1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:18:22.88:bUNM0KS30

王城

王「では勇者よ、いくがよい!!」

勇者「はい!必ず魔王を倒します!!」

兵士「(あんな小さな子供に魔王の討伐をさせるのか……)」

兵士「(世も末だな……勇者の父を持つというだけで……)」

兵士「(あんな少年じゃあ旅半ばで死ぬだろうな)」

兵士「(100Gとこんぼうと旅人の服だけだもんな、支給品)」

兵士「(可哀想に……女の子ともろくにお付き合いしてないんだろうなぁ……)」

勇者「おっしゃー!がんばるぞー!!」

勇者「えい!えい!おー!!」

 
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:21:04.56:bUNM0KS30

街の外

勇者「よし、まずは北にある街を目指そう」

勇者(母上、父上!俺は必ずこの世界に平和を―――)

スライム「ぎゃっぴー!!」

バブルスライム「びゅー!!!」

キングスライム「ぶるぶるー!!!」

メタルスライム「しゃ!しゃ!!」

勇者「な!?」

勇者「なんて数……」

勇者「――――くそ」

 
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:24:57.60:bUNM0KS30

数日後 王城

兵士「さあ、こっちへ」

王「……傷は癒えたのか?」

勇者「……はい」

王「勇者よ、情けないぞ!!」

勇者「申し訳……ありません」

王「全世界の希望であることを忘れるでない!!」

勇者「はっ」

兵士(よく言うぜ……)

兵士(なら仲間の一人や二人ぐらい用意してやれよ)

王「二度目はないぞ、勇者。さあ、行け!!」

勇者「はっ!!」

勇者(そうだ……もう負けるわけにはいかない……)

 
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:29:28.64:bUNM0KS30

城下町

勇者(この街周辺の魔物がここまで凶暴だったとは誤算だった……)

勇者(こんな装備では心もとないな……しかし、所持金が少ない)

勇者(どうしたら……)

兵士「勇者殿」

勇者「あ、これは」

兵士「ルイーダの酒場に行ってみてはどうですか?」

勇者「ルイーダの酒場?」

兵士「はい。そこには屈強な者たちがよく出入りしていると聞きます。そこで力を貸してもらえるように交渉してみては?」

勇者「なるほど……わかりました!ありがとうございます!!」

兵士「どうか……死なないでください」

勇者「はっ!」

兵士(……代われるなら代わってあげたい……)

 
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:33:04.09:bUNM0KS30

ルイーダの酒場

勇者「ここが……」

ヒソヒソ……

勇者「あの、すいません」

店員「なんだい、ぼうや?」

勇者「俺と一緒に魔王を倒してくれそうな人はここにいますか?」

店員「魔王……?」

勇者「はい」

店員「いないね」

勇者「え……?」

店員「ここに集まるのはそこらへんの魔物を倒して日銭を稼いでいるような連中ばっかりだ。そんな志を持つ奴はいない」

勇者「しかし……!!」

男A「坊主、いい加減にしとけよ」

勇者「む……?」

男B「へっへっへ。俺たちを雇うって言うならそれなりの金を用意しろ、へっへっへ」

 
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:38:13.57:bUNM0KS30

勇者「100Gで足りますか?」

男A「は?」

男B「ぶぁっはっはっはっはっは!!!!」

勇者「なにか?」

男A「そんなはした金で俺たちを雇えるかよ!!出直してこい!!!」

勇者「……今はこれだけですが、魔王討伐の暁には王直々に褒美が―――」

男B「うっせえ!!そんな与太話を誰が信じるかよ!!」

勇者「嘘ではありません!!」

男A「坊主……大人をからかうのもいい加減にしとけ?」

勇者「ぐっ……!?」

男A「こうやって首を絞められてもなんの抵抗もできないお前が魔王なんて討伐できるかよ」

勇者「し、かし……ど、んな、理由があ、っても……人を、傷つける、なと……」

男A「大金持って出直してこい、ガキが!!」

勇者「ぐぁ!?」

男B「へっ。一日100万Gで俺たちを雇えるから頑張れよ」

 
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:42:42.97:bUNM0KS30

城下町

勇者「……ルイーダの酒場はダメだった」

勇者「仕方ない……周辺の魔物を狩って日銭を稼ぐしか……」

勇者「一日100万Gか……大金だな」


街の外

勇者「……」

スライム「きゅぴー」

勇者「よし!」

スライム「きゅぴ!?」

勇者「悪いが死んでもらうぞ!!」

スライム「きゅぴーーー!!!!!」

勇者「……」

スライム「……(プルプル」

勇者「―――何をやっているんだ……魔物とはいえ無抵抗の者を傷つけてはいけないと父上が言っていたじゃないか……すまない……」

スライム「……?」

 
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:47:19.10:bUNM0KS30

夜 城下町

勇者「……まだ旅立てないな」

勇者(今日の宿はどうすれば……)

兵士「勇者殿?」

勇者「あ……」

兵士「待ってください」

勇者「申し訳ありません。恥知らずなのは十分承知しています……」

兵士「宿は?」

勇者「実家にも戻りにくく、路銀も乏しいので今晩は野宿に……」

兵士「勇者殿……申し訳ありません」

勇者「え?」

兵士「王がもう少しだけ良心があれば……勇者殿を苦しめないで済んだのですが……」

勇者「いえ。王も大変なのは知っています。これだけの施しを与えてくださっただけでも感謝しています」

兵士「勇者殿……くっ……あの!教会に行ってみてはどうですか?こちらからも話を通しておきますので」

勇者「教会、ですか?」

 
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:51:29.08:bUNM0KS30

教会

勇者「夜分に恐れ入ります」

神父「おお……これはこれは」

勇者「あの……」

神父「どうぞ。お話は聞いております。今晩だけでもゆっくりしていってください」

勇者「申し訳ありません。ここはそのような場所ではないのに……」

神父「頭をあげてください。貴方は世界の希望なのです。協力を惜しむつもりはありません」

勇者「はっ……その言葉を裏切らぬよう、精進いたします」

神父「では、寝室へ案内させます。―――おい」

僧侶「はい」

神父「お連れしてあげなさい」

勇者「初めまして」

僧侶「こんばんは。どうぞ、こちらです」

勇者「はい」

 
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 09:55:37.70:bUNM0KS30

寝室

勇者(まさかこんなにいい部屋を用意してくれるなんて……)

勇者(情けない)

僧侶「――勇者様、失礼いたします」

勇者「あ……どうも」

僧侶「どうぞ。空腹だと思ってパンとシチューをご用意いたしました」

勇者「そんな!!ここまでしていただく必要は!!」

僧侶「いいのです……勇者様、これは気持ちなので」

勇者「しかし……俺は……まだなにも……」

僧侶「勇者様……」

勇者「すいません……」

僧侶「遠慮せずにお召し上がりください」

勇者「はい……真に申し訳ありません……」

僧侶「そんなに頭を下げないでください……困ってしまいます」

勇者「……頂きます」

 
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:00:57.93:bUNM0KS30

神父「――どうでしたか?」

僧侶「やはりまだまだ幼い少年……といったところでしょうか」

神父「……」

僧侶「勇者であることに相当な重圧を感じているのが分かりました」

神父「王も民も先代勇者の一人息子というだけで彼に絶大な期待をしていますからね……」

僧侶「ええ……彼は天才だ。あの年齢でも魔王を倒す力があると、私も思っていました」

神父「実際はどうです?」

僧侶「ただの子どもです。仲間もなしに魔王を討伐することなど到底不可能でしょう」

神父「私も同じです……」

僧侶「神父様……あの……」

神父「わかっております……準備は万全にしておきなさい」

僧侶「……今までありがとうございました」

神父「孤児の貴女がここまで成長してくれたことに、私は誇らしく思います」

僧侶「……神父様に出逢えたことが、私の誇りです」

神父「ありがとう……いってらっしゃい」

 
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:05:46.76:bUNM0KS30

早朝 城下町

勇者(何も言わずに出ていくことをお許しください)

勇者(せめてもの謝礼として100Gを置いて行きます)

勇者(パンとシチュー……大変美味でした。もうどうお礼をしたらいいのかもわかりません)

勇者(さようなら……神父様、僧侶さん……)

