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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:18:52.99:RnhTe/1k0
春休みも過ぎ、俺は高校三年生になった。
二年生の時にも佐々木たちとのいざこざや、朝比奈さんの卒業などなど…まぁ、いろいろとあったのだが、今はそれについては語るまい。
とにかく、今俺は三年生。つまり忌々しいことに受験生となってしまったのである。
SOS団にかまけて、学生の本分である学業をおろそかにしてきたツケは大きい。
俺の母親など無理やりにでも予備校に通わせようとしているし、担任岡部との面談も回数を重ねた。
つまり…これは非常に珍しいことだが、俺は非常に日常的なことで窮地に立たされているのである。
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韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:21:48.84:RnhTe/1k0
今日の始業式。おそろしいことに三年連続で担任は岡部となり、またもや5組である。
相変わらずというか、やはりというか、メンバーはあまり変わっていない。
谷口も国木田もいるし、そして、ハルヒは俺の真後ろの席でふんぞり返っている。
新学期最初のホームルーム、岡部はいよいよ受験生になったんだからと、おそらく日本中の学生たちが同じような事を聞いているであろう文句を延々と語り、そのまま解散となった。
俺は惰性で文芸部室に向かう。
ただ…もう朝比奈さんのお茶が飲めないのは残念だがな。
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:24:21.91:RnhTe/1k0
コンコン
キョン「っと、もうノックする必要もないか…」
一抹のさみしさを覚えながら俺は部室のドアを開ける。
長門「…」
古泉「おや、今日は遅かったですね」
キョン「岡部の奴が時間無視して話しまくりやがってな」
古泉「涼宮さんは?」
キョン「あいつなら掃除当番だよ」
古泉「そうですか。どうです?今日は久しぶりに将棋でも」
キョン「いや…今日は遠慮しとく」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:26:30.82:RnhTe/1k0
古泉の誘いを断ったのは単に気分が乗らなかったからだ。
非日常な出来事を満喫してきたこのSOS団の俺は、逆に進路という俗物的な出来事に弱いのかもしれない
古泉「どうしました?珍しくセンチメンタルな様子ですが」
キョン「珍しく、は余計だ」
俺にだって、漠然とした不安に駆りたてられることはあるんだよ。
お前みたいにいつもにこやかでいられるわけじゃない。
キョン「…、なぁ、お前たちは来年どうするんだ?」
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:28:43.52:RnhTe/1k0
古泉「来年…といいますと、進学についてですか?」
キョン「ああ」
古泉「そうですね…。まぁ、涼宮さんの進路によると思いますね」
キョン「お前も同じところに進学するってのか?」
古泉「おそらくは…そうなるかと思います」
キョン「長門は?お前もか」
長門「…情報統合思念体が自立進化のきっかけを見つけるまでは、涼宮ハルヒの観測を続ける。おそらく同じ」
キョン「…そうか…」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:30:46.88:RnhTe/1k0
なるほど。おれの漠然とした不安の正体がやっとわかったぜ。
こいつらはハルヒの後を追って進学する。そうなると、俺は必然的に一人になるわけだ。
なぜかって?
そんなことわかりきっているじゃないか。
ハルヒの学力と俺の学力は月とすっぽんほどの違いがある。
同じ大学に進むことは…まぁ、不可能だ。
古泉「あなたはどうなんです?」
キョン「俺か?…さぁ、どうなるんだろうな?」
古泉「『機関』もですが…、まぁ、僕個人としてもあなたには涼宮さんの近くにいていただきたいのですがね。これからも」
キョン「無茶言うなよ」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:32:47.16:RnhTe/1k0
その時、けたたましい音とともに部室のドアが開いた。
ハルヒ「お待たせ!いやー、掃除なんてチャッチャと終わらせるに限るわ!」
キョン「少しはドアを労わってやれよ。今年もそんな扱いしてたらそろそろ本当にぶっ壊れちまうぞ」
ハルヒ「別に大丈夫でしょ。壊れない程度には手加減してるわ」
こともなげに言うがな…ドアノブとかもうだいぶゆるくなってんだよ
ハルヒ「そういえば、あんたこれどうしたの?」
ハルヒが手に持ってヒラヒラさせているのは、今日岡部が配った進路志望調査票だった。
北高の生徒は大抵が進学するため、第三志望までかいてこいというものだった。
キョン「そんなもん、どこにやったかな…。」
まったく…忘れておきたいことをあっという間に思い出させてくれるやつだぜ。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:34:47.43:RnhTe/1k0
ハルヒ「ちゃんとしなさいよ。こういう些末事もとっとと終わらせるに限るわよ」
キョン「けっこう重要なことだと思うぞ」
人に言えた義理ではないんだがな
キョン「そういえば…お前はどうするんだ。その志望票」
ハルヒ「私?わたしはこうよ!」
ハルヒが見せた志望票には以下のように書かれていた…
第一志望:京都大学
第二志望:
第三志望:
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:36:49.23:RnhTe/1k0
キョン「京都?京都大学ってあの京大か?」
ハルヒ「そこ以外にどこがあるのよ」
これは驚いた…もちろん、ハルヒなら東大とかMITとか書いていても不思議ではなかったのだが…
もっとも、これに驚いているのはおれだけではないようで…
古泉「京都ですか?」
古泉のこの質問の意図をおれは知っている。ハルヒの後を追わねばならないということは…古泉もこの瞬間京大志望になったということだ。無論、長門も。
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:38:51.58:RnhTe/1k0
古泉「意外ですね。てっきり、東京大学のほうかと思っていました」
ハルヒ「もちろん、日本一は東大ってわかってるわよ。でもね、京大のほうが変人多そうじゃない?」
全国の京大生に謝れ
ハルヒ「なんか、校風も一味変ってるし…東大って秀才はいるけど変人はあんまりいないイメージなのよね」
ハルヒ「ところで、古泉君は?」
古泉「…、いえ、僕もまだ決めていないんですよ」
ハルヒ「あら、そうなの?じゃあ、有希は?」
長門「…私も京都大学」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:41:17.07:RnhTe/1k0
ハルヒ「有希も!?良かったわ。やっぱ一人だと張り合いがないしね」
さて、この会話に一番あせっているのは誰だろうな。
俺かもしれんし、古泉かもしれん。ハルヒの秀才振りは知っていたさ。しかし、京都か…。
朝比奈さんと同じ神戸大学じゃないかと思ってたんだがな。
まぁ、どっちにしろ俺には手が届かないのだが…
その後、いつものように、ただだらだらと過ごして解散となった。
家に帰ると、母親に塾へ入れと勧められたことは言うまでもないことだ
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:44:32.98:RnhTe/1k0
俺は、ベットに寝転びながら今日のことを思い出していた。
ハルヒ・長門は京都大学か。まぁ、長門なら大丈夫だろうし、ハルヒもきっとふつうに合格しそうだ。
古泉は…どうだろう?
今日の帰り道に話を聞いてみると
古泉「僕の一存では決められませんからね。『機関』で少々話し合ってきます」
キョン「てっきり、二つ返事でお前も京大に行くのかと思ったがな」
古泉「二つ返事で決められるほど簡単ではありませんよ」
キョン「まぁ…そうだが」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:46:34.10:RnhTe/1k0
古泉「正直なところ、神戸、大阪くらいではないかと思っていたんです」
古泉「神戸なら朝比奈さんもいます。阪大でも関西圏ですし…」
キョン「おれからすれば、どこも手が届かないという意味では一緒だけどな」
古泉「京都と東京はやはり難易度が格段に違いますよ」
キョン「そんなもんかねえ」
古泉「あなたも京都大学を受けてみたらいかがです?僕としてはそうなると助かるのですが」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:48:38.03:RnhTe/1k0
キョン「一年棒にふれってか?冗談はよしてくれ」
古泉「もちろん、本気ではありませんよ。僕と違ってあなたは普通の人間です。自分の進路くらい自分で決めるべきですよ」
古泉が結局どうしたのかはまだわからんが…、まぁ、明日にでも聞いてやるさ
それよりも自分の進路希望調査票をどうにかせねばなるまい
苦心した挙句、以下のようになった
第一志望:岡山大学
第二志望:三重大学
第三志望:高知大学
模試のたびに配られる偏差値一覧などから適当に引っ張ってきただけだ。
岡山大学なんて相当厳しそうだがな…
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:50:46.29:RnhTe/1k0
翌日。学校に登校すると、すでにハルヒは席に着いていた。
キョン「よう」
ハルヒ「今日も遅いのね」
キョン「朝の惰眠はぎりぎりまで楽しもうと決めてるんだよ」
ハルヒ「いい身分じゃない」
程なく担任の岡部がやってきて、朝のホームルームとなった
岡部「では、進路希望票を持ってきているものは前に持ってきてくれ」
一応、個人情報なので各人が教卓に提出、という運びになった。
だが、昨日の今日の事態である。まだ書いていないものも大勢いるし、提出している人数はさほど多くない。
まぁ、俺は珍しくすぐに出せる状態なので持っていこうとしたのだが
ハルヒ「ついでに持って行ってあげるわよ」
キョン「いいのか?」
ハルヒ「別に」
これは珍しいこともあったものだ。こいつがついでとはいえ俺をいたわってくれるとはな。せっかくなので頼むことにした
もちろん、これが間違いであることはすぐに判明する
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:52:47.16:RnhTe/1k0
放課後
古泉「今日はこれでもどうです?」
キョン「オセロか、いいだろう。何か賭けるか?」
古泉「そうですね。ジュースでどうです?」
キョン「よし、乗った」
こいつはこの手のゲームで俺に勝ったことがないくせにやけに強気だな。
かといって手があるようにも思えないし、へんなところで勝ち気な性格なのだろう。
試合も終盤、四つのうち三つの隅をとった俺はいったい何のジュースにしようかと自販機のメニューを思い出していた。のだが
岡部『3年5組のキョン。今すぐ職員室に来るように』
突然アナウンスで岡部に呼ばれたのだ。
古泉「珍しいですね。何かしでかしたんですか?」
キョン「ハルヒじゃあるまいし…」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:53:51.80:790WyZFF0
もちろん、心当たりは全くない。恐る恐る職員室に入った俺はすぐに岡部の机に向かった。
岡部「おお、来たかキョン」
というか、さっきの放送でもキョンと呼んでいたが、教諭までもが生徒の本名を忘れてしまったのではなかろうか?
キョン「どうしました?」
岡部「どうしたもこうしたもあるか、お前今日の志望調査票」
キョン「ああ、あれですか。やっぱり岡山は高望みしすぎですかね」
岡部「岡山?お前の志望調査票はこれだろ」
不審に思って覗き込んだ志望調査票は以下のようになっていた
第一志望:京都大学
第二志望:三重大学
第三志望:高知大学
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:56:55.30:RnhTe/1k0
これはいったいどうしたことだ。と、思ったが…すぐに思考が追いついた。
どうせハルヒに違いない。あいつが珍しく持って行ってくれるなんて言ったのはこういうわけだな。よく見ると、消しゴムの後もある。
岡部「まぁ、もちろん無理だ、と決めつけるわけにはいかない。だがな…」
キョン「はぁ、すみません。もう一度よく考えてみます」
ハルヒの名前を出すと、厄介なことになりそうだったのですぐさま引き取ることにした。
岡部はまだ納得のいっていない様子だったのだが、そんなことはどうでもいい。ハルヒに直接問いただしてやる。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:58:08.04:7qIhfn2x0
急いで、文芸部室に戻ったら、すでにハルヒも来ていた。
ハルヒ「どうしたの?遅かったじゃない」
キョン「遅かったにきまってるだろ。お前のせいで呼び出しくらってたんだからな」
俺は岡部から返してもらった志望調査票を突き出した。
キョン「いったいどういうつもりだ?」
ハルヒ「ああ、それ?あんたも京大目指しなさい」
キョン「は?」
まるで毎日のあいさつのように気軽に出てきた言葉に、場にいた全員が驚愕した。
場にいた全員というからにはもちろん、俺も古泉も、そして長門でさえだ。俺には分かる。
キョン「正気か?」
ハルヒ「ええ。いいじゃない。せっかく受けるんならそこそこいいところ受けなさいよ」
キョン「全国偏差値50程度の俺がか?冗談はよせよ。というか、人の進路で遊ぶな」
ハルヒ「別に遊んでいるつもりはないわよ」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:01:41.53:RnhTe/1k0
このときのハルヒの目を見てわかった。信じがたいことに、どうやらこいつは本気のようだ。
ハルヒ「どうせあんたのことだから、適当に選んだんでしょ。偏差値見て適当なところに」
ハルヒ「こだわりがないんだったら上を目指したほうがいいと思わない?」
ハルヒ「そういうわけよ」
キョン「いったいどういうわけだよ」
と言いつつも…俺だって馬鹿じゃない。もう二年もハルヒとかかわってきたのだ。
こいつの行動パターンを考えるとこういうときは、無理にあらがってはいけない。
川を流れる枯葉のようにいったん流れに身を任せるのだ。
しばらくすれば、川岸に打ち上げられるだろう。
そういうことを考えた俺はとりあえず納得したふりをしてみる
キョン「まぁ、いってることは正しいのかもしれないけどな」
ハルヒ「でしょ?そういうわけだから、あんたも頑張るのよ」
そういうと、いつものようにネットサーフィンやらよからぬ考えごとに戻っていった
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:03:47.51:RnhTe/1k0
帰り道
古泉「で、どうなさるおつもりです?」
キョン「さっきのことか?あいつが飽きるまではつきあってやるさ。しばらくすると自分の言ったことがいかに無謀だったかわかるだろ」
古泉「涼宮さんとあなたが同じ大学に行くのは望ましいことではありますが…。まぁ、無理強いはできませんからね」
キョン「そういうお前はどうなんだよ。お前もか?」
古泉「実は悩んでいるんですよ。」
キョン「ほう、珍しいな」
古泉「『機関』からは自由にしろと…、まぁ、こんなことは異例ですが」
キョン「まあ、人生を左右することもあるからな。ハルヒにこだわり続けることもないさ」
そう言ってやったのだが、古泉は前方で長門と話している(というか一方的に話しかけている)ハルヒを見ていた。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:05:48.02:RnhTe/1k0
ハルヒ、長門、古泉と別れた俺は程なく帰宅した。
さて、どうしたもんかなと俺は考えあぐねた。
ハルヒに抗わず、飽きさせる…。まぁ、俺の空っぽの脳みそで考えうる方法はひとつくらいなものだ。
適当に話を合わせて、しばらく放っておく。これに尽きるね。
きっとハルヒのことだ。すぐに別のことに気が向くだろう。
そう思って、翌日。俺は岡部に返されたそのままの状態で進路希望票を提出した。
岡部「おい…、変わってないじゃないか」
キョン「ええ、まぁ…」
岡部「はぁ…。わかったとりあえず受け取っておこう」
岡部教諭も二年も涼宮ハルヒを受け持つと多少のことでは動じなくなっているのだろうな。渋々ながら受け取ってくれた。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:07:50.07:RnhTe/1k0
谷口「おい、キョン。お前どうした?」
キョン「何のことだ?」
谷口「進路だよ。大学。もう決めたのか?」
キョン「あー、まだだよ。そういうお前は?」
谷口「俺もだな。まぁ、親父が国公立じゃないと金は出さんとかいっててな」
キョン「ほう、大変だな」
谷口「まったくな」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:09:51.04:RnhTe/1k0
その日もSOS団の活動は粛々と執り行なわれた。そして、いつも通り解散。
俺の目論見は思ったよりはやく成功を迎えるかもしれない。
ハルヒは昨日の話題など全く出さなかったし、もうすっかり忘れているかのようでもあった。
そんなことを夕食を終えて自室のベッドでうつらうつら考えていると、知らないうちに眠ってしまっていたようだ。
そんな俺の安眠を貪ったのは妹であった。
妹「キョンくーん。起っきてー」
キョン「ん…?なんだ。もう朝か?」
ハルヒ「だらけ過ぎよ!キョン!」
キョン「ハルヒ!?」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:11:56.64:RnhTe/1k0
キョン「なんでここに?」
ハルヒ「なんでって、勉強を教えにきてあげたのよ」
キョン「え?」
ハルヒ「岡部に聞いたわよ。あんたも腹くくったみたいじゃない」
ハルヒ「まぁ、今のあんたじゃ厳しいだろうから、私が直々にコーチングしてあげようというわけよ」
ハルヒめ…、諦めていなかったのかよ。
それにしても、こんな時間に…、と思って時計を見るとまだ午後8時というところだった。
キョン「部室でやっても良かったんじゃないか?」
ハルヒ「SOS団の活動中に私事を持ち込んじゃダメよ。そのあたりのケジメはきちんと付けないとだめだわ」
キョン「はいはい…」
まぁ、昨日の今日で飽きるのはさすがに怪しまれるか…。
とりあえず、俺は妹を部屋から追い出した。
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:13:58.45:RnhTe/1k0
キョン「で、いったいどうするんだ?宿題でも教えてくれるってのか?」
ハルヒ「宿題?そんなもん後回しよ。とりあえず、今後の計画を立てることが先決じゃない」
キョン「まぁ、そうだな。」
ハルヒ「というわけで、一番最近の模試の結果見せなさい」
キョン「模試?ああ、二年の冬にあったやつか。どこにやったかな…」
俺は過去は振り返らないことにしている性分のため、模試の成績などを後生大事に取っておくということはしない。おそらく見つからないだろう。
と、思っていたのだが、探すと案外すぐに見つかってしまった。
キョン「ほらよ、これだ」
ハルヒ「どれどれ…」
ちなみに、模試の成績は以下の通りであった。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:16:01.15:RnhTe/1k0
国語 52.9
英語 47.7
数学 46.7
理科 47.8
歴史 55.6
とまぁ、国語と歴史はなんとか全国のうちでも上半分にいるのだが、数学、英語、理科は俺の下より上にいるやつのほうが多いという結果であった。
ハルヒはもちろんご立腹だろうと思ったのだが…
ハルヒ「まぁ、こんなもんよね。安心しなさい。私がいればあっという間に偏差値なんて60越えよ」
キョン「60じゃ足りんだろう」
ハルヒ「もちろん最終的にはもっと上を目指してもらうんだけどね」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:19:09.85:RnhTe/1k0
ハルヒ「それにしても、国語が偏差値50オーバーだとは思わなかったわ」
日ごろから訳のわからん与太話を、古泉、朝比奈さん(大)、長門から聞いているからな。知らんうちに日本語の理解力が上がったのかもしれん。
ハルヒ「当面は英語と数学ね」
キョン「理科はいいのか?生物だがこいつも半分より下だぞ」
ハルヒ「生物なんてセンター試験でしか使わないから大丈夫よ。二次試験で必要な教科を今のうちに重点的にやっておくのよ」
キョン「へぇ」
ハルヒ「あと、歴史ね。いまのところそこそこいい成績取れてるけど…。これってどっち?」
キョン「日本史だな」
ハルヒ「そう。じゃあ、二次試験で日本史ね」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:21:22.33:RnhTe/1k0
キョン「待て待て。ということはまさか…」
ハルヒ「センターで世界史よ。問題ある?」
キョン「歴史を二科目か?」
ハルヒ「あたりまえじゃない。まあ、センターの世界史のほうは、これも早めにやっておいたほうがいいわね」
キョン「それで志望を変えたらどうするんだよ。一科目無駄になっちまうじゃないか」
ハルヒ「一応言っておくけど。今のうちからそんなこと考えてるとだめよ。何が何でも受けるところまで持って行くんだって気持ちじゃないと」
ハルヒ「それに、得た知識が無駄になることなんてないわ。血となり肉となりどこかで役に立つものよ」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:23:35.26:RnhTe/1k0
キョン「わかったよ。で、どうすればいい?」
ハルヒ「英語はなんといっても単語ね。なんか単語帳持ってる?」
キョン「いや。生憎と参考書の類は一冊も持ってないな」
ハルヒ「あんたそれでも受験生?はぁ…しょうがないわね。あとで買いに行きましょ」
ハルヒ「一か月に…そうね、単語帳5周するぐらいの気持ちで行きなさい」
キョン「5周か?きついな…」
ハルヒ「そのくらいでへこたれない!だいたい単語帳なんて2000前後の単語があるけど一、二割はすでに知ってるものなんだから」
ハルヒ「まぁ、当面英語はそれよ。後は学校の授業で長文とかちゃんとやりなさい」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:25:50.15:RnhTe/1k0
ハルヒ「次は数学ね。どうせ何も持ってないんでしょ」
キョン「ああ、さっき言ったとおりだ」
ハルヒ「学校で買った青チャートがあるでしょ」
キョン「青チャート?ああ、あの分厚いのか。机の上で埃を被っているが」
ハルヒ「ちょっと貸して…ってホントに折り目もついてないのね!」
キョン「まあ、一回も使ってないからな」
ハルヒ「これの、このあたり、例題の問題を一日10問ペースで解きなさい」
キョン「10問?」
ハルヒ「10問よ。ⅠAⅡB全部で600問くらいの例題があるから、二か月もあれば終わるでしょ」
ハルヒ「ただ解いていくだけじゃダメなのよ。間違った問題は翌日にもう一回解く!溶けるまで繰り返しなさい!週に一回は間違えた問題が解けるかどうか確認すること!」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:28:17.02:RnhTe/1k0
ハルヒ「生物はさっき言ったとおり、まぁ、そこそこ真面目に授業聞いてれば問題ないわ。連休明けぐらいからセンターの過去問とかに手を出したらちょうどいいくらいよ」
ハルヒ「歴史は…日本史は大丈夫そうね。といっても京大レベルに達するにはもっと鍛錬が必要よ。一問一答形式の問題集を隅から隅までやることね。記述対策はまだいいわ」
ハルヒ「世界史のほうは、完全に独学ね」
キョン「独学か」
ハルヒ「まあ、心配しなくてもいいわ。わたしが気が向いたら教えてあげるから」
キョン「お前は何気に、人に教えるのがうまいからな」
ハルヒ「お世辞言っても何も出ないわよ!まあ、人に教えるのだって自分のためよ。情けは人の為ならずって言うじゃない!」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:30:18.42:RnhTe/1k0
ハルヒ「まあ、こんなところね」
ハルヒはさも簡単なことのように言うのだが…。
勉強に耐性のないおれにとってこれはアンモニア入りのフラスコの口に直接鼻をかざすようなものではなかろうか
ハルヒ「まあ、大丈夫よ。なんといってもあたしがついてるんだから!」
キョン「そうだといいがな…」
まぁ、どっちにしろ勉強しないといけないというのは事実だ。京大を目指すというわけでなくともな。
ハルヒ「さて、じゃあさっそく買いに行くわよ!」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:32:45.15:RnhTe/1k0
駅前の本屋 参考書コーナー
キョン「へえ、こんなにあるのか」
ハルヒ「受験産業はいくらでも儲けられるもの。いくらでも新しいのを出すわよ」
キョン「で…。いったいどれを買えばいいんだ?」
キョン「単語王、システム英単語、『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語がおもしろいほど身に着く本…。これだけあればどれがいいかわからんな…」
ハルヒ「とりあえず、王道が一番よ。はい、これ」
キョン「ん?ターゲット1900?」
ハルヒ「それと付属の単語カードも一緒に買っときなさい」
ハルヒ「単語帳なんてのは『どれ』より『やれ』っていうくらいなんだから」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:34:45.53:RnhTe/1k0
ハルヒ「古文はこれね。『マドンナ古文単語230』」
キョン「他のは565とかだが、数は大丈夫なのか?」
ハルヒ「とりあえず、230で十分対応できるわ。知らない単語が出てきたらその都度覚えておけばいんだから」
キョン「なるほどね。世界史はどうするんだ?」
ハルヒ「世界史は…まぁ、これね。東進ブックスの『世界史B一問一答 完全版』」
ハルヒ「山川出版のも有名なんだけど…まあ、これもどれでもいいわ。日本史も東進ブックスのでいいわ」
ハルヒ「いい?とにかくなんでも早く始めるのが一番なんだから」
ハルヒ「参考書を選ぶのに悩む時間で勉強しなさい!」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:36:46.46:RnhTe/1k0
駅前
ハルヒ「じゃあ、私はここで帰るわ。ちゃんとやるのよ」
キョン「わかってるよ。英単語は…一日200~300ってところか」
ハルヒ「一日で完全に覚えようとしなくてもいいわ。速いスピードで何周も単語帳を繰り返すのよ」
ハルヒ「完璧に覚えた英単語は除外していくの。そうすれば一周にかかる時間はもっと減るでしょ」
ハルヒ「そのために単語カードも買ったんだから」
ハルヒ「古文はちゃんと説明読んだほうがいいわよ。その参考書一語ごとに解説あるから」
ハルヒ「次の模試を楽しみにしてるわ。じゃあね」
キョン「ああ、また明日な」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:37:24.24:EI2L/S570
今日だけで出費は8000円弱だ。勉強の前にバイトを探さなくてはいけないかもしれない。
家に帰って、ハルヒに言われたように単語帳と単語カードをめくる。
なるほど。確かに、十個に一個くらいはすでに覚えているものもあるようだ。
それでも、300個弱の英単語に目を通すのに30分程度はかかった。
次に数学…例題10問だったけな?
青チャートのIAからスタートして最初の10個などは簡単なものだったのでさすがのおれも普通に終えることができた。
今日一日の勉強時間は一時間半程度…。こんなもんで大丈夫なのだろうか?という一抹の疑問を感じつつ、俺は眠りに就いた。
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:40:51.79:RnhTe/1k0
翌日。朝学校に向かっていると、珍しいことに古泉がいた。
キョン「よお、古泉。珍しいなこんな時間に」
古泉「ああ、おはようございます。いえ、少し夜更かしをしてしまいまして」
キョン「ん?何かあったのか?」
古泉「進路のことです。神戸か京都で悩んでいたのですよ。」
目の前で特進クラスのエリートが弱音を吐いているのをみると、自分のしていることがいかにばかばかしいことか実感できる。
キョン「俺もしばらくは京大志望ってことになってるみたいだからな。まあ、お前なら大丈夫なんじゃないか?」
古泉「あなたがですか?涼宮さんの意向も関係ありと考えても…いえ、それ以外にありませんね」
キョン「わかってんなら、いちいち言わんでもいい」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:42:55.15:RnhTe/1k0
キョン「まあ、ハルヒが俺の学力に愕然とするか、飽きるまでの辛抱だよ。その時は俺の身の丈に合った志望に変えるさ」
古泉「もし、涼宮さんにその時が来なかったらどうするおつもりです?」
キョン「まさか…きっと来るさ」
キョン「そういうわけだ。あんまり深く悩むなよ」
古泉「ええ、そうですね。ありがとうございます」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:45:23.44:RnhTe/1k0
その日の放課後。二年間にわたって身に着いた惰性はそうそう簡単に抜けることもなく、俺は今日も文芸部室に向かった。
すると、ハルヒも古泉もまだ来ていない様子で部室にいたのは長門のみであった。
キョン「よお。相変わらず早いな」
長門「……」
と、ふとここ数日気になっていたことを聞いてみた。
キョン「なあ、長門」
長門「…何?」
キョン「お前も京都大学を受験するのか?」
長門「おそらく…」
キョン「そうか」
まぁ、わかっていたことだし、こいつなら確実に安全だろう。
無理かもしれない、と悩むのは古泉が現代人で地球人だからである。
長門にそんな心配をするのはかえって失礼というものだ。
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:48:04.35:RnhTe/1k0
古泉「やあ、遅くなりました」
キョン「遅かったな。いったい何事だ?」
古泉「いえ、少々担任と話しておりまして」
キョン「というと?」
古泉「進路の件です。僕も可能な限り京都大学を目指すことにしました」
キョン「そうか。…ということはSOS団高三4人は全員京大を目指すことになっているわけか」
古泉「すでに、あなたと涼宮さんと長門さんが京都志望であることは職員室の話題の中心であるようです」
古泉「僕が言った時も『ああやっぱりな』みたいな感じでしたから」
キョン「SOS団はいよいよ何がしたいんだろうな…」
そもそも、俺達四人が全員京都に行ってしまったら朝比奈さんは神戸に一人…。
いや鶴屋さんも神戸大だから一人というわけではないが…。
それにしても、教師からみれば訳の分らん集団であることに拍車をかけてしまったようだな。
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:50:05.21:RnhTe/1k0
その後、ハルヒがやってきて、SOS団は通常業務に戻った。
ハルヒは団長席で何事かやっているし、長門はいつもの定位置で分厚い本を読んでいる。俺と古泉はボードゲームで対戦中だ。
たしかに、はたから見たら訳の分らん集団だよな。まったく。
ハルヒ「それじゃあ、今日もそろそろ解散にしましょ」
団長の一声で俺たちは解散し、帰路についた。
家に帰り、夕食をとり、ベッドに寝転び、そろそろハルヒに与えられた宿題をしようかと思っていた午後9時ごろ…
ピンポーン
キョン「ん?こんな時間に誰だ?」
ほどなくしてその正体は明らかになる。
ハルヒ「しっかりやってるかしら?」
キョン「ハルヒ!?なんだって今日も?」
ハルヒ「ちゃんとやってるか心配だったから来てあげたのよ。あんたのことだから一日くらい…とか思ってそうだし」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:52:24.36:RnhTe/1k0
どんだけ信用がないんだよ、俺は…
ハルヒ「というわけで、ちゃっちゃとやる!」
キョン「やれやれ…。わかったよ」
ハルヒ「まったく、気が緩んでるわよ!」
ハルヒにせかされるままに、勉強机に向かう。それにしても今日まで来るとは…こいつものすごく暇なんじゃないのか?
