3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:02:28.81:o7jmYi0I0

ある晴れた春の日の放課後、俺は文芸部室ことSOS団アジトに今日もやってきた。

まるでパブロフの犬のようだとふと思った、

あの実験では犬にベルを鳴らしてからエサを与える事を繰り返し、

それを習慣化するとベルの音だけで唾液が出るようになる。

最初はご褒美とともにある行動を習慣化させるとそのうちご褒美なしでも行動をしてしまうのだ


今の俺も然りである。

部室に入る、麗しのマイスイートエンジェルこと朝比奈さんがノーベル平和賞を取れそうな

笑顔で出迎えてくれるという全校中の男子垂涎のご褒美があるからこそ

この北高の大いなるスキャンダルとも言える団に毎日通う習慣がついたのである。

 
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:05:36.82:o7jmYi0I0

この1年間が俺に学習させたもう一つの習慣である「ドアへのノック」という行動もまた律儀にやってのけた俺は

中からのエンジェルボイスがしないことを確かめ、ドアを開け、部室へと入っていった。


部室には誰もいなかった。ハルヒは掃除当番だし、しかも今日は新2年生の進路面談の日であり、順番ではハルヒが今日の1番目だった。

俺はHR後すぐに部室へと向かったから まだハルヒがくるまでにはかなりの時間がある。

いつもの定位置であるパイプ椅子に腰を下ろし、カバンを長机に置いた。

ふと窓に目をやる。春らしいやわらかい午後の日差しが窓から差し込んでくる。

普段であれば絶好の昼寝のパターンなのだが、今日はあいにく5,6限の古典と数学をフルに睡眠に充てたため

珍しく爽快な気分だった。


窓にやった視線を少し手前に移動させると

そこには我らが団長様の席にお隣コンピ研から強奪したパソコンが鎮座していた。

あまりにも暇だったのだろう、それといやに覚醒レベルが高かった俺に

ある好奇心が芽生えた、知的欲求をそそられるってヤツだ。

 
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:07:48.89:o7jmYi0I0

俺にはひそかに気づいていた事がある。

ハルヒはここ3日ほど部室のパソコンでなにやら熱心に調べ物をしているようだった。

カチカチとマウスを操りながら目を輝かせたかと思ったら、次の瞬間にはため息をつきメランコリーな表情を見せる。

俺が昨日「何をそんなに熱心に調べているんだ」と尋ねると「うっさい、アンタには関係ないわよ」の一点張りで

ハルヒのいない時に検索履歴を見たいと思っていたのだが、ハルヒはこの3日間昼休みにも部室に来てパソコンの前に張り付いていた

もちろん放課後も団室に入るなり真っ先にパソコンの前に陣取り、「みくるちゃん、お茶」と不機嫌そうに口を開くのがパターン化していた。

幸い今部室には誰もいない。特にハルヒがくるまでにはまだ時間がある。俺は団長の椅子に座りパソコンの電源を入れた。


パソコンからウイーン、ガガ、という起動音を聞きながら、俺の頭は好奇心とスリルで満たされていた。

普段ならこんな野暮な事はまずしないのだが・・・ まぁ春のせいだろう、あとで俺はひどく後悔する事になるのをこの時は知る由もなかった。


あのハルヒのことだ、検索履歴を消すなんて恥じらいのある事をするはずがない。という俺の読みは正しかった。

インターネットブラウザを起動し、「履歴」をクリックする。 そこに表示されていたのは・・・・

 
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:11:38.88:o7jmYi0I0

「夢 コントロール」 「夢 自由自在」 「夢 操作」  「夢見コントロール法」 


そして最新の履歴には・・・「明晰夢」


・・・・なんだ? 一体こいつは何がしたいんだ?

