- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:29:16.06:XFhJlLVV0
土曜日。6時29分。
軽音部の練習は今日も明日も休みだ。加えて仕事の都合で両親が二日とも家を空けるので
夕飯の買い出しに行く以外は家を離れないつもりだ。
たまにはこういう日があってもいい。
勉強して、ギターの練習をして、音楽を聞いて、テレビを見て。
いつもの慌ただしい日々を振り返るとこんなのどかな時間も貴重だ。
決して毎日がつまらないというわけではない。寧ろ楽しい。でもたまには、ね。

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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:30:16.27:XFhJlLVV0
土曜日。6時半。
何でかな?やっぱり楽しみだったからかな?
いつもならお昼近くまで寝ててもおかしくないのに今日は早起きだ。
今日と明日の部活は休み。でも予定がないわけじゃない。
昨日憂から聞いた話では、あの子は二日間家にこもりっぱなしらしい。
だから私は昨晩計画を立てた。
今日は朝からあの子の家に突撃。
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:35:16.26:XFhJlLVV0
もう少し寝ててよかったかも。
でもいいや。せっかくいい気分で目が覚めたんだから。
それにちょっとした予感がしたから。
今日はいいことありそう。
そんなことあるわけないか。出かける予定もないのに。
せいぜい朝の占いで一位とかそんなところでしょ。
さて食パンはあるかな?
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:40:16.55:XFhJlLVV0
眠い。慣れないことをするもんじゃないね。憂もびっくりしてたよ。
でも憂はすごいね。休みの日だっていつも早起きで。
私が憂より早く起きたのっていつが最後だろ?中学生の時?小学生の時?
ダメだ、全然記憶にないや。
私だってお姉ちゃんなのになあ。
でもあの子よりはきっと早く起きられたはず。休みの日はお寝坊さんって聞いたし。
ちょっぴり先輩気分。
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:45:16.33:XFhJlLVV0
食パンなかった。ご飯炊かなきゃ。
メンドくさいなあ。でも遅く起きてたらもっと面倒だと思ってたろうな。
早起きすると何に対してもちょっとやる気が出るのはどうしてだろう。
毎日早起きしてたらあの人ももっとやる気を出して練習してくれるのかな?
そんなわけないか。
あの人はきっと今も布団の中。
憂も苦労してるんだろうなぁ。
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:50:16.56:XFhJlLVV0
やっぱり憂のごはんはおいしいね。でももっと早く起きてれば私もお手伝いできたのに。
いや、今度もっともっと早起きして私が朝食全部用意しよう。
偶には妹孝行しなきゃね。
……後輩孝行もしなきゃね。
いつもあの子には苦労かけてばっか。振り回してばっか。
今日だって押しかけたら迷惑がられるかも。追い出されるかも。
今日の天気は晴れのち雨。あ、さそり座一位だ。
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 06:55:17.63:XFhJlLVV0
いて座十二位だ。
味噌汁しょっぱい。
やっぱり憂や律先輩には敵わないな。ちょっとは料理も身につけといた方がいいかな。
年頃の女の子なんだから最低限はね。
いつかは私の料理を好きな人に食べてもらって喜んでもらいたい。
今度あの人に食べてもらおうかな?
……まだちょっと遠慮したいの。
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:00:16.55:XFhJlLVV0
さてそろそろ行こうかな。
憂には澪ちゃん達と一緒に勉強すると伝えておいた。密会ってかっこいいじゃん。
こんな朝早くから偉いねって言われてちょっと心が痛んだ。嘘はいけないよね。
でも、勉強道具だってちゃんと持って行くよ。でないとあの子にも怒られそうだから。
もちろんギー太もね。
もうすぐ学園祭。これで最後なんだなぁ。
最後なんだから笑って終われるように頑張らなきゃ。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:05:15.64:XFhJlLVV0
笑えない。
学園祭前なんだからもう少し宿題減らしてくれてもいいのに。
午前中に片付けようと思ってたけど間に合うかな?
これなら憂に手伝ってもらった方が良かったかも。いいや、ダメだ。
憂はきっとあの人のお世話で忙しい。
受験生なのに、最後のライブが近いのに、相変わらずぽわぽわしてるあの人の。
私まで心配になってきちゃった。大丈夫かなあの人。
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:10:15.62:XFhJlLVV0
あれ?もう9時だ。
家を出てから1時間以上経ってるよ。
お休みの日の朝って新鮮だからついついふらふらしちゃったね。
お散歩中のワンちゃんとか野良の子猫ちゃんとかと遊んでたらもうこんな時間。
すっかりあの子の家から遠ざかっちゃったよ。のどかわいた。ジュース買おう。
ああっ。500円玉が……。溝の中へ……。
今日はついてないなぁ。
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:15:15.69:XFhJlLVV0
ついてるなぁ。
ガリガリ君当たりだ。夕方買い物に行った時交換しよう。
ってもう10時前。いつまでもサボってばっかじゃいけないよね。
でも一人きりの休日ってどうも集中力が保たない。純を呼べばよかったかな?……部活か。
先輩達は演劇の練習があるんだっけ。
私だけでも練習しとかなきゃライブが悲惨なことに……。
そのためにまずは宿題を片付けなきゃ。
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:20:15.88:XFhJlLVV0
これじゃあ早起きした意味ないよ。
お金落とすし靴ヒモ切れるしアイス地面に落とすし。
お気に入りのTシャツの新デザインを衝動買いしちゃうし。もうお昼前だし。
ギー太背負って歩くのも疲れたな。そろそろ目的地に向かおう。
でもこれじゃあお昼ごはんたかりに行くみたいでなんかやだなぁ。
何かお土産買っていってあげなきゃね。
ここはやっぱり……。
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:25:15.76:XFhJlLVV0
ふぅ。結局午前中じゃ終わらなかったな。
もうこんな時間。お昼の用意をしようかな。
その前にお布団を取り込もう。午後から雲行きが怪しくなるみたいだから。
どんよりしてるなぁ。朝はあんなに清々しかったのに。
雨の中を出歩くのは好きじゃないけど、室内から眺める雨は嫌いじゃない。
雨音は自然が奏でる音楽。あの人ならきっとギターを弾いて歌い出すんだろうな。
……あれ?
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:30:15.88:XFhJlLVV0
う~ん。
先に無駄遣いしすぎちゃったせいで結局買えたのは3個だけ。
こんなんじゃあの子は喜んでくれないよね。いや、3個全部あげればきっと……。
あ、もう12時半。やっぱりこんな時間にお邪魔するのはダメかな。
でもせっかくのたい焼きが冷めちゃうよ。
あ、雨降ってきちゃった。どうしよう。
……あれ?
