- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 13:48:58.52:jR4Jn9of0
唯「えへへ……何日ぶりかな……」
こんにちは平沢唯です!
修学旅行から帰ってきた平沢唯です!
本日は修学旅行の振り替え休日です。お留守番です。
唐突ですが今日は憂の居ぬ間に憂のお布団をもふもふしたいと思います!
さてさっそく、まずは第一の難関、ベッドインです。
憂のベッドの上に上がるときは十分に身を清め穢れのない状態で臨まないといけません。
わたしの体臭でせっかくの憂の匂いを損なってしまっては台無しです。
唯「ふんすっ……ふんすっ……」シュイッ シュイッ
また、布団の下に閉じ込められた芳醇な憂分を含んだ空気が逃げてしまっては大変です。
いくら同じ憂の部屋の空気とはいえ深層憂気体は純度100%で味わいたいわたしは、空気をまとわずに移動するべく準備運動に余念がありません。
唯「よし……、アップは……これくらいでいいかな……」
さぁ、憂のベッドの上に上がることに関しては世界的権威とも言われているほどのわたしの全身全霊を、いまこの瞬間に捧げましょう。
平沢唯、十七歳、灼熱の刻です。
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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 13:52:10.61:jR4Jn9of0
吸って、吐く。
深くゆっくりと一呼吸すると、急にぴん、と部屋を満たす空気が張り詰め冷たくなったように感じました。
部屋に鎮座するベッドそしてその上の憂が毎日匂いを染み込ませている寝具たち。
その圧倒的存在感に、ごくりと喉が鳴ります。
わたしとしたことが、緊張しているのでしょうか。
間合いは完全に掴んでいます。あと一歩踏み出せば、わたしの射程距離内に入ります。
しかし、一向にその一足が踏み出せないのはなぜでしょうか。
まさか、無意識の内にこのわたしが「恐怖」しているというのでしょうか、そんな馬鹿な。
ほんの数日間この悪魔城と形容して過言ではない憂のベッドに挑まなかっただけで、ここまでのプレッシャーを感じるとは。
士別れて三日なれば、まさに刮目して待つべしという言葉がありますが、さすが、憂のベッドです。
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 13:58:11.16:jR4Jn9of0
ですが、いつまでもうろたえている時間はありません。
タイムリミットは憂が帰ってくるまで、堪能する時間はあと六時間しかありません。
憂の布団をもふもふするには足りないくらいです。覚悟を決めなければ。
唯「……お願いしますっ……!」
意を決して、深層憂気体で肺胞を満たすべく、まずは肺から空気を1cc残らず吐き出しました。
そして見る人全てを魅了するであろう流麗な動きで憂の布団に滑り込みます。
それからはもう一心不乱にクンカクンカするだけです。
唯「クンカクンカクンカクンカ……!」クンカクンカ
唯「クンッ……?!」
唯「くん、すんすん……」クンカクンカ…
……なにかが、おかしい……。
かすかな、いや、わたしが認められない程度には大きな、違和。
憂以外の、匂いがする……。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:04:11.77:jR4Jn9of0
匂いを更に嗅いでいくたびにわたしの中に芽生えた懐疑心は膨張していき、やがて行為は堪能から探索に変わりました。
唯「そんな、憂に限って……、わたしがいない間に……」
ベッドの上を目を凝らして見回します、髪の毛でも、糸くずでも何か証拠があるかもしれない。
そしてなければ憂を少しでも疑った愚かな自分を戒め、今度からは慎ましく憂のベッドをもふもふくんくんすることにしましょう。
しかしわたしは見つけてしまいました。
枕元に残された汚らわしいちぢれ毛を。
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:10:12.32:jR4Jn9of0
汚らわしい、とは失言でした。
決め付けるのは良くありません。
秘密裏に行われた前回の毛髪チェックでは生えてなかった憂にもついに、下の毛が生えた、という可能性も捨て切れません。
今夜、確認の必要がありそうです。
しかし、憂にも下の毛が……そう思うと、妹の健全な成長に自然と頬が綻んでしまいます。
唯「ふひ……ふひひ……」
姉としても一安心です。ですが憂はまだまだよそには任せられない半人前です。
むしろ誰にも任せたくありません。
そう、憂がわたし以外の人間をベッドの上に上げただなんてことはあってはならないのです。
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:16:12.89:jR4Jn9of0
しかたがないから憂の衣類でいっぱいのクローゼットの中でくんかくんかしていたら、あっという間に憂が帰ってくる時間になってしまいました。
家の玄関の扉が開閉する振動を感じた瞬間、クローゼットから己が身を解き放ちます。
一刻も早くちぢれ毛の謎を解くべく未だ玄関にいるであろう憂の元へ、階段を駆け下りました。
憂「ただいまー、お姉ちゃん」
唯「おかえりうい! うい!」
憂「どうしたの? なにかあった?」
少し息を切らして憂の元へ飛んできたわたしを、怪訝に思っているようです。
小首をかしげてもうかわいらしい。
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:22:13.46:jR4Jn9of0
しかしこれから姉妹の血を争う疑惑の大審判が始まります。
外堀から埋めるように、なーんてまどろっこしい手段はわたし向きではありません。
攻めの姿勢を貫いて最後には必ずお姉ちゃん大好きと言わせて見せましょう。
唯「うい! ちょっとぱんつ脱いで!!」
憂「えっ!?///」
生えていればあのちぢれ毛は憂のもの、生えていなければ……。
憂「めっ!」びしっ!
唯「ごめんなさぁああい!!!」ビエエン
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:23:49.88:tPRHpcgB0
憂「家の外で変なこといっちゃダメだよ? お姉ちゃん」
唯「ごめんなしゃい……ぐすっ」
――憂に怒られてしまいました。
憂に怒られると自分の生きている意味さえ失うようでイヤなので早々にごめんなさいしました。
ぐずぐず泣いている暇はありません、この件は明日からのもふもふライフがかかっているのです。
しかしどうしましょう。憂のおまたを確認する方法を新たに模索しなければなりません。
憂の作ってくれたごはんを食べながら脳内作戦会議です。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:34:14.49:jR4Jn9of0
――――――――
~唯の脳内会議~
――――――――――
唯A「はい! やっぱりお風呂に一緒に入るのがいいと思います!」
唯B「いやいや、憂がトイレに入ってるときに間違えたふりして入っちゃうのがいいよ!」
唯C「ていうか今日のハンバーグ美味しくない?」
唯A「何言ってるの? 毎日おいしいじゃん!」
唯B「うんうん、毎日おいしいよねー」
唯C「憂は自慢の妹だよねー」
唯ABC「「「ねー♪」」」
――――――――――
――――――――
憂「お姉ちゃん、おいしい?」
唯「おいしい!」
今夜も憂との楽しい楽しい食卓が幸せに滞りなく過ぎていきました!
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:40:15.72:jR4Jn9of0
――――――
―――
……いやはやわたしとしたことがあまりのハンバーグの美味しさに作戦会議を途中放棄してしまいました。
しかし方向性はすでに決まっていました、トイレ、おあ、お風呂です。
日常的なぱんつをおろす瞬間を狙うことに決まりました。
憂「お姉ちゃん、ちょっとトイレいってくるね」
来ました、さっそくチャンスです。
トイレへ向かう憂を後ろからつけます。
しかしそこはさすがわたしの妹、後をつけるわたしの気配に気づいている様子。
こちらをちらちらみてきます。鋭い。
憂「お姉ちゃん、なんで家の中でほふく前進してるの?」
唯「ちょ、ちょっとごろごろしてるだけだよっ……!」
憂「……そっか」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:46:16.25:jR4Jn9of0
……危ない危ない。
しかし予定通り憂がトイレの扉を開け、閉めました。
カチャンッ
鍵までしっかりかけるなんて、しっかりしてる子です。偉い偉い。偉いねぇ。
……ぜーんぜん偉くないぃっ!!
扉の向こうでは衣擦れの音が聞こえます。
一枚隔てた向こうでは憂のおまたが大公開中だというのに、わたしは力なくトイレの前でうなだれることしかできません。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:52:16.87:jR4Jn9of0
いいえ、ここであきらめてしまうのはいささか早計というもの。
絶望するにはまだ早すぎます。
そうです、家のトイレの鍵は外側からも開けられるのです。
爪を鍵の溝に挿して、まわす。
それだけで夢の楽園への扉の鍵は開錠され、憂の下の毛を確認することが出来ます。
ならばやらない手はないでしょう。
「あ、間違えて開けちゃったー。憂、ごめんねー間違えちゃったー作戦」を強行して見せましょう。
サクッ くいっ
あ、間違えて鍵開けちゃったーついでに扉もあけちゃったー。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:58:17.54:jR4Jn9of0
がちゃりと扉を開けるとそこには当然、便座に座る憂がいました。
びっくりした様子で目を見開いています。
しかし様子がおかしいです。おなかを手で押さえて、その手の影でおまたが良く見えません。
ていうか顔を真っ赤にして、涙目で、あれ、怒ってる?
憂「お姉ちゃんのばか!! 早く出てって!!」
あ。
……いや、ほんとに、おしっこのほうだとばかり。
憂「早く出てってよぉ……ぐすっ……」
唯「ご、ごめんういっ!」
事態を把握して慌ててトイレから出て扉を閉めました。中からは憂のすすり泣く声が聞こえてきます。
しまった……、泣かしちゃった……ど、どうしよう……。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:04:18.09:jR4Jn9of0
妹を泣かす。
それはこの世の姉にとって最も美しくない、恥ずべき行為です。
その不名誉を返上するには早急にごめんなさいをして慰めて、前よりいっそうの姉妹愛を築き上げなければなりません。
とりあえずトイレの前で土下座して待っておきましょう。
水の流れる音と、トイレットペーパーを引き取る音が聞こえます。もう少しででてくるかな、お尻を拭く音が聞こえてきます。
少しの間があって、それからドアノブがゆっくりと回りました。わたしは額を床にこすり付けて平身低頭謝罪の権化と化しました。
目をぎゅっとつむって、これから浴びせられるだろう憂のいかなる視線にも発言にも行為にも耐え受け止める覚悟をしました。
ドアノブが回るよりゆっくりと、小さく扉が開いて憂のきれいな左足が出てきます。
思わず匂いを嗅いでしまいたくなる白いあんよ、そんなにきれいな足ですから、次の一足でわたしの顔面が蹴り上げられようと、自戒の念をもって潔く受け入れましょう。
いえ、そんなことはされないとわかっていますけれど。
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:10:18.89:jR4Jn9of0
唯「ごめんなさい!!」
誠心誠意の土下座です。
わたしは、憂を想うあまり暴走して、あろうことかその憂のプライバシーを侵害してしまったのです。
数秒前のわたしの、なんと身勝手なことか。お尻ぺんぺんしてやりたいくらいです。
憂「………………」
今更過ぎるその言い訳がましいわたしの思考は、憂がトイレから出てきて、五秒で途切れました。
とん、とん、とん、とんとんとんとん!