勇者「―――よし、行こう。魔物に注意していけば、北の街ぐらいには」

僧侶「勇者様」

勇者「え……?」

僧侶「お忘れ物を届けに参りました」

勇者「これは……このお金は……!!」

僧侶「気持ちだと言ったはずです」

勇者「ですが……何もせずに……」

僧侶「あともう一つ忘れ物です」

勇者「え?」

僧侶「―――私は僧侶。傷の治療はお任せください。さあ、出発いたしましょう」

 
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:12:37.67:bUNM0KS30

街の外

勇者「いいのですか、本当に?」

僧侶「構いません。神父様にも許可を頂きました」

勇者「……」

僧侶「それとも私では勇者様のお力にはなれないと?」

勇者「い、いえ……そんなことは!!」

僧侶「そうですか。それは良かったです」

勇者「……これから、よろしくお願いします」

僧侶「はい。傷ついたらすぐに言ってくださいね?」

勇者「助かります」

僧侶「では―――」

バブルスライム「ぎゅぴーー!!!!」

勇者「魔物!?」

僧侶「気を付けてくださいね!」

勇者「はい!!」

 
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:14:44.80:bUNM0KS30

勇者「はぁ!!」

バブルスライム「ぎゃぴーーー!!」

僧侶「てい!」

バブルスライム「きゅぷ?!」

勇者「ふう……」

僧侶「やりましたね」

勇者「ええ」

スライム「ぷるぷるーー!!」

勇者「む!?」

僧侶「まだいましたか……ここはニフラ―――」

勇者「待ってください!!」

僧侶「え?」

勇者「襲ってくる気はないようです。行きましょう」

僧侶「……はい。分かりました」

スライム「……?」

 
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:19:04.90:bUNM0KS30

北の街

勇者「ふう……なんとか日が高いうちに着けましたね」

僧侶「はい」

町民「はぁ……今月でもう3人目か……」

町民「俺の城下のほうへ引っ越そうって思ってるよ」

町民「だよなぁ……王が屑だけど……ここよりははるかに……」

勇者「あの……何かあったのですか?」

町民「ん?旅の人か?」

僧侶「はい。今、来たばかりです」

町民「悪いことは言わない。すぐに出ていきなさい」

勇者「どうしてですか?」

町民「この街には今、殺人鬼がいるんだ」

僧侶「殺人鬼……」

町民「もう何人も殺されてるんだ……ホントに恐ろしいよ」

勇者「殺人鬼……」

 
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:22:02.70:bUNM0KS30

宿屋

店主「と、とまるんですか?」

勇者「ええ……野宿のほうが怖いですから」

店主「わ、わかりました……一泊10Gです」

僧侶「では、これで」

店主「部屋は二階になります」


二階

僧侶「ふう……疲れましたね」

勇者「あの……」

僧侶「なにか?」

勇者「別の部屋をとったほうが……」

僧侶「路銀がありません。同室で寝ましょう」

勇者「しかし……」

僧侶「それに殺人鬼から私の身を勇者様に守って頂かないと」

勇者「……わ、わかりました」

 
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:24:56.75:bUNM0KS30



僧侶「……」

勇者「―――僧侶さん、お風呂空きました」

僧侶「あ、はい」

勇者「何かありましたか?」

僧侶「この街は夜になると随分静かになりますね……少し怖いぐらいです」

勇者「殺人鬼がいるから警戒するのも仕方ないのでは?」

僧侶「まあ、そうですね」

勇者「お風呂、どうぞ」

僧侶「はい。すいません。入らせていただきます」

勇者「……」

勇者(確かに静かだ……)

勇者(このままでは普通の生活が送れないだろう……)

勇者(よし……)

 
44以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:27:51.25:bUNM0KS30

公園

勇者「……灯りが一つもないなんて……人がいなくなったみたいだ」

勇者「殺人鬼か……一体、どんな奴……」

「……うぅ……」

勇者「!?」

勇者「誰かいるんですか!?」

「た……すけ……」

勇者「……貴方は!?」


宿屋

僧侶「勇者様がいない……全く……」

勇者「―――僧侶さん!!」

僧侶「もう!心配するじゃないですか!!―――あ」

勇者「この人の傷を!!」

僧侶「わかりました!!」

「うぅ……」

 
45以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:30:52.25:bUNM0KS30

僧侶「ふう……落ち着きましたか?」

「すいません……」

勇者「一体、どうしてあんな傷を?」

「それが……この街の人たちに……」

僧侶「どういうことです?」

「わかりません……」

勇者「俺、訊いてみます。何があったのか」

僧侶「勇者様、危険ですよ?」

勇者「僧侶さんはこの方をお願いします」

僧侶「わかりました……」

「……」

勇者「それでは」

僧侶「お気をつけて」

「………」

 
47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:34:18.27:bUNM0KS30

住宅街

勇者「夜分、恐れ入ります!!」

勇者「……ここもいない」

勇者「警戒しているのか……?」

勇者「それにしては……静かすぎる……」

勇者(本当に誰もいないような……)

スライム「きゅぷー!?!?」

勇者「な!?街中にスライム!?」

スライム「きゅぴー!!きゅぴー!!」

勇者「……なんだ?様子が変だ」

スライム「きゅぴー!!きゅぴゆー!!」

勇者「そっちに何かあるのか?」

スライム「ぷるぷるー!!」

勇者「……よし、案内してくれ」

 
49以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:37:28.73:bUNM0KS30

宿屋

勇者「宿屋じゃないか……」

スライム「きゅぷぅぅ……きゅぴ!!」

勇者「あ、待て!!―――行ってしまったか」

勇者「何があるというんだ……?」


二階

勇者「――僧侶さん、すいません」

殺人鬼「お?なんだ、もう帰ってきたのか?」

勇者「お前は!?」

殺人鬼「ぎゃははは!!」

僧侶「くっ……!」

勇者「貴様……その人にそれ以上なにかしてみろ……絶対に許さないぞ」

殺人鬼「ぎゃはははは!!!!そりゃあ、無理な注文だぁぁ!!!」

勇者「やめ―――」

「させるかぁぁ!!!」

 
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:42:47.70:bUNM0KS30

勇者「え?」

殺人鬼「てめえ?!!今、くたばったはずじゃあ!?」

武道家「やはり……お前が殺人鬼だったんだな」

勇者「あなたは!?」

武道家「自分は旅の者です。この宿屋の店主は旅人を襲っては私腹を肥やしていた狂人です」

殺人鬼「くそが……黙って死んでいればいいものを……」

勇者「そうだったんですか……」

殺人鬼「ぎゃははは!!もう町民は外に出てくれないからなぁ!!旅人を殺すしかなかったんだよ!!」

勇者「外道め……」

僧侶「ゆう、しゃ……様……」

勇者「こちらへ」

武道家「その人は自分の恩人だ!!貴様は我が拳で砕いてみせる!」

殺人鬼「やってみろ!!ぎゃはははは!!!!」

勇者「加勢します!」

武道家「助かります!行きましょう!!」

 
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:47:32.87:bUNM0KS30

殺人鬼「―――が……!?」

武道家「ふぅ……」

勇者「こいつは然るべき場所に預けないと」

武道家「それは自分がやりましょう。勇者殿はあのご婦人の手当てを」

勇者「そうだ!?僧侶さん、大丈夫ですか!?」

僧侶「は、い……武道家様が守ってくださいました……」

勇者「申し訳ありません……俺が守らなくてはいけなかったのに」

僧侶「いえ……勇者様はこうしてすぐに駆けつけてくれたじゃないですか……十分、守ってくれましたよ」

勇者「僧侶さん……」

武道家「……お二人は……恋仲か何かなのですか?」

勇者「な……!?ち、違います!!いや、あの……大事な人では……ありますけど……」

僧侶「ふふ……嬉しいです」

武道家「二人はゆっくりと休んでください。こやつの見張りは自分が引き受けます」

勇者「すいません。お願いします」

 
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:51:43.98:bUNM0KS30

早朝 宿屋前

勇者「本当にお任せしてもいいのですか?」

武道家「はい。自分は王城に用事がありますので」

僧侶「それでは……」

武道家「はい。ご武運を」

勇者「ありがとうございました」

武道家「勇者殿にお礼をされるとは……これは我が一族にとって最高の誉れですよ」

勇者「そんな……大げさです」

僧侶「勇者様?」

勇者「はい……また、どこかで」

武道家「はい。また」


武道家「―――あれが勇者殿か……」

武道家「まだまだだが……それなりの人物ではあるようだな」

武道家「また。いずれ会うこともあるかもしれませんね」

 
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 10:56:02.04:bUNM0KS30

街道

勇者「そういえば、ここから次の街へはどのくらいなんでしょうか?」

僧侶「そうですね……ここからだと……」

女性「はぁ……はぁ……」

勇者「あ、僧侶さん、あの人」

僧侶「誰か倒れてますね」

勇者「助けないと!!」

僧侶「あ、ちょっと。そんな無警戒に……!!」

勇者「大丈夫ですか?」

女性「み……ミミズ」

勇者「ミミズ?」

女性「あ、いや……水……」

勇者「水……はい、どうぞ」

女性「やった……いだだきます!!―――ゴクゴクゴク!!!!」

勇者「ああ、あの俺達の分も残してくれると嬉しい……んですけど」

 
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:00:26.27:bUNM0KS30

女性「ぷっはぁー!!!いやー!!いきかえったー!!ありがと!それじゃあねえ!!」

勇者「あ―――」

僧侶「待ってください!」

女性「あーん?なによ?」

僧侶「施しを受けておいて、その態度はあんまりです」

女性「うっさいなぁー」

僧侶「む……」

勇者「僧侶さん、落ち着いて」

僧侶「ですが……」

女性「ごめんて。今は先を急いでるの!この先の街まで早く行かなきゃならなくてさ!」

勇者「なにかあるんですか?」

女性「この先の街、どんなとこか知らないわけ?」

僧侶「ええ、生憎と」

女性「魔法使いの街だよ。魔法使いを目指す人たちが世界中から集まるんだよ。で、私は最終試験を終えて戻ろうとしてるわけ」

勇者「それは大変ですね」

 
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:05:03.73:bUNM0KS30

女性「そうなの!もうルーラも使えなくて困ってたんだ!いやーだから、助かったよ!サンキュー!!」

僧侶「はぁ……」

勇者「頑張ってくださいね」

女性「うん!んじゃ、また会えたらお礼してあげるー!!」

僧侶「行ってしまいましたね」

勇者「魔法使いの街かぁ……」

僧侶「魔法使いさんが仲間になってくれるといいですね」

勇者「はい。じゃあ、俺達も行きましょう」

僧侶「ですね。水がありませんし……早く行かないと干からびてしまいます」


魔法使いの街

勇者「―――ここが」

僧侶「すごい活気ですね……城下町以上に発展している街があるなんて……驚きました」

勇者「と、とりあえず、宿屋を探そうか?」

僧侶「そ、そうですね……でも、どこを探せば……」

勇者「あ、こっちホテル街って書いてますよ?こっちじゃないですかね?」

 
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:09:04.90:bUNM0KS30

ホテル

店員「休憩ですか?宿泊ですか?」

勇者「えっと……宿泊で」

店員「宿泊だと600Gです」

勇者「え!?」

僧侶「流石は都会ですね……お値段がすごい」

店員「どうされました?」

勇者「……あ、新しい武器のために貯めてたんだけど……」

僧侶「しばらくこの街を拠点に路銀を集めた方がいいかもしれませんね」

勇者「はぁ……まあ、致し方ないですね」

僧侶「では、これで」

店員「ゴムはご利用になりますか?」

勇者「ゴム?いいえいりません」

店員「では、ごゆっくり」

僧侶「いきましょう」

 
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:09:11.38:z3GdDwzB0
ホテル街wwww

 
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:09:30.57:9K4gG4by0
ほほう…!

