母魔王「それは困ったものね」アラー
母魔王「一応私が魔王ではあるのだけれど」
母魔王「あなたみたいな子供が勇者として来るとは思わなかったわね」
母魔王「ちょっと、何で言わなかったの?」
側近「申し訳ありません。私の失策です」
母魔王「もう……」
子勇者「なに自分たちだけでぶつぶつ言ってるの?早く戦ってよ。じゃないと……」ウルッ
母魔王「ああ、わかったわ、わかったから勇者がみっともなく泣くのはやめなさい」
こんな感じだけどどうですか?

【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」

【速報】尾田っち、ワンピース最新話でやってしまうwwww

【東方】ルックス100点の文ちゃん

【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?

韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:51:41.25:/TRB9J0s0
>>1代行感謝
母魔王「ところで、あなただけなの?」
子勇者「ふえ?」
母魔王「仲間とかは?僧侶とか、戦士とか」
子勇者「…ない」
母魔王「なんで?」
子勇者「そんなのお前と関係ないじゃん」
母魔王「子供だからって仲間になってくれなかったとか?」
子勇者「うっ」
母魔王「図星みたいね」
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:00:52.97:2axu39Ev0
子勇者「そ、そんなの関係ない!ボクはお前と戦うために来たの。おしゃべりしに来たんじゃない」
母魔王「まぁ、落ち着きなさい。私はどこにも逃げないわよ。ちゃんと戦うわ」
子勇者「……」
母魔王「それで、あなた一人でここまで来たの」
子勇者「…うん」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:05:02.56:2axu39Ev0
母魔王「はじめから」
子勇者「…ずっと一人で」
母魔王「回復とかは?そもそもどうやって戦ったの?そんな小さな体で」
子勇者「ば、馬鹿にしないで!これでも一人だけで竜も倒せたんだから」
母魔王「まぁ、それはすごく偉いわね」ナデナデ
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:15:16.98:2axu39Ev0
子勇者「な、撫でるな!」
母魔王「あら、いきなり剣振っちゃって。怪我する所だったじゃない」
子勇者「当たり前だよ。これからお前を倒さなきゃいけないから」
母魔王「まぁ、そうなのだけどね」
母魔王「ところでほんとにトラゴン一人倒したの、この子?」
側近「そのようで」
母魔王「どうやって?」
側近「普通に負けたそうです」
母魔王「普通に!?」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:24:49.78:2axu39Ev0
側近「はい、かなり強いようです。見た目と違って」
母魔王「見た目じゃ10才ぐらいみたいだけどね」
子勇者「そっちが来ないならこっちから行くよ!」
母魔王「まぁ、待ちなさいって」
子勇者「わわっ、弾かれた?!」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:40:01.68:2axu39Ev0
母魔王「こっちも魔王としての誇りがあるからね」
母魔王「勇者を相手にして言い訳を言うつもりはないけど」
母魔王「勇者として戦うには幼すぎるでしょ、あなたは」
子勇者「…」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:42:09.12:2axu39Ev0
母魔王「人間の王は一体どういうつもりあなたみたいな子供を…」
子勇者「わかんないよ……そんなの…」
母魔王「…まぁ、子供に聞いてもしょうがないか」
子勇者「わかんないんだよー!!」
母魔王「わわっ、だからいきなりはやめなさいって」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:44:57.11:2axu39Ev0
子勇「真面目に戦ってよ!お前が魔王でしょ?」
母魔「まぁ、魔王なのだけどね…困ったわね」
子勇「…」
母魔「それじゃ、ほら、側近と戦って勝ったら戦ってあげる」
子勇「勝った」
側近「負けました」
母魔「弱いわよ、あなた!それでも私の右腕なの?」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:47:41.51:2axu39Ev0
子勇「ほら、早くボクと戦ってよ!」
母魔「…やるしかないようね」
母魔「言っておくけど、私も一応魔王だからね」
母魔「勇者相手で手加減はしないわ」
子勇「っ!!」
母魔「さぁ、かかってきなさい、坊や」
子勇「…ぼ、ボクは負けないよ。ママに会うためにも」
子勇「お前を殺してママに会いに行くの!」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:52:03.82:2axu39Ev0
母魔「腕はなかなかのものね」
母魔「もしちゃんとパーティを組んで挑んでいたら負けてたかもしれない」
母魔「でも」メラゾーマ
子勇「うわっ!」
母魔「独りだけじゃあ流石に無理よ」モウイッチョ
子勇「あつっ!」
母魔「腕は認めるけど、サポートがなければただのちょっと強い子供にすぎない」
23: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/02/15(水) 00:55:55.24:f8Vq8Y4m0
子勇「うっ、やくそう…」
母魔「食べる時間をあげるとでも思って?」
子勇「ひっ!」
母魔「!!」
母魔「……」
子勇「…ふえ?」
母魔「なにしてるの、やくそう食べるんでしょ?」
子勇「え?あ、そうだった」ムシャム…
子勇「苦い」ジワッ
母魔「」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:58:37.74:rKnK81ewO
男の子だよ。
子勇「よし、回復した。また行くよ」
母魔「…あなた、まだやる気?」
子勇「当たり前だよ!ボクは勇者だから。魔王を倒すのが使命だから」
母魔「いっておくけど、今のあなたじゃ私に勝てない。少なくも独りでは」
子勇「……」
母魔「逃げなさい」
子勇「へ?」
子勇「!」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:08:39.74:2axu39Ev0
母魔「魔王からは逃げられないとかそんなことどうでも良いわ」
母魔「ちゃんとした仲間を組んで私に挑みなさい」
母魔「でないと、私はあなたと戦わない」
子勇「そんな…!そ、それでも魔王なの?」
母魔「…」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:11:30.39:2axu39Ev0
子勇「ボクは、逃げないよ。逃げられないよ」
母魔「…」
子勇「誰も、ボクの仲間になんてなってくれない」
子勇「子供だから、頼れない勇者だから、誰も助けてくれない」
子勇「ボクは独りで魔王と戦わなければいけない勇者だよ」
母魔「あなた独りじゃ私に勝てないわ」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:16:04.63:2axu39Ev0
子勇「それでも…他に方法がないよ」
子勇「ボクは魔王と勝って、早くママの元に戻りたいよ」
子勇「お前を殺したら、ボクはやっとママの元にいけるんだよ」
子勇「だから、ボクと戦って」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:19:08.63:2axu39Ev0
母魔「…わかったわ、戦いましょう。あなたと一対一で」
母魔「魔王と勇者、互いを殺さなければならない存在」
母魔「例えそれが子供だとしても、私はあなたと全力で戦って」
母魔「あなたを殺して人間どもを駆逐する」
母魔「かかってきなさい、勇者!」
子勇「い、いくよ!」タッ
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:23:53.94:2axu39Ev0
コイシガー
子勇「うわっ!」スッコロ
母魔「!」
子勇「…うっ」ウルッ
子勇「痛いよー」
母魔「」
子勇「もうやだよ、ママに会いたいよ。ふえーん」
母魔「(私、何もしてないのにすごく罪悪感が…)」アセアセ
母魔「もう、だから勇者が泣くんじゃないって言ったでしょ?」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:27:25.43:2axu39Ev0
母魔「ほら、こっちに顔見せなさい」
子勇「うぅっ」
母魔「見事に顔面から転んじゃって。なんでこんな所に小石落ちてるのよ」
母魔「今日ここ掃除した奴誰よ」
側近「メイドMです」
母魔「あの娘クビ。後軟膏持ってきて」
側近「はい」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:30:58.19:+G+y/C1ZO
母魔「ほら、顔こっち向けて」
子勇「痛い…」
母魔「傷跡残らないと良いのだけど……」
子勇「……あれ?」
母魔「他に怪我した所はない?」
子勇「う?うん……多分ない」
母魔「多分じゃないわよ。軟膏塗ってあげてるうちにさっさと探しなさい」
子勇「…なんで魔王なのにボクの傷に軟膏塗ってくれてるの?」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:37:30.54:2axu39Ev0
母魔「ほら、服脱いで」
子勇「わっ、何するの」
母魔「じっとしてなさい」ドクガノコナ
子勇「うっ!それボクの道具…」
母魔「後で傷跡とか残ったら大変だから、ちゃんと治療しとかないと後悔するわよ」
子勇「や、やめて」ウゴケナイ
母魔「……あ」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:40:50.08:2axu39Ev0
子勇「み、みないで」
母魔「なにこれ…体に傷がない所がない…」
子勇「っ…!」
母魔「こんなになるまで独りで戦って来たというの?子供独りで?」
子勇「もう…やめて!」マヒが解けた
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:42:54.68:2axu39Ev0
母魔「なっ!きゃっ!」
子勇「誰にも…見せたくなかったのに…」
子勇「こんな傷だらけの体、見せたくなかったのに」ジワッ
母魔「あなたは…いつから勇者になったの?」
子勇「もうお前と話しない。倒す!」
母魔「答えなさい!」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:45:14.52:2axu39Ev0
母魔「そんな酷い傷を負わせながら」
母魔「まだお母さんと一緒に居るべき年の子供に」
母魔「人間の王はあなたに一体なんてことをしたの!」
子勇「やーーっ!!」
母魔「うっ!」メラゾーマ
子勇「っ、こんなの!」
母魔「なっ、馬鹿な!メラゾーマなのよ?そんなに突っ込んだら肌が焼ける!」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:48:56.83:2axu39Ev0
子勇「ていっ!」
母魔「うっ!あんなの見せられたらまともに対応できない…!」
子勇「倒す!魔王を倒すとママの所にいける」
子勇「だから早く倒れて!」
母魔「…これがあなた達が自分たちを守るために立たせた者なの?人間ども」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:53:47.32:2axu39Ev0
子勇「やーっ!やーっ!」
母魔「そのまだ小さな手に自分の背ぐらいはある剣を握らせて」
母魔「まだ白い肌をドラゴンの炎に焼かせながら」
母魔「自分たちを守らなければ母を返してあげないと脅迫でもしたって言うの?」
母魔「ただ人並よりちょっと強いというだけで?!」
子勇「ギガデイン」
母魔「っ!」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:57:30.35:2axu39Ev0
子勇「やった……魔王、倒したよ」
母魔「」
子勇「ママ…これで、ママに会いにいけるよ」
子勇「ママ、待って。ボク、帰るからね」
子勇「もうどれだけ会ってないのか分からないよ」
子勇「早く会いたいよ、ママ」
母魔「ごめんね」ラリホーマ
子勇「……」zz…ママー
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:09:07.57:2axu39Ev0
母魔「この子が寝られる部屋を用意なさい」
側近「宜しいので?」
母魔「不満があるとでも言うの?」ギロリ
側近「滅相もございません」
母魔「後、この子がどうやって勇者になったのか、母とはどう離れてしまったのか」
母魔「この子に関しての全ての情報を調べてきなさい」
側近「ははっ」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:13:52.18:2axu39Ev0
ー回想ー
魔王の息子「ママー」
母魔「あら、どうしたの?子魔、その花冠」
子魔「えっとね、これね、メイドお姉ちゃんたちと一緒に作ったの」
母魔「そう、似合ってるわね」
子魔「それでね、これ、ママの」
母魔「ママに?」
子魔「うん、ボクが作ったの、花冠。ちょっと変だけど」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:16:17.91:2axu39Ev0
母魔「そんなことないわ。ママ子魔にプレゼントもらえてとても嬉しいわ」
子魔「ほんと?」
母魔「子魔が飾ってくれる?」
子魔「うん」
母魔「どう?」
子魔「すごく似あってるよ、ママ」
母魔「子魔とおそろいね」
子魔「うん♪」
ー回想終わりー
母魔「子魔……」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:21:59.42:2axu39Ev0
側近「魔王さま」
母魔「勇者は」
側近「はい、丁寧に運ばせました」
母魔「私が行くまで起きないようにしておきなさい」
側近「すでに指示しております。身勝手ながら、
治療魔法に一見識を持ってる者を呼んでおきました。体の傷跡を治すことが出来るかはわかりませんが
母魔「…ありがとう」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:24:30.78:2axu39Ev0
側近「魔王さまの側にいてもう五百年ですから」
母魔「…」
側近「あの勇者の姿を見て亡くなられたぼっちゃんのことを…」
母魔「側近」
側近「失礼…」
母魔「…いえ、たしかにあなたの言う通りよ、否定しない」
母魔「あの子を見ていたら、子魔のことを思い出してしまった」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:29:07.27:2axu39Ev0
母魔「可愛い子だった」
側近「坊ちゃんは生まれつきの強さと賢さをお持ちになっておられました」
側近「坊ちゃんが生きて居られたら、きっと歴代最強の魔王になられたでしょう」
母魔「…子魔はもう居ないわ」
母魔「私のせいだった」
側近「そのようなことは…」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:32:14.67:2axu39Ev0
母魔「私が人類滅亡などとくだらない計画に目を眩んでさえいなければ」
母魔「あの子があんなに虚しく病で死ぬ前に助けられたはずよ」
