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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:17:15.00:iuDXAJ+q0
赤「おっ父!人間拾った」
青「捨ててこい。」
赤「嫌じゃ。」
青「そんなん一体どうするつもりじゃ?」
赤「育てて食う。」

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5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:18:52.83:iuDXAJ+q0
青「ならんならん。肉は臭いし食えたもんじゃないわ。」
赤「なら、おっ父にはやらん。わしが食う。」
青「第一育つのが遅いぞ。育てるまでに食わせる分を自分で食べたほうがマシじゃ。」
赤「なら、わしが餌をとってくる。」
青「頭がいいからすぐ逃げるぞ。」
赤「なら、足だけ今食う。それなら逃げられん。」
青「そんなことしたら育たん。今すぐ死ぬぞ。」
赤「それは困った。」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:21:28.09:iuDXAJ+q0
青「どっから拾って来たんじゃ?この辺には人間の集落なぞないじゃろう。」
赤「滝の前に落ちとったぞ。寝とったからつかまえるのは簡単じゃった。」
青「そりゃ落ちて気ぃ失ってただけじゃな。あちこち怪我しとる。」
赤「そうか。なら、こいつはマヌケじゃな。」
青「とりあえずヨモギでも巻いて戻してこい。ここで気が付いたら面倒じゃ。」
赤「なにが面倒なんじゃ?」
青「ここを覚えられたら、大勢で追い出しに来るにきまっとる。」
赤「なんと、それは嫌だの。」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:23:45.92:iuDXAJ+q0
赤「戻してきたぞ。」
青「娘っ子がなんちゅうカッコしとる?毛皮はどうした?」
赤「寒いかもしれんから、マヌケにかけておいた。」
青「余計なことを。次に鹿が獲れるまで藁を巻いとけ。」
赤「あれはチクチクするから嫌じゃ。」
青「明日獲りに行くから辛抱せい。お前が余計なことするからじゃ。」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:25:27.64:iuDXAJ+q0
赤「おっ父!昨日のマヌケがまた居たぞ。」
青「帰っとらんかったんか。犬は連れとらんかったか?」
赤「犬はおらん。おったらにおいで分かるはずじゃ。わしは犬が好かんからの。」
青「ほうか、ならいいが。帰っとらんという事は、わしらを探しておるのかの?」
赤「なんでじゃ?」
青「わしが知るわけなかろうが。」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:30:15.00:iuDXAJ+q0
青「お前は隠れとれ。わしは焚き火を消してくる。もう遅いかもしらんがな。」
男『出てこい!』
赤「遅かったようじゃの。」
青「やれやれ、また立ち退くことになるのかの。」
赤「わしのせいか?」
青「さあな。とにかくお前は出てくるでないぞ。」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:34:28.68:iuDXAJ+q0
青「一体なんの用じゃ?騒々しいぞ。」
男「あ!い、い・・・」
青「さっきの威勢はどうした?怯えておるのか?」
男「うるさい!妹を返せ!」
青「はあ?お前の妹なぞ知らんぞ?」
男「嘘をつくな!トヨを・・・く、食ったのか!?」
青「わしらは人間なぞ食わんわ。」
男「わしら?・・・な、仲間が居るのか?」
青「お前には関係の無い事だ。」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:39:01.27:ko+LX1LuO
青「それともお前を食ってやろうか?」
男「あ・・・ヒッ!」
赤「なんと!食ってもいいのか!?」
青「あ、こら!出てくるなと言うとろうが!」
男「トヨ?・・・いや、似ているが違う・・・」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:46:18.26:iuDXAJ+q0
青「それで?わしの娘がお前の妹に似ておっただと?」
男「ああ、5日前から姿が見えん、本当に食っていないのだな?」
赤「おっ父は人間はまずいから食わんのだと。」
男「不味いと知っているという事は・・・」
青「今は食わんが、食ったことはあるぞ。」
男「俺も・・・食うつもりか?」
青「食わぬというに。」
赤「わしは食ってみたいぞ。」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:56:01.56:iuDXAJ+q0
青「なんでこんな山奥まで来た?わしがさらったと思ったのか?」
男「他に誰がおる!?」
青「誰と言われてもな、人間の里に知り合いなどおらん。」
男「トヨ・・・」
青「わしらが住んでおる事は知っておったのか?」
男「確かめた者はおらんが、昔から猟師の間で噂はある。」
赤「そんな噂を信じて崖から落ちたのか。マヌケマヌケ。」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:02:14.70:iuDXAJ+q0
男「くっ・・・!だが、三日三晩さまよってこの毛皮を見つけた。これで確信した。」
青「ほれ見ろ。お前がしたことが仇になっとるぞ。」
赤「めんぼくない。」
青「とにかくそれは返せ。こいつのじゃ。」
赤「おー!チクチクはもういやじゃしの。」
男「そうはいかん!」
青「ぁん?」
男「あ・・・う・・・か、返す。」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:11:09.19:iuDXAJ+q0
男「本当に妹は知らんのか・・・?」
青「くどいぞ。」
赤「くどいくどい。」
男「他に仲間は居ないのか?」
青「この辺りにはおらんし。おったとしても教えんわ。」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:20:41.67:iuDXAJ+q0
男「なら妹は・・・どこへ行ったというのだ・・・」
青「どこぞの男とかけ落ちでもしたんじゃろ。」
男「妹は目が見えぬ。喘息もある。遠出なぞ無理だ。」
赤「かけ落ちとは何ぞ?」
青「家族の他の者は何か言うておらんのか?」
男「家族は死んだ。妹しかおらん。今は親戚の家に世話になってる。」
青「同じ事じゃ、一緒に住んどる者は何か見てなかったのか?」
男「うちは貧しい・・・妹以外は皆畑に出ていた。戻ってきたら消えておったと・・・」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:27:29.12:iuDXAJ+q0
男「邪魔をした。もう一度村の周りを探してみる。」
青「このまま帰れると思うてか?」
男「お、俺をどうするつもりだ・・・?」
赤「どうするつもりだ?」
青「さて・・・どうしたもんかの?」
赤「どうしたもんか?」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:36:25.68:iuDXAJ+q0
青「ここへは一人で来たのだな?」
男「そうだ。」
青「ならば、お前以外は誰も知らん。そうだな?」
男「そうだ。」
青「・・・ここであった事は誰にも言うな。お前も忘れろ。」
男「・・・出来ん。と言ったら?」
青「とって食う。」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:47:38.60:iuDXAJ+q0
男「・・・わかった。ひとつ教えてくれ。」
青「何度も言うが、お前の妹なぞ知らん。」
男「そうじゃない、俺が起きた時、傷の手当てがしてあった。お前たちなのか?」
赤「おお!わしだ!わしわし。」
青「それも知らん。見逃してやるからはよう去れ。」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 17:54:33.65:iuDXAJ+q0
赤「おっ父、叔父貴が来たぞ。」
青「なんじゃと?珍しい。」
黒「よぉ兄弟、息災かえ?」
青「兄者、良くここが分かったの。」
黒「竹細工でトラハジキ作れるんはお前くらいのもんじゃ。」
青「それでわしがこの山におると?」
黒「罠を見つけて、後は煮焚きのにおいをたどっての。」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 18:05:19.93:iuDXAJ+q0
赤「で、その人間はどうしたのじゃ?食うのか?」
娘「あの・・・」
黒「ソレの事は後で話す。だが、僅かに別の人間のにおいがするの?」
青「ああ、前に迷い込んだマヌケがおってな。それでじゃろ。」
黒「では、また食うようになったのか?」
赤「食ってはおらんぞ。」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 18:17:31.62:iuDXAJ+q0
黒「なんと、そのまま帰らせただと?面倒なことになるぞ。」
青「まあ、大丈夫じゃろう・・・で、ソレの事を聞いても良いか?」
黒「ああ、実はの、先日食った人間が連れておって・・・」
青「旅の衆を襲ったのか!?その方が面倒になるではないか。もし、噂が立ったりすれば・・・」
黒「なに、心配はいらんよ。そいつは人買いだったでの。」
青「なら心配するものもおらんな。」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 18:24:57.04:iuDXAJ+q0
赤「こいつを食わなかったのは何でじゃ?」
黒「わしももう歳かの、一人食ったら腹いっぱいでの。」
娘「・・・・・」
黒「それに、お前に似ておったからの。何だか食う気にならなんだ。」
青「言われてみれば似ておるかの。ハテ、目が開かぬようじゃが?」
黒「帰れと言っても見えねば道が分からぬだろうし、わしが人里近くまで送るわけにもいかん。」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 18:30:44.46:iuDXAJ+q0
黒「わしもそろそろどこかに腰を据えようと思っておったから、こいつに家事でもさせようかと。」
青「ま、目が見えねば枷もいらんであろ。しかし、やれやれ・・・情が移ったか。」
黒「お前にゃ言われとうないが、まあそういう事だの。」
赤「叔父貴もう旅がらすやめるのか?」
黒「そうじゃ。それで、ここらで住めそうな場所を聞こうと思っての。」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 18:54:36.21:iuDXAJ+q0
青「あいにくここらには無いの。前に住んどった処は猟師が出入りするようになったしの。」
赤「お前ずいぶん白いな。」
娘「え?」
青「向こうの山ならまだ誰も住んどらんハズだが。」
赤「これは何ぞ?」
娘「櫛・・・髪を梳かす道具です。」
黒「山越えになるか。わしはともかくアレには難儀じゃな。」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:01:53.51:iuDXAJ+q0
黒「いざとなったら抱えて渡るが、雲行きがよくないの。」
青「夕方からは天気も崩れてきそうだの。」
赤「これは鏡か?全然研がれておらんの。随分くもっとる。」
娘「私には・・・必要ないものですから。」
青「まあ、急ぐこともないのであろ?しばらくは泊まっていくがいい。」
黒「おう、そのつもりじゃ。なので酒を持ってきたぞ。」
