- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 01:41:16.93:j0C1URZX0
「今日で本当に出て行ってくれるんでしょうね」
女「あー、わかってます。わかってますよ」
「まったく。必ずですよ」
女「ほんと、わかりましたってば」
女「はぁ、困っちゃったなあ」
女「仕方ないし、彼の家にでも泊めてもらおうかな。泊めてくれるかな」
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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 01:46:00.81:j0C1URZX0
女「なに、話って。わたしも話したいことがあるんだけど」
「いや、その。あのさぁ」
女「何よぉ」
「お、俺とさ、別れてくれない?」
女「え、なに、突然・・・」
「いやさ、他に好きな子ができたっていうか。その、ほんとごめん」
女「・・・」
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 01:49:59.84:j0C1URZX0
女「まったく。あんな男、こっちから振ってやるってんだ」
女「・・・はあ」
女「明日からどうしようかなぁ」
女「ほんと、困っちゃった・・・」
女「どうしよう」
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 01:53:33.70:j0C1URZX0
女「あ」
男「お、よお」
女「なんで、いるの」
男「なんでって。そこに、住んでるから」
女「いや、それはわかってるよ。なんでこんな時間に」
男「散歩。悪い」
女「全然、悪く、ないけどさ」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:03:54.61:j0C1URZX0
男「そっちこそ、なんでここに」
女「別に、散歩かな」
男「散歩、か。そんな風に見えないけど」
女「あはは。実は男に用があって」
男「偶然を装わなくてもいいのに」
女「ごめん。そうだったね」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:06:38.31:j0C1URZX0
女「今日さ、泊めてくれないかな」
男「はあ」
女「いや、ほんというと明日、明後日も」
男「また、なんで」
女「実はさ、部屋を追い出されちゃってさ」
男「・・・いつの時代だよ」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:09:21.04:j0C1URZX0
女「うちもさ、今月厳しくて、給料日まで仕送りできないんだって」
男「わかるけど。なんで俺に頼むの。つきあってた男がいたんじゃなかった?」
女「ああ・・・。今日さ、別れたんだ」
男「ふうん」
女「・・・」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:11:44.89:j0C1URZX0
男「振ったの」
女「まあね」
男「ほんとに?」
女「ほんとだって」
男「だから、そんな風に見えないんだって」
女「はあ。振られたのよ」
男「やっぱり。そうだと思ったよ」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:16:09.63:j0C1URZX0
女「わかるの」
男「わかるよ。口で。震えてるもん」
女「そっか・・・。でも、別にそれはいいんだ」
男「未練ないの」
女「まあ、ないよ」
男「そう」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:19:07.95:j0C1URZX0
男「あてにしていた彼とも別れて、元彼の俺の許に転がり込む気か」
女「あなたは元彼ってだけじゃないでしょ」
男「なに、友達?」
女「幼なじみでしょうに」
男「幼なじみねぇ」
女「そうよ。違う?」
男「別に違わないけどさ」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:22:44.06:j0C1URZX0
男「そう易々と異性を泊めるわけには、いかんよ」
女「なによ。意識しちゃって」
男「子どもじゃあるまいし」
女「大人だと何が違うの」
男「見た目、かな」
女「意識してるじゃないの」
男「なあに。さっきまで別の男とつきあってた癖に」
女「そ、それは、ごめん」
男「謝られても困るんだけどな・・・」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:27:35.87:j0C1URZX0
男「まあ、いいよ。のたれ死なれても困るし」
女「さっすが。わかるね」
男「お前こそわかってるんだろうな」
女「なにが」
男「なんにもないからな」
女「何よ。わたしはそんなに軽くないって」
男「そのつきあってた奴とはどうだったんだ」
女「別に、何もしてないよ」
男「ちゅーは?」
女「ちゅーはした、けど・・・」
男「やっぱり」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:34:58.59:j0C1URZX0
女「やっぱりって、ちゅーくらいで騒ぐ歳じゃないでしょうよ」
男「まあな。それでも、嫌だよ」
女「ふうん。まだ惚れてたりして」
男「まあ、違うっていうと嘘になるかもな」
女「そうなの?」
男「嘘だって。さすがに、ないよ」
女「・・・そっか」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:40:20.51:j0C1URZX0
男「とにかく泊めてやるから。感謝しろよ」
女「うん、する。すごく」
男「まったく。大学も中退したんだって」
女「それをいわれると、きついよ」
男「色ぼけになってたんじゃねえか」
女「もう、いいでしょ」
男「悪い。ちょっと仕返し」
女「はあ。とにかく、ありがとう」
男「あの時もそれくらい素直だったら、よかったのに」
女「・・・」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:44:04.09:j0C1URZX0
男「汚い部屋だけど」
女「なんか、生活感ないね」
