- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 23:45:24.87:G2UdAfzj0
生まれつきの天然でゴロゴロしてばかりいる。
小学校の時分、調理実習で蛸焼きを作る際、蛸を忘れたことがある。
同級生の和が恨めしそうに見るので、蛸なしでもおいしいねと言ってやった。
おやじと母はやたら海外に出かける。
年頃の娘を置いて海外旅行もないものだ。
そのせいか、妹は家事をひととおり覚えてしまった。
この妹は憂といって大変出来た娘だ。
何かにつけて「おねぇちゃんはやれば出来る人です」と褒めてくれる。
また、大変に世話焼きであるから
「おねえちゃんにもしものことがあっては大変」と家事を全くさせてくれない。
私は特段やることもないから家へ帰ればゴロゴロするばかりである。

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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 23:47:13.87:/RRkzIyEO
続けたまへ
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 23:51:47.68:G2UdAfzj0
そんな私も高校にあがると、なにか部活に入ろうかと思い立った。
とはいえ運動は苦手であるし、文化系の倶楽部というのもとんと見当がつかぬ。
結局どこに入るか決められないままそのままにしてあったのであるが
ある日、同級生の和から「きみ、そのままじゃニートになるぜ」と言われてしまった。
部活をやっていないだけでニートもないものだ。
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 23:54:33.76:oUsXhkdt0
ここの部分はあの作品かとニヤニヤしながら見てる
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 23:56:21.54:G2UdAfzj0
そうして、しばらく考えあぐねていたのだが
ある日、掲示板を見ていると軽音楽部という張り紙が目に付いた。
軽音楽、というものはどういうものか解せぬが軽い音楽と書くくらいだから
大方口笛でも吹くんだろう。気楽なものだ。
こう見えても幼稚園の時分にはカスタネットの演奏で褒められたこともある。
どれひとつやってみるかと入部届けを出したのがさっきのことである。
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 00:14:26.42:uijmnR1X0
昼飯を食っていると、和がやってきて「きみ、部活は決めたか」と問うので
「軽音楽部に入った」と答えると大変驚いて
「それならギターは弾けるのか」と言う。
私は「なに、カスタネットができるから心配はない」と答えておいた。
放課後、軽音楽の部室である音楽室へ向かった。
和には心配ないと言ったが、実際扉を前にすると気が重いものだ
なかなか入れずにいると
「きみ、軽音部になにか用か」と声をかけられた。
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 00:22:56.30:uijmnR1X0
どうやら軽音楽部の部員らしい
カチューシャで前髪をあげ、額をぴかぴかさせている。
返答しかねていると
「もしかすると、あなたが平沢唯か」と問うので
「そうだ」と答えると
「やはりそうか。ギターが堪能だと聞いている。さぁ、入りたまえ」
あらぬ尾ひれがついている。
これはとんだ勘違いの勘太郎、いやでこっぱちのでこ助だ。
面食らっていると、でこ助に部室に引っ張られ、着席させられた。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 00:43:58.99:uijmnR1X0
テーブルに着くと、他にも二名の部員が座っている。
そのうちの一人、西洋人風の容姿の大変美しい娘が紅茶とケーキを持ってきた。
喫茶店じゃあるまいし、学校でケーキもないものだと思ったが
せっかく出されたのだから、と勧められるままケーキを口にした。
なかなかうまい。これほどのケーキは銀座の一流店でしか買えまい。
この紬という娘は、おおかた、親が金持ちなんだろう。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 00:44:57.82:F0O3QPkD0
口ひげはやしてそうだなこの唯は
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 01:00:47.22:uijmnR1X0
もう一人は長身に黒髪。これもなかなか綺麗な顔立ちをしている。
さっきからやたらと西洋人の名ばかり口にする。
ジミーとは誰のことか知らないが、知らなくても困らないから黙っておいた。
しかしここにいる皆が私のことをギターが弾けると勘違いしているには閉口した。
このまま勘違いさせるのも騙しているようで気分が悪い。
思い切って「ギターなど弾けない」と言ったところ
一同落胆の様子であったが「それでもいいから入部してくれ」と言う。
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 01:10:45.36:uijmnR1X0
茶店の看板娘じゃあるまいし、いるだけでいいなんてことがあるものか。
さっきから見ていればケーキを食べてお茶を飲んでばかりだ。
軽音楽の名を改めて放課後喫茶同好会とでもするがいい。
そんなことを思っていると
「せめて私たちの演奏を聴いていってくれ」とくだんのでこ助が口を開いた。
ものはためしだ。聴くだけ聴いてみようかしらんと「それじゃ頼む」と答えた。
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 01:27:57.87:uijmnR1X0
曲目は「翼をください」いかにもガールズバンドらしい安易な選曲だ。
聴いてはみたがどうにもうまくない。これではまるでちんどん屋だ。
これなら私でもできそうだ。演奏が終わった後その旨を伝えると
少し気を悪くしたようであるが私の入部を快く引き受けてくれた。
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 01:29:05.06:XzKpR5DY0
ちんどん屋www
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 02:05:46.51:uijmnR1X0
そうして軽音楽部に入った私だがカスタネット以外の楽器は馴染みがない
どの楽器をはじめたものか思案していると
紬嬢が「ギターをはじめてみたらどうか」と言うので
それなら、とギターの担当に決まった。
しかし、ギターというものがいくらするのか、まったく見当がつかぬ
軽音楽部の連中に相談したところ
今度の休日にギター選びに楽器店へ行こうということになった
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 02:31:19.00:gsjCUpMy0
でこ助
黒髪
紬嬢
あずにゃんはどうなるかな
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 02:35:31.79:RPkXOleSO
>>102
名前はまだない
