- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:17:45.14:K6tYb50/O
憂「ん……」
憂「そっか、私は」
憂「うん……よしっ」
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韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:21:31.16:K6tYb50/O
ある日の平沢家
唯「ただいまー」ガチャ
憂「おかえり、お姉ちゃん」トットッ
唯「あれー? きみ、どなた?」
憂「今日からお姉ちゃんの妹になる憂だよ。とりあえずお姉ちゃん、お部屋まで行こう?」
唯「おお、いもうと! うん、行こう行こう!」トテテ
唯の部屋
唯「えっと、ういちゃん。いや妹だから……うい!」
唯「ういはどうして私の妹になったの?」
憂「落ち着いて聞いてね、お姉ちゃん。私は未来から来たの」
唯「未来?」
憂「うん。私はずっと未来からやってきた、お姉ちゃんの子供なんだ」
唯「え……」
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:24:45.30:K6tYb50/O
唯「いもうとじゃ、ないの……?」グスン
憂「あ、えと……妹だよ、妹なんだけど……」
憂「……ううん、何でもないっ!」
憂(ほんとはお姉ちゃん、このままじゃ……)
憂(でも今はまだ、ほんとのことを伝えられそうにないね)
憂「私はお姉ちゃんの妹だよ。お姉ちゃんの手助けをするために未来から来たんだ!」
唯「そうなんだ。大変だったね……」
憂「ううん、大丈夫! これからお姉ちゃんがしっかりできるように頑張るからね!」
憂(そしてその為に……妹として、この家に潜りこませてもらいます)
唯「ういー? よだれよだれ」
唯「もー、しょうがないなー」フキフキ
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:28:16.25:K6tYb50/O
――――
10年後
唯「ただいまー」
憂「おかえり、お姉ちゃん。あれ?」
唯「軽音部のお友達だよ。りっちゃんに、澪ちゃん、ムギちゃん」
律澪紬「おじゃましまーす」
憂「初めまして。姉がお世話になってます」
唯「紹介するね。未来から来た妹の憂」
憂(あっ)
律「いやナチュラルに言われると反応しづらいんだけど」
紬「未来からなんて……唯ちゃん、面白いのね」
唯「ほんとだよー! ね、憂?」
憂(ヤバイヤバイ完全に忘れてた私の使命……お姉ちゃんを自立させなきゃいけないのに!)ダラダラ
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:32:08.29:K6tYb50/O
唯「あれ、どしたの憂?」
律「唯のボケに乗りきれなかったみたいだな」
憂「い、いえ! お姉ちゃんの言うとおり、私は未来から来たんですよ!」
澪「なんか、まさしく唯の妹って感じだな」
唯「そうかなぁ? じゃ憂、私たち部屋で勉強会してるからね」
憂「うん、頑張ってね!」
ガヤガヤ…
憂「……えーっと」
憂(ど、どうしよう……お姉ちゃんのお世話をしてたらいつの間にか10年も経ってたよ)
憂(お姉ちゃんは未だにオムライスも作れないし……)
憂(うん、もうお姉ちゃんも高校生なんだし、そろそろ本当のこと話してもいいよね)
憂(……あれ? 私の目的って、こんなことじゃなかったような……うーん?)
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:37:04.07:K6tYb50/O
澪『静かにしろっ!』
律『あてぇ!』
憂(でも今は大変そうだし、後にしておいたほうがいいよね)
憂「よし、今晩……今晩話そう」
憂(そうと決まれば、早速今晩お姉ちゃんに教える料理を考えよう……ん?)
トン トン
律「あーあ、せっかく唯の部屋来たのによぉ……恨むぞ、澪よ」
憂「律さん?」
憂(この頃はカチューシャしてたんだ。……知ってるけど)
律「あ……う、憂ちゃん。ねぇ、暇だから構ってよ」
憂(……)
憂「はいっ♪」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:42:42.16:K6tYb50/O
憂(このゲーム……)ピコピコ
憂(昔はお母さんにぜんぜん勝てなかったけど)チラ
律「ふんっ! 3連鎖!」
憂(今なら……)
律「って、おいおい!」
憂「10連鎖組んでみました」
律「ギャアアアアアアア!!」
憂「あれ、失敗したな……8で止まっちゃった」
律「ばたんきゅ~……ぐす」
憂「あ……ご、ごめんなさい」
憂(でも、勝てたなぁ)
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:47:06.15:K6tYb50/O
律「憂ちゃん……バカに強いな」
憂「小さいころから鍛えられてますので」
律「そうなのか? 唯がこういうゲーム得意ってのは意外だなぁ」
憂「お姉ちゃんも確かに強いですけど、やっぱりお母さんがいちばんの強敵でしたよ」
律「でした、ね……今はもう打ち砕いてしまった訳か」
憂「そうですね」
憂(……ついさっき、だよ)
律「うん、ゲームはよそう。お話しようか憂ちゃん」
憂「ええ、いいですよ?」
律「あ、そうだ。憂ちゃん未来人なんでしょ?」ニヤニヤ
憂「はい。10年前、お姉ちゃんの力になるために遠い未来からやって来ました」
憂「それ以来、妹という続柄をかたって一緒に暮らしているんです」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:52:06.22:K6tYb50/O
律「というと、ほんとは妹じゃないの?」
憂「そうなります。……私は、お姉ちゃんの娘なんです」
律「ほえぇ」
憂(信じてないなぁ、お母さん)
憂「未来のこと、お話しましょうか?」
律「お、それじゃあ……そうだな、私の結婚する相手とかわかる?」
憂「下手に未来を変えないって、約束できるならいいですよ」
憂(変わらないって、信じてるけどね)
憂(だってお母さんたちは、もともと……)
律「変えない変えない。いいから言ってごらんなさい?」
憂「……律さんが結婚するのは……お姉ちゃんです。平沢唯です」
律「」
憂(ぽかーんとしてる)
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 14:57:25.40:K6tYb50/O
律「え、ちょ、待っ」
憂「結婚記念日は7月20日。大学3年生の時に結婚します。式はささやかにこの家で開かれます」
憂「大学は今いる軽音部のお仲間と、あともう一人と同じ大学ですね。律さんとお姉ちゃんは生物学専攻です」
憂「律さんは大学を卒業した後、お姉ちゃんと共に研究者になります」
憂「そして、共にある偉大な発明をするんですよ」
律「え……と」
律「7月、20日か……へえぇ」
憂(お母さんはずっと言っていた。昔から、大好きな夏の始まりの日に結婚したかった、って)
律「あながち、信じられない話じゃないな? うん」
律「そ、それにしても私が唯と結婚か……へえ、へえぇ」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:00:13.46:K6tYb50/O
憂「……律さん、お姉ちゃんのこと好きなんですか?」
律「ま、まあな。ていうか訊かなくても分かってたりとかする?」
憂「えへへ、もちろんです。……信じてくれたみたいですね」
憂「でも律さん、気を抜かないでくださいね。律さんのアプローチによって二人は付き合うことになるんですから」
憂(ほんとはお姉ちゃんも既に律さんを好きなはずだけど、一応ちょっと念を押しといたほうがいいよね)
律「くっ、そうか……頑張らなきゃな」
律「……ありがとう、憂ちゃん」
憂「事実を言ったまでですから」
律「そっか……頼りにしてるよ、未来人」
憂「あんまり人には話さないでくださいね? ヘンだと思われますから」
律「確かにそうだな。私自身、冗談だと思ってたし」
律「内緒にするよ」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:05:41.41:K6tYb50/O
律「でもほんと、憂ちゃんがいてくれてよかったわ」
憂「!?」ドクンッ
憂(なに、いまの……)
律「……どうかした?」
憂「あ、いえ……」
『憂がいてくれて、よかった……』
憂「なんでもないですよ?」
律「そう? 慣れないこと話しすぎて、ちょっと疲れたかな……」
憂「そうですね。少し休みましょうか」
律「ふー……」ゴロン
憂「よいしょっと」ゴロン
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:10:16.87:K6tYb50/O
律「……」
憂「ごろごろ~」ピトッ
律「わっ。どうした憂ちゃん?」
憂「人とくっつくのって、なんだか落ち着きませんか?」
律「まぁ、分からないでもないな」
憂「……律さん、抱きしめてください」
律「へっ? いや、急にそんな事……」
憂「駄目ですか……?」
律「だめじゃないけど……」ギュッ
憂「……あったかいですね」
律「そりゃ良かった」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:15:47.76:K6tYb50/O
律「……憂ちゃん。未来の世界ってどうなの?」
憂「今とそんなに変わり映えはしませんよ。女性同士でも妊娠、出産ができるようになったくらいでしょうか」
律「すごい技術じゃないか、それ」
憂「はい。本当にすごいことです……」
律「弊害とか、ないの?」
憂「……あっ」
『病気と戦う力が、すごく弱いってことなんだ』
憂(まただ……この声、お母さん……?)
律「まぁ、無いってわけはないか……」
憂「律さんっ」ギュウゥ
律「ん? よしよし……」ナデナデ
憂「……」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:20:44.22:K6tYb50/O
――――
憂「すいませんでした、律さん」
律「いいってことよ。正直、悪い気しないし」
トン トン
澪「ここにいたのか、律。帰るぞ」
律「あれ、もう勉強終わったのか?」
澪「もうって……夜の6時だぞ。試験範囲全部やるにしたって、かかりすぎだ」
律「そうか? 勉強しないからわかんね」
紬「でも、唯ちゃん頑張ってたわよ」
澪「頑張りすぎて、範囲が終わったと同時に寝始めたけどな」
律「またずいぶん器用だなオイ」
憂(それじゃあ……起こさないほうがいいかな)
憂(話はまた明日でもいいはず)
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:25:06.20:K6tYb50/O
紬「それじゃあ憂ちゃん、私たちは失礼するわね」
憂「はい、またいつでもいらして下さい」
澪「ありがとう。それじゃ、お邪魔しました」
律「またな、憂ちゃん」
ガチャ バタン
憂「またね……お母さん」
憂(……私も寝ようかな)
憂(なんだかお腹いっぱいだし、お風呂入ってすぐ寝ちゃおう)
憂「ふぁ~……」スタスタ
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:30:50.85:K6tYb50/O
『おかあさん……』
『憂……なにか、したいことはない?』
『……おかあさんたちと、もっといっしょにいたい』
『っ……』
ギュッ
『ごめん……ごめんね、憂!』
『私がもっと、しっかりしてたら!』
『……』
『憂っ! ういーっ!!』
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:35:06.32:K6tYb50/O
唯「うーいー!」ユサユサ
憂「……どうしたの、お姉ちゃん」
唯「えへへ……お腹すいちゃった。憂のご飯が食べたいな」
憂「自分で作りなよ……少しはできるでしょ?」
唯「憂のがいいんだよ」
憂「もう……わかった。ちょっと待ってて」ムクッ
唯「ありがとうい~」
憂「……」スタスタ
憂(ありがとうって、言えなかったな……)
憂(さっきの夢……わたしなの?)