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:35:29.52:XFhJlLVV0
何をやっているのかな。人の家の前を行ったり来たりして。
どうしてそんな不安そうな目で私を見るんですか。
いつもみたいに飛びついてきたらどうですか。
はぁ。やっぱりこの人はよくわからない。
ギターを背負って手提げを肩にかけて片手には洋服屋の袋を抱えて。
口の周りにはアイスがついてて片手にはおいしそうなものを持って。
……保護してあげなきゃダメだよね。
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:40:16.15:XFhJlLVV0
この家に来るのも久しぶりだなぁ。
憂はしょっちゅう来てるんだっけ。羨ましい。
あの子に洗面所に行けって言われたけど何だろう。手洗いうがいしろってことかな。
あ、口元にアイスが。恥ずかしい。こんな間抜けな顔して街中を堂々と歩いてたなんて。
それにしても立派なお家だねぇ。洗面所使うだけでもちょっと気が引けちゃうよ。
お風呂、一緒に入りたいな。
ん?いいにおい。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:45:16.13:XFhJlLVV0
料理のレパートリー増やした方がいいかな。
あり合わせで作れるのは焼きそばくらいだよ。
あー、本格的に降り出したな。やっぱり保護して正解だった。
……早速ギター弾いて歌い出した。
家でもいつもこうなのかな?
ギターの練習してくれるのはうれしいけど、仮にも受験生なんだからちょっと心配になる。
きれいな声だなぁ。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:50:16.43:XFhJlLVV0
あーめあーめふーれふーれかーさんがー。
もう。聞こえてるんでしょ?
一緒に歌ってくれたっていいじゃん。振り向いてさえくれないなんて寂しいよ。
おやおや。お昼は焼きそばか。
あ、私の分も用意してくれたんだ。何か申し訳ないよ。でもおいしそう。
ありがとう。いただきます。
おいしい。とってもおいしい。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 07:55:16.34:XFhJlLVV0
おいしいって言ってもらえた。
この人はお世辞を言えるようなタイプじゃない。
笑顔でむしゃむしゃ食べている。
何よりこの笑顔が、私の料理を心の底からおいしいって思ってくれた証拠だ。
ああ、のどに詰まらせちゃって。
ほらお水ですよ。しっかりしてください。
どうしてそんなに勢いよく食べちゃうんですか。
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:00:16.24:XFhJlLVV0
あ~。死ぬかと思った。
あまりにおいしかったからついつい箸が進んじゃったよ。
ムギちゃんにも食べさせてあげたいね。
それにしてもこの子は料理も上手なんだね。
ギターも勉強も料理も何でも出来ちゃうからすごいな~。いいお嫁さんになれるよ。
ごちそうさま。
よし。デザートはたい焼き!召し上がれ。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:05:16.61:XFhJlLVV0
おいしい。
やっぱりあの店のたい焼きはいいな。ちょっと冷めちゃってるけど。
でもなんでこの人は食べないんだろう。
3個とも全部私の分?
何言ってるんですか。ほら、早く食べてください。
遠慮しないで。って私が買ってきたわけじゃないのにこれは不躾か。
残りの一個は半分こですよ。
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:10:16.44:XFhJlLVV0
おいしー。でもやっぱ申し訳ないよ。
先輩としての威厳が~。
ま、この子がこんなに喜んでくれたんだからよしとしよう。
あ、そういえばどうしてここに来たのかを話してなかったね。
寂しがりの子猫ちゃんのお世話をしにね。あはは、世話されてるのは私の方か。
うぅ、そんな目で見ないでよ。今日の日のために慣れない早起きまでしたのに。
ごめんね。急に訪ねるのは迷惑だったよね。
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:15:16.53:XFhJlLVV0
当たり前です。
来るなら来るって言ってくれれば掃除したり事前に買い出しに行ったりできたのに。
午前中の過ごし方ももう少しましになってたのに。
大体どうして澪先輩達の誘いを断ってまで私のところに来たんですか。
木Gでも何か手伝えることはあるでしょう。
こんな時間に訪ねてくるなら早起きした意味ないじゃないですか。
予報では雨だったのになんで傘を持ってきてないんですか。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:20:16.85:XFhJlLVV0
ごめんなさい。返す言葉もありません。
うん。確かに予報では午後から雨って言ってたね。うっかりうっかり。
それにしてもかなり怒ってるなぁ。この雨の中帰れ!なんて言わないよね?
宿題が片付いてない?なら私と一緒にやろうよ。
これでも勉強道具はちゃんと持ってきたんだから。わからないところは教えてあげる。
ぶ~。失礼な。私だって2年生の問題くらい解けるよ。
たぶん。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:25:18.63:XFhJlLVV0
ああ、よだれ垂れてますよ。
まだ始めて1時間も経ってないじゃないですか。
ここのwhoは関係代名詞のwhoですよ。いや、習ったでしょ?
ダメです。休憩には早すぎですよ。勝手にリモコン使わないでください。
あ、このドラマ再放送やってたんだ。懐かしい。
でもダメだ。この人の考えていることはすべてお見通しだ。
ペースに乗せられちゃダメ。
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:30:35.61:XFhJlLVV0
あ、消さないでよぉ。
おりゃっ。
おっと。リモコンは渡さないぜ。
あれ、どこに行くの?トイレかな?
あちゃぁ。また呆れられちゃったかな。これじゃあ私があの子の勉強を邪魔してるみたいだし。
いや実際邪魔してるか。
う~ん。私もこの先生みたいに頭良ければなぁ。
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:35:19.03:XFhJlLVV0
3時のおやつにはまだ30分早いけどしょうがないか。あの人だし。
うーん。クッキーとポテチしかないや。それとオレンジジュース。
ムギ先輩のお茶とお菓子とは程遠い。
ムギ先輩が最近あまり部室に来ないからティータイムが恋しくなってきた。
ふふ。結局私も軽音部の一員だったってことかな。
すっかり餌付けられちゃって。これじゃあの人と同じだ。
でも甘やかしちゃダメだ。厳しく厳しく。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:40:28.22:XFhJlLVV0
あま~い。このクッキー甘いねぇ。
これ食べたら勉強ですよ!っていつもの放課後みたいだね。
そう言いながらドラマの再放送に見入ってるんだから可愛いなぁ。
おっと目が合った。うぅ。そんなに睨まないでよ。
やります。やりますから。
私に気を遣ってなのかダイエット中なのかほとんどお菓子に手をつけていないね。
だから私がゆっくり食べれば休憩時間を延ばせるね。もしかして私ってジーニアス?