青「知っておったさ。だから泊めるのじゃ。」
赤「叔父貴泊まるのか!?じゃあ、またおっ母の話を聞かしてくれ!」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:08:49.33:iuDXAJ+q0
娘「どうかしたのですか?」
赤「おっ父も叔父貴も酔っぱらって寝てしもうた。」
娘「・・・はい。」
赤「のう人間、ウタとはなんじゃ?」
娘「歌・・・ですか?いろいろありますが・・・」
赤「わしのおっ母はウタというのが上手かったらしい。さっき叔父貴が教えてくれた。」
娘「♪~・・・・」
赤「?」
娘「♪~・・♪♪~・・・」
赤「おお、おお、それがウタか!?」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:16:37.32:iuDXAJ+q0
赤「教えてくれぬか?いや、わしにも出来るか?」
娘「じゃあ、一緒に歌いましょう。」
赤「真似をすればいいのかや?」
娘「♪~・・・・」
赤「@¥×・・・」
娘「♪~・・♪♪~・・・」
赤「△?・・※$#・・・」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:20:28.09:iuDXAJ+q0
黒「やれやれ、2~3日のつもりが、長居してしもうたの。」
青「なに、構わぬよ。あやつの伽にもなっておったしの。」
赤「じゃあの!歌は毎日練習するぞ!そうじゃ、これをやろう。川で拾った翡翠じゃ。」
娘「あ、ありがとう。」
青「では気をつけての。」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:30:13.53:iuDXAJ+q0
黒「どうした?もう疲れたのか?」
娘「・・・すこし。」
黒「休める場所が見つかるまで抱えてやるか?」
娘「結構です。」
黒「なんじゃ?まだわしが恐ろしいか?」
娘「・・・いいえ。」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:38:17.60:iuDXAJ+q0
赤「おっ父!わしにも櫛を作ってくれ!」
青「なんじゃ色気づきおってからに。」
赤「あの人間は持っておったに、ダメか?」
青「作ってやらん。」
赤「ちえ、おっ父なぞ嫌いじゃ!」
青「教えてやるから自分で作れ。」
赤「おお!やっぱりおっ父は好きじゃ!」
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:44:59.76:iuDXAJ+q0
赤「おっ父、マヌケがまた来たぞ。」
青「忘れろと言うたにの。」
赤「今度は食い物もなしで山に入ったようじゃ。」
青「何度も来られると困るんだがの。」
赤「なんでじゃ?」
青「短い間に何度も行き来すると道ができるじゃろ。あいつ以外も来るようになる。」
赤「そうか。人間に見つかったら引っ越しじゃもんの。」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:49:56.74:iuDXAJ+q0
男「たのもう・・・」
青「ここの事は忘れろと言ったはずだが?」
男「すまぬ。」
赤「今日は何しに来たんじゃ?」
男「今日は・・・頼みがあって来た。」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 19:53:31.56:iuDXAJ+q0
男「俺をここに住まわせてはくれないか?」
青「いきなり何を言うとる?」
男「村を捨てて来た。もうあそこには戻れん。」
青「そんなことわしらの知ったことではない。」
男「俺が戻ったら急に羽振りが良くなってた。おかしいと思って問い詰めたら・・・妹を人買いに出したと。」
赤「おっ父、もしかすると叔父貴の・・・」
青「お前はだまっとれ。いいな?」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:02:07.45:iuDXAJ+q0
男「家のもんはみんな殺してきた。そいで騒ぎを聞いて集まって来た奴らから逃げて来た。」
青「お前にどんな理由があろうがわしらに関係なかろう。」
男「じゃあ、せめてこの山に住むことを許してくれ。迷惑はかけない。」
青「それなら構わんが。絶対に山から出ないと約束できるか?」
男「なぜだ?」
青「できるのか、できんのか!?」
男「・・・約束する。」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:07:50.06:iuDXAJ+q0
青「麓近くに前住んどったほら穴がある。そこにでも住むがいい。」
赤「あそこは時たま猟師が来るぞ?」
青「こいつは人間じゃ。猟師に見つかっても騒ぎにはならん。」
赤「む。喋ってしもうた。黙らねばならぬに・・・」
青「わしの目は1里先だろうと見える。約束をたがえるなよ。」
男「肝に銘じる。」
青「それから、しばらくの間ここへは近付くな。お前の通った跡は目立ちすぎる。」
男「そうだったのか、すまない。」
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:14:54.10:iuDXAJ+q0
赤「おっ父、叔父貴じゃ。」
黒「よう兄弟。住処が決まったのでな。知らせに来た。」
青「ほお、それは良かった。」
赤「今日は一人だの。」
黒「連れてこようかとも思ったがの、ちと困っておる。それの相談もしたくての。」
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:18:51.56:iuDXAJ+q0
黒「股から血が出てな。具合が悪そうなのじゃ。死ぬのかの?」
赤「なんじゃと!?おっ父、なんとかしてやれんか?」
青「ああ、案ずることはない。それは月の物じゃて。本人は何と言うておる?」
赤「ツキ?」
黒「わからんと言うておった。こんなことは初めてじゃと。」
青「ほうか。それはな、子供が産めるようになった証じゃ。人間なら家族で祝いを催すが・・・」
赤「おっ父はもの知りじゃのう。」
青「じきにお前にも来るようになるぞ。祝ったりはせんがの。」
赤「なんと!」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:22:42.19:iuDXAJ+q0
黒「で、どうすれば治るのじゃ?」
青「放っておけば良いじゃろ。日が経てば自然と収まるものよ。」
黒「ならばしばらくは様子を見るかの。」
青「じゃが、これからは毎月それの繰り返しじゃ。本人にも教えておくと良いの。」
赤「おっ父もそうなのか?」
青「阿呆。なるのは女だけじゃ。」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:29:19.67:iuDXAJ+q0
赤「マヌケの事はいいのかの?」
青「おお、そうじゃそうじゃ。」
黒「前に来たという人間か?」
青「左様、兄者はあの娘を人買いからさらったのだの?」
黒「そうじゃの。さらったのか助け出したのか妙な具合だがの。」
青「そのマヌケはあの娘の兄で、妹を探して山に入ったらしくての。」
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:37:04.52:iuDXAJ+q0
黒「わしはお前ほど頭がようない。すまんがわからんわ。」
青「言い方が悪かったの。そのマヌケは妹が見当たらなくなったから、わしがさらったと早とちりして山に来た。」
赤「そんでわしらが追い返したんじゃ。」
黒「ほうほう。」
青「本当は妹は人買いに売られたからいなくなったわけじゃ。」
黒「その妹というのがあの娘なのだな?」
青「マヌケが言うには、妹はこいつに似ておって、目が見えぬと。おそらく間違いあるまい。」
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:43:18.73:iuDXAJ+q0
青「それからもう一つ。そのマヌケは今はこの山に住んでおる。」
黒「自分の山に人間を住まわせておるのか?お前のもの好きは底がないの。」
青「妹を売られたことに腹を立て、家のものを皆殺しにして逃げて来たんだと。」
黒「いやはやなんとものう。わしらより人間の方がよっぽどえげつないではないか。」
青「どうするかの?会わせてみるかえ?」
黒「会わせてやりたい・・・の間違いではないのかの?」
青「まあ、そうとも言うかの。よし、マヌケを呼んでこい。」
赤「おお!心得たぞ!」
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:48:31.77:iuDXAJ+q0
赤「・・・というわけじゃ。おっ父と叔父貴が呼んでおるからついて来やれ。」
男「その話、本当なのか?」
赤「わからぬよ、お前が会ってみんことにはな。お前の妹の顔はお前しか知らんのじゃ。」
男「そうだな。わかったすぐに行こう。」
赤「まてまて、そっちはダメじゃ。また草が踏み倒される。こっちから登って行くぞ。」
男「こんなところ登れるはずがないだろう?」
赤「だらしないの。ならわしが抱えてやるわな。」
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:50:18.80:kXLaprCY0
赤「すまんの・・・おっ父や叔父貴のようにはいかなんだ。もうちっとわしに丈があればの。」
男「俺を片手で持ちあげるだけでもすごいとは思うが・・・イテテ」
赤「だが釣り合いがとれん。両手で抱えたら登るのに使う手が無くなるしの。」
男「やっぱりあっちから行った方が・・・」
赤「そうじゃ!お前、わしにおぶされ。抱えられんなら背負えばいいんじゃ。」
男「こ・・・これでいいか?」
赤「ぬほほ・・・なにやらこそばゆいの。」
>>104青と黒は2mちょい、赤は150cmくらい。
つか、風呂入ってくる。
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:12:33.02:iuDXAJ+q0
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」
男「その歌は・・・」
赤「おお!歌がわかるのか?なら、お前も習うと良いぞ。」
男「俺は歌は不得手なんだ。その代わりにこれを吹いている。」
赤「なんじゃそれは?竹ではないのか?」
男「これは笛というものだ。こうすると音が出る。」
「♪-・・・♪-♪-・・・」
赤「なんと!」
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:18:39.18:iuDXAJ+q0
赤「ぐぎぎ・・・全く音が出ぬ。頭がくらくらしてきたぞ。」
男「一朝一夕では無理だろう。壊す前に返してくれ。」
赤「うぬぬ・・・返す。」
男「ん?こっちじゃないのか?」
赤「そっちは嫌じゃ。通りとうない。」
男「ああ、ヒイラギか・・・意外と言えば意外だな。こんなものが怖いとは。」
赤「怖くなぞないわ!嫌いなだけじゃ!ほれ、はよう来い。」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:24:37.59:iuDXAJ+q0
赤「おっ父!待たせた!連れて来たぞ。」
黒「ほう、こやつがそのマヌケか。」
赤「そうじゃ、そのマヌケじゃ!」
男「は、始め・・・まして・・・?」
青「言うまでも無いが、そいつはわしの山の者じゃ。勝手に食ってくれるなよ。」
黒「心得ておるよ。一応は客人としての扱いはする。だが、この山の外で会った時は・・・」
青「それは言ってある。山から出るな。とな。」
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:27:50.99:iuDXAJ+q0
青「では行ってくるがいい。お前は場所を覚えてわしに教えろ。」
赤「おっ父は行かんのか?」