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:40:16.85:K6tYb50/O
――――
唯「憂に悪いことしちゃったなぁ」
唯「あとでお礼しないと……ん?」ツン
唯「なんだろ、これ。うにゃにゃ~……に関する成果……? 難しそうだなぁ」
唯「……これって。そっか、だからこうなって」ペラ
唯「なるほど、ふんふん……」
唯「あーもうややこしい……つまり、ここに書いてある方法なら、女の子同士でも子供を作れるってことなんだよね」
唯「でも肝心のやり方がよく分かんないな……」
唯「……あ、この言葉は知ってる。学校で習ったんだ」
唯「……」
唯「とりあえずこれは頂いておこう……」ゴソッ
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:45:36.10:K6tYb50/O
ガチャ
憂「お姉ちゃん、できたよ」
唯「う、うん」
憂「どうかした?」
唯「な、なんでもないよぉ~」ニコニコ
憂「そう? じゃあ私は寝るね」
唯「うん、おやすみ。……」
憂「ふー……」ギシッ
唯「……憂、ありがとう」
憂「うん」
パタン
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:50:48.74:K6tYb50/O
憂「すぅ……すぅ」
『名前は決めてあるんだ。ずっと前から……』
『へぇー。なんて名前?』
『うれいって書いて、憂だ』
『……』
『すごく、良い名前だよ』
『立派に育ってほしいな』
憂「……」パチ
憂(何かを忘れてる。一体何を……)
憂(思い、出せない)
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 15:55:31.54:K6tYb50/O
憂(……なんだろう)ズキッ
憂(頭が痛い、胸が苦しい……もう寝なきゃ)
憂「……すぅ」
――――
翌朝 憂の部屋
ジリリリリリリ
憂「う……」モゾッ
憂「はぁ」カチ
憂「だめ、寒くて……」
憂「でも……」フラッ
バタッ
憂「……あいたた」
憂「あれ……立てな……」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:00:00.93:K6tYb50/O
――――
『どうして……』
『まだこんなに小さいんだよ……?』
『やっぱりあの研究が不完全だったんだ、唯……』
『どこがいけなかったんだ……ちくしょうっ!』
『私がぬか喜びしてたせいで……憂が死んじゃうよ……』
『憂……』
憂「……」パチ
憂「あれ……?」
律「起きたか、憂ちゃん」
憂「……ここ、どこなの?」
律「病院だよ。憂ちゃん、風邪引いて倒れたんだ」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:05:17.49:K6tYb50/O
憂「風邪……? う、けほっ」
律「安静にしてなって。唯も追試終わったらすぐ来てくれるし」
憂「うん……わかった」
律「お姉ちゃんのこと好きなのは分かるけど、無理しすぎちゃだめだぞ」
律「泣きやませて試験受けさせるの大変だったんだからな?」
憂「ごめんなさい……私、人より体弱くて……」
憂「けほっ、げほっ」
律「いいから今は休んでなって。疲れただろ?」
律「ただの風邪なんだから、安静にしてすぐ治す。いいか?」
憂「……うん」
憂(でも、私には風邪だって一大事なんだよ……? 忘れちゃったの、お母さん?)
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:10:20.87:K6tYb50/O
律「おっ、唯が追試終わったってさ。すぐこっち来てくれる」
律「つーか電源切るの忘れてたな。いかんいかん」
憂「……」
律「まぁ、なんだ。怒ってやるなよ?」
憂「怒らないよ……私の大事なお母さんだもん」
律「……風邪、早く治そうな」
憂「……」
憂「律さん……未来のこと、すこし話してもいい? お姉ちゃんが来る前に」
律「……ああ」
憂「実は、私……お姉ちゃんと律さんの子供なの」
憂「前も言ったけど、私の時代には女の人同士で子供を作れるようになってて」
律「……」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:15:58.13:K6tYb50/O
憂「私は、その技術で生まれた初めての人間なんだけど……実は技術には欠陥があって」
憂「生まれた子供の免疫力が、極端に弱くなってしまうの」
憂「……だから私は、生まれて4年で死んじゃったんだ」
律「……」
憂「けど、私のお願いを、やさしい神様が聞いてくれたの」
憂「もっとお母さんと一緒にいたいって……」
憂「だから、私は死んだ時の姿で……5歳のときのお母さんの家にやってきたんだ」
律「……豪快な話だな」
憂「でも、信じてるよね?」
律「あぁ。演技だったら、そんな顔はできないよ」
律「ちょっと悲しげだけど……すごく幸せそうだ」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:20:09.96:K6tYb50/O
律「それに……それに」
律「未来じゃ4つで死んじまった自分の子供が、こんなに成長した姿を見て……」
律「嘘だなんて突きっかえすことできねぇって……」
憂「おかあさんっ……」ダキッ
律「憂……わたし、わかんねぇんだけどさ……なんかすごく嬉しいんだ」
律「また憂に会えたって、感じがするっ……」
律「ありがとう、憂……帰ってきてくれて!」ギュッ
憂「お母さん、会いたかった!」ギュウ
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:25:11.99:K6tYb50/O
憂「……っ」クラッ
律「あ。ごめん、大丈夫か?」パッ
憂「えへへ……結局一緒なんだ、私の体」
憂「病気に弱いまんまなの……」クタッ
律「……そんな」
憂「ごめんなさい。大きくなってからは、幾分かましだったけど」
憂「ごほ、ごほっ」
律「おい、憂? しっかりしろって……」
憂「ふう、ふぅ……きっと、もう……」
憂「う、おぇっ」
ビチャビチャッ
律「あ……」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:30:09.42:K6tYb50/O
律「な、ナースコールを……」
カチカチカチ
律「ま、待ってろ……いまお医者さんが来るからな」
憂「おかあ、さ……」
律「目を閉じちゃだめだ! まだ14年だろうが……満足していい歳じゃねえだろ!」
憂「はあ、はあ……」
ガラッ
「どうしました……っ!」
律「遅い! 憂が大変なんだよ!」
「鈴木さん、すぐに斎藤先生を!」
「はいっ!」
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:34:21.21:K6tYb50/O
バタバタ
「患者は?」
「昏睡状態です。すぐにでも……」
「ああ、そうだな」
ガチャ ガチャン
「あなた、そっちを!」
律「は、はい」
「2、1!」
律「……」グッ
「よし、運んでくれ!」
ガラララ…
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:38:04.95:K6tYb50/O
律「……」
トコ トコ
ガラララ……パタン
唯「……りっちゃん」
唯「いまの、憂だよね……」
律「……ああ」
唯「これ、憂が……?」ピチャ
律「そうだよ……」
唯「……」
唯「うい……」ポロッ
ピチャン
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:42:11.09:K6tYb50/O
律「唯は……憂のこと、どれくらい知ってるんだ」
唯「……よく、わかんない」
唯「けど、ほんとは妹じゃなくて、私の子供なんだって言ってた……」
律「……」
唯「それから、憂の部屋から出てきたその方法についての論文を見て……」
唯「きっと憂は私と、誰か女の子との間に出来た子供なんだと思ってる」
唯「あとは……可愛くて優しい、私の大事な妹。それしか知らない」
律「そうか」
律「……」
律「その論文、今どこにあるんだ……?」
唯「私の部屋に……」
律「じゃあ、憂ちゃんが落ち着いたら……家に行っていいな」
唯「……」コクッ
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:46:08.67:K6tYb50/O
――――
澪「……遅い、な」
律「ああ……」
紬「信じて待ちましょう。それしか出来ないわ」
律「……今は、そうだな」
澪「憂ちゃん……」
唯「……」
律「……大丈夫だ、唯」ギュッ
唯「でも、りっちゃん……」
律「いいから。まだ泣くんじゃない」フキフキ
唯「やだ、やだよ憂……ういぃ……」
律「……」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:50:03.76:K6tYb50/O
――――
フッ
澪「!」
キィッ
「……お待たせいたしました」
唯「憂は……」
「どうにか一命は取り留めました。今は落ち着いていますが……」
「またいつこのような状態になるかわかりません。長期入院をすべきです」
唯「……そうですか」
紬「良かったわね、唯ちゃん」
唯「……そだね。生きててくれてよかった」
律「……」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:54:02.45:K6tYb50/O
「それから、平沢さんは現在かなり衰弱していますから……今日のところは」
唯「……はい。みんな、帰ろう?」
澪「そうだな……」
――――
コツコツ カツン……
唯「りっちゃんは私の家に来るんだよね?」
律「ああ。少し寄らせてもらう」
紬「……」
澪「そうか。じゃあ、別々だな」
紬「皆、また明日ね」
ウィーン
律「よし、私たちも行こうか唯」
唯「そうだね。……途中でコンビニ寄ってこ? お腹すいちゃった」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 16:58:06.69:K6tYb50/O
律「あぁ、そうするか。腹が減っては戦はできないからな」
唯「戦うの、りっちゃん?」
律「戦うよ。唯もな」
唯「ほぉ~。なるほど、これは戦いの予感だったんだね」
律「フッフッフ。狼煙が西になびいておる……」
唯「やめてよ」
律「……ごめん」
唯「気をつけてね」
律「ほんとごめん」
唯「もう許したよ」
テクテク
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:02:37.80:K6tYb50/O
唯「……セブンあったよ」
律「道路の向こう側だからめんどくさいな」
唯「じゃあ、この先のセブンだね」
律「変な奴がたむろしてる。やめたほうがいいな」
唯「そしたら、ちょっと家を通りすぎちゃうけど、私の家の近くにあるセブンにしよっか」
律「セブンってなんであんなに密集するんだろうな」
唯「みんな仲良しなんだよ」
律「そうだったらいいな」
テクテク
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:06:16.07:K6tYb50/O
唯「こっちだよ」
律「おっ、あったな」
ウィーン
「しゃらっしゃーせー」
律「唯ってセブン好き?」
唯「うん。セブンじゃないと落ち着かないくらいに」
律「子供のころ近くにあったコンビニが、自分のホームコンビニになるよな」
唯「分かるね、それ。あ、おにぎりが焼たらこと昆布しか残ってない」
律「そういえば、なんでコンビニのおにぎりは短いスパンで進化していくんだろうな」
唯「正直パッケージ以外変わってないよね」
律「唯のことか」
唯「否定できないのが歯痒いなぁ」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:14:35.98:K6tYb50/O
唯「言われてみれば私って子供のころから成長しないね」
唯「ハンバーグとかオムライスとか未だに大好きだし、カレーは甘口だしね」
