- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:43:49.56:+Ce2yGMt0
母「おきなさい おきなさい ごくつぶしの ゆうすけ や」
勇者「なに……勝手に部屋入ってくんなったじゃん」
母「きょうは とても たいせつなひ。 ゆうすけ が はじめて おしろに
いくひ だったでしょ。
このひのために おまえを ゆうかんな おとこのこ として そだてようと
おもったけれど ニート になって しまって なさけないわ」
勇者「お城? 行きたくねーし。
あーもう、うるせえから。出てってくれる?」

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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:45:51.69:+Ce2yGMt0
母「さあ かあさんに ついてらっしゃい」
勇者「は? 嫌だし。ちょ、なにすんだよ、うぜえんだよババア!
嫌だ、出たくない! 外に出る服がない! 外に出る服がっ……!」
俺は母親に無理やり引きずられて、お城の前まで連れてこられる。。
この国アニヤハンは小さな王国だが、そのくせやたらと豪華な城を
見上げるとムカムカしてくる。税金泥棒め。
母「ここから まっすぐいくと おしろ です。
おうさまに ちゃんと あいさつ するのですよ。 さあ いってらっしゃい」
勇者「なあカーチャン。わかったよ、わかった。そのうち仕事探すから。
な、だから今日は帰らせてくれ、頼むよ。まだ読んでる途中のラノベがさ……」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:49:52.17:+Ce2yGMt0
母「ゆうすけ や どうしたの? おうさまに あっていらっしゃい」
勇者「明日探すから、明日! 今日は帰らせて、帰らせろよ。なあ……」
母「ゆうすけ や どうしたの? おうさまに あっていらっしゃい」
勇者「今ちょっとなんか……体の調子よくないし……あーお腹痛い、お腹……」
母「ゆうすけ や どうしたの? おうさまに あっていらっしゃい」
勇者「いい加減にしろよ、ババア! 帰るっつってんだろどけよっ!」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:54:46.49:+Ce2yGMt0
母「じゃあ母さんと一緒に死にましょう、ゆうすけ」
勇者「ひっ……な、なな、危ない、包丁危ない、やめ、やめてっ!」
母「お父さんは冒険に出たまま帰ってこないし、あんたが働いてくれないから
うちはもうお金が無いの……。このままじゃ生きていけないの……わかる?」
勇者「わかる、わかるからそれしまって! ひっ、ひい! やめやめやめやめ!」
母「母さんと一緒に死にましょう……ね? そうしましょう……」
勇者「あのさ、生活苦しいならカーチャンもスロットやめたほうが……」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 18:59:02.08:+Ce2yGMt0
母「ああああっ! 死ぬ! もう死んだほうがマシよ!」
勇者「わかった、わかったから! いくいくいきます! いってきます!」
母「立派な冒険者になって、うんと稼ぐまで帰ってこないでね。
ちゃんと仕送りするのよ。でないと母さん……死ぬから」
勇者「うう……」
拝謁の間には、冒険者になりたい者たちが王様の紹介状を交付して
もらうために、沢山並んでいる。
不景気により、近ごろは冒険者になる者が急増しているとか。
だが俺は冒険者になるつもりなど毛頭ない。適当に理由を付けて
この場を切り抜けられないか、というようなことばかりが頭に浮かんでいる。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:01:32.43:+Ce2yGMt0
勇者「あー、マジめんどくせ……」
「51番の方、どうぞー」
勇者「は、はい……」
王様「おーよくきたねよくきたね。オルテカさんの息子のゆうすけくんだね?」
勇者「あはい、そうです……」
王様「いやー、こんなに大きくなったんだね、うんうん、今いくつ?」
勇者「26……です」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:05:11.84:+Ce2yGMt0
王様「そうかぁ、26かあ。もういい歳だねえ。ところで仕事、
してないんだって?」
勇者「ええ、その……なかなか仕事が見つからなくて……。
探しては、いるんですけど……」
王様「今不景気だからねぇ、なかなか見つからないよねぇ?」
勇者「そうなんですよ……。ほんと、ロクな仕事がなくて。
時給670モナーの仕事とか、夜勤の肉体労働とか、誰がするんだって
感じッスよ……」
王様「はははそうだねえ、今だとなかなか条件の良い仕事はねぇ」
勇者「そりゃあ気持よく働ける所ならナンボでも頑張りますよ?
けど、従業員をナメたようなブラックばっかッスもん。
んなのやる気おこらないって、ねえ……?」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:10:01.85:+Ce2yGMt0
王様「うんうん、ナメてるよねえ。
いやあ、ほんと……社会ナメてんなお前」
勇者「え……?」
王様「おいてめえ、穀潰しニートの分際で仕事選り好み出来る
立場だと思ってんのか? おう……」
勇者「あっ、あっ、あのっ、そのっ、」
王様「ブラックだぁ? 社会のブラック人間が偉そうな口
聞いてんじゃねーぞゴルァ! 牢屋ブチこんで根性叩き直して
やろうか? あ? 空きあっから今すぐ入れてやんぞ?」
勇者「そそそ、それだけはっ、すすすすいませんでした!!」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:13:03.52:+Ce2yGMt0
王様「てめえ働きもせずに食っちゃ寝してよし江さん苦労させてんじゃねえよ。
よし江さん泣いてたぞ、なあ? お前を食わせるために毎日パートで
クタクタになってな。お前母親居なかったら野垂れ死んでんぞ?
わかってんのか? わかってんのかって聞いてんだよ!」
勇者「はははい!! すいません、わかります、すいま……あうっ、うっうっうっ……」
王様「てめえの親父は立派な勇者でな、割に合わねえ仕事も自ら進んでやってな、
周りから尊敬されてたんだ。俺らの若い頃はなあ、やれ給料が安いだの仕事がキツいだの
言う甘ったれは半殺しにの目に遭ってたぞ。おう、お前もうちの兵士にしごかれたいか?
ちょっと叱られたぐらいで泣いてたら死ぬぞ。死ぬからな、死ぬぞ?」
勇者「うぐっ、はう……あううう……あ……」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:17:02.28:+Ce2yGMt0
王様「……な、それが嫌なら頑張れよ。お前頑張れるだろ?
父ちゃんみたいに立派な勇者になって、母ちゃんに楽させてやれよ。
お前男だろ? お前は出来る奴だって、俺分かるよ。お前いい目してるもん。
俺がお前を信じてやるよ。な、できるよな? 冒険者やるよな?」
勇者「あうっ、あうう……やります、やります! 俺……俺頑張ります!
頑張って……頑張って……カーチャン……ううっ……」
王様「うん、お前なら出来るよ。絶対出来る。お前頑張れる男だから、
冒険者なんてすぐ慣れるよ。いっぱい稼いたらでかい家でも建てて、あとは
遊んで暮らせよ、な? ちょっとだけ、10年だけ辛抱しろ、な?」
勇者「はい……ううっ、頑張ります、頑張ります……!」
王様「よく言った。期待してるからな! ほんと頑張れよ!
おーい、こいつ10年で頼むわ!」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:21:43.27:+Ce2yGMt0
冒険者の手続きを終えて、城から出てきた男は頭を抱える。
勇者「うう……やっちまったなあ……やっちまった……」
城から出てくる者たちを見ると、同じように契約して頭を抱える者は大抵
気が弱そうな者で、多くの者は冒険者になるのを辞退して出てくる。
そりゃそうだ。普通に考えて冒険者になりたい奴なんて、よっぽど才能に恵まれた
奴か、他に行き場のない底辺の連中だ。
勇者「なんだよ……これ。冒険者ってブラックかよ……」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:25:14.75:+Ce2yGMt0
=アニヤハン王国 冒険者契約書=
冒険者は以下に挙げる特別の権利を有する。
・他国への自由旅行 ・魔物の自由狩猟 ・各種ギルドの結成、加入の自由
・他国で冒険者としての扱いを受ける権利 ・武器を許可なく所持出来る権利
・魔術、召喚術、錬金術などを許可無く使用出来る権利
・その他国王が認める権利
冒険者は以下に挙げる特別の義務を負う。
・いかなる時もアニヤハン王国の冒険者としてその名を汚さぬよう務める義務
・国家の戦争、魔物の襲撃、その他有事の際直ちに招集に従う義務
・犯罪者及び違法に冒険者活動を行う者を取り締まる義務
・登録料として毎月[32,000]モナーの金銭を国家に納付する義務
・冒険を通じて得た報酬、賞金、財宝類は国家に報告し[45]%を金銭で納付する義務
・その他国王が認める義務
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:26:28.58:+Ce2yGMt0
[タナカ ユウスケ]さんの冒険者登録期間は[10]年[0]ヶ月です。
死亡及び解除申請料[5,000,000]モナーを納付する場合を除き、
登録の途中解除は出来ません。
納付や報告の義務を怠ったり、支払いの不能が認められる場合は
財産の没収及び法により処罰されます。
俺「……」
俺は思った。ああ、この国じたいがブラックなんだと。
こうやって若者は搾取されて、一生這い上がれないシステムになっているのだと。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:33:25.41:+Ce2yGMt0
勇者「そういや、職業登録所に行かなきゃいけないって言われてたな……。
あー帰りたい……帰って布団にくるまってラノベ読みたい……」
ここは公営の職業登録所『ハローワールド』、通称『ハロワ』。
冒険者としての職業(クラス)を決めたり、冒険者パーティーを結成したり
仲間を探す場所として利用されているらしい。
勇者「あの、すいませーん。さっきお城で登録してきたんですけど……」
職員A「あんた新規?」
勇者「あ、はい」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:34:22.11:+Ce2yGMt0
職員A「じゃこれ書いて紹介状と契約書と一緒に1番窓口」
勇者「は、はい……」
敬語も使えない態度の悪い公務員め。誰の税金で養ってやってると思ってんだ。
死ねよ……俺だって消費税ぐらいは払ってんだぞ……。
勇者「あの、書きました。ここでいいんですか」
職員B「はい、登録料6800モナーになります。
108番の札でお待ちください」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:40:48.22:+Ce2yGMt0
氏名[タナカ ユウスケ] 種族 [人] 性別 [男]
生年月日 ヌルポ歴[1985]年[5]月[12]日
住所[アニヤハン王国 アニヤハン第四街 6-3]
現在の職業 [なし]
最終学歴 [アニヤハン王立ヌルポ高等学校]
卒業したクラス訓練学校 [なし]
過去5年以内に就いたことのあるクラス [なし]
所持する術免許 [なし]
持っている資格 [そろばん五級]
特技 [ラノベを書くこと]
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:44:54.02:+Ce2yGMt0
職員B「108番のかたー」
勇者「はいっ」
職員B「2番の部屋で錬金術写真を撮影してください。
その後適性テスト行いますので、緑の線を辿って3番の部屋に
お入り下さい」
適性テストは、運動能力や術の適性を調べるテストだとか。
その結果により、選択できるクラスを決められるそうだ。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:46:13.30:+Ce2yGMt0
職員C「はい持ち上がりませんかー? 無理ですかー?」
勇者「うぎぎぎ……む、無理でえす!」
職員D「飛んでー、伏せてー、飛んでー、伏せてー」
勇者「ぜえぜえ……、無理、無理でえす!」
職員E「はい裏向きのカード左から透視するー」
勇者「☆……○……△……×……~……かな……
うわ、一枚もあってないし」
職員F「以上でテスト終了したから5番の部屋の前で
結果待っててね」
勇者「疲れた……」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:49:21.53:+Ce2yGMt0
テストの結果を待つ時間。
食い扶持を求めて冒険者になる新米冒険者にとって、最も緊張する時間だという。
クラス訓練校を出たり、資格や免状を持たない者は、テストの結果により
これからのクラスが決定される。テストの結果が良かったものは
複数のクラスから好きなものを選択でき、一芸に秀でているものは、
なり手の少ない貴重なクラスになれる。
そうでないものは……
職員G「108番の方どうぞ」
勇者「はいっ! うう、緊張する……」
職員G「これ、おたくのテスト結果ね」
勇者「ど、どうも。いやー、あんま自信なかったしなー、
ダメかもな~。自信なかったし~。……えっ?」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:51:58.50:+Ce2yGMt0
適性診断書
[タナカ ユウスケ]さんに最も適したクラスは[勇者]です。
二番目に適したクラスは[なし] 三番目に適したクラスは[なし]です。
その他の適したクラスは
『
なし』です。
筋力:F 持久力:F 忍耐力:F 判断力:F 思考力:F
魔術適性:- 召喚術適性:- 錬金術適性:- 神聖術適性:-
・著しい体力不足が認められます。パーティーの前に出て激しい戦闘を
行うことは非常に危険でしょう。
・とっさの判断に迷うことが多いでしょう。作戦を考えたりパーティーを
指揮する能力にも欠けています。
・すべての術において適性がありません。また、難しい道具や知識を要する
クラスには全く向かないでしょう。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 19:59:50.49:+Ce2yGMt0
男「な、あの……ずいぶんボロクソに書いてあるんですが、
あの……勇者? 勇者って凄い人がなるんじゃ……?」
職員G「あー勇者ってのはね、何も出来ない人のこと。
あなたテスト最悪だったから、勇者しか出来ないの」
男「ちょ、えっ? 何も出来ないって、え、勇者ですよ?」
職員G「昔は『無能者』って呼んでたんだけどねぇ。
無能ってのは差別にあたるってことで……。
だから呼び方変えるように通達されたんだよね。で、勇者」
男「そう……ですか」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:01:05.16:+Ce2yGMt0
俺は……『勇者オルテカ』である父の事を密かに誇りに思っていた。
たまに冒険の旅から家に帰ってきた時も、近所の人たちは父を
『勇者のおやっさん』と親しみを込めて呼んでいた。
だが、勇者=無能者であるということは、父は自分と同じ『何も出来ない人』
だということだ。父がそうであったこと、自分もそうであることに
二重の衝撃と失望を感じた。
男「……」
職員G「じゃー選択の余地無しということで勇者で免許発行するから」
男「はい……」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:01:58.92:bIRD4/Jz0
男子に生まれたなら一度は、世界を旅して魔物を薙ぎ倒し、金銀財宝や
伝説の武器を探し求め、魔王から美姫を救いだす夢を持ったことがあるだろう。
まして勇者と呼ばれる父を持つ俺は、自分も勇者の血、才能を持つ者だという
自信とプライドが人一倍あり、そのため待遇の低い割に合わない仕事に就こうとせず、
たまに働き出してもすぐに退職し、自分はやれば出来る人間なんだという自信だけを
頼りに、危機感も無く生きてきた。だが、その自信は完全に打ち砕かれたのだ……。
勇者「……」
職員G「じゃ6番窓口で免許受け取ってね」
勇者「……」
職員H「108番の方ー」
勇者「……」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:04:47.03:+Ce2yGMt0
職員H「こちらが冒険者免許になりまーす。
冒険安全協会にご協力お願いしまーす、加入お願いしまーす。
うちでは皆さんご協力いただいてるんでー」
勇者「はい……」
職員H「3年の更新で4400モナーになりまーす。はいどーも。
こちら冒険者免許入れと冒険者のしおりになりまーす」
勇者「……」
冒 険 者 免 許
ADVENTURER LICENSE
氏名[タナカ ユウスケ/YUSUKE TANAKA]
種族 [人/HUMAN] 性別 [男/M]
生年月日 [1985]年[5]月[12]日
交付年月日[2010]年[11]月[1]日
クラス[勇者/HERO] 冒険者ランク[F]
ヌルポ歴2020年まで有効
(ア)アニヤハン王国公安委員会
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:09:20.62:+Ce2yGMt0
勇者「はぁ……」
勇者「なにが無能者だよ、ふざけやがって……
それにランクFとか……ランクって何が基準なんだよ」
勇者「そうやって人に序列付けて、格差社会作って楽しいのか?」
勇者「……あんなテストごときで、俺の何が分かるっていうの?」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:13:38.90:+Ce2yGMt0
勇者「はぁ……パーティーに加入しないといけないんだっけ……
また申請して書類書かされて待たされて……あーめんどい……明日でいいや……
明日から頑張る……明日できることは明日やればいいんだ……」
勇者「帰ろう……」
出口に足を向けた俺の視界に入ってきたのは、旅装束をした冒険者たち数人が、
ドカドカとハロワのカウンターに向かってくるところだった。
聖騎士「おい、誰か前衛出来る奴はおらんか?」
拳闘士「やっすい奴でええねん、やっすいので」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:15:44.58:+Ce2yGMt0
職員A「いないね」
神聖術師「は? 市民に対して何その態度。
あんたね、うちら納税者。わかる? わかる?
