-
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 15:50:01.79:oaqXs8h40
人狼姉「腹減ったなぁ…」
人狼妹「ごめんね、もうなにも材料がなくて」
人狼姉「姉ちゃんがなんかとってくるよ」
人狼妹「ううん、いいよ。今すごい雨だもん」
人狼姉「大丈夫、頑張ってなんか見つけてくるから」
人狼妹「分かった、気をつけてね」
バタ
ザァァァァ
人狼姉「嫌な季節だ…」

【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」

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【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?

韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 15:52:08.07:oaqXs8h40
森
人狼姉「とは言ったものの」
人狼姉「まるで鼻がきかないな…」
人狼姉「兎か、リスで捕れれば…」
人狼姉「このさい野ねずみか蛇でもいいんだけど」
人狼姉「みんな土の中か…」
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 15:54:03.10:oaqXs8h40
川
ゴォォォ
人狼姉「すごい濁流…」
人狼姉「魚、無理かな」
人狼姉「あ」
魚 ピチピチ
人狼姉「打ち上げられてる」
人狼姉「結構太ってて美味しそうだ」
人狼姉「山の神様ありがとう」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:00:18.23:oaqXs8h40
姉妹の小屋
バタン
人狼妹「お姉ちゃん?」
人狼姉「ただいま」
人狼妹「お姉ちゃんずぶ濡れ…」
人狼姉「ん」
人狼妹「今拭くもの持ってくるから、服脱いで囲炉裏のそばにいてね」
人狼姉「分かった」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:03:02.21:oaqXs8h40
パチパチ
人狼姉(とりあえず、魚を焼いておこうかな)
人狼妹「おまたせ、体拭くね」
人狼姉「ああ」
人狼妹「…」
ゴシゴシ
人狼姉「火の傍でお前に体拭いてもらうと、体がポカポカしてきて寝ちゃいそうだ」
人狼妹「ふふ、寝ちゃってもいいよ」
人狼姉「…」
人狼妹「お姉ちゃん、綺麗な体してるよね」
人狼姉「そうか」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:09:57.66:oaqXs8h40
人狼妹「ごめんね」
人狼姉「うん?」
人狼妹「私が足悪くなかったら、お姉ちゃんにこんな苦労かけることなかったのに…」
人狼姉「血を分けたたった二人の姉妹なんだ、水くさい事を言うな」
人狼妹「…うん」
人狼姉「ほら、魚が焼けたからたんとおあがり」
人狼妹「…お姉ちゃんの分は?」
人狼姉「私は途中で木の実を食べてきたから」
人狼妹「お姉ちゃん?」
人狼姉「…」
人狼妹「嘘言っても分かるんだからね、半分こしよ」
人狼姉「…ああ」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:22:31.96:oaqXs8h40
人狼姉「…」
人狼妹「美味しいね、お姉ちゃん」
人狼姉「ああ」
人狼妹「んぐんぐ」
人狼姉「ご馳走様」
人狼妹「骨は埋めておくね」
人狼姉「すまないな、もっとたくさん獲れたら良かった」
人狼妹「ううん、私はお腹一杯だよ」
人狼姉(もっと栄養のあるものがあれば、妹の足も…)
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:25:51.27:oaqXs8h40
夜
人狼姉「寝ようか」
人狼妹「うん」
ゴソゴソ
人狼妹「ふふっ」
人狼姉「どうした?」
人狼妹「お姉ちゃんの尻尾はモコモコで暖かいね」
人狼姉「そうか」
人狼妹「お姉ちゃん」
人狼姉「なんだ?」
人狼妹「私ね、お姉ちゃんと一緒にいられるだけで十分幸せだから」
人狼姉「ん、分かったよ」
人狼妹「今日もひっついて寝ようね」
12:呼称を姉・妹に変更します:2011/06/18(土) 16:29:52.29:oaqXs8h40
朝
ガラッ ザァァァァ
姉「今日も雨か…」
姉(昨日は運良く魚にありつけたけど、今日は…)
妹「お姉ちゃん?」
姉「おはよう」
妹「あそぼ」
姉「ああ、どうしようか」
妹「お絵かきがいいよ」
姉「分かった、炭はあったかな」
妹「うん」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:46:06.68:oaqXs8h40
カリカリ
妹「これ、分かる?」
姉「尻尾があるから私だろう」
妹「当たり!すごいね」
姉「お前は私しか知らないからね」
妹「うん」
カリカリ
妹「…」
姉「これは魚だな」
妹「うん」
姉「こっちは兎だ」
妹「うん」
姉「お腹が空いてるのか」
妹「だ、大丈夫空いてないよ」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:48:30.76:oaqXs8h40
姉「なにか捕ってこよう」
妹「ダメだよ、今日もすごい雨振ってるし…」
姉「大人しくお留守番してなさい」
妹「…」
姉「姉ちゃんなら大丈夫だから」 ナデナデ
妹「うん…」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:54:51.25:oaqXs8h40
昼 小高い丘
姉「人里がもうこんなに近くまで来ている…」
姉「もう1・2年もすれば私達の山も…」
姉「…」
姉「草原のほうに行ってみるか」
ガサガサ
…グモゥモゥモゥ
姉「ん」
姉「ウシガエルだ」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 16:55:26.41:Z//FEsuN0
夜 姉妹の小屋
パチパチ ジュウジュウ
妹「おおおお。おいしそう!」
姉「いい匂いがしてきた」
妹「すごいね!3匹も」
姉「ああ、いい場所を見つけた。明日も期待できるかもしれない」
妹「よかったぁ、これで飢えないでもすみそうだね」
姉「……さ、焼けたぞ」
妹「ありがとう!」
ハグハグ
妹「久しぶりのお肉ー」
姉「うん」
残念ながら親狼は妹が物心つく前に猟師に打たれて
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:05:37.21:oaqXs8h40
パチパチ
妹「お腹いっぱい」
姉「毎日このくらい食べられるといいな」
妹「うんうん」
姉「さぁ、もうおやすみ」
妹「も、もうちょっと」
姉「船をこいでるじゃないか」
妹「お姉ちゃん、だっこ」
姉「ふふ、しょうがないな」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:13:38.73:oaqXs8h40
翌日
妹「お姉ちゃん石取りしよ」
姉「ああ」
妹「私が勝ったら、今日は一日家にいてね」
姉「そんなことをしたらお前が飢えてしまうよ」
妹「いいの」
妹「むむむ」
姉「ほうらこんなに取ってしまった」
妹「はぁ、負けた…」
姉「それじゃ、姉ちゃんは狩りに行ってくるよ」
妹「…うん、気をつけて」
ガラッ
ザァァァ
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:17:38.12:oaqXs8h40
昼 草原
ザァァァァ
姉「いない…」
姉(もう少し遅くにならないと出てこない、か…)
姉「…分厚い雲だな…本当に、嫌な時期だ」
姉(少し木陰で時間を潰そう)
――…
グモゥグモゥ
姉「出てきたか」
姉「すまんな、これも私達が生きるためだ」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:24:46.36:oaqXs8h40
夜 姉妹の小屋
パチパチ グツグツ
妹「はぁぁぁ、カエルが煮えてきたよ!」
姉「うん、もうちょっとかな」
妹「…ゴクリ」
姉「…ん、そろそろいいかな」
トロッ
姉「さぁおあがり」
妹「いただきます!」
姉「いただきます」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:29:20.85:oaqXs8h40
妹「おいしい、おいしい」
姉「…」
妹「お姉ちゃん、どうしたの?」
姉「…お前は鶏肉を食べた事があるか?」
妹「とりにく?雀とか烏のお肉?」
姉「鶏の肉だよ」
妹「うーん、にわとりは食べた事ないなぁ…おいしいの?」
姉「ああ、脂がのっててな。口に入れると良い香りと甘い脂が広がってたまらないんだ」
妹「…ゴクリ」
姉「父さんや母さんがまだこの家にいる頃に、何度か食べた」
妹「いいなぁ」
姉「今度捕ってきてやろうな」
妹「うん!」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:31:47.12:pj3vQUqE0
夜 布団
妹「お姉ちゃんは狼の姿でいることが多いね?」
姉「人には良い思い出がないからな」
妹「…」
姉「でも、人型の手は器用だから」
妹「うん」
姉「妹は人の姿のほうがいいのか?」
妹「…そっちのほうが綺麗だよ」
姉「そうか」
妹「寝る時はどっちもあたたかくていいけど、えへへ」
姉「…」
はい
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:39:47.23:oaqXs8h40
翌朝
ガラ
チュンチュン
姉「おお…」
姉(晴れ間がのぞいたか)
妹「おはよ、お姉ちゃん」
姉「見てごらん、少し曇ってはいるが今日は中々良い天気だ」
妹「ほんとだ!」
姉「ほら、姉ちゃんの手につかまって」
妹「うん」
姉「たまには日光浴をしないと、毛皮がカビくさくなってしまうよ」
妹「私かびくさい?」
姉「いいや、良い匂いだよ」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:47:36.72:oaqXs8h40
姉「あの岩の上がいいかな」
妹「そうだね」
姉「よいしょっと」
姉「さ、おいで」
ポフ
妹「へへ、お姉ちゃんのお膝だ」
姉「落ちないように」
妹「お姉ちゃんに抱きつくから平気だよ」
姉「ん、少し重くなったな」
妹「太ってないよ?」
姉「大きくなったんだよ」 ナデナデ
妹「うん、早くお姉ちゃんみたいな立派な狼になりたいよ」
姉「…」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:51:00.11:oaqXs8h40
