- 25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 02:33:40.76:nqaPMd0FO
餡「…バイキンマンが最近強くなってきた」
餡「銃っていう鉄の塊を撃ち出す機械を使われてすぐに頭がダメになっちゃうんだ」
ジャム「じゃあこちらも銃を使おうか」
餡「銃があるのかい?ジャムおじさん!」
ジャム「まぁ何も言わずについておいで」

【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」

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韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 02:35:50.73:sXbkIO9rO
餡「ここは倉庫じゃないか。ここには銃なんてなかったよね?」
ジャム「ああ、そっちじゃなくてこっちだよ」
餡「こんな所に階段が…ジャムおじさん、ここに銃があるのかい?」
ジャム「まぁ、降りてごらん」
餡「こ、これは…」
ジャム「ピースメイカー、スチェッキン、S&WM500初期ロット」
ジャム「拳銃だけじゃなくライフル…Type89、SG552、L85…は…なかった事にしておいておくれ」
ジャム「機関銃やロケットもあるぞ」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 02:51:32.57:xpRj/BcsO
餡「こんなものが…おじさんはどうしてこんなものを?」
ジャム「細かい事は気にしない方がいいよ、アンパンマン。それがお互いの為だ」
餡「…分かったよジャムおじさん」
ジャム「これらを使えばバイキンマンにもある程度は太刀打ち出来るはずだよ」
ジャム「でも気を付けなさい。バイキンマンの乗り物はアンパンマンやカレーパンマン、食パンマンのような者達の必殺パンチくらい威力のある…そうだな…RPG-7くらいの火器じゃないと倒せないよ」
餡「分かったよジャムおじさん!」
ジャム「それから…銃を使う男の子…いや、男にその話し方は似合わないな…」
ジャム「男らしい話し方をするように心掛けろ!」
餡「うん…いや…分かったぜ、ジャムのおっさん!」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 02:55:20.46:nqaPMd0FO
やり直そう
ここはパン工場
普段は暖かな雰囲気とパンの焼ける香ばしい香りに包まれているこの場所に、普段とは違う物々しい気配と硝煙の匂いが覆い尽くしていた
パン工場の付近にはカビルンルン――バイキンマンの努力によって忠実、かつ理性的になった――がその手に持ったSCARの銃口をパン工場の各出入り口に向けている
バイキンマン「まだ撃つなよ」
そう指示を出すバイキンマンはいつものUFOに乗りながら、コクピットに持ち込んだM60のグリップを撫でた
バイキンマンの口元には下卑た笑みが浮かんでいる
ついにここまで来たのだ
この瞬間のために尽くした労を脳裏に浮かべ、その辛い過去を振り払うように頭を振った
バイキンマン「アンパンマン…お前はこれで終わりだ」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:21:25.98:nqaPMd0FO
そう呟き、手元のスイッチを操作し、マイクをONにする
バイキンマン「パン工場の中に籠もったアンパンマン一味に告ぐ。投降しろ。俺様は殺しをしたいわけじゃあない」
バイキンマン「俺様は俺様の自由なように生きたいだけだ。それを邪魔するお前たちを捕まえこそすれ、殺すことはないと約束しようじゃないか」
バイキンマンの投降を呼びかける声が聞こえるパン工場の中、アンパンマンとカレーパンマンは向かい合い、出来ることを考えていた
バイキンマンがあのような武器…銃と呼ばれる物を持ち出したのは昨日のことだった
いつものようにバイキンマンが悪事を働き、アンパンマンが駆けつけ、バイキンマンから人々を救う
昨日もそんな日常だったはずなのだ
しかし、アンパンマンが現場に駆けつけるやいなや、バイキンマンはカビルンルンを呼び出し、あまつさえあのような銃でアンパンマンを穴だらけにしてしまった
ジャムおじさん達が駆けつけた時にはアンパンマンの頭部は原型を留めぬ程に破壊されていた
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:33:06.79:EoXgRG/f0
しかし、悲劇はそれだけに留まらなかった
その日の未明にはパン工場はバイキンマン達に包囲され、完全に出入りを封じられてしまっていた
餡「こんな事になるなんて…」
カレー(甘口)「チクショウ、避けられない程早く玉を飛ばしてくるなんて…どうすれば…」
長く対策を練り続けていた二人の口から諦めの溜め息が出始めた
餡「いっそ…僕だけが出て行くから君は後から助けてくれないかい?」
甘口「馬鹿言うな!昨日お前はボロボロにされたんだろ!そんな事をする奴らにお前だけでいかせるわけにはいかない!」
餡「でも…」
二人の間に重い沈黙が降りた
ジャム「だったら、こちらも銃を使おう」
そう、後ろから声が聞こえた
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:46:03.33:nqaPMd0FO
二人が振り向くと、いつの間にかジャムおじさんが背後に立っていた
餡「銃っていうのは僕達は持ってないよ…」
アンパンマンの言葉に頷くカレーパンマン
だが、ジャムおじさんは頷かなかった
ジャム「こちらに来なさい」
ジャムおじさんの有無を言わせない雰囲気に、二人は完全に呑まれていた
二人は今まで見たことのないジャムおじさんの威圧感に違和感を覚えながら、ジャムおじさんの向かった先…倉庫に向かい、扉を潜る
だが…
甘口「なんでぇ、あんなこと言うから銃があるのかと思ったら…」
そこにはいつも通り、パンを作るための小麦粉や酵母の入った樽、水などの材料が並べてあるだけだった
だが、倉庫に入ってもジャムおじさんの足は歩を進めていく
アンパンマンは不安げに、カレーパンマンは疑うような目をジャムおじさんに向けながら倉庫の最奥…一際大きな棚の前まで進んだ
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:47:48.33:EoXgRG/f0
ジャムおじさんは棚の前で立ち止まり、棚に手をかける
ジャム「…まさか、この扉を再び開ける時が来るとはな…」
そう言いながら、ジャムおじさんの手が横に動いていく
当然のように掴まれた棚もスライドしていき壁にその姿を隠していった
それと入れ替わるように、棚の後ろから錆び付いた重厚な鉄の扉が三人に姿を見せる
ジャム「今から見せるのは、大昔の遺産だ。危険な、ものだ」
ジャムおじさんはそう言うと、錆び付いた扉の中で唯一錆の浮いていないドアノブを掴み、扉を押し開く
扉の向こうは暗かったが、錆びた扉の軋みが響いて聞こえたところからその広さを想像させるのには容易だった
ジャムおじさんに促され、二人は暗闇に足を踏み入れる
そして、内部の明かりが灯いた時、二人は息を呑む他なかった
そこは、大量の銃器が納められた鉄の世界だった
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 04:16:13.62:nqaPMd0FO
雑菌「……」
バイキンマンは苛立っていた
降伏勧告をしてから一時間以上経つ
だが、パン工場からはなんの反応もなかった
それこそ、物音一つ起たないのだ
この沈黙が彼を苛立たせていた
今までも彼等をここまで、本拠地とも言えるパン工場まで追い詰めた事はないことはないのだ
だがしかし、いつも彼等は考え、仲間の助けを借り、逆転してきた
彼は銃というこの遥か過去の兵器を譲り受けてからカビルンルンを準備し、タイミングを計り、絶対の自信と覚悟を以てここに至ったのだ
失敗はしたくない
雑菌「…RPG-7を構えろ」
カビルンルンに指示を出す
本来ならここまで荒事をするつもりはなかったが、作戦を立てさせ、実行させたくはなかった
雑菌「10…9…8…7…」
RPGを撃ち込み、パン工場を破壊して出て来たアンパンマン達を蜂の巣にする
その時を、徐々に呼ぶ
雑菌「…4……3…2…1…」
瞬間。破裂音が周囲に鳴り響いた
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 04:28:59.03:nqaPMd0FO
雑菌「……」
バイキンマンは悟っていた
やはり、アンパンマン達は俺様に痛い目を見せてくる、と
だから、次の指示もすぐに口から出た
雑菌「倒れたカビルンルンのRPGを拾え!そしてすぐに撃て!」
雑菌「SCARを持っているカビルンルンは窓を撃ちまくれ!爆撃役を狙撃させるな!」
UFOの中から叫び、自身もUFOに取り付けたミニガンをパン工場に撃ち込んでいく
窓が破れ、壁が抉り砕かれていく
だがRPGの爆撃が成功する直前、パン工場のガレージからアンパンマン号が飛び出してきた
雑菌「ガァァァァァクソッ!潰れろぉぉぉぉッ!」
バイキンマンの叫びと共にミニガンの銃口がアンパンマン号を追う
だが、ミニガンの銃口がその身を捉えるよりも早く、爆発するパン工場を背にアンパンマン号は戦場から逃げ出していた…
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 04:30:21.82:m+2FnB3P0
餡「ふぅ…なんとか逃げられたね」
パン工場から離れた位置にある山中…アンパンマン号に迷彩カバーを掛け、4人はキャンプしていた
油脂「逃げ切れてよかったわぁ」
アンパンマン号の中は普段より遥かに狭く、息苦しくなっていた
その原因は…
油脂「でもまたこの子達を使うときが来てしまったのね…」
P90、PK5K、グロック21、ブロウニング、PSG-1…
ありとあらゆる銃器が入るだけアンパンマン号に搬入されている
当然、使用する弾薬も運び込まれている
それによって普段は快適なスペースを持つはずのアンパンマン号の中はまるで整理をされていない倉庫の様相を見せていた
餡「初めて銃を使ったけど結構どうにかなるものだね」
中辛「ハッハッハ!あいつら、こっちが銃を持ってるなんて思ってなかったんだろうな!」
アンパンマンとカレーパンマンは初めての銃を上手く扱えた事にご満悦だ
ジャム「ところで、これからどうしようかなぁ…」
だがジャムおじさんの呼びかけに、またその場が重い空気を思い出した
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:00:37.24:nqaPMd0FO
当然だ
今回のバイキンマンは懲らしめれば済む話ではないのだ
銃とカビルンルン兵による制圧は、たとえ今日倒しても、必ずこの先もずっと行われるはずなのだ
油脂「…」
甘口「…」
発酵乳「クゥーン…」
ジャム「…」
車内に沈黙が降りる
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:15:44.27:nqaPMd0FO
餡「……を…よう」
アンパンマンがその沈黙のなか、ぽつりと呟く
沈黙の中での突然の呟きを、三人は聞き取れなかった
それを察し、アンパンマンはもう一度、声をあげた
餡「バイキンマンの城を攻めよう」
バイキンマンの城に攻め込み、銃を手に入れた経路を調べて、取り上げる
それがアンパンマンの立てた行動の指針だった
中辛「…それしかないか、乗ったぜアンパンマン!」
カレーパンマンが立ち上がり、アンパンマンの手を握る
ジャムおじさんはその様子を見て、バタコさんに視線を送り、頷いた
バタコさんは少しの間俯いていたが、やがて意を決したかのように顔を上げた
その時、
「その作戦、僕も手伝うよ」
アンパンマン号の搬入口が開かれ、中にひとりの青年が入ってきた
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:32:14.23:nqaPMd0FO