 
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:13:29.80:bUNM0KS30

勇者「僧侶さん!すごい部屋ですよ!!」

僧侶「天井が鏡になってますね……」

勇者「すごい大きなベッドですよ、これ!」

僧侶「もうはしゃがないでください。にしても都会の宿屋は趣が全く違うのですね」

勇者「よし……僧侶さん、一休みしたら街を見に行きませんか?」

僧侶「はい。そうしましょう。武具はともかく、旅の水と食料は買わないといけませんし」

勇者「あと魔法使いも」

僧侶「これだけの都会ですし、一人くらいはいてほしいですね」

勇者「ですね」


中心街

僧侶「―――迷ってしまいそう……」

勇者「あ、僧侶さん、手を」

僧侶「あ、はい」

勇者「こうやって握っていれば逸れることはないですね」

僧侶「……ええ」

 
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:17:27.97:bUNM0KS30

道具屋

店員「ありがとうございましたー」

勇者「よかった……ちゃんと買い物ができて」

僧侶「なんか勝手が違うから怖いですね」

勇者「僧侶さん、これ……」

僧侶「はい?―――魔法使い最終試験会場……?」

勇者「外で出逢った人もいるんじゃないですか?」

僧侶「ああ、でも部外者は入れないでしょう」

勇者「外から覗くだけなら」

僧侶「ふふ……そうですね。行ってみましょう」


試験会場

勇者「あそこだ」

僧侶「……何か様子が変ですね」

勇者「なんだろう……喧嘩?」

 
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:22:57.30:bUNM0KS30

女性「ちょっと!!どうして私だけが不合格なのよぉ!!」

試験官「どうしてだと……?そんなの技量が足らないからに決まっているだろ?」

女性「な!?」

試験官「他の者はみな三日前にはここに辿り着いている」

女性「ちょ……でも、この日までに街に帰ってきたら合格でしょ!?」

試験官「ただ帰ってくるだけなら誰でもできる。これは魔法使いの試験だ。魔法で帰ってきて初めて合格だ」

女性「そんな話聞いたことないわよ!!」

試験官「当たり前だ。今まで徒歩で帰ってきたのはお前ぐらいだ」

女性「くっ……なによ……!!えらそうに!!!」

勇者「ちょっと!!暴力は―――ぐぁ!?」

女性「あ……な、なによ!!割りこまないで!!!」

僧侶「頭を冷やしてください。暴力での交渉は失敗しかありませんよ?」

女性「……なによ……」

試験官「よかったな。今、私を殴っていたら来年の試験も不合格になっていたぞ?」

女性「くそ!!」

 
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:27:52.79:bUNM0KS30

勇者「あ、待ってください!!」

試験官「ふん。君達、あの子の知り合いかね?」

僧侶「まあ、一応」

試験官「悪いことは言わない。彼女とは関わらない方がいい」

勇者「何故ですか?」

試験官「……彼女は魔族だ」

僧侶「魔族……?しかし、人間にしか」

試験官「魔族と人間の間に生まれた者だ。普段はモシャスによって女性の姿に化けているだけだ」

勇者「本来の姿は……?」

試験官「おぞましいドラゴンだ……」

僧侶「……」

試験官「だから関わらない方がいい」

勇者「僧侶さん、俺……」

僧侶「はい。彼女を追ってください。私は、この方ともう少しだけお話がしたいです」

試験官「なに……?」

 
83以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:33:42.25:bUNM0KS30

僧侶「魔族と人間の間に生まれた者を迫害するするのは現代の風潮ですよね?」

試験官「……何が言いたい?」

僧侶「あの人が魔法使いになれないのではなく、貴方達が魔法使いにさせたくないのでは?」

試験官「ふん……推測で語らないで頂きたい」

僧侶「私はここの規則がどうなっているのかは知りません。ですが、彼女の実力を公平な目でみているのかは疑問です」

試験官「下らん。おい、誰か。この部外者を連れ出せ」

警備兵「はっ」

僧侶「……」

警備兵「こっちにこい」

僧侶「はい」


路地裏

女性「はぁ……はぁ……くそ!!くそ!!!いつもだ!!毎年、私だけが僻地に飛ばされて……!!」

女性「余力を残して帰ってくるなんて……絶対に無理じゃん!!!」

女性「………もういいや……もう、私は……」

女性「……人間にも……なれない……」

 
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:37:53.51:bUNM0KS30

通行人「あはは、でさー」

女性(みんな幸せそう……)

通行人「マジで!?魔法使いになれたんだー」

女性(なんで……私だけが……こんなにも明るい街で惨めな思いをしなきゃ……)

