- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:29:06.61:jzjat2lb0
男「え?」
女「お元気でしたか?」
男「いや……あの」
女「どうしました?」
男「失礼ですがどちら様、でしょうか?」
女「私のこと、忘れちゃったんですか?」

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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:31:34.85:jzjat2lb0
男(忘れるも何も、初対面なんだが……)
女「やっぱり、思い出せませんか?」
男「思い出せませんか、と言われても……」
男(色々話されたが……全部身に覚えのないことばかりだった)
女「……んー」
男(昔知り合ってた、とか……?いや、俺に限ってそれはないな)
女「あの
ゴーン ゴーン ゴーン
女「っと、この鐘の音は……もうこんな時間!?」
女「ごめんなさい、ボクもう行かなきゃ……それでは」
男「あ、おいっ!……行っちゃったよ」
男「なんだったんだ?一体……」
男(結構可愛かったな、今の子)
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:34:00.11:jzjat2lb0
女「あ、お父さん……」
女父「急に飛び出したかと思ったら、こんなところにいたんだね」
女「ご、ごめんなさい」
女父「お前が無事だったなら、それでいいんだ」
女「久しぶりに会う友達だったから、つい飛び出しちゃった」
女父「誰かに会ってたのか?」
女「うん、向こうは私をよく覚えてないみたいだったけど」
女父「……話はゆっくり家で聞くとしようか」
女「うん!」
女父(目を離した間に誰かと会っていたか……何もなければいいのだが)
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:36:24.48:jzjat2lb0
男「ただいまー」
母「おや、おかえり。今日は遅かったね」
男(あの女、結局なんだったんだ……?)
母「ご飯どうすんのー」
男(宗教勧誘でもないようだったし……ドッキリでもなかった)
母「聞いてんのー?」
男(久しぶり、って言ってたよな……うぅ、ますます謎だ)
母「……何か悩みごとかしら?」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:41:06.59:jzjat2lb0
女「それでね、その後……」
女父「ふむ、それはよかったな」
女「で、それでね」
女父「女、もうこんな時間だ。そろそろ寝なさい」
女「何言ってるのお父さん、まだ……ってあれ、いつの間にかこんなに経ってたんだ」
女「じゃお父さん、おやすみー」
女父「ああ、おやすみ……」
女父「……」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:47:05.28:jzjat2lb0
男「結局訳が分からない女、という結論しか出ないわけで」
男「昨日と同じ場所に来ればまたいるかと思ったが……んなわけな
女「あれれ?また会ったね」
男「うわぁっ!?い、いきなり下から出てくるなっ!」
女「へへへ、ビックリしたでしょ?」
男(制服を着てる、一応学生なんだな)
女「ここに来たらまた君と会えるかなー、なんて」
女「私のこと、思い出せた?」
男「いや、全く」
女「君、記憶喪失か何かになったことは?」
男「生まれてこの方一度もないな」
女「むー」
男(なんか随分昨日とキャラが違うな……なんだってんだ)
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:52:30.67:jzjat2lb0
女父「……女」
女「あれ……お父さん。どうしてここに?」
女父「それはこっちが聞きたいよ」
女「え?昨日ここに来るって説明したはずだよ?」
女父「……そう、だったけか」
女「そうだよー。お父さんってば、ボケる歳でもないでしょー」
男「……あの」
女父「君が……女の友達かい?」
男「……みたいです」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 01:56:34.15:jzjat2lb0
女父「……少し、話がしたいのだがいいかね?」
男「え、ええ。こちらも聞きたいことがありますし」
女父「女はここで待っていなさい。すぐ戻ってくるから」
女「えー……分かりましたー」
男「えーと」
女父「言いたいことは大体分かるよ。君は女の友達では無くて、突然知り合いかのように話しかけられて友達扱いされた……合ってるかな?」
男「その通りです」
女父「やっぱり……」
男「どういうことか説明していただけますか?」
女父「……止むを得ないな」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 02:02:51.19:jzjat2lb0
男「記憶が増えていく病気……?」
女父「信じられないかも知れないが、あの子は無いはずの記憶を作ってしまうんだ」
女父「初対面の相手でも、すでに知っている相手でも関係ないらしい」
女父「あの子の頭の中では、君と出会い、君と過ごした日々が存在してるんだ」
男「……今まで、どうしてたんですか?」
女父「出来るだけ人と接触させないようにさせてきた。今みたいなことが起きないように」
男「でも、制服……着てましたよね」
女父「あの子は……いまだに学校に行っていると思っているんだ、頭の中では」
男「……」
女父「だが……久しぶりにみたんだ、あの子のあんな明るい顔を」
女父「こんなことを突然言われても困るだろうが……あの子と本当の友達になってもらえないだろうか
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 02:06:28.60:jzjat2lb0
男「……すぐには答えられないです」
女父「それが当たり前の答え、だろうね」
女「パパー!まだー?」
女父「娘が呼んでいるな。今日は帰るとするよ」
女父「……この時間、君はいつもここを通るのかい?」
男「用事がなければ大体は」
女父「そう、か」
女父「時間を取らせてしまって、すまなかったね」
男「いや……別に」
女父「では」
女「お父さん、何話してたのー?」
女父「……なんでもないことさ」
男「……なんか大変なことに首突っ込んじゃったか……?」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 02:11:32.15:jzjat2lb0
男「ただいまー」
妹「おかえりなさい」
男「あれ?母さんは?」
妹「兄さんが遅いからって買い物行ったよ」
男「ふーん、そうか……」
妹「兄さん、何かあったの?」
男「どうして」
妹「帰り遅いし、何か悩んでるってお母さん言ってた」
男「……別に、大したことじゃねーよ」
妹「ふぅーん……」
妹(……それ言う時って大抵大したことあるよね、大体の場合)
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 02:17:27.49:jzjat2lb0
女「ふーん、ふふふーん♪」
女父「随分機嫌がいいな、どうしたんだ?」
女「だってー、昨日はあんな楽しかったんだもん。今日はもっと楽しいはずだよ!」
女父「……」
女「どの服着て行こうかなー?これかな?それともこっちかな?」
女父「女」
女「んー?どうかしたの?父さん」
女父「……いや、なんでもない」
女「?」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 13:36:13.16:jzjat2lb0
男「……で、結局来ちゃう俺もどうなんだろう」
女「お待たせしました」
男「どうも」
女「何を着て行くか悩んでたら遅れてしまって……申し訳ありません」
男「いや、別に待ってないぞ」
女「よかった……」
男(なんかまた性格が違うな……)
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 13:50:37.76:jzjat2lb0
女「今日もお付き合いいただけますか?」
男「お、おう」
女「では、行きましょう」ギュッ
男「!!」
男(む、胸が当たって……る。見た目の割になかなか……)
女「……どうしました?」
男「い、いや……なんでも……ない」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 14:16:35.29:jzjat2lb0
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男『……楽しい?』ボソ
女『はい、とても』
男(……美術館とか初めて来たわ……)
女「~♪」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 15:12:00.72:jzjat2lb0