あーっ? ねえあんた耳聞こえないの? 聞こえないの?
前衛できる冒険者、何でもいいから連れてきなさいよ」
職員A「そ、そう言われてましても……前衛は常に人手不足で……」
職員に絡みだす冒険者パーティーたち。
「うへえなにあれ。ああいうの関わりたくねえ」と瞬時に思考した俺は、なるべく
目を合わさないようにして外に出ようとする、が、
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:19:39.38:+Ce2yGMt0
砲撃手「あの人は?」
爆弾士「おい、お前、そこのお前ちょっとこいよ。おい、無視すんなー?
おーい無視すんなよコラー」
聞こえないフリをしてそそくさと逃げようとした俺の足を、
冒険者たちの一人が引っ掛ける。
勇者「あう、あうっ、あ……」
拳闘士「なんやこいつめっちゃ弱そうやん。めっちゃ弱いでこんなん。
な、こいつ勇者ちゃう? 絶対勇者やで」
爆弾士「いくらなんでも勇者はねえだろー。あんなの滅多にいねえって」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:21:46.76:+Ce2yGMt0
拳闘士「ほな賭けるか? 賭けよや。ええか? ええな?
どやっ……きたあああ! 勇者やっ!」
爆弾士「えーマジか。勇者ってカスじゃん……」
下品な冒険者達に囲まれ、免許をひったくられ、ガクガクと震える俺は、
今にも涙が溢れ出しそうなのを懸命にこらえる。
勇者「うっ……う、う……」
聖騎士「おいお前ら遊ぶな。時間ないんじゃ時間が」
拳闘士「もうこれでええんちゃう? 他おらんのやろ?」
神聖術師「えーこんなのイヤよ。足手まといになるだけでしょ」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:27:25.43:+Ce2yGMt0
砲撃手「いいんじゃないですか別に? 盾にはなるし」
爆弾士「ならねーって、ならねーよこれはー」
勇者「あうあうあうあうあうあう……あうあうあ……」
聖騎士「ちっ、しゃあない。おいお前、名前いわんか」
勇者「たたたたた、たなかっ! ゆう……すけです……」
聖騎士「じゃあ申請してくるけえ。おい勇者、こいや」
勇者「ななななな、あのっ、僕体の具合が……お腹痛い、痛いっ!」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:28:15.99:+Ce2yGMt0
聖騎士「こいつパーティに入れるけん、頼むわ」
職員A「はいじゃあ免許出して」
勇者「え、あ、はいっ……」
よくわからないまま手続きが行われる。
何をさせられるんだ。何を。
職員A「はいこれ、パーティー証明書ね」
聖騎士「おう。よし勇者、お前は今からワシらのパーティーメンバー
じゃけえの。しっかり頼むぞ」
勇者「マジですか? マジで? え……マジで……」
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:32:45.98:+Ce2yGMt0
拳闘士「ほないこかー、勇者ちゃん」
勇者「ああああああの! 本気っすか? 本気!?」
爆弾士「こいつすぐ死ぬんじゃね? 死ぬだろー?」
神聖術師「死んだら死んだでいいんじゃないの。
まさか治癒魔法これに使えって言わないよね?」
勇者「え、死ぬとか、えっ……」
聖騎士「はよう馬車のれ。急いどんじゃ」
勇者「これ乗るんすか? あの、俺準備とか……あの、準備……
ちょ、ちょっと一旦家に……」
拳闘士「ええから乗れて」
勇者「ぐほっ……」
ケツを蹴りあげられる。暴力……暴力振るわれた。
こんなことが許されるのか。ふざけるな訴えてやる訴えてやる訴えてやる。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:38:19.70:+Ce2yGMt0
荷物が積まれまくった馬車の中は薄暗く狭い。
これからのことを考えると不安で一杯になる。
勇者「あの、どこへ行くんですか……」
聖騎士「あとで説明しちゃるけえ。とりあえずおい爆弾士、
メンバーの紹介したれや」
爆弾士「うぃっす。この人がリーダーの聖騎士さん、あっちの一番若いのが
サブリーダーの砲撃手、あそこのオバサンが神聖術師、あの坊主頭が拳闘士、
俺が爆弾士。あと魔術師がいるけど先に現場近くで待機してる、以上」
勇者「わ、わかりました……」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:41:52.22:+Ce2yGMt0
適当な説明でよくわからない。
頭の整理のためにぱっと見の印象とクラスだけ確認しておく。
聖騎士(パラディン)。オッサン。
このパーティーのリーダー。
いかつい見た目で喋り方も怖い。こういうの苦手。
砲撃手(ガンナー)。ガキ。
10代にみえるがサブリーダーらしい。
生意気そうなゆとりでムカムカ。こういうの苦手。
神聖術師(クレリック)。オバサン。
我関せずと言った感じで俺を見ようともしないカエル顔。
ババアキャラとか誰得。こういうの苦手。
爆弾士(ボマー)。チャラ男。
いかにもなDQN。爆弾士ってなんだよ? 適当すぎんぞ。こういうの苦手。
拳闘士(ボクサー)。亀田。
暴力と強盗とレイプしか頭に無さそう。氏ねばいいのに。こういうの苦手。
以上、なんの華やかさもない糞みたいな連中。
ファンタジーな世界に似つかわしくないこんなDQNと冒険するなんて
拷問もいいところだ。俺のパーティーのイメージは男:俺、残り:美少女。
一人ぐらいシブいオッサンがいても良いかなって程度である。
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:45:51.34:+Ce2yGMt0
爆弾士「お前コラ。人に紹介させといて自分は? なあ自分は?」
勇者「え、あ……俺はええと、勇者です……まだ新米ですが」
拳闘士「新米ゆうても多少は経験あるんやろ?」
勇者「え……いやその……。初めて……です、けど」
拳闘士「はっ? マジで? マジでゆうてんの?
おいヤバいんちゃうーん。ド素人やーん。」
勇者「だって……その……」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:51:19.70:+Ce2yGMt0
聖騎士「おい、勇者。お前ボソボソ喋るな。なあ、ボソボソ喋るなよ」
勇者「え、えっ? あ、は、はい……」
聖騎士「ははいじゃなくて、はいじゃろ。なあ、
ボソボソダラダラ喋るないいよんじゃ。わかったか?」
勇者「……はい。すいません」
聖騎士の鋭い眼光にビビってしまう。というか何故こんな風に説教
されなければいけないのかと、不満と怒りが沸き上がってくる。
勝手に連れてきて、なんでそんなに偉そうなのかと。
むしろお願いする立場ではないのかと。
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:52:38.73:+Ce2yGMt0
聖騎士「甘あ考えとったら死ぬぞ。シャキっとせんか。シャキっと」
勇者「はいっ」
「もうこんなとこ辞めてやる!」とたんかを切って辞めた職場もあった。
言ってやりたい。今すぐこの場から逃げ出した。
だが、そんな事はとても言えそうに無い。言えば殺されるんじゃないか。
ああ……とんでもないブラックなパーティに入れられた……。
拳闘士「せや、ほんま死ぬで。聖騎士さんの言うことよー聞かなあかんで」
勇者「はいっ」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:59:27.64:+Ce2yGMt0
聖騎士「おい砲撃手、勇者に作戦の説明したれよ」
砲撃手「はい。勇者さん、作戦の説明するからちゃんと聞いてくださいね」
勇者「はいっ」
何故そんなものを聞かなくてはいけないのか。拒否する権利は無いのか。
威圧して行動を強要して許されるのか。お前たちはそんなに偉い人間なのか。
そんな風に思える理不尽な展開に、涙が出そうになる。
砲撃手「目的は、依頼主の村から財産を強奪した魔物の集団の討伐、
及び盗んだ物の奪還です。魔物の数は推定15から20。タイリクマダラオークと
シマシマツキノワバッファローの混成。魔物たちが北の山脈の住処に盗んだ物を
移送しているところを急襲します。爆弾士が投擲したニードル爆弾が炸裂したのを
確認してから、シールドディフェンスの陣形を敷き、魔術師と神聖術師が詠唱を開始。
戦闘の魔物が距離30まで迫ったら砲撃手は第一射を行います。
前衛は聖騎士、拳闘士、勇者が担当。シールドを構えて……
あの、勇者さん理解できてますか?」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:01:06.21:+Ce2yGMt0
勇者「えっ……はい、なんとか理解……してます」
砲撃手「じゃあ僕が言ったこと覚えてますよね。どんな作戦ですか?」
勇者「ええと、奪われたのを……取り返し、て……20匹の……
オークと、えっと、爆弾を、その……」
砲撃手「なんでメモとらないんですか? 覚えられないなら
なんでメモとらないの? ねえ?」
勇者「すいません……」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:04:25.78:+Ce2yGMt0
砲撃手「勇者さんが覚えてくれないと、みんな迷惑するんです。
みんなに迷惑かかるんです。それ理解できてますか? 理解で、き、て、ま、す、か?」
勇者「できます……うっ、すいません……うううっ……」
砲撃手「泣き出したので僕無理です。別の人に説明頼んでください。
僕泣く人無理なんで」
勇者「うっ、うっうっ、ううう……」
拳闘士「泣くことないやろー。泣くかー? あんなんで泣くかー? ふつー」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:07:25.32:+Ce2yGMt0
爆弾士「あー……うっぜぇ……もうそいつ叩きだしたら? 叩き出そうぜ」
聖騎士「おい勇者、みーんな困っとるぞ。お前に困っとる。
どうするんじゃ? なあ、降りるか? ワシはどっちでもええ。
降りたかったら降りぃ」
降りろと言われても、馬車は既に相当な距離を進んでいる。
ここがどこだかもわからない。もし降ろされたら……迷い、歩き疲れ、
やがて魔物に見つかって餌食になるだろう。それを分かってて言っている
リーダーが、憎くて仕方ない……。
勇者「うっ、うっ、降りません、ちゃんと覚えます、ちゃんと覚えますから……」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:09:45.88:+Ce2yGMt0
聖騎士「ほんまじゃの? うそいいよったら……わかっとるのぉ?
二度はないぞ。二度はな」
勇者「わかります、やります、がんばります……うっ……」
聖騎士「のー砲撃手、こいつ頑張るゆうとるけん、教えたってくれんかー」
砲撃手「リーダーがそう仰るなら。わかりました。
勇者さん、いい歳なんだから泣くとかやめてくださいね。引くんで。
未成年の僕に説教されたくなかったら、ちゃんとメモとるなりして覚えてください」
勇者「はい、すいませんでした……」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:17:39.57:+Ce2yGMt0
屈辱に耐えながら、必死にメモを取る。なんとか理解できた作戦内容は、
ようするに後衛が攻撃できるように、前衛が体を張って敵を食い止めろと
いうものである。ちなみに俺も前衛の一人である。無理、無理です。
俺は後衛どころか家の中に閉じこもるのが好きなんだ。
俺が死んだら誰が責任取るんだ。ふざけんなふざけんなふざけんな……。
聖騎士「おい、勇者降りんか」
勇者「……え? え、ちゃんと覚えましたけど……なんで……」
聖騎士「着いたから降りろいいよるんじゃ。ボソボソ喋るな」
勇者「……はいっ。すいませんっ」
他の連中はとっくに降りていた。声ぐらい掛けてくれてもいいのに、くそ。
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:36:17.80:+Ce2yGMt0
聖騎士「おい魔術師、監視他のもんと代わってちょっとこい」
魔術師「はーい」
聖騎士「あいつ補充してきたメンバーの勇者じゃ。
初めてで何も知りよらんからお前教えたれ」
魔術師「了解です!」
ん? なんだか可愛らしい声が……。
魔術師「はじめまして勇者さん、魔術師です。よろしくお願いします!
