- 42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 05:45:54.67:Z86g+GqH0
女「オレはもう一度 この手で 抱・き・し・め・る・ために♪ 地獄から蘇ったぜ なにか文句があるかよ~♪」
男「全然ないわ あたしあなたに 抱・か・れ・る・た~めに♪ 生まれて きたんだから もうどうってことな~いわ~♪」
男&女「死・者・と生・け・る・者・が・今・恋・の・も・と・に・ひ・と・つ~~~~♪」
「ラーララ♪ララ♪ラブ・ゾンビ♪ラブ・ゾンビ♪」
男友「お前らほんとその歌好きなー」 ジュースズゾゾ
女友「でもパート逆だと思うわ―」 ウタホンペラペラ
デデデデン 87点!
男「あーなかなか90点越えないなー」
女「男くん男くん!次ノゾミ・カナエ・タマエ歌おうよ!」
男「えー、あれお前の葬式思い出して俺泣いちゃうよ」
女「私は男くんと結ばれた日だからいい思い出だけどなー。送信っと」 ピッ
女友「あの日の同級生の奴らの顔は傑作だったわ―良い気味よバカ女共」
男友「白装束姿で起き上がった女ちゃん色っぽかったなーチラリズムがもうってイタイイタイ」 オンナトモニミミヒッパラレル
男&女「ある日寂しい少女が~♪」
【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」
【速報】尾田っち、ワンピース最新話でやってしまうwwww
【東方】ルックス100点の文ちゃん
【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?
韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 06:10:25.65:Z86g+GqH0
アリガトウゴザイマシター
女「あ゛ーーーwwwあ゛ーーーwww」
男「んん゛。ちょっと歌いすぎたなーのどいてー」
女友「女、はしたないからヤメなさい」
女「え゛ーーーwww」
男友「女友お母さんみたいだぞ。高校生料金で良かったのかよってイッテーなチクショウ」 オンナトモニケラレル
女友「女の子なんだからもっと恥じらい持ちなよー女はそういうとこいつまでたっても疎いんだから―」
女「何言ってんのー人間いつどうなるかわかんないんだよー恥や外聞なんて気にして損するのつまんないよー」
男「女がそういうこというと説得力あるなー飯どうしようかー」
男友「あー、サイゼリヤでいいんじゃないか―?安いし、それにこんな時間でもやってるだろ」
女友「あそこイタリアンワインとカフェを売りにしてるけど頼んだことないわね・・・女に習って頼んでみようかしら」
男「いやいや俺たち学生服だしねー・・・って女どこ行ったー?!おーい!!女―?!女どこだーー!!」
女「いやーごめんごめんw喉乾いたからお供え物にあったジュース貰ってきちゃったwww」
女友「あんた自分の事故現場よく見れるわね」
男「たくましすぎるだろ・・・まぁ一言言ってけよ。勝手に居なくなると困るから」
女「やーんわたし愛されてるー」
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 06:32:05.87:Z86g+GqH0
イラッシャイマセー 4メイサマデスネー コチラドゾー
男友「あーワリ、俺トイレ、外歩いてたら冷えちゃった」
女友「カラオケで行っときなさいよ全く」
男友「おかぁさん、ごめんなさい・・・睨むな睨むな冗談だって。俺ペペロンチーノね」 ガタ タッタッタッ
男「俺トマトクリームスパゲティにしようかなー」
女「えーっとえーっと・・・じゃあ私この鶏肉にチーズ乗ってるヤツ!」
女友「男くん相変わらず魚系好きねー私魚介のドリアにしよーっと。女はなんで鶏肉?ダイエット?」
女「死んだ人間はお肉は鶏しか食べちゃダメなの。だからもうダイエットって単語出さないで」
「あ、ボタン押させて押させてーーー!アチョー!」 ピッ
ゴチュウモンオキマリデショカー
トマクリ、ギョドリ、チキチー、キノスパデスネー ショーショーオマチヲー
男「深夜だからってあの接客は適当過ぎなんじゃないかなー」
男友「ふぅ~すっきりした。注文終わった?」 スタスタ ガタッ
女友「うん、キノコスパゲティにしといたから」
男友「?おれきのこ食えないよ?」
女友「知ってる。ねえ水4つ取ってきてよ。一番近いんだから」
男友「・・・・・・」 ガタッ スタスタ
女「ねーねーこの竹みたいなのもう一個取ってきていいー?居合い切りってやりたーい」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 06:48:47.22:Z86g+GqH0
女「スパゲティとパスタの違いってなんなのかな?」モグモグ
男「えー?うーん・・・パスタは・・・スパゲティを・・・カッコよく言ったヤツ・・・?」 ズルズル
女「あー、ジーパンのことジーンズとかデニムって言うみたいなね」
女友「え。女ジーパンって言うの?え、嘘」 カタン
男友「ふっふっふ・・・教えてやろう小僧ども。日本で「スパゲティー」と呼ばれるものは、「パスタ」の中の1種類。でだな・・・」 スパゲティクルクル
ー静寂ー
男「俺もジーパンって言うけど?おかしいかな?」 カチャ ミズコクコク
女「ジーパンだよねえ。ジーンズ()デニム()」 クチモトフキフキ
女友「いやいや、ジーパンって言ってるのはお母さんたちの年代だけだって」 オサゲシマスネー ハーイ
男友「聞けよお前ら俺の話。あと女友こそジーパンって言うべきだろ」 スパゲティクルクル
ー静寂ー
男「てか今更言い方変えれないよー馴染んじゃって。あーあと女、スパゲティはパスタのうちの一種なんだぜ」
女「へーそうなんだー男くん物知りー博識ー天才ー」
男友「あれ?それ俺が言ったヤツじゃね?あれ?おかあさーん、あの二人がいじめるー」 ウヘーン
女友「黙れクソガキ。さっさとスパゲティ食いきれよ。みんなお前待ってんだよ」
男友「・・・ウヘーン・・・」 ズルズル・・・モグ・・・モグ・・・
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 07:10:09.32:Z86g+GqH0
アリガトウゴザイマシター
男「ふぅ~食ったな~。男友ー、今何時だー?」
男友「あー・・・、3時20分ってとこだ」
女友「え?!もう?!なんで?!早くない?!」
男「そっかー・・・じゃあここらでお開きかなー・・・」
男友「・・・・・・」
女友「・・・いや、でもさ!もうちょっと時間あるんじゃないの!女の言う時間なんて宛になんないしさ!」
女「えー、私そんなに抜けてないよー!自分の死亡時刻ぐらいちゃんと覚えてるって!毎日確認してたんだから!ww」
女友「え・・・イヤ。ヤダよ・・・だって、こんなの普通すぎるじゃん・・・昨日と全然一緒じゃん・・・」
男友「女友・・・」
女「・・・女友ちゃんありがと・・・。でもね、私にとって、私が死んでからの49日は本当に楽しかったんだよ!」
「私、この数日間が、本当に、人生の楽しい部分の全部だと思えるんだ!って、もう人生終わってたや・・・テヘヘ・・・」
「でも私、いま心から言える・・・。死んでからのほうが、幸せだったって!」
男(今から49日前、午前3時32分。女は、死んだ・・・)
