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勇者募集してたから王様に会いに行った 第一部
┗【外伝】盗賊だけど今日勇者に解雇された
勇者募集してたから王様に会いに行った 第二部 「魔 王」
勇者募集してたから王様に会いに行った 第三部 「勇 者」前編
勇者募集してたから王様に会いに行った 第三部 「勇 者」後編
┗勇者募集してたから王様に会いに行った エンディング if ルート
┗【外伝】魔法使いに大切なもの
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった 【第一部】 勇者×勇者×勇者
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった 【第二部】 武術大会 in 西の王国コロシアム
347:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:22:42.37:dm6UOcY0
1
--北の王国--
研究部長「調べた結果、これは魔王の骨の一つであると判明しました」
研究部長は腕輪についての報告を発表する。
北の王「うぅん……やっかいなものを持ち込まれてしまったなぁ。牧師が持ち込んだんかいな?」
工作部長「いえ、ここ数年牧師がこの国を出た形跡はありません。恐らく何者かが牧師に渡してそそのかしたのかと」
北の王「はぁ。北の王国はとるに足らない、制圧しても仕方がないというイメージを植え付けてきたつもりなんやけどなぁ……」
治療部長「口を割らそうにも蘇生が成功しませんからね。寿命の尽きた人間の蘇生は不可能。どうやら魔王の骨は寿命を喰って力を発動しているようです」
北の王「あかんわぁ~。そんな危険なものポイしたいわぁ。そんなもん持ってたら攻め込まれる原因にもなるし……めんどくさいめんどくさい」
建設部長「ゴーレムにぐちゃぐちゃにされた国を直すだけでも大変だと言うのに、悩みが尽きませんね」
北の王「ひぃえー目の回る忙しさやな!!仕方ない。久々に王クラススキル……王の言でも使っちゃおかしら」

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348:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:26:59.16:dm6UOcY0
2
--王国--
新王「なんて……ことだ」
妃「その情報は確かですか~?」
諜報部「……はっ。残念ながら」
新王「それが本当なら、これは最悪の事態だ。恐らく人類の歴史上、最大の危機……」
妃「……あなた~?」
新王「ん?」
妃「もしもの時は、お願いしますね~」
新王「……」
349:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:30:06.63:dm6UOcY0
3
--宿屋--
ツインテ「ん、んー!!はぁ~久しぶりに一人で寝れた」
カーテンから朝日が洩れる。
ツインテは気持ち良さそうに伸びをした。
もぞもぞ
ツインテ「ん?」
もぞもぞもぞもぞ
ツインテ「……んん!?」
シーツの中に蠢く何かが……。
ガバッ
ツインテ「ひっ!?な、なにやってるんですか!!」
レン「ツインテのベッド……あったかい」
350:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:35:15.23:dm6UOcY0
4
--宿屋--
ポニテ「おっはよーう!!」
すでにポニテは食卓に付いていた。
ツインテ「おはようございますポニテさん」
レン「……おはよ」
ポニテ「あー!やっぱりツインテちゃんのとこ行ってたんだー!朝起きたらいなくなってて心配したんだぞー!」
レン「……ポニテと寝るの……辛い」
ポニテ「ぐさっ!?」
ツインテ「わかります……あれはとてもじゃないけど寝てられません」
ポニテ「ぐさぐさっ!!」
アッシュ「みんな早いな」
アッシュが食堂に姿を現す。
351:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:39:17.14:dm6UOcY0
5
--宿屋--
ツインテ「あ、アッシュ君、おはようございます」
アッシュ「ん」
アッシュが席につく。
アッシュ「……なぁ、飯を食う前に一ついいか?」
ポニテ「ん?どしたのー!?」
アッシュ「いやな、このパーティー……女多すぎないか?」
ツインテ(男女比2:2なんですけどもー!!)
ポニテ「そだね。でもなんか困ることあんの?」
アッシュ「……なんとなく心の問題もあるし」
352:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:43:17.76:dm6UOcY0
6
--宿屋--
ポニテ「めんどくさー!でもそしたらどうするの?誰かリストラするってこと?」
レン「……レン、また捨てられるの?」
俯き耳を垂らすレン。
ツインテ「だ、誰がレンさんを捨てるもんですか!!」(かわEー)
ポニテ「非常食は必要だもんね!!」
レン「ふ、フーー!!」
アッシュ「お前……」
ポニテ「うそうそ!本気で食べるわけないじゃない~!!」
ツインテ「レンさんいいですか?ポニテさんと二人きりになってはいけませんよ?」
アッシュ「……考えないように考えないようにしていたが、下手すると俺らも危ういんじゃないか?同種族だからといって安全とは限らんぞ」
ポニテ「だからぁ!!食べないって言ってるでしょ!?……味を覚えちゃったらわからないけど」
ツインテ「鯱と一緒に海を泳ぐとこんな感じなんでしょうか……」
353:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:46:36.95:dm6UOcY0
7
--宿屋--
ツインテ「で具体的にはどうするつもりなんですか?」
ポニテ「まさか私をリストラ!?」
ツインテ「あー……確かにポニテさんの食欲のせいで家計の圧迫が大きいですからね」
アッシュ「確かに……そのせいで宿には泊まれないわ、満足に武器も買い替えられないわ……」
ポニテ「ね、燃費が悪いんだよ!その分戦闘では役立ってるでしょ!?」
ツインテ「不必要に魔法連打して虐殺してますよね……非効率と言うか」
ポニテ「なんかツインテちゃんが毒舌!!」
354:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:49:52.64:dm6UOcY0
8
--宿屋--
アッシュ「そういうんじゃなくてな……」
ツインテ「はう!!もしかして戦闘で役に立たないボクをリストラ……」
ポニテ「あー、あーあー!有り得るね!!回復役と言っても、アイテムでどうとでも代用出来るポジションだし!」
ツインテ「そんなっ!!」(あれ?いやまてよ?もしここでリストラされればボク、もう戦わなくて済む?)
ツインテはすっくと立ち上がった。
ツインテ「皆さん、短い間でしたがお世話になりました。力不足というのであれば致し方ありません、実家に帰らせて頂きます」
レン「!!や、やー!!」
レンはツインテにしがみ付く。
レン「ツインテ……行くなら……レンも行くっ」
アッシュ「こらこらこらこら勝手に話進めんなっ!!てかお前だけは絶対にやめさせん!!」
アッシュは顔を赤らめて言う。
ツインテ「ひぃっ!?」(そ、そんなにボクのこと……危険に晒したいのか)
355:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:54:37.19:dm6UOcY0
9
--宿屋--
ポニテ「いや待てよ?……今のパーティーに不満があるのはアッシュ君だけ……ということは、アッシュ君が辞めればいいだけの話!?」
アッシュ「なぬ!?」
ポニテ「そーだよー!!私達今のままで全然楽しいもん!!文句あるならでてけー!!」
アッシュ「ぬ、ぬぬぬ!」
ツインテ(アッシュ君が抜けたら……スパルタが無くなる!?い、いや待て待て落ち着けボク。そしたらポニテさんが仕切ってもっと恐ろしいことに……)
レン「にゃーにゃー」
アッシュ「なぜ鳴いたし」
ツインテ(しかもそしたら男女比がやばくなる!?同姓皆無!?はわ、はわわわわ)
シュビ
ツインテは挙手とともに勢いよく立ち上がる。
ツインテ「あ、アッシュ君をリストラするのは反対です!!アッシュ君がいなくなるのは嫌ですボク!!」
アッシュ「……お前」
356:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 22:59:32.63:dm6UOcY0
10
--宿屋--
ポニテ「まぁ冗談だけどね!!」
アッシュ「冗談かよ!!」
ポニテ「でもさー?じゃあさー?結局なにがしたいの?アッシュ君は」
アッシュ「単純に男をパーティに入れたい。そしてこのパーティに足りないのは壁役。正直俺では心もとないし、女では不可能な職業だろう?」
ツインテ「確かに……」(ボクも男だけど)
レン「にゃ」
ポニテ「あ、じゃあ私が壁役やるよー!!」
ポニテは元気よく手を上げる。
アッシュ「いやだから……」(ん?)
ツインテ「そう言えば……ボクポニテさんにだけは回復魔法かけたことない?」
ポニテ「うん!だって怪我したことないしっ!!」
レン「……カッチカチ」
357:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 23:03:32.38:dm6UOcY0
11
--宿屋--
宿長「あ、あのぉ~お客様?」
アッシュ「ん?」
ポニテ「やっとご飯きた!?」
宿長「いえ、昨夜おっしゃられていた西の王国行きの船の件なんですがね、あと五分で出航するらしいのですが……よろしいので?」
ツインテ「……五分?」
宿長「はい」
ポニテ「……ご飯?」
宿長「いいえ」
レン「……にゃあ」
アッシュ「……走るぞ」
358:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 23:07:55.48:dm6UOcY0
12
--街道--
ポニテ「あーん!!お腹空いたお腹空いた!!我慢できないーーー!!」
アッシュ「ええい、やかましい!!握り飯を作って持たせてくれただけありがたいと思え!!移動速度上昇レベル3更新!!」
勇者一行は風のような速さで駆けて行く。
ツインテ「ボ、ボクこんな早く走ったの初めてです!!」
レン「にゃあー」
ドドドドドドドドドドドド!!
--港--
ツインテ「あ!!船が見えましたよ!!」
アッシュ「くっ!!もう出発してやがる!!」
レン「二アー」
ポニテ「もっきゅもっきゅ、ふぁたひが、ふぉめようふぁ?<私が、止めようか?>)」
ポニテはおむすびを頬張りながら話しかけてきた。
そしてポニテの右手を中心に炎が燃え盛る。
アッシュ「お前破壊して止める気だろ……却下だ。俺達はこのまま乗り込む!!」
ツインテ「ええ!?で、でももうちょっと陸から離れちゃってます!!」
359:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/21(月) 23:12:00.78:dm6UOcY0
13
--港--
アッシュ「……TOBUNDA」
ツインテ「え、えええええええええ!!!!」
勇者達は前方のブリヂストンで跳躍すべく、速度を上げた。
ポニテ「むっちゃむっちゃ。楽しそうww」
レン「ギアー」
ツインテ「ええええええ!!って止まることもできないいいいいいいいい」
ダンっ!!
超速度でジャンプした勇者一行は海を飛び越え、
船員「……ん?なんか大砲みたいな音が」
ヒュウウウウウドオオオオンン!!!
船へと着地した。
船員「な、なななな!!」
ツインテ「はっ、はっ、はっ……」
アッシュ「なんとか……なったか」
予期せぬ来訪者達をクルーズがお出迎え。
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
第二部
武術大会 in 西の王国コロシアム
369:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 21:49:12.21:ht5rgiA0
14
--東の遺跡地下十階--
学者「ほぉ~。こらおったまげたなぁ……大災害前のもんだぞこれは」
小柄な付き人「これは一体なんなのでしょうか。ん?学者様、ここに文字が書かれています。現在使われている言語と違うようですが」
二人は古びた石板の前に立っている。
学者「なになに……『ナビ子ちゃんはぁ、現在お眠り中でーーーすっ!御用の方は、ここに手を当てて魔力を流しこんじゃってくださーい
っ!そしたらナビ子ぉ……いやんっここからは恥ずかしくて言えなーーい!!』と書いてあるな」
小柄な付き人「気持ちを込めて読む必要は無かったですよね……おえっ」
学者「調査隊の中に魔法使いのやつおったよな?」
小柄な付き人「えぇ。彼女は上のフロアで待機しています。呼びますか?」
風の魔法使い「お呼びですか?」
学者「あぁ、ここに手をおいて魔力を流し込んで欲しいんだ。やれるか?」
風の魔法使い「えぇ、大丈夫だと思います。ん」
風の魔法使いが石板に手を乗せると、部屋全体が淡い緑色に発光する。
学者「おぉ」
風の魔法使い「うっ」(ど、どんどん吸い取られる。これ、なんなの?)
372:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 21:52:22.52:ht5rgiA0
15
--東の遺跡地下十階--
??『んっ……んんんんーーーー!!』
風の魔法使い「きゃっ!?」
??『ナビ子ちゃんふっかああああああああああああああああつ!!』
学者「お、おおおお!!人の形をした靄が喋っておる!!」
??改めナビ子『あーーっよっく寝たーー!!あ、そこのお姉さん、もう魔力はいいよ?おいしく頂きましたー!!やっぱり朝一の魔力は
処女のに限るよね!!』
風の魔法使い「!!!!」
小柄な付き人「なん……だと?」
学者「ナビ子と呼べばいいのかの?お前さんはここを管理しとる精霊か?」
ナビ子『うん私管理者なのよー?精霊っていうのとはちょっと違うかなー。おじさん達、ナビ子を起こしてどういうつもりなのかな??』
小柄な付き人「普通に意思疎通している……」
373:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 21:56:48.71:ht5rgiA0
16
--東の遺跡地下十階--
学者「ここはどういった場所なのか知っているか?わしらは何年もここを調査しているが何もつかめん。ここだって、偶然フロアが崩れたおかげで知ったんじゃ」
ナビ子『なるほどー。私が眠ってから随分時間が立ってるみたいねー??ぴぴぴ、ナビ子ちゃん検索中ー検索中ー。ワオ!!400年くらいたっちゃってるのねー!!』
風の魔法使い「400年前のものなの?これ」
ナビ子『あ、ここがどんな場所かだったはね。じゃあそうね、右の壁に埋め込まれた棺があるでしょ?あれの石板部分に魔力流しこんじゃってよ!!そうすればわかるかも~』
学者「ふむ……そっちも頼めるかの?」
風の魔法使い「はい、後一度くらいならなんとか」
風の魔法使いは棺の石板に手を触れた。
ナビ子『ふふふー』
ズリュリュ
風の魔法使い「っ」(さっきのよりも強力だ)
374:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:00:16.64:ht5rgiA0
17
--東の遺跡地下十階--
ナビ子『もうそろそろかな?かな?必要最低限くらいの分は出せるよねっ!!』
学者「?」
ブシュウーーー
棺から煙が漏れ出す。
ナビ子『あんっ!!おっけおっけー!!機動完了よんっ!!』
風の魔法使い「はっ!はっ!」(ほとんど吸われてしまった……)
ギィぃ
棺から現れたのは、
??「……」
白いメイド服を纏った紫髪の少女。
375:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:03:50.44:ht5rgiA0
18
--東の遺跡地下十階--
??改めメイド「……私が目覚めた?……ナビ子、今はいつ?でございます」
ナビ子『メイドちゃんおはよーーっ!!えーっとね、今はね、眠りに着いた時から400年くらい立ってるのよー!!』
メイド「400年……」
学者「生身の人間が!!ど、どういう構造をしているんじゃこの棺は!!400年もの間腐りもしないとは……」
メイド「?ナビ子、この者達はなんでございますか?」
ナビ子『えー?ナビ子わかんなーい』
メイド「そうでございますか。では……処理するでございます」
風の魔法使い「え」
376:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:07:37.18:ht5rgiA0
19
--東の遺跡地下十階--
??「これで来ていた人間は全部だバウ」
黒い犬が人間を引きずってやってくる。
メイドは人間達を縛り上げていた。
メイド「ご苦労様です番犬。でございます」
??改め番犬「……難儀なしゃべり方だなバウ」
メイド「貴方に言われとうないでございます」
ナビ子『いやんっ!番犬ちゃんお帰り!!全部で24名かー。中々の大所帯ね!!』
メイド「ではさっそく始めるでございます」
メイドは、縄で縛られてぐったりしている風の魔法使いのもとへ歩いていく。そして頭髪を掴み、引きずりながら奥へ向かった。
風の魔法使い「あぐっ」
一際大きな石板の前で立ち止まる。
377:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:12:13.42:ht5rgiA0
20
--東の遺跡地下十階--
学者「わ、わしらを捕まえてどうするつもりじゃ」
番犬「黙っていろバウ」
番犬の尾で叩かれた学者は弾き飛ばされる。
メイド「さぁ頑張ってでございます」
メイドは風の魔法使いの顔面を石板に押しつけた。
ぎゅるぎゅる
風の魔法使い「あ、あがっ!!」(い、一瞬で吸われっ)
メイド「もう空ですか?底が浅いでございます」
メイドは調査隊から取り上げた回復薬の蓋を取る。
メイド「さぁたんと飲むでございます」
ゴブッ
風の魔法使い「ぐ、ぐぶっ!!」
メイド「……こぼさないで欲しいでございます」
風の魔法使い「ぶはっ!!はっ!はっ!」
メイド「さぁもう一度」
ガッ
風の魔法使い「うああああああああああああ!!」
379:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:17:10.59:ht5rgiA0
21
--東の遺跡地下十階--
小柄な付き人「むごい……」
メイド「充足する喜びと奪われる苦しみ……素晴らしいでございます」
ナビ子『メイドちゃんたら、どっエスー!!』
メイド「何を言うでございますか。メイドのMはドマゾのMでございます」
風の魔法使い「あ、あぁ……」
番犬「そろそろかバウ」
メイド「ほら、もう一踏張りしやがれでございます」
風の魔法使い「ひ、ひぃ!!」
ぎゅるぎゅる
ナビ子『ぴぴーん!ステージ1に到達よん!!』
学者「な、何が始まるんだ……」
シュゴォォ
中央の棺が開いていく。
それを見て、メイド、番犬、ナビ子は跪いた。
???「……う」
中から現われたのは金髪の青年。
メイド「おはようございます我らが主様」
番犬「闇の主、アンシュ様バウ」
???改めアンシュ「む……それが俺の名か?」
学者「普通の……人間?」
380:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:21:47.51:ht5rgiA0
22
--東の遺跡地下十階--
メイド「記憶は……ございますか?」
アンシュ「……いや、なにも思い出せない。名前も。お前たちがなんなのかも……」
メイド「そうでございますか」
メイドは立ち上がり風の魔法使いを連れてアンシュの側へ。
メイド「どうぞアンシュ様。処女の生体エネルギーをお吸いくださいでございます」
風の魔法使い(生体エネルギー?)「……っひ!?」
アンシュ「よくわからないが、なにやら喉が鳴る」
アンシュの指が風の魔法使いの頬に優しく触れる。
風の魔法使い「あ、ああっ、あああ!!」
何もされてはいない。だが、風の魔法使いは確かに感じた。
絶対なる捕食者の威圧を。
381:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:35:00.29:ht5rgiA0
23
--東の遺跡地下十階--
学者「なんてことだ……まるでミイラのように……」
風の魔法使いは全てを絞りだされ、ミイラのように干からびている。
番犬「アンシュ様、よろしければこちらもどうぞバウ。こちらの12人は全て童貞処女ですバウ」
ナビ子『やっぱ童貞処女は質が違いますからねん!!』
小柄な付き人「え!?あんたその年で!?……あんたいつも若い子としてるとか自慢してたのに」
学者「う、うるさいわい!!お前こそ!!」
じゅるる
学者「あばばば!!」
ドサリ
アンシュ「……先ほどに比べれば微妙だな」
番犬「まぁ歳が歳ですからバウ」
アンシュ「お前たちはいらんのか?」
メイド「私達は非童貞処女を頂きますのでご遠慮なさらないでございます」
番犬「アンシュ様は少しでも回復してくだされバウ」
アンシュ「ほうか」
382:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/06/25(金) 22:35:54.23:ht5rgiA0
24
--東の遺跡地下十階--
じゅる、じゅる、じゅるる!!
アンシュ「一つだけ……思い出したぞ」
メイド「!!本当でございますか!?」
アンシュ「あぁ、俺の目的……使命」
番犬「なんとバウ……」
アンシュ「俺の使命は……」
ナビ子『わくわくどきどきっ』
アンシュ「魔王となって世界を支配すること」
メイド「その通りでございます……アンシュ様」
番犬「いざ我らが悲願のため、世界へ踊り出ましょうバウ」
ナビ子『残念~私はここから動けません~。だからぁ、困った時は電話してねっ!!』
アンシュ「まだ力は不十分……近くになにかないのか?」
ナビ子『ぴぴぴ、ナビ子チェックー!!あ、近くに東の王国っていうのがあるわ!人間の数も多いっすー!』
アンシュ「よし。そこに行こう」
メイド、番犬「ははっ!!」
419:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 21:28:45.01:8Xz3KdY0
25
--東の王国--
アンシュ「ここが東の王国か?」
メイド「そのようでございます」
番犬「ふむ。しばらく見ない間になかなか立派なものが立っておるなバウ」
ガシャッ
アンシュ達の前で槍が交差される。
アンシュ「む?」
東の城門槍兵「通行許可証を提示しないと中には入れられん。通行許可証を」
メイド「……」
番犬「面倒バウな」
東の城門槍兵「!!い、犬が喋った!?まさかそいつモンスターか!!」
423:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 21:33:18.34:8Xz3KdY0
26
--東の王国--
アンシュ「うるさいやつらよ」
アンシュが手を伸ばそうとした瞬間、
ザブシュ
アンシュ「?」
メイド「あ、すいません、出過ぎた真似でございましたか?アンシュ様の攻撃思考を受信したもので」
メイドの手刀により両断される二人の城門槍兵。
アンシュ「いや、構わない。俺も黙らせようとしただけだ」
東の城門弓兵「ひ、ひっ!!応援をがきやっ!!」
番犬「面倒なのはやめてもらおうバウ」
一瞬で門の上に飛び乗り、城門弓兵の首を噛みちぎる。
番犬「ふむ。犬の姿は少々不便か。スキル、形態模倣」
番犬は殺した城門弓兵の姿へと変貌した。
メイド「さぁ行きましょう……って、そんなもの食べちゃいけないでございます!!」
アンシュは城門兵の切り身に手を伸ばしていた。
アンシュ「小腹が減った」
425:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 21:42:14.14:8Xz3KdY0
27
--東の王国--
じゅる
アンシュ「む、魔法を一つ思い出したぞ」
メイド「左様でございますか」
アンシュ「誰かで試してみたいな。一匹連れて来てくれないか?」
メイド「了解しましたでございます。スキル雷動」
バシュッ
メイドは一瞬でアンシュの目の前から消える。
アンシュ「む、なんでもかんでもやらんでいいのだがな……」
シュッ
メイド「お待たせいたしました。どうぞでございます」
メイドは抱えてきた男を放りだす。そして男の髪を掴んで顔を持ち上げ、アンシュへと向けた。
眼鏡男「な、ななななんだ一体!!俺は家でピンク髪ツンデレ女の子のアニメを見ていたはずなのに!!何が起きてるんだ!?」
アンシュ「……よし、魔法、洗脳魔眼」
びかっ
アンシュ「俺のことをピンク髪ツンデレ女の子と認識しろ」
眼鏡男「ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくんんはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!小説12 巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!」
グシャっ
メイド「……アンシュ様、考えてお使いくださいでございます」
アンシュ「……恐ろしい生物だな。この俺が全く反応出来ずになすがままだったぞ」
426:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 21:47:20.42:8Xz3KdY0
28
--東の王国--
東の兵「おい、何か不穏な空気を感じるぞ!何かあったのか!?」
ドカドカと兵達が集まり始める。
番犬(質がいいな。気配だけで我々を)「いや、何もない。下で変な人間が喚き始めただけだ。それもすでに処分した」
東の兵「処分?」
東の兵は下を覗き込もうとした。
トストストス
その瞬間、番犬は全ての東の兵の首を落とす。
番犬「アンシュ様、そろそろ中に入りましょうバウ。こいつらが無限に湧きでてくるバウ」
アンシュ「そうだな」
アンシュは門を潜り、東の王国の領土に足を踏み入れた。
427:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 21:51:27.57:8Xz3KdY0
29
--剣の町--
ガヤガヤ
メイド「どうしますか?さすがにこの数を同時に相手にするのも食するのも面倒でございます」
アンシュ「ふむ」
番犬「しばらくどっかの家を占領して、ゆっくり療養したらどうだろうバウ」
アンシュ「そうだな、そうするか」
メイド「わかりました。それでは住み心地のよさそうな場所を探すでございます。スキル雷動」
バシュッ
アンシュ「あいつそればっかだな」
428:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 21:58:21.56:8Xz3KdY0
30
--丘の洋館--
痩せた家政婦「お、お帰りなさいませ」
長髪の家政婦「お、お帰りなさいませご主人様。お、お帰りなさいませご主人様」
アンシュ「ふむ、全部に洗脳終了か」
メイド「ご苦労様でございました。本来は私達がやらねばいけないことでございますのに」
アンシュ「気にするな。出来るやつがやればいい」
館の主人「そ、それでは仕事に行ってまいります」
番犬「複数に洗脳をかけたせいか効き目が怪しいバウ」
メイド「この屋敷、変なアイテムでもあるのか、それともいわくつきの場所なのか……私の索敵能力もうまく機能していないでございます。洗脳の効き目が悪いのもおそらくその影響だとおもわれでございます」
番犬「ジャミングか?こちらにとってプラスになるのかマイナスになるのか……バウ」
三人の立っている位置から見えない場所、柱時計の後ろに一人の少年がいた。
太い眉の少年「はっ!はっ!はっ!」(みんなも!父さんも!何かされた!!なんなんだあの人達っ!!)
430:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:04:03.37:8Xz3KdY0
31
--丘の洋館、秘密部屋--
太い眉の少年「ここならあいつらもこないはず……ここで何か対策をとらないと……」
日ごろから溜めこんでいたお菓子で食糧はどうにかなる。そして武器になるものは一つ。壁に立てかけている昔拾った錆びた剣。
ガチャリ
少年は剣を手に取る。
太い眉の少年「これを使って僕が……僕があいつらを!!」
431:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:10:49.29:8Xz3KdY0
32
--丘の洋館--
三日後。
番犬「どうぞアンシュ様。今日は四人だけにしておきました。ここ最近警備がきつくなっているものでバウ」
メイド「なら警備ごとやっちゃえばよかったのでございます。ゆとったでございますね」
番犬「あまりやりすぎると上の奴らが出て来そうバウ。それはこちらとしても良く無い展開バウ。まぁもうやりすぎた感はあるけどバウ」
アンシュ「うむ。じゃあいただくか」
茶髪幼女「あわ、あわわわ」
じゅるるじゅるる
メイド「とりあえず誰か一人でも本調子になれば安心なんでございますが……番犬、今どんな感じでございますか?」
番犬「わしか?わしは今13%くらいだな」
メイド「私7%なのに……いつのまにそんな吸ったでございます?」
いがぐり「やだよおおお!!」
じゅるじゅるうる
432:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:17:07.84:8Xz3KdY0
33
--丘の洋館--
メイド「……」
じゅるじゅるる
メイド「番犬、アンシュ様はどの程度溜まったと思うでございますか?」
メイドは番犬に近づき小声で話す。
番犬「うむ?……どうだろう。まだ一割程度かバウ」
メイド「やはりそうですか。質のいい処女童貞のエネルギー、その量も我らの10倍以上吸ってまだ一割……今回のアンシュ様は底が知れぬでございます」
番犬「うむ……時にメイド、この屋敷になにかが潜んでいるような気がしたことはないかバウ?」
メイド「ばっちしするでございます。ただうまく索敵が出来ないせいで、確信とは言い切れないでございます」
番犬「いくら妨害されていようと、我らの索敵は優秀バウ。ということはよほど小さい生物なんだバウ。ただの一般人か小動物か……」
アンシュ「じゅるるるるるる」
太い眉の少年「……ごくっ」
少年は部屋の外から中を除いていた。
434:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:23:20.58:8Xz3KdY0
34
--丘の洋館--
太い眉の少年(あいつら……夜になるとああやって、街から子供をつれてきて……殺してる!!)
アンシュは四人目の少女に手を伸ばす。
青眼の少女「ひっ!」
太い眉の少年「!!」(あれは!!いつも遊んでるお姉ちゃん!!)
メイド「ほぉ美しい青色でございます。すばらしい青色。ブルーアイズというやつでございますね」
番犬「今の子達はカードダスの方知らないのかな??」
メイド「何の話でございます?語尾語尾」
太い眉の少年「っっ!!」(お、お姉ちゃんが!!助けないと……いや、でもあんな何人も殺してるようなやつら相手に僕なんかじゃ出てっても)
じゅるる
青眼の少女「ああああああああ!!」
アンシュ「む?美味だ。白き龍のような……いや何を言ってるんだ俺は」
436:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:30:24.31:8Xz3KdY0
35
--丘の洋館--
アンシュ「ふむ、まぁ少しは腹が膨れたか。では寝るぞ」
メイド「はっ、お休みくださいでございます」
番犬「良い夢をバウ」
アッシュは洋館の暗闇の中へと姿を消した。
メイド「……さて、お残しでも食べるとするでございますか」
番犬「だな。回復は愚か、維持エネルギーすらままならんからな
メイドは床に投げ捨てられた吸い殻に手を伸ばす。
メイド「いただきますでございます」
バギ
太い眉の少年「う、うっ!!」
437:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:38:15.81:8Xz3KdY0
36
--東の王国、離宮--
東の王と剣豪は、和室に似た部屋で将棋を指している。
東の王「剣豪知っているか?」
パチ
剣豪「何をだ?」
パチ
東の王「剣の町で最近失踪事件が多発しているらしい。それも女子供ばかりだとか」
パチ
剣豪「あぁその話か。どっかで小耳にはさんだな。で、それがどうした」
パチ
東の王「……あぁ。それが妙でな。兵士達が必死に探っても、何もわからないのだと」
パチ
剣豪「わけぇのはだらしないな……はぁ俺の息子もなぁ」
パチ
東の王「その話はもうよい。問題なのは俺の国の兵達でさえ、素性がつかめない相手がこの国にいるということだ」
剣豪「……」
東の王「剣豪行け。お前の探知能力なら見つけられる。これ以上犠牲を出したくない」
剣豪「……はぁ、俺は隠居した身なんだぜ?大戦で片腕も無くした老兵をまだ動かそうってか」
剣豪は静かに立ち上がる。
剣豪「仕方ねぇな」
438:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:46:20.24:8Xz3KdY0
37
--丘の洋館、秘密部屋--
少年は一人膝を抱え項垂れている。
太い眉の少年「……もう僕に出来ることなんて何もない。逃げよう。それで大人にやっつけてもらおう」
少年は窓から顔を出す。秘密部屋は二階にあるため、窓から降りるには飛び降りるか梯子を使うしかない。
太い眉の少年「もうあいつらの行動パターンはわかってるんだ。男は昼は寝てて、犬は一階のエントランス、メイドはそろそろ」
ガチャッ
メイド「では行ってくるでございます」
少年は慌てて窓を閉める。
バタン
メイド「?」
メイドは音をした方に目をやる。しかしそこには何もない。
メイド「……家政婦達でございますか?」
メイドは視線を戻すと町へと向かった。
太い眉の少年「あ、危なかった!!」
439:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:50:15.63:8Xz3KdY0
38
--丘の洋館、秘密部屋--
太い眉の少年「……よし」
少年は悩んだ挙句、窓からカーテンを放り投げた。
ブワッ
少年はカーテンが地面に落ちたことを確認すると、次に剣を落とした。
ガイン
太い眉の少年「カーテンが下にひいてあるから飛び降りても大丈夫なはず!!」
少年は無謀にも窓から飛び降りる。
ドサ
太い眉の少年「いって!!か、かてえええ!!カーテン全然役に立ってないじゃん!!」
少年は大きな声を出してしまったことに気付き、慌てて口を塞いでその場を去った。
太い眉の少年(ど、どこも折れて無いよな?)
