- 唯「さばいばる!」 前編
- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 22:05:22.44 ID:aROkXn/j0
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生存に必要不可欠なものは何だろうか、水か食料か、衣服や住居、友情や勇気か。
否、断じて否ッ!!
生存に必要不可欠なものは……
遭難1日目!
最初は四肢がだらんと垂れていて、皮膚が冷たくなっていることだけはわかった。
数十秒、あるいは数分してからだろうか徐々に周囲の状況に気付きはじめる。
砂浜に打ち上げられた自分の身体、少し離れたところにムギと 律が倒れているのがうっすらと見えた
声をかけようにも喉はかれ、舌が動かない、立ち上がろうにも身体がなかなか動きだそうとしない……。
動かない身体はますます倦怠感を増して、すっかり眠くなってきた。憂ならここで寝れば怒るんだろうな。
そんな考えが頭をよぎる。でも、
(でも、すごく眠いよ、憂……)
唯「さばいばる!」 後編

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【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?

韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
(あれ、律っちゃん……?)
気付くと先ほどまでムギの横にいたはずの律の姿がない。どうにか頭を動かして視線をずらすと、
律が波に誘われ、砂浜から海へ引き戻されているのが見えた。
このままでは律の身体が海へと、沖へと流れ出すのがはっきりとわかった。
(律っちゃん……!律っちゃん……!)
唯の直感はこの潮が律を沖へ流せば二度とは戻れないことを察知した。
同時に紬が暫く起きそうにないこと、律が完全に意識を失い波にのまれようとしていることもわかった。
事実、唯の観察には一切の間違いはない。だが、その現実への理性的な対抗策まではみえなかった。
(どうしよう……律っちゃん……)
だが平沢唯は猶予のなさに気づくとまさしく正しい選択を選んだのだ。
瞬間、頭に靄がかかったような倦怠感は晴れて、身体にエンジンがかかる。
友達のためになら、律っちゃんのためにならいける。
「律っちゃあああああああんっ!」
喉を枯らして叫びながら律のほうへかけより身体を砂浜に引きずりあげる。
水の中まで体が浸かっていた律を引き上げるのはなかなかの難作業だった。
もともとそこまで力の強くない唯には律の重さを引きずるだけでもかなりの重労働。
腰に力をこめ、半ばおぶるようなかたちで律を抱えて水中の砂を踏みしめる。
やっと律は引き上げたが、やはり身体のどうしようもない疲労は無視できず、
律を引き上げたところで唯は力なくその場に倒れた。のどの渇きを感じる。
「ううっ、体中痛いよお……」
すでに身体は限界だったが、頭の回転はさっきの運動で急回復したようだった。
まず自分たちが合宿先の海で津波に浚われたことを思いだし、次に周囲の状況を整理を試みる。
打ち上げられたのは砂浜、胸にふれる砂がチリチリと熱いのがわかる。
相当の海水を飲んでしまったのだろうか、喉の痛みと腹部の妙な熱が気にかかる。
どうやら律もムギも息はしているらしいが、意識があるのかは唯からは判断できなかった。
「お腹が熱いよお……」
芯から冷えているはずのなかで妙に熱さを帯びる腹に唯はある種の危機感を抱く。
しかし、動かない体では 手の打ちようもなく、対処方法も判らない。
彼女は自分の衰退した能力でできるかぎり周囲の状況をつかもうとあたりに視線をやる。
まだ視界はみょうにぼやけていて、なかなか思うように景色を把握できない。
とりあえず浜には外の人影はない。エンジン音や音楽のような人工音もないし、
駐車場だとか海の家、船もみあたらない。海辺にしてはやけに静かで人の存在感がないのが気になる。
(どこなんだろう、ここ……?)
やや視線をあげて周りに目をむける。高い丘が浜の先に見えた
ポリタンクなどの数々の漂着物と丘の上に見える朽ちかけた赤い家。
視界が開けるにつれて閑散とした浜の様子が明らかになっていく。
漂着したゴミは雑然としていてほんの少しも仕分けられた様子はない。
体中の意識を振り絞る。こういう言葉はないのかもしれないがとにかく唯はそれをした。
うっすらと看板が見える。そのあたりだけなぜだか生前としていてゴミも少ない。
まるでそこにだけ朽ちていく運命から逃れられるかのように。
生命感がない。この島のゴミと看板は生活から切り離されたところにある。
この島のモノには命がない
そして極めつけは 数メートル先の白い看板にデカデカと青字で書かれた「この島国有地」の字。
人気のない島の無機質さをその看板がより一層際立たせる。
「そうか、ここは!!」
ここは人々に見捨てられて、国に押し付けられた島。
その国も管理を半ば手放した人のいない島。
「ここは無人島なんだね……!」
絶望からか失望からか、そこで頭の回転は急失速し、唯の限界の身体は気絶に近い睡眠を選んだ。
どうやったかは覚えていない。けれど律はどうやら気を失っている紬と唯の二人を砂浜の木陰に運べたらしい。
唯が砂浜に身体を持ち上げてくれたことで、ぼんやりと意識を取り戻ししばらくしてから肌が暑いと思ったのは覚えている。
ほんとうにそれだけの記憶の後で、気づいたら二人と一緒に日陰にいたわけだ。
直射日光の厳しさは予想外のもので、随分長い間海をさ迷っていた身体が熱を持つのに一時間かからなかった。
おそらく砂浜にあのままいれば、熱中症や日射病で身体が完全に動かなくなってしまっただろうという律の推測はおおむね正しい。
冷えた体で日陰に行けば低体温症のリスクもある。しかし、浜の熱さはそちらのリスクを完全に立つほどの高温。
結果としてだが律の判断と行動はグループの生命を救うことに成功したのだ。
サバイバルにおいては環境条件というのは実は生存における最重要ファクターでもある。
とりあえずだが唯の決心と律の判断は死者を出さないことに大きく貢献した。
律「とりあえず、日陰にきたのはいいが……」
凄まじい体力の消費と喉の乾き、突然の出来事への混乱と他二名の安否への焦燥。
どうにかしたい気持ちとどうにもならない身体が激しくぶつかりあう。
律の精神状態は物事を冷静に理解するにはあまりにも傷つきすぎていた。
グルグルグルグルグルグルと律のとりとめもない考えは自らの精神をかき乱す。
助けに行かなきゃいけないなどとつぶやいた後にライブの失敗を思い出したり、
中学の時のテストの赤点が急に恥ずかしくなったり、その後に紬の髪をなでてみたり、
とにかくその精神は深く疲弊していた
律(澪……、梓……)
一番の親友と後輩の不在は律の不安をいっそう掻き立て、気づけば律は涙が止まらなくなっている。
律「澪……、梓……、どうすりゃいいんだよお………」
焦燥に対し疲労した身体と混乱した精神はいつまでも何もできなかった。
涙はとめどなく溢れ、嗚咽は止まらない。
律「うっ……どうしよう……」
すると、そっと律の身体を後ろから何かが包んだ。
紬「泣かないで、律っちゃん……」
いつ目を覚ましたのか、ムギが 律を柔らかく抱き締めてくれる。