早速ですが、作戦の内容はお聞きになりましたか?」
勇者「あ……」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:37:40.07:+Ce2yGMt0
天使。それはDQN共の巣窟に舞い降りた天使だった。
モロ俺好みの愛らしく可憐な少女の笑顔は、さっきまでの暗澹たる気分を
完全に吹き飛ばすほどの破壊力があった。
勇者「は、はい……聞きました!」
魔術師「あなたに守っていただけるんですね。
前衛をなさるのは大変でしょうけれど、私も精一杯頑張りますので」
魔術師が差し出した手は、柔らかくて暖かく、一瞬で俺を虜にした。
勇者「こ、こちらこそ命にかえてでも、あ、あなたを……!」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:43:34.81:+Ce2yGMt0
魔術師「嬉しいです。でも無理なさらないでくださいね。
それで作戦のことなんですが、あそこに魔法陣が描いてあるの見えます?」
勇者「あはい、ありますね!」
魔術師「魔法陣に私が陣取って、魔法を詠唱して撃ち出していきます。
神聖術師さんは治癒魔法の詠唱、爆弾士さんは投擲機で爆弾の投擲、
砲撃手さんは魔弾の充填を行っていくので、その間勇者さんたち前衛の方は、
迫ってくる魔物から私たち後衛を防衛していただくことになります」
勇者「ふむふむ……メモメモ」
魔術師「1500、15時に向こうのポイントを魔物が通過する予定なので、
それまでに武装の準備をしてください。えっと確か予備の武装は……」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:46:06.38:+Ce2yGMt0
拳闘士「おーい、今のうちメシくっとこやー。メシー」
魔術師「あっ、休憩するみたいなんでいきましょうか」
勇者「はい!」
そういえばまだ昼食ってなかったな。飯食わせてもらえるんなら助かる……。
勇者「……」
爆弾士「砲撃手の弁当美味そうじゃん。それいくらよ」
砲撃手「850モナー……」
爆弾士「そっちにすりゃよかったなー、そっちがいいわー」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:46:50.21:+Ce2yGMt0
拳闘士「聖騎士さん自分で作ってきたん?」
聖騎士「おう、つまむか?」
拳闘士「すんませんねえ、うまっ、これごっつうまいわ!」
勇者「……」
俺の分は……?
勇者「あの……食べるものが無いんですけど……」
爆弾士「しらねーよ」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:47:47.29:+Ce2yGMt0
拳闘士「は? お前買ってこんかったん? アホちゃう」
無理やりつれてこられてそんな暇無かったし……。
砲撃手「次からちゃんと用意してくださいね。
なんか食べさせてないみたいで気分悪いんで。次があるか知りませんが」
勇者「……」
なに、なに……なんなの。お前らのせいで飯食えない上に
説教までされなきゃいけないの……。
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:49:18.87:+Ce2yGMt0
魔術師「勇者さん、よかったら私のお弁当食べませんか?」
勇者「えっ……そんな悪いですよ」
魔術師「私あんまりお腹が空いてないので。
私が作ったサンドイッチですけど、どうぞ食べてください」
拳闘士「なになに? 食わへんの? ほな俺もらうわ」
やめろ。近寄ってくんなハゲ。失せろ!
魔術師「駄目っ。自分のお弁当あるじゃないっ」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:52:14.65:+Ce2yGMt0
拳闘士「えっ、なんでやねん。あーお前惚れたやろ?
なあそいつに惚れてもうた? おーい、魔術師が勇者に惚れたてー」
魔術師「ち、違うからっ、そんなんじゃないから!」
勇者「あ、あのあのあの、ほんと、大丈夫ですから、
俺もあんまりその、食欲が……」
魔術師「じゃあ半分こしませんか? はい、どうぞ」
勇者「ううう……ありがとうございます」
なんという天使。なんという優しさ。ブラックPTの中で唯一のオアシス。
……もしかして俺のこと好きなのかな。どどどうしよう、
こんな可愛い彼女できたら俺、俺……うへへへへへへ。
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:55:00.70:rl8WfiZ+0
砲撃手「そろそろ準備開始してくださーい」
魔術師「はーい。勇者さん、私武装取ってきますんでまだ食べていいですよ」
勇者「あ、ども……」
魔術師「よいしょ……よいしょ……ふぅ、胴当てと帽子と盾、置いておきますね。
身に付け方わからなければお手伝いしますけど」
勇者「いえ、大丈夫です。なんとか、はい」
魔術師「では、また後で! 頑張ってくださいね」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:59:55.27:+Ce2yGMt0
あー可愛いなあ、彼氏いるのかなあ、
あの清純そうな感じからして、いないはず……だといいなあ。
あーそうだ、武装……。
……って、なにこれ。綿を押し固めたというか、マットみたいというか。
布? 革? うわっ、臭っ……。汗と埃の臭いが……。
聖騎士「タラタラすんな、さっさと着んか!」
自分は金属製の豪華な鎧を着てるのに、なんで俺、これ?
殺す気? 殺す気満々?
勇者「えとあの、鉄鎧とかじゃないんですか、こんな鎧じゃケガしそうで……」
聖騎士「お前が重いの着たら動けんじゃろが、ちょっとは考えろ」
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:00:41.22:RCxVc4rEO
勇者「でもでも……そ、それと武器は……」
拳闘士「馬車ん中に棍棒入っとるし自分で取ってこいや」
勇者「棍棒……? 剣とか、槍とかじゃないんですか!?」
聖騎士「素人がそんなん持ったら自分で怪我するだけじゃ。
お前なんでもかんでも聞くな。自分で考えろいいよんじゃ」
勇者「わかりました……取ってきます」
うう……薄汚れた臭い胴当てと帽子、野蛮人みたいな棍棒……。
ダサすぎる、酷過ぎる、こんな格好あの子に見せたくない。
見られたくない……。
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:08:40.03:+Ce2yGMt0
拳闘士「チンタラしてんとさっさと盾持って用意せえや!」
勇者「うげっ!」
蹴りやがった。このハゲ、死ね。棍棒でぶん殴ってやりたい……っ!
勇者「うわっ……重っ……」
丸々身を隠せるような分厚い大きな木の盾。
下部が尖っているのはこれを地面に突き立てるのか。
ずっとこれに隠れててやろうか?
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:11:02.32:+Ce2yGMt0
聖騎士「配置に付け! おい走れ走れ! 走らんか!」
勇者「こ、こんな重いの持って、走れるわけ……」
拳闘士「盾引きずんなや!」
勇者「うげっ!」
殺す殺すハゲ殺すドサクサに紛れて殺す。
聖騎士「もっと左じゃ! トロトロすんな!」
勇者「ぜえぜえ、もう無理、もう嫌……」
ああ、あの子に見られてるかな、この情けない姿……くそうっ。
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:14:02.63:+Ce2yGMt0
聖騎士「この陣形崩すなよ、わかったの!」
敵敵敵敵敵敵敵敵敵
敵敵敵敵敵
聖
勇 拳
爆
砲 魔 神
聖騎士「来た……まだやど、まだいくなー……」
勇者「はひっ、はふっ、はいっ……」
拳闘士「ちょ、ネクロおるで、ネクロ!」
爆弾士「マジ? うっわ、やっべ、ネクロマンサーじゃん」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:16:37.67:+Ce2yGMt0
聖騎士「構わん! 予定通りいくけん!」
勇者「あの、ヤバいならやめたほうが、やめたほうが……」
聖騎士「防御魔法いくど!」
リーダーが防御魔法とやらを詠唱すると、体の周りをキラキラした光が包む。
こんなので本当に大丈夫なんですか……。
爆弾士「距離65---!」
聖騎士「よしやれ!」
爆弾士「射角45! いくぞオラァ!」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:22:04.67:+Ce2yGMt0
勇者「ひっ!」
爆弾士が投擲した爆弾が、魔物の集団の中央で炸裂する。
飛び出した針が魔物たちに食い込み、魔物たちはパニックに陥る。
拳闘士「気づきよった! 来るで!」
咆哮をあげて魔物たちがこちらに押し寄せてくる。その数およそ20。
目を血走しらせ怒り狂った顔は、俺たちへの憎悪に満ちている。
怖い、間近に見る魔物がこんなに怖いなんて……!
勇者「うっ、嫌だ、殺される……殺される……」
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:22:59.22:+Ce2yGMt0
仕掛けられた地雷を踏んだ魔物が、バラバラに吹き飛ぶ。
目の前に飛んできた頭部が、俺を睨みつけて「シャーッ」と鳴いた。
勇者「うわああああああああっ!!」
聖騎士「勇者! しっかり構えんか! ボケっとしとったら死ぬど!
みんな死ぬど! 前見ろ前!」
勇者「あ、あ、あああああああああ!!」
砲撃手「第一射いきます!」
砲撃手の砲から放たれた魔弾が魔物集団の先頭に炸裂する。
着弾点には火柱があがり、魔物たちが焼かれ、嫌な臭いが漂ってくる。
それでも突進する余力のある魔物や後方の魔物たちが、
我々前衛に向かって勢いよく突き進んでくる。
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:27:22.49:+Ce2yGMt0
聖騎士「来るぞーー! 絶対後ろにやるなーーー!
ヘイト稼げヘイトーーーっ!!」
拳闘士「ヘイトーーーーッ!! オォーーーーッ!!」
勇者「は? ヘイト……? うわ、きたきたきたきた!!」
一番槍の魔物が我々の最前線にいる聖騎士に特攻する。
聖騎士は大盾で魔物を受け止めるが、もう一匹、もう二匹と
ぶちあたってくる。
聖騎士「しごうしたるどワリゃあ!!」
聖騎士はメイスで魔物の頭をカチ割る。吹き出した脳漿が
顔にビシャビシャとかかる。
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:29:44.10:+Ce2yGMt0
拳闘士「おい、よそ見すな! 前みろや!!」
勇者「えっ、えっ、ああああああああああ」
俺の盾に魔物が体当たりをブチかます。
衝撃で数メートル後ずさりする。こんなの、無理、力が違いすぎ、違いすぎ!!
「ガウアウアアアウッ!!」
勇者「ひいっ、あひっ、助け、お助けあああああああ!!」
魔物が大きな顎を開き、鋭い牙が盾に噛み付いてガッチリ食い込んでいる。
盾を持ってたら振り回されてしまう、が、盾を離したらやられてしまう。
無理、無理無理こんなの無理!
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:34:08.15:+Ce2yGMt0
拳闘士「目狙え目! 肘でもエエから目入れろ!!」
勇者「目って言われても……ああああっ!」
さらに鈍器を持った魔物がこっちに迫ってくる。
あれでカチ割られる。脳みそが飛び出す。あああああ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!
聖騎士「よし放てーーーーっ!!」
魔術師「*************!」
魔術師の放った魔法が魔物を襲う。魔物だけを狙う沢山の魔法の火矢が、
俺に迫っていたのと噛み付いていた魔物も、それを食らって断末魔をあげる。
勇者「あうあう……凄い……」
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:36:17.46:MPvSiwz+O
砲撃手「押してるー! 押してるよー!」
拳闘士「シャーコラーッ!!」
魔法の威力を垣間見て、残った魔物も怖じ気付き、逃げ出すものもいる。
砲撃手が逃げる魔物の背後から魔弾を叩き込み、
死ぬ気で特攻する魔物の頭部を拳闘士が拳で叩き潰す。
聖騎士「まだじゃー! まだいけー! 詠唱忘れんなー!」
どうやら勝ちそう? いや、どう見ても勝ってる。
やった、生き延びた……生き延びたぞ……。
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:40:41.94:+Ce2yGMt0
聖騎士「ネクロ来たぞーーーーーっ!」
勇者「えっ?」
なんだあれは……なんだ……。
ローブを着た骸骨。周りの空気が揺らめいていてただならぬ
雰囲気を発している。どう見ても中ボス、いや魔王って言われても
おかしくないぐらい怖い!! めちゃくちゃ怖い!!
勇者「あっ……ううあああ……」
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:44:39.16:+Ce2yGMt0
聖騎士「召喚阻害せえー!!」
砲撃手「抗魔弾発射します!!」
聖騎士「神聖術師ーーーっ!! 退死霊シールド張れ、はよう!!」
神聖術「+++++++++++……」
地面からボコボコと剣と盾を持った骸骨が湧き出してくる。
5……10……無理だ、無理だ無理無理無理無理無理!!
勇者「ああああああああああああああっ!!」
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:48:36.60:+Ce2yGMt0
拳闘士「ビビんなや! 男やろ!」
そう檄を飛ばすハゲの顔にも焦りが浮かんでいる。
想定外のことがあったのに、ヤバいっていってたのに、
中止しないから、ゴリ押しするから、こんなことになるんだ!!
こんなパーティーに居たら死んでしまう。というか今まさに死んでしまう!!
魔術師「**********!」
可愛いあの子が放った魔法の火矢は、表面積の少ない骸骨の間を
通り抜けてしまって効果が薄い。骸骨たちがどんどんと迫ってくる。
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:52:36.37:+Ce2yGMt0
聖騎士「別の唱ええ別のーーーっ! 俺が親玉やるけえ援護せえ!
後衛は絶対死守せえよ!」
リーダーは盾を構えて集団に突撃していく。
ちょ、あんたが行っちゃったら守りが、守りが!
勇者「うわ、うわああああっ!」
鈍色の剣を手にした骸骨がワラワラと迫ってくる。
あっ、あっ、あっ、刺される、刺される!!
「キシャアアアアアッ!!」
勇者「あああひいいいっ!!」
剣が分厚い木盾をスパっと断ち切る。盾が、盾が……。
もう一匹きた、きたきたきたきた!!
