- 3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 09:46:35.52:R2n0xqLr0
憂は好きな人、いないの?
テレビでやっていた、よくある恋愛ドラマ。
バラエティ番組が終わり、そのまま始まったそれを、私と憂は何の気なしに見ていた。
普段はあまり興味は無いが、たまに見るとこれはこれで面白く、中途半端な回だったにも関わらず、結局最後まで見てしまった。
そして私は、本当に深い意味はなく、聞いてしまったのだ。
全ての始まりとなった冒頭の、問いを。
「え…?」
この時、憂はどんな顔をしていたのだろう。
どんな思いをしていたのだろう。
食器を片付けていた憂の手が止まり、戸惑うその常にない様子。
賢く聡い憂が、こうして感情を顕にする機会なぞ早々ないのに、愚鈍な私は、この時何も気づけなかった。
だから勿論。
そんな己のせいで、このさきどれ程、憂を傷つける事になるのかも、当然気づけなかった。
とても、悔やまれる。
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6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 10:31:44.89:PxXaEkm80
「ど、どうしたの急に?…」
憂が苦笑いしながら返した、私としては本当に深い意味は無かった
「んー?やっぱり高校生だしそういうの興味ないのかなーって…」
私はテレビを見ながら答えた
本当に何気ない、日常の会話。
「ッ………お姉ちゃんは……お姉ちゃんはいるの…?」
もし、もしもこの時憂の動揺に気づければ
憂を傷つける事も無かったかもしれない
もしかしたらこの時…ううん。
きっと憂は必死な思いでその言葉を吐き出したんだと思う
「わたし?、私は無いかなー、それに女子校ってのもあるし機会も無いよー」
当然の答えだった。
「ッ!……そ、そうなんだぁ、私も無いかな今のとこは…」
ごめんね憂、鈍い人間でごめんね、この時から始まったんだよね
でもね、後悔はしてないよ、だって……
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 12:14:43.47:R2n0xqLr0
その日から、憂の態度がほんの少しだけ、変わった。
変わらず良い子だった。
変わらず優しいかった。
変わらず気がきいた。
変わらず笑顔だった。
けれど、あまり呼ばなくなった。
「お姉ちゃん」、と。
別に呼び名がなくても、会話は勿論成立する。
私も変わりなく、応じる。
しかし明らかに、あるはずのピースがそこには無いのは、確かだった。
憂は、本当に良い子だ。
私に心配させるような事は、きっとしない。絶対にしない。
するぐらいなら、一人で耐え忍ぶ方を選んでしまうような、そんな子なのだ。
そんな憂が、こんな分かりやすく不自然な事を、するはずがない。
けれど、している。
この矛盾から分かる事は、今は一つだ。
憂は自分のしている事に、気づいていない。
その事実は色んな意味で、私を愕然とさせた。
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 18:12:23.13:R2n0xqLr0
「ねぇ、」
その後に続くはずだった呼び名を、無意識に飲み込んだ憂。
けれど、それに対して「どうしてお姉ちゃんって呼んでくれないの?」と問うのは、何故か躊躇われた。
触れてはいけない、気がして。
「なぁに?うい~」
ならば、私は気づかないふりをしていなければならない。
どことなくぎこちない憂の笑顔に、いつものように答える。
「あのね、相談があるの…いいかな?」
どきん、と心臓が波打った。
それは緊張なのだろうか?それとも。
けれど、可愛い妹に頼られるのは、嬉しい。私で出来る事なら、何でも聞いてあげたい。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 18:12:40.11:R2n0xqLr0
「もちろんだよ~!どしたの?」
傍に座る様に促せば、憂が静かにソファに腰を下ろす。
その途端に、ふわりと香ったシャンプーの匂い。
同じ物を使っているはずなのに、その芳香に、少し意識を持っていかれてしまう。
なんだろう、この、感覚は。
「…あのね、」
「うん」
そんな私には気づかずに、少し目を逸らしたまま、憂が話始める。
強張った頬が可哀想で、思わず撫でてあげたくなるのを我慢しながら、私は先をまった。
「…友達にね、相談、されたんだけどね?」
「うん」
そして、再度開いた、憂の唇。
今なら分かる。
「…女の人を、好きになっちゃったんだって…」
憂がその口からこの短い言葉を吐くのに、どれほどの緊張と、どれほどの勇気と、どれほどの覚悟が要ったのかを。
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 20:52:48.30:PxXaEkm80
「え?……好きって、女の子が女の子の事を?」
私はなんで憂がこんな事を私に聞くのかわからなかった。
けれど、私の心臓は確実に鼓動を早めていた
このとき、自分では気づかなかったのか
それとも、気づきたくなかったのか。
「う、うん…なんていうか、やっぱり…変じゃない?接し方とかわからなくって、ヘヘへ」
憂は苦笑いしながら言葉を繋げた、その表情がどこか、どこか悲しそうに見えたのを覚えている
でも私はなんて言ったらいいかわからなかった。
「うーん、私もそういうのは疎いからねぇ……」
事実、恋愛など無縁の人生の私に。
しかも女性同士の関係など見当もつかなかった
「やっ、やっぱり…気持ち悪い、とか……思う?」
憂は拳をギュッ握り締めてか細い声で呟いた
「んー、私は別に思わないけどなぁ…だって好きになっちゃったんだし、しょうがないんじゃないかなぁ」
「ほっ……本当?本当に!?」
ズイッと憂がこちらに身を乗り出して聞いてきた
「ッッ!……憂ぃ、いきなりこっち来るからビックリしたよぉ……」
私は憂の顔が視界いっぱいに広がったとき、自分の心臓が跳ね上がった
私はヘラッとして言ったが、自分でもうまく笑えてないのがわかる、でも理由はわからなかった
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 22:18:13.98:zIuTZ/02O
私は間近に迫った憂の顔を見る。
………可愛い、というか凄く綺麗だ。共学の学校に通っていたら色々と大変だっただろう。
幼い頃から姉妹でそっくりだと言われ続けた。今でもそうだけど、全然違う、と思う。
憂は「オトナ」の顔をしている。もっと言うなら「オンナ」の………。
それに比べて自分は「コドモ」だ。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 22:28:15.62:zIuTZ/02O
一歳しか離れていないのに、この差はなんだろう。
どちらが姉か解らない、と言われる事もある。確かに憂の方が外見、内面とも大人っぽいが、そんな話じゃない。
何か決定的な違いを感じた。
憂「………?」
改めて妹の顔を見る。
………本当に綺麗だ。おそらく街ですれ違う男の子達も高確率で振り返っているだろう。
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 22:37:54.14:zIuTZ/02O
しかし、この憂の表情、どこかで見た事がある様な………、それも何回も………。
唯「………!」
そこまで考えて思い出した。憂の表情、雰囲気は、クラスで「好きな人が出来た~」と話をしている子と同じなのだ。
と言う事は…………、
憂に好きな人が出来た…………??
