唯「女体的な観点で見るとあずにゃんはちょお魅力的だよね」 前編
唯「女体的な観点で見るとあずにゃんはちょお魅力的だよね」 後編


147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 09:52:01.04:91lSQpkt0

べつのひ!

唯「あ、あずにゃんが先に来てる~」

梓「どもです、先輩方」

  カバンを放り投げて、ぱたぱたと嬉しそうに駆け寄ってくる唯先輩。
  そして、いつも通りといえばいつも通り、だけど密かに力加減を強めて私を抱き締めてくれる。

唯「わーい、あーずにゃんっ♪」

梓「はあ……またですか、唯先輩」

唯「んにゅ~……あずにゃん分補給開始だよ! きゅーんきゅーんきゅーんきゅーん……」

律「補給っつーより何か物騒なモノ充填してないか、その効果音」

唯「物騒じゃないよ、あずにゃん分だよ! この有り余る可愛さで癒してもらう感じだよ!」

紬「はいはい。今日のおやつはチョコタルトよ~」

  ……まぁ、唯先輩とべたべたしても不審がられないのは気楽でいいですが。
  何ていうか、ちょっとこの異常な光景に慣れすぎてませんか、皆さん?

澪「今日も練習出来そうにないな……はあ」

梓「いえ、練習しましょうよ。ね、唯先輩?」

唯「へ?」

 
148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 09:54:01.13:91lSQpkt0

梓「昨日も一昨日も、結局お茶と雑談で終わっちゃったじゃないですか」

唯「あー……うん、そうだったかも……」

梓「律先輩もですよ? 部長として、しっかり部員を発憤させてくれないと困ります」

律「お……おー」

紬「あらあらあら」

  自分は蚊帳の外とばかりに、ムギ先輩がみんなの紅茶を用意してくれる。
  ええ、確かにムギ先輩は練習する日もしない日も、さり気なくお茶を入れるばかりでどっちつかずですよね。

梓「……ムギ先輩も、今日は練習しません?」

紬「はっ……まぁ、何ということでしょう~♪」

梓「ムギ先輩?」

紬「私、後輩から不真面目だって注意されるのが夢だったの~♪」

梓「……はあ。そうですか」

  相変わらず、この人だけは正体が掴めない。
  浮世離れしているっていうか、私達みたいな一般庶民にとっては当然のことが『夢』だとか、うん、まぁ、人それぞれだけども。

澪「よ、よおーし。ティータイムが終わったら今日こそ練習だ! いいな、律!」

律「はい、澪しゃん」

 
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 09:56:01.29:91lSQpkt0

梓「私も賛成でーす」

紬「後輩に注意されて、嫌々ながら従うのも夢だったのよ~♪」

  ……嫌々されるのは、それはそれで困るんですが。

唯「きゅーんきゅーん……」

梓「……唯先輩は?」

唯「んうっ!? な、何が!?」

梓「今日は真面目に練習するかどうか、っていう多数決なんですけど」

  真上を見上げて、じとー、ってちょっと冷たい目で唯先輩を見つめる。
  ああ、目が泳いでる泳いでる、でっかい迷ってますね?

唯「え、えっとね、私、もう少しあずにゃん分を補給して、それからでないとギー太の実力を発揮出来そうにないよ!」

梓「ふーん……」

唯「あっ、あのね、今日は真面目に授業でノート取ってたから、いつもより疲れてて、だからあずにゃん分が不足してて……」

澪「ああ、そういえば唯にしては珍しく起きてたな。ノートの内容まではわからないけど」

律「なっ!? 私も起きてたぞー!?」

澪「いや、お前は半分舟こいでたろ」

紬「あらあら、うふふ……はい、どうぞ。ちなみに多数決でもう練習することに決まってるから」

 
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 09:58:01.55:91lSQpkt0

唯「んにゅう……」

梓「……というわけです。さあ、折角の紅茶を美味しくいただくか、冷めてからもそもそタルトを食べるか、ふたつにひとつです!」

唯「……わかったよ。今すぐ食べるよ……」

  ぱ、と肩口にかかっていた重みが消える。
  唯先輩は不承不承ながら自分の指定席に着いて、先輩方と同じくチョコタルトにフォークを入れ始めた。

紬「ふふっ……いいのかしらね、そんな冷たい態度取って」

梓「はむ?」

  ムギ先輩の顔を見つめる、けど、普段通りに柔らかく微笑んでいるだけ。
  何を考えているかなんて、少しも読み取れない。
  ……冷たい態度、ですか?

 
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:00:01.63:91lSQpkt0

れんしう!

律「よぉーし! んじゃ、いっちょ真面目にやってやんよ!」

澪「『いっちょ』じゃなくて、いつも真面目にやろうな……」

梓「頑張りましょうね、唯先輩!」

唯「うん……」

紬「……うふふ」

……………………。
…………。
……。

ぢゃらーん。

唯「…………」

澪「なあ、唯……調子悪かったのか?」

律「途中で止めてもよかったんだぞー」

  ジャンジャン、バババドーン!

澪「ちょっ……今はお前が止めろ、律!」

律「あい……」

 
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:02:01.64:91lSQpkt0

唯「うん、何か、ごめんね……今日は先に帰るよ。みんなやる気になってたのに……ほんと、ごめん」

梓「唯先輩? 帰るって、そんな……もうちょっと合わせれば、調子出てきますよきっと!」

唯「ううん、帰る。ごめんね、あずにゃん。折角あずにゃん分を補給させてもらったけど……明日、明日はちゃんと頑張るから」

  ギー太をケースに仕舞って、カバンを拾ったかと思うと、唯先輩は小走りに部室を出て行っちゃった。
  私はいつも通り……練習しましょうって言って、珍しく先輩方がノってくれて、軽く演奏しただけなのに。
  どうして、こんなに寂しい気持ちになっちゃってるんだろう。

紬「あら。そういえば私、今日はどうしても外せない用事があったのを忘れてたわ」

律「おいおい、それじゃ今日は練習したくても出来ないじゃないかー」

澪「棒読みな上にどことなく嬉しそうだぞ」

律「うっ」

  いえ、そんなことはどうでもいいんです。
  練習が中止になったんなら、私は、その……。

紬「梓ちゃん、ちょっとこっちに来てくれる?」

梓「はい?」

  いつもの席に戻る澪先輩達をよそに、ムギ先輩が、鍵盤を拭きながら私を手招きする。
  私もソフトケースを拾い上げつつ、一体何なんだろうと耳を寄せてみると。

紬「あのね。唯ちゃん、あの日だったんだけど……気が付かなかったかしら?」

 
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:04:01.03:91lSQpkt0

梓「へ? えっ!? ちょっ……むしろ! どうして気付くんですか!?」

紬「女の子の日なんだもの、どう頑張っても調子悪いわよね~。なのに、大好きな梓ちゃんに責められて、ハートブレイクよね~?」

梓「ん……う、うう……」

  ムギ先輩は、こういうことに関しては嘘をつかない……と、思う。
  だからこそ唯先輩があの日だった、っていう話を信じられるし、実際に調子はとても悪かったみたいだし。
  なのに、私ってば全然わかんなくって、むしろお付き合いしてる仲なんだから、そういう周期ぐらい把握してなきゃいけなかったのに。

紬「早く追いかけてあげて? 私、後輩の恋を応援するのが夢だったの」

梓「そ、それが本当か嘘かはともかく、ありがとうございますっ」

紬「いえいえ~♪」

梓「私もお先です、先輩方っ! それではまた明日です!」

  荷物を背負って走り出す。
  唯先輩が出て行ってから、まだそんなに時間は経ってない。
  スカートがはためくのも気にしないで階段を段飛ばしで飛び降りて、廊下を走って昇降口へ。
  もつれる指先にもどかしさを感じながら上靴を履き替えて、唯先輩の帰り道を追いかける。

梓「はぁ、はっ、はぁっ……」

  唯先輩。
  すみませんでした、知らなかったとはいえ責めるようなこと言って。
  許してもらえなくても仕方ないですけど、せめて、謝らせてください。

 
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:06:01.14:91lSQpkt0

唯「……はあ」

  ……いた。
  唯先輩が、重々しい溜め息をつきながら、とぼとぼと歩いていた。

梓「あ……は、はぁ……唯先輩っ!」

唯「……あ、あずにゃん? どおして?」

梓「はっ、はあ、はあぁ、はふ……その……ムギ先輩から、話を聞いてっ」

唯「ムギちゃん? んーと……話って、どんなこと?」

  どうしよう。
  いくら女の子同士でも、直接的には言いづらい。
  でも、唯先輩は直接的に言わないとわかってくれないくらい、お鈍さんだから……!

梓「唯先輩が、その、えっと、えと……せ、せ、生理だって……だから、調子悪かったんですよね? なのに、私ったら全然気付かなくてっ」

唯「……えっ?」

梓「……え?」

唯「私、来週の予定だよ?」

梓「…………」

  ……騙された!
  あの金毛白面九尾の女狐!
  私にこんな恥をかかせる為に、意味深なこと言って、嘘まで吹き込んで!

 
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:08:01.31:91lSQpkt0

梓「ちょっと今すぐ学校に戻ってムギ先輩を締めてきます。この獣のむったんで、物理的に差し違えてでも」

唯「駄目だよ、あずにゃん。腕力じゃムギちゃんには敵わないよ」

梓「それでも戦わなければならない時が女にはあるんですよ! よりによって、唯先輩の生理周期のことで私を騙すなんて!」

唯「えっ、えーと、ね? そのぉ……往来で、そーゆーこと大声で言われる方が、恥ずかしいかも……」

梓「……すみませんでした」

  ……ああ。
  これは、嫌われちゃったかなあ、さすがに。

唯「で、でもでも、あずにゃんが心配して追っかけてきてくれたのは嬉しいよ? そんでもって、暴力反対だよっ」

梓「唯先輩がそう言うなら……今回は堪えることにします」

唯「ん……よかった」

  胸元に手を当てて、ほっと安堵の溜め息。
  ……いやいやいや、どうして私は唯先輩の胸の形とか、溜め息ついた時に動いたボディラインで興奮気味になったりしてるのかな!?

梓「ま、まぁ、それはそれとして置いときましょうか……それで、唯先輩? 今日、本当に調子悪かったんじゃないです?」

唯「うん……今日は、憂が和ちゃんに生徒会のお手伝いを頼まれてて……帰っても誰もご飯を作ってくれないんだよ」

梓「…………」

唯「カップ麺で済ませよっかなあ、とか、ファミレスに行ってもひとりじゃ寂しいなあ、とか……考えてるうちにどんどん寂しくなってきて……うう、ぐすっ」

 
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:10:01.20:91lSQpkt0

  そんな理由だったんですか。
  あ、いえ、唯先輩にとっては重大な問題だったんでしょうけど。
  っていうか……やっぱり、『そんな理由』ですよ。

梓「……私に相談してくれたらよかったのに」

唯「え?」

梓「ご飯くらい作ってあげますよ! ファミレスでひとり飯が寂しくたって、私がいれば平気でしょう! さあ、何でも言ってください!」

唯「ん……ほ、本当に、ご飯作るの、お願いしてもいいの?」

梓「勿論です! 憂と比べられたら、腕には全く自信ないですけど!」

唯「比べないよ。あずにゃんと憂は、別の人間なんだもん」

梓「……じゃ、じゃあ、ご希望の献立をお伺いしましょうか」

  あの日だ、っていうのは嘘だったけど。
  唯先輩の様子がおかしかったのは本当で、気付いたのはムギ先輩だけで。
  悔しいけど、でも、今から挽回させてください、唯先輩。

唯「……グラタン、は……いいかな?」

梓「唯先輩のうち……オーブン、ありましたよね」

唯「うん」

梓「なら、任せてくださいです! 材料買いに行きましょう、唯先輩でも食べきれないくらい作っちゃいますからね!」

 
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:12:01.97:91lSQpkt0

唯「うんっ」

  独り暮らしスキルが、こんなところで活きるとは思ってなかった。
  でも、唯先輩の表情は、さっきまでと違ってとっても嬉しそうで、明るい。

唯「ねえ、あずにゃん」

梓「はい?」

唯「お買い物して、帰ってからでいいんだけど、お願いがあるの」

梓「いいですよ、この際ですから何でも聞いちゃいます!」

  ええ。
  あずにゃんこと中野梓、今はとってもやる気に満ち溢れてますからね!
  唯先輩の為なら、例え火の中水の中!

唯「あずにゃん分を補給させて欲しいなあ、って……うん、あずにゃんが来てくれて、寂しくなくなったんだけどね、その、やっぱり……さっきの分じゃ、足りないんだよ」

梓「……お料理するのに響かない程度にお願いします」

 
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:14:00.98:91lSQpkt0

  ええ、ふたりっきりになったら抱っこされるくらい想定してましたとも、私は唯先輩の恋人なんですから。
  だけど、あんまり夢中になっちゃったら、お料理出来なくてふたりしてお腹が空いて、唯先輩がひもじい思いをするじゃないですか。
  だから数分……長くても10分くらい、で、お願いしますね。

唯「んへー……ありがと、あずにゃん。私の心も身体も満たしてくれるのは、やっぱりあずにゃんだけだよぉ~」

梓「んにゃっ……そっ、そーゆー恥ずかしいことは、それこそ往来で言うべきじゃないと思います!」

  もお。

唯「ああん、そんな、あずにゃ~ん!」

  丸っきり誤解ってわけじゃないですけど、他人に聞かれたらどおするんですか、全くもー、唯先輩ってば。

~おしまい!~

 
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:16:01.48:91lSQpkt0

またべつのひ!