女「今日はとても楽しかったです」
男「あ、ああ……」
女「……また、ご一緒させていただいてもよろしいですか?」
男「まぁ、それは構わないが」
女「もう、こんな時間……楽しい時間は過ぎるのも早いですね」
男(ほんとだ、いつの間にか暗くなり始めてる)
女「では男さん、私はこの辺で」
男「……送っていこうか?」(色々心配だ……)
女「いえ、そんな遠くないので」
男「なら、いいんだが」
女「それでは、また後日」
妹「……あれって兄さん、だよね……?」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 23:06:42.45:jzjat2lb0
男「ただいまー」
妹「……おかえり」
男「何だよ、その顔」
妹「……最近遅いと思ってたら」
男「?」
妹「今日いた人、彼女?」
男「なんのことやら」
妹「結構年下なんだねー。私と一緒かそれより下ぐらいかな?」
男「……見てたのか」
妹「偶然、ね」
男「……」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 23:23:03.17:jzjat2lb0
男「あれは彼女とかじゃなくてだな……ただの知り合いだ」
妹「あんな風に腕組んでて、ただの知り合い?」
男「……ぐぬぬ」
妹「まあ、どーでもいいけどね」
男「母さんには黙っていてくれないか」
妹「……別に、いいけど」
男「恩に着る」
妹「見返りに期待してるよ?」
男「……譲歩しよう」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 23:41:57.67:jzjat2lb0
女「ただいまー……って」
女「今日はお父さん、夜勤だったっけ」
女「あー、暇だなー」
女「男、何してるかなー」
女「ボクのこと考えてくれてるかな?……なんてね」
女「……寝よっと」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/28(金) 23:52:54.45:jzjat2lb0
男「あれ、今日小テストだっけ」
男友「なんだ、忘れてたのか?」
男「みたい」
男友「お前が物忘れなんて珍しいな」
男「たまにはこういうこともあるさ」
男友「……随分と余裕があるじゃないか」
男「こういう時は焦っても仕方ないさ」
男友「焦らなくても危ないと思うけどね
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 00:06:30.84:yCKFI2nR0
男「……結局、テストは散々だった」
男友「あんだけ余裕そうだったのに?」
男「余裕『そう』だったんだよ」
男友「……」
男「黙られると困るわ」
男友「おま
妹「兄さん」
男「おう、妹よ。ナイスカットだ」
妹「さ、一緒に帰りましょう」
男「え」 男友「え」
妹「さ、早く」
男「え、え」ズルズル
男友「……今日も一人、か」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 13:46:17.36:yCKFI2nR0
男「お、おい……どこ行くんだよ」
妹「今日は会う約束してないの?」
男「誰と」
妹「そのしらばっくれ方、通ると思う?」
男「……約束とかは……特に」
妹「変な間が気になる」
男「どうしても行くのか?」
妹「うん」
男「なら……余計な事は言わないって約束しろ」
妹「……了解」
男「変な間が気になる」
妹「真似するな!」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 13:51:52.33:yCKFI2nR0
男(結局止められなかった……)
妹「この辺、だったよね確か」
女「あ」
妹「いた……!」
男『なんでいるんだよ……』
女「やっほー!男くん……と」
男「俺の妹だ」
女「それは知ってるけど……今日はどうしたの?」
妹「え!?なんで私を知っ
男「妹がお前さんに会いたかったらしくてな」
女「そっかー……確かに長く会ってなかったしねー」
妹「????」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 13:56:25.70:yCKFI2nR0
女「元気にしてた?妹ちゃん」
妹「え、えと……は、はい」
女「喧嘩したままだったからこのまま会ってくれないかと思ってたよー」
女「もう許してくれたって思って、いいのかな……?」
妹「そ、その……思ってくれていいです」
女「よかったー……」
妹「……」グイグイ
男「……ちょっとすまん、妹と二人で話がしたい」
女「ん、りょーかい。私はここで待ってればいいのかな?」
男「すまん――な」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:02:48.05:yCKFI2nR0
妹「どういうことなのかを一行で」
男「随分と難題だな」
妹「私あの人に自己紹介した覚えはないんだけど?」
男「俺もつい何日か前に知り合ったしな」
妹「……?」
男(説明していいもんかね、これ)
妹「もしかして、危ない人?」
男「そういうわけではないんだがなぁ」
妹「ならなんなの?」
男「……説明せんと埒があかん、か」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:09:15.99:yCKFI2nR0
妹「……病気、ねぇ」
男「まぁそういうわけでして」
妹「それって結局……危ない人なんじゃないの?」
男「……さぁ?」
男「別になんかされたって訳じゃないし」
妹「これからされるかもしれないよ?」
男「されたらされたで考えるさ」
妹「……可愛いからこのままでいいかなー、ってことですか」
男「なかなか鋭い指摘かも」
妹「はぁ……」
男「帰るか?」
妹「……無理言って来たんだから、最後まで付き合う」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:14:14.66:yCKFI2nR0
女「話は終わった、かな?」
男「おう、すまんな」
妹「……」
女「やっぱり、まだ怒ってる……のかな?」
妹「い、いえ別に……」
女「……お詫びさせてください!」
妹「え、そんなの悪いです……」
女「いや、これは私がしたいだけで、妹ちゃんは気にしなくていいよ」
妹「あ、えと……じゃぁ」
女「よーし、決まりだね」
男(妹が押されっぱなしとは、珍しい光景だな)
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:22:13.70:yCKFI2nR0
妹「……おいしい」
女「ほんと?嬉しいなー、気に入ってもらえて」
男「……」
女「どうしたの?男くん」
男「……いや、別に」
妹(すごい高そうなお店……いいのかな、ほんとに)
男(男の客が少なくて落ち着かんな……)
女「?」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:28:17.42:yCKFI2nR0
妹「……あの」
女「んー?」
妹「ありがとう、ございました」
女「いやいやいや、そんな気にしないでってば」
妹(あんな高いとは思ってなかった……)
男「本当によかったのか?全額払ってもらっちゃって」
女「気にしなくていいってばー。それに、男くん何も頼んでないじゃん」
男「いや、そうなんだけど……」
妹「……」
男(こいつが超気にしてるっぽいからなぁ)
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:47:05.14:yCKFI2nR0
ゴーン ゴーン
妹「……え、えと……もうこんな時間ですね。兄さん、帰りましょう」
男「お、おう?」
妹「ほら、今日はお母さんが早く帰ってくるように言ってたでしょ」
男「え、え」
妹「では女さん、今日は本当にありがとうございました!」
男「またなー」ズルズル
女「またねー」
女「兄妹って、いいなぁ」
女「……」
女「帰ろっと」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 14:56:56.06:yCKFI2nR0
妹「……兄さん」
男「なんでしょうか」
妹「そんな悪い人じゃ、ないかもです」
男「買収か」
妹「そ、そういう言い方はしないでください!」
男「ごめんごめん」
妹「もう……お母さんに言っちゃいますよ?」
男「それは勘弁」
男(しかし……随分金持ちなんだな、あいつ)
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:20:52.45:yCKFI2nR0
女「ただいまー」
女父「おかえり。今日も男くんの所に?」
女「うん。今日は妹ちゃんと一緒だったみたい」
女父「……ふむ」
女「喧嘩しちゃったから怒ってるかと思ったけど、許してくれたみたい」
女父「それはよかったな」
女「明日も会えるかなー」
女父(最近、学校に行っているという話をしなくなった)
女父(制服以外の服も着ているようだし……いい傾向と見ていいのだろうか?)