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 02:44:39.31:uijmnR1X0
とは言うものの、ギターの値段もばかにならない。
聞けば安いものなら1万円台だが高いものになると数十万もするらしい。
なけなしの貯金をかき集めてみたが、これでは足しにもなるまい。
どうしたものかと考えていると妹の憂がやってきて
「お姉ちゃんどうしたの?」と尋ねるので
これこれこういう理由でと話して聞かせると
憂が「私も今は持ち合わせがないから両親に頼んでみたらどうか」という。
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 08:50:22.46:uijmnR1X0
果たして小遣いを前借りさせてくれるだろうかと迷っていると
「私からも頼んであげます」というので一緒に金を用立ててくれるよう母に頼んだ。
妹の口添えもあり、5万円を手にした私は意気揚々と待ち合わせ場所へ向かった。
途中の店でいろいろ買い物をした後、楽器屋へ向かう。
どれがよいかと選別していると
少し大ぶりではあるがとても趣味のよいギターを見つけた。
なんでもレスポールとかいうらしい。
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 08:56:09.81:uijmnR1X0
たいへん気に入ったが25万円もするんじゃ、と逡巡していると
紬嬢が寄ってきて「これが欲しいのか」と問うた。
しかし持ち合わせがない、と答えると
しばらく思案していたようであるが、思い立ったように帳場へ向かい
程なくして満面の笑みで戻ってきた。
「それを5万円で売ってくれるそうだ」
驚いてよくよく聞いてみるとこの店は紬の父の系列店であるらしい。
なるほど店員も値引きするわけだが、しかし8割も値引きさせるとは豪胆なものだ。
とにかく、ありがとうと礼を言って支払いを済ませて店をあとにした。
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 09:12:56.79:uijmnR1X0
さて、買ったはいいが弾き方がわからぬ。
途方に暮れているとジミーの黒髪がギターコードの教本を貸してくれた。
案外いいやつだ。名は澪というらしい。
早速ギターコードの練習にとりかかったもののなかなかうまくいかない。
そうこうしているうちに中間考査の時期となった。
和には勉強しなくてもいいのかと聞かれたが
何、今までだって勉強してなかったんだから、たいてい大丈夫だろうと言ったらそれぎり何も言わなくなった。
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 09:30:19.22:uijmnR1X0
勉強そっちのけで練習していると、えらいものでだいたいのコードは覚えてしまった。
憂には「おねぇちゃんは集中するとすごいね」と褒められたが
試験の結果は散々で、成績順位は下から勘定したほうが早かった。
季節がすぎるのは早いもので学校が夏期休暇に入った。
澪の提案で合宿をすることに決まった。場所は紬嬢の別荘だそうだ。
なんでも本当に大富豪の娘らしい。
しかし海辺のスタジオつき別荘とは豪勢だ。聞けばプライベートビーチだと言う。
それならおもいきり遊んでやろうと水着を新調して、楽しみに出かけていった。
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 10:03:30.17:kVF/MPtCO
けいおんを知らない俺からすればいいダイジェスト
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 10:23:37.23:uijmnR1X0
8月の太陽の光を受け、きらきらとひかる水面が眩しい。
憂も一緒に連れてくればさぞ愉快だろうと思いながら
学園祭に向けての練習をしたがる澪をよそに大いにはしゃいだ。
そんなこんなで夏期休暇も終わり、いよいよ文化祭という段になって
ある問題に気付いた。軽音楽部は正式な届出をしていなかったのだ。
申請をするにはまず顧問を探さねばならぬ。
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 10:46:21.54:uijmnR1X0
話し合いの結果、山中さわ子という教師に顧問を頼むことにした。
山中先生と言うのはなかなかの美人で、生徒からの人気も高い。
いわゆるマドンナ教師というやつだ。
はたして顧問になってくれるか心配であったが、でこ助の計略により顧問になることを承諾してくれた。
そのときはでこ助のくせに悪知恵が働く、と感心したものだ。
とにもかくにも正式に部として認められ
文化祭での発表に向けて本格的な練習が始まった。
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 10:49:21.37:+3aXVEs10
なんか唯が賢く見えるなw
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 10:49:21.73:uijmnR1X0
発表のためには歌い手を決めなければいけない。
皆が歌詞を書いた澪を推したが本人が頑として聞き入れない。
澪によれば、自分は胃弱で、人前に立つと腹が痛くなる。
歌など歌ったら死んでしまう、ということだった。
それならと私が立候補したものの、演奏しながら歌う、というのはどうしてなかなかむずかしい。
放課後、マドンナの家で稽古をつけてもらうことになった。
177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 11:09:28.51:uijmnR1X0
当日の朝、目が覚めてみると喉がいがいがする。
どうもおかしいと思いながら洗面所に立ち、うがいをする。
ひどく沁みる。どうやら練習をしすぎたようだ。
部室でその旨を打ち明けると一同驚いたが、仕方がないと澪を歌い手に立てることとなった。
発表は大成功に終わり、私たちは大いに満足した。
ただ、舞台袖に下がる際、転倒してショーツを見られた澪はひどく落ち込んでいたようである。
186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 12:06:57.01:uijmnR1X0
あっというまに季節は巡り、私たちは2年生になった。
妹の憂も無事高校に合格し、晴れて同じ高校の後輩となる。
春といえば新入部員。私たちも新入生獲得に向けて動き出した。
着ぐるみを身につけ、チラシを配ってみるが、なかなか興味を持ってくれない。
どうしたものかと軽音楽部一同、悲嘆に暮れていると
妹の憂が軽音楽部に興味があるという友人を連れて部室にやってきた。
うらなりのなすびのような顔をしている。名を純というらしい。
うらなりでも新入生には違いないと、私たちは英国給仕の服装で出迎えた。
195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 13:06:36.81:5eiG9O5i0
うらなりかわいいようらなり
227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 19:22:47.29:uijmnR1X0
この英国給仕の衣装はマドンナの力作であるが、これがまずかったらしい。
ごわごわした生地が邪魔をしてうまく演奏が出来ない。
仕方なくジャージに着替えることにしたのだが、脱ぐのに非常に難儀した。
あまりの体たらくにうらなり女史も呆れてしまったようである。
これでは入部も望み薄だろう。