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:45:26.65:XFhJlLVV0
気付いてますよ。
リスみたいにちまちまポテチをかじるこの人はいつものこの人ではない。
いつもはもっと意地きたな……がつがつ……いや、元気よく食べるのに。
そういうずる賢さはどこで覚えたんですか。
そんなに勉強は嫌ですか。
はぁ。しょうがないなぁ。
このドラマが終わるまで待ってあげよう。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:50:16.55:XFhJlLVV0
チラ見されてる。
きっと私の悪巧みにこの子は気付いているんだろうなぁ。
でもドラマを最後まで見たいからきっと早く食べろって言えないんだろうなぁ。
可愛い。
でもちょっと罪悪感。今日何度目かな?
ドラマが終わるまであと10分か。がんばってかき込もう。
私にできることは食べることだけ!なんだか情けない。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 08:55:16.14:XFhJlLVV0
このままこの人にお菓子を押しつけるのは意地悪かな?
でもたまには意地悪してもいいよね。自業自得だもん。
いつものお返し。
……やっぱりダメ。
この人一人に何かを任せることほど危なっかしいことはない。
いやただお菓子を食べるだけなのに何の危険があるのって話だけど。
協力してあげますよ。太っちゃうかもだけど。
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:00:16.80:XFhJlLVV0
ふぃ~。おっともう6時だ。
何だかんだでちゃんと勉強できたよ。この子のおかげだね。
この子の宿題も片付いたみたいでよかった。
う~、確かに私が邪魔しなければもっと早く終わったよね。ごめん。
おや憂からメールだ。う~ん名残惜しいけどもう帰る時間だね。
あの子は私の顔をじっと見ている。
帰るって言ったら引き留めてくれるかな?
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:05:16.41:XFhJlLVV0
お疲れ様でした。
今ちょうど雨止んでますし帰るなら今ですよ。
あれ。なに不満そうな顔してるんだろうこの人は。
わかってるけどね。
でも憂が心配してるでしょう。早く帰ってください。私も買い物に行きますから。
あれ。意外と簡単に折れたな。泊って行く!って言いだすのかと思ってたのに。
その時は……いや、早く帰ってください。
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:10:16.33:XFhJlLVV0
そうだよね。ごめんね。
今日は私迷惑かけてばかりでこの子の貴重な休日邪魔しちゃった。
考えてみれば今日だけじゃなくていつもこの子には迷惑を……。
練習よりお茶を優先して。ギターは教えてもらったところをすぐ忘れて。
嫌がってるのに無理やり抱きついて。
あれ。いつの間に私外に出たんだろう。
あの子にさよなら言ってないや。
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:15:16.83:XFhJlLVV0
どうしたんだろう。あんな暗い顔して。黙って出て行って。
らしくない。……私の態度もきつかったかな。
いや、これでいいんだ。あの人にはたまにお灸をすえてあげなきゃ。
これはあの人のためなんだから。
そもそもなんであの人に対して私はあんなに甘かったんだろう。
駄目な部分ばかり目につくあの人に対して。自分でもよくわからない。
あ、雨。どしゃ降り……。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:20:19.90:XFhJlLVV0
ひどいね。
罰当たっちゃったね、私。
こんなに濡れてちゃお店に入って雨宿りというわけにもいかない。全速力で走ろう。
傘持ってくればよかったなぁ。早起きなんかしなければよかったなぁ。
もうちょっとあの子の家にいればなぁ……うわっ。
痛い。膝すりむいちゃった。
痛い。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:25:17.21:XFhJlLVV0
ひどいね。
ひどい雨。足がふやけて気持ち悪い。ひどい風。もう傘差してる意味ないね。
そしてあの人は輪をかけてひどい。転んでは起きて、また転んで。
今に至ってはまるで赤ちゃんがはいはいしてるみたい。
服はびしょ濡れで、泥だらけで、ところどころ破けて。
幸いここは人通りが少ない。この場にいるのはあの人とその10メートル後ろの私だけだ。
私だけなんだ。
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:30:25.87:XFhJlLVV0
はぁ。はぁ。
もうこのままここで寝ちゃってもいいかな。
え?ダメなの?いいじゃ~ん。相変わらず厳しいねぇ。
……どうして来たの。びしょ濡れだよ。
うわっ。引っ張らないでよ。もう疲れちゃったんだから。
ごめんなさい。文句を言える立場じゃありませんよね。
こうして私は我が家から遠ざかっていくのでした。
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:35:21.17:XFhJlLVV0
弱り切っているのは雨のせいだけじゃなさそう。
くしゃくしゃの顔は雨のせいだけじゃなさそう。
ほら早くお風呂入ってください。
……嫌です。一人で入ってください。私は着替えを用意しますから。
こんな時でもあの人はあの人か。呆れるべきか喜ぶべきか。
このスウェットでいいかな。ちょっと大きめを買ったのに結局着る機会がなかったやつ。
……下着どうしよう。
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:40:20.89:XFhJlLVV0
雨に濡れた後のお風呂って気持ちいいね。
あったかさが体中に染み込んでいくよぉ。
ん?何?下着?
あー。どうしよう。あ、そうだ。お部屋のクローゼットの奥の方を見てみてー。
いいからいいから。
ふぅ~。行ったみたいだね。もしもの時のためのお泊まりセット。仕込んでおきました!
……また嫌われちゃったかもね。
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:45:16.88:XFhJlLVV0
呆れるしかないね。
いつの間にこんなもの仕込んだんだろう。
あの人がこの家に来た回数なんて数えるほどしかないのに。まったくもう。
浴室からは鼻歌が聞こえる。私の恋はホッチキス。
まったくもう。急に元気になっちゃって。感情の振れ幅大きすぎませんか。
ま、いいけどね。いいのかな?
もうあの人のことで悩むのは疲れちゃった。
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:50:17.95:XFhJlLVV0
いいお湯でした。
そういえばこの家のお風呂使うの初めてだなぁ。
入ってる時は意識してなかったけど、今思い出すとちょっと変な気分になるね。
あの子がいつも使うお風呂。
あの子はお風呂上がりの私にジト目を向けて、着替えを手渡してきた。
今はあの子が入浴中。
うん。なんか変な気分。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 09:55:20.22:XFhJlLVV0
あれ?あの人はどこに行ったんだろう。
ん?誰か来てる?