通行人「―――って!?おい、いってーだろ!?」

女性「……」

通行人「謝ったらどうだ?」

女性「……ろ」

通行人「このブスが!」

女性「……えろ」

通行人「あ?なんだよ?はっきりいえよ?」

女性「―――消えろ!!!ゴミ屑がぁぁ!!!!!」

通行人「―――あ」


勇者「―――ん!?なんだ?爆発音が……!!」

勇者「行ってみよう!!」

 
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:41:56.48:bUNM0KS30

「きゃぁぁぁぁ!!!!」

「うわぁぁ!!!魔物だぁぁぁ!!!」

ドラゴン「死ね!!死ね!!!!」

勇者「な!?」

ドラゴン「―――オォォォォォン!!!!」

勇者「ドラゴン……どうしてこんな街中に……いるはずないのに……」

僧侶「勇者様!!」

勇者「僧侶さん、あれ!!」

僧侶「ええ……こんな街中にドラゴンが誰にも気づかれず出現することはありえません……恐らく」

勇者「彼女……ですか」

僧侶「とにかく止めないと、被害が大きくなります」

勇者「しかし……どうやって……」

ドラゴン「ガァァァァァ!!!!」

勇者「……考えている暇はないか」

僧侶「―――援護します!」

 
92以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:46:06.21:bUNM0KS30

勇者「はぁぁ!!」

ドラゴン「ガァァァ!!!」

勇者「ずっ……!?」

僧侶「ルカニ!!」

ドラゴン「……!?」

勇者「―――やぁ!!」

ドラゴン「ギャァァァン……!!!」

勇者「よし!効いたか!?」

ドラゴン「―――くたばれ!!」

勇者「炎!?」

僧侶「危ない!!―――フバーハ!!」

勇者「っ……ありがとう!!」

僧侶「やはり、今の私たちでは……」

試験官「―――皆の者、ドラゴンを囲い込め!!」

魔術師「はっ!!―――ドラゴンは氷系の呪文が弱点だ!一斉に仕掛けるぞ!!」

 
94以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:50:19.91:bUNM0KS30

勇者「な!?」

僧侶「ちょっと、待ってください!!」

試験官「なんだ?この街を脅かす魔物を排除するだけではないか」

勇者「でも、彼女なんですよ!?」

試験官「関係ない。奴はこうして魔物になった。殺すべき対象だ」

僧侶「ですが……」

ドラゴン「ガァァァ!!!」

魔術師「マヒャド!!」

魔術師「マヒャド!!」

ドラゴン「オォォォォォォン……!!!」

試験官「よし!モシャス!!」

女性「……」

勇者「あ……」

試験官「……連れて帰るぞ。やはり、この者は牢に入れておかなくてはならなかったな」

僧侶「そ、そんな……」

 
96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:54:57.98:bUNM0KS30

勇者「彼女をどうするつもりですか?」

試験官「然るべき機関によって裁いてもらう。これだけのことをしたのだ、もう言い逃れはできん」

僧侶「……貴方がたの責任でもあるのでは?」

勇者「僧侶さん!」

試験官「ふん、試験に落ちたというだけで死傷者を出してもいいと?」

僧侶「……」

試験官「この者には魔法使いになるだけど資質も資格もなかった。それだけだ」

勇者「本当にそうなんですか?」

試験官「ああ。もう彼女は今年で5回も試験に落ちている。なのにこりもせず、本当に馬鹿だったな。これも魔物の血が半分流れている所為だろうが」

僧侶「……っ!!」

勇者「ダメです!!」

僧侶「放して、勇者様」

勇者「暴力はダメです」

僧侶「……すいません」

試験官「気は済んだか?それでは失礼する」

 
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 11:59:27.96:bUNM0KS30

僧侶「確かに死傷者を出した罪は……あります。ですが……」

勇者「……僧侶さん。この街でやり残したこと、ありますか?」

僧侶「え……?」

勇者「すぐにでも出発できますか?」

僧侶「勇者様……」

勇者「水と食糧……武具はもう次の街まで我慢するしかないですよね?」

僧侶「はい」

勇者「では、一度宿に戻りましょう」

僧侶「私は、彼女の居場所を調べてみます」

勇者「はい。お願いします」


ホテル

勇者「……彼女はきっとずっと独りだったに違いない……」

勇者「俺と一緒だ……」

勇者「よし……いこう」

僧侶「―――勇者様、お待たせしました。参りましょう」

 
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:03:44.89:bUNM0KS30

魔法使い学校 地下

試験官「……お目覚めか?」

女性「……」

試験官「お前は処刑だ。裁判も略式で行われた」

女性「あっそ」

試験官「短い人生だったな」

女性「……消えろ」

試験官「ふん……」

女性「―――何が短い人生だよ……」


勇者「―――お邪魔しまーす」

僧侶「誰もいませんね」

勇者「今のうちに……」

女性「ん……?だれ?」

勇者「どうも……今、助けますね」

女性「……なんで?」

 
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:08:10.08:bUNM0KS30

勇者「誰しも死にたくないでしょう?」

僧侶「はい」

女性「……馬鹿ね。ここは鍵で開けないの。呪文じゃないとね」

勇者「呪文……?」

僧侶「ニフラム!―――ダメですね」

女性「……早く出ていって。目障りだから」

勇者「でも……」

女性「もういい……生きるのに疲れちゃったし……」

僧侶「生まれてからずっと迫害を?」

女性「……ねえ、どうして魔族と人間の間に子供が生まれると思う?」

勇者「え……それはやっぱり、禁断の愛?」

女性「あははは!!アナタ、童貞?」

勇者「な!?それは関係ないでしょう!?」

女性「早くやってあげなよ」

僧侶「な、なにをですか!?やめてください!!」

 
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:16:03.14:bUNM0KS30

女性「……人間の実験。普通に考えて人間と魔物が恋に落ちるなんてありえない」

勇者「実験って……どのような?」

女性「魔王の脅威は勿論、魔物の凶悪化が進む中で人間が考え出した兵器よ」

僧侶「まさか……無理矢理な交配を?」

女性「試験管に人間のと魔物のものを入れてね。完成したのが私」

勇者「そ、そうなんですか……」

僧侶「ハーフは人間が自ら生み出していたなんて……」

女性「そう。人間が生み出した癖に人間は私たちを気味悪いって疎むのよね。笑っちゃうわ」

勇者「……しかし、そんな実験を王が許すとは思えません。そうなると非合法な人体実験として摘発されるはずでは?」

女性「言ったでしょ?魔物の凶暴化に備えてのこと……この免罪符があれば……」

僧侶「王も認める?」

女性「正解。この実験は王が認めたものよ」

勇者「そ、そんな馬鹿な!!王は!!だって、王は民を統べる御人……」

女性「なに?王様を崇拝してるの?珍しいわね、ボウヤ」

僧侶「この方は、勇者様ですので。王のことを信頼しています……心から」

 
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:22:37.70:bUNM0KS30

女性「勇者……ああ、王様の狗か」

勇者「……愚弄は許しません」

女性「……ごめん。でも、私は王を好きになんてなれないから」

僧侶「……」

女性「さあ、お話は終わり。帰ってくれる?私は死んで罪を償わないといけないの」

勇者「死ぬなんて許さない」

女性「なんですって?」

勇者「貴女は生きるべきだ……罪を償うために」

女性「馬鹿言わないで」

僧侶「私たちとともに、魔王を倒しませんか?」

女性「……それで、英雄になれって?確かに英雄になれば罪は消えるかもねー」

勇者「いいえ。貴女は人を殺めた。英雄になってもそれは消えない」

女性「なによ……じゃあ、どうしろっていうのよ!!」

勇者「それを探しましょう。俺達と生きて。死ぬ以外の償う方法を一緒に」

女性「……なんで、そこまでするの?あなた達には関係ないじゃない」

 
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:29:46.02:bUNM0KS30

試験官「―――良い考えだ」

勇者「!?」

僧侶「あなたは!?」

試験官「このゴミが魔王討伐の役に立てるかは甚だ疑問だが、盾ぐらいにはなるでしょう」

勇者「……」

僧侶「アナタ……」

試験官「それに万が一、魔王討伐に成功すれば我々の考えは正しかったといえる。研究も進んで行くことになる」

勇者「我々……まさか、貴方が人体実験を?」

試験官「そうです。そもそもその娘はこの街で生まれた珍獣ですからね」

女性「……」

僧侶「それなら、もっとやり方があったんじゃ……!!」

試験官「その娘は近年稀にみる成功例。人間らしい生活を送ってもらいたかったのに……魔法使いになると言いだしてね」

勇者「何か問題でもあるんですか?」

試験官「魔法使いになれば戦争に赴くこともある。そのとき人間を裏切ってもらっては我々が困るのですよ」

僧侶「それで……この街に閉じ込めておくために……」

 
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:35:12.65:bUNM0KS30

試験官「試験のときのこの娘のためだけに監視役を何人も割かなくてはならず、大変でね」

勇者「……」

女性「くそが……」

試験官「ですが、勇者様の傍にいるのだったら構いません。その娘を存分に御使いください」

僧侶「使うって……」

試験官「……まあ、裏切られて死んでも私たちを怨まないように」

勇者「わかりました」

試験官「アバカム……貴女には魔法使いとして生きることを特別に許します。はい、これ。卒業のときに授与される杖とローブ」

魔法使い「……」

試験官「では、よろしくおねがいしますね。勇者様。ああ、そうそう。死体はいりませんから」

勇者「……行きましょう」

僧侶「さ、歩けますか?」

魔法使い「歩けるわよ……うるさいわね」

試験官「ご武運を……ふふ」

 
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:41:00.71:bUNM0KS30

街道

勇者「あの……これからよろしくお願いします」

魔法使い「ふん……」

僧侶「……」

魔法使い「……いいの?」

勇者「え?」

魔法使い「罪人と一緒にいるなんて、やりにくいでしょ?」

勇者「そんなことは……」

魔法使い「罪を償う方法……そんなものない」

僧侶「あ……」

魔法使い「生きて魔王を倒したら、きっとまた私みたいな子がこんどは大量に生まれる」

勇者「王に進言します」

魔法使い「無駄よ……そんなことしたって」

勇者「……」

魔法使い「そんな世界になるなら……私は死んだ方がいい……途中で死んだほうが良いに決まってる」

 
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:47:13.81:bUNM0KS30

王城

王「……勇者の動向は?」

兵士「はっ!数日前、魔法使いの街にて実験体を仲間に加えたとの情報が」

王「ほお……あの出来そこないのドラゴンか」

兵士「はっ」

王「それは面白い……くくく……討伐が叶えば奴らも狂喜乱舞することだろうな……そして我への献上も増える……ふふふ」

兵士(屑が……)