潮にあれだけ浸かったはずなのにムギの髪からは優しい匂いがした。
紬「大丈夫だから、律っちゃん」
優しく微笑むムギ。
律「ムギッ!ムギッ!怖いよおおお!」
律はムギに泣きつき、どうにもならない気持ちを少し軽くした。
紬「大丈夫、大丈夫だからね……」
なにが大丈夫かはわからなかったが、律は大丈夫な気がしてきた。
気付いたら律が泣いていた。だから慰めた。それだけのことをする余裕がムギにはあった。
律を抱き締めながら、ムギは自分たちが重大な局面におかれていることを瞬時に理解した。
律はなにがなんでも澪と梓を探したいと思っている。
だが、おそらく、この身体の疲労でそれがままならない状態に律は身を焦がしているはずだ。
それをなだめ、落ち着かせるのは友人としても生存の上でも大切なことだ。
精神的動揺、とくに嗚咽などは体力を過度に消費させてしまう。
ムギはこの木陰の三人の中で最も慈愛に満ちていて、同時に冷静だった。
紬は洞察力においては人を寄せ付けない何かがある。
彼女はまさしく母であり、他人の理性的な愛し方を知っていた。
律「澪と梓が!」
紬「大丈夫、二人とも無事に違いないわ」
律「でも、でも……!」
律の目に再び大量の涙がたまる。
紬「潮の流れを考えて、律っちゃん。私たちと一緒に流されたなら、近くの浜に流されてるはずよ」
律「でも、でも、浜には私たち三人しかいなかった!」
落ち着かないのか、律が大声を張り上げて反論する。
律「澪も梓もこの浜に流されて倒れてないじゃないか!」
律はついにヒステリックなかな切り声をあげて顔を真っ赤にしながら泣き始めた。
なんとか保たれていた心の平静はあっさりと崩れ、再び嗚咽が始まる。
紬「気を失った私たちがこの浜にたどり着いたのよ!」
律「だからなんなんだよ!!」
ますますヒステリックな狂気をおびる律の声は叫びと変わらない。
紬「もし澪ちゃんたちが死んだなら、この浜に遺体があがるはずってことよ!」
律「死んだなんて言うなああああああ!!」
いまにも殴りかかりそうな剣幕で律が泣きながら叫ぶ。
紬「絶対に二人は生きてる!!」
律「どうして!」
紬「この浜にいないからよ!」
律「!」
律は急に力が抜けたように地面にへたりと倒れた。何かに気付いたのか安堵で顔は穏やかな色を取り戻す。
紬「もし二人が死んだなら、気を失った私たちと同じように波に逆らわずにここに来てるはずよ!」
律はムギの説明に納得し、泣きつかれたのか。澪は生きてる梓は生きてるとポツポツ呟きながら眠りに入った。
ムギは優しく律の頭を撫でながら、先の見えない不安と律を騙した罪悪感に抗っていた。
でもねそれは嘘だ、全部嘘だ。嘘なの。律っちゃん。嘘、嘘、大嘘なんだ。
口ではああ言ったが澪と梓はほぼ間違いなく死んでいる。これは間違いないだろう。
本来、潮の流れを考えるなら五人は同じ浜に行き着くべきなのだ。
複雑な潮流の中で、都合よく陸地に向かって物を運べるような流れは数少ない。
三人はその都合のよい流れに乗り同じ浜に着いたのだ。それをとらえなければ浜に物はたどり着かない。
おそらく澪と梓は潮流に乗れずに大海に投げ出されたのだろう。
だが、非情な現実をいまの律に告げることはできない。
澪と梓のことを思うと胸が痛まないわけではない。いや、胸が痛まないはずがない。
しかし、ムギには今目の前で生きてる唯と律を生かすことのが重要だと割りきれるだけの冷たさもあった。
唯と律には澪たち二人が死んでいるだろうなどという現実はいらない。
生きるためには厳しい現実に打ち勝つ、甘い夢が必要なのだ。
紬「ごめんね、澪ちゃん梓ちゃん。私はあなたたちを……」
ムギは涙した。自分の情けなさに二人を探しにいけない情けなさに涙した。
本当は二人に生きていて欲しくて堪らない自分に暴力的に詰め寄る冷静な自分が怖かった。
しかし、泣いてばかりもいられない。水や食料、水着の自分たちが今後の衣料をどうすべきか、
木陰ではなく建物を探し屋内に入るべきか、火はどうするのか、ムギは冷静に尽きない課題へと目を向ける。
二人のことが大好きで大好きで仕方ない自分から、優しい自分から目を背けるのに他に方法はなかったから。
現実の冷たさに心を沈めなければ、すぐに死の灼熱に追いつかれる。
灼熱から隠れて生きるには、じっと心を沈めていくしかない。
寒さにまひしても、心をじっと沈下させる。それも生きるための手段だ。
唯が目を覚ましたころには太陽が傾きかけ、夕方近くになっていた。
浜に漂着したころには多分昼前であったから、およそ6時間以上はぐっすり眠っていた計算になる。
体力はそれなりに回復したが、のどの渇きと腹部の熱はおさまらない。
横に目をやると律とムギは既に起きていたらしく、なにやら話し合いをしていた。
二人が無事に話していることで唯も一安心し、会話の輪に加わっていく。
唯「おはよう」
紬「おはよう、唯ちゃん」
ムギがいつもと変わらない笑顔で優しく返す。
律「お前、寝言でギー太が云々いってたぞ」
唯「いってないよぉ!」
良かった。無人島でも二人ともいつもの調子だ。唯はそんな幻想を信じ込み心の安らぎをえた。
唯「二人とも何の話をしてたの?」
紬「ええ、唯ちゃん、ここでこのままいるのは危険だって話をしてたの」
律「ああ、砂浜は朝晩の寒暖差が激しいし、津波がまたあるかもしれないからな」
唯は寒暖差など全く考えてもいなかった。いくら8月とはいえ海辺はやや冷える。
半乾きの水着しか来てない唯たちには厳しい環境であることは簡単に推察できた。
体温が変化しすぎる環境は生存には適さない。恒温動物にだって限界はある。
唯「どうするの?」
律「民家がみえるだろ?」
砂浜からは林の陰に隠れてはいるが、確かに民家の頭が遠くに見えた。
唯「あそこにいって、一晩明かすんだね」
律「ああ、それに家にいけばなにかしらあるだろうからな……」
なにかしら、おそらくは生存へのアイテムをさしているのだろう。
サバイバル体験のない唯には何が大切かなど皆目見当もつかなかったが、
律と紬はそれぞれ必要なものを頭の中で描いているようだ。
唯「じゃあ行こうか」
善は急げ、 太陽が傾いていくのが普段よりも敏感に感じられた。
おそらく、夜まで唯たちにはそれほどの時間は残されていないのだろう。
紬「ええ、そのつもりだけど……」
紬が言葉を途中で濁す。
唯「だけど?」
律「私たちは今水着で靴も履いてない。そんな状況で砂浜からはなれて足元が安全かわからない場所にいくのはな……」
紬「そう、誰か怪我しても治療の手立てがないの……」
怪我のリスク。病院は愚か包帯も消毒液もない状態での怪我は命にもかかわりかねない。
唯の頭の中にはけがのリスクがしっかりと刻み込まれた。
少しではあるが自分や周囲の行動をきにすべきだという自覚も芽生えたのだ。
唯「じゃあ、どうするの?」
律「あそこにあるのを使わせてもらおうぜ!」
律が示す砂浜の先には、赤ペンキで海のいえと書かれた看板がだらしなーくぶらさがったボロ屋が一件かたむいていた。
日光と潮風のなせる業だろうか、うみのいえの内部は思いのほかきれいだった。
いくらかほこりは積っていたし、天井もなかったが、それほど荒れていない。
奥には倉庫のような部屋があったので、三人で中に入り物色する。
海のいえの奥からビーチサンダルと比較的綺麗な布地と男物の短パンをいただき店をでる。
律「日の当たる店で風通しもよさそうだったから布や服に虫の心配はないな」
