- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 22:37:40.97:9nUUebCn0
谷口「わらわんだほ~WA~」
谷口「ふっふっふ、今日から俺も華の男子高校生か!」
キョン「朝から元気だな……」
谷口「おお、何だお前は? これからセーラー服と学び舎を供にする日々が待ってるんだ! もっと楽しく行こうぜ」
キョン「なに言ってんだか……ん、お前も5組か?」
谷口「おうよ! 我こそは神様の忘れ物谷口。東中のホットロッドとは俺のことだ。でお前は?」
キョン「ああ、俺は……」
国木田「こいつはキョン、あと僕は国木田。まぁひとつよろしく」
キョン「だからあだ名はやめろっつーの、俺にはちゃんと……」
谷口「キョンに国木田か! よろしく、後でアド交換しよーぜ」
キョン「……はぁ。まぁ、よろしくな」
岡部「席につけー」
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【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?
韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 22:44:27.72:9nUUebCn0
谷口(さてさて、宴もたけなわではございますがウチのクラスのレベルは…………)
谷口(…………ふむふむ。悪くない悪くない)
谷口(とりあえず見た目審査だ。右から順に……A-、C+、B++、B……)カキカキ
谷口(げ、涼宮……あいつもこのクラスか……まぁ、無視しよう)カキカキ
谷口(さて次だ次…………!?)
朝倉「朝倉涼子です。趣味は……んー、お料理かな。みなさんよろしくお願いします」
谷口(えらい美人がそこにいた)
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 22:45:14.13:9nUUebCn0
谷口(すっすげえええええ!! 涼宮以来の超ド級ナントカってやつだぜ!!)
谷口(見た目に関しては文句なしにAAだ! なんでさっき気づかなかったんだ……)
谷口(趣味は料理か……まぁ自己申告だけじゃまだ分からんが、なかなか悪くない)
谷口(期待の新星ってところか。ふっふっふ……さっそく楽しくなってきやがったぜ!!)
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 22:49:01.69:9nUUebCn0
それから、谷口調査員がその実力を発揮し始める。
調査員は、悟られることがない。
ストーカー行為などもっての他である。
あくまで自然に。教室でのさりげない仕草や言動から、彼女たちのありのままの姿を描きあげていく。
入学後一週間にして、調査員はその仕事(ミッション)を達成してみせた。
あざやかな技。彼こそ、現代に生きる「匠‐TAKUMI‐」である。
谷口「よしよし、アドレスもあらかた埋まってきたな」
国木田「うわあ」
キョン「お前……なにその痛々しいノート……」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:03:47.95:9nUUebCn0
谷口「そうそう! キョン、お前このまえ涼宮に話しかけてたな」
キョン「ああ、まあ。すぐに追い返されたが」
谷口「悪いことは言わん、やめとけ。あいつはダメだ! 何がダメって顔以外すべてダメだ!」
国木田「ひどい言い方だね……」
キョン「本当だよ。つーかそもそもそんな気はない」
谷口「だが事実だしな。それより俺のイチオシはあいつだな、朝倉涼子!」
キョン「朝倉? まぁ確かに美人だが……眉毛が……」
国木田「キョンもひどいな」
谷口「ばっか、そこがいいんじゃねーか! どことなくスキのありそうな眉毛……かわいらしさってーのはそういう所に表れるもんだ」
国木田「うわっ」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:09:28.58:9nUUebCn0
谷口「いや、この際見た目はどうでもいい。何たってあいつは頭もいい! 運動もできる! 実に健康的だ」
国木田「まぁ、確かにそうだね」
谷口「そして何よりやさしい! ここだよ、あいつは誰に対しても思いやりってのを欠くことが無いんだ。こんな完璧超人いるか?」
国木田「できる委員長さんだよね」
谷口「そんな超人であの眉毛だぜ? くぅ~たまんねえ」
キョン「つまるところ眉毛かよ……」
谷口「うるせー! てかお前聞いてた?」
キョン「聞いてるわけ無いだろ」
谷口「こんにゃろー!」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:13:16.36:9nUUebCn0
朝倉「さっきから眉毛眉毛って……二人ともひどいなー」
国木田「やぁ朝倉さん」
谷口「うぉびびった!」
朝倉「ふふっ、まあいいや、何だかんだでホメてくれてたみたいだし」
谷口「お、おう。すまんかったな」
朝倉「いいよ、ありがと」
女子A「りょうこ~授業行くよ~」
朝倉「今いくー。じゃまた後でね」ガタッ
キョン「ん、もうそんな時間か。国木田、とっとと食え」
国木田「ごめんごめん」
谷口「……うおー! うおー! うっほ~!!」バタバタ
キョン「あぁあぁうるさい」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:19:14.67:9nUUebCn0
朝倉「……ふー。今日も特に変化は無し、と」
朝倉「だいたい上も上よ。何よ、『どうにかしろ』って」
朝倉「たった数週間で何をどうしろってのよ」
朝倉「はー……まいいや、今度キョンくんあたりをけしかけてみよ」
谷口「WAWAWA忘れ物……お、朝倉」ガラッ
朝倉「あ、谷口くん」
谷口「放課後まで仕事か~? 大変だねいいんちょさんは」
朝倉「う、うん。まぁね」
谷口「何なら手伝ってやろうか~?」
朝倉「ううん、もう大丈夫よ。ありがと、じゃあね」
谷口「じゃあな~」
谷口「……ちっ、あわよくば一緒に帰宅を、と思ったが」
谷口「まぁいい。急がば回れ! じっくり外堀から埋めていくか」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:25:12.58:9nUUebCn0
谷口「WAんだほ~まっちーがえもある~」
谷口「あんびゅーてほ~ふかん……ん?」
谷口(朝っぱらから朝倉! 目の保養だっぜ)
朝倉「えーと……ここだっけ」ガサガサ
谷口(ふむふむ、キョンの下駄箱に可愛らしい便箋を…………なにっ!?)