チチチ…
妹「あ、スズメだ」
姉「ああ」
妹「おいしそうだね」
姉「全くだ」
姉「お日様は素晴らしいな…」 ポカポカ
妹「ん…」 ウツラウツラ
姉(もう眠たそうだな)
姉「ほら、姉ちゃんの胸に頭をあずけて」
妹「う…ん」
姉「大丈夫、寝ちゃったら姉ちゃんが運んであげるから」
妹「…うん」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:53:12.86:ZxanfAe/0
妹「くぅくぅ…」
姉(もう寝てしまった)
姉「……」
スッ
姉(成長が足りていない)
姉(こんなにも細い腕、強く抱けば折れてしまうのではと心配になる腰)
姉(儚げな顔も相まって本当にいつかいなくなってしまいそう)
姉(もっと、栄養をとらせてあげないと)
姉「父さん、母さん…」
姉(二人がいて、私とこの子二人で丸くなっていた頃は本当に幸せだった)
姉(今が、不幸せというわけではないけれど…)
姉「…本当にいい天気だ」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:23:36.06:oaqXs8h40
ジリジリ
姉「少し暑くなってきたな」
姉(小屋に運ぼうか)
スッ
妹「う、ううん」 ムニャ
姉「すまない、起こしてしまったか」
妹「あ、お姉ちゃん…」
姉「暑くなってきたから、小屋に戻ろうか」
妹「うん」
姉「そのままじっとしていなさい」
妹「ううん、お姉ちゃんの腕を借りて頑張って歩く」
姉「そうか、偉いな」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:29:08.47:oaqXs8h40
妹「山がくっきり見えるね」
姉「ああ、雨が振った後のお山は本当に綺麗だ」
妹「…まだ私の足がいい頃は、あのあたりでビワをとったね」
姉「そういえば…」
妹「私、あそこまで歩いてみたい」
姉「…ビワならお姉ちゃんがとってくるよ?」
妹「ううん、歩いてみたいの」
姉「…」
妹「最後まで歩くから。ダメ?」
姉「いや、また歩く練習もしないとだし構わない」
妹「ありがとう!」
姉「そのかわり、痛くなったら言うんだよ。無理して足が悪くなると困るから」
妹「…うん」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:33:05.51:oaqXs8h40
夕方 森
サァァァァ
姉(ああ、いい風が森を吹き抜けていく)
妹「ここは涼しくて気持ちいいね」
姉「足は大丈夫か?」
妹「うん、痛くないよ」
姉「もっと姉ちゃんにしがみついても構わないよ」
妹「うん!…あ」
姉「どうした?」
妹「あそこ!蛇!」
姉「いい子だ、目ざといな」
妹「えへへ」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:36:23.77:oaqXs8h40
姉「ふぅ…」
妹「お姉ちゃんかっこいい!」
姉「ふふっ、ここに埋めておこう」
妹「はーい」
バリバリ ポンポン
姉「今晩は蛇の焼き肉だな」
妹「楽しみー」
ゴロゴロ
姉「しっかりと私の匂いをつけておいた」
妹「くんくん」
姉「帰りに忘れないように掘り返しにこよう」
妹「うん!」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:39:08.02:oaqXs8h40
森 少しひらけた場所
姉「確か、このあたりか」
妹「……なんだか嗅ぎ慣れない匂いがする」
姉「本当か?」
妹「うん、いろんな匂いが混じってて…」
姉「お前は私より鼻が利くんだな」
妹「…」
ガサガサ
姉「姉ちゃんが様子見てくるから、ここでまってなさい」
妹「うん」
姉(狼の姿になっていたほうが良いか…) ググッ
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:42:36.48:oaqXs8h40
姉(なるほど、この狼になるとよく判る)
姉(この匂い…)
姉(――人間だ)
男「ふんふん♪」
姉(私達のビワを…)
姉(人間は……あいつ一人か)
姉(少し脅かしてやろう)
ガサッ
男「んっ?」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:45:54.16:oaqXs8h40
姉「グルルル…」
男「おっ…狼!」
姉「ウゥ…」
男「や、やべぇ」 ダッ
姉(よし、いいぞ)
ドシャッ
姉(転んだ…無様な)
男「いてて…」
姉「……」
男「ああ、こ、腰が抜けちまった…」
姉(はやく行ってくれればいいんだが)
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:47:37.75:oaqXs8h40
男「も、もうダメだ…」
姉「……」
男「……」
姉「……」
男「あれ?俺を襲わないのか?」
姉「ウゥ……」
男「こ、こええけどありがとよ」
ダダダッ
姉「行ったか」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:50:52.34:oaqXs8h40
ガサ
姉「もう大丈夫だ」
妹「あ、おかえりなさい」
姉「人間は逃げちゃったからな」
妹「さすがお姉ちゃんだね!」
姉「さ、ビワを取りに行こう」
妹「うん!」
妹「いっぱい落ちてる」
姉「あの人間が落としていったんだ」
妹「くんくん……ほんとだあの匂いがする」
姉「あまりいい匂いじゃないがもらっていこう、背負い籠も」
妹「たくさんもって帰れるね」
姉「ああ」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:57:35.12:oaqXs8h40
森の帰り道
妹「お姉ちゃん」
姉「うん?」
妹「ひとつ、食べてもいい?」 ジー
姉「ああ、姉ちゃんが剥いてあげるよ」
妹「やった!」
姉「よいしょっと」 ドスン
ゴソゴソ
姉(爪で薄く切れ目を入れて…) ツゥッ
姉(皮を…)
姉「……」
妹「私がする?」
姉「…ああ、姉ちゃんはこれ苦手だ」 ポン
妹「えへへ、任せて」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:01:05.71:oaqXs8h40
妹「はい、お姉ちゃん」
姉「ありがとう」
シャクシャク
妹「甘くて美味しい!」
姉(とうとう私達の山にまで人間が…)
姉(私達の小屋が見つかるまで。あと何ヵ月あるんだろう)
妹「お姉ちゃん?」
姉「あっ、なんだ?」
妹「むずかしい顔してたよ?」
姉「……ちょっと渋いビワだったんだ」
妹「そうなんだ」
姉「ああ」 シャク
妹「‥…」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:04:22.61:oaqXs8h40
夜 姉妹の小屋
妹「やっと帰ってこれたね」
姉「ああ、今開ける」
ガチャ
妹「ただいまー!」
姉「ふぅ、おかえり」
妹「お姉ちゃん?」
姉「うん。なんだい」
妹「帰ったらただいま、だよ?」
姉「そうだったな」
姉「ただいま」
妹「おかえり!お姉ちゃん」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:08:45.26:oaqXs8h40
パチパチ ジュウジュウ
妹「おねえちゃん、頭としっぽどっちがいいの?」
姉「そうだな、私は頭かな」
妹「私はしっぽ」
姉「ちょうど良かった」
妹「うん」
姉「ほら、熱いから火傷しないように」
妹「うん……はふはふ」
姉「いい顔つきのヘビだ、パク」
妹「おかしらつきだね」
姉「…そうなるのかな」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:14:20.32:oaqXs8h40
夜 布団
姉「足を出して、揉んであげるから」
妹「うん」
姉「相変わらず細い足だな」 モミモミ
妹「今日はたくさん運動したからもうちょっと太くなるよ」
姉「……そうだといいな」
妹「うん」
姉「痛くないか?」
妹「んっ…とっても気持ちいいよ?」
姉「良かった」 モミモミ
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:19:27.90:oaqXs8h40
姉「よし、全体的に柔らかくなったかな」
妹「はぁーすごい良かった‥…お姉ちゃんにもしてあげるね」
姉「私は…」
妹「いいから」
姉「はぁ、お願いしようか」
妹「~♪」 モミモミ
姉「ふぅ…上手だな」
妹「愛情をこめて揉んでるんだよ」 モミモミ
姉「ふふっ、それは効きそうだな」
妹「お姉ちゃんの足は白くて柔らかくて触ってて気持ちいいし…」 モミモミ
姉「……」
妹「あ、今度ひざ枕して」
姉「ああ」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:26:53.18:oaqXs8h40
――…
姉「さ、寝ようか」
妹「もーくたくただよー」
ギュッ
妹「あったかあったか」
姉「ん…」 ナデナデ
妹「……ずっと一緒にいたいね」
姉「姉ちゃんはどこにも行かないよ」
妹「うん」
姉「足が良くなったら」
妹「んん?」
姉「ちょっと遠くまで行ってみようか」
妹「うん」
姉(もっと……人里から離れたところに)
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:33:47.65:oaqXs8h40
朝
ガチャ
ザァァァ
姉「今日は雨か…」
妹「お姉ちゃんあそぼ」
姉「そうだな、ウシガエルは夜まで出てこないし」
妹「やった、今日はねえっと…」
ポーンポーン
妹「あんたがたどっこさ♪ひごさ♪ひごどこさ♪」
姉「上手い上手い」 パチパチ
妹「えへへ、くーまもとさ♪くーまもとどこさ♪」
ポンポン
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:38:35.92:oaqXs8h40
夕方 小屋
姉「姉ちゃんカエル捕まえてくるね」
妹「うん」
姉「ビワを食べ過ぎるとお腹壊しちゃうからあんまり食べないように」
妹「はーい」
ガチャ
ジージー
姉「雨がやんだか…」
姉(梅雨明けもそう遠くないかもしれないな……)
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:43:34.98:oaqXs8h40
グモッ
姉「これで3匹目」 ガシッ
姉「悪いがお前は今日の夕飯だ」
モゥモゥ
姉「……」
姉「もっと、精のつく物を食べさせてあげたいな」
姉「卵や鶏肉や…」
姉(人里に行けば、たくさん…)