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 22:47:41.66:PxXaEkm80
私は動揺していた、実の妹を…綺麗と思った自分に。
憂の表情の答えに。
「憂……顔…近いよ」
「あっ……そのっ、ごめん……ごめんなさい」
憂はハッとすると乗り出した体制を戻して、謝ってきた。
それは、とても切実に、声に力は無くてもそれは伝わってきた
まるで…何かを恐れるように
「ははは、怒ってるわけじゃないんだからそんなに謝らなくてもいいのに~」
怒ってるわけじゃない、その逆。
酷い自己嫌悪だ、自分が情けなくて…
そう思っているのに胸の鼓動は収まらなくて…情けない。
「うっ、うん………さっきの事、本当?」
憂は目を合わせたくないかのように、下を向いて呟いた
「ん?…さっ、さっきの…?」
「うん…女の子同士でも別にいい……って」
また私の鼓動は早まった
もうこの原因には気づいていた、もう否定する事はできなかった
でも、それを認められるわけでは決して無い
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 22:49:06.01:PxXaEkm80
「…うん……いいと、思う……でもっ」
苦しかった、自分に嘘をつくのが、でも認めたくない
それでも私は言葉を紡いだ、自分に言い聞かせるように…
「それは…個人の自由だから…でも…っ……私には、考える必要の無い…事だよ」
言葉を吐き出した、心を吐き出さないように。
全部わかったんだ、認めたくないけど、この話は憂自身の事だって
それに、私自身の心も
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 23:30:29.50:PxXaEkm80
「えっ…それって……っ」
今までに見たこと無いような憂の表情、苦痛でもないし悲しさでもない。
もしくは両方だったのか
自分の事で精一杯で、気づけなかった
「言ったとうりだよ憂、その友達は応援してあげて、でもそれだけ、結局は関係の無い世界」
私は冷静に、、慎重に答えた。
できるだけいつもと通りに、不自然じゃないように
「そっ…そうだね、うん……伝えとく」
憂はどんな事考えてるのかな
ごめんね、駄目なお姉ちゃんで
でも憂のためだから、私は苦しくてもいいんだよ?
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 23:36:41.78:PxXaEkm80
「じゃあ私疲れたからもう行くね」
私は憂の顔を見ないようにして出口へ向かった
「…………っ…!」
憂は何か言いたそうだった
でもそれを聞くのが恐かった
「あ、後今日はご飯いらないや、ごめんね、もう休むよ」
「えっ……うん、わかった…」
私は振り返らずに部屋を出た
憂はどんな顔してたのかな。
それは私にはわからなかった
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 23:39:53.85:PxXaEkm80
ふー」
ドサッと私はベットに倒れこむ
疲れたよ……。
本当に、私はこれから大丈夫なのだろうか
憂のお姉ちゃんとしてがんばれるだろうか
「……ッ…ヒッ……ヒック……」
なんで涙がでるの?
憂のために、憂の迷惑にならないように
私は苦しくても大丈夫って自分で決めたのに
……なんで
「……グスッ…ぃ……憂ぃ…」
苦しいよ
悲しいよ
こんなに苦しむなら
この気持ちに気づくべきじゃなかった
今日はもう寝よう
「おやすみ………憂」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/29(水) 23:41:03.87:PxXaEkm80
よし、続きパス保守
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:03:00.35:vQTxb3WH0
リレー形式だし伏線っぽいのは後々めんどくさいだろ、でも完結はさせてほしいな
唯憂は至高ですねはい
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:03:34.70:k8Ia5adhO
朝。
「……おはよう」
「……おはよう」
昨日のことがあるので気まずいよ。
でも、何も聞けない。憂にも、私と同じ様に泣いた跡があったから。
やっぱり私は駄目なお姉ちゃんだね。
でも、そんな事ばかり考えてちゃ本当に駄目になっちゃうよ。
ここは、やっぱり私から何か話さなくちゃ。
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:22:13.11:k8Ia5adhO
「……ごめんね。昨日は変な事相談しちゃって」
「……え?」
私が話そうとする前に、憂に話しかけられた。
「………う、うん。私こそごめんね。ちゃんと相談にのれなくて」
「もうその事はいいの!早くご飯食べないと学校に遅れちゃうよ?」
そう言って憂は笑った。
「!! あ、あの………」
「何?」
「ご、ごめん………何でもない………」
私はそれ以外憂に何も言う事が出来なかった………。
憂がさっき見せた笑顔は………、見ている方が辛くなってしまう位に悲しい笑顔だった………。
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:38:26.28:vQTxb3WH0
放課後。
「おい、今日どうしたんだ?」
そういって話しかけてくるのは律ちゃん
いつも冗談言ってみんなを笑わせてくれる
私も律ちゃんといると私も楽しい……けど
「んー?何が?」
今は楽しくない
ううん、今日はずっと楽しくない
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:40:37.37:vQTxb3WH0
「何って……お前今日元気ないぞ?話しかけてもボケーッとしてるしみんな心配してるぞ?」
そういって周りを見渡す
澪ちゃんもムギちゃんも心配そうにこちらをみていた
…ごめんね
「なんでもないよー、ちょっと考え事してただけだよー」
嘘。
私は何個嘘をついて自分を隠さなきゃいけないんだろ
そう考えるとまた不安でつぶれそうになる……ごめんねみんな
「………そうか……?」
「うん、大丈夫だよー」
私はニヘラっと笑ってみせた
そうだ、この気持ちは隠さないと
ううん、自分でもわからないくらいに抑えないといけないんだ
「唯……」
「唯ちゃん……」
ムギちゃんと澪ちゃんがこちらをみながら名前を呟いた
律ちゃんはこちらも見たまま何も言わない
「…………ふー」
律ちゃんがため息のように息を吐き出す
「唯………嘘なんだろ?」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:45:38.78:vQTxb3WH0
「………へ…?」
一瞬何を言われたのかわからなくて…
「無理してるんだろ?みんな知ってるよ、その目も寝不足じゃなくて泣いた跡なんじゃないのか?」
私はビックリして言葉が出なかった
「………ちっ、ちがうよぉ、これはただの寝不足」
「…唯ちゃん、私たちには言えないことなの?」
「そうだぞ、私たち……仲間だろ?」
みんな真剣なまなざしだ
私だけがごまかすようにヘラヘラしている
なんで……なんでみんなそんなにやさしいの?