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:30:07.29:yCKFI2nR0
妹「ただいまー」
男「ただいま」
母「あら、おかえり。二人一緒なんて珍しいわね」
男「たまたまタイミングが同じだっただけだよ」
妹「そうそう、一緒に帰ってきてなんていないよ」
男(逆に怪しまれるような気がする)
母「そうだったのー」
妹「そうそう」
男(信じてないな、母さん)
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:07:07.05:eahPFd7v0
母「そういえば、あんたさ」
男「なんだよ、母さん」
母「彼女でも出来た?」
男「……なんでいきなり」
母「最近帰りが遅かったから」
母「妹に聞いてもはっきり答えてくれないからさー」
男「……別に」
母「あっそ。なら別にいいんだけどさ」
母(何かあるとき別に、って答えるとこは父さんそっくりね)
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:38:44.45:eahPFd7v0
男友「よう、男。昨日はなんだったんだ?」
男「あぁ、あれか」
男「俺が妹の買い物付き合うのをすっかり忘れててな」
男友「それでご立腹だったわけか」
男「そういうことだ」
男友「そりゃお前が悪いな」
男「まぁ、その通りだな」
男(我ながら実に無難な嘘だ)
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:53:44.73:eahPFd7v0
女「男くん、遅いなー」
女「もしかして、ボクとの約束忘れちゃったのかなぁ?」
チンピラ「お、可愛い子はっけーん……ねぇ、君」
女「ボク、ですか?」
チンピラ「俺と遊ばない?」
女「あなたは……あの時の不良……?」
チンピラ「……?」(知り合った覚えはねぇんだけど……)
女「あなたと話すことなんて、ありません」
チンピラ「そういわずにさぁ」
女「どこかに行ってくれませんか?」
チンピラ「……人が下手にでてりゃ、なんだてめぇ!」
女「!!」
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:55:02.96:eahPFd7v0
男「……変な胸騒ぎがする」
男友「おい、永久コンボはやめろって!友達相手にすることじゃねーって!」
男「すまん、友。俺帰るわ」
男友「え、えぇえっ!?」
男友「また一人、か……」
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:06:28.76:eahPFd7v0
女「離してっ……」
チンピラ「へへへ……ここは人通りがあんまねぇからなぁ」
チンピラ「助けには期待できねぇぜ?」
女「お、おとこ……くん……」
チンピラ「彼氏持ちだったのか?そりゃ悪いことするなぁ」
女「ひっ……!」
チンピラ「ちょっと肩触っただけだろ?そんな驚くなよ」
男「おい、てめぇ……」
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 22:07:29.89:E1Q4Tx9p0
チンピラ「あぁん!?」 ゴッ
チンピラ「ぐおふっ……なんだ、てめ ゴッ ゴッ ゴッ
チンピラ「ウ……ウボァー」ドサ
男「……大丈夫か?」
女「はぁ……はぁ……だい、じょ……ぶ」
男「……とりあえず、ここから離れよう。そいつが起きたら厄介だ」
女「……う、ん」
男(尋常じゃないくらい震えてる……)
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 22:16:41.84:E1Q4Tx9p0
男「落ち着いたか?」
女「……うん」
男「えと……その、すまんかった」
女「……うん」
男「怖い思いさせてしまったお詫びだ、なんでも言ってくれ」
女「……じゃあ……連絡先、教えて」
男「……そういえば、教えてなかったっけ」
女「……うん」
男「はい、これ」
女「……ん」
男「何かあったら呼んでくれ。用事が無ければ駆けつけよう」
女「……ありがと」
男(震え止まったみたいだな……よかった)
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 22:25:37.91:E1Q4Tx9p0
男「家まで送るよ。またあいつがいないとも限らないし」
女「いや、男のお母さんに迷惑だか
男「関係ない。送る」
女「……」
男(無言で歩き出した……)
男「そっちでいいん、だな?」
女「……」コク
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 22:41:36.90:E1Q4Tx9p0
男「……」
女「……」
男「……ここは?」
女「お気に入りの空き地」ポスッ
男「……ふぅん」ポスッ
女「……」
男「……」
女「よく、母さんと来てた」
男「……そうか」
女「それが本当か、わからないけど」
男「……?」
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 22:44:40.05:E1Q4Tx9p0
女「母さんとの記憶はいっぱいあるけど……ありすぎるの」
女「私の中に私がいっぱいいる、って感じ?上手く説明できないや」
女「自分が頭の中で分割されて、みんなが記憶を持ってるって感じ……多重人格とは違う気がするけど、同じことかなぁ」
女「今も記憶がぼやけて……明日にはこの私も記憶の波に押しつぶされてるかも」
男「……」
女「君と過ごした記憶も、私の中にいっぱいあるけど、どこまでがほんとか分からない」
女「少し過ごしてみて、すごく居心地がよくて……それこそ、いままでの記憶何て全部及ばないぐらい」
女「君と出会ったのは本当にあの時?それともあの時?それとも……」
女「……君とは、初めまして?」
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 23:01:21.61:E1Q4Tx9p0
男「……」
女「……」
男「どうも初めまして」
女「……やっぱり」
男「そして、これからもよろしく」
女「……え」
男「俺が君と出会ったのはあの時、あの広場。これは本当」
男「正直、危ない子かな?と思ったのも嘘じゃない」
男「それと同時に、可愛い子だなぁと下心があったのも事実」
男「今の印象は面白い子。少なくとも、嫌いじゃない」
女「……」
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 23:07:31.12:E1Q4Tx9p0
男「と、今の自分の気持ちをまとめてみました」
女「……えと」
男「今言ったことだけは、記憶に留めておいてくれれば、それでいいよ」
女「……うん」
