- 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:23:31.24:AD84eotR0
ピンポーン
男「どなたですか」
犬「こないだ腹減ってぶっ倒れてたところを助けていただいた犬ですけれども」
男「電波さんですか」
犬「現実を認めたくありませんか」
男「いやそんなVIPのSSじゃあるまいし」
犬「いやコレVIPのSSですから」
男「まぁ確かにその耳とか尻尾とか本物っぽいな。でも、だったら美少女が来るはずだろ。なんで八頭身のイケメンが玄関の前に鎮座ましましてんだよ」
犬「世の中そんな都合のいい事ばかりでもないんですよ」
男「犬に言われるとは思わんかった」
犬「とりあえず入りますよ」ガチャガチャバッキィ!!
男「うっわすっげえ力。チェーン千切れましたけど」
犬「男さんかわいそう」
男「ぶっ殺すぞ」
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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:24:14.34:AD84eotR0
犬「きったねー部屋ですね」
男「何様なの」
犬「あれ? 何か忘れてません?」
男「なんだよ」
犬「お茶ですよ。お・ちゃ!」トントン
男「本当に何様なの」
コポコポ
犬「やっすい茶葉ですね。まずい。ってかこれ、ティーバック?」
男「何度でも言うよ。本当に何様なの」
犬「wwwwwwwwwwww」
男「仮にお前が美少女だとしてもそろそろ限界だったと思うよ、俺は」
犬「まぁ、落ち着いて」
男「うるせぇ」
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:24:58.11:AD84eotR0
犬「そう、で、私恩返しに来たわけなんですけれども」
男「何かしてくれんのか?」
犬「あざーーす」
男「おう」
犬「……」
男「……」
犬「……」
男「えっ?」
犬「えっ?」
男「終わり?」
犬「はい」
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:25:42.30:AD84eotR0
男「いやいやいやいやそりゃねーだろ!」
犬「つっても一回メシ奢ってもらったくらいでそんな恩義も感じてませんし」
男「じゃあお前わざわざ人化してまで何しに来たの」
犬「いえね、神様が『恩返しの為なら人化してやってもいいけど、どうする?』って仰ったもんですから」
男「うん」
犬「人間生活エンジョイしたいし、いいかなーって」
男「出てけ」
犬「家がないんで」
男「知るかよ。大体なんで男かなぁ。女の子だったら、平気……ではないけど、まぁ歯食い縛りながら接待してたと思うんだけど。あれ? 恩返してもらってんのに接待っておかしくね?」
犬「まぁ、そうは仰いますがね」
男「なんだよ」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:26:25.11:AD84eotR0
犬「仮に、犬耳でわんわんわふぅな美少女が男さんの家に恩返しに来たとしましょう」
男「うん」
犬「その時、男さんは犬耳美少女の目を見て話せますか? っていうか女の子と会話したことあります?」
男「あるよ」
犬「ほう。どんな?」
~~~
女1「体重なんキロあるの?」
男「きゅ、きゅきゅきゅ98キr……キロ」
女2「キモーイ」
女1「ブター」
男「ブヒヒッwww」
~~~
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:32:21.32:AD84eotR0
犬「会話じゃねえwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
男「笑ってんじゃねぇよ」
犬「いや、失礼。想像の遥か下方を行かれましたもので」
男「確かに俺が間違っていたのかもしれない」
犬「でしょう」
男「犬耳美少女が来たところで、にゃんにゃんはおろか、手を触れることもできないだろう」
犬「そうですよね。そんな度胸があったら無職童貞やってませんよね」
男「なんでいちいちトゲがある言い方しかできないの」
犬「ほら、パソコンの前に座ってる貴方! 貴方のことですよ!」
男「悪かった! 俺が悪かったから煽らないで!」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:35:51.32:J5sbmgyS0
男「確かに俺が悪かったよ。身の程を弁えずに夢を見た俺が悪かった」
犬「うんうん」
男「でも、これはねーだろ! 恩返しってこんなんだっけ!? 違うよね! 俺にはなんのメリットもねーもん! チェーン破壊されて、その上グチグチ文句言われただけじゃねーか! 恩を仇で返すってレベルじゃねーぞ!」
犬「男さん」
男「なんだよ!」
犬「息が超クサイです」
男「あqwせxdcrfvtgyふじk!!!」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:44:32.37:AD84eotR0
犬「男さんをイジるのにも飽きましたね」
男「ああそうかよ帰れよ!」
犬「そろそろいいかな……おーい」
男「なんだよ」
ドタドタドタ
雌「チョリッスwwww」
男「!?」
犬「ほら、ごあいさつ」
雌「クッセェwwwww この部屋超クッセェwwww」
犬「よくできました」ナデナデ
男「どの部分が!?」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:49:30.83:AD84eotR0
雌「んー?」
男「あ……」
雌「んんんー?」ジー
男「あああああのあの……」
雌「ギャハハハハハハ! いーくん、今の見た!? 超目反らしてんスけど~~wwwww」
犬「そうだね」
雌「キモーイwwwwww」
男「な、なんですかこの方は」
犬「私の雌犬です。ついでに人化してもらいました」
男「ファック!!」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:56:56.01:AD84eotR0