男「そんなことないだろ。ほら、ゲームあるし」
女「無機質だよ」
男「そう?冷蔵庫とか押入れとか、すごいよ」
女「彼女、いないんでしょ」
男「いるよ」
女「うそ」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:47:38.06:j0C1URZX0
女「彼女がいたら、わたしなんか泊めないもんね」
男「だから、最初断っただろうが」
女「部屋にも女っけないし」
男「部屋には呼んでないからな」
女「別に無理しなくていいよ?」
男「本当にいるんだって」
女「ほんとに?」
男「ほんとだって」
女「・・・そう」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 02:55:11.94:j0C1URZX0
男「なに、その残念そうな顔は」
女「べつに。そんな顔してないよ」
男「さっきまで別の男とつきあってたのに」
女「だから、それはもういいって」
男「ほんとにいいの。俺んちに泊まって」
女「なに、今更」
男「もう戻らなくなるぞ」
女「そんなの気にしなくていいんだって。もう何もないから」
男「そっか」
女「そうだよ」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:01:59.02:j0C1URZX0
男「飯は、どうする?あれなら、なんかつくるけど」
女「食べてないけど、いいよ。そんなに空いてない」
男「まあ、時間も遅いしな。先に風呂入れよ」
女「一緒に入ろうか」
男「冗談はよせよ。俺も入るから早くしてくれ」
女「まーったく。つれないね」
男「性格だよ」
女「そんなの、知ってるって」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:26:27.21:j0C1URZX0
男「ふう。あれ、まだ起きてたの」
女「うん。まあね」
男「もう遅いし、俺は寝るけど」
女「明日学校あるんだったね」
男「だから、寝るよ」
女「うん。わたしも寝るから」
男「じゃあ、おやすみ」
女「ちょっとちょっと」
男「なに」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:30:31.64:j0C1URZX0
女「なんでソファで寝ようとしてるの。ベッドあるのに」
男「それはお前がつかっていいよ」
女「そんな」
男「嫌か?」
女「いや、なんか、悪いよ。わたしがソファで寝るから」
男「いいって。さすがにそんなに気の回らない男じゃないよ」
女「でも」
男「なにを今更遠慮してるんだよ。もう上がり込んでおいて」
女「それは、そうだけど」
男「じゃあ、おやすみ」
女「・・・おやすみ」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:33:47.92:j0C1URZX0
女「ねえ。男」
男「・・・」
女「もう寝た?」
女「・・・なんか、寂しい。でも元はと言えばわたしが悪いんだよね」
女「はあ・・・」
男「・・・」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:42:50.61:j0C1URZX0
女「はあ。よく寝た」
女「男ぉ。って、もういないのか」
女「9時か・・・。お腹減ったな」
女「あれ、パンとメモが置いてある。なんだって・・・」
おはよう。今から学校へ行ってきます。
朝ご飯はお前が好きなパンに目玉焼きを挟んだ、それです。冷めてたらお前の寝坊なのが悪い。
飲み物はポットにお湯が湧いてるから、棚の紅茶でもコーヒーでも飲んで下さい。お前はコーヒーが好きなんだっけ。
じゃあ、行ってきます。
女「なに。この他人行儀は」
女「へえ、覚えててくれたんだ・・・」
女「ぱく。・・・ちょっと冷たい」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:46:41.16:j0C1URZX0
女「この一枚のパンを二つに割るのがいいの。わかってるね」
女「二枚で挟むと厚くなっちゃうもんね」
女「ふう」
女「ゲームでも、しよっかな」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:51:17.53:j0C1URZX0
女「わたしは紅茶の方が好きだったんだけど」
女「ええと。ここか」
女「ほこり被ってるじゃない。男はコーヒー派だっけ」
女「ポットは、と。ここか」
女「ふう。なんか、暇だなぁ」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:56:06.22:j0C1URZX0
お昼
ぴこぴこ
女「あれ。これけっこう面白い」
ぴこぴこ
男「よお、って。お前何、ゲームしてるんだよ」
女「だめだった?」
男「別にダメじゃないけどさ」
女「変なゲームがあるの」
男「あるかもしれないだろ」
女「あるの」
男「ないよ」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 03:59:48.10:j0C1URZX0
女「そんなことはどうでもよくて。なんで帰ってきたの?」
男「お前が腹空かしてるだろうと思って」
女「そっか。ありがとう。でも、少しならお金、もってるよ」
男「そう。飯食いに行こうと思ってたんだけど、いらないか」
女「いや、いるよ。奢ってくれるんでしょ」
男「金もってるなら、やめた」
女「別にそれでも、いいよ。行こうよ」
男「わかったよ」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:02:02.19:j0C1URZX0
女「やっぱり彼女、いないんでしょ」
男「いるって」
女「彼女がいて、それで女とご飯食べに行くの」
男「お前は幼なじみだろ?自分で言ったぞ」
女「そうだけど、さ」
男「とにかく彼女はいるから。心配してくれなくていいよ」
女「・・・そりゃどうも」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:07:10.91:j0C1URZX0
男「誘っておいて何だけど。牛丼でよかった?」
女「牛丼好きだから。彼女と行く時は違う場所に行った方が、いいけどね」
男「覚えておくよ」
