- 17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:43:53.69:RG+XWOQMO
「っと」
アジアカップで宿泊中のホテルの階段を下りてすぐ私服の川島さんとぶつかった
どんっ
俺の右肩が川島さんの鍛え上げられた胸にぶつかるような形で軽く衝突
「あっ…」
「す、すいません、川島さん」
俺は素直に詫び、床に散らばった練習用具等にてを伸ばそうとしたのだが…
ぱしっ
それをゴールキーパーの本能で察したのだろうか川島さんが俺の手を平手で叩いた

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韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:49:20.88:RG+XWOQMO
「えっ?」
目を見開いた俺は鋭い視線を向けられ絶句する
「…いい、触るな」
それだけ告げて散らばったバッグを黙々と拾い集める川島さん
…嫌われてる…?
日頃の不甲斐ないディフェンスに川島さんから良く思われていないのだろう
俺は川島さんが立ち去るまで一歩も動けずにいた
「はぁ…」
俺は薄々きがついていたことをまざまざと見せられ少しへこんでいた
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:50:39.39:OzypExX+0
仕方ない…この後のグループリーグでディフェンスをしっかりやって信頼を得ていこう
憂鬱な気分を前向きに切り替えそこを立ち去ろうとすると
「…ん?」
それが落ちていたのはソファの下
白くて薄いケースのような物が落ちている
「…なんだろう?」
俺はケースを拾い上げてみた
DVDのケースだ
それは分かる
しかしそのパッケージにはやたらと色の艶やかな筋肉をした男達が様々なポーズをとっていた
一体誰がこんなものを…
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:05:14.08:RG+XWOQMO
パッケージの上部におそらくタイトルであろう文字が書かれている
しかしタイトルはなにやら修正液でもぶちまけたのだろうか一部が見えにくくなっていた
「きんに…く…サイド…バック…ゆう…と?初回…限定版?」
よくはわからないが何かのDVDなのだろう
なぜか嫌な気分にしかならないが
「で…?なぜこんなもんが?」
俺が途方にくれていると背後から
「お、内田じゃないかなにしてんだ?」
長谷部さんが声をかけてきた
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:12:26.40:Cih6fnJw0
「なんだ?DVDか?」
長谷部さんは俺の手にしているDVDにきがついたのか話を降ってきた
「え、えぇ…」
真面目な長谷部さんにこんなものを見せられるわけも無く俺は曖昧に答える
「まぁ内田は若いから仕方ないかもしれんが、試合前に無駄な体力を使うんじゃないぞ、ははっ」
長谷部さんは爽やかに勘違いをしたまま俺の肩をポンと叩きその場を立ち去った
「ふう…」
立ち去る長谷部さんを見送った俺はこのDVDの持ち主に興味が湧いた
俺は鞄にDVDをしまい込むと、ある罠を思いついた
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:23:05.07:RG+XWOQMO
シリア戦の前日、ホテルで食事会があるというので俺はその罠を実行することに決めた
食事会前に長友さんを誘い筋トレをつんだあとシャワーを浴び胸元の広く開いたシャツで食事会へ向かった
「お!ウッチー風呂上がり?」
早速吉田が食いついてきたがコイツはブログのネタが欲しいだけだろう
「写メとってブログにアップしてもいい?」
やっぱりだ
俺は軽く2、3枚撮らせると吉田とは離れて席についた
吉田は根っからの女好きそうだから持ち主とは違うと判断しての事だ
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:35:55.12:RG+XWOQMO
「長友さん~こっち開いてますよ~」
俺は罠を張るため長友さんを呼び寄せる
「おぅ、ウッチー!じゃあそっち行くわ」
長友さんも何を怪しむ事も無くこちらの席にやってくる
ここまでは順調だ
「お前らサイドバック同士仲がいいな」
向かい合わせの席の岩政さんが話を向けてくる
正直この時点では岩政さんが持ち主だと俺は思っていた
だけど…
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:39:48.98:80eU1oBgi
そのとき俺が岩政さんに動揺を与えようと長友さんに
「いやぁほんと凄い筋肉ですよね~」
「ちょ、ウッチーくすぐったいって!」
とか軽くじゃれつくと
ガチャン!!
隣のテーブルから大きな音が
そして
「おい!そんな格好して!風邪ひいたらどうすんだ!!」
そこには鬼のような形相の川島さんが立っていた
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:44:05.32:6JlNRPUf0
「えっ…あっ…すいません」
俺はあまりの恐怖に謝ることしかできなかった
「まぁまぁ…とりあえず落ち着けよ」
本田さんが鬼のような川島さんをなだめている
あの人はこんな時でも冷静なんだなと俺は妙に感心してしまった
「…すまん…だが身体が心配でな…」
川島さんは本田さんに冷静にたしなめられ、素に戻ったのか少し気まずそうに言い訳をし
「と、とにかく試合に響いたらマズいから早くお前ら上着着ろ!上着!」
とぶっきらぼうにジャージの上を俺達に投げてよこした
結局その日はそのまま普通に食事会をして解散となった
持ち主が見つからなかったな…俺は少し落ち込みつつも翌日の試合に頭を切り替えることにした
翌日、川島さんはレッドカードで退場になった
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:04:39.22:80eU1oBgi
その翌日の深夜
安らかに眠っていた俺はバチンと頬に痛みを感じ目覚めさせられた
「痛っ!?」
「静かにしろ、何時だと思っているんだ?」
そこには俺に馬乗りになったパジャマ姿の川島さんがいた
「な、な、なんすか!?なんなんすか!?これ!?」
深夜大男に馬乗りにされまともにリアクションできるわけがない
俺は狼狽し助けを求めようとする
「暴れるな、悪いようにはせん」
暴れようとする俺を楽々と制し川島さんはこう告げた
「人生相談があるんだ」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:50:08.20:ffbVD+X90
家捜しされたのだろう、俺の部屋は荒らされカバンやらがしっちゃかめっちゃかだった
川島さんは手に持ったDVDを見せ俺にもう一度告げた
「これについて人生相談があるんだ」
罠にかかってぐったりした獲物のような俺は軽く頷く事しかできなかった
―――
―
そのままヤラレてしまうかもと思っていたが川島さんは俺を川島さんの自室へと連れていった
どうやら俺の身体が目当てな訳ではないらしい
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:02:11.76:RG+XWOQMO
「まぁこれでも飲め」
川島さんは部屋に入るとスッとグラスを渡してくる
何か嫌な予感もしたが犯すならさっき犯していただろうと思い俺はグラスの飲み物の一口くちにした
プロテインだった
「落ち着いたか?」
川島さんが俺の顔を覗き込んでくる
「えぇ…」
なぜプロテインなのかはあえて聞くのは止めておいた
が、
「で、本題なんだが…」
と、いきなり本題に入られプロテイン話で誤魔化せば良かったと俺は後悔した
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:09:47.42:RG+XWOQMO
「これを見てお前はどう思った?」
川島さんは性格そのままにストレートに俺に聞いてくる
『肉体美って素晴らしいですね!』
『そうだろ!どうだ俺のを見て!』脱ぎっ
『アッー!』
『気持ち悪いです』
『そうか…洗脳するしかないな』脱ぎっ
『アッー!』
『ユニーク』
『只のサイドバックには興味ありません!』
『アッー!』
「…」
どう答えても不正解な気がして俺は即座に返事ができなかった
というよりまともな思考が出来ていなかった
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:26:34.67:RG+XWOQMO
どうしようどうしよう…緊張感で変な汗と吐き気がしてくる
ようやく身体も良くなってきたのにまた…
などと考えながら川島さんの方を見やると川島さんも少しうつむき加減でこちらの様子を窺っていた
?
もしかして川島さんの方が緊張してる?
ふと思いついた俺は
「まぁいいんじゃないっスか?人にはそれぞれ好みがあるし」
とサラッと言ってみた
するとうつむき加減だった川島さんがパアッと花が咲いたように微笑み
「そうか!良かった!やっぱり内田は分かる奴だな!!」
とこれまで試合でもみたこともない良いドヤ顔を見せた
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:27:34.69:6JlNRPUf0
「なあ!DVD!中身は見たのか!?」
川島さんは急に生き生きとした顔で俺に聞いてくる
えっ?なんですか?これ?なんなんですか?これ?
ちょっとリアクションに困ったがここで対応を間違えるといろんな意味で不味いと思った俺は
「いや、時間が無くて…見てないんですよ」
と、別に見たくないから見てないとも、見たい訳でもないともハッキリ答えない時間をかせぐ対応をとった
ディフェンスで言うディレイってやつだ
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:38:58.52:RG+XWOQMO
「じゃあ見るか!今!!」
「今!?」
俺が時間をかせぐのを見越していたのかのように川島さんは素早く仕掛けてきた
既にDVDをデッキに挿入しようとしている
本当にこの人はゴールキーパーなんだろうか?