唯「好物は天津飯です、とか言えたらいいのに」
律「半ばオムライスじゃないかそれ……嗜好は別にいいんだけどさ、もっとこう、な?」
唯「ほんとだね……」
唯「あれで憂が死んでたら、私……」
律「……」
律「……私、シャケな」
唯「あれ!? 残ってたんだ。大好きなのに気付かなかったよ」
律「よく見てないからだぜ」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:18:08.90:K6tYb50/O
――――
律「で、結局肉まんか」
唯「寒いしねぇ。はふはふ」
律「……」
唯「あちっち! あふいよう……」
唯「ほあほあ、ひたやけどしたー」ベー
律「やれやれ……見ても分かんないって」
唯「んー」
律「ちゃんと前見て歩こうか」
唯「だいじょうぶだよー」ハグハグ
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:22:15.27:K6tYb50/O
夜12時 平沢家
律「唯の部屋はこっちだったよな」トントン
唯「うん。憂が持ってた論文が欲しいんだよね? いま持ってくるよ」
律「私も入っていいか? というか、これは私たち二人で見なきゃいけない」
唯「わかった。入って」ガチャ
律「うむ」
パタン
唯「えっと、確かここに……」ゴソゴソ
唯「これだよ。憂が持ってた、女の子同士で子供を産む方法を研究してまとめた論文」バサッ
律「未来の技術だな。……電気をつけてくれ、唯」
唯「はい、ルーモス・マキシマ」カチ
律「ネタが古い」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:26:30.92:K6tYb50/O
唯「私はもう目を通したから、りっちゃん見てていいよ」
唯「憂の着替えとか、用意してあげなきゃいけないし」
律「分かった。ざっと読んでおくよ」
唯「分かんないとこあったら言ってね」ガチャ
パタン
律「まぁ唯に分かるもんなら私にだって」ペラ
律「……」タラッ
律「……うん?」
律「えーっと……どういうことだろうねぇ」
律「方法自体はなんとなく分かるけど……どうしてこれで子供ができるんだろ」
律「これを理解するには、私は勉強不足すぎるみたいだな……」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:30:07.84:K6tYb50/O
律「でも、ひとつ間違いないのは……この研究が未完成だっていうことだ」
律「この方法じゃ駄目なんだ……生まれる子供が免疫力を持てない」
律「子供に問題が出ないよう、改良しなきゃいけないわけで……その為には」
バサッ
律「まず、この出来損ないをみんな理解しなきゃいけないわけだ」
律「……時間、かかるな」
律「とりあえず、全体に目を通しておくか」ペラッ
律「唯はこれ、どれぐらい理解できたんだろうな」
律「……」ペラッ
ガチャ
唯「りっちゃん、今晩どうするの?」
律「どうするって?」
唯「すごく遅くなっちゃったけど……帰れる?」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:34:42.52:K6tYb50/O
律「確かに、もう日付変わってるな」
唯「だからほら……と、泊まってかない?」
律「あ……うん」
律「そうするか。私も一人じゃ不安だしな……」
唯「えへへ……ありがと」
唯「わたし、お風呂沸かしてくるね!」
律「ああ、サンキュ」
ガチャ パタン
トタタタ…
律「……唯とお泊まりか」
憂『私……お姉ちゃんと律さんの子供なの』
律「変なこと考えてる場合じゃないって」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:38:00.47:K6tYb50/O
――――
更に夜遅く 唯の部屋
律「……起きてるか、唯?」
唯「うん……」
律「寝れないのか?」
唯「ううん。ちょっと考え事してた」
唯「私はたぶん、将来女の子と結婚して子供を産むんだろうけど」
唯「それって一体、誰なのかなって……」
律「さあな。未来って、どうなるか分からないもんだろ」
唯「でも、分かることもあるよ?」
唯「ういが……どうなるかとか」
律「……」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:42:07.96:K6tYb50/O
唯「お父さんの書斎の専門書とかいっぱい引いて、頑張って論文に書いてあることを理解したんだ」
唯「追試くらい、へのかっぱだったよ」
唯「で……そしたら、あの方法じゃ駄目なんじゃないかって……思った」
唯「憂があの方法で生まれたんだとしたら、きっと……」
律「……唯、そっち行っていいか」ムクッ
唯「……」
律「まぁいいや。入るぞ」ギシッ
ゴソゴソ
律「ぷはっ」
唯「……りっちゃん」
律「ん?」
唯「ありがとう」
律「……急になんだよ?」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:46:01.77:K6tYb50/O
唯「だってりっちゃん、憂のために頑張ってくれてるし」
律「私はただ……」
唯「理由なんかなんでもいいよ」
唯「こんなに頑張ってくれるのはりっちゃんだけだもん」
律「何言ってんだよ。みんな心配してるぞ」
唯「そうだね。でも、りっちゃんからは別の気持ちを感じるよ」
唯「澪ちゃんにも、ムギちゃんにさえもない、あったかい優しさがみえる」
律「……」
唯「私ね」ダキッ
唯「りっちゃんの顔、好きだよ」
律「はは……すごく誤解されそうな一言だな、おい」
唯「そうかも……」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:50:02.21:K6tYb50/O
唯「でも……うん、そう言うのが一番正しい気がする」
唯「りっちゃんのその優しい顔が好きだな」
律「へぇ……」
唯「……なんか、今なら寝れそう」
律「明日からも大変だし、さっさと寝た方がいいな」
唯「……」スー
律「って、もう寝てるのな」ツン
唯「んやぁ……」ピクッ
律「唯、抱き着いたまんまだし……これはまずい」
唯「ん……うい~」ガシッ
律「……」
律「鎮まれ私の中のビースト」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:54:03.16:K6tYb50/O
――――
翌朝 唯の部屋
唯「ん……」ゴシゴシ
律「くかー」
唯「……なんでりっちゃんが?」
唯「あ、そっか。昨日泊めたんだっけ」
唯「……りっちゃん」サワッ
律「んあ……朝か」モゾッ
唯「あ、起こしちゃったね」
律「いいよ。もう7時じゃんか」
律「ちょっと待ってろ、朝飯作ってやるから」ギシッ
唯「待って。……私が作る」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 17:58:05.85:K6tYb50/O
律「唯の朝飯か? 食べてみたいような食べてみたくないような……」
唯「もうっ、いいからりっちゃんは休んでてよ」
律「へへ……わかったよ。もうちょっと寝てる」
唯「うん、おやすみ」ガチャ
パタン
律「ふーっ」
律「なんとか手を出さずに眠れたみたいだな……」
律「それにしても……唯はあの小難しい論文を理解してたのか?」
律「もしかして、唯ってすごく頭いいのかもしれん……」
律「だとしたら、私なんか……」
律「……いや」フルフル
律「憂と約束しただろ。未来は変えない……」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:02:25.67:K6tYb50/O
律「けど……」
律「未来を変えてでも、憂のことは救わなきゃ……」
憂『律さんは大学を卒業した後、お姉ちゃんと共に研究者になります』
憂『そして、共にある偉大な発明をするんですよ』
律「……偉大な発明と言ってくれた。私たちの、できそこないの発明を」
律「また会いに来てくれて……なのに」
律「やっぱ、死んじまうのかな」
サアアアァ……
律「外は……鬱陶しい霧雨だな」
律「……」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:06:07.71:K6tYb50/O
ガチャ
唯「りっちゃん、出来たよ。目玉焼きしか作れなかったけど……」
律「お、ありがとう」ギシッ
唯「あ……やっぱり寝れなかった?」
律「いや、なんだろうな……よく考えてたら私、十分すぎるほど寝てたわ」
唯「あはは。りっちゃん変なの」ニコッ
律「うるせっ」
――――
律「……唯、今日は学校どうする?」
唯「休むよ。担任の先生も、休んだ方がいいって言ってくれたし」
唯「何より私は……まだ憂とちゃんと話をできてないから」
律「だな。なら、私も付き添うよ」
唯「いいの? りっちゃんだって学校あるのに」
律「憂が優先だろ。学校の勉強くらい、憂が治るまでほっといていい」
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:10:20.03:K6tYb50/O
唯「りっちゃん、だけど……」
律「あ……」
律「そうだな、悪かった。私は学校行かなきゃな……」
律「折角だ。いっぱい憂ちゃんと話してこい。今まで言えなかったこと、聞けなかったこと、ぜんぶ」
律「目を覚ましてたらだけどさ。でもきっと……」
唯「ねぇ、りっちゃん」
律「ん?」
唯「本当にありがとね。私……」
唯「りっちゃんのこと好きだよ」
律「と、いうと?」
唯「……って」
律「おい、唯……?」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:14:36.16:K6tYb50/O
唯「……憂のとこ、行ってくる」ガタッ
律「唯、待て!」
唯「ああわああぁっ!!」
ドタッ ドダダダン
律「……気をつけろって言おうと思った」
唯「遅いよ!」
律「言っても無駄だっただろうなと思ってる」
唯「はっはっは……」ズーン
律「スーツケース落としたのか? あぁ、憂の着替えね」
唯「……りっちゃぁん」ウルウル
律「はいはい、分かってるよ。送ってってやる」
唯「ご迷惑をおかけします……」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:18:20.64:K6tYb50/O
1時間後 病院へ向かうバス
律「……そういえばさ、唯の作った目玉焼き、意外と美味かった」
唯「意外と、は余計だよりっちゃん」
律「その台詞を言っていいのはちゃんと毎日料理をしてる女の子だけだ」
唯「これからはやるもん」ブー
律「あ、そうか。じゃあ今回限りは見逃してやろうぞ」
唯「ああ……ありがとうごぜえます、領主さま」
唯「これでオラ達、今年もなんどか凌げただぁ」
律「ほう、そうか。ならば今年はいっそう米作りに精出すんじゃぞぉ」
唯「ははぁっ、ありがとうございましたぁっ」ペコペコ
パンポーン♪
律「あ、次だ」カチッ
唯「降りますボタンは私が押したかったのに……領主めぇ!」
律「そんな日常的に復讐を決意しないでくれ」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:22:11.19:K6tYb50/O
――――
唯「あの……平沢憂の病室は」
「平沢さん……ええと、あなたはお姉さんの」
唯「唯です。後ろは友達の田井中律で……」
律「憂ちゃんのお見舞いに来たんですけど……ど、どうされたんですか?」
「実は……お姉さんだけに大切な話があると、平沢憂さんから頼まれていまして」
唯「……」
律「……唯」
唯「それで……?」
「一人で病室に来ていただきたいと。いま、病室まで案内いたします」スタスタ
律「……憂、目が覚めたみたいだな」
唯「うん……」
「では、平沢さん。私の後について来て下さい」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:26:58.78:K6tYb50/O
律「……なぁ、看護婦さん」
「はい?」
唯「りっちゃん……?」
律「……いや。やっぱり何でもない。行ってくれ」