唯「どうだろう、いまいちわかんないけど、使うほかないよね……」
律「おーい、ムギ!捜索は終わったかあ?」
紬「うん、とりあえず店の中の鞄にいくつかの道具もいれて持ってきたから」
パンパンと手持ち鞄を叩いて、紬が奥から出てきた。
三人とも水着の上から短パンをはき、マントのように布地を羽織ってビーチサンダルをはく。
最初は布と短パンを潮水で洗おうかとも考えたが、体温の低下を避けるために三人はそれを避けて、
ビーチサンダルのみを軽く洗って、民家へ急ぐこととした。
紬「なんだかワクワクするわね!」
律「だな!」
唯「うん!」
唯は二人のテンションに後押しされるかのように先頭を歩いて民家の見えた先へと向かう。
砂浜にはSOSと石を並べて描き救助に無視されないようにと注意して三人は砂浜を離れた。
唯はともかく、律と紬の二人はSOSの石が慰みにもならないものだと気づいていた。
あれだけの大津波が起きたのだ。おそらくは全国的に津波災害が発生したに違いない。
そのなかで得体のしれない無人島に漂流した女子高生をさがすことなど誰も思いつかないだろう。
浜からの道はずっと砂利続きで、アスファルトと違いサンダルでの歩きにくさが目立つ。
看板の年数からでは推測しがたいが、この島は一体何年前から人が踏み入ってないのだろうか。
そこらに伸び放題の雑草はなぜか砂利道を邪魔することなく生えていたが、
相当な年数この島が人から見向きされていないであろうことを如実に物語る。
砂利道をてくてく歩きながらも唯の頭にはずっとひとつのことが気になっていた。
唯の下腹部の熱はますます強くなる。これは腎臓や肝臓のあたりだろうか。
唯には理由もよくわからないが熱はますます上がっていくばかりだ。
唯「なんか、お腹が熱い……」
律「お前もか……!」
紬「実は私も……」
三人は全員が同じ症状を持ったことに奇妙な不安を覚えた。
紬「そしてのどがすごく渇くんでしょう?」
唯「う、うん!」
律「海水の飲みすぎか……!!」
紬「ええ、多分……」
本能だろうか、医学的知識を持ち合わせない三人には根拠をもちだせなかったが、
潮水の飲みすぎをすぐに察知することができた。
律「急ごう……」
危機感が三人の足取りを速めていく。
十分ほどすると商店一軒と家が十軒ほどのちょっとした集落についた。
通りの退廃具合からして人はすっかり何年も前からいないのだろう。家々の庭は雑草パラダイスになっている。
示し合わせたように三人は散り散りになって集落を歩き回り何かないかを捜し歩いた。
何かとは、さっくりいえば水を飲む蛇口の類のモノである。
すでに三人ののどの渇きは口にこそ出さないものの相当ひどくなっていた。
そして三人それぞれがそれぞれの渇きを思って何かを必死に探す。
通り以外は雑草だらけで思うように探索も進まない。
律「おーい!二人ともー!こっちにこいよー」
家々の庭を観察していた唯たちに先駆け、律が何かを発見したようだ。
律「おいおい井戸があるぜ!!」
ついに水を発見した唯たち!果たして澪と梓は生きているのか!唯たちは生き残れるのか!唯たちのサバイバルは始まったばかりだ!!
完!!!!!!!!!!!!!
第二部
井戸があっても水がきれいかわからない。いや、井戸などそもそもかれてるかもわからないのだ。
しかし、唯の腹部の熱がますます強くなる。水が飲みたい。三人の本能は理性的な嫌疑をどこかに置き去りにして井戸に向かわせた。
この渇きのまえでは水が安全かどうかなどどうでもよかった。真水ならなんでもいい。
井戸は手押しポンプ式で少々錆び付いていたが、律が手でポンプを動かすと、水がでてきた。
唯「うう……」
律「はあ……?」
真っ赤に錆びた色をした水が
ポンプが錆びついていたからだろう。しばらくは赤い水がで続けた。
しばらくして真水がでてくると律は何も考えずにポンプの下に口をやり水を飲み始めた。
きれいな水と夕焼けの光が空中でキラキラとぶつかって、唯は思わず生唾を飲む。
律「うまい、めちゃくちゃうまいぞ!」
そんな言葉を聞かされては紬も唯も黙ってはいられない。律に習って二人もポンプからの水を浴びるように飲んだ。
唯「おいひいよっ!」
紬「おいひい!」
どことなく鉄くさい味もしたが、のどの渇きの前では大した問題ではない。
浴びるように水を飲み乾きを癒した三人は急にもじもじし始め、お互いの下腹部を意味ありげにチラチラ見る。
紬「みんな……、いきたくない……?」
律「だよな、ずっと我慢してたしな……」
みなが恥じらいの目で自分の股に目をやる。
唯「うん、おしっこしたい……」
気づけば三人の尿意はクライマックスに達していた。本当は最初からクライマックスだったが、
三人の緊張が解けて、水をのんだことでそれは思い出したように強さを増して三人を襲うのだ。
尿意からすれば、俺の必殺技パート2といったところだろうか。
唯「おしっこしようか……」
律「まて、紙がないし、そもそもトイレがないぞ……」
紬「それはねえ……、仕方のないことだし……」
律「野外か!野外なのか!」
唯「どうせだれもいないよ」
律「そういう問題じゃねえ!」
紬「じゃあ、どうするの?」
律「みっ民家のなかのトイレを!」
唯「民家のことはよくわからないし、危ないよ」
紬「じゃあ野外しかないわね」
唯「うん、もう我慢できないし」
紬「非常時だし」
律「ううっ……お嫁にいけない……」
唯が待ってましたとばかりに短パンを脱ぎ、肌にまとわりついた水着を全力で脱ぎだす。
それを見て紬も勢いよく短パンと水着を同時脱ぎし、二人は秘所をあらわにかがみこんだ。
紬「ツーピースで良かったあ!」
唯「うん、すばやく脱げるよ!」
律「ちょっとまて……お前ら二人で一緒にやるのか……!!」
唯「まっさかー」
律「だよなー」
紬「三人だもの!!」
律「ですよねー」
律「まっ待てよ!」
唯「したいの!?したくないの!?」
律「ううっ!やるっきゃない!」
紬「待ってましたあ!」
意を決したのか律も服を脱ぎ、三人は輪になってかがみ、標的をその輪の中心に定め、
放尿を開始した。
ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
クライマックスなどっとっくに通り越した膀胱がうなりをあげる!!
唯「はっ、はぁ、うっあああああああああああああ!!」
内在的な水分量にすでに三人の膀胱は破裂寸前!
つまりはこの排尿も大変なエネルギーをもつのだ!!
律「いやあああっ!!お、おなかがああああ!!」
まさしく苦行!まさしく試練!三人は襲い来る水分の暴力に必死に抗う。
紬「音、音がすごいの!!消せなくてっ!!ああ!!」
そう、静音の仕様がない野外放尿は流れ落ちる滝のように激しくうなる!!
ブッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!1
ワロタ
律「見られてる!見られちゃってるう!!!」
唯「ふえっ、見られてするの!!!」
ぶっしゃあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
紬「すっごく!!!!!!!!!!!」
ぶしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!111
律「……気持ちいい!!」
三人はしばらく全力を出し切り、お互いの放尿をしっかりとみつめながら、最後にはちょろちょろとそれを終えた!