少年は自分の体を確認すると剣を担ぎ、カーテンをマントのようにはおり、駆けだした。
太い眉の少年(あそこの塀の下!!)
少年は大きな石をずらすと、塀の下にぽっかりと開いている穴を見つける。
太い眉の少年(ここを通れば!!)
少年は
番犬「曲者かバウ?」
太い眉の少年「!?」
440:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 22:55:14.19:8Xz3KdY0
39
--丘の洋館--
後ろを振り向くと、さっきの音を聞きつけてか番犬が歩いて来ていた。
その距離約50メートル。
太い眉の少年「う、うわ!!」(早く潜らないと!!)
少年は焦りながら穴へと潜っていく。
番犬「待て、ここで逃げられたらわしの名が伊達になる」
番犬は走り出す。
太い眉の少年「わあああ!!」
少年は焦って進むが、剣が引っ掛かって前へと進めない。
太い眉の少年「くそっくそっ!!」
少年は力づくで剣を引っ張る。
ズリズリ
番犬「氷属性魔法レベル2」
番犬の口から氷の礫が発射される。
ドオオン!!
441:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:03:31.91:8Xz3KdY0
40
--丘の洋館--
パキパキ
凍った土の上を歩く番犬。
番犬「消し飛んだか?……いや逃げられたバウ」
太い眉の少年「はー!はっー!!」
なんとか塀の向こう側へ来ることが出来た。
太い眉の少年「はっ!」(安心してちゃだめだ!あんな化物すぐ追ってくるに決まってる!!)
少年は剣を抱えて走り出す。
番犬「追うか……いや、アンシュ様の傍を離れるわけにはいかんバウ。それにどうせ大したやつじゃあるまいバウ」
442:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:08:35.09:8Xz3KdY0
41
--剣の町--
メイド「このパイナポォーを一つくれでございます」
果物屋「あいよお譲ちゃん、可愛いからリンゴもつけちゃうよww」
メイド「あらいやだでございます」
果物屋「いつもあの屋敷からわざわざ大変だねぇ。あそこに住んでる領主は厳しいだろう?」
メイド「仕事でございますので。それでは」
メイドが振り向いた先には、
太い眉の少年「はっはっはっ!!」
カーテンに身を包んだ少年がいた。
メイド「?何か用でございますか?」(……この感覚)
少年は錆びた剣をメイドに向けた。
太い眉の少年「みんな騙されちゃ駄目だ!!こいつは、悪魔なんだ!!」
443:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:15:14.20:8Xz3KdY0
42
--剣の町--
メイド「……悪魔?」(この少年、やはりあの屋敷の者でございますか?)
果物屋「おいがきんちょ、馬鹿なこといっちゃあいけねぇよ!!それに錆びてるからってそんなもん振りまわすんじゃねぇ」
果物屋の男は少年を窘める。
果物屋「まぁ確かにぃ?その二つのメロンは悪魔みたいなもんだがよがはははは!!」
果物屋は自分の胸に手をやり大きさを露わす。
メイド「セクハラでございます」
太い眉の少年「し、信じてよ!!僕見たんだ!!こいつらが」
メイド「ぎっ」
太い眉の少年「!!!!」
メイドの目を見た瞬間、少年は動けなくなる。
太い眉の少年(な、なんだこれ……こ、怖い、怖すぎて、声も、息もできな)
果物屋「お、おいおい、お譲ちゃん、子供のたわごとなんだから許してやんなよ」
444:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:23:09.47:8Xz3KdY0
43
--剣の町--
メイド「いえ怒っているわけではないでございますよ」
メイドの視線が少年とずれる。
太い眉の少年「かはっ、はっ!!はっ!!」
少年は全力疾走をした後のように息が切れていた。
太い眉の少年(だ、だめだ!こいつは倒せない!!大人も……大人でも!!)
少年はメイドに背を向け走り去った。
果物屋「あ、ありゃりゃ、逃げちまった。まぁ気を悪くしないでやってくれ。お譲ちゃんが美人だから構って欲しいんだろうよ」
メイド「……」
446:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:27:05.56:8Xz3KdY0
44
--路地裏--
太い眉の少年「はっ!はっ!はっ!!」
少年は路地裏に駆けこみ、樽の後ろに隠れた。
太い眉の少年「駄目だ駄目だ!!あいつらやばい……この国がこの国が滅ぼされちゃう!!」
カツン
太い眉の少年「はっ!?」
カツン、カツン
太い眉の少年(追いついてきた!?)
カツン、カツン、カツン
メイドは路地裏の前にまで来ると立ち止った。
太い眉の少年「ふっ、ふっ!!」
447:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:32:31.58:8Xz3KdY0
45
--路地裏--
メイド「……」
太い眉の少年(ううううう!!)
メイド「……こっちではないでありますか」
カツン
メイドは路地裏を一瞥するとそのまま立ち去った。
太い眉の少年「……助かった?」
少年はこっそりと顔を出した。
太い眉の少年「……いない。逃げなきゃ」
ドスン
太い眉の少年「あぶっ!!」
来た道を引き返そうとした少年は警備兵にぶつかってしまう。
太い眉の少年「!!警備兵!!よかった、話を聞いて!!」
448:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:40:34.63:8Xz3KdY0
46
--剣の町--
太い眉の少年「な…何を言ってるのか、わからねーと思うが(ry」
少年は警備兵に説明を始めた。
警備兵「……」
太い眉の少年「それで……き、聞いてるの?ねぇ」
警備兵「ごふ」
ドシャっ
太い眉の少年「!!ど、どうしたの?警備兵のおじ、!!」
倒れた警備兵の背中は何かでごっそりと抉られていた。
太い眉の少年「な、ななな!!」
メイド「ふふ、ふふふ」
メイドは、
太い眉の少年「!?」
少年の真上の看板に座っていた。
449:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:43:56.65:8Xz3KdY0
47
--剣の町--
メイド「お前がどこに隠れようがお見通しでございます。私達には索敵能力があるでございますから」
メイドは地面に降り立つ。
メイド「でもさっき、お前が私の前に現れた瞬間上手く機能しなくなったでございます。つまり……お前かお前が背負っているその剣か、そのどちらかが我らの索敵を妨害していたということ……」
メイドは右手を警備員に突き刺す。
ドシュっ
じゅるるるる
太い眉の少年「……だからお前を索敵能力では探せないでございます。でもそれは逆に、私の索敵能力に異変が生じる場所にお前がいるということになるでございます」
警備員はみるみるうちにミイラのようにしぼんでいく。
メイド「ふぅ、やはり大した補填にはならんでございますね。やっぱり喰うのは……」
メイドは太い眉の少年を眺めて、唇を舐める。
メイド「お前のような童貞に限るであります」
450:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:48:49.27:8Xz3KdY0
48
--剣の町--
太い眉の少年「ひ、ひぃ!!来るな!!」
メイド「自分から私の下に来たのではございませんか」
メイドは一歩、また一歩と近づいて行く。
メイド「私達はお前ら人間が安心して過ごせるように密かに動いてやっているというのにそれをバラそうなどと……この慈悲の心がわからないのでございますか?」
太い眉の少年「な、何言ってるんだよぉ!!」
メイド「面倒くさいだけで国ごと喰ってやってもいいんだぞ?と言っているのでございます」
太い眉の少年「!!」
メイド「人間なんて……人間なんて!」
一瞬メイドの顔が曇る。しかし、それも数秒。
ガっ
メイドは少年の首を掴み持ち上げる。
メイド「本来ならアンシュ様に献上すべきなんでございますが、そんなにおいしそうに逃げ回られたらこちらとしても喰わずにはいられねぇでございます」
454:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/03(土) 23:55:56.24:8Xz3KdY0
49
--剣の町--
太い眉の少年「が、がああ!!」
メイド「暴れてくれるなでございます」
太い眉の少年(やだやだ!!喰われるなんてやだ!!)
少年は剣を引き抜き、そしてメイドに向けて力いっぱい振った。
ブオン
メイド「ん」
ヒュッ
しかしメイドは人差し指と中指で挟んで止めた。
メイド「切れ味はてんで駄目でございますね。でもこの剣の魅力は違うところにある……ジャミングブレードってやつでございましょうか」
459:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:05:50.61:s5/Tbg20
50
--剣の町--
メイド「もしかしたらアンシュ様が気にいるかもでございますね」
メイドはひとしきり剣を愛でると、少年の首を掴む手に力を込める。
ぎぎぎ
太い眉の少年「あ、っげへっ!!」
メイド「じゃあ……お楽しみでございます」
ピシュッ
メイド「!!」
メイドに向けて投擲された短剣。それをメイド左手の手刀で払う。
メイド「……しまったでございます」
兵隊長「少年を離せ、悪鬼」
数十人の兵士達がメイド達を取り囲んでいた。
462:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:11:15.54:s5/Tbg20
51
--剣の町--
メイド(ジャミングのせいでこいつらの接近を許してしまった……なるほど。屋敷の時とは違い、今は接近状態。効果は強力ということでございますか)
兵隊長「お前がここ最近の事件の犯人か?」
メイド「最近の事件がなんなのか知らないでございます」
兵隊長(……こいつ)
兵隊長は剣を抜く。
兵隊長「もう一度言う、少年を離せ。お前は包囲されているんだぞ?」
ジリジリと兵士達がメイドとの距離を掴む。
メイド「……ふふ、私がしまったと言ったのは、騒ぎを大きくしたせいで番犬に叱られるな、と思ったからでございます」
兵隊長(番犬?)
メイド「お前らに囲まれたくらいで困るわけがないでございます」
464:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:16:17.15:s5/Tbg20
52
--剣の町--
兵隊長「……やるしかないようだ。補助兵!!」
補助兵「はっ!!任意対象16、速度上昇レベル2!!」
ドッ
メイドを囲んだ兵士達の速度が上昇する。
メイド「ちんけな魔法でございます」
兵隊長「ふん、お前は少年の首を絞め落とすよりも先に死ぬことになる。東の王国第十三部隊のお家芸、高速の戦法を見よ!!」
メイド「雷動」
ギャッッッ
465:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:19:24.02:s5/Tbg20
53
--剣の町--
兵隊長(なんだこれは)
バシュッ、バチ、ドッ
兵隊長(高速で動いているはずの俺らが)
ギャッ、ズガ、グシャっ
兵隊長(スローモーションで吹き飛ばされているようにしか見えん!!)
メイド「にいい」
兵隊長「!!」
ギャギイイイイン!!
メイド「……ほぉ、私の一撃を防ぐとは……中々やるではないかでございます」
兵隊長「っく!!」
467:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:23:56.32:s5/Tbg20
54
--剣の町--
兵隊長(!!さすがに少年を連れて移動はできないか!!)「守備兵!!少年を連れて逃げろ!!」
守備兵「!!……はっ!!」
守備兵はぐったりしている少年を抱えて走る。
メイド「逃がすわけが」
兵隊長「地形変化、氷河!!」
メイド「!?」
バキィイイイイン!!
兵隊長を中心に地面が凍っていく。
メイド「これは……」
兵隊長「足が地面とくっついてても早く動けるかよ?」
メイド「めんどくさいやつでございます……雷斧生成」
468:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:30:32.08:s5/Tbg20
55
--剣の町--
メイド「お互い足を地面に固定された状態での殴り合いを望んでいるのなら、ぐちゃにしてやるでございます」
メイドは斧を振る。
--小屋--
太い眉の少年「う……?ここは……」
少年が目を覚ますと見たこともない家の中だった。
守備兵「起きたか少年……」
太い眉の少年「おじさんは……あっ!!あ、は、話を聞いて!あの!!」
守備兵「待て落ち着け」
太い眉の少年「う、うちが変なやつらに!!それと、あれ?路地裏で!!」
守備兵「落ち着け!!」
守備兵は少年の肩を掴む。
守備兵「……あれは……あいつは何なんだ?」
469:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:33:32.48:s5/Tbg20
56
--小屋--
太い眉の少年「はっ!はっ!……わ、わかんない。僕も何もわからない」
守備兵「……そうか」
太い眉の少年「あいつはどうなったの!?倒せたの?まだなら王都から軍隊を呼ばないと!!」
守備兵「申請はしていない……が、次期に軍が動くだろう」
太い眉の少年「!?遅いよ!!早くしないとあいつらが町のみんなを!!」
少年は守備兵の手を払いのけ小屋から外に出た。
バタン
太い眉の少年「……え」
少年が見た物。
それは焼け野原になっているかつての剣の町。
守備兵「あいつ……たった、たった一人で町を」
470:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:38:53.10:s5/Tbg20
57
--丘の洋館--
メイド「すまんでございます」
番犬「すまんで済むかばかものバウー!!」
メイド「ついむしゃくしゃしてやった。後悔はしていない、むしろ満足でございます」
メイドは満面の笑みを浮かべる。
番犬「何やりきったみたいな顔してんの!?あんだけしんちょうにいこうぜ!って言ったバウ!!」
メイド「その時だけがんがんいこうぜになってしまったバウ」
番犬「語尾マネすんなバウ!!」
アンシュ「何事だ騒がしい……」
アンシュが降りてきたことにより二人は口論を止める。
メイド「申しわけございません。つい……町を消してしまいました」
アンシュ「それは俺の飯が無くなったということか?」
メイド「い、いえ、その、多少見繕って持ってきましたでございます。40体ほどですが……」
アンシュ「ふむ、ならいい」
番犬「い、いいのですかバウ!?」
アンシュ「別にいい」
471:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:43:47.08:s5/Tbg20
58
--丘の洋館--
メイド「アンシュ様、アジ寛大」
番犬「……ったく。あれだけ暴れたら力もかなり消費しただろうにバウ」
メイド「4%にまで減ってしまったバウ」
番犬「だからっっ!!」
アンシュ「……ん?よく見れば所々怪我をしているな」
メイド「あ、これは」
番犬「ほぉ、それなりの使い手だったのかバウ?」
メイド「思った以上でした。中々この国は質が高いでございます」
アンシュ「修復させないのか?」
メイド「いえ、修復で魔力を使うわけには……3%を切ったら可動できなくなりますのでございます」
アンシュ「そうか……メイド、ちこぉよれ」
メイド「は?」
メイドはアンシュの下へと向かう。
メイド「何用でございますか?」
アンシュ「あぐ」
番犬「!?」
アンシュはメイドの顔にかじりついた。
472:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:50:24.54:s5/Tbg20
59
--丘の洋館--
アンシュ「あむ」
がりっごりっ
メイド「っっっっ!!」
番犬「あ、アンシュ様!!まだメイドには利用価値がございます!!おやめくださ」
ゴクン
アンシュ「番犬、黙ってみていろ」
アンシュは頭部の無くなったメイドの体を持って言った。
がぶしゅ、ばくっ、がりっ
番犬「っっ……!!」
アンシュ「げぷっ……あまりうまくないな。自分とベースが同じだからか?」
アンシュはメイドの全てを平らげた。
473:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:54:15.12:s5/Tbg20
60
--丘の洋館--
番犬「……アンシュ……様」
アンシュ「ふむ、こんなもんか」
アンシュは口を拭うと、自分の腹部に手を突き刺した。
番犬「!!!!アンシュ様!!」
アンシュ「んぐっ……」
ず、ずるずるずる!!
アンシュの腹部から引きずり出されてきたものは、メイドの頭部。
番犬「!!」
アンシュ「どっせーーーい!!」
アンシュはカツオの一本釣りのように、腹部からメイドを引き抜いた。
メイドは血まみれ全裸だが、その体は完全そのものである。
メイド「……う、うん?」
474:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 00:57:13.39:s5/Tbg20
61
--丘の洋館--
メイド「わ、私は一体……いや一度アンシュ様と合体したようなでございます」
番犬「これはまさか……アンシュ様の新たなスキルバウ?」
アンシュ「あーつら、これは辛いは。子供産むってすごいことだよこれ。お母さんに感謝しなきゃいけないねこれ」
番犬「アンシュ様のキャラがちょっと狂うほどの苦痛バウ!!」
アンシュ「でもなんだこの充足感。やり遂げたというか……うむ!」
メイド「私の怪我が全部治ってるでございま……!?エネルギーが40%にまで!?」
アンシュ「あぁ、ちょっと充填しておいた」
番犬「な、なんと!!」
メイド「あ、ありがとうございますアンシュ様!!私のことをそこまで考えてくださっていたとは……でございます!!」
アンシュ「うむ」
メイド「これは今晩辺り……もう一つの合体をすべき!!」
アンシュ「ん?まだなんかいけそうだな」
ずぼっ
アンシュはまた自分の腹をまさぐる。
番犬「これ絵面やべぇバウ」
475:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:00:14.50:s5/Tbg20
62
--丘の洋館--
メイド「もしやアンシュ様の中に何かを置き忘れてきてしまいましたか?でございます」
メイドは自分の体を見てみるが無い部分は無い。おっぱいはいっぱいある。
アンシュ「いやな、ちょっと試してみようかとな、お、よしよし」
すっぽーん!!
??「ぷあっ!!」
中から出てきたのは……
アンシュ「ん?ちょっとしくじったか」
番犬「これは……」
メイド「ちびっこい……私でございます?」
??「ございますー!」
ちっちゃなメイドは両手を挙げた。
476:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:02:08.17:s5/Tbg20
63
--丘の洋館--
番犬「おじさんちょっともう理解の範疇越えたバウ」
アンシュ「まぁいいか、名前はなんだ、差別化のためにちびメイドとでも呼ぶか?」
??改めちびメイド「了解でございますー!」
ちびメイドはビシッと敬礼のポーズを向ける。
アンシュ「ふむ。俺の魔力量次第ではあるが、お前らの回復、充填、量産が可能になったようだな」
メイド「すごいでございます」
ちびメイド「ございますー!」
番犬「なんと……しかし、魔力量がかなり減ってしまいましたなバウ」
アンシュ「む?まぁ許容の範囲だな。メイド、飯を用意しろ」
メイド「はい!!喜んででございます!!」
477:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:04:01.01:s5/Tbg20
64
--丘の洋館--
数日後。
じゅるるるるるるる。
太めな女性「ああ、あああああ!!」
アンシュ「うむ、吸い応えがあってよい。次」
メイド「はい」
ちびメイド「はいー!」
ガラガラと少女を運んでくる二人のメイド。
褐色肌の少女「……」
アンシュ「む?見たことの無い肌色だな」
アンシュは褐色肌の少女の体を眺めて言う。
番犬「恐らくは南の王国の出身者でございます。あの王国に住む人間は肌が褐色、もしくは黒色になると聞きますでございます」
アンシュ「なるほど」
褐色肌の少女「あなたが、噂の吸血鬼様ですか?」
478:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:04:39.54:s5/Tbg20
65
--丘の洋館--
アンシュ「吸血鬼?」
メイド「血を吸うモンスターのことでございます」
ちびメイド「ますー!」
番犬「いや魔族じゃなかったか?それよりもなぜ吸血鬼なんぞと勘違いしたバウ」
褐色肌の少女「最近町で少女が消えていっているのは吸血鬼が現れたからって……そうサーカス団のみんなでいっていたもので」
アンシュ「サーカス?」
メイド「この場合は見世物小屋ですね。この娘はサーカス団からぱくってきましたでございます」
ちびメイド「ますますー!」
番犬「褐色、黒肌は南の王国出身の証。それはつまりあの亜人と住んでいたことになる。ゆえに彼らは差別され、奴隷として扱われることが多いのですバウ」
アンシュ「愚の骨頂だな。肌の色だけで同種を虐げているのか」
479:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:07:14.66:s5/Tbg20
66
--丘の洋館--
メイド「中にも敵、外にも敵がいないと人間は安心できないと聞きますでございます」
ちびメイド「ですますー!」
アンシュ「なんと。難儀な生物なんだな」
褐色肌の少女「よかった……でもこれでやっと私は救われる」
アンシュ「?」
褐色肌の少女「さぁ、私を食ろうてくださいまし」
アンシュ「!?」
褐色肌の少女は自分から手を広げ、アンシュを待った。
アンシュ「……何を考えている?死ぬのだぞ?」
褐色肌の少女「はいっ!!」
褐色肌の少女は満面の笑みを浮かべる。
480:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:09:41.95:s5/Tbg20
67
--丘の洋館--
アンシュ「理解出来ん……どういう魂胆だ?」
メイド「いえ……私にも理解できませんでございます」
ちびメイド「わけふめー!」
番犬「……大方未来に絶望したという所か?バウ」
褐色肌の少女「……はい、生きていてもしようがありませんし」
少女は苦笑って見せる。
アンシュ「……生物は生きてなんぼだろう」
褐色肌の少女「生きていても仕方がありません。ならばいっそ誰かの糧となって、誰かのために命を散らすほうが素敵です」
アンシュ「……メイド」
メイド「はっ」
アンシュ「代わりを持ってこい。今すぐだ」
メイド「了解いたしましたでございます」
アンシュ「お前の目の前で死を教えてやる」
481:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:11:41.71:s5/Tbg20
68
--丘の洋館--
ちょんまげ「や、やめてちょんまげ!」
アンシュ「見ていろ」
じゅるるるるるる!
ちょんまげ「あばあああああああああああああ!!」
褐色肌の少女「……」
番犬(いつもより荒々しく……)
アンシュはミイラ化した男の死体を放り投げる。
アンシュ「どうだ?」
褐色肌の少女「では次は私の番ですね」
アンシュ「!!!!」
ちびメイド「これたべてもいいのです??」
482:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:13:26.46:s5/Tbg20
69
--丘の洋館--
アンシュ「……解せぬ……お前もあれのように無様に喰い散らかされるのだぞ?」
ちびメイド「あむあむ」
アンシュが指差した先でちびメイドがお食事中。
褐色肌の少女「それが望みですから」
番犬「……多様性を極めた種か……クレイジーバウ」
アンシュ「……」
アンシュは少女の首に手をかける。
メイド「……」
アンシュ「……ふ、なるほど、病か」
褐色肌の少女「!!」
アンシュ「更にお前の腹には」
褐色肌の少女「……早く食べて下さいませ」
483:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/04(日) 01:15:37.00:s5/Tbg20
70
--丘の洋館--
アンシュ「ふ」
じゅるるるる
褐色肌の少女「んっ」
アンシュは少しだけ口をつけて、そして離す。
アンシュ「お前の病は喰った」
褐色肌の少女「!?」
アンシュ「こいつは喰ってないがな」
ボン
アンシュは少女の腹を軽くたたく。
褐色肌の少女「っっ!そんなことは些細なことです……もうこんな世界で生きていたくありません。生きていても辛い思いをするだけ。も
う奴隷はいやです!!なら母のいるあの世へ!!」
アンシュ「そうか。ならお前を喰うのは延期だ」
褐色肌の少女「!!?」
アンシュ「お前が人生を謳歌し、楽しくて嬉しくて気持ちよくて最高の幸福を感じている最中に食ってやる」
褐色肌の少女「!!!!」
アンシュ「お前をこれ以上無いほどに幸せにしてやるよ」
516:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/06(火) 23:57:12.18:8FXlIhM0
71
--丘の洋館--
翌日。
メイド「おはようございますアンシュ様」
アンシュ「ん」
アンシュが一階に降りてくるのを確認し、メイドは頭をさげる。
アンシュ「あいつはどうした」
メイド「ここでございます」
褐色肌の少女「……」
メイドの後ろから出てきた褐色肌の少女は、綺麗な服を着せられていた。
アンシュ「ほう、これは……美しいという表現があっているんだったか?」
番犬「そうでございましょうバウ」
褐色肌の少女「そんな……でも」
アンシュ「お前の名はそうだな、その綺麗な褐色肌にちなんで……ブラ」
褐色肌の少女改めブラ「……」(……綺麗って)
ちびメイド「そっちのぶらじゃないでございますよぉー!!」
517:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:01:26.95:FzsO/JQ0
72
--丘の洋館--
ブラ「今まで……そんなこと言われたことが無い……いつも……」
メイド「不届き者め!!アンシュ様にお褒めのお言葉をいただいたのですよ!?しっかりとお礼を言いなさいでございます!!」
ブラ「あ、え?あ、ああありがとうござい……ます」
アンシュ「うむ」
ブラ(……確かにこの人は……嘘なんて言う人じゃない……)
番犬「ブラよ、一応人間用の食事も買ってある。好きにくうバウよ」
ブラ「食材も、あるのですか?」
メイド「もちろんでございます。保管している人間が腐ってしまっては意味がないでございますし」
ブラ「……あの……料理しても……いいですか?」
メイド「料理は私の仕事でございます!!」
ブラ「あ、す、すいません」
番犬「お前の料理は人間を綺麗に洗うだけだろバウ」
518:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:08:04.43:FzsO/JQ0
73
--丘の洋館--
トントントン
ブラが包丁を握っている。
ブラ「……私を幸せにしてくれる……私のことを綺麗だって……」
ぐつぐつとシチューを煮込む。
ブラ「……本当に期待しても……いいの……かな」
--剣の町跡--
剣豪「……ちぃ。こりゃひどいな。何が探知だ。探るまでもねぇ」
選抜兵「剣豪様。丘の洋館だけが無事です。恐らくは」
剣豪「あぁそこにいるだろうな。俺の故郷をめちゃくちゃにしたやつが!!」
519:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:17:33.08:FzsO/JQ0
74
--丘の洋館--
ブラ「できました。どうぞ召し上がってくださいまし皆さん」
ブラは料理をテーブルに並べていく。
シチューやサラダ、ホンオフェ等、質素ながらも暖かな料理の数々。
番犬「なんで数ある料理の中からわざわざそれをチョイスした……バウ」
番犬はテーブルの上のホンオフェを見て、切ない表情を浮かばせる。
アンシュ「ほぉ、これが料理か。どれ」
ブス
アンシュはパンに指を刺す。
しゅる
アンシュ「……薄い。こんなものが料理なのか」
ブラ「あ、違いますよ!料理は食べるものですよ?」
アンシュ「?口からでか?めんどくさいんだけどな……」
番犬「き、菌が見える……バウ」
520:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:19:12.55:FzsO/JQ0
75
--丘の洋館--
アンシュ「あむ」
メイド「もぐ」
番犬「くっさ!これくっさ!!」
皆それぞれ料理を口に運ぶ。
ブラ「あの、お口に合いませんでしょうか?」
アンシュ「……ほぉ、なるほどな。エネルギー吸収としては不十分なんだが……」
ブラ「……」
アンシュ「悪くない、かも」
ブラ「本当ですか!!よかった!!」
メイド「この感覚懐かしいでございます……普通の食事を取ったのは……」(そっか、あれってスリープ前なんだ……)
アンシュ「これはなんだ?」
ブラ「それはいものにっころがしです。祖母が昔」
メイド「そう言えば番犬は……」
番犬はホンオフェを口に咥えたまま失神していた。
番犬「ごふっ!!ゴ、ゴスロリ黒髪ストレートの幼なじみ……うらやまバウ」
メイド「目を覚ませ!!あの子は男の子でございます!!」
番犬「いいんだバウ……十分射程範囲に入っているバウ……」
521:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:21:33.74:FzsO/JQ0
76
--丘の洋館--
選抜兵『こちら選抜兵、丘の洋館に潜入した』
通信兵『了解、スキルテレパシー、感度良好。選抜兵、今どこにいますか?』
選抜兵『東館の二階だ、窓際のな。この階には敵はいないようだが……部屋を片っ端から入ってみようと思う』
ガチャ
窓から一番近い部屋のドアノブを握る。
選抜兵(鍵か……スキル使用、施錠解除)
ガチャリ
選抜兵「おはようございます」ボソ
通信兵『今何か?』
選抜兵『なんでもない。ん?こ、この部屋は!?』
通信兵『!?どうしました!?』
選抜兵『この部屋の匂い……メイド臭がする』
通信兵『……今なんと?』
選抜兵『敵が潜伏していた部屋だと思われる。調査を続行する』
通信兵『は、はぁ』
選抜兵『こ、こここれは!!ぱぱぱぱぱ、パパンパンパンぱパパン!!!!』
通信兵『選抜兵!?どうしたしたか!!』
選抜兵『……性欲をもてあます』
522:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:23:49.81:FzsO/JQ0
77
--丘の洋館--
通信兵「選抜兵と連絡が取れなくなりました。どうしますか?」
剣豪「あいつを選抜したやつは誰だ。責任者を呼べ」
選抜兵『ザッザザ、こちら、ザザ、こちら選抜兵』
通信兵「!!」『選抜兵!何かあったんですか!?』
選抜兵『いや、もう大丈夫だ。全部終わった』
通信兵『何が終わったというんですか!?』
選抜兵『えぇー?それ聞いちゃう?そりゃちょっとおじさん困っちゃうよww』
通信兵『……』
選抜兵『お、おほん、任務を続行する』
ギィ
選抜兵は部屋を出て次の部屋の前へ。
選抜兵『こ… これは…! ジュテーム……!! どすこい喫茶… ジュテーム!!! …と 書いてある!』
ブツっ
通信兵「選抜兵とのテレパシーを解除しました」
剣豪「妥当だな」
523:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:24:40.90:FzsO/JQ0
78
--丘の洋館--
アンシュ「ふむ、なかなかよかったな。だがエネルギーがなぁ……」
ブラ「そう、ですか……」
メイド「えぇ、やはり人間から直接吸う方がよろしいでございますよ」
番犬「な、なんでキビヤックまであるのくさっっ!!く、くさっくさくさ……くちゃい////////」
メイド「番犬、アウトー」
ブラ「……」(やはり人間は食料……)
524:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:25:38.34:FzsO/JQ0
79
--丘の洋館--
選抜兵(2階はあとこの部屋で終わりか。ん?……すごい臭いだ……死と糞尿の臭い……)
ガチャリ
うっ、うぅ、ぐーぐー、ひ、ひっく、ぐすん!
