-
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 01:50:47.05:lVwBbUSo0
㌧
男「……」
「……」キョロキョロ
男「気付かないふりするか」
「……」ウロウロ
男「……(邪魔だな畜生)」
「……」
男「邪魔」
「え」
男「あ……んーごほんごほんっ」

【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」

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【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?

韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 01:53:53.98:lVwBbUSo0
「……」
クラスメイト「おい、消しゴム貸してくれねぇ?」
男「いいよ」
クラスメイト「サンキュー」
男「ん」
「……」 ジー
男「……」 チラッ
「!」 ビクッ
男(やべぇ目あった)
「……」
男「ちょっとトイレ行ってきていいですか、先生」
先生「行っトイレ」
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 01:56:23.24:lVwBbUSo0
ガララ
男「……」
「……」 スゥー
男(マジかよ…)
「ねぇ」
男「!」
「ねぇちょっと」
男「……」 スタスタスタ
「ねぇってば、ねぇ!」
男「……」 スタタタタタタ
「あ!こ、こらっ!待ってってば!」 スゥー
男子トイレ
男「よし」
ジョボボボボ
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 01:59:20.67:lVwBbUSo0
男「ふー(意外と出たな)」
ニュー 「ねぇ?」
男「ううぇあっ!?」
「あー!!やっぱり見えてるのね!?」
男「……ご、ごほんっ。げほげほっ、何故かむせた。けほっ」
「え……むせただけ?…あれ?」
男(イケる)
男「あー風邪かなぁ、なんだろ」
「……」
男(つか男子トイレ入ってきてんじゃねぇよ)
「……むー、なんなのよ」
ジャバジャバ
男(こっちのセリフだよくそ)
「せっかく……あーむかつく!この……」
男「?」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:03:59.76:lVwBbUSo0
「この……租チン野郎!!」
男「!!!」
「あーもう最悪……せっかく…あーもう、勘違いとかさいあく……」
男「……」 ジャバジャバ キュッ
「あーイライラする……この租チンやろう!虚チン!男として最下位!!」
男「……」 プルプル
「租チン!租チン!そーちーん!租チン!租チン!そーちーん!」
男「……」 プルプルプル
「あんたみたいな包茎租チン野郎は一生童貞だから生きてる価値なし!今すぐ死んじゃえばいいのよ!」
男「じゃぁかましぃんじゃごら゛ああああ!!!!」
「ひぃぃ!!???」
男「人が黙って聞いてりゃぶっ飛ばすぞこの糞アマがああああ!!!!!!!」
「や、やっぱり……見えて、るんだ」
男「あ」
「」 ニヤッ
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:08:02.98:lVwBbUSo0
男「……」
「ふふん? 見えてるのね?そうなのね?」
男「俺は租チンじゃねぇ!!!」
「見てないわよ」
男「え?」
「カマかけたのよ。ふふっ」
男「てっめこの野郎」
「あんたみたいな男は過去にもいっぱいいたんだから。私が見えるのに気付かない振りして……
そんな奴らみんなに効果覿面なのが、さっきの租チン攻撃ってわけ」
男「……」
「本当に見てないわよ?」
男「……ハメられた…」
「数年ぶりの話し相手、見ーつけた♪」
男「は?ふざけんな」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:14:12.65:lVwBbUSo0
「え?」
男「幽霊と話すわけねぇだろ、俺に関わるな」
「え……だって今までの男は皆私のこの美貌に惹かれて恐れつつも話をしてくれたのに……」
男「不細工が何言ってんだ」
「は、はぁ!?私不細工じゃないし!!超超可愛いんですけどっ!?」
男「気持ち悪いんだよ不細工」
「はぁ!?この大きな二重の瞳、シュッとした鼻!完全な黄金比からなる顔!完全なるストレートロングヘア!
幽霊だから劣化もせずずぅっと綺麗!そのこの私に不細工ですってぇ!?ナメた事言わないで!」
男「うるせぇんだよ貞子が」
「その言い方は一番ムカつくわ……死ね!!」
男「とにかく俺にもう2度と話しかけんな」
「あ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
男「……」 スタスタスタ
「あ……」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:18:21.96:lVwBbUSo0
ガララ
先生「遅いぞウンコか」
男「女子のみなさんにきかれると恥ずかしいので言いません」
先生「ウンコか」
男「……」
クスクス
クラスメート「お前墓穴掘りすぎだろ」
男「いや先生が何も言わなかったらよかったんだろ」
クラスメート「お前のあの返答の方がだめだね」
男「まぁ振り返れば確かにキモかったか」
クラスメート「うん」
先生「こらこらそこ話し始めるな、黙って授業聞けー」
男「すいません(全部あいつのせいだ……ったく)」
ニュッ 「……」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:22:34.64:lVwBbUSo0
男「……(うわ、戻ってくんなよ)」
「……」 ジーー
男(憤怒の形相で睨んできてるし……)
「ふぁっく」
男「……」
「……」
「……」 クルクルクル
男(先生の周りで回ってんじゃねぇよ)
「……」 クルクルクルー
男(集中できねぇー、マジうぜぇ)
「……ふふん♪」
男(なんだよあのどや顔は)
「む…」
男「……」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:26:05.65:lVwBbUSo0
「……ふふっ」 スッ
男(え、黒板消し?持てる…のか?)
「えい!」 ブンッ
男「!?」
ボフッ
男「げほっ!げほげほっ!!」
クラスメート「男!?」
ザワザワ
先生「なんだー……!? どうした!」
クラスメート「何だじゃねぇよ先生!何で男に黒板消し投げてんだよ!!」
先生「ええ!?」
クラスメート「男が何したってんだよ!……大丈夫かよ男」
男「ぶぇっ…けほっ……」
先生「先生じゃないぞ!?ほんとだぞ!?」
クラスメート「先生以外いねぇだろ!!」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:28:34.97:lVwBbUSo0
クラスメート「ね、ねぇ?さっき黒板消し……浮いてなかった?」
男「……」
ザワザワ
クラスメート「私も……そう見えたんだけど」
ザワワワ
先生「先生じゃないよぉぉぉ!!」 ポロポロポロ
クラスメート「泣いてんじゃねぇよ先生!!」
男「と、とにかく……すみません、トイレ行って来ていいですか?」
先生「う゛ん」
ザワザワ
ガララ
「…………」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:36:59.62:lVwBbUSo0
トイレ
「……ちょっと、やり過ぎちゃった。思った以上にチョークの粉がついててさ」
男「……」 ジャーー
「あ、あそこまでなるとは…ね。あははっ」
男「……」 バシャバシャ
「……」
男「……」 バシャバシャ
「……い、一応。謝っておくわ」
男(一応だぁ?) バシャバシャ
「ごめん」
男「……」 バシャバシャ
「……」 チラッ
男「……」 バシャバシャバシャ キュッ
「……ね、ねぇ?」 ジー
男「さーてと……戻ろう(全無視だな、舐めやがって)」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:40:52.71:lVwBbUSo0
「ぁ……」
男「……」 スタスタ
「ね、ねぇ……」
男「……」 スタスタ
「っ!……ねぇってばっ!謝ってるでしょ!?」
男「……」 スタスタ
「ごめんってば!!」
男「……」 スタスタ
「待ちなさいよ!!止まりなさいよ!!」
男「……」 スタスタ
「止まってよぉ!!!」
ガララッ
男「戻りました」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:45:40.72:lVwBbUSo0
先生「うわああああん男ー何かすまんかったぁぁぁぁぁ!!」
男「え!?ど、どうしたんですか先生」
クラスメート「結局よくわかんなくてさぁ」
クラスメート「浮いてたって絶対!」
クラスメート「私も見た―」
クラスメート「いやいや流石にそれはないだろー」
ワイワイガヤガヤ
クラスメート「って事だ」
男「そ、そっか。いやぁよくわからないな」
先生「なので取りあえず先生が謝っといたあああああ!!」
男「わ、分かりましたから泣かないでください先生」
クラスメート「結構取れたっぽいけどまだちょっと汚れてるな」
男「ま、学校終わったら即効帰ってクリーニング出すよ」
ワイワイガヤガヤ
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:50:34.55:lVwBbUSo0
放課後
先生「きりー れーい 部活ない奴はまっすぐ帰れよー」
ワイワイガヤガヤ
男(諦めたか知らんがあれから教室来なかったな……よかったよかった)
クラスメート「男ーさっさと帰ってクリーニングしたほうがいいぜそれ」
男「分かってるよ。じゃあまた明日な!」
ガララ
「……」
男(……ぇー……いるし……)
「……あ、あの……」
男「……さてとー(帰ろ帰ろ)」
「ま、待って!!お願い!!」
男「……」 スタスタ
「な……何でも言う事聞くから私の話を聞いて!!お願い!!」
男「」 ピクッ
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 02:59:19.14:lVwBbUSo0
「……お願い」
男「……(何やらすかな……くくくっ……)」 クルッ
「あ」
男「……で?」 ボソッ
「お、屋上で。話した方がいいわ、あんたにとってはそうでしょ?」
男「はぁ……」
屋上
男「……」 キョロキョロ
「誰もいないわ、立ち入り禁止だもん」
男「何でお前がキーロックの番号知ってんだよ」
「そ、それはいいじゃない」
男「まぁ……で?」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 03:02:15.25:lVwBbUSo0
「……」
男「……」
「さ、さっきの……ごめん」
男「あーおかげで帰ったらすぐにクリ―ニング行かなきゃなんねぇわ。死ね」
「……もう、死んでる」
男「あ……はっ!だからなんだよ、謝ったら汚れ落ちるのかよ?お?」
「だから、ごめんなさい」
男「……」
男「俺が、お前と話すのはこれが最後だ。二度と俺に話しかけるな」
ポロポロ
男「!?」
「……っび……の」 ヒック
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 03:07:29.30:lVwBbUSo0
男「な、なんだよ……泣いたって…
「寂しいの!!!」
男「!」
「何年も何年も一人なの!私、寂しいの……あんたともっと話したいの!!」
男「……」
「私の話し相手、に、なって、ほしいの……本当に、寂しい、の……寂しい……ヒック」
男「……(あーなんだよ……悲しそうな顔しやがって……)」
「う……うぇぇぇぇ……」
男(あーあ、誰かに聞かれ…ない、か……俺だけか。聞こえるの)
「うぅー……寂しい……辛い……」
男(こいつがいくら泣いても、誰も気付きもしないし慰めもしねぇ……ってか)
「ふぇぇ……お願い……私の、話相手に……なってぇ…」 グスッ
男(……数年間ずっと孤独。真の孤独って奴だったわけか……)
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 03:13:29.31:lVwBbUSo0
「……ふぅぅ……うぇぇぇ……」 ペタン
男「ずーっと、泣いたりして来たのか、お前」
「……」
男「……」
「……ヒック…」
男「……呪ったり、しねぇよな?」
「…しな……ぃ゛」
男「」 ハァー
男「……」 スタスタスタ
「?」
男「……」 ピタッ
「……」
男「お前、学校外に移動とか、できんのかよ」 クルッ
「!……わ、私が見えるなら……誘導、してくれれば……」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 03:18:24.91:lVwBbUSo0
男「そうかよ」
「……」
男「……」 スタスタスタ
「……」
男「話し相手になれば、満足か?」
「……う゛ん」
男「授業中ましてや学校内ではほとんど話さなくてもか?変人に見られるからな」
「……」
男「話すときはここか。俺の家か、だ。そんな極端な2か所でだけなら……だが、それでもいいか?
学校じゃあ基本的にお前を見つけても無視するが、いいか」
「話し相手になってくれるなら……いいよ」
男「……」
「話してくれる……それだけで、いいの」
男「はぁぁ…………」
「…………」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 03:23:07.38:lVwBbUSo0
「……お願い」
男「……取りあえず、今日はもう帰るわ。クリーニング出さなきゃだし」
「う、うん…」
男「……」
「……」
男「また、明日の、昼。ここ、開けといてくれれば……」
「!……うんっ!うん!!」
男「じゃあ」
ギィ
「……」
男「また明日」 ガチャンッ
「……」
「また……明日……」
「…………ふぁぁぁ!」 パァァァ
男(……はぁぁぁ……めんどくせぇ事になっちまいやがった……)
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:14:56.94:lVwBbUSo0
翌日 昼
ガチャッ
男「お、本当に開いてる」
「来たわね!」
男「うぉぉビビった!おどかすな!」
「あんまり遅いから教室に行こうかと思ったんだけど、待っててあげたわ」
男「パン買ってきてたんだよ」
「あ……パン。うん、そっか……そうだよね」
男「……」
「……あははっ」
男「来るっつったろ。心配し過ぎなんだよ」
「うるさい……それより!ねねっ、何から話そうかしら」
男「しらね、取りあえずパン食わせろ」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:17:55.01:lVwBbUSo0
「わ、分かったわ」
男「んぐ……」 モグモグ
「……」
男「……お前、幽霊なのか」
「そう、ね」
男「何で幽霊になんかなっちまったんだよ」
「分からないわよ、そんなの。気付いたら……」
男「ふーん」 モグモグ
「……気付いたら、この学校にいて。それで…ずっと……」
男「あー分かった分かった。辛気臭ぇ顔すんなよ、メシがまずくなる」
「そ、そんな顔してないわよっ!失礼ねあんた!」
男「男だ」
「……失礼ね男!」
男「……あんたでいいや」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:24:07.12:lVwBbUSo0
男「んぐ……それで?お前名前は?」
「……名前……」
男「思いだせないのか」
「……」
男「死因とか分かるのか」
「…ううん」
男「ふーん」 モグモグ
「……」
男「だから成仏できねぇんじゃねぇのか。幽霊って未練があるから残るんだろ」
「そう、なの?」
男「それ以外に理由ねぇだろ。お前の名前思いだせないのと、何か関係あんだろ」
「そうかも…ね」
男「そっかー……じゃあまぁお前でいいか。それか幽霊女」 モグモグ
幽霊女「まんまじゃない!嫌よそんなの!」
男「嫌ならさっさと名前思いだして成仏すりゃいいんだよ、ま、取りあえずそれはいいや。置いとくか」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:28:46.20:lVwBbUSo0
幽霊女「くぅ……何か卑怯よ!」
男「何がだよ、楽しいだろ?会話」
幽霊女「た……楽しい、けど」
男「もっと何か楽しい会話しようか、せっかくだし」
幽霊女「な、なに?」
男「お前、バスト何カップあんの?」
幽霊女「……」
男「……」
幽霊女「バストって、何?」
男「胸だよ胸。乳のサイズ。胸囲はどれぐらいあるんだ?って事」
幽霊女「そ、そそれ楽しい会話なのっ!?」
男「楽しいけど?」
幽霊女「私は楽しくないというか何だか恥ずかしいわよ!!」
男「会話を成立させるためだ。答えたまえ」
幽霊女「わ、分かんないわよ……測ったことない。と、というか測り方も分かんないわよ!」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:40:26.74:lVwBbUSo0
男「測り方分かんないって、お前生きてた時の記憶ねぇのかよ。測っただろ?学校で」
幽霊女「測ってない!学校にも行ってないわ!」
男「ここ学校じゃん」
幽霊女「……知ってるけど?」
男「お前学校の呪縛霊、じゃあないのか?」
幽霊女「違うわよ!」
男「じゃあ、何で学校にいるんだよ」
幽霊女「そ、それは……」
男「それは?」
幽霊女「お、同じ年の子たちが……いっぱい居そうだったから……」
男「……あー」
幽霊女「……」
男「なるほど……寂しかったっつってたもんな」
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:48:12.36:lVwBbUSo0
幽霊女「と、とにかく!学校へは行った事がないの!それは覚えてる」
男「はぁ?でも義務教育だろ」
幽霊女「が、学校……なかったし」
男「へ?」
幽霊女「わ、私が生きてた頃には学校がなかったの!」
男「……つかぬ事をお聞きしますが」
幽霊女「な、何よ……あらたまって」
男「お前、何時代の人?」
幽霊女「そ、それは……結構前よ!」
男「いや、そうだけど。江戸とか、安土桃山とか、室町とか、平安とか……ま、まさか奈良…とか…」
幽霊女「わ、分かんないわよ……そんなの」
男「あれ?時代時代の人達って自分たちの時代知ってるはずだろ当然」
幽霊女「わ、私……あの、多分だけど。世間知らずって言うか……その……」
男「なるほど、馬鹿の子だったわけだ」
幽霊女「違うわよ!!」
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 04:54:40.40:lVwBbUSo0
男「じゃあなんだよ」
幽霊女「……言わない」
男「覚えてないとか?」
幽霊女「覚えてるわよ。でも……あんたには言いたくない。今は、何となく」
男「あっそ」 モグモグ
幽霊女「そ、それより……お願いが、あるんだけど」
男「んぁ?」 モグモグ
幽霊女「あの…えっとね」
男「んー」 モグモグ
幽霊女「あんたの家に、住んでもいい?」
男「ぶーーー!!」
幽霊女「きゃっ!き、汚いわね!!やめてよ!!」
男「俺の家に住む!?」
幽霊女「あ……ぅ…うん……だめ?…」
男「だめ」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 05:12:14.50:lVwBbUSo0
幽霊女「何で即否定するのよ!」
男「あたりめーだろ!幽霊と暮らせってのか!?」
幽霊女「あんたもう幽霊と話してるんだから一緒じゃない!」
男「一緒じゃねぇよきもちわりぃ……あのなぁ」
幽霊女「な、なに……よ」
男「俺は、お前と、話をするだけの、関係だ」
幽霊女「で、でも昨日家でも話してくれるみたいな事言ってたじゃない!あれはなんなのよ!?」
男「そりゃ家にお前を連れてくれば話せるだろ家で、泊まらせるなんて一言も言ってねぇぞ俺は」
幽霊女「う……ぅぅぅ……じゃ、じゃあ今日行くわ!!」
男「え?」
幽霊女「いいでしょ!?日時は決めてなかったけど、私があんたと話をしたい時にあんたの家に行けば、それで」
男「……今日?」
幽霊女「……わ、私と暮らしたくなかったら……今日、私をあんたの家に連れて行きなさい……いいわね」
男「わぁったわぁった……放課後、校門前にいろよ」
幽霊女(…………なによ……)
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 05:46:53.82:lVwBbUSo0
放課後
男(お、いたいた)
「あ……」 パァァ
男(おおっと、喋りかけるなよ?) シッ
「……」
「喋りかけるなって事?そんなに私と話すのが嫌なの?」
男(こんな人の多い場所で無理言うなったく……)
「いいわ、じゃあ私が一方的に言うけど、校門を出る前にそこで聞いて」
男「……(んだよ)」 ピタッ
「うん、あのね……移動するとき、はその、あんたのどこかを触ってなくちゃいけないの」
男(は?)
「そ、その目は何よ!しょうがないじゃない!私は呪縛霊じゃないけど、知らない場所には……行けないんだから……案内が必要なのよ」
男(そういうもん、なのか)
「ほ、本当なの……だから、どこか、その」 チラッ
男「……(片手ポケットつっこんで腕でも触らしゃいいか)」 クィ
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 05:54:33.86:lVwBbUSo0
「!わ、分かったわ……じゃあ」
ピト
男(肩じゃなくて腕にしろよ何でこれで分かんねぇんだよこいつ!)
「ふふっ、じゃ、じゃあ行きましょっ!」
男「……」 ムスッ
男「……」 スタスタスタ
「へー……ねぇねぇ、あの建物はなに?カラオケって読むのよね?あれ」
男「……」 スタスタスタ
「コーヒーって……あのお店は食事をする所?ねぇったら」
男「……」 スタスタスタ
「ねぇーねぇー」
家
男「……」 ピタッ
「わぁ……ここがあんたの家?なんだか狭いわね」
105:幽霊女表記2レス程忘れてたw:2011/08/31(水) 06:01:41.52:lVwBbUSo0
男「……」 ピッピッピッ ガチャッ
幽霊女「あ、学校の屋上のと同じ仕掛けね?へー」
バタンッ
幽霊女「へへ、お邪魔します」
男「てめぇさっきからごちゃごちゃごちゃごちゃうっせぇんだよ!!!!!!!!」
幽霊女「ひゃぁ!?」
男「家に向かってる時は話しかけられても答えないって分かるだろうがっ!!」
幽霊女「う、うん……途中からそうかな、とは思ってたけど」
男「やっぱ馬鹿の子かお前は」
幽霊女「……ごめん」
男「はぁ……まぁもういいよ。ここが俺んちだ。一人だから適当にくつろげ」
幽霊女「一人暮らしなの?」
男「そうだよ」
幽霊女「ご両親は?」
男「死んだ。制服脱いでくるからそこのソファーに座ってろ」
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:11:26.12:lVwBbUSo0
5分後 リビング
幽霊女「死んだ、の……そう」
男「ふぁぁ……やれやれ」
幽霊女「じゃあ、あんたもずっと一人で?」
男「偶に親戚のおじさんが様子見に来てくれるけどそれ以外は一人だ。金は幸いにも親が遺してくれてた」
幽霊女「ふーん」
男「……」
幽霊女「……」
男「俺の両親は幽霊になんかなってねぇぞ」
幽霊女「分かってるわよ」
男「……」
幽霊女「ねぇ」
男「……」
幽霊女「毎日、一人で……その」
男「何だよ」
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:16:14.75:lVwBbUSo0
幽霊女「寂しく、ない?」
男「……学校行けば、友達はいるしな」
幽霊女「で、でもさ……」
男「まぁ、寂しい時はあったよ。死んだ直後とかは……超寂しかった」
幽霊女「あ……」
男「すげぇ泣いちまったしなぁ。でも今はもう大丈夫だ」
幽霊女「……本当に?」
男「ああ」
幽霊女「私は、まだ辛いし寂しいのに……なんであんたはそんなに?」
男「お前の場合はずっと孤独を味わった事からくる寂しさだろ。俺のとは性質がちげぇよ」
幽霊女「それは確かにあるけど、私だって父上と母上がお亡くなりになった時の悲しみはまだ……あるし」
男「父上に母上だぁ?」
幽霊女「あ!い、いや……今のはその……」
男「……」
幽霊女「と、とにかく!……その……大丈夫じゃ、ないでしょ。そんなの」
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:20:54.90:lVwBbUSo0
男「それはお前が決める事じゃねぇだろ」
幽霊女「でも……」
幽霊女「あんた、今ちょっと、寂しそうな顔してるよ?」
男「……」
幽霊女「……」
男「……大丈夫だって事と。寂しいって事は、矛盾しねぇよ」
幽霊女「強がり、じゃん。そんなの」
男「違う」
幽霊女「……」
男「俺は、両親に色んなものを貰った。だから寂しいと感じる時は、それを思いだして、大丈夫にするんだ」
幽霊女「……私は……」
男「お前も、あるだろ?そういうの……」
幽霊女「私…は……」
男「?」
幽霊女「父上と母上を亡くした悲しさは覚えてる。けれど、思い出は……殆ど、思いだせないんだ」 ニコッ
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:25:08.02:lVwBbUSo0
男「……」
幽霊女「ふふっ、だから。ちょっと、羨ましいかな。あんたの、男の、その『大丈夫』が」
男「お前、その状態で、ずっと幽霊やってきたのか」
幽霊女「?」
男「……」
幽霊女「……なんなの?」
男「そっか……」
幽霊女「?」
男「なぁ」
幽霊女「何よ」
男「やっぱ、お前。ここ住みたいなら、住んでいいぞ」
幽霊女「え!? な、なんで急に!?昼はあんなに……言って……」
男「寂しいんだろ?」
幽霊女「そ、それは……ぅん……」
男「だから……気が変わった。そんだけだ」
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:32:13.40:lVwBbUSo0
幽霊女「???」
男「お前の『寂しい』は、ちょっと俺には重すぎるって思ってたんだがな」
幽霊女「……」
男「それでも、ちょっと。ある意味で言う『補充』に関して、協力してやってもいいか、と。そんな気になった。これが理由だ」
幽霊女「……何となくだけど」
男「なんだ」
幽霊女「うん……ちょっと、分かったかも……ありがとう」
男「俺も今自分でよく分からずに言ったのに分かったのかよ。ははっ」
幽霊女「ふふっ……じゃあ、その」
男「おう、どれぐらいになるかはしらんが。よろしく」
幽霊女「うん!よろしくね」
男「ま、お前は衣食住金かからなそうだし楽でいいわ」
幽霊女「まぁ、そうなるかな」
男「ま、どうしても○○したい。的な事があるんなら、内容とその時の俺の気分次第で……要相談ってところだな」
幽霊女「了解」
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:40:05.46:lVwBbUSo0
男「さてとー……んじゃ今日はもう予定ねぇし。くつろぐとして……そう言えばお前ってさ」
幽霊女「なに?」
男「俺に触れるって事は俺もお前に触れるんだよな。てか物も持てるんだな、幽霊のくせに」
幽霊女「それは、多分あんたのおかげだと思う」
男「どういう事だ?」
幽霊女「私が、私を視る事が出来る人と接点を持つと、その接点を持つ間だけは。物に触れるらしいの」
男「経験則か?」
幽霊女「」 コクンッ
男「……不思議だなそれ」
幽霊女「まぁ、私の存在自体が不思議なんだけどね」
男「それは大前提として当然あるけど」
幽霊女「だから、ほらっ」
ギュッ
男「!」
幽霊女「手、触っちゃった……えへへ」
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:48:33.33:lVwBbUSo0
男「体温、有るんだな」
幽霊女「それ、前に話した人も言ってた」
男「前?」
幽霊女「あんたの、前に。私を視る事が出来た人」
男「何年も何年も孤独だったって聞いた記憶があるけど、そいつと会ったのは具体的に何年前位の事なんだ?」
幽霊女「……うーん……」
男「具体的に何かその時に起こった世間の出来事、とか覚えてないか?」
幽霊女「……あ!」
男「なんだよ」
幽霊女「戦争をしてた様な気がする、日本が他の国と」
男「…………………………………………」
幽霊女「あれ?……男?……ねぇ、おーい」
男「……数年前とかそういう話じゃなくて?」
幽霊女「え?何年か前の事でしょ?」
男「70年近く前だよ!!」
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 06:58:25.60:lVwBbUSo0
幽霊女「ええっ!?」
男「まぁいいや、時間の感じ方が狂ってんだろお前の体内時計的な意味で」
幽霊女「……地味にショックなんだけど」
男「話戻すけどさ、そいつとは何話してたんだ?」
幽霊女「んと……」
男「……」
幽霊女「今は、大変な時期だから。俺じゃあ役には立たないと思うよって……言ってた様な」
男「なんじゃそりゃ」
幽霊女「……」
男「……何だよ?」
幽霊女「ねぇ、あんたにとって、私はどう視えてる?」
男「どういう意味で言ってんだそれ。容姿か?幽霊的な意味でか?」
幽霊女「後者」
男「……特には何とも……普通に視えてるが……」
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:04:15.92:lVwBbUSo0
幽霊女「視え方って意味よ」
男「視え方ねぇ……あ、幽霊って透明に視えないんだなそういえば」
幽霊女「!!!!!」
男「な……なんだよ?」
幽霊女「あんた、わ、私が透明に視えないの!?実体を持ってる様に視えるの!?」
男「だったら何だよ」
幽霊女「ほ、本当に?……嘘じゃない?」
男「おう」
幽霊女「……で、でも!だったら何で私が幽霊だと思ったの?」
男「直感ってか、なんかお前視た瞬間に気付いたんだよ。『あ、こいつ幽霊だ』って」
幽霊女「…………」
男「なんだよ、変かもしれねぇけどそうなんだから仕方ねぇだろ」
幽霊女「今まで、私を視れた人は居たって、言ったじゃない?」
男「おう」
幽霊女「でも、私を実体がある様に視た人は、一人もいなかったのよ」
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:10:03.20:lVwBbUSo0
男「!……ふーん」
幽霊女「だから……前の人とは、話はしたけど。表面上の軽い会話だけというか……数分だけだったし」
男「数分!?」
幽霊女「私と会話した、翌日に、戦争に行っちゃったっぽい」
男「……その、更に前の人は?」
幽霊女「お侍さん、だったけど。その人は、私を化けもの呼ばわりして……逃げちゃった」
男「お前……」
幽霊女「……だから、その。あんたとは、結構相性いいのかもね。ふふっ」
男「……」
『何年も何年も一人なの!私、寂しいの……あんたともっと話したいの!!』
『私の話し相手、に、なって、ほしいの……本当に、寂しい、の……寂しい……ヒック』
男「……何年どころじゃねぇじゃんかよ」 ボソッ
幽霊女「なんか言った?」
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:17:43.12:lVwBbUSo0
男「いや……えーと……だな」
幽霊女「何よ、気になる事があったら言って」
男「お前を幽霊だって分かったのは直感だったわけだが、疑問がある」
幽霊女「だから何よ?さっさと言って」
男「おう、お前なんでうちの制服着てんの?」
幽霊女「ああ、これは……さっきの人が」
男「戦争の時の?」
幽霊女「うん、その人は、制服の仕立て屋さんだったから。もらったの」
男「学校で会ったんじゃねぇのかよ!?」
幽霊女「え?学校で会ったのはあんたよ」
男「いやそうじゃなくて学校にずっとお前いるって言ってたじゃん?だったら約70年前も学校にいたと考えるのが俺の思考回路じゃん?
あの学校創立200年超えてるし」
幽霊女「私が学校にいる様になったのは、彼が服をくれて、この服はあの学校で着るものなんだよって言って
連れて行ってくれてからなのよ」
男「数分で服もらって学校に案内してもらってって……また体内時計狂い的な意味で数時間とかだったんじゃねぇの?それ」
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:24:29.23:lVwBbUSo0
幽霊女「う……? 言われてみれば……そんな気も」
男「はぁ……なるほ……って待てよ?お前、自分の知らない場所には行けないんだよな。
誰かが一度案内してくれれば行けるんだっけか。そういう理解であってる?」
幽霊女「た、多分」
男「お前が服の仕立て屋に向かう事が出来た経緯は?誰に教えてもらったんだ」
幽霊女「ううん、違うの。あの場所は、もともと知ってたから」
男「服の仕立て屋が?」
幽霊女「そう、今の学校の目の前にあった建物がその服の仕立て屋だったんだけど。
私は……あそこで幽霊として存在し始めたんだと思う」
男「そこがお前の幽霊としてのスタート地点だったって事か?」
幽霊女「多分だけど……ね」
男「ん?……だったらお前、何でその仕立て屋の人が暇な時に行動を起こさなかったんだ?