母魔「優しいあの子は私の邪魔にならないようと自分の病を隠していた
母魔「気づいた時はもう何もかも遅かった」
母魔「魔王ともあろう者が自分の子独りを助けることが出来なかった」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:35:08.66:2axu39Ev0
側近「その後、魔王さまは達成寸前まで行っていた人類滅亡計画を咄嗟に中止なさいました」
側近「そして百年ぶりに人間はまるでゴキブリのように蘇ってきてまた我らを威脅しました」
母魔「そして送ってきた勇者という人間は、まだまだ小さい子供」
母魔「いったいどういうことなの」
側近「それなのですが」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:37:49.04:2axu39Ev0
側近「水晶玉で、人間の国の様子を見たのですが」
母魔「何?」
側近「勇者の母となる者は、見るに国王の妃になったそうです」
母魔「…は?」
側近「今の人間の王はとても好色な男で、」
側近「美しい勇者の母を見て目が眩んだようです」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:42:46.41:2axu39Ev0
側近「夫を若くして亡くした勇者の母を見て」
側近「人間の王は彼女を己の者にしようと画策したようです」
側近「そして邪魔になる息子は勇者と称して
我らの元へ送り始末するつもりだったようで」
母魔「母は何もしなかったというの?」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:45:10.09:2axu39Ev0
側近「なにやらその母という人間も男の肌が恋しかったようで」
側近「しかも相手は王、目が眩んで子を見捨てるとしてもおかしくはないかと」
母魔「下衆どもが」
側近「人間も腐ったものです」
側近「先代の魔王たちも認めていた人間の良き所はまるで残っていません」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:48:09.76:2axu39Ev0
側近「如何いたしましょう。勇者は」
母魔「……」
側近「そのまま人間の国へ返すとしても、またここへ戻されるか、それとも…」
母魔「…まだ小さい子よ。なのに自分が捨てられたことも知らずに、ここまで来た」
側近「人間とは思えぬほどの強い精神を持った者です」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:50:23.65:2axu39Ev0
母魔「誰にも頼らず己の力のみでここまでやってきた。
母魔「あの子は勇者ではない。魔王の器よ」
側近「私もそう思います」
母魔「あの子を魔王に育てれば、きっと良い魔王になる」
側近「彼を洗脳しましょうか?」
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:53:04.57:2axu39Ev0
母魔「いいえ、そのつもりはない」
側近「と言いますと?」
母魔「あの子を魔王にはしないわ」
側近「ならば」
母魔「…側近、あの子の母の姿、見せてみなさい」
側近「魔王さま、それは」
母魔「命令よ」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:57:16.55:2axu39Ev0
子勇の居る部屋
子勇「…うん、ママ…会いたいよ」
「勇者…起きなさい」
子勇「ママ…?」
「勇者」
母「勇者」
子勇「……ママ?」
母「勇者」
子勇「ママ……ママー!!」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 02:59:26.79:2axu39Ev0
子勇「ママー!あいたかったよー」
母「はい、ママも勇者に会いたかったわ。良く頑張ったわね」
子勇「…ママ?」
母「うん?どうしたの?」
子勇「どうして、ボクのこと勇者って呼ぶの?」
母「うん?あ、ああ、ごめん、皆勇者って呼ぶからついママもそう読んじゃうのよね」アセアセ
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:02:06.49:2axu39Ev0
子勇「やだー、ママはボクのこと子勇って呼ぶの。勇者って呼ぶのやー」
母「そ、そうね。ごめんなさい、ママが子勇のこと間違って読んじゃって」
母「ママに怒ったのかしら」
子勇「!ううん、違うよ。怒ってないよ。ママ大好きだよ」
母「うん、ママも子勇のこと大好きだよ」
子勇「ママ」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:06:31.25:2axu39Ev0
母「ほら、起きなさい。ママがご飯作ったから」
子勇「ご飯!」ぐぅー
母「あらあら、お腹ペコペコみたいね」
子勇「うぅ…」コク
母「ほら、早く手洗ってきなさい。ママと一緒にご飯食べましょう」
子勇「うん」
母魔「…」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:16:14.42:2axu39Ev0
母「はい、今日は子勇が帰ってきたことを祝って大盤振る舞いよ」
子勇「わーっ、すごくおいしそー!」
母「ちゃんと手は洗ってきたわね?」
子勇「うん、いただきます」
母「召し上がれ」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:19:37.00:2axu39Ev0
母「もうそんなに早く食べなくても食べ物はどっかに行きませんよ?」
子勇「うっ!」詰まった
母「ほら、だから言ったじゃない」トントン
子勇「けほっ!けほっ!ふぅ、死ぬかと思った」
母「もう…そんなの美味しかったの」
子勇「うん!ママが作ってくれた料理、すごく美味しいよ!」
母「そう言ってくれると作った甲斐あるわね」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:22:51.99:2axu39Ev0
子勇「ママ」
母「何?」
子勇「どうしてボクとママ、お城の中に居るの?」
母「うん、それはね……そう、王さまにもらったのよ」
子勇「…王さま嫌い」
母「あら、どうして?」
子勇「だって、ママのこといやらしい目で見てたもん」
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:25:33.31:2axu39Ev0
母「もうそんなこと言って…」
子勇「だってほんとだもん。城を出る時もママのこと合わせてくれなかったんだもん」
母「……うん、そうかもね。でも、もうそんなことはいいでしょ」
母「これからはママはどこにも消えない。子勇と一緒に、ずっとここで住むのよ?」
子勇「ずっと?」
母「ずっと、二人だけで」
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:28:10.93:2axu39Ev0
子勇「昔みたいに?」
母「そう。子勇もそれがいいよね?」
母「このお城はね。王さまが魔王を倒した勇者にくれたお城なの」
母「ここでママとずっと一緒に住むのよ」
子勇「…嬉しい」
母「ママも嬉しいわ。こうしてあなたが無事に戻ってきてくれて、ほんとに良かった」
子勇「……」
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:31:37.25:2axu39Ev0
母「お腹いっぱい食べた?」
子勇「うん、お腹いっぱい……ふああ」
母「また眠くなったの。さっきあんなに寝てお寝坊さんだね」
子勇「うぅ…だって眠いんだもん」
母「ふふっ、そうね、眠いんだもんね、仕方ないわね」
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:35:49.37:2axu39Ev0
子勇「ね、ママ、一緒に寝よ?」
母「甘えん坊さんね。魔王も倒した勇者さまが、ママが一緒に寝てくれないと眠れない子と誰が想像するのかしら」
子勇「うぅ…今日のママは凄く意地悪だよ」
母「あらあら、ごめんね。ほんとはママも子勇とずっと一緒に寝たかったの」
子勇「ほんと?」パーッ
母「ほんとよ」ニコッ
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:39:15.47:2axu39Ev0
子勇「お休みなさい」
母「ええ、お休みなさい、子勇」チュッ
子勇「わっ!」
母「うん?どうしたの?寝る前にいつもほっぺにチューしてたじゃない」
子勇「してない、そんなことしてないよ?」
母「あ、あら?そうだったっけ。じゃあ、これからは寝る前に子勇のほっぺにチューしちゃうね」
子勇「……うん」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:41:42.77:2axu39Ev0
子勇「」すぴー
母「…」
母魔「子魔…」
子勇「…ママーらいすき…」
母魔「……」ギューッ
側近「魔王さま」
母魔「声が大きいわ」
側近「失礼しました」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:45:07.74:2axu39Ev0
母魔「報告を」
側近「魔族の精鋭軍団を、全て集めました。いつでも人間どもの息の根を絶つことができます」
母魔「…やってしまいなさい」
母魔「淫行に乱れたバビロンを滅ぼしてしまいなさい」
母魔「その地が彼らの悲鳴と血を吸って、二度とあのような汚らわしい生き物どもがこの世に残らないようにしなさい」
側近「ははっ」
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:53:19.68:2axu39Ev0
子勇「…ん……ママ?」
子勇「居ない」
子勇「ママはどこ?」
子勇「ママ、ボクを置いて行かないで」
子勇「ボクと一緒に居て」
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:55:56.42:2axu39Ev0
人間の王都の城
王「ええいっ、使えない勇者め!こんな所まで魔族どもが入ってくるとは」
王の側近「陛下!ここは危険です、お逃げくださ…」
王「ふざけるなー!」
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 03:59:35.72:2axu39Ev0
王「逃げろだと。俺にこの城を逃げろだと!」
王「この城には俺の全てが残ってるんだ」
王「財宝が!女が!俺の全てがここにある!」
王「それを失ってしまえば俺は何になるというのだ!」
母魔「ただの屍になってしまえばいいんじゃないかしら」
王「!」
ぐちゃり
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:04:51.55:2axu39Ev0
王の側近「ひ、ひぃ!魔王!」
母魔「…この城に勇者の母親が居るはずよ。どこに居るか教えなさい」
王の側近「お、おおしえます!教えますから命だけは…!」
母魔「言え」
王の側近「そ、その女は王様が娶った数カ月後に飽きたと他の女たちと一緒に牢屋に…」
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:10:25.60:2axu39Ev0
母魔「そう、わかった。もういっていいわ」
王の側近「あ、ありがとうございま…」グチャリ
母魔「逝ってよし…と」
母魔「本当に腐ってしまったようね、人間は。魔王の存在も忘れて
自分たちの娯楽に酔っていた」
母魔「これが長く続いた人間と魔族の戦いの終焉とは、複雑なものよ」
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:13:36.88:2axu39Ev0
側近「魔王さま、城の制圧が終わりました」
母魔「勇者、いえ、子勇の母親を確保しなさい。私直々に話すことがあるわ」
側近「御意」
母魔「その他は各自好きにさせなさい」
母魔「人間を食ってもよし。女を慰み者にしてもよし。自由行動よ」
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:16:17.79:2axu39Ev0
子勇「ママー」
子勇「ママがどこにも居ない」
子勇「なんか、この城、どこかで見たような気がするよ」
子勇「まるで魔王が居たしろ……」
「勇者」
子勇「…!」
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:21:27.00:2axu39Ev0
母「……」
母魔「あなたが子勇の母親ね」
母「…」
母魔「あなたは私が知っている母親の中でも最悪よ」
母魔「自分の欲のために子を死地に送り込み、王と堕落した」
母魔「でも、そんなあなたでも母ならまだ少しは人間らしさを保ってるでしょう」
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:24:46.17:2axu39Ev0
母魔「あなたに最後のチャンスをあげる。
子勇を連れてこの城を出て、人間の国を出なさい」
母魔「どこに行ってもいい。私の目にはいらない所で、
子勇と一緒に以前ように幸せに住みなさい」
母魔「強い子を育てた貴女だからこそ、その罪を許してチャンスを与えるのよ」
母「……ふざけるな」
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:27:07.75:2axu39Ev0
母「ふざけるな!あんなの私の子じゃない!いや、人間の子じゃない!」
母魔「…」
母「アレは生んだ時から気持ち悪いと思っていた。人間とは思えない強さ」
母「なのにいつも私の近くに居ようとした」
母「怖くて気持ち悪い。アレもお前たちみたいな化物よ」
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:30:10.00:2axu39Ev0
母「死ね!皆死んでしまえ!貴様ら不気味な魔族どもに負ける人間じゃない」
母「いつかまたどこから勇者が現れて貴様らを倒して新しい人間の王国を作る」
母「その時は貴様ら私たち人間に命を乞ってるでしょうね」
母「でも助けてあげない。何故か分かる?」
母「貴様らのような気持ち悪いやつらはこの世から居なくなった方がいいからよ!」
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:32:11.94:2axu39Ev0
母魔「…たしかに、ここでこのまま消え去るあなた達人間じゃないわね」
母魔「この戦いがここで終わるわけがない」
母魔「でもね、今はそんなことどうでもいいのよ」
母魔「私が何であの昔あなたたちを生かしたのか知ってる?」
母魔「私が母としての自分を忘れてあなたたちへの憎悪心で自分の息子を殺したからよ」
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:34:51.61:2axu39Ev0
母魔「でも、今度は人間が魔王の私さえも反吐が出そうな真似をしてくれた」
母魔「母の胸を恋しがる子供に剣を握らせ私を殺そうと送って」
母魔「自分たちは享楽に溺れていた」
母魔「それが許せなかった。そんな生き物がこの世に居ていいはずがない」
母魔「でも、それじゃああの子が可哀想よ」
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:37:05.34:2axu39Ev0
母魔「ましてや、あの子は人間の全てを救うためで戦ったわけでもない」
母魔「ただあなたをまた見るために」
母魔「あなたと一緒に居て幸せだったあの日々を取り戻そうとその小さな体で」
母魔「この世で一番強い者に挑んだ」
母魔「なのにあなたの口から出る言葉はそれだけ?気持ち悪い?」
母魔「ふざけるな!!
