- 唯「放課後てぃーたいむとらべらー」 前編
唯「放課後てぃーたいむとらべらー」 後編
506:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 02:19:10.38:3WFb6kmJ0
>>77から続く
2010年5月8日 平沢家
『ドラえもーん!』
『そうだ! タイムマシンを使おう!』
憂「そんなものが本当にあったら便利なのにね」
唯「むふふぅ」
憂「ん?」
唯(それがあるんだなぁ♪ でもみんなには内緒にしろって言われてるから)
憂「どうかした?」
唯「いいえー(ごめんねぇ憂)」
唯「きっとタイムマシン、いつかできると思うよ!」
憂「うふふ、だったらいいなぁ」

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韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
509:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 02:23:02.50:3WFb6kmJ0
唯「憂はタイムマシンがあったら何がしたいの?」
憂「一昨日のスーパーのバーゲンセールに行きたいかも」
唯「えー、そんなもん?」
憂「だめかな?」
唯「過去でも未来でも、どこでも行けるんだよ? もっと色々あるって」
憂「じゃあ未来にいってお姉ちゃんの子どもでも見てこよっかな」クスッ
唯「いるかなぁ」
憂「どうだろうね。きっと可愛いと思うよ」
唯「でも私じゃなくて父親のほうに似てたら?」
憂「それでも可愛いよ」
唯「そっかぁー、よかったぁ」
514:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 02:26:49.38:3WFb6kmJ0
・・・
ガチャリ
唯「ふぁ~……憂とお喋りしてたらもうこんな時間になってたとは」
唯「寝ちゃお、寝ちゃお~!」
唯「あ、でも歯磨きちゃんとしておかないと」
唯「虫歯は無視できない、なんちゃってー……」
ガチャリ
シュッ
?「こ、ここは……」
529:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 03:47:33.15:prd3wFmj0
ガチャリ
唯「よし寝るよー!」
「お休みの前に少しお話させてもらってもいいですか」
唯「……え」
梓「……えっと、こんばんは。唯先輩」
唯「あずにゃーん! あーずにゃーん!」ギュッ
梓「ちょ!?」
唯「寝る前にあずにゃんに抱きつけるとは幸せですなぁ、むふふ」
唯「……あれ」
唯「でもなんであずにゃんが今ここにいんの!?」
梓「気づくの……遅いです」
550:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:10:06.52:3WFb6kmJ0
唯「まさか窓から忍び込んだとか! えー、うっそー!」
梓「勝手に変な想像しないでくださいよ!」
梓「いいですか? 私は未来から来た中野梓です。タイムスリップして」
唯「未来あずにゃん!?」
梓「……」
梓「話、進めてもいいですか?」
唯「あ、ごめん! どうぞどうぞ!」
梓「……まずはどうしてここに私が現れたのかを説明します」
梓「私の時間のタイムマシンはもうガタがきてて、ていうか壊れちゃったというか……まぁ、よくわかってないんですけど」
梓「年月日に場所と時間、それらが指定できずにランダムに跳ばされてしまう状態なんです」
唯「……へぇー」
梓(絶対この人理解してない)
552:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:15:18.16:3WFb6kmJ0
梓「さっき、勝手に申し訳なかったですけど唯先輩の携帯の日付を確認させてもらいました……2010年の5月8日、間違いないですよね?」
唯「もうすぐ9日になるよ」
梓「それはいいから! 間違いないんですよね!?」
唯「えー……うん」
梓「……ここまでたどり着くまで予想外に苦労しませんでしたよ。運よく最初に辿りつた時間がタイムマシンが正常なときでしたから。あとはある程度皆さんがタイムマシンについて知識があった時間に跳んできたんです」
梓(でもおかしいんだよね……あの時間のタイムマシンは確かに正常だったはずなのにどうしてこんな夜に、しかも唯先輩の部屋に来ちゃったのかな)
唯「……もしかして、あずにゃん。とんでもなく危ないことしてたってこと?」
梓「はい。かなりの賭けだったと思います。でもそれぐらいの覚悟は……」
ギュッ
唯「よかったぁ……あずにゃんが無事でよかったぁ……」
梓「また抱きつく……もぉ、唯先輩は変わりませんね……」
553:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:20:13.39:3WFb6kmJ0
唯「でも」
唯「そこまでしてタイムスリップしてやりたかったことって何なの?」
梓「……はい」
梓「そもそも、私は未来の私と言ってもそう遠くに存在する中野梓じゃないんです」
梓「2010年5月24日から来ました」
唯「あれ、ほんとにそこまで遠くないかも」
梓「ここからが重要です。ていうか……これから私が話すこと、信じてくれますか」
唯「あずにゃんがここまで来てウソつくはずないもん。信じるよぉ」
梓「……ありがとうございます」
梓「唯先輩。それに、律先輩に澪先輩、ムギ先輩は……」
梓「5月22日に……4人ともそれぞれ死んでしまいます」
唯「はい?」
555:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:25:21.47:3WFb6kmJ0
唯・梓「……」
梓「唯先ぱ――」
唯「またまたぁ~あずにゃんったら冗談キツいんだからぁ~」
梓「冗談じゃありませんっ!!!!」ドンッ
唯「!」
梓「……信じてください」
唯「う、うん……」
梓「このままじゃ、先輩方は死んでしまうんです。死因は……もう覚えてません」
唯「覚えてないって?」
梓「何度も何度も救おうと22日にタイムスリップして皆さんの様々な死に方を見てきましたから……」
唯「うげっ……」
557:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:30:34.14:3WFb6kmJ0
梓「22日に死ぬことはもう決まった運命みたいなものなんです。だから救いようもない」
唯「じゃ、じゃあ私たちこのまま死んじゃうのを待ってることしかできないの!?」
梓「そうさせないために私がわざわざ苦労してタイムスリップしてきたんですよ。唯先輩」
唯「あ……そっか! じゃあ方法があるんだね!」
梓「ええ。ただ成功するかはわかりませんけど」
唯「ダメじゃん!」
梓「それしか方法がないから仕方がないでしょう!? グダグダ言わないでっ」
唯「ううっ……」
梓「とにかく、やっとこの話をまともに話すことができる時間の先輩に会えたんです。もうやってもらうしかありません」
唯「い、今すぐ?」
梓「ううん。明日、先輩方にまとめてもう一度この話をしてからです。さすがに唯先輩だけに任せるのは不安だから」
唯(このあずにゃん、いつにもましてビシビシ言ってくるよぉ……)
559:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:35:51.53:3WFb6kmJ0
梓「……ごめんなさい。急に色々言われたって混乱しちゃいますよね」
唯「まぁ、よくわかんないけど」
唯「あずにゃんが一生懸命私たちのために頑張ってくれてるんだもん! だったら先輩としてちゃんとそれに応えなきゃ」
梓「唯先輩……」
唯「そういえばみんなに会って大丈夫なの? 未来のあずにゃんが」
梓「タイムマシンのことをこちらの皆さんは既に知ってることだし、大丈夫だとは思いますけど」
梓「ていうか今さらそんなこと気にしてられないし……というかこうして唯先輩に会っちゃってるし」
唯「あ」
梓「心配することはありません。もちろんこの時間の私と会うことになるのも覚悟してます」
梓「私ならきっと大丈夫なはず……はず」
唯「自信ないのぉ?」
梓「うーん……」
560:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:40:17.29:3WFb6kmJ0
梓「ところで、私しばらくこの家に寝泊まりしても構わないでしょうか?」
梓「このままじゃ帰るにも帰れなくて……」
唯「うん! いいよ! ていうか大歓迎!」
梓「あ、ありがとうございます!」
唯「でも憂に見つかると色々面倒かなぁ」
梓「見つからないようなところで寝ればいいんです。例えばクローゼットの中とか」
唯「そんなのあずにゃんがかわいそうだよ……いい。一緒に寝よう? 憂に見つかったら私がなんとかしてあげるし、憂だって話せばわかってくれるよ」
梓「まぁ、それはそうかも……ていうか一緒に?」
梓「同じベッドの上で……並んで寝るってことですか?」
唯「あったりめーよ!」
561:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:45:16.23:3WFb6kmJ0
・・・
梓(けっきょく)
梓(こうなっちゃうか……)
唯「あずにゃーん、すりすり~」
梓「い、いい加減寝てくださいよぉ……」
唯「もちょっと、もちょっとー」
梓「むぅ……」
唯「……ね、あずにゃん」
梓「え?」
唯「今まで寂しい思いさせちゃってごめんね」
562:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:50:34.65:3WFb6kmJ0
梓「そんな……別に……。ていうかこっちの時間の唯先輩は関係ないじゃないですか……」
唯「まぁ、それはそうなんだけど……」
唯「あずにゃんは私たちのためにいっぱい頑張ってくれたんだよね。私、よくわかんないけどほんとに嬉しいんだよ?」
梓「……」
唯「ぜったい、ぜったいのぜったい。私は、ううん、私たちは」
梓「……」
唯「あずにゃんを一人ぼっちになんかさせないから、安心して」
梓「……」
梓「あの」
唯「うん?」
梓「……抱きしめて、唯先輩」
唯「うん」ギュッ
563:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:54:29.88:7r0k+F3yO
2010年5月9日
憂「お姉ちゃーん、朝だよ。起きて」
唯「ん、んー……」
憂「ほら、遅刻したら大変だよ?」
唯「あずにゃ……あーずにゃん…………はっ!」
唯「う、憂!」
憂「え?」
唯(もしかして、あずにゃん見つかっちゃったかな)
唯「ねぇ、憂。あずにゃん」
憂「うん?」
566:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:05:09.81:3WFb6kmJ0
憂「梓ちゃんがどうかした?」
唯「え、あ……あれ?」ガサ
唯(なにこのメモ?)
―やっぱり憂にバレて色々説明するのも面倒だと思うので、さきに外に出ていますね。どこかで時間を潰そうと思います―
唯「ありゃ」
憂「なに? そのメモ」
唯「な、なんでもない!」
唯「それより朝ご飯食べようよぉ。私、お腹ぺこぺこ!」
憂「そうだね。じゃ、早く起きてきてね」
唯「はーい」
569:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:10:01.27:3WFb6kmJ0
2010年5月9日 教室
唯(未来あずにゃん、どこ行ってるのかなぁ)
紬「唯ちゃん?」
唯「ほえ?」
紬「あの、タイムマシンはこれからどうなっちゃうんだろねって」
唯「そうだねぇ……ムギちゃんはどうなってほしいの?」
紬「誰かの幸せのために使えたらなー……なんて」
紬「本当のこと言っちゃえば、全然わかんない」
唯「私もかな、えへへ」
紬「ふふっ」
紬「タイムマシンって……誰が作ったのかしら?」
唯「へ?」
572:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:15:05.24:3WFb6kmJ0
澪「唯、ムギ、おはよう」
律「二人でなに話してたー?」
唯「おはよー。えっと、なに話してたんだっけ」
紬「別に大した話じゃないわ」
律「そう? そういやさ、さっき梓に会ったの。あ、学校の外でな」
紬「えっと、それが?」
律「うん。とりあえず声かけたんだけどさ、私と澪の姿見た瞬間すんごい嬉しそうにして」
澪「ふふ、可愛かったな」
唯「まさか!」
律「ん?」
唯「あ、なんでもないっ」
573:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:20:02.44:3WFb6kmJ0
律「んでんで、今度は放課後大事な話があるから覚悟しててくださいって、すんごい真面目な顔して言ってきたのよ」
紬「大事な話……何かしらぁ」
澪「最近部活真面目にしてないから、梓怒ってるのかな」
唯「そ、そんなことないと思う!」
澪「そう?」
律「どうだかなぁ。とりあえずその後梓どっかに走ってっちゃって……あいつ、学校サボる気なのかね」
紬「梓ちゃんはそんなことする子だとは思わないけれど」
律「まぁねぇ……なんだったんだろ、梓のやつ」
唯(たぶんそのあずにゃんって未来あずにゃんだよね……?)
574:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:25:18.25:3WFb6kmJ0
軽音部室
ガチャリ
梓「あ……」
紬「あら、梓ちゃんが一番だったのね」
律「梓はやいなぁ、気合い十分ってところか」
澪「梓ごめんな。私たち真面目に練習するから」
梓「え?」
唯「あ、あずにゃん!」
梓「はい!?」
唯「あの話、みんなちゃんと信じてくれるかなぁ」ヒソヒソ
梓「は……?」
梓「……あの、皆さん。さっきからいきなりどうしたんですか?」
「え?」
575:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:30:30.11:3WFb6kmJ0
澪「大事な話があるとか朝言ってただろ?」
唯「そうだよ! とっても大切な話でしょ!?」
梓「え? えぇ?」
紬「梓ちゃん?」
梓「む、ムギ先輩?」
唯「あーもうっ! 大丈夫だよ! みんなあずにゃんの話、きっちり聞くから!」
梓「えぇー……」
梓(この人たち……私に何を求めているんだろう)
梓(ま、まさか! 私、試されてる!?)
梓「えっと、えっと……」アタフタ
ガチャリ
梓「遅くなっちゃったかな……あ、みんないる」
律・澪「え」
紬「あ、あれ……あれ?」
梓「私!? 私がもう1人!?」
577:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:35:11.83:3WFb6kmJ0
・・・
律「つまり」
律「お前は未来の梓なのか」
梓「はい」
澪「ということは私たちが朝会った梓は」
梓「私ですね」
唯「もうっ、紛らわしいよぉ」
梓「でしょうね……ごめんなさい」
紬「そ、それよりこっちの梓ちゃんが」
梓「あわわわわ……」
律「ん? こっちは今の時間の梓でいいんだよね?」
梓「はっ、はい!」
律(本当に紛らわしいな……)
578:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:40:02.28:3WFb6kmJ0
唯「そうだ!」
「?」
唯「じゃんじゃじゃーん!」
梓「シールですか?」
紬「それがどうかしたの?」
唯「これを未来あずにゃんのほっぺに貼りつけると……ほら!」
澪・律・紬「おぉ~」
み梓(未来)「わかりやすくなったのはいいですけど、別にシールじゃなくたって」
唯「でも可愛いよぉ~」
律「似合ってるな、たいへんよくできましたシール」
み梓「……」ムカッ
梓「あ、あの、私のこと忘れてませんよね……?」
579:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:45:17.90:7r0k+F3yO
み梓「それで、皆さん」
梓「それって私も含む?」
み梓「うん」
梓「ほっ……」
律「で、なんだよ? あるんだろ? 大事な話が」
唯「う……」
澪「どうした唯?」
み梓「唯先輩には昨日の夜に説明したんです」
梓「唯先輩の家に行ったの!?」
み梓「それも含めて話すから黙って聞いてて」
梓「うっ……」
582:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:00:07.16:3WFb6kmJ0
・・・
澪「――わ、私たちが死んじゃうって……冗談はやめてくれよっ」
み梓「冗談だったらわざわざ未来から来ません」
唯「私は信じてるからね!」
み梓「ふふ、昨日も聞きましたよ」
律「梓がウソをつくとは思えないし、私も信じるよ」
紬「私も」
澪「……うん」
み梓「皆さん……」
律「よかったなぁ、梓。普段からいい子にしてたからこんなこと言われてんだぜー?」
梓「な、なんで私に言うんですか!?」
唯「それで、未来あずにゃん。どうやったら私たちは助かるの?」
584:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:05:07.73:3WFb6kmJ0
み梓「えっと、ですね。難しい話になりますけど、とりあえず聞いていてください」
唯・律「はーい!」
み梓(大丈夫かな……)
み梓「これはハッキリとわかっていることじゃなんですけど、恐らく、タイムマシンを初めて使ってから過去でみなさんが色々してきたことで、世界が変わったんだと思います」
澪「変わったって?」
み梓「もちろん。22日に先輩方が死んでしまう世界に」
律「過去を変えたら世界が変わるってのはどういうことなんだ?」
み梓「それについては……まぁ、詳しい人がいますから後で教えてもらってください」
律「詳しい人……?」
み梓「とにかく、どう考えても4人がその日にそれぞれで死んでしまうなんて偶然、おかしいんです。……まぁ、私見も入っちゃってますけど」
み梓「だから、今までに行ってきた過去にもう一度行って、世界を変えてしまった原因を取り除いてくるんです。そうすることができればもしかすると助かる、かも……」
587:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:10:16.89:3WFb6kmJ0
紬「確証は持てないのね?」
み梓「で、ですけど! これしか方法はないんです!」
律「なら試してみるっきゃない!」
律「黙って何もしないよりはマシだろ? な?」
み梓「は、はい!」
紬「ところで未来の梓ちゃん。その知識はどこから……」
み梓「それは――」
澪「す、すとっぷ!」
唯「どったの澪ちゃん?」
澪「そろそろ過去の私たちがこの時間に来ると思うんだけど……」
590:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:15:12.15:3WFb6kmJ0
唯「え、なんで?」
澪「忘れたのか、私たち部室覗きに行っただろ?」
律「そういえば……って、だったらここに梓が二人いたらまずくないか!?」
梓「え?」
紬「梓ちゃんちょっとそこの物置きに隠れて!」グイグイ
梓「ちょ、ちょっと! 私は未来の私じゃ……!」
律「んなのどっちでもいい!」
ガチャリ
紬「ふぅ……」
み梓「な、なんかすいません」
唯「気にしないでいいってー」
律「それよりなんかこれだと不自然だな……みんな! とりあえず席につけ!」
591:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:20:09.17:3WFb6kmJ0
唯「……んで?」
澪「とりあえずいつものティータイムみたいな会話をしようっ」
唯「いつも何話してるっけ~」
律「自然体だ! 自然体!」
唯「でもどうするの?」
澪「そうだなぁ」
紬「やっぱり今後の部活の方針を決める会話とか?」
律「いやいやいや」
み梓「こんな感じのグダグダで十分だと思いますよ」
592:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:25:03.71:3WFb6kmJ0
・・・
律「も、もういいかな?」
澪「たぶん……」
み梓「さすがに30分も様子見なんてしてないと思いますけど」
紬「とりあえずお茶にしよっか」
唯「さんせー!」
澪「なんか喉渇いちゃったな」
律「お菓子は? 今日のおっかしはー!」
紬「ちゃんとありますよー」
律「いえっす!」
み梓(なんだか……ほっとするなぁ)
梓「誰か忘れてませんか!?」ガチャ
「あ」
593:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:25:50.21:7r0k+F3yO
梓「ひどいですっ、あんまりですっ……」グスン
唯「よしよし、いい子じゃあずにゃん」
澪「しばらくしてからまたあの私たちが戻ってくるからそれまでにはこの部室から離れなきゃな」
唯「なんで?」
澪「なんでって、もとの時間に無事帰らせるために決まってるだろ」
律「そっか。いやー自分たちのこととはいえ、面倒だな」
紬「それで、未来の梓ちゃん。さっきの話の続きなんだけど」
み梓「あ、はい」
み梓「今さっき皆さんに話したことは全てある人から教わったことなんです」
律「ま、まさかタイムマシン太を作った人か!?」
澪「タイムマシン太で定着したのか……」
梓「それで? ある人って? もったいぶらないで早く言ってよ」ムスッ
み梓「さわ子先生」
律・唯「さわちゃん!?」
595:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:35:04.95:3WFb6kmJ0
澪「どうしてさわ子先生……まさか」
律・唯「タイムマシン太作ったのはさわちゃん!?」
澪「じゃなくて、あれはさわ子先生の物だったんじゃないか? 梓?」
梓「へ?」
み梓「はい」
梓(あ、そっちか)
み梓「私が過去へ行って先輩たちの死を回避しようと何度も挑戦していたときに先生が話してくれたんです」
み梓「このままでは絶対に助けられないって。そこからタイムマシンのこと、それを所持していた自身のことを話してくれました」
律「びっくり……」
紬「正直、私も……」
597:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:40:15.99:3WFb6kmJ0
唯「だったら私たちもさわちゃんから詳しく話聞いたほうがいいよね」
澪「そうだな。なにもわからないよりはマシだし」
さわ子「呼んだ?」ガチャリ
唯・澪「ナイスタイミング……」
さわ子「……うん?」
さわ子「ひー、ふー、みー……ねぇ、うちの部員って何人いるんだっけ?」
律「6人だよ~。忘れちゃったのかよぅ」
紬「り、りっちゃん」
さわ子「ウソおっしゃい。5人でしょ? 人数少ないんだからすぐわかるわよ」
さわ子「……じゃあ、なんでここに6人いるのかしら? ま、まさか……」
澪「あわわわわ……」ガタガタ
律「おい」
598:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:45:13.86:3WFb6kmJ0
梓・み梓「あ、あの! 先生!」
さわ子「あらぁ……? 梓ちゃんが二人……」
唯「さて、どっちが本物のあずにゃんでしょう!」
さわ子「よくできたマスクねぇ。ていうか体の大きさもそのまんま」グイグイ
梓「あいてててっ」
さわ子「胸も、むふふ……ぺったんこねぇ……」ペタペタツンツン
み梓「っ!?」バッ
律「エロオヤジいいかげんにせいっ」ペチンッ
さわ子「あぁんっ」
さわ子「……まぁ、冗談はこれぐらいにしておいて」
澪・紬(冗談だったんだ)
さわ子「説明してちょうだい。梓ちゃんが二人いるわけを」
600:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:00:03.23:3WFb6kmJ0
さわ子「――なるほどねぇ」
唯「ウソだって思わないの?」
さわ子「例のタイムマシンの話が出てきてしまったんですもの」
さわ子「作り話にしてはできすぎてるしね」
律「まぁ、なぁ……」
さわ子「それで、未来の梓ちゃん。どうして未来の私はあなたと一緒にこっちに来なかったのかしら?」
さわ子「大事な教え子のピンチだっていうのに……」
み梓「これは私が勝手にやってることなんです。だから先生には内緒で来ました」
み梓「どのみち、一緒に来れる確率も低いと思います」
紬「そっか、タイムマシンが壊れていたから……」
さわ子「だとしても……まぁ、そのぶん私がしっかりするしかないか」
603:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:05:07.25:3WFb6kmJ0
唯「それにしてもこのタイムマシン、ほんとにさわちゃんのだったんだねぇ」
梓「だからここの物置にしまっていたんですね」
さわ子「まぁ、ね」
さわ子「自宅で保管しておくべきだったわ……」
澪「先生のもとにあった前はタイムマシンはどこに」
さわ子「私の叔父さんがゆずってくれたのよ。まぁ、本人はわかってないで渡したと思うんだけど」
律「その人、一度もあれに触ってないってこと? でもそれって変じゃないか?」
律「普通は一度弾いてみたりしないか?」
唯「大事にしてたんじゃない?」
澪「ギターコレクターとか」
律「うーん……」
604:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:10:15.74:3WFb6kmJ0
み梓「今はそんなことは関係ありません。とにかく早くなんとかしなきゃ」
さわ子「そうね」
紬「でも世界が変わってしまった原因がわからなきゃどう動けばいいかわからないんじゃ」
み梓「それは……まぁ」
律「虱潰しに過去へ跳べばいいんじゃないか? それでその時間に跳んできた別の私たちを見張って」
唯「あ、それいいね! りっちゃん隊長さっすがぁ」
律「だろぉ?」
澪「となると、5月4日……からだよな?」
紬「そうね」
梓「あ、でも!」
606:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:15:02.68:3WFb6kmJ0
梓「初めてタイムマシンを使ったのって私じゃないですか」
律「あ! ていうことはもっと前の時間で梓か何かしちゃった場合もあるってことか!」
み梓「ま、まさか私が原因で唯先輩たちを……」
唯「そんなことない! そんなことないよっ」
み梓「でも……」
紬「梓ちゃん。行った時間は覚えてる?」
梓「……あのときは何もわからない状態で色々跳んでてたので」
澪「まさか……」
梓「覚えて、ないんです……ごめんなさい」
澪「そんな……」
さわ子「……」
さわ子「……あんな物を私が受け取らなければこんなことは起きなかったのね」
さわ子「そして……」
唯「さわちゃん?」
611:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:20:17.84:3WFb6kmJ0
さわ子「私もね、世界を変えてしまったのよ。私の友達が死ぬ世界に」
梓「先生も!?」
さわ子「興味本意で過去でキッカケを作ったのが悪かったのね……許されない罪よ、これは」
律「き、気持ちはわかるよ。こんな物があったら誰だって……」
さわ子「……」
さわ子「少し、お話しましょっか」
唯「さわちゃん……」
澪「そ、その前に一回ここからでませんか? 過去の私と唯と律がそろそろ……」
唯「あ、すっかり忘れてた!」
さわ子「もぉ、空気読めないわねぇ……」
612:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:25:35.14:3WFb6kmJ0
「あっちにいきなり戻ったらムギたち驚くだろうな~」
「やめろってば! やっぱり一度電話したほうが」
「もうおそ――――」シュッ
「ば、ばかりつぅ~……」
「澪ちゃーん。次私ね~」シュッ
「ゆ、唯! ま……行っちゃった」
「もういいや……――――」シュッ
…ビリッ、バチバチバチッ…シュ~……
ガチャリ
律「行った……みたいだな。よし、もう入っても大丈夫ー」
唯「ふぃ~……」
梓「それじゃあさっきの先生のお話、聞かせてもらえますか?」
さわ子「ええ」
614:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:32:53.60:3WFb6kmJ0
2000年4月28日 教室
紀美「へー、SGかぁ」
さわ子「おじさんがね、譲ってくれて」
紀美「よかったじゃん! これでDEATH DEVIL結成ね」
さわ子「ちょ、ちょっと気が早すぎない?」
紀美「そんなことないって。さぁて、今日からさっそく練習だからねー」
さわ子「ふふっ、はいはい」
615:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:37:17.08:3WFb6kmJ0
2000年4月28日 軽音部室
ガチャリ
さわ子「私が一番乗りかぁ」
ガサゴソ、ストッ
さわ子「……ちょっと見てみよっか」
ジィーッ、ピッ
さわ子「よっこいしょ、っと」
さわ子「ふふっ、私のギターだ……」
パサッ…
さわ子「ん? なにこれ、メモ?」ス
さわ子(タイムマシン取扱についての注意……?)
618:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:42:01.53:3WFb6kmJ0
さわ子「タイムマシンって……ぷっ」
さわ子「なによそれ。何のこと?」
さわ子(えっと、このギターはタイムマシン。取扱いには注意すること……)
さわ子「……このギターがタイムマシン?」
さわ子(六弦で戻る年数、五弦で……)
さわ子「へー……おじさんも面白いこと考えるわ」
さわ子「試しに昨日へ戻ってみたりして」
ポーン、ポーン、ピーン
さわ子「やだこれ変なお――――」
619:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:47:07.29:3WFb6kmJ0
2000年4月27日 軽音部室
さわ子「――と」
さわ子「!!」
さわ子(な、なにいまの変な感じ!?)
ガチャリ
紀美「あれ? さわ子」
さわ子「の、紀美……」
紀美「あんた今日は家の用事あったんじゃなかったっけ? 親戚の家に行くとか」
さわ子「家の、用事?」
紀美「違うの?」
さわ子「ちょ、ちょっと待って紀美……話が」
さわ子「……あれ? ギター」
紀美「え?」
622:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 14:52:20.88:3WFb6kmJ0
さわ子「ね、ねぇ! ギターは!? 私のギターはどこいったの?」
紀美「ギター? あんたギターまだ持ってないじゃない」
さわ子「うそ!? 今日紀美にも見せたじゃない! ほら、SGって……」
紀美「さわ子。あんた大丈夫?」
紀美「ちょっと保健室に……」サ
パシッ
さわ子「私はおかしくないっ」
紀美「さ、さわ子っ」
さわ子「っ……!」
ガチャッ、タタタ…
紀美「あの子、どうしちゃったんだろう?」
623:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:00:04.28:3WFb6kmJ0
さわ子(なんなのよ……なんだってのよ……)
さわ子「……なんか、紀美に悪いことしちゃったかな」
ドン
堀込「おっと!」
さわ子「ご、ごめんなさっ……なんだ、先生」
堀込「山中! なんだとは何だ。ちゃんと前向いて歩けよ?」
さわ子「……」
堀込「山中? おーい」
さわ子「先生、今日は何月の何日でしたっけ……」
堀込「うん? 5月27日だが」
さわ子「……え」
624:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:05:08.05:3WFb6kmJ0
さわ子「27、ですか?」
堀込「あ、ああ……山中、お前顔色悪いぞ? 大丈夫か?」
さわ子「へ、平気ですっ。なんでもありませんっ」
さわ子「し、失礼します……!」
タタタ…
堀込「お、おい!? ったく……」
さわ子(おかしい! 今日は28日なはずよ? 27日は昨日!)
625:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:10:01.70:3WFb6kmJ0
さわ子「教室のカレンダーも27日……」
さわ子「まさか、あのギター本当に……」
さわ子「……」
さわ子(本当に過去に来れたっていうなら、私すごいよね?)
さわ子(だ、だってタイムトラベルしてきたのよ!? よくわからなかったけど……)
さわ子「えっと……あった」ガサゴソ
さわ子(メモ、一応ポケットに突っ込んでおいて正解だったわ)
さわ子(タイムマシンは夜になってから私の部屋にこっそりいけば使えるはず……)
さわ子「……ふふっ!」
626:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:15:08.86:3WFb6kmJ0
「あれ、さわ子。なんか嬉しそうじゃん。どうかしたの?」
さわ子「ちょっとね~」
さわ子(どうせなら帰る前に色々しておきましょっか!)
さわ子「ねぇ、○○さん。もし、あなたがタイムマシンで過去へ1日前に行ったら何する?」
「は? なによ急に……」
さわ子「いいから、いいから」
「そう、ねぇ……過去を変えたら未来も変わるよね?」
さわ子「え?」
「だってそうじゃない? 例えば、そこの窓がタイムマシンを使う前は割れてなかったとする」
「で、タイムマシンでそこの窓を割って、もとの時間に戻ってくるとすると……」
628:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:20:05.80:3WFb6kmJ0
さわ子「本来割れてなかった窓が割れてる?」
「たぶん」
さわ子「つまり○○さんは過去へ行ったら未来を変えたいってこと?」
「面白そうじゃない?」
さわ子「……そう、ね!」
さわ子「いいかも! ありがと、○○さん!」タタタ…
さわ子(そうね、そういうのも悪くないかもしれない! だったら……!)
629:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:23:55.95:3WFb6kmJ0
教室
さわ子「えっと、紀美の机は」
さわ子「あった、あった」
さわ子(さっきは悪いことしちゃったし、なんだか面と向かって謝るのも恥ずかしいから……)カキカキ
さわ子(紀美、ごめんね……っと)
さわ子「ん、これだけじゃちょっと物足りないか。少しつけたして」
さわ子「……by.タイムトラベラーさわ子、っと」カキカキ
さわ子「机にこんなに大きく書いて、紀美怒ったりしないよね?」
さわ子(さて、あとは夜になるまでそのへんでうろつこうかなぁ、ふふっ)
631:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:28:19.61:3WFb6kmJ0
2000年4月28日 自室
さわ子「――ぶないっ」
さわ子「あ……無事戻ってこれた?」
さわ子(もう少しで27日の私に見つかるところだったわ……ふぅ)
さわ子(でもメモのとおりにしたら無事に帰ってこれたし)
さわ子「色々不思議だったけど、いい体験にはなったかな」
さわ子「あ! でもこれだったら普通の楽器として使えないじゃない!」
さわ子「あー……もうっ、バイトしてお金貯めようかなぁ」
このときは自分がバカなことをしてきただなんて思いもしなかった。
後悔することになるなんて思いもしなかった。
632:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:33:02.85:3WFb6kmJ0
2000年4月29日 軽音部室
紀美「はい、さわ子のギター」
さわ子「ちゃんと保管しててくれたんだ!」
紀美「誰にも指一本触れさせてないから、安心しな」
さわ子「ありがとう紀美!」
紀美「でも昨日はギター放っておいてどこ行ってたのさ? しかも帰ってるし」
さわ子「ちょ、ちょっと急用で……」
紀美「そうなの? じゃあ、しゃーないね。さてとじゃあ……」
さわ子「あ! それと……このギター、やっぱり返さなきゃいけないことになったの」
紀美「えぇ~!? もらって2日で返すの!?」
さわ子(演奏するたびにタイムスリップしてたら……ちょっと、ね)
634:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:38:04.75:3WFb6kmJ0
・・・
「それじゃあまた明日~」
「さわ子、紀美! ばいばーい!」
紀美「おーう」
紀美「さて、私らもそろそろ帰るか」
さわ子「うん」
紀美「ところで私の机の上にあれ書いたのってあんた?」
さわ子「あ、わかった?」
紀美「ていうかあんたの名前書いてあったしね。んで、なにがごめんねなの? 謝られる覚えないんだけどな」
さわ子「……あの、ほら、私一昨日、部室で紀美に変なこと言って困らせちゃったじゃない? だから……」
紀美「ん? ……あー! 思いだした! うん、変だったよ! さわ子!」
紀美「ていうかあの日はなんで用事あったのにすぐ帰んなかったのさ?」
さわ子「えっとー……あ!」
635:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 15:43:09.31:3WFb6kmJ0
紀美「どうしたの!?」
さわ子「ギター……部室に忘れてきちゃった」
紀美「こ、ここまで来て今さら気づくかぁ、普通……」
さわ子「あんまりギター背負って帰るのに慣れてなくて、へへへ」
さわ子「ちょっと学校戻るから紀美はさきに帰ってて!」
タタタ…
さわ子(さすがに二日も学校に置きっぱなしにはできないよね……)
…ブゥゥーーン
640:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:00:06.69:3WFb6kmJ0
紀美「さわ子っっ!!」
さわ子「え――」
ドン!
さわ子(押された……!?)
キキィーッッ
さわ子(なにが――)
ドンッ
グシャァッ
さわ子「……」
さわ子「のり、み」
さわ子「のりみ……?」ガタガタ
紀美「 」
641:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:03:30.29:3WFb6kmJ0
紀美はトラックに撥ねられたその日に死んだわ。
頭を強く打ちつけたのが原因だったのかしらね。
……ううん、原因は私。
私が過去で未来を変えたせいで、紀美が29日に死ぬ運命が待つ世界へと変えてしまった。
偶然だったかもしれない?
そうだとしても、私があのとき紀美を殺してしまったことには変わりはない。
もっと車に気をつけていればよかったのにね……。
紀美はなんであのとき私を庇って助けてくれたのかしら。
私が轢かれていればよかったのに。
644:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:06:19.36:3WFb6kmJ0
紀美が亡くなってからしばらくは部屋から出ることができなかったわね。
目の前で人が死んだというショックと友達が死んだというショック。
あの頃の私にはとても重かった。……まぁ、今でも変わりはないけど。
話を戻すわ。
学校に今まで通り通えるようになった頃に、私はタイムマシンの存在を思い出したの。
そして思った。
過去へ戻って紀美を助けることができるんじゃないか、って。
でも未来の梓ちゃんは知っていると思うけれど、一度起きた死はそう簡単に回避することができない。
変えてしまった世界はそう簡単に戻すことができないの。
何も知らないそのときの私は何度も何度も紀美を助けようとした。無駄だということを知らずにね。
646:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:09:17.51:3WFb6kmJ0
さすがに繰り返し、親しい人の死を見ると精神的につらかった。
ついには耐えきれなくなった私は紀美を救うことを中断して、おじさんのもとに向かった。
タイムマシンを譲ってくれたのはおじさん。なら、なにか知っているんじゃないかと思ってね。
何かわかれば紀美も救えるかもしれないって。
……何もわからなかった。
それどころかおじさんはタイムマシンのことも知らなかったの。
話を訊いたときはとても笑われたわ。冗談にしてはよくできた話だって。
でもね、おかしいのよ。
648:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:14:07.01:3WFb6kmJ0
さわ子「タイムマシンを入れていたケースの中にあったメモはどう見てもおじさんが書いた文字だったの」
紬「似てただけだったとか……」
さわ子「かもしれないと最初は思ったわ。でももう一つのメモを見て確証したの」
梓「もう一つって……使い方を書いたメモ一枚だけじゃなかったんですか?」
さわ子「ええ。あとになって見つけたのだけど……それにはタイムトラベルについての注意とか、今までみんなに説明したようなことが書いてあった」
み梓「パラレルワールドのこと、とか?」
さわ子「そう。そしてそのメモの裏にね、おじさんの名前が書いてあったの」
さわ子「名前と一緒に、゛自分を忘れるな゛という文も添えてね」
律「自分を忘れるな?」
唯「どういう意味?」
澪「自分を見失うな、とかじゃないのかな」
650:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:19:04.13:3WFb6kmJ0
律「ていうか、さわちゃんのおじさん。もしかしたらトボケてるだけじゃないの?」
さわ子「そう思うでしょ? でも本当にわかっていない感じなのよ」
唯「ほんとかなぁ」
さわ子「ええ」
み梓「どっちにせよ、まずは先輩たちを救うことが先決です。それができてからこのことについて調べてくれませんか?」
さわ子「……そうね」
さわ子「私が行くわ。私ならもし過去でもう1人の私と会っても説明要らずだし」
律「でもさわちゃんは私たちがしでかしてきたことが何かよくわからないだろ」
律「だったら直接私たちが行ったほうが早いよ」
澪「私も律と同意見です」
さわ子「……言い忘れてたことがあった」
梓「え?」
651:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:21:06.45:WKOw1B+W0
さわ子「紀美の机に字を書いたってのはさっき話したわよね?」
唯「ごめんね、ってでしょ?」
さわ子「あれが世界を変えた原因だと思った私は過去へ行ってあれを消そうとしたの」
紬「原因を取り除くことができれば、もしかしたら紀美さんは死なずにすんだかもしれないからですよね」
さわ子「そう。でもね、消せなかった」
律「は? なんでだよ?」
さわ子「消すことができなかったのよ……。紀美の机に近づけなかった」
律「近づけなかったって……まわりに誰かいたから、とか?」
さわ子「違う。近づこうとすると何かに押し出されるの」
さわ子「実態のない。なにか……よくわからない力、みたいな。なんというか……」
さわ子「何をしようと、どう近づこうと机には近寄れなかった」
654:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:27:05.67:3WFb6kmJ0
み梓「原因を取り除くことができなかった……ううん、取り除くことが許されなかった?」
唯「どういうこと?」
み梓「これ、私の時間の先生から聞いた話なんですけど、一度過去で何かを変えてしまうと戻すことが困難になる、みたいなこと言ってたんですよ」
さわ子「困難と言うか、ほぼ無理なのかもしれない」
み梓「え!?」
さわ子「それもおじさんのメモに書かれていた注意事項の一つよ。きっと梓ちゃんを気遣ってそんなこと言ったのね。私は」
み梓「そんな……」
梓「で、でもやってみなきゃわかんないよ!? まだ確定ってわけじゃないかもしれないしっ」
み梓「う、うん……」
655:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:32:24.23:3WFb6kmJ0
紬「……世界を変えた原因」
紬「もしかしてっ」
唯「どったのムギちゃん?」
紬「ほら、りっちゃんが澪ちゃんの机の中に落書きを書いた紙を入れてたじゃない!」
澪「あ……ああぁぁ!!」
紬「ほかに私たちの中で過去に行ったのは梓ちゃんが最初のトラブルで過去へ行ったことを除けばりっちゃんしかいないし!」
律「そういえば……」
梓「でもそれが違ったらやっぱり私が過去でなにか……」
紬「それを悔やむのはりっちゃんの落書きをどうにかしてから」
梓「うう……」
梓「もし先輩方を殺してしまったのが私のせいだったら……私……」
唯「大丈夫、大丈夫だよぉ」ギュッ
梓「慰めなんていらないです……」
656:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:40:48.79:3WFb6kmJ0
律「ていうか私だって原因作ってたのが私だってのなら……けっこうへこむ」
律「結果的にみんなが死ぬし」
澪「そのときはお前も死んじゃうんだから、気にするな」
律「それは慰め? 慰めてるつもりなのか!?」
梓・み梓「ふふっ……」クスッ
唯「とりあえず! やるだけやってみようよ!」
さわ子「そうね、もしかしたら上手くいくかもしれない」
律「もしかしたらじゃなくて絶対上手くいくの!」
澪「よし、じゃあ原因作ったお前が行ってこい。律」
律「え~……」
664:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:06:01.80:WKOw1B+W0
唯「はい、りっちゃん! タイムマシン太だよ!」ス
律「うおっ、準備いいな……」
律「えっと、たしか4日でいいんだよね?」
紬「そうよ。4日ならここから跳んでも大丈夫ね」
律「部活は休みってことになってたし、誰もいなかったしな」
梓「そういえば前に4日に跳んだときもこの時間帯でしたよね?」
さわ子「じゃあもう1人のりっちゃんに会わないように気をつけてね」
律「へいへい……」
澪「4日には3人の律がいることになるのか……ん?」
666:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:20:38.51:3WFb6kmJ0
澪「ねぇ、未来の梓」
み梓「はい?」
澪「梓のときも、こうやって未来から梓が来て、お前みたいに私たちが死んじゃうからなんとかしなきゃ、みたいな話したの?」
み梓「いいえ? ……それがなにか?」
澪「あ、いや……なんでもないよ」
み梓「?」
律「話は済んだぁー? あと、私行くぞー?」
澪「あ、ああ」
唯「りっちゃんファイト!」
梓「しっかり原因取り除いてきてください」
律「わかってるって。……では!」
ポーン、ポーン、ピーン
667:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:25:56.39:3WFb6kmJ0
「……」
律「……ん」
律「……」パチクリ
唯「りっちゃん?」
律「な、なんで! 部室に誰もいないはずなのになんでみんないるの!?」
梓「あの、落ち着いて。律先輩」
み梓「ど、どういうことなの……なんで……」
律「え? え?」
律「今日は5月4日だよね? そうなんだろ?」
澪「律……5月9日だ……ていうか」
紬「タイムスリップしてない……?」
668:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:30:39.28:3WFb6kmJ0
・・・
ポーン、ポーン、ピーン
唯「……どう!? タイムスリップできた?」
紬「ううん」
唯「だめかぁ」
さわ子「今までにこんなことは?」
律「なかったと思うけど……。なんでだよぉ? さっき過去の私たちが帰るときはちゃんと動いてたじゃんか」
み梓「あの、皆さん聞いてください」
「?」
み梓「もしかしたら、壊れたかもしれません」
梓「タイムマシン?」
み梓「……うん」
澪「う、うんって……」
669:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:35:11.75:3WFb6kmJ0
み梓「私の時間のタイムマシンが壊れてて上手く時間を飛び越えることができないって話、しましたよね?」
澪「ああ」
唯「聞いたよー」
み梓「実は壊れたのは先輩たちが死んでから私がその死を回避しようと奮闘してるときなんです。かなり唐突でした」
紬「それってまさか」
み梓「ええ。こんな状況です」
み梓「そのタイムマシンが壊れたのはもっとさきになるんです。9日には一度もこんなことになりませんでした」
さわ子「未来から梓ちゃんが来たことで、壊れるまでの日にちが縮まったのかもしれないわね」
紬「それってまた世界が変わったってことですよね? だったら22日私が死んじゃうって未来がなくなったりは?」
さわ子「そんなことはその日が来るまでわからないわ。もしかしたら助かるかもしれないし、22日の死は回避できずそのままかもしれない」
さわ子「ていうか回避されているのならここにいる未来の梓ちゃんの存在は? 持っている記憶は?」
紬「……」
670:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:39:44.84:7r0k+F3yO
ピーン、ポーン、ピーン
梓「未来にもいけませんね」
律「ああ……ん? ていうか」
律「未来の梓ぁ。なんでタイムマシン壊れてたのにお前は使えたんだよ? 動かなくなったんだろ?」
み梓「……タイムマシンが動かないことに私が苛立ってですね」
み梓「タイムマシンを蹴ったんです」
律「え……」
み梓「あ、でもほんのちょっと。かるーく……そしたら」
澪「にしても蹴るってそんな……」
み梓「つ、続けますよっ」
672:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:49:32.58:3WFb6kmJ0
み梓「蹴ったらすぐにタイムマシンが放電したんです」
紬「放電!?」
梓「ちょ、ちょっとそれってまずいんじゃ」
み梓「もちろん私はあんまりにも突然のことにパニックになって……」
澪「梓ぁ……」
み梓「うっ……」
唯「それでどうしたの?」
み梓「しばらくしたら放電は止まって……。恐る恐るタイムマシンを調べて、もしかしたらって過去に跳べるか試すために、弦を鳴らしたら……」
さわ子「できた、と?」
み梓「ですが、跳んだ時間は指定した月日と時間、場所通りじゃなかったんです」
律「それがわかるってことは、変なところに行かなかったんだな」
み梓「……不幸中の幸いですね」
673:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:57:23.15:3WFb6kmJ0
澪「結果からいうと、タイムマシン太がおかしく……」
唯「えへへ~」
澪「どうした唯?」
唯「澪ちゃんもタイムマシン太って言ってくれて嬉しいなぁって」
澪「……と、とにかくっ」
律「おかしくなったのは梓のせいだということだな」
澪「まぁ、おかしくする前にもともと壊れてたんだろ」
み梓「……まぁ、私がこうしてここに来ることができたのも蹴ってまた動かしたから」
紬「結果オーライねぇ」
律「……よし、じゃあ私もこれを蹴って」
さわ子「ちょ、ちょっと待ちなさい!」ガシッ
674:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:00:42.83:3WFb6kmJ0
律「離せー! 止めるなさわちゃーん!」ジタバタ
さわ子「こっちのタイムマシンまでおかしくさせる必要はないでしょっ」
律「じゃあどうしろってんだよっ」
さわ子「……私のおじさんに会いに行きましょう 」
梓「でも、先生のおじさんは」
さわ子「ダメもとでも何でも、やれることは全部やるべきだわ」
さわ子「もしかしたら……何かわかるかもしれないし、この状況を打破できるかもしれない」
唯「おぉ、さわちゃんが頼もしいよ」
さわ子「それっていつも頼りないってこと!?」
紬「ま、まぁまぁ……」
675:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:06:23.23:3WFb6kmJ0
さわ子「というわけだから明日さっそく行くことにしましょう。明日はちょうど土曜日だし」
澪「そうですね」
律「それじゃあ今日は一旦お開きってことで」
唯「色々考えたから頭いっぱいいっぱいだよぉ」
紬「ところで未来の梓ちゃんはどうするの?」
み梓「え?」
紬「帰る家よ」
677:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:11:09.16:3WFb6kmJ0
唯「それなら大丈夫だよー。私の家に泊めるから」
み梓「ごめんなさい唯先輩。迷惑かけちゃって」
梓「……」
「いいなぁ、未来の私……唯先輩と一緒に」
律「寝ることができて。あーんなことやこーんなこととかしちゃうのかなぁ!」
澪「おぉ……似てる」
梓「か、勝手に私の声真似で変なこと言わないでくださいっ!!」
律「違いますぅー心読んだだけですぅー」
梓「きーっ!!」
678:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:15:59.88:RJ/UGZm80
2010年5月9日 平沢家
憂「さぁ、梓ちゃん。いっぱい食べてね」ニコニコ
み梓「こ、こんなにいっぱい……なんかごめんね、急にお邪魔しちゃって」
唯「昨日もいたくせにぃ~」ヒソヒソ
み梓「唯先輩っ!!」
憂「え、どうかした?」
み梓「……な、なんでもないよ」
唯「うぇっへっへっ……」ニヤニヤ
み梓(ぐぬぬ……)ギリギリ
憂「?」
680:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:21:45.08:3WFb6kmJ0
憂「ところで梓ちゃん。ふふっ、さっきから気になってたんだけどほっぺにシールついてるよ?」
み梓「え? あ……(すっかり忘れてた!)」
憂「大変よくできました、だって」クスッ
み梓「す、すぐ剥がすっ」
唯「えー! そのまんまがいいよー」
み梓「ずっとシール肌に貼りつけてたら肌がはれちゃいますよっ」
唯「じゃあ、いいや」
唯(明日になったらまた貼ればいいしね)フンス
憂・み梓「ん?」
681:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:26:12.44:3WFb6kmJ0
・・・
ガチャリ
み梓「ふぅ、お風呂まで借りちゃってなんだか申し訳ないです」
唯「気にしないでよぉ。さーて、今日のところはもう寝ちゃお寝ちゃお~」
み梓「明日早いですしね」
唯「ささっ、私のお隣においで。未来あずにゃん」サ
み梓(けっきょく一緒に寝ることにはなるんだ……)
み梓「で、でも憂がせっかく布団しいてくれたんだし」
唯「いいからいいから」グイッ
み梓「ちょ!? ……もうっ」
683:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:32:28.86:3WFb6kmJ0
「……」
唯「まだ起きてる?」
み梓「寝ました」
唯「起きてるじゃん……ねぇ、私たちうまくいくかなぁ」
み梓「大丈夫ですよ。絶対なんとかなります」
唯「あずにゃん強気だねぇ」
み梓「ここまで来て助けられなかったら私が来た意味、ありませんもん」
唯「そうだねぇ……」
685:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:40:58.96:3WFb6kmJ0
唯「ねぇ、私たちが助かっちゃったらあずにゃんはもとの時間に帰っちゃうの?」
み梓「そりゃあ帰りますよ、なんとかして。ずっとここにいれるわけないじゃないですか」
唯「そっか……ときどき遊びに来てね?」
み梓「へ、変なこと言いますね……私が来なくてもこっちにもう1人の私がいるじゃないですか」
唯「そりゃそうだけど……それはそれ、これはこれだよぉ」
み梓「えー……」
唯「ね?」
み梓「……気が向いたら、遊びに来ます」
唯「えへへぇ」
み梓「ふふっ」
686:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:44:42.10:3WFb6kmJ0
2010年5月10日
さわ子「みんな集まったわね」
律「あれ? 車変えたの、さわちゃん」
さわ子「借りたのよ。こんなに大人数が乗るんだから私の車じゃ入りきらないし」
紬「あら、今日は別のシールなのね!」
み梓「……///」
唯「ネコのシールだよぉ。角度によっては、ほら光るの」
澪「帽子被るとかすればいいのに。まぁ、制服だから一発でわかるけど」
梓「まぁ、いいんじゃないですか?」
律「他人事だと思って安心してるなぁ? あ、でもこの場合他人じゃないか」
さわ子「ほら、もう行くわよ? さっさと車に乗って」
687:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:48:24.32:3WFb6kmJ0
2010年5月10日 さわ子おじの家
ピンポーン
おじ「おぉ、よく来た」ガチャリ
さわ子「おじさん。お久しぶりです」
おじ「いやぁ、さわ子ちゃんはいつ見てもベッピンさんで……むふふ」
律「なんかエロおやじだなぁ……」ヒソヒソ
澪「こら! そんな失礼なこと言うなよっ」ヒソ
おじ「後ろにいるのが今の教え子たちかい?」
さわ子「ええ。今日は無理言ってごめんなさい」
おじ「ははは、気にするなよ。さぁ、上がりなさい。男1人の家だから散らかっているのは気にしないでくれよ?」
さわ子「お邪魔します」
「おじゃましまーす」
691:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:00:19.47:3WFb6kmJ0
おじ「おぉ、おぉ……こんなに可愛い子たちが俺の家を訪ねてくれるなんて嬉しいこと極まりない」ニコニコ
律「やっぱエロおや……」
澪「ふんっ」ゴンッ
律「ったぁ!?」
唯「すごーい! 本がいっぱいだよー」ウロウロ
紬「ゆ、唯ちゃんっ」
さわ子「こら! ごめんなさい、騒がしくて……」
おじ「いや、気にせんでいいよ。お嬢ちゃんは本が好きなのかい?」
唯「難しい本は嫌いです!」
さわ子「……///」
唯「でも漫画とかは大好きだよ」
おじ「はっはっはっ! 素直でいい子だね君は。いい生徒さんを持ったじゃないか、さわ子ちゃん」
さわ子「は、はぁ……おほほほほ……」
693:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:05:13.69:3WFb6kmJ0
梓「唯先輩ったら……もう」
み梓「私はある程度は覚悟してた……」
おじ「それで? 俺に話って何だい? 用があるから来たんだろう」
さわ子「は、はい……コホンっ」
さわ子「単刀直入にお聞きします。私に譲ってくれたあのギター型のタイムマシン……なにか知っていることがあるのでは?」
おじ「……ぷっ」
律・澪・紬「!」
おじ「ははは、またタイムマシンの話か! 何年か前もその話は聞かれたぞ!」
さわ子「冗談じゃありません! 真面目な話です……っ」
おじ「ははは……あー、悪いが本当に俺はなにも知らなくて」
おじ「そもそもあのギターがなんでこの家にあったのかすら覚えてないんだなぁ」
さわ子「え……?」
698:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:15:06.19:3WFb6kmJ0
律「おじさん、本当なんですか?」
おじ「ああ。きっと以前自分が買ったことを忘れていただけだとは思うんだがね。だが、なんだか自分のもとに置いておきたくなくなって、さわ子ちゃんに譲ったんだが」
梓・み梓「一度も触ったり、弾いたりしなかったんですか!?」
おじ「おや、そちらさんは双子ちゃんかな。可愛らしいね」
梓「あ、えっと……はい、どうも」
おじ「確かに触らなかったよ。ケースにしまったままにしておいた」
紬「さわ子先生に渡すまで?」
おじ「ああ」
さわ子「でもおじさん。あのケースの中にはメモが2枚入っていたの。しかもそのうち1枚にはおじさんの名前が書かれていたわ」
さわ子「ちょうど今日2枚とも持ってきました。これを……」ス
700:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:19:16.36:3WFb6kmJ0
おじ「……タイムマシン?」
さわ子「それ、おじさんの執筆と同じだと思うの」
おじ「確かに俺の字と似ているが」
澪「じゃあやっぱり……!」
おじ「しかし、面白いな。ここに書かれていることは」
おじ「さわ子ちゃん。俺の仕事は覚えてるかい?」
さわ子「○大で物理を専門としている教授でした……よね」
梓「物理学者?」
おじ「そんなところさね」
おじ「俺はね、タイムマシンってやつにも少しは知識……いや、興味はあるんだな」
さわ子「……初耳ですよ?」
おじ「聞かれなかったしね」
702:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:25:38.36:3WFb6kmJ0
おじ「そんな俺から言わせてみるとだな。ここに書かれてること、面白いけど」
おじ「まずありえないんじゃないかな」
「!」
律「でも現に私たちは過去へ行ったり未来へ行ったりした!」
おじ「証拠は?」
律「……」
唯「こ、こっちのあずにゃんは未来から来たんだよ!」バッ
み梓「え!?」
紬「そうですっ、双子なんかじゃないんです!」
おじ「……確かに似ている。瓜二つだな。で、証拠あるかい?」
み梓「えっと……ご、5月19日に高速道路でトラックが横転して大きな事故が起こりますっ」
おじ「ふむ、それじゃあ19日にその事故が起きたら証拠になるね。それじゃあその日になるまで……」
み梓「そ、そんな悠長に構えている暇は……」
703:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:30:18.81:3WFb6kmJ0
澪「……そうだ!」
律「どうした澪?」
澪「さわ子先生、もう1つのメモの裏に゛自分を忘れるな゛って書いてあるんですよね?」
さわ子「え? ええ……それがどうかしたの?」
澪「それだけでもいいから、心当たりがないか聞きいてみませんか?」
さわ子「……そうね」
さわ子「おじさん。そっちのメモの裏を見て」
おじ「ん?」
さわ子「あなたの名前と一緒に一つの文が書かれているはず……それに覚えは?」
おじ「おお、本当だ。俺の名前じゃないか……?」
おじ「自分を忘れるな?」
おじ「自分を……忘れるな……」
唯「おじさん?」
704:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:35:21.39:3WFb6kmJ0
おじ「!」ガタッ
おじ「ううっ、あ……っぐ」
律「どうした!?」
さわ子「おじさんしっかりして!」
おじ「お、俺は! おれは! おれはっ」
澪「な、なに!? ひぃっ」
さわ子「おじさんっ!!」
おじ「…………」
おじ「は、はは……」
梓「こ、壊れた?」
紬「いったいなにが……」
おじ「うははははははは!」ゲラゲラ
おじ「くくっ……っ、笑いすぎて腹が痛むぞっ、ははは……!」
705:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:40:18.44:3WFb6kmJ0
さわ子「し、しっかりして!」
おじ「ああ、大丈夫だ。正気だよ。気違えてなんてない……」
み梓「じゃあ何がおかしくてそんなに」
おじ「思い出したんだよ……! 俺は……」
おじ「タイムマシンを使って2010年から2000年にタイムスリップしてきたんだ……」
「!?」
紬「ま、待って! どういうことですか!? 2010年は今ですよ!?」
おじ「要するに……君たちとは別の世界。パラレルワールドから来たということになるのかな」
律「はぁ!?」
み梓「じゃあ2000年のあなたはどこへ行ったんですか!? あなたの言うことが正しければあなたは二人存在することに……!」
おじ「殺したよ」
さわ子「……え?」
706:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:46:30.17:3WFb6kmJ0
おじ「俺が殺した。そういう実験だったからね」
律「殺したって……あんたが過去のあんた自身をか?」
おじ「そう」
律「んなバカな話信じられるかよ!?」
おじ「いやぁ、そうでもないさ。聞いたことないかい?」
おじ「タイムマシンで今の自分が過去へ行って、その時間に生きている自分を殺したら……存在自体が消滅ってやつをさ」
澪「小説とか漫画とかでは……」
おじ「そいつがさ、本当なのかを確かめる為に俺は自分の身を持って実験したわけさ」
唯「でもおじさんは消えてないよね? ってことは」
おじ「そいつは違っていたってことかね。まぁ、その代わり、殺した俺自身が過去の俺となったようだが」
さわ子「つまり、予期しない入れ替わりが起きた?」
おじ「いや、俺のもしもの予想の1つにはあったさ。こういう事ってのはわからないことだらけだから」
707:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:48:12.39:7r0k+F3yO
さわ子「ということは、私がタイムマシンを受け取ったときにはもう既に……ん?」
さわ子「ちょっと待って。なぜタイムマシンをおじさんが持っていたの!?」
梓「たしかにタイムスリップしてもタイムマシンは一緒に時間を越えてきませんもんね」
おじ「タイムマシンも俺と一緒にタイムスリップしていたら?」
唯「いっしょ?」
おじ「もともとあのギター型のタイムマシンは俺……俺と助手たちが作った物じゃあない。ある人物が所持していたのを……その、パクってね」
さわ子「な……!?」
おじ「その人らはなにも知らない素人みたいなもんだったよ。まぁ、最初に調べていたのはその人らで、俺たちは後から加わったんだが」
おじ「そんな価値もわからない連中が所持しているくらいならとね」
唯「どろぼー!」
おじ「まぁ……認めるさ」
710:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:55:11.78:EtF9evOl0
おじ「盗んだあとは俺たちがしっかりと調べさせてもらったさ」
おじ「そして、作らせてもらった。もう1つのタイムマシンを」
紬「もう1つって……」
律「またギターみたいな形のか?」
おじ「いや、しっかりしたそれこそもっとメカメカしいやつだったね」
おじ「それで後はそいつを使ってさっき言った通りさ」
澪「タイムマシンをタイムマシンで過去へ送るって……」
み梓「どうしてタイムマシンも持っていったんですか?」
おじ「もとの時間へ帰るために決まっているだろう。俺たちが作った物も既存したタイムマシン同等、片道限定だった」
み梓「だから帰り用にギター型の物を……」
おじ「今となっては無意味だったがね。こんなメモまで残しておいたのに、記憶が過去のものになってしまった俺はタイムマシンに一切触れずに、しかもさわ子ちゃんに受け渡してしまっていた」
715:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:01:37.30:3WFb6kmJ0
紬「そこから色々と繋がるわけね」
澪「でもそれがわかったからなんだって感じになるんだけれど」
律「まぁな」
唯「おじさん。私たちが使っていたタイムマシン、どうも壊れちゃったみたいでして」
おじ「なに?」
唯「だからおじさん直せないかなぁ……って」
さわ子「おじさんだけが頼りなの……お願い」
梓(こんな人に頼むのもなんか癪だけど……今は我慢しなきゃ)
おじ「……どうにかしてやりたいのも山々だが、修理するにもここでは設備がまず整っていないし、まずどう直していいのやらわからん」
律「あんたたちだって作ったんだろ!? だったら」
おじ「あのタイムマシンをバラして見よう見真似で作ったんだ。詳しいところは今一つわからんかったさ」
律「はぁ!? そんことってあるかよ……どうするんだよ……」
717:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:06:29.53:3WFb6kmJ0
おじ「俺ももとの時間へもど……いや、戻れるのか? はたして」
おじ「どうも今の2010年は俺がいた時間と少し違うようだからな。というかパラレルワールドか」
おじ「こいつはどうしようもないな。だが、タイムマシンが使えないことで君たちが困ることが何かあるのかい?」
み梓「とてもありますっ!! あれが使えなきゃ先輩たちは……先輩たちは……」
澪「梓……」
おじ「弱ったなぁ」
紬「……あ!!」
唯「どしたのムギちゃん?」
紬「電話……電話通じないかしら!?」
719:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:09:46.47:6JVCpZVR0
さわ子「どういうこと?」
梓「そ、そっか! 過去へ行っても未来へ行っても通じましたもんね!」
おじ「お、おい。説明してくれっ」
唯「えっとね、例えば今こっちの時間から誰かが過去にタイムスリップしたとするでしょ? んで、こっちの時間から過去に行った人に電話かけても通じちゃうんだよ」
おじ「……なんだって? そんな馬鹿なっ」
唯「その、ぱられるわーるどってのと繋がるかはよくわかんないけど」
おじ「だが今まで俺が電話をかけても俺のもといた時間に繋がることはなかったぞ」
紬「それはあなたがもといた時間の人ではなくて、過去の、こっちの時間の存在になっていたからじゃないでしょうか?」
おじ「……納得がいかない。それだと意識の問題ということになるんじゃ……」
律「ものは試しだよ! 一回あんたの助手の人たちに電話してみろって!」
おじ「あ、ああ……」
723:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:16:42.40:3WFb6kmJ0
おじ「あれから何年も経っているんだ……繋がるかどうか……」ピッピッピ
…プルルルル
おじ「つながった……!」
さわ子「うそ!?」
律「な! 言った通りだったでしょ!?」
おじ「す、少し静かにしていてくれ……」
『……はい、もしもし?』
おじ「!!」
おじ「じょ、助手Aか……?」
『まさか……○○先生ですか!?』
おじ「あ、ああ……そうだ。こっちは今2010年の5月10日……そっちは?」
『2020年12月27日……です』
おじ「10年……経ったのか」
724:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:21:28.37:3WFb6kmJ0
唯「10年経ったって……2020年! すっごーい!」
澪「唯っ、静かに」
『先生がいつになっても帰ってこないから実験は失敗に終わったのだと思っていましたよ』
おじ「いや、成功さ。俺が存在したという記憶はそっちで消滅していなかったんだからな!」
『ですがなぜ今になって……』
おじ「そんなことはいい。それより問題が発生した。例のギター型タイムマシンが故障した」
『なんですって! だからこちらに帰って来ることができなかったんですね……ですが安心してください。先生は運がいい!』
おじ「……どういうことだ?」
『実は偶然にもタイムマシンを回収しましてね。発見したのはアパートの一室だったのですが、それが……以前、先生と一緒にそちらへ送ったタイムマシンそのままなんですよ』
おじ「なに……?」
『とにかくそちらにすぐにでも送りますよ。場所は……』
おじ「俺の家だ。すぐに頼む」
律「なんか……なんとかなりそうだぞ!?」
澪「ああ……ああ! そうだな!」
727:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:26:03.68:3WFb6kmJ0
おじ「ん、でも待てよ」
おじ「おい、そっちとこっちはおそらくパラレルワールドだ。送ったとしても届くのは……」
『ええ。ですからもっと前の時間……こちらとそちらの世界が別れる、つまりパラレルワールドになるであろう前の時間に、2000年に先生の家の倉庫へ送らせていただきました』
おじ「ぐ、グッジョブだ! おい、さわ子ちゃん! すぐにここの倉庫の中を見てきてくれ!」
さわ子「え? あ、はい!」タタタ…
『おそらくどこかにはあると思います。間違いありません』
おじ「そうか……ふぅ」
み梓「どうなったんですか!?」
おじ「ああ、タイムマシンはなんとかなりそうだ」
唯「よ、よかったぁ……」
紬「やっぱりここに来てよかったね」
唯「うん!」
728:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:34:48.57:3WFb6kmJ0
さわ子「あったわ! タイムマシン!」
律「おぉ! ってほこりっぽい……うっ」パタパタ
澪「げほげほっ」
おじ「タイムマシンを確認できた。ありがとう助手A」
『いえいえ。ですが……先生。先生はもうこちらに帰ってくることは……』
おじ「ああ、無理だと思う。俺が2020年に行ったとして、そこはお前たちが待つ世界ではない」
おじ「これで、これでいいんだ俺は。とくに不自由なこともないしな」
さわ子「おじさん……」
律「さわちゃん、忘れんなよ。あの人は自分を殺したって一応の犯罪者でもあるし、そんな狂った実験をした人でもあるんだから」
さわ子「……」
729:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:38:52.59:3WFb6kmJ0
み梓「全ての元凶はタイムマシンを持ってきたあの人……私、少し許せません」
紬「でも使ったのは私たちよ。私たちも悪いとは思う」
み梓「っ……」
澪「とにかく無事にタイムマシンが手に入ったんだ。これで」
唯「にしてもほんとそっくりだよねー」
梓「私たちが最初に使っていた物と同じですよね」
律「まぁ、細かいことはいいっしょ」
おじ「……じゃあな、元気でやるんだぞ」ガチャ、ツーツー
おじ「……さて、俺はいつまでこうやってもとの自分を覚えていられるかな」
さわ子「どういうこと?」
梓「また未来から来た自分を忘れてしまうかもしれないってことですか?」
おじ「確証はも――――」
おじ「……うん?」
730:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:43:02.70:3WFb6kmJ0
車内
「……」
唯「おじさん、寂しくないのかな」
紬「あの大きな家に1人だったもんね」
梓「……ていうかよく考えると、この世界で1人ぼっちって見解もできますよね」
さわ子「あの人、ああ見えて案外1人になるのが好きな人なのよ」
澪「あ、案外って……」
さわ子「それだけ強い人ってこと。なんせ自分を……殺しちゃってる人だし」
律「あ、あははは……それはあんまり笑えないや」
さわ子「とにかく、今やるべきことだけあなたたちは考えていなさい」
み梓「……」
梓「……心配?」
み梓「べ、別にっ!」
731:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:48:02.72:3WFb6kmJ0
・・・
律「なんで今日さっそくやらないんだよ? 善は急げって言うじゃん」
さわ子「色々あったし、あなたたちも疲れているでしょ?」
み梓「そんなことは!」
さわ子「無理しないの。とにかく、やるのは明日、学校で。ね?」
み梓「……」
紬「それじゃあ今日のところはおうちに帰ろっか?」
澪「そうだな」
唯「私、色々考えたから頭いっぱいいっぱいだよぉ」
梓「それ昨日も言ってましたよね」
唯「そだっけ?」
さわ子「とりあえず、私がタイムマシンを預かっておくわね。それじゃあまた明日」ブロロロ…
律「行っちゃったぁ……私らも帰るか」
732:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:00:08.68:3WFb6kmJ0
平沢家
み梓「ごめんね、二日も連続で泊っちゃって……」
憂「ううん、全然気にしなくていいよ。私も梓ちゃんがうちにいてくれて楽しいもん」
唯「私もだよ~」
み梓「そ、そっか……えへへ」
憂「このままうちの子になっちゃおっか! 梓ちゃん」ニコニコ
み梓「ど、どこぞのお母さんみたいなこと言わないでよっ」
唯「平沢梓も悪くないと思うんだぁ。名前の響き的に」
憂「私は中野の方が似合ってると思うんだけどなぁ」
み梓(こ、この姉妹は……)
734:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:04:01.62:3WFb6kmJ0
・・・
チャポン
み梓「はぁ……」
み梓「やっと、かぁ……」
み梓(長かったようで短かったような)
――――……
梓「唯先輩っ! 唯先輩起きて!! 死んじゃダメ!」
唯「あ……あ……」
「君、離れて!」
梓「いや、いやぁっ!! どうして!? どうして助けられないの!?」
梓「澪先輩も律先輩もムギ先輩も……どうして私を1人にして死んじゃうのよ!?」
梓「1人に、しないでよ……私を1人ぼっちにしないでよぉ…………」
……――――
み梓「……」
735:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:08:10.34:3WFb6kmJ0
み梓「あんなこと、認めない」
み梓「絶対に……」
ガチャリ
唯「おっす、未来あずにゃん」
み梓「ゆ、唯先輩!? な、なんで……」
唯「たまには裸のお付き合いもいいじゃなーい」ゴシゴシ
唯「いやだった?」
み梓「はい」
唯「あ、あーずにゃあぁん……」
738:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:12:07.60:3WFb6kmJ0
み梓「冗談ですよ。それに泊めてもらっている身でそんな生意気なこと言えません」
唯「律儀だなぁ。別にそんなこと気にしなくていいのに」
み梓「……ねぇ、唯先輩」
唯「ん?」
み梓「私……もう1人ぼっちになることなんて……ないですよね」
み梓「あ! こ、こんなこと言ってもわけわかんないですよねっ。ごめんなさい」
唯「大丈夫だよ」
唯「1人ぼっちだなんて寂しいことにはぜっっったいならないよ!」
み梓「……」
唯「いくらいた時間が違っても、未来あずにゃんは私の大切な後輩」
唯「だから大丈夫! ねっ」
み梓「……」クスッ
み梓「なんですかそれ。わけわかんないです」
唯「えー、わかんないかなぁ?」ゴシゴシ
744:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:44:43.10:3WFb6kmJ0
・・・
唯「くーっ、風呂のあとのアイスは格別ですなぁ!」
憂「お姉ちゃんおやじくさい~」クスクス
み梓「……おいひぃ」モグモグ
唯「天下のハーゲンダッツさんだからね!」
み梓「さん?」
唯「ほら、ガリガリくんはガリガリくんでしょ?」
唯「だからハーゲンダッツさん!」
み梓「憂、唯先輩大丈夫?」
憂「あはは……いつもどおりだよ……」
み梓「そ、そっか」
746:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:48:15.92:3WFb6kmJ0
ガチャリ
唯「さーて、今日も早めに寝るよー」
み梓「はい」
唯「今日で未来あずにゃんと寝るのも最後かなぁ……?」
み梓「そうですね」
唯「あ、最後じゃないや!」
み梓「え?」
唯「また未来あずにゃんが遊びに来てくれたときにうちに泊ってくれればいいんだよ」
唯「だから最後じゃない!」フンス
み梓「……」
み梓「ふふふ、あはははっ」
み梓「あはははは!」
唯「あ、あずにゃん? どっかに頭打っちゃった?」
749:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:51:09.82:3WFb6kmJ0
み梓「あ、あー……お腹痛い、ふふふっ」
唯「未来あずにゃん?」
み梓「ご、ごめんなさい! でもおかしくって」
み梓「……遊びに来れたらいいなぁ」
唯「来れるよぜったい!」
み梓「ふふっ、そうですね。来れますよね、ぜったい」
唯「ほら、おしゃべりは終わりだよ。もう寝ないと!」
み梓「……はい」
唯「さっきの、約束だからね!」
み梓「はいはい」クスッ
751:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:54:01.53:3WFb6kmJ0
2010年5月11日 軽音部室
澪「い、いよいよだな」
梓「これでどうもできなかったら打つ手なし……」
紬「かどうかはまだよくわからないわよね。今までもなんとかなってきたし」
み梓「む、ムギ先輩……結構楽観視してるんですね」
紬「えへっ」
律「まぁ、これぐらいのほうが気楽でいいよ」
唯「だねぇ~」
さわ子「いや、ちょっと気楽過ぎるのもよくないわよ……適度に緊張感持ってよね。あなたたちのこれからのためなんだから!」
唯・律「はーい」
澪「大丈夫かな……」
752:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 21:57:08.58:3WFb6kmJ0
梓「それで、誰が4日に行くんですか?」
律「前に決めたとおり、私でいいっしょ。原因作ったの私かもしれないんだし」
唯「りっちゃんかっくいいー!」
澪「一応は責任感じてるんだ?」
律「当たり前だろ!」
さわ子「本当は私がやってあげたいのだけれど……」
律「いいよ、さわちゃん。これは私たちの問題だよ」
さわ子「またそうやって除け者にするっ」
み梓「私たちの中に……私って含まれますか?」
唯「もっちろーん!」
梓「除外してほしかったの?」
み梓「と、とんでもないっ。むしろ……よかった」
律「そんなことよりさっさと始めるぞー!」
755:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:00:02.19:3WFb6kmJ0
2010年5月4日 教室
「うん。それじゃそろそろ切るぞ」
「さて、みんな待ってることだし! そろそろ帰ってやるかぁ。にしてもビックリしたな……」タタタ…
ガチャリ
律「よし、うまく行った」
澪『あとは落書きを処分するだけだな』
唯『ゴミ箱にポイするだけでいいの?』
紬『それだとちゃんと処分できたことにならないかもしれない』
梓『焼却処分しちゃえばいいんじゃないですか?』
律「えー、面倒くさいなぁ……」
澪『ここまで来て面倒くさがることはないだろ? やれることはやってきなさい』
律「ちぇー……はいはい。んじゃ、電話切るぞー」ピッ
758:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:08:47.81:3WFb6kmJ0
律「さてと、確か澪の机の中に入れたんだったよな」スタスタスタ…
律「よいしょっと」
律「お、見つけた! ったく、過去の私も面倒なことしてくれたなぁ……」
ス…
律「……ん?」
ス…
律(あ、あれ? おかしいな、机の中に手を入れられない……)
ス…
律「んんっ!? なんで!?」
律「……こ、このぉっ!」シュッ…
ドンッ
律「!?」ヨロヨロ…ドテッ
律「え……え……?」
律(お、押された……? でも誰もいないぞ!?)
律「そんな……」
759:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:13:05.48:3WFb6kmJ0
律「も、もしもし!」
澪『どうした律? 上手くいったのか!?』
律「それが……」
梓『ま、まさか……』
律「手がのばせないんだ……机の中に……」
律「ていうか押されたんだ! よくわかんないけどこっち来んなーって感じで!」
み梓・さわ子『……』
紬『り、りっちゃん! 落ち着いてっ』
律「おかしいんだよっ!? なにもできないんだ! ど、どうして!? え!?」
唯『りっちゃん! りっちゃんてば!』
さわ子『りっちゃん!!』
律「!」
さわ子『一度……こっちに戻ってきなさい』
律「……うん」
761:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:18:02.51:3WFb6kmJ0
2010年5月11日 軽音部室
律「……」
唯「り、りっちゃん。気にしないで……?」
律「……気にするよ。ダメだったんだ」
澪「……律が悪いわけじゃない」
律「悪いよ。全部私のせいだ……」
紬「お、お茶でも!」
律「いらない」
紬「ううっ……」
梓「いや、いやあぁぁ……」ガクン
762:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:23:22.48:3WFb6kmJ0
律「……さわちゃんの言うとおりだったな。簡単にはいかないって」
さわ子「そう、ね……」
律「ダメだった。私ダメだったよ、ははは」
律「はぁ……」
さわ子「落書きを処分しようとして、力が働かれたということはそれが原因でたぶん間違いないわ。つまり……」
梓「打つ手なし、ですか」
紬「私たち、死んじゃうのね」
澪「やだ……死にたくないっ、死にたくないっ、死にたくないっ!!」ブルブル
唯「わ、わたしだ、って……や、だよぉおお……まだいき……で、だい゛……」ポロポロ
律「っっ……」
み梓「まだ諦めるのは早いですよ」
764:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:28:04.72:3WFb6kmJ0
唯「ふぇ……?」
紬「いまなんて……」
み梓「諦めるのは早いって言ったんです」
律「でも、もう……」
み梓「弱気になるなんてらしくありませんよ。律先輩」
梓「ひっ、ぐ……あうっ……」
み梓「ほら、もう1人の私も。泣かないで」
澪「なんで、なんでそんな……」
み梓「諦めない限り、なんとかなります。絶対に」
さわ子「なにか他に原因を取り除く方法があるっていうの?」
み梓「……はい」
768:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:33:10.79:3WFb6kmJ0
み梓「世界を変えた原因を取り除こうとすれば確実に妨害される。なら、取り除くんじゃなくて」
み梓「また変えてしまえばいいんです」
紬「逆転の発想……?」
律「でもそんなことしてまた変なことになったらどうするんだよ!?」
み梓「最後まで話を聞いてください」
み梓「変えるといってもタイムマシンがもともと存在しなかった世界に、です」
唯「……どういうこと?」
さわ子「まさか……」
み梓「そう。過去へ行ってタイムマシンを壊すんです。二度と使えないように」
769:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:38:26.22:3WFb6kmJ0
み梓「そしたらそのスクラップはどこかに埋めてしまいましょう。それで全部終わりです」
紬「たしかにタイムマシンがなければりっちゃんが作った原因……というか過去に行ったという事実がなくなるもんね! それにさわ子先生のお友達も死なずに済むわ!」
澪「でも……壊すのはいいんだけど、どうやってもとの時間に戻ってくるんだ?」
律「そっか、あれがなきゃ戻るに戻れないもんな」
み梓「……私が行ってきます」
唯「そ、そんなのダメだよ!」
み梓「でもこれしか方法は……!」
さわ子「あわてる必要はないわ」
み梓「え?」
さわ子「私がタイムマシンを学校に初めて持ってきた日……この日にタイムスリップして過去の私にタイムマシンの破壊を頼んでから戻ってくればいいの」
773:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:44:20.74:3WFb6kmJ0
さわ子「私がタイムマシンを使ってから壊すんじゃ、タイムマシンがあったという記憶が私に残るでしょ? だから壊すならその前……」
さわ子「おじさんの方は過去の自分を殺してタイムマシンのことを忘れているから……申し訳ないけど」
さわ子「それにあの人の家まで行くには相当の距離を行かなきゃいけないし、どちらにせよタイミング的にはこっちの方がいいわ」
梓「確かにそれならなんとかなりますけど……」
律「見ず知らずの人間にいきなりお前の持っているギターを壊せって言うのか? ちょっと無理あるんじゃ」
さわ子「大丈夫よ! 私なんだから」
み梓「ほ、ほんとですか……」
唯「でもこれしかないってのなら、やるっきゃないよ!」
澪「そう、だな……私もそう思う!」
775:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:49:10.92:3WFb6kmJ0
さわ子「ていうか私が行かせてもらうわ。これ以上あなたたちを危ない目に会わせるわけにはいかない!」
み梓「いえ、やっぱり私が!」
唯「待って!」
さわ子・み梓「?」
唯「わ、私が行くよ!」
律「お前が!?」
梓「無茶言わないでくださいよっ」
唯「うぅ……でも」
唯「みんなこんなに頑張ってるのに、ぼーっとしてるだけだなんて我慢できないの」
紬・澪・梓(それ言うなら私もそうなんだけど……)
唯「だから行かせて?」
み梓「で、でも……」
律「行ってこい! 唯隊員!」
澪「律!?」
778:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:54:01.58:3WFb6kmJ0
梓「そんな簡単に託さないでくださいよ!」
澪「律! お前なぁ……」
律「隊長命令だから、絶対な」
さわ子「りっちゃん。ふざけな――」
律「ふざけて言ってるわけじゃないよ。唯がやるって言ってるんだから私は唯の意思を尊重してるの」
唯「りっちゃぁん……」
律「行ってこい。こんなの誰が行ったって同じだよ。だったら私は唯に全てを委ねてしんぜよう!」
紬「そうね、私もりっちゃんに賛成」
梓「……もう好きにしてください」
澪「唯、いいのか? ほんとにいいのか?」
唯「まっかせなさーい!」
779:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 22:59:36.56:+lWkmdar0
唯「よっこいしょっと……」
唯「準備おっけー。いつでもいけるよー」
さわ子「あっちに着いたらすぐに私に会うと思うわ。いい? 私はとても慌てると思うけど焦らずに事情を話してあげて。でもタイムマシンについては言わないように」
さわ子「たぶん、わかってくれるかもしれないから」
梓「たぶんでかもですか……不安だなぁ」
澪「唯、がんばって。お前が私たちの希望なんだ」
唯「あいよー!」
澪「……あぁ、やっぱり心配すぎるっ」
紬「み、澪ちゃんっ」
唯「も、もう行ってよろしい……?」
782:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:03:21.67:3WFb6kmJ0
み梓「唯先輩……」
唯「お、未来あずにゃーん」
唯「あ! そういえば!」ガサゴソ
み梓「どうしたんですか?」
唯「ほい!」ペタン
み梓「なっ!?」
唯「今日のシール、貼り忘れたよぉ。あ、でもあとみんなシールなくてもどっちがどっちだか区別ついてたね」
み梓「そういえば、そうですね……」
唯「でもこれがあっての未来あずにゃんって感じだから。今日は温泉マークシールだよぉ」
み梓「ど、どうも……」
784:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:08:04.38:3WFb6kmJ0
律「よし、みんな! 重大な任務を果たしてくる唯隊員にむけて~」
律「敬礼!」ビシッ
唯「敬礼っ」ビシッ
「……」
律「だぁーっ! みんな乗り悪いなぁ。ここはやっとくべきだろ!?」
澪「いや、それは恥ずかしい」
梓・み梓「同じく」
紬「あははは……」
さわ子「バカなことやってないでさっさと行ってきなさい!」
唯「は、はいぃ!」
ポーン、ポーン、ピーン
785:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:13:03.87:3WFb6kmJ0
2000年4月28日 軽音部室
ガチャリ
さわ子(過去)「私が一番乗りかぁ」
唯「あのぉ」
さわ子「きゃあ!?」
唯「お、驚かせちゃってごめんね!」
さわ子(上級生? でもこんな人いたっけ?)
さわ子「あの、もしかして軽音部に入部希望とか……?」
唯「えっと、ていうか既に入部してるんだけどね」
さわ子「え? でも……」
唯(な、なんて説明しましょうかぁ……)ウズウズ
786:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:18:16.62:3WFb6kmJ0
さわ子「上級生の方、ですよね? 名前は?」
唯「平沢唯だよー」
唯「そ、そんなことより! あのね!」
唯「それ!」ビシィッ
さわ子「え……?」
さわ子「このギターですか?」
唯「それは……えっとね」
唯「呪いのギターなんだよ!」
さわ子「……はい?」
789:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:23:02.60:3WFb6kmJ0
唯「あ、えっと、えっとぉ……」
唯(勢いで言っちゃったけど変だったかなぁ!)