(原因は交通事故。即死だった。だが死体を初めて目の当たりにしたとき、すべてが悪い冗談だと思えるほど、女は美しいままだった)
(女と出会ったのは、いや、その前からクラスメートとしての認識はあったが、彼女と初めて話したのは、クリスマスだった)
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 07:24:50.68:Z86g+GqH0
クリスマスの日・・・
部活もやってない、1年後に控えた受験対策の課外授業にも参加していない俺は
例年通り家でダラダラと過ごすはずだったが、
学校に大切な忘れ物をしたのに気付き、寒い中自転車を漕いで朝一の学校に向かった・・・。
机の中に、男友から借りたムフフな雑誌を入れっぱなしにしていたのを昨日の晩に思い出し、
朝一で回収しなければならないと思ったからだ・・・。
男「さみー・・・やってらんねーよまったく・・・」
「でもあれないと俺聖夜乗りきれないしなー・・・」
<ドアガラガラ ドンガラガッシャッコーン>
男「え?!何?!え?!」
女「ェ・・・ァ・・・その・・・あの・・・その・・・」
背が低く、長すぎると思える黒髪に包まれているような風貌のその少女は、
俺の大事なむふふ書物を一つ打き抱え、残りを床に散乱させながら、
震えながら、俺と目を合わせては逸らしながら、今にも逃げ出しそうに、泣き出しそうに、座り込んでいた
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 07:31:30.11:Z86g+GqH0
男「・・・・・・」
女「ぇと・・・ぁの・・・これ・・・一冊床に落ちてて・・・」ビクビク
「それで拾ったら・・・その・・・」 カァァァ
「その・・・えと・・・ごめなさ・・・ごめんあさぃ・・・」 グス・・・
俺は羞恥心でいっぱいになったが、俺よりも恥ずかしそうに佇む彼女を見て、
なんだか・・・「許そう」っと、思ってしまっていた
男「いやー・・・ハハハ・・・恥ずかしいもの見られちゃったね・・・」
「とりあえずーこれ、片付けようか。部活やらで他の人に来られると俺、困るし」
「手伝って・・・もらえるかな?」
少女はコクンと小さく頷いた
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 07:46:12.75:Z86g+GqH0
それから教室を片付け、簡単に自己紹介を済ませた俺は、ブツも回収できたので家に帰るつもりだった
良い男ならここで彼女に声でも掛けるのかもしれないが、卑猥な雑誌をカバンに忍ばせながら少女を食事に誘うなんて俺には出来なかった
しかも、忍ばせられていない。この子にこのことを誰にも言わないよう念を押して帰ろう。できるだけ早く帰ろう
女友「あれー?男じゃん。それと・・・女・・・さん?何してんの?」
男「え、あぁいや、えと・・・忘れもんしてさ・・・はは・・・」 ナンデコノタイミングデクルンデスカー
女友「何を?」
男「」 ナンデソコツッコムンデスカー
女友「・・・あ、うちのバカ絡んでんでしょ。ねぇ何?怒んないから言ってみ?ん?」
男(男友すまん・・・俺のために犠牲になってくれ・・・お前俺よりリア充だし別にいいよね・・・) エーットデスネ・・・
女「ぁの・・・でば・・・が・・・」 ビクビク
女友「 え ? 」
女「ひ・・・」 ビクッ
女友「っと、ごめんごめん。聞き取れなかっただけ。もういっかいいってくれる?」
女「えと・・・私のふでばこが・・・里・・・さん?のカバンに入っちゃってて・・・それ届けに来てくれたんです・・・」
俺はこのときから彼女を意識するようになった
というか惚れた。
知り合って間もない、名前もうまく覚えられてないような相手の為に、嘘をついてくれる彼女が好きになってしまった
ここからが大変だった
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 07:56:10.56:Z86g+GqH0
女は女友をうまくいなしたあと、そそくさと帰ってしまった
俺は校門を出る彼女の姿が見えなくなるまで、じっと彼女を窓から見つめていた
そして部活に行くという女友を引き止め、事の真相を全て話した。男友、スマン
真相の中には、俺の受けた感情も入っていた
男「頼む!女さんと仲良くなってくれ!そして俺とも仲良くなるようにしてくれ!!」
女友「あんたそこまで甲斐性ないとはね・・・まぁいいよ。いい子そうだし」
男「マジで!!」 マジデ!!
女友「そのかわりあのバカから貰ったもん全部出しなさい」
「値段計算してその値段だけ貢がせてやる」
男友改めてスマン
冬休み中のお前の苦労はいかばかりだったろうか
女友は後に、正直最初は面白半分で声をかけたと女に謝っていた。女は穏やかな笑顔で許していた。彼女の葬式から3日後の夜だった
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 08:05:15.84:Z86g+GqH0
ある日女友からメールが入った
「学校で女と待ってる」
簡素なメールのせいだったが、文面のせいで女が俺を待ち焦がれているのかと期待してしまった
女はもちろん俺なんて待っていなかった
ヨーシオレオチツケ サワヤカニ サワヤカニ
男「おはよう!」 ガラガラ
女友「あ、女ちゃんトイレ」
男「」 カァァァ
女友「あんたこのクソ寒いのに元気いいわねー」 ニヤニヤ
男「・・・で、なんだよ。なんか用かよ。用無いなら帰るぞ」
女友「あ、拗ねちゃうんだ。ふ~ん。これから女とご飯食べに行こうと思ったから誘ってやろうと思ったのに」
男「すいませんごめんなさい行きます行かせてください」 ペコペコ
女「・・・え・・っと・・・え・・・?」
女友「あー女ちゃん気にしないでー。こいつ覚えてるー?」
男「」 イルナライルッテイエヨハジカイタジャネーカクソガフck
女「うん・・・覚えてるよ・・・男くんだよね?」
彼女は俺の名前を正しく覚えていてくれた
それだけで俺の心は躍った
エロ本の恥も、今の恥もどこかへ吹き飛んでいた
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 08:12:53.20:Z86g+GqH0
その後俺達は今となってはお馴染みとなったこのサイゼリヤで一緒にご飯を食べた
女ちゃんは女友にはいくらか心を許していたみたいだが、俺との会話はまだぎこちなかった
女友には帰りの際に「もっとがんばれよお前は草食系でさえないね霞でも喰らい続ける気?」と辛辣な言葉を浴びせられた
俺はこの日の夜、女に鋭い牙を向けるためにイメージとレーニングに没頭した
いつしかそこに男友も加わり、俺達は4人で活動することが多くなった
女友は男友への罰だからと女へも色々奢らせようとしたが、女は全て断っていた
彼女は自分の分は必ず自分で出すが、人に奢ろうとすることはあった
俺はそれがなんだか友達料金みたいで嫌だった
彼女の敬語混じりの話し方も、なんだか距離を感じる要因の一つだった
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 08:22:45.73:Z86g+GqH0
女は正月は親御さんと過ごした