デコ助などは、「もとはといえばむやみに衣装を着せたがるマドンナの責任だ。
あんな顧問なら沢庵石をつけて海の底へ沈めちまうのが軽音部のためだ」などと憤っていた。
くよくよしても始まらない、新入生歓迎の演奏で部員を募ろうと腹を決め、舞台に臨む。
幕が上がる前、澪にも歌い手になることを勧めてみたが、やっこさん相変わらずの胃弱とみえて頑なに拒むので
しかたがないから私が全部歌うと引き受けて、幕が開いた。
235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 19:55:17.85:uijmnR1X0
出だしの歌詞を忘れこそしたものの、演奏は大成功に終わった。
ここらで一番良い出来だろうと密かに喜んでいたのであるが
どういうわけか、一向に入部希望者が現れない。
かくなるうえは妹を入部させるかと算段を立てていると、たいへん小柄な娘が部室へ入ってきた。
聞けば、入部希望だという。
ギターは出来るか、ちと弾いてみろとギターを渡してみるとなかなかの腕前だ。
241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 20:11:01.17:uijmnR1X0
これはいい後輩が入ったものだと一度は喜んだものの
部活中の飲食を否定したかと思えば翌日にはあっさり受け入れたりと気まぐれなのには閉口した。
一度デコ助に「あいつはにゃあにゃあ鳴けば猫も同然なやつだ。」と言ったところ
「間違いない。案外正体は化け猫かもしれない」と答えた。
軽音楽部の中ではデコ助が一番馬が合うようだ。
246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 20:46:22.75:5htyOH1N0
チョビ髭をつけてすまし顔をした唯が軽音楽部の面々に交じってこんなことを考えてると思うとどうしても笑う
253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 21:48:10.61:uijmnR1X0
そして再び夏期休暇がやってきて、新入部員の梓を交え、夏合宿へ行くことになった。
また紬嬢の別荘であるが、今年は昨年のものよりはるかに大きい。
この上まだ大きい別荘を持っているというのだから恐れ入る。
その夏も私たちは大きに遊んだ。
中でも梓のはしゃぎようはすさまじく、とうとう日焼けで真っ黒になってしまった。
到着した時には、先に練習をしましょうと盛んに言っていたのが嘘のようだ。
相変わらずの気まぐれだが堅物よりはいくらか扱いやすいと思い直し、よしとした。
255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 21:52:35.95:uijmnR1X0
夏期休暇も終わり、いよいよ学園祭の練習という段になってギターの調子が悪くなった。
聞けば、ギターというものは細かく手入れをするものらしい。
言われてみれば、買ったはいいが一度も手入れなどしていない。
元来、暇さえあればゴロゴロしていたい性分であるから、細かい手入れや掃除などは気が向かない。
これではギターも調子が悪くなるはずだと大きに反省して楽器店に持っていって直してもらった。
修理費は紬嬢の特権で無料にしてくれた。なるほど、お嬢様というのは便利なものである。
262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 22:17:34.82:uijmnR1X0
ギターは元の調子を取り戻したものの、その日からデコ助と胃弱の仲が妙な雲行きになってきた。
初めはいつものじゃれあいかと思っていたが、胃弱は本気で嫌がっているふうである。
なにやら剣呑である。今まで喧嘩らしい喧嘩はしてこなかっただけに、事態は深刻だ。
そう心配していると、翌日、デコ助は風邪をひいて欠席していた、大方、デコの冷えすぎだろう。
なにやら胃弱が見舞いに行き、仲直りしたらしい。人騒がせにも程がある。
263:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/27(月) 22:18:28.56:j3e2+Xm20
デコの冷えすぎ…
348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 12:44:05.13:ld1B6eWb0
そう思っていたら今度は私が風邪をひいてしまった。
舞台で着る衣装で一日過ごしていたからだろう。まったく、顧問の作る衣装を着るとろくなことにならない。
妹の憂が、よせばいいのに、私に成り代わって軽音楽部へいったようであるが、結局ばれてしまった。
その後、一度は軽音楽部へ顔を出したものの、どうも体調が思わしくない。
胃弱に、当日まで来なくてよいから、しっかり養生するようにと申し渡された。
胃弱の癖にいやに仕切るやつだ。
350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 12:47:26.16:ld1B6eWb0
うんと眠り、栄養をとってみたが、なかなかよくならない。
こうして部屋で鼻をかんでばかりいるのもつまらない。
つまらぬが風邪を治さなければいけないことには代わりない。
うんうんうなっていたが、不思議なもので、当日の朝にはすっかり治っていた。
こうして意気揚々と部室へ向かったのであるが、途中でマドンナに出くわした。
353:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 12:51:39.04:ld1B6eWb0
「きみ、風邪の方はもういいのか」と尋ねるから
「おかげさまで、すっかりよくなりました。」と嫌味たっぷりに答えてやったが
やっこさん悪びれる様子もなく
「それなら一度職員室にお寄り。衣装を改良したから。」とこうである。
もう衣装はたくさんだと思ったが、渋々ついていくことにした。
防寒仕様というから少し期待していたら、なんのことはない、襟元に綿をつけただけの簡素なものだ。
ためしに着てみたら、これが思いのほかあたたかい。
これなら風邪をひく心配はない、と改めて軽音楽の部室へ向かった。
357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 13:24:09.44:ld1B6eWb0
胃弱にはまず初めに部室へ来るべきだ、との抗議を受けた。もっともである。
梓猫などは大変ご立腹の様子であったが、撫でてやると落ち着いたようである。単純なものだ。
しばらくして、さぁ舞台へ向かおうかと腰をあげたが、ギターが見当たらない。
妹の憂が家へ持って帰ったらしい。
これは一大事と、その間の代役をマドンナに任せ、家へ走ってギターを取りに行った。
360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 14:11:18.22:WjBcCHMKO
吾輩はスッポンモドキである
361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 14:16:28.19:ld1B6eWb0
ギターをうんしょと背負い、来た道を引き返す。
その道中で今までのことを思い返してみる。
入学したての時分、どの部に入ろうか決めかねていたことを思い出した。
あの頃の自分に会ったら、なに、案ずることはない。じきにやりたいことも見つかるだろう、とでも
言ってやりたい気分である。悪くない心持だ。
そうして走って、なんとか次の演奏に間に合わせることが出来た。
