- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 01:11:59.17:UCT2Ap7G0
兄「すいません。何を言ってるのか、よくわからないのですが」
役人「ええ。こちらも困惑しています。まさか、こんな事になるとは」
妹「……」 ぶるぶる
兄「妹はまだ10才ですよっ!?」
役人「ええはい。しかし厳正な抽選の結果、選ばれてしまいましたので」
兄「正気とは思えない!」
妹「お兄ちゃん……」
兄「大丈夫だ。僕が何とかするから」
役人「お兄さんも知ってるでしょう。わが国は法改正に伴い、抽選で大統領を選ぶ事になりました」
兄「そういう問題じゃないでしょう!?」
役人「そう言われてもねぇ」

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12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 01:31:07.30:UCT2Ap7G0
兄「役人仕事もいい加減にしてください! 大体、未成年に……っ!」
役人「あ、リモコンを拝借しますね」 ピッ
妹「……え?」
『……というわけで、大統領は10才の妹さんに決まりました。以上で記者会見を終わります』
兄「なっ!?」
役人「もう発表しちゃったんですよ」
兄「ふざけるなよ! こんなやり方が許されるわけないだろう!?」
役人「文句は方針を決めた方に言ってくださいよ」
兄「どこにいるんだよ、そいつは!?」
役人「官邸に。会いたければ会えますよ。大統領ならね」
兄「……っ」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 01:37:04.54:UCT2Ap7G0
役人「それより、急がなければ大変なことになりますよ」
兄「なんだって? ……なんだ、外が騒がしいな」
役人「マスコミが押し寄せているのでしょう。日本初の大統領ですからね」
兄「プライバシーの権利は」
役人「大統領ですから、ないでしょうね。早く決断した方がよろしいかと」
兄「なら今すぐ辞退を」
役人「ただし、辞退が知らされた所で、この騒ぎが収まると思わない方がいいですよ」
兄「なに?」
役人「大統領を辞退した少女として、見世物にされるのは避けられないでしょうね。当然、お兄さんも身内として晒し者になるでしょう」
妹「……」
役人「それに、一般人を守る義務もありませんから、外に大挙しているマスコミを止めているSPも退散します」
兄「……やり方が汚いぞ」
役人「国が一度決めた方針を変える事はないのですよ。その過ちが証明されるまではね」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 01:44:28.56:UCT2Ap7G0
妹「私、やる。大統領になる」
兄「妹!?」
妹「もう決まっちゃったんだもん、しょうがないよ。それに……お兄ちゃんに、迷惑かけたくないから」
兄「……っ!」
役人「そうですか。それでは表に車を待たせていますので、そちらに」
兄「待て!!」
役人「……何か?」
兄「僕も付いていく。それくらい許されるだろう?」
妹「お兄ちゃん」
兄「お前は僕が守ってやるから。絶対にだ」
役人「……まぁ、いいでしょう。特例ですよ。次はありません」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 01:55:13.09:UCT2Ap7G0
妹「すごい」
兄「あの人、テレビで見たことある。国会議員だ」
役人「それでは、こちらの部屋にお入りください」
兄「あ、はい。妹、ほらこっち」
妹「ん」
役人「粗茶ですが」
妹「あ、ありがとうございます」
兄「……それで、これから妹はどうなるんですか?」
役人「副大統領を一人指名していただくだけでいいです」
兄「それだけ、ですか?」
役人「仕事は秘書がやります。重要な判断は側近が片付けます。妹さんは座っているだけでいいです」
妹「ほっ」
兄「……待ってください。なら、妹が大統領になる意味は、なんですか?」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:01:47.97:UCT2Ap7G0
役人「スケープゴートです」
妹「すけーぷごーと?」