なんと土下座するわたしをあっけなく無視をして、無言で、しかも加速度的なリズムで階段をのぼっていったのです!
超、怒ってる……。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:16:19.51:jR4Jn9of0
唯「ど、どど、どうしよぉおぉ……」
人生最大のピンチです。
か弱いわたしは憂無しでは生きていけません。
本当にどうしたらいいのでしょう、憂も年頃です。
実の姉とはいえ、その、大……のほうをしているところを見られたなんて、恥ずかしくてたまらないでしょう。
わたしは憂の生産したものならなんだって愛せる自信があるのに。
かくなる上は、脳内会議、開始。
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:22:20.59:jR4Jn9of0
――――――――
~唯の脳内会議~
――――――――――
唯A「ういに嫌われた……ぜったい嫌われた……」
唯B「誰なの? 鍵開けてトイレ入ろうなんていったの……」
唯C「間違えて入っちゃったフリしようって始めにいったのはBちゃんでしょ……」
唯A「ういぃ……ぐすっ……ごめんなさぁあぁい……」
唯B「鍵開けてまで入ろうなんていってないよお……!」
唯C「すなおにお風呂を狙えばよかったのにぃ……」
唯ABC「「「びえぇえぇええんっ!!!」」」
――――――――――
――――――――
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:24:42.48:tPRHpcgB0
……ダメです、次すべき行動が全く浮かびません。
もう泣いてしまいたいです。
……こしゃくなことはもう考えないようにしましょう。
土下座ではなにも、伝えられなかった。
ならばわたしに何が出来るでしょう。
地に伏せていた身体を起こし、立ち上がりました。
一刻も早く、憂を抱きしめてあげなくちゃ。
そして耳元で、こう囁いてあげるんだ。「憂の全てを、愛してるよ」って。
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:34:22.50:jR4Jn9of0
憂の部屋の扉を開けると、机に突っ伏して、泣いている憂がいました。
わたしが部屋に入ったことに気づくと、泣き顔を見られたくないのか、いっそう深く腕の中に顔をうずめました。
そのしぐさを見てまたわたしの胸はずきりと痛みましたが、ここで逃げ出すわけには行きません。
唯「うい……聞いてくれる……?」
呼びかけると、強張るようにぴくりと憂の身体が動きました。
それを肯定と受け止めて、わたしは謝りはじめました。
唯「うい、ごめんね、あの、事情があって……」
憂「……なんでトイレのぞいたの? 意味わかんないよ……」
しかしさえぎられて、問いかけられます。
そのとおり自分でも意味がわかりません。
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:40:23.12:jR4Jn9of0
冷静になってみれば妹のおまたみたさにトイレに侵入する姉がいつどこにいましょうか。
なうひあ。わたしでした。
しかしわたしはわたしの意味のわからない行動を説明しなければならないのです。懺悔しなければならないのです。
唯「……あのね、うい、今日ういが学校に行ってる間ね、なんだか寂しくなってういのベッドに入りたくなったんだよ……」
唯「そしたらね、ういの布団の枕元に……その、憂の髪の毛じゃない、……ちぢれ毛があって……」
唯「あのちぢれ毛がういの毛だったらいいんだよ? ういにもそういう毛が、いい加減生えてくれないと困るし……」
あぁ、なぜだかわたしの目には涙が湛えられていきます。なかなかこの先を口走ることが出来ません。
まさかありえないとは思いますが憂の口から、お姉ちゃんがいない隙に、他人をベッドの上にあげてましただなんて、あああ、聞きたくない! 考えたくない!
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:46:24.07:jR4Jn9of0
憂「……えっとね、お姉ちゃん、あらぬ誤解をしているようだけど……」
唯「誤解ってなにさ……下の毛だって生えてないんでしょ……? あれはういの毛じゃないんでしょ……?」
憂「うん……まだ、生えてない、けど……」
唯「うわぁああぁあん……!! やっぱり……ういがうわきしたぁああぁあぁ……!!」
あれが憂の毛じゃない=憂がわたし以外の他人をベッドに上げたということです。
まさかまさか他人をベッドの上に上げただけでなく共に大人の階段をも上ってしまったとでも言うのでしょうか。
そうだとしたら発狂しそうです嫉妬に狂いそうです。
憂「あ、あのね、お姉ちゃん。落ち着いて?」
唯「うぅ……ぐしゅっ……わたしがいないあいだにういはうわきしてたんだぁあぁあ……!!!」
うわあああああああん!! ういのうわきものぉぉおおお……!!
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:53:25.87:jR4Jn9of0
こんなことになるならば憂を修学旅行に連れて行くんだった……。
そんな今更過ぎる後悔をして泣き咽び床をどんどん叩いていると、ふと憂が立ち上がる気配がしました。
そしてまもなく憂の両腕で強く抱きすくめられ、耳元で「落ち着いて」と囁かれました。
唯「ぐすっ……ういぃ……!」
憂「もう……お姉ちゃんが変なこというからさっきまで怒ってたのどうでもよくなっちゃったよ……」
そうだ、わたし、謝りに来たのに……。
唯「ごめんねええ……ひっ……ごめんういぃぃ…………」
とことん自分勝手です、こんなんじゃ愛想をつかされるのも仕方ありません。
しかし憂はそんなわたしを抱きしめて、頭を撫でて落ち着かせてくれるのです。
なんという母性でしょう、お嫁にもらいたい。
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:01:26.58:jR4Jn9of0
そしてゆっくりと憂の口が開きます、「聞いて」と一言、ついに真実を話してくれるようです。
今は姉として最低限、憂の告白を聞いてあげなくてはいけません、あぁ、うぅ。
憂「……お姉ちゃん、あの毛はね、別にその、下の毛とかじゃなくて……純ちゃんの髪の毛なんだよ」
…………………。
ジュンチャンノカミノケ?
唯「……はえっ?」
憂「だから、友達の鈴木純ちゃんの髪の毛、お姉ちゃんたちが修学旅行いってる間に、梓ちゃんと三人でお泊り会したんだよー」
あ、あぁ純ちゃんの髪の毛……。
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:03:09.81:ir5FAmU30
いえしかし女の子だからといって油断はしちゃいけません、性別は関係ないのです。
純ちゃんがおまたをまさぐって憂のまくらもとにちぢれ毛を残していった可能性も否めなくありません。
そして女の子同士という可能性もまた否めないのです。
唯「あの、うい……、ところでだけど、三人でどういう風に寝たの?」
憂「えっと……純ちゃんがベッドで先に寝ちゃって……梓ちゃんとわたしが下に布団敷いて寝たんだったかな」
唯「つまり……一緒のベッドでおねんねしたわけではないと……」
憂「うん、布団も足りてたしねー」
……ひとまず安心です。
もし三人でみだらな行為をしていたら、どうなっていたことか……。
しかし純ちゃん、聖域とも呼べる憂の布団に易々と上がるなんて……!
ぐぬぬ。
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:17:29.15:jR4Jn9of0
憂「純ちゃんってクセっ毛がすごいんだよー、朝起きたらひどいことになってて、直してあげるのにも一苦労だったんだー」
唯「……!」
憂「差し入れでドーナツもって来てくれたんだけどね、純ちゃんったら全部一口ずつ口つけちゃって」
唯「……!!」
憂「しかたないからわたしと梓ちゃんが全部食べたんだけどね、うふふー」
唯「……!!!」
……純ちゃんなんなの。
クセっ毛直してもらうのもドーナツ余して憂やあずにゃんと間接ちゅーするのも、全部わたしがやりたかったのにぃ!!
よろしい、ならば戦争です。
わたしはこれから復讐の鬼になります。
純ちゃんめ……!
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:25:30.02:jR4Jn9of0
翌日。
今日は振り替え休日もあけ、登校日となりました。
愛しのあずにゃんとも久しぶりに会うことができます。
ああわたしはなんと年下に恵まれていることでしょう。
憂にあずにゃん、とってもプリティーな娘たち、わたしの両腕両脚が今すぐにも抱きしめんと動き出してしまいそうです。
ちぢれ毛の件ではわたしも相当わたしも焦りましたが、放課後はあずにゃん分による堪忍袋の緒の補修を行う事にしましょう。
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:30:14.67:4pm48oS40
唯「あっずにゃーん!!」
梓「わぁっ?!」
後ろからがばっと抱き着いて頬をすりすり、おぉおぉ抵抗しちゃってかわいい。
くんくんすんすん。ああ、あずにゃん分。万歳。
唯「あずにゃん、わたしたちがいなくて、寂しかった?」
梓「なっ……! べ、別に、逆に静かでちょうど良かったです!」
唯「またまたあ、寂しくてわたしの家に泊まりに着てたんでしょ? 知ってるよおっ」
梓「それは、憂が寂しがってたから……」
唯「ほうほう……共にわたしがいない寂しさを紛らそうと……かわいいねぇっ」
梓「ち、ちがいますっ!」
ああ全く、なんて可愛い子たちなのでしょうか。
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:39:30.33:jR4Jn9of0
純「あ、こんにちは唯先輩」
唯「……ふんっ」
でました、にっくき純ちゃんです。
わたしが不在のときを狙って、この泥棒猫は、憂とあずにゃんにツバつけていたのです!