リア充「パン工場が焼けたって聞いたんで、長い時間探し回ったよ」
食パンマンは4人に近付くと、顔を見渡した
リア充「ここから先は三人で、かな」
そう言いながら、すぐ横に置いてあったXM-8を掴み上げた
フロントマウントに40mmGLを付けられたそれはずっしりと重いはずだったが、彼はその重さを感じさせない扱いを見せた
ジャム「食パンマン、君は銃を使ったことがあったのかい?」
リア充「…はい、少し前に」
ジャム「そうかい…詳しくは聞かないよ…だが、三人で、とはどういう意味かな?」
ジャムは立ち上がりながら、普段のゆっくりとした口調で訊いた
リア充「僕達は撃たれても頭を変えればなんとかなりますが、アナタはそうではないでしょう?」
食パンマンは変わらず、今度はサイドアームを探し始めた
次の瞬間、打撃音が響いた
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:44:24.56:nqaPMd0FO
リア充「…ッ!?ジャムおじさん…ッ!?」
ジャムおじさんが食パンマンの胸ぐらを掴み、顔面に頭突きをしたのだ
その衝撃に食パンマンはよろめき、壁に背を付けた
ジャム「大丈夫だよ、君達よりも年季があるからね…やられたりはしないさ」
ジャムはそう言うと、自身も銃を選別し始めた
それを横目で見ながら、バタコさんが食パンマンの手を取り立ち上がらせる
油脂「ジャムおじさんったら、あなた達だけで行かせるのは不安なのよ…連れて行ってあげてね」
そうジャムおじさんに聞こえないように言うと、残った三人にヘッドセットを渡す
使い方を手早く教えると、ウィンクを送る
油脂「これで遠くにいてもお互いに話が出来るからね?活用して」
そうして、ついに準備が整ったのだった
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 12:48:40.65:/rRc0wt90
移動は夜の闇に乗じて行われた
アンパンマン号はエンジン音やライトで目立つため、森にバタコさんと共に残してきた
それぞれがそれぞれに特徴的な装備をとり、闇の中を進んでいく
途中、哨戒するカビルンルンに見つかりそうになったがなんとか切り抜け、遂にバイキンマンの城に辿り着いた
辛口「どうにかここまで来れたな」
そう言いながらその手に持ったスチェッキンの安全装置を解除する
スチェッキンはフルオートに対応したハンドガンだ
フルオートで撃つときに必ず頭を悩ませることになる安定性を、専用の木製ホルスターをストックにすることができるという特性を付けることで若干の改善を狙った拳銃だ
ジャム「空を飛んで侵入すれば気付かれて固定銃座に蜂の巣にされるな…」
ジャムおじさんは崖の所々に備え付けられた銃座を双眼鏡で確認すると、溜め息混じりにそう言った
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 13:04:59.85:OgYcm5XNO
それを聞くと、他の三人は谷底を見下ろした
バイキンマンの居城は尖った岩山の頂上に乗ったセンスを疑うような趣味の最悪な丸いバイキンマンの頭部のような建物だと勘違いされがちだが、実際には岩山の内部もバイキンマンの基地として改修されているのだ
アンパンマンはジャムおじさんを抱え、他の二人は先行してクリアリングを行って、谷底の搬入口に向かっていく
しかし、さすがにバイキンマンの本拠地だけはあり、警備が厳重だった
とっさに岩陰に隠れたが、搬入口は歩哨が4人守っていた
さらに、哨戒塔(櫓っぽいあれ)が一つあり、そこにも一人着いていた
リア充「あれじゃあ気付かれずに侵入は出来ないね…」
食パンマンは手に持ったM95を槍のように持ち上げる
M95は対物狙撃銃、M82A1の後継型で、ボルトアクション式の狙撃銃だ
ブルバップ方式と呼ばれるメカニズムや弾倉を後部に設置する事により、銃身長を得ながらコンパクトに設計された近代的なフォルムを持っている
食パンマンは哨戒塔にいるカビルンルンに照準を合わせる
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 13:22:11.99:0IauQYKh0
だが、それだけでは残ったカビルンルンが反応し、抵抗されてジリ貧になるのは目に見えていた
そう、食パンマンだけだったならば…
辛口「よっこいしょっと!」
カレーパンマンはスチェッキンをホルスターに仕舞い込むと、背負ったロケットランチャー…M3カールグスタフを構える
M3カールグスタフは対人、対拠点攻撃用の兵器だ
無反動砲という種類のコレは背後に発射時の爆風が飛び出すので注意が必要な火器で、そのためにカレーパンマンの背後に座っていたアンパンマンはゆっくりとカレーパンマンの横に並ぶように移動した
このカールグスタフならば、搬入口を吹き飛ばし、その付近にいるカビルンルン二人を爆風に巻き込めるだろう
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:03:59.73:nqaPMd0FO
そして、残ったカビルンルンはジャムおじさんがL85エンフィールドに付けられているスコープを覗き込み、狙う
L85エンフィールドは、ある一点を除き、基本的に使いやすいアサルトライフルと言えるだろう
最初から付けられているスコープがデッドウェイトになる場合も多いが、このような場面では安定した射撃能力を見せるものだ
ジャム「Stand by…」
ジャムおじさんがスコープを覗きながらタイミングを計る
カビルンルンの呼吸、歩み…いろんな要素を彼の経験で計り、予測する
ジャム「Stand by…」
食パンマンが息を止める
カレーパンマンは山風が止まるのを感じた
そして…
ジャム「GO、GO、GO、GO!」
ジャムおじさんの号令と同時に、アンパンマンを除く全員が引き金を引いた
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:16:17.83:nqaPMd0FO
食パンマンの放った大口径弾がカビルンルンの胴を砕き、その次の瞬間には搬入口とその付近のカビルンルンを、カールグスタフの無情な爆発が等しく引き裂いた
それに気付き、思わず爆発に目を向けたカビルンルンはジャムおじさんの射撃により胴、胸、首を撃たれ、驚く暇すら与えられずその命を奪われた
この間僅か五秒
だが、いくらこの初撃が手際良く、早かったとしても意味はあまりない
むしろ重要なのはこの後
バイキンマンの城を捜索、制圧するまでが最も重要なのだ
4人はお互いを見ることもなく瓦礫の散らばる搬入口を超えて城の中に入っていった
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:30:56.17:nqaPMd0FO
中辛「じゃああとは手筈通りだな!」
カレーパンマンの言葉に皆が頷く
中辛「俺は工場方面」
リア充「僕は研究室方面」
ジャム「私は居住区…」
餡「僕が最上部…作戦室方面だね!」
道が別れている場所に出たところで各人が顔を見合わせる
ここからはバラバラに行動する事になる
全員がお互いの目を見る
生きてまた会う
そんな決意を交わし、それぞれが向かう道に走っていく
また、皆で日常を生きるために、愛と勇気を胸に走っていった
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:32:11.44:mSYvsx9UO
カレーパンマンは分岐点から廊下を走っていた
しばらく走っているとT字路の向こうから多数のカビルンルンの気配が現れた
カレーパンマン達の侵入に気付いているらしい様子がその慌ただしい足音からも伺えた
だが、カレーパンマンは当然だろうと理解していた
入り口の一つで爆発が起きれば気付かれるのは当たり前だ
カレーパンマンはまたカールグスタフを構え、T字路を見据えた
カレーパンマンが担当した任務は陽動、及び工場区の破壊だ
ならば…
辛口「どんどんカビルンルンを倒して、こっちに注意を向けさせてやるぜ!」
カビルンルンがT字路から顔を覗かせた瞬間、T字路の正面の壁に瑠弾が叩きつけられた
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 00:55:11.31:GxsaXa8XO
カレーパンマンが工場区に足を踏み入れた時、残りの弾薬は心細くなっていた
カールグスタフの弾薬も対戦車瑠弾が2つだけになり、スチェッキンの弾倉も残りは一つ…今使っている分を含めても2つだけになっている
彼は4人の中で唯一多数の手榴弾も持ち込んでいたが、残りは焼夷手榴弾が一つだけだ
だが、後はこの工場区にC4をセットすれば、彼の任務は撤退だけになる
そう思い、C4を仕掛けるために改めてゆっくりと工場内を見渡すと、やはりそこには銃器を造るための設備が大量に詰め込まれていた
中辛「ここで銃を造ってたんならここさえぶっ飛ばせば後は設計図さえなくせば…」
「そうですねぇ…ご主人様に銃は造れなくなるでしょう」
そう呟く彼に、応える声が奥から響く
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 01:08:16.93:GxsaXa8XO
甘口「誰だ?」
カレーパンマンの誰何の声に工場の奥から声が響く
「…そう問うあなたはカレーパンマンでよろしいですか?」
質問に対し質問で返された事に不快感を抱きながら、しかしそれを声色に出すことなくカレーパンマンは、そうだ、と答えた
それを聞いた何者かがゆっくりと機械の陰から姿を見せる
見たことのない姿だった
体の各所にカビルンルンのような印象を受けるが、他のカビルンルンとは圧倒的なまでに違う
まず、その姿はまるでアンパンマン達のように体、手足、頭としっかり分かれているのがわかる
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 01:19:35.37:GxsaXa8XO
「私はご主人様に力と知恵を頂いたカビルンルン…名をアスペルギルスと言います」
そう名乗る姿はカビルンルンの気配こそすれ街の人々と全く遜色ないほど理性的で、人間的だった
甘口「…で?やっぱり邪魔するのかい?」
アスペル「当然でしょう?」
そうアスペルギルスが言った瞬間、工場の各所からカビルンルンが現れ、カレーパンマンに銃口を向けた
甘口「…だろうと思った」
カレーパンマンが目の前のベルトコンベアの陰にしゃがんで隠れた瞬間、今まで頭のあった空間を大量の弾丸が通過していった
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 01:26:34.39:GxsaXa8XO
カレーパンマンはカビルンルンの弱点を理解している
彼等はいくら武装したところで所詮はカビルンルンなのだ
小さく脆く、そして本能に忠実だ
カレーパンマンは少しベルトコンベアに沿って移動すると使い切った弾倉を移動した方向とは真逆に対して強く投げつける
それはベルトコンベアの陰というカビルンルンの死角を通り、工場の壁にぶつかり音を立てた
瞬間、カビルンルンの集団は全員音のした方向に向けて視線と銃口を向ける
それはカレーパンマンに向けて無防備に側面を見せることに気付かずに
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 01:40:41.10:GxsaXa8XO
カレーパンマンが立ち上がり、片手で構えたスチェッキンをリズム良く、三発ずつ目に付いたカビルンルンに撃ち込んでいく
カビルンルン達も流石に三人が倒された時点でカレーパンマンのいる位置を再認識したが、銃口を向けた瞬間には既にカレーパンマンに引き金を引かれている状態だった
三人いたカビルンルン達はスチェッキンの弾倉をまるまる一本消費させて全滅してしまった
カレーパンマンはスチェッキンのリロードを行いながらアスペルギルスの姿を探す
奴が攻撃してくると思って警戒しながらカビルンルン達を攻撃していたのに全く無反応だったことに違和感を覚え、改めて探してみれば彼はその後ろ姿を工場奥の扉に滑り込ませているところだった
激甘(アイツを放っておいたら危ないか…?)