そこには「夢」というキーワードから始まる様々な事柄を検索した形跡があった。

この検索履歴から俺はない脳細胞をフルに使って考えた。ハルヒの調べていた事って・・・・

 
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:14:08.48:o7jmYi0I0

その時だった、コンコンと部室のドアをノックする音が聞こえた。

ヤバイ! ハルヒか!? いや、ハルヒはノックするようなやつじゃねーし、それに今は岡部教諭と面談中のはずだ

俺がパソコンの画面だけ電源を消し、あわてて立ったところで

「どうも」とジャニーズ顔のリミテッド超能力者がやってきた。

「・・・何もそんなに焦る事はないでしょう」と古泉はインチキ臭いようで爽やかなハンサムスマイルを俺に向けてきた。

「涼宮さんがここ最近何を調べていたのか気になっていたのでしょう?」読心能力でもあるのか、おまえは。

「残念ながらそのような能力は僕にはありませんよ、僕には ね。」と爽やかハンサムスマイルにインチキ成分を更に足しやがった。

「するってーと森さんか新川さんにはあるのか」俺は話の流れを変えようとするも

「んっふ、禁則事項です。 ところで、涼宮さんは一体何を調べていたのですか?」この野郎、そのセリフは朝比奈さんの専売特許だ。 長門も使っていたが。

「夢について、コントロールだとか 明晰夢だとかってのを調べていたみたいなんだが・・・俺にはさっぱりだ」と俺は肩をすくめいつものポーズをとってみせた。

 
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:16:22.25:o7jmYi0I0

「ほう、明晰夢、ですか。それはそれは。」古泉は孫の成長を見守る祖父のように感心した様子で

「何か心当たりがあるのか?」とハンサム野郎を問い詰めてみた。

「おそらく、涼宮さんは明晰夢について知りたかったのでしょう」

「めいせきむ?なんだ?それは」はじめて耳にする単語だ。

古泉はお得意のしたり顔での説明スタイルに入った。

「明晰夢とは、簡単に言うと『これは夢だ』と夢の中で自覚している状態の事を指します。」


「んーと、それはアレか?意識は明晰なまま、夢の中に居るって事を自分で理解してるって事か?」古泉が噛み砕いた説明を俺は更に噛み砕き、

更に古泉は続ける。「明晰夢自体は睡眠中に誰にでも起こりうる事です。しかし、常に起こるという事ではありません。更にですね・・・」

「明晰夢、というのは夢の内容を自分で思うままに、自由自在に操ることができる、と言われているんですよ。」

 
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:18:32.98:o7jmYi0I0

「ちょっと待った。」俺は嫌な予感がしたので古泉を制止して、喉に引っかかっている疑問を吐き出した。

「なんだってハルヒはその明晰夢とやらに興味をもっているんだ?」素直な疑問を投げかけた。

「それはですね」古泉が団長席のパソコンの前まで来て、インチキ成分が更に高まったスマイルを向けながら

「去年の春ごろ涼宮さんが世界を再構築しようとした時の事を覚えていますか?」

忘れるはずもない。 ハルヒが摩訶不思議パワーを爆発させ、なぜか俺だけがこっちの世界から借り出されたあの夜。

結局、俺がハルヒに・・・ その・・・ キスする事で夢オチってことにハルヒ的にはなってるらしいあの一件。

俺だってあの時の出来事は夢であった。と言う事にしたいさ。 ん? 夢?

 
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:22:07.88:o7jmYi0I0
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:28:22.07:o7jmYi0I0

「涼宮さんには願望を実現する能力が備わっている。これは今さら言うまでもない事です。しかし、」キザに髪をかき上げ

「涼宮さんの願望実現能力が弱まっている事は先日お話ししましたよね。」古泉は更に続けた。

「最近では、閉鎖空間を作り出すことはあってもその規模はごく狭いもので、神人の暴れっぷりもも全盛期ほどではありません」

「ああ、それはおまえにとっていい事なんだろ?」と俺。 もうこいつの相槌マシーンになるしかねぇのか。

「えぇ、そうです。もう涼宮さんはあの時のように世界を作り変えたりするほどの力はないのでしょう。」

「ですが」古泉は更に俺に顔を近づけた。 やめろ、気持ち悪い。

「もし涼宮さんがあの春の閉鎖空間の出来事を夢の中での出来事だと思いこんでいて、

それを再現したいと思っている。としたら・・・?」

・・・・・なんだって?