女「あなたはそういう所、鈍感だから。まあ、それがよかったんだけど」
男「女心と秋の空ってやつ?」
女「なにそれ」
男「すまん。今考えた」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:12:56.20:j0C1URZX0
女「ふう。お腹いっぱい。結局奢ってもらって、悪かったね」
男「お前の財布の中を見たら悲惨過ぎて、払わせられなかったよ」
女「そうだね。助かってるよ」
男「じゃあ、俺は学校に戻るから。道は、わかるよな」
女「うん。わかるよ。近所だから」
男「じゃあ、またな」
女「バイバイ」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:29:52.34:j0C1URZX0
夕方
男「ただいま。帰ったよ」
女「おかえり。ずいぶん遅かったんじゃない」ぴこぴこ
男「まあな。買い物してたから。というか、またゲームしてるのか」
女「だって面白いんだもの」ぴこぴこ
男「洋ゲー好きなんて、普通なのかな。まあ、いいけど」
女「彼女は?」
男「ああ、それで遅くなったんだ」
女「ふうん」ぴこぴこ
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:33:11.46:j0C1URZX0
女「なにも言われないの?」
男「なにが」
女「わたしがいること」
男「だって、言ってないから」
女「そっか。見られたら、なんか嫌だね」
男「別に何もしてないだろ。こんなことで何もいわないよ」
女「そうかなぁ。わたしだったら、怒るけど」
男「お前はな」
女「まあね」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:39:29.65:j0C1URZX0
女「たくさん買い物したんだね」
男「ああ。一週間分だからな」
女「今日は何つくるの?」
男「今日は、そうだな。色々あるから好きなもの言ってくれれば、つくるよ」
女「男って、料理できたっけ」
男「大学入ってから、ちょっとな」
女「そうなんだ。わたしも手伝うけど、期待してるよ」
男「まあ、まかせろ」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:41:30.24:j0C1URZX0
男「で、何が食べたいんだ?」
女「うーんと。やっぱりオムライスかな」
男「いいのか、そんなので」
女「うん。最近食べてないから」
男「オムライスくらい自分でつくれるだろ」
女「いいの。お願い」
男「わかったよ」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:43:50.39:j0C1URZX0
女「おいしい。男って料理うまいんだね」
男「いや、殆どお前がつくってたじゃん」
女「そんなことないよ。この卵、わたしできないよ」
男「そういってもらえると本気にするけど」
女「どうぞ。実際、うまいよ」
男「ありがとう」
女「どういたしまして」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:48:38.05:j0C1URZX0
男「じゃあ、風呂も入ったし、寝るか」
女「もう寝るの。まだ10時だよ」
男「だって、何するの。うちテレビ見られないからさ」
女「ゲームしようよ。それ専用なんでしょ」
男「そうだけど。これ、そんなに気に入ったの」
女「入ったよ。やろう」
男「はいはい」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:52:28.11:j0C1URZX0
女「ねえ」ぴこぴこ
男「なに」
女「なんで泊めてくれたの」ぴこぴこ
男「そりゃ、お前が困ってたから」
女「そっか」ぴこぴこ
女「ありがとう」ぴこぴこ
男「うん・・・。まあ、今度俺がそうなったら、頼むよ」
女「いやだよ」
男「なんでよ」
女「だってつきあってないんだもの」
男「・・・」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 04:59:39.04:j0C1URZX0
女「って普通はこう云うと思うんだけど」
女「本当に、なんで泊めてくれたの?」
男「別に、さっきの理由で間違いないよ」
女「そっか」
女「優しいんだね」
男「今更、知ったのかよ」
女「ううん。知ってたよ」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:03:40.46:j0C1URZX0
女「じゃあ、寝よっか。もう12時回ったしね」
男「ああ、おやすみ」
女「今日もソファで寝るの」
男「そうだけど」
女「大丈夫?」
男「なにが」
女「体とか、痛くなったりしない?」
男「余計なこと、心配しなくていいよ」
女「そう・・・。じゃ、おやすみ」
男「おやすみなさい」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:07:42.29:j0C1URZX0
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・ねぇ」
男「・・・」
女「起きてるんでしょ」
男「・・・」
女「昨日もそうして、寝た振りしてたよね」
男「・・・」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:13:06.37:j0C1URZX0
女「睡眠の邪魔をする気はないけど」
女「男」
女「ねぇ」
男「・・・なんだよ」
女「やっぱり起きてたんだ」
男「お前が呼ぶから、起きたんだよ」
女「うそ」
女「だって男、昔から寝つき悪いもん」
男「いつの話だよ、いつの」
女「10年前かな」
男「俺は小学生でありながら女と寝たりしてないぞ」
女「ごめん。そうだったね。もっと、昔だよ。昔」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:15:45.19:j0C1URZX0
女「こっち、きて」
男「そんなこというから、軽い女だと思われるんだ」
女「軽くないよ。前の彼とは結局何もしてないもん」
男「ちゅーはしたんだろ?」
女「男だって彼女とちゅーくらいするでしょ」
男「ま、まあな」