キョン「お前こそ、こんなに毎日ここに来て自分の勉強は大丈夫なのか?」
ハルヒ「その点抜かりはないわ。今日は私もここでするから」
キョン「そうかい…」
ハルヒ「というわけで、このテーブル借りるわよ」
そういうと、ハルヒは自分の参考書を取り出して、勉強を始めた。
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:54:42.37:RnhTe/1k0
が、今日は特にこれといった会話もなく、黙々と勉強するにいたった。
昨日と同じメニューと、古文単語を少し、学校の宿題などを終わらせると二時間ほど経過していた。
ハルヒはその間、自分の勉強をしていたようなのだが、俺にはいったい何をしていたのか皆目見当もつかん。
キョン「ふう…、今日はこんなもんか…って、もうこんな時間じゃねーか!おい、ハルヒ」
ハルヒ「ん?なに?」
キョン「なにじゃねーよ。もう11時過ぎだ。そろそろ帰れ」
ハルヒ「ん?ああ、もうそんな時間だったの。ちょっと長居しすぎたわね」
キョン「どれだけ集中してたんだよ」
ハルヒ「あんたが集中してなさすぎるのよ」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:56:42.74:RnhTe/1k0
11時はさすがに一人で返すには不安だ。ということで一応送っていくことにした。
まあ、ハルヒなら暴漢にであっても返り討ちにしてしまうんだろうがな。
ハルヒ「それにしても、一日2時間は少し少なすぎよ」
キョン「まあ…そうなんだろうな」
ハルヒ「学校から帰るのがだいたい6時でしょ。夕食とお風呂で1時間半は使うとしても、寝るまでに5時間はしないと駄目ね」
キョン「そんなにか…」
ハルヒ「まあ、もちろん今すぐにとは言わないわよ。今は二時間でもだんだん伸びてくるわ。六月が終わるくらいまでにそのくらいに持っていけばいいわよ」
キョン「ずいぶん悠長な話だな」
ハルヒ「毎日やることが一番大事なんだから。勉強しない日を作っちゃ駄目よ!」
キョン「へいへい」
そんな会話をしつつ、ハルヒの家の近くまでやってきていたようだ。
というか、ハルヒの家に来るのって何気に初めてだな
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:58:43.98:RnhTe/1k0
ハルヒ「じゃあ、ここだから」
キョン「そうか」
ハルヒ「ちゃんとやりなさいよ。聞いた話だと、有希も古泉君も京大らしいわ。いっそみんなで受かりましょ」
キョン「そうだな。まあ、一番のネックは俺なんだろうが」
ハルヒ「そんなことわかりきったことじゃない。だから、私が直々に指導してあげてるの。感謝しなさいよね」
キョン「わかってるよ。じゃあ、また明日な」
ハルヒ「ええ、お休み」
その後、家に帰り、風呂に入りすぐ眠った。二日勉強しただけでこれほど疲れるとは…。
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:59:40.20:0BkWv2yD0
驚くべきことにその後も毎日ハルヒはやってきた。ある時は8時、ある時は9時に。
もちろんハルヒが毎日のようにやってきていることは俺の母、父の知るところであり、時折乱入してくる妹によって勉強を教えに来ているらしいことも知っていた。
そんな日が二週間も続いたある日のホームルーム。
岡部「そろそろ。新学期にも慣れてきたころだろう。連休前には家庭訪問もあるから、保護者の方にはきちんと伝えておくように」
岡部「時間は決まり次第、連絡する。では、今日はこれまで。気をつけて帰れよ」
岡部「そうだ、キョン。ちょっと職員室に来てくれ」
キョン「?」
いったい何事だろう。といいますか、いい加減本名で呼んでくれてもいいのではないだろうか?
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:03:15.45:5qehNlGg0
岡部「今度の家庭訪問のことだ」
キョン「はあ…」
岡部「実質の三者面談なんだが…どうする?」
キョン「どうするといいますと…?」
岡部「志望についてに決まっているだろ」
岡部「そのまま親御さんに伝えるか?」
キョン「ああ…」
そういえば、すっかり忘れていた。
親は勉強し始めて何よりと思っているらしいのだが、京都大学を志望していることになっていることは全く知らない。
キョン「どうしましょうかね」
岡部「俺に聞くなよ」
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:03:53.54:mh2KqVP10
岡部「お前の志望について涼宮が関係しているのはなんとなくわかる」
岡部「お前の本意ではないのかもしれないということもな」
岡部「で、そのうえでこのことを親御さんに率直に伝えるか?」
キョン「……」
もちろん、京都大学を目指しているのはハルヒに対するポーズであるし、本意ではない。
ただ…、この二週間勉強してみて多少変わったこともある。
ハルヒは一向に飽きる気配を見せないし、俺のあきれるほどの学力にもさじを投げたりしていない。
ここで手のひらを返すのは…、さすがにハルヒに悪いような気がしたのだ。
キョン「そうですね。まあ、本意ではないところがないと言えばうそになりますが…」
キョン「今回はとりあえず、その票通りに伝えてください」
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:05:18.56:5qehNlGg0
岡部「いいんだな?」
キョン「はい」
岡部「まったく…短い教師人生だが、お前たちのような生徒は始めてだよ」
キョン「それはほめ言葉と受け取っても?」
岡部「そうだな。そう解釈してくれ」
岡部「なあ、ついでにもうひとつ教えてくれないか?」
キョン「なんでしょう?」
岡部「文芸部が全員京都大学志望なのは涼宮に関係するのか?」
キョン「まぁ、ハルヒの影響力があるんでしょうが、強制的にあいつが志望を曲げさせたわけじゃないですよ」
間接的にはそうなるのかもしれないが…
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:05:27.23:mh2KqVP10
岡部「そうか、ならいいんだ。てっきり、またあの一団がなにか仕出かそうとしているんじゃないかと思ってな」
岡部「まあ、お前も最近授業中の態度がだいぶ良くなったっていろんな先生に聞いてはいるし…」
岡部「なにがあるのか詳しくは聞かんが、まあ、頑張れよ」
キョン「はい、では失礼します」
岡部も話せばわかるやつじゃないか。そんな新たな発見があった一日だった。
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:06:23.08:mh2KqVP10
そして、やってきた家庭訪問の日。
三年生は担任到着までに帰宅しておくことが義務付けられている。
そういうわけで今日はSOS 団も休業している
ピンポーン
岡部「おじゃまします。キョン君の担任の岡部です」
ママキョン「あら、こんにちは。どうぞお上がり下さい」
なんだかんだで三年も同じ担任の先生の為、俺の母親ももう手慣れている。
さて、俺はリビングで待っている。家庭訪問と言いつつ、家で行う三者面談だからだ。
ママキョン「さあ、おかけください」
岡部「失礼します」
岡部「さっそくですが、進路についてご家庭で話されていますか?」
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:07:33.65:5qehNlGg0
ママキョン「いえ、私と旦那はとにかく国公立大学に進学してほしいと思っているのですが」
岡部「そうですか。おそらく、その希望はきちんと伝わっていると思いますよ」
岡部「こちらが、キョン君の志望票になります」
岡部が手渡した票は俺が岡部に提出したときのままだ。
ママキョン「はい。……、岡部先生?これ他のお子さんのものと間違えていませんか?」
岡部「いえ、間違いなく、キョン君のものですよ」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:08:31.06:mh2KqVP10
ママキョン「京都大学って…あの?」
岡部「ええ、あの京大です」
ママキョン「ちょっとキョン、なにかの冗談なの?」
この家では妹のセリフを聞いてもわかるとおり、両親も俺をキョンと呼ぶ。さて、本名がなんだったかな、自分でも忘れかけているような…
ママキョン「京大なんて無理に決まってるじゃない」
キョン「まあ…なんというか…」
ママキョン「最近、真面目に勉強し始めたと思ったのに…」
岡部「まあ、お母さん」
岡部「今の学力では京大は無謀と思われるかもしれませんが、まだ受験までは10カ月も残っています」
岡部「目標を高く掲げることは大切ですし、もしだめならその時はその時で受ける大学を変えればいいんですから」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:09:38.26:5qehNlGg0
ママキョン「でも…」
岡部「一応、本人にも確認はとりましたが、キョン君は本気のようです」
岡部「もちろん、一度家庭のほうで話し合っていただくことになるかとは思いますが、私も精いっぱいサポートさせていただきます」
ママキョン「はあ…」
岡部「とにかく、一度ご家族で話し合ってみてください。それで変えるというのであればそれはそれで結構ですから」
岡部「やはり、本人の将来ですから。僕としても本人が決めたことは応援したいですので」
岡部「ということで、今日はこのあたりで失礼します。また、お電話でもかまいませんので、ご連絡していただければ」
ママキョン「そうですか…、今日はどうもありがとうございました」
そうして、やけに短い家庭訪問は終わりを告げた。
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:09:48.85:mh2KqVP10
その日の夕飯後、帰ってきた父親と母親と俺で本日二回目の三者面談だ。
妹は自室で遊んでいるらしい。
ママキョン「そりゃあ、目標は高いほうがいいというのはわかるけど、もうちょっと現実味のあるところに…」
パパキョン「まあまあ母さん。キョンの意見も聞こうじゃないか。どうして、いきなり京大なんだ?そんなに受験は甘くないぞ」
キョン「まあ、そんなことはわかってるさ。なんというか…」
両親は岡部ほどチョロくなかった。
ここでハルヒに勧められたからなどというのはどうだろうか…
キョン「心境の変化というか、まあ、一年間必死でやればどうにかなるんじゃないかと…」
パパキョン「もちろん、自分の息子に無理だなどと頭ごなしに言うつもりなどないが、それでもその心境の変化はいったいどこから来たんだ?」
その時であった。
ドッバーン
ハルヒ「おじゃましまーす!」
なんと間の悪い…
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:10:30.56:mh2KqVP10
ハルヒ「妹ちゃんが気がついて中に入れてくれたわ。あっ、どうもこんばんは」
ママキョン「あら、こんばんは。毎日悪いわねぇ」
ハルヒ「いえいえ、いいんですよ。私も勝手に勉強してるだけなんですから」
ハルヒ「さぁ、キョン。今日もみっちりやるわよ!」
キョン「ん?すまんが、ちょっと待ってくれ」
ハルヒ「何?もしかして、家族会議の途中だった?」
パパキョン「実は、そうなんだよ。なあ、涼宮さん。キョンが京大を第一志望にしたのは知っているかい?」
わが親父ながらいきなり核心を突いてきやがる!
ハルヒ「ええ。というか、キョンに京大を受けるように言ったの私ですし」
パパキョンママキョン「!!」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:10:37.95:56dyQ/M80
キョン「おい!お前なんつーことを…」
ハルヒ「あんたまだ言ってなかったの?駄目よ、親御さんには先に言っておかなくちゃ」
キョン「そうじゃなくて…、あーもういい。」
パパキョン「で、キョン。さっきのことは本当なのかい?」
キョン「ああ、そうだよ。ハルヒが京大を受けてみないかといわれて、確かにそれに応じた」
ママキョン「ねえ、涼宮さん。キョンに京大を受けさせようとしたのはどうしてなの?」
ハルヒ「だって、キョンってば志望大学を適当に選んでたから、とくにこだわりがないんなら…と思って」
ハルヒ「それに、京大なら変人も多いから、おもしろい大学生活が送れるに違いないはずだわ」
パパキョン「それにしても、キョンに京大は無理じゃないのかい?」
ハルヒ「そんなことないですよ。大学受験なんて所詮、教科書の延長線上だもの。一年かそこら必死にやればできるようにできているわ」
ハルヒ「キョンなら、なんだかんだでSOS団で鍛えられているし、そのくらいの受験勉強楽勝よ!」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:11:45.17:5qehNlGg0
パパキョン「やれやれ…、なるほど。どうやら二人とも本気らしい」
パパキョン「なあ、母さん。好きなようにさせてみないか?」
ママキョン「あなた!」
パパキョン「大学受験なんて所詮は人生の分岐点にすぎない。その後の道がどうなるかなんてその後の自分が決めるものだ」
パパキョン「それに…なんとなくさっきの話を聞いていたらキョンでもなんと中なるような気がしてきた」
ママキョン「はぁ…。そうですね。もともと放任主義で育ててきた子だし…。わかりました。そもそも志望がどこでも国公立にさえ行ってくれればいいんだから」
パパキョン「そういうことだ」
キョン「ということは…、特に問題はないと?」
パパキョン「現状はな」
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:13:46.15:mh2KqVP10
ママキョン「そういえば、涼宮さんも京大だったわよね」
ハルヒ「ええ」
キョン「なんで知ってるんだ?」
ママキョン「この前うちに来た時に聞いたのよ。まあ、涼宮さんの迷惑にならなければ、キョンのことよろしくね」
ハルヒ「まかせといてください!さあ、キョン行くわよ!」
こうして、岡部、両親は俺が京大を第一志望とすることを認めてくれたようだ。
もちろん、この段階で俺は本当に京大を受けることになるとは思っていない。
学力向上は願ってもいない事態だが、京大というレベルに達するのは難しいだろう…、とも思っていた。
ただ熱心に俺に教授してくれているハルヒに悪いという気持ちから第一志望京都大学を変更しなかったにすぎないのだ。
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:14:01.07:5qehNlGg0
ハルヒがそんな風に俺の家に勉強を教えに来てからというもの、さらに二週間がたった。
連休中も欠かさず来ていたが、暇なのだろうか?
まぁ、学校の授業が以前よりは理解できるようになっていったし、自分にとっても悪いことではない。
俺は直近の課題を抱えていた。
それは、五月にあるセンター模試である。
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:14:37.64:mh2KqVP10
キョン「なあ、ハルヒ。今週末の模試なんだが」
ハルヒ「何よ?まさか不安だなんて言うんじゃないでしょうね」
キョン「いや、そのとおりなんだが」
ハルヒ「まったく、そんな弱気じゃ先が思いやられるわよ」
キョン「だって、本格的に勉強初めてまだ一ヶ月程度だぜ?」
ハルヒ「大丈夫よ。どうせ大した点取れなくても、この時期の模試なんて」
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:15:43.44:mh2KqVP10
キョン「そんなもんなのか?」
ハルヒ「そうよ。だから、今は普通に勉強してなさい」
キョン「はいはい…」
ハルヒの言うとおりにしてみることにした。まあ、不安がったところで点数が上がるわけでもないしな。
そして、迎える模試当日。
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:16:03.52:5qehNlGg0
他の学校がどうかは知らないのだが、北高ではセンター模試を二日間かけて行う。よって、模試がある週は週末がなくなるのだ。
谷口「まったく、休みも無しにまた月曜日から学校に行けってか?」
国木田「しょうがないよ。光陽園なんて10月には全部の週に模試が入ってるって聞いたことがあるよ」
谷口「うげ…まじかよ」
キョン「それはさけたいところだな」
谷口「そういやよ、キョン」
キョン「ん?なんだ?」
谷口「風の噂で聞いたんだが、お前、第一志望京大なんだって?」
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:18:20.83:5qehNlGg0
まったく…どこで聞いてきたんだよ。
キョン「まあ…一応な」
谷口「本気か?…まあ、お前が今どんな奇行を起こそうと俺は別に驚きやしないがな」
キョン「そうかい」
国木田「へえ、あの噂は本当だったんだ。やっぱり涼宮さん絡み?」
キョン「そういうことになるかな」
谷口「まあ、ほどほどにしとけよ。受験失敗したら洒落じゃないぜ」
もちろんだ。おれだってこの段階で本気で京大に受かるだなんて思ってもいない。ただ、他の大学に受かる為に勉強しているだけなのだ。
谷口と国木田らとだべりながら学校へ着き、すぐに模試となった。
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:20:33.32:5qehNlGg0
結果から言おう。俺の模試は以下の結果だ。
英語135/200
数学104/200
国語120/200
世界史78/100
現代社会55/100
生物50/100
合計520/900
まずまずの結果…というか過去うけてきた模試の中では最高得点である。
国木田には届かなかったが、谷口とは大きく水をあける結果となった。
谷口「キョンよ…お前まで遠くに行っちまうのか」
悪いな谷口。さすがに何時までもお前と同じくらいだと俺の将来に関わるんだ。
直近の未来から顔をそむけるほど俺は愚か者じゃないのさ。
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:20:41.91:mh2KqVP10
ハルヒ「まあ…まずまずなんじゃない?」
結果が返ってきたその日。いつものように家にやってきたハルヒはまず、模試の分析から始めた。
キョン「俺にとっては、凄まじい上昇だったんだがな」
ハルヒ「英語も順調に伸びてるし、それにしても世界史が思ったより取れてるのね」
キョン「まあな、もともと歴史は得意だったんじゃないか?」
ハルヒ「そうかもしれないわね。例えとかいちいち歴史用語だったりするし…」
キョン「で、今後はどうするんだ?」
ハルヒ「もちろん、今まで通りよ。ペースはだんだん上がってきていうようだし」
キョン「まあ、机に向かう時間はだんだん長くなってきたな」
ハルヒ「時間だけで語るのは危険だけど、まあ、いい兆候よ。あとは間違ったところはリストアップして二度と間違えないようにすること」
キョン「へいへい」
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:23:27.34:5qehNlGg0
ハルヒの言っていたとおり、ここ最近の俺は勉強のペースを掴みかけていた。
勉強時間も平日5時間程度になってきた。相変わらず、SOS団も続いているから土日も時間的束縛はあるがいい感じだ。
6月は学校の期末テストもあったのだが、これも過去最高の成績であった。教師陣も驚いただろうな。国木田には相変わらず勝てないのだが。
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:25:45.26:5qehNlGg0
梅雨明けが宣言されたそんなある日。
古泉「最近どうです?」
キョン「なんのことだ?」
五目並べをしながら古泉が話しかけてきた。
服装はもう夏服である。
古泉「勉強ですよ。噂は多少聞いていますよ」
キョン「そうかい。まあ、今のところ順調だよ。お前こそどうなんだ?俺と違って本当に京大を受けるんだろ」
古泉「あまり芳しくはありませんよ。まあ、ぼちぼちといったところですね」
古泉「それより、俺と違ってということは、あなたは受けないんですか?」
キョン「まあ、客観的に考えるとそうなるんじゃないか?自分をそこまで過信する自信はないぜ」
古泉「そうですか」
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:26:23.10:mh2KqVP10
そして、7月。鬱陶しいほどの暑さにうだりながら、登校する毎日。
ハルヒは今も毎日のように俺の家に押しかけてくる。最近なんて、夕飯まで俺んちで食っていくくらいだぜ。
おふくろも親父ともすっかり打ち解けている。
まぁ、それはそれでいいのだが、俺は二回目のセンター模試を迎えようとしていた。
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:27:55.59:5qehNlGg0
センター模試二日目の昼休みである。
谷口「で、どうだった?」
キョン「どうと言われてもな…、前よりは出来ていると思うんだが」
谷口「ちくしょー!また俺との差が広がっていくのかよ」
キョン「お前、前と同じくらいなのかよ…」
谷口「いや、手応えから言うと、前より駄目だな」
キョン「おいおい…」
国木田「まあ、あと数学があるから」
谷口「お前は数学が得意だからいいよな…。まあ見てろ。苦労の末に十角形の鉛筆を用意したからな。俺の運を見せてやるぜ!」
結果…、谷口は数学ⅠA、ⅡBともに科目をマークし忘れて0点となった。
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:29:57.78:5qehNlGg0
アホの谷口は放っておいて、俺の結果は以下のとおりである。
英語134/200
数学118/200
国語140/200
世界史82/100
現代社会62/100
生物61/100
合計596/900
惜しくも600点台には届かなかったが、平均は六割を超えた。
英語は伸び悩んだが、他の科目でカバーできたようだ。実際、リスニングが足を引っ張ったようなもので筆記試験は前回よりも点数が上がっていた。
まあまあ順調なのだろう。
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:30:08.22:mh2KqVP10
ハルヒの講評は以下のとおりだ。
ハルヒ「600点は超えて欲しかったところだけど…。まあいい調子じゃない」
ハルヒ「英語と数学がそろそろ伸びてくる頃のはずだから次の模試は七割超えると思うわよ」
ハルヒ「さて…、そろそろ二次試験の対策もしないとね」
キョン「二次試験?」
ハルヒ「そうよ。8月には京大のプレ模試もあるんだから」
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:31:26.02:mh2KqVP10
どうすっかな…。本当に京大志望者みたいになってきた。
まあ、ここまで付き合ってもらったんだし、プレ模試くらいは受けてやるか。
キョン「で、どうすればいい?」
ハルヒ「そうね。夏休みに入ったら最初の週に京大の去年の問題を解いてみなさい」
キョン「京大の?」
ハルヒ「安心しなさい。どうせ解けると思ってないわよ。ただ傾向を知るだけ」
ハルヒ「まあ、要するに雰囲気になれておけってことよ。一応、復習しておくこと」
ハルヒ「後はいつも通りに勉強してればいいわよ。ただ…数学はそろそろ添削指導とかした方がいいかもしれないわね」
キョン「添削?赤ペン先生とかZ会とかか?」
ハルヒ「Z会はまだ難しすぎるからダメよ。というか、毎月お金払うなんて勿体無いじゃない!」
キョン「じゃあ、どうするんだよ」
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:32:20.44:5qehNlGg0
ハルヒ「適当に数学の教師とっ捕まえて教えてもらえばいいじゃない」
ハルヒ「一応、学校には添削指導用の問題とかあるから」
ハルヒ「英作文もそろそろし始めたほうがいいわね。こっちは私が見てあげるわよ」
キョン「え?いいのか?」
ハルヒ「別にいいわよ。英語なら自信あるし、それに私の勉強にもなるから」
キョン「なんというか…いろいろ悪いな」
ハルヒ「べっ、別にあんたのために教えてあげてるわけじゃないんだから!」
じゃあ、誰のために教えてるんだよ、と心のなかでツッコミつつ、まあ一応感謝しとくか。
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:33:18.23:mh2KqVP10
そして、迎える夏休み。だったのだが、その前に三者面談があるのだ。
ママキョン「で、どうですか?最近のキョンは」
岡部「そうですね。順調に成績は上がってますよ。職員室でもちょっとした話題です」
ママキョン「そうですか」
岡部「この上がり幅を維持し続ければ、センターの得点なら京大のボーダーには届くんではないかとおもいます」
ママキョン「この調子でいけば…ですか」
岡部「ええ、まあ最低でも八割必要と言われていますから。それ以下なら二次試験が受けられません」
キョン「え?そうなんすか?」
岡部「って知らなかったのか。まあ、そうだな。多分そっちは大丈夫だろう」
岡部「で、お母さん。今度のプレ模試は結果はあんまり気にしないでください」
岡部「最初のプレ模試なんて現役生は散々な結果ですから」
ママキョン「やっぱり浪人生がいるからですか?」
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:34:24.09:5qehNlGg0
岡部「それもありますが、現役生はこの時期、まだすべての範囲をおえているわけでもありませんし、センター試験対策が主です」
岡部「二次試験対策は夏休みの末からぐらいですからね」
岡部「とにかく、この夏休みが天王山です。生活のリズムを崩さないようにご家庭でもよろしくお願いします」
ママキョン「はい。どうも、ありがとうございました。それでは失礼します」
キョン「失礼します」ガラガラ
岡部「…」
岡部「しかし、本当にここまで伸びるとはな…」
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:34:31.95:mh2KqVP10
そしていよいよ、夏休みだ。
一学期の終了間際には担当の数学教師に添削指導も依頼し、週に二問程度、学校に持って行き指導してもらっている。
そして、それ以外の日は…というと。
ハルヒ「だから、なんでここにseeなのよ。意図的に見てるんだからwatchでしょうが!」
キョン「そんなにガンガン言わんでくれよ」
ハルヒ「甘いわよ。この程度のミスでもきっちり減点されるのよ」
ハルヒとの勉強会である。英作文の添削はまず短文から始まり、短い和文を英訳させられている。
古泉「ちなみに、そっちのembarrassのスペルが間違えてますよ」
長門「ピリオドがない」
そうそう、古泉と長門も俺の家にやってきて勉強会に参加している。まあ、同じ京大志望者と言うことになっているしな
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:35:57.55:mh2KqVP10
もちろん、SOS団の不思議探索もほぼ週一のペースで続いているし、夏休みということでたまーに朝比奈さんも参加してくれている。
卒業後もこっちの時間平面に残ってくれたのは意外なことだったが、俺にとっては僥倖だ。
そして、あっという間に8月半ば。プレ模試の日を迎えた。
夏休み中の土日を利用しての模試だ。
ちなみに同日、東大、名大、阪大、九大、東北大のプレ模試も行われていて、国木田は大阪大学のプレ模試を受けに行っている。
谷口?あいつは夏休み中に学校に模試を受けに来るほど勉強好きじゃないさ。まぁ、俺も似たようなものだったが。
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:36:30.34:5qehNlGg0
指定の教室に着くと、すでにハルヒ、長門、古泉は席に着いていた。
なお、この京大プレ模試を受けているのはSOS団のみのようだ。
ハルヒ「おっそいわよ!やる気あんの?」
キョン「これでも、30分前には着いてるだろ。俺としては早い部類だ」
一日目の科目は国語・英語である。
参考書をパラパラとめくっていると担当教官が入ってきて、試験開始である。
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:36:57.95:mh2KqVP10
さて、一日目は終了した。のだが…
キョン「なんだあの国語は…」
もちろん、ハルヒの言いつけを守り去年の問題だけは解いたことがある。それにしても難しい。
桁外れの難易度を再認識させられるね、まったく…
古泉「その様子では、あまり芳しくなかったのですか?」
キョン「ああ、国語も英語も壊滅状態だな」
古泉「まあ、最初のプレ模試です。結果はあまり気になさらず…」
キョン「お前に言われてもな…。お前はどうせ解けたんだろ」
古泉「正直に申しますと僕も微妙なところですよ。手応えが全くありません」
キョン「まぁ、理系と文系じゃ国語の問題は違うしな。英語はどうだ?」
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:38:48.91:5qehNlGg0
古泉「どうでしょう?結果が帰ってくるまではなんとも…」
うまくはぐらかしやがって…
前方ではハルヒと長門がいるのだが、二人して今日の問題の感想など言っている。
ハルヒがサブマシンガンのようにまくし立てているのだが、どうせあいつもそこそこ解けているだろうし、長門にいたっては言うまでもないだろう。
そのまま解散後、家に帰って翌日の模試の準備などしていたのだが、明日は数学がある。
夏休みのはじめに、京大数学の問題は解いてみたが訳がわからない。というか問題文がなにを聞いているのかも理解しがたいのだ。
下手な理系の問題より難しいのではないか?
というわけで日本史の参考書だけ読み、ほどほどに眠りについた。
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:39:03.49:mh2KqVP10
翌朝、学校に向かっていると珍しいことにハルヒがやってきた。
キョン「よう、今日は遅いんだな」
ハルヒ「あんたと同じ時間だなんて屈辱ね、まあ、今日は昨日よりも早い時間だから」
そう、今日はまず文系が歴史の試験を実施、その後、文理共同で数学をして、最後に理系が理科を解いて解散なのだ。
つまり、古泉は一人で理科をやって帰ることとなる。想像すると寂しい絵面だな。
キョン「しかし、今日は数学か…」
ハルヒ「なに?自信ないの?」
キョン「ある奴がいたら見てみたいね」
ハルヒ「まあ、確かに満点なんて不可能に近いのはわかってるわよ」
ハルヒ「でも、他の奴よりは出来ていると思って解きなさい!そうすれば案外気楽になれるものよ」
キョン「そんなもんかね」
ハルヒ「そうよ。朝っぱらからしみったれた顔してるんじゃないわよ。さあ、学校までダッシュよ!」
何を思いついたのか、本当にこの急勾配の坂道をダッシュで駆け上っていく。
その元気を少しでも分けてもらいたいものだと思いながら、しぶしぶ駆け足で追っていく俺であった。
132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:40:12.41:mh2KqVP10
その後、教室では長門が既にいて、到着後ほどなく歴史が始まった。
まあ、これは国語ほど壊滅的ではないだろうと思う。
その後、やってきた古泉を加えての数学。
これは…覚悟してきたことなのだが、全く解けなかった。
何か道筋を見つけようとしても計算していくとありえない結果になったりと、結局90分ほとんど四則演算に費やしてしまった。
これならまだループする夏休みから9月を迎えるとか、吹雪の館から脱出するほうが簡単なんじゃないか?