 
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:31:04.29:o7jmYi0I0

「ちょっとまて。」団長のイスに座り直し、改めて古泉に尋ねる

「つまりこういうことか?ハルヒは明晰夢とやらを見れるようになって夢の中で神人を暴れさせたいって事か?」

古泉は呆れたような表情をしたあと

「・・・あなたの試行プロセスには驚かされるばかりです。」名探偵のように考え込む仕草をした古泉は視線を俺に合わせて

「わかりました、言い換えましょう。涼宮さんは以前世界を改変しあなたと閉鎖空間に2人っきりになりました。」

「その時間の出来事が忘れられないのですよ。だからもう一度再現したいと思っている。」

「今度は自分から、自分の意思で、ね。 」

「しかし今の涼宮さんに世界を改変するだけの力はない。 よって夢を自在に操作する方法を調べている。と言うわけです。」

 
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:33:07.85:o7jmYi0I0

・・・・ずいぶん嬉しそうだな、古泉。

「えぇ。最近の涼宮さんの不可解な傾向についての謎が解けたもので。」事件を解決し、大円団を迎えた刑事のような顔をした古泉。

「不可解な傾向?」いやな引っかかりを感じた俺は聞いてみた。「閉鎖空間は出してないんじゃなかったのか?」

「いえ、ここ3日間閉鎖空間は出現しています。しかしいずれも昼間、学校にいる時間に出現することが多くなっていましてね。」

「どういうことだ?」一応聞いてみる。

 
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:35:44.25:o7jmYi0I0

「これは僕の推測ですが・・・」古泉がこの表情をした時、俺にとっていい事が起こった事は少なくとも俺の記憶にはない。

「この3日間、彼女は夜には閉鎖空間を発生させずに昼間にそれも学校にいる間に出現させます。」

「この事から昼間に何らかのストレスの原因があると考えられます。」またしても名探偵顔になったハンサム野郎は

「更に涼宮さんの検索履歴から考察するに、学校で夢を操る方法を調べ、それを夜間に実行しているのでしょう。」

「それがあまり上手くいかなかったのでしょう。ですから日中はストレスがたまって、夜が来るのを心待ちにしていたのです。」

・・・俺は嫌な予感がする。すんごい。

 
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:37:49.33:o7jmYi0I0

さらに古泉は続ける。

「今日の履歴に明晰夢が残っていたということは、涼宮さんはその方法を今日決行するでしょう。」

「そしてあなたは再び涼宮さんと夢の世界で・・・」歌舞伎の女形のような妙な色気のある仕草で

「フォーリンラブです」

俺はしばらく絶句していた。 

 
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:44:23.40:o7jmYi0I0

そこにタイミングがいいのか悪いのか朝比奈さんと長門がやってきた。

「・・・・」無表情娘はいつもかわらずだ。

「ごめんなさい、遅れちゃいましたぁ 」愛しのラブリー妖精も相変わらずである。

「何のお話をしていたんですかぁ?」純粋無垢な瞳が俺に向けられる。俺は急いでパソコンの電源を切り、その声に答えようとすると

「僕のやっているバイトを彼に紹介していたのですよ、なんでも彼は最近ジリ貧だとかで。」仮面のようなハンサムフェイスで俺をさえぎり答えやがった。

 
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:49:55.96:o7jmYi0I0

「へぇぇ、キョン君もバイト、するんですかぁ?」おかしい、

彼女は古泉のやっているバイトが普通のバイトじゃない事ぐらい知っているはずだ。

「えぇ・・・まぁぁ」声にならない声で答える。そして自分の席に着く。

その瞬間、大きな音を立てて部室のドアが開かれる。

もうわかっているだろうが、俺にトラウマを植え付け、諸悪の根源ともいえる我らが団長様だ。

ハルヒには聞こえないような小声で「では今日の放課後、宜しくお願いしますね」とウインクしながら古泉。