女「だったら、おあいこだよ」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:18:00.67:j0C1URZX0
女「それにわたし、男の後、彼しかつきあってないし」
女「ほんとに何もないんだって・・・」
男「わかったよ。寝るだけな。寝るだけ。他には何もしないからな」
女「うん・・・」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:20:26.79:j0C1URZX0
男「ほら、きてやったぞ」
女「・・・ありがとう」
女「昔はこうして、よく一緒に寝たよね」
男「15年前だろ」
女「そうだけどさ。懐かしいよ」
男「まあな」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:22:49.35:j0C1URZX0
女「なんで壁の方向いてるのよ」
男「そりゃあ、変な気が起こらないように」
女「変な気、起こるんだ」
男「まあ、男ですから」
女「大人になったんだ」
男「その言い方、やめてくれ」
女「ごめん」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:25:49.18:j0C1URZX0
男「ほら、こっち向けばいいんだろ」
女「うん。相変わらず平凡な顔してるね」
男「うるせえよ。お前だって、変わり映えしないよ」
女「そう?変わって欲しかった?」
男「まあ、そういうわけじゃ、ないけど」
女「そう。そうだよね」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:28:28.33:j0C1URZX0
女「ごめんね。まだ怒ってるんでしょ」
男「なに。何の話」
女「高校の時」
男「ああ」
女「好きな人がいるって、一方的に別れ話してさ」
男「もう、いいよ。その話は」
女「ううん」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:34:36.84:j0C1URZX0
女「あれさ、嘘だったんだ」
男「はあ?」
女「男が受験勉強で忙しくなって。それでわたし、寂しくなって」
女「注意をひこうと思って。止めて欲しかったんだ」
女「でも、男は止めてくれなくて」
女「当たり前だよね。後でそれに気づいて、後悔したよ。一度きりのね」
男「・・・」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:38:51.96:j0C1URZX0
女「それでもずっと男のことが好きで」
女「志望大学も男が行こうとした東京にある所に変えたんだ」
女「でね、こうして東京にきて。でもいえなかったんだ。怖くて」
男「もう、いいよ」
女「それで結局、別の男とつるんでるんだもんね」
女「最低だよね。わたし」
女「本当にごめんなさい」
男「・・・別に、今は俺も彼女がいるんだから」
女「・・・」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:44:33.31:j0C1URZX0
男「気にしてないから。ほら、泣くなよ」
女「ごめん。ほんと、ごめん・・・」
男「こっちこそごめんな。気づいてあげられなくて」
女「男は、悪くないの。わたしが、余計なことをして」
男「大丈夫。だいじょうぶだから。もう、寝ろよ」
女「うん。ほんと・・・ごめん」
男「おやすみ」
女「うん・・・」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:47:33.58:j0C1URZX0
翌日
女「じゃあね。実家に帰って、しばらく会えないかもしれないけど」
男「ああ、元気でな」
女「・・・もう、一生会えないかもね」
男「そんなこと、ねえよ」
女「そう、だよね」
女「あのさ」
男「なに」
女「男のつきあってる彼女って、どんな人?」
男「そ、それは・・・」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:56:41.16:j0C1URZX0
女「・・・やっぱり、いいや」
女「わたしより可愛かったら、くやしいもんね」
男「お前より、可愛いよ」
女「へへ、この幸せもん」
男「嘘うそ。お前の方が可愛いよ」
女「・・・そんな言われ方されたら、彼女、傷つくよ」
男「そう、だな。気をつけるよ」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 05:57:55.22:j0C1URZX0
女「・・・そろそろ、行かないと」
男「ああ。じゃあ」
男「あ、女」
女「なに?」
男「いや、やっぱりなんでもない」
女「何よ。なんか、気持ち悪いよ」
男「ほっとけよ」
女「あなたの態度じゃなくて、わたしの気分が」
男「・・・いや、いいんだ」
女「そっか」
女「じゃあね。また、会えるといいね」
男「ああ。必ず、会えるよ」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:03:08.17:j0C1URZX0
男「ふう。行っちまったか」
男「これで、よかったんだよな。これで」
男「・・・実家は隣同士だし」
男「また、会えるよな」
男「さよなら。本当は、またねって素直に云って欲しかったんだ」
男「・・・またな」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:17:05.54:j0C1URZX0
一ヶ月後
ピンポーン
男「はい、どちらさま・・・って」
女「よっ。来ちゃった」
男「・・・来ちゃったって。どういうことだよ」
女「親がさ、もううちじゃ食わせられないから、働け~って」
男「それで、また東京まで出てきたの」
女「そう。こっちの方が居心地いいし」
男「お前の親はほんと、何考えてるんだろうな」
女「それは、わたしが思ってたことだって」
男「ふふ。そうだな」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:20:22.82:j0C1URZX0
女「あのさ。それで、言いにくいんだけどさ」
男「なに。また、泊めてくれ、とかいうの」
女「いや、そんなこと、もういわないよ」
女「ご、ご飯一緒に食べに行かないかな~って」
男「はあ。めし?」