でこ助に胃弱、紬嬢に猫娘も笑顔で迎えてくれた。
私たちの演奏は大盛況のうちに終わった。
これが私たちの2年生までの時分の話である。
第一期 おわり
408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 21:56:42.11:ld1B6eWb0
月日のたつのは早いもので、私たちもとうとう三年生になってしまった。
軽音楽部の同級生がみな同じ学級だというので、これは何かあるなと思っていると案の定、マドンナが担任であった。
何にせよ、かれらと同じ学級になれば便利には相違ない。
宿題の写しも頼めるし、修学旅行もこの面々で行けば楽しかろうと喜んでいたのだが
胃弱が「きみ、そろそろ進路のことも考えなきゃいかんぜ」と言い出した。
なるほど、三年生といえば進路決定の時期である。真剣に考えないと和君の言うとおりになるかもしれない、と
少し心配になったが、もともとが楽天家であるから、何とかなるだろうと思い直し
なに、そのうち考えるから心配いらない、と答えておいた。
420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 22:16:00.27:ld1B6eWb0
とにかく、今は新入生を勧誘することが先決だ。
このままだと来年の部員は猫娘一人になってしまう。ことによると、廃部になるかもしれない。
これはいかんと部員獲得に乗り出したのであるが、なかなかうまくいかない。
心のどこかで昨年のように演奏を披露すれば誰かしら入るだろうとたかをくくっていたのであるが
演奏が終わって数日しても入部希望者が現れない。
さすがの猫娘も少し落ち込んでいたようであるが、今年いっぱいはこの面々で活動しようと開き直ってしまった。
猫だけあって、さっぱりしたものである。妙に感心した。
427:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 22:22:02.97:ld1B6eWb0
しばらくたって、修学旅行へ行くことになった。
京都に行くというので大原の三千院やら三十三間堂を見物できるかと期待していたのであるが
いつもの調子で楽器屋に入ってみたり、猿を眺めたりといい加減なものだ。
紬嬢などは大いに張り切ってみなに枕を投げつける始末である。
結局観光地などはほとんど回らず、デコ助とはしゃぎまわって教師にこっぴどく叱られた。
猫娘の土産にはキーホルダーを買って帰った。随分喜んだようである。
444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 23:16:05.12:ld1B6eWb0
梅雨もあけ、期末試験もどうにかやっつけると、いつのまにか季節は夏になった。
デコ助の誘いもあり、夏期講習を受けることにした。胃弱と紬嬢も一緒だ。
勉強だけでは体に毒である、息抜きも必要だということで遊びにもいろいろ出かけた。
夏の歌謡祭にも行った、夏祭りでは花火も見た。
ほかにもいろいろ行ったが、きりがないのでこのくらいにしておく。
453:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 23:53:49.26:ld1B6eWb0
夏休みも終わり、秋になると、早いものでもう学園祭の準備をする時期である。
とはいえ、受験勉強をしながら、学校の行事をこなしながらであるから、非常に骨が折れる。
マラソン大会では途中にあるトミ婆さんのところで茶を飲んでいたらたいへん叱られた。
学園祭の学級発表では演劇をやった。デコ助と胃弱が大活躍したようである。
発表前日には泊り込みで練習をして、本番に臨むことにした。
マドンナも張り切って衣装を作っているようで、好きにするがいいと取り合わずにいたが
翌日、出来上がった衣装を見てみるとなかなか悪くない。今回ばかりはマドンナの衣装をきて演奏することに皆が賛成した。
幕が開くと、同じ衣装を着ている生徒が何人かいる。どうやらマドンナの発案らしい。
珍しく粋なことをする、と感心しながらも順調に演奏を進め
最後の曲目には妹の憂のために書いた曲を披露した。妹もいたく気に入ったようである。
454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 23:55:22.14:HhV9LpFF0
二期駆け足すぎwww
456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/28(火) 23:56:43.68:ld1B6eWb0
演奏は今までで一番の盛り上がりを見せ、舞台は幕を下ろした。
演奏後、みなで部室へ集まる。一同満足の様子であったが
考えてみれば、もう高校での学園祭はないのだ、と思うとなんだか胸の奥がしんしんする。
出すまいと思っていた涙が溢れてくるには閉口したが、他の面々も同様らしい。少ししんみりしてしまった。
463:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:03:45.65:5+sraPcA0
しかし、そうしてばかりもいられない。文化祭が終われば本格的な受験の時期である。
一人にさせては猫娘が気の毒であるからと、軽音楽の部室で勉強をすることにした。
第一志望は四人が一様にN女子大としている。
これは進路希望をどこにするか悩んでいた際に胃弱の提案で決まった。
胃弱などはN女子大を受験するために推薦入試を蹴ったぐらいだ。ずいぶん思い切ったことをする。
私は、小学生が小便に行くわけじゃあるまいし、みなが一緒でなくてもよいと思ったが
ほかに行きたい学校もなく、別段断る理由もなかったので第一志望にN女子大と書いておいた。
そうして皆で勉強して、第一志望のN女子大に揃って合格することができた。
その時はみな我を忘れて大きに喜んだものである。
479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:26:38.32:5+sraPcA0
さて、進路も決まったものの、やはり気にかかるのは卒業後の軽音楽部と猫娘のことである。
卒業式が終わりいつもの部室へ集まり、茶を飲んでいると、くだんの猫娘がやってきた。
紬嬢が「おかけなさい」と着席を促すと、でこ助が今後どうするかと尋ねる。
猫娘は気丈にも心配ないと振舞うが、そのうち涙をぽろぽろこぼし始めた。
484:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:36:27.63:5+sraPcA0
どれ、ひとつ慰めてやろうと、梓のために紬嬢が書き下ろした曲を演奏してやった。
すると、泣きやんだばかりか、あまり上手くないですね、などと生意気を口にする。
相変わらずの猫ぶりである。これなら一人で置いても問題はあるまい。
ことによると、すでに入部する人間の見当をつけているのかもしれない。
これに安堵した私たちは後ろ髪をひかれながらも、懐かしい校舎を去っていった。
その後は相変わらず四人で楽器隊を組んで、まあまあ楽しくやっている。
演奏がたいへんうまいと学内でももっぱらの評判である。
猫娘が卒業したらまた五人で演奏しようと皆で約束した。
だからサイドギターの位置は空いたままである。
おわり
485:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:37:50.85:6G+b0s+n0
いい感じに決まったな
491:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:38:34.05:q/qwEhA20
乙!