兵士「―――王!!王子が戻ってまいりました!!」

王「おぉ!!早く通せ」

王子「お父様。ただ今、戻りました」

王「久しいな。見聞の旅はどうだった?」

王子「はい。自分としても収穫が多かったです」

兵士「北の街の殺人鬼を捕えて戻られたのですよ!」

王「わっはっはっは!!流石は我が息子!!鼻が高いわい!!」

王子「……」

 
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:48:54.08:1huXumpS0
王子だったのか

 
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:51:13.50:bUNM0KS30

漁村

勇者「はぁ……ここまで長かったですね」

魔法使い「全くよ……もうだめ、歩けない……勇者ーおぶってよー」

勇者「ええ?」

魔法使い「はやくー!!つーかーれーたー!!」

勇者「はいはい」

僧侶「勇者様!!」

勇者「よいしょっと……ここで駄々に付き合ってたら日が暮れますし」

魔法使い「やっほー!らくちんじゃーん!!」

僧侶「もう……」

勇者「とにかく、宿を探しましょう」

僧侶「ですね」

魔法使い「おい!勇者!!アソコに船があるよ!!すっごいねー!!」

勇者「はいはい。すごいですね」

僧侶「……はぁ」

 
132以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 12:54:59.45:bUNM0KS30

宿屋

勇者「では、買い物に行ってきます」

僧侶「はい。お願いします」

魔法使い「一緒に行けばいいじゃん」

僧侶「ダメです。逃げないように見張ってないと」

魔法使い「ちっ……いつか犯してやろうか」

僧侶「何を!?」

勇者「仲良くしてくださいよ?」

魔法使い「べーっだ!!」

僧侶「ふん!!」

勇者「……」


道具屋

勇者「では、これで」

店主「どうも……あなた、旅の方ですか?」

勇者「ええ、そうですけど?」

 
135以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:00:34.55:bUNM0KS30

店主「この先は危険ですよ?」

勇者「危険とは?」

店主「最近、魔物の侵攻がすごくてね……もう手に負えないんだ」

勇者「そんなに?」

店主「ええ。魔王が大規模な戦争を仕掛けるんじゃないかって噂もあって……この漁村も危ないんだよ」

勇者「そうですか……魔王が戦争……」

店主「陸路は危険だから、海路にしたほうがいい」

勇者「でも……船が……」

店主「それなら余ってる船を使えば良い。この漁村も人が少なくなって、乗り手が激減したからな」

勇者「いいのですか……大事な船を使っても……」

店主「ええ。どうぞどうぞ」

勇者「では、お言葉に甘えて」

店主「……」

勇者「ありがとうございました」

店主「いいよいいよ……ヒヒ」

 
137以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:05:27.09:bUNM0KS30

宿屋

勇者「ただいまもど―――」

魔法使い「このやろー!!!」

僧侶「ちょ!!まくらは一つまでのルールですよ!!」

魔法使い「うるさい!!あんたのその真面目なとこがきにくわないのー!!!」

僧侶「なんですかそれは!?」

勇者「あの……何を……ぶっ!?」

僧侶「あ……勇者様」

魔法使い「あーん!!勇者ーきいてよー!!僧侶がいきなり枕で私をぶつんだよー!!」

僧侶「な!?違います!!私はこれからのことを彼女と相談しようとしたら、いきなり枕を投げてきて―――」

勇者「はぁ……」

魔法使い「勇者ーそれよりはらへったぞー」

僧侶「もう!!何なんですか!!貴女は!!一つの話題を終わらせてから次の話題にですね―――」

魔法使い「うっさい、おばさん」

僧侶「まだ16歳です!!」

 
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:10:14.91:bUNM0KS30

勇者「はい、どうぞ。パンですけど」

魔法使い「やったー!はむはむはむ」

僧侶「勇者様、甘やかしてはダメですよ」

勇者「まあ、まあ。一々、反応していたら話が進みませんから」

僧侶「それは……」

魔法使い「べーっ」

僧侶「む……」

勇者「それより今後のことですけど―――」


漁村 中央広場

店主「情報通り勇者一行だ」

村民「ヒヒ……よくやったな?尾行任務、御苦労」

スライム「あ、あの……」

店主「なんだ?」

スライム「あ、あの人たちは……そんなに悪い感じはしないよ?」

村民「魔王様に盾突こうとする人間だ。魔王様に刃向うことは大罪。殺さなくてはならん。そうだろう?」

 
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:15:24.99:bUNM0KS30

勇者「―――というわけで、海路で魔王の城を目指すことにしました」

僧侶「えっと……魔王の城がある孤島までは……日数的にはそれほどでもありませんね」

魔法使い「……船をもらったの?」

勇者「はい。どれでもいいと」

僧侶「良い人たちですね」

勇者「ええ。まあ、乗り手がいない船という条件ですけど」

魔法使い「ふーん」

僧侶「では、どの船がいいか見に行きましょうか?」

勇者「そうしましょう」

魔法使い「船ねえ……おばさん」

僧侶「な……!?」

魔法使い「親切って怖いよ?」

僧侶「アナタの口の悪さよりはマシです」

魔法使い「……まあ、いいけど。私的には死んだ方がいいしー♪」

僧侶「……?」

 
144以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:20:05.28:bUNM0KS30

船着き場

勇者「おおー。どれも立派ですね」

僧侶「ええ。これ、本当に貰ってもいいんでしょうか?」

魔法使い「……」

勇者「どうかしました?」

魔法使い「べっつにー」

僧侶「……?」

漁師「おお、アンタらか勇者一行様は」

勇者「ええ」

僧侶「どうも」

魔法使い「……」

漁師「話は聞いてるよ。どれでも好きなのもってきな」

勇者「ありがとうございます。このお礼はいつか必ず」

漁師「ヒヒ……礼なんて……もったいないです」

僧侶「これなんて……良さそうですよ?」

 
145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:23:42.88:bUNM0KS30

翌日 船着き場

勇者「じゃあ、出発しようか」

僧侶「はい」

魔法使い「……」

勇者「どうかしました?」

魔法使い「……いや。なにも。私はこの船、好きだなーって」

勇者「僧侶さんが選んだ船です。間違いはないでしょう」

僧侶「いや……そんな」

魔法使い「……本当に、私にとってはありがたいね」

勇者「よし!出向の準備を!」

僧侶「アイアイサー!……なんちゃって」

魔法使い「うわ!さぶ」

僧侶「い、いってみただけです!!もう……」

勇者「あはは」

 
147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:29:22.53:bUNM0KS30

勇者「よし、帆も痛んでいないようですし……行けます!!」

僧侶「はい!」

店主「おーい!!」

勇者「あ、どうも!こんなに立派な船、ありがとうございます!!」

村民「いいよーいいよー、ヒヒ……気を付けてねー」

僧侶「この恩は忘れません!」

勇者「ほら、魔法使いさんも何か」

魔法使い「……ありがとー。殺してくれてー」

僧侶「え?」

勇者「どういう……」

店主「ヒヒヒヒヒ……ウィヒヒヒヒヒ!!!!」

勇者「……!?」

魔法使い「この船、変な呪文が施されてる。多分、爆発系の術式だからそのうち私達ごと爆発して粉々になって海の藻屑になるんじゃない?」

僧侶「貴女!!どうして気づいているなら……!!!」

魔法使い「……言ったじゃん。私は死んだ方がいいって」

 
152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:35:17.58:bUNM0KS30

勇者「魔法使いさん……」

魔法使い「ほら、助かりたいなら海に飛び込んだ方がいいよ?ま、海中にも魔物はいるし、陸に上がろうとしたら―――」

漁師「ウィヒヒヒヒヒ!!!」

魔法使い「あいつ等の餌食だろうけどね」

僧侶「……っ!!」

パシンッ

魔法使い「―――ったいな!!何するのよ!!」

僧侶「勇者様、海に飛び込みましょう」

勇者「でも、そんなことしても……」

僧侶「ここに残るよりは望みはあります」

勇者「……魔法使いさん」

魔法使い「なによ?」

勇者「……ドラゴンになって俺たちを背中に乗せてくれませんか?」

魔法使い「分かって訊いてるんでしょうけど、嫌よ。私はここで死ぬんだから」

僧侶「勇者様、この人を相手にしても無駄です!早く、海へ!!」

 
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:42:27.94:bUNM0KS30

漁師「ヒヒヒ!!奴らはどう転んでもここで死ぬ!!!」

店主「魔王様もあのような人間を警戒するとは……ヒヒヒ!!」

スライム「ぴぎゅー……」




勇者「魔法使いさん……死にたいのだったら止めません」

魔法使い「……」

勇者「ですが、俺はアナタをおんぶする必要のないところで、おんぶしましたよね?」

魔法使い「え?」

勇者「なら、今ここでその恩を返してください。そして、その後俺が責任をもって、殺します」

僧侶「勇者様?!」

勇者「俺たちはまだ死ぬわけにはいかない。お願いします」

魔法使い「……」

僧侶「……わ、私からもお願いします」

魔法使い「……っ」

 
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 13:56:16.24:bUNM0KS30

魔法使い「むちゃくちゃじゃない……もう……」

勇者「……」

魔法使い「約束だからね……ちゃんと、私を殺しなさいよ?」

勇者「……はい」


船着き場

漁師「ウィヒヒヒヒ!!!」

店主「そろそろだな……ヒヒヒ!!!」

スライム「あ……ぁぁ……」

村民「―――ばくはーつ!!!」

ドォォォォン!!!!

スライム「わぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

漁師「ウィヒヒヒヒ!!!やった!!やった!!!」

店主「呆気なかったなぁ……ヒヒ…ヒヒ…??!!」

ドラゴン「――――オォォォォォォォン!!!!」

勇者「お前達、覚悟しろ!!!」

 
165以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:02:12.90:bUNM0KS30

漁師「ドラゴンだと!?!?」

村民「ど、どういうことだ……!?!?」

スライム「よ、よかった……」

僧侶「高い!!高いです!!!もっと高度を下げてください!!」

ドラゴン「うっさいなぁー!!高いとこから攻撃した方が有利でしょ!!」

勇者「お前達、一つ訊く!!この村にいた人たちはどうした!!」

店主「ヒヒヒ……全員くっちまったよ……ウィヒヒヒ!!!」

漁師「ウィヒヒヒ!!!ああ、うまかったぜ!!!」

勇者「―――魔法使いさん、焼き払ってください。ここにはもう人間がいない」

ドラゴン「オッケー!!―――食らえ!!!しゃくねつ!!!」

店主「ぎゃぁああああああああうぃひぃぃぃぃいいいいいい!!!!!!」

村民「ウィヒヒヒィィィィィィィィイ!!!!!!!」

スライム「ぴぎゅー!!!あつい!!あついよー!!!」

勇者「……あれは!?―――魔法使いさん!あのスライムは狙わないようにできます?!」

ドラゴン「難しい事いわないでしょ!!馬鹿じゃないの!?」

 
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:07:42.00:bUNM0KS30

勇者「なら、俺が降ります!少し高度を下げてください」

僧侶「勇者様、どうされたんですか!?」

勇者「あのスライムは北の街で助けてくれたスライムです。理由もなく殺すわけにはいきません」

僧侶「え……じゃあ」

勇者「はい。あのスライムがいなければ、きっと僧侶さんを救えていなかった」

僧侶「……魔法使いさん!!高度を下げて!!早く!!」

ドラゴン「竜の扱いが酷いっつーの!!!もう!!」

勇者「―――ありがとうございます!はっ!!」

スライム「もえるー!!!もえるよー!!!!!」

勇者「大丈夫か!?」

スライム「あ!勇者さん!!」

勇者「さ!こっちへ!!」

スライム「で、でも……ぼくは魔物……だし……」

勇者「俺は君を助けたい!魔物だからじゃない!君だからだ!早くきて!!火が迫っている!!」

スライム「ぴぎゅー!!!!勇者さーん!!!!」

 
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:09:58.84:lBvrUk8X0
スライムたんかわええ