兄「……身代わりか。つまり、全ての責任は妹が負うってことか」
妹「え!?」
役人「当然でしょう。給与をもらい、大統領の席に座るのですから」
兄「帰るぞ、妹。こんなの受ける必要はない。マスコミが嫌なら、しばらくジイちゃんの家で暮らそう」
妹「……ダメだよ。逃げられないよ」
兄「妹!」
妹「お兄ちゃんは行って。私、頑張るから。ね?」 ぷるぷる
兄「バカ野郎! 自分の妹を放って行けるかよっ!」
役人「しかし、もう刻限です。あなたにはお引取り願わねばなりません」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:11:53.37:UCT2Ap7G0
兄「……妹、僕を副大統領に指名しろ」
妹「え?」
役人「これはまた大胆な事を」
兄「それ以外に側にいる方法がないなら、僕は喜んで副大統領になる。妹が大統領になれるんだ、僕が副大統領になるのも問題ないだろ?」
役人「ええ。手続き的な問題はありませんね」
兄「なら、妹。僕を副大統領に指名してくれ」
妹「でも、お兄ちゃんまで」
兄「僕は、お前のお兄ちゃんなんだ! 離れたりなんかするもんかっ!」
妹「……お兄ちゃんっ!」 だきっ
役人「それでは、そのように発表しておきましょう」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:18:59.45:UCT2Ap7G0
『大統領は10才!?』
『大統領制度に早急な見直しを』
『未成年が大統領に?』
兄「予想通りだな」
役人「こうなるでしょうね」
兄「……あんたがなぜ大統領室にいるんだ?」
役人「ええ。私も大統領秘書に任命されまして」
兄「どうなってるんだ、この国は?」
役人「私も、子供のお守りをさせられるとは」
兄「なんだと? その子供に責任を押し付けてるのは、あんたらじゃないか」
役人「気に入らないならどうぞ、クビにしてください」
妹「お兄ちゃん。役人さんに怒っても仕方ないよ。それに、少しでも知ってる人の方が、私はいいかな」
兄(確かに、知らない大人と話をするのは、妹には辛いか)
兄「わかったよ。……ただし、役人さん。あんたも少しは歩み寄ってくれ。妹も好きで大統領になったわけじゃないのは知ってるだろ?」
役人「ええ。私も別にあなた方と敵対したいわけではありませんから」
兄(本当にそう思ってるのかよ)
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:28:49.93:UCT2Ap7G0
役人「それでは、最初のお仕事です。所信表明演説をしていただきます」
妹「えんぜつ、ですか?」
兄「話が違うだろ。妹は座っているだけでいいと」
役人「完全に座っているだけでいいはずがないでしょう」
兄「くそっ! あんたは誰の味方なんだよ!」
役人「一応は秘書ですから、妹さんの味方かと」
妹「お兄ちゃん。大丈夫だから、少し落ち着いて」
兄「……ああ、悪い。妹に心配させるようじゃ、俺も副大統領失格だな」
妹「それで、役人さん。そのしょしんえんぜつっていうのは、何をすればいいの?」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:38:30.15:UCT2Ap7G0
役人「これからの方針を語ればよろしいのです」
妹「方針?」
役人「経済対策、外交政策。その他諸々の問題について述べるだけです」
妹「でも、私、何も知りません」
役人「台本はこちらで用意しますから、どうにか覚えてもらえればいいです。しかし」
兄「ただの子供だったはずの妹が、そんな話をしても信憑性はないな」
役人「その通りです。そして、国民に疑心を持たれれば、ただでさえ風向きの悪い大統領制は崩壊します」
兄(それだけならいい。むしろ望む所だ。でも、妹にも非難の目が向くのは避けたい)
妹「……台本は、いりません」
役人「本気ですか?」
妹「私、素直な気持ちで話してみます。だって……台本なんて覚えられないと思うし」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:48:29.84:UCT2Ap7G0
役人「お兄さん。あなたも、それでいいんですか?」
兄「妹が決めたなら、僕は見守るだけだ」
役人「……どうなっても知りませんよ」
妹「ごめんなさい。役人さんには、迷惑、掛けませんから」
