- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 17:53:01.26:yQfOggvT0
姉「おはよ」
弟「おう」
姉「ごはんできてるよ」
弟「あんがと」
姉「バター半分だけ塗っておいたから」
弟「さんきゅ」
姉「制服、いつものとこね」
弟「制服?」
姉「どしたの?」
弟「なぜに制服姿?」
姉「?」
弟「今日、日曜」
姉「うそ」
弟「ほんと」

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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 17:55:34.06:yQfOggvT0
姉「しまった……」
弟「どんまいどんまい」
姉「お弁当まで作ったのに」
弟「テレビにみのさん居ないでしょ?」
ピ
姉「本当だ、黒くない」
弟「うん」
姉「コレ、どうしよう」
弟「せっかくだから後で食べよ」
姉「うん」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 17:58:05.83:yQfOggvT0
モグモグ
弟「ん……この味は……」
姉「どしたん?」
弟「お袋の味」
姉「本当?」
弟「袋は袋でもコンビニの袋だけど」
姉「んー」
弟「何点すか?」
姉「60点てトコ?」
弟「厳しいすな」
姉「この煮豆どう?」
弟「100点」
姉「あんがと」
モグモグ
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:01:39.15:yQfOggvT0
弟「点数と言えば」
姉「うん?」
弟「この前の期末テスト、難しかった」
姉「そうね、平均が赤点だったもんね」
弟「ますます数学が嫌いになった」
姉「中学の時は理数系だったのにね」
弟「理科は好きだけど高校上がってから数学は苦手になったなぁ」
姉「あんた陸上ばっかりやって勉強しないから」
弟「確かに」
姉「自業自得ね」
弟「厳しいすなー」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:04:24.25:yQfOggvT0
弟「ん、コーヒー淹れるけど飲む?」
姉「ミルク半分くらい入れて」
弟「いつも思うけどそれコーヒー違うよね」
姉「どう違うの?」
弟「カフェオレって言うんじゃない?」
姉「んー? コーヒーとどう違うのん?」
弟「さあ? 球の大きさが違うだけで呼び方が変わる球技もあるくらいだし」
姉「テニスとテーブルテニスか」
弟「どっちかと言うと野球とソフトボール?」
姉「ふむ」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:06:05.49:yQfOggvT0
ズズズ
姉「野球の練習でさ、ティーバッティングってあるよね」
弟「あるね」
ズズズ
姉「ティーバッティグとティータイムって似てるよね」
弟「どこが?」
ズズズ
姉「一人より二人の方がうまくなる」
ズズズ
弟「ん、たしかに」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:09:01.10:yQfOggvT0
姉「ご馳走様」
弟「おう」
姉「んー」
弟「あん?」
姉「なんでもなーい」
弟「へんなやつ」
姉「ひどーい」
弟「ところでいつまで制服姿?」
姉「ん、着替えてくる」
パタパタ
弟「いってら」
パタパタ
弟「どしたん?」
姉「覗かないでよ?」
弟「アホか」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:12:26.02:yQfOggvT0
姉「絶対、絶対覗いちゃだめだからね?」
弟「念押しされると逆にやってみたくなるのは人間の習性らしいよ」
姉「そか……あ」
ピーン
弟「どしたん?」
姉「覗いていいからね?」
弟「中学あがるまで一緒に風呂入ってたんだし今更裸見てもなぁ」
姉「むー」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:17:02.58:yQfOggvT0
姉「ねぇ」
弟「ん?」
姉「ブラジャーどこ?」
弟「何色の?」
姉「黄色」
弟「あー、洗濯中」
姉「んー」
弟「つけなくてもいいのでは」
姉「お姉ちゃんだから許すけど、他の女の子に絶対言ったらだめよ?」
弟「ん、わかった」
姉「じゃあ、でかけてくる」
弟「ちょっと待て」
姉「ん?」
弟「そのままで?」
姉「そのままとは?」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:18:39.46:yQfOggvT0
弟「いやだから……」
姉「うん?」
弟「その」
姉「?」
弟「あーもー! ちょっと待ってろ! ドライヤーで乾かしてくるから」
姉「わーい、ありがと」
弟「はぁ……」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:21:41.19:yQfOggvT0
ガー
弟「こんにちは、日曜の朝からドライヤーで姉の下着乾かす弟です」
ガー
弟「……うへぇ、生乾き」
ガー
弟「こんなことしてると万が一でも下心が……」
ガー
弟「沸かないんだよなぁ……」
ガー
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:23:26.98:yQfOggvT0
弟「ん、乾いた」
姉「ありがと」
弟「ほれ」
姉「ん」
ヌギ
弟「ばっ! ここで着けんな!」
姉「ん~? 裸見ても何とも思わないのでは?」
弟「うるせぇよ」
バタンッ
姉「あら、反抗期?」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:26:17.64:yQfOggvT0
弟「あれ……? 今なんで?」
Prrrrrrrrrr......
弟「やべ、部活の時間忘れてた」
ガチャ
姉「弟、さっきは──」
弟「悪いねーちゃん、部活行ってくる、用事なら後で」
姉「ん」
弟「帰り6時」
姉「ごはんは?」
弟「食べる」
姉「了解」
弟「いってきます」
姉「忘れ物は?」
弟「ない」
姉「いってらっしゃ~い」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:29:07.93:yQfOggvT0
バタン
姉「んー、弟君居ないと暇になっちゃうな」
チクタク
チクタク
姉「んー、ん?」
姉「これ、あのコ。スパイク忘れてる」
姉「もー、しょうがないんだから」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:30:47.17:yQfOggvT0
姉「ガスの元栓よーし」
姉「戸締りよーし」
姉「持ち物よーし」
姉「それじゃ、弟の忘れ物を届けに3000里、行ってきます」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:34:30.33:yQfOggvT0
姉「んー、毎日自転車で通ってるはずなのに日曜日に学校に行くってなんだか新鮮だなぁ」
姉「風が気持ちいー」
姉「んー」
姉「そうだ、せっかくだからいつもと違う道で行ってみようかな」
姉「あ、おいしそうなパン屋」
姉「すみませーん、これとこれくださーい」
「はーい、420円です」
姉「ありがとうございます」
「また来てねー」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:37:52.86:yQfOggvT0
パクッ
姉「んー、美味しいっ」
姉「なんだろうこのチョココロネ、宇宙みたいな形してる」
姉「スペースコロネ?」
姉「あはは、変な名前」
姉「あ、こんなところに雑貨屋さん」
姉「ん、このブレスレット弟君に似合いそう。最近流行ってるし、いいよね」
姉「すみませーん、これくださいな」
「はいよっ」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:40:57.82:yQfOggvT0
「彼氏へのプレゼントかい?」
姉「んー? そうですねー」
「そんじゃ、サービスで包装しといてあげるよ」
姉「わぁ、お兄さんありがと」
姉「んー、ちょっと男モノにしてはキラキラしすぎだったかなぁ?」
姉「いいよね、似合う似合う」
姉「良い買い物しちゃった~、早く帰って弟君にあげよっと」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:42:17.27:yQfOggvT0
姉「ただいまー」
姉「弟くーん?」
姉「ただいまー?」
姉「おとーとくーん?」
姉「……」
姉「あ、そうだ。弟君」
姉「……」
姉「学校……だった……」ズーン
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:48:41.60:yQfOggvT0
弟「ハァ……ハァ……」
友「ゼーハーゼーハー」
弟「ハァ……ハァ……何今日のメニュー、……殺されるの俺ら?」
友「300+100×10ってのはもう……冬のサーキット並……」
「コラ、いつまでも休んでんな。次オマエラだぞ」
友「嬉しいねぇ、涙が出てくる」
弟「いくか……」
友「おう」
「ヨーイ……」
パーン
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:52:07.40:yQfOggvT0
マネージャー「ポカリどうぞ」
弟「おー、さんきゅー」
マネ「は、はい」
友「俺にはー?」
マネ「友さん、どうぞ」
友「ありがとー、マネージャーさんの笑顔で元気120%だよー」
弟「嘘付け」
ヒザカックン
友「うおおおおお」
マネ「……プ、それじゃあ氷とってきますね」
弟「ああ、頼む」
友「ああ……笑われた……俺笑われた……終わりだ……畜生……」
弟「そんな大袈裟な」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 18:56:17.57:yQfOggvT0
友「あー、可愛いなマネージャーさん。傷ついた俺を癒してくれる天使だよマジで、あー俺の彼女になってくれないかなぁ」
弟「無理だろ」
友「即答っ?!」
弟「軽薄な男は嫌いって言ってたよ」
友「この硬派な俺のどこが軽薄だって!」
弟「本当に硬派なヤツが自己申告するもんかい?」
友「一理ある」
弟「うむ」
友「ところで」
弟「あん?」
友「どうなのよ、新しい女は?」
弟「お前、その言い方辞めろよなぁ」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:01:10.71:yQfOggvT0
友「うるせー。今が一番楽しい所だろーが、自分色に染めてやるぞーって感じだろ?」
弟「それがまだあんまり馴染んでないんだよ」
友「まぁなぁ、まだ3日だっけ?」
弟「1週間」
友「まー、初々しい」
弟「合ってなかったのかなぁ」
友「でも一目ぼれだったんだろ?」
弟「うん」
友「コイツしかいねぇ! って言ってたじゃん」
弟「いや……必ずしも外見と中身が一致するとは……」
友「意外とコダワるタイプなのな、お前」
弟「お前程じゃないと思うけど」
友「そうか? 俺なんか適当だぜ? 気に入らなかったら1ヶ月持たないもん、気持ち悪いし」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:05:22.72:yQfOggvT0
弟「そんなもんかね」
友「ま、自分に合ったスパイクが一番だからな。じっくり履けや」
弟「おう」
マネ「氷嚢もってきました!」
友「ありがと~! ん~! 気持ちいい~!!」
マネ「弟さんも、ど、どうぞ」
弟「ん、ありがと」
マネ「それじゃあ私は……」
弟「あ、ちょっと待って」
マネ「はいっ?!」
弟「さっきの記録見せて」
マネ「はい! どうぞ!」
弟「ん、ありがと」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:08:25.46:yQfOggvT0
弟「んー……」
マネ「あ、あの」
弟「うん?」
マネ「弟さん、これが以前の同メニューの結果で……」
弟「おー、ありがと。比較できるようにしてくれたのね」
マネ「は、はい! とんでもないです!」
弟「さすがマネージャーさん、頼りになるよ。いつもありがとうね」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:10:21.29:yQfOggvT0
「そんじゃ、ダウンして今日は上がっとけ。ストレッチは入念にな」
友「はー、今日は死ぬかと思った」
弟「それ毎日言ってない?」
友「今日は格別に死ぬかと思ったのさ」
弟「それ使い方間違ってない?」
友「うるせー、……ん?」
弟「どした?」
友「あれ」
弟「あれ?」
友「あれ、お前の姉ちゃんじゃね?」
弟「本当だ、何やってんだろ」
友「思いっきり手振ってるな」
弟「ちょっと行ってくる」
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:12:14.25:yQfOggvT0
弟「どしたん?」
姉「あー……あのね、弟君」
弟「ん?」
姉「えーっとね」
弟「どうしたの? まさか何か家でなんか事件でも起きた?」
姉「いやそうじゃなくて」
弟「?」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:15:40.12:yQfOggvT0
姉「カクカクシカシカ……と、いう訳で」
弟「そんでスパイクを届けにきたつもりが一旦帰っちゃって練習に間に合わなかった……と?」
姉「ごめんなさい、このとーり」
弟「……プ、あはははははははははは」
姉「?」
弟「あのさ、姉ちゃん。俺新しいスパイク買ったの言わなかったっけ? ほらこれ」
姉「あら」
弟「もー、ドジだなー」
姉「むー」
弟「でもありがと」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:17:02.56:yQfOggvT0
弟「でもありがと」
姉「うん、あ。そうだ、あとこれ」
弟「パン?」
姉「うん、美味しいよ」
弟「ん、ありがと」
ぐ、るるるるる……
弟「……半分こ、する?」
姉「うん」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:22:23.50:yQfOggvT0
2話
弟「……ふあぁ」
弟「よし、時計鳴る前に起きた」
弟「弁当作るかぁふぁあ」
トントン
トントン
ジュー
ジュー
弟「ん、完成」
姉「おはよー」
弟「はよ」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:24:27.05:yQfOggvT0
弟「朝ごはんできてるよ」
姉「ん、ありがと」
弟「マーガリン半分だけ塗っておいたから」
姉「さんきゅ」
弟「制服、いつものとこな」
姉「……」
弟「どしたん?」
姉「日曜じゃないよね」
ピ
TV「ズバッ!」
弟「ね?」
姉「ん、おっけい」
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:26:30.24:yQfOggvT0
弟「はい弁当」
姉「ほい」
弟「そんじゃ行くか」
姉「行ってきま~す」
弟「忘れもんは?」
姉「弟君と違って忘れたりしないよ」
弟「いや俺忘れてなかったでしょ昨日」
姉「そだっけ?」
弟「そうだよ」
姉「あ、ちょっと待って」
弟「あん?」
姉「行ってきますって言って?」
弟「なんで?」
姉「いいから」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:28:00.43:yQfOggvT0
弟「はぁ……行ってきます、これでいい?」
姉「ん、いってらっしゃい」
弟「……」
姉「……?」
弟「は、はやく行かないと遅刻する」
姉「いってらっしゃい弟君~」
弟「あんたも登校するんだよ!」
姉「あら」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:30:37.90:yQfOggvT0
弟「ふむ」
姉「あらあら」
弟「パンクしてるなこりゃ……」
姉「どうしよう弟君」
弟「しゃーねー、歩いていくか」
姉「間に合う?」
弟「途中で市バスに乗るから大丈夫」
姉「そっか」
弟「戸締りは?」
姉「ん、大丈夫」
弟「おう」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:33:45.98:yQfOggvT0
姉「ね~」
弟「ん?」
姉「弟君と並んで歩いて登校するのって久々だと思って」
弟「そうか?」
姉「中学の時以来?」
弟「あ、思い出した」
姉「ん?」
弟「雨の日だろ」
姉「ぶっぶー、ハズレ」
弟「……ん」
姉「もー、物覚え悪いなぁ」
弟「うるせえよ」
姉「あ、バス来たよ」
弟「おう」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:36:07.13:yQfOggvT0
弟「結構混んでるんだなこの時間」
姉「そだね」
弟「乗り物酔い、大丈夫だよな?」
姉「うん」
弟「そうかい」
姉「……ん」
弟「……」
姉「……ん、ん」
弟「……」
姉「……」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:38:26.40:yQfOggvT0
姉「ん、……ふ」
姉「……」
姉「……んっ」
弟「……」
弟「……おい、オッサン」
「……あ?」
弟「手」
「……、ち」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:43:25.88:yQfOggvT0
ブロロロロロロロロロロロ……
弟「……」
姉「こ……」
弟「ん?」
姉「こわかった……」
弟「ごめん、バスで行こうなんて言ったから」
姉「ううん……」
弟「あの野郎、次に顔みたらぶっ飛ばす」
姉「ん、でも弟君が守ってくれたから。もう大丈夫」
弟「そうか? 無理すんなよ」
姉「ほんと大丈夫だから」
弟「ん、そっか」
姉「うん」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:47:27.46:yQfOggvT0
キーンコーンカーンコーン
姉「あ」
弟「やべっ、予鈴だ」
姉「走る?」
弟「残り時間5分、距離約300m。よし、荷物もっちゃる、貸して」
姉「ほい」
弟「ほいきた」
姉「よーい」
弟「どーん」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:52:21.98:yQfOggvT0
ガラッ
弟「ゼーハーゼーハー……、すんません……遅れました……」
先生「なんだ、姉弟揃って遅刻か」
弟「すんません……」
姉「すみません……」
友「よう、遅かったな。どしたん?」
弟「……あんまり遅いんで背負って走ってきた」
友「重かったろう……ご苦労」
姉「友君、聞こえてるよ」
友「ひ」
姉「うふふ」
友「イヤアハハ、ナンノコトカナー、アハハー」
姉「もー」
先生「こらー静かにしろー」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:55:55.62:yQfOggvT0
キーンコーンカーンコーン
友「おーい! 昼飯たべようぜー!」
弟「おう」
友「今日はどっちが作ったん?」
弟「俺」
友「やっぱりな」
弟「なんで?」
友「華がない」
弟「うるさいよ」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 19:57:53.85:yQfOggvT0
「俺も一緒に食べていいか?」
友「おう、来い来い」
「さんきゅー、お? 今日は弁当、お前が作ったのか?」
弟「なんでわかんの?」
「見た目……かな?」
弟「……」ズーン