紬「梓ちゃん。正直に答えて欲しい質問があるの」

梓「は……はひ、何でせう?」

紬「梓ちゃん、唯ちゃんとお付き合いしてるわよね? 恋人的な意味で」

  ……はあ。
  この人は、何でまた百合ん百合んしたことに首を突っ込みたがるんだろう。

梓「唯先輩に聞いてください。私、こないだムギ先輩に騙されたの、まだ根に持ってるんですから」

紬「あら、唯ちゃんの生理の話かしら?」

梓「まさにそおです」

  何を考えてますか、この金毛白面九尾の女狐め。

紬「あの時は風邪気味で、ちょっと鼻と勘が鈍ってたかもしれないわ~。でも今は平気よ? 例えば……梓ちゃんは、今日か明日が始まりね」

梓「なっ!?」

  いえ、勘とかそういう話じゃないんですけど、それ。
  鼻? うん、鼻のいい人は嗅ぎ分けられるって聞いたことがないこともないような気がするけど、まさかムギ先輩が?

紬「前後二日くらいは、誤差の範囲ということで~♪」

梓「……ええ。調べられたらすぐにバレますから、白状します。まさに今日です」

 
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:18:01.89:91lSQpkt0

紬「あらあら♪」

梓「で、そういう恥ずかしい秘密を暴露したところで、相談があるんですけども」

紬「あら~? 私、後輩に恋愛相談されるのが夢だったの~♪」

梓「……まぁ、はい。悔しいことにその通りなんですが」

  この人はどこまで自分を隠しているんだろう。
  その、せ、生理の匂いとか、並の嗅覚じゃわからないハズなのに……かといって、ストーカーの真似をして周期を把握した風でもないし。

梓「ご想像通りだと思うんですけど、唯先輩に関してです」

紬「ふむふむ」

梓「実は、なかなかふたりきりになれる機会がないんです。唯先輩の家には憂がいますし、いつも私の家に呼ぶのもマンネリですし」

紬「それは深刻な問題ね」

梓「面白がってませんか?」

紬「ううん。私としては、唯ちゃん達にはもっと深い仲になって欲しいもの」

梓「……面白がってませんか?」

紬「う、ううん。決して面白がってなんかいないわ。純粋に貴女達に幸せになってもらいたくて」

  何でちょっと言い淀んだんですかね、ムギ先輩?
  その一点だけで、何やら背後に怪しげな雰囲気が広がって見えるんですけど?

 
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:20:01.46:91lSQpkt0

紬「そうだわ! うちのグループで、今度新しくオープンするホテルがあるの! 招待させてもらえないかしら?」

梓「……こないだ、泊まりがけデートに行きました。タダチケで、某有名ホテルのスゥイート。立て続けだと、私はよくても唯先輩が飽きるんじゃないかと」

紬「ほうほう、それはそれは……んむ、そこまで進展してるにゃんて……」

梓「ムギ先輩、ハナチ出てますよ」

  私が指摘すると、ムギ先輩は慌ててティッシュを取り出して拭い、鼻つっぺ。
  仮にも、っていうか真性のお嬢様がする行為じゃないと思うんだけどなあ。

紬「んむぎゅ……んはぁ。それじゃ、温泉旅行はどうかしら? 勿論、覗き対策も万全で、男女別の旅館を格安で紹介させてもらうわ」

梓「温泉、かぁ……よさそうですね。おいくらで都合してもらえます?」

紬「……怒らないで聞いてくれる?」

梓「内容によりますが、まぁ、とりあえず聞かせてください」

紬「こちらで渡すデジカメで、旅行の記念撮影をしてきて欲しいの。ただし、同じお布団で並んでポーズ取ってるところだけは確実にね?」

梓「そっ! そんな、の、撮れるわけ……」

紬「流出の心配はしなくていいわ。私のお願いを聞いてくれたら、その次の旅行も移動費込みの格安ツアー料金で……内容によっては、更に半額以下の料金にもしてあげる」

  内容、って……どういう写真を期待してるんだろ、ムギ先輩。
  それに、勝手にこんな約束しちゃったら……唯先輩を騙すみたいで、後ろめたすぎます。

梓「ええと……唯先輩にも相談してから、でいいでしょうか?」

 
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:22:01.64:91lSQpkt0

紬「私は構わないわ。琴吹グループの旅行部門で、今度新しくカップル向けの商品を売り出す予定だから、何組かリサーチを頼んでいるところなの」

  はあ。
  商売繁盛、笹持ってこーいってやつですか。
  この不況の世の中、景気のいいお話ですね。

梓「じゃ、未定ですけど予約ということでお願いします」

紬「はいはい♪ 埋まっちゃっても、無理矢理ねじ込んであげるから♪」

  ムギ先輩が言うと、別の意味に聞こえて怖いですよ?
  でも、まぁ、私と唯先輩との仲を応援してくれてる……のかな?

 
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:24:01.84:91lSQpkt0

そのご!

梓「……かくかくしかじか、というわけなんですが、どうですかね?」

唯「まるまるうまうま……いいんじゃないかな。私達はお安く旅行出来るし、ムギちゃんはモニターの意見が欲しいっていうことだよね?」

梓「いえ、欲しがってるのはデジカメの……お布団で、並んで写した写真なんじゃないかと思いますけど」

唯「んー……やっぱ、いいんじゃないかな? うん、その、えっちぃことする前なら何ともないし……しちゃっても、朝に写せば大丈夫だよ!」

  朝が大丈夫かどうかはまた別の話なんですけど、ええ、エッチする前に撮影すれば平気ですかね。
  ムギ先輩的には、事後だとハナチ噴いて喜んじゃうかもしれませんが、そうなると複雑な気分ですが。

唯「ねぇ、あずにゃん。こないだのホテルみたく、タダっていうのはお得っぽいけど……ムギちゃんは、お金を払う旅行を楽しませたいんだと思うよ!」

梓「はい?」

唯「だって、本当なら何倍もお金かかるんだよ? なのに、今回はお安く済ませてくれるってゆうんだから……」

梓「ええ、確かにそうですけど。調べてみたら、いくらモニターっていっても、相場の半額以下は破格すぎで……」

唯「旅っていうのは、本来はどこに行くか悩んで選んで決めて、行った先でも楽しむものだと思うのです!」

唯「でも、私達はまだ高校生だから、お金の制約があるんだよ! それなら制約の中で行ける楽しそうなところを選ぶのは当然じゃないかな!?」

  ふんす、って腰に手を当てて踏ん反り返らなくてもいいと思うんですけど。
  ……まぁ、特に気になってたのは写真の件ですが、唯先輩が構わないなら、私もいいですよ。

梓「じゃ、じゃあ、写真のことも含めて、ムギ先輩にお返事しちゃっていいんですね?」

 
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:26:00.83:91lSQpkt0

唯「ムギちゃんのカメラとは別に、私達用の思い出作りの為のカメラも持っていくけどね!」

梓「……いやあ、それは……」

唯「あずにゃんがデジカメ持ってたら任せるよ! うちにもあるけど、使い方よくわからないし!」

梓「は、はい、です」

  そういうことなら、まぁ、流出的な心配もないですし……私と唯先輩の写真、撮り放題……ってことだよね、えへへ、えへへへへ。

梓「えへへへ」

唯「あずにゃん?」

梓「はっ……!? あ、ああ、ムギ先輩にお願いしてきます! 行き先は、また相談するっていうことで!」

唯「うんっ!」

 
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:28:01.16:91lSQpkt0

さらにそのご!

梓「……ということでした。ムギ先輩の思惑通りっぽくて面白くないんですけど」

紬「ふふふ……思惑だなんて、梓ちゃん、変なこと言うのね?」

  明らさまに怪しく笑いつつ、ムギ先輩は一通の封筒を差し出してきた。
  受け取る、しかない。

梓「……これは?」

紬「今週末の、新幹線乗車券と特急券。それと、温泉旅館の特別割引チケットよ?」

梓「変な取り引きしてるみたいで、嫌な気分です」

紬「あら? 私は純粋に梓ちゃん達の恋を応援してるのよ~?」

 
178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:30:01.38:91lSQpkt0

  純粋に信じられない、けど、中身は確かにムギ先輩の言う通りのモノだった。
  割引券が本当に使えるのかどうかはともかくとして。

梓「とりあえず、ありがたくいただいておきます」

紬「うふふ。ずーっと協力するつもりなんだけど、梓ちゃんに信じてもらえるようになるのが先かしらね?」

梓「部員として、先輩としてなら……でも、やっぱり私、汚い人間なんですかね? お金が絡む話になると、ちょっと……」

紬「あら、私だって無償協力っていうわけじゃないのよ? ギブアンドテイクの関係、だったら信じてもらえるかしら?」

  ……唯先輩と私の睦み事。
  その、ほんの最初の瞬間を写真に撮るだけ。
  いい、のかな。
  唯先輩に聞かないと、私にはわからないよ……。

 
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:32:01.43:91lSQpkt0

りょこうぜんじつ!

唯「遂に明日はラヴい温泉旅行だね!」

梓「はい……」

唯「あり? あずにゃん、あんまし乗り気じゃない?」

梓「その……ムギ先輩の条件が、引っかかっちゃって」

唯「ああ、写真を撮ってきて、っていうやつだよね。それがどうかしたの?」

梓「…………」

  唯先輩、わかってるのかな、わかってないのかな。
  別に私は、唯先輩と女の子同士でお付き合いしてるのが周囲に知られるのが嫌なわけじゃないんです。
  知られたところで、ちょっとうるさくなるだけで、抱き着いたり抱き着かれたり、それ以上のことをするのも変わらないと思うんです。
  でも、例えムギ先輩であっても、私達ふたりの関係に割り込まれるのは抵抗があるんです。

唯「写真、嫌なの?」

梓「……はい。風景とか、建物とか、記念写真みたいなのは構わないんですけど……お布団の上とか、そういうのはちょっと」

唯「嫌、なんだね?」

梓「はい」

唯「……うん、わかった。旅行は残念だけど、あずにゃんが嫌なことはしたくないもん」

梓「え……」

 
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:34:01.72:91lSQpkt0

  唯先輩が携帯を取り出す。
  ぴぴ、ぴってダイヤル先を選んで、発信ボタンを押そうとする。

梓「あっ、あの、でも、ムギ先輩が手配してくれた旅行なんですし、一緒に温泉行けるんですし……」

唯「でも、あずにゃんが嫌がってるんなら、私も嫌だよ。このまま旅行に行くくらいなら、あずにゃんのおうちにお泊まりする方がのんびり出来ていいと思うよ」

梓「ん……」

  のんびりっていう話なら、確かに私の家に泊まってくれた方が色々と便利で楽ですけど。
  でも、でもですね。

唯「あ、ムギちゃん? 旅行ね、やっぱ止める。写真撮りたくないから」

  電話越しに、『え~?』って、ものすごく残念そうな声が聞こえてくる。

唯「うん、記念写真は別にいいんだけど、それ以外はやだよ。え? うん、だって、デジカメでそーゆー写真撮ったら、怖いインターネッツなんでしょ?」

  いやあそれは何というか、ムギ先輩が自信を持って扱うって言ってるんですから、きっとスタンドアロンな感じだと思いますが、でもやっぱり怖いですよね。

唯「ええ? よくわかんないよ、とにかくやだよ、写真が条件なら行きたくな……え? ムギちゃんのデジカメは置いてってもいいの?」

  ……え?

唯「代わりにレポート? それ、どういう……旅行の感想? そんなんでいいの? うん、うん……別にいいけど」

  ど、どういう話になってるんですかね、唯先輩?
  夜のレポートとかだったら、全力でお断りさせてもらいますよ?

唯「ん……うん。じゃあ、予定通り行くね。ありがと、ムギちゃん」

 
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:36:01.85:91lSQpkt0

  ぴ。

唯「えへへ……何かね、写真はどーでもいいんだって。その代わりに、ツアーに参加した感想をレポートに書いて提出して欲しいって言われちった」

梓「あ、あの……唯先輩? どうして、こんな簡単に……ムギ先輩が出した条件を引っ繰り返しちゃえたんですか?」

唯「条件って……だって、私達、友達で仲間でしょ? ……あ! 私とあずにゃんはちょおラヴい恋人同士だけど!」

梓「そういう無駄に細かいフォローはいりませんから」

唯「うっ、うん……えっとね、ムギちゃんがね、『重荷になるようなら純粋に旅行を楽しんで来て』って。その後、カメラの代わりにレポートの話になって」

梓「…………」

  あの金毛白面九尾ったら……女狐のくせに、小憎らしいことしてくれるじゃないですか。
  悩まされただけに、素直に感謝は出来ないけど……ま、まあ? 旅行から帰って、来週顔を合わせたら、頭を下げるくらいはしてあげてもいいですよ。

唯「ね、ねっ、あずにゃん。温泉旅行、やっぱし行くよね?」

  ものすごく行きたそうにして、準備だってしっかり済ませてるだろうに、今更そんなことを聞きますか。
  私の方の中止に足る懸念材料は、完全に消え去りましたよ。

梓「はい。変な写真撮らなくてよくなりましたから」

唯「……撮っちゃ駄目なの?」

梓「……はい?」

  あれ、何ですかその見慣れない最新型デジカメ。
  しかも表情をきらきらさせて、早速撮影ポーズになったりして。

 
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:38:02.55:91lSQpkt0

唯「あずにゃん! セイ、ウィスキー!」

梓「…………」

  ぱしゃ、って。
  ……ウィスキー?