姉「……明日、晴れていたら、行ってみよう」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:54:42.52:oaqXs8h40
翌丑三つ時 人里のはずれ
コッコッコッ
姉(人の気配はない……鶏も眠ってる)
姉(そっと、そっと) ジリジリ
姉(卵だ!5つもある) ゴクリ
姉(全部貰おう…)
コッコッコッ
姉(鶏は……とるとバレるかな……)
姉(とりあえずはこの卵で)
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 19:57:40.85:oaqXs8h40
朝 姉妹の小屋
ガチャ
姉「ふぅ…」
妹「お姉ちゃん!」
姉「ただいま」
妹「朝起きたらお姉ちゃんいなくて…私…」 グスッ
姉「すまない、でもお土産」
妹「こ、これなぁに?」
姉「鶏の卵、今日の朝食にしよう」
妹「はわぁ、卵?こんな大きの初めてみた……」
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:02:14.24:oaqXs8h40
パチパチ グツグツ
妹「茹でて食べるの?」
姉「ああ」
妹「蛇の卵10こ分くらいありそう…」
姉「栄養満点だ、これを食べたら私くらい大きくなれる」
妹「おおー!」
妹「いただきます!」 コンコン
姉「いただきます」 コンコン
妹「はむはむ……お、おいしい!」 パァッ
姉「うん…美味しい」 ウットリ
妹「朝からこんなの食べれるなんて…はぐはぐ」
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:06:56.81:oaqXs8h40
妹「はぁ…幸せ」
姉「ああ…」
ガチャ チチチ・・・
姉「うん、いい陽気だ」
姉「――私は日向ぼっこに行くが一緒にくるか?」
妹「うん!」
姉「分かった」
妹「んしょ」 ギュッ
姉「ビワをいくつか持っていこう」
妹「そうだね」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:11:16.18:oaqXs8h40
チチチチ…
姉「今日は少し眠りたいから、軽く木陰になってるここで」 ストン
妹「はーい」
姉「おいで」
妹「わーい、お姉ちゃんのお膝!」 ポフッ
姉「よしよし」 ナデナデ
サァァァァ
妹「風は涼しいし、お腹もいっぱいだししあわせ…」
姉「…」
妹「お姉ちゃん?」
姉「あっちの山」
妹「うん」
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:14:47.18:oaqXs8h40
姉「あの山を越えた先にたぬきの隠れ里があるらしい」
妹「たぬきの?」
姉「これは父さんに聞いた話なんだが…」
妹「うん」
姉「昔、この山で人間の罠にかかっているたぬきを助けたらしい」
妹「…」
姉「その時にな『いつか里にいらしてください、恩返しいたしますので』と場所を聞いたと」
妹「おお……」
妹「結構通そうだね」
姉「ああ」
妹「でも行ってみたいかも」
姉「足が良くなったらきっと行こうな」
妹「うん」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:18:44.50:oaqXs8h40
姉「あっちの山には沼があってな」
妹「うん」
姉「河童が住んでいるらしい」
妹「かっぱ?」
姉「私にもよく分からないのだが、大きなカエルのようなものかと想像している」
妹「大きなカエルかぁ…」 ゴクリ
姉「あっちにも行ってみような」
妹「うん」
姉「さて、私は少し仮眠をとるから。近くで遊んでなさい」
妹「ううん、一緒に寝るよ」
姉「そうか」
妹「うん」 ギュッ
姉「……」 ナデナデ
妹「えへへ、お姉ちゃんだい好き」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:25:41.74:oaqXs8h40
翌丑三つ時 人里のはずれ
姉「くんくん」
姉(……鉄の匂いがする)
姉(嫌な感じだ…)
姉(でも…)
コッコッコッコッ
姉「鶏……」
姉(慎重に行こう) ジリジリ
姉(卵がみえてきた……もうちょっと)
ガチン
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:29:02.19:oaqXs8h40
姉「はっ…!ああっ!」
姉(いっ、痛い!まるで前足が焼けるよう!)
姉「こんなもの!人の形になればッ!」
バキン
姉「はぁ……はぁ」
姉「ううっ…」
姉(痛い……右手にあんまり力が入らない…)
コッコッコッコッ
姉(片手じゃ卵たくさん持てない…)
姉「……」
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:32:15.24:oaqXs8h40
朝 姉妹の小屋
ガチャ
妹「おかえりなさーい」
姉「…ん、ただいま」
妹「…それ、お姉ちゃん、血がついてる!」
姉「ちょっとだけ、ヘマしちゃった」
妹「見せて!」
妹「ん…」 ペロペロ
姉「っ……」
妹「いたいの?」
姉「…大丈夫」
妹「……」 ペロペロ
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:36:49.24:oaqXs8h40
妹「ひどい傷…」
姉「見た目ほど、痛くないから」
妹「……」 ペロペロ
姉「もう大丈夫、なにか巻いてくれるか?」
妹「…うん」
姉「ほら、お土産」 ブラン
妹「これって…」
姉「鶏」
妹「……」
姉「さっそく焼いて食べよう」
妹「お姉ちゃん、この鳥に怪我したの?」
姉「いいや、転んだだけ」
妹「……転んだ傷じゃないよ」
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:41:49.85:oaqXs8h40
パチパチ ジュウジュウ
妹「お姉ちゃんが無事でいてくれたら、私ご飯なんていらない…」
姉「…お前はたんと食べて大きくならないと」
妹「ずっと小さいままでもいいから!」
姉「……」
妹「大きくなったってお姉ちゃんいなくなったら生きていたくない…」
姉「…すまないかった」
妹「お姉ちゃん!」
ギュッ
姉「ごめんね」 ナデナデ
妹「ほんとは痛いんだよね?我慢してるんだよね?」
姉「……うん、とっても痛いよ」
妹「お姉ちゃんのばか…」
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:48:09.95:oaqXs8h40
パチパチ
姉「ほら、焼けたよ」
妹「私が食べさせてあげるね」
姉「ああ」
妹「大きいお肉…」
姉「足をちぎってくれるか?」
妹「うん」
妹「あーん」
姉「あーん……はむはむ」
妹「美味しい?」
姉「ああ、思わず尻尾が出るくらい美味しいよ」 パタパタ
妹「……」 ゴクリ
姉「お前もお食べ」
妹「う、うん」
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:53:21.00:oaqXs8h40
妹「お…美味しい!」
姉「そうだろう」
妹「こんなとろっとしたお肉初めて…」
姉「噛めば噛むほど脂が出てくるなぁ」
妹「うん」
姉「次は身をちぎって食べさせてくれ」
妹「了解」
姉「ふぅ、ご馳走さま」
妹「複雑なきもちだけど、でもおいしかった…」
姉「こうして、お前に食べさせてもらえるなら、甲斐あったかな」
妹「こんなのいくらでもするから、もう絶対怪我しないで…でないと」
姉「ああ、分かってるよ」
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:56:14.28:oaqXs8h40
夜 布団
妹「お姉ちゃんの手、貸して」
姉「ああ」
妹「やっぱり、ちょっと冷たい…」
姉「そうかな」
妹「舐めて暖める・・・ぺちゃ」
姉「……」
妹「ぺちゃぺちゃ」
姉「…とても暖かいな」 ナデナデ
妹「えへへ」
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 20:59:29.50:oaqXs8h40
朝
ゴソ
姉「……」 ニギニギ
姉(痛いけど、ちゃんと握れる…) ホッ
姉(手首のあたりが結構深くやられてる)
姉(食べ物、どうしよう)
妹「う・・・ううん」
姉「ふふ、お前のお陰かな」 ナデナデ
妹「えへへ…むにゃむにゃ」
姉「……」
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:10:44.81:oaqXs8h40
ガチャ
チュンチュン
姉「右手が使えないから、人の姿のほうがいいな」
姉「良い天気だ」
姉「梅雨は明けたかな」
チチチチ…
姉「あまり小屋をあけると心配がるかな」
姉「戻ろうか」
妹「お姉ちゃん」
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:12:24.47:oaqXs8h40
姉「ここまで一人できたのか」
妹「うん、杖があればなんとか」
姉「偉いな」 ナデナデ
妹「えへへ」
姉「少し、そのへんを散歩しようか」
妹「うん」
123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:20:17.69:oaqXs8h40
森
ミーンミンミン
姉「今日は少し暑いな」
妹「うん」
姉「杖があったらどのくらい歩けるんだ?」
妹「試した事はないけど、たぶん一刻くらいの間は」
姉「そうか」
妹「遠くに行くの?」
姉「そのうちに」
妹「一緒に?」
姉「ああ」
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:23:49.64:oaqXs8h40
ガサッ
姉「…誰だ!」
妹「ひっ…」
ガサッ
男「あれ、こんな森の中で娘さんが何してるんだ?」
姉「…」
妹「…」
男「まぁいいや、あんた達このへんにいると危ないぜ」
姉「…どういう事だ」
男「里を荒らす獣がいるみたいでな、この山を山狩りするんだと」
妹「…」
男「あんた達も鹿かなにかと間違われないうちに山を降りたほうがいいよ」
姉「…そうか、分かった」
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:26:56.20:oaqXs8h40
男「じゃあな」
ガサガサ
妹「お姉ちゃん…」
姉「すまない」
妹「どうしたの?お姉ちゃんはなにも悪くないよ」
姉「軽率だった……人間の家畜に手を出すなど」
妹「私の為にやったんだもん、お姉ちゃんは悪くない」
姉「…」
姉「家を捨てて、たぬきの隠れ里を目指そう」
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:33:11.39:oaqXs8h40
妹「うん…もうおうちには帰れない?」