駄目だよ、この気持ちは無かったことにしなくちゃいけないんだよ
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:50:55.77:vQTxb3WH0
「みっ、みんな変だよ?…ほんとになんでもない」
ガチャ
私がいいかけたとこで扉の開く音がした
あずにゃんだ、一年後輩の。
軽音部の仲間
「あっ、あずにゃ~ん!」
私は話をそらすためあずにゃんの元へ駆け寄った
これでこの話は終わり、そう思っていた
「唯先輩」
私が駆け寄る前にあずにゃんが口を空けた
「ん?何々あずにゃん」
まだ後ろでは律ちゃんたちが心配そうに見ている
なんでも、なんでもいいから違う話題に_
「憂と………何かあったんですか?」
「………え……」
自分でも顔がこわばるのを感じた
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:54:57.82:vQTxb3WH0
「な……いきなり何言って」
「まじめに聞いてください!!」
そういって叫んだあずにゃんは、どこか辛そうで
みれば目には涙を浮かべてるのに気づいた
「唯……憂ちゃんの事なのか?」
律ちゃんが私の様子をみて問いかけてくる
「えっ………ち、ちがうよぉ」
声が震える
笑おうとしても笑えない
「そうなんだな唯…」
「唯ちゃん」
みんな…違うんだよ
違うんだよ、憂は関係ないんだよ
私だけが悪いんだよ
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 00:59:19.38:vQTxb3WH0
「梓、話…聞かせてくれないか?」
澪ちゃんはそう言ってそういってあずにゃんを椅子に座らせた
「………」
私はただ、立ち尽くすしかなかった
もう私の心は限界で、今何を吐き出してしまうかわからない
自分が恐かった
「はい……実は」
あずにゃんがポツリポツリと説明しはじめた
憂に元気が無かった事
私の話題を出すとなぜか話題をそらしてしまう事
憂に聞いても何も教えてくれない事
それでも確実に憂がいつもと違う事
そしてそれを親友である自分がどうにも出来なくて情けない事
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:04:10.56:vQTxb3WH0
私は胸が痛かった
苦しいを通り越して
死んでしまうんじゃないかって思った位に
「そうか、ありがとな梓…」
そういって澪ちゃんはあずにゃんの頭をやさしく撫でた
「うぅ…先輩…私、親友なのに……何もできなくて、弱ってる憂を見るのが辛くて……うわぁぁぁ」
あずにゃんは慰められて緊張が解けたのか澪ちゃんにしがみついて泣き始めた
ごめんねあずにゃん、全部私が悪いんだよ…
心配させてごめんね…
「唯…話してくれるか?」
「唯、仲間だろ?、お前をほうっておくわけにはいかないよ」
律ちゃんと澪ちゃんがこちらを向く
「っ……わっ、私は、本当になんでもっ」
息をするのが辛い、なぜこんなに苦しいのか
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:08:03.29:vQTxb3WH0
私が誤魔化そうとした時
ギュ
「唯ちゃん……無理しなくていいのよ、私たちがついてるから……ね?」
そういって抱きしめて……
やめて
やめてよ
そんなに優しくされたら、駄目だよ
私が悪いのに、みんなに
みんなに
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
私はダムが崩れるように
それまでの感情が全部流れ出すように
大きな声で泣いた
「よしよし」
ムギちゃんはニコニコして頭を撫でてくれる
その優しさが辛くて
嬉しくて、私は…
「わぁぁぁあああっうわぁぁぁぁああ」
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:15:08.08:vQTxb3WH0
「落ち着いたか?」
そう言ってカップを私の前にだして笑う律ちゃん
「……うん…ごめんね?」
結局私は落ち着くまで1時間は掛かった
これまで我慢した感情がせきを切ったように涙としてあふれだし
止まる事は中々無かった
「うふふ、いいのよ唯ちゃん、私たち、軽音部の仲間なんだから!」
そうニコニコしながら言うムギちゃん
私が泣いてる間ずっと。
ずっと慰めてくれたね、ありがとう
「じゃあ、話してくれるか?…憂ちゃんとの事」
「………」
澪ちゃんがまっすぐこっちを見た、心まで見透かされそうなくらい
その綺麗な目で。
あずにゃんは何もいわず、ずっと下にふいているままだ
心配かけて、ごめんね?
「ゆーい?」
律ちゃんが顔を覗き込んでくる。
「……うん、言うよ」
私ははっきりと
みんなに聞こえるように声をあげた
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:18:16.24:vQTxb3WH0
私は、順々に、確実に
昨日のお出来事は説明した
憂に相談された事
それまで感じたモヤモヤした気持ち
憂の話を聞いて気づいてしまったこと
勿論、私自身の思いも、理由も
その間みんなは喋らず、うまく話せない私をしっかりと見て
話を聞いてくれた
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:24:03.89:vQTxb3WH0
「大体……そんな感じ…」
私は話し終えると、みんなを見渡した
みんなそれぞれ何か思う事があるのか
なにか考えてるようだ
「………それで?」
律ちゃんが最初に口を開いた
「…?、何が?」
私はなにを聞かれたのかわからなかった
もう話すことはないはずだ
「いや、それで唯はどうしたいんだ?」
「えっ……?」
唐突に聞かれ私は戸惑った
私がどうしたいか?
……憂の、憂の迷惑になりたくないから…
「私は…憂の邪魔はしたくないから……憂に迷惑かけたくないから…」
そう、震える声で言葉を吐き出した
これが私のするべき事なんだ、これしかないんだ
「……それでいいのか?」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:30:18.47:vQTxb3WH0
「…だって、これしかないんだよ……これしか」
「唯…」
澪ちゃんがさえぎる様に話しかけてきた。
「なっ、なに?澪ちゃん…」
「このまま…このままだったら、唯が…ううん、憂ちゃんも苦しいだろう?」
そう言い聞かせる
わかっている、このままだったら私は駄目になる
けれど、私が駄目でも、憂だけでも………
そう思った
「わかってるよ…でも、どうしようもないじゃない!」
「……唯ちゃん、憂ちゃんの気持ちも考えてあげたら?」
私をなだめるようにムギちゃんが言う
憂の気持ち…?
わからない………わからないよ。
「………ス…」
私が黙っていると、あずにゃんが立ち上がった
「唯先輩は……最低です!!」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:39:45.90:vQTxb3WH0
「あっ……あずにゃん?」
私はビックリしてしまう
今まで黙ったいたあずにゃんがいきなり大きな声でそう言ったのだ
みんなもびっくりしているようだ
「先輩は……先輩はっ!、憂の気持ちに気づかなかったんですか!?」
「…!?」
そう叫んだあずにゃんはまた涙をためていた
「憂の……気持ち?」
私は動揺 していてうまく喋れなかった。
憂がどうしたのだろうか
気づかない?憂の気持ち?
「憂はっ……憂は!、いつも唯先輩の話ばかりで…だけど、とても嬉しそうで…、
憂らしく…いつも、笑ってて……それが、今日の憂は、まるで抜け殻で…笑ってるけど
笑ってない、……それは唯先輩の話を全くしないからです!!」
「…!」
憂が…いつも私のことを?
なんで?
なんでなの?