仕立て屋の人が視える人だったならお前が姿を見せれば戦争になる前に会話出来たんじゃ……?」
幽霊女「……痛いところをつくわね」
男「いや当然のツッコミだろ。隠れてたんだろ?」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:30:47.22:lVwBbUSo0
幽霊女「……うん」
男「何でお前が隠れてて、尚且つ仕立て屋の人に接触を試みようとしたのかってのは。単純に話のネタとして興味がある」
幽霊女「更に前の人……お侍さんと会ったって、言ったでしょ?」
男「うん」
幽霊女「その時……化けもの扱いされたから……かな」
男「ぁ……」
幽霊女「わ、私……結構傷ついちゃって……トラウマって言うんだっけ? あはは……」
男「……」
幽霊女「仕立て屋の人に接触したのは2つ理由があったんだっけかな」
男「2つ?」
幽霊女「一つは、ずっと隠れてたけれど、その間に、仕立て屋さんの人に私が視えそうな素質を感じ取ったというか……
うまく言えないんだけど、日々の生活の中でね。多分姿を現したら会話、出来るんじゃないかって思ってて……」
男「で?」
幽霊女「それで、トラウマの所為もあって、ずっと隠れてたんだけど。仕立て屋さんは、戦争に行く事になったって言ってるのが聞こえて
……何か郵便屋さんから、紙をもらってた様な気がするけど」
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:35:07.54:lVwBbUSo0
男「赤紙って奴だな。当時それもらった男の人はみーんな強制的に戦場行きだったって歴史で習った気がする」
幽霊女「それで……戦争に行っちゃったらその……もう会う機会がないんじゃないかと思って……それで」
男「一か八かってか」
幽霊女「そう。それが1つ目」
男「2つ目ってなんだよ?」
幽霊女「……その……これ」
男「制服?」
幽霊女「うん……ほ、欲しかったから。もしかしたら……って」
男「おま……」
幽霊女「だ、だって!!私ずっと裸だったし!!」
男「なにぃ!?」
幽霊女「っ!……分かんないけど、ずっとそうだったの!だ、だからぁ……」
男「なるほど?戦争行く→店じまい→1着ぐらい貰えるべ。そういう思考回路だったわけだな」
幽霊女「……う、うん」
男「あのなぁ……いや、いいんだけど。戦争に行く前の人にそんなやましい気持ちで接するなよ」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:43:54.50:lVwBbUSo0
幽霊女「だ、だって……何年も何年も、裸って言うのが……流石にキツくて……」
男(ま、まぁ確かに……ある意味拷問みたいなもんではあるかもしれん。いくら視られてないとはいえ、人が居る所で何年も…ってこいつの場合多分何百年も?……うーむ)
男「まぁ、気持ちは分かった」
幽霊女「ぅぅー……」
男「その人、結局どうなったんだろうな」
幽霊女「分からないわよ、仕立て屋さんが出て行ってすぐに軍の人が倉庫みたいにしちゃったから。私はそれからずっと学校に居たし」
男「なるほどね……うちの学校って明治維新のころの制服のままってのが売り文句だが、マジだったんだな」
幽霊女「ところで、何の話してたんだっけ?」
男「お前に体温あるんだなって所から話を捻じ曲げまくって脱線させまくっただけだ」
幽霊女「そっか」
男「その結果として、ま、1つ分かった事は、お前は学校の目の前の場所である意味でいう『生まれた』可能性があるって事だな」
幽霊女「……それがどうしたのよ」
男「別に?話のネタが1つ出来たってだけだ……話しすぎて疲れた。そろそろ風呂でも入って寝るかな」
幽霊女「お風呂……湯浴み!?」
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 07:58:46.65:lVwBbUSo0
男「湯浴み?」
幽霊女「体をお湯で洗うんでしょ!?」
男「温泉って分かるか?」
幽霊女「分かる!!」
男「あれの家庭用というかまぁなんだ、お湯を張って入る」
幽霊女「だから分かるって言ってるじゃない!湯浴みでしょ!?」
男「やけーに嬉しそうだなお前」
幽霊女「男、お願い!入らせて!」
男「お前幽霊だから入っても入らなくても関係ねぇんだろどうせ、臭いも別にしねぇしさ」 スンスン
幽霊女「やっ!ちょ、嗅がないでよ!!」
男「うーん……入ってもいいぞ」
幽霊女「本当!?」 パァァ
男「俺の後でいいなら」
幽霊女「いい!ありがとう男!!」 ギュッ
男(ここは手じゃなくてハグの方が俺は喜ぶぞ幽霊よ)
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 08:15:42.49:lVwBbUSo0
幽霊女「ん?何その目は」
男「何でもねぇよ。んじゃ入ってくるが、くれぐれも覗かない様にしてくれ」
幽霊女「分かった」
男「お前が透明に視えない分壁から突然ヌッと出てこられた時の衝撃度はヤバいんだからな」
幽霊女「分かってるって!さっさと入ってきてよ。ここにずっと居るから!」
男「へーい」 バタンッ
幽霊女「『お前が透明に視えない分』……か……ふふっ」
20分後
男「上がった」
幽霊女「早くない!?ちゃんと体洗ったの?頭も」
男「洗ったって、男は大体こんなもんだよ。だからお前入れ」
幽霊女「!!……うん!入るー♪」 バタンッ
男「……ま、さて……」
男(幽霊が湯船に入るとお湯の変化はあるのかどうか……覗いて確かめろと天からの声が聞こえる気がするな……さて……)
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 08:27:05.04:lVwBbUSo0
男「さて……」 テクテク
幽霊女「男ー!」
男「! な、なんだー?」
幽霊女「ちょ、ちょっと来て!」
男「なんですとっ!?」 タタッ
幽霊女「あ、開けないでよ!?扉開けたら駄目だからねっ!」
男「お、おう。どうした?」
幽霊女「うん。あの……この、管みたいな。先っぽの出っ張りに、小さい穴がたくさん開いているものは、何?」
男「それシャワーっつって水とかお湯が出るんだ。それで頭や体を洗ったりする」
幽霊女「こ、この何かの容器に入ったねばねばした液体は?」
男「それは髪とかにつけてゴシゴシっとすると泡立って髪や体を綺麗にする為の液体だ。石鹸みたいなもんだ」
幽霊女「!!石鹸って液体化していたの!?」
男「目に入れるとすっげぇ痛いからそこは気をつけろよ?」
幽霊女「わ、分かった!……あの、あとさ!」
男「なんだ?まだなんか説明いるか?」
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 08:32:35.63:lVwBbUSo0
幽霊女「うん、このシャワーって言うの……どうやったらお湯が出るの?」
男「!(よーしここだっ!!)」
幽霊女「ね、ねぇー?」
男「おい、ちょっと湯船に入ってろ。使い方をレクシャーしてやるから」
幽霊女「ええっ!?来ないでよ!口で伝えてくれれば大丈夫だから!!」
男「まぁまぁ、百聞は一見に如かずだ。お前もすーぐに分かるから、な?」
幽霊女「で、でもでもそしたらあんたが私の……」
男「幽霊の裸なんて全然興味ねぇって!!大丈夫大丈夫!」
幽霊女「で、でもでもで
男「入るぞー」
幽霊女「ぎゃああ!!!ちょっと待ってええええ!!!!」
ガラッ
男「どうもー」
幽霊女「うううううううううう」
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 08:40:44.06:lVwBbUSo0
男(さてと……水の変位は……おお!変化している!やはり流体にも干渉するのか……ほほぅ)
幽霊女「な、何故私を見る!やめろ!!ばか!」
男「さて、目の保養が終わったところで、これの使い方だが」
幽霊女「ぅぅぅー」
男「この青い方をこう捻ると、水」 ジャー
幽霊女「……」
男「この赤い方を捻ると、お湯」 ジャー
幽霊女「……」
男「だから使う時は、この左右の蛇口を捻って、出る水の温度を自分に合う様に調節してから、使う。以上だ」
幽霊女「……」
男「分かった?」
幽霊女「わ、分かったから……」
男「それにしても、胸でかいなお前」
幽霊女「さっさと出ていけ!!」
男(ぽっちが見えなかったじゃねぇか畜生)
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 08:47:45.21:lVwBbUSo0
1時間後
幽霊女「……」 ガチャッ
男「お、出たか。やっぱ髪濡れてるって事は干渉できてるんだな」
幽霊女「……」 ギロッ
男「しかし女の風呂は長いって聞いてたけどマジだな」
幽霊女「ふん……」
男「気持ちよかったか?」
幽霊女「うるさい!」
男「顔が赤いが、恥ずかしかったのか?」
幽霊女「そうに決まってんでしょっ!何じろじろ見てんのよあんた!!犯罪よ犯罪!!大罪だわ!!女子の肌を見るなんて!」
男「おなごて」
幽霊女「!……こほんっ、じょしの!……もう、本当にやめて欲しかったんですけど」
男「ま、幽霊だし問題ないだろ」
幽霊女「問題あるわよ!私が恥ずかしいっての!!」
男「はっはっは……さてと、そろそろ寝るか」
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 08:56:49.61:lVwBbUSo0
幽霊女「……ね、寝るって……そういえば……」
男「一緒に寝たいのか?」
幽霊女「なっ!?ば、馬鹿じゃないの!?絶対に嫌よ!イヤ!」
男「お前って普段どうやって寝てるんだ?」
幽霊女「別に、寝なくても大丈夫なんだけど。寝る時は、屋上の入り口の所に、マットがあるでしょ?」
男「ああ、使わなくなった奴置いてんだっけあれ」
幽霊女「あそこに、転がってる」
男「きたねぇ」
幽霊女「汚くないわよ!私の場合は大丈夫なの!」
男「あ、そっか。……なるほど、寒くも暑くもないんだろうし、いいな」
幽霊女「で、でも……ここで暮らすとしたら……その」 チラッ
男「俺が普段寝てるのはあそこのベッドだ。布団みたいなもんね」
幽霊女「そ、それ位分かってるわよ」
男「……」
幽霊女「……なによ!」
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 09:00:25.52:lVwBbUSo0
男「ま、幽霊だし。俺の布団の匂いとか、気にならないだろ?」
幽霊女「気になるわよ!」
男「普段からマットで寝てんのに?」
幽霊女「それとこれとは話が別!!」
男「変わらねぇって、ちょっと横になってみろよ」
幽霊女「え、ええっ!?な、なな……」
男「いや、そんなに動揺しなくても、俺は寝ないから」
幽霊女「え?」
男「お前がそこで寝られそうだったら俺はソファーでいいよ」
幽霊女「……」 ボフッ
男「どうよ?」
幽霊女「………………大丈夫、みたい」
男「そっか」
幽霊女「で、でも……あの、いいの?その」
男「キニスンナ」
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 09:04:21.19:lVwBbUSo0
幽霊女「でも……でも」
男「うるせぇな。じゃあちょっと注文がある」
幽霊女「!…な、なに?」
男「お前、その制服姿でずっと過ごすつもりか?」
幽霊女「え?だってこれしか服持ってないんだけど私」
男「パジャマ位はお袋のがあるから、それにすれば?」
幽霊女「お洋服をくれるの!?」
男「お洋服ってか寝巻だよ」
幽霊女「!!」 パァァ
男「取ってくるからちょっと待っててくれ」
幽霊女「うん!ありがとうっ!」
男「キニスンナ」
10分後
幽霊女「……」 ゴソゴソ
男「どうだ?着れたか?」
175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 09:07:30.24:lVwBbUSo0
幽霊女「う、うん……大丈夫」
男「もうそっち向いていいか?」
幽霊女「い、いいよ」
男「……」 クルッ
幽霊女「……ど、どう?」
男「お前、予想以上に紫が似合うな」
幽霊女「ほ、本当?う、嬉しいかも♪」
男「じゃ、制服貸せよ」
幽霊女「え……ど、どうするつもりよ」
男「いやハンガーにかけておくんだよ、あんな風に」
幽霊女「ああ、なるほど。じゃあ、はい」
男「よし」 スンスンスン
幽霊女「何嗅いでんのよっ!!!!!」
177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 09:13:45.18:lVwBbUSo0
男「シャンプーの匂い、俺のパジャマと大して変わんねぇな」
幽霊女「そりゃそうでしょっ!やめてよこの変態!!」
男「変態って言葉知ってたのかお前」
幽霊女「昔からあんたみたいなのはいっぱい居たからね」
男「流石だな俺の先祖達よ」
幽霊女「はぁ……で、でさぁ?話を戻すけど」
男「話?」
幽霊女「これ……本当に似合ってる、かな?」
男「ああ、いいと思うけど」
幽霊女「ふふっ……紫は、特別な位の人用の衣装にしか使われなかったって、あんた知ってる?」
男「聖徳太子がそういう色の帽子被ってたのは知ってる」
幽霊女「それ以後も、紫って色は高貴な色で在り続けたのよ。ふふっ♪」
男「よかったな、似合ってて」
幽霊女「うん……嬉しい♪」
男「さて……おらっ、布団入れ」
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 09:17:12.41:lVwBbUSo0
幽霊女「えっ!?あ、あんたやっぱり一緒に!?」
男「はぁ?お前だけだよ入れって」
幽霊女「う、うん?」 ゴソゴソ
男「じゃ、電気消すぞー」
幽霊女「あ……そういう事か」
男「……どういう事だと思ったんだ?」 ニヤニヤ
幽霊女「はぁ!?な、何でもないわよ!!」
男「さいですかっと」 カチッ カチッ
幽霊女「……」
男「じゃ、寝るか。おやすみ」
幽霊女「う、うん……」
男「うーむ」 ゴロン
男(もうちょっといいソファー買っときゃよかったかな……まぁ大丈夫か。慣れだな)
幽霊女「ね、ねぇ?」
男「あー?なんだ?オレンジねぇと眠れねぇ子だったりすんのか?」
179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 09:20:33.19:lVwBbUSo0
幽霊女「オレンジって、何よ?」
男「……」 カチッ
幽霊女「きゃっ」
男「……」 カチッ
幽霊女「?」
男「この状態がオレンジ」
幽霊女「……ああ、その豆電球の事か」
男「そう、この状態と真っ暗。どっちがいい?」
幽霊女「どっちでもいいわ」
男「じゃ、今日はこれでいいか。おやすみ」
幽霊女「男……私ね?」
男「あ?」
幽霊女「おやすみって言われたの……本当に……ほんとーに……嬉しい」
男「………おやすみ」
幽霊「うん……おやすみなさい。男」
276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:15:23.60:lVwBbUSo0
翌朝
男「……」 ムクッ
男(あり……なんで俺ソファーで寝てん…だ?) ポリポリ
男「ふぁぁ……」 テクテク
ゴソゴソ
男「んー」
「!? ちょ、ちょちょ……!」
男「ふぁー……あれ、なんかあったけぇな……」
「な、ななあんたちょっとどい……」
男「ん、何じゃこの柔らかいのは……」 サワサワ
「っ!! どいてっつってんでしょ!!」 ドンッ
男「え!? な、なんだ!??」
幽霊女「だ、だから!どいてってばっ!この馬鹿!!」
男「……」
幽霊女「え……(も、もしかして……)」
280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:19:12.01:lVwBbUSo0
男「……」
幽霊女「わ、私……見えてる?覚えてる?」
男「……」
幽霊女「……」
男「あー、そうだ。幽霊だ」
幽霊女「あ」 パァァ
男「朝だからてっきり見えなくなってるのかと」
幽霊女「そんな訳ないでしょ!!!」
男「いや、世間一般の人の幽霊の認識ってそうだぞ」
幽霊女「私とあんたが会ったのはあんたが授業中の日中だったじゃない!」
男「あ、それもそうか」
幽霊女「もうっ!変な所で馬鹿ねあんた」
男「まだボケてんだろ……顔洗ってくる」
幽霊女「あ……うん」
男「……」 ポリポリ テクテク
284:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:28:07.57:lVwBbUSo0
男「……あーすっきりした」
幽霊女「……」
男「あ、もう制服着てんのか」
幽霊女「だってあれ、寝巻でしょ?もう起きたもん」
男「いやそうだけどよ」
幽霊女「え、なんか間違ってる?」
男「いや、完璧すぎてすごいねって話」
幽霊女「言葉と表情に違いがあるんだけど……?」
男「気の所為だ」
幽霊女「ぅー」
男「俺は朝飯食べてから学校だな……あ、そうだ。お前さ」
幽霊女「な、なに……」
男「こう、今日はというか、これからというか、学校へは毎日行く感じ?」
幽霊女「わ、分からないわよそんなの……でも」
男「でも?」
286:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:33:01.36:lVwBbUSo0
幽霊女「今日は、行こうと思う」
男「ふーん……あとさぁ」
幽霊女「今度はなによ」
男「お前、現代の文というか。そういうのは、読めるのか?」
幽霊女「馬鹿にしないでよ!完璧に決まってるでしょ?何年学校にいると思ってんのよ」
男「なるほど、生徒同様授業に出たりもしてたわけだお忍びで」
幽霊女「もとから読書きの心得はあったみたいだから、基礎形は出来てた状態だったわけ
そこから、私の頭脳で現代に適応させて……」
男「幽霊って脳味噌あんのか」
幽霊女「ぶっ飛ばすわよあんた!!」
男「さて、朝飯食うかな」
幽霊女「ちょ、ちょっと無視しないでよ!」
男「お前はいらないんだよな?当然」
幽霊女「あ、当たり前じゃない」
男「へいへい」
287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:41:28.65:lVwBbUSo0
男「んじゃーお前はそこに座って適当にしてなさい」
幽霊女「……」
男(何があったかな……) パカッ
幽霊女「……」 ジー
男(スクランブルエッグにパンでいいか、めんどくせぇし) カッ パカァ カシャカシャカシャ
幽霊女「……」 ソー
男「……」 カチッ ボッ!!
幽霊女「!? ね、ねぇそれ!火が出てる!!」
男「学校にコンロは無いから知らなかったってかー?」
幽霊女「だ、大丈夫なの!?」
男「俺が出してんだよこの火は。大丈夫だから黙ってろ」
幽霊女(す、すごい……)
男「油切れそうだな、そのうち買うか」 ツー
幽霊女「……」
男「……」 ジュワアアアア
289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:43:53.01:JKiRTFLNi
5分後
男「でーきた」 コトッ
幽霊女「卵焼き……?」
男「グジャグジャだけどまぁそうだな。あとパン」
幽霊女「それが、朝食?」
男「そうに決まってんだろ」
幽霊女「……ふーん」
男「じゃ、頂きま」
グーー
男「……」
幽霊女「……あ、あれ?何の音?」
グーー
男「……」
幽霊女「ん、んー?この音は……一体……なに?」
男「……」
293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:50:00.02:lVwBbUSo0
幽霊女「……」 パクッ
男「……」
幽霊女「……」 モグモグモグ
男「……」
幽霊女「ッ~~~!!!」 パァァァ
男「……おいしい?」
幽霊女「すっごくおいしい!!」
男「あ、そ」
幽霊女「特にこの、ジャム?だっけ」
男「いちごジャムな」
幽霊女「やっぱり!いちごだと思ったわ!これが本当においしいんだけど!」
男「今のお前を食品会社のモニターにしたら引く手数多だろうなぁ」
幽霊女「どういう事?」 モグモグ
男「いいからまぁ食いねぇ食いねぇ」
幽霊女「?」 モグモグ
298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:56:45.15:lVwBbUSo0
男「それにしてもいい食いっぷりだな」
幽霊女「!」
男「何というか、こう……数百年分の食への意識が一気に解放された感じの……」
幽霊女「わ、私ったら何というはしたない事を……! わ、忘れて!」
男「どうせこれからもメシ食うんだろうし今忘れても意味ねぇと思うが」
幽霊女「え?」
男「食わしてやるよメシぐらい」
幽霊女「ええ!?」 ガタッ
男「おおっ、どした?」
幽霊女「ほ、本当、に?」
男「金に余裕があるうちは、な」
幽霊女「それでいいわ!ありがとう」
男「いやグーグー音鳴らされても堪らんし」
幽霊女「ッッ!」
男「おー幽霊でも赤くなるのか」
302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:02:52.60:lVwBbUSo0
幽霊女「うるさい!!」
男「……」
幽霊女「でも……ありがと」
男「着替えよっと」
幽霊女「あ……」
男「ふぁぁぁー、学校めんどくせー」
幽霊女「ふふっ……」
男「あ、そうだ。話は変わるけどさ」
幽霊女「なぁに?」
男「お前、成仏したいんだよな?」
306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:07:56.37:lVwBbUSo0
幽霊女「え……」
男「な?」
幽霊女「あ、当たり前じゃない。出来るなら、うん、成仏したいわ」
男「だよな?分かった」
幽霊女「……なに?」
男「確認だよ確認」
幽霊女「だからなんの?」
男「よーし学校行くぞ」
幽霊女「…………」
男「……そうそう」 ピタッ
幽霊女「」 ビクッ
男「お前、授業中でも、俺の邪魔さえしなけりゃいてもいいぞ。教室に」
幽霊女「え」
男「会話したかったら話しかければいい、授業に集中してない時は筆談で応じてやるから」
幽霊女「……わ、分かった」
309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:13:19.35:lVwBbUSo0
男(ま、とにかくそういう事だ。成仏させるためには背景事情を知る必要があると見た)
男「となると……」
幽霊女「なに?」
男「……」 ブンブン
幽霊女「あ、通学中は無視ってのはそのままなんだ」
男(当たりめぇだろ)
幽霊女「……ふん」
男(えーと……そう、となるとだ……あの場所について、こいつに確認して、更にあそこに行ってみるべき、だよな)
幽霊女「?」
校門前
男「……」 ジー
幽霊女「な、なに?……!え、えっと……」
男「……」
幽霊女「あそこの、建物……」
男(了解。マジで校門の目の前だな) コクッ
313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:26:28.64:lVwBbUSo0
ガララッ
男「おはよー」
クラスメート「おはよー怪奇男」
男「おいそのあだ名はやめてくれよ」
クラスメート「ま、飽きたらやめるって」
男「いやいや語呂悪いだろカイキオトコって」
クラスメート「いやぁでもあの珍現象は結構な広がりを見せてるんだぞ?」
男「ん?なんで?」
クラスメート「いや、この学校で昔からああいうのがあったらしくてさぁ、それがお前のこないだので再び盛り上がって」
男「怪談話系の広がりを見せてるって事かよ」
クラスメート「ま、そういう事だよ怪奇男くん」 ポンッ
男(うぜぇ)
ガララッ 先生「えーみんなおはようー」
クラスメート「おはよう怪奇先生」
先生「ええっ!?」
314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:30:35.36:lVwBbUSo0
先生「えーそれでこの公式はー」 カッ カッ
幽霊女「……」
男「……」
幽霊女「なんか、ごめんね。私のせいで」
男『いい迷惑だわ』
幽霊女「うん」
男『ま、別にいいよ。実際事実だしな』
幽霊女「……」
男『怒ってねぇから、授業に集中させろ』
幽霊女「うん、分かった。ありがと」
男「……」 カリカリ
幽霊女「……」 ジー
男「……」
幽霊女「あんたって、字汚いわね」
男(うるせぇよ)
316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:41:13.56:lVwBbUSo0
昼 屋上
男「考えてたんだけどさ」
幽霊女「なに?」
男「お前が成仏するためにはさ」
幽霊女「!……うん」
男「死因と、その時の記憶と、現世にやり残したこと、この3つが分かればいいと思うんだよ。俺」
幽霊女「うん、同感」
男「だろ?と、いう事はだ。まずお前が幽霊として『生まれた』場所が、死に場所だった可能性が高いという観点から物事を見る」
幽霊女「……」
男「すると、あの場所がお前が死んだ時にどんな建物だったのか。それを知る必要があるよな
お前が住んでた家だったのか、はたまた只の戦場だったのか、それともお前が殺されたとして、その殺した相手の家だったとか」
幽霊女「私……殺されたのかな?」
男「強姦されて殺されたかもしれねぇな。裸だったんだろ?『生まれた』時」
幽霊女「」 ビクッ
男「あ、いや……可能性の話だから。まぁ、ごめん。……えーと、それでだな」
320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 18:49:38.49:lVwBbUSo0
幽霊女「……」
男「話、進めていい?いや、確かに気分がいいもんじゃねぇよな。唐突にこんな事言っても不躾だった、ごめん」
幽霊女「いいよ」
男「……」
幽霊女「その可能性を、考えた事がないって言えば、嘘になるから」
男「……」
幽霊女「話、進めて。それで?」
男「それで、放課後。この学校の歴史研究会に行こうと思うんだけど。お前来るか?」
幽霊女「歴史、研究会?」
男「この学校創立200年ぐらいだから歴史あんだよ、だからこの土地に関する移り変わりを見てきた建物ってわけだ。
自然とそこに興味を惹かれてこの土地について調べてみようって輩が作ったんだってさ」
幽霊女「そんなものがあったなんて、私知らなかったんだけど」
男「なんか影うっすいらしいからな。部員も今は1人とかそんなもんらしい」
幽霊女「で、でも前からあったんでしょう?なら私が気付いてもおかしくないと思うんだけど」
男「……うーん……まぁ、とにかく。放課後行ってみて、話を聞いてみようかと思ってるんだよ。来るか?」
323:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 19:00:26.39:lVwBbUSo0
放課後
男「ったく……」
幽霊女『なんか……怖いから、あんた聞いてきてくれない?』
男「自分の事だろうが……ってのに」
男(まぁ、俺があいつの立場でも、いきなり色々分かるかもって所には心の準備が要りそうだってのは……理解出来るけどさ)
歴史研究会 部室前
男「ここか」
男「……」
コンコン
男「……」
ガラッ
男「」 ビクッ
?「……へぇ、噂の怪奇男君から来てくれるとは、手間が省けたよ。ふふっ」
338:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 19:54:36.51:lVwBbUSo0
男「え……どういう事ですか?」
?「ああ、敬語はいいよ。同い年だから」
男「……俺が来るのが分かってた?」
?「いや?分からなかったから、こちらから行こうかと思ってた」
男「俺が、何かここに関する事に巻き込まれてると、思ったって事か?」
?「……」 ニコッ
男「……」
?「ま、立ち話もなんだ、入ってよ」
男「……」
?「さてと……えーと、お茶でいい?」
男「あ、お構いなく」
?「お茶でいいね。よし」
男「……」
340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:00:04.90:lVwBbUSo0
3分後
?「さて、と」
男「あんまり、物がないんだな?」
?「まぁね。部員は私1人だし、顧問も1人。私の部屋みたいになってるんだよ」
男「いや、歴史に関するものとかが少ないって意味だったんだが」
?「ああ、そうだね。歴史研究会、だもんね」
男(おいおい……)
?「ああ、心配しないで?君の要件に叶う情報は、ここに入ってる」 コツン
男「……お前、名前は?」
?「女でいいよ。君は男君だよね」
男「まぁ君でも何でも好きに呼んでくれ」
女「私もそういう感じで頼むよ」
男「……で、だけどな」
女「まず、何が知りたい?この学校の前身?それとも……校門前の建物の歴史……とか?」
男「!?」
343:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:07:11.47:lVwBbUSo0
男「……」
女「……」 ジー
男「何か、知ってるっぽいな」
女「先輩方から引き継いだこの歴史研究会。その【歴史】は、君達一般生徒が思ってる物とはちょっと違うからね」
男「と、言うと?」
女「……君の今知りたがっている過去の出来事、【歴史】……『その【歴史】』にしか、私は興味がないんだ」
男「……」
女「オカルトな出来事が君に起こったって聞いたよ?本当かい?」
男「ま、まぁそうだな」
女「この学校、他の学校に比べて、怪談話が多い方なんだが。君、知ってるかい?」
男「あいにくそこら辺の事に関しては疎いんだ」
女「そうか。……では、考えて見て欲しいんだが、この学校には、古ーくから伝えられてる怪談話が多い。新しい近年に出来た怪談話なんて皆無だ。
理由に思い当たる節はないかい?」
男「……分からないな」
344:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:11:40.65:lVwBbUSo0
女「怪談話というものは、どうやって生まれると思う?」
男「そりゃー……!わかった」
女「どうぞ」
男「昔に起きた時にはまだ、その時代の科学では解明できない事だったんだよ。
だから怪談となって語り継がれた。その理屈で、色々な現象が分かってきた近現代では怪談が生まれにくくなった、科学で説明出来るからって理由でな」
女「ふーむ、正解」
男「よーし」
女「でも不正解でもあるね」
男「え?」
女「じゃあ、聞こう。君が体験した出来事は、科学で説明できるかい?」
男「……いや」
女「君の理屈に当てはめると、君が経験したその現象が怪奇現象と呼ばれている。
その理由は、現代の科学では説明できない現象だからって事になるよね?」
345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:16:50.36:lVwBbUSo0
男「そ、そうだ。俺の理屈と矛盾しないじゃん、なんで不正解なんだよ?」
女「何故かだって? その理由は君が知っているんじゃないかい?
……知ってしまったんじゃないのかい?」
男「な……」
女「私は、『それ』を知りたくて君と接触しようとしていた」
男(こいつ……)
女「さぁ、君が素直に教えてくれたら……その返答次第では、君の知りたい情報について、
私が知る限りの事を教えてあげてもいいよ」
男「……」
女「……さぁ、教えてくれ」
男「……なるほど、確かに怪奇現象。
科学で説明するとか、そういう分野の話ではない。『科学外』の分野における怪奇現象ってのも
あるのかもな」
女「その調子で続けて」
347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:23:40.66:lVwBbUSo0
男「……ま、あれだな。『気のせい』という事があるよな、まず」
女「え?」
男「気のせい、見間違い、人ってのは不完全な生き物だからな。
たとえばあるものに対して、警戒心を持つと、その人の脳が、その人に幻覚を見せる事もあるだろうな。人間だし」
女「……ふーん?」
男「確かに?そういう系の事柄から起因した怪奇現象は、『科学外』だよな、どっちかっていうと『生物』だ」
女「減らず口を叩くじゃないか、それとも本心かい?」
男「どっちだと思う?」
女「……」
男「……」
女「……私個人としての、いや、この研究会の見解としては、この学校で語り継がれている
『怪奇現象』のうち、いくつかは、『科学外』でも君の言う『生物』にも属さないものである。
そう考えているんだけどね」
男「真の意味での【オカルト】だな。これから先未来永劫絶対に『科学』や『生物』では説明されないであろう類……」
女「ふふふっ……ここまでまともに私の話を聞いたのは、君が初めてだよ」
349:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:31:00.88:lVwBbUSo0
男「ただ、そんな物の存在を俺は信じてないけどな」
女「この世のすべての事象は、『科学』『生物』その他の学問でいつか必ず解明される、そう信じているんだね」
男「ま、簡単に言えばそういう事だ」
男(だから正直あいつの存在に関しては、俺の中で自己矛盾の真っ最中。
現実を受け入れろ派と、己の信条に従え派が大戦争絶賛勃発中だっだりすんだけどな……)
女「勘違いをしないでほしいから、言うけれどね」
男「ん?」
女「私も、君と同じ考えを持っている。基本的にはね」
男「え?だって……」
女「ただ、君と私の考え方で徹底的に違うのは、今話した流れでいう最後の部分。真の【オカルト】の部分」
男「……」
女「君はその【オカルト】も、いつか必ず科学で解明されると信じている。
しかし、私は違う。この【オカルト】は、この先人類が何年何百年繁栄しようとも、決して解明される事はないだろう。そう考えている」
男「……そういう考えに至った理屈は?」
女「簡単さ」
352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:39:02.33:lVwBbUSo0
男「簡単?」
女「ああ、宇宙に関して考えて見ればいい。
私たちが宇宙に関して、理解している、と考えている事象は、全部、私たちが都合のいい解釈を持てて、納得のできる様な定義を誰かが考え、
その仮定に従っているにすぎない」
男「それでつじつまが合えばそれが正解なんだろう」
女「じゃあ、君は将来この宇宙が誕生する前には何があったのか。そもそもこの宇宙とは何故出来たのか。そういう根本的な事について
人間が解明できると思うかい?」
男「そ、それは……」
女「私は、多分無理だと思うね。断言してもいい、みんなが私のこの意見に賛同する訳がないのは分かっているが。
私の意見を否定しつつ、「こうなのだ、だから君の言い分は違う」と断言出来る人は絶対に出てこないだろう」
男「……科学の極限の先にある答えかもしれねぇじゃん!」
女「そうだね。で、その科学の極限にたどりつくまでに、はたしてこの地球と言う星、人類は繁栄し続けられていると思うかい?」
男「お前、それ屁理屈だよ」
女「君が認めたくないだけさ、まぁ、そういうエリアでおいて語られるにしかるべき【オカルト】……そういうものだけに、私は興味がある」
男「……何でお前オカルト研究会にしなかったんだよ、ここ」
354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:45:16.27:lVwBbUSo0
女「私の言っている【オカルト】だが、それをたとえばレベル∞にするとしよう」
男「∞て……」
女「で、ここをオカルト研究会にするとしよう。
……さて、ここに集まってくる人達はレベル∞のオカルトに関して語りたいと思ってやってくるかな?」
男「来るんじゃねぇの?」
女「君が今思い浮かべた人達は、君が言った今の科学で説明可能な過去に置いてのオカルト、つまりレベル1とか2とかのオカルトについて
それをレベル∞のオカルトに変換して騒ぎたい人達」
男「あ……なるほど?お前にとってそれはオカルトじゃない、と」
女「そう、私は君と同じ考えを持っていると言ってるだろう? それはオカルトじゃなくて『科学』だ」
男「……なるほどねー……よーやく合点がいった」
女「……」
男「ガチで真面目に∞の【オカルト】について考えるなら、こういった人が来なさそう、尚且つ
この地域に関して起こっているであろうと、お前が考えている【オカルト】に関して考えやすそうな
「歴史研究会」という名前にしたほうがいいんじゃないか、と」
女「……」 ガタッ
357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:48:54.55:lVwBbUSo0
男「……な、なに……?」
ギュッ
男「!?」
女「ふふっ、ちょっと嬉しくなっちゃったよ。そのお礼だ」
男「やめろ!」
女「おっと……ふふっ、まぁ。そうだね、大体それであってる。
私は、この地で起こっている【オカルト】に関して、調べていたんだ」
男「……過去形?」
女「ああ、君の口調、語り口から確信した」
男「?」
女「君は……私の求める【答え】をすでに手に入れている」
男「!?」
女「……その【答え】是非、聞きたいんだが……どうだい?」
男「か、勘違いをしてるみたいだな」
女「?」
360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 20:53:36.12:lVwBbUSo0
男「お、俺は、この学校に関する歴史を知りたくなっただけだ」
女「怪奇現象に巻き込まれた直後に?」
男「それとこれとは別だ」
女「さっき、君に正解であり不正解である。という事を言ったね。覚えてるかい?」
男「な、なんとなく」
女「この学校で、『私の求めている』怪奇現象、オカルトだが……それは、本当に何十年も起きていない事なんだ」
男「……?」
女「分からないかい?……私の言う【オカルト】を起こせる者が……活動をしていなかったと言う意味だよ」
男「……」
女「ま、端的に言っちゃうと……真の意味での……幽霊、かな?」
男「!!!」
女「…・…で、私は日々悶々と学園生活を送っていた。そこで起きた君の怪奇現象」
男「……」
女「もう言い逃れはできそうにないと、自分でも気付いてるんじゃないかい?男君」
363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 21:00:51.53:lVwBbUSo0
男「……」
女「伊達に先輩方からずっと続いてきた『歴史研究会』じゃない。ちゃんと過去の先輩方の研究成果……【情報】は伝わってる」
男「……」
女「この地域に関する【オカルト】は幽霊によるものであり、その幽霊は、自己の存在を認識できる人間が学校に現れている際、
その期間中限定ではあるが、物理法則を操り行動できる……これが我々の見解の1つとしてあるんだ」
男「……」
女「さぁ、ここに関してまずは返答を貰いたい。 yesと君が言えば、我々が長年追い求めている【答え】……
その第一関門がクリアーした、という事になるんだ」
男「……」 スクッ
女「あ」
男「今日は、疲れたので、取りあえず帰らせてもらってもいい?」
女「明日もまたきてくれるかな?」
男「……」
女「強制はしないが……私は本気で知りたがっているよ?……君の口からね……ふふふっ」
男「……話すかどうかは別として……明日ここに来るって事に関しては……いいとも」 ガラッ バタンッ
392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 21:44:11.08:lVwBbUSo0
校門前
男(あいつは……いたいた)
幽霊女「……」 チラッ
男「……(帰るぞ)」 クィ
幽霊女「う、うん……帰ってから、聞くね」
男「……」
家
男「ただいま」
幽霊女「そ、それで?どうだったの?」
男「お前もただいまと言え!」 ビシッ
幽霊女「叩かなくてもいいでしょ!?言うわよ!ただいま!」
男「おかえり」
幽霊女「え……ぁ……」
394:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 21:47:23.07:lVwBbUSo0
男「おかえり」
幽霊女「う、うん……ただいまっ、えへへ」
男「お前って叩かれると痛いの?」
幽霊女「いや、別に」
男「そういう所は便利に出来てんだな」
幽霊女「みたいね、それよりもさっ!」
男「あーはいはい。ちょっと着替えてくるから俺」
幽霊女「……」
男「ソファー座って待ってなさい」
幽霊女「は、早くしてね」
男「着替え手伝ってくれたら早くなるかもな」
幽霊女「え、じゃ、じゃあ手伝ってあげるからさっさと…」
男「冗談だよ馬鹿」 タタッ
幽霊女「あ……っ!からかわないでよ!!」
幽霊女(って……そりゃそうよね……恥ずかしいし……私、慌て過ぎかも……えーと深呼吸深呼吸……)
398:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 21:59:23.47:lVwBbUSo0
男「えー、それでな」
幽霊女「う、うん」
男「あの歴史研究会って所だが……お前関連の事について調べるグループだった」
幽霊女「え!?」
男「……うん、部員は一人だけだったんだけど、そいつがかなりお前の正体について、分かってたと言うか……」
幽霊女「ほ、本当に?……」
男「多分な。俺達が知りたがってる歴史については、かなり知ってるっぽいんで、明日聞こうかと思ってる」
幽霊女「……」
男「お前が嫌だってなら行かない」
幽霊女「え……」
男「何となくあいつ、話して来た奴だけど。協力すればかなーりの事が一気に分かりそうだ」
幽霊女「……」
男「どうする?お前に判断を任せようと思って、今日は何も聞いてこなかった」
幽霊女「……」
ギュッ
399:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:02:51.11:lVwBbUSo0
男「……なんだよ」
幽霊女「わ、私……どうすればいいと思う?」
男「手を放せっての」
幽霊女「……」 スッ
男「お前、成仏したいんだろ?最終的には」
幽霊女「う、うん……多分……」
男「最終的には同じゴールへ行く道だ。はやく行くか、ゆっくり行くか。どっちがいいかって事だ」
幽霊女「……」
男「……」
幽霊女「もう、ゆっくり……しすぎちゃった気もする。ふふっ」
男「そんな顔してんじゃねぇよ」
幽霊女「え?」
男「全然笑えてねぇから……見てて気持ちが沈んでくるっての」
幽霊女「……ごめん」
男「……あいつと話してて、思った事があるんだけどな?」
402:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:09:54.82:lVwBbUSo0
幽霊女「なに?」
男「俺の中で、お前っていう幽霊の存在は、基本的に否定されてきたんだ」
幽霊女「……」
男「お前が俺の立場だったらどう思う?」
幽霊女「信じないよね…普通」
男「でも、お前は俺の前に現れた。俺はお前の存在をこうして目の前に感じている」
幽霊女「……」
男「俺、お前の事、嫌いじゃねぇよ」
幽霊女「え!」
男「お前の存在を今までの俺が変に思ってるけど、今までの俺と、お前に出会った後の俺が会議をした結果
お前の存在自体を嫌いはならないって結論になった」
幽霊女「つ、つまりそれって……あんた……その……ぇと……あの……」 モジモジ
男「と、言う訳で」
スッ
幽霊女「ひゃっ!?ちょ、ちょちょちょっと待って!」
403:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:13:27.84:lVwBbUSo0
男「いや、押し倒したりしないから、肩つかんだだけだろうが……」
幽霊女「馬鹿!わ、わわ分かってるわよそんなの!」
男「慌ててんじゃん」 ニヤニヤ
幽霊女「っ~~!!うざい!!」
男「……真面目な話なんだが」
幽霊女「……」
男「俺、お前をちゃんと、絶対に……成仏させてやりたいと思う」
幽霊女「!!」
男「俺が学校にいられる期間は、お前にとっては馬鹿みたいに短く感じると思う。
でも、まぁ大丈夫だ。多分もうすぐお前、成仏できるよ」
幽霊女「……」 ポロッ
男「……泣いてるけども」
幽霊女「え?あ、あれ……いや違うのこれは……その……あれ?」
男「お前、ずぅっと一人だったんだろ?」
幽霊女「あ、あれ……何これ……なんで……」
407:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:21:20.26:lVwBbUSo0
男「過去に会った人達とだって……どうせ大した事喋ってねぇんだろうし、大した時間も共有できてねぇんだろ」
幽霊女「……なん……で……」
男「なんか分かるんだよな。お前が実体として見える位、俺との相性がいいって事が関係してるのかも?