あ、ピザ頼んだってことあの人に伝えるの忘れてた。あの人お金持ってない。
玄関にはオロオロしてるあの人と渋い顔してびしょ濡れのピザ屋さん。
ごめんなさい。色々と。
結局買い物に行けなかったからこれが夕飯だ。
……二人で食べるには量が多すぎたかな?
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:00:23.73:XFhJlLVV0
今夜は帰れないってことを憂にメールしようかと思ったけど、あの子に止められた。
もう私が連絡しましたから、だって。
憂は私がこの子の家にいることを不思議がってないのかな?
それもうまく言いくるめたって。
至れり尽くせり、ってこういうことかな。
……今日だけで一体いくつこの子に借りができたんだろう。
って何するの?いきなりピザを口に突っ込まないで。
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:05:20.76:XFhJlLVV0
もううんざりです。
突然テンション下げるのはやめてください。気味悪いです。
今は食事中ですよ。せっかくのピザがまずくなります。
この大雨の中ピザを届けてくれた配達員さんに申し訳ないと思わないんですか。
ほらもっと食べてください。いくら食べても太らないんでしょう。
さあさあ。
あ、水水。
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:10:20.21:XFhJlLVV0
ごちそうさまでした。うぇっぷ。
おいしかったけど……疲れた。
あの子はソファに身を預けて天井を眺めてる。お疲れですなぁ。
憂はどうしてるかな。
そっか……。今日もお父さんとお母さんいないから憂は一人になっちゃうんだ。
うぅ。ごめんね、憂。私が後先考えて行動しておけば。私が嘘をつかなければ。
どうしたの?あの子がまっすぐ私の顔を見ている。
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:15:53.98:XFhJlLVV0
この人が何を考えているかはわかる。
今この人の顔はお姉ちゃんの顔。頼りないお姉ちゃんだけどね。
どうやらこの人は憂に嘘をついてここに来たみたい。さっきの電話でわかった。
もちろん私はその事実を伝えはせず、雨に濡れたこの人を私がたまたま拾ったと伝えた。
私が言うことじゃないもんね。
とはいえ憂が寂しがってることに変わりはないか。
ほら、何してるんですか。ダメなお姉ちゃんにもやれることはあるでしょう。
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:20:39.50:XFhJlLVV0
憂には何回もごめんなさいって言った。
傘忘れてごめんなさい。一人にさせちゃってごめんなさい。嘘ついてごめんなさい。
憂は繰り返しうん、うんと言った。
最初は涙声だった憂もしばらくすると赤ちゃんをあやすような優しい声に変わった。
私って赤ちゃん?
憂は最後にありがとうって伝えといて、と言って電話を切った。
通話時間は56分。
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:26:02.04:XFhJlLVV0
終わったかな。
私がむったんを弾く手を休めるとあの人が入ってきた。ギー太を携えて。
この家防音すごいんだね~なんて能天気なことを言って私の隣に座った。
そしておもむろにギー太をかき鳴らした。私もそれに合わせる。
いつもの音だった。いつもの笑顔だった。
目をつむってハミングしている。私もそれに合わせる。
楽しいな。
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:30:23.92:XFhJlLVV0
一曲弾き終えて隣に目をやるとまた二つの目が私の顔を見据えていた。
私はその綺麗な目を見返す。
ありがとう。
もう何に対してかわからない。数えきれない。とにかくありがとう。
お互い言葉を発することはなかったけど自然と次の曲を弾き始めた。
今度は向けられた視線から目を逸らすことなく。感謝の気持ちを込めて。
気付いたら私は歌い出していた。
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:35:18.65:XFhJlLVV0
何曲目かな?
もうわかんなくなってきた。今何時かな。
私達放課後ティータイムの曲だけでなく、流行の曲とか、演歌とか、民謡とか。
果ては私が聞いたことない曲を歌い始めた。
この人のオリジナルかな?
私はそれでも何とか付いて行った。
決して途切れさせたくなかったから。
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:40:27.55:XFhJlLVV0
2時。
私が力尽きたのは2時。
私は肩に重みを感じた。この子も全く休むことなく付き合ってくれた。
眠そうだけど今もその目はぱっちり開かれていた。
目が合うとクスッと微笑んだ、ように見えた。
それからゆっくり立ち上がるとドアの方に歩き出した。
お夜食持ってくる、だって。
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:45:21.50:XFhJlLVV0
何やってるんだか。土曜の夜とはいえ。
朝が早かったこともあってかなりだるい。
でもさっきまではそんな気分になることはなかったな。
好きなことに夢中になってる瞬間ってああいう感じなんだろうね。
あの人も楽しそうに笑ってた。それが何より嬉しかった。
やっぱりあの人はへらへら笑ってギターを弾いて歌ってるのが一番いい。
さて、アイスはあるかな。
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:50:20.18:XFhJlLVV0
おいしいね。スイカバー。
この種が特に。え~種こそスイカバーの真髄だよぅ。わかってないなぁ。
私があっという間にたいらげる横で、あの子はちょびちょび齧っている。可愛いね。
そうだ。明日はりっちゃんの家に行かない?
澪ちゃんとムギちゃんと一緒に演劇の練習するんだって。
手伝えることはあんまりないかもしれないけど、久し振りにみんなで集まりたいでしょ。
明日も早起きしなきゃ!