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:39:51.60:2axu39Ev0
母魔「貴様がそれでも人間か!母親か!」
母魔「同じ母として恥ずかしい!」
母魔「この世で私が見てきた人間の中で」
母魔「貴様のその姿が一番醜くで、気持ち悪い!」
母魔「この世から消え去ってしまえ!」
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:41:58.25:2axu39Ev0
子勇「ママ」
母魔「!」
子勇「ママ」
母魔「子勇、どうしてここに…!」
母「子勇」
子勇「…ママが、二人?」
132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:44:17.05:2axu39Ev0
母「子、子勇、助けて!ママよ!ママを助けなさい!」
子勇「…ママ?」
母魔「」
子勇「…」
母「何してるの?ママがこの卑劣な魔族に殺されそうになってるじゃない!」
母「早く助けなさい!あなたは『勇者』でしょ!」
子勇「…!」
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:44:46.74:ItSfo8Uj0
子勇「ママ…」
母魔「…」
子勇「そう、ボクは勇者」
子勇「魔王を倒すのがボクの使命」
母魔「子勇…」
母「そう、そうよ!だからあの魔王を早く倒してしまいなさい!」
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:49:44.76:2axu39Ev0
子勇「でもね」
子勇「もう疲れたの」
子勇「ボク、子供なんだよ」
子勇「結局、誰も助けられない」
子勇「人たちを、魔王から救えないよ」
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:53:51.74:2axu39Ev0
母「そんなのどうでも良いわ!」
母「ママだけでも良い!」
母「ママ一人でも助けなさい!」
子勇「……分かった」
子勇「…直ぐに、助けてあげる」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:57:25.51:2axu39Ev0
子勇「魔王」
母魔「子勇、あなたのママは外道よ。こんなの人間とも言えないほど腐ってる」
子勇「それでも…ボクのママだよ」
母魔「…わかったわ」
子勇「ありがとう。おかげで…久しぶりに、ううん、
生まれて初めて幸せだったよ」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:00:03.12:2axu39Ev0
母「ゆう……しゃ…」ペチャ
子勇「ママ、ボクは、勇者じゃないよ」
子勇「ボクは、一度も『勇者』だったことなんてなかったよ」
子勇「ボクはただ、ママの『子勇』で居たかった」
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:03:53.49:2axu39Ev0
子勇「好きだったよ、ママ」
母「……」
母魔「どうして…」
子勇「ボクがママに出来ることはこれぐらいしかないから」
子勇「せめて自分の手で終わらせるぐらいしか出来ないから」
子勇「知ってたよ」
子勇「実はママは最初からボクなんて愛してなかったって」
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:06:21.95:2axu39Ev0
子勇「でも魔王を倒したらね、きっとママも振り向いてくれるだろうと思ったの」
子勇「ボクが想ってきたママに会えると思ってたの」
子勇「でも、駄目だった」
子勇「だから、ありがとう、魔王」
子勇「最後にボクが欲しかったママを見せてくれて、ありがとう」
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:08:28.78:2axu39Ev0
母魔「やめなさい」
子勇「…」
母魔「死なないで」
子勇「ボクはもう休みたいよ」
子勇「もう、ママも居ないから」
子勇「もう頑張る必要もないよ」
151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:10:38.22:2axu39Ev0
母魔「もうたくさんよ」
母魔「あなたのこんな姿を見ようとここまでやったわけじゃないのに…」
母魔「どうして私の気持ちをわかってくれないの?」
母魔「なんで自分だけ晴れた気持ちで消えようとするの?」
母魔「ずるいじゃない」
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:13:02.52:2axu39Ev0
母魔「私にも償わせて」
母魔「私に償わせて」
母魔「あなたの幸せも」
母魔「あの子の幸せも守れないというのなら」
母魔「私は何のためにここまでやらなければいけなかったの?」
母魔「私がどうすればよかったの」
母魔「ね、『子勇』」
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:18:35.70:2axu39Ev0
子勇「…」
子勇「魔王」
母魔「……」ブルブル
子勇「泣いてる?」
母魔「……」ギューッ
子勇「…泣かないで」
子勇「ボクは……ボクはどうすればいいか分からないよ」
子勇「ボクは子供だから、こんな時どうすれば良いのか……あ」
161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:20:42.90:2axu39Ev0
母魔「子魔…」
母魔「ごめんね」
母魔「ママが…馬鹿で…出来損ないのママで……」
母魔「守れなかった」
母魔「何も…誰も守れなかった」
チュッ
164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:24:25.81:2axu39Ev0
母魔「あ」
子勇「泣かないで」
母魔「子…勇」
子勇「ボクね、勇者じゃない」
子勇「ママに愛された子でもない」
子勇「だけど、ボクのせいで誰かが泣くのは見たくない」
子勇「コレ以上、誰かが不幸せになるのは嫌」
子勇「だから……もう泣かないで
『ママ』
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:26:27.17:2axu39Ev0
その後
人間は世界から消し去った。
もちろんそれが種が絶えたというわけではないだろう。
人間はとてもしつこく生きる生き物だから、
きっと今頃また新しい勇者がどこかで生まれているかもしれない
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:28:52.94:2axu39Ev0
でも、今はそんなことはどうでもいい。
だってこの物語は、魔王と勇者、剣と魔法の物語ではないから。
少なくとも、今この場で繰り広げられている物語は
母「子勇」チュッ
子勇「ママ」チュッ
母と子との幸せな日々、ただそれだけのお話だから。
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:31:18.47:2axu39Ev0
皆ありがとう
母魔「移住計画は?」
側近「着々と進んでいます」
母魔「人間たちの住処を完全に奪わなければいつまた蘇ってくるかわからないわ」
母魔「この機に人間界まで全部私たちのものにする」
子勇「ママー、お腹すいた」グゥー
母魔「あ、うん、そうね、そろそろお昼にしましょうか」ニコッ
213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:23:59.95:2axu39Ev0
母魔「ゴメンね、最近忙しくてママが手作り料理作れなくて」
子勇「うん、大丈夫」
子勇「ママと一緒に食事出来るだけでもうれしい」
母魔「子勇」ジワッ
母魔「ありがとうね」ナデナデ
子勇「うん…」
216:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:27:18.58:2axu39Ev0
側近「魔王さま、申し上げたいことが」
母魔「何かしら」
子勇「…」すぴー
側近「勇者、いえ、子勇さまのことです」
母魔「…」
側近「御存知の通り、幾ら強くて尚優しい子勇さまとしても結局人間」
側近「人類抹殺計画遂行中の今、子勇の存在に反感を持つ魔族たちも
少なくありません」
218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:30:07.58:2axu39Ev0
母魔「言いたいことはわかったわ」
母魔「この子を魔族に変えるべきだと言いたいのね」
側近「はっ」
母魔「…私が嫌と言ったら?」
側近「仕方のないことですが、何故」
母魔「あの子の今の姿を否定するのが嫌なのよ」
母魔「子勇の今の姿、その優しさ、人間の勇者だったからこそのその純粋さ」
220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:32:15.45:2axu39Ev0
母魔「腐った人間の世界でたった一人綺麗に残ってくれたこの子の純白さ」
母魔「私はそんなものたちに惹かれたのよ」
母魔「なのに今更この子を魔族にしてしまったら」
母魔「私はこの子のそういう良いところたちを全否定しなければならない」
母魔「それじゃ、私は今までこの子に嘘を付いてきたことにしかならない」
222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:36:30.63:2axu39Ev0
側近「ですが、魔王さま」
側近「御存知の通り、人間の寿命は魔族に比べれば儚いもの」
側近「しかもこれから10年もあれば、子勇さまは成人としての成長を終えます」
側近「そしてそれは魔王さまのことを理解するにはあまりにも短い時間です」
224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:39:01.21:2axu39Ev0
側近「大人になった子勇さまが、再び人間の勇者として
魔王さまに歯向かうことも考え無くありません」
母魔「…否定はできないわね」
側近「せっかく訪れたこの平和」
側近「揺るがすようなことがあってはありません」
側近「この側近、この命を賭けて進言します」
側近「子勇さまを魔族に替えるべきです」
225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:41:23.12:2axu39Ev0
母魔「…少し考えさせて頂戴」
側近「どうか、我ら魔族のためにも、子勇さまのためにも良き決断を」
母魔「…子勇」
子勇「…ぅん…」
母魔「私は…」
227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:44:48.44:2axu39Ev0
子勇「ママ、ママ見て、これ、幼馴染ちゃん花冠作ったの」
子勇「ママにもあげる!」
ママ「」
子勇「…ママ?どうしたの?そんなにぐったりしてて」ユサッ
ピチャッ
子勇「え?」
子勇「赤い……ボクの手、赤い」
子勇「……あ、そうか」
子勇「ボクが…」
228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:46:50.62:2axu39Ev0
母「…『勇者』」
子勇「!」
母「勇者、助けて。ママを助けて」
子勇「や……やだ」
子勇「もうやめてよ」
母「勇者…」
子勇「違う!」
子勇「ボクは勇者じゃない!」
子勇「ボクを勇者って呼ばないで!」
230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:48:55.18:2axu39Ev0
子勇「違う…勇者じゃ…勇者じゃないよ」
母魔「子勇、子勇起きなさい」
子勇「!!」
母魔「どうしたの?」
子勇「…魔王」
母魔「!!」
子勇「……ママ」
母魔「子勇」
231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:51:00.35:2axu39Ev0
母魔「大丈夫」
母魔「私がママだよ」
母魔「あなたは子勇」
母魔「それだけだから」
母魔「もうそれだけだから」
母魔「子勇のことが大好きなママがここに居るだけだから」
子勇「ママ…」ギュー
232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:53:02.66:2axu39Ev0
母魔「(言えない)」
母魔「(今この子に魔族になってほしいなんて言ってしまったら)」
母魔「(きっと壊れてしまう)」
母魔「(この優しい子の笑顔を)」
母魔「(絶望に落として二度と掬いあげられないようにしてしまう)」
235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:58:26.19:2axu39Ev0
母魔「子勇」
母魔「ママが一緒に寝てあげる」
母魔「あなたが魘されないように」
母魔「誰もあなたにまたあんな酷いことができないように」
母魔「ママが守ってあげるから」
母魔「あなたは笑ってだけ居て」
238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:13:01.85:2axu39Ev0
竜の王「近頃魔王さまが政務を務まらないことが増えたと聞くが」
妖精の女王「聞く話では、人間の子供を一人拾って死んだ息子の代わりにしてるとか」
狼の頭「くだらん!人間など生かしてなるものか。魔王さま自ら自分の規則を破っている」
魔女「しかしながら、息子を失った魔王さま傷心がどれほど大きかったかは
ここに居る皆が知っていること」
240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:16:37.45:2axu39Ev0
魔女「聞くとその人間の勇者を見て魔王さまは百年も待っていた人類撲滅計画を
やっとの思いで実行なさったとか」
竜の王「なにはともあれ、たかが人間の子供一人に気を奪われ魔族たちを蔑ろにされては困る」
妖精女王「とは言え、今の魔王さまが良き方なのもまた事実でしょう」
妖精女王「現に、魔族たちは過去に無いほど豊かに生きています」
243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:22:58.15:2axu39Ev0
狼の頭「だがそれも人間が残っていれば儚いものだ。
一瞬で全ての繁栄が崩れ落ちるかもしれん!」
竜の王「側近はなんと言っていた」
魔女「説得なさったようですが、魔王さまもまた頑固なお方」