部屋の中は呻き声と泣き声で支配されている。
垂れ目の少女「ひっ!?」
ドアを開けると、中にいた少年少女達が一斉に選抜兵に視線を向けた。
片腕の少年「う、ううぅ」
選抜兵(20人くらいか?……中には死んでるのもいる。私のいたスラムを思い出すな……)
垂れ目の少女「や、やだ!!わ、私まだ死にたくないよ!!」
選抜兵「しー、しずかに。私は助けに来たんだ。ここから逃げるぞ」
片腕の少年「!?た、助けに来てくれたの!?……で、でも駄目だよ……」
選抜兵「?何が駄目なんだ?大丈夫、あの剣豪様も来ている。さぁ、逃げよう」
垂れ目の少女「だ、だって、あ、あの人達すごく強いんだよ……そ、それに」
ギィ
ちびメイド「あれれー?おねーさんどこから入ってきたのでございますー?」
垂れ目の少女「見張りの女の子が、おき、ちゃった……から」
525:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/07(水) 00:28:03.74:FzsO/JQ0
80
--丘の洋館--
ちびメイド「おねーさんふくきてるししょじょじゃないー。しのびこんだんですかでございますー?いけないひとですねーwww」
ちびメイドはけらけらと笑いながら選抜兵に近づいてくる。
ちびメイド「おねーさん、ばっらばらにしちゃうよ?」
選抜兵「!!」(こいつ!!)
選抜兵はちびメイドの迫力に押され、防御を固める。
選抜兵(……確かにこいつ程の魔力があれば町を……見張り?)
ちびメイド「アンシュ様にどうていしょじょいがいはたべてもいいっていわれてるからぁ、いただきますでございます♪」
選抜兵「!!戦札、魔力解放!!」
選抜兵は札を二枚取りだして破りすてる。
ちびメイド「あれー?おねーさんのまりょくりょーがふえたでございます?」
選抜兵「単体のスペックが全てじゃない、次期東の三強候補、選抜兵。その力を見せてやる」
ちびメイド「ほよよー!!」
527:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/07/07(水) 00:34:01.29:UR4lOBoo
81
--丘の洋館--
ちびメイド「ふっふふーん♪」
メイド「こら!二階が騒がしいと思ったら……一体何をやっていたでございます?」
メイドは階段を降りてきたちびメイドに声をかける。
ちびメイド「へんなおねーさんがしんにゅうしてたから、じょきょったでございますです」
メイド「侵入者……?」
メイドは腕を組んで考える。
メイド(私や番犬の索敵にひっかからない相手?……それともまだ、ジャミングされているでございます?)
ちびメイド「どーですかねーさま!!このやしきの、はなぶそくをかいしょうするいっぴんでございますです!!」
ちびメイドは持っていた植木鉢をメイドに突き出す。
メイド「……何年か前に、某国のギャルゲの画像でそんなのを見たでございます」
植木鉢には選抜兵の頭部が乗せられている。
547:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:13:41.06:F7r4t/w0
82
--丘の洋館--
番犬「まったく。えらいめにあったバウ」
ブラ「すいません番犬様。どれもおいしいものだから味わって頂きたくて……」
番犬「……いや、あんなのを買い込んでいたメイドのせいバウ。あいつめ、どうせわしへの嫌がらせで購入したんだバウ」
アンシュ「番犬」
アンシュがエントランスに顔を見せる。
番犬「はっ。いかがいたしましたかアンシュ様」
アンシュ「外に何かいるようだが」
番犬「!?か、確認してまいりますバウ!!」(ラリってる場合では無かった!!)
アンシュ「いやまて番犬、たまには俺にも遊ばせろよ」
番犬「し、しかし……いやそうですね。馴らし運転はいつかしなくてはなりますまい……ならアンシュ様、少々お時間を下さい。やつらが馴らしに足る存在か見極めて参りますバウ」(そして危険で無いかを)
アンシュ「そんなのはいらない。俺を否定する気か番犬……」
番犬「っ!……申し訳ありませんアンシュ様。ならメイド達も呼んでまいります。皆で行きましょうバウ」
番犬は言うが早いか、その場から姿を消した。
アンシュ「……心配性だなやつらは。孫に対するじいさんばあさんみたいだ」
ブラ「あの、アンシュ様……戦うのですか?」
アンシュ「?あぁそうだ。自分が今どれだけの力を持っているのか知りたいしな」
ブラ「……」(そんな理由で……)
548:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:19:13.80:F7r4t/w0
83
--丘の洋館--
アンシュ「……どうした?浮かない顔をしている。笑え。幸せな人間は笑うものだ」
ブラ「……人間はアンシュ様のなんなのですか?」
アンシュ「支配対象、捕食対象、そして玩具と言ったところか」
ブラ「……」
アンシュ「……笑わんな。無理強いさせて笑わせても意味が無いしな」
ブラ(老若男女関係無く食すこの人は、人の天敵。この世界を恨んだ私だけれど、でも)
アンシュ「……」
しばしの静寂。そして番犬がメイド達を連れて現われる。
番犬「遅くなりました。では行きましょうバウ」
アンシュ「……ん」
ブラ(……やっぱり私駄目だ。何も悪くない人達まで殺すのはおかしいと思っちゃってる……でもこの人達からしたら、人間は食べ物でありおもちゃ。それは人間が他の動物に対して行ってることと変わらない)
ブラは磔にされている自分の姿を思い出す。
そしてそれをかき消そうと頭を振った。
ブラ(やっぱり……)
549:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:24:34.33:F7r4t/w0
84
--東の黒森--
木漏れ日が射す森の中を、黒いフードを被った二人組が歩いている。
?「あー、懐かしいなっ。故郷の森、ちっとも変わってないわ」
??「あ、おい走るなよ。お前、最近体調が良くないんだから」
?「平気よ。むしろ良くなったわ。やっぱり故郷の空気は体に馴染むのね……ふははは馴染むっ、馴染むぞ!!」
??「そういうのは女がやるもんじゃない」
?「ふふっ」
女はよほど嬉しいのか、スキップをしながらくるくると回る。
?「ここのね、ここの大きな木を曲がるとね、町が見えるの。城門へは迂回しないといけないのだけど、こっから見える景色は特別なのよ?」
??「はいはい。楽しみだなぁ」
?「もう!いっつもそうなんだから」
女が大木を追い越すと、
?「見えた!!我が愛しの故郷、剣の……え?」
そこには荒れ果てた故郷があった。
550:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:29:57.83:F7r4t/w0
85
--剣の町跡--
通信兵「選抜兵から連絡がありません。ということはやられたと見て間違いないですね」
いともあっさりと言い放つ通信兵。
剣豪「……連絡無いのはお前が通信切ったからと違うか?」
通信兵「選抜兵はあれでも相当な手だれ。それがこんな短時間でやられてしまうなんて相手は化け物ですね」
通信兵はどうしてもその方向にもっていきたいらしい。
剣豪「話を聞こうぜ。まぁこの町の惨状を見る限り、何体か化け物じみた奴はいるだろうな」
剣豪は剣の町を見渡す。その時、剣豪は何かの気配を感じた。
剣豪「……!?来るぞ!!」
剣豪は右手一本で刀を引き抜き、臨戦態勢をとる。
通信兵「え?」
ヒュルルルルドガァァァン!!
空中から猛スピードで落下してきたのはメイド。
それを剣豪と通信兵は、攻撃範囲から間一髪逃れた。
メイド「……やるでございますね。人間の探知範囲外だと思いましたのに、まさか雷動を避けるとは……」
メイドは自ら作成したクレーターの中からはい上がってくる。
剣豪「……第六感とでも言うのかな、俺には神掛かった何かがあるのだ」
剣豪はメイドに近づいていく。
剣豪(ほう……これは死ぬかもしれんな)
剣豪はそう思わずにはいられない。
551:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:39:17.87:F7r4t/w0
86
--剣の町跡--
メイド「……」(相当出来ますね。いくら私と言えど遊んでられないでございます)
ちびメイド「……ぇぇー……さまぁー」
ヒュルルルルドガァァァン!
何かがまた飛んできた。
通信兵「……頭から激突してましたね。死にましたかね」
新たに出来たクレーターの中央がもぞもぞと動く。
ちびメイド「ぷあっ!!あーおもしろかったでございますです!!」
メイド「遊びじゃないでございます。しゃきっとせい!でございます」
ちびメイド「えー?ねーさまもあそびにきたくせにでございますですー」
メイド「うっ。ち、ちち違うでございます。アンシュ様に危険が無いように……」
通信兵「……私達も舐められましたね」
552:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:46:42.15:F7r4t/w0
87
--丘--
戦場から離れた丘にアンシュ達はいた。アンシュは番犬にまたがり、剣豪達のいる町跡を目指している。
番犬「あの馬鹿者共め!!先走りすぎバウ!!」
どかっどかっどかっどかっ
アンシュ「……」
番犬「どうなされましたアンシュ様。何か思うところでも?」
アンシュ「……いや」
番犬「……アンシュ様」
アンシュ「なんでもない。急げ、メイドに全て持ってかれるぞ」
番犬「了解バウ!!」
553:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:56:44.72:F7r4t/w0
88
--剣の町跡--
メイド「とりあえず、邪魔者には消えていただきたいでございます」
ブウウウン
メイドは両手に雷の魔力を纏わせる。
ちびメイド「ございますですー!!」
ちびメイドの場合は両手に止まらず、全身から雷を漲らせた。
ちびメイド「すきる、らいどうにんげんたいほう」
ボッ
剣豪「っ」
ギャチィィン!!
高速の特攻。剣豪は刀で撫でることにより、紙一重でかわす。
剣豪(硬い?……ありえねぇ)
メイド「あれをかわした!?」
ちびメイド「ほよよー!?」
ちびメイドは着地に失敗し、地面を転げ回る。
通信兵(剣豪様の魔剣で斬れないですって?……見たところ硬そうな外見はしていないし、雷属性に防御力上昇は無いハズ……)
剣豪(なるほど。接触時の判定が、防御力ではなく攻撃力になってやがんのか……全身凶器がそのまま鉄壁の防御に……やるじゃねぇか)
剣豪はメイド、ちびメイド両方に注意を向けつつ名乗る。
剣豪「俺は東の三強が一人、剣豪。王の命によりお前等を討つぜ!!」
通信兵「来たっ!メインかませ来た!!これで勝つる!!」
554:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:02:20.05:F7r4t/w0
89
--剣の町跡--
メイド「東の三強……?大方この国の最高戦力ってところですかでございます」
剣豪「名乗られたら名乗りかえすのが礼儀ってもんだろ?」
剣豪はメイドに刀を向ける。
メイド「家畜に名前なんて名乗る奴はいないでございます」
そう言うとメイドは剣豪から通信兵に視線を移す。
メイド(……こいつはあまり強そうじゃないでございますね)
剣豪「け、そうかい。大した文化は無いみたいだな」
ヒュッ
剣豪が手首を返す。たったそれだけで、
ズバッ!
メイド「!?」
メイドの右肩が切り裂かれる。
メイド(中距離攻撃?……見えない刃とはうっぜぇでございますね……)
555:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:05:17.76:F7r4t/w0
90
--剣の町跡--
ちびメイド「ねーさまー!いまおたすけするでございますです!!」
ちびメイドは後ろから剣豪に飛びかかる。完全な死角からの攻撃だったのだが、苦もなくかわされてしまう。
ちびメイド「ほよよー!!」
剣豪「スキル、斬魔」
ズバズバズバ!!
ちびメイド「ぎっ!?」
交錯した瞬間、剣豪は太刀を浴びせる。
剣豪(魔力を斬るスキルは有効か。お)
ダメージを食らったせいかはわからないが、ちびメイドの雷の鎧が解除されていた。
剣豪「好機」
シュ
ズバッ!
追撃にと放った風の斬撃は、割って入ったメイドによって防がれてしまう。
556:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:07:10.37:F7r4t/w0
91
--剣の町跡--
ちびメイド「あいたたた~でございますです~」
メイド「ちびメイド、同時に畳み込みかけるでございます」
剣豪「はん」
メイドとちびメイドは二人がかりで剣豪に飛び掛かる。
シャシャシャシャシャシャ!!
メイド「!!全てかわして」
朝ズバッ!
メイド「あっ!」
ちびメイド「ねねねねーさま~」
ちびメイドの注意がメイドに向かった瞬間、
ズンッ!!
剣豪の刀がちびメイドの胸部を貫いた。
557:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:08:36.59:F7r4t/w0
92
--剣の町跡--
ちびメイド「ごぼぼ~!!」
メイド(ありえない……技術や体術でどうにか出来るスピードじゃないでございますのに……む?)
メイドは離れた場所からこちらを見ている通信兵に気付く。
メイド(……く、なぜ今まで気付かなかったのか、微弱な電波を感じる……電波を剣豪に送りつつジャミングもしているでございます……)
通信兵(こっちみて睨んでるということは……ありゃりゃ、ばれちゃいましたか)
剣豪「ほら立てよ、お前はまだいけるだろ?」
剣豪はちびメイドを刀から抜くと放り捨てる。
ちびメイド「がふ~」
メイド「っ!!」
メイドは再び剣豪に向かっていく。
メイド「ああああああ!!」
シャシャ!!
しかし剣豪には擦りもしない。
558:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:11:11.39:F7r4t/w0
93
--剣の町跡--
通信兵(雷属性の人形師だから出来る芸当、電波操り。私だって雷属性、見るだけならどんな速さにもついていける)
剣豪「しっ」
ズバッ!
通信兵(電波によるテレパシーで剣豪様に情報送信、同時に電力供給による機動力補助、そして無駄電波垂れ流しによって彼女らは処理落ち状態……)
メイド「くっ!!」
メイドは剣豪から距離を置き、通信兵に接近する。
メイド「お前から死ねでございます!!」
ドシュ
通信兵「ふふふ」
メイド「!!デコイ!?」
メイドが貫いたものは映像だった。
通信兵「申し遅れました。私、東の王国次期三強候補、通信兵と申します」
559:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:13:11.09:F7r4t/w0
94
--剣の町跡--
ちびメイド「あうあうあう~。ねーさまー」
ちびメイドは立ち上がりメイドのもとに駆け寄る。這いよる。
這いよれ!
ぐしゃ
ちびメイド「あ、あれ?」
ちびメイドの体に赤い蔦が絡まっている。
ちびメイド「なにこれでございますです?」
???「こ~ろ~し~た~な~」
ちびメイド「背中から何か声が」
ちびメイドが振り向くとそこには、
???改め選抜兵の首「よ~く~も~こ~ろ~し~た~な~」
植木鉢に植えてやったハズの選抜兵の首が、ちびメイドの背中にまとわりついていた。首の切断面からは赤い蔦が無数に伸びている。
ちびメイド「ほ、ホララー!!!?」
561:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:16:40.06:F7r4t/w0
95
--剣の町跡--
選抜兵「案外楽な任務だったな」
何食わぬ顔で、通信兵の横に立つ選抜兵。
通信兵「あら、生きてたんですか?てっきり死んだものかと」
選抜兵「の割りには全く驚いてないじゃないか」
通信兵「いえ、凄く驚いてますよ?場所が場所なら卒倒してますね」
選抜兵「よく言うぜ」
通信兵「あのちびっこいのに幻覚使い使ったんですか?一枚しか無かったのではないんですか?」
選抜兵「あぁ。だからこの戦いがすんだらまた捕獲しに行かなきゃならない。しかも亜種だからなぁ、あれ」
通信兵「面倒くさい職業ですね」
562:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:19:27.84:F7r4t/w0
96
--剣の町跡--
選抜兵「さて、剣豪様にばかり戦わせてはな。私も行ってくる」
メイド「デコイばかりでどれがどれだかでございます!!」
悪戦苦闘のメイドの後ろから、剣豪の近づいてくる足音が聞こえる。
剣豪「もう詰みだ。素直に捕まりな」
メイド「断る……誰が人間などに!!」
選抜兵「そうか、それならお仕置きだ。ドロー!!」
メイド「!!」
選抜兵「俺はモンスターを一枚伏せ、ターンエンド!!」
メイド「……どいつもこいつもわけがわからんでございます!」
選抜兵「爆弾なめくじの効果発動!爆弾なめくじが敵と接触した時、爆弾なめくじは自爆する!」
メイド「これは!」
メイドの下半身には無数のなめくじが張りついていた。
メイド(モンスター、爆弾なめくじ……。人類の敵さえ利用するとは……400年の間に随分と戦闘方法が変わったでございますね)
ボンッ!!
563:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:20:49.25:F7r4t/w0
97
--剣の町跡--
選抜兵「剣豪様、お疲れ様です」
剣豪「ん」
剣豪は刀についた血を払い、鞘に戻す。
カキン
剣豪「他にも仲間がいるんだろ?」
選抜兵「えぇ、後『二体』」
通信兵「こちらに向かってますね、あと三分程度です」
ズリズリ
三人が集まって話していると、砂煙の中からメイドが這い出て来る。
メイド「に、人間ごときにこのような!!」
メイドの両足は吹き飛んでしまっていた。
剣豪「やめろ、もうお前は戦えないだろが。そこでおとなしくしてれば、後で足付けて牢屋に入れてやる」
メイド「ふざけ……やがってでございます!!」
ちびメイド「ひぃぃ~!!むしってもむしっても終わらないでございますです~!!」
剣豪はのたうつちびメイドを眺めている。
剣豪「……にしてもやっぱりお前らの戦い方はしっくりこない……まるで北みたいだぜ」
通信兵「東の王国は直球タイプを好みますからね。私達のような変化球タイプは嫌われてばっかりです」
剣豪(まるで北の王の目論見通りのような気がするしな……)
メイド(……まずい。機動力を失った私ではどうにも出来ない……)
564:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:22:46.98:F7r4t/w0
98
--剣の町跡--
アンシュ「……む」
番犬「まさか……人間などに遅れをとっていようとはバウ」
アンシュ達が戦場で見たものは、メイド達の無様な姿。
剣豪「……なんだ。親玉でも出てくるのかと期待してたんだが、こっちの侍女の方がましか」
剣豪は親指でメイドを指差す。
番犬「!!貴様!我が主をそんなゴミクソみたいな奴より弱いなどと、馬鹿にするのもたいがいにするバウ!!」
メイド「……お前が普段私をどんな風に思っていたのかわかったでございます」
ちびメイド「眼が~眼が~」
アンシュ「……なかなかあれだな。別にどうってことは無いとおもっていたが」
剣豪「?」
アンシュの体から黒い霧のようなものが立ちこめる。
アンシュ「……所有物を好きなようにされているのは不快だな」
ぎ
剣豪「!?」
選抜兵「!!」
通信兵「!?」
メイド「!!」
番犬「!?」
ちびメイド「はっ!!」
戦場にいた全ての生物は固まった。
胃袋の中に捕えられたかのような絶対的な圧迫感と
剣豪、選抜兵、通信兵(終わった……)
生の諦めを強制的に味わわされる。
565:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:24:43.31:F7r4t/w0
99
--剣の町跡--
びりびりびりびりびりびりっ!!!
メイド(こ、これはスキル、威圧!!しかもこれほど強力な!!)
番犬(何十倍もの重力を感じる!!息すらも、出来ぬほどに!!)
ちびメイド「ほ、ほほほ、ほっ、ほよよーーーー!!」
アンシュ「……」
アンシュが一歩近づくたびに、
びりびりびりびりびりびりっ!!!!!
剣豪「っっっ!!」
大地震が起きたかのような衝撃が全身を貫く。
剣豪(こ、この俺が、この俺が動くことすら!!)
アンシュ「……やはり戦場というのはいいな、ぽこぽこと忘れていたものを思い出す……六属性複合生成魔法、闇色鎌」
アンシュの右手に漆黒の鎌が出現する。
メイド「!!」(……黒い……)
566:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 23:26:38.76:F7r4t/w0
100
--剣の町跡--
スチャ
アンシュ「俺の従者を可愛がってくれた礼だ。命を狩り取ってやる」
剣豪(ぐっ!!こ、これまでか)
ビシャアアアアアアン
鎌を振り上げたアンシュに、横から雷が直撃する。
アンシュ「ぬっ!?」
アンシュが攻撃された方向に目を向ける。
??「……あれを食らってもなんともないのか」
?「大丈夫ですか!?皆さん!!」
駆け寄ってくる黒いフードを被った二人組。
剣豪「はっ!?いつのまにか動ける。ん?お前……」
?「……お久しぶりです剣豪様。恥ずかしながら帰ってまいりました」
剣豪(……大戦のどさくさで逃げだした人形か……)
??「キバ、やるんだな?」
?改めキバ「うん、お願い。私の故郷でこれ以上犠牲を出したくないのよ。力を貸して……魔法使い!」
??改め魔法使い「わかった。それがお前の望みなら」
569:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/07/14(水) 23:30:38.39:CW4vxBs0
101
--剣の町跡--
キバ「じゃあ魔法使いはあのわんちゃんお願いね」
魔法使い「……力を貸せと言っておきながら、俺の受け持ちは犬の駆除なのかよ」
番犬「バウ!?」
剣豪「って、まてまてお前ら、何勝手に決めてるんだ。お前らなんぞじゃ話にならんぞ」
剣豪はキバを睨んで言い放つ。
メイド(……まずい……増援か。なんとか、なんとかしなくてはアンシュ様がまた!!)
ちびメイド「おねーさま~。まりょくがきどうさいていちギリギリでございますです~」
とてて
ちびメイドがメイドの傍らに走りよる。
メイド(……ええい、他に手段は無いようでございます!!)「ちびメイド!!私を食べるでございます!!」
ちびメイド「え?いいの……でございますです?」
じゅるり
586:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:22:20.19:mM9EAUo0
102
--剣の町跡--
メイド「アンシュ様を御守りするにはそれしかないでございます!!さあ食らえ!!」
ちびメイド「おねーさま……わかりました。そのおもい、わたしがうけつぐでございいただきます!!」
がぶしゅ
ちびメイドは問答無用で頭にかぶりつく。
ちびメイド「!!」
がぶしゅ
がぶしゅ
ちびメイド「……」
ちびメイドは味わうように咀嚼し、そしてゆっくりと目を閉じた。
ちびメイド「……うめぇ」
メイド「トリコの真似はいいからさっさと食い尽くせでございます!!破のゼルエルにやられた弐号機状態はきついでございます!!」
片目の無い状態でメイドは叫ぶ。
ちびメイド「あ!おねーさまのせなかから、くいのようなものが!!」
メイド「出てない出てない!!」
番犬「人を捨てたメイドの力を見せるのかバウ?」
メイド「捨てないからっ!!……もう!!」
メイドはちびメイドの口の中に自ら入っていく。
ちびメイド「あ、あごご!」
通信兵「すごい光景ですね。てかこれ黙って見てていいんですかね」
587:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:32:02.96:mM9EAUo0
103
--剣の町跡--
キバ「剣豪様、あれは本来人がどうこうできるものでは無いです。どうか私に任せて下さい」
アンシュ「……」
キバが剣豪を説得している間、アンシュはじっとキバを見ていた。
キバ「幸い不完全のようですから、不完成な私でもなんとかなると思うんです」
剣豪「……わけわからんこと言いやがって」
ひゅひゅっ
剣豪が刀を振ると、地面に大きな傷が出来る。
×
剣豪「却下だ、駄目に決まってる。これはこの国の問題であり、この国の被害だ。国を捨てて逃げた人間の意見なんかをパッと採用すると思うのか?」
588:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:36:13.01:mM9EAUo0
104
--剣の町跡--
キバ「うっ……」
剣豪「ここで奴らをし損じれば更に被害が増える。黙って退いとけ」
魔法使い「……ごもっともです。でも!……では周りの従者は任せて下さい!」
剣豪「くどい。数は十分足りている」
通信兵「各個撃破は正直きつい感じがします剣豪様」
キバと剣豪の会話に通信兵が割り込んでくる。
選抜兵「同意」
剣豪「っ!軟弱者が!!」
通信兵(剣豪様は前時代の象徴ですからね……誇りとか玉砕覚悟に魅力を感じていそうですね)
選抜兵(私ら冷ややか世代じゃ理解できないな)
魔法使い「……キバ。しばらく見てよう」
キバ「!!……それしか、ないの……かな」
アンシュ(……あの女……何か変だ)
アンシュは自分の胸の中で、何かが蠢くのを感じる。
589:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:42:51.80:mM9EAUo0
105
--剣の町跡--
剣豪「俺は男、選抜兵は犬、通信兵は女をやれ!」
選抜兵、通信兵「はっ!!」
番犬「人間ごときがサシだと?なめやがってバウ!!スキル、遠吠え!アオオーン!!」
番犬は遠吠えをあげた。
選抜兵「!?これは」
ジ、ジジ
すると全てのホログラムが消え、通信兵が姿を現す。
通信兵「魔力使用を……封じられた?」
番犬「軟弱な生き物め!!魔力が使えなきゃモンスターにすら勝てぬくせにバウ!!」
シュッ
番犬が駆け出すと、それに合わせるように剣豪が動いた。
番犬「ガウルルル!!」
剣豪「スキル、縮地」
だっ
番犬「!?」
ズバシャッ!!
一瞬で距離を詰めた剣豪は刀を振り抜き、番犬の右前脚を切り落とした。
番犬「ぎゅあああああ!!」
剣豪「あいにく俺の家系は魔力の才能がからっきしなんだよ」
592:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:49:18.72:mM9EAUo0
106
--剣の町跡--
剣豪の背中を眺める選抜兵達。
選抜兵「剣豪様……やっぱり強いな」
通信兵「私は魔力使えないとなんにもできないですよ。選抜兵、貴女はまだ格闘出来るでしょ?犬は貴女の受け持ちなんですから」
選抜兵「あぁ、そうだな」
選抜兵は腰からナイフを抜き番犬のもとへ。
通信兵「私はどうしましょうか。んっ、やはり、魔力は使えない……え?」
通信兵は驚きの声をあげた。なぜならアンシュの手には、先ほど生成した鎌が消えずに残っているからである。
通信兵(……魔力は使えないはずだし、私が魔力で作り出した映像分身はかき消された……。だがあの鎌は依然、存在を保っている……)
通信兵は腕を組んで考え始める。
通信兵(生成魔法と言っておきながら転送魔法を行う、いわゆる偽装詠唱を使ったのか?いや、自分の力に自信を持つ彼らが小細工など使うはずもないですね)
キバ「あのー」
通信兵(あの犬の遠吠えが今の状況を生み出しているわけだが、果たして魔力使用禁止と魔力解除を同時に行えるのか?という疑問もありますね。禁止の時間はどれくらい?解除の対象は何レベルまで?まさか敵にだけ作用するなんてことは……)
キバ「あのー」
通信兵(ある属性だけを封じている……いやそれも無いですね、とするとやはり)
キバ「効果切れてるみたいですよ?」
すっごい色々考えていたら遠吠えの効果は切れていた。
593:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:53:36.72:mM9EAUo0
107
--剣の町跡--
通信兵「あら……じゃあちょっとメイドっぽい人やっちゃいに行きますかね。映像魔法、イリュージョン」
通信兵がスキルを使うと、その場に10体の分身が出現した。
通信兵「私は火力無いんですけど、死にかけならなんとかなるでしょ」
通信兵がメイド達に視線を向けると、そこには口から足が飛び出している捕食光景。
通信兵「……もうほとんど食べちゃってますね」
選抜兵「さて犬、終わりにするぜ」
番犬「ふ、ふざけるな!!いくらフルパワーでないからといってお前らなんぞに!!」
番犬は三足で立ちあがる。
選抜兵「戦場なんだ、全力が出せないなんて当たり前だろ?それを含めて実力って言うんじゃないか?」
番犬「ッッ!!」
選抜兵「通信兵が魔法を使ったってことは効果切れか?」(一瞬だけ封じておいて、接近戦で終わらせる目論見か。戦闘スタイルが見えた
な)
アンシュ「……」
剣豪「さっきからどこずっと見てやがる」
剣豪はアンシュにゆっくりと近づいて行く。
アンシュ「……」
剣豪「あんなにやる気だったのに、どうしたんだよお前。投降する気になったのか?」
アンシュ「あいつが……欲しい」
594:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:55:27.69:mM9EAUo0
108
--剣の町跡--
剣豪「あ?……はっ、わけえな」
ドシュッ
剣豪は踏み込んで一太刀を入れる。
アンシュ「っ」
ブシッ
浅くはあるが、アンシュの腕から血が噴出する。
剣豪「あまり眼中に無いようなそぶりはしないでくれよ……さびしいだろ?」
アンシュ「……お前らはもうどうでもいい。どこへなりと行け」
剣豪「っっ!!……」
アンシュのムシケラでも見るかのような視線に、剣豪は屈辱と激しい怒りを覚えた。
剣豪は二度、三度と刀を回すと、大地に思いっきり突き立てた。
ズン!!
剣豪「スキル、地烈!!」
バゴオオ!!!
アンシュ「!?」
アンシュ達の立つ地面が刀によって粉砕される。
それによってバランスを崩したのを見計らい、剣豪は一瞬で納刀し、そして
剣豪「スキル、居合!!」
ドブシュッっ!!
595:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:57:25.19:mM9EAUo0
109
--剣の町跡--
番犬「アンシュ様!!」
剣豪(……まだ浅い)
さっきの斬撃よりも、格段に深く切り裂いた。
そこでアンシュは、ようやく剣豪を視界に入れる。
アンシュ「目的には……障害がつきもの……か。わかった」
アンシュは黒い鎌を構えて言った。
アンシュ「崩してやる」
びりびりびりびりびりびりっ!!!
剣豪(これはっ!!)