・・・・ってことは要するにアレか。

・・・・・・・・・・・・・・・・ハルヒの夢の中でもっかいキスしろってことか。

 
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 22:57:18.77:o7jmYi0I0

その日の団活でのハルヒはここ3日間と大きな変わりはなかった。相変わらずパソコンの前にひっつき

なにやら音楽をダウンロードしているらしくiPodとパソコンをつなげたりしていた。


朝比奈さんはいつものメイドルックに、長門は読書と

古泉と俺はオセロに興じている。もちろん俺が勝っている

ふと、机の下に いや、俺の靴に何かが当たった気がした。

ハルヒはこっちを見ていない。俺は机の下をのぞいてみた

ルーズリーフを4分の1程度に切ったものを丸めたものがそこにはあった。

ハルヒにばれないように拾い挙げ、広げるとそれにはこう書かれてあった。

 
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:02:42.50:o7jmYi0I0

「もちろん、報酬は弾みますよ、今までとこれからの団活であなたが負担した金額を越えるくらいは」

マジか、それは願ってもない好条件だ。

いやいやいやいや。ちょっと待ってくれ。俺にも心の準備というものがあってだな・・・

無言で古泉を睨む。

女が見たらイチコロなんだろうが俺には嫌みにしか感じない微笑をヤツは投げかけている。

「あ、ちょっとヤカンに水くんできますねぇ」トテテと部室のドアに走っていくSOS団の専属メイド。

「僕も手伝いますよ」とインチキハンサム。

 
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:12:08.49:o7jmYi0I0

「あ、古泉君ありがとう、そしたらもう一個のほうもお願いしてもいいかな?」

「いいですよ、さ、いきましょうか。」


・・・・俺は嫌な予感しかしなかった。

あの野郎、朝比奈さんにさっきの事言うんじゃねぇだろうな・・・

2人が帰ってくる、古泉はさっきまでと同じ顔だが

朝比奈さんの俺を見る目が明らかに変わった。

まるで息子がはじめてできた彼女を連れてきた時の母親のような顔をしていた。

古泉は心なしかさっきよりも笑顔が偽悪的になっている。


この野郎。言いふらしやがったな。 覚えてやがれ

 
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:16:56.17:o7jmYi0I0

長門の本が閉じられ、団活の終わりの時間となった。

それと同時に「今日はもう終わり!私は急ぎの用があるから先帰るわね!鍵宜しく!!」

とハルヒは脱兎の如く帰っていった。

「んっふ、早く帰ってナニをするのでしょうね?」古泉が今日一番の爽やかな声で言った。

古泉、おまえはいつかぶっ殺す。

 
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:23:35.89:o7jmYi0I0

部室の外の廊下

朝比奈さんの着替えが終わるのを俺と古泉と長門とで待っている。

俺は今一番頼りになるヤツに聞いてみた。

「なぁ長門、明晰夢って知ってるか?」

宇宙的アンドロイド娘は検索エンジンに語句を打ち込んで結果が帰ってくるぐらいの速さで

「睡眠中にみる夢のうち、自分で夢であると自覚しながら見ている夢のことである。
明晰夢の経験者はしばしば、夢の状況を自分の思い通りに変化させられる体験をする。」

ワープロ読み上げソフトを速度を上げて再生したように

「脳内において思考・意識・長期記憶などに関わる前頭葉などが、海馬などと連携して、
覚醒時に入力された情報を整理する前段階において、前頭葉が半覚醒状態のために起こると考えられ、
明晰夢の内容は見ている本人がある程度コントロールしたり、悪夢を自分に都合の良い内容に変えたり、
思い描いた通りのことを覚醒時に体験したりすることが可能である。」

<wikiより引用・一部改変>

 
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:33:53.26:o7jmYi0I0

俺は本日2度目の絶句を披露した。

ってことはアレか? 夢の中でも感覚は覚醒時と同じくらい鋭敏になってるって事か?