魔女「増してやその子を人間としてでなく、自分の子のように可愛がっていますから」
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:25:35.66:2axu39Ev0
竜の王「我らは魔族の各種族の長だ」
竜の王「魔族全体のためにも、この怪異な状況を打開せねばならない」
竜の王「魔王さまがご自分の過ちに気付かれないのであれば」
竜の王「我らの手でそれを気づかせるべきだ」
狼の頭「俺は竜の王に同意する」
245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:28:52.51:2axu39Ev0
妖精女王「魔王さまが育てる人間です」
妖精女王「それほどの問題になるのでしょうか」
魔女「全ての魔族を率いるお方です。一人の人間に魔族全てを蔑ろにされては」
妖精女王「ですが、それが母というものです」
妖精女王「他のなによりも子を愛することを最優先にするのが母の務めというもの」
247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:31:21.43:2axu39Ev0
妖精女王「恐れながら、一人の娘の母として、わたくしはその反逆に参加できません」
竜の王「これは反逆ではない。魔王さまを正しい道へ導くためのことだ」
狼の頭「しかも、その子とは人間。魔王さまのそれは子育てにもならない」
狼の頭「せいぜい飼い慣らし、飼育だ」
248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:35:15.83:2axu39Ev0
魔女「忠節の気持ちは同じでもその形はそれぞれ」
魔女「ですが覚えてください。この違い、下手すれば人間によってではなく
我らの手で魔族の未来を壊す結果になるかもしれないということを…」
竜の王「魔女、あなたはどっちに付く」
魔女「…私は独自に行動させて頂きましょう」
魔女「自分の目で確かめたいことがあります故」
250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:37:49.66:2axu39Ev0
母魔「新たな勇者…か」
側近「はっ、どうやらかの王の娘がまで生き残っていたようで」
母魔「とんだ失策だったわね。私がしっかりしていなかったせいよ」
側近「…」
母魔「その勇者は」
側近「一ヶ月後にはここに辿り着くでしょう。いえ、その前に討伐出来れば良い話ですが」
252:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:39:51.84:2axu39Ev0
母魔「いえ、ここまで辿り着くようになさい」
母魔「魔族と人間、例え人間が腐ってしまってもその縁はまだ残っている」
母魔「私たちの間の戦いは、必ず魔王と勇者で決着を着けなければならない」
側近「宜しいので?」
母魔「逆に問いましょう、側近。あなたは私という魔王をどう思うのかしら」
254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:43:53.55:2axu39Ev0
側近「あなたは良き魔王です」
側近「それは今の生きる魔族誰もが認めること」
側近「ですが、」
側近「それ以上あなた様は、良い母親で居たかった」
側近「それだけのことです」
255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:46:08.53:2axu39Ev0
母魔「…私も知らないわけじゃないわ」
母魔「子勇のことを良く思わない一部の魔族」
母魔「いえ、寧ろその方がより多いでしょうね」
母魔「でもね。例えそうだとしても私は諦めるつもりはない」
母魔「子勇は、私の子よ。あのままで、人間のままで、私の子よ」
257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:48:58.83:2axu39Ev0
魔女「魔王さまにそれほどの覚悟させた人間」
母魔「!」
魔女「人間と言え、なかなかも者のようです」
側近「魔女、ここがどこだと思って盗み聴きなどを…!」
母魔「結構よ」
259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:51:56.88:2axu39Ev0
母魔「言ってみなさい、魔女」
母魔「魔族の者たちが今の私をどう思っているか」
母魔「人間の子に誑かされ魔族全てを威脅している出来損ないの魔王」
母魔「私を失脚させようと今頃軍を集めている頃だろうと思うのだけど」
魔女「…魔王さまは、己のことをあまりにも過小評価しています」
魔女「そのような姿も子魔さまを失ってからでした」
262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:54:46.44:2axu39Ev0
魔女「ですが、私には見えます」
魔女「その人間の子供が、あなたをもっと強くしてくれています」
魔女「魔族の長としてではなく、母としての魔王の姿」
魔女「それが本来魔王さまの力の源だったのですから」
266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 15:58:42.75:2axu39Ev0
魔女「現在竜の王を主軸として、魔族たちの中で魔王さまへの嘆願書を準備しています」
魔女「魔王さまがかの人間を殺すか、もしくは魔族に変えなければ」
魔女「きっと魔族たちは魔王さまを攻めるでしょう」
母魔「……あってはならないことよ」
270:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:03:49.82:2axu39Ev0
母魔「せっかく得られた魔族たちの栄光。どんなことがあっても失うわけにはいかない」
母魔「増してや魔族たちの自分の手で…」
母魔「そんなことが起こってしまったら、魔族は二度と立ち直れなくなる」
魔女「…」
271:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:07:13.93:2axu39Ev0
子勇「……うん?」
?「あなたが例の人間の子かしら」
子勇「…ママに会いにきたの」
?「…そう、魔王さまをママと」
子勇「魔王じゃない!」
?「!」
子勇「魔王じゃ…ない」
273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:09:14.68:2axu39Ev0
妖精の女王(以後、女王)「この力、まさか勇者?」
女王「魔王さまが息子にした人間とは、まさか勇者のことだったの?」
女王「しかもこんな小さい子が勇者に…」
子勇「勇者……」
子勇「勇者じゃない」
274:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:11:23.98:2axu39Ev0
子勇「勇者なら人を守るのにボクは守れなかった」
子勇「勇者なのに魔王に勝たなきゃいけないのに、ボクは勝てなかった」
子勇「勇者なら、ママを守らなきゃいけなかったのに…」
子勇「ボクは…ボクはあんなことしか出来なかった」
子勇「この手で…ママを」
276:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:16:26.93:2axu39Ev0
子勇「ママが…ママは…ボクのことを子勇って呼ぶの」
子勇「ボクは『勇者』じゃない。勇者になんてなりたくない」
子勇「ボクのママは…魔王だよ」
子勇「でもボクが『勇者』で、ママが『魔王』だなんて」
子勇「そんなの嫌だから」
子勇「だから、魔王って呼ばないで。魔王じゃない」
子勇「ボクのママは…魔王じゃない」
277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:21:35.70:2axu39Ev0
母魔「魔族は、勇者と戦いに魔王という私の存在をいつも必要としてきた」
母魔「だけど、あなた達が本当にほしいのは、自分たちの代表出来る存在」
母魔「自分たちの人間への憎悪感を代表出来る」
母魔「その大きな負の感情を持ってまた人間の代表者である勇者に立ち向かえる存在」
母魔「それが魔王」
282:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:26:32.76:2axu39Ev0
母魔「その互いを憎むべき存在として作られたのが魔王と勇者」
母魔「相容れない二つの集団の憎さを代表するために作られた代役」
母魔「でも、それが出来ないとしたら」
母魔「魔王が勇者を憎めないというのなら」
母魔「勇者が魔王を憎めないとしたら」
母魔「もう、その代役を任される筋合いなんてない」
285:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:34:21.26:2axu39Ev0
魔女「ただ人間一人のために」
魔女「我々を見捨てるというのですか」
魔女「あなただけを信じてここまで来た魔族全てを」
魔女「また混乱の渦の中に戻れと言うのですか?」
母魔「私があの子のママにあるためになら…ええ」
287:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:37:31.19:2axu39Ev0
魔女「例えあなたがそう言おうとも」
魔女「あなたは魔王で居なければいけません」
魔女「魔族という大きな集団のために」
魔女「勇者がそうであるように」
魔女「あなたもまた犠牲にされなければならないのです」
288:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:40:08.22:2axu39Ev0
母魔「どうするつもりなのかしら」
魔女「まだまだ魔女として極みを知らない私ですが」
魔女「先々代から尽くしてきたこの力」
魔女「恐れながらあなたの記憶をいじらせて頂きます」
魔女「人間をもっと憎むように。あの子共さえも殺せるほど
強い人間への憎しみをあなたに」
母魔「ただでやられると思っているのかしら」
290:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:42:27.18:2axu39Ev0
魔女「例え魔王さまでも、私の魔力には敵えません」
母魔「そうかしらね」
母魔「あなたの言う通りよ」
母魔「あの子が、子勇が私の力の源なのよ」
母魔「あなたたちはその子を子魔の代わりだと言っていたけど違う」
母魔「子勇は子勇よ。そのままで、私の大切な子よ」
291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:44:40.16:2axu39Ev0
魔女「あなたみたいな方が魔王になられて、実に残念と思います」
母魔「魔族たちへ?それとも私へかしら」
魔女「どっちにも、です」
魔女「どの道、私は魔族たちのために、あなたを抑えなければなりません」
「邪魔だよ」
魔女「へっ?」ぐちゃり
292:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:46:46.30:2axu39Ev0
魔女「あ……そん…な」
子勇「…」
魔女「そう…そういうことでしたのね」
魔女「結局、これもまた勇者と魔王との戦いだったのです」
子勇「違う」
子勇「勇者もいない。魔王も居ないよ」
子勇「居るのは…」
グサッ
294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:48:59.40:2axu39Ev0
母魔「子、勇?」
子勇「『魔王』」
母魔「!それは、妖精女王の首…まさかあなた」
子勇「ボクと、戦って」
297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:52:20.02:2axu39Ev0
母魔「なにを言ってるの?」
母魔「あなたは子勇だよ。勇者なんかじゃない」
母魔「嫌よ!」
母魔「どうして!どうしてあなたと戦わなければいけないの?」
母魔「どうしてあなたは勇者にならなければならなかったの?」
母魔「どうして私は魔王としてあなたに会わなければならなかったの!」
299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:54:22.60:2axu39Ev0
母魔「あなたを愛することさえ出来ればそれでいいのに」
母魔「それがそんな大きな願いなの?」
母魔「あなたを誰かの代わりにするつもりなんてなかった」
母魔「私自身もあなたにとって誰かの代わりものとされるのが嫌だったから」
300:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:56:27.75:2axu39Ev0
子勇「…」
母魔「嫌よ」
母魔「あなたをコレ以上傷つけたくない」
母魔「そんなこと私にさせないで」
母魔「私は嫌なの」
母魔「あなたを傷つくのも、あなたが誰かに傷つけられるのも全部嫌」
302:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 16:58:56.27:2axu39Ev0
子勇「…『魔王』」
母魔「!」ジワッ
子勇「ボクと、戦って、お願い」
母魔「…嫌」
子勇「戦って、お前を倒さないと
ママに会えない」
303:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:03:33.56:2axu39Ev0
母魔「…へ?」
子勇「ボクと戦って」
子勇「ボクが魔王を倒したら、『魔王』は子勇のママになる」
子勇「魔王がボクを倒したら、『勇者』はママの子勇になる」
子勇「他のなんでもない。ただそれだけの存在になるの」
305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:06:05.91:2axu39Ev0
母魔「…!」
母魔「そうか。……そうなの」
母魔「そういうことなの!」
母魔「……『勇者』」
母魔「さあ、良くここまで来たわね『勇者』」
306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:08:24.39:2axu39Ev0
母魔「私と戦いなさい、『勇者』」
母魔「あなたが持っている全てを私にぶつけてきなさい」
母魔「私も自分が持っている全てをあなたにぶつけるわ」
母魔「私の望みはただ一つ」
母魔「私の愛おしい『子勇』を返しなさい!」
子勇「倒れて魔王、そしてボクの『ママ』を返して」
魔、勇「この世から消え去ってしまえ!!
311:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:17:41.15:2axu39Ev0
この魔王と勇者の勝負がどう決まったのだろうか。
その答えを知ろうとするものに問いたい。
それが重要なのかと。
魔王が勝っても、勇者が勝っても、結局この世界の人間と魔族の戦いは絶えないだろう。
そして魔王と、勇者は、その互いをただただ憎しみ会う二つの集団の代表する存在として生き続けるのだ
313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:21:35.82:2axu39Ev0
結局、この勝負で誰が勝ったかは、以後の人間と魔族の戦争には何の関係もない。
今でも、二つの集団の戦いは続く。
でも、見る観点を変えれば、
その二つの集団の戦いと離れたある場所には、自分たちが求めなかった代役から外れた二人の存在が居た
一人は母で、一人が子供。
その二人が以前どのような者だったかはもう重要ではない。
314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:24:14.24:2axu39Ev0
一度憎しみ合い、戦わなければならなかった二人は、最後には互いを愛するために戦った。
そして、二人は自分たちの全てを失った。
勇者としての、魔王としての全てを失った。
でもそれこそが彼らが望んでいたこと。
もう、二人は魔王でも、勇者でもなくなった。
315:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:26:55.90:2axu39Ev0
もう二人にはお互いの存在が全てとなった。
互いにそれほど欲しがっていたソレを手に入れた時、
残されたものたちのこれからの戦などどうでも良くなってしまった。
今でも二人は世界の憎しみ合いから離れた場所で生きている。
これで物語はやっと二人が最初から望んでいたように動き始めたのだった。
316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:29:23.88:2axu39Ev0
もう一度言おう。
この物語は、魔王と勇者、剣と魔法の物語ではないから。
少なくとも、今この場で繰り広げられている物語は
母と子との幸せな日々、ただそれだけのお話だ。
そして、その物語は、今やっと始まったばかりだ。
318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:31:48.14:2axu39Ev0
子勇「ママ、ただいま」
母魔「うん?…!子勇、何その顔の傷」
子勇「えへへっ、ちょっと下り道で転んじゃった」
母魔「大変、早く薬塗らないと」
子勇「ボクは平気」
母魔「ダメよ。ほっとくと傷跡が残るのだから」
320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:33:52.54:2axu39Ev0
子勇「うっ」
母魔「痛くても我慢しなさい。もうあまりママのこと驚かせないでほしいわ」
子勇「ごめんなさい」シュン
母魔「はい、出来ました」
子勇「ありがとう、ママ」
母魔「あら、口だけ?いやねー」
321:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:36:56.28:2axu39Ev0
子勇「うーん」チュッ
母魔「あはっ、はい、ママも」チュッ
子勇「…えへへっ」
母魔「ふふっ」
子勇「ママ、大好き」
母魔「私も大好きよ、子勇」
終わり
322:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:37:24.63:ANOYhQji0
早よ書け
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/14(火) 23:57:18.08:7RDkA4XZ0>>1代行感謝
母魔王「ところで、あなただけなの?」
子勇者「ふえ?」
母魔王「仲間とかは?僧侶とか、戦士とか」
子勇者「…ない」
母魔王「なんで?」
子勇者「そんなのお前と関係ないじゃん」
母魔王「子供だからって仲間になってくれなかったとか?」
子勇者「うっ」
母魔王「図星みたいね」
子勇者「そ、そんなの関係ない!ボクはお前と戦うために来たの。おしゃべりしに来たんじゃない」
母魔王「まぁ、落ち着きなさい。私はどこにも逃げないわよ。ちゃんと戦うわ」
子勇者「……」
母魔王「それで、あなた一人でここまで来たの」
子勇者「…うん」
母魔王「はじめから」
子勇者「…ずっと一人で」
母魔王「回復とかは?そもそもどうやって戦ったの?そんな小さな体で」
子勇者「ば、馬鹿にしないで!これでも一人だけで竜も倒せたんだから」
母魔王「まぁ、それはすごく偉いわね」ナデナデ
子勇者「な、撫でるな!」
母魔王「あら、いきなり剣振っちゃって。怪我する所だったじゃない」
子勇者「当たり前だよ。これからお前を倒さなきゃいけないから」
母魔王「まぁ、そうなのだけどね」
母魔王「ところでほんとにトラゴン一人倒したの、この子?」
側近「そのようで」
母魔王「どうやって?」
側近「普通に負けたそうです」
母魔王「普通に!?」
側近「はい、かなり強いようです。見た目と違って」
母魔王「見た目じゃ10才ぐらいみたいだけどね」
子勇者「そっちが来ないならこっちから行くよ!」
母魔王「まぁ、待ちなさいって」
子勇者「わわっ、弾かれた?!」
母魔王「こっちも魔王としての誇りがあるからね」
母魔王「勇者を相手にして言い訳を言うつもりはないけど」
母魔王「勇者として戦うには幼すぎるでしょ、あなたは」
子勇者「…」
母魔王「人間の王は一体どういうつもりあなたみたいな子供を…」
子勇者「わかんないよ……そんなの…」
母魔王「…まぁ、子供に聞いてもしょうがないか」
子勇者「わかんないんだよー!!」
母魔王「わわっ、だからいきなりはやめなさいって」
子勇「真面目に戦ってよ!お前が魔王でしょ?」
母魔「まぁ、魔王なのだけどね…困ったわね」
子勇「…」
母魔「それじゃ、ほら、側近と戦って勝ったら戦ってあげる」
子勇「勝った」
側近「負けました」
母魔「弱いわよ、あなた!それでも私の右腕なの?」
子勇「ほら、早くボクと戦ってよ!」
母魔「…やるしかないようね」
母魔「言っておくけど、私も一応魔王だからね」
母魔「勇者相手で手加減はしないわ」
子勇「っ!!」
母魔「さぁ、かかってきなさい、坊や」
子勇「…ぼ、ボクは負けないよ。ママに会うためにも」
子勇「お前を殺してママに会いに行くの!」
母魔「腕はなかなかのものね」
母魔「もしちゃんとパーティを組んで挑んでいたら負けてたかもしれない」
母魔「でも」メラゾーマ
子勇「うわっ!」
母魔「独りだけじゃあ流石に無理よ」モウイッチョ
子勇「あつっ!」
母魔「腕は認めるけど、サポートがなければただのちょっと強い子供にすぎない」
男なのか女なのかはっきりしろ!
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 00:57:35.96:2axu39Ev0子勇「うっ、やくそう…」
母魔「食べる時間をあげるとでも思って?」
子勇「ひっ!」
母魔「!!」
母魔「……」
子勇「…ふえ?」
母魔「なにしてるの、やくそう食べるんでしょ?」
子勇「え?あ、そうだった」ムシャム…
子勇「苦い」ジワッ
母魔「」
こうしてターン制が生まれたのか
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:04:04.06:2axu39Ev0男の子だよ。
子勇「よし、回復した。また行くよ」
母魔「…あなた、まだやる気?」
子勇「当たり前だよ!ボクは勇者だから。魔王を倒すのが使命だから」
母魔「いっておくけど、今のあなたじゃ私に勝てない。少なくも独りでは」
子勇「……」
母魔「逃げなさい」
子勇「へ?」
子勇「!」
母魔「魔王からは逃げられないとかそんなことどうでも良いわ」
母魔「ちゃんとした仲間を組んで私に挑みなさい」
母魔「でないと、私はあなたと戦わない」
子勇「そんな…!そ、それでも魔王なの?」
母魔「…」
子勇「ボクは、逃げないよ。逃げられないよ」
母魔「…」
子勇「誰も、ボクの仲間になんてなってくれない」
子勇「子供だから、頼れない勇者だから、誰も助けてくれない」
子勇「ボクは独りで魔王と戦わなければいけない勇者だよ」
母魔「あなた独りじゃ私に勝てないわ」
子勇「それでも…他に方法がないよ」
子勇「ボクは魔王と勝って、早くママの元に戻りたいよ」
子勇「お前を殺したら、ボクはやっとママの元にいけるんだよ」
子勇「だから、ボクと戦って」
母魔「…わかったわ、戦いましょう。あなたと一対一で」
母魔「魔王と勇者、互いを殺さなければならない存在」
母魔「例えそれが子供だとしても、私はあなたと全力で戦って」
母魔「あなたを殺して人間どもを駆逐する」
母魔「かかってきなさい、勇者!」
子勇「い、いくよ!」タッ
コイシガー
子勇「うわっ!」スッコロ
母魔「!」
子勇「…うっ」ウルッ
子勇「痛いよー」
母魔「」
子勇「もうやだよ、ママに会いたいよ。ふえーん」
母魔「(私、何もしてないのにすごく罪悪感が…)」アセアセ
母魔「もう、だから勇者が泣くんじゃないって言ったでしょ?」
母魔「ほら、こっちに顔見せなさい」
子勇「うぅっ」
母魔「見事に顔面から転んじゃって。なんでこんな所に小石落ちてるのよ」
母魔「今日ここ掃除した奴誰よ」
側近「メイドMです」
母魔「あの娘クビ。後軟膏持ってきて」
側近「はい」
側近復活してらw
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 01:31:13.41:2axu39Ev0母魔「ほら、顔こっち向けて」
子勇「痛い…」
母魔「傷跡残らないと良いのだけど……」
子勇「……あれ?」
母魔「他に怪我した所はない?」
子勇「う?うん……多分ない」
母魔「多分じゃないわよ。軟膏塗ってあげてるうちにさっさと探しなさい」
子勇「…なんで魔王なのにボクの傷に軟膏塗ってくれてるの?」
母魔「ほら、服脱いで」
子勇「わっ、何するの」
母魔「じっとしてなさい」ドクガノコナ
子勇「うっ!それボクの道具…」
母魔「後で傷跡とか残ったら大変だから、ちゃんと治療しとかないと後悔するわよ」
子勇「や、やめて」ウゴケナイ
母魔「……あ」
子勇「み、みないで」
母魔「なにこれ…体に傷がない所がない…」
子勇「っ…!」
母魔「こんなになるまで独りで戦って来たというの?子供独りで?」
子勇「もう…やめて!」マヒが解けた
母魔「なっ!きゃっ!」
子勇「誰にも…見せたくなかったのに…」
子勇「こんな傷だらけの体、見せたくなかったのに」ジワッ
母魔「あなたは…いつから勇者になったの?」
子勇「もうお前と話しない。倒す!」
母魔「答えなさい!」
母魔「そんな酷い傷を負わせながら」
母魔「まだお母さんと一緒に居るべき年の子供に」
母魔「人間の王はあなたに一体なんてことをしたの!」
子勇「やーーっ!!」
母魔「うっ!」メラゾーマ
子勇「っ、こんなの!」
母魔「なっ、馬鹿な!メラゾーマなのよ?そんなに突っ込んだら肌が焼ける!」
子勇「ていっ!」
母魔「うっ!あんなの見せられたらまともに対応できない…!」
子勇「倒す!魔王を倒すとママの所にいける」
子勇「だから早く倒れて!」
母魔「…これがあなた達が自分たちを守るために立たせた者なの?人間ども」
子勇「やーっ!やーっ!」
母魔「そのまだ小さな手に自分の背ぐらいはある剣を握らせて」
母魔「まだ白い肌をドラゴンの炎に焼かせながら」
母魔「自分たちを守らなければ母を返してあげないと脅迫でもしたって言うの?」
母魔「ただ人並よりちょっと強いというだけで?!」
子勇「ギガデイン」
母魔「っ!」
子勇「やった……魔王、倒したよ」
母魔「」
子勇「ママ…これで、ママに会いにいけるよ」
子勇「ママ、待って。ボク、帰るからね」
子勇「もうどれだけ会ってないのか分からないよ」
子勇「早く会いたいよ、ママ」
母魔「ごめんね」ラリホーマ
子勇「……」zz…ママー