青「人間の足にあわせれば往復に何日かかかるじゃろ。その間ここを留守には出来ん。」
赤「うむー。いたしかたないの。」
黒「そうじゃ、この辺りで塩は採れんか?わしらには毒じゃが、人間の食事には必要らしいでの。」
青「尾根づたいに行けば魚の棲まぬ湖がある。そこらを掘れば岩塩が出るであろ。」
黒「ふむ。ちと寄り道になるが、近いもんじゃな。」
赤「どうやって運ぶのじゃ?」
黒「こやつが持てばよかろう。」
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:36:06.93:iuDXAJ+q0
黒「のう、人間。家の者を殺してきたというのは本当か?」
男「・・・本当です。」
黒「わしが聞いた話では、お前が祝言を挙げるための元手が必要で身売りしたと。」
男「そんな馬鹿な。」
黒「重荷になっていた自分でも、兄に報いることができたのだと。」
赤「祝言とはなんじゃ?」
黒「夫婦になることじゃ。」
赤「メオト?おっ父とおっ母になる約束か!」
男「俺にそんな話が来ていたことなどない。そうか、あいつら・・・妹を騙して売ったんだ。」
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:46:04.39:iuDXAJ+q0
黒「まあ、そんなところかのう。人違いという事もあるにはあるが・・・」
赤「ついたぞ。ここがおっ父が言っておった湖じゃ。」
黒「ホントに魚がおらんのじゃな。あちち!うかつに近寄らんほうがよさそうじゃの。」
赤「大げさじゃの。叔父貴もこれがだめなんか?わしは何ともないぞ。」
黒「うむー・・・そらお前、お前はまだ若いからじゃ。おい坊主、それを5貫ほど集めて持ってこい。」
男「坊主・・・?」
赤「叔父貴、こいつは坊主ではない。マヌケじゃ。」
男「・・・・・」
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:54:05.03:iuDXAJ+q0
黒「さて、もう日も傾いてきたし。この谷を渡ったら暖をとるかの。」
赤「わしらはいいとしてものう・・・」
男「うー・・・」
黒「なに、疲れとるのを差し引いても人間が渡れるとは思っとらんわ。」
赤「ではどうするのだ?」
黒「わしが向こうまで投げ渡す。」
赤「なんと!」
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 21:59:39.67:iuDXAJ+q0
黒「木の枝の中に投げ込むからの。下まで落ちる前に何かにしがみ付け。よいな?」
男「え?」
黒「よっ・・・と」
男「・・・・・え?」
黒「ヨイサー!」
男「えあ?おおおおおお!・・・ぉぉぉぉぉ・・・・!?」
163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:04:02.11:iuDXAJ+q0
黒「さて、寝る前に腹ごしらえじゃ。燻製じゃが人間の口にはあわんかもの。」
赤「おお、豪勢じゃの!これは鹿か?山羊か?」
黒「羊じゃ・・・二本脚のな。」
男「ブッ!」
赤「そんなもんがおるんか?」
黒「まあ嘘じゃ。安心せい、鹿の肉じゃ。」
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:07:18.13:iuDXAJ+q0
赤「よし!笛じゃ!笛を吹くのじゃ!聴かせたもれ。」
黒「ほう、それは篠笛だの。心得があるのか?」
男「うん・・・まあ。」
黒「ならば存分にやれ。笛の音色はわしも好きだしの。」
「♪-・・・♪-♪-・・・」
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:12:04.72:iuDXAJ+q0
赤「Zzz・・・」
黒「寝てしまったか。のう、こいつは変わり者じゃ。そう思わんか?」
男「良く分からない・・・」
黒「まあそうか。人間はわしらのことなぞ良く知らんだろうしの。」
男「・・・・・」
黒「何にでも興味を持つし、何でも真似したがる、そのうちわしが教えられる立場になりそうじゃ。」
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:17:18.36:iuDXAJ+q0
黒「着いたぞ。ここがわしの住処だ。おおい!今戻ったぞ!」
娘「おかえりなさいませ。あら?」
黒「堅っ苦しいのう。もう少し気を抜かんかえ。まあいい、客じゃ。」
赤「わしじゃ、遊びにきたぞ!それと・・・」
男「よかった。無事だったんだな。」
娘「兄さん?」
177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:22:08.42:iuDXAJ+q0
黒「変わりはないか?」
娘「はい。」
赤「月の物が来たそうじゃな。見せてみい。」
男「え?」
赤「良いではないか!良いではないか!」
娘「やめて!やめてください!」
赤「ならば交換条件だ。わしのも見せるから見せあいこじゃ・・・っと、お前は見えんのだの。」
黒「やめんか。積もる話もあろうし、まずは話をさせてやらんか。」
赤「おお、そうじゃの。」
180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:25:28.58:iuDXAJ+q0
男「怖かったか?もう大丈夫だからな。」
娘「初めは色々と驚きましたが、今は平気です。それよりこんなことになってしまって・・・」
男「こんなこと?」
娘「いえ、その・・・人買いの人は食べられてしまって。でも私の代金は先に受け取っていますよね?」
男「あ、ああ・・・」
娘「祝言は無事に済みましたか?兄さんのためとは言え、こんなことでしか役に立てず・・・」
男「もう、いいんだ。」
娘「奥さんは優しい方ですか?おじさまやおばさまは元気にしていますか?」
男「・・・・・」
娘「兄さん?」
男「ああ、うん・・・みんな変わりないよ。みんなお前に感謝している。」
赤「なんと!」
182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:30:30.48:iuDXAJ+q0
黒「おまえはちとわしとこっちに来い。」
赤「なんでじゃ?」
黒「ええから来るんじゃ。」
娘「遠かったでしょう。疲れてはいませんか?」
男「確かに疲れはあるが、お前に会うためだ。なんのことはない。」
娘「いけません、新しく一家の主になったのですから、自分の家を大事にしてください。」
男「そ、そうだったな。すまん。」
娘「でも、嬉しいです。本当に・・・」
黒「おーい、ちとこっち来て荷物を運ぶのを手伝ってくれいや。」
男「あ、はい。」
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:36:16.09:iuDXAJ+q0
男「なにを運べば・・・?」
黒「お前の力なぞアテにしてはおらん。ちと耳を貸せ。」
赤「なんで本当のことを言わんのじゃ?」
男「・・・言えるわけがない。あいつは売られても俺達の事を案じてくれていた。」
黒「そのようじゃの。」
男「俺は・・・俺は、それを全部壊して逃げて来たんだ。」
黒「わしらは嘘が下手じゃ。お前のことは『良く知らん』で通すから、自分で話を会わせるのだ。それで良いな?」
男「そうしてくれると、助かる・・・」
黒「お前もじゃぞ。」
赤「わしもか!」
189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:42:19.78:iuDXAJ+q0
男「塩を持ってきたぞ。岩塩というらしい。すり潰して使うと良い。」
娘「兄さんは、どこで皆さんと知り合いになられたのですか?」
赤「良く知らん!」
男「薪を採りに山に入った時に・・・」
黒「会ったのがわしの兄弟で良かったの。他の者なら今頃食われとるぞ。」
赤「叔父貴でもか?」
黒「そうじゃろうの。まあ、これからはわしも人食いはやめることにするがの。」
娘「もうあの音は聞きたくないです・・・」
191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:48:35.38:iuDXAJ+q0
娘「また・・・以前のように笛を吹いてはくれませんか?」
男「ああ、構わないよ。」
赤「おお!お前も笛好きか!わしもだ!」
「♪-・・・♪-♪-・・・」
娘「♪~・・・♪~♪~・・・」
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」
194:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 22:54:22.00:iuDXAJ+q0
黒「Zzz・・・」
赤「ん?髪を梳いておるのかや?おお!そうじゃ。見よ!わしも作ったぞ!」
娘「・・・・はい?」
赤「・・・つまらん。お前はつまらんぞ。なして見えんのじゃ?」
娘「そう言われましても・・・」
赤「ホレ、おっ父にならってわしも櫛を作ったのじゃ。まあ、上手く使えんのだがの。」
娘「少しお借りします。それからもう少しこちらに・・・」
赤「おお!梳いてくれるのかや?」
娘「引っかかったり、痛かったら言ってください。」
198:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:03:17.14:iuDXAJ+q0
娘「奇麗な髪・・・なのでしょうね。指通りがいいのでわかります。」
赤「わしの髪はおっ母に似たのだそうじゃ。おっ父も叔父貴もモジャモジャだしの。」
娘「はい、おしまいです。」
赤「次はわしがやる!お前の髪を梳いてみたいぞ!」
娘「力任せにしてはダメですよ?」
200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:08:18.53:iuDXAJ+q0
黒「朝ぞ。起きれ。」
赤「ふわ!?」
男「・・・・む。」
黒「どうする?今日も一晩泊っていくか?わしは構わんが。」
男「・・・・いや、帰ろう。」
赤「つまらんのう・・・じゃあわしも帰るしかあるまい。」
黒「そうか。まあ飯くらいは食っていけ。」
202:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:12:37.95:iuDXAJ+q0
娘「どうぞ、有り物ですが。あ、兄さんはこちらを。」
男「ん?」
赤「なんじゃ?贔屓か?ずるいぞな。」
娘「いえ、こっちは塩が入れてあります。」
赤「あれか。ならわしは大丈夫じゃ。少し分けい。」
黒「意地汚い事を言うでない。あ!こら!」
赤「おお!これはこれでなかなか!」
205:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:18:52.54:iuDXAJ+q0
赤「のう、叔父貴。わしの目を一つ、こいつにくれてやることはできんかの?」
黒「お前の頭には一体何が入っておるのかのう・・・」
赤「わしはおかしなことを言うたのか?」
黒「馬鹿にしておるのではないぞ。わしにはそんなこと思い付かんかったでな。」
赤「目は二つついとるが、ホレ!片方だけでも物は見えるぞ。」
黒「まあ、無理じゃ。」
赤「そうか。」
211:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:25:02.63:iuDXAJ+q0
黒「どれ、送って行ってやるかの。」
男「その・・・送らなくてもいいから、妹の傍にいてやってもらえないだろうか・・・」
黒「それは構わんが。道はわかるのか?」
男「・・・たぶん。」
赤「道ならわしが覚えとるぞ。」
黒「ほうか、んなら気をつけての。」
212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:31:00.74:iuDXAJ+q0
黒「そうじゃ、帰る前にひとつ教えておいてやろう。」