俺の初詣の誘いはものすごく申し訳なさそうに断られた
その丁寧な拒絶が俺の心を傷つけ、一時期はものすごく落ち込んだ
しかしその一週間後ぐらいに、彼女から誘いの電話があったときは天にも昇る想いだった
結局いつもの4人で遊んだが
冬休みがあけて、学校でも女とは会えば挨拶したし、二人の時は話したりもした
しかし彼女から俺に話しかけてくることはなかった
原因は俺達にあった
女友「・・・なーんでこんなことになっちゃったかなー」
男友「いやー、オンナって生き物は怖いはやっぱり。コエーコエー」
男「お前ら真面目に考えてくれよ・・・あーくそ・・・」
男友「わりーわりー、でもどうすりゃいいのか分かんねーよこんなもん」
簡単に言うと、女はクラスの「よろしくない女子達」に睨まれた
影で嫌がらせを受けているらしいっと女友が教えてくれた
女はもちろん何も言わなかったし、俺も何も聞けなかった
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 08:33:42.40:Z86g+GqH0
後に聞いた話・・・、これも葬式のあと、起き上がった女から聞かされた話だが、
なんでもそのよろしくない女子のなかに俺に好意を抱いていたオンナがいたらしい
それで俺と親しそうな女がいびられだしたそうだ
これには身に覚えがあった
俺は冬休みがあけるちょっと前、一人の女子に告白らしきものをされたことがあった
清楚そうな可愛い子だったが、俺はそれを振った。俺には女しか見えていなかった
あの女子が女に陰湿な嫌がらせをしていたかと思うと腹がたった。腹が立ってしょうがなかった
そして俺は、そいつのせいで女が死んだんじゃないかと考えた。あんな見通しのいい交差点で普通死んだりしない
俺は女に詰め寄ったが、
女「もー違うってばーwww私は事故で死んだの!」
「男くん考えすぎだよーその人のせいでもないし、男くんのせいでも絶対にない!」
「それに、自殺した人はこういう風に生き返らせてもらえたりしないって!」
と明るく否定され、俺はそのオンナを恨むことやめようと思った
許したわけではないが、そのオンナを恨む時間を彼女の為に使おうと思った
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 08:39:52.42:Z86g+GqH0
女が生きて登校していた頃に話はもどるが、
彼女が陰湿な嫌がらせにあっているということはクラスの暗黙の了解のようなものになっていた
しかしクラス全体からのいじめに加速するということもなく、ただただ小さな嫌がらせが続いただけだったので
俺や男友、女友も特に何も出来なかった
なにより、女が何もないように生活しているので、時々嫌がらせが本当に起こっているのかさえ疑問に思えた
しかしそんなある日、ソレは起こった
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 08:52:10.23:Z86g+GqH0
女が死んだ
交通事故で即死
通夜の日程が言い渡された
担任は涙を浮かべていた
俺はなにがなんだかわからなかった
朝のHRが終わったあと、男友が俺に駆け寄り、ずっと「大丈夫か?大丈夫か?」と言っていた
女友は頭を垂れてただじーっと座っていた。ああいう姿は初めて見た
サワサワと妙に静かなと喧騒。集まってしくしくと泣き出す女子たち。あいつらは誰だ?あんな奴らと女が話した記憶がない
もしかしてあいつらが女を?いやもうどうでもいい。何をしたらいいかわからない。こんなところにいる場合じゃない
生前の女は几帳面な性格だったのか、携帯の電話帳に自分の家の住所を登録していた
俺は学校を抜けだした。女に、彼女に会いに行こうと、その考えが脳にいっぱいになった
だが彼女らしく、その登録された住所が間違っていた
俺は団地を延々歩きまわった。バス停のベンチに腰をかけた老婆たちのうわさ話に女が出ていた
事故だとか自殺だとかいい子だったとか暗かったとか色々言っていたがどうでもいい
女の家を聞き出し、俺は走った
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:01:57.32:Z86g+GqH0
女の家についた
押し入った
彼女の名を叫んだ
思えば俺は生前の彼女をいつもさん付けで呼んでいた
まったく、距離をとっていたのはおれだって一緒じゃないか
まったく俺って奴はまったく、惚れたのは俺の方だっていうのに
気づけば俺は女のお父さんに強く抱きしめられていた
俺は泣いていた。お父さんも泣いていた
女父「男くんだね・・・。あの子は病院だよ。会いに来てくれたんだね。うれしいよ。」
「あの子はいつも君の話をしていたよ。君と、君のお友達と、その彼氏くん・・・。良く夕飯の話題にでていた」
「君の話をするとき、あの子はすごくいい顔をしていたよ。君に何度も嫉妬した」
「あの子に会ってあげてくれ。あの子の髪を撫でてあげてくれ。自慢なんだ。僕の自慢」
この会話を女の家で聞いたのか、病院への車中で聞いたのか、病院で聞いたのか
俺はよく覚えていない
ただ、お父さんの言葉のぬくもりが、俺を落ち着かせてくれていた
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:07:09.29:Z86g+GqH0
女は眠っていた
きれいだった
生きているという息吹は感じられないが
死んでいるとも思えなかった
ただただ彼女は、美しかった
微笑んでいた
今となって、あれは勘違いだったのかもしれないと思うこともあるが
俺には女が微笑んでいるように見えた
幸せそうに見えた
少なくとも俺にはそう見えた
涙は引いていた
俺は女が愛しくて愛しくてたまらなかった
髪を撫で、頬を撫で、彼女の目元に親指をなぞらせた
女のお父さんは席を外してくれていた
俺は彼女の手を握り、俺の頬へ当てた
その手は冷たかったが、俺はなんだか、その冷たさが、すごく心地よかった
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:14:33.72:Z86g+GqH0
彼女にこうして触れるのは初めてな気がした
それにしても、彼女の冷たい手のひらの、細い指のなんと心地よいことか
今まで触ってきた人間の感触、ぬくもりでは遠く及ばない
彼女の冷たいぬくもり、彼女の固くなった肌のやわさ
あぁ、彼女は冷たく、凛とした世界の住人になったんだ
死んだのではない。決して死んだんじゃあない
彼女はなにかに、高潔ななにかに選ばれて、この土色の美しさを得たに違いない
彼女は脱却したんだ。このつまらなく醜い僕達が必死に食らいついている世界から見事逃げ出したんだ
しかし
それにしても
どうして
どうして俺を連れて行ってはくれなかったのか
彼女をこんなに愛していたのに
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:17:41.54:Z86g+GqH0
そして運命の日が訪れた
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:28:44.33:Z86g+GqH0
俺は通夜の間、何を考えていたかわからない
なんだか物騒で凶悪なことを幸せの道と想い、一心不乱に考えていたような気もすれば