おもしろかったぜ
501:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:42:48.04:683wV7au0
正直最初はネタで終わると思ってたけど想像以上に面白かったよ
511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:46:55.18:GyJ9L0guO
いいダイジェストだった
518:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 00:55:48.91:5+sraPcA0
ちょっと駆け足でしたが、最終回放送に間に合ってよかったです。
支援や保守やコメントをくれた方、ありがとうございました。
何度もこれ↓を貼ろうと思ったのですが、おかげで思いとどまることができました。
私の家でクリスマス会をすることになった。
かくし芸も盛り上がり、宴もたけなわといったところで
梓がうっかり顧問のマドンナの飲んでいたビールを飲み干してしまった。
みなが呆気に取られていると、いい気分のままふらふらとどこかへあるいて行ってしまった。
でこ助に、梓はどこへ行ったのだろう、と聞いてみると
なに、すぐに戻ってくる。厠にでも行っているのだろう、と存外呑気なものである。
それならしばらくほうっておこう、とこちらも呑気に構えていると
その後何分かして、風呂場のほうでありがたいありがたいと呟く声がする。
何事かと風呂場へ行ってみると、気の毒なことにツインテールの土左衛門が浮いていた。
その後梓は丁重に葬られ、供養された。
梓の墓は小日向の養源寺にある。
おわり
525:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 01:00:44.17:7Y+Q2ijF0
>>518
迷亭先生…
526:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 01:01:16.72:NAPSOA4M0
>>518
ひでえwwww
527:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 01:01:21.18:NVO213k50
>>518
ちょwww
吾輩猫のラストwww
吾輩は猫であるって最初10ページと最後の5ページだけ読めば十分だよな
546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 02:38:22.82:6AGkDAC90
良スレ乙
久々に夏目漱石の本借りてみようかな
続けたまへ
そんな私も高校にあがると、なにか部活に入ろうかと思い立った。
とはいえ運動は苦手であるし、文化系の倶楽部というのもとんと見当がつかぬ。
結局どこに入るか決められないままそのままにしてあったのであるが
ある日、同級生の和から「きみ、そのままじゃニートになるぜ」と言われてしまった。
部活をやっていないだけでニートもないものだ。
ここの部分はあの作品かとニヤニヤしながら見てる
そうして、しばらく考えあぐねていたのだが
ある日、掲示板を見ていると軽音楽部という張り紙が目に付いた。
軽音楽、というものはどういうものか解せぬが軽い音楽と書くくらいだから
大方口笛でも吹くんだろう。気楽なものだ。
こう見えても幼稚園の時分にはカスタネットの演奏で褒められたこともある。
どれひとつやってみるかと入部届けを出したのがさっきのことである。
昼飯を食っていると、和がやってきて「きみ、部活は決めたか」と問うので
「軽音楽部に入った」と答えると大変驚いて
「それならギターは弾けるのか」と言う。
私は「なに、カスタネットができるから心配はない」と答えておいた。
放課後、軽音楽の部室である音楽室へ向かった。
和には心配ないと言ったが、実際扉を前にすると気が重いものだ
なかなか入れずにいると
「きみ、軽音部になにか用か」と声をかけられた。
どうやら軽音楽部の部員らしい
カチューシャで前髪をあげ、額をぴかぴかさせている。
返答しかねていると
「もしかすると、あなたが平沢唯か」と問うので
「そうだ」と答えると
「やはりそうか。ギターが堪能だと聞いている。さぁ、入りたまえ」
あらぬ尾ひれがついている。
これはとんだ勘違いの勘太郎、いやでこっぱちのでこ助だ。
面食らっていると、でこ助に部室に引っ張られ、着席させられた。
テーブルに着くと、他にも二名の部員が座っている。
そのうちの一人、西洋人風の容姿の大変美しい娘が紅茶とケーキを持ってきた。
喫茶店じゃあるまいし、学校でケーキもないものだと思ったが
せっかく出されたのだから、と勧められるままケーキを口にした。
なかなかうまい。これほどのケーキは銀座の一流店でしか買えまい。
この紬という娘は、おおかた、親が金持ちなんだろう。
口ひげはやしてそうだなこの唯は
もう一人は長身に黒髪。これもなかなか綺麗な顔立ちをしている。
さっきからやたらと西洋人の名ばかり口にする。
ジミーとは誰のことか知らないが、知らなくても困らないから黙っておいた。
しかしここにいる皆が私のことをギターが弾けると勘違いしているには閉口した。
このまま勘違いさせるのも騙しているようで気分が悪い。
思い切って「ギターなど弾けない」と言ったところ
一同落胆の様子であったが「それでもいいから入部してくれ」と言う。
茶店の看板娘じゃあるまいし、いるだけでいいなんてことがあるものか。
さっきから見ていればケーキを食べてお茶を飲んでばかりだ。
軽音楽の名を改めて放課後喫茶同好会とでもするがいい。
そんなことを思っていると
「せめて私たちの演奏を聴いていってくれ」とくだんのでこ助が口を開いた。
ものはためしだ。聴くだけ聴いてみようかしらんと「それじゃ頼む」と答えた。
曲目は「翼をください」いかにもガールズバンドらしい安易な選曲だ。
聴いてはみたがどうにもうまくない。これではまるでちんどん屋だ。
これなら私でもできそうだ。演奏が終わった後その旨を伝えると