さわ子「ふふっ」
唯「え?」
さわ子「面白い人ですね。平沢先輩」
唯「あ、よく言われるよ。それ」
さわ子「あはははっ」
さわ子「呪いのギターでも、私にとってはこれはおじさんから譲ってもらった大事なギターなの」
唯「そ、そっかぁ。でもね、それ使っちゃったら大変なことになるんだよ……」
さわ子「大変なこと?」
唯「さわちゃんの友達がね、死んじゃうの」
さわ子「わ、私の?」
795:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:31:22.48:3WFb6kmJ0
さわ子「ていうかさわちゃんって……私のこと知ってるんですか?」
唯「うん。だってさわちゃんは先生でもあって、軽音部の顧問でもあるんだもん」
さわ子「先生? 顧問? あの、人違いじゃ……それに私、まだ学生ですよ」
唯「今はそうだけど、さわちゃんは先生になるの。この学校の音楽の先生」
さわ子「な、なんでそんなこと言えちゃうんですか?」
唯「それは私がみら――――」
唯「なななな、なんでもない! やっぱなんでもないよ!?」
さわ子「えぇー……」
さわ子「ていうか私の友達が死んじゃうっていうのは……」
唯「紀美さん、だっけ。その人が事故で……亡くなっちゃうの」
さわ子「え!? 紀美!?」
797:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:32:25.03:qqsxrLh9O
さわ子「じょ、冗談でも言っていいことと悪いことがあるわっ!!」
唯「ご、ごめんね! でも本当なのっ、信じてっ」
さわ子「初対面の人をそう簡単に信じられると思えますか!?」
さわ子「おまけにさっきから変なことばかり言うしっ」
唯「へ、変じゃないよぉ……」
さわ子「出ていってください! 」
唯「そういうわけにもいかないの!」
さわ子「出ていって!」
唯(さ、さわちゃんのばかぁ! 全然分かってくれないじゃんっ)
唯「ど、どうしよう……」
Prrr…
802:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:40:05.78:3WFb6kmJ0
さわ子「ん?」
唯「あ、携帯……ちょっとごめんね」ピッ
さわ子(携帯って……なんでそんな……)
唯「はいはい、もしもし?」
さわ子『もしもし、唯ちゃん』
唯「あ、さわちゃーん!」
さわ子(過去)「え?」
唯「あ、そっちのさわちゃんじゃなくて……と、とりあえず気にしないで!」
さわ子(過去)「?」
唯「さわちゃん大変だよ、こっちのさわちゃん私の言うこと全然信じてくれないっ」ヒソヒソ
さわ子『そっか……電話かけて正解だったわ』
律『やっぱりなんとかならないじゃん』
唯「ほんとだよっ」プンスカ
さわ子(過去)(本当になんなのこの人……)
804:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:43:01.58:3WFb6kmJ0
唯「でもどうするの? このままじゃ」
さわ子『唯ちゃん。ちょっとそっちの私と電話代わって』
梓『そ、それって大丈夫なんですか!?』
さわ子『たぶん大丈夫よ。タイムマシンのことさえ言わなければいいんだから』
唯「……んじゃあ、代わるよ? おーい、さわちゃん。電話代わってだって」クイクイ
さわ子(過去)「え、私!? だ、誰からですか……?」
唯「それは出てからのお楽しみ」サ
さわ子(過去)「……も、もしもし」
さわ子『もしもし』
さわ子(過去)「どなたですか……?」
さわ子『山中さわ子よ』
805:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:46:22.59:3WFb6kmJ0
さわ子(過去)「あ、同じ名前……」
さわ子『そりゃそうよ。私はあなた、あなたは私なんだから』
さわ子(過去)「は?」
さわ子『私は未来のあなたよ』
さわ子(過去)「またそんな冗談を……だれ? なんのつもり?」
さわ子『私はね、今桜高の教師やってるのよ。びっくりでしょ?』
さわ子(過去)「……平沢さんから聞きました。それがなんですか」
さわ子『DEATH DEVILは色々あって続かなかったのよねぇ……ちょっと残念だけど』
さわ子(過去)「な、なんでまだ誰にも教えてないバンド名をあなたが!?」
さわ子『ふふふ……(なんかちょっと面白くなってきたかも)』
806:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:48:11.19:XnEVFsqiO
さわ子『まだ信じられない? 私が未来のあなたなんだってこと』
さわ子(過去)「あ、あたり前ですっ」
さわ子『じゃあ今度は振られた男の数でも言っちゃおうかな~?』
さわ子(過去)「いっ!? や、やめてぇっ」
唯(なんかよくわかんないけど学生さわちゃんが押されてる……!)
さわ子『じゃあ信じてくれるわね?』
さわ子(過去)「信じる! 信じるからっ!」
さわ子『そう、よかった。じゃあまた唯ちゃんに電話代わって?』
さわ子(過去)「……はい」ス
唯「ほえ?」
811:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:56:16.02:3WFb6kmJ0
さわ子『もしもし唯ちゃん。上手くいったわ。これでだいぶ話は聞いてくれるとは思う』
唯「ほんとぉ!? さっすがさわちゃん先生~」
さわ子(過去)「あの……」
唯「ん?」
さわ子(過去)「まさか、平沢さんも未来の人だとか……言いませんよね?」
唯「そのまさかです!」
さわ子(過去)(あ、頭痛くなってきた……)フラ
さわ子(過去)「どうやって未来からここに来たんですか。まさかタイムマシンとか?」
唯「それは内緒ー。それ言っちゃダメって言われてるからね」
さわ子(過去)「……じゃあ、なんで未来からわざわざ? 何か用でも?」
唯「そのギターに用事があって来たんだよ」
さわ子(過去)「呪いのギター?」
唯「ああ……それもう忘れてよぉ……」
813:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:00:05.55:xmu1na1Z0
さわ子(過去)「まさか、このギターをよこせとか言いだすんじゃないでしょうね?」
唯「ううん。ぶっ壊してほしいの」
さわ子(過去)「……」
さわ子(過去)「……は?」
唯「だから――」
さわ子(過去)「ちょ、ちょっと待って! 本当にあなた私をばかにしてるんですか!?」
さわ子『ゆ、唯ちゃん。ちょっともう一度私と電話代わってくれるかしら?』
唯「え? あ、うん。はい、さわちゃん」ス
さわ子(過去)「……もしもし、どういうこと!? 説明して!」
さわ子『あのね、落ち着いて聞きなさい。あのギターについて詳しいことは教えられないけど、とにかく今、私たちの時間で大変なことが起きてしまいそうなの』
さわ子(過去)「あのギターが原因でってこと……?」
さわ子『そう。それにあれをあなたが使うことで紀美が死んでしまうのよ』
さわ子(過去)「また紀美……」
814:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:04:04.02:xmu1na1Z0
さわ子(過去)「本当、なんですか? にわかには信じがたいですよ」
さわ子『本当よ。ウソじゃない。……とりあえずあのギターを絶対に弾かないで』
さわ子『それだけでも紀美の死は回避できるわ』
さわ子(過去)「だったらわざわざ壊さなくても……」
さわ子『……あれがあると、私の教え子が死ぬのよ。そこにいる唯ちゃんがその1人』
さわ子(過去)「え……」
唯「ん?」ヒョコ
さわ子『あなたがおじさんから譲ってもらったあのギターこそが全ての元凶。あれを壊して二度と使えなくすることで、おそらく唯ちゃんたちの死は回避される』
さわ子(過去)「どうしておじさんから貰ったって……」
さわ子『何度も言わせないで頂戴。とにかく、あとはそこにいる唯ちゃんの言うことをしっかり聞いて。……それじゃあ』ブチッ、ツーツー
さわ子(過去)「え、あ、ちょっ……まだ聞くことが……」
815:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:08:04.69:xmu1na1Z0
さわ子「はい、電話。返します」
唯「あれ? さわちゃん電話切っちゃったの?」
さわ子「私じゃなくて、向こうの私が切りました……それより」
さわ子「あのギターを壊さなきゃ、あなた死んじゃうんですか?」
唯「んー……まだよくわかってないけど、そうみたいだよ。あはは……」
唯「それ教えてくれたのは未来から来たあずにゃんなんだけどね。あ、あずにゃんっていうのは私たちの後輩の1人で」
さわ子「そこまで聞いてない。……あなた、私の教え子にあたる生徒さんだったんですね」
唯「そだよぉ~。さわちゃんはねぇ、なんだかんだ言っていい先生なんだよ! あ、最近だと彼氏が全然できないって泣いてた」
さわ子「……そういうことは教えなくていいですっ!! それで軽音部の顧問と?」
唯「あんまり顧問らしいことしてないけどね。あ、でもギターすごく上手くて私も色々教えてもらったよぉ。歯ギターとか!」
さわ子(未来の私はいったい何をしているの……!?)
818:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:13:16.88:xmu1na1Z0
唯「でもね」
さわ子「え?」
唯「みんなさわちゃんのこと大好きだよ」
さわ子「……あ、ありがとう」
さわ子「って、私に言ったんじゃなくて未来の私ですよね……あ、でも私には変わりないのか」
唯「ふふふっ」
さわ子「な、なに?」
唯「さわちゃん若いなぁって。さわちゃんも私たちと同じときがあったんだなって思って」
さわ子「そりゃ、誰だって学生のときはありますよ」
唯「でもなんか変な感じして、えへへ」
さわ子「……ふふっ」
819:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:16:52.83:JvE1WSB90
さわ子「それで? 私はなにをすればいいの?」
唯「え?」
さわ子「あなた、何のために未来からやってきたんですか」
唯「あ、そだったね。えっと……」
さわ子「やるなら早くしたほうがいいと思います。もうすぐここに誰か来ちゃうかもしれないし」
唯「そ、そだね! それじゃあ……」
唯(まずギターケースに入ってるおじさんが書いたメモを……)ジィーッ、ガサゴソ
さわ子「?」
唯「あった! えっとこれを……どうしよう?」
さわ子「なんですかそのメモ?」
唯「み、見ちゃダメだよ!」
823:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:22:02.33:xmu1na1Z0
さわ子「でもそれ……」
唯(ど、どうやって処分しよう……そうだ!)
唯「あむっ」パクッ、ムシャムシャ
さわ子「は!? え、ちょっと!? なに食べてるんですか!」
唯「ほうふふひははいんはほ~(こうするしかないんだよ~)」
ゴクン
唯「はぁ……まずっ」
さわ子「と、とんでもない人……」
唯「よし、メモはこれでおっけー。後は」ガシッ
さわ子「こ、今度はなんですか?」
唯「ちょっとこのギター使わせてもらうねぇ。あ、見られないようにしなきゃダメか」
唯「物置部屋借りるよー!」
さわ子「え? えぇっ?」
824:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:27:11.18:xmu1na1Z0
さわ子「あ、あのちょっと!」
唯「いい? 今から3分ぐらい経ったらここ開けてギター持っていって」
唯「そしたら何があってもかならずギターぶっ壊しちゃってね! いい? かならずだよっ」
さわ子「壊すのはわかりましたけど……なんでそんな」
唯「それと、私と会ったことは忘れてね!」
さわ子(こんな強烈なキャラ中々忘れられないと思うけど……)
唯「んじゃね! 頼んだよ、学生さわちゃん!」
ガチャリ
さわ子「あ! も、もぉ……なんなのよ……」
829:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:31:25.63:xmu1na1Z0
唯「ふぅ、疲れたぁ……」
唯(あとは私がみんなのところに帰ってタイムマシン太が壊れるのを待つだけだね)
唯「よーし、んじゃ――」
唯「……」
唯「待って、タイムマシン太壊れちゃったらたしかに世界変わるけど……」
唯「……」
831:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:34:19.29:0Sr4NhTP0
Prrr…
唯「もしもし」
澪『唯? どうした』
唯「ちょっと未来あずにゃんに代わって」
澪『え? あ、うん』
み梓『もしもし、今代わりました。どうしました?』
唯「タイムマシン太壊れちゃったら……未来あずにゃんこっちにまた来れなくなるじゃん」
み梓『そうですね』
唯「……約束したじゃん。遊びに来てくれるって」
み梓『……そうですね』
834:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:38:01.62:xmu1na1Z0
唯「来れないどころか、タイムマシン太ない世界になっちゃったら……私たちの今までの思い出ってどうなっちゃのかな」
み梓『もともとなかったことになるんだから、タイムマシンを見つけてからの記憶はたぶんなくなるかと』
唯「そうなると……未来あずにゃんってどうなっちゃうの?」
み梓「そもそもタイムマシンのせいで先輩たちが死んだという世界から私は来たんですから……たぶん消えちゃったり、とか」
唯「そ、そんなのやだよ……!」
み梓「じゃあこのままにして唯先輩たちが死んじゃってもいいんですか」
唯「あう……」
み梓『私はそんなのいや。耐えられません。もう1人の私だってそうです』
唯「……」
み梓『電話切りますよ。……早く戻ってきてください』
ブチッ、ツーツー
837:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:43:00.47:xmu1na1Z0
唯「……」
唯「……」
唯「……」
唯「……」
唯「……」
唯「……っ」
>>840
戻る? 戻らない?
840:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:46:04.84:lHAJ0BS4O
唯「無理だよ……そんなことできない」
未来あずにゃんが消えちゃうだなんて悲しいこと、私には耐えられない。
だって、そうだよ。
未来から来たって未来あずにゃんはあずにゃんに変わりはないんだもん。
みんなだってきっとそう思うに違いない。
私たちが死んじゃうか、未来のあずにゃんが消えちゃうか。
どっちかを秤にかけて、さぁどっちを選ぶって言われても……
唯「選べるわけ、ないよぉ……」
そうだ、もう一度電話をかけてみんなと相談を――
『3分経った。よし、開けますよー』
外から学生さわちゃんの声が。
もう3分経った……!?
849:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:51:33.41:xmu1na1Z0
ドアを開けて部屋に入って来たさわちゃんは不思議そうな顔で私を見た。
さわ子「いったい中でなにしてたんですか?」
唯「……」
なんて言えばいいんだろう。
言ったところでわかってくれるのかな。
さわ子「それじゃあ約束通り、壊しましょう……不本意ですけど」
唯「ま、待って! だめ! 壊しちゃだめぇっ!」
タイムマシン太を庇うように抱いた。
でもそんな行為も無意味だったみたい。
さわ子「……なんとしてでも壊せって言ったのは平沢さんじゃないっ」
ひったくるようにして無理矢理タイムマシン太を奪われた。
853:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:54:13.61:xmu1na1Z0
唯「か、返して……!」
さわ子「ダメです! やれって言われたことはきちんとやるわ」
唯「ダメなのっ、壊しちゃったら未来あずにゃんが消えちゃう!」
さわ子「またわけのわからないことを……そもそもこれを壊さなかったらあなたが死んじゃうんでしょう!?」
唯「それは……」
さわ子「だったら尚更壊さなきゃダメです。あなたが死んじゃったら未来の私が悲しむもの! それに私だって……!」
唯「でも……」
ダメだ。
話を聞いてくれない……。
856:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:57:08.60:xmu1na1Z0
一息つくと、タイムマシン太のネックを持って、学生さわちゃんは上に振り上げた。
だめ! やめて!
唯「壊さないで! お願いさわちゃんっ」
さわ子「……」
無視だ。
もうあれを壊すって決心をきめた顔をしてる。
だめ。あれを壊したらあずにゃんが。
私は考えるよりもさきにさわちゃんを押さえつけにかかった。
さわ子「なにをするの!?」
唯「だめぇーっ!」
さわ子「っ……!」
860:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:00:04.70:xmu1na1Z0
さわ子「邪魔、しないでっ!」
学生さわちゃんは腕に絡みついていた私を強引に払いのけた。
バランスを崩した私はそのまま壁に叩きつけられる。
痛いっ、痛いよさわちゃん……。
さわ子「おじさん……ごめんねっ――」
唯「やめて……っ」
――ゴンッ。
壁に思いっきり叩きつけられたタイムマシン太はボディが傷つき、塗装がはげていた。
壁から離されると、パラパラと小さな破片が床に落ちる。
まだ、まだ完全に壊れてない……!
なんとかしなきゃ……なんとかしなきゃ……
唯「壊さな――」
――バキィッ。
865:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:03:10.98:xmu1na1Z0
さわ子「はぁ、はぁ……お、折れた……!」
二撃目。もう一度同じようにして壁に叩きつけられていた。
今度はネックが折れ、ボディもズタズタ。
唯「やめ、て……」
さわ子「……次で」
ボディを持って窓辺に歩いていくさわちゃん。
まさか……。
窓を開けると、持っていたタイムマシン太を……外に向かって放り投げた。
唯「あ、あ……ああ…………」
しばらくして、外から大きな音が―――――――――――
・・・
・・・
・・・
867:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:06:02.99:xmu1na1Z0
?年?月?日 ?
眠りから覚めると、知らない天井がまず最初に目がついた。
体を起こしてまわりを見渡せばこれまた知らない部屋。
どこなんだろう、ここは。
「あ、起きたんですね! 急に倒れて気を失っていたからビックリしちゃいましたよ」
眼鏡をかけた女の子だ。
髪は長くて艶々。きれいだと思う。
「さっきはごめんなさい。でもあれを壊さなきゃって思ったら必死になっちゃって……」
「窓から投げちゃったし……おかげで先生にも怒られちゃって。でも安心して! きちんと壊れましたよ。あのギター」
なんの話かな?
覚えがないよ。
あなたはだぁれ?
「え、なに言ってるんですか? 山中さわ子ですよ。さっきまでさわちゃんって私のこと呼んでたじゃない……」
さわちゃん?
869:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:09:06.53:xmu1na1Z0
「ど、どうしちゃったんですか? 何か、様子が変……」
どうもこうも、よくわかんないんだよ。
「わからないって……なにが?」
何もかも。なーんにもわかんないんだぁ。
ねぇ、ここはどこ?
「ちょ、ちょっと……平沢さん?」
ヒラサワさん?
だれ?
「誰って、あなたの名前……」
私の名前?
870:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:12:02.37:xmu1na1Z0
私はヒラサワ?
「自分でそう言ってたでしょ!? 本当にどうしちゃったんですか!」
「やっぱりさっき頭打ったときにでも……ほ、保健室に行きましょう!」
えー、やだよ。
「やだとかそういうのじゃなくて!」
どうしてここに私はいるの?
どうして私はこうしてさわちゃんと話してるの?
私は本当にヒラサワなの?
どうして? ねぇ、どうして?
「いいから保健室に――」
いや! 離して!
「ちょっ、どこへ行くの!? 待って!!」
874:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:15:02.17:xmu1na1Z0
?年?月?日
あの場所から抜け出してからどれくらいの時間が経ったんだろう。
1日? 3日? それとも一週間かな。
とても長い時間に思えた。
……私はだれなんだろう。
私はあそこで何をしていたんだろう。
何にもわからない。
何にもわからないの。
879:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:18:10.89:xmu1na1Z0
?年?月?日
あれから何年かの時間が過ぎていった。
未だに私は何も思い出すことができない。
だけど、そんな私を支えてくれる人が現れた。
彼は数年前、路頭に迷っていた私に声をかけてくれて、優しく接してくれた。
それから私は彼のアパートに住まわせてもらっている。
彼は私のことを気味が悪いとか頭がおかしいんだと嘲笑うことなく、私を命一杯愛してくれた。
私も彼の愛に応えようと精一杯頑張った。
私には今彼だけ。彼の存在だけが私の全て。
881:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:21:05.19:xmu1na1Z0
?年?月?日
私は彼と結婚した。
親族がわかっていない私のことを察して、式は挙げずに戸籍上のみの結婚だ。
結婚をきっかけにアパートから一軒家を立て、住むことになった。
とてもいい家だと思う。
彼の趣味は外国旅行。
私も彼に着いていって、あちこちの国へ行った。
結婚した今でもよく旅行をする。
そのたびに新婚旅行の気分になって、私と彼はいつまでも愛しあえる気がした。
884:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:23:37.69:iDYPCotd0
?年?月?日
ついに彼との間に子どもを授かった。
私たちはそのことをとても喜んだ。
1人目は女の子。
とても可愛らしい女の子。
もしかしたら彼は男の子を欲しがっていたんじゃないかと私は心配した。
だけど娘に優しく接している笑顔の彼を見て、それは杞憂だったんだなと思った。
1年後、もう1人の子が生まれた。
また女の子。
最初に生まれた子とまるでそっくり。
彼は、どちらの子も君によく似てとても愛らしいと言ってくれた。
私も彼同様に、子どもたちを可愛がり、命一杯の愛情を注いで育てた。
889:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:26:35.49:8p8yBmHTO
2010年5月26日 公園
今日はとても天気がよくて、ついつい子どもたちを連れて公園へ足を伸ばしてしまった。
彼は仕事で夜まで帰って来ることはない。
「今日はいい天気だね、お姉ちゃん」
「そだねぇ~。お昼寝日和だよー」
「もうお姉ちゃんったら」
ベンチに座って子どもたちとうたた寝をしていると、向こうから二人の女の子がやってきた。
二人ともよく似ている。まるで双子のよう。
「あいてっ」
あ、こけた。
「お姉ちゃんっ。だ、大丈夫!?」
「あいててて……大丈夫だよぉ」
「よかったぁ……」
なんて微笑ましい姉妹なんだろう。
私はその光景に自然と笑みを浮かべた。
892:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:30:04.10:xmu1na1Z0
「あ、見てみて~。ほら、あの赤ちゃんたち可愛い~」
「ほんとだ……ふふっ」
姉妹は私の娘たちに気がついたのか、こっちに近寄り、私に挨拶をした。
挨拶を返すと間髪いれずに姉の女の子が、
「可愛い~可愛いよぉ~……」
うっとりと眺め、娘の1人と遊び始めた。
「ご、ごめんなさい。でも本当に可愛いですね」
ありがとう、と返すと。
「名前はなんていうの、お姉さん? この子たちの名前」
なまえ?
そっちが唯で、こっちが憂っていうの。
「すごーい! 私たちと同じ名前だね、憂!」
BADEND6
893:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:31:52.55:qUKLgv8d0
>>837から
2010年5月11日 軽音部室
シュッ
唯「……」
律「唯ー! 無事だったな! よかったぁ……」
澪「みんなすごく心配してたんだからな?」
唯「そう、なんだ」
紬「お疲れ様、唯ちゃん」
梓「これで一安心ですね!」
さわ子「あっちの私にタイムマシンの破壊は頼んだのよね?」
唯「うん、バッチリ……」
律「あとは壊してくれるのを待つだけか!」
み梓「そうですね」
唯「……ねぇ、未来あずにゃん」
902:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:36:25.33:xmu1na1Z0
み梓「はい」
唯「本当にこれでいいの!? 消えちゃうかもしれないんだよ!?」
「……」
み梓「……はい」
み梓「私の目的はそもそも先輩たち死なせないことです。その目的のために壊れちゃったタイムマシンでわざわざ時間を越えて来たんですから」
み梓「一種の賭けでしたよ。まぁ、無事につけなかったことなんて微塵にも考えてませんでしたけど」
梓「そんな……」
さわ子「どうして未来の私はそれを止めなかったの?」
み梓「内緒で来たんです。言えばどうせ止められると思ってましたし」
さわ子「……ばか」
905:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:39:03.72:xmu1na1Z0
紬「そこまでして私たちのことを」
み梓「だって私、先輩たちのこと」
み梓「大好きですから」
梓「ちょ、ちょっとっ……///」
澪「梓……」
律「なんか、照れるな」
ギュッ
唯「あ、ずにゃあ……ん……」
み梓「はい」
唯「ごめん、ごめんね、ごめんねぇ……っ」
み梓「唯先輩はなにも悪くありませんよ」ナデナデ
唯「だっ、でぇっ……」
907:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:42:12.82:xmu1na1Z0
み梓「それになにも悲しむことないじゃないですか。そこに私はいるんだから」
梓「あ……」
み梓「私も、そっちの私も、同じ中野梓ですよ」
唯「おん、なじ……だけどっ、ちがうんだよぅ……っ」
澪「……」
律「……」
紬「……」
さわ子「……そろそろかしらね」
唯「やああぁぁっ! やだよおおぉっ!」
梓「ワガママ言わないでください!!」
唯「!」
913:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:45:16.44:xmu1na1Z0
梓「そんなに、そんなに言われちゃったら……つらくなっちゃうじゃないですか」
唯「あずにゃん……?」
み梓「ありがと、私」
梓「別にっ」
梓「……私ね、正直あなたに嫉妬してた。あなたが来てからみんな私を見てくれなくなっちゃったんだもん」
紬「あ、梓ちゃん。そんなことは」
梓「私が勝手にそう思い込んでいただけかもしれない。でも……」
み梓「ごめん……気づかなかった……」
梓「でも許す! 私の方こそごめんなさいっ」
み梓「そんな、謝らなくたって……」
梓「ううん、謝らせてっ」
916:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:48:36.07:xmu1na1Z0
み梓「なんか、ごめんなさい。私のせいで皆さんに」
さわ子「いいのよ、気にしなくて。あなたは唯ちゃんたちを助けてくれたんだから」
み梓「大したことしてませんよ。伝えに来ただけみたいなものです」
律「でもタイムマシン壊すって考えはお前の発想なんだぞ」
律「なにもできないと思ってた私たちにお前は希望くれたんだ。ちゃんと助けられたよ」
み梓「……えへへ」
唯「……未来あずにゃん。私、待ってるからね。遊びに来てくれるの」
み梓「そう、ですね……約束しましたもんね」
唯「……指きりげんまんウソついたら針千本のーますっ、ゆ……ゆびきっ、たぁ」
唯「やく、そく…………だよぉっ……?」
み梓「……」
み梓「はい! ……約束です!」
917:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:51:28.64:xmu1na1Z0
2000年4月28日 軽音部室
さわ子「平沢さん……どこに消えちゃったのかしら?」
さわ子「言われたとおり待ってて開けたらいないんだもん……まさか未来に帰った?」
さわ子「と、とりあえず壊すんだっけ」ガシッ
さわ子(うっ……いざとなったら……なんだか)
紀美「さわ子、そんなとこでなにしてんの?」
さわ子「ひっ、きゃあああっ!!?」シュッ…
ズガァァンッ!
紀美「いっ!? な、なにしてんの!?」
さわ子(こ、壊しちゃった……)
紀美「それおじさんからもらったギターでしょ!? な、なんつーことを……!」
さわ子「……こ」
紀美「え?」
さわ子「これが私のロックなんだよおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ドカン、ドカンッ、バキィッ
紀美「ちょ、ちょっと!? さ、さわ子ぉっ!!」
918:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:51:58.72:HXHYRC090
・・・
・・・
・・・
2010年5月25日
さわ子「ふふっ、ほんと久しぶりよね」
紀美「さわ子が先生になってからだいぶ会う機会減ったからねぇ」
紀美「どう? しっかり先生やれてんのかよっ、キャサリン」
さわ子「おうっ! じゃなくて、ええ。生徒たちのハートもがっしり掴んでるわ」
紀美「そりゃあおっかないね」クスッ
さわ子「えぇ~! なんでよっ、いい方で掴んでるのよ? 美人でおしとやかで優しい先生ってな感じで!」
紀美「ふふっ、そりゃあいつ本性がバレるか今から楽しみだね~」
さわ子「もうっ……!」
922:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:58:09.94:xmu1na1Z0
2010年5月25日 軽音部室
梓「……」
梓「……んんっ」
梓「……」
梓「すぅーっ…………」
梓「……」ジャンジャンジャンジャカ、ジャン
梓「ふぅ……」
梓「……」
梓「はぁ……」
ガチャリ
梓「あ!」
925:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:01:02.41:xmu1na1Z0
唯「あ~ずにゃん!」ギュッ
梓「ひっ」
唯「1人ぼっちで寂しかったかぁい~?」スリスリ
梓「いっ、いきなり抱きつかないでくださいよっ!」
唯「今さら何を言うかぁ、このこのぉっ」スリスリ
梓「うぇー……」グニグニ
927:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:01:56.38:sEnce1jl0
澪「お、梓が一番乗りだったのか」
紬「遅れちゃってごめんねぇ」
梓「い、いえ! そんな気にしないでください」
紬「すぐにお茶の用意しちゃうから」
梓「は、はぁ……」
唯「あずにゃんのほっぺプニプニぃ~」スリスリ
梓「あぅぅ……」
律「お前らまたやってんのかよー? あいかわらず仲良いですこと」
梓「ち、違いますっ」
唯「え!? 違うのぉ……?」
梓「あ、いや! えっと……」
929:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:09:43.65:xmu1na1Z0
紬「はい。今日は紅茶とクッキー」
律「お、シンプルにきたぞ」
澪「美味しそう……は、でも」
律「なんだよ、またダイエット? だったら澪の分も私がもらっちゃおー」
澪「や、やめろ!」
紬「いっぱいあるから慌てなくていいわよぉ」
唯「あ、あずにゃん! 私たちも食べいこっ」
梓「え!? あ、はいっ」
唯「ティータイム~、ティータイム~♪」
梓「それもいいですけど。練習、そろそろ真面目に頑張りましょうね?」
唯「気が向いたらするよ~」
梓「……はぁ」
932:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:13:27.17:xmu1na1Z0
唯「あ、そういえば聞いてよー」
澪「なんだ?」
唯「昨日いい夢みたんだぁ」
律「なんだよ、夢の話か……」
紬「どんな夢を見たの?」
唯「あずにゃんがうちに遊びに来たって夢」
律「おーおー、中野ぉ。好かれてんのぉ?」
梓「う、うるさいですっ!」
933:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:18:07.43:xmu1na1Z0
唯「えへへぇ」
澪「……もしかしてそれだけ?」
唯「そうだよ?」
律「おっもしろくねー! どうでもいいっての」
紬「まぁまぁ」
梓「……それで、私はなんで唯先輩のところへ遊びに来たんですか?」
唯「えっとね」
唯「約束通り、ちゃんと遊びに来たって言ってた」
梓「約束? 約束してたんですか?」
唯「うん!」
おしまい
938:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:20:48.98:WD0se9AXO
唯「憂はタイムマシンがあったら何がしたいの?」
憂「一昨日のスーパーのバーゲンセールに行きたいかも」
唯「えー、そんなもん?」
憂「だめかな?」
唯「過去でも未来でも、どこでも行けるんだよ? もっと色々あるって」
憂「じゃあ未来にいってお姉ちゃんの子どもでも見てこよっかな」クスッ
唯「いるかなぁ」
憂「どうだろうね。きっと可愛いと思うよ」
唯「でも私じゃなくて父親のほうに似てたら?」
憂「それでも可愛いよ」
唯「そっかぁー、よかったぁ」
・・・
ガチャリ
唯「ふぁ~……憂とお喋りしてたらもうこんな時間になってたとは」
唯「寝ちゃお、寝ちゃお~!」
唯「あ、でも歯磨きちゃんとしておかないと」
唯「虫歯は無視できない、なんちゃってー……」
ガチャリ
シュッ
?「こ、ここは……」
しかし、これハッピーエンドにしようと思ったらやっぱりさっさとタイムマシンをぶっ壊す以外にないよなぁw
530:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 03:50:23.02:bdAyojHT0好奇心は澪滅ぼすという教訓なのか?
531:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 03:59:38.25:XnEVFsqiO>>530
うまいこと言ったつもりか貴様
今見返したら、>>1の時点で既に伏線があったんだな…>>1のあずにゃんは一体どこへ…
532:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 04:19:15.62:z2aBa++10うまいこと言ったつもりか貴様
今見返したら、>>1の時点で既に伏線があったんだな…>>1のあずにゃんは一体どこへ…
>>1のときの梓の反応からして、まさか唯は…
533:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 05:09:22.43:yaDGzZ1W0まあまあ
534:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 05:27:10.61:78Jomw/Q0俺が気になってることまとめ
・2009年9月5日の唯が見ていた梓は何者か
・なぜタイムマシンが2009年の時点で存在するのか(いつから存在するのか)
・なぜタイムマシンがギターなのか
・使用後のタイムマシンはどうなるのか(過去で物置以外で使用した場合は使用した場所にあるのか、使用後床に落ちないのか)
・なぜBAD4はタイムマシンで唯を助けようとしなかったのか
・さわちゃんは誰からギターを貰ったのか
・律の落書きと梓の答案用紙の差は何か(前者は本人に記憶があり、後者は本人に記憶が無い)
・未来の澪の行動と現在の澪の行動
・さわちゃんはどれだけ知っているのか(タイムマシンとパラドックスについて、どういう改変がされたかを感知しているっぽい?)
なんか荒さがしっぽくなってたらすまない。書かなきゃ忘れそうだから…
支援
535:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 05:32:35.31:uDLBosCjO・2009年9月5日の唯が見ていた梓は何者か
・なぜタイムマシンが2009年の時点で存在するのか(いつから存在するのか)
・なぜタイムマシンがギターなのか
・使用後のタイムマシンはどうなるのか(過去で物置以外で使用した場合は使用した場所にあるのか、使用後床に落ちないのか)
・なぜBAD4はタイムマシンで唯を助けようとしなかったのか
・さわちゃんは誰からギターを貰ったのか
・律の落書きと梓の答案用紙の差は何か(前者は本人に記憶があり、後者は本人に記憶が無い)
・未来の澪の行動と現在の澪の行動
・さわちゃんはどれだけ知っているのか(タイムマシンとパラドックスについて、どういう改変がされたかを感知しているっぽい?)
なんか荒さがしっぽくなってたらすまない。書かなきゃ忘れそうだから…
支援
>>534
なぁに、全てはトゥルーエンドの伏線さ
549:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 11:06:21.75:3WFb6kmJ0なぁに、全てはトゥルーエンドの伏線さ
ガチャリ
唯「よし寝るよー!」
「お休みの前に少しお話させてもらってもいいですか」
唯「……え」
梓「……えっと、こんばんは。唯先輩」
唯「あずにゃーん! あーずにゃーん!」ギュッ
梓「ちょ!?」
唯「寝る前にあずにゃんに抱きつけるとは幸せですなぁ、むふふ」
唯「……あれ」
唯「でもなんであずにゃんが今ここにいんの!?」
梓「気づくの……遅いです」
唯「まさか窓から忍び込んだとか! えー、うっそー!」
梓「勝手に変な想像しないでくださいよ!」
梓「いいですか? 私は未来から来た中野梓です。タイムスリップして」
唯「未来あずにゃん!?」
梓「……」
梓「話、進めてもいいですか?」
唯「あ、ごめん! どうぞどうぞ!」
梓「……まずはどうしてここに私が現れたのかを説明します」
梓「私の時間のタイムマシンはもうガタがきてて、ていうか壊れちゃったというか……まぁ、よくわかってないんですけど」
梓「年月日に場所と時間、それらが指定できずにランダムに跳ばされてしまう状態なんです」
唯「……へぇー」
梓(絶対この人理解してない)
梓「さっき、勝手に申し訳なかったですけど唯先輩の携帯の日付を確認させてもらいました……2010年の5月8日、間違いないですよね?」
唯「もうすぐ9日になるよ」
梓「それはいいから! 間違いないんですよね!?」
唯「えー……うん」
梓「……ここまでたどり着くまで予想外に苦労しませんでしたよ。運よく最初に辿りつた時間がタイムマシンが正常なときでしたから。あとはある程度皆さんがタイムマシンについて知識があった時間に跳んできたんです」
梓(でもおかしいんだよね……あの時間のタイムマシンは確かに正常だったはずなのにどうしてこんな夜に、しかも唯先輩の部屋に来ちゃったのかな)
唯「……もしかして、あずにゃん。とんでもなく危ないことしてたってこと?」
梓「はい。かなりの賭けだったと思います。でもそれぐらいの覚悟は……」
ギュッ
唯「よかったぁ……あずにゃんが無事でよかったぁ……」
梓「また抱きつく……もぉ、唯先輩は変わりませんね……」
唯「でも」
唯「そこまでしてタイムスリップしてやりたかったことって何なの?」
梓「……はい」
梓「そもそも、私は未来の私と言ってもそう遠くに存在する中野梓じゃないんです」
梓「2010年5月24日から来ました」
唯「あれ、ほんとにそこまで遠くないかも」
梓「ここからが重要です。ていうか……これから私が話すこと、信じてくれますか」
唯「あずにゃんがここまで来てウソつくはずないもん。信じるよぉ」
梓「……ありがとうございます」
梓「唯先輩。それに、律先輩に澪先輩、ムギ先輩は……」
梓「5月22日に……4人ともそれぞれ死んでしまいます」
唯「はい?」
唯・梓「……」
梓「唯先ぱ――」
唯「またまたぁ~あずにゃんったら冗談キツいんだからぁ~」
梓「冗談じゃありませんっ!!!!」ドンッ
唯「!」
梓「……信じてください」
唯「う、うん……」
梓「このままじゃ、先輩方は死んでしまうんです。死因は……もう覚えてません」
唯「覚えてないって?」
梓「何度も何度も救おうと22日にタイムスリップして皆さんの様々な死に方を見てきましたから……」
唯「うげっ……」
梓「22日に死ぬことはもう決まった運命みたいなものなんです。だから救いようもない」
唯「じゃ、じゃあ私たちこのまま死んじゃうのを待ってることしかできないの!?」
梓「そうさせないために私がわざわざ苦労してタイムスリップしてきたんですよ。唯先輩」
唯「あ……そっか! じゃあ方法があるんだね!」
梓「ええ。ただ成功するかはわかりませんけど」
唯「ダメじゃん!」
梓「それしか方法がないから仕方がないでしょう!? グダグダ言わないでっ」
唯「ううっ……」
梓「とにかく、やっとこの話をまともに話すことができる時間の先輩に会えたんです。もうやってもらうしかありません」
唯「い、今すぐ?」
梓「ううん。明日、先輩方にまとめてもう一度この話をしてからです。さすがに唯先輩だけに任せるのは不安だから」
唯(このあずにゃん、いつにもましてビシビシ言ってくるよぉ……)
梓「……ごめんなさい。急に色々言われたって混乱しちゃいますよね」
唯「まぁ、よくわかんないけど」
唯「あずにゃんが一生懸命私たちのために頑張ってくれてるんだもん! だったら先輩としてちゃんとそれに応えなきゃ」
梓「唯先輩……」
唯「そういえばみんなに会って大丈夫なの? 未来のあずにゃんが」
梓「タイムマシンのことをこちらの皆さんは既に知ってることだし、大丈夫だとは思いますけど」
梓「ていうか今さらそんなこと気にしてられないし……というかこうして唯先輩に会っちゃってるし」
唯「あ」
梓「心配することはありません。もちろんこの時間の私と会うことになるのも覚悟してます」
梓「私ならきっと大丈夫なはず……はず」
唯「自信ないのぉ?」
梓「うーん……」
梓「ところで、私しばらくこの家に寝泊まりしても構わないでしょうか?」
梓「このままじゃ帰るにも帰れなくて……」
唯「うん! いいよ! ていうか大歓迎!」
梓「あ、ありがとうございます!」
唯「でも憂に見つかると色々面倒かなぁ」
梓「見つからないようなところで寝ればいいんです。例えばクローゼットの中とか」
唯「そんなのあずにゃんがかわいそうだよ……いい。一緒に寝よう? 憂に見つかったら私がなんとかしてあげるし、憂だって話せばわかってくれるよ」
梓「まぁ、それはそうかも……ていうか一緒に?」
梓「同じベッドの上で……並んで寝るってことですか?」
唯「あったりめーよ!」
・・・
梓(けっきょく)
梓(こうなっちゃうか……)
唯「あずにゃーん、すりすり~」
梓「い、いい加減寝てくださいよぉ……」
唯「もちょっと、もちょっとー」
梓「むぅ……」
唯「……ね、あずにゃん」
梓「え?」
唯「今まで寂しい思いさせちゃってごめんね」
梓「そんな……別に……。ていうかこっちの時間の唯先輩は関係ないじゃないですか……」
唯「まぁ、それはそうなんだけど……」
唯「あずにゃんは私たちのためにいっぱい頑張ってくれたんだよね。私、よくわかんないけどほんとに嬉しいんだよ?」
梓「……」
唯「ぜったい、ぜったいのぜったい。私は、ううん、私たちは」
梓「……」
唯「あずにゃんを一人ぼっちになんかさせないから、安心して」
梓「……」
梓「あの」
唯「うん?」
梓「……抱きしめて、唯先輩」
唯「うん」ギュッ
おうふ
565:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:00:07.05:3WFb6kmJ02010年5月9日
憂「お姉ちゃーん、朝だよ。起きて」
唯「ん、んー……」
憂「ほら、遅刻したら大変だよ?」
唯「あずにゃ……あーずにゃん…………はっ!」
唯「う、憂!」
憂「え?」
唯(もしかして、あずにゃん見つかっちゃったかな)
唯「ねぇ、憂。あずにゃん」
憂「うん?」
憂「梓ちゃんがどうかした?」
唯「え、あ……あれ?」ガサ
唯(なにこのメモ?)
―やっぱり憂にバレて色々説明するのも面倒だと思うので、さきに外に出ていますね。どこかで時間を潰そうと思います―
唯「ありゃ」
憂「なに? そのメモ」
唯「な、なんでもない!」
唯「それより朝ご飯食べようよぉ。私、お腹ぺこぺこ!」
憂「そうだね。じゃ、早く起きてきてね」
唯「はーい」
2010年5月9日 教室
唯(未来あずにゃん、どこ行ってるのかなぁ)
紬「唯ちゃん?」
唯「ほえ?」
紬「あの、タイムマシンはこれからどうなっちゃうんだろねって」
唯「そうだねぇ……ムギちゃんはどうなってほしいの?」
紬「誰かの幸せのために使えたらなー……なんて」
紬「本当のこと言っちゃえば、全然わかんない」
唯「私もかな、えへへ」
紬「ふふっ」
紬「タイムマシンって……誰が作ったのかしら?」
唯「へ?」
澪「唯、ムギ、おはよう」
律「二人でなに話してたー?」
唯「おはよー。えっと、なに話してたんだっけ」
紬「別に大した話じゃないわ」
律「そう? そういやさ、さっき梓に会ったの。あ、学校の外でな」
紬「えっと、それが?」
律「うん。とりあえず声かけたんだけどさ、私と澪の姿見た瞬間すんごい嬉しそうにして」
澪「ふふ、可愛かったな」
唯「まさか!」
律「ん?」
唯「あ、なんでもないっ」
律「んでんで、今度は放課後大事な話があるから覚悟しててくださいって、すんごい真面目な顔して言ってきたのよ」
紬「大事な話……何かしらぁ」
澪「最近部活真面目にしてないから、梓怒ってるのかな」
唯「そ、そんなことないと思う!」
澪「そう?」
律「どうだかなぁ。とりあえずその後梓どっかに走ってっちゃって……あいつ、学校サボる気なのかね」
紬「梓ちゃんはそんなことする子だとは思わないけれど」
律「まぁねぇ……なんだったんだろ、梓のやつ」
唯(たぶんそのあずにゃんって未来あずにゃんだよね……?)
軽音部室
ガチャリ
梓「あ……」
紬「あら、梓ちゃんが一番だったのね」
律「梓はやいなぁ、気合い十分ってところか」
澪「梓ごめんな。私たち真面目に練習するから」
梓「え?」
唯「あ、あずにゃん!」
梓「はい!?」
唯「あの話、みんなちゃんと信じてくれるかなぁ」ヒソヒソ
梓「は……?」
梓「……あの、皆さん。さっきからいきなりどうしたんですか?」
「え?」
澪「大事な話があるとか朝言ってただろ?」
唯「そうだよ! とっても大切な話でしょ!?」
梓「え? えぇ?」
紬「梓ちゃん?」
梓「む、ムギ先輩?」
唯「あーもうっ! 大丈夫だよ! みんなあずにゃんの話、きっちり聞くから!」
梓「えぇー……」
梓(この人たち……私に何を求めているんだろう)
梓(ま、まさか! 私、試されてる!?)
梓「えっと、えっと……」アタフタ
ガチャリ
梓「遅くなっちゃったかな……あ、みんないる」
律・澪「え」
紬「あ、あれ……あれ?」
梓「私!? 私がもう1人!?」
・・・
律「つまり」
律「お前は未来の梓なのか」
梓「はい」
澪「ということは私たちが朝会った梓は」
梓「私ですね」
唯「もうっ、紛らわしいよぉ」
梓「でしょうね……ごめんなさい」
紬「そ、それよりこっちの梓ちゃんが」
梓「あわわわわ……」
律「ん? こっちは今の時間の梓でいいんだよね?」
梓「はっ、はい!」
律(本当に紛らわしいな……)
唯「そうだ!」
「?」
唯「じゃんじゃじゃーん!」
梓「シールですか?」
紬「それがどうかしたの?」
唯「これを未来あずにゃんのほっぺに貼りつけると……ほら!」
澪・律・紬「おぉ~」
み梓(未来)「わかりやすくなったのはいいですけど、別にシールじゃなくたって」
唯「でも可愛いよぉ~」
律「似合ってるな、たいへんよくできましたシール」
み梓「……」ムカッ
梓「あ、あの、私のこと忘れてませんよね……?」
あずにゃんwww
バッドエンドルート連続だったからこういうのはほっとする・・・
580:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 12:49:34.60:3WFb6kmJ0バッドエンドルート連続だったからこういうのはほっとする・・・
み梓「それで、皆さん」
梓「それって私も含む?」
み梓「うん」
梓「ほっ……」
律「で、なんだよ? あるんだろ? 大事な話が」
唯「う……」
澪「どうした唯?」
み梓「唯先輩には昨日の夜に説明したんです」
梓「唯先輩の家に行ったの!?」
み梓「それも含めて話すから黙って聞いてて」
梓「うっ……」
・・・
澪「――わ、私たちが死んじゃうって……冗談はやめてくれよっ」
み梓「冗談だったらわざわざ未来から来ません」
唯「私は信じてるからね!」
み梓「ふふ、昨日も聞きましたよ」
律「梓がウソをつくとは思えないし、私も信じるよ」
紬「私も」
澪「……うん」
み梓「皆さん……」
律「よかったなぁ、梓。普段からいい子にしてたからこんなこと言われてんだぜー?」
梓「な、なんで私に言うんですか!?」
唯「それで、未来あずにゃん。どうやったら私たちは助かるの?」
み梓「えっと、ですね。難しい話になりますけど、とりあえず聞いていてください」
唯・律「はーい!」
み梓(大丈夫かな……)
み梓「これはハッキリとわかっていることじゃなんですけど、恐らく、タイムマシンを初めて使ってから過去でみなさんが色々してきたことで、世界が変わったんだと思います」
澪「変わったって?」
み梓「もちろん。22日に先輩方が死んでしまう世界に」
律「過去を変えたら世界が変わるってのはどういうことなんだ?」
み梓「それについては……まぁ、詳しい人がいますから後で教えてもらってください」
律「詳しい人……?」
み梓「とにかく、どう考えても4人がその日にそれぞれで死んでしまうなんて偶然、おかしいんです。……まぁ、私見も入っちゃってますけど」
み梓「だから、今までに行ってきた過去にもう一度行って、世界を変えてしまった原因を取り除いてくるんです。そうすることができればもしかすると助かる、かも……」
紬「確証は持てないのね?」
み梓「で、ですけど! これしか方法はないんです!」
律「なら試してみるっきゃない!」
律「黙って何もしないよりはマシだろ? な?」
み梓「は、はい!」
紬「ところで未来の梓ちゃん。その知識はどこから……」
み梓「それは――」
澪「す、すとっぷ!」
唯「どったの澪ちゃん?」
澪「そろそろ過去の私たちがこの時間に来ると思うんだけど……」
唯「え、なんで?」
澪「忘れたのか、私たち部室覗きに行っただろ?」
律「そういえば……って、だったらここに梓が二人いたらまずくないか!?」
梓「え?」
紬「梓ちゃんちょっとそこの物置きに隠れて!」グイグイ
梓「ちょ、ちょっと! 私は未来の私じゃ……!」
律「んなのどっちでもいい!」
ガチャリ
紬「ふぅ……」
み梓「な、なんかすいません」
唯「気にしないでいいってー」
律「それよりなんかこれだと不自然だな……みんな! とりあえず席につけ!」
唯「……んで?」
澪「とりあえずいつものティータイムみたいな会話をしようっ」
唯「いつも何話してるっけ~」
律「自然体だ! 自然体!」
唯「でもどうするの?」
澪「そうだなぁ」
紬「やっぱり今後の部活の方針を決める会話とか?」
律「いやいやいや」
み梓「こんな感じのグダグダで十分だと思いますよ」
・・・
律「も、もういいかな?」
澪「たぶん……」
み梓「さすがに30分も様子見なんてしてないと思いますけど」
紬「とりあえずお茶にしよっか」
唯「さんせー!」
澪「なんか喉渇いちゃったな」
律「お菓子は? 今日のおっかしはー!」
紬「ちゃんとありますよー」
律「いえっす!」
み梓(なんだか……ほっとするなぁ)
梓「誰か忘れてませんか!?」ガチャ
「あ」
こういうことだったのか
594:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 13:30:19.86:3WFb6kmJ0梓「ひどいですっ、あんまりですっ……」グスン
唯「よしよし、いい子じゃあずにゃん」
澪「しばらくしてからまたあの私たちが戻ってくるからそれまでにはこの部室から離れなきゃな」
唯「なんで?」
澪「なんでって、もとの時間に無事帰らせるために決まってるだろ」
律「そっか。いやー自分たちのこととはいえ、面倒だな」
紬「それで、未来の梓ちゃん。さっきの話の続きなんだけど」
み梓「あ、はい」
み梓「今さっき皆さんに話したことは全てある人から教わったことなんです」
律「ま、まさかタイムマシン太を作った人か!?」
澪「タイムマシン太で定着したのか……」
梓「それで? ある人って? もったいぶらないで早く言ってよ」ムスッ
み梓「さわ子先生」
律・唯「さわちゃん!?」
澪「どうしてさわ子先生……まさか」
律・唯「タイムマシン太作ったのはさわちゃん!?」
澪「じゃなくて、あれはさわ子先生の物だったんじゃないか? 梓?」
梓「へ?」
み梓「はい」
梓(あ、そっちか)
み梓「私が過去へ行って先輩たちの死を回避しようと何度も挑戦していたときに先生が話してくれたんです」
み梓「このままでは絶対に助けられないって。そこからタイムマシンのこと、それを所持していた自身のことを話してくれました」
律「びっくり……」
紬「正直、私も……」
唯「だったら私たちもさわちゃんから詳しく話聞いたほうがいいよね」
澪「そうだな。なにもわからないよりはマシだし」
さわ子「呼んだ?」ガチャリ
唯・澪「ナイスタイミング……」
さわ子「……うん?」
さわ子「ひー、ふー、みー……ねぇ、うちの部員って何人いるんだっけ?」
律「6人だよ~。忘れちゃったのかよぅ」
紬「り、りっちゃん」
さわ子「ウソおっしゃい。5人でしょ? 人数少ないんだからすぐわかるわよ」
さわ子「……じゃあ、なんでここに6人いるのかしら? ま、まさか……」
澪「あわわわわ……」ガタガタ
律「おい」
梓・み梓「あ、あの! 先生!」
さわ子「あらぁ……? 梓ちゃんが二人……」
唯「さて、どっちが本物のあずにゃんでしょう!」
さわ子「よくできたマスクねぇ。ていうか体の大きさもそのまんま」グイグイ
梓「あいてててっ」
さわ子「胸も、むふふ……ぺったんこねぇ……」ペタペタツンツン
み梓「っ!?」バッ
律「エロオヤジいいかげんにせいっ」ペチンッ
さわ子「あぁんっ」
さわ子「……まぁ、冗談はこれぐらいにしておいて」
澪・紬(冗談だったんだ)
さわ子「説明してちょうだい。梓ちゃんが二人いるわけを」
さわ子「――なるほどねぇ」
唯「ウソだって思わないの?」
さわ子「例のタイムマシンの話が出てきてしまったんですもの」
さわ子「作り話にしてはできすぎてるしね」
律「まぁ、なぁ……」
さわ子「それで、未来の梓ちゃん。どうして未来の私はあなたと一緒にこっちに来なかったのかしら?」
さわ子「大事な教え子のピンチだっていうのに……」
み梓「これは私が勝手にやってることなんです。だから先生には内緒で来ました」
み梓「どのみち、一緒に来れる確率も低いと思います」
紬「そっか、タイムマシンが壊れていたから……」
さわ子「だとしても……まぁ、そのぶん私がしっかりするしかないか」
唯「それにしてもこのタイムマシン、ほんとにさわちゃんのだったんだねぇ」
梓「だからここの物置にしまっていたんですね」
さわ子「まぁ、ね」
さわ子「自宅で保管しておくべきだったわ……」
澪「先生のもとにあった前はタイムマシンはどこに」
さわ子「私の叔父さんがゆずってくれたのよ。まぁ、本人はわかってないで渡したと思うんだけど」
律「その人、一度もあれに触ってないってこと? でもそれって変じゃないか?」
律「普通は一度弾いてみたりしないか?」
唯「大事にしてたんじゃない?」
澪「ギターコレクターとか」
律「うーん……」
み梓「今はそんなことは関係ありません。とにかく早くなんとかしなきゃ」
さわ子「そうね」
紬「でも世界が変わってしまった原因がわからなきゃどう動けばいいかわからないんじゃ」
み梓「それは……まぁ」
律「虱潰しに過去へ跳べばいいんじゃないか? それでその時間に跳んできた別の私たちを見張って」
唯「あ、それいいね! りっちゃん隊長さっすがぁ」
律「だろぉ?」
澪「となると、5月4日……からだよな?」
紬「そうね」
梓「あ、でも!」
梓「初めてタイムマシンを使ったのって私じゃないですか」
律「あ! ていうことはもっと前の時間で梓か何かしちゃった場合もあるってことか!」
み梓「ま、まさか私が原因で唯先輩たちを……」
唯「そんなことない! そんなことないよっ」
み梓「でも……」
紬「梓ちゃん。行った時間は覚えてる?」
梓「……あのときは何もわからない状態で色々跳んでてたので」
澪「まさか……」
梓「覚えて、ないんです……ごめんなさい」
澪「そんな……」
さわ子「……」
さわ子「……あんな物を私が受け取らなければこんなことは起きなかったのね」
さわ子「そして……」
唯「さわちゃん?」
さわ子「私もね、世界を変えてしまったのよ。私の友達が死ぬ世界に」
梓「先生も!?」
さわ子「興味本意で過去でキッカケを作ったのが悪かったのね……許されない罪よ、これは」
律「き、気持ちはわかるよ。こんな物があったら誰だって……」
さわ子「……」
さわ子「少し、お話しましょっか」
唯「さわちゃん……」
澪「そ、その前に一回ここからでませんか? 過去の私と唯と律がそろそろ……」
唯「あ、すっかり忘れてた!」
さわ子「もぉ、空気読めないわねぇ……」
「あっちにいきなり戻ったらムギたち驚くだろうな~」
「やめろってば! やっぱり一度電話したほうが」
「もうおそ――――」シュッ
「ば、ばかりつぅ~……」
「澪ちゃーん。次私ね~」シュッ
「ゆ、唯! ま……行っちゃった」
「もういいや……――――」シュッ
…ビリッ、バチバチバチッ…シュ~……
ガチャリ
律「行った……みたいだな。よし、もう入っても大丈夫ー」
唯「ふぃ~……」
梓「それじゃあさっきの先生のお話、聞かせてもらえますか?」
さわ子「ええ」
2000年4月28日 教室
紀美「へー、SGかぁ」
さわ子「おじさんがね、譲ってくれて」
紀美「よかったじゃん! これでDEATH DEVIL結成ね」
さわ子「ちょ、ちょっと気が早すぎない?」
紀美「そんなことないって。さぁて、今日からさっそく練習だからねー」
さわ子「ふふっ、はいはい」
2000年4月28日 軽音部室
ガチャリ
さわ子「私が一番乗りかぁ」
ガサゴソ、ストッ
さわ子「……ちょっと見てみよっか」
ジィーッ、ピッ
さわ子「よっこいしょ、っと」
さわ子「ふふっ、私のギターだ……」
パサッ…
さわ子「ん? なにこれ、メモ?」ス
さわ子(タイムマシン取扱についての注意……?)
さわ子「タイムマシンって……ぷっ」
さわ子「なによそれ。何のこと?」
さわ子(えっと、このギターはタイムマシン。取扱いには注意すること……)
さわ子「……このギターがタイムマシン?」
さわ子(六弦で戻る年数、五弦で……)
さわ子「へー……おじさんも面白いこと考えるわ」
さわ子「試しに昨日へ戻ってみたりして」
ポーン、ポーン、ピーン
さわ子「やだこれ変なお――――」
2000年4月27日 軽音部室
さわ子「――と」
さわ子「!!」
さわ子(な、なにいまの変な感じ!?)