女「そう。メシ」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:22:56.15:j0C1URZX0
女「この間奢ってもらっちゃったから、今度はそのお礼に」
男「はあ、そうだな」
男「あのさ、女」
女「ん?なに」
男「すごく言いにくいんだけどさ」
女「勿体ぶってないで、早くいってよ」
男「俺さ、今度結婚するんだ」
女「・・・え?」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:24:46.88:j0C1URZX0
女「結婚、するの」
男「ああ。だから、その。今後はお前とこうしてつき合えない」
女「・・・おめでとう」
男「どうも。ありがとう」
女「・・・」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:27:48.35:j0C1URZX0
女「・・・」
男「・・・なんてな」
女「え?」
男「嘘だよ、うそ。お前って簡単に騙されるんだな」
女「嘘?結婚しないの」
男「ああ、しない。だから、めし、行ってもいいぞ」
女「・・・ふふ」
男「なんだよ」
女「だって・・・」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:31:48.87:j0C1URZX0
女「全部知ってたんだもん」
男「はあ?なにが」
女「彼女、いなかったんでしょう」
男「な、なんで。いたよ」
女「いいえ。いません」
男「なんでわかるんだよ」
女「だってね。口が震えてたもの。彼女のことを言うとき」
男「うそつけよ」
女「ほんと。全部、わかってたんだから」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 06:35:59.05:j0C1URZX0
女「なんのつもりで嘘ついてるんだろうな~って」
女「でも、わかった。仕返しのつもりだったんでしょう」
女「実家は隣同士だもんね。会おうと思えば会えるのに。臭い別れ方しちゃって」
男「・・・それは、お前もだろ」
女「とにかく。全部わかってたんだ。わたしの前で嘘つこうったってだめだよ」
女「わたしはあなたの、幼なじみだから」
男「・・・ちぇ」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:02:22.30:j0C1URZX0
女「それともこっちの方がよかった?元カノだから」
男「いいよ。そっちは。なんだか滅入る」
女「そっか」
男「・・・はは」
女「ふふ」
男「そうだよ。仕返しのつもりで。いつからわかってたの」
女「ああ、やっぱり。ふうん」
男「なんだよ」
女「ごめん。ちょっと、半信半疑だった。最後は賭けてみた」
男「はあ?」
女「ごめん。口が震えてたってのはほんとだけど」
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:08:02.86:j0C1URZX0
男「てっきりお前にはもう嘘はつけないと思った」
女「つけるよ。でも、あんまりつかないでね」
男「ああ・・・そうだな。お互いに」
女「うん」
男「散々俺を手玉にとったな」
女「そういうつもりじゃ、なかったんだけど・・・」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:13:56.66:j0C1URZX0
女「じゃあ、そういうことだから。住所決まったら、連絡するよ」
男「ああ、ちょっと待てよ。めし、食いに行くんだろ?」
女「え?ああ、うん」
男「なに。気分変わったの」
女「違う。なんか、嬉しくて」
男「はあ。お前、今なんて」
女「別に何もいってないよ」
男「そっか。じゃあ早速行こうぜ」
女「うん」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:20:32.98:j0C1URZX0
女「何がいい?」
男「そうだな・・・。やっぱり牛丼かな」
女「ええ、またぁ?彼女と行く時は別の所にした方がいいよっていったじゃん」
男「だってお前、彼女じゃないもの」
女「彼女にしてよ」
男「ええと。それはまた考えておくよ」
女「けち」
男「なんとでもいえよ」
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:39:45.65:j0C1URZX0
女「ふふ」
男「なに」
女「いや、ありがとう」
男「何が」
女「なんでも、ないよ。ほら、行こう?」
男「まったくおかしなやつだな。わかったから、引っ張らないで」
女「・・・ありがとう」
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:42:23.83:j0C1URZX0
男「いっとくけどな、俺はまだ許してないぞ」
女「わかってるよ。わかってる」
男「振られるのは、きついわ。例え嘘でも」
女「しつこい男はさ、その、嫌われるよ?」
男「わかってる癖に。ほら、行くぞ」
女「ああ、ちょっと。待ってよ」
男「まったく。これでもう少し素直だったら、可愛いんだけど」
女「聞こえてるよ?」
男「ああ、いや。ごめん」
女「素直に、なるね」
男「いいよ。口から出ただけだから」
女「そっか。それじゃあ、よろしくね。今後とも」
男「ああ・・・。よろしく」
おわり
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 11:57:12.71:MW241hAn0
乙
良かったぜ
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/11(月) 14:25:03.20:1JTNh/jL0
VIPにはあまりない感じの話だから面白かった
おつん
女「なに、話って。わたしも話したいことがあるんだけど」
「いや、その。あのさぁ」
女「何よぉ」
「お、俺とさ、別れてくれない?」
女「え、なに、突然・・・」
「いやさ、他に好きな子ができたっていうか。その、ほんとごめん」
女「・・・」
女「まったく。あんな男、こっちから振ってやるってんだ」
女「・・・はあ」
女「明日からどうしようかなぁ」
女「ほんと、困っちゃった・・・」
女「どうしよう」
女「あ」
男「お、よお」
女「なんで、いるの」
男「なんでって。そこに、住んでるから」
女「いや、それはわかってるよ。なんでこんな時間に」
