- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 00:46:10.61:J4ze8fFJO
女「こんばんは」
男「……」
女「電気もつけないで、まったく……晩ごはんちゃんと食べたの?」
男「……」
女「もう、そんなんじゃ体に悪いよ。風邪だってひきやすくなるし」
男「寒くないから、平気」
女「……布団にくるまってれば寒くはないかもしれないけどさ」

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5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 00:54:57.28:J4ze8fFJO
男「もう、疲れたんだよ」
女「またそんな事言って……ん、さむっ」
男「毛布……」
女「ありがと」
男「……」
女「電気は?」
男「どっちでも」
女「じゃあ、つけないよ」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 00:59:52.15:J4ze8fFJO
女「どっかご飯食べにいかない?」
男「お腹すかないから、いい」
女「……」
男「一体何の用?」
女「連絡しても出なかったから、心配で」
男「寝てるだけなんだから、生きてるよ」
女「……そんな生活でいいの?」
男「いいんだよ、別に」
女「別に、ね……」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:05:05.37:J4ze8fFJO
女「仕事……アルバイトは?」
男「明後日からまた連続勤務」
女「そう。じゃあ来週は?」
男「来週?」
女「うん。クリスマスがあるじゃん、その辺りもバイト?」
男「……」
女「まあ時間ある人間だからシフトには入れられちゃうかもね」
男「クリスマスなんて関係ないよ。なにも変わらない普通の日……それ以外に何があるの?」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:12:02.18:J4ze8fFJO
女「そこは、ほら。家族や友人で一緒にご飯食べたりさ」
男「……で?」
女「ちょっとしたイベントだよ」
男「ご飯食べるだけじゃん」
女「……あとは、街の明かりがクリスマス色に染まるあの雰囲気とか」
男「大嫌いだ。あんなの」
女「ああ、あとはクリスマスソングとか好きだよ」
男「……」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:17:54.40:J4ze8fFJO
女「真っ赤なお鼻の、トナカイさんは~」
男「嫌いだってば、そんな歌」
女「……」
女「ねえ、そんなのでさ生きていて楽しい?」
男「不満はないよ」
女「何もない毎日なのに? ただバイト先と自宅を往復するだけの……」
男「……うるさいな」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:24:43.52:J4ze8fFJO
男「楽しくなんかないよ。でも、もういいんだ」
女「何がもういいの?」
男「……自分の人生なんてこんなもんでいいんだよ」
女「……」
女「日付、変わったね」
男「関係ない」
女「ふぅ……」
男(いいから、早く帰りなよ。俺になんかかまっていたって……)
女「ねえ」
男「?」
女「覚えてる?」
男「なにを?」
女「楽しかったクリスマスの日の事を」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:29:44.76:J4ze8fFJO
男「……そんなの覚えてないよ」
女「私たちが生まれてから、クリスマスは二十回以上あって……」
女「子供の頃は、その日を祝わないなんて考えられなかったよね」
男「……」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:36:54.65:J4ze8fFJO
女「一番最初のクリスマスはどんな感じだったんだろうね~」
男「ケーキ食べてプレゼントを貰う、普通のクリスマスでしょ……」
女「ふふっ、私たちが物心ついた時の話じゃないよ?」
男「?」
女「本当に最初の……私たちが生まれた年のクリスマスだよ」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:41:29.86:J4ze8fFJO
男「……」
女「私たちの記憶は無いけどさ……お父さんとお母さん、初めて過ごすクリスマス」
女「どんな風だったのかな。暖かい部屋でベビーベッドを囲んで……ふふっ、最初のクリスマス」
男「……」
女「まあ、覚えてるわけじゃないけどさ。暖かかったんだろうねえ……」
男「そんな記憶に無い事なんて、知らない」
女「……もう」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:44:30.56:kHwWAJDK0
男(そんな昔の事、どうでもいいじゃないか)
女「ふふっ、でもクリスマスって言ったらやっぱりケーキの思い出だよね」
女「イチゴのケーキ……美味しかったなあ。お母さん、いつも私に買ってきてくれていた」
男「……」
女「あ、あとは鶏肉だね、チキン」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:53:47.62:J4ze8fFJO
女「なんでクリスマスには鶏肉なんだろうね~?」
男「……どうでもいいよ」
女「お店で買ってきてくれたり……あ、唐揚げだった年もあったね?」
男「あ……家もあったかもしれない」
女「ふふっ、お母さんの作ってくれる唐揚げってなんであんなに美味しいんだろうね?」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:00:16.61:J4ze8fFJO
男(普段作ってくれている、ただの唐揚げ)
男(でもそれを、クリスマスに食べるだけで……)
女「ああ、お母さんのご飯が食べたくなっちゃったよ」
男「……クリスマスに帰ればいいだけじゃない」
女「今食べてもさ、なぜか美味しく……」
男「……」
女「ううん、もちろん美味しくないわけじゃないんだけどさ。子供の時みたいに、ご飯でワクワクは出来ないんだよ……」
男「……」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:06:27.33:J4ze8fFJO
男(ご飯でワクワク?)