さて、放尿を終えた三人の顔は勝利と悦楽に輝いていた。
紙がないこの状況では、清潔さを保つのに一つの方法しかなかった。
このあと、嫌がる律のまたを二人で丹念に井戸で水洗いしたり、
仕返しとばかりに律が二人のまたをきれいに洗ったりしたのだが、
さすがにその話は本編に関係ないうえ、狙いすぎなのでやめておこう。
落ち着いたころには太陽はほとんど沈みかけて、島を黄昏が支配しようとしていた。
まだ明かりのあるうちに探索を進めなければなるまい。
三人は井戸から離れて井戸に一番近い民家の探索にかかる
一軒目は古泉という立派な表札の平屋だ。
割りと保存状態がよかったのか畳はともかく、縁側や板の間は埃を被っていたが使えそうだ。
庭が広く、日当たりの問題か雑草もそこまで多くはなかった。
今夜はおそらくここの板の間あたりで寝ることになるのではないだろうか。
室内を探すと食料品は乾パンが台所にたんまりあったが他は全滅。
布団などは非常に状態が悪く使えそうなものはなかった。
あとはいくらかの調理器具と小説や聖書のような本があるくらいでほとんど何もない。
何十年も前に人がいなくなったようだったが、
缶詰の賞味期限はここ二三年前に切れたものばかり
このことに三人とも気がついたが、気にせずに缶切りを探しだした。
律「にしても、湿気た家だなあ、ったく」
紬「食料品と調理器具があるだけいいわ」
唯「とりあえず、当面の水と食料はなんとかなりそうだね!」
安堵に唯の顔がほころぶ。
が、
紬「どうかしら……」
紬が土間にあった古泉家のかまどを睨みながら、不安そうな表情をつくる。
唯「へ?」
唯が間抜けな声を出すと、律が紬の横に歩いていき相談を始めた。
紬「まず、私たちには調理器具はあっても火がない」
律「ああ、火を通さずに食材をとるのはなるべく避けたいところだ」
食中毒のリスクを下げるため、胃に優しい食事をつくるために
火は欠かすことのできないファクターである。
律「火はほかのことにも使えるしな」
唯はほかの事が何かはわからなかったが、二人の会話をじっと聞く。
紬「あとは靴ね、ビーチサンダルで畳が抜けたりしたら大怪我よ」
足を持ち上げ不満げにぶらぶらさせて、紬は律を見る。
律「だったら短パンに布だって改善したいとこだぜ」
対して律は大げさに布と短パンを強調してみせた。
唯「うーん、そういえば怪我しても医薬品もないし、じつは全然なんにもないんだね……」
律「ナイフやスコップもあってもいいだろう」
紬「うん、とにかく身の安全と健康を考えたら今すぐにでも欲しいものはたくさんあるの」
三人は水を手に入れた幸運になかなか気づいていないが、水こそ彼女たちの最大の発見、功績である。
水だけあれば三日は生き残れるのだから、なにもないなどとはサバイバル知識のある人間なら口にしなかっただろう。
三人は窓の外を見る。この家の窓には一応ガラスと網戸がかかっていた。
目を凝らすと夜が近いのが空の色でわかった。
律「まずは火だな……」
紬「ええ、いきましょう」
唯「ファイトー!」
紬「いっぱーつ!」
唯「マッチマッチー」
律「チャッカマーン」
紬「ガスバーナー」
三人は日が沈む前に火をつけるのが先決と各々集落内を駆け回り、火の元を探す。
唯「あっマッチあったよー!」
キョンと壁にペンキで書かれた、集落内でも一番ぼろぼろの家の仏壇からマッチを探し出した唯。
早速、紬と律は枯れ木を集めて、家のかまどに火をくべようとする。
長年の湿気のせいか、なかなか火をつけられなかったが、何とか日が沈む前にマッチをかまどに投げ込む。
かまどのなかでは徐々に徐々に火が燃え、燃え広がり、暖かな光が古泉邸をつつむ。
何本かの薪のストックを用意するまもなく、火がついて数分で 唯たち三人は睡魔にまけた。
玄関でくたくたになって横になる三人は、その瞬間だけは苦しさを忘れて安らかな表情を浮かべるのだった。
一日目終
遭難1日目!Bパートの予告!
こいつははずれをひいたなあと最初にわかったのは
水の中でおぼれかけながら意識を取り戻したら、、
砂浜に力なく座ってただ泣くだけの澪先輩が見えたときからだ。
必死に砂浜に向かって泳ぎながら、他の先輩と漂着したかったものだと思った。
ムギ先輩は案外クールだけど、みんな優しくて決断力がある。
この決断力のない女を引き当ててしまったのは不幸だ。
砂浜にたどりつく頃にはこんな気持ちはすっかり消えていた。
このときは、こんな暗い感情をさらけ出した自分が正直怖かった。
でも、この感情がまちがったものじゃないという確信がどこかでささやいていた気もする。
熱した砂の上、梓があんなに遠くに見える。
とにかく混乱していた。澪は溺れている梓を助けようとしたが、
助けようにも声の出し方と歩き方がとっさにわからなくなってしまった。
こんなことが実際にあるのである。
後輩の命の窮地にも情けない自分が恥ずかしい。
恥ずかしいけど泣くことしかできない。それが恥ずかしい。堂々巡りだ。
「うわ、うあああああああ」
そんな自家撞着をよそに梓はなんとか砂浜までたどりついた。
体力を限界ギリギリまで浸かって何とか浜辺にたどりつく。
梓の眼に非難するような色はなかったが、失望はありありと描かれていた。
まあ、実際のところ助けに来ても二人とも溺れてしまう可能性だってあるのだから、
非難の仕様はないし、失望を抱いたのも自分勝手な気がして、
梓はとりあえずのところ澪をどうにかしてあげたいと思うようになった。
澪はそんな逡巡にも気付かずに泣きながら、やっと声の出し方を思い出したのか。
「梓、大丈夫か!?大丈夫だったか!?」
などと今更になって言い出し、梓の失望を少しよみがえらせる。
いい人だけど使えない。梓は無意識化で澪に対してそう判断を下した。
それは半分事実だったが、サバイバル化ではストレスはたまりやすいものだ。
否定的になりやすいし、それはいくらかの危険もはらむ。
この否定的判断が吉と出るか凶と出るかは、いずれわかるだろう。
澪「良かった、本当によかった!!」
澪は馬鹿みたいにその文句を繰り返すばかりでなにも考えられない様子だ。
梓はわかったわかったと手でその動きを制し、いきなり切り出す。
梓「三人を探しに行きましょう。」
その言葉を聞いて初めて、澪は三人の不在に気づいたようだ。
急にあたふたし始めて、なにやら二三ぼそぼそつぶやくと、
にっこりと笑顔を浮かべて、そのまま微動だにしなくなった。
面倒だなあ、と梓は口には出さないけれど、強く思った。
おそらく、意識を失うなりなんなりで潮水をあまり飲まなかったのだろう。
梓と澪は漂着してすぐに行動が開始できた。もっとも澪は再起動にずいぶんかかったが。
同じ浜に流されるなら同時に近い時間で着くはず、
という梓の意見でSOSの置き石を残して二人はビーチから早々に立ち去ることとした。
浜に流れ着いたゴミからサンダルを拾ってきれいに洗って履く。