「憂はっ……唯先輩が居ないと駄目なんです!!……悔しいけど…私じゃ、駄目なんです」
そう言ってまた下を向いてしまう
それでも、あずにゃんは力強く言葉をつなげる
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:51:27.18:vQTxb3WH0
「……先輩」
あずにゃんは顔を上げて私を見据えた
「憂のとこ…行ってあげてください」
「……でっ、でも!」
私は今憂に顔を合わせる自身が無かった
これ以上、苦しくなるのが恐かった
「行ってあげてください!!…憂には唯先輩がついてないと駄目なんです、唯先輩も…」
「でもっ…でも私は…!憂を傷つけてっ」
「いいんです!!、傷つけたなら、それを直せばいいんです……これは唯先輩しか出来ないから、頼んでるんですよ?」
そう言ってあずにゃんは微笑む
吹っ切れたような、綺麗な。
まぶしい笑顔で
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 01:56:14.53:vQTxb3WH0
「…私っ、憂に会ったらなんて言えば…」
また胸が苦しくなる
今度は、もっと傷つけてしまうかもしれない
もう元には戻れないんじゃないか
そう思った
「いいんじゃない?、何もしなくて」
「…え?……」
キョトンとする私にムギちゃんがニコニコしながら続ける
「別にいままで通りで、帰ったらただいまって、憂ちゃんに抱きついて、一緒にご飯食べて…」
そう、私に語りかける
そんな…そんな事
「私が…私なんかが」
「…唯だからだろ?」
律ちゃんが呟いた
「いいじゃないか、まずは帰って、憂ちゃんに甘えたら、話はそれからでも遅くないぞ?」
律ちゃんはヘヘッと優しく笑いながら肩を叩いた
「そうだな、そろそろご飯が出来る時間じゃないか?憂ちゃんのご飯はおいしいからなー」
澪ちゃんは時計をみながら言った
もう時計の針は6時を回るところだった
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:07:44.06:vQTxb3WH0
「おーもうそんな時間だったかぁ、いやぁ私も腹へっちった」
「全く…律は食い意地だけはあるからぁ」
「なっ、なんだとー、そっそんな事言ったら澪の方が重いじゃないかー」
ブーブー言いながら揚げ足を取る律ちゃん
「なっ!!こんのバカ律!!わたしは身長があるからいいんだ!!」ゴッ
「あいて!」
「うふふふ」
そして澪ちゃんに怒られる律ちゃん、それも見て笑うムギちゃん
温かい…今までの辛さが嘘のように。
いつもの軽音部の暖かさ
「ふふふ………ホラ、唯先輩っ!」
「………うん!!」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:08:30.09:vQTxb3WH0
私はあずにゃんに背中を押され、歩き出した
扉まできて振り返った
「唯ーちゃんと仲直りするんだぞー?」
「憂ちゃんなら大丈夫よ」
「がんばれ、唯」
「唯先輩!憂がまた悲しそうにしてたら許しませんよ?」
みんな応援してくれる
本当に大切な仲間たち
みんな、ありがとう
「うん!!平沢唯、言ってまいります!!」
そういってわたしは駆け出した。
憂の元へ
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:13:44.25:vQTxb3WH0
トントントントン グツグツ
「はぁ……」
私、平沢憂は夕飯を作りながらため息を吐いた
自分でもわかってる
なんてバカな事をしたんだって
「……はぁ」
ため息ばかりでる
いや、まだ出る内はいいのかも知れない
そうでもしないと私が壊れてしまいそうで
「お姉ちゃん……」
そう呟くと、何かがこみ上げてくるのがわかる
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん
どうすればよかったのだろう
自分でもわからない、あの夜、お姉ちゃんの悲しそうな顔を見たとき
私は取り返しのつかない事をしたと気づいた
でも、気づいた時には遅かった、遅かったんだ
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:18:25.77:vQTxb3WH0
「………ッ…」
泣いちゃ駄目だ、私が悪かったんだ
でも、これから前みたいに戻れないと思うと涙が自然に出てくる
「うぅ……ッ…おねッ…ちゃ……」
もうあの暖かい笑顔は見れないんだろうか
もうあの楽しそうな声は聞こえないのだろうか
もう…私は嫌われたのだろうか…
「…グスッ…お姉ちゃん……うっ…うわぁぁぁ」
嫌われた
そう思っただけで
もうお姉ちゃんは、温かいお姉ちゃんはいないんだ
そう思っただけで……
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:22:19.53:vQTxb3WH0
「ごめんね…私が…」
そう言って私は握ってる包丁を見た
もし、もしもこれで私が消えたら、お姉ちゃんは幸せかな?
もちろんそんな勇気無いけど、だけど
それでお姉ちゃんが幸せばら、救われるなら…
そう思った
ガチャ
玄関の開く音…お姉ちゃんだ
涙拭かないと。
私が、せめて変わらず接しないと…
たとえ…たとえお姉ちゃんに嫌われていても…っ
私は玄関へと向かった
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:28:25.93:vQTxb3WH0
「お姉ちゃん、おかえ」
「憂いぃぃぃぃぃぃ」ガバッ
「!?」
憂は一体何が起こったかわからなかった
だってそれは、いつもと変わらない
いつもの幸せな日常の風景だったから
「おっ、おねえちゃん!?」
「えへへ~ただいま憂~」スリスリ
いつもと同じように
ニコニコしながら頬スリする
「どっ……どうして?」
「どうしてって……えへへ、憂だからだよ!」
憂だから
そう、これは私の
心から思った
嘘偽りのない、答えだよ
「お姉ちゃん……おねぇ……ちゃん……うっ…うわぁぁぁぁ」
「おーよしよし、いい子だね~憂は~」
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:35:19.63:vQTxb3WH0
「お姉ちゃん私…」
落ち着いた憂は私の目をみれないのか
顔を下にふいたままだ
「なぁに?憂?」
私はここに居るよ
もう逃げないよ
「お姉ちゃん……私、ごめんなs」
「まって!!」
私は憂を制止して
言おうとしてる事えを止めた
憂はキョトンとして、意味がわからなそうな顔をしている
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:36:16.71:vQTxb3WH0
「なんで謝るの?」
「えっ……だって私お姉ちゃんに」
「憂は何もしてないよ、悪いのは私の方なんだから」
そう言って憂の頭を撫でる
「っ!!、ちがう!私がお姉ちゃんを困らせて……それで」
「ふふふ、憂は本当にえ~子じゃのぉ、私がいいって言ったんだからいいの!」
「お姉ちゃん……!」
憂はえへへっとはにかんだ
うん、憂は笑顔が一番だよ
その……か、可愛いからね!……えへへ
「それよりも…」
「?」
憂は小首を傾げた
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:41:15.72:vQTxb3WH0
「この前の、恋愛相談の話…」
「えっ……」
憂がビックリした顔をしている
それ程予想外だったのだろう
「ごめんね、私あの時嘘ついたんだ…」
「……嘘?」
私はうん、と言って話を続けた
今、私の鼓動は今までに無く早く脈打っている
けれどこれまでのように苦しくは無い
それだけは確かだ
「……憂?」
「なっ、なに?お姉ちゃん…」
憂も緊張しているようだ
今にも泣き出しそうな顔をしている
「私ね……その女の子が好きになった子の事、好きなんだ!」
「…え?……えっ?」
憂は一瞬何を言われたかわからないようだった
私も、純粋に告白なんて恥ずかしくてできないから
これで許してね、憂
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:45:14.94:vQTxb3WH0
「……あっ…」
憂は意味に気づいたのか、顔を赤くした
私も、憂が予想以上に照れるものだから
恥ずかしくなってきてしまった
「お姉ちゃん……それって」
「行くよ!憂、お腹ペコペコなんだよ~」
憂がいい終わらない内に私はリビングへむかった
恥ずかしかったから
「あ……うっ、うん!」
それから私達はご飯を食べた、やっぱり憂と食べるご飯は最高だね
憂が一緒ならカップメンだったとしても
世界中のどんな料理よりご馳走だよ
…口に出してはいえないけど
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 02:50:58.03:vQTxb3WH0
今憂はお皿を洗っている
私はテレビを見ておる、ゴロゴロしながら
いつもと同じ風景
幸せな日常がここにはあった
でもね……
私は憂に近づいた
「憂ー?」
「んー?なぁにおねぇ…」チュ
憂にそっとキスをした
本当に、優しいキス
私たちの温かい幸せを壊さないような
優しい……
「…えっ……えぇぇぇぇ!?」カァァ///
「えへへ、言ったでしょ?………好きだって」
「…っ!」
憂は耳まで真っ赤にしてビックリしてる
まぁ私も憂のこと言えないけどね
顔が熱いや
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 03:01:54.80:vQTxb3WH0
数日後
「よー唯、憂ちゃんおはよう!」
律ちゃんの元気な声が響く
「おはよーございます!」
「おはようございます律さん、皆さんも」
私と憂は挨拶する
「おはよう二人とも」
「おはよー」
「おはようございます、憂、おはよう」
ムギちゃんと澪ちゃんもちろんあずにゃんもいる
私たちは学校に向かって歩き出した
みんなで一緒に
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 03:02:52.20:vQTxb3WH0
「それでねーお姉ちゃんたらねー」
「えー?憂だって最初は恥ずかしがってたけど途中からノリノリだったじゃん」
「…なんか、前より仲良くなったというか…」
「うん…度合いがかわったと言うか…」
「これは見ている方が恥ずかしいぞ…」
「あらあらまあまあ…」
「えへへー、憂!」
「ふふっ、お姉ちゃん」
これからも、続いていくだろう
大切な仲間達と最愛の人との日常
後悔はしてる、けれどそのかわりに今がある
それだけで、それだけでいいんだから
本当に、本当にみんなありがとうね
そしてこれからも、よろしく!