朝倉「さて、後は放課後ね~」パタパタ
谷口「────」ぱくぱく
谷口「……きょんのやろう……なんちゃら団じゃ飽き足らず、朝倉エンジェルまで」ゴゴゴ
谷口「許すまじスケコマシ! 正義の鉄槌を下してくれる!」
国木田「……朝からうるさいよ」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:29:57.01:9nUUebCn0
キョン「なぜか谷口に殴られた……」
キョン「まぁいいや、放課後に教室だったか? そろそろ向かうか」
谷口「お。えーと、長門さんだっけ?」
長門「そう」
谷口「キョンのやつ見なかった?」
長門「教室に行った」
谷口「あんにゃろおおおおお!!」バビュン
長門「……」
長門「……」
長門「……胸騒ぎ」ダッ
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:35:29.25:9nUUebCn0
谷口「はぁ、はぁ、はぁ……」
谷口「い、今、この中では朝倉とキョンが……」
谷口「くっそ畜生おおおおおお!!」
谷口「せめて……聞き耳を立てるくらい……ん?」
谷口「妙だな、何も聴こえん」
谷口「そして何も見えん」
谷口「ドアも開かない……なんでだ?」ガタンガタ
谷口「……まさか、キョンのやつ」
谷口「うおー朝倉! 今助けてやるぞ!」ガタッガタッガタン
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:42:11.28:9nUUebCn0
朝倉「じゃあ、死ん」
谷口「WAおー忘れ物だこんにゃろおおおおお!!」ガシャーン
朝倉「でえーっ!?」
キョン「おわっ、谷口!」
谷口「おいこの外道!!」ゴスッ
キョン「あだっ! ちょ、落ち着け」
谷口「…………ん? のわっ!? 何だここ!!」
長門「一つ一つのプログラムが甘……い……としても、力ずくで侵入するとは……」
朝倉「ちょっ、長門さん! 彼、何者?」
長門「驚天動地……」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:49:54.84:9nUUebCn0
谷口「……おい、朝倉。そのナイフは何だ?」
朝倉「へ? あ、いや、これは」
谷口「お前、キョンに何をしようとしてた?」
朝倉「いや、あのその」
谷口「とぼけんじゃねえ!」
朝倉「だ、だってしょうがないじゃない! 命令だったのよ」
谷口「うるせえ! 人の命をなんだと思ってやがる!」
朝倉「知らないわよそんなの!」
キョン「お、落ち着け谷口……つーか適応早すぎだろ」
長門「自律進化の可能性が見える」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/20(月) 23:55:39.92:9nUUebCn0
長門「……朝倉涼子。上層部の決断が降りた」
朝倉「……」
長門「急進派は粛正される。しかし、貴方にはこのまま残ってもらう」
朝倉「へ?」
長門「谷口は間違いなく一般人。そんな彼が情報封鎖を破るのは、極めて稀な事態」
長門「そこで、思念体はあなたを私の下に置き、あなたに対する彼の行動を観察することにした」
朝倉「え!? 何よそれ、コイツと一緒にいろっての!」
谷口「うるせえよ! 何か知らんがちょうどいい、俺が人道ってものをじっくり教えてやる」
朝倉「勘弁してよ……」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:00:40.08:9nUUebCn0
テクテク
谷口「何だかよく分からんことになっちまったなぁ」
キョン「一番よく分からんのはお前だ……」
谷口「で、結局あの二人はそのなんとか体の子分みたいなモンなんだな?」
キョン「まぁそんな感じだな」
谷口「……朝倉のヤロー、見損なったぜ! あいつはC-に格下げだ!」カキカキ
キョン「お前はのんきで羨ましいよ……じゃあな」
谷口「おう、また明日」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:05:04.11:5tozZ23A0
谷口(しかし驚いたぜ……朝倉と長門が宇宙人だ?)