 
177以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:13:16.84:bUNM0KS30

勇者「よし!魔法使いさん!!」

ドラゴン「何回降下させりゃあ気が済むのよ!!馬鹿ー!!!」

勇者「よっと!」

スライム「ぴぎゅー……勇者さん……ごめんなさい……」

勇者「何が?」

スライム「ここに勇者さんがくるって教えたの……ぼくなんです……」

勇者「そうか……」

スライム「ぼくは悪い子なんです……」

勇者「でも、北の街では俺に僧侶さんが危ないことを教えてくれた……そうだろ?」

スライム「それは……あの……」

勇者「ありがとう……心から感謝する」

スライム「ぴぎゅー!!魔物に頭を下げるなんて!!!いけません!!!」

ドラゴン「ちょっとー!!もう炎だすのつかれたんだけどー?」

僧侶「そろそろ少し離れたところに降りましょう」

勇者「そうしたほうが良さそうですね。魔法使いさん、どこか人目に付かない場所に降りましょう」

 
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:17:43.95:bUNM0KS30

とある森

勇者「ふう……」

ドラゴン「ふう……じゃないわよ!全くもう」

勇者「感謝しています」

ドラゴン「当たり前でしょ!?」

スライム「ぴぎゅぅぅ」

僧侶「貴方が私を救ってくれたのね?ありがとう……(ナデナデ」

スライム「く、くすっぐたいです……・」

僧侶「かわいい……」

魔法使い「モシャス!!―――で、これからどうするの?」

勇者「スライム、色々と訊きたいことがあるんだけど、いいかな?」

スライム「ぴゅぎぅ!なんでも訊いてください!もう、ぼくは勇者さんについていくしかないですし!!」

勇者「ありがとう。じゃあ、まずは魔王の動向なんだけど―――」

 
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:25:47.61:bUNM0KS30

魔王城

魔王「―――ほお。勇者があの漁村の罠を掻い潜ったと?」

魔物「はい。どうやら仲間の中に例のハーフがいるようで」

魔王「なるほど……昔、人間に捕えられたドラゴンの血を分かつ者か」

魔物「はい」

魔王「我が同胞を玩具にするだけには飽き足らず、ついに兵器としての運用を始めたか……」

魔物「ええ……」

魔王「我々をどこまで愚弄する気なのだ……!!」

魔物「魔王様……我々魔族一同、いつでも戦をする心構えであります」

魔王「そうか……」

魔物「勇者など敵ではありません。魔王様の敵は……人間の王です」

魔王「……そうだな……勇者という人間の希望を砕いたとしても、悪戯にやつらに時間を与え、そして同胞がまた悲鳴をあげるだけ、か……」

魔物「はい」

魔王「―――全魔族に告げる!!魔王の名の下に人間を駆逐する!!皆の者!!牙と怒りを憎悪に変えろ!!戦だ!!!」

魔物「「オォォォォォォォォォ!!!!」」

 
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:33:53.94:bUNM0KS30

王城

兵士「―――報告します。勇者が漁村を壊滅させたとのことです」

王「なんじゃと!?どういうことだ!?」

兵士「詳細は不明ですが、船を強奪するために村を焼いたのではないかという情報もあります」

王子(何を馬鹿な。勇者殿がそのようなことをするわけあるまい。……誰がそんな情報を)

兵士「(やっぱり、例の娘のせいか?このデマカセ)」

兵士「(だろうな。あのドラゴン娘のことを公にしたくない連中は多いって聞くぜ)」

兵士「(勇者もその仲間も政治のために生かされて、殺されるのか……救えないな)」

王子(なるほど)

王「仕方あるまい……勇者を探してこい!!奴らに事情を聞き出せ!!」

兵士「はっ!!」

王子(ちっ……魔王の討伐が遅れるだけではないか……何を考えているのだ……)

王「全く……我が息子のように真直ぐに生きてほしいものだ。勇者だからと全てが許されるわけではない。なぁ?」

王子「ええ……」

王子(だが、これは好都合かもしれない。勇者殿にもう一度接触できる好機だな)