男「散歩。悪い」
女「全然、悪く、ないけどさ」
男「そっちこそ、なんでここに」
女「別に、散歩かな」
男「散歩、か。そんな風に見えないけど」
女「あはは。実は男に用があって」
男「偶然を装わなくてもいいのに」
女「ごめん。そうだったね」
女「今日さ、泊めてくれないかな」
男「はあ」
女「いや、ほんというと明日、明後日も」
男「また、なんで」
女「実はさ、部屋を追い出されちゃってさ」
男「・・・いつの時代だよ」
女「うちもさ、今月厳しくて、給料日まで仕送りできないんだって」
男「わかるけど。なんで俺に頼むの。つきあってた男がいたんじゃなかった?」
女「ああ・・・。今日さ、別れたんだ」
男「ふうん」
女「・・・」
男「振ったの」
女「まあね」
男「ほんとに?」
女「ほんとだって」
男「だから、そんな風に見えないんだって」
女「はあ。振られたのよ」
男「やっぱり。そうだと思ったよ」
女「わかるの」
男「わかるよ。口で。震えてるもん」
女「そっか・・・。でも、別にそれはいいんだ」
男「未練ないの」
女「まあ、ないよ」
男「そう」
男「あてにしていた彼とも別れて、元彼の俺の許に転がり込む気か」
女「あなたは元彼ってだけじゃないでしょ」
男「なに、友達?」
女「幼なじみでしょうに」
男「幼なじみねぇ」
女「そうよ。違う?」
男「別に違わないけどさ」
男「そう易々と異性を泊めるわけには、いかんよ」
女「なによ。意識しちゃって」
男「子どもじゃあるまいし」
女「大人だと何が違うの」
男「見た目、かな」
女「意識してるじゃないの」
男「なあに。さっきまで別の男とつきあってた癖に」
女「そ、それは、ごめん」
男「謝られても困るんだけどな・・・」
男「まあ、いいよ。のたれ死なれても困るし」
女「さっすが。わかるね」
男「お前こそわかってるんだろうな」
女「なにが」
男「なんにもないからな」
女「何よ。わたしはそんなに軽くないって」
男「そのつきあってた奴とはどうだったんだ」
女「別に、何もしてないよ」
男「ちゅーは?」
女「ちゅーはした、けど・・・」
男「やっぱり」
女「やっぱりって、ちゅーくらいで騒ぐ歳じゃないでしょうよ」
男「まあな。それでも、嫌だよ」
女「ふうん。まだ惚れてたりして」
男「まあ、違うっていうと嘘になるかもな」
女「そうなの?」
男「嘘だって。さすがに、ないよ」
女「・・・そっか」
男「とにかく泊めてやるから。感謝しろよ」
女「うん、する。すごく」
男「まったく。大学も中退したんだって」
女「それをいわれると、きついよ」
男「色ぼけになってたんじゃねえか」
女「もう、いいでしょ」
男「悪い。ちょっと仕返し」
女「はあ。とにかく、ありがとう」
男「あの時もそれくらい素直だったら、よかったのに」
女「・・・」
男「汚い部屋だけど」
女「なんか、生活感ないね」
男「そんなことないだろ。ほら、ゲームあるし」
女「無機質だよ」
男「そう?冷蔵庫とか押入れとか、すごいよ」
女「彼女、いないんでしょ」
男「いるよ」
女「うそ」
女「彼女がいたら、わたしなんか泊めないもんね」
男「だから、最初断っただろうが」
女「部屋にも女っけないし」
男「部屋には呼んでないからな」
女「別に無理しなくていいよ?」
男「本当にいるんだって」
女「ほんとに?」
男「ほんとだって」
女「・・・そう」
男「なに、その残念そうな顔は」
女「べつに。そんな顔してないよ」
男「さっきまで別の男とつきあってたのに」
女「だから、それはもういいって」
男「ほんとにいいの。俺んちに泊まって」
女「なに、今更」
男「もう戻らなくなるぞ」
女「そんなの気にしなくていいんだって。もう何もないから」
男「そっか」
女「そうだよ」
男「飯は、どうする?あれなら、なんかつくるけど」
女「食べてないけど、いいよ。そんなに空いてない」
男「まあ、時間も遅いしな。先に風呂入れよ」
女「一緒に入ろうか」
男「冗談はよせよ。俺も入るから早くしてくれ」
女「まーったく。つれないね」
男「性格だよ」
女「そんなの、知ってるって」
男「ふう。あれ、まだ起きてたの」
女「うん。まあね」
男「もう遅いし、俺は寝るけど」
女「明日学校あるんだったね」
男「だから、寝るよ」
女「うん。わたしも寝るから」
男「じゃあ、おやすみ」
女「ちょっとちょっと」
男「なに」
女「なんでソファで寝ようとしてるの。ベッドあるのに」
男「それはお前がつかっていいよ」
女「そんな」
男「嫌か?」
女「いや、なんか、悪いよ。わたしがソファで寝るから」
男「いいって。さすがにそんなに気の回らない男じゃないよ」
女「でも」
男「なにを今更遠慮してるんだよ。もう上がり込んでおいて」
女「それは、そうだけど」
男「じゃあ、おやすみ」
女「・・・おやすみ」
女「ねえ。男」
男「・・・」
女「もう寝た?」
女「・・・なんか、寂しい。でも元はと言えばわたしが悪いんだよね」
女「はあ・・・」
男「・・・」
女「はあ。よく寝た」
女「男ぉ。って、もういないのか」
女「9時か・・・。お腹減ったな」
女「あれ、パンとメモが置いてある。なんだって・・・」
おはよう。今から学校へ行ってきます。
朝ご飯はお前が好きなパンに目玉焼きを挟んだ、それです。冷めてたらお前の寝坊なのが悪い。
飲み物はポットにお湯が湧いてるから、棚の紅茶でもコーヒーでも飲んで下さい。お前はコーヒーが好きなんだっけ。
じゃあ、行ってきます。
女「なに。この他人行儀は」
女「へえ、覚えててくれたんだ・・・」
女「ぱく。・・・ちょっと冷たい」
女「この一枚のパンを二つに割るのがいいの。わかってるね」
女「二枚で挟むと厚くなっちゃうもんね」
女「ふう」
女「ゲームでも、しよっかな」
女「わたしは紅茶の方が好きだったんだけど」
女「ええと。ここか」
女「ほこり被ってるじゃない。男はコーヒー派だっけ」
女「ポットは、と。ここか」
女「ふう。なんか、暇だなぁ」
お昼
ぴこぴこ
女「あれ。これけっこう面白い」
ぴこぴこ
男「よお、って。お前何、ゲームしてるんだよ」
女「だめだった?」
男「別にダメじゃないけどさ」
女「変なゲームがあるの」
男「あるかもしれないだろ」
女「あるの」
男「ないよ」
女「そんなことはどうでもよくて。なんで帰ってきたの?」
男「お前が腹空かしてるだろうと思って」
女「そっか。ありがとう。でも、少しならお金、もってるよ」
男「そう。飯食いに行こうと思ってたんだけど、いらないか」