結局、ほとんど白紙のまま提出した解答用紙でもって、俺の最初のプレ模試は幕を閉じた。
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:41:01.14:5qehNlGg0
その後の夏休みもSOS団高3組で何故か俺の家に集まって勉強会などし続けていた。
このころになると、俺の一日の勉強時間が10時間近くなっており、まったくかつての自分から見れば異常なほどである。
そんなある日。
ハルヒ「明日は八月最後の日曜日ね。明日くらい休みにしましょ」
キョン「そうか?まあ、ここのところ近くのコンビニくらいしか行ってないからな」
ハルヒ「みくるちゃんも誘ってどこか行かない?高校生活最後の夏休みだもの。後顧の憂いなく遊び倒すわよ!」
古泉「いいですね。どちらに行きます?」
ハルヒ「そうね…明日このあたりで何かあったかしら?」
長門「神戸で花火大会」
ハルヒ「ちょうどいいわね!じゃあそれ!」
古泉「では、電車の時刻などは調べておきましょう」
こうして、俺達の高校最後の夏休み最後のイベントが決定した。
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:41:21.03:mh2KqVP10
朝比奈「お待たせしましたー」
ここは神戸駅前である。朝比奈さんは神戸大学に通いだしてから、神戸市内に住んでいるのだ。
キョン「いえいえ、いま来たところですから」
ハルヒ「それにしてもひとが多いわね」
朝比奈「いろんなところから人が集まってきますからね。さあ、みなさんこっちですよ」
すっかり神戸に慣れている様子である。なんとなく幼げな雰囲気も薄くなっているような気がする。
まあ、一抹の寂しさを覚えないわけではない…
朝比奈「鶴屋さんが特等席を用意してくれてるそうですよ」
ハルヒ「良かった、鶴屋さんもこれたのね。卒業してから会えなかったし」
朝比奈「鶴屋さんも皆さんと会えるの楽しみにしてましたよ」
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:42:32.08:mh2KqVP10
鶴屋「やっほー!みんな久しぶりだねー。元気そうで何よりだよ!」
鶴屋さんは高校卒業時と変わらず、照りつける真夏の太陽に負けないほどの明るさだ。
ちなみに、鶴屋さんがブルーシートを敷いてくれていたのは、海岸近くの公園で海を見渡せる場所にある。
鶴屋「地元の人間でも知る人ぞ知る穴場らしいのさ!偶然見つけたんだよ。いやー、自分の幸運に感謝だね!」
古泉「ありがとうございます。本当なら僕が探しておくべきだったんですが」
鶴屋「気にしない気にしない。受験生は先輩にどーん頼っていいんだよ」
辺りは既に日がくれかけており、花火大会開始まで一時間ほどだ。
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:43:11.62:5qehNlGg0
用意してもらっていたり、持参した軽食をとっていると、ふと朝比奈さんがこちらにやって来た。
朝比奈「そういえば、キョンくんも涼宮さんたちと同じ大学に進学するんですよね?」
キョン「知ってましたか…。まあ、そのうち変わるだろうと思って、朝比奈さんには伝えていなかったんですが」
朝比奈「ううん。きっと大丈夫です。京都大学ですよね。」
キョン「はい。まったく、いろんな人から驚かれましてね」
朝比奈「でも、私だって神戸大学に合格したんです。キョンくんだって頑張れば、合格します」
キョン「そうですかね…」
朝比奈「ええ。今まで世界を救ったり、夏休みを終わらせたり、5年前に行って絵を書いたり…」
朝比奈「受験よりよっぽど難しいことをやってのけてきたんですから」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:46:08.05:5qehNlGg0
なるほど、そう言われてみるとそうなんだろうか?
少なくとも、久々に朝比奈さんとこうして談笑できて気が楽になったのは事実である。
鶴屋「そうだよ、少年!まあ人生なるようになるってね」
いつから聞いていたのか鶴屋さんも会話に加わった。
鶴屋「くよくよ悩んだって仕方ないってものさ。ゴールに向かって頑張ってればいつの間にか着いてるもんだよ!」
キョン「そうですね。なんか、励ましてもらったみたいで…ありがとうございます。」
鶴屋「気にしなくていいっさ。後輩の幸せは先輩には何より嬉しいものだからね。頑張るんだよ少年!」
朝比奈「なにか困ったことがあったら言ってくださいね」
頼りになる先輩方というものはありがたいものだ。しみじみと感慨にふけっていると…
ドーン!
夜空を花火が照らした。なるほどたしかによく見える場所だ。
俺もあの花火のように散ってしまわなければいいのだが…
142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:48:22.36:5qehNlGg0
始業式
キョン「いよいよ今日から二学期か…」
谷口「ようキョン!高校生活最後の夏は満喫してきたか?」
キョン「なんだ谷口か」
谷口「なんだとはなんだ。夏休みは一回もつるまなかったしな、ずいぶん久しぶりじゃねーか」
キョン「まあ、忙しかったからな」
谷口「まったく、最後の夏休みだってのに勉強漬けか?息抜きも大切だぞ」
キョン「ずっと息抜きしてる奴に言われたくないな」
谷口「厳しいなあ、おい」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:50:27.13:5qehNlGg0
その後のホームルーム
岡部「みんな、久しぶりだな。最後の夏休みだったが、勉強もちゃんとやってたか?」
そして、ここから長話が続き、ホームルームの終了間際
岡部「では、夏休みにプレ模試をうけたものは返すから取りに来い」
キョン「!?」
すっかり忘れていた。プレ模試のことは記憶の彼方に追いやっていたし、朝比奈さんと鶴屋さんとの花火大会というビッグイベントもあり、受けたことすら忘れていたくらいだ。
そして、あまり思い出したくないが、壊滅的にできていなかったはずだよな…
岡部「キョン、取りにこーい」
キョン「えっ?ああ、はい」
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:50:48.80:mh2KqVP10
岡部「まあ、最初のプレ模試だからな、結果はあまり気にするな」
キョン「はあ…」
つまり、先程の岡部教諭の言葉から察するに本当にひどい結果なのだろうな…
恐る恐る封筒の封を開けてみると…
国語 41/150
英語 32/150
数学 10/100
日本史 46/100
合計 129/500
京都大学文学部人文学科 E判定
キョン「…なっ、これは…」
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:52:31.03:5qehNlGg0
その日の放課後
俺は珍しくわかりやすく落ち込んでいたらしい、というのもハルヒにこんな風に声をかけられたからだ
ハルヒ「まあ、この時期の模試の判定なんて気にすることないわよ、判定を気にしなくちゃいけないのは直前期くらいよ」
キョン「そんなもんかね」
ハルヒ「私が言うんだから間違いないわ!」
キョン「へいへい。そういや、お前はどうだったんだ?」
ハルヒ「私?私はB判定だったわ。A判までもうちょっとだったんだけどね。まあ、相手が強いほど盛り上がるというものよ!」
キョン「ほう…さすがだな。古泉は?」
古泉「僕も涼宮さんと同じくらいですよ。B判定です」
キョン「聞くまでもないだろうが、長門は?」
長門「A判定」
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:52:42.88:mh2KqVP10
ハルヒ「それがね、有希の点数ってなんか不思議なのよ」
キョン「ん?」
俺が疑問に思ったことを察したのだろうか、長門は模試の結果が入っているであろう封筒を差し出した
国語 50/150
英語 145/150
数学 100/100
日本史 96/100
合計 391/500
キョン「いや、普通にすごいよな…ん?国語だけ低いのか」
長門「そう」
ハルヒ「回答を見たんだけど、難しく書きすぎてるのね。なんとなく言ってることはあってるんだろうけど」
長門「情報の伝達に齟齬がはっせいした模様」
キョン(京大の模試の採点ってことは…まあ、予備校の講師や大学生がやってるんだろうな)
キョン(確かに、長門の回答は理解できまい。長門がハイスペックすぎるゆえの減点か)
ハルヒ「でも、今のところ有希がトップね!キョンも頑張りなさいよ!」
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:54:36.07:5qehNlGg0
その日の夜。相も変わらずハルヒは俺の家にやってきていた
ハルヒ「まあ、今日は模試の反省からやるわよ」
キョン「模試のか?お前、気にしなくていいって言ってたじゃないか」
ハルヒ「私が気にしなくていいって言ったのは結果についてだけよ。過程まで気にするなとはいってないわ」
ハルヒ「というわけで答案見せなさい!」
そう言って、俺のかばんから答案を奪い取っていった
その答案をしげしげと見てしばらく考え込んでいるようであった
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:55:16.66:mh2KqVP10
ハルヒ「数学が一番ひどいのね」
キョン「それは見たらわかる」
ハルヒ「あとは英語ね。国語と日本史は現段階では及第点だわ。ずいぶん頑張ってるじゃない!」
キョン「その点でか?」
ハルヒ「あんた平均点見たの?京大模試受けるのなんて、現役も浪人も一応、日本の中で上位の人間だけよ」
ハルヒ「その平均点のちょっと下くらいなら現役生としては十分よ」
キョン(その平均を超えてるお前や古泉はなんなんだよ!?)
152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:56:42.06:mh2KqVP10
ハルヒ「まあ、英語は時間かかるからもう少しすれば結果も出てくるでしょう」
ハルヒ「問題は数学ね…。あんた思ったより、本当にセンス無いのね」
キョン「わかっていたことだが、そうはっきり言われると傷付くな…」
ハルヒ「チャートはもう全部終わってるんでしょ?」
キョン「ああ、一学期に一周。夏休みにももう一周したからな」
ハルヒ「じゃあ、そろそろ分野別にせめて言ったほうがいいわね」
キョン「どういうことだ?」
ハルヒ「京大の数学って出やすいところ決まってるでしょ?その分野を重点的に取り組めってことよ」
キョン「どうやってだ?」
ハルヒ「分野別の参考書売ってるでしょ?一対一の数学だっけ、あんな感じの」
ハルヒ「センター対策はあとは学校の授業で十分じゃないかしらね」
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:57:10.34:5qehNlGg0
ハルヒ「そういうこと。わかった?」
キョン「ああ、わかったよ。しかし、前々から気になっていたんだが…」
ハルヒ「何よ?聞きたいことがあるのならはっきり言いなさい」
キョン「なんでそんなに俺の受験に手伝ってくれるんだ?」
ハルヒ「えっ?そ、そんなのSOS団の団長だからに決まってるじゃない!」
ハルヒ「別に他意はないんだから!古泉くんや有希は放っておいても大丈夫だから仕方なく、あんたを指導してるだけよ!」
キョン「わかったよ、わかったからネクタイ掴むのはやめてくれ」
ハルヒ「まったく…急に変なコト言うからよ」
キョン「お前、いきなり人のネクタイ掴む癖やめたほうがいいぞ」
ハルヒ「安心しなさい。あんた以外にはしてないから」
キョン「やれやれ…、俺の身にもなってくれ…」
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:58:04.01:mh2KqVP10
キョン「で、反省ってなにをすればいい?」
ハルヒ「とりあえず、この模試で間違った問題は完璧に解けるようにしときなさい」
キョン「なんだ、今までと違わないじゃないか」
ハルヒ「まあね、でもこの模試は一応、仮想京大試験なんだから今までと違って精度を高めて復習しとくのよ」
キョン「わかったよ」
ハルヒ「じゃあ、さっそくやりなさい。わからないとこがあったら教えてあげるから」
キョン「おう!」
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:59:16.47:5qehNlGg0
ハルヒに言われたとおりに模試の復習、そして、数学の分野別特訓。加えて今までの勉強に、数学の添削指導、ハルヒによる英作文の添削指導。
なんだかいよいよ受験生っぽくなってきたな。
始まったばかりだと思っていた二学期もあっという間に10月が近づいてきた。
体育祭はすでに終わり、三年五組は岡部教諭の熱血指導、例によってのハルヒの大活躍によって優勝を勝ちとっていた。
なんだかんだで岡部教諭は体育祭三連覇である。体育教諭としても鼻が高いであろう。
次の行事は…そう、SOS団のひとまずの最後の大イベント、北高祭である。
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:59:25.16:mh2KqVP10
キョン「そういえば、今年は映画どうするんだ?」
結局、去年も朝比奈さん主演の未来人メイド活劇をしたのであった。
今年もきっと、その続きだろうと思っていたのだが…
ハルヒ「今年はね…じつは、どうしようかと迷っているのよね」
キョン「ほう、お前が悩むとは珍しいな…」
ハルヒ「みくるちゃんがいないのは大きいわよね。主演女優が不在なんだもの」
ハルヒ「…!そうだわ!去年やろうと思ってたけど、結局できなかったアレをやるわよ!」
キョン「去年?…おい、まさか…」
キョン「バンドか?」
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:00:54.87:mh2KqVP10
幸か不幸か俺の予想はドンピシャで当たっていたようだ
去年は結局映画製作のみでハルヒは来年、つまり今年こそはとリベンジを誓っていたっけか。
よもや覚えていようとはな…
キョン「そういえば、パートはどうするんだ?」
ハルヒ「そうね、私がギターボーカル、有希がギターってのは考えてるけど、古泉くんはなにかできる楽器ある?」
古泉「ベースかドラムですか?申し訳ありませんが両方とも心得はありませんが…」
ハルヒ「キョンは?」
キョン「俺もだな。リコーダーくらいならできんこともないだろうが…」
ハルヒ「じゃあ、キョンがドラムで古泉くんがベースね!」
古・キ「え?」
ハルヒ「楽器なんてやる気があればすぐに会得できるわよ!そういうわけで明日から特訓開始よ!」
159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:01:27.65:5qehNlGg0
実際にその翌日から特訓は開始された
そもそも、楽譜の読み方から覚えなければならなかったし、スティックだって初めて持つのである。
まあ、曲はハルヒが書いてきたし、楽器は軽音楽部に貸してもらったようだ
ハルヒ「ちょっとキョン!リズムキープができてないわよ!」
キョン「そうか?さっきのはうまく言ったと思ったんだが」
ハルヒ「だんだん遅くなってたわ。それに二番のサビが表拍になってたじゃない」
キョン「すまん、気をつける」
ハルヒ「本番まであんまり時間がないのよ。しっかりしなさい!」
最初の頃は、大変に思っていたが、だんだんと形ができてくると面白くなってくるものだし、なんといっても打楽器であるから良いストレス発散になる
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:01:58.93:mh2KqVP10
そして、ハルヒのつくってきた曲がある程度の完成を見た頃…、文化祭の二週間ほど前のことであるが、ハルヒがある提案をしてきた
ハルヒ「せっかく、最後の北高祭なんだから一人ひとり持ち歌が欲しいわね」
ハルヒ「そうね…、よし!明日までにみんな詞を作ってきなさい!曲は私がつけてあげるから!」
キョン「詞?そんなもん作ったこと無いぞ…」
ハルヒ「詞なんて義務教育受けてたら作れるわよ。じゃあ、そういうことだから!またあしたね!」
つくづくいきなりな奴だ。それにまた明日って言ったってどうせ、このあと俺んちに来るんだろうが…
161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:03:50.85:5qehNlGg0
そして、時の流れってのは意外と早い。今日はもう北高祭当日である
準備のために朝早く学校に行っていると、またもや谷口である
谷口「ようキョン!今日は楽しみにしてるぜ!」
キョン「あんまり楽しみにしてくれるな。人に見せれるレベルかどうかわからんぞ」
谷口「なーに、しょっぱい顔してるんだよ。そういえば、お前はドラムだったな。で、涼宮がギター、長門有希がギターで、古泉がベースか」
谷口「そういえば、キーボードがいないんだな」
キョン「キーボード?まあ、いるところにはいるんだろうが不可欠なものでもないだろ?」
谷口「いや、おれの知り合いのガールズバンドはギター二人、ベース、ドラム、キーボードの5人でな」
キョン「お前にガールズバンドの知り合いがいることのほうが驚きだよ。どこで知り合った?」
谷口「俺の中学時代のツレの話だよ。京都だったか滋賀だったかの女子校だったっけ?全員がAランクプラスの美少女軍団がいるってな」
キョン「お前の知り合いじゃねーだろ」
谷口「ははは、まあな。とにかく頑張れよ!国木田も誘って観に行くから」
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:03:58.14:mh2KqVP10
そして、今は舞台袖である。
今日は雨も降っていないのに体育館はそこそこの盛況である
この三年間SOS団はよくも悪くも目立ってきたから、そのせいだろうな。
ハルヒ「じゃあ、張り切って行くわよ!」
ハルヒ「見に来た奴らに一生忘れられないくらいの演奏を聞かせてやるのよ!」
団長の影声と共に俺達はステージに向かう。
いいさ、ハメを外せるのもどうせこれが最後だからな。楽しんできてやるさ
163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:05:58.61:5qehNlGg0
ハルヒ『答えは~いつも私の胸に~♪』
ハルヒ『こんにちは♪ありがとう♪さよなら~また会いましょう♪』
ハルヒ『過去はじーぶんのーもーのー♪当然だれとも取り替えたくない~♪』
ハルヒ『あなたに~あなたに~謝りたくて~♪』
ハルヒ『スーパードライバー♪突進、任せて♪何てったって前進♪』
さすが、ハルヒ作詞作曲でボーカルもハルヒとなれば、そのポテンシャルを持て余すことなく発揮できるのだろう
観客のボルテージもいい感じだ
ハルヒ「じゃあ、次は有希の曲よ!しっかり聞きなさい!」
と、ここで長門作詞の曲である、ここからは団員がひとりずつ曲を歌って最後にハルヒが締める、ということだ。
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:06:05.92:mh2KqVP10
長門『私にも~ただひとつの~願望が~♪』
そういえば、文芸部で部誌を作ったときに、難解な文章を書いていたがこの詩は、一般大衆でも理解できるレベルだ
客席をふと見やると、コンピ研の部長氏が来ていた。たしか浪人中と聞いていたが、大丈夫なのか?
しかし、長門の奴律儀に連絡しておいたのだろうか?
古泉『悪いことには~ならないでしょう~♪』
古泉め、忌々しいことにこいつは歌もうまいらしい。
天のパラメータ配分に今一度、意見書を提出したい気分だね。
ついでに曲名が「まっがーれ↓スペクタクル」ってなんだ?超能力者ちっくなタイトルにしやがって
そして、観客席からあがる黄色い歓声も気に食わんな
キョン『やめとけと~いうべきか~♪どうせ徒労だろ♪』
まあ、人のことを言えないのが俺の曲である。
歌詞をめぐっては多少ハルヒともめたのだが、一日で書いてきたにしては十分すぎるだろう
前二人に比べて観客の盛り上がりは小さいな、当然だが…
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:07:07.23:mh2KqVP10
ハルヒ『ある晴れた日のこと~♪魔法以上のユカイが~♪』
そして最後のハルヒの曲で終わりである。
最初は踊りをつけると言っていたが…そんなことをすればギターのシールドは絡まるし、演奏もできないしで取り止めになった
ハルヒ「じゃあ、今日はみんなありがとー!今後もSOS団の活躍に期待しときなさい!」
団長の多少乱暴な締めの言葉で俺達はステージを降りる。
高校最後のイベントとしては大成功だ。まあ、いい思い出になったよ
などと、安堵していると
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:08:05.46:5qehNlGg0
アンコール!アンコール!アンコール!
キョン「え?」
古泉「おやおや…これはこれは…」
ハルヒ「ふふ、私は分かっていたわ。さっきの演奏を聞いてアンコールが来ないはずはないってね!さあ、みんな!もう一曲行くわよ!」
視界の端に、時間の都合があるのか困惑した顔の実行委員がいた。
構うものか。SOS団に常識は通用しねえ!
俺たちはもう一度、ライトに照らされたステージに向かう
ハルヒ「仕方ないからもう一曲だけよ!ちゃんと聞きなさい!」
『乾いた~♪心で駆け~ぬける~♪ごめんね何も言えなくて~♪痛みを~…』
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:08:58.64:mh2KqVP10
大盛況に終わった北高祭SOS団ライブ。
次の目標は大学受験である。SOS団では文化祭翌日から部室でも勉強が行われるようになった。
なんというか…非常に普通の部活らしいのだが…
まあ、そんなことも言っていられない。部室でも勉強するようになったのは俺にとっても幸運だった。
何しろ目の前に再び京大プレ模試が迫っているのだ。
もう残り少ないプレ模試なのだ。そろそろ結果がほしい。
落葉樹の木の葉が落ちる季節がやってきている。受験までもう時間があまり残されていない。
そういえば、最初は京大志望はハルヒをごまかすためのパフォーマンスだと思っていたが…
今では、本当に京大に行きたいと思うようになっていた
これだけ勉強しているんだ。報われたっていいだろう。
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:10:21.05:5qehNlGg0
そういうわけで、11月の中頃と末に京大プレ模試とセンター模試が行われた。
その結果は以下のとおりである。
センター模試
国語 175/200
英語 160/200
数学 135/200
世界史 90/100
現社 62/100
生物 63/100
合計 687/900
京大プレ模試
国語 59/150
英語 60/150
数学 32/100
日本史 74/100
合計 225/500
京都大学文学部人文学科 D判定
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:10:50.75:mh2KqVP10
自分で点数を見てみてもなにか間違っているのではないかと思った。
センター模試でも七割を超え、京大プレ模試ではとうとうE判定を抜けだした。
ハルヒ「へえ、やるじゃない。やっとD判定になったのね」
キョン「ああ…そうみたいだな」
ハルヒ「EとDでは天地ほどの差があるもの。よかったじゃない」
キョン「まあ、俺としても感慨はひとしおだが、そんなに違うものなのか?」
ハルヒ「もちろんよ!いい、E判定に底はないの。幼稚園児が受けたって、高校生が受けたって、点が取れなければE判定なのよ」
ハルヒ「D判定ということは、その最下層から抜けだしたってことなんだから」
キョン「そうなのか」
ハルヒ「そうよ!だから、もっと胸をはりなさい!」
171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:12:27.93:5qehNlGg0
俺がD判定をとったらしいことはハルヒの声が大きかったせいだろうが、昼休みには国木田と谷口も知っていた
国木田「キョンもすごい伸び方だよね。半年前までは谷口と同じくらいだったのに」
谷口「おい、そりゃどういうことだ」
キョン「言葉通りの意味だ。谷口よ、お前結構やばいんじゃないのか?」
谷口「心配するな。と、言いたいところだがな。俺も最近は本腰いれてやってるぜ。国木田に教えてもらってるんだ」
キョン「そういえば、国木田は志望校決めたのか?」
国木田「そうだね。僕は神戸大にしたよ」
谷口「こいつ、朝比奈さんのあとを追ってるんじゃないのか?」
キョン(多分、おっかけてるのは朝比奈さんじゃない方だろうな…)
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:12:33.94:mh2KqVP10
ちなみに、このプレ模試でハルヒB判定、古泉B判定、長門A判定と特に変わったところはなかった。
まあ、模試の結果に一喜一憂してもいられない。
教室で、部室で、自宅で、たまに長門の家や図書館なんかでも勉強したりして俺達は二学期を終えようとしていた。
しばらくただの勉強集団となっていたSOS団だが、年越しには初詣に行くことになっていた。
ハルヒ「……」
古泉「……」
長門「……」
部室には沈黙が占めるようになってきており、これがいわゆる受験前のピリピリしたムードという奴であろう
かくいう俺も緊張が徐々に高まっていた
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:14:31.52:5qehNlGg0
冬休みも夏休み同様、なぜか俺の家での勉強会が連日連夜開かれていた。
ハルヒ「まあ、英語はこのくらい書けるようになれば現段階では十分ね」
キョン「なあ、ハルヒ。お前の渡してきた日本語だが、もともとのがずいぶんと変じゃないか?」
ハルヒ「変ってなにが?」
キョン「いや、この文章だよ」ペラッ
『騙すという行為自体、僕たちには理解出来ない』
『認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は他者を憎悪するんだよね』
『まったく、わけがわからないよ』
キョン「訳がわからないのはこっちだ。なんだこの悪徳商法のセールスマンみたいなセリフは!?」
ハルヒ「いやー、京大ならこのくらい変な文章が出てもおかしくないんじゃない?それに、そこそこうまく英訳してたじゃない」
キョン「他にも、エントロピーってなんだよ?注釈いれりゃいいってもんじゃねーぞ」
ハルヒ「それの訳は完璧だったわよ。別にいいじゃない」
キョン「…いいのか?これで」
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:15:29.19:mh2KqVP10
キョン「古泉、今大丈夫か?」
古泉「なんでしょう?」
キョン「数学の問題なんだが、なんか答えみてもよくわからんのがあってな」
古泉「ほう…これは数Ⅲの範囲が含まれているようですね」
キョン「数Ⅲ?これ文系の問題だぞ」
古泉「京大は文系の問題でも数Ⅲのある範囲はでたことがありますよ。たしか…微積のグラフの回転体の体積を求める問題でしたっけ?」
キョン「初耳だぞ…そんなこと」
ハルヒ「大丈夫よ。私の勘では今年は出ないわ。去年出てたから」
キョン「お前の勘かよ!?」
177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:16:40.86:5qehNlGg0
長門「……」クイクイ
キョン「ん?どうした?」
長門「ここが理解不能」
キョン「国語か?どうわからないんだ?」
長門「登場人物の心情を予想して答えるという問題。そこに至る過程が不明」
キョン「なになに…ああ、これなら一度解いたことがあるな」
キョン「要するに、この女子生徒が主人公に恋をするまでの過程を理由を述べて答えろってことだろ」
キョン「陸上の大会直前に怪我をした、この女子はクラスで嫌われている主人公にシューズを渡されて励まされるから…えーっと、その主人公の人間性を垣間見たとか、落ち込んでいたときに優しい言葉をかけられたからとか、先輩のイビリで落ち込んでいたからとか…」
キョン「まあ、その過程を字数を考えて理路整然と答えればいいんじゃないか?」
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:16:48.96:mh2KqVP10
長門「違う」
キョン「?」
長門「この女子生徒は最後まで主人公に対して辛辣な態度をとっていた。一度、偶然転びそうになって結果的にキスしてしまったが、最後まで恋をしているとみられる表現はない」
キョン「ああ、たしかにさいごまでそんな感じだな。この場合は口先では憎まれ口を叩いているけど、内心惹かれてるってことを予想しろってことだ」
キョン「まあ、俗な言葉を使えばツンデレってやつだな」
キョン「まあ、予想問題でツンデレの生徒なんて出すなよな、とは思うが…実在しないだろそんな女子」
長門「そう?」
キョン「ああ、ツンデレなんてのはフィクションの中のセカイの話だけだ。俺はお目にかかったことはないね」
古泉(この人、わざとやってるんでしょうか…)
179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:17:54.09:LnbL0M1/0
そして、大晦日の夜。
キョン妹「みんな~。ママが年越しそばができたから食べにおいでーって」
ハルヒ「もうそんな時間だったのね。じゃあそばをいただいて、その後に初詣に行きましょ」
キョン「そうだな。じゃあ、下に行こうぜ」
トタトタトタ
ママキョン「みんなお疲れ様。蕎麦作ったから食べていきなさい」
古泉「ありがとうございます、いつも夜遅くまでお邪魔しているのにごちそうにまでなって」
ママキョン「いいのよ、有希ちゃんの食べっぷりは見てて気持いいもの。さ、ハルヒちゃんも古泉くんも座って」
181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:18:58.43:mh2KqVP10
一同「いただきまーす」
パパキョン「しかし、時間が過ぎるのは早いものだな。ついこないだまで家庭訪問だと思っていたのに…」
ママキョン「本当にね。まさかキョンがここまで勉強するものとは思っていなかったわ。これもみんなのおかげよ」
ハルヒ「これも団長の努めだもの。キョン一人で受験させてたらいったいどうなるかわかったものじゃないもの」
キョン「言いすぎだ。それじゃまるで俺が能なしみたいじゃないか」
ハルヒ「そこまでは言ってないわよ。一応、やればできる人間だってところまでは認めてあげてるんだから」
キョン「本当に上から目線だな」
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:20:54.64:5qehNlGg0
年越しそばを食べ終えて近くの神社に向かう頃にはもう年は開けていたようだ
意外なことに参詣客はまばらですぐに賽銭箱の前にたどり着いた
ハルヒ「さあ、今年一年の野望を叶えてもらうのよ!」
キョン「野望て…、ほらよ」ジャラジャラ、パンパン
キョン(やっぱり京大合格だよな、ここまで来たら)
時は1月1日午前1時。第1関門のセンター試験がすぐそこまで近づいてきていた。
186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:21:18.76:mh2KqVP10
残りの冬休みも俺の家で受験勉強をして、あっというまに三学期の開幕である。
といっても三学期は自由登校であり、課外も午前中までだ。
SOS団は文芸部室に篭ってセンター試験に向けて最後の追い込みをかけた
そんな日々もあっという間に過ぎる。三学期が始まればセンターまでは一週間しか無いのだ。
センター試験前日。自宅から通える距離にある会場の下見に、四人でむかった。
ハルヒ「いよいよ明日ね。まあ、センター試験くらいちゃちゃっとクリアーしないとね」
ハルヒ「受験票と書く物さえ忘れなければ大丈夫よ」
キョン「まあ、それだけ持ってくるというわけにもいかんがな」
ハルヒ「そんなことわかってるわよ。カイロとか飲み物とか弁当とかもね」
キョン「あと当分の多いお菓子とかはどうだ?」
ハルヒ「チョコレートは個人的にオススメできないわ。歯にくっついたら面倒よ。同じ理由でキャラメルも却下」
ハルヒ「それよりも、眠気覚ましのガムとかのほうがいいわ」
188:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:23:00.83:5qehNlGg0
キョン「他にはなにかいるものあるか?」
古泉「そうですね。好みによりますが音楽プレーヤーは重宝しますよ」
キョン「平常心を保つためか?」
古泉「それもありますが、耳栓替わりです。周りの生徒は北高生だけではありませんので、話し声が耳障りな場合もあります」
キョン「なるほどね」
長門「お守り」
キョン「この前に神社で買ったものか?もちろん忘れないつもりだが、長門が言うと意外だな」
長門「そうでもない」
189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:23:10.05:mh2KqVP10
ハルヒ「じゃあ、明日は早めに来るのよ。特にキョン!」
キョン「わかってるよ。試験30分まえくらいか?」
ハルヒ「遅いわよ!電車が脱線しても間に合うくらいの余裕をもって家をでること!試験1時間前くらいには来ておくのよ!」
キョン「いくらなんでも早すぎないか?」
ハルヒ「そのくらい早いほうが人が少なくていいの。どうせ会場じゃあいろんな業者がティッシュやらチラシやら配り始めるんだから。煩わしくないうちに来ておいたほうがいいわ」
キョン「そうか…わかったよ」
ハルヒ「じゃあ、また明日ね。今日は早く寝るのよ!前日にちょっとやったくらいじゃ大して変わらないんだから」
キョン「ああ、また明日な」
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:25:15.69:5qehNlGg0
明けて翌日。
午前五時半に目が覚めた俺は、ハルヒの言いつけ通り大幅な余裕を持って家をでた。
そして、受験生もまだほとんど乗っていない電車に乗り、会場へ向かう。
なるほど。会場前の道はまだ人もまばらで、進学校の教師や生徒がいるのみである。
昨日、3人と別れた場所にやってくると既に全員、そろっていた。
ハルヒ「遅い!罰金!」
キョン「いや、今日に限っては十分すぎるほどに早いだろうが。お前たちなんでそんなに早いんだよ」
古泉「といっても、今日は我々も五分ほど前に着いたんですよ」
キョン「なんだそうだったのか」
ハルヒ「さっさと自分の受験番号の教室を見つけてきなさい」
キョン「ああ、ちょっとまってろ」トテトテトテ
192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:25:46.39:mh2KqVP10
キョン「本名のアイウエオ順か…さて、俺の教室はここだな、一旦戻るか。ん?あれは…」
キョン「岡部先生ー」
岡部「おお、キョンか」
キョン「どうしたんですか」
岡部「どうしたもこうしたも、一応俺も担任だからな、何かあるといけないから来てるんだよ」
岡部「まあ、なんだ今日は頑張れよ。ほとんど心配はしていないんだがな」
キョン「俺としては結構不安もありますけどね…」
岡部「気楽に、とは言わないがあまり緊張せずに受けてこいよ。今のお前ならセンター試験くらいなら大丈夫だ」
キョン「はあ、ありがとうございます」
岡部「それよりも、谷口が心配でな。あいつ見てないか?」
キョン「いえ、今日はまだあってませんけど…」
岡部「そうか、まあ俺は入り口の辺りで探してみるか。じゃあな」
194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:27:07.53:mh2KqVP10
キョン「担任教諭も来るんだな。まあ、谷口が心配なのは同感だが、人の心配ばかりしていられないしな…」トテトテトテ
ハルヒ「教室は見つかった?」
キョン「ああ、どうやら全員別々の教室らしいな」
長門「五十音順では全員バラバラだから仕方ない」
古泉「本名不詳の方もいますしね」
キョン「なにか言ったか?」
古泉「いえ、なにも」
ハルヒ「じゃあさっそく教室に行きましょ。教室の温度に体を慣らしておくことも大切だわ」
195:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:27:22.14:5qehNlGg0
各々の教室に入り軽く復讐などしていると、一時間なんてあっという間のようだ。
試験官が入ってきて注意事項の説明の後、問題用紙が配布された。
……
休み時間にトイレに行ったりはしたが、周りに知り合いもおらずほとんどの時間を席について過ごしていると、あっという間に一日目は終了した。
ここで、朝ハルヒに言われた注意事項を思い出していた
ハルヒ「いい?今日音楽プレーヤーを持ってるなら試験終わったらすぐに、耳に突っ込みなさい」
ハルヒ「一日目が終わってすぐに答え合わせをするなんて愚の骨頂だわ。聞こえないようにしときなさい。マイナスにしかならないから」
ハルヒ「終わったことなんて振り返らずに、常に前だけをみていないといけないのよ!」
201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:31:57.74:5qehNlGg0
まあ、ハルヒの言っていたことには一理ある。というか受験関連のアドバイスに関してはあいつは至極まっとうなのだ。
そういうわけで俺はプレーヤーを再生して周りの声が耳に入らないようにしていた。
エイゴナンカシテタヨネ
コクゴノサイゴノコタエハ4ダロ
ネエソコノエーランクマイナーノキミチョットコノアトオチャシナイ?