カレーパンマンは彼をリロードを終えるとベルトコンベアを乗り越え、アスペルギルスを追って扉をくぐった
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 02:00:05.28:GxsaXa8XO
しかし、カレーパンマンはその判断を大いに後悔することになった
扉が閉じられた瞬間、その扉に鍵のかかる音がなったのだ
さらに彼の前には、
アスペル「対アンパンマン級戦力戦車『Focus』…逃げ道のないこの試験場で君の正義もお終いです」
カビルンルンの体に無限軌道と戦車砲、機関砲を付けたような威容が立ちはだかった
その姿を確認した瞬間、カレーパンマンは周囲に遮蔽物を探した
ここは確かに試験場なのだろう
大量の的、土嚢、そして即席コンクリートの壁…そういったものがちらほらと見受けられた
カレーパンマンは無言で即席コンクリートの壁に向かって文字通り飛んでいった
その後を追うように機関砲弾が空を穿っていく
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 02:24:21.00:GxsaXa8XO
辛うじて壁に身を隠す事は出来たが、背にしたコンクリート壁が機関砲に削られていく振動にカレーが冷える
この壁もあと数秒も保たないだろう
次の壁の位置を思い出し、一気に壁から身をさらけ出す
だがそれだけではない
戦車に対して彼が持つ唯一の有効武器
カールグスタフがFocusに向けて撃ち込まれた
着弾したかどうかを確認することなく次なる壁に飛翔する
しかし爆発音の直後に響いたのは戦車の爆発する音ではなくアスペルギルスの嗤う声だった
アスペル「フフハハハ…あなた方のパンチにすら耐えられるように設計したこのFocusにそんなチャチな攻撃が徹るわけがないでしょう!?」
爆煙で少し照準が合わせにくくなったのか機関砲が停止する
だが、壁に隠れる直前に見たのは無限軌道を使いコンクリート壁に正面を…つまり戦車砲を向けようとしている威容だった
151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 02:36:40.67:GxsaXa8XO
だがカレーパンマンは慌てなかった
もはや戦車に勝利する手段は無いが、それでも諦めず、むしろ笑みさえ浮かべていた
アスペル「では…さよならです」
戦車砲が火を吹くその直前、カレーパンマンは壁を飛び出し攻撃した
しかし当然その攻撃はFocusには傷一つ付けない
当然だ
対戦車瑠弾ですらダメージにならなかった装甲に対してスチェッキンの拳銃弾も焼夷手榴弾も意味を為すわけがない
ならばそれは
カレーパンマンの口から吐き出されたカレーがダメージになるわけなどなかった
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 02:48:27.28:GxsaXa8XO
アスペル「…そうでした…食パンマンにもアンパンマンにもない攻撃手段として、あなたにはカレーがあったのでしたね」
アスペル「確かに、これでしばらくはFocusの視界は封じられました」
アスペル「それでどうなるというんですか?この堅牢な装甲にあなたは有効打を持たないでし」
だが、彼は自身の拳をためらいなくその装甲に叩きつけた
その強烈な振動にアスペルギルスの弁舌も停止する
だが、とアスペルギルスは違和感を覚えた
殴られたはずなのに、とアスペルギルスはその違和感に気付く
吹き飛ばされる衝撃が無い
当然だ
吹き飛ばされるべき方向には地面があるのだから
すなわち彼は、直上からハッチに打撃を与えている
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 03:01:44.60:GxsaXa8XO
カレーパンマンはFocusの上に乗りながら拳を振るい続けていた
だが、一番装甲の薄いハッチにすらダメージは入っていないように見える
戦車からアスペルギルスの諦めを誘う声が聞こえ続けていたが、それでも、拳から血を流しながら殴り続けた
激辛「今までバイキンマンを何度も殴ってきたけどなぁ…」
血に濡れた拳を止め、
激辛「バイキンマンを憎くて殴ったことなんてなかった!」
一気に試験場の天井付近まで飛び上がった
激辛「俺達は…バイキンマンも、街のみんなも笑っている」
そして…
激辛「そんな日常を続ける為に殴って来たんだよ!」
急降下と同時にハッチに拳を叩きつけた
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 03:04:31.18:GxsaXa8XO
鈍く
拳の砕ける音がした
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 03:06:20.54:GxsaXa8XO
だが
その拳はハッチを貫いた
159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 03:10:58.62:GxsaXa8XO
アスペル「なんですとぉッ!?」
アスペルギルスは驚嘆と共にハッチの方を振り向いた
そこにあった拳は既に抜き取られていたが、確かに貫いた証拠がハッチの中心に外の光を降らせていた
そして、そこから落ちる円筒形のそれは
激辛「だが、てめぇだけは笑わせねぇ」
焼夷手榴弾
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 03:13:30.10:GxsaXa8XO
~カレー編・終~
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 03:25:00.12:I+LrFusYO
食パンマンは階段を下り、地下の研究区画に向かっていた
カレーパンマンが陽動をしてくれているので地下にはあまり戦力が回されてこない
だがそれでも警備を行うカビルンルンはいるので彼等の死角を通りながら目的の資料室に辿り着いた
リア充「どうにかここまで来れたよ…」
そう言いながら後ろ手に扉を閉じ、埃臭い部屋をゆっくりと見渡す
バイキンマンは電子媒体で情報を保管しているが、そのバックアップに紙媒体を使っている
それ故にこの資料室もそれなりの広さと資料の数を、ザッと見ただけの来訪者に教えていた
リア充「……」
一瞬、食パンマンは資料室ごと全て消してしまえばいいのではないかと考えたが、しかし頭を振ってその考えを消した
彼は銃の設計図のみを消しに来たのだ
それ以上を消しては、バイキンマンの『イタズラ程度の発明』まで消してしまう事になる
彼も、もちろん此処にいない他の三人もそれは望んではいない
196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 12:13:15.57:GxsaXa8XO
食パンマンはため息を吐くと、本棚の一つに近付き、ファイルを一つ一つ確認していった
197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 12:15:02.63:GxsaXa8XO
~食パン編・終~
199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 12:45:39.16:EHin6rrlO
ジャム「ちっ…銃がジャムっちまったぜ」
通路でカビルンルン達と遭遇し、小部屋の金属扉を遮蔽物に撃ち合いを始めて一分も経たないうちにジャムおじさんの愛銃…L85エンフィールドの最悪の特徴が現れた
それは部品数の多さと構造的欠陥による故障…弾詰まりだ
エンフィールドは過去幾度か改修を受けているが、それでもこの欠陥は改善されず、弾詰まりを引き起こし続けている
ジャム「だが…私はそう簡単にはやられんぞ」
ジャムおじさんはそう言うと、懐からグレネード――パイナップルと呼ばれたりもする――を取り出し、ピンを抜く
だが、それをすぐには投げず、しばらく待ちそれから投げつけた
投げられたグレネードは曲がり角に向かって飛び、しかし空中で破裂した
その破片と爆発で至近距離にいたカビルンルンは吹き飛び、少し離れていた個体も負傷した
だが、そこにジャムおじさんがいきなり踏み込んできた
グレネードの爆発音を聞いた瞬間に角に向けて飛び込んだのだ
203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 13:43:49.03:GxsaXa8XO
まだ生きていたカビルンルンが必死に銃口を向けるが、ジャムおじさんの蹴りがその手からSCARを蹴り放す方が早かった
さらにジャムおじさんはその最後に生き残ったカビルンルンの後頭部を掴むと、硬質の壁面に思い切り叩きつけた
一度では飽きたらず、二度、三度と叩きつけカビルンルンの体から力が抜けるのを確認してようやく手を離した
ジャム「勝因はグレネードの調理に成功したことだ」
ジャムおじさんは呟くと、廊下をゆっくりと歩いていった
204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 14:38:25.56:GxsaXa8XO
ジャムおじさんが担当した任務は居住区の制圧、及び探索
ジャムおじさんの予測ではバックアップはないとは予測しているが、念のためにバイキンマン達が生活している所も確認しておく程度のものだ
だが
予測とは外れるものである
バイキンマンの部屋の扉を開けた瞬間に突き出されたナイフに鼻先を切り裂かれながらも身を捩り、回避する
同時に三歩を後退り、攻撃してきた相手を見る
「よう!ヒーローが来るかと思ったらまさか老いぼれパン職人が来るとはな!」
体がカビで覆われた巨漢が、手に持ったナイフの先端についたジャムおじさんの血液を舐めていた
ジャム「じゃあ期待を裏切ってしまったお詫びにパンをあげよう…ただし…」
ジャム「パンはパンでもパンチだがな」
バイキンマンの部屋に踏み込んだ
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 15:01:07.83:GxsaXa8XO
ジャムおじさんの拳を左肘で受け、右手のナイフを突き出す巨漢
その動きは熟練の戦士を思わせるほど鮮やかだが、それを見詰めるジャムおじさんは更に熟達していた
ナイフを突き出した腕を絡め取るように掴み、その肘を打撃する
関節に対する打撃に骨が軋み、巨漢は表情を歪ませナイフを手放す
だが巨漢もただやられるだけではなく、自由になっている左手でジャムおじさんの腹部を殴りつけ、拘束が緩んだ右手で顔面を殴り飛ばす
巨漢の太い腕から繰り出された打撃は、ジャムおじさんをバイキンマンの私室奥の扉を押し開け、その奥のキッチンの床に這わせた
ジャム「…ッ!」
ジャムおじさんの口から血の混じった唾液が吐き出され、キッチンの床に浮かせる
年々衰えを感じる四肢に力を込めて立ち上がり、キッチンにまで追ってきた巨漢を睨みつけた
216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 20:21:32.98:bi9l/L170
巨漢「ようパン職人、お前意外にやるな!ヒーローならともかくただの爺がこんだけ強いのは驚いた…名乗ってやろうか?」
巨漢が薄く笑いながらジャムおじさんに問いかける
だが、ジャムおじさんは回りを見渡すだけで返事をしない
まるで巨漢の事など眼中にないかのような仕草だが、彼はそれを見ても動じることなく名乗った
巨漢「俺の名前はフザリウム!バイキンマンに強化されたカビルンルンよ!」
そう巨漢が名乗ったとき、ジャムおじさんはようやくフザリウムの顔を見据え、構えをとった
ジャム「そんな事より、はやく決着をつけないかい?アンパンマン達が待っているといけないからね」
その言葉と同時にフザリウムも構えをとった
230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:40:46.17:GxsaXa8XO
フザリウム「ッ!」
最初の動きはフザリウムが拳を放つ事だった
その巨腕から繰り出される一撃は直撃すれば戦車砲にすら匹敵するだろう
先のジャムおじさんを襲った一撃も、咄嗟に拳とは逆の方向に跳んだから生きているだけだったのだ
だが、ジャムおじさんの目つきが違うことに、そしてそれがどういう意味なのか、フザリウムは気付いていない
ジャム「……」
ジャムおじさんは威圧感のある一撃を踏み込み、姿勢を低くすることで避け、更にはカウンターのアッパー気味の拳をフザリウムの頭部にぶち込んだ
フザリウム「ゴッ…ア…!」
だがフザリウムもよろけはするものの倒れない
二歩を下がり、頭を振って意識を保たせる
そしてジャムおじさんを改めて視界に収めたとき、脳内に疑問符が浮かぶことになった
231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:05:57.31:4MnftaTxO
ジャムおじさんの構えは常に変わっていた
というより、その動きこそが構えなのだろうか?