男「?」
黒「わしらは比べごとをするのが好きじゃ。」
男「比べごと?」
黒「力比べ、駆け比べ、丈比べと色々じゃ。」
赤「おっ父と叔父貴は酒の飲み比べをやっておったの。」
黒「もし、他の者に会う事があったら、命乞いをするよりも勝負を挑んで勝つほうがいい。」
男「それに負けたら・・・?」
黒「まあ食われて終わりじゃな。しかし、勝負を受けた以上は勝者が絶対じゃ。相手が人間でもな。」
217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:35:53.30:iuDXAJ+q0
黒「行ってしもうたぞ。もう手を振っても見えとらんじゃろう。」
娘「兄さんは、私に何か隠し事をしていましたね?」
黒「ほう。わかるのか。知りたいか?」
娘「はい。・・・ですが、兄さんが言いたくなかったのであれば聞きません。」
黒「まだまだわしにはお前らの考えがわからんわ。」
218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:40:42.85:iuDXAJ+q0
赤「妹に会えてどうじゃ?嬉しかったか。」
男「ああ、うん。」
赤「それにしては浮かない顔をしておるの。」
男「お前の叔父貴は、妹を大事にしてくれるだろうか?」
赤「それはわからんの。食わんと言っておったし。役に立つ間は生かしておくのではないか?」
男「買われていくよりは、その方が幸せかもしれん・・・」
赤「しあわせ?なんじゃそれは。楽しいことか?」
男「幸せと言うのは・・・」
赤「どうした?教えられんか?」
男「嬉しい気持ちが続くことか?辛い事が少ないことか?・・・良く考えたら俺にもわからん。」
赤「なるほど!つまり、いいかげんなことだな!」
222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:49:25.23:iuDXAJ+q0
赤「うむ、困ったぞ。わしは叔父貴のように遠くまで投げられん。」
男「いや、あれはもう勘弁してほしい。」
赤「よし。飛び越えるぞ。わしにおぶされ。」
男「大丈夫なのか?」
赤「お前は見ておらんかったであろ。来るときは叔父貴もわしも飛び越えたのじゃ。」
男「じゃあ、頼む。」
赤「しっかりつかまっておれよ!」
223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:55:06.01:iuDXAJ+q0
赤「すまんの。お前の目方が増える事を考えておらなんだ。」
男「水が深くて助かったが・・・本当に死ぬかと思った。」
赤「おいマヌケ。火を炊け。濡れたものを乾かすぞ。」
男「お前もマヌケだ!このマヌケ!」
赤「なんと!」
225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 23:56:08.40:5SeFQQau0
赤「寒いぞ。もっと寄らんか。」
男「火にあたればいいだろう。俺だって寒いわ。」
赤「わからん奴じゃな。こうすればお互いに温かいであろ?」
男「いや・・・これはちょっと・・・」
赤「なんじゃ?わしが恐ろしいのか?噛みついたりせんからじっとしておれ。」
男「・・・意外と柔らかいんだな。」
赤「知らんのか?女は柔らかいものぞ!」
234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:02:51.74:fkVBNP2P0
男「だいたい乾いたぞ。さっさと着てしまおう。」
赤「んん?お、そうか。ぽかぽかして寝ておったわ。」
男「おかげで背中がヨダレまみれだ。」
赤「今からよじ登るのは億劫じゃの。今夜はここで寝るとしよう。」
男「大丈夫なのか?こんなところで。」
赤「わしがおればの!仲間も地の利もなしに、自分より強いものを襲う獣はおらん。」
242:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:11:38.45:rMQj8kBA0
赤「おっ父!今戻ったぞ。」
青「戻ったか。どうじゃった?」
赤「いろいろと楽しかったぞ。今度案内するぞ。」
男「じゃあ、俺はここで・・・」
青「妹には会えたんか?確かめて来たか?」
赤「こいつはおかしいのだ。妹に本当のことを言わん。」
青「なんぞ思うところがあったのじゃろ。行方が知れただけでも果報というもんじゃ。」
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:15:50.01:rMQj8kBA0
赤「おっ父は幸せというものがわかるかや?」
青「難しい言葉を覚えて来たな。あのマヌケが言うとったのか?」
赤「そうじゃ、じゃが自分でもよくわからんのだと。」
青「まやかしじゃ。人にもよる。時にもよる。色々と意味を変えて皆を惑わすものだの。」
赤「やはりいいかげんなものなのじゃの。」
青「だがの、存在せんわけではない・・・ま、お前にゃわかるまいて。」
250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:21:17.86:rMQj8kBA0
赤「おっ父!わしも血が出た!」――――
青「ほう。だが祝ってはやらんぞ。」――――
・・・・・・・・・・
赤「おっ父!マヌケのところへ行ってくるぞ!」――――
青「お前はあやつが気にいっとるようだの。」――――
・・・・・・・・・・
赤「・・・叔父貴が来とるぞ。はよ起きれ、だらしのない・・・」――――
青「嫌われたもんじゃの・・・」――――
・・・・・・・・・・
赤「うるさいわい。お父には関係の無い事じゃ。」――――
青「子が育つのは嬉しくも・・・痛し痒しというところだの・・・」――――
252:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:26:16.76:rMQj8kBA0
赤「お父、毛皮がきつい。新しいのを作ってくれ。」――――
青「この前仕立てたばかりじゃのに。もうか?」――――
・・・・・・・・・・
赤「お父、叔父貴のところへ行こう。」――――
青「お前もそろそろ一人前じゃ、一人で行っても構わんのだぞ?」――――
・・・・・・・・・・
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」――――
「♪-・・・♪-♪-・・・」――――
256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:30:34.13:rMQj8kBA0
男「ここのところ毎日来ているな。」
赤「お前と一緒におると楽しいからな。迷惑か?」
男「いいや。むしろ感謝しているくらいだ。」
赤「なんじゃ?いきなりあらたまって。」
男「ずっと一人でいたら、もしお前という話し相手がいなかったら、俺はとっくに気が狂っていたと思う。」
赤「そうか、ならばこれからも感謝するがいい。」
260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:35:47.65:rMQj8kBA0
青「この時分には珍しい長雨じゃの。こりゃあところどころ崩れるかもしれん。」
赤「叔父貴のところは大丈夫かの?」
青「兄者よりも心配な者が他におるじゃろう?」
赤「な、何を!?わしはただ・・・」
青「この雨じゃ、さすがに川には近付かんとは思うが、様子を見てこい。」
赤「お父がそういうなら仕方ないの。行ってくる。」
青「やれやれ・・・誰に似たのやらのぅ・・・」
264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:42:17.43:rMQj8kBA0
赤「洞におらんと思ったら・・・何をやっとるんじゃ!?こら!しっかりせい!」
男「ガハ!ゲホッ・・・ゲホッ!・・・」
赤「わしが見つけなんだら死んどったぞ!?こんな大水に水浴びでもしようと思ったんか?」
男「・・・足をとられて・・・ゲホッ!」
赤「もういい!肩を貸してやる、はよう中に入れ!」
男「フヒュー・・・フヒュー・・・」
赤「ちょっと破くぞ。濡れた服が絡んで脱がせられん。」
268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:47:01.70:rMQj8kBA0
赤「水はそんなに飲んでおらんな?全部吐き出したか?」
男「・・・・ああ、吐いた。」
赤「薪はあるが焚きつけが湿っとる。すぐには着かんな・・・」
男「うぅ・・・・はぁ、はぁ・・・」
赤「いかん、体が冷え切っとる・・・ええい、あれこれ考えとる場合か!」
274:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:54:28.97:rMQj8kBA0
男「あれ・・・助かったのか・・・?」
赤「む、起きたか。良かった良かった。」
男「顔がちか・・・お前!何を!?」
赤「こら!見るでない。目はずっと閉じておけ!」
男「すまん!」
赤「息苦しくはないか?重ければ少し身をずらすぞ。」
男「大丈夫だ・・・その・・・すまん。」
赤「まず礼を先に言わんか・・・まだ震えておるの。しばらくはこのままにしておれ。」
276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:00:37.48:rMQj8kBA0
赤「なぜ濁流にもまれておった?」
男「笛を落としてしまって、拾おうとしたら足をとられて落ちてしまった。」
赤「マヌケが!笛どころか命まで落とすところだったのだぞ?」
男「吹いてやれなくなると、お前が悲しむと思った。本当にすまなかった。」
赤「わしのせいで死にかけたと?ふ、ふざけるでないわ・・・」
男「軽率だった・・・・・む?」
赤「泣いてなぞおらんからな!ゴミが入っただけじゃ!」
280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:05:48.36:rMQj8kBA0
男「こんなザマで言う事じゃないかもしれんが、俺と一緒になってはくれないか?」
赤「一緒じゃと?」
男「所帯をもってはくれないか?」
赤「自分が何を言うておるのかわかっとるのか?」
男「やっぱり人間は人間と一緒になるべきと思うか?だが、俺はお前がいい。」
赤「他に人間がおらんから、わしで妥協するのではあるまいな?」
男「そう思うのか?」
赤「思っとらん。」
283:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:12:26.48:rMQj8kBA0
赤「雨が上がったら、一緒にお父の所へ行こう。」
男「許してくれるだろうか?」
赤「お父が恐ろしいか。」
男「親父殿は・・・怖いな。頼み事が事なだけに。」
赤「前に叔父貴が言うたことを覚えておるか?」
男「比べごとか・・・」
285:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:19:55.45:rMQj8kBA0
赤「お父、戻ったぞ。」
青「遅かったの。」
赤「死にかけておったから介抱しておった。」
男「この度は迷惑を・・・」
青「よせよせ、こいつが勝手にやったことじゃろうて。して、その神妙な顔は何事かの?」
男「俺はこいつと夫婦になりたいと思う。そこで親父殿に許しを頂きたい。」
青「わしが許すと思うてか?」
男「許しをもらえないのなら、親父殿に勝負を申し込む。」
青「比べごとを挑まれたとあっては受けぬわけにはいかんな。」
289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:23:12.07:rMQj8kBA0
青「して、何を競うのじゃ?」
男「え?何をって?」
青「力比べに丈比べ、何でも良いぞ。知恵比べ以外なら何でもな。」
男「俺が決めてもいいのか?」