キョウカノトコロマークシタッケ
ボクトケイヤクシテマホウショウジョニナッテヨ
リスニングキコエニクカッタナ
とまぁ、こういった雑音が聞こえないのは確かに良いことであろう。
すぐに明日の教科に意識を切り替えなければいけない。
ハルヒたちと帰る時も明日の教科の予想などをして過ごしていた。
205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:34:08.00:5qehNlGg0
翌日。同じように集まって教室に向かい、同じように試験を受ける。
文系の三人は理系の古泉よりも終わるのが早いのだが、まあ、先に帰るのも可哀想なので待っておいてやることにした。
ハルヒ「さて、明日の新聞で答え合わせをするだけね」
キョン「まあ、そうだな。手応えはどうだ?」
ハルヒ「そうね。簡単すぎて手応えがないくらいね」
長門「心配は無用」
まぁ、この二人、そして古泉も大丈夫だろう。問題になるのは俺くらいなものだ。
二次試験の勉強をしつつ待っていると、全教科を受けて古泉が帰ってきたのは辺りが暗くなってきた頃であった。
キョン「よう、古泉どうだった?」
古泉「どうでしょうね。取りこぼしは無いと思うのですが」
いつもの微笑で答えるが、まあこの様子なら大丈夫なのだろう。
ということは問題は俺だけか…。
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:34:18.35:mh2KqVP10
そして、翌日。
今日は学校への登校義務が生じている。センター試験の答え合わせはクラスで行われるためだ。
まあ、焦らしていても仕方ない。センターの試験は以下のとおりであった。
国語 182/200
英語 170/200
数学 164/200
世界史 96/100
現社 78/100
生物 82/100
合計 770/900
つまり、京大のボーダーを超えて二次試験を受けられることがほぼ確実なものとなったということだ。
207: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/07/03(日) 01:35:51.68:+rIs7SLA0
谷口「おいキョン。おまえどんな魔法を使ったんだ?」
キョン「なんのことだ?」
谷口「お前が国木田より点が高いなんて信じられん。驚天動地だ」
キョン「いきなり人を捕まえておいて失礼な事を言うやつだな。そういうお前は何点くらいだったんだ?」
谷口「まあ、六割前後…ってとこか。知り合いからもらったルーレット付き六角鉛筆でだいぶ稼げたからな」
キョン「出願はどうするんだ?」
谷口「まあ、愛媛大学、高知大学あたりだろうな。まさか四国に行くことになるとは…」
キョン「四国の人に謝ってこい。四国だってお前を受け入れたいわけじゃないだろうよ」
209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:36:21.26:mh2KqVP10
岡部「おい、キョン」
キョン「ん?じゃあ、谷口また後でな。なんでしょう」
岡部「出願だが、どうする?」
キョン「どうとは?」
岡部「前期は京都だろ。中期後期をどうするのか。ってことだよ」
キョン「この前出しておいたところで行こうと思うんですが」
岡部「中期都留文、後期岡山か?まあ、後期で神戸あたりでもいいんだろうが安全策でいくか」
キョン「はい。前期で終わればいいんですけどね」
岡部「まあ、前期受かってても中期の試験はあるからな。じゃあこれでいいんだな。願書は早く取り寄せろよ」
210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:37:29.21:mh2KqVP10
ちなみに、SOS団の他のメンバーの点数も言っておこう。
ハルヒ 836/900
長門 900/900
古泉 829/900
…はっきり言おう、化物か?東大でもA判定が出るんじゃないかという点数ばかりだ。
まったく、俺の肩身が狭い。
その後も、残された僅かな時間を勉強に費やした。
一ヶ月なんてもうあっという間だ。
まるで受験生とそれ以外の人間では時間の体感速度がぜんぜん違うのではないだろうか?
俺が見ていない間に時計の針は通常の何倍ものスピードで回っているのではないかという疑問さえ生じる。
この間に全宇宙を揺るがすような大事件が発生していたら発狂か過労死していた自信さえあるね。
まあ、何事もなく時間は進む…
211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:38:13.40:5qehNlGg0
そして、いよいよ二次試験前日である。
俺達SOS団は全員同じビジネスホテルに泊まることとなった。
とりあえず、ここでも会場の下見に行っておくことにした。
ハルヒ「へえ、やっぱり大学って広いのね」
キョン「北高と比べるのは却って失礼ってもんだな。文学部の受験会場はここだな。中には入れないか…」
ハルヒ「まあ、そりゃそうよね。次は古泉くんの会場も見ておきましょ」
キョン「しかし、結構人がいるんだな。みんな聡明そうに見えるぜ」
ハルヒ「全員そんなものよ。あんたのアホ面でも他の人から見れば賢そうに見えてるかもしれないわよ」
キョン「アホ面て…」
会場を見てまわるのにさほど時間は必要ではなかった。
すぐにホテルに帰り、明日に向けて少しでも勉強である。
センター試験の時同様、早めに寝て、早めに出発である。
212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:38:58.64:mh2KqVP10
ホテルの自室で準備を整えていると、携帯の着信音が鳴った。
見てみると谷口、国木田両名からのメールであった。
国木田『いよいよ今日だね。キョンも頑張って』
谷口『今日は頑張れよ。京都に受かったら京美人の女の子紹介してくれ』
持つべきものは友である。二人に激励のメールを返信しておいた。まあ谷口にはみかん美人を見つけて紹介してもらうことにしよう
213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:40:18.92:5qehNlGg0
4人で連れ立って大学に向かう。俺は少なからず緊張していた。当然だ。
大学前には様々なサークルの勧誘や看板があり、多くの受験生の波と混ざって大混乱の様相であった。
これでも早く出発したつもりだったのだが。
ハルヒ「やっぱりみんな早いのね。こんなに混んでいるとは思ってもいなかったわ」
古泉「明日はもう少し早く出たほうがいいですかね」
人ごみに押されつつ、大学入口で理系の古泉とは別れ、俺とハルヒ、長門は文学部の受験会場に向かった。
ハルヒ「ここまで来ると、だいぶ人も少ないのね」
キョン「そもそも、サークルや下宿の勧誘に混じってなんで予備校も宣伝してるんだ?いくらなんでも無神経だろ」
ハルヒ「そのくらい商魂たくましくないとやっていけない業界なのよ」
214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:40:25.80:mh2KqVP10
ちなみに、今回はハルヒ、長門とも同じ教室での受験である。
同時に願書を提出したためであろう、受験番号は3人続きである。俺が76、ハルヒが77、長門が78であった。
長机の両端に受験番号が貼ってあり、そこが自分の席である。
すでに教室の半分ほどは埋まっており参考書などをめくっている。
俺達も席につき、最後の抵抗を見せることとした。
ほどなく試験官が登場。
携帯電話の電源を切るように言われ、その他もろもろの注意事項を受けてまずは国語の試験からである。
216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:42:44.36:5qehNlGg0
一時間目・国語
キョン(さて、まずは評論っと…何々…時間という概念について?)
キョン(ふふ、おそらく受験生で唯一の時間遡行を経験したであろう俺に時間について答えさせるなど愚の骨頂…)カキカキ
キョン(小説は…なるほど、ファミレスでバイトしている高校生二人の恋物語ね…)
キョン(……男性恐怖症の女子がミニコンの男子をボコボコにする…って、これはいわゆるボコデレ?長門とやったとこじゃないか)
キョン(小説は例年に比べるとかなり簡単だったな。古文は…)カキカキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(まあ、こんなもんだろ。滑り出しは順調だな)
221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:46:27.32:BJoqfmbN0
二時間目・英語
キョン(まずは、英作文からだな。えーっとまずは会話形式の作文か
『騙してたのね』
『僕はヤクルトレディになってくれってきちんとお願いしたはずだよ』
『実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど』
『どうして言わなかったのよ』
『聞かれなかったからさ。知らなければ知らないままで何の不都合もないからね』
…なんだこの既視感は。ハルヒの例文に出てきた悪徳セールスマンにそっくりじゃないか)
キョン(えーっと、もうひとつは…こっちも会話形式?珍しいなんてものじゃないな。京大が両方共会話形式なんて
『ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を!英雄がやってくるまでの場つなぎじゃねえ!
主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ!他の何者でもなく!他の何物でもなく!
テメエのその手で、たった一人の女の子を助けてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!
ずっとずっと主人公になりたかったんだろ!絵本みてえに映画みてえに、 命を賭けてたった一人の女の子を守る、大道芸人になりたかったんだろ!
だったらそれは全然終わってねえ!! 始まってすらいねえ!! ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!
手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、ジャグラー!』
長っ!?なんだこの説教臭い文章は…会話というかしゃべり倒してるだけじゃないか。さて長文…
キョン(さて、長文長文…)カキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(疲れたが、とりあえず全部答えきったぞ…まぁ一日目はこんなもんだろ…)
223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:47:50.44:mh2KqVP10
ハルヒ「さあ、今日のことは忘れて明日の準備よ!」
キョン「明日は数学と歴史だな…。国語と英語を並べて来るってな」
古泉「そちらの国語はどんなでした?」
キョン「時間の概念とボコデレの話だよ。そっちは?」
古泉「神はいるのかどうかについての文章でしたよ。小説は高校の近くのアパートに住む女子高生4人の話でした」
キョン「なんか、そっちのほうがおもしろそうだな」
古泉「いえいえ大変でしたよ…」
224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:48:24.25:BJoqfmbN0
ハルヒ「じゃ、また明日ね。おやすみ~」
キョン「ああ」
ビジネスホテルに来たときまで今までのように俺の部屋で勉強していたのである。
惰性なんだろうな。まあ、いつもと違う環境だからペースメーカーがいてくれるのはありがたい。
明日でいよいよ京大受験は終了となる。受験は続くが一段落だ…
などと考えるまもなく、個体の水銀が泥に沈むように深く眠っていった
228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:51:29.57:yM7zT2Vh0
翌朝。朝早いのに目覚めは良好だ。
ホテルのレストランでバイキング形式の朝食をとり、地下鉄にのって大学に向かう。
古泉と別れ、昨日と同じ席に着く。昨日ほどの緊張はない。
ハルヒ「まあ、今日で最後だからね。頑張っていくわよ」
言われなくたってそのつもりだ。後、二教科で京大受験は終了だからな。
長かった受験もこれで一段落なのだ。
大学前で古泉と別れる。
古泉「では、僕はこちらなので…。頑張ってください」
試験開始直前。長門から声をかけられる
長門「あなたなら大丈夫。…頑張って」
真後ろの席のハルヒは特に激励の声援はなかったがそれでもいい。
なにしろ8ヶ月ほぼ毎日勉強を教えてもらってきたのだ。十分だ。
そして、二日目が始まる…。
237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:57:37.94:5qehNlGg0
一時間目・数学
キョン(最初に5問全部見て解けそうなものから…だったな…)
キョン(本当に回転体の体積は出ていないな。じゃあ…この証明とかなら解けそうだ)
……
キョン(……おいおい…5問中4問が最後まで解けたぞ。計算ミスはないはずだし…)
キョン(まさかの4完!?いや、落ち着け。5問目を解くのだ…)カキカキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(5問目の半分くらいまで解けたぞ…おいおい、今年の数学は易化しすぎだろ…)
238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:02:39.65:5qehNlGg0
二時間目・日本史
キョン(あとは日本史のみか…)
キョン(ここは…鶯谷…豊郷…白川郷…箱根…)
キョン(今年の地名は簡単だな。さて、大問3は近現代史か)
キョン(なになに、ゼロ年代のサブカル文化に大きく寄与した…ナントカカントカ…フラクタルの監督は誰か?)
キョン(いやいや、なんだよこの問題…でもどこかで聞き覚えのある…)
キョン(えーい、空白はいかんな。わからんときはヤマ勘でも…?)
キョン(そうか、山本寛だな。なるほどヤマカンで思い出したのか。ラッキーだな)カキカキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(よし、記述問題も全部埋められたな。いい感触だ)
243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:06:38.07:5qehNlGg0
キョン「よし、終わったな」
ハルヒ「そうね。まあ、少し気を抜くくらい許してあげるわ」
キョン「ほう、珍しいな」
ハルヒ「京大を受けられるくらいにはなったんだから中期後期も大丈夫でしょ」
ハルヒ「さすがに疲れたわ。早く帰りましょ」
キョン「ああ、そうだな」
持てる力の全部は出し切った。すべての教科で満足のいく回答だ。
長きに渡る受験勉強が思い出されるが、俺もハルヒ同様、疲れていた。とっとと帰って眠るに限る。
京都から兵庫・西宮まですぐに帰り、家に着くと眠ってしまった。
よほど気が張っていたのか、長門や古泉との会話も覚えていない
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:11:07.90:5qehNlGg0
その後は、中期の小論文、後期の科目の勉強をしていたのだが、京大の合否を待っている間の時間はあっという間に過ぎて言った。
都留文科大学の中期試験は地方受験であったし、小論文のテーマは
「友達が少ないことを自負する人間の集まりは友達でないのか?」
という比較的簡単なものであった。おそらく大丈夫だろう。
ハルヒや古泉、長門も一応、後期試験はあるのだが、中期試験はうけていない。
古泉はどこかの私立を一つ滑り止めで受けたらしいのだが、まあ、古泉も京都は大丈夫だと思う。
中期試験の翌々日が京都大学の合格発表だった。
文芸部室のパソコンで全員で確認しようということとなり、その日を迎える
245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:14:09.11:5qehNlGg0
3月中頃の水曜日。正午十二時が京都大学の合格発表であった。
ハルヒ「さて、じゃあそろそろね。アクセスするわよ」
ハルヒ「そういえば、文学部と理学部どっちからにする?」
古泉「では、僕の方からでもいいですか?」
ハルヒ「そうね。じゃあ、先に古泉くんのほうから見ましょう」
ハルヒ「何番だっけ?」
古泉「79番です」
ハルヒ「じゃあ、見るわよ」カチッ
246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:14:39.78:Vs4qvDHEi
…
…
…
65
66
68
70
71
72
75
79
82
83
84
89
…
…
ハルヒ「あったわよ!古泉くん!」
古泉「いやあ、本当ですね。良かったです」
感動の薄い奴だな。まあ、古泉なら大丈夫だろうとは思っていたけどな。
まあおめでとう、古泉。
ハルヒ「じゃあ、次文学部ね」カチッ
251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:16:45.21:LnbL0M1/0
憎いことに文芸部室の回線はあのコンピ研の部長が整備してくれていたおかげで非常に早いのだ。
あっというまに数字が画面を覆う
………
………
29
35
36
37
39
………
………
思えば、ハルヒが俺の進路希望調査票を書き換えなければ、こんなことにならなかったんだな
………
………
41
46
52
56
57
………
………
長くて辛かったがそれでも今はそれで良かったと素直に思える自分がいる
…、ありがとよ。ハルヒ。
259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:21:42.23:lItITBP90
………
………
61
68
71
72
73
74
75
77
78
79
81
………
………
ハルヒ「…え?」
長門「……」
古泉「そんな…」
キョン「……」
ここで俺の記憶は一旦途切れることとなる
そうだな、目の前が真っ暗になるってことが本当に起きるとは思わなかったな
262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:23:32.21:5y6SVln40
その後のことはあまり覚えていない
古泉曰く、普通に振舞っていたものの俺から薄ら寒いオーラを感じたということだ。
その翌日、岡山に出発し、後期試験を受けた。
ハルヒは着いて来ると言ってくれたが俺が制した。
それは…なんというか、やめて欲しかったからな。
集中力が切れた状態で後期試験を受けて、結果を待つ。
岡部や谷口の心配げな声も俺の聴覚器官を素通りしていった。
なんとなくぼーっと夕食を食べていたときのことだ。
ママキョン「ねえ、キョン。なんならもう一年、やってもいいのよ」
キョン「いや、いいよ。まだ中期と後期の試験結果も返ってきてないんだから」
パパキョン「家計に気遣っているのなら、そんなことは気にしなくてもいいんだぞ」
キョン「いや、本当にいいって…、じゃあ、ご馳走様」
287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:31:09.16:5qehNlGg0
パパキョン「大丈夫か、あいつ」
ママキョン「もし中期・後期がダメなら浪人はさせてあげましょ。あれじゃ…キョンが報われないわ…」
パパキョン「そうだな…あれだけ必死にやってたんだからな。それに比べて、このaicezukiという奴は…」
tv『…容疑者は仙台の予備校生で現在京都府警が事情聴取を進めております…』
tv『京都大学では、このカンニングによる威力業務妨害を視野にいれて立件を…』
tv『なお、このカンニング容疑者は合格点に達していなかったため、繰り上げ合格はないとのことです』
290: 忍法帖【Lv=29,xxxPT】 :2011/07/03(日) 02:32:28.45:qpcJWoa10
中期・後期の結果が返ってきた。
都留文科大学:合格
岡山大学:不合格
まあ、予想できていたことだ。
岡山に行ったときの精神状態を考えればな。あれで合格したほうが不思議なものだ。
なお、国木田は神戸大学に無事合格。谷口は愛媛大学に合格したらしい。
TVでは連日京大カンニングについて報道していたが、東北の震災以降、ぱったりと続報はなくなった。
浪人するか、それとも現役で山梨に行くか…思い悩んでいたところ
プルルルルルルル
着信を見るとハルヒであった。
300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:36:54.46:5qehNlGg0
ハルヒ「もしもし、キョン?」
キョン「おう、ハルヒか。どうした?」
ハルヒ「いや…別になんということはないんだけど…」
キョン「そうだな。まあ、俺はもう大丈夫だ。気にするなよ」
ハルヒ「でも…まさかキョンが…」
キョン「すまんな。ちょっと今立て込んでるんだ。あとでかけ直す」ガチャッ
やはり、しばらくは話していてもぎこちない。
アレだけ世話になっておきながら、自分でもひどい人間だとつくづく思う。
しかし、少しだけ許してくれ。僻地に行くか。もう一年するか…
その結論が出るまではな
306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:40:56.38:5qehNlGg0
…結論から言おう。
その電話の日に徹夜して思い悩んだ結果、俺は都留文への進学を決めた。
公立大学だし、そんなにわるいところでもない。
その旨を両親、岡部教諭にも伝えた。
両親は俺の意思を尊重してくれた。
岡部は浪人も勧めてくれたが俺の意思が固いことを知ったのだろう
岡部「頑張れよ。お前なら、何が起こっても大丈夫だ…。まあ、たまには顔見せに来い」
と言ってくれた。
谷口や国木田、そのほか多くのクラスメートが来年の身の振り方を考えていた頃…
俺もいろいろな準備に追われていた。
そんなある日、意外な人物が俺の前に現れる。
朝比奈さん(大)である
308:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:42:15.52:NWBFxbq70
朝比奈さん(大)「キョンくん、久しぶり」
キョン「朝比奈さん(大)!?どうしてここに?」
部屋の整理をしているといきなり目の前に現れたのだ。
朝比奈さん(大)「キョンくんに伝えることがあるんです。ううん、今すぐテレビをつけてもらえるかしら?」
キョン「テレビですか?…いいですけど…」ポチッ
tv『内閣は…法案を…自衛隊が…。では次のニュースです』
tv『今年の京都大学の二次試験での不正行為を行った学生についての続報です』
314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:44:53.68:/OFcbpJM0
tv『京都府警の取り調べに対し、容疑者は複数人での反抗を示唆。』
tv『京都大学とともに調べを進めると、数十人単位での犯行の可能性があるとのことです』
tv『これにより、合格者の中からも失格者が出る模様で、今日の午後…、えー、速報です。京都大学で会見が開かれている模様です』
画面が切り替わり、どこかの部屋で会見が行われているようだ
パシャパシャ
学長「えー、このたびの不正行為に関して、さきほど合格者の中からも不正行為を行ったものがいることが判明しました」
学長「現在、その総数は42人で、この者を失格とし、文学部の定員まで繰り上げて合格者を改めて発表することとなりました」
学長「このたびは……」
えーっと、つまりどういうことだ?
なぜ朝比奈さん(大)が?
朝比奈さん(大)「もう今言ってしまいますけれど、キョンくんは繰り上げ合格なんですよ」
320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:51:37.25:/OFcbpJM0
なんて言った?
一体、どういうことだ?
朝比奈さん(大)「今、これをキョンくんに伝えるのも既定事項なんです」
キョン「どういうことです?一体何がおこっていたんです?」
朝比奈さん(大)「キョンくんはこの時間平面を作り変えようとしている未来人を知っていますよね?」
俺が思い出したのは藤原と名乗った未来人だ
朝比奈さん(大)「ああいった、未来人はいくつもの派閥があるんです。」
朝比奈さん(大)「涼宮さんを殺すという物騒な方法をとらなくても、キョンくんの人生を狂わせてしまうことで時間平面を作り変えようとした人間もいたんです」
朝比奈さん(大)「その一派が今回、京大受験に潜り込んで、不正を行い、キョンくんが合格的内容にしたというわけです」
338:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:01:06.64:aPdwD0xtP
キョン「まってください。どうして俺なんです?それならハルヒを不合格に追いやったほうがいいんじゃ?」
朝比奈さん(大)「ふふ、涼宮さんは今回一番の成績で合格していますよ。
朝比奈さん(大)「220人もの未来人がこちらに来れば可能ですけど、それほどの勢力はなかったようですね」
キョン「えーっと、じゃあ、次の質問です。どうして急にわかったんですか?」
キョン「最初から試験に紛れさせなければ、なにも起きなかったんじゃないですか。これも未来の既定事項ってやつですか?」
朝比奈さん(大)「私にも理由は不明です。今回の反逆は実に狡猾でした」
朝比奈さん(大)「実際に京都大学にいた古泉くんも長門さんも気がつかなかったんですから」
朝比奈さん(大)「詳しいことは禁則ですが…、これもネタを明かしてしまうと涼宮さんの力ですよ」
キョン「ハルヒの?」
339:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:02:39.02:5qehNlGg0
朝比奈さん(大)「こちらの時間軸で涼宮さんから電話がかかってきたときがあったでしょ?」
キョン「ええ」
朝比奈さん(大)「そのときにどういう具合にか、反逆を企てたグループの存在が明らかになったんです」
朝比奈さん(大)「まぁ、これもわかるように伝えられないのだけれど」
朝比奈さん(大)「それでその人たちを未来人が始末したというわけです」
キョン「始末ですか?」
朝比奈さん(大)「まあ、未来に強制送還したんです。それでこちらの警察でも犯行がわかったんでしょう」
キョン「なんだかよくわかりませんね」
朝比奈さん(大)「そのあたりはご都合主義に考えていただければいいです」
朝比奈さん(大)「明日には合格の連絡が来ます。その後はキョンくんに任せます」
朝比奈さん(大)「じゃあ、こっちのわたしとももうしばらくよろしくね」
そう言うと朝比奈さん(大)はすぐに消えてしまった
ずいぶんと忙しい人なんだな…
342:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:05:25.27:5qehNlGg0
朝比奈さん(大)の言ったとおり、翌日には合格繰り上げの連絡が入った。
そのほうを受けて母親は感涙にむせぶこととなったし、連絡のはいった岡部教諭も似たような反応だった。
それよりも、俺はすぐさま連絡しなければならないやつがいる
プルルルルルルル
キョン「もしもし、ハルヒか?」
ハルヒ「キョン?どうしたのよ」
キョン「どうしたもこうしたもあるか。テレビ見てないのか?」
ハルヒ「いちいち見ちゃいないわよ。どうしたの?」
キョン「俺、京大に繰り上げ合格だ」
ハルヒ「…は?何ですって!?」
347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:09:05.40:5qehNlGg0
キョン「細かいことはいいんだよ。とにかくこれで俺も晴れて京大生だ」
ハルヒ「…本当なのね?」
キョン「ああ、間違いない」
ハルヒ「そう…」
キョン「なんだよ。不満か?」
ハルヒ「そんなわけないじゃない!!だって、信じられなくて…」
キョン「俺もまだ夢見心地だよ」
キョン「なあ、ハルヒ」
ハルヒ「何よ」
キョン「まあ、改めて言うがお前のおかげだよ。ありがとう」
ハルヒ「何よ急に改まって」
キョン「お前がいなけりゃ、今頃俺はぜんぜん違う道を歩いていただろうからな」
キョン「言いたいことは色々とあるが…まあ、今はありがとうとだけ言っておく」
348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:11:07.89:5qehNlGg0
ハルヒ「何よ急に…」
ハルヒ「まあ、私も言っておくわ」
ハルヒ「おめでとうキョン」
349: 忍法帖【Lv=29,xxxPT】 :2011/07/03(日) 03:12:33.46:qpcJWoa10
その後のことを少しだけ語ろう。
7月末。
ハルヒ「まったく、あの教授声が小さいのよ。マイクが全然拾ってないじゃない」
キョン「それよりも聞こえても全然わからんのだがな」
長門「それより今日の日替わりランチが売り切れる前に学食に」
古泉「長門さん、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
晴れて京大生としての生活を送っている俺だ。
授業は難しく、間近に控えたテストに戦々恐々としている
キョン「出席はギリギリ足りていると思うが…、テストが不安だな。単位落としそうだ」
ハルヒ「何よ?そんなにひどいの?」
ハルヒ「仕方ないわね。私が教えてあげる」
354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:15:26.93:FAD/1SmU0
今日の始業式。おそろしいことに三年連続で担任は岡部となり、またもや5組である。
相変わらずというか、やはりというか、メンバーはあまり変わっていない。
谷口も国木田もいるし、そして、ハルヒは俺の真後ろの席でふんぞり返っている。
新学期最初のホームルーム、岡部はいよいよ受験生になったんだからと、おそらく日本中の学生たちが同じような事を聞いているであろう文句を延々と語り、そのまま解散となった。
俺は惰性で文芸部室に向かう。
ただ…もう朝比奈さんのお茶が飲めないのは残念だがな。
コンコン
キョン「っと、もうノックする必要もないか…」
一抹のさみしさを覚えながら俺は部室のドアを開ける。
長門「…」
古泉「おや、今日は遅かったですね」
キョン「岡部の奴が時間無視して話しまくりやがってな」
古泉「涼宮さんは?」
キョン「あいつなら掃除当番だよ」
古泉「そうですか。どうです?今日は久しぶりに将棋でも」
キョン「いや…今日は遠慮しとく」
古泉の誘いを断ったのは単に気分が乗らなかったからだ。
非日常な出来事を満喫してきたこのSOS団の俺は、逆に進路という俗物的な出来事に弱いのかもしれない
古泉「どうしました?珍しくセンチメンタルな様子ですが」
キョン「珍しく、は余計だ」
俺にだって、漠然とした不安に駆りたてられることはあるんだよ。
お前みたいにいつもにこやかでいられるわけじゃない。
キョン「…、なぁ、お前たちは来年どうするんだ?」
古泉「来年…といいますと、進学についてですか?」
キョン「ああ」
古泉「そうですね…。まぁ、涼宮さんの進路によると思いますね」
キョン「お前も同じところに進学するってのか?」
古泉「おそらくは…そうなるかと思います」
キョン「長門は?お前もか」
長門「…情報統合思念体が自立進化のきっかけを見つけるまでは、涼宮ハルヒの観測を続ける。おそらく同じ」
キョン「…そうか…」
なるほど。おれの漠然とした不安の正体がやっとわかったぜ。
こいつらはハルヒの後を追って進学する。そうなると、俺は必然的に一人になるわけだ。
なぜかって?