梓「……唯先輩?」
純「? 梓、昼休み終わっちゃうよ? 早くお昼ご飯食べようよー」
唯「……わたしもご一緒していいかしら?」
梓「なんですかその口調……」
唯「油断大敵なんだよ……」
すでに闘いは始まっているのです。
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:48:17.44:jR4Jn9of0
教室の中では憂が待っていました。
わたしの登場に驚いていたようですがそこはそれ、憂とわたしは相思相愛ですから、一緒にお昼ご飯くらい、むしろいままで食べてなかったほうがおかしいというものです。
しかしやはり周りの視線が集中して注がれます。けいおん部の平沢唯といえばちょっとした有名人です。ふふん。
純ちゃんにはちょっと大人でかっこいいわたしを見せつけ格の違いというものをわからせてあげる必要がありそうです。
唯「あ、あの、ごめんなさい、ここの椅子借りていいですか……?」
二年「あ、いいっすよー」
唯「あ、ありがとうございましゅ……」
ヒソヒソ
ウイチャンノオネエサンナンカカワイイネー
ショウドウブツッポイヨネー
ヒソヒソ
ううぐ……。
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:59:11.29:jR4Jn9of0
違います、見せ付けるべきはそんなところじゃないのです。
どちらがより憂とあずにゃんとらぶらぶか、その勝負なのです。
純「ほい、梓」スッ
梓「ん、ありがと」チュー
唯「!?」
な……、回し飲み……?
ジュースの回し飲みです! 唾液交換です! こ、公然と、見せ付けるようにやってのけるなんて……。
純「はい、憂も」
憂「ありがと純ちゃん、んー」チュー
は、ハレンチ極まりないです、若者の性の乱れがこんな身近で起こっているなんて……!
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:08:51.29:jR4Jn9of0
純「唯先輩も、飲みます? バナナ豆乳、美味しいですよ」
唯「うっ」
バナナ豆乳。
いいえ、それは憂とあずにゃんの唾液の混じった聖水です。バナナソイミルクなどではありません。
刺激的過ぎる甘美なその液体にわたしも思わず手が出てしまいそうになりますが、敵の施しを受けるわけには……!
……くやしいでもおいしい。
唯「……ありがと純ちゃん」
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:17:34.25:jR4Jn9of0
純「どういたしまして」
にこっと笑顔ではにかんで、ストローをくわえる純ちゃん。
魂胆が見え見えです、わたしを懐柔しようとしてもそうは簡単にはいきません。
純「あー、やっぱ昼休みのバナナ豆乳は最高だなー」
そういって純ちゃんがストローを鳴らした瞬間、彼女の表情にわずかなかげりが見えました。
まさかこの子……この場にいる全員の唾液を狙って……!?
だとしたら、恐ろしい子です……!
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:27:13.94:jR4Jn9of0
いえ、それよりも、そうするとこの子はどんなハレンチ少女なのでしょう。
容量の少ないバナナ豆乳を太っ腹にも全員に回し飲ませる、これはまず間違いなく唾液を回収するため他なりません。
憂やあずにゃんばかりか、まさかわたしまで、狙われてる……?
そう考えるとなんだか妙にどきどきしてきました、動揺させる作戦かもしれません、どうゆうつもりなのかもわかりません。
いつの間にかわたしは、狩る側から狩られる側になっていたようです。
憂「お姉ちゃん、そういえば弁当持ってきてないんじゃない?」
はっ。
唯「う、うん、昼休みは二人に会うために時間空けたかったから、早弁しちゃって……」
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:36:32.49:jR4Jn9of0
梓「まったく……放課後おなか空いても知りませんよ?」
唯「ムギちゃんのお茶があるからだいじょーぶだよー」
憂「お姉ちゃん、卵焼き分けてあげるー」
唯「えっいいの?」
梓「しかたないですね、わたしもプチトマトを」
唯「ありがとーごぜーます……ありがとーごぜーます……!」
おかしいな、憂の卵焼きは甘く作ってくれてるはずなのに、なぜだかしょっぱい味がしました。
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:46:52.96:jR4Jn9of0
情けない姿を晒しているのは間違いありませんがしかしそこは、転んだらただじゃ起きない不屈の精神で、いちゃいちゃらぶらぶすることにしましょう。
唯「ういー、あーんしてー」
憂「はい、あーん♪」
あーんもぐもぐ、おいしーい。
さぁ純ちゃん、見なさいこれがわたしと憂のらぶらぶっぷり。
嫉妬の炎に妬かれ豆乳のパックを握りつぶしている様子がありありと浮かびます。
純「梓ー、わたしにもプチトマトちょうだいよー」
梓「しかたないなぁ、はい純、あーん」
唯「!?」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:55:11.79:jR4Jn9of0
信じられないことにあずにゃんはプチトマトを指で摘んで純ちゃんの口まで運びます。
ダメ、あずにゃん。その子はとんでもないハレンチ娘、指で摘んであーんなんてしたら、指ちゅぱされちゃうよ!
ああわたしが憂の卵焼きを咀嚼している間にも、確実にその距離は縮んでいきます。
かくなる上はわたしがあずにゃんのプチトマトを奪い取るしかありません。
不可抗力で指ちゅぱしてしまってもそれは仕方のないことなのです。
膳は急げというじゃないですか。スピードがつけば制動するための距離も大きくなるのです。
だから第二関節くらいまで指ちゅぱしてしまっても仕方ないことなのです。
ごくり。口内の卵焼きを飲み下して、あずにゃんの指をちゅぱちゅぱするべく、わたしは身を乗り出しました。
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 17:59:15.65:jR4Jn9of0
平沢唯、17歳。
ファーストキスを奪われました。
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:00:46.23:A23JHaT50
純「……///」
唯「……///」
横からあずにゃんの指にちゅぱつこうとしたらやわらかいものにあたって、
ほほうこれはこれはさすがあずにゃんの指、はむはむ柔らかいなぁおいしいなぁ、でもあれ?あずにゃんの指ってギターやってるからぷにぷに硬いはず……
と思ったらこれです。
見事に舌まで這わしてしまいました。
憂「え、えっと……」
梓「あの……」
なんということでしょう、不可抗力とはいえ二人の前で過激な大人のちゅーをしてしまいました。
純「あ、あの……わたし気にしてませんから///」
唯「う、うん……///」
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:36:34.43:z01nr7KV0
顔が腫れ上がってしまいそうなほど熱くほてって、そのせいか余計に外野のヒソヒソ話が聞こえてきます。
ヒソヒソ
ネェミタミタ!? イマジュントヒラサワセンパイガー
ミタミタ! キスシテタヨネー
ジョシコウヲブタイニシタ、センパイコウハイノキンダンノコイ!? ミタイナ! キャー
ヒソヒソ
梓「ちょ、ちょっとみんな……」
憂「違うよみんな、今のは事故で……!」
梓「そうだよね? 純、唯先輩!?」
純唯「う、うん……///」
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:08:17.76:jR4Jn9of0
――――
――
その場は憂とあずにゃんが弁護してくれました。
しかし奪われたファーストキスの価値は、やはり乙女として大きいものなのです。
わたしと純ちゃんはいわば憂とあずにゃんを取り合うライバルともいうべき関係なのに!
梓「唯先輩、いつまでも落ち込んでないでください、練習にも全然身が入ってなかったじゃないですか」
部活帰りの下校路であずにゃんに励まされます。
そうですこんなときはあずにゃん分を吸収するのが一番です。
もたれかかるように抱きついて、どうしようと糖度100%の甘えた声で助けを求めます。
梓「どうしよう……って、あんな事故を気にするのなんて、唯先輩らしくないです」
唯「ううん……だよね……いや、そうかな……」
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:16:25.99:jR4Jn9of0
梓「だいたい唯先輩はいつもわたしにキスしようとしたりするじゃないですか、それなのにそんな落ち込むなんて……」
唯「いつもあずにゃんに拒否られたときは落ち込んでるんだよ?」
梓「……純とキスするのがそんなにいやだったんですか? なんか変な態度とってましたし」
唯「……あずにゃんのためにファーストキスをとっておいたんだよぉ、残念だよあずにゃん……」
梓「何馬鹿なこと言ってるんですか……」
ちなみに家族はノーカウントです。
はぁ、自業自得とは言え、純ちゃんめー……。
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:31:03.68:jR4Jn9of0
翌日登校したら廊下を歩けば茶化され教室に着けば囃され、なにをやらかしてしまったのかとびくびくしていたら、案の定昨日のお昼休みのことでした。
女の子は噂好きといいますがどういう波及の仕方でしょうか、奥様方によるご近所のスキャンダルよりも広まるのが早いのではないでしょうか。
律「おい唯、お前、さ……えーっと、後輩と付き合ってるってマジか?」
噂とはあらぬ尾ひれが当然のようについているものでなぜか純ちゃんとわたしは熱愛疑惑を掛けられているようです。
身近なところから誤解を解いていかなければなりません。
唯「違うよりっちゃん、あれは事故で、偶然二年の教室で唇と唇がぶつかっちゃっただけなんだよー」
律「ほんとうかー? 唯ならだれかれかまわず抱きついてそうだしな、ありえるかもなー」
唯「むー、ほんとなんだよりっちゃん」
律「まぁ信じるよ、唯ならありえる、ありえるなー」
さすがりっちゃん、話がわかる。
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:42:22.45:jR4Jn9of0
律「じゃあとりあえず、誤解だって友達にいっておくわ、よくある噂だ、気にすんな唯」
唯「りっちゃん……! いつになくかっこいいね……!」
なんだか今日のりっちゃんはまぶしくて直視できません。
薄目でありがたやありがたやと拝んでいたら「眩しくないわい」とチョップされました。
持つべきものはやはり頼れる友人と可愛い妹と後輩です。
友達の多いりっちゃんなら素早く事態を収束へ導いてくれるでしょう。
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:45:02.02:EdkkamWWP
しかしこうなると心配なのは純ちゃんのほうです。
わたしにはりっちゃんを始めとした心強い味方がいましたが、純ちゃんはだいじょうぶでしょうか。
変に茶化されて落ち込んでいなければいいのですが……、いや、あの、格上として敵に塩を送る余裕をみせるのも、大事じゃないですか。
もちろん憂やあずにゃんがついていますから、別にそんなに心配ってわけでもないんですけれど。
こうなった以上は一蓮托生、気になるじゃないですか。
とりあえずメールで、憂に連絡を取ります、純ちゃんの様子は、と。
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:00:35.41:jR4Jn9of0
「すごく落ち込んじゃってる、お姉ちゃんと付き合ってるって噂されてるのがショックだったみたいで」