唯「あれ……ううん、これはこれで、いつものあずにゃんだけど……にこにこ笑顔が欲しかったよ……」

梓「普通はチーズって言うんじゃないですか?」

唯「憂に、世界共通って聞いたんだよ! 旅行に行くって言ったら、外国の人にも通じるからって教えてくれたんだよ!?」

梓「日本人にはチーズの方がいいと思いますよ」

唯「そう言ったら、あずにゃんもにっこり笑ってくれる?」

梓「……え、ええ」

  や、やだなぁ、自分でハードル上げちゃったよ。
  タイミング外したらやだし、作り笑いを撮られるのもやだし。

梓「あの、唯先輩っ! 写真は後でいくらでも撮れますから、旅行先でどうするか相談しましょうよ!」

唯「あ、そうだね! 旅館でゆっくりするのもいいし、温泉巡りもいいし……ううん、ムギちゃんのいけずぅ!」

梓「ツアーですから、観光地回りますんで……旅館以外はそんなに自由時間ありませんよ」

唯「……でも、夜はゆっくりあずにゃんといちゃいちゃ出来るんだよね」

 
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:40:01.17:91lSQpkt0

梓「え、ええ、そうですけども」

唯「えへー……じゃあ、いいや。このカメラで記念写真撮ってもらおうね! 普通のはムギちゃんにも分けてあげようね!」

梓「は、はい。いちおー、渡す前に画像チェックさせてもらいますけどね」

  これだけは譲れない。
  唯先輩にならどんな写真を撮られてもいいけど、これだけは! これだけは!

唯「んへー……んじゃ、はい。チーズっ」

梓「チーズっ」

  ぱしゃ。

梓「…………」

  いえ、今のは何ていうか、つい、反射的に。

唯「わ、かわいー! ほらほら、あずにゃんが笑ってる可愛い写真だよ!」

梓「あは、あははは……よかったですね、滅多に撮れませんよ? そんなの」

 
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:42:01.80:91lSQpkt0

  もう、いきなり撮るもんだから半分くらい素だったじゃないですか。
  見たところ、買ったばっかりでバッテリーもメモリーもたっぷりだし……ん、まぁ、撮られる練習だと思えばいいのかも。

唯「えへへ。後で憂に頼んで印刷してもらって、それと携帯の待ち受けにしてもらおっと」

梓「ちょぉ!? そういう用途だったら、ポーズ決めたり着替えたりしますから!?」

唯「おお……それは、何と素敵な……でもこの写真も可愛いから、これはこれでね!」

梓「嫌ああああああっ!?」

  結局、使い方がわからないからって削除とかしてくれなくて。
  唯先輩の部屋を後日訪れると、ポスターみたいに大きく引き伸ばされて、唯先輩がベッドに寝た時に真上になる場所に貼られてた。
  ……嬉しい、けど恥ずかしい、けど嬉しい、けど恥ずかしい、けど嬉しい、っていうか……まさか、憂が引き伸ばし加工したんじゃないよね?

 
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:44:01.64:91lSQpkt0

りょこう!

唯「ごっめーん、待った~?」

梓「はい、15分くらい」

唯「やんやん、そこは『ちっとも、今来たところだよ』ってゆってくれないと!」

梓「でも、唯先輩が約束の時間に遅れたのは事実ですから」

唯「んむー。あずにゃんのいけずー」

  そんな可愛らしくほっぺ膨らませても駄目ですよ。
  電車の時間まで、あと10分しかないんですからね。

 
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:46:01.68:91lSQpkt0

梓「唯先輩、朝ご飯は食べてきましたか?」

唯「ううん! 駅弁食べたかったから!」

梓「やっぱり……ええと、横浜しうまい弁当でいいです?」

唯「うん、どこで売ってるのかな、早く買わないとね!」

  まだ駅舎に入る前からきょろきょろされても……。
  もう、唯先輩は本当に、私が付いていないと駄目なんですから。

梓「切符は指定席ですし、乗り遅れたら大変です。先にホームに入っちゃいましょう」

唯「え~? しうまい弁当は~?」

梓「最悪、車内販売で買えますから。あとホームだと他の駅弁も選べますけど、乗り遅れると思ったら首根っこ掴んで電車に乗りますからね」

唯「ううん、何だか強引な雰囲気のあずにゃんにどっきどきだよ!」

梓「冗談言ってる場合じゃないんですってば! ほら、急ぎますよ!」

 
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:48:01.67:91lSQpkt0

しゃない!

  がたんごとん、がたんごとん……。

唯「しうまい美味しい! 冷たいけど美味しい! 不思議!」

梓「ふう……」

  何とか間に合った。
  案の定、唯先輩が他の商品に目移りしちゃって、新幹線に駆け込み乗車する羽目になっちゃったけど。

梓「駄目ですよ、もう。これに乗り遅れたらツアーも旅館もキャンセルしなきゃいけないところだったんですから」

唯「まーまー、乗れたんだからよかったじゃない。あ、あずにゃんもしうまい食べる?」

梓「遠慮しときます」

唯「美味しいのになぁ」

  ええと、これからの予定は……っと。
  しばらく新幹線。
  着いたらツアーに参加して、あとは流れに任せるだけ。
  ……現地集合・解散のツアー旅行っていうのも何だかなあ。
  交通費を削った分だけ、料金を安く見せられるからかな。

唯「ふぃー、ご馳走様でしたっ」

梓「あ、唯先輩。ちょっと動かないでくださいね」

  口の横にちょっと汚れが……ふきふき。

 
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:50:01.31:91lSQpkt0

梓「はい、もういいですよ」

唯「はわぁ……何か今、恋人ちっくだったね! ねっ!」

梓「子供の面倒を見る母親の気分でしたよ……」

唯「んむー」

  少しご機嫌を損ねちゃったみたいで、ほっぺを膨らませる唯先輩。
  そんなことすると、ますます子供みたいですよ?

梓「唯先輩。水筒に紅茶入れてきましたけど、飲みます?」

  立ち上がって、頭上のバッグの中を探る。
  すぐに見付かって、またうとんと自分の席に戻ると。

唯「えい」

  ぱしゃ。

梓「…………」

唯「……てへっ」

梓「不意打ちで写真撮るの禁止ですっ」

唯「う、うん」

  今、ものすごく無防備な顔してたのに。
  後で絶対削除してやるんですからね、もう。

 
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:52:01.45:91lSQpkt0

  がたんごとん、がたんごとん……。

梓「ふわあぁ……」

  しかしながら、この眠気を誘う独特のリズムはどうにかなりませんかね。
  ちょっとくらいなら眠ってもいいかなと思うけど、お連れ様が唯先輩だから、一緒に寝こけたら乗り過ごしちゃうし……。

唯「すぴょ~……くぅ~……にゃむ~……」

  もう寝てるし!
  わ、私だって昨夜は楽しみで楽しみでなかなか寝付けなくって、今朝も寝坊したら大変だと思ってやたら早起きしたっていうのにこの人は!

唯「んにゅぅぅ……あずにゃぁん……♪」

梓「…………」

  まあ、眠ってしまったものは仕方がないですよね。
  私の方は何とか、唯先輩の寝顔を見物させてもらって、眠気を誤魔化すことにしますか。

 
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:54:01.66:91lSQpkt0

梓「……えいえい。ほっぺむに~」

唯「んー♪」

  あらやだ、可愛い反応。
  でもやりすぎると起こしちゃうし、程々に……。

梓「…………」

  胸を、ぷにっと突ついてみたり。

唯「にゅ~……んう……ふみゅ、すぴょぴょ……」

  何ていうかこれは、ひとりでも結構退屈しなくて済みそうな予感ですよ。

 
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:56:01.91:91lSQpkt0

とうちゃく!

唯「ふわああ……よく寝たぁ。これですっきりした気分で観光を楽しめるよ!」

梓「あは、ははは……そおですか、それはよかったです……ね」

  元気一杯の唯先輩とは対照的に、私の方は寝不足で足下も覚束ない。
  やっぱり、遊んでないで少しくらい仮眠取った方がよかったかもしれない。

梓「あ、集合場所に人が集まってますよ。多分私達と同じツアー参加者じゃないですか」

唯「うん、そうだね。行ってみよ~」

  唯先輩と人だかりのとこまで行くと、旗を持ったお姉さんがすぐにこちらに気付いた。
  今まで頭数が揃わなかったんだろう、参加者名簿を見せられて、確認が取れると、すぐ近くに停まっていたバスへ乗り込むよう案内された。

『本日は○○旅行社、□□ツアーにご参加いただきありがとうございます。本日ご案内いたしますのは……』

  適当な席を確保して、バッグも頭の上の棚に押し込んで、ようやくひと息。
  アナウンスはまだ続いてるけど、あれですよね、自己紹介とか回るルートの説明とかですよね。

唯「あずにゃん、窓側と通路側、どっちがいい?」

梓「通路側で。っていうか唯先輩、窓側に座りたくて仕方ないって顔してますし」

唯「うんっ! 実はそうだったんだよ!」

  はあ。
  そんなの、聞く意味ないじゃないですか。

 
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 10:58:02.52:91lSQpkt0

梓「よっ……と。ほら、唯先輩」

唯「おお?」

梓「肘掛けが動かせるんですよ、この座席。こうすれば……窓の外も、一緒に見られます」

唯「う、うんっ……そう、だね」

梓「でもまだ駅前ですからねー。特に目を引くようなものはないですか」

唯「…………」

梓「……唯先輩?」

  唯先輩が不意に押し黙ってしまったので、何事かと思って目をやると。

唯「い、今のアングルで一枚、撮らせてもらってもいーい?」

  もう指がシャッターを押す寸前。
  アングルっていったって、ごく普通に窓の外を眺めていただけなのに。

梓「……はあ。いいですよ、減るもんじゃないですし」

  ぱしゃ。

唯「わーい、ありがと~♪」

  何だろう、初めてカメラを手に入れて、目に映るもの全てを撮影してはしゃぐ子供……じゃないよね。
  今時デジカメなんて珍しいものじゃないし、携帯にも付いてるんだし。

 
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:00:01.52:91lSQpkt0

唯「おお、撮影可能枚数が999枚から減らないよ! すごいねあずにゃん!」

梓「メモリーがやたら多いんですね。正直、それだけ写す前に電池切れになったり旅行が終わったりすると思いますが」

唯「ふっふうん。抜かりないよ、あずにゃん! スペアの電池も充電器もばっちりさー!」

梓「その準備のよさを早起きとか音楽なんかに向けてくれれば……よよよよよ」

唯「あ、ほらほらあずにゃん、もうすぐ最初の目的地のお寺さんだって。カメラ持ってるけど写真撮るの何か怖いねぇ~」

  え?
  私の相手しながら、バスガイドの人の話もちゃんと聞いてたんですか、唯先輩?
  なんて思っていたら、ぷしう~っていう大型車がよく鳴らす音と共に、バスが停車した。

『それでは皆様、こちらでの滞在時間は20分程になります。くれぐれも時間までに集合くださいますよう……』

唯「さて、行こうかあずにゃん。真昼の肝試しだよ!」

梓「いっ、いえいえいえいえ! 肝試しなんかじゃありませんから!」

  手を引っ張られるようにしてバスを降りて、お寺の門をくぐる。
  た、確かこの下の木を踏んじゃいけないんだよね、うんっ。

唯「あれ~? お寺って言ってたのに、全然お墓ないね」

梓「どうして残念そうなんですか」

唯「それは勿論……お墓とあずにゃんのツーショットを撮って、変なのが写ってたら面白いかなって!」

梓「私そんなの絶対に嫌ですよぉ!?」

 
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:02:01.34:91lSQpkt0

唯「まあまあ。旅の記念に、ね?」

  そんなホラーな記念はこの先の人生においても絶対にお断りです。
  も、もう、唯先輩ってば、私を怖がらせようとして……っていうか、唯先輩は平気なのかな、こういうの。

唯「んう?」

梓「あのっ……は、はぐれたら困りますから、ここ掴んでていいですか?」

唯「……手、繋ごっか。はい」

梓「でも、デジカメ……」

唯「写真は片手でも写せるよ、何たって手ブレ補正付きだし! でも、あずにゃんが怯えてるっぽいのは、放っとけないもん」

梓「ん……じゃ、じゃあ、手、お願いします……」

  唯先輩が差し出してくれた手を、私は両手で包むように握り締める。
  その途端、ふっと憑き物が落ちたように今までの怖さが消えたような気がした。

唯「えへへ……んじゃ、お寺の建物まで行って、誰かにツーショット写真撮ってもらおっか」

梓「は、はいですっ」

  本殿、っていうのかな。
  奥を覗いたら大きな仏像があって、写真を撮ってもいいのかな、って後ろめたい気持ちになったんだけど。

唯「すいませんーん! シャッターお願いしますー!」

 
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:04:03.16:91lSQpkt0

  見知らぬ人に気軽に声をかけて、デジカメを渡して。
  どんなポーズを取るのかと思ったら、部室でする時みたいに、後ろから私に抱き着いてきて。

梓「は、はう……」

唯「ほらほら、あずにゃん。ピースピース。目線はレンズだよ」

梓「はい……」

  って言われても、私にはそう簡単に出来ることじゃなくって。
  ぱしゃ、って音が聞こえた時には、真っ赤な顔をしながら、超控え目なVサインを出すことしか出来なかった。

唯「ありがとうございました~♪」

梓「ひ、酷いですよ、いきなり抱き着くなんて……心の準備が、その……」

唯「うん、でも、可愛いく写ってる。ほら、照れて真っ赤になってて、すっごく可愛い~♪」

梓「ううっ……も、もういいですよね? 時間もありませんし、早くバスに戻りましょうっ」

  今度は私の方から唯先輩の手を握って、引っ張って。

唯「わ、わわ、あずにゃん? そんなに急がなくても大丈夫だよぉ~」

  聞こえません、知りません。
  もお、唯先輩のどっきり大作戦には乗せられませんからね。

 
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:06:01.77:91lSQpkt0

いどうちゅう!