谷口(まぁ、長門は何となく分からんでもないが……)
谷口(…………)
谷口(……見た目はあんなでも、生まれてたった3年しか経ってないなんてな)
谷口(……)
谷口(少し、かわいそうだな)
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:09:53.99:5tozZ23A0
谷口「おう朝倉、おはよう」
朝倉「……おはよう」
谷口「ちったあ人の生き死にについて考えたか?」
朝倉「考えるわけないでしょ、くだらない」
谷口「……お前さぁ、そんなんでいいわけ?」
朝倉「どうだっていいわよ、私は人間じゃないんだし」
谷口「あーあーそーですかい。じゃあな」
朝倉「……」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:15:36.94:5tozZ23A0
谷口「おっと、言い忘れてた。放課後少し残ってろ」
朝倉「は? 知らないわよ」
谷口「うるせえ、いいから黙って待ってろ」
朝倉「……分かった」
国木田「……ねぇ谷口、何かあったの? 朝倉さんと仲いいんだか悪いんだか」
谷口「さあな」
国木田「……なんか変だなぁ」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:21:14.84:5tozZ23A0
朝倉「これは仕事これは仕事これは仕事……」ブツブツ
朝倉「ていうかいつまで待たせるのよ。もう授業はとっくに……」
ガラッ
谷口「よー、わりぃな遅れた」
朝倉「……あなた、まさか忘れてたとかじゃないでしょうね」
谷口「大事な忘れ物はしない人間のつもりだぜ?」
朝倉「……」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:25:52.23:5tozZ23A0
谷口「よしよし、いい具合にみんな下校してるな。さて……」ゴソゴソ
朝倉「何よ」
谷口「いや。俺なりにな? 命というものについて一晩考えてみたのさ」
谷口「だがまぁ、まとまらんもんはまとまらん。そこで……」
ガサッ
谷口「じゃじゃーん! 昔の思い出に頼ってみることにしたのさ」
朝倉「『ずーっとずっとだいすきだよ』……」
谷口「ああ」
朝倉「何これ、絵本?」
谷口「そうだ」
朝倉「………………」
朝倉「……くっ……くだらない」プルプル
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:28:57.01:5tozZ23A0
朝倉「こんな事のために私はこんな時間まで……」
谷口「まぁまぁ、そう言うな。絵本ってのはすばらしい読み物なんだぞ」
朝倉「どこがよ!」
谷口「大体お前、絵本なんて読んだことねーだろ。」
朝倉「だって読む必要ないもの」
谷口「何でそう言い切れる? 読んでもないのに」
朝倉「……それは」
谷口「まぁともかく、谷口くんから最初の宿題! 明日までにそれを一回読んでくること。じゃなっ」
朝倉「あ、ちょっ!」
朝倉「……ちょっとー」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:33:42.70:5tozZ23A0
朝倉「……ただいま」
長門「お帰りなさい。ご飯は出来ている」
朝倉「……またカレー?」
長門「私という個体は三食カレーパラダイスを望ん」
朝倉「あぁはいはいはい分かったわよ分かった、食べるから……」
長門「……それは、何?」
朝倉「絵本。宿題ですって。はー……」
長門「そう」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:37:35.06:5tozZ23A0
長門「えふぉんほいうものあようにのようしょうにょう」ムグムグ
朝倉「情報の伝達に齟齬が発生してるわよ」モグモグ
長門「もぐもぐもぐもぐごっくんプハー」
長門「……『絵本』というものは、幼児の情操教育に主として用いられる書物」
朝倉「ふむふむ」モグモグ
長門「人格形成に重要な情報が、たいへんコンパクトかつ理解しやすくまとめられている」
長門「特に名作といわれる部類の『絵本』は、子供だけでなく多くの大人も感動させるほどの出来」
長門「その本も、代表的な名作のひとつ。小学校の教科書にも採用されている」
朝倉「長門さんも読んだことあるの?」
長門「ある。一晩、涙が止まらなかった」
朝倉「……マジで」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:40:40.66:5tozZ23A0
ジャーッバシャバシャ
朝倉「長門さんのお風呂って長いのよね……あー暇」ゴロゴロ
朝倉「……うーん」ガサッ
朝倉「絵本、か……」
朝倉「まぁ、暇だし」ペラッ
朝倉「…………」ペラッ
朝倉「…………」ペラッ
朝倉「……………………んー」ポリポリ
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:44:29.64:5tozZ23A0
谷口「WAったしのわたしの彼は~♪」ガラガラ
ハルヒ「だからね、何度も言ってると思うけど、我々は対外的な活動も想定している以上、団員としての品位というか、最低限守るべきものがあり、つまるところ授業中の過度な居眠りというものは」
キョン「うるさい眠い」
国木田「……」←耳栓して勉強中
谷口「うーん、今日もいつもと変わらぬ朝だな」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:50:14.35:5tozZ23A0
谷口「よぉ朝倉」
朝倉「……おはよう」
谷口「どうだった」
朝倉「犬が老衰で死ぬだけの話の何が面白いのか分からなかった。はい」ガサッ
谷口「うん、最初はそれでいい。ところでお前の家、ネコは飼えるか?」
朝倉「……ネコ?」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:54:23.72:5tozZ23A0
朝倉「まぁ、金銭的な面なんてどうとでもなるし……一応、ペット可のマンションだけど」
谷口「よし。俺の親戚が子ネコの群れをもて余してるんだが、一匹もらってくれ」
朝倉「えっ……なにそれ押し付け?」
谷口「ちがわい、谷口くんの宿題その2だ! いいから一匹飼ってみろ」
朝倉「それにネコって……あの本の主要動物は犬じゃない?」
谷口「それもちゃんと理由がある。ともかく、放課後に俺の家に行くぞ」
朝倉「…………はー」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 00:57:29.12:5tozZ23A0
朝倉「…………」
ネコ「…………」
朝倉「…………」
ネコ「…………」
朝倉「…………」
長門「……それは、何?」