そんなことわかりきっているじゃないか。
ハルヒの学力と俺の学力は月とすっぽんほどの違いがある。
同じ大学に進むことは…まぁ、不可能だ。
古泉「あなたはどうなんです?」
キョン「俺か?…さぁ、どうなるんだろうな?」
古泉「『機関』もですが…、まぁ、僕個人としてもあなたには涼宮さんの近くにいていただきたいのですがね。これからも」
キョン「無茶言うなよ」
その時、けたたましい音とともに部室のドアが開いた。
ハルヒ「お待たせ!いやー、掃除なんてチャッチャと終わらせるに限るわ!」
キョン「少しはドアを労わってやれよ。今年もそんな扱いしてたらそろそろ本当にぶっ壊れちまうぞ」
ハルヒ「別に大丈夫でしょ。壊れない程度には手加減してるわ」
こともなげに言うがな…ドアノブとかもうだいぶゆるくなってんだよ
ハルヒ「そういえば、あんたこれどうしたの?」
ハルヒが手に持ってヒラヒラさせているのは、今日岡部が配った進路志望調査票だった。
北高の生徒は大抵が進学するため、第三志望までかいてこいというものだった。
キョン「そんなもん、どこにやったかな…。」
まったく…忘れておきたいことをあっという間に思い出させてくれるやつだぜ。
ハルヒ「ちゃんとしなさいよ。こういう些末事もとっとと終わらせるに限るわよ」
キョン「けっこう重要なことだと思うぞ」
人に言えた義理ではないんだがな
キョン「そういえば…お前はどうするんだ。その志望票」
ハルヒ「私?わたしはこうよ!」
ハルヒが見せた志望票には以下のように書かれていた…
第一志望:京都大学
第二志望:
第三志望:
キョン「京都?京都大学ってあの京大か?」
ハルヒ「そこ以外にどこがあるのよ」
これは驚いた…もちろん、ハルヒなら東大とかMITとか書いていても不思議ではなかったのだが…
もっとも、これに驚いているのはおれだけではないようで…
古泉「京都ですか?」
古泉のこの質問の意図をおれは知っている。ハルヒの後を追わねばならないということは…古泉もこの瞬間京大志望になったということだ。無論、長門も。
古泉「意外ですね。てっきり、東京大学のほうかと思っていました」
ハルヒ「もちろん、日本一は東大ってわかってるわよ。でもね、京大のほうが変人多そうじゃない?」
全国の京大生に謝れ
ハルヒ「なんか、校風も一味変ってるし…東大って秀才はいるけど変人はあんまりいないイメージなのよね」
ハルヒ「ところで、古泉君は?」
古泉「…、いえ、僕もまだ決めていないんですよ」
ハルヒ「あら、そうなの?じゃあ、有希は?」
長門「…私も京都大学」
ハルヒ「有希も!?良かったわ。やっぱ一人だと張り合いがないしね」
さて、この会話に一番あせっているのは誰だろうな。
俺かもしれんし、古泉かもしれん。ハルヒの秀才振りは知っていたさ。しかし、京都か…。
朝比奈さんと同じ神戸大学じゃないかと思ってたんだがな。
まぁ、どっちにしろ俺には手が届かないのだが…
その後、いつものように、ただだらだらと過ごして解散となった。
家に帰ると、母親に塾へ入れと勧められたことは言うまでもないことだ
俺は、ベットに寝転びながら今日のことを思い出していた。
ハルヒ・長門は京都大学か。まぁ、長門なら大丈夫だろうし、ハルヒもきっとふつうに合格しそうだ。
古泉は…どうだろう?
今日の帰り道に話を聞いてみると
古泉「僕の一存では決められませんからね。『機関』で少々話し合ってきます」
キョン「てっきり、二つ返事でお前も京大に行くのかと思ったがな」
古泉「二つ返事で決められるほど簡単ではありませんよ」
キョン「まぁ…そうだが」
古泉「正直なところ、神戸、大阪くらいではないかと思っていたんです」
古泉「神戸なら朝比奈さんもいます。阪大でも関西圏ですし…」
キョン「おれからすれば、どこも手が届かないという意味では一緒だけどな」
古泉「京都と東京はやはり難易度が格段に違いますよ」
キョン「そんなもんかねえ」
古泉「あなたも京都大学を受けてみたらいかがです?僕としてはそうなると助かるのですが」
キョン「一年棒にふれってか?冗談はよしてくれ」
古泉「もちろん、本気ではありませんよ。僕と違ってあなたは普通の人間です。自分の進路くらい自分で決めるべきですよ」
古泉が結局どうしたのかはまだわからんが…、まぁ、明日にでも聞いてやるさ
それよりも自分の進路希望調査票をどうにかせねばなるまい
苦心した挙句、以下のようになった
第一志望:岡山大学
第二志望:三重大学
第三志望:高知大学
模試のたびに配られる偏差値一覧などから適当に引っ張ってきただけだ。
岡山大学なんて相当厳しそうだがな…
翌日。学校に登校すると、すでにハルヒは席に着いていた。
キョン「よう」
ハルヒ「今日も遅いのね」
キョン「朝の惰眠はぎりぎりまで楽しもうと決めてるんだよ」
ハルヒ「いい身分じゃない」
程なく担任の岡部がやってきて、朝のホームルームとなった
岡部「では、進路希望票を持ってきているものは前に持ってきてくれ」
一応、個人情報なので各人が教卓に提出、という運びになった。
だが、昨日の今日の事態である。まだ書いていないものも大勢いるし、提出している人数はさほど多くない。
まぁ、俺は珍しくすぐに出せる状態なので持っていこうとしたのだが
ハルヒ「ついでに持って行ってあげるわよ」
キョン「いいのか?」
ハルヒ「別に」
これは珍しいこともあったものだ。こいつがついでとはいえ俺をいたわってくれるとはな。せっかくなので頼むことにした
もちろん、これが間違いであることはすぐに判明する
放課後
古泉「今日はこれでもどうです?」
キョン「オセロか、いいだろう。何か賭けるか?」
古泉「そうですね。ジュースでどうです?」
キョン「よし、乗った」
こいつはこの手のゲームで俺に勝ったことがないくせにやけに強気だな。
かといって手があるようにも思えないし、へんなところで勝ち気な性格なのだろう。
試合も終盤、四つのうち三つの隅をとった俺はいったい何のジュースにしようかと自販機のメニューを思い出していた。のだが
岡部『3年5組のキョン。今すぐ職員室に来るように』
突然アナウンスで岡部に呼ばれたのだ。
古泉「珍しいですね。何かしでかしたんですか?」
キョン「ハルヒじゃあるまいし…」
担任まであだ名でいうのかよ
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:54:48.76:RnhTe/1k0もちろん、心当たりは全くない。恐る恐る職員室に入った俺はすぐに岡部の机に向かった。
岡部「おお、来たかキョン」
というか、さっきの放送でもキョンと呼んでいたが、教諭までもが生徒の本名を忘れてしまったのではなかろうか?
キョン「どうしました?」
岡部「どうしたもこうしたもあるか、お前今日の志望調査票」
キョン「ああ、あれですか。やっぱり岡山は高望みしすぎですかね」
岡部「岡山?お前の志望調査票はこれだろ」
不審に思って覗き込んだ志望調査票は以下のようになっていた
第一志望:京都大学
第二志望:三重大学
第三志望:高知大学
これはいったいどうしたことだ。と、思ったが…すぐに思考が追いついた。
どうせハルヒに違いない。あいつが珍しく持って行ってくれるなんて言ったのはこういうわけだな。よく見ると、消しゴムの後もある。
岡部「まぁ、もちろん無理だ、と決めつけるわけにはいかない。だがな…」
キョン「はぁ、すみません。もう一度よく考えてみます」
ハルヒの名前を出すと、厄介なことになりそうだったのですぐさま引き取ることにした。
岡部はまだ納得のいっていない様子だったのだが、そんなことはどうでもいい。ハルヒに直接問いただしてやる。
ハルヒww
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 22:59:35.34:RnhTe/1k0急いで、文芸部室に戻ったら、すでにハルヒも来ていた。
ハルヒ「どうしたの?遅かったじゃない」
キョン「遅かったにきまってるだろ。お前のせいで呼び出しくらってたんだからな」
俺は岡部から返してもらった志望調査票を突き出した。
キョン「いったいどういうつもりだ?」
ハルヒ「ああ、それ?あんたも京大目指しなさい」
キョン「は?」
まるで毎日のあいさつのように気軽に出てきた言葉に、場にいた全員が驚愕した。
場にいた全員というからにはもちろん、俺も古泉も、そして長門でさえだ。俺には分かる。
キョン「正気か?」
ハルヒ「ええ。いいじゃない。せっかく受けるんならそこそこいいところ受けなさいよ」
キョン「全国偏差値50程度の俺がか?冗談はよせよ。というか、人の進路で遊ぶな」
ハルヒ「別に遊んでいるつもりはないわよ」
このときのハルヒの目を見てわかった。信じがたいことに、どうやらこいつは本気のようだ。
ハルヒ「どうせあんたのことだから、適当に選んだんでしょ。偏差値見て適当なところに」
ハルヒ「こだわりがないんだったら上を目指したほうがいいと思わない?」
ハルヒ「そういうわけよ」
キョン「いったいどういうわけだよ」
と言いつつも…俺だって馬鹿じゃない。もう二年もハルヒとかかわってきたのだ。
こいつの行動パターンを考えるとこういうときは、無理にあらがってはいけない。
川を流れる枯葉のようにいったん流れに身を任せるのだ。
しばらくすれば、川岸に打ち上げられるだろう。
そういうことを考えた俺はとりあえず納得したふりをしてみる
キョン「まぁ、いってることは正しいのかもしれないけどな」
ハルヒ「でしょ?そういうわけだから、あんたも頑張るのよ」
そういうと、いつものようにネットサーフィンやらよからぬ考えごとに戻っていった
帰り道
古泉「で、どうなさるおつもりです?」
キョン「さっきのことか?あいつが飽きるまではつきあってやるさ。しばらくすると自分の言ったことがいかに無謀だったかわかるだろ」
古泉「涼宮さんとあなたが同じ大学に行くのは望ましいことではありますが…。まぁ、無理強いはできませんからね」
キョン「そういうお前はどうなんだよ。お前もか?」
古泉「実は悩んでいるんですよ。」
キョン「ほう、珍しいな」
古泉「『機関』からは自由にしろと…、まぁ、こんなことは異例ですが」
キョン「まあ、人生を左右することもあるからな。ハルヒにこだわり続けることもないさ」
そう言ってやったのだが、古泉は前方で長門と話している(というか一方的に話しかけている)ハルヒを見ていた。
ハルヒ、長門、古泉と別れた俺は程なく帰宅した。
さて、どうしたもんかなと俺は考えあぐねた。
ハルヒに抗わず、飽きさせる…。まぁ、俺の空っぽの脳みそで考えうる方法はひとつくらいなものだ。
適当に話を合わせて、しばらく放っておく。これに尽きるね。
きっとハルヒのことだ。すぐに別のことに気が向くだろう。
そう思って、翌日。俺は岡部に返されたそのままの状態で進路希望票を提出した。
岡部「おい…、変わってないじゃないか」
キョン「ええ、まぁ…」
岡部「はぁ…。わかったとりあえず受け取っておこう」
岡部教諭も二年も涼宮ハルヒを受け持つと多少のことでは動じなくなっているのだろうな。渋々ながら受け取ってくれた。
谷口「おい、キョン。お前どうした?」
キョン「何のことだ?」
谷口「進路だよ。大学。もう決めたのか?」
キョン「あー、まだだよ。そういうお前は?」
谷口「俺もだな。まぁ、親父が国公立じゃないと金は出さんとかいっててな」
キョン「ほう、大変だな」
谷口「まったくな」
その日もSOS団の活動は粛々と執り行なわれた。そして、いつも通り解散。
俺の目論見は思ったよりはやく成功を迎えるかもしれない。
ハルヒは昨日の話題など全く出さなかったし、もうすっかり忘れているかのようでもあった。
そんなことを夕食を終えて自室のベッドでうつらうつら考えていると、知らないうちに眠ってしまっていたようだ。
そんな俺の安眠を貪ったのは妹であった。
妹「キョンくーん。起っきてー」
キョン「ん…?なんだ。もう朝か?」
ハルヒ「だらけ過ぎよ!キョン!」
キョン「ハルヒ!?」
キョン「なんでここに?」
ハルヒ「なんでって、勉強を教えにきてあげたのよ」
キョン「え?」
ハルヒ「岡部に聞いたわよ。あんたも腹くくったみたいじゃない」
ハルヒ「まぁ、今のあんたじゃ厳しいだろうから、私が直々にコーチングしてあげようというわけよ」
ハルヒめ…、諦めていなかったのかよ。
それにしても、こんな時間に…、と思って時計を見るとまだ午後8時というところだった。
キョン「部室でやっても良かったんじゃないか?」
ハルヒ「SOS団の活動中に私事を持ち込んじゃダメよ。そのあたりのケジメはきちんと付けないとだめだわ」
キョン「はいはい…」
まぁ、昨日の今日で飽きるのはさすがに怪しまれるか…。
とりあえず、俺は妹を部屋から追い出した。
キョン「で、いったいどうするんだ?宿題でも教えてくれるってのか?」
ハルヒ「宿題?そんなもん後回しよ。とりあえず、今後の計画を立てることが先決じゃない」
キョン「まぁ、そうだな。」
ハルヒ「というわけで、一番最近の模試の結果見せなさい」
キョン「模試?ああ、二年の冬にあったやつか。どこにやったかな…」
俺は過去は振り返らないことにしている性分のため、模試の成績などを後生大事に取っておくということはしない。おそらく見つからないだろう。
と、思っていたのだが、探すと案外すぐに見つかってしまった。
キョン「ほらよ、これだ」
ハルヒ「どれどれ…」
ちなみに、模試の成績は以下の通りであった。
国語 52.9
英語 47.7
数学 46.7
理科 47.8
歴史 55.6
とまぁ、国語と歴史はなんとか全国のうちでも上半分にいるのだが、数学、英語、理科は俺の下より上にいるやつのほうが多いという結果であった。
ハルヒはもちろんご立腹だろうと思ったのだが…
ハルヒ「まぁ、こんなもんよね。安心しなさい。私がいればあっという間に偏差値なんて60越えよ」
キョン「60じゃ足りんだろう」
ハルヒ「もちろん最終的にはもっと上を目指してもらうんだけどね」
ハルヒ「それにしても、国語が偏差値50オーバーだとは思わなかったわ」
日ごろから訳のわからん与太話を、古泉、朝比奈さん(大)、長門から聞いているからな。知らんうちに日本語の理解力が上がったのかもしれん。
ハルヒ「当面は英語と数学ね」
キョン「理科はいいのか?生物だがこいつも半分より下だぞ」
ハルヒ「生物なんてセンター試験でしか使わないから大丈夫よ。二次試験で必要な教科を今のうちに重点的にやっておくのよ」
キョン「へぇ」
ハルヒ「あと、歴史ね。いまのところそこそこいい成績取れてるけど…。これってどっち?」
キョン「日本史だな」
ハルヒ「そう。じゃあ、二次試験で日本史ね」
キョン「待て待て。ということはまさか…」
ハルヒ「センターで世界史よ。問題ある?」
キョン「歴史を二科目か?」
ハルヒ「あたりまえじゃない。まあ、センターの世界史のほうは、これも早めにやっておいたほうがいいわね」
キョン「それで志望を変えたらどうするんだよ。一科目無駄になっちまうじゃないか」
ハルヒ「一応言っておくけど。今のうちからそんなこと考えてるとだめよ。何が何でも受けるところまで持って行くんだって気持ちじゃないと」
ハルヒ「それに、得た知識が無駄になることなんてないわ。血となり肉となりどこかで役に立つものよ」
キョン「わかったよ。で、どうすればいい?」
ハルヒ「英語はなんといっても単語ね。なんか単語帳持ってる?」
キョン「いや。生憎と参考書の類は一冊も持ってないな」
ハルヒ「あんたそれでも受験生?はぁ…しょうがないわね。あとで買いに行きましょ」
ハルヒ「一か月に…そうね、単語帳5周するぐらいの気持ちで行きなさい」
キョン「5周か?きついな…」
ハルヒ「そのくらいでへこたれない!だいたい単語帳なんて2000前後の単語があるけど一、二割はすでに知ってるものなんだから」
ハルヒ「まぁ、当面英語はそれよ。後は学校の授業で長文とかちゃんとやりなさい」
ハルヒ「次は数学ね。どうせ何も持ってないんでしょ」
キョン「ああ、さっき言ったとおりだ」
ハルヒ「学校で買った青チャートがあるでしょ」
キョン「青チャート?ああ、あの分厚いのか。机の上で埃を被っているが」
ハルヒ「ちょっと貸して…ってホントに折り目もついてないのね!」
キョン「まあ、一回も使ってないからな」
ハルヒ「これの、このあたり、例題の問題を一日10問ペースで解きなさい」
キョン「10問?」
ハルヒ「10問よ。ⅠAⅡB全部で600問くらいの例題があるから、二か月もあれば終わるでしょ」
ハルヒ「ただ解いていくだけじゃダメなのよ。間違った問題は翌日にもう一回解く!溶けるまで繰り返しなさい!週に一回は間違えた問題が解けるかどうか確認すること!」
ハルヒ「生物はさっき言ったとおり、まぁ、そこそこ真面目に授業聞いてれば問題ないわ。連休明けぐらいからセンターの過去問とかに手を出したらちょうどいいくらいよ」
ハルヒ「歴史は…日本史は大丈夫そうね。といっても京大レベルに達するにはもっと鍛錬が必要よ。一問一答形式の問題集を隅から隅までやることね。記述対策はまだいいわ」
ハルヒ「世界史のほうは、完全に独学ね」
キョン「独学か」
ハルヒ「まあ、心配しなくてもいいわ。わたしが気が向いたら教えてあげるから」
キョン「お前は何気に、人に教えるのがうまいからな」
ハルヒ「お世辞言っても何も出ないわよ!まあ、人に教えるのだって自分のためよ。情けは人の為ならずって言うじゃない!」
ハルヒ「まあ、こんなところね」
ハルヒはさも簡単なことのように言うのだが…。
勉強に耐性のないおれにとってこれはアンモニア入りのフラスコの口に直接鼻をかざすようなものではなかろうか
ハルヒ「まあ、大丈夫よ。なんといってもあたしがついてるんだから!」
キョン「そうだといいがな…」
まぁ、どっちにしろ勉強しないといけないというのは事実だ。京大を目指すというわけでなくともな。
ハルヒ「さて、じゃあさっそく買いに行くわよ!」
駅前の本屋 参考書コーナー
キョン「へえ、こんなにあるのか」
ハルヒ「受験産業はいくらでも儲けられるもの。いくらでも新しいのを出すわよ」
キョン「で…。いったいどれを買えばいいんだ?」
キョン「単語王、システム英単語、『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語がおもしろいほど身に着く本…。これだけあればどれがいいかわからんな…」
ハルヒ「とりあえず、王道が一番よ。はい、これ」
キョン「ん?ターゲット1900?」
ハルヒ「それと付属の単語カードも一緒に買っときなさい」
ハルヒ「単語帳なんてのは『どれ』より『やれ』っていうくらいなんだから」
ハルヒ「古文はこれね。『マドンナ古文単語230』」
キョン「他のは565とかだが、数は大丈夫なのか?」
ハルヒ「とりあえず、230で十分対応できるわ。知らない単語が出てきたらその都度覚えておけばいんだから」
キョン「なるほどね。世界史はどうするんだ?」
ハルヒ「世界史は…まぁ、これね。東進ブックスの『世界史B一問一答 完全版』」
ハルヒ「山川出版のも有名なんだけど…まあ、これもどれでもいいわ。日本史も東進ブックスのでいいわ」
ハルヒ「いい?とにかくなんでも早く始めるのが一番なんだから」
ハルヒ「参考書を選ぶのに悩む時間で勉強しなさい!」
駅前
ハルヒ「じゃあ、私はここで帰るわ。ちゃんとやるのよ」
キョン「わかってるよ。英単語は…一日200~300ってところか」
ハルヒ「一日で完全に覚えようとしなくてもいいわ。速いスピードで何周も単語帳を繰り返すのよ」
ハルヒ「完璧に覚えた英単語は除外していくの。そうすれば一周にかかる時間はもっと減るでしょ」
ハルヒ「そのために単語カードも買ったんだから」
ハルヒ「古文はちゃんと説明読んだほうがいいわよ。その参考書一語ごとに解説あるから」
ハルヒ「次の模試を楽しみにしてるわ。じゃあね」
キョン「ああ、また明日な」
キョン頑張れ
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/02(土) 23:38:51.22:RnhTe/1k0今日だけで出費は8000円弱だ。勉強の前にバイトを探さなくてはいけないかもしれない。
家に帰って、ハルヒに言われたように単語帳と単語カードをめくる。
なるほど。確かに、十個に一個くらいはすでに覚えているものもあるようだ。
それでも、300個弱の英単語に目を通すのに30分程度はかかった。
次に数学…例題10問だったけな?
青チャートのIAからスタートして最初の10個などは簡単なものだったのでさすがのおれも普通に終えることができた。
今日一日の勉強時間は一時間半程度…。こんなもんで大丈夫なのだろうか?という一抹の疑問を感じつつ、俺は眠りに就いた。
翌日。朝学校に向かっていると、珍しいことに古泉がいた。
キョン「よお、古泉。珍しいなこんな時間に」
古泉「ああ、おはようございます。いえ、少し夜更かしをしてしまいまして」
キョン「ん?何かあったのか?」
古泉「進路のことです。神戸か京都で悩んでいたのですよ。」
目の前で特進クラスのエリートが弱音を吐いているのをみると、自分のしていることがいかにばかばかしいことか実感できる。
キョン「俺もしばらくは京大志望ってことになってるみたいだからな。まあ、お前なら大丈夫なんじゃないか?」
古泉「あなたがですか?涼宮さんの意向も関係ありと考えても…いえ、それ以外にありませんね」
キョン「わかってんなら、いちいち言わんでもいい」
キョン「まあ、ハルヒが俺の学力に愕然とするか、飽きるまでの辛抱だよ。その時は俺の身の丈に合った志望に変えるさ」
古泉「もし、涼宮さんにその時が来なかったらどうするおつもりです?」
キョン「まさか…きっと来るさ」
キョン「そういうわけだ。あんまり深く悩むなよ」
古泉「ええ、そうですね。ありがとうございます」
その日の放課後。二年間にわたって身に着いた惰性はそうそう簡単に抜けることもなく、俺は今日も文芸部室に向かった。
すると、ハルヒも古泉もまだ来ていない様子で部室にいたのは長門のみであった。
キョン「よお。相変わらず早いな」
長門「……」
と、ふとここ数日気になっていたことを聞いてみた。
キョン「なあ、長門」
長門「…何?」
キョン「お前も京都大学を受験するのか?」
長門「おそらく…」
キョン「そうか」
まぁ、わかっていたことだし、こいつなら確実に安全だろう。
無理かもしれない、と悩むのは古泉が現代人で地球人だからである。
長門にそんな心配をするのはかえって失礼というものだ。
古泉「やあ、遅くなりました」
キョン「遅かったな。いったい何事だ?」
古泉「いえ、少々担任と話しておりまして」
キョン「というと?」
古泉「進路の件です。僕も可能な限り京都大学を目指すことにしました」
キョン「そうか。…ということはSOS団高三4人は全員京大を目指すことになっているわけか」
古泉「すでに、あなたと涼宮さんと長門さんが京都志望であることは職員室の話題の中心であるようです」
古泉「僕が言った時も『ああやっぱりな』みたいな感じでしたから」
キョン「SOS団はいよいよ何がしたいんだろうな…」
そもそも、俺達四人が全員京都に行ってしまったら朝比奈さんは神戸に一人…。
いや鶴屋さんも神戸大だから一人というわけではないが…。
それにしても、教師からみれば訳の分らん集団であることに拍車をかけてしまったようだな。
その後、ハルヒがやってきて、SOS団は通常業務に戻った。
ハルヒは団長席で何事かやっているし、長門はいつもの定位置で分厚い本を読んでいる。俺と古泉はボードゲームで対戦中だ。
たしかに、はたから見たら訳の分らん集団だよな。まったく。
ハルヒ「それじゃあ、今日もそろそろ解散にしましょ」
団長の一声で俺たちは解散し、帰路についた。
家に帰り、夕食をとり、ベッドに寝転び、そろそろハルヒに与えられた宿題をしようかと思っていた午後9時ごろ…
ピンポーン
キョン「ん?こんな時間に誰だ?」
ほどなくしてその正体は明らかになる。
ハルヒ「しっかりやってるかしら?」
キョン「ハルヒ!?なんだって今日も?」
ハルヒ「ちゃんとやってるか心配だったから来てあげたのよ。あんたのことだから一日くらい…とか思ってそうだし」
どんだけ信用がないんだよ、俺は…
ハルヒ「というわけで、ちゃっちゃとやる!」
キョン「やれやれ…。わかったよ」
ハルヒ「まったく、気が緩んでるわよ!」
ハルヒにせかされるままに、勉強机に向かう。それにしても今日まで来るとは…こいつものすごく暇なんじゃないのか?
キョン「お前こそ、こんなに毎日ここに来て自分の勉強は大丈夫なのか?」
ハルヒ「その点抜かりはないわ。今日は私もここでするから」
キョン「そうかい…」
ハルヒ「というわけで、このテーブル借りるわよ」
そういうと、ハルヒは自分の参考書を取り出して、勉強を始めた。
が、今日は特にこれといった会話もなく、黙々と勉強するにいたった。
昨日と同じメニューと、古文単語を少し、学校の宿題などを終わらせると二時間ほど経過していた。
ハルヒはその間、自分の勉強をしていたようなのだが、俺にはいったい何をしていたのか皆目見当もつかん。
キョン「ふう…、今日はこんなもんか…って、もうこんな時間じゃねーか!おい、ハルヒ」
ハルヒ「ん?なに?」
キョン「なにじゃねーよ。もう11時過ぎだ。そろそろ帰れ」
ハルヒ「ん?ああ、もうそんな時間だったの。ちょっと長居しすぎたわね」
キョン「どれだけ集中してたんだよ」
ハルヒ「あんたが集中してなさすぎるのよ」
11時はさすがに一人で返すには不安だ。ということで一応送っていくことにした。
まあ、ハルヒなら暴漢にであっても返り討ちにしてしまうんだろうがな。
ハルヒ「それにしても、一日2時間は少し少なすぎよ」
キョン「まあ…そうなんだろうな」
ハルヒ「学校から帰るのがだいたい6時でしょ。夕食とお風呂で1時間半は使うとしても、寝るまでに5時間はしないと駄目ね」
キョン「そんなにか…」
ハルヒ「まあ、もちろん今すぐにとは言わないわよ。今は二時間でもだんだん伸びてくるわ。六月が終わるくらいまでにそのくらいに持っていけばいいわよ」
キョン「ずいぶん悠長な話だな」
ハルヒ「毎日やることが一番大事なんだから。勉強しない日を作っちゃ駄目よ!」
キョン「へいへい」
そんな会話をしつつ、ハルヒの家の近くまでやってきていたようだ。
というか、ハルヒの家に来るのって何気に初めてだな
ハルヒ「じゃあ、ここだから」
キョン「そうか」
ハルヒ「ちゃんとやりなさいよ。聞いた話だと、有希も古泉君も京大らしいわ。いっそみんなで受かりましょ」
キョン「そうだな。まあ、一番のネックは俺なんだろうが」
ハルヒ「そんなことわかりきったことじゃない。だから、私が直々に指導してあげてるの。感謝しなさいよね」
キョン「わかってるよ。じゃあ、また明日な」
ハルヒ「ええ、お休み」
その後、家に帰り、風呂に入りすぐ眠った。二日勉強しただけでこれほど疲れるとは…。
ああ、もっと勉強するんだったと後悔するSSだな・・・
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:01:12.50:tMD4l2nC0驚くべきことにその後も毎日ハルヒはやってきた。ある時は8時、ある時は9時に。
もちろんハルヒが毎日のようにやってきていることは俺の母、父の知るところであり、時折乱入してくる妹によって勉強を教えに来ているらしいことも知っていた。
そんな日が二週間も続いたある日のホームルーム。
岡部「そろそろ。新学期にも慣れてきたころだろう。連休前には家庭訪問もあるから、保護者の方にはきちんと伝えておくように」
岡部「時間は決まり次第、連絡する。では、今日はこれまで。気をつけて帰れよ」
岡部「そうだ、キョン。ちょっと職員室に来てくれ」
キョン「?」
いったい何事だろう。といいますか、いい加減本名で呼んでくれてもいいのではないだろうか?