『それでは出発いたします。え~、次の目的地は……』

唯「あれ~ 変なの写ってないや。やっぱり観光地だから、幽霊さんも、騒がしいのが嫌で引っ越しちゃったのかな」

梓「おっ、お願いですから、そういうこと言わないでくださいよぉ」

  折角、何事もなく帰ってこられて、写真を確認してもおかしなモノはなくって、安心しかけたところなのに。
  今度言ったら、人目もはばからず胸に飛び込んでぎゅうって抱き着いちゃいますからね?

唯「そんなに怖がらなくても大丈夫だよぉ。あずにゃんは私が守ってあげるから」

  なでなで。

梓「あ……」

  い、いえ、優しく頭をなでられてもですね、騙されないっていうか、警戒は続けるっていうか……。

唯「……ね? あずにゃん」

梓「……はい」

  なでなでなでり、なでなでり。

梓「……ふにゃ……」

  ま、まあ? 今回のところは許してあげないこともないですよ、唯先輩。
  でも、次からは充分に気を付けてくださいよね。

 
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:54:33.98:91lSQpkt0

ちゅうしょく!

『それでは、これよりお食事の時間となります。二種類のメニューからお好きな方を選んでいただきまして……』

唯「ご飯! ご飯だよ、あずにゃん!」

梓「はいはい、ちゃんと聞こえてましたよ」

  各々の観光地を巡るのは駆け足だったけど、ご飯くらいはゆっくり食べられるといいなあ。
  唯先輩のデジカメを借りて、画像を確認しながらそんなことを思う。
  何とかの滝。何とか城の跡。どっかで聞いたことがあるようなないような、昔の人の生家。
  どれもこれも10分とか20分とか、いくら格安ツアーだっていっても本当に記念写真くらいしか撮れないじゃないですか。

唯「あ、あそこで食べるのかな。ホテルみたいだけど」

梓「あー。ツアー客用に量を作るんなら、確かにホテルの領分かもですね」

  結婚式でもない限り、厨房がフル回転することなんてないだろうし、持ちつ持たれつ?

唯「二種類のメニューって何だろうね! あずにゃん、別々の選んで比べっこしよっか!」

梓「いいですよ。私的には、唯先輩と同じメニューでも構わないんですけど……」

唯「うーん、何だろうね! 楽しみだよぉ~」

  聞いてない、し。

梓「どぞ、デジカメお返ししますね」

唯「変なの写ってなかった?」

 
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:56:33.60:91lSQpkt0

梓「写ってませんでしたよっ!」

  ……ぷしう~。
  どうやら唯先輩が目を付けたホテルで昼食みたい。
  バスが停まって、他の人達もぞろぞろ降りていって、私達も後に続く。
  レストランらしき広い場所に入ると、例のメニューとやらがお盆に載って左右に沢山並べられていた。
  ……へー。
  作り置きしといて、選ぶところからはもうセルフサービスなんだ。

唯「あずにゃん、あずにゃん! 私、こっちにしてもいい?」

梓「はい、私はこっちの海鮮丼っぽいのにします」

  唯先輩と一緒に、お盆を持って席に着く。

唯「んじゃあ、いっただっきまーす!」

梓「いただきます」

  うん、でもまぁ、割と美味しそうな見た目。
  マグロ、ホタテ、甘エビ……んむんむ、これは、なかなか……美味しい、かも。

唯「あずにゃーん。この天ぷらあげるから、そのお刺身頂戴?」

梓「むぐ? あむあむ、んっ、は……はい、どうぞ」

  いえ、まぁ、お刺身っていっても何切れかありますから……ごそっと持っていかれない限りは平気ですけど。

唯「ありがとー。はい、カニの脚の天ぷらが二本あるから、とりあえずこれね。んで、私は……甘エビ、もらっていい?」

 
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 11:58:32.68:91lSQpkt0

梓「どうぞ。っていうか、カニと交換ならもう2・3種類くらい持ってってもいいですよ?」

  受け取ったカニ脚を、早速口に運ぶ。
  まあ、こういうツアーだから形が小さいのは仕方ないとして……。

梓「ふも!? むぐむぐ……お、美味しい……!?」

  あれですね、これはもしかして、わけあり品ってやつですね!?
  品質は普通の商品と変わらないのに、ボイルの段階で脚が取れちゃったりとか、そういう!

唯「んう~♪ 甘エビ、とってもあまぁいよぉ♪ スーパーで売ってるのより何倍も美味しい~」

梓「……ええ。正直、こんなケチぃツアーなので、食事もさっぱりだと思ってました。でも……」

  ん、まぁ、何ていうか。
  日本人には『終わりよければ全てよし』的な、最後の印象がとても重要っていう妙な風潮がありますからね。
  このツアーも、参加した人達は途中の観光地すっ飛ばし巡りのことなんか忘れて、『ご飯がすごく美味しかった! 最高!』っていう感想を言うんだろうなあ。

唯「あう~ん、美味しい、美味しい。あずにゃん、エビの天ぷらもあるよ? 食べる?」

梓「あ……私、もうエビに見合うネタはないんですけど……」

唯「いいからいいから。美味しいから食べて欲しいんだよ!」

梓「では、遠慮なく……ん、あむっ」

  ……え?
  どうして作り置きだったくせに衣がまだサクサクですか?
  エビも美味しいし、衣を重ねて大きさを誤魔化してるわけでもないし!

 
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:00:31.62:91lSQpkt0

梓「むぐむぐむぐ……ん、っく」

唯「ね? 美味しいでしょ?」

梓「はい……予想外に、とっても……」

  悔しいことに、箸が進む。
  時間的にお腹が空いてるっていうのもあるけど、お味噌汁やお漬け物に至るまで全てが平均点以上だなんて。

唯「はぁ~あ♪ 美味しかった、ご馳走様!」

梓「ご馳走様でした……ふぅ、意外と満腹になっちゃいましたね」

唯「あ、写真撮るの忘れてた! あっちに置いてあるやつ、今から撮らせてもらってくるね!」

梓「ああ……そんな恥ずかしいことを……」

  ……って。
  係の人にデジカメ見せながら説明して、何か許可もらったみたい。
  あっちでパチリ、そっちでパチリ。
  そして、満足げな表情で戻ってきた。

唯「ふぃ~。これでムギちゃんに提出するレポートはばっちりだね!」

梓「ああ……そういえば、そんな話もありましたっけ」

  でも、唯先輩に任せておいたら、この食事の話だけで終始してしまいそうな気がする。
  食事にお金をかける為に他の部分のコストを削ったのかもしれないですけど、やっぱり、観光なんですから……ねえ?

 
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:02:03.06:91lSQpkt0

唯「ところでさ、あずにゃん。全部食べちゃったし、私達は平気みたいだからいいんだけど」

梓「はい?」

唯「甲殻類アレルギー、ってゆうの? そういう人は、このご飯食べられないよねえ」

梓「……割といいとこ突いてくるじゃないですか。それ、絶対にレポートに書いた方がいいですよ」

梓「えへへ~。あずにゃんに誉められた~♪」

  こっちには刺身の甘エビ。もう一方にはエビとカニの天ぷら。
  うん、折角こんなに食事に力を入れてるのに、アレルギーだからって食べられないのは可哀想だよ。
  そういう人達の為に、別の素材を用意してもらわないと納得いかない。

 
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:05:01.34:91lSQpkt0

いどう!

『それではこれより出発地の駅に戻りまして、解散となります。皆様とお別れするのは~』

唯「解散だって、解散! この後は旅館じゃなかったの!?」

梓「私に言われてもわかりませんよ……あれじゃないですか、迎えの人が駅前で待っててくれてるんじゃないですか?」

唯「あ……そっか。それか、駅から歩いてすぐに行ける場所に旅館があるとか!」

  どういうポジティブ思考ですかそれ。
  って、もう見覚えのある駅前ですし。

『本日は本ツアーにご参加いただき誠にありがとうございました。皆様、お忘れ物などないよう……』

  いえ、唯先輩がデジカメを出したくらいで、別に荷物はどうこうしてませんが。
  まぁ、とりあえず引っ張り出して、唯先輩の分も下ろして……っと。

梓「デジカメ忘れないでくださいよ、唯先輩?」

唯「うん! えへへ、今日だけであずにゃんとの思い出が一杯出来ちゃったね!」

梓「…………」

  だ、だから、そおゆう恥ずかしいことを真顔で言われると、まともに顔を見られなくなって困るんですってば。

梓「え、ええと……降りましょうか。旅館のことは、そこら辺で休憩しながら考えましょう」

唯「うん」

 
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:07:01.17:91lSQpkt0

おむかえ!

  あれ?
  駅前の隅っこの方にクルマを停めて、直立不動で立ってる着物の女の人がいる。
  ……いやあ、まさか、ねえ?

唯「あずにゃん、あずにゃん。あの人、もしかしてお迎えの人じゃないのかなあ?」

梓「だ、だって、私達は割引チケット使ってお安く泊まろうっていう、儲けの少ないお客ですよ? なのに、お迎えとか……」

  とか言い合っていると、私達の視線に気が付いたらしく、着物の人がこっちに近付いてきた。

女将「琴吹亭の女将をしている者です。失礼ですが、琴吹紬様のご友人の方でいらっしゃいますか?」

唯「ほ? は、はい。私達、ムギちゃんとお友達ですけど」

女将「然様ですか。お話は伺っております、どうぞあちらのクルマへ」

梓「…………」

  いやあ、ムギ先輩?
  女将さん自ら迎えにこさせるとか、割引チケット云々っていうレベルじゃないですよ?

女将「お荷物、お預かりさせていただいてよろしいでしょうか?」

唯「は、はい……あ、カメラだけ別に……お願いします」

梓「あ、私もお願いします」

女将「では、ご案内いたします」

 
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:09:01.15:91lSQpkt0

  女将さんが合図をすると、クルマが音もなく近付いてきた。
  トランクに荷物を積んでもらって、後部座席のドアを開けてもらって、戸惑いつつも乗り込んで。

女将「10分少々で到着いたします。申し訳ございませんが、しばし車窓の風景をご覧になってくださいまし」

梓「は、はい……」

  すっごい緊張する。
  ムギ先輩の名前が出たってことは、私達に対して決して粗相がないように、って従業員全員が身構えてるんだろうし。
  そもそも女将さん直々のお出迎えというのが、何とも、その。

唯「わぁ~。バスの時と違って、山が綺麗に見えるよ! あずにゃん!」

梓「そりゃ、通る道が違ってますからね……」

唯「むむ! 何か固い表情のあずにゃん、いただきぃ!」

  ぱしゃ。

梓「にゃっ!? にゃにゃにゃ、にゃにをするですかっ!?」

唯「えへへへへ。折角ムギちゃんが私達の為に手配してくれたんだから、楽しもうよ。緊張してたら面白くないよぉ?」

梓「……ええ、まあ、そうですけど」

  私達のやり取りを聞いていた女将さんが、くすりと笑ったような気がした。

 
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:11:01.45:91lSQpkt0

りょかん!

女将「長らくお待たせいたしました。当旅館・琴吹亭へようこそいらっしゃいませ」

  荷物は、運転手の人が軽々と運んでくれてる。
  もしかしたら私達が部屋に案内されたら先に届いてるかもしれない。

唯「あの~……」

女将「はい、何でございましょう?」

唯「私達、ムギちゃんから旅行のレポートを頼まれてるので……色んなとこで写真撮ってもいいですか?」

女将「はい、勿論です。ただし、従業員用のエリアへの立ち入りは、ご遠慮願います」

梓「はい、ちゃんと私も見張ってますから! ご迷惑はおかけしませんっ」

唯「じゃあとりあえず一枚いきまーす。女将さん、玄関ののれんの横でにっこりしてくださーい」

  うわあ、何この遠慮無用な態度。
  さすがに不躾すぎて、こういう旅館の人は……って。

女将「この辺りでよろしいでしょうか?」

  はい?

唯「はーい。それじゃ……セイ、ウィスキー!」

女将「ウィスキー」

 
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:13:01.85:91lSQpkt0

  ぱしゃ。

梓「…………」

  ノリがいいんだか、ムギ先輩の影響力なんだか。

唯「こんな感じで撮れました!」

女将「あらあら、実物より綺麗に撮っていただいて。ありがとうございます」

  リップサービスもお上手だし。

女将「それでは、そろそろお部屋へご案内いたしますね」

梓「あ、よろしくお願いします」

唯「お願いしまーす」

女将「ああ、念の為……本日、他のお客様はおられませんが……普通のお部屋と、離れのお部屋。どちらになさいますか?」

唯「へ?」

梓「ふ! 普通の部屋でお願いします! っていうかお気遣い無用で!」

女将「うふふふ……承知しました。では、どうぞこちらへ」

  この人、もしかしたらムギ先輩の血縁なんじゃ……?

 
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:15:01.93:91lSQpkt0

りょかんのへや!

唯「…………」

梓「…………」

女将「お荷物は、そちらへ置かせていただきました」

唯「は、い……」

女将「僭越ながら、お茶の方ご用意させていただきますね」

梓「あ、ありがとう、ございます……」

  広い、和室。
  ううん、この部屋まで歩いてくるまでにも感じていたけれど、ここって、ものすごく格式高い和風旅館なんじゃあ?