姉「帰る途中、万が一にでも見つかって、尻尾や耳が出てしまったらお終いだから」
妹「もし捕まったら殺されちゃうのかな…」
姉「分からない、でも良い事にはならない気がする」
妹「…うん」
姉「一緒に来てくれるか?」
妹「うん、お姉ちゃんとなら、どこまでも」
姉「よし、歩けるだけ歩いて、疲れたら私がおぶるから」
妹「うん、ごめんね、お姉ちゃん」
姉「お前なんて羽毛を背負って歩くようなもんだよ」
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:36:16.31:oaqXs8h40
夜 森の中
サクサク
妹「お姉ちゃん、重くない?」
姉「軽い軽い」
妹「……」 ギュッ
姉「……」
姉「…あれは」
妹「人間の建物?」
姉「打ち棄てられた古いお堂のようだ、あそこで今夜は休もう」
妹「うん」
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:54:26.79:oaqXs8h40
サクサク
姉「さすがに少し疲れたな」
妹「ごめんね」
姉「お前の重みはかえって足を軽くしてくれるよ」
妹「そうなの…?」
サクサク
姉「……」
妹「意外とお堂まで距離あったんだね」
姉「ああ」
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 21:56:20.41:oaqXs8h40
サクサク
妹「な、なんかおかしいよ?」
姉(なぜいつまで立ってもお堂に着かない)
妹「なんだか不気味だよ…それに変な匂い…」
姉「匂い?」
妹「うん、なんだか変わった獣の匂いがする」
姉「くんくん」
妹「……」
姉「なるほどな」
妹「お姉ちゃん?」
姉「大当たりを引いたようだ」
姉「スゥゥゥ」
姉「ウゥゥ、ワン!!!」 ビリビリ
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:00:21.38:oaqXs8h40
妹「キャッ」
???「ひっ、ひえええ!」
ドロン
姉「やはりな」
妹「わっ、お堂が消えた!」
姉「出てこい、化け狸」
子だぬき「す、すみません……てっきり人間かとおもいやして……」
妹「この子…たぬき?」
子だぬき「どうか食わないくだせぇ…」 ペタ
妹「小さくて可愛い…」
姉「お前なんか食わん」
子だぬき「そ、そうですか。それじゃあっしはこれで…」
姉「待て」 ガシッ
子だぬき「ひっ」
142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:04:26.20:oaqXs8h40
姉「渡りに船だ、このあたりにお前たちの隠れ里があるだろう」
子だぬき「……」
姉「案内してもらおう」
子だぬき「……」
妹「お姉ちゃん、その子怯えてるよ!」
姉「ん……」
子だぬき「……」 ジッ
妹「ごめんね、お姉ちゃんも必死だから」 ナデナデ
子だぬき「はふぅ……それで、あなた方は?」
妹「人狼の姉妹だよ」
子だぬき「ははぁ……すると山向かいの?」
姉「そうだ、知っているのか?」
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:08:43.55:oaqXs8h40
子だぬき「知ってるというか、うちの爺ちゃんが昔そこの人狼に命を助けられたと聞きやした」
妹「それって……」
姉「私達の父だな」
子だぬき「そうでやすか…」
妹「それで、案内してくれるのかな?」
子だぬき「うちの里にどんなご用で?」
姉「この昼間に、住んでいた山を追われたんだ」
妹「着の身着のままで飛び出してきたの」
子だぬき「それはまた…お気の毒に」
妹「ありがとう」 ニコッ
子だぬき「‥…」 ドキドキ
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:13:59.48:oaqXs8h40
子だぬき「こっちです」
妹「良かったね、お姉ちゃん」
姉「ああ」
サクサク
子だぬき「里についたら、うちの爺ちゃんの所に来て下さい」
姉「分かった」
妹「たぬきちゃんのおうちはどんなところなの?」
子だぬき「うちは平屋の一軒家です」
姉「家屋に住んでいるのか」
子だぬき「ええ、うちの里はみんな家に住んでやすよ」
妹「すごいね、お姉ちゃん」
姉「ああ、大したものだ」
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:19:50.37:oaqXs8h40
チーチーチー…
子だぬき「さ、着きやした。中央に見えるのがあっしの家で」
妹「わぁ…おうちがたくさん」
姉「畑もあるな、ここは人里ではないのか?」
子だぬき「里のたぬき全員が人に化けてるんで。家も畑も人同様に作って」
姉「そうか……そういう手もあるんだな」
子だぬき「化かすのに適したあっしらの村らしいでしょう」
姉「驚いた」
妹「人里ってこんな感じなんだね……」
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:22:56.90:oaqXs8h40
深夜 子だぬきの家
子だぬき「どうぞ、入ってください」
姉「ああ」
妹「お、お邪魔します…」
子だぬき「今爺ちゃん呼んできやすんで、どうぞ囲炉裏ばたに」
タンタンタン
パチパチ
姉「温もるな…」
妹「うん、なんだかすごく安心して…」
姉「眠そうだ、もう深夜だものな」
妹「うん…」
姉「構わないから、姉ちゃんの膝で眠りな」
152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:28:25.13:oaqXs8h40
スゥー
古狸「お待たせいたしましたな」
姉「夜分遅くすまない」
古狸「いえいえ、そちらの方は?」
姉「疲れて眠り込んでしまった」
古狸「ホッホッホッ、そうですか」
古狸「聞きましたよ」
古狸「あなた方は儂を助けてくださった人狼のお子さんだとか」
姉「父から、たぬきを助けて里の場所を教えてもらったと聞いている」
古狸「うんうん、凛々しい方だったのう。目元が良く似ておられる」
姉「そうですか…」
古狸「お父上はご健在で?」
姉「いえ、猟師に…」
古狸「なんと…」
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:31:17.62:oaqXs8h40
古狸「さてと、ずいぶんとお疲れのようですから、
今日はゆっくりとお休みになられると良いですな」
姉「すまないな」
古狸「これからの事は、また明日起きてから相談するとしましょう」
姉「ありがとう」
古狸「そうそう、風呂と膳の用意ができておりますでな」
姉「風呂?」
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:34:49.84:oaqXs8h40
カポーン
妹「すごい……あったかいお水がこんなにいっぱい」
姉「めったに入れるもんじゃないから、堪能しよう」
妹「うん」
チャポ
妹「おおっ…」 ブルッ
姉「ん…これは」
妹「気持ちいい……お風呂っていいね!」
姉「ああ…尻尾の先まで疲れが抜けていくようだ…」 ウットリ
妹「眠気が一気に飛んじゃったよ」
姉「起こした甲斐があったな」
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:38:19.08:oaqXs8h40
ガラガラ
姉「はぁ…良かった」
妹「すごいさっぱりした…」
姉「たぬきの生活レベル侮りがたし」
妹「うん…」
コンコン
妹「はーい」
子だぬき「食事の用意ができてやすんで、上がられたらどうぞ」
姉「分かった、ありがとう」
妹「お姉ちゃんご飯だって!」
姉「いたれり尽くせりだ」
163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:43:45.87:oaqXs8h40
子だぬき「どうぞ」
姉「この白いのはなんだ?」
子だぬき「米で、うちの里でとれた奴です」
妹「はぁー、初めて見たよ」
姉「変わった香りだ」
子だぬき「里じゃそれが主食で」
妹「くんくん……ぱく」
妹「んん…‥おいしい?ような?」
姉「どれ……ぱく」
姉「ううん、変わった味だ」
子だぬき「そのうち慣れますよ」
妹「お魚は美味しいね!」
姉「ああ」
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:47:17.03:oaqXs8h40
子だぬき「ここが寝る所で、すいやせん。お布団は1つしか」
姉「大丈夫だ、ありがとう」
妹「いつも一緒に寝てたから」
子だぬき「そうですか、ではまた明日起こしにきますんで」
姉「おいたぬき」
子だぬき「へい」
姉「化かしてないだろうな」
子だぬき「どういうことで?」
姉「あまりに何もかもが上手く行き過ぎててな」
妹「そうだね、ちょっと怖いくらい」
子だぬき「いやいや一族の恩人ですから、それに化かしてもバレるでしょう」
姉「まぁ、そうだな」
子だぬき「大丈夫です」
妹「ありがと、たぬきちゃん」 ニコッ
子だぬき「い、いえ!おやすみなさい」 ドキドキ
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:50:39.33:oaqXs8h40
ゴソゴソ
妹「お姉ちゃん、手はどう?」
姉「ん……お風呂のお陰かな。痛みはかなり軽い」
妹「良かった…ん」
ギュッ
姉「こんな遠くにきても変わらないな」 ナデナデ
妹「うん」
姉「たぬきの里か……」
妹「くぅくぅ…」
姉「ふふ」
姉(父さんが私達も助けてくれたのかな…)
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:53:43.21:oaqXs8h40
朝 子だぬきの家
チュンチュン
スゥー
子だぬき「おはようございやす」
姉「ん……おはよう」
子だぬき「お目覚めでしたら、爺ちゃんが囲炉裏端で待ってますので」
姉「分かった、すぐに向かおう」 チラッ
妹「くぅくぅ…」
姉「姉ちゃん、ちょっと行ってくるからな」
妹「んん…おねえちゃん…むにゃむにゃ」
171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 22:59:27.24:oaqXs8h40
姉「お待たせした」
古狸「いやいや、人を待つ時間というのは楽しいものです」
姉「変わった事を言うな」
古狸「ホッホッホ、まぁお座りに」
姉「ああ」
パチパチ
古狸「さて、あなた方のこれからなのですがどうなさいます?」
姉「……できればこの里に置いていただきたい」
古狸「ふむ」
姉「ダメか?」
古狸「いやいや、構いませんよ」