女「いや、いるよ。奢ってくれるんでしょ」
男「金もってるなら、やめた」
女「別にそれでも、いいよ。行こうよ」
男「わかったよ」
女「やっぱり彼女、いないんでしょ」
男「いるって」
女「彼女がいて、それで女とご飯食べに行くの」
男「お前は幼なじみだろ?自分で言ったぞ」
女「そうだけど、さ」
男「とにかく彼女はいるから。心配してくれなくていいよ」
女「・・・そりゃどうも」
男「誘っておいて何だけど。牛丼でよかった?」
女「牛丼好きだから。彼女と行く時は違う場所に行った方が、いいけどね」
男「覚えておくよ」
女「あなたはそういう所、鈍感だから。まあ、それがよかったんだけど」
男「女心と秋の空ってやつ?」
女「なにそれ」
男「すまん。今考えた」
女「ふう。お腹いっぱい。結局奢ってもらって、悪かったね」
男「お前の財布の中を見たら悲惨過ぎて、払わせられなかったよ」
女「そうだね。助かってるよ」
男「じゃあ、俺は学校に戻るから。道は、わかるよな」
女「うん。わかるよ。近所だから」
男「じゃあ、またな」
女「バイバイ」
夕方
男「ただいま。帰ったよ」
女「おかえり。ずいぶん遅かったんじゃない」ぴこぴこ
男「まあな。買い物してたから。というか、またゲームしてるのか」
女「だって面白いんだもの」ぴこぴこ
男「洋ゲー好きなんて、普通なのかな。まあ、いいけど」
女「彼女は?」
男「ああ、それで遅くなったんだ」
女「ふうん」ぴこぴこ
女「なにも言われないの?」
男「なにが」
女「わたしがいること」
男「だって、言ってないから」
女「そっか。見られたら、なんか嫌だね」
男「別に何もしてないだろ。こんなことで何もいわないよ」
女「そうかなぁ。わたしだったら、怒るけど」
男「お前はな」
女「まあね」
女「たくさん買い物したんだね」
男「ああ。一週間分だからな」
女「今日は何つくるの?」
男「今日は、そうだな。色々あるから好きなもの言ってくれれば、つくるよ」
女「男って、料理できたっけ」
男「大学入ってから、ちょっとな」
女「そうなんだ。わたしも手伝うけど、期待してるよ」
男「まあ、まかせろ」
男「で、何が食べたいんだ?」
女「うーんと。やっぱりオムライスかな」
男「いいのか、そんなので」
女「うん。最近食べてないから」
男「オムライスくらい自分でつくれるだろ」
女「いいの。お願い」
男「わかったよ」
女「おいしい。男って料理うまいんだね」
男「いや、殆どお前がつくってたじゃん」
女「そんなことないよ。この卵、わたしできないよ」
男「そういってもらえると本気にするけど」
女「どうぞ。実際、うまいよ」
男「ありがとう」
女「どういたしまして」
男「じゃあ、風呂も入ったし、寝るか」
女「もう寝るの。まだ10時だよ」
男「だって、何するの。うちテレビ見られないからさ」
女「ゲームしようよ。それ専用なんでしょ」
男「そうだけど。これ、そんなに気に入ったの」
女「入ったよ。やろう」
男「はいはい」
女「ねえ」ぴこぴこ
男「なに」
女「なんで泊めてくれたの」ぴこぴこ
男「そりゃ、お前が困ってたから」
女「そっか」ぴこぴこ
女「ありがとう」ぴこぴこ
男「うん・・・。まあ、今度俺がそうなったら、頼むよ」
女「いやだよ」
男「なんでよ」
女「だってつきあってないんだもの」
男「・・・」
女「って普通はこう云うと思うんだけど」
女「本当に、なんで泊めてくれたの?」
男「別に、さっきの理由で間違いないよ」
女「そっか」
女「優しいんだね」
男「今更、知ったのかよ」
女「ううん。知ってたよ」
女「じゃあ、寝よっか。もう12時回ったしね」
男「ああ、おやすみ」
女「今日もソファで寝るの」
男「そうだけど」
女「大丈夫?」
男「なにが」
女「体とか、痛くなったりしない?」
男「余計なこと、心配しなくていいよ」
女「そう・・・。じゃ、おやすみ」
男「おやすみなさい」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・ねぇ」
男「・・・」
女「起きてるんでしょ」
男「・・・」
女「昨日もそうして、寝た振りしてたよね」
男「・・・」
女「睡眠の邪魔をする気はないけど」
女「男」
女「ねぇ」
男「・・・なんだよ」
女「やっぱり起きてたんだ」
男「お前が呼ぶから、起きたんだよ」
女「うそ」
女「だって男、昔から寝つき悪いもん」
男「いつの話だよ、いつの」
女「10年前かな」
男「俺は小学生でありながら女と寝たりしてないぞ」
女「ごめん。そうだったね。もっと、昔だよ。昔」
女「こっち、きて」
男「そんなこというから、軽い女だと思われるんだ」
女「軽くないよ。前の彼とは結局何もしてないもん」
男「ちゅーはしたんだろ?」
女「男だって彼女とちゅーくらいするでしょ」
男「ま、まあな」
女「だったら、おあいこだよ」
女「それにわたし、男の後、彼しかつきあってないし」
女「ほんとに何もないんだって・・・」
男「わかったよ。寝るだけな。寝るだけ。他には何もしないからな」
女「うん・・・」
男「ほら、きてやったぞ」
女「・・・ありがとう」
女「昔はこうして、よく一緒に寝たよね」
男「15年前だろ」
女「そうだけどさ。懐かしいよ」
男「まあな」
女「なんで壁の方向いてるのよ」
男「そりゃあ、変な気が起こらないように」
女「変な気、起こるんだ」
男「まあ、男ですから」
女「大人になったんだ」
男「その言い方、やめてくれ」
女「ごめん」
男「ほら、こっち向けばいいんだろ」
女「うん。相変わらず平凡な顔してるね」
男「うるせえよ。お前だって、変わり映えしないよ」
女「そう?変わって欲しかった?」
男「まあ、そういうわけじゃ、ないけど」
女「そう。そうだよね」
女「ごめんね。まだ怒ってるんでしょ」
男「なに。何の話」
女「高校の時」
男「ああ」
女「好きな人がいるって、一方的に別れ話してさ」
男「もう、いいよ。その話は」
女「ううん」
女「あれさ、嘘だったんだ」
男「はあ?」
女「男が受験勉強で忙しくなって。それでわたし、寂しくなって」
女「注意をひこうと思って。止めて欲しかったんだ」
女「でも、男は止めてくれなくて」
女「当たり前だよね。後でそれに気づいて、後悔したよ。一度きりのね」
男「・・・」
女「それでもずっと男のことが好きで」
女「志望大学も男が行こうとした東京にある所に変えたんだ」
女「でね、こうして東京にきて。でもいえなかったんだ。怖くて」
男「もう、いいよ」
女「それで結局、別の男とつるんでるんだもんね」