 
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:43:28.24:bUNM0KS30

スライム「近いうちに戦争を起こすかもしれません……それは間違いないと思います」

勇者「原因は?ここ数年はそういった動きなんてなかったけど……」

スライム「恐らく……」

魔法使い「私の所為でしょ?」

僧侶「え?」

魔法使い「同胞の体を好き勝手にいじくって、黙ってられるやつなんていないでしょ?」

勇者「ええ」

スライム「そのことが分かってから……魔王様は人間のことがお嫌いになられました……」

僧侶「その言い方だと……魔王は人間が好きだったんですか?」

スライム「好きというか……同じ世界に住む生物という認識でした。人間を支配しようなんて考えは持ってませんでしたし。小さな争いは昔からありましたけど」

勇者「それって……」

魔法使い「人間がぜーんぶわるいんじゃないの?」

僧侶「ですが、魔王を人を殺めています!!」

魔法使い「魔王が脅威だから、魔物が凶暴化したから相手を殺して、体を弄んでもいいって考え?馬鹿じゃないの?」

勇者「……やっぱり、一度王と話をしたほうがいいのかもしれない……俺自信、信じられなくなってきたよ」

 
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:50:14.35:bUNM0KS30

翌日 森

勇者「おはよう……」

魔法使い「―――勇者さん?」

勇者「なに?」

魔法使い「早く殺してくれない?昨日から待ってるんだけど?」

勇者「それは……」

スライム「ぴぎゅぅぅ?」

僧侶「……勇者様……」

兵士「―――いたぞ!!!勇者一行だ!!!」

勇者「なんですか!?」

兵士「大人しくご同行お願いします」

魔法使い「ちょっと!!放してよ!!なによ!!スケベ!!!」

僧侶「な、なんですか!!?」

兵士「貴方たちに漁村の壊滅、および大量虐殺の容疑がかけられております」

勇者「……なんですか、それ?」

 
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 14:55:35.43:bUNM0KS30

王城 謁見の間

王「嘆かわしいぞ!!!勇者であることを驕ったか!!!」

勇者「王、何のことかわかりません!!」

王「ええい、白を切る気か……よかろう、連れて行け!!」

兵士「は?」

王「何をしておる!!何をしてもかまわん!!勇者が漁村でなにをしたのか吐かせろ!!」

勇者「ちょっと待ってください!!!」

王「僧侶と魔法使い、あと魔物は好きなようにして構わん」

勇者「王!!俺の話を聞いてください!!!お願いします!!!」

王「ええい!!早く連れて行け!!」

兵士「……っ!―――勇者殿、こちらへ」

勇者「王!!お願いです!!!俺の話を―――」

王「ふん……勇者なら全てが許されるとでも思ったか……許されるのは我、王だけだとういうのに……なあ?」

王子「……少し、席を外します」

王「そうか。もうすぐ、夕食の時間だ。遅くならんようにな」

 
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:00:05.47:bUNM0KS30

地下牢

看守「……勇者殿!?」

勇者「……」

兵士「牢屋に入れておけ」

看守「しかし……」

兵士「王の命令だ」

看守「は、はい……こちらへ」

勇者「……」

僧侶「あ……勇者様」

魔法使い「おかえりー。早く処刑されないかなー?」

スライム「勇者さーん!!心配しましたー!!」

勇者「はぁ……何を聞いてくれなかった……ごめん、魔法使いさん」

魔法使い「だから言ったでしょ?私の存在は、無かったことになるだけ。魔王倒しちゃったら大変よ」

僧侶「……ん?誰ですか?」

王子「―――勇者殿、お久しぶりです」

 
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:05:40.86:bUNM0KS30

勇者「貴方は……!?」

魔法使い「わお!!イッケメーン!!!」

僧侶「王子!?」

スライム「こ、こんにちは!!」

王子「はい、こんにちは」

勇者「王子がこんなところに来ては……」

王子「構わない。今は王子ではなく、勇者殿と共に殺人鬼を捕えた武道家としてお話しにきました」

勇者「え……?」

僧侶「あ、あのときの武道家さん……?」

魔法使い「ねえねえ、紹介してよー」

勇者「こ、これは……その節はとんだご無礼を!!」

僧侶「わ、私も……気安く話してしまって……!!」

王子「顔を上げてください。アナタの言う通り、ここに王族は来てはならない。―――だから、今は王族であることを捨てている」

勇者「王子……」

王子「勇者殿、何があったのですか?この短い旅で知ったことを自分に教えてください」

 
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:12:08.82:bUNM0KS30

勇者「―――以上です」

王子「……そうですか……父である王がそのようなことに手を染めていたなんて」

僧侶「あの……王子が気にするようなことでは」

王子「何を仰いますか。これは我が一族の恥だ。……魔法使い殿」

魔法使い「あ、は、はい!なんでも言って!」

王子「この場を借りて……謝罪する」

勇者「王子!?土下座なんておやめ下さい!!!」

スライム「ぴぎゅー!ここ床が汚いですよー!!」

魔法使い「……そ、そうよ。服が汚れるでしょ……?」

王子「我が名よりも汚れた場所などない」

僧侶「王子様……」

魔法使い「やめてよ。ここには王族なんていないんでしょ?」

王子「……」

魔法使い「ほら、顔を上げて。服が……汚れてるわ……」

王子「すまない。この事は必ず公の場で謝罪すると誓う」

 
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:17:39.26:bUNM0KS30

勇者「王子、実験は……」

王子「分かっています。即刻中止させ、技術の全ても廃棄させます」

魔法使い「あの……私みたいな子がまだ何人がいるはずなんだけど……」

王子「はい。その子たちも責任を持って自分が引き取りましょう」

スライム「かっこいー!!ぴぎゅぅぅ!!」

魔法使い「そ、それって!!あの!!私も入ってます!?」

王子「ええ、勿論です」

魔法使い「―――やったー!!!王子様ゲットだ~!!!!」

勇者「死にたかったんじゃないんですか?」

魔法使い「お……バ、バカ!!もういいわよ!!こうしてちゃんと私を認めてくれるならね!!」

僧侶「分かりやすい人……」

魔法使い「うっさい!!おばさん」

僧侶「だから、まだ16歳ですってば!!」

王子「それでは少しばかりお待ちください。すぐにここから―――」

兵士「王子!!大変です!!東から魔族の大軍が攻めてきているとのことです!!すぐに王の元へ!!」

 
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:22:57.82:bUNM0KS30

謁見の間

王「すぐに兵を集結させろ!!」

王子「―――すいません、遅くなりました。戦況は?」

王「東から万を超す大軍を引き連れて魔王が攻めてきておる」

王子「……戦争か……無理もないでしょう」

王「何がいいたい?」

王子「いえ」

王「しかし、急な進撃だ……如何せん戦力が足りぬ」

王子「……」

王「おお!そうだ、勇者たちも隊に加えろ」

王子「何を言っているのですか!?彼らは長旅で疲弊し、更に牢獄という場所で精神的にも……!!」

王「構わぬよ。勇者は王のために存在する。王の危険に牢で寝かせておくわけにもいくまい?」

王子「あなたって人は……!!」

王「勇者たちを連れてこい!!今すぐだ!!」

兵士(……王子……!!)

 
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:27:13.45:bUNM0KS30

勇者「王……」

王「勇者よ、戦え」

僧侶「……」

魔法使い「何だこいつ、えらそーに」

王子「すまない。自分の父です」

魔法使い「お、お父さんでしたか!?これはこれは!!なんか聡明そうですね!!」

スライム「ぴぎゅぅぅ……」

王「さあ、行け!!国民の脅威を打ち崩してこい!!!!」

勇者「……王子は?」

王子「自分は―――」

王「王子、こちらへ」

王子「……は」

王「(今のうちに隠し通路から我が一族は遠くへ逃げる。準備だけはしておけ)」

王子「……っ」

王「(王族は死んではならん。わかるだろ?死ぬのは平民だけでよいのだ)」

 
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:31:55.84:bUNM0KS30

街の外

魔王「あそこに人間の王がいるのだな?」

魔物「はい」

魔王「ふん……よし、進むぞ」

魔物「全軍、前進!!」

魔物「「オォォォ!!!!!!」」

魔王「同胞の恨みは必ず……!!!」


兵士長「―――来たぞ!城下町には指一本触れさせるな!!!」

兵士「「おおおお!!!」」

勇者「始まった……」

僧侶「……勇者様」

勇者「大丈夫、僧侶さんは守ってみせる」

魔法使い「あたしもーまもってー♪」

スライム「ぴぎゅぅぅ!!勇者さん!!ぼく、絶対魔王様に怒られますー!!!」

勇者「はいはい……みんなを守るよ……絶対に」

 
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:36:26.56:bUNM0KS30

城下町

神父「はやく!!みなさん、避難を!!」

神父(国王……民よりも自分の身を優先させますか……)