唯憂「大好きだよ!!」
おわり
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 03:05:11.43:vQTxb3WH0
呼んでくれた人支援くれた人ありがとう
元々リレーだったけど一応完結させました、書こうとした人はすいません
多分所々矛盾などあると思いますが、そこは生暖かい目でおねがいします
文才の無い話をみてくれてありがとう
唯憂は至高
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 03:10:48.99:JCnstOwg0
乙!最高の唯憂をありがとう!
唯憂は真理!
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/30(木) 03:11:57.90:CYM181hFP
乙!!
唯憂は新たな領域へ入り始めた…
「ど、どうしたの急に?…」
憂が苦笑いしながら返した、私としては本当に深い意味は無かった
「んー?やっぱり高校生だしそういうの興味ないのかなーって…」
私はテレビを見ながら答えた
本当に何気ない、日常の会話。
「ッ………お姉ちゃんは……お姉ちゃんはいるの…?」
もし、もしもこの時憂の動揺に気づければ
憂を傷つける事も無かったかもしれない
もしかしたらこの時…ううん。
きっと憂は必死な思いでその言葉を吐き出したんだと思う
「わたし?、私は無いかなー、それに女子校ってのもあるし機会も無いよー」
当然の答えだった。
「ッ!……そ、そうなんだぁ、私も無いかな今のとこは…」
ごめんね憂、鈍い人間でごめんね、この時から始まったんだよね
でもね、後悔はしてないよ、だって……
その日から、憂の態度がほんの少しだけ、変わった。
変わらず良い子だった。
変わらず優しいかった。
変わらず気がきいた。
変わらず笑顔だった。
けれど、あまり呼ばなくなった。
「お姉ちゃん」、と。
別に呼び名がなくても、会話は勿論成立する。
私も変わりなく、応じる。
しかし明らかに、あるはずのピースがそこには無いのは、確かだった。
憂は、本当に良い子だ。
私に心配させるような事は、きっとしない。絶対にしない。
するぐらいなら、一人で耐え忍ぶ方を選んでしまうような、そんな子なのだ。
そんな憂が、こんな分かりやすく不自然な事を、するはずがない。
けれど、している。
この矛盾から分かる事は、今は一つだ。
憂は自分のしている事に、気づいていない。
その事実は色んな意味で、私を愕然とさせた。
「ねぇ、」
その後に続くはずだった呼び名を、無意識に飲み込んだ憂。
けれど、それに対して「どうしてお姉ちゃんって呼んでくれないの?」と問うのは、何故か躊躇われた。
触れてはいけない、気がして。
「なぁに?うい~」
ならば、私は気づかないふりをしていなければならない。
どことなくぎこちない憂の笑顔に、いつものように答える。
「あのね、相談があるの…いいかな?」
どきん、と心臓が波打った。
それは緊張なのだろうか?それとも。
けれど、可愛い妹に頼られるのは、嬉しい。私で出来る事なら、何でも聞いてあげたい。
「もちろんだよ~!どしたの?」
傍に座る様に促せば、憂が静かにソファに腰を下ろす。
その途端に、ふわりと香ったシャンプーの匂い。
同じ物を使っているはずなのに、その芳香に、少し意識を持っていかれてしまう。
なんだろう、この、感覚は。
「…あのね、」
「うん」
そんな私には気づかずに、少し目を逸らしたまま、憂が話始める。
強張った頬が可哀想で、思わず撫でてあげたくなるのを我慢しながら、私は先をまった。
「…友達にね、相談、されたんだけどね?」
「うん」
そして、再度開いた、憂の唇。
今なら分かる。
「…女の人を、好きになっちゃったんだって…」
憂がその口からこの短い言葉を吐くのに、どれほどの緊張と、どれほどの勇気と、どれほどの覚悟が要ったのかを。
「え?……好きって、女の子が女の子の事を?」
私はなんで憂がこんな事を私に聞くのかわからなかった。
けれど、私の心臓は確実に鼓動を早めていた
このとき、自分では気づかなかったのか
それとも、気づきたくなかったのか。
「う、うん…なんていうか、やっぱり…変じゃない?接し方とかわからなくって、ヘヘへ」
憂は苦笑いしながら言葉を繋げた、その表情がどこか、どこか悲しそうに見えたのを覚えている
でも私はなんて言ったらいいかわからなかった。
「うーん、私もそういうのは疎いからねぇ……」
事実、恋愛など無縁の人生の私に。
しかも女性同士の関係など見当もつかなかった
「やっ、やっぱり…気持ち悪い、とか……思う?」
憂は拳をギュッ握り締めてか細い声で呟いた
「んー、私は別に思わないけどなぁ…だって好きになっちゃったんだし、しょうがないんじゃないかなぁ」
「ほっ……本当?本当に!?」
ズイッと憂がこちらに身を乗り出して聞いてきた
「ッッ!……憂ぃ、いきなりこっち来るからビックリしたよぉ……」
私は憂の顔が視界いっぱいに広がったとき、自分の心臓が跳ね上がった
私はヘラッとして言ったが、自分でもうまく笑えてないのがわかる、でも理由はわからなかった
私は間近に迫った憂の顔を見る。
………可愛い、というか凄く綺麗だ。共学の学校に通っていたら色々と大変だっただろう。
幼い頃から姉妹でそっくりだと言われ続けた。今でもそうだけど、全然違う、と思う。
憂は「オトナ」の顔をしている。もっと言うなら「オンナ」の………。
それに比べて自分は「コドモ」だ。
一歳しか離れていないのに、この差はなんだろう。
どちらが姉か解らない、と言われる事もある。確かに憂の方が外見、内面とも大人っぽいが、そんな話じゃない。
何か決定的な違いを感じた。
憂「………?」
改めて妹の顔を見る。
………本当に綺麗だ。おそらく街ですれ違う男の子達も高確率で振り返っているだろう。
しかし、この憂の表情、どこかで見た事がある様な………、それも何回も………。
唯「………!」
そこまで考えて思い出した。憂の表情、雰囲気は、クラスで「好きな人が出来た~」と話をしている子と同じなのだ。
と言う事は…………、
憂に好きな人が出来た…………??