ジャムおじさんの両手が手刀のように形どられ、それを前後左右…頭の横や胴の前を斬るようなその動きにフザリウムは眩惑されかけ、だが、冷静にその動きの意味を思考した
だが、理解が及ばない
判断材料が足りないのだ
故に、フザリウムは動いた
間合いを調整し、威力よりも素早さを重視したジャブを放つ
その瞬間、ジャムおじさんの手刀が拳に絡み付き、拳が狙いが逸れる
それだけではなく、ジャムおじさんの手刀が拳に変わり、フザリウムの顔面を殴打する
頭部への打撃でフザリウムはよろけるが、だがまたジャブを打ち込む
そのさらなる攻撃すら攻撃すらジャムおじさんの構えは受け流し、反撃する
そう、これは…
フザリウム「カウンター特化か…!」
238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:29:29.84:4MnftaTxO
だが、それがわかったところで彼にはどうにもならない
このカウンターに対して攻撃した所で打ち破れないのは目に見えていた
だが、ジャムおじさんはゆっくりとだが確実に間合いを詰めている
手詰まり
通常ならば逃げる以外にない
だが、彼はここから逃げるつもりはなかった
だから、それを手にとった
フザリウム「しッ!」
中華包丁の鈍い輝きがジャムおじさんに向かって振り下ろされる
だが…フザリウムは失敗していた
240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:45:44.26:4MnftaTxO
包丁を振り下ろすその手首を踏み込みと同時に掴み、捻りながら引き込む
その結果は、
フザリウム(関節だとぉッ!?)
ジャムおじさんの手が倒れたフザリウムの首に絡みつき
フザリウム「強ぇ…」
フザリウムの首をへし折った
ジャム「昔こういう言葉がを言ったコックがいる」
ジャム「キッチンでは負けたことがないんだ」
241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:47:04.00:XV5LpZ1F0
ジャム「さて、それじゃあこの部屋を調べないとね」
なぜなら、
ジャム「留守番を残しているんだから、大事な何かがあるんだろうからね」
そう言うと、バイキンマンの部屋に戻り、散らかり放題のその惨状に先ほどのフザリウムとの戦いの方が楽だった、と胸の内で溜め息をついた
245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:54:14.07:4MnftaTxO
~沈黙のジャム編・終~
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:52:20.82:DNsiO7nU0
エレベーターの中でアンパンマンが腰のホルスターから拳銃を抜き放ち、銃身をスライドさせ弾丸が装填されていることを確認する
その手に握られた拳銃はMP-443
装弾数は合計で17発
扱いやすい事が特徴のセミオートマチックハンドガンだ
アンパンマンの任務はたった一つ
バイキンマンを反省させる、ただそれだけだ
本当なら作戦司令室でもある最上階のデータベースにも銃器の設計図はあるだろうが、アンパンマンはそれを消すことは目的にしていない
彼の目的は『平和を守り、取り戻す事』
それだけを胸に、ここに立っている
エレベーターが電子音で目的地に到着したことを知らせる
アンパンマンは無言でエレベーターの扉に狙いを定め
扉が開かれると同時に引き金を引いた
266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 02:26:58.91:4MnftaTxO
エレベーターから飛び出た9mmパラベラム弾は空間を引き裂きながら、作戦司令室の中央で仁王立ちする黒い人影に向かっていく
だが、それは結局人影まで届くことはなかった
なぜならば、正面から飛来した同じ9mmパラベラム弾とぶつかり、それぞれがあさっての方向に弾かれたからだ
アンパンマンが撃たなければ人影が穿たれ、人影が撃たなければアンパンマンが穿たれていたであろうことは想像に難くない
だがそれは起こらなかった
それは、奇跡でもなんでもなく、お互いがお互いを理解しているが故の必然だった
人影は右手に持ったグロック17を弄びながら、招かれざる、しかし待ちわびた客に歓迎の言葉を掛けた
菌「やぁ、アンパンマン。俺様の城へようこそ」
268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 02:41:40.60:4MnftaTxO
アンパンマンもバイキンマンに向けていた銃口を下ろすと部屋に入り、バイキンマンから8mほどの距離まで近づいた
常のにこやかな笑顔でバイキンマンに挨拶を返す
餡「やぁ、バイキンマン。君を止めに来たよ」
バイキンマンは歯を噛み締め、そして、口を開いた
菌「俺様は、いつも悪役だった」
思えば、バイキンマンとて悪意はなかったのだ
ただの好奇心や悪戯心、興味から人々に接触し、結果として平和を乱してしまっていただけなのだ
街の学校の運動会に興味を持ち、だが自身が参加する資格を持たないためにせめてと悪戯心から雨を降らせ、成敗される
旅人を見かけ、ちょっとした好奇心から接触し、スキンシップ的に悪戯を行い、嫌われ、成敗される
彼の日常とは、決して人々と優しい交わりを得ない、冷たいものだったのだ
だから、欲した
自身と街の人々との関係を確定させる方法を
せめて、街の人々に、自分を、どんな形であれ、認めさせる術を
だから、
菌「アンパンマン、正義の味方という壁を、今日こそ乗り越えてやる」
笑って銃口を向けた
269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 02:51:57.90:4MnftaTxO
アンパンマンはバイキンマンの薄い笑顔の裏にどんな気持ちが隠れているのかを、なんとなくは理解していた
だが、
餡「僕は、生まれた時から正義の味方だった」
そう、悪のバイキンマンに対する最大のカウンターにして、人々の平和の象徴
それが悪意のあるなしに関わらず、それが悲鳴を生むのなら無力化する
それが正義の味方である彼の役目なのだ
だから、
たとえ、悪の中の、切なる願いであろうとも、守るべき者のために、立ち向かうのだ
痛みと共に
だから、
餡「バイキンマン、僕の日常には、君の悪戯だって含まれているんだ」
彼は、取り返しがつく今の内に、ライバルに銃を向けた
271:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:08:40.98:4MnftaTxO
二つの銃口から弾丸が吐き出された瞬間、二人はお互いの右側にステップする
その機敏な動きにアンパンマンは驚く
餡「速いッ!?」
アンパンマンの身体能力と互角の動きをバイキンマンがしているのだ
バイキンマンと長く戦い続けているアンパンマンには、この状況の心当たりが一つだけあった
餡「カードかい?」
努めて冷静に問うと、特徴的な笑い方で答えが返ってきた
菌「ハッヒフッヘホー!」
それだけを確認し、またお互いに射撃と回避、時にはコンソールや机で防御も交えていく
熱い弾丸がアンパンマンの肩を削った
応じるように、バイキンマンの顔を銃弾が掠めていく
お互いの体を硝煙に晒しながら、踊るように応酬していく
お互いに16回目の銃声を響かせたあと、立ち止まる
272:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:17:09.84:4MnftaTxO
菌「グロック17の装弾数は17発…MP-443も17発だ」
菌「これで決着をつけよう、アンパンマン!」
餡「…」
アンパンマンは答えず、銃口を向ける事で応えた
バイキンマンは溜め息をつき、笑みを浮かべる
菌「さよなら、と言うよ」
餡「また明日、と言うよ」
重なった銃声が、作戦司令室の空気を震わせた
273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:23:03.91:4MnftaTxO
銃弾は、どちらの体も傷つけなかった
最初の一発同様、二つの銃弾がぶつかったのだ
だが
菌「…ッ!」
バイキンマンは勝利を確信し、もう一度引き金を引いた
グロックから吐き出された、18発目の弾丸
それはアンパンマンの頭部を
撃ち抜かず、MP-443から吐き出された18発目の弾丸に撃ち落とされた
275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:30:54.85:4MnftaTxO
菌「…バ…カなぁ…ッ!?」
バイキンマンの呻きが広い作戦司令室の空気に溶けていく
必殺を期待した弾丸は、アンパンマンに撃ち落とされた
タクティカルリロード、というものがある
本来、弾倉には17発までしか入らなくても、
『最初から銃身に弾丸を装填しておけば、弾倉の17発と銃身の1発で18発の弾丸が放てる』という技術だ
バイキンマンはそれを行い、銃の知識の少ないはずと侮ったアンパンマンのタクティカルリロードにより、必殺のタイミングを失ったのだ
277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:39:08.47:4MnftaTxO
菌「バカな…アンパンマン…お前は、俺様のぉ…ッ!」
バイキンマンは駆けた
負けるわけにはいかなかった
これで人々と、たとえ最悪であろうと関係が確立されたはずだったのだ
それを望み、もはや徒手空拳でヒーローに挑む
餡「アン…」
そして、
餡「パンチッ!!」
その顔面にもはや慣れた感触の拳がめり込んだ
たとえカードで身体能力が強化されていようとも、彼の拳の前に立っていられる者などいない
菌「バァ…い…バイ……キ…」
背中に司令室の壁に叩き付けられる感触を得ながら、彼の視界は暗く閉ざされた
279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:45:57.24:4MnftaTxO
~数日後、街~
河馬「バイキンマンだぁぁぁぁぁぁ」
兎「私のアイスがーーーッ!」
子ども達の悲鳴が突き抜けるような空に響く
今日もバイキンマンの悪戯は悲鳴を生んでいるようだ
だが、街にも、森にも、あの日のような硝煙の香りは漂っていない
さぁ、今日もバイキンマンの悪戯を諫めに行こう
カレーパンマンや食パンマンも一緒に
バタコさんとジャムおじさんはもう新しい顔を焼き始めている
さぁ!正義の味方の出撃だ!