……超絶論理の欠片もない推測で自分で嫌になるが……」
幽霊女「……男…」
男「だから、俺とちょっと楽しく遊んで、んで、成仏して。あの世行けばいいさ」
幽霊女「…ぅ…ぅ……ヒック……何、言うの………よ……ばか……ヒッグ……」
男「何となくだけど、お前あれだよ、きっと現世に居る時に「色々楽しめなかった」のが心残りなんじゃねぇのかな?って……どうだ?」
幽霊女「……分から、ない……」
男「まぁ……とりあえずさ!明るく、適当にゆっくり、過ごしていけば、そのうち何とかなる気がする」
幽霊女「……根拠は…」
男「ねぇな。すまん」
幽霊女「……ふふっ………なんなのよ………もぉ……」
男(やっべぇなーんも論理的な事言ってねぇ……さっさと成仏させたかったんだが……なんだこりゃ)
409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:25:36.10:lVwBbUSo0
男「……まぁ、いっか」
幽霊女「?」
男「なんでもねぇよ……取りあえず、明日、お前も一緒に歴史研究会行こうぜ。多分大丈夫だよ」
幽霊女「ぇ……でも」
男「あいつ、なんかお前を退治しようって感じじゃなったし。多分俺側だよどっちかってぇとな……勘だけど」
幽霊女「……」
男「心配すんな、俺がついてる」
幽霊女「!」
男「……かっこよかったか?」
幽霊女「ばかっ!……もぉぉぉ……さっきからあんた変!喋りすぎ……変なんだから!」
男「まぁお前の存在自体が変だし」
幽霊女「へ、減らず口を叩くんじゃないわよ……ふふっ……もぉ」 ポロポロ
男「はっはっはっ」
幽霊女「……」 ジッ
男「はっ?」
411:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:28:30.35:lVwBbUSo0
幽霊女「……ねぇ……」
男「……何?」
幽霊女「もしかしたら……私達……」
男「???」
幽霊女「……」
男「いや、そこで微笑を浮かべられても意味が分からんから」
幽霊女「やっぱり、なんでもないっ」
男「やっぱ変だよなお前って」
幽霊女「存在自体が変なんでしょ?じゃあしょうがないわよ」
男「な……」
幽霊女「へへっ、ばーか……」
男「チッ……で?明日、結局どうすんだよ」
幽霊女「うん……」
男「……」
幽霊女「行って……みる。あんたと一緒に」
422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:51:14.03:lVwBbUSo0
翌日 放課後 歴史研究会 部室前
男「じゃあ、いいか?」
幽霊女「う、うん……大丈夫、ただし」
男「お前の存在が完璧に見えてる事は伏せる、だろ?了解」
幽霊女「うん、じゃあ」
男「おう、じゃあ」
ガラッ
男・幽霊女「「うわっ!?」」
女「やあ、待ってたよ」
男「び、びっくりした」
女「すまないね、扉の前で何か声が聞こえたから」
男「!」
幽霊女(まさか、聞かれて……)
女「安心してほしい、何も聞いてないよ。さあ、どうぞ」
423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 22:56:34.42:lVwBbUSo0
女「ささ、それではお茶をどうぞ」
男「あ、どうも」
女「一つでよかったかい?」
男「……ああ、大丈夫だ」
女「そうか、それは残念」
幽霊女「……」
男「……えーと…だ。昨日の答えについてだが」
女「」 ピクッ
男「……」
女「……」
男「……yesだ」
女「本当かい!?」ガタッ
男「おわっ!!」
女「本当に本当に君には幽霊が視えるんだね!?」
男「か、かか完璧じゃない!いるな……って位の感じと言えばいいか……半透明なんだ!」
428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:02:42.12:lVwBbUSo0
女「は、半透明……か。なぁんだ」
男「……あれ?トーンダウン?」
女「過去にも半透明なら視える人がいたらしいからね。生憎その人と幽霊はあまり話をしなかったらしいけれど」
男「それって、戦争に行った人か?」
女「な!?」
男「え?」
女「……言ってないよね。私、その事」
男「……」
女「何故、君がそれを知っているんだい?」
男「……」
女「いや、答えなくても分かったよ……なるほど……それなら話はもっと濃いものになるに違いない……」
幽霊女(な、なんなの……言っちゃだめだったの?いや、そんな訳ないわよね。この子に私を縛る権限なんてないし……)
男(なんかマズったか?……)
女「男君……端的に聞くよ」
女「……今幽霊は、君の右にいるのかい?それとも左?」
436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:10:15.25:lVwBbUSo0
男「え!?」
幽霊女「!」
女「君は幽霊とコミュニケーションが取れている!そうだね!?」
男「お、落ち着け……」
女「ハッ! もしや昨日の会話の時もいたのかい!?」
男「いや、ちょっと待て、俺は……えーと」
幽霊女「……言って、いいよ。男」
男「!」
女「なんだい?」
男「いや……分かった、降参降参。そうだな、意思疎通は可能だ」
女「やっぱり!!」
男「そして、今ここに確かにいる」
女「ど、どこ!?」
男「いや……言っても分からないだろうけど……俺の右に」
女「!……」 ジィィィィィィィ
437:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:14:16.31:lVwBbUSo0
幽霊女「……」 ビクビクッ
男「おい女……ビクついてんぞ幽霊」
女「……」 ジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ
幽霊女「ね、ねぇ……ちょっとやめさせてよぉ」
男「(お前が動けばいいだろ)女、幽霊が左に移ったぞ」
女「!」 クルッ
男「……で、お前ももしかして見えたりするのか?」
女「……はぁ……」
男「?」
女「実際に視えている人に、存在を教えてもらってさえ……私に視る力が作用する事がないなんて
……研究会の予想が大きく覆された瞬間だよ」 ズーン
男「……えっと……まぁ、あの……どんまい」
女「いや、まぁそもそも君と同じく基本的に私はそういうものはないと思って生きてきたからね。
真の【オカルト】的な概念について考える様になったのも最近だし、きっと素質がないんだろう」
440:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:17:27.51:lVwBbUSo0
男「そんな事言ったら俺なんか幽霊と会った時でさえその概念がなかったわけだが」
女「……やはり、君は何か【有る】様な気がする…」 ボソッ
男「?」
女「ところで……じゃあ、えっと……えー、今はどこにいる?」
男「俺の右隣」
幽霊女(この人、私の事が視えないんだ)
女「えーと……じゃあ、何か喋ってみてもらえるかな……?男、頼むよ」
男「ふむ……なぁ」
幽霊女「な、何よ」
男「なんか喋ってみてくれ」
幽霊女「何を喋ればいいのよっ!」
男「喋ったぞ女」
幽霊女「!」
女「うーん……だめだ。まったく分からない」
男「そいつは残念だな」
443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:22:36.61:lVwBbUSo0
幽霊女「ハメたわね!この馬鹿!!」
男「なんか怒ってるぞ、どうするんだ。お前の所為だぞ」
女「え……お、怒らせてしまったのかな……ごめんなさい」
幽霊女「ち、違う、あなたの事じゃなくて」
男「お前の所為じゃないってさ、俺の所為らしい」
女「……き、君……本当に……?」
男「ああ、意思疎通可能だ」
女「う、羨ましい……」
男「……」
幽霊女「何で目逸らしてんのよあんた!なんかムカつくわね」
女「じゃ、じゃあ。えっと……自己紹介をしようか」
男「男です」
女「ふざけてるのかい?」 ギロッ
男「ご、ごめん(怒りすぎだろおい)」
452:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:45:11.08:lVwBbUSo0
女「当然私と幽霊さんとの自己紹介に決まっているだろう」
男「じゃあお前からまず自己紹介しとけよ、ここにいるから」
女「えーと、私の声は聞こえてるんだよね」
男「だよな?」
幽霊女「ええ、聞こえてるわ」
男「大丈夫だ」
女「え、えーと……じゃあ」
男「目線はこの辺だ」
幽霊女「や、やめてよ」
女「」ジー
幽霊女「う……あ、あの……」
女「私は女、あなたの事をずっと探していました。来てくれて、ありがとう」
幽霊女「!」
女「私は、あなたの正体を知りたくて、そして……あなたを、成仏させたくてこの研究会を引き継ぎました」
幽霊女「……」
456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:52:13.60:lVwBbUSo0
女「しかし、私には確証がなかった。引き継いでいた過去の先輩方も、あなたを見た人はいなかったから」
幽霊女「それは、そうだろうね」
女「でも、私たちは……特に私は……あなたが絶対に居ると信じる事ができた」
幽霊女「……何故?」
女「それは、私の先祖が……あなたに仕えていたからです。幽霊さん」
男「え!?」
幽霊女「なっ……!!?」
女「……多分ですけど」
男「多分かいっ!!」 ビシッ!!
女「い、痛い!やめてくれよ男君、今自己紹介の真っ最中なんだ!」
男「あ、す、すまんつい……」
幽霊女「ど、どういう事!?私の事を知っているの!?どうして!?」
男「何で知ってるのって言ってるぞ」
女「もちろん……我が家に代々伝わる先祖の伝言により……です」
458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 23:55:59.67:lVwBbUSo0
男「……マ、マジで……?」
女「うん、この男の幽霊の方の事なら、私の家が一番詳しい……と思う」
男・幽霊女「「え!?」」
女「え?……ど、どうしたんだい?……」
男「……」
幽霊女「……」
女「…………?」
男「あの……男……の?」
幽霊女「幽霊……?」
女「え?だ、だってそうだろう?この土地の歴史を研究して、現世に未練がありそうな人は……男性しかいないと
我が研究会は長年の研究により……導き……出し………え?」
男・幽霊女「「…………」」
464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:04:13.76:BAgryqVm0
男「……」 ジッ
幽霊女「どういう……事……?」
男「あーなるほど……お前、男だったのか」
幽霊女「な訳ないでしょ!!」
女「……ど、どういう事……?」
男「こっちのセリフだよ」
女「き、君が今話している……幽霊は」
男「性別は女だそうだが?見た目もお前や俺と同じ年頃だ」
女「なっ!??……嘘だろう!?」
男「いや……」
幽霊女「???」
男「ホントなんだが」
女「……女の……幽霊……」
男「そ、そもそもなんで男だと結論付けるに至ったんだ?」
469:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:14:47.47:BAgryqVm0
女「そ、それは……この土地の歴史資料を探して、幽霊の話が証言として出てきた人を辿って行って……」
幽霊女「……」
女「辿って行って……その資料が無くなった時代に、幽霊が出現したんだと。仮定したからだよ」
男「その時代は?……」
女「……安土桃山時代、戦乱の時代だよ」
男「……そうなのか?」
幽霊女「…………」
男「おい」
幽霊女「ぁ……もしかして……」
男「?」
幽霊女「男、ちょっとこっちへ……」
男「……女」
女「な、なんだい?」
男「ちょっとトイレ」
女「あ、ああ……」
471:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:20:20.32:BAgryqVm0
ガララッ バタンッ
男「どういう事だよ…」 ボソッ
幽霊女「多分……時代、あってるかも……」
男「戦国時代だぞ……」
幽霊女「うん……多分だけど」
男「お前何歳だよ」
幽霊女「そ、そんな事言われても」
男「……お前、死因と、その時の記憶……んで名前が思い出せないんだった、よな?」
幽霊女「……」
男「他に、思いだせない事は?ないんだな?だったら今から俺の質問に答えられるな?」
幽霊女「……さっき、思いだした様な…気がするのよ」
男「なにを?」
幽霊女「私の……身分?……」
男「……身分……」
474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:26:57.10:BAgryqVm0
幽霊女「女さんが、仕えていたって……言ってたじゃない?あの時に……」
男「お、お前……やっぱり男」
幽霊女「違うっ!!女さんの先祖の人が、仕えていた人について……心当たりが……」
男「誰だ?」
幽霊女「当主様よ……ここ、昔お城だったの」
男「……え……本当に?」
幽霊女「記憶に靄がかかってる様な感じで……不鮮明だけど……ここがお城だったのは、多分あってると思う」
男「じゃあ、女が言ってた人って……」
幽霊女「……」
男「じゃ、じゃあお前は!?お前がその当主とやらを知ってるんなら……あの……お前自分自身の事については?」
幽霊女「それは……まだ……当主様の顔も、よく思いだせないし、私が何で当主様を知っているのかも……」
男「で、でもお前……身分を思いだしたって…」
幽霊女「あ、あれ……あ、うん……私は……確か……」
幽霊女「……確か…………」
479:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:35:11.10:BAgryqVm0
ガララッ
女「!君……」
男「ちょっと、聞きたいことがあるんだが」
女「あ、ああ……」
男「……安土桃山時代……ここは?」
女「……」
男「城……だった、とか?」
女「!!」
男「……マジ?」
女「どうして…」
男「幽霊が、教えてくれた」
女「……」
男「お前達が幽霊だと思ってた人物ってのは、そこの当主の人か?」
女「…………」
男「……どうなんだ?」
489:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:56:48.44:BAgryqVm0
女「そうだよ」
男「……」
女「我々は、この土地にかつて存在していた城の当主。彼を幽霊としてターゲットにしていたんだ」
男「……そこらへんの、歴史。詳しいんだろう?当然」
女「調べ上げたからね……幽霊さんは?」
男「ここに居る……って言いたいところなんだが、帰った」
女「帰った?」
男「頭痛いっつって……帰らせた」
女「……ッ!……記憶が?」
男「そうだ」
女「やはり……え?でもそうしたら君は何故……」
男「お前の祖先が仕えていた当主の事に関して、記憶が一部だけ思いだせたらしい。それを教えてもらったんだ」
女「……私達を、知っている?」
男「いや、当主を思いだしt… 女「当主は簡単に会える存在じゃない!!あの時代の当主に謁見できるなど……!!」
490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 00:58:04.36:fhTiSjmN0
男「!……あ、そうか……」
女「限られたものだけだ……家臣たちと親族と……!」
男「え?ど、どうした……」
女「……」 ガサゴソガサゴソ
男「も、もしもし?」
女「……親族、かもしれない」
男「え?」
女「幽霊さんは、本当に当主様の事を知っていたんだね?」
男「知ってはいたが、まだ顔も思い出せていないみたいだ。当主ってのが存在してたのは知ってた……」
女「……じゃあ、まだ確証はないって事を前提で話すけどね、男君」
男「お、おう」
女「幽霊さん、彼女は、当主様の親族か、彼女たちの身の回りの世話する女の家臣たち……の、誰か」
男「……」
女「だと思う」
男「お前の……女の先祖ってのは……?」
499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 01:15:13.03:BAgryqVm0
女「私の先祖は……当主様の、側近の一人だよ」
男「側近?」
女「今で言う秘書、ガードマンみたいなものだね。当時、当主様は4人の側近がいたそうだけれど、そのうちの一人だったみたい」
男「……ふーん」
女「君は……しかし、頭が痛く……記憶が……なんて……困ったな」
男「え?」
女「男君、彼女に、この事実は伏せておいた方がいいかもしれない」
男「な、なんで!?だってせっかくあいつの記憶の手がかりg… 女「それだよ」
男「え?」
女「記憶……記憶がないんだよね、彼女」
男「あ、ああ……」
女「私たちは、彼女の記憶を呼び覚まそうとしている可能性がある」
男「ああ、それが目的で俺は」
女「それじゃあ、駄目なんだよ男君」
男「……なんで?」
506:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 01:23:30.80:BAgryqVm0
女「いや、駄目というか……なんだ、駄目じゃあないんだけど、駄目なんだ」
男「お前日本語の駅前留学言ってきてくれ」
女「いや、すまない。違うんだ……説明しずらい事で……よし、わかった」
男「???」
女「まず、我々歴史研究会は、代々に渡って幽霊を成仏、つまり当主様の幽霊を成仏させる為に
……そのチャンスに備えて、成仏方法を研究していたんだ」
男「まぁそれは、そうだろうな」
女「その方法は、当主様のご記憶が、はっきりしている事が大前提だったんだ」
男「ぇ……」
女「当主様の幽霊が、自分が当主であった記憶を覚えていて、尚且つ何が心残りだったのかをしっかり自己認識している状態
そうでなければ……我々は成仏の手助けさえも出来ないんだよ」
男「…………」
女「我々は、現世に心残りがありそうなこの土地の幽霊を、当主様だと思って行動していた。
それには、歴史の資料から分かりうる、当主様が心残りだろうと思っている事がらについて、我々が知っていなければならない」
男「……それは、そうだな。 そうじゃないと、当主は心残りなんてねぇじゃん、ここにいる幽霊は他の幽霊だ……ってなってるよな?」
508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 01:28:31.81:BAgryqVm0
女「その通りだよ。だから、我々は当主様が幽霊だと信じて疑わなかった……いや、疑いようがなかったんだ。
他の選択肢がなかったと言ってもいい」
男「……当主さんとやらは……歴史の資料からも分かる位に心残りがあるっぽいの……か?」
女「うん」
男「それ…は?」
女「……戦だよ。当主様は、ここで、敵対関係にあった他の大名に、殺されたんだ。親族もろともね」
男「!?」
女「まぁ、当時としては珍しい事じゃなかったけれど……でも……分かるだろう?」
男「……親族や、他の人達も皆……?」
女「ああ、幸いにも私の先祖の人は、逃げて生き延びたそうだが。
当主様からの言伝を友好関係にあった他の大名の元へ伝えに行っていたそうだ」
男「……心残り、親族や他の人達もあったんじゃないのか?」
女「勿論、あっただろうが。一番の……という事ならば、当主様なんじゃないか?」
男「でもそれじゃああいつは!!」
女「……だから……私も混乱してるんだよ、男君」
525:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:02:39.88:BAgryqVm0
男「……」
女「確かに……でも、そうだな……君の視えている幽霊、彼女が当主様を知っている女の幽霊だという事実……」
男「だろ?」
女「ああ、どうやら……私たちは、見当違いだった様だね」
男「当主さんとやらは……成仏したんだろ」
女「かもしれないね……そして、幽霊さんは」
男「成仏、しなかった」
女「……」
男「……」
女「記憶……幽霊さんの記憶はまだ曖昧なんだよね?」
男「ああ」
女「話を戻そう。男君、心して聞いてくれ」
男「な、なんだよ……」
女「幽霊さんは、自力で、記憶を思い出す様に、我々で仕向けないと、成仏は難しい可能性がある」
男「!」
527:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:07:26.13:BAgryqVm0
女「……」
男「理由、聞いていいか?そう言える理由を」
女「私たちは、日本全国、各地の幽霊の成仏に関して、かなりの資料を何年にも渡り集め、研究したんだ」
男「それで?」
女「その研究成果から、私たちが見解として持っているもの……それは」
男「……」
女「霊体は、自身の記憶が鮮明で、尚且つ現世への心残りがはっきりと自己認識できている状態でしか……成仏できない様なんだ」
男「な……」
女「君が話している幽霊、彼女は、その条件を満たしているかい?」
男「満たしていなかったら……?」
女「……悪霊となって、災いをもたらす」
男「嘘だろ?」
女「嘘か真実かは私にも分からないよ。でも……各地の伝承では、そうなってる」
男「……」
女「そして……悪霊となった霊は、決して成仏することができずに……一生この世をさまようか、封印されるか……ってね……」
532:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:11:53.92:pMxC3yuG0
男「……」
女「……」
男「……とりあえず」
女「うん?」
男「分かった……あいつには、これ以上の情報は、出来るだけ、与えない様にする」
女「……うん、今のところは、それがいいと思う」
男「でも、俺は別だ」
女「うん、分かってるよ」
男「俺とお前は、あいつの正体について……資料から探り続ける。それでいいか?」
女「この歴史研究会の存在意義は、彼女に成仏してもらう事だよ。愚問だね」
男「……分かった。明日、また来る」
女「うん……」
男「今日は、取りあえず帰るわ……あいつが、ちょっと心配になってきたから……じゃあな」
女「うん。また明日」
536:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:19:21.66:BAgryqVm0
ガララッ バタンッ
女「……」
女「……君も、当主様と無関係では……ない様な気がするよ、男君」
男「……」 タタタタッ
男(畜生……んだよ……あいつの記憶が全回復してからじゃねぇとだめって事かよ?)
男「……」
男(やるべき事は3つ)
男(あいつが記憶を自分で取り戻せる様に誘導)
男(あいつが現世に思う心残りに関して、あいつを観察しながら推測しておく)
男(あいつを…・…)
男「……悪霊にさせない」 タタタッ
家
男「ただいま!!」
537:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:24:01.70:BAgryqVm0
男「……」 キョロキョロ
男「あれ?……あ」
男「……」 スタスタ
男「気分、どうだ?」
幽霊女「……」
男「大丈夫か?そのまま寝るか?」
幽霊女「……お城」
男「ん…」
幽霊女「あってた?当主様の事も」
男「ま、多分な。でもあれだ、あいつ使えねぇんだよ」
幽霊女「?」ムクッ
男「それ以外の事は、分からないってさ。まぁ、すげぇ昔の事だからな」
幽霊女「そっか……」
男「お前、頭痛はもういいのか?」
539:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:27:57.43:BAgryqVm0
幽霊女「ん……大丈夫」
男「……他に、何か思いだした事は?」
幽霊女「ある、一つだけね」
男「! な、なんだ?」
幽霊女「……」 ジッ
男「?」
幽霊女「……今は、言いたくない。混乱してるから」
男「……お前が?」
幽霊女「そう、言ったらあんたも……混乱しちゃうと思うし」
男「そっか」
幽霊女「うん」
男「ま、あれだよ……取りあえず、一歩前進って意味では……よかったな」
幽霊女「まぁ、うん。そうだね」
男「……なんだよ」
幽霊女「別に」
540:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:32:28.33:BAgryqVm0
男「?」
幽霊女「……」
男「……どうしたんだよ、ムスッとしちゃって」
幽霊女「別にムスッとなんかしてないわよ」
男「?」
幽霊女「ねぇ……私さ」
男「なんだよ」
幽霊女「……分からなく、なっちゃった」
男「え?」
幽霊女「……」
ポロッ
男「え!?」
幽霊女「本当に、思いだしたいのか……分からなく、なっちゃった……」
男「……」
544:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:39:53.58:BAgryqVm0
幽霊女「何か、思いだそうとすると……怖くて……苦しくなって……」
男「お前……」
幽霊女「とても、胸騒ぎがする……辛い気分になるの」
男「……」
幽霊女「でも……それでも」
男「それでも?」
幽霊女「私は、思いだしたい……でも、怖い」
男「……」
幽霊女「どうすれば、いいの……もぅ、訳わかんないよ…」
ギュッ
幽霊女「!」
男「俺がいるだろ」
幽霊女「!!」
男「お前もう、一人じゃねぇんだからさ。ゆっくりペースで……一緒に……協力してやるから、な?」
幽霊女「……ふぇ…」
548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:46:08.34:BAgryqVm0
男「その、とにかく、怖かったら。手握ってやるでも何でもしてやるからさ」
幽霊女「……」
男「頑張ろうぜ?な?」
幽霊女「ぅん……」
男「俺、お前に成仏してほしいんだよ」
幽霊女「うん」
男「ずっと……一緒に居られるわけでもねぇんだから……お前の存在知ってて、このまま高校卒業するのは……俺も嫌だ」
幽霊女「……分かった」
男「協力はする」
幽霊女「……」
男「大丈夫だ」
幽霊女「……」
男「俺がいるからさ、何とかなるって」
幽霊女「……ヒグッ……エッ……ヒック……」
550:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:51:49.87:BAgryqVm0
男「うん、大丈夫だ。大丈夫大丈夫」 サスサス
幽霊女「……なんで、あんた……そんなに」
男「……しらねぇよ。俺にも分かんねぇけど」
幽霊女「……」
男「もう、放っとけねぇんだよ。乗っかった船でもあるしな」
幽霊女「……」
ギュゥゥゥ
男「!?」
幽霊女「……」
ギュゥゥゥゥ
男「……あ、と……あの、おい?」
幽霊女「……」 スッ
男「……」
幽霊女「ごめ……ん…」
男「い、いや……いいけど……あの……えっと」
553:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:56:36.19:BAgryqVm0
幽霊女「うれ……しくて」
男「……」
幽霊女「ずぅっと……ずぅっと……人に、頼る事なんて、なかった」
男「……」
幽霊女「でも……あんたが……私の前に、来てくれた」
男「……大した人間じゃ…ねぇけど俺…全然……お前が視えただけだし…」
幽霊女「それを判断するのは」
男「……」
幽霊女「……あんたじゃないわ」 ギュゥ
男(ち、畜生……んだよこれ……心臓が…) ドキドキ
幽霊女「……ね、ねぇ」
男「な、なんだ?」
幽霊女「お願いが……」
男「! あ、ああ。なんだ?」
幽霊女「……っ……と……あの……い、一緒に……」
564:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 03:12:14.43:BAgryqVm0
ベッド
男(どうしてこうなった)
幽霊女「……」 スーッ スーッ
男(爆睡してるし……)
幽霊女「……ん」 ムニャムニャ
男(だぁぁぁ!!青少年になんちゅう破廉恥な攻撃を仕掛けてきやがるこの幽霊!!!)
幽霊女「……んん」
男(しかも毎晩一緒に寝て欲しいとか……ありえねぇお願いすぎるだろおい!!)
幽霊女「んぁ」
男「」 ビクッ
幽霊女「……ん」
男「……(色々な恥の感情というものが、欠如しているのかも……それとも昔の人は意外と奔放だった?
……いやでもどうやらこいつ、結構身分高い奴だったみたいだし……????)」
幽霊女「……」 スースー
男(俺に……どんだけ、拠り所を求めてんだって……見当はずれな事……考えちまうぞ、畜生が……何なんだよ……)
642:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:04:20.47:BAgryqVm0
1週間後
男「……」ムクッ
幽霊女「おはよう、男」
男「……おう」
幽霊女「早く朝ごはん食べないと、遅刻するんじゃない?」
男「へいへい」
幽霊女「顔洗ってくれば?あと寝癖。すごいよ?」
男「……うん」
幽霊女「寝ぼけてるな、こいつ」
男「いや、ただ……」
幽霊女「ただ?」
男(一緒に寝るようになって1週間……か)
幽霊女「?」
男「……」 ギュッ
幽霊女「なに? 手なんか握って」 ギュッ
646:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:11:25.81:BAgryqVm0
男「お前さ……」
幽霊女「ん?」
男「俺に、惚れてるのか?」
幽霊女「!? きゅ、きゅきゅ急に何言い出すかと思えば……なに!?」
男「いや、何というか。それしか思い浮かばなくて」
幽霊女「は、はぁ?」 ドキドキ
男「だって……なぁ?」
幽霊女「意味が分かんないんですけど……さっさと支度すれば?」
男「おぅ……」ポリポリ
幽霊女「…………」
男「……あの、さ」
幽霊女「まだなにか?」
男「俺がさぁ、お前の事、綺麗だ―とか、美しいーとか、言ったらどうする?」
幽霊女「え?そ、それは……まぁ、う、嬉しい……けど」
男「……」
648:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:18:15.37:BAgryqVm0
幽霊女「そ、そう思ってる……の?」
男「……まぁ、思わなくはないかな」
幽霊女「は、はっきり言ってよ」
男「顔洗ってくる」
幽霊女「あ!逃げんな!」
男「……」 スタスタ
幽霊女「もぉー…………へへ」
男(おかしいだろ……常識的に考えて……1週間だぞ?7日だぞ?……) ジャーー
男「……」
男「頭の中が、やべぇ……何が起こってる……」
キュッ
男(あいつと時間を過ごせば過ごす程……あいつの事を出会う前から知ってる様な……
絶対にあり得ない感覚が、俺を襲ってくる)
男「……っ…………完全に実体として視える……事と、何か関係が?」
650:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:26:52.06:BAgryqVm0
幽霊女「ねぇ!」
男「っ!」 ビクッ!
幽霊女「はいタオル」
男「び、ビックリさせんなよ」
幽霊女「あ……ご、ごめん」
男「いや、そこまでへこまなくてもいいけどな?」
幽霊女「……遅刻、しちゃうわよ?」
男「分かってるって」
男「……」モグモグ
幽霊女「それにしても、女さん。あの日からずっとお休みなの?」
男「おう、なんかあの日色んな意味で衝撃を受けて、知恵熱出まくって……それが風邪に変化して、と、大変な事になったみたいだぞ」
幽霊女「今日は来るのかな?」
男「分かんねぇ、一応放課後行ってみるけどな」
652:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:32:43.37:BAgryqVm0
幽霊女「じゃあ私も……」
男「お前はだめだ」
幽霊女「………………なんでよ」
男「ちゃんと長々と説明しただろ?俺が女と調べて言って、お前に言う。
そして、お前はゆっくりと思いだす。この流れを大事にしたいんだよ」
幽霊女「そうしないと、私が……悪霊になっちゃうから?」
男「可能性があるって話だ。女曰くな」
幽霊女「……分かった……私の為に……って事だもんね……信じる」
男「この1週間は俺だけで、しかも二人で生活していただけだったけど……思い出せた事、あるだろ?」
幽霊女「うん。私は、あの校門前の建物に当時あった場所……お城の離れみたいなところで
暮らしてた事と……当主様は、私にとても優しくして下さった事……そして……」
男「え?その2つだろ?」
幽霊女「ううん……当主様の顔も……思い出したよ」
男「マジで!?」
幽霊女「うん♪」
653:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:41:21.69:BAgryqVm0
男「へー、そりゃ大きな進歩なんじゃねぇの?」
幽霊女「かもねー」
男「どんな奴?イケメンか?」
幽霊女「んーとね……うん、まぁ。私は好きなタイプの顔かも」
男「おお!つーことはあれじゃね?やっぱお前ってその当主とやらといい仲だったという可能性が」
幽霊女「どうなんだろう」
男「いやぁ……しかし」
ポンッ
幽霊女「ひゃっ?」
男「よかったじゃん。本当に」ナデナデ
幽霊女「ぁ……」
男「なに?」
幽霊女「ん……! な、ななんでもない」
男「?」
幽霊女「……」ドキドキ
654:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:42:20.35:BAgryqVm0
男「さてとー、今日こそは女と話し合ってもっといい情報を見つけてきてやるからな。
ちょっとやる気出たわ」
幽霊女「あ、ありがと」
男「おう、んじゃそろそろ行くかな」
prrrr prrrr
男「……こんな朝早くに……?」
幽霊女「?」
男「はいもしもし……ああおじさん!お久しぶりです!