「では……失礼します」
唯「……」スタスタ
律「……」
フラッ
律「ははっ……よっぽど特別な病室らしいな」
律「ちくしょう……」ギュッ
律「今日まで……この時代で生きてきた憂には、私はなんもしてあげられねえのか?」
律「私がしっかりしなかったから、二度も憂を傷つけてるんじゃないか……!」ギリッ
律「……憂」フラッ
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:31:57.87:K6tYb50/O
――――
無菌室
唯「……」
「検査の結果、妹さんには数多のウイルスと戦うための免疫力がほとんどないということでした」
「いずれ斎藤先生に説明を受けるかと思いますが……」
唯「……そうですか」
唯「ドラマで見たことありますよ、ここ。中には入れないんですよね」
「一応、きちんと手順を踏めば入れないこともないですけど」
唯「……」
唯「憂と話はできますか」
「大丈夫ですけど、今は寝ているので……」
憂「……きこえてるよ、お姉ちゃん」
唯「! ういっ!」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:35:56.34:K6tYb50/O
憂「鈴木さん、すいません……お姉ちゃんと二人きりにさせてもらえませんか?」
「……ええ、構わないわ。平沢さん。扉の横にいますから、少しでも何かあったらすぐに呼んで下さい」
唯「はい。ありがとうございます」
「じゃ」ニコッ
ガチャ バタン
憂「……お姉ちゃん、来てくれたね」
唯「憂……お、おはよう」
憂「えへへ。おはよう、お姉ちゃん」クス
憂「う……コホッ」
唯「だ、大丈夫!?」
憂「うん、平気……お姉ちゃん、よく聞いて。伝えたいことがあるの」
唯「……わかった。何でも言って」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:40:01.94:K6tYb50/O
憂「お姉ちゃん、私ね……ずっとお姉ちゃんの妹として生きてきたけど……ほんとは未来から来た、お姉ちゃんが生んだ子供なんだ」
唯「うん……知ってたよ。初めて会った日に言ってくれたよね」
唯「私がだだこねて、受け入れなかったんだよね。ごめんねうい」
憂「ううん。お姉ちゃんの妹になるのも楽しかったよ?」
唯「……ありがとう」
憂「でも、私が未来から来た本当の理由は、そうじゃないんだ。……妹になって、お姉ちゃんと一緒にいるだけじゃない」
唯「……私にしっかりしてほしいって言ってたっけ」
憂「そう……だけど、ちょっと違う……」
憂「一番の目的は、お母さんたちが今度は技術を完成させられるように導くこと……」
唯「……女の子同士で子供を作る方法だね」
憂「それも知ってたんだ……その通りだよ。私をこの世に生んだ技術……お母さんたちに出会わせてくれた技術だよ」
唯「……」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:44:02.68:K6tYb50/O
唯「でも、あれには問題が残ってるよね」
唯「その問題は今でも憂自身に降りかかってる……」
憂「……お姉ちゃん、そこまで分かったの?」
唯「お父さんの書斎にある本を読みながら、なんとか読み解いたよ」
唯「難しかったけど……憂のことだと思ったから頑張ったんだ」
憂「すごいね……私が聞いてきた昔のお母さんとは全然違う」
唯「そうなの?」
憂「うん。お母さんは高校あがったばかりの頃、すごく努力が苦手だったんだよ」
憂「だから毎回追試もらってたし、ギターもなかなか上手にならなかったんだって」
唯「うーん……今回は追試だったけど、合格点はとれたはずだし」
唯「ギターだって、始めて1ヵ月とは思えないって言われるよ?」
憂「じゃあ、やっぱりお姉ちゃんは変わったんだよ」
憂「なんだ……私があれこれしなくても大丈夫だったのかな?」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:48:06.75:K6tYb50/O
唯「……そんなことないよ」
憂「けど……」
唯「前の私がどうだったかは分からないけど……きっと、憂がいたから変われたんだよ」
唯「『1回目の私』と『2回目の私』に相違点があるとしたら、ひとつだけしかないよ」
唯「憂っていう、かわいくて世話焼きな妹がいてくれたこと……それだけで私は変われたんじゃないかな」
憂「私、お姉ちゃんに何もできてないよ……」
唯「憂がそう思ってても、私は憂がいてくれてよかったんだよ」
唯「憂にたくさんの物をもらっていたんだと思う。だから……ぜったい無駄にしない」
憂「……」
唯「うい。もっとたくさん、一緒に生きるよ」
憂「おかあさん……うん! きっと……待ってる」
唯「……っ」
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:52:20.88:K6tYb50/O
憂「私はたぶん、そろそろ死んじゃうんだと思う……」
唯「うい、だめだよ……」ウルウル
憂「だけど、もう一回やったことだから……そんなに怖くないよ」
憂「それに……今度はお母さんが必ず迎えに来てくれるもん」
唯「うん、迎えに行くよ! だから、まだ……」
憂「今日、はね。どんどん雨が激しくなっていくんだって」ハァ、ハァ
憂「うたったよね。ざあざあ、雨がふる……ひに……」
唯「うい……?」
憂「はあ、は……おかあ、さ……」
憂「うんでくれ、て……ありがと……!」
唯「!」ガタッ
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 18:56:01.77:K6tYb50/O
バタァン
唯「鈴木さん!」
「どうしました!?」
唯「う、ういが苦しそうなんです! 助けて下さい!」
「分かりました。すぐ先生を呼びます!」
タタタタッ
唯「どうしよ、どうしよ……憂が……」オロオロ
律「……憂がどうしたんだ?」
唯「りっちゃん! 大変だよ、憂が死んじゃう!」
律「そうか……もう」ガチャ
唯「……りっちゃん?」
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:00:02.77:K6tYb50/O
律「聞こえるか、憂?」
憂「ん……」コクン
律「……ごめんな。私のせいで苦しい思いをさせて」
憂「ううん……」フルフル
憂「苦しく、ないよ……だっていつかは、お母さんたちにまた会える……」
律「憂……」
唯「りっちゃん! 憂!」
憂「おかあさん……けいおん部はやめちゃだめだよ。未来が悪く変わっちゃう」
律「……わかった。続けるよ」
唯「私もだよ!」
憂「やくそく、だね……」ニコッ
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:04:44.85:K6tYb50/O
憂「……それじゃ、さよなら」
唯「憂っ!」
憂「そんなに心配そうにしないでよ……ぜったいまた会えるから」
憂「ふっ、うぐ……」
憂「ちょっとのお別れ……だよ」
憂「……」スゥ
律「あ……嫌ぁ……」
唯「憂、まだだめっ! 死なないでよ!」
唯「ちゃんと憂がそばで見ててくれないと不安なのっ!」
憂「……」
唯「起きてよ、憂っ!!」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:08:25.32:K6tYb50/O
深夜 病院のピロティ
澪「……ひどい雨だな」
律「……」
澪「こんな所にいたら風邪ひくよ。そろそろ戻ろう……な?」
紬「唯ちゃん……」
唯「……」
紬「……お医者さんが探してるかもしれないわよ? 憂ちゃんの病気がすっかり治りましたよって、スキップしてるかもしれないわ」
唯「憂……」
澪「……」
ザアアァ……
律「……戻るか」
澪「いいのか、律?」
律「延々と雨を見ててもしょうがないからな……そんなことより、やらなきゃいけないことがあるんだよ」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:10:54.93:K6tYb50/O
紬「やらなきゃいけない事……?」
律「送り迎えだよ。一人じゃだめなんだ」
澪「何のことだ……?」
律「分かるだろ、唯?」
唯「……」
唯「分かるよ、りっちゃん。……じゃのめを差して行かなきゃね」
紬「唯ちゃん……」
澪「……?」
ザアアァ……
律「だから、唯も戻ろう。こんなんじゃ、いい母親になれないぞ?」
唯「えへへ……うん。行こう、りっちゃん!」
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:14:23.31:K6tYb50/O
――――
およそ1ヶ月後 唯の家
律「……がらんどう、だな」
唯「ごめんね、手伝わせちゃって」
律「なに水臭いこと言ってるんだよ。憂のことは……二人のことだろ」
唯「そうだったね。ごめんごめん」
律「ま、今日ぐらいは姉の平沢唯でも良いかもしれないな……」
律「実際、お前たちが10年の間姉妹であったことは本当なんだしさ」
唯「……そうだね。楽しかったな」
唯「あ、また思い出しちゃう……」
律「こら唯、一人で泣くのは禁止だぞ?」ギュムッ
唯「痛いよりっちゃん……もうっ」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:16:40.55:K6tYb50/O
唯「それにしても、どうして私の家だったんだろう?」
律「んー……うちは聡とかいるしな。平沢家のほうが都合が良かったんじゃないか?」
唯「いや、りっちゃんはきっと家庭も顧みずに仕事ばっかりしてたんだ」
唯「だから憂に……あいーいたいいたい!! ギブギブ!」ペシペシ
律「ふんっ」グネリ
唯「らおーう!!」
――――
唯「まったくもう……」
律「ごめん、やり過ぎた……」
唯「ねぇ……りっちゃん?」
律「……どうした?」
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:20:24.27:K6tYb50/O
唯「ずっとバタバタしてて、ちゃんと言えなかったから……いま言うよ」
律「あ、うん……なんだよ」
唯「憂の事でいろいろあって……私、たくさんりっちゃんに助けられたよね」
律「ああ。大変だったし、これからも大変だと思うな」
唯「もう……でも、そんなこと言いながら、これからもりっちゃんは嫌な顔しないで私を助けてくれるんだよね」
律「そりゃあな。決まってるだろ」
唯「よかった……えへへ。私ね、りっちゃんに助けられてるうちに、りっちゃんのこと好きになっちゃったんだ」
唯「それで、もし良かったら……付き合って欲しいんだ」
唯「どうかな……だめ?」
律「……60点くらいかな」
唯「え? どういうこと?」
律「この場合、こう言うのが正解だ」
律「唯。結婚しよう」キリッ
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:23:38.93:K6tYb50/O
唯「ぶふっ」
律「えぇー……」
唯「ご、ごめ……だって、りっちゃん……あっはははは!」
律「人の真剣な告白で吹き出しやがってー!」グリリ
唯「いひゃいいひゃい! ごめんあはーい!!」
律「笑いすぎだーバカタレー!!」グニャ
唯「ぐっぴー!」
――――
唯「はーっ、はー……」クテッ
律「ど、どーだ……参ったか」ゼエゼエ
唯「3回くらい臨死した……技術が完成する前に憂に会えちゃったよ……」
律「寂しくなった時は言っていいぞ?」
唯「我慢するよ?」
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:28:22.21:K6tYb50/O
唯「……それはそれとして、りっちゃん勉強どう?」
律「うーん……とりあえず期末テストは余裕っぽい」
唯「りっちゃんも意外とやれば出来る子なんだね」
律「意外と、は余計だ!」
唯「そういうのは普段から毎日勉強している人だけが言っていい台詞なんだよ」
律「根に持ってやがった……つーかやってるし」
唯「えへへ。まぁりっちゃんなら大丈夫だって分かってるけどね」
律「さすが唯、賢いなー」ナデナデ
唯「……飼い犬に手を噛まれた気分。あっ、ちょいたいっ!」