先ほどと同等、アンシュは威圧を使用。
だが剣豪達はスキルに完全に飲み込まれる前に、
剣豪、選抜兵、通信兵『はっっっ!!!!』
闘志によるきつけで乗り切った。
アンシュ「!?」
剣豪「何度も同じ手を食うかよ!!スキル、乱刃!!」
ドシュドシュドシュドシュ!!
連撃がアンシュに襲いかかる。
596:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 02:01:54.60:mM9EAUo0
110
--剣の町跡--
通信兵「ちょおーっと大人しくしてて下さいね」
通信兵は両手を広げてちびメイドに近づいて行く。
ちびメイド「ふ、ふがふが!」
ちびメイドは口から足を出した状態でファイティングポーズを取る。
通信兵「っと、そういえば貴女も雷属性でしたね。麻痺は難しそうですね……じゃあ」
ちびメイドの後ろからもう一人の通信兵がいきなり出現する。
通信兵「頭ん中いじっちゃいましょう」
バリバリバリっ!!
ちびメイド「!!??」
ゴックン
その電撃のショックで、ちびメイドは口の中にあるものを飲み込んでしまう。
ぞわ……ぞわわっ
通信兵「!?」
何かを感じた通信兵の本体がその場から跳ね退いた。
通信兵(な、い、いきなり魔力量が、ば、)
バチバチバチバチ!!!
電撃とともにちびメイドの体が再構築されていく。手足が伸び、髪が増え、体つきが一回り成長した。
ちびメイド「す、すごい!生まれてこの方満たされたことの無い力が……力が体中に漲ってるでありますです!!……なるほど、この大き
さくらいのボディならフル充填も可能なんでございますですね~」
通信兵(化物……だ)
ちびメイド改め小メイド「勝機は我にアリ!!」
632:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 00:00:20.19:ASROii60
111
--剣の町跡--
小メイド「まずはお前だ!!」
小メイドは振り向きざまに手刀を繰り出す。
通信兵「う!!」
ヴォン
小メイドの手刀が通信兵を捉えた。
しかし通信兵の体は陽炎のように揺れて消えた。
小メイド「映像か……本体を捜し当てるのに大して時間はかからないけど……こんなのにかまけているのはもったいないでございますですね」
バシュ!!
小メイドは通信兵に構うのをやめることにした。その強化された足で大地を蹴り、一瞬でアンシュの横へと移動する。
剣豪「な!?」
ズバッ
そしてそのついでに、斜線上にいた剣豪の肩を引き裂いていた。
小メイド「アンシュ様、お守りいたしますです!!」
633:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 00:05:21.36:ASROii60
112
--剣の町跡--
アンシュ「いらん。お前等は過保護過ぎる。いざという時に自分で出来なくなったらどうするんだ」
小メイド「でもお母さんは心配で心配で」
アンシュ「母親面すんじゃねーっていつも言ってんだろ!!」
番犬「反抗期バウ……」
剣豪「ぐう……」
剣豪の右肩は大きく裂かれ、そこから大量の血が流れだしている。
剣豪(まだ……振れるか?)
剣豪はゆっくりと腕をあげてみる。激痛は伴うものの、振れないわけではなさそうだ。
剣豪(……この腕で奥義をたたき込めるか?腕は契れ飛ぶだろうが……)
634:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 00:19:47.44:ASROii60
113
--剣の町跡--
選抜兵(剣豪様が手傷を!)「おいわんころ、決着つけるぞ」
番犬「……慢心だったバウ」
選抜兵「ん?……」
番犬「いくら人間相手とはいえ、今のわしではお前らに遅れを取るバウ……」
選抜兵「……」(まずい、冷静になってきたか)
選抜兵は急いで番犬に切り掛かる。
ガギィン!!
番犬は振り下ろされた刄を氷の盾で防ぐ。
そして失った足を氷で代用し立ち上がった。
番犬「出し惜しみはせぬ、下位種とも今は思わぬ。全力で、命をとして貴様を殺す!!」
選抜兵「!!」
636:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 00:27:38.57:ASROii60
114
--剣の町跡--
ガリっ
剣豪は赤い果実を食している。それは体力を回復させる携帯食である。
剣豪「男同士の決闘を邪魔すんじゃねえよ家政婦」
小メイド「決闘?……ふふ、あくまで対等だと思い込んでいるのでございますですか」
べっ
剣豪は種を吐き捨てる。
剣豪(まだ完全に上だと思ってるのか……なら勝機が無いわけじゃねぇ)
剣豪は再び刀を沙耶に収める。
剣豪(スキル、融合、風)
リンっ
小メイド「……」
637:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 00:36:16.16:ASROii60
115
--剣の町跡--
小メイド「……変な闘気を発したと思ったら……いないようで……いる……?ジャミング型のスキル?」
小メイドは剣豪を眼で捕えている。だが、そこにいる気がしない。海面に映る月を見ているかのようで……。
小メイド「……面倒くさいでございますです。やってやるです!!」
アンシュ「まて」
小メイドが飛び立とうとした瞬間、アンシュが肩を掴む。
アンシュ「どうもとっておきを撃ってくるらしい。俺がやる」
小メイド「でもでも、万が一があったら……」
アンシュ「どいてろ」
ドン
小メイド「きゃう!!」
小メイドはアンシュに弾き飛ばされ、地面へ伏す。
小メイド「う、ううぅなんでこんな子に……」
番犬「母さんに当たるな!!」
アンシュ「芝居はいい!!」
638:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 00:47:07.05:ASROii60
116
--剣の町跡--
剣豪「いいのか?余裕ぶりやがって。死んでもしらねぇぞ?」
アンシュ「お前程度には殺されん。人間の限界というものも知っておかなくちゃな」
剣豪「……」
ヒュオオオ
荒れ地に風が吹く。
剣豪「……」
すると剣豪は姿を消した。
アンシュ「ぬ」
小メイド「!?アンシュ様?突進してきてますよ!?」
小メイドからは剣豪の姿が確認できるのだが、
アンシュ「?……見えん」
剣豪(……もらった)
剣豪はアンシュに向かって超スピードで跳躍し、刀を抜いた。
剣豪「奥義、天翔龍閃牙突回転剣舞六連!!」
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
640:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:00:16.83:ASROii60
117
--剣の町跡--
凄まじい剣撃の嵐の後、剣豪は自分の刀を手放した。
剣豪「ぐっ!!」
ブシャアアアア
自らの奥義の負荷に耐えきれず、剣豪の右腕は弾け飛ぶ。
剣豪「……どうだよ」
剣豪が砂煙の中に立っているアンシュを見つめる。
アンシュ「……中々だ」
血まみれのアンシュはそうつぶやく。
アンシュ「だが」
アンシュは人差し指で剣豪を指さす。
剣豪の腹部からは夥しい量の血液が流れ出している。
アンシュ「……適当に振ったらあたったようだ」
剣豪は口からごぼりと血を吐き、少しだけ口角を上げる。
剣豪「……あー、くそ」
ドサリ
641:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:10:20.26:ASROii60
118
--剣の町跡--
小メイド「くぅ~アンシュ様もこんなのに構うことないでございますですよ!!ボロボロでございますです!!」
アンシュ「いや、見た目ほどひどくはない。だがすごいな。自分を犠牲にしてでも放つ技とは……」
小メイド「そんなの私達だって、アンシュ様のためだったらいくらでも犠牲にできますでございますです!!」
アンシュ(役割とは違う……)「さて、食うか。メインディッシュの前の前菜みたいでやなんだが……まぁいいか」
アンシュが剣豪に近づき触れようとした瞬間、
キバ「剣豪様に触るな」
アンシュ「!?」
ドッ
アンシュの探知を振り切る速度でキバは接近、そして回し蹴りアンシュを蹴り飛ばす。
小メイド「!!あー!!不意打ちなんていけないんだ!!!」
アンシュ「……あぁ、やっぱりお前は……お前は違うんだな」
キバ「剣豪様が気絶した今、私が戦いを引き受ける!!」
642:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:16:09.36:ASROii60
119
--剣の町跡--
小メイド「さ、させませんでございますです!!アンシュ様は疲れてるし怪我してるんでございますですよ!!」
アンシュ「うるせぇどっかいってろ」
小メイド「きゃうん!!」
キバ「魔法使い、あっちはお願い」
魔法使い「引きうけた」
魔法使いは小メイドに向けて掌を向ける。
魔法使い「対単体雷属性魔法、レベル4」
ビッシャアアアアアン!!!
小メイド「ぎいいいいいいいん!!い、痛いですーー!!同属性でもここまで高威力だとととととと!!!」
小メイドのことなぞ全く気にせずアンシュは口を開く。
アンシュ「お前は……何者なんだ?」
キバ「……君と同じだよ」
643:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:21:25.73:ASROii60
120
--剣の町跡--
アンシュ「俺と?」
キバ「多分……どこで作られたのか知らないけど、きっと君も私達と同じ……」
キバは顔を伏せる。
アンシュ「……ふん、感覚でものを言ったのか。まぁ確かではないが、お前も感じるということはそういうことなんだろう。お前は……」
アンシュの話の途中でキバは両手を天にかざす。
キバ「六属性複合攻撃魔法、六色剣」
バシュッ
六色の光の輝きとともに剣が出現した。
アンシュ「……」
キバ「手加減はしない、出来ない。だから早々にけりをつける!!」
アンシュ「……やはり」
644:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:26:12.48:ASROii60
121
--剣の町跡--
番犬「なっ!!あの力は……」
選抜兵「余所見とは余裕じゃないかっ!!」
番犬「ぬ!」
ガギイイン
番犬(あの力……あの力がなぜ!!くっ、今回は例外が多すぎる……よし、やつに頼むバウ!!)
番犬は一旦選抜兵との距離を置く。
番犬「とぅおるるるるるん、るるるるん」
選抜兵「……へ?」
番犬は口で呼び出し音を鳴らす。
番犬「とぅおるるるるるんん。どこだっけ受話器。あ、あったあった、股間についてた。よし、もしもしバウ。出るがいいナビ子」
ガチャ
ナビ子『はーい、ナビ子ちゃんでーす!現在サイバトロンと交戦中ー!御用がある方はー、伝言を残しておいてね!!』
番犬「ガッデム!!」
645:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:33:16.77:ASROii60
122
--剣の町跡--
小メイド「舐めないでくださいでございますですよおおおお!!行きます!お姉さま!!」
どこからか、(よくってよ)、という言葉が聞こえる。
ギュン
魔法使い「!!早い!!」
ギャリイイイイイン
魔法使いはいつのまにか生成していた雷の鎌で手刀を弾く。
小メイド「ぐぅ!?私のスピードを防いだ!?」
魔法使い「腐っても元王国軍団長だ。いや、腐っていたのはあの頃か」
646:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:37:44.61:ASROii60
123
--剣の町跡--
キバ「あああああああああああああ!!」
ギンギンガギイイン!!
アンシュ「ふはっ、ふはっははははははあ!!!それだそれだそれだああああああああ!!」
キバとアンシュの武器による剣戟。飛び散るのは火花では無く、圧縮された魔力の光。
キバ(この子……)
アンシュ「ふははははは!!」
ズバッ
アンシュ「ぐふっ?!!」
キバ「……あんまり強くない?」
647:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:43:57.04:ASROii60
124
--剣の町跡--
キバ(覚醒も何も、全然エネルギーが足りて無いんだ!!ならば!!)
キバは六色剣を構え直す。
キバ「奥義、キバスラッシュ!!!」
アンシュ「!!」
ズドシャアアアアアアアアアアアアアア!!!!
天まで届く赤い閃光がアンシュの体を引き裂いた。
小メイド「!!??」
番犬「!!!!あ、アンシュ様ああああああああ!!」
アンシュ「ぐ、ぐああああああああああああああああああああああ!!!!」
648:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:49:06.63:ASROii60
125
--剣の町跡--
番犬「アンシュ様あああああああ!!」
選抜兵「おっと!!」
ガギイイン!!
選抜兵「俺の今の仕事は、お前をあいつの傍にまで寄らせないことだな」
番犬「おのれ!!邪魔をするな!!移動速度上昇、レベル2!!」
シュン
番犬は風のように選抜兵の横をすり抜けて行く。
選抜兵「そうは行くかよ!!移動速度下降、レベル3」
ぎゅうぅぅううん
番犬「!?」
番犬はいきなり失速する。そして
ズバッ!!
番犬「ぎゃああうんん!!」
649:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:54:02.77:ASROii60
126
--剣の町跡--
小メイド「どけええええええええええ!!」
魔法使い「雷属性魔法、雷獄」
魔法使いから放たれた雷は、鎖のように形状を変えて小メイドの四肢を縛り上げた。
小メイド「ぐっ!!!!ぎゃぎゃああああああ!!!!」
そして雷による電撃が流れ始める。
魔法使い「同属性であろうと、軽減しきれまい」
小メイド「きさ、きさまあああああああああああ!!」
バリバリバリバリバリいいいい!!!
650:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 01:59:26.99:ASROii60
127
--剣の町跡--
アンシュ「がはっ、はっ、はっ、はっ」
キバ「!?……全力で放ったのに……倒しきれなかった?」
アンシュ「はっ、はっ、はっ……はははははは!!」
アンシュは血まみれの顔を振り乱し喜びの声を上げる。
アンシュ「似ている!!お前は俺に良く似ている!!君は僕に似ている」
アンシュはキバに向かって飛びついた。
キバ(しまっ!!)
がぶしゅっ
キバ「っ!!!!」
アンシュの歯がキバの腹部に噛みついた。服の防御力など意に介さず、その柔肌を問答無用で引きちぎる。
ぶしゃああああ!!
キバ「あああああああああああ!!」
651:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 02:07:47.36:ASROii60
128
--剣の町跡--
魔法使い「!?キバ!!大丈夫か!?」
キバ「はあっはあっはあっ!!っく、だ、大丈夫……」
キバは横腹を押さえて片膝をつく。
キバ(この子……私を食べた?……私のことを、頭部が菓子パンのマゾいヒーローと勘違いしたわけではなさそうだけど)
ドクドクドクドク
キバ(出血がまずい……これは十二分に致命傷だ……迂闊だったよ)
アンシュ「ぐっちゃぐっちゃぐっちゃ……ごくん」
アンシュはキバの肉の全てを咀嚼し飲み干す。
アンシュ「……これだ……見つけた」
キバ「……?」
アンシュ「俺が不完全な理由がわかった。俺は、俺はお前みたいなやつを食って完全体になるんだ」
652:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 02:12:56.02:ASROii60
129
--剣の町跡--
キバ「……っ!!」
アンシュ「お前、さっき言っていたな?『私達と同じ』と。ということはお前と同じようなものは他にも何人かいるのだろう?」
キバ(まずい……この子、今私からごっそり魔力を奪っていった……。しかもパワーアップの仕方がまずい!!私みたいな人造勇者を片っ端からこの子が食べたら……本当の魔王が生まれる!!)
アンシュ「なるほど。お前らは俺のパーツだったのだ。さぁ、もっと寄こせ、足りぬ足りぬ足りぬ!!」
キバ「……駄目みたい」
魔法使い「キバ!?」
魔法使いが完全にキバとアンシュの戦いに注意が向いている中、小メイドはなんとかしようともがいていた。
しょuめイド「ぐぎ、ぐぎぎぎぎ」
キバ「このままの状態じゃ勝てない……みたいだ」
魔法使い「!!駄目だキバ!!それを使っては!!」
キバ「……ごめん。でも使うしかないよ。この子を止めるには。東の王国を守るには。魔法使いを……」
そう言うとキバは腹を押さえるを止め目を瞑る。
キバ「……全制限解除、魔王化発動!!」
653:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 02:14:33.07:ASROii60
130
--剣の町跡--
??「オオオオオオオオオオオオオ!!!!」
キバだった者は黒い魔力に包まれる。傷は一瞬で修復され、黒い鎧を身にまとう。
アンシュ「お、お、おおおお!!」
??(疑似魔王状態……あまり長くはいられない……一気にケリをつける!!)
アンシュ「早く俺もそんな姿になりたああああああああああああああい!!!」
??改め疑似魔王キバ「ああああああああああああああああ!!」
キバとアンシュは互いに急加速し、激突。
ズドオオオオオオオオオオオン!!!!
アンシュ「ぐべえええええ!!!」
アンシュの一撃をかわしたキバの右ストレートがアンシュの顎を打ち砕く。
662:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 22:44:18.10:ASROii60
131
--剣の町跡--
番犬「アンシュ様あああああああああ!!」
疑似魔王キバ「ああああああああああああ!!!!」
ゴッ!!
岩をも砕く拳。それを受ける度にアンシュは吹き飛んでいく。
アンシュ「ぐふっ!!」
アンシュが地面を転がる。勢いが止まってアンシュが顔を上げると、
ドゴ!!
アンシュ「ごぶっ!!」
一瞬で距離を縮めたキバの蹴りが炸裂する。
アンシュを宙に蹴りあげたキバは、魔力を両手に溜める。
疑似魔王キバ「黒雷属性魔法、レベル4」
稲光を発する黒い球体が二発アンシュに直撃する。
どごおおおおおおおおん!!!!
663:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 22:53:54.53:ASROii60
132
--剣の町跡--
ドサっ
アンシュは焼け焦げた匂いを発しながら地面に墜落した。
アンシュ(ぐ、ぐ……想像以上だ……まずい、こちらも余裕が無くなってきた……)
疑似魔王キバ「!?耐えた?」(やっぱりこの子不気味……なんでかな?今のだって耐えられるとは思えないのに……それにまた魔力量が変動した気がする?)
キバは左を足に力を込める。
疑似魔王キバ「確実に仕留める!!」
アンシュ「スキル、威圧!!」
ズズズウズン!!
疑似魔王キバ「くっ!?」
スキルが発動した瞬間、キバは地面に叩きつけられる。
664:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:01:00.87:ASROii60
133
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「い、威圧?なんで、こんな強力な!!」(それに魔王化してる私にこんなスキルが効くわけないのに)
アンシュ「魔力も、体力も残り少ない……そろそろお前を!!」
疑似魔王キバ「!?う、うおおおおおおおおおおお!!」
バチィン
アンシュ「!?俺のスキルを破っただと!?」
キバはスキルを破るとすぐに次の準備に映った。
キバの左足に強大な魔力が纏わりついていく。
疑似魔王キバ(行動時間が……あまりない)「これで、これで終わらせる!!」
キバが更に膨大な魔力を注ぎ込むと、左足は黒い光を放ち始める。
魔法使い「!!キバああ!!駄目だ!!!」
疑似魔王キバ「う、ぐうう!!!」
アンシュ(す、吸いこまれるような闇!!俺が、一歩たりとも動けぬ!!)
665:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:06:48.52:ASROii60
134
--剣の町跡--
?「よくもわたしをしばりつけやがったでございますですね!!」
魔法使い「!?」
後ろからの声に反応し、振り向こうとすると、
ドブシュッ!!
魔法使い「がふっ!?な、なにっ!!」
一回り小さくなった小メイド、いやちびメイドの腕が魔法使いの腹を突き破った。
?改めちびメイド「おかげでずいぶんよわっちくなってしまったでございますですよ!!」
魔法使い「そんな、あの鎖が?」
魔法使いが確認すると、そこには小メイドの四肢が繋がれたままだった。
ちびメイド「じせつ、ってやつでございますですよ!」
ズボッ!!
魔法使い(で、でたらめだ……体のパーツを失っても、残った部分で小型化したのか?)
腕を引き抜かれた魔法使いは倒れこむ。
ドサリ
666:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:11:39.37:ASROii60
135
--剣の町跡--
選抜兵「!!やばい感じがするな。通信兵!!」
通信兵「なんでしょう」
選抜兵「ってずっといたのかよ!?」
通信兵「ずっと見てましたよ。最も本体はもうずいぶん遠くまで行っていますが」
選抜兵「逃げてるのかよ!!帰ってこいよ!!」
通信兵「おや?」
選抜兵「……どうした?」
通信兵「あ、いえ、本体の方の話なんですけど、褐色人がそちらに走っていくのを見かけたもので」
選抜兵「??そんなのどうでもいいだろ」
通信兵「まぁ、そうなんですけど」
番犬「ぐ、ぐぐううう……」
667:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:18:51.09:ASROii60
136
--剣の町跡--
チュン
選抜兵「!!!!!」
弾丸のように高速で飛んできたちびメイドの手刀が選抜兵を斬る。
ドブシャアアアアアアアアアアア!!!
選抜兵「がああああああああああ!!」
着弾と同時に両手を刎ねられ、選抜兵が倒れきる前に、
バゴベギ
選抜兵「!!!」
ちびメイドの拳が顔面を破砕した。
ちびメイド「ばんけんさん!!あんしゅさまをつれてにげて!!」
668:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:21:59.41:ASROii60
137
--剣の町跡--
番犬「ひゅー、ひゅー、ご、ごふ、こんなボロボロのわしにそんなことを頼むのか?お前が連れて逃げればいいバウ。時間稼ぎはわしがやる」
血まみれの番犬はちびメイドを見上げて言う。
ちびメイド「わたしはこれからじばくするばう!!あ、まちがえた!!ございますです」
番犬「……自爆?」
見るとちびメイドの体は発光している。
番犬「……オーバーロードか。馬鹿め……」
ちびメイド「さぁ!はやく!!じかんはないでございますですよ!!」
番犬「っっ」
669:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:31:55.42:ASROii60
138
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「力は……溜まった。これで君を殺す」
アンシュ「ぐ、ぐっ!!」
キバの左足は圧倒的存在感を放っている。周囲の空間を歪め、全ての物体を引きずり込もうとしている。
ちびメイド「あんしゅさまああああああ!!」
疑似魔王キバ「!?」
急接近してきたちびメイドを、キバは左手で地面に叩きつける。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
ちびメイド「ぐはっ!!!」
地面にひびを入れるほどの一撃を受け、ちびメイドの頭部から大量の血が噴出する。
疑似魔王キバ「邪魔をっ……しないでっ!!」
ちびメイド「し、しないわけが……ないでございますです!!」
ちびメイドは起き上がると疑似魔王キバに飛びついた。
疑似魔王キバ「!!」
ドゴッ!!!
ちびメイド「!?」
飛びついて来た所をキバは右足の膝蹴りで応戦する。
670:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:38:15.68:ASROii60
139
--剣の町跡--
アンシュ「おい、ちびメイド!何してんだ!」
ちびメイド(つよい……このおねえさんばけものでございますです。たったにはつでわたしのたいりょくをここまで……でも!!)
ちびメイドはキバの左足に纏わりつく。
ちびメイド「あんしゅさまだけはころさせないでございますです!!もう、こんどこそは!!」
魔力が溜まりきった左足に直接触れることでちびメイドの体は悲鳴をあげている。
ビチッブシッ
疑似魔王キバ「っく!!」
ギュイイイン
キバの左の掌に寒気が走るほどの魔力が集まっていく。
疑似魔王キバ「足を離しなさい……魔王は、自分の魔力ではダメージを受けません。だから貴女を消し飛ばすほどの威力の魔法を放っても私はノーダメージです。だから」
ちびメイド「いやだ!!」
アンシュ「……ちび……メイド」
671:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:47:40.78:ASROii60
140
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「そう……ですか。なら!!!」
キバの魔力が集束していく。
ちびメイド「うっ……」
ちびメイドは自分の上で発射されようとしている砲台を見上げる。思わず体が竦み、震えあがる。
疑似魔王キバ「六属性複合攻撃魔法、六色砲!!」
ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
ちびメイド「あ、ぐ、があああああああ!!!!!!」
ドオオオオオン!!
アンシュ「お、おい!!」
照射され続ける魔力。キバの言った通り放つ本人は無傷、しかしちびメイドは外皮を破壊され、地面は抉られていく。
ドオオオオオン!!
672:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/07(土) 23:58:14.75:ASROii60
141
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「うっ!!」
嫌な匂いが戦場を満たす。その発信源はちびメイド。
ちびメイド「え、えへへ……た、たえられました。や、ややややっぱ、あんしゅさま、が、じょうぶにうんで、くれたから、でございます、です」
外皮は消し飛び筋肉もまだら。活動ギリギリの状態になっても、ちびメイドはキバの左足にしがみついていた。
ちびメイド「あんしゅさまは、ころさせませんでございますです!!」
疑似魔王キバ「あ、あが、あああああああっ!!」
キバは突如頭を抱えて苦しみだした。
ちびメイド「!?い、いまれす!!ばんけんしゃん!!」
番犬「!!」
番犬はアンシュの服を咥えるとその場を走り出した。
アンシュ「!?お、お前!?なにをしている!!」
673:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:04:05.66:szepCx20
142
--剣の町跡--
アンシュ「聞いているのか番犬!!まだあいつが、俺の従者が戦っているのだ!!」
番犬「……」
アンシュ「戻れ!!番犬!!」
番犬「……もしそれがあの得体のしれない女を食うためであるのならば、引き返すもよしとしましょうバウ」
アンシュ「……なに?」
番犬「従者を助けるために主の身を危険に晒す?なんですかそれはバウ」
アンシュ「なにを……」
番犬「貴方は魔王になるのではないのかバウ!?それともあなたはまた!!」
番犬は何かを言おうとしてやめた。
番犬「……ん?あれは、ブラが迎えにきたようですバウ」
ブラ「はっ、はっ!!」
ブラはこちらに向かって走って来ている。
番犬「丁度良い、あいつも連れてさっさと逃げますバウ」
674:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:12:56.96:szepCx20
143
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「あ、アンタノせいで、やつを、ニガシてしまった……」
ちびメイド「っ!?」
髪の毛の間から見えるキバの瞳を見て、ちびメイドは凍りつく。
だがちびメイドは恐怖を振り払った。
ちびメイド「え、えへへ。ぶいっでございますです。このしょうぶ、わたしのかちでござ」
ガシッ
キバはちびメイドの頭部を鷲掴みにする。
疑似魔王キバ「あんた、自爆する気ダネ?魔力ガ暴走を始めてイル」
キバはちびメイドを空中に放り投げた。
ちびメイド「ふあっ!!」
疑似魔王キバ「ふふふ、コノママ生かしておけばみんなにも被害がオヨブし……どの道アンタにはニガシタ責任を取ってもらうツモリだったけどさっ!!」
キバは跳躍し、ちびメイドに接近する。
ちびメイド(あんしゅさま、どうか、どうかおげんきで)
疑似魔王キバ「魔王技、キバキック!!」
675:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/08(日) 00:16:00.23:x./GXlAo
144
--盾の町--
翌日。
剣豪「う、うむ?」
衛生兵「気がつかれましたか!?剣豪様!!」
剣豪が目を覚ますとそこは剣の町の隣に位置する盾の町だった。
衛生兵「通信兵が首都から応援を呼んだのです。もう少し遅かったら危なかったかもしれません」
剣豪「……お、おおそうか。そういやあのふざけた敵はどうなったんだ?」
衛生兵「それは選抜兵が一人で倒したとのことです!いや、我が国の若い連中も捨てたものではないですね!!」
剣豪「んう?」
677:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:24:52.77:szepCx20
145
--盾の町--
剣豪「おい選抜兵」
選抜兵「なんでしょう剣豪様。この英雄に向かって」
ドゴッ
選抜兵「ごほっ!?お、俺女っす!女っす!!」
剣豪「うるせぇ。あいつらを倒したのは……キバ達か?」
選抜兵「……」
選抜兵はきょろきょろと辺りを見回す。
剣豪「心配すんな、俺しかいねぇよ」
選抜兵「そうですか……。えぇそうです。彼女達があの吸血鬼達を倒したようです」
剣豪「……っち、手出しすんなって釘さしておいたのに。で、やつらは?」
選抜兵「……私なりの感謝の気持ちです」
678:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:31:10.60:szepCx20
146
--盾の町--
剣豪「……なるほど、手を貸してくれた代わりに、やつらは今回のことに関与していない、いやこの国に帰って来てすらいない、ってことにしたのか」
選抜兵「はい。彼女たちは追われる身ですから」
剣豪(……甘いな。情なんて関係ねぇっつーのに)
剣豪は頭をかきむしる。
剣豪「で、お前はお前で手柄を一人占めっと」
選抜兵「うっ」
剣豪「そりゃぁ天下に名高い剣豪すら負ける相手を、一人で倒したとくりゃぁ、さぞいい手柄にならぁな」
選抜兵「な、ななななんのことですかな」
剣豪「はぁ、まぁいいや、んで、キバ達はどこにいるんだ?今」
選抜兵「……それは」
剣豪「疑ってんじゃねぇ。何もしねぇ。てか隠そうとすんじゃねぇぞ?パワハラ使うぞ?」
選抜兵「しょ、処女を奪っただけでは飽き足らないと!?」
剣豪「してません」
679:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:37:26.48:szepCx20
147
--盾の町--
剣豪「吸血鬼達が住み着いていた洋館……ねぇ。なんでんなところに」
選抜兵「さぁ、あまり人のいないところで療養したいんじゃないですか?一応彼らは賞金首ですし」
剣豪「……まぁいいや、吸血鬼もいなくなったことだし、王都へけぇるぞ」
選抜兵「?あ、あぁそうか、言って無かったですね」
剣豪「?」
選抜兵「吸血鬼は逃げたそうです」
剣豪「……は?」
680:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:44:14.65:szepCx20
148
--丘の洋館--
ベッドに横になっているキバの下へ、魔法使いが水の入ったコップをもってやってくる。
魔法使い「大丈夫か?」
キバ「う、うん。ちょっとぼーっとする」
キバは虚ろになった目でコップの中の水を眺める。そしてゆっくりと口をつけた。
魔法使い(反動が……でかいか)
キバ「あ、そうそう、もう無理しないでいいよ?いつもの魔法使いに戻って」
魔法使い「いや、そういうわけには……」
キバ「魔法使いまで無理して倒れたら元も子もないでしょ?」
魔法使い「……」
魔法使いは一旦天井に目線をやり、再びキバへと戻した。
魔法使い「……デュクシデュクシwwwwwwwwwwww」
681:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/08(日) 00:48:24.48:x./GXlAo
149
--海原--
くあーくあー
船の甲板にカモメが止まり鳴いている。
ざざーん
潮風が心地よく響いている。
アッシュ「……」
アッシュはナイフを研いでいる。
レン「にゃーにゃー」
ツインテ「わわ、どうしたんですかレンさん?」
レンはツインテに纏わりついている。
ポニテ「ん、んんー!!」
ポニテは水着姿で船首に仁王立ち。
ポニテ「まだ船にのって二日間のはずなのに、一か月以上船に乗ってる気がする!!なんでかなっ!!なんでかなっ!!」
698:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/11(水) 15:54:19.22:/TFzTwg0
150
--海原じゃないよね、船のほうがあってるよね--
ポニテ「ふああぁ。あり?眠くなっちった……」
アッシュ「またかよ。お前昨日一日中寝てたじゃないか」
ポニテ「寝る子は育つんだよ?そしていつかむっちんプリンになるのだ!!」
アッシュ「はいはい」
レン「すー、すー」
レンはツインテの膝に抱きつくようにして眠っている。
ツインテ「平和ですねぇ。……これがたんなる旅行とかだったらよかったんですけど……」
ツインテはレンの頭をやさしくなでる。
ポニテ「あっ!!レンちゃんばっか膝枕ずるい!!私もする!!」
ツインテ「え!?か、勘弁してくださいっ!!」
アッシュ「……ごくり」
699:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/11(水) 15:55:09.27:/TFzTwg0
151
--船--
ツインテ「こ、ここはもう一杯なんです!!そ、それならアッシュ君に膝枕してもらったらいいじゃないですかっっ」
アッシュ「なん……だと?」
ポニテ「あー……うん、それでいいやっ!!」
アッシュ「ふざけんな!!スキル、インビジボォ!!」
ブゥン
アッシュは姿を消した。
ポニテ「あっ!!アッシュ君、かくれんぼしたかったんだね!!よぉおし!!」
ツインテ「アッシュ君……そこまで嫌だったんですか」
700:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/11(水) 15:56:30.10:/TFzTwg0
152
--船--
ポニテ「どこだどんどこどーん!!」
ポニテは船の中を駆けまわっている。
??「お譲ちゃんや、元気がありあまってるようじゃな」
漆黒のローブに身を包んだ老婆がポニテに話しかける。
ポニテ「ん?えへへ、だって船の中退屈なんだもんー」
??「そうかい。じゃぁおばあちゃんが何かお話をしてあげようかねぇ」
老婆はそう言って本を二冊取りだした。
??「赤い本と黄色い本、どっちがいいかえ?」
①じゃぁ赤ー!!(番外編ss・魔法使いに大切なもの)
②むむ?黄色にしようかなー?(番外編ss・isの踊子)
③知るかばばぁ、ただでさえ変なやつが出てきたせいで私達の活躍が130もふっとばされたんだ。主人公だってのにこれ以上影が薄くなってたまるか。海の藻屑と消えろ。(そのまま進行)
701:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/11(水) 15:57:40.23:/TFzTwg0
153
--船--
ポニテ「知るかばばぁ、ただでさえ変なやつが出てきたせいで私達の活躍が130もふっとばされたんだ。主人公だってのにこれ以上影が薄くなってたまるか。海の藻屑と消えろww」
??「えっ!?」
ポニテ「あ、違います違います!!じゃぁ……赤の本がいいなぁ」
??「い、今のセリフはなんじゃったのか……ま、まぁよしとしよう。それでは始めるぞい」
『魔法使いに大切なもの』
ポニテ「どうでもいいけど、おもっくそタイトルぱくってるね。ちゃんとタイトル通りの話になるのかなっww」
Qw0『……』
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2
--王国--
新王「なんて……ことだ」
妃「その情報は確かですか~?」
諜報部「……はっ。残念ながら」
新王「それが本当なら、これは最悪の事態だ。恐らく人類の歴史上、最大の危機……」
妃「……あなた~?」
新王「ん?」
妃「もしもの時は、お願いしますね~」
新王「……」
3
--宿屋--
ツインテ「ん、んー!!はぁ~久しぶりに一人で寝れた」
カーテンから朝日が洩れる。
ツインテは気持ち良さそうに伸びをした。
もぞもぞ
ツインテ「ん?」
もぞもぞもぞもぞ
ツインテ「……んん!?」
シーツの中に蠢く何かが……。
ガバッ
ツインテ「ひっ!?な、なにやってるんですか!!」
レン「ツインテのベッド……あったかい」
4
--宿屋--
ポニテ「おっはよーう!!」
すでにポニテは食卓に付いていた。
ツインテ「おはようございますポニテさん」
レン「……おはよ」
ポニテ「あー!やっぱりツインテちゃんのとこ行ってたんだー!朝起きたらいなくなってて心配したんだぞー!」
レン「……ポニテと寝るの……辛い」
ポニテ「ぐさっ!?」
ツインテ「わかります……あれはとてもじゃないけど寝てられません」
ポニテ「ぐさぐさっ!!」
アッシュ「みんな早いな」
アッシュが食堂に姿を現す。
5
--宿屋--
ツインテ「あ、アッシュ君、おはようございます」
アッシュ「ん」
アッシュが席につく。
アッシュ「……なぁ、飯を食う前に一ついいか?」
ポニテ「ん?どしたのー!?」
アッシュ「いやな、このパーティー……女多すぎないか?」
ツインテ(男女比2:2なんですけどもー!!)