男(ああ、そんな気持ちなんてとっくに忘れている)
女「お腹すいたね」
男「すかない」
女「……」
女「こんなにご飯の話してるのに?」
男(ワクワクしないんだってば……)
男「もう、ケーキだけで喜べる年齢じゃないんだよ俺は」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:12:35.31:J4ze8fFJO
女「あ、じゃあプレゼントでも持ってくれば機嫌もよくなるかな?」
男(次はプレゼントか……)
女「ねね、クリスマスプレゼント、何貰ってた?」
男「……」
女「私はね、毎年サンタさんからプレゼント貰ってたんだよ。お人形さんに、ままごとセット……あとは何があったかな~」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:18:33.66:J4ze8fFJO
男「……アニメのビデオがあったろ」
女「あ……あったね~そんなの。よく覚えてたね?」
男「見ようって言われて、何度も一緒に見てたろ?」
女「そうだっけ? 忘れちゃってたよ」
男(思い出なんて、忘れるしかないじゃないか)
男(振り返ったって、何があるわけじゃない)
女「思い出って暖かいよね」
男(暗い部屋で女と二人、こんな話をしても……暖まる事なんてない)
男「でも、いらないよね」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:21:43.42:J4ze8fFJO
女「いらない? 思い出が?」
男(そうだよ……)
女「……でも思い出がないって悲しい事だよ?」
男「いらないよ……」
女「でも、今ある思い出はもう捨てられないよ?」
男「……」
女「暖かかったクリスマスの思い出、全部いらないの?」
男「そんなの……」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:30:14.57:J4ze8fFJO
女「ストーブの匂いがする部屋の中、家族でこたつを囲んで……」
女「テーブルの上にはケーキと、いつもの食事より豪華なご馳走……」
女「テレビからはクリスマスの特別番組……ふふっ、私はアニメスペシャルばっか見てたよ」
男(自分だってそうだ)
女「お父さんもお母さんも、私と一緒にジュースを飲んで……笑ってた」
男「……」
女「楽しかったよね、昔はさ」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:35:21.13:J4ze8fFJO
女「そんなクリスマスを……私たちは十何回か、過ごしてきたんだよね」
男(そうだな)
女「……それが、いつからだろうね」
女「クリスマスが楽しみじゃなくなって、一人で過ごす時間が増えたのは」
男「……」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:40:10.98:J4ze8fFJO
女「ふふっ、二十代になってからまだ数回しかクリスマスなんてやってないのに……なんでかな」
女「……たった数回、寂しいクリスマスを過ごしただけで、昔の暖かかったクリスマスの面影が消えるんだろうね」
男(消える……消えてる)
男(暖かかった。クリスマスは確かに楽しみだったよ)
男(朝の冷たい空気も、クリスマスの日だけは特別だった)
男(枕元に置かれたプレゼントを見つけただけで僕は……僕?)