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:02:37.61:yQfOggvT0
姉「こら、あんまり弟君いじめちゃだめだぞ。こう見えて味はしっかりしてるんだから」
パクッ
友「姉さん、とか言いながら俺のハンバーグ食べるの辞めてもらいます?」
姉「朝のでおあいこ」
友「……く、安い出費だ」
姉「なによ友君、何か言いたげね」
友「イエ、ナニモ」
姉「ふーん」
弟「今日の卵焼き、どうだった?」
姉「ん、美味しかった」
弟「何点?」
姉「60点かな?」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:09:20.10:yQfOggvT0
「ん? お前らの家、砂糖味なのな」
姉「え? 君の家は違うの?」
「我が家はしょうゆ派だ、正当な日本の伝統を受け継いでな」
姉「しょうゆ……完全にノーマークだったわ」
「日本人で醤油をしらねぇとは……姉さん、人生の99%を損してるぜ」
姉「そんなにっ?!」
「あぁ、間違いねぇ……だがまだ取り戻せる、この醤油でな……」
姉「しょうゆうう~~」
友「チッチッチ、甘い、甘いなぁ」
「あん?」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:10:49.59:yQfOggvT0
友「見ろ、この黄金色に輝くマヨネーズを。卵とマヨネーズ、元は一つのDNAだったものが今こうして卵焼きの上で再開するわけよ……日本の伝統? はっ、そんなもんこの感動的な親子の再会の目の前では霞むね」
「んな大袈裟な……」
友「嘘だと思うなら食べてみろぃ」
パク
「ん、イケるな」
弟「どれどれ? おお、わりとイケルな」
姉「え? 本当? あら、おいしい」
友「だろ?」
「ん、うまいうまい」
弟「マジ美味いよ、これ」
姉「ん~、でりしゃす」
友「はっはっは! そうだろそうだろ!」
姉「ごちそうさま」
友「うむ。大儀であった」
友「……って、俺の分がないっ?!」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:12:58.96:yQfOggvT0
友「うぅ~、俺の卵焼きが~」
弟「泣くなよ……高校生が卵焼きくらいで」
友「うぅ~、毎日楽しみにしてたのにぃぃ」
「その割には’食べてっ’っていうオーラだしまくりだったよね」
姉「うん」
弟「てっきりダチョウ倶楽部的なノリかと思ったぜ」
友「くるりんぱ」
友「……ってアホな」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:16:24.86:yQfOggvT0
友「あ~、そうだ弟。昨日の事なんだけどよ」
弟「ん? 昨日?」
友「あん? 忘れちまったのか? コーチから連絡あったろ」
弟「すまん、何だっけ?」
友「ったくよー、今週の土日は競技場で練習やるって言ってたろ、ちゃんとメモっとけよ」
弟「ん、ありがと。メモしとくよ」
メモメモ
姉「弟くん、足速いね」
弟「なんだよ改めて」
姉「もう勝てないなーって」
弟「朝の事言ってんのか?」
友「さぞかしおm」
姉「と・も・く・ん?」
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:20:08.07:yQfOggvT0
「姉さん、だってこいつとうとう400m50秒切ったんだぜ。来年はインターハイだって狙えるよ」
友「ま、俺より遅いけどな」
「お前の方が遅いだろ」
友「てめー真実は時として残酷という言葉を知らんのか」
「意味わからんし」
姉「あはは」
弟「……ったく、バカだなー友は」
姉「来年かぁ」
弟「来年こそは行ってみたいな、来年は3年だし」
姉「行けたらいいねぇ」
弟「おう」
姉「本当、弟君は走るのが好きなんだね」
友「こいつ走ってなかったらマグロみたいに死ぬって絶対」
「その例えはどうなのよ」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:45:29.45:yQfOggvT0
姉「むー」
弟「どしたん?」
姉「ん、こう見えても昔は私の方が速かったんだからね」
「へー」
友「なんか……運動できる姉さんって想像できない……」
姉「あら、突然プロレス技かけたくなってきたわ?」
友「コ……コブラツイストッ?! ギブギブギブギb」
「な~む……」
チーン
弟「友よ……お前の事は一生忘れない……」
「俺の実家、寺だから骨は収めてやるよ」
弟「おー、お前ん家、寺だったのか?」
「そーだよ」
弟「よかったな友」
友「生きてます! 生きてます!」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:48:11.05:yQfOggvT0
姉「んー」
カシャ
友「姉さん」
カシャ
姉「ん?」
カシャ
友「何を撮っているので?」
姉「写真」
友「なぜに?」
姉「友君がおかしいから?」
友「さらば青春っ!」
タッタッタ
「忙しいヤツだな」
弟「腹が減ったら戻ってくるだろ」
姉「お弁当忘れていっちゃってるもんね」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:52:13.84:yQfOggvT0
弟「ふむ……砂糖味か。よし、今度作ってみるかな」
メモメモ
「あ、やべ。午後イチで移動教室なの忘れてた」
姉「えー、どこ?」
「生物実験室」
弟「あのアホはどうする?」
「書置きしとこう」
姉「お弁当を返してほしくば生物実験室まで……、これでいいよね?」
「姉さん、優しいなー」
姉「なんか昔から友くん見てると意地悪したくなるのよね」
弟「友よ……生きろ……」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 20:56:04.73:yQfOggvT0
姉「んー」
女「どうしたのー?」
姉「んー?」
女「なんか楽しそうね」
姉「うん」
女「今更だけど弟と一緒のクラスって複雑じゃない?」
姉「んー、そうかな?」
女「そうだよー、あたしだったら絶対嫌だけどなぁ」
姉「昔からそうだったからなぁ、そういう感覚はよくわかんないよ」
女「大人の意見すなぁ」
姉「ん、そうかなぁ」
女「胸はあたしのが大人だけど」
モミモミ
姉「……んっ」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:00:50.88:yQfOggvT0
姉「……んんっ、もう……やめてよ~」
女「ぐへへへへへ」
姉「も~」
女「ええどすなぁ……ほわあああ」
友「とーう! 何羨ましい事堂々としとるんじゃーい!」
女「出たな悪の親玉ー!」
友「誰が悪の親玉か!」
女「貴様だー! 女の敵ー!」
友「女の敵って……俺何かしたっけ?」
女「更衣室覗いたでしょ?」
友「いやだからアレは事故だって何度も説明したじゃない?」
女「事故ですんだら警察いらなくない?」
友「ですよね」
女「そうですよね」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:03:45.21:yQfOggvT0
友「それに……あの件は合コン3件で手打ちという事になったはずだ……」
女「そうだったわね」
友「うむ、わかったら行くのだ、俺は姉さんに用事がある」
女「イタズラするんじゃないわよ」
友「お前と一緒にすんな!」
スタスタ
友「ったく、セクハラ女が」
姉「友君も似たような存在じゃない?」
友「存在レベルで?! 俺居るだけでセクハラなのっ?!」
姉「んー?」
友「……?」
姉「うん」
友「oh...shit」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:06:01.22:yQfOggvT0
姉「それで?」
友「あん?」
姉「用って?」
友「弟の居ない所で話したいんだが……あいつは?」
姉「移動教室だって言って行っちゃったよ?」
友「そうか」
姉「うん」
友「じゃちょっと来てくれ」
姉「どこに?」
友「中庭で良いだろ? 屋上にするか?」
姉「んー、中庭かな」
友「おっけー」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:09:30.28:yQfOggvT0
女「シャキーン! 女探偵参上ってな訳よ!」
女「友の野郎……あたしの姉さんに何用……」
女「決まってる! 男が女と一対一になってする会話なんて古来から一つしかないのよ!」
女「燃えてきた! 暴いてやる! 全ての謎を明らかにしてやるー!」
「どうでもいいがそんな大声だしてたらバレバレだぞ」
女「ひっ?!」
「あん?」
女「なんだアンタか……」
「友しらねーか?」
女「さー? 知ってるけどタダって訳にはねぇ……」
「あいつの為に払う金なんぞ1円足りとも持ち合わせとらんわい」
女「男の友情なんて脆いものね……」
「お前が言うな」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:11:21.53:yQfOggvT0
スタスタ
女「……」
「……」
スタスタ
女「……」
「……」
スタスタ
女「……」
「……」
ピタ
女「ねー」
「あん?」
女「ついてこないでよ」
「勘違いするな、俺の行きたい方角にお前が歩いているんじゃないか」
女「同じ事よ!」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:14:29.37:yQfOggvT0
女「あーもーめんどくさくなってきた」
「何が」
女「今ね、友と姉さんが一緒に中庭でピロートーク中な訳よ」
「ほう、それで?」
女「それで……って、あんたバカじゃない? 監視よ監視、あのバカが姉さんに手を出すとも限らないでしょうが!」
「あー、それの事ならさ……」
女「あん?」
「お前、あんま深入りすんな」
女「なんでよ」
「ほら、人の恋路を邪魔するものはなんとやらって言うだろ?」
女「はん、だったらなおさらよ」
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:18:58.22:yQfOggvT0
友「なーにがなおさらだこのストーカーが」
「よう、ここに居たのか」
女「あーもー、……あんたが騒ぐから見つかったじゃない」
友「うるせー、しっし」
女「あたしは虫か!」
友「無視だ無視」
女「面白くない!」
友「ぐ……そう切り返されるのが地味に一番傷つく……」
姉「女ちゃ~ん、どうしたの?」
女「あ! 姉さん! 大丈夫? この野蛮人に何もされなかった?」
姉「え? あ、うん」
女「ホントに? 脅されて無い? 金品を要求されてない? 弱みにつけこまれてない?」
友「お前の中で俺はどんな人間なんだよ」
女「女性の敵」
友「ひでぇ……」
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:26:20.26:yQfOggvT0
姉「大丈夫だよ女ちゃん。あたしこの前の月曜日、図書委員のお仕事休んじゃって、その事について教えててもらってただけだから」
女「本当?」
姉「うん、第一友君なんかに負けないもん」
友「そうだぞ、俺なんか姉さんの前ではイチコロ……自分で言ってて凹んできた……」
女「よかった~、あたしはてっきり姉さんが友の魔の手に絡め取られるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしてたのさ」
「その割には随分楽しそうだったけどな」
女「あ~ら、午後の授業に遅刻しちゃう♪」
友「あ、逃げた」
姉「ふふ、面白い女ちゃんだね」
「全くだ、見てて飽きないよ」
友「助かったよ」
「気にするな」
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:30:25.37:yQfOggvT0
弟「おせーぞ、お前ら」
友「いやーすまねー、でかいのが中々でなくてよお」
「食後に言う台詞かよそれ」
弟「デリカシーのカケラもないヤツだな」
友「ひゃははは、そうだろそうだろ。もっと褒めてくれ」
「決して褒め言葉じゃないからな?」
弟「ったく……」
姉「は~い、皆こっち向いて~」
カシャ
姉「ん、よく取れてる」
「あたしも入りたい訳よ! ほら、姉さんも一緒に!」
姉「ん、それじゃセルフタイマーで皆で撮ろっか」
弟「おう、皆寄れ寄れ」
ジー…………………………、カシャ。
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:34:26.35:yQfOggvT0
キーンコーンカーンコーン
「よし、今日の練習はここまでだ。各自クールダウンの後、解散しろ」
「はい!」
マネ「お疲れ様でした」
弟「マネージャーさん、おつかれ様」
マネ「弟さん、マッサージしましょうか?」
弟「ん、お願いできる? じゃあハムストリング中心で」
マネ「はいっ」
弟「ん……、上手くなったね、いたきもちいい」
マネ「え……? 本当ですか?」
弟「ん、前に受けた時より上手いよ」
マネ「あ、ありがとうございます」
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:38:21.08:yQfOggvT0
弟「そういや、前っていつだったっけ、あー思い出した、マネージャーさんがまだ入学したての時だったっけ」
マネ「あ……はい、あの時はとんだご無礼を……」
弟「いやいや、骨に染みたよ。筋肉じゃなくてね」
マネ「もう間違えません」
弟「ん……頼むよ」
友「おーい、マネージャーさーん、そいつ終わったら俺も頼むわ」
「友、グランド整備しとけー」
友「コーチイイイィイイ?! そりゃないっすよおおおお?!」
「うるせー、今日のタイムトライアルでビリっけつだったお前が悪い」
友「鬼! 悪魔! うおお~! 青春だああああ!!!!!」
弟「元気なヤツだなぁ」
マネ「あはは、そうですね」
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:42:14.72:yQfOggvT0
マネ「あの、終わりました」
弟「ん、ありがと」
マネ「弟さん」
弟「ん?」
マネ「これ、記録ノートです。今日の練習タイムと過去のタイム一発で比較できるように整理しておきました、使ってください」
弟「え? こんなに沢山の記録、マネージャーさん一人で?」
マネ「はい!」
弟「……ん、ありがと。大事に使わせてもらうよ」
マネ「あ、の!」
弟「ん?」
マネ「わたし! 弟さんの力になりたいです! だから! 一生懸命がんばります!」
弟「あはは、ありがとう。でもたまにはアイツの力にもなってあげて?」
友「うおおお~~~~青春~~~~~~!!!!!」
「スゲェ! みるみるグランドが整地されていく!」
「奇跡だ……俺は今神の奇跡を見ている……!」
マネ「はいっ!」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:46:35.03:yQfOggvT0
弟「お待たせ」
姉「ん、時間ぴったりね」
弟「ちょっと急いで来たからギリギリ間に合ったよ。この時間だとバスも間に合うね」
姉「むー?」
クンクン
弟「ん?」
姉「弟君から女性のニオイがするなぁ?」
弟「女性? あぁ、マネージャーさんかな?」
姉「マネージャーさん? あぁ、あの可愛らしいくりっとしたコ?」
弟「うん、マッサージしてもらってた」
姉「むー?」
弟「どしたの?」
姉「そのコ、弟君の事好きかもよ?」
弟「あはは、そんなまさか」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:49:06.24:yQfOggvT0
姉「むー」
弟「どうしたのさ」
姉「べっつにー?」
弟「ヘンなねーちゃんだな」
姉「私が変なら弟君もヘンだよ」
弟「なんで?」
姉「姉弟だから」
弟「パズルゲームみたいに連鎖しないってば」
姉「うー……」
弟「どしたの」
姉「パズルゲームで連鎖したことない……」
弟「え?! 今そこで悩んでたのっ?!」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:53:00.53:yQfOggvT0
姉「弟君」
弟「はい」
姉「おねーちゃんはねー」
弟「ん?」
姉「いっろいろな事に思いを馳せているのよー」
弟「そうですか」
姉「あ、信じてないな?」
弟「信じてるよ。だって、ねーちゃんだもの」
姉「むー、ずるいなぁ。全部許してあげたくなるじゃないのさ」
弟「……んー」
姉「ん」
弟「よし、かえろっか」
姉「うん」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 21:56:45.24:yQfOggvT0
姉「あ、そうだコレ」
ゴソゴソ
姉「はい弟君、プレゼント」
弟「え? 俺誕生日まだだよねーちゃん」
姉「いいのいいの、あげたくなった時にあげるのが一番なの」
弟「あけていい?」
姉「いいよ」
弟「ん……あ、このブレスレットってまさか」
姉「そう、昨日買ったの」
弟「これ買って満足して家帰っちゃったんだよね」
姉「むー、それは言わないでー」
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:00:22.98:yQfOggvT0
キラッ
弟「ん、どうかな?」
姉「似合う似合う」
弟「ありがと」
姉「いいよ」
弟「大切にするね」
姉「それを私だと思って大切にしてね」
弟「うん」
姉「ん、よーし」
弟「ん?」
姉「弟君」
弟「?」
姉「だいすきだー!!」
弟「ちょ、ココ公道公道! みんな見てるって! ねーちゃん!」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:01:48.11:+5syb/8A0
姉「はっはっはー、それがどうしたー」
姉「私は弟君のおねーちゃんだぞー!」
姉「どうだーまいったかー!」
弟「ねーちゃん……」
姉「弟君」
弟「はい!」
姉「何があっても君は私の弟だからね」
弟「ん、うん」
姉「ん、わかればよろし」
弟「え? それだけ?」
姉「うん」
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:07:56.83:yQfOggvT0
姉「あ、ホラ。バス来たよ」
弟「ん。あ、うん」
姉「ほら、ボーっとしてないで、走るっ?」
弟「本気で走ったらおねーちゃんおいてっちゃうよ?」
姉「それでもいいのさー、君は君の思うまま走ればいい、自由だ」
姉「それじゃあ……よーい……どんっ!」
弟「ねーちゃん……」
ブロロロロロロロロ……
弟「バス……いっちゃったよ……」
姉「だめ……もう走れない……」
弟「結局こうなるんかい」
第2話おわり。
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:28:14.91:yQfOggvT0
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:31:12.02:m8EoGKKP0
第3話
弟「さて……参考書買いに市内のでっかい本屋に来たものの」
姉「わー、ひろーい」
弟「広いのと人多いのでえらいこっちゃ」
姉「迷子にならないよーに」
弟「その台詞……そっくりそのまま返す事にしよう」
姉「むー」
弟「甲子園1個分らしいよ」
姉「こーしえん?」
弟「えーっと」
姉「?」
弟「スカイマークスタジアムくらい?」
姉「なるほど」
弟「わかったみたいでよかった」
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:39:31.81:yQfOggvT0
姉「弟君、弟君」
弟「ん?」
姉「面白そうな本が」
弟「とうもろこしと、たこさんういんなー?」
姉「絵本」
弟「へー、可愛い本だね」
姉「……」
弟「……」
姉「むー……」
弟「……?」
姉「……だめ?」
弟「はぁ……いいよ」
姉「やったー」
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:43:06.35:yQfOggvT0