ポニテ「そだね。でもなんか困ることあんの?」
アッシュ「……なんとなく心の問題もあるし」
6
--宿屋--
ポニテ「めんどくさー!でもそしたらどうするの?誰かリストラするってこと?」
レン「……レン、また捨てられるの?」
俯き耳を垂らすレン。
ツインテ「だ、誰がレンさんを捨てるもんですか!!」(かわEー)
ポニテ「非常食は必要だもんね!!」
レン「ふ、フーー!!」
アッシュ「お前……」
ポニテ「うそうそ!本気で食べるわけないじゃない~!!」
ツインテ「レンさんいいですか?ポニテさんと二人きりになってはいけませんよ?」
アッシュ「……考えないように考えないようにしていたが、下手すると俺らも危ういんじゃないか?同種族だからといって安全とは限らんぞ」
ポニテ「だからぁ!!食べないって言ってるでしょ!?……味を覚えちゃったらわからないけど」
ツインテ「鯱と一緒に海を泳ぐとこんな感じなんでしょうか……」
7
--宿屋--
ツインテ「で具体的にはどうするつもりなんですか?」
ポニテ「まさか私をリストラ!?」
ツインテ「あー……確かにポニテさんの食欲のせいで家計の圧迫が大きいですからね」
アッシュ「確かに……そのせいで宿には泊まれないわ、満足に武器も買い替えられないわ……」
ポニテ「ね、燃費が悪いんだよ!その分戦闘では役立ってるでしょ!?」
ツインテ「不必要に魔法連打して虐殺してますよね……非効率と言うか」
ポニテ「なんかツインテちゃんが毒舌!!」
8
--宿屋--
アッシュ「そういうんじゃなくてな……」
ツインテ「はう!!もしかして戦闘で役に立たないボクをリストラ……」
ポニテ「あー、あーあー!有り得るね!!回復役と言っても、アイテムでどうとでも代用出来るポジションだし!」
ツインテ「そんなっ!!」(あれ?いやまてよ?もしここでリストラされればボク、もう戦わなくて済む?)
ツインテはすっくと立ち上がった。
ツインテ「皆さん、短い間でしたがお世話になりました。力不足というのであれば致し方ありません、実家に帰らせて頂きます」
レン「!!や、やー!!」
レンはツインテにしがみ付く。
レン「ツインテ……行くなら……レンも行くっ」
アッシュ「こらこらこらこら勝手に話進めんなっ!!てかお前だけは絶対にやめさせん!!」
アッシュは顔を赤らめて言う。
ツインテ「ひぃっ!?」(そ、そんなにボクのこと……危険に晒したいのか)
9
--宿屋--
ポニテ「いや待てよ?……今のパーティーに不満があるのはアッシュ君だけ……ということは、アッシュ君が辞めればいいだけの話!?」
アッシュ「なぬ!?」
ポニテ「そーだよー!!私達今のままで全然楽しいもん!!文句あるならでてけー!!」
アッシュ「ぬ、ぬぬぬ!」
ツインテ(アッシュ君が抜けたら……スパルタが無くなる!?い、いや待て待て落ち着けボク。そしたらポニテさんが仕切ってもっと恐ろしいことに……)
レン「にゃーにゃー」
アッシュ「なぜ鳴いたし」
ツインテ(しかもそしたら男女比がやばくなる!?同姓皆無!?はわ、はわわわわ)
シュビ
ツインテは挙手とともに勢いよく立ち上がる。
ツインテ「あ、アッシュ君をリストラするのは反対です!!アッシュ君がいなくなるのは嫌ですボク!!」
アッシュ「……お前」
10
--宿屋--
ポニテ「まぁ冗談だけどね!!」
アッシュ「冗談かよ!!」
ポニテ「でもさー?じゃあさー?結局なにがしたいの?アッシュ君は」
アッシュ「単純に男をパーティに入れたい。そしてこのパーティに足りないのは壁役。正直俺では心もとないし、女では不可能な職業だろう?」
ツインテ「確かに……」(ボクも男だけど)
レン「にゃ」
ポニテ「あ、じゃあ私が壁役やるよー!!」
ポニテは元気よく手を上げる。
アッシュ「いやだから……」(ん?)
ツインテ「そう言えば……ボクポニテさんにだけは回復魔法かけたことない?」
ポニテ「うん!だって怪我したことないしっ!!」
レン「……カッチカチ」
11
--宿屋--
宿長「あ、あのぉ~お客様?」
アッシュ「ん?」
ポニテ「やっとご飯きた!?」
宿長「いえ、昨夜おっしゃられていた西の王国行きの船の件なんですがね、あと五分で出航するらしいのですが……よろしいので?」
ツインテ「……五分?」
宿長「はい」
ポニテ「……ご飯?」
宿長「いいえ」
レン「……にゃあ」
アッシュ「……走るぞ」
12
--街道--
ポニテ「あーん!!お腹空いたお腹空いた!!我慢できないーーー!!」
アッシュ「ええい、やかましい!!握り飯を作って持たせてくれただけありがたいと思え!!移動速度上昇レベル3更新!!」
勇者一行は風のような速さで駆けて行く。
ツインテ「ボ、ボクこんな早く走ったの初めてです!!」
レン「にゃあー」
ドドドドドドドドドドドド!!
--港--
ツインテ「あ!!船が見えましたよ!!」
アッシュ「くっ!!もう出発してやがる!!」
レン「二アー」
ポニテ「もっきゅもっきゅ、ふぁたひが、ふぉめようふぁ?<私が、止めようか?>)」
ポニテはおむすびを頬張りながら話しかけてきた。
そしてポニテの右手を中心に炎が燃え盛る。
アッシュ「お前破壊して止める気だろ……却下だ。俺達はこのまま乗り込む!!」
ツインテ「ええ!?で、でももうちょっと陸から離れちゃってます!!」
13
--港--
アッシュ「……TOBUNDA」
ツインテ「え、えええええええええ!!!!」
勇者達は前方のブリヂストンで跳躍すべく、速度を上げた。
ポニテ「むっちゃむっちゃ。楽しそうww」
レン「ギアー」
ツインテ「ええええええ!!って止まることもできないいいいいいいいい」
ダンっ!!
超速度でジャンプした勇者一行は海を飛び越え、
船員「……ん?なんか大砲みたいな音が」
ヒュウウウウウドオオオオンン!!!
船へと着地した。
船員「な、なななな!!」
ツインテ「はっ、はっ、はっ……」
アッシュ「なんとか……なったか」
予期せぬ来訪者達をクルーズがお出迎え。
酒場で戦士募集したら勇者が仲間になった
第二部
武術大会 in 西の王国コロシアム
14
--東の遺跡地下十階--
学者「ほぉ~。こらおったまげたなぁ……大災害前のもんだぞこれは」
小柄な付き人「これは一体なんなのでしょうか。ん?学者様、ここに文字が書かれています。現在使われている言語と違うようですが」
二人は古びた石板の前に立っている。
学者「なになに……『ナビ子ちゃんはぁ、現在お眠り中でーーーすっ!御用の方は、ここに手を当てて魔力を流しこんじゃってくださーい
っ!そしたらナビ子ぉ……いやんっここからは恥ずかしくて言えなーーい!!』と書いてあるな」
小柄な付き人「気持ちを込めて読む必要は無かったですよね……おえっ」
学者「調査隊の中に魔法使いのやつおったよな?」
小柄な付き人「えぇ。彼女は上のフロアで待機しています。呼びますか?」
風の魔法使い「お呼びですか?」
学者「あぁ、ここに手をおいて魔力を流し込んで欲しいんだ。やれるか?」
風の魔法使い「えぇ、大丈夫だと思います。ん」
風の魔法使いが石板に手を乗せると、部屋全体が淡い緑色に発光する。
学者「おぉ」
風の魔法使い「うっ」(ど、どんどん吸い取られる。これ、なんなの?)
15
--東の遺跡地下十階--
??『んっ……んんんんーーーー!!』
風の魔法使い「きゃっ!?」
??『ナビ子ちゃんふっかああああああああああああああああつ!!』
学者「お、おおおお!!人の形をした靄が喋っておる!!」
??改めナビ子『あーーっよっく寝たーー!!あ、そこのお姉さん、もう魔力はいいよ?おいしく頂きましたー!!やっぱり朝一の魔力は
処女のに限るよね!!』
風の魔法使い「!!!!」
小柄な付き人「なん……だと?」
学者「ナビ子と呼べばいいのかの?お前さんはここを管理しとる精霊か?」
ナビ子『うん私管理者なのよー?精霊っていうのとはちょっと違うかなー。おじさん達、ナビ子を起こしてどういうつもりなのかな??』
小柄な付き人「普通に意思疎通している……」
16
--東の遺跡地下十階--
学者「ここはどういった場所なのか知っているか?わしらは何年もここを調査しているが何もつかめん。ここだって、偶然フロアが崩れたおかげで知ったんじゃ」
ナビ子『なるほどー。私が眠ってから随分時間が立ってるみたいねー??ぴぴぴ、ナビ子ちゃん検索中ー検索中ー。ワオ!!400年くらいたっちゃってるのねー!!』
風の魔法使い「400年前のものなの?これ」
ナビ子『あ、ここがどんな場所かだったはね。じゃあそうね、右の壁に埋め込まれた棺があるでしょ?あれの石板部分に魔力流しこんじゃってよ!!そうすればわかるかも~』
学者「ふむ……そっちも頼めるかの?」
風の魔法使い「はい、後一度くらいならなんとか」
風の魔法使いは棺の石板に手を触れた。
ナビ子『ふふふー』
ズリュリュ
風の魔法使い「っ」(さっきのよりも強力だ)
17
--東の遺跡地下十階--
ナビ子『もうそろそろかな?かな?必要最低限くらいの分は出せるよねっ!!』
学者「?」
ブシュウーーー
棺から煙が漏れ出す。
ナビ子『あんっ!!おっけおっけー!!機動完了よんっ!!』
風の魔法使い「はっ!はっ!」(ほとんど吸われてしまった……)
ギィぃ
棺から現れたのは、
??「……」
白いメイド服を纏った紫髪の少女。
18
--東の遺跡地下十階--
??改めメイド「……私が目覚めた?……ナビ子、今はいつ?でございます」
ナビ子『メイドちゃんおはよーーっ!!えーっとね、今はね、眠りに着いた時から400年くらい立ってるのよー!!』
メイド「400年……」
学者「生身の人間が!!ど、どういう構造をしているんじゃこの棺は!!400年もの間腐りもしないとは……」
メイド「?ナビ子、この者達はなんでございますか?」
ナビ子『えー?ナビ子わかんなーい』
メイド「そうでございますか。では……処理するでございます」
風の魔法使い「え」
19
--東の遺跡地下十階--
??「これで来ていた人間は全部だバウ」
黒い犬が人間を引きずってやってくる。
メイドは人間達を縛り上げていた。
メイド「ご苦労様です番犬。でございます」
??改め番犬「……難儀なしゃべり方だなバウ」
メイド「貴方に言われとうないでございます」
ナビ子『いやんっ!番犬ちゃんお帰り!!全部で24名かー。中々の大所帯ね!!』
メイド「ではさっそく始めるでございます」
メイドは、縄で縛られてぐったりしている風の魔法使いのもとへ歩いていく。そして頭髪を掴み、引きずりながら奥へ向かった。
風の魔法使い「あぐっ」
一際大きな石板の前で立ち止まる。
20
--東の遺跡地下十階--
学者「わ、わしらを捕まえてどうするつもりじゃ」
番犬「黙っていろバウ」
番犬の尾で叩かれた学者は弾き飛ばされる。
メイド「さぁ頑張ってでございます」
メイドは風の魔法使いの顔面を石板に押しつけた。
ぎゅるぎゅる
風の魔法使い「あ、あがっ!!」(い、一瞬で吸われっ)
メイド「もう空ですか?底が浅いでございます」
メイドは調査隊から取り上げた回復薬の蓋を取る。
メイド「さぁたんと飲むでございます」
ゴブッ
風の魔法使い「ぐ、ぐぶっ!!」
メイド「……こぼさないで欲しいでございます」
風の魔法使い「ぶはっ!!はっ!はっ!」
メイド「さぁもう一度」
ガッ
風の魔法使い「うああああああああああああ!!」
21
--東の遺跡地下十階--
小柄な付き人「むごい……」
メイド「充足する喜びと奪われる苦しみ……素晴らしいでございます」
ナビ子『メイドちゃんたら、どっエスー!!』
メイド「何を言うでございますか。メイドのMはドマゾのMでございます」
風の魔法使い「あ、あぁ……」
番犬「そろそろかバウ」
メイド「ほら、もう一踏張りしやがれでございます」
風の魔法使い「ひ、ひぃ!!」
ぎゅるぎゅる
ナビ子『ぴぴーん!ステージ1に到達よん!!』
学者「な、何が始まるんだ……」
シュゴォォ
中央の棺が開いていく。
それを見て、メイド、番犬、ナビ子は跪いた。
???「……う」
中から現われたのは金髪の青年。
メイド「おはようございます我らが主様」
番犬「闇の主、アンシュ様バウ」
???改めアンシュ「む……それが俺の名か?」
学者「普通の……人間?」
22
--東の遺跡地下十階--
メイド「記憶は……ございますか?」
アンシュ「……いや、なにも思い出せない。名前も。お前たちがなんなのかも……」
メイド「そうでございますか」
メイドは立ち上がり風の魔法使いを連れてアンシュの側へ。
メイド「どうぞアンシュ様。処女の生体エネルギーをお吸いくださいでございます」
風の魔法使い(生体エネルギー?)「……っひ!?」
アンシュ「よくわからないが、なにやら喉が鳴る」
アンシュの指が風の魔法使いの頬に優しく触れる。
風の魔法使い「あ、ああっ、あああ!!」
何もされてはいない。だが、風の魔法使いは確かに感じた。
絶対なる捕食者の威圧を。
23
--東の遺跡地下十階--
学者「なんてことだ……まるでミイラのように……」
風の魔法使いは全てを絞りだされ、ミイラのように干からびている。
番犬「アンシュ様、よろしければこちらもどうぞバウ。こちらの12人は全て童貞処女ですバウ」
ナビ子『やっぱ童貞処女は質が違いますからねん!!』
小柄な付き人「え!?あんたその年で!?……あんたいつも若い子としてるとか自慢してたのに」
学者「う、うるさいわい!!お前こそ!!」
じゅるる
学者「あばばば!!」
ドサリ
アンシュ「……先ほどに比べれば微妙だな」
番犬「まぁ歳が歳ですからバウ」
アンシュ「お前たちはいらんのか?」
メイド「私達は非童貞処女を頂きますのでご遠慮なさらないでございます」
番犬「アンシュ様は少しでも回復してくだされバウ」
アンシュ「ほうか」
24
--東の遺跡地下十階--
じゅる、じゅる、じゅるる!!
アンシュ「一つだけ……思い出したぞ」
メイド「!!本当でございますか!?」
アンシュ「あぁ、俺の目的……使命」
番犬「なんとバウ……」
アンシュ「俺の使命は……」
ナビ子『わくわくどきどきっ』
アンシュ「魔王となって世界を支配すること」
メイド「その通りでございます……アンシュ様」
番犬「いざ我らが悲願のため、世界へ踊り出ましょうバウ」
ナビ子『残念~私はここから動けません~。だからぁ、困った時は電話してねっ!!』
アンシュ「まだ力は不十分……近くになにかないのか?」
ナビ子『ぴぴぴ、ナビ子チェックー!!あ、近くに東の王国っていうのがあるわ!人間の数も多いっすー!』
アンシュ「よし。そこに行こう」
メイド、番犬「ははっ!!」
25
--東の王国--
アンシュ「ここが東の王国か?」
メイド「そのようでございます」
番犬「ふむ。しばらく見ない間になかなか立派なものが立っておるなバウ」
ガシャッ
アンシュ達の前で槍が交差される。
アンシュ「む?」
東の城門槍兵「通行許可証を提示しないと中には入れられん。通行許可証を」
メイド「……」
番犬「面倒バウな」
東の城門槍兵「!!い、犬が喋った!?まさかそいつモンスターか!!」
26
--東の王国--
アンシュ「うるさいやつらよ」
アンシュが手を伸ばそうとした瞬間、
ザブシュ
アンシュ「?」
メイド「あ、すいません、出過ぎた真似でございましたか?アンシュ様の攻撃思考を受信したもので」
メイドの手刀により両断される二人の城門槍兵。
アンシュ「いや、構わない。俺も黙らせようとしただけだ」
東の城門弓兵「ひ、ひっ!!応援をがきやっ!!」
番犬「面倒なのはやめてもらおうバウ」
一瞬で門の上に飛び乗り、城門弓兵の首を噛みちぎる。
番犬「ふむ。犬の姿は少々不便か。スキル、形態模倣」
番犬は殺した城門弓兵の姿へと変貌した。
メイド「さぁ行きましょう……って、そんなもの食べちゃいけないでございます!!」
アンシュは城門兵の切り身に手を伸ばしていた。
アンシュ「小腹が減った」
27
--東の王国--
じゅる
アンシュ「む、魔法を一つ思い出したぞ」
メイド「左様でございますか」
アンシュ「誰かで試してみたいな。一匹連れて来てくれないか?」
メイド「了解しましたでございます。スキル雷動」
バシュッ
メイドは一瞬でアンシュの目の前から消える。
アンシュ「む、なんでもかんでもやらんでいいのだがな……」
シュッ
メイド「お待たせいたしました。どうぞでございます」
メイドは抱えてきた男を放りだす。そして男の髪を掴んで顔を持ち上げ、アンシュへと向けた。
眼鏡男「な、ななななんだ一体!!俺は家でピンク髪ツンデレ女の子のアニメを見ていたはずなのに!!何が起きてるんだ!?」
アンシュ「……よし、魔法、洗脳魔眼」
びかっ
アンシュ「俺のことをピンク髪ツンデレ女の子と認識しろ」
眼鏡男「ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくんんはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!小説12 巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!」
グシャっ
メイド「……アンシュ様、考えてお使いくださいでございます」
アンシュ「……恐ろしい生物だな。この俺が全く反応出来ずになすがままだったぞ」
28
--東の王国--
東の兵「おい、何か不穏な空気を感じるぞ!何かあったのか!?」
ドカドカと兵達が集まり始める。
番犬(質がいいな。気配だけで我々を)「いや、何もない。下で変な人間が喚き始めただけだ。それもすでに処分した」
東の兵「処分?」
東の兵は下を覗き込もうとした。
トストストス
その瞬間、番犬は全ての東の兵の首を落とす。
番犬「アンシュ様、そろそろ中に入りましょうバウ。こいつらが無限に湧きでてくるバウ」
アンシュ「そうだな」
アンシュは門を潜り、東の王国の領土に足を踏み入れた。
29
--剣の町--
ガヤガヤ
メイド「どうしますか?さすがにこの数を同時に相手にするのも食するのも面倒でございます」
アンシュ「ふむ」
番犬「しばらくどっかの家を占領して、ゆっくり療養したらどうだろうバウ」
アンシュ「そうだな、そうするか」
メイド「わかりました。それでは住み心地のよさそうな場所を探すでございます。スキル雷動」
バシュッ
アンシュ「あいつそればっかだな」
30
--丘の洋館--
痩せた家政婦「お、お帰りなさいませ」
長髪の家政婦「お、お帰りなさいませご主人様。お、お帰りなさいませご主人様」
アンシュ「ふむ、全部に洗脳終了か」
メイド「ご苦労様でございました。本来は私達がやらねばいけないことでございますのに」
アンシュ「気にするな。出来るやつがやればいい」
館の主人「そ、それでは仕事に行ってまいります」
番犬「複数に洗脳をかけたせいか効き目が怪しいバウ」
メイド「この屋敷、変なアイテムでもあるのか、それともいわくつきの場所なのか……私の索敵能力もうまく機能していないでございます。洗脳の効き目が悪いのもおそらくその影響だとおもわれでございます」
番犬「ジャミングか?こちらにとってプラスになるのかマイナスになるのか……バウ」
三人の立っている位置から見えない場所、柱時計の後ろに一人の少年がいた。
太い眉の少年「はっ!はっ!はっ!」(みんなも!父さんも!何かされた!!なんなんだあの人達っ!!)
31
--丘の洋館、秘密部屋--
太い眉の少年「ここならあいつらもこないはず……ここで何か対策をとらないと……」
日ごろから溜めこんでいたお菓子で食糧はどうにかなる。そして武器になるものは一つ。壁に立てかけている昔拾った錆びた剣。
ガチャリ
少年は剣を手に取る。
太い眉の少年「これを使って僕が……僕があいつらを!!」
32
--丘の洋館--
三日後。
番犬「どうぞアンシュ様。今日は四人だけにしておきました。ここ最近警備がきつくなっているものでバウ」
メイド「なら警備ごとやっちゃえばよかったのでございます。ゆとったでございますね」
番犬「あまりやりすぎると上の奴らが出て来そうバウ。それはこちらとしても良く無い展開バウ。まぁもうやりすぎた感はあるけどバウ」
アンシュ「うむ。じゃあいただくか」
茶髪幼女「あわ、あわわわ」
じゅるるじゅるる
メイド「とりあえず誰か一人でも本調子になれば安心なんでございますが……番犬、今どんな感じでございますか?」
番犬「わしか?わしは今13%くらいだな」
メイド「私7%なのに……いつのまにそんな吸ったでございます?」
いがぐり「やだよおおお!!」
じゅるじゅるうる
33
--丘の洋館--
メイド「……」
じゅるじゅるる
メイド「番犬、アンシュ様はどの程度溜まったと思うでございますか?」
メイドは番犬に近づき小声で話す。
番犬「うむ?……どうだろう。まだ一割程度かバウ」
メイド「やはりそうですか。質のいい処女童貞のエネルギー、その量も我らの10倍以上吸ってまだ一割……今回のアンシュ様は底が知れぬでございます」
番犬「うむ……時にメイド、この屋敷になにかが潜んでいるような気がしたことはないかバウ?」
メイド「ばっちしするでございます。ただうまく索敵が出来ないせいで、確信とは言い切れないでございます」
番犬「いくら妨害されていようと、我らの索敵は優秀バウ。ということはよほど小さい生物なんだバウ。ただの一般人か小動物か……」
アンシュ「じゅるるるるるる」
太い眉の少年「……ごくっ」
少年は部屋の外から中を除いていた。
34
--丘の洋館--
太い眉の少年(あいつら……夜になるとああやって、街から子供をつれてきて……殺してる!!)
アンシュは四人目の少女に手を伸ばす。
青眼の少女「ひっ!」
太い眉の少年「!!」(あれは!!いつも遊んでるお姉ちゃん!!)
メイド「ほぉ美しい青色でございます。すばらしい青色。ブルーアイズというやつでございますね」
番犬「今の子達はカードダスの方知らないのかな??」
メイド「何の話でございます?語尾語尾」
太い眉の少年「っっ!!」(お、お姉ちゃんが!!助けないと……いや、でもあんな何人も殺してるようなやつら相手に僕なんかじゃ出てっても)
じゅるる
青眼の少女「ああああああああ!!」
アンシュ「む?美味だ。白き龍のような……いや何を言ってるんだ俺は」
35
--丘の洋館--
アンシュ「ふむ、まぁ少しは腹が膨れたか。では寝るぞ」
メイド「はっ、お休みくださいでございます」
番犬「良い夢をバウ」
アッシュは洋館の暗闇の中へと姿を消した。
メイド「……さて、お残しでも食べるとするでございますか」
番犬「だな。回復は愚か、維持エネルギーすらままならんからな
メイドは床に投げ捨てられた吸い殻に手を伸ばす。
メイド「いただきますでございます」
バギ
太い眉の少年「う、うっ!!」
36
--東の王国、離宮--
東の王と剣豪は、和室に似た部屋で将棋を指している。
東の王「剣豪知っているか?」
パチ
剣豪「何をだ?」
パチ
東の王「剣の町で最近失踪事件が多発しているらしい。それも女子供ばかりだとか」
パチ
剣豪「あぁその話か。どっかで小耳にはさんだな。で、それがどうした」
パチ
東の王「……あぁ。それが妙でな。兵士達が必死に探っても、何もわからないのだと」
パチ
剣豪「わけぇのはだらしないな……はぁ俺の息子もなぁ」
パチ
東の王「その話はもうよい。問題なのは俺の国の兵達でさえ、素性がつかめない相手がこの国にいるということだ」
剣豪「……」
東の王「剣豪行け。お前の探知能力なら見つけられる。これ以上犠牲を出したくない」
剣豪「……はぁ、俺は隠居した身なんだぜ?大戦で片腕も無くした老兵をまだ動かそうってか」
剣豪は静かに立ち上がる。
剣豪「仕方ねぇな」
37
--丘の洋館、秘密部屋--
少年は一人膝を抱え項垂れている。
太い眉の少年「……もう僕に出来ることなんて何もない。逃げよう。それで大人にやっつけてもらおう」
少年は窓から顔を出す。秘密部屋は二階にあるため、窓から降りるには飛び降りるか梯子を使うしかない。
太い眉の少年「もうあいつらの行動パターンはわかってるんだ。男は昼は寝てて、犬は一階のエントランス、メイドはそろそろ」
ガチャッ
メイド「では行ってくるでございます」
少年は慌てて窓を閉める。
バタン
メイド「?」
メイドは音をした方に目をやる。しかしそこには何もない。
メイド「……家政婦達でございますか?」
メイドは視線を戻すと町へと向かった。
太い眉の少年「あ、危なかった!!」
38
--丘の洋館、秘密部屋--
太い眉の少年「……よし」
少年は悩んだ挙句、窓からカーテンを放り投げた。
ブワッ
少年はカーテンが地面に落ちたことを確認すると、次に剣を落とした。
ガイン
太い眉の少年「カーテンが下にひいてあるから飛び降りても大丈夫なはず!!」
少年は無謀にも窓から飛び降りる。
ドサ
太い眉の少年「いって!!か、かてえええ!!カーテン全然役に立ってないじゃん!!」
少年は大きな声を出してしまったことに気付き、慌てて口を塞いでその場を去った。
太い眉の少年(ど、どこも折れて無いよな?)