少し気を悪くしたようであるが私の入部を快く引き受けてくれた。
ちんどん屋www
そうして軽音楽部に入った私だがカスタネット以外の楽器は馴染みがない
どの楽器をはじめたものか思案していると
紬嬢が「ギターをはじめてみたらどうか」と言うので
それなら、とギターの担当に決まった。
しかし、ギターというものがいくらするのか、まったく見当がつかぬ
軽音楽部の連中に相談したところ
今度の休日にギター選びに楽器店へ行こうということになった
でこ助
黒髪
紬嬢
あずにゃんはどうなるかな
>>102
名前はまだない
とは言うものの、ギターの値段もばかにならない。
聞けば安いものなら1万円台だが高いものになると数十万もするらしい。
なけなしの貯金をかき集めてみたが、これでは足しにもなるまい。
どうしたものかと考えていると妹の憂がやってきて
「お姉ちゃんどうしたの?」と尋ねるので
これこれこういう理由でと話して聞かせると
憂が「私も今は持ち合わせがないから両親に頼んでみたらどうか」という。
果たして小遣いを前借りさせてくれるだろうかと迷っていると
「私からも頼んであげます」というので一緒に金を用立ててくれるよう母に頼んだ。
妹の口添えもあり、5万円を手にした私は意気揚々と待ち合わせ場所へ向かった。
途中の店でいろいろ買い物をした後、楽器屋へ向かう。
どれがよいかと選別していると
少し大ぶりではあるがとても趣味のよいギターを見つけた。
なんでもレスポールとかいうらしい。
たいへん気に入ったが25万円もするんじゃ、と逡巡していると
紬嬢が寄ってきて「これが欲しいのか」と問うた。
しかし持ち合わせがない、と答えると
しばらく思案していたようであるが、思い立ったように帳場へ向かい
程なくして満面の笑みで戻ってきた。
「それを5万円で売ってくれるそうだ」
驚いてよくよく聞いてみるとこの店は紬の父の系列店であるらしい。
なるほど店員も値引きするわけだが、しかし8割も値引きさせるとは豪胆なものだ。
とにかく、ありがとうと礼を言って支払いを済ませて店をあとにした。
さて、買ったはいいが弾き方がわからぬ。
途方に暮れているとジミーの黒髪がギターコードの教本を貸してくれた。
案外いいやつだ。名は澪というらしい。
早速ギターコードの練習にとりかかったもののなかなかうまくいかない。
そうこうしているうちに中間考査の時期となった。
和には勉強しなくてもいいのかと聞かれたが
何、今までだって勉強してなかったんだから、たいてい大丈夫だろうと言ったらそれぎり何も言わなくなった。
勉強そっちのけで練習していると、えらいものでだいたいのコードは覚えてしまった。
憂には「おねぇちゃんは集中するとすごいね」と褒められたが
試験の結果は散々で、成績順位は下から勘定したほうが早かった。
季節がすぎるのは早いもので学校が夏期休暇に入った。
澪の提案で合宿をすることに決まった。場所は紬嬢の別荘だそうだ。
なんでも本当に大富豪の娘らしい。
しかし海辺のスタジオつき別荘とは豪勢だ。聞けばプライベートビーチだと言う。
それならおもいきり遊んでやろうと水着を新調して、楽しみに出かけていった。
けいおんを知らない俺からすればいいダイジェスト
8月の太陽の光を受け、きらきらとひかる水面が眩しい。
憂も一緒に連れてくればさぞ愉快だろうと思いながら
学園祭に向けての練習をしたがる澪をよそに大いにはしゃいだ。
そんなこんなで夏期休暇も終わり、いよいよ文化祭という段になって
ある問題に気付いた。軽音楽部は正式な届出をしていなかったのだ。
申請をするにはまず顧問を探さねばならぬ。
話し合いの結果、山中さわ子という教師に顧問を頼むことにした。
山中先生と言うのはなかなかの美人で、生徒からの人気も高い。
いわゆるマドンナ教師というやつだ。
はたして顧問になってくれるか心配であったが、でこ助の計略により顧問になることを承諾してくれた。
そのときはでこ助のくせに悪知恵が働く、と感心したものだ。
とにもかくにも正式に部として認められ
文化祭での発表に向けて本格的な練習が始まった。
なんか唯が賢く見えるなw
発表のためには歌い手を決めなければいけない。
皆が歌詞を書いた澪を推したが本人が頑として聞き入れない。
澪によれば、自分は胃弱で、人前に立つと腹が痛くなる。
歌など歌ったら死んでしまう、ということだった。
それならと私が立候補したものの、演奏しながら歌う、というのはどうしてなかなかむずかしい。
放課後、マドンナの家で稽古をつけてもらうことになった。
当日の朝、目が覚めてみると喉がいがいがする。
どうもおかしいと思いながら洗面所に立ち、うがいをする。
ひどく沁みる。どうやら練習をしすぎたようだ。
部室でその旨を打ち明けると一同驚いたが、仕方がないと澪を歌い手に立てることとなった。
発表は大成功に終わり、私たちは大いに満足した。
ただ、舞台袖に下がる際、転倒してショーツを見られた澪はひどく落ち込んでいたようである。
あっというまに季節は巡り、私たちは2年生になった。
妹の憂も無事高校に合格し、晴れて同じ高校の後輩となる。
春といえば新入部員。私たちも新入生獲得に向けて動き出した。
着ぐるみを身につけ、チラシを配ってみるが、なかなか興味を持ってくれない。
どうしたものかと軽音楽部一同、悲嘆に暮れていると
妹の憂が軽音楽部に興味があるという友人を連れて部室にやってきた。
うらなりのなすびのような顔をしている。名を純というらしい。
うらなりでも新入生には違いないと、私たちは英国給仕の服装で出迎えた。
うらなりかわいいようらなり
この英国給仕の衣装はマドンナの力作であるが、これがまずかったらしい。
ごわごわした生地が邪魔をしてうまく演奏が出来ない。
仕方なくジャージに着替えることにしたのだが、脱ぐのに非常に難儀した。
あまりの体たらくにうらなり女史も呆れてしまったようである。
これでは入部も望み薄だろう。
デコ助などは、「もとはといえばむやみに衣装を着せたがるマドンナの責任だ。
あんな顧問なら沢庵石をつけて海の底へ沈めちまうのが軽音部のためだ」などと憤っていた。