澪は拾ったものを使うのが嫌そうだったが、後輩の前なので頑張った。
澪「どこをどう探すんだ?」
自分で考えてください、などと意地悪を言おうか迷ったが、正直に伝えた。
梓「とりあえず真水を探しましょう。」
澪「どうして水なんて探すんだ?」
梓「生存には水は不可欠ですよね?」
澪「水さえあれば、三日半は生きられるなんて言うよな」
梓「私たちには絶対必要です。つまり、」
澪「みんなにも必要か!」
梓の推理は非常に、論理的には正しいものだった。
生存に必要な水、それを得ると同時に仲間と再会する。
だが実際には唯たち三人にはそれでは会えない。
無人島であろうことは二人とも理解していたが、二人とも家を見ていなかった。
その二人がまさか井戸が生きている集落があろうなどと予測できるはずもない。
小さな間違えを抱えつつ二人は浜辺に沿って歩き、河口を探すこととした。
河口を探すと一口にいっても簡単なものではない。
梓の思惑に反して、すぐには河口にはたどりつけない。
浜の熱さにやられそうになりながら、二人はせっせと歩く。
この間、二人は一言も言葉を発することはなかったが、それは正しい。
熱と徒歩による疲労以外は最小限に抑えて行動することが本能的にできていた。
40分ほどわき目も振らずに歩くと、海にちょっとした川が流れているのが見えてきた。
澪「なんだか結構細い河だな……」
梓「支流ってやつなんでしょうか……」
二人は少しばかりのどが渇いていたが、下流の水はどうにも信用できず、
火照った皮膚を湿らせる程度で口には含めず、上流に向かって歩き出す。
上流に行くにはどうにも道が歩きにくく、サイズの合わないサンダルでは難行だった。
梓と澪はたがいに怪我のないように注意して、ゆっくりとだが確実に登っていく。
梓「上流に向かえば、この川がどういう構造か少しはわかりますね」
澪「ああ、唯たちも水のきれいな上流近くに向かうだろうし」
残念ながら井戸を手に入れた三人にはその考えでは外れである。
しかし上流を目指すという志向はサバイバルにおいて決して間違いではない。
きれいな水を手に入れるのは最優先の命題なのだ。
山に入って沢を探そうとするようなことは素人には無理だが、
上流をめざし比較的きれいな湧水を探すのは難しくない。
道なき道をかき分けていくと、水がたまっている地点へたどりついた。
ここから水がわいているわけではないが、見たところきれいな水が蓄えられている。
湿った川沿いを歩いてきた二人はそこまでのどが渇いていたわけではないが、
それでもやはり水を飲まないわけにはいかない。
澪「ここの水、きれいかな……」
梓「なんとも言えないですね」
見た目がきれいでも雑菌が繁殖している水など多々ある。
水溜りの近くに作業小屋のようなものがあるのに澪が気付き、
視線で梓を促し、とりあえずは小屋の中をみてみることにした。
作業小屋は八畳もない掘立小屋だったが、所狭しと道具が並べてある。
漁や採集に使うのか釣り具やナイフやマッチや薬缶など役立ちそうなものは多い。
安全靴や作業着のつなぎ、ブルーシートに蚊取り線香、石鹸まである。
澪「すごいな……」
どの道具も少々ふるいがつかいようはありそうだ。
澪は無人島でこのような道具と出会えたことが不思議でならかった。
どうしてこうも使える道具が都合よく並ぶのだろうか。
神秘を感じる澪に対し、梓は早々と道具の中から薬缶とマッチを取り出す。
澪「どうした、梓?」
梓「そうですよ、水が飲みたきゃ沸かせばいいじゃないですか!」
そういうと梓は枯れ木を探しに出ていった。
ワンテンポ遅れて澪も石を探しに出て行った
サバイバル物ってどうしてもワクワクしてしまうな
かまどは、熱効率を高めるために三方を石の壁で囲った「コの字形」がもっとも一般的なタイプである。
その際には、「空気が供給されやすいように、かまどの焚き口を風が吹き込んでくる側へ向ける事が鉄則」
そのような基本事項を知っていた澪はせっせとかまどを組み上げていく。
梓もそれにはくちだしせずにさまざまな太さの枝を拾ってきた。
なんだかんだで二人のコンビネーションは良好だった。
お互いが規則的に自分のやることを理解していたので、
問題もなくかまどと薪の用意はできた。
水溜り近くにあったのでマッチは湿っていた。
なかなかつかなかったが、しばらくしてどうにか弱弱しい火がついた。
それをダメにしたマッチにつけて、かまどの中で木々が徐々にが燃え上がる。
澪「や、やったあ!」
梓「ヤッテヤッタデス!」
澪と梓は手を取り合って我を忘れて喜んだ。
共同作業の達成は人間に喜びの感情を与える。
それは原初の人間が狩をしていたころからの本能である。
作業の中で梓は澪への否定的判断を払拭し、尊敬する澪先輩は帰ってきた。
澪の弱さと強さの両方を受け入れることができるようになったのだ。
共同作業は心の結びつきを強める。
ましてや、二人で生存のために作業するなど、最高の好機だ。
火は楽しみである。そう火遊びは楽しい。
それは少年少女はもちろん大人にも言えることだ。
ろうそくに火をつけたり、枯れ木を燃やすのに人は言い切れぬ高揚感をえる。
本能が火の慰みをもとめるのだ。
さっそく水溜りの水を薬缶に入れて煮沸を始める。
二人は作業着やら何やらをやや下流の水で洗って火干しを始めた。
梓も澪も火にまきをくべる作業が楽しくて仕方がないようで、
服を乾かす間にかまどをもうひとつつくり、予備の火として保存することとした。
梓と澪は火の楽しさを十二分に堪能し、薬缶の中身が沸騰すると、
かまどから薬缶をはずして、じぶんたちは食べられそうなものを探しに歩いた。
梓「たんぽぽがたくさんありますね」
二人があたりを散策すると、タンポポが群生しているのを見つけた。
梓が葉を何枚かつむと、虫食いもなく鮮度もいい。
梓「晩御飯はきまりましたね」
澪「ちょっと待て、たったんぽぽなんて食えるのか?」
梓「食べたことはないですけど、大丈夫らしいですよ」
中東などではタンポポは食用にされる。
日本でも揚げて食べるケースは多い。
澪「わざわざ食べなくても……」
梓「私は食べます。この暑さでお腹に物を入れてなきゃ、最悪死にます」
澪「そんな、大げさな……、第一おなかこわしたらどうするんだ?」
グウゥーと何とも間抜けな音が澪の腹から響く。
梓「とりあえず、二人分作りますから。食べたくなったら言って下さい」
澪「ううっ、私も一緒に作ってたべるよー」
素人にとって野草は簡単に取れる栄養源の最たるものだ。
獣や魚などをとれるなら、野草はサブの食糧だが。
大の大人でもそうかんたんに狩猟はできない。
ましてや女子高生の彼女たちには土台無理な話だ。
食糧に富んだ唯たち三人に対し、不利なように見える二人だが、
このタンポポ食は思わぬ点で唯たちよりも有利な状況を生み出した。
みおみおとあずにゃんの拾いものリョウリショー!!!