少年は自分の体を確認すると剣を担ぎ、カーテンをマントのようにはおり、駆けだした。
太い眉の少年(あそこの塀の下!!)
少年は大きな石をずらすと、塀の下にぽっかりと開いている穴を見つける。
太い眉の少年(ここを通れば!!)
少年は
番犬「曲者かバウ?」
太い眉の少年「!?」
39
--丘の洋館--
後ろを振り向くと、さっきの音を聞きつけてか番犬が歩いて来ていた。
その距離約50メートル。
太い眉の少年「う、うわ!!」(早く潜らないと!!)
少年は焦りながら穴へと潜っていく。
番犬「待て、ここで逃げられたらわしの名が伊達になる」
番犬は走り出す。
太い眉の少年「わあああ!!」
少年は焦って進むが、剣が引っ掛かって前へと進めない。
太い眉の少年「くそっくそっ!!」
少年は力づくで剣を引っ張る。
ズリズリ
番犬「氷属性魔法レベル2」
番犬の口から氷の礫が発射される。
ドオオン!!
40
--丘の洋館--
パキパキ
凍った土の上を歩く番犬。
番犬「消し飛んだか?……いや逃げられたバウ」
太い眉の少年「はー!はっー!!」
なんとか塀の向こう側へ来ることが出来た。
太い眉の少年「はっ!」(安心してちゃだめだ!あんな化物すぐ追ってくるに決まってる!!)
少年は剣を抱えて走り出す。
番犬「追うか……いや、アンシュ様の傍を離れるわけにはいかんバウ。それにどうせ大したやつじゃあるまいバウ」
41
--剣の町--
メイド「このパイナポォーを一つくれでございます」
果物屋「あいよお譲ちゃん、可愛いからリンゴもつけちゃうよww」
メイド「あらいやだでございます」
果物屋「いつもあの屋敷からわざわざ大変だねぇ。あそこに住んでる領主は厳しいだろう?」
メイド「仕事でございますので。それでは」
メイドが振り向いた先には、
太い眉の少年「はっはっはっ!!」
カーテンに身を包んだ少年がいた。
メイド「?何か用でございますか?」(……この感覚)
少年は錆びた剣をメイドに向けた。
太い眉の少年「みんな騙されちゃ駄目だ!!こいつは、悪魔なんだ!!」
42
--剣の町--
メイド「……悪魔?」(この少年、やはりあの屋敷の者でございますか?)
果物屋「おいがきんちょ、馬鹿なこといっちゃあいけねぇよ!!それに錆びてるからってそんなもん振りまわすんじゃねぇ」
果物屋の男は少年を窘める。
果物屋「まぁ確かにぃ?その二つのメロンは悪魔みたいなもんだがよがはははは!!」
果物屋は自分の胸に手をやり大きさを露わす。
メイド「セクハラでございます」
太い眉の少年「し、信じてよ!!僕見たんだ!!こいつらが」
メイド「ぎっ」
太い眉の少年「!!!!」
メイドの目を見た瞬間、少年は動けなくなる。
太い眉の少年(な、なんだこれ……こ、怖い、怖すぎて、声も、息もできな)
果物屋「お、おいおい、お譲ちゃん、子供のたわごとなんだから許してやんなよ」
43
--剣の町--
メイド「いえ怒っているわけではないでございますよ」
メイドの視線が少年とずれる。
太い眉の少年「かはっ、はっ!!はっ!!」
少年は全力疾走をした後のように息が切れていた。
太い眉の少年(だ、だめだ!こいつは倒せない!!大人も……大人でも!!)
少年はメイドに背を向け走り去った。
果物屋「あ、ありゃりゃ、逃げちまった。まぁ気を悪くしないでやってくれ。お譲ちゃんが美人だから構って欲しいんだろうよ」
メイド「……」
44
--路地裏--
太い眉の少年「はっ!はっ!はっ!!」
少年は路地裏に駆けこみ、樽の後ろに隠れた。
太い眉の少年「駄目だ駄目だ!!あいつらやばい……この国がこの国が滅ぼされちゃう!!」
カツン
太い眉の少年「はっ!?」
カツン、カツン
太い眉の少年(追いついてきた!?)
カツン、カツン、カツン
メイドは路地裏の前にまで来ると立ち止った。
太い眉の少年「ふっ、ふっ!!」
45
--路地裏--
メイド「……」
太い眉の少年(ううううう!!)
メイド「……こっちではないでありますか」
カツン
メイドは路地裏を一瞥するとそのまま立ち去った。
太い眉の少年「……助かった?」
少年はこっそりと顔を出した。
太い眉の少年「……いない。逃げなきゃ」
ドスン
太い眉の少年「あぶっ!!」
来た道を引き返そうとした少年は警備兵にぶつかってしまう。
太い眉の少年「!!警備兵!!よかった、話を聞いて!!」
46
--剣の町--
太い眉の少年「な…何を言ってるのか、わからねーと思うが(ry」
少年は警備兵に説明を始めた。
警備兵「……」
太い眉の少年「それで……き、聞いてるの?ねぇ」
警備兵「ごふ」
ドシャっ
太い眉の少年「!!ど、どうしたの?警備兵のおじ、!!」
倒れた警備兵の背中は何かでごっそりと抉られていた。
太い眉の少年「な、ななな!!」
メイド「ふふ、ふふふ」
メイドは、
太い眉の少年「!?」
少年の真上の看板に座っていた。
47
--剣の町--
メイド「お前がどこに隠れようがお見通しでございます。私達には索敵能力があるでございますから」
メイドは地面に降り立つ。
メイド「でもさっき、お前が私の前に現れた瞬間上手く機能しなくなったでございます。つまり……お前かお前が背負っているその剣か、そのどちらかが我らの索敵を妨害していたということ……」
メイドは右手を警備員に突き刺す。
ドシュっ
じゅるるるる
太い眉の少年「……だからお前を索敵能力では探せないでございます。でもそれは逆に、私の索敵能力に異変が生じる場所にお前がいるということになるでございます」
警備員はみるみるうちにミイラのようにしぼんでいく。
メイド「ふぅ、やはり大した補填にはならんでございますね。やっぱり喰うのは……」
メイドは太い眉の少年を眺めて、唇を舐める。
メイド「お前のような童貞に限るであります」
48
--剣の町--
太い眉の少年「ひ、ひぃ!!来るな!!」
メイド「自分から私の下に来たのではございませんか」
メイドは一歩、また一歩と近づいて行く。
メイド「私達はお前ら人間が安心して過ごせるように密かに動いてやっているというのにそれをバラそうなどと……この慈悲の心がわからないのでございますか?」
太い眉の少年「な、何言ってるんだよぉ!!」
メイド「面倒くさいだけで国ごと喰ってやってもいいんだぞ?と言っているのでございます」
太い眉の少年「!!」
メイド「人間なんて……人間なんて!」
一瞬メイドの顔が曇る。しかし、それも数秒。
ガっ
メイドは少年の首を掴み持ち上げる。
メイド「本来ならアンシュ様に献上すべきなんでございますが、そんなにおいしそうに逃げ回られたらこちらとしても喰わずにはいられねぇでございます」
49
--剣の町--
太い眉の少年「が、がああ!!」
メイド「暴れてくれるなでございます」
太い眉の少年(やだやだ!!喰われるなんてやだ!!)
少年は剣を引き抜き、そしてメイドに向けて力いっぱい振った。
ブオン
メイド「ん」
ヒュッ
しかしメイドは人差し指と中指で挟んで止めた。
メイド「切れ味はてんで駄目でございますね。でもこの剣の魅力は違うところにある……ジャミングブレードってやつでございましょうか」
50
--剣の町--
メイド「もしかしたらアンシュ様が気にいるかもでございますね」
メイドはひとしきり剣を愛でると、少年の首を掴む手に力を込める。
ぎぎぎ
太い眉の少年「あ、っげへっ!!」
メイド「じゃあ……お楽しみでございます」
ピシュッ
メイド「!!」
メイドに向けて投擲された短剣。それをメイド左手の手刀で払う。
メイド「……しまったでございます」
兵隊長「少年を離せ、悪鬼」
数十人の兵士達がメイド達を取り囲んでいた。
51
--剣の町--
メイド(ジャミングのせいでこいつらの接近を許してしまった……なるほど。屋敷の時とは違い、今は接近状態。効果は強力ということでございますか)
兵隊長「お前がここ最近の事件の犯人か?」
メイド「最近の事件がなんなのか知らないでございます」
兵隊長(……こいつ)
兵隊長は剣を抜く。
兵隊長「もう一度言う、少年を離せ。お前は包囲されているんだぞ?」
ジリジリと兵士達がメイドとの距離を掴む。
メイド「……ふふ、私がしまったと言ったのは、騒ぎを大きくしたせいで番犬に叱られるな、と思ったからでございます」
兵隊長(番犬?)
メイド「お前らに囲まれたくらいで困るわけがないでございます」
52
--剣の町--
兵隊長「……やるしかないようだ。補助兵!!」
補助兵「はっ!!任意対象16、速度上昇レベル2!!」
ドッ
メイドを囲んだ兵士達の速度が上昇する。
メイド「ちんけな魔法でございます」
兵隊長「ふん、お前は少年の首を絞め落とすよりも先に死ぬことになる。東の王国第十三部隊のお家芸、高速の戦法を見よ!!」
メイド「雷動」
ギャッッッ
53
--剣の町--
兵隊長(なんだこれは)
バシュッ、バチ、ドッ
兵隊長(高速で動いているはずの俺らが)
ギャッ、ズガ、グシャっ
兵隊長(スローモーションで吹き飛ばされているようにしか見えん!!)
メイド「にいい」
兵隊長「!!」
ギャギイイイイン!!
メイド「……ほぉ、私の一撃を防ぐとは……中々やるではないかでございます」
兵隊長「っく!!」
54
--剣の町--
兵隊長(!!さすがに少年を連れて移動はできないか!!)「守備兵!!少年を連れて逃げろ!!」
守備兵「!!……はっ!!」
守備兵はぐったりしている少年を抱えて走る。
メイド「逃がすわけが」
兵隊長「地形変化、氷河!!」
メイド「!?」
バキィイイイイン!!
兵隊長を中心に地面が凍っていく。
メイド「これは……」
兵隊長「足が地面とくっついてても早く動けるかよ?」
メイド「めんどくさいやつでございます……雷斧生成」
55
--剣の町--
メイド「お互い足を地面に固定された状態での殴り合いを望んでいるのなら、ぐちゃにしてやるでございます」
メイドは斧を振る。
--小屋--
太い眉の少年「う……?ここは……」
少年が目を覚ますと見たこともない家の中だった。
守備兵「起きたか少年……」
太い眉の少年「おじさんは……あっ!!あ、は、話を聞いて!あの!!」
守備兵「待て落ち着け」
太い眉の少年「う、うちが変なやつらに!!それと、あれ?路地裏で!!」
守備兵「落ち着け!!」
守備兵は少年の肩を掴む。
守備兵「……あれは……あいつは何なんだ?」
56
--小屋--
太い眉の少年「はっ!はっ!……わ、わかんない。僕も何もわからない」
守備兵「……そうか」
太い眉の少年「あいつはどうなったの!?倒せたの?まだなら王都から軍隊を呼ばないと!!」
守備兵「申請はしていない……が、次期に軍が動くだろう」
太い眉の少年「!?遅いよ!!早くしないとあいつらが町のみんなを!!」
少年は守備兵の手を払いのけ小屋から外に出た。
バタン
太い眉の少年「……え」
少年が見た物。
それは焼け野原になっているかつての剣の町。
守備兵「あいつ……たった、たった一人で町を」
57
--丘の洋館--
メイド「すまんでございます」
番犬「すまんで済むかばかものバウー!!」
メイド「ついむしゃくしゃしてやった。後悔はしていない、むしろ満足でございます」
メイドは満面の笑みを浮かべる。
番犬「何やりきったみたいな顔してんの!?あんだけしんちょうにいこうぜ!って言ったバウ!!」
メイド「その時だけがんがんいこうぜになってしまったバウ」
番犬「語尾マネすんなバウ!!」
アンシュ「何事だ騒がしい……」
アンシュが降りてきたことにより二人は口論を止める。
メイド「申しわけございません。つい……町を消してしまいました」
アンシュ「それは俺の飯が無くなったということか?」
メイド「い、いえ、その、多少見繕って持ってきましたでございます。40体ほどですが……」
アンシュ「ふむ、ならいい」
番犬「い、いいのですかバウ!?」
アンシュ「別にいい」
58
--丘の洋館--
メイド「アンシュ様、アジ寛大」
番犬「……ったく。あれだけ暴れたら力もかなり消費しただろうにバウ」
メイド「4%にまで減ってしまったバウ」
番犬「だからっっ!!」
アンシュ「……ん?よく見れば所々怪我をしているな」
メイド「あ、これは」
番犬「ほぉ、それなりの使い手だったのかバウ?」
メイド「思った以上でした。中々この国は質が高いでございます」
アンシュ「修復させないのか?」
メイド「いえ、修復で魔力を使うわけには……3%を切ったら可動できなくなりますのでございます」
アンシュ「そうか……メイド、ちこぉよれ」
メイド「は?」
メイドはアンシュの下へと向かう。
メイド「何用でございますか?」
アンシュ「あぐ」
番犬「!?」
アンシュはメイドの顔にかじりついた。
59
--丘の洋館--
アンシュ「あむ」
がりっごりっ
メイド「っっっっ!!」
番犬「あ、アンシュ様!!まだメイドには利用価値がございます!!おやめくださ」
ゴクン
アンシュ「番犬、黙ってみていろ」
アンシュは頭部の無くなったメイドの体を持って言った。
がぶしゅ、ばくっ、がりっ
番犬「っっ……!!」
アンシュ「げぷっ……あまりうまくないな。自分とベースが同じだからか?」
アンシュはメイドの全てを平らげた。
60
--丘の洋館--
番犬「……アンシュ……様」
アンシュ「ふむ、こんなもんか」
アンシュは口を拭うと、自分の腹部に手を突き刺した。
番犬「!!!!アンシュ様!!」
アンシュ「んぐっ……」
ず、ずるずるずる!!
アンシュの腹部から引きずり出されてきたものは、メイドの頭部。
番犬「!!」
アンシュ「どっせーーーい!!」
アンシュはカツオの一本釣りのように、腹部からメイドを引き抜いた。
メイドは血まみれ全裸だが、その体は完全そのものである。
メイド「……う、うん?」
61
--丘の洋館--
メイド「わ、私は一体……いや一度アンシュ様と合体したようなでございます」
番犬「これはまさか……アンシュ様の新たなスキルバウ?」
アンシュ「あーつら、これは辛いは。子供産むってすごいことだよこれ。お母さんに感謝しなきゃいけないねこれ」
番犬「アンシュ様のキャラがちょっと狂うほどの苦痛バウ!!」
アンシュ「でもなんだこの充足感。やり遂げたというか……うむ!」
メイド「私の怪我が全部治ってるでございま……!?エネルギーが40%にまで!?」
アンシュ「あぁ、ちょっと充填しておいた」
番犬「な、なんと!!」
メイド「あ、ありがとうございますアンシュ様!!私のことをそこまで考えてくださっていたとは……でございます!!」
アンシュ「うむ」
メイド「これは今晩辺り……もう一つの合体をすべき!!」
アンシュ「ん?まだなんかいけそうだな」
ずぼっ
アンシュはまた自分の腹をまさぐる。
番犬「これ絵面やべぇバウ」
62
--丘の洋館--
メイド「もしやアンシュ様の中に何かを置き忘れてきてしまいましたか?でございます」
メイドは自分の体を見てみるが無い部分は無い。おっぱいはいっぱいある。
アンシュ「いやな、ちょっと試してみようかとな、お、よしよし」
すっぽーん!!
??「ぷあっ!!」
中から出てきたのは……
アンシュ「ん?ちょっとしくじったか」
番犬「これは……」
メイド「ちびっこい……私でございます?」
??「ございますー!」
ちっちゃなメイドは両手を挙げた。
63
--丘の洋館--
番犬「おじさんちょっともう理解の範疇越えたバウ」
アンシュ「まぁいいか、名前はなんだ、差別化のためにちびメイドとでも呼ぶか?」
??改めちびメイド「了解でございますー!」
ちびメイドはビシッと敬礼のポーズを向ける。
アンシュ「ふむ。俺の魔力量次第ではあるが、お前らの回復、充填、量産が可能になったようだな」
メイド「すごいでございます」
ちびメイド「ございますー!」
番犬「なんと……しかし、魔力量がかなり減ってしまいましたなバウ」
アンシュ「む?まぁ許容の範囲だな。メイド、飯を用意しろ」
メイド「はい!!喜んででございます!!」
64
--丘の洋館--
数日後。
じゅるるるるるるる。
太めな女性「ああ、あああああ!!」
アンシュ「うむ、吸い応えがあってよい。次」
メイド「はい」
ちびメイド「はいー!」
ガラガラと少女を運んでくる二人のメイド。
褐色肌の少女「……」
アンシュ「む?見たことの無い肌色だな」
アンシュは褐色肌の少女の体を眺めて言う。
番犬「恐らくは南の王国の出身者でございます。あの王国に住む人間は肌が褐色、もしくは黒色になると聞きますでございます」
アンシュ「なるほど」
褐色肌の少女「あなたが、噂の吸血鬼様ですか?」
65
--丘の洋館--
アンシュ「吸血鬼?」
メイド「血を吸うモンスターのことでございます」
ちびメイド「ますー!」
番犬「いや魔族じゃなかったか?それよりもなぜ吸血鬼なんぞと勘違いしたバウ」
褐色肌の少女「最近町で少女が消えていっているのは吸血鬼が現れたからって……そうサーカス団のみんなでいっていたもので」
アンシュ「サーカス?」
メイド「この場合は見世物小屋ですね。この娘はサーカス団からぱくってきましたでございます」
ちびメイド「ますますー!」
番犬「褐色、黒肌は南の王国出身の証。それはつまりあの亜人と住んでいたことになる。ゆえに彼らは差別され、奴隷として扱われることが多いのですバウ」
アンシュ「愚の骨頂だな。肌の色だけで同種を虐げているのか」
66
--丘の洋館--
メイド「中にも敵、外にも敵がいないと人間は安心できないと聞きますでございます」
ちびメイド「ですますー!」
アンシュ「なんと。難儀な生物なんだな」
褐色肌の少女「よかった……でもこれでやっと私は救われる」
アンシュ「?」
褐色肌の少女「さぁ、私を食ろうてくださいまし」
アンシュ「!?」
褐色肌の少女は自分から手を広げ、アンシュを待った。
アンシュ「……何を考えている?死ぬのだぞ?」
褐色肌の少女「はいっ!!」
褐色肌の少女は満面の笑みを浮かべる。
67
--丘の洋館--
アンシュ「理解出来ん……どういう魂胆だ?」
メイド「いえ……私にも理解できませんでございます」
ちびメイド「わけふめー!」
番犬「……大方未来に絶望したという所か?バウ」
褐色肌の少女「……はい、生きていてもしようがありませんし」
少女は苦笑って見せる。
アンシュ「……生物は生きてなんぼだろう」
褐色肌の少女「生きていても仕方がありません。ならばいっそ誰かの糧となって、誰かのために命を散らすほうが素敵です」
アンシュ「……メイド」
メイド「はっ」
アンシュ「代わりを持ってこい。今すぐだ」
メイド「了解いたしましたでございます」
アンシュ「お前の目の前で死を教えてやる」
68
--丘の洋館--
ちょんまげ「や、やめてちょんまげ!」
アンシュ「見ていろ」
じゅるるるるるる!
ちょんまげ「あばあああああああああああああ!!」
褐色肌の少女「……」
番犬(いつもより荒々しく……)
アンシュはミイラ化した男の死体を放り投げる。
アンシュ「どうだ?」
褐色肌の少女「では次は私の番ですね」
アンシュ「!!!!」
ちびメイド「これたべてもいいのです??」
69
--丘の洋館--
アンシュ「……解せぬ……お前もあれのように無様に喰い散らかされるのだぞ?」
ちびメイド「あむあむ」
アンシュが指差した先でちびメイドがお食事中。
褐色肌の少女「それが望みですから」
番犬「……多様性を極めた種か……クレイジーバウ」
アンシュ「……」
アンシュは少女の首に手をかける。
メイド「……」
アンシュ「……ふ、なるほど、病か」
褐色肌の少女「!!」
アンシュ「更にお前の腹には」
褐色肌の少女「……早く食べて下さいませ」
70
--丘の洋館--
アンシュ「ふ」
じゅるるるる
褐色肌の少女「んっ」
アンシュは少しだけ口をつけて、そして離す。
アンシュ「お前の病は喰った」
褐色肌の少女「!?」
アンシュ「こいつは喰ってないがな」
ボン
アンシュは少女の腹を軽くたたく。
褐色肌の少女「っっ!そんなことは些細なことです……もうこんな世界で生きていたくありません。生きていても辛い思いをするだけ。も
う奴隷はいやです!!なら母のいるあの世へ!!」
アンシュ「そうか。ならお前を喰うのは延期だ」
褐色肌の少女「!!?」
アンシュ「お前が人生を謳歌し、楽しくて嬉しくて気持ちよくて最高の幸福を感じている最中に食ってやる」
褐色肌の少女「!!!!」
アンシュ「お前をこれ以上無いほどに幸せにしてやるよ」
71
--丘の洋館--
翌日。
メイド「おはようございますアンシュ様」
アンシュ「ん」
アンシュが一階に降りてくるのを確認し、メイドは頭をさげる。
アンシュ「あいつはどうした」
メイド「ここでございます」
褐色肌の少女「……」
メイドの後ろから出てきた褐色肌の少女は、綺麗な服を着せられていた。
アンシュ「ほう、これは……美しいという表現があっているんだったか?」
番犬「そうでございましょうバウ」
褐色肌の少女「そんな……でも」
アンシュ「お前の名はそうだな、その綺麗な褐色肌にちなんで……ブラ」
褐色肌の少女改めブラ「……」(……綺麗って)
ちびメイド「そっちのぶらじゃないでございますよぉー!!」
72
--丘の洋館--
ブラ「今まで……そんなこと言われたことが無い……いつも……」
メイド「不届き者め!!アンシュ様にお褒めのお言葉をいただいたのですよ!?しっかりとお礼を言いなさいでございます!!」
ブラ「あ、え?あ、ああありがとうござい……ます」
アンシュ「うむ」
ブラ(……確かにこの人は……嘘なんて言う人じゃない……)
番犬「ブラよ、一応人間用の食事も買ってある。好きにくうバウよ」
ブラ「食材も、あるのですか?」
メイド「もちろんでございます。保管している人間が腐ってしまっては意味がないでございますし」
ブラ「……あの……料理しても……いいですか?」
メイド「料理は私の仕事でございます!!」
ブラ「あ、す、すいません」
番犬「お前の料理は人間を綺麗に洗うだけだろバウ」
73
--丘の洋館--
トントントン
ブラが包丁を握っている。
ブラ「……私を幸せにしてくれる……私のことを綺麗だって……」
ぐつぐつとシチューを煮込む。
ブラ「……本当に期待しても……いいの……かな」
--剣の町跡--
剣豪「……ちぃ。こりゃひどいな。何が探知だ。探るまでもねぇ」
選抜兵「剣豪様。丘の洋館だけが無事です。恐らくは」
剣豪「あぁそこにいるだろうな。俺の故郷をめちゃくちゃにしたやつが!!」
74
--丘の洋館--
ブラ「できました。どうぞ召し上がってくださいまし皆さん」
ブラは料理をテーブルに並べていく。
シチューやサラダ、ホンオフェ等、質素ながらも暖かな料理の数々。
番犬「なんで数ある料理の中からわざわざそれをチョイスした……バウ」
番犬はテーブルの上のホンオフェを見て、切ない表情を浮かばせる。
アンシュ「ほぉ、これが料理か。どれ」
ブス
アンシュはパンに指を刺す。
しゅる
アンシュ「……薄い。こんなものが料理なのか」
ブラ「あ、違いますよ!料理は食べるものですよ?」
アンシュ「?口からでか?めんどくさいんだけどな……」
番犬「き、菌が見える……バウ」
75
--丘の洋館--
アンシュ「あむ」
メイド「もぐ」
番犬「くっさ!これくっさ!!」
皆それぞれ料理を口に運ぶ。
ブラ「あの、お口に合いませんでしょうか?」
アンシュ「……ほぉ、なるほどな。エネルギー吸収としては不十分なんだが……」
ブラ「……」
アンシュ「悪くない、かも」
ブラ「本当ですか!!よかった!!」
メイド「この感覚懐かしいでございます……普通の食事を取ったのは……」(そっか、あれってスリープ前なんだ……)
アンシュ「これはなんだ?」
ブラ「それはいものにっころがしです。祖母が昔」
メイド「そう言えば番犬は……」
番犬はホンオフェを口に咥えたまま失神していた。
番犬「ごふっ!!ゴ、ゴスロリ黒髪ストレートの幼なじみ……うらやまバウ」
メイド「目を覚ませ!!あの子は男の子でございます!!」
番犬「いいんだバウ……十分射程範囲に入っているバウ……」
76
--丘の洋館--
選抜兵『こちら選抜兵、丘の洋館に潜入した』
通信兵『了解、スキルテレパシー、感度良好。選抜兵、今どこにいますか?』
選抜兵『東館の二階だ、窓際のな。この階には敵はいないようだが……部屋を片っ端から入ってみようと思う』
ガチャ
窓から一番近い部屋のドアノブを握る。
選抜兵(鍵か……スキル使用、施錠解除)
ガチャリ
選抜兵「おはようございます」ボソ
通信兵『今何か?』
選抜兵『なんでもない。ん?こ、この部屋は!?』
通信兵『!?どうしました!?』
選抜兵『この部屋の匂い……メイド臭がする』
通信兵『……今なんと?』
選抜兵『敵が潜伏していた部屋だと思われる。調査を続行する』
通信兵『は、はぁ』
選抜兵『こ、こここれは!!ぱぱぱぱぱ、パパンパンパンぱパパン!!!!』
通信兵『選抜兵!?どうしたしたか!!』
選抜兵『……性欲をもてあます』
77
--丘の洋館--
通信兵「選抜兵と連絡が取れなくなりました。どうしますか?」
剣豪「あいつを選抜したやつは誰だ。責任者を呼べ」
選抜兵『ザッザザ、こちら、ザザ、こちら選抜兵』
通信兵「!!」『選抜兵!何かあったんですか!?』
選抜兵『いや、もう大丈夫だ。全部終わった』
通信兵『何が終わったというんですか!?』
選抜兵『えぇー?それ聞いちゃう?そりゃちょっとおじさん困っちゃうよww』
通信兵『……』
選抜兵『お、おほん、任務を続行する』
ギィ
選抜兵は部屋を出て次の部屋の前へ。
選抜兵『こ… これは…! ジュテーム……!! どすこい喫茶… ジュテーム!!! …と 書いてある!』
ブツっ
通信兵「選抜兵とのテレパシーを解除しました」
剣豪「妥当だな」
78
--丘の洋館--
アンシュ「ふむ、なかなかよかったな。だがエネルギーがなぁ……」
ブラ「そう、ですか……」
メイド「えぇ、やはり人間から直接吸う方がよろしいでございますよ」
番犬「な、なんでキビヤックまであるのくさっっ!!く、くさっくさくさ……くちゃい////////」
メイド「番犬、アウトー」
ブラ「……」(やはり人間は食料……)
79
--丘の洋館--
選抜兵(2階はあとこの部屋で終わりか。ん?……すごい臭いだ……死と糞尿の臭い……)
ガチャリ
うっ、うぅ、ぐーぐー、ひ、ひっく、ぐすん!
部屋の中は呻き声と泣き声で支配されている。
垂れ目の少女「ひっ!?」
ドアを開けると、中にいた少年少女達が一斉に選抜兵に視線を向けた。
片腕の少年「う、ううぅ」
選抜兵(20人くらいか?……中には死んでるのもいる。私のいたスラムを思い出すな……)
垂れ目の少女「や、やだ!!わ、私まだ死にたくないよ!!」
選抜兵「しー、しずかに。私は助けに来たんだ。ここから逃げるぞ」
片腕の少年「!?た、助けに来てくれたの!?……で、でも駄目だよ……」
選抜兵「?何が駄目なんだ?大丈夫、あの剣豪様も来ている。さぁ、逃げよう」
垂れ目の少女「だ、だって、あ、あの人達すごく強いんだよ……そ、それに」
ギィ
ちびメイド「あれれー?おねーさんどこから入ってきたのでございますー?」
垂れ目の少女「見張りの女の子が、おき、ちゃった……から」
80
--丘の洋館--
ちびメイド「おねーさんふくきてるししょじょじゃないー。しのびこんだんですかでございますー?いけないひとですねーwww」
ちびメイドはけらけらと笑いながら選抜兵に近づいてくる。
ちびメイド「おねーさん、ばっらばらにしちゃうよ?」
選抜兵「!!」(こいつ!!)
選抜兵はちびメイドの迫力に押され、防御を固める。
選抜兵(……確かにこいつ程の魔力があれば町を……見張り?)
ちびメイド「アンシュ様にどうていしょじょいがいはたべてもいいっていわれてるからぁ、いただきますでございます♪」
選抜兵「!!戦札、魔力解放!!」
選抜兵は札を二枚取りだして破りすてる。
ちびメイド「あれー?おねーさんのまりょくりょーがふえたでございます?」
選抜兵「単体のスペックが全てじゃない、次期東の三強候補、選抜兵。その力を見せてやる」
ちびメイド「ほよよー!!」
選抜兵……女だったのか!
546:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/14(水) 22:07:04.03:F7r4t/w081
--丘の洋館--
ちびメイド「ふっふふーん♪」
メイド「こら!二階が騒がしいと思ったら……一体何をやっていたでございます?」
メイドは階段を降りてきたちびメイドに声をかける。
ちびメイド「へんなおねーさんがしんにゅうしてたから、じょきょったでございますです」
メイド「侵入者……?」
メイドは腕を組んで考える。
メイド(私や番犬の索敵にひっかからない相手?……それともまだ、ジャミングされているでございます?)
ちびメイド「どーですかねーさま!!このやしきの、はなぶそくをかいしょうするいっぴんでございますです!!」
ちびメイドは持っていた植木鉢をメイドに突き出す。
メイド「……何年か前に、某国のギャルゲの画像でそんなのを見たでございます」
植木鉢には選抜兵の頭部が乗せられている。
82
--丘の洋館--
番犬「まったく。えらいめにあったバウ」
ブラ「すいません番犬様。どれもおいしいものだから味わって頂きたくて……」
番犬「……いや、あんなのを買い込んでいたメイドのせいバウ。あいつめ、どうせわしへの嫌がらせで購入したんだバウ」
アンシュ「番犬」
アンシュがエントランスに顔を見せる。
番犬「はっ。いかがいたしましたかアンシュ様」
アンシュ「外に何かいるようだが」
番犬「!?か、確認してまいりますバウ!!」(ラリってる場合では無かった!!)
アンシュ「いやまて番犬、たまには俺にも遊ばせろよ」
番犬「し、しかし……いやそうですね。馴らし運転はいつかしなくてはなりますまい……ならアンシュ様、少々お時間を下さい。やつらが馴らしに足る存在か見極めて参りますバウ」(そして危険で無いかを)
アンシュ「そんなのはいらない。俺を否定する気か番犬……」
番犬「っ!……申し訳ありませんアンシュ様。ならメイド達も呼んでまいります。皆で行きましょうバウ」
番犬は言うが早いか、その場から姿を消した。
アンシュ「……心配性だなやつらは。孫に対するじいさんばあさんみたいだ」
ブラ「あの、アンシュ様……戦うのですか?」
アンシュ「?あぁそうだ。自分が今どれだけの力を持っているのか知りたいしな」
ブラ「……」(そんな理由で……)
83
--丘の洋館--
アンシュ「……どうした?浮かない顔をしている。笑え。幸せな人間は笑うものだ」
ブラ「……人間はアンシュ様のなんなのですか?」
アンシュ「支配対象、捕食対象、そして玩具と言ったところか」
ブラ「……」
アンシュ「……笑わんな。無理強いさせて笑わせても意味が無いしな」
ブラ(老若男女関係無く食すこの人は、人の天敵。この世界を恨んだ私だけれど、でも)
アンシュ「……」
しばしの静寂。そして番犬がメイド達を連れて現われる。
番犬「遅くなりました。では行きましょうバウ」
アンシュ「……ん」
ブラ(……やっぱり私駄目だ。何も悪くない人達まで殺すのはおかしいと思っちゃってる……でもこの人達からしたら、人間は食べ物でありおもちゃ。それは人間が他の動物に対して行ってることと変わらない)
ブラは磔にされている自分の姿を思い出す。
そしてそれをかき消そうと頭を振った。
ブラ(やっぱり……)
84
--東の黒森--
木漏れ日が射す森の中を、黒いフードを被った二人組が歩いている。
?「あー、懐かしいなっ。故郷の森、ちっとも変わってないわ」
??「あ、おい走るなよ。お前、最近体調が良くないんだから」
?「平気よ。むしろ良くなったわ。やっぱり故郷の空気は体に馴染むのね……ふははは馴染むっ、馴染むぞ!!」
??「そういうのは女がやるもんじゃない」
?「ふふっ」
女はよほど嬉しいのか、スキップをしながらくるくると回る。
?「ここのね、ここの大きな木を曲がるとね、町が見えるの。城門へは迂回しないといけないのだけど、こっから見える景色は特別なのよ?」
??「はいはい。楽しみだなぁ」
?「もう!いっつもそうなんだから」
女が大木を追い越すと、
?「見えた!!我が愛しの故郷、剣の……え?」
そこには荒れ果てた故郷があった。
85
--剣の町跡--
通信兵「選抜兵から連絡がありません。ということはやられたと見て間違いないですね」
いともあっさりと言い放つ通信兵。
剣豪「……連絡無いのはお前が通信切ったからと違うか?」
通信兵「選抜兵はあれでも相当な手だれ。それがこんな短時間でやられてしまうなんて相手は化け物ですね」
通信兵はどうしてもその方向にもっていきたいらしい。
剣豪「話を聞こうぜ。まぁこの町の惨状を見る限り、何体か化け物じみた奴はいるだろうな」
剣豪は剣の町を見渡す。その時、剣豪は何かの気配を感じた。
剣豪「……!?来るぞ!!」
剣豪は右手一本で刀を引き抜き、臨戦態勢をとる。
通信兵「え?」
ヒュルルルルドガァァァン!!
空中から猛スピードで落下してきたのはメイド。
それを剣豪と通信兵は、攻撃範囲から間一髪逃れた。
メイド「……やるでございますね。人間の探知範囲外だと思いましたのに、まさか雷動を避けるとは……」
メイドは自ら作成したクレーターの中からはい上がってくる。
剣豪「……第六感とでも言うのかな、俺には神掛かった何かがあるのだ」
剣豪はメイドに近づいていく。
剣豪(ほう……これは死ぬかもしれんな)
剣豪はそう思わずにはいられない。
86
--剣の町跡--
メイド「……」(相当出来ますね。いくら私と言えど遊んでられないでございます)
ちびメイド「……ぇぇー……さまぁー」
ヒュルルルルドガァァァン!
何かがまた飛んできた。
通信兵「……頭から激突してましたね。死にましたかね」
新たに出来たクレーターの中央がもぞもぞと動く。
ちびメイド「ぷあっ!!あーおもしろかったでございますです!!」
メイド「遊びじゃないでございます。しゃきっとせい!でございます」
ちびメイド「えー?ねーさまもあそびにきたくせにでございますですー」
メイド「うっ。ち、ちち違うでございます。アンシュ様に危険が無いように……」
通信兵「……私達も舐められましたね」
87
--丘--
戦場から離れた丘にアンシュ達はいた。アンシュは番犬にまたがり、剣豪達のいる町跡を目指している。
番犬「あの馬鹿者共め!!先走りすぎバウ!!」
どかっどかっどかっどかっ
アンシュ「……」
番犬「どうなされましたアンシュ様。何か思うところでも?」
アンシュ「……いや」
番犬「……アンシュ様」
アンシュ「なんでもない。急げ、メイドに全て持ってかれるぞ」
番犬「了解バウ!!」
88
--剣の町跡--
メイド「とりあえず、邪魔者には消えていただきたいでございます」
ブウウウン
メイドは両手に雷の魔力を纏わせる。
ちびメイド「ございますですー!!」
ちびメイドの場合は両手に止まらず、全身から雷を漲らせた。
ちびメイド「すきる、らいどうにんげんたいほう」
ボッ
剣豪「っ」
ギャチィィン!!
高速の特攻。剣豪は刀で撫でることにより、紙一重でかわす。
剣豪(硬い?……ありえねぇ)
メイド「あれをかわした!?」
ちびメイド「ほよよー!?」
ちびメイドは着地に失敗し、地面を転げ回る。
通信兵(剣豪様の魔剣で斬れないですって?……見たところ硬そうな外見はしていないし、雷属性に防御力上昇は無いハズ……)
剣豪(なるほど。接触時の判定が、防御力ではなく攻撃力になってやがんのか……全身凶器がそのまま鉄壁の防御に……やるじゃねぇか)
剣豪はメイド、ちびメイド両方に注意を向けつつ名乗る。
剣豪「俺は東の三強が一人、剣豪。王の命によりお前等を討つぜ!!」
通信兵「来たっ!メインかませ来た!!これで勝つる!!」
89
--剣の町跡--
メイド「東の三強……?大方この国の最高戦力ってところですかでございます」
剣豪「名乗られたら名乗りかえすのが礼儀ってもんだろ?」
剣豪はメイドに刀を向ける。
メイド「家畜に名前なんて名乗る奴はいないでございます」
そう言うとメイドは剣豪から通信兵に視線を移す。
メイド(……こいつはあまり強そうじゃないでございますね)
剣豪「け、そうかい。大した文化は無いみたいだな」
ヒュッ
剣豪が手首を返す。たったそれだけで、
ズバッ!
メイド「!?」
メイドの右肩が切り裂かれる。
メイド(中距離攻撃?……見えない刃とはうっぜぇでございますね……)
90
--剣の町跡--
ちびメイド「ねーさまー!いまおたすけするでございますです!!」
ちびメイドは後ろから剣豪に飛びかかる。完全な死角からの攻撃だったのだが、苦もなくかわされてしまう。
ちびメイド「ほよよー!!」
剣豪「スキル、斬魔」
ズバズバズバ!!
ちびメイド「ぎっ!?」
交錯した瞬間、剣豪は太刀を浴びせる。
剣豪(魔力を斬るスキルは有効か。お)
ダメージを食らったせいかはわからないが、ちびメイドの雷の鎧が解除されていた。
剣豪「好機」
シュ
ズバッ!
追撃にと放った風の斬撃は、割って入ったメイドによって防がれてしまう。
91
--剣の町跡--
ちびメイド「あいたたた~でございますです~」
メイド「ちびメイド、同時に畳み込みかけるでございます」
剣豪「はん」
メイドとちびメイドは二人がかりで剣豪に飛び掛かる。
シャシャシャシャシャシャ!!
メイド「!!全てかわして」
朝ズバッ!
メイド「あっ!」
ちびメイド「ねねねねーさま~」
ちびメイドの注意がメイドに向かった瞬間、
ズンッ!!
剣豪の刀がちびメイドの胸部を貫いた。
92
--剣の町跡--
ちびメイド「ごぼぼ~!!」
メイド(ありえない……技術や体術でどうにか出来るスピードじゃないでございますのに……む?)
メイドは離れた場所からこちらを見ている通信兵に気付く。
メイド(……く、なぜ今まで気付かなかったのか、微弱な電波を感じる……電波を剣豪に送りつつジャミングもしているでございます……)
通信兵(こっちみて睨んでるということは……ありゃりゃ、ばれちゃいましたか)
剣豪「ほら立てよ、お前はまだいけるだろ?」
剣豪はちびメイドを刀から抜くと放り捨てる。
ちびメイド「がふ~」
メイド「っ!!」
メイドは再び剣豪に向かっていく。
メイド「ああああああ!!」
シャシャ!!
しかし剣豪には擦りもしない。
93
--剣の町跡--
通信兵(雷属性の人形師だから出来る芸当、電波操り。私だって雷属性、見るだけならどんな速さにもついていける)
剣豪「しっ」
ズバッ!
通信兵(電波によるテレパシーで剣豪様に情報送信、同時に電力供給による機動力補助、そして無駄電波垂れ流しによって彼女らは処理落ち状態……)
メイド「くっ!!」
メイドは剣豪から距離を置き、通信兵に接近する。
メイド「お前から死ねでございます!!」
ドシュ
通信兵「ふふふ」
メイド「!!デコイ!?」
メイドが貫いたものは映像だった。
通信兵「申し遅れました。私、東の王国次期三強候補、通信兵と申します」
94
--剣の町跡--
ちびメイド「あうあうあう~。ねーさまー」
ちびメイドは立ち上がりメイドのもとに駆け寄る。這いよる。
這いよれ!
ぐしゃ
ちびメイド「あ、あれ?」
ちびメイドの体に赤い蔦が絡まっている。
ちびメイド「なにこれでございますです?」
???「こ~ろ~し~た~な~」
ちびメイド「背中から何か声が」
ちびメイドが振り向くとそこには、
???改め選抜兵の首「よ~く~も~こ~ろ~し~た~な~」
植木鉢に植えてやったハズの選抜兵の首が、ちびメイドの背中にまとわりついていた。首の切断面からは赤い蔦が無数に伸びている。
ちびメイド「ほ、ホララー!!!?」
95
--剣の町跡--
選抜兵「案外楽な任務だったな」
何食わぬ顔で、通信兵の横に立つ選抜兵。
通信兵「あら、生きてたんですか?てっきり死んだものかと」
選抜兵「の割りには全く驚いてないじゃないか」
通信兵「いえ、凄く驚いてますよ?場所が場所なら卒倒してますね」
選抜兵「よく言うぜ」
通信兵「あのちびっこいのに幻覚使い使ったんですか?一枚しか無かったのではないんですか?」
選抜兵「あぁ。だからこの戦いがすんだらまた捕獲しに行かなきゃならない。しかも亜種だからなぁ、あれ」
通信兵「面倒くさい職業ですね」
96
--剣の町跡--
選抜兵「さて、剣豪様にばかり戦わせてはな。私も行ってくる」
メイド「デコイばかりでどれがどれだかでございます!!」
悪戦苦闘のメイドの後ろから、剣豪の近づいてくる足音が聞こえる。
剣豪「もう詰みだ。素直に捕まりな」
メイド「断る……誰が人間などに!!」
選抜兵「そうか、それならお仕置きだ。ドロー!!」
メイド「!!」
選抜兵「俺はモンスターを一枚伏せ、ターンエンド!!」
メイド「……どいつもこいつもわけがわからんでございます!」
選抜兵「爆弾なめくじの効果発動!爆弾なめくじが敵と接触した時、爆弾なめくじは自爆する!」
メイド「これは!」
メイドの下半身には無数のなめくじが張りついていた。
メイド(モンスター、爆弾なめくじ……。人類の敵さえ利用するとは……400年の間に随分と戦闘方法が変わったでございますね)
ボンッ!!
97
--剣の町跡--
選抜兵「剣豪様、お疲れ様です」
剣豪「ん」
剣豪は刀についた血を払い、鞘に戻す。
カキン
剣豪「他にも仲間がいるんだろ?」
選抜兵「えぇ、後『二体』」
通信兵「こちらに向かってますね、あと三分程度です」
ズリズリ
三人が集まって話していると、砂煙の中からメイドが這い出て来る。
メイド「に、人間ごときにこのような!!」
メイドの両足は吹き飛んでしまっていた。
剣豪「やめろ、もうお前は戦えないだろが。そこでおとなしくしてれば、後で足付けて牢屋に入れてやる」
メイド「ふざけ……やがってでございます!!」
ちびメイド「ひぃぃ~!!むしってもむしっても終わらないでございますです~!!」
剣豪はのたうつちびメイドを眺めている。
剣豪「……にしてもやっぱりお前らの戦い方はしっくりこない……まるで北みたいだぜ」
通信兵「東の王国は直球タイプを好みますからね。私達のような変化球タイプは嫌われてばっかりです」
剣豪(まるで北の王の目論見通りのような気がするしな……)
メイド(……まずい。機動力を失った私ではどうにも出来ない……)
98
--剣の町跡--
アンシュ「……む」
番犬「まさか……人間などに遅れをとっていようとはバウ」
アンシュ達が戦場で見たものは、メイド達の無様な姿。
剣豪「……なんだ。親玉でも出てくるのかと期待してたんだが、こっちの侍女の方がましか」
剣豪は親指でメイドを指差す。
番犬「!!貴様!我が主をそんなゴミクソみたいな奴より弱いなどと、馬鹿にするのもたいがいにするバウ!!」
メイド「……お前が普段私をどんな風に思っていたのかわかったでございます」
ちびメイド「眼が~眼が~」
アンシュ「……なかなかあれだな。別にどうってことは無いとおもっていたが」
剣豪「?」
アンシュの体から黒い霧のようなものが立ちこめる。
アンシュ「……所有物を好きなようにされているのは不快だな」
ぎ
剣豪「!?」
選抜兵「!!」
通信兵「!?」
メイド「!!」
番犬「!?」
ちびメイド「はっ!!」
戦場にいた全ての生物は固まった。
胃袋の中に捕えられたかのような絶対的な圧迫感と
剣豪、選抜兵、通信兵(終わった……)
生の諦めを強制的に味わわされる。
99
--剣の町跡--
びりびりびりびりびりびりっ!!!
メイド(こ、これはスキル、威圧!!しかもこれほど強力な!!)
番犬(何十倍もの重力を感じる!!息すらも、出来ぬほどに!!)
ちびメイド「ほ、ほほほ、ほっ、ほよよーーーー!!」
アンシュ「……」
アンシュが一歩近づくたびに、
びりびりびりびりびりびりっ!!!!!
剣豪「っっっ!!」
大地震が起きたかのような衝撃が全身を貫く。
剣豪(こ、この俺が、この俺が動くことすら!!)
アンシュ「……やはり戦場というのはいいな、ぽこぽこと忘れていたものを思い出す……六属性複合生成魔法、闇色鎌」
アンシュの右手に漆黒の鎌が出現する。
メイド「!!」(……黒い……)
100
--剣の町跡--
スチャ
アンシュ「俺の従者を可愛がってくれた礼だ。命を狩り取ってやる」
剣豪(ぐっ!!こ、これまでか)
ビシャアアアアアアン
鎌を振り上げたアンシュに、横から雷が直撃する。
アンシュ「ぬっ!?」
アンシュが攻撃された方向に目を向ける。
??「……あれを食らってもなんともないのか」
?「大丈夫ですか!?皆さん!!」
駆け寄ってくる黒いフードを被った二人組。
剣豪「はっ!?いつのまにか動ける。ん?お前……」
?「……お久しぶりです剣豪様。恥ずかしながら帰ってまいりました」
剣豪(……大戦のどさくさで逃げだした人形か……)
??「キバ、やるんだな?」
?改めキバ「うん、お願い。私の故郷でこれ以上犠牲を出したくないのよ。力を貸して……魔法使い!」
??改め魔法使い「わかった。それがお前の望みなら」
キバって人造勇者か!!
相変わらず面白いな!!!
584:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/07/22(木) 01:14:50.00:mM9EAUo0相変わらず面白いな!!!
101
--剣の町跡--
キバ「じゃあ魔法使いはあのわんちゃんお願いね」
魔法使い「……力を貸せと言っておきながら、俺の受け持ちは犬の駆除なのかよ」
番犬「バウ!?」
剣豪「って、まてまてお前ら、何勝手に決めてるんだ。お前らなんぞじゃ話にならんぞ」
剣豪はキバを睨んで言い放つ。
メイド(……まずい……増援か。なんとか、なんとかしなくてはアンシュ様がまた!!)
ちびメイド「おねーさま~。まりょくがきどうさいていちギリギリでございますです~」
とてて
ちびメイドがメイドの傍らに走りよる。
メイド(……ええい、他に手段は無いようでございます!!)「ちびメイド!!私を食べるでございます!!」
ちびメイド「え?いいの……でございますです?」
じゅるり
102
--剣の町跡--
メイド「アンシュ様を御守りするにはそれしかないでございます!!さあ食らえ!!」
ちびメイド「おねーさま……わかりました。そのおもい、わたしがうけつぐでございいただきます!!」
がぶしゅ
ちびメイドは問答無用で頭にかぶりつく。
ちびメイド「!!」
がぶしゅ
がぶしゅ
ちびメイド「……」
ちびメイドは味わうように咀嚼し、そしてゆっくりと目を閉じた。
ちびメイド「……うめぇ」
メイド「トリコの真似はいいからさっさと食い尽くせでございます!!破のゼルエルにやられた弐号機状態はきついでございます!!」
片目の無い状態でメイドは叫ぶ。
ちびメイド「あ!おねーさまのせなかから、くいのようなものが!!」
メイド「出てない出てない!!」
番犬「人を捨てたメイドの力を見せるのかバウ?」
メイド「捨てないからっ!!……もう!!」
メイドはちびメイドの口の中に自ら入っていく。
ちびメイド「あ、あごご!」
通信兵「すごい光景ですね。てかこれ黙って見てていいんですかね」
103
--剣の町跡--
キバ「剣豪様、あれは本来人がどうこうできるものでは無いです。どうか私に任せて下さい」
アンシュ「……」
キバが剣豪を説得している間、アンシュはじっとキバを見ていた。
キバ「幸い不完全のようですから、不完成な私でもなんとかなると思うんです」
剣豪「……わけわからんこと言いやがって」
ひゅひゅっ
剣豪が刀を振ると、地面に大きな傷が出来る。
×
剣豪「却下だ、駄目に決まってる。これはこの国の問題であり、この国の被害だ。国を捨てて逃げた人間の意見なんかをパッと採用すると思うのか?」
104
--剣の町跡--
キバ「うっ……」
剣豪「ここで奴らをし損じれば更に被害が増える。黙って退いとけ」
魔法使い「……ごもっともです。でも!……では周りの従者は任せて下さい!」
剣豪「くどい。数は十分足りている」
通信兵「各個撃破は正直きつい感じがします剣豪様」
キバと剣豪の会話に通信兵が割り込んでくる。
選抜兵「同意」
剣豪「っ!軟弱者が!!」
通信兵(剣豪様は前時代の象徴ですからね……誇りとか玉砕覚悟に魅力を感じていそうですね)
選抜兵(私ら冷ややか世代じゃ理解できないな)
魔法使い「……キバ。しばらく見てよう」
キバ「!!……それしか、ないの……かな」
アンシュ(……あの女……何か変だ)
アンシュは自分の胸の中で、何かが蠢くのを感じる。
105
--剣の町跡--
剣豪「俺は男、選抜兵は犬、通信兵は女をやれ!」
選抜兵、通信兵「はっ!!」
番犬「人間ごときがサシだと?なめやがってバウ!!スキル、遠吠え!アオオーン!!」
番犬は遠吠えをあげた。
選抜兵「!?これは」
ジ、ジジ
すると全てのホログラムが消え、通信兵が姿を現す。
通信兵「魔力使用を……封じられた?」
番犬「軟弱な生き物め!!魔力が使えなきゃモンスターにすら勝てぬくせにバウ!!」
シュッ
番犬が駆け出すと、それに合わせるように剣豪が動いた。
番犬「ガウルルル!!」
剣豪「スキル、縮地」
だっ
番犬「!?」
ズバシャッ!!
一瞬で距離を詰めた剣豪は刀を振り抜き、番犬の右前脚を切り落とした。
番犬「ぎゅあああああ!!」
剣豪「あいにく俺の家系は魔力の才能がからっきしなんだよ」
106
--剣の町跡--
剣豪の背中を眺める選抜兵達。
選抜兵「剣豪様……やっぱり強いな」
通信兵「私は魔力使えないとなんにもできないですよ。選抜兵、貴女はまだ格闘出来るでしょ?犬は貴女の受け持ちなんですから」
選抜兵「あぁ、そうだな」
選抜兵は腰からナイフを抜き番犬のもとへ。
通信兵「私はどうしましょうか。んっ、やはり、魔力は使えない……え?」
通信兵は驚きの声をあげた。なぜならアンシュの手には、先ほど生成した鎌が消えずに残っているからである。
通信兵(……魔力は使えないはずだし、私が魔力で作り出した映像分身はかき消された……。だがあの鎌は依然、存在を保っている……)
通信兵は腕を組んで考え始める。
通信兵(生成魔法と言っておきながら転送魔法を行う、いわゆる偽装詠唱を使ったのか?いや、自分の力に自信を持つ彼らが小細工など使うはずもないですね)
キバ「あのー」
通信兵(あの犬の遠吠えが今の状況を生み出しているわけだが、果たして魔力使用禁止と魔力解除を同時に行えるのか?という疑問もありますね。禁止の時間はどれくらい?解除の対象は何レベルまで?まさか敵にだけ作用するなんてことは……)
キバ「あのー」
通信兵(ある属性だけを封じている……いやそれも無いですね、とするとやはり)
キバ「効果切れてるみたいですよ?」
すっごい色々考えていたら遠吠えの効果は切れていた。
107
--剣の町跡--
通信兵「あら……じゃあちょっとメイドっぽい人やっちゃいに行きますかね。映像魔法、イリュージョン」
通信兵がスキルを使うと、その場に10体の分身が出現した。
通信兵「私は火力無いんですけど、死にかけならなんとかなるでしょ」
通信兵がメイド達に視線を向けると、そこには口から足が飛び出している捕食光景。
通信兵「……もうほとんど食べちゃってますね」
選抜兵「さて犬、終わりにするぜ」
番犬「ふ、ふざけるな!!いくらフルパワーでないからといってお前らなんぞに!!」
番犬は三足で立ちあがる。
選抜兵「戦場なんだ、全力が出せないなんて当たり前だろ?それを含めて実力って言うんじゃないか?」
番犬「ッッ!!」
選抜兵「通信兵が魔法を使ったってことは効果切れか?」(一瞬だけ封じておいて、接近戦で終わらせる目論見か。戦闘スタイルが見えた
な)
アンシュ「……」
剣豪「さっきからどこずっと見てやがる」
剣豪はアンシュにゆっくりと近づいて行く。
アンシュ「……」
剣豪「あんなにやる気だったのに、どうしたんだよお前。投降する気になったのか?」
アンシュ「あいつが……欲しい」
108
--剣の町跡--
剣豪「あ?……はっ、わけえな」
ドシュッ
剣豪は踏み込んで一太刀を入れる。
アンシュ「っ」
ブシッ
浅くはあるが、アンシュの腕から血が噴出する。
剣豪「あまり眼中に無いようなそぶりはしないでくれよ……さびしいだろ?」
アンシュ「……お前らはもうどうでもいい。どこへなりと行け」
剣豪「っっ!!……」
アンシュのムシケラでも見るかのような視線に、剣豪は屈辱と激しい怒りを覚えた。
剣豪は二度、三度と刀を回すと、大地に思いっきり突き立てた。
ズン!!
剣豪「スキル、地烈!!」
バゴオオ!!!
アンシュ「!?」
アンシュ達の立つ地面が刀によって粉砕される。
それによってバランスを崩したのを見計らい、剣豪は一瞬で納刀し、そして
剣豪「スキル、居合!!」
ドブシュッっ!!
109
--剣の町跡--
番犬「アンシュ様!!」
剣豪(……まだ浅い)
さっきの斬撃よりも、格段に深く切り裂いた。
そこでアンシュは、ようやく剣豪を視界に入れる。
アンシュ「目的には……障害がつきもの……か。わかった」
アンシュは黒い鎌を構えて言った。
アンシュ「崩してやる」
びりびりびりびりびりびりっ!!!
剣豪(これはっ!!)
先ほどと同等、アンシュは威圧を使用。
だが剣豪達はスキルに完全に飲み込まれる前に、
剣豪、選抜兵、通信兵『はっっっ!!!!』
闘志によるきつけで乗り切った。
アンシュ「!?」
剣豪「何度も同じ手を食うかよ!!スキル、乱刃!!」
ドシュドシュドシュドシュ!!
連撃がアンシュに襲いかかる。
110
--剣の町跡--
通信兵「ちょおーっと大人しくしてて下さいね」
通信兵は両手を広げてちびメイドに近づいて行く。
ちびメイド「ふ、ふがふが!」
ちびメイドは口から足を出した状態でファイティングポーズを取る。
通信兵「っと、そういえば貴女も雷属性でしたね。麻痺は難しそうですね……じゃあ」
ちびメイドの後ろからもう一人の通信兵がいきなり出現する。
通信兵「頭ん中いじっちゃいましょう」
バリバリバリっ!!
ちびメイド「!!??」
ゴックン
その電撃のショックで、ちびメイドは口の中にあるものを飲み込んでしまう。
ぞわ……ぞわわっ
通信兵「!?」
何かを感じた通信兵の本体がその場から跳ね退いた。
通信兵(な、い、いきなり魔力量が、ば、)
バチバチバチバチ!!!
電撃とともにちびメイドの体が再構築されていく。手足が伸び、髪が増え、体つきが一回り成長した。
ちびメイド「す、すごい!生まれてこの方満たされたことの無い力が……力が体中に漲ってるでありますです!!……なるほど、この大き
さくらいのボディならフル充填も可能なんでございますですね~」
通信兵(化物……だ)
ちびメイド改め小メイド「勝機は我にアリ!!」
111
--剣の町跡--
小メイド「まずはお前だ!!」
小メイドは振り向きざまに手刀を繰り出す。
通信兵「う!!」
ヴォン
小メイドの手刀が通信兵を捉えた。
しかし通信兵の体は陽炎のように揺れて消えた。
小メイド「映像か……本体を捜し当てるのに大して時間はかからないけど……こんなのにかまけているのはもったいないでございますですね」
バシュ!!
小メイドは通信兵に構うのをやめることにした。その強化された足で大地を蹴り、一瞬でアンシュの横へと移動する。
剣豪「な!?」
ズバッ
そしてそのついでに、斜線上にいた剣豪の肩を引き裂いていた。
小メイド「アンシュ様、お守りいたしますです!!」
112
--剣の町跡--
アンシュ「いらん。お前等は過保護過ぎる。いざという時に自分で出来なくなったらどうするんだ」
小メイド「でもお母さんは心配で心配で」
アンシュ「母親面すんじゃねーっていつも言ってんだろ!!」
番犬「反抗期バウ……」
剣豪「ぐう……」
剣豪の右肩は大きく裂かれ、そこから大量の血が流れだしている。
剣豪(まだ……振れるか?)
剣豪はゆっくりと腕をあげてみる。激痛は伴うものの、振れないわけではなさそうだ。
剣豪(……この腕で奥義をたたき込めるか?腕は契れ飛ぶだろうが……)
113
--剣の町跡--
選抜兵(剣豪様が手傷を!)「おいわんころ、決着つけるぞ」
番犬「……慢心だったバウ」
選抜兵「ん?……」
番犬「いくら人間相手とはいえ、今のわしではお前らに遅れを取るバウ……」
選抜兵「……」(まずい、冷静になってきたか)
選抜兵は急いで番犬に切り掛かる。
ガギィン!!