母魔「この子が寝られる部屋を用意なさい」
側近「宜しいので?」
母魔「不満があるとでも言うの?」ギロリ
側近「滅相もございません」
母魔「後、この子がどうやって勇者になったのか、母とはどう離れてしまったのか」
母魔「この子に関しての全ての情報を調べてきなさい」
側近「ははっ」
ー回想ー
魔王の息子「ママー」
母魔「あら、どうしたの?子魔、その花冠」
子魔「えっとね、これね、メイドお姉ちゃんたちと一緒に作ったの」
母魔「そう、似合ってるわね」
子魔「それでね、これ、ママの」
母魔「ママに?」
子魔「うん、ボクが作ったの、花冠。ちょっと変だけど」
母魔「そんなことないわ。ママ子魔にプレゼントもらえてとても嬉しいわ」
子魔「ほんと?」
母魔「子魔が飾ってくれる?」
子魔「うん」
母魔「どう?」
子魔「すごく似あってるよ、ママ」
母魔「子魔とおそろいね」
子魔「うん♪」
ー回想終わりー
母魔「子魔……」
側近「魔王さま」
母魔「勇者は」
側近「はい、丁寧に運ばせました」
母魔「私が行くまで起きないようにしておきなさい」
側近「すでに指示しております。身勝手ながら、
治療魔法に一見識を持ってる者を呼んでおきました。体の傷跡を治すことが出来るかはわかりませんが
母魔「…ありがとう」
側近「魔王さまの側にいてもう五百年ですから」
母魔「…」
側近「あの勇者の姿を見て亡くなられたぼっちゃんのことを…」
母魔「側近」
側近「失礼…」
母魔「…いえ、たしかにあなたの言う通りよ、否定しない」
母魔「あの子を見ていたら、子魔のことを思い出してしまった」
母魔「可愛い子だった」
側近「坊ちゃんは生まれつきの強さと賢さをお持ちになっておられました」
側近「坊ちゃんが生きて居られたら、きっと歴代最強の魔王になられたでしょう」
母魔「…子魔はもう居ないわ」
母魔「私のせいだった」
側近「そのようなことは…」
母魔「私が人類滅亡などとくだらない計画に目を眩んでさえいなければ」
母魔「あの子があんなに虚しく病で死ぬ前に助けられたはずよ」
母魔「優しいあの子は私の邪魔にならないようと自分の病を隠していた
母魔「気づいた時はもう何もかも遅かった」
母魔「魔王ともあろう者が自分の子独りを助けることが出来なかった」
側近「その後、魔王さまは達成寸前まで行っていた人類滅亡計画を咄嗟に中止なさいました」
側近「そして百年ぶりに人間はまるでゴキブリのように蘇ってきてまた我らを威脅しました」
母魔「そして送ってきた勇者という人間は、まだまだ小さい子供」
母魔「いったいどういうことなの」
側近「それなのですが」
側近「水晶玉で、人間の国の様子を見たのですが」
母魔「何?」
側近「勇者の母となる者は、見るに国王の妃になったそうです」
母魔「…は?」
側近「今の人間の王はとても好色な男で、」
側近「美しい勇者の母を見て目が眩んだようです」
側近「夫を若くして亡くした勇者の母を見て」
側近「人間の王は彼女を己の者にしようと画策したようです」
側近「そして邪魔になる息子は勇者と称して
我らの元へ送り始末するつもりだったようで」
母魔「母は何もしなかったというの?」
側近「なにやらその母という人間も男の肌が恋しかったようで」
側近「しかも相手は王、目が眩んで子を見捨てるとしてもおかしくはないかと」
母魔「下衆どもが」
側近「人間も腐ったものです」
側近「先代の魔王たちも認めていた人間の良き所はまるで残っていません」
側近「如何いたしましょう。勇者は」
母魔「……」
側近「そのまま人間の国へ返すとしても、またここへ戻されるか、それとも…」
母魔「…まだ小さい子よ。なのに自分が捨てられたことも知らずに、ここまで来た」
側近「人間とは思えぬほどの強い精神を持った者です」
母魔「誰にも頼らず己の力のみでここまでやってきた。
母魔「あの子は勇者ではない。魔王の器よ」
側近「私もそう思います」
母魔「あの子を魔王に育てれば、きっと良い魔王になる」
側近「彼を洗脳しましょうか?」
母魔「いいえ、そのつもりはない」
側近「と言いますと?」
母魔「あの子を魔王にはしないわ」
側近「ならば」
母魔「…側近、あの子の母の姿、見せてみなさい」
側近「魔王さま、それは」
母魔「命令よ」
子勇の居る部屋
子勇「…うん、ママ…会いたいよ」
「勇者…起きなさい」
子勇「ママ…?」
「勇者」
母「勇者」
子勇「……ママ?」
母「勇者」
子勇「ママ……ママー!!」
子勇「ママー!あいたかったよー」
母「はい、ママも勇者に会いたかったわ。良く頑張ったわね」
子勇「…ママ?」
母「うん?どうしたの?」
子勇「どうして、ボクのこと勇者って呼ぶの?」
母「うん?あ、ああ、ごめん、皆勇者って呼ぶからついママもそう読んじゃうのよね」アセアセ
子勇「やだー、ママはボクのこと子勇って呼ぶの。勇者って呼ぶのやー」
母「そ、そうね。ごめんなさい、ママが子勇のこと間違って読んじゃって」
母「ママに怒ったのかしら」
子勇「!ううん、違うよ。怒ってないよ。ママ大好きだよ」
母「うん、ママも子勇のこと大好きだよ」
子勇「ママ」
母「ほら、起きなさい。ママがご飯作ったから」
子勇「ご飯!」ぐぅー
母「あらあら、お腹ペコペコみたいね」
子勇「うぅ…」コク
母「ほら、早く手洗ってきなさい。ママと一緒にご飯食べましょう」
子勇「うん」
母魔「…」
母「はい、今日は子勇が帰ってきたことを祝って大盤振る舞いよ」
子勇「わーっ、すごくおいしそー!」
母「ちゃんと手は洗ってきたわね?」
子勇「うん、いただきます」
母「召し上がれ」
母「もうそんなに早く食べなくても食べ物はどっかに行きませんよ?」
子勇「うっ!」詰まった
母「ほら、だから言ったじゃない」トントン
子勇「けほっ!けほっ!ふぅ、死ぬかと思った」
母「もう…そんなの美味しかったの」
子勇「うん!ママが作ってくれた料理、すごく美味しいよ!」
母「そう言ってくれると作った甲斐あるわね」
子勇「ママ」
母「何?」
子勇「どうしてボクとママ、お城の中に居るの?」
母「うん、それはね……そう、王さまにもらったのよ」
子勇「…王さま嫌い」
母「あら、どうして?」
子勇「だって、ママのこといやらしい目で見てたもん」
母「もうそんなこと言って…」
子勇「だってほんとだもん。城を出る時もママのこと合わせてくれなかったんだもん」
母「……うん、そうかもね。でも、もうそんなことはいいでしょ」
母「これからはママはどこにも消えない。子勇と一緒に、ずっとここで住むのよ?」
子勇「ずっと?」
母「ずっと、二人だけで」
子勇「昔みたいに?」
母「そう。子勇もそれがいいよね?」
母「このお城はね。王さまが魔王を倒した勇者にくれたお城なの」
母「ここでママとずっと一緒に住むのよ」
子勇「…嬉しい」
母「ママも嬉しいわ。こうしてあなたが無事に戻ってきてくれて、ほんとに良かった」
子勇「……」
母「お腹いっぱい食べた?」
子勇「うん、お腹いっぱい……ふああ」
母「また眠くなったの。さっきあんなに寝てお寝坊さんだね」
子勇「うぅ…だって眠いんだもん」
母「ふふっ、そうね、眠いんだもんね、仕方ないわね」
子勇「ね、ママ、一緒に寝よ?」
母「甘えん坊さんね。魔王も倒した勇者さまが、ママが一緒に寝てくれないと眠れない子と誰が想像するのかしら」
子勇「うぅ…今日のママは凄く意地悪だよ」
母「あらあら、ごめんね。ほんとはママも子勇とずっと一緒に寝たかったの」
子勇「ほんと?」パーッ
母「ほんとよ」ニコッ
子勇「お休みなさい」
母「ええ、お休みなさい、子勇」チュッ
子勇「わっ!」
母「うん?どうしたの?寝る前にいつもほっぺにチューしてたじゃない」
子勇「してない、そんなことしてないよ?」
母「あ、あら?そうだったっけ。じゃあ、これからは寝る前に子勇のほっぺにチューしちゃうね」
子勇「……うん」
子勇「」すぴー
母「…」
母魔「子魔…」
子勇「…ママーらいすき…」
母魔「……」ギューッ
側近「魔王さま」
母魔「声が大きいわ」
側近「失礼しました」
母魔「報告を」
側近「魔族の精鋭軍団を、全て集めました。いつでも人間どもの息の根を絶つことができます」
母魔「…やってしまいなさい」
母魔「淫行に乱れたバビロンを滅ぼしてしまいなさい」
母魔「その地が彼らの悲鳴と血を吸って、二度とあのような汚らわしい生き物どもがこの世に残らないようにしなさい」
側近「ははっ」
子勇「…ん……ママ?」
子勇「居ない」
子勇「ママはどこ?」
子勇「ママ、ボクを置いて行かないで」
子勇「ボクと一緒に居て」
人間の王都の城
王「ええいっ、使えない勇者め!こんな所まで魔族どもが入ってくるとは」
王の側近「陛下!ここは危険です、お逃げくださ…」
王「ふざけるなー!」
王「逃げろだと。俺にこの城を逃げろだと!」
王「この城には俺の全てが残ってるんだ」
王「財宝が!女が!俺の全てがここにある!」
王「それを失ってしまえば俺は何になるというのだ!」
母魔「ただの屍になってしまえばいいんじゃないかしら」
王「!」
ぐちゃり
王の側近「ひ、ひぃ!魔王!」
母魔「…この城に勇者の母親が居るはずよ。どこに居るか教えなさい」
王の側近「お、おおしえます!教えますから命だけは…!」
母魔「言え」
王の側近「そ、その女は王様が娶った数カ月後に飽きたと他の女たちと一緒に牢屋に…」
母魔「そう、わかった。もういっていいわ」
王の側近「あ、ありがとうございま…」グチャリ
母魔「逝ってよし…と」
母魔「本当に腐ってしまったようね、人間は。魔王の存在も忘れて
自分たちの娯楽に酔っていた」
母魔「これが長く続いた人間と魔族の戦いの終焉とは、複雑なものよ」
側近「魔王さま、城の制圧が終わりました」
母魔「勇者、いえ、子勇の母親を確保しなさい。私直々に話すことがあるわ」
側近「御意」
母魔「その他は各自好きにさせなさい」
母魔「人間を食ってもよし。女を慰み者にしてもよし。自由行動よ」
子勇「ママー」
子勇「ママがどこにも居ない」
子勇「なんか、この城、どこかで見たような気がするよ」
子勇「まるで魔王が居たしろ……」
「勇者」
子勇「…!」
母「……」
母魔「あなたが子勇の母親ね」
母「…」
母魔「あなたは私が知っている母親の中でも最悪よ」
母魔「自分の欲のために子を死地に送り込み、王と堕落した」
母魔「でも、そんなあなたでも母ならまだ少しは人間らしさを保ってるでしょう」
母魔「あなたに最後のチャンスをあげる。
子勇を連れてこの城を出て、人間の国を出なさい」
母魔「どこに行ってもいい。私の目にはいらない所で、
子勇と一緒に以前ように幸せに住みなさい」
母魔「強い子を育てた貴女だからこそ、その罪を許してチャンスを与えるのよ」
母「……ふざけるな」
母「ふざけるな!あんなの私の子じゃない!いや、人間の子じゃない!」
母魔「…」
母「アレは生んだ時から気持ち悪いと思っていた。人間とは思えない強さ」
母「なのにいつも私の近くに居ようとした」
母「怖くて気持ち悪い。アレもお前たちみたいな化物よ」
母「死ね!皆死んでしまえ!貴様ら不気味な魔族どもに負ける人間じゃない」
母「いつかまたどこから勇者が現れて貴様らを倒して新しい人間の王国を作る」
母「その時は貴様ら私たち人間に命を乞ってるでしょうね」
母「でも助けてあげない。何故か分かる?」
母「貴様らのような気持ち悪いやつらはこの世から居なくなった方がいいからよ!」
母魔「…たしかに、ここでこのまま消え去るあなた達人間じゃないわね」
母魔「この戦いがここで終わるわけがない」
母魔「でもね、今はそんなことどうでもいいのよ」
母魔「私が何であの昔あなたたちを生かしたのか知ってる?」
母魔「私が母としての自分を忘れてあなたたちへの憎悪心で自分の息子を殺したからよ」
母魔「でも、今度は人間が魔王の私さえも反吐が出そうな真似をしてくれた」
母魔「母の胸を恋しがる子供に剣を握らせ私を殺そうと送って」
母魔「自分たちは享楽に溺れていた」
母魔「それが許せなかった。そんな生き物がこの世に居ていいはずがない」
母魔「でも、それじゃああの子が可哀想よ」
母魔「ましてや、あの子は人間の全てを救うためで戦ったわけでもない」
母魔「ただあなたをまた見るために」
母魔「あなたと一緒に居て幸せだったあの日々を取り戻そうとその小さな体で」
母魔「この世で一番強い者に挑んだ」
母魔「なのにあなたの口から出る言葉はそれだけ?気持ち悪い?」
母魔「ふざけるな!!