律「そろそろその生意気な口ふさいでいいか?」
唯「手段によります!」
律「口封じの手段と言えば古来から決まってるだろ?」
唯「うん、やめて」
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 20:09:59.52:K6tYb50/O
律「……次はねぇぞ、平沢唯ぃ」
唯「うん。ねぇねぇ、りっちゃん?」
律「今度はなんだ?」
唯「こうして過ごす一瞬一瞬にもさ……憂は待っててくれるんだよね」
唯「あんまり待たせて、憂は怒っちゃわないかな?」
律「それは……多分大丈夫だと思うな」
唯「どうして?」
律「本来、私たちが不完全な発明をするのは、大学卒業後だって憂は言ってた」
律「だからさ、それまでは憂もニコニコしながら待ってくれるんじゃないかな」
唯「そっか……じゃあ、向こう7年はりっちゃんと二人きりなんだね」
律「フルに使う気かい! まぁ……いいんだろうけど」
律「でも、勉強は忘れるなよ?」
唯「りっちゃんに言われるまでもな……」ドタッ
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:34:19.82:K6tYb50/O
律「次は無いと言ったはずだぞ?」
唯「あう……何するの?」
律「口封じだ」
唯「さっきの発言もアウトなの!?」
律「あー……もう何でもありって事で!」
唯「ブチ壊しだよ……」
律「あー、いいからハイ! 目を閉じる!」
唯「ん……」
律「そ、それじゃ……いくからな?」ドキドキ
唯「う、うん」ドキドキ
律(なんっかどうにも視線を感じるんだけどな……)
律(まあいいか……っ)チュ
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 19:36:40.55:K6tYb50/O
――――
10年後
唯「ん?」
ピーン ピーン
唯「ういー? 何してるの?」
憂「ギター! ほらね、こうすると鳴るんだよ!」
ピーン ピーン
唯「……ママが教えてあげよっか?」
憂「ママできるの?」
唯「うん。それ、ママのギターだしね」
憂「ほぇー。ねぇ、なにかえんそーして!」
唯「ん……じゃあ」
ジャン ジャ カ♪
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 20:00:01.75:K6tYb50/O
ジャカ ジャカ
唯「あーめあーめ降ーれ降ーれ かーあさーんがー♪」
唯憂「じゃーのめーでおー迎ーえ うーれしーいなー♪」
唯「……」ピタ
憂「……?」
唯「……」
唯憂「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ らん・らん・らん♪」
唯憂「あーめあーめ降ーれ降ーれ……」
――――
ザアアアァ……
律「おーい」
律「私のお迎えはー?」
おわり。
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/23(木) 20:02:56.76:YtLNRON90
乙
単純な律唯じゃなくて面白かった
ある日の平沢家
唯「ただいまー」ガチャ
憂「おかえり、お姉ちゃん」トットッ
唯「あれー? きみ、どなた?」
憂「今日からお姉ちゃんの妹になる憂だよ。とりあえずお姉ちゃん、お部屋まで行こう?」
唯「おお、いもうと! うん、行こう行こう!」トテテ
唯の部屋
唯「えっと、ういちゃん。いや妹だから……うい!」
唯「ういはどうして私の妹になったの?」
憂「落ち着いて聞いてね、お姉ちゃん。私は未来から来たの」
唯「未来?」
憂「うん。私はずっと未来からやってきた、お姉ちゃんの子供なんだ」
唯「え……」
唯「いもうとじゃ、ないの……?」グスン
憂「あ、えと……妹だよ、妹なんだけど……」
憂「……ううん、何でもないっ!」
憂(ほんとはお姉ちゃん、このままじゃ……)
憂(でも今はまだ、ほんとのことを伝えられそうにないね)
憂「私はお姉ちゃんの妹だよ。お姉ちゃんの手助けをするために未来から来たんだ!」
唯「そうなんだ。大変だったね……」
憂「ううん、大丈夫! これからお姉ちゃんがしっかりできるように頑張るからね!」
憂(そしてその為に……妹として、この家に潜りこませてもらいます)
唯「ういー? よだれよだれ」
唯「もー、しょうがないなー」フキフキ
――――
10年後
唯「ただいまー」
憂「おかえり、お姉ちゃん。あれ?」
唯「軽音部のお友達だよ。りっちゃんに、澪ちゃん、ムギちゃん」
律澪紬「おじゃましまーす」
憂「初めまして。姉がお世話になってます」
唯「紹介するね。未来から来た妹の憂」
憂(あっ)
律「いやナチュラルに言われると反応しづらいんだけど」
紬「未来からなんて……唯ちゃん、面白いのね」
唯「ほんとだよー! ね、憂?」
憂(ヤバイヤバイ完全に忘れてた私の使命……お姉ちゃんを自立させなきゃいけないのに!)ダラダラ
唯「あれ、どしたの憂?」
律「唯のボケに乗りきれなかったみたいだな」
憂「い、いえ! お姉ちゃんの言うとおり、私は未来から来たんですよ!」
澪「なんか、まさしく唯の妹って感じだな」
唯「そうかなぁ? じゃ憂、私たち部屋で勉強会してるからね」
憂「うん、頑張ってね!」
ガヤガヤ…
憂「……えーっと」
憂(ど、どうしよう……お姉ちゃんのお世話をしてたらいつの間にか10年も経ってたよ)
憂(お姉ちゃんは未だにオムライスも作れないし……)
憂(うん、もうお姉ちゃんも高校生なんだし、そろそろ本当のこと話してもいいよね)
憂(……あれ? 私の目的って、こんなことじゃなかったような……うーん?)
澪『静かにしろっ!』
律『あてぇ!』
憂(でも今は大変そうだし、後にしておいたほうがいいよね)
憂「よし、今晩……今晩話そう」
憂(そうと決まれば、早速今晩お姉ちゃんに教える料理を考えよう……ん?)
トン トン
律「あーあ、せっかく唯の部屋来たのによぉ……恨むぞ、澪よ」
憂「律さん?」
憂(この頃はカチューシャしてたんだ。……知ってるけど)
律「あ……う、憂ちゃん。ねぇ、暇だから構ってよ」
憂(……)
憂「はいっ♪」
憂(このゲーム……)ピコピコ
憂(昔はお母さんにぜんぜん勝てなかったけど)チラ
律「ふんっ! 3連鎖!」
憂(今なら……)
律「って、おいおい!」
憂「10連鎖組んでみました」
律「ギャアアアアアアア!!」
憂「あれ、失敗したな……8で止まっちゃった」
律「ばたんきゅ~……ぐす」
憂「あ……ご、ごめんなさい」
憂(でも、勝てたなぁ)
律「憂ちゃん……バカに強いな」
憂「小さいころから鍛えられてますので」
律「そうなのか? 唯がこういうゲーム得意ってのは意外だなぁ」
憂「お姉ちゃんも確かに強いですけど、やっぱりお母さんがいちばんの強敵でしたよ」
律「でした、ね……今はもう打ち砕いてしまった訳か」
憂「そうですね」
憂(……ついさっき、だよ)
律「うん、ゲームはよそう。お話しようか憂ちゃん」
憂「ええ、いいですよ?」
律「あ、そうだ。憂ちゃん未来人なんでしょ?」ニヤニヤ
憂「はい。10年前、お姉ちゃんの力になるために遠い未来からやって来ました」
憂「それ以来、妹という続柄をかたって一緒に暮らしているんです」
律「というと、ほんとは妹じゃないの?」
憂「そうなります。……私は、お姉ちゃんの娘なんです」
律「ほえぇ」
憂(信じてないなぁ、お母さん)
憂「未来のこと、お話しましょうか?」
律「お、それじゃあ……そうだな、私の結婚する相手とかわかる?」
憂「下手に未来を変えないって、約束できるならいいですよ」
憂(変わらないって、信じてるけどね)
憂(だってお母さんたちは、もともと……)
律「変えない変えない。いいから言ってごらんなさい?」
憂「……律さんが結婚するのは……お姉ちゃんです。平沢唯です」
律「」
憂(ぽかーんとしてる)
律「え、ちょ、待っ」
憂「結婚記念日は7月20日。大学3年生の時に結婚します。式はささやかにこの家で開かれます」
憂「大学は今いる軽音部のお仲間と、あともう一人と同じ大学ですね。律さんとお姉ちゃんは生物学専攻です」
憂「律さんは大学を卒業した後、お姉ちゃんと共に研究者になります」
憂「そして、共にある偉大な発明をするんですよ」
律「え……と」
律「7月、20日か……へえぇ」
憂(お母さんはずっと言っていた。昔から、大好きな夏の始まりの日に結婚したかった、って)
律「あながち、信じられない話じゃないな? うん」
律「そ、それにしても私が唯と結婚か……へえ、へえぇ」
憂「……律さん、お姉ちゃんのこと好きなんですか?」
律「ま、まあな。ていうか訊かなくても分かってたりとかする?」
憂「えへへ、もちろんです。……信じてくれたみたいですね」
憂「でも律さん、気を抜かないでくださいね。律さんのアプローチによって二人は付き合うことになるんですから」
憂(ほんとはお姉ちゃんも既に律さんを好きなはずだけど、一応ちょっと念を押しといたほうがいいよね)
律「くっ、そうか……頑張らなきゃな」
律「……ありがとう、憂ちゃん」
憂「事実を言ったまでですから」
律「そっか……頼りにしてるよ、未来人」
憂「あんまり人には話さないでくださいね? ヘンだと思われますから」
律「確かにそうだな。私自身、冗談だと思ってたし」
律「内緒にするよ」
律「でもほんと、憂ちゃんがいてくれてよかったわ」
憂「!?」ドクンッ
憂(なに、いまの……)
律「……どうかした?」
憂「あ、いえ……」
『憂がいてくれて、よかった……』
憂「なんでもないですよ?」
律「そう? 慣れないこと話しすぎて、ちょっと疲れたかな……」
憂「そうですね。少し休みましょうか」
律「ふー……」ゴロン
憂「よいしょっと」ゴロン
律「……」
憂「ごろごろ~」ピトッ
律「わっ。どうした憂ちゃん?」
憂「人とくっつくのって、なんだか落ち着きませんか?」
律「まぁ、分からないでもないな」
憂「……律さん、抱きしめてください」
律「へっ? いや、急にそんな事……」
憂「駄目ですか……?」
律「だめじゃないけど……」ギュッ
憂「……あったかいですね」
律「そりゃ良かった」
律「……憂ちゃん。未来の世界ってどうなの?」
憂「今とそんなに変わり映えはしませんよ。女性同士でも妊娠、出産ができるようになったくらいでしょうか」
律「すごい技術じゃないか、それ」
憂「はい。本当にすごいことです……」
律「弊害とか、ないの?」
憂「……あっ」
『病気と戦う力が、すごく弱いってことなんだ』
憂(まただ……この声、お母さん……?)
律「まぁ、無いってわけはないか……」
憂「律さんっ」ギュウゥ
律「ん? よしよし……」ナデナデ
憂「……」
――――
憂「すいませんでした、律さん」
律「いいってことよ。正直、悪い気しないし」
トン トン
澪「ここにいたのか、律。帰るぞ」
律「あれ、もう勉強終わったのか?」
澪「もうって……夜の6時だぞ。試験範囲全部やるにしたって、かかりすぎだ」
律「そうか? 勉強しないからわかんね」
紬「でも、唯ちゃん頑張ってたわよ」
澪「頑張りすぎて、範囲が終わったと同時に寝始めたけどな」
律「またずいぶん器用だなオイ」
憂(それじゃあ……起こさないほうがいいかな)
憂(話はまた明日でもいいはず)
紬「それじゃあ憂ちゃん、私たちは失礼するわね」
憂「はい、またいつでもいらして下さい」
澪「ありがとう。それじゃ、お邪魔しました」
律「またな、憂ちゃん」
ガチャ バタン
憂「またね……お母さん」
憂(……私も寝ようかな)
憂(なんだかお腹いっぱいだし、お風呂入ってすぐ寝ちゃおう)
憂「ふぁ~……」スタスタ
『おかあさん……』
『憂……なにか、したいことはない?』
『……おかあさんたちと、もっといっしょにいたい』
『っ……』
ギュッ
『ごめん……ごめんね、憂!』
『私がもっと、しっかりしてたら!』
『……』
『憂っ! ういーっ!!』
唯「うーいー!」ユサユサ
憂「……どうしたの、お姉ちゃん」
唯「えへへ……お腹すいちゃった。憂のご飯が食べたいな」
憂「自分で作りなよ……少しはできるでしょ?」
唯「憂のがいいんだよ」
憂「もう……わかった。ちょっと待ってて」ムクッ
唯「ありがとうい~」
憂「……」スタスタ
憂(ありがとうって、言えなかったな……)
憂(さっきの夢……わたしなの?)