男「そろそろ暗くなってきてるし、急いだ方がいいかも」
女「……私も、君のこと嫌いじゃないよ」
男「?」
ちゅ
男「……?」
女「家はここからすぐだから……じゃあっ!」タタタッ
男「……??」
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 23:16:41.58:E1Q4Tx9p0
女「……ふぅ」
女父「おかえり。今日は随分遅かったね」
女「……」
女父「……顔が真っ赤じゃないか!熱でもあるんじゃ
女「大丈夫、心配しないで」
女父「ん、あぁ……そうか」
女「おやすみ、お父さん」
女父「あ、ご飯は……」
ぱたん
女父「あの子が、夜話をしなかった……これは……」
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 00:14:40.31:fLV9pCZa0
男「……」
母「あんた、流石におそっ……す……ぎ」
男「……」ボーッ
母「おーい、おーい?」
男「……」フラフラ
ぴしゃり
母「……これは触れないほうがいいね……」
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 00:30:39.51:fLV9pCZa0
男友「おーとーこぅぉーっ!」
男「……よう」
男友「よくも置き去りにしてくれやがったなぁああああああ!」
男「……すまん」
男友「……いや、俺もそんな怒ってないぞ?」
男「……そうか」
男友「怒ってないから、頼むから許して!」
男「……おう」
妹「兄さん!」
男「……妹」
妹「ちょっと、来てもらいますよ……」
男「……」ズルズル
男友「もういいです、慣れっこです……」
166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 13:50:38.24:fLV9pCZa0
妹「何があったの、一体」
男「……別に」
妹「兄さんが別に、って言ったときは……絶対何かある」
男「……ぐ」
妹「女さん、でしょ?」
男「……」こく
妹「やっぱりね……兄さん」
妹「何があったか知らないけど……しゃきっとしてください」
男「……面目ない」
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 14:18:29.94:fLV9pCZa0
男「……で、なんでお前がついてくるんだ」
妹「別に」
男(なーんかおかしなことになったなぁ)
女「あ……男ぉ!遅いぞ!」
男「いつもよりは早いと思うんだけど」
女「私が先に来てたんだから、お前が先に来てるのが当然だろうが!」
男「理不尽だなぁ」
妹「……女、さん?」
女「あぁ、妹さんも一緒だったのか」
男「ダメだったか?」
女「いや、別にかまわない」
妹(ここまで来るとほぼ別人みたい……)
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 14:22:49.34:fLV9pCZa0
妹「あ、今日は私がお店紹介します!」
女「ん……男はそれでいいのか?」
男「お任せします」
女「しかし、この前のことなんて気にしなくていいって言ったのに」
妹「いえ、これは私が勝手にやることです!」
女「ハハハ」
男(……この前のこと、覚えてたんだな)
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 15:08:36.58:fLV9pCZa0
男(で、やっぱり俺みたいなのが居づらい店ですと)
妹「それで、女さん……兄さんと何があったんですか」
男「っ!」ガタッ
女「何かと言うと?」
妹「その……なんか兄さんが腑抜けてて……女さんと何かあったのかなって」
女「んー……何か、ねぇ」
男(あること無いこと話される予感……)
女「これと言って特には。まぁ一緒に話をちょこっとしたぐらいかな?」
妹「ふーん……」
男(……あれ?)
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 16:31:54.96:fLV9pCZa0
女「妹ちゃん、今日はありがとうねー」
妹「……いえ、別に」
男「妹、先に帰っててくれ」
妹「え?」
男「……母さんには、適当に頼む」
妹「……分かりました」(兄さんのこんな顔、初めて見た)
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 16:39:05.89:fLV9pCZa0
男「さて、と」
女「なんだよ、改まって」
男「ちょっと君のお父さんと話がしたい。今日はいるかな?」
女「確か……いたと思うけど」
男「家まで連れていってくれないか?」
女「なんだよ強引だな……別に、いいけどさ」
175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 17:07:51.60:fLV9pCZa0
男「ここか」
女「普通の家でガッカリか?」
男「少なくともうちよりは大きいからスゲー、かな」
女「ただいまー」
女父「あぁ、おか……えり」
男「どうも」
女父「……近いうちに話したいと思っていたよ」
男「はい、こちらもそのつもりで来ました」
女「私はいないほうがいいかな?」
男「いや、一緒に……いいですか?」
女父「君の方がこの子のことをよくわかっているだろう。君が決めてくれて構わない」
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 17:59:03.07:fLV9pCZa0
男「って言っても、言いたいことは一つで」
男「治ってきてませんか?ってことだけです」
女父「やはり、か……」
女「治ってきてる?」
男「お前の頭がこんがらがってる、それのこと」
女「あぁ、これね。確かに最近頭が若干だけどクリアーというか」
男「何が原因か知らないけどこんがらがって、これまた何が原因か知らんけど治ってきてるってこと」
女「よう分からんね」
男「医者じゃないし、俺」
女「医者もわかんないって言ってた」
男「ならなおさらわからんよ」
女父「……なるほど」
177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 18:07:31.54:fLV9pCZa0
女父(母親を失って、この子の記憶が崩壊してから……私はずっとこの子を守ってきた)
女父(人と出会うことは、また新たな別れに繋がる……そうなるとこの子はもう耐えられない、と)
女父(だが、それは……ただ私が『守っている』という実感を得たいだけの自己満足だったようだ)
女父(この子はもう治らない……ならば今のままの方がいい、とそう決めつけて)
男「そういや口調変わんのも記憶が多すぎるせい?」
女「あれ?口調変わってたの?」
男「気づいてなかったのか……一人称はボク固定で頼む」