朝倉「……宿題」
長門「…………そう」
ネコ「ミィ」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:00:27.74:5tozZ23A0
朝倉「………………」
『ちゃんと可愛がれよ。名前くらいはつけてやれ』
朝倉「……名前ねぇ」
ネコ「…………」
朝倉「……きみ、じゃがいもみたいな色だね」
ネコ「…………」
朝倉「……じゃがいもでいいや。名前」
じゃが「ミィ」
朝倉「……はぁー」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:03:48.75:5tozZ23A0
先生「──であるからして、ここは──」
朝倉(……なんでネコなんだろ)
朝倉(犬の方が愛想がいいって聞くけど)
朝倉(一般的には、その方が好かれやすいんじゃないのかな)
『飼ってりゃそのうち分かる』
朝倉(……のかな)
朝倉「はー……」
阪中「???」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:07:01.58:5tozZ23A0
朝倉「~♪」トントン グツグツ
ガチャ、バタン
長門「ただいま」
朝倉「あ、おかえりなさい。すぐカレー出来るからね」
じゃが「ミィ」
長門「この匂い…………インドカレー」
朝倉「うん。本読んで作ってみたの」
長門「そういう事じゃない……そういう事じゃない……」シクシク
朝倉「……三食バー○ンドじゃ私が保たないわよ」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:11:00.89:5tozZ23A0
長門「バーモ○ド……愛しの○゛ーモンド……」シクシクモグモグ
朝倉「そろそろ泣き止んでよ……」モグモグ
じゃが「……、……」
朝倉「ん?」
じゃが「、…………、」
長門「カレーのエビが食べたいものと思われる」
朝倉「そうなの? でもさすがにこれはね」
じゃが「……、……、」
朝倉「はいはい、テーブルに登らないの」
じゃが「ミィ」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:14:21.49:5tozZ23A0
朝倉「んー……今日は絶好のおせんたく日和ね」ノビー
じゃが「! ……!」バタンバタン
朝倉「こら、くつしたで遊ばないの」ヒョイ
じゃが「……! ミィ、」ピョンピョン
朝倉「えーと、確かここに長門さんが拾ってきたボールが……」ガサガサ
朝倉「あったあった。それっ!」ポーン
じゃが「!!」ダッ
朝倉「ふぅ……さて、おせんたくおせんたく」
朝倉「……落ち着かない生き物ねー」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:19:53.29:5tozZ23A0
鶴屋さん「そんなこんなで二ヶ月が経ったにょろ!」
谷口「よー朝倉」
朝倉「なに」
谷口「宿題見せてくれ」
朝倉「たまには自分でやりなさいよ……」ガサッ
谷口「へっへ悪いわりぃ」
ハルヒ「アホ口と朝倉エンジェルが……不思議だわ」
キョン「そこまで言わなくとも」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:22:35.40:5tozZ23A0
谷口「ところで朝倉よ」カリカリ
朝倉「なに」
谷口「じゃがはどうだ」カリカリ
朝倉「……まぁ、大きくはなってるわよ」
谷口「飼ってみた感想は」カリカリ
朝倉「はっきり言って、邪魔なだけなんだけど。そこらじゅう走り回るし」
谷口「ふんふん」カリカリ
朝倉「試しに撫でようとしたらそっぽ向かれるし」
谷口「まぁ、ネコってそんなだよな」カリカリ
朝倉「……今のところ、何も得るものがない。むしろエサ代がかさんでる」
谷口「食うよなーネコって」カリカリ
朝倉「…………」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:26:45.79:5tozZ23A0
長門「……」
じゃが「……」モグモグ
朝倉「あれ、なにそれ」
長門「にぼし。少し高いやつ。たまのプレゼント」
じゃが「……」モグモグ
朝倉「ふーん」
長門「……」
朝倉「……ネコ、かわいい?」
長門「……良く分からない」
じゃが「まー」
朝倉「……」
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:29:25.53:5tozZ23A0
朝倉「今日は長門さんも出掛けてるし……暇ね」
じゃが「……」
朝倉「……じゃがー」なでなで
じゃが「……」ぷいっ スタスタ
朝倉「……このやろー」
じゃが「……」
朝倉「……」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:32:24.13:5tozZ23A0
朝倉「日誌書いてたら遅くなっちゃった」テクテク
お前ら「うう……」
悪ガキA「おいこら、何か言えやコラ」ゲシゲシ
悪ガキB「おめーマジくせーんだよマジwww」
お前ら「い、痛い……ごめんなさい……」
悪ガキA「うっせーコラ」ゲシゲシ
悪ガキB「マジうぜーなマジwwwww」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:36:16.53:5tozZ23A0
朝倉「……馬鹿じゃないの」
悪ガキA「あ?」
朝倉「弱いやついじめて楽しいの? よく分からないわ」
悪ガキA「な……何だよコラ」
悪ガキB「マジなんだてめーマジwww文句あんのかマジ?wwwww」
朝倉「うっさいわね」バキッ
悪ガキB「マジブッ!!」
朝倉「イライラする奴ら……消してやろうかしら」
悪ガキA「ヒッ」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:39:59.96:5tozZ23A0
朝倉「……」
朝倉「……………………」
朝倉「…………やっぱいいわ」
お前ら「あ……あの……」
朝倉「とっとと消えなさいよ。殴るわよ」
お前ら「ヒエッ」タタッ
悪ガキA「! てめこのアマ──」
朝倉「あと一歩動いてごらん」
悪ガキA「ごめんなさい」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:42:24.37:5tozZ23A0
朝倉「…………はー」テクテク
朝倉「何やってんのかしらね、私」テクテク
朝倉「あんなのほっときゃいいのにね」テクテク
朝倉「…………」
朝倉「……わかんない」
朝倉「なにもわかんない」テクテク
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:45:21.18:5tozZ23A0