母魔「貴様がそれでも人間か!母親か!」
母魔「同じ母として恥ずかしい!」
母魔「この世で私が見てきた人間の中で」
母魔「貴様のその姿が一番醜くで、気持ち悪い!」
母魔「この世から消え去ってしまえ!」
子勇「ママ」
母魔「!」
子勇「ママ」
母魔「子勇、どうしてここに…!」
母「子勇」
子勇「…ママが、二人?」
母「子、子勇、助けて!ママよ!ママを助けなさい!」
子勇「…ママ?」
母魔「」
子勇「…」
母「何してるの?ママがこの卑劣な魔族に殺されそうになってるじゃない!」
母「早く助けなさい!あなたは『勇者』でしょ!」
子勇「…!」
うわぁ…
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 04:47:00.79:2axu39Ev0子勇「ママ…」
母魔「…」
子勇「そう、ボクは勇者」
子勇「魔王を倒すのがボクの使命」
母魔「子勇…」
母「そう、そうよ!だからあの魔王を早く倒してしまいなさい!」
子勇「でもね」
子勇「もう疲れたの」
子勇「ボク、子供なんだよ」
子勇「結局、誰も助けられない」
子勇「人たちを、魔王から救えないよ」
母「そんなのどうでも良いわ!」
母「ママだけでも良い!」
母「ママ一人でも助けなさい!」
子勇「……分かった」
子勇「…直ぐに、助けてあげる」
子勇「魔王」
母魔「子勇、あなたのママは外道よ。こんなの人間とも言えないほど腐ってる」
子勇「それでも…ボクのママだよ」
母魔「…わかったわ」
子勇「ありがとう。おかげで…久しぶりに、ううん、
生まれて初めて幸せだったよ」
母「ゆう……しゃ…」ペチャ
子勇「ママ、ボクは、勇者じゃないよ」
子勇「ボクは、一度も『勇者』だったことなんてなかったよ」
子勇「ボクはただ、ママの『子勇』で居たかった」
子勇「好きだったよ、ママ」
母「……」
母魔「どうして…」
子勇「ボクがママに出来ることはこれぐらいしかないから」
子勇「せめて自分の手で終わらせるぐらいしか出来ないから」
子勇「知ってたよ」
子勇「実はママは最初からボクなんて愛してなかったって」
子勇「でも魔王を倒したらね、きっとママも振り向いてくれるだろうと思ったの」
子勇「ボクが想ってきたママに会えると思ってたの」
子勇「でも、駄目だった」
子勇「だから、ありがとう、魔王」
子勇「最後にボクが欲しかったママを見せてくれて、ありがとう」
母魔「やめなさい」
子勇「…」
母魔「死なないで」
子勇「ボクはもう休みたいよ」
子勇「もう、ママも居ないから」
子勇「もう頑張る必要もないよ」
母魔「もうたくさんよ」
母魔「あなたのこんな姿を見ようとここまでやったわけじゃないのに…」
母魔「どうして私の気持ちをわかってくれないの?」
母魔「なんで自分だけ晴れた気持ちで消えようとするの?」
母魔「ずるいじゃない」
母魔「私にも償わせて」
母魔「私に償わせて」
母魔「あなたの幸せも」
母魔「あの子の幸せも守れないというのなら」
母魔「私は何のためにここまでやらなければいけなかったの?」
母魔「私がどうすればよかったの」
母魔「ね、『子勇』」
子勇「…」
子勇「魔王」
母魔「……」ブルブル
子勇「泣いてる?」
母魔「……」ギューッ
子勇「…泣かないで」
子勇「ボクは……ボクはどうすればいいか分からないよ」
子勇「ボクは子供だから、こんな時どうすれば良いのか……あ」
母魔「子魔…」
母魔「ごめんね」
母魔「ママが…馬鹿で…出来損ないのママで……」
母魔「守れなかった」
母魔「何も…誰も守れなかった」
チュッ
母魔「あ」
子勇「泣かないで」
母魔「子…勇」
子勇「ボクね、勇者じゃない」
子勇「ママに愛された子でもない」
子勇「だけど、ボクのせいで誰かが泣くのは見たくない」
子勇「コレ以上、誰かが不幸せになるのは嫌」
子勇「だから……もう泣かないで
『ママ』
その後
人間は世界から消し去った。
もちろんそれが種が絶えたというわけではないだろう。
人間はとてもしつこく生きる生き物だから、
きっと今頃また新しい勇者がどこかで生まれているかもしれない
でも、今はそんなことはどうでもいい。
だってこの物語は、魔王と勇者、剣と魔法の物語ではないから。
少なくとも、今この場で繰り広げられている物語は
母「子勇」チュッ
子勇「ママ」チュッ
母と子との幸せな日々、ただそれだけのお話だから。
はい、終わり!
いやー、眠かったよ。苦しかったよ。なんとかまとめたよー
初めての書き込み、初めての2chというものを使ってみたのだけど、どうでしたかね?
エロ要望だった方々には申し訳ない。自分はそういうのは柄ではないんです。
今回はこれでご満足してください。
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:32:32.34:g0vlTpqxOいやー、眠かったよ。苦しかったよ。なんとかまとめたよー
初めての書き込み、初めての2chというものを使ってみたのだけど、どうでしたかね?
エロ要望だった方々には申し訳ない。自分はそういうのは柄ではないんです。
今回はこれでご満足してください。
すごくよかった
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 05:34:02.30:6RplJTCu0
乙
良かった
212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 14:18:15.81:2axu39Ev0良かった
皆ありがとう
母魔「移住計画は?」
側近「着々と進んでいます」
母魔「人間たちの住処を完全に奪わなければいつまた蘇ってくるかわからないわ」
母魔「この機に人間界まで全部私たちのものにする」
子勇「ママー、お腹すいた」グゥー
母魔「あ、うん、そうね、そろそろお昼にしましょうか」ニコッ
母魔「ゴメンね、最近忙しくてママが手作り料理作れなくて」
子勇「うん、大丈夫」
子勇「ママと一緒に食事出来るだけでもうれしい」
母魔「子勇」ジワッ
母魔「ありがとうね」ナデナデ
子勇「うん…」
側近「魔王さま、申し上げたいことが」
母魔「何かしら」
子勇「…」すぴー
側近「勇者、いえ、子勇さまのことです」
母魔「…」
側近「御存知の通り、幾ら強くて尚優しい子勇さまとしても結局人間」
側近「人類抹殺計画遂行中の今、子勇の存在に反感を持つ魔族たちも
少なくありません」
母魔「言いたいことはわかったわ」
母魔「この子を魔族に変えるべきだと言いたいのね」
側近「はっ」
母魔「…私が嫌と言ったら?」
側近「仕方のないことですが、何故」
母魔「あの子の今の姿を否定するのが嫌なのよ」
母魔「子勇の今の姿、その優しさ、人間の勇者だったからこそのその純粋さ」
母魔「腐った人間の世界でたった一人綺麗に残ってくれたこの子の純白さ」
母魔「私はそんなものたちに惹かれたのよ」
母魔「なのに今更この子を魔族にしてしまったら」
母魔「私はこの子のそういう良いところたちを全否定しなければならない」
母魔「それじゃ、私は今までこの子に嘘を付いてきたことにしかならない」
側近「ですが、魔王さま」
側近「御存知の通り、人間の寿命は魔族に比べれば儚いもの」
側近「しかもこれから10年もあれば、子勇さまは成人としての成長を終えます」
側近「そしてそれは魔王さまのことを理解するにはあまりにも短い時間です」
側近「大人になった子勇さまが、再び人間の勇者として
魔王さまに歯向かうことも考え無くありません」
母魔「…否定はできないわね」
側近「せっかく訪れたこの平和」
側近「揺るがすようなことがあってはありません」
側近「この側近、この命を賭けて進言します」
側近「子勇さまを魔族に替えるべきです」
母魔「…少し考えさせて頂戴」
側近「どうか、我ら魔族のためにも、子勇さまのためにも良き決断を」
母魔「…子勇」
子勇「…ぅん…」
母魔「私は…」
子勇「ママ、ママ見て、これ、幼馴染ちゃん花冠作ったの」
子勇「ママにもあげる!」
ママ「」
子勇「…ママ?どうしたの?そんなにぐったりしてて」ユサッ
ピチャッ
子勇「え?」
子勇「赤い……ボクの手、赤い」
子勇「……あ、そうか」
子勇「ボクが…」
母「…『勇者』」
子勇「!」
母「勇者、助けて。ママを助けて」
子勇「や……やだ」
子勇「もうやめてよ」
母「勇者…」
子勇「違う!」
子勇「ボクは勇者じゃない!」
子勇「ボクを勇者って呼ばないで!」
子勇「違う…勇者じゃ…勇者じゃないよ」
母魔「子勇、子勇起きなさい」
子勇「!!」
母魔「どうしたの?」
子勇「…魔王」
母魔「!!」
子勇「……ママ」
母魔「子勇」
母魔「大丈夫」
母魔「私がママだよ」
母魔「あなたは子勇」
母魔「それだけだから」
母魔「もうそれだけだから」
母魔「子勇のことが大好きなママがここに居るだけだから」
子勇「ママ…」ギュー
母魔「(言えない)」
母魔「(今この子に魔族になってほしいなんて言ってしまったら)」
母魔「(きっと壊れてしまう)」
母魔「(この優しい子の笑顔を)」
母魔「(絶望に落として二度と掬いあげられないようにしてしまう)」
母魔「子勇」
母魔「ママが一緒に寝てあげる」
母魔「あなたが魘されないように」
母魔「誰もあなたにまたあんな酷いことができないように」
母魔「ママが守ってあげるから」
母魔「あなたは笑ってだけ居て」
竜の王「近頃魔王さまが政務を務まらないことが増えたと聞くが」
妖精の女王「聞く話では、人間の子供を一人拾って死んだ息子の代わりにしてるとか」
狼の頭「くだらん!人間など生かしてなるものか。魔王さま自ら自分の規則を破っている」
魔女「しかしながら、息子を失った魔王さま傷心がどれほど大きかったかは
ここに居る皆が知っていること」
魔女「聞くとその人間の勇者を見て魔王さまは百年も待っていた人類撲滅計画を
やっとの思いで実行なさったとか」
竜の王「なにはともあれ、たかが人間の子供一人に気を奪われ魔族たちを蔑ろにされては困る」
妖精女王「とは言え、今の魔王さまが良き方なのもまた事実でしょう」
妖精女王「現に、魔族たちは過去に無いほど豊かに生きています」
狼の頭「だがそれも人間が残っていれば儚いものだ。
一瞬で全ての繁栄が崩れ落ちるかもしれん!」
竜の王「側近はなんと言っていた」
魔女「説得なさったようですが、魔王さまもまた頑固なお方」
魔女「増してやその子を人間としてでなく、自分の子のように可愛がっていますから」
竜の王「我らは魔族の各種族の長だ」
竜の王「魔族全体のためにも、この怪異な状況を打開せねばならない」
竜の王「魔王さまがご自分の過ちに気付かれないのであれば」
竜の王「我らの手でそれを気づかせるべきだ」
狼の頭「俺は竜の王に同意する」
妖精女王「魔王さまが育てる人間です」
妖精女王「それほどの問題になるのでしょうか」
魔女「全ての魔族を率いるお方です。一人の人間に魔族全てを蔑ろにされては」
妖精女王「ですが、それが母というものです」
妖精女王「他のなによりも子を愛することを最優先にするのが母の務めというもの」
妖精女王「恐れながら、一人の娘の母として、わたくしはその反逆に参加できません」
竜の王「これは反逆ではない。魔王さまを正しい道へ導くためのことだ」
狼の頭「しかも、その子とは人間。魔王さまのそれは子育てにもならない」
狼の頭「せいぜい飼い慣らし、飼育だ」
魔女「忠節の気持ちは同じでもその形はそれぞれ」
魔女「ですが覚えてください。この違い、下手すれば人間によってではなく
我らの手で魔族の未来を壊す結果になるかもしれないということを…」
竜の王「魔女、あなたはどっちに付く」
魔女「…私は独自に行動させて頂きましょう」
魔女「自分の目で確かめたいことがあります故」
母魔「新たな勇者…か」
側近「はっ、どうやらかの王の娘がまで生き残っていたようで」
母魔「とんだ失策だったわね。私がしっかりしていなかったせいよ」
側近「…」
母魔「その勇者は」
側近「一ヶ月後にはここに辿り着くでしょう。いえ、その前に討伐出来れば良い話ですが」
母魔「いえ、ここまで辿り着くようになさい」