梓「あっ、あの、すっごく失礼なことを聞いちゃうかもしれないんですけど!」

女将「何でしょう?」

梓「さっき、他にお客さんいないって言いましたよね? それってまさか、ムギ先輩が私達の為に手を回して無理矢理……」

女将「うふふ……オフシーズンの旅館なんて、どこもこんなものですよ。お嬢様のご心配なさっているようなことはございませんでした」

梓「そ、そうでしたか……」

唯「うおお! 内風呂もある上にヒノキの露天風呂まであるよ! ここに引きこもって暮らしたくなるくらい素敵なお部屋だよ!」

梓「……あの人はものすごくフリーダムですから、あんまり気にしないでください……」

 
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:16:16.68:91lSQpkt0

女将「うふふふ、紬お嬢様から伺っております。とても楽しい方ですね?」

梓「は……はい。一緒にいると楽しくって、嬉しくて、幸せで……唯先輩の方は、私に対してそう思っていてくれるのかわかりませんけど……」

  ……あれ。
  私、何で今日初めて会ったばかりの人にこんなこと話してるんだろ。

女将「失礼を承知で申し上げますが、それは無駄な心配というものです。さ、お茶が冷めないうちに召し上がってくださいませ」

梓「あ……はい。唯先輩! 女将さんがお茶入れてくれましたよー!」

唯「はーい!」

女将「ふふっ……あちらの電話の傍に、当旅館の案内がございます。ご不明な点は、いつでもご遠慮なくフロントまでお問い合わせくださいまし」

梓「はい……どうも、ありがとうございます」

女将「それでは、私はこれで……お夕飯は18時、お布団は20時にご用意しに参ります。当旅館には自慢の温泉がござますので、ごゆるりと」

梓「はい」

  すすす……っていうのは、私の頭の中に響いた擬音。
  実際には、女将さんは物音ひとつ立てずに、静かに部屋から出て行った。

唯「お茶菓子ーぃ!」

梓「わあ!?」

唯「……あれ? これ、前にムギちゃんが持ってきてくれた羊羹じゃないかな?」

 
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:18:01.32:91lSQpkt0

  そんな、ひと口でほとんど食べちゃってからどんな分析してるんですか。
  いや、でも、確かに包みに見覚えがあるし……ん、味も、とっても美味しい、です。

唯「ずずー」

梓「ずずー」

唯「えへへ。お行儀悪いんだ、あずにゃん」

梓「唯先輩こそ」

  段々とぬるくなるお茶をすすりながら、時計に目をやる。
  さっきお昼ご飯食べたばっかりで、移動を含めても、あんな短距離じゃたかが知れてる。
  つまるところ、お夕飯までは何時間もあるっていうこと。

梓「ずずー……」

唯「ずずず……ずーっ」

  ことん。

唯「ね、あずにゃん」

梓「……ずず、ずー……はい?」

  ことん

唯「時間が来るまでえっちぃことしよっか!」

梓「……わ、私も、それを考えなかったといえば嘘になりますけど……こんな明るいうちからですか?」

 
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:20:00.97:91lSQpkt0

  それより旅館の探検とか。
  ほら、こういうとこって、古いゲームとか卓球設備とかがあるって、大体相場が決まってるじゃないですか。

唯「んうー……じゃあ、温泉に入る? 女将さんも、自慢の温泉だってゆってたし……」

  だからどうして貴女は話を明らかに聞いてない風なのに、しっかり聞き耳立ててるんですか。

梓「温泉にしましょう。ええ、何時間も入ってるわけにはいきませんけど、折角来たんですから! ね!」

  女将さんに教えられた通り、電話の横の案内パンフを手に取る。
  えーと……ふむふむ、ふむ。

唯「ご飯の後に温泉の方がいいと思うんだけどなあ」

梓「……『美女の湯』っていうのがあるみたいですよ」

唯「何ゅ」

梓「あと、何かこんなに続くと眉唾ですけど『美髪の湯』っていうのと『美肌の湯』っていうのが」

唯「あずにゃん! 早く浴衣出して! 急がないと!」

  ……唯先輩は、『美肌の湯』に入るくらいでいいと思いますけどね。
  今でも充分に綺麗ですし、これ以上素敵になったら、沢山の人に言い寄ってこられて困っちゃうんじゃないかと。

唯「ほらほら、何してるのかな!? お夕飯まであんまり時間ないよ!?」

梓「はいはい、すぐ準備しますから」

 
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:22:01.33:91lSQpkt0

びじょのゆ!

  かっぽーん。

唯「びじょのゆ……ねえ、具体的にどうなるのかな? まさか顔の形が変わるわけじゃないよねぇ」

梓「さあ、私には何とも……お肌が綺麗になっていつもより美人に見えるとか、そういうことじゃないんです?」

  唯先輩はいつだって可愛くて綺麗ですけど……きゃっ、そんなこと口に出していえないっ。

唯「『美肌の湯』もあるってことは、『美女の湯』には別の効果があるに違いないんだよ。でも……何なんだろうね?」

  はぷー、と湯船の外でタオルを絞って、たたんで、頭の上に乗せる唯先輩。
  ううん、綺麗です綺麗です、誰が何と言おうと唯先輩は美女ですよっ。

梓「まあ、言い伝え的なものかもしれないですね。入り口に温泉成分の一覧表があったので見てきましたけど、一般的な温泉と大差なかったですし」

唯「それでも! きっと美女になれるんだよ、ここは!」

  溜め息をつきつつ、のんびり身体を洗い終えた私もお湯に浸かる。
  はー。
  ちょっち熱いけど、なかなか、気持ちいーですねぇ。

梓「はー」

唯「はー」

梓「唯先輩、あんまり長く入ってると、のぼせちゃいますよ?」

唯「そんなこと言って、自分だけ美女になろうって腹だね!?」

 
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:24:31.75:91lSQpkt0

梓「……いえ、美肌とか美髪とか、そっちにも入りたいんなら、ローテーション組んで回るのがいいんじゃないかなあ、と」

唯「……おお。それは確かに」

  ちなみに私、美女は諦めてますよ。
  唯先輩と並んで比べられたら、敵いっこないですし。

唯「……でも、うん、あずにゃん。もちょっと一緒に入ってようよ」

梓「はい?」

唯「あずにゃんって、今は『美少女』だけど、大人になったら『美女』になるんだし。入っておいて損はないよー」

梓「んにゃっ……!?」

  だから、どっ、どおして、そおゆうことを真顔で言えるんですか。
  誉めてくれてるんだから嬉しいとか、お世辞だっていうのがわかりきってるけど嬉しいとか、気分は様々なんですけど。

唯「今は本当に可愛いから、可愛いって言ってあげられるけど……大人になったら、それじゃ駄目なんだよねぇ……」

梓「……いえ。私、きっと、大人になってもそんなに変わりませんよ……だから、唯先輩には、いつまでも……可愛いって、言って欲しい、です」

  ぶくぶく、ぶくぶくぶく。

  顔を半分くらいまで湯船に沈めながら、ちらっと唯先輩を眺める。
  何か、複雑そう。
  でも、不意ににっこり笑って。

唯「うん。可愛いあずにゃんでいてくれる間は、一杯可愛がってあげるからね!」

 
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:26:32.01:91lSQpkt0

  い、いえ……それは、何だか違う意味にしか聞こえないんですけど……わざとです?
  でも、ずーっと、唯先輩に可愛がって欲しい、です。

梓「……ぶくぶく」

唯「あ」

梓「はい?」

唯「もしかしたら、この温泉の中でえっちぃことしたら、美女になれるかもしんないよ!?」

梓「そんな真似してまで美女にはなりたくありませんっ!」

唯「えー」

  んもう……言い伝え、伝説ですよ。
  入っただけで美女になれるんだったら、いくら閑散期とはいえ、女性客で溢れ返ってるハズじゃないですか。

唯「じゃあ、どこならえっちぃことしてもいいの?」

梓「とりあえず、全部回ってからでしょうか。唯先輩は発情期みたいなので、一緒に回るのちょっと怖くなってきましたけど」

唯「発情なんてしてないよ! でも、でもぉ……あずにゃんの裸を見てると、お腹の奥から火照ってきちゃうっていうか……」

梓「ああ、それは温泉でしっかりあったまった証拠ですね」

  私は気にせず、汗を拭って次の温泉へ向かう。
  美髪、だっけ。結構、気になるし。

 
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:28:31.23:91lSQpkt0

びはつのゆ!

  かっぽーん。

梓「はあ……」

  他に誰もいないわけだし、ってことで、湯船に浮かんで髪を浸す。
  温泉成分の表示はなかった、けど、最初のとことは泉質が違う気がするから。

唯「……もきゅ」

梓「……唯先輩? いくら唯先輩でも、変なとこ覗いたら承知しませんからね?」

唯「……ちぇー。デジカメの防水ケースも用意してあるのにー」

  それでどこを撮るつもりだったんですかね?

梓「そういうのは、後で内風呂でやりましょうよ。こう、手拭いで顔を拭いた感じの時にパチリと」

唯「そだね。変なとこ撮って、お返しされたら私も恥ずかしいし」

  だから、どこを撮るつもりだったんですかね?

唯「じゃ、私もあずにゃんみたくぷかぷかするー」

  ざば、とお湯を跳ねる音が聞こえた後は、すっごく静かになった。
  空はまだ明るい。
  外気に触れてる上半面と、お湯に浸かってる下半面の温度差が、ちょっと不思議な感じ。

 
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:30:31.06:91lSQpkt0

唯「えーい」

  こつん。

梓「んにゃ……ゆ、唯先輩?」

唯「えへへ。浮かんでるだけじゃつまんなくって」

梓「だからって泳がないでくださいよ……えいっ」

  こつん。

唯「あはっ……地味だけど、楽しーね、これ」

梓「はい」

  こんな温泉に浸したくらいで、髪が綺麗になるんだろうか。
  唯先輩の寝癖を直しやすくなるんだろうか。
  ……まあ、別に、今までと変わらなくたっていい。
  だって、唯先輩とお風呂に入った後、髪を乾かして櫛でとかすのは、私の密かな楽しみなんだから。

 
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:32:31.34:91lSQpkt0

びはだのゆ!

梓「……遂にきましたね」

唯「うん……正直、ここが一番の期待だったよ」

梓「お肌が……」

唯「美肌になる……」

  同時に、ちゃぷん。

唯「…………」

梓「…………」

唯「これ、アルカリ泉なのかな?」

梓「ええ、ちょっとぬるっとしますね」

  個人的には、アルカリ泉は好きくないですが。
  だって、肌が溶けちゃうからぬるぬるするのに、手触りがよくなったーって言う人がいるし。
  いえ、酸性泉でも溶けるのは溶けるんでしょうけども。

唯「……お部屋の内風呂はどんなんなんだろうねぇ」

梓「アルカリじゃないのを期待します」

唯「うん、もしそうだったらまたさっきの温泉に入るとして……えーい♪」

 
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:34:31.41:91lSQpkt0

梓「にゃぅん!?」

  にゅるにゅるにゅるぅ。

唯「あは……あずにゃんのお肌、ぬるぬるだぁ。いつもと違って、これはこれで気持ちいいね!」

梓「んぅっ……ちょ、やん、唯先輩っ、駄目ぇ……あんまりこすると、後でヒリヒリしますよ!?」

唯「ええ!? ほんと!?」

梓「だ、だって、ほんの少しですが、肌の表面が溶かされてるわけですから……大袈裟に言うと、赤むけ状態になっちゃうんですよ?」

唯「う、ううっ……それじゃあ私はいつ裸のあずにゃんに抱き着けばいいの!?」

梓「部屋の内風呂か露天風呂でいいじゃないですか!?」

唯「ああ……うん、そおだね、そおだったね……そんなのもあったね……」

  ものすごく残念そうに俯かれても、困っちゃうわけですが。

梓「え、えと……唯先輩? そろそろ一旦上がって、ちょっと休んで、また入りませんか?」

唯「防水ケース入りのデジカメ……一度も活躍しないままなんだね」

梓「少しくらい撮らせてあげますよ! でも、唯先輩の写真も写しますからね!?」

  っていうか、そろそろ私がのぼせちゃいますよ。
  ちょっとした写真なら撮られてもいいですし、代わりに唯先輩のも撮らせてもらえばお相子だし。
  だから、もう、お部屋に戻りましょう。

 
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:36:32.17:91lSQpkt0

りょかんのへや!

唯「はー。結構だるい感じになっちゃったねえ」

梓「ええ……特別動いたわけでもないんですけどね」

  あ、お茶セットが新しくなってる。
  ちょいちょい、ぱっぱのじょろろろ……っと。

梓「唯先輩、お茶飲みませんか?」

唯「おお、さすがあずにゃん! 気が利いてるねえ~」

梓「いえ、旅館の人が用意しておいてくれたんですけどね」

  自分の分も入れて、ずずずっと。

唯「……はあ」

梓「……ほう」

唯「はー。温泉に入ると、身体の芯からぽぽぽって熱くなるよね」

  ……って。
  浴衣の合わせを開いてぱたぱたされても、目のやり場に困るんですが。

梓「……ずず」

唯「あずにゃんは、ぽっぽーってならない?」

 
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:38:31.89:91lSQpkt0

梓「なりますけど……別に、唯先輩みたくぱたぱたする程じゃないです」

唯「あ。興味ないふりして、しっかり見てるんだ?」

梓「見せてるんじゃないですか!」

  もう。唯先輩ってば、本当にもう。

唯「……はい、あずにゃん。好きな時に写していいよ?」

梓「え?」

  デジカメ……。
  好きな時に、って。
  つまるところ、いつでもいけないシャッター★チャンスを狙えっていうことなんです?