役人「そういう問題では、ないのですがね」
兄「妹は、一度決めたら引き下がらないですよ」
役人「……わかりました。それでは時間になったら、お呼びします。ゆっくりお考えください」
兄「僕はどうする?」
妹「……えと」
兄「遠慮するなよ。僕はお前のお兄ちゃんなんだ。不安ならそばにいるし、助けが欲しいなら全部投げ出しても助けてみせる」
妹「……お兄ちゃん、ちょっと大げさすぎ。恥ずかしいかも」
兄「うるさいな。お前ほどじゃないにしろ、僕も緊張してるんだよ」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 02:55:34.66:UCT2Ap7G0
妹「……お兄ちゃん。少し、眠っていい?」
兄「ああ。まだ時間はあるし、構わないだろう」
妹「えと、その」
兄「……ほら、こっちに来いよ。膝、貸してやるから」
妹「あ。う、うん!」 てとてと ぽふっ
兄「こうしてるとさ、全部夢みたいだよな」
妹「そうだね」
兄「妹が大統領なんてバカみたいな話、あるはずないのに」 なでなで
妹「……うん」
兄「本当に、どうなってるんだろう。この国は」 なでなで
妹「…………ん」
兄「何があっても、僕はお前の味方だからな。たとえ世界全部を敵に回したって、お前の味方で居続けるから」 なでなで
妹「………………すぅ、すぅ」
兄「寝たか。そりゃ疲れてるよな。僕も、少し寝ようかな」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:04:28.91:UCT2Ap7G0
役人「時間ですよ」
兄「うわっ! 近っ、顔近っ!?」
妹「きゃっ!」 ずるどてっ
兄「あ、妹! ごっ、ごめん! 大丈夫か!」
役人「あわただしい兄妹ですね」
兄「あんたのせいだろうが!」
役人「ふむ。そうかもしれませんね」
妹「ん……時間なの?」
役人「はい」
妹「わかりました」
兄「妹、僕も」
役人「あなたは別席が用意されています」
妹「大丈夫! お兄ちゃんの膝で眠ったんだもん、負けない!」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:11:14.62:UCT2Ap7G0
兄「とは言ったものの、大丈夫なんだろうか」
ざわざわ ざわざわ
役人「どうでしょうね。あとは妹さんの頑張り次第、と言ったところでしょうか。……来ましたよ」
妹「……えと、こんにちは、皆さん!」 カシャカシャ! パシャパシャ!
兄「……あのカメラ、やめさせられませんか?」
役人「申し訳ないですが」
兄「……」
妹「その、今日は私なんかのために集まってもらって、ありがとうございます!」
役人「もっと威厳を持って話さなければ、舐められてしまいます」
兄「無理を言うなよ。妹は、そういう事ができる子じゃないんだ」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:22:14.27:UCT2Ap7G0
妹「新聞、読みました。皆さんが私が大統領になるのが嫌なのは、知ってます」
妹「私も、突然『大統領になれ』って言われて、驚きました」
妹「……でも、思うんです。私がやめたら、次は誰が選ばれるんだろう、って」
妹「私の友達かもしれない。おじいちゃんかもしれない。……今、私を見てくれてる人かもしれない」
役人「あなたの事ですよ」
兄「……言われなくても、わかってるさ」
妹「とっても怖いです。……今も、手が震えてます。こんな重圧、誰かに押し付けるなんて、私にはできません」 にこっ
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:29:56.59:UCT2Ap7G0
兄「……止めてくれ」
役人「無理です」
兄「あんたには見えないのかよ、妹が泣いてるのが! それでも必死に笑ってるのが、見えないのかよ!」
役人「無理なものは無理です。それに今あなたがすべき事は、わめき散らす事じゃないでしょう。……一瞬たりとも目を逸らさずに見ていなさい」
兄「……っ」
妹「だから、もう少しだけ続けようと思います。ごめんなさい。……何もできない私ですけど、少しでも皆さんの役に立てるように頑張りますから」
妹「もう少しだけ、我慢してください。お話、聞いてくれて、ありがとうございました」 ぺこり
カシャカシャカシャカシャ! パシャパシャパシャパシャ!