澪「というわけで、このタンポポをどう調理するんだ?」
梓「まずはきれいな葉っぱを選び、それを水を入れたなべにぶち込みます」
澪「豪快だな」
梓「いえ、決して豪快じゃないですよ。あく抜きですから、五分ごとに水を入れかえて苦みを抜きます」
澪「何回変えるんだ?」
梓「最低五回くらいです。多分」
筆者はあく抜きを怠ったがために苦い思いをしたのをここに付記する。
ドレッシングなどの調味料がない場合はあく抜きは必須だ。
タンポポは十分にあくをぬいても苦みがはっきり残るため、この作業は大事である。
水溶性ビタミンが溶け出してしまうことなど気にせず、
ひたすら水にさらしてえぐみをぬくことに専念すべきだといえよう。
澪「あく抜き終了!」
梓「ずいぶん早いですがまあ気にしませんよ。その間にわかしておいたお湯に葉っぱをさっとくぐらせます」
澪「葉がくたくたになるまでやってもいいぞ」
梓「今回はお腹に優しくなるようにくたくたになるまで火に通しました」
澪「で、次はどうするんだ?」
梓「終了です」
澪「へ?」
梓「だから終了です」
澪「味付けとかは?」
梓「醤油はおろか塩もないです。ですからこれで完成です」
澪「……」
料理名
たんぽぽのはっぱのあくをぬいてゆでたの
澪「じゃ食べてみるか……」
梓「見た目はいまいちですけど多分味もいまいちですよ」
澪「テンション下がるなあ……」
気づけば日もだいぶ下がり、昼の三時くらいだろうか、
とりあえずはおやつという名目でいいのだろうか。
かけた茶碗に入ったくたくたの葉っぱと湯呑には煮沸した水。
貧しい食卓ではあったが、とりあえずは食べられるものがそろった。
澪梓「いただきまーす」
澪「苦いし青臭いな、これ……」
梓「そうですか?思ったよりいけますよコレ」
くたくたの葉っぱは得体の知れぬ青臭さがあったが苦みはそこまでくつうではない。
山菜的な苦さで、好きな人は好きだろう。
長いあく抜きが功を奏したのか残るような苦さはない。
舌触りはしょうしょうざらついたが、奥歯でしっかり噛んで飲む。
当初抱いたほどの野草への嫌悪感もなく、案外食べ切れた。
なかなかの量をたべたことで腹も膨れて気分もよくなる。
水は生ぬるかったが渇いたのどは潤せたし、
冷たすぎる水はお腹によくないのでよしとすべきだろう。
澪「結構、食べたな」
梓「ええ、少なくとも飢餓の心配はなさそうですね」
タンポポには様々な薬効がある。調理法のせいでビタミンはあまりとれないが、
ありあまって十分の利尿作用と胃腸の調整の効果がある。
つまりは海水をのんだ腹からの排泄がよりスムーズにいき、
なれないストレスで極端に荒れるであろう胃腸の保護にもなるのだ。
筆者は三日間タンポポをたべて生活していたが、
胃腸がだいぶ強くなり、べ塗りやすくなったような気さえもする。
お前は三日間どんなとこで生活してたんだよ
素人判断で野草を食すのは本来は危険である。
タンポポのようなよく知ってる草でも注意が必要だが、
知らない草を通ぶって食草とするべきではない。
梓「どうしますか?まだ太陽から昼ぐらいですが上流に向かって探索を続けますか?」
澪「いや、このさきどれだけあるのかも分からないし、靴や服が乾いてからでも行動は遅くない」
梓「ですね、暗闇をむやみやたらと歩き回っても探しようがないです」
澪「それよりも、小屋の中を探索して、周囲の食べられそうなものを探すのが先だろう」
梓「あと肌着もほしいですね、さすがに水着のままじゃあちょっと」
火でだいぶ乾いてはいたものの、水着は動きにくい。
食事が終わって、今後の予定を話した後、
二人はともに恥ずかしそうに川の下流で用を足し、
顔を真っ赤にしながら帰ってきた。
爆音は川の音にかき消され、ほとんど聞こえなかった。
川沿いは八月だろうと夜は冷えるものだ。
それを見越して二人は薪を用意し、
小屋の床を濡れたぼろ布できれいに拭いて寝場所をつくった。
スコップやナイフなどの便利そうな道具を部屋の隅に集めて、
自分たちは部屋の真ん中でビニールシートを掛け布団に寝ることとした。
あらったあとで針金で木と小屋の間に縛り付けて服と一緒に乾かしたもので、
ふたりはそれなりにきれいだろうとふんで寝床の調整をおえた。
澪「あいつら大丈夫かな?」
梓「大丈夫ですよ、きっと」
胃袋が満たされると心が落ち着く、二人の間の不安は一応おさまり、
寝る前に鍋にたっぷりの水をいれてかまどの近くに置き、
保存用にタンポポの根を天日干ししようと外の針金に吊るし終えると、
すでに日は沈んでいた。
明りもないなかで火だけが煌々とあたりを照らす。
二人は寝床でぐっすり眠った。澪もあっさり寝付いてしまった。
けいおんぶの長い一日目はこうしておわった。
遭難二日目!
思ったよりも早く目が覚めた。かまどの火は消えていて、
律と紬はすでに起きて作業を始めたらしく室内にはいなかった。
腹部の熱がまだ残っていることと、空腹が早起きの原因らしい。
潮水の飲みすぎは命にかかわる状態も招きかねない。
唯はのそのそと井戸までいきポンプから浴びるように水を飲む。
空腹と熱は一時的に抑えられたが、倦怠感が抜けない。
集落の中を歩いていると律と紬が向こうから歩いてきた。
唯「おはよーう…」
律「おはよう」
紬「おはよう」
声にあまり抑揚がなく、みたところ律と紬も体調がいまいちらしい。
唯「どこいってたの?」
律「いや、食べられそうなものを探しにな」
唯「へえ、なんかあった?」
紬「ほとんど何にも見つからなかったけど、乾パンがあるから今朝は大丈夫かな」
唯たちは三人とものそのそと覇気のない様子で食卓へ向かった。
乾パンというのは油っけと水分という概念を置き去りにした料理である。
ひとたび口の中に入れば、まちがいなく口腔中の油分と水分を奪って胃袋をめざす。
口の中はもっさもっさである。本当にもっさもっさである。もっさもっさカーニバルである。
紬はその点を考慮し、水でふやかそうかとも考えたが、
噛んで満腹感を得るほうを優先し、食卓には乾パンと水が並んだ。
唯「もっさもさだねえ……」
律「もさもさだなあ……」
紬「もっさりね……」
食糧的には恵まれているはずの三人だったが、いまいちの健康状態と
達成感にいまいちかける食事のせいかなかなか進まない。
大量の水と三人で一缶の乾パンを食べ終えると、食事は味気なく終わった。
三人は不潔な短パンと布嫌気がさし、誰が指示するでもなく脱いで
羽織っていた布と短パンを一緒に井戸水で丹念にあらい流して干す。
ついでに水着も脱いで乾かしておいた。
素っ裸で探索行動をするわけにもいかなかったので、
とりあえず周囲に水をまいてから丹念に体を洗った。
水をまいたのは打ち水効果を狙ってのことでもあるが、
とにかく当たりと体を水で包んで、熱さを避けようとした。
服もなく疲労が色濃く残っていたが、澪梓探索のためには行動しなければいけない。
とりあえず水着を再び着て行動を開始した。
古泉家のあたりは雑草も少なかったので、古泉家の板の間をを本拠地に作戦を考える。
もちろん、ぼろ布で床をふき、使えそうな布は回収して洗っておいた。
律「どうするか……」
紬「まず、ほかの民家を回って服とかを探しましょう」
唯「うん、使えそうなものがあったら回収すべきだよ。今は体力が全然追いつかなくて生きるのが精いっぱいって感じ」
律「たしかに下着はほしいな、食べ物もないし、それに探索に鉈とか必要だろ」
集落から少し離れたところにある茂みを指さして律がいう。
律「とりあえずは比較的ぼろくなさそうな家を探そう」
紬「でも床が抜けたりしたら大変だし、二人も気をつけてね」
唯「りょーかーい……」
下腹部の熱が加速度的にどんどん強くなるのを感じて唯は焦った。
まず間違いなく、自分は体調がかなり悪い。
だが対処法も分からないし、二人の体調も限界に近いはずだ。
その状況で具合が悪いから休ませてくれとはいえない。
どうにも今朝から尿の出も悪く、排泄系の不調だろうというのはわかる。
塩分のとりすぎかなにかだろうか。体が張るような感じで汗もうまく出ない。
腹部の熱を気にしながら、唯は涼宮という表札の家に入って行った。
なんだかごちゃごちゃした家で、本や衣服が乱雑に転がっていた。
ふと足元をみるとセーラー服が転がっている。
唯「へへ、服はここかあ……」
力なく笑って、目につく限りの衣服をかっさらいふらふらになりながら井戸のあたりに放って、
腹部の熱で、ころりと倒れた。
律はもう意識も絶え絶えだった。
下腹部の痛みは尋常ではなくなり、足元がおぼつく。
探索の途中で急に気分が悪くなり徐々に動けなくなった。
律「くそ、目眩が……」
水だ。水を飲まなくてはと意識を保ち井戸のあたりに行くと、、唯が倒れている。
落ち着きを失っていなかった律は衣服のクッションが唯を守ったことを確認すると、
意識があるのか問いかける。返事はない。
律「熱中症ではないな、朝の涼しさと水浴びの後だ間違いない」
そっと唯の脇の下と胸と腹部と足をさわって体温を確認する。
この方法は何となく思いついたものだが腹部の異常に気付く。
律「熱い……」
腹だけが妙に熱いのだ。
律「くっ、むぎいいいいいいいい!」
腹から声を出してムギを呼ぶ。すると通りの向こうから紬がかけてくる。
見たところ、紬は唯や律より健康なようだ。
律「全滅なんて洒落になんねーよな……」
律も意識を保ちつつ、ゆっくりと倒れこんだ。
気づくのが早くてよかった。律に説明を受けた後で、紬が二人を日陰に運ぶ
おそらくは潮水の飲みすぎが不調の原因だろう。
昨日から水を大量に飲んでいるが、塩分が抜けきったのかはあやしい。
おそらくは自分も軽度であれ潮水飲みすぎ状態にあると判断したあと、
紬は二人に水を飲ませると、かまどに火をつけてすぐに行動を開始した。
彼女が目指すのは現状で唯一問題につながりそうな野草。
そう、
ド ク ダ ミ !