くよくよしても始まらない、新入生歓迎の演奏で部員を募ろうと腹を決め、舞台に臨む。
幕が上がる前、澪にも歌い手になることを勧めてみたが、やっこさん相変わらずの胃弱とみえて頑なに拒むので
しかたがないから私が全部歌うと引き受けて、幕が開いた。
出だしの歌詞を忘れこそしたものの、演奏は大成功に終わった。
ここらで一番良い出来だろうと密かに喜んでいたのであるが
どういうわけか、一向に入部希望者が現れない。
かくなるうえは妹を入部させるかと算段を立てていると、たいへん小柄な娘が部室へ入ってきた。
聞けば、入部希望だという。
ギターは出来るか、ちと弾いてみろとギターを渡してみるとなかなかの腕前だ。
これはいい後輩が入ったものだと一度は喜んだものの
部活中の飲食を否定したかと思えば翌日にはあっさり受け入れたりと気まぐれなのには閉口した。
一度デコ助に「あいつはにゃあにゃあ鳴けば猫も同然なやつだ。」と言ったところ
「間違いない。案外正体は化け猫かもしれない」と答えた。
軽音楽部の中ではデコ助が一番馬が合うようだ。
チョビ髭をつけてすまし顔をした唯が軽音楽部の面々に交じってこんなことを考えてると思うとどうしても笑う
そして再び夏期休暇がやってきて、新入部員の梓を交え、夏合宿へ行くことになった。
また紬嬢の別荘であるが、今年は昨年のものよりはるかに大きい。
この上まだ大きい別荘を持っているというのだから恐れ入る。
その夏も私たちは大きに遊んだ。
中でも梓のはしゃぎようはすさまじく、とうとう日焼けで真っ黒になってしまった。
到着した時には、先に練習をしましょうと盛んに言っていたのが嘘のようだ。
相変わらずの気まぐれだが堅物よりはいくらか扱いやすいと思い直し、よしとした。
夏期休暇も終わり、いよいよ学園祭の練習という段になってギターの調子が悪くなった。
聞けば、ギターというものは細かく手入れをするものらしい。
言われてみれば、買ったはいいが一度も手入れなどしていない。
元来、暇さえあればゴロゴロしていたい性分であるから、細かい手入れや掃除などは気が向かない。
これではギターも調子が悪くなるはずだと大きに反省して楽器店に持っていって直してもらった。
修理費は紬嬢の特権で無料にしてくれた。なるほど、お嬢様というのは便利なものである。
ギターは元の調子を取り戻したものの、その日からデコ助と胃弱の仲が妙な雲行きになってきた。
初めはいつものじゃれあいかと思っていたが、胃弱は本気で嫌がっているふうである。
なにやら剣呑である。今まで喧嘩らしい喧嘩はしてこなかっただけに、事態は深刻だ。
そう心配していると、翌日、デコ助は風邪をひいて欠席していた、大方、デコの冷えすぎだろう。
なにやら胃弱が見舞いに行き、仲直りしたらしい。人騒がせにも程がある。
デコの冷えすぎ…
そう思っていたら今度は私が風邪をひいてしまった。
舞台で着る衣装で一日過ごしていたからだろう。まったく、顧問の作る衣装を着るとろくなことにならない。
妹の憂が、よせばいいのに、私に成り代わって軽音楽部へいったようであるが、結局ばれてしまった。
その後、一度は軽音楽部へ顔を出したものの、どうも体調が思わしくない。
胃弱に、当日まで来なくてよいから、しっかり養生するようにと申し渡された。
胃弱の癖にいやに仕切るやつだ。
うんと眠り、栄養をとってみたが、なかなかよくならない。
こうして部屋で鼻をかんでばかりいるのもつまらない。
つまらぬが風邪を治さなければいけないことには代わりない。
うんうんうなっていたが、不思議なもので、当日の朝にはすっかり治っていた。
こうして意気揚々と部室へ向かったのであるが、途中でマドンナに出くわした。
「きみ、風邪の方はもういいのか」と尋ねるから
「おかげさまで、すっかりよくなりました。」と嫌味たっぷりに答えてやったが
やっこさん悪びれる様子もなく
「それなら一度職員室にお寄り。衣装を改良したから。」とこうである。
もう衣装はたくさんだと思ったが、渋々ついていくことにした。
防寒仕様というから少し期待していたら、なんのことはない、襟元に綿をつけただけの簡素なものだ。
ためしに着てみたら、これが思いのほかあたたかい。
これなら風邪をひく心配はない、と改めて軽音楽の部室へ向かった。
胃弱にはまず初めに部室へ来るべきだ、との抗議を受けた。もっともである。
梓猫などは大変ご立腹の様子であったが、撫でてやると落ち着いたようである。単純なものだ。
しばらくして、さぁ舞台へ向かおうかと腰をあげたが、ギターが見当たらない。
妹の憂が家へ持って帰ったらしい。
これは一大事と、その間の代役をマドンナに任せ、家へ走ってギターを取りに行った。
吾輩はスッポンモドキである
ギターをうんしょと背負い、来た道を引き返す。
その道中で今までのことを思い返してみる。
入学したての時分、どの部に入ろうか決めかねていたことを思い出した。
あの頃の自分に会ったら、なに、案ずることはない。じきにやりたいことも見つかるだろう、とでも
言ってやりたい気分である。悪くない心持だ。
そうして走って、なんとか次の演奏に間に合わせることが出来た。
でこ助に胃弱、紬嬢に猫娘も笑顔で迎えてくれた。
私たちの演奏は大盛況のうちに終わった。
これが私たちの2年生までの時分の話である。
第一期 おわり
月日のたつのは早いもので、私たちもとうとう三年生になってしまった。
軽音楽部の同級生がみな同じ学級だというので、これは何かあるなと思っていると案の定、マドンナが担任であった。
何にせよ、かれらと同じ学級になれば便利には相違ない。
宿題の写しも頼めるし、修学旅行もこの面々で行けば楽しかろうと喜んでいたのだが
胃弱が「きみ、そろそろ進路のことも考えなきゃいかんぜ」と言い出した。
なるほど、三年生といえば進路決定の時期である。真剣に考えないと和君の言うとおりになるかもしれない、と
少し心配になったが、もともとが楽天家であるから、何とかなるだろうと思い直し
なに、そのうち考えるから心配いらない、と答えておいた。
とにかく、今は新入生を勧誘することが先決だ。