メールを開いた瞬間、わたしのほうこそショックを受けました。
いやしかし、その気持ちもわかります、高校生といえば多感な時期、純ちゃんもああ見えて恋する乙女だったりするのでしょう。
その恋する乙女が、面識のあまりない、友達の姉と付き合ってるだなんてスキャンダラスな噂が流れたらどうでしょう。
想像するに容易く、推し量るに難い葛藤が彼女を襲ったことでしょう。
こういうとき、わたしはどうしたらいいのでしょうか。そばに行って励ますべきなのでしょうか、ほとぼりが冷めるまでそっとしておくべきなのでしょうか。
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 20:09:28.21:jR4Jn9of0
続けてメールを送ります。
「落ち込んでる具体的な理由はわかる? わたしはどうしたらいい?」
「聞いても教えてくれない、お姉ちゃんが悪いわけじゃないから、じっとしてて」
「でも、純ちゃんがかわいそうだよ」
「お姉ちゃんのせいじゃないよ、わたしと梓ちゃんでどうにかするから」
そういわれても、やはり心配です。
純ちゃんみたいな子が落ち込むなんて、あまり想像が出来ないもので、余計に。
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:14:21.97:jR4Jn9of0
あっという間に放課後です。
りっちゃんから、今日は早く帰れと言われました。
また変な噂が立つといけないから、との配慮のようです。冗談でなくりっちゃんのことが眩しくて直視できませんでした。
だから今日は珍しく、一人での帰り道です。
いつもならば隣にあずにゃんか憂、和ちゃんがいるのに、少し寂しくも思います。
いえ、この気持ちは寂しさからだけではないでしょう、やはり純ちゃんのことが気にかかるのです。
気を紛らわそうと、わたしは寄り道をはじめました。
右右左右左。気の向くまま足の向くまま歩いていきます。
段々と家の近所に近づいてきます。
そういえばこの辺には公園があって、よく憂や和ちゃんと一緒に遊んだっけ。
ぎーこぎーことブランコの揺れる音がだんだんと聞こえてきます。
公園の中に入ると、一人でブランコをこぐ純ちゃんの姿が見えました。
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:23:14.29:jR4Jn9of0
純「唯先輩……?」
純ちゃんもわたしに気づいたようで、ブランコをこいでいた脚を止めました。
唯「……純ちゃん、偶然だね」
やはり純ちゃんはまだ少し落ち込んでいる様子で、暗い表情をしていました。
ならばわたしにできることはなんでしょう。
そう、格上として敵に塩を送る余裕を見せることです。
唯「純ちゃん、隣のブランコ空いてるかな?」
純「……はい」
向かって右のブランコにわたしが乗って、今純ちゃんが乗っているブランコには憂が乗っていたっけ。
なんだか懐かしい気分になりながら、ブランコに腰掛けます。
132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:34:33.07:jR4Jn9of0
唯「よっ……と」
ぐいっと足を投げ出して、ゆっくりと漕ぎ出します。
久しぶりに乗るブランコは、体重が増えた分少し怖くて、落ちてしまいそうです。
唯「純ちゃん、わたしと恋人って言う噂、そんなにいやかな?」
あくまでも軽く茶化すように、問いかけてみます。
すると純ちゃんは、少しうつむいて、いやです、と答えて、失礼かもしれませんけど、と付け加えました。
唯「ううん、いいよ、わたしも良くは思ってないし……でも出来れば、理由とか聞かせて欲しいかなあ」
純「…………えっと、実は……他に好きな人がいるんです……」
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:43:16.57:jR4Jn9of0
唯「他に、好きな人?」
純「はい……だから、誤解だってわかってもらってても、何となく、辛くて……」
大方の予想通り、落ち込んでる理由は、恋でした。
なんと甘酸っぱい話でしょう。
興味津々、ぜひ詳しく聞きたい話ですが、ここはふざけていい場面ではありません。
大人として、先輩として、優しく話を聞いてあげるべきです。
唯「良ければだけど、好きな人って、誰なの?」
純「…………」
あぁやはり口ごもってしまいました。
こういう子に限って色恋沙汰にはシャイなのです。困ったものです。
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 21:53:24.36:jR4Jn9of0
唯「もしかしてー……あずにゃんとか?」
純「……違いますよ、梓は友達ですし……」
唯「じゃあじゃあ、ういとか」
純「うっ……」
唯「いやー、まさかなー、もし憂なら姉として黙っちゃいられないからなー」
純「…………憂ですよ……」
唯「えっ」
冗談のつもりでしたのに。
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:10:35.96:jR4Jn9of0
唯「じゅ、純ちゃん、それは ほんと ですか?」
純「……はい……」
唯「お、おぉう……」
どう反応したらいいのでしょう。あなたの妹が好きです。この台詞に対してどう反応するのが正しいのでしょうか。
妙にあっさりなのがリアルです。
憂とわたしは相思相愛ですがそれは姉妹愛および家族愛のそれであり恋愛感情などではありません。
くんくんもふもふしたいくらいそれはそれは可愛がってる妹のことですので前述のとおりどこの馬の骨かもわからない他人にはもちろん任せられません。
しかし、かっこつけて相談に乗った身。「へーんういは誰にも渡さないもんねー」というわけにもいきません。
それに純ちゃんには実績があります。バナナ豆乳を回し憂の唾液をさりげなく得る技術は素晴らしいものでした。
伝聞ですが全てのドーナツに一口ずつつけて、憂との間接キスに成功し、あろうことかその晩ベッドまで占拠したという武勇伝があります。
考えれば考えるほど純ちゃんの行動につじつまがあっていきます。
やはり恐ろしい。いえ、この子にならば憂を任せることが出来るかもしれません。
右隣のブランコに座る純ちゃんを見ると、目が合いました。
そのまなざしは恋する乙女のもの、なぜだか幼き日の憂と被って仕方がありません。
唯「純ちゃん……その気持ちは本物みたいだね……」
純「はい……!」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:23:02.50:jR4Jn9of0
それからわたしと純ちゃんの修行の日々は始まりました。
純「ふっ……ふっ……」シュンッ シュンッ
唯「違う! 右足の入りが遅い! そんなんじゃ憂の布団の中に蓄えられた深層憂気体が逃げちゃうでしょ!」
純「すいません唯先輩!」
初歩中の初歩、憂の布団もふもふの指導を始めてから3ヶ月、ようやく純ちゃんも型を覚えてきました。
しかし実践で使えるレベルになるにはまだまだかかりそうです。
憂の大きな愛を受け止めるにはそれ相応のスキルが必要なのです。
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:24:02.56:nSl+HLNp0
しかし恐るべきはやはり純ちゃんの類稀な才能。
わたしが17年間かけて習得してきた技術をどんどん吸収していきます。
そしてついにはオリジナルの必殺技まで開発するようになりました。
純「見てください唯先輩! ついにクセっ毛のうねり具合で、憂の部屋の湿度を量れるようになったんです!!」
唯「素晴らしいよ純ちゃん……!」
憂の部屋の湿度。それが意味するものは大きいです。体温から寝息の立て方、代謝など、さまざまなことがわかります。
純ちゃんの憂スキーとしての完成が恐ろしくなってきました。
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:34:02.80:OYchojI5P
そして更に4ヶ月が過ぎた頃。季節は冬。
いつもの公園にはそれはそれは立派に成長した純ちゃんがいました。
純「唯先輩……今まで、ありがとうございました。わたし、自分に自信が持てそうです!」
唯「うん、もう教えることは何もないよ……。明日のバレンタイン、憂に告白するんだってね……」
純「はい。唯先輩との修行を経て、自分の憂への愛の確かさを再確認しました……。もう迷いません。明日、全てにけりをつけます!」
純ちゃん、君は本当に強くなったよ。
いつか二人で、憂に怒られたときも。
いつか二人で、寒い雪の日に憂の可愛さについて語り合ったときも。
いつか二人で、不審者として警察に追い回されたときも。
そのまなざしは淀みなく色あせることがなかった。
唯「純ちゃん、免許皆伝だよ。純ちゃんになら憂を任せられる。頑張ってきてね!」
151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:49:50.03:y/t5IV4Z0
わたしたちはきつく抱きしめあい、もう一度師弟の絆を熱く確かめ合いました。
唯「いい結果を祈ってるよ」
純「ありがとうございます。いい報告が出来るように、がんばります」
唯「ふふ、緊張しないでね純ちゃん。今日はしっかり身体を休めて、明日ベストを尽くせるようにね」
純「はいっ!!」
唯「じゃあね純ちゃん。これからチョコレートも作らないといけないんでしょ? こんなとこに長居してちゃ、いけないよ」
不意に浮かんできた涙を見られたくなくて、くるりと振り向いて、一方的に別れを告げました。
もはや純ちゃんは妹のような存在。その成長が嬉しくてたまらないのです。
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:14:05.69:jR4Jn9of0
明日は月曜日。
わたしは自宅学習期間に入っているので登校の義務はありません。
憂のくれるチョコを食べながら、優雅な午前を過ごし、憂が帰ってきたら、きっと純ちゃんとのチョコより甘いお話を聞かせてもらえるでしょう。
唯「ういー、ちなみに今年はチョコつくるのー?」
憂「うん、お姉ちゃんとお父さんの分だけね」
唯「――ッ!!?」
純ちゃんアウトオブ眼中。
……。いえ、本命チョコのことは、たとえ姉といえど恥ずかしくて言えないものなのでしょう。
どうせこんなこと言っておいて純ちゃんの分も作っているはず……。
ええ、そのはずです。
161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:29:39.46:jR4Jn9of0
事の顛末を話すと、純ちゃんはチョコを渡し思いを伝えたところで千々の雪と共に儚く散ったそうです。
ただ憂も優しい子なので、純ちゃんを深く傷つけるような振り方はしなかったそうな。
純ちゃんはわたし仕込の不屈の精神で、嫌われない限りは、憂スキーでい続ける所存であるとのことです。
純「唯先輩、今日の憂の部屋……やや湿度が高く……粘っこい感じがします……」
唯「純ちゃん……それは確かなの?」
純「はい、この前髪のうねり具合……間違いありません!」
唯「よし、純ちゃん、準備はいい?」
純「もちろんです!」
唯純「ふんすっ」シュイッ
唯「クンカクンカクンカクンカ……、お月様を迎えている憂の布団は格別だね!」
純「クンカクンカクンカクンカ……、全くですね、唯先輩!」
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:43:32.35:34gjL9E80
純ちゃんと共に憂の布団をもふもふします。
深層憂気体は純度100%で味わいたいわたしでしたが、今は違います。
純ちゃんと共に味わう深層憂気体、そこに価値があるのです。
あれから8ヶ月が過ぎようとしています。憂のおまたにもおけけが生えました。
時の流れは日々に確実に変化を与えていくものです。
共に一つのことに熱中できる仲間。
ある日のちぢれ毛との小さな出会いが、その大切さを私に教えてくれたのでした。
おわり!