男(なんだか……ガキみたいだな)
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:46:11.95:J4ze8fFJO
男「クリスマスなんて、そんなもんだろ。もう子供じゃないんだから……」
女「……」
女「子供みたいに楽しんでいた、あの冬の日はもう戻らないのかな?」
男「……」
女「もうデパートで流れるクリスマスソングを聞いてワクワクしたり、大きなサンタの人形を見てはしゃいだり……」
男「……」
女「クリスマスツリーなんてさ、ただバイト先に飾るだけの置物になっちゃったよね」
男「それは……」
女「なんでかな……なんでこんなにつまんないんだろうね」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 02:58:44.67:J4ze8fFJO
男(恋人と一緒にいても、クリスマスなんてただの日)
女「大人になった私たちは、ただなんとなくケーキを食べて……つまらないバラエティ番組を見て、小さく笑ってさ」
男(そうやって、いつもとあまり変わらない一日をクリスマスとして過ごして……)
女「……気付いたら、また一つ大人になるんだよね」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:04:03.90:J4ze8fFJO
男(そして来年も、同じ事を考えるんだろうなあ)
クリスマスって……こんなに寂しいものだったっけ。
男(大人になってから、楽しいクリスマスもなかったわけじゃない)
男(でも、もう昔に感じた……あの暖かみなんて感じなくなっていて)
男「はぁ……」
女「はぁ……」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:10:15.64:J4ze8fFJO
女「ね……今年のクリスマス、どうするの」
男「ん……」
女「一緒に街にでも出かけてみる?」
男(楽しい事なんて……)
女「楽しいクリスマスなんて、もう帰ってこないかもしれないけどさ」
男「……」
女「まだ、私たちには一緒に遊べる友達がいるんだから……少しでも楽しもうよ?」
男(無理だよ)
男(僕にはもう、成長する気……向上心がないんだよ)
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:17:51.10:J4ze8fFJO
男(だから、大人の気持ちになって落ち着いてクリスマスを過ごす事)
男(そして、子供みたいな無邪気さでクリスマスを送る事は出来ない)
男(ああ、もう今の僕はクリスマスを必要としていないんだ)
男「……家族が出来てさ?」
女「ん? うん」
男「家族……結婚の話」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:20:48.92:J4ze8fFJO
男「結婚して子供が出来たら……その子供と一緒に楽しいクリスマスを過ごす事はできるかもしれない」
女「暖かさは、なんとなくわかるよ」
男「……まあ、それも結婚しないと無理な話だけどさ」
女「なんでいきなり?」
男「それくらいじゃないと、もうクリスマスは楽しめそうにないんだ」
女「……」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:25:32.77:J4ze8fFJO
男「友達がいても楽しめない。一人なら、なおさら」
女「……」
男「クリスマスなんて」
女「クリスマスなんて、もう……」
男(寒い……毛布、あげなきゃよかったな)
男(毛布?)
女「……」
男「女、寒くない?」
女「ちょっと寒いかも」
男「……暖房、今いれたから」
女「あ、ありがとう」
男「……」
女「……」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:31:47.90:J4ze8fFJO
男「で、なんだっけ」
女「……クリスマス」
男(もう、話す事なんて無いよ)
男(昔の話をして、思い出に浸って……傷を舐めあって)
男「結局、何しにきたんだよ?」
女「……」
女「ちょっとでも、楽しいクリスマスを過ごしたくて」
女「だから誘ってみたんだよ。一人よりはいいかな、って……」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:37:56.57:J4ze8fFJO
男「帰ってよ」
女「……」
男「さっき言っただろ。クリスマスなんて、もう楽しめないんだよ」
女「でも……」
男「だから、クリスマスの誘いなんていらないよ」
女「……そっか」
男(……言い過ぎたかな?)