――――
唯「憂に悪いことしちゃったなぁ」
唯「あとでお礼しないと……ん?」ツン
唯「なんだろ、これ。うにゃにゃ~……に関する成果……? 難しそうだなぁ」
唯「……これって。そっか、だからこうなって」ペラ
唯「なるほど、ふんふん……」
唯「あーもうややこしい……つまり、ここに書いてある方法なら、女の子同士でも子供を作れるってことなんだよね」
唯「でも肝心のやり方がよく分かんないな……」
唯「……あ、この言葉は知ってる。学校で習ったんだ」
唯「……」
唯「とりあえずこれは頂いておこう……」ゴソッ
ガチャ
憂「お姉ちゃん、できたよ」
唯「う、うん」
憂「どうかした?」
唯「な、なんでもないよぉ~」ニコニコ
憂「そう? じゃあ私は寝るね」
唯「うん、おやすみ。……」
憂「ふー……」ギシッ
唯「……憂、ありがとう」
憂「うん」
パタン
憂「すぅ……すぅ」
『名前は決めてあるんだ。ずっと前から……』
『へぇー。なんて名前?』
『うれいって書いて、憂だ』
『……』
『すごく、良い名前だよ』
『立派に育ってほしいな』
憂「……」パチ
憂(何かを忘れてる。一体何を……)
憂(思い、出せない)
憂(……なんだろう)ズキッ
憂(頭が痛い、胸が苦しい……もう寝なきゃ)
憂「……すぅ」
――――
翌朝 憂の部屋
ジリリリリリリ
憂「う……」モゾッ
憂「はぁ」カチ
憂「だめ、寒くて……」
憂「でも……」フラッ
バタッ
憂「……あいたた」
憂「あれ……立てな……」
――――
『どうして……』
『まだこんなに小さいんだよ……?』
『やっぱりあの研究が不完全だったんだ、唯……』
『どこがいけなかったんだ……ちくしょうっ!』
『私がぬか喜びしてたせいで……憂が死んじゃうよ……』
『憂……』
憂「……」パチ
憂「あれ……?」
律「起きたか、憂ちゃん」
憂「……ここ、どこなの?」
律「病院だよ。憂ちゃん、風邪引いて倒れたんだ」
憂「風邪……? う、けほっ」
律「安静にしてなって。唯も追試終わったらすぐ来てくれるし」
憂「うん……わかった」
律「お姉ちゃんのこと好きなのは分かるけど、無理しすぎちゃだめだぞ」
律「泣きやませて試験受けさせるの大変だったんだからな?」
憂「ごめんなさい……私、人より体弱くて……」
憂「けほっ、げほっ」
律「いいから今は休んでなって。疲れただろ?」
律「ただの風邪なんだから、安静にしてすぐ治す。いいか?」
憂「……うん」
憂(でも、私には風邪だって一大事なんだよ……? 忘れちゃったの、お母さん?)
律「おっ、唯が追試終わったってさ。すぐこっち来てくれる」
律「つーか電源切るの忘れてたな。いかんいかん」
憂「……」
律「まぁ、なんだ。怒ってやるなよ?」
憂「怒らないよ……私の大事なお母さんだもん」
律「……風邪、早く治そうな」
憂「……」
憂「律さん……未来のこと、すこし話してもいい? お姉ちゃんが来る前に」
律「……ああ」
憂「実は、私……お姉ちゃんと律さんの子供なの」
憂「前も言ったけど、私の時代には女の人同士で子供を作れるようになってて」
律「……」
憂「私は、その技術で生まれた初めての人間なんだけど……実は技術には欠陥があって」
憂「生まれた子供の免疫力が、極端に弱くなってしまうの」
憂「……だから私は、生まれて4年で死んじゃったんだ」
律「……」
憂「けど、私のお願いを、やさしい神様が聞いてくれたの」
憂「もっとお母さんと一緒にいたいって……」
憂「だから、私は死んだ時の姿で……5歳のときのお母さんの家にやってきたんだ」
律「……豪快な話だな」
憂「でも、信じてるよね?」
律「あぁ。演技だったら、そんな顔はできないよ」
律「ちょっと悲しげだけど……すごく幸せそうだ」
律「それに……それに」
律「未来じゃ4つで死んじまった自分の子供が、こんなに成長した姿を見て……」
律「嘘だなんて突きっかえすことできねぇって……」
憂「おかあさんっ……」ダキッ
律「憂……わたし、わかんねぇんだけどさ……なんかすごく嬉しいんだ」
律「また憂に会えたって、感じがするっ……」
律「ありがとう、憂……帰ってきてくれて!」ギュッ
憂「お母さん、会いたかった!」ギュウ
憂「……っ」クラッ
律「あ。ごめん、大丈夫か?」パッ
憂「えへへ……結局一緒なんだ、私の体」
憂「病気に弱いまんまなの……」クタッ
律「……そんな」
憂「ごめんなさい。大きくなってからは、幾分かましだったけど」
憂「ごほ、ごほっ」
律「おい、憂? しっかりしろって……」
憂「ふう、ふぅ……きっと、もう……」
憂「う、おぇっ」
ビチャビチャッ
律「あ……」
律「な、ナースコールを……」
カチカチカチ
律「ま、待ってろ……いまお医者さんが来るからな」
憂「おかあ、さ……」
律「目を閉じちゃだめだ! まだ14年だろうが……満足していい歳じゃねえだろ!」
憂「はあ、はあ……」
ガラッ
「どうしました……っ!」
律「遅い! 憂が大変なんだよ!」
「鈴木さん、すぐに斎藤先生を!」
「はいっ!」
バタバタ
「患者は?」
「昏睡状態です。すぐにでも……」
「ああ、そうだな」
ガチャ ガチャン
「あなた、そっちを!」
律「は、はい」
「2、1!」
律「……」グッ
「よし、運んでくれ!」
ガラララ…
律「……」
トコ トコ
ガラララ……パタン
唯「……りっちゃん」
唯「いまの、憂だよね……」
律「……ああ」
唯「これ、憂が……?」ピチャ
律「そうだよ……」
唯「……」
唯「うい……」ポロッ
ピチャン
律「唯は……憂のこと、どれくらい知ってるんだ」
唯「……よく、わかんない」
唯「けど、ほんとは妹じゃなくて、私の子供なんだって言ってた……」
律「……」
唯「それから、憂の部屋から出てきたその方法についての論文を見て……」
唯「きっと憂は私と、誰か女の子との間に出来た子供なんだと思ってる」
唯「あとは……可愛くて優しい、私の大事な妹。それしか知らない」
律「そうか」
律「……」
律「その論文、今どこにあるんだ……?」
唯「私の部屋に……」
律「じゃあ、憂ちゃんが落ち着いたら……家に行っていいな」
唯「……」コクッ
――――
澪「……遅い、な」
律「ああ……」
紬「信じて待ちましょう。それしか出来ないわ」
律「……今は、そうだな」
澪「憂ちゃん……」
唯「……」
律「……大丈夫だ、唯」ギュッ
唯「でも、りっちゃん……」
律「いいから。まだ泣くんじゃない」フキフキ
唯「やだ、やだよ憂……ういぃ……」
律「……」
――――
フッ
澪「!」
キィッ
「……お待たせいたしました」
唯「憂は……」
「どうにか一命は取り留めました。今は落ち着いていますが……」
「またいつこのような状態になるかわかりません。長期入院をすべきです」
唯「……そうですか」
紬「良かったわね、唯ちゃん」
唯「……そだね。生きててくれてよかった」
律「……」
「それから、平沢さんは現在かなり衰弱していますから……今日のところは」
唯「……はい。みんな、帰ろう?」
澪「そうだな……」
――――
コツコツ カツン……
唯「りっちゃんは私の家に来るんだよね?」
律「ああ。少し寄らせてもらう」
紬「……」
澪「そうか。じゃあ、別々だな」
紬「皆、また明日ね」
ウィーン
律「よし、私たちも行こうか唯」
唯「そうだね。……途中でコンビニ寄ってこ? お腹すいちゃった」
律「あぁ、そうするか。腹が減っては戦はできないからな」
唯「戦うの、りっちゃん?」
律「戦うよ。唯もな」
唯「ほぉ~。なるほど、これは戦いの予感だったんだね」
律「フッフッフ。狼煙が西になびいておる……」
唯「やめてよ」
律「……ごめん」
唯「気をつけてね」
律「ほんとごめん」
唯「もう許したよ」
テクテク
唯「……セブンあったよ」
律「道路の向こう側だからめんどくさいな」
唯「じゃあ、この先のセブンだね」
律「変な奴がたむろしてる。やめたほうがいいな」
唯「そしたら、ちょっと家を通りすぎちゃうけど、私の家の近くにあるセブンにしよっか」
律「セブンってなんであんなに密集するんだろうな」
唯「みんな仲良しなんだよ」
律「そうだったらいいな」
テクテク
唯「こっちだよ」
律「おっ、あったな」
ウィーン
「しゃらっしゃーせー」
律「唯ってセブン好き?」
唯「うん。セブンじゃないと落ち着かないくらいに」
律「子供のころ近くにあったコンビニが、自分のホームコンビニになるよな」
唯「分かるね、それ。あ、おにぎりが焼たらこと昆布しか残ってない」
律「そういえば、なんでコンビニのおにぎりは短いスパンで進化していくんだろうな」
唯「正直パッケージ以外変わってないよね」
律「唯のことか」
唯「否定できないのが歯痒いなぁ」
唯「言われてみれば私って子供のころから成長しないね」
唯「ハンバーグとかオムライスとか未だに大好きだし、カレーは甘口だしね」
唯「好物は天津飯です、とか言えたらいいのに」
律「半ばオムライスじゃないかそれ……嗜好は別にいいんだけどさ、もっとこう、な?」
唯「ほんとだね……」
唯「あれで憂が死んでたら、私……」
律「……」
律「……私、シャケな」
唯「あれ!? 残ってたんだ。大好きなのに気付かなかったよ」
律「よく見てないからだぜ」
――――
律「で、結局肉まんか」
唯「寒いしねぇ。はふはふ」
律「……」
唯「あちっち! あふいよう……」
唯「ほあほあ、ひたやけどしたー」ベー
律「やれやれ……見ても分かんないって」
唯「んー」
律「ちゃんと前見て歩こうか」
唯「だいじょうぶだよー」ハグハグ
夜12時 平沢家
律「唯の部屋はこっちだったよな」トントン
唯「うん。憂が持ってた論文が欲しいんだよね? いま持ってくるよ」
律「私も入っていいか? というか、これは私たち二人で見なきゃいけない」
唯「わかった。入って」ガチャ
律「うむ」
パタン
唯「えっと、確かここに……」ゴソゴソ
唯「これだよ。憂が持ってた、女の子同士で子供を産む方法を研究してまとめた論文」バサッ
律「未来の技術だな。……電気をつけてくれ、唯」
唯「はい、ルーモス・マキシマ」カチ
律「ネタが古い」