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:45:21.48:+I4TBAvs0
吸って、吐く。
深くゆっくりと一呼吸すると、急にぴん、と部屋を満たす空気が張り詰め冷たくなったように感じました。
部屋に鎮座するベッドそしてその上の憂が毎日匂いを染み込ませている寝具たち。
その圧倒的存在感に、ごくりと喉が鳴ります。
わたしとしたことが、緊張しているのでしょうか。
間合いは完全に掴んでいます。あと一歩踏み出せば、わたしの射程距離内に入ります。
しかし、一向にその一足が踏み出せないのはなぜでしょうか。
まさか、無意識の内にこのわたしが「恐怖」しているというのでしょうか、そんな馬鹿な。
ほんの数日間この悪魔城と形容して過言ではない憂のベッドに挑まなかっただけで、ここまでのプレッシャーを感じるとは。
士別れて三日なれば、まさに刮目して待つべしという言葉がありますが、さすが、憂のベッドです。
ですが、いつまでもうろたえている時間はありません。
タイムリミットは憂が帰ってくるまで、堪能する時間はあと六時間しかありません。
憂の布団をもふもふするには足りないくらいです。覚悟を決めなければ。
唯「……お願いしますっ……!」
意を決して、深層憂気体で肺胞を満たすべく、まずは肺から空気を1cc残らず吐き出しました。
そして見る人全てを魅了するであろう流麗な動きで憂の布団に滑り込みます。
それからはもう一心不乱にクンカクンカするだけです。
唯「クンカクンカクンカクンカ……!」クンカクンカ
唯「クンッ……?!」
唯「くん、すんすん……」クンカクンカ…
……なにかが、おかしい……。
かすかな、いや、わたしが認められない程度には大きな、違和。
憂以外の、匂いがする……。
匂いを更に嗅いでいくたびにわたしの中に芽生えた懐疑心は膨張していき、やがて行為は堪能から探索に変わりました。
唯「そんな、憂に限って……、わたしがいない間に……」
ベッドの上を目を凝らして見回します、髪の毛でも、糸くずでも何か証拠があるかもしれない。
そしてなければ憂を少しでも疑った愚かな自分を戒め、今度からは慎ましく憂のベッドをもふもふくんくんすることにしましょう。
しかしわたしは見つけてしまいました。
枕元に残された汚らわしいちぢれ毛を。
汚らわしい、とは失言でした。
決め付けるのは良くありません。
秘密裏に行われた前回の毛髪チェックでは生えてなかった憂にもついに、下の毛が生えた、という可能性も捨て切れません。
今夜、確認の必要がありそうです。
しかし、憂にも下の毛が……そう思うと、妹の健全な成長に自然と頬が綻んでしまいます。
唯「ふひ……ふひひ……」
姉としても一安心です。ですが憂はまだまだよそには任せられない半人前です。
むしろ誰にも任せたくありません。
そう、憂がわたし以外の人間をベッドの上に上げただなんてことはあってはならないのです。
しかたがないから憂の衣類でいっぱいのクローゼットの中でくんかくんかしていたら、あっという間に憂が帰ってくる時間になってしまいました。
家の玄関の扉が開閉する振動を感じた瞬間、クローゼットから己が身を解き放ちます。
一刻も早くちぢれ毛の謎を解くべく未だ玄関にいるであろう憂の元へ、階段を駆け下りました。
憂「ただいまー、お姉ちゃん」
唯「おかえりうい! うい!」
憂「どうしたの? なにかあった?」
少し息を切らして憂の元へ飛んできたわたしを、怪訝に思っているようです。
小首をかしげてもうかわいらしい。
しかしこれから姉妹の血を争う疑惑の大審判が始まります。
外堀から埋めるように、なーんてまどろっこしい手段はわたし向きではありません。
攻めの姿勢を貫いて最後には必ずお姉ちゃん大好きと言わせて見せましょう。
唯「うい! ちょっとぱんつ脱いで!!」
憂「えっ!?///」
生えていればあのちぢれ毛は憂のもの、生えていなければ……。
憂「めっ!」びしっ!
唯「ごめんなさぁああい!!!」ビエエン
アグレッシブだなおい
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 14:28:13.97:jR4Jn9of0憂「家の外で変なこといっちゃダメだよ? お姉ちゃん」
唯「ごめんなしゃい……ぐすっ」
――憂に怒られてしまいました。
憂に怒られると自分の生きている意味さえ失うようでイヤなので早々にごめんなさいしました。
ぐずぐず泣いている暇はありません、この件は明日からのもふもふライフがかかっているのです。
しかしどうしましょう。憂のおまたを確認する方法を新たに模索しなければなりません。
憂の作ってくれたごはんを食べながら脳内作戦会議です。
――――――――
~唯の脳内会議~
――――――――――
唯A「はい! やっぱりお風呂に一緒に入るのがいいと思います!」
唯B「いやいや、憂がトイレに入ってるときに間違えたふりして入っちゃうのがいいよ!」
唯C「ていうか今日のハンバーグ美味しくない?」
唯A「何言ってるの? 毎日おいしいじゃん!」
唯B「うんうん、毎日おいしいよねー」
唯C「憂は自慢の妹だよねー」
唯ABC「「「ねー♪」」」
――――――――――
――――――――
憂「お姉ちゃん、おいしい?」
唯「おいしい!」
今夜も憂との楽しい楽しい食卓が幸せに滞りなく過ぎていきました!
――――――
―――
……いやはやわたしとしたことがあまりのハンバーグの美味しさに作戦会議を途中放棄してしまいました。
しかし方向性はすでに決まっていました、トイレ、おあ、お風呂です。
日常的なぱんつをおろす瞬間を狙うことに決まりました。
憂「お姉ちゃん、ちょっとトイレいってくるね」
来ました、さっそくチャンスです。
トイレへ向かう憂を後ろからつけます。
しかしそこはさすがわたしの妹、後をつけるわたしの気配に気づいている様子。
こちらをちらちらみてきます。鋭い。
憂「お姉ちゃん、なんで家の中でほふく前進してるの?」
唯「ちょ、ちょっとごろごろしてるだけだよっ……!」
憂「……そっか」
……危ない危ない。
しかし予定通り憂がトイレの扉を開け、閉めました。
カチャンッ
鍵までしっかりかけるなんて、しっかりしてる子です。偉い偉い。偉いねぇ。
……ぜーんぜん偉くないぃっ!!
扉の向こうでは衣擦れの音が聞こえます。
一枚隔てた向こうでは憂のおまたが大公開中だというのに、わたしは力なくトイレの前でうなだれることしかできません。
いいえ、ここであきらめてしまうのはいささか早計というもの。
絶望するにはまだ早すぎます。
そうです、家のトイレの鍵は外側からも開けられるのです。
爪を鍵の溝に挿して、まわす。
それだけで夢の楽園への扉の鍵は開錠され、憂の下の毛を確認することが出来ます。
ならばやらない手はないでしょう。
「あ、間違えて開けちゃったー。憂、ごめんねー間違えちゃったー作戦」を強行して見せましょう。
サクッ くいっ
あ、間違えて鍵開けちゃったーついでに扉もあけちゃったー。
がちゃりと扉を開けるとそこには当然、便座に座る憂がいました。
びっくりした様子で目を見開いています。
しかし様子がおかしいです。おなかを手で押さえて、その手の影でおまたが良く見えません。
ていうか顔を真っ赤にして、涙目で、あれ、怒ってる?
憂「お姉ちゃんのばか!! 早く出てって!!」
あ。
……いや、ほんとに、おしっこのほうだとばかり。
憂「早く出てってよぉ……ぐすっ……」
唯「ご、ごめんういっ!」
事態を把握して慌ててトイレから出て扉を閉めました。中からは憂のすすり泣く声が聞こえてきます。
しまった……、泣かしちゃった……ど、どうしよう……。
妹を泣かす。
それはこの世の姉にとって最も美しくない、恥ずべき行為です。
その不名誉を返上するには早急にごめんなさいをして慰めて、前よりいっそうの姉妹愛を築き上げなければなりません。
とりあえずトイレの前で土下座して待っておきましょう。
水の流れる音と、トイレットペーパーを引き取る音が聞こえます。もう少しででてくるかな、お尻を拭く音が聞こえてきます。
少しの間があって、それからドアノブがゆっくりと回りました。わたしは額を床にこすり付けて平身低頭謝罪の権化と化しました。
目をぎゅっとつむって、これから浴びせられるだろう憂のいかなる視線にも発言にも行為にも耐え受け止める覚悟をしました。
ドアノブが回るよりゆっくりと、小さく扉が開いて憂のきれいな左足が出てきます。
思わず匂いを嗅いでしまいたくなる白いあんよ、そんなにきれいな足ですから、次の一足でわたしの顔面が蹴り上げられようと、自戒の念をもって潔く受け入れましょう。
いえ、そんなことはされないとわかっていますけれど。
唯「ごめんなさい!!」
誠心誠意の土下座です。
わたしは、憂を想うあまり暴走して、あろうことかその憂のプライバシーを侵害してしまったのです。
数秒前のわたしの、なんと身勝手なことか。お尻ぺんぺんしてやりたいくらいです。
憂「………………」
今更過ぎるその言い訳がましいわたしの思考は、憂がトイレから出てきて、五秒で途切れました。
とん、とん、とん、とんとんとんとん!
なんと土下座するわたしをあっけなく無視をして、無言で、しかも加速度的なリズムで階段をのぼっていったのです!