梓「…………」

唯「えへへへへ。お望みなら、あずにゃんに言われた通りのポーズ取るよぉ?」

梓「じゃ……じゃあ、窓の外を眺めながら、そこのうちわで首筋を扇ぎつつ気だるげに溜め息をついてください」

唯「難しいね」

梓「何度か繰り返してくれたら、上手いこと撮ってみせます」

唯「うん……」

  唯先輩はうちわを拾って、私の指示通りに視線を窓の外に向ける。
  そして、ぱたぱたと扇ぎながら憂鬱そうに溜め息をつく……寸前、浴衣の胸元をするりと開いた。

 
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:40:31.69:91lSQpkt0

梓「わ……」

  ぱしゃ。

唯「ね、ねっ、どーだった、今の!? あずにゃん的には合格!?」

梓「だ、誰が浴衣をずらしてくださいって言いましたかっ!?」

  ぴ、ぴっ。

唯「うわ、えっちぃね。あずにゃんにしか見せらんないよ、こんなの」

梓「……こほん。それは後で削除するとして、次の撮影をしましょうか」

唯「え~? 消しちゃうの?」

  消すか消さないかは、またその時の気分ですけど。

梓「え、えと、唯先輩。こっちにきてください」

唯「んう?」

梓「もっとこっちです」

唯「こお?」

  私の膝の上に、唯先輩がもたれかかる。
  さっき浴衣をはだけたせいで、微妙にえろいやらしい。

梓「お願いですから、そのまま、何もしないで……え、えと、何ていうか……えっちしたいなーっていう感じで、レンズに目線送ってもらえます?」

 
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:42:31.78:91lSQpkt0

唯「ん……声に出しても、いいよね?」

梓「んくっ……は、はい」

  接写になるっぽいけど、ピントは自動で合わせてくれるみたい。
  だから、膝上の唯先輩の、頭から腰の辺りまでをフレームに収めていたんだけど。

唯「したいよ、あずにゃん……ずっと、ずっと、今朝会った時からずっと、えっちぃことしたくて堪らなかったんだよぉ」

唯「それなのに、誤魔化されたり、逃げられたりして、私……もお、こんな近くであずにゃんとくっついたら、本当に我慢出来ないよぉ」

  ぱしゃ。

梓「…………」

唯「ね、撮れた? 撮れた? どお?」

  ぴぴ、ぴ。

唯「……撮れてるけど……どうかな、あずにゃん?」

梓「……えろっちぃ視線で、何かこう、全身からえっちぃことしたいオーラも出てて、とってもいいんじゃないかと」

唯「えへ。今の、かなり本気で言ってたもん……あずにゃんが何も感じてくれなかったら、とっても悲しかったかも!」

  い、いえ、デジカメを構えてなかったら、がばっと覆い被さってたかもしれませんよ。
  こんな……っく、えろっちぃ視線で姿勢で雰囲気で、まさかまだ明るいのに私を本気で誘ってらっしゃいますか?

梓「私、にも、そんな余裕があったら……是非、撮らせてください」

 
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:44:31.06:91lSQpkt0

  とりあえず、カメラを置く。
  自由になった両手を、唯先輩の背中から回して抱き締めて、左右の膨らみを揉みしだく。

唯「んぅ……ん、んあ、はぁ……あ、あっ、やん、カメラ使えないよ、あずにゃぁん……い、いいのぉ?」

梓「カメラなんて、正直なとこ、どうでもいいです。それよりも、唯先輩とエッチするのに集中したいですから」

  私に余裕があって、唯先輩にも隙があれば勿論狙いますけどね。
  でも、今は唯先輩の胸を触りたくて、隣り合っていた身体を重ねるように持ち上げて、私の膝に乗せる。

唯「んはぁ……あずにゃん、どんどん上手になってきてる……ちょっと触られただけなのに、私、もおとっても感じちゃってるよ」

梓「唯先輩だって、私をいじめる時はすっごい勢いじゃないですか。感じすぎちゃって、イかされちゃって、でも許してくれなかったり?」

唯「んんっ、はうぅんっ……んく、あぅ、ああ……い、いぢわるぅ……♪」

  私自身のそれとは程遠い膨らみを、こねるように揉みほぐしていく。
  痛い場所はわかってる。痛くない……気持ちいいところも、知ってる。
  唯先輩が甘い声ばかりを上げてくれるように、精一杯の気持ちを込めて指先に集中、集中。

唯「はぁんっ、あっ、あああっ……やぁ、感じちゃうよっ……あずにゃぁん、あ、あっ、気持ち、いいっ……!」

梓「唯先輩って、乳首、もっと感じますよね?」

唯「ひゃあ!?」

梓「私にする時は、ちょっと怖いくらいなのに……される時は、とっても可愛いんですねえ?」

唯「んんっ、あ、ふあ……わ、私、怖い……? あずにゃんのこと、怖がらせてた?」

 
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:46:31.22:91lSQpkt0

梓「ものの例えです。雰囲気が怖い、とか……そういう意味で。本当に、存在自体が怖いと思ったことは……あったりなかったり?」

  怖いと思ったことはあっても、それはエッチの最中だけのことであって。
  普段は何ともないっていうか、こう、抱き着いたり抱き着かれたりでぽやぽやの幸せな気分にさせてくれるし。

唯「ん、ふぅ……わ、私のこと、怖く、ない……の?」

梓「怖いハズがありません。だって、こんなに……ちゅ、ちゅっ……んむ、ちゅむ……こんなに好きなんですから」

唯「あ、あは……嬉しい……♪ ね、ねぇ、キスぅ……もっと、してぇ?」

梓「はい……ん、んく、ちゅ、ちゅう……んむ、ちゅっ、ちゅちゅ、はぷ……あむあむ、はむ……れるっ」

  口付けだけでなく、甘噛みも織り交ぜる。
  歯形が付いたら困るだろから、本当に、軽く、かぷって。

唯「んぅ♪ んん、んー……気持ち、いいっ、あずにゃぁん……♪」

梓「それは、どうもです……んはぷ、んちゅ、ちゅくっ、ちゅう……あむはむっ、くぷ……」

  と、言われても。
  背中や肩に吸い付いているだけじゃ、何だかちょっとつまらない、から。
  唯先輩が震えながら浮かせている腕の下へ頭をくぐらせて、その先にある膨らみへ口を付ける。

梓「んちゅう……ちゅっ、ちゅっぷ、んむっ……はむむ、んっ、ちゅ、くちゅる」

唯「ひにゃ!? にゃ、あ、あぅぅ……あずにゃっ……ちょっ、ちょぉ……! いきなり、おっぱいは、駄目ぇ!」

梓「じゃあ、おっぱい舐めたり吸ったりします……で、いいですよね?」

 
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:48:31.45:91lSQpkt0

唯「うく……よ、よくない、よ?」

梓「今更そんな都合は知りません……んむ、ちゅううっ、ちゅ、ちゅくく……んむ、はぷちゅ」

  本気で嫌だったら、私を跳ね除けてどっかに行っちゃうハズ。
  それをしないで、私の傍で、私が与える刺激に震えているっていうことは……つまり、本気で嫌がってない、っていうことですよね?

梓「ちゅううっ、んむ、んう、くちゅ……ん、ふ……乳首、吸わせてくださいね?」

唯「んふぁ、あぁ、あぅ……や、やあ、そんな、あずにゃぁん……」

梓「ちゅううっ、んちゅ、ちゅくっ、ちゅちゅっ……んちゅううううっ」

唯「ふにゃあああああああんっ!? ああ、あっ、ひゃああああんっ!」

  びくびくんって、唯先輩の身体が痙攣する。
  おっぱいだけでイくなんて、っていう人もいるかもしれないけど、唯先輩はイっちゃう人なんですよ。
  ……私も、ですけど。

梓「んふ、ちゅ、くむっ、れるりゅ、りゅぷ……んっ、ちゅっ、ちゅうううっ」

  おっぱいを揉みながら、更に乳首にも刺激を与える。
  どっちが気持ちいいのか、それは、唯先輩にしかわからないけど。

唯「んひっ、ひ、ひゃああああん! 駄目ぇ、あっ、あずにゃんっ! イっちゃうよ、私もおイっちゃうよおおっ!」

梓「ちゅっ、じゅちゅっ、くぷちゅ、ちゅるるっ……んむ、んむむくぷ、ちゅむむっ、れるれるるっ」

唯「あ、あっ、あああああ! ひゃああああああああんっ!」

 
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:51:08.21:91lSQpkt0

  唯先輩が、胸元を突き出すようにしながら全身を硬直させる。
  ゆ、と意地悪く乳首を歯の先で引っかきながら口を離すと、その瞬間にびくんって揺れて、私の膝の上でぐったりと脱力する。

唯「ふあ……あ、あっ、んぁぅ……ま、またぁ……おっぱいだけ、で、イかされ、ちゃった、よぉ……♪」

  何となく、意地悪をしたい気分。
  だから、傍のカメラを構えて、唯先輩の全身を一枚。
  気付かないでいる表情を一枚。
  ……気付いた表情を、一枚。

  ぱしゃ。
  ぱしゃ、ぱしゃ。

唯「あぅ……や、やぁん……あずにゃん、こんなとこ撮るの、意地悪だよぉ……」

梓「唯先輩だって、後で私をイかせて、骨抜きのふにゃふにゃにして、こういう写真を撮るつもりだったんですよね? お相子ですよ」

唯「んぅ……」

梓「……そんなつもりはなかったんだよぉ、とか反論してくださいよっ」

  ぱしゃ。

唯「ね、ねえ、あずにゃん。お願いがあるんだけど」

梓「……はい?」

唯「今の、イってる顔の横で、私にちゅうしながら、一枚……撮ってくれないかな?」

 
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:53:01.36:91lSQpkt0

  ええ、いいですとも、喜んで。

梓「んじゃ、撮りますよ」

唯「えへー」

梓「ちゅー……」

  ぱしゃ。

唯「ね、私の顔、やーらしかった?」

梓「はい、とっても。下品な言い方をすれば、オカズに使えるくらいでしたよ」

唯「えへへ……嬉しい。あずにゃんに、そんだけ感じさせてもらったってゆうのが、とっても嬉しいよ」

梓「……まぁ、オカズはともかく……もうしばらくしたら夕食の時間です、ゆっくりじっくり落ち着いて、興奮を覚ましましょうね」

 
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:55:01.40:91lSQpkt0

唯「うん」

  いきなり冷水を浴びせるような真似はしない。
  いつもとは逆に、私が唯先輩を抱っこして頭をなでてあげたり、湯船から出て火照りが冷めるのを待ったり。

唯「ん~……」

梓「落ち着きました?」

唯「うん……多分、だいじょぶ。さ、ご飯の前にあずにゃんのお茶をいただこっかな!」

  もう平気そうですね。
  では、早速お茶の用意をさせてもらいましょうか。

 
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 12:58:31.67:91lSQpkt0

おゆうはん!

  座ったまま、後ろから唯先輩に抱っこしてもらいながら、ぼんやりとテレビを眺める。
  チャンネルが少なくて、面白い番組もやってなかったけど、何の音もなければまたえっちぃことを始めちゃいそうだったから。
  もうすぐ旅館の人が食事を運んでくる頃だもんね。

唯「んふぅ~……ご飯食べたら、また温泉に行こっか。カメラ持って」

梓「んにゅ……いいですよ。ただし、私を写す時にはきちんと許可取ってからにしてくださいね」

唯「うん~。いや、でも、あずにゃんの抱き心地は相変わらず最高だねぇ~♪」

梓「唯先輩こそ……んにゅにゅ、んぅ……温泉のお陰で、お肌がいつもよりもっちりしてますよ?」

  唯先輩の肌にほっぺをすりつけたり、お腹のとこに置かれた手を握ったり、その指の腹をぷにぷに押してみたり。
  やー、何ていうか、人目も時間も気にせずこうやって、一見無駄な行為をしながら甘えられるのっていいですよね。

女将「お客様、失礼いたします」

唯「あ、はーい」

  ちぇ、時間が来ちゃったか。
  私はちょっぴり残念に思いつつ、唯先輩から離れてテーブルの向かい側に移動する。

女将「お食事のご用意が出来ました。お運びしてよろしいですか?」

唯「待ってました! よろしくお願いしまーす」

女将「かしこまりました」

 
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:00:31.75:91lSQpkt0

  女将さんが合図をすると、次々とお膳が運び込まれてくる。
  テーブルの上は、あっという間に食べきれない程のご馳走で埋め尽くされてしまった。

唯「わあ! すごいすごい、美味しそうだね、あずにゃん!」

梓「は、はい……」

  んぐ、って思わず生唾を飲んじゃう。

女将「石焼きとお鍋の方、熱くなっておりますのでご注意を。では、何かございましたらお申し付けくださいまし」

唯「はーい!」

梓「ありがとうございます」

唯「っと、記念撮影、記念撮影……」

  ぱしゃ、って。
  結構こまめに撮りますね、唯先輩。

唯「んじゃ、いっただっきまーす!」

  唯先輩ってば、女将さんが退室する前に大声で叫んじゃって、ああもう恥ずかしいなあ。
  けど、その気持ちもわかるっていうか……わ、私も!