ガチャリ
紀美「あれ? さわ子」
さわ子「の、紀美……」
紀美「あんた今日は家の用事あったんじゃなかったっけ? 親戚の家に行くとか」
さわ子「家の、用事?」
紀美「違うの?」
さわ子「ちょ、ちょっと待って紀美……話が」
さわ子「……あれ? ギター」
紀美「え?」
さわ子「ね、ねぇ! ギターは!? 私のギターはどこいったの?」
紀美「ギター? あんたギターまだ持ってないじゃない」
さわ子「うそ!? 今日紀美にも見せたじゃない! ほら、SGって……」
紀美「さわ子。あんた大丈夫?」
紀美「ちょっと保健室に……」サ
パシッ
さわ子「私はおかしくないっ」
紀美「さ、さわ子っ」
さわ子「っ……!」
ガチャッ、タタタ…
紀美「あの子、どうしちゃったんだろう?」
さわ子(なんなのよ……なんだってのよ……)
さわ子「……なんか、紀美に悪いことしちゃったかな」
ドン
堀込「おっと!」
さわ子「ご、ごめんなさっ……なんだ、先生」
堀込「山中! なんだとは何だ。ちゃんと前向いて歩けよ?」
さわ子「……」
堀込「山中? おーい」
さわ子「先生、今日は何月の何日でしたっけ……」
堀込「うん? 5月27日だが」
さわ子「……え」
さわ子「27、ですか?」
堀込「あ、ああ……山中、お前顔色悪いぞ? 大丈夫か?」
さわ子「へ、平気ですっ。なんでもありませんっ」
さわ子「し、失礼します……!」
タタタ…
堀込「お、おい!? ったく……」
さわ子(おかしい! 今日は28日なはずよ? 27日は昨日!)
さわ子「教室のカレンダーも27日……」
さわ子「まさか、あのギター本当に……」
さわ子「……」
さわ子(本当に過去に来れたっていうなら、私すごいよね?)
さわ子(だ、だってタイムトラベルしてきたのよ!? よくわからなかったけど……)
さわ子「えっと……あった」ガサゴソ
さわ子(メモ、一応ポケットに突っ込んでおいて正解だったわ)
さわ子(タイムマシンは夜になってから私の部屋にこっそりいけば使えるはず……)
さわ子「……ふふっ!」
「あれ、さわ子。なんか嬉しそうじゃん。どうかしたの?」
さわ子「ちょっとね~」
さわ子(どうせなら帰る前に色々しておきましょっか!)
さわ子「ねぇ、○○さん。もし、あなたがタイムマシンで過去へ1日前に行ったら何する?」
「は? なによ急に……」
さわ子「いいから、いいから」
「そう、ねぇ……過去を変えたら未来も変わるよね?」
さわ子「え?」
「だってそうじゃない? 例えば、そこの窓がタイムマシンを使う前は割れてなかったとする」
「で、タイムマシンでそこの窓を割って、もとの時間に戻ってくるとすると……」
さわ子「本来割れてなかった窓が割れてる?」
「たぶん」
さわ子「つまり○○さんは過去へ行ったら未来を変えたいってこと?」
「面白そうじゃない?」
さわ子「……そう、ね!」
さわ子「いいかも! ありがと、○○さん!」タタタ…
さわ子(そうね、そういうのも悪くないかもしれない! だったら……!)
教室
さわ子「えっと、紀美の机は」
さわ子「あった、あった」
さわ子(さっきは悪いことしちゃったし、なんだか面と向かって謝るのも恥ずかしいから……)カキカキ
さわ子(紀美、ごめんね……っと)
さわ子「ん、これだけじゃちょっと物足りないか。少しつけたして」
さわ子「……by.タイムトラベラーさわ子、っと」カキカキ
さわ子「机にこんなに大きく書いて、紀美怒ったりしないよね?」
さわ子(さて、あとは夜になるまでそのへんでうろつこうかなぁ、ふふっ)
2000年4月28日 自室
さわ子「――ぶないっ」
さわ子「あ……無事戻ってこれた?」
さわ子(もう少しで27日の私に見つかるところだったわ……ふぅ)
さわ子(でもメモのとおりにしたら無事に帰ってこれたし)
さわ子「色々不思議だったけど、いい体験にはなったかな」
さわ子「あ! でもこれだったら普通の楽器として使えないじゃない!」
さわ子「あー……もうっ、バイトしてお金貯めようかなぁ」
このときは自分がバカなことをしてきただなんて思いもしなかった。
後悔することになるなんて思いもしなかった。
2000年4月29日 軽音部室
紀美「はい、さわ子のギター」
さわ子「ちゃんと保管しててくれたんだ!」
紀美「誰にも指一本触れさせてないから、安心しな」
さわ子「ありがとう紀美!」
紀美「でも昨日はギター放っておいてどこ行ってたのさ? しかも帰ってるし」
さわ子「ちょ、ちょっと急用で……」
紀美「そうなの? じゃあ、しゃーないね。さてとじゃあ……」
さわ子「あ! それと……このギター、やっぱり返さなきゃいけないことになったの」
紀美「えぇ~!? もらって2日で返すの!?」
さわ子(演奏するたびにタイムスリップしてたら……ちょっと、ね)
・・・
「それじゃあまた明日~」
「さわ子、紀美! ばいばーい!」
紀美「おーう」
紀美「さて、私らもそろそろ帰るか」
さわ子「うん」
紀美「ところで私の机の上にあれ書いたのってあんた?」
さわ子「あ、わかった?」
紀美「ていうかあんたの名前書いてあったしね。んで、なにがごめんねなの? 謝られる覚えないんだけどな」
さわ子「……あの、ほら、私一昨日、部室で紀美に変なこと言って困らせちゃったじゃない? だから……」
紀美「ん? ……あー! 思いだした! うん、変だったよ! さわ子!」
紀美「ていうかあの日はなんで用事あったのにすぐ帰んなかったのさ?」
さわ子「えっとー……あ!」
紀美「どうしたの!?」
さわ子「ギター……部室に忘れてきちゃった」
紀美「こ、ここまで来て今さら気づくかぁ、普通……」
さわ子「あんまりギター背負って帰るのに慣れてなくて、へへへ」
さわ子「ちょっと学校戻るから紀美はさきに帰ってて!」
タタタ…
さわ子(さすがに二日も学校に置きっぱなしにはできないよね……)
…ブゥゥーーン
紀美「さわ子っっ!!」
さわ子「え――」
ドン!
さわ子(押された……!?)
キキィーッッ
さわ子(なにが――)
ドンッ
グシャァッ
さわ子「……」
さわ子「のり、み」
さわ子「のりみ……?」ガタガタ
紀美「 」
紀美はトラックに撥ねられたその日に死んだわ。
頭を強く打ちつけたのが原因だったのかしらね。
……ううん、原因は私。
私が過去で未来を変えたせいで、紀美が29日に死ぬ運命が待つ世界へと変えてしまった。
偶然だったかもしれない?
そうだとしても、私があのとき紀美を殺してしまったことには変わりはない。
もっと車に気をつけていればよかったのにね……。
紀美はなんであのとき私を庇って助けてくれたのかしら。
私が轢かれていればよかったのに。
紀美が亡くなってからしばらくは部屋から出ることができなかったわね。
目の前で人が死んだというショックと友達が死んだというショック。
あの頃の私にはとても重かった。……まぁ、今でも変わりはないけど。
話を戻すわ。
学校に今まで通り通えるようになった頃に、私はタイムマシンの存在を思い出したの。
そして思った。
過去へ戻って紀美を助けることができるんじゃないか、って。
でも未来の梓ちゃんは知っていると思うけれど、一度起きた死はそう簡単に回避することができない。
変えてしまった世界はそう簡単に戻すことができないの。
何も知らないそのときの私は何度も何度も紀美を助けようとした。無駄だということを知らずにね。
さすがに繰り返し、親しい人の死を見ると精神的につらかった。
ついには耐えきれなくなった私は紀美を救うことを中断して、おじさんのもとに向かった。
タイムマシンを譲ってくれたのはおじさん。なら、なにか知っているんじゃないかと思ってね。
何かわかれば紀美も救えるかもしれないって。
……何もわからなかった。
それどころかおじさんはタイムマシンのことも知らなかったの。
話を訊いたときはとても笑われたわ。冗談にしてはよくできた話だって。
でもね、おかしいのよ。
さわ子「タイムマシンを入れていたケースの中にあったメモはどう見てもおじさんが書いた文字だったの」
紬「似てただけだったとか……」
さわ子「かもしれないと最初は思ったわ。でももう一つのメモを見て確証したの」
梓「もう一つって……使い方を書いたメモ一枚だけじゃなかったんですか?」
さわ子「ええ。あとになって見つけたのだけど……それにはタイムトラベルについての注意とか、今までみんなに説明したようなことが書いてあった」
み梓「パラレルワールドのこと、とか?」
さわ子「そう。そしてそのメモの裏にね、おじさんの名前が書いてあったの」
さわ子「名前と一緒に、゛自分を忘れるな゛という文も添えてね」
律「自分を忘れるな?」
唯「どういう意味?」
澪「自分を見失うな、とかじゃないのかな」
律「ていうか、さわちゃんのおじさん。もしかしたらトボケてるだけじゃないの?」
さわ子「そう思うでしょ? でも本当にわかっていない感じなのよ」
唯「ほんとかなぁ」
さわ子「ええ」
み梓「どっちにせよ、まずは先輩たちを救うことが先決です。それができてからこのことについて調べてくれませんか?」
さわ子「……そうね」
さわ子「私が行くわ。私ならもし過去でもう1人の私と会っても説明要らずだし」
律「でもさわちゃんは私たちがしでかしてきたことが何かよくわからないだろ」
律「だったら直接私たちが行ったほうが早いよ」
澪「私も律と同意見です」
さわ子「……言い忘れてたことがあった」
梓「え?」
おじさんは澪のケースか
653:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 16:22:12.44:3WFb6kmJ0さわ子「紀美の机に字を書いたってのはさっき話したわよね?」
唯「ごめんね、ってでしょ?」
さわ子「あれが世界を変えた原因だと思った私は過去へ行ってあれを消そうとしたの」
紬「原因を取り除くことができれば、もしかしたら紀美さんは死なずにすんだかもしれないからですよね」
さわ子「そう。でもね、消せなかった」
律「は? なんでだよ?」
さわ子「消すことができなかったのよ……。紀美の机に近づけなかった」
律「近づけなかったって……まわりに誰かいたから、とか?」
さわ子「違う。近づこうとすると何かに押し出されるの」
さわ子「実態のない。なにか……よくわからない力、みたいな。なんというか……」
さわ子「何をしようと、どう近づこうと机には近寄れなかった」
み梓「原因を取り除くことができなかった……ううん、取り除くことが許されなかった?」
唯「どういうこと?」
み梓「これ、私の時間の先生から聞いた話なんですけど、一度過去で何かを変えてしまうと戻すことが困難になる、みたいなこと言ってたんですよ」
さわ子「困難と言うか、ほぼ無理なのかもしれない」
み梓「え!?」
さわ子「それもおじさんのメモに書かれていた注意事項の一つよ。きっと梓ちゃんを気遣ってそんなこと言ったのね。私は」
み梓「そんな……」
梓「で、でもやってみなきゃわかんないよ!? まだ確定ってわけじゃないかもしれないしっ」
み梓「う、うん……」
紬「……世界を変えた原因」
紬「もしかしてっ」
唯「どったのムギちゃん?」
紬「ほら、りっちゃんが澪ちゃんの机の中に落書きを書いた紙を入れてたじゃない!」
澪「あ……ああぁぁ!!」
紬「ほかに私たちの中で過去に行ったのは梓ちゃんが最初のトラブルで過去へ行ったことを除けばりっちゃんしかいないし!」
律「そういえば……」
梓「でもそれが違ったらやっぱり私が過去でなにか……」
紬「それを悔やむのはりっちゃんの落書きをどうにかしてから」
梓「うう……」
梓「もし先輩方を殺してしまったのが私のせいだったら……私……」
唯「大丈夫、大丈夫だよぉ」ギュッ
梓「慰めなんていらないです……」
律「ていうか私だって原因作ってたのが私だってのなら……けっこうへこむ」
律「結果的にみんなが死ぬし」
澪「そのときはお前も死んじゃうんだから、気にするな」
律「それは慰め? 慰めてるつもりなのか!?」
梓・み梓「ふふっ……」クスッ
唯「とりあえず! やるだけやってみようよ!」
さわ子「そうね、もしかしたら上手くいくかもしれない」
律「もしかしたらじゃなくて絶対上手くいくの!」
澪「よし、じゃあ原因作ったお前が行ってこい。律」
律「え~……」
未来が変わる要因を潰すんじゃなくて逆に増やしたらどうなるんだ
665:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:16:57.54:3WFb6kmJ0唯「はい、りっちゃん! タイムマシン太だよ!」ス
律「うおっ、準備いいな……」
律「えっと、たしか4日でいいんだよね?」
紬「そうよ。4日ならここから跳んでも大丈夫ね」
律「部活は休みってことになってたし、誰もいなかったしな」
梓「そういえば前に4日に跳んだときもこの時間帯でしたよね?」
さわ子「じゃあもう1人のりっちゃんに会わないように気をつけてね」
律「へいへい……」
澪「4日には3人の律がいることになるのか……ん?」
澪「ねぇ、未来の梓」
み梓「はい?」
澪「梓のときも、こうやって未来から梓が来て、お前みたいに私たちが死んじゃうからなんとかしなきゃ、みたいな話したの?」
み梓「いいえ? ……それがなにか?」
澪「あ、いや……なんでもないよ」
み梓「?」
律「話は済んだぁー? あと、私行くぞー?」
澪「あ、ああ」
唯「りっちゃんファイト!」
梓「しっかり原因取り除いてきてください」
律「わかってるって。……では!」
ポーン、ポーン、ピーン
「……」
律「……ん」
律「……」パチクリ
唯「りっちゃん?」
律「な、なんで! 部室に誰もいないはずなのになんでみんないるの!?」
梓「あの、落ち着いて。律先輩」
み梓「ど、どういうことなの……なんで……」
律「え? え?」
律「今日は5月4日だよね? そうなんだろ?」
澪「律……5月9日だ……ていうか」
紬「タイムスリップしてない……?」
・・・
ポーン、ポーン、ピーン
唯「……どう!? タイムスリップできた?」
紬「ううん」
唯「だめかぁ」
さわ子「今までにこんなことは?」
律「なかったと思うけど……。なんでだよぉ? さっき過去の私たちが帰るときはちゃんと動いてたじゃんか」
み梓「あの、皆さん聞いてください」
「?」
み梓「もしかしたら、壊れたかもしれません」
梓「タイムマシン?」
み梓「……うん」
澪「う、うんって……」
み梓「私の時間のタイムマシンが壊れてて上手く時間を飛び越えることができないって話、しましたよね?」
澪「ああ」
唯「聞いたよー」
み梓「実は壊れたのは先輩たちが死んでから私がその死を回避しようと奮闘してるときなんです。かなり唐突でした」
紬「それってまさか」
み梓「ええ。こんな状況です」
み梓「そのタイムマシンが壊れたのはもっとさきになるんです。9日には一度もこんなことになりませんでした」
さわ子「未来から梓ちゃんが来たことで、壊れるまでの日にちが縮まったのかもしれないわね」
紬「それってまた世界が変わったってことですよね? だったら22日私が死んじゃうって未来がなくなったりは?」
さわ子「そんなことはその日が来るまでわからないわ。もしかしたら助かるかもしれないし、22日の死は回避できずそのままかもしれない」
さわ子「ていうか回避されているのならここにいる未来の梓ちゃんの存在は? 持っている記憶は?」
紬「……」
打つ手なしどころか未来のあずにゃんもとの時間に帰れなくなったか
671:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 17:43:07.51:3WFb6kmJ0ピーン、ポーン、ピーン
梓「未来にもいけませんね」
律「ああ……ん? ていうか」
律「未来の梓ぁ。なんでタイムマシン壊れてたのにお前は使えたんだよ? 動かなくなったんだろ?」
み梓「……タイムマシンが動かないことに私が苛立ってですね」
み梓「タイムマシンを蹴ったんです」
律「え……」
み梓「あ、でもほんのちょっと。かるーく……そしたら」
澪「にしても蹴るってそんな……」
み梓「つ、続けますよっ」
み梓「蹴ったらすぐにタイムマシンが放電したんです」
紬「放電!?」
梓「ちょ、ちょっとそれってまずいんじゃ」
み梓「もちろん私はあんまりにも突然のことにパニックになって……」
澪「梓ぁ……」
み梓「うっ……」
唯「それでどうしたの?」
み梓「しばらくしたら放電は止まって……。恐る恐るタイムマシンを調べて、もしかしたらって過去に跳べるか試すために、弦を鳴らしたら……」
さわ子「できた、と?」
み梓「ですが、跳んだ時間は指定した月日と時間、場所通りじゃなかったんです」
律「それがわかるってことは、変なところに行かなかったんだな」
み梓「……不幸中の幸いですね」
澪「結果からいうと、タイムマシン太がおかしく……」
唯「えへへ~」
澪「どうした唯?」
唯「澪ちゃんもタイムマシン太って言ってくれて嬉しいなぁって」
澪「……と、とにかくっ」
律「おかしくなったのは梓のせいだということだな」
澪「まぁ、おかしくする前にもともと壊れてたんだろ」
み梓「……まぁ、私がこうしてここに来ることができたのも蹴ってまた動かしたから」
紬「結果オーライねぇ」
律「……よし、じゃあ私もこれを蹴って」
さわ子「ちょ、ちょっと待ちなさい!」ガシッ
律「離せー! 止めるなさわちゃーん!」ジタバタ
さわ子「こっちのタイムマシンまでおかしくさせる必要はないでしょっ」
律「じゃあどうしろってんだよっ」
さわ子「……私のおじさんに会いに行きましょう 」
梓「でも、先生のおじさんは」
さわ子「ダメもとでも何でも、やれることは全部やるべきだわ」
さわ子「もしかしたら……何かわかるかもしれないし、この状況を打破できるかもしれない」
唯「おぉ、さわちゃんが頼もしいよ」
さわ子「それっていつも頼りないってこと!?」
紬「ま、まぁまぁ……」
さわ子「というわけだから明日さっそく行くことにしましょう。明日はちょうど土曜日だし」
澪「そうですね」
律「それじゃあ今日は一旦お開きってことで」
唯「色々考えたから頭いっぱいいっぱいだよぉ」
紬「ところで未来の梓ちゃんはどうするの?」
み梓「え?」
紬「帰る家よ」
唯「それなら大丈夫だよー。私の家に泊めるから」
み梓「ごめんなさい唯先輩。迷惑かけちゃって」
梓「……」
「いいなぁ、未来の私……唯先輩と一緒に」
律「寝ることができて。あーんなことやこーんなこととかしちゃうのかなぁ!」
澪「おぉ……似てる」
梓「か、勝手に私の声真似で変なこと言わないでくださいっ!!」
律「違いますぅー心読んだだけですぅー」
梓「きーっ!!」
あずにゃんかわゆす
679:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 18:16:12.64:3WFb6kmJ02010年5月9日 平沢家
憂「さぁ、梓ちゃん。いっぱい食べてね」ニコニコ
み梓「こ、こんなにいっぱい……なんかごめんね、急にお邪魔しちゃって」
唯「昨日もいたくせにぃ~」ヒソヒソ
み梓「唯先輩っ!!」
憂「え、どうかした?」
み梓「……な、なんでもないよ」
唯「うぇっへっへっ……」ニヤニヤ
み梓(ぐぬぬ……)ギリギリ
憂「?」
憂「ところで梓ちゃん。ふふっ、さっきから気になってたんだけどほっぺにシールついてるよ?」
み梓「え? あ……(すっかり忘れてた!)」
憂「大変よくできました、だって」クスッ
み梓「す、すぐ剥がすっ」
唯「えー! そのまんまがいいよー」
み梓「ずっとシール肌に貼りつけてたら肌がはれちゃいますよっ」
唯「じゃあ、いいや」
唯(明日になったらまた貼ればいいしね)フンス
憂・み梓「ん?」
・・・
ガチャリ
み梓「ふぅ、お風呂まで借りちゃってなんだか申し訳ないです」
唯「気にしないでよぉ。さーて、今日のところはもう寝ちゃお寝ちゃお~」
み梓「明日早いですしね」
唯「ささっ、私のお隣においで。未来あずにゃん」サ
み梓(けっきょく一緒に寝ることにはなるんだ……)
み梓「で、でも憂がせっかく布団しいてくれたんだし」
唯「いいからいいから」グイッ
み梓「ちょ!? ……もうっ」
「……」
唯「まだ起きてる?」
み梓「寝ました」
唯「起きてるじゃん……ねぇ、私たちうまくいくかなぁ」
み梓「大丈夫ですよ。絶対なんとかなります」
唯「あずにゃん強気だねぇ」
み梓「ここまで来て助けられなかったら私が来た意味、ありませんもん」
唯「そうだねぇ……」
唯「ねぇ、私たちが助かっちゃったらあずにゃんはもとの時間に帰っちゃうの?」
み梓「そりゃあ帰りますよ、なんとかして。ずっとここにいれるわけないじゃないですか」
唯「そっか……ときどき遊びに来てね?」
み梓「へ、変なこと言いますね……私が来なくてもこっちにもう1人の私がいるじゃないですか」
唯「そりゃそうだけど……それはそれ、これはこれだよぉ」
み梓「えー……」
唯「ね?」
み梓「……気が向いたら、遊びに来ます」
唯「えへへぇ」
み梓「ふふっ」
2010年5月10日
さわ子「みんな集まったわね」
律「あれ? 車変えたの、さわちゃん」
さわ子「借りたのよ。こんなに大人数が乗るんだから私の車じゃ入りきらないし」
紬「あら、今日は別のシールなのね!」
み梓「……///」
唯「ネコのシールだよぉ。角度によっては、ほら光るの」
澪「帽子被るとかすればいいのに。まぁ、制服だから一発でわかるけど」
梓「まぁ、いいんじゃないですか?」
律「他人事だと思って安心してるなぁ? あ、でもこの場合他人じゃないか」
さわ子「ほら、もう行くわよ? さっさと車に乗って」
2010年5月10日 さわ子おじの家
ピンポーン
おじ「おぉ、よく来た」ガチャリ
さわ子「おじさん。お久しぶりです」
おじ「いやぁ、さわ子ちゃんはいつ見てもベッピンさんで……むふふ」
律「なんかエロおやじだなぁ……」ヒソヒソ
澪「こら! そんな失礼なこと言うなよっ」ヒソ
おじ「後ろにいるのが今の教え子たちかい?」
さわ子「ええ。今日は無理言ってごめんなさい」
おじ「ははは、気にするなよ。さぁ、上がりなさい。男1人の家だから散らかっているのは気にしないでくれよ?」
さわ子「お邪魔します」
「おじゃましまーす」
おじ「おぉ、おぉ……こんなに可愛い子たちが俺の家を訪ねてくれるなんて嬉しいこと極まりない」ニコニコ
律「やっぱエロおや……」
澪「ふんっ」ゴンッ
律「ったぁ!?」
唯「すごーい! 本がいっぱいだよー」ウロウロ
紬「ゆ、唯ちゃんっ」
さわ子「こら! ごめんなさい、騒がしくて……」
おじ「いや、気にせんでいいよ。お嬢ちゃんは本が好きなのかい?」
唯「難しい本は嫌いです!」
さわ子「……///」
唯「でも漫画とかは大好きだよ」
おじ「はっはっはっ! 素直でいい子だね君は。いい生徒さんを持ったじゃないか、さわ子ちゃん」
さわ子「は、はぁ……おほほほほ……」
梓「唯先輩ったら……もう」
み梓「私はある程度は覚悟してた……」
おじ「それで? 俺に話って何だい? 用があるから来たんだろう」
さわ子「は、はい……コホンっ」
さわ子「単刀直入にお聞きします。私に譲ってくれたあのギター型のタイムマシン……なにか知っていることがあるのでは?」
おじ「……ぷっ」
律・澪・紬「!」
おじ「ははは、またタイムマシンの話か! 何年か前もその話は聞かれたぞ!」
さわ子「冗談じゃありません! 真面目な話です……っ」
おじ「ははは……あー、悪いが本当に俺はなにも知らなくて」
おじ「そもそもあのギターがなんでこの家にあったのかすら覚えてないんだなぁ」
さわ子「え……?」
律「おじさん、本当なんですか?」
おじ「ああ。きっと以前自分が買ったことを忘れていただけだとは思うんだがね。だが、なんだか自分のもとに置いておきたくなくなって、さわ子ちゃんに譲ったんだが」
梓・み梓「一度も触ったり、弾いたりしなかったんですか!?」
おじ「おや、そちらさんは双子ちゃんかな。可愛らしいね」
梓「あ、えっと……はい、どうも」
おじ「確かに触らなかったよ。ケースにしまったままにしておいた」
紬「さわ子先生に渡すまで?」
おじ「ああ」
さわ子「でもおじさん。あのケースの中にはメモが2枚入っていたの。しかもそのうち1枚にはおじさんの名前が書かれていたわ」
さわ子「ちょうど今日2枚とも持ってきました。これを……」ス
おじ「……タイムマシン?」
さわ子「それ、おじさんの執筆と同じだと思うの」
おじ「確かに俺の字と似ているが」
澪「じゃあやっぱり……!」
おじ「しかし、面白いな。ここに書かれていることは」
おじ「さわ子ちゃん。俺の仕事は覚えてるかい?」
さわ子「○大で物理を専門としている教授でした……よね」
梓「物理学者?」
おじ「そんなところさね」
おじ「俺はね、タイムマシンってやつにも少しは知識……いや、興味はあるんだな」
さわ子「……初耳ですよ?」
おじ「聞かれなかったしね」
おじ「そんな俺から言わせてみるとだな。ここに書かれてること、面白いけど」
おじ「まずありえないんじゃないかな」
「!」
律「でも現に私たちは過去へ行ったり未来へ行ったりした!」
おじ「証拠は?」
律「……」
唯「こ、こっちのあずにゃんは未来から来たんだよ!」バッ
み梓「え!?」
紬「そうですっ、双子なんかじゃないんです!」
おじ「……確かに似ている。瓜二つだな。で、証拠あるかい?」
み梓「えっと……ご、5月19日に高速道路でトラックが横転して大きな事故が起こりますっ」
おじ「ふむ、それじゃあ19日にその事故が起きたら証拠になるね。それじゃあその日になるまで……」
み梓「そ、そんな悠長に構えている暇は……」
澪「……そうだ!」
律「どうした澪?」
澪「さわ子先生、もう1つのメモの裏に゛自分を忘れるな゛って書いてあるんですよね?」
さわ子「え? ええ……それがどうかしたの?」
澪「それだけでもいいから、心当たりがないか聞きいてみませんか?」
さわ子「……そうね」
さわ子「おじさん。そっちのメモの裏を見て」
おじ「ん?」
さわ子「あなたの名前と一緒に一つの文が書かれているはず……それに覚えは?」
おじ「おお、本当だ。俺の名前じゃないか……?」
おじ「自分を忘れるな?」
おじ「自分を……忘れるな……」
唯「おじさん?」
おじ「!」ガタッ
おじ「ううっ、あ……っぐ」
律「どうした!?」
さわ子「おじさんしっかりして!」
おじ「お、俺は! おれは! おれはっ」
澪「な、なに!? ひぃっ」
さわ子「おじさんっ!!」
おじ「…………」
おじ「は、はは……」
梓「こ、壊れた?」
紬「いったいなにが……」
おじ「うははははははは!」ゲラゲラ
おじ「くくっ……っ、笑いすぎて腹が痛むぞっ、ははは……!」
さわ子「し、しっかりして!」
おじ「ああ、大丈夫だ。正気だよ。気違えてなんてない……」
み梓「じゃあ何がおかしくてそんなに」
おじ「思い出したんだよ……! 俺は……」
おじ「タイムマシンを使って2010年から2000年にタイムスリップしてきたんだ……」
「!?」
紬「ま、待って! どういうことですか!? 2010年は今ですよ!?」
おじ「要するに……君たちとは別の世界。パラレルワールドから来たということになるのかな」
律「はぁ!?」
み梓「じゃあ2000年のあなたはどこへ行ったんですか!? あなたの言うことが正しければあなたは二人存在することに……!」
おじ「殺したよ」
さわ子「……え?」
おじ「俺が殺した。そういう実験だったからね」
律「殺したって……あんたが過去のあんた自身をか?」
おじ「そう」
律「んなバカな話信じられるかよ!?」
おじ「いやぁ、そうでもないさ。聞いたことないかい?」
おじ「タイムマシンで今の自分が過去へ行って、その時間に生きている自分を殺したら……存在自体が消滅ってやつをさ」