超、怒ってる……。
唯「ど、どど、どうしよぉおぉ……」
人生最大のピンチです。
か弱いわたしは憂無しでは生きていけません。
本当にどうしたらいいのでしょう、憂も年頃です。
実の姉とはいえ、その、大……のほうをしているところを見られたなんて、恥ずかしくてたまらないでしょう。
わたしは憂の生産したものならなんだって愛せる自信があるのに。
かくなる上は、脳内会議、開始。
――――――――
~唯の脳内会議~
――――――――――
唯A「ういに嫌われた……ぜったい嫌われた……」
唯B「誰なの? 鍵開けてトイレ入ろうなんていったの……」
唯C「間違えて入っちゃったフリしようって始めにいったのはBちゃんでしょ……」
唯A「ういぃ……ぐすっ……ごめんなさぁあぁい……」
唯B「鍵開けてまで入ろうなんていってないよお……!」
唯C「すなおにお風呂を狙えばよかったのにぃ……」
唯ABC「「「びえぇえぇええんっ!!!」」」
――――――――――
――――――――
ディスカッション意味あるのかよwwww
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 15:28:21.53:jR4Jn9of0……ダメです、次すべき行動が全く浮かびません。
もう泣いてしまいたいです。
……こしゃくなことはもう考えないようにしましょう。
土下座ではなにも、伝えられなかった。
ならばわたしに何が出来るでしょう。
地に伏せていた身体を起こし、立ち上がりました。
一刻も早く、憂を抱きしめてあげなくちゃ。
そして耳元で、こう囁いてあげるんだ。「憂の全てを、愛してるよ」って。
憂の部屋の扉を開けると、机に突っ伏して、泣いている憂がいました。
わたしが部屋に入ったことに気づくと、泣き顔を見られたくないのか、いっそう深く腕の中に顔をうずめました。
そのしぐさを見てまたわたしの胸はずきりと痛みましたが、ここで逃げ出すわけには行きません。
唯「うい……聞いてくれる……?」
呼びかけると、強張るようにぴくりと憂の身体が動きました。
それを肯定と受け止めて、わたしは謝りはじめました。
唯「うい、ごめんね、あの、事情があって……」
憂「……なんでトイレのぞいたの? 意味わかんないよ……」
しかしさえぎられて、問いかけられます。
そのとおり自分でも意味がわかりません。
冷静になってみれば妹のおまたみたさにトイレに侵入する姉がいつどこにいましょうか。
なうひあ。わたしでした。
しかしわたしはわたしの意味のわからない行動を説明しなければならないのです。懺悔しなければならないのです。
唯「……あのね、うい、今日ういが学校に行ってる間ね、なんだか寂しくなってういのベッドに入りたくなったんだよ……」
唯「そしたらね、ういの布団の枕元に……その、憂の髪の毛じゃない、……ちぢれ毛があって……」
唯「あのちぢれ毛がういの毛だったらいいんだよ? ういにもそういう毛が、いい加減生えてくれないと困るし……」
あぁ、なぜだかわたしの目には涙が湛えられていきます。なかなかこの先を口走ることが出来ません。
まさかありえないとは思いますが憂の口から、お姉ちゃんがいない隙に、他人をベッドの上にあげてましただなんて、あああ、聞きたくない! 考えたくない!
憂「……えっとね、お姉ちゃん、あらぬ誤解をしているようだけど……」
唯「誤解ってなにさ……下の毛だって生えてないんでしょ……? あれはういの毛じゃないんでしょ……?」
憂「うん……まだ、生えてない、けど……」
唯「うわぁああぁあん……!! やっぱり……ういがうわきしたぁああぁあぁ……!!」
あれが憂の毛じゃない=憂がわたし以外の他人をベッドに上げたということです。
まさかまさか他人をベッドの上に上げただけでなく共に大人の階段をも上ってしまったとでも言うのでしょうか。
そうだとしたら発狂しそうです嫉妬に狂いそうです。
憂「あ、あのね、お姉ちゃん。落ち着いて?」
唯「うぅ……ぐしゅっ……わたしがいないあいだにういはうわきしてたんだぁあぁあ……!!!」
うわあああああああん!! ういのうわきものぉぉおおお……!!
こんなことになるならば憂を修学旅行に連れて行くんだった……。
そんな今更過ぎる後悔をして泣き咽び床をどんどん叩いていると、ふと憂が立ち上がる気配がしました。
そしてまもなく憂の両腕で強く抱きすくめられ、耳元で「落ち着いて」と囁かれました。
唯「ぐすっ……ういぃ……!」
憂「もう……お姉ちゃんが変なこというからさっきまで怒ってたのどうでもよくなっちゃったよ……」
そうだ、わたし、謝りに来たのに……。
唯「ごめんねええ……ひっ……ごめんういぃぃ…………」
とことん自分勝手です、こんなんじゃ愛想をつかされるのも仕方ありません。
しかし憂はそんなわたしを抱きしめて、頭を撫でて落ち着かせてくれるのです。
なんという母性でしょう、お嫁にもらいたい。
そしてゆっくりと憂の口が開きます、「聞いて」と一言、ついに真実を話してくれるようです。
今は姉として最低限、憂の告白を聞いてあげなくてはいけません、あぁ、うぅ。
憂「……お姉ちゃん、あの毛はね、別にその、下の毛とかじゃなくて……純ちゃんの髪の毛なんだよ」
…………………。
ジュンチャンノカミノケ?
唯「……はえっ?」
憂「だから、友達の鈴木純ちゃんの髪の毛、お姉ちゃんたちが修学旅行いってる間に、梓ちゃんと三人でお泊り会したんだよー」
あ、あぁ純ちゃんの髪の毛……。
ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ ジュンチャンノカミノケ
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:09:28.56:jR4Jn9of0いえしかし女の子だからといって油断はしちゃいけません、性別は関係ないのです。
純ちゃんがおまたをまさぐって憂のまくらもとにちぢれ毛を残していった可能性も否めなくありません。
そして女の子同士という可能性もまた否めないのです。
唯「あの、うい……、ところでだけど、三人でどういう風に寝たの?」
憂「えっと……純ちゃんがベッドで先に寝ちゃって……梓ちゃんとわたしが下に布団敷いて寝たんだったかな」
唯「つまり……一緒のベッドでおねんねしたわけではないと……」
憂「うん、布団も足りてたしねー」
……ひとまず安心です。
もし三人でみだらな行為をしていたら、どうなっていたことか……。
しかし純ちゃん、聖域とも呼べる憂の布団に易々と上がるなんて……!
ぐぬぬ。
憂「純ちゃんってクセっ毛がすごいんだよー、朝起きたらひどいことになってて、直してあげるのにも一苦労だったんだー」
唯「……!」
憂「差し入れでドーナツもって来てくれたんだけどね、純ちゃんったら全部一口ずつ口つけちゃって」
唯「……!!」
憂「しかたないからわたしと梓ちゃんが全部食べたんだけどね、うふふー」
唯「……!!!」
……純ちゃんなんなの。
クセっ毛直してもらうのもドーナツ余して憂やあずにゃんと間接ちゅーするのも、全部わたしがやりたかったのにぃ!!
よろしい、ならば戦争です。
わたしはこれから復讐の鬼になります。
純ちゃんめ……!
翌日。
今日は振り替え休日もあけ、登校日となりました。
愛しのあずにゃんとも久しぶりに会うことができます。
ああわたしはなんと年下に恵まれていることでしょう。
憂にあずにゃん、とってもプリティーな娘たち、わたしの両腕両脚が今すぐにも抱きしめんと動き出してしまいそうです。
ちぢれ毛の件ではわたしも相当わたしも焦りましたが、放課後はあずにゃん分による堪忍袋の緒の補修を行う事にしましょう。
この唯はあずにゃんも大好きなのか、安心した
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 16:33:30.65:jR4Jn9of0唯「あっずにゃーん!!」
梓「わぁっ?!」
後ろからがばっと抱き着いて頬をすりすり、おぉおぉ抵抗しちゃってかわいい。
くんくんすんすん。ああ、あずにゃん分。万歳。
唯「あずにゃん、わたしたちがいなくて、寂しかった?」
梓「なっ……! べ、別に、逆に静かでちょうど良かったです!」
唯「またまたあ、寂しくてわたしの家に泊まりに着てたんでしょ? 知ってるよおっ」
梓「それは、憂が寂しがってたから……」
唯「ほうほう……共にわたしがいない寂しさを紛らそうと……かわいいねぇっ」
梓「ち、ちがいますっ!」
ああ全く、なんて可愛い子たちなのでしょうか。
純「あ、こんにちは唯先輩」
唯「……ふんっ」
でました、にっくき純ちゃんです。
わたしが不在のときを狙って、この泥棒猫は、憂とあずにゃんにツバつけていたのです!
梓「……唯先輩?」
純「? 梓、昼休み終わっちゃうよ? 早くお昼ご飯食べようよー」
唯「……わたしもご一緒していいかしら?」
梓「なんですかその口調……」
唯「油断大敵なんだよ……」
すでに闘いは始まっているのです。
教室の中では憂が待っていました。
わたしの登場に驚いていたようですがそこはそれ、憂とわたしは相思相愛ですから、一緒にお昼ご飯くらい、むしろいままで食べてなかったほうがおかしいというものです。
しかしやはり周りの視線が集中して注がれます。けいおん部の平沢唯といえばちょっとした有名人です。ふふん。
純ちゃんにはちょっと大人でかっこいいわたしを見せつけ格の違いというものをわからせてあげる必要がありそうです。
唯「あ、あの、ごめんなさい、ここの椅子借りていいですか……?」
二年「あ、いいっすよー」
唯「あ、ありがとうございましゅ……」
ヒソヒソ
ウイチャンノオネエサンナンカカワイイネー
ショウドウブツッポイヨネー
ヒソヒソ
ううぐ……。
違います、見せ付けるべきはそんなところじゃないのです。
どちらがより憂とあずにゃんとらぶらぶか、その勝負なのです。
純「ほい、梓」スッ
梓「ん、ありがと」チュー
唯「!?」
な……、回し飲み……?
ジュースの回し飲みです! 唾液交換です! こ、公然と、見せ付けるようにやってのけるなんて……。
純「はい、憂も」
憂「ありがと純ちゃん、んー」チュー
は、ハレンチ極まりないです、若者の性の乱れがこんな身近で起こっているなんて……!