朝倉「ただいま」ガチャ、バタン
朝倉「……長門さんは寝ちゃったのかな」
朝倉「……」
朝倉「ご飯食べよ」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:48:30.30:5tozZ23A0
朝倉「……」モグモグ
朝倉「……」モグモグ
朝倉「……」モグモグ
じゃが「……」スタスタ
朝倉「……」モグモグ
じゃが「……」ピョン
朝倉「……」モグモグ
じゃが「……」スリスリ
朝倉「……」モグモグ
朝倉「……」
朝倉「…………」
朝倉「……」なでなで
じゃが「……」スリスリ
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:51:37.40:5tozZ23A0
朝倉「……きみも」
じゃが「……」
朝倉「いつかは、死ぬんだね」
じゃが「……」
朝倉「……」
じゃが「……」
朝倉「……」なでなで
じゃが「まー」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:56:34.32:5tozZ23A0
朝倉「昨日ね」
谷口「?」
朝倉「夢を見た」
谷口「どんな」
朝倉「死にかけてる私が、死にたくないー死にたくないーってやってるの」
谷口「そりゃ物騒だな」
朝倉「醜いことこの上ないわ」
谷口「何が?」
朝倉「命に執着することが」
谷口「そうかもな」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 01:59:33.97:5tozZ23A0
谷口「いいんじゃないか、醜くて」
朝倉「なんでよ」
谷口「多分な、」
谷口「美しいかどうかが問題じゃないんだ」
谷口「美しく、あろうとしているか」
谷口「生きた先の躍進を求めてるのかどうかが」
谷口「大事なんじゃないかな」
朝倉「……カッコ良くないわよ」
谷口「うるせー」
朝倉「ふふっ」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 02:02:22.13:5tozZ23A0
谷口「死の概念とやらは分かったか?」
朝倉「全然」
谷口「そうか…………」
朝倉「ねぇ、また絵本貸してくれない?」
谷口「おっ!? いいぜいいぜ、明日持ってくるよ」
朝倉「ありがと」
谷口「そうそう。この間な、校内ランキングをまた書き直したんだ」
朝倉「?」
谷口「お前は────」
終わり
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/21(火) 06:13:39.88:yVHZIZDI0
谷口が主人公なんて…! ビクンビクン
谷口(さてさて、宴もたけなわではございますがウチのクラスのレベルは…………)
谷口(…………ふむふむ。悪くない悪くない)
谷口(とりあえず見た目審査だ。右から順に……A-、C+、B++、B……)カキカキ
谷口(げ、涼宮……あいつもこのクラスか……まぁ、無視しよう)カキカキ
谷口(さて次だ次…………!?)
朝倉「朝倉涼子です。趣味は……んー、お料理かな。みなさんよろしくお願いします」
谷口(えらい美人がそこにいた)
谷口(すっすげえええええ!! 涼宮以来の超ド級ナントカってやつだぜ!!)
谷口(見た目に関しては文句なしにAAだ! なんでさっき気づかなかったんだ……)
谷口(趣味は料理か……まぁ自己申告だけじゃまだ分からんが、なかなか悪くない)
谷口(期待の新星ってところか。ふっふっふ……さっそく楽しくなってきやがったぜ!!)
それから、谷口調査員がその実力を発揮し始める。
調査員は、悟られることがない。
ストーカー行為などもっての他である。
あくまで自然に。教室でのさりげない仕草や言動から、彼女たちのありのままの姿を描きあげていく。
入学後一週間にして、調査員はその仕事(ミッション)を達成してみせた。
あざやかな技。彼こそ、現代に生きる「匠‐TAKUMI‐」である。
谷口「よしよし、アドレスもあらかた埋まってきたな」
国木田「うわあ」
キョン「お前……なにその痛々しいノート……」
谷口「そうそう! キョン、お前このまえ涼宮に話しかけてたな」
キョン「ああ、まあ。すぐに追い返されたが」
谷口「悪いことは言わん、やめとけ。あいつはダメだ! 何がダメって顔以外すべてダメだ!」
国木田「ひどい言い方だね……」
キョン「本当だよ。つーかそもそもそんな気はない」
谷口「だが事実だしな。それより俺のイチオシはあいつだな、朝倉涼子!」
キョン「朝倉? まぁ確かに美人だが……眉毛が……」
国木田「キョンもひどいな」
谷口「ばっか、そこがいいんじゃねーか! どことなくスキのありそうな眉毛……かわいらしさってーのはそういう所に表れるもんだ」
国木田「うわっ」
谷口「いや、この際見た目はどうでもいい。何たってあいつは頭もいい! 運動もできる! 実に健康的だ」
国木田「まぁ、確かにそうだね」
谷口「そして何よりやさしい! ここだよ、あいつは誰に対しても思いやりってのを欠くことが無いんだ。こんな完璧超人いるか?」
国木田「できる委員長さんだよね」
谷口「そんな超人であの眉毛だぜ? くぅ~たまんねえ」
キョン「つまるところ眉毛かよ……」
谷口「うるせー! てかお前聞いてた?」
キョン「聞いてるわけ無いだろ」
谷口「こんにゃろー!」
朝倉「さっきから眉毛眉毛って……二人ともひどいなー」
国木田「やぁ朝倉さん」
谷口「うぉびびった!」
朝倉「ふふっ、まあいいや、何だかんだでホメてくれてたみたいだし」
谷口「お、おう。すまんかったな」
朝倉「いいよ、ありがと」
女子A「りょうこ~授業行くよ~」
朝倉「今いくー。じゃまた後でね」ガタッ
キョン「ん、もうそんな時間か。国木田、とっとと食え」
国木田「ごめんごめん」
谷口「……うおー! うおー! うっほ~!!」バタバタ
キョン「あぁあぁうるさい」
朝倉「……ふー。今日も特に変化は無し、と」
朝倉「だいたい上も上よ。何よ、『どうにかしろ』って」
朝倉「たった数週間で何をどうしろってのよ」
朝倉「はー……まいいや、今度キョンくんあたりをけしかけてみよ」
谷口「WAWAWA忘れ物……お、朝倉」ガラッ
朝倉「あ、谷口くん」
谷口「放課後まで仕事か~? 大変だねいいんちょさんは」
朝倉「う、うん。まぁね」
谷口「何なら手伝ってやろうか~?」
朝倉「ううん、もう大丈夫よ。ありがと、じゃあね」
谷口「じゃあな~」
谷口「……ちっ、あわよくば一緒に帰宅を、と思ったが」
谷口「まぁいい。急がば回れ! じっくり外堀から埋めていくか」
谷口「WAんだほ~まっちーがえもある~」
谷口「あんびゅーてほ~ふかん……ん?」
谷口(朝っぱらから朝倉! 目の保養だっぜ)
朝倉「えーと……ここだっけ」ガサガサ
谷口(ふむふむ、キョンの下駄箱に可愛らしい便箋を…………なにっ!?)