「そう」珍しく頷いたあと付け加えて

「本来、普通の人間が明晰夢を見るにはそれなりの訓練が必要だが涼宮ハルヒはもうすでに条件を満たしている。」

「?どういうことだ?」

「それは・・・」長門は少しの沈黙のあと

「禁則事項」いつかの長門流ジョークがまさかまた聞けるとは。

「でも」

「涼宮ハルヒが今夜明晰夢を見る、そしてそこにあなたが出現させられるのは規定事項。」


俺は大きくため息をつき、肩をすくめ、お約束のセリフを吐いた。

「やれやれ。」

 
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:40:31.01:o7jmYi0I0

長門・古泉・朝比奈さん・俺で下校する。いつもの光景マイナスハルヒである。

「実は、我々機関の最近の研究ではこの世界自体が涼宮さんの明晰夢によって構築されたのではないかと言う意見もあるくらいです。」

古泉は取って付けたように話す。

「おまえは黙ってろ。それにするべき事を俺がしたあかつきにはそれなりの報酬を払ってもらうからな。」

「もちろん、そのつもりですよ。」

「今夜、上手くいけば閉鎖空間から永遠におさらばできるかもしれないのですからね」

古泉は今日一番嬉しそうな表情で言った

「どういうこったい、それは。」俺が怪訝に聞く。聞いてやる。一応な。

「今まで涼宮さんは閉鎖空間を発生させることでストレスを発散していました。」ふむ、それは何度も聞いたぞ。

「しかし、明晰夢を毎晩見るようになれば彼女のストレスの矛先が彼女の夢の中になるんです。つまり」

「閉鎖空間で神人を暴れさせるなんて方法よりももっと素敵で平和的な方法で解決されるようになるのですよ。」

古泉は満面の笑顔だった。

 
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:48:20.60:o7jmYi0I0

「がんばってね、キョン君。」聖母のごとき瞳を向けられ、浄化されそうになる俺。

「えぇ・・まぁ」そうだよ、照れ隠しだよ。 悪いかこの野郎。

正直俺は困惑していた。

もちろんハルヒの事が嫌いなわけじゃない。

恋愛感情で好きかと言われればそれは微妙だが、

この1年間で少なくともそれなりの関係を築いてきたつもりだ。

でも。

それと同じくらい俺は朝比奈さんや長門ともそれなりの関係になっているんだ。

いつまでもこの距離感が続けばいいと思っている。優柔不断と言うやつもいるかもしれないが

俺はこのSOS団が好きなのだ。誰か個人を選ぶ事で、この5人の関係をを壊したくはないのさ。

 
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/04(月) 23:56:47.10:o7jmYi0I0

ところで。まだ引っかかる事がある。

帰り道、別れる前に聞いておきたいことだ。

なぜ長門は明晰夢についてあんなに詳しかったんだ? 

っていうかヒューマノイドなんちゃれも夢を見るのか?

「長門、一つ聞いていいか?」俺は前を歩くショートヘアに声をかける。

立ち止まって振り返らずに「なに」

「長門も・・その・・・ヒューマノイドインターフェイスとやらも夢を見たりするのか?」

長門は振り返り俺の目をじっと見つめた。

その目には隠し事をする幼い子どものような光が混じっていたように感じた

体感的には1分、実際には3秒ほど経って、宇宙娘は口を開いた

たったの3文字。


「ひ・み・つ」

 
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:07:14.85:ikR/6pFz0

同時刻トコロ変わって

~ハルヒサイド~

ハルヒの家

ハルヒ「たっだいまーっ!!」

ハルヒ母「お帰り、ご飯できてるわよ」

ハルヒ「うん、着替えてくるわね!」バタバタ

ハルヒ母(なんか最近家に帰ると機嫌がいいのよね、寝る時までテンションがあがりっぱなし・・・

      朝はその逆なのに・・・)


ハルヒの部屋

ハルヒ「よし、今夜こそ夢を自在に操ってやるんだから!そしたら・・・今度は・・・」

    (ちゃんと・・・キョンと・・・ ううん、まずキョンの気持ちを確かめなきゃ・・)

 
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:16:46.25:ikR/6pFz0

夕食後・涼宮家の風呂

ハルヒ「あ、右手に付けた印が消えかかってる・・明晰夢を見るコツはまず夢の中で『これは夢だ』と気付くきっかけを作ることね・・・

    「手にマジックで印をつけておいて、それを見た時、夢ならそれが消えてるし、現実なら残ってる。」

    「現実と夢を見分ける方法なんてよく考えつくものね。他にも手のひらを見る癖とか眼鏡をはずして見るとかいろいろあるのね。」


ハルヒの部屋

ハルヒ「夢日記もしっかりつけなきゃね、夢の内容を記録しておいて意識的に夢を記憶する癖を付けるか。」
     
    「キョンが夢に出てくる時はいっつも内容が曖昧なのよね、」
   
    「・・・シーツが・・濡れちゃって/// 朝それにびっくりして夢の内容が飛んじゃうのよね。」

 
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:22:52.36:ikR/6pFz0

ハルヒ「今日部室でオベパルスとヘミシンクもダウンロードしたし。準備は万端ね。」

    (※オベパルス&ヘミシンク 催眠導入しやすくする音源。幽体離脱、催眠おナニなどでも使われる。)