梓「いただきますっ」

  キノコの炊き込みご飯に白子の味噌汁、天ぷらとお刺身がそれぞれ盛り合わせにされてる。
  石焼き、っていうのはこれかな? 豚肉に見えるけど……ううっ、じゅーじゅー焼けてて美味しそう。

 
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:02:00.99:91lSQpkt0

唯「はむはむはむ、んぐ、もぐもぐごくんっ。美味しいよあずにゃん! すっごく美味しい!」

梓「そんなに慌てて食べなくても、なくなりませんよ……もぐもぐ」

  ……はっ。
  こ、これは! 丹精込めて育てられた最高級豚肉の霜降り部位を云々かんぬん、実は全然知らないけど。

梓「もぐもぐもぐもぐ……こ、こんなご馳走ばっかで大丈夫なんですかね、宿泊料金の方っ」

唯「今更気にしたって仕方がないよ! 折角だから目一杯楽しもうよ!」

  何かものすごくお高い感じですけど、確かにその通りですね。
  ええ、腹が減っては戦が出来ぬといいますし。

唯「もぐもぐもぐもぐもぐ」

梓「もぐもぐ……ごくん」

 
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:04:00.87:91lSQpkt0

しょくご!

唯「ご馳走様でした! とっても美味しかったです!」

梓「ご馳走様でした」

  食器を片付けにきた女将さんに、唯先輩と揃ってお礼を言う。
  はー。食べ過ぎちゃったかも、体重計に乗るのが怖いかも……。

女将「あらあら、ありがとうございます……お布団は如何いたしましょう?」

唯「布団はひとつ、枕はふたつでお願いします!」

梓「ちょっ……そういう意味じゃないですよ! あ、あの、私達また温泉に入ってきますし、戻ったらすぐ寝ますから、敷いといちゃってくださいっ」

女将「あらあら……ふふふ、かしこまりました」

唯「ええ~? あずにゃん、すぐに寝ちゃうの? ゆっくりいちゃいちゃしようよぉ~」

梓「ううっ……何という無駄恥……」

  もお、唯先輩ってば見知らぬ人相手に何てこと言うんだろ。
  旅の恥はかき捨てって言うけど、わざわざ羞恥プレイの渦中に飛び込む必要はないでしょうに。

 
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:06:01.30:91lSQpkt0

おんせん!

唯「あずにゃ~ん。ポーズ決めて、ポーズ! ちょおいやらしいやつ!」

梓「嫌ですよ……は、はい。こんな感じでどうです?」

  ぱしゃ、と間髪入れずにフラッシュの光。

唯「いいねいいね~。その調子でタオル取ってみよっか!?」

梓「駄目ですっ。他に誰もいないからって、そこまで恥を捨てきれませんのでっ」

唯「ううぅん、あずにゃんのいけずぅ~♪」

  温泉に浸かるというよりは、代わりばんこに撮影会をしてる感じ。
  唯先輩は、かなーりご機嫌な様子。

唯「あのねあのね、あずにゃん。さっき、ムギちゃんからもらった割引チケットを確認したんだけどね」

梓「はい?」

唯「ひとりよんせんえんでいいみたいだよ! こんなに素敵な旅館だけあって、素敵な割引率だよね!」

梓「……はい? 旅行費用は、一緒に計算して確認しましたよね」

唯「うん。あ、でもね、ムギちゃんが『間違えて期限切れのチケット渡しちゃったの~』って、交換してくれたんだけど」

  えっと、確か私が受け取った時は八千円になる計算で、結構痛い額だけど唯先輩との思い出作りだし、とか思ってた覚えがあるんですが。
  それでもいざ泊まってみたら、八千円で済ませるのが申し訳ないくらいの豪華な旅館で。

 
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:08:01.62:91lSQpkt0

唯「ちゃんと携帯の電卓で計算したよ? 私も、いくら何でも安すぎじゃないかなー、どこ間違ったかなーって思ったんだけど……」

梓「はあ……ムギ先輩に、後でしっかりお礼を言わないといけませんね。割引チケット、超特別優待チケットにしてくれたみたいですから」

唯「……うん、そうだね。ふけーきとかオフシーズンとか言っても、こんな素敵な旅館が貸し切りだなんて、やっぱりおかしいもんね」

  んう……これじゃあ女狐だとか、心の中でだって失礼なこと言えないじゃないですか。
  あの人は気にしないんだろうけど、おっきな借りが出来ちゃった気分ですよ。

梓「あの、唯先輩。ムギ先輩へのお土産、ってわけじゃありませんけど……欲しがってた写真、一枚だけならあげてもいいかなと」

唯「え? あずにゃん、嫌だったんじゃないの?」

梓「いえ、嫌なのは嫌なんですけど、それは唯先輩との本気でラヴい写真を他の人に見せるのが嫌なわけで……明日、旅館の前で抱っこしてもらって、ってくらいなら構いませんよ」

唯「そっかぁ。じゃ、女将さんにお願いしないとね」

梓「はい」

  ムギ先輩のご期待には添えそうにありませんが、お陰様で唯先輩と楽しい旅行が出来ましたよー、っていう気持ちということで。

唯「んじゃー、それはそれとして! あずにゃん、はいえろポーズ!」

梓「ふぇっ!? え、えっ、わあ!?」

  ぱしゃり。

唯「う、うわあ……今、すっごいの撮れちゃった……」

梓「なっ、何ですか!? どんなの写しちゃったんですかぁ!?」

 
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:10:01.62:91lSQpkt0

唯「んへへへへ。おぜうさん、この恥ずかしい写真をばら撒かれたくなかったら、もっと大胆な写真を撮らせてーん♪」

梓「どーいう理屈ですか、それっ! やだもう、今度は私が唯先輩を撮る番ですよ!」

  わいわい、きゃいきゃい、ざぶーん。
  温泉って本来、もっとしっとり楽しむものなんだろうけど。
  唯先輩にかかれば、どうしてもこうなっちゃうのは仕方ないかなあ。

 
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:12:01.84:91lSQpkt0

おねむ!

唯「ふあゎ……んにゅうー」

梓「は、はしゃぎすぎましたね、さすがに……温泉に入って逆に疲れるとか、有り得ません……」

  ふたりしてへとへとになりつつ、部屋に戻る。
  まぁ、お昼の観光の疲れがどっと出たのかもしれないけど。

唯「……ふぉぉぉ!?」

梓「どうしたんですか、唯先輩?」

  先に部屋に入った唯先輩の背中にぶつかりそうになって、慌てて足を止める。

唯「や、や、や……やったー! これだよこれ! 温泉旅館っていったらこれがないとね!」

  ……って。

梓「唯先輩が変なこと言うから、本当にお布団ひとつだけしか敷いてくれてないじゃないですかぁ!」

唯「んふー……枕、ふたつ並べてあるよ? ちゃあんと、枕元にティッシュも置いてくれてるしぃ」

梓「雰囲気出そうとして声色変えても駄目ですっ。そ、そりゃあ、一緒に寝るつもりでしたけど……その、えっちぃことする体力、残ってないってゆうか……」

唯「あずにゃん。エッチはいつでもどこでも出来るけど、温泉旅館でひとつの布団で寝るっていうのは、なかなか経験出来ることじゃないよ?」

  そんな真面目な顔で力説されても困るんですが。
  ああもう、早速記念写真撮ろうとしてるし。

 
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:14:03.70:91lSQpkt0

唯「あずにゃんあずにゃん、ほらほら。横になって一緒に記念撮影しよ! 早くっ」

梓「はあ……んもう、唯先輩ってば、本当に仕方ないですねえ……」

唯「ん……あずにゃん、も少し寄って、ほっぺぴたーってなるまで。うん、後ろのティッシュも入れて……はい、撮るよー」

梓「も、もうっ……こんな恥ずかしい写真、撮るなんて……」

  ぱしゃ。

唯「はー、満足満足。それじゃあ……お風呂にする? エッチする? もう寝ちゃう?」

梓「さっき、私もう体力残ってないって言いましたよね?」

唯「にゅー。あずにゃん、寝るのはいつでもどこでも出来るけど、温泉旅館でひとつの布団でえちーことするっていうのは……」

梓「写真撮る前と言ってること微妙に変わってますよね」

唯「……わかったよ。今夜は大人しく寝るよ……」

梓「はい。そんでは、私はお先に……ふわゎゎゎ……んにゅぅ……」

  汗も引いたし、髪もほぼ乾いてるし、歯磨きも済ませてあるし。
  さ、明日は朝ご飯をいただいたら、すぐに出発しないと。

唯「電気消すよー」

梓「ふぁい……おやしゅみなしゃい、唯しぇんぱぁい……」

 
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:16:01.15:91lSQpkt0

  布団に潜り込むなり、強烈な睡魔に襲われる。
  でも、もうちょっとだけ、起きてないと。

唯「んしょ、んしょ……えへー。あずにゃん、おやすみぃ」

梓「んにぅ」

  唯先輩も同じ布団に入ってきて、当然のように私を胸の内に抱き締めてくれた。
  ちょっとだけ頭を動かして、谷間のところに鼻先を埋めて、収まりをよくする。
  ……うん。これで快眠は約束されたも同然です。

唯「えへへへへ。おっぱい好きなあずにゃん、大好きだよ」

  何とでも言ってください。
  こんなにあったかくて柔らかくて、気持ちいいモノをお持ちな唯先輩のせいなんですからね。

梓「……ゆぃしぇんぱ……だぃ、しゅき……れふ……すぴゅー……」

 
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:18:06.48:91lSQpkt0

まよなか!

梓「むにゅ……」

  ふと、目が覚めた。
  別におトイレに行きたくなったわけでも、寝苦しくなったわけでもない。
  ただ……何だか、むずむずする。

唯「……すぴょぴょ……んぅ~……にゃふ~……」

  どう、しよう、かな。
  すやすや眠ってる唯先輩を起こせないし、寝る前にあんなこと言った手前、お願いするわけにもいかない。
  しょうがない、自分でするしかない……かな。

梓「んっ……んん、ふ、ふぅ……」

  浴衣の裾に手を入れて、自分を慰める。
  ちょっとくらい無理をしてでも、えっちぃことしてもらえばよかった、かな。

梓「んぁっ、あっ、あふぅ……っく、ん、んきゅ……きゅぅんっ……」

  唯先輩、きっと私をへろへろにして、恥ずかしい写真を撮るつもりだったんだろうな。
  気持ちよくなっちゃって、もう正体も怪しくなった辺りで、えろいやらしーポーズなんか取らせるんだ、絶対に。

梓「んぅ……ゆ、唯先輩っ……はぁ、はぁぅ……んくっ……」

  こんなに密着して添い寝してるのに、何してるんだろ、私。
  でも、起こすの可哀想だし……あ、そうだ、ちょっとだけなら。

梓「唯、せんぱぁい……指先だけ、ちょっぴり、貸してください……ん、しょ……んくぅ」

 
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:20:01.56:91lSQpkt0

  唯先輩の腕を動かして、指先が私の股間に触れる位置へ。
  そして、私の指を添えて、また淫らな行為に耽る。

梓「はあっ、は、ああ、唯先輩っ……んく、ぁう、き、気持ちーです、唯せんぱぁいっ……ああ、あふっ」

唯「すぴゅぴゅ……すぅ……くふぅ~……」

梓「あ、う、そこっ……唯先輩、そこ、とっても感じちゃうですよぉ……っはう、はぅんっ……あっ、あああっ」

  気持ちよくって、時々、身体が跳ねる。
  密着した唯先輩も一緒に揺れるけど、眠りが深くて全然気付いてないみたい。
  ……もう少しだけ、もう少しで済みますから、眠ったままでいてくださいね?

梓「んっ、ん、んんぅ、ふぁ……あは、い、いいですぅ、唯先輩、気持ちいいですぅっ……んっ、くぅっ、んんん!」

  もう、少し……もう、済みます、から。

梓「ふああ、あっ、駄目だめ、イくっ、あっ、イきます、唯先輩っ……私、イっちゃいますっ、ああ、ふにゃあああっ!」

  全身に走る快感を、ぎゅううっ、と唯先輩の腕にしがみついて堪える。
  声も、出来るだけ我慢したつもりだったけど、唯先輩の指先が、酷く敏感になっている私のあそこを優しくさすってくれるから、まだ快感が止まない。
  ……え?