雌「ねぇいーくん、あたしもうここいたくないよぅ」
犬「そうだねぇ。クサイからねぇ」
雌「クサイクサイ!」
男「帰れよおおおおおお!!」
犬「さてと、それじゃ行きますよ男さん」
男「はい?」
犬「私達は、これから街へ向かいます。何分、元が犬なものですからね。人間の交通機関はよく分かりませんし、お金も持ち合わせていないんですよ」
男「なんで俺が!?」
雌「お願い~」
男「うぐっ」
犬「ほら、早く立って」グイッ
男「俺はそんな……あらヤダすごい力!?」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 20:04:40.85:AD84eotR0
犬「ここが原宿ですか」
男「おらこんなオサレなとこ来たことねえだよ」
雌「すごい! いいにおい~」
犬「一通り見て周りましょうか」
黒人「HEY!」
男「ヒィ!?」
犬「おやおや。変わった体色の人間もいるものですねぇ」
黒人「オニイサンカッコイイネ! オニイサンタチニダケイイモノミセテアゲルヨ!」グイッ
男「いててててててて!」
雌「いいものだって! なんだろね、いーくん!」
犬「楽しみだねぇ」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 20:09:30.07:yMA/J1MQ0
犬「ほう……」
雌「見て! 着てみた! かわいい? かわいい?」
犬「あまり私の趣味にあったお店ではありませんねぇ……」
雌「きゅうん……いーくん、ごめん」
男「あの~入り口塞がれてんですけど。何か買うまで帰れない雰囲気ですけど」
犬「そうですか……ではこれなどどうです?」
男「何このでかいパーカー!? なんでこんなのが十万とかすんの!?」
雌「絶対似合うよ~~wwwww」
男「嘘つけ!!」
犬「そうは言っても、買わなければ出られませんよ?」
男「こんなもん買えない……」
雌「じゃあ、あの人にお願いしてくる! そんで別のお店いこ!」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 20:30:56.70:AD84eotR0
黒人「?」
雌「どいてもらってイイスか~?」
黒人「ンフフフフ」ガシッ
雌「んあ?」
男「ちょ、おい! どっか連れてかれるぞ!」
犬「へぇ(笑)」
男「なんでお前そんなに冷静なの!?」
犬「たかが人間相手にそこまで焦る必要もないでしょう」
男「とうとう本音隠さなくなったなお前」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 20:32:24.01:AD84eotR0
雌「え? くれるの?」
黒人「Yes!」
雌「ねぇ! なんかキラキラもらった!」
黒人「カワイイカラネ!」
雌「ありがとー!」
男「あれ?」
犬「よかったですねぇ」
雌「いーくんにあげる!」
犬「要りませんよ。そんな趣味の悪い」
雌「ごめん……」
男「あのさぁ……」
犬「なんでしょう」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 20:43:56.79:AD84eotR0
男「……いや、なんでもねーや」
犬「はぁ、そうですか。では、他のお店も見ましょうか」
雌「うん!」
~~~
犬「いやいや、楽しかったですねぇ」
雌「うん!」
男「服って高いのな……。エロゲ程高いものもそうは無いって思ってたが……」
犬「有意義な一日を過ごせてよかったじゃないですか」
雌「そうだぞブタwww」
男「うるせーよバカ犬共! ……っと、そういや犬、お前は自分の服買ってねーよな? 雌と俺の分ばっかりで」
犬「なかなか気にいった服がありませんでしたもので。この身長ですから、それだけで選択肢がかなり絞られるのですよ」
男「そうかよ! イケメン高身長様は違いますね!」
雌「wwwww」
男「笑ってんじゃねえ!!」
犬「ふふふ……」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 21:17:14.86:AD84eotR0
その晩、男宅にて。
男「zzzz」
ブツ……ブツブツ……
男「んむ?」
す…い。でも、これもあの……
ううん。パ…人さん…もん。それに、あの……優し……
そう…私は…信じ…
男(犬共が寝てる部屋か。帰る算段でもしてんのかな)
男(早く帰ってくれないかなぁ)
男「zzzz」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 21:23:51.66:AD84eotR0
翌朝
雌「起きろブヒ~www」バサッ
男「ギエピー!」
犬「遅いじゃないですか」
男「……今、何時?」
犬「5:30」
男「バカじゃないの!?」
犬「いえいえ、なんせ私共、犬なものですから。ほら」
雌「あおーん!」
男「だから何!?」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 21:29:57.49:AD84eotR0
犬「掃除しましょう」
男「意味がわからない」
犬「だって、暫く私達が生活する場所がこんなに汚くては、ねぇ。犬というのは、存外にキレイ好きなものなのですよ」
雌「クサくて汚いの、イヤ!」
男「そうか。頑張れ。俺は寝る」
犬「そうですか。では手始めに、男さんの部屋から掃除を始めるとしましょうか」
雌「なんか人形いっぱいあるんスけど。キモイwww」
犬「おや、この箱は何でしょうか。なになに、『今宵も召しませ! アリステイr』
男「分かった! 分かったから物色するのやめて!!」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 21:37:25.09:AD84eotR0
男「俺の部屋は俺が掃除するからな!! お前らは自分の部屋と台所な!」
犬「必死ですねwwwwww」
男「悪いかよチクショウ!」
雌「wwwwwwwwwwwww」
男「もう帰ってくださいよォォォォ!!」
犬「さて、始めましょうか」
雌「いーくん、あたしどうすればいい?」