弟「んー……」
姉「良い参考書あった?」
弟「こうして並んでるの見るとなんか全部良さそうに見えてくる」
姉「むー……たしかに」
弟「赤本はまだ要らないとして、苦手な数学をどうにかしたいんだよなぁ」
姉「おねーちゃんは弟君が向学心に溢れていてくれているだけで嬉しいんだよ」
弟「我輩はその向学心をなんとか点数に結び付けたいところである」
姉「むー」
弟「ん?」
姉「時に弟君や」
弟「なに?」
姉「君はどこの大学にいくつもりかね?」
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:44:43.46:yQfOggvT0
弟「俺の頭でいけるとこ……ってのは冗談で」
姉「ん」
弟「大学は、どこでもいいんだ。でも医学部に入りたい」
姉「ほう、医学部とな」
弟「うん」
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:49:02.88:yQfOggvT0
姉「医学部だと、今の500倍は頑張らないと厳しいと思うよー」
弟「厳しいなぁ」
姉「むー、弟君は60点だから」
弟「ん」
姉「うん?」
弟「その60点って何?」
姉「弟君の中学の時の平均点」
弟「可もなく不可もなくってか……」
姉「まぁまだあと1年もある、頑張ろー」
弟「ねーちゃんは?」
姉「ん、私?」
弟「どこ行くの?」
姉「弟君と一緒のとこ」
弟「は?」
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:52:16.06:yQfOggvT0
姉「だから、弟君と一緒のとこ」
弟「えーっと、医学部?」
姉「ううん」
弟「?」
姉「ん?」
弟「どういう事?」
姉「おねーちゃんは、弟君と一緒の大学に行くのさ」
弟「……なんで?」
姉「なぜって、好きだから?」
弟「いや、おかしいでしょ」
姉「姉弟なんだからおかしくはないと思うなー」
弟「そうじゃなくて!」
姉「しー……ここ、本屋さんだよ」
弟「あ、……ごめん」
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:58:00.87:yQfOggvT0
友「なぁーんか聞いた声がすると思ったら、どこぞの姉弟じゃねーか」
弟「お前は……」
友「よう」
弟「……誰だっけ」
友「……ひでぇ、唯一無二の親友からこの扱い……ひどすぎる……」
姉「あーはいはい。よしよし、友君、元気だそうねー」
友「挙句姉さんに励まされるなんて……、うおお……むぐっ?」
姉「し・ず・か・に、ね?」
友「はい……すみません……」
姉「わかればよろし」
弟「ったくバカなんだからさ」
友「うるせー」
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:05:20.74:yQfOggvT0
友「で? なんなのお前等、エロ本でも買いに来たの?」
弟「どこの世界に姉弟でエロ本買いにくる奴がいるんだよ」
友「そっか、それもそうだな」
弟「参考書だよ、お前は?」
友「奇遇だな、俺もだよ」
弟「お前の口からついに勉学の言葉を聞こうとはな……地球が滅びるのか? アルマゲドンの前兆か?」
友「いやだっ! 宇宙になんか行きたくない! 地球にのこって100人くらいの孫に囲まれて幸せに死ぬんだ!」
姉「と~も~く~ん~? し~ず~か~に~」
友「スンマセン姉サン」
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:10:28.40:yQfOggvT0
「有難うございましたー」
友「そういや昔はよくこの三人で遊んだよな」
姉「ん、そうね」
友「最近あんま遊んでないし……久々にどー?」
姉「私はいいけど、弟君は?」
弟「ん?」
友「遊びにいこうぜーっていう話」
弟「おう、いいよ」
友「よっしゃ決まりな。カラオケいこうぜカラオケ、ここらの安い店知ってるからさ」
姉「ん、エスコートは任せたよ」
友「ははぁ」
弟「不安だ」
友「うおい!」
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:13:26.90:yQfOggvT0
友「まず俺からね!」
弟「はいよ」
友「よっしゃ! まず最初はコレだろ! この曲で決まり!」
~♪
友「~~~♪」
「12点だピョン!」
友「何で!」
姉「あはは」
弟「12点て、奇跡的だなー」
友「くっそー、こんなハズでは……」
姉「次私ね」
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:14:43.01:yQfOggvT0
姉「~~♪」
姉「~♪」
姉「~~~~♪」
弟「うお……ねーちゃんうまいなぁ」
友「~~~♪」
姉「と~も~く~ん~♪」
友「姉・さ・ん~♪」
姉「かぶせてくんな~~♪」
友「すみませ~~ん♪」
123: ◆cmYne3uJkg :2011/01/11(火) 23:22:13.90:yQfOggvT0
弟「次俺だな」
友「お前の歌はね、コレ」
ピ
~~♪
弟「これ、……中学の校歌じゃない?」
姉「こんなの入ってるんだ」
友「地元密着が売りだからなココ」
弟「そういう問題っ?」
友「まま、いいからいいから。歌うぞー、いっせーのーで!」
~~♪
~♪
~~~~~♪
~~~♪
124: ◆3LsjyiVMzQ :2011/01/11(火) 23:24:36.61:yQfOggvT0
友「あー楽しかった」
姉「ほんとー」
弟「久々に歌ったー」
友「ん、もうこんな時間か」
姉「おなかすいたぁ」
弟「ん、帰って食べるか」
友「そうだな、明日は学校だし、そろそろ帰るか」
弟「ありがとうな、友」
友「あん?」
弟「なんか久々に3人で遊んだ気がしたよ」
友「気がしたんじゃなくて、実際遊んだんだあよ」
弟「ん、そっか」
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:28:43.60:yQfOggvT0
姉「んー、友君、弟君」
友「ん?」
弟「あん?」
姉「久々に行ってみない? 裏庭公園」
友「おーいいな」
弟「裏庭公園?」
友「ほら、あの幼稚園の近くの」
姉「滑り台と砂場しかない公園」
友「まだあるかなー、再開発とかでつぶれてないか?」
姉「まーまー、久しぶりに見とくのもオツなもんさー」
弟「そんじゃ、行ってみるか」
友「おい、こっちこっち」
弟「ん、すまん」
友「この道だ、うわー懐かしいな」
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:32:24.36:yQfOggvT0
弟「ここか……」
姉「むー」
弟「ん?」
姉「もうその滑り台、弟君には小さすぎるねー」
弟「ん、確かにこれじゃ滑らなくても降りていけるな」
友「でかくなったもんな、お互い」
姉「年寄りみたいな発言だねー、友君」
友「えぇ?!」
姉「友じいさん」
友「リアルすぎるんでやめてもらえませんか姉さん……」
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:36:30.51:yQfOggvT0
友「なぁ弟さ」
弟「ん?」
友「俺さっき宇宙には行きたくないって言ったけど、ありゃ嘘だ」
弟「ほう?」
友「見上げてみろよ、この星空を。なかなかどうして、キレーなもんだぜ」
弟「たしかにな」
友「こう、手を伸ばせば捕まえられそうじゃねーか?」
弟「そうか?」
友「男だったらよ! 捕まえてみたいって思うよな、あの星さ」
弟「なんかいつになくロマンチックな発言だなおい」
友「なんてったってガキの頃の俺の夢は、宇宙飛行士、だからな」
弟「お前らしい途方もない夢だな」
友「……だろっ?! なーっはっはっは!」
弟「おう」
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 23:40:08.52:yQfOggvT0
姉「宇宙飛行士かー」
友「おうよ」
姉「宇宙に行ってどうするの?」
友「そうだなー、まずは宇宙人と握手」
姉「むー? タコみたいなあれか?」
友「最近だとグレイってのが有力らしい」
姉「棚からグレイのライブチケット2枚」
友「うわそれ誰のネタだったか思い出せない」
姉「んー、宇宙かー」
友「おうよ」
姉「あ、流れ星」
弟「ほんとだ」
友「え? どこどこ?」
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:06:35.68:ODDTNklr0
姉「友君……友君はお星様になっちゃったんだね……」
弟「良いヤツだった……」
友「さーさーのーはーさーらさらー、……ってコラ! 季節も違うし! そもそも生きとるわ!」
姉「むー」
友「え? なにその空気読めよ的なオーラ」
姉「べつにー」
友「この扱いの酷さ……いつからなの……」
姉「覚えてない?」
友「う?」
姉「幼稚園で、友君が弟君をいじめてた事あったでしょ?」
友「あー……、あったね。そんなことも」
弟「そうだっけ」
友「いや、あの時はホントすまんかった」
姉「はっはっは、その時私がこらしめてやったのさー」
友「あー……そうだったそうだった」
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:09:35.85:ODDTNklr0
弟「……なー」
姉「ん」
友「どした?」
弟「なんか、さっきから物音聞こえないか?」
友「あははー。おい、冗談やめろよなー」
姉「……ん」
友「姉さんも?」
姉「しっ」
弟「……やっぱり聞こえる」
友「おい……?」
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:12:31.66:ODDTNklr0
弟「……」
友「なんか……いるのか?」
弟「……暗くてよく見えないけど、たぶん」
友「姉さん、下がってろ」
姉「ん、わかった」
友「弟、いけるか?」
弟「お前こそびびんなよ」
友「はん、誰が」
弟「……」
友「……」
ガザッ
友「……おい、聞こえたか今」
弟「ん」
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:15:02.53:ODDTNklr0
友「くそ、暗くて周りがよく見えないな」
弟「足元気をつけろよ」
友「ああ」
ガサガサ
弟「……なんかゆっくり動いてるな」
友「気味悪いぜ」
弟「あの木の裏からか?」
友「お前、右からな」
友「じゃ、お前は左からで」
い
っせー
のーで!
ニャーン
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:17:11.05:ODDTNklr0
姉「あら、猫ちゃん?」
ニャーン
姉「ミー?」
ニャーン
姉「ニャーァ」
ニャ
姉「ニャー?」
ニャーン?
姉「ニー」
ミャー
姉「ふんふん、なるほどね」
友「まさか……わかるのか姉さん!」
姉「ううん、全然」
友「おおう! おう! そうだと思ったわ畜生!」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:21:18.91:ODDTNklr0
姉「むー」
友「え? 何まさか翻訳にチャレンジしてたの? それですねてるの?」
姉「むー」
弟「ん、かわいいなこいつ」
ニャー
弟「ねーちゃん」
姉「ん?」
弟「……」
姉「むー……」
弟「……」
姉「……むー」
弟「……だめ?」
姉「いいよー」
弟「やった」
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:25:34.29:ODDTNklr0
姉「そうと決まれば名前つけないとね」
友「猫だからサンタクルスでどうだ?」
姉「却下」
友「即効かい!」
ニャー
弟「ん」
姉「ん?」
弟「よし。決めた」
姉「ん、聞こう」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:44:50.42:EqL+EIej0
友「ちょっと待ったあああああああああああああああああああああああ!!」
弟「なんだよ」
友「サンタクルスはこの際諦めよう」
弟「うん」
友「その代わりニャンダフル! ってのはどう?」
弟「いいね」
友「おし決まr」
弟「でもダメ」
友「ガーン……あと、にゃにがにゃんだーにゃんだーかめんってのと、猫林にゃん子ってのと、にゃん太っ!!ってのがあるんだけど」
姉「沢山考えてくれてありがとね」
ゴメンニャー
弟「こいつの名前は……」
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:23:07.10:ODDTNklr0
弟「こいつの名前はニャー、鳴き声がニャーだから」
ニャー?
姉「ニャーね、良い名前じゃない」
友「ニャーって……ニャーって……、サンタクルスうぅ……」
弟「ニャー、よろしくな」
ニャー
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:28:44.01:ODDTNklr0
弟「ん、そんじゃそろそろ帰るか」
友「キャットフード買って帰れよ、それともミルクのがいいのかな? あと明日即効で動物病院もな」
弟「わかってるよ」
姉「ミャー」
ニャー
姉「ミャー?」
ニャ
姉「ミャーン」
友「姉さん、鳴き声変えようとしてない?」
姉「むー……、無理だった」
ニャー
152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:33:27.02:ODDTNklr0
友「なぁ……姉さん、これって……」
姉「わかんない……、でも……」
弟「ん? どったの?」
友「べっつにー。お前さ、飼い主になるんだからちゃんと餌やれよ」
弟「ん、わかった」
姉「うー、冷えるわね。ね? そろそろ帰ろう?」
ニャー
弟「そうだな、帰るか」
『……にゃあ』
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:36:29.71:ODDTNklr0
────────
────
──
友「そんじゃ俺、こっちだから」
弟「おう」
友「ニャー、寂しくなったらいつでも俺ん家に来るんだぞー」
ニャー?
姉「イヤだって言ってるよ?」
友「猫にまで嫌われてるのっ?! もういい! 実家に帰らせていただきます!」
弟「毎度毎度忙しないヤツだな」
姉「あら? 友君は友君で良いトコあるのよ」
弟「それは……わかってるよ、うん」
ニャー
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:39:25.11:ODDTNklr0
ニャー
姉「ニャー、あなた運がいいわよ」
ニャー?
姉「こーんな素敵な飼い主様に拾われたんだから」
ニャ
姉「ふふ、幸せになりなさいな」
ニャー
弟「ねーちゃん」
姉「ん?」
弟「あいつのせいで有耶無耶になってたけど」
姉「なーに?」
弟「本屋での話」
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:41:42.24:ODDTNklr0
姉「弟君」
弟「うん?」
姉「私が医学部を志しているのは本当だよ」
弟「そうなん?」
姉「うん」
弟「……ん、そっか」
姉「うん」
弟「わかった」
姉「ん」
弟「じゃ、帰ろっか」
姉「うんっ」
ニャー
第3話おわり。
159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:09:04.22:ODDTNklr0
間話
「また一人消えたらしい」
「……なぁ、多分とは思うけど。俺の事か?」
「勘がいいな」
「……まぁな」
「寂しいか?」
「……寂しさを感じさせるわけにはいかねぇな、死んでも」
「……死んだら何も残らねぇだろうが」
「だーっはっはっはっは! たしかにそうだ」
バンバン
「いてててて、叩くなって」
「なぁ、聞いていいか?」
「なんだよ」
「消えるってのは、死んだのと同じになるのか?」
161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:15:35.10:ODDTNklr0
第4話
中庭。
友「昨日は本当にビックリしたよ、まさかニャーが生きてたなんて」
姉「生きてた……っていう表現が正しいのかどうかわからないけれど。姿形、鳴き声まで一緒なんてね」
友「別の個体だってのか? 俄かには信じられないなぁ」
姉「友君もそう思う?」
友「あいつのあの反応みてたらな」
姉「むー」
友「全ては検査の結果待ちってか?」
姉「でも」
友「でも?」
姉「弟君、昨日から元気なのー」
友「そりゃ良かった」
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:20:57.23:ODDTNklr0
女「ねぇ」
友「あん?」
女「二人はいつピロートーク始めるの?」
友「っだあ! かあ! らぁ! 俺と姉ちゃんはそんな関係じゃねえ!」
女「あたしの事は……一晩で捨てたくせに……姉さんを取るのね……」
姉「うわー、友君極悪人?」
友「事実無根です! よし! そこまで言うなら女ッ! 法廷で会おう!」
スタスタ
女「行っちゃった、さすがに怒ったかなアイツ?」
姉「ううん、思う存分ツッコミができて満足そうだったよ」
女「アイツのセンスを疑うわ」
163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:24:24.60:ODDTNklr0
女「まぁアイツはヘタレだし、面白くないし、カッコ悪いの三重ダメ男だから、姉さんとは似ても似つかないわよね」
姉「そうでもないよ」
女「え?」
姉「友君、根は優しい良い人だよ?」
女「あぁ……女神様……矮小なこの私目をお許しくださいぃぃいいい」
モミモミ
姉「……ん、もう。女ちゃん……んん」
女「ん~、これで今日も生きていけそう」
姉「むー」
女「姉さん、めんごめんご」
姉「女ちゃん」
女「うん?」
姉「友君の事、好きなの?」
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:27:18.50:ODDTNklr0
女「……いま、なんと?」
姉「ん」
女「イマ・ナントー?」
姉「えっと、友君の事、好きなの?」
女「ひゃあああああああああああっ?!」
姉「むー?」
女「なんで! どうしてそうなるの! あんな変態助平男のどこが! どこが! 一点の隙もあんな男に許した覚えはないのよっ!」
姉「そんな力一杯否定しなくても」
女「こ……これが大人のレディーの余裕なのかしら……おーっほっほっほ」
姉「面白いなあ、女ちゃん」
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:32:01.07:ODDTNklr0
女「人で面白がるなんて最低です……! って、アレー? なんだか自分も似た様な事をしていた気がスルー?」
姉「だってほら」
女「う?」
姉「私と友くんが一緒にいるところに女ちゃんいつも現れるから」
女「……ぐ」
姉「そうだよね?」
女「言われて見れば……あれ? 否定できない?」
姉「ん」
女「あたし……アイツの事が……好きだったの? え? 嘘? そんな? 嘘からでた真? 真実? これがあたしの求めていた真実なのーっ?!」
ヒュウウゥゥゥゥゥウウウウ……
パタン
姉「お、女ちゃーん。大丈夫?」
女「オイオイヨー、オイヨイヨー」
166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:35:31.89:ODDTNklr0
姉「どうしよう……ちょっとからかっただけでまさかこんなになるなんて……」
「オイオイヨー、オイオイヨー」
姉「ううん、こまった。とにかく保健室へ」
友「困った時の俺参上! とうっ!」
姉「あ、友君」
友「ついでにこいつも連れてきた」
弟「ついでって何」
友「いいからいいから、ほら、お前そっちの肩もて」
「オイオイヨー、オイオイヨー」
弟「あれ? このひと、なんで伸びてるの?」
友「おそらく宇宙人からの精神攻撃だろう」