女「自分じゃわからないっての」
女父「……男くん」
男「はい?」
女父「この子を、よろしく頼む」
男「……はい」
183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 21:00:57.13:fLV9pCZa0
男「……で、今日はどこ行くんだ?」
女「えーとね、美術館」
女「ボクと君の、本当の思い出の始まりの場所」
男「あー、そういやそうだったっけ?」
女「覚えてないの?ひどいなー」
男「ま、別にどこだっていいさ」
男「思い出なんて、覚えきれないぐらいたくさんあるほうがいいからな」
男「それこそ、曖昧な記憶なんて全部上書きするぐらいに」
女「そうだね……これから作っていこう、いっぱい」
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 21:04:33.87:fLV9pCZa0
男「……で、ここは?」
女「水族館、だけど」
女「あれ……?今日はここに来る予定……だったよね?」
男「……ああ、だな」
男「たっぷり楽しむか!」
女「うん!」
終わらして
185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 21:05:16.69:fLV9pCZa0
男(忘れるも何も、初対面なんだが……)
女「やっぱり、思い出せませんか?」
男「思い出せませんか、と言われても……」
男(色々話されたが……全部身に覚えのないことばかりだった)
女「……んー」
男(昔知り合ってた、とか……?いや、俺に限ってそれはないな)
女「あの
ゴーン ゴーン ゴーン
女「っと、この鐘の音は……もうこんな時間!?」
女「ごめんなさい、ボクもう行かなきゃ……それでは」
男「あ、おいっ!……行っちゃったよ」
男「なんだったんだ?一体……」
男(結構可愛かったな、今の子)
女「あ、お父さん……」
女父「急に飛び出したかと思ったら、こんなところにいたんだね」
女「ご、ごめんなさい」
女父「お前が無事だったなら、それでいいんだ」
女「久しぶりに会う友達だったから、つい飛び出しちゃった」
女父「誰かに会ってたのか?」
女「うん、向こうは私をよく覚えてないみたいだったけど」
女父「……話はゆっくり家で聞くとしようか」
女「うん!」
女父(目を離した間に誰かと会っていたか……何もなければいいのだが)
男「ただいまー」
母「おや、おかえり。今日は遅かったね」
男(あの女、結局なんだったんだ……?)
母「ご飯どうすんのー」
男(宗教勧誘でもないようだったし……ドッキリでもなかった)
母「聞いてんのー?」
男(久しぶり、って言ってたよな……うぅ、ますます謎だ)
母「……何か悩みごとかしら?」
女「それでね、その後……」
女父「ふむ、それはよかったな」
女「で、それでね」
女父「女、もうこんな時間だ。そろそろ寝なさい」
女「何言ってるのお父さん、まだ……ってあれ、いつの間にかこんなに経ってたんだ」
女「じゃお父さん、おやすみー」
女父「ああ、おやすみ……」
女父「……」
男「結局訳が分からない女、という結論しか出ないわけで」
男「昨日と同じ場所に来ればまたいるかと思ったが……んなわけな
女「あれれ?また会ったね」
男「うわぁっ!?い、いきなり下から出てくるなっ!」
女「へへへ、ビックリしたでしょ?」
男(制服を着てる、一応学生なんだな)
女「ここに来たらまた君と会えるかなー、なんて」
女「私のこと、思い出せた?」
男「いや、全く」
女「君、記憶喪失か何かになったことは?」
男「生まれてこの方一度もないな」
女「むー」
男(なんか随分昨日とキャラが違うな……なんだってんだ)
女父「……女」
女「あれ……お父さん。どうしてここに?」
女父「それはこっちが聞きたいよ」
女「え?昨日ここに来るって説明したはずだよ?」
女父「……そう、だったけか」
女「そうだよー。お父さんってば、ボケる歳でもないでしょー」
男「……あの」
女父「君が……女の友達かい?」
男「……みたいです」
女父「……少し、話がしたいのだがいいかね?」
男「え、ええ。こちらも聞きたいことがありますし」
女父「女はここで待っていなさい。すぐ戻ってくるから」
女「えー……分かりましたー」
男「えーと」
女父「言いたいことは大体分かるよ。君は女の友達では無くて、突然知り合いかのように話しかけられて友達扱いされた……合ってるかな?」
男「その通りです」
女父「やっぱり……」
男「どういうことか説明していただけますか?」
女父「……止むを得ないな」
男「記憶が増えていく病気……?」
女父「信じられないかも知れないが、あの子は無いはずの記憶を作ってしまうんだ」
女父「初対面の相手でも、すでに知っている相手でも関係ないらしい」
女父「あの子の頭の中では、君と出会い、君と過ごした日々が存在してるんだ」
男「……今まで、どうしてたんですか?」
女父「出来るだけ人と接触させないようにさせてきた。今みたいなことが起きないように」
男「でも、制服……着てましたよね」
女父「あの子は……いまだに学校に行っていると思っているんだ、頭の中では」
男「……」
女父「だが……久しぶりにみたんだ、あの子のあんな明るい顔を」
女父「こんなことを突然言われても困るだろうが……あの子と本当の友達になってもらえないだろうか
男「……すぐには答えられないです」
女父「それが当たり前の答え、だろうね」
女「パパー!まだー?」
女父「娘が呼んでいるな。今日は帰るとするよ」
女父「……この時間、君はいつもここを通るのかい?」
男「用事がなければ大体は」
女父「そう、か」
女父「時間を取らせてしまって、すまなかったね」
男「いや……別に」
女父「では」
女「お父さん、何話してたのー?」
女父「……なんでもないことさ」
男「……なんか大変なことに首突っ込んじゃったか……?」
男「ただいまー」
妹「おかえりなさい」
男「あれ?母さんは?」
妹「兄さんが遅いからって買い物行ったよ」
男「ふーん、そうか……」
妹「兄さん、何かあったの?」
男「どうして」
妹「帰り遅いし、何か悩んでるってお母さん言ってた」
男「……別に、大したことじゃねーよ」
妹「ふぅーん……」
妹(……それ言う時って大抵大したことあるよね、大体の場合)
女「ふーん、ふふふーん♪」
女父「随分機嫌がいいな、どうしたんだ?」
女「だってー、昨日はあんな楽しかったんだもん。今日はもっと楽しいはずだよ!」
女父「……」
女「どの服着て行こうかなー?これかな?それともこっちかな?」
女父「女」
女「んー?どうかしたの?父さん」
女父「……いや、なんでもない」
女「?」
男「……で、結局来ちゃう俺もどうなんだろう」
女「お待たせしました」
男「どうも」
女「何を着て行くか悩んでたら遅れてしまって……申し訳ありません」
男「いや、別に待ってないぞ」
女「よかった……」