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:03:51.01:oaqXs8h40
古狸「この里は人間からの驚異からは逃れられていますが、何分狸しかおりませんゆえ」
姉「……」
古狸「猪なんぞの力の強い獣がやってくるとまるで歯が立ちませんでな」
姉「なるほど、用心棒か」
古狸「平たく言うとそうなります」
姉「分かった、その程度ならお安い御用だ」
古狸「ありがとう、恩人の娘と言えど、村に置くには大義名分がいりますので」
姉「大丈夫だ、腕さえ治れば熊にだって引けを取らない」
古狸「心強い限りです――ここから少し離れた場所に最近開いた家がありましてな」
姉「ああ」
古狸「ちと古い家ですが、良かったらそこにお住みになると宜しいでしょう」
姉「すまない、この恩に着る」
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:06:49.90:oaqXs8h40
寝室
妹「おかえり、お姉ちゃん」
姉「ああ、布団を畳んでくれたのか」
妹「えへへ、暇だったから…」
姉「ありがとう、それで――」
妹「里の用心棒?」
姉「ああ、悪いのがきたらやっつける。分かりやすいな」
妹「…うん、お姉ちゃんにはぴったりのお仕事かも」
姉「家も用意してくれたんだ。さっそく行こう」
妹「うん!」
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:10:32.98:oaqXs8h40
昼間 姉妹の家
ガラガラッ
姉「…これは」
妹「…ちょっと掃除しなきゃだね」
姉「ああ、でもこれで腰を落ち着けられる」
妹「お姉ちゃんと一緒に暮らせる家だもんね。あ、2階があるよ!」
姉「どぉれ」
トントントン
妹「ケホケホッ…ほこりっぽいね」
姉「しばらく使ってなかったみたいだな、窓を開けようか」
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:14:01.93:oaqXs8h40
ガラッ
サァァァァ
妹「わぁっ!」
姉「里が一望できるな」
妹「みんな、畑でお仕事してるね」
姉「あそこで昨日の食材を作ってるんだな」
妹「私にもできるかな?」
姉「そうだな、お前は器用だから」
妹「お姉ちゃんに私の作ったもの食べてもらいたいよ」
姉「そうか、期待してる」
181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:22:12.41:oaqXs8h40
妹「私達、ずっとここにいてもいいんだよね」
姉「ああ」
妹「お姉ちゃんもずっと一緒だよね?」
姉「もちろんだ」
妹「きっと、お父さんとお母さんがここに連れてきてくれたんだね」
姉「そうかもしれないな」
妹「私頑張って足治して、今度はお姉ちゃんを支えられるようになるよ」
姉「そんなに急がなくてもいいよ。時間はたっぷりあるし。」
姉「梅雨は終わって、これからは茹だるくらいの明るくて暑い日々が始まるんだから――」
その後、姉は里の用心棒として暮らし。妹は姉をずっと支え幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし
色々書きたい展開もあったけど、とりあえずここで終わりということで
最後かなりはしょってご都合展開で申し訳ない。支援ありがとうございました
183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 23:24:03.97:6/QzDTJQ0
森
人狼姉「とは言ったものの」
人狼姉「まるで鼻がきかないな…」
人狼姉「兎か、リスで捕れれば…」
人狼姉「このさい野ねずみか蛇でもいいんだけど」
人狼姉「みんな土の中か…」
川
ゴォォォ
人狼姉「すごい濁流…」
人狼姉「魚、無理かな」
人狼姉「あ」
魚 ピチピチ
人狼姉「打ち上げられてる」
人狼姉「結構太ってて美味しそうだ」
人狼姉「山の神様ありがとう」
姉妹の小屋
バタン
人狼妹「お姉ちゃん?」
人狼姉「ただいま」
人狼妹「お姉ちゃんずぶ濡れ…」
人狼姉「ん」
人狼妹「今拭くもの持ってくるから、服脱いで囲炉裏のそばにいてね」
人狼姉「分かった」
パチパチ
人狼姉(とりあえず、魚を焼いておこうかな)
人狼妹「おまたせ、体拭くね」
人狼姉「ああ」
人狼妹「…」
ゴシゴシ
人狼姉「火の傍でお前に体拭いてもらうと、体がポカポカしてきて寝ちゃいそうだ」
人狼妹「ふふ、寝ちゃってもいいよ」
人狼姉「…」
人狼妹「お姉ちゃん、綺麗な体してるよね」
人狼姉「そうか」
人狼妹「ごめんね」
人狼姉「うん?」
人狼妹「私が足悪くなかったら、お姉ちゃんにこんな苦労かけることなかったのに…」
人狼姉「血を分けたたった二人の姉妹なんだ、水くさい事を言うな」
人狼妹「…うん」
人狼姉「ほら、魚が焼けたからたんとおあがり」
人狼妹「…お姉ちゃんの分は?」
人狼姉「私は途中で木の実を食べてきたから」
人狼妹「お姉ちゃん?」
人狼姉「…」
人狼妹「嘘言っても分かるんだからね、半分こしよ」
人狼姉「…ああ」
人狼姉「…」
人狼妹「美味しいね、お姉ちゃん」
人狼姉「ああ」
人狼妹「んぐんぐ」
人狼姉「ご馳走様」
人狼妹「骨は埋めておくね」
人狼姉「すまないな、もっとたくさん獲れたら良かった」
人狼妹「ううん、私はお腹一杯だよ」
人狼姉(もっと栄養のあるものがあれば、妹の足も…)
夜
人狼姉「寝ようか」
人狼妹「うん」
ゴソゴソ
人狼妹「ふふっ」
人狼姉「どうした?」
人狼妹「お姉ちゃんの尻尾はモコモコで暖かいね」
人狼姉「そうか」
人狼妹「お姉ちゃん」
人狼姉「なんだ?」
人狼妹「私ね、お姉ちゃんと一緒にいられるだけで十分幸せだから」
人狼姉「ん、分かったよ」
人狼妹「今日もひっついて寝ようね」
朝
ガラッ ザァァァァ
姉「今日も雨か…」
姉(昨日は運良く魚にありつけたけど、今日は…)
妹「お姉ちゃん?」
姉「おはよう」
妹「あそぼ」
姉「ああ、どうしようか」
妹「お絵かきがいいよ」
姉「分かった、炭はあったかな」
妹「うん」
カリカリ
妹「これ、分かる?」
姉「尻尾があるから私だろう」
妹「当たり!すごいね」
姉「お前は私しか知らないからね」
妹「うん」
カリカリ
妹「…」
姉「これは魚だな」
妹「うん」
姉「こっちは兎だ」
妹「うん」
姉「お腹が空いてるのか」
妹「だ、大丈夫空いてないよ」
姉「なにか捕ってこよう」
妹「ダメだよ、今日もすごい雨振ってるし…」
姉「大人しくお留守番してなさい」
妹「…」
姉「姉ちゃんなら大丈夫だから」 ナデナデ
妹「うん…」
昼 小高い丘
姉「人里がもうこんなに近くまで来ている…」
姉「もう1・2年もすれば私達の山も…」
姉「…」
姉「草原のほうに行ってみるか」
ガサガサ
…グモゥモゥモゥ
姉「ん」
姉「ウシガエルだ」
親はもういないのか
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:01:45.70:oaqXs8h40夜 姉妹の小屋
パチパチ ジュウジュウ
妹「おおおお。おいしそう!」
姉「いい匂いがしてきた」
妹「すごいね!3匹も」
姉「ああ、いい場所を見つけた。明日も期待できるかもしれない」
妹「よかったぁ、これで飢えないでもすみそうだね」
姉「……さ、焼けたぞ」
妹「ありがとう!」
ハグハグ
妹「久しぶりのお肉ー」
姉「うん」
残念ながら親狼は妹が物心つく前に猟師に打たれて
パチパチ
妹「お腹いっぱい」
姉「毎日このくらい食べられるといいな」
妹「うんうん」
姉「さぁ、もうおやすみ」
妹「も、もうちょっと」
姉「船をこいでるじゃないか」
妹「お姉ちゃん、だっこ」
姉「ふふ、しょうがないな」
翌日
妹「お姉ちゃん石取りしよ」
姉「ああ」
妹「私が勝ったら、今日は一日家にいてね」
姉「そんなことをしたらお前が飢えてしまうよ」
妹「いいの」
妹「むむむ」
姉「ほうらこんなに取ってしまった」
妹「はぁ、負けた…」
姉「それじゃ、姉ちゃんは狩りに行ってくるよ」
妹「…うん、気をつけて」
ガラッ
ザァァァ
昼 草原
ザァァァァ
姉「いない…」
姉(もう少し遅くにならないと出てこない、か…)
姉「…分厚い雲だな…本当に、嫌な時期だ」
姉(少し木陰で時間を潰そう)
――…
グモゥグモゥ
姉「出てきたか」
姉「すまんな、これも私達が生きるためだ」
夜 姉妹の小屋
パチパチ グツグツ
妹「はぁぁぁ、カエルが煮えてきたよ!」
姉「うん、もうちょっとかな」
妹「…ゴクリ」
姉「…ん、そろそろいいかな」
トロッ
姉「さぁおあがり」
妹「いただきます!」
姉「いただきます」
妹「おいしい、おいしい」
姉「…」
妹「お姉ちゃん、どうしたの?」
姉「…お前は鶏肉を食べた事があるか?」
妹「とりにく?雀とか烏のお肉?」
姉「鶏の肉だよ」
妹「うーん、にわとりは食べた事ないなぁ…おいしいの?」
姉「ああ、脂がのっててな。口に入れると良い香りと甘い脂が広がってたまらないんだ」
妹「…ゴクリ」
姉「父さんや母さんがまだこの家にいる頃に、何度か食べた」
妹「いいなぁ」
姉「今度捕ってきてやろうな」
妹「うん!」
ホロを幼くしたもので再生してよろしいか
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:35:28.60:oaqXs8h40夜 布団
妹「お姉ちゃんは狼の姿でいることが多いね?」
姉「人には良い思い出がないからな」
妹「…」
姉「でも、人型の手は器用だから」
妹「うん」
姉「妹は人の姿のほうがいいのか?」
妹「…そっちのほうが綺麗だよ」
姉「そうか」
妹「寝る時はどっちもあたたかくていいけど、えへへ」
姉「…」
はい
翌朝
ガラ
チュンチュン
姉「おお…」
姉(晴れ間がのぞいたか)
妹「おはよ、お姉ちゃん」
姉「見てごらん、少し曇ってはいるが今日は中々良い天気だ」
妹「ほんとだ!」
姉「ほら、姉ちゃんの手につかまって」
妹「うん」
姉「たまには日光浴をしないと、毛皮がカビくさくなってしまうよ」
妹「私かびくさい?」
姉「いいや、良い匂いだよ」
姉「あの岩の上がいいかな」
妹「そうだね」
姉「よいしょっと」
姉「さ、おいで」
ポフ
妹「へへ、お姉ちゃんのお膝だ」
姉「落ちないように」
妹「お姉ちゃんに抱きつくから平気だよ」
姉「ん、少し重くなったな」
妹「太ってないよ?」
姉「大きくなったんだよ」 ナデナデ
妹「うん、早くお姉ちゃんみたいな立派な狼になりたいよ」
姉「…」
チチチ…
妹「あ、スズメだ」
姉「ああ」
妹「おいしそうだね」
姉「全くだ」
姉「お日様は素晴らしいな…」 ポカポカ
妹「ん…」 ウツラウツラ
姉(もう眠たそうだな)
姉「ほら、姉ちゃんの胸に頭をあずけて」
妹「う…ん」
姉「大丈夫、寝ちゃったら姉ちゃんが運んであげるから」
妹「…うん」
人間の姿になったり狼の姿になったりできるってことですか?