はい、何とかやってますよ……あーはい、分かりました。それじゃあ待ってます」
ガチャッ
幽霊女「誰?」
男「俺のおじさん、親戚のおじさんが偶に来るって初めてお前がここに来た時に言っただろ?
そのおじさん。元気かってさ」
幽霊女「それだけ?」
657:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:48:16.62:BAgryqVm0
男「いや、明日はちょうど休みだから久々に様子見に来るって」
幽霊女「ふーん」
男「と、言うわけだから、明日はおじさん来てる間はじっとしててくれよ?」
幽霊女「……」
男「なんだよ?」
幽霊女「男のそばに……い、いたい……かも?」
男「……いや、その、俺んちで持て成すんだから大丈夫だって。どこにも行かねぇよ」
幽霊女「……それは分かってるけど」
男「じゃあ……」
ギュッ
男「!?」
幽霊女「だ、だって……話せなく、なるじゃん」
男「いや、おじさん来てる間だけだから」
幽霊女「……むー」
男(どんだけ俺と話してぇんだよこいつ)
660:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 09:56:20.53:BAgryqVm0
幽霊女「分かった、じゃあ我慢する」
男「よし」
幽霊女「……」 ジー
男「今度はなんだ?」
幽霊女「遅刻するわよ?」
男「!わあああああ!!ちょ、急げっ!」
幽霊女「急ぐのはあんただって、ふふふっ」
放課後 歴史研究会 部室前
ガララッ
男「お!」
女「……」
男「久しぶり」
女「やぁ」
男「もういいのか?熱は」
女「お陰さまでね……いやぁまいったまいった」
669:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:08:12.23:BAgryqVm0
男「結構長引いたな」
女「それだけ衝撃度が大きかったんだろうね」
男「途中からただの風邪になったって聞いたけど?」
女「……まぁそれはいいじゃないか」
男「ははっ」
女「それで……1週間経ったね」
男「あ、おう……」
女「彼女は?」
男「お前の言いつけを守る為に、ここには来させてない。今頃家だろ」
女「1週間、君なりに何かしてみた?」
男「いや、お前がいないとこの部屋もどこに何の資料があるのか分からないからさ
お前がいなかったこの1週間はここに来て、お前がいなかったら帰ってた」
女「それで、幽霊さんと暮らしてたと」
男「そういう事」
女「何か、幽霊さんに変化はあったかい?」
674:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:23:43.11:BAgryqVm0
男「……」
女「視え方の変化は勿論、態度、表情は視えるんだっけ?、あと言動とか……そう、それに……新たに思い出した記憶があったり?」
男「……」
女「何かあったみたいだね」
男「実は―――」
3分後
女「……男君」
男「はい」
女「幽霊さんが現世でやり残した事って……もしかして……」
男「……」
女「何となく、私の言いたい事は分かるかい?」
男「まぁ……あそこまでされたら、察しはつくかも」
女「……愛に飢えているのか、はたまた……君だからなのか」
男「え……」
676:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:27:01.29:BAgryqVm0
女「君と言う人間に、幽霊さんの中で、心当たりがあるのかもしれないよ?
なにせ、視える人間だし」
男「い、今までもいたんだろ?視える人間」
女「でも、彼女がここまで君と一緒にいる。
今まで視た人の中でこんなに長時間彼女と居た人なんて絶対にいない。
もし居たとしたら、そういう人の証言資料から、我々は幽霊さんを女性だと……君と会う前に分かっていたはずだからね」
男「……」
女「君、彼女が半透明に視えるって言ったよね?」
男「……」
女「具体的に……どのレベルの半透明なのか。ものすごく興味があるんだけど、教えてくれるかい?」
男「……おい」
女「なんだい?」
男「お前、いつ風邪が治ったんだ?」
女「3日前」
男「昨日と、一昨日は……何をしてたんだ?」
678:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:30:09.78:BAgryqVm0
女「……ふふっ」
男「……」
女「家の蔵で、ずっと調べものさ。家族総出でね」
男「……で?」
女「まぁ、言おうと思ってたんだけど。気付くのが早いね男君」
男「俺から幽霊の様子を聞いてる時のお前の顔に 『そうだろうねぇそうだろうねぇ』 って書いてあったからな」
女「そんな顔してたかい?」
男「俺にはそう見えた」
女「それはどっちの、みえた?」
男「……」
女「冗談だよ……まぁとにかく!そうなんだ。分かったんだよ男君」
男「?」
女「あまりにも今まで、当主様の事について調べすぎてたから、盲目になってたんだね。
観点を当主様以外に絞って家族みんなで資料を探したら……あったんだよ」
682:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:38:04.33:BAgryqVm0
男「なにが?」
女「幽霊さんの正体が書いてある資料さ」
男「!?」
女「……そして」
男「……」
女「何故、幽霊さんが君に固執しているのか……その理由についても、仮定を得られるに至ったんだよ。私は」
男「……それ、もう解決じゃね?」
女「いや、そんなに簡単にはいかないよ。順番に説明しようか」
男「頼む」
女「うん……まず、彼女の正体についてだが。彼女の住んでいた場所に関しては、もう思い出したんだったよね?」
男「ああ、自分でお城の離れだったと言ってた」
女「そう、正解なんだよそれ。だから……そういう事になるんだ」
男「?」
685:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:44:02.01:BAgryqVm0
女「いいかい、男君。彼女の正体は……当主様の……奥様に当たる……姫様なんだ」
男「お!?」
女「言ってなかったかもしれないが、当主様がお亡くなりになった時、彼は17歳。
ちょうど、今の私達と同い年……」
男「17で当主!?」
女「当主様が討たれたのは……当主様のお父上、先代の当主様がお亡くなりになって、後を継いだ直後だったんだよ。
あの時代ならそこまで珍しくない」
男「じゃぁ……」
女「ああ、彼女は当主様の、正真正銘の奥様……その可能性が極めて高い」
男「な、なる……ほど……納得した」
女「納得?」
男「あいつが、視える俺に固執してベタベタしてくるのは……政略結婚?とかで
連れてこられて、離れに入れられて……何も普通の女の子っぽい事をせずに死んでしまったから……とか」
女「うーん」
687:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 10:53:55.05:BAgryqVm0
男「だ、だってそれしか考えられないだろ?」
女「そうとも、言えないんだよ」
男「?」
女「政略結婚じゃなかったんだってさ」
男「へ?」
女「だから、普通に好き同士で結婚した、恋愛結婚だったみたいなんだよ。資料の記録によるとね」
男「???」
女「となると……姫様は、君の考えの通りの意味での『現世への未練』を抱いていた
というのとは、ちょっと違うんじゃないか……と私は思うんだが、どう思う?」
男(頭がこんがらがってきた……)
女「ま、こういうのは男である君より私の方が考えやすかったよ」
男「また過去形で言ってるけど……どういう事だ?」
女「今ここで君と会話していった推測……それは、『もし、君が幽霊さんにベタベタされていたら……』と
私が仮定すれば、君と話す前に私の中で、すでに辿りつけていた地点だったって事」
男「!!……だからお前『そうだろうねぇ』って顔してたって事……なのか?」
689:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:01:24.41:BAgryqVm0
女「うん、予想してたからね。君から話を聞いた時に多分これで合ってるんだろうなと、思ったよ」
男「……答え出てるっぽいなお前」
女「うん、多分ね……」
男「教えてくれよ」
女「うーん……どうしようかな?」
男「ここに来てお預けですか?」
女「いや、そういう意味じゃなくて……これ、男君が自分で知らないと意味がない様な……」
男「俺の事?」
女「うん……男君。 明日、幽霊さんをここに連れて来てくれない? 二人で話してみたいんだ」
男「それはまぁ……いいけど、どうやって話すんだよ」
女「幽霊さんは、物理干渉が可能なんでしょう?筆談してもらうよ」
男「あ、なるほど」
女「女の子同士の会話だから……男君は幽霊さんを連れてきたら、すぐに帰ってね?」
男「ふむ……あ」
女「え?なに?」
690:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:07:21.21:BAgryqVm0
男「明日、学校休みじゃん」
女「昼からなら、ここ使えるんだよ。昼から夕方にかけて、好きな時間に来てくれればいい。待ってるから」
男「……分かった」
女「……」
男「……女?」
女「これは、まぁ……伝えておいてもいいかな……これで君が気付ければ、それでいいと思うし」
男「なんだよ?」
女「当主様と、お姫様。幽霊さんとの関係なんだけど、彼女は当主様達と友好関係にあった大名の娘さんだったんだ」
男「へー」
女「二人は幼いころから一緒に遊んだりする機会があって、両家の人達も皆が二人の仲を微笑ましく眺めていたんだって」
男「……」
女「二人は、許嫁の関係、ではなかったけれど。いつしか当主様の方から、お姫様のお父上に頼み込んだそうだよ。
即OKだったみたい」
男「やるじゃねぇか当主様」
698:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:19:37.20:BAgryqVm0
女「それで……二人はめでたく結婚……二人ともお互いが大好きだったそうで……わざわざ離れを作って
そこで二人だけで新婚生活を送ろうとしていたみたいだ。当時としては異例だよね。側近が全然いない状態で、
全部二人でやりたがったそうだから……でも」
男「でも?」
女「二人が結婚して……丁度10日後に……戦が起こって……」
男「え!?じゃあ……」
女「当主様は、戦の直前に、姫様を離れから逃がそうと、姫様の実家である大名の元へ……
側近に手紙を持たせて向かわせたんだ。けれど、敵が予想以上の速さで城に攻め込み……」
男「……その……側近が……」
女「そうさ。私の先祖様……二人の仲人みたいな事をしていたみたいだね」
男「…………」
女「……まだ、何も感じないかい?」
ドクンッ
男「え?」
女「…………」
699:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:26:19.18:BAgryqVm0
ドクンッ ドクンッ
男「さ、さぁ……ちょっと、ビックリしたからか……動悸が早くなったかも、だけど」
女「……」
男「し、しかしおかしいな?それなら、何で当主様は心残りがないまま逝ったんだろ。
それだったら、姫様を守れなかった事に対する後悔の念とかがあってもおかしくないよな?」
女「当主様と側近、親族の人達はみんな、城で討たれたって言ったよね?」
男「……ああ」
女「でも、逃げのびた僅かな一握りの人もいる。私の先祖さまも含めてね」
男「ふむ……それで?」
女「先祖さまが、その時聞いたみたいなんだけど……当主様が息を引き取る直前に、側近の一人が彼に
『姫様は無事にお逃げになりました』って……言ったそうなんだ……」
男「…………」
女「その……ある意味残酷で、そして、優しい嘘を……当主様は信じて、逝った」
男「…………」
女「皆から愛されていた、いい当主様だったんだよ」
700:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:28:33.15:BAgryqVm0
男「…………」
女「現実では、姫様は……」
男「なるほど……な」
女「……」
男「俺が、もし当主の立場だったら」
女「!?」
男「……その、嘘言った奴に……感謝と、激怒……7:3位の感情をぶつけて死にそうだ」
女「……」
男「でも、そうだな。……なるほどな、感謝が7なら……ちゃんと逝けたのかもな」
ガシッ
男「な、なんだ?」
女「本当に、本当に……まだ、気付けていないのかい?」
男「……何が?」
女「…………君が……君こそが………」
707:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:37:41.86:BAgryqVm0
男「何なんだよ……離せよ」
女「……」スッ
男「お前が、何を言ってるのかは、よくわかんねぇよ……でも」
女「でも?」
男「何となくだけど……俺が、関係してそうな事は分かった」
女「!それって……」
男「あいつと、一緒に過ごして、まだ1週間位だけど……
昔から……知ってた様な……懐かしい感じが、どんどん俺の中で膨らんでいってるんだよ……自分でも変だと思ってんだ」
女「もう、分かってるんじゃないのかい?」
男「……」
女「……」
男「いや、分かってはない。それは……一生俺には『分からない事』だ。
ただ……確証はないけど、ある事実を確認したら、『分かる事』もあるかな……とは思う」
女「ある事実……君の、ご先祖様の事だね?」
男「まぁ……そういう事だな」
709:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:40:04.84:BAgryqVm0
女「……」
男「お前が自分で確かめるべきだって言った事は理解出来た。明日、親戚のおじさんがくるから聞いてみる」
女「うん。分かるといいね」
男「まぁな……でも、それなら疑問が残る」
女「え?」
男「もし、俺とお前が今考えている事が事実だったら……俺は、なんで……【ここ】に、居る?」
女「……それは、簡単さ」
男「え!?」
女「日本人は……神道と仏教の国だよ?それを考えて、【オカルト】的な部分で更に理論を補強してやれば、答えは出るよ」
男「……」
女「大丈夫、明日には分かるんじゃないかな?」
男「……今日は、取りあえず帰るわ。また、明日」
女「明日、結論が出る事を祈ってるよ」
男「じゃあな」
女「うん」
714:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:47:04.67:BAgryqVm0
家
男「ただいま」
幽霊女「おかえりい!!」
ギュッ
男「おわっ!くっつくんじゃねぇよ!」
幽霊女「いいじゃん♪減るもんじゃないしさ!」
男「そういう問題じゃねぇ、服に皺がつくだろ!」
幽霊女「あ、ごめん」 パッ
男「ん」
幽霊女「おかえり」
男「うん……」 ジー
幽霊女「なに?」
男「いや?……ソファーにでも座ってろ」
718:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 11:53:57.11:BAgryqVm0
男「ふー」
幽霊女「その、どうだった?」
男「ん?ああ……」
幽霊女「ねぇ、どうだった?」
男「近いっつの……明日、お前を連れて女の所へ行く」
幽霊女「! いいの?」
男「女がお前を呼んだんだ、二人で話がしたいそうだ」
幽霊女「え?でも私……」
男「お前は紙とペンで筆談。あいつは口で会話」
幽霊女「な、なるほど……頭いいわね」
男「…………」
幽霊女「…………」
男「本当は、どこまで思いだしてるんだ?お前」
幽霊女「!」ビクッ
721:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:01:24.09:BAgryqVm0
男「……」
幽霊女「どういう意味?あんたに教えた事で全部、だけど」
男「明日、お前……成仏できるかもしれないぞ」
幽霊女「え!?」
男「……分かんないけどな」
ポンポン
幽霊女「何を、知ったの?」
男「お前の、正体」
幽霊女「な………」
男「……明日になれば、全部分かる。気がする
俺、朝はおじさんを呼んで確認することがあるから、それを確認した後、歴史研究会の部屋に行こう」
幽霊女「…………」
男「大丈夫だ」
幽霊女「なに……が?」
723:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:07:28.22:BAgryqVm0
男「お前は、ちゃんと成仏出来るさ。心配すんな」
幽霊女「ッ!……」 バシッ!!
男「……って…」
幽霊女「……」 ポロポロ
男「……」
幽霊女「そうじゃない……私が言いたいのは……そうじゃないっ!!」
男「……」
幽霊女「違うのに……何で、分かってくれないの?」
男「……今日は、もう寝ようぜ……ちょっと疲れた」
幽霊女「…………」
男「……」 ゴロンッ
幽霊女「……」 ゴソゴソ
男「……」
幽霊女「……あんたは、ひどいよ」
724:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:08:45.64:BAgryqVm0
男「何でだよ」
幽霊女「私、許さないんだから」
ギュゥ
男「そいつは……困ったな」
幽霊女「ヒック……エグッ……許さな……い……から……」
男「……」
幽霊女「ぅ……ぅぅ……」
男「……」
幽霊女「怖いの」
男「ぁ……」
幽霊女「成仏するって……もう、あんたと一生……離ればなれ」
男「……お前」
727:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:10:22.14:BAgryqVm0
幽霊女「もぅ……一人は嫌……いやなのぉ……」
ギュゥゥゥゥゥ
幽霊女「ひゃっ!?……」
男「…………」
幽霊女「……」
ギュゥゥ
男「大丈夫だ」
幽霊女「……」
男「……大丈夫だから……ま、根拠はねぇんだが……でも……大丈夫だ」
幽霊女「…」
男「おやすみ」
幽霊女「…………うん……」
730:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:15:24.03:BAgryqVm0
翌日 昼 歴史研究会 部室前
男「……」
幽霊女「……」
ガラッ
女「来たね」
男「そりゃ来るさ、昨日言っただろ」
幽霊女「……」
女「幽霊さんも?来たかい?」
男「おう、隣に居る」
女「そう……それで、結果は?」
男「まぁ、ビンゴ」
女「ま、知ってたけどね」
731:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:20:26.07:BAgryqVm0
男「何でお前が知ってるんだよ、うちの家系図」
女「私の先祖様が当主様の一族の家系図を保管していただけだよ」
男「……そういう事か」
女「まぁ……君は当主様の遠縁にあたる人間だから、直系じゃあないんだけどね」
男「遠縁でも知ってビビったよ、マジで震えが来た」
女「知ったのはおじさん経由で?」
男「そうだよ、ついさっきの話だ」
女「そう……じゃあ、昨日の『分かる事もある』と言っていた方は……理解したかい?」
男「おう、まぁな」
女「幽霊さんにそれは?」
男「言ってないけど……」 チラッ
幽霊女「……」コクッ
男「とっくに気付いてたっぽい」
女「あはは……さてと、それじゃあ……男君は食堂の自販機で飲み物でも買って暇を潰していてくれ」
男「……大丈夫なのか?」
732:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:24:28.54:BAgryqVm0
女「大丈夫。準備は出来てるよ」
男「いや、お前じゃねぇよ」
女「あら、これは失礼」
幽霊女「……」
男「こいつは、危害を加えるつもりはまったくない。最初に確認しただろ?
お前の成仏に必要なのは、死因、死んだ時の記憶、現世への未練の内容の把握だ。
それをこいつと話す事で完璧に持っていけるはずなんだってさ」
幽霊女「分かってる」
男「じゃあ、話すんだな?」
幽霊女「うん」
男「話すってさ」
女「では、こちらに」
男「幽霊は座ったぞ」
女「うん、これが紙とペンね」
男「おう……分かったってよ」
733:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:27:06.29:BAgryqVm0
女「それじゃあ男君……失せて」
男「言い方ひどくねぇか?……まぁいいや、じゃあまた後でな?」
ガララッ バタンッ
女「さぁて……と」
幽霊女「……」
女「やっと、二人きりになれましたね」
幽霊女「あなた……私が視えています、よね?」
女「はい、半透明ですけどね。男さんからはまるで実体の様に視えるんでしょうけど」
幽霊女「! 何故それを……?」
女「過去に、あなたが教えてくれたのではありませんか。お忘れですか?」
幽霊女「??」
739:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:36:18.73:BAgryqVm0
女「200年ほど前、あなたを視た人に対し、あなたは「貴方には私がどう視えますか?」と質問した。
限りなく透明だ、と答えたその人に対し、あなたは「貴方は違うようですね」と言い残して消えた……」
幽霊女「…………そんな事も、あったかもしれません」
女「なので、そこから推測し、見解として我々の方で保持していたのですよ。今確信に変わりましたけどね、ふふっ」
幽霊女「あなたは、一体……」
女「佐吉と、呼ばれていた側近をご存じないですか?」
幽霊女「……!私とあの方の婚約の儀を……取持って下さった方……」
女「そうです、私は佐吉の子孫であり……同時に、シャーマンでもあります」
幽霊女「……巫女……?」
女「そうですね。今、私の実家は大きな寺でして……そこで巫女として人生を送っています」
幽霊女「なるほど……あなたが視えるのは」
女「ええ、巫女の力によってです。あなたが視える人に当てはまる法則……つまり、『当主様の血が流れている人間』ではないので、イレギュラーな方法で、あなたを視ている事になります」
幽霊女「…………」
女「ふふっ、驚きましたか?」
幽霊女「ええ……とても」
741:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:40:06.62:EzcCPiVd0
>>741
巫女は明治から神社という事になって、それ以前は特に神社=巫女ではなかったんです。
あと現在も一部の仏教寺院で巫女装束をつかってお勤めをしている女性がいらっしゃいます。
まぁ神社でもいいけどw まぁ、終わったら寺にした理由を別に書きます
女「まぁ、私の事はこれ位にしておきますか……本題に入りましょう」
幽霊女「その前に、お聞きしても?」
女「何でしょう」
幽霊女「貴方は……私の事が、ずっと視えていた……そうなのですね?」
女「ええ」
幽霊女「ならば何故……」
女「男君が連れてくるまで、あなたに接触しようとしなかったか……ですか?」
幽霊女「……」
女「誤解を恐れずに申し上げますが、私は一刻もあなたとお話がしたかった」
幽霊女「なら!」
女「しかし、私が手順を踏まずに……あなたに接触していれば、あなたは悪霊になっていた可能性があります」
幽霊女「!」
751:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:59:43.33:BAgryqVm0
女「この地域での霊魂の扱いですが……それぞれの霊魂に接する際、しっかりとした『手順』が霊魂ごとに存在するものと心得なければならない。
成仏させる時は、その『手順』に沿う方法でなければ……失敗すると……教えられてきたのです」
幽霊女「…………」
女「この教えが、はたしてどの様な過去の事象から導き出されたのかは、分かりませんが。
先人達の知恵を……【この分野】では、無碍にする事は出来ないのです。
学問ではないので」
幽霊女「……私の、手順とは?」
女「あなたご自身の力で、あなたが視える人……すなわち男さん……彼を見つける」
幽霊女「…………」
女「その後ならば、私も多少の干渉が可能だったのです」
幽霊女「わかりました……ごめんなさい」
女「謝る必要はございません、私があなたの立場に陥ったとすると、同じ憤りを覚えるでしょうから」
幽霊女「……本題へ、入りましょうか」
女「ええ……では……」
752:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:02:33.05:BAgryqVm0
女「男君がさっき言っていた事。自分の死因、自分が死んだ時の記憶、現世に残っている未練
……そして……男君が何故か失念している……あなたの名前……
すべてではないでしょうが……どれ程思いだされていますか?」
幽霊女「……」 フルフル
女「?」
幽霊女「すべて……思い出しています」
女「え!?」
幽霊女「……」
女「そ、それでは……」
幽霊女「ええ、すべて思いだした時に……私は成仏するはずでした。
成仏の仕方も、何となくですが、分かっています。多分こうすれば逝けるのだろうと……そういう感覚があります」
女「……ではなぜ……ぁ!」
幽霊女「…………」
女「…………そういう……事、ですか……」
754:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:08:31.92:BAgryqVm0
幽霊女「…………」
女「私は、あなたに成仏して頂きたい。その一心ゆえに……少し残酷な後押しをしても、よろしいでしょうか?」
幽霊女「……」
女「彼は……男君は……中身は、確かに当主様と同じ魂を持っています。
……外見に関しては、私には分かりませんがおそらく……」
幽霊女「瓜二つです。声も……何もかもが」
女「……しかし」
幽霊女「…………」
女「彼は……」
幽霊女「…………」
女「彼は……当主様ではないのです。男君なんですよ」
幽霊女「分かっています!」
女「……」
756:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:14:30.94:BAgryqVm0
幽霊女「分かっていますとも……男……彼も、同じ事を思っています」
女「そうでしょうね……彼は私に、こう言いました。【それは……一生俺には『分からない事』だ。
ただ……確証はないけど、ある事実を確認したら、『分かる事』もあるかな……とは思う】 と……」
幽霊女「……」
女「彼にとっては、自分の中に、当主様の血が通っていて、当主様の魂がある事は『分かる事』
しかし……自分が当主様と同じ記憶を持ち、同じ様にあなたに振る舞う……その事については
一生『分からない事』と……言っていたのです」
幽霊女「ええ……理解しています」
女「…………」
幽霊女「男と……あなた。あなた方は……現代に生きている、方ですものね」
女「はい」
幽霊女「……」
女「あなたは、もう一度、当主様と……当主様ご本人と、恋愛をしたいと……そう思ったのですね」
幽霊女「……………………はい……」
女「しかし、その未練は……叶えられません」
760:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:19:41.30:BAgryqVm0
幽霊女「ええ、でも。それでも……」
女「……男君、ですか?」
幽霊女「……」コクッ
女「……死因、死に際の記憶が戻り、現世への未練に関しても理解し、己で消化し
……自らの名前も思いだしたあなたに…………まだ、成仏したくない理由が、男君と接した事により、新たに出来てしまったのですね?」
幽霊女「……」
女「それは……私が聞いてもいい事ですか?」
幽霊女「……」
女「……男君に任せましょうか」
幽霊女「え?」
女「伊達に巫女を何年もしていません……私には、あなたがもう成仏する気がある様に視えます。
男君を一生束縛するような類の事ではない事が分かりました」
幽霊女「……」
女「ここで待っていて下さい。男君を呼んできますから」
762:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:22:47.95:BAgryqVm0
幽霊女「……女さん」
女「はい」
幽霊女「色々と……私の為に……今まで、ありがとうございました」
女「私は、大した事はしていません……それに、礼には及びませんよ」
幽霊女「え?」
女「私は……私達皆が大好きだった、あなたに……幸せになってもらいたいだけなのですから」
幽霊女「……」
女「佐吉は……死ぬ間際に、『お守りできず、申し訳ありませんでした』と、言って、息を引き取ったと聞いています」
幽霊女「……」ヒック
女「あなたは、皆に愛されていました……どうぞ、これからも……ご自愛くださいませ」 ガララッ バタンッ
765:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:29:27.36:BAgryqVm0
男「……」 グビグビグビッ
女「いい飲みっぷりだねぇ男君」
男「あ……終わったのか?」
女「うん、もう全部オールオッケー」
男「って事は?」
女「うん……最後に、君と話したいってさ」
男「……」
女「見届けてあげてよ、あの可愛らしいお姫様をね」
男「……」 スクッ
女「……ふふっ…………あ、そうそう」
男「?」
女「行く前に、ちょっとだけ講義をさせてくれ」
男「へ?」
女「なに、1分で終わるよ。あのね、日本ってのは神道と仏教の国なんだけど―――」
770:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:36:36.41:BAgryqVm0
男「…………それなら、安心だな」
女「でしょう?日本人だけなんだから、世界でこの考え方をしてる民族は……最高だよ。ビバ日本人ってね」
男「じゃ……行ってくる」
女「ちゃんと見届けてあげてよね。泣いちゃってもいいからさ」
男「泣かねぇよ馬鹿」
ガララッ
幽霊女「あ……」
男「おう」
幽霊女「こっち、来て……?」
男「いいよ……っと」
幽霊女「…………」
男「…………」
ギュッ
幽霊女「あの、ね……私……その……全部……」
773:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:39:53.34:BAgryqVm0
男「全部思い出したんだろ?」
幽霊女「え?」
男「何となく、そうなんだろうなって思ってたよ。昨日の時点で」
幽霊女「…………」
男「口調も、無理があったような気もするし……元の記憶が完全に戻ったんだろ?
そりゃ口が当時の口調に戻ろうとするわな勝手に」
幽霊女「あ……ぅぅ……」
男「ま、当時の言葉で喋られても俺よくわかんないだろうけど」
幽霊女「わ、分かっています!だから……」
男「うわ、お前の丁寧語初めて聞いたわ。違和感すげぇな」
幽霊女「ッ!!…ばかっ!!」
男「あははっ……ま、勘弁してくれ。これが俺だ」
幽霊女「ぁ……」
男「俺は……俺なんだからな」
幽霊女「…………」
775:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:46:19.62:BAgryqVm0
男「…………成仏、出来るんだろ?」
幽霊女「……」
男「まだなんk 幽霊女「離れたくないのです」
男「……」
幽霊女「私は……当主様を、愛しています。ずっと愛しています」
男「分かってる」
幽霊女「でも……私を見つけてくれた……あなた……男さんも……」
男「俺は、当主じゃない」
幽霊女「中身は同じです」
男「それでも、だ。この世に同じ人間は生まれない、俺には当主だった時の記憶はない」
幽霊女「…………」 ポロポロ
男「…………」
幽霊女「そ、それでも……それでも……離れたく……ないよぉ……」
男「……うーむ」
幽霊女「……」 ギュゥゥゥゥ
778:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:51:04.23:BAgryqVm0
男「あのな……」
幽霊女「……?」
男「俺は、当主じゃない……でも」
幽霊女「でも……?」
男「魂は、当主と同じもの……そして……俺も……」
幽霊女「……」
男「俺も、お前が好きになっちまったらしい」
幽霊女「!」
男「魂が同じなら、人間違っても、大して関係ねぇよ……どんな事になろうが
結局は同じ魂が好きになっちまう様に出来てんだよ日本人は」
幽霊女「……」
男「お前……俺と会った時に、何でも言う事を聞くって言ったよな……覚えてるか?」
幽霊女「ぅん」
男「それじゃあ、今から言う事を、信じてみてくれ」
783:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 13:59:05.17:BAgryqVm0
男「この国は、神道と仏教の国だ。でも、その中で、輪廻転生の思想は、仏教が日本に来る前から……
日本に神道しかなかった時代から続いている思想なんだってよ。
死んだ人間の魂は、仏に成り、ある意味でいう神となる。そして、3~5世代ごとに新たな器、
新たな人間として、生まれ変わる。俺達の死生観にはキリスト教みたいに「天国と地獄」なんてものはないんだ。
神道と仏教を融合した輪廻転生と極楽浄土の考え方……これだけだ」
幽霊女「…………」
男「ま、俺自身も何言ってるかよくわかんねぇんだけどな。間違ってるかもしれねぇけど……
要は日本人ってのは、神道の世界と、人が死んだら仏様になって、神にはならないという仏教とをミックス。
仏教でいう仏って、人が神になった姿として考えれば神道とも矛盾しないんじゃないか?って感じでな……
そういう包容力のある解釈が出来る民族って事だ。
魂はいつまでも変わらない、そういうモノなんだってよ。日本人の死生観って奴は」
幽霊女「…………」
男「だから、何が言いたいかって言うとだな」
幽霊女「……ぅん」
男「俺と……お前は……またいつか、絶対会える様になってんだよ」
785:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:02:59.43:BAgryqVm0
男「そして……その時も、必ず俺はお前を好きになると思うし」
幽霊女「私は、あなたを好きになる……」
男「そういう事っぽいぞ……日本人でよかったな、俺達」
幽霊女「ふふっ……分かった……それを、信じればいいのね?」
男「言う事聞けよ?……もう、怖くねぇだろ」
幽霊女「……男……私はあんたが好き……大好きよ」
男「当主が泣いてるぞ」
幽霊女「当主様もあんたも……本当に、大好き」
男「はは……もう思い残す事、なさそうだな……」
幽霊女「成仏に関して抱いていた、最後のとても大きな不安を、あんたがぶっ壊してくれたからね」
男「俺グッジョブだな」
幽霊女「ふふっ」
パァァァァ
男「!?(光り……え?)」
791:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:11:30.98:BAgryqVm0
幽霊女「男……」
男「……そうか、もう」
幽霊女「うん」
男「…………ははっ」
幽霊女「なに泣いてんのよ、馬鹿みたい」
男「お前もだろ。俺のは汗だよ」
幽霊女「また、会えるんでしょう?なら泣く事……ないじゃん?」
男「会えない間は、寂しいだろ?だから寂しさの到来に備えて泣いてんだよばか」
幽霊女「……うん!私も」
793:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:12:20.91:BAgryqVm0
男「……じゃあ……」
幽霊女「最後に……私の本当の名前……呼んで?」
男「しらねぇもん」
幽霊女「――」
男「……」
幽霊女「……呼んで?」
男「……また、今度な? ――」
幽霊女「……うん、……じゃあ、またっ!」ニコッ
――――――――――――――――
798:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:18:38.16:BAgryqVm0
女「ひっどい顔だねぇ」
男「うるせぇ」
女「笑顔でお見送りするんじゃなかったの?」
男「だまってろ」
女「さてと……これからどうするの?」
男「そりゃーお前……取りあえずこの人生を楽しく全うして、死んで、また全うして、死んで……で、会うんだよ」
女「何年計画なんだよ、ふふっ」
男「しらん。3~5世代ごとに生まれ変わるんだろ?俺が何世代ごとに生まれ変わってるのか知らないし
あいつが何世代ごとに生まれ変わるのか知らないし……いつか会う事は絶対に会うんだから……それまで待つ!それでいいんだよ!」
女「姫様は幸せ者だね、こんなに思われて」
男「あー……疲れた」
女「ところで、生まれ変わるには子孫を残して血を受け継いでいかないと駄目って条件があるのは知ってるんだよね?」
男「!? な……なん……だと……?」
女「浮気しないと姫様に会えないね」ニッコリ
男「おいそこの毒舌キャラ死んでくれ」
806:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:22:23.71:BAgryqVm0
女「ま、子宮を貸すぐらいの事はしてあげてもいいから。決心したら声をかけてくれたまえ」
男「!? はぁ!? い、嫌だ!絶対他の方法を模索する!!」
女「姫様だって許してくれるよ、今は仏の境地だろうしまさに」
男「いやいやいや!!許すわけねぇだろ!そもそも俺自身が許さねぇよ!!」
女「ま、最悪人工授精でもいいからさ……君の血を子孫へと受け継ぐ事は必要だよ?どっちみち」
男「……」
女「ま。君の親戚が子供生んでいけばそれでいい話なんだけどねん♪君だって当主様の魂が入ってるけど
当主様の直系じゃないし……自分で今日その事実を知ったでしょ?」
男「!!!!!!!!」
女「あはははははっ!本当に困ってやーんの!慌てふためく男君は面白いねー」
男「てっめこんちくしょうふっざけんな!!」 ダダダッ
女「きゃー野獣が追いかけてくるぅぅ!!」 タタタッ
男「てかお前そんなキャラだったっけか……ってそれはいいけどとにかく待てやふざけんなゴラァ!!!!」 ダダダダッ
812:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:31:00.59:BAgryqVm0
―――――――――――――――――――
数百年後 とある高校
「あー……マジだりぃ……宿題忘れたし……」
先生「今日は転校生が来たぞー」
「あーー……転校生?どうでもいいやー宿題どうすっべー……」
先生「おい!起きろ!」 ポカッ
「んぎゃ!?……あ?」
『今日からこの学校に引っ越してきました……よろしくね?』
「………よろしくぅ」
813:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:33:01.53:BAgryqVm0
「……」
クラスメイト「おい、消しゴム貸してくれねぇ?」
男「いいよ」
クラスメイト「サンキュー」
男「ん」
「……」 ジー
男「……」 チラッ
「!」 ビクッ
男(やべぇ目あった)
「……」
男「ちょっとトイレ行ってきていいですか、先生」
先生「行っトイレ」
ガララ
男「……」
「……」 スゥー
男(マジかよ…)
「ねぇ」
男「!」
「ねぇちょっと」
男「……」 スタスタスタ
「ねぇってば、ねぇ!」
男「……」 スタタタタタタ
「あ!こ、こらっ!待ってってば!」 スゥー
男子トイレ
男「よし」
ジョボボボボ
男「ふー(意外と出たな)」
ニュー 「ねぇ?」
男「ううぇあっ!?」
「あー!!やっぱり見えてるのね!?」
男「……ご、ごほんっ。げほげほっ、何故かむせた。けほっ」
「え……むせただけ?…あれ?」
男(イケる)
男「あー風邪かなぁ、なんだろ」
「……」
男(つか男子トイレ入ってきてんじゃねぇよ)
「……むー、なんなのよ」
ジャバジャバ
男(こっちのセリフだよくそ)
「せっかく……あーむかつく!この……」
男「?」
「この……租チン野郎!!」
男「!!!」
「あーもう最悪……せっかく…あーもう、勘違いとかさいあく……」
男「……」 ジャバジャバ キュッ
「あーイライラする……この租チンやろう!虚チン!男として最下位!!」
男「……」 プルプル
「租チン!租チン!そーちーん!租チン!租チン!そーちーん!」
男「……」 プルプルプル
「あんたみたいな包茎租チン野郎は一生童貞だから生きてる価値なし!今すぐ死んじゃえばいいのよ!」
男「じゃぁかましぃんじゃごら゛ああああ!!!!」
「ひぃぃ!!???」
男「人が黙って聞いてりゃぶっ飛ばすぞこの糞アマがああああ!!!!!!!」
「や、やっぱり……見えて、るんだ」
男「あ」
「」 ニヤッ
男「……」
「ふふん? 見えてるのね?そうなのね?」
男「俺は租チンじゃねぇ!!!」
「見てないわよ」
男「え?」
「カマかけたのよ。ふふっ」
男「てっめこの野郎」
「あんたみたいな男は過去にもいっぱいいたんだから。私が見えるのに気付かない振りして……
そんな奴らみんなに効果覿面なのが、さっきの租チン攻撃ってわけ」
男「……」
「本当に見てないわよ?」
男「……ハメられた…」
「数年ぶりの話し相手、見ーつけた♪」
男「は?ふざけんな」
「え?」
男「幽霊と話すわけねぇだろ、俺に関わるな」
「え……だって今までの男は皆私のこの美貌に惹かれて恐れつつも話をしてくれたのに……」
男「不細工が何言ってんだ」
「は、はぁ!?私不細工じゃないし!!超超可愛いんですけどっ!?」
男「気持ち悪いんだよ不細工」
「はぁ!?この大きな二重の瞳、シュッとした鼻!完全な黄金比からなる顔!完全なるストレートロングヘア!