である。
ドクダミはおそらく史上最悪の味の薬草である。
火を通せばおいしいなどという何ら根拠のない説が出回っているが、
それは大嘘である。火を通しても強烈にまずい。
それがドクダミのドクダミたる所以である。
生物兵器級の味を知らなかった筆者は、
家の庭に生えていたドクダミを生食し、
あまりの味に本気で祖母に泣きついたこともある。
これが17の夏休みの話だと記憶する。
祖母のドクダミの説明を引用しよう。
まずいが効き目は普通。
>>136だめじゃん
日本国内なら沖縄だろうが北海道だろうが竹島だろうが北方領土だろうが自生するドクダミ。
ほどよい温度の日陰ならばそこらへんで手に入るので比較的手軽な薬草といえよう。
紬「あった!」
谷口と書かれた家の庭に大量にあったドクダミの葉を摘み取る。
独特の臭気が鼻をつくがそれをも辞せずにこんもりと摘み、井戸水で洗う。
本来的には乾燥作業などを伴わなくてはとても食用には絶えない代物だが、
紬はここで荒業を使う。日本漢方でも禁じてとされるドクダミ直絞りである。
ドクダミは乾燥することで効用が弱まる(それでも手に入りやすい薬草内では上位である)が、
直搾りは強烈なまずさと劇的な効用を両立する諸刃の剣である。
このドクダミ直搾りは主に塗り薬としての使用が主だが、飲み薬としても使える。
筆者はこれを水で薄めたものを塗り薬として使用したが、そのときも鼻がかなり臭気にやられた。
家の表札が全部ハルヒ関連な件
生のドクダミを早々とてで引きちぎり、先ほど乾いた布に包んで液を濾す。
強烈なくささの液体が用意した湯呑の中に滴り落ちる。
大量の臭気に似つかわしくない少量の青汁のようなものが湯呑にたまった。
急いでこれをもって唯たちのもとに行く。
律は気を保っていたが、苦しそうにうめいている。
よこの唯も呼吸が乱れがちで相当苦しいようだ。
紬「ごめんね唯ちゃん!!」
申し訳なささえ生じる救命薬を口の中に投入する。
唯「…………………
律「うう、唯!!」
唯「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!ぐへぇ!うえ!」
のたうち回り井戸水を必死に飲み始める唯。
唯「いやああああああああああああああああああああああああああ!!!くさあああああ!!!!!!!!」
それだけでは足りないのか、何度も何度も水を飲み、叫ぶ。
唯「生臭い………………」
しまいには水を飲みきれなくなり、そそくさと茂みへいき、尿を済ませてそこで倒れた。
その様子を見ていた律は戦慄とともに紬へ眼をやる。
にっこりと紬は微笑みとともにドクダミを飲ませて……。
後は覚えていない。
そこまでなのか…逆に試してみたくなってきた
とにもかくにも三人はドクダミ汁で何とか体力を回復した。
三人ともしばらくは狂ったように水を飲んでいたが最終的にはあきらめた。
利尿作用があるといっても、そこまでの即効性はない。
おそらくは強制的に水を飲まざるを得ない状況が良かったのだろう。
紬「ドクダミは胃も整えるから、健康にいいのー」
唯「うん、目が覚めたよ……」
律「とりあえず、窮地はしのげたな……」
唯「民間療法っていうのかな?医薬品が見つかるまでは我慢だね」
紬「ドクダミなら消毒と入浴剤にも使えるし、料理にも使うこともあるのー」
唯「料理はやめとくにしても消毒液の代用品がみつかったのは大きいね」
律「ああ、服も乾いてきたし、本格的に探索を始める準備ができてきたな」
紬「そうねー」
唯「ムギちゃん、目の焦点が……」
三人は短パンに布をはおって着替えをおえた。
体調のすぐれない唯が涼宮宅の衣服を整理して、
紬がかまどに火をつけて食材を探しつつ調理を始め、
律は集落の外に出て何かないか探索する運びとなった。
唯「ばにーがーる?なんでこんなのがあるんだろ?」
涼宮宅はなによりとにかく衣服が充実していて、
食べ物や役立ちそうなは見つけられなかったけれど、
唯は多くの服を見つけて洗った。虫食いも少なく比較的清潔だ。
下着もいくつかあって、各種サイズが取り揃えてある。
唯「うーん、女性服のお店だったのかなあ?」
とりあえず真水で洗って、干せるだけの衣服を干しておいた。
石鹸や洗剤の類があればいいけど、そんなものは見つからない。
唯「とりあえず服はいいかなぁ、かわいいシャツもあったしぃ」
唯は胸にハイブリッドとかかれたシャツを手に、紬の手伝いに向かった。
紬「ごっはん、ごっはん!!」
かまどに火をつけて出てきたのはいいが、正直言えば食べられる植物の特徴なんてほとんどしらない。
とりあえず勢いででてきたものの食糧など無人島では手に入る気もしない。
しかし、やるといったし、なんとかなりそうだし紬は集落のなかをかけていった。
朝比奈とかかれたなんだかかわいらしい門扉のうちの前、
そこでなぜだか急に気になって庭にはいって行ってみる。
紬「あらあらー」
庭には家庭菜園の跡がそこかしこあって、ハーブがいくらか自生していた。
ハーブは案外生命力のある品種が存在するので驚くほどのことはない
使う分だけを摘み取って、さらに庭を見渡す。
雑草も多いが、まだ生きている植物もあるかもしれない。
とりあえずはハーブを持ち帰って、誰かに暇ができたら探索しよう。
紬「塩とかないけど、まあいいかしら」
とりあえずセージの葉をそのまま鍋につっこんで火をかける。
多分セージティーとスープの親せきのようなものができるだろう。
塩味がどうしても出せないが、乾パンのともに飲めればいい。
唯「むぎちゃん、ただいま」
戸口で唯が立っている。
唯「服はいっぱいあったよ、ごはんはまだ?」
紬「ちょうどよかった。ちょっと一緒に食べ物があるか見に行ってほしいんだけど」
唯「うん、今日のごはんは乾パンと何かなぁ?」
セージ汁です。
紬「これからとれる食材しだいね」
庭の雑草をかき分けて入ると、裏手には畑の跡のようなものがある。
雑草が多い。もしかしたら植物が埋もれているかもしれないが、
道具も何もない今探すのは面倒なばかりでなかなか進展しないだろう。
紬「唯ちゃん、今日はハーブスープと乾パンにしましょ」
セージ汁です。
唯「うん、スープがあれば乾パンも食べられるね」
汁です。
紬「じゃあ、別の作業しましょうか」
唯「なにするの?」
紬「……塩、食べたくない?」
製塩、これも無人島生活では避けては通れない難題だ。
テレビ番組のように塩が最初から提供されるはずもない。
砂糖以上に生存に不可欠な調味料、無人島で手にはいるのだろうか。
どきどき!唯紬製塩ショー!!