唯「私はもう目を通したから、りっちゃん見てていいよ」
唯「憂の着替えとか、用意してあげなきゃいけないし」
律「分かった。ざっと読んでおくよ」
唯「分かんないとこあったら言ってね」ガチャ
パタン
律「まぁ唯に分かるもんなら私にだって」ペラ
律「……」タラッ
律「……うん?」
律「えーっと……どういうことだろうねぇ」
律「方法自体はなんとなく分かるけど……どうしてこれで子供ができるんだろ」
律「これを理解するには、私は勉強不足すぎるみたいだな……」
律「でも、ひとつ間違いないのは……この研究が未完成だっていうことだ」
律「この方法じゃ駄目なんだ……生まれる子供が免疫力を持てない」
律「子供に問題が出ないよう、改良しなきゃいけないわけで……その為には」
バサッ
律「まず、この出来損ないをみんな理解しなきゃいけないわけだ」
律「……時間、かかるな」
律「とりあえず、全体に目を通しておくか」ペラッ
律「唯はこれ、どれぐらい理解できたんだろうな」
律「……」ペラッ
ガチャ
唯「りっちゃん、今晩どうするの?」
律「どうするって?」
唯「すごく遅くなっちゃったけど……帰れる?」
律「確かに、もう日付変わってるな」
唯「だからほら……と、泊まってかない?」
律「あ……うん」
律「そうするか。私も一人じゃ不安だしな……」
唯「えへへ……ありがと」
唯「わたし、お風呂沸かしてくるね!」
律「ああ、サンキュ」
ガチャ パタン
トタタタ…
律「……唯とお泊まりか」
憂『私……お姉ちゃんと律さんの子供なの』
律「変なこと考えてる場合じゃないって」
――――
更に夜遅く 唯の部屋
律「……起きてるか、唯?」
唯「うん……」
律「寝れないのか?」
唯「ううん。ちょっと考え事してた」
唯「私はたぶん、将来女の子と結婚して子供を産むんだろうけど」
唯「それって一体、誰なのかなって……」
律「さあな。未来って、どうなるか分からないもんだろ」
唯「でも、分かることもあるよ?」
唯「ういが……どうなるかとか」
律「……」
唯「お父さんの書斎の専門書とかいっぱい引いて、頑張って論文に書いてあることを理解したんだ」
唯「追試くらい、へのかっぱだったよ」
唯「で……そしたら、あの方法じゃ駄目なんじゃないかって……思った」
唯「憂があの方法で生まれたんだとしたら、きっと……」
律「……唯、そっち行っていいか」ムクッ
唯「……」
律「まぁいいや。入るぞ」ギシッ
ゴソゴソ
律「ぷはっ」
唯「……りっちゃん」
律「ん?」
唯「ありがとう」
律「……急になんだよ?」
唯「だってりっちゃん、憂のために頑張ってくれてるし」
律「私はただ……」
唯「理由なんかなんでもいいよ」
唯「こんなに頑張ってくれるのはりっちゃんだけだもん」
律「何言ってんだよ。みんな心配してるぞ」
唯「そうだね。でも、りっちゃんからは別の気持ちを感じるよ」
唯「澪ちゃんにも、ムギちゃんにさえもない、あったかい優しさがみえる」
律「……」
唯「私ね」ダキッ
唯「りっちゃんの顔、好きだよ」
律「はは……すごく誤解されそうな一言だな、おい」
唯「そうかも……」
唯「でも……うん、そう言うのが一番正しい気がする」
唯「りっちゃんのその優しい顔が好きだな」
律「へぇ……」
唯「……なんか、今なら寝れそう」
律「明日からも大変だし、さっさと寝た方がいいな」
唯「……」スー
律「って、もう寝てるのな」ツン
唯「んやぁ……」ピクッ
律「唯、抱き着いたまんまだし……これはまずい」
唯「ん……うい~」ガシッ
律「……」
律「鎮まれ私の中のビースト」
――――
翌朝 唯の部屋
唯「ん……」ゴシゴシ
律「くかー」
唯「……なんでりっちゃんが?」
唯「あ、そっか。昨日泊めたんだっけ」
唯「……りっちゃん」サワッ
律「んあ……朝か」モゾッ
唯「あ、起こしちゃったね」
律「いいよ。もう7時じゃんか」
律「ちょっと待ってろ、朝飯作ってやるから」ギシッ
唯「待って。……私が作る」
律「唯の朝飯か? 食べてみたいような食べてみたくないような……」
唯「もうっ、いいからりっちゃんは休んでてよ」
律「へへ……わかったよ。もうちょっと寝てる」
唯「うん、おやすみ」ガチャ
パタン
律「ふーっ」
律「なんとか手を出さずに眠れたみたいだな……」
律「それにしても……唯はあの小難しい論文を理解してたのか?」
律「もしかして、唯ってすごく頭いいのかもしれん……」
律「だとしたら、私なんか……」
律「……いや」フルフル
律「憂と約束しただろ。未来は変えない……」
律「けど……」
律「未来を変えてでも、憂のことは救わなきゃ……」
憂『律さんは大学を卒業した後、お姉ちゃんと共に研究者になります』
憂『そして、共にある偉大な発明をするんですよ』
律「……偉大な発明と言ってくれた。私たちの、できそこないの発明を」
律「また会いに来てくれて……なのに」
律「やっぱ、死んじまうのかな」
サアアアァ……
律「外は……鬱陶しい霧雨だな」
律「……」
ガチャ
唯「りっちゃん、出来たよ。目玉焼きしか作れなかったけど……」
律「お、ありがとう」ギシッ
唯「あ……やっぱり寝れなかった?」
律「いや、なんだろうな……よく考えてたら私、十分すぎるほど寝てたわ」
唯「あはは。りっちゃん変なの」ニコッ
律「うるせっ」
――――
律「……唯、今日は学校どうする?」
唯「休むよ。担任の先生も、休んだ方がいいって言ってくれたし」
唯「何より私は……まだ憂とちゃんと話をできてないから」
律「だな。なら、私も付き添うよ」
唯「いいの? りっちゃんだって学校あるのに」
律「憂が優先だろ。学校の勉強くらい、憂が治るまでほっといていい」
唯「りっちゃん、だけど……」
律「あ……」
律「そうだな、悪かった。私は学校行かなきゃな……」
律「折角だ。いっぱい憂ちゃんと話してこい。今まで言えなかったこと、聞けなかったこと、ぜんぶ」
律「目を覚ましてたらだけどさ。でもきっと……」
唯「ねぇ、りっちゃん」
律「ん?」
唯「本当にありがとね。私……」
唯「りっちゃんのこと好きだよ」
律「と、いうと?」
唯「……って」
律「おい、唯……?」
唯「……憂のとこ、行ってくる」ガタッ
律「唯、待て!」
唯「ああわああぁっ!!」
ドタッ ドダダダン
律「……気をつけろって言おうと思った」
唯「遅いよ!」
律「言っても無駄だっただろうなと思ってる」
唯「はっはっは……」ズーン
律「スーツケース落としたのか? あぁ、憂の着替えね」
唯「……りっちゃぁん」ウルウル
律「はいはい、分かってるよ。送ってってやる」
唯「ご迷惑をおかけします……」
1時間後 病院へ向かうバス
律「……そういえばさ、唯の作った目玉焼き、意外と美味かった」
唯「意外と、は余計だよりっちゃん」
律「その台詞を言っていいのはちゃんと毎日料理をしてる女の子だけだ」
唯「これからはやるもん」ブー
律「あ、そうか。じゃあ今回限りは見逃してやろうぞ」
唯「ああ……ありがとうごぜえます、領主さま」
唯「これでオラ達、今年もなんどか凌げただぁ」
律「ほう、そうか。ならば今年はいっそう米作りに精出すんじゃぞぉ」
唯「ははぁっ、ありがとうございましたぁっ」ペコペコ
パンポーン♪
律「あ、次だ」カチッ
唯「降りますボタンは私が押したかったのに……領主めぇ!」
律「そんな日常的に復讐を決意しないでくれ」
――――
唯「あの……平沢憂の病室は」
「平沢さん……ええと、あなたはお姉さんの」
唯「唯です。後ろは友達の田井中律で……」
律「憂ちゃんのお見舞いに来たんですけど……ど、どうされたんですか?」
「実は……お姉さんだけに大切な話があると、平沢憂さんから頼まれていまして」
唯「……」
律「……唯」
唯「それで……?」
「一人で病室に来ていただきたいと。いま、病室まで案内いたします」スタスタ
律「……憂、目が覚めたみたいだな」
唯「うん……」
「では、平沢さん。私の後について来て下さい」
律「……なぁ、看護婦さん」
「はい?」
唯「りっちゃん……?」
律「……いや。やっぱり何でもない。行ってくれ」
「では……失礼します」
唯「……」スタスタ
律「……」
フラッ
律「ははっ……よっぽど特別な病室らしいな」
律「ちくしょう……」ギュッ
律「今日まで……この時代で生きてきた憂には、私はなんもしてあげられねえのか?」
律「私がしっかりしなかったから、二度も憂を傷つけてるんじゃないか……!」ギリッ
律「……憂」フラッ
――――
無菌室
唯「……」
「検査の結果、妹さんには数多のウイルスと戦うための免疫力がほとんどないということでした」
「いずれ斎藤先生に説明を受けるかと思いますが……」
唯「……そうですか」
唯「ドラマで見たことありますよ、ここ。中には入れないんですよね」
「一応、きちんと手順を踏めば入れないこともないですけど」
唯「……」
唯「憂と話はできますか」
「大丈夫ですけど、今は寝ているので……」
憂「……きこえてるよ、お姉ちゃん」
唯「! ういっ!」
憂「鈴木さん、すいません……お姉ちゃんと二人きりにさせてもらえませんか?」
「……ええ、構わないわ。平沢さん。扉の横にいますから、少しでも何かあったらすぐに呼んで下さい」
唯「はい。ありがとうございます」
「じゃ」ニコッ
ガチャ バタン
憂「……お姉ちゃん、来てくれたね」
唯「憂……お、おはよう」
憂「えへへ。おはよう、お姉ちゃん」クス
憂「う……コホッ」
唯「だ、大丈夫!?」
憂「うん、平気……お姉ちゃん、よく聞いて。伝えたいことがあるの」
唯「……わかった。何でも言って」
憂「お姉ちゃん、私ね……ずっとお姉ちゃんの妹として生きてきたけど……ほんとは未来から来た、お姉ちゃんが生んだ子供なんだ」
唯「うん……知ってたよ。初めて会った日に言ってくれたよね」
唯「私がだだこねて、受け入れなかったんだよね。ごめんねうい」
憂「ううん。お姉ちゃんの妹になるのも楽しかったよ?」
唯「……ありがとう」
憂「でも、私が未来から来た本当の理由は、そうじゃないんだ。……妹になって、お姉ちゃんと一緒にいるだけじゃない」