fin
281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 03:48:34.26:sN6LAnMeO
ジャム「これがワシのマグナムじゃ」
アンパンマン「すごい…そそり立ってる!!」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 02:44:18.60:nqaPMd0FOアンパンマン「すごい…そそり立ってる!!」
餡「ここは倉庫じゃないか。ここには銃なんてなかったよね?」
ジャム「ああ、そっちじゃなくてこっちだよ」
餡「こんな所に階段が…ジャムおじさん、ここに銃があるのかい?」
ジャム「まぁ、降りてごらん」
餡「こ、これは…」
ジャム「ピースメイカー、スチェッキン、S&WM500初期ロット」
ジャム「拳銃だけじゃなくライフル…Type89、SG552、L85…は…なかった事にしておいておくれ」
ジャム「機関銃やロケットもあるぞ」
なんか凄いの来たな
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 02:53:34.28:nqaPMd0FO餡「こんなものが…おじさんはどうしてこんなものを?」
ジャム「細かい事は気にしない方がいいよ、アンパンマン。それがお互いの為だ」
餡「…分かったよジャムおじさん」
ジャム「これらを使えばバイキンマンにもある程度は太刀打ち出来るはずだよ」
ジャム「でも気を付けなさい。バイキンマンの乗り物はアンパンマンやカレーパンマン、食パンマンのような者達の必殺パンチくらい威力のある…そうだな…RPG-7くらいの火器じゃないと倒せないよ」
餡「分かったよジャムおじさん!」
ジャム「それから…銃を使う男の子…いや、男にその話し方は似合わないな…」
ジャム「男らしい話し方をするように心掛けろ!」
餡「うん…いや…分かったぜ、ジャムのおっさん!」
なんか普段の文体と違うから吐き気がしてきた上になんかアンパンマンじゃなくなりそうで厭になった
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:10:56.06:nqaPMd0FOやり直そう
ここはパン工場
普段は暖かな雰囲気とパンの焼ける香ばしい香りに包まれているこの場所に、普段とは違う物々しい気配と硝煙の匂いが覆い尽くしていた
パン工場の付近にはカビルンルン――バイキンマンの努力によって忠実、かつ理性的になった――がその手に持ったSCARの銃口をパン工場の各出入り口に向けている
バイキンマン「まだ撃つなよ」
そう指示を出すバイキンマンはいつものUFOに乗りながら、コクピットに持ち込んだM60のグリップを撫でた
バイキンマンの口元には下卑た笑みが浮かんでいる
ついにここまで来たのだ
この瞬間のために尽くした労を脳裏に浮かべ、その辛い過去を振り払うように頭を振った
バイキンマン「アンパンマン…お前はこれで終わりだ」
そう呟き、手元のスイッチを操作し、マイクをONにする
バイキンマン「パン工場の中に籠もったアンパンマン一味に告ぐ。投降しろ。俺様は殺しをしたいわけじゃあない」
バイキンマン「俺様は俺様の自由なように生きたいだけだ。それを邪魔するお前たちを捕まえこそすれ、殺すことはないと約束しようじゃないか」
バイキンマンの投降を呼びかける声が聞こえるパン工場の中、アンパンマンとカレーパンマンは向かい合い、出来ることを考えていた
バイキンマンがあのような武器…銃と呼ばれる物を持ち出したのは昨日のことだった
いつものようにバイキンマンが悪事を働き、アンパンマンが駆けつけ、バイキンマンから人々を救う
昨日もそんな日常だったはずなのだ
しかし、アンパンマンが現場に駆けつけるやいなや、バイキンマンはカビルンルンを呼び出し、あまつさえあのような銃でアンパンマンを穴だらけにしてしまった
ジャムおじさん達が駆けつけた時にはアンパンマンの頭部は原型を留めぬ程に破壊されていた
よく訓練されたかびるんるんwwww
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:33:28.79:nqaPMd0FOしかし、悲劇はそれだけに留まらなかった
その日の未明にはパン工場はバイキンマン達に包囲され、完全に出入りを封じられてしまっていた
餡「こんな事になるなんて…」
カレー(甘口)「チクショウ、避けられない程早く玉を飛ばしてくるなんて…どうすれば…」
長く対策を練り続けていた二人の口から諦めの溜め息が出始めた
餡「いっそ…僕だけが出て行くから君は後から助けてくれないかい?」
甘口「馬鹿言うな!昨日お前はボロボロにされたんだろ!そんな事をする奴らにお前だけでいかせるわけにはいかない!」
餡「でも…」
二人の間に重い沈黙が降りた
ジャム「だったら、こちらも銃を使おう」
そう、後ろから声が聞こえた
二人が振り向くと、いつの間にかジャムおじさんが背後に立っていた
餡「銃っていうのは僕達は持ってないよ…」
アンパンマンの言葉に頷くカレーパンマン
だが、ジャムおじさんは頷かなかった
ジャム「こちらに来なさい」
ジャムおじさんの有無を言わせない雰囲気に、二人は完全に呑まれていた
二人は今まで見たことのないジャムおじさんの威圧感に違和感を覚えながら、ジャムおじさんの向かった先…倉庫に向かい、扉を潜る
だが…
甘口「なんでぇ、あんなこと言うから銃があるのかと思ったら…」
そこにはいつも通り、パンを作るための小麦粉や酵母の入った樽、水などの材料が並べてあるだけだった
だが、倉庫に入ってもジャムおじさんの足は歩を進めていく
アンパンマンは不安げに、カレーパンマンは疑うような目をジャムおじさんに向けながら倉庫の最奥…一際大きな棚の前まで進んだ
甘口wwww
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 03:58:53.26:nqaPMd0FOジャムおじさんは棚の前で立ち止まり、棚に手をかける
ジャム「…まさか、この扉を再び開ける時が来るとはな…」
そう言いながら、ジャムおじさんの手が横に動いていく
当然のように掴まれた棚もスライドしていき壁にその姿を隠していった
それと入れ替わるように、棚の後ろから錆び付いた重厚な鉄の扉が三人に姿を見せる
ジャム「今から見せるのは、大昔の遺産だ。危険な、ものだ」
ジャムおじさんはそう言うと、錆び付いた扉の中で唯一錆の浮いていないドアノブを掴み、扉を押し開く
扉の向こうは暗かったが、錆びた扉の軋みが響いて聞こえたところからその広さを想像させるのには容易だった
ジャムおじさんに促され、二人は暗闇に足を踏み入れる
そして、内部の明かりが灯いた時、二人は息を呑む他なかった
そこは、大量の銃器が納められた鉄の世界だった
雑菌「……」
バイキンマンは苛立っていた
降伏勧告をしてから一時間以上経つ
だが、パン工場からはなんの反応もなかった
それこそ、物音一つ起たないのだ
この沈黙が彼を苛立たせていた
今までも彼等をここまで、本拠地とも言えるパン工場まで追い詰めた事はないことはないのだ
だがしかし、いつも彼等は考え、仲間の助けを借り、逆転してきた
彼は銃というこの遥か過去の兵器を譲り受けてからカビルンルンを準備し、タイミングを計り、絶対の自信と覚悟を以てここに至ったのだ
失敗はしたくない
雑菌「…RPG-7を構えろ」
カビルンルンに指示を出す
本来ならここまで荒事をするつもりはなかったが、作戦を立てさせ、実行させたくはなかった
雑菌「10…9…8…7…」
RPGを撃ち込み、パン工場を破壊して出て来たアンパンマン達を蜂の巣にする
その時を、徐々に呼ぶ
雑菌「…4……3…2…1…」
瞬間。破裂音が周囲に鳴り響いた
雑菌「……」
バイキンマンは悟っていた
やはり、アンパンマン達は俺様に痛い目を見せてくる、と
だから、次の指示もすぐに口から出た
雑菌「倒れたカビルンルンのRPGを拾え!そしてすぐに撃て!」
雑菌「SCARを持っているカビルンルンは窓を撃ちまくれ!爆撃役を狙撃させるな!」
UFOの中から叫び、自身もUFOに取り付けたミニガンをパン工場に撃ち込んでいく
窓が破れ、壁が抉り砕かれていく
だがRPGの爆撃が成功する直前、パン工場のガレージからアンパンマン号が飛び出してきた
雑菌「ガァァァァァクソッ!潰れろぉぉぉぉッ!」
バイキンマンの叫びと共にミニガンの銃口がアンパンマン号を追う
だが、ミニガンの銃口がその身を捉えるよりも早く、爆発するパン工場を背にアンパンマン号は戦場から逃げ出していた…
なんだこの洋画は
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 11:55:08.30:nqaPMd0FO餡「ふぅ…なんとか逃げられたね」
パン工場から離れた位置にある山中…アンパンマン号に迷彩カバーを掛け、4人はキャンプしていた
油脂「逃げ切れてよかったわぁ」
アンパンマン号の中は普段より遥かに狭く、息苦しくなっていた
その原因は…
油脂「でもまたこの子達を使うときが来てしまったのね…」
P90、PK5K、グロック21、ブロウニング、PSG-1…
ありとあらゆる銃器が入るだけアンパンマン号に搬入されている
当然、使用する弾薬も運び込まれている
それによって普段は快適なスペースを持つはずのアンパンマン号の中はまるで整理をされていない倉庫の様相を見せていた
餡「初めて銃を使ったけど結構どうにかなるものだね」
中辛「ハッハッハ!あいつら、こっちが銃を持ってるなんて思ってなかったんだろうな!」
アンパンマンとカレーパンマンは初めての銃を上手く扱えた事にご満悦だ
ジャム「ところで、これからどうしようかなぁ…」
だがジャムおじさんの呼びかけに、またその場が重い空気を思い出した
当然だ
今回のバイキンマンは懲らしめれば済む話ではないのだ
銃とカビルンルン兵による制圧は、たとえ今日倒しても、必ずこの先もずっと行われるはずなのだ
油脂「…」
甘口「…」
発酵乳「クゥーン…」
ジャム「…」
車内に沈黙が降りる
餡「……を…よう」
アンパンマンがその沈黙のなか、ぽつりと呟く
沈黙の中での突然の呟きを、三人は聞き取れなかった
それを察し、アンパンマンはもう一度、声をあげた
餡「バイキンマンの城を攻めよう」
バイキンマンの城に攻め込み、銃を手に入れた経路を調べて、取り上げる
それがアンパンマンの立てた行動の指針だった
中辛「…それしかないか、乗ったぜアンパンマン!」
カレーパンマンが立ち上がり、アンパンマンの手を握る
ジャムおじさんはその様子を見て、バタコさんに視線を送り、頷いた
バタコさんは少しの間俯いていたが、やがて意を決したかのように顔を上げた
その時、
「その作戦、僕も手伝うよ」
アンパンマン号の搬入口が開かれ、中にひとりの青年が入ってきた
リア充「パン工場が焼けたって聞いたんで、長い時間探し回ったよ」
食パンマンは4人に近付くと、顔を見渡した
リア充「ここから先は三人で、かな」
そう言いながら、すぐ横に置いてあったXM-8を掴み上げた
フロントマウントに40mmGLを付けられたそれはずっしりと重いはずだったが、彼はその重さを感じさせない扱いを見せた