こうして俺は
「きんにく・サイドバック・ゆうと♪」
を川島さんと見るハメになってしまったのだった
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:48:59.32:RG+XWOQMO
ニコニコしながら『最初から』を押し再生していく川島さん
すると妙に扇情的な衣装をまとった長友さんが画面端からトコトコ歩いてきた
画面中央でくるりんっ♪と筋肉を見せつける
そしてバチ(太鼓の?)ようなものを掲げ
野太いボイスで叫ぶ
『きんにくサイドバックゆうと♪はっじまるよ~っ♪』
ここでミュージックスタート
ぎゅっと歯を食いしばって画面を見る俺
横では川島さんがニコニコしながら横乗りでノリノリだ
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:58:35.11:RG+XWOQMO
きーんにくにくにくにくめるめ~
きーんにくにくにくにくめるめ~
ピッチにきらめーくスルーパス~☆
きんにーくじぇっとで~てーきを打つ~
日本のくにからアジアのために 上がって 流れ~て こ~んにちは
きんにーくサイドバックゆうと~♪
俺は自分の顔が青ざめるのを自覚していた
俺は主人公長友さんが歌う『めてお☆サイドバック』を聞きながら猛烈な羞恥と後悔に耐えていた
さいどばっーく♪さいどばっーく♪
あなたの胸に飛び込んでいくの~
きんにーくよりも~(キラッ☆)
きょだいなパワーで~(キラッ☆)
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:12:06.68:b4LbyfDaO
ピッ
「で、どうかな…?」
一通り見終わった後川島さんはもじもじしながら俺にこう聞いてきた
正直後半は気を失っていたかもしれない
内容が脳の許容範囲を超えていたのだろうか
「良かった…よな?」
そんな俺に執拗に聞いてくる川島さん
なんだか筋肉質の男のDVDを見せられあげく筋肉質な男にわけのわからない質問をされ俺は正直もうどうにでもなれという気分になってきた俺は
「まぁ悪くはないんじゃね」
先輩とかもうどうでもいいだろという風に答えた
「だろ~!!で!他にもさ…」ガサガサ
川島がカバンを漁り違うDVDを出そうとしたので俺はとっさに
「でも長友さんこれいつ撮ったんですか?」
とDVDから意識をそらそうと川島にパスを出した
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:27:20.83:RG+XWOQMO
「ん、あぁ…なんか大学の時に余興で撮影したらしいんだ」
川島はカバンを漁りながら答える
それを何故お前が持ってるのかは聞かないでやろう
俺は心の中で呟いた
「でさ!次なんだけど!」
「まて!」
次のDVDを取り出した川島を制し俺は
「人生相談…しろよ」
はっきりと言った
「そう…だね…うん…」
急に子猫のように丸くなった川島はもじもじしながら
「俺さ…」
語り始めた
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:32:32.74:RG+XWOQMO
川島の話を要約するとこうだった
昔から体育会系に囲まれて過ごしていた川島だったがけして男色家と言うわけではなかった
だが
ある時試合で出会った長友さんを見て
小さくて
筋肉質な
男を
好きになってしまったということだった
「小鳥遊君みたいなものか…」
「?」
「いや、なんでもない…」
川島は俺がぽつりともらした言葉の意味は分かってないようだった
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:39:36.35:RG+XWOQMO
「でもこんな事…誰に相談する訳にもいかず…」
「悩んでたって訳か…」
「うん…」
まぁ当然と言えば当然だろう
こんなガタイをしたオッサンが筋肉質の小さな男が好きとか
マジで日本と対戦するときのアジアの弱小国くらいドン引きだし
「でも!犯すとかそういうんじゃなくて!愛でたいとかそう言った気持ちなだけで!!」
あぁ…涙目で犯すとか愛でるとか口走らないでくれ頼むから
「しょうがねぇ…わかったよ…」
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:43:31.46:ODN7dxjwO
その後、川島の部屋を出た俺は途方にくれていた
『じゃあ内密に同じ話が出来る仲間を見つければいいんだろ?』
なんて事を言っちまったからだ
小さくて筋肉質好き…いねーだろ常識的に…
そんな風に考えながら廊下を歩いていると
「ん」
飲み物を買いに行ってたのかジュースを持った遠藤さんがいた
「遠藤さん…あの…」
正直人畜無害そうな遠藤さんならと俺は早速相談することにした
内密とか面倒だったしこれくらいいいよね
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:56:55.81:HWm6UEGVO
「あぁそれ…やっぱりね」
「えぇっ!?」
事のあらましを話した俺に遠藤さんはあっさりとそう言った
なにこれ!?なにこれ!?バレてんの!?知らなかったの俺だけ!?ふざけた話ですよ!!
さすがに動揺した俺に
「まぁ鈍い岡崎とか最近来た奴らは知らないかな、あと監督も」
と事も無げに遠藤さんは続けた
「俺に森島さんの電話番号とか聞こうとしてたし、最近の長友見てる目を見ればね」
はぁ~なんだか一気に肩の力が抜けた
バレバレじゃん川島…
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:15:04.41:RG+XWOQMO
「でもまぁ男色家かと思ってたから違うのがわかったのが収穫かな」
まるで親善試合後のインタビューのようにサラッと答える遠藤さん
あぁもうこの人に任せてしまえばいいか、
ボールの出しどころに困った時も何とかしてくれるし頼りになるなと俺が思ったその時
「じゃあ川島の事は内田頼んだぞ」
と、ひらりと俺の横をすり抜け自分の部屋に帰っていってしまった
まるでコロコロPKを決められたキーパーのように俺は立ち尽くしていた
あぁ接触プレイとか面倒なの嫌うもんなあのひと…
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:37:49.98:RG+XWOQMO
カタール戦前のバスの中、隣には川島がどっかりと座っていた
隣が香川君の方がスペースが広くてよいのだが変われともさすがにいいずらい
それに遠藤さんが後ろからニヤニヤ見てるのが正直うざい
試合前からウンザリで本気で今日は出場停止で良かったと思っていた
「あれ?最近川島さんウッチーと一緒すね!」
「あぁ」
吉田が余計な事を言ってきた
ブログネタなら他で拾ってくれ
どこかでガムをぐちゃぐちゃする音が聞こえてくる
なんだかイライラする
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:45:50.25:RG+XWOQMO
カタール戦の試合内容は酷い物だった
まぁあのジャッジ開催国に負けるなら国民の皆さんも納得するだろう
負けてチーム解散すればドイツでしばらく川島の顔見なくてすむから負けてもいいんじゃねとか思っていたら
吉田のバカが退場した
バカはバカなりに役にたつもんだな
更に点入れられた時の憔悴仕切った顔を見て最近胃が痛いのが少しだけ和らいだ気がした
ブログ炎上ワロスとか思ってたら
俺の代わりの伊野波が決めた
上がるなって指示聞いてなかったの?
手荒い祝福を受ける伊野波にこっそり痛めにキックいれといた
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:01:04.22:RG+XWOQMO
「で、どうだった?」
試合後の食事中に川島が隣に座ってきた
カタールに来てから色々な事が有り過ぎで疲れていた俺は隣のテーブルで無理やり
「集まれ~!」と似てもない闘莉王の真似をいまだにやらされてる今野さんを指差し
「今野さん、結構筋肉質好きらしいよ」
とぶん投げてみた
「マジか!ありがとう内田!!」
川島はキラキラしたドヤ顔で俺に礼をいい今野さんを連れてトレーニングルームへ向かっていった
その後俺はゆっくり食事をしながら香川君と最近のドイツでの暮らしについて語り合った
香川君は爽やかだしほんとゆったりとした清々しい時間を過ごせた
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:25:38.45:80eU1oBgi
韓国とのPKの最中今野さんが俺の隣にそっと寄ってきた
「酷いよ、ウッチー…川島さんから昨日DVD見せられてさぁ僕、寝れなかったんだよ」
「あぁ、すいません今野さんなら無茶ぶりもなんとかしてくれると思って」
「良くわからないけどとりあえず話合わせておいたけどさぁ…」
ふと気がつくと川島の奴が馬鹿当たりしてPKとめまくっている
今野さんに適当に話を聞いてもらえたのが良かったのだろうか?
「ねぇ聞いてる?ウッチー?」
「あ、順番ですよ今野さん」
「えっ?マジで?やべえ…どっち蹴ろ?」
韓国戦は今野さんがPKを決め試合は終了した
さぁ次は決勝だ
香川君が足を痛めていたのが気になるけど…
この時の俺はあんなことになるなんて思ってもみなかったんだ
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:33:13.25:lqdgFgTn0
香川君が離脱したと聞いてその日俺はイライラしていた
大人な話が出来る松井さんに続いて…香川君まで…やっぱりアジアカップは呪われてる
そんな事を思っていた俺に△じゃないほうが話しかけてきた
「あ、ウッチー、いやウッチーさん。なんかぁ、監督呼んでるらしーすよ?」
爽やかさの欠片も無いトークにイラっとしながらも俺は監督室へ向かった
「失礼します」
恐る恐る監督室に入るとそこには正座したショボンとした川島と今野さんが座っている
そしてザッケローニ監督の座る机の上には例のDVDが乗せられていた
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:46:51.69:80eU1oBgi
「ペラペーラ…」
「えぇ、あの内田はこのDVDを知っているかと監督は聞いています」
通訳越しに説教か…
「ペラペーラ…」
「このDVDは男性がいやらしい事をしているDVDなのかと監督はたずねています」
「いや…その…」
まともに返してもちゃんと通訳してくれるんだろうか?
しかしなんで見つかったんだ?