まさしく、遠い異国の僧が求める無というものに望んでもいないのに支配されていたのかもしれない
女友は泣いていた
彼女は責任感が強い
きっと、女が自殺したと思っているに違いない
自分がもっと気を使っていればと、思っているに違いない
お前、よくあの女子グループと言い争いしてたじゃないか。知ってるんだぞ
男友は女友にずっと寄り添っていた
お前はいつもおちゃらけているが、周りの人間の痛みがわかる男だ
自分の痛みをないがしろにする
口元にあざが出来ているが、それは学校を飛び出そうとした俺を止めようとしてできたケガだろう
どうして俺を咎めないんだ
そう考えると、俺という奴はまったく何も無い男だった
まったく俺には何も無い
やっとできた大事なものも、守ることも出来ず、受動的というものに甘んじ、見つめているだけだった
まったく俺には何も無い
俺は、ここで何をしていたらいいんだろうか
泣く資格も、何も無いじゃないか
彼女が起き上がった
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:39:53.16:Z86g+GqH0
彼女は起き上がった
誰も何も言わない
皆が彼女を見つめていた
空気が世界から消え去ったように、静かだった
彼女はキョロキョロと周りを見渡している
俺と目があった
あ、それた。おーい、俺はここだよ
すぐにまた、俺と目が合った
彼女はゆっくり
ゆっくりと
笑った
悲鳴、怒号、阿鼻叫喚、地獄絵図
泣き喚く女子高生 何を思ったか周りを蹴飛ばし我先にと逃げ出す男子高生
脳を無くしたように口を開ける教師 花輪の後ろに身を隠そうとして盛大にそれを倒す坊主 下敷きになる葬儀屋
彼女は、そんな時、彼女は
俺にむかって一歩一歩、ゆっくりと足を進めていた
まるで、ヴァージンロードを歩く花嫁のように
俺は、そんな時、俺は
彼女を見つめ、ゆっくりと、天使の羽のように、両手を広げた
そして、彼女に、最高の笑顔をむけた
こんなことを自分で言うのもなんだが、俺のかっこいい思い出なんだ
格好つけさせて欲しい
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:50:45.56:Z86g+GqH0
ヴァージンロードをゆっくりと歩く彼女
両手を広げ、彼女の到着を待つ俺
次第に二人の距離は縮まっていき、そしてあと一歩というところで、
俺は彼女の手をぐいっと引っ張り、自分の胸に彼女を押し込め、2本の腕で彼女を包んだ
俺は何も持たざる男だった
だが今、はっきりと俺の腕の中に存在するものがある
それが彼女だ それが女だ
もう一生、いや死のうとも、彼女を離しはしない 離れはしない
君のこの躰を離さない
君のお父さんの自慢の艶やかな髪も
生前ではありえなかた、俺をしっかりと見つめるその瞳も
そして、触れることはかなわなかったこの唇も
すべて俺のものだ
どこから言葉にしていたのかわからず、今となっては恥ずかしい限りだが
おれはそう言うと女と口付けを交わした
冷たい唇
女だけが持つ、他の人間ではありえないたったひとつの特別な固さ、冷たさ
長い長いくちづけ
彼女の骨が軋むような抱擁
周りの騒ぎなんて聞こえていなかった
この瞬間だけは、世界には俺と女しかいなかった
もしかしたら、二人で別の世界に行っていたのかも知れない
俺が夢見た、彼女の世界へ
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 09:57:44.09:Z86g+GqH0
それからは騒がしいものだった
ロマンチックなムードというものは長くは続かない
くちづけを終えた俺たち、というか女に、女友が抱きついた
泣きながら「ごめんね、ごめんね」とずっと言っていた
男友は俺の肩を揺さぶりながら「やった!やった!あはははは!」と叫んでいた
体が壊れるかと思った
女のお父さんが俺達に近寄ってきた
女を抱きしめた。女友も巻き込まれていた
そして俺の顔を見て、優しく「ありがとう」とささやいた
俺は何もしていないので、ちょっと困ってしまった
それから何をどう処理したのかわからないが、
女は死んだ。たちこめる線香の煙が、集団催眠を引き起こした
女は生き返ってなんかいない
ということで決着がついた
まぁこれでいいんだろうと思う
女は陽の光の下では生きられないらしいし、死んだ。ということのほうが都合が良かった
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:03:40.62:Z86g+GqH0
皆で女の家に行った
そこが一番落ち着ける気がした
女「ちょっと着替えてくるねー」
女はそう言った
かわいいからそのままでもいいのにと伝えたら、デコピンされた
そういえばこの時にはもう、女と俺は生前の関係から現在のような関係へとうつっていた
俺は彼女を「女さん」ではなく「女」と呼ぶし、彼女は俺を「男さん」でなくて「男くん」と呼んでいた
自分でも昔からお互いを知っていって、ずっとこういう関係だったような気がした。垣根なんて本当にあったのだろうかとさえ思えた
女「愛の力って素晴らしいね」
と彼女は言う
まったくもって、愛の力とやらは素晴らしい
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:09:56.66:Z86g+GqH0
女「誰かに言われたのか、それとも本能的に分かっているのか自分でもわからない」
「でも今から言うことは間違いのない真実。狂いようがないから事実といったほうがいいかもね」
「私がここにいられるのは、私が死んだ日、死んだ時間からきっかり49日」
「そして私は、太陽のもとでは生きられない」
「行動できるのは夜だけ。日が沈み、また日が昇るまで。もちろん日によって時間は変わる」
「太陽が昇ると、私は眠らずにはいられない。いや、死ぬといったほうがいいかもね」
「太陽のもとで死に、月の下で生き返る。ロマンチックでしょ?」
なんだか別人になったように、女はハキハキとそのことを告げた
生前も死後も、彼女がしっかりしていたのはこの時だけだった
録音しとけばよかったと思う
聞かせたらきっと恥ずかしがってかわいいだろう
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:16:03.00:Z86g+GqH0
それから何度も女と夜を過ごした
俺と女が会うことを許してくれた女の家族の人たちには本当に感謝している
普通だったら、家族で毎日過ごすことを大事にするだろうに
じいちゃんは「孫娘が死んだら孫息子ができたわい」と言い
ばあちゃんは「あの子はめんこいよーいいこやよー大事にしてなー」と言い
お母さんは「だいぶ抜けてるから、しっかり面倒みてあげてね」と言い
お父さんは「ウエディングドレスを買って着せよう。君のはレンタルでいいね?」と言った
俺と女は毎晩会った
2人で会った。女友、男友と4人であった。女の家族と6人であった。全部合わせて8人であった
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:19:09.38:Z86g+GqH0
手をつないだ
抱きしめた
キスをした
抱いた
くだらないことを話した