僧侶「神父様!!」

神父「おぉ……どうしてここへ?」

勇者「この街を守るために戻ってきました」

神父「勇者様……そうですか。この娘を今まで守ってくれてありがとうございます」

魔法使い「だれー?このジジイ?」

僧侶「マホトーンくらわせますよ?」

魔法使い「ちょ!?」

神父「ふふ……可愛いお友達も増えたみたいですね」

勇者「街が戦火に巻き込まれる可能性が十分にあります。神父様も速やかに避難を」

神父「……僧侶?」

僧侶「はい」

神父「……死なないでください。絶対に」

 
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:43:01.48:bUNM0KS30

魔王「よし……全軍、止まれ」

魔物「全軍、とまれー!!!」

兵士長「……」

魔王「―――人間どもよ!!!答えろ!!!我が同胞に何をしたぁ!!!」

勇者「……」

魔王「答えないのなら構わん。貴様たちは数種類の我が同胞を捕え、そしてとある実験をしたな!?」

魔法使い「魔王……こわ」

スライム「ぴぎゅぅぅ……」

魔王「そして生まれた魔族と人間の混血種……。何が目的だぁぁ!!!!」

魔王「兵器の運用……憂さの捌け口……そのためだけに生み出したのか!!!」

兵士長「……答える義理はない!!」

魔王「……そうか。ならばもういい!!―――全軍、突撃!!」

魔物「突撃ぃぃぃ!!!!」

兵士長「怯むな!!いくぞぉぉぉ!!!」

兵士「「おぉぉぉぉ!!!!」」

 
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:46:52.26:bUNM0KS30

勇者「……」

魔法使い「あーあ、始まった。―――メラゾーマ」

魔物「ぐわぁぁ!!!」

僧侶「勇者、様……バギクロス!!」

魔物「ひゃがやああ!!」

スライム「ぴぎゅーー!!!やめてーーー!!!」

勇者「魔法使いさん」

魔法使い「また!?私は便利屋じゃないんだけど?」

勇者「お願いします」

魔法使い「はいはい……」

武道家「勇者殿!!」

勇者「王子!?どうして……!?」

武道家「……何も言わず自分を連れていってください」

勇者「王子……」

ドラゴン「はやくのってよー!!!この姿、目立つんだからー!!―――しゃくねつ!!!」

 
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:52:20.35:bUNM0KS30

魔王「……む?」

ドラゴン「こんちはー!!」

魔王「……お前は……魔族ではない……そうか、お前が混血か……辛かったであろう?」

ドラゴン「まあ、ね」

勇者「魔王!!」

魔王「勇者か……我に直接挑むとはいい度胸だ」

勇者「……人間を代表して俺が詫びよう!!」

魔王「なに……?」

勇者「人間がしてきたことは許されることではない!!それは分かっている!!」

武道家「ああ!!償う覚悟はある!!」

スライム「魔王様ーー!!もうゆるしてあげてーーー!!」

僧侶「お願いします!!」

魔王「……そして我々が人間に行った行為を詫びればいいのか?」

勇者「その通りだ!!」

魔王「……ふふふ……面白い……」

 
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 15:57:26.68:bUNM0KS30

勇者「魔王……」

魔王「ならば!!その覚悟を見せろ!!!」

ドラゴン「どうやって?」

魔王「貴様たちの王の首を持ってこい」

勇者「……!?」

武道家「それは……」

魔王「出来ぬというなら、この場で刃を交えるしかないが?」

勇者「……」

武道家「自分が―――」

ドラゴン「ちょっと!!それは!!!」

勇者「俺の首ではダメだろうか!!」

僧侶「勇者様!?」

スライム「それはだめですよー!!!」

魔王「……ならんな。貴様はこの国を憂いている。そういった者が死ぬのは国のためにならん」

勇者「魔王……」

 
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:03:55.66:bUNM0KS30

魔王「王一人の首で平和が訪れるのだぞ?何を躊躇う?」

勇者「……」

武道家「……」

ドラゴン「いーじゃん、王が死んだって。王子がいるしー」

僧侶「魔法使いさん!!」

勇者「ダメだ……王は……王だけは、人間の手で裁きたい!」

魔王「……下らん。それに何の意味がある?」

勇者「王が全ての人間、魔族、そしてハーフたちに頭を下げなくてはならない」

魔王「首を晒した方がいいだろう?」

勇者「言葉は大事だ。殺したから終わる問題でもない」

魔王「平行線だな……貴様の考えは立派だがこの戦争を止める一手には程遠い」

僧侶「……そんな」

スライム「魔王様のいじわるーー!!!!」

魔王「さあ、早く決断しろ」

 
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:10:55.91:bUNM0KS30

王「―――我が息子め……姿が見えぬと思ったら……あんなところで人間を裏切ろうとしておるのか……!!」

王「おい」

近衛兵「はっ!」

王「あのドラゴンに乗っている者を全て射殺せ」

近衛兵「は?しかし、あそこには王子が……」

王「やれ。人間を裏切ったものなど、一族には不要だ」

近衛兵「………」


ドラゴン「いい加減、飛んでるの疲れてきたんだけど?」

武道家「魔王!自分がハーフを責任をもって育てる。そして、これ以上の実験は行わないと誓う!!だから―――」

魔王「そんな口約束では信用できんな」

勇者「わかった……王子、申し訳ありませんが王の場所を教えてもらえますか?」

武道家「勇者殿……」

勇者「王の首をここへ。これ以上、戦火を拡大させるわけにはいきません」

僧侶「勇者様……」

武道家「………そうだな。謝罪はこの場でさせれ―――ぅ!?」

 
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:15:35.93:bUNM0KS30

勇者「え……!?」

武道家「あ……ゆ、しゃ……ど―――」

ドラゴン「王子様!?ちょっと!!!危ないって!!!落ちちゃうじゃん!!!」

僧侶「王子!!!」

勇者「あ―――」

魔王「……あそこか」

勇者「王子!!!王子ぃぃぃ!!!」

ドラゴン「みんな!しっかりつかまってて!!!!」

僧侶「は、早く!!!」

ドラゴン「わかってるつーの!!!」


近衛兵「……っ」

王「ふん。一人だけか。まあ、よい。伝令だ。勇者一行を抹殺しろ」

近衛兵「王……それだけは……」

王「今更何をいう?奴らは人類を裏切ったのだぞ?」

魔王「――人間の王とは愚者でなくては務まらんのか?」

 
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:20:57.58:bUNM0KS30

王「ひぃぃぃ!!?」

近衛兵「ま、魔王!!!」

王「皆の者!!わ、我をまもれ!!まもらんかぁ!!!」

魔王「……貴様、誰を殺めたか分かっているのだろうな?」

王「は、はん……魔物風情が何を……!!」

魔王「この国のことを考え、自らの命を顧みず、魔王と対峙した勇敢な若人を一人、愚かにも殺めた……その意味がわかるか?」

王「は、はやく!!魔王を殺さんか!!」

魔王「この国を滅ぼしたのと同じだ……自分の手でな」

王「……王族がいれば国は滅びん!!!」

近衛兵「……」

王「は、はやくせんか!!我はに、にげるぞ!!!」

魔王「……無様だ」

近衛兵「……っ」

魔王「人間……良心に問え。人間の味方は魔王なのか、それとも自身の主君なのかをな」

近衛兵「……」

 
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:25:01.87:bUNM0KS30

ドラゴン「―――王子様!!!」

勇者「早く、僧侶さん!!」

僧侶「やっています!!」

スライム「しんじゃやだよーー!!!」

武道家「………」

僧侶「王子……王子……」

勇者「王子……!!」

ドラゴン「目をあけてよ!!火を吐くぞ!!」

王「ひぃ……はぁ……!!」

勇者「王!?」

王「き、きさまら……何故こんな場所におるのだ!!早く、戦場へ戻れ!!」

ドラゴン「お前こそ……なんでこんな安全な場所にいるのよ!?」

僧侶「……王は城にいるべきでは?」

王「は!王族は生き延びねばならん!!城の中にいては危ないではないか!!」

勇者「……っ!!!!」

 
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:29:10.95:bUNM0KS30

王「―――ぐほぉ!?」

僧侶「勇者様……!?」

ドラゴン「ちょ!?勇者……!!」

スライム「ひぃ!!痛そう……」

王「き、きさま……王である我を殴るとは……極刑だ!!」

勇者「極刑でもなんでもしてください……その前に俺が貴方を殺す」

王「……!?!」

魔王「やめんか。勇者」

王「な……!?」

勇者「魔王……」

魔王「独り占めは許さん。きっちり半分よこせ」

王「お、おい!!勇者よ!!魔王を倒せ!!そうすれば今の非礼は見なかったことにしてやろう!!」

勇者「……」

ドラゴン「吐き気がしそう」

スライム「きゅぴぃ!?火ははかないでー!!」

 
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:35:33.13:bUNM0KS30

王「はよせんか!!勇者!!勇者は魔王を倒すために―――」

勇者「魔王を倒すため……か」

魔王「ふむ……剣を抜くか、勇者よ」

王「おお!!そうだ!!それでいいのだ!!はやくやってしまえ!!」

勇者「……魔王。貴方の腰にも立派な大剣があるな」

魔王「ふむ……抜けというか?」

勇者「ああ」

魔王「よかろう……魔族に伝わる宝剣だ……切れ味は本物だぞ?」

勇者「……」

王「やれ!!勇者!!やってしまえ!!」

勇者「―――魔王。覚悟しろ」

魔王「―――うむ」

王「―――ひい!?なんだ!!貴様ら!!!何故、我に剣を向ける!!!??」

勇者「王族は逃げるべきだと?……貴方の息子が果敢にも魔族と交渉しているのを目の当たりにしてそれを言う……貴様は紛れもなく魔王だよ」

王「お、おまえ……極刑だぞ!!王族殺しはその家系にも罪が及ぶ大犯罪だ!!わかっているのか!!?」

 
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:41:40.44:bUNM0KS30

僧侶「……王子」

武道家「……ぅ……あ……」

ドラゴン「王子様!!」

スライム「きゅぴぷるー!!!」

武道家「っ……ありがとうございます……」

僧侶「よかった……本当に……」

王「おお!!目を覚ましたか!!息子よ!!早く勇者を捕えろ!!こやつは魔王と手を組み、我を殺そうとしている!!」

武道家「真か……?」

勇者「王子……俺を止めるなら今です」

武道家「―――いや、すまない。誰かに腹を撃たれた所為か、目が見えなくなってしまいました。自分は何も見えません」

王「貴様まで!!!なんという親不孝者だ!!!」

魔王「愚かすぎて笑いもこみ上げてこないな」

ドラゴン「勇者、魔王を殺しちゃえよ。どうせ謝罪なんてしてくんないよ」

僧侶「はい」

王「貴様ら死刑だ!!死刑だ!!一族も全て死刑だ!!!」

 
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:45:28.75:bUNM0KS30

魔王「……では」

勇者「ああ」

王「……やめろ!!」

魔王「もう遅い」

勇者「命乞いならもっと早くしておくべきでしたね」

王「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」

魔王「―――ふん!」

勇者「―――はぁ!!」


僧侶「……終わりましたね」

魔王「目的は果たした、軍を退こう」

勇者「魔王……」

武道家「約束は守る」

魔王「貴様の言葉は信じてやろう。だが、次に裏切った場合はもうないぞ?」

武道家「……」

魔王「―――さらばだ」

 
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:50:16.89:bUNM0KS30

城下町

魔法使い「はぁ……意外とあっさり終わったね」

僧侶「それでも甚大な被害が……」

武道家「ええ。それは自分の責務だと思っています」

勇者「王子ならきっと……大丈夫だと思います」

武道家「ありがとうございます」

スライム「きゅぴー!!がんばってください!!」

勇者「スライムは魔王と一緒に帰らなくてもよかったのか?」

スライム「もう勇者さんと一緒にいるってきめましたー!!これからも末長くよろしくおねがいします!!」

勇者「そうか……こちらこそ、よろしく」

武道家「さて……これからのことですが、皆さんはどうされるのですか?」

勇者「……」

僧侶「うーん……」

魔法使い「私はもう永久就職だしぃ」

スライム「ぼくもー!!」

 
329以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 16:55:13.78:bUNM0KS30

半年後 城内

幼竜「きゃっほー♪」

魔法使い「こらー!!暴れない!!走らない!!」

幼竜「べーっだ!!」

魔法使い「調子に乗んな糞ガキ!!!」

兵士「はぁ……すっかりここも騒がしくなりましたね?」

王「まあ、いいじゃないか。活気があって」

兵士「嫌というわけではありませんが」

王「ふふ……」

兵士「あ、王。勇者殿から手紙が届いています」

王「ありがとう。早速読んでみるよ」

兵士「はっ。こちらです」

王「……ほお」

魔法使い「王子様ー!!それ勇者から?!見せてー!!」

王「元気でやっているみたいです。自分の側近として傍に居てほしかったんですけどね……」

 
330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:00:36.10:6S/Gkihq0
幼竜ということは…

 
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:02:52.60:bUNM0KS30

漁村跡

勇者「ふう……よし」

僧侶「勇者様、少し休憩にしましょう」

勇者「ありがとうございます」

僧侶「やっと、家が建ちましたね」

勇者「まだまだこれからだけど……この村をちゃんと復興させないと」

スライム「きゅぷぅぅ……薪がおもい、です……」

勇者「スライム、無茶はダメだっていつも言ってるだろ?」

スライム「すいま、きゅうぅぅ」

勇者「僧侶さん、スライムになにか飲み物をお願いできますか?」

僧侶「はーい」

スライム「きゅぴぃぃぃ……」

勇者(王……こちらは村の再建を目指しています。まだ何もないですが、少しずつ前へ向かっていると思います)

勇者(まずは村を成すだけの仲間を集めなくてはなりませんが……)

勇者(―――人間も魔物も関係ない全ての者が共存できる場所を俺は作りたいです)
                                                       END

 
333:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:03:36.01:HHmN2P2P0


 
337:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:04:39.23:kUFhCieI0
乙!面白かったぜ

 
341:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:05:42.96:fQGjO+N1O

幼竜と聞いてしばらく固まってたが半年じゃ子供生まれるわけないもんな

 
355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:27:32.36:17oqMzs30
乙!
楽しかった。

 
364:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 17:59:15.59:m9uXXF790

幼竜はハーフの一人だろうな

 
370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/08(土) 18:27:38.83:T/PPgQAA0
面白かったよー!乙ー!

 


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