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:54:56.80:oaqXs8h40
>>39
そうです、GS美神のシロみたいに人と狼の両方の姿になれます
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 17:58:26.35:ZxanfAe/0そうです、GS美神のシロみたいに人と狼の両方の姿になれます
>>41
人間の姿の時に耳とか尻尾ついてますか?
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:16:17.87:oaqXs8h40人間の姿の時に耳とか尻尾ついてますか?
>>43
妹ちゃんは未熟なので集中しないと耳や尻尾が出ます
お姉ちゃんは立派な人狼なので隠せます、でも寝るときは寒いので出しています
再開します
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:26:29.68:ZxanfAe/0妹ちゃんは未熟なので集中しないと耳や尻尾が出ます
お姉ちゃんは立派な人狼なので隠せます、でも寝るときは寒いので出しています
再開します
>>46
thx妹ちゃん可愛い
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/18(土) 18:20:57.51:oaqXs8h40thx妹ちゃん可愛い
妹「くぅくぅ…」
姉(もう寝てしまった)
姉「……」
スッ
姉(成長が足りていない)
姉(こんなにも細い腕、強く抱けば折れてしまうのではと心配になる腰)
姉(儚げな顔も相まって本当にいつかいなくなってしまいそう)
姉(もっと、栄養をとらせてあげないと)
姉「父さん、母さん…」
姉(二人がいて、私とこの子二人で丸くなっていた頃は本当に幸せだった)
姉(今が、不幸せというわけではないけれど…)
姉「…本当にいい天気だ」
ジリジリ
姉「少し暑くなってきたな」
姉(小屋に運ぼうか)
スッ
妹「う、ううん」 ムニャ
姉「すまない、起こしてしまったか」
妹「あ、お姉ちゃん…」
姉「暑くなってきたから、小屋に戻ろうか」
妹「うん」
姉「そのままじっとしていなさい」
妹「ううん、お姉ちゃんの腕を借りて頑張って歩く」
姉「そうか、偉いな」
妹「山がくっきり見えるね」
姉「ああ、雨が振った後のお山は本当に綺麗だ」
妹「…まだ私の足がいい頃は、あのあたりでビワをとったね」
姉「そういえば…」
妹「私、あそこまで歩いてみたい」
姉「…ビワならお姉ちゃんがとってくるよ?」
妹「ううん、歩いてみたいの」
姉「…」
妹「最後まで歩くから。ダメ?」
姉「いや、また歩く練習もしないとだし構わない」
妹「ありがとう!」
姉「そのかわり、痛くなったら言うんだよ。無理して足が悪くなると困るから」
妹「…うん」
夕方 森
サァァァァ
姉(ああ、いい風が森を吹き抜けていく)
妹「ここは涼しくて気持ちいいね」
姉「足は大丈夫か?」
妹「うん、痛くないよ」
姉「もっと姉ちゃんにしがみついても構わないよ」
妹「うん!…あ」
姉「どうした?」
妹「あそこ!蛇!」
姉「いい子だ、目ざといな」
妹「えへへ」
姉「ふぅ…」
妹「お姉ちゃんかっこいい!」
姉「ふふっ、ここに埋めておこう」
妹「はーい」
バリバリ ポンポン
姉「今晩は蛇の焼き肉だな」
妹「楽しみー」
ゴロゴロ
姉「しっかりと私の匂いをつけておいた」
妹「くんくん」
姉「帰りに忘れないように掘り返しにこよう」
妹「うん!」
森 少しひらけた場所
姉「確か、このあたりか」
妹「……なんだか嗅ぎ慣れない匂いがする」
姉「本当か?」
妹「うん、いろんな匂いが混じってて…」
姉「お前は私より鼻が利くんだな」
妹「…」
ガサガサ
姉「姉ちゃんが様子見てくるから、ここでまってなさい」
妹「うん」
姉(狼の姿になっていたほうが良いか…) ググッ
姉(なるほど、この狼になるとよく判る)
姉(この匂い…)
姉(――人間だ)
男「ふんふん♪」
姉(私達のビワを…)
姉(人間は……あいつ一人か)
姉(少し脅かしてやろう)
ガサッ
男「んっ?」
姉「グルルル…」
男「おっ…狼!」
姉「ウゥ…」
男「や、やべぇ」 ダッ
姉(よし、いいぞ)
ドシャッ
姉(転んだ…無様な)
男「いてて…」
姉「……」
男「ああ、こ、腰が抜けちまった…」
姉(はやく行ってくれればいいんだが)
男「も、もうダメだ…」
姉「……」
男「……」
姉「……」
男「あれ?俺を襲わないのか?」
姉「ウゥ……」
男「こ、こええけどありがとよ」
ダダダッ
姉「行ったか」
ガサ
姉「もう大丈夫だ」
妹「あ、おかえりなさい」
姉「人間は逃げちゃったからな」
妹「さすがお姉ちゃんだね!」
姉「さ、ビワを取りに行こう」
妹「うん!」
妹「いっぱい落ちてる」
姉「あの人間が落としていったんだ」
妹「くんくん……ほんとだあの匂いがする」
姉「あまりいい匂いじゃないがもらっていこう、背負い籠も」
妹「たくさんもって帰れるね」
姉「ああ」
森の帰り道
妹「お姉ちゃん」
姉「うん?」
妹「ひとつ、食べてもいい?」 ジー
姉「ああ、姉ちゃんが剥いてあげるよ」
妹「やった!」
姉「よいしょっと」 ドスン
ゴソゴソ
姉(爪で薄く切れ目を入れて…) ツゥッ
姉(皮を…)
姉「……」
妹「私がする?」
姉「…ああ、姉ちゃんはこれ苦手だ」 ポン
妹「えへへ、任せて」
妹「はい、お姉ちゃん」
姉「ありがとう」
シャクシャク
妹「甘くて美味しい!」
姉(とうとう私達の山にまで人間が…)
姉(私達の小屋が見つかるまで。あと何ヵ月あるんだろう)
妹「お姉ちゃん?」
姉「あっ、なんだ?」
妹「むずかしい顔してたよ?」
姉「……ちょっと渋いビワだったんだ」
妹「そうなんだ」
姉「ああ」 シャク
妹「‥…」
夜 姉妹の小屋
妹「やっと帰ってこれたね」
姉「ああ、今開ける」
ガチャ
妹「ただいまー!」
姉「ふぅ、おかえり」
妹「お姉ちゃん?」
姉「うん。なんだい」
妹「帰ったらただいま、だよ?」
姉「そうだったな」
姉「ただいま」
妹「おかえり!お姉ちゃん」
パチパチ ジュウジュウ
妹「おねえちゃん、頭としっぽどっちがいいの?」
姉「そうだな、私は頭かな」
妹「私はしっぽ」
姉「ちょうど良かった」
妹「うん」
姉「ほら、熱いから火傷しないように」
妹「うん……はふはふ」
姉「いい顔つきのヘビだ、パク」
妹「おかしらつきだね」
姉「…そうなるのかな」
夜 布団
姉「足を出して、揉んであげるから」
妹「うん」
姉「相変わらず細い足だな」 モミモミ
妹「今日はたくさん運動したからもうちょっと太くなるよ」
姉「……そうだといいな」
妹「うん」
姉「痛くないか?」
妹「んっ…とっても気持ちいいよ?」
姉「良かった」 モミモミ
姉「よし、全体的に柔らかくなったかな」
妹「はぁーすごい良かった‥…お姉ちゃんにもしてあげるね」
姉「私は…」
妹「いいから」
姉「はぁ、お願いしようか」
妹「~♪」 モミモミ
姉「ふぅ…上手だな」
妹「愛情をこめて揉んでるんだよ」 モミモミ
姉「ふふっ、それは効きそうだな」
妹「お姉ちゃんの足は白くて柔らかくて触ってて気持ちいいし…」 モミモミ
姉「……」
妹「あ、今度ひざ枕して」
姉「ああ」
――…
姉「さ、寝ようか」
妹「もーくたくただよー」
ギュッ
妹「あったかあったか」
姉「ん…」 ナデナデ
妹「……ずっと一緒にいたいね」
姉「姉ちゃんはどこにも行かないよ」
妹「うん」
姉「足が良くなったら」
妹「んん?」
姉「ちょっと遠くまで行ってみようか」
妹「うん」
姉(もっと……人里から離れたところに)
朝
ガチャ
ザァァァ
姉「今日は雨か…」
妹「お姉ちゃんあそぼ」
姉「そうだな、ウシガエルは夜まで出てこないし」
妹「やった、今日はねえっと…」
ポーンポーン
妹「あんたがたどっこさ♪ひごさ♪ひごどこさ♪」
姉「上手い上手い」 パチパチ
妹「えへへ、くーまもとさ♪くーまもとどこさ♪」
ポンポン
夕方 小屋
姉「姉ちゃんカエル捕まえてくるね」
妹「うん」
姉「ビワを食べ過ぎるとお腹壊しちゃうからあんまり食べないように」
妹「はーい」
ガチャ
ジージー
姉「雨がやんだか…」
姉(梅雨明けもそう遠くないかもしれないな……)
グモッ
姉「これで3匹目」 ガシッ
姉「悪いがお前は今日の夕飯だ」
モゥモゥ
姉「……」
姉「もっと、精のつく物を食べさせてあげたいな」
姉「卵や鶏肉や…」
姉(人里に行けば、たくさん…)
姉「……明日、晴れていたら、行ってみよう」
翌丑三つ時 人里のはずれ
コッコッコッ
姉(人の気配はない……鶏も眠ってる)
姉(そっと、そっと) ジリジリ
姉(卵だ!5つもある) ゴクリ
姉(全部貰おう…)
コッコッコッ
姉(鶏は……とるとバレるかな……)
姉(とりあえずはこの卵で)
朝 姉妹の小屋
ガチャ
姉「ふぅ…」
妹「お姉ちゃん!」
姉「ただいま」
妹「朝起きたらお姉ちゃんいなくて…私…」 グスッ
姉「すまない、でもお土産」
妹「こ、これなぁに?」
姉「鶏の卵、今日の朝食にしよう」
妹「はわぁ、卵?こんな大きの初めてみた……」
パチパチ グツグツ
妹「茹でて食べるの?」
姉「ああ」
妹「蛇の卵10こ分くらいありそう…」
姉「栄養満点だ、これを食べたら私くらい大きくなれる」
妹「おおー!」
妹「いただきます!」 コンコン
姉「いただきます」 コンコン
妹「はむはむ……お、おいしい!」 パァッ
姉「うん…美味しい」 ウットリ
妹「朝からこんなの食べれるなんて…はぐはぐ」
妹「はぁ…幸せ」
姉「ああ…」
ガチャ チチチ・・・
姉「うん、いい陽気だ」
姉「――私は日向ぼっこに行くが一緒にくるか?」
妹「うん!」
姉「分かった」
妹「んしょ」 ギュッ
姉「ビワをいくつか持っていこう」
妹「そうだね」
チチチチ…
姉「今日は少し眠りたいから、軽く木陰になってるここで」 ストン
妹「はーい」
姉「おいで」
妹「わーい、お姉ちゃんのお膝!」 ポフッ
姉「よしよし」 ナデナデ
サァァァァ
妹「風は涼しいし、お腹もいっぱいだししあわせ…」
姉「…」
妹「お姉ちゃん?」
姉「あっちの山」
妹「うん」
姉「あの山を越えた先にたぬきの隠れ里があるらしい」
妹「たぬきの?」
姉「これは父さんに聞いた話なんだが…」
妹「うん」
姉「昔、この山で人間の罠にかかっているたぬきを助けたらしい」
妹「…」
姉「その時にな『いつか里にいらしてください、恩返しいたしますので』と場所を聞いたと」
妹「おお……」
妹「結構通そうだね」
姉「ああ」
妹「でも行ってみたいかも」
姉「足が良くなったらきっと行こうな」
妹「うん」
姉「あっちの山には沼があってな」
妹「うん」
姉「河童が住んでいるらしい」
妹「かっぱ?」
姉「私にもよく分からないのだが、大きなカエルのようなものかと想像している」
妹「大きなカエルかぁ…」 ゴクリ
姉「あっちにも行ってみような」
妹「うん」
姉「さて、私は少し仮眠をとるから。近くで遊んでなさい」
妹「ううん、一緒に寝るよ」
姉「そうか」
妹「うん」 ギュッ
姉「……」 ナデナデ
妹「えへへ、お姉ちゃんだい好き」
翌丑三つ時 人里のはずれ
姉「くんくん」
姉(……鉄の匂いがする)
姉(嫌な感じだ…)
姉(でも…)
コッコッコッコッ
姉「鶏……」
姉(慎重に行こう) ジリジリ
姉(卵がみえてきた……もうちょっと)
ガチン
姉「はっ…!ああっ!」
姉(いっ、痛い!まるで前足が焼けるよう!)