弟「……大変なんだな」
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:41:18.83:ODDTNklr0
『起きてください』
女『……ん』
『起きてください』
女『……んん?』
『あ、やっと起きましたね』
女『……なに、アンタ誰? ココどこ?』
『ココは貴女の夢の中、私は友です』
女『友?』
『はい、女王様』
女『は? 女王様?』
『はい、そうです女王様』
女『何? あんた頭でも打ったわけ?』
『ここは貴女の夢の中、全てはあなたの思惑のままに……』
女『はっはーん、ピーンときたわ。ドッキリでしょう、さっきのはその複線だったわけね? その手にはひっかからないんだから』
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:43:48.84:ODDTNklr0
女『お腹すいた』
『はっ、只今お持ちいたします』
女『喉渇いた』
『かしこまりました』
女『肩凝った』
『お揉みいたします』
女『(ナニココ楽園?)』
※夢です
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 02:49:41.45:ODDTNklr0
女『ふーん、本当に夢なんだ。明晰夢ってヤツかしら?』
女『ん、まてよ……確か明晰夢って夢の状況を自分の思うまま操れるのよね……?』
女『よし、やってみるか』
女『3DプラズマTV出て来い!』
ポーン
女『すげーーーーーー!!!』
女『なにこれ本物でた?!』
ンン……
女『あら? 消えちゃった』
女『そっか、さすがにそんなに都合よく行かないわよねー』
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:00:34.83:ODDTNklr0
女『ちょっとそこらを散歩する訳よ』
女『んん、よく見れば現実の世界にソックリね』
女『考えてみれば当たり前か……って、うわ、ととと、意識してないと体が勝手に宙に浮いちゃうわ』
女『こりゃ歩くのも一苦労……? そっか、移動できれば別に浮いてもいいんだわこれ』
女『なるほど……奥が深いな……』
女『っだー、飽きた』
女『せっかくあたしの夢だってのに人っ子一人居ないじゃないのさー』
女『どーなってんだ責任者でてこーい』
『……また一人消えたらしい』
女『あん?』
171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:01:50.11:ODDTNklr0
女『何かしら? 向こうの方から声がするわね。人がいるかも! れっつごー!』
女『っと、居た居た。ん? 友じゃん、何やってんだろ。なぜか物陰に隠れてしまう、悲しい習性かな……』
『……また一人消えたらしい』
『……なぁ、多分とは思うけど。俺の事か?』
『勘がいいな』
『……まぁな』
『寂しいか?』
『……寂しさを感じさせるわけにはいかねぇな、死んでも』
女『んー、何言ってるのか聞こえないなー。あたしの夢なんだしここで出て行っても問題ないよね』
女『っしゃああ!!! おーい! 友ぉー!』
『なんだぁ?』
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:07:13.06:ODDTNklr0
女『よ』
『な、なんでお前こんなとこに?』
女『なんでって、あれ? 女王様って呼ばないの?』
『あぁ?! なんでお前の事そんな風に呼ばないといけねーんだよ、労働法か? 民法か? 行政法か? それとも刑法か?』
女『あーもーうるさいなー、ここが夢の中ってネタはもう割れてんだよ、大人しくしてろい』
『夢?』
女『3DプラズマTVも出せるぜ』
ポーン
『うおー! すげーーー!』
ンン……
『って、消えるんかーい』
女『あ、わかったこいつたぶん私の記憶の中の友だわ、このアホさからして』
『誰がアホやねん』
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:11:35.89:ODDTNklr0
女『……あーもー、スキップしながらどっか行っちゃえ、しっし』
『なんでGet out of here? そしてなんでスキップ?』
女『……スキ……ップ?』
姉「友君の事、好きなの?」
女『だ……誰があんたの事、ことなんか! すき、すきじゃないわよ!』
『何テンパってんの? オマエ?』
女『し、しらない! それよりアンタらさっきから何話してたのよ!』
『俺らは……』
177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:18:37.92:ODDTNklr0
女『?』
『いや……なんでもない』
女『友のくせにこのあたしに隠し事とはいい度胸じゃないのさ』
『いててててててててて、プロレス技かけんなよ!』
女『吐け、吐いて楽になれ』
『だー! もー! オマエにも無関係ってわけじゃねーし、話す、話すよ』
女『フン、最初からそうしてればいいのよ』
『だからよぉ──』
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:23:22.16:ODDTNklr0
女『は? 文化祭の出しモノの練習? ついでに演技の稽古?』
『おう、ほら演劇の脚本俺だし』
女『はっ……くだらな……、消えるとか死ぬとか行ってたから何か事件だと思ってたのに』
『オマエさー、そんな縁起でもねーこと言うなよ』
女『今縁起と演技をかけてうまい事言ったと思ってるでしょ?』
『なんでバレたの?』
女『あ、やっぱこいつアホだ』
『アホとは何だー! アホとはー! ええい、なんか普段の3割増でむかつくな、もう良い、法廷で会おう』
ドロン
女『あ、消えちゃった……』
女『なんだったんだろう……』
179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:27:30.65:ODDTNklr0
女「……」スースー
女「……」スースー
友「はー、寝てりゃ可愛いのになーこいつ」
女「……」
女「……むにゃ?」
友「おーっす、起きた?」
女「……友?」
友「おう、俺だ。ちなみに放課後な」
女「あたし……寝てたの?」
友「もう爆睡も爆睡だったぜー」
180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:30:03.16:ODDTNklr0
女「……アンタが診ててくれてたの?」
友「姉と弟と俺で交代にな、あいつらはもう帰っちまったけどよ。ニャーに会いに行くんだと」
女「ニャー?」
友「猫」
女「……ふーん、ねぇ」
友「あん?」
女「あんたは、そのニャーに会いにいかなくていいの?」
友「だって俺嫌われてるし」
女「猫に?」
友「猫に」
女「……」
友「?」
女「バッカじゃない?」
友「なんですとーッ?!」
181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:35:58.27:ODDTNklr0
女「あー、なんかアンタの顔みたらすっきりしたわ」
友「いや俺一方的に罵声浴びせられただけですやん」
女「いきなりあたしの事、女王様とか言わないし」
友「オマエの事女王様って呼ぶ法律が出来たら国外退去だ」
女「夢の中でアンタ、私が命じたら何でもやってくれたのよ」
友「なんだそりゃ願望か、願望なのか?」
女「は? んなわけないじゃん、それから……」
友「へいへい、そんじゃもうそんな口叩けるくらい体調も戻ってそうだし、帰るか」
女「それから。あと、死ぬだの消えるだの言わないし」
友「……あん? 死ぬ? 消える?」
女「夢の中のあんたがね、言ってたの」
友「エンギでもねぇ」
女「うまいこと言ったと思ってるでしょ?」
友「……」
182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 03:44:55.53:ODDTNklr0
友「そんな事より。ほら、立てるか? 手貸せよ」
女「優しいじゃない……言っとくけどこれはノーカンなんだからね」
友「何だオマエ、ノーパンなのか?」
女「変態!」
ボカ
友「いってぇ! 殴んなよ暴力女!」
女「うるさいわね! 変態男!」
186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:01:56.48:ODDTNklr0
友「いてててて、そうだ。保健室の先生に治してもらえば……、って、さっき先に帰るからーって鍵渡されたとこだった……」
女「はぁ……これじゃあ夢の中のアンタの方がよかったわ」
友「夢かー、……夢ねぇ」
女「何よ」
友「なんだっけなー、俺の夢」
女「あんたの夢?」
友「おう、俺の子供ん時の夢」
女「興味なーい」
友「ふふん? 特別に教えてやろう」
女「いらないわよ」
友「そんな、ちょっと位聞いてくれても」
女「先帰るわねー、バイバイ」
187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:09:46.34:ODDTNklr0
友「薄情なヤツめ、子供の時の夢……ね。なんだっけなぁ、宇宙飛行士じゃない事だけは確かだけどな──」
弟「──宇宙飛行士のヘルメットみたいじゃない? 猫の目って」
姉「例えが微妙すぎて伝わってこないよー、ね?」
ニャー
姉「病気も無いみたいでよかったね、ニャーちゃん」
ニャー
弟「徐々に食べる量増やしてもいいってな」
ニャ
姉「ふふ、ニャーちゃんは食いしん坊さんかな?」
弟「食いモンだけは無駄に買い込んだから大丈夫だろう、多分」
姉「そうだね。当分は大丈夫だと思うけど……」
弟「けど、猫ってどうやって飼ったらいいのかな。図書館で本でも探してみる?」
姉「……そうねぇ」
188:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:14:55.37:ODDTNklr0
Prrrrrrrrrrrrrrrrr......
弟「ん? メール?」
姉「あ、女ちゃんから」
弟「何て?」
姉「我、復活セリ……だって」
弟「元気そうでよかった」
姉「そうね」
Prrrrrrrrrrrrrrrrr......
弟「ん、友からだ」
姉「何て?」
弟「もう瀕死……だって」
姉「元気そうでよかった」
弟「そうだな」
189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:33:54.72:ODDTNklr0
姉「ところで弟君」
弟「はいな」
姉「君は次でいくつになるのかな?」
弟「記憶が正しければ17歳です姉上」
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:41:06.22:ODDTNklr0
姉「そっかー、17か。弟君今16だもんね」
弟「ねーちゃんはもう17だもんね」
姉「むー」
弟「たった1個じゃない」
姉「次の三月の一ヶ月だけ同い年になって、おねーちゃんの方がまた抜かしちゃうのね、悲しい……」
弟「そんな悲しむ事か……」
姉「だって18だよー、高校三年生だよー、弟くん結婚できちゃうじゃないのさー」
弟「いや、高三になってから18になるまでかなりの猶予が……」
姉「むー、弟くんはいつかおねーちゃんの前から旅立っていってしまうんだね」
弟「旅立ちって、どこに旅立たせるつもりだよ」
姉「さー? 宇宙とか?」
192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 04:56:59.38:ODDTNklr0
弟「宇宙かー興味ないけどなぁ」
姉「うん、そだね」
弟「途方も無い話だよ」
姉「ん」
ニャー
姉「よしよし、ニャーちゃん。後でミルクをあげよう
ニャーン
姉「弟君」
弟「ん?」
姉「わがままを言ってもいいかな」
弟「いいけど何さ」
姉「ちょっと、むこう向いてて」
193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:02:13.90:ODDTNklr0
弟「向いたよー」
姉「そのままねー、良いって言うまでこっち見ちゃダメだぞー」
ニャー?
弟「……」
姉「……」
弟「……ん?」
弟「ねーちゃん、まだ?」
弟「ねーちゃーん?」
弟「……?」
弟「あれ? ニャーは?」
194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:12:23.32:ODDTNklr0
────────
────
──
姉「ニャーちゃん、私についてきちゃったの?」
ニャー
姉「だめだよ、ニャーちゃんの飼い主様は弟君だよ? あっちあっち」
ニャー?
姉「もー、くすぐったいなぁ」
ニャン
姉「ニャーちゃん。……でも君は、あのニャーちゃんじゃないんだよね」
ニャ?
姉「ううん、ごめんね難しい話して。わかんないよね」
ニャー
195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:20:01.87:ODDTNklr0
弟「あ、戻ってきた」
姉「弟君、ただいま」
弟「どこ行ってたのさ」
姉「ちょっとニャーちゃんとブラブラ?」
弟「もーだったらそう言ってくれれば良いのに、携帯電話も通じなかったし戻ってくるかわからなかったからずっとココで待ってるしかなかったよ」
姉「むー、ごめんね」
弟「ま、いいけど」
196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:36:15.36:ODDTNklr0
姉「許してくれる?」
弟「うん」
姉「ありがと」
弟「いいよ」
姉「ん……優しいなぁ、弟君は」
弟「?」
姉「なんでも許してくれるから……いっつも甘えちゃって……」
弟「うん?」
姉「……あー、私だめなお姉ちゃんだなぁ」
弟「そんな事ないよ」
姉「ん、あんがと」
197:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:37:50.60:ODDTNklr0
姉「弟君」
弟「ん?」
姉「私、ちゃんとお姉ちゃんできてるかな」
弟「できてるんじゃない?」
姉「弟君に迷惑ばっかりかけてる気がするよ」
弟「気のせいだって」
姉「そうかな」
弟「うん」
姉「ん、そっか」
弟「ガンバレ、応援してる」
姉「わかった、応援される」
198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:45:11.78:ODDTNklr0
ニャー
姉「ニャーちゃんは随分弟君に懐いてるね」
弟「さっきはねーちゃんいついていったけどね」
ニャー?
姉「気まぐれなんだよ、猫だもん」
弟「そっか、猫だもんね」
姉「弟君」
弟「うん?」
姉「呼んでみただけ」
弟「ねーちゃん」
姉「ん」
弟「呼んでみただけ」
姉「マネっこかー」
199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:50:35.75:ODDTNklr0
弟「むー」
姉「それもマネっこかー」
弟「ん」
姉「ん?」
弟「うん」
姉「爽やかスマイルには騙されないよ」
弟「友がよくやる仕草をマネてみたんだけどダメだったか」
姉「友君発祥なら余計にダメだよ」
弟「明日あいつに言っとくよ」
姉「なるべくオブラートに包んであげてね」
弟「包めばええんかい」
姉「うん」
弟「善処するよ」
200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:53:42.42:ODDTNklr0
姉「弟君、インターハイには出場できそう?」
弟「わかんないよ」
姉「弱気だね」
弟「どれだけ準備しても相手があっての事だからね、レースが始まってみない事にはなんとも言えないからさ」
姉「ふむ」
弟「でもさ」
姉「うん?」
弟「未だに信じられない事が一つあるんだけど、言って良い?」
姉「いいよ」
弟「本当にねーちゃん、昔は俺より足速かったの?」
姉「失礼な。あのねー、こう見えて弟君のお姉ちゃんなんだぞ」
201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:57:31.63:ODDTNklr0
弟「だって今走ったらたぶんすごい差だよ?」
姉「それは弟君が頑張ったからじゃないかな、私は運動頑張らなかったからさ」
弟「頑張るベクトルが違っただけでしょ、ねーちゃんは勉強すごいできるし」
姉「ベクトルねぇ、むつかしい言葉しってるね弟君」
弟「中学までは理数科目好きだったんだって」
202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 05:58:19.33:ODDTNklr0
姉「弟君」
弟「なにさ?」
姉「星空を見てご覧よ」
弟「見てるよ、さっきから」
姉「君はどこの星から来たんだい?」
弟「どこって……地球でしょそりゃ」
姉「んー、ロマンがないなぁ。月とか火星とか言えないのかね」
弟「わるーござんしたね、天体とかあんま興味ないのよね」
姉「ね」
弟「ん?」
姉「弟君、覚えてないかな?」
弟「なにを?」
姉「弟君がまだニャーちゃんみたいに小さかった時の話」
弟「そんな昔の事覚えてないよ」
203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 06:00:07.15:ODDTNklr0
姉「そっかー、弟君、良い事言ってたんだぞー?」
弟「このシチュエーションで?」
姉「うん」
弟「んん……? 俺何て言ったの?」
姉「もちろん内緒だー」
弟「うぇ、ケチだなぁ」
姉「はっはっは、悔しければ思い出したまえ、はっはっは」
弟「……」
姉「はっはっは」
弟「……」
姉「はっは」
弟「ねーちゃん」
姉「んー?」
204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 06:12:41.05:ODDTNklr0
弟「あのさ、なんか俺」
姉「うん?」
弟「最近物忘れが多いなって思う事があるんだけど」
姉「そう?」
弟「うん、だってほら見てよ」
姉「どれ」
弟「メモ帳、たった4日で使い切っちゃったんだ」
姉「……そう」
弟「新しいメモ帳買いに行かなくちゃな、はは」
205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 06:18:37.04:ODDTNklr0
弟「そういえば最近さ、俺達結構大人数で遊ばなかった?」
姉「ううん」
弟「そうだったかな、確かどっかの公園で、父さんと母さんも居た様な」
姉「弟君!」
弟「陸上部の、ほら、マネージャーさんとか、友とか、後同じクラスの男って居るでしょ? そいつも一緒だった気が」
姉「弟君! ダメ! それは思い出しちゃダメ!」
弟「たしかあの日……」
弟「あの日……」
弟「あれ?」
弟「……なんで俺……」
第4話おわり。
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 06:38:57.73:ODDTNklr0
第5話
小さい頃読んだ絵本に描いてあった話だ。
宇宙に憧れる少年の前に、宇宙人がやってきてこう言うんだ。
「お前を宇宙につれてってやろう」
少年は大層喜んで宇宙船に乗り込んで宇宙から地球を眺める。
宇宙船から見た地球はとても小さくて
「あんな星に住んでいたんだ」
「そうだよ、あれが君の星。地球だ」
そして子供は、そこで見た全ての記憶を消去させられて
朝起きると自分が眠っていたベッドで目を覚ます。
……絵本はそこで終わっていた。
210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 07:30:39.66:ODDTNklr0
だけどこの物語には、実は別の話もあったらしい。
────────
────
──
結論から言おう、弟君の姉、つまり「私」は医者になった。現代医学で治せない病は無いと息巻きながら毎日奮闘している……と言えば少しは格好がつくだろうか?