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:37:01.22:UCT2Ap7G0
兄「おつかれさま。……立派だったぞ」
妹「あ、お兄ちゃん」 ふらふら
兄「おい、大丈夫か?」
妹「大丈夫、じゃないかも。世界が、くるくる回ってる」
兄「役人さん。すぐに横になれる所へ」
役人「承知しました」
妹「……ん」
兄「ほら、行くぞ」
妹「もう、動けないー」 ずるずる
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:40:31.45:UCT2Ap7G0
兄「あ、おい。床に寝転がるな、汚いぞ! ……仕方ないか。よい、しょ!」 ぐいっ
妹「……おひめさま」
兄「今度からは『大統領だっこ』だな。すぐに着くから、そのまま眠ってていいぞ」
妹「やだ。もったいないもん」
兄「よくわからない奴だな」
妹「わからなくていいもん」
役人「……そろそろよろしいでしょうか」
兄「あ。ああ、ごめん」
妹「くすっ」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:47:11.31:UCT2Ap7G0
『10才大統領の決意! 国民のために』
『涙の演説! 大統領も被害者か?』
『国民の多数、大統領支持へ』
役人「完全に風向きが変わりましたね」
兄「……そうだな」
役人「嬉しくないのですか?」
兄「素直に喜べないよ。一歩間違えば、この新聞には妹を傷付ける言葉が並べ立てられたかもしれないんだ」
役人「その可能性もありましたが、当分は大丈夫でしょう。並大抵の事では支持は崩れませんよ」
兄「どうして?」
役人「この国の人間は、他人を責めるのが下手ですから。わかりやすい敵にしか矛先は向けられません。『被害者』『弱者』という言葉に弱いのですよ」
兄「なんか、嫌な話だな」
がちゃっ 妹「お兄ちゃん、お兄ちゃん! どう? 大統領っぽい?」
兄「ああ。よく似合ってるよ」
妹「役人さんは?」
役人「よくお似合いかと。……それでは、行きましょう」
兄妹『はい!』
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:48:38.46:UCT2Ap7G0
その日の夕刊は、兄妹二人が各大臣達の中心に映る写真が一面を飾った
こうして、この国初の大統領が誕生したのだった
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 03:49:48.10:UCT2Ap7G0
兄「役人仕事もいい加減にしてください! 大体、未成年に……っ!」
役人「あ、リモコンを拝借しますね」 ピッ
妹「……え?」
『……というわけで、大統領は10才の妹さんに決まりました。以上で記者会見を終わります』
兄「なっ!?」
役人「もう発表しちゃったんですよ」
兄「ふざけるなよ! こんなやり方が許されるわけないだろう!?」
役人「文句は方針を決めた方に言ってくださいよ」
兄「どこにいるんだよ、そいつは!?」
役人「官邸に。会いたければ会えますよ。大統領ならね」
兄「……っ」
役人「それより、急がなければ大変なことになりますよ」
兄「なんだって? ……なんだ、外が騒がしいな」
役人「マスコミが押し寄せているのでしょう。日本初の大統領ですからね」
兄「プライバシーの権利は」
役人「大統領ですから、ないでしょうね。早く決断した方がよろしいかと」
兄「なら今すぐ辞退を」
役人「ただし、辞退が知らされた所で、この騒ぎが収まると思わない方がいいですよ」