岡部「今度の家庭訪問のことだ」
キョン「はあ…」
岡部「実質の三者面談なんだが…どうする?」
キョン「どうするといいますと…?」
岡部「志望についてに決まっているだろ」
岡部「そのまま親御さんに伝えるか?」
キョン「ああ…」
そういえば、すっかり忘れていた。
親は勉強し始めて何よりと思っているらしいのだが、京都大学を志望していることになっていることは全く知らない。
キョン「どうしましょうかね」
岡部「俺に聞くなよ」
岡部「お前の志望について涼宮が関係しているのはなんとなくわかる」
岡部「お前の本意ではないのかもしれないということもな」
岡部「で、そのうえでこのことを親御さんに率直に伝えるか?」
キョン「……」
もちろん、京都大学を目指しているのはハルヒに対するポーズであるし、本意ではない。
ただ…、この二週間勉強してみて多少変わったこともある。
ハルヒは一向に飽きる気配を見せないし、俺のあきれるほどの学力にもさじを投げたりしていない。
ここで手のひらを返すのは…、さすがにハルヒに悪いような気がしたのだ。
キョン「そうですね。まあ、本意ではないところがないと言えばうそになりますが…」
キョン「今回はとりあえず、その票通りに伝えてください」
岡部「いいんだな?」
キョン「はい」
岡部「まったく…短い教師人生だが、お前たちのような生徒は始めてだよ」
キョン「それはほめ言葉と受け取っても?」
岡部「そうだな。そう解釈してくれ」
岡部「なあ、ついでにもうひとつ教えてくれないか?」
キョン「なんでしょう?」
岡部「文芸部が全員京都大学志望なのは涼宮に関係するのか?」
キョン「まぁ、ハルヒの影響力があるんでしょうが、強制的にあいつが志望を曲げさせたわけじゃないですよ」
間接的にはそうなるのかもしれないが…
岡部「そうか、ならいいんだ。てっきり、またあの一団がなにか仕出かそうとしているんじゃないかと思ってな」
岡部「まあ、お前も最近授業中の態度がだいぶ良くなったっていろんな先生に聞いてはいるし…」
岡部「なにがあるのか詳しくは聞かんが、まあ、頑張れよ」
キョン「はい、では失礼します」
岡部も話せばわかるやつじゃないか。そんな新たな発見があった一日だった。
そして、やってきた家庭訪問の日。
三年生は担任到着までに帰宅しておくことが義務付けられている。
そういうわけで今日はSOS 団も休業している
ピンポーン
岡部「おじゃまします。キョン君の担任の岡部です」
ママキョン「あら、こんにちは。どうぞお上がり下さい」
なんだかんだで三年も同じ担任の先生の為、俺の母親ももう手慣れている。
さて、俺はリビングで待っている。家庭訪問と言いつつ、家で行う三者面談だからだ。
ママキョン「さあ、おかけください」
岡部「失礼します」
岡部「さっそくですが、進路についてご家庭で話されていますか?」
ママキョン「いえ、私と旦那はとにかく国公立大学に進学してほしいと思っているのですが」
岡部「そうですか。おそらく、その希望はきちんと伝わっていると思いますよ」
岡部「こちらが、キョン君の志望票になります」
岡部が手渡した票は俺が岡部に提出したときのままだ。
ママキョン「はい。……、岡部先生?これ他のお子さんのものと間違えていませんか?」
岡部「いえ、間違いなく、キョン君のものですよ」
ママキョン「京都大学って…あの?」
岡部「ええ、あの京大です」
ママキョン「ちょっとキョン、なにかの冗談なの?」
この家では妹のセリフを聞いてもわかるとおり、両親も俺をキョンと呼ぶ。さて、本名がなんだったかな、自分でも忘れかけているような…
ママキョン「京大なんて無理に決まってるじゃない」
キョン「まあ…なんというか…」
ママキョン「最近、真面目に勉強し始めたと思ったのに…」
岡部「まあ、お母さん」
岡部「今の学力では京大は無謀と思われるかもしれませんが、まだ受験までは10カ月も残っています」
岡部「目標を高く掲げることは大切ですし、もしだめならその時はその時で受ける大学を変えればいいんですから」
ママキョン「でも…」
岡部「一応、本人にも確認はとりましたが、キョン君は本気のようです」
岡部「もちろん、一度家庭のほうで話し合っていただくことになるかとは思いますが、私も精いっぱいサポートさせていただきます」
ママキョン「はあ…」
岡部「とにかく、一度ご家族で話し合ってみてください。それで変えるというのであればそれはそれで結構ですから」
岡部「やはり、本人の将来ですから。僕としても本人が決めたことは応援したいですので」
岡部「ということで、今日はこのあたりで失礼します。また、お電話でもかまいませんので、ご連絡していただければ」
ママキョン「そうですか…、今日はどうもありがとうございました」
そうして、やけに短い家庭訪問は終わりを告げた。
その日の夕飯後、帰ってきた父親と母親と俺で本日二回目の三者面談だ。
妹は自室で遊んでいるらしい。
ママキョン「そりゃあ、目標は高いほうがいいというのはわかるけど、もうちょっと現実味のあるところに…」
パパキョン「まあまあ母さん。キョンの意見も聞こうじゃないか。どうして、いきなり京大なんだ?そんなに受験は甘くないぞ」
キョン「まあ、そんなことはわかってるさ。なんというか…」
両親は岡部ほどチョロくなかった。
ここでハルヒに勧められたからなどというのはどうだろうか…
キョン「心境の変化というか、まあ、一年間必死でやればどうにかなるんじゃないかと…」
パパキョン「もちろん、自分の息子に無理だなどと頭ごなしに言うつもりなどないが、それでもその心境の変化はいったいどこから来たんだ?」
その時であった。
ドッバーン
ハルヒ「おじゃましまーす!」
なんと間の悪い…
ハルヒ「妹ちゃんが気がついて中に入れてくれたわ。あっ、どうもこんばんは」
ママキョン「あら、こんばんは。毎日悪いわねぇ」
ハルヒ「いえいえ、いいんですよ。私も勝手に勉強してるだけなんですから」
ハルヒ「さぁ、キョン。今日もみっちりやるわよ!」
キョン「ん?すまんが、ちょっと待ってくれ」
ハルヒ「何?もしかして、家族会議の途中だった?」
パパキョン「実は、そうなんだよ。なあ、涼宮さん。キョンが京大を第一志望にしたのは知っているかい?」
わが親父ながらいきなり核心を突いてきやがる!
ハルヒ「ええ。というか、キョンに京大を受けるように言ったの私ですし」
パパキョンママキョン「!!」
ドッバーンww
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 00:11:29.51:mh2KqVP10キョン「おい!お前なんつーことを…」
ハルヒ「あんたまだ言ってなかったの?駄目よ、親御さんには先に言っておかなくちゃ」
キョン「そうじゃなくて…、あーもういい。」
パパキョン「で、キョン。さっきのことは本当なのかい?」
キョン「ああ、そうだよ。ハルヒが京大を受けてみないかといわれて、確かにそれに応じた」
ママキョン「ねえ、涼宮さん。キョンに京大を受けさせようとしたのはどうしてなの?」
ハルヒ「だって、キョンってば志望大学を適当に選んでたから、とくにこだわりがないんなら…と思って」
ハルヒ「それに、京大なら変人も多いから、おもしろい大学生活が送れるに違いないはずだわ」
パパキョン「それにしても、キョンに京大は無理じゃないのかい?」
ハルヒ「そんなことないですよ。大学受験なんて所詮、教科書の延長線上だもの。一年かそこら必死にやればできるようにできているわ」
ハルヒ「キョンなら、なんだかんだでSOS団で鍛えられているし、そのくらいの受験勉強楽勝よ!」
パパキョン「やれやれ…、なるほど。どうやら二人とも本気らしい」
パパキョン「なあ、母さん。好きなようにさせてみないか?」
ママキョン「あなた!」
パパキョン「大学受験なんて所詮は人生の分岐点にすぎない。その後の道がどうなるかなんてその後の自分が決めるものだ」
パパキョン「それに…なんとなくさっきの話を聞いていたらキョンでもなんと中なるような気がしてきた」
ママキョン「はぁ…。そうですね。もともと放任主義で育ててきた子だし…。わかりました。そもそも志望がどこでも国公立にさえ行ってくれればいいんだから」
パパキョン「そういうことだ」
キョン「ということは…、特に問題はないと?」
パパキョン「現状はな」
ママキョン「そういえば、涼宮さんも京大だったわよね」
ハルヒ「ええ」
キョン「なんで知ってるんだ?」
ママキョン「この前うちに来た時に聞いたのよ。まあ、涼宮さんの迷惑にならなければ、キョンのことよろしくね」
ハルヒ「まかせといてください!さあ、キョン行くわよ!」
こうして、岡部、両親は俺が京大を第一志望とすることを認めてくれたようだ。
もちろん、この段階で俺は本当に京大を受けることになるとは思っていない。
学力向上は願ってもいない事態だが、京大というレベルに達するのは難しいだろう…、とも思っていた。
ただ熱心に俺に教授してくれているハルヒに悪いという気持ちから第一志望京都大学を変更しなかったにすぎないのだ。
ハルヒがそんな風に俺の家に勉強を教えに来てからというもの、さらに二週間がたった。
連休中も欠かさず来ていたが、暇なのだろうか?
まぁ、学校の授業が以前よりは理解できるようになっていったし、自分にとっても悪いことではない。
俺は直近の課題を抱えていた。
それは、五月にあるセンター模試である。
キョン「なあ、ハルヒ。今週末の模試なんだが」
ハルヒ「何よ?まさか不安だなんて言うんじゃないでしょうね」
キョン「いや、そのとおりなんだが」
ハルヒ「まったく、そんな弱気じゃ先が思いやられるわよ」
キョン「だって、本格的に勉強初めてまだ一ヶ月程度だぜ?」
ハルヒ「大丈夫よ。どうせ大した点取れなくても、この時期の模試なんて」
キョン「そんなもんなのか?」
ハルヒ「そうよ。だから、今は普通に勉強してなさい」
キョン「はいはい…」
ハルヒの言うとおりにしてみることにした。まあ、不安がったところで点数が上がるわけでもないしな。
そして、迎える模試当日。
他の学校がどうかは知らないのだが、北高ではセンター模試を二日間かけて行う。よって、模試がある週は週末がなくなるのだ。
谷口「まったく、休みも無しにまた月曜日から学校に行けってか?」
国木田「しょうがないよ。光陽園なんて10月には全部の週に模試が入ってるって聞いたことがあるよ」
谷口「うげ…まじかよ」
キョン「それはさけたいところだな」
谷口「そういやよ、キョン」
キョン「ん?なんだ?」
谷口「風の噂で聞いたんだが、お前、第一志望京大なんだって?」
まったく…どこで聞いてきたんだよ。
キョン「まあ…一応な」
谷口「本気か?…まあ、お前が今どんな奇行を起こそうと俺は別に驚きやしないがな」
キョン「そうかい」
国木田「へえ、あの噂は本当だったんだ。やっぱり涼宮さん絡み?」
キョン「そういうことになるかな」
谷口「まあ、ほどほどにしとけよ。受験失敗したら洒落じゃないぜ」
もちろんだ。おれだってこの段階で本気で京大に受かるだなんて思ってもいない。ただ、他の大学に受かる為に勉強しているだけなのだ。
谷口と国木田らとだべりながら学校へ着き、すぐに模試となった。
結果から言おう。俺の模試は以下の結果だ。
英語135/200
数学104/200
国語120/200
世界史78/100
現代社会55/100
生物50/100
合計520/900
まずまずの結果…というか過去うけてきた模試の中では最高得点である。
国木田には届かなかったが、谷口とは大きく水をあける結果となった。
谷口「キョンよ…お前まで遠くに行っちまうのか」
悪いな谷口。さすがに何時までもお前と同じくらいだと俺の将来に関わるんだ。
直近の未来から顔をそむけるほど俺は愚か者じゃないのさ。
ハルヒ「まあ…まずまずなんじゃない?」
結果が返ってきたその日。いつものように家にやってきたハルヒはまず、模試の分析から始めた。
キョン「俺にとっては、凄まじい上昇だったんだがな」
ハルヒ「英語も順調に伸びてるし、それにしても世界史が思ったより取れてるのね」
キョン「まあな、もともと歴史は得意だったんじゃないか?」
ハルヒ「そうかもしれないわね。例えとかいちいち歴史用語だったりするし…」
キョン「で、今後はどうするんだ?」
ハルヒ「もちろん、今まで通りよ。ペースはだんだん上がってきていうようだし」
キョン「まあ、机に向かう時間はだんだん長くなってきたな」
ハルヒ「時間だけで語るのは危険だけど、まあ、いい兆候よ。あとは間違ったところはリストアップして二度と間違えないようにすること」
キョン「へいへい」
ハルヒの言っていたとおり、ここ最近の俺は勉強のペースを掴みかけていた。
勉強時間も平日5時間程度になってきた。相変わらず、SOS団も続いているから土日も時間的束縛はあるがいい感じだ。
6月は学校の期末テストもあったのだが、これも過去最高の成績であった。教師陣も驚いただろうな。国木田には相変わらず勝てないのだが。
梅雨明けが宣言されたそんなある日。
古泉「最近どうです?」
キョン「なんのことだ?」
五目並べをしながら古泉が話しかけてきた。
服装はもう夏服である。
古泉「勉強ですよ。噂は多少聞いていますよ」
キョン「そうかい。まあ、今のところ順調だよ。お前こそどうなんだ?俺と違って本当に京大を受けるんだろ」
古泉「あまり芳しくはありませんよ。まあ、ぼちぼちといったところですね」
古泉「それより、俺と違ってということは、あなたは受けないんですか?」
キョン「まあ、客観的に考えるとそうなるんじゃないか?自分をそこまで過信する自信はないぜ」
古泉「そうですか」
そして、7月。鬱陶しいほどの暑さにうだりながら、登校する毎日。
ハルヒは今も毎日のように俺の家に押しかけてくる。最近なんて、夕飯まで俺んちで食っていくくらいだぜ。
おふくろも親父ともすっかり打ち解けている。
まぁ、それはそれでいいのだが、俺は二回目のセンター模試を迎えようとしていた。
センター模試二日目の昼休みである。
谷口「で、どうだった?」
キョン「どうと言われてもな…、前よりは出来ていると思うんだが」
谷口「ちくしょー!また俺との差が広がっていくのかよ」
キョン「お前、前と同じくらいなのかよ…」
谷口「いや、手応えから言うと、前より駄目だな」
キョン「おいおい…」
国木田「まあ、あと数学があるから」
谷口「お前は数学が得意だからいいよな…。まあ見てろ。苦労の末に十角形の鉛筆を用意したからな。俺の運を見せてやるぜ!」
結果…、谷口は数学ⅠA、ⅡBともに科目をマークし忘れて0点となった。
アホの谷口は放っておいて、俺の結果は以下のとおりである。
英語134/200
数学118/200
国語140/200
世界史82/100
現代社会62/100
生物61/100
合計596/900
惜しくも600点台には届かなかったが、平均は六割を超えた。
英語は伸び悩んだが、他の科目でカバーできたようだ。実際、リスニングが足を引っ張ったようなもので筆記試験は前回よりも点数が上がっていた。
まあまあ順調なのだろう。
ハルヒの講評は以下のとおりだ。
ハルヒ「600点は超えて欲しかったところだけど…。まあいい調子じゃない」
ハルヒ「英語と数学がそろそろ伸びてくる頃のはずだから次の模試は七割超えると思うわよ」
ハルヒ「さて…、そろそろ二次試験の対策もしないとね」
キョン「二次試験?」
ハルヒ「そうよ。8月には京大のプレ模試もあるんだから」
どうすっかな…。本当に京大志望者みたいになってきた。
まあ、ここまで付き合ってもらったんだし、プレ模試くらいは受けてやるか。
キョン「で、どうすればいい?」
ハルヒ「そうね。夏休みに入ったら最初の週に京大の去年の問題を解いてみなさい」
キョン「京大の?」
ハルヒ「安心しなさい。どうせ解けると思ってないわよ。ただ傾向を知るだけ」
ハルヒ「まあ、要するに雰囲気になれておけってことよ。一応、復習しておくこと」
ハルヒ「後はいつも通りに勉強してればいいわよ。ただ…数学はそろそろ添削指導とかした方がいいかもしれないわね」
キョン「添削?赤ペン先生とかZ会とかか?」
ハルヒ「Z会はまだ難しすぎるからダメよ。というか、毎月お金払うなんて勿体無いじゃない!」
キョン「じゃあ、どうするんだよ」
ハルヒ「適当に数学の教師とっ捕まえて教えてもらえばいいじゃない」
ハルヒ「一応、学校には添削指導用の問題とかあるから」
ハルヒ「英作文もそろそろし始めたほうがいいわね。こっちは私が見てあげるわよ」
キョン「え?いいのか?」
ハルヒ「別にいいわよ。英語なら自信あるし、それに私の勉強にもなるから」
キョン「なんというか…いろいろ悪いな」
ハルヒ「べっ、別にあんたのために教えてあげてるわけじゃないんだから!」
じゃあ、誰のために教えてるんだよ、と心のなかでツッコミつつ、まあ一応感謝しとくか。
そして、迎える夏休み。だったのだが、その前に三者面談があるのだ。
ママキョン「で、どうですか?最近のキョンは」
岡部「そうですね。順調に成績は上がってますよ。職員室でもちょっとした話題です」
ママキョン「そうですか」
岡部「この上がり幅を維持し続ければ、センターの得点なら京大のボーダーには届くんではないかとおもいます」
ママキョン「この調子でいけば…ですか」
岡部「ええ、まあ最低でも八割必要と言われていますから。それ以下なら二次試験が受けられません」
キョン「え?そうなんすか?」
岡部「って知らなかったのか。まあ、そうだな。多分そっちは大丈夫だろう」
岡部「で、お母さん。今度のプレ模試は結果はあんまり気にしないでください」
岡部「最初のプレ模試なんて現役生は散々な結果ですから」
ママキョン「やっぱり浪人生がいるからですか?」
岡部「それもありますが、現役生はこの時期、まだすべての範囲をおえているわけでもありませんし、センター試験対策が主です」
岡部「二次試験対策は夏休みの末からぐらいですからね」
岡部「とにかく、この夏休みが天王山です。生活のリズムを崩さないようにご家庭でもよろしくお願いします」
ママキョン「はい。どうも、ありがとうございました。それでは失礼します」
キョン「失礼します」ガラガラ
岡部「…」
岡部「しかし、本当にここまで伸びるとはな…」
そしていよいよ、夏休みだ。
一学期の終了間際には担当の数学教師に添削指導も依頼し、週に二問程度、学校に持って行き指導してもらっている。
そして、それ以外の日は…というと。
ハルヒ「だから、なんでここにseeなのよ。意図的に見てるんだからwatchでしょうが!」
キョン「そんなにガンガン言わんでくれよ」
ハルヒ「甘いわよ。この程度のミスでもきっちり減点されるのよ」
ハルヒとの勉強会である。英作文の添削はまず短文から始まり、短い和文を英訳させられている。
古泉「ちなみに、そっちのembarrassのスペルが間違えてますよ」
長門「ピリオドがない」
そうそう、古泉と長門も俺の家にやってきて勉強会に参加している。まあ、同じ京大志望者と言うことになっているしな
もちろん、SOS団の不思議探索もほぼ週一のペースで続いているし、夏休みということでたまーに朝比奈さんも参加してくれている。
卒業後もこっちの時間平面に残ってくれたのは意外なことだったが、俺にとっては僥倖だ。
そして、あっという間に8月半ば。プレ模試の日を迎えた。
夏休み中の土日を利用しての模試だ。
ちなみに同日、東大、名大、阪大、九大、東北大のプレ模試も行われていて、国木田は大阪大学のプレ模試を受けに行っている。
谷口?あいつは夏休み中に学校に模試を受けに来るほど勉強好きじゃないさ。まぁ、俺も似たようなものだったが。
指定の教室に着くと、すでにハルヒ、長門、古泉は席に着いていた。
なお、この京大プレ模試を受けているのはSOS団のみのようだ。
ハルヒ「おっそいわよ!やる気あんの?」
キョン「これでも、30分前には着いてるだろ。俺としては早い部類だ」
一日目の科目は国語・英語である。
参考書をパラパラとめくっていると担当教官が入ってきて、試験開始である。
さて、一日目は終了した。のだが…
キョン「なんだあの国語は…」
もちろん、ハルヒの言いつけを守り去年の問題だけは解いたことがある。それにしても難しい。
桁外れの難易度を再認識させられるね、まったく…
古泉「その様子では、あまり芳しくなかったのですか?」
キョン「ああ、国語も英語も壊滅状態だな」
古泉「まあ、最初のプレ模試です。結果はあまり気になさらず…」
キョン「お前に言われてもな…。お前はどうせ解けたんだろ」
古泉「正直に申しますと僕も微妙なところですよ。手応えが全くありません」
キョン「まぁ、理系と文系じゃ国語の問題は違うしな。英語はどうだ?」
古泉「どうでしょう?結果が帰ってくるまではなんとも…」
うまくはぐらかしやがって…
前方ではハルヒと長門がいるのだが、二人して今日の問題の感想など言っている。
ハルヒがサブマシンガンのようにまくし立てているのだが、どうせあいつもそこそこ解けているだろうし、長門にいたっては言うまでもないだろう。
そのまま解散後、家に帰って翌日の模試の準備などしていたのだが、明日は数学がある。
夏休みのはじめに、京大数学の問題は解いてみたが訳がわからない。というか問題文がなにを聞いているのかも理解しがたいのだ。
下手な理系の問題より難しいのではないか?
というわけで日本史の参考書だけ読み、ほどほどに眠りについた。
翌朝、学校に向かっていると珍しいことにハルヒがやってきた。
キョン「よう、今日は遅いんだな」
ハルヒ「あんたと同じ時間だなんて屈辱ね、まあ、今日は昨日よりも早い時間だから」
そう、今日はまず文系が歴史の試験を実施、その後、文理共同で数学をして、最後に理系が理科を解いて解散なのだ。
つまり、古泉は一人で理科をやって帰ることとなる。想像すると寂しい絵面だな。
キョン「しかし、今日は数学か…」
ハルヒ「なに?自信ないの?」
キョン「ある奴がいたら見てみたいね」
ハルヒ「まあ、確かに満点なんて不可能に近いのはわかってるわよ」
ハルヒ「でも、他の奴よりは出来ていると思って解きなさい!そうすれば案外気楽になれるものよ」
キョン「そんなもんかね」
ハルヒ「そうよ。朝っぱらからしみったれた顔してるんじゃないわよ。さあ、学校までダッシュよ!」
何を思いついたのか、本当にこの急勾配の坂道をダッシュで駆け上っていく。
その元気を少しでも分けてもらいたいものだと思いながら、しぶしぶ駆け足で追っていく俺であった。
その後、教室では長門が既にいて、到着後ほどなく歴史が始まった。
まあ、これは国語ほど壊滅的ではないだろうと思う。
その後、やってきた古泉を加えての数学。
これは…覚悟してきたことなのだが、全く解けなかった。
何か道筋を見つけようとしても計算していくとありえない結果になったりと、結局90分ほとんど四則演算に費やしてしまった。
これならまだループする夏休みから9月を迎えるとか、吹雪の館から脱出するほうが簡単なんじゃないか?
結局、ほとんど白紙のまま提出した解答用紙でもって、俺の最初のプレ模試は幕を閉じた。
その後の夏休みもSOS団高3組で何故か俺の家に集まって勉強会などし続けていた。
このころになると、俺の一日の勉強時間が10時間近くなっており、まったくかつての自分から見れば異常なほどである。
そんなある日。
ハルヒ「明日は八月最後の日曜日ね。明日くらい休みにしましょ」
キョン「そうか?まあ、ここのところ近くのコンビニくらいしか行ってないからな」
ハルヒ「みくるちゃんも誘ってどこか行かない?高校生活最後の夏休みだもの。後顧の憂いなく遊び倒すわよ!」
古泉「いいですね。どちらに行きます?」
ハルヒ「そうね…明日このあたりで何かあったかしら?」
長門「神戸で花火大会」
ハルヒ「ちょうどいいわね!じゃあそれ!」
古泉「では、電車の時刻などは調べておきましょう」
こうして、俺達の高校最後の夏休み最後のイベントが決定した。
朝比奈「お待たせしましたー」
ここは神戸駅前である。朝比奈さんは神戸大学に通いだしてから、神戸市内に住んでいるのだ。
キョン「いえいえ、いま来たところですから」
ハルヒ「それにしてもひとが多いわね」
朝比奈「いろんなところから人が集まってきますからね。さあ、みなさんこっちですよ」
すっかり神戸に慣れている様子である。なんとなく幼げな雰囲気も薄くなっているような気がする。
まあ、一抹の寂しさを覚えないわけではない…
朝比奈「鶴屋さんが特等席を用意してくれてるそうですよ」
ハルヒ「良かった、鶴屋さんもこれたのね。卒業してから会えなかったし」
朝比奈「鶴屋さんも皆さんと会えるの楽しみにしてましたよ」
鶴屋「やっほー!みんな久しぶりだねー。元気そうで何よりだよ!」
鶴屋さんは高校卒業時と変わらず、照りつける真夏の太陽に負けないほどの明るさだ。
ちなみに、鶴屋さんがブルーシートを敷いてくれていたのは、海岸近くの公園で海を見渡せる場所にある。
鶴屋「地元の人間でも知る人ぞ知る穴場らしいのさ!偶然見つけたんだよ。いやー、自分の幸運に感謝だね!」
古泉「ありがとうございます。本当なら僕が探しておくべきだったんですが」
鶴屋「気にしない気にしない。受験生は先輩にどーん頼っていいんだよ」
辺りは既に日がくれかけており、花火大会開始まで一時間ほどだ。
用意してもらっていたり、持参した軽食をとっていると、ふと朝比奈さんがこちらにやって来た。
朝比奈「そういえば、キョンくんも涼宮さんたちと同じ大学に進学するんですよね?」
キョン「知ってましたか…。まあ、そのうち変わるだろうと思って、朝比奈さんには伝えていなかったんですが」
朝比奈「ううん。きっと大丈夫です。京都大学ですよね。」
キョン「はい。まったく、いろんな人から驚かれましてね」
朝比奈「でも、私だって神戸大学に合格したんです。キョンくんだって頑張れば、合格します」
キョン「そうですかね…」
朝比奈「ええ。今まで世界を救ったり、夏休みを終わらせたり、5年前に行って絵を書いたり…」
朝比奈「受験よりよっぽど難しいことをやってのけてきたんですから」
なるほど、そう言われてみるとそうなんだろうか?
少なくとも、久々に朝比奈さんとこうして談笑できて気が楽になったのは事実である。
鶴屋「そうだよ、少年!まあ人生なるようになるってね」
いつから聞いていたのか鶴屋さんも会話に加わった。
鶴屋「くよくよ悩んだって仕方ないってものさ。ゴールに向かって頑張ってればいつの間にか着いてるもんだよ!」
キョン「そうですね。なんか、励ましてもらったみたいで…ありがとうございます。」
鶴屋「気にしなくていいっさ。後輩の幸せは先輩には何より嬉しいものだからね。頑張るんだよ少年!」
朝比奈「なにか困ったことがあったら言ってくださいね」
頼りになる先輩方というものはありがたいものだ。しみじみと感慨にふけっていると…
ドーン!