純「唯先輩も、飲みます? バナナ豆乳、美味しいですよ」
唯「うっ」
バナナ豆乳。
いいえ、それは憂とあずにゃんの唾液の混じった聖水です。バナナソイミルクなどではありません。
刺激的過ぎる甘美なその液体にわたしも思わず手が出てしまいそうになりますが、敵の施しを受けるわけには……!
……くやしいでもおいしい。
唯「……ありがと純ちゃん」
純「どういたしまして」
にこっと笑顔ではにかんで、ストローをくわえる純ちゃん。
魂胆が見え見えです、わたしを懐柔しようとしてもそうは簡単にはいきません。
純「あー、やっぱ昼休みのバナナ豆乳は最高だなー」
そういって純ちゃんがストローを鳴らした瞬間、彼女の表情にわずかなかげりが見えました。
まさかこの子……この場にいる全員の唾液を狙って……!?
だとしたら、恐ろしい子です……!
いえ、それよりも、そうするとこの子はどんなハレンチ少女なのでしょう。
容量の少ないバナナ豆乳を太っ腹にも全員に回し飲ませる、これはまず間違いなく唾液を回収するため他なりません。
憂やあずにゃんばかりか、まさかわたしまで、狙われてる……?
そう考えるとなんだか妙にどきどきしてきました、動揺させる作戦かもしれません、どうゆうつもりなのかもわかりません。
いつの間にかわたしは、狩る側から狩られる側になっていたようです。
憂「お姉ちゃん、そういえば弁当持ってきてないんじゃない?」
はっ。
唯「う、うん、昼休みは二人に会うために時間空けたかったから、早弁しちゃって……」
梓「まったく……放課後おなか空いても知りませんよ?」
唯「ムギちゃんのお茶があるからだいじょーぶだよー」
憂「お姉ちゃん、卵焼き分けてあげるー」
唯「えっいいの?」
梓「しかたないですね、わたしもプチトマトを」
唯「ありがとーごぜーます……ありがとーごぜーます……!」
おかしいな、憂の卵焼きは甘く作ってくれてるはずなのに、なぜだかしょっぱい味がしました。
情けない姿を晒しているのは間違いありませんがしかしそこは、転んだらただじゃ起きない不屈の精神で、いちゃいちゃらぶらぶすることにしましょう。
唯「ういー、あーんしてー」
憂「はい、あーん♪」
あーんもぐもぐ、おいしーい。
さぁ純ちゃん、見なさいこれがわたしと憂のらぶらぶっぷり。
嫉妬の炎に妬かれ豆乳のパックを握りつぶしている様子がありありと浮かびます。
純「梓ー、わたしにもプチトマトちょうだいよー」
梓「しかたないなぁ、はい純、あーん」
唯「!?」
信じられないことにあずにゃんはプチトマトを指で摘んで純ちゃんの口まで運びます。
ダメ、あずにゃん。その子はとんでもないハレンチ娘、指で摘んであーんなんてしたら、指ちゅぱされちゃうよ!
ああわたしが憂の卵焼きを咀嚼している間にも、確実にその距離は縮んでいきます。
かくなる上はわたしがあずにゃんのプチトマトを奪い取るしかありません。
不可抗力で指ちゅぱしてしまってもそれは仕方のないことなのです。
膳は急げというじゃないですか。スピードがつけば制動するための距離も大きくなるのです。
だから第二関節くらいまで指ちゅぱしてしまっても仕方ないことなのです。
ごくり。口内の卵焼きを飲み下して、あずにゃんの指をちゅぱちゅぱするべく、わたしは身を乗り出しました。
平沢唯、17歳。
ファーストキスを奪われました。
え?
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:01:54.57:EdkkamWWPなん…だと…?
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:07:08.42:jR4Jn9of0純「……///」
唯「……///」
横からあずにゃんの指にちゅぱつこうとしたらやわらかいものにあたって、
ほほうこれはこれはさすがあずにゃんの指、はむはむ柔らかいなぁおいしいなぁ、でもあれ?あずにゃんの指ってギターやってるからぷにぷに硬いはず……
と思ったらこれです。
見事に舌まで這わしてしまいました。
憂「え、えっと……」
梓「あの……」
なんということでしょう、不可抗力とはいえ二人の前で過激な大人のちゅーをしてしまいました。
純「あ、あの……わたし気にしてませんから///」
唯「う、うん……///」
憂ちゃん可愛い
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 18:57:47.68:jR4Jn9of0顔が腫れ上がってしまいそうなほど熱くほてって、そのせいか余計に外野のヒソヒソ話が聞こえてきます。
ヒソヒソ
ネェミタミタ!? イマジュントヒラサワセンパイガー
ミタミタ! キスシテタヨネー
ジョシコウヲブタイニシタ、センパイコウハイノキンダンノコイ!? ミタイナ! キャー
ヒソヒソ
梓「ちょ、ちょっとみんな……」
憂「違うよみんな、今のは事故で……!」
梓「そうだよね? 純、唯先輩!?」
純唯「う、うん……///」
――――
――
その場は憂とあずにゃんが弁護してくれました。
しかし奪われたファーストキスの価値は、やはり乙女として大きいものなのです。
わたしと純ちゃんはいわば憂とあずにゃんを取り合うライバルともいうべき関係なのに!
梓「唯先輩、いつまでも落ち込んでないでください、練習にも全然身が入ってなかったじゃないですか」
部活帰りの下校路であずにゃんに励まされます。
そうですこんなときはあずにゃん分を吸収するのが一番です。
もたれかかるように抱きついて、どうしようと糖度100%の甘えた声で助けを求めます。
梓「どうしよう……って、あんな事故を気にするのなんて、唯先輩らしくないです」
唯「ううん……だよね……いや、そうかな……」
梓「だいたい唯先輩はいつもわたしにキスしようとしたりするじゃないですか、それなのにそんな落ち込むなんて……」
唯「いつもあずにゃんに拒否られたときは落ち込んでるんだよ?」
梓「……純とキスするのがそんなにいやだったんですか? なんか変な態度とってましたし」
唯「……あずにゃんのためにファーストキスをとっておいたんだよぉ、残念だよあずにゃん……」
梓「何馬鹿なこと言ってるんですか……」
ちなみに家族はノーカウントです。
はぁ、自業自得とは言え、純ちゃんめー……。
翌日登校したら廊下を歩けば茶化され教室に着けば囃され、なにをやらかしてしまったのかとびくびくしていたら、案の定昨日のお昼休みのことでした。
女の子は噂好きといいますがどういう波及の仕方でしょうか、奥様方によるご近所のスキャンダルよりも広まるのが早いのではないでしょうか。
律「おい唯、お前、さ……えーっと、後輩と付き合ってるってマジか?」
噂とはあらぬ尾ひれが当然のようについているものでなぜか純ちゃんとわたしは熱愛疑惑を掛けられているようです。
身近なところから誤解を解いていかなければなりません。
唯「違うよりっちゃん、あれは事故で、偶然二年の教室で唇と唇がぶつかっちゃっただけなんだよー」
律「ほんとうかー? 唯ならだれかれかまわず抱きついてそうだしな、ありえるかもなー」
唯「むー、ほんとなんだよりっちゃん」
律「まぁ信じるよ、唯ならありえる、ありえるなー」
さすがりっちゃん、話がわかる。
律「じゃあとりあえず、誤解だって友達にいっておくわ、よくある噂だ、気にすんな唯」
唯「りっちゃん……! いつになくかっこいいね……!」
なんだか今日のりっちゃんはまぶしくて直視できません。
薄目でありがたやありがたやと拝んでいたら「眩しくないわい」とチョップされました。
持つべきものはやはり頼れる友人と可愛い妹と後輩です。
友達の多いりっちゃんなら素早く事態を収束へ導いてくれるでしょう。
それはどうかな!