私は動揺していた、実の妹を…綺麗と思った自分に。
憂の表情の答えに。
「憂……顔…近いよ」
「あっ……そのっ、ごめん……ごめんなさい」
憂はハッとすると乗り出した体制を戻して、謝ってきた。
それは、とても切実に、声に力は無くてもそれは伝わってきた
まるで…何かを恐れるように
「ははは、怒ってるわけじゃないんだからそんなに謝らなくてもいいのに~」
怒ってるわけじゃない、その逆。
酷い自己嫌悪だ、自分が情けなくて…
そう思っているのに胸の鼓動は収まらなくて…情けない。
「うっ、うん………さっきの事、本当?」
憂は目を合わせたくないかのように、下を向いて呟いた
「ん?…さっ、さっきの…?」
「うん…女の子同士でも別にいい……って」
また私の鼓動は早まった
もうこの原因には気づいていた、もう否定する事はできなかった
でも、それを認められるわけでは決して無い
「…うん……いいと、思う……でもっ」
苦しかった、自分に嘘をつくのが、でも認めたくない
それでも私は言葉を紡いだ、自分に言い聞かせるように…
「それは…個人の自由だから…でも…っ……私には、考える必要の無い…事だよ」
言葉を吐き出した、心を吐き出さないように。
全部わかったんだ、認めたくないけど、この話は憂自身の事だって
それに、私自身の心も
「えっ…それって……っ」
今までに見たこと無いような憂の表情、苦痛でもないし悲しさでもない。
もしくは両方だったのか
自分の事で精一杯で、気づけなかった
「言ったとうりだよ憂、その友達は応援してあげて、でもそれだけ、結局は関係の無い世界」
私は冷静に、、慎重に答えた。
できるだけいつもと通りに、不自然じゃないように
「そっ…そうだね、うん……伝えとく」
憂はどんな事考えてるのかな
ごめんね、駄目なお姉ちゃんで
でも憂のためだから、私は苦しくてもいいんだよ?
「じゃあ私疲れたからもう行くね」
私は憂の顔を見ないようにして出口へ向かった
「…………っ…!」
憂は何か言いたそうだった
でもそれを聞くのが恐かった
「あ、後今日はご飯いらないや、ごめんね、もう休むよ」
「えっ……うん、わかった…」
私は振り返らずに部屋を出た
憂はどんな顔してたのかな。
それは私にはわからなかった
ふー」
ドサッと私はベットに倒れこむ
疲れたよ……。
本当に、私はこれから大丈夫なのだろうか
憂のお姉ちゃんとしてがんばれるだろうか
「……ッ…ヒッ……ヒック……」
なんで涙がでるの?
憂のために、憂の迷惑にならないように
私は苦しくても大丈夫って自分で決めたのに
……なんで
「……グスッ…ぃ……憂ぃ…」
苦しいよ
悲しいよ
こんなに苦しむなら
この気持ちに気づくべきじゃなかった
今日はもう寝よう
「おやすみ………憂」
よし、続きパス保守
リレー形式だし伏線っぽいのは後々めんどくさいだろ、でも完結はさせてほしいな
唯憂は至高ですねはい
朝。
「……おはよう」
「……おはよう」
昨日のことがあるので気まずいよ。
でも、何も聞けない。憂にも、私と同じ様に泣いた跡があったから。
やっぱり私は駄目なお姉ちゃんだね。
でも、そんな事ばかり考えてちゃ本当に駄目になっちゃうよ。
ここは、やっぱり私から何か話さなくちゃ。
「……ごめんね。昨日は変な事相談しちゃって」
「……え?」
私が話そうとする前に、憂に話しかけられた。
「………う、うん。私こそごめんね。ちゃんと相談にのれなくて」
「もうその事はいいの!早くご飯食べないと学校に遅れちゃうよ?」
そう言って憂は笑った。
「!! あ、あの………」
「何?」
「ご、ごめん………何でもない………」
私はそれ以外憂に何も言う事が出来なかった………。
憂がさっき見せた笑顔は………、見ている方が辛くなってしまう位に悲しい笑顔だった………。
放課後。
「おい、今日どうしたんだ?」
そういって話しかけてくるのは律ちゃん
いつも冗談言ってみんなを笑わせてくれる
私も律ちゃんといると私も楽しい……けど
「んー?何が?」
今は楽しくない
ううん、今日はずっと楽しくない
「何って……お前今日元気ないぞ?話しかけてもボケーッとしてるしみんな心配してるぞ?」
そういって周りを見渡す
澪ちゃんもムギちゃんも心配そうにこちらをみていた
…ごめんね
「なんでもないよー、ちょっと考え事してただけだよー」
嘘。
私は何個嘘をついて自分を隠さなきゃいけないんだろ
そう考えるとまた不安でつぶれそうになる……ごめんねみんな
「………そうか……?」
「うん、大丈夫だよー」
私はニヘラっと笑ってみせた
そうだ、この気持ちは隠さないと
ううん、自分でもわからないくらいに抑えないといけないんだ
「唯……」
「唯ちゃん……」
ムギちゃんと澪ちゃんがこちらをみながら名前を呟いた
律ちゃんはこちらも見たまま何も言わない
「…………ふー」
律ちゃんがため息のように息を吐き出す
「唯………嘘なんだろ?」
「………へ…?」
一瞬何を言われたのかわからなくて…
「無理してるんだろ?みんな知ってるよ、その目も寝不足じゃなくて泣いた跡なんじゃないのか?」
私はビックリして言葉が出なかった
「………ちっ、ちがうよぉ、これはただの寝不足」
「…唯ちゃん、私たちには言えないことなの?」
「そうだぞ、私たち……仲間だろ?」
みんな真剣なまなざしだ
私だけがごまかすようにヘラヘラしている
なんで……なんでみんなそんなにやさしいの?