犬「トイレ掃除でもしててください」
雌「わかった!」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 21:48:01.13:AD84eotR0
男「はぁ……大体こんなもんかな」
ジャバジャバジャバジャバ ギャー
男「!?」
雌「壊れた! アタシなんもしてないのに! なんもしてないのに!!」
男「はぁ!?」
犬「あらら」
男「大洪水じゃねぇか……よっと」
キュッ
男「これ、元々壊れてんだ。水出した後、自力で捻りを戻さねーと水止まんねーんだわ」
犬「ホント、使えませんねぇ」
雌「そ、そうだぞ、ブタ!!」
犬「いや、私はお前に言っているんだよ」
雌「え?」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 21:54:43.41:AD84eotR0
犬「はぁ……。折角人間の身体を手に入れたというのに、その様はなんだ?」
雌「ご、ごめ」
犬「何かあればすぐに謝る。尻尾を振って誤魔化す。反省していれば何もかも許されるとでも? 学習しない駄犬は大嫌いなんだよ」
雌「う」
男「わ、悪いな犬! これは俺の落ち度だ! こんなもん、初見じゃ人間だってわかんね―よなwww」
雌「……」
男「雌もごめんな、伝えとくべきだったわ」
犬「……ふん」スタスタ
男「こ、こえぇ……」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 22:02:50.21:AD84eotR0
雌「……いーくん、怖い?」
男「え?」
雌「怖い?」
男「あ、あぁ。すっげー怖かった。なんか、野生の迫力ってのを思い知らされた」
雌「う、うぅ」ポロポロ
男「!? な、泣くなよ! 俺が悪かったから!」
雌「……ッちげーよ、バカ!! そんなんじゃない! お前にはカンケーないんだよ!!」ダッ
男「……何だってんだよ、クソ」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 22:17:20.23:AD84eotR0
犬「やれやれ、疲れましたよ。客にこんな事をやらせるなんて、恥ずかしくはないのですか?」
雌「そーだそーだ!」
男(なんだコイツら……すっかり元通りじゃねえか)
犬「さて、お腹が空きましたね」
男「お前は昨日から何も食べてないからな。雌はバクバク食べてたっつーのに」
雌「わりーかよ! キモブタ!」
男「わりーよ! 遠慮しろよ!」
犬「ふふふ。小食なのですよ、私は。そもそも私は野良犬ですから、何も口に入れられない日などいくらでもありましたからね。その生活に慣れてしまったせいで、あまり多くは食べられないのですよ」
男「大変だなぁ」
犬「そういうわけで、たまには贅沢させてくださいな。ほら、早く」
男「クソ、分かったよ。そんな事言われたからには、腕によりをかけて……」
雌「アタシも行くッスwwwwww」
男「は?」
雌「いーくんに、私が作ったのを食べさせてあげたい」
男「……そっか。分かった」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 22:36:09.50:AD84eotR0
ザクザク、コトコト
男「いーくん、ねぇ」
雌「なんだよ、ブタ」
男「やっぱ、顔って大事?」
雌「なんで」
男「いや……。犬って、結構キツいだろ」
雌「……」
男「それでもお前が惚れてんのは、やっぱり顔がいいからかなって。いや、犬の顔なんて分かんねーけど」
雌「お前……!!」ガシッ
男「な、なんだよ」
雌「……なんでもない。お前は悪くない」
男「なんだよ。なんなんだよ……」
雌「これは、こうでいいの?」
男「あ、あぁ。ちょっといびつだけど、食べる分には問題ない」
雌「わかった」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 22:51:10.01:AD84eotR0
男「できたぞー」
雌「できた!」
犬「待たせてくれますねぇ、全く」
雌「はい、いーくんの分!」
犬「ほうほう」
男「お前の分はな、雌が頑張って作ったんだぞ」
犬「……どこに行っているかと思えば」
雌「……ごめんね、いーくん。ガマンできなかったの」
犬「お前という奴は、本当に」
雌「あのね。辛い、よね。でも、見てくれるだけでいいの。最後に、いーくんのために」
犬「っく……!!」
男「おいおい、最後って大げさな……」
犬「ふざけるな!!」
男「!?」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:02:09.81:AD84eotR0
男「!?」
犬「お前は……お前は!! こんな、こんなモノを私に食べろと言うのか!? なんだコレは! きちんと切れていない! 繋がっているじゃないか……! ハ、ハハハ。こんな無様なモノを、くっ、私に……」
雌「う、うぅう……」
男「……良い加減にしろよ!! お前なぁ、これは雌がお前のために、頑張って教わりながら作ったんだぞ! それを、お前は……! 消えろ!!」
雌「男さん!!」
男「消えろよ! テメェなんかの顔はもう見たくねえんだよ!!」
犬「……そうですか。では、お望み通り、消えるとしましょう」スッ
雌「やだ! やだよぅ!」
犬「来るな!!」
雌「!!」
犬「来ないで……くれ。お願いだ」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:17:38.30:AD84eotR0
……ガチャ、バタン。
雌「あ、あああ。あああああああああああああああ!!」
男「お、おい……」
雌「やだ。やだよおおお!」
男「……しょうがねぇな。追うぞ!!」
雌「ダメえええええええ!!」ギュッ
男「どうしろと!?」
雌「うっぐ……うぇえ……」
男(リア充なら、こんな時も気の利いた言葉くらいかけてやれるんだろうな……)
雌「う、うぅぅ」
男(頭撫でてやればいいのかな……クソ、手が震える)
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:20:37.55:AD84eotR0
雌「……パァ……」