男(なんかまた性格が違うな……)
女「今日もお付き合いいただけますか?」
男「お、おう」
女「では、行きましょう」ギュッ
男「!!」
男(む、胸が当たって……る。見た目の割になかなか……)
女「……どうしました?」
男「い、いや……なんでも……ない」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男『……楽しい?』ボソ
女『はい、とても』
男(……美術館とか初めて来たわ……)
女「~♪」
女「今日はとても楽しかったです」
男「あ、ああ……」
女「……また、ご一緒させていただいてもよろしいですか?」
男「まぁ、それは構わないが」
女「もう、こんな時間……楽しい時間は過ぎるのも早いですね」
男(ほんとだ、いつの間にか暗くなり始めてる)
女「では男さん、私はこの辺で」
男「……送っていこうか?」(色々心配だ……)
女「いえ、そんな遠くないので」
男「なら、いいんだが」
女「それでは、また後日」
妹「……あれって兄さん、だよね……?」
男「ただいまー」
妹「……おかえり」
男「何だよ、その顔」
妹「……最近遅いと思ってたら」
男「?」
妹「今日いた人、彼女?」
男「なんのことやら」
妹「結構年下なんだねー。私と一緒かそれより下ぐらいかな?」
男「……見てたのか」
妹「偶然、ね」
男「……」
男「あれは彼女とかじゃなくてだな……ただの知り合いだ」
妹「あんな風に腕組んでて、ただの知り合い?」
男「……ぐぬぬ」
妹「まあ、どーでもいいけどね」
男「母さんには黙っていてくれないか」
妹「……別に、いいけど」
男「恩に着る」
妹「見返りに期待してるよ?」
男「……譲歩しよう」
女「ただいまー……って」
女「今日はお父さん、夜勤だったっけ」
女「あー、暇だなー」
女「男、何してるかなー」
女「ボクのこと考えてくれてるかな?……なんてね」
女「……寝よっと」
男「あれ、今日小テストだっけ」
男友「なんだ、忘れてたのか?」
男「みたい」
男友「お前が物忘れなんて珍しいな」
男「たまにはこういうこともあるさ」
男友「……随分と余裕があるじゃないか」
男「こういう時は焦っても仕方ないさ」
男友「焦らなくても危ないと思うけどね
男「……結局、テストは散々だった」
男友「あんだけ余裕そうだったのに?」
男「余裕『そう』だったんだよ」
男友「……」
男「黙られると困るわ」
男友「おま
妹「兄さん」
男「おう、妹よ。ナイスカットだ」
妹「さ、一緒に帰りましょう」
男「え」 男友「え」
妹「さ、早く」
男「え、え」ズルズル
男友「……今日も一人、か」
男「お、おい……どこ行くんだよ」
妹「今日は会う約束してないの?」
男「誰と」
妹「そのしらばっくれ方、通ると思う?」
男「……約束とかは……特に」
妹「変な間が気になる」
男「どうしても行くのか?」
妹「うん」
男「なら……余計な事は言わないって約束しろ」
妹「……了解」
男「変な間が気になる」
妹「真似するな!」
男(結局止められなかった……)
妹「この辺、だったよね確か」
女「あ」
妹「いた……!」
男『なんでいるんだよ……』
女「やっほー!男くん……と」
男「俺の妹だ」
女「それは知ってるけど……今日はどうしたの?」
妹「え!?なんで私を知っ
男「妹がお前さんに会いたかったらしくてな」
女「そっかー……確かに長く会ってなかったしねー」
妹「????」
女「元気にしてた?妹ちゃん」
妹「え、えと……は、はい」
女「喧嘩したままだったからこのまま会ってくれないかと思ってたよー」
女「もう許してくれたって思って、いいのかな……?」
妹「そ、その……思ってくれていいです」
女「よかったー……」
妹「……」グイグイ
男「……ちょっとすまん、妹と二人で話がしたい」
女「ん、りょーかい。私はここで待ってればいいのかな?」
男「すまん――な」
妹「どういうことなのかを一行で」
男「随分と難題だな」
妹「私あの人に自己紹介した覚えはないんだけど?」
男「俺もつい何日か前に知り合ったしな」
妹「……?」
男(説明していいもんかね、これ)
妹「もしかして、危ない人?」
男「そういうわけではないんだがなぁ」
妹「ならなんなの?」
男「……説明せんと埒があかん、か」
妹「……病気、ねぇ」
男「まぁそういうわけでして」
妹「それって結局……危ない人なんじゃないの?」
男「……さぁ?」
男「別になんかされたって訳じゃないし」
妹「これからされるかもしれないよ?」
男「されたらされたで考えるさ」
妹「……可愛いからこのままでいいかなー、ってことですか」
男「なかなか鋭い指摘かも」
妹「はぁ……」
男「帰るか?」
妹「……無理言って来たんだから、最後まで付き合う」
女「話は終わった、かな?」
男「おう、すまんな」
妹「……」
女「やっぱり、まだ怒ってる……のかな?」
妹「い、いえ別に……」
女「……お詫びさせてください!」
妹「え、そんなの悪いです……」
女「いや、これは私がしたいだけで、妹ちゃんは気にしなくていいよ」
妹「あ、えと……じゃぁ」
女「よーし、決まりだね」
男(妹が押されっぱなしとは、珍しい光景だな)
妹「……おいしい」
女「ほんと?嬉しいなー、気に入ってもらえて」
男「……」
女「どうしたの?男くん」
男「……いや、別に」
妹(すごい高そうなお店……いいのかな、ほんとに)
男(男の客が少なくて落ち着かんな……)
女「?」
妹「……あの」
女「んー?」
妹「ありがとう、ございました」
女「いやいやいや、そんな気にしないでってば」
妹(あんな高いとは思ってなかった……)
男「本当によかったのか?全額払ってもらっちゃって」
女「気にしなくていいってばー。それに、男くん何も頼んでないじゃん」
男「いや、そうなんだけど……」
妹「……」
男(こいつが超気にしてるっぽいからなぁ)
ゴーン ゴーン
妹「……え、えと……もうこんな時間ですね。兄さん、帰りましょう」
男「お、おう?」
妹「ほら、今日はお母さんが早く帰ってくるように言ってたでしょ」
男「え、え」
妹「では女さん、今日は本当にありがとうございました!」
男「またなー」ズルズル
女「またねー」
女「兄妹って、いいなぁ」
女「……」
女「帰ろっと」
妹「……兄さん」
男「なんでしょうか」
妹「そんな悪い人じゃ、ないかもです」
男「買収か」
妹「そ、そういう言い方はしないでください!」
男「ごめんごめん」
妹「もう……お母さんに言っちゃいますよ?」
男「それは勘弁」
男(しかし……随分金持ちなんだな、あいつ)
女「ただいまー」
女父「おかえり。今日も男くんの所に?」
女「うん。今日は妹ちゃんと一緒だったみたい」
女父「……ふむ」
女「喧嘩しちゃったから怒ってるかと思ったけど、許してくれたみたい」
女父「それはよかったな」
女「明日も会えるかなー」
女父(最近、学校に行っているという話をしなくなった)
女父(制服以外の服も着ているようだし……いい傾向と見ていいのだろうか?)