このままだと来年の部員は猫娘一人になってしまう。ことによると、廃部になるかもしれない。
これはいかんと部員獲得に乗り出したのであるが、なかなかうまくいかない。
心のどこかで昨年のように演奏を披露すれば誰かしら入るだろうとたかをくくっていたのであるが
演奏が終わって数日しても入部希望者が現れない。
さすがの猫娘も少し落ち込んでいたようであるが、今年いっぱいはこの面々で活動しようと開き直ってしまった。
猫だけあって、さっぱりしたものである。妙に感心した。
しばらくたって、修学旅行へ行くことになった。
京都に行くというので大原の三千院やら三十三間堂を見物できるかと期待していたのであるが
いつもの調子で楽器屋に入ってみたり、猿を眺めたりといい加減なものだ。
紬嬢などは大いに張り切ってみなに枕を投げつける始末である。
結局観光地などはほとんど回らず、デコ助とはしゃぎまわって教師にこっぴどく叱られた。
猫娘の土産にはキーホルダーを買って帰った。随分喜んだようである。
梅雨もあけ、期末試験もどうにかやっつけると、いつのまにか季節は夏になった。
デコ助の誘いもあり、夏期講習を受けることにした。胃弱と紬嬢も一緒だ。
勉強だけでは体に毒である、息抜きも必要だということで遊びにもいろいろ出かけた。
夏の歌謡祭にも行った、夏祭りでは花火も見た。
ほかにもいろいろ行ったが、きりがないのでこのくらいにしておく。
夏休みも終わり、秋になると、早いものでもう学園祭の準備をする時期である。
とはいえ、受験勉強をしながら、学校の行事をこなしながらであるから、非常に骨が折れる。
マラソン大会では途中にあるトミ婆さんのところで茶を飲んでいたらたいへん叱られた。
学園祭の学級発表では演劇をやった。デコ助と胃弱が大活躍したようである。
発表前日には泊り込みで練習をして、本番に臨むことにした。
マドンナも張り切って衣装を作っているようで、好きにするがいいと取り合わずにいたが
翌日、出来上がった衣装を見てみるとなかなか悪くない。今回ばかりはマドンナの衣装をきて演奏することに皆が賛成した。
幕が開くと、同じ衣装を着ている生徒が何人かいる。どうやらマドンナの発案らしい。
珍しく粋なことをする、と感心しながらも順調に演奏を進め
最後の曲目には妹の憂のために書いた曲を披露した。妹もいたく気に入ったようである。
二期駆け足すぎwww
演奏は今までで一番の盛り上がりを見せ、舞台は幕を下ろした。
演奏後、みなで部室へ集まる。一同満足の様子であったが
考えてみれば、もう高校での学園祭はないのだ、と思うとなんだか胸の奥がしんしんする。
出すまいと思っていた涙が溢れてくるには閉口したが、他の面々も同様らしい。少ししんみりしてしまった。
しかし、そうしてばかりもいられない。文化祭が終われば本格的な受験の時期である。
一人にさせては猫娘が気の毒であるからと、軽音楽の部室で勉強をすることにした。
第一志望は四人が一様にN女子大としている。
これは進路希望をどこにするか悩んでいた際に胃弱の提案で決まった。
胃弱などはN女子大を受験するために推薦入試を蹴ったぐらいだ。ずいぶん思い切ったことをする。
私は、小学生が小便に行くわけじゃあるまいし、みなが一緒でなくてもよいと思ったが
ほかに行きたい学校もなく、別段断る理由もなかったので第一志望にN女子大と書いておいた。
そうして皆で勉強して、第一志望のN女子大に揃って合格することができた。
その時はみな我を忘れて大きに喜んだものである。
さて、進路も決まったものの、やはり気にかかるのは卒業後の軽音楽部と猫娘のことである。
卒業式が終わりいつもの部室へ集まり、茶を飲んでいると、くだんの猫娘がやってきた。
紬嬢が「おかけなさい」と着席を促すと、でこ助が今後どうするかと尋ねる。
猫娘は気丈にも心配ないと振舞うが、そのうち涙をぽろぽろこぼし始めた。
どれ、ひとつ慰めてやろうと、梓のために紬嬢が書き下ろした曲を演奏してやった。
すると、泣きやんだばかりか、あまり上手くないですね、などと生意気を口にする。
相変わらずの猫ぶりである。これなら一人で置いても問題はあるまい。
ことによると、すでに入部する人間の見当をつけているのかもしれない。
これに安堵した私たちは後ろ髪をひかれながらも、懐かしい校舎を去っていった。
その後は相変わらず四人で楽器隊を組んで、まあまあ楽しくやっている。
演奏がたいへんうまいと学内でももっぱらの評判である。
猫娘が卒業したらまた五人で演奏しようと皆で約束した。
だからサイドギターの位置は空いたままである。
おわり
いい感じに決まったな
乙!
おもしろかったぜ
正直最初はネタで終わると思ってたけど想像以上に面白かったよ
いいダイジェストだった
ちょっと駆け足でしたが、最終回放送に間に合ってよかったです。
支援や保守やコメントをくれた方、ありがとうございました。
何度もこれ↓を貼ろうと思ったのですが、おかげで思いとどまることができました。
私の家でクリスマス会をすることになった。
かくし芸も盛り上がり、宴もたけなわといったところで
梓がうっかり顧問のマドンナの飲んでいたビールを飲み干してしまった。
みなが呆気に取られていると、いい気分のままふらふらとどこかへあるいて行ってしまった。
でこ助に、梓はどこへ行ったのだろう、と聞いてみると
なに、すぐに戻ってくる。厠にでも行っているのだろう、と存外呑気なものである。
それならしばらくほうっておこう、とこちらも呑気に構えていると
その後何分かして、風呂場のほうでありがたいありがたいと呟く声がする。
何事かと風呂場へ行ってみると、気の毒なことにツインテールの土左衛門が浮いていた。
その後梓は丁重に葬られ、供養された。
梓の墓は小日向の養源寺にある。
おわり
>>518
迷亭先生…
>>518
ひでえwwww
>>518
ちょwww
吾輩猫のラストwww
吾輩は猫であるって最初10ページと最後の5ページだけ読めば十分だよな
良スレ乙
久々に夏目漱石の本借りてみようかな
コメント 4
コメント一覧 (4)
個人的には山田風太郎調けいおん!とか夢枕獏調けいおん!が読んでみたい。
ひどい言い様www