姉「こんなもの!人の形になればッ!」
バキン
姉「はぁ……はぁ」
姉「ううっ…」
姉(痛い……右手にあんまり力が入らない…)
コッコッコッコッ
姉(片手じゃ卵たくさん持てない…)
姉「……」
朝 姉妹の小屋
ガチャ
妹「おかえりなさーい」
姉「…ん、ただいま」
妹「…それ、お姉ちゃん、血がついてる!」
姉「ちょっとだけ、ヘマしちゃった」
妹「見せて!」
妹「ん…」 ペロペロ
姉「っ……」
妹「いたいの?」
姉「…大丈夫」
妹「……」 ペロペロ
妹「ひどい傷…」
姉「見た目ほど、痛くないから」
妹「……」 ペロペロ
姉「もう大丈夫、なにか巻いてくれるか?」
妹「…うん」
姉「ほら、お土産」 ブラン
妹「これって…」
姉「鶏」
妹「……」
姉「さっそく焼いて食べよう」
妹「お姉ちゃん、この鳥に怪我したの?」
姉「いいや、転んだだけ」
妹「……転んだ傷じゃないよ」
パチパチ ジュウジュウ
妹「お姉ちゃんが無事でいてくれたら、私ご飯なんていらない…」
姉「…お前はたんと食べて大きくならないと」
妹「ずっと小さいままでもいいから!」
姉「……」
妹「大きくなったってお姉ちゃんいなくなったら生きていたくない…」
姉「…すまないかった」
妹「お姉ちゃん!」
ギュッ
姉「ごめんね」 ナデナデ
妹「ほんとは痛いんだよね?我慢してるんだよね?」
姉「……うん、とっても痛いよ」
妹「お姉ちゃんのばか…」
パチパチ
姉「ほら、焼けたよ」
妹「私が食べさせてあげるね」
姉「ああ」
妹「大きいお肉…」
姉「足をちぎってくれるか?」
妹「うん」
妹「あーん」
姉「あーん……はむはむ」
妹「美味しい?」
姉「ああ、思わず尻尾が出るくらい美味しいよ」 パタパタ
妹「……」 ゴクリ
姉「お前もお食べ」
妹「う、うん」
妹「お…美味しい!」
姉「そうだろう」
妹「こんなとろっとしたお肉初めて…」
姉「噛めば噛むほど脂が出てくるなぁ」
妹「うん」
姉「次は身をちぎって食べさせてくれ」
妹「了解」
姉「ふぅ、ご馳走さま」
妹「複雑なきもちだけど、でもおいしかった…」
姉「こうして、お前に食べさせてもらえるなら、甲斐あったかな」
妹「こんなのいくらでもするから、もう絶対怪我しないで…でないと」
姉「ああ、分かってるよ」
夜 布団
妹「お姉ちゃんの手、貸して」
姉「ああ」
妹「やっぱり、ちょっと冷たい…」
姉「そうかな」
妹「舐めて暖める・・・ぺちゃ」
姉「……」
妹「ぺちゃぺちゃ」
姉「…とても暖かいな」 ナデナデ
妹「えへへ」
朝
ゴソ
姉「……」 ニギニギ
姉(痛いけど、ちゃんと握れる…) ホッ
姉(手首のあたりが結構深くやられてる)
姉(食べ物、どうしよう)
妹「う・・・ううん」
姉「ふふ、お前のお陰かな」 ナデナデ
妹「えへへ…むにゃむにゃ」
姉「……」
ガチャ
チュンチュン
姉「右手が使えないから、人の姿のほうがいいな」
姉「良い天気だ」
姉「梅雨は明けたかな」
チチチチ…
姉「あまり小屋をあけると心配がるかな」
姉「戻ろうか」
妹「お姉ちゃん」
姉「ここまで一人できたのか」
妹「うん、杖があればなんとか」
姉「偉いな」 ナデナデ
妹「えへへ」
姉「少し、そのへんを散歩しようか」
妹「うん」
森
ミーンミンミン
姉「今日は少し暑いな」
妹「うん」
姉「杖があったらどのくらい歩けるんだ?」
妹「試した事はないけど、たぶん一刻くらいの間は」
姉「そうか」
妹「遠くに行くの?」
姉「そのうちに」
妹「一緒に?」
姉「ああ」
ガサッ
姉「…誰だ!」
妹「ひっ…」
ガサッ
男「あれ、こんな森の中で娘さんが何してるんだ?」
姉「…」
妹「…」
男「まぁいいや、あんた達このへんにいると危ないぜ」
姉「…どういう事だ」
男「里を荒らす獣がいるみたいでな、この山を山狩りするんだと」
妹「…」
男「あんた達も鹿かなにかと間違われないうちに山を降りたほうがいいよ」
姉「…そうか、分かった」
男「じゃあな」
ガサガサ
妹「お姉ちゃん…」
姉「すまない」
妹「どうしたの?お姉ちゃんはなにも悪くないよ」
姉「軽率だった……人間の家畜に手を出すなど」
妹「私の為にやったんだもん、お姉ちゃんは悪くない」
姉「…」
姉「家を捨てて、たぬきの隠れ里を目指そう」
妹「うん…もうおうちには帰れない?」
姉「帰る途中、万が一にでも見つかって、尻尾や耳が出てしまったらお終いだから」
妹「もし捕まったら殺されちゃうのかな…」
姉「分からない、でも良い事にはならない気がする」
妹「…うん」
姉「一緒に来てくれるか?」
妹「うん、お姉ちゃんとなら、どこまでも」
姉「よし、歩けるだけ歩いて、疲れたら私がおぶるから」
妹「うん、ごめんね、お姉ちゃん」
姉「お前なんて羽毛を背負って歩くようなもんだよ」
夜 森の中
サクサク
妹「お姉ちゃん、重くない?」
姉「軽い軽い」
妹「……」 ギュッ
姉「……」
姉「…あれは」
妹「人間の建物?」
姉「打ち棄てられた古いお堂のようだ、あそこで今夜は休もう」
妹「うん」
サクサク
姉「さすがに少し疲れたな」
妹「ごめんね」
姉「お前の重みはかえって足を軽くしてくれるよ」
妹「そうなの…?」
サクサク
姉「……」
妹「意外とお堂まで距離あったんだね」
姉「ああ」
サクサク
妹「な、なんかおかしいよ?」
姉(なぜいつまで立ってもお堂に着かない)
妹「なんだか不気味だよ…それに変な匂い…」
姉「匂い?」
妹「うん、なんだか変わった獣の匂いがする」
姉「くんくん」
妹「……」
姉「なるほどな」
妹「お姉ちゃん?」
姉「大当たりを引いたようだ」
姉「スゥゥゥ」
姉「ウゥゥ、ワン!!!」 ビリビリ
妹「キャッ」
???「ひっ、ひえええ!」
ドロン
姉「やはりな」
妹「わっ、お堂が消えた!」
姉「出てこい、化け狸」
子だぬき「す、すみません……てっきり人間かとおもいやして……」
妹「この子…たぬき?」
子だぬき「どうか食わないくだせぇ…」 ペタ
妹「小さくて可愛い…」
姉「お前なんか食わん」
子だぬき「そ、そうですか。それじゃあっしはこれで…」
姉「待て」 ガシッ
子だぬき「ひっ」
姉「渡りに船だ、このあたりにお前たちの隠れ里があるだろう」
子だぬき「……」
姉「案内してもらおう」
子だぬき「……」
妹「お姉ちゃん、その子怯えてるよ!」
姉「ん……」
子だぬき「……」 ジッ
妹「ごめんね、お姉ちゃんも必死だから」 ナデナデ
子だぬき「はふぅ……それで、あなた方は?」
妹「人狼の姉妹だよ」
子だぬき「ははぁ……すると山向かいの?」
姉「そうだ、知っているのか?」
子だぬき「知ってるというか、うちの爺ちゃんが昔そこの人狼に命を助けられたと聞きやした」
妹「それって……」
姉「私達の父だな」
子だぬき「そうでやすか…」
妹「それで、案内してくれるのかな?」
子だぬき「うちの里にどんなご用で?」
姉「この昼間に、住んでいた山を追われたんだ」
妹「着の身着のままで飛び出してきたの」
子だぬき「それはまた…お気の毒に」
妹「ありがとう」 ニコッ
子だぬき「‥…」 ドキドキ
子だぬき「こっちです」
妹「良かったね、お姉ちゃん」
姉「ああ」
サクサク
子だぬき「里についたら、うちの爺ちゃんの所に来て下さい」
姉「分かった」
妹「たぬきちゃんのおうちはどんなところなの?」
子だぬき「うちは平屋の一軒家です」
姉「家屋に住んでいるのか」
子だぬき「ええ、うちの里はみんな家に住んでやすよ」
妹「すごいね、お姉ちゃん」
姉「ああ、大したものだ」
チーチーチー…
子だぬき「さ、着きやした。中央に見えるのがあっしの家で」
妹「わぁ…おうちがたくさん」
姉「畑もあるな、ここは人里ではないのか?」