ハルヒ「さて・・・ねよーっと。」
    

    「・・・」
    

    「zzz・・・今夜こそ・・・」


    「私の気持ち・・・伝えなきゃ・・・」

    「夢の中でなら・・・・素直に・・・zzz」

 
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:30:59.43:ikR/6pFz0

またまたトコロ変わって

同時刻キョンサイド

~キョンの家。っていうか部屋~


ベッドに寝転がって天井を見つめる。

俺は一体どうすればいいのか。


俺は朴念仁と巷でもよく言われる。それは重々承知の上だ。

佐々木の件にしたって長門の暴走の件にしたって、最初のハルヒと2人きりの閉鎖空間だって

今考えれば俺が明確な立ち位置で意思表示をしてこなかったことが大元の原因だ。

なぜしなかったのか? その理由もわかってる。


怖かったからさ。自分の意思を公表する事で喜ぶ人がいたとしよう、でも、そうする事で悲しむ人がいたら?

悲しむ人も、喜ぶ人も、俺にとっては同じくらい大事な人だったとしたら?

俺はどっちを選べばいい?

 
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:38:39.31:ikR/6pFz0

例えば今夜、ハルヒと2人っきりで前みたいな事になったとしよう。

今夜以降ハルヒと俺が夢の中だけ恋人関係になったら。

きっと今までと同じようにはいかないだろう。

古泉の苦労は減るだろうし、ハルヒが世界をこねくり回す心配もなくなるが・・・

もし恋人関係が毎晩続いたら?

毎晩、ハルヒと夢の中で逢瀬を重ねる日々をつづけると言う事を

朝比奈さんも、多分長門ももうわかっている。

そうなったら・・・

今までと同じSOS団ってわけにはいかなくなるんじゃないか?


そうこう考えてるうちに、眠りにつくのが怖くなった。

仲間を失いたくない、けど、ハルヒを拒否もしたくない。


どっちも 俺は 好きだから―――――

 
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:48:00.87:ikR/6pFz0

そんな事を考えるうちに、体から力が抜けていくのを感じていた。

手足の先が少しずつ重くなり、それが体幹の方に伝播していく。

まるでこの体は単なる脳と神経の入れ物であるかのような、魂の入れ物であるかのような

自分の体が「モノ」になっていく感覚。

まぶたが閉じられ、体温で暖められたベッドが触れているとまるでどこからが体でどこからがベッドか

わからなくなっていく―――――

そしてゆっくりと。 実にゆっくりとベッドと同化していくような、宇宙空間を揺らいでいるような感覚。

今日はいろいろあって疲れたのだろう。このまま寝てしまうのは不安要素が多すぎるが

ええい、ままよ。


俺は絶対に失ったりしないぜ。

ハルヒも。 長門も。 朝比奈さんも。 ついでに古泉も。

 
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 00:58:19.18:ikR/6pFz0

――――――――ョン、 起きてキョン。

ん・・・まぶし・・くはない、夜?  ここはどこだ?


「私の出身中学。 東中よ。」

そこには赤いTシャツにタイトなジーンズといういでたちの我らが団長様。

そう涼宮ハルヒがいた。

「ハルヒ・・・」

「なに情けない声出してんのよ。さぁ、いくわよ」ハルヒは俺の手をつかんで歩き出した。

どうやら東中のグランドの真ん中で大の字になって寝ていたらしい。

どう考えても夢だよなぁ。コレ。

「さぁ、早く、こっちよ。」ハルヒはぐいぐい俺を引っ張る。

こいつはそういうやつなのだ。どんな時も先頭に立って引っ張るのが好きらしい。

「どこに行くんだ?」と俺。

「どこって・・・部室に決まってるじゃない」なに当然の事聞いちゃってるのよとばかりに

ハルヒはきょとんとした顔をしている。

 
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:03:40.60:ikR/6pFz0

ハルヒに引っ張られながら俺はここが夢の中であるという事を再確認する。

東中の校門からでて道路を挟んですぐにわが北高の校門があるのである。

夢の中とはいえ、空間を捻じ曲げやがったヤツは

「ホント・・思いどうりになるのね・・・」といった。

「やれやれ」と俺もいつものセリフを吐いてみた。

校舎には鍵がかかっていなかった。っていうかガラスがなかった。

さらに驚くべき事に下駄箱から直通で見慣れた旧館の廊下にすりかえられていた。

「さ、いくわよ。みんなが待ってる。」とハルヒ

ん?