母魔「魔族と人間、例え人間が腐ってしまってもその縁はまだ残っている」
母魔「私たちの間の戦いは、必ず魔王と勇者で決着を着けなければならない」
側近「宜しいので?」
母魔「逆に問いましょう、側近。あなたは私という魔王をどう思うのかしら」
側近「あなたは良き魔王です」
側近「それは今の生きる魔族誰もが認めること」
側近「ですが、」
側近「それ以上あなた様は、良い母親で居たかった」
側近「それだけのことです」
母魔「…私も知らないわけじゃないわ」
母魔「子勇のことを良く思わない一部の魔族」
母魔「いえ、寧ろその方がより多いでしょうね」
母魔「でもね。例えそうだとしても私は諦めるつもりはない」
母魔「子勇は、私の子よ。あのままで、人間のままで、私の子よ」
魔女「魔王さまにそれほどの覚悟させた人間」
母魔「!」
魔女「人間と言え、なかなかも者のようです」
側近「魔女、ここがどこだと思って盗み聴きなどを…!」
母魔「結構よ」
母魔「言ってみなさい、魔女」
母魔「魔族の者たちが今の私をどう思っているか」
母魔「人間の子に誑かされ魔族全てを威脅している出来損ないの魔王」
母魔「私を失脚させようと今頃軍を集めている頃だろうと思うのだけど」
魔女「…魔王さまは、己のことをあまりにも過小評価しています」
魔女「そのような姿も子魔さまを失ってからでした」
魔女「ですが、私には見えます」
魔女「その人間の子供が、あなたをもっと強くしてくれています」
魔女「魔族の長としてではなく、母としての魔王の姿」
魔女「それが本来魔王さまの力の源だったのですから」
魔女「現在竜の王を主軸として、魔族たちの中で魔王さまへの嘆願書を準備しています」
魔女「魔王さまがかの人間を殺すか、もしくは魔族に変えなければ」
魔女「きっと魔族たちは魔王さまを攻めるでしょう」
母魔「……あってはならないことよ」
母魔「せっかく得られた魔族たちの栄光。どんなことがあっても失うわけにはいかない」
母魔「増してや魔族たちの自分の手で…」
母魔「そんなことが起こってしまったら、魔族は二度と立ち直れなくなる」
魔女「…」
子勇「……うん?」
?「あなたが例の人間の子かしら」
子勇「…ママに会いにきたの」
?「…そう、魔王さまをママと」
子勇「魔王じゃない!」
?「!」
子勇「魔王じゃ…ない」
妖精の女王(以後、女王)「この力、まさか勇者?」
女王「魔王さまが息子にした人間とは、まさか勇者のことだったの?」
女王「しかもこんな小さい子が勇者に…」
子勇「勇者……」
子勇「勇者じゃない」
子勇「勇者なら人を守るのにボクは守れなかった」
子勇「勇者なのに魔王に勝たなきゃいけないのに、ボクは勝てなかった」
子勇「勇者なら、ママを守らなきゃいけなかったのに…」
子勇「ボクは…ボクはあんなことしか出来なかった」
子勇「この手で…ママを」
子勇「ママが…ママは…ボクのことを子勇って呼ぶの」
子勇「ボクは『勇者』じゃない。勇者になんてなりたくない」
子勇「ボクのママは…魔王だよ」
子勇「でもボクが『勇者』で、ママが『魔王』だなんて」
子勇「そんなの嫌だから」
子勇「だから、魔王って呼ばないで。魔王じゃない」
子勇「ボクのママは…魔王じゃない」
母魔「魔族は、勇者と戦いに魔王という私の存在をいつも必要としてきた」
母魔「だけど、あなた達が本当にほしいのは、自分たちの代表出来る存在」
母魔「自分たちの人間への憎悪感を代表出来る」
母魔「その大きな負の感情を持ってまた人間の代表者である勇者に立ち向かえる存在」
母魔「それが魔王」
母魔「その互いを憎むべき存在として作られたのが魔王と勇者」
母魔「相容れない二つの集団の憎さを代表するために作られた代役」
母魔「でも、それが出来ないとしたら」
母魔「魔王が勇者を憎めないというのなら」
母魔「勇者が魔王を憎めないとしたら」
母魔「もう、その代役を任される筋合いなんてない」
魔女「ただ人間一人のために」
魔女「我々を見捨てるというのですか」
魔女「あなただけを信じてここまで来た魔族全てを」
魔女「また混乱の渦の中に戻れと言うのですか?」
母魔「私があの子のママにあるためになら…ええ」
魔女「例えあなたがそう言おうとも」
魔女「あなたは魔王で居なければいけません」
魔女「魔族という大きな集団のために」
魔女「勇者がそうであるように」
魔女「あなたもまた犠牲にされなければならないのです」
母魔「どうするつもりなのかしら」
魔女「まだまだ魔女として極みを知らない私ですが」
魔女「先々代から尽くしてきたこの力」
魔女「恐れながらあなたの記憶をいじらせて頂きます」
魔女「人間をもっと憎むように。あの子共さえも殺せるほど
強い人間への憎しみをあなたに」
母魔「ただでやられると思っているのかしら」
魔女「例え魔王さまでも、私の魔力には敵えません」
母魔「そうかしらね」
母魔「あなたの言う通りよ」
母魔「あの子が、子勇が私の力の源なのよ」
母魔「あなたたちはその子を子魔の代わりだと言っていたけど違う」
母魔「子勇は子勇よ。そのままで、私の大切な子よ」
魔女「あなたみたいな方が魔王になられて、実に残念と思います」
母魔「魔族たちへ?それとも私へかしら」
魔女「どっちにも、です」
魔女「どの道、私は魔族たちのために、あなたを抑えなければなりません」
「邪魔だよ」
魔女「へっ?」ぐちゃり
魔女「あ……そん…な」
子勇「…」
魔女「そう…そういうことでしたのね」
魔女「結局、これもまた勇者と魔王との戦いだったのです」
子勇「違う」
子勇「勇者もいない。魔王も居ないよ」
子勇「居るのは…」
グサッ
母魔「子、勇?」
子勇「『魔王』」
母魔「!それは、妖精女王の首…まさかあなた」
子勇「ボクと、戦って」
母魔「なにを言ってるの?」
母魔「あなたは子勇だよ。勇者なんかじゃない」
母魔「嫌よ!」
母魔「どうして!どうしてあなたと戦わなければいけないの?」
母魔「どうしてあなたは勇者にならなければならなかったの?」
母魔「どうして私は魔王としてあなたに会わなければならなかったの!」
母魔「あなたを愛することさえ出来ればそれでいいのに」
母魔「それがそんな大きな願いなの?」
母魔「あなたを誰かの代わりにするつもりなんてなかった」
母魔「私自身もあなたにとって誰かの代わりものとされるのが嫌だったから」
子勇「…」
母魔「嫌よ」
母魔「あなたをコレ以上傷つけたくない」
母魔「そんなこと私にさせないで」
母魔「私は嫌なの」
母魔「あなたを傷つくのも、あなたが誰かに傷つけられるのも全部嫌」
子勇「…『魔王』」
母魔「!」ジワッ
子勇「ボクと、戦って、お願い」
母魔「…嫌」
子勇「戦って、お前を倒さないと
ママに会えない」
母魔「…へ?」
子勇「ボクと戦って」
子勇「ボクが魔王を倒したら、『魔王』は子勇のママになる」
子勇「魔王がボクを倒したら、『勇者』はママの子勇になる」
子勇「他のなんでもない。ただそれだけの存在になるの」
母魔「…!」
母魔「そうか。……そうなの」
母魔「そういうことなの!」
母魔「……『勇者』」
母魔「さあ、良くここまで来たわね『勇者』」
母魔「私と戦いなさい、『勇者』」
母魔「あなたが持っている全てを私にぶつけてきなさい」
母魔「私も自分が持っている全てをあなたにぶつけるわ」
母魔「私の望みはただ一つ」
母魔「私の愛おしい『子勇』を返しなさい!」
子勇「倒れて魔王、そしてボクの『ママ』を返して」
魔、勇「この世から消え去ってしまえ!!
この魔王と勇者の勝負がどう決まったのだろうか。
その答えを知ろうとするものに問いたい。
それが重要なのかと。
魔王が勝っても、勇者が勝っても、結局この世界の人間と魔族の戦いは絶えないだろう。
そして魔王と、勇者は、その互いをただただ憎しみ会う二つの集団の代表する存在として生き続けるのだ
結局、この勝負で誰が勝ったかは、以後の人間と魔族の戦争には何の関係もない。
今でも、二つの集団の戦いは続く。
でも、見る観点を変えれば、
その二つの集団の戦いと離れたある場所には、自分たちが求めなかった代役から外れた二人の存在が居た
一人は母で、一人が子供。
その二人が以前どのような者だったかはもう重要ではない。
一度憎しみ合い、戦わなければならなかった二人は、最後には互いを愛するために戦った。
そして、二人は自分たちの全てを失った。
勇者としての、魔王としての全てを失った。
でもそれこそが彼らが望んでいたこと。
もう、二人は魔王でも、勇者でもなくなった。
もう二人にはお互いの存在が全てとなった。
互いにそれほど欲しがっていたソレを手に入れた時、
残されたものたちのこれからの戦などどうでも良くなってしまった。
今でも二人は世界の憎しみ合いから離れた場所で生きている。
これで物語はやっと二人が最初から望んでいたように動き始めたのだった。
もう一度言おう。
この物語は、魔王と勇者、剣と魔法の物語ではないから。
少なくとも、今この場で繰り広げられている物語は
母と子との幸せな日々、ただそれだけのお話だ。
そして、その物語は、今やっと始まったばかりだ。
子勇「ママ、ただいま」
母魔「うん?…!子勇、何その顔の傷」
子勇「えへへっ、ちょっと下り道で転んじゃった」
母魔「大変、早く薬塗らないと」
子勇「ボクは平気」
母魔「ダメよ。ほっとくと傷跡が残るのだから」
子勇「うっ」
母魔「痛くても我慢しなさい。もうあまりママのこと驚かせないでほしいわ」
子勇「ごめんなさい」シュン
母魔「はい、出来ました」
子勇「ありがとう、ママ」
母魔「あら、口だけ?いやねー」
子勇「うーん」チュッ
母魔「あはっ、はい、ママも」チュッ
子勇「…えへへっ」
母魔「ふふっ」
子勇「ママ、大好き」
母魔「私も大好きよ、子勇」
終わり
乙!
324:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:38:53.20:Hu9KDLSk0
おつ!
327:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:41:07.56:2axu39Ev0
お疲れ様です。
なんか勇者魔王的ないろいろを期待していた人たちはほんとに申し訳ありません。
こういう話でした。
全部終わったから言いますけど、
これが自分の処女作です。
自分は一度もDQたぐいのゲームやってみたことがありません。
日本人でもありません(誤字脱字あったら刺される)
330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:43:16.76:HdcfJvxR0なんか勇者魔王的ないろいろを期待していた人たちはほんとに申し訳ありません。
こういう話でした。
全部終わったから言いますけど、
これが自分の処女作です。
自分は一度もDQたぐいのゲームやってみたことがありません。
日本人でもありません(誤字脱字あったら刺される)
超乙
332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:43:32.55:2axu39Ev0
色々大変でしたけど、自分が書きたかったものが最後まで書けて満足しています。
またこういうのを書くことがあるだろうか判りませんが、その時はまたよろしくお願いします。
ではまた会う日まで
ノシノシ
338:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 17:59:55.22:ANOYhQji0またこういうのを書くことがあるだろうか判りませんが、その時はまたよろしくお願いします。
ではまた会う日まで
ノシノシ
おれも帰ってかあちゃんに軟膏塗ってもらう
340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/15(水) 18:11:22.24:v7cLA6cfO
面白かった、乙!
コメント 11
コメント一覧 (11)
子勇のキャラが定ってない風にもみえた
それ以外はかなり良い
まあ…外人にしてはうまいんじゃないの、日本語
やめろよな、日本人の恥め。
よう、在日