弟君はあの日以来、人工呼吸器無しでは生きられない身体になってしまっている。「宇宙人が掛けた呪いを解くとどうなってしまうのか?」絵本では語られなかった闇の部分がここに生きている。
……私は弟君の意識が無くなるその直前まで、ずっとその呪いを解く方法を探していた。
ただ一言、あの忌々しい宇宙人共が言い残した『この事故の事は忘れろ、これは呪いだ』という言葉を反芻しながら。記憶を消去されたフリをして、息を殺して潜んでいた。
今現在、この手紙を書いている事が奴等に知れたとしたら、私とてその事故の目撃者の一部なのだから消されてしまうかもしれない。いや、おそらくは工作員の手によって消されるだろう。
ただ幸運だったのは、あの船体の不時着で私の身体は何一つ傷つかなかったという事だ、だから呪いが解けた所で私の身体には何も影響が無い。
しかし、あの事故で弟君は瀕死の重傷、クラスメイトの男の子・女の子に至っては即死。父・母に至っては完全に消し飛んでしまっていた。彼らの蘇生技術(あえて技術と呼ぶ)も、元となる身体が存在しなければ恐らく使用できないのだろう。
だからあの事故の後、父・母は蘇生されなかった。そう考えれば合点がいく。
211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 07:34:49.51:ODDTNklr0
呪いが解けた後に弟君が植物状態で生きていられている事は奇跡と呼べる代物だと、奇跡を否定する立場である医者の「私」から「あえて」言わせてもらおう。
……弟君のクラスメイト・同時に私のクラスメイトでもあった男の子、女の子は……残念だが一昨日、去年と急逝してしまった。症状は弟君と同じ、宇宙人の呪いが解かれた事によって、つまり、最期の瞬間を思い出しながら逝ってしまったのだ。
表向きには変死体として「彼らの呪い」が解けた事で、弟君と同じ、事故が起こった当時の身体へと戻ってしまったのだ。果たして二人が何を思い、最期の瞬間を思い出して果てたのか私には想像する事ができない。
身体を蝕む逆向きの時計の針がもたらす恐怖心とは、いくら医学が進歩したとしても解決しうる問題ではないだろう。
あの事故が起きた時、緑で覆われていた公園が火の海に包まれた時、
「誰かッ! 誰か弟君を助けてよ!!!」
私がそう叫ばなかったら、あるいは彼らもあの技術を使用する事はなかったのかもしれない。
「たら」「れば」を言い出すことに意味は無い事にも、「私」はもう気がついてはいるのだけれど。
212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 07:36:14.30:ODDTNklr0
まだ、弟君に関して特筆すべき点が残っている。
通常の……というにはあまりにサンプルデータが少ないが、あの事故で負傷を負った他の二人は事故当時の記憶、あるいはその前後数日の記憶が抜け落ちる程度で済んでいた。それは数回にわたる些細な実験で私個人と友君だけが知り得た事だ。
それに比べて弟君は彼らにより消去される記憶の部位が広角に及んだ、消去された範囲は幼少期の記憶、宇宙への関心、飼い猫の記憶、中学で学んだ数学の記憶などから「60点」など特定の言葉にも及んでいる。それから僅かだが運動能力の向上も見出す事ができていた。
これは個人的推測だが、本当に神話的観測だが、弟君は元々「宇宙少年」だった事もあり、それを彼らが恐れたのではないだろうか。
だからこそ、弟君の消された記憶を辿れば、彼らの足跡を追う事ができるかもしれない。そう思った私は……、ああ。後悔などとうにし尽くした。
時間が無い、話を戻そう。
記憶障害とも見られる症状が弟君に現れた、新しい事を記録できず、古い記憶をどんどん忘れてしまい、最期には自分でメモした内容すら忘れてしまっていた。
その発芽は、つまり、私の最大のミスは、あのパンを弟君に与えた事。
スペースコロネ、まさかあんなもので、と貴方は思うかもしれない。
往々として切欠というものは本当に単純な、些細なものでしかない。まさにあれがダムを決壊させる小さな切欠であったのだろう。
ダム……そう、彼らの掛けた呪いさえも決壊させる、小さな切欠だったのだろう。
それが契機となり弟君の身体を駆け巡った、結果的にあの夜、私の目の前で弟君は崩れ去った。少しの言葉と、わずかの生きる意志を残して。
213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 07:39:53.65:ODDTNklr0
友君は高校を卒業した後、単身アメリカに渡り、宇宙人との交渉の材料を探している。
弟君が所属していた陸上競技部のマネージャーさんは、毎週日曜日に弟君の病室を訪れてくれている。
二人ともあの事故による身体の損傷は無い、つまり、黙認されているのだ、彼らに。
「私」がそうであったように。
……誠に勝手ながら「私」の都合によりこれ以上の事を書き残す事はできなくなってしまった。
弟「『ねーちゃん』」
弟「『空、綺麗だね。あの星まで、僕が連れてってあげるよ?』」
弟「『僕、どこにも行かないよ、ずっとねーちゃんのそばに居るから』」
弟「『だから、ねーちゃん、泣かないで』」
ここに「私」が知り得た、私の心に残る弟君の最期の言葉を残すことにする。
願わくば貴方……、つまりこれを読んでいる「私」が、悲劇の歴史を繰り返す事の無い様に。
214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 07:41:08.44:ODDTNklr0
追伸
もし弟君が生きていれば、今月は弟君の誕生日があります。
「私」に「同い年の弟」が居た事を、本当に誇りに思っています。
216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 08:12:02.76:ODDTNklr0
〆をわすれていました。
おしまい、おしまい。
217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 08:14:47.33:uIq5K6Jf0
姉「しまった……」
弟「どんまいどんまい」
姉「お弁当まで作ったのに」
弟「テレビにみのさん居ないでしょ?」
ピ
姉「本当だ、黒くない」
弟「うん」
姉「コレ、どうしよう」
弟「せっかくだから後で食べよ」
姉「うん」
モグモグ
弟「ん……この味は……」
姉「どしたん?」
弟「お袋の味」
姉「本当?」
弟「袋は袋でもコンビニの袋だけど」
姉「んー」
弟「何点すか?」
姉「60点てトコ?」
弟「厳しいすな」
姉「この煮豆どう?」
弟「100点」
姉「あんがと」
モグモグ
弟「点数と言えば」
姉「うん?」
弟「この前の期末テスト、難しかった」
姉「そうね、平均が赤点だったもんね」
弟「ますます数学が嫌いになった」
姉「中学の時は理数系だったのにね」
弟「理科は好きだけど高校上がってから数学は苦手になったなぁ」
姉「あんた陸上ばっかりやって勉強しないから」
弟「確かに」
姉「自業自得ね」
弟「厳しいすなー」
弟「ん、コーヒー淹れるけど飲む?」
姉「ミルク半分くらい入れて」
弟「いつも思うけどそれコーヒー違うよね」
姉「どう違うの?」
弟「カフェオレって言うんじゃない?」
姉「んー? コーヒーとどう違うのん?」
弟「さあ? 球の大きさが違うだけで呼び方が変わる球技もあるくらいだし」
姉「テニスとテーブルテニスか」
弟「どっちかと言うと野球とソフトボール?」
姉「ふむ」
ズズズ
姉「野球の練習でさ、ティーバッティングってあるよね」
弟「あるね」
ズズズ
姉「ティーバッティグとティータイムって似てるよね」
弟「どこが?」
ズズズ
姉「一人より二人の方がうまくなる」
ズズズ
弟「ん、たしかに」
姉「ご馳走様」
弟「おう」
姉「んー」
弟「あん?」
姉「なんでもなーい」
弟「へんなやつ」
姉「ひどーい」
弟「ところでいつまで制服姿?」
姉「ん、着替えてくる」
パタパタ
弟「いってら」
パタパタ
弟「どしたん?」
姉「覗かないでよ?」
弟「アホか」
姉「絶対、絶対覗いちゃだめだからね?」
弟「念押しされると逆にやってみたくなるのは人間の習性らしいよ」
姉「そか……あ」
ピーン
弟「どしたん?」
姉「覗いていいからね?」
弟「中学あがるまで一緒に風呂入ってたんだし今更裸見てもなぁ」
姉「むー」
姉「ねぇ」
弟「ん?」
姉「ブラジャーどこ?」
弟「何色の?」
姉「黄色」
弟「あー、洗濯中」
姉「んー」
弟「つけなくてもいいのでは」
姉「お姉ちゃんだから許すけど、他の女の子に絶対言ったらだめよ?」
弟「ん、わかった」
姉「じゃあ、でかけてくる」
弟「ちょっと待て」
姉「ん?」
弟「そのままで?」
姉「そのままとは?」
弟「いやだから……」
姉「うん?」
弟「その」
姉「?」
弟「あーもー! ちょっと待ってろ! ドライヤーで乾かしてくるから」
姉「わーい、ありがと」
弟「はぁ……」
ガー
弟「こんにちは、日曜の朝からドライヤーで姉の下着乾かす弟です」
ガー
弟「……うへぇ、生乾き」
ガー
弟「こんなことしてると万が一でも下心が……」
ガー
弟「沸かないんだよなぁ……」
ガー
弟「ん、乾いた」
姉「ありがと」
弟「ほれ」
姉「ん」
ヌギ
弟「ばっ! ここで着けんな!」
姉「ん~? 裸見ても何とも思わないのでは?」
弟「うるせぇよ」
バタンッ
姉「あら、反抗期?」
弟「あれ……? 今なんで?」
Prrrrrrrrrr......
弟「やべ、部活の時間忘れてた」
ガチャ
姉「弟、さっきは──」
弟「悪いねーちゃん、部活行ってくる、用事なら後で」
姉「ん」
弟「帰り6時」
姉「ごはんは?」
弟「食べる」
姉「了解」
弟「いってきます」
姉「忘れ物は?」
弟「ない」
姉「いってらっしゃ~い」
バタン
姉「んー、弟君居ないと暇になっちゃうな」
チクタク
チクタク
姉「んー、ん?」
姉「これ、あのコ。スパイク忘れてる」
姉「もー、しょうがないんだから」
姉「ガスの元栓よーし」
姉「戸締りよーし」
姉「持ち物よーし」
姉「それじゃ、弟の忘れ物を届けに3000里、行ってきます」
姉「んー、毎日自転車で通ってるはずなのに日曜日に学校に行くってなんだか新鮮だなぁ」
姉「風が気持ちいー」
姉「んー」
姉「そうだ、せっかくだからいつもと違う道で行ってみようかな」
姉「あ、おいしそうなパン屋」
姉「すみませーん、これとこれくださーい」
「はーい、420円です」
姉「ありがとうございます」
「また来てねー」
パクッ
姉「んー、美味しいっ」
姉「なんだろうこのチョココロネ、宇宙みたいな形してる」
姉「スペースコロネ?」
姉「あはは、変な名前」
姉「あ、こんなところに雑貨屋さん」
姉「ん、このブレスレット弟君に似合いそう。最近流行ってるし、いいよね」
姉「すみませーん、これくださいな」
「はいよっ」
「彼氏へのプレゼントかい?」
姉「んー? そうですねー」
「そんじゃ、サービスで包装しといてあげるよ」
姉「わぁ、お兄さんありがと」
姉「んー、ちょっと男モノにしてはキラキラしすぎだったかなぁ?」
姉「いいよね、似合う似合う」
姉「良い買い物しちゃった~、早く帰って弟君にあげよっと」
姉「ただいまー」
姉「弟くーん?」
姉「ただいまー?」
姉「おとーとくーん?」
姉「……」
姉「あ、そうだ。弟君」
姉「……」
姉「学校……だった……」ズーン
弟「ハァ……ハァ……」
友「ゼーハーゼーハー」
弟「ハァ……ハァ……何今日のメニュー、……殺されるの俺ら?」
友「300+100×10ってのはもう……冬のサーキット並……」
「コラ、いつまでも休んでんな。次オマエラだぞ」
友「嬉しいねぇ、涙が出てくる」
弟「いくか……」
友「おう」
「ヨーイ……」
パーン
マネージャー「ポカリどうぞ」
弟「おー、さんきゅー」
マネ「は、はい」
友「俺にはー?」
マネ「友さん、どうぞ」
友「ありがとー、マネージャーさんの笑顔で元気120%だよー」
弟「嘘付け」
ヒザカックン
友「うおおおおお」
マネ「……プ、それじゃあ氷とってきますね」
弟「ああ、頼む」
友「ああ……笑われた……俺笑われた……終わりだ……畜生……」
弟「そんな大袈裟な」
友「あー、可愛いなマネージャーさん。傷ついた俺を癒してくれる天使だよマジで、あー俺の彼女になってくれないかなぁ」
弟「無理だろ」
友「即答っ?!」
弟「軽薄な男は嫌いって言ってたよ」
友「この硬派な俺のどこが軽薄だって!」
弟「本当に硬派なヤツが自己申告するもんかい?」
友「一理ある」
弟「うむ」
友「ところで」
弟「あん?」
友「どうなのよ、新しい女は?」
弟「お前、その言い方辞めろよなぁ」
友「うるせー。今が一番楽しい所だろーが、自分色に染めてやるぞーって感じだろ?」
弟「それがまだあんまり馴染んでないんだよ」
友「まぁなぁ、まだ3日だっけ?」
弟「1週間」
友「まー、初々しい」
弟「合ってなかったのかなぁ」
友「でも一目ぼれだったんだろ?」
弟「うん」
友「コイツしかいねぇ! って言ってたじゃん」
弟「いや……必ずしも外見と中身が一致するとは……」
友「意外とコダワるタイプなのな、お前」
弟「お前程じゃないと思うけど」
友「そうか? 俺なんか適当だぜ? 気に入らなかったら1ヶ月持たないもん、気持ち悪いし」
弟「そんなもんかね」
友「ま、自分に合ったスパイクが一番だからな。じっくり履けや」
弟「おう」
マネ「氷嚢もってきました!」
友「ありがと~! ん~! 気持ちいい~!!」
マネ「弟さんも、ど、どうぞ」
弟「ん、ありがと」
マネ「それじゃあ私は……」
弟「あ、ちょっと待って」
マネ「はいっ?!」
弟「さっきの記録見せて」
マネ「はい! どうぞ!」
弟「ん、ありがと」
弟「んー……」
マネ「あ、あの」
弟「うん?」
マネ「弟さん、これが以前の同メニューの結果で……」
弟「おー、ありがと。比較できるようにしてくれたのね」
マネ「は、はい! とんでもないです!」
弟「さすがマネージャーさん、頼りになるよ。いつもありがとうね」
「そんじゃ、ダウンして今日は上がっとけ。ストレッチは入念にな」
友「はー、今日は死ぬかと思った」
弟「それ毎日言ってない?」
友「今日は格別に死ぬかと思ったのさ」
弟「それ使い方間違ってない?」
友「うるせー、……ん?」
弟「どした?」
友「あれ」
弟「あれ?」
友「あれ、お前の姉ちゃんじゃね?」
弟「本当だ、何やってんだろ」
友「思いっきり手振ってるな」
弟「ちょっと行ってくる」
弟「どしたん?」
姉「あー……あのね、弟君」
弟「ん?」
姉「えーっとね」
弟「どうしたの? まさか何か家でなんか事件でも起きた?」
姉「いやそうじゃなくて」
弟「?」
姉「カクカクシカシカ……と、いう訳で」
弟「そんでスパイクを届けにきたつもりが一旦帰っちゃって練習に間に合わなかった……と?」
姉「ごめんなさい、このとーり」
弟「……プ、あはははははははははは」
姉「?」
弟「あのさ、姉ちゃん。俺新しいスパイク買ったの言わなかったっけ? ほらこれ」
姉「あら」
弟「もー、ドジだなー」
姉「むー」
弟「でもありがと」
弟「でもありがと」
姉「うん、あ。そうだ、あとこれ」
弟「パン?」
姉「うん、美味しいよ」
弟「ん、ありがと」
ぐ、るるるるる……
弟「……半分こ、する?」
姉「うん」
2話
弟「……ふあぁ」
弟「よし、時計鳴る前に起きた」
弟「弁当作るかぁふぁあ」
トントン
トントン
ジュー
ジュー
弟「ん、完成」
姉「おはよー」
弟「はよ」
弟「朝ごはんできてるよ」
姉「ん、ありがと」
弟「マーガリン半分だけ塗っておいたから」
姉「さんきゅ」
弟「制服、いつものとこな」
姉「……」
弟「どしたん?」
姉「日曜じゃないよね」
ピ
TV「ズバッ!」
弟「ね?」
姉「ん、おっけい」
弟「はい弁当」
姉「ほい」
弟「そんじゃ行くか」
姉「行ってきま~す」
弟「忘れもんは?」
姉「弟君と違って忘れたりしないよ」
弟「いや俺忘れてなかったでしょ昨日」
姉「そだっけ?」
弟「そうだよ」
姉「あ、ちょっと待って」
弟「あん?」
姉「行ってきますって言って?」
弟「なんで?」
姉「いいから」
弟「はぁ……行ってきます、これでいい?」
姉「ん、いってらっしゃい」
弟「……」
姉「……?」
弟「は、はやく行かないと遅刻する」
姉「いってらっしゃい弟君~」
弟「あんたも登校するんだよ!」
姉「あら」
弟「ふむ」
姉「あらあら」
弟「パンクしてるなこりゃ……」
姉「どうしよう弟君」
弟「しゃーねー、歩いていくか」
姉「間に合う?」
弟「途中で市バスに乗るから大丈夫」
姉「そっか」
弟「戸締りは?」
姉「ん、大丈夫」
弟「おう」
姉「ね~」
弟「ん?」
姉「弟君と並んで歩いて登校するのって久々だと思って」
弟「そうか?」
姉「中学の時以来?」
弟「あ、思い出した」
姉「ん?」
弟「雨の日だろ」
姉「ぶっぶー、ハズレ」
弟「……ん」
姉「もー、物覚え悪いなぁ」
弟「うるせえよ」
姉「あ、バス来たよ」
弟「おう」
弟「結構混んでるんだなこの時間」
姉「そだね」
弟「乗り物酔い、大丈夫だよな?」
姉「うん」
弟「そうかい」
姉「……ん」
弟「……」
姉「……ん、ん」
弟「……」
姉「……」
姉「ん、……ふ」
姉「……」
姉「……んっ」
弟「……」
弟「……おい、オッサン」
「……あ?」
弟「手」
「……、ち」
ブロロロロロロロロロロロ……
弟「……」
姉「こ……」
弟「ん?」
姉「こわかった……」
弟「ごめん、バスで行こうなんて言ったから」
姉「ううん……」
弟「あの野郎、次に顔みたらぶっ飛ばす」
姉「ん、でも弟君が守ってくれたから。もう大丈夫」
弟「そうか? 無理すんなよ」
姉「ほんと大丈夫だから」
弟「ん、そっか」
姉「うん」
キーンコーンカーンコーン
姉「あ」
弟「やべっ、予鈴だ」
姉「走る?」
弟「残り時間5分、距離約300m。よし、荷物もっちゃる、貸して」
姉「ほい」
弟「ほいきた」
姉「よーい」
弟「どーん」
ガラッ
弟「ゼーハーゼーハー……、すんません……遅れました……」
先生「なんだ、姉弟揃って遅刻か」
弟「すんません……」
姉「すみません……」
友「よう、遅かったな。どしたん?」
弟「……あんまり遅いんで背負って走ってきた」
友「重かったろう……ご苦労」
姉「友君、聞こえてるよ」
友「ひ」
姉「うふふ」
友「イヤアハハ、ナンノコトカナー、アハハー」
姉「もー」
先生「こらー静かにしろー」
キーンコーンカーンコーン
友「おーい! 昼飯たべようぜー!」
弟「おう」
友「今日はどっちが作ったん?」
弟「俺」
友「やっぱりな」
弟「なんで?」
友「華がない」
弟「うるさいよ」
「俺も一緒に食べていいか?」
友「おう、来い来い」
「さんきゅー、お? 今日は弁当、お前が作ったのか?」
弟「なんでわかんの?」
「見た目……かな?」
弟「……」ズーン
姉「こら、あんまり弟君いじめちゃだめだぞ。こう見えて味はしっかりしてるんだから」
パクッ