女「もう、今日は帰るよ。ごめんね変な話しちゃって」
男「うん」
男(……なんでこんなにやさぐれてるんだろう、自分)
男(もう、生きているのがつまらない……)
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:45:11.18:J4ze8fFJO
男(帰ったか)
男(……もう三時か。何かテレビやってないかな)
男(……)
男(真っ暗な部屋の中で、テレビの光だけ)
男(この時間が一番落ちつく)
男(……)
男(クリスマスか、クリスマス)
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 03:57:43.99:J4ze8fFJO
女「……」
女(暖かいクリスマス、か)
女(もう、父さんも母さんも……昔みたいに……)
女(優しく私には笑ってくれないんだよ)
女(仕事の愚痴を言っても、相手にしてくれない。大人なら当たり前なんだって言ってさ)
女(大人……)
女(もう一度、子供みたいな……あんなにも甘えたクリスマスを過ごしたいな)
女(もう……無理なんだよね)
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 04:10:48.64:J4ze8fFJO
男(僕たちが望んだクリスマスは、もう戻ってこない)
女(気持ちを大人にして、静かにクリスマスを過ごす事は私たちには出来ませんでした)
男(せめてもう一度だけ)
女(もう一度……あんな風に楽しいクリスマスを……)
男(暖かい部屋で、無邪気に笑って)
女(なんの不安もなくケーキを食べていたあの日)
男(プレゼントの箱が包まれていたキラキラした袋……)
女(楽しみだったなあ……クリスマスの日って)
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 04:24:02.29:J4ze8fFJO
男(これからも、僕たちはクリスマスを迎える)
女(……多分、あと何十回も)
男(クリスマスが来る度に、ずっとこんな気持ちでいるんだろう)
女(ああ……)
男(つまらない……)
女(私たちが夢に見ているクリスマスは、もう本当に夢でしか見る事ができません)
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 04:30:43.31:J4ze8fFJO
女(窓の外では雪が降っています)
男(部屋の中では、暖かそうに家族が笑っている)
女(美味しそうにケーキを頬張る女の子は、口にクリームをつけながら笑っています)
男(テレビでは……アニメのスペシャルが三時間も放送されていて、男の子はそれに夢中)
女(パパもママも……笑顔でその子供たちを見つめています)
男(僕たちは、それを窓の外から雪と一緒に……)
女(見つめています……)
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 04:40:02.36:J4ze8fFJO
男(目が覚めて、僕たちはまた大人として生きていく)
女(もちろん、枕元にはプレゼントなんてありません)
男(……こんなクリスマスを、何回過ごしたかなんて、もう数えていない)
女(いつの間にか、ただ寒いだけの冬にも慣れて)
男(僕たちは、毎年クリスマスが終わるのを……)
女(ただ毛布にくるまりながら、待っていました)
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 04:55:19.75:J4ze8fFJO
男(冬になる)
女(デパートのおもちゃ売り場が賑やかになって……)
男(僕たちはそれを横目に、その場から逃げるように街を歩き出す)
女(寒い寒い外では、もう雪が降りだしそうなくらい冷たい風が吹いていて)
男(一人ぼっちの僕たちは、そっと空を見る)
女(街の灯……綺麗だなあ)
男(……寒い。早く帰ろう)
女(あと何回、クリスマスを迎えるんだろう)
男(楽しくもない、こんな日を)
(ああ……)
今年もまた、クリスマスがやってくる。
