ヒーラー男「男らしくない?」エルフ「はい!」
ヒーラー男「男らしくない?」エルフ「はい!!」
盗賊「男らしくないね」 ヒーラー男「よく言われる」
1: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:51:16.36:PxnlyKit0
ヒーラー「どういう事だ?」
エルフ「……良心は痛まないのですか?」
ヒーラー「?」
エルフ「私達、野宿してますよね?」
ヒーラー「ああ」
エルフ「夜、寝る時の約束しましたよね?」
ヒーラー「ああ、2時間ごとに見張りを交代な」
エルフ「ええ、寝ずの番ですよ」
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2: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:52:12.28:PxnlyKit0
ヒーラー「それがどうした?」
エルフ「……女の子だけにそれを押し付けて、貴方は毎晩グッスリ眠ってますね?」
エルフ「良心は痛まないのですか?」
ヒーラー「は?別に寝たいときは寝てもいいだろ?」
エルフ「なんか、呆れを通り越して逆に感心しますよ……」
盗賊「……ヒーラーのお兄さん、いくら殴っても起きないよね」
ヒーラー「まあな」
エルフ「あ?」シャキン
盗賊「わああ!?エルフちゃんストップ!!」
3: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:52:32.13:PxnlyKit0
盗賊「(あたし達は現在、砂漠地帯を横断して、水の都に向かっている)」
盗賊「(……途中、砂漠の真ん中で足止めは食らったけど)」
盗賊「(ともかく、現在進行中だね)」
ヒーラー「女の子って事を主張するなら!剣振るのやめろ!」
エルフ「今の時代!女性も戦わなくては食べていけません!」
ヒーラー「野蛮人め!」
エルフ「……いいでしょう、職業は剣士らしく、美しく仕留めてあげましょう」シャキン
盗賊「(愉快な仲間と共