兄「なに?」
役人「大統領を辞退した少女として、見世物にされるのは避けられないでしょうね。当然、お兄さんも身内として晒し者になるでしょう」
妹「……」
役人「それに、一般人を守る義務もありませんから、外に大挙しているマスコミを止めているSPも退散します」
兄「……やり方が汚いぞ」
役人「国が一度決めた方針を変える事はないのですよ。その過ちが証明されるまではね」
妹「私、やる。大統領になる」
兄「妹!?」
妹「もう決まっちゃったんだもん、しょうがないよ。それに……お兄ちゃんに、迷惑かけたくないから」
兄「……っ!」
役人「そうですか。それでは表に車を待たせていますので、そちらに」
兄「待て!!」
役人「……何か?」
兄「僕も付いていく。それくらい許されるだろう?」
妹「お兄ちゃん」
兄「お前は僕が守ってやるから。絶対にだ」
役人「……まぁ、いいでしょう。特例ですよ。次はありません」
妹「すごい」
兄「あの人、テレビで見たことある。国会議員だ」
役人「それでは、こちらの部屋にお入りください」
兄「あ、はい。妹、ほらこっち」
妹「ん」
役人「粗茶ですが」
妹「あ、ありがとうございます」
兄「……それで、これから妹はどうなるんですか?」
役人「副大統領を一人指名していただくだけでいいです」
兄「それだけ、ですか?」
役人「仕事は秘書がやります。重要な判断は側近が片付けます。妹さんは座っているだけでいいです」
妹「ほっ」
兄「……待ってください。なら、妹が大統領になる意味は、なんですか?」
役人「スケープゴートです」
妹「すけーぷごーと?」
兄「……身代わりか。つまり、全ての責任は妹が負うってことか」
妹「え!?」
役人「当然でしょう。給与をもらい、大統領の席に座るのですから」
兄「帰るぞ、妹。こんなの受ける必要はない。マスコミが嫌なら、しばらくジイちゃんの家で暮らそう」
妹「……ダメだよ。逃げられないよ」
兄「妹!」
妹「お兄ちゃんは行って。私、頑張るから。ね?」 ぷるぷる
兄「バカ野郎! 自分の妹を放って行けるかよっ!」
役人「しかし、もう刻限です。あなたにはお引取り願わねばなりません」
兄「……妹、僕を副大統領に指名しろ」
妹「え?」
役人「これはまた大胆な事を」
兄「それ以外に側にいる方法がないなら、僕は喜んで副大統領になる。妹が大統領になれるんだ、僕が副大統領になるのも問題ないだろ?」
役人「ええ。手続き的な問題はありませんね」
兄「なら、妹。僕を副大統領に指名してくれ」
妹「でも、お兄ちゃんまで」
兄「僕は、お前のお兄ちゃんなんだ! 離れたりなんかするもんかっ!」
妹「……お兄ちゃんっ!」 だきっ
役人「それでは、そのように発表しておきましょう」
『大統領は10才!?』
『大統領制度に早急な見直しを』
『未成年が大統領に?』
兄「予想通りだな」
役人「こうなるでしょうね」
兄「……あんたがなぜ大統領室にいるんだ?」
役人「ええ。私も大統領秘書に任命されまして」
兄「どうなってるんだ、この国は?」
役人「私も、子供のお守りをさせられるとは」
兄「なんだと? その子供に責任を押し付けてるのは、あんたらじゃないか」
役人「気に入らないならどうぞ、クビにしてください」
妹「お兄ちゃん。役人さんに怒っても仕方ないよ。それに、少しでも知ってる人の方が、私はいいかな」
兄(確かに、知らない大人と話をするのは、妹には辛いか)
兄「わかったよ。……ただし、役人さん。あんたも少しは歩み寄ってくれ。妹も好きで大統領になったわけじゃないのは知ってるだろ?」