朝倉「さて、後は放課後ね~」パタパタ
谷口「────」ぱくぱく
谷口「……きょんのやろう……なんちゃら団じゃ飽き足らず、朝倉エンジェルまで」ゴゴゴ
谷口「許すまじスケコマシ! 正義の鉄槌を下してくれる!」
国木田「……朝からうるさいよ」
キョン「なぜか谷口に殴られた……」
キョン「まぁいいや、放課後に教室だったか? そろそろ向かうか」
谷口「お。えーと、長門さんだっけ?」
長門「そう」
谷口「キョンのやつ見なかった?」
長門「教室に行った」
谷口「あんにゃろおおおおお!!」バビュン
長門「……」
長門「……」
長門「……胸騒ぎ」ダッ
谷口「はぁ、はぁ、はぁ……」
谷口「い、今、この中では朝倉とキョンが……」
谷口「くっそ畜生おおおおおお!!」
谷口「せめて……聞き耳を立てるくらい……ん?」
谷口「妙だな、何も聴こえん」
谷口「そして何も見えん」
谷口「ドアも開かない……なんでだ?」ガタンガタ
谷口「……まさか、キョンのやつ」
谷口「うおー朝倉! 今助けてやるぞ!」ガタッガタッガタン
朝倉「じゃあ、死ん」
谷口「WAおー忘れ物だこんにゃろおおおおお!!」ガシャーン
朝倉「でえーっ!?」
キョン「おわっ、谷口!」
谷口「おいこの外道!!」ゴスッ
キョン「あだっ! ちょ、落ち着け」
谷口「…………ん? のわっ!? 何だここ!!」
長門「一つ一つのプログラムが甘……い……としても、力ずくで侵入するとは……」
朝倉「ちょっ、長門さん! 彼、何者?」
長門「驚天動地……」
谷口「……おい、朝倉。そのナイフは何だ?」
朝倉「へ? あ、いや、これは」
谷口「お前、キョンに何をしようとしてた?」
朝倉「いや、あのその」
谷口「とぼけんじゃねえ!」
朝倉「だ、だってしょうがないじゃない! 命令だったのよ」
谷口「うるせえ! 人の命をなんだと思ってやがる!」
朝倉「知らないわよそんなの!」
キョン「お、落ち着け谷口……つーか適応早すぎだろ」
長門「自律進化の可能性が見える」
長門「……朝倉涼子。上層部の決断が降りた」
朝倉「……」
長門「急進派は粛正される。しかし、貴方にはこのまま残ってもらう」
朝倉「へ?」
長門「谷口は間違いなく一般人。そんな彼が情報封鎖を破るのは、極めて稀な事態」
長門「そこで、思念体はあなたを私の下に置き、あなたに対する彼の行動を観察することにした」
朝倉「え!? 何よそれ、コイツと一緒にいろっての!」
谷口「うるせえよ! 何か知らんがちょうどいい、俺が人道ってものをじっくり教えてやる」
朝倉「勘弁してよ……」
テクテク
谷口「何だかよく分からんことになっちまったなぁ」
キョン「一番よく分からんのはお前だ……」
谷口「で、結局あの二人はそのなんとか体の子分みたいなモンなんだな?」
キョン「まぁそんな感じだな」
谷口「……朝倉のヤロー、見損なったぜ! あいつはC-に格下げだ!」カキカキ
キョン「お前はのんきで羨ましいよ……じゃあな」
谷口「おう、また明日」
谷口(しかし驚いたぜ……朝倉と長門が宇宙人だ?)