男(おりゃあああああああ!!)ナデナデ
雌「……う」
男「ごごごごごごめん! 調子に乗ったわ!!」パッ
雌「もっと」
男「え?」
雌「もっと……強くてもいい」
男「え、あ……はい」ぐしゃぐしゃ
雌「ん……」
男「い、痛くないですか」
雌「きもちい……」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:26:10.15:AD84eotR0
男「……落ち着きました?」
雌「うん。ありがと」
男「……冷静に考えるとさ」
雌「?」
男「犬、普通じゃなかった。アレ、怒ってたっていうか……半分、泣いてた、よな」
雌「……」
男「俺、言い過ぎちゃったな。謝らなきゃ」
雌「優しいね」
男「は?」
雌「優しいよ。パパの言った通りだ」
男「……パパ?」
雌「……ああああああ!? 違う! 違うの!!」
男「kwsk」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:37:44.13:AD84eotR0
――公園――
男「はぁ、はぁ」
犬「……おや?」
雌「パパ! パパァ!」
犬「……そっか。話しちゃったのか。お前は本当に馬鹿な子だね」
雌「ごめん……なさい」
犬「だけど、本当に優しい子だ。私の眼に狂いは無かった、かな」
男「全部、聞いたよ」
犬「そうですか」
男「お前が本当に恩返しをしに来たって事も。俺を心配してくれてたって事も。お前がもう死んでるって事もさ」
犬「あらら」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:38:57.09:01wuQUnC0
男「本当にゴメンな……! 俺、そんな事知らなくて、うぐ、あんな酷いこと……」
犬「ふふふ。いやー、あれは危なかったですねー。まさか娘の手料理が出てくるとは。歳の所為か、涙腺が緩んでしまいましてね」
雌「パパ……」
犬「食べたかったなぁ。でも、もう死んでるものなぁ」
男「なんでだよ。なんでお前、自分一人が悪者みたいな……」
犬「懐かしいなぁ」
男「?」
犬「ここで、貴方は私にご飯をくれたんですよね」
男「そう、だったな」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:55:05.54:AD84eotR0
犬「いやいや、野良犬生活も長いとはいえ、あの時は本当に危なかった!! あー、私もここで死ぬのかー。あの子たちも飢え死にかなー。父親失格だなーなんて思いながら」
雌「そんなことない……!」
犬「そこで、白いご飯を恵んで下さったのが、男さん。貴方だったんですよ」
男「あの時は、たまたま余ったからで」
犬「理由は関係ありません。貴方が、私共の命を助けて下さった。それは確かなのです」
雌「男さんのおかげで、アタシ達も独り立ちできたの」
男「俺は、お前らが思ってる様な人間じゃ」
犬「ほら、そうやって。だから教えたくなかったんです。だから無職童貞なんですよ」
男「無職童貞は関係ねーだろ!!」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 00:11:29.45:zBU6cB7z0
犬「それで、どうにかこうにかこの子達も独り立ちして、私も肩の荷が下りたって時です。いやいや、トラックにバーン! とやられちゃいましてね。アレは死ぬかと思った。いや、死んだんですけれども」
男「……」
犬「そこで神様が現れたんです。お前は死んだから、さぁ選べ。人を憎んで復讐するか、人から受けた恩を忘れずに返すか。どちらだって言うんですよ」
男「それで」
犬「ええ、後者を選んだワケです。ところが、神様も万能じゃないらしくて、恩返しの方法は自分で考えろ、なんてのたまいました」
雌「割とテキトーだよね、神様」
犬「そこで、私は男さんの人生をちょろっと見せてもらったんです。ほんの24年程」
男「殆ど全部じゃねーか!」
犬「そしたらどうです。無職童貞、彼女居ない歴=年齢。惨めなもんですねwwww」
男「え? お前、素で性格悪くね?」
雌「照れ隠しだよ!」
犬「うるさい」
雌「ごめんなさい……」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 00:23:30.34:zBU6cB7z0
犬「で、犬の頭で必死に考えた結果がこれだったんです。その原因となっている女の子絡みのトラウマを取り除いてやろう、と」
男「めっちゃエグられたけどな!」
雌「ブタ!」
男「やめろ!」
犬「その辺りは、何分時間が無かったもので、荒療治って事になっちゃいましたが。私のタイムリミット、今夜なんですよねぇ」
男「……ま、確かに効果はあったよ。女ってのも、そう悪い奴ばかりじゃないって分かった。口は最悪だったけどな」
犬「そこは、その子のお陰です。頭は壊滅的に悪いけれど、本当に優しい子ですから。神様も娘の分はおまけしといてくれました」
男「……確かにな」
雌「うるせーブタ!!」
犬「で、私が娘に厳しくしていた理由なんですけれども」
男「あぁ。そこは俺も気になってた。雌は何も教えてくれないしよ」
犬「……すいません! ぶっちゃけテストしてました!!」
男「はぁ!?」
雌「///」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 00:33:21.74:zBU6cB7z0
犬「いやいや、娘がパパの恩人さんの所にお嫁に行くーって言うもんですから、そこは親としてと言いますか、娘の人生……犬生? のためと言いますか……」
男「え? え? おま……」
雌「……見てんじゃねーよ」
犬「あんだけやって怒ってくれない様だったら、とりあえず女性恐怖症だけ治しておしまいって感じだったんですが、どうしてどうして!」
犬「いーい男っぷりでしたねーwwww 『テメェなんかの顔はもう見たくねえんだよ』wwwwwww」
男「やめろォ!」
犬「って事で、私も安心して成仏できますよ!」
男「あ、あぁ」
雌「パパ! パパ! アタシ、男さんと幸せになるからね!」
男「ちょ!?」
犬「あはははは! 孫ができるのを、あの世で楽しみにしていますよ!」シュン!