役人「ええ。私も別にあなた方と敵対したいわけではありませんから」
兄(本当にそう思ってるのかよ)
役人「それでは、最初のお仕事です。所信表明演説をしていただきます」
妹「えんぜつ、ですか?」
兄「話が違うだろ。妹は座っているだけでいいと」
役人「完全に座っているだけでいいはずがないでしょう」
兄「くそっ! あんたは誰の味方なんだよ!」
役人「一応は秘書ですから、妹さんの味方かと」
妹「お兄ちゃん。大丈夫だから、少し落ち着いて」
兄「……ああ、悪い。妹に心配させるようじゃ、俺も副大統領失格だな」
妹「それで、役人さん。そのしょしんえんぜつっていうのは、何をすればいいの?」
役人「これからの方針を語ればよろしいのです」
妹「方針?」
役人「経済対策、外交政策。その他諸々の問題について述べるだけです」
妹「でも、私、何も知りません」
役人「台本はこちらで用意しますから、どうにか覚えてもらえればいいです。しかし」
兄「ただの子供だったはずの妹が、そんな話をしても信憑性はないな」
役人「その通りです。そして、国民に疑心を持たれれば、ただでさえ風向きの悪い大統領制は崩壊します」
兄(それだけならいい。むしろ望む所だ。でも、妹にも非難の目が向くのは避けたい)
妹「……台本は、いりません」
役人「本気ですか?」
妹「私、素直な気持ちで話してみます。だって……台本なんて覚えられないと思うし」
役人「お兄さん。あなたも、それでいいんですか?」
兄「妹が決めたなら、僕は見守るだけだ」
役人「……どうなっても知りませんよ」
妹「ごめんなさい。役人さんには、迷惑、掛けませんから」
役人「そういう問題では、ないのですがね」
兄「妹は、一度決めたら引き下がらないですよ」
役人「……わかりました。それでは時間になったら、お呼びします。ゆっくりお考えください」
兄「僕はどうする?」
妹「……えと」
兄「遠慮するなよ。僕はお前のお兄ちゃんなんだ。不安ならそばにいるし、助けが欲しいなら全部投げ出しても助けてみせる」
妹「……お兄ちゃん、ちょっと大げさすぎ。恥ずかしいかも」
兄「うるさいな。お前ほどじゃないにしろ、僕も緊張してるんだよ」
妹「……お兄ちゃん。少し、眠っていい?」
兄「ああ。まだ時間はあるし、構わないだろう」
妹「えと、その」
兄「……ほら、こっちに来いよ。膝、貸してやるから」
妹「あ。う、うん!」 てとてと ぽふっ
兄「こうしてるとさ、全部夢みたいだよな」
妹「そうだね」
兄「妹が大統領なんてバカみたいな話、あるはずないのに」 なでなで
妹「……うん」
兄「本当に、どうなってるんだろう。この国は」 なでなで
妹「…………ん」
兄「何があっても、僕はお前の味方だからな。たとえ世界全部を敵に回したって、お前の味方で居続けるから」 なでなで
妹「………………すぅ、すぅ」
兄「寝たか。そりゃ疲れてるよな。僕も、少し寝ようかな」
役人「時間ですよ」
兄「うわっ! 近っ、顔近っ!?」
妹「きゃっ!」 ずるどてっ
兄「あ、妹! ごっ、ごめん! 大丈夫か!」
役人「あわただしい兄妹ですね」
兄「あんたのせいだろうが!」
役人「ふむ。そうかもしれませんね」
妹「ん……時間なの?」
役人「はい」
妹「わかりました」
兄「妹、僕も」
役人「あなたは別席が用意されています」
妹「大丈夫! お兄ちゃんの膝で眠ったんだもん、負けない!」
兄「とは言ったものの、大丈夫なんだろうか」
ざわざわ ざわざわ
役人「どうでしょうね。あとは妹さんの頑張り次第、と言ったところでしょうか。……来ましたよ」
妹「……えと、こんにちは、皆さん!」 カシャカシャ! パシャパシャ!