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:55:24.20:+Ce2yGMt0
勇者「あっ……」
刺された。痛くないけど刺された。……いや刺さってない。
でもキラキラ消えた!! キラキラ消えた!!
勇者「ちょっ、あのっ、やめてください、やめましょうよ、やめっ……」
刺された。痛いし刺された。太もも貫通してる。
痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
勇者「がああああぁぁっ!!」
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:59:02.56:+Ce2yGMt0
砲撃手「魔法ーーーっ!! 2時の方向に放ってーーーーっ!!
く、くそっ! こいつっ!」
魔術師「いいですか!? 放っていいですか!?」
爆弾士「早くやれよ!! あーくそっ、前衛ちゃんとやれやぁーーーっ!!」
拳闘士「あかん、指千切れた! 指千切れた! ヒールして!
ヒールしてくれえー!」
神聖術師「誰からヒール!? 誰から、ねえ誰から!?」
駄目だ……。死ぬ。全滅する。みんな死ぬ。
あの子も死ぬ。あの子も……。
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:03:16.64:+Ce2yGMt0
勇者「……」
俺死んだふりしてる。死んだふりして逃げてる。
俺が何したって何もかわらん。何もかわらんし。
爆弾士「オバハン!! 後衛に腕力魔法! はやく、はやくしろよぉっ!」
神聖術師「ひっ、ひっ、+++++++!!」
骸骨共は前衛を突破して後衛に押し寄せている。
ハゲも骸骨に囲まれて血を流しぜえぜえと息をついている。
後衛が格闘で応戦するも、もうどうにもならない……あ、オバサン刺された……。
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:06:06.29:+Ce2yGMt0
勇者「あー……俺なんでこんなことしてんだ……」
昨日までは絶対に安全な家の中に身を置いていた。
自分の部屋が世界のすべてだった。
働かなくても一生このまま暮らしていけると思ってた。
勇者「……」
食べていくって、自分の力でお金を稼ぐってこんなにも大変だったのか。
カーチャン、パートきつかっただろうな。父ちゃん、よくケガして帰ってきたな……。
勇者「……」
123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:11:43.17:+Ce2yGMt0
でも父ちゃんはこんなのをくぐり抜けてきたんだな……。
何度も何度も、俺たち家族を食わせるために。
『勇者』なのに、頑張って働いて、街の人達に愛されて……。
勇者「うっ、うっ、う……」
魔術師「きゃあああああああっ!!」
父ちゃん……俺は、父ちゃんの息子で、だから、俺は――。
勇者「勇者……だ……」
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:12:52.41:ymrTf2NK0
不思議と痛みが消えた。立ち上がり、刺された足を引きずって歩く。
だめだ、歩くな、走れ、走れ!
勇者「うわああああああああああああああ!!」
神聖術師に止めを刺そうとしている骸骨の頭部を、背後から思いきり殴りつける!!
勇者「あああああああああああああああっ!!」
……木っ端微塵になる。こいつら意外と脆い、脆いぞ……!!
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:19:20.76:l3+1+ftFO
勇者「自分と、みんなにヒールしてくれっ! 頼む!」
神聖術師の「うっ、うっ、あぐっ……わかった……++++++++……」
神聖術師の傷がみるみるうちに塞がっていく。
俺は自分に治癒魔法がくるのを待たずに、あの子を囲んでいる骸骨に
向かって体当たりをかます。
「キェエエエッ!」
そのまま馬乗りになって頭を棍棒で叩き潰す!!
魔術師「勇者さんっ!」
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:22:01.20:Rd7ai2zpO
勇者「おい魔物共!! 俺がリーダーだ! 俺を倒さないと
勝ったことにならないぞ、こいっ! こいよ! ビビってんのか!?」
骸骨共が一斉に俺の方を見る。これがヘイトってやつか。
そして、一斉に俺のほうに向けて迫ってくる。
勇者「ほらっ、こいよ、こっちだこいよ!」
足が思うように動かない、だが少しでも前衛に、俺に引き付けないと……!
142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:30:33.13:+Ce2yGMt0
勇者「あっ――」
治癒魔法が届く。足が動く。
続いて敏捷魔法。体が軽くなる。
勇者「トロいなおい! ぶっ殺してやるから追いついてみろよ!!」
走る、挑発する、走る、挑発する、無表情な骸骨が顎をカチャカチャ鳴らして
怒り狂ってるのがわかる。
勇者「ほら、どうした? 雑魚モンスター!
お前らレベル上げに丁度いいんだよ! 稼がせてくれよ、ガイコツちゃんっ」
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:36:57.47:+Ce2yGMt0
走る、挑発する、走る、挑発する、走る……。
勇者「……」
追い詰められた。目の前は高い崖。
勇者「ほ……ほら、えっと、こい……よ。
いややっぱ来なくていいかも。来なくていいです……」
大量の骸骨がガチャガチャとにじり寄ってくる。
もう駄目、無理っす、無理……。
勇者「あー……。今日はなんか、凄い目まぐるしい一日だったなあ。
骸骨のみなさんに語って聞かせたいぐらいです。聞きますか……?
あ、結構ですか? そりゃどうも……」
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:41:50.55:+Ce2yGMt0
なんか最後に格好つけたし、あの子にもいいとこみせたから、
あんまり後悔ないなあ。いや死にたくないけど……
どっちかっていうと凄く死にたくないけど……
てゆーか絶対死にたくないし……。
勇者「ううっ……勘弁してください……勘弁……」
聖騎士「おい」
勇者「許してください、ほんと勘弁してください……」
聖騎士「おい、終わったけん。帰るぞ」
勇者「へ?」
……血まみれのリーダーが、ネクロマンサーの首を抱えて立っていた。
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:42:41.10:rq4vTQH80
拳闘士「ちょ、めっちゃあるやん! 貯めこんどるなあ~」
爆弾士「これ、金はパクっていいだろ~。苦労したし~。パクっていいだろー」
奪われた財産を積んだ、帰りの馬車の中。
あんなに激しい戦いのあとだというのに、こいつら超人か。
勇者「あーいてててて、て……」
魔術師「大丈夫ですか、勇者さん? 街に帰ったら治療院に連れていきますから……」
砲撃手「痛み取る魔法してあげたらどうすか?」
神聖術師「嫌よ、魔力スッカラカンだし。あ、あたし蚊に刺されちゃってる……。ヒールっと」
俺は初仕事を終えた。働くってこんなに大変で……でも、達成感があることだったんですね。
これからも続けるかって? そりゃあ答えはもちろん……
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:52:30.02:F5R5uUw80
魔術師「えっ……どうして、辞めるん、ですか?」
勇者「やっぱ俺には無理です……こんなの、向いてません」
魔術師「今日の勇者さん、とても頑張ってたじゃないですか!
私、助けてもらって凄く感謝してます。だから続けてみませんか……?」
勇者「いえ……ほんとすいません。ご迷惑をお掛けすることになるんで……」
爆弾士「無理っていってんならしょうがないんじゃねーの?」
拳闘士「せやせや、はよ飯食いにいこや」
神聖術師「私お腹すいたんだけどー」
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:04:34.28:P/BHfc2D0
勇者「では、お世話になりました……」
魔術師「勇者さん……」
これからあんな目に、何度も何度もあうなんて、とても耐えられない。
人間、向き不向きがあるんだ。俺には向いてない。人を守る、人の命を預かるなんて、俺には……。
聖騎士「おいちょっと待てや」
勇者「え……」
聖騎士「お前給料いらんのか」
勇者「……お金を貰えるような仕事をしてません」
聖騎士「ワレなめとんか!」
勇者「ひっ!」
聖騎士「そんなもんはお前が決めるもんじゃなかろうが、何偉そうに言いよんじゃ」
勇者「あ、す、すいません……」
179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:11:13.91:iB6q1pxnO
聖騎士「メシ食いにいくぞ。そこで渡したる」
勇者「え、あ、はいっ……でも、行っていいんですか?」
聖騎士「ワシが来いゆうとんじゃ、黙ってついてこいや。
それとボソボソ喋んな」
勇者「はいっすいません!」
給与明細書
支給
基本給 12000モナー
モンスター手当(ネクロマンサー)3000モナー
控除
装備品貸出費 1500モナー
物品費(ヤクソウ ナド) 2000モナー
治療院費 4500モナー
合計
7000モナー
196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:19:15.10:siCb3BYw0
勇者「うっ、うっ、ありがとうございます、
ありがとうございます……ううっ……」
拳闘士「なんで泣くん? 泣くとこあった?
なあ泣くとこあった? おい泣くなてー」
勇者「ちゃんと給料もらったの初めてで……
あうっ、あっ、ううっ……」
爆弾士「えーニート? ニートだったの? マジで?」
勇者「今まで、うっ、すぐ仕事やめて、
入ったその日に途中で帰ったり……うううっ……」
魔術師「勇者さん……よかったですね。
ほんとに、頑張りましたもんね……」
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:27:51.62:P/BHfc2D0
聖騎士「働いたあとの飯は美味いじゃろ。
ワシは仕事のあとのビールのためにこの仕事やっとるようなもんじゃ。ワハハ」
勇者「はいっ、ううっ、ううう……」
砲撃手「また飲み過ぎて暴れないでくださいね」
神聖術師「ちょっと店員さーん、ワイン遅いー。いくら待たせる気ー?」
聖騎士「のう勇者、お前の親父、オルテカゆうのちがうか?」
勇者「うっ……あ、はい、なんでご存知で……?」
聖騎士「そうじゃろ? よー似とるわ。ワシはのう、昔王様とお前の親父と一緒にパーティ組んどったんや」
勇者「えっ……そうなんですか!?」
208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:31:21.23:ELvyfeZN0
聖騎士「お前の親父は、『伝説の勇者』て呼ばれとった。
そらあもう、凄い冒険者でな、ほんまに伝説やったんじゃ」
勇者「ほ……本当に? 本当……ですか?」
聖騎士「ああ、人がやりたがらん仕事、割に合わん仕事、進んでやっとった。
勇者のクラスやゆうて馬鹿にされることもあったけど、行動で、仕事で
黙らせよったわ。あいつは、ほんまの意味の『勇者』にふさわしい男じゃ」
勇者「父ちゃんが……そんな、俺、てっきり……勇者って、
無能者の……」
聖騎士「じゃけど……ワシらが魔王の城に乗り込んだ時、戦いの中で
あいつは行方不明になった。パーティーの連中と
必死になって探したけんど、ついに見つからなんだ、すまんな……」
勇者「いえ……父ちゃんは立派に戦ったんだと思います、立派に……」
215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:48:37.71:P/BHfc2D0
聖騎士「……じゃけん、俺はお前を見たとき、どっかオルテカに
似とる思うて、連れていったんじゃ。そうか、息子か……。
のう、お前は『伝説』になりとうないんか?」
勇者「えっ、いや、俺はそんな、無理ですよ……」
聖騎士「そうやってあれも無理、これも無理ゆうんか?
お前の親父は、どんな逆境でも乗り越えてきたんじゃ。
お前はその親父の息子じゃろ! 気張らんか!」
勇者「……できるでしょうか、俺に……」
拳闘士「んなもん、やってみなわからへんやろ
220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:51:30.73:P/BHfc2D0
爆弾士「そーそー、何事もチャレンジだろー?」
砲撃手「気楽にやればいいんじゃないですかね。気楽に」
神聖術師「贅沢言ってたら何もできないと思うけどぉ」
魔術師「勇者さんなら絶対、絶対やれます!
私、信じてますから!」
勇者「うう……」
聖騎士「どうじゃ、ワシらはみんな歓迎じゃ。
あとはお前次第じゃ。無理には言わん、けどな、ここで踏み出せな
もうチャンスはないかもしれん。それぐらいの覚悟で生きなあかんのじゃ」
勇者「……俺……俺……、やります! 『伝説の勇者』になりたいです!
伝説の……父ちゃんみたいに……ううっ……う……」
226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:56:24.00:P/BHfc2D0
聖騎士「そうか、よう言った。それでこそ男じゃ!
よし、今日は勇者の加入を祝って宴会じゃ!」
拳闘士「おーええなあ! がんばろや、勇者!」
爆弾士「よかったよかった、あれが無駄にならなくてよかったなー」
砲撃手「そういえばあれがありましたね」
神聖術師「魔術師ちゃんが預かってたんだっけ、あれ、出したら?」
魔術師「あ、そうですね……! お店のカウンターに預けてます。
勇者さん、実はみんなからプレゼントがあるんですよー?」
勇者「え、プレゼント……?」
232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:02:00.17:P/BHfc2D0
魔術師「じゃーん! ミスリル銀の鎧とロングソードです!」
勇者「え、これは、えっ?」
聖騎士「それじゃったら軽いけんお前にも使えるじゃろ」
爆弾士「よかったなあおい、高かったんだぞこれ!」
勇者「え、え、いいんですか、え……あうっ、あうううっ……
ありがとうございます、俺、絶対、絶対みなさんに恩返しを……!」
砲撃手「結局余らなかったんでしたっけ?」
神聖術師「余った分でここのお代。まー足りなかったらリーダーが
出すだろうしいいんじゃない?」
拳闘士「あー奪い返した金なー、あれやっぱパクっといてよかったなー」
勇者「えっ、えっ、あの、え、これ買ったお金って、え……」
234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:03:58.69:ELvyfeZN0
勇者「えっ、えっ、あの、え、これ買ったお金って、え……」
魔術師「しーっ! あまり深くは考えてはいけません」
勇者「あのあの、それやばいんじゃ、バレたら縛り首、あの……」
砲撃手「あ、それとこれ、料理の本と裁縫の本と馬車の本と……
とにかく色々です。毎日勉強してくださいね」
勇者「はい? あの、ななな、こんなに、あの……」
聖騎士「下っ端じゃけん、雑用も色々と覚えてもらわんとの」
魔術師「はぁー、これで雑用減るー! 勇者さん、一緒に頑張りましょ!」
勇者「ちょちょちょ、やっぱり、あの、やめ……」
拳闘士「目出度いのー、祝お祝お!」
爆弾士「ヒャッハー!!」
勇者「えええええええええええええええええ!!」
239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:15:32.52:P/BHfc2D0
カーチャン、俺はなんとか冒険者を続けています。
時には……いや、毎日のように辛いことがあるけれど、
父ちゃんみたいになれるように、俺、頑張るよ。
ブラックPTに入ってるんだが、もう俺は泣き言は言わない、俺は伝説の勇者になる。
聖騎士「オラァーー!! 勇者ーーっ!! タラタラしてんなーっ!!」
砲撃手「ちょっとちょっと無理、こっち無理、ちゃんとやって、ちゃんとやれって!」
爆弾士「前衛何やってんだゴルァ!! 死ねやあぁーーっ!!」
拳闘士「アカン指飛んだ! 指飛んだて! 指~~~~っ!!」
神聖術師「ヒール誰!? ヒールもう無理、魔力無理!!」
魔術師「勇者さんファイトっ!! 足折れたぐらい、気合ですっ!」
勇者「うああああああああああああああああああああああああああ!!」
おしまい。
242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:17:23.98:ELvyfeZN0
母「さあ かあさんに ついてらっしゃい」
勇者「は? 嫌だし。ちょ、なにすんだよ、うぜえんだよババア!