唯「……私にしっかりしてほしいって言ってたっけ」
憂「そう……だけど、ちょっと違う……」
憂「一番の目的は、お母さんたちが今度は技術を完成させられるように導くこと……」
唯「……女の子同士で子供を作る方法だね」
憂「それも知ってたんだ……その通りだよ。私をこの世に生んだ技術……お母さんたちに出会わせてくれた技術だよ」
唯「……」
唯「でも、あれには問題が残ってるよね」
唯「その問題は今でも憂自身に降りかかってる……」
憂「……お姉ちゃん、そこまで分かったの?」
唯「お父さんの書斎にある本を読みながら、なんとか読み解いたよ」
唯「難しかったけど……憂のことだと思ったから頑張ったんだ」
憂「すごいね……私が聞いてきた昔のお母さんとは全然違う」
唯「そうなの?」
憂「うん。お母さんは高校あがったばかりの頃、すごく努力が苦手だったんだよ」
憂「だから毎回追試もらってたし、ギターもなかなか上手にならなかったんだって」
唯「うーん……今回は追試だったけど、合格点はとれたはずだし」
唯「ギターだって、始めて1ヵ月とは思えないって言われるよ?」
憂「じゃあ、やっぱりお姉ちゃんは変わったんだよ」
憂「なんだ……私があれこれしなくても大丈夫だったのかな?」
唯「……そんなことないよ」
憂「けど……」
唯「前の私がどうだったかは分からないけど……きっと、憂がいたから変われたんだよ」
唯「『1回目の私』と『2回目の私』に相違点があるとしたら、ひとつだけしかないよ」
唯「憂っていう、かわいくて世話焼きな妹がいてくれたこと……それだけで私は変われたんじゃないかな」
憂「私、お姉ちゃんに何もできてないよ……」
唯「憂がそう思ってても、私は憂がいてくれてよかったんだよ」
唯「憂にたくさんの物をもらっていたんだと思う。だから……ぜったい無駄にしない」
憂「……」
唯「うい。もっとたくさん、一緒に生きるよ」
憂「おかあさん……うん! きっと……待ってる」
唯「……っ」
憂「私はたぶん、そろそろ死んじゃうんだと思う……」
唯「うい、だめだよ……」ウルウル
憂「だけど、もう一回やったことだから……そんなに怖くないよ」
憂「それに……今度はお母さんが必ず迎えに来てくれるもん」
唯「うん、迎えに行くよ! だから、まだ……」
憂「今日、はね。どんどん雨が激しくなっていくんだって」ハァ、ハァ
憂「うたったよね。ざあざあ、雨がふる……ひに……」
唯「うい……?」
憂「はあ、は……おかあ、さ……」
憂「うんでくれ、て……ありがと……!」
唯「!」ガタッ
バタァン
唯「鈴木さん!」
「どうしました!?」
唯「う、ういが苦しそうなんです! 助けて下さい!」
「分かりました。すぐ先生を呼びます!」
タタタタッ
唯「どうしよ、どうしよ……憂が……」オロオロ
律「……憂がどうしたんだ?」
唯「りっちゃん! 大変だよ、憂が死んじゃう!」
律「そうか……もう」ガチャ
唯「……りっちゃん?」
律「聞こえるか、憂?」
憂「ん……」コクン
律「……ごめんな。私のせいで苦しい思いをさせて」
憂「ううん……」フルフル
憂「苦しく、ないよ……だっていつかは、お母さんたちにまた会える……」
律「憂……」
唯「りっちゃん! 憂!」
憂「おかあさん……けいおん部はやめちゃだめだよ。未来が悪く変わっちゃう」
律「……わかった。続けるよ」
唯「私もだよ!」
憂「やくそく、だね……」ニコッ
憂「……それじゃ、さよなら」
唯「憂っ!」
憂「そんなに心配そうにしないでよ……ぜったいまた会えるから」
憂「ふっ、うぐ……」
憂「ちょっとのお別れ……だよ」
憂「……」スゥ
律「あ……嫌ぁ……」
唯「憂、まだだめっ! 死なないでよ!」
唯「ちゃんと憂がそばで見ててくれないと不安なのっ!」
憂「……」
唯「起きてよ、憂っ!!」
深夜 病院のピロティ
澪「……ひどい雨だな」
律「……」
澪「こんな所にいたら風邪ひくよ。そろそろ戻ろう……な?」
紬「唯ちゃん……」
唯「……」
紬「……お医者さんが探してるかもしれないわよ? 憂ちゃんの病気がすっかり治りましたよって、スキップしてるかもしれないわ」
唯「憂……」
澪「……」
ザアアァ……
律「……戻るか」
澪「いいのか、律?」
律「延々と雨を見ててもしょうがないからな……そんなことより、やらなきゃいけないことがあるんだよ」
紬「やらなきゃいけない事……?」
律「送り迎えだよ。一人じゃだめなんだ」
澪「何のことだ……?」
律「分かるだろ、唯?」
唯「……」
唯「分かるよ、りっちゃん。……じゃのめを差して行かなきゃね」
紬「唯ちゃん……」
澪「……?」
ザアアァ……
律「だから、唯も戻ろう。こんなんじゃ、いい母親になれないぞ?」
唯「えへへ……うん。行こう、りっちゃん!」
――――
およそ1ヶ月後 唯の家
律「……がらんどう、だな」
唯「ごめんね、手伝わせちゃって」
律「なに水臭いこと言ってるんだよ。憂のことは……二人のことだろ」
唯「そうだったね。ごめんごめん」
律「ま、今日ぐらいは姉の平沢唯でも良いかもしれないな……」
律「実際、お前たちが10年の間姉妹であったことは本当なんだしさ」
唯「……そうだね。楽しかったな」
唯「あ、また思い出しちゃう……」
律「こら唯、一人で泣くのは禁止だぞ?」ギュムッ
唯「痛いよりっちゃん……もうっ」
唯「それにしても、どうして私の家だったんだろう?」
律「んー……うちは聡とかいるしな。平沢家のほうが都合が良かったんじゃないか?」
唯「いや、りっちゃんはきっと家庭も顧みずに仕事ばっかりしてたんだ」
唯「だから憂に……あいーいたいいたい!! ギブギブ!」ペシペシ
律「ふんっ」グネリ
唯「らおーう!!」
――――
唯「まったくもう……」
律「ごめん、やり過ぎた……」
唯「ねぇ……りっちゃん?」
律「……どうした?」
唯「ずっとバタバタしてて、ちゃんと言えなかったから……いま言うよ」
律「あ、うん……なんだよ」
唯「憂の事でいろいろあって……私、たくさんりっちゃんに助けられたよね」
律「ああ。大変だったし、これからも大変だと思うな」
唯「もう……でも、そんなこと言いながら、これからもりっちゃんは嫌な顔しないで私を助けてくれるんだよね」
律「そりゃあな。決まってるだろ」
唯「よかった……えへへ。私ね、りっちゃんに助けられてるうちに、りっちゃんのこと好きになっちゃったんだ」
唯「それで、もし良かったら……付き合って欲しいんだ」
唯「どうかな……だめ?」
律「……60点くらいかな」
唯「え? どういうこと?」
律「この場合、こう言うのが正解だ」
律「唯。結婚しよう」キリッ
唯「ぶふっ」
律「えぇー……」
唯「ご、ごめ……だって、りっちゃん……あっはははは!」
律「人の真剣な告白で吹き出しやがってー!」グリリ
唯「いひゃいいひゃい! ごめんあはーい!!」
律「笑いすぎだーバカタレー!!」グニャ
唯「ぐっぴー!」
――――
唯「はーっ、はー……」クテッ
律「ど、どーだ……参ったか」ゼエゼエ
唯「3回くらい臨死した……技術が完成する前に憂に会えちゃったよ……」
律「寂しくなった時は言っていいぞ?」
唯「我慢するよ?」
唯「……それはそれとして、りっちゃん勉強どう?」
律「うーん……とりあえず期末テストは余裕っぽい」
唯「りっちゃんも意外とやれば出来る子なんだね」
律「意外と、は余計だ!」
唯「そういうのは普段から毎日勉強している人だけが言っていい台詞なんだよ」
律「根に持ってやがった……つーかやってるし」
唯「えへへ。まぁりっちゃんなら大丈夫だって分かってるけどね」
律「さすが唯、賢いなー」ナデナデ
唯「……飼い犬に手を噛まれた気分。あっ、ちょいたいっ!」
律「そろそろその生意気な口ふさいでいいか?」
唯「手段によります!」
律「口封じの手段と言えば古来から決まってるだろ?」
唯「うん、やめて」
律「……次はねぇぞ、平沢唯ぃ」
唯「うん。ねぇねぇ、りっちゃん?」
律「今度はなんだ?」
唯「こうして過ごす一瞬一瞬にもさ……憂は待っててくれるんだよね」
唯「あんまり待たせて、憂は怒っちゃわないかな?」
律「それは……多分大丈夫だと思うな」
唯「どうして?」
律「本来、私たちが不完全な発明をするのは、大学卒業後だって憂は言ってた」
律「だからさ、それまでは憂もニコニコしながら待ってくれるんじゃないかな」
唯「そっか……じゃあ、向こう7年はりっちゃんと二人きりなんだね」
律「フルに使う気かい! まぁ……いいんだろうけど」
律「でも、勉強は忘れるなよ?」
唯「りっちゃんに言われるまでもな……」ドタッ
律「次は無いと言ったはずだぞ?」
唯「あう……何するの?」
律「口封じだ」
唯「さっきの発言もアウトなの!?」
律「あー……もう何でもありって事で!」
唯「ブチ壊しだよ……」
律「あー、いいからハイ! 目を閉じる!」
唯「ん……」
律「そ、それじゃ……いくからな?」ドキドキ
唯「う、うん」ドキドキ
律(なんっかどうにも視線を感じるんだけどな……)
律(まあいいか……っ)チュ
――――
10年後
唯「ん?」
ピーン ピーン
唯「ういー? 何してるの?」
憂「ギター! ほらね、こうすると鳴るんだよ!」
ピーン ピーン
唯「……ママが教えてあげよっか?」
憂「ママできるの?」
唯「うん。それ、ママのギターだしね」
憂「ほぇー。ねぇ、なにかえんそーして!」
唯「ん……じゃあ」
ジャン ジャ カ♪
ジャカ ジャカ
唯「あーめあーめ降ーれ降ーれ かーあさーんがー♪」
唯憂「じゃーのめーでおー迎ーえ うーれしーいなー♪」
唯「……」ピタ
憂「……?」
唯「……」
唯憂「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ らん・らん・らん♪」
唯憂「あーめあーめ降ーれ降ーれ……」
――――
ザアアアァ……
律「おーい」
律「私のお迎えはー?」
おわり。
乙
単純な律唯じゃなくて面白かった
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