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 12:13:00.62:8MJH/2T40
男「もう、疲れたんだよ」
女「またそんな事言って……ん、さむっ」
男「毛布……」
女「ありがと」
男「……」
女「電気は?」
男「どっちでも」
女「じゃあ、つけないよ」
女「どっかご飯食べにいかない?」
男「お腹すかないから、いい」
女「……」
男「一体何の用?」
女「連絡しても出なかったから、心配で」
男「寝てるだけなんだから、生きてるよ」
女「……そんな生活でいいの?」
男「いいんだよ、別に」
女「別に、ね……」
女「仕事……アルバイトは?」
男「明後日からまた連続勤務」
女「そう。じゃあ来週は?」
男「来週?」
女「うん。クリスマスがあるじゃん、その辺りもバイト?」
男「……」
女「まあ時間ある人間だからシフトには入れられちゃうかもね」
男「クリスマスなんて関係ないよ。なにも変わらない普通の日……それ以外に何があるの?」
女「そこは、ほら。家族や友人で一緒にご飯食べたりさ」
男「……で?」
女「ちょっとしたイベントだよ」
男「ご飯食べるだけじゃん」
女「……あとは、街の明かりがクリスマス色に染まるあの雰囲気とか」
男「大嫌いだ。あんなの」
女「ああ、あとはクリスマスソングとか好きだよ」
男「……」
女「真っ赤なお鼻の、トナカイさんは~」
男「嫌いだってば、そんな歌」
女「……」
女「ねえ、そんなのでさ生きていて楽しい?」
男「不満はないよ」
女「何もない毎日なのに? ただバイト先と自宅を往復するだけの……」
男「……うるさいな」
男「楽しくなんかないよ。でも、もういいんだ」
女「何がもういいの?」
男「……自分の人生なんてこんなもんでいいんだよ」
女「……」
女「日付、変わったね」
男「関係ない」
女「ふぅ……」
男(いいから、早く帰りなよ。俺になんかかまっていたって……)
女「ねえ」
男「?」
女「覚えてる?」
男「なにを?」
女「楽しかったクリスマスの日の事を」
男「……そんなの覚えてないよ」
女「私たちが生まれてから、クリスマスは二十回以上あって……」
女「子供の頃は、その日を祝わないなんて考えられなかったよね」
男「……」
女「一番最初のクリスマスはどんな感じだったんだろうね~」
男「ケーキ食べてプレゼントを貰う、普通のクリスマスでしょ……」
女「ふふっ、私たちが物心ついた時の話じゃないよ?」
男「?」
女「本当に最初の……私たちが生まれた年のクリスマスだよ」
男「……」
女「私たちの記憶は無いけどさ……お父さんとお母さん、初めて過ごすクリスマス」
女「どんな風だったのかな。暖かい部屋でベビーベッドを囲んで……ふふっ、最初のクリスマス」
男「……」
女「まあ、覚えてるわけじゃないけどさ。暖かかったんだろうねえ……」
男「そんな記憶に無い事なんて、知らない」
女「……もう」
久々に心に来るSSだ
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/04(土) 01:49:13.96:J4ze8fFJO男(そんな昔の事、どうでもいいじゃないか)
女「ふふっ、でもクリスマスって言ったらやっぱりケーキの思い出だよね」
女「イチゴのケーキ……美味しかったなあ。お母さん、いつも私に買ってきてくれていた」
男「……」
女「あ、あとは鶏肉だね、チキン」
女「なんでクリスマスには鶏肉なんだろうね~?」
男「……どうでもいいよ」
女「お店で買ってきてくれたり……あ、唐揚げだった年もあったね?」
男「あ……家もあったかもしれない」
女「ふふっ、お母さんの作ってくれる唐揚げってなんであんなに美味しいんだろうね?」
男(普段作ってくれている、ただの唐揚げ)
男(でもそれを、クリスマスに食べるだけで……)
女「ああ、お母さんのご飯が食べたくなっちゃったよ」
男「……クリスマスに帰ればいいだけじゃない」
女「今食べてもさ、なぜか美味しく……」
男「……」
女「ううん、もちろん美味しくないわけじゃないんだけどさ。子供の時みたいに、ご飯でワクワクは出来ないんだよ……」
男「……」
男(ご飯でワクワク?)