嫌だ、出たくない! 外に出る服がない! 外に出る服がっ……!」
俺は母親に無理やり引きずられて、お城の前まで連れてこられる。。
この国アニヤハンは小さな王国だが、そのくせやたらと豪華な城を
見上げるとムカムカしてくる。税金泥棒め。
母「ここから まっすぐいくと おしろ です。
おうさまに ちゃんと あいさつ するのですよ。 さあ いってらっしゃい」
勇者「なあカーチャン。わかったよ、わかった。そのうち仕事探すから。
な、だから今日は帰らせてくれ、頼むよ。まだ読んでる途中のラノベがさ……」
母「ゆうすけ や どうしたの? おうさまに あっていらっしゃい」
勇者「明日探すから、明日! 今日は帰らせて、帰らせろよ。なあ……」
母「ゆうすけ や どうしたの? おうさまに あっていらっしゃい」
勇者「今ちょっとなんか……体の調子よくないし……あーお腹痛い、お腹……」
母「ゆうすけ や どうしたの? おうさまに あっていらっしゃい」
勇者「いい加減にしろよ、ババア! 帰るっつってんだろどけよっ!」
母「じゃあ母さんと一緒に死にましょう、ゆうすけ」
勇者「ひっ……な、なな、危ない、包丁危ない、やめ、やめてっ!」
母「お父さんは冒険に出たまま帰ってこないし、あんたが働いてくれないから
うちはもうお金が無いの……。このままじゃ生きていけないの……わかる?」
勇者「わかる、わかるからそれしまって! ひっ、ひい! やめやめやめやめ!」
母「母さんと一緒に死にましょう……ね? そうしましょう……」
勇者「あのさ、生活苦しいならカーチャンもスロットやめたほうが……」
母「ああああっ! 死ぬ! もう死んだほうがマシよ!」
勇者「わかった、わかったから! いくいくいきます! いってきます!」
母「立派な冒険者になって、うんと稼ぐまで帰ってこないでね。
ちゃんと仕送りするのよ。でないと母さん……死ぬから」
勇者「うう……」
拝謁の間には、冒険者になりたい者たちが王様の紹介状を交付して
もらうために、沢山並んでいる。
不景気により、近ごろは冒険者になる者が急増しているとか。
だが俺は冒険者になるつもりなど毛頭ない。適当に理由を付けて
この場を切り抜けられないか、というようなことばかりが頭に浮かんでいる。
勇者「あー、マジめんどくせ……」
「51番の方、どうぞー」
勇者「は、はい……」
王様「おーよくきたねよくきたね。オルテカさんの息子のゆうすけくんだね?」
勇者「あはい、そうです……」
王様「いやー、こんなに大きくなったんだね、うんうん、今いくつ?」
勇者「26……です」
王様「そうかぁ、26かあ。もういい歳だねえ。ところで仕事、
してないんだって?」
勇者「ええ、その……なかなか仕事が見つからなくて……。
探しては、いるんですけど……」
王様「今不景気だからねぇ、なかなか見つからないよねぇ?」
勇者「そうなんですよ……。ほんと、ロクな仕事がなくて。
時給670モナーの仕事とか、夜勤の肉体労働とか、誰がするんだって
感じッスよ……」
王様「はははそうだねえ、今だとなかなか条件の良い仕事はねぇ」
勇者「そりゃあ気持よく働ける所ならナンボでも頑張りますよ?
けど、従業員をナメたようなブラックばっかッスもん。
んなのやる気おこらないって、ねえ……?」
王様「うんうん、ナメてるよねえ。
いやあ、ほんと……社会ナメてんなお前」
勇者「え……?」
王様「おいてめえ、穀潰しニートの分際で仕事選り好み出来る
立場だと思ってんのか? おう……」
勇者「あっ、あっ、あのっ、そのっ、」
王様「ブラックだぁ? 社会のブラック人間が偉そうな口
聞いてんじゃねーぞゴルァ! 牢屋ブチこんで根性叩き直して
やろうか? あ? 空きあっから今すぐ入れてやんぞ?」
勇者「そそそ、それだけはっ、すすすすいませんでした!!」
王様「てめえ働きもせずに食っちゃ寝してよし江さん苦労させてんじゃねえよ。
よし江さん泣いてたぞ、なあ? お前を食わせるために毎日パートで
クタクタになってな。お前母親居なかったら野垂れ死んでんぞ?
わかってんのか? わかってんのかって聞いてんだよ!」
勇者「はははい!! すいません、わかります、すいま……あうっ、うっうっうっ……」
王様「てめえの親父は立派な勇者でな、割に合わねえ仕事も自ら進んでやってな、
周りから尊敬されてたんだ。俺らの若い頃はなあ、やれ給料が安いだの仕事がキツいだの
言う甘ったれは半殺しにの目に遭ってたぞ。おう、お前もうちの兵士にしごかれたいか?
ちょっと叱られたぐらいで泣いてたら死ぬぞ。死ぬからな、死ぬぞ?」
勇者「うぐっ、はう……あううう……あ……」
王様「……な、それが嫌なら頑張れよ。お前頑張れるだろ?
父ちゃんみたいに立派な勇者になって、母ちゃんに楽させてやれよ。
お前男だろ? お前は出来る奴だって、俺分かるよ。お前いい目してるもん。
俺がお前を信じてやるよ。な、できるよな? 冒険者やるよな?」
勇者「あうっ、あうう……やります、やります! 俺……俺頑張ります!
頑張って……頑張って……カーチャン……ううっ……」
王様「うん、お前なら出来るよ。絶対出来る。お前頑張れる男だから、
冒険者なんてすぐ慣れるよ。いっぱい稼いたらでかい家でも建てて、あとは
遊んで暮らせよ、な? ちょっとだけ、10年だけ辛抱しろ、な?」
勇者「はい……ううっ、頑張ります、頑張ります……!」
王様「よく言った。期待してるからな! ほんと頑張れよ!
おーい、こいつ10年で頼むわ!」
冒険者の手続きを終えて、城から出てきた男は頭を抱える。
勇者「うう……やっちまったなあ……やっちまった……」
城から出てくる者たちを見ると、同じように契約して頭を抱える者は大抵
気が弱そうな者で、多くの者は冒険者になるのを辞退して出てくる。
そりゃそうだ。普通に考えて冒険者になりたい奴なんて、よっぽど才能に恵まれた
奴か、他に行き場のない底辺の連中だ。
勇者「なんだよ……これ。冒険者ってブラックかよ……」
=アニヤハン王国 冒険者契約書=
冒険者は以下に挙げる特別の権利を有する。
・他国への自由旅行 ・魔物の自由狩猟 ・各種ギルドの結成、加入の自由
・他国で冒険者としての扱いを受ける権利 ・武器を許可なく所持出来る権利
・魔術、召喚術、錬金術などを許可無く使用出来る権利
・その他国王が認める権利
冒険者は以下に挙げる特別の義務を負う。
・いかなる時もアニヤハン王国の冒険者としてその名を汚さぬよう務める義務
・国家の戦争、魔物の襲撃、その他有事の際直ちに招集に従う義務
・犯罪者及び違法に冒険者活動を行う者を取り締まる義務
・登録料として毎月[32,000]モナーの金銭を国家に納付する義務
・冒険を通じて得た報酬、賞金、財宝類は国家に報告し[45]%を金銭で納付する義務
・その他国王が認める義務
[タナカ ユウスケ]さんの冒険者登録期間は[10]年[0]ヶ月です。
死亡及び解除申請料[5,000,000]モナーを納付する場合を除き、
登録の途中解除は出来ません。
納付や報告の義務を怠ったり、支払いの不能が認められる場合は
財産の没収及び法により処罰されます。
俺「……」
俺は思った。ああ、この国じたいがブラックなんだと。
こうやって若者は搾取されて、一生這い上がれないシステムになっているのだと。
勇者「そういや、職業登録所に行かなきゃいけないって言われてたな……。
あー帰りたい……帰って布団にくるまってラノベ読みたい……」
ここは公営の職業登録所『ハローワールド』、通称『ハロワ』。
冒険者としての職業(クラス)を決めたり、冒険者パーティーを結成したり
仲間を探す場所として利用されているらしい。
勇者「あの、すいませーん。さっきお城で登録してきたんですけど……」
職員A「あんた新規?」
勇者「あ、はい」
職員A「じゃこれ書いて紹介状と契約書と一緒に1番窓口」
勇者「は、はい……」
敬語も使えない態度の悪い公務員め。誰の税金で養ってやってると思ってんだ。
死ねよ……俺だって消費税ぐらいは払ってんだぞ……。
勇者「あの、書きました。ここでいいんですか」
職員B「はい、登録料6800モナーになります。
108番の札でお待ちください」
氏名[タナカ ユウスケ] 種族 [人] 性別 [男]
生年月日 ヌルポ歴[1985]年[5]月[12]日
住所[アニヤハン王国 アニヤハン第四街 6-3]
現在の職業 [なし]
最終学歴 [アニヤハン王立ヌルポ高等学校]
卒業したクラス訓練学校 [なし]
過去5年以内に就いたことのあるクラス [なし]
所持する術免許 [なし]
持っている資格 [そろばん五級]
特技 [ラノベを書くこと]
職員B「108番のかたー」
勇者「はいっ」
職員B「2番の部屋で錬金術写真を撮影してください。
その後適性テスト行いますので、緑の線を辿って3番の部屋に
お入り下さい」
適性テストは、運動能力や術の適性を調べるテストだとか。
その結果により、選択できるクラスを決められるそうだ。
職員C「はい持ち上がりませんかー? 無理ですかー?」
勇者「うぎぎぎ……む、無理でえす!」
職員D「飛んでー、伏せてー、飛んでー、伏せてー」
勇者「ぜえぜえ……、無理、無理でえす!」
職員E「はい裏向きのカード左から透視するー」
勇者「☆……○……△……×……~……かな……
うわ、一枚もあってないし」
職員F「以上でテスト終了したから5番の部屋の前で
結果待っててね」
勇者「疲れた……」
テストの結果を待つ時間。
食い扶持を求めて冒険者になる新米冒険者にとって、最も緊張する時間だという。
クラス訓練校を出たり、資格や免状を持たない者は、テストの結果により
これからのクラスが決定される。テストの結果が良かったものは
複数のクラスから好きなものを選択でき、一芸に秀でているものは、
なり手の少ない貴重なクラスになれる。
そうでないものは……
職員G「108番の方どうぞ」
勇者「はいっ! うう、緊張する……」
職員G「これ、おたくのテスト結果ね」
勇者「ど、どうも。いやー、あんま自信なかったしなー、
ダメかもな~。自信なかったし~。……えっ?」
適性診断書
[タナカ ユウスケ]さんに最も適したクラスは[勇者]です。
二番目に適したクラスは[なし] 三番目に適したクラスは[なし]です。
その他の適したクラスは
『
なし』です。
筋力:F 持久力:F 忍耐力:F 判断力:F 思考力:F
魔術適性:- 召喚術適性:- 錬金術適性:- 神聖術適性:-
・著しい体力不足が認められます。パーティーの前に出て激しい戦闘を
行うことは非常に危険でしょう。
・とっさの判断に迷うことが多いでしょう。作戦を考えたりパーティーを
指揮する能力にも欠けています。
・すべての術において適性がありません。また、難しい道具や知識を要する
クラスには全く向かないでしょう。
男「な、あの……ずいぶんボロクソに書いてあるんですが、
あの……勇者? 勇者って凄い人がなるんじゃ……?」
職員G「あー勇者ってのはね、何も出来ない人のこと。
あなたテスト最悪だったから、勇者しか出来ないの」
男「ちょ、えっ? 何も出来ないって、え、勇者ですよ?」
職員G「昔は『無能者』って呼んでたんだけどねぇ。
無能ってのは差別にあたるってことで……。
だから呼び方変えるように通達されたんだよね。で、勇者」
男「そう……ですか」
俺は……『勇者オルテカ』である父の事を密かに誇りに思っていた。
たまに冒険の旅から家に帰ってきた時も、近所の人たちは父を
『勇者のおやっさん』と親しみを込めて呼んでいた。
だが、勇者=無能者であるということは、父は自分と同じ『何も出来ない人』
だということだ。父がそうであったこと、自分もそうであることに
二重の衝撃と失望を感じた。
男「……」
職員G「じゃー選択の余地無しということで勇者で免許発行するから」
男「はい……」
じゃあ俺も「勇者」か
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:02:51.63:+Ce2yGMt0男子に生まれたなら一度は、世界を旅して魔物を薙ぎ倒し、金銀財宝や
伝説の武器を探し求め、魔王から美姫を救いだす夢を持ったことがあるだろう。
まして勇者と呼ばれる父を持つ俺は、自分も勇者の血、才能を持つ者だという
自信とプライドが人一倍あり、そのため待遇の低い割に合わない仕事に就こうとせず、
たまに働き出してもすぐに退職し、自分はやれば出来る人間なんだという自信だけを
頼りに、危機感も無く生きてきた。だが、その自信は完全に打ち砕かれたのだ……。
勇者「……」
職員G「じゃ6番窓口で免許受け取ってね」
勇者「……」
職員H「108番の方ー」
勇者「……」
職員H「こちらが冒険者免許になりまーす。
冒険安全協会にご協力お願いしまーす、加入お願いしまーす。
うちでは皆さんご協力いただいてるんでー」
勇者「はい……」
職員H「3年の更新で4400モナーになりまーす。はいどーも。
こちら冒険者免許入れと冒険者のしおりになりまーす」
勇者「……」
冒 険 者 免 許
ADVENTURER LICENSE
氏名[タナカ ユウスケ/YUSUKE TANAKA]
種族 [人/HUMAN] 性別 [男/M]
生年月日 [1985]年[5]月[12]日
交付年月日[2010]年[11]月[1]日
クラス[勇者/HERO] 冒険者ランク[F]
ヌルポ歴2020年まで有効
(ア)アニヤハン王国公安委員会
勇者「はぁ……」
勇者「なにが無能者だよ、ふざけやがって……
それにランクFとか……ランクって何が基準なんだよ」
勇者「そうやって人に序列付けて、格差社会作って楽しいのか?」
勇者「……あんなテストごときで、俺の何が分かるっていうの?」
勇者「はぁ……パーティーに加入しないといけないんだっけ……
また申請して書類書かされて待たされて……あーめんどい……明日でいいや……
明日から頑張る……明日できることは明日やればいいんだ……」
勇者「帰ろう……」
出口に足を向けた俺の視界に入ってきたのは、旅装束をした冒険者たち数人が、
ドカドカとハロワのカウンターに向かってくるところだった。
聖騎士「おい、誰か前衛出来る奴はおらんか?」
拳闘士「やっすい奴でええねん、やっすいので」
職員A「いないね」
神聖術師「は? 市民に対して何その態度。
あんたね、うちら納税者。わかる? わかる?