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 10:55:40.31:XFhJlLVV0
無理でしょう。早起きは。
きっと私達二人揃って昼まで寝てるでしょうね。
確かに澪先輩達には会いたいですけど。
今日は疲れたので明日はゆっくり休みたいですね。
はいはいわかりましたよ。善処します。
あ~、深夜のアイスも意外といけるね。
さてそろそろ寝ましょうか。
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:00:18.35:XFhJlLVV0
今私達はベッドの上。
あの子が持ってきてくれたアイスを食べて一息ついたらさすがに睡魔が襲ってきた。
一緒に寝ようという私の提案を意外にもあの子はあっさり受け入れた。
明日は嵐が来るね。嵐なら今日来たか。
疲れ切っているのかあの子は私に背を向けてぐったりしている。
猫みたいに丸くなって可愛い。
どんな寝顔なのか見てみたいけど怒られそうだから止そう。
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:05:17.65:XFhJlLVV0
ベッドがギシギシ揺れる。
背後であの人がゴロゴロしてるんだろうな。
狭いんだから大人しくしてください。眠れないじゃないですか。
口に出す元気もないからこのまま自然と眠りに落ちるのを待つ。
そのつもりだったのに。
背中にくっついた体温に邪魔された。
振り向こうにも振り向けないよ。
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:10:24.90:XFhJlLVV0
あり、がと……ね。
今日、も、昨日、も……今までずっと。
私、ぜんぜん、先輩らしく……ないけど。
めいわく、かけっぱなし、だけど。
がんばるから、ね。
君に、なにかをあげられる、ように。きみに、こころから、わらって……もらえるように。
ふわぁ。おやすみ。
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:15:20.23:XFhJlLVV0
いつもの体温。落ち着く体温。
暑苦しくはない。むしろ、なんだか、ねむく、なって。
おかし、な、一日、だったなぁ。グダ……グダ、だった、なぁ。
私も、この人、も、早起きした、いみ、あったのかなぁ。
でも、あえて、よかったよ。あしたも、いっしょに……いようよ。
のどかな、休日なんて、今は、いらない。いまは……あなたと……いっしょが……いい。
あした、はやおき……できなくても……いいや。おやすみ。
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:28:23.66:VyNqoLSHP
乙
またこういうスタイルで何か書いて
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:44:04.15:7+CwVV7y0
乙
なんか他の誰も絡むことのない純粋な唯梓は久しぶりだ
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:24:53.71:FdRu61sWO
俺得SSありがとう
土曜日。6時半。
何でかな?やっぱり楽しみだったからかな?
いつもならお昼近くまで寝ててもおかしくないのに今日は早起きだ。
今日と明日の部活は休み。でも予定がないわけじゃない。
昨日憂から聞いた話では、あの子は二日間家にこもりっぱなしらしい。
だから私は昨晩計画を立てた。
今日は朝からあの子の家に突撃。
もう少し寝ててよかったかも。
でもいいや。せっかくいい気分で目が覚めたんだから。
それにちょっとした予感がしたから。
今日はいいことありそう。
そんなことあるわけないか。出かける予定もないのに。
せいぜい朝の占いで一位とかそんなところでしょ。
さて食パンはあるかな?
眠い。慣れないことをするもんじゃないね。憂もびっくりしてたよ。
でも憂はすごいね。休みの日だっていつも早起きで。
私が憂より早く起きたのっていつが最後だろ?中学生の時?小学生の時?
ダメだ、全然記憶にないや。
私だってお姉ちゃんなのになあ。
でもあの子よりはきっと早く起きられたはず。休みの日はお寝坊さんって聞いたし。
ちょっぴり先輩気分。
食パンなかった。ご飯炊かなきゃ。
メンドくさいなあ。でも遅く起きてたらもっと面倒だと思ってたろうな。
早起きすると何に対してもちょっとやる気が出るのはどうしてだろう。
毎日早起きしてたらあの人ももっとやる気を出して練習してくれるのかな?
そんなわけないか。
あの人はきっと今も布団の中。
憂も苦労してるんだろうなぁ。
やっぱり憂のごはんはおいしいね。でももっと早く起きてれば私もお手伝いできたのに。
いや、今度もっともっと早起きして私が朝食全部用意しよう。
偶には妹孝行しなきゃね。
……後輩孝行もしなきゃね。
いつもあの子には苦労かけてばっか。振り回してばっか。
今日だって押しかけたら迷惑がられるかも。追い出されるかも。
今日の天気は晴れのち雨。あ、さそり座一位だ。
いて座十二位だ。
味噌汁しょっぱい。
やっぱり憂や律先輩には敵わないな。ちょっとは料理も身につけといた方がいいかな。
年頃の女の子なんだから最低限はね。
いつかは私の料理を好きな人に食べてもらって喜んでもらいたい。
今度あの人に食べてもらおうかな?
……まだちょっと遠慮したいの。
さてそろそろ行こうかな。
憂には澪ちゃん達と一緒に勉強すると伝えておいた。密会ってかっこいいじゃん。
こんな朝早くから偉いねって言われてちょっと心が痛んだ。嘘はいけないよね。
でも、勉強道具だってちゃんと持って行くよ。でないとあの子にも怒られそうだから。
もちろんギー太もね。
もうすぐ学園祭。これで最後なんだなぁ。
最後なんだから笑って終われるように頑張らなきゃ。
笑えない。
学園祭前なんだからもう少し宿題減らしてくれてもいいのに。
午前中に片付けようと思ってたけど間に合うかな?
これなら憂に手伝ってもらった方が良かったかも。いいや、ダメだ。
憂はきっとあの人のお世話で忙しい。
受験生なのに、最後のライブが近いのに、相変わらずぽわぽわしてるあの人の。
私まで心配になってきちゃった。大丈夫かなあの人。
あれ?もう9時だ。
家を出てから1時間以上経ってるよ。
お休みの日の朝って新鮮だからついついふらふらしちゃったね。
お散歩中のワンちゃんとか野良の子猫ちゃんとかと遊んでたらもうこんな時間。
すっかりあの子の家から遠ざかっちゃったよ。のどかわいた。ジュース買おう。
ああっ。500円玉が……。溝の中へ……。
今日はついてないなぁ。
ついてるなぁ。
ガリガリ君当たりだ。夕方買い物に行った時交換しよう。
ってもう10時前。いつまでもサボってばっかじゃいけないよね。
でも一人きりの休日ってどうも集中力が保たない。純を呼べばよかったかな?……部活か。
先輩達は演劇の練習があるんだっけ。
私だけでも練習しとかなきゃライブが悲惨なことに……。
そのためにまずは宿題を片付けなきゃ。
これじゃあ早起きした意味ないよ。
お金落とすし靴ヒモ切れるしアイス地面に落とすし。
お気に入りのTシャツの新デザインを衝動買いしちゃうし。もうお昼前だし。
ギー太背負って歩くのも疲れたな。そろそろ目的地に向かおう。
でもこれじゃあお昼ごはんたかりに行くみたいでなんかやだなぁ。
何かお土産買っていってあげなきゃね。
ここはやっぱり……。
ふぅ。結局午前中じゃ終わらなかったな。
もうこんな時間。お昼の用意をしようかな。
その前にお布団を取り込もう。午後から雲行きが怪しくなるみたいだから。
どんよりしてるなぁ。朝はあんなに清々しかったのに。
雨の中を出歩くのは好きじゃないけど、室内から眺める雨は嫌いじゃない。
雨音は自然が奏でる音楽。あの人ならきっとギターを弾いて歌い出すんだろうな。
……あれ?