谷口(まぁ、長門は何となく分からんでもないが……)
谷口(…………)
谷口(……見た目はあんなでも、生まれてたった3年しか経ってないなんてな)
谷口(……)
谷口(少し、かわいそうだな)
谷口「おう朝倉、おはよう」
朝倉「……おはよう」
谷口「ちったあ人の生き死にについて考えたか?」
朝倉「考えるわけないでしょ、くだらない」
谷口「……お前さぁ、そんなんでいいわけ?」
朝倉「どうだっていいわよ、私は人間じゃないんだし」
谷口「あーあーそーですかい。じゃあな」
朝倉「……」
谷口「おっと、言い忘れてた。放課後少し残ってろ」
朝倉「は? 知らないわよ」
谷口「うるせえ、いいから黙って待ってろ」
朝倉「……分かった」
国木田「……ねぇ谷口、何かあったの? 朝倉さんと仲いいんだか悪いんだか」
谷口「さあな」
国木田「……なんか変だなぁ」
朝倉「これは仕事これは仕事これは仕事……」ブツブツ
朝倉「ていうかいつまで待たせるのよ。もう授業はとっくに……」
ガラッ
谷口「よー、わりぃな遅れた」
朝倉「……あなた、まさか忘れてたとかじゃないでしょうね」
谷口「大事な忘れ物はしない人間のつもりだぜ?」
朝倉「……」
谷口「よしよし、いい具合にみんな下校してるな。さて……」ゴソゴソ
朝倉「何よ」
谷口「いや。俺なりにな? 命というものについて一晩考えてみたのさ」
谷口「だがまぁ、まとまらんもんはまとまらん。そこで……」
ガサッ
谷口「じゃじゃーん! 昔の思い出に頼ってみることにしたのさ」
朝倉「『ずーっとずっとだいすきだよ』……」
谷口「ああ」
朝倉「何これ、絵本?」
谷口「そうだ」
朝倉「………………」
朝倉「……くっ……くだらない」プルプル
朝倉「こんな事のために私はこんな時間まで……」
谷口「まぁまぁ、そう言うな。絵本ってのはすばらしい読み物なんだぞ」
朝倉「どこがよ!」
谷口「大体お前、絵本なんて読んだことねーだろ。」
朝倉「だって読む必要ないもの」
谷口「何でそう言い切れる? 読んでもないのに」
朝倉「……それは」
谷口「まぁともかく、谷口くんから最初の宿題! 明日までにそれを一回読んでくること。じゃなっ」
朝倉「あ、ちょっ!」
朝倉「……ちょっとー」
朝倉「……ただいま」
長門「お帰りなさい。ご飯は出来ている」
朝倉「……またカレー?」
長門「私という個体は三食カレーパラダイスを望ん」
朝倉「あぁはいはいはい分かったわよ分かった、食べるから……」
長門「……それは、何?」
朝倉「絵本。宿題ですって。はー……」
長門「そう」
長門「えふぉんほいうものあようにのようしょうにょう」ムグムグ
朝倉「情報の伝達に齟齬が発生してるわよ」モグモグ
長門「もぐもぐもぐもぐごっくんプハー」
長門「……『絵本』というものは、幼児の情操教育に主として用いられる書物」
朝倉「ふむふむ」モグモグ
長門「人格形成に重要な情報が、たいへんコンパクトかつ理解しやすくまとめられている」
長門「特に名作といわれる部類の『絵本』は、子供だけでなく多くの大人も感動させるほどの出来」
長門「その本も、代表的な名作のひとつ。小学校の教科書にも採用されている」
朝倉「長門さんも読んだことあるの?」
長門「ある。一晩、涙が止まらなかった」
朝倉「……マジで」
ジャーッバシャバシャ
朝倉「長門さんのお風呂って長いのよね……あー暇」ゴロゴロ
朝倉「……うーん」ガサッ
朝倉「絵本、か……」
朝倉「まぁ、暇だし」ペラッ
朝倉「…………」ペラッ
朝倉「…………」ペラッ
朝倉「……………………んー」ポリポリ
谷口「WAったしのわたしの彼は~♪」ガラガラ
ハルヒ「だからね、何度も言ってると思うけど、我々は対外的な活動も想定している以上、団員としての品位というか、最低限守るべきものがあり、つまるところ授業中の過度な居眠りというものは」
キョン「うるさい眠い」
国木田「……」←耳栓して勉強中
谷口「うーん、今日もいつもと変わらぬ朝だな」
谷口「よぉ朝倉」
朝倉「……おはよう」
谷口「どうだった」
朝倉「犬が老衰で死ぬだけの話の何が面白いのか分からなかった。はい」ガサッ
谷口「うん、最初はそれでいい。ところでお前の家、ネコは飼えるか?」
朝倉「……ネコ?」
朝倉「まぁ、金銭的な面なんてどうとでもなるし……一応、ペット可のマンションだけど」
谷口「よし。俺の親戚が子ネコの群れをもて余してるんだが、一匹もらってくれ」
朝倉「えっ……なにそれ押し付け?」
谷口「ちがわい、谷口くんの宿題その2だ! いいから一匹飼ってみろ」
朝倉「それにネコって……あの本の主要動物は犬じゃない?」
谷口「それもちゃんと理由がある。ともかく、放課後に俺の家に行くぞ」
朝倉「…………はー」
朝倉「…………」
ネコ「…………」
朝倉「…………」
ネコ「…………」
朝倉「…………」
長門「……それは、何?」
朝倉「……宿題」
長門「…………そう」
ネコ「ミィ」
朝倉「………………」
『ちゃんと可愛がれよ。名前くらいはつけてやれ』
朝倉「……名前ねぇ」
ネコ「…………」
朝倉「……きみ、じゃがいもみたいな色だね」
ネコ「…………」
朝倉「……じゃがいもでいいや。名前」
じゃが「ミィ」
朝倉「……はぁー」
先生「──であるからして、ここは──」
朝倉(……なんでネコなんだろ)
朝倉(犬の方が愛想がいいって聞くけど)
朝倉(一般的には、その方が好かれやすいんじゃないのかな)
『飼ってりゃそのうち分かる』
朝倉(……のかな)
朝倉「はー……」
阪中「???」
朝倉「~♪」トントン グツグツ
ガチャ、バタン
長門「ただいま」
朝倉「あ、おかえりなさい。すぐカレー出来るからね」