たまにケンカした
24時間営業の店に買い物に行った
真っ暗で寒い海に行った
学校に忍び込んで月を眺めた
学校でも抱いた
家族のみんなと鍋を囲ったりした
ウエディングドレスを着た彼女と、彼女の家で結婚式の真似をした
幸せだった
幸せだった
幸せだった
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:19:56.63:Z86g+GqH0
今日でもうおわる
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:29:13.46:Z86g+GqH0
無意識に彼女を抱きしめていた
女「男くんくるしいよ・・・」
今日は冷静にかっこよく見送るつもりだった
女「へへ・・・でも男くんあったか~い・・・」
笑顔で元気でなって言ってやるつもりだった
女「男くんに抱きしめられるとね、胸の奥がぎゅーーーっと・・・冷たくなるの」
彼女が目覚めてから、涙を流したことはない。今日だってそのつもりだった
女「これ変だよね・・・でも私はさ、私だけの、男くんだけの感覚だから、これ好きなんだぁ」
涙があふれる。止まらない。情けない声が出る。まるで中身だけ子供に戻ったようだ
女「おとこくぅん・・・グス・・・だいすきぃぃ・・・えぐ・・・だいすきだよぉぉ・・・」
男「ぐす・・・おr・・俺も・・・ヒク・・・愛してる・・・だいすきだ・・・女・・・」
冷たい涙が俺の頬をつたっていた
俺だけの冷たさが消えようとしていた
俺だけのものなのに、俺にはこれしかないのに、これが全てなのに
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:30:11.85:Z86g+GqH0
ふ っ
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/23(水) 10:41:41.84:Z86g+GqH0
俺は女の父から、女が死んだ理由を聞いた
女に何度聞いても答えてくれなかったことだ
そのせいで一度喧嘩になり、それきり聞いていなかった
女父「野良犬を助けたそうだよ」
男「子犬・・・ですか?」
女父「いや、成人したでかい犬らしいよ。生ごみを追いかけて道路の真中でふごふごやっていたそうだ」
男「・・・それで?」
女父「そこに例の車がやってきてね。あの子はその汚いでかい犬を助けなきゃと思ったらしい。道路に飛び出した」
男「で・・・轢かれた・・・」
女父「必死になって犬を押したら、きょとんとした顔で振り向かれたと言われたよ。その顔が・・・ふふ・・・おかしかったらしい」
男「あいつらしいなぁ・・・まったく、ばかなんだから」
女父「いや、これが面白いのはね・・・ふふ・・・その犬のアホ面が、あぁ、あの子が言ったんだよ。アホ面って」
「そのアホ面がね・・・ふふ・・・君にそっくりだったそうだ・・・あはははは!君の顔にね!ははははは!」
男「・・・へ?」
女父「あはははは!まさに今みたいな顔だったんだろうね。学校で初めて会った君の、まの抜けた顔を思い出して笑ってしまったそうだよ」
男「は・・ははは・・・あはははは!」
俺は間違ってなかった
彼女はやっぱり、笑いながら、死んでいたんだ
男「あはは!は~~・・・こりゃまたそのうち会えそうだな。まったくあいつは・・・だいたいぃっm・・・・・・・」
終わり
アリガトウゴザイマシター
女「あ゛ーーーwwwあ゛ーーーwww」
男「んん゛。ちょっと歌いすぎたなーのどいてー」
女友「女、はしたないからヤメなさい」
女「え゛ーーーwww」
男友「女友お母さんみたいだぞ。高校生料金で良かったのかよってイッテーなチクショウ」 オンナトモニケラレル
女友「女の子なんだからもっと恥じらい持ちなよー女はそういうとこいつまでたっても疎いんだから―」
女「何言ってんのー人間いつどうなるかわかんないんだよー恥や外聞なんて気にして損するのつまんないよー」
男「女がそういうこというと説得力あるなー飯どうしようかー」
男友「あー、サイゼリヤでいいんじゃないか―?安いし、それにこんな時間でもやってるだろ」
女友「あそこイタリアンワインとカフェを売りにしてるけど頼んだことないわね・・・女に習って頼んでみようかしら」
男「いやいや俺たち学生服だしねー・・・って女どこ行ったー?!おーい!!女―?!女どこだーー!!」
女「いやーごめんごめんw喉乾いたからお供え物にあったジュース貰ってきちゃったwww」
女友「あんた自分の事故現場よく見れるわね」
男「たくましすぎるだろ・・・まぁ一言言ってけよ。勝手に居なくなると困るから」
女「やーんわたし愛されてるー」
イラッシャイマセー 4メイサマデスネー コチラドゾー
男友「あーワリ、俺トイレ、外歩いてたら冷えちゃった」
女友「カラオケで行っときなさいよ全く」
男友「おかぁさん、ごめんなさい・・・睨むな睨むな冗談だって。俺ペペロンチーノね」 ガタ タッタッタッ
男「俺トマトクリームスパゲティにしようかなー」
女「えーっとえーっと・・・じゃあ私この鶏肉にチーズ乗ってるヤツ!」
女友「男くん相変わらず魚系好きねー私魚介のドリアにしよーっと。女はなんで鶏肉?ダイエット?」
女「死んだ人間はお肉は鶏しか食べちゃダメなの。だからもうダイエットって単語出さないで」
「あ、ボタン押させて押させてーーー!アチョー!」 ピッ
ゴチュウモンオキマリデショカー
トマクリ、ギョドリ、チキチー、キノスパデスネー ショーショーオマチヲー
男「深夜だからってあの接客は適当過ぎなんじゃないかなー」
男友「ふぅ~すっきりした。注文終わった?」 スタスタ ガタッ
女友「うん、キノコスパゲティにしといたから」
男友「?おれきのこ食えないよ?」
女友「知ってる。ねえ水4つ取ってきてよ。一番近いんだから」
男友「・・・・・・」 ガタッ スタスタ
女「ねーねーこの竹みたいなのもう一個取ってきていいー?居合い切りってやりたーい」
女「スパゲティとパスタの違いってなんなのかな?」モグモグ
男「えー?うーん・・・パスタは・・・スパゲティを・・・カッコよく言ったヤツ・・・?」 ズルズル
女「あー、ジーパンのことジーンズとかデニムって言うみたいなね」
女友「え。女ジーパンって言うの?え、嘘」 カタン
男友「ふっふっふ・・・教えてやろう小僧ども。日本で「スパゲティー」と呼ばれるものは、「パスタ」の中の1種類。でだな・・・」 スパゲティクルクル
ー静寂ー
男「俺もジーパンって言うけど?おかしいかな?」 カチャ ミズコクコク
女「ジーパンだよねえ。ジーンズ()デニム()」 クチモトフキフキ
女友「いやいや、ジーパンって言ってるのはお母さんたちの年代だけだって」 オサゲシマスネー ハーイ
男友「聞けよお前ら俺の話。あと女友こそジーパンって言うべきだろ」 スパゲティクルクル
ー静寂ー
男「てか今更言い方変えれないよー馴染んじゃって。あーあと女、スパゲティはパスタのうちの一種なんだぜ」
女「へーそうなんだー男くん物知りー博識ー天才ー」
男友「あれ?それ俺が言ったヤツじゃね?あれ?おかあさーん、あの二人がいじめるー」 ウヘーン
女友「黙れクソガキ。さっさとスパゲティ食いきれよ。みんなお前待ってんだよ」
男友「・・・ウヘーン・・・」 ズルズル・・・モグ・・・モグ・・・
アリガトウゴザイマシター