う~ん。
先に無駄遣いしすぎちゃったせいで結局買えたのは3個だけ。
こんなんじゃあの子は喜んでくれないよね。いや、3個全部あげればきっと……。
あ、もう12時半。やっぱりこんな時間にお邪魔するのはダメかな。
でもせっかくのたい焼きが冷めちゃうよ。
あ、雨降ってきちゃった。どうしよう。
……あれ?
何をやっているのかな。人の家の前を行ったり来たりして。
どうしてそんな不安そうな目で私を見るんですか。
いつもみたいに飛びついてきたらどうですか。
はぁ。やっぱりこの人はよくわからない。
ギターを背負って手提げを肩にかけて片手には洋服屋の袋を抱えて。
口の周りにはアイスがついてて片手にはおいしそうなものを持って。
……保護してあげなきゃダメだよね。
この家に来るのも久しぶりだなぁ。
憂はしょっちゅう来てるんだっけ。羨ましい。
あの子に洗面所に行けって言われたけど何だろう。手洗いうがいしろってことかな。
あ、口元にアイスが。恥ずかしい。こんな間抜けな顔して街中を堂々と歩いてたなんて。
それにしても立派なお家だねぇ。洗面所使うだけでもちょっと気が引けちゃうよ。
お風呂、一緒に入りたいな。
ん?いいにおい。
料理のレパートリー増やした方がいいかな。
あり合わせで作れるのは焼きそばくらいだよ。
あー、本格的に降り出したな。やっぱり保護して正解だった。
……早速ギター弾いて歌い出した。
家でもいつもこうなのかな?
ギターの練習してくれるのはうれしいけど、仮にも受験生なんだからちょっと心配になる。
きれいな声だなぁ。
あーめあーめふーれふーれかーさんがー。
もう。聞こえてるんでしょ?
一緒に歌ってくれたっていいじゃん。振り向いてさえくれないなんて寂しいよ。
おやおや。お昼は焼きそばか。
あ、私の分も用意してくれたんだ。何か申し訳ないよ。でもおいしそう。
ありがとう。いただきます。
おいしい。とってもおいしい。
おいしいって言ってもらえた。
この人はお世辞を言えるようなタイプじゃない。
笑顔でむしゃむしゃ食べている。
何よりこの笑顔が、私の料理を心の底からおいしいって思ってくれた証拠だ。
ああ、のどに詰まらせちゃって。
ほらお水ですよ。しっかりしてください。
どうしてそんなに勢いよく食べちゃうんですか。
あ~。死ぬかと思った。
あまりにおいしかったからついつい箸が進んじゃったよ。
ムギちゃんにも食べさせてあげたいね。
それにしてもこの子は料理も上手なんだね。
ギターも勉強も料理も何でも出来ちゃうからすごいな~。いいお嫁さんになれるよ。
ごちそうさま。
よし。デザートはたい焼き!召し上がれ。
おいしい。
やっぱりあの店のたい焼きはいいな。ちょっと冷めちゃってるけど。
でもなんでこの人は食べないんだろう。
3個とも全部私の分?
何言ってるんですか。ほら、早く食べてください。
遠慮しないで。って私が買ってきたわけじゃないのにこれは不躾か。
残りの一個は半分こですよ。
おいしー。でもやっぱ申し訳ないよ。
先輩としての威厳が~。
ま、この子がこんなに喜んでくれたんだからよしとしよう。
あ、そういえばどうしてここに来たのかを話してなかったね。
寂しがりの子猫ちゃんのお世話をしにね。あはは、世話されてるのは私の方か。
うぅ、そんな目で見ないでよ。今日の日のために慣れない早起きまでしたのに。
ごめんね。急に訪ねるのは迷惑だったよね。
当たり前です。
来るなら来るって言ってくれれば掃除したり事前に買い出しに行ったりできたのに。
午前中の過ごし方ももう少しましになってたのに。
大体どうして澪先輩達の誘いを断ってまで私のところに来たんですか。
木Gでも何か手伝えることはあるでしょう。
こんな時間に訪ねてくるなら早起きした意味ないじゃないですか。
予報では雨だったのになんで傘を持ってきてないんですか。
ごめんなさい。返す言葉もありません。
うん。確かに予報では午後から雨って言ってたね。うっかりうっかり。
それにしてもかなり怒ってるなぁ。この雨の中帰れ!なんて言わないよね?
宿題が片付いてない?なら私と一緒にやろうよ。
これでも勉強道具はちゃんと持ってきたんだから。わからないところは教えてあげる。
ぶ~。失礼な。私だって2年生の問題くらい解けるよ。
たぶん。
ああ、よだれ垂れてますよ。
まだ始めて1時間も経ってないじゃないですか。
ここのwhoは関係代名詞のwhoですよ。いや、習ったでしょ?
ダメです。休憩には早すぎですよ。勝手にリモコン使わないでください。
あ、このドラマ再放送やってたんだ。懐かしい。
でもダメだ。この人の考えていることはすべてお見通しだ。
ペースに乗せられちゃダメ。
あ、消さないでよぉ。
おりゃっ。
おっと。リモコンは渡さないぜ。
あれ、どこに行くの?トイレかな?
あちゃぁ。また呆れられちゃったかな。これじゃあ私があの子の勉強を邪魔してるみたいだし。
いや実際邪魔してるか。
う~ん。私もこの先生みたいに頭良ければなぁ。
3時のおやつにはまだ30分早いけどしょうがないか。あの人だし。
うーん。クッキーとポテチしかないや。それとオレンジジュース。
ムギ先輩のお茶とお菓子とは程遠い。
ムギ先輩が最近あまり部室に来ないからティータイムが恋しくなってきた。
ふふ。結局私も軽音部の一員だったってことかな。
すっかり餌付けられちゃって。これじゃあの人と同じだ。
でも甘やかしちゃダメだ。厳しく厳しく。
あま~い。このクッキー甘いねぇ。
これ食べたら勉強ですよ!っていつもの放課後みたいだね。
そう言いながらドラマの再放送に見入ってるんだから可愛いなぁ。
おっと目が合った。うぅ。そんなに睨まないでよ。
やります。やりますから。
私に気を遣ってなのかダイエット中なのかほとんどお菓子に手をつけていないね。
だから私がゆっくり食べれば休憩時間を延ばせるね。もしかして私ってジーニアス?