青「挑んできたのはお前であろう?もっとも、腕力や脚力では勝負になるまいがな。」
男「しばらく考えさせてはもらえないか?」
青「わしが娘を掛けておることを忘れるなよ。取るに足らん勝負なら・・・殺すぞ。」
赤「お父・・・」
青「明日までじゃ。明日まで時間をやる。ふさわしい勝負を考えてこい。」
293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:26:53.91:rMQj8kBA0
赤「お父・・・わしはただ・・・」
青「お前は口をはさむでないぞ。わしとあの男の勝負じゃからの。」
赤「お父は勝ったらどうするつもりじゃ?」
青「山から出て行ってもらうとしようかの。」
赤「それはあんまりじゃ!」
青「じゃが、わしとてそのくらいの代償は乞わねば釣り合いが取れんわ。」
赤「あやつと離れるのは嫌なのじゃ。」
青「お前はあやつが負けるとしか思えんのか・・・」
296:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:31:28.76:rMQj8kBA0
青「何比べをするか決まったかの?」
男「我慢比べを・・・受けてもらえるだろうか。」
青「ほほう。力では敵わんとみて我慢比べと来たか。面白そうじゃの。」
男「これならば、覚悟の程も証明できると思う。」
青「では、それをどうやって競う?」
男「生爪を剥がしていき、先に根を上げた方が負け。ではどうか?」
青「面白い。受けて立つぞ。」
299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:33:38.96:hnM4KGDb0
青「だが、足を入れても20枚。どちらも耐え切ったとするならどうなる?」
男「引き分けにして、日を改めて別の勝負を挑みたい。」
青「良かろう。ただし、こいつの爪はお前が剥がすのだ。わしの代わりだ。よいな?」
赤「なんでわしが!?そ、そんなこと・・・」
青「わしの代わりと言うておる。わしがやれば指ごと引き抜いてしまうかもしらんぞ?」
赤「うう・・・引き受けた。」
青「そして、わしが勝ったら山から出て行ってもらう。以後、二度と山に入ってはならん。よいな?」
男「わかった。」
308:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:38:31.05:rMQj8kBA0
男「やってくれ。」
赤「いいんじゃな?剥がすぞ?・・・うーーーー・・・うぅ・・」
男「いあ!ぎっ!ふぅ・・・ふぅ・・・」
青「次はわしか・・・よう見とれよ。ぬぅ!・・・くっ!・・・どうじゃ。」
男「まだまだだ。さあ、次は人差し指を・・・」
赤「うむ・・・」
男「どうした?早くやってくれ。」
赤「いーーーーーっ・・・」
313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:41:24.55:rMQj8kBA0
赤「い、嫌じゃ。もう無理じゃ。」
青「出来んというなら根を上げたと見なすぞ?」
男「待ってくれ!さあ早く!俺なら平気だ。」
赤「嫌なものは嫌じゃ!お前を傷つけてまで続けとうないわ!」
男「頼む!お前のために耐えているんだ!」
赤「出来んものは出来ん!」
青「勝負あり。じゃな。」
315:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:44:22.12:rMQj8kBA0
男「くっ・・・・!」
赤「いいんじゃ。お前が山を出るならわしも付いていく。そう決めた。」
男「だが、それでは・・・」
青「なにを言うておる?お前はわしの代わりじゃぞ。」
赤「?」
青「お前が根を上げたのだから、この勝負はわしの負けぞ?」
赤「なんと!」
317:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:45:03.64:PjB3Ba+a0
赤「わしをたばかったのか!?」
青「何を言うか。お前こそ勝っても負けても損をせぬ算段をしておったではないか。」
赤「いや・・・あれは、咄嗟に思い付いただけで、お父と離れるのも嫌じゃぞ。」
青「ふん、それを聞けただけでも良しとするかの。」
赤「だが、こやつよりはお父と離れる方がマシじゃと思うただけじゃ。」
青「それは言わんほうが良かったの。」
332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:49:59.92:rMQj8kBA0
青「とにかく、お前の覚悟はしかと見届けたつもりじゃ。」
男「じゃあ、許してもらえるのか?」
青「改めてこいつの事を頼むぞ・・・あー・・・その・・・」
赤「どうしたんじゃ?クソでも漏れそうか?」
青「む・・婿ど・・の?」
赤「なんじゃ、照れておったのか。」
青「うるさいわ。とにかく、今日はめでたい日じゃ。宴の用意じゃ。」
340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:54:35.92:rMQj8kBA0
男「親父殿、正直なところ俺はまだまだ頼りなく見えると思う。」
青「まあ、そうだの。」
男「こいつに苦労もかけることもあると思う。」
青「仕方なかろうな。だが、度が過ぎるようならわしが殺す。」
赤「そんなことはわしがさせんがの。」
青「一気に立場が弱くなった気がするの・・・」
男「これからのことに全く不安が無いわけじゃないが、親父殿には・・・」
青「まどろっこしいのは好かんので言わせてもらうがの。お前らはたぶん大丈夫じゃ。」
342:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:56:51.81:rMQj8kBA0
青「根拠ならあるぞ。こいつの半分は人間じゃからの。」
赤「わしが?」
男「え?」
赤「どういう事じゃ?」
青「わしという前例があるのだ。今のお前らの関係はわしが既に通った道ぞ。」
赤「それはつまり・・・どういう事じゃ?」
青「お前の母親は人間だったという事じゃ。」
赤「なんと!」
345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:58:26.82:hnM4KGDb0
赤「お母が人間?」
男「知らなかったのか?」
青「まあ無理もなかろ。まだ小さかったころに病に臥して死んでしもうたからの。」
男「だから人を食べるのをやめた・・・と?」
青「それもあるがの。こいつに人間の味を覚えさせとうなかった。それが一番の理由ぞ。」
赤「なぜ教えてくれんかったのじゃ!?」
青「聞かれんかったからの。」
348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:01:04.53:rMQj8kBA0
青「動揺せん年頃になれば、聞かれずとも教えるつもりではおったがの。」
赤「わしのお母は人間か?などと、聞こうと思う機会なぞあるはずもなかろうが。」
青「だから今教えたではないか。」
赤「そうなのだが・・・納得いかん。」
青「とにかくめでたい席じゃ。飲め、それから食え。」
351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:02:34.47:rMQj8kBA0
娘「♪~・・・♪~♪~・・・」
黒「どうした?今夜は子守唄ではないな。」
娘「ええ、笛の音が聞こえたような気がして。」
黒「合わせて歌っておるのか?わしには聞こえんが。」
娘「いいえ、本当に聞こえるわけではないのです。」
黒「お前は時々おかしなことを言うの。」
娘「それより、名前はまだ決まりませんか?」
352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:03:16.05:Gi9FdDy70
赤「お父、明日は叔父貴のところに報告に行こうと思う。」
青「そうじゃの。それが良かろう。」
赤「義妹?いや叔母になるのか?とにかく先を越されっぱなしじゃからの。」
青「また妙なことを考えとるな。比べ好きはわしの血かの。」
赤「わしらは数で対抗しようと思うのじゃ。」
青「何の事を言うておる?」
赤「子供じゃよ。手始めに10人ほどこさえるか?」
男「なんと!」
――――――――――――――――――――おわり
363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:06:24.99:4kSClHV20
青「ならんならん。肉は臭いし食えたもんじゃないわ。」
赤「なら、おっ父にはやらん。わしが食う。」
青「第一育つのが遅いぞ。育てるまでに食わせる分を自分で食べたほうがマシじゃ。」
赤「なら、わしが餌をとってくる。」
青「頭がいいからすぐ逃げるぞ。」
赤「なら、足だけ今食う。それなら逃げられん。」
青「そんなことしたら育たん。今すぐ死ぬぞ。」
赤「それは困った。」
青「どっから拾って来たんじゃ?この辺には人間の集落なぞないじゃろう。」
赤「滝の前に落ちとったぞ。寝とったからつかまえるのは簡単じゃった。」
青「そりゃ落ちて気ぃ失ってただけじゃな。あちこち怪我しとる。」
赤「そうか。なら、こいつはマヌケじゃな。」
青「とりあえずヨモギでも巻いて戻してこい。ここで気が付いたら面倒じゃ。」
赤「なにが面倒なんじゃ?」
青「ここを覚えられたら、大勢で追い出しに来るにきまっとる。」
赤「なんと、それは嫌だの。」
赤「戻してきたぞ。」
青「娘っ子がなんちゅうカッコしとる?毛皮はどうした?」
赤「寒いかもしれんから、マヌケにかけておいた。」
青「余計なことを。次に鹿が獲れるまで藁を巻いとけ。」
赤「あれはチクチクするから嫌じゃ。」
青「明日獲りに行くから辛抱せい。お前が余計なことするからじゃ。」
赤「おっ父!昨日のマヌケがまた居たぞ。」
青「帰っとらんかったんか。犬は連れとらんかったか?」
赤「犬はおらん。おったらにおいで分かるはずじゃ。わしは犬が好かんからの。」
青「ほうか、ならいいが。帰っとらんという事は、わしらを探しておるのかの?」
赤「なんでじゃ?」
青「わしが知るわけなかろうが。」
青「お前は隠れとれ。わしは焚き火を消してくる。もう遅いかもしらんがな。」
男『出てこい!』
赤「遅かったようじゃの。」
青「やれやれ、また立ち退くことになるのかの。」
赤「わしのせいか?」
青「さあな。とにかくお前は出てくるでないぞ。」
青「一体なんの用じゃ?騒々しいぞ。」
男「あ!い、い・・・」
青「さっきの威勢はどうした?怯えておるのか?」
男「うるさい!妹を返せ!」
青「はあ?お前の妹なぞ知らんぞ?」
男「嘘をつくな!トヨを・・・く、食ったのか!?」
青「わしらは人間なぞ食わんわ。」
男「わしら?・・・な、仲間が居るのか?」
青「お前には関係の無い事だ。」
なにこの日本昔話感
龍に太鼓もった赤子が乗るレベル
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 16:41:05.78:iuDXAJ+q0龍に太鼓もった赤子が乗るレベル
青「それともお前を食ってやろうか?」
男「あ・・・ヒッ!」
赤「なんと!食ってもいいのか!?」
青「あ、こら!出てくるなと言うとろうが!」
男「トヨ?・・・いや、似ているが違う・・・」
青「それで?わしの娘がお前の妹に似ておっただと?」
男「ああ、5日前から姿が見えん、本当に食っていないのだな?」
赤「おっ父は人間はまずいから食わんのだと。」
男「不味いと知っているという事は・・・」
青「今は食わんが、食ったことはあるぞ。」
男「俺も・・・食うつもりか?」
青「食わぬというに。」
赤「わしは食ってみたいぞ。」
青「なんでこんな山奥まで来た?わしがさらったと思ったのか?」
男「他に誰がおる!?」
青「誰と言われてもな、人間の里に知り合いなどおらん。」
男「トヨ・・・」
青「わしらが住んでおる事は知っておったのか?」
男「確かめた者はおらんが、昔から猟師の間で噂はある。」