あーっ? ねえあんた耳聞こえないの? 聞こえないの?
前衛できる冒険者、何でもいいから連れてきなさいよ」
職員A「そ、そう言われてましても……前衛は常に人手不足で……」
職員に絡みだす冒険者パーティーたち。
「うへえなにあれ。ああいうの関わりたくねえ」と瞬時に思考した俺は、なるべく
目を合わさないようにして外に出ようとする、が、
砲撃手「あの人は?」
爆弾士「おい、お前、そこのお前ちょっとこいよ。おい、無視すんなー?
おーい無視すんなよコラー」
聞こえないフリをしてそそくさと逃げようとした俺の足を、
冒険者たちの一人が引っ掛ける。
勇者「あう、あうっ、あ……」
拳闘士「なんやこいつめっちゃ弱そうやん。めっちゃ弱いでこんなん。
な、こいつ勇者ちゃう? 絶対勇者やで」
爆弾士「いくらなんでも勇者はねえだろー。あんなの滅多にいねえって」
拳闘士「ほな賭けるか? 賭けよや。ええか? ええな?
どやっ……きたあああ! 勇者やっ!」
爆弾士「えーマジか。勇者ってカスじゃん……」
下品な冒険者達に囲まれ、免許をひったくられ、ガクガクと震える俺は、
今にも涙が溢れ出しそうなのを懸命にこらえる。
勇者「うっ……う、う……」
聖騎士「おいお前ら遊ぶな。時間ないんじゃ時間が」
拳闘士「もうこれでええんちゃう? 他おらんのやろ?」
神聖術師「えーこんなのイヤよ。足手まといになるだけでしょ」
砲撃手「いいんじゃないですか別に? 盾にはなるし」
爆弾士「ならねーって、ならねーよこれはー」
勇者「あうあうあうあうあうあう……あうあうあ……」
聖騎士「ちっ、しゃあない。おいお前、名前いわんか」
勇者「たたたたた、たなかっ! ゆう……すけです……」
聖騎士「じゃあ申請してくるけえ。おい勇者、こいや」
勇者「ななななな、あのっ、僕体の具合が……お腹痛い、痛いっ!」
聖騎士「こいつパーティに入れるけん、頼むわ」
職員A「はいじゃあ免許出して」
勇者「え、あ、はいっ……」
よくわからないまま手続きが行われる。
何をさせられるんだ。何を。
職員A「はいこれ、パーティー証明書ね」
聖騎士「おう。よし勇者、お前は今からワシらのパーティーメンバー
じゃけえの。しっかり頼むぞ」
勇者「マジですか? マジで? え……マジで……」
拳闘士「ほないこかー、勇者ちゃん」
勇者「ああああああの! 本気っすか? 本気!?」
爆弾士「こいつすぐ死ぬんじゃね? 死ぬだろー?」
神聖術師「死んだら死んだでいいんじゃないの。
まさか治癒魔法これに使えって言わないよね?」
勇者「え、死ぬとか、えっ……」
聖騎士「はよう馬車のれ。急いどんじゃ」
勇者「これ乗るんすか? あの、俺準備とか……あの、準備……
ちょ、ちょっと一旦家に……」
拳闘士「ええから乗れて」
勇者「ぐほっ……」
ケツを蹴りあげられる。暴力……暴力振るわれた。
こんなことが許されるのか。ふざけるな訴えてやる訴えてやる訴えてやる。
荷物が積まれまくった馬車の中は薄暗く狭い。
これからのことを考えると不安で一杯になる。
勇者「あの、どこへ行くんですか……」
聖騎士「あとで説明しちゃるけえ。とりあえずおい爆弾士、
メンバーの紹介したれや」
爆弾士「うぃっす。この人がリーダーの聖騎士さん、あっちの一番若いのが
サブリーダーの砲撃手、あそこのオバサンが神聖術師、あの坊主頭が拳闘士、
俺が爆弾士。あと魔術師がいるけど先に現場近くで待機してる、以上」
勇者「わ、わかりました……」
適当な説明でよくわからない。
頭の整理のためにぱっと見の印象とクラスだけ確認しておく。
聖騎士(パラディン)。オッサン。
このパーティーのリーダー。
いかつい見た目で喋り方も怖い。こういうの苦手。
砲撃手(ガンナー)。ガキ。
10代にみえるがサブリーダーらしい。
生意気そうなゆとりでムカムカ。こういうの苦手。
神聖術師(クレリック)。オバサン。
我関せずと言った感じで俺を見ようともしないカエル顔。
ババアキャラとか誰得。こういうの苦手。
爆弾士(ボマー)。チャラ男。
いかにもなDQN。爆弾士ってなんだよ? 適当すぎんぞ。こういうの苦手。
拳闘士(ボクサー)。亀田。
暴力と強盗とレイプしか頭に無さそう。氏ねばいいのに。こういうの苦手。
以上、なんの華やかさもない糞みたいな連中。
ファンタジーな世界に似つかわしくないこんなDQNと冒険するなんて
拷問もいいところだ。俺のパーティーのイメージは男:俺、残り:美少女。
一人ぐらいシブいオッサンがいても良いかなって程度である。
爆弾士「お前コラ。人に紹介させといて自分は? なあ自分は?」
勇者「え、あ……俺はええと、勇者です……まだ新米ですが」
拳闘士「新米ゆうても多少は経験あるんやろ?」
勇者「え……いやその……。初めて……です、けど」
拳闘士「はっ? マジで? マジでゆうてんの?
おいヤバいんちゃうーん。ド素人やーん。」
勇者「だって……その……」
聖騎士「おい、勇者。お前ボソボソ喋るな。なあ、ボソボソ喋るなよ」
勇者「え、えっ? あ、は、はい……」
聖騎士「ははいじゃなくて、はいじゃろ。なあ、
ボソボソダラダラ喋るないいよんじゃ。わかったか?」
勇者「……はい。すいません」
聖騎士の鋭い眼光にビビってしまう。というか何故こんな風に説教
されなければいけないのかと、不満と怒りが沸き上がってくる。
勝手に連れてきて、なんでそんなに偉そうなのかと。
むしろお願いする立場ではないのかと。
聖騎士「甘あ考えとったら死ぬぞ。シャキっとせんか。シャキっと」
勇者「はいっ」
「もうこんなとこ辞めてやる!」とたんかを切って辞めた職場もあった。
言ってやりたい。今すぐこの場から逃げ出した。
だが、そんな事はとても言えそうに無い。言えば殺されるんじゃないか。
ああ……とんでもないブラックなパーティに入れられた……。
拳闘士「せや、ほんま死ぬで。聖騎士さんの言うことよー聞かなあかんで」
勇者「はいっ」
聖騎士「おい砲撃手、勇者に作戦の説明したれよ」
砲撃手「はい。勇者さん、作戦の説明するからちゃんと聞いてくださいね」
勇者「はいっ」
何故そんなものを聞かなくてはいけないのか。拒否する権利は無いのか。
威圧して行動を強要して許されるのか。お前たちはそんなに偉い人間なのか。
そんな風に思える理不尽な展開に、涙が出そうになる。
砲撃手「目的は、依頼主の村から財産を強奪した魔物の集団の討伐、
及び盗んだ物の奪還です。魔物の数は推定15から20。タイリクマダラオークと
シマシマツキノワバッファローの混成。魔物たちが北の山脈の住処に盗んだ物を
移送しているところを急襲します。爆弾士が投擲したニードル爆弾が炸裂したのを
確認してから、シールドディフェンスの陣形を敷き、魔術師と神聖術師が詠唱を開始。
戦闘の魔物が距離30まで迫ったら砲撃手は第一射を行います。
前衛は聖騎士、拳闘士、勇者が担当。シールドを構えて……
あの、勇者さん理解できてますか?」
勇者「えっ……はい、なんとか理解……してます」
砲撃手「じゃあ僕が言ったこと覚えてますよね。どんな作戦ですか?」
勇者「ええと、奪われたのを……取り返し、て……20匹の……
オークと、えっと、爆弾を、その……」
砲撃手「なんでメモとらないんですか? 覚えられないなら
なんでメモとらないの? ねえ?」
勇者「すいません……」
砲撃手「勇者さんが覚えてくれないと、みんな迷惑するんです。
みんなに迷惑かかるんです。それ理解できてますか? 理解で、き、て、ま、す、か?」
勇者「できます……うっ、すいません……うううっ……」
砲撃手「泣き出したので僕無理です。別の人に説明頼んでください。
僕泣く人無理なんで」
勇者「うっ、うっうっ、ううう……」
拳闘士「泣くことないやろー。泣くかー? あんなんで泣くかー? ふつー」
爆弾士「あー……うっぜぇ……もうそいつ叩きだしたら? 叩き出そうぜ」
聖騎士「おい勇者、みーんな困っとるぞ。お前に困っとる。
どうするんじゃ? なあ、降りるか? ワシはどっちでもええ。
降りたかったら降りぃ」
降りろと言われても、馬車は既に相当な距離を進んでいる。
ここがどこだかもわからない。もし降ろされたら……迷い、歩き疲れ、
やがて魔物に見つかって餌食になるだろう。それを分かってて言っている
リーダーが、憎くて仕方ない……。
勇者「うっ、うっ、降りません、ちゃんと覚えます、ちゃんと覚えますから……」
聖騎士「ほんまじゃの? うそいいよったら……わかっとるのぉ?
二度はないぞ。二度はな」
勇者「わかります、やります、がんばります……うっ……」
聖騎士「のー砲撃手、こいつ頑張るゆうとるけん、教えたってくれんかー」
砲撃手「リーダーがそう仰るなら。わかりました。
勇者さん、いい歳なんだから泣くとかやめてくださいね。引くんで。
未成年の僕に説教されたくなかったら、ちゃんとメモとるなりして覚えてください」
勇者「はい、すいませんでした……」
屈辱に耐えながら、必死にメモを取る。なんとか理解できた作戦内容は、
ようするに後衛が攻撃できるように、前衛が体を張って敵を食い止めろと
いうものである。ちなみに俺も前衛の一人である。無理、無理です。
俺は後衛どころか家の中に閉じこもるのが好きなんだ。
俺が死んだら誰が責任取るんだ。ふざけんなふざけんなふざけんな……。
聖騎士「おい、勇者降りんか」
勇者「……え? え、ちゃんと覚えましたけど……なんで……」
聖騎士「着いたから降りろいいよるんじゃ。ボソボソ喋るな」
勇者「……はいっ。すいませんっ」
他の連中はとっくに降りていた。声ぐらい掛けてくれてもいいのに、くそ。
聖騎士「おい魔術師、監視他のもんと代わってちょっとこい」
魔術師「はーい」
聖騎士「あいつ補充してきたメンバーの勇者じゃ。
初めてで何も知りよらんからお前教えたれ」
魔術師「了解です!」
ん? なんだか可愛らしい声が……。
魔術師「はじめまして勇者さん、魔術師です。よろしくお願いします!