幽霊だから劣化もせずずぅっと綺麗!そのこの私に不細工ですってぇ!?ナメた事言わないで!」
男「うるせぇんだよ貞子が」
「その言い方は一番ムカつくわ……死ね!!」
男「とにかく俺にもう2度と話しかけんな」
「あ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
男「……」 スタスタスタ
「あ……」
ガララ
先生「遅いぞウンコか」
男「女子のみなさんにきかれると恥ずかしいので言いません」
先生「ウンコか」
男「……」
クスクス
クラスメート「お前墓穴掘りすぎだろ」
男「いや先生が何も言わなかったらよかったんだろ」
クラスメート「お前のあの返答の方がだめだね」
男「まぁ振り返れば確かにキモかったか」
クラスメート「うん」
先生「こらこらそこ話し始めるな、黙って授業聞けー」
男「すいません(全部あいつのせいだ……ったく)」
ニュッ 「……」
男「……(うわ、戻ってくんなよ)」
「……」 ジーー
男(憤怒の形相で睨んできてるし……)
「ふぁっく」
男「……」
「……」
「……」 クルクルクル
男(先生の周りで回ってんじゃねぇよ)
「……」 クルクルクルー
男(集中できねぇー、マジうぜぇ)
「……ふふん♪」
男(なんだよあのどや顔は)
「む…」
男「……」
「……ふふっ」 スッ
男(え、黒板消し?持てる…のか?)
「えい!」 ブンッ
男「!?」
ボフッ
男「げほっ!げほげほっ!!」
クラスメート「男!?」
ザワザワ
先生「なんだー……!? どうした!」
クラスメート「何だじゃねぇよ先生!何で男に黒板消し投げてんだよ!!」
先生「ええ!?」
クラスメート「男が何したってんだよ!……大丈夫かよ男」
男「ぶぇっ…けほっ……」
先生「先生じゃないぞ!?ほんとだぞ!?」
クラスメート「先生以外いねぇだろ!!」
クラスメート「ね、ねぇ?さっき黒板消し……浮いてなかった?」
男「……」
ザワザワ
クラスメート「私も……そう見えたんだけど」
ザワワワ
先生「先生じゃないよぉぉぉ!!」 ポロポロポロ
クラスメート「泣いてんじゃねぇよ先生!!」
男「と、とにかく……すみません、トイレ行って来ていいですか?」
先生「う゛ん」
ザワザワ
ガララ
「…………」
トイレ
「……ちょっと、やり過ぎちゃった。思った以上にチョークの粉がついててさ」
男「……」 ジャーー
「あ、あそこまでなるとは…ね。あははっ」
男「……」 バシャバシャ
「……」
男「……」 バシャバシャ
「……い、一応。謝っておくわ」
男(一応だぁ?) バシャバシャ
「ごめん」
男「……」 バシャバシャ
「……」 チラッ
男「……」 バシャバシャバシャ キュッ
「……ね、ねぇ?」 ジー
男「さーてと……戻ろう(全無視だな、舐めやがって)」
「ぁ……」
男「……」 スタスタ
「ね、ねぇ……」
男「……」 スタスタ
「っ!……ねぇってばっ!謝ってるでしょ!?」
男「……」 スタスタ
「ごめんってば!!」
男「……」 スタスタ
「待ちなさいよ!!止まりなさいよ!!」
男「……」 スタスタ
「止まってよぉ!!!」
ガララッ
男「戻りました」
先生「うわああああん男ー何かすまんかったぁぁぁぁぁ!!」
男「え!?ど、どうしたんですか先生」
クラスメート「結局よくわかんなくてさぁ」
クラスメート「浮いてたって絶対!」
クラスメート「私も見た―」
クラスメート「いやいや流石にそれはないだろー」
ワイワイガヤガヤ
クラスメート「って事だ」
男「そ、そっか。いやぁよくわからないな」
先生「なので取りあえず先生が謝っといたあああああ!!」
男「わ、分かりましたから泣かないでください先生」
クラスメート「結構取れたっぽいけどまだちょっと汚れてるな」
男「ま、学校終わったら即効帰ってクリーニング出すよ」
ワイワイガヤガヤ
放課後
先生「きりー れーい 部活ない奴はまっすぐ帰れよー」
ワイワイガヤガヤ
男(諦めたか知らんがあれから教室来なかったな……よかったよかった)
クラスメート「男ーさっさと帰ってクリーニングしたほうがいいぜそれ」
男「分かってるよ。じゃあまた明日な!」
ガララ
「……」
男(……ぇー……いるし……)
「……あ、あの……」
男「……さてとー(帰ろ帰ろ)」
「ま、待って!!お願い!!」
男「……」 スタスタ
「な……何でも言う事聞くから私の話を聞いて!!お願い!!」
男「」 ピクッ
「……お願い」
男「……(何やらすかな……くくくっ……)」 クルッ
「あ」
男「……で?」 ボソッ
「お、屋上で。話した方がいいわ、あんたにとってはそうでしょ?」
男「はぁ……」
屋上
男「……」 キョロキョロ
「誰もいないわ、立ち入り禁止だもん」
男「何でお前がキーロックの番号知ってんだよ」
「そ、それはいいじゃない」
男「まぁ……で?」
「……」
男「……」
「さ、さっきの……ごめん」
男「あーおかげで帰ったらすぐにクリ―ニング行かなきゃなんねぇわ。死ね」
「……もう、死んでる」
男「あ……はっ!だからなんだよ、謝ったら汚れ落ちるのかよ?お?」
「だから、ごめんなさい」
男「……」
男「俺が、お前と話すのはこれが最後だ。二度と俺に話しかけるな」
ポロポロ
男「!?」
「……っび……の」 ヒック
男「な、なんだよ……泣いたって…
「寂しいの!!!」
男「!」
「何年も何年も一人なの!私、寂しいの……あんたともっと話したいの!!」
男「……」
「私の話し相手、に、なって、ほしいの……本当に、寂しい、の……寂しい……ヒック」
男「……(あーなんだよ……悲しそうな顔しやがって……)」
「う……うぇぇぇぇ……」
男(あーあ、誰かに聞かれ…ない、か……俺だけか。聞こえるの)
「うぅー……寂しい……辛い……」
男(こいつがいくら泣いても、誰も気付きもしないし慰めもしねぇ……ってか)
「ふぇぇ……お願い……私の、話相手に……なってぇ…」 グスッ
男(……数年間ずっと孤独。真の孤独って奴だったわけか……)
「……ふぅぅ……うぇぇぇ……」 ペタン
男「ずーっと、泣いたりして来たのか、お前」
「……」
男「……」
「……ヒック…」
男「……呪ったり、しねぇよな?」
「…しな……ぃ゛」
男「」 ハァー
男「……」 スタスタスタ
「?」
男「……」 ピタッ
「……」
男「お前、学校外に移動とか、できんのかよ」 クルッ
「!……わ、私が見えるなら……誘導、してくれれば……」
男「そうかよ」
「……」
男「……」 スタスタスタ
「……」
男「話し相手になれば、満足か?」
「……う゛ん」
男「授業中ましてや学校内ではほとんど話さなくてもか?変人に見られるからな」
「……」
男「話すときはここか。俺の家か、だ。そんな極端な2か所でだけなら……だが、それでもいいか?
学校じゃあ基本的にお前を見つけても無視するが、いいか」
「話し相手になってくれるなら……いいよ」
男「……」
「話してくれる……それだけで、いいの」
男「はぁぁ…………」
「…………」
「……お願い」
男「……取りあえず、今日はもう帰るわ。クリーニング出さなきゃだし」
「う、うん…」
男「……」
「……」
男「また、明日の、昼。ここ、開けといてくれれば……」
「!……うんっ!うん!!」
男「じゃあ」
ギィ
「……」
男「また明日」 ガチャンッ
「……」
「また……明日……」
「…………ふぁぁぁ!」 パァァァ
男(……はぁぁぁ……めんどくせぇ事になっちまいやがった……)
翌日 昼
ガチャッ
男「お、本当に開いてる」
「来たわね!」
男「うぉぉビビった!おどかすな!」
「あんまり遅いから教室に行こうかと思ったんだけど、待っててあげたわ」
男「パン買ってきてたんだよ」
「あ……パン。うん、そっか……そうだよね」
男「……」
「……あははっ」
男「来るっつったろ。心配し過ぎなんだよ」
「うるさい……それより!ねねっ、何から話そうかしら」
男「しらね、取りあえずパン食わせろ」
「わ、分かったわ」
男「んぐ……」 モグモグ
「……」
男「……お前、幽霊なのか」
「そう、ね」
男「何で幽霊になんかなっちまったんだよ」
「分からないわよ、そんなの。気付いたら……」
男「ふーん」 モグモグ
「……気付いたら、この学校にいて。それで…ずっと……」
男「あー分かった分かった。辛気臭ぇ顔すんなよ、メシがまずくなる」
「そ、そんな顔してないわよっ!失礼ねあんた!」
男「男だ」
「……失礼ね男!」
男「……あんたでいいや」
男「んぐ……それで?お前名前は?」
「……名前……」
男「思いだせないのか」
「……」
男「死因とか分かるのか」
「…ううん」
男「ふーん」 モグモグ
「……」
男「だから成仏できねぇんじゃねぇのか。幽霊って未練があるから残るんだろ」
「そう、なの?」
男「それ以外に理由ねぇだろ。お前の名前思いだせないのと、何か関係あんだろ」
「そうかも…ね」
男「そっかー……じゃあまぁお前でいいか。それか幽霊女」 モグモグ
幽霊女「まんまじゃない!嫌よそんなの!」
男「嫌ならさっさと名前思いだして成仏すりゃいいんだよ、ま、取りあえずそれはいいや。置いとくか」
幽霊女「くぅ……何か卑怯よ!」
男「何がだよ、楽しいだろ?会話」
幽霊女「た……楽しい、けど」
男「もっと何か楽しい会話しようか、せっかくだし」
幽霊女「な、なに?」
男「お前、バスト何カップあんの?」
幽霊女「……」
男「……」
幽霊女「バストって、何?」
男「胸だよ胸。乳のサイズ。胸囲はどれぐらいあるんだ?って事」
幽霊女「そ、そそれ楽しい会話なのっ!?」
男「楽しいけど?」
幽霊女「私は楽しくないというか何だか恥ずかしいわよ!!」
男「会話を成立させるためだ。答えたまえ」
幽霊女「わ、分かんないわよ……測ったことない。と、というか測り方も分かんないわよ!」
男「測り方分かんないって、お前生きてた時の記憶ねぇのかよ。測っただろ?学校で」
幽霊女「測ってない!学校にも行ってないわ!」
男「ここ学校じゃん」
幽霊女「……知ってるけど?」
男「お前学校の呪縛霊、じゃあないのか?」
幽霊女「違うわよ!」
男「じゃあ、何で学校にいるんだよ」
幽霊女「そ、それは……」
男「それは?」
幽霊女「お、同じ年の子たちが……いっぱい居そうだったから……」
男「……あー」
幽霊女「……」
男「なるほど……寂しかったっつってたもんな」
幽霊女「と、とにかく!学校へは行った事がないの!それは覚えてる」
男「はぁ?でも義務教育だろ」
幽霊女「が、学校……なかったし」
男「へ?」
幽霊女「わ、私が生きてた頃には学校がなかったの!」
男「……つかぬ事をお聞きしますが」
幽霊女「な、何よ……あらたまって」
男「お前、何時代の人?」
幽霊女「そ、それは……結構前よ!」
男「いや、そうだけど。江戸とか、安土桃山とか、室町とか、平安とか……ま、まさか奈良…とか…」
幽霊女「わ、分かんないわよ……そんなの」
男「あれ?時代時代の人達って自分たちの時代知ってるはずだろ当然」
幽霊女「わ、私……あの、多分だけど。世間知らずって言うか……その……」
男「なるほど、馬鹿の子だったわけだ」
幽霊女「違うわよ!!」
男「じゃあなんだよ」
幽霊女「……言わない」
男「覚えてないとか?」
幽霊女「覚えてるわよ。でも……あんたには言いたくない。今は、何となく」
男「あっそ」 モグモグ
幽霊女「そ、それより……お願いが、あるんだけど」
男「んぁ?」 モグモグ
幽霊女「あの…えっとね」
男「んー」 モグモグ
幽霊女「あんたの家に、住んでもいい?」
男「ぶーーー!!」
幽霊女「きゃっ!き、汚いわね!!やめてよ!!」
男「俺の家に住む!?」
幽霊女「あ……ぅ…うん……だめ?…」
男「だめ」
幽霊女「何で即否定するのよ!」
男「あたりめーだろ!幽霊と暮らせってのか!?」
幽霊女「あんたもう幽霊と話してるんだから一緒じゃない!」
男「一緒じゃねぇよきもちわりぃ……あのなぁ」
幽霊女「な、なに……よ」
男「俺は、お前と、話をするだけの、関係だ」
幽霊女「で、でも昨日家でも話してくれるみたいな事言ってたじゃない!あれはなんなのよ!?」
男「そりゃ家にお前を連れてくれば話せるだろ家で、泊まらせるなんて一言も言ってねぇぞ俺は」
幽霊女「う……ぅぅぅ……じゃ、じゃあ今日行くわ!!」
男「え?」
幽霊女「いいでしょ!?日時は決めてなかったけど、私があんたと話をしたい時にあんたの家に行けば、それで」
男「……今日?」
幽霊女「……わ、私と暮らしたくなかったら……今日、私をあんたの家に連れて行きなさい……いいわね」
男「わぁったわぁった……放課後、校門前にいろよ」
幽霊女(…………なによ……)
放課後
男(お、いたいた)
「あ……」 パァァ
男(おおっと、喋りかけるなよ?) シッ
「……」
「喋りかけるなって事?そんなに私と話すのが嫌なの?」
男(こんな人の多い場所で無理言うなったく……)
「いいわ、じゃあ私が一方的に言うけど、校門を出る前にそこで聞いて」
男「……(んだよ)」 ピタッ
「うん、あのね……移動するとき、はその、あんたのどこかを触ってなくちゃいけないの」
男(は?)
「そ、その目は何よ!しょうがないじゃない!私は呪縛霊じゃないけど、知らない場所には……行けないんだから……案内が必要なのよ」
男(そういうもん、なのか)
「ほ、本当なの……だから、どこか、その」 チラッ
男「……(片手ポケットつっこんで腕でも触らしゃいいか)」 クィ
「!わ、分かったわ……じゃあ」
ピト
男(肩じゃなくて腕にしろよ何でこれで分かんねぇんだよこいつ!)
「ふふっ、じゃ、じゃあ行きましょっ!」
男「……」 ムスッ
男「……」 スタスタスタ
「へー……ねぇねぇ、あの建物はなに?カラオケって読むのよね?あれ」
男「……」 スタスタスタ
「コーヒーって……あのお店は食事をする所?ねぇったら」
男「……」 スタスタスタ
「ねぇーねぇー」
家
男「……」 ピタッ
「わぁ……ここがあんたの家?なんだか狭いわね」
男「……」 ピッピッピッ ガチャッ
幽霊女「あ、学校の屋上のと同じ仕掛けね?へー」
バタンッ
幽霊女「へへ、お邪魔します」
男「てめぇさっきからごちゃごちゃごちゃごちゃうっせぇんだよ!!!!!!!!」
幽霊女「ひゃぁ!?」
男「家に向かってる時は話しかけられても答えないって分かるだろうがっ!!」
幽霊女「う、うん……途中からそうかな、とは思ってたけど」
男「やっぱ馬鹿の子かお前は」
幽霊女「……ごめん」
男「はぁ……まぁもういいよ。ここが俺んちだ。一人だから適当にくつろげ」
幽霊女「一人暮らしなの?」
男「そうだよ」
幽霊女「ご両親は?」
男「死んだ。制服脱いでくるからそこのソファーに座ってろ」
5分後 リビング
幽霊女「死んだ、の……そう」
男「ふぁぁ……やれやれ」
幽霊女「じゃあ、あんたもずっと一人で?」
男「偶に親戚のおじさんが様子見に来てくれるけどそれ以外は一人だ。金は幸いにも親が遺してくれてた」
幽霊女「ふーん」
男「……」
幽霊女「……」
男「俺の両親は幽霊になんかなってねぇぞ」
幽霊女「分かってるわよ」
男「……」
幽霊女「ねぇ」
男「……」
幽霊女「毎日、一人で……その」
男「何だよ」
幽霊女「寂しく、ない?」
男「……学校行けば、友達はいるしな」
幽霊女「で、でもさ……」
男「まぁ、寂しい時はあったよ。死んだ直後とかは……超寂しかった」
幽霊女「あ……」
男「すげぇ泣いちまったしなぁ。でも今はもう大丈夫だ」
幽霊女「……本当に?」
男「ああ」
幽霊女「私は、まだ辛いし寂しいのに……なんであんたはそんなに?」
男「お前の場合はずっと孤独を味わった事からくる寂しさだろ。俺のとは性質がちげぇよ」
幽霊女「それは確かにあるけど、私だって父上と母上がお亡くなりになった時の悲しみはまだ……あるし」
男「父上に母上だぁ?」
幽霊女「あ!い、いや……今のはその……」
男「……」
幽霊女「と、とにかく!……その……大丈夫じゃ、ないでしょ。そんなの」
男「それはお前が決める事じゃねぇだろ」
幽霊女「でも……」
幽霊女「あんた、今ちょっと、寂しそうな顔してるよ?」
男「……」
幽霊女「……」
男「……大丈夫だって事と。寂しいって事は、矛盾しねぇよ」
幽霊女「強がり、じゃん。そんなの」
男「違う」
幽霊女「……」
男「俺は、両親に色んなものを貰った。だから寂しいと感じる時は、それを思いだして、大丈夫にするんだ」
幽霊女「……私は……」
男「お前も、あるだろ?そういうの……」
幽霊女「私…は……」
男「?」
幽霊女「父上と母上を亡くした悲しさは覚えてる。けれど、思い出は……殆ど、思いだせないんだ」 ニコッ
男「……」
幽霊女「ふふっ、だから。ちょっと、羨ましいかな。あんたの、男の、その『大丈夫』が」
男「お前、その状態で、ずっと幽霊やってきたのか」
幽霊女「?」
男「……」
幽霊女「……なんなの?」
男「そっか……」
幽霊女「?」
男「なぁ」
幽霊女「何よ」
男「やっぱ、お前。ここ住みたいなら、住んでいいぞ」
幽霊女「え!? な、なんで急に!?昼はあんなに……言って……」
男「寂しいんだろ?」
幽霊女「そ、それは……ぅん……」
男「だから……気が変わった。そんだけだ」
幽霊女「???」
男「お前の『寂しい』は、ちょっと俺には重すぎるって思ってたんだがな」
幽霊女「……」
男「それでも、ちょっと。ある意味で言う『補充』に関して、協力してやってもいいか、と。そんな気になった。これが理由だ」
幽霊女「……何となくだけど」
男「なんだ」
幽霊女「うん……ちょっと、分かったかも……ありがとう」
男「俺も今自分でよく分からずに言ったのに分かったのかよ。ははっ」
幽霊女「ふふっ……じゃあ、その」
男「おう、どれぐらいになるかはしらんが。よろしく」
幽霊女「うん!よろしくね」
男「ま、お前は衣食住金かからなそうだし楽でいいわ」
幽霊女「まぁ、そうなるかな」
男「ま、どうしても○○したい。的な事があるんなら、内容とその時の俺の気分次第で……要相談ってところだな」
幽霊女「了解」
男「さてとー……んじゃ今日はもう予定ねぇし。くつろぐとして……そう言えばお前ってさ」
幽霊女「なに?」
男「俺に触れるって事は俺もお前に触れるんだよな。てか物も持てるんだな、幽霊のくせに」
幽霊女「それは、多分あんたのおかげだと思う」
男「どういう事だ?」
幽霊女「私が、私を視る事が出来る人と接点を持つと、その接点を持つ間だけは。物に触れるらしいの」
男「経験則か?」
幽霊女「」 コクンッ
男「……不思議だなそれ」
幽霊女「まぁ、私の存在自体が不思議なんだけどね」
男「それは大前提として当然あるけど」
幽霊女「だから、ほらっ」
ギュッ
男「!」
幽霊女「手、触っちゃった……えへへ」
男「体温、有るんだな」
幽霊女「それ、前に話した人も言ってた」
男「前?」
幽霊女「あんたの、前に。私を視る事が出来た人」
男「何年も何年も孤独だったって聞いた記憶があるけど、そいつと会ったのは具体的に何年前位の事なんだ?」
幽霊女「……うーん……」
男「具体的に何かその時に起こった世間の出来事、とか覚えてないか?」
幽霊女「……あ!」
男「なんだよ」
幽霊女「戦争をしてた様な気がする、日本が他の国と」
男「…………………………………………」
幽霊女「あれ?……男?……ねぇ、おーい」
男「……数年前とかそういう話じゃなくて?」
幽霊女「え?何年か前の事でしょ?」
男「70年近く前だよ!!」
幽霊女「ええっ!?」
男「まぁいいや、時間の感じ方が狂ってんだろお前の体内時計的な意味で」
幽霊女「……地味にショックなんだけど」
男「話戻すけどさ、そいつとは何話してたんだ?」
幽霊女「んと……」
男「……」
幽霊女「今は、大変な時期だから。俺じゃあ役には立たないと思うよって……言ってた様な」
男「なんじゃそりゃ」
幽霊女「……」
男「……何だよ?」
幽霊女「ねぇ、あんたにとって、私はどう視えてる?」
男「どういう意味で言ってんだそれ。容姿か?幽霊的な意味でか?」
幽霊女「後者」
男「……特には何とも……普通に視えてるが……」
幽霊女「視え方って意味よ」
男「視え方ねぇ……あ、幽霊って透明に視えないんだなそういえば」
幽霊女「!!!!!」
男「な……なんだよ?」
幽霊女「あんた、わ、私が透明に視えないの!?実体を持ってる様に視えるの!?」
男「だったら何だよ」
幽霊女「ほ、本当に?……嘘じゃない?」
男「おう」
幽霊女「……で、でも!だったら何で私が幽霊だと思ったの?」
男「直感ってか、なんかお前視た瞬間に気付いたんだよ。『あ、こいつ幽霊だ』って」
幽霊女「…………」
男「なんだよ、変かもしれねぇけどそうなんだから仕方ねぇだろ」
幽霊女「今まで、私を視れた人は居たって、言ったじゃない?」
男「おう」
幽霊女「でも、私を実体がある様に視た人は、一人もいなかったのよ」
男「!……ふーん」
幽霊女「だから……前の人とは、話はしたけど。表面上の軽い会話だけというか……数分だけだったし」
男「数分!?」
幽霊女「私と会話した、翌日に、戦争に行っちゃったっぽい」
男「……その、更に前の人は?」
幽霊女「お侍さん、だったけど。その人は、私を化けもの呼ばわりして……逃げちゃった」
男「お前……」
幽霊女「……だから、その。あんたとは、結構相性いいのかもね。ふふっ」
男「……」
『何年も何年も一人なの!私、寂しいの……あんたともっと話したいの!!』
『私の話し相手、に、なって、ほしいの……本当に、寂しい、の……寂しい……ヒック』
男「……何年どころじゃねぇじゃんかよ」 ボソッ
幽霊女「なんか言った?」
男「いや……えーと……だな」
幽霊女「何よ、気になる事があったら言って」
男「お前を幽霊だって分かったのは直感だったわけだが、疑問がある」
幽霊女「だから何よ?さっさと言って」
男「おう、お前なんでうちの制服着てんの?」
幽霊女「ああ、これは……さっきの人が」
男「戦争の時の?」
幽霊女「うん、その人は、制服の仕立て屋さんだったから。もらったの」
男「学校で会ったんじゃねぇのかよ!?」
幽霊女「え?学校で会ったのはあんたよ」
男「いやそうじゃなくて学校にずっとお前いるって言ってたじゃん?だったら約70年前も学校にいたと考えるのが俺の思考回路じゃん?
あの学校創立200年超えてるし」
幽霊女「私が学校にいる様になったのは、彼が服をくれて、この服はあの学校で着るものなんだよって言って
連れて行ってくれてからなのよ」
男「数分で服もらって学校に案内してもらってって……また体内時計狂い的な意味で数時間とかだったんじゃねぇの?それ」
幽霊女「う……? 言われてみれば……そんな気も」
男「はぁ……なるほ……って待てよ?お前、自分の知らない場所には行けないんだよな。
誰かが一度案内してくれれば行けるんだっけか。そういう理解であってる?」
幽霊女「た、多分」
男「お前が服の仕立て屋に向かう事が出来た経緯は?誰に教えてもらったんだ」
幽霊女「ううん、違うの。あの場所は、もともと知ってたから」
男「服の仕立て屋が?」
幽霊女「そう、今の学校の目の前にあった建物がその服の仕立て屋だったんだけど。
私は……あそこで幽霊として存在し始めたんだと思う」
男「そこがお前の幽霊としてのスタート地点だったって事か?」
幽霊女「多分だけど……ね」
男「ん?……だったらお前、何でその仕立て屋の人が暇な時に行動を起こさなかったんだ?