雌「///」
男「……ええ~~」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 00:38:21.84:zBU6cB7z0
男宅
男「……えっと」
雌「男さん」ジリジリ
男「お、面白いオヤジだったな」
雌「アタシ、アンタの子供産みたい」
男「ちょ、ちょっと待って! 心の準備が!」
雌「男さん!」ガバッ
ガチャ
犬「ただいま~」
男・雌「!?」
犬「え、あ、いや……なんか、タイムリミットは来年の今日だったらしいですwwwwww」
雌「wwwwwww」
男「……ふッざけんなああああああああ!!」
終わり
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 00:41:51.85:hxMN16Pi0
犬「きったねー部屋ですね」
男「何様なの」
犬「あれ? 何か忘れてません?」
男「なんだよ」
犬「お茶ですよ。お・ちゃ!」トントン
男「本当に何様なの」
コポコポ
犬「やっすい茶葉ですね。まずい。ってかこれ、ティーバック?」
男「何度でも言うよ。本当に何様なの」
犬「wwwwwwwwwwww」
男「仮にお前が美少女だとしてもそろそろ限界だったと思うよ、俺は」
犬「まぁ、落ち着いて」
男「うるせぇ」
犬「そう、で、私恩返しに来たわけなんですけれども」
男「何かしてくれんのか?」
犬「あざーーす」
男「おう」
犬「……」
男「……」
犬「……」
男「えっ?」
犬「えっ?」
男「終わり?」
犬「はい」
男「いやいやいやいやそりゃねーだろ!」
犬「つっても一回メシ奢ってもらったくらいでそんな恩義も感じてませんし」
男「じゃあお前わざわざ人化してまで何しに来たの」
犬「いえね、神様が『恩返しの為なら人化してやってもいいけど、どうする?』って仰ったもんですから」
男「うん」
犬「人間生活エンジョイしたいし、いいかなーって」
男「出てけ」
犬「家がないんで」
男「知るかよ。大体なんで男かなぁ。女の子だったら、平気……ではないけど、まぁ歯食い縛りながら接待してたと思うんだけど。あれ? 恩返してもらってんのに接待っておかしくね?」
犬「まぁ、そうは仰いますがね」
男「なんだよ」
犬「仮に、犬耳でわんわんわふぅな美少女が男さんの家に恩返しに来たとしましょう」
男「うん」
犬「その時、男さんは犬耳美少女の目を見て話せますか? っていうか女の子と会話したことあります?」
男「あるよ」
犬「ほう。どんな?」
~~~
女1「体重なんキロあるの?」
男「きゅ、きゅきゅきゅ98キr……キロ」
女2「キモーイ」
女1「ブター」
男「ブヒヒッwww」
~~~
犬「会話じゃねえwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
男「笑ってんじゃねぇよ」
犬「いや、失礼。想像の遥か下方を行かれましたもので」
男「確かに俺が間違っていたのかもしれない」
犬「でしょう」
男「犬耳美少女が来たところで、にゃんにゃんはおろか、手を触れることもできないだろう」
犬「そうですよね。そんな度胸があったら無職童貞やってませんよね」
男「なんでいちいちトゲがある言い方しかできないの」
犬「ほら、パソコンの前に座ってる貴方! 貴方のことですよ!」
男「悪かった! 俺が悪かったから煽らないで!」
やめて!
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 19:39:04.04:AD84eotR0男「確かに俺が悪かったよ。身の程を弁えずに夢を見た俺が悪かった」
犬「うんうん」
男「でも、これはねーだろ! 恩返しってこんなんだっけ!? 違うよね! 俺にはなんのメリットもねーもん! チェーン破壊されて、その上グチグチ文句言われただけじゃねーか! 恩を仇で返すってレベルじゃねーぞ!」
犬「男さん」
男「なんだよ!」
犬「息が超クサイです」
男「あqwせxdcrfvtgyふじk!!!」
犬「男さんをイジるのにも飽きましたね」
男「ああそうかよ帰れよ!」
犬「そろそろいいかな……おーい」
男「なんだよ」
ドタドタドタ
雌「チョリッスwwww」
男「!?」
犬「ほら、ごあいさつ」
雌「クッセェwwwww この部屋超クッセェwwww」
犬「よくできました」ナデナデ
男「どの部分が!?」
雌「んー?」
男「あ……」
雌「んんんー?」ジー
男「あああああのあの……」
雌「ギャハハハハハハ! いーくん、今の見た!? 超目反らしてんスけど~~wwwww」
犬「そうだね」
雌「キモーイwwwwww」
男「な、なんですかこの方は」
犬「私の雌犬です。ついでに人化してもらいました」
男「ファック!!」
雌「ねぇいーくん、あたしもうここいたくないよぅ」
犬「そうだねぇ。クサイからねぇ」
雌「クサイクサイ!」
男「帰れよおおおおおお!!」
犬「さてと、それじゃ行きますよ男さん」
男「はい?」
犬「私達は、これから街へ向かいます。何分、元が犬なものですからね。人間の交通機関はよく分かりませんし、お金も持ち合わせていないんですよ」
男「なんで俺が!?」
雌「お願い~」
男「うぐっ」