夜空を花火が照らした。なるほどたしかによく見える場所だ。
俺もあの花火のように散ってしまわなければいいのだが…
始業式
キョン「いよいよ今日から二学期か…」
谷口「ようキョン!高校生活最後の夏は満喫してきたか?」
キョン「なんだ谷口か」
谷口「なんだとはなんだ。夏休みは一回もつるまなかったしな、ずいぶん久しぶりじゃねーか」
キョン「まあ、忙しかったからな」
谷口「まったく、最後の夏休みだってのに勉強漬けか?息抜きも大切だぞ」
キョン「ずっと息抜きしてる奴に言われたくないな」
谷口「厳しいなあ、おい」
その後のホームルーム
岡部「みんな、久しぶりだな。最後の夏休みだったが、勉強もちゃんとやってたか?」
そして、ここから長話が続き、ホームルームの終了間際
岡部「では、夏休みにプレ模試をうけたものは返すから取りに来い」
キョン「!?」
すっかり忘れていた。プレ模試のことは記憶の彼方に追いやっていたし、朝比奈さんと鶴屋さんとの花火大会というビッグイベントもあり、受けたことすら忘れていたくらいだ。
そして、あまり思い出したくないが、壊滅的にできていなかったはずだよな…
岡部「キョン、取りにこーい」
キョン「えっ?ああ、はい」
岡部「まあ、最初のプレ模試だからな、結果はあまり気にするな」
キョン「はあ…」
つまり、先程の岡部教諭の言葉から察するに本当にひどい結果なのだろうな…
恐る恐る封筒の封を開けてみると…
国語 41/150
英語 32/150
数学 10/100
日本史 46/100
合計 129/500
京都大学文学部人文学科 E判定
キョン「…なっ、これは…」
その日の放課後
俺は珍しくわかりやすく落ち込んでいたらしい、というのもハルヒにこんな風に声をかけられたからだ
ハルヒ「まあ、この時期の模試の判定なんて気にすることないわよ、判定を気にしなくちゃいけないのは直前期くらいよ」
キョン「そんなもんかね」
ハルヒ「私が言うんだから間違いないわ!」
キョン「へいへい。そういや、お前はどうだったんだ?」
ハルヒ「私?私はB判定だったわ。A判までもうちょっとだったんだけどね。まあ、相手が強いほど盛り上がるというものよ!」
キョン「ほう…さすがだな。古泉は?」
古泉「僕も涼宮さんと同じくらいですよ。B判定です」
キョン「聞くまでもないだろうが、長門は?」
長門「A判定」
ハルヒ「それがね、有希の点数ってなんか不思議なのよ」
キョン「ん?」
俺が疑問に思ったことを察したのだろうか、長門は模試の結果が入っているであろう封筒を差し出した
国語 50/150
英語 145/150
数学 100/100
日本史 96/100
合計 391/500
キョン「いや、普通にすごいよな…ん?国語だけ低いのか」
長門「そう」
ハルヒ「回答を見たんだけど、難しく書きすぎてるのね。なんとなく言ってることはあってるんだろうけど」
長門「情報の伝達に齟齬がはっせいした模様」
キョン(京大の模試の採点ってことは…まあ、予備校の講師や大学生がやってるんだろうな)
キョン(確かに、長門の回答は理解できまい。長門がハイスペックすぎるゆえの減点か)
ハルヒ「でも、今のところ有希がトップね!キョンも頑張りなさいよ!」
その日の夜。相も変わらずハルヒは俺の家にやってきていた
ハルヒ「まあ、今日は模試の反省からやるわよ」
キョン「模試のか?お前、気にしなくていいって言ってたじゃないか」
ハルヒ「私が気にしなくていいって言ったのは結果についてだけよ。過程まで気にするなとはいってないわ」
ハルヒ「というわけで答案見せなさい!」
そう言って、俺のかばんから答案を奪い取っていった
その答案をしげしげと見てしばらく考え込んでいるようであった
ハルヒ「数学が一番ひどいのね」
キョン「それは見たらわかる」
ハルヒ「あとは英語ね。国語と日本史は現段階では及第点だわ。ずいぶん頑張ってるじゃない!」
キョン「その点でか?」
ハルヒ「あんた平均点見たの?京大模試受けるのなんて、現役も浪人も一応、日本の中で上位の人間だけよ」
ハルヒ「その平均点のちょっと下くらいなら現役生としては十分よ」
キョン(その平均を超えてるお前や古泉はなんなんだよ!?)
ハルヒ「まあ、英語は時間かかるからもう少しすれば結果も出てくるでしょう」
ハルヒ「問題は数学ね…。あんた思ったより、本当にセンス無いのね」
キョン「わかっていたことだが、そうはっきり言われると傷付くな…」
ハルヒ「チャートはもう全部終わってるんでしょ?」
キョン「ああ、一学期に一周。夏休みにももう一周したからな」
ハルヒ「じゃあ、そろそろ分野別にせめて言ったほうがいいわね」
キョン「どういうことだ?」
ハルヒ「京大の数学って出やすいところ決まってるでしょ?その分野を重点的に取り組めってことよ」
キョン「どうやってだ?」
ハルヒ「分野別の参考書売ってるでしょ?一対一の数学だっけ、あんな感じの」
ハルヒ「センター対策はあとは学校の授業で十分じゃないかしらね」
ハルヒ「そういうこと。わかった?」
キョン「ああ、わかったよ。しかし、前々から気になっていたんだが…」
ハルヒ「何よ?聞きたいことがあるのならはっきり言いなさい」
キョン「なんでそんなに俺の受験に手伝ってくれるんだ?」
ハルヒ「えっ?そ、そんなのSOS団の団長だからに決まってるじゃない!」
ハルヒ「別に他意はないんだから!古泉くんや有希は放っておいても大丈夫だから仕方なく、あんたを指導してるだけよ!」
キョン「わかったよ、わかったからネクタイ掴むのはやめてくれ」
ハルヒ「まったく…急に変なコト言うからよ」
キョン「お前、いきなり人のネクタイ掴む癖やめたほうがいいぞ」
ハルヒ「安心しなさい。あんた以外にはしてないから」
キョン「やれやれ…、俺の身にもなってくれ…」
キョン「で、反省ってなにをすればいい?」
ハルヒ「とりあえず、この模試で間違った問題は完璧に解けるようにしときなさい」
キョン「なんだ、今までと違わないじゃないか」
ハルヒ「まあね、でもこの模試は一応、仮想京大試験なんだから今までと違って精度を高めて復習しとくのよ」
キョン「わかったよ」
ハルヒ「じゃあ、さっそくやりなさい。わからないとこがあったら教えてあげるから」
キョン「おう!」
ハルヒに言われたとおりに模試の復習、そして、数学の分野別特訓。加えて今までの勉強に、数学の添削指導、ハルヒによる英作文の添削指導。
なんだかいよいよ受験生っぽくなってきたな。
始まったばかりだと思っていた二学期もあっという間に10月が近づいてきた。
体育祭はすでに終わり、三年五組は岡部教諭の熱血指導、例によってのハルヒの大活躍によって優勝を勝ちとっていた。
なんだかんだで岡部教諭は体育祭三連覇である。体育教諭としても鼻が高いであろう。
次の行事は…そう、SOS団のひとまずの最後の大イベント、北高祭である。
キョン「そういえば、今年は映画どうするんだ?」
結局、去年も朝比奈さん主演の未来人メイド活劇をしたのであった。
今年もきっと、その続きだろうと思っていたのだが…
ハルヒ「今年はね…じつは、どうしようかと迷っているのよね」
キョン「ほう、お前が悩むとは珍しいな…」
ハルヒ「みくるちゃんがいないのは大きいわよね。主演女優が不在なんだもの」
ハルヒ「…!そうだわ!去年やろうと思ってたけど、結局できなかったアレをやるわよ!」
キョン「去年?…おい、まさか…」
キョン「バンドか?」
幸か不幸か俺の予想はドンピシャで当たっていたようだ
去年は結局映画製作のみでハルヒは来年、つまり今年こそはとリベンジを誓っていたっけか。
よもや覚えていようとはな…
キョン「そういえば、パートはどうするんだ?」
ハルヒ「そうね、私がギターボーカル、有希がギターってのは考えてるけど、古泉くんはなにかできる楽器ある?」
古泉「ベースかドラムですか?申し訳ありませんが両方とも心得はありませんが…」
ハルヒ「キョンは?」
キョン「俺もだな。リコーダーくらいならできんこともないだろうが…」
ハルヒ「じゃあ、キョンがドラムで古泉くんがベースね!」
古・キ「え?」
ハルヒ「楽器なんてやる気があればすぐに会得できるわよ!そういうわけで明日から特訓開始よ!」
実際にその翌日から特訓は開始された
そもそも、楽譜の読み方から覚えなければならなかったし、スティックだって初めて持つのである。
まあ、曲はハルヒが書いてきたし、楽器は軽音楽部に貸してもらったようだ
ハルヒ「ちょっとキョン!リズムキープができてないわよ!」
キョン「そうか?さっきのはうまく言ったと思ったんだが」
ハルヒ「だんだん遅くなってたわ。それに二番のサビが表拍になってたじゃない」
キョン「すまん、気をつける」
ハルヒ「本番まであんまり時間がないのよ。しっかりしなさい!」
最初の頃は、大変に思っていたが、だんだんと形ができてくると面白くなってくるものだし、なんといっても打楽器であるから良いストレス発散になる
そして、ハルヒのつくってきた曲がある程度の完成を見た頃…、文化祭の二週間ほど前のことであるが、ハルヒがある提案をしてきた
ハルヒ「せっかく、最後の北高祭なんだから一人ひとり持ち歌が欲しいわね」
ハルヒ「そうね…、よし!明日までにみんな詞を作ってきなさい!曲は私がつけてあげるから!」
キョン「詞?そんなもん作ったこと無いぞ…」
ハルヒ「詞なんて義務教育受けてたら作れるわよ。じゃあ、そういうことだから!またあしたね!」
つくづくいきなりな奴だ。それにまた明日って言ったってどうせ、このあと俺んちに来るんだろうが…
そして、時の流れってのは意外と早い。今日はもう北高祭当日である
準備のために朝早く学校に行っていると、またもや谷口である
谷口「ようキョン!今日は楽しみにしてるぜ!」
キョン「あんまり楽しみにしてくれるな。人に見せれるレベルかどうかわからんぞ」
谷口「なーに、しょっぱい顔してるんだよ。そういえば、お前はドラムだったな。で、涼宮がギター、長門有希がギターで、古泉がベースか」
谷口「そういえば、キーボードがいないんだな」
キョン「キーボード?まあ、いるところにはいるんだろうが不可欠なものでもないだろ?」
谷口「いや、おれの知り合いのガールズバンドはギター二人、ベース、ドラム、キーボードの5人でな」
キョン「お前にガールズバンドの知り合いがいることのほうが驚きだよ。どこで知り合った?」
谷口「俺の中学時代のツレの話だよ。京都だったか滋賀だったかの女子校だったっけ?全員がAランクプラスの美少女軍団がいるってな」
キョン「お前の知り合いじゃねーだろ」
谷口「ははは、まあな。とにかく頑張れよ!国木田も誘って観に行くから」
そして、今は舞台袖である。
今日は雨も降っていないのに体育館はそこそこの盛況である
この三年間SOS団はよくも悪くも目立ってきたから、そのせいだろうな。
ハルヒ「じゃあ、張り切って行くわよ!」
ハルヒ「見に来た奴らに一生忘れられないくらいの演奏を聞かせてやるのよ!」
団長の影声と共に俺達はステージに向かう。
いいさ、ハメを外せるのもどうせこれが最後だからな。楽しんできてやるさ
ハルヒ『答えは~いつも私の胸に~♪』
ハルヒ『こんにちは♪ありがとう♪さよなら~また会いましょう♪』
ハルヒ『過去はじーぶんのーもーのー♪当然だれとも取り替えたくない~♪』
ハルヒ『あなたに~あなたに~謝りたくて~♪』
ハルヒ『スーパードライバー♪突進、任せて♪何てったって前進♪』
さすが、ハルヒ作詞作曲でボーカルもハルヒとなれば、そのポテンシャルを持て余すことなく発揮できるのだろう
観客のボルテージもいい感じだ
ハルヒ「じゃあ、次は有希の曲よ!しっかり聞きなさい!」
と、ここで長門作詞の曲である、ここからは団員がひとりずつ曲を歌って最後にハルヒが締める、ということだ。
長門『私にも~ただひとつの~願望が~♪』
そういえば、文芸部で部誌を作ったときに、難解な文章を書いていたがこの詩は、一般大衆でも理解できるレベルだ
客席をふと見やると、コンピ研の部長氏が来ていた。たしか浪人中と聞いていたが、大丈夫なのか?
しかし、長門の奴律儀に連絡しておいたのだろうか?
古泉『悪いことには~ならないでしょう~♪』
古泉め、忌々しいことにこいつは歌もうまいらしい。
天のパラメータ配分に今一度、意見書を提出したい気分だね。
ついでに曲名が「まっがーれ↓スペクタクル」ってなんだ?超能力者ちっくなタイトルにしやがって
そして、観客席からあがる黄色い歓声も気に食わんな
キョン『やめとけと~いうべきか~♪どうせ徒労だろ♪』
まあ、人のことを言えないのが俺の曲である。
歌詞をめぐっては多少ハルヒともめたのだが、一日で書いてきたにしては十分すぎるだろう
前二人に比べて観客の盛り上がりは小さいな、当然だが…
ハルヒ『ある晴れた日のこと~♪魔法以上のユカイが~♪』
そして最後のハルヒの曲で終わりである。
最初は踊りをつけると言っていたが…そんなことをすればギターのシールドは絡まるし、演奏もできないしで取り止めになった
ハルヒ「じゃあ、今日はみんなありがとー!今後もSOS団の活躍に期待しときなさい!」
団長の多少乱暴な締めの言葉で俺達はステージを降りる。
高校最後のイベントとしては大成功だ。まあ、いい思い出になったよ
などと、安堵していると
アンコール!アンコール!アンコール!
キョン「え?」
古泉「おやおや…これはこれは…」
ハルヒ「ふふ、私は分かっていたわ。さっきの演奏を聞いてアンコールが来ないはずはないってね!さあ、みんな!もう一曲行くわよ!」
視界の端に、時間の都合があるのか困惑した顔の実行委員がいた。
構うものか。SOS団に常識は通用しねえ!
俺たちはもう一度、ライトに照らされたステージに向かう
ハルヒ「仕方ないからもう一曲だけよ!ちゃんと聞きなさい!」
『乾いた~♪心で駆け~ぬける~♪ごめんね何も言えなくて~♪痛みを~…』
大盛況に終わった北高祭SOS団ライブ。
次の目標は大学受験である。SOS団では文化祭翌日から部室でも勉強が行われるようになった。
なんというか…非常に普通の部活らしいのだが…
まあ、そんなことも言っていられない。部室でも勉強するようになったのは俺にとっても幸運だった。
何しろ目の前に再び京大プレ模試が迫っているのだ。
もう残り少ないプレ模試なのだ。そろそろ結果がほしい。
落葉樹の木の葉が落ちる季節がやってきている。受験までもう時間があまり残されていない。
そういえば、最初は京大志望はハルヒをごまかすためのパフォーマンスだと思っていたが…
今では、本当に京大に行きたいと思うようになっていた
これだけ勉強しているんだ。報われたっていいだろう。
そういうわけで、11月の中頃と末に京大プレ模試とセンター模試が行われた。
その結果は以下のとおりである。
センター模試
国語 175/200
英語 160/200
数学 135/200
世界史 90/100
現社 62/100
生物 63/100
合計 687/900
京大プレ模試
国語 59/150
英語 60/150
数学 32/100
日本史 74/100
合計 225/500
京都大学文学部人文学科 D判定
自分で点数を見てみてもなにか間違っているのではないかと思った。
センター模試でも七割を超え、京大プレ模試ではとうとうE判定を抜けだした。
ハルヒ「へえ、やるじゃない。やっとD判定になったのね」
キョン「ああ…そうみたいだな」
ハルヒ「EとDでは天地ほどの差があるもの。よかったじゃない」
キョン「まあ、俺としても感慨はひとしおだが、そんなに違うものなのか?」
ハルヒ「もちろんよ!いい、E判定に底はないの。幼稚園児が受けたって、高校生が受けたって、点が取れなければE判定なのよ」
ハルヒ「D判定ということは、その最下層から抜けだしたってことなんだから」
キョン「そうなのか」
ハルヒ「そうよ!だから、もっと胸をはりなさい!」
俺がD判定をとったらしいことはハルヒの声が大きかったせいだろうが、昼休みには国木田と谷口も知っていた
国木田「キョンもすごい伸び方だよね。半年前までは谷口と同じくらいだったのに」
谷口「おい、そりゃどういうことだ」
キョン「言葉通りの意味だ。谷口よ、お前結構やばいんじゃないのか?」
谷口「心配するな。と、言いたいところだがな。俺も最近は本腰いれてやってるぜ。国木田に教えてもらってるんだ」
キョン「そういえば、国木田は志望校決めたのか?」
国木田「そうだね。僕は神戸大にしたよ」
谷口「こいつ、朝比奈さんのあとを追ってるんじゃないのか?」
キョン(多分、おっかけてるのは朝比奈さんじゃない方だろうな…)
ちなみに、このプレ模試でハルヒB判定、古泉B判定、長門A判定と特に変わったところはなかった。
まあ、模試の結果に一喜一憂してもいられない。
教室で、部室で、自宅で、たまに長門の家や図書館なんかでも勉強したりして俺達は二学期を終えようとしていた。
しばらくただの勉強集団となっていたSOS団だが、年越しには初詣に行くことになっていた。
ハルヒ「……」
古泉「……」
長門「……」
部室には沈黙が占めるようになってきており、これがいわゆる受験前のピリピリしたムードという奴であろう
かくいう俺も緊張が徐々に高まっていた
冬休みも夏休み同様、なぜか俺の家での勉強会が連日連夜開かれていた。
ハルヒ「まあ、英語はこのくらい書けるようになれば現段階では十分ね」
キョン「なあ、ハルヒ。お前の渡してきた日本語だが、もともとのがずいぶんと変じゃないか?」
ハルヒ「変ってなにが?」
キョン「いや、この文章だよ」ペラッ
『騙すという行為自体、僕たちには理解出来ない』
『認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は他者を憎悪するんだよね』
『まったく、わけがわからないよ』
キョン「訳がわからないのはこっちだ。なんだこの悪徳商法のセールスマンみたいなセリフは!?」
ハルヒ「いやー、京大ならこのくらい変な文章が出てもおかしくないんじゃない?それに、そこそこうまく英訳してたじゃない」
キョン「他にも、エントロピーってなんだよ?注釈いれりゃいいってもんじゃねーぞ」
ハルヒ「それの訳は完璧だったわよ。別にいいじゃない」
キョン「…いいのか?これで」
キョン「古泉、今大丈夫か?」
古泉「なんでしょう?」
キョン「数学の問題なんだが、なんか答えみてもよくわからんのがあってな」
古泉「ほう…これは数Ⅲの範囲が含まれているようですね」
キョン「数Ⅲ?これ文系の問題だぞ」
古泉「京大は文系の問題でも数Ⅲのある範囲はでたことがありますよ。たしか…微積のグラフの回転体の体積を求める問題でしたっけ?」
キョン「初耳だぞ…そんなこと」
ハルヒ「大丈夫よ。私の勘では今年は出ないわ。去年出てたから」
キョン「お前の勘かよ!?」
長門「……」クイクイ
キョン「ん?どうした?」
長門「ここが理解不能」
キョン「国語か?どうわからないんだ?」
長門「登場人物の心情を予想して答えるという問題。そこに至る過程が不明」
キョン「なになに…ああ、これなら一度解いたことがあるな」
キョン「要するに、この女子生徒が主人公に恋をするまでの過程を理由を述べて答えろってことだろ」
キョン「陸上の大会直前に怪我をした、この女子はクラスで嫌われている主人公にシューズを渡されて励まされるから…えーっと、その主人公の人間性を垣間見たとか、落ち込んでいたときに優しい言葉をかけられたからとか、先輩のイビリで落ち込んでいたからとか…」
キョン「まあ、その過程を字数を考えて理路整然と答えればいいんじゃないか?」
長門「違う」
キョン「?」
長門「この女子生徒は最後まで主人公に対して辛辣な態度をとっていた。一度、偶然転びそうになって結果的にキスしてしまったが、最後まで恋をしているとみられる表現はない」
キョン「ああ、たしかにさいごまでそんな感じだな。この場合は口先では憎まれ口を叩いているけど、内心惹かれてるってことを予想しろってことだ」
キョン「まあ、俗な言葉を使えばツンデレってやつだな」
キョン「まあ、予想問題でツンデレの生徒なんて出すなよな、とは思うが…実在しないだろそんな女子」
長門「そう?」
キョン「ああ、ツンデレなんてのはフィクションの中のセカイの話だけだ。俺はお目にかかったことはないね」
古泉(この人、わざとやってるんでしょうか…)
神のみぞ知る世界?
183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:19:59.63:mh2KqVP10
>>179
そう
まさか気づく人がいるとは
180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:18:50.57:5qehNlGg0そう
まさか気づく人がいるとは
そして、大晦日の夜。
キョン妹「みんな~。ママが年越しそばができたから食べにおいでーって」
ハルヒ「もうそんな時間だったのね。じゃあそばをいただいて、その後に初詣に行きましょ」
キョン「そうだな。じゃあ、下に行こうぜ」
トタトタトタ
ママキョン「みんなお疲れ様。蕎麦作ったから食べていきなさい」
古泉「ありがとうございます、いつも夜遅くまでお邪魔しているのにごちそうにまでなって」
ママキョン「いいのよ、有希ちゃんの食べっぷりは見てて気持いいもの。さ、ハルヒちゃんも古泉くんも座って」
一同「いただきまーす」
パパキョン「しかし、時間が過ぎるのは早いものだな。ついこないだまで家庭訪問だと思っていたのに…」
ママキョン「本当にね。まさかキョンがここまで勉強するものとは思っていなかったわ。これもみんなのおかげよ」
ハルヒ「これも団長の努めだもの。キョン一人で受験させてたらいったいどうなるかわかったものじゃないもの」
キョン「言いすぎだ。それじゃまるで俺が能なしみたいじゃないか」
ハルヒ「そこまでは言ってないわよ。一応、やればできる人間だってところまでは認めてあげてるんだから」
キョン「本当に上から目線だな」
年越しそばを食べ終えて近くの神社に向かう頃にはもう年は開けていたようだ
意外なことに参詣客はまばらですぐに賽銭箱の前にたどり着いた
ハルヒ「さあ、今年一年の野望を叶えてもらうのよ!」
キョン「野望て…、ほらよ」ジャラジャラ、パンパン
キョン(やっぱり京大合格だよな、ここまで来たら)
時は1月1日午前1時。第1関門のセンター試験がすぐそこまで近づいてきていた。
残りの冬休みも俺の家で受験勉強をして、あっというまに三学期の開幕である。
といっても三学期は自由登校であり、課外も午前中までだ。
SOS団は文芸部室に篭ってセンター試験に向けて最後の追い込みをかけた
そんな日々もあっという間に過ぎる。三学期が始まればセンターまでは一週間しか無いのだ。
センター試験前日。自宅から通える距離にある会場の下見に、四人でむかった。
ハルヒ「いよいよ明日ね。まあ、センター試験くらいちゃちゃっとクリアーしないとね」
ハルヒ「受験票と書く物さえ忘れなければ大丈夫よ」
キョン「まあ、それだけ持ってくるというわけにもいかんがな」
ハルヒ「そんなことわかってるわよ。カイロとか飲み物とか弁当とかもね」
キョン「あと当分の多いお菓子とかはどうだ?」
ハルヒ「チョコレートは個人的にオススメできないわ。歯にくっついたら面倒よ。同じ理由でキャラメルも却下」
ハルヒ「それよりも、眠気覚ましのガムとかのほうがいいわ」
キョン「他にはなにかいるものあるか?」
古泉「そうですね。好みによりますが音楽プレーヤーは重宝しますよ」
キョン「平常心を保つためか?」
古泉「それもありますが、耳栓替わりです。周りの生徒は北高生だけではありませんので、話し声が耳障りな場合もあります」
キョン「なるほどね」
長門「お守り」
キョン「この前に神社で買ったものか?もちろん忘れないつもりだが、長門が言うと意外だな」
長門「そうでもない」
ハルヒ「じゃあ、明日は早めに来るのよ。特にキョン!」
キョン「わかってるよ。試験30分まえくらいか?」
ハルヒ「遅いわよ!電車が脱線しても間に合うくらいの余裕をもって家をでること!試験1時間前くらいには来ておくのよ!」
キョン「いくらなんでも早すぎないか?」
ハルヒ「そのくらい早いほうが人が少なくていいの。どうせ会場じゃあいろんな業者がティッシュやらチラシやら配り始めるんだから。煩わしくないうちに来ておいたほうがいいわ」
キョン「そうか…わかったよ」
ハルヒ「じゃあ、また明日ね。今日は早く寝るのよ!前日にちょっとやったくらいじゃ大して変わらないんだから」
キョン「ああ、また明日な」
明けて翌日。
午前五時半に目が覚めた俺は、ハルヒの言いつけ通り大幅な余裕を持って家をでた。
そして、受験生もまだほとんど乗っていない電車に乗り、会場へ向かう。
なるほど。会場前の道はまだ人もまばらで、進学校の教師や生徒がいるのみである。
昨日、3人と別れた場所にやってくると既に全員、そろっていた。
ハルヒ「遅い!罰金!」
キョン「いや、今日に限っては十分すぎるほどに早いだろうが。お前たちなんでそんなに早いんだよ」
古泉「といっても、今日は我々も五分ほど前に着いたんですよ」
キョン「なんだそうだったのか」
ハルヒ「さっさと自分の受験番号の教室を見つけてきなさい」
キョン「ああ、ちょっとまってろ」トテトテトテ
キョン「本名のアイウエオ順か…さて、俺の教室はここだな、一旦戻るか。ん?あれは…」
キョン「岡部先生ー」
岡部「おお、キョンか」
キョン「どうしたんですか」
岡部「どうしたもこうしたも、一応俺も担任だからな、何かあるといけないから来てるんだよ」
岡部「まあ、なんだ今日は頑張れよ。ほとんど心配はしていないんだがな」
キョン「俺としては結構不安もありますけどね…」
岡部「気楽に、とは言わないがあまり緊張せずに受けてこいよ。今のお前ならセンター試験くらいなら大丈夫だ」
キョン「はあ、ありがとうございます」
岡部「それよりも、谷口が心配でな。あいつ見てないか?」
キョン「いえ、今日はまだあってませんけど…」
岡部「そうか、まあ俺は入り口の辺りで探してみるか。じゃあな」
キョン「担任教諭も来るんだな。まあ、谷口が心配なのは同感だが、人の心配ばかりしていられないしな…」トテトテトテ
ハルヒ「教室は見つかった?」
キョン「ああ、どうやら全員別々の教室らしいな」
長門「五十音順では全員バラバラだから仕方ない」
古泉「本名不詳の方もいますしね」
キョン「なにか言ったか?」
古泉「いえ、なにも」
ハルヒ「じゃあさっそく教室に行きましょ。教室の温度に体を慣らしておくことも大切だわ」
各々の教室に入り軽く復讐などしていると、一時間なんてあっという間のようだ。
試験官が入ってきて注意事項の説明の後、問題用紙が配布された。
……
休み時間にトイレに行ったりはしたが、周りに知り合いもおらずほとんどの時間を席について過ごしていると、あっという間に一日目は終了した。
ここで、朝ハルヒに言われた注意事項を思い出していた
ハルヒ「いい?今日音楽プレーヤーを持ってるなら試験終わったらすぐに、耳に突っ込みなさい」
ハルヒ「一日目が終わってすぐに答え合わせをするなんて愚の骨頂だわ。聞こえないようにしときなさい。マイナスにしかならないから」
ハルヒ「終わったことなんて振り返らずに、常に前だけをみていないといけないのよ!」
まあ、ハルヒの言っていたことには一理ある。というか受験関連のアドバイスに関してはあいつは至極まっとうなのだ。
そういうわけで俺はプレーヤーを再生して周りの声が耳に入らないようにしていた。
エイゴナンカシテタヨネ
コクゴノサイゴノコタエハ4ダロ
ネエソコノエーランクマイナーノキミチョットコノアトオチャシナイ?