そんな疑問が頭をよぎる
ふと正座してる二人を見ると川島は唇をぎゅっと噛みしめて黙っている
…お前がなんとかしろよ
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 12:14:51.98:b2N0dKVc0
「それ、みんなで観て遊んでたんです」
通訳からザッケローニに、ザッケローニから通訳に言葉が移り行くのを待つ
なぜか気まずくて川島を見ることができない
「どういうことか説明しろ、と」
通訳が言い終えないうちに内田はまくしたてた
「ジャケットを見てください、それは長友佑都さんが学生時代にふざけて撮ったものなんです」
視界の端で川島がこちらを見ていることに気付いた
だがそちらを見る余裕などない
「メンバーの1人が持ってきた映画DVDの中に紛れ込んでたんです」
我ながら苦しすぎる言い訳だ、と内田は心の中で苦笑した
一体誰が、他のDVDに紛れ込む程の手元に長友のそれを置いておくというのだ
290:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:27:17.85:NvfM26DZO
「ちなみに、それはいかがわしいものではありません。学生のふざけたノリで撮影されているものです」
通訳とザッケローニのやりとりを待つ時間がもどかしい
駒野が背伸びをしたのでそちらに目をやると、川島とばっちり視線がかち合った
その目には色々な感情が浮かんでいる
「まぎらわしい真似はするな、びっくりした、だそうです」
「すみませんでした」
内田に続いて川島、駒野も謝罪する
というかなんでDVDごときで呼び出しなんだ、高校生か、と内田はため息をついた
291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:28:33.54:NvfM26DZO
ザッケローニが退室してもまだ川島と駒野は沈んだ顔をして座っている
まるで修学旅行にゲーム機を持ち込んだのを先生に見つかった高校生のようだ
そんな2人を引き連れて部屋へと戻る
「さっきは助かったよ」
駒野が肩を叩いて礼を言う
「いや…じゃあおやすみなさい」
駒野と部屋の前で別れると、川島が口を開いた
「内田、悪かったな」
「いや、別にいいよ。気にしないで」
あのDVDを暴露された日から、川島はなんだかおかしかった
今までの威厳や気迫が感じられなくなったというか、とにかくいつもの川島に戻ってほしい
そう思った内田は、川島にある提案をした
「永嗣さん、部屋に行ってもいいですか?」
297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:50:23.16:NvfM26DZO
「えっいいけど…」
少しうろたえた様子の川島に、内田はイラつきを覚えた
こんな弱くてもじもじした川島など見たことがない
試合前に緊張をほぐしてくれたり、練習中に色々構ってくれたり、一緒にゲームを楽しんだりした川島はどこに行ったのだ
「じゃ、行きましょう」
川島の部屋の場所は目を閉じてても辿り着ける
こちらにきてから、夜寝るとき以外はずっと入り浸っていたのだ
「あ、ああ」
内田は構わずつかつかと歩いて行った
その後ろを川島がついてくる
「永嗣さん、鍵」
川島は黙ってポケットからカードキーを出すと、内田とドアの間に滑り込み鍵を開けた
その大きい背中に、内田は目をそらす
298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:00:40.05:NvfM26DZO
川島はドアを開けて内田を先に中に入れると、自身もゆっくりと後に続いた
「内田、さっきは本当に悪かったな」
「だからいいよ別に」
内田はベッドにごろんと身体を預けながら面倒臭そうに言った
「駒野には悪いことをしたな…」
「大丈夫だよ、気にしてないって。それより永嗣さんもうご飯食べた?」
「い、いやまだ食べてないが」
「お腹空いた!」
いつもの川島に戻ってもらおうと、内田は明るくいつもどおりに振る舞う
実際お腹が空いているのは事実であるし、元の川島が戻ってきてかつお腹も満たせればDVDの件などなんということはない
300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:09:20.52:NvfM26DZO
「俺お腹空いたよ、何か食べようよ」
「そうだな、何か食べに行くか」
川島の顔に、徐々に笑顔が戻る
「行く行く!何がいいかなー何がいい?」
「お前は何がいいんだ?今日は俺の奢りだ」
「ほんと!?やったーじゃあ、うーん…」
当たり前だ、と思いながらも川島の笑顔にほっとして食べたいものを真剣に考える
その時、ドアをノックする音が聞こえた
303:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:19:12.67:NvfM26DZO
「おーい」
ドアを開けると、遠藤と長谷部が立っていた
「お、内田も一緒にいたのか」
この二人はおそらく事情を察して様子を見に来てくれたのだろう
内田はそう思うと、自然と笑顔になった
「ちょうどよかった、今から食べに行くんだけどお前らも行かない?」
「あ、行きたいです!今永嗣さんとちょうどその話してたところでした。何食べに行きます?」
遠藤と長谷部は実に勘が良い
そのうえ面倒見も良く、温厚で信頼できるタイプだ
305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:28:08.51:NvfM26DZO
「あれ、うっちー?」
どこに行くか決まらないままとりあえず廊下に出て歩き始めると、内田の部屋の前に吉田が立っていた
「あれ、ごめん俺部屋にいなかった。今からみんなでご飯食べに行くんだけどお前も行く?」
「おー行く!」
川島と二人で食べる予定が、いつの間にか大所帯になってしまった
夜はまだ長いしいいや、その後も増えるメンバーを見て内田はそう思った
「永嗣さん、今日の昼頃ここらへんに猫たくさんいたんだよ」
「へえ、なんでだろうな」
「多分お昼寝じゃないかな」
こんなに他愛ない会話をしたのは何日ぶりだろう
そう思うと、内田の顔は自然に綻んだ
306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:29:40.50:L/Z6aX+zO
夕食の席でも、内田は川島の隣に座って話し続けた
「このチャーハンおいしいね」
「ああ」
「俺ラーメンも食べたいな」
「そうか」
しかし、川島の反応が薄い
会話が続かないことで少し疲れたので、吉田に話を振ってみた
「そういえばお前の作るチャーハン美味いよなー!」
「ふふん、当たり前だろ」
「吉田料理出来るのか、意外だな」
川島が喋った
315:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:48:39.55:NvfM26DZO
「出来ますよ~!」
「いつも吉田の料理食べてるのか?」
「…。うん、まあ結構食べてるかなー」
ここに来て初めてこんなに長く会話した気がする
吉田はブログに載せるからと言って料理の写真を撮り始めた
「永嗣さん、ベルギーってチョコ美味しそうだよね」
「ああ」
「美味しい?」
「うん」
また会話が続かなくなってしまった
「…。マヤマヤ!」
「なんだその呼び方!」
317:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:54:39.28:NvfM26DZO
「今度お前んちでゲームしたい」
「しょっちゅう来てただろが。気付くとベッド占領してるし」
「なんか寝心地いいんだよなー」
「結構泊まったりするのか?」
「…。うんまあね!」
「仲が良いんだな」
内田は確信した
内田が吉田と喋り出すと、その会話に無理に割り込んでくる川島
嫉妬だ
320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 05:06:20.07:NvfM26DZO
これには内田も気分が良かった
不器用ながらに独占欲の強いいつもの川島に戻りつつあるからだ
「仲良いと言えば仲良いよなーお前俺のこと大好きだもんなー」
「ああもうお前と結婚するしな、柏木には渡さん!」
「うあー永嗣さん助けて!」
川島の肩に頭を乗せ、少しだけ身体をくっつけてみる
これで背中に手を回してニコニコ笑いながら冗談を言ってくれれば、いつもの川島だ
「わかった、ブーケは俺がキャッチするよ」
よかった
内田は、自分の背中をぽんぽんと叩きながら笑う川島に安堵して、食べかけのチャーハンに手を伸ばした
323:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 05:27:08.50:NvfM26DZO
「楽しかったね」
部屋に戻ると、内田は早速ベッドに飛び込む
川島はバインバインと弾む内田の横にどっかり腰を下ろした
「ああ、そうだな。チャーハンな」
「そう、チャーハン!あとなんか肉の何かの何かも美味しかった」
「肉の何かの何かってなんだ」
二人で声を上げて笑う
「ねえ永嗣さん」
しん、となった部屋に内田の声が響き渡る
「なんだ?」
ベッドの縁に座っている川島の後ろから、肩に顎を乗せて囁いた
「永嗣さんの趣味もDVDも、何も気にしてないからね」
324:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 05:37:31.41:NvfM26DZO
川島の身体が急に強張るのがわかる
「あ、ああ、その件なんだが」
「永嗣さんが長友さんを好きなのも、俺はいいと思うよ」
「ん?」
「あっちはどうかわからないけど、俺は永嗣さんを応援する」
「え、内田?」
川島が後ろを振り向こうとするが、真横に内田の顔があるので迂闊に動けない
「でも、でもね永嗣さん」
内田が川島のシャツの裾をぎゅっと握る
「内田…?」
「俺の前では、俺の永嗣さんで、いてよ」
326:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 05:46:00.70:NvfM26DZO
耳の隣で囁く内田の声は、まるで何かに縋るようだった
「内田ちょっと待て」
「え?」
「俺が長友を好き?」
目をしばたかせる川島と内田の視線が、至近距離で繋がる
「え?」
「俺は長友が好きなのか」
「えっそうじゃないの?」
「何を言っているんだお前は」
「えっ?えっ?だってDVD…」
「いやいやいや」
333:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 07:04:13.07:c4sObGLU0
川島が心底驚いた様子でこちらを見ている
なんだか話が噛み合っていない
「え?だって永嗣さん、長友さんのことが好きだからDVD持ち歩いてたんじゃないの?」
「いやちょっと待て、それじゃ俺が変態みたいだろ」
どういうことだ
川島は長友のことが好きなのだとばかり思っていた内田は、川島のリアクションに混乱した
「じ、じゃあなんでそんなDVDを…」
「あいつの同級生からもらったんだ。だからみんなで観て冷やかそうと思って」
「でも長友さんの筋肉がどうとか好きだとか言って…」
内田は、川島に初めてこのDVDを見せられたときのことを思い出して言った
「ああ、あれな…」
言いにくそうに頭を掻く川島
「冗談なんだ」
「冗談?」
352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 14:28:55.40:NvfM26DZO
「ああ、冗談なんだよ」
「なんで…?」
話の先が見えない
川島は苦笑いしながら話し出した
「お前とぶつかったときあるだろ?あの時それを落としたんだよ」
「うん知ってる」
「落としたのに気付いて探してたら、拾ったのがお前だと知った」
「で?」
「それで、その…お前なんかおかしかっただろ?だからつい、なんというかまあ、悪戯を思いついてだな」
「…で、ゲイの真似をしたと」
「すまん…」
川島が素直に謝る
354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 14:51:16.63:q1L88u4iO
「じゃあ別に長友さんのこと好きとかそういうわけじゃないってこと?」
「チームメイトとしては好きだが、お前の思っているような感情はないよ」
「遠藤さんとか今野さんとか長友さんとかは…」
「みんなも面白がってたな」
「決勝戦が近いのに大掛かりで悪趣味な悪戯だね…」
「本当にすまん、うろたえたりするお前を見てたらつい…」