ジャム「食パンマン、君は銃を使ったことがあったのかい?」
リア充「…はい、少し前に」
ジャム「そうかい…詳しくは聞かないよ…だが、三人で、とはどういう意味かな?」
ジャムは立ち上がりながら、普段のゆっくりとした口調で訊いた
リア充「僕達は撃たれても頭を変えればなんとかなりますが、アナタはそうではないでしょう?」
食パンマンは変わらず、今度はサイドアームを探し始めた
次の瞬間、打撃音が響いた
リア充「…ッ!?ジャムおじさん…ッ!?」
ジャムおじさんが食パンマンの胸ぐらを掴み、顔面に頭突きをしたのだ
その衝撃に食パンマンはよろめき、壁に背を付けた
ジャム「大丈夫だよ、君達よりも年季があるからね…やられたりはしないさ」
ジャムはそう言うと、自身も銃を選別し始めた
それを横目で見ながら、バタコさんが食パンマンの手を取り立ち上がらせる
油脂「ジャムおじさんったら、あなた達だけで行かせるのは不安なのよ…連れて行ってあげてね」
そうジャムおじさんに聞こえないように言うと、残った三人にヘッドセットを渡す
使い方を手早く教えると、ウィンクを送る
油脂「これで遠くにいてもお互いに話が出来るからね?活用して」
そうして、ついに準備が整ったのだった
老兵って言葉にときめいちゃう
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 13:01:50.98:nqaPMd0FO移動は夜の闇に乗じて行われた
アンパンマン号はエンジン音やライトで目立つため、森にバタコさんと共に残してきた
それぞれがそれぞれに特徴的な装備をとり、闇の中を進んでいく
途中、哨戒するカビルンルンに見つかりそうになったがなんとか切り抜け、遂にバイキンマンの城に辿り着いた
辛口「どうにかここまで来れたな」
そう言いながらその手に持ったスチェッキンの安全装置を解除する
スチェッキンはフルオートに対応したハンドガンだ
フルオートで撃つときに必ず頭を悩ませることになる安定性を、専用の木製ホルスターをストックにすることができるという特性を付けることで若干の改善を狙った拳銃だ
ジャム「空を飛んで侵入すれば気付かれて固定銃座に蜂の巣にされるな…」
ジャムおじさんは崖の所々に備え付けられた銃座を双眼鏡で確認すると、溜め息混じりにそう言った
なんでカレーパンマンの辛さ変わってんのwww
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 13:20:37.36:nqaPMd0FOそれを聞くと、他の三人は谷底を見下ろした
バイキンマンの居城は尖った岩山の頂上に乗ったセンスを疑うような趣味の最悪な丸いバイキンマンの頭部のような建物だと勘違いされがちだが、実際には岩山の内部もバイキンマンの基地として改修されているのだ
アンパンマンはジャムおじさんを抱え、他の二人は先行してクリアリングを行って、谷底の搬入口に向かっていく
しかし、さすがにバイキンマンの本拠地だけはあり、警備が厳重だった
とっさに岩陰に隠れたが、搬入口は歩哨が4人守っていた
さらに、哨戒塔(櫓っぽいあれ)が一つあり、そこにも一人着いていた
リア充「あれじゃあ気付かれずに侵入は出来ないね…」
食パンマンは手に持ったM95を槍のように持ち上げる
M95は対物狙撃銃、M82A1の後継型で、ボルトアクション式の狙撃銃だ
ブルバップ方式と呼ばれるメカニズムや弾倉を後部に設置する事により、銃身長を得ながらコンパクトに設計された近代的なフォルムを持っている
食パンマンは哨戒塔にいるカビルンルンに照準を合わせる
カビルンルンに.50とか消し飛んじゃう><
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 14:49:28.83:nqaPMd0FOだが、それだけでは残ったカビルンルンが反応し、抵抗されてジリ貧になるのは目に見えていた
そう、食パンマンだけだったならば…
辛口「よっこいしょっと!」
カレーパンマンはスチェッキンをホルスターに仕舞い込むと、背負ったロケットランチャー…M3カールグスタフを構える
M3カールグスタフは対人、対拠点攻撃用の兵器だ
無反動砲という種類のコレは背後に発射時の爆風が飛び出すので注意が必要な火器で、そのためにカレーパンマンの背後に座っていたアンパンマンはゆっくりとカレーパンマンの横に並ぶように移動した
このカールグスタフならば、搬入口を吹き飛ばし、その付近にいるカビルンルン二人を爆風に巻き込めるだろう
そして、残ったカビルンルンはジャムおじさんがL85エンフィールドに付けられているスコープを覗き込み、狙う
L85エンフィールドは、ある一点を除き、基本的に使いやすいアサルトライフルと言えるだろう
最初から付けられているスコープがデッドウェイトになる場合も多いが、このような場面では安定した射撃能力を見せるものだ
ジャム「Stand by…」
ジャムおじさんがスコープを覗きながらタイミングを計る
カビルンルンの呼吸、歩み…いろんな要素を彼の経験で計り、予測する
ジャム「Stand by…」
食パンマンが息を止める
カレーパンマンは山風が止まるのを感じた
そして…
ジャム「GO、GO、GO、GO!」
ジャムおじさんの号令と同時に、アンパンマンを除く全員が引き金を引いた
食パンマンの放った大口径弾がカビルンルンの胴を砕き、その次の瞬間には搬入口とその付近のカビルンルンを、カールグスタフの無情な爆発が等しく引き裂いた
それに気付き、思わず爆発に目を向けたカビルンルンはジャムおじさんの射撃により胴、胸、首を撃たれ、驚く暇すら与えられずその命を奪われた
この間僅か五秒
だが、いくらこの初撃が手際良く、早かったとしても意味はあまりない
むしろ重要なのはこの後
バイキンマンの城を捜索、制圧するまでが最も重要なのだ
4人はお互いを見ることもなく瓦礫の散らばる搬入口を超えて城の中に入っていった
中辛「じゃああとは手筈通りだな!」
カレーパンマンの言葉に皆が頷く
中辛「俺は工場方面」
リア充「僕は研究室方面」
ジャム「私は居住区…」
餡「僕が最上部…作戦室方面だね!」
道が別れている場所に出たところで各人が顔を見合わせる
ここからはバラバラに行動する事になる
全員がお互いの目を見る
生きてまた会う
そんな決意を交わし、それぞれが向かう道に走っていく
また、皆で日常を生きるために、愛と勇気を胸に走っていった
なぜL85……
どうせならM14の方が……
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:37:08.29:0IauQYKh0どうせならM14の方が……
>>103
スレタイをよく見るんだ
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/16(火) 15:48:45.13:mSYvsx9UOスレタイをよく見るんだ
>>105
そういうことか
笑っちまったじゃねーか
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 00:40:28.23:GxsaXa8XOそういうことか
笑っちまったじゃねーか
カレーパンマンは分岐点から廊下を走っていた
しばらく走っているとT字路の向こうから多数のカビルンルンの気配が現れた
カレーパンマン達の侵入に気付いているらしい様子がその慌ただしい足音からも伺えた
だが、カレーパンマンは当然だろうと理解していた
入り口の一つで爆発が起きれば気付かれるのは当たり前だ
カレーパンマンはまたカールグスタフを構え、T字路を見据えた
カレーパンマンが担当した任務は陽動、及び工場区の破壊だ
ならば…
辛口「どんどんカビルンルンを倒して、こっちに注意を向けさせてやるぜ!」
カビルンルンがT字路から顔を覗かせた瞬間、T字路の正面の壁に瑠弾が叩きつけられた
カレーパンマンが工場区に足を踏み入れた時、残りの弾薬は心細くなっていた
カールグスタフの弾薬も対戦車瑠弾が2つだけになり、スチェッキンの弾倉も残りは一つ…今使っている分を含めても2つだけになっている
彼は4人の中で唯一多数の手榴弾も持ち込んでいたが、残りは焼夷手榴弾が一つだけだ
だが、後はこの工場区にC4をセットすれば、彼の任務は撤退だけになる
そう思い、C4を仕掛けるために改めてゆっくりと工場内を見渡すと、やはりそこには銃器を造るための設備が大量に詰め込まれていた
中辛「ここで銃を造ってたんならここさえぶっ飛ばせば後は設計図さえなくせば…」
「そうですねぇ…ご主人様に銃は造れなくなるでしょう」
そう呟く彼に、応える声が奥から響く
甘口「誰だ?」
カレーパンマンの誰何の声に工場の奥から声が響く
「…そう問うあなたはカレーパンマンでよろしいですか?」
質問に対し質問で返された事に不快感を抱きながら、しかしそれを声色に出すことなくカレーパンマンは、そうだ、と答えた
それを聞いた何者かがゆっくりと機械の陰から姿を見せる
見たことのない姿だった
体の各所にカビルンルンのような印象を受けるが、他のカビルンルンとは圧倒的なまでに違う
まず、その姿はまるでアンパンマン達のように体、手足、頭としっかり分かれているのがわかる
「私はご主人様に力と知恵を頂いたカビルンルン…名をアスペルギルスと言います」
そう名乗る姿はカビルンルンの気配こそすれ街の人々と全く遜色ないほど理性的で、人間的だった
甘口「…で?やっぱり邪魔するのかい?」
アスペル「当然でしょう?」
そうアスペルギルスが言った瞬間、工場の各所からカビルンルンが現れ、カレーパンマンに銃口を向けた
甘口「…だろうと思った」
カレーパンマンが目の前のベルトコンベアの陰にしゃがんで隠れた瞬間、今まで頭のあった空間を大量の弾丸が通過していった
カレーパンマンはカビルンルンの弱点を理解している
彼等はいくら武装したところで所詮はカビルンルンなのだ
小さく脆く、そして本能に忠実だ
カレーパンマンは少しベルトコンベアに沿って移動すると使い切った弾倉を移動した方向とは真逆に対して強く投げつける
それはベルトコンベアの陰というカビルンルンの死角を通り、工場の壁にぶつかり音を立てた
瞬間、カビルンルンの集団は全員音のした方向に向けて視線と銃口を向ける
それはカレーパンマンに向けて無防備に側面を見せることに気付かずに
カレーパンマンが立ち上がり、片手で構えたスチェッキンをリズム良く、三発ずつ目に付いたカビルンルンに撃ち込んでいく
カビルンルン達も流石に三人が倒された時点でカレーパンマンのいる位置を再認識したが、銃口を向けた瞬間には既にカレーパンマンに引き金を引かれている状態だった
三人いたカビルンルン達はスチェッキンの弾倉をまるまる一本消費させて全滅してしまった
カレーパンマンはスチェッキンのリロードを行いながらアスペルギルスの姿を探す
奴が攻撃してくると思って警戒しながらカビルンルン達を攻撃していたのに全く無反応だったことに違和感を覚え、改めて探してみれば彼はその後ろ姿を工場奥の扉に滑り込ませているところだった
激甘(アイツを放っておいたら危ないか…?)