友「姉さん、とか言いながら俺のハンバーグ食べるの辞めてもらいます?」
姉「朝のでおあいこ」
友「……く、安い出費だ」
姉「なによ友君、何か言いたげね」
友「イエ、ナニモ」
姉「ふーん」
弟「今日の卵焼き、どうだった?」
姉「ん、美味しかった」
弟「何点?」
姉「60点かな?」
「ん? お前らの家、砂糖味なのな」
姉「え? 君の家は違うの?」
「我が家はしょうゆ派だ、正当な日本の伝統を受け継いでな」
姉「しょうゆ……完全にノーマークだったわ」
「日本人で醤油をしらねぇとは……姉さん、人生の99%を損してるぜ」
姉「そんなにっ?!」
「あぁ、間違いねぇ……だがまだ取り戻せる、この醤油でな……」
姉「しょうゆうう~~」
友「チッチッチ、甘い、甘いなぁ」
「あん?」
友「見ろ、この黄金色に輝くマヨネーズを。卵とマヨネーズ、元は一つのDNAだったものが今こうして卵焼きの上で再開するわけよ……日本の伝統? はっ、そんなもんこの感動的な親子の再会の目の前では霞むね」
「んな大袈裟な……」
友「嘘だと思うなら食べてみろぃ」
パク
「ん、イケるな」
弟「どれどれ? おお、わりとイケルな」
姉「え? 本当? あら、おいしい」
友「だろ?」
「ん、うまいうまい」
弟「マジ美味いよ、これ」
姉「ん~、でりしゃす」
友「はっはっは! そうだろそうだろ!」
姉「ごちそうさま」
友「うむ。大儀であった」
友「……って、俺の分がないっ?!」
友「うぅ~、俺の卵焼きが~」
弟「泣くなよ……高校生が卵焼きくらいで」
友「うぅ~、毎日楽しみにしてたのにぃぃ」
「その割には’食べてっ’っていうオーラだしまくりだったよね」
姉「うん」
弟「てっきりダチョウ倶楽部的なノリかと思ったぜ」
友「くるりんぱ」
友「……ってアホな」
友「あ~、そうだ弟。昨日の事なんだけどよ」
弟「ん? 昨日?」
友「あん? 忘れちまったのか? コーチから連絡あったろ」
弟「すまん、何だっけ?」
友「ったくよー、今週の土日は競技場で練習やるって言ってたろ、ちゃんとメモっとけよ」
弟「ん、ありがと。メモしとくよ」
メモメモ
姉「弟くん、足速いね」
弟「なんだよ改めて」
姉「もう勝てないなーって」
弟「朝の事言ってんのか?」
友「さぞかしおm」
姉「と・も・く・ん?」
「姉さん、だってこいつとうとう400m50秒切ったんだぜ。来年はインターハイだって狙えるよ」
友「ま、俺より遅いけどな」
「お前の方が遅いだろ」
友「てめー真実は時として残酷という言葉を知らんのか」
「意味わからんし」
姉「あはは」
弟「……ったく、バカだなー友は」
姉「来年かぁ」
弟「来年こそは行ってみたいな、来年は3年だし」
姉「行けたらいいねぇ」
弟「おう」
姉「本当、弟君は走るのが好きなんだね」
友「こいつ走ってなかったらマグロみたいに死ぬって絶対」
「その例えはどうなのよ」
姉「むー」
弟「どしたん?」
姉「ん、こう見えても昔は私の方が速かったんだからね」
「へー」
友「なんか……運動できる姉さんって想像できない……」
姉「あら、突然プロレス技かけたくなってきたわ?」
友「コ……コブラツイストッ?! ギブギブギブギb」
「な~む……」
チーン
弟「友よ……お前の事は一生忘れない……」
「俺の実家、寺だから骨は収めてやるよ」
弟「おー、お前ん家、寺だったのか?」
「そーだよ」
弟「よかったな友」
友「生きてます! 生きてます!」
姉「んー」
カシャ
友「姉さん」
カシャ
姉「ん?」
カシャ
友「何を撮っているので?」
姉「写真」
友「なぜに?」
姉「友君がおかしいから?」
友「さらば青春っ!」
タッタッタ
「忙しいヤツだな」
弟「腹が減ったら戻ってくるだろ」
姉「お弁当忘れていっちゃってるもんね」
弟「ふむ……砂糖味か。よし、今度作ってみるかな」
メモメモ
「あ、やべ。午後イチで移動教室なの忘れてた」
姉「えー、どこ?」
「生物実験室」
弟「あのアホはどうする?」
「書置きしとこう」
姉「お弁当を返してほしくば生物実験室まで……、これでいいよね?」
「姉さん、優しいなー」
姉「なんか昔から友くん見てると意地悪したくなるのよね」
弟「友よ……生きろ……」
姉「んー」
女「どうしたのー?」
姉「んー?」
女「なんか楽しそうね」
姉「うん」
女「今更だけど弟と一緒のクラスって複雑じゃない?」
姉「んー、そうかな?」
女「そうだよー、あたしだったら絶対嫌だけどなぁ」
姉「昔からそうだったからなぁ、そういう感覚はよくわかんないよ」
女「大人の意見すなぁ」
姉「ん、そうかなぁ」
女「胸はあたしのが大人だけど」
モミモミ
姉「……んっ」
姉「……んんっ、もう……やめてよ~」
女「ぐへへへへへ」
姉「も~」
女「ええどすなぁ……ほわあああ」
友「とーう! 何羨ましい事堂々としとるんじゃーい!」
女「出たな悪の親玉ー!」
友「誰が悪の親玉か!」
女「貴様だー! 女の敵ー!」
友「女の敵って……俺何かしたっけ?」
女「更衣室覗いたでしょ?」
友「いやだからアレは事故だって何度も説明したじゃない?」
女「事故ですんだら警察いらなくない?」
友「ですよね」
女「そうですよね」
友「それに……あの件は合コン3件で手打ちという事になったはずだ……」
女「そうだったわね」
友「うむ、わかったら行くのだ、俺は姉さんに用事がある」
女「イタズラするんじゃないわよ」
友「お前と一緒にすんな!」
スタスタ
友「ったく、セクハラ女が」
姉「友君も似たような存在じゃない?」
友「存在レベルで?! 俺居るだけでセクハラなのっ?!」
姉「んー?」
友「……?」
姉「うん」
友「oh...shit」
姉「それで?」
友「あん?」
姉「用って?」
友「弟の居ない所で話したいんだが……あいつは?」
姉「移動教室だって言って行っちゃったよ?」
友「そうか」
姉「うん」
友「じゃちょっと来てくれ」
姉「どこに?」
友「中庭で良いだろ? 屋上にするか?」
姉「んー、中庭かな」
友「おっけー」
女「シャキーン! 女探偵参上ってな訳よ!」
女「友の野郎……あたしの姉さんに何用……」
女「決まってる! 男が女と一対一になってする会話なんて古来から一つしかないのよ!」
女「燃えてきた! 暴いてやる! 全ての謎を明らかにしてやるー!」
「どうでもいいがそんな大声だしてたらバレバレだぞ」
女「ひっ?!」
「あん?」
女「なんだアンタか……」
「友しらねーか?」
女「さー? 知ってるけどタダって訳にはねぇ……」
「あいつの為に払う金なんぞ1円足りとも持ち合わせとらんわい」
女「男の友情なんて脆いものね……」
「お前が言うな」
スタスタ
女「……」
「……」
スタスタ
女「……」
「……」
スタスタ
女「……」
「……」
ピタ
女「ねー」
「あん?」
女「ついてこないでよ」
「勘違いするな、俺の行きたい方角にお前が歩いているんじゃないか」
女「同じ事よ!」
女「あーもーめんどくさくなってきた」
「何が」
女「今ね、友と姉さんが一緒に中庭でピロートーク中な訳よ」
「ほう、それで?」
女「それで……って、あんたバカじゃない? 監視よ監視、あのバカが姉さんに手を出すとも限らないでしょうが!」
「あー、それの事ならさ……」
女「あん?」
「お前、あんま深入りすんな」
女「なんでよ」
「ほら、人の恋路を邪魔するものはなんとやらって言うだろ?」
女「はん、だったらなおさらよ」
友「なーにがなおさらだこのストーカーが」
「よう、ここに居たのか」
女「あーもー、……あんたが騒ぐから見つかったじゃない」
友「うるせー、しっし」
女「あたしは虫か!」
友「無視だ無視」
女「面白くない!」
友「ぐ……そう切り返されるのが地味に一番傷つく……」
姉「女ちゃ~ん、どうしたの?」
女「あ! 姉さん! 大丈夫? この野蛮人に何もされなかった?」
姉「え? あ、うん」
女「ホントに? 脅されて無い? 金品を要求されてない? 弱みにつけこまれてない?」
友「お前の中で俺はどんな人間なんだよ」
女「女性の敵」
友「ひでぇ……」
姉「大丈夫だよ女ちゃん。あたしこの前の月曜日、図書委員のお仕事休んじゃって、その事について教えててもらってただけだから」
女「本当?」
姉「うん、第一友君なんかに負けないもん」
友「そうだぞ、俺なんか姉さんの前ではイチコロ……自分で言ってて凹んできた……」
女「よかった~、あたしはてっきり姉さんが友の魔の手に絡め取られるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしてたのさ」
「その割には随分楽しそうだったけどな」
女「あ~ら、午後の授業に遅刻しちゃう♪」
友「あ、逃げた」
姉「ふふ、面白い女ちゃんだね」
「全くだ、見てて飽きないよ」
友「助かったよ」
「気にするな」
弟「おせーぞ、お前ら」
友「いやーすまねー、でかいのが中々でなくてよお」
「食後に言う台詞かよそれ」
弟「デリカシーのカケラもないヤツだな」
友「ひゃははは、そうだろそうだろ。もっと褒めてくれ」
「決して褒め言葉じゃないからな?」
弟「ったく……」
姉「は~い、皆こっち向いて~」
カシャ
姉「ん、よく取れてる」
「あたしも入りたい訳よ! ほら、姉さんも一緒に!」
姉「ん、それじゃセルフタイマーで皆で撮ろっか」
弟「おう、皆寄れ寄れ」
ジー…………………………、カシャ。
キーンコーンカーンコーン
「よし、今日の練習はここまでだ。各自クールダウンの後、解散しろ」
「はい!」
マネ「お疲れ様でした」
弟「マネージャーさん、おつかれ様」
マネ「弟さん、マッサージしましょうか?」
弟「ん、お願いできる? じゃあハムストリング中心で」
マネ「はいっ」
弟「ん……、上手くなったね、いたきもちいい」
マネ「え……? 本当ですか?」
弟「ん、前に受けた時より上手いよ」
マネ「あ、ありがとうございます」
弟「そういや、前っていつだったっけ、あー思い出した、マネージャーさんがまだ入学したての時だったっけ」
マネ「あ……はい、あの時はとんだご無礼を……」
弟「いやいや、骨に染みたよ。筋肉じゃなくてね」
マネ「もう間違えません」
弟「ん……頼むよ」
友「おーい、マネージャーさーん、そいつ終わったら俺も頼むわ」
「友、グランド整備しとけー」
友「コーチイイイィイイ?! そりゃないっすよおおおお?!」
「うるせー、今日のタイムトライアルでビリっけつだったお前が悪い」
友「鬼! 悪魔! うおお~! 青春だああああ!!!!!」
弟「元気なヤツだなぁ」
マネ「あはは、そうですね」
マネ「あの、終わりました」
弟「ん、ありがと」
マネ「弟さん」
弟「ん?」
マネ「これ、記録ノートです。今日の練習タイムと過去のタイム一発で比較できるように整理しておきました、使ってください」
弟「え? こんなに沢山の記録、マネージャーさん一人で?」
マネ「はい!」
弟「……ん、ありがと。大事に使わせてもらうよ」
マネ「あ、の!」
弟「ん?」
マネ「わたし! 弟さんの力になりたいです! だから! 一生懸命がんばります!」
弟「あはは、ありがとう。でもたまにはアイツの力にもなってあげて?」
友「うおおお~~~~青春~~~~~~!!!!!」
「スゲェ! みるみるグランドが整地されていく!」
「奇跡だ……俺は今神の奇跡を見ている……!」
マネ「はいっ!」
弟「お待たせ」
姉「ん、時間ぴったりね」
弟「ちょっと急いで来たからギリギリ間に合ったよ。この時間だとバスも間に合うね」
姉「むー?」
クンクン
弟「ん?」
姉「弟君から女性のニオイがするなぁ?」
弟「女性? あぁ、マネージャーさんかな?」
姉「マネージャーさん? あぁ、あの可愛らしいくりっとしたコ?」
弟「うん、マッサージしてもらってた」
姉「むー?」
弟「どしたの?」
姉「そのコ、弟君の事好きかもよ?」
弟「あはは、そんなまさか」
姉「むー」
弟「どうしたのさ」
姉「べっつにー?」
弟「ヘンなねーちゃんだな」
姉「私が変なら弟君もヘンだよ」
弟「なんで?」
姉「姉弟だから」
弟「パズルゲームみたいに連鎖しないってば」
姉「うー……」
弟「どしたの」
姉「パズルゲームで連鎖したことない……」
弟「え?! 今そこで悩んでたのっ?!」
姉「弟君」
弟「はい」
姉「おねーちゃんはねー」
弟「ん?」
姉「いっろいろな事に思いを馳せているのよー」
弟「そうですか」
姉「あ、信じてないな?」
弟「信じてるよ。だって、ねーちゃんだもの」
姉「むー、ずるいなぁ。全部許してあげたくなるじゃないのさ」
弟「……んー」
姉「ん」
弟「よし、かえろっか」
姉「うん」
姉「あ、そうだコレ」
ゴソゴソ
姉「はい弟君、プレゼント」
弟「え? 俺誕生日まだだよねーちゃん」
姉「いいのいいの、あげたくなった時にあげるのが一番なの」
弟「あけていい?」
姉「いいよ」
弟「ん……あ、このブレスレットってまさか」
姉「そう、昨日買ったの」
弟「これ買って満足して家帰っちゃったんだよね」
姉「むー、それは言わないでー」
キラッ
弟「ん、どうかな?」
姉「似合う似合う」
弟「ありがと」
姉「いいよ」
弟「大切にするね」
姉「それを私だと思って大切にしてね」
弟「うん」
姉「ん、よーし」
弟「ん?」
姉「弟君」
弟「?」
姉「だいすきだー!!」
弟「ちょ、ココ公道公道! みんな見てるって! ねーちゃん!」
これはすばらしいねーちゃんですねwktk
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:03:07.24:yQfOggvT0姉「はっはっはー、それがどうしたー」
姉「私は弟君のおねーちゃんだぞー!」
姉「どうだーまいったかー!」
弟「ねーちゃん……」
姉「弟君」
弟「はい!」
姉「何があっても君は私の弟だからね」
弟「ん、うん」
姉「ん、わかればよろし」
弟「え? それだけ?」
姉「うん」
姉「あ、ホラ。バス来たよ」
弟「ん。あ、うん」
姉「ほら、ボーっとしてないで、走るっ?」
弟「本気で走ったらおねーちゃんおいてっちゃうよ?」
姉「それでもいいのさー、君は君の思うまま走ればいい、自由だ」
姉「それじゃあ……よーい……どんっ!」
弟「ねーちゃん……」
ブロロロロロロロロ……
弟「バス……いっちゃったよ……」
姉「だめ……もう走れない……」
弟「結局こうなるんかい」
第2話おわり。
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:31:12.02:m8EoGKKP0
>>104
これに似たのうちのカーチャンもってるぞ
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/11(火) 22:32:48.82:yQfOggvT0これに似たのうちのカーチャンもってるぞ
第3話
弟「さて……参考書買いに市内のでっかい本屋に来たものの」
姉「わー、ひろーい」
弟「広いのと人多いのでえらいこっちゃ」
姉「迷子にならないよーに」
弟「その台詞……そっくりそのまま返す事にしよう」
姉「むー」
弟「甲子園1個分らしいよ」
姉「こーしえん?」
弟「えーっと」
姉「?」
弟「スカイマークスタジアムくらい?」
姉「なるほど」
弟「わかったみたいでよかった」
姉「弟君、弟君」
弟「ん?」
姉「面白そうな本が」
弟「とうもろこしと、たこさんういんなー?」
姉「絵本」
弟「へー、可愛い本だね」
姉「……」
弟「……」
姉「むー……」
弟「……?」
姉「……だめ?」
弟「はぁ……いいよ」
姉「やったー」
弟「んー……」
姉「良い参考書あった?」
弟「こうして並んでるの見るとなんか全部良さそうに見えてくる」
姉「むー……たしかに」
弟「赤本はまだ要らないとして、苦手な数学をどうにかしたいんだよなぁ」
姉「おねーちゃんは弟君が向学心に溢れていてくれているだけで嬉しいんだよ」
弟「我輩はその向学心をなんとか点数に結び付けたいところである」
姉「むー」
弟「ん?」
姉「時に弟君や」
弟「なに?」
姉「君はどこの大学にいくつもりかね?」
弟「俺の頭でいけるとこ……ってのは冗談で」
姉「ん」
弟「大学は、どこでもいいんだ。でも医学部に入りたい」
姉「ほう、医学部とな」
弟「うん」
姉「医学部だと、今の500倍は頑張らないと厳しいと思うよー」
弟「厳しいなぁ」
姉「むー、弟君は60点だから」
弟「ん」
姉「うん?」
弟「その60点って何?」
姉「弟君の中学の時の平均点」
弟「可もなく不可もなくってか……」
姉「まぁまだあと1年もある、頑張ろー」
弟「ねーちゃんは?」
姉「ん、私?」
弟「どこ行くの?」
姉「弟君と一緒のとこ」
弟「は?」
姉「だから、弟君と一緒のとこ」
弟「えーっと、医学部?」
姉「ううん」
弟「?」
姉「ん?」
弟「どういう事?」
姉「おねーちゃんは、弟君と一緒の大学に行くのさ」
弟「……なんで?」
姉「なぜって、好きだから?」
弟「いや、おかしいでしょ」
姉「姉弟なんだからおかしくはないと思うなー」
弟「そうじゃなくて!」
姉「しー……ここ、本屋さんだよ」
弟「あ、……ごめん」
友「なぁーんか聞いた声がすると思ったら、どこぞの姉弟じゃねーか」
弟「お前は……」
友「よう」
弟「……誰だっけ」
友「……ひでぇ、唯一無二の親友からこの扱い……ひどすぎる……」
姉「あーはいはい。よしよし、友君、元気だそうねー」
友「挙句姉さんに励まされるなんて……、うおお……むぐっ?」
姉「し・ず・か・に、ね?」
友「はい……すみません……」
姉「わかればよろし」
弟「ったくバカなんだからさ」
友「うるせー」
友「で? なんなのお前等、エロ本でも買いに来たの?」
弟「どこの世界に姉弟でエロ本買いにくる奴がいるんだよ」
友「そっか、それもそうだな」
弟「参考書だよ、お前は?」
友「奇遇だな、俺もだよ」
弟「お前の口からついに勉学の言葉を聞こうとはな……地球が滅びるのか? アルマゲドンの前兆か?」
友「いやだっ! 宇宙になんか行きたくない! 地球にのこって100人くらいの孫に囲まれて幸せに死ぬんだ!」
姉「と~も~く~ん~? し~ず~か~に~」
友「スンマセン姉サン」
「有難うございましたー」
友「そういや昔はよくこの三人で遊んだよな」
姉「ん、そうね」
友「最近あんま遊んでないし……久々にどー?」
姉「私はいいけど、弟君は?」
弟「ん?」
友「遊びにいこうぜーっていう話」
弟「おう、いいよ」
友「よっしゃ決まりな。カラオケいこうぜカラオケ、ここらの安い店知ってるからさ」
姉「ん、エスコートは任せたよ」
友「ははぁ」
弟「不安だ」
友「うおい!」
友「まず俺からね!」
弟「はいよ」
友「よっしゃ! まず最初はコレだろ! この曲で決まり!」
~♪
友「~~~♪」
「12点だピョン!」
友「何で!」
姉「あはは」
弟「12点て、奇跡的だなー」
友「くっそー、こんなハズでは……」
姉「次私ね」
姉「~~♪」
姉「~♪」
姉「~~~~♪」
弟「うお……ねーちゃんうまいなぁ」
友「~~~♪」
姉「と~も~く~ん~♪」
友「姉・さ・ん~♪」
姉「かぶせてくんな~~♪」
友「すみませ~~ん♪」