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 19:51:41.02:jR4Jn9of0しかしこうなると心配なのは純ちゃんのほうです。
わたしにはりっちゃんを始めとした心強い味方がいましたが、純ちゃんはだいじょうぶでしょうか。
変に茶化されて落ち込んでいなければいいのですが……、いや、あの、格上として敵に塩を送る余裕をみせるのも、大事じゃないですか。
もちろん憂やあずにゃんがついていますから、別にそんなに心配ってわけでもないんですけれど。
こうなった以上は一蓮托生、気になるじゃないですか。
とりあえずメールで、憂に連絡を取ります、純ちゃんの様子は、と。
「すごく落ち込んじゃってる、お姉ちゃんと付き合ってるって噂されてるのがショックだったみたいで」
メールを開いた瞬間、わたしのほうこそショックを受けました。
いやしかし、その気持ちもわかります、高校生といえば多感な時期、純ちゃんもああ見えて恋する乙女だったりするのでしょう。
その恋する乙女が、面識のあまりない、友達の姉と付き合ってるだなんてスキャンダラスな噂が流れたらどうでしょう。
想像するに容易く、推し量るに難い葛藤が彼女を襲ったことでしょう。
こういうとき、わたしはどうしたらいいのでしょうか。そばに行って励ますべきなのでしょうか、ほとぼりが冷めるまでそっとしておくべきなのでしょうか。
続けてメールを送ります。
「落ち込んでる具体的な理由はわかる? わたしはどうしたらいい?」
「聞いても教えてくれない、お姉ちゃんが悪いわけじゃないから、じっとしてて」
「でも、純ちゃんがかわいそうだよ」
「お姉ちゃんのせいじゃないよ、わたしと梓ちゃんでどうにかするから」
そういわれても、やはり心配です。
純ちゃんみたいな子が落ち込むなんて、あまり想像が出来ないもので、余計に。
あっという間に放課後です。
りっちゃんから、今日は早く帰れと言われました。
また変な噂が立つといけないから、との配慮のようです。冗談でなくりっちゃんのことが眩しくて直視できませんでした。
だから今日は珍しく、一人での帰り道です。
いつもならば隣にあずにゃんか憂、和ちゃんがいるのに、少し寂しくも思います。
いえ、この気持ちは寂しさからだけではないでしょう、やはり純ちゃんのことが気にかかるのです。
気を紛らわそうと、わたしは寄り道をはじめました。
右右左右左。気の向くまま足の向くまま歩いていきます。
段々と家の近所に近づいてきます。
そういえばこの辺には公園があって、よく憂や和ちゃんと一緒に遊んだっけ。
ぎーこぎーことブランコの揺れる音がだんだんと聞こえてきます。
公園の中に入ると、一人でブランコをこぐ純ちゃんの姿が見えました。
純「唯先輩……?」
純ちゃんもわたしに気づいたようで、ブランコをこいでいた脚を止めました。
唯「……純ちゃん、偶然だね」
やはり純ちゃんはまだ少し落ち込んでいる様子で、暗い表情をしていました。
ならばわたしにできることはなんでしょう。
そう、格上として敵に塩を送る余裕を見せることです。
唯「純ちゃん、隣のブランコ空いてるかな?」
純「……はい」
向かって右のブランコにわたしが乗って、今純ちゃんが乗っているブランコには憂が乗っていたっけ。
なんだか懐かしい気分になりながら、ブランコに腰掛けます。
唯「よっ……と」
ぐいっと足を投げ出して、ゆっくりと漕ぎ出します。
久しぶりに乗るブランコは、体重が増えた分少し怖くて、落ちてしまいそうです。
唯「純ちゃん、わたしと恋人って言う噂、そんなにいやかな?」
あくまでも軽く茶化すように、問いかけてみます。
すると純ちゃんは、少しうつむいて、いやです、と答えて、失礼かもしれませんけど、と付け加えました。
唯「ううん、いいよ、わたしも良くは思ってないし……でも出来れば、理由とか聞かせて欲しいかなあ」
純「…………えっと、実は……他に好きな人がいるんです……」
唯「他に、好きな人?」
純「はい……だから、誤解だってわかってもらってても、何となく、辛くて……」
大方の予想通り、落ち込んでる理由は、恋でした。
なんと甘酸っぱい話でしょう。
興味津々、ぜひ詳しく聞きたい話ですが、ここはふざけていい場面ではありません。
大人として、先輩として、優しく話を聞いてあげるべきです。
唯「良ければだけど、好きな人って、誰なの?」
純「…………」
あぁやはり口ごもってしまいました。
こういう子に限って色恋沙汰にはシャイなのです。困ったものです。
唯「もしかしてー……あずにゃんとか?」
純「……違いますよ、梓は友達ですし……」
唯「じゃあじゃあ、ういとか」
純「うっ……」
唯「いやー、まさかなー、もし憂なら姉として黙っちゃいられないからなー」
純「…………憂ですよ……」
唯「えっ」
冗談のつもりでしたのに。
唯「じゅ、純ちゃん、それは ほんと ですか?」
純「……はい……」
唯「お、おぉう……」
どう反応したらいいのでしょう。あなたの妹が好きです。この台詞に対してどう反応するのが正しいのでしょうか。
妙にあっさりなのがリアルです。
憂とわたしは相思相愛ですがそれは姉妹愛および家族愛のそれであり恋愛感情などではありません。
くんくんもふもふしたいくらいそれはそれは可愛がってる妹のことですので前述のとおりどこの馬の骨かもわからない他人にはもちろん任せられません。
しかし、かっこつけて相談に乗った身。「へーんういは誰にも渡さないもんねー」というわけにもいきません。
それに純ちゃんには実績があります。バナナ豆乳を回し憂の唾液をさりげなく得る技術は素晴らしいものでした。
伝聞ですが全てのドーナツに一口ずつつけて、憂との間接キスに成功し、あろうことかその晩ベッドまで占拠したという武勇伝があります。
考えれば考えるほど純ちゃんの行動につじつまがあっていきます。
やはり恐ろしい。いえ、この子にならば憂を任せることが出来るかもしれません。
右隣のブランコに座る純ちゃんを見ると、目が合いました。
そのまなざしは恋する乙女のもの、なぜだか幼き日の憂と被って仕方がありません。
唯「純ちゃん……その気持ちは本物みたいだね……」
純「はい……!」
それからわたしと純ちゃんの修行の日々は始まりました。
純「ふっ……ふっ……」シュンッ シュンッ
唯「違う! 右足の入りが遅い! そんなんじゃ憂の布団の中に蓄えられた深層憂気体が逃げちゃうでしょ!」
純「すいません唯先輩!」
初歩中の初歩、憂の布団もふもふの指導を始めてから3ヶ月、ようやく純ちゃんも型を覚えてきました。
しかし実践で使えるレベルになるにはまだまだかかりそうです。
憂の大きな愛を受け止めるにはそれ相応のスキルが必要なのです。
バカスww
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:30:34.69:ciBqs2KnPこれが>>1がしたかったことか
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:31:04.67:jR4Jn9of0しかし恐るべきはやはり純ちゃんの類稀な才能。
わたしが17年間かけて習得してきた技術をどんどん吸収していきます。
そしてついにはオリジナルの必殺技まで開発するようになりました。
純「見てください唯先輩! ついにクセっ毛のうねり具合で、憂の部屋の湿度を量れるようになったんです!!」
唯「素晴らしいよ純ちゃん……!」
憂の部屋の湿度。それが意味するものは大きいです。体温から寝息の立て方、代謝など、さまざまなことがわかります。
純ちゃんの憂スキーとしての完成が恐ろしくなってきました。
わけがわからんw
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 22:49:03.05:jR4Jn9of0そして更に4ヶ月が過ぎた頃。季節は冬。
いつもの公園にはそれはそれは立派に成長した純ちゃんがいました。
純「唯先輩……今まで、ありがとうございました。わたし、自分に自信が持てそうです!」
唯「うん、もう教えることは何もないよ……。明日のバレンタイン、憂に告白するんだってね……」
純「はい。唯先輩との修行を経て、自分の憂への愛の確かさを再確認しました……。もう迷いません。明日、全てにけりをつけます!」
純ちゃん、君は本当に強くなったよ。
いつか二人で、憂に怒られたときも。
いつか二人で、寒い雪の日に憂の可愛さについて語り合ったときも。
いつか二人で、不審者として警察に追い回されたときも。
そのまなざしは淀みなく色あせることがなかった。
唯「純ちゃん、免許皆伝だよ。純ちゃんになら憂を任せられる。頑張ってきてね!」
なにやってんだよ、こいつらw
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:02:08.74:jR4Jn9of0わたしたちはきつく抱きしめあい、もう一度師弟の絆を熱く確かめ合いました。
唯「いい結果を祈ってるよ」
純「ありがとうございます。いい報告が出来るように、がんばります」
唯「ふふ、緊張しないでね純ちゃん。今日はしっかり身体を休めて、明日ベストを尽くせるようにね」
純「はいっ!!」
唯「じゃあね純ちゃん。これからチョコレートも作らないといけないんでしょ? こんなとこに長居してちゃ、いけないよ」
不意に浮かんできた涙を見られたくなくて、くるりと振り向いて、一方的に別れを告げました。
もはや純ちゃんは妹のような存在。その成長が嬉しくてたまらないのです。
明日は月曜日。
わたしは自宅学習期間に入っているので登校の義務はありません。
憂のくれるチョコを食べながら、優雅な午前を過ごし、憂が帰ってきたら、きっと純ちゃんとのチョコより甘いお話を聞かせてもらえるでしょう。
唯「ういー、ちなみに今年はチョコつくるのー?」
憂「うん、お姉ちゃんとお父さんの分だけね」
唯「――ッ!!?」
純ちゃんアウトオブ眼中。
……。いえ、本命チョコのことは、たとえ姉といえど恥ずかしくて言えないものなのでしょう。
どうせこんなこと言っておいて純ちゃんの分も作っているはず……。
ええ、そのはずです。
事の顛末を話すと、純ちゃんはチョコを渡し思いを伝えたところで千々の雪と共に儚く散ったそうです。
ただ憂も優しい子なので、純ちゃんを深く傷つけるような振り方はしなかったそうな。
純ちゃんはわたし仕込の不屈の精神で、嫌われない限りは、憂スキーでい続ける所存であるとのことです。
純「唯先輩、今日の憂の部屋……やや湿度が高く……粘っこい感じがします……」
唯「純ちゃん……それは確かなの?」
純「はい、この前髪のうねり具合……間違いありません!」
唯「よし、純ちゃん、準備はいい?」
純「もちろんです!」
唯純「ふんすっ」シュイッ
唯「クンカクンカクンカクンカ……、お月様を迎えている憂の布団は格別だね!」
純「クンカクンカクンカクンカ……、全くですね、唯先輩!」
愛すべきバカ二人
166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:43:56.23:jR4Jn9of0純ちゃんと共に憂の布団をもふもふします。
深層憂気体は純度100%で味わいたいわたしでしたが、今は違います。
純ちゃんと共に味わう深層憂気体、そこに価値があるのです。
あれから8ヶ月が過ぎようとしています。憂のおまたにもおけけが生えました。
時の流れは日々に確実に変化を与えていくものです。
共に一つのことに熱中できる仲間。
ある日のちぢれ毛との小さな出会いが、その大切さを私に教えてくれたのでした。
おわり!
えっ?
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:46:09.56:u5xvwNBS0乙!なかなかの変態ぶりだった
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:47:31.74:AbtKFmbx0良い話っぽく終わってるww
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:48:32.89:zw1PgCLgO乙
良い意味で裏切られた
171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:53:18.72:34gjL9E80良い意味で裏切られた
乙でした
なんか前にも爽やか変態系のSS見た気がするんだが>>1は他に書いたことある?
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/13(日) 23:56:44.04:jR4Jn9of0なんか前にも爽やか変態系のSS見た気がするんだが>>1は他に書いたことある?
終わりです
読んでくれた人、保守してくれた人、ありがとうございました
>>171
唯ちゃんが他人の尿意を操れるようになるSSとか
180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:29:01.81:3zJyjNzMO読んでくれた人、保守してくれた人、ありがとうございました
>>171
唯ちゃんが他人の尿意を操れるようになるSSとか
>>179
尿意のSSタイトルおせーて
181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:37:19.77:17XI9x7L0尿意のSSタイトルおせーて
>>180
唯「おもらし!」
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:01:52.36:DwDlF4oU0唯「おもらし!」
面白かったよ
おつ!!
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/14(月) 00:57:38.64:D7rCKX3q0おつ!!
乙
尿意のもおもしろかった
次回作も期待してます
尿意のもおもしろかった
次回作も期待してます
コメント 7
コメント一覧 (7)
憂ちゃんが年をとるはずがない!
俺も憂ちゃんのおっぱいはとても素晴らしいと思います!
面白かった!
こういうさっぱりしたバカと変態は後味がいいね