カレーパンマンは彼をリロードを終えるとベルトコンベアを乗り越え、アスペルギルスを追って扉をくぐった
しかし、カレーパンマンはその判断を大いに後悔することになった
扉が閉じられた瞬間、その扉に鍵のかかる音がなったのだ
さらに彼の前には、
アスペル「対アンパンマン級戦力戦車『Focus』…逃げ道のないこの試験場で君の正義もお終いです」
カビルンルンの体に無限軌道と戦車砲、機関砲を付けたような威容が立ちはだかった
その姿を確認した瞬間、カレーパンマンは周囲に遮蔽物を探した
ここは確かに試験場なのだろう
大量の的、土嚢、そして即席コンクリートの壁…そういったものがちらほらと見受けられた
カレーパンマンは無言で即席コンクリートの壁に向かって文字通り飛んでいった
その後を追うように機関砲弾が空を穿っていく
辛うじて壁に身を隠す事は出来たが、背にしたコンクリート壁が機関砲に削られていく振動にカレーが冷える
この壁もあと数秒も保たないだろう
次の壁の位置を思い出し、一気に壁から身をさらけ出す
だがそれだけではない
戦車に対して彼が持つ唯一の有効武器
カールグスタフがFocusに向けて撃ち込まれた
着弾したかどうかを確認することなく次なる壁に飛翔する
しかし爆発音の直後に響いたのは戦車の爆発する音ではなくアスペルギルスの嗤う声だった
アスペル「フフハハハ…あなた方のパンチにすら耐えられるように設計したこのFocusにそんなチャチな攻撃が徹るわけがないでしょう!?」
爆煙で少し照準が合わせにくくなったのか機関砲が停止する
だが、壁に隠れる直前に見たのは無限軌道を使いコンクリート壁に正面を…つまり戦車砲を向けようとしている威容だった
だがカレーパンマンは慌てなかった
もはや戦車に勝利する手段は無いが、それでも諦めず、むしろ笑みさえ浮かべていた
アスペル「では…さよならです」
戦車砲が火を吹くその直前、カレーパンマンは壁を飛び出し攻撃した
しかし当然その攻撃はFocusには傷一つ付けない
当然だ
対戦車瑠弾ですらダメージにならなかった装甲に対してスチェッキンの拳銃弾も焼夷手榴弾も意味を為すわけがない
ならばそれは
カレーパンマンの口から吐き出されたカレーがダメージになるわけなどなかった
アスペル「…そうでした…食パンマンにもアンパンマンにもない攻撃手段として、あなたにはカレーがあったのでしたね」
アスペル「確かに、これでしばらくはFocusの視界は封じられました」
アスペル「それでどうなるというんですか?この堅牢な装甲にあなたは有効打を持たないでし」
だが、彼は自身の拳をためらいなくその装甲に叩きつけた
その強烈な振動にアスペルギルスの弁舌も停止する
だが、とアスペルギルスは違和感を覚えた
殴られたはずなのに、とアスペルギルスはその違和感に気付く
吹き飛ばされる衝撃が無い
当然だ
吹き飛ばされるべき方向には地面があるのだから
すなわち彼は、直上からハッチに打撃を与えている
カレーパンマンはFocusの上に乗りながら拳を振るい続けていた
だが、一番装甲の薄いハッチにすらダメージは入っていないように見える
戦車からアスペルギルスの諦めを誘う声が聞こえ続けていたが、それでも、拳から血を流しながら殴り続けた
激辛「今までバイキンマンを何度も殴ってきたけどなぁ…」
血に濡れた拳を止め、
激辛「バイキンマンを憎くて殴ったことなんてなかった!」
一気に試験場の天井付近まで飛び上がった
激辛「俺達は…バイキンマンも、街のみんなも笑っている」
そして…
激辛「そんな日常を続ける為に殴って来たんだよ!」
急降下と同時にハッチに拳を叩きつけた
鈍く
拳の砕ける音がした
だが
その拳はハッチを貫いた
アスペル「なんですとぉッ!?」
アスペルギルスは驚嘆と共にハッチの方を振り向いた
そこにあった拳は既に抜き取られていたが、確かに貫いた証拠がハッチの中心に外の光を降らせていた
そして、そこから落ちる円筒形のそれは
激辛「だが、てめぇだけは笑わせねぇ」
焼夷手榴弾
~カレー編・終~
か……カレーパンマンーーーーーー!!!
かっこいい
195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 12:03:24.88:GxsaXa8XOかっこいい
食パンマンは階段を下り、地下の研究区画に向かっていた
カレーパンマンが陽動をしてくれているので地下にはあまり戦力が回されてこない
だがそれでも警備を行うカビルンルンはいるので彼等の死角を通りながら目的の資料室に辿り着いた
リア充「どうにかここまで来れたよ…」
そう言いながら後ろ手に扉を閉じ、埃臭い部屋をゆっくりと見渡す
バイキンマンは電子媒体で情報を保管しているが、そのバックアップに紙媒体を使っている
それ故にこの資料室もそれなりの広さと資料の数を、ザッと見ただけの来訪者に教えていた
リア充「……」
一瞬、食パンマンは資料室ごと全て消してしまえばいいのではないかと考えたが、しかし頭を振ってその考えを消した
彼は銃の設計図のみを消しに来たのだ
それ以上を消しては、バイキンマンの『イタズラ程度の発明』まで消してしまう事になる
彼も、もちろん此処にいない他の三人もそれは望んではいない
食パンマンはため息を吐くと、本棚の一つに近付き、ファイルを一つ一つ確認していった
~食パン編・終~
リア充出番少ねえwwwww
202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 13:36:54.11:GxsaXa8XOジャム「ちっ…銃がジャムっちまったぜ」
通路でカビルンルン達と遭遇し、小部屋の金属扉を遮蔽物に撃ち合いを始めて一分も経たないうちにジャムおじさんの愛銃…L85エンフィールドの最悪の特徴が現れた
それは部品数の多さと構造的欠陥による故障…弾詰まりだ
エンフィールドは過去幾度か改修を受けているが、それでもこの欠陥は改善されず、弾詰まりを引き起こし続けている
ジャム「だが…私はそう簡単にはやられんぞ」
ジャムおじさんはそう言うと、懐からグレネード――パイナップルと呼ばれたりもする――を取り出し、ピンを抜く
だが、それをすぐには投げず、しばらく待ちそれから投げつけた
投げられたグレネードは曲がり角に向かって飛び、しかし空中で破裂した
その破片と爆発で至近距離にいたカビルンルンは吹き飛び、少し離れていた個体も負傷した
だが、そこにジャムおじさんがいきなり踏み込んできた
グレネードの爆発音を聞いた瞬間に角に向けて飛び込んだのだ
まだ生きていたカビルンルンが必死に銃口を向けるが、ジャムおじさんの蹴りがその手からSCARを蹴り放す方が早かった
さらにジャムおじさんはその最後に生き残ったカビルンルンの後頭部を掴むと、硬質の壁面に思い切り叩きつけた
一度では飽きたらず、二度、三度と叩きつけカビルンルンの体から力が抜けるのを確認してようやく手を離した
ジャム「勝因はグレネードの調理に成功したことだ」
ジャムおじさんは呟くと、廊下をゆっくりと歩いていった
ジャムおじさんが担当した任務は居住区の制圧、及び探索
ジャムおじさんの予測ではバックアップはないとは予測しているが、念のためにバイキンマン達が生活している所も確認しておく程度のものだ
だが
予測とは外れるものである
バイキンマンの部屋の扉を開けた瞬間に突き出されたナイフに鼻先を切り裂かれながらも身を捩り、回避する
同時に三歩を後退り、攻撃してきた相手を見る
「よう!ヒーローが来るかと思ったらまさか老いぼれパン職人が来るとはな!」
体がカビで覆われた巨漢が、手に持ったナイフの先端についたジャムおじさんの血液を舐めていた
ジャム「じゃあ期待を裏切ってしまったお詫びにパンをあげよう…ただし…」
ジャム「パンはパンでもパンチだがな」
バイキンマンの部屋に踏み込んだ
ジャムおじさんの拳を左肘で受け、右手のナイフを突き出す巨漢
その動きは熟練の戦士を思わせるほど鮮やかだが、それを見詰めるジャムおじさんは更に熟達していた
ナイフを突き出した腕を絡め取るように掴み、その肘を打撃する
関節に対する打撃に骨が軋み、巨漢は表情を歪ませナイフを手放す
だが巨漢もただやられるだけではなく、自由になっている左手でジャムおじさんの腹部を殴りつけ、拘束が緩んだ右手で顔面を殴り飛ばす
巨漢の太い腕から繰り出された打撃は、ジャムおじさんをバイキンマンの私室奥の扉を押し開け、その奥のキッチンの床に這わせた
ジャム「…ッ!」
ジャムおじさんの口から血の混じった唾液が吐き出され、キッチンの床に浮かせる
年々衰えを感じる四肢に力を込めて立ち上がり、キッチンにまで追ってきた巨漢を睨みつけた
ジャムおじさん渋すぎワロタwwwww
228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/17(水) 23:24:08.75:GxsaXa8XO巨漢「ようパン職人、お前意外にやるな!ヒーローならともかくただの爺がこんだけ強いのは驚いた…名乗ってやろうか?」
巨漢が薄く笑いながらジャムおじさんに問いかける
だが、ジャムおじさんは回りを見渡すだけで返事をしない
まるで巨漢の事など眼中にないかのような仕草だが、彼はそれを見ても動じることなく名乗った
巨漢「俺の名前はフザリウム!バイキンマンに強化されたカビルンルンよ!」
そう巨漢が名乗ったとき、ジャムおじさんはようやくフザリウムの顔を見据え、構えをとった
ジャム「そんな事より、はやく決着をつけないかい?アンパンマン達が待っているといけないからね」
その言葉と同時にフザリウムも構えをとった
フザリウム「ッ!」
最初の動きはフザリウムが拳を放つ事だった
その巨腕から繰り出される一撃は直撃すれば戦車砲にすら匹敵するだろう
先のジャムおじさんを襲った一撃も、咄嗟に拳とは逆の方向に跳んだから生きているだけだったのだ
だが、ジャムおじさんの目つきが違うことに、そしてそれがどういう意味なのか、フザリウムは気付いていない
ジャム「……」
ジャムおじさんは威圧感のある一撃を踏み込み、姿勢を低くすることで避け、更にはカウンターのアッパー気味の拳をフザリウムの頭部にぶち込んだ
フザリウム「ゴッ…ア…!」
だがフザリウムもよろけはするものの倒れない
二歩を下がり、頭を振って意識を保たせる
そしてジャムおじさんを改めて視界に収めたとき、脳内に疑問符が浮かぶことになった
ジャムおじさんの構えは常に変わっていた
というより、その動きこそが構えなのだろうか?