川島が長友を好きだという内田の思い込みは勘違いだったとわかり、ほっと胸を撫で下ろした
「もう、みんなしてひどいな!」
ちょっと腹が立ったが、胸につかえていたものがなくなって顔には笑顔が広がっていく
387:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 18:29:51.88:NvfM26DZO
「すまん、ちょっとやりすぎだったな」
「いいよ、びっくりしたけど」
本当によかった、川島のお気に入りが自分から長友に移らなくてよかった
いや、川島が自分のものじゃなくなってしまう心配がなくなってよかった
これからも、川島の笑顔も優しさも独占欲も全て自分のものだ
無意識のうちにそんなことを考えた内田は、自分の中のおかしな気持ちに気付いて自嘲した
「変態は俺か」
ぽつりと零れた呟きに、川島が反応する
「何言って…えっもしかしてお前長友のこと好きだったのか?」
388:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 18:31:32.87:sbV162yxO
「は?」
「変態は俺か、って」
何を言ってるんだこの人は、そう思ってため息をつきベッドにごろんと転がった
「とっさに悪趣味な悪戯が思い付く永嗣さんには言われたくないな」
「そうだな」
川島も笑いながら後ろに身を倒した
「永嗣さん重い」
内田の腹に川島の頭が乗る
390:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 18:43:54.84:NvfM26DZO
「内田」
川島は身体を起こすと、ベッドの縁に腰掛けたまま内田の方を向いた
内田の頭の両脇に手をつき、静かに見下ろす
「なに、永嗣さん」
内田もその視線を真っ直ぐに見つめ返す
「変な勘違いをさせてお前を困らせてしまって本当に悪かった」
「もういいって。そのかわり明日頑張ってよね、キーパーさん」
真剣な表情の川島に、軽く微笑みで返す
「お前もな」
笑顔でそう言うと、内田の上から退けた
「…緊張して吐きそう」
「おい」
391:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 18:55:33.26:NvfM26DZO
「大丈夫大丈夫俺は大丈夫、できる、頑張る」
「緊張しすぎだ。力抜いてリラックスしろ」
「……」
川島は、枕をぎゅっと抱いたまま動かなくなってしまった内田の頭をぽんぽんと叩く
「お前ならできる。これまでもそうだっただろ」
「ん…」
「それに安心しろ、最後まで守り抜く」
「わかってる」
男らしく頼もしい川島を見ていると、緊張もすーっと引いていく
「…よし!じゃあ俺部屋に戻るね永嗣さん」
「ああ、明日に備えてゆっくり休め」
「ありがとう」
枕を元の位置に戻してベッドから立ち上がる
393:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 19:09:48.09:NvfM26DZO
「じゃあ明日な」
「うん」
川島がドアまで見送りにくる
だがなぜか内田は一向にドアを開けようとしない
「どうした内田?」
不思議に思った川島が声をかけると、内田はくるりと向き直った
部屋の設計上身体と身体の間隔が狭い
「永嗣さん」
細くしなやかな内田の両手が、川島の右手を包んだ
川島の大きな手は、温かくて優しい
「な、なんだ?」
「永嗣さん」
内田は、掴んだ川島の右手を自分の胸の位置まで持ってくると、真っ直ぐに相手の目を見る
川島の方が背が高いので、だいぶ見上げる形になった
「俺、明日頑張るから」
そして静かに微笑むと、おやすみなさい、と残して自分の部屋へと戻って行った
410:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 22:03:23.21:NvfM26DZO
翌日――――
「おはよう永嗣さん!」
「あ、おは、おはよう」
川島は昨夜の内田を思い出し、なんだか恥ずかしくなって目を合わせられなかった
「どうしたの?」
「な、なんでもない!」
覗きこんで目を見てくる内田を振り切るように前を見据えると、集合場所へと歩きだした
「あーヤバい、昨日はぐっすり眠れたのにまた緊張してきた」
「しっかりしろ、今日で決まるからな」
409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 21:56:10.99:6hev0Ppw0
「いよいよだ。みんなもわかってると思うが、ここで勝たなければ意味がない」
試合前最後のミーティングで、長谷部や本田がチームの士気を高める
泣いても笑っても、これがアジア杯最後の試合だ
優 勝
このためにここまでやってきた
そう考えるとまた緊張して吐き気が押し寄せてくる
試合前にこんなことではいけないと思い、隣にいた川島に話を振ってみた
何かしていないと嘔吐感に飲み込まれそうだった
「テーピング持ってない?」
「ほら」
「ありがとう。調子どう?」
「わからないが全力でいける」
実に頼もしい男である
温厚で、優しくて、頼もしくて、ときには鬼になる
448:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:40:42.97:9gha0rF0O
「永嗣さんといると自信が沸いてくるよ」
内田は、心の底からそう言った
「あー…内田」
「ん?」
川島の先程までの頼もしさが一変し、どこか困惑した表情になっている
「どうしたの」
何か変なことを言ってしまったのだろうか
不安になる
「その…最近」
「最近?」
「なんで突然、永嗣さん、になったんだ?」
ずいぶんと言葉を選んでいたようだが、結局ストレートに言うことにしたらしい
「ああ」
これにはちゃんとした理由があった
451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:46:56.57:vV2/jk5E0
理由はある
あるのだが、誰かに言えるようなものではない
ましてや本人になど
「あー…あっほら、年上だし“さん”をつけないとさ、うん」
「…」
内田のバレバレの嘘に、川島が納得している様子はない
「嫌?」
「嫌、ではないが…そのなんというか…」
内田が川島への呼称を変更したのには理由があった
454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:00:31.86:9gha0rF0O
長友を好きだと知ったとき、正確にはそう思い込んだとき、内田の心に何か大きなものが渦巻いていた
それが嫉妬よりも強いものだと気付いたのは昨夜であった
「嫌じゃないけど…、なに?」
長友が好きな川島へのイラつきから、呼称を他人行儀に変えてやろうというなんとも幼い嫌がらせを思い付いたのだ
しかし川島さん、だといくらなんでも他人行儀すぎると思い、“永嗣さん”にしてみたのである
そして態度もそっけなくするように頑張った
「…本当のことを言ってくれ。もしかして、まだ怒ってるのか?」
全ては悪戯で長友の件も内田の勘違いだったとわかったとき、元に戻そうとした
しかし、本人を前にしながら急に呼称を変えることに気まずさと恥ずかしさを感じ、今までずるずると引っ張ってしまったのである
456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:11:36.38:9gha0rF0O
「…そっちだって、なんで急に苗字呼び?」
呼び方が変わったのは内田の方だけではなかった
気が付くとなぜか川島まで、内田に対する呼び方を変えていた
「それは…お前が突然変な呼び方するから」
「そっか」
「おそらく俺がゲイだから遠ざけようとしているんだろうな、と思っていた」
「…」
「悪戯仕掛けてるのは俺の方なのになんだか悔しくなって、それで…」
「…違うよ」
「え?」
他の選手達は各々談笑したりスパイスの調整をしたりと散らばっている
485:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 06:19:36.58:K+JImmMz0
「全然違うよ」
「違う、のか」
「遠ざけようとなんかしてないよ」
川島がそんなことを思っていたなんて、内田は気付きもしなかった
「たとえそっち系でも俺の前では俺だけの、えい…ちゃんでいてって言ったじゃん」
川島は昨夜のことを思い出して耳が赤くなるのを感じた
「そ、そうだな」
「俺がそんな理由でえいちゃんから離れるわけないでしょ」
「そう、か、」
「俺はただ、えいちゃんが奪われると思って、だからそっけなくして、俺の大切さを、その…」
460:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:23:32.22:zr7cwa59O
「あ…」
「う…」
最後まで言い終わらないうちに二人で赤くなる
「えいちゃん」
「な、なんだ」
ほんのり赤く染まった川島の顔を覗きこみながら、内田は笑った
「早く篤人って呼んでよ」
「なんだよ、篤人」
川島も満面の笑みで返す
「じゃ、えいちゃん、試合頑張ろうね」
「篤人も1点くらい決めてこい」
そろそろ時間だ、という誰かの声を合図に一斉に立ち上がる
ピッチへと向かう廊下を歩きながら、内田は一人微笑んだ
462:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:37:09.74:9gha0rF0O
「篤人」
試合に緊張した内田の胸を、川島が後ろから抱きすくめてぽんぽんと叩く
「篤人しっかりしろ、大丈夫だ」
「…うん」
内田には川島の目を見る余裕もないらしく、川島とは逆の方を向いたままその温かさを感じていた
「篤人、安心しろ。俺が守る」
「えいちゃん…」
464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:46:34.97:9gha0rF0O
試合は、1-0で日本の勝ち
見事優勝を果たした
その夜―――
「えいちゃん」
「なんだ」
「終わっちゃったね」
「ああ、優勝だぞ優勝」
「うん!」
内田はあまりチームに貢献できていなかったが、これからの成長がとても楽しみな選手だ
467:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:56:58.01:9gha0rF0O
「帰るまで一緒に寝てもいい?」
「あ、ああ」
「やった」
内田は枕をぎゅっと抱きしめるとベッドに転がった
「ふふふー」
川島はごろんごろんと無邪気に転がり回る内田の横に腰を下ろす
「ベルギーとドイツって近いようで遠いよねー」
「そうだな」
手は自然とふわふわとした内田の髪を撫でている
「ふはっくすぐったい」
そう言いながらも自分から頭をこすりつけてくる内田を見て、今この瞬間がいつまでも続けばいいのに、と思った
469:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:05:39.47:9gha0rF0O
―――帰国の日がやってきた
川島はベルギーへ、内田はドイツへと旅立つ
次の代表戦は3月だ
実質3月まではあまり会えない
「えいちゃん、頑張ってね」
「篤人もな」
内田に握られている手が異常に熱く感じられた
「じゃ、俺もうそろそろ行くよ」
「ああ」
二人が、自分達の日常へと戻っていく
470:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:16:45.85:9gha0rF0O
「えいちゃん!」
50m程距離ができたところで内田が騒ぐ
川島はすぐに向き直り、次の言葉を待つ
「次までにはゲームもっと練習しておいてね!」
言うに事欠いてこれか、と川島は微笑んだ口元からため息を零し返事を返す
「はいはい。じゃあ篤人、風邪ひくなよ」
「風邪はドイツにはないんだよ」
「何言ってんだ」
「へへへっじゃ、またねー!」
きらきらとした笑顔を残して内田は空港へと姿を消した
川島も、もう出発しなくてはいけない
「またね、か」
手を繋いで頭を寄せ合い眠った夜を思い出しながら、川島は幸せに満ちた顔で空を見上げた
人生はまだまだ、これからである
471:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:19:59.53:1Zl4O3dc0
「えっ?」
目を見開いた俺は鋭い視線を向けられ絶句する
「…いい、触るな」
それだけ告げて散らばったバッグを黙々と拾い集める川島さん
…嫌われてる…?