梓「んぅ、あ、にゃうっ……も、もしかして……唯先輩、起きちゃってます……? い、いつから、ですか?」

唯「んう……あずにゃんが、イっちゃう直前かな? んもー、起こしてくれればよかったのにぃ」

梓「はうっ、んんんっ……んにゃ、は、はう、すみませんでした、からっ、もお、指っ……んく……ふにゃあ」

唯「あずにゃんのえっち。私の指、勝手に使うなんて……どうしてくれるのかなあ?」

 
272以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:22:03.17:91lSQpkt0

  あ……何か、唯先輩の目が意地悪モードになってる気がする。

梓「こ……こお、します……んっ、あむ、ちゅるる……ぴちゅ、んく、ちゅぴる」

唯「わぁ、お口で綺麗にしてくれるんだ……ちょっと予想外だったよ」

  ぱしゃ。

梓「ひんっ!? んふ、ぷぁ……しゃ、写真は、駄目ですよぅ」

  勝手に手指を使っちゃったのは謝ります。
  けど、私の愛液にまみれた指を私自身が舐めてお掃除してるところなんて、写さないでください。

唯「指、早く綺麗にしてくれないと……お布団めくって、きっと大変なことになってるあずにゃんの格好を写しちゃうよ?」

梓「ふぁ、ふぁい……っんむ、くむっ、ちゅるる、れるぷ、はむ……ん、んあ……」

  そんな写真を撮られたら、私、恥ずかしすぎて死んじゃうかもしれないです。
  唯先輩の指、一生懸命に綺麗にしますから、どづか許してくださいよぅ。

梓「んむっ、ふう、くぷぷ、ちゅっ、れる、れろっ……んふ、ちゅううっ、ちゅ、ふあ……はあ、はぅ……唯先輩、これで、どおでしょう?」

唯「ん……うん、結構気持ちよかったし、綺麗になったね……けど、駄目。私が隣にいたのに、ひとりでえっちぃことしたのは許せないよ」

  ばさっとお布団が剥ぎ取られる。
  浴衣は勝手にまくれてて、私と唯先輩の素足が絡み合ってるいやらしい光景。
  そして……太ももの途中まで脱ぎかけの、私の縞々ぱんつ。

梓「や……や、です……唯せんぱぁい……」

 
273以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:24:00.82:91lSQpkt0

唯「駄ぁ目。撮っちゃうからね……はい、チーズ」

  ぱしゃ。
  ぱしゃぱしゃ。

梓「やああっ! お願いです、許してくださいっ! も、もうこんなことしないから、だからっ」

唯「……本当に? 約束?」

梓「約束します……んく、ぐす……本当に、唯先輩と一緒の時は、無理に起こしてでもえっちぃことしてもらいますから……」

唯「そっか、うんうん。それならいーんだよ。もう今夜は写真は撮らないであげるね」

  うう、消してくれるわけじゃないんですか。

唯「んじゃ、少しだけ一緒にお風呂に入ろっか。拭くだけより、洗った方がすっきりするでしょ、お股」

梓「うく……は、はい……」

  私、唯先輩を起こす気は全然なかったのに……こんな目に遭わされるくらいなら、最初からお願いしてた方がよかったかも。

 
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:26:01.20:91lSQpkt0

よくじつのあさ!

唯「おはよう! 清々しい朝! そしてあずにゃん、今日もよろしく!」

梓「おはようございます……はあ」

唯「おりょ? 元気ないね、あずにゃん……もしかして夜中、私が目を覚ます前に、何回もひとりエッチしてたのかにゃ~?」

梓「あの一回だけですよっ! 元気ないのは、その……唯先輩とお風呂入ったら、結局またエッチに雪崩れ込んじゃったせいです……」

  さっとお湯を浴びて流すだけでよかったんだけど、唯先輩がわざわざ背中を洗ってくれたり、湯船の中で後ろから抱っこしてきたり。
  それだけなら安眠出来たかもしれないのに、本格的に唯先輩のスイッチが入っちゃったみたいで……大変だったなあ。
  でも……えへ、えへへ……自分でするより、すっごく気持ちよくしてもらっちゃったなあ。

唯「朝ご飯はなっあにっかなぁ~♪」

  洗顔を済ませ、浴衣から着替えつつ鼻歌を鼻ずさむ唯先輩。
  私と同じくらいしか寝てないのに、この人はどうして元気なんだろう。
  もしかして夜中のエッチの時、私の元気を吸われちゃったのかな。

梓「普通に、ザ・和食って感じの献立だと思いますよ」

唯「そうだね~。むしろそうでないと拍子抜けだよ」

  私も着替えて洗顔、戻ってくると仲居さん達が手早くお布団を片付けているところだった。
  ……へ、変な染みとか、出来てないかどうか確認はしたけど……バレたりしないよね?

女将さん「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね」

梓「んにゃっ!?」

 
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:28:01.28:91lSQpkt0

唯「やーん、うふふふふ。お布団ありがとうございました」

女将「あらあら、本当に可愛らしいですこと」

  な、何が!? 誰が!?
  っていうか会話してくださいよ! 意味深な微笑みを交わしてないで!

女将「では、朝食のご用意をいたしますので、少々お待ちを」

唯「はい! よろしくお願いします!」

梓「ううっ……少しくらい恥ずかしがってくださいよぉ……」

  私の呟きをよそに、てきぱきと並べられていく料理。
  白いご飯に焼き鮭、お味噌汁、海苔と卵と小鉢。

唯「ザ・和食だね! あずにゃん!」

梓「そうですね、ええ……」

  わかりましたよ、もう。
  旅の恥はかき捨てですもんね、こうなったらちゃんと腹ごしらえするですよ。

女将「それではごゆっくりどうぞ。ご出立の折には、フロントまでお電話くださいませ」

唯「はーい」

梓「どもです」

唯「んーと……ほっ」

 
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:30:01.56:91lSQpkt0

  ぱしゃ。

唯「んじゃ、食べよっか。あずにゃん」

梓「はい」

唯「いっただっきまーす!」

梓「いただきます」

  んぐもぐむぐ……うん、美味しいですね。
  安宿だと、焼き鮭なんかはすっかり冷めたのが出てくるのに、まだ湯気がほこほこですよ。

唯「もぐもぐ……何から何まで美味しいね、すごいねこの旅館」

梓「はい……んぐ、もぐ……ここら辺って、どうも海産物に力を入れてるみたいですが」

  あ、でもお味噌汁の具は豆腐とお揚げ。
  まぁ、朝から丼でアラ汁なんて出てきてもちょっと引きますが。

 
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:32:02.08:91lSQpkt0

唯「海産物? んぐ、ずずー……」

梓「はい。昨夜だって、お肉は申し訳程度にしか出てきませんでしたし、昨日のお昼も海鮮丼だったりしたじゃないですか」

唯「そういえば、そうだったねえ……天ぷらも海のものばっかりだったし、美味しかったけど」

梓「お魚苦手な人は、ちょっと厳しいかもって、レポートに一筆書いておいてもらえればと……もぐもぐ」

  うわぁ、この海苔、味付きじゃない……高いやつだ。
  うーん、海苔だけ取っても少し贅沢な気分。

唯「はむっ、もぐもぐ……おひつにお代わりご飯があると、得した気分になれるよね」

梓「はい? いえ、私、朝からお代わりってしない方なので……」

唯「だって、鮭で一杯、卵で二杯。小鉢とお味噌汁で三杯は食べられない?」

梓「んず、ずずー……私はそんなに食べられません。よかったら唯先輩、食べ過ぎない程度にどうぞ」

唯「まーかせて! あ、あずにゃんの分の卵、食べないんだったらもらっていい?」

梓「は、はい……四杯目確定ですか」

唯「大丈夫、ここのお茶碗うちよりちっちゃいから!」

  何ていうか、朝からどんな食欲ですか。
  っていうか、よく入りますね、そんなに。
  っていうか、絶対太りますよね? 太らないハズがないですよね?

 
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:35:01.01:91lSQpkt0

でっぱつ!

女将「お泊まりいただきまして、誠にありがとうございました。機会がありましたら、どうぞまたお立ち寄りくださいまし」

唯「いえいえ、こちらこそほんとーにお世話になりました! ご飯もとっても美味しかったし、温泉も気持ちよかったです!」

梓「……私も、その……お世話になりました」

女将「うふふふふ」

  ううっ、そういう含んだような笑い方されると、とっても恥ずかしいんですけど。

唯「あ、そうだ! すみません、シャッターお願いします! 記念写真撮りたいので!」

女将「はい、こちらのボタンでよろしいですか?」

唯「よろしいです!」

梓「ちょ……唯先輩、そんな言い方は失礼ですよっ」

  ……なぁんて、心配して恐縮する私のことなんてお構いなし。
  唯先輩は、私の手を引いて旅館ののれんの前に立つと、背後から覆い被さってくる。

唯「んへ~……あずにゃん、笑顔だよ笑顔っ! あと、ピースピース!」

梓「ん、んもう……普通に恥ずかしいのに、無理言わないでください……」

  それでも、まあ、記念だから。
  ぎゅっと抱き締められながら、ほっぺをむにっとすりつけながら、手をチョキにして前に出す。

 
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:36:31.11:91lSQpkt0

女将「いきますよー、アイキャンフラーイ」

唯「アイキャンフラーイ♪」

梓「フラ!?」

  ぱしゃ。

梓「あ」

唯「……どうでした?」

女将「可愛く写ってらっしゃいますよ、ほら」

唯「おお……こりはなかなか」

  い、一体何がどうなって『なかなか』なんです!?
  ちょ、唯先輩、見せてくださいよ!

女将「では、駅までお送りいたします。道中、お気を付けてどうぞ」

唯「はーい。ありがとうございました!」

梓「ううっ……あ、ありがとうございました……」

  色々問い詰めたり撮り直したいとか思うんだけど、電車の時間が迫っていた。
  いいや、うん、こういう時って割とまともに写ってることが多いし。

 
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:38:33.21:91lSQpkt0

しんかんせん!

唯「また駅弁買えなかったよ……」

梓「乗り遅れたら元も子もないですよね」

唯「ううっ、お願いだよあずにゃん。車内販売のお姉さんが来たら必ず呼び止めておくれ」

梓「え?」

唯「何かね、朝ご飯一杯食べたせいか、何だか眠くなってきて……」

  いえ、まさか、そんな。

梓「そっ、そうだ唯先輩! 私、実は寝不足だから帰りは寝ようと思ってたんです! あー眠い! おやすみなさいっ」

  一気にまくし立てて、ぱふっ、と唯先輩の胸に顔を埋める。
  ……手すりが邪魔だなあ、って思って、先に上げておくべきだったと思いつつ、寝たふりをしながらぐいっと。

唯「……あずにゃん?」

梓「……すー、すー……」

唯「……まぁ、買えなくてもいっか。一緒に寝よ、あずにゃん」

梓「ん……すーすー……すー」

唯「さすがに身体を斜めにしてまでおっぱいに顔を押し付けるのは、無理な姿勢だと思うよ?」

  ええ、もう早くもキツいなあって思ってたところなんです。

 
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:40:35.95:91lSQpkt0

梓「……こお、でもいいですか?」

唯「うん、いいよ。窮屈そうだけどね」

梓「いえ、そんなことないです。私ちっちゃいですから」

  丸まって、唯先輩のお膝の上に頭を乗せて、目をつむる。
  ……うん。割と、悪くない寝心地です。

唯「ふぁ……おやすみ、あずにゃん」

  唯先輩は、私の肩と頭に手を置いて、優しくなでてくれて。
  何か、猛烈に眠かったわけじゃないのに……段々、眠く……。

梓「おやすみ、なさい……」

  ぐっすりと眠って、私が先に起きた頃に丁度車内販売が回ってきて。
  お昼もお腹を空かせることなく、私達は無事に家に帰り着いたのでした。

 
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:43:01.72:91lSQpkt0

そのご!

唯「旅館の前で記念撮影した写真を持ってきたよ、ムギちゃん!」

紬「えっ? 写真は撮らないハズじゃあ……レポートはもう書いてもらったし……」

唯「あずにゃんがね、ムギちゃんのお陰で素敵な旅行が出来たから、一枚だけあげてもいいって!」

梓「……ま、まあ、そういうわけです……あ、USBメモリは返してくださいね」

  照れ臭いけど、ムギ先輩のお陰なのは間違いないし、心ばかりのお礼というか。
  勿論、私がチェックしてUSBメモリに一枚だけコピーして、ですけど。

紬「あらら、まあまあ♪ 私、後輩に不器用ながらも気を遣われるのが夢だったの~♪」

梓「どんなピンポイントで歪んだ夢ですかっ!?」

紬「うふふ。ありがとう、梓ちゃん。このUSBメモリ、うちの家宝にするわね~」

梓「それ1個しか持ってないんで、写真コピーしたら返してくださいってば」

  さり気なく宝物にされるところだった、危ない危ない。

唯「そんでね、次のデートはいつにしようか話し合ってるところなんだけどー」

紬「むっ!? ふむふむ、是非私にも相談して欲しいわね!」

唯「こないだはムギちゃんに甘えすぎだったから、今度は近場でどうかなあって」

紬「気にしなくていいのに……丸二日拘束されるモニターアルバイトの日当だと思ってくれれば、妥当なラインだったんじゃないかしら?」

 
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:45:01.34:91lSQpkt0

梓「ええとですね、頻繁に旅行に行くというのも何ですし……ちょろっと出かけてうちに帰って、一緒にごろごろするとか、そういうのもいいなあと」

紬「ふむふむ! 念の為、そのごろごろの内容を詳しく聞かせてもらえないかしら!」

唯「ええとね、私があずにゃんを抱っこして座ってね、何となくそーゆー気分だったらあずにゃんの身体を触っ」

梓「ちょおおおおおっと! 唯先輩!?」

紬「ふむふむふむ! ちなみに、梓ちゃんがそーゆー気分の時は!?」

唯「うぅん、それがまた可愛いんだよぉ。ほっぺすりすりって甘えてきて、おっぱ」

梓「わ、わーわー! わああ! も、もう用は済みましたから! 帰りましょう、唯先輩!」

唯「えぇー」

  どうしてそうナチュラルに何でもかんでもバラしちゃおうとするんですか、貴女は。

紬「ふぷっ……お、おっぱ?」

梓「ムギ先輩は少しハナチを自重することを覚えてください」

  はあ。
  やっぱり油断のならない女狐ですね、ムギ先輩は。
  何ていうか……私と唯先輩の仲に強引に踏み込んでこないのはいいんだけど、それでも前途多難な予感がしますよ、んもう。

~おしまい!~

 
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 13:47:20.58:91lSQpkt0
今回はこれにて終了だよ!
保守支援してくれた人ありまとう、お疲れ様ーノシ

 
292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/28(火) 17:23:37.63:hs+TWGvHO

次回も楽しみにしてるぜ