女「最低だよね。わたし」
女「本当にごめんなさい」
男「・・・別に、今は俺も彼女がいるんだから」
女「・・・」
男「気にしてないから。ほら、泣くなよ」
女「ごめん。ほんと、ごめん・・・」
男「こっちこそごめんな。気づいてあげられなくて」
女「男は、悪くないの。わたしが、余計なことをして」
男「大丈夫。だいじょうぶだから。もう、寝ろよ」
女「うん。ほんと・・・ごめん」
男「おやすみ」
女「うん・・・」
翌日
女「じゃあね。実家に帰って、しばらく会えないかもしれないけど」
男「ああ、元気でな」
女「・・・もう、一生会えないかもね」
男「そんなこと、ねえよ」
女「そう、だよね」
女「あのさ」
男「なに」
女「男のつきあってる彼女って、どんな人?」
男「そ、それは・・・」
女「・・・やっぱり、いいや」
女「わたしより可愛かったら、くやしいもんね」
男「お前より、可愛いよ」
女「へへ、この幸せもん」
男「嘘うそ。お前の方が可愛いよ」
女「・・・そんな言われ方されたら、彼女、傷つくよ」
男「そう、だな。気をつけるよ」
女「・・・そろそろ、行かないと」
男「ああ。じゃあ」
男「あ、女」
女「なに?」
男「いや、やっぱりなんでもない」
女「何よ。なんか、気持ち悪いよ」
男「ほっとけよ」
女「あなたの態度じゃなくて、わたしの気分が」
男「・・・いや、いいんだ」
女「そっか」
女「じゃあね。また、会えるといいね」
男「ああ。必ず、会えるよ」
男「ふう。行っちまったか」
男「これで、よかったんだよな。これで」
男「・・・実家は隣同士だし」
男「また、会えるよな」
男「さよなら。本当は、またねって素直に云って欲しかったんだ」
男「・・・またな」
一ヶ月後
ピンポーン
男「はい、どちらさま・・・って」
女「よっ。来ちゃった」
男「・・・来ちゃったって。どういうことだよ」
女「親がさ、もううちじゃ食わせられないから、働け~って」
男「それで、また東京まで出てきたの」
女「そう。こっちの方が居心地いいし」
男「お前の親はほんと、何考えてるんだろうな」
女「それは、わたしが思ってたことだって」
男「ふふ。そうだな」
女「あのさ。それで、言いにくいんだけどさ」
男「なに。また、泊めてくれ、とかいうの」
女「いや、そんなこと、もういわないよ」
女「ご、ご飯一緒に食べに行かないかな~って」
男「はあ。めし?」
女「そう。メシ」
女「この間奢ってもらっちゃったから、今度はそのお礼に」
男「はあ、そうだな」
男「あのさ、女」
女「ん?なに」
男「すごく言いにくいんだけどさ」
女「勿体ぶってないで、早くいってよ」
男「俺さ、今度結婚するんだ」
女「・・・え?」
女「結婚、するの」
男「ああ。だから、その。今後はお前とこうしてつき合えない」
女「・・・おめでとう」
男「どうも。ありがとう」
女「・・・」
女「・・・」
男「・・・なんてな」
女「え?」
男「嘘だよ、うそ。お前って簡単に騙されるんだな」
女「嘘?結婚しないの」
男「ああ、しない。だから、めし、行ってもいいぞ」
女「・・・ふふ」
男「なんだよ」
女「だって・・・」
女「全部知ってたんだもん」
男「はあ?なにが」
女「彼女、いなかったんでしょう」
男「な、なんで。いたよ」
女「いいえ。いません」
男「なんでわかるんだよ」
女「だってね。口が震えてたもの。彼女のことを言うとき」
男「うそつけよ」
女「ほんと。全部、わかってたんだから」
女「なんのつもりで嘘ついてるんだろうな~って」
女「でも、わかった。仕返しのつもりだったんでしょう」
女「実家は隣同士だもんね。会おうと思えば会えるのに。臭い別れ方しちゃって」
男「・・・それは、お前もだろ」
女「とにかく。全部わかってたんだ。わたしの前で嘘つこうったってだめだよ」
女「わたしはあなたの、幼なじみだから」
男「・・・ちぇ」
女「それともこっちの方がよかった?元カノだから」
男「いいよ。そっちは。なんだか滅入る」
女「そっか」
男「・・・はは」
女「ふふ」
男「そうだよ。仕返しのつもりで。いつからわかってたの」
女「ああ、やっぱり。ふうん」
男「なんだよ」
女「ごめん。ちょっと、半信半疑だった。最後は賭けてみた」
男「はあ?」
女「ごめん。口が震えてたってのはほんとだけど」
男「てっきりお前にはもう嘘はつけないと思った」
女「つけるよ。でも、あんまりつかないでね」
男「ああ・・・そうだな。お互いに」
女「うん」
男「散々俺を手玉にとったな」
女「そういうつもりじゃ、なかったんだけど・・・」
女「じゃあ、そういうことだから。住所決まったら、連絡するよ」
男「ああ、ちょっと待てよ。めし、食いに行くんだろ?」
女「え?ああ、うん」
男「なに。気分変わったの」
女「違う。なんか、嬉しくて」
男「はあ。お前、今なんて」
女「別に何もいってないよ」
男「そっか。じゃあ早速行こうぜ」
女「うん」
女「何がいい?」
男「そうだな・・・。やっぱり牛丼かな」
女「ええ、またぁ?彼女と行く時は別の所にした方がいいよっていったじゃん」
男「だってお前、彼女じゃないもの」
女「彼女にしてよ」
男「ええと。それはまた考えておくよ」
女「けち」
男「なんとでもいえよ」
女「ふふ」
男「なに」
女「いや、ありがとう」
男「何が」
女「なんでも、ないよ。ほら、行こう?」
男「まったくおかしなやつだな。わかったから、引っ張らないで」
女「・・・ありがとう」
男「いっとくけどな、俺はまだ許してないぞ」
女「わかってるよ。わかってる」
男「振られるのは、きついわ。例え嘘でも」
女「しつこい男はさ、その、嫌われるよ?」
男「わかってる癖に。ほら、行くぞ」
女「ああ、ちょっと。待ってよ」
男「まったく。これでもう少し素直だったら、可愛いんだけど」
女「聞こえてるよ?」
男「ああ、いや。ごめん」
女「素直に、なるね」
男「いいよ。口から出ただけだから」
女「そっか。それじゃあ、よろしくね。今後とも」
男「ああ・・・。よろしく」
おわり
乙
良かったぜ
VIPにはあまりない感じの話だから面白かった
おつん
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コメント一覧 (11)
ケータイ小説作家のVIPデビューかい
別れ話をして気を引きたいみたいな人は中高生とかにはいそうだけど別れる可能性でてくるし理解し難いね。
悔しいッビクンビクン!!
iいつものVIPとは違う感じだったしよかったGJ