澪「小説とか漫画とかでは……」
おじ「そいつがさ、本当なのかを確かめる為に俺は自分の身を持って実験したわけさ」
唯「でもおじさんは消えてないよね? ってことは」
おじ「そいつは違っていたってことかね。まぁ、その代わり、殺した俺自身が過去の俺となったようだが」
さわ子「つまり、予期しない入れ替わりが起きた?」
おじ「いや、俺のもしもの予想の1つにはあったさ。こういう事ってのはわからないことだらけだから」
りっちゃん・・・君がそれを言うか
709:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:51:36.56:3WFb6kmJ0さわ子「ということは、私がタイムマシンを受け取ったときにはもう既に……ん?」
さわ子「ちょっと待って。なぜタイムマシンをおじさんが持っていたの!?」
梓「たしかにタイムスリップしてもタイムマシンは一緒に時間を越えてきませんもんね」
おじ「タイムマシンも俺と一緒にタイムスリップしていたら?」
唯「いっしょ?」
おじ「もともとあのギター型のタイムマシンは俺……俺と助手たちが作った物じゃあない。ある人物が所持していたのを……その、パクってね」
さわ子「な……!?」
おじ「その人らはなにも知らない素人みたいなもんだったよ。まぁ、最初に調べていたのはその人らで、俺たちは後から加わったんだが」
おじ「そんな価値もわからない連中が所持しているくらいならとね」
唯「どろぼー!」
おじ「まぁ……認めるさ」
ムギ√か
712:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 19:56:16.96:3WFb6kmJ0おじ「盗んだあとは俺たちがしっかりと調べさせてもらったさ」
おじ「そして、作らせてもらった。もう1つのタイムマシンを」
紬「もう1つって……」
律「またギターみたいな形のか?」
おじ「いや、しっかりしたそれこそもっとメカメカしいやつだったね」
おじ「それで後はそいつを使ってさっき言った通りさ」
澪「タイムマシンをタイムマシンで過去へ送るって……」
み梓「どうしてタイムマシンも持っていったんですか?」
おじ「もとの時間へ帰るために決まっているだろう。俺たちが作った物も既存したタイムマシン同等、片道限定だった」
み梓「だから帰り用にギター型の物を……」
おじ「今となっては無意味だったがね。こんなメモまで残しておいたのに、記憶が過去のものになってしまった俺はタイムマシンに一切触れずに、しかもさわ子ちゃんに受け渡してしまっていた」
紬「そこから色々と繋がるわけね」
澪「でもそれがわかったからなんだって感じになるんだけれど」
律「まぁな」
唯「おじさん。私たちが使っていたタイムマシン、どうも壊れちゃったみたいでして」
おじ「なに?」
唯「だからおじさん直せないかなぁ……って」
さわ子「おじさんだけが頼りなの……お願い」
梓(こんな人に頼むのもなんか癪だけど……今は我慢しなきゃ)
おじ「……どうにかしてやりたいのも山々だが、修理するにもここでは設備がまず整っていないし、まずどう直していいのやらわからん」
律「あんたたちだって作ったんだろ!? だったら」
おじ「あのタイムマシンをバラして見よう見真似で作ったんだ。詳しいところは今一つわからんかったさ」
律「はぁ!? そんことってあるかよ……どうするんだよ……」
おじ「俺ももとの時間へもど……いや、戻れるのか? はたして」
おじ「どうも今の2010年は俺がいた時間と少し違うようだからな。というかパラレルワールドか」
おじ「こいつはどうしようもないな。だが、タイムマシンが使えないことで君たちが困ることが何かあるのかい?」
み梓「とてもありますっ!! あれが使えなきゃ先輩たちは……先輩たちは……」
澪「梓……」
おじ「弱ったなぁ」
紬「……あ!!」
唯「どしたのムギちゃん?」
紬「電話……電話通じないかしら!?」
しかしどっちのあずにゃんを応援すればいいのか迷うぜ
721:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 20:11:20.90:3WFb6kmJ0さわ子「どういうこと?」
梓「そ、そっか! 過去へ行っても未来へ行っても通じましたもんね!」
おじ「お、おい。説明してくれっ」
唯「えっとね、例えば今こっちの時間から誰かが過去にタイムスリップしたとするでしょ? んで、こっちの時間から過去に行った人に電話かけても通じちゃうんだよ」
おじ「……なんだって? そんな馬鹿なっ」
唯「その、ぱられるわーるどってのと繋がるかはよくわかんないけど」
おじ「だが今まで俺が電話をかけても俺のもといた時間に繋がることはなかったぞ」
紬「それはあなたがもといた時間の人ではなくて、過去の、こっちの時間の存在になっていたからじゃないでしょうか?」
おじ「……納得がいかない。それだと意識の問題ということになるんじゃ……」
律「ものは試しだよ! 一回あんたの助手の人たちに電話してみろって!」
おじ「あ、ああ……」
おじ「あれから何年も経っているんだ……繋がるかどうか……」ピッピッピ
…プルルルル
おじ「つながった……!」
さわ子「うそ!?」
律「な! 言った通りだったでしょ!?」
おじ「す、少し静かにしていてくれ……」
『……はい、もしもし?』
おじ「!!」
おじ「じょ、助手Aか……?」
『まさか……○○先生ですか!?』
おじ「あ、ああ……そうだ。こっちは今2010年の5月10日……そっちは?」
『2020年12月27日……です』
おじ「10年……経ったのか」
唯「10年経ったって……2020年! すっごーい!」
澪「唯っ、静かに」
『先生がいつになっても帰ってこないから実験は失敗に終わったのだと思っていましたよ』
おじ「いや、成功さ。俺が存在したという記憶はそっちで消滅していなかったんだからな!」
『ですがなぜ今になって……』
おじ「そんなことはいい。それより問題が発生した。例のギター型タイムマシンが故障した」
『なんですって! だからこちらに帰って来ることができなかったんですね……ですが安心してください。先生は運がいい!』
おじ「……どういうことだ?」
『実は偶然にもタイムマシンを回収しましてね。発見したのはアパートの一室だったのですが、それが……以前、先生と一緒にそちらへ送ったタイムマシンそのままなんですよ』
おじ「なに……?」
『とにかくそちらにすぐにでも送りますよ。場所は……』
おじ「俺の家だ。すぐに頼む」
律「なんか……なんとかなりそうだぞ!?」
澪「ああ……ああ! そうだな!」
おじ「ん、でも待てよ」
おじ「おい、そっちとこっちはおそらくパラレルワールドだ。送ったとしても届くのは……」
『ええ。ですからもっと前の時間……こちらとそちらの世界が別れる、つまりパラレルワールドになるであろう前の時間に、2000年に先生の家の倉庫へ送らせていただきました』
おじ「ぐ、グッジョブだ! おい、さわ子ちゃん! すぐにここの倉庫の中を見てきてくれ!」
さわ子「え? あ、はい!」タタタ…
『おそらくどこかにはあると思います。間違いありません』
おじ「そうか……ふぅ」
み梓「どうなったんですか!?」
おじ「ああ、タイムマシンはなんとかなりそうだ」
唯「よ、よかったぁ……」
紬「やっぱりここに来てよかったね」
唯「うん!」
さわ子「あったわ! タイムマシン!」
律「おぉ! ってほこりっぽい……うっ」パタパタ
澪「げほげほっ」
おじ「タイムマシンを確認できた。ありがとう助手A」
『いえいえ。ですが……先生。先生はもうこちらに帰ってくることは……』
おじ「ああ、無理だと思う。俺が2020年に行ったとして、そこはお前たちが待つ世界ではない」
おじ「これで、これでいいんだ俺は。とくに不自由なこともないしな」
さわ子「おじさん……」
律「さわちゃん、忘れんなよ。あの人は自分を殺したって一応の犯罪者でもあるし、そんな狂った実験をした人でもあるんだから」
さわ子「……」
み梓「全ての元凶はタイムマシンを持ってきたあの人……私、少し許せません」
紬「でも使ったのは私たちよ。私たちも悪いとは思う」
み梓「っ……」
澪「とにかく無事にタイムマシンが手に入ったんだ。これで」
唯「にしてもほんとそっくりだよねー」
梓「私たちが最初に使っていた物と同じですよね」
律「まぁ、細かいことはいいっしょ」
おじ「……じゃあな、元気でやるんだぞ」ガチャ、ツーツー
おじ「……さて、俺はいつまでこうやってもとの自分を覚えていられるかな」
さわ子「どういうこと?」
梓「また未来から来た自分を忘れてしまうかもしれないってことですか?」
おじ「確証はも――――」
おじ「……うん?」
車内
「……」
唯「おじさん、寂しくないのかな」
紬「あの大きな家に1人だったもんね」
梓「……ていうかよく考えると、この世界で1人ぼっちって見解もできますよね」
さわ子「あの人、ああ見えて案外1人になるのが好きな人なのよ」
澪「あ、案外って……」
さわ子「それだけ強い人ってこと。なんせ自分を……殺しちゃってる人だし」
律「あ、あははは……それはあんまり笑えないや」
さわ子「とにかく、今やるべきことだけあなたたちは考えていなさい」
み梓「……」
梓「……心配?」
み梓「べ、別にっ!」
・・・
律「なんで今日さっそくやらないんだよ? 善は急げって言うじゃん」
さわ子「色々あったし、あなたたちも疲れているでしょ?」
み梓「そんなことは!」
さわ子「無理しないの。とにかく、やるのは明日、学校で。ね?」
み梓「……」
紬「それじゃあ今日のところはおうちに帰ろっか?」
澪「そうだな」
唯「私、色々考えたから頭いっぱいいっぱいだよぉ」
梓「それ昨日も言ってましたよね」
唯「そだっけ?」
さわ子「とりあえず、私がタイムマシンを預かっておくわね。それじゃあまた明日」ブロロロ…
律「行っちゃったぁ……私らも帰るか」
平沢家
み梓「ごめんね、二日も連続で泊っちゃって……」
憂「ううん、全然気にしなくていいよ。私も梓ちゃんがうちにいてくれて楽しいもん」
唯「私もだよ~」
み梓「そ、そっか……えへへ」
憂「このままうちの子になっちゃおっか! 梓ちゃん」ニコニコ
み梓「ど、どこぞのお母さんみたいなこと言わないでよっ」
唯「平沢梓も悪くないと思うんだぁ。名前の響き的に」
憂「私は中野の方が似合ってると思うんだけどなぁ」
み梓(こ、この姉妹は……)
・・・
チャポン
み梓「はぁ……」
み梓「やっと、かぁ……」
み梓(長かったようで短かったような)
――――……
梓「唯先輩っ! 唯先輩起きて!! 死んじゃダメ!」
唯「あ……あ……」
「君、離れて!」
梓「いや、いやぁっ!! どうして!? どうして助けられないの!?」
梓「澪先輩も律先輩もムギ先輩も……どうして私を1人にして死んじゃうのよ!?」
梓「1人に、しないでよ……私を1人ぼっちにしないでよぉ…………」
……――――
み梓「……」
み梓「あんなこと、認めない」
み梓「絶対に……」
ガチャリ
唯「おっす、未来あずにゃん」
み梓「ゆ、唯先輩!? な、なんで……」
唯「たまには裸のお付き合いもいいじゃなーい」ゴシゴシ
唯「いやだった?」
み梓「はい」
唯「あ、あーずにゃあぁん……」
み梓「冗談ですよ。それに泊めてもらっている身でそんな生意気なこと言えません」
唯「律儀だなぁ。別にそんなこと気にしなくていいのに」
み梓「……ねぇ、唯先輩」
唯「ん?」
み梓「私……もう1人ぼっちになることなんて……ないですよね」
み梓「あ! こ、こんなこと言ってもわけわかんないですよねっ。ごめんなさい」
唯「大丈夫だよ」
唯「1人ぼっちだなんて寂しいことにはぜっっったいならないよ!」
み梓「……」
唯「いくらいた時間が違っても、未来あずにゃんは私の大切な後輩」
唯「だから大丈夫! ねっ」
み梓「……」クスッ
み梓「なんですかそれ。わけわかんないです」
唯「えー、わかんないかなぁ?」ゴシゴシ
・・・
唯「くーっ、風呂のあとのアイスは格別ですなぁ!」
憂「お姉ちゃんおやじくさい~」クスクス
み梓「……おいひぃ」モグモグ
唯「天下のハーゲンダッツさんだからね!」
み梓「さん?」
唯「ほら、ガリガリくんはガリガリくんでしょ?」
唯「だからハーゲンダッツさん!」
み梓「憂、唯先輩大丈夫?」
憂「あはは……いつもどおりだよ……」
み梓「そ、そっか」
ガチャリ
唯「さーて、今日も早めに寝るよー」
み梓「はい」
唯「今日で未来あずにゃんと寝るのも最後かなぁ……?」
み梓「そうですね」
唯「あ、最後じゃないや!」
み梓「え?」
唯「また未来あずにゃんが遊びに来てくれたときにうちに泊ってくれればいいんだよ」
唯「だから最後じゃない!」フンス
み梓「……」
み梓「ふふふ、あはははっ」
み梓「あはははは!」
唯「あ、あずにゃん? どっかに頭打っちゃった?」
み梓「あ、あー……お腹痛い、ふふふっ」
唯「未来あずにゃん?」
み梓「ご、ごめんなさい! でもおかしくって」
み梓「……遊びに来れたらいいなぁ」
唯「来れるよぜったい!」
み梓「ふふっ、そうですね。来れますよね、ぜったい」
唯「ほら、おしゃべりは終わりだよ。もう寝ないと!」
み梓「……はい」
唯「さっきの、約束だからね!」
み梓「はいはい」クスッ
2010年5月11日 軽音部室
澪「い、いよいよだな」
梓「これでどうもできなかったら打つ手なし……」
紬「かどうかはまだよくわからないわよね。今までもなんとかなってきたし」
み梓「む、ムギ先輩……結構楽観視してるんですね」
紬「えへっ」
律「まぁ、これぐらいのほうが気楽でいいよ」
唯「だねぇ~」
さわ子「いや、ちょっと気楽過ぎるのもよくないわよ……適度に緊張感持ってよね。あなたたちのこれからのためなんだから!」
唯・律「はーい」
澪「大丈夫かな……」
梓「それで、誰が4日に行くんですか?」
律「前に決めたとおり、私でいいっしょ。原因作ったの私かもしれないんだし」
唯「りっちゃんかっくいいー!」
澪「一応は責任感じてるんだ?」
律「当たり前だろ!」
さわ子「本当は私がやってあげたいのだけれど……」
律「いいよ、さわちゃん。これは私たちの問題だよ」
さわ子「またそうやって除け者にするっ」
み梓「私たちの中に……私って含まれますか?」
唯「もっちろーん!」
梓「除外してほしかったの?」
み梓「と、とんでもないっ。むしろ……よかった」
律「そんなことよりさっさと始めるぞー!」
2010年5月4日 教室
「うん。それじゃそろそろ切るぞ」
「さて、みんな待ってることだし! そろそろ帰ってやるかぁ。にしてもビックリしたな……」タタタ…
ガチャリ
律「よし、うまく行った」
澪『あとは落書きを処分するだけだな』
唯『ゴミ箱にポイするだけでいいの?』
紬『それだとちゃんと処分できたことにならないかもしれない』
梓『焼却処分しちゃえばいいんじゃないですか?』
律「えー、面倒くさいなぁ……」
澪『ここまで来て面倒くさがることはないだろ? やれることはやってきなさい』
律「ちぇー……はいはい。んじゃ、電話切るぞー」ピッ
律「さてと、確か澪の机の中に入れたんだったよな」スタスタスタ…
律「よいしょっと」
律「お、見つけた! ったく、過去の私も面倒なことしてくれたなぁ……」
ス…
律「……ん?」
ス…
律(あ、あれ? おかしいな、机の中に手を入れられない……)
ス…
律「んんっ!? なんで!?」
律「……こ、このぉっ!」シュッ…
ドンッ
律「!?」ヨロヨロ…ドテッ
律「え……え……?」
律(お、押された……? でも誰もいないぞ!?)
律「そんな……」
律「も、もしもし!」
澪『どうした律? 上手くいったのか!?』
律「それが……」
梓『ま、まさか……』
律「手がのばせないんだ……机の中に……」
律「ていうか押されたんだ! よくわかんないけどこっち来んなーって感じで!」
み梓・さわ子『……』
紬『り、りっちゃん! 落ち着いてっ』
律「おかしいんだよっ!? なにもできないんだ! ど、どうして!? え!?」
唯『りっちゃん! りっちゃんてば!』
さわ子『りっちゃん!!』
律「!」
さわ子『一度……こっちに戻ってきなさい』
律「……うん」
2010年5月11日 軽音部室
律「……」
唯「り、りっちゃん。気にしないで……?」
律「……気にするよ。ダメだったんだ」
澪「……律が悪いわけじゃない」
律「悪いよ。全部私のせいだ……」
紬「お、お茶でも!」
律「いらない」
紬「ううっ……」
梓「いや、いやあぁぁ……」ガクン
律「……さわちゃんの言うとおりだったな。簡単にはいかないって」
さわ子「そう、ね……」
律「ダメだった。私ダメだったよ、ははは」
律「はぁ……」
さわ子「落書きを処分しようとして、力が働かれたということはそれが原因でたぶん間違いないわ。つまり……」
梓「打つ手なし、ですか」
紬「私たち、死んじゃうのね」
澪「やだ……死にたくないっ、死にたくないっ、死にたくないっ!!」ブルブル
唯「わ、わたしだ、って……や、だよぉおお……まだいき……で、だい゛……」ポロポロ
律「っっ……」
み梓「まだ諦めるのは早いですよ」
唯「ふぇ……?」
紬「いまなんて……」
み梓「諦めるのは早いって言ったんです」
律「でも、もう……」
み梓「弱気になるなんてらしくありませんよ。律先輩」
梓「ひっ、ぐ……あうっ……」
み梓「ほら、もう1人の私も。泣かないで」
澪「なんで、なんでそんな……」
み梓「諦めない限り、なんとかなります。絶対に」
さわ子「なにか他に原因を取り除く方法があるっていうの?」
み梓「……はい」
み梓「世界を変えた原因を取り除こうとすれば確実に妨害される。なら、取り除くんじゃなくて」
み梓「また変えてしまえばいいんです」
紬「逆転の発想……?」
律「でもそんなことしてまた変なことになったらどうするんだよ!?」
み梓「最後まで話を聞いてください」
み梓「変えるといってもタイムマシンがもともと存在しなかった世界に、です」
唯「……どういうこと?」
さわ子「まさか……」
み梓「そう。過去へ行ってタイムマシンを壊すんです。二度と使えないように」
み梓「そしたらそのスクラップはどこかに埋めてしまいましょう。それで全部終わりです」
紬「たしかにタイムマシンがなければりっちゃんが作った原因……というか過去に行ったという事実がなくなるもんね! それにさわ子先生のお友達も死なずに済むわ!」
澪「でも……壊すのはいいんだけど、どうやってもとの時間に戻ってくるんだ?」
律「そっか、あれがなきゃ戻るに戻れないもんな」
み梓「……私が行ってきます」
唯「そ、そんなのダメだよ!」
み梓「でもこれしか方法は……!」
さわ子「あわてる必要はないわ」
み梓「え?」
さわ子「私がタイムマシンを学校に初めて持ってきた日……この日にタイムスリップして過去の私にタイムマシンの破壊を頼んでから戻ってくればいいの」
さわ子「私がタイムマシンを使ってから壊すんじゃ、タイムマシンがあったという記憶が私に残るでしょ? だから壊すならその前……」
さわ子「おじさんの方は過去の自分を殺してタイムマシンのことを忘れているから……申し訳ないけど」
さわ子「それにあの人の家まで行くには相当の距離を行かなきゃいけないし、どちらにせよタイミング的にはこっちの方がいいわ」
梓「確かにそれならなんとかなりますけど……」
律「見ず知らずの人間にいきなりお前の持っているギターを壊せって言うのか? ちょっと無理あるんじゃ」
さわ子「大丈夫よ! 私なんだから」
み梓「ほ、ほんとですか……」
唯「でもこれしかないってのなら、やるっきゃないよ!」
澪「そう、だな……私もそう思う!」
さわ子「ていうか私が行かせてもらうわ。これ以上あなたたちを危ない目に会わせるわけにはいかない!」
み梓「いえ、やっぱり私が!」
唯「待って!」
さわ子・み梓「?」
唯「わ、私が行くよ!」
律「お前が!?」
梓「無茶言わないでくださいよっ」
唯「うぅ……でも」
唯「みんなこんなに頑張ってるのに、ぼーっとしてるだけだなんて我慢できないの」
紬・澪・梓(それ言うなら私もそうなんだけど……)
唯「だから行かせて?」
み梓「で、でも……」
律「行ってこい! 唯隊員!」
澪「律!?」
梓「そんな簡単に託さないでくださいよ!」
澪「律! お前なぁ……」
律「隊長命令だから、絶対な」
さわ子「りっちゃん。ふざけな――」
律「ふざけて言ってるわけじゃないよ。唯がやるって言ってるんだから私は唯の意思を尊重してるの」
唯「りっちゃぁん……」
律「行ってこい。こんなの誰が行ったって同じだよ。だったら私は唯に全てを委ねてしんぜよう!」
紬「そうね、私もりっちゃんに賛成」
梓「……もう好きにしてください」
澪「唯、いいのか? ほんとにいいのか?」
唯「まっかせなさーい!」
おいおい大丈夫か?
780:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:00:04.88:3WFb6kmJ0唯「よっこいしょっと……」
唯「準備おっけー。いつでもいけるよー」
さわ子「あっちに着いたらすぐに私に会うと思うわ。いい? 私はとても慌てると思うけど焦らずに事情を話してあげて。でもタイムマシンについては言わないように」
さわ子「たぶん、わかってくれるかもしれないから」
梓「たぶんでかもですか……不安だなぁ」
澪「唯、がんばって。お前が私たちの希望なんだ」
唯「あいよー!」
澪「……あぁ、やっぱり心配すぎるっ」
紬「み、澪ちゃんっ」
唯「も、もう行ってよろしい……?」
み梓「唯先輩……」
唯「お、未来あずにゃーん」
唯「あ! そういえば!」ガサゴソ
み梓「どうしたんですか?」
唯「ほい!」ペタン
み梓「なっ!?」
唯「今日のシール、貼り忘れたよぉ。あ、でもあとみんなシールなくてもどっちがどっちだか区別ついてたね」
み梓「そういえば、そうですね……」
唯「でもこれがあっての未来あずにゃんって感じだから。今日は温泉マークシールだよぉ」
み梓「ど、どうも……」
律「よし、みんな! 重大な任務を果たしてくる唯隊員にむけて~」
律「敬礼!」ビシッ
唯「敬礼っ」ビシッ
「……」
律「だぁーっ! みんな乗り悪いなぁ。ここはやっとくべきだろ!?」
澪「いや、それは恥ずかしい」
梓・み梓「同じく」
紬「あははは……」
さわ子「バカなことやってないでさっさと行ってきなさい!」
唯「は、はいぃ!」
ポーン、ポーン、ピーン
2000年4月28日 軽音部室
ガチャリ
さわ子(過去)「私が一番乗りかぁ」
唯「あのぉ」
さわ子「きゃあ!?」
唯「お、驚かせちゃってごめんね!」
さわ子(上級生? でもこんな人いたっけ?)
さわ子「あの、もしかして軽音部に入部希望とか……?」
唯「えっと、ていうか既に入部してるんだけどね」
さわ子「え? でも……」
唯(な、なんて説明しましょうかぁ……)ウズウズ
さわ子「上級生の方、ですよね? 名前は?」
唯「平沢唯だよー」
唯「そ、そんなことより! あのね!」
唯「それ!」ビシィッ
さわ子「え……?」
さわ子「このギターですか?」
唯「それは……えっとね」
唯「呪いのギターなんだよ!」
さわ子「……はい?」
唯「あ、えっと、えっとぉ……」
唯(勢いで言っちゃったけど変だったかなぁ!)
さわ子「ふふっ」
唯「え?」
さわ子「面白い人ですね。平沢先輩」
唯「あ、よく言われるよ。それ」
さわ子「あはははっ」
さわ子「呪いのギターでも、私にとってはこれはおじさんから譲ってもらった大事なギターなの」
唯「そ、そっかぁ。でもね、それ使っちゃったら大変なことになるんだよ……」
さわ子「大変なこと?」
唯「さわちゃんの友達がね、死んじゃうの」
さわ子「わ、私の?」
さわ子「ていうかさわちゃんって……私のこと知ってるんですか?」
唯「うん。だってさわちゃんは先生でもあって、軽音部の顧問でもあるんだもん」
さわ子「先生? 顧問? あの、人違いじゃ……それに私、まだ学生ですよ」
唯「今はそうだけど、さわちゃんは先生になるの。この学校の音楽の先生」
さわ子「な、なんでそんなこと言えちゃうんですか?」
唯「それは私がみら――――」
唯「なななな、なんでもない! やっぱなんでもないよ!?」
さわ子「えぇー……」
さわ子「ていうか私の友達が死んじゃうっていうのは……」
唯「紀美さん、だっけ。その人が事故で……亡くなっちゃうの」
さわ子「え!? 紀美!?」
唯に全てがかかってる
798:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:35:02.10:3WFb6kmJ0さわ子「じょ、冗談でも言っていいことと悪いことがあるわっ!!」
唯「ご、ごめんね! でも本当なのっ、信じてっ」
さわ子「初対面の人をそう簡単に信じられると思えますか!?」
さわ子「おまけにさっきから変なことばかり言うしっ」
唯「へ、変じゃないよぉ……」
さわ子「出ていってください! 」
唯「そういうわけにもいかないの!」
さわ子「出ていって!」
唯(さ、さわちゃんのばかぁ! 全然分かってくれないじゃんっ)
唯「ど、どうしよう……」
Prrr…
さわ子「ん?」
唯「あ、携帯……ちょっとごめんね」ピッ
さわ子(携帯って……なんでそんな……)
唯「はいはい、もしもし?」
さわ子『もしもし、唯ちゃん』
唯「あ、さわちゃーん!」
さわ子(過去)「え?」
唯「あ、そっちのさわちゃんじゃなくて……と、とりあえず気にしないで!」
さわ子(過去)「?」
唯「さわちゃん大変だよ、こっちのさわちゃん私の言うこと全然信じてくれないっ」ヒソヒソ
さわ子『そっか……電話かけて正解だったわ』
律『やっぱりなんとかならないじゃん』
唯「ほんとだよっ」プンスカ
さわ子(過去)(本当になんなのこの人……)
唯「でもどうするの? このままじゃ」
さわ子『唯ちゃん。ちょっとそっちの私と電話代わって』
梓『そ、それって大丈夫なんですか!?』
さわ子『たぶん大丈夫よ。タイムマシンのことさえ言わなければいいんだから』
唯「……んじゃあ、代わるよ? おーい、さわちゃん。電話代わってだって」クイクイ
さわ子(過去)「え、私!? だ、誰からですか……?」
唯「それは出てからのお楽しみ」サ
さわ子(過去)「……も、もしもし」
さわ子『もしもし』
さわ子(過去)「どなたですか……?」
さわ子『山中さわ子よ』
さわ子(過去)「あ、同じ名前……」
さわ子『そりゃそうよ。私はあなた、あなたは私なんだから』
さわ子(過去)「は?」
さわ子『私は未来のあなたよ』
さわ子(過去)「またそんな冗談を……だれ? なんのつもり?」
さわ子『私はね、今桜高の教師やってるのよ。びっくりでしょ?』
さわ子(過去)「……平沢さんから聞きました。それがなんですか」
さわ子『DEATH DEVILは色々あって続かなかったのよねぇ……ちょっと残念だけど』
さわ子(過去)「な、なんでまだ誰にも教えてないバンド名をあなたが!?」
さわ子『ふふふ……(なんかちょっと面白くなってきたかも)』
期待できないけど期待できる…なんだか変だが、唯ってそんな感じだよな
809:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/26(日) 23:51:05.29:3WFb6kmJ0さわ子『まだ信じられない? 私が未来のあなたなんだってこと』
さわ子(過去)「あ、あたり前ですっ」
さわ子『じゃあ今度は振られた男の数でも言っちゃおうかな~?』
さわ子(過去)「いっ!? や、やめてぇっ」
唯(なんかよくわかんないけど学生さわちゃんが押されてる……!)