赤「そんな噂を信じて崖から落ちたのか。マヌケマヌケ。」
男「くっ・・・!だが、三日三晩さまよってこの毛皮を見つけた。これで確信した。」
青「ほれ見ろ。お前がしたことが仇になっとるぞ。」
赤「めんぼくない。」
青「とにかくそれは返せ。こいつのじゃ。」
赤「おー!チクチクはもういやじゃしの。」
男「そうはいかん!」
青「ぁん?」
男「あ・・・う・・・か、返す。」
男「本当に妹は知らんのか・・・?」
青「くどいぞ。」
赤「くどいくどい。」
男「他に仲間は居ないのか?」
青「この辺りにはおらんし。おったとしても教えんわ。」
男「なら妹は・・・どこへ行ったというのだ・・・」
青「どこぞの男とかけ落ちでもしたんじゃろ。」
男「妹は目が見えぬ。喘息もある。遠出なぞ無理だ。」
赤「かけ落ちとは何ぞ?」
青「家族の他の者は何か言うておらんのか?」
男「家族は死んだ。妹しかおらん。今は親戚の家に世話になってる。」
青「同じ事じゃ、一緒に住んどる者は何か見てなかったのか?」
男「うちは貧しい・・・妹以外は皆畑に出ていた。戻ってきたら消えておったと・・・」
男「邪魔をした。もう一度村の周りを探してみる。」
青「このまま帰れると思うてか?」
男「お、俺をどうするつもりだ・・・?」
赤「どうするつもりだ?」
青「さて・・・どうしたもんかの?」
赤「どうしたもんか?」
青「ここへは一人で来たのだな?」
男「そうだ。」
青「ならば、お前以外は誰も知らん。そうだな?」
男「そうだ。」
青「・・・ここであった事は誰にも言うな。お前も忘れろ。」
男「・・・出来ん。と言ったら?」
青「とって食う。」
男「・・・わかった。ひとつ教えてくれ。」
青「何度も言うが、お前の妹なぞ知らん。」
男「そうじゃない、俺が起きた時、傷の手当てがしてあった。お前たちなのか?」
赤「おお!わしだ!わしわし。」
青「それも知らん。見逃してやるからはよう去れ。」
赤「おっ父、叔父貴が来たぞ。」
青「なんじゃと?珍しい。」
黒「よぉ兄弟、息災かえ?」
青「兄者、良くここが分かったの。」
黒「竹細工でトラハジキ作れるんはお前くらいのもんじゃ。」
青「それでわしがこの山におると?」
黒「罠を見つけて、後は煮焚きのにおいをたどっての。」
赤「で、その人間はどうしたのじゃ?食うのか?」
娘「あの・・・」
黒「ソレの事は後で話す。だが、僅かに別の人間のにおいがするの?」
青「ああ、前に迷い込んだマヌケがおってな。それでじゃろ。」
黒「では、また食うようになったのか?」
赤「食ってはおらんぞ。」
黒「なんと、そのまま帰らせただと?面倒なことになるぞ。」
青「まあ、大丈夫じゃろう・・・で、ソレの事を聞いても良いか?」
黒「ああ、実はの、先日食った人間が連れておって・・・」
青「旅の衆を襲ったのか!?その方が面倒になるではないか。もし、噂が立ったりすれば・・・」
黒「なに、心配はいらんよ。そいつは人買いだったでの。」
青「なら心配するものもおらんな。」
赤「こいつを食わなかったのは何でじゃ?」
黒「わしももう歳かの、一人食ったら腹いっぱいでの。」
娘「・・・・・」
黒「それに、お前に似ておったからの。何だか食う気にならなんだ。」
青「言われてみれば似ておるかの。ハテ、目が開かぬようじゃが?」
黒「帰れと言っても見えねば道が分からぬだろうし、わしが人里近くまで送るわけにもいかん。」
黒「わしもそろそろどこかに腰を据えようと思っておったから、こいつに家事でもさせようかと。」
青「ま、目が見えねば枷もいらんであろ。しかし、やれやれ・・・情が移ったか。」
黒「お前にゃ言われとうないが、まあそういう事だの。」
赤「叔父貴もう旅がらすやめるのか?」
黒「そうじゃ。それで、ここらで住めそうな場所を聞こうと思っての。」
青「あいにくここらには無いの。前に住んどった処は猟師が出入りするようになったしの。」
赤「お前ずいぶん白いな。」
娘「え?」
青「向こうの山ならまだ誰も住んどらんハズだが。」
赤「これは何ぞ?」
娘「櫛・・・髪を梳かす道具です。」
黒「山越えになるか。わしはともかくアレには難儀じゃな。」
黒「いざとなったら抱えて渡るが、雲行きがよくないの。」
青「夕方からは天気も崩れてきそうだの。」
赤「これは鏡か?全然研がれておらんの。随分くもっとる。」
娘「私には・・・必要ないものですから。」
青「まあ、急ぐこともないのであろ?しばらくは泊まっていくがいい。」
黒「おう、そのつもりじゃ。なので酒を持ってきたぞ。」
青「知っておったさ。だから泊めるのじゃ。」
赤「叔父貴泊まるのか!?じゃあ、またおっ母の話を聞かしてくれ!」
娘「どうかしたのですか?」
赤「おっ父も叔父貴も酔っぱらって寝てしもうた。」
娘「・・・はい。」
赤「のう人間、ウタとはなんじゃ?」
娘「歌・・・ですか?いろいろありますが・・・」
赤「わしのおっ母はウタというのが上手かったらしい。さっき叔父貴が教えてくれた。」
娘「♪~・・・・」
赤「?」
娘「♪~・・♪♪~・・・」
赤「おお、おお、それがウタか!?」
赤「教えてくれぬか?いや、わしにも出来るか?」
娘「じゃあ、一緒に歌いましょう。」
赤「真似をすればいいのかや?」
娘「♪~・・・・」
赤「@¥×・・・」
娘「♪~・・♪♪~・・・」
赤「△?・・※$#・・・」
黒「やれやれ、2~3日のつもりが、長居してしもうたの。」
青「なに、構わぬよ。あやつの伽にもなっておったしの。」
赤「じゃあの!歌は毎日練習するぞ!そうじゃ、これをやろう。川で拾った翡翠じゃ。」
娘「あ、ありがとう。」
青「では気をつけての。」
黒「どうした?もう疲れたのか?」
娘「・・・すこし。」
黒「休める場所が見つかるまで抱えてやるか?」
娘「結構です。」
黒「なんじゃ?まだわしが恐ろしいか?」
娘「・・・いいえ。」
赤「おっ父!わしにも櫛を作ってくれ!」
青「なんじゃ色気づきおってからに。」
赤「あの人間は持っておったに、ダメか?」
青「作ってやらん。」
赤「ちえ、おっ父なぞ嫌いじゃ!」
青「教えてやるから自分で作れ。」
赤「おお!やっぱりおっ父は好きじゃ!」
赤「おっ父、マヌケがまた来たぞ。」
青「忘れろと言うたにの。」
赤「今度は食い物もなしで山に入ったようじゃ。」
青「何度も来られると困るんだがの。」
赤「なんでじゃ?」
青「短い間に何度も行き来すると道ができるじゃろ。あいつ以外も来るようになる。」
赤「そうか。人間に見つかったら引っ越しじゃもんの。」
男「たのもう・・・」
青「ここの事は忘れろと言ったはずだが?」
男「すまぬ。」
赤「今日は何しに来たんじゃ?」
男「今日は・・・頼みがあって来た。」
男「俺をここに住まわせてはくれないか?」
青「いきなり何を言うとる?」
男「村を捨てて来た。もうあそこには戻れん。」
青「そんなことわしらの知ったことではない。」
男「俺が戻ったら急に羽振りが良くなってた。おかしいと思って問い詰めたら・・・妹を人買いに出したと。」
赤「おっ父、もしかすると叔父貴の・・・」
青「お前はだまっとれ。いいな?」
男「家のもんはみんな殺してきた。そいで騒ぎを聞いて集まって来た奴らから逃げて来た。」
青「お前にどんな理由があろうがわしらに関係なかろう。」
男「じゃあ、せめてこの山に住むことを許してくれ。迷惑はかけない。」
青「それなら構わんが。絶対に山から出ないと約束できるか?」
男「なぜだ?」
青「できるのか、できんのか!?」
男「・・・約束する。」
青「麓近くに前住んどったほら穴がある。そこにでも住むがいい。」
赤「あそこは時たま猟師が来るぞ?」
青「こいつは人間じゃ。猟師に見つかっても騒ぎにはならん。」
赤「む。喋ってしもうた。黙らねばならぬに・・・」
青「わしの目は1里先だろうと見える。約束をたがえるなよ。」
男「肝に銘じる。」
青「それから、しばらくの間ここへは近付くな。お前の通った跡は目立ちすぎる。」
男「そうだったのか、すまない。」
赤「おっ父、叔父貴じゃ。」
黒「よう兄弟。住処が決まったのでな。知らせに来た。」
青「ほお、それは良かった。」
赤「今日は一人だの。」
黒「連れてこようかとも思ったがの、ちと困っておる。それの相談もしたくての。」
黒「股から血が出てな。具合が悪そうなのじゃ。死ぬのかの?」
赤「なんじゃと!?おっ父、なんとかしてやれんか?」
青「ああ、案ずることはない。それは月の物じゃて。本人は何と言うておる?」
赤「ツキ?」
黒「わからんと言うておった。こんなことは初めてじゃと。」
青「ほうか。それはな、子供が産めるようになった証じゃ。人間なら家族で祝いを催すが・・・」
赤「おっ父はもの知りじゃのう。」
青「じきにお前にも来るようになるぞ。祝ったりはせんがの。」
赤「なんと!」
黒「で、どうすれば治るのじゃ?」
青「放っておけば良いじゃろ。日が経てば自然と収まるものよ。」
黒「ならばしばらくは様子を見るかの。」
青「じゃが、これからは毎月それの繰り返しじゃ。本人にも教えておくと良いの。」
赤「おっ父もそうなのか?」
青「阿呆。なるのは女だけじゃ。」
赤「マヌケの事はいいのかの?」
青「おお、そうじゃそうじゃ。」
黒「前に来たという人間か?」
青「左様、兄者はあの娘を人買いからさらったのだの?」
黒「そうじゃの。さらったのか助け出したのか妙な具合だがの。」
青「そのマヌケはあの娘の兄で、妹を探して山に入ったらしくての。」
黒「わしはお前ほど頭がようない。すまんがわからんわ。」
青「言い方が悪かったの。そのマヌケは妹が見当たらなくなったから、わしがさらったと早とちりして山に来た。」
赤「そんでわしらが追い返したんじゃ。」
黒「ほうほう。」
青「本当は妹は人買いに売られたからいなくなったわけじゃ。」
黒「その妹というのがあの娘なのだな?」
青「マヌケが言うには、妹はこいつに似ておって、目が見えぬと。おそらく間違いあるまい。」
青「それからもう一つ。そのマヌケは今はこの山に住んでおる。」
黒「自分の山に人間を住まわせておるのか?お前のもの好きは底がないの。」
青「妹を売られたことに腹を立て、家のものを皆殺しにして逃げて来たんだと。」
黒「いやはやなんとものう。わしらより人間の方がよっぽどえげつないではないか。」
青「どうするかの?会わせてみるかえ?」
黒「会わせてやりたい・・・の間違いではないのかの?」
青「まあ、そうとも言うかの。よし、マヌケを呼んでこい。」
赤「おお!心得たぞ!」
赤「・・・というわけじゃ。おっ父と叔父貴が呼んでおるからついて来やれ。」
男「その話、本当なのか?」
赤「わからぬよ、お前が会ってみんことにはな。お前の妹の顔はお前しか知らんのじゃ。」
男「そうだな。わかったすぐに行こう。」
赤「まてまて、そっちはダメじゃ。また草が踏み倒される。こっちから登って行くぞ。」
男「こんなところ登れるはずがないだろう?」
赤「だらしないの。ならわしが抱えてやるわな。」
人間と鬼の大きさはどのくらいの比率なんだ?
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/18(日) 20:53:33.34:iuDXAJ+q0赤「すまんの・・・おっ父や叔父貴のようにはいかなんだ。もうちっとわしに丈があればの。」
男「俺を片手で持ちあげるだけでもすごいとは思うが・・・イテテ」
赤「だが釣り合いがとれん。両手で抱えたら登るのに使う手が無くなるしの。」
男「やっぱりあっちから行った方が・・・」
赤「そうじゃ!お前、わしにおぶされ。抱えられんなら背負えばいいんじゃ。」
男「こ・・・これでいいか?」
赤「ぬほほ・・・なにやらこそばゆいの。」
>>104青と黒は2mちょい、赤は150cmくらい。
つか、風呂入ってくる。
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」
男「その歌は・・・」
赤「おお!歌がわかるのか?なら、お前も習うと良いぞ。」
男「俺は歌は不得手なんだ。その代わりにこれを吹いている。」
赤「なんじゃそれは?竹ではないのか?」
男「これは笛というものだ。こうすると音が出る。」
「♪-・・・♪-♪-・・・」