早速ですが、作戦の内容はお聞きになりましたか?」
勇者「あ……」
天使。それはDQN共の巣窟に舞い降りた天使だった。
モロ俺好みの愛らしく可憐な少女の笑顔は、さっきまでの暗澹たる気分を
完全に吹き飛ばすほどの破壊力があった。
勇者「は、はい……聞きました!」
魔術師「あなたに守っていただけるんですね。
前衛をなさるのは大変でしょうけれど、私も精一杯頑張りますので」
魔術師が差し出した手は、柔らかくて暖かく、一瞬で俺を虜にした。
勇者「こ、こちらこそ命にかえてでも、あ、あなたを……!」
魔術師「嬉しいです。でも無理なさらないでくださいね。
それで作戦のことなんですが、あそこに魔法陣が描いてあるの見えます?」
勇者「あはい、ありますね!」
魔術師「魔法陣に私が陣取って、魔法を詠唱して撃ち出していきます。
神聖術師さんは治癒魔法の詠唱、爆弾士さんは投擲機で爆弾の投擲、
砲撃手さんは魔弾の充填を行っていくので、その間勇者さんたち前衛の方は、
迫ってくる魔物から私たち後衛を防衛していただくことになります」
勇者「ふむふむ……メモメモ」
魔術師「1500、15時に向こうのポイントを魔物が通過する予定なので、
それまでに武装の準備をしてください。えっと確か予備の武装は……」
拳闘士「おーい、今のうちメシくっとこやー。メシー」
魔術師「あっ、休憩するみたいなんでいきましょうか」
勇者「はい!」
そういえばまだ昼食ってなかったな。飯食わせてもらえるんなら助かる……。
勇者「……」
爆弾士「砲撃手の弁当美味そうじゃん。それいくらよ」
砲撃手「850モナー……」
爆弾士「そっちにすりゃよかったなー、そっちがいいわー」
拳闘士「聖騎士さん自分で作ってきたん?」
聖騎士「おう、つまむか?」
拳闘士「すんませんねえ、うまっ、これごっつうまいわ!」
勇者「……」
俺の分は……?
勇者「あの……食べるものが無いんですけど……」
爆弾士「しらねーよ」
拳闘士「は? お前買ってこんかったん? アホちゃう」
無理やりつれてこられてそんな暇無かったし……。
砲撃手「次からちゃんと用意してくださいね。
なんか食べさせてないみたいで気分悪いんで。次があるか知りませんが」
勇者「……」
なに、なに……なんなの。お前らのせいで飯食えない上に
説教までされなきゃいけないの……。
魔術師「勇者さん、よかったら私のお弁当食べませんか?」
勇者「えっ……そんな悪いですよ」
魔術師「私あんまりお腹が空いてないので。
私が作ったサンドイッチですけど、どうぞ食べてください」
拳闘士「なになに? 食わへんの? ほな俺もらうわ」
やめろ。近寄ってくんなハゲ。失せろ!
魔術師「駄目っ。自分のお弁当あるじゃないっ」
拳闘士「えっ、なんでやねん。あーお前惚れたやろ?
なあそいつに惚れてもうた? おーい、魔術師が勇者に惚れたてー」
魔術師「ち、違うからっ、そんなんじゃないから!」
勇者「あ、あのあのあの、ほんと、大丈夫ですから、
俺もあんまりその、食欲が……」
魔術師「じゃあ半分こしませんか? はい、どうぞ」
勇者「ううう……ありがとうございます」
なんという天使。なんという優しさ。ブラックPTの中で唯一のオアシス。
……もしかして俺のこと好きなのかな。どどどうしよう、
こんな可愛い彼女できたら俺、俺……うへへへへへへ。
だめだこいつwww
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:58:19.81:+Ce2yGMt0砲撃手「そろそろ準備開始してくださーい」
魔術師「はーい。勇者さん、私武装取ってきますんでまだ食べていいですよ」
勇者「あ、ども……」
魔術師「よいしょ……よいしょ……ふぅ、胴当てと帽子と盾、置いておきますね。
身に付け方わからなければお手伝いしますけど」
勇者「いえ、大丈夫です。なんとか、はい」
魔術師「では、また後で! 頑張ってくださいね」
あー可愛いなあ、彼氏いるのかなあ、
あの清純そうな感じからして、いないはず……だといいなあ。
あーそうだ、武装……。
……って、なにこれ。綿を押し固めたというか、マットみたいというか。
布? 革? うわっ、臭っ……。汗と埃の臭いが……。
聖騎士「タラタラすんな、さっさと着んか!」
自分は金属製の豪華な鎧を着てるのに、なんで俺、これ?
殺す気? 殺す気満々?
勇者「えとあの、鉄鎧とかじゃないんですか、こんな鎧じゃケガしそうで……」
聖騎士「お前が重いの着たら動けんじゃろが、ちょっとは考えろ」
なんという鬱SS、俺は何でこんなに気が滅入るものを読んでるんだ……?
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:05:30.03:+Ce2yGMt0勇者「でもでも……そ、それと武器は……」
拳闘士「馬車ん中に棍棒入っとるし自分で取ってこいや」
勇者「棍棒……? 剣とか、槍とかじゃないんですか!?」
聖騎士「素人がそんなん持ったら自分で怪我するだけじゃ。
お前なんでもかんでも聞くな。自分で考えろいいよんじゃ」
勇者「わかりました……取ってきます」
うう……薄汚れた臭い胴当てと帽子、野蛮人みたいな棍棒……。
ダサすぎる、酷過ぎる、こんな格好あの子に見せたくない。
見られたくない……。
拳闘士「チンタラしてんとさっさと盾持って用意せえや!」
勇者「うげっ!」
蹴りやがった。このハゲ、死ね。棍棒でぶん殴ってやりたい……っ!
勇者「うわっ……重っ……」
丸々身を隠せるような分厚い大きな木の盾。
下部が尖っているのはこれを地面に突き立てるのか。
ずっとこれに隠れててやろうか?
聖騎士「配置に付け! おい走れ走れ! 走らんか!」
勇者「こ、こんな重いの持って、走れるわけ……」
拳闘士「盾引きずんなや!」
勇者「うげっ!」
殺す殺すハゲ殺すドサクサに紛れて殺す。
聖騎士「もっと左じゃ! トロトロすんな!」
勇者「ぜえぜえ、もう無理、もう嫌……」
ああ、あの子に見られてるかな、この情けない姿……くそうっ。
聖騎士「この陣形崩すなよ、わかったの!」
敵敵敵敵敵敵敵敵敵
敵敵敵敵敵
聖
勇 拳
爆
砲 魔 神
聖騎士「来た……まだやど、まだいくなー……」
勇者「はひっ、はふっ、はいっ……」
拳闘士「ちょ、ネクロおるで、ネクロ!」
爆弾士「マジ? うっわ、やっべ、ネクロマンサーじゃん」
聖騎士「構わん! 予定通りいくけん!」
勇者「あの、ヤバいならやめたほうが、やめたほうが……」
聖騎士「防御魔法いくど!」
リーダーが防御魔法とやらを詠唱すると、体の周りをキラキラした光が包む。
こんなので本当に大丈夫なんですか……。
爆弾士「距離65---!」
聖騎士「よしやれ!」
爆弾士「射角45! いくぞオラァ!」
勇者「ひっ!」
爆弾士が投擲した爆弾が、魔物の集団の中央で炸裂する。
飛び出した針が魔物たちに食い込み、魔物たちはパニックに陥る。
拳闘士「気づきよった! 来るで!」
咆哮をあげて魔物たちがこちらに押し寄せてくる。その数およそ20。
目を血走しらせ怒り狂った顔は、俺たちへの憎悪に満ちている。
怖い、間近に見る魔物がこんなに怖いなんて……!
勇者「うっ、嫌だ、殺される……殺される……」
仕掛けられた地雷を踏んだ魔物が、バラバラに吹き飛ぶ。
目の前に飛んできた頭部が、俺を睨みつけて「シャーッ」と鳴いた。
勇者「うわああああああああっ!!」
聖騎士「勇者! しっかり構えんか! ボケっとしとったら死ぬど!
みんな死ぬど! 前見ろ前!」
勇者「あ、あ、あああああああああ!!」
砲撃手「第一射いきます!」
砲撃手の砲から放たれた魔弾が魔物集団の先頭に炸裂する。
着弾点には火柱があがり、魔物たちが焼かれ、嫌な臭いが漂ってくる。
それでも突進する余力のある魔物や後方の魔物たちが、
我々前衛に向かって勢いよく突き進んでくる。
聖騎士「来るぞーー! 絶対後ろにやるなーーー!
ヘイト稼げヘイトーーーっ!!」
拳闘士「ヘイトーーーーッ!! オォーーーーッ!!」
勇者「は? ヘイト……? うわ、きたきたきたきた!!」
一番槍の魔物が我々の最前線にいる聖騎士に特攻する。
聖騎士は大盾で魔物を受け止めるが、もう一匹、もう二匹と
ぶちあたってくる。
聖騎士「しごうしたるどワリゃあ!!」
聖騎士はメイスで魔物の頭をカチ割る。吹き出した脳漿が
顔にビシャビシャとかかる。
拳闘士「おい、よそ見すな! 前みろや!!」
勇者「えっ、えっ、ああああああああああ」
俺の盾に魔物が体当たりをブチかます。
衝撃で数メートル後ずさりする。こんなの、無理、力が違いすぎ、違いすぎ!!
「ガウアウアアアウッ!!」
勇者「ひいっ、あひっ、助け、お助けあああああああ!!」
魔物が大きな顎を開き、鋭い牙が盾に噛み付いてガッチリ食い込んでいる。
盾を持ってたら振り回されてしまう、が、盾を離したらやられてしまう。
無理、無理無理こんなの無理!
拳闘士「目狙え目! 肘でもエエから目入れろ!!」
勇者「目って言われても……ああああっ!」
さらに鈍器を持った魔物がこっちに迫ってくる。
あれでカチ割られる。脳みそが飛び出す。あああああ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!
聖騎士「よし放てーーーーっ!!」
魔術師「*************!」
魔術師の放った魔法が魔物を襲う。魔物だけを狙う沢山の魔法の火矢が、
俺に迫っていたのと噛み付いていた魔物も、それを食らって断末魔をあげる。
勇者「あうあう……凄い……」
亀田www
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:36:48.43:+Ce2yGMt0砲撃手「押してるー! 押してるよー!」
拳闘士「シャーコラーッ!!」
魔法の威力を垣間見て、残った魔物も怖じ気付き、逃げ出すものもいる。
砲撃手が逃げる魔物の背後から魔弾を叩き込み、
死ぬ気で特攻する魔物の頭部を拳闘士が拳で叩き潰す。
聖騎士「まだじゃー! まだいけー! 詠唱忘れんなー!」
どうやら勝ちそう? いや、どう見ても勝ってる。
やった、生き延びた……生き延びたぞ……。
聖騎士「ネクロ来たぞーーーーーっ!」
勇者「えっ?」
なんだあれは……なんだ……。
ローブを着た骸骨。周りの空気が揺らめいていてただならぬ
雰囲気を発している。どう見ても中ボス、いや魔王って言われても
おかしくないぐらい怖い!! めちゃくちゃ怖い!!
勇者「あっ……ううあああ……」
聖騎士「召喚阻害せえー!!」
砲撃手「抗魔弾発射します!!」
聖騎士「神聖術師ーーーっ!! 退死霊シールド張れ、はよう!!」
神聖術「+++++++++++……」
地面からボコボコと剣と盾を持った骸骨が湧き出してくる。
5……10……無理だ、無理だ無理無理無理無理無理!!
勇者「ああああああああああああああっ!!」
拳闘士「ビビんなや! 男やろ!」
そう檄を飛ばすハゲの顔にも焦りが浮かんでいる。
想定外のことがあったのに、ヤバいっていってたのに、
中止しないから、ゴリ押しするから、こんなことになるんだ!!
こんなパーティーに居たら死んでしまう。というか今まさに死んでしまう!!
魔術師「**********!」
可愛いあの子が放った魔法の火矢は、表面積の少ない骸骨の間を
通り抜けてしまって効果が薄い。骸骨たちがどんどんと迫ってくる。
聖騎士「別の唱ええ別のーーーっ! 俺が親玉やるけえ援護せえ!
後衛は絶対死守せえよ!」
リーダーは盾を構えて集団に突撃していく。
ちょ、あんたが行っちゃったら守りが、守りが!
勇者「うわ、うわああああっ!」
鈍色の剣を手にした骸骨がワラワラと迫ってくる。
あっ、あっ、あっ、刺される、刺される!!
「キシャアアアアアッ!!」
勇者「あああひいいいっ!!」
剣が分厚い木盾をスパっと断ち切る。盾が、盾が……。
もう一匹きた、きたきたきたきた!!
勇者「あっ……」
刺された。痛くないけど刺された。……いや刺さってない。
でもキラキラ消えた!! キラキラ消えた!!
勇者「ちょっ、あのっ、やめてください、やめましょうよ、やめっ……」
刺された。痛いし刺された。太もも貫通してる。
痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
勇者「がああああぁぁっ!!」
砲撃手「魔法ーーーっ!! 2時の方向に放ってーーーーっ!!
く、くそっ! こいつっ!」
魔術師「いいですか!? 放っていいですか!?」
爆弾士「早くやれよ!! あーくそっ、前衛ちゃんとやれやぁーーーっ!!」
拳闘士「あかん、指千切れた! 指千切れた! ヒールして!
ヒールしてくれえー!」
神聖術師「誰からヒール!? 誰から、ねえ誰から!?」
駄目だ……。死ぬ。全滅する。みんな死ぬ。
あの子も死ぬ。あの子も……。
勇者「……」
俺死んだふりしてる。死んだふりして逃げてる。
俺が何したって何もかわらん。何もかわらんし。
爆弾士「オバハン!! 後衛に腕力魔法! はやく、はやくしろよぉっ!」
神聖術師「ひっ、ひっ、+++++++!!」
骸骨共は前衛を突破して後衛に押し寄せている。
ハゲも骸骨に囲まれて血を流しぜえぜえと息をついている。
後衛が格闘で応戦するも、もうどうにもならない……あ、オバサン刺された……。
勇者「あー……俺なんでこんなことしてんだ……」
昨日までは絶対に安全な家の中に身を置いていた。
自分の部屋が世界のすべてだった。
働かなくても一生このまま暮らしていけると思ってた。
勇者「……」
食べていくって、自分の力でお金を稼ぐってこんなにも大変だったのか。
カーチャン、パートきつかっただろうな。父ちゃん、よくケガして帰ってきたな……。
勇者「……」
でも父ちゃんはこんなのをくぐり抜けてきたんだな……。
何度も何度も、俺たち家族を食わせるために。
『勇者』なのに、頑張って働いて、街の人達に愛されて……。
勇者「うっ、うっ、う……」
魔術師「きゃあああああああっ!!」
父ちゃん……俺は、父ちゃんの息子で、だから、俺は――。
勇者「勇者……だ……」
覚醒キター
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:15:33.58:eLOwcaSgOリアルすぎて鬱いけど設定しっかりしてるな
田中ゆうすけを私怨するぞ
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:18:47.78:+Ce2yGMt0田中ゆうすけを私怨するぞ
不思議と痛みが消えた。立ち上がり、刺された足を引きずって歩く。
だめだ、歩くな、走れ、走れ!