弟「次俺だな」
友「お前の歌はね、コレ」
ピ
~~♪
弟「これ、……中学の校歌じゃない?」
姉「こんなの入ってるんだ」
友「地元密着が売りだからなココ」
弟「そういう問題っ?」
友「まま、いいからいいから。歌うぞー、いっせーのーで!」
~~♪
~♪
~~~~~♪
~~~♪
友「あー楽しかった」
姉「ほんとー」
弟「久々に歌ったー」
友「ん、もうこんな時間か」
姉「おなかすいたぁ」
弟「ん、帰って食べるか」
友「そうだな、明日は学校だし、そろそろ帰るか」
弟「ありがとうな、友」
友「あん?」
弟「なんか久々に3人で遊んだ気がしたよ」
友「気がしたんじゃなくて、実際遊んだんだあよ」
弟「ん、そっか」
姉「んー、友君、弟君」
友「ん?」
弟「あん?」
姉「久々に行ってみない? 裏庭公園」
友「おーいいな」
弟「裏庭公園?」
友「ほら、あの幼稚園の近くの」
姉「滑り台と砂場しかない公園」
友「まだあるかなー、再開発とかでつぶれてないか?」
姉「まーまー、久しぶりに見とくのもオツなもんさー」
弟「そんじゃ、行ってみるか」
友「おい、こっちこっち」
弟「ん、すまん」
友「この道だ、うわー懐かしいな」
弟「ここか……」
姉「むー」
弟「ん?」
姉「もうその滑り台、弟君には小さすぎるねー」
弟「ん、確かにこれじゃ滑らなくても降りていけるな」
友「でかくなったもんな、お互い」
姉「年寄りみたいな発言だねー、友君」
友「えぇ?!」
姉「友じいさん」
友「リアルすぎるんでやめてもらえませんか姉さん……」
友「なぁ弟さ」
弟「ん?」
友「俺さっき宇宙には行きたくないって言ったけど、ありゃ嘘だ」
弟「ほう?」
友「見上げてみろよ、この星空を。なかなかどうして、キレーなもんだぜ」
弟「たしかにな」
友「こう、手を伸ばせば捕まえられそうじゃねーか?」
弟「そうか?」
友「男だったらよ! 捕まえてみたいって思うよな、あの星さ」
弟「なんかいつになくロマンチックな発言だなおい」
友「なんてったってガキの頃の俺の夢は、宇宙飛行士、だからな」
弟「お前らしい途方もない夢だな」
友「……だろっ?! なーっはっはっは!」
弟「おう」
姉「宇宙飛行士かー」
友「おうよ」
姉「宇宙に行ってどうするの?」
友「そうだなー、まずは宇宙人と握手」
姉「むー? タコみたいなあれか?」
友「最近だとグレイってのが有力らしい」
姉「棚からグレイのライブチケット2枚」
友「うわそれ誰のネタだったか思い出せない」
姉「んー、宇宙かー」
友「おうよ」
姉「あ、流れ星」
弟「ほんとだ」
友「え? どこどこ?」
姉「友君……友君はお星様になっちゃったんだね……」
弟「良いヤツだった……」
友「さーさーのーはーさーらさらー、……ってコラ! 季節も違うし! そもそも生きとるわ!」
姉「むー」
友「え? なにその空気読めよ的なオーラ」
姉「べつにー」
友「この扱いの酷さ……いつからなの……」
姉「覚えてない?」
友「う?」
姉「幼稚園で、友君が弟君をいじめてた事あったでしょ?」
友「あー……、あったね。そんなことも」
弟「そうだっけ」
友「いや、あの時はホントすまんかった」
姉「はっはっは、その時私がこらしめてやったのさー」
友「あー……そうだったそうだった」
弟「……なー」
姉「ん」
友「どした?」
弟「なんか、さっきから物音聞こえないか?」
友「あははー。おい、冗談やめろよなー」
姉「……ん」
友「姉さんも?」
姉「しっ」
弟「……やっぱり聞こえる」
友「おい……?」
弟「……」
友「なんか……いるのか?」
弟「……暗くてよく見えないけど、たぶん」
友「姉さん、下がってろ」
姉「ん、わかった」
友「弟、いけるか?」
弟「お前こそびびんなよ」
友「はん、誰が」
弟「……」
友「……」
ガザッ
友「……おい、聞こえたか今」
弟「ん」
友「くそ、暗くて周りがよく見えないな」
弟「足元気をつけろよ」
友「ああ」
ガサガサ
弟「……なんかゆっくり動いてるな」
友「気味悪いぜ」
弟「あの木の裏からか?」
友「お前、右からな」
友「じゃ、お前は左からで」
い
っせー
のーで!
ニャーン
姉「あら、猫ちゃん?」
ニャーン
姉「ミー?」
ニャーン
姉「ニャーァ」
ニャ
姉「ニャー?」
ニャーン?
姉「ニー」
ミャー
姉「ふんふん、なるほどね」
友「まさか……わかるのか姉さん!」
姉「ううん、全然」
友「おおう! おう! そうだと思ったわ畜生!」
姉「むー」
友「え? 何まさか翻訳にチャレンジしてたの? それですねてるの?」
姉「むー」
弟「ん、かわいいなこいつ」
ニャー
弟「ねーちゃん」
姉「ん?」
弟「……」
姉「むー……」
弟「……」
姉「……むー」
弟「……だめ?」
姉「いいよー」
弟「やった」
姉「そうと決まれば名前つけないとね」
友「猫だからサンタクルスでどうだ?」
姉「却下」
友「即効かい!」
ニャー
弟「ん」
姉「ん?」
弟「よし。決めた」
姉「ん、聞こう」
ニャンダフル!
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 00:58:18.81:fT844KyI0にゃにがにゃんだーにゃんだーかめん
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:05:32.84:2xFWS8oi0猫林にゃん子
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:15:10.18:K9w1h/wk0にゃん太っ!!
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 01:21:06.33:ODDTNklr0友「ちょっと待ったあああああああああああああああああああああああ!!」
弟「なんだよ」
友「サンタクルスはこの際諦めよう」
弟「うん」
友「その代わりニャンダフル! ってのはどう?」
弟「いいね」
友「おし決まr」
弟「でもダメ」
友「ガーン……あと、にゃにがにゃんだーにゃんだーかめんってのと、猫林にゃん子ってのと、にゃん太っ!!ってのがあるんだけど」
姉「沢山考えてくれてありがとね」
ゴメンニャー
弟「こいつの名前は……」
弟「こいつの名前はニャー、鳴き声がニャーだから」
ニャー?
姉「ニャーね、良い名前じゃない」
友「ニャーって……ニャーって……、サンタクルスうぅ……」
弟「ニャー、よろしくな」
ニャー
弟「ん、そんじゃそろそろ帰るか」
友「キャットフード買って帰れよ、それともミルクのがいいのかな? あと明日即効で動物病院もな」
弟「わかってるよ」
姉「ミャー」
ニャー
姉「ミャー?」
ニャ
姉「ミャーン」
友「姉さん、鳴き声変えようとしてない?」
姉「むー……、無理だった」
ニャー
友「なぁ……姉さん、これって……」
姉「わかんない……、でも……」
弟「ん? どったの?」
友「べっつにー。お前さ、飼い主になるんだからちゃんと餌やれよ」
弟「ん、わかった」
姉「うー、冷えるわね。ね? そろそろ帰ろう?」
ニャー
弟「そうだな、帰るか」
『……にゃあ』
────────
────
──
友「そんじゃ俺、こっちだから」
弟「おう」
友「ニャー、寂しくなったらいつでも俺ん家に来るんだぞー」
ニャー?
姉「イヤだって言ってるよ?」
友「猫にまで嫌われてるのっ?! もういい! 実家に帰らせていただきます!」
弟「毎度毎度忙しないヤツだな」
姉「あら? 友君は友君で良いトコあるのよ」
弟「それは……わかってるよ、うん」
ニャー
ニャー
姉「ニャー、あなた運がいいわよ」
ニャー?
姉「こーんな素敵な飼い主様に拾われたんだから」
ニャ
姉「ふふ、幸せになりなさいな」
ニャー
弟「ねーちゃん」
姉「ん?」
弟「あいつのせいで有耶無耶になってたけど」
姉「なーに?」
弟「本屋での話」
姉「弟君」
弟「うん?」
姉「私が医学部を志しているのは本当だよ」
弟「そうなん?」
姉「うん」
弟「……ん、そっか」
姉「うん」
弟「わかった」
姉「ん」
弟「じゃ、帰ろっか」
姉「うんっ」
ニャー
第3話おわり。
間話
「また一人消えたらしい」
「……なぁ、多分とは思うけど。俺の事か?」
「勘がいいな」
「……まぁな」
「寂しいか?」
「……寂しさを感じさせるわけにはいかねぇな、死んでも」
「……死んだら何も残らねぇだろうが」
「だーっはっはっはっは! たしかにそうだ」
バンバン
「いてててて、叩くなって」
「なぁ、聞いていいか?」
「なんだよ」
「消えるってのは、死んだのと同じになるのか?」
第4話
中庭。
友「昨日は本当にビックリしたよ、まさかニャーが生きてたなんて」
姉「生きてた……っていう表現が正しいのかどうかわからないけれど。姿形、鳴き声まで一緒なんてね」
友「別の個体だってのか? 俄かには信じられないなぁ」
姉「友君もそう思う?」
友「あいつのあの反応みてたらな」
姉「むー」
友「全ては検査の結果待ちってか?」
姉「でも」
友「でも?」
姉「弟君、昨日から元気なのー」
友「そりゃ良かった」
女「ねぇ」
友「あん?」
女「二人はいつピロートーク始めるの?」
友「っだあ! かあ! らぁ! 俺と姉ちゃんはそんな関係じゃねえ!」
女「あたしの事は……一晩で捨てたくせに……姉さんを取るのね……」
姉「うわー、友君極悪人?」
友「事実無根です! よし! そこまで言うなら女ッ! 法廷で会おう!」
スタスタ
女「行っちゃった、さすがに怒ったかなアイツ?」
姉「ううん、思う存分ツッコミができて満足そうだったよ」
女「アイツのセンスを疑うわ」
女「まぁアイツはヘタレだし、面白くないし、カッコ悪いの三重ダメ男だから、姉さんとは似ても似つかないわよね」
姉「そうでもないよ」
女「え?」
姉「友君、根は優しい良い人だよ?」
女「あぁ……女神様……矮小なこの私目をお許しくださいぃぃいいい」
モミモミ
姉「……ん、もう。女ちゃん……んん」
女「ん~、これで今日も生きていけそう」
姉「むー」
女「姉さん、めんごめんご」
姉「女ちゃん」
女「うん?」
姉「友君の事、好きなの?」
女「……いま、なんと?」
姉「ん」
女「イマ・ナントー?」
姉「えっと、友君の事、好きなの?」
女「ひゃあああああああああああっ?!」
姉「むー?」
女「なんで! どうしてそうなるの! あんな変態助平男のどこが! どこが! 一点の隙もあんな男に許した覚えはないのよっ!」
姉「そんな力一杯否定しなくても」
女「こ……これが大人のレディーの余裕なのかしら……おーっほっほっほ」
姉「面白いなあ、女ちゃん」
女「人で面白がるなんて最低です……! って、アレー? なんだか自分も似た様な事をしていた気がスルー?」
姉「だってほら」
女「う?」
姉「私と友くんが一緒にいるところに女ちゃんいつも現れるから」
女「……ぐ」
姉「そうだよね?」
女「言われて見れば……あれ? 否定できない?」
姉「ん」
女「あたし……アイツの事が……好きだったの? え? 嘘? そんな? 嘘からでた真? 真実? これがあたしの求めていた真実なのーっ?!」
ヒュウウゥゥゥゥゥウウウウ……
パタン
姉「お、女ちゃーん。大丈夫?」
女「オイオイヨー、オイヨイヨー」
姉「どうしよう……ちょっとからかっただけでまさかこんなになるなんて……」
「オイオイヨー、オイオイヨー」
姉「ううん、こまった。とにかく保健室へ」
友「困った時の俺参上! とうっ!」
姉「あ、友君」
友「ついでにこいつも連れてきた」
弟「ついでって何」
友「いいからいいから、ほら、お前そっちの肩もて」
「オイオイヨー、オイオイヨー」
弟「あれ? このひと、なんで伸びてるの?」
友「おそらく宇宙人からの精神攻撃だろう」
弟「……大変なんだな」
『起きてください』
女『……ん』
『起きてください』
女『……んん?』
『あ、やっと起きましたね』
女『……なに、アンタ誰? ココどこ?』
『ココは貴女の夢の中、私は友です』
女『友?』
『はい、女王様』
女『は? 女王様?』
『はい、そうです女王様』
女『何? あんた頭でも打ったわけ?』
『ここは貴女の夢の中、全てはあなたの思惑のままに……』
女『はっはーん、ピーンときたわ。ドッキリでしょう、さっきのはその複線だったわけね? その手にはひっかからないんだから』
女『お腹すいた』
『はっ、只今お持ちいたします』
女『喉渇いた』
『かしこまりました』
女『肩凝った』
『お揉みいたします』
女『(ナニココ楽園?)』
※夢です
女『ふーん、本当に夢なんだ。明晰夢ってヤツかしら?』
女『ん、まてよ……確か明晰夢って夢の状況を自分の思うまま操れるのよね……?』
女『よし、やってみるか』
女『3DプラズマTV出て来い!』
ポーン
女『すげーーーーーー!!!』
女『なにこれ本物でた?!』
ンン……
女『あら? 消えちゃった』
女『そっか、さすがにそんなに都合よく行かないわよねー』
女『ちょっとそこらを散歩する訳よ』
女『んん、よく見れば現実の世界にソックリね』
女『考えてみれば当たり前か……って、うわ、ととと、意識してないと体が勝手に宙に浮いちゃうわ』
女『こりゃ歩くのも一苦労……? そっか、移動できれば別に浮いてもいいんだわこれ』
女『なるほど……奥が深いな……』
女『っだー、飽きた』
女『せっかくあたしの夢だってのに人っ子一人居ないじゃないのさー』
女『どーなってんだ責任者でてこーい』
『……また一人消えたらしい』
女『あん?』
女『何かしら? 向こうの方から声がするわね。人がいるかも! れっつごー!』
女『っと、居た居た。ん? 友じゃん、何やってんだろ。なぜか物陰に隠れてしまう、悲しい習性かな……』
『……また一人消えたらしい』
『……なぁ、多分とは思うけど。俺の事か?』
『勘がいいな』
『……まぁな』
『寂しいか?』
『……寂しさを感じさせるわけにはいかねぇな、死んでも』
女『んー、何言ってるのか聞こえないなー。あたしの夢なんだしここで出て行っても問題ないよね』
女『っしゃああ!!! おーい! 友ぉー!』
『なんだぁ?』
女『よ』
『な、なんでお前こんなとこに?』
女『なんでって、あれ? 女王様って呼ばないの?』
『あぁ?! なんでお前の事そんな風に呼ばないといけねーんだよ、労働法か? 民法か? 行政法か? それとも刑法か?』
女『あーもーうるさいなー、ここが夢の中ってネタはもう割れてんだよ、大人しくしてろい』
『夢?』
女『3DプラズマTVも出せるぜ』
ポーン
『うおー! すげーーー!』
ンン……
『って、消えるんかーい』
女『あ、わかったこいつたぶん私の記憶の中の友だわ、このアホさからして』
『誰がアホやねん』
女『……あーもー、スキップしながらどっか行っちゃえ、しっし』
『なんでGet out of here? そしてなんでスキップ?』
女『……スキ……ップ?』
姉「友君の事、好きなの?」
女『だ……誰があんたの事、ことなんか! すき、すきじゃないわよ!』
『何テンパってんの? オマエ?』
女『し、しらない! それよりアンタらさっきから何話してたのよ!』
『俺らは……』
女『?』
『いや……なんでもない』
女『友のくせにこのあたしに隠し事とはいい度胸じゃないのさ』
『いててててててててて、プロレス技かけんなよ!』
女『吐け、吐いて楽になれ』
『だー! もー! オマエにも無関係ってわけじゃねーし、話す、話すよ』
女『フン、最初からそうしてればいいのよ』
『だからよぉ──』
女『は? 文化祭の出しモノの練習? ついでに演技の稽古?』
『おう、ほら演劇の脚本俺だし』
女『はっ……くだらな……、消えるとか死ぬとか行ってたから何か事件だと思ってたのに』
『オマエさー、そんな縁起でもねーこと言うなよ』
女『今縁起と演技をかけてうまい事言ったと思ってるでしょ?』
『なんでバレたの?』
女『あ、やっぱこいつアホだ』
『アホとは何だー! アホとはー! ええい、なんか普段の3割増でむかつくな、もう良い、法廷で会おう』
ドロン
女『あ、消えちゃった……』
女『なんだったんだろう……』
女「……」スースー
女「……」スースー
友「はー、寝てりゃ可愛いのになーこいつ」
女「……」
女「……むにゃ?」
友「おーっす、起きた?」
女「……友?」
友「おう、俺だ。ちなみに放課後な」
女「あたし……寝てたの?」
友「もう爆睡も爆睡だったぜー」
女「……アンタが診ててくれてたの?」
友「姉と弟と俺で交代にな、あいつらはもう帰っちまったけどよ。ニャーに会いに行くんだと」
女「ニャー?」
友「猫」
女「……ふーん、ねぇ」
友「あん?」
女「あんたは、そのニャーに会いにいかなくていいの?」
友「だって俺嫌われてるし」
女「猫に?」
友「猫に」
女「……」
友「?」
女「バッカじゃない?」
友「なんですとーッ?!」
女「あー、なんかアンタの顔みたらすっきりしたわ」
友「いや俺一方的に罵声浴びせられただけですやん」
女「いきなりあたしの事、女王様とか言わないし」
友「オマエの事女王様って呼ぶ法律が出来たら国外退去だ」
女「夢の中でアンタ、私が命じたら何でもやってくれたのよ」
友「なんだそりゃ願望か、願望なのか?」
女「は? んなわけないじゃん、それから……」
友「へいへい、そんじゃもうそんな口叩けるくらい体調も戻ってそうだし、帰るか」
女「それから。あと、死ぬだの消えるだの言わないし」
友「……あん? 死ぬ? 消える?」
女「夢の中のあんたがね、言ってたの」
友「エンギでもねぇ」
女「うまいこと言ったと思ってるでしょ?」
友「……」
友「そんな事より。ほら、立てるか? 手貸せよ」
女「優しいじゃない……言っとくけどこれはノーカンなんだからね」
友「何だオマエ、ノーパンなのか?」
女「変態!」
ボカ
友「いってぇ! 殴んなよ暴力女!」
女「うるさいわね! 変態男!」
友「いてててて、そうだ。保健室の先生に治してもらえば……、って、さっき先に帰るからーって鍵渡されたとこだった……」
女「はぁ……これじゃあ夢の中のアンタの方がよかったわ」
友「夢かー、……夢ねぇ」
女「何よ」
友「なんだっけなー、俺の夢」
女「あんたの夢?」
友「おう、俺の子供ん時の夢」
女「興味なーい」
友「ふふん? 特別に教えてやろう」
女「いらないわよ」
友「そんな、ちょっと位聞いてくれても」
女「先帰るわねー、バイバイ」
友「薄情なヤツめ、子供の時の夢……ね。なんだっけなぁ、宇宙飛行士じゃない事だけは確かだけどな──」
弟「──宇宙飛行士のヘルメットみたいじゃない? 猫の目って」
姉「例えが微妙すぎて伝わってこないよー、ね?」
ニャー
姉「病気も無いみたいでよかったね、ニャーちゃん」
ニャー
弟「徐々に食べる量増やしてもいいってな」
ニャ
姉「ふふ、ニャーちゃんは食いしん坊さんかな?」
弟「食いモンだけは無駄に買い込んだから大丈夫だろう、多分」
姉「そうだね。当分は大丈夫だと思うけど……」
弟「けど、猫ってどうやって飼ったらいいのかな。図書館で本でも探してみる?」
姉「……そうねぇ」
Prrrrrrrrrrrrrrrrr......