仕立て屋の人が視える人だったならお前が姿を見せれば戦争になる前に会話出来たんじゃ……?」
幽霊女「……痛いところをつくわね」
男「いや当然のツッコミだろ。隠れてたんだろ?」
幽霊女「……うん」
男「何でお前が隠れてて、尚且つ仕立て屋の人に接触を試みようとしたのかってのは。単純に話のネタとして興味がある」
幽霊女「更に前の人……お侍さんと会ったって、言ったでしょ?」
男「うん」
幽霊女「その時……化けもの扱いされたから……かな」
男「ぁ……」
幽霊女「わ、私……結構傷ついちゃって……トラウマって言うんだっけ? あはは……」
男「……」
幽霊女「仕立て屋の人に接触したのは2つ理由があったんだっけかな」
男「2つ?」
幽霊女「一つは、ずっと隠れてたけれど、その間に、仕立て屋さんの人に私が視えそうな素質を感じ取ったというか……
うまく言えないんだけど、日々の生活の中でね。多分姿を現したら会話、出来るんじゃないかって思ってて……」
男「で?」
幽霊女「それで、トラウマの所為もあって、ずっと隠れてたんだけど。仕立て屋さんは、戦争に行く事になったって言ってるのが聞こえて
……何か郵便屋さんから、紙をもらってた様な気がするけど」
男「赤紙って奴だな。当時それもらった男の人はみーんな強制的に戦場行きだったって歴史で習った気がする」
幽霊女「それで……戦争に行っちゃったらその……もう会う機会がないんじゃないかと思って……それで」
男「一か八かってか」
幽霊女「そう。それが1つ目」
男「2つ目ってなんだよ?」
幽霊女「……その……これ」
男「制服?」
幽霊女「うん……ほ、欲しかったから。もしかしたら……って」
男「おま……」
幽霊女「だ、だって!!私ずっと裸だったし!!」
男「なにぃ!?」
幽霊女「っ!……分かんないけど、ずっとそうだったの!だ、だからぁ……」
男「なるほど?戦争行く→店じまい→1着ぐらい貰えるべ。そういう思考回路だったわけだな」
幽霊女「……う、うん」
男「あのなぁ……いや、いいんだけど。戦争に行く前の人にそんなやましい気持ちで接するなよ」
幽霊女「だ、だって……何年も何年も、裸って言うのが……流石にキツくて……」
男(ま、まぁ確かに……ある意味拷問みたいなもんではあるかもしれん。いくら視られてないとはいえ、人が居る所で何年も…ってこいつの場合多分何百年も?……うーむ)
男「まぁ、気持ちは分かった」
幽霊女「ぅぅー……」
男「その人、結局どうなったんだろうな」
幽霊女「分からないわよ、仕立て屋さんが出て行ってすぐに軍の人が倉庫みたいにしちゃったから。私はそれからずっと学校に居たし」
男「なるほどね……うちの学校って明治維新のころの制服のままってのが売り文句だが、マジだったんだな」
幽霊女「ところで、何の話してたんだっけ?」
男「お前に体温あるんだなって所から話を捻じ曲げまくって脱線させまくっただけだ」
幽霊女「そっか」
男「その結果として、ま、1つ分かった事は、お前は学校の目の前の場所である意味でいう『生まれた』可能性があるって事だな」
幽霊女「……それがどうしたのよ」
男「別に?話のネタが1つ出来たってだけだ……話しすぎて疲れた。そろそろ風呂でも入って寝るかな」
幽霊女「お風呂……湯浴み!?」
男「湯浴み?」
幽霊女「体をお湯で洗うんでしょ!?」
男「温泉って分かるか?」
幽霊女「分かる!!」
男「あれの家庭用というかまぁなんだ、お湯を張って入る」
幽霊女「だから分かるって言ってるじゃない!湯浴みでしょ!?」
男「やけーに嬉しそうだなお前」
幽霊女「男、お願い!入らせて!」
男「お前幽霊だから入っても入らなくても関係ねぇんだろどうせ、臭いも別にしねぇしさ」 スンスン
幽霊女「やっ!ちょ、嗅がないでよ!!」
男「うーん……入ってもいいぞ」
幽霊女「本当!?」 パァァ
男「俺の後でいいなら」
幽霊女「いい!ありがとう男!!」 ギュッ
男(ここは手じゃなくてハグの方が俺は喜ぶぞ幽霊よ)
幽霊女「ん?何その目は」
男「何でもねぇよ。んじゃ入ってくるが、くれぐれも覗かない様にしてくれ」
幽霊女「分かった」
男「お前が透明に視えない分壁から突然ヌッと出てこられた時の衝撃度はヤバいんだからな」
幽霊女「分かってるって!さっさと入ってきてよ。ここにずっと居るから!」
男「へーい」 バタンッ
幽霊女「『お前が透明に視えない分』……か……ふふっ」
20分後
男「上がった」
幽霊女「早くない!?ちゃんと体洗ったの?頭も」
男「洗ったって、男は大体こんなもんだよ。だからお前入れ」
幽霊女「!!……うん!入るー♪」 バタンッ
男「……ま、さて……」
男(幽霊が湯船に入るとお湯の変化はあるのかどうか……覗いて確かめろと天からの声が聞こえる気がするな……さて……)
男「さて……」 テクテク
幽霊女「男ー!」
男「! な、なんだー?」
幽霊女「ちょ、ちょっと来て!」
男「なんですとっ!?」 タタッ
幽霊女「あ、開けないでよ!?扉開けたら駄目だからねっ!」
男「お、おう。どうした?」
幽霊女「うん。あの……この、管みたいな。先っぽの出っ張りに、小さい穴がたくさん開いているものは、何?」
男「それシャワーっつって水とかお湯が出るんだ。それで頭や体を洗ったりする」
幽霊女「こ、この何かの容器に入ったねばねばした液体は?」
男「それは髪とかにつけてゴシゴシっとすると泡立って髪や体を綺麗にする為の液体だ。石鹸みたいなもんだ」
幽霊女「!!石鹸って液体化していたの!?」
男「目に入れるとすっげぇ痛いからそこは気をつけろよ?」
幽霊女「わ、分かった!……あの、あとさ!」
男「なんだ?まだなんか説明いるか?」
幽霊女「うん、このシャワーって言うの……どうやったらお湯が出るの?」
男「!(よーしここだっ!!)」
幽霊女「ね、ねぇー?」
男「おい、ちょっと湯船に入ってろ。使い方をレクシャーしてやるから」
幽霊女「ええっ!?来ないでよ!口で伝えてくれれば大丈夫だから!!」
男「まぁまぁ、百聞は一見に如かずだ。お前もすーぐに分かるから、な?」
幽霊女「で、でもでもそしたらあんたが私の……」
男「幽霊の裸なんて全然興味ねぇって!!大丈夫大丈夫!」
幽霊女「で、でもでもで
男「入るぞー」
幽霊女「ぎゃああ!!!ちょっと待ってええええ!!!!」
ガラッ
男「どうもー」
幽霊女「うううううううううう」
男(さてと……水の変位は……おお!変化している!やはり流体にも干渉するのか……ほほぅ)
幽霊女「な、何故私を見る!やめろ!!ばか!」
男「さて、目の保養が終わったところで、これの使い方だが」
幽霊女「ぅぅぅー」
男「この青い方をこう捻ると、水」 ジャー
幽霊女「……」
男「この赤い方を捻ると、お湯」 ジャー
幽霊女「……」
男「だから使う時は、この左右の蛇口を捻って、出る水の温度を自分に合う様に調節してから、使う。以上だ」
幽霊女「……」
男「分かった?」
幽霊女「わ、分かったから……」
男「それにしても、胸でかいなお前」
幽霊女「さっさと出ていけ!!」
男(ぽっちが見えなかったじゃねぇか畜生)
1時間後
幽霊女「……」 ガチャッ
男「お、出たか。やっぱ髪濡れてるって事は干渉できてるんだな」
幽霊女「……」 ギロッ
男「しかし女の風呂は長いって聞いてたけどマジだな」
幽霊女「ふん……」
男「気持ちよかったか?」
幽霊女「うるさい!」
男「顔が赤いが、恥ずかしかったのか?」
幽霊女「そうに決まってんでしょっ!何じろじろ見てんのよあんた!!犯罪よ犯罪!!大罪だわ!!女子の肌を見るなんて!」
男「おなごて」
幽霊女「!……こほんっ、じょしの!……もう、本当にやめて欲しかったんですけど」
男「ま、幽霊だし問題ないだろ」
幽霊女「問題あるわよ!私が恥ずかしいっての!!」
男「はっはっは……さてと、そろそろ寝るか」
幽霊女「……ね、寝るって……そういえば……」
男「一緒に寝たいのか?」
幽霊女「なっ!?ば、馬鹿じゃないの!?絶対に嫌よ!イヤ!」
男「お前って普段どうやって寝てるんだ?」
幽霊女「別に、寝なくても大丈夫なんだけど。寝る時は、屋上の入り口の所に、マットがあるでしょ?」
男「ああ、使わなくなった奴置いてんだっけあれ」
幽霊女「あそこに、転がってる」
男「きたねぇ」
幽霊女「汚くないわよ!私の場合は大丈夫なの!」
男「あ、そっか。……なるほど、寒くも暑くもないんだろうし、いいな」
幽霊女「で、でも……ここで暮らすとしたら……その」 チラッ
男「俺が普段寝てるのはあそこのベッドだ。布団みたいなもんね」
幽霊女「そ、それ位分かってるわよ」
男「……」
幽霊女「……なによ!」
男「ま、幽霊だし。俺の布団の匂いとか、気にならないだろ?」
幽霊女「気になるわよ!」
男「普段からマットで寝てんのに?」
幽霊女「それとこれとは話が別!!」
男「変わらねぇって、ちょっと横になってみろよ」
幽霊女「え、ええっ!?な、なな……」
男「いや、そんなに動揺しなくても、俺は寝ないから」
幽霊女「え?」
男「お前がそこで寝られそうだったら俺はソファーでいいよ」
幽霊女「……」 ボフッ
男「どうよ?」
幽霊女「………………大丈夫、みたい」
男「そっか」
幽霊女「で、でも……あの、いいの?その」
男「キニスンナ」
幽霊女「でも……でも」
男「うるせぇな。じゃあちょっと注文がある」
幽霊女「!…な、なに?」
男「お前、その制服姿でずっと過ごすつもりか?」
幽霊女「え?だってこれしか服持ってないんだけど私」
男「パジャマ位はお袋のがあるから、それにすれば?」
幽霊女「お洋服をくれるの!?」
男「お洋服ってか寝巻だよ」
幽霊女「!!」 パァァ
男「取ってくるからちょっと待っててくれ」
幽霊女「うん!ありがとうっ!」
男「キニスンナ」
10分後
幽霊女「……」 ゴソゴソ
男「どうだ?着れたか?」
幽霊女「う、うん……大丈夫」
男「もうそっち向いていいか?」
幽霊女「い、いいよ」
男「……」 クルッ
幽霊女「……ど、どう?」
男「お前、予想以上に紫が似合うな」
幽霊女「ほ、本当?う、嬉しいかも♪」
男「じゃ、制服貸せよ」
幽霊女「え……ど、どうするつもりよ」
男「いやハンガーにかけておくんだよ、あんな風に」
幽霊女「ああ、なるほど。じゃあ、はい」
男「よし」 スンスンスン
幽霊女「何嗅いでんのよっ!!!!!」
男「シャンプーの匂い、俺のパジャマと大して変わんねぇな」
幽霊女「そりゃそうでしょっ!やめてよこの変態!!」
男「変態って言葉知ってたのかお前」
幽霊女「昔からあんたみたいなのはいっぱい居たからね」
男「流石だな俺の先祖達よ」
幽霊女「はぁ……で、でさぁ?話を戻すけど」
男「話?」
幽霊女「これ……本当に似合ってる、かな?」
男「ああ、いいと思うけど」
幽霊女「ふふっ……紫は、特別な位の人用の衣装にしか使われなかったって、あんた知ってる?」
男「聖徳太子がそういう色の帽子被ってたのは知ってる」
幽霊女「それ以後も、紫って色は高貴な色で在り続けたのよ。ふふっ♪」
男「よかったな、似合ってて」
幽霊女「うん……嬉しい♪」
男「さて……おらっ、布団入れ」
幽霊女「えっ!?あ、あんたやっぱり一緒に!?」
男「はぁ?お前だけだよ入れって」
幽霊女「う、うん?」 ゴソゴソ
男「じゃ、電気消すぞー」
幽霊女「あ……そういう事か」
男「……どういう事だと思ったんだ?」 ニヤニヤ
幽霊女「はぁ!?な、何でもないわよ!!」
男「さいですかっと」 カチッ カチッ
幽霊女「……」
男「じゃ、寝るか。おやすみ」
幽霊女「う、うん……」
男「うーむ」 ゴロン
男(もうちょっといいソファー買っときゃよかったかな……まぁ大丈夫か。慣れだな)
幽霊女「ね、ねぇ?」
男「あー?なんだ?オレンジねぇと眠れねぇ子だったりすんのか?」
幽霊女「オレンジって、何よ?」
男「……」 カチッ
幽霊女「きゃっ」
男「……」 カチッ
幽霊女「?」
男「この状態がオレンジ」
幽霊女「……ああ、その豆電球の事か」
男「そう、この状態と真っ暗。どっちがいい?」
幽霊女「どっちでもいいわ」
男「じゃ、今日はこれでいいか。おやすみ」
幽霊女「男……私ね?」
男「あ?」
幽霊女「おやすみって言われたの……本当に……ほんとーに……嬉しい」
男「………おやすみ」
幽霊「うん……おやすみなさい。男」
翌朝
男「……」 ムクッ
男(あり……なんで俺ソファーで寝てん…だ?) ポリポリ
男「ふぁぁ……」 テクテク
ゴソゴソ
男「んー」
「!? ちょ、ちょちょ……!」
男「ふぁー……あれ、なんかあったけぇな……」
「な、ななあんたちょっとどい……」
男「ん、何じゃこの柔らかいのは……」 サワサワ
「っ!! どいてっつってんでしょ!!」 ドンッ
男「え!? な、なんだ!??」
幽霊女「だ、だから!どいてってばっ!この馬鹿!!」
男「……」
幽霊女「え……(も、もしかして……)」
男「……」
幽霊女「わ、私……見えてる?覚えてる?」
男「……」
幽霊女「……」
男「あー、そうだ。幽霊だ」
幽霊女「あ」 パァァ
男「朝だからてっきり見えなくなってるのかと」
幽霊女「そんな訳ないでしょ!!!」
男「いや、世間一般の人の幽霊の認識ってそうだぞ」
幽霊女「私とあんたが会ったのはあんたが授業中の日中だったじゃない!」
男「あ、それもそうか」
幽霊女「もうっ!変な所で馬鹿ねあんた」
男「まだボケてんだろ……顔洗ってくる」
幽霊女「あ……うん」
男「……」 ポリポリ テクテク
男「……あーすっきりした」
幽霊女「……」
男「あ、もう制服着てんのか」
幽霊女「だってあれ、寝巻でしょ?もう起きたもん」
男「いやそうだけどよ」
幽霊女「え、なんか間違ってる?」
男「いや、完璧すぎてすごいねって話」
幽霊女「言葉と表情に違いがあるんだけど……?」
男「気の所為だ」
幽霊女「ぅー」
男「俺は朝飯食べてから学校だな……あ、そうだ。お前さ」
幽霊女「な、なに……」
男「こう、今日はというか、これからというか、学校へは毎日行く感じ?」
幽霊女「わ、分からないわよそんなの……でも」
男「でも?」
幽霊女「今日は、行こうと思う」
男「ふーん……あとさぁ」
幽霊女「今度はなによ」
男「お前、現代の文というか。そういうのは、読めるのか?」
幽霊女「馬鹿にしないでよ!完璧に決まってるでしょ?何年学校にいると思ってんのよ」
男「なるほど、生徒同様授業に出たりもしてたわけだお忍びで」
幽霊女「もとから読書きの心得はあったみたいだから、基礎形は出来てた状態だったわけ
そこから、私の頭脳で現代に適応させて……」
男「幽霊って脳味噌あんのか」
幽霊女「ぶっ飛ばすわよあんた!!」
男「さて、朝飯食うかな」
幽霊女「ちょ、ちょっと無視しないでよ!」
男「お前はいらないんだよな?当然」
幽霊女「あ、当たり前じゃない」
男「へいへい」
男「んじゃーお前はそこに座って適当にしてなさい」
幽霊女「……」
男(何があったかな……) パカッ
幽霊女「……」 ジー
男(スクランブルエッグにパンでいいか、めんどくせぇし) カッ パカァ カシャカシャカシャ
幽霊女「……」 ソー
男「……」 カチッ ボッ!!
幽霊女「!? ね、ねぇそれ!火が出てる!!」
男「学校にコンロは無いから知らなかったってかー?」
幽霊女「だ、大丈夫なの!?」
男「俺が出してんだよこの火は。大丈夫だから黙ってろ」
幽霊女(す、すごい……)
男「油切れそうだな、そのうち買うか」 ツー
幽霊女「……」
男「……」 ジュワアアアア
食欲はあるみたいだなwwwww
290:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/08/31(水) 17:45:33.38:lVwBbUSo05分後
男「でーきた」 コトッ
幽霊女「卵焼き……?」
男「グジャグジャだけどまぁそうだな。あとパン」
幽霊女「それが、朝食?」
男「そうに決まってんだろ」
幽霊女「……ふーん」
男「じゃ、頂きま」
グーー
男「……」
幽霊女「……あ、あれ?何の音?」
グーー
男「……」
幽霊女「ん、んー?この音は……一体……なに?」
男「……」
幽霊女「……」 パクッ
男「……」
幽霊女「……」 モグモグモグ
男「……」
幽霊女「ッ~~~!!!」 パァァァ
男「……おいしい?」
幽霊女「すっごくおいしい!!」
男「あ、そ」
幽霊女「特にこの、ジャム?だっけ」
男「いちごジャムな」
幽霊女「やっぱり!いちごだと思ったわ!これが本当においしいんだけど!」
男「今のお前を食品会社のモニターにしたら引く手数多だろうなぁ」
幽霊女「どういう事?」 モグモグ
男「いいからまぁ食いねぇ食いねぇ」
幽霊女「?」 モグモグ
男「それにしてもいい食いっぷりだな」
幽霊女「!」
男「何というか、こう……数百年分の食への意識が一気に解放された感じの……」
幽霊女「わ、私ったら何というはしたない事を……! わ、忘れて!」
男「どうせこれからもメシ食うんだろうし今忘れても意味ねぇと思うが」
幽霊女「え?」
男「食わしてやるよメシぐらい」
幽霊女「ええ!?」 ガタッ
男「おおっ、どした?」
幽霊女「ほ、本当、に?」
男「金に余裕があるうちは、な」
幽霊女「それでいいわ!ありがとう」
男「いやグーグー音鳴らされても堪らんし」
幽霊女「ッッ!」
男「おー幽霊でも赤くなるのか」
幽霊女「うるさい!!」
男「……」
幽霊女「でも……ありがと」
男「着替えよっと」
幽霊女「あ……」
男「ふぁぁぁー、学校めんどくせー」
幽霊女「ふふっ……」
男「あ、そうだ。話は変わるけどさ」
幽霊女「なぁに?」
男「お前、成仏したいんだよな?」
幽霊女「え……」
男「な?」
幽霊女「あ、当たり前じゃない。出来るなら、うん、成仏したいわ」
男「だよな?分かった」
幽霊女「……なに?」
男「確認だよ確認」
幽霊女「だからなんの?」
男「よーし学校行くぞ」
幽霊女「…………」
男「……そうそう」 ピタッ
幽霊女「」 ビクッ
男「お前、授業中でも、俺の邪魔さえしなけりゃいてもいいぞ。教室に」
幽霊女「え」
男「会話したかったら話しかければいい、授業に集中してない時は筆談で応じてやるから」
幽霊女「……わ、分かった」
男(ま、とにかくそういう事だ。成仏させるためには背景事情を知る必要があると見た)
男「となると……」
幽霊女「なに?」
男「……」 ブンブン
幽霊女「あ、通学中は無視ってのはそのままなんだ」
男(当たりめぇだろ)
幽霊女「……ふん」
男(えーと……そう、となるとだ……あの場所について、こいつに確認して、更にあそこに行ってみるべき、だよな)
幽霊女「?」
校門前
男「……」 ジー
幽霊女「な、なに?……!え、えっと……」
男「……」
幽霊女「あそこの、建物……」
男(了解。マジで校門の目の前だな) コクッ
ガララッ
男「おはよー」
クラスメート「おはよー怪奇男」
男「おいそのあだ名はやめてくれよ」
クラスメート「ま、飽きたらやめるって」
男「いやいや語呂悪いだろカイキオトコって」
クラスメート「いやぁでもあの珍現象は結構な広がりを見せてるんだぞ?」
男「ん?なんで?」
クラスメート「いや、この学校で昔からああいうのがあったらしくてさぁ、それがお前のこないだので再び盛り上がって」
男「怪談話系の広がりを見せてるって事かよ」
クラスメート「ま、そういう事だよ怪奇男くん」 ポンッ
男(うぜぇ)
ガララッ 先生「えーみんなおはようー」
クラスメート「おはよう怪奇先生」
先生「ええっ!?」
先生「えーそれでこの公式はー」 カッ カッ
幽霊女「……」
男「……」
幽霊女「なんか、ごめんね。私のせいで」
男『いい迷惑だわ』
幽霊女「うん」
男『ま、別にいいよ。実際事実だしな』
幽霊女「……」
男『怒ってねぇから、授業に集中させろ』
幽霊女「うん、分かった。ありがと」
男「……」 カリカリ
幽霊女「……」 ジー
男「……」
幽霊女「あんたって、字汚いわね」
男(うるせぇよ)
昼 屋上
男「考えてたんだけどさ」
幽霊女「なに?」
男「お前が成仏するためにはさ」
幽霊女「!……うん」
男「死因と、その時の記憶と、現世にやり残したこと、この3つが分かればいいと思うんだよ。俺」
幽霊女「うん、同感」
男「だろ?と、いう事はだ。まずお前が幽霊として『生まれた』場所が、死に場所だった可能性が高いという観点から物事を見る」
幽霊女「……」
男「すると、あの場所がお前が死んだ時にどんな建物だったのか。それを知る必要があるよな
お前が住んでた家だったのか、はたまた只の戦場だったのか、それともお前が殺されたとして、その殺した相手の家だったとか」
幽霊女「私……殺されたのかな?」
男「強姦されて殺されたかもしれねぇな。裸だったんだろ?『生まれた』時」
幽霊女「」 ビクッ
男「あ、いや……可能性の話だから。まぁ、ごめん。……えーと、それでだな」
幽霊女「……」
男「話、進めていい?いや、確かに気分がいいもんじゃねぇよな。唐突にこんな事言っても不躾だった、ごめん」
幽霊女「いいよ」
男「……」
幽霊女「その可能性を、考えた事がないって言えば、嘘になるから」
男「……」
幽霊女「話、進めて。それで?」
男「それで、放課後。この学校の歴史研究会に行こうと思うんだけど。お前来るか?」
幽霊女「歴史、研究会?」
男「この学校創立200年ぐらいだから歴史あんだよ、だからこの土地に関する移り変わりを見てきた建物ってわけだ。
自然とそこに興味を惹かれてこの土地について調べてみようって輩が作ったんだってさ」
幽霊女「そんなものがあったなんて、私知らなかったんだけど」
男「なんか影うっすいらしいからな。部員も今は1人とかそんなもんらしい」
幽霊女「で、でも前からあったんでしょう?なら私が気付いてもおかしくないと思うんだけど」
男「……うーん……まぁ、とにかく。放課後行ってみて、話を聞いてみようかと思ってるんだよ。来るか?」
放課後
男「ったく……」
幽霊女『なんか……怖いから、あんた聞いてきてくれない?』
男「自分の事だろうが……ってのに」
男(まぁ、俺があいつの立場でも、いきなり色々分かるかもって所には心の準備が要りそうだってのは……理解出来るけどさ)
歴史研究会 部室前
男「ここか」
男「……」
コンコン
男「……」
ガラッ
男「」 ビクッ
?「……へぇ、噂の怪奇男君から来てくれるとは、手間が省けたよ。ふふっ」
男「え……どういう事ですか?」
?「ああ、敬語はいいよ。同い年だから」
男「……俺が来るのが分かってた?」
?「いや?分からなかったから、こちらから行こうかと思ってた」
男「俺が、何かここに関する事に巻き込まれてると、思ったって事か?」
?「……」 ニコッ
男「……」
?「ま、立ち話もなんだ、入ってよ」
男「……」
?「さてと……えーと、お茶でいい?」
男「あ、お構いなく」
?「お茶でいいね。よし」
男「……」
3分後
?「さて、と」
男「あんまり、物がないんだな?」
?「まぁね。部員は私1人だし、顧問も1人。私の部屋みたいになってるんだよ」
男「いや、歴史に関するものとかが少ないって意味だったんだが」
?「ああ、そうだね。歴史研究会、だもんね」
男(おいおい……)
?「ああ、心配しないで?君の要件に叶う情報は、ここに入ってる」 コツン
男「……お前、名前は?」
?「女でいいよ。君は男君だよね」
男「まぁ君でも何でも好きに呼んでくれ」
女「私もそういう感じで頼むよ」
男「……で、だけどな」
女「まず、何が知りたい?この学校の前身?それとも……校門前の建物の歴史……とか?」
男「!?」
男「……」
女「……」 ジー
男「何か、知ってるっぽいな」
女「先輩方から引き継いだこの歴史研究会。その【歴史】は、君達一般生徒が思ってる物とはちょっと違うからね」
男「と、言うと?」
女「……君の今知りたがっている過去の出来事、【歴史】……『その【歴史】』にしか、私は興味がないんだ」
男「……」
女「オカルトな出来事が君に起こったって聞いたよ?本当かい?」
男「ま、まぁそうだな」
女「この学校、他の学校に比べて、怪談話が多い方なんだが。君、知ってるかい?」
男「あいにくそこら辺の事に関しては疎いんだ」
女「そうか。……では、考えて見て欲しいんだが、この学校には、古ーくから伝えられてる怪談話が多い。新しい近年に出来た怪談話なんて皆無だ。
理由に思い当たる節はないかい?」
男「……分からないな」
女「怪談話というものは、どうやって生まれると思う?」
男「そりゃー……!わかった」
女「どうぞ」
男「昔に起きた時にはまだ、その時代の科学では解明できない事だったんだよ。
だから怪談となって語り継がれた。その理屈で、色々な現象が分かってきた近現代では怪談が生まれにくくなった、科学で説明出来るからって理由でな」
女「ふーむ、正解」
男「よーし」
女「でも不正解でもあるね」
男「え?」
女「じゃあ、聞こう。君が体験した出来事は、科学で説明できるかい?」
男「……いや」
女「君の理屈に当てはめると、君が経験したその現象が怪奇現象と呼ばれている。
その理由は、現代の科学では説明できない現象だからって事になるよね?」
男「そ、そうだ。俺の理屈と矛盾しないじゃん、なんで不正解なんだよ?」
女「何故かだって? その理由は君が知っているんじゃないかい?
……知ってしまったんじゃないのかい?」
男「な……」
女「私は、『それ』を知りたくて君と接触しようとしていた」
男(こいつ……)
女「さぁ、君が素直に教えてくれたら……その返答次第では、君の知りたい情報について、
私が知る限りの事を教えてあげてもいいよ」
男「……」
女「……さぁ、教えてくれ」
男「……なるほど、確かに怪奇現象。
科学で説明するとか、そういう分野の話ではない。『科学外』の分野における怪奇現象ってのも
あるのかもな」
女「その調子で続けて」
男「……ま、あれだな。『気のせい』という事があるよな、まず」
女「え?」
男「気のせい、見間違い、人ってのは不完全な生き物だからな。
たとえばあるものに対して、警戒心を持つと、その人の脳が、その人に幻覚を見せる事もあるだろうな。人間だし」
女「……ふーん?」
男「確かに?そういう系の事柄から起因した怪奇現象は、『科学外』だよな、どっちかっていうと『生物』だ」
女「減らず口を叩くじゃないか、それとも本心かい?」
男「どっちだと思う?」
女「……」
男「……」
女「……私個人としての、いや、この研究会の見解としては、この学校で語り継がれている
『怪奇現象』のうち、いくつかは、『科学外』でも君の言う『生物』にも属さないものである。
そう考えているんだけどね」
男「真の意味での【オカルト】だな。これから先未来永劫絶対に『科学』や『生物』では説明されないであろう類……」
女「ふふふっ……ここまでまともに私の話を聞いたのは、君が初めてだよ」
男「ただ、そんな物の存在を俺は信じてないけどな」
女「この世のすべての事象は、『科学』『生物』その他の学問でいつか必ず解明される、そう信じているんだね」
男「ま、簡単に言えばそういう事だ」
男(だから正直あいつの存在に関しては、俺の中で自己矛盾の真っ最中。
現実を受け入れろ派と、己の信条に従え派が大戦争絶賛勃発中だっだりすんだけどな……)
女「勘違いをしないでほしいから、言うけれどね」
男「ん?」
女「私も、君と同じ考えを持っている。基本的にはね」
男「え?だって……」
女「ただ、君と私の考え方で徹底的に違うのは、今話した流れでいう最後の部分。真の【オカルト】の部分」
男「……」
女「君はその【オカルト】も、いつか必ず科学で解明されると信じている。
しかし、私は違う。この【オカルト】は、この先人類が何年何百年繁栄しようとも、決して解明される事はないだろう。そう考えている」
男「……そういう考えに至った理屈は?」
女「簡単さ」
男「簡単?」
女「ああ、宇宙に関して考えて見ればいい。
私たちが宇宙に関して、理解している、と考えている事象は、全部、私たちが都合のいい解釈を持てて、納得のできる様な定義を誰かが考え、
その仮定に従っているにすぎない」
男「それでつじつまが合えばそれが正解なんだろう」
女「じゃあ、君は将来この宇宙が誕生する前には何があったのか。そもそもこの宇宙とは何故出来たのか。そういう根本的な事について
人間が解明できると思うかい?」
男「そ、それは……」
女「私は、多分無理だと思うね。断言してもいい、みんなが私のこの意見に賛同する訳がないのは分かっているが。
私の意見を否定しつつ、「こうなのだ、だから君の言い分は違う」と断言出来る人は絶対に出てこないだろう」
男「……科学の極限の先にある答えかもしれねぇじゃん!」
女「そうだね。で、その科学の極限にたどりつくまでに、はたしてこの地球と言う星、人類は繁栄し続けられていると思うかい?」
男「お前、それ屁理屈だよ」
女「君が認めたくないだけさ、まぁ、そういうエリアでおいて語られるにしかるべき【オカルト】……そういうものだけに、私は興味がある」
男「……何でお前オカルト研究会にしなかったんだよ、ここ」
女「私の言っている【オカルト】だが、それをたとえばレベル∞にするとしよう」
男「∞て……」
女「で、ここをオカルト研究会にするとしよう。
……さて、ここに集まってくる人達はレベル∞のオカルトに関して語りたいと思ってやってくるかな?」
男「来るんじゃねぇの?」
女「君が今思い浮かべた人達は、君が言った今の科学で説明可能な過去に置いてのオカルト、つまりレベル1とか2とかのオカルトについて
それをレベル∞のオカルトに変換して騒ぎたい人達」
男「あ……なるほど?お前にとってそれはオカルトじゃない、と」
女「そう、私は君と同じ考えを持っていると言ってるだろう? それはオカルトじゃなくて『科学』だ」
男「……なるほどねー……よーやく合点がいった」
女「……」
男「ガチで真面目に∞の【オカルト】について考えるなら、こういった人が来なさそう、尚且つ
この地域に関して起こっているであろうと、お前が考えている【オカルト】に関して考えやすそうな
「歴史研究会」という名前にしたほうがいいんじゃないか、と」
女「……」 ガタッ
男「……な、なに……?」
ギュッ
男「!?」
女「ふふっ、ちょっと嬉しくなっちゃったよ。そのお礼だ」
男「やめろ!」
女「おっと……ふふっ、まぁ。そうだね、大体それであってる。
私は、この地で起こっている【オカルト】に関して、調べていたんだ」
男「……過去形?」
女「ああ、君の口調、語り口から確信した」
男「?」
女「君は……私の求める【答え】をすでに手に入れている」
男「!?」
女「……その【答え】是非、聞きたいんだが……どうだい?」
男「か、勘違いをしてるみたいだな」
女「?」
男「お、俺は、この学校に関する歴史を知りたくなっただけだ」
女「怪奇現象に巻き込まれた直後に?」
男「それとこれとは別だ」
女「さっき、君に正解であり不正解である。という事を言ったね。覚えてるかい?」
男「な、なんとなく」
女「この学校で、『私の求めている』怪奇現象、オカルトだが……それは、本当に何十年も起きていない事なんだ」
男「……?」
女「分からないかい?……私の言う【オカルト】を起こせる者が……活動をしていなかったと言う意味だよ」
男「……」
女「ま、端的に言っちゃうと……真の意味での……幽霊、かな?」
男「!!!」
女「…・…で、私は日々悶々と学園生活を送っていた。そこで起きた君の怪奇現象」
男「……」
女「もう言い逃れはできそうにないと、自分でも気付いてるんじゃないかい?男君」
男「……」
女「伊達に先輩方からずっと続いてきた『歴史研究会』じゃない。ちゃんと過去の先輩方の研究成果……【情報】は伝わってる」
男「……」
女「この地域に関する【オカルト】は幽霊によるものであり、その幽霊は、自己の存在を認識できる人間が学校に現れている際、
その期間中限定ではあるが、物理法則を操り行動できる……これが我々の見解の1つとしてあるんだ」
男「……」
女「さぁ、ここに関してまずは返答を貰いたい。 yesと君が言えば、我々が長年追い求めている【答え】……
その第一関門がクリアーした、という事になるんだ」
男「……」 スクッ
女「あ」
男「今日は、疲れたので、取りあえず帰らせてもらってもいい?」
女「明日もまたきてくれるかな?」
男「……」
女「強制はしないが……私は本気で知りたがっているよ?……君の口からね……ふふふっ」
男「……話すかどうかは別として……明日ここに来るって事に関しては……いいとも」 ガラッ バタンッ
校門前
男(あいつは……いたいた)
幽霊女「……」 チラッ
男「……(帰るぞ)」 クィ
幽霊女「う、うん……帰ってから、聞くね」
男「……」
家
男「ただいま」
幽霊女「そ、それで?どうだったの?」
男「お前もただいまと言え!」 ビシッ
幽霊女「叩かなくてもいいでしょ!?言うわよ!ただいま!」
男「おかえり」
幽霊女「え……ぁ……」
男「おかえり」
幽霊女「う、うん……ただいまっ、えへへ」
男「お前って叩かれると痛いの?」
幽霊女「いや、別に」
男「そういう所は便利に出来てんだな」
幽霊女「みたいね、それよりもさっ!」
男「あーはいはい。ちょっと着替えてくるから俺」
幽霊女「……」
男「ソファー座って待ってなさい」
幽霊女「は、早くしてね」
男「着替え手伝ってくれたら早くなるかもな」
幽霊女「え、じゃ、じゃあ手伝ってあげるからさっさと…」
男「冗談だよ馬鹿」 タタッ
幽霊女「あ……っ!からかわないでよ!!」
幽霊女(って……そりゃそうよね……恥ずかしいし……私、慌て過ぎかも……えーと深呼吸深呼吸……)
男「えー、それでな」
幽霊女「う、うん」
男「あの歴史研究会って所だが……お前関連の事について調べるグループだった」
幽霊女「え!?」
男「……うん、部員は一人だけだったんだけど、そいつがかなりお前の正体について、分かってたと言うか……」
幽霊女「ほ、本当に?……」
男「多分な。俺達が知りたがってる歴史については、かなり知ってるっぽいんで、明日聞こうかと思ってる」
幽霊女「……」
男「お前が嫌だってなら行かない」
幽霊女「え……」
男「何となくあいつ、話して来た奴だけど。協力すればかなーりの事が一気に分かりそうだ」
幽霊女「……」
男「どうする?お前に判断を任せようと思って、今日は何も聞いてこなかった」
幽霊女「……」
ギュッ
男「……なんだよ」
幽霊女「わ、私……どうすればいいと思う?」
男「手を放せっての」
幽霊女「……」 スッ
男「お前、成仏したいんだろ?最終的には」
幽霊女「う、うん……多分……」
男「最終的には同じゴールへ行く道だ。はやく行くか、ゆっくり行くか。どっちがいいかって事だ」
幽霊女「……」
男「……」
幽霊女「もう、ゆっくり……しすぎちゃった気もする。ふふっ」
男「そんな顔してんじゃねぇよ」
幽霊女「え?」
男「全然笑えてねぇから……見てて気持ちが沈んでくるっての」
幽霊女「……ごめん」
男「……あいつと話してて、思った事があるんだけどな?」
幽霊女「なに?」
男「俺の中で、お前っていう幽霊の存在は、基本的に否定されてきたんだ」
幽霊女「……」
男「お前が俺の立場だったらどう思う?」
幽霊女「信じないよね…普通」
男「でも、お前は俺の前に現れた。俺はお前の存在をこうして目の前に感じている」
幽霊女「……」
男「俺、お前の事、嫌いじゃねぇよ」
幽霊女「え!」
男「お前の存在を今までの俺が変に思ってるけど、今までの俺と、お前に出会った後の俺が会議をした結果
お前の存在自体を嫌いはならないって結論になった」
幽霊女「つ、つまりそれって……あんた……その……ぇと……あの……」 モジモジ
男「と、言う訳で」
スッ
幽霊女「ひゃっ!?ちょ、ちょちょちょっと待って!」
男「いや、押し倒したりしないから、肩つかんだだけだろうが……」
幽霊女「馬鹿!わ、わわ分かってるわよそんなの!」
男「慌ててんじゃん」 ニヤニヤ
幽霊女「っ~~!!うざい!!」
男「……真面目な話なんだが」
幽霊女「……」
男「俺、お前をちゃんと、絶対に……成仏させてやりたいと思う」
幽霊女「!!」
男「俺が学校にいられる期間は、お前にとっては馬鹿みたいに短く感じると思う。
でも、まぁ大丈夫だ。多分もうすぐお前、成仏できるよ」
幽霊女「……」 ポロッ
男「……泣いてるけども」
幽霊女「え?あ、あれ……いや違うのこれは……その……あれ?」
男「お前、ずぅっと一人だったんだろ?」
幽霊女「あ、あれ……何これ……なんで……」
男「過去に会った人達とだって……どうせ大した事喋ってねぇんだろうし、大した時間も共有できてねぇんだろ」
幽霊女「……なん……で……」
男「なんか分かるんだよな。お前が実体として見える位、俺との相性がいいって事が関係してるのかも?