男「ふぅ~食ったな~。男友ー、今何時だー?」
男友「あー・・・、3時20分ってとこだ」
女友「え?!もう?!なんで?!早くない?!」
男「そっかー・・・じゃあここらでお開きかなー・・・」
男友「・・・・・・」
女友「・・・いや、でもさ!もうちょっと時間あるんじゃないの!女の言う時間なんて宛になんないしさ!」
女「えー、私そんなに抜けてないよー!自分の死亡時刻ぐらいちゃんと覚えてるって!毎日確認してたんだから!ww」
女友「え・・・イヤ。ヤダよ・・・だって、こんなの普通すぎるじゃん・・・昨日と全然一緒じゃん・・・」
男友「女友・・・」
女「・・・女友ちゃんありがと・・・。でもね、私にとって、私が死んでからの49日は本当に楽しかったんだよ!」
「私、この数日間が、本当に、人生の楽しい部分の全部だと思えるんだ!って、もう人生終わってたや・・・テヘヘ・・・」
「でも私、いま心から言える・・・。死んでからのほうが、幸せだったって!」
男(今から49日前、午前3時32分。女は、死んだ・・・)
(原因は交通事故。即死だった。だが死体を初めて目の当たりにしたとき、すべてが悪い冗談だと思えるほど、女は美しいままだった)
(女と出会ったのは、いや、その前からクラスメートとしての認識はあったが、彼女と初めて話したのは、クリスマスだった)
クリスマスの日・・・
部活もやってない、1年後に控えた受験対策の課外授業にも参加していない俺は
例年通り家でダラダラと過ごすはずだったが、
学校に大切な忘れ物をしたのに気付き、寒い中自転車を漕いで朝一の学校に向かった・・・。
机の中に、男友から借りたムフフな雑誌を入れっぱなしにしていたのを昨日の晩に思い出し、
朝一で回収しなければならないと思ったからだ・・・。
男「さみー・・・やってらんねーよまったく・・・」
「でもあれないと俺聖夜乗りきれないしなー・・・」
<ドアガラガラ ドンガラガッシャッコーン>
男「え?!何?!え?!」
女「ェ・・・ァ・・・その・・・あの・・・その・・・」
背が低く、長すぎると思える黒髪に包まれているような風貌のその少女は、
俺の大事なむふふ書物を一つ打き抱え、残りを床に散乱させながら、
震えながら、俺と目を合わせては逸らしながら、今にも逃げ出しそうに、泣き出しそうに、座り込んでいた
男「・・・・・・」
女「ぇと・・・ぁの・・・これ・・・一冊床に落ちてて・・・」ビクビク
「それで拾ったら・・・その・・・」 カァァァ
「その・・・えと・・・ごめなさ・・・ごめんあさぃ・・・」 グス・・・
俺は羞恥心でいっぱいになったが、俺よりも恥ずかしそうに佇む彼女を見て、
なんだか・・・「許そう」っと、思ってしまっていた
男「いやー・・・ハハハ・・・恥ずかしいもの見られちゃったね・・・」
「とりあえずーこれ、片付けようか。部活やらで他の人に来られると俺、困るし」
「手伝って・・・もらえるかな?」
少女はコクンと小さく頷いた
それから教室を片付け、簡単に自己紹介を済ませた俺は、ブツも回収できたので家に帰るつもりだった
良い男ならここで彼女に声でも掛けるのかもしれないが、卑猥な雑誌をカバンに忍ばせながら少女を食事に誘うなんて俺には出来なかった
しかも、忍ばせられていない。この子にこのことを誰にも言わないよう念を押して帰ろう。できるだけ早く帰ろう
女友「あれー?男じゃん。それと・・・女・・・さん?何してんの?」
男「え、あぁいや、えと・・・忘れもんしてさ・・・はは・・・」 ナンデコノタイミングデクルンデスカー
女友「何を?」
男「」 ナンデソコツッコムンデスカー
女友「・・・あ、うちのバカ絡んでんでしょ。ねぇ何?怒んないから言ってみ?ん?」
男(男友すまん・・・俺のために犠牲になってくれ・・・お前俺よりリア充だし別にいいよね・・・) エーットデスネ・・・
女「ぁの・・・でば・・・が・・・」 ビクビク
女友「 え ? 」
女「ひ・・・」 ビクッ
女友「っと、ごめんごめん。聞き取れなかっただけ。もういっかいいってくれる?」
女「えと・・・私のふでばこが・・・里・・・さん?のカバンに入っちゃってて・・・それ届けに来てくれたんです・・・」
俺はこのときから彼女を意識するようになった
というか惚れた。
知り合って間もない、名前もうまく覚えられてないような相手の為に、嘘をついてくれる彼女が好きになってしまった
ここからが大変だった
女は女友をうまくいなしたあと、そそくさと帰ってしまった
俺は校門を出る彼女の姿が見えなくなるまで、じっと彼女を窓から見つめていた
そして部活に行くという女友を引き止め、事の真相を全て話した。男友、スマン
真相の中には、俺の受けた感情も入っていた
男「頼む!女さんと仲良くなってくれ!そして俺とも仲良くなるようにしてくれ!!」
女友「あんたそこまで甲斐性ないとはね・・・まぁいいよ。いい子そうだし」
男「マジで!!」 マジデ!!
女友「そのかわりあのバカから貰ったもん全部出しなさい」
「値段計算してその値段だけ貢がせてやる」
男友改めてスマン
冬休み中のお前の苦労はいかばかりだったろうか
女友は後に、正直最初は面白半分で声をかけたと女に謝っていた。女は穏やかな笑顔で許していた。彼女の葬式から3日後の夜だった
ある日女友からメールが入った
「学校で女と待ってる」
簡素なメールのせいだったが、文面のせいで女が俺を待ち焦がれているのかと期待してしまった
女はもちろん俺なんて待っていなかった
ヨーシオレオチツケ サワヤカニ サワヤカニ
男「おはよう!」 ガラガラ
女友「あ、女ちゃんトイレ」
男「」 カァァァ
女友「あんたこのクソ寒いのに元気いいわねー」 ニヤニヤ
男「・・・で、なんだよ。なんか用かよ。用無いなら帰るぞ」
女友「あ、拗ねちゃうんだ。ふ~ん。これから女とご飯食べに行こうと思ったから誘ってやろうと思ったのに」
男「すいませんごめんなさい行きます行かせてください」 ペコペコ
女「・・・え・・っと・・・え・・・?」
女友「あー女ちゃん気にしないでー。こいつ覚えてるー?」
男「」 イルナライルッテイエヨハジカイタジャネーカクソガフck
女「うん・・・覚えてるよ・・・男くんだよね?」
彼女は俺の名前を正しく覚えていてくれた
それだけで俺の心は躍った
エロ本の恥も、今の恥もどこかへ吹き飛んでいた
その後俺達は今となってはお馴染みとなったこのサイゼリヤで一緒にご飯を食べた
女ちゃんは女友にはいくらか心を許していたみたいだが、俺との会話はまだぎこちなかった
女友には帰りの際に「もっとがんばれよお前は草食系でさえないね霞でも喰らい続ける気?」と辛辣な言葉を浴びせられた
俺はこの日の夜、女に鋭い牙を向けるためにイメージとレーニングに没頭した
いつしかそこに男友も加わり、俺達は4人で活動することが多くなった
女友は男友への罰だからと女へも色々奢らせようとしたが、女は全て断っていた
彼女は自分の分は必ず自分で出すが、人に奢ろうとすることはあった
俺はそれがなんだか友達料金みたいで嫌だった
彼女の敬語混じりの話し方も、なんだか距離を感じる要因の一つだった
女は正月は親御さんと過ごした
俺の初詣の誘いはものすごく申し訳なさそうに断られた
その丁寧な拒絶が俺の心を傷つけ、一時期はものすごく落ち込んだ
しかしその一週間後ぐらいに、彼女から誘いの電話があったときは天にも昇る想いだった