じゃが「ミィ」
長門「この匂い…………インドカレー」
朝倉「うん。本読んで作ってみたの」
長門「そういう事じゃない……そういう事じゃない……」シクシク
朝倉「……三食バー○ンドじゃ私が保たないわよ」
長門「バーモ○ド……愛しの○゛ーモンド……」シクシクモグモグ
朝倉「そろそろ泣き止んでよ……」モグモグ
じゃが「……、……」
朝倉「ん?」
じゃが「、…………、」
長門「カレーのエビが食べたいものと思われる」
朝倉「そうなの? でもさすがにこれはね」
じゃが「……、……、」
朝倉「はいはい、テーブルに登らないの」
じゃが「ミィ」
朝倉「んー……今日は絶好のおせんたく日和ね」ノビー
じゃが「! ……!」バタンバタン
朝倉「こら、くつしたで遊ばないの」ヒョイ
じゃが「……! ミィ、」ピョンピョン
朝倉「えーと、確かここに長門さんが拾ってきたボールが……」ガサガサ
朝倉「あったあった。それっ!」ポーン
じゃが「!!」ダッ
朝倉「ふぅ……さて、おせんたくおせんたく」
朝倉「……落ち着かない生き物ねー」
鶴屋さん「そんなこんなで二ヶ月が経ったにょろ!」
谷口「よー朝倉」
朝倉「なに」
谷口「宿題見せてくれ」
朝倉「たまには自分でやりなさいよ……」ガサッ
谷口「へっへ悪いわりぃ」
ハルヒ「アホ口と朝倉エンジェルが……不思議だわ」
キョン「そこまで言わなくとも」
谷口「ところで朝倉よ」カリカリ
朝倉「なに」
谷口「じゃがはどうだ」カリカリ
朝倉「……まぁ、大きくはなってるわよ」
谷口「飼ってみた感想は」カリカリ
朝倉「はっきり言って、邪魔なだけなんだけど。そこらじゅう走り回るし」
谷口「ふんふん」カリカリ
朝倉「試しに撫でようとしたらそっぽ向かれるし」
谷口「まぁ、ネコってそんなだよな」カリカリ
朝倉「……今のところ、何も得るものがない。むしろエサ代がかさんでる」
谷口「食うよなーネコって」カリカリ
朝倉「…………」
長門「……」
じゃが「……」モグモグ
朝倉「あれ、なにそれ」
長門「にぼし。少し高いやつ。たまのプレゼント」
じゃが「……」モグモグ
朝倉「ふーん」
長門「……」
朝倉「……ネコ、かわいい?」
長門「……良く分からない」
じゃが「まー」
朝倉「……」
朝倉「今日は長門さんも出掛けてるし……暇ね」
じゃが「……」
朝倉「……じゃがー」なでなで
じゃが「……」ぷいっ スタスタ
朝倉「……このやろー」
じゃが「……」
朝倉「……」
朝倉「日誌書いてたら遅くなっちゃった」テクテク
お前ら「うう……」
悪ガキA「おいこら、何か言えやコラ」ゲシゲシ
悪ガキB「おめーマジくせーんだよマジwww」
お前ら「い、痛い……ごめんなさい……」
悪ガキA「うっせーコラ」ゲシゲシ
悪ガキB「マジうぜーなマジwwwww」
朝倉「……馬鹿じゃないの」
悪ガキA「あ?」
朝倉「弱いやついじめて楽しいの? よく分からないわ」
悪ガキA「な……何だよコラ」
悪ガキB「マジなんだてめーマジwww文句あんのかマジ?wwwww」
朝倉「うっさいわね」バキッ
悪ガキB「マジブッ!!」
朝倉「イライラする奴ら……消してやろうかしら」
悪ガキA「ヒッ」
朝倉「……」
朝倉「……………………」
朝倉「…………やっぱいいわ」
お前ら「あ……あの……」
朝倉「とっとと消えなさいよ。殴るわよ」
お前ら「ヒエッ」タタッ
悪ガキA「! てめこのアマ──」
朝倉「あと一歩動いてごらん」
悪ガキA「ごめんなさい」
朝倉「…………はー」テクテク
朝倉「何やってんのかしらね、私」テクテク
朝倉「あんなのほっときゃいいのにね」テクテク
朝倉「…………」
朝倉「……わかんない」
朝倉「なにもわかんない」テクテク
朝倉「ただいま」ガチャ、バタン
朝倉「……長門さんは寝ちゃったのかな」
朝倉「……」
朝倉「ご飯食べよ」
朝倉「……」モグモグ
朝倉「……」モグモグ
朝倉「……」モグモグ
じゃが「……」スタスタ
朝倉「……」モグモグ
じゃが「……」ピョン
朝倉「……」モグモグ
じゃが「……」スリスリ
朝倉「……」モグモグ
朝倉「……」
朝倉「…………」
朝倉「……」なでなで
じゃが「……」スリスリ
朝倉「……きみも」
じゃが「……」
朝倉「いつかは、死ぬんだね」
じゃが「……」
朝倉「……」
じゃが「……」
朝倉「……」なでなで
じゃが「まー」
朝倉「昨日ね」
谷口「?」
朝倉「夢を見た」
谷口「どんな」
朝倉「死にかけてる私が、死にたくないー死にたくないーってやってるの」
谷口「そりゃ物騒だな」
朝倉「醜いことこの上ないわ」
谷口「何が?」
朝倉「命に執着することが」
谷口「そうかもな」
谷口「いいんじゃないか、醜くて」
朝倉「なんでよ」
谷口「多分な、」
谷口「美しいかどうかが問題じゃないんだ」
谷口「美しく、あろうとしているか」
谷口「生きた先の躍進を求めてるのかどうかが」
谷口「大事なんじゃないかな」
朝倉「……カッコ良くないわよ」
谷口「うるせー」
朝倉「ふふっ」
谷口「死の概念とやらは分かったか?」
朝倉「全然」
谷口「そうか…………」
朝倉「ねぇ、また絵本貸してくれない?」
谷口「おっ!? いいぜいいぜ、明日持ってくるよ」
朝倉「ありがと」
谷口「そうそう。この間な、校内ランキングをまた書き直したんだ」
朝倉「?」
谷口「お前は────」
終わり
谷口が主人公なんて…! ビクンビクン
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一つ、ネコに煮干は駄目。牛乳も駄目。子猫なら尚更。
一つ、ネコに煮干は駄目。牛乳も駄目。子猫なら尚更。