犬「ほら、早く立って」グイッ
男「俺はそんな……あらヤダすごい力!?」
犬「ここが原宿ですか」
男「おらこんなオサレなとこ来たことねえだよ」
雌「すごい! いいにおい~」
犬「一通り見て周りましょうか」
黒人「HEY!」
男「ヒィ!?」
犬「おやおや。変わった体色の人間もいるものですねぇ」
黒人「オニイサンカッコイイネ! オニイサンタチニダケイイモノミセテアゲルヨ!」グイッ
男「いててててててて!」
雌「いいものだって! なんだろね、いーくん!」
犬「楽しみだねぇ」
これはひどい もっとやれwwww
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 20:18:31.32:AD84eotR0犬「ほう……」
雌「見て! 着てみた! かわいい? かわいい?」
犬「あまり私の趣味にあったお店ではありませんねぇ……」
雌「きゅうん……いーくん、ごめん」
男「あの~入り口塞がれてんですけど。何か買うまで帰れない雰囲気ですけど」
犬「そうですか……ではこれなどどうです?」
男「何このでかいパーカー!? なんでこんなのが十万とかすんの!?」
雌「絶対似合うよ~~wwwww」
男「嘘つけ!!」
犬「そうは言っても、買わなければ出られませんよ?」
男「こんなもん買えない……」
雌「じゃあ、あの人にお願いしてくる! そんで別のお店いこ!」
黒人「?」
雌「どいてもらってイイスか~?」
黒人「ンフフフフ」ガシッ
雌「んあ?」
男「ちょ、おい! どっか連れてかれるぞ!」
犬「へぇ(笑)」
男「なんでお前そんなに冷静なの!?」
犬「たかが人間相手にそこまで焦る必要もないでしょう」
男「とうとう本音隠さなくなったなお前」
雌「え? くれるの?」
黒人「Yes!」
雌「ねぇ! なんかキラキラもらった!」
黒人「カワイイカラネ!」
雌「ありがとー!」
男「あれ?」
犬「よかったですねぇ」
雌「いーくんにあげる!」
犬「要りませんよ。そんな趣味の悪い」
雌「ごめん……」
男「あのさぁ……」
犬「なんでしょう」
男「……いや、なんでもねーや」
犬「はぁ、そうですか。では、他のお店も見ましょうか」
雌「うん!」
~~~
犬「いやいや、楽しかったですねぇ」
雌「うん!」
男「服って高いのな……。エロゲ程高いものもそうは無いって思ってたが……」
犬「有意義な一日を過ごせてよかったじゃないですか」
雌「そうだぞブタwww」
男「うるせーよバカ犬共! ……っと、そういや犬、お前は自分の服買ってねーよな? 雌と俺の分ばっかりで」
犬「なかなか気にいった服がありませんでしたもので。この身長ですから、それだけで選択肢がかなり絞られるのですよ」
男「そうかよ! イケメン高身長様は違いますね!」
雌「wwwww」
男「笑ってんじゃねえ!!」
犬「ふふふ……」
その晩、男宅にて。
男「zzzz」
ブツ……ブツブツ……
男「んむ?」
す…い。でも、これもあの……
ううん。パ…人さん…もん。それに、あの……優し……
そう…私は…信じ…
男(犬共が寝てる部屋か。帰る算段でもしてんのかな)
男(早く帰ってくれないかなぁ)
男「zzzz」
翌朝
雌「起きろブヒ~www」バサッ
男「ギエピー!」
犬「遅いじゃないですか」
男「……今、何時?」
犬「5:30」
男「バカじゃないの!?」
犬「いえいえ、なんせ私共、犬なものですから。ほら」
雌「あおーん!」
男「だから何!?」
犬「掃除しましょう」
男「意味がわからない」
犬「だって、暫く私達が生活する場所がこんなに汚くては、ねぇ。犬というのは、存外にキレイ好きなものなのですよ」
雌「クサくて汚いの、イヤ!」
男「そうか。頑張れ。俺は寝る」
犬「そうですか。では手始めに、男さんの部屋から掃除を始めるとしましょうか」
雌「なんか人形いっぱいあるんスけど。キモイwww」
犬「おや、この箱は何でしょうか。なになに、『今宵も召しませ! アリステイr』
男「分かった! 分かったから物色するのやめて!!」
男「俺の部屋は俺が掃除するからな!! お前らは自分の部屋と台所な!」
犬「必死ですねwwwwww」
男「悪いかよチクショウ!」
雌「wwwwwwwwwwwww」
男「もう帰ってくださいよォォォォ!!」
犬「さて、始めましょうか」
雌「いーくん、あたしどうすればいい?」
犬「トイレ掃除でもしててください」
雌「わかった!」
男「はぁ……大体こんなもんかな」
ジャバジャバジャバジャバ ギャー
男「!?」
雌「壊れた! アタシなんもしてないのに! なんもしてないのに!!」
男「はぁ!?」
犬「あらら」
男「大洪水じゃねぇか……よっと」
キュッ
男「これ、元々壊れてんだ。水出した後、自力で捻りを戻さねーと水止まんねーんだわ」
犬「ホント、使えませんねぇ」
雌「そ、そうだぞ、ブタ!!」
犬「いや、私はお前に言っているんだよ」
雌「え?」
犬「はぁ……。折角人間の身体を手に入れたというのに、その様はなんだ?」
雌「ご、ごめ」
犬「何かあればすぐに謝る。尻尾を振って誤魔化す。反省していれば何もかも許されるとでも? 学習しない駄犬は大嫌いなんだよ」
雌「う」