日頃の不甲斐ないディフェンスに川島さんから良く思われていないのだろう
俺は川島さんが立ち去るまで一歩も動けずにいた
「はぁ…」
俺は薄々きがついていたことをまざまざと見せられ少しへこんでいた
これは…
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 01:56:31.47:RG+XWOQMO仕方ない…この後のグループリーグでディフェンスをしっかりやって信頼を得ていこう
憂鬱な気分を前向きに切り替えそこを立ち去ろうとすると
「…ん?」
それが落ちていたのはソファの下
白くて薄いケースのような物が落ちている
「…なんだろう?」
俺はケースを拾い上げてみた
DVDのケースだ
それは分かる
しかしそのパッケージにはやたらと色の艶やかな筋肉をした男達が様々なポーズをとっていた
一体誰がこんなものを…
パッケージの上部におそらくタイトルであろう文字が書かれている
しかしタイトルはなにやら修正液でもぶちまけたのだろうか一部が見えにくくなっていた
「きんに…く…サイド…バック…ゆう…と?初回…限定版?」
よくはわからないが何かのDVDなのだろう
なぜか嫌な気分にしかならないが
「で…?なぜこんなもんが?」
俺が途方にくれていると背後から
「お、内田じゃないかなにしてんだ?」
長谷部さんが声をかけてきた
こういう時ふいに出てくるのがいつも長谷部でウケるわ
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:14:13.19:RG+XWOQMO「なんだ?DVDか?」
長谷部さんは俺の手にしているDVDにきがついたのか話を降ってきた
「え、えぇ…」
真面目な長谷部さんにこんなものを見せられるわけも無く俺は曖昧に答える
「まぁ内田は若いから仕方ないかもしれんが、試合前に無駄な体力を使うんじゃないぞ、ははっ」
長谷部さんは爽やかに勘違いをしたまま俺の肩をポンと叩きその場を立ち去った
「ふう…」
立ち去る長谷部さんを見送った俺はこのDVDの持ち主に興味が湧いた
俺は鞄にDVDをしまい込むと、ある罠を思いついた
シリア戦の前日、ホテルで食事会があるというので俺はその罠を実行することに決めた
食事会前に長友さんを誘い筋トレをつんだあとシャワーを浴び胸元の広く開いたシャツで食事会へ向かった
「お!ウッチー風呂上がり?」
早速吉田が食いついてきたがコイツはブログのネタが欲しいだけだろう
「写メとってブログにアップしてもいい?」
やっぱりだ
俺は軽く2、3枚撮らせると吉田とは離れて席についた
吉田は根っからの女好きそうだから持ち主とは違うと判断しての事だ
「長友さん~こっち開いてますよ~」
俺は罠を張るため長友さんを呼び寄せる
「おぅ、ウッチー!じゃあそっち行くわ」
長友さんも何を怪しむ事も無くこちらの席にやってくる
ここまでは順調だ
「お前らサイドバック同士仲がいいな」
向かい合わせの席の岩政さんが話を向けてくる
正直この時点では岩政さんが持ち主だと俺は思っていた
だけど…
岩政www
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 02:41:09.03:RG+XWOQMOそのとき俺が岩政さんに動揺を与えようと長友さんに
「いやぁほんと凄い筋肉ですよね~」
「ちょ、ウッチーくすぐったいって!」
とか軽くじゃれつくと
ガチャン!!
隣のテーブルから大きな音が
そして
「おい!そんな格好して!風邪ひいたらどうすんだ!!」
そこには鬼のような形相の川島さんが立っていた
>>48
ウッチーは小悪魔系かwwwwwww
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:00:36.77:RG+XWOQMOウッチーは小悪魔系かwwwwwww
「えっ…あっ…すいません」
俺はあまりの恐怖に謝ることしかできなかった
「まぁまぁ…とりあえず落ち着けよ」
本田さんが鬼のような川島さんをなだめている
あの人はこんな時でも冷静なんだなと俺は妙に感心してしまった
「…すまん…だが身体が心配でな…」
川島さんは本田さんに冷静にたしなめられ、素に戻ったのか少し気まずそうに言い訳をし
「と、とにかく試合に響いたらマズいから早くお前ら上着着ろ!上着!」
とぶっきらぼうにジャージの上を俺達に投げてよこした
結局その日はそのまま普通に食事会をして解散となった
持ち主が見つからなかったな…俺は少し落ち込みつつも翌日の試合に頭を切り替えることにした
翌日、川島さんはレッドカードで退場になった
川島に鬱憤がたまりはじめたな
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:46:57.76:RG+XWOQMOその翌日の深夜
安らかに眠っていた俺はバチンと頬に痛みを感じ目覚めさせられた
「痛っ!?」
「静かにしろ、何時だと思っているんだ?」
そこには俺に馬乗りになったパジャマ姿の川島さんがいた
「な、な、なんすか!?なんなんすか!?これ!?」
深夜大男に馬乗りにされまともにリアクションできるわけがない
俺は狼狽し助けを求めようとする
「暴れるな、悪いようにはせん」
暴れようとする俺を楽々と制し川島さんはこう告げた
「人生相談があるんだ」
川島がぱじゃまとかwww
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:54:45.62:4tOFDGkC0>「暴れるな、悪いようにはせん」
どこのお代官様だよwwwwwwwww
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 03:54:48.49:RG+XWOQMOどこのお代官様だよwwwwwwwww
家捜しされたのだろう、俺の部屋は荒らされカバンやらがしっちゃかめっちゃかだった
川島さんは手に持ったDVDを見せ俺にもう一度告げた
「これについて人生相談があるんだ」
罠にかかってぐったりした獲物のような俺は軽く頷く事しかできなかった
―――
―
そのままヤラレてしまうかもと思っていたが川島さんは俺を川島さんの自室へと連れていった
どうやら俺の身体が目当てな訳ではないらしい
「まぁこれでも飲め」
川島さんは部屋に入るとスッとグラスを渡してくる
何か嫌な予感もしたが犯すならさっき犯していただろうと思い俺はグラスの飲み物の一口くちにした
プロテインだった
「落ち着いたか?」
川島さんが俺の顔を覗き込んでくる
「えぇ…」
なぜプロテインなのかはあえて聞くのは止めておいた
が、
「で、本題なんだが…」
と、いきなり本題に入られプロテイン話で誤魔化せば良かったと俺は後悔した
「これを見てお前はどう思った?」
川島さんは性格そのままにストレートに俺に聞いてくる
『肉体美って素晴らしいですね!』
『そうだろ!どうだ俺のを見て!』脱ぎっ
『アッー!』
『気持ち悪いです』
『そうか…洗脳するしかないな』脱ぎっ
『アッー!』
『ユニーク』
『只のサイドバックには興味ありません!』
『アッー!』
「…」
どう答えても不正解な気がして俺は即座に返事ができなかった
というよりまともな思考が出来ていなかった
どうしようどうしよう…緊張感で変な汗と吐き気がしてくる
ようやく身体も良くなってきたのにまた…
などと考えながら川島さんの方を見やると川島さんも少しうつむき加減でこちらの様子を窺っていた
?
もしかして川島さんの方が緊張してる?
ふと思いついた俺は
「まぁいいんじゃないっスか?人にはそれぞれ好みがあるし」
とサラッと言ってみた
するとうつむき加減だった川島さんがパアッと花が咲いたように微笑み
「そうか!良かった!やっぱり内田は分かる奴だな!!」
とこれまで試合でもみたこともない良いドヤ顔を見せた
良いドヤ顔ってwwwwwwwwwww
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:28:53.15:UpaSFukk0お前ドヤ顔の使い方まちがってないかwwwww
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:30:00.78:4tOFDGkC0ドヤwwww顔wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:32:04.28:YWBsKYHg0ドヤwwwwwwwwwwwwwwww
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 04:33:50.41:RG+XWOQMO「なあ!DVD!中身は見たのか!?」
川島さんは急に生き生きとした顔で俺に聞いてくる
えっ?なんですか?これ?なんなんですか?これ?
ちょっとリアクションに困ったがここで対応を間違えるといろんな意味で不味いと思った俺は
「いや、時間が無くて…見てないんですよ」
と、別に見たくないから見てないとも、見たい訳でもないともハッキリ答えない時間をかせぐ対応をとった
ディフェンスで言うディレイってやつだ
「じゃあ見るか!今!!」
「今!?」
俺が時間をかせぐのを見越していたのかのように川島さんは素早く仕掛けてきた
既にDVDをデッキに挿入しようとしている
本当にこの人はゴールキーパーなんだろうか?