赤「なんと!」
赤「ぐぎぎ・・・全く音が出ぬ。頭がくらくらしてきたぞ。」
男「一朝一夕では無理だろう。壊す前に返してくれ。」
赤「うぬぬ・・・返す。」
男「ん?こっちじゃないのか?」
赤「そっちは嫌じゃ。通りとうない。」
男「ああ、ヒイラギか・・・意外と言えば意外だな。こんなものが怖いとは。」
赤「怖くなぞないわ!嫌いなだけじゃ!ほれ、はよう来い。」
赤「おっ父!待たせた!連れて来たぞ。」
黒「ほう、こやつがそのマヌケか。」
赤「そうじゃ、そのマヌケじゃ!」
男「は、始め・・・まして・・・?」
青「言うまでも無いが、そいつはわしの山の者じゃ。勝手に食ってくれるなよ。」
黒「心得ておるよ。一応は客人としての扱いはする。だが、この山の外で会った時は・・・」
青「それは言ってある。山から出るな。とな。」
青「では行ってくるがいい。お前は場所を覚えてわしに教えろ。」
赤「おっ父は行かんのか?」
青「人間の足にあわせれば往復に何日かかかるじゃろ。その間ここを留守には出来ん。」
赤「うむー。いたしかたないの。」
黒「そうじゃ、この辺りで塩は採れんか?わしらには毒じゃが、人間の食事には必要らしいでの。」
青「尾根づたいに行けば魚の棲まぬ湖がある。そこらを掘れば岩塩が出るであろ。」
黒「ふむ。ちと寄り道になるが、近いもんじゃな。」
赤「どうやって運ぶのじゃ?」
黒「こやつが持てばよかろう。」
黒「のう、人間。家の者を殺してきたというのは本当か?」
男「・・・本当です。」
黒「わしが聞いた話では、お前が祝言を挙げるための元手が必要で身売りしたと。」
男「そんな馬鹿な。」
黒「重荷になっていた自分でも、兄に報いることができたのだと。」
赤「祝言とはなんじゃ?」
黒「夫婦になることじゃ。」
赤「メオト?おっ父とおっ母になる約束か!」
男「俺にそんな話が来ていたことなどない。そうか、あいつら・・・妹を騙して売ったんだ。」
黒「まあ、そんなところかのう。人違いという事もあるにはあるが・・・」
赤「ついたぞ。ここがおっ父が言っておった湖じゃ。」
黒「ホントに魚がおらんのじゃな。あちち!うかつに近寄らんほうがよさそうじゃの。」
赤「大げさじゃの。叔父貴もこれがだめなんか?わしは何ともないぞ。」
黒「うむー・・・そらお前、お前はまだ若いからじゃ。おい坊主、それを5貫ほど集めて持ってこい。」
男「坊主・・・?」
赤「叔父貴、こいつは坊主ではない。マヌケじゃ。」
男「・・・・・」
黒「さて、もう日も傾いてきたし。この谷を渡ったら暖をとるかの。」
赤「わしらはいいとしてものう・・・」
男「うー・・・」
黒「なに、疲れとるのを差し引いても人間が渡れるとは思っとらんわ。」
赤「ではどうするのだ?」
黒「わしが向こうまで投げ渡す。」
赤「なんと!」
黒「木の枝の中に投げ込むからの。下まで落ちる前に何かにしがみ付け。よいな?」
男「え?」
黒「よっ・・・と」
男「・・・・・え?」
黒「ヨイサー!」
男「えあ?おおおおおお!・・・ぉぉぉぉぉ・・・・!?」
黒「さて、寝る前に腹ごしらえじゃ。燻製じゃが人間の口にはあわんかもの。」
赤「おお、豪勢じゃの!これは鹿か?山羊か?」
黒「羊じゃ・・・二本脚のな。」
男「ブッ!」
赤「そんなもんがおるんか?」
黒「まあ嘘じゃ。安心せい、鹿の肉じゃ。」
赤「よし!笛じゃ!笛を吹くのじゃ!聴かせたもれ。」
黒「ほう、それは篠笛だの。心得があるのか?」
男「うん・・・まあ。」
黒「ならば存分にやれ。笛の音色はわしも好きだしの。」
「♪-・・・♪-♪-・・・」
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」
赤「Zzz・・・」
黒「寝てしまったか。のう、こいつは変わり者じゃ。そう思わんか?」
男「良く分からない・・・」
黒「まあそうか。人間はわしらのことなぞ良く知らんだろうしの。」
男「・・・・・」
黒「何にでも興味を持つし、何でも真似したがる、そのうちわしが教えられる立場になりそうじゃ。」
黒「着いたぞ。ここがわしの住処だ。おおい!今戻ったぞ!」
娘「おかえりなさいませ。あら?」
黒「堅っ苦しいのう。もう少し気を抜かんかえ。まあいい、客じゃ。」
赤「わしじゃ、遊びにきたぞ!それと・・・」
男「よかった。無事だったんだな。」
娘「兄さん?」
黒「変わりはないか?」
娘「はい。」
赤「月の物が来たそうじゃな。見せてみい。」
男「え?」
赤「良いではないか!良いではないか!」
娘「やめて!やめてください!」
赤「ならば交換条件だ。わしのも見せるから見せあいこじゃ・・・っと、お前は見えんのだの。」
黒「やめんか。積もる話もあろうし、まずは話をさせてやらんか。」
赤「おお、そうじゃの。」
男「怖かったか?もう大丈夫だからな。」
娘「初めは色々と驚きましたが、今は平気です。それよりこんなことになってしまって・・・」
男「こんなこと?」
娘「いえ、その・・・人買いの人は食べられてしまって。でも私の代金は先に受け取っていますよね?」
男「あ、ああ・・・」
娘「祝言は無事に済みましたか?兄さんのためとは言え、こんなことでしか役に立てず・・・」
男「もう、いいんだ。」
娘「奥さんは優しい方ですか?おじさまやおばさまは元気にしていますか?」
男「・・・・・」
娘「兄さん?」
男「ああ、うん・・・みんな変わりないよ。みんなお前に感謝している。」
赤「なんと!」
黒「おまえはちとわしとこっちに来い。」
赤「なんでじゃ?」
黒「ええから来るんじゃ。」
娘「遠かったでしょう。疲れてはいませんか?」
男「確かに疲れはあるが、お前に会うためだ。なんのことはない。」
娘「いけません、新しく一家の主になったのですから、自分の家を大事にしてください。」
男「そ、そうだったな。すまん。」
娘「でも、嬉しいです。本当に・・・」
黒「おーい、ちとこっち来て荷物を運ぶのを手伝ってくれいや。」
男「あ、はい。」
男「なにを運べば・・・?」
黒「お前の力なぞアテにしてはおらん。ちと耳を貸せ。」
赤「なんで本当のことを言わんのじゃ?」
男「・・・言えるわけがない。あいつは売られても俺達の事を案じてくれていた。」
黒「そのようじゃの。」
男「俺は・・・俺は、それを全部壊して逃げて来たんだ。」
黒「わしらは嘘が下手じゃ。お前のことは『良く知らん』で通すから、自分で話を会わせるのだ。それで良いな?」
男「そうしてくれると、助かる・・・」
黒「お前もじゃぞ。」
赤「わしもか!」
男「塩を持ってきたぞ。岩塩というらしい。すり潰して使うと良い。」
娘「兄さんは、どこで皆さんと知り合いになられたのですか?」
赤「良く知らん!」
男「薪を採りに山に入った時に・・・」
黒「会ったのがわしの兄弟で良かったの。他の者なら今頃食われとるぞ。」
赤「叔父貴でもか?」
黒「そうじゃろうの。まあ、これからはわしも人食いはやめることにするがの。」
娘「もうあの音は聞きたくないです・・・」
娘「また・・・以前のように笛を吹いてはくれませんか?」
男「ああ、構わないよ。」
赤「おお!お前も笛好きか!わしもだ!」
「♪-・・・♪-♪-・・・」
娘「♪~・・・♪~♪~・・・」
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」
黒「Zzz・・・」
赤「ん?髪を梳いておるのかや?おお!そうじゃ。見よ!わしも作ったぞ!」
娘「・・・・はい?」
赤「・・・つまらん。お前はつまらんぞ。なして見えんのじゃ?」
娘「そう言われましても・・・」
赤「ホレ、おっ父にならってわしも櫛を作ったのじゃ。まあ、上手く使えんのだがの。」
娘「少しお借りします。それからもう少しこちらに・・・」
赤「おお!梳いてくれるのかや?」
娘「引っかかったり、痛かったら言ってください。」
娘「奇麗な髪・・・なのでしょうね。指通りがいいのでわかります。」
赤「わしの髪はおっ母に似たのだそうじゃ。おっ父も叔父貴もモジャモジャだしの。」
娘「はい、おしまいです。」
赤「次はわしがやる!お前の髪を梳いてみたいぞ!」
娘「力任せにしてはダメですよ?」
黒「朝ぞ。起きれ。」
赤「ふわ!?」
男「・・・・む。」
黒「どうする?今日も一晩泊っていくか?わしは構わんが。」
男「・・・・いや、帰ろう。」
赤「つまらんのう・・・じゃあわしも帰るしかあるまい。」
黒「そうか。まあ飯くらいは食っていけ。」
娘「どうぞ、有り物ですが。あ、兄さんはこちらを。」
男「ん?」
赤「なんじゃ?贔屓か?ずるいぞな。」
娘「いえ、こっちは塩が入れてあります。」
赤「あれか。ならわしは大丈夫じゃ。少し分けい。」
黒「意地汚い事を言うでない。あ!こら!」
赤「おお!これはこれでなかなか!」
赤「のう、叔父貴。わしの目を一つ、こいつにくれてやることはできんかの?」
黒「お前の頭には一体何が入っておるのかのう・・・」
赤「わしはおかしなことを言うたのか?」
黒「馬鹿にしておるのではないぞ。わしにはそんなこと思い付かんかったでな。」
赤「目は二つついとるが、ホレ!片方だけでも物は見えるぞ。」
黒「まあ、無理じゃ。」
赤「そうか。」
黒「どれ、送って行ってやるかの。」
男「その・・・送らなくてもいいから、妹の傍にいてやってもらえないだろうか・・・」
黒「それは構わんが。道はわかるのか?」
男「・・・たぶん。」
赤「道ならわしが覚えとるぞ。」
黒「ほうか、んなら気をつけての。」
黒「そうじゃ、帰る前にひとつ教えておいてやろう。」
男「?」
黒「わしらは比べごとをするのが好きじゃ。」
男「比べごと?」
黒「力比べ、駆け比べ、丈比べと色々じゃ。」
赤「おっ父と叔父貴は酒の飲み比べをやっておったの。」
黒「もし、他の者に会う事があったら、命乞いをするよりも勝負を挑んで勝つほうがいい。」
男「それに負けたら・・・?」
黒「まあ食われて終わりじゃな。しかし、勝負を受けた以上は勝者が絶対じゃ。相手が人間でもな。」
黒「行ってしもうたぞ。もう手を振っても見えとらんじゃろう。」
娘「兄さんは、私に何か隠し事をしていましたね?」
黒「ほう。わかるのか。知りたいか?」
娘「はい。・・・ですが、兄さんが言いたくなかったのであれば聞きません。」
黒「まだまだわしにはお前らの考えがわからんわ。」
赤「妹に会えてどうじゃ?嬉しかったか。」
男「ああ、うん。」
赤「それにしては浮かない顔をしておるの。」
男「お前の叔父貴は、妹を大事にしてくれるだろうか?」
赤「それはわからんの。食わんと言っておったし。役に立つ間は生かしておくのではないか?」
男「買われていくよりは、その方が幸せかもしれん・・・」
赤「しあわせ?なんじゃそれは。楽しいことか?」
男「幸せと言うのは・・・」
赤「どうした?教えられんか?」
男「嬉しい気持ちが続くことか?辛い事が少ないことか?・・・良く考えたら俺にもわからん。」
赤「なるほど!つまり、いいかげんなことだな!」
赤「うむ、困ったぞ。わしは叔父貴のように遠くまで投げられん。」
男「いや、あれはもう勘弁してほしい。」
赤「よし。飛び越えるぞ。わしにおぶされ。」
男「大丈夫なのか?」
赤「お前は見ておらんかったであろ。来るときは叔父貴もわしも飛び越えたのじゃ。」
男「じゃあ、頼む。」
赤「しっかりつかまっておれよ!」
赤「すまんの。お前の目方が増える事を考えておらなんだ。」
男「水が深くて助かったが・・・本当に死ぬかと思った。」
赤「おいマヌケ。火を炊け。濡れたものを乾かすぞ。」
男「お前もマヌケだ!このマヌケ!」
赤「なんと!」
落ちたのか
233:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:00:05.36:rMQj8kBA0赤「寒いぞ。もっと寄らんか。」
男「火にあたればいいだろう。俺だって寒いわ。」
赤「わからん奴じゃな。こうすればお互いに温かいであろ?」
男「いや・・・これはちょっと・・・」
赤「なんじゃ?わしが恐ろしいのか?噛みついたりせんからじっとしておれ。」
男「・・・意外と柔らかいんだな。」
赤「知らんのか?女は柔らかいものぞ!」
おやっ?