弟「ん? メール?」
姉「あ、女ちゃんから」
弟「何て?」
姉「我、復活セリ……だって」
弟「元気そうでよかった」
姉「そうね」
Prrrrrrrrrrrrrrrrr......
弟「ん、友からだ」
姉「何て?」
弟「もう瀕死……だって」
姉「元気そうでよかった」
弟「そうだな」
姉「ところで弟君」
弟「はいな」
姉「君は次でいくつになるのかな?」
弟「記憶が正しければ17歳です姉上」
姉「そっかー、17か。弟君今16だもんね」
弟「ねーちゃんはもう17だもんね」
姉「むー」
弟「たった1個じゃない」
姉「次の三月の一ヶ月だけ同い年になって、おねーちゃんの方がまた抜かしちゃうのね、悲しい……」
弟「そんな悲しむ事か……」
姉「だって18だよー、高校三年生だよー、弟くん結婚できちゃうじゃないのさー」
弟「いや、高三になってから18になるまでかなりの猶予が……」
姉「むー、弟くんはいつかおねーちゃんの前から旅立っていってしまうんだね」
弟「旅立ちって、どこに旅立たせるつもりだよ」
姉「さー? 宇宙とか?」
弟「宇宙かー興味ないけどなぁ」
姉「うん、そだね」
弟「途方も無い話だよ」
姉「ん」
ニャー
姉「よしよし、ニャーちゃん。後でミルクをあげよう
ニャーン
姉「弟君」
弟「ん?」
姉「わがままを言ってもいいかな」
弟「いいけど何さ」
姉「ちょっと、むこう向いてて」
弟「向いたよー」
姉「そのままねー、良いって言うまでこっち見ちゃダメだぞー」
ニャー?
弟「……」
姉「……」
弟「……ん?」
弟「ねーちゃん、まだ?」
弟「ねーちゃーん?」
弟「……?」
弟「あれ? ニャーは?」
────────
────
──
姉「ニャーちゃん、私についてきちゃったの?」
ニャー
姉「だめだよ、ニャーちゃんの飼い主様は弟君だよ? あっちあっち」
ニャー?
姉「もー、くすぐったいなぁ」
ニャン
姉「ニャーちゃん。……でも君は、あのニャーちゃんじゃないんだよね」
ニャ?
姉「ううん、ごめんね難しい話して。わかんないよね」
ニャー
弟「あ、戻ってきた」
姉「弟君、ただいま」
弟「どこ行ってたのさ」
姉「ちょっとニャーちゃんとブラブラ?」
弟「もーだったらそう言ってくれれば良いのに、携帯電話も通じなかったし戻ってくるかわからなかったからずっとココで待ってるしかなかったよ」
姉「むー、ごめんね」
弟「ま、いいけど」
姉「許してくれる?」
弟「うん」
姉「ありがと」
弟「いいよ」
姉「ん……優しいなぁ、弟君は」
弟「?」
姉「なんでも許してくれるから……いっつも甘えちゃって……」
弟「うん?」
姉「……あー、私だめなお姉ちゃんだなぁ」
弟「そんな事ないよ」
姉「ん、あんがと」
姉「弟君」
弟「ん?」
姉「私、ちゃんとお姉ちゃんできてるかな」
弟「できてるんじゃない?」
姉「弟君に迷惑ばっかりかけてる気がするよ」
弟「気のせいだって」
姉「そうかな」
弟「うん」
姉「ん、そっか」
弟「ガンバレ、応援してる」
姉「わかった、応援される」
ニャー
姉「ニャーちゃんは随分弟君に懐いてるね」
弟「さっきはねーちゃんいついていったけどね」
ニャー?
姉「気まぐれなんだよ、猫だもん」
弟「そっか、猫だもんね」
姉「弟君」
弟「うん?」
姉「呼んでみただけ」
弟「ねーちゃん」
姉「ん」
弟「呼んでみただけ」
姉「マネっこかー」
弟「むー」
姉「それもマネっこかー」
弟「ん」
姉「ん?」
弟「うん」
姉「爽やかスマイルには騙されないよ」
弟「友がよくやる仕草をマネてみたんだけどダメだったか」
姉「友君発祥なら余計にダメだよ」
弟「明日あいつに言っとくよ」
姉「なるべくオブラートに包んであげてね」
弟「包めばええんかい」
姉「うん」
弟「善処するよ」
姉「弟君、インターハイには出場できそう?」
弟「わかんないよ」
姉「弱気だね」
弟「どれだけ準備しても相手があっての事だからね、レースが始まってみない事にはなんとも言えないからさ」
姉「ふむ」
弟「でもさ」
姉「うん?」
弟「未だに信じられない事が一つあるんだけど、言って良い?」
姉「いいよ」
弟「本当にねーちゃん、昔は俺より足速かったの?」
姉「失礼な。あのねー、こう見えて弟君のお姉ちゃんなんだぞ」
弟「だって今走ったらたぶんすごい差だよ?」
姉「それは弟君が頑張ったからじゃないかな、私は運動頑張らなかったからさ」
弟「頑張るベクトルが違っただけでしょ、ねーちゃんは勉強すごいできるし」
姉「ベクトルねぇ、むつかしい言葉しってるね弟君」
弟「中学までは理数科目好きだったんだって」
姉「弟君」
弟「なにさ?」
姉「星空を見てご覧よ」
弟「見てるよ、さっきから」
姉「君はどこの星から来たんだい?」
弟「どこって……地球でしょそりゃ」
姉「んー、ロマンがないなぁ。月とか火星とか言えないのかね」
弟「わるーござんしたね、天体とかあんま興味ないのよね」
姉「ね」
弟「ん?」
姉「弟君、覚えてないかな?」
弟「なにを?」
姉「弟君がまだニャーちゃんみたいに小さかった時の話」
弟「そんな昔の事覚えてないよ」
姉「そっかー、弟君、良い事言ってたんだぞー?」
弟「このシチュエーションで?」
姉「うん」
弟「んん……? 俺何て言ったの?」
姉「もちろん内緒だー」
弟「うぇ、ケチだなぁ」
姉「はっはっは、悔しければ思い出したまえ、はっはっは」
弟「……」
姉「はっはっは」
弟「……」
姉「はっは」
弟「ねーちゃん」
姉「んー?」
弟「あのさ、なんか俺」
姉「うん?」
弟「最近物忘れが多いなって思う事があるんだけど」
姉「そう?」
弟「うん、だってほら見てよ」
姉「どれ」
弟「メモ帳、たった4日で使い切っちゃったんだ」
姉「……そう」
弟「新しいメモ帳買いに行かなくちゃな、はは」
弟「そういえば最近さ、俺達結構大人数で遊ばなかった?」
姉「ううん」
弟「そうだったかな、確かどっかの公園で、父さんと母さんも居た様な」
姉「弟君!」
弟「陸上部の、ほら、マネージャーさんとか、友とか、後同じクラスの男って居るでしょ? そいつも一緒だった気が」
姉「弟君! ダメ! それは思い出しちゃダメ!」
弟「たしかあの日……」
弟「あの日……」
弟「あれ?」
弟「……なんで俺……」
第4話おわり。
第5話
小さい頃読んだ絵本に描いてあった話だ。
宇宙に憧れる少年の前に、宇宙人がやってきてこう言うんだ。
「お前を宇宙につれてってやろう」
少年は大層喜んで宇宙船に乗り込んで宇宙から地球を眺める。
宇宙船から見た地球はとても小さくて
「あんな星に住んでいたんだ」
「そうだよ、あれが君の星。地球だ」
そして子供は、そこで見た全ての記憶を消去させられて
朝起きると自分が眠っていたベッドで目を覚ます。
……絵本はそこで終わっていた。
だけどこの物語には、実は別の話もあったらしい。
────────
────
──
結論から言おう、弟君の姉、つまり「私」は医者になった。現代医学で治せない病は無いと息巻きながら毎日奮闘している……と言えば少しは格好がつくだろうか?
弟君はあの日以来、人工呼吸器無しでは生きられない身体になってしまっている。「宇宙人が掛けた呪いを解くとどうなってしまうのか?」絵本では語られなかった闇の部分がここに生きている。
……私は弟君の意識が無くなるその直前まで、ずっとその呪いを解く方法を探していた。
ただ一言、あの忌々しい宇宙人共が言い残した『この事故の事は忘れろ、これは呪いだ』という言葉を反芻しながら。記憶を消去されたフリをして、息を殺して潜んでいた。
今現在、この手紙を書いている事が奴等に知れたとしたら、私とてその事故の目撃者の一部なのだから消されてしまうかもしれない。いや、おそらくは工作員の手によって消されるだろう。
ただ幸運だったのは、あの船体の不時着で私の身体は何一つ傷つかなかったという事だ、だから呪いが解けた所で私の身体には何も影響が無い。
しかし、あの事故で弟君は瀕死の重傷、クラスメイトの男の子・女の子に至っては即死。父・母に至っては完全に消し飛んでしまっていた。彼らの蘇生技術(あえて技術と呼ぶ)も、元となる身体が存在しなければ恐らく使用できないのだろう。
だからあの事故の後、父・母は蘇生されなかった。そう考えれば合点がいく。
呪いが解けた後に弟君が植物状態で生きていられている事は奇跡と呼べる代物だと、奇跡を否定する立場である医者の「私」から「あえて」言わせてもらおう。
……弟君のクラスメイト・同時に私のクラスメイトでもあった男の子、女の子は……残念だが一昨日、去年と急逝してしまった。症状は弟君と同じ、宇宙人の呪いが解かれた事によって、つまり、最期の瞬間を思い出しながら逝ってしまったのだ。
表向きには変死体として「彼らの呪い」が解けた事で、弟君と同じ、事故が起こった当時の身体へと戻ってしまったのだ。果たして二人が何を思い、最期の瞬間を思い出して果てたのか私には想像する事ができない。
身体を蝕む逆向きの時計の針がもたらす恐怖心とは、いくら医学が進歩したとしても解決しうる問題ではないだろう。
あの事故が起きた時、緑で覆われていた公園が火の海に包まれた時、
「誰かッ! 誰か弟君を助けてよ!!!」
私がそう叫ばなかったら、あるいは彼らもあの技術を使用する事はなかったのかもしれない。
「たら」「れば」を言い出すことに意味は無い事にも、「私」はもう気がついてはいるのだけれど。
まだ、弟君に関して特筆すべき点が残っている。
通常の……というにはあまりにサンプルデータが少ないが、あの事故で負傷を負った他の二人は事故当時の記憶、あるいはその前後数日の記憶が抜け落ちる程度で済んでいた。それは数回にわたる些細な実験で私個人と友君だけが知り得た事だ。
それに比べて弟君は彼らにより消去される記憶の部位が広角に及んだ、消去された範囲は幼少期の記憶、宇宙への関心、飼い猫の記憶、中学で学んだ数学の記憶などから「60点」など特定の言葉にも及んでいる。それから僅かだが運動能力の向上も見出す事ができていた。
これは個人的推測だが、本当に神話的観測だが、弟君は元々「宇宙少年」だった事もあり、それを彼らが恐れたのではないだろうか。
だからこそ、弟君の消された記憶を辿れば、彼らの足跡を追う事ができるかもしれない。そう思った私は……、ああ。後悔などとうにし尽くした。
時間が無い、話を戻そう。
記憶障害とも見られる症状が弟君に現れた、新しい事を記録できず、古い記憶をどんどん忘れてしまい、最期には自分でメモした内容すら忘れてしまっていた。
その発芽は、つまり、私の最大のミスは、あのパンを弟君に与えた事。
スペースコロネ、まさかあんなもので、と貴方は思うかもしれない。
往々として切欠というものは本当に単純な、些細なものでしかない。まさにあれがダムを決壊させる小さな切欠であったのだろう。
ダム……そう、彼らの掛けた呪いさえも決壊させる、小さな切欠だったのだろう。
それが契機となり弟君の身体を駆け巡った、結果的にあの夜、私の目の前で弟君は崩れ去った。少しの言葉と、わずかの生きる意志を残して。
友君は高校を卒業した後、単身アメリカに渡り、宇宙人との交渉の材料を探している。
弟君が所属していた陸上競技部のマネージャーさんは、毎週日曜日に弟君の病室を訪れてくれている。
二人ともあの事故による身体の損傷は無い、つまり、黙認されているのだ、彼らに。
「私」がそうであったように。
……誠に勝手ながら「私」の都合によりこれ以上の事を書き残す事はできなくなってしまった。
弟「『ねーちゃん』」
弟「『空、綺麗だね。あの星まで、僕が連れてってあげるよ?』」
弟「『僕、どこにも行かないよ、ずっとねーちゃんのそばに居るから』」
弟「『だから、ねーちゃん、泣かないで』」
ここに「私」が知り得た、私の心に残る弟君の最期の言葉を残すことにする。
願わくば貴方……、つまりこれを読んでいる「私」が、悲劇の歴史を繰り返す事の無い様に。
追伸
もし弟君が生きていれば、今月は弟君の誕生日があります。
「私」に「同い年の弟」が居た事を、本当に誇りに思っています。
〆をわすれていました。
おしまい、おしまい。
このエンドは最初から予定調和なのか?
220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 08:33:35.90:ODDTNklr0一応終わったからレスしてもいいですよね。
>>217
一応弟視点の時は「」の前に名前を入れないとかそういう姑息な手段を使ってたので
記憶喪失絡みのエンドになればいいくらいの気持ちで書いた後に>>27見返して宇宙人エンドになりました。
218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/12(水) 08:18:43.08:hBnDSFU10>>217
一応弟視点の時は「」の前に名前を入れないとかそういう姑息な手段を使ってたので
記憶喪失絡みのエンドになればいいくらいの気持ちで書いた後に>>27見返して宇宙人エンドになりました。
日常系姉弟いちゃこらSSかと思ったらSFメインだったでござる
大層乙であった
大層乙であった
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