勇者「うわああああああああああああああ!!」
神聖術師に止めを刺そうとしている骸骨の頭部を、背後から思いきり殴りつける!!
勇者「あああああああああああああああっ!!」
……木っ端微塵になる。こいつら意外と脆い、脆いぞ……!!
腕をぐるぐる回しながら突っ込め!
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:21:48.83:+Ce2yGMt0勇者「自分と、みんなにヒールしてくれっ! 頼む!」
神聖術師の「うっ、うっ、あぐっ……わかった……++++++++……」
神聖術師の傷がみるみるうちに塞がっていく。
俺は自分に治癒魔法がくるのを待たずに、あの子を囲んでいる骸骨に
向かって体当たりをかます。
「キェエエエッ!」
そのまま馬乗りになって頭を棍棒で叩き潰す!!
魔術師「勇者さんっ!」
ひょおおおおお
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:23:19.78:+Ce2yGMt0勇者「おい魔物共!! 俺がリーダーだ! 俺を倒さないと
勝ったことにならないぞ、こいっ! こいよ! ビビってんのか!?」
骸骨共が一斉に俺の方を見る。これがヘイトってやつか。
そして、一斉に俺のほうに向けて迫ってくる。
勇者「ほらっ、こいよ、こっちだこいよ!」
足が思うように動かない、だが少しでも前衛に、俺に引き付けないと……!
勇者「あっ――」
治癒魔法が届く。足が動く。
続いて敏捷魔法。体が軽くなる。
勇者「トロいなおい! ぶっ殺してやるから追いついてみろよ!!」
走る、挑発する、走る、挑発する、無表情な骸骨が顎をカチャカチャ鳴らして
怒り狂ってるのがわかる。
勇者「ほら、どうした? 雑魚モンスター!
お前らレベル上げに丁度いいんだよ! 稼がせてくれよ、ガイコツちゃんっ」
走る、挑発する、走る、挑発する、走る……。
勇者「……」
追い詰められた。目の前は高い崖。
勇者「ほ……ほら、えっと、こい……よ。
いややっぱ来なくていいかも。来なくていいです……」
大量の骸骨がガチャガチャとにじり寄ってくる。
もう駄目、無理っす、無理……。
勇者「あー……。今日はなんか、凄い目まぐるしい一日だったなあ。
骸骨のみなさんに語って聞かせたいぐらいです。聞きますか……?
あ、結構ですか? そりゃどうも……」
なんか最後に格好つけたし、あの子にもいいとこみせたから、
あんまり後悔ないなあ。いや死にたくないけど……
どっちかっていうと凄く死にたくないけど……
てゆーか絶対死にたくないし……。
勇者「ううっ……勘弁してください……勘弁……」
聖騎士「おい」
勇者「許してください、ほんと勘弁してください……」
聖騎士「おい、終わったけん。帰るぞ」
勇者「へ?」
……血まみれのリーダーが、ネクロマンサーの首を抱えて立っていた。
さっすがリーダーのж聖騎士жさんや!
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:43:55.79:Rd7ai2zpO穫ったどおおおおおおおお
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:47:58.24:TMnz6kBHO 聖騎士△
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:51:31.18:+Ce2yGMt0拳闘士「ちょ、めっちゃあるやん! 貯めこんどるなあ~」
爆弾士「これ、金はパクっていいだろ~。苦労したし~。パクっていいだろー」
奪われた財産を積んだ、帰りの馬車の中。
あんなに激しい戦いのあとだというのに、こいつら超人か。
勇者「あーいてててて、て……」
魔術師「大丈夫ですか、勇者さん? 街に帰ったら治療院に連れていきますから……」
砲撃手「痛み取る魔法してあげたらどうすか?」
神聖術師「嫌よ、魔力スッカラカンだし。あ、あたし蚊に刺されちゃってる……。ヒールっと」
俺は初仕事を終えた。働くってこんなに大変で……でも、達成感があることだったんですね。
これからも続けるかって? そりゃあ答えはもちろん……
カエルひでえww
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:57:24.23:+Ce2yGMt0魔術師「えっ……どうして、辞めるん、ですか?」
勇者「やっぱ俺には無理です……こんなの、向いてません」
魔術師「今日の勇者さん、とても頑張ってたじゃないですか!
私、助けてもらって凄く感謝してます。だから続けてみませんか……?」
勇者「いえ……ほんとすいません。ご迷惑をお掛けすることになるんで……」
爆弾士「無理っていってんならしょうがないんじゃねーの?」
拳闘士「せやせや、はよ飯食いにいこや」
神聖術師「私お腹すいたんだけどー」
勇者「では、お世話になりました……」
魔術師「勇者さん……」
これからあんな目に、何度も何度もあうなんて、とても耐えられない。
人間、向き不向きがあるんだ。俺には向いてない。人を守る、人の命を預かるなんて、俺には……。
聖騎士「おいちょっと待てや」
勇者「え……」
聖騎士「お前給料いらんのか」
勇者「……お金を貰えるような仕事をしてません」
聖騎士「ワレなめとんか!」
勇者「ひっ!」
聖騎士「そんなもんはお前が決めるもんじゃなかろうが、何偉そうに言いよんじゃ」
勇者「あ、す、すいません……」
聖騎士頑固親父な感じでいいな
183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:13:35.66:P/BHfc2D0聖騎士「メシ食いにいくぞ。そこで渡したる」
勇者「え、あ、はいっ……でも、行っていいんですか?」
聖騎士「ワシが来いゆうとんじゃ、黙ってついてこいや。
それとボソボソ喋んな」
勇者「はいっすいません!」
給与明細書
支給
基本給 12000モナー
モンスター手当(ネクロマンサー)3000モナー
控除
装備品貸出費 1500モナー
物品費(ヤクソウ ナド) 2000モナー
治療院費 4500モナー
合計
7000モナー
>>183
収支がマイナスにならなくて良かったのう。
185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:15:08.85:ELvyfeZN0収支がマイナスにならなくて良かったのう。
安ッ!
187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:16:03.02:wETVpHBr0安い時給が670モナーだから1モナー≒1円でいいんだよな・・・?
191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:17:55.12:jVOlC3430気になるのがこの7000モナー・・・円にしていくらぐらいの価値なのだろうか
てかここから5割削られるんだっけか。国のブラックLVがやばいだろ
198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:20:40.53:P/BHfc2D0てかここから5割削られるんだっけか。国のブラックLVがやばいだろ
勇者「うっ、うっ、ありがとうございます、
ありがとうございます……ううっ……」
拳闘士「なんで泣くん? 泣くとこあった?
なあ泣くとこあった? おい泣くなてー」
勇者「ちゃんと給料もらったの初めてで……
あうっ、あっ、ううっ……」
爆弾士「えーニート? ニートだったの? マジで?」
勇者「今まで、うっ、すぐ仕事やめて、
入ったその日に途中で帰ったり……うううっ……」
魔術師「勇者さん……よかったですね。
ほんとに、頑張りましたもんね……」
聖騎士「働いたあとの飯は美味いじゃろ。
ワシは仕事のあとのビールのためにこの仕事やっとるようなもんじゃ。ワハハ」
勇者「はいっ、ううっ、ううう……」
砲撃手「また飲み過ぎて暴れないでくださいね」
神聖術師「ちょっと店員さーん、ワイン遅いー。いくら待たせる気ー?」
聖騎士「のう勇者、お前の親父、オルテカゆうのちがうか?」
勇者「うっ……あ、はい、なんでご存知で……?」
聖騎士「そうじゃろ? よー似とるわ。ワシはのう、昔王様とお前の親父と一緒にパーティ組んどったんや」
勇者「えっ……そうなんですか!?」
なんとここに伏線があるとは
211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:39:46.52:P/BHfc2D0聖騎士「お前の親父は、『伝説の勇者』て呼ばれとった。
そらあもう、凄い冒険者でな、ほんまに伝説やったんじゃ」
勇者「ほ……本当に? 本当……ですか?」
聖騎士「ああ、人がやりたがらん仕事、割に合わん仕事、進んでやっとった。
勇者のクラスやゆうて馬鹿にされることもあったけど、行動で、仕事で
黙らせよったわ。あいつは、ほんまの意味の『勇者』にふさわしい男じゃ」
勇者「父ちゃんが……そんな、俺、てっきり……勇者って、
無能者の……」
聖騎士「じゃけど……ワシらが魔王の城に乗り込んだ時、戦いの中で
あいつは行方不明になった。パーティーの連中と
必死になって探したけんど、ついに見つからなんだ、すまんな……」
勇者「いえ……父ちゃんは立派に戦ったんだと思います、立派に……」
聖騎士「……じゃけん、俺はお前を見たとき、どっかオルテカに
似とる思うて、連れていったんじゃ。そうか、息子か……。
のう、お前は『伝説』になりとうないんか?」
勇者「えっ、いや、俺はそんな、無理ですよ……」
聖騎士「そうやってあれも無理、これも無理ゆうんか?
お前の親父は、どんな逆境でも乗り越えてきたんじゃ。
お前はその親父の息子じゃろ! 気張らんか!」
勇者「……できるでしょうか、俺に……」
拳闘士「んなもん、やってみなわからへんやろ
爆弾士「そーそー、何事もチャレンジだろー?」
砲撃手「気楽にやればいいんじゃないですかね。気楽に」
神聖術師「贅沢言ってたら何もできないと思うけどぉ」
魔術師「勇者さんなら絶対、絶対やれます!
私、信じてますから!」
勇者「うう……」
聖騎士「どうじゃ、ワシらはみんな歓迎じゃ。
あとはお前次第じゃ。無理には言わん、けどな、ここで踏み出せな
もうチャンスはないかもしれん。それぐらいの覚悟で生きなあかんのじゃ」
勇者「……俺……俺……、やります! 『伝説の勇者』になりたいです!
伝説の……父ちゃんみたいに……ううっ……う……」
聖騎士「そうか、よう言った。それでこそ男じゃ!
よし、今日は勇者の加入を祝って宴会じゃ!」
拳闘士「おーええなあ! がんばろや、勇者!」
爆弾士「よかったよかった、あれが無駄にならなくてよかったなー」
砲撃手「そういえばあれがありましたね」
神聖術師「魔術師ちゃんが預かってたんだっけ、あれ、出したら?」
魔術師「あ、そうですね……! お店のカウンターに預けてます。
勇者さん、実はみんなからプレゼントがあるんですよー?」
勇者「え、プレゼント……?」
魔術師「じゃーん! ミスリル銀の鎧とロングソードです!」
勇者「え、これは、えっ?」
聖騎士「それじゃったら軽いけんお前にも使えるじゃろ」
爆弾士「よかったなあおい、高かったんだぞこれ!」
勇者「え、え、いいんですか、え……あうっ、あうううっ……
ありがとうございます、俺、絶対、絶対みなさんに恩返しを……!」
砲撃手「結局余らなかったんでしたっけ?」
神聖術師「余った分でここのお代。まー足りなかったらリーダーが
出すだろうしいいんじゃない?」
拳闘士「あー奪い返した金なー、あれやっぱパクっといてよかったなー」
勇者「えっ、えっ、あの、え、これ買ったお金って、え……」
パーティのやってることがブラックw
237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:08:21.06:P/BHfc2D0勇者「えっ、えっ、あの、え、これ買ったお金って、え……」
魔術師「しーっ! あまり深くは考えてはいけません」
勇者「あのあの、それやばいんじゃ、バレたら縛り首、あの……」
砲撃手「あ、それとこれ、料理の本と裁縫の本と馬車の本と……
とにかく色々です。毎日勉強してくださいね」
勇者「はい? あの、ななな、こんなに、あの……」
聖騎士「下っ端じゃけん、雑用も色々と覚えてもらわんとの」
魔術師「はぁー、これで雑用減るー! 勇者さん、一緒に頑張りましょ!」
勇者「ちょちょちょ、やっぱり、あの、やめ……」
拳闘士「目出度いのー、祝お祝お!」
爆弾士「ヒャッハー!!」
勇者「えええええええええええええええええ!!」
カーチャン、俺はなんとか冒険者を続けています。
時には……いや、毎日のように辛いことがあるけれど、
父ちゃんみたいになれるように、俺、頑張るよ。
ブラックPTに入ってるんだが、もう俺は泣き言は言わない、俺は伝説の勇者になる。
聖騎士「オラァーー!! 勇者ーーっ!! タラタラしてんなーっ!!」
砲撃手「ちょっとちょっと無理、こっち無理、ちゃんとやって、ちゃんとやれって!」
爆弾士「前衛何やってんだゴルァ!! 死ねやあぁーーっ!!」
拳闘士「アカン指飛んだ! 指飛んだて! 指~~~~っ!!」
神聖術師「ヒール誰!? ヒールもう無理、魔力無理!!」
魔術師「勇者さんファイトっ!! 足折れたぐらい、気合ですっ!」
勇者「うああああああああああああああああああああああああああ!!」
おしまい。
もうちょっと続きが見たかった乙
246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:20:11.36:oYnIwfY2O久しぶりの良作!>>1乙!
249:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:22:30.62:o7CgXly40ここまで終わってよかったと思えるSSも珍しい…乙、面白かった
254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:31:45.57:SCtMJLJ3Oテラいい話www









































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俺の名前ゆうすけでニートなんだが……
がんばれ勇者!
ニート全員に読ませたい良作
働いてる人間も初心に帰るためにも読むべき良作
今はどんどんいなくなっちゃってるけど
よし明日からオレも本気出す