駄目だよ、この気持ちは無かったことにしなくちゃいけないんだよ
「みっ、みんな変だよ?…ほんとになんでもない」
ガチャ
私がいいかけたとこで扉の開く音がした
あずにゃんだ、一年後輩の。
軽音部の仲間
「あっ、あずにゃ~ん!」
私は話をそらすためあずにゃんの元へ駆け寄った
これでこの話は終わり、そう思っていた
「唯先輩」
私が駆け寄る前にあずにゃんが口を空けた
「ん?何々あずにゃん」
まだ後ろでは律ちゃんたちが心配そうに見ている
なんでも、なんでもいいから違う話題に_
「憂と………何かあったんですか?」
「………え……」
自分でも顔がこわばるのを感じた
「な……いきなり何言って」
「まじめに聞いてください!!」
そういって叫んだあずにゃんは、どこか辛そうで
みれば目には涙を浮かべてるのに気づいた
「唯……憂ちゃんの事なのか?」
律ちゃんが私の様子をみて問いかけてくる
「えっ………ち、ちがうよぉ」
声が震える
笑おうとしても笑えない
「そうなんだな唯…」
「唯ちゃん」
みんな…違うんだよ
違うんだよ、憂は関係ないんだよ
私だけが悪いんだよ
「梓、話…聞かせてくれないか?」
澪ちゃんはそう言ってそういってあずにゃんを椅子に座らせた
「………」
私はただ、立ち尽くすしかなかった
もう私の心は限界で、今何を吐き出してしまうかわからない
自分が恐かった
「はい……実は」
あずにゃんがポツリポツリと説明しはじめた
憂に元気が無かった事
私の話題を出すとなぜか話題をそらしてしまう事
憂に聞いても何も教えてくれない事
それでも確実に憂がいつもと違う事
そしてそれを親友である自分がどうにも出来なくて情けない事
私は胸が痛かった
苦しいを通り越して
死んでしまうんじゃないかって思った位に
「そうか、ありがとな梓…」
そういって澪ちゃんはあずにゃんの頭をやさしく撫でた
「うぅ…先輩…私、親友なのに……何もできなくて、弱ってる憂を見るのが辛くて……うわぁぁぁ」
あずにゃんは慰められて緊張が解けたのか澪ちゃんにしがみついて泣き始めた
ごめんねあずにゃん、全部私が悪いんだよ…
心配させてごめんね…
「唯…話してくれるか?」
「唯、仲間だろ?、お前をほうっておくわけにはいかないよ」
律ちゃんと澪ちゃんがこちらを向く
「っ……わっ、私は、本当になんでもっ」
息をするのが辛い、なぜこんなに苦しいのか
私が誤魔化そうとした時
ギュ
「唯ちゃん……無理しなくていいのよ、私たちがついてるから……ね?」
そういって抱きしめて……
やめて
やめてよ
そんなに優しくされたら、駄目だよ
私が悪いのに、みんなに
みんなに
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
私はダムが崩れるように
それまでの感情が全部流れ出すように
大きな声で泣いた
「よしよし」
ムギちゃんはニコニコして頭を撫でてくれる
その優しさが辛くて
嬉しくて、私は…
「わぁぁぁあああっうわぁぁぁぁああ」
「落ち着いたか?」
そう言ってカップを私の前にだして笑う律ちゃん
「……うん…ごめんね?」
結局私は落ち着くまで1時間は掛かった
これまで我慢した感情がせきを切ったように涙としてあふれだし
止まる事は中々無かった
「うふふ、いいのよ唯ちゃん、私たち、軽音部の仲間なんだから!」
そうニコニコしながら言うムギちゃん
私が泣いてる間ずっと。
ずっと慰めてくれたね、ありがとう
「じゃあ、話してくれるか?…憂ちゃんとの事」
「………」
澪ちゃんがまっすぐこっちを見た、心まで見透かされそうなくらい
その綺麗な目で。
あずにゃんは何もいわず、ずっと下にふいているままだ
心配かけて、ごめんね?
「ゆーい?」
律ちゃんが顔を覗き込んでくる。
「……うん、言うよ」
私ははっきりと
みんなに聞こえるように声をあげた
私は、順々に、確実に
昨日のお出来事は説明した
憂に相談された事
それまで感じたモヤモヤした気持ち
憂の話を聞いて気づいてしまったこと
勿論、私自身の思いも、理由も
その間みんなは喋らず、うまく話せない私をしっかりと見て
話を聞いてくれた
「大体……そんな感じ…」
私は話し終えると、みんなを見渡した
みんなそれぞれ何か思う事があるのか
なにか考えてるようだ
「………それで?」
律ちゃんが最初に口を開いた
「…?、何が?」
私はなにを聞かれたのかわからなかった
もう話すことはないはずだ
「いや、それで唯はどうしたいんだ?」
「えっ……?」
唐突に聞かれ私は戸惑った
私がどうしたいか?
……憂の、憂の迷惑になりたくないから…
「私は…憂の邪魔はしたくないから……憂に迷惑かけたくないから…」
そう、震える声で言葉を吐き出した
これが私のするべき事なんだ、これしかないんだ
「……それでいいのか?」
「…だって、これしかないんだよ……これしか」
「唯…」
澪ちゃんがさえぎる様に話しかけてきた。
「なっ、なに?澪ちゃん…」
「このまま…このままだったら、唯が…ううん、憂ちゃんも苦しいだろう?」
そう言い聞かせる
わかっている、このままだったら私は駄目になる
けれど、私が駄目でも、憂だけでも………
そう思った
「わかってるよ…でも、どうしようもないじゃない!」
「……唯ちゃん、憂ちゃんの気持ちも考えてあげたら?」
私をなだめるようにムギちゃんが言う
憂の気持ち…?
わからない………わからないよ。
「………ス…」
私が黙っていると、あずにゃんが立ち上がった
「唯先輩は……最低です!!」
「あっ……あずにゃん?」
私はビックリしてしまう
今まで黙ったいたあずにゃんがいきなり大きな声でそう言ったのだ
みんなもびっくりしているようだ
「先輩は……先輩はっ!、憂の気持ちに気づかなかったんですか!?」
「…!?」
そう叫んだあずにゃんはまた涙をためていた
「憂の……気持ち?」
私は動揺 していてうまく喋れなかった。
憂がどうしたのだろうか
気づかない?憂の気持ち?
「憂はっ……憂は!、いつも唯先輩の話ばかりで…だけど、とても嬉しそうで…、
憂らしく…いつも、笑ってて……それが、今日の憂は、まるで抜け殻で…笑ってるけど
笑ってない、……それは唯先輩の話を全くしないからです!!」
「…!」
憂が…いつも私のことを?
なんで?
なんでなの?
「憂はっ……唯先輩が居ないと駄目なんです!!……悔しいけど…私じゃ、駄目なんです」
そう言ってまた下を向いてしまう
それでも、あずにゃんは力強く言葉をつなげる
「……先輩」
あずにゃんは顔を上げて私を見据えた
「憂のとこ…行ってあげてください」
「……でっ、でも!」
私は今憂に顔を合わせる自身が無かった
これ以上、苦しくなるのが恐かった
「行ってあげてください!!…憂には唯先輩がついてないと駄目なんです、唯先輩も…」
「でもっ…でも私は…!憂を傷つけてっ」
「いいんです!!、傷つけたなら、それを直せばいいんです……これは唯先輩しか出来ないから、頼んでるんですよ?」
そう言ってあずにゃんは微笑む
吹っ切れたような、綺麗な。
まぶしい笑顔で
「…私っ、憂に会ったらなんて言えば…」
また胸が苦しくなる
今度は、もっと傷つけてしまうかもしれない
もう元には戻れないんじゃないか
そう思った
「いいんじゃない?、何もしなくて」
「…え?……」
キョトンとする私にムギちゃんがニコニコしながら続ける
「別にいままで通りで、帰ったらただいまって、憂ちゃんに抱きついて、一緒にご飯食べて…」
そう、私に語りかける
そんな…そんな事
「私が…私なんかが」
「…唯だからだろ?」
律ちゃんが呟いた
「いいじゃないか、まずは帰って、憂ちゃんに甘えたら、話はそれからでも遅くないぞ?」
律ちゃんはヘヘッと優しく笑いながら肩を叩いた
「そうだな、そろそろご飯が出来る時間じゃないか?憂ちゃんのご飯はおいしいからなー」
澪ちゃんは時計をみながら言った
もう時計の針は6時を回るところだった
「おーもうそんな時間だったかぁ、いやぁ私も腹へっちった」
「全く…律は食い意地だけはあるからぁ」
「なっ、なんだとー、そっそんな事言ったら澪の方が重いじゃないかー」
ブーブー言いながら揚げ足を取る律ちゃん
「なっ!!こんのバカ律!!わたしは身長があるからいいんだ!!」ゴッ
「あいて!」
「うふふふ」
そして澪ちゃんに怒られる律ちゃん、それも見て笑うムギちゃん
温かい…今までの辛さが嘘のように。
いつもの軽音部の暖かさ
「ふふふ………ホラ、唯先輩っ!」
「………うん!!」
私はあずにゃんに背中を押され、歩き出した
扉まできて振り返った
「唯ーちゃんと仲直りするんだぞー?」
「憂ちゃんなら大丈夫よ」
「がんばれ、唯」
「唯先輩!憂がまた悲しそうにしてたら許しませんよ?」
みんな応援してくれる
本当に大切な仲間たち
みんな、ありがとう
「うん!!平沢唯、言ってまいります!!」
そういってわたしは駆け出した。
憂の元へ
トントントントン グツグツ
「はぁ……」
私、平沢憂は夕飯を作りながらため息を吐いた
自分でもわかってる
なんてバカな事をしたんだって
「……はぁ」
ため息ばかりでる
いや、まだ出る内はいいのかも知れない
そうでもしないと私が壊れてしまいそうで
「お姉ちゃん……」
そう呟くと、何かがこみ上げてくるのがわかる
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん
どうすればよかったのだろう
自分でもわからない、あの夜、お姉ちゃんの悲しそうな顔を見たとき
私は取り返しのつかない事をしたと気づいた
でも、気づいた時には遅かった、遅かったんだ
「………ッ…」
泣いちゃ駄目だ、私が悪かったんだ
でも、これから前みたいに戻れないと思うと涙が自然に出てくる
「うぅ……ッ…おねッ…ちゃ……」
もうあの暖かい笑顔は見れないんだろうか
もうあの楽しそうな声は聞こえないのだろうか
もう…私は嫌われたのだろうか…
「…グスッ…お姉ちゃん……うっ…うわぁぁぁ」
嫌われた
そう思っただけで
もうお姉ちゃんは、温かいお姉ちゃんはいないんだ
そう思っただけで……
「ごめんね…私が…」
そう言って私は握ってる包丁を見た
もし、もしもこれで私が消えたら、お姉ちゃんは幸せかな?