結局いつもの4人で遊んだが
冬休みがあけて、学校でも女とは会えば挨拶したし、二人の時は話したりもした
しかし彼女から俺に話しかけてくることはなかった
原因は俺達にあった
女友「・・・なーんでこんなことになっちゃったかなー」
男友「いやー、オンナって生き物は怖いはやっぱり。コエーコエー」
男「お前ら真面目に考えてくれよ・・・あーくそ・・・」
男友「わりーわりー、でもどうすりゃいいのか分かんねーよこんなもん」
簡単に言うと、女はクラスの「よろしくない女子達」に睨まれた
影で嫌がらせを受けているらしいっと女友が教えてくれた
女はもちろん何も言わなかったし、俺も何も聞けなかった
後に聞いた話・・・、これも葬式のあと、起き上がった女から聞かされた話だが、
なんでもそのよろしくない女子のなかに俺に好意を抱いていたオンナがいたらしい
それで俺と親しそうな女がいびられだしたそうだ
これには身に覚えがあった
俺は冬休みがあけるちょっと前、一人の女子に告白らしきものをされたことがあった
清楚そうな可愛い子だったが、俺はそれを振った。俺には女しか見えていなかった
あの女子が女に陰湿な嫌がらせをしていたかと思うと腹がたった。腹が立ってしょうがなかった
そして俺は、そいつのせいで女が死んだんじゃないかと考えた。あんな見通しのいい交差点で普通死んだりしない
俺は女に詰め寄ったが、
女「もー違うってばーwww私は事故で死んだの!」
「男くん考えすぎだよーその人のせいでもないし、男くんのせいでも絶対にない!」
「それに、自殺した人はこういう風に生き返らせてもらえたりしないって!」
と明るく否定され、俺はそのオンナを恨むことやめようと思った
許したわけではないが、そのオンナを恨む時間を彼女の為に使おうと思った
女が生きて登校していた頃に話はもどるが、
彼女が陰湿な嫌がらせにあっているということはクラスの暗黙の了解のようなものになっていた
しかしクラス全体からのいじめに加速するということもなく、ただただ小さな嫌がらせが続いただけだったので
俺や男友、女友も特に何も出来なかった
なにより、女が何もないように生活しているので、時々嫌がらせが本当に起こっているのかさえ疑問に思えた
しかしそんなある日、ソレは起こった
女が死んだ
交通事故で即死
通夜の日程が言い渡された
担任は涙を浮かべていた
俺はなにがなんだかわからなかった
朝のHRが終わったあと、男友が俺に駆け寄り、ずっと「大丈夫か?大丈夫か?」と言っていた
女友は頭を垂れてただじーっと座っていた。ああいう姿は初めて見た
サワサワと妙に静かなと喧騒。集まってしくしくと泣き出す女子たち。あいつらは誰だ?あんな奴らと女が話した記憶がない
もしかしてあいつらが女を?いやもうどうでもいい。何をしたらいいかわからない。こんなところにいる場合じゃない
生前の女は几帳面な性格だったのか、携帯の電話帳に自分の家の住所を登録していた
俺は学校を抜けだした。女に、彼女に会いに行こうと、その考えが脳にいっぱいになった
だが彼女らしく、その登録された住所が間違っていた
俺は団地を延々歩きまわった。バス停のベンチに腰をかけた老婆たちのうわさ話に女が出ていた
事故だとか自殺だとかいい子だったとか暗かったとか色々言っていたがどうでもいい
女の家を聞き出し、俺は走った
女の家についた
押し入った
彼女の名を叫んだ
思えば俺は生前の彼女をいつもさん付けで呼んでいた
まったく、距離をとっていたのはおれだって一緒じゃないか
まったく俺って奴はまったく、惚れたのは俺の方だっていうのに
気づけば俺は女のお父さんに強く抱きしめられていた
俺は泣いていた。お父さんも泣いていた
女父「男くんだね・・・。あの子は病院だよ。会いに来てくれたんだね。うれしいよ。」
「あの子はいつも君の話をしていたよ。君と、君のお友達と、その彼氏くん・・・。良く夕飯の話題にでていた」
「君の話をするとき、あの子はすごくいい顔をしていたよ。君に何度も嫉妬した」
「あの子に会ってあげてくれ。あの子の髪を撫でてあげてくれ。自慢なんだ。僕の自慢」
この会話を女の家で聞いたのか、病院への車中で聞いたのか、病院で聞いたのか
俺はよく覚えていない
ただ、お父さんの言葉のぬくもりが、俺を落ち着かせてくれていた
女は眠っていた
きれいだった
生きているという息吹は感じられないが
死んでいるとも思えなかった
ただただ彼女は、美しかった
微笑んでいた
今となって、あれは勘違いだったのかもしれないと思うこともあるが
俺には女が微笑んでいるように見えた
幸せそうに見えた
少なくとも俺にはそう見えた
涙は引いていた
俺は女が愛しくて愛しくてたまらなかった
髪を撫で、頬を撫で、彼女の目元に親指をなぞらせた
女のお父さんは席を外してくれていた
俺は彼女の手を握り、俺の頬へ当てた
その手は冷たかったが、俺はなんだか、その冷たさが、すごく心地よかった
彼女にこうして触れるのは初めてな気がした
それにしても、彼女の冷たい手のひらの、細い指のなんと心地よいことか
今まで触ってきた人間の感触、ぬくもりでは遠く及ばない
彼女の冷たいぬくもり、彼女の固くなった肌のやわさ
あぁ、彼女は冷たく、凛とした世界の住人になったんだ
死んだのではない。決して死んだんじゃあない
彼女はなにかに、高潔ななにかに選ばれて、この土色の美しさを得たに違いない
彼女は脱却したんだ。このつまらなく醜い僕達が必死に食らいついている世界から見事逃げ出したんだ
しかし
それにしても
どうして
どうして俺を連れて行ってはくれなかったのか
彼女をこんなに愛していたのに
そして運命の日が訪れた
俺は通夜の間、何を考えていたかわからない
なんだか物騒で凶悪なことを幸せの道と想い、一心不乱に考えていたような気もすれば
まさしく、遠い異国の僧が求める無というものに望んでもいないのに支配されていたのかもしれない
女友は泣いていた
彼女は責任感が強い
きっと、女が自殺したと思っているに違いない
自分がもっと気を使っていればと、思っているに違いない
お前、よくあの女子グループと言い争いしてたじゃないか。知ってるんだぞ
男友は女友にずっと寄り添っていた
お前はいつもおちゃらけているが、周りの人間の痛みがわかる男だ
自分の痛みをないがしろにする
口元にあざが出来ているが、それは学校を飛び出そうとした俺を止めようとしてできたケガだろう
どうして俺を咎めないんだ
そう考えると、俺という奴はまったく何も無い男だった
まったく俺には何も無い
やっとできた大事なものも、守ることも出来ず、受動的というものに甘んじ、見つめているだけだった
まったく俺には何も無い
俺は、ここで何をしていたらいいんだろうか
泣く資格も、何も無いじゃないか
彼女が起き上がった
彼女は起き上がった
誰も何も言わない
皆が彼女を見つめていた
空気が世界から消え去ったように、静かだった
彼女はキョロキョロと周りを見渡している
俺と目があった
あ、それた。おーい、俺はここだよ
すぐにまた、俺と目が合った
彼女はゆっくり
ゆっくりと
笑った
悲鳴、怒号、阿鼻叫喚、地獄絵図
泣き喚く女子高生 何を思ったか周りを蹴飛ばし我先にと逃げ出す男子高生
脳を無くしたように口を開ける教師 花輪の後ろに身を隠そうとして盛大にそれを倒す坊主 下敷きになる葬儀屋
彼女は、そんな時、彼女は