……超絶論理の欠片もない推測で自分で嫌になるが……」
幽霊女「……男…」
男「だから、俺とちょっと楽しく遊んで、んで、成仏して。あの世行けばいいさ」
幽霊女「…ぅ…ぅ……ヒック……何、言うの………よ……ばか……ヒッグ……」
男「何となくだけど、お前あれだよ、きっと現世に居る時に「色々楽しめなかった」のが心残りなんじゃねぇのかな?って……どうだ?」
幽霊女「……分から、ない……」
男「まぁ……とりあえずさ!明るく、適当にゆっくり、過ごしていけば、そのうち何とかなる気がする」
幽霊女「……根拠は…」
男「ねぇな。すまん」
幽霊女「……ふふっ………なんなのよ………もぉ……」
男(やっべぇなーんも論理的な事言ってねぇ……さっさと成仏させたかったんだが……なんだこりゃ)
男「……まぁ、いっか」
幽霊女「?」
男「なんでもねぇよ……取りあえず、明日、お前も一緒に歴史研究会行こうぜ。多分大丈夫だよ」
幽霊女「ぇ……でも」
男「あいつ、なんかお前を退治しようって感じじゃなったし。多分俺側だよどっちかってぇとな……勘だけど」
幽霊女「……」
男「心配すんな、俺がついてる」
幽霊女「!」
男「……かっこよかったか?」
幽霊女「ばかっ!……もぉぉぉ……さっきからあんた変!喋りすぎ……変なんだから!」
男「まぁお前の存在自体が変だし」
幽霊女「へ、減らず口を叩くんじゃないわよ……ふふっ……もぉ」 ポロポロ
男「はっはっはっ」
幽霊女「……」 ジッ
男「はっ?」
幽霊女「……ねぇ……」
男「……何?」
幽霊女「もしかしたら……私達……」
男「???」
幽霊女「……」
男「いや、そこで微笑を浮かべられても意味が分からんから」
幽霊女「やっぱり、なんでもないっ」
男「やっぱ変だよなお前って」
幽霊女「存在自体が変なんでしょ?じゃあしょうがないわよ」
男「な……」
幽霊女「へへっ、ばーか……」
男「チッ……で?明日、結局どうすんだよ」
幽霊女「うん……」
男「……」
幽霊女「行って……みる。あんたと一緒に」
翌日 放課後 歴史研究会 部室前
男「じゃあ、いいか?」
幽霊女「う、うん……大丈夫、ただし」
男「お前の存在が完璧に見えてる事は伏せる、だろ?了解」
幽霊女「うん、じゃあ」
男「おう、じゃあ」
ガラッ
男・幽霊女「「うわっ!?」」
女「やあ、待ってたよ」
男「び、びっくりした」
女「すまないね、扉の前で何か声が聞こえたから」
男「!」
幽霊女(まさか、聞かれて……)
女「安心してほしい、何も聞いてないよ。さあ、どうぞ」
女「ささ、それではお茶をどうぞ」
男「あ、どうも」
女「一つでよかったかい?」
男「……ああ、大丈夫だ」
女「そうか、それは残念」
幽霊女「……」
男「……えーと…だ。昨日の答えについてだが」
女「」 ピクッ
男「……」
女「……」
男「……yesだ」
女「本当かい!?」ガタッ
男「おわっ!!」
女「本当に本当に君には幽霊が視えるんだね!?」
男「か、かか完璧じゃない!いるな……って位の感じと言えばいいか……半透明なんだ!」
女「は、半透明……か。なぁんだ」
男「……あれ?トーンダウン?」
女「過去にも半透明なら視える人がいたらしいからね。生憎その人と幽霊はあまり話をしなかったらしいけれど」
男「それって、戦争に行った人か?」
女「な!?」
男「え?」
女「……言ってないよね。私、その事」
男「……」
女「何故、君がそれを知っているんだい?」
男「……」
女「いや、答えなくても分かったよ……なるほど……それなら話はもっと濃いものになるに違いない……」
幽霊女(な、なんなの……言っちゃだめだったの?いや、そんな訳ないわよね。この子に私を縛る権限なんてないし……)
男(なんかマズったか?……)
女「男君……端的に聞くよ」
女「……今幽霊は、君の右にいるのかい?それとも左?」
男「え!?」
幽霊女「!」
女「君は幽霊とコミュニケーションが取れている!そうだね!?」
男「お、落ち着け……」
女「ハッ! もしや昨日の会話の時もいたのかい!?」
男「いや、ちょっと待て、俺は……えーと」
幽霊女「……言って、いいよ。男」
男「!」
女「なんだい?」
男「いや……分かった、降参降参。そうだな、意思疎通は可能だ」
女「やっぱり!!」
男「そして、今ここに確かにいる」
女「ど、どこ!?」
男「いや……言っても分からないだろうけど……俺の右に」
女「!……」 ジィィィィィィィ
幽霊女「……」 ビクビクッ
男「おい女……ビクついてんぞ幽霊」
女「……」 ジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ
幽霊女「ね、ねぇ……ちょっとやめさせてよぉ」
男「(お前が動けばいいだろ)女、幽霊が左に移ったぞ」
女「!」 クルッ
男「……で、お前ももしかして見えたりするのか?」
女「……はぁ……」
男「?」
女「実際に視えている人に、存在を教えてもらってさえ……私に視る力が作用する事がないなんて
……研究会の予想が大きく覆された瞬間だよ」 ズーン
男「……えっと……まぁ、あの……どんまい」
女「いや、まぁそもそも君と同じく基本的に私はそういうものはないと思って生きてきたからね。
真の【オカルト】的な概念について考える様になったのも最近だし、きっと素質がないんだろう」
男「そんな事言ったら俺なんか幽霊と会った時でさえその概念がなかったわけだが」
女「……やはり、君は何か【有る】様な気がする…」 ボソッ
男「?」
女「ところで……じゃあ、えっと……えー、今はどこにいる?」
男「俺の右隣」
幽霊女(この人、私の事が視えないんだ)
女「えーと……じゃあ、何か喋ってみてもらえるかな……?男、頼むよ」
男「ふむ……なぁ」
幽霊女「な、何よ」
男「なんか喋ってみてくれ」
幽霊女「何を喋ればいいのよっ!」
男「喋ったぞ女」
幽霊女「!」
女「うーん……だめだ。まったく分からない」
男「そいつは残念だな」
幽霊女「ハメたわね!この馬鹿!!」
男「なんか怒ってるぞ、どうするんだ。お前の所為だぞ」
女「え……お、怒らせてしまったのかな……ごめんなさい」
幽霊女「ち、違う、あなたの事じゃなくて」
男「お前の所為じゃないってさ、俺の所為らしい」
女「……き、君……本当に……?」
男「ああ、意思疎通可能だ」
女「う、羨ましい……」
男「……」
幽霊女「何で目逸らしてんのよあんた!なんかムカつくわね」
女「じゃ、じゃあ。えっと……自己紹介をしようか」
男「男です」
女「ふざけてるのかい?」 ギロッ
男「ご、ごめん(怒りすぎだろおい)」
女「当然私と幽霊さんとの自己紹介に決まっているだろう」
男「じゃあお前からまず自己紹介しとけよ、ここにいるから」
女「えーと、私の声は聞こえてるんだよね」
男「だよな?」
幽霊女「ええ、聞こえてるわ」
男「大丈夫だ」
女「え、えーと……じゃあ」
男「目線はこの辺だ」
幽霊女「や、やめてよ」
女「」ジー
幽霊女「う……あ、あの……」
女「私は女、あなたの事をずっと探していました。来てくれて、ありがとう」
幽霊女「!」
女「私は、あなたの正体を知りたくて、そして……あなたを、成仏させたくてこの研究会を引き継ぎました」
幽霊女「……」
女「しかし、私には確証がなかった。引き継いでいた過去の先輩方も、あなたを見た人はいなかったから」
幽霊女「それは、そうだろうね」
女「でも、私たちは……特に私は……あなたが絶対に居ると信じる事ができた」
幽霊女「……何故?」
女「それは、私の先祖が……あなたに仕えていたからです。幽霊さん」
男「え!?」
幽霊女「なっ……!!?」
女「……多分ですけど」
男「多分かいっ!!」 ビシッ!!
女「い、痛い!やめてくれよ男君、今自己紹介の真っ最中なんだ!」
男「あ、す、すまんつい……」
幽霊女「ど、どういう事!?私の事を知っているの!?どうして!?」
男「何で知ってるのって言ってるぞ」
女「もちろん……我が家に代々伝わる先祖の伝言により……です」
男「……マ、マジで……?」
女「うん、この男の幽霊の方の事なら、私の家が一番詳しい……と思う」
男・幽霊女「「え!?」」
女「え?……ど、どうしたんだい?……」
男「……」
幽霊女「……」
女「…………?」
男「あの……男……の?」
幽霊女「幽霊……?」
女「え?だ、だってそうだろう?この土地の歴史を研究して、現世に未練がありそうな人は……男性しかいないと
我が研究会は長年の研究により……導き……出し………え?」
男・幽霊女「「…………」」
男「……」 ジッ
幽霊女「どういう……事……?」
男「あーなるほど……お前、男だったのか」
幽霊女「な訳ないでしょ!!」
女「……ど、どういう事……?」
男「こっちのセリフだよ」
女「き、君が今話している……幽霊は」
男「性別は女だそうだが?見た目もお前や俺と同じ年頃だ」
女「なっ!??……嘘だろう!?」
男「いや……」
幽霊女「???」
男「ホントなんだが」
女「……女の……幽霊……」
男「そ、そもそもなんで男だと結論付けるに至ったんだ?」
女「そ、それは……この土地の歴史資料を探して、幽霊の話が証言として出てきた人を辿って行って……」
幽霊女「……」
女「辿って行って……その資料が無くなった時代に、幽霊が出現したんだと。仮定したからだよ」
男「その時代は?……」
女「……安土桃山時代、戦乱の時代だよ」
男「……そうなのか?」
幽霊女「…………」
男「おい」
幽霊女「ぁ……もしかして……」
男「?」
幽霊女「男、ちょっとこっちへ……」
男「……女」
女「な、なんだい?」
男「ちょっとトイレ」
女「あ、ああ……」
ガララッ バタンッ
男「どういう事だよ…」 ボソッ
幽霊女「多分……時代、あってるかも……」
男「戦国時代だぞ……」
幽霊女「うん……多分だけど」
男「お前何歳だよ」
幽霊女「そ、そんな事言われても」
男「……お前、死因と、その時の記憶……んで名前が思い出せないんだった、よな?」
幽霊女「……」
男「他に、思いだせない事は?ないんだな?だったら今から俺の質問に答えられるな?」
幽霊女「……さっき、思いだした様な…気がするのよ」
男「なにを?」
幽霊女「私の……身分?……」
男「……身分……」
幽霊女「女さんが、仕えていたって……言ってたじゃない?あの時に……」
男「お、お前……やっぱり男」
幽霊女「違うっ!!女さんの先祖の人が、仕えていた人について……心当たりが……」
男「誰だ?」
幽霊女「当主様よ……ここ、昔お城だったの」
男「……え……本当に?」
幽霊女「記憶に靄がかかってる様な感じで……不鮮明だけど……ここがお城だったのは、多分あってると思う」
男「じゃあ、女が言ってた人って……」
幽霊女「……」
男「じゃ、じゃあお前は!?お前がその当主とやらを知ってるんなら……あの……お前自分自身の事については?」
幽霊女「それは……まだ……当主様の顔も、よく思いだせないし、私が何で当主様を知っているのかも……」
男「で、でもお前……身分を思いだしたって…」
幽霊女「あ、あれ……あ、うん……私は……確か……」
幽霊女「……確か…………」
ガララッ
女「!君……」
男「ちょっと、聞きたいことがあるんだが」
女「あ、ああ……」
男「……安土桃山時代……ここは?」
女「……」
男「城……だった、とか?」
女「!!」
男「……マジ?」
女「どうして…」
男「幽霊が、教えてくれた」
女「……」
男「お前達が幽霊だと思ってた人物ってのは、そこの当主の人か?」
女「…………」
男「……どうなんだ?」
女「そうだよ」
男「……」
女「我々は、この土地にかつて存在していた城の当主。彼を幽霊としてターゲットにしていたんだ」
男「……そこらへんの、歴史。詳しいんだろう?当然」
女「調べ上げたからね……幽霊さんは?」
男「ここに居る……って言いたいところなんだが、帰った」
女「帰った?」
男「頭痛いっつって……帰らせた」
女「……ッ!……記憶が?」
男「そうだ」
女「やはり……え?でもそうしたら君は何故……」
男「お前の祖先が仕えていた当主の事に関して、記憶が一部だけ思いだせたらしい。それを教えてもらったんだ」
女「……私達を、知っている?」
男「いや、当主を思いだしt… 女「当主は簡単に会える存在じゃない!!あの時代の当主に謁見できるなど……!!」
やんごとなきお方だったのか…
496:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 01:05:51.06:BAgryqVm0男「!……あ、そうか……」
女「限られたものだけだ……家臣たちと親族と……!」
男「え?ど、どうした……」
女「……」 ガサゴソガサゴソ
男「も、もしもし?」
女「……親族、かもしれない」
男「え?」
女「幽霊さんは、本当に当主様の事を知っていたんだね?」
男「知ってはいたが、まだ顔も思い出せていないみたいだ。当主ってのが存在してたのは知ってた……」
女「……じゃあ、まだ確証はないって事を前提で話すけどね、男君」
男「お、おう」
女「幽霊さん、彼女は、当主様の親族か、彼女たちの身の回りの世話する女の家臣たち……の、誰か」
男「……」
女「だと思う」
男「お前の……女の先祖ってのは……?」
女「私の先祖は……当主様の、側近の一人だよ」
男「側近?」
女「今で言う秘書、ガードマンみたいなものだね。当時、当主様は4人の側近がいたそうだけれど、そのうちの一人だったみたい」
男「……ふーん」
女「君は……しかし、頭が痛く……記憶が……なんて……困ったな」
男「え?」
女「男君、彼女に、この事実は伏せておいた方がいいかもしれない」
男「な、なんで!?だってせっかくあいつの記憶の手がかりg… 女「それだよ」
男「え?」
女「記憶……記憶がないんだよね、彼女」
男「あ、ああ……」
女「私たちは、彼女の記憶を呼び覚まそうとしている可能性がある」
男「ああ、それが目的で俺は」
女「それじゃあ、駄目なんだよ男君」
男「……なんで?」
女「いや、駄目というか……なんだ、駄目じゃあないんだけど、駄目なんだ」
男「お前日本語の駅前留学言ってきてくれ」
女「いや、すまない。違うんだ……説明しずらい事で……よし、わかった」
男「???」
女「まず、我々歴史研究会は、代々に渡って幽霊を成仏、つまり当主様の幽霊を成仏させる為に
……そのチャンスに備えて、成仏方法を研究していたんだ」
男「まぁそれは、そうだろうな」
女「その方法は、当主様のご記憶が、はっきりしている事が大前提だったんだ」
男「ぇ……」
女「当主様の幽霊が、自分が当主であった記憶を覚えていて、尚且つ何が心残りだったのかをしっかり自己認識している状態
そうでなければ……我々は成仏の手助けさえも出来ないんだよ」
男「…………」
女「我々は、現世に心残りがありそうなこの土地の幽霊を、当主様だと思って行動していた。
それには、歴史の資料から分かりうる、当主様が心残りだろうと思っている事がらについて、我々が知っていなければならない」
男「……それは、そうだな。 そうじゃないと、当主は心残りなんてねぇじゃん、ここにいる幽霊は他の幽霊だ……ってなってるよな?」
女「その通りだよ。だから、我々は当主様が幽霊だと信じて疑わなかった……いや、疑いようがなかったんだ。
他の選択肢がなかったと言ってもいい」
男「……当主さんとやらは……歴史の資料からも分かる位に心残りがあるっぽいの……か?」
女「うん」
男「それ…は?」
女「……戦だよ。当主様は、ここで、敵対関係にあった他の大名に、殺されたんだ。親族もろともね」
男「!?」
女「まぁ、当時としては珍しい事じゃなかったけれど……でも……分かるだろう?」
男「……親族や、他の人達も皆……?」
女「ああ、幸いにも私の先祖の人は、逃げて生き延びたそうだが。
当主様からの言伝を友好関係にあった他の大名の元へ伝えに行っていたそうだ」
男「……心残り、親族や他の人達もあったんじゃないのか?」
女「勿論、あっただろうが。一番の……という事ならば、当主様なんじゃないか?」
男「でもそれじゃああいつは!!」
女「……だから……私も混乱してるんだよ、男君」
男「……」
女「確かに……でも、そうだな……君の視えている幽霊、彼女が当主様を知っている女の幽霊だという事実……」
男「だろ?」
女「ああ、どうやら……私たちは、見当違いだった様だね」
男「当主さんとやらは……成仏したんだろ」
女「かもしれないね……そして、幽霊さんは」
男「成仏、しなかった」
女「……」
男「……」
女「記憶……幽霊さんの記憶はまだ曖昧なんだよね?」
男「ああ」
女「話を戻そう。男君、心して聞いてくれ」
男「な、なんだよ……」
女「幽霊さんは、自力で、記憶を思い出す様に、我々で仕向けないと、成仏は難しい可能性がある」
男「!」
女「……」
男「理由、聞いていいか?そう言える理由を」
女「私たちは、日本全国、各地の幽霊の成仏に関して、かなりの資料を何年にも渡り集め、研究したんだ」
男「それで?」
女「その研究成果から、私たちが見解として持っているもの……それは」
男「……」
女「霊体は、自身の記憶が鮮明で、尚且つ現世への心残りがはっきりと自己認識できている状態でしか……成仏できない様なんだ」
男「な……」
女「君が話している幽霊、彼女は、その条件を満たしているかい?」
男「満たしていなかったら……?」
女「……悪霊となって、災いをもたらす」
男「嘘だろ?」
女「嘘か真実かは私にも分からないよ。でも……各地の伝承では、そうなってる」
男「……」
女「そして……悪霊となった霊は、決して成仏することができずに……一生この世をさまようか、封印されるか……ってね……」
災い→黒板消しが飛んでくる
かわいい
533:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 02:12:49.07:BAgryqVm0かわいい
男「……」
女「……」
男「……とりあえず」
女「うん?」
男「分かった……あいつには、これ以上の情報は、出来るだけ、与えない様にする」
女「……うん、今のところは、それがいいと思う」
男「でも、俺は別だ」
女「うん、分かってるよ」
男「俺とお前は、あいつの正体について……資料から探り続ける。それでいいか?」
女「この歴史研究会の存在意義は、彼女に成仏してもらう事だよ。愚問だね」
男「……分かった。明日、また来る」
女「うん……」
男「今日は、取りあえず帰るわ……あいつが、ちょっと心配になってきたから……じゃあな」
女「うん。また明日」
ガララッ バタンッ
女「……」
女「……君も、当主様と無関係では……ない様な気がするよ、男君」
男「……」 タタタタッ
男(畜生……んだよ……あいつの記憶が全回復してからじゃねぇとだめって事かよ?)
男「……」
男(やるべき事は3つ)
男(あいつが記憶を自分で取り戻せる様に誘導)
男(あいつが現世に思う心残りに関して、あいつを観察しながら推測しておく)
男(あいつを…・…)
男「……悪霊にさせない」 タタタッ
家
男「ただいま!!」
男「……」 キョロキョロ
男「あれ?……あ」
男「……」 スタスタ
男「気分、どうだ?」
幽霊女「……」
男「大丈夫か?そのまま寝るか?」
幽霊女「……お城」
男「ん…」
幽霊女「あってた?当主様の事も」
男「ま、多分な。でもあれだ、あいつ使えねぇんだよ」
幽霊女「?」ムクッ
男「それ以外の事は、分からないってさ。まぁ、すげぇ昔の事だからな」
幽霊女「そっか……」
男「お前、頭痛はもういいのか?」
幽霊女「ん……大丈夫」
男「……他に、何か思いだした事は?」
幽霊女「ある、一つだけね」
男「! な、なんだ?」
幽霊女「……」 ジッ
男「?」
幽霊女「……今は、言いたくない。混乱してるから」
男「……お前が?」
幽霊女「そう、言ったらあんたも……混乱しちゃうと思うし」
男「そっか」
幽霊女「うん」
男「ま、あれだよ……取りあえず、一歩前進って意味では……よかったな」
幽霊女「まぁ、うん。そうだね」
男「……なんだよ」
幽霊女「別に」
男「?」
幽霊女「……」
男「……どうしたんだよ、ムスッとしちゃって」
幽霊女「別にムスッとなんかしてないわよ」
男「?」
幽霊女「ねぇ……私さ」
男「なんだよ」
幽霊女「……分からなく、なっちゃった」
男「え?」
幽霊女「……」
ポロッ
男「え!?」
幽霊女「本当に、思いだしたいのか……分からなく、なっちゃった……」
男「……」
幽霊女「何か、思いだそうとすると……怖くて……苦しくなって……」
男「お前……」
幽霊女「とても、胸騒ぎがする……辛い気分になるの」
男「……」
幽霊女「でも……それでも」
男「それでも?」
幽霊女「私は、思いだしたい……でも、怖い」
男「……」
幽霊女「どうすれば、いいの……もぅ、訳わかんないよ…」
ギュッ
幽霊女「!」
男「俺がいるだろ」
幽霊女「!!」
男「お前もう、一人じゃねぇんだからさ。ゆっくりペースで……一緒に……協力してやるから、な?」
幽霊女「……ふぇ…」
男「その、とにかく、怖かったら。手握ってやるでも何でもしてやるからさ」
幽霊女「……」
男「頑張ろうぜ?な?」
幽霊女「ぅん……」
男「俺、お前に成仏してほしいんだよ」
幽霊女「うん」
男「ずっと……一緒に居られるわけでもねぇんだから……お前の存在知ってて、このまま高校卒業するのは……俺も嫌だ」
幽霊女「……分かった」
男「協力はする」
幽霊女「……」
男「大丈夫だ」
幽霊女「……」
男「俺がいるからさ、何とかなるって」
幽霊女「……ヒグッ……エッ……ヒック……」
男「うん、大丈夫だ。大丈夫大丈夫」 サスサス
幽霊女「……なんで、あんた……そんなに」
男「……しらねぇよ。俺にも分かんねぇけど」
幽霊女「……」
男「もう、放っとけねぇんだよ。乗っかった船でもあるしな」
幽霊女「……」
ギュゥゥゥ
男「!?」
幽霊女「……」
ギュゥゥゥゥ
男「……あ、と……あの、おい?」
幽霊女「……」 スッ
男「……」
幽霊女「ごめ……ん…」
男「い、いや……いいけど……あの……えっと」
幽霊女「うれ……しくて」
男「……」
幽霊女「ずぅっと……ずぅっと……人に、頼る事なんて、なかった」
男「……」
幽霊女「でも……あんたが……私の前に、来てくれた」
男「……大した人間じゃ…ねぇけど俺…全然……お前が視えただけだし…」
幽霊女「それを判断するのは」
男「……」
幽霊女「……あんたじゃないわ」 ギュゥ
男(ち、畜生……んだよこれ……心臓が…) ドキドキ
幽霊女「……ね、ねぇ」
男「な、なんだ?」
幽霊女「お願いが……」
男「! あ、ああ。なんだ?」
幽霊女「……っ……と……あの……い、一緒に……」
ベッド
男(どうしてこうなった)
幽霊女「……」 スーッ スーッ
男(爆睡してるし……)
幽霊女「……ん」 ムニャムニャ
男(だぁぁぁ!!青少年になんちゅう破廉恥な攻撃を仕掛けてきやがるこの幽霊!!!)
幽霊女「……んん」
男(しかも毎晩一緒に寝て欲しいとか……ありえねぇお願いすぎるだろおい!!)
幽霊女「んぁ」
男「」 ビクッ
幽霊女「……ん」
男「……(色々な恥の感情というものが、欠如しているのかも……それとも昔の人は意外と奔放だった?
……いやでもどうやらこいつ、結構身分高い奴だったみたいだし……????)」
幽霊女「……」 スースー
男(俺に……どんだけ、拠り所を求めてんだって……見当はずれな事……考えちまうぞ、畜生が……何なんだよ……)
1週間後
男「……」ムクッ
幽霊女「おはよう、男」
男「……おう」
幽霊女「早く朝ごはん食べないと、遅刻するんじゃない?」
男「へいへい」
幽霊女「顔洗ってくれば?あと寝癖。すごいよ?」
男「……うん」
幽霊女「寝ぼけてるな、こいつ」
男「いや、ただ……」
幽霊女「ただ?」
男(一緒に寝るようになって1週間……か)
幽霊女「?」
男「……」 ギュッ
幽霊女「なに? 手なんか握って」 ギュッ
男「お前さ……」
幽霊女「ん?」
男「俺に、惚れてるのか?」
幽霊女「!? きゅ、きゅきゅ急に何言い出すかと思えば……なに!?」
男「いや、何というか。それしか思い浮かばなくて」
幽霊女「は、はぁ?」 ドキドキ
男「だって……なぁ?」
幽霊女「意味が分かんないんですけど……さっさと支度すれば?」
男「おぅ……」ポリポリ
幽霊女「…………」
男「……あの、さ」
幽霊女「まだなにか?」
男「俺がさぁ、お前の事、綺麗だ―とか、美しいーとか、言ったらどうする?」
幽霊女「え?そ、それは……まぁ、う、嬉しい……けど」
男「……」
幽霊女「そ、そう思ってる……の?」
男「……まぁ、思わなくはないかな」
幽霊女「は、はっきり言ってよ」
男「顔洗ってくる」
幽霊女「あ!逃げんな!」
男「……」 スタスタ
幽霊女「もぉー…………へへ」
男(おかしいだろ……常識的に考えて……1週間だぞ?7日だぞ?……) ジャーー
男「……」
男「頭の中が、やべぇ……何が起こってる……」
キュッ
男(あいつと時間を過ごせば過ごす程……あいつの事を出会う前から知ってる様な……
絶対にあり得ない感覚が、俺を襲ってくる)
男「……っ…………完全に実体として視える……事と、何か関係が?」
幽霊女「ねぇ!」
男「っ!」 ビクッ!
幽霊女「はいタオル」
男「び、ビックリさせんなよ」
幽霊女「あ……ご、ごめん」
男「いや、そこまでへこまなくてもいいけどな?」
幽霊女「……遅刻、しちゃうわよ?」
男「分かってるって」
男「……」モグモグ
幽霊女「それにしても、女さん。あの日からずっとお休みなの?」
男「おう、なんかあの日色んな意味で衝撃を受けて、知恵熱出まくって……それが風邪に変化して、と、大変な事になったみたいだぞ」
幽霊女「今日は来るのかな?」
男「分かんねぇ、一応放課後行ってみるけどな」
幽霊女「じゃあ私も……」
男「お前はだめだ」
幽霊女「………………なんでよ」
男「ちゃんと長々と説明しただろ?俺が女と調べて言って、お前に言う。
そして、お前はゆっくりと思いだす。この流れを大事にしたいんだよ」
幽霊女「そうしないと、私が……悪霊になっちゃうから?」
男「可能性があるって話だ。女曰くな」
幽霊女「……分かった……私の為に……って事だもんね……信じる」
男「この1週間は俺だけで、しかも二人で生活していただけだったけど……思い出せた事、あるだろ?」
幽霊女「うん。私は、あの校門前の建物に当時あった場所……お城の離れみたいなところで
暮らしてた事と……当主様は、私にとても優しくして下さった事……そして……」
男「え?その2つだろ?」
幽霊女「ううん……当主様の顔も……思い出したよ」
男「マジで!?」
幽霊女「うん♪」
男「へー、そりゃ大きな進歩なんじゃねぇの?」
幽霊女「かもねー」
男「どんな奴?イケメンか?」
幽霊女「んーとね……うん、まぁ。私は好きなタイプの顔かも」
男「おお!つーことはあれじゃね?やっぱお前ってその当主とやらといい仲だったという可能性が」
幽霊女「どうなんだろう」
男「いやぁ……しかし」
ポンッ
幽霊女「ひゃっ?」
男「よかったじゃん。本当に」ナデナデ
幽霊女「ぁ……」
男「なに?」
幽霊女「ん……! な、ななんでもない」
男「?」
幽霊女「……」ドキドキ
男「さてとー、今日こそは女と話し合ってもっといい情報を見つけてきてやるからな。
ちょっとやる気出たわ」
幽霊女「あ、ありがと」
男「おう、んじゃそろそろ行くかな」
prrrr prrrr
男「……こんな朝早くに……?」
幽霊女「?」
男「はいもしもし……ああおじさん!お久しぶりです!
はい、何とかやってますよ……あーはい、分かりました。それじゃあ待ってます」
ガチャッ
幽霊女「誰?」
男「俺のおじさん、親戚のおじさんが偶に来るって初めてお前がここに来た時に言っただろ?
そのおじさん。元気かってさ」
幽霊女「それだけ?」
男「いや、明日はちょうど休みだから久々に様子見に来るって」
幽霊女「ふーん」
男「と、言うわけだから、明日はおじさん来てる間はじっとしててくれよ?」
幽霊女「……」
男「なんだよ?」
幽霊女「男のそばに……い、いたい……かも?」
男「……いや、その、俺んちで持て成すんだから大丈夫だって。どこにも行かねぇよ」
幽霊女「……それは分かってるけど」
男「じゃあ……」
ギュッ
男「!?」
幽霊女「だ、だって……話せなく、なるじゃん」
男「いや、おじさん来てる間だけだから」
幽霊女「……むー」
男(どんだけ俺と話してぇんだよこいつ)
幽霊女「分かった、じゃあ我慢する」
男「よし」
幽霊女「……」 ジー
男「今度はなんだ?」
幽霊女「遅刻するわよ?」
男「!わあああああ!!ちょ、急げっ!」
幽霊女「急ぐのはあんただって、ふふふっ」
放課後 歴史研究会 部室前
ガララッ
男「お!」
女「……」
男「久しぶり」
女「やぁ」
男「もういいのか?熱は」
女「お陰さまでね……いやぁまいったまいった」
男「結構長引いたな」
女「それだけ衝撃度が大きかったんだろうね」
男「途中からただの風邪になったって聞いたけど?」
女「……まぁそれはいいじゃないか」
男「ははっ」
女「それで……1週間経ったね」
男「あ、おう……」
女「彼女は?」
男「お前の言いつけを守る為に、ここには来させてない。今頃家だろ」
女「1週間、君なりに何かしてみた?」
男「いや、お前がいないとこの部屋もどこに何の資料があるのか分からないからさ
お前がいなかったこの1週間はここに来て、お前がいなかったら帰ってた」
女「それで、幽霊さんと暮らしてたと」
男「そういう事」
女「何か、幽霊さんに変化はあったかい?」
男「……」
女「視え方の変化は勿論、態度、表情は視えるんだっけ?、あと言動とか……そう、それに……新たに思い出した記憶があったり?」
男「……」
女「何かあったみたいだね」
男「実は―――」
3分後
女「……男君」
男「はい」
女「幽霊さんが現世でやり残した事って……もしかして……」
男「……」
女「何となく、私の言いたい事は分かるかい?」
男「まぁ……あそこまでされたら、察しはつくかも」
女「……愛に飢えているのか、はたまた……君だからなのか」
男「え……」
女「君と言う人間に、幽霊さんの中で、心当たりがあるのかもしれないよ?