子だぬき「里のたぬき全員が人に化けてるんで。家も畑も人同様に作って」
姉「そうか……そういう手もあるんだな」
子だぬき「化かすのに適したあっしらの村らしいでしょう」
姉「驚いた」
妹「人里ってこんな感じなんだね……」
深夜 子だぬきの家
子だぬき「どうぞ、入ってください」
姉「ああ」
妹「お、お邪魔します…」
子だぬき「今爺ちゃん呼んできやすんで、どうぞ囲炉裏ばたに」
タンタンタン
パチパチ
姉「温もるな…」
妹「うん、なんだかすごく安心して…」
姉「眠そうだ、もう深夜だものな」
妹「うん…」
姉「構わないから、姉ちゃんの膝で眠りな」
スゥー
古狸「お待たせいたしましたな」
姉「夜分遅くすまない」
古狸「いえいえ、そちらの方は?」
姉「疲れて眠り込んでしまった」
古狸「ホッホッホッ、そうですか」
古狸「聞きましたよ」
古狸「あなた方は儂を助けてくださった人狼のお子さんだとか」
姉「父から、たぬきを助けて里の場所を教えてもらったと聞いている」
古狸「うんうん、凛々しい方だったのう。目元が良く似ておられる」
姉「そうですか…」
古狸「お父上はご健在で?」
姉「いえ、猟師に…」
古狸「なんと…」
古狸「さてと、ずいぶんとお疲れのようですから、
今日はゆっくりとお休みになられると良いですな」
姉「すまないな」
古狸「これからの事は、また明日起きてから相談するとしましょう」
姉「ありがとう」
古狸「そうそう、風呂と膳の用意ができておりますでな」
姉「風呂?」
カポーン
妹「すごい……あったかいお水がこんなにいっぱい」
姉「めったに入れるもんじゃないから、堪能しよう」
妹「うん」
チャポ
妹「おおっ…」 ブルッ
姉「ん…これは」
妹「気持ちいい……お風呂っていいね!」
姉「ああ…尻尾の先まで疲れが抜けていくようだ…」 ウットリ
妹「眠気が一気に飛んじゃったよ」
姉「起こした甲斐があったな」
ガラガラ
姉「はぁ…良かった」
妹「すごいさっぱりした…」
姉「たぬきの生活レベル侮りがたし」
妹「うん…」
コンコン
妹「はーい」
子だぬき「食事の用意ができてやすんで、上がられたらどうぞ」
姉「分かった、ありがとう」
妹「お姉ちゃんご飯だって!」
姉「いたれり尽くせりだ」
子だぬき「どうぞ」
姉「この白いのはなんだ?」
子だぬき「米で、うちの里でとれた奴です」
妹「はぁー、初めて見たよ」
姉「変わった香りだ」
子だぬき「里じゃそれが主食で」
妹「くんくん……ぱく」
妹「んん…‥おいしい?ような?」
姉「どれ……ぱく」
姉「ううん、変わった味だ」
子だぬき「そのうち慣れますよ」
妹「お魚は美味しいね!」
姉「ああ」
子だぬき「ここが寝る所で、すいやせん。お布団は1つしか」
姉「大丈夫だ、ありがとう」
妹「いつも一緒に寝てたから」
子だぬき「そうですか、ではまた明日起こしにきますんで」
姉「おいたぬき」
子だぬき「へい」
姉「化かしてないだろうな」
子だぬき「どういうことで?」
姉「あまりに何もかもが上手く行き過ぎててな」
妹「そうだね、ちょっと怖いくらい」
子だぬき「いやいや一族の恩人ですから、それに化かしてもバレるでしょう」
姉「まぁ、そうだな」
子だぬき「大丈夫です」
妹「ありがと、たぬきちゃん」 ニコッ
子だぬき「い、いえ!おやすみなさい」 ドキドキ
ゴソゴソ
妹「お姉ちゃん、手はどう?」
姉「ん……お風呂のお陰かな。痛みはかなり軽い」
妹「良かった…ん」
ギュッ
姉「こんな遠くにきても変わらないな」 ナデナデ
妹「うん」
姉「たぬきの里か……」
妹「くぅくぅ…」
姉「ふふ」
姉(父さんが私達も助けてくれたのかな…)
朝 子だぬきの家
チュンチュン
スゥー
子だぬき「おはようございやす」
姉「ん……おはよう」
子だぬき「お目覚めでしたら、爺ちゃんが囲炉裏端で待ってますので」
姉「分かった、すぐに向かおう」 チラッ
妹「くぅくぅ…」
姉「姉ちゃん、ちょっと行ってくるからな」
妹「んん…おねえちゃん…むにゃむにゃ」
姉「お待たせした」
古狸「いやいや、人を待つ時間というのは楽しいものです」
姉「変わった事を言うな」
古狸「ホッホッホ、まぁお座りに」
姉「ああ」
パチパチ
古狸「さて、あなた方のこれからなのですがどうなさいます?」
姉「……できればこの里に置いていただきたい」
古狸「ふむ」
姉「ダメか?」
古狸「いやいや、構いませんよ」
古狸「この里は人間からの驚異からは逃れられていますが、何分狸しかおりませんゆえ」
姉「……」
古狸「猪なんぞの力の強い獣がやってくるとまるで歯が立ちませんでな」
姉「なるほど、用心棒か」
古狸「平たく言うとそうなります」
姉「分かった、その程度ならお安い御用だ」
古狸「ありがとう、恩人の娘と言えど、村に置くには大義名分がいりますので」
姉「大丈夫だ、腕さえ治れば熊にだって引けを取らない」
古狸「心強い限りです――ここから少し離れた場所に最近開いた家がありましてな」
姉「ああ」
古狸「ちと古い家ですが、良かったらそこにお住みになると宜しいでしょう」
姉「すまない、この恩に着る」
寝室
妹「おかえり、お姉ちゃん」
姉「ああ、布団を畳んでくれたのか」
妹「えへへ、暇だったから…」
姉「ありがとう、それで――」
妹「里の用心棒?」
姉「ああ、悪いのがきたらやっつける。分かりやすいな」
妹「…うん、お姉ちゃんにはぴったりのお仕事かも」
姉「家も用意してくれたんだ。さっそく行こう」
妹「うん!」
昼間 姉妹の家
ガラガラッ
姉「…これは」
妹「…ちょっと掃除しなきゃだね」
姉「ああ、でもこれで腰を落ち着けられる」
妹「お姉ちゃんと一緒に暮らせる家だもんね。あ、2階があるよ!」
姉「どぉれ」
トントントン
妹「ケホケホッ…ほこりっぽいね」
姉「しばらく使ってなかったみたいだな、窓を開けようか」
ガラッ
サァァァァ
妹「わぁっ!」
姉「里が一望できるな」
妹「みんな、畑でお仕事してるね」
姉「あそこで昨日の食材を作ってるんだな」
妹「私にもできるかな?」
姉「そうだな、お前は器用だから」
妹「お姉ちゃんに私の作ったもの食べてもらいたいよ」
姉「そうか、期待してる」
妹「私達、ずっとここにいてもいいんだよね」
姉「ああ」
妹「お姉ちゃんもずっと一緒だよね?」
姉「もちろんだ」
妹「きっと、お父さんとお母さんがここに連れてきてくれたんだね」
姉「そうかもしれないな」
妹「私頑張って足治して、今度はお姉ちゃんを支えられるようになるよ」
姉「そんなに急がなくてもいいよ。時間はたっぷりあるし。」
姉「梅雨は終わって、これからは茹だるくらいの明るくて暑い日々が始まるんだから――」
その後、姉は里の用心棒として暮らし。妹は姉をずっと支え幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし
色々書きたい展開もあったけど、とりあえずここで終わりということで
最後かなりはしょってご都合展開で申し訳ない。支援ありがとうございました
乙。
199:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:05:14.85:OIn6PMM20
大層乙であった
203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/19(日) 00:36:53.99:0wNpdmWE0
乙
追いついたら終わってた
こういう話大好きです
追いついたら終わってた
こういう話大好きです

コメント 4
コメント一覧 (4)
ちょっと物足りないぐらいがちょうどいいね