「みんな?」

 
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:14:08.79:ikR/6pFz0

~ハルヒの夢の中、文芸部室の前~

ハルヒが俺の手を離す。

「ちょっと、まって・・・」しかしこっちには振り返らない。

「どうした?急いでたんじゃないのか? 中には誰かいるのか?」いろんな疑問がいっぺんに出る。

「うっさいわね!!今覚悟を決めてたのよ!!邪魔するんじゃないわよこんのバカキョン!!」

ハルヒは再び俺の手をつかんだ。

「いーい?私はもう覚悟決めたからね。あんたもハラくくりなさいよ。」あぁ、いつものハルヒだ。

だがしかしその表情には―――――――少し、ほんの少し恥らっているような成分を感じた。

―――――――――この違和感に気付けるのは俺くらいだろうという根拠のない自信がある。

「じゃぁ、入るわよ」ドアノブに手をかけたハルヒは

いつものように豪快にドアをあけた。

そこにいたのは――――――――――――

 
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:28:23.27:ikR/6pFz0

いつものように無表情、だがどこか優しいような、そんな気がした長門がいた。

その隣には北高のプリンセス・朝比奈さんもいた。

さらには見飽きたハンサムにやけ面の古泉もいる。「やぁ、こんばんは、というべきでしょうか?」

「キョンくぅ~ん、すずみやしゃ~ん」なぜか朝比奈さんは泣きそうである。

「・・・・」こいつは相変わらずだ。

「おい? ハルヒ?」どういう事なのかハルヒに説明を求めようとすると

「みんなっ! 私の夢の中へようこそ!!」とハルヒが切り出した

「私はついに明晰夢によって夢の内容を自由に操れるようになったわ!」

「そして夢の中だけみんなに能力・属性を付けたの!」一同ポカン状態である

「有希は宇宙人!みくるちゃんは未来人!古泉君は超能力者よ!」

「オイハルヒ、」と俺「俺は?」

「アンタは異世界人よ!」

「ね!こうすればわがSOS団の目的は達成されたでしょ!」

 
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:29:52.05:UYjz3uxsO
>>62
かわいい夢だな

 
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:33:26.19:ikR/6pFz0

「夢の中だけとはいえ現実では見つからなかったような不思議と出会えるのよ!」

「人間の脳にはまだまだ知られていない不思議がいっぱいあるのよ!今回はそれを利用したってわけ!」

ハルヒはここ最近、いやこの1年で1番ともいえるくらいの太陽のような笑顔で言った。

「・・・もうひとつ、この場だから、夢の中でしかいえない事を言うわ。」ハルヒのトーンが急に下がり

真面目な目つきになった

「私はね・・・・」気のせいだろうか、ハルヒの目元が潤んでいるような気がした

「・・・」ふぅ~と深呼吸したハルヒは次の瞬間

「キョンも!」

「有希も!」

「みくるちゃんも!」

「古泉君も!」

「みぃ~んな大好きだからねっ!!」大声で叫んだ

 
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:40:01.31:ikR/6pFz0

ハルヒの目には明らかに涙が溜まっていた

「わたし・・・」ハルヒは右腕で目をごしごしこすり

「みんなを振り回してばっかりで・・いつか私から離れていくんじゃないかって・・」

「すごく怖くなって・・・いつかみんなに感謝の気持ちを伝えようと思ったんだけど」

「現実ではどうしても素直になれなくて・・・」

「それで・・この方法が上手くいったら伝えようって、せめて・・夢の中だけでも。」

ハルヒの目からは涙があふれていたが表情は泣いているようには見えなかった。

言いたい事を言えたのか、つかえていたものが取れたようなすがすがしい表情だった。

 
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:48:46.85:ikR/6pFz0

「僕も涼宮さんが大好きですよ。これからも団長としてみんなをひっぱっていってくださいよ」

ハンサム野郎のスマイルが今回ばかりは嫌みに感じなかった。

「しゅずみやしゃぁ~ん、、ひっぐ、わたしもすずみやしゃんがしゅきですよぉ~」涙と鼻水でえらい事になっても

朝比奈さんだからオールOK! 問題ないね!