気付いてますよ。
リスみたいにちまちまポテチをかじるこの人はいつものこの人ではない。
いつもはもっと意地きたな……がつがつ……いや、元気よく食べるのに。
そういうずる賢さはどこで覚えたんですか。
そんなに勉強は嫌ですか。
はぁ。しょうがないなぁ。
このドラマが終わるまで待ってあげよう。
チラ見されてる。
きっと私の悪巧みにこの子は気付いているんだろうなぁ。
でもドラマを最後まで見たいからきっと早く食べろって言えないんだろうなぁ。
可愛い。
でもちょっと罪悪感。今日何度目かな?
ドラマが終わるまであと10分か。がんばってかき込もう。
私にできることは食べることだけ!なんだか情けない。
このままこの人にお菓子を押しつけるのは意地悪かな?
でもたまには意地悪してもいいよね。自業自得だもん。
いつものお返し。
……やっぱりダメ。
この人一人に何かを任せることほど危なっかしいことはない。
いやただお菓子を食べるだけなのに何の危険があるのって話だけど。
協力してあげますよ。太っちゃうかもだけど。
ふぃ~。おっともう6時だ。
何だかんだでちゃんと勉強できたよ。この子のおかげだね。
この子の宿題も片付いたみたいでよかった。
う~、確かに私が邪魔しなければもっと早く終わったよね。ごめん。
おや憂からメールだ。う~ん名残惜しいけどもう帰る時間だね。
あの子は私の顔をじっと見ている。
帰るって言ったら引き留めてくれるかな?
お疲れ様でした。
今ちょうど雨止んでますし帰るなら今ですよ。
あれ。なに不満そうな顔してるんだろうこの人は。
わかってるけどね。
でも憂が心配してるでしょう。早く帰ってください。私も買い物に行きますから。
あれ。意外と簡単に折れたな。泊って行く!って言いだすのかと思ってたのに。
その時は……いや、早く帰ってください。
そうだよね。ごめんね。
今日は私迷惑かけてばかりでこの子の貴重な休日邪魔しちゃった。
考えてみれば今日だけじゃなくていつもこの子には迷惑を……。
練習よりお茶を優先して。ギターは教えてもらったところをすぐ忘れて。
嫌がってるのに無理やり抱きついて。
あれ。いつの間に私外に出たんだろう。
あの子にさよなら言ってないや。
どうしたんだろう。あんな暗い顔して。黙って出て行って。
らしくない。……私の態度もきつかったかな。
いや、これでいいんだ。あの人にはたまにお灸をすえてあげなきゃ。
これはあの人のためなんだから。
そもそもなんであの人に対して私はあんなに甘かったんだろう。
駄目な部分ばかり目につくあの人に対して。自分でもよくわからない。
あ、雨。どしゃ降り……。
ひどいね。
罰当たっちゃったね、私。
こんなに濡れてちゃお店に入って雨宿りというわけにもいかない。全速力で走ろう。
傘持ってくればよかったなぁ。早起きなんかしなければよかったなぁ。
もうちょっとあの子の家にいればなぁ……うわっ。
痛い。膝すりむいちゃった。
痛い。
ひどいね。
ひどい雨。足がふやけて気持ち悪い。ひどい風。もう傘差してる意味ないね。
そしてあの人は輪をかけてひどい。転んでは起きて、また転んで。
今に至ってはまるで赤ちゃんがはいはいしてるみたい。
服はびしょ濡れで、泥だらけで、ところどころ破けて。
幸いここは人通りが少ない。この場にいるのはあの人とその10メートル後ろの私だけだ。
私だけなんだ。
はぁ。はぁ。
もうこのままここで寝ちゃってもいいかな。
え?ダメなの?いいじゃ~ん。相変わらず厳しいねぇ。
……どうして来たの。びしょ濡れだよ。
うわっ。引っ張らないでよ。もう疲れちゃったんだから。
ごめんなさい。文句を言える立場じゃありませんよね。
こうして私は我が家から遠ざかっていくのでした。
弱り切っているのは雨のせいだけじゃなさそう。
くしゃくしゃの顔は雨のせいだけじゃなさそう。
ほら早くお風呂入ってください。
……嫌です。一人で入ってください。私は着替えを用意しますから。
こんな時でもあの人はあの人か。呆れるべきか喜ぶべきか。
このスウェットでいいかな。ちょっと大きめを買ったのに結局着る機会がなかったやつ。
……下着どうしよう。
雨に濡れた後のお風呂って気持ちいいね。
あったかさが体中に染み込んでいくよぉ。
ん?何?下着?
あー。どうしよう。あ、そうだ。お部屋のクローゼットの奥の方を見てみてー。
いいからいいから。
ふぅ~。行ったみたいだね。もしもの時のためのお泊まりセット。仕込んでおきました!
……また嫌われちゃったかもね。
呆れるしかないね。
いつの間にこんなもの仕込んだんだろう。
あの人がこの家に来た回数なんて数えるほどしかないのに。まったくもう。
浴室からは鼻歌が聞こえる。私の恋はホッチキス。
まったくもう。急に元気になっちゃって。感情の振れ幅大きすぎませんか。
ま、いいけどね。いいのかな?
もうあの人のことで悩むのは疲れちゃった。
いいお湯でした。
そういえばこの家のお風呂使うの初めてだなぁ。
入ってる時は意識してなかったけど、今思い出すとちょっと変な気分になるね。
あの子がいつも使うお風呂。
あの子はお風呂上がりの私にジト目を向けて、着替えを手渡してきた。
今はあの子が入浴中。
うん。なんか変な気分。
あれ?あの人はどこに行ったんだろう。
ん?誰か来てる?
あ、ピザ頼んだってことあの人に伝えるの忘れてた。あの人お金持ってない。
玄関にはオロオロしてるあの人と渋い顔してびしょ濡れのピザ屋さん。
ごめんなさい。色々と。
結局買い物に行けなかったからこれが夕飯だ。
……二人で食べるには量が多すぎたかな?
今夜は帰れないってことを憂にメールしようかと思ったけど、あの子に止められた。
もう私が連絡しましたから、だって。
憂は私がこの子の家にいることを不思議がってないのかな?