俺にむかって一歩一歩、ゆっくりと足を進めていた
まるで、ヴァージンロードを歩く花嫁のように
俺は、そんな時、俺は
彼女を見つめ、ゆっくりと、天使の羽のように、両手を広げた
そして、彼女に、最高の笑顔をむけた
こんなことを自分で言うのもなんだが、俺のかっこいい思い出なんだ
格好つけさせて欲しい
ヴァージンロードをゆっくりと歩く彼女
両手を広げ、彼女の到着を待つ俺
次第に二人の距離は縮まっていき、そしてあと一歩というところで、
俺は彼女の手をぐいっと引っ張り、自分の胸に彼女を押し込め、2本の腕で彼女を包んだ
俺は何も持たざる男だった
だが今、はっきりと俺の腕の中に存在するものがある
それが彼女だ それが女だ
もう一生、いや死のうとも、彼女を離しはしない 離れはしない
君のこの躰を離さない
君のお父さんの自慢の艶やかな髪も
生前ではありえなかた、俺をしっかりと見つめるその瞳も
そして、触れることはかなわなかったこの唇も
すべて俺のものだ
どこから言葉にしていたのかわからず、今となっては恥ずかしい限りだが
おれはそう言うと女と口付けを交わした
冷たい唇
女だけが持つ、他の人間ではありえないたったひとつの特別な固さ、冷たさ
長い長いくちづけ
彼女の骨が軋むような抱擁
周りの騒ぎなんて聞こえていなかった
この瞬間だけは、世界には俺と女しかいなかった
もしかしたら、二人で別の世界に行っていたのかも知れない
俺が夢見た、彼女の世界へ
それからは騒がしいものだった
ロマンチックなムードというものは長くは続かない
くちづけを終えた俺たち、というか女に、女友が抱きついた
泣きながら「ごめんね、ごめんね」とずっと言っていた
男友は俺の肩を揺さぶりながら「やった!やった!あはははは!」と叫んでいた
体が壊れるかと思った
女のお父さんが俺達に近寄ってきた
女を抱きしめた。女友も巻き込まれていた
そして俺の顔を見て、優しく「ありがとう」とささやいた
俺は何もしていないので、ちょっと困ってしまった
それから何をどう処理したのかわからないが、
女は死んだ。たちこめる線香の煙が、集団催眠を引き起こした
女は生き返ってなんかいない
ということで決着がついた
まぁこれでいいんだろうと思う
女は陽の光の下では生きられないらしいし、死んだ。ということのほうが都合が良かった
皆で女の家に行った
そこが一番落ち着ける気がした
女「ちょっと着替えてくるねー」
女はそう言った
かわいいからそのままでもいいのにと伝えたら、デコピンされた
そういえばこの時にはもう、女と俺は生前の関係から現在のような関係へとうつっていた
俺は彼女を「女さん」ではなく「女」と呼ぶし、彼女は俺を「男さん」でなくて「男くん」と呼んでいた
自分でも昔からお互いを知っていって、ずっとこういう関係だったような気がした。垣根なんて本当にあったのだろうかとさえ思えた
女「愛の力って素晴らしいね」
と彼女は言う
まったくもって、愛の力とやらは素晴らしい
女「誰かに言われたのか、それとも本能的に分かっているのか自分でもわからない」
「でも今から言うことは間違いのない真実。狂いようがないから事実といったほうがいいかもね」
「私がここにいられるのは、私が死んだ日、死んだ時間からきっかり49日」
「そして私は、太陽のもとでは生きられない」
「行動できるのは夜だけ。日が沈み、また日が昇るまで。もちろん日によって時間は変わる」
「太陽が昇ると、私は眠らずにはいられない。いや、死ぬといったほうがいいかもね」
「太陽のもとで死に、月の下で生き返る。ロマンチックでしょ?」
なんだか別人になったように、女はハキハキとそのことを告げた
生前も死後も、彼女がしっかりしていたのはこの時だけだった
録音しとけばよかったと思う
聞かせたらきっと恥ずかしがってかわいいだろう
それから何度も女と夜を過ごした
俺と女が会うことを許してくれた女の家族の人たちには本当に感謝している
普通だったら、家族で毎日過ごすことを大事にするだろうに
じいちゃんは「孫娘が死んだら孫息子ができたわい」と言い
ばあちゃんは「あの子はめんこいよーいいこやよー大事にしてなー」と言い
お母さんは「だいぶ抜けてるから、しっかり面倒みてあげてね」と言い
お父さんは「ウエディングドレスを買って着せよう。君のはレンタルでいいね?」と言った
俺と女は毎晩会った
2人で会った。女友、男友と4人であった。女の家族と6人であった。全部合わせて8人であった
手をつないだ
抱きしめた
キスをした
抱いた
くだらないことを話した
たまにケンカした
24時間営業の店に買い物に行った
真っ暗で寒い海に行った
学校に忍び込んで月を眺めた
学校でも抱いた
家族のみんなと鍋を囲ったりした
ウエディングドレスを着た彼女と、彼女の家で結婚式の真似をした
幸せだった
幸せだった
幸せだった
今日でもうおわる
無意識に彼女を抱きしめていた
女「男くんくるしいよ・・・」
今日は冷静にかっこよく見送るつもりだった
女「へへ・・・でも男くんあったか~い・・・」
笑顔で元気でなって言ってやるつもりだった
女「男くんに抱きしめられるとね、胸の奥がぎゅーーーっと・・・冷たくなるの」
彼女が目覚めてから、涙を流したことはない。今日だってそのつもりだった
女「これ変だよね・・・でも私はさ、私だけの、男くんだけの感覚だから、これ好きなんだぁ」
涙があふれる。止まらない。情けない声が出る。まるで中身だけ子供に戻ったようだ
女「おとこくぅん・・・グス・・・だいすきぃぃ・・・えぐ・・・だいすきだよぉぉ・・・」
男「ぐす・・・おr・・俺も・・・ヒク・・・愛してる・・・だいすきだ・・・女・・・」
冷たい涙が俺の頬をつたっていた
俺だけの冷たさが消えようとしていた
俺だけのものなのに、俺にはこれしかないのに、これが全てなのに
ふ っ
俺は女の父から、女が死んだ理由を聞いた
女に何度聞いても答えてくれなかったことだ
そのせいで一度喧嘩になり、それきり聞いていなかった
女父「野良犬を助けたそうだよ」
男「子犬・・・ですか?」
女父「いや、成人したでかい犬らしいよ。生ごみを追いかけて道路の真中でふごふごやっていたそうだ」
男「・・・それで?」
女父「そこに例の車がやってきてね。あの子はその汚いでかい犬を助けなきゃと思ったらしい。道路に飛び出した」
男「で・・・轢かれた・・・」
女父「必死になって犬を押したら、きょとんとした顔で振り向かれたと言われたよ。その顔が・・・ふふ・・・おかしかったらしい」
男「あいつらしいなぁ・・・まったく、ばかなんだから」
女父「いや、これが面白いのはね・・・ふふ・・・その犬のアホ面が、あぁ、あの子が言ったんだよ。アホ面って」
「そのアホ面がね・・・ふふ・・・君にそっくりだったそうだ・・・あはははは!君の顔にね!ははははは!」
男「・・・へ?」
女父「あはははは!まさに今みたいな顔だったんだろうね。学校で初めて会った君の、まの抜けた顔を思い出して笑ってしまったそうだよ」
男「は・・ははは・・・あはははは!」
俺は間違ってなかった
彼女はやっぱり、笑いながら、死んでいたんだ
男「あはは!は~~・・・こりゃまたそのうち会えそうだな。まったくあいつは・・・だいたいぃっm・・・・・・・」
終わり
コメント 10
コメント一覧 (10)
49日でググってこい
意味が解らないで済むのは中学生までだぞ
1レスめで断念したわ