番犬は振り下ろされた刄を氷の盾で防ぐ。
そして失った足を氷で代用し立ち上がった。
番犬「出し惜しみはせぬ、下位種とも今は思わぬ。全力で、命をとして貴様を殺す!!」
選抜兵「!!」
114
--剣の町跡--
ガリっ
剣豪は赤い果実を食している。それは体力を回復させる携帯食である。
剣豪「男同士の決闘を邪魔すんじゃねえよ家政婦」
小メイド「決闘?……ふふ、あくまで対等だと思い込んでいるのでございますですか」
べっ
剣豪は種を吐き捨てる。
剣豪(まだ完全に上だと思ってるのか……なら勝機が無いわけじゃねぇ)
剣豪は再び刀を沙耶に収める。
剣豪(スキル、融合、風)
リンっ
小メイド「……」
115
--剣の町跡--
小メイド「……変な闘気を発したと思ったら……いないようで……いる……?ジャミング型のスキル?」
小メイドは剣豪を眼で捕えている。だが、そこにいる気がしない。海面に映る月を見ているかのようで……。
小メイド「……面倒くさいでございますです。やってやるです!!」
アンシュ「まて」
小メイドが飛び立とうとした瞬間、アンシュが肩を掴む。
アンシュ「どうもとっておきを撃ってくるらしい。俺がやる」
小メイド「でもでも、万が一があったら……」
アンシュ「どいてろ」
ドン
小メイド「きゃう!!」
小メイドはアンシュに弾き飛ばされ、地面へ伏す。
小メイド「う、ううぅなんでこんな子に……」
番犬「母さんに当たるな!!」
アンシュ「芝居はいい!!」
116
--剣の町跡--
剣豪「いいのか?余裕ぶりやがって。死んでもしらねぇぞ?」
アンシュ「お前程度には殺されん。人間の限界というものも知っておかなくちゃな」
剣豪「……」
ヒュオオオ
荒れ地に風が吹く。
剣豪「……」
すると剣豪は姿を消した。
アンシュ「ぬ」
小メイド「!?アンシュ様?突進してきてますよ!?」
小メイドからは剣豪の姿が確認できるのだが、
アンシュ「?……見えん」
剣豪(……もらった)
剣豪はアンシュに向かって超スピードで跳躍し、刀を抜いた。
剣豪「奥義、天翔龍閃牙突回転剣舞六連!!」
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
117
--剣の町跡--
凄まじい剣撃の嵐の後、剣豪は自分の刀を手放した。
剣豪「ぐっ!!」
ブシャアアアア
自らの奥義の負荷に耐えきれず、剣豪の右腕は弾け飛ぶ。
剣豪「……どうだよ」
剣豪が砂煙の中に立っているアンシュを見つめる。
アンシュ「……中々だ」
血まみれのアンシュはそうつぶやく。
アンシュ「だが」
アンシュは人差し指で剣豪を指さす。
剣豪の腹部からは夥しい量の血液が流れ出している。
アンシュ「……適当に振ったらあたったようだ」
剣豪は口からごぼりと血を吐き、少しだけ口角を上げる。
剣豪「……あー、くそ」
ドサリ
118
--剣の町跡--
小メイド「くぅ~アンシュ様もこんなのに構うことないでございますですよ!!ボロボロでございますです!!」
アンシュ「いや、見た目ほどひどくはない。だがすごいな。自分を犠牲にしてでも放つ技とは……」
小メイド「そんなの私達だって、アンシュ様のためだったらいくらでも犠牲にできますでございますです!!」
アンシュ(役割とは違う……)「さて、食うか。メインディッシュの前の前菜みたいでやなんだが……まぁいいか」
アンシュが剣豪に近づき触れようとした瞬間、
キバ「剣豪様に触るな」
アンシュ「!?」
ドッ
アンシュの探知を振り切る速度でキバは接近、そして回し蹴りアンシュを蹴り飛ばす。
小メイド「!!あー!!不意打ちなんていけないんだ!!!」
アンシュ「……あぁ、やっぱりお前は……お前は違うんだな」
キバ「剣豪様が気絶した今、私が戦いを引き受ける!!」
119
--剣の町跡--
小メイド「さ、させませんでございますです!!アンシュ様は疲れてるし怪我してるんでございますですよ!!」
アンシュ「うるせぇどっかいってろ」
小メイド「きゃうん!!」
キバ「魔法使い、あっちはお願い」
魔法使い「引きうけた」
魔法使いは小メイドに向けて掌を向ける。
魔法使い「対単体雷属性魔法、レベル4」
ビッシャアアアアアン!!!
小メイド「ぎいいいいいいいん!!い、痛いですーー!!同属性でもここまで高威力だとととととと!!!」
小メイドのことなぞ全く気にせずアンシュは口を開く。
アンシュ「お前は……何者なんだ?」
キバ「……君と同じだよ」
120
--剣の町跡--
アンシュ「俺と?」
キバ「多分……どこで作られたのか知らないけど、きっと君も私達と同じ……」
キバは顔を伏せる。
アンシュ「……ふん、感覚でものを言ったのか。まぁ確かではないが、お前も感じるということはそういうことなんだろう。お前は……」
アンシュの話の途中でキバは両手を天にかざす。
キバ「六属性複合攻撃魔法、六色剣」
バシュッ
六色の光の輝きとともに剣が出現した。
アンシュ「……」
キバ「手加減はしない、出来ない。だから早々にけりをつける!!」
アンシュ「……やはり」
121
--剣の町跡--
番犬「なっ!!あの力は……」
選抜兵「余所見とは余裕じゃないかっ!!」
番犬「ぬ!」
ガギイイン
番犬(あの力……あの力がなぜ!!くっ、今回は例外が多すぎる……よし、やつに頼むバウ!!)
番犬は一旦選抜兵との距離を置く。
番犬「とぅおるるるるるん、るるるるん」
選抜兵「……へ?」
番犬は口で呼び出し音を鳴らす。
番犬「とぅおるるるるるんん。どこだっけ受話器。あ、あったあった、股間についてた。よし、もしもしバウ。出るがいいナビ子」
ガチャ
ナビ子『はーい、ナビ子ちゃんでーす!現在サイバトロンと交戦中ー!御用がある方はー、伝言を残しておいてね!!』
番犬「ガッデム!!」
122
--剣の町跡--
小メイド「舐めないでくださいでございますですよおおおお!!行きます!お姉さま!!」
どこからか、(よくってよ)、という言葉が聞こえる。
ギュン
魔法使い「!!早い!!」
ギャリイイイイイン
魔法使いはいつのまにか生成していた雷の鎌で手刀を弾く。
小メイド「ぐぅ!?私のスピードを防いだ!?」
魔法使い「腐っても元王国軍団長だ。いや、腐っていたのはあの頃か」
123
--剣の町跡--
キバ「あああああああああああああ!!」
ギンギンガギイイン!!
アンシュ「ふはっ、ふはっははははははあ!!!それだそれだそれだああああああああ!!」
キバとアンシュの武器による剣戟。飛び散るのは火花では無く、圧縮された魔力の光。
キバ(この子……)
アンシュ「ふははははは!!」
ズバッ
アンシュ「ぐふっ?!!」
キバ「……あんまり強くない?」
124
--剣の町跡--
キバ(覚醒も何も、全然エネルギーが足りて無いんだ!!ならば!!)
キバは六色剣を構え直す。
キバ「奥義、キバスラッシュ!!!」
アンシュ「!!」
ズドシャアアアアアアアアアアアアアア!!!!
天まで届く赤い閃光がアンシュの体を引き裂いた。
小メイド「!!??」
番犬「!!!!あ、アンシュ様ああああああああ!!」
アンシュ「ぐ、ぐああああああああああああああああああああああ!!!!」
125
--剣の町跡--
番犬「アンシュ様あああああああ!!」
選抜兵「おっと!!」
ガギイイン!!
選抜兵「俺の今の仕事は、お前をあいつの傍にまで寄らせないことだな」
番犬「おのれ!!邪魔をするな!!移動速度上昇、レベル2!!」
シュン
番犬は風のように選抜兵の横をすり抜けて行く。
選抜兵「そうは行くかよ!!移動速度下降、レベル3」
ぎゅうぅぅううん
番犬「!?」
番犬はいきなり失速する。そして
ズバッ!!
番犬「ぎゃああうんん!!」
126
--剣の町跡--
小メイド「どけええええええええええ!!」
魔法使い「雷属性魔法、雷獄」
魔法使いから放たれた雷は、鎖のように形状を変えて小メイドの四肢を縛り上げた。
小メイド「ぐっ!!!!ぎゃぎゃああああああ!!!!」
そして雷による電撃が流れ始める。
魔法使い「同属性であろうと、軽減しきれまい」
小メイド「きさ、きさまあああああああああああ!!」
バリバリバリバリバリいいいい!!!
127
--剣の町跡--
アンシュ「がはっ、はっ、はっ、はっ」
キバ「!?……全力で放ったのに……倒しきれなかった?」
アンシュ「はっ、はっ、はっ……はははははは!!」
アンシュは血まみれの顔を振り乱し喜びの声を上げる。
アンシュ「似ている!!お前は俺に良く似ている!!君は僕に似ている」
アンシュはキバに向かって飛びついた。
キバ(しまっ!!)
がぶしゅっ
キバ「っ!!!!」
アンシュの歯がキバの腹部に噛みついた。服の防御力など意に介さず、その柔肌を問答無用で引きちぎる。
ぶしゃああああ!!
キバ「あああああああああああ!!」
128
--剣の町跡--
魔法使い「!?キバ!!大丈夫か!?」
キバ「はあっはあっはあっ!!っく、だ、大丈夫……」
キバは横腹を押さえて片膝をつく。
キバ(この子……私を食べた?……私のことを、頭部が菓子パンのマゾいヒーローと勘違いしたわけではなさそうだけど)
ドクドクドクドク
キバ(出血がまずい……これは十二分に致命傷だ……迂闊だったよ)
アンシュ「ぐっちゃぐっちゃぐっちゃ……ごくん」
アンシュはキバの肉の全てを咀嚼し飲み干す。
アンシュ「……これだ……見つけた」
キバ「……?」
アンシュ「俺が不完全な理由がわかった。俺は、俺はお前みたいなやつを食って完全体になるんだ」
129
--剣の町跡--
キバ「……っ!!」
アンシュ「お前、さっき言っていたな?『私達と同じ』と。ということはお前と同じようなものは他にも何人かいるのだろう?」
キバ(まずい……この子、今私からごっそり魔力を奪っていった……。しかもパワーアップの仕方がまずい!!私みたいな人造勇者を片っ端からこの子が食べたら……本当の魔王が生まれる!!)
アンシュ「なるほど。お前らは俺のパーツだったのだ。さぁ、もっと寄こせ、足りぬ足りぬ足りぬ!!」
キバ「……駄目みたい」
魔法使い「キバ!?」
魔法使いが完全にキバとアンシュの戦いに注意が向いている中、小メイドはなんとかしようともがいていた。
しょuめイド「ぐぎ、ぐぎぎぎぎ」
キバ「このままの状態じゃ勝てない……みたいだ」
魔法使い「!!駄目だキバ!!それを使っては!!」
キバ「……ごめん。でも使うしかないよ。この子を止めるには。東の王国を守るには。魔法使いを……」
そう言うとキバは腹を押さえるを止め目を瞑る。
キバ「……全制限解除、魔王化発動!!」
130
--剣の町跡--
??「オオオオオオオオオオオオオ!!!!」
キバだった者は黒い魔力に包まれる。傷は一瞬で修復され、黒い鎧を身にまとう。
アンシュ「お、お、おおおお!!」
??(疑似魔王状態……あまり長くはいられない……一気にケリをつける!!)
アンシュ「早く俺もそんな姿になりたああああああああああああああい!!!」
??改め疑似魔王キバ「ああああああああああああああああ!!」
キバとアンシュは互いに急加速し、激突。
ズドオオオオオオオオオオオン!!!!
アンシュ「ぐべえええええ!!!」
アンシュの一撃をかわしたキバの右ストレートがアンシュの顎を打ち砕く。
131
--剣の町跡--
番犬「アンシュ様あああああああああ!!」
疑似魔王キバ「ああああああああああああ!!!!」
ゴッ!!
岩をも砕く拳。それを受ける度にアンシュは吹き飛んでいく。
アンシュ「ぐふっ!!」
アンシュが地面を転がる。勢いが止まってアンシュが顔を上げると、
ドゴ!!
アンシュ「ごぶっ!!」
一瞬で距離を縮めたキバの蹴りが炸裂する。
アンシュを宙に蹴りあげたキバは、魔力を両手に溜める。
疑似魔王キバ「黒雷属性魔法、レベル4」
稲光を発する黒い球体が二発アンシュに直撃する。
どごおおおおおおおおん!!!!
132
--剣の町跡--
ドサっ
アンシュは焼け焦げた匂いを発しながら地面に墜落した。
アンシュ(ぐ、ぐ……想像以上だ……まずい、こちらも余裕が無くなってきた……)
疑似魔王キバ「!?耐えた?」(やっぱりこの子不気味……なんでかな?今のだって耐えられるとは思えないのに……それにまた魔力量が変動した気がする?)
キバは左を足に力を込める。
疑似魔王キバ「確実に仕留める!!」
アンシュ「スキル、威圧!!」
ズズズウズン!!
疑似魔王キバ「くっ!?」
スキルが発動した瞬間、キバは地面に叩きつけられる。
133
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「い、威圧?なんで、こんな強力な!!」(それに魔王化してる私にこんなスキルが効くわけないのに)
アンシュ「魔力も、体力も残り少ない……そろそろお前を!!」
疑似魔王キバ「!?う、うおおおおおおおおおおお!!」
バチィン
アンシュ「!?俺のスキルを破っただと!?」
キバはスキルを破るとすぐに次の準備に映った。
キバの左足に強大な魔力が纏わりついていく。
疑似魔王キバ(行動時間が……あまりない)「これで、これで終わらせる!!」
キバが更に膨大な魔力を注ぎ込むと、左足は黒い光を放ち始める。
魔法使い「!!キバああ!!駄目だ!!!」
疑似魔王キバ「う、ぐうう!!!」
アンシュ(す、吸いこまれるような闇!!俺が、一歩たりとも動けぬ!!)
134
--剣の町跡--
?「よくもわたしをしばりつけやがったでございますですね!!」
魔法使い「!?」
後ろからの声に反応し、振り向こうとすると、
ドブシュッ!!
魔法使い「がふっ!?な、なにっ!!」
一回り小さくなった小メイド、いやちびメイドの腕が魔法使いの腹を突き破った。
?改めちびメイド「おかげでずいぶんよわっちくなってしまったでございますですよ!!」
魔法使い「そんな、あの鎖が?」
魔法使いが確認すると、そこには小メイドの四肢が繋がれたままだった。
ちびメイド「じせつ、ってやつでございますですよ!」
ズボッ!!
魔法使い(で、でたらめだ……体のパーツを失っても、残った部分で小型化したのか?)
腕を引き抜かれた魔法使いは倒れこむ。
ドサリ
135
--剣の町跡--
選抜兵「!!やばい感じがするな。通信兵!!」
通信兵「なんでしょう」
選抜兵「ってずっといたのかよ!?」
通信兵「ずっと見てましたよ。最も本体はもうずいぶん遠くまで行っていますが」
選抜兵「逃げてるのかよ!!帰ってこいよ!!」
通信兵「おや?」
選抜兵「……どうした?」
通信兵「あ、いえ、本体の方の話なんですけど、褐色人がそちらに走っていくのを見かけたもので」
選抜兵「??そんなのどうでもいいだろ」
通信兵「まぁ、そうなんですけど」
番犬「ぐ、ぐぐううう……」
136
--剣の町跡--
チュン
選抜兵「!!!!!」
弾丸のように高速で飛んできたちびメイドの手刀が選抜兵を斬る。
ドブシャアアアアアアアアアアア!!!
選抜兵「がああああああああああ!!」
着弾と同時に両手を刎ねられ、選抜兵が倒れきる前に、
バゴベギ
選抜兵「!!!」
ちびメイドの拳が顔面を破砕した。
ちびメイド「ばんけんさん!!あんしゅさまをつれてにげて!!」
137
--剣の町跡--
番犬「ひゅー、ひゅー、ご、ごふ、こんなボロボロのわしにそんなことを頼むのか?お前が連れて逃げればいいバウ。時間稼ぎはわしがやる」
血まみれの番犬はちびメイドを見上げて言う。
ちびメイド「わたしはこれからじばくするばう!!あ、まちがえた!!ございますです」
番犬「……自爆?」
見るとちびメイドの体は発光している。
番犬「……オーバーロードか。馬鹿め……」
ちびメイド「さぁ!はやく!!じかんはないでございますですよ!!」
番犬「っっ」
138
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「力は……溜まった。これで君を殺す」
アンシュ「ぐ、ぐっ!!」
キバの左足は圧倒的存在感を放っている。周囲の空間を歪め、全ての物体を引きずり込もうとしている。
ちびメイド「あんしゅさまああああああ!!」
疑似魔王キバ「!?」
急接近してきたちびメイドを、キバは左手で地面に叩きつける。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
ちびメイド「ぐはっ!!!」
地面にひびを入れるほどの一撃を受け、ちびメイドの頭部から大量の血が噴出する。
疑似魔王キバ「邪魔をっ……しないでっ!!」
ちびメイド「し、しないわけが……ないでございますです!!」
ちびメイドは起き上がると疑似魔王キバに飛びついた。
疑似魔王キバ「!!」
ドゴッ!!!
ちびメイド「!?」
飛びついて来た所をキバは右足の膝蹴りで応戦する。
139
--剣の町跡--
アンシュ「おい、ちびメイド!何してんだ!」
ちびメイド(つよい……このおねえさんばけものでございますです。たったにはつでわたしのたいりょくをここまで……でも!!)
ちびメイドはキバの左足に纏わりつく。
ちびメイド「あんしゅさまだけはころさせないでございますです!!もう、こんどこそは!!」
魔力が溜まりきった左足に直接触れることでちびメイドの体は悲鳴をあげている。
ビチッブシッ
疑似魔王キバ「っく!!」
ギュイイイン
キバの左の掌に寒気が走るほどの魔力が集まっていく。
疑似魔王キバ「足を離しなさい……魔王は、自分の魔力ではダメージを受けません。だから貴女を消し飛ばすほどの威力の魔法を放っても私はノーダメージです。だから」
ちびメイド「いやだ!!」
アンシュ「……ちび……メイド」
140
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「そう……ですか。なら!!!」
キバの魔力が集束していく。
ちびメイド「うっ……」
ちびメイドは自分の上で発射されようとしている砲台を見上げる。思わず体が竦み、震えあがる。
疑似魔王キバ「六属性複合攻撃魔法、六色砲!!」
ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
ちびメイド「あ、ぐ、があああああああ!!!!!!」
ドオオオオオン!!
アンシュ「お、おい!!」
照射され続ける魔力。キバの言った通り放つ本人は無傷、しかしちびメイドは外皮を破壊され、地面は抉られていく。
ドオオオオオン!!
141
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「うっ!!」
嫌な匂いが戦場を満たす。その発信源はちびメイド。
ちびメイド「え、えへへ……た、たえられました。や、ややややっぱ、あんしゅさま、が、じょうぶにうんで、くれたから、でございます、です」
外皮は消し飛び筋肉もまだら。活動ギリギリの状態になっても、ちびメイドはキバの左足にしがみついていた。
ちびメイド「あんしゅさまは、ころさせませんでございますです!!」
疑似魔王キバ「あ、あが、あああああああっ!!」
キバは突如頭を抱えて苦しみだした。
ちびメイド「!?い、いまれす!!ばんけんしゃん!!」
番犬「!!」
番犬はアンシュの服を咥えるとその場を走り出した。
アンシュ「!?お、お前!?なにをしている!!」
142
--剣の町跡--
アンシュ「聞いているのか番犬!!まだあいつが、俺の従者が戦っているのだ!!」
番犬「……」
アンシュ「戻れ!!番犬!!」
番犬「……もしそれがあの得体のしれない女を食うためであるのならば、引き返すもよしとしましょうバウ」
アンシュ「……なに?」
番犬「従者を助けるために主の身を危険に晒す?なんですかそれはバウ」
アンシュ「なにを……」
番犬「貴方は魔王になるのではないのかバウ!?それともあなたはまた!!」
番犬は何かを言おうとしてやめた。
番犬「……ん?あれは、ブラが迎えにきたようですバウ」
ブラ「はっ、はっ!!」
ブラはこちらに向かって走って来ている。
番犬「丁度良い、あいつも連れてさっさと逃げますバウ」
143
--剣の町跡--
疑似魔王キバ「あ、アンタノせいで、やつを、ニガシてしまった……」
ちびメイド「っ!?」
髪の毛の間から見えるキバの瞳を見て、ちびメイドは凍りつく。
だがちびメイドは恐怖を振り払った。
ちびメイド「え、えへへ。ぶいっでございますです。このしょうぶ、わたしのかちでござ」
ガシッ
キバはちびメイドの頭部を鷲掴みにする。
疑似魔王キバ「あんた、自爆する気ダネ?魔力ガ暴走を始めてイル」
キバはちびメイドを空中に放り投げた。
ちびメイド「ふあっ!!」
疑似魔王キバ「ふふふ、コノママ生かしておけばみんなにも被害がオヨブし……どの道アンタにはニガシタ責任を取ってもらうツモリだったけどさっ!!」
キバは跳躍し、ちびメイドに接近する。
ちびメイド(あんしゅさま、どうか、どうかおげんきで)
疑似魔王キバ「魔王技、キバキック!!」
魔王技なのにキバキックってどうよ。
676:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:20:59.96:szepCx20144
--盾の町--
翌日。
剣豪「う、うむ?」
衛生兵「気がつかれましたか!?剣豪様!!」
剣豪が目を覚ますとそこは剣の町の隣に位置する盾の町だった。
衛生兵「通信兵が首都から応援を呼んだのです。もう少し遅かったら危なかったかもしれません」
剣豪「……お、おおそうか。そういやあのふざけた敵はどうなったんだ?」
衛生兵「それは選抜兵が一人で倒したとのことです!いや、我が国の若い連中も捨てたものではないですね!!」
剣豪「んう?」
145
--盾の町--
剣豪「おい選抜兵」
選抜兵「なんでしょう剣豪様。この英雄に向かって」
ドゴッ
選抜兵「ごほっ!?お、俺女っす!女っす!!」
剣豪「うるせぇ。あいつらを倒したのは……キバ達か?」
選抜兵「……」
選抜兵はきょろきょろと辺りを見回す。
剣豪「心配すんな、俺しかいねぇよ」
選抜兵「そうですか……。えぇそうです。彼女達があの吸血鬼達を倒したようです」
剣豪「……っち、手出しすんなって釘さしておいたのに。で、やつらは?」
選抜兵「……私なりの感謝の気持ちです」
146
--盾の町--
剣豪「……なるほど、手を貸してくれた代わりに、やつらは今回のことに関与していない、いやこの国に帰って来てすらいない、ってことにしたのか」
選抜兵「はい。彼女たちは追われる身ですから」
剣豪(……甘いな。情なんて関係ねぇっつーのに)
剣豪は頭をかきむしる。
剣豪「で、お前はお前で手柄を一人占めっと」
選抜兵「うっ」
剣豪「そりゃぁ天下に名高い剣豪すら負ける相手を、一人で倒したとくりゃぁ、さぞいい手柄にならぁな」
選抜兵「な、ななななんのことですかな」
剣豪「はぁ、まぁいいや、んで、キバ達はどこにいるんだ?今」
選抜兵「……それは」
剣豪「疑ってんじゃねぇ。何もしねぇ。てか隠そうとすんじゃねぇぞ?パワハラ使うぞ?」
選抜兵「しょ、処女を奪っただけでは飽き足らないと!?」
剣豪「してません」
147
--盾の町--
剣豪「吸血鬼達が住み着いていた洋館……ねぇ。なんでんなところに」
選抜兵「さぁ、あまり人のいないところで療養したいんじゃないですか?一応彼らは賞金首ですし」
剣豪「……まぁいいや、吸血鬼もいなくなったことだし、王都へけぇるぞ」
選抜兵「?あ、あぁそうか、言って無かったですね」
剣豪「?」
選抜兵「吸血鬼は逃げたそうです」
剣豪「……は?」
148
--丘の洋館--
ベッドに横になっているキバの下へ、魔法使いが水の入ったコップをもってやってくる。
魔法使い「大丈夫か?」
キバ「う、うん。ちょっとぼーっとする」
キバは虚ろになった目でコップの中の水を眺める。そしてゆっくりと口をつけた。
魔法使い(反動が……でかいか)
キバ「あ、そうそう、もう無理しないでいいよ?いつもの魔法使いに戻って」
魔法使い「いや、そういうわけには……」
キバ「魔法使いまで無理して倒れたら元も子もないでしょ?」
魔法使い「……」
魔法使いは一旦天井に目線をやり、再びキバへと戻した。
魔法使い「……デュクシデュクシwwwwwwwwwwww」
やっぱりかwwwwwwww
685:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/08(日) 01:26:56.98:z7kjZESO魔法使いwwwwwwww
いつもキバの前だと元通りなのかwwwwww
686:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/08(日) 13:01:45.13:0pOWqpM0いつもキバの前だと元通りなのかwwwwww
デュクシwwwwwwデュクシwwwwwwwwww
682:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/08(日) 00:54:07.19:szepCx20149
--海原--
くあーくあー
船の甲板にカモメが止まり鳴いている。
ざざーん
潮風が心地よく響いている。
アッシュ「……」
アッシュはナイフを研いでいる。
レン「にゃーにゃー」
ツインテ「わわ、どうしたんですかレンさん?」
レンはツインテに纏わりついている。
ポニテ「ん、んんー!!」
ポニテは水着姿で船首に仁王立ち。
ポニテ「まだ船にのって二日間のはずなのに、一か月以上船に乗ってる気がする!!なんでかなっ!!なんでかなっ!!」
150
--海原じゃないよね、船のほうがあってるよね--
ポニテ「ふああぁ。あり?眠くなっちった……」
アッシュ「またかよ。お前昨日一日中寝てたじゃないか」
ポニテ「寝る子は育つんだよ?そしていつかむっちんプリンになるのだ!!」
アッシュ「はいはい」
レン「すー、すー」
レンはツインテの膝に抱きつくようにして眠っている。
ツインテ「平和ですねぇ。……これがたんなる旅行とかだったらよかったんですけど……」
ツインテはレンの頭をやさしくなでる。
ポニテ「あっ!!レンちゃんばっか膝枕ずるい!!私もする!!」
ツインテ「え!?か、勘弁してくださいっ!!」
アッシュ「……ごくり」
151
--船--
ツインテ「こ、ここはもう一杯なんです!!そ、それならアッシュ君に膝枕してもらったらいいじゃないですかっっ」
アッシュ「なん……だと?」
ポニテ「あー……うん、それでいいやっ!!」
アッシュ「ふざけんな!!スキル、インビジボォ!!」
ブゥン
アッシュは姿を消した。
ポニテ「あっ!!アッシュ君、かくれんぼしたかったんだね!!よぉおし!!」
ツインテ「アッシュ君……そこまで嫌だったんですか」
152
--船--
ポニテ「どこだどんどこどーん!!」
ポニテは船の中を駆けまわっている。
??「お譲ちゃんや、元気がありあまってるようじゃな」
漆黒のローブに身を包んだ老婆がポニテに話しかける。
ポニテ「ん?えへへ、だって船の中退屈なんだもんー」
??「そうかい。じゃぁおばあちゃんが何かお話をしてあげようかねぇ」
老婆はそう言って本を二冊取りだした。
??「赤い本と黄色い本、どっちがいいかえ?」
①じゃぁ赤ー!!(番外編ss・魔法使いに大切なもの)
②むむ?黄色にしようかなー?(番外編ss・isの踊子)
③知るかばばぁ、ただでさえ変なやつが出てきたせいで私達の活躍が130もふっとばされたんだ。主人公だってのにこれ以上影が薄くなってたまるか。海の藻屑と消えろ。(そのまま進行)
・魔法使いに大切なもの
魔法使いとキバの放浪の旅を書きまふ
・isの踊子
勇者と踊子の出会いを書きまふ
※どちらも少量です。
考える時間も欲しいので10時までに多かったものを書かせていただきたいと思います。それではっ!
702:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/11(水) 15:58:02.35:kTye4LIo魔法使いとキバの放浪の旅を書きまふ
・isの踊子
勇者と踊子の出会いを書きまふ
※どちらも少量です。
考える時間も欲しいので10時までに多かったものを書かせていただきたいと思います。それではっ!
④隠し持ってる青いの!!(番外編ss・戦士の最後
・・・ではなく①で
703:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/11(水) 16:32:28.81:cXdyWbU0・・・ではなく①で
⑤そ、その禍々しい黒色の本は!(番外編ss・盗賊とその嫁の日常
と、思ったがせっかくなので俺は①の赤い本を選ぶぜ!
704:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/11(水) 16:53:00.15:axVQH0k0と、思ったがせっかくなので俺は①の赤い本を選ぶぜ!
はげしく⑤に同意
しかし①かなww
705:V1PにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/11(水) 17:21:28.79:bgQodYU0しかし①かなww
お前ら本当に魔法使い好きなのねwwwwwww
①で
706:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/11(水) 17:50:20.93:axVQH0k0①で
でも多分だが一番盗賊が好きだよな?
少なくとも俺はそう
707:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/08/11(水) 18:20:51.94:ETIFWBoo少なくとも俺はそう
>>706
同意するが今回は①だな
728:Qw0 ◆7b3JfpIY/2:2010/08/11(水) 22:13:30.94:/TFzTwg0同意するが今回は①だな
153
--船--
ポニテ「知るかばばぁ、ただでさえ変なやつが出てきたせいで私達の活躍が130もふっとばされたんだ。主人公だってのにこれ以上影が薄くなってたまるか。海の藻屑と消えろww」
??「えっ!?」
ポニテ「あ、違います違います!!じゃぁ……赤の本がいいなぁ」
??「い、今のセリフはなんじゃったのか……ま、まぁよしとしよう。それでは始めるぞい」
『魔法使いに大切なもの』
ポニテ「どうでもいいけど、おもっくそタイトルぱくってるね。ちゃんとタイトル通りの話になるのかなっww」
Qw0『……』
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パクリょくなぃ
でも前作の内容忘れた…超大作だな
続き楽しみだというのにな
今週に入ってコレやっとプロローグが終わったよw
ここから先かなり長いけど皆追いついてくるべき
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1326724911/