それもうまく言いくるめたって。
至れり尽くせり、ってこういうことかな。
……今日だけで一体いくつこの子に借りができたんだろう。
って何するの?いきなりピザを口に突っ込まないで。
もううんざりです。
突然テンション下げるのはやめてください。気味悪いです。
今は食事中ですよ。せっかくのピザがまずくなります。
この大雨の中ピザを届けてくれた配達員さんに申し訳ないと思わないんですか。
ほらもっと食べてください。いくら食べても太らないんでしょう。
さあさあ。
あ、水水。
ごちそうさまでした。うぇっぷ。
おいしかったけど……疲れた。
あの子はソファに身を預けて天井を眺めてる。お疲れですなぁ。
憂はどうしてるかな。
そっか……。今日もお父さんとお母さんいないから憂は一人になっちゃうんだ。
うぅ。ごめんね、憂。私が後先考えて行動しておけば。私が嘘をつかなければ。
どうしたの?あの子がまっすぐ私の顔を見ている。
この人が何を考えているかはわかる。
今この人の顔はお姉ちゃんの顔。頼りないお姉ちゃんだけどね。
どうやらこの人は憂に嘘をついてここに来たみたい。さっきの電話でわかった。
もちろん私はその事実を伝えはせず、雨に濡れたこの人を私がたまたま拾ったと伝えた。
私が言うことじゃないもんね。
とはいえ憂が寂しがってることに変わりはないか。
ほら、何してるんですか。ダメなお姉ちゃんにもやれることはあるでしょう。
憂には何回もごめんなさいって言った。
傘忘れてごめんなさい。一人にさせちゃってごめんなさい。嘘ついてごめんなさい。
憂は繰り返しうん、うんと言った。
最初は涙声だった憂もしばらくすると赤ちゃんをあやすような優しい声に変わった。
私って赤ちゃん?
憂は最後にありがとうって伝えといて、と言って電話を切った。
通話時間は56分。
終わったかな。
私がむったんを弾く手を休めるとあの人が入ってきた。ギー太を携えて。
この家防音すごいんだね~なんて能天気なことを言って私の隣に座った。
そしておもむろにギー太をかき鳴らした。私もそれに合わせる。
いつもの音だった。いつもの笑顔だった。
目をつむってハミングしている。私もそれに合わせる。
楽しいな。
一曲弾き終えて隣に目をやるとまた二つの目が私の顔を見据えていた。
私はその綺麗な目を見返す。
ありがとう。
もう何に対してかわからない。数えきれない。とにかくありがとう。
お互い言葉を発することはなかったけど自然と次の曲を弾き始めた。
今度は向けられた視線から目を逸らすことなく。感謝の気持ちを込めて。
気付いたら私は歌い出していた。
何曲目かな?
もうわかんなくなってきた。今何時かな。
私達放課後ティータイムの曲だけでなく、流行の曲とか、演歌とか、民謡とか。
果ては私が聞いたことない曲を歌い始めた。
この人のオリジナルかな?
私はそれでも何とか付いて行った。
決して途切れさせたくなかったから。
2時。
私が力尽きたのは2時。
私は肩に重みを感じた。この子も全く休むことなく付き合ってくれた。
眠そうだけど今もその目はぱっちり開かれていた。
目が合うとクスッと微笑んだ、ように見えた。
それからゆっくり立ち上がるとドアの方に歩き出した。
お夜食持ってくる、だって。
何やってるんだか。土曜の夜とはいえ。
朝が早かったこともあってかなりだるい。
でもさっきまではそんな気分になることはなかったな。
好きなことに夢中になってる瞬間ってああいう感じなんだろうね。
あの人も楽しそうに笑ってた。それが何より嬉しかった。
やっぱりあの人はへらへら笑ってギターを弾いて歌ってるのが一番いい。
さて、アイスはあるかな。
おいしいね。スイカバー。
この種が特に。え~種こそスイカバーの真髄だよぅ。わかってないなぁ。
私があっという間にたいらげる横で、あの子はちょびちょび齧っている。可愛いね。
そうだ。明日はりっちゃんの家に行かない?
澪ちゃんとムギちゃんと一緒に演劇の練習するんだって。
手伝えることはあんまりないかもしれないけど、久し振りにみんなで集まりたいでしょ。
明日も早起きしなきゃ!
無理でしょう。早起きは。
きっと私達二人揃って昼まで寝てるでしょうね。
確かに澪先輩達には会いたいですけど。
今日は疲れたので明日はゆっくり休みたいですね。
はいはいわかりましたよ。善処します。
あ~、深夜のアイスも意外といけるね。
さてそろそろ寝ましょうか。
今私達はベッドの上。
あの子が持ってきてくれたアイスを食べて一息ついたらさすがに睡魔が襲ってきた。
一緒に寝ようという私の提案を意外にもあの子はあっさり受け入れた。
明日は嵐が来るね。嵐なら今日来たか。
疲れ切っているのかあの子は私に背を向けてぐったりしている。
猫みたいに丸くなって可愛い。
どんな寝顔なのか見てみたいけど怒られそうだから止そう。
ベッドがギシギシ揺れる。
背後であの人がゴロゴロしてるんだろうな。
狭いんだから大人しくしてください。眠れないじゃないですか。
口に出す元気もないからこのまま自然と眠りに落ちるのを待つ。
そのつもりだったのに。
背中にくっついた体温に邪魔された。
振り向こうにも振り向けないよ。
あり、がと……ね。
今日、も、昨日、も……今までずっと。
私、ぜんぜん、先輩らしく……ないけど。
めいわく、かけっぱなし、だけど。
がんばるから、ね。
君に、なにかをあげられる、ように。きみに、こころから、わらって……もらえるように。
ふわぁ。おやすみ。
いつもの体温。落ち着く体温。
暑苦しくはない。むしろ、なんだか、ねむく、なって。
おかし、な、一日、だったなぁ。グダ……グダ、だった、なぁ。
私も、この人、も、早起きした、いみ、あったのかなぁ。
でも、あえて、よかったよ。あしたも、いっしょに……いようよ。
のどかな、休日なんて、今は、いらない。いまは……あなたと……いっしょが……いい。
あした、はやおき……できなくても……いいや。おやすみ。
乙
またこういうスタイルで何か書いて
乙
なんか他の誰も絡むことのない純粋な唯梓は久しぶりだ
俺得SSありがとう

- ねんどろいどぷち けいおん! (ノンスケール ABS&PVC製塗装済みトレーディング可動フィギュア) BOX
- グッドスマイルカンパニー 2010-12-25
by G-Tools , 2010/09/11









































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