「ありがとう。」長門の口からいつかの病院で聞いたセリフが再び。今回はそれに付け足して

「私も、感謝している。」と。その目には優しさと決意の色がこもっていた。

俺が言うんだからまちがいない。

いつもの満足げな顔に戻ったハルヒは「で!?」と。 なぜか俺を見る。

 
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:53:52.60:ikR/6pFz0

「で!?とは?」俺はカツアゲされるような形でハルヒに詰め寄られている。

「私の気持ちはもう伝えたわ。 そしてみんなも言ってくれたわ。」なぜだろう

すごく怒こられているような気がする。

ぐぬぬ顔のハルヒ「あんたは・・・?」

「へ?」うん、今思えば人生で一番情けない声を出したと思う。

「あんたはっ!私の事っ!どう思ってんのかって聞いてんのよーっ!」

さっきよりも大きい声だ。鼓膜が破けるかと思ったぜ。

 
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 01:59:43.86:ikR/6pFz0

俺に聞こう。そう。自分自身にだ。

Q 俺はハルヒが好きか?
A 恋愛感情で言えばイエスとは言いがたい

Q ハルヒの今の告白をどう受け止めた?
A 今のは・・アレだろ、恋愛的なヤツじゃないだろ?

Q SOS団のみんなは好きか?
A もちろんだ。俺の唯一の居場所だからな。

Q ではもう一度聞こう、さっきハルヒが言ったような意味で、ハルヒが好きか?
A さっきってのはSOS団の1員としてってことか? それならば無論イエスに決まっているだろう。


そうだ。

とっくに答えは出ていたんだ。

結局俺が勝手に勘違いしてヤキモキしちまったって事か。

そんなくだらない事で悩む必要なんてなかったのにな。

 
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 02:05:12.77:ikR/6pFz0

ハルヒがいる限り、ハルヒが先頭に立っている限りSOS団がバラバラになる事などありえない。

そんな色恋沙汰でポシャるような人間関係で結ばれているわけがない。

だから俺もへんな杞憂などする必要などないのだ。

いい機会だ。ハルヒの夢の中だしな。普段言えない事も言っちまおう。

「ハルヒ。」俺はハルヒに向き直り、両肩をつかんだ。

いつものハルヒなら振りほどくだろうが今は夢の中だ。

「俺もお前が、大好きだ。」

 
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 02:10:12.50:ikR/6pFz0

その瞬間、空間が光に包まれた。

それまであった部室の壁は無くなり、真っ白な光の中に俺たちはいた。

地面の感覚も、どっちが上で下かもわからなくなる――――

そう、再び眠りに落ちる感覚。

でもなぜか―――

―――とても心地がいい。

その感覚の中で俺たち5人は手をつないで円になっていた。

「また、あした、部室で会いましょ。」ハルヒがそういって

みんなが同時にうなずいた。

 
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 02:16:00.08:ikR/6pFz0

~次の日~

キョンの教室

俺が教室に入ると俺の後ろの席のやつはポ二ーテールだった。

一生それでいてくれればいいのに、なーんて一瞬思ったり思わなかったりした。

いや、ホントに。

休み時間、ハルヒはいつもと変わらずに俺と接していた。

俺もいつもと変わらずにハルヒと接していた。

終業のチャイムが鳴った。いつものようにハルヒと部室に向い、ドアをあけた。

そこには昨日と、いや、いつもと変わらぬSOS団の面々が定位置に、あるべき姿でいた。

 
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 02:22:00.73:ikR/6pFz0

その日の団活は特に変わった事も無く、古泉から「ありがとうございます」と書かれた紙を

これまた机の下経由でもらったのは別として、長門の本が読み終わるのを合図にそれぞれが帰る支度をした

いち早く準備を終えたハルヒは「私は今日も早く帰らなきゃいけないから鍵よろしくね!」と部室のドアを開け振り向いて

「それから、 キョン。」完全に気を抜いていた俺はこれまた気の抜けた声で「なんだ?」


「ありがとう。」

昨日より3割増しくらいの笑顔だった。


FIN

 
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 02:24:44.48:ikR/6pFz0
とりあえずコレで終わります。

いろいろな展開考えてたけど明晰夢と絡めるのは難しかったです。


こんなオナニー文章を公開してしまっていることが

もう申しわけなくてたまりません。

最後まで読んでくれた人ありがとう

支援してくれた人本当にありがとうございました。

 
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/05(火) 03:21:38.69:OTYDMXZk0
乙~

 


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