もちろんそんな勇気無いけど、だけど
それでお姉ちゃんが幸せばら、救われるなら…
そう思った
ガチャ
玄関の開く音…お姉ちゃんだ
涙拭かないと。
私が、せめて変わらず接しないと…
たとえ…たとえお姉ちゃんに嫌われていても…っ
私は玄関へと向かった
「お姉ちゃん、おかえ」
「憂いぃぃぃぃぃぃ」ガバッ
「!?」
憂は一体何が起こったかわからなかった
だってそれは、いつもと変わらない
いつもの幸せな日常の風景だったから
「おっ、おねえちゃん!?」
「えへへ~ただいま憂~」スリスリ
いつもと同じように
ニコニコしながら頬スリする
「どっ……どうして?」
「どうしてって……えへへ、憂だからだよ!」
憂だから
そう、これは私の
心から思った
嘘偽りのない、答えだよ
「お姉ちゃん……おねぇ……ちゃん……うっ…うわぁぁぁぁ」
「おーよしよし、いい子だね~憂は~」
「お姉ちゃん私…」
落ち着いた憂は私の目をみれないのか
顔を下にふいたままだ
「なぁに?憂?」
私はここに居るよ
もう逃げないよ
「お姉ちゃん……私、ごめんなs」
「まって!!」
私は憂を制止して
言おうとしてる事えを止めた
憂はキョトンとして、意味がわからなそうな顔をしている
「なんで謝るの?」
「えっ……だって私お姉ちゃんに」
「憂は何もしてないよ、悪いのは私の方なんだから」
そう言って憂の頭を撫でる
「っ!!、ちがう!私がお姉ちゃんを困らせて……それで」
「ふふふ、憂は本当にえ~子じゃのぉ、私がいいって言ったんだからいいの!」
「お姉ちゃん……!」
憂はえへへっとはにかんだ
うん、憂は笑顔が一番だよ
その……か、可愛いからね!……えへへ
「それよりも…」
「?」
憂は小首を傾げた
「この前の、恋愛相談の話…」
「えっ……」
憂がビックリした顔をしている
それ程予想外だったのだろう
「ごめんね、私あの時嘘ついたんだ…」
「……嘘?」
私はうん、と言って話を続けた
今、私の鼓動は今までに無く早く脈打っている
けれどこれまでのように苦しくは無い
それだけは確かだ
「……憂?」
「なっ、なに?お姉ちゃん…」
憂も緊張しているようだ
今にも泣き出しそうな顔をしている
「私ね……その女の子が好きになった子の事、好きなんだ!」
「…え?……えっ?」
憂は一瞬何を言われたかわからないようだった
私も、純粋に告白なんて恥ずかしくてできないから
これで許してね、憂
「……あっ…」
憂は意味に気づいたのか、顔を赤くした
私も、憂が予想以上に照れるものだから
恥ずかしくなってきてしまった
「お姉ちゃん……それって」
「行くよ!憂、お腹ペコペコなんだよ~」
憂がいい終わらない内に私はリビングへむかった
恥ずかしかったから
「あ……うっ、うん!」
それから私達はご飯を食べた、やっぱり憂と食べるご飯は最高だね
憂が一緒ならカップメンだったとしても
世界中のどんな料理よりご馳走だよ
…口に出してはいえないけど
今憂はお皿を洗っている
私はテレビを見ておる、ゴロゴロしながら
いつもと同じ風景
幸せな日常がここにはあった
でもね……
私は憂に近づいた
「憂ー?」
「んー?なぁにおねぇ…」チュ
憂にそっとキスをした
本当に、優しいキス
私たちの温かい幸せを壊さないような
優しい……
「…えっ……えぇぇぇぇ!?」カァァ///
「えへへ、言ったでしょ?………好きだって」
「…っ!」
憂は耳まで真っ赤にしてビックリしてる
まぁ私も憂のこと言えないけどね
顔が熱いや
数日後
「よー唯、憂ちゃんおはよう!」
律ちゃんの元気な声が響く
「おはよーございます!」
「おはようございます律さん、皆さんも」
私と憂は挨拶する
「おはよう二人とも」
「おはよー」
「おはようございます、憂、おはよう」
ムギちゃんと澪ちゃんもちろんあずにゃんもいる
私たちは学校に向かって歩き出した
みんなで一緒に
「それでねーお姉ちゃんたらねー」
「えー?憂だって最初は恥ずかしがってたけど途中からノリノリだったじゃん」
「…なんか、前より仲良くなったというか…」
「うん…度合いがかわったと言うか…」
「これは見ている方が恥ずかしいぞ…」
「あらあらまあまあ…」
「えへへー、憂!」
「ふふっ、お姉ちゃん」
これからも、続いていくだろう
大切な仲間達と最愛の人との日常
後悔はしてる、けれどそのかわりに今がある
それだけで、それだけでいいんだから
本当に、本当にみんなありがとうね
そしてこれからも、よろしく!
唯憂「大好きだよ!!」
おわり
呼んでくれた人支援くれた人ありがとう
元々リレーだったけど一応完結させました、書こうとした人はすいません
多分所々矛盾などあると思いますが、そこは生暖かい目でおねがいします
文才の無い話をみてくれてありがとう
唯憂は至高
乙!最高の唯憂をありがとう!
唯憂は真理!
乙!!
唯憂は新たな領域へ入り始めた…
コメント 3
コメント一覧 (3)
内容で唯憂が真理と知った
まあわかったけど
唯の気持ちも考えてやれよ