こうして俺は
「きんにく・サイドバック・ゆうと♪」
を川島さんと見るハメになってしまったのだった
ニコニコしながら『最初から』を押し再生していく川島さん
すると妙に扇情的な衣装をまとった長友さんが画面端からトコトコ歩いてきた
画面中央でくるりんっ♪と筋肉を見せつける
そしてバチ(太鼓の?)ようなものを掲げ
野太いボイスで叫ぶ
『きんにくサイドバックゆうと♪はっじまるよ~っ♪』
ここでミュージックスタート
ぎゅっと歯を食いしばって画面を見る俺
横では川島さんがニコニコしながら横乗りでノリノリだ
きーんにくにくにくにくめるめ~
きーんにくにくにくにくめるめ~
ピッチにきらめーくスルーパス~☆
きんにーくじぇっとで~てーきを打つ~
日本のくにからアジアのために 上がって 流れ~て こ~んにちは
きんにーくサイドバックゆうと~♪
俺は自分の顔が青ざめるのを自覚していた
俺は主人公長友さんが歌う『めてお☆サイドバック』を聞きながら猛烈な羞恥と後悔に耐えていた
さいどばっーく♪さいどばっーく♪
あなたの胸に飛び込んでいくの~
きんにーくよりも~(キラッ☆)
きょだいなパワーで~(キラッ☆)
俺の長友が汚されていく……
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:19:11.50:RG+XWOQMOピッ
「で、どうかな…?」
一通り見終わった後川島さんはもじもじしながら俺にこう聞いてきた
正直後半は気を失っていたかもしれない
内容が脳の許容範囲を超えていたのだろうか
「良かった…よな?」
そんな俺に執拗に聞いてくる川島さん
なんだか筋肉質の男のDVDを見せられあげく筋肉質な男にわけのわからない質問をされ俺は正直もうどうにでもなれという気分になってきた俺は
「まぁ悪くはないんじゃね」
先輩とかもうどうでもいいだろという風に答えた
「だろ~!!で!他にもさ…」ガサガサ
川島がカバンを漁り違うDVDを出そうとしたので俺はとっさに
「でも長友さんこれいつ撮ったんですか?」
とDVDから意識をそらそうと川島にパスを出した
「ん、あぁ…なんか大学の時に余興で撮影したらしいんだ」
川島はカバンを漁りながら答える
それを何故お前が持ってるのかは聞かないでやろう
俺は心の中で呟いた
「でさ!次なんだけど!」
「まて!」
次のDVDを取り出した川島を制し俺は
「人生相談…しろよ」
はっきりと言った
「そう…だね…うん…」
急に子猫のように丸くなった川島はもじもじしながら
「俺さ…」
語り始めた
川島の話を要約するとこうだった
昔から体育会系に囲まれて過ごしていた川島だったがけして男色家と言うわけではなかった
だが
ある時試合で出会った長友さんを見て
小さくて
筋肉質な
男を
好きになってしまったということだった
「小鳥遊君みたいなものか…」
「?」
「いや、なんでもない…」
川島は俺がぽつりともらした言葉の意味は分かってないようだった
「でもこんな事…誰に相談する訳にもいかず…」
「悩んでたって訳か…」
「うん…」
まぁ当然と言えば当然だろう
こんなガタイをしたオッサンが筋肉質の小さな男が好きとか
マジで日本と対戦するときのアジアの弱小国くらいドン引きだし
「でも!犯すとかそういうんじゃなくて!愛でたいとかそう言った気持ちなだけで!!」
あぁ…涙目で犯すとか愛でるとか口走らないでくれ頼むから
「しょうがねぇ…わかったよ…」
タメ口というか上から口調がデフォになってるwww
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 05:53:14.21:RG+XWOQMOその後、川島の部屋を出た俺は途方にくれていた
『じゃあ内密に同じ話が出来る仲間を見つければいいんだろ?』
なんて事を言っちまったからだ
小さくて筋肉質好き…いねーだろ常識的に…
そんな風に考えながら廊下を歩いていると
「ん」
飲み物を買いに行ってたのかジュースを持った遠藤さんがいた
「遠藤さん…あの…」
正直人畜無害そうな遠藤さんならと俺は早速相談することにした
内密とか面倒だったしこれくらいいいよね
いいぞいいぞ
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 06:02:41.98:RG+XWOQMO「あぁそれ…やっぱりね」
「えぇっ!?」
事のあらましを話した俺に遠藤さんはあっさりとそう言った
なにこれ!?なにこれ!?バレてんの!?知らなかったの俺だけ!?ふざけた話ですよ!!
さすがに動揺した俺に
「まぁ鈍い岡崎とか最近来た奴らは知らないかな、あと監督も」
と事も無げに遠藤さんは続けた
「俺に森島さんの電話番号とか聞こうとしてたし、最近の長友見てる目を見ればね」
はぁ~なんだか一気に肩の力が抜けた
バレバレじゃん川島…
「でもまぁ男色家かと思ってたから違うのがわかったのが収穫かな」
まるで親善試合後のインタビューのようにサラッと答える遠藤さん
あぁもうこの人に任せてしまえばいいか、
ボールの出しどころに困った時も何とかしてくれるし頼りになるなと俺が思ったその時
「じゃあ川島の事は内田頼んだぞ」
と、ひらりと俺の横をすり抜け自分の部屋に帰っていってしまった
まるでコロコロPKを決められたキーパーのように俺は立ち尽くしていた
あぁ接触プレイとか面倒なの嫌うもんなあのひと…
カタール戦前のバスの中、隣には川島がどっかりと座っていた
隣が香川君の方がスペースが広くてよいのだが変われともさすがにいいずらい
それに遠藤さんが後ろからニヤニヤ見てるのが正直うざい
試合前からウンザリで本気で今日は出場停止で良かったと思っていた
「あれ?最近川島さんウッチーと一緒すね!」
「あぁ」
吉田が余計な事を言ってきた
ブログネタなら他で拾ってくれ
どこかでガムをぐちゃぐちゃする音が聞こえてくる
なんだかイライラする
カタール戦の試合内容は酷い物だった
まぁあのジャッジ開催国に負けるなら国民の皆さんも納得するだろう
負けてチーム解散すればドイツでしばらく川島の顔見なくてすむから負けてもいいんじゃねとか思っていたら
吉田のバカが退場した
バカはバカなりに役にたつもんだな
更に点入れられた時の憔悴仕切った顔を見て最近胃が痛いのが少しだけ和らいだ気がした
ブログ炎上ワロスとか思ってたら
俺の代わりの伊野波が決めた
上がるなって指示聞いてなかったの?
手荒い祝福を受ける伊野波にこっそり痛めにキックいれといた
「で、どうだった?」
試合後の食事中に川島が隣に座ってきた
カタールに来てから色々な事が有り過ぎで疲れていた俺は隣のテーブルで無理やり
「集まれ~!」と似てもない闘莉王の真似をいまだにやらされてる今野さんを指差し
「今野さん、結構筋肉質好きらしいよ」
とぶん投げてみた
「マジか!ありがとう内田!!」
川島はキラキラしたドヤ顔で俺に礼をいい今野さんを連れてトレーニングルームへ向かっていった
その後俺はゆっくり食事をしながら香川君と最近のドイツでの暮らしについて語り合った
香川君は爽やかだしほんとゆったりとした清々しい時間を過ごせた
ちょいちょい香川でるなw
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:31:54.97:RG+XWOQMO韓国とのPKの最中今野さんが俺の隣にそっと寄ってきた
「酷いよ、ウッチー…川島さんから昨日DVD見せられてさぁ僕、寝れなかったんだよ」
「あぁ、すいません今野さんなら無茶ぶりもなんとかしてくれると思って」
「良くわからないけどとりあえず話合わせておいたけどさぁ…」
ふと気がつくと川島の奴が馬鹿当たりしてPKとめまくっている
今野さんに適当に話を聞いてもらえたのが良かったのだろうか?
「ねぇ聞いてる?ウッチー?」
「あ、順番ですよ今野さん」
「えっ?マジで?やべえ…どっち蹴ろ?」
韓国戦は今野さんがPKを決め試合は終了した
さぁ次は決勝だ
香川君が足を痛めていたのが気になるけど…
この時の俺はあんなことになるなんて思ってもみなかったんだ
集中しろやwww
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:45:36.67:RG+XWOQMO香川君が離脱したと聞いてその日俺はイライラしていた
大人な話が出来る松井さんに続いて…香川君まで…やっぱりアジアカップは呪われてる
そんな事を思っていた俺に△じゃないほうが話しかけてきた
「あ、ウッチー、いやウッチーさん。なんかぁ、監督呼んでるらしーすよ?」
爽やかさの欠片も無いトークにイラっとしながらも俺は監督室へ向かった
「失礼します」
恐る恐る監督室に入るとそこには正座したショボンとした川島と今野さんが座っている
そしてザッケローニ監督の座る机の上には例のDVDが乗せられていた
監督wwwwwwwwwww
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 07:54:45.71:RG+XWOQMO「ペラペーラ…」
「えぇ、あの内田はこのDVDを知っているかと監督は聞いています」
通訳越しに説教か…
「ペラペーラ…」
「このDVDは男性がいやらしい事をしているDVDなのかと監督はたずねています」
「いや…その…」
まともに返してもちゃんと通訳してくれるんだろうか?
しかしなんで見つかったんだ?
そんな疑問が頭をよぎる
ふと正座してる二人を見ると川島は唇をぎゅっと噛みしめて黙っている
…お前がなんとかしろよ
起きてスレみて超展開になっててクロワロタ
181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:27:58.26:z4mK7VNt0RG+XWOQMO寝たのか…
保守すべき?
185:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 13:47:40.81:YWBsKYHg0保守すべき?
つづけてくれ
神展開すぎる
239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/06(日) 21:03:14.31:bLhA2qcIO神展開すぎる
もしや1の中では >>149で完結してるのか??!
288:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:21:45.70:NvfM26DZO「それ、みんなで観て遊んでたんです」
通訳からザッケローニに、ザッケローニから通訳に言葉が移り行くのを待つ
なぜか気まずくて川島を見ることができない
「どういうことか説明しろ、と」
通訳が言い終えないうちに内田はまくしたてた
「ジャケットを見てください、それは長友佑都さんが学生時代にふざけて撮ったものなんです」
視界の端で川島がこちらを見ていることに気付いた
だがそちらを見る余裕などない
「メンバーの1人が持ってきた映画DVDの中に紛れ込んでたんです」
我ながら苦しすぎる言い訳だ、と内田は心の中で苦笑した
一体誰が、他のDVDに紛れ込む程の手元に長友のそれを置いておくというのだ
「ちなみに、それはいかがわしいものではありません。学生のふざけたノリで撮影されているものです」
通訳とザッケローニのやりとりを待つ時間がもどかしい
駒野が背伸びをしたのでそちらに目をやると、川島とばっちり視線がかち合った
その目には色々な感情が浮かんでいる
「まぎらわしい真似はするな、びっくりした、だそうです」
「すみませんでした」
内田に続いて川島、駒野も謝罪する
というかなんでDVDごときで呼び出しなんだ、高校生か、と内田はため息をついた
ごめん俺ID:RG+XWOQMOじゃないです
292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:34:37.08:TI16KA1C0>>291
全然かまわん つづけてくれ
293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 03:40:09.04:NvfM26DZO全然かまわん つづけてくれ
ザッケローニが退室してもまだ川島と駒野は沈んだ顔をして座っている
まるで修学旅行にゲーム機を持ち込んだのを先生に見つかった高校生のようだ
そんな2人を引き連れて部屋へと戻る
「さっきは助かったよ」
駒野が肩を叩いて礼を言う
「いや…じゃあおやすみなさい」
駒野と部屋の前で別れると、川島が口を開いた
「内田、悪かったな」
「いや、別にいいよ。気にしないで」
あのDVDを暴露された日から、川島はなんだかおかしかった
今までの威厳や気迫が感じられなくなったというか、とにかくいつもの川島に戻ってほしい
そう思った内田は、川島にある提案をした
「永嗣さん、部屋に行ってもいいですか?」
「えっいいけど…」
少しうろたえた様子の川島に、内田はイラつきを覚えた
こんな弱くてもじもじした川島など見たことがない
試合前に緊張をほぐしてくれたり、練習中に色々構ってくれたり、一緒にゲームを楽しんだりした川島はどこに行ったのだ
「じゃ、行きましょう」
川島の部屋の場所は目を閉じてても辿り着ける
こちらにきてから、夜寝るとき以外はずっと入り浸っていたのだ
「あ、ああ」
内田は構わずつかつかと歩いて行った
その後ろを川島がついてくる
「永嗣さん、鍵」
川島は黙ってポケットからカードキーを出すと、内田とドアの間に滑り込み鍵を開けた
その大きい背中に、内田は目をそらす
川島はドアを開けて内田を先に中に入れると、自身もゆっくりと後に続いた
「内田、さっきは本当に悪かったな」
「だからいいよ別に」
内田はベッドにごろんと身体を預けながら面倒臭そうに言った
「駒野には悪いことをしたな…」
「大丈夫だよ、気にしてないって。それより永嗣さんもうご飯食べた?」
「い、いやまだ食べてないが」
「お腹空いた!」
いつもの川島に戻ってもらおうと、内田は明るくいつもどおりに振る舞う
実際お腹が空いているのは事実であるし、元の川島が戻ってきてかつお腹も満たせればDVDの件などなんということはない
「俺お腹空いたよ、何か食べようよ」
「そうだな、何か食べに行くか」
川島の顔に、徐々に笑顔が戻る
「行く行く!何がいいかなー何がいい?」
「お前は何がいいんだ?今日は俺の奢りだ」
「ほんと!?やったーじゃあ、うーん…」
当たり前だ、と思いながらも川島の笑顔にほっとして食べたいものを真剣に考える
その時、ドアをノックする音が聞こえた
「おーい」
ドアを開けると、遠藤と長谷部が立っていた
「お、内田も一緒にいたのか」
この二人はおそらく事情を察して様子を見に来てくれたのだろう
内田はそう思うと、自然と笑顔になった
「ちょうどよかった、今から食べに行くんだけどお前らも行かない?」
「あ、行きたいです!今永嗣さんとちょうどその話してたところでした。何食べに行きます?」
遠藤と長谷部は実に勘が良い
そのうえ面倒見も良く、温厚で信頼できるタイプだ
「あれ、うっちー?」
どこに行くか決まらないままとりあえず廊下に出て歩き始めると、内田の部屋の前に吉田が立っていた
「あれ、ごめん俺部屋にいなかった。今からみんなでご飯食べに行くんだけどお前も行く?」
「おー行く!」
川島と二人で食べる予定が、いつの間にか大所帯になってしまった
夜はまだ長いしいいや、その後も増えるメンバーを見て内田はそう思った
「永嗣さん、今日の昼頃ここらへんに猫たくさんいたんだよ」
「へえ、なんでだろうな」
「多分お昼寝じゃないかな」
こんなに他愛ない会話をしたのは何日ぶりだろう
そう思うと、内田の顔は自然に綻んだ
いつの間にかパラメヒコマンに入れ替わってるwww
310:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:35:39.63:jxM4Zm7n0なんで今野が途中から駒野になってるんだ
311:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 04:36:34.36:NvfM26DZO夕食の席でも、内田は川島の隣に座って話し続けた
「このチャーハンおいしいね」
「ああ」
「俺ラーメンも食べたいな」
「そうか」
しかし、川島の反応が薄い
会話が続かないことで少し疲れたので、吉田に話を振ってみた
「そういえばお前の作るチャーハン美味いよなー!」
「ふふん、当たり前だろ」
「吉田料理出来るのか、意外だな」
川島が喋った
「出来ますよ~!」
「いつも吉田の料理食べてるのか?」
「…。うん、まあ結構食べてるかなー」
ここに来て初めてこんなに長く会話した気がする
吉田はブログに載せるからと言って料理の写真を撮り始めた
「永嗣さん、ベルギーってチョコ美味しそうだよね」
「ああ」
「美味しい?」
「うん」
また会話が続かなくなってしまった
「…。マヤマヤ!」
「なんだその呼び方!」
「今度お前んちでゲームしたい」
「しょっちゅう来てただろが。気付くとベッド占領してるし」
「なんか寝心地いいんだよなー」
「結構泊まったりするのか?」
「…。うんまあね!」
「仲が良いんだな」
内田は確信した
内田が吉田と喋り出すと、その会話に無理に割り込んでくる川島
嫉妬だ
これには内田も気分が良かった
不器用ながらに独占欲の強いいつもの川島に戻りつつあるからだ
「仲良いと言えば仲良いよなーお前俺のこと大好きだもんなー」
「ああもうお前と結婚するしな、柏木には渡さん!」
「うあー永嗣さん助けて!」
川島の肩に頭を乗せ、少しだけ身体をくっつけてみる
これで背中に手を回してニコニコ笑いながら冗談を言ってくれれば、いつもの川島だ
「わかった、ブーケは俺がキャッチするよ」
よかった
内田は、自分の背中をぽんぽんと叩きながら笑う川島に安堵して、食べかけのチャーハンに手を伸ばした
「楽しかったね」
部屋に戻ると、内田は早速ベッドに飛び込む
川島はバインバインと弾む内田の横にどっかり腰を下ろした
「ああ、そうだな。チャーハンな」
「そう、チャーハン!あとなんか肉の何かの何かも美味しかった」
「肉の何かの何かってなんだ」
二人で声を上げて笑う
「ねえ永嗣さん」
しん、となった部屋に内田の声が響き渡る
「なんだ?」
ベッドの縁に座っている川島の後ろから、肩に顎を乗せて囁いた
「永嗣さんの趣味もDVDも、何も気にしてないからね」
川島の身体が急に強張るのがわかる
「あ、ああ、その件なんだが」
「永嗣さんが長友さんを好きなのも、俺はいいと思うよ」
「ん?」
「あっちはどうかわからないけど、俺は永嗣さんを応援する」
「え、内田?」
川島が後ろを振り向こうとするが、真横に内田の顔があるので迂闊に動けない
「でも、でもね永嗣さん」
内田が川島のシャツの裾をぎゅっと握る
「内田…?」
「俺の前では、俺の永嗣さんで、いてよ」
耳の隣で囁く内田の声は、まるで何かに縋るようだった
「内田ちょっと待て」
「え?」
「俺が長友を好き?」
目をしばたかせる川島と内田の視線が、至近距離で繋がる
「え?」
「俺は長友が好きなのか」
「えっそうじゃないの?」
「何を言っているんだお前は」
「えっ?えっ?だってDVD…」
「いやいやいや」
読んでると口元がニヤついてしまうw
351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 14:20:17.06:NvfM26DZO川島が心底驚いた様子でこちらを見ている
なんだか話が噛み合っていない
「え?だって永嗣さん、長友さんのことが好きだからDVD持ち歩いてたんじゃないの?」
「いやちょっと待て、それじゃ俺が変態みたいだろ」
どういうことだ
川島は長友のことが好きなのだとばかり思っていた内田は、川島のリアクションに混乱した
「じ、じゃあなんでそんなDVDを…」
「あいつの同級生からもらったんだ。だからみんなで観て冷やかそうと思って」
「でも長友さんの筋肉がどうとか好きだとか言って…」
内田は、川島に初めてこのDVDを見せられたときのことを思い出して言った
「ああ、あれな…」
言いにくそうに頭を掻く川島
「冗談なんだ」
「冗談?」
「ああ、冗談なんだよ」
「なんで…?」
話の先が見えない
川島は苦笑いしながら話し出した
「お前とぶつかったときあるだろ?あの時それを落としたんだよ」
「うん知ってる」
「落としたのに気付いて探してたら、拾ったのがお前だと知った」
「で?」
「それで、その…お前なんかおかしかっただろ?だからつい、なんというかまあ、悪戯を思いついてだな」
「…で、ゲイの真似をしたと」
「すまん…」
川島が素直に謝る
クソwwwww
362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 15:52:50.13:sbV162yxO内田「俺の永嗣がこんなに小悪魔なわけがない」
368:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 17:20:32.53:NvfM26DZO「じゃあ別に長友さんのこと好きとかそういうわけじゃないってこと?」
「チームメイトとしては好きだが、お前の思っているような感情はないよ」
「遠藤さんとか今野さんとか長友さんとかは…」
「みんなも面白がってたな」
「決勝戦が近いのに大掛かりで悪趣味な悪戯だね…」
「本当にすまん、うろたえたりするお前を見てたらつい…」
川島が長友を好きだという内田の思い込みは勘違いだったとわかり、ほっと胸を撫で下ろした
「もう、みんなしてひどいな!」
ちょっと腹が立ったが、胸につかえていたものがなくなって顔には笑顔が広がっていく
「すまん、ちょっとやりすぎだったな」
「いいよ、びっくりしたけど」
本当によかった、川島のお気に入りが自分から長友に移らなくてよかった
いや、川島が自分のものじゃなくなってしまう心配がなくなってよかった
これからも、川島の笑顔も優しさも独占欲も全て自分のものだ
無意識のうちにそんなことを考えた内田は、自分の中のおかしな気持ちに気付いて自嘲した
「変態は俺か」
ぽつりと零れた呟きに、川島が反応する
「何言って…えっもしかしてお前長友のこと好きだったのか?」
クソワロタ
389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 18:32:06.37:NvfM26DZO「は?」
「変態は俺か、って」
何を言ってるんだこの人は、そう思ってため息をつきベッドにごろんと転がった
「とっさに悪趣味な悪戯が思い付く永嗣さんには言われたくないな」
「そうだな」
川島も笑いながら後ろに身を倒した
「永嗣さん重い」
内田の腹に川島の頭が乗る
「内田」
川島は身体を起こすと、ベッドの縁に腰掛けたまま内田の方を向いた
内田の頭の両脇に手をつき、静かに見下ろす
「なに、永嗣さん」
内田もその視線を真っ直ぐに見つめ返す
「変な勘違いをさせてお前を困らせてしまって本当に悪かった」
「もういいって。そのかわり明日頑張ってよね、キーパーさん」
真剣な表情の川島に、軽く微笑みで返す
「お前もな」
笑顔でそう言うと、内田の上から退けた
「…緊張して吐きそう」
「おい」
「大丈夫大丈夫俺は大丈夫、できる、頑張る」
「緊張しすぎだ。力抜いてリラックスしろ」
「……」
川島は、枕をぎゅっと抱いたまま動かなくなってしまった内田の頭をぽんぽんと叩く
「お前ならできる。これまでもそうだっただろ」
「ん…」
「それに安心しろ、最後まで守り抜く」
「わかってる」
男らしく頼もしい川島を見ていると、緊張もすーっと引いていく
「…よし!じゃあ俺部屋に戻るね永嗣さん」
「ああ、明日に備えてゆっくり休め」
「ありがとう」
枕を元の位置に戻してベッドから立ち上がる
「じゃあ明日な」
「うん」
川島がドアまで見送りにくる
だがなぜか内田は一向にドアを開けようとしない
「どうした内田?」
不思議に思った川島が声をかけると、内田はくるりと向き直った
部屋の設計上身体と身体の間隔が狭い
「永嗣さん」
細くしなやかな内田の両手が、川島の右手を包んだ
川島の大きな手は、温かくて優しい
「な、なんだ?」
「永嗣さん」
内田は、掴んだ川島の右手を自分の胸の位置まで持ってくると、真っ直ぐに相手の目を見る
川島の方が背が高いので、だいぶ見上げる形になった
「俺、明日頑張るから」
そして静かに微笑むと、おやすみなさい、と残して自分の部屋へと戻って行った
翌日――――
「おはよう永嗣さん!」
「あ、おは、おはよう」
川島は昨夜の内田を思い出し、なんだか恥ずかしくなって目を合わせられなかった
「どうしたの?」
「な、なんでもない!」
覗きこんで目を見てくる内田を振り切るように前を見据えると、集合場所へと歩きだした
「あーヤバい、昨日はぐっすり眠れたのにまた緊張してきた」
「しっかりしろ、今日で決まるからな」
ちなみに内田は川島のこと「えいちゃん」呼びだから
その流れもいれてくれたらうれしい
支援
416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 22:42:43.53:NvfM26DZOその流れもいれてくれたらうれしい
支援
ごめん今更で悪いんだけど、呼び方間違ってたの直した方がいい?このままがいい?