男(ああ、そんな気持ちなんてとっくに忘れている)
女「お腹すいたね」
男「すかない」
女「……」
女「こんなにご飯の話してるのに?」
男(ワクワクしないんだってば……)
男「もう、ケーキだけで喜べる年齢じゃないんだよ俺は」
女「あ、じゃあプレゼントでも持ってくれば機嫌もよくなるかな?」
男(次はプレゼントか……)
女「ねね、クリスマスプレゼント、何貰ってた?」
男「……」
女「私はね、毎年サンタさんからプレゼント貰ってたんだよ。お人形さんに、ままごとセット……あとは何があったかな~」
男「……アニメのビデオがあったろ」
女「あ……あったね~そんなの。よく覚えてたね?」
男「見ようって言われて、何度も一緒に見てたろ?」
女「そうだっけ? 忘れちゃってたよ」
男(思い出なんて、忘れるしかないじゃないか)
男(振り返ったって、何があるわけじゃない)
女「思い出って暖かいよね」
男(暗い部屋で女と二人、こんな話をしても……暖まる事なんてない)
男「でも、いらないよね」
女「いらない? 思い出が?」
男(そうだよ……)
女「……でも思い出がないって悲しい事だよ?」
男「いらないよ……」
女「でも、今ある思い出はもう捨てられないよ?」
男「……」
女「暖かかったクリスマスの思い出、全部いらないの?」
男「そんなの……」
女「ストーブの匂いがする部屋の中、家族でこたつを囲んで……」
女「テーブルの上にはケーキと、いつもの食事より豪華なご馳走……」
女「テレビからはクリスマスの特別番組……ふふっ、私はアニメスペシャルばっか見てたよ」
男(自分だってそうだ)
女「お父さんもお母さんも、私と一緒にジュースを飲んで……笑ってた」
男「……」
女「楽しかったよね、昔はさ」
女「そんなクリスマスを……私たちは十何回か、過ごしてきたんだよね」
男(そうだな)
女「……それが、いつからだろうね」
女「クリスマスが楽しみじゃなくなって、一人で過ごす時間が増えたのは」
男「……」
女「ふふっ、二十代になってからまだ数回しかクリスマスなんてやってないのに……なんでかな」
女「……たった数回、寂しいクリスマスを過ごしただけで、昔の暖かかったクリスマスの面影が消えるんだろうね」
男(消える……消えてる)
男(暖かかった。クリスマスは確かに楽しみだったよ)
男(朝の冷たい空気も、クリスマスの日だけは特別だった)
男(枕元に置かれたプレゼントを見つけただけで僕は……僕?)
男(なんだか……ガキみたいだな)
男「クリスマスなんて、そんなもんだろ。もう子供じゃないんだから……」
女「……」
女「子供みたいに楽しんでいた、あの冬の日はもう戻らないのかな?」
男「……」
女「もうデパートで流れるクリスマスソングを聞いてワクワクしたり、大きなサンタの人形を見てはしゃいだり……」
男「……」
女「クリスマスツリーなんてさ、ただバイト先に飾るだけの置物になっちゃったよね」
男「それは……」
女「なんでかな……なんでこんなにつまんないんだろうね」
男(恋人と一緒にいても、クリスマスなんてただの日)
女「大人になった私たちは、ただなんとなくケーキを食べて……つまらないバラエティ番組を見て、小さく笑ってさ」
男(そうやって、いつもとあまり変わらない一日をクリスマスとして過ごして……)
女「……気付いたら、また一つ大人になるんだよね」
男(そして来年も、同じ事を考えるんだろうなあ)
クリスマスって……こんなに寂しいものだったっけ。
男(大人になってから、楽しいクリスマスもなかったわけじゃない)
男(でも、もう昔に感じた……あの暖かみなんて感じなくなっていて)
男「はぁ……」
女「はぁ……」
女「ね……今年のクリスマス、どうするの」
男「ん……」
女「一緒に街にでも出かけてみる?」
男(楽しい事なんて……)
女「楽しいクリスマスなんて、もう帰ってこないかもしれないけどさ」
男「……」
女「まだ、私たちには一緒に遊べる友達がいるんだから……少しでも楽しもうよ?」
男(無理だよ)
男(僕にはもう、成長する気……向上心がないんだよ)
男(だから、大人の気持ちになって落ち着いてクリスマスを過ごす事)
男(そして、子供みたいな無邪気さでクリスマスを送る事は出来ない)
男(ああ、もう今の僕はクリスマスを必要としていないんだ)
男「……家族が出来てさ?」
女「ん? うん」
男「家族……結婚の話」
男「結婚して子供が出来たら……その子供と一緒に楽しいクリスマスを過ごす事はできるかもしれない」
女「暖かさは、なんとなくわかるよ」
男「……まあ、それも結婚しないと無理な話だけどさ」
女「なんでいきなり?」
男「それくらいじゃないと、もうクリスマスは楽しめそうにないんだ」
女「……」
男「友達がいても楽しめない。一人なら、なおさら」
女「……」
男「クリスマスなんて」
女「クリスマスなんて、もう……」
男(寒い……毛布、あげなきゃよかったな)
男(毛布?)