男「わ、悪いな犬! これは俺の落ち度だ! こんなもん、初見じゃ人間だってわかんね―よなwww」
雌「……」
男「雌もごめんな、伝えとくべきだったわ」
犬「……ふん」スタスタ
男「こ、こえぇ……」
雌「……いーくん、怖い?」
男「え?」
雌「怖い?」
男「あ、あぁ。すっげー怖かった。なんか、野生の迫力ってのを思い知らされた」
雌「う、うぅ」ポロポロ
男「!? な、泣くなよ! 俺が悪かったから!」
雌「……ッちげーよ、バカ!! そんなんじゃない! お前にはカンケーないんだよ!!」ダッ
男「……何だってんだよ、クソ」
犬「やれやれ、疲れましたよ。客にこんな事をやらせるなんて、恥ずかしくはないのですか?」
雌「そーだそーだ!」
男(なんだコイツら……すっかり元通りじゃねえか)
犬「さて、お腹が空きましたね」
男「お前は昨日から何も食べてないからな。雌はバクバク食べてたっつーのに」
雌「わりーかよ! キモブタ!」
男「わりーよ! 遠慮しろよ!」
犬「ふふふ。小食なのですよ、私は。そもそも私は野良犬ですから、何も口に入れられない日などいくらでもありましたからね。その生活に慣れてしまったせいで、あまり多くは食べられないのですよ」
男「大変だなぁ」
犬「そういうわけで、たまには贅沢させてくださいな。ほら、早く」
男「クソ、分かったよ。そんな事言われたからには、腕によりをかけて……」
雌「アタシも行くッスwwwwww」
男「は?」
雌「いーくんに、私が作ったのを食べさせてあげたい」
男「……そっか。分かった」
ザクザク、コトコト
男「いーくん、ねぇ」
雌「なんだよ、ブタ」
男「やっぱ、顔って大事?」
雌「なんで」
男「いや……。犬って、結構キツいだろ」
雌「……」
男「それでもお前が惚れてんのは、やっぱり顔がいいからかなって。いや、犬の顔なんて分かんねーけど」
雌「お前……!!」ガシッ
男「な、なんだよ」
雌「……なんでもない。お前は悪くない」
男「なんだよ。なんなんだよ……」
雌「これは、こうでいいの?」
男「あ、あぁ。ちょっといびつだけど、食べる分には問題ない」
雌「わかった」
男「できたぞー」
雌「できた!」
犬「待たせてくれますねぇ、全く」
雌「はい、いーくんの分!」
犬「ほうほう」
男「お前の分はな、雌が頑張って作ったんだぞ」
犬「……どこに行っているかと思えば」
雌「……ごめんね、いーくん。ガマンできなかったの」
犬「お前という奴は、本当に」
雌「あのね。辛い、よね。でも、見てくれるだけでいいの。最後に、いーくんのために」
犬「っく……!!」
男「おいおい、最後って大げさな……」
犬「ふざけるな!!」
男「!?」
男「!?」
犬「お前は……お前は!! こんな、こんなモノを私に食べろと言うのか!? なんだコレは! きちんと切れていない! 繋がっているじゃないか……! ハ、ハハハ。こんな無様なモノを、くっ、私に……」
雌「う、うぅう……」
男「……良い加減にしろよ!! お前なぁ、これは雌がお前のために、頑張って教わりながら作ったんだぞ! それを、お前は……! 消えろ!!」
雌「男さん!!」
男「消えろよ! テメェなんかの顔はもう見たくねえんだよ!!」
犬「……そうですか。では、お望み通り、消えるとしましょう」スッ
雌「やだ! やだよぅ!」
犬「来るな!!」
雌「!!」
犬「来ないで……くれ。お願いだ」
……ガチャ、バタン。
雌「あ、あああ。あああああああああああああああ!!」
男「お、おい……」
雌「やだ。やだよおおお!」
男「……しょうがねぇな。追うぞ!!」
雌「ダメえええええええ!!」ギュッ
男「どうしろと!?」
雌「うっぐ……うぇえ……」
男(リア充なら、こんな時も気の利いた言葉くらいかけてやれるんだろうな……)
雌「う、うぅぅ」
男(頭撫でてやればいいのかな……クソ、手が震える)
雌「……パァ……」
男(おりゃあああああああ!!)ナデナデ
雌「……う」
男「ごごごごごごめん! 調子に乗ったわ!!」パッ
雌「もっと」
男「え?」
雌「もっと……強くてもいい」
男「え、あ……はい」ぐしゃぐしゃ
雌「ん……」
男「い、痛くないですか」
雌「きもちい……」
男「……落ち着きました?」
雌「うん。ありがと」
男「……冷静に考えるとさ」
雌「?」
男「犬、普通じゃなかった。アレ、怒ってたっていうか……半分、泣いてた、よな」
雌「……」
男「俺、言い過ぎちゃったな。謝らなきゃ」
雌「優しいね」
男「は?」
雌「優しいよ。パパの言った通りだ」
男「……パパ?」
雌「……ああああああ!? 違う! 違うの!!」
男「kwsk」
――公園――
男「はぁ、はぁ」
犬「……おや?」
雌「パパ! パパァ!」
犬「……そっか。話しちゃったのか。お前は本当に馬鹿な子だね」
雌「ごめん……なさい」
犬「だけど、本当に優しい子だ。私の眼に狂いは無かった、かな」
男「全部、聞いたよ」
犬「そうですか」
男「お前が本当に恩返しをしに来たって事も。俺を心配してくれてたって事も。お前がもう死んでるって事もさ」
犬「あらら」
なんてこったい
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:43:43.40:AD84eotR0男「本当にゴメンな……! 俺、そんな事知らなくて、うぐ、あんな酷いこと……」