妹「ただいまー」
男「ただいま」
母「あら、おかえり。二人一緒なんて珍しいわね」
男「たまたまタイミングが同じだっただけだよ」
妹「そうそう、一緒に帰ってきてなんていないよ」
男(逆に怪しまれるような気がする)
母「そうだったのー」
妹「そうそう」
男(信じてないな、母さん)
母「そういえば、あんたさ」
男「なんだよ、母さん」
母「彼女でも出来た?」
男「……なんでいきなり」
母「最近帰りが遅かったから」
母「妹に聞いてもはっきり答えてくれないからさー」
男「……別に」
母「あっそ。なら別にいいんだけどさ」
母(何かあるとき別に、って答えるとこは父さんそっくりね)
男友「よう、男。昨日はなんだったんだ?」
男「あぁ、あれか」
男「俺が妹の買い物付き合うのをすっかり忘れててな」
男友「それでご立腹だったわけか」
男「そういうことだ」
男友「そりゃお前が悪いな」
男「まぁ、その通りだな」
男(我ながら実に無難な嘘だ)
女「男くん、遅いなー」
女「もしかして、ボクとの約束忘れちゃったのかなぁ?」
チンピラ「お、可愛い子はっけーん……ねぇ、君」
女「ボク、ですか?」
チンピラ「俺と遊ばない?」
女「あなたは……あの時の不良……?」
チンピラ「……?」(知り合った覚えはねぇんだけど……)
女「あなたと話すことなんて、ありません」
チンピラ「そういわずにさぁ」
女「どこかに行ってくれませんか?」
チンピラ「……人が下手にでてりゃ、なんだてめぇ!」
女「!!」
男「……変な胸騒ぎがする」
男友「おい、永久コンボはやめろって!友達相手にすることじゃねーって!」
男「すまん、友。俺帰るわ」
男友「え、えぇえっ!?」
男友「また一人、か……」
女「離してっ……」
チンピラ「へへへ……ここは人通りがあんまねぇからなぁ」
チンピラ「助けには期待できねぇぜ?」
女「お、おとこ……くん……」
チンピラ「彼氏持ちだったのか?そりゃ悪いことするなぁ」
女「ひっ……!」
チンピラ「ちょっと肩触っただけだろ?そんな驚くなよ」
男「おい、てめぇ……」
チンピラ「あぁん!?」 ゴッ
チンピラ「ぐおふっ……なんだ、てめ ゴッ ゴッ ゴッ
チンピラ「ウ……ウボァー」ドサ
男「……大丈夫か?」
女「はぁ……はぁ……だい、じょ……ぶ」
男「……とりあえず、ここから離れよう。そいつが起きたら厄介だ」
女「……う、ん」
男(尋常じゃないくらい震えてる……)
男「落ち着いたか?」
女「……うん」
男「えと……その、すまんかった」
女「……うん」
男「怖い思いさせてしまったお詫びだ、なんでも言ってくれ」
女「……じゃあ……連絡先、教えて」
男「……そういえば、教えてなかったっけ」
女「……うん」
男「はい、これ」
女「……ん」
男「何かあったら呼んでくれ。用事が無ければ駆けつけよう」
女「……ありがと」
男(震え止まったみたいだな……よかった)
男「家まで送るよ。またあいつがいないとも限らないし」
女「いや、男のお母さんに迷惑だか
男「関係ない。送る」
女「……」
男(無言で歩き出した……)
男「そっちでいいん、だな?」
女「……」コク
男「……」
女「……」
男「……ここは?」
女「お気に入りの空き地」ポスッ
男「……ふぅん」ポスッ
女「……」
男「……」
女「よく、母さんと来てた」
男「……そうか」
女「それが本当か、わからないけど」
男「……?」
女「母さんとの記憶はいっぱいあるけど……ありすぎるの」
女「私の中に私がいっぱいいる、って感じ?上手く説明できないや」
女「自分が頭の中で分割されて、みんなが記憶を持ってるって感じ……多重人格とは違う気がするけど、同じことかなぁ」
女「今も記憶がぼやけて……明日にはこの私も記憶の波に押しつぶされてるかも」
男「……」
女「君と過ごした記憶も、私の中にいっぱいあるけど、どこまでがほんとか分からない」
女「少し過ごしてみて、すごく居心地がよくて……それこそ、いままでの記憶何て全部及ばないぐらい」
女「君と出会ったのは本当にあの時?それともあの時?それとも……」
女「……君とは、初めまして?」
男「……」
女「……」
男「どうも初めまして」
女「……やっぱり」
男「そして、これからもよろしく」
女「……え」
男「俺が君と出会ったのはあの時、あの広場。これは本当」
男「正直、危ない子かな?と思ったのも嘘じゃない」
男「それと同時に、可愛い子だなぁと下心があったのも事実」
男「今の印象は面白い子。少なくとも、嫌いじゃない」
女「……」
男「と、今の自分の気持ちをまとめてみました」
女「……えと」
男「今言ったことだけは、記憶に留めておいてくれれば、それでいいよ」
女「……うん」
男「そろそろ暗くなってきてるし、急いだ方がいいかも」
女「……私も、君のこと嫌いじゃないよ」
男「?」
ちゅ
男「……?」
女「家はここからすぐだから……じゃあっ!」タタタッ
男「……??」
女「……ふぅ」
女父「おかえり。今日は随分遅かったね」
女「……」
女父「……顔が真っ赤じゃないか!熱でもあるんじゃ
女「大丈夫、心配しないで」
女父「ん、あぁ……そうか」
女「おやすみ、お父さん」
女父「あ、ご飯は……」
ぱたん
女父「あの子が、夜話をしなかった……これは……」
男「……」
母「あんた、流石におそっ……す……ぎ」
男「……」ボーッ
母「おーい、おーい?」
男「……」フラフラ
ぴしゃり
母「……これは触れないほうがいいね……」
男友「おーとーこぅぉーっ!」