唯「質問なんだけど、塩分は海水飲むだけじゃだめなの?」
紬「海水を飲んで塩分をとると肝臓などの内臓に負荷があるのでおススメできないの」
唯「じゃあ、どうするの?」
紬「ある程度の塩がほしければ、ビニールシート式塩田法ね」
唯「びにーる?」
紬「そう、ひなたに穴をほってそこに海水を汲んで流し込む」
唯「地面をお椀みたいに使うんだぁ」
紬「そして海水が少し蒸発するたびに海水をたして、お椀のなかの塩分量を高めていく」
唯「そうすると、最終的に塩がとけきれなくなって出てくるんだね!」
紬「正解!」
唯「でも、これって時間がかかるよね?」
紬「だから私たちは別の方法でいくのー」
紬「ちなみに>>174はあくまで理論上のことだから、最終的には煮詰めるの」
唯「結局煮詰めるんだね」
紬「こっちのがいい塩が出やすいのよ」
唯「じゃあ、私たちはどうするの?」
紬「煮ます!」
唯「結局煮るの?」
紬「うん、でもね割ときれいな塩がとれる方法があるのー」
唯「なっ、なんだってー」
まず、大量の海水とたくさんの布と大きな鍋を用意します。
海水を十枚ほどのぬのでろ過しながら鍋に移します。
紬「細かな不純物は塩ができるのに役立つから、粗めの布でのゴミ掃除をイメージしてね」
その後、鍋を火にかけて少し白くなってきたら鍋から海水をこしながら別の鍋に移します。
そのまま煮ていって塩の濃度を高めます。
唯「ビニール塩田と一緒だね」
その後、海水をにていき白い結晶が出て少したら火を消して30分ほど放置します。
ここでは煮詰めずに、白い結晶が出たら少しは火をとおしても煮詰めず放置です。
紬「煮詰めるとにがりも出ちゃうからね」
30分後には白い結晶をきれいな布で濾し結晶を布で三重ほどに縛って振り回します。
遠心力でよけいな水分が抜けたらこれが塩です。
唯「めっちゃ少ないね……」
筆者の経験上、5キロの海水で20から30グラムしかとれません。
これを繰り返して、塩を増やしていきましょう。
http://www.ajiwai.com/otoko/make/shio.htmのやり方に酷似しています。
しかし筆者はこんなに煮詰めずに水分がもう少し多い状態で遠心力します。
なぜかというと、筆者なんかは塩をにつめすぎるとお腹が痛くなってしまうからです。
これは原因はいろいろあるのでしょうが筆者はなぜだか分りません。
遭難二日目!りっちゃん無視してBパート!
澪「なあ、このベリー系の赤い実って食べれないのかなあ」
梓「ああ、ヘビイチゴですか、食べられますよ」
澪と梓は早朝に食糧探しに出ていき各々が成果をかごやらかばんやらにつめて持ち帰ってきた。
澪は山のようなヘビイチゴと少量の三つ葉、相変わらずのタンポポを
梓は数キロのコナラの実とわずかばかりのグミの実を持ってきた。
澪「へー、名前は怖いけど、かわいい色だし美味しいのかなヘビイチゴ」
梓「いえ、ゲロマズです。豚の餌にもなりません。ジャムにしてもまずかったです」
梓はそのあとの澪の悲しそうな顔も気にせずにコナラの実、ドングリの選別作業に入った。
虫食いがあるものはそこらへんに捨て、きれいなものだけを鍋の中に投げ込む。
梓「でもそれ薬になりますから水洗いして天日で乾かしといてください」
澪「ああ……」
澪と梓の二人は煮沸した薬缶の水とタンポポの葉っぱ汁を作業中に食べながら
互いに黙々と目の前の課題をこなしていった。
ヘビイチゴを洗い終えた澪はドングリの選別を手伝いに行く。
澪「なあ、そのドングリってもしかして?」
梓「ええ、食用です」
澪があからさまに敬遠する姿勢を示したので、
梓がすかさずドングリをフォローする。
梓「栗もドングリの仲間です。火さえ通せば食べられますから」
澪「そ、そうなのか」
栗が好きなのだろうか、まあ栗よりだいぶまずいがその点は避けておこうと梓は思った。
梓がなげこんだドングリのからを澪が破り、中身を別の鍋にいれ仕込みの準備をする。
澪「そういえば、無効にきれいな山百合が何本も咲いててな」
梓「ユリの根っこは食べられますから後で引っこぬきに行きましょうね」
澪「……………」
澪と梓はドングリを洗濯用のネットにいくつかに分割して入れて針金で気に括り付け、
水溜りよりも下流で川の水にドングリをにさらしておく。こうすれば三日であくが抜けるのだ。
二人は作業を終えてからグミの実をおやつとして食べる。久々の甘みは酸っぱさは格別だ。
澪「ムギたち元気かなあ……」
梓「私たちが生きてるんですから、あの三人が死んでいるはずがありません!」
澪「はは、そうだな!」
作業後ティータイムを終えて、日が高く昇る前に、
二人は砂浜へと向かって歩き出した。
塩と仲間の捜索のためである。
澪はSOSの石をもっとはっきりさせ、浜辺にもかまどをつくって煙を出すことにした。
砂浜に文字を書き、自分たちがどこを寝床にしているかもはっきりと書いた。
梓はその横で塩をつくるためにせっせとバケツに塩水を入れて、水溜りまで持っていく。
澪も途中で梓の作業に合流し、その日は一日中塩作りに精を出すことにした。
澪「煮詰めるだけじゃダメなんだ……」
梓「詳しいんですね」
澪「まあな」
少量だが塩も生成し、水がめに煮沸した真水と濃度の濃い塩水をそれぞれためた。
生活の準備はほとんど整ったので、二人は川を上ってみることにした。
梓「先輩たちはいるでしょうか」
澪「さあな、でも行ってみないことには分からない」
澪「上流にたどりつくのは無理そうだな」
思いのほか切り立った崖や鬱蒼とした木々の邪魔も入り、二人の思惑は見事に外れた。
上流に行くのは無理であることと、上流に人が住めないであろうことがすぐに判明した。
梓「ここにいないなら、どこにいるんでしょうか」
澪「見当もつかない、三人が一緒に安全な場所で行動してくれているなら幸いだけど……」
それ以上は言わずに、澪たちは自分たちの水溜りへと帰りつつ、
タンポポを摘みながら川の横を下って行ったのだった。
仲間の安否が分からない現状では手の出しようもない。
澪は秘策を一つ胸に抱えながら、その実行のために必要なものを考え始めた。
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- サバイバル (1) (リイド文庫)
- さいとう たかを
- リイド社 2001-06
- おすすめ平均
その時、日本人は今の日本人のままで居られるか
今でも色あせていない
予想以上に面白い!
大人も子供もハマる作品
名作です
by G-Tools , 2010/09/01
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