なにせ、視える人間だし」
男「い、今までもいたんだろ?視える人間」
女「でも、彼女がここまで君と一緒にいる。
今まで視た人の中でこんなに長時間彼女と居た人なんて絶対にいない。
もし居たとしたら、そういう人の証言資料から、我々は幽霊さんを女性だと……君と会う前に分かっていたはずだからね」
男「……」
女「君、彼女が半透明に視えるって言ったよね?」
男「……」
女「具体的に……どのレベルの半透明なのか。ものすごく興味があるんだけど、教えてくれるかい?」
男「……おい」
女「なんだい?」
男「お前、いつ風邪が治ったんだ?」
女「3日前」
男「昨日と、一昨日は……何をしてたんだ?」
女「……ふふっ」
男「……」
女「家の蔵で、ずっと調べものさ。家族総出でね」
男「……で?」
女「まぁ、言おうと思ってたんだけど。気付くのが早いね男君」
男「俺から幽霊の様子を聞いてる時のお前の顔に 『そうだろうねぇそうだろうねぇ』 って書いてあったからな」
女「そんな顔してたかい?」
男「俺にはそう見えた」
女「それはどっちの、みえた?」
男「……」
女「冗談だよ……まぁとにかく!そうなんだ。分かったんだよ男君」
男「?」
女「あまりにも今まで、当主様の事について調べすぎてたから、盲目になってたんだね。
観点を当主様以外に絞って家族みんなで資料を探したら……あったんだよ」
男「なにが?」
女「幽霊さんの正体が書いてある資料さ」
男「!?」
女「……そして」
男「……」
女「何故、幽霊さんが君に固執しているのか……その理由についても、仮定を得られるに至ったんだよ。私は」
男「……それ、もう解決じゃね?」
女「いや、そんなに簡単にはいかないよ。順番に説明しようか」
男「頼む」
女「うん……まず、彼女の正体についてだが。彼女の住んでいた場所に関しては、もう思い出したんだったよね?」
男「ああ、自分でお城の離れだったと言ってた」
女「そう、正解なんだよそれ。だから……そういう事になるんだ」
男「?」
女「いいかい、男君。彼女の正体は……当主様の……奥様に当たる……姫様なんだ」
男「お!?」
女「言ってなかったかもしれないが、当主様がお亡くなりになった時、彼は17歳。
ちょうど、今の私達と同い年……」
男「17で当主!?」
女「当主様が討たれたのは……当主様のお父上、先代の当主様がお亡くなりになって、後を継いだ直後だったんだよ。
あの時代ならそこまで珍しくない」
男「じゃぁ……」
女「ああ、彼女は当主様の、正真正銘の奥様……その可能性が極めて高い」
男「な、なる……ほど……納得した」
女「納得?」
男「あいつが、視える俺に固執してベタベタしてくるのは……政略結婚?とかで
連れてこられて、離れに入れられて……何も普通の女の子っぽい事をせずに死んでしまったから……とか」
女「うーん」
男「だ、だってそれしか考えられないだろ?」
女「そうとも、言えないんだよ」
男「?」
女「政略結婚じゃなかったんだってさ」
男「へ?」
女「だから、普通に好き同士で結婚した、恋愛結婚だったみたいなんだよ。資料の記録によるとね」
男「???」
女「となると……姫様は、君の考えの通りの意味での『現世への未練』を抱いていた
というのとは、ちょっと違うんじゃないか……と私は思うんだが、どう思う?」
男(頭がこんがらがってきた……)
女「ま、こういうのは男である君より私の方が考えやすかったよ」
男「また過去形で言ってるけど……どういう事だ?」
女「今ここで君と会話していった推測……それは、『もし、君が幽霊さんにベタベタされていたら……』と
私が仮定すれば、君と話す前に私の中で、すでに辿りつけていた地点だったって事」
男「!!……だからお前『そうだろうねぇ』って顔してたって事……なのか?」
女「うん、予想してたからね。君から話を聞いた時に多分これで合ってるんだろうなと、思ったよ」
男「……答え出てるっぽいなお前」
女「うん、多分ね……」
男「教えてくれよ」
女「うーん……どうしようかな?」
男「ここに来てお預けですか?」
女「いや、そういう意味じゃなくて……これ、男君が自分で知らないと意味がない様な……」
男「俺の事?」
女「うん……男君。 明日、幽霊さんをここに連れて来てくれない? 二人で話してみたいんだ」
男「それはまぁ……いいけど、どうやって話すんだよ」
女「幽霊さんは、物理干渉が可能なんでしょう?筆談してもらうよ」
男「あ、なるほど」
女「女の子同士の会話だから……男君は幽霊さんを連れてきたら、すぐに帰ってね?」
男「ふむ……あ」
女「え?なに?」
男「明日、学校休みじゃん」
女「昼からなら、ここ使えるんだよ。昼から夕方にかけて、好きな時間に来てくれればいい。待ってるから」
男「……分かった」
女「……」
男「……女?」
女「これは、まぁ……伝えておいてもいいかな……これで君が気付ければ、それでいいと思うし」
男「なんだよ?」
女「当主様と、お姫様。幽霊さんとの関係なんだけど、彼女は当主様達と友好関係にあった大名の娘さんだったんだ」
男「へー」
女「二人は幼いころから一緒に遊んだりする機会があって、両家の人達も皆が二人の仲を微笑ましく眺めていたんだって」
男「……」
女「二人は、許嫁の関係、ではなかったけれど。いつしか当主様の方から、お姫様のお父上に頼み込んだそうだよ。
即OKだったみたい」
男「やるじゃねぇか当主様」
女「それで……二人はめでたく結婚……二人ともお互いが大好きだったそうで……わざわざ離れを作って
そこで二人だけで新婚生活を送ろうとしていたみたいだ。当時としては異例だよね。側近が全然いない状態で、
全部二人でやりたがったそうだから……でも」
男「でも?」
女「二人が結婚して……丁度10日後に……戦が起こって……」
男「え!?じゃあ……」
女「当主様は、戦の直前に、姫様を離れから逃がそうと、姫様の実家である大名の元へ……
側近に手紙を持たせて向かわせたんだ。けれど、敵が予想以上の速さで城に攻め込み……」
男「……その……側近が……」
女「そうさ。私の先祖様……二人の仲人みたいな事をしていたみたいだね」
男「…………」
女「……まだ、何も感じないかい?」
ドクンッ
男「え?」
女「…………」
ドクンッ ドクンッ
男「さ、さぁ……ちょっと、ビックリしたからか……動悸が早くなったかも、だけど」
女「……」
男「し、しかしおかしいな?それなら、何で当主様は心残りがないまま逝ったんだろ。
それだったら、姫様を守れなかった事に対する後悔の念とかがあってもおかしくないよな?」
女「当主様と側近、親族の人達はみんな、城で討たれたって言ったよね?」
男「……ああ」
女「でも、逃げのびた僅かな一握りの人もいる。私の先祖さまも含めてね」
男「ふむ……それで?」
女「先祖さまが、その時聞いたみたいなんだけど……当主様が息を引き取る直前に、側近の一人が彼に
『姫様は無事にお逃げになりました』って……言ったそうなんだ……」
男「…………」
女「その……ある意味残酷で、そして、優しい嘘を……当主様は信じて、逝った」
男「…………」
女「皆から愛されていた、いい当主様だったんだよ」
男「…………」
女「現実では、姫様は……」
男「なるほど……な」
女「……」
男「俺が、もし当主の立場だったら」
女「!?」
男「……その、嘘言った奴に……感謝と、激怒……7:3位の感情をぶつけて死にそうだ」
女「……」
男「でも、そうだな。……なるほどな、感謝が7なら……ちゃんと逝けたのかもな」
ガシッ
男「な、なんだ?」
女「本当に、本当に……まだ、気付けていないのかい?」
男「……何が?」
女「…………君が……君こそが………」
男「何なんだよ……離せよ」
女「……」スッ
男「お前が、何を言ってるのかは、よくわかんねぇよ……でも」
女「でも?」
男「何となくだけど……俺が、関係してそうな事は分かった」
女「!それって……」
男「あいつと、一緒に過ごして、まだ1週間位だけど……
昔から……知ってた様な……懐かしい感じが、どんどん俺の中で膨らんでいってるんだよ……自分でも変だと思ってんだ」
女「もう、分かってるんじゃないのかい?」
男「……」
女「……」
男「いや、分かってはない。それは……一生俺には『分からない事』だ。
ただ……確証はないけど、ある事実を確認したら、『分かる事』もあるかな……とは思う」
女「ある事実……君の、ご先祖様の事だね?」
男「まぁ……そういう事だな」
女「……」
男「お前が自分で確かめるべきだって言った事は理解出来た。明日、親戚のおじさんがくるから聞いてみる」
女「うん。分かるといいね」
男「まぁな……でも、それなら疑問が残る」
女「え?」
男「もし、俺とお前が今考えている事が事実だったら……俺は、なんで……【ここ】に、居る?」
女「……それは、簡単さ」
男「え!?」
女「日本人は……神道と仏教の国だよ?それを考えて、【オカルト】的な部分で更に理論を補強してやれば、答えは出るよ」
男「……」
女「大丈夫、明日には分かるんじゃないかな?」
男「……今日は、取りあえず帰るわ。また、明日」
女「明日、結論が出る事を祈ってるよ」
男「じゃあな」
女「うん」
家
男「ただいま」
幽霊女「おかえりい!!」
ギュッ
男「おわっ!くっつくんじゃねぇよ!」
幽霊女「いいじゃん♪減るもんじゃないしさ!」
男「そういう問題じゃねぇ、服に皺がつくだろ!」
幽霊女「あ、ごめん」 パッ
男「ん」
幽霊女「おかえり」
男「うん……」 ジー
幽霊女「なに?」
男「いや?……ソファーにでも座ってろ」
男「ふー」
幽霊女「その、どうだった?」
男「ん?ああ……」
幽霊女「ねぇ、どうだった?」
男「近いっつの……明日、お前を連れて女の所へ行く」
幽霊女「! いいの?」
男「女がお前を呼んだんだ、二人で話がしたいそうだ」
幽霊女「え?でも私……」
男「お前は紙とペンで筆談。あいつは口で会話」
幽霊女「な、なるほど……頭いいわね」
男「…………」
幽霊女「…………」
男「本当は、どこまで思いだしてるんだ?お前」
幽霊女「!」ビクッ
男「……」
幽霊女「どういう意味?あんたに教えた事で全部、だけど」
男「明日、お前……成仏できるかもしれないぞ」
幽霊女「え!?」
男「……分かんないけどな」
ポンポン
幽霊女「何を、知ったの?」
男「お前の、正体」
幽霊女「な………」
男「……明日になれば、全部分かる。気がする
俺、朝はおじさんを呼んで確認することがあるから、それを確認した後、歴史研究会の部屋に行こう」
幽霊女「…………」
男「大丈夫だ」
幽霊女「なに……が?」
男「お前は、ちゃんと成仏出来るさ。心配すんな」
幽霊女「ッ!……」 バシッ!!
男「……って…」
幽霊女「……」 ポロポロ
男「……」
幽霊女「そうじゃない……私が言いたいのは……そうじゃないっ!!」
男「……」
幽霊女「違うのに……何で、分かってくれないの?」
男「……今日は、もう寝ようぜ……ちょっと疲れた」
幽霊女「…………」
男「……」 ゴロンッ
幽霊女「……」 ゴソゴソ
男「……」
幽霊女「……あんたは、ひどいよ」
男「何でだよ」
幽霊女「私、許さないんだから」
ギュゥ
男「そいつは……困ったな」
幽霊女「ヒック……エグッ……許さな……い……から……」
男「……」
幽霊女「ぅ……ぅぅ……」
男「……」
幽霊女「怖いの」
男「ぁ……」
幽霊女「成仏するって……もう、あんたと一生……離ればなれ」
男「……お前」
幽霊女「もぅ……一人は嫌……いやなのぉ……」
ギュゥゥゥゥゥ
幽霊女「ひゃっ!?……」
男「…………」
幽霊女「……」
ギュゥゥ
男「大丈夫だ」
幽霊女「……」
男「……大丈夫だから……ま、根拠はねぇんだが……でも……大丈夫だ」
幽霊女「…」
男「おやすみ」
幽霊女「…………うん……」
翌日 昼 歴史研究会 部室前
男「……」
幽霊女「……」
ガラッ
女「来たね」
男「そりゃ来るさ、昨日言っただろ」
幽霊女「……」
女「幽霊さんも?来たかい?」
男「おう、隣に居る」
女「そう……それで、結果は?」
男「まぁ、ビンゴ」
女「ま、知ってたけどね」
男「何でお前が知ってるんだよ、うちの家系図」
女「私の先祖様が当主様の一族の家系図を保管していただけだよ」
男「……そういう事か」
女「まぁ……君は当主様の遠縁にあたる人間だから、直系じゃあないんだけどね」
男「遠縁でも知ってビビったよ、マジで震えが来た」
女「知ったのはおじさん経由で?」
男「そうだよ、ついさっきの話だ」
女「そう……じゃあ、昨日の『分かる事もある』と言っていた方は……理解したかい?」
男「おう、まぁな」
女「幽霊さんにそれは?」
男「言ってないけど……」 チラッ
幽霊女「……」コクッ
男「とっくに気付いてたっぽい」
女「あはは……さてと、それじゃあ……男君は食堂の自販機で飲み物でも買って暇を潰していてくれ」
男「……大丈夫なのか?」
女「大丈夫。準備は出来てるよ」
男「いや、お前じゃねぇよ」
女「あら、これは失礼」
幽霊女「……」
男「こいつは、危害を加えるつもりはまったくない。最初に確認しただろ?
お前の成仏に必要なのは、死因、死んだ時の記憶、現世への未練の内容の把握だ。
それをこいつと話す事で完璧に持っていけるはずなんだってさ」
幽霊女「分かってる」
男「じゃあ、話すんだな?」
幽霊女「うん」
男「話すってさ」
女「では、こちらに」
男「幽霊は座ったぞ」
女「うん、これが紙とペンね」
男「おう……分かったってよ」
女「それじゃあ男君……失せて」
男「言い方ひどくねぇか?……まぁいいや、じゃあまた後でな?」
ガララッ バタンッ
女「さぁて……と」
幽霊女「……」
女「やっと、二人きりになれましたね」
幽霊女「あなた……私が視えています、よね?」
女「はい、半透明ですけどね。男さんからはまるで実体の様に視えるんでしょうけど」
幽霊女「! 何故それを……?」
女「過去に、あなたが教えてくれたのではありませんか。お忘れですか?」
幽霊女「??」
女「200年ほど前、あなたを視た人に対し、あなたは「貴方には私がどう視えますか?」と質問した。
限りなく透明だ、と答えたその人に対し、あなたは「貴方は違うようですね」と言い残して消えた……」
幽霊女「…………そんな事も、あったかもしれません」
女「なので、そこから推測し、見解として我々の方で保持していたのですよ。今確信に変わりましたけどね、ふふっ」
幽霊女「あなたは、一体……」
女「佐吉と、呼ばれていた側近をご存じないですか?」
幽霊女「……!私とあの方の婚約の儀を……取持って下さった方……」
女「そうです、私は佐吉の子孫であり……同時に、シャーマンでもあります」
幽霊女「……巫女……?」
女「そうですね。今、私の実家は大きな寺でして……そこで巫女として人生を送っています」
幽霊女「なるほど……あなたが視えるのは」
女「ええ、巫女の力によってです。あなたが視える人に当てはまる法則……つまり、『当主様の血が流れている人間』ではないので、イレギュラーな方法で、あなたを視ている事になります」
幽霊女「…………」
女「ふふっ、驚きましたか?」
幽霊女「ええ……とても」
うーん…
知識が浅いから違ってたらごめんなさいですけど、巫女さんは神社では…
揚げ足取りすみません…
749:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 12:50:05.78:BAgryqVm0知識が浅いから違ってたらごめんなさいですけど、巫女さんは神社では…
揚げ足取りすみません…
>>741
巫女は明治から神社という事になって、それ以前は特に神社=巫女ではなかったんです。
あと現在も一部の仏教寺院で巫女装束をつかってお勤めをしている女性がいらっしゃいます。
まぁ神社でもいいけどw まぁ、終わったら寺にした理由を別に書きます
女「まぁ、私の事はこれ位にしておきますか……本題に入りましょう」
幽霊女「その前に、お聞きしても?」
女「何でしょう」
幽霊女「貴方は……私の事が、ずっと視えていた……そうなのですね?」
女「ええ」
幽霊女「ならば何故……」
女「男君が連れてくるまで、あなたに接触しようとしなかったか……ですか?」
幽霊女「……」
女「誤解を恐れずに申し上げますが、私は一刻もあなたとお話がしたかった」
幽霊女「なら!」
女「しかし、私が手順を踏まずに……あなたに接触していれば、あなたは悪霊になっていた可能性があります」
幽霊女「!」
女「この地域での霊魂の扱いですが……それぞれの霊魂に接する際、しっかりとした『手順』が霊魂ごとに存在するものと心得なければならない。
成仏させる時は、その『手順』に沿う方法でなければ……失敗すると……教えられてきたのです」
幽霊女「…………」
女「この教えが、はたしてどの様な過去の事象から導き出されたのかは、分かりませんが。
先人達の知恵を……【この分野】では、無碍にする事は出来ないのです。
学問ではないので」
幽霊女「……私の、手順とは?」
女「あなたご自身の力で、あなたが視える人……すなわち男さん……彼を見つける」
幽霊女「…………」
女「その後ならば、私も多少の干渉が可能だったのです」
幽霊女「わかりました……ごめんなさい」
女「謝る必要はございません、私があなたの立場に陥ったとすると、同じ憤りを覚えるでしょうから」
幽霊女「……本題へ、入りましょうか」
女「ええ……では……」
女「男君がさっき言っていた事。自分の死因、自分が死んだ時の記憶、現世に残っている未練
……そして……男君が何故か失念している……あなたの名前……
すべてではないでしょうが……どれ程思いだされていますか?」
幽霊女「……」 フルフル
女「?」
幽霊女「すべて……思い出しています」
女「え!?」
幽霊女「……」
女「そ、それでは……」
幽霊女「ええ、すべて思いだした時に……私は成仏するはずでした。
成仏の仕方も、何となくですが、分かっています。多分こうすれば逝けるのだろうと……そういう感覚があります」
女「……ではなぜ……ぁ!」
幽霊女「…………」
女「…………そういう……事、ですか……」
幽霊女「…………」
女「私は、あなたに成仏して頂きたい。その一心ゆえに……少し残酷な後押しをしても、よろしいでしょうか?」
幽霊女「……」
女「彼は……男君は……中身は、確かに当主様と同じ魂を持っています。
……外見に関しては、私には分かりませんがおそらく……」
幽霊女「瓜二つです。声も……何もかもが」
女「……しかし」
幽霊女「…………」
女「彼は……」
幽霊女「…………」
女「彼は……当主様ではないのです。男君なんですよ」
幽霊女「分かっています!」
女「……」
幽霊女「分かっていますとも……男……彼も、同じ事を思っています」
女「そうでしょうね……彼は私に、こう言いました。【それは……一生俺には『分からない事』だ。
ただ……確証はないけど、ある事実を確認したら、『分かる事』もあるかな……とは思う】 と……」
幽霊女「……」
女「彼にとっては、自分の中に、当主様の血が通っていて、当主様の魂がある事は『分かる事』
しかし……自分が当主様と同じ記憶を持ち、同じ様にあなたに振る舞う……その事については
一生『分からない事』と……言っていたのです」
幽霊女「ええ……理解しています」
女「…………」
幽霊女「男と……あなた。あなた方は……現代に生きている、方ですものね」
女「はい」
幽霊女「……」
女「あなたは、もう一度、当主様と……当主様ご本人と、恋愛をしたいと……そう思ったのですね」
幽霊女「……………………はい……」
女「しかし、その未練は……叶えられません」
幽霊女「ええ、でも。それでも……」
女「……男君、ですか?」
幽霊女「……」コクッ
女「……死因、死に際の記憶が戻り、現世への未練に関しても理解し、己で消化し
……自らの名前も思いだしたあなたに…………まだ、成仏したくない理由が、男君と接した事により、新たに出来てしまったのですね?」
幽霊女「……」
女「それは……私が聞いてもいい事ですか?」
幽霊女「……」
女「……男君に任せましょうか」
幽霊女「え?」
女「伊達に巫女を何年もしていません……私には、あなたがもう成仏する気がある様に視えます。
男君を一生束縛するような類の事ではない事が分かりました」
幽霊女「……」
女「ここで待っていて下さい。男君を呼んできますから」
幽霊女「……女さん」
女「はい」
幽霊女「色々と……私の為に……今まで、ありがとうございました」
女「私は、大した事はしていません……それに、礼には及びませんよ」
幽霊女「え?」
女「私は……私達皆が大好きだった、あなたに……幸せになってもらいたいだけなのですから」
幽霊女「……」
女「佐吉は……死ぬ間際に、『お守りできず、申し訳ありませんでした』と、言って、息を引き取ったと聞いています」
幽霊女「……」ヒック
女「あなたは、皆に愛されていました……どうぞ、これからも……ご自愛くださいませ」 ガララッ バタンッ
男「……」 グビグビグビッ
女「いい飲みっぷりだねぇ男君」
男「あ……終わったのか?」
女「うん、もう全部オールオッケー」
男「って事は?」
女「うん……最後に、君と話したいってさ」
男「……」
女「見届けてあげてよ、あの可愛らしいお姫様をね」
男「……」 スクッ
女「……ふふっ…………あ、そうそう」
男「?」
女「行く前に、ちょっとだけ講義をさせてくれ」
男「へ?」
女「なに、1分で終わるよ。あのね、日本ってのは神道と仏教の国なんだけど―――」
男「…………それなら、安心だな」
女「でしょう?日本人だけなんだから、世界でこの考え方をしてる民族は……最高だよ。ビバ日本人ってね」
男「じゃ……行ってくる」
女「ちゃんと見届けてあげてよね。泣いちゃってもいいからさ」
男「泣かねぇよ馬鹿」
ガララッ
幽霊女「あ……」
男「おう」
幽霊女「こっち、来て……?」
男「いいよ……っと」
幽霊女「…………」
男「…………」
ギュッ
幽霊女「あの、ね……私……その……全部……」
男「全部思い出したんだろ?」
幽霊女「え?」
男「何となく、そうなんだろうなって思ってたよ。昨日の時点で」
幽霊女「…………」
男「口調も、無理があったような気もするし……元の記憶が完全に戻ったんだろ?
そりゃ口が当時の口調に戻ろうとするわな勝手に」
幽霊女「あ……ぅぅ……」
男「ま、当時の言葉で喋られても俺よくわかんないだろうけど」
幽霊女「わ、分かっています!だから……」
男「うわ、お前の丁寧語初めて聞いたわ。違和感すげぇな」
幽霊女「ッ!!…ばかっ!!」
男「あははっ……ま、勘弁してくれ。これが俺だ」
幽霊女「ぁ……」
男「俺は……俺なんだからな」
幽霊女「…………」
男「…………成仏、出来るんだろ?」
幽霊女「……」
男「まだなんk 幽霊女「離れたくないのです」
男「……」
幽霊女「私は……当主様を、愛しています。ずっと愛しています」
男「分かってる」
幽霊女「でも……私を見つけてくれた……あなた……男さんも……」
男「俺は、当主じゃない」
幽霊女「中身は同じです」
男「それでも、だ。この世に同じ人間は生まれない、俺には当主だった時の記憶はない」
幽霊女「…………」 ポロポロ
男「…………」
幽霊女「そ、それでも……それでも……離れたく……ないよぉ……」
男「……うーむ」
幽霊女「……」 ギュゥゥゥゥ
男「あのな……」
幽霊女「……?」
男「俺は、当主じゃない……でも」
幽霊女「でも……?」
男「魂は、当主と同じもの……そして……俺も……」
幽霊女「……」
男「俺も、お前が好きになっちまったらしい」
幽霊女「!」
男「魂が同じなら、人間違っても、大して関係ねぇよ……どんな事になろうが
結局は同じ魂が好きになっちまう様に出来てんだよ日本人は」
幽霊女「……」
男「お前……俺と会った時に、何でも言う事を聞くって言ったよな……覚えてるか?」
幽霊女「ぅん」
男「それじゃあ、今から言う事を、信じてみてくれ」
男「この国は、神道と仏教の国だ。でも、その中で、輪廻転生の思想は、仏教が日本に来る前から……
日本に神道しかなかった時代から続いている思想なんだってよ。
死んだ人間の魂は、仏に成り、ある意味でいう神となる。そして、3~5世代ごとに新たな器、
新たな人間として、生まれ変わる。俺達の死生観にはキリスト教みたいに「天国と地獄」なんてものはないんだ。
神道と仏教を融合した輪廻転生と極楽浄土の考え方……これだけだ」
幽霊女「…………」
男「ま、俺自身も何言ってるかよくわかんねぇんだけどな。間違ってるかもしれねぇけど……
要は日本人ってのは、神道の世界と、人が死んだら仏様になって、神にはならないという仏教とをミックス。
仏教でいう仏って、人が神になった姿として考えれば神道とも矛盾しないんじゃないか?って感じでな……
そういう包容力のある解釈が出来る民族って事だ。
魂はいつまでも変わらない、そういうモノなんだってよ。日本人の死生観って奴は」
幽霊女「…………」
男「だから、何が言いたいかって言うとだな」
幽霊女「……ぅん」
男「俺と……お前は……またいつか、絶対会える様になってんだよ」
男「そして……その時も、必ず俺はお前を好きになると思うし」
幽霊女「私は、あなたを好きになる……」
男「そういう事っぽいぞ……日本人でよかったな、俺達」
幽霊女「ふふっ……分かった……それを、信じればいいのね?」
男「言う事聞けよ?……もう、怖くねぇだろ」
幽霊女「……男……私はあんたが好き……大好きよ」
男「当主が泣いてるぞ」
幽霊女「当主様もあんたも……本当に、大好き」
男「はは……もう思い残す事、なさそうだな……」
幽霊女「成仏に関して抱いていた、最後のとても大きな不安を、あんたがぶっ壊してくれたからね」
男「俺グッジョブだな」
幽霊女「ふふっ」
パァァァァ
男「!?(光り……え?)」
幽霊女「男……」
男「……そうか、もう」
幽霊女「うん」
男「…………ははっ」
幽霊女「なに泣いてんのよ、馬鹿みたい」
男「お前もだろ。俺のは汗だよ」
幽霊女「また、会えるんでしょう?なら泣く事……ないじゃん?」
男「会えない間は、寂しいだろ?だから寂しさの到来に備えて泣いてんだよばか」
幽霊女「……うん!私も」
男「……じゃあ……」
幽霊女「最後に……私の本当の名前……呼んで?」
男「しらねぇもん」
幽霊女「――」
男「……」
幽霊女「……呼んで?」
男「……また、今度な? ――」
幽霊女「……うん、……じゃあ、またっ!」ニコッ
――――――――――――――――
女「ひっどい顔だねぇ」
男「うるせぇ」
女「笑顔でお見送りするんじゃなかったの?」
男「だまってろ」
女「さてと……これからどうするの?」
男「そりゃーお前……取りあえずこの人生を楽しく全うして、死んで、また全うして、死んで……で、会うんだよ」
女「何年計画なんだよ、ふふっ」
男「しらん。3~5世代ごとに生まれ変わるんだろ?俺が何世代ごとに生まれ変わってるのか知らないし
あいつが何世代ごとに生まれ変わるのか知らないし……いつか会う事は絶対に会うんだから……それまで待つ!それでいいんだよ!」
女「姫様は幸せ者だね、こんなに思われて」
男「あー……疲れた」
女「ところで、生まれ変わるには子孫を残して血を受け継いでいかないと駄目って条件があるのは知ってるんだよね?」
男「!? な……なん……だと……?」
女「浮気しないと姫様に会えないね」ニッコリ
男「おいそこの毒舌キャラ死んでくれ」
女「ま、子宮を貸すぐらいの事はしてあげてもいいから。決心したら声をかけてくれたまえ」
男「!? はぁ!? い、嫌だ!絶対他の方法を模索する!!」
女「姫様だって許してくれるよ、今は仏の境地だろうしまさに」
男「いやいやいや!!許すわけねぇだろ!そもそも俺自身が許さねぇよ!!」
女「ま、最悪人工授精でもいいからさ……君の血を子孫へと受け継ぐ事は必要だよ?どっちみち」
男「……」
女「ま。君の親戚が子供生んでいけばそれでいい話なんだけどねん♪君だって当主様の魂が入ってるけど
当主様の直系じゃないし……自分で今日その事実を知ったでしょ?」
男「!!!!!!!!」
女「あはははははっ!本当に困ってやーんの!慌てふためく男君は面白いねー」
男「てっめこんちくしょうふっざけんな!!」 ダダダッ
女「きゃー野獣が追いかけてくるぅぅ!!」 タタタッ
男「てかお前そんなキャラだったっけか……ってそれはいいけどとにかく待てやふざけんなゴラァ!!!!」 ダダダダッ
―――――――――――――――――――
数百年後 とある高校
「あー……マジだりぃ……宿題忘れたし……」
先生「今日は転校生が来たぞー」
「あーー……転校生?どうでもいいやー宿題どうすっべー……」
先生「おい!起きろ!」 ポカッ
「んぎゃ!?……あ?」
『今日からこの学校に引っ越してきました……よろしくね?』
「………よろしくぅ」
何とか終われました。
誤字脱字ひどいですが、最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
追記で、女がお寺にいる理由ですけど
最後らへんの男のセリフの様な感じで私は日本の神道と仏教について捉えているので
それとウィキの巫女の項目を見た後に、シャーマンも 巫女も 神に仕えるものとして書いて
仏教は基本的に神はおらず、人が仏になるという考えだが、仏となった人を神と考えて神道と混合して考えるという捉え方が日本にはある。
……って観点があんじゃね?と勝手に思って
おk寺でも大丈夫だろwwwと自分の中でなったわけです。
まぁ本当の最初の最初は蔵がある所って寺じゃね?神社じゃなくね?と思っただけだったりします。
んで辻褄合わせようとしたら何とかイケそうだと思って実行したと……混乱してしまった方はすみません。
なお、私のこの神道と仏教についての考え方は、あくまで私個人の1解釈(しかも間違ってる可能性大)なのであんまり突っ込まずに
流して頂けると幸いです。
ただ、日本人が中国や韓国と違って、よっぽどの人じゃない限り自分たちの先祖について記録を大事にするって事がないのは
こういう輪廻転生の考え方が昔からあって
「どうせ3世代ぐらいたったら生まれ変わるんだから記録とって大事にしなくてもいいだろ」的な考えに落ち着いたから
という事らしい……と本で読んだことがあったので、完全に間違ってる訳でもないかもなと思ってたりしてます。
何でも受け入れる日本の神道があったから、日本で大規模な宗教戦争等が起こらなかったのではないかなと思ったりしてます。
じゃあ、失礼します。 ありがとうございました。
最後に……おれ>>1じゃないお^q^
837:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:41:26.00:ZCywCMG40誤字脱字ひどいですが、最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
追記で、女がお寺にいる理由ですけど
最後らへんの男のセリフの様な感じで私は日本の神道と仏教について捉えているので
それとウィキの巫女の項目を見た後に、シャーマンも 巫女も 神に仕えるものとして書いて
仏教は基本的に神はおらず、人が仏になるという考えだが、仏となった人を神と考えて神道と混合して考えるという捉え方が日本にはある。
……って観点があんじゃね?と勝手に思って
おk寺でも大丈夫だろwwwと自分の中でなったわけです。
まぁ本当の最初の最初は蔵がある所って寺じゃね?神社じゃなくね?と思っただけだったりします。
んで辻褄合わせようとしたら何とかイケそうだと思って実行したと……混乱してしまった方はすみません。
なお、私のこの神道と仏教についての考え方は、あくまで私個人の1解釈(しかも間違ってる可能性大)なのであんまり突っ込まずに
流して頂けると幸いです。
ただ、日本人が中国や韓国と違って、よっぽどの人じゃない限り自分たちの先祖について記録を大事にするって事がないのは
こういう輪廻転生の考え方が昔からあって
「どうせ3世代ぐらいたったら生まれ変わるんだから記録とって大事にしなくてもいいだろ」的な考えに落ち着いたから
という事らしい……と本で読んだことがあったので、完全に間違ってる訳でもないかもなと思ってたりしてます。
何でも受け入れる日本の神道があったから、日本で大規模な宗教戦争等が起こらなかったのではないかなと思ったりしてます。
じゃあ、失礼します。 ありがとうございました。
最後に……おれ>>1じゃないお^q^
>>813
面白かった
おつかれさん!
821:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:36:03.01:iZhI0Oj00面白かった
おつかれさん!
>>1は代行だってことだろ
乙
828:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:38:21.66:yyFEMjGU0乙
楽しかったよ!
833:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 14:39:48.70:aJviZA0J0
乙ううううううううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!
865:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:06:44.17:sVjHQmNg0
良作でした。このスレに出会えたことに感謝
873:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 16:38:55.48:xO0d3cvn0
とりあえず幽霊が裸だった理由を教えてもらおうか
幽霊の姿になって裸→死ぬ直前に裸だった→姫様は城から脱出した→逃げるんだからきっと山道とかを通って
…………ふぅ
985:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 22:51:41.96:BAgryqVm0幽霊の姿になって裸→死ぬ直前に裸だった→姫様は城から脱出した→逃げるんだからきっと山道とかを通って
…………ふぅ
起きた。最後にもっかい読んでくれてありがとう
>>873
いまさらですが
個人的には離れに火を放たれて姫様は焼き討ちされたって裏設定で
服は燃えたって感じです
881:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:16:47.19:NWICdQHa0>>873
いまさらですが
個人的には離れに火を放たれて姫様は焼き討ちされたって裏設定で
服は燃えたって感じです
久しぶりにすっきりした気持ちになれたssだったよー
お疲れ様でした ありがとう
884:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 17:19:23.88:jsv7OQjh0お疲れ様でした ありがとう
乙乙
数百年後も日本が日本でありますように(´人`)
930:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 19:55:31.68:1DX2A9dt0数百年後も日本が日本でありますように(´人`)
最後のは転生したって解釈でおkなんかな
なにはともあれ乙
932:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:03:42.82:vLmJ2MoU0なにはともあれ乙
大層乙でした
でも俺はやっぱ今いる本人に
幸せになってほしいと思う小さい人間
941:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:36:55.19:aWFgvDYo0でも俺はやっぱ今いる本人に
幸せになってほしいと思う小さい人間
面白かった!乙!
しかし最後の『今日からこの学校に引っ越してきました……』って学校に住むのか…
946:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 20:50:58.31:4pon85Zu0しかし最後の『今日からこの学校に引っ越してきました……』って学校に住むのか…
>>941
細けぇこたぁ(ry
993:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 22:57:12.87:jsv7OQjh0細けぇこたぁ(ry
>>1000なら近々次回作
994:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 22:57:42.55:pWjulh9x0
1000ならみんなの恋愛成就
1000:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/01(木) 22:58:40.89:2aAiEuSH0
1000なら全員リア充

コメント 8
コメント一覧 (8)
良かった
成仏メインだったんだな
途中から泣いちゃいました。
日本人でよかった!!
変にイチャイチャ展開にしなかったのも○