418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/07(月) 22:45:32.33:+x7VL36rO>>416
こういうときは途中で呼び方変えるイベントを起こせばおk
445:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:34:30.96:9gha0rF0Oこういうときは途中で呼び方変えるイベントを起こせばおk
「いよいよだ。みんなもわかってると思うが、ここで勝たなければ意味がない」
試合前最後のミーティングで、長谷部や本田がチームの士気を高める
泣いても笑っても、これがアジア杯最後の試合だ
優 勝
このためにここまでやってきた
そう考えるとまた緊張して吐き気が押し寄せてくる
試合前にこんなことではいけないと思い、隣にいた川島に話を振ってみた
何かしていないと嘔吐感に飲み込まれそうだった
「テーピング持ってない?」
「ほら」
「ありがとう。調子どう?」
「わからないが全力でいける」
実に頼もしい男である
温厚で、優しくて、頼もしくて、ときには鬼になる
「永嗣さんといると自信が沸いてくるよ」
内田は、心の底からそう言った
「あー…内田」
「ん?」
川島の先程までの頼もしさが一変し、どこか困惑した表情になっている
「どうしたの」
何か変なことを言ってしまったのだろうか
不安になる
「その…最近」
「最近?」
「なんで突然、永嗣さん、になったんだ?」
ずいぶんと言葉を選んでいたようだが、結局ストレートに言うことにしたらしい
「ああ」
これにはちゃんとした理由があった
あ、川島も内田のことあつとって呼んでるよー
ソースは川島ブログ
http://s.ameblo.jp/eiji-kawashima/entry-10270460423.html
http://s.ameblo.jp/eiji-kawashima/entry-10267958962.html
452:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:48:24.64:9gha0rF0Oソースは川島ブログ
http://s.ameblo.jp/eiji-kawashima/entry-10270460423.html
http://s.ameblo.jp/eiji-kawashima/entry-10267958962.html
理由はある
あるのだが、誰かに言えるようなものではない
ましてや本人になど
「あー…あっほら、年上だし“さん”をつけないとさ、うん」
「…」
内田のバレバレの嘘に、川島が納得している様子はない
「嫌?」
「嫌、ではないが…そのなんというか…」
内田が川島への呼称を変更したのには理由があった
長友を好きだと知ったとき、正確にはそう思い込んだとき、内田の心に何か大きなものが渦巻いていた
それが嫉妬よりも強いものだと気付いたのは昨夜であった
「嫌じゃないけど…、なに?」
長友が好きな川島へのイラつきから、呼称を他人行儀に変えてやろうというなんとも幼い嫌がらせを思い付いたのだ
しかし川島さん、だといくらなんでも他人行儀すぎると思い、“永嗣さん”にしてみたのである
そして態度もそっけなくするように頑張った
「…本当のことを言ってくれ。もしかして、まだ怒ってるのか?」
全ては悪戯で長友の件も内田の勘違いだったとわかったとき、元に戻そうとした
しかし、本人を前にしながら急に呼称を変えることに気まずさと恥ずかしさを感じ、今までずるずると引っ張ってしまったのである
「…そっちだって、なんで急に苗字呼び?」
呼び方が変わったのは内田の方だけではなかった
気が付くとなぜか川島まで、内田に対する呼び方を変えていた
「それは…お前が突然変な呼び方するから」
「そっか」
「おそらく俺がゲイだから遠ざけようとしているんだろうな、と思っていた」
「…」
「悪戯仕掛けてるのは俺の方なのになんだか悔しくなって、それで…」
「…違うよ」
「え?」
他の選手達は各々談笑したりスパイスの調整をしたりと散らばっている
>>456
スパイスワロタ
459:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:19:28.31:9gha0rF0Oスパイスワロタ
「全然違うよ」
「違う、のか」
「遠ざけようとなんかしてないよ」
川島がそんなことを思っていたなんて、内田は気付きもしなかった
「たとえそっち系でも俺の前では俺だけの、えい…ちゃんでいてって言ったじゃん」
川島は昨夜のことを思い出して耳が赤くなるのを感じた
「そ、そうだな」
「俺がそんな理由でえいちゃんから離れるわけないでしょ」
「そう、か、」
「俺はただ、えいちゃんが奪われると思って、だからそっけなくして、俺の大切さを、その…」
wktk
461:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:29:24.95:9gha0rF0O「あ…」
「う…」
最後まで言い終わらないうちに二人で赤くなる
「えいちゃん」
「な、なんだ」
ほんのり赤く染まった川島の顔を覗きこみながら、内田は笑った
「早く篤人って呼んでよ」
「なんだよ、篤人」
川島も満面の笑みで返す
「じゃ、えいちゃん、試合頑張ろうね」
「篤人も1点くらい決めてこい」
そろそろ時間だ、という誰かの声を合図に一斉に立ち上がる
ピッチへと向かう廊下を歩きながら、内田は一人微笑んだ
「篤人」
試合に緊張した内田の胸を、川島が後ろから抱きすくめてぽんぽんと叩く
「篤人しっかりしろ、大丈夫だ」
「…うん」
内田には川島の目を見る余裕もないらしく、川島とは逆の方を向いたままその温かさを感じていた
「篤人、安心しろ。俺が守る」
「えいちゃん…」
試合は、1-0で日本の勝ち
見事優勝を果たした
その夜―――
「えいちゃん」
「なんだ」
「終わっちゃったね」
「ああ、優勝だぞ優勝」
「うん!」
内田はあまりチームに貢献できていなかったが、これからの成長がとても楽しみな選手だ
「帰るまで一緒に寝てもいい?」
「あ、ああ」
「やった」
内田は枕をぎゅっと抱きしめるとベッドに転がった
「ふふふー」
川島はごろんごろんと無邪気に転がり回る内田の横に腰を下ろす
「ベルギーとドイツって近いようで遠いよねー」
「そうだな」
手は自然とふわふわとした内田の髪を撫でている
「ふはっくすぐったい」
そう言いながらも自分から頭をこすりつけてくる内田を見て、今この瞬間がいつまでも続けばいいのに、と思った
―――帰国の日がやってきた
川島はベルギーへ、内田はドイツへと旅立つ
次の代表戦は3月だ
実質3月まではあまり会えない
「えいちゃん、頑張ってね」
「篤人もな」
内田に握られている手が異常に熱く感じられた
「じゃ、俺もうそろそろ行くよ」
「ああ」
二人が、自分達の日常へと戻っていく
「えいちゃん!」
50m程距離ができたところで内田が騒ぐ
川島はすぐに向き直り、次の言葉を待つ
「次までにはゲームもっと練習しておいてね!」
言うに事欠いてこれか、と川島は微笑んだ口元からため息を零し返事を返す
「はいはい。じゃあ篤人、風邪ひくなよ」
「風邪はドイツにはないんだよ」
「何言ってんだ」
「へへへっじゃ、またねー!」
きらきらとした笑顔を残して内田は空港へと姿を消した
川島も、もう出発しなくてはいけない
「またね、か」
手を繋いで頭を寄せ合い眠った夜を思い出しながら、川島は幸せに満ちた顔で空を見上げた
人生はまだまだ、これからである
乙!
いい話だったなあ
472:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:20:01.87:jxIRGpIrOいい話だったなあ
まだあったこのスレwww
475:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:28:20.45:R6aQSMRx0抜きどころを期待していたのに・・・乙!
477:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:33:49.89:3N1MUBWw0乙
ほのぼのいい話に見えて、なんかすっげー萌えたw
ほのぼのいい話に見えて、なんかすっげー萌えたw
コメント 12
コメント一覧 (12)
他のラノベや漫画と混ざるともう見れたもんじゃない。
前半とはガチさが違う
ネタ的には前半の方が面白かったな
まだ続きそうな感じだったのに