女「……」
男「女、寒くない?」
女「ちょっと寒いかも」
男「……暖房、今いれたから」
女「あ、ありがとう」
男「……」
女「……」
男「で、なんだっけ」
女「……クリスマス」
男(もう、話す事なんて無いよ)
男(昔の話をして、思い出に浸って……傷を舐めあって)
男「結局、何しにきたんだよ?」
女「……」
女「ちょっとでも、楽しいクリスマスを過ごしたくて」
女「だから誘ってみたんだよ。一人よりはいいかな、って……」
男「帰ってよ」
女「……」
男「さっき言っただろ。クリスマスなんて、もう楽しめないんだよ」
女「でも……」
男「だから、クリスマスの誘いなんていらないよ」
女「……そっか」
男(……言い過ぎたかな?)
女「もう、今日は帰るよ。ごめんね変な話しちゃって」
男「うん」
男(……なんでこんなにやさぐれてるんだろう、自分)
男(もう、生きているのがつまらない……)
男(帰ったか)
男(……もう三時か。何かテレビやってないかな)
男(……)
男(真っ暗な部屋の中で、テレビの光だけ)
男(この時間が一番落ちつく)
男(……)
男(クリスマスか、クリスマス)
女「……」
女(暖かいクリスマス、か)
女(もう、父さんも母さんも……昔みたいに……)
女(優しく私には笑ってくれないんだよ)
女(仕事の愚痴を言っても、相手にしてくれない。大人なら当たり前なんだって言ってさ)
女(大人……)
女(もう一度、子供みたいな……あんなにも甘えたクリスマスを過ごしたいな)
女(もう……無理なんだよね)
男(僕たちが望んだクリスマスは、もう戻ってこない)
女(気持ちを大人にして、静かにクリスマスを過ごす事は私たちには出来ませんでした)
男(せめてもう一度だけ)
女(もう一度……あんな風に楽しいクリスマスを……)
男(暖かい部屋で、無邪気に笑って)
女(なんの不安もなくケーキを食べていたあの日)
男(プレゼントの箱が包まれていたキラキラした袋……)
女(楽しみだったなあ……クリスマスの日って)
男(これからも、僕たちはクリスマスを迎える)
女(……多分、あと何十回も)
男(クリスマスが来る度に、ずっとこんな気持ちでいるんだろう)
女(ああ……)
男(つまらない……)
女(私たちが夢に見ているクリスマスは、もう本当に夢でしか見る事ができません)
女(窓の外では雪が降っています)
男(部屋の中では、暖かそうに家族が笑っている)
女(美味しそうにケーキを頬張る女の子は、口にクリームをつけながら笑っています)
男(テレビでは……アニメのスペシャルが三時間も放送されていて、男の子はそれに夢中)
女(パパもママも……笑顔でその子供たちを見つめています)
男(僕たちは、それを窓の外から雪と一緒に……)
女(見つめています……)
男(目が覚めて、僕たちはまた大人として生きていく)
女(もちろん、枕元にはプレゼントなんてありません)
男(……こんなクリスマスを、何回過ごしたかなんて、もう数えていない)
女(いつの間にか、ただ寒いだけの冬にも慣れて)
男(僕たちは、毎年クリスマスが終わるのを……)
女(ただ毛布にくるまりながら、待っていました)
男(冬になる)
女(デパートのおもちゃ売り場が賑やかになって……)
男(僕たちはそれを横目に、その場から逃げるように街を歩き出す)
女(寒い寒い外では、もう雪が降りだしそうなくらい冷たい風が吹いていて)
男(一人ぼっちの僕たちは、そっと空を見る)
女(街の灯……綺麗だなあ)
男(……寒い。早く帰ろう)
女(あと何回、クリスマスを迎えるんだろう)
男(楽しくもない、こんな日を)
(ああ……)
今年もまた、クリスマスがやってくる。
乙。










































コメント 7
コメント一覧 (7)
楽しんでる人よりクリスマスのことを重大なイベントとして考えてるよね
泣きそうになった
俺の場合会話すらないけど