キョウカノトコロマークシタッケ
ボクトケイヤクシテマホウショウジョニナッテヨ
リスニングキコエニクカッタナ
とまぁ、こういった雑音が聞こえないのは確かに良いことであろう。
すぐに明日の教科に意識を切り替えなければいけない。
ハルヒたちと帰る時も明日の教科の予想などをして過ごしていた。
翌日。同じように集まって教室に向かい、同じように試験を受ける。
文系の三人は理系の古泉よりも終わるのが早いのだが、まあ、先に帰るのも可哀想なので待っておいてやることにした。
ハルヒ「さて、明日の新聞で答え合わせをするだけね」
キョン「まあ、そうだな。手応えはどうだ?」
ハルヒ「そうね。簡単すぎて手応えがないくらいね」
長門「心配は無用」
まぁ、この二人、そして古泉も大丈夫だろう。問題になるのは俺くらいなものだ。
二次試験の勉強をしつつ待っていると、全教科を受けて古泉が帰ってきたのは辺りが暗くなってきた頃であった。
キョン「よう、古泉どうだった?」
古泉「どうでしょうね。取りこぼしは無いと思うのですが」
いつもの微笑で答えるが、まあこの様子なら大丈夫なのだろう。
ということは問題は俺だけか…。
そして、翌日。
今日は学校への登校義務が生じている。センター試験の答え合わせはクラスで行われるためだ。
まあ、焦らしていても仕方ない。センターの試験は以下のとおりであった。
国語 182/200
英語 170/200
数学 164/200
世界史 96/100
現社 78/100
生物 82/100
合計 770/900
つまり、京大のボーダーを超えて二次試験を受けられることがほぼ確実なものとなったということだ。
キョンつええ
208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:36:11.11:5qehNlGg0谷口「おいキョン。おまえどんな魔法を使ったんだ?」
キョン「なんのことだ?」
谷口「お前が国木田より点が高いなんて信じられん。驚天動地だ」
キョン「いきなり人を捕まえておいて失礼な事を言うやつだな。そういうお前は何点くらいだったんだ?」
谷口「まあ、六割前後…ってとこか。知り合いからもらったルーレット付き六角鉛筆でだいぶ稼げたからな」
キョン「出願はどうするんだ?」
谷口「まあ、愛媛大学、高知大学あたりだろうな。まさか四国に行くことになるとは…」
キョン「四国の人に謝ってこい。四国だってお前を受け入れたいわけじゃないだろうよ」
岡部「おい、キョン」
キョン「ん?じゃあ、谷口また後でな。なんでしょう」
岡部「出願だが、どうする?」
キョン「どうとは?」
岡部「前期は京都だろ。中期後期をどうするのか。ってことだよ」
キョン「この前出しておいたところで行こうと思うんですが」
岡部「中期都留文、後期岡山か?まあ、後期で神戸あたりでもいいんだろうが安全策でいくか」
キョン「はい。前期で終わればいいんですけどね」
岡部「まあ、前期受かってても中期の試験はあるからな。じゃあこれでいいんだな。願書は早く取り寄せろよ」
ちなみに、SOS団の他のメンバーの点数も言っておこう。
ハルヒ 836/900
長門 900/900
古泉 829/900
…はっきり言おう、化物か?東大でもA判定が出るんじゃないかという点数ばかりだ。
まったく、俺の肩身が狭い。
その後も、残された僅かな時間を勉強に費やした。
一ヶ月なんてもうあっという間だ。
まるで受験生とそれ以外の人間では時間の体感速度がぜんぜん違うのではないだろうか?
俺が見ていない間に時計の針は通常の何倍ものスピードで回っているのではないかという疑問さえ生じる。
この間に全宇宙を揺るがすような大事件が発生していたら発狂か過労死していた自信さえあるね。
まあ、何事もなく時間は進む…
そして、いよいよ二次試験前日である。
俺達SOS団は全員同じビジネスホテルに泊まることとなった。
とりあえず、ここでも会場の下見に行っておくことにした。
ハルヒ「へえ、やっぱり大学って広いのね」
キョン「北高と比べるのは却って失礼ってもんだな。文学部の受験会場はここだな。中には入れないか…」
ハルヒ「まあ、そりゃそうよね。次は古泉くんの会場も見ておきましょ」
キョン「しかし、結構人がいるんだな。みんな聡明そうに見えるぜ」
ハルヒ「全員そんなものよ。あんたのアホ面でも他の人から見れば賢そうに見えてるかもしれないわよ」
キョン「アホ面て…」
会場を見てまわるのにさほど時間は必要ではなかった。
すぐにホテルに帰り、明日に向けて少しでも勉強である。
センター試験の時同様、早めに寝て、早めに出発である。
ホテルの自室で準備を整えていると、携帯の着信音が鳴った。
見てみると谷口、国木田両名からのメールであった。
国木田『いよいよ今日だね。キョンも頑張って』
谷口『今日は頑張れよ。京都に受かったら京美人の女の子紹介してくれ』
持つべきものは友である。二人に激励のメールを返信しておいた。まあ谷口にはみかん美人を見つけて紹介してもらうことにしよう
4人で連れ立って大学に向かう。俺は少なからず緊張していた。当然だ。
大学前には様々なサークルの勧誘や看板があり、多くの受験生の波と混ざって大混乱の様相であった。
これでも早く出発したつもりだったのだが。
ハルヒ「やっぱりみんな早いのね。こんなに混んでいるとは思ってもいなかったわ」
古泉「明日はもう少し早く出たほうがいいですかね」
人ごみに押されつつ、大学入口で理系の古泉とは別れ、俺とハルヒ、長門は文学部の受験会場に向かった。
ハルヒ「ここまで来ると、だいぶ人も少ないのね」
キョン「そもそも、サークルや下宿の勧誘に混じってなんで予備校も宣伝してるんだ?いくらなんでも無神経だろ」
ハルヒ「そのくらい商魂たくましくないとやっていけない業界なのよ」
ちなみに、今回はハルヒ、長門とも同じ教室での受験である。
同時に願書を提出したためであろう、受験番号は3人続きである。俺が76、ハルヒが77、長門が78であった。
長机の両端に受験番号が貼ってあり、そこが自分の席である。
すでに教室の半分ほどは埋まっており参考書などをめくっている。
俺達も席につき、最後の抵抗を見せることとした。
ほどなく試験官が登場。
携帯電話の電源を切るように言われ、その他もろもろの注意事項を受けてまずは国語の試験からである。
一時間目・国語
キョン(さて、まずは評論っと…何々…時間という概念について?)
キョン(ふふ、おそらく受験生で唯一の時間遡行を経験したであろう俺に時間について答えさせるなど愚の骨頂…)カキカキ
キョン(小説は…なるほど、ファミレスでバイトしている高校生二人の恋物語ね…)
キョン(……男性恐怖症の女子がミニコンの男子をボコボコにする…って、これはいわゆるボコデレ?長門とやったとこじゃないか)
キョン(小説は例年に比べるとかなり簡単だったな。古文は…)カキカキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(まあ、こんなもんだろ。滑り出しは順調だな)
ことごとくアニメネタか
222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:46:40.33:5qehNlGg0二時間目・英語
キョン(まずは、英作文からだな。えーっとまずは会話形式の作文か
『騙してたのね』
『僕はヤクルトレディになってくれってきちんとお願いしたはずだよ』
『実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど』
『どうして言わなかったのよ』
『聞かれなかったからさ。知らなければ知らないままで何の不都合もないからね』
…なんだこの既視感は。ハルヒの例文に出てきた悪徳セールスマンにそっくりじゃないか)
キョン(えーっと、もうひとつは…こっちも会話形式?珍しいなんてものじゃないな。京大が両方共会話形式なんて
『ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を!英雄がやってくるまでの場つなぎじゃねえ!
主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ!他の何者でもなく!他の何物でもなく!
テメエのその手で、たった一人の女の子を助けてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!
ずっとずっと主人公になりたかったんだろ!絵本みてえに映画みてえに、 命を賭けてたった一人の女の子を守る、大道芸人になりたかったんだろ!
だったらそれは全然終わってねえ!! 始まってすらいねえ!! ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!
手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、ジャグラー!』
長っ!?なんだこの説教臭い文章は…会話というかしゃべり倒してるだけじゃないか。さて長文…
キョン(さて、長文長文…)カキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(疲れたが、とりあえず全部答えきったぞ…まぁ一日目はこんなもんだろ…)
ハルヒ「さあ、今日のことは忘れて明日の準備よ!」
キョン「明日は数学と歴史だな…。国語と英語を並べて来るってな」
古泉「そちらの国語はどんなでした?」
キョン「時間の概念とボコデレの話だよ。そっちは?」
古泉「神はいるのかどうかについての文章でしたよ。小説は高校の近くのアパートに住む女子高生4人の話でした」
キョン「なんか、そっちのほうがおもしろそうだな」
古泉「いえいえ大変でしたよ…」
しゅわしゅわーwwwww
226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:49:24.98:5qehNlGg0ハルヒ「じゃ、また明日ね。おやすみ~」
キョン「ああ」
ビジネスホテルに来たときまで今までのように俺の部屋で勉強していたのである。
惰性なんだろうな。まあ、いつもと違う環境だからペースメーカーがいてくれるのはありがたい。
明日でいよいよ京大受験は終了となる。受験は続くが一段落だ…
などと考えるまもなく、個体の水銀が泥に沈むように深く眠っていった
京大文系1日目は国数だったとおもう・・・
まあどうでもいいけどww
232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:54:33.97:mh2KqVP10まあどうでもいいけどww
>>228
そうだったか…
今年受けたのにもう忘れてるんだわ
そして申し訳ないんだが書きだめはここまで
ペースは遅くなると思うけど朝までは持たないだろうから今晩じゅうに完結させる
230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 01:52:48.83:5qehNlGg0そうだったか…
今年受けたのにもう忘れてるんだわ
そして申し訳ないんだが書きだめはここまで
ペースは遅くなると思うけど朝までは持たないだろうから今晩じゅうに完結させる
翌朝。朝早いのに目覚めは良好だ。
ホテルのレストランでバイキング形式の朝食をとり、地下鉄にのって大学に向かう。
古泉と別れ、昨日と同じ席に着く。昨日ほどの緊張はない。
ハルヒ「まあ、今日で最後だからね。頑張っていくわよ」
言われなくたってそのつもりだ。後、二教科で京大受験は終了だからな。
長かった受験もこれで一段落なのだ。
大学前で古泉と別れる。
古泉「では、僕はこちらなので…。頑張ってください」
試験開始直前。長門から声をかけられる
長門「あなたなら大丈夫。…頑張って」
真後ろの席のハルヒは特に激励の声援はなかったがそれでもいい。
なにしろ8ヶ月ほぼ毎日勉強を教えてもらってきたのだ。十分だ。
そして、二日目が始まる…。
一時間目・数学
キョン(最初に5問全部見て解けそうなものから…だったな…)
キョン(本当に回転体の体積は出ていないな。じゃあ…この証明とかなら解けそうだ)
……
キョン(……おいおい…5問中4問が最後まで解けたぞ。計算ミスはないはずだし…)
キョン(まさかの4完!?いや、落ち着け。5問目を解くのだ…)カキカキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(5問目の半分くらいまで解けたぞ…おいおい、今年の数学は易化しすぎだろ…)
二時間目・日本史
キョン(あとは日本史のみか…)
キョン(ここは…鶯谷…豊郷…白川郷…箱根…)
キョン(今年の地名は簡単だな。さて、大問3は近現代史か)
キョン(なになに、ゼロ年代のサブカル文化に大きく寄与した…ナントカカントカ…フラクタルの監督は誰か?)
キョン(いやいや、なんだよこの問題…でもどこかで聞き覚えのある…)
キョン(えーい、空白はいかんな。わからんときはヤマ勘でも…?)
キョン(そうか、山本寛だな。なるほどヤマカンで思い出したのか。ラッキーだな)カキカキカキ
キーンコーンカーンコーン
キョン(よし、記述問題も全部埋められたな。いい感触だ)
キョン「よし、終わったな」
ハルヒ「そうね。まあ、少し気を抜くくらい許してあげるわ」
キョン「ほう、珍しいな」
ハルヒ「京大を受けられるくらいにはなったんだから中期後期も大丈夫でしょ」
ハルヒ「さすがに疲れたわ。早く帰りましょ」
キョン「ああ、そうだな」
持てる力の全部は出し切った。すべての教科で満足のいく回答だ。
長きに渡る受験勉強が思い出されるが、俺もハルヒ同様、疲れていた。とっとと帰って眠るに限る。
京都から兵庫・西宮まですぐに帰り、家に着くと眠ってしまった。
よほど気が張っていたのか、長門や古泉との会話も覚えていない
その後は、中期の小論文、後期の科目の勉強をしていたのだが、京大の合否を待っている間の時間はあっという間に過ぎて言った。
都留文科大学の中期試験は地方受験であったし、小論文のテーマは
「友達が少ないことを自負する人間の集まりは友達でないのか?」
という比較的簡単なものであった。おそらく大丈夫だろう。
ハルヒや古泉、長門も一応、後期試験はあるのだが、中期試験はうけていない。
古泉はどこかの私立を一つ滑り止めで受けたらしいのだが、まあ、古泉も京都は大丈夫だと思う。
中期試験の翌々日が京都大学の合格発表だった。
文芸部室のパソコンで全員で確認しようということとなり、その日を迎える
3月中頃の水曜日。正午十二時が京都大学の合格発表であった。
ハルヒ「さて、じゃあそろそろね。アクセスするわよ」
ハルヒ「そういえば、文学部と理学部どっちからにする?」
古泉「では、僕の方からでもいいですか?」
ハルヒ「そうね。じゃあ、先に古泉くんのほうから見ましょう」
ハルヒ「何番だっけ?」
古泉「79番です」
ハルヒ「じゃあ、見るわよ」カチッ
ドキドキ
250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:16:26.72:5qehNlGg0…
…
…
65
66
68
70
71
72
75
79
82
83
84
89
…
…
ハルヒ「あったわよ!古泉くん!」
古泉「いやあ、本当ですね。良かったです」
感動の薄い奴だな。まあ、古泉なら大丈夫だろうとは思っていたけどな。
まあおめでとう、古泉。
ハルヒ「じゃあ、次文学部ね」カチッ
いいかんじだ
255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:18:59.94:F0pGzR+e0
いやだ…トラウマが蘇る…
257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:20:06.19:5qehNlGg0憎いことに文芸部室の回線はあのコンピ研の部長が整備してくれていたおかげで非常に早いのだ。
あっというまに数字が画面を覆う
………
………
29
35
36
37
39
………
………
思えば、ハルヒが俺の進路希望調査票を書き換えなければ、こんなことにならなかったんだな
………
………
41
46
52
56
57
………
………
長くて辛かったがそれでも今はそれで良かったと素直に思える自分がいる
…、ありがとよ。ハルヒ。
77.76.78
260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:22:39.10:5qehNlGg0………
………
61
68
71
72
73
74
75
77
78
79
81
………
………
ハルヒ「…え?」
長門「……」
古泉「そんな…」
キョン「……」
ここで俺の記憶は一旦途切れることとなる
そうだな、目の前が真っ暗になるってことが本当に起きるとは思わなかったな
おいいいいいいい!!
264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:23:57.32:LnbL0M1/0
あああああああああああああ
267: 忍法帖【Lv=29,xxxPT】 :2011/07/03(日) 02:24:18.77:qpcJWoa10
トラウマが...
268: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 :2011/07/03(日) 02:24:36.41:Rn1x1Y5t0
くそおおおお
270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:24:47.86:k26kO5B20
俺もトラウマがあああああああああ蘇るうううううう
276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:26:30.65:F0pGzR+e0
う…うわあわああああいやだああああ
280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:27:12.38:5qehNlGg0その後のことはあまり覚えていない
古泉曰く、普通に振舞っていたものの俺から薄ら寒いオーラを感じたということだ。
その翌日、岡山に出発し、後期試験を受けた。
ハルヒは着いて来ると言ってくれたが俺が制した。
それは…なんというか、やめて欲しかったからな。
集中力が切れた状態で後期試験を受けて、結果を待つ。
岡部や谷口の心配げな声も俺の聴覚器官を素通りしていった。
なんとなくぼーっと夕食を食べていたときのことだ。
ママキョン「ねえ、キョン。なんならもう一年、やってもいいのよ」
キョン「いや、いいよ。まだ中期と後期の試験結果も返ってきてないんだから」
パパキョン「家計に気遣っているのなら、そんなことは気にしなくてもいいんだぞ」
キョン「いや、本当にいいって…、じゃあ、ご馳走様」
パパキョン「大丈夫か、あいつ」
ママキョン「もし中期・後期がダメなら浪人はさせてあげましょ。あれじゃ…キョンが報われないわ…」
パパキョン「そうだな…あれだけ必死にやってたんだからな。それに比べて、このaicezukiという奴は…」
tv『…容疑者は仙台の予備校生で現在京都府警が事情聴取を進めております…』
tv『京都大学では、このカンニングによる威力業務妨害を視野にいれて立件を…』
tv『なお、このカンニング容疑者は合格点に達していなかったため、繰り上げ合格はないとのことです』
aicezukiwww
295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:33:59.82:5qehNlGg0中期・後期の結果が返ってきた。
都留文科大学:合格
岡山大学:不合格
まあ、予想できていたことだ。
岡山に行ったときの精神状態を考えればな。あれで合格したほうが不思議なものだ。
なお、国木田は神戸大学に無事合格。谷口は愛媛大学に合格したらしい。
TVでは連日京大カンニングについて報道していたが、東北の震災以降、ぱったりと続報はなくなった。
浪人するか、それとも現役で山梨に行くか…思い悩んでいたところ
プルルルルルルル
着信を見るとハルヒであった。
ハルヒ「もしもし、キョン?」
キョン「おう、ハルヒか。どうした?」
ハルヒ「いや…別になんということはないんだけど…」
キョン「そうだな。まあ、俺はもう大丈夫だ。気にするなよ」
ハルヒ「でも…まさかキョンが…」
キョン「すまんな。ちょっと今立て込んでるんだ。あとでかけ直す」ガチャッ
やはり、しばらくは話していてもぎこちない。
アレだけ世話になっておきながら、自分でもひどい人間だとつくづく思う。
しかし、少しだけ許してくれ。僻地に行くか。もう一年するか…
その結論が出るまではな
…結論から言おう。
その電話の日に徹夜して思い悩んだ結果、俺は都留文への進学を決めた。
公立大学だし、そんなにわるいところでもない。
その旨を両親、岡部教諭にも伝えた。
両親は俺の意思を尊重してくれた。
岡部は浪人も勧めてくれたが俺の意思が固いことを知ったのだろう
岡部「頑張れよ。お前なら、何が起こっても大丈夫だ…。まあ、たまには顔見せに来い」
と言ってくれた。
谷口や国木田、そのほか多くのクラスメートが来年の身の振り方を考えていた頃…
俺もいろいろな準備に追われていた。
そんなある日、意外な人物が俺の前に現れる。
朝比奈さん(大)である
ktkr
309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:42:32.02:VVX5I6uv0
おっ
なんか動き出した
312:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:44:15.79:5qehNlGg0なんか動き出した
朝比奈さん(大)「キョンくん、久しぶり」
キョン「朝比奈さん(大)!?どうしてここに?」
部屋の整理をしているといきなり目の前に現れたのだ。
朝比奈さん(大)「キョンくんに伝えることがあるんです。ううん、今すぐテレビをつけてもらえるかしら?」
キョン「テレビですか?…いいですけど…」ポチッ
tv『内閣は…法案を…自衛隊が…。では次のニュースです』
tv『今年の京都大学の二次試験での不正行為を行った学生についての続報です』
まさか......
315: 忍法帖【Lv=6,xxxP】 :2011/07/03(日) 02:45:32.85:Rn1x1Y5t0
これは
319:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:50:42.49:5qehNlGg0tv『京都府警の取り調べに対し、容疑者は複数人での反抗を示唆。』
tv『京都大学とともに調べを進めると、数十人単位での犯行の可能性があるとのことです』
tv『これにより、合格者の中からも失格者が出る模様で、今日の午後…、えー、速報です。京都大学で会見が開かれている模様です』
画面が切り替わり、どこかの部屋で会見が行われているようだ
パシャパシャ
学長「えー、このたびの不正行為に関して、さきほど合格者の中からも不正行為を行ったものがいることが判明しました」
学長「現在、その総数は42人で、この者を失格とし、文学部の定員まで繰り上げて合格者を改めて発表することとなりました」
学長「このたびは……」
えーっと、つまりどういうことだ?
なぜ朝比奈さん(大)が?
朝比奈さん(大)「もう今言ってしまいますけれど、キョンくんは繰り上げ合格なんですよ」
キタアアアアアアアアアア
322:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:52:21.72:P3dAbY3v0
ほああああああああ
327:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:54:24.80:5qehNlGg0なんて言った?
一体、どういうことだ?
朝比奈さん(大)「今、これをキョンくんに伝えるのも既定事項なんです」
キョン「どういうことです?一体何がおこっていたんです?」
朝比奈さん(大)「キョンくんはこの時間平面を作り変えようとしている未来人を知っていますよね?」
俺が思い出したのは藤原と名乗った未来人だ
朝比奈さん(大)「ああいった、未来人はいくつもの派閥があるんです。」
朝比奈さん(大)「涼宮さんを殺すという物騒な方法をとらなくても、キョンくんの人生を狂わせてしまうことで時間平面を作り変えようとした人間もいたんです」
朝比奈さん(大)「その一派が今回、京大受験に潜り込んで、不正を行い、キョンくんが合格的内容にしたというわけです」
>>327
合格できないようにした
か
3回くらい見直したぞ
330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:55:35.79:FAD/1SmU0合格できないようにした
か
3回くらい見直したぞ
もっと未来的なカンニングの仕方しろよ未来人は
336:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 02:58:31.84:5qehNlGg0キョン「まってください。どうして俺なんです?それならハルヒを不合格に追いやったほうがいいんじゃ?」
朝比奈さん(大)「ふふ、涼宮さんは今回一番の成績で合格していますよ。
朝比奈さん(大)「220人もの未来人がこちらに来れば可能ですけど、それほどの勢力はなかったようですね」
キョン「えーっと、じゃあ、次の質問です。どうして急にわかったんですか?」
キョン「最初から試験に紛れさせなければ、なにも起きなかったんじゃないですか。これも未来の既定事項ってやつですか?」
朝比奈さん(大)「私にも理由は不明です。今回の反逆は実に狡猾でした」
朝比奈さん(大)「実際に京都大学にいた古泉くんも長門さんも気がつかなかったんですから」
朝比奈さん(大)「詳しいことは禁則ですが…、これもネタを明かしてしまうと涼宮さんの力ですよ」
キョン「ハルヒの?」
朝比奈さん(大)「こちらの時間軸で涼宮さんから電話がかかってきたときがあったでしょ?」
キョン「ええ」
朝比奈さん(大)「そのときにどういう具合にか、反逆を企てたグループの存在が明らかになったんです」
朝比奈さん(大)「まぁ、これもわかるように伝えられないのだけれど」
朝比奈さん(大)「それでその人たちを未来人が始末したというわけです」
キョン「始末ですか?」
朝比奈さん(大)「まあ、未来に強制送還したんです。それでこちらの警察でも犯行がわかったんでしょう」
キョン「なんだかよくわかりませんね」
朝比奈さん(大)「そのあたりはご都合主義に考えていただければいいです」
朝比奈さん(大)「明日には合格の連絡が来ます。その後はキョンくんに任せます」
朝比奈さん(大)「じゃあ、こっちのわたしとももうしばらくよろしくね」
そう言うと朝比奈さん(大)はすぐに消えてしまった
ずいぶんと忙しい人なんだな…
朝比奈さん(大)の言ったとおり、翌日には合格繰り上げの連絡が入った。
そのほうを受けて母親は感涙にむせぶこととなったし、連絡のはいった岡部教諭も似たような反応だった。
それよりも、俺はすぐさま連絡しなければならないやつがいる
プルルルルルルル
キョン「もしもし、ハルヒか?」
ハルヒ「キョン?どうしたのよ」
キョン「どうしたもこうしたもあるか。テレビ見てないのか?」
ハルヒ「いちいち見ちゃいないわよ。どうしたの?」
キョン「俺、京大に繰り上げ合格だ」
ハルヒ「…は?何ですって!?」
キョン「細かいことはいいんだよ。とにかくこれで俺も晴れて京大生だ」
ハルヒ「…本当なのね?」
キョン「ああ、間違いない」
ハルヒ「そう…」
キョン「なんだよ。不満か?」
ハルヒ「そんなわけないじゃない!!だって、信じられなくて…」
キョン「俺もまだ夢見心地だよ」
キョン「なあ、ハルヒ」
ハルヒ「何よ」
キョン「まあ、改めて言うがお前のおかげだよ。ありがとう」
ハルヒ「何よ急に改まって」
キョン「お前がいなけりゃ、今頃俺はぜんぜん違う道を歩いていただろうからな」
キョン「言いたいことは色々とあるが…まあ、今はありがとうとだけ言っておく」
ハルヒ「何よ急に…」
ハルヒ「まあ、私も言っておくわ」
ハルヒ「おめでとうキョン」
ヒャッホウウ
350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:13:11.65:h2uAC46Gi
うっほほい
351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:14:43.87:5qehNlGg0その後のことを少しだけ語ろう。
7月末。
ハルヒ「まったく、あの教授声が小さいのよ。マイクが全然拾ってないじゃない」
キョン「それよりも聞こえても全然わからんのだがな」
長門「それより今日の日替わりランチが売り切れる前に学食に」
古泉「長門さん、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
晴れて京大生としての生活を送っている俺だ。
授業は難しく、間近に控えたテストに戦々恐々としている
キョン「出席はギリギリ足りていると思うが…、テストが不安だな。単位落としそうだ」
ハルヒ「何よ?そんなにひどいの?」
ハルヒ「仕方ないわね。私が教えてあげる」
おめでとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう
よかったよ乙
358:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:17:19.19:5qehNlGg0よかったよ乙
まず、こんなに終わるのが遅くなってすみません。
やっぱり完全に書き溜めしてからじゃないとだめだな…
そうそう、合格的内容→合格できないよう
であってます。すみません
そして、途中で感づいた人がいるかもしれないけど、元ネタは俺の受験体験記です。
山梨僻地発言には怒らないでください。
俺も今住んでますから。
京大の点数が返ってきて衝動的に書いた。後悔はしてない
質問があれば答えます
360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:18:18.84:STkoQqRCOやっぱり完全に書き溜めしてからじゃないとだめだな…
そうそう、合格的内容→合格できないよう
であってます。すみません
そして、途中で感づいた人がいるかもしれないけど、元ネタは俺の受験体験記です。
山梨僻地発言には怒らないでください。
俺も今住んでますから。
京大の点数が返ってきて衝動的に書いた。後悔はしてない
質問があれば答えます
乙
初めてハルヒを可愛いと思った
361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:18:49.46:mX6wdAnc0初めてハルヒを可愛いと思った
あー勉強しねーとな
362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:18:54.75:p105mVWi0
作者は超ぎりぎりで落ちたの?
365:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:20:18.35:5qehNlGg0
>>362
超ギリギリってほどじゃないよ
合格最低点に10点足りなかった
ちなみにキョンの京大試験の様子はほとんど俺のまま
日本史だけは大幅に変えたけど
日本史が壊滅したんだわ
366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:21:51.93:VVX5I6uv0超ギリギリってほどじゃないよ
合格最低点に10点足りなかった
ちなみにキョンの京大試験の様子はほとんど俺のまま
日本史だけは大幅に変えたけど
日本史が壊滅したんだわ
>>365
4月当初に偏差値50しかなかったのか?!
369:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:25:25.42:5qehNlGg04月当初に偏差値50しかなかったのか?!
>>366
いや、キョンの京大試験の二日間の様子だけはほとんど俺の様子ってこと
俺の受験勉強は高一から京大志望で三年間勉強してたんだよ
だからせめて俺のかわりにキョンに合格させてみましたっていう悪ふざけかな
370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:26:20.87:7rNtwVnA0いや、キョンの京大試験の二日間の様子だけはほとんど俺の様子ってこと
俺の受験勉強は高一から京大志望で三年間勉強してたんだよ
だからせめて俺のかわりにキョンに合格させてみましたっていう悪ふざけかな
現在偏差値42の高3は頑張ってもやっぱりFランにしかいけないか?
371:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:28:17.21:5qehNlGg0
>>370
Fランって私立下の方のことだよな?
今から頑張れば国公立で受かるとこはあるはずだよ
では、朝からバイトあるので今日はそろそろ寝ます
読んでくれた人本当にありがとう
375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/03(日) 03:51:09.31:ViAgLHrT0Fランって私立下の方のことだよな?
今から頑張れば国公立で受かるとこはあるはずだよ
では、朝からバイトあるので今日はそろそろ寝ます
読んでくれた人本当にありがとう
お疲れ
勉強がんばるよ
勉強がんばるよ
コメント 18
コメント一覧 (18)
キョンが受かったのも結局ハルヒの力だろうし、相変わらず世界がハルヒに優しすぎる
3年間で取ったこと無い点をとってしまった
ありがとう
東大と京大、問題の難易度でいったら京大の方が明らかにむずいんだよなぁ。
高1のときに京大の過去問やってあまりの難しさに京大諦めたわ。当時はC判定だったけど絶対無理って思った
勉強すっか
かなり優秀じゃないか!
現役生の時はあのときで本気で挑んだ。そして夢を諦めきれずに現在は浪人生…。
この時期になって決意が薄らいできていたときになんと素晴らしいSSが!
またモチベーションが高まってきたよ、作者と管理人さんに感謝感激。
余談で、センター試験は共通一次の時代から900点満点は出たことがないそうな…
流石は長門と言ったところか。
勉強開始前の模試だと偏差値50越えてたくらいだったと思う
もう10年前の話だけど
あの頃の自分は才気に満ちあふれてたとつくづく思う
こんなに感情移入して読めたSSは初めてだ。
俺も去年は夏休みはガチで12時間とかやってた。
これに書いてる心構えは、俺は正しいと思う。
頑張れ受験生。
驚きだわ
私立希望かと思ってた
別に春時点で教師に出す志望校とかどうでもいいんだよなぁ、経験ないのはいいけど考えて
ハルヒと古泉は実戦模試B判ならちょっと焦れよ、と思った。てか模試医Aじゃないのに首席は運よすぎやな、能力か
あとセンター重視し過ぎ。例えば理系なら国社は7割でおkですお
誰かあの漫画を俺の記憶から消してくれえ