男「……よう」
男友「よくも置き去りにしてくれやがったなぁああああああ!」
男「……すまん」
男友「……いや、俺もそんな怒ってないぞ?」
男「……そうか」
男友「怒ってないから、頼むから許して!」
男「……おう」
妹「兄さん!」
男「……妹」
妹「ちょっと、来てもらいますよ……」
男「……」ズルズル
男友「もういいです、慣れっこです……」
妹「何があったの、一体」
男「……別に」
妹「兄さんが別に、って言ったときは……絶対何かある」
男「……ぐ」
妹「女さん、でしょ?」
男「……」こく
妹「やっぱりね……兄さん」
妹「何があったか知らないけど……しゃきっとしてください」
男「……面目ない」
男「……で、なんでお前がついてくるんだ」
妹「別に」
男(なーんかおかしなことになったなぁ)
女「あ……男ぉ!遅いぞ!」
男「いつもよりは早いと思うんだけど」
女「私が先に来てたんだから、お前が先に来てるのが当然だろうが!」
男「理不尽だなぁ」
妹「……女、さん?」
女「あぁ、妹さんも一緒だったのか」
男「ダメだったか?」
女「いや、別にかまわない」
妹(ここまで来るとほぼ別人みたい……)
妹「あ、今日は私がお店紹介します!」
女「ん……男はそれでいいのか?」
男「お任せします」
女「しかし、この前のことなんて気にしなくていいって言ったのに」
妹「いえ、これは私が勝手にやることです!」
女「ハハハ」
男(……この前のこと、覚えてたんだな)
男(で、やっぱり俺みたいなのが居づらい店ですと)
妹「それで、女さん……兄さんと何があったんですか」
男「っ!」ガタッ
女「何かと言うと?」
妹「その……なんか兄さんが腑抜けてて……女さんと何かあったのかなって」
女「んー……何か、ねぇ」
男(あること無いこと話される予感……)
女「これと言って特には。まぁ一緒に話をちょこっとしたぐらいかな?」
妹「ふーん……」
男(……あれ?)
女「妹ちゃん、今日はありがとうねー」
妹「……いえ、別に」
男「妹、先に帰っててくれ」
妹「え?」
男「……母さんには、適当に頼む」
妹「……分かりました」(兄さんのこんな顔、初めて見た)
男「さて、と」
女「なんだよ、改まって」
男「ちょっと君のお父さんと話がしたい。今日はいるかな?」
女「確か……いたと思うけど」
男「家まで連れていってくれないか?」
女「なんだよ強引だな……別に、いいけどさ」
男「ここか」
女「普通の家でガッカリか?」
男「少なくともうちよりは大きいからスゲー、かな」
女「ただいまー」
女父「あぁ、おか……えり」
男「どうも」
女父「……近いうちに話したいと思っていたよ」
男「はい、こちらもそのつもりで来ました」
女「私はいないほうがいいかな?」
男「いや、一緒に……いいですか?」
女父「君の方がこの子のことをよくわかっているだろう。君が決めてくれて構わない」
男「って言っても、言いたいことは一つで」
男「治ってきてませんか?ってことだけです」
女父「やはり、か……」
女「治ってきてる?」
男「お前の頭がこんがらがってる、それのこと」
女「あぁ、これね。確かに最近頭が若干だけどクリアーというか」
男「何が原因か知らないけどこんがらがって、これまた何が原因か知らんけど治ってきてるってこと」
女「よう分からんね」
男「医者じゃないし、俺」
女「医者もわかんないって言ってた」
男「ならなおさらわからんよ」
女父「……なるほど」
女父(母親を失って、この子の記憶が崩壊してから……私はずっとこの子を守ってきた)
女父(人と出会うことは、また新たな別れに繋がる……そうなるとこの子はもう耐えられない、と)
女父(だが、それは……ただ私が『守っている』という実感を得たいだけの自己満足だったようだ)
女父(この子はもう治らない……ならば今のままの方がいい、とそう決めつけて)
男「そういや口調変わんのも記憶が多すぎるせい?」
女「あれ?口調変わってたの?」
男「気づいてなかったのか……一人称はボク固定で頼む」
女「自分じゃわからないっての」
女父「……男くん」
男「はい?」
女父「この子を、よろしく頼む」
男「……はい」
男「……で、今日はどこ行くんだ?」
女「えーとね、美術館」
女「ボクと君の、本当の思い出の始まりの場所」
男「あー、そういやそうだったっけ?」
女「覚えてないの?ひどいなー」
男「ま、別にどこだっていいさ」
男「思い出なんて、覚えきれないぐらいたくさんあるほうがいいからな」
男「それこそ、曖昧な記憶なんて全部上書きするぐらいに」
女「そうだね……これから作っていこう、いっぱい」
男「……で、ここは?」
女「水族館、だけど」
女「あれ……?今日はここに来る予定……だったよね?」
男「……ああ、だな」
男「たっぷり楽しむか!」
女「うん!」
終わらして
保守してくれた人たち、感謝
つまんなくてスマン
眠い
じゃ
186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 21:06:25.49:qcXJ3Yfk0つまんなくてスマン
眠い
じゃ
乙
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/31(月) 21:37:20.79:exUiPgAw0乙
よかった
よかった
コメント 3
コメント一覧 (3)
十分面白かった。
まぁ回復の兆しが見れたのを納得させる材料にする。