237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:04:08.58:kLiTkeHc0
おやや
240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 00:05:28.68:rMQj8kBA0男「だいたい乾いたぞ。さっさと着てしまおう。」
赤「んん?お、そうか。ぽかぽかして寝ておったわ。」
男「おかげで背中がヨダレまみれだ。」
赤「今からよじ登るのは億劫じゃの。今夜はここで寝るとしよう。」
男「大丈夫なのか?こんなところで。」
赤「わしがおればの!仲間も地の利もなしに、自分より強いものを襲う獣はおらん。」
赤「おっ父!今戻ったぞ。」
青「戻ったか。どうじゃった?」
赤「いろいろと楽しかったぞ。今度案内するぞ。」
男「じゃあ、俺はここで・・・」
青「妹には会えたんか?確かめて来たか?」
赤「こいつはおかしいのだ。妹に本当のことを言わん。」
青「なんぞ思うところがあったのじゃろ。行方が知れただけでも果報というもんじゃ。」
赤「おっ父は幸せというものがわかるかや?」
青「難しい言葉を覚えて来たな。あのマヌケが言うとったのか?」
赤「そうじゃ、じゃが自分でもよくわからんのだと。」
青「まやかしじゃ。人にもよる。時にもよる。色々と意味を変えて皆を惑わすものだの。」
赤「やはりいいかげんなものなのじゃの。」
青「だがの、存在せんわけではない・・・ま、お前にゃわかるまいて。」
赤「おっ父!わしも血が出た!」――――
青「ほう。だが祝ってはやらんぞ。」――――
・・・・・・・・・・
赤「おっ父!マヌケのところへ行ってくるぞ!」――――
青「お前はあやつが気にいっとるようだの。」――――
・・・・・・・・・・
赤「・・・叔父貴が来とるぞ。はよ起きれ、だらしのない・・・」――――
青「嫌われたもんじゃの・・・」――――
・・・・・・・・・・
赤「うるさいわい。お父には関係の無い事じゃ。」――――
青「子が育つのは嬉しくも・・・痛し痒しというところだの・・・」――――
赤「お父、毛皮がきつい。新しいのを作ってくれ。」――――
青「この前仕立てたばかりじゃのに。もうか?」――――
・・・・・・・・・・
赤「お父、叔父貴のところへ行こう。」――――
青「お前もそろそろ一人前じゃ、一人で行っても構わんのだぞ?」――――
・・・・・・・・・・
赤「♪~・・・♪~♪~・・・」――――
「♪-・・・♪-♪-・・・」――――
男「ここのところ毎日来ているな。」
赤「お前と一緒におると楽しいからな。迷惑か?」
男「いいや。むしろ感謝しているくらいだ。」
赤「なんじゃ?いきなりあらたまって。」
男「ずっと一人でいたら、もしお前という話し相手がいなかったら、俺はとっくに気が狂っていたと思う。」
赤「そうか、ならばこれからも感謝するがいい。」
青「この時分には珍しい長雨じゃの。こりゃあところどころ崩れるかもしれん。」
赤「叔父貴のところは大丈夫かの?」
青「兄者よりも心配な者が他におるじゃろう?」
赤「な、何を!?わしはただ・・・」
青「この雨じゃ、さすがに川には近付かんとは思うが、様子を見てこい。」
赤「お父がそういうなら仕方ないの。行ってくる。」
青「やれやれ・・・誰に似たのやらのぅ・・・」
赤「洞におらんと思ったら・・・何をやっとるんじゃ!?こら!しっかりせい!」
男「ガハ!ゲホッ・・・ゲホッ!・・・」
赤「わしが見つけなんだら死んどったぞ!?こんな大水に水浴びでもしようと思ったんか?」
男「・・・足をとられて・・・ゲホッ!」
赤「もういい!肩を貸してやる、はよう中に入れ!」
男「フヒュー・・・フヒュー・・・」
赤「ちょっと破くぞ。濡れた服が絡んで脱がせられん。」
赤「水はそんなに飲んでおらんな?全部吐き出したか?」
男「・・・・ああ、吐いた。」
赤「薪はあるが焚きつけが湿っとる。すぐには着かんな・・・」
男「うぅ・・・・はぁ、はぁ・・・」
赤「いかん、体が冷え切っとる・・・ええい、あれこれ考えとる場合か!」
男「あれ・・・助かったのか・・・?」
赤「む、起きたか。良かった良かった。」
男「顔がちか・・・お前!何を!?」
赤「こら!見るでない。目はずっと閉じておけ!」
男「すまん!」
赤「息苦しくはないか?重ければ少し身をずらすぞ。」
男「大丈夫だ・・・その・・・すまん。」
赤「まず礼を先に言わんか・・・まだ震えておるの。しばらくはこのままにしておれ。」
赤「なぜ濁流にもまれておった?」
男「笛を落としてしまって、拾おうとしたら足をとられて落ちてしまった。」
赤「マヌケが!笛どころか命まで落とすところだったのだぞ?」
男「吹いてやれなくなると、お前が悲しむと思った。本当にすまなかった。」
赤「わしのせいで死にかけたと?ふ、ふざけるでないわ・・・」
男「軽率だった・・・・・む?」
赤「泣いてなぞおらんからな!ゴミが入っただけじゃ!」
男「こんなザマで言う事じゃないかもしれんが、俺と一緒になってはくれないか?」
赤「一緒じゃと?」
男「所帯をもってはくれないか?」
赤「自分が何を言うておるのかわかっとるのか?」
男「やっぱり人間は人間と一緒になるべきと思うか?だが、俺はお前がいい。」
赤「他に人間がおらんから、わしで妥協するのではあるまいな?」
男「そう思うのか?」
赤「思っとらん。」
赤「雨が上がったら、一緒にお父の所へ行こう。」
男「許してくれるだろうか?」
赤「お父が恐ろしいか。」
男「親父殿は・・・怖いな。頼み事が事なだけに。」
赤「前に叔父貴が言うたことを覚えておるか?」
男「比べごとか・・・」
赤「お父、戻ったぞ。」
青「遅かったの。」
赤「死にかけておったから介抱しておった。」
男「この度は迷惑を・・・」
青「よせよせ、こいつが勝手にやったことじゃろうて。して、その神妙な顔は何事かの?」
男「俺はこいつと夫婦になりたいと思う。そこで親父殿に許しを頂きたい。」
青「わしが許すと思うてか?」
男「許しをもらえないのなら、親父殿に勝負を申し込む。」
青「比べごとを挑まれたとあっては受けぬわけにはいかんな。」
青「して、何を競うのじゃ?」
男「え?何をって?」
青「力比べに丈比べ、何でも良いぞ。知恵比べ以外なら何でもな。」
男「俺が決めてもいいのか?」
青「挑んできたのはお前であろう?もっとも、腕力や脚力では勝負になるまいがな。」
男「しばらく考えさせてはもらえないか?」
青「わしが娘を掛けておることを忘れるなよ。取るに足らん勝負なら・・・殺すぞ。」
赤「お父・・・」
青「明日までじゃ。明日まで時間をやる。ふさわしい勝負を考えてこい。」
赤「お父・・・わしはただ・・・」
青「お前は口をはさむでないぞ。わしとあの男の勝負じゃからの。」
赤「お父は勝ったらどうするつもりじゃ?」
青「山から出て行ってもらうとしようかの。」
赤「それはあんまりじゃ!」
青「じゃが、わしとてそのくらいの代償は乞わねば釣り合いが取れんわ。」
赤「あやつと離れるのは嫌なのじゃ。」
青「お前はあやつが負けるとしか思えんのか・・・」
青「何比べをするか決まったかの?」
男「我慢比べを・・・受けてもらえるだろうか。」
青「ほほう。力では敵わんとみて我慢比べと来たか。面白そうじゃの。」
男「これならば、覚悟の程も証明できると思う。」
青「では、それをどうやって競う?」
男「生爪を剥がしていき、先に根を上げた方が負け。ではどうか?」
青「面白い。受けて立つぞ。」
痛いw
300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:33:47.92:fkVBNP2P0
イタタタタタ
302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:34:34.70:rMQj8kBA0青「だが、足を入れても20枚。どちらも耐え切ったとするならどうなる?」
男「引き分けにして、日を改めて別の勝負を挑みたい。」
青「良かろう。ただし、こいつの爪はお前が剥がすのだ。わしの代わりだ。よいな?」
赤「なんでわしが!?そ、そんなこと・・・」
青「わしの代わりと言うておる。わしがやれば指ごと引き抜いてしまうかもしらんぞ?」
赤「うう・・・引き受けた。」
青「そして、わしが勝ったら山から出て行ってもらう。以後、二度と山に入ってはならん。よいな?」
男「わかった。」
男「やってくれ。」
赤「いいんじゃな?剥がすぞ?・・・うーーーー・・・うぅ・・」
男「いあ!ぎっ!ふぅ・・・ふぅ・・・」
青「次はわしか・・・よう見とれよ。ぬぅ!・・・くっ!・・・どうじゃ。」
男「まだまだだ。さあ、次は人差し指を・・・」
赤「うむ・・・」
男「どうした?早くやってくれ。」
赤「いーーーーーっ・・・」
赤「い、嫌じゃ。もう無理じゃ。」
青「出来んというなら根を上げたと見なすぞ?」
男「待ってくれ!さあ早く!俺なら平気だ。」
赤「嫌なものは嫌じゃ!お前を傷つけてまで続けとうないわ!」
男「頼む!お前のために耐えているんだ!」
赤「出来んものは出来ん!」
青「勝負あり。じゃな。」
男「くっ・・・・!」
赤「いいんじゃ。お前が山を出るならわしも付いていく。そう決めた。」
男「だが、それでは・・・」
青「なにを言うておる?お前はわしの代わりじゃぞ。」
赤「?」
青「お前が根を上げたのだから、この勝負はわしの負けぞ?」
赤「なんと!」
なんと!
322: 忍法帖【Lv=21,xxxPT】 :2011/09/19(月) 01:46:07.67:L7tDBvb70
オヤジ………
324:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:47:10.52:rMQj8kBA0赤「わしをたばかったのか!?」
青「何を言うか。お前こそ勝っても負けても損をせぬ算段をしておったではないか。」
赤「いや・・・あれは、咄嗟に思い付いただけで、お父と離れるのも嫌じゃぞ。」
青「ふん、それを聞けただけでも良しとするかの。」
赤「だが、こやつよりはお父と離れる方がマシじゃと思うただけじゃ。」
青「それは言わんほうが良かったの。」
青「とにかく、お前の覚悟はしかと見届けたつもりじゃ。」
男「じゃあ、許してもらえるのか?」
青「改めてこいつの事を頼むぞ・・・あー・・・その・・・」
赤「どうしたんじゃ?クソでも漏れそうか?」
青「む・・婿ど・・の?」
赤「なんじゃ、照れておったのか。」
青「うるさいわ。とにかく、今日はめでたい日じゃ。宴の用意じゃ。」
男「親父殿、正直なところ俺はまだまだ頼りなく見えると思う。」
青「まあ、そうだの。」
男「こいつに苦労もかけることもあると思う。」
青「仕方なかろうな。だが、度が過ぎるようならわしが殺す。」
赤「そんなことはわしがさせんがの。」
青「一気に立場が弱くなった気がするの・・・」
男「これからのことに全く不安が無いわけじゃないが、親父殿には・・・」
青「まどろっこしいのは好かんので言わせてもらうがの。お前らはたぶん大丈夫じゃ。」
青「根拠ならあるぞ。こいつの半分は人間じゃからの。」
赤「わしが?」
男「え?」
赤「どういう事じゃ?」
青「わしという前例があるのだ。今のお前らの関係はわしが既に通った道ぞ。」
赤「それはつまり・・・どういう事じゃ?」
青「お前の母親は人間だったという事じゃ。」
赤「なんと!」
なんと!
346:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 01:59:04.79:rMQj8kBA0赤「お母が人間?」
男「知らなかったのか?」
青「まあ無理もなかろ。まだ小さかったころに病に臥して死んでしもうたからの。」
男「だから人を食べるのをやめた・・・と?」
青「それもあるがの。こいつに人間の味を覚えさせとうなかった。それが一番の理由ぞ。」
赤「なぜ教えてくれんかったのじゃ!?」
青「聞かれんかったからの。」
青「動揺せん年頃になれば、聞かれずとも教えるつもりではおったがの。」
赤「わしのお母は人間か?などと、聞こうと思う機会なぞあるはずもなかろうが。」
青「だから今教えたではないか。」
赤「そうなのだが・・・納得いかん。」
青「とにかくめでたい席じゃ。飲め、それから食え。」
娘「♪~・・・♪~♪~・・・」
黒「どうした?今夜は子守唄ではないな。」
娘「ええ、笛の音が聞こえたような気がして。」
黒「合わせて歌っておるのか?わしには聞こえんが。」
娘「いいえ、本当に聞こえるわけではないのです。」
黒「お前は時々おかしなことを言うの。」
娘「それより、名前はまだ決まりませんか?」
え?まさか
356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:04:11.65:dOe00FE20
みんな幸せ!
361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:04:53.70:rMQj8kBA0赤「お父、明日は叔父貴のところに報告に行こうと思う。」
青「そうじゃの。それが良かろう。」
赤「義妹?いや叔母になるのか?とにかく先を越されっぱなしじゃからの。」
青「また妙なことを考えとるな。比べ好きはわしの血かの。」
赤「わしらは数で対抗しようと思うのじゃ。」
青「何の事を言うておる?」
赤「子供じゃよ。手始めに10人ほどこさえるか?」
男「なんと!」
――――――――――――――――――――おわり
なんと!
おつ!
364:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/19(月) 02:06:49.55:AFHVBuhe0おつ!
乙でした おもしろかったよ

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