ジャムおじさんの両手が手刀のように形どられ、それを前後左右…頭の横や胴の前を斬るようなその動きにフザリウムは眩惑されかけ、だが、冷静にその動きの意味を思考した
だが、理解が及ばない
判断材料が足りないのだ
故に、フザリウムは動いた
間合いを調整し、威力よりも素早さを重視したジャブを放つ
その瞬間、ジャムおじさんの手刀が拳に絡み付き、拳が狙いが逸れる
それだけではなく、ジャムおじさんの手刀が拳に変わり、フザリウムの顔面を殴打する
頭部への打撃でフザリウムはよろけるが、だがまたジャブを打ち込む
そのさらなる攻撃すら攻撃すらジャムおじさんの構えは受け流し、反撃する
そう、これは…
フザリウム「カウンター特化か…!」
だが、それがわかったところで彼にはどうにもならない
このカウンターに対して攻撃した所で打ち破れないのは目に見えていた
だが、ジャムおじさんはゆっくりとだが確実に間合いを詰めている
手詰まり
通常ならば逃げる以外にない
だが、彼はここから逃げるつもりはなかった
だから、それを手にとった
フザリウム「しッ!」
中華包丁の鈍い輝きがジャムおじさんに向かって振り下ろされる
だが…フザリウムは失敗していた
包丁を振り下ろすその手首を踏み込みと同時に掴み、捻りながら引き込む
その結果は、
フザリウム(関節だとぉッ!?)
ジャムおじさんの手が倒れたフザリウムの首に絡みつき
フザリウム「強ぇ…」
フザリウムの首をへし折った
ジャム「昔こういう言葉がを言ったコックがいる」
ジャム「キッチンでは負けたことがないんだ」
どこのセガールwww
243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 00:51:52.44:4MnftaTxOジャム「さて、それじゃあこの部屋を調べないとね」
なぜなら、
ジャム「留守番を残しているんだから、大事な何かがあるんだろうからね」
そう言うと、バイキンマンの部屋に戻り、散らかり放題のその惨状に先ほどのフザリウムとの戦いの方が楽だった、と胸の内で溜め息をついた
~沈黙のジャム編・終~
うはwwwジャムかっけえーーーーーーwwwwwwww
アンパンマンをまた違う視点で見れそうだwwwww
264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 01:57:31.20:4MnftaTxOアンパンマンをまた違う視点で見れそうだwwwww
エレベーターの中でアンパンマンが腰のホルスターから拳銃を抜き放ち、銃身をスライドさせ弾丸が装填されていることを確認する
その手に握られた拳銃はMP-443
装弾数は合計で17発
扱いやすい事が特徴のセミオートマチックハンドガンだ
アンパンマンの任務はたった一つ
バイキンマンを反省させる、ただそれだけだ
本当なら作戦司令室でもある最上階のデータベースにも銃器の設計図はあるだろうが、アンパンマンはそれを消すことは目的にしていない
彼の目的は『平和を守り、取り戻す事』
それだけを胸に、ここに立っている
エレベーターが電子音で目的地に到着したことを知らせる
アンパンマンは無言でエレベーターの扉に狙いを定め
扉が開かれると同時に引き金を引いた
エレベーターから飛び出た9mmパラベラム弾は空間を引き裂きながら、作戦司令室の中央で仁王立ちする黒い人影に向かっていく
だが、それは結局人影まで届くことはなかった
なぜならば、正面から飛来した同じ9mmパラベラム弾とぶつかり、それぞれがあさっての方向に弾かれたからだ
アンパンマンが撃たなければ人影が穿たれ、人影が撃たなければアンパンマンが穿たれていたであろうことは想像に難くない
だがそれは起こらなかった
それは、奇跡でもなんでもなく、お互いがお互いを理解しているが故の必然だった
人影は右手に持ったグロック17を弄びながら、招かれざる、しかし待ちわびた客に歓迎の言葉を掛けた
菌「やぁ、アンパンマン。俺様の城へようこそ」
アンパンマンもバイキンマンに向けていた銃口を下ろすと部屋に入り、バイキンマンから8mほどの距離まで近づいた
常のにこやかな笑顔でバイキンマンに挨拶を返す
餡「やぁ、バイキンマン。君を止めに来たよ」
バイキンマンは歯を噛み締め、そして、口を開いた
菌「俺様は、いつも悪役だった」
思えば、バイキンマンとて悪意はなかったのだ
ただの好奇心や悪戯心、興味から人々に接触し、結果として平和を乱してしまっていただけなのだ
街の学校の運動会に興味を持ち、だが自身が参加する資格を持たないためにせめてと悪戯心から雨を降らせ、成敗される
旅人を見かけ、ちょっとした好奇心から接触し、スキンシップ的に悪戯を行い、嫌われ、成敗される
彼の日常とは、決して人々と優しい交わりを得ない、冷たいものだったのだ
だから、欲した
自身と街の人々との関係を確定させる方法を
せめて、街の人々に、自分を、どんな形であれ、認めさせる術を
だから、
菌「アンパンマン、正義の味方という壁を、今日こそ乗り越えてやる」
笑って銃口を向けた
アンパンマンはバイキンマンの薄い笑顔の裏にどんな気持ちが隠れているのかを、なんとなくは理解していた
だが、
餡「僕は、生まれた時から正義の味方だった」
そう、悪のバイキンマンに対する最大のカウンターにして、人々の平和の象徴
それが悪意のあるなしに関わらず、それが悲鳴を生むのなら無力化する
それが正義の味方である彼の役目なのだ
だから、
たとえ、悪の中の、切なる願いであろうとも、守るべき者のために、立ち向かうのだ
痛みと共に
だから、
餡「バイキンマン、僕の日常には、君の悪戯だって含まれているんだ」
彼は、取り返しがつく今の内に、ライバルに銃を向けた
二つの銃口から弾丸が吐き出された瞬間、二人はお互いの右側にステップする
その機敏な動きにアンパンマンは驚く
餡「速いッ!?」
アンパンマンの身体能力と互角の動きをバイキンマンがしているのだ
バイキンマンと長く戦い続けているアンパンマンには、この状況の心当たりが一つだけあった
餡「カードかい?」
努めて冷静に問うと、特徴的な笑い方で答えが返ってきた
菌「ハッヒフッヘホー!」
それだけを確認し、またお互いに射撃と回避、時にはコンソールや机で防御も交えていく
熱い弾丸がアンパンマンの肩を削った
応じるように、バイキンマンの顔を銃弾が掠めていく
お互いの体を硝煙に晒しながら、踊るように応酬していく
お互いに16回目の銃声を響かせたあと、立ち止まる
菌「グロック17の装弾数は17発…MP-443も17発だ」
菌「これで決着をつけよう、アンパンマン!」
餡「…」
アンパンマンは答えず、銃口を向ける事で応えた
バイキンマンは溜め息をつき、笑みを浮かべる
菌「さよなら、と言うよ」
餡「また明日、と言うよ」
重なった銃声が、作戦司令室の空気を震わせた
銃弾は、どちらの体も傷つけなかった
最初の一発同様、二つの銃弾がぶつかったのだ
だが
菌「…ッ!」
バイキンマンは勝利を確信し、もう一度引き金を引いた
グロックから吐き出された、18発目の弾丸
それはアンパンマンの頭部を
撃ち抜かず、MP-443から吐き出された18発目の弾丸に撃ち落とされた
菌「…バ…カなぁ…ッ!?」
バイキンマンの呻きが広い作戦司令室の空気に溶けていく
必殺を期待した弾丸は、アンパンマンに撃ち落とされた
タクティカルリロード、というものがある
本来、弾倉には17発までしか入らなくても、
『最初から銃身に弾丸を装填しておけば、弾倉の17発と銃身の1発で18発の弾丸が放てる』という技術だ
バイキンマンはそれを行い、銃の知識の少ないはずと侮ったアンパンマンのタクティカルリロードにより、必殺のタイミングを失ったのだ
菌「バカな…アンパンマン…お前は、俺様のぉ…ッ!」
バイキンマンは駆けた
負けるわけにはいかなかった
これで人々と、たとえ最悪であろうと関係が確立されたはずだったのだ
それを望み、もはや徒手空拳でヒーローに挑む
餡「アン…」
そして、
餡「パンチッ!!」
その顔面にもはや慣れた感触の拳がめり込んだ
たとえカードで身体能力が強化されていようとも、彼の拳の前に立っていられる者などいない
菌「バァ…い…バイ……キ…」
背中に司令室の壁に叩き付けられる感触を得ながら、彼の視界は暗く閉ざされた
~数日後、街~
河馬「バイキンマンだぁぁぁぁぁぁ」
兎「私のアイスがーーーッ!」
子ども達の悲鳴が突き抜けるような空に響く
今日もバイキンマンの悪戯は悲鳴を生んでいるようだ
だが、街にも、森にも、あの日のような硝煙の香りは漂っていない
さぁ、今日もバイキンマンの悪戯を諫めに行こう
カレーパンマンや食パンマンも一緒に
バタコさんとジャムおじさんはもう新しい顔を焼き始めている
さぁ!正義の味方の出撃だ!
fin
乙でした
楽しかったれす
285:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 04:00:36.03:zGJFDPIO0楽しかったれす
面白かったぜ次回作に期待する
ところで「カード」って何じゃい?
287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 04:05:39.89:4MnftaTxOところで「カード」って何じゃい?
>>285
悪魔のカード
確かバイキンマンの先祖だったかがバイキンマンに渡した食べるといろんな効果が出るカードだったような…
俺も大昔のアンパンマンの映画であった気がするだけだからもし俺の妄想だったら脳内でカードに関わる部分を削除してくれ
289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 04:17:11.53:4MnftaTxO悪魔のカード
確かバイキンマンの先祖だったかがバイキンマンに渡した食べるといろんな効果が出るカードだったような…
俺も大昔のアンパンマンの映画であった気がするだけだからもし俺の妄想だったら脳内でカードに関わる部分を削除してくれ
今確認したらバイキンマンのパワーアップエピソードと変身カードがごっちゃになったみたいだな>カード
変身カードを応用してパワーアップしたと解釈してくれ
292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 04:50:20.22:/BvwT1jn0変身カードを応用してパワーアップしたと解釈してくれ
よくやってくれた
面白かったおつ
295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/18(木) 06:03:51.73:oSp7bbUiP面白かったおつ
夜勤から帰宅して、今全部読んだわ。
アンパンマン舐めてたけど、こんなすげえ話だったんだな…
お疲れ様でした。次回作に期待。
アンパンマン舐めてたけど、こんなすげえ話だったんだな…
お疲れ様でした。次回作に期待。
コメント 4
コメント一覧 (4)
はじめまして。
楽しく読ませて頂きました!
件のレスは、私ではありません。
他のブログの方ではないでしょうか。
それではまた。
そいつぁ失敬
俺なんぞの糞SSをまとめてくれて、あまつさえ誉めてもらって有り難いと思ってるぜ!
縁があったらまた読んでくれな!
('A`)ノシ
カレーパンマンに惚れ直したよ、ありがとう