兄「……あのカメラ、やめさせられませんか?」
役人「申し訳ないですが」
兄「……」
妹「その、今日は私なんかのために集まってもらって、ありがとうございます!」
役人「もっと威厳を持って話さなければ、舐められてしまいます」
兄「無理を言うなよ。妹は、そういう事ができる子じゃないんだ」
妹「新聞、読みました。皆さんが私が大統領になるのが嫌なのは、知ってます」
妹「私も、突然『大統領になれ』って言われて、驚きました」
妹「……でも、思うんです。私がやめたら、次は誰が選ばれるんだろう、って」
妹「私の友達かもしれない。おじいちゃんかもしれない。……今、私を見てくれてる人かもしれない」
役人「あなたの事ですよ」
兄「……言われなくても、わかってるさ」
妹「とっても怖いです。……今も、手が震えてます。こんな重圧、誰かに押し付けるなんて、私にはできません」 にこっ
兄「……止めてくれ」
役人「無理です」
兄「あんたには見えないのかよ、妹が泣いてるのが! それでも必死に笑ってるのが、見えないのかよ!」
役人「無理なものは無理です。それに今あなたがすべき事は、わめき散らす事じゃないでしょう。……一瞬たりとも目を逸らさずに見ていなさい」
兄「……っ」
妹「だから、もう少しだけ続けようと思います。ごめんなさい。……何もできない私ですけど、少しでも皆さんの役に立てるように頑張りますから」
妹「もう少しだけ、我慢してください。お話、聞いてくれて、ありがとうございました」 ぺこり
カシャカシャカシャカシャ! パシャパシャパシャパシャ!
兄「おつかれさま。……立派だったぞ」
妹「あ、お兄ちゃん」 ふらふら
兄「おい、大丈夫か?」
妹「大丈夫、じゃないかも。世界が、くるくる回ってる」
兄「役人さん。すぐに横になれる所へ」
役人「承知しました」
妹「……ん」
兄「ほら、行くぞ」
妹「もう、動けないー」 ずるずる
兄「あ、おい。床に寝転がるな、汚いぞ! ……仕方ないか。よい、しょ!」 ぐいっ
妹「……おひめさま」
兄「今度からは『大統領だっこ』だな。すぐに着くから、そのまま眠ってていいぞ」
妹「やだ。もったいないもん」
兄「よくわからない奴だな」
妹「わからなくていいもん」
役人「……そろそろよろしいでしょうか」
兄「あ。ああ、ごめん」
妹「くすっ」
『10才大統領の決意! 国民のために』
『涙の演説! 大統領も被害者か?』
『国民の多数、大統領支持へ』
役人「完全に風向きが変わりましたね」
兄「……そうだな」
役人「嬉しくないのですか?」
兄「素直に喜べないよ。一歩間違えば、この新聞には妹を傷付ける言葉が並べ立てられたかもしれないんだ」
役人「その可能性もありましたが、当分は大丈夫でしょう。並大抵の事では支持は崩れませんよ」
兄「どうして?」
役人「この国の人間は、他人を責めるのが下手ですから。わかりやすい敵にしか矛先は向けられません。『被害者』『弱者』という言葉に弱いのですよ」
兄「なんか、嫌な話だな」
がちゃっ 妹「お兄ちゃん、お兄ちゃん! どう? 大統領っぽい?」
兄「ああ。よく似合ってるよ」
妹「役人さんは?」
役人「よくお似合いかと。……それでは、行きましょう」
兄妹『はい!』
その日の夕刊は、兄妹二人が各大臣達の中心に映る写真が一面を飾った
こうして、この国初の大統領が誕生したのだった
俺頑張った。超頑張った。よくまとめた。俺偉い。おやすみ
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 04:28:12.09:FjQMg1HF0ええー…続けろよー
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/17(日) 07:34:09.57:2dPHWKMf02chにスレが立ったら・・・
鬼女板だけ異常な叩きに・・・
鬼女板だけ異常な叩きに・・・










































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