犬「ふふふ。いやー、あれは危なかったですねー。まさか娘の手料理が出てくるとは。歳の所為か、涙腺が緩んでしまいましてね」
雌「パパ……」
犬「食べたかったなぁ。でも、もう死んでるものなぁ」
男「なんでだよ。なんでお前、自分一人が悪者みたいな……」
犬「懐かしいなぁ」
男「?」
犬「ここで、貴方は私にご飯をくれたんですよね」
男「そう、だったな」
犬「いやいや、野良犬生活も長いとはいえ、あの時は本当に危なかった!! あー、私もここで死ぬのかー。あの子たちも飢え死にかなー。父親失格だなーなんて思いながら」
雌「そんなことない……!」
犬「そこで、白いご飯を恵んで下さったのが、男さん。貴方だったんですよ」
男「あの時は、たまたま余ったからで」
犬「理由は関係ありません。貴方が、私共の命を助けて下さった。それは確かなのです」
雌「男さんのおかげで、アタシ達も独り立ちできたの」
男「俺は、お前らが思ってる様な人間じゃ」
犬「ほら、そうやって。だから教えたくなかったんです。だから無職童貞なんですよ」
男「無職童貞は関係ねーだろ!!」
犬「それで、どうにかこうにかこの子達も独り立ちして、私も肩の荷が下りたって時です。いやいや、トラックにバーン! とやられちゃいましてね。アレは死ぬかと思った。いや、死んだんですけれども」
男「……」
犬「そこで神様が現れたんです。お前は死んだから、さぁ選べ。人を憎んで復讐するか、人から受けた恩を忘れずに返すか。どちらだって言うんですよ」
男「それで」
犬「ええ、後者を選んだワケです。ところが、神様も万能じゃないらしくて、恩返しの方法は自分で考えろ、なんてのたまいました」
雌「割とテキトーだよね、神様」
犬「そこで、私は男さんの人生をちょろっと見せてもらったんです。ほんの24年程」
男「殆ど全部じゃねーか!」
犬「そしたらどうです。無職童貞、彼女居ない歴=年齢。惨めなもんですねwwww」
男「え? お前、素で性格悪くね?」
雌「照れ隠しだよ!」
犬「うるさい」
雌「ごめんなさい……」
犬「で、犬の頭で必死に考えた結果がこれだったんです。その原因となっている女の子絡みのトラウマを取り除いてやろう、と」
男「めっちゃエグられたけどな!」
雌「ブタ!」
男「やめろ!」
犬「その辺りは、何分時間が無かったもので、荒療治って事になっちゃいましたが。私のタイムリミット、今夜なんですよねぇ」
男「……ま、確かに効果はあったよ。女ってのも、そう悪い奴ばかりじゃないって分かった。口は最悪だったけどな」
犬「そこは、その子のお陰です。頭は壊滅的に悪いけれど、本当に優しい子ですから。神様も娘の分はおまけしといてくれました」
男「……確かにな」
雌「うるせーブタ!!」
犬「で、私が娘に厳しくしていた理由なんですけれども」
男「あぁ。そこは俺も気になってた。雌は何も教えてくれないしよ」
犬「……すいません! ぶっちゃけテストしてました!!」
男「はぁ!?」
雌「///」
犬「いやいや、娘がパパの恩人さんの所にお嫁に行くーって言うもんですから、そこは親としてと言いますか、娘の人生……犬生? のためと言いますか……」
男「え? え? おま……」
雌「……見てんじゃねーよ」
犬「あんだけやって怒ってくれない様だったら、とりあえず女性恐怖症だけ治しておしまいって感じだったんですが、どうしてどうして!」
犬「いーい男っぷりでしたねーwwww 『テメェなんかの顔はもう見たくねえんだよ』wwwwwww」
男「やめろォ!」
犬「って事で、私も安心して成仏できますよ!」
男「あ、あぁ」
雌「パパ! パパ! アタシ、男さんと幸せになるからね!」
男「ちょ!?」
犬「あはははは! 孫ができるのを、あの世で楽しみにしていますよ!」シュン!
雌「///」
男「……ええ~~」
男宅
男「……えっと」
雌「男さん」ジリジリ
男「お、面白いオヤジだったな」
雌「アタシ、アンタの子供産みたい」
男「ちょ、ちょっと待って! 心の準備が!」
雌「男さん!」ガバッ
ガチャ
犬「ただいま~」
男・雌「!?」
犬「え、あ、いや……なんか、タイムリミットは来年の今日だったらしいですwwwwww」
雌「wwwwwww」
男「……ふッざけんなああああああああ!!」
終わり
乙乙
面白かったぜ
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 00:48:01.65:ID/Zq+FF0面白かったぜ
最後ひでぇwwwwwwwww
しかし八頭身イケメン犬耳か……アリだな……
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 01:17:56.27:xbqL68aIOしかし八頭身イケメン犬耳か……アリだな……
乙!
面白かった!!
面白かった!!
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現実で野良犬にエサをあげないで下さい。
しかしキモデブに可愛い彼女とか絵面的にダメだな。
どんな外見年齢設定なんだい?