さわ子『じゃあ信じてくれるわね?』
さわ子(過去)「信じる! 信じるからっ!」
さわ子『そう、よかった。じゃあまた唯ちゃんに電話代わって?』
さわ子(過去)「……はい」ス
唯「ほえ?」
さわ子『もしもし唯ちゃん。上手くいったわ。これでだいぶ話は聞いてくれるとは思う』
唯「ほんとぉ!? さっすがさわちゃん先生~」
さわ子(過去)「あの……」
唯「ん?」
さわ子(過去)「まさか、平沢さんも未来の人だとか……言いませんよね?」
唯「そのまさかです!」
さわ子(過去)(あ、頭痛くなってきた……)フラ
さわ子(過去)「どうやって未来からここに来たんですか。まさかタイムマシンとか?」
唯「それは内緒ー。それ言っちゃダメって言われてるからね」
さわ子(過去)「……じゃあ、なんで未来からわざわざ? 何か用でも?」
唯「そのギターに用事があって来たんだよ」
さわ子(過去)「呪いのギター?」
唯「ああ……それもう忘れてよぉ……」
さわ子(過去)「まさか、このギターをよこせとか言いだすんじゃないでしょうね?」
唯「ううん。ぶっ壊してほしいの」
さわ子(過去)「……」
さわ子(過去)「……は?」
唯「だから――」
さわ子(過去)「ちょ、ちょっと待って! 本当にあなた私をばかにしてるんですか!?」
さわ子『ゆ、唯ちゃん。ちょっともう一度私と電話代わってくれるかしら?』
唯「え? あ、うん。はい、さわちゃん」ス
さわ子(過去)「……もしもし、どういうこと!? 説明して!」
さわ子『あのね、落ち着いて聞きなさい。あのギターについて詳しいことは教えられないけど、とにかく今、私たちの時間で大変なことが起きてしまいそうなの』
さわ子(過去)「あのギターが原因でってこと……?」
さわ子『そう。それにあれをあなたが使うことで紀美が死んでしまうのよ』
さわ子(過去)「また紀美……」
さわ子(過去)「本当、なんですか? にわかには信じがたいですよ」
さわ子『本当よ。ウソじゃない。……とりあえずあのギターを絶対に弾かないで』
さわ子『それだけでも紀美の死は回避できるわ』
さわ子(過去)「だったらわざわざ壊さなくても……」
さわ子『……あれがあると、私の教え子が死ぬのよ。そこにいる唯ちゃんがその1人』
さわ子(過去)「え……」
唯「ん?」ヒョコ
さわ子『あなたがおじさんから譲ってもらったあのギターこそが全ての元凶。あれを壊して二度と使えなくすることで、おそらく唯ちゃんたちの死は回避される』
さわ子(過去)「どうしておじさんから貰ったって……」
さわ子『何度も言わせないで頂戴。とにかく、あとはそこにいる唯ちゃんの言うことをしっかり聞いて。……それじゃあ』ブチッ、ツーツー
さわ子(過去)「え、あ、ちょっ……まだ聞くことが……」
さわ子「はい、電話。返します」
唯「あれ? さわちゃん電話切っちゃったの?」
さわ子「私じゃなくて、向こうの私が切りました……それより」
さわ子「あのギターを壊さなきゃ、あなた死んじゃうんですか?」
唯「んー……まだよくわかってないけど、そうみたいだよ。あはは……」
唯「それ教えてくれたのは未来から来たあずにゃんなんだけどね。あ、あずにゃんっていうのは私たちの後輩の1人で」
さわ子「そこまで聞いてない。……あなた、私の教え子にあたる生徒さんだったんですね」
唯「そだよぉ~。さわちゃんはねぇ、なんだかんだ言っていい先生なんだよ! あ、最近だと彼氏が全然できないって泣いてた」
さわ子「……そういうことは教えなくていいですっ!! それで軽音部の顧問と?」
唯「あんまり顧問らしいことしてないけどね。あ、でもギターすごく上手くて私も色々教えてもらったよぉ。歯ギターとか!」
さわ子(未来の私はいったい何をしているの……!?)
唯「でもね」
さわ子「え?」
唯「みんなさわちゃんのこと大好きだよ」
さわ子「……あ、ありがとう」
さわ子「って、私に言ったんじゃなくて未来の私ですよね……あ、でも私には変わりないのか」
唯「ふふふっ」
さわ子「な、なに?」
唯「さわちゃん若いなぁって。さわちゃんも私たちと同じときがあったんだなって思って」
さわ子「そりゃ、誰だって学生のときはありますよ」
唯「でもなんか変な感じして、えへへ」
さわ子「……ふふっ」
なんだかんだで仲良くなったw
流石だな唯
821:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:18:02.49:xmu1na1Z0流石だな唯
さわ子「それで? 私はなにをすればいいの?」
唯「え?」
さわ子「あなた、何のために未来からやってきたんですか」
唯「あ、そだったね。えっと……」
さわ子「やるなら早くしたほうがいいと思います。もうすぐここに誰か来ちゃうかもしれないし」
唯「そ、そだね! それじゃあ……」
唯(まずギターケースに入ってるおじさんが書いたメモを……)ジィーッ、ガサゴソ
さわ子「?」
唯「あった! えっとこれを……どうしよう?」
さわ子「なんですかそのメモ?」
唯「み、見ちゃダメだよ!」
さわ子「でもそれ……」
唯(ど、どうやって処分しよう……そうだ!)
唯「あむっ」パクッ、ムシャムシャ
さわ子「は!? え、ちょっと!? なに食べてるんですか!」
唯「ほうふふひははいんはほ~(こうするしかないんだよ~)」
ゴクン
唯「はぁ……まずっ」
さわ子「と、とんでもない人……」
唯「よし、メモはこれでおっけー。後は」ガシッ
さわ子「こ、今度はなんですか?」
唯「ちょっとこのギター使わせてもらうねぇ。あ、見られないようにしなきゃダメか」
唯「物置部屋借りるよー!」
さわ子「え? えぇっ?」
さわ子「あ、あのちょっと!」
唯「いい? 今から3分ぐらい経ったらここ開けてギター持っていって」
唯「そしたら何があってもかならずギターぶっ壊しちゃってね! いい? かならずだよっ」
さわ子「壊すのはわかりましたけど……なんでそんな」
唯「それと、私と会ったことは忘れてね!」
さわ子(こんな強烈なキャラ中々忘れられないと思うけど……)
唯「んじゃね! 頼んだよ、学生さわちゃん!」
ガチャリ
さわ子「あ! も、もぉ……なんなのよ……」
唯「ふぅ、疲れたぁ……」
唯(あとは私がみんなのところに帰ってタイムマシン太が壊れるのを待つだけだね)
唯「よーし、んじゃ――」
唯「……」
唯「待って、タイムマシン太壊れちゃったらたしかに世界変わるけど……」
唯「……」
未来あずにゃんか・・・
832:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:34:21.68:xmu1na1Z0Prrr…
唯「もしもし」
澪『唯? どうした』
唯「ちょっと未来あずにゃんに代わって」
澪『え? あ、うん』
み梓『もしもし、今代わりました。どうしました?』
唯「タイムマシン太壊れちゃったら……未来あずにゃんこっちにまた来れなくなるじゃん」
み梓『そうですね』
唯「……約束したじゃん。遊びに来てくれるって」
み梓『……そうですね』
唯「来れないどころか、タイムマシン太ない世界になっちゃったら……私たちの今までの思い出ってどうなっちゃのかな」
み梓『もともとなかったことになるんだから、タイムマシンを見つけてからの記憶はたぶんなくなるかと』
唯「そうなると……未来あずにゃんってどうなっちゃうの?」
み梓「そもそもタイムマシンのせいで先輩たちが死んだという世界から私は来たんですから……たぶん消えちゃったり、とか」
唯「そ、そんなのやだよ……!」
み梓「じゃあこのままにして唯先輩たちが死んじゃってもいいんですか」
唯「あう……」
み梓『私はそんなのいや。耐えられません。もう1人の私だってそうです』
唯「……」
み梓『電話切りますよ。……早く戻ってきてください』
ブチッ、ツーツー
唯「……」
唯「……」
唯「……」
唯「……」
唯「……」
唯「……っ」
>>840
戻る? 戻らない?
戻らない
841:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:46:14.13:I+0URNqkOここで選択肢か…
全BAD見てからトゥルー行きたいし…安価なら戻らない、で
844:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 00:47:45.05:xmu1na1Z0全BAD見てからトゥルー行きたいし…安価なら戻らない、で
唯「無理だよ……そんなことできない」
未来あずにゃんが消えちゃうだなんて悲しいこと、私には耐えられない。
だって、そうだよ。
未来から来たって未来あずにゃんはあずにゃんに変わりはないんだもん。
みんなだってきっとそう思うに違いない。
私たちが死んじゃうか、未来のあずにゃんが消えちゃうか。
どっちかを秤にかけて、さぁどっちを選ぶって言われても……
唯「選べるわけ、ないよぉ……」
そうだ、もう一度電話をかけてみんなと相談を――
『3分経った。よし、開けますよー』
外から学生さわちゃんの声が。
もう3分経った……!?
ドアを開けて部屋に入って来たさわちゃんは不思議そうな顔で私を見た。
さわ子「いったい中でなにしてたんですか?」
唯「……」
なんて言えばいいんだろう。
言ったところでわかってくれるのかな。
さわ子「それじゃあ約束通り、壊しましょう……不本意ですけど」
唯「ま、待って! だめ! 壊しちゃだめぇっ!」
タイムマシン太を庇うように抱いた。
でもそんな行為も無意味だったみたい。
さわ子「……なんとしてでも壊せって言ったのは平沢さんじゃないっ」
ひったくるようにして無理矢理タイムマシン太を奪われた。
唯「か、返して……!」
さわ子「ダメです! やれって言われたことはきちんとやるわ」
唯「ダメなのっ、壊しちゃったら未来あずにゃんが消えちゃう!」
さわ子「またわけのわからないことを……そもそもこれを壊さなかったらあなたが死んじゃうんでしょう!?」
唯「それは……」
さわ子「だったら尚更壊さなきゃダメです。あなたが死んじゃったら未来の私が悲しむもの! それに私だって……!」
唯「でも……」
ダメだ。
話を聞いてくれない……。
一息つくと、タイムマシン太のネックを持って、学生さわちゃんは上に振り上げた。
だめ! やめて!
唯「壊さないで! お願いさわちゃんっ」
さわ子「……」
無視だ。
もうあれを壊すって決心をきめた顔をしてる。
だめ。あれを壊したらあずにゃんが。
私は考えるよりもさきにさわちゃんを押さえつけにかかった。
さわ子「なにをするの!?」
唯「だめぇーっ!」
さわ子「っ……!」
さわ子「邪魔、しないでっ!」
学生さわちゃんは腕に絡みついていた私を強引に払いのけた。
バランスを崩した私はそのまま壁に叩きつけられる。
痛いっ、痛いよさわちゃん……。
さわ子「おじさん……ごめんねっ――」
唯「やめて……っ」
――ゴンッ。
壁に思いっきり叩きつけられたタイムマシン太はボディが傷つき、塗装がはげていた。
壁から離されると、パラパラと小さな破片が床に落ちる。
まだ、まだ完全に壊れてない……!
なんとかしなきゃ……なんとかしなきゃ……
唯「壊さな――」
――バキィッ。
さわ子「はぁ、はぁ……お、折れた……!」
二撃目。もう一度同じようにして壁に叩きつけられていた。
今度はネックが折れ、ボディもズタズタ。
唯「やめ、て……」
さわ子「……次で」
ボディを持って窓辺に歩いていくさわちゃん。
まさか……。
窓を開けると、持っていたタイムマシン太を……外に向かって放り投げた。
唯「あ、あ……ああ…………」
しばらくして、外から大きな音が―――――――――――
・・・
・・・
・・・
?年?月?日 ?
眠りから覚めると、知らない天井がまず最初に目がついた。
体を起こしてまわりを見渡せばこれまた知らない部屋。
どこなんだろう、ここは。
「あ、起きたんですね! 急に倒れて気を失っていたからビックリしちゃいましたよ」
眼鏡をかけた女の子だ。
髪は長くて艶々。きれいだと思う。
「さっきはごめんなさい。でもあれを壊さなきゃって思ったら必死になっちゃって……」
「窓から投げちゃったし……おかげで先生にも怒られちゃって。でも安心して! きちんと壊れましたよ。あのギター」
なんの話かな?
覚えがないよ。
あなたはだぁれ?
「え、なに言ってるんですか? 山中さわ子ですよ。さっきまでさわちゃんって私のこと呼んでたじゃない……」
さわちゃん?
「ど、どうしちゃったんですか? 何か、様子が変……」
どうもこうも、よくわかんないんだよ。
「わからないって……なにが?」
何もかも。なーんにもわかんないんだぁ。
ねぇ、ここはどこ?
「ちょ、ちょっと……平沢さん?」
ヒラサワさん?
だれ?
「誰って、あなたの名前……」
私の名前?
私はヒラサワ?
「自分でそう言ってたでしょ!? 本当にどうしちゃったんですか!」
「やっぱりさっき頭打ったときにでも……ほ、保健室に行きましょう!」
えー、やだよ。
「やだとかそういうのじゃなくて!」
どうしてここに私はいるの?
どうして私はこうしてさわちゃんと話してるの?
私は本当にヒラサワなの?
どうして? ねぇ、どうして?
「いいから保健室に――」
いや! 離して!
「ちょっ、どこへ行くの!? 待って!!」
?年?月?日
あの場所から抜け出してからどれくらいの時間が経ったんだろう。
1日? 3日? それとも一週間かな。
とても長い時間に思えた。
……私はだれなんだろう。
私はあそこで何をしていたんだろう。
何にもわからない。
何にもわからないの。
?年?月?日
あれから何年かの時間が過ぎていった。
未だに私は何も思い出すことができない。
だけど、そんな私を支えてくれる人が現れた。
彼は数年前、路頭に迷っていた私に声をかけてくれて、優しく接してくれた。
それから私は彼のアパートに住まわせてもらっている。
彼は私のことを気味が悪いとか頭がおかしいんだと嘲笑うことなく、私を命一杯愛してくれた。
私も彼の愛に応えようと精一杯頑張った。
私には今彼だけ。彼の存在だけが私の全て。
?年?月?日
私は彼と結婚した。
親族がわかっていない私のことを察して、式は挙げずに戸籍上のみの結婚だ。
結婚をきっかけにアパートから一軒家を立て、住むことになった。
とてもいい家だと思う。
彼の趣味は外国旅行。
私も彼に着いていって、あちこちの国へ行った。
結婚した今でもよく旅行をする。
そのたびに新婚旅行の気分になって、私と彼はいつまでも愛しあえる気がした。
これってもしかして…
885:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:24:11.60:xmu1na1Z0?年?月?日
ついに彼との間に子どもを授かった。
私たちはそのことをとても喜んだ。
1人目は女の子。
とても可愛らしい女の子。
もしかしたら彼は男の子を欲しがっていたんじゃないかと私は心配した。
だけど娘に優しく接している笑顔の彼を見て、それは杞憂だったんだなと思った。
1年後、もう1人の子が生まれた。
また女の子。
最初に生まれた子とまるでそっくり。
彼は、どちらの子も君によく似てとても愛らしいと言ってくれた。
私も彼同様に、子どもたちを可愛がり、命一杯の愛情を注いで育てた。
まさか、時間軸的に有り得ないが、まさかな……
890:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:27:03.14:xmu1na1Z02010年5月26日 公園
今日はとても天気がよくて、ついつい子どもたちを連れて公園へ足を伸ばしてしまった。
彼は仕事で夜まで帰って来ることはない。
「今日はいい天気だね、お姉ちゃん」
「そだねぇ~。お昼寝日和だよー」
「もうお姉ちゃんったら」
ベンチに座って子どもたちとうたた寝をしていると、向こうから二人の女の子がやってきた。
二人ともよく似ている。まるで双子のよう。
「あいてっ」
あ、こけた。
「お姉ちゃんっ。だ、大丈夫!?」
「あいててて……大丈夫だよぉ」
「よかったぁ……」
なんて微笑ましい姉妹なんだろう。
私はその光景に自然と笑みを浮かべた。
「あ、見てみて~。ほら、あの赤ちゃんたち可愛い~」
「ほんとだ……ふふっ」
姉妹は私の娘たちに気がついたのか、こっちに近寄り、私に挨拶をした。
挨拶を返すと間髪いれずに姉の女の子が、
「可愛い~可愛いよぉ~……」
うっとりと眺め、娘の1人と遊び始めた。
「ご、ごめんなさい。でも本当に可愛いですね」
ありがとう、と返すと。
「名前はなんていうの、お姉さん? この子たちの名前」
なまえ?
そっちが唯で、こっちが憂っていうの。
「すごーい! 私たちと同じ名前だね、憂!」
BADEND6
このBADENDは深く考えると絶対スレが足りなくなるからやめておこう
898:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:33:42.10:I+0URNqkOこれが真の唯BADか
ああ、次はトゥルーだ……スレ足りるといいが
896:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:33:04.13:xmu1na1Z0ああ、次はトゥルーだ……スレ足りるといいが
>>837から
2010年5月11日 軽音部室
シュッ
唯「……」
律「唯ー! 無事だったな! よかったぁ……」
澪「みんなすごく心配してたんだからな?」
唯「そう、なんだ」
紬「お疲れ様、唯ちゃん」
梓「これで一安心ですね!」
さわ子「あっちの私にタイムマシンの破壊は頼んだのよね?」
唯「うん、バッチリ……」
律「あとは壊してくれるのを待つだけか!」
み梓「そうですね」
唯「……ねぇ、未来あずにゃん」
み梓「はい」
唯「本当にこれでいいの!? 消えちゃうかもしれないんだよ!?」
「……」
み梓「……はい」
み梓「私の目的はそもそも先輩たち死なせないことです。その目的のために壊れちゃったタイムマシンでわざわざ時間を越えて来たんですから」
み梓「一種の賭けでしたよ。まぁ、無事につけなかったことなんて微塵にも考えてませんでしたけど」
梓「そんな……」
さわ子「どうして未来の私はそれを止めなかったの?」
み梓「内緒で来たんです。言えばどうせ止められると思ってましたし」
さわ子「……ばか」
紬「そこまでして私たちのことを」
み梓「だって私、先輩たちのこと」
み梓「大好きですから」
梓「ちょ、ちょっとっ……///」
澪「梓……」
律「なんか、照れるな」
ギュッ
唯「あ、ずにゃあ……ん……」
み梓「はい」
唯「ごめん、ごめんね、ごめんねぇ……っ」
み梓「唯先輩はなにも悪くありませんよ」ナデナデ
唯「だっ、でぇっ……」
み梓「それになにも悲しむことないじゃないですか。そこに私はいるんだから」
梓「あ……」
み梓「私も、そっちの私も、同じ中野梓ですよ」
唯「おん、なじ……だけどっ、ちがうんだよぅ……っ」
澪「……」
律「……」
紬「……」
さわ子「……そろそろかしらね」
唯「やああぁぁっ! やだよおおぉっ!」
梓「ワガママ言わないでください!!」
唯「!」
梓「そんなに、そんなに言われちゃったら……つらくなっちゃうじゃないですか」
唯「あずにゃん……?」
み梓「ありがと、私」
梓「別にっ」
梓「……私ね、正直あなたに嫉妬してた。あなたが来てからみんな私を見てくれなくなっちゃったんだもん」
紬「あ、梓ちゃん。そんなことは」
梓「私が勝手にそう思い込んでいただけかもしれない。でも……」
み梓「ごめん……気づかなかった……」
梓「でも許す! 私の方こそごめんなさいっ」
み梓「そんな、謝らなくたって……」
梓「ううん、謝らせてっ」
み梓「なんか、ごめんなさい。私のせいで皆さんに」
さわ子「いいのよ、気にしなくて。あなたは唯ちゃんたちを助けてくれたんだから」
み梓「大したことしてませんよ。伝えに来ただけみたいなものです」
律「でもタイムマシン壊すって考えはお前の発想なんだぞ」
律「なにもできないと思ってた私たちにお前は希望くれたんだ。ちゃんと助けられたよ」
み梓「……えへへ」
唯「……未来あずにゃん。私、待ってるからね。遊びに来てくれるの」
み梓「そう、ですね……約束しましたもんね」
唯「……指きりげんまんウソついたら針千本のーますっ、ゆ……ゆびきっ、たぁ」
唯「やく、そく…………だよぉっ……?」
み梓「……」
み梓「はい! ……約束です!」
2000年4月28日 軽音部室
さわ子「平沢さん……どこに消えちゃったのかしら?」
さわ子「言われたとおり待ってて開けたらいないんだもん……まさか未来に帰った?」
さわ子「と、とりあえず壊すんだっけ」ガシッ
さわ子(うっ……いざとなったら……なんだか)
紀美「さわ子、そんなとこでなにしてんの?」
さわ子「ひっ、きゃあああっ!!?」シュッ…
ズガァァンッ!
紀美「いっ!? な、なにしてんの!?」
さわ子(こ、壊しちゃった……)
紀美「それおじさんからもらったギターでしょ!? な、なんつーことを……!」
さわ子「……こ」
紀美「え?」
さわ子「これが私のロックなんだよおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ドカン、ドカンッ、バキィッ
紀美「ちょ、ちょっと!? さ、さわ子ぉっ!!」
吹いたww
919:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:52:28.41:sEnce1jl0 さ わ 子 、 感 染 の瞬間である
920:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:54:15.02:MO1eScLuOさわちゃんww
921:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 01:55:06.11:xmu1na1Z0・・・
・・・
・・・
2010年5月25日
さわ子「ふふっ、ほんと久しぶりよね」
紀美「さわ子が先生になってからだいぶ会う機会減ったからねぇ」
紀美「どう? しっかり先生やれてんのかよっ、キャサリン」
さわ子「おうっ! じゃなくて、ええ。生徒たちのハートもがっしり掴んでるわ」
紀美「そりゃあおっかないね」クスッ
さわ子「えぇ~! なんでよっ、いい方で掴んでるのよ? 美人でおしとやかで優しい先生ってな感じで!」
紀美「ふふっ、そりゃあいつ本性がバレるか今から楽しみだね~」
さわ子「もうっ……!」
2010年5月25日 軽音部室
梓「……」
梓「……んんっ」
梓「……」
梓「すぅーっ…………」
梓「……」ジャンジャンジャンジャカ、ジャン
梓「ふぅ……」
梓「……」
梓「はぁ……」
ガチャリ
梓「あ!」
唯「あ~ずにゃん!」ギュッ
梓「ひっ」
唯「1人ぼっちで寂しかったかぁい~?」スリスリ
梓「いっ、いきなり抱きつかないでくださいよっ!」
唯「今さら何を言うかぁ、このこのぉっ」スリスリ
梓「うぇー……」グニグニ
っしゃああああ22日越えたああああああああああ
928:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:04:52.58:xmu1na1Z0澪「お、梓が一番乗りだったのか」
紬「遅れちゃってごめんねぇ」
梓「い、いえ! そんな気にしないでください」
紬「すぐにお茶の用意しちゃうから」
梓「は、はぁ……」
唯「あずにゃんのほっぺプニプニぃ~」スリスリ
梓「あぅぅ……」
律「お前らまたやってんのかよー? あいかわらず仲良いですこと」
梓「ち、違いますっ」
唯「え!? 違うのぉ……?」
梓「あ、いや! えっと……」
紬「はい。今日は紅茶とクッキー」
律「お、シンプルにきたぞ」
澪「美味しそう……は、でも」
律「なんだよ、またダイエット? だったら澪の分も私がもらっちゃおー」
澪「や、やめろ!」
紬「いっぱいあるから慌てなくていいわよぉ」
唯「あ、あずにゃん! 私たちも食べいこっ」
梓「え!? あ、はいっ」
唯「ティータイム~、ティータイム~♪」
梓「それもいいですけど。練習、そろそろ真面目に頑張りましょうね?」
唯「気が向いたらするよ~」
梓「……はぁ」
唯「あ、そういえば聞いてよー」
澪「なんだ?」
唯「昨日いい夢みたんだぁ」
律「なんだよ、夢の話か……」
紬「どんな夢を見たの?」
唯「あずにゃんがうちに遊びに来たって夢」
律「おーおー、中野ぉ。好かれてんのぉ?」
梓「う、うるさいですっ!」
唯「えへへぇ」
澪「……もしかしてそれだけ?」
唯「そうだよ?」
律「おっもしろくねー! どうでもいいっての」
紬「まぁまぁ」
梓「……それで、私はなんで唯先輩のところへ遊びに来たんですか?」
唯「えっとね」
唯「約束通り、ちゃんと遊びに来たって言ってた」
梓「約束? 約束してたんですか?」
唯「うん!」
おしまい
乙!!!
940:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:21:39.20:I+0URNqkOタイムマシン関連の記憶がすべて消えても、約束だけはちゃんと覚えてたんだな
乙。久々にいいSSを読ませてもらった
944:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:23:06.05:HXHYRC090乙。久々にいいSSを読ませてもらった
お疲れ
なんか感無量だわ
未来あずにゃん…(;ω;)
951:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:28:41.44:MF/gBZPS0なんか感無量だわ
未来あずにゃん…(;ω;)
>>1乙!
久々に良いSSを見たぜ
952:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:29:05.19:xmu1na1Z0久々に良いSSを見たぜ
ようやく終わったよー。お疲れ様でした!
見てくれた方、支援、保守してくれた方、安価につきあってくれた方、ありがとうね
実はおまけちょっと書いといたんだが
残りレス数の都合上書かないで立ち去ることにするぜ
よいお年を!
954:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 02:30:50.79:HXHYRC090見てくれた方、支援、保守してくれた方、安価につきあってくれた方、ありがとうね
実はおまけちょっと書いといたんだが
残りレス数の都合上書かないで立ち去ることにするぜ
よいお年を!
>>952
ちょww
書かないなら言わないでくれww
これだけの大作ともなると気になるww
985:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 03:41:03.51:pkKXuncOOちょww
書かないなら言わないでくれww
これだけの大作ともなると気になるww
乙
タイムトラベル系は大好物だから楽しく読ませてもらった
話も作り込まれてたし良かったよ
997:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 04:01:45.56:pkKXuncOOタイムトラベル系は大好物だから楽しく読ませてもらった
話も作り込まれてたし良かったよ
1000ならタイムトラベル
999:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 04:02:38.03:KRXZ95eX01000なら唯ちゃんと結婚!
1000:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/27(月) 04:02:40.33:pkKXuncOO1000ならあずにゃん幸せになれよ
コメント 5
コメント一覧 (5)
馬鹿すぎだし自分勝手だしモラルはないし。
危ないってわかってて好き勝手使っといて
作った人が悪い。恨んでいる。なんて梓頭おかしいと思った。
唯も池沼度高かった
キャラのセリフが「そりゃあないだろ!」ってツッコミどころ満載すぎた。残念
お陰で俺のゴールデンタイム全部潰れたが後悔はないぜ
しかし本当に壮大だな!
高校生さわ子がギターを使う前にギターを壊したんでそれ以降の干渉が全て排除されたって解釈でおk?
なんかテイルズオブデスティニー2を思い出したわ
やっぱりタイムマシンなんてこの世に存在しちゃいけないんだな
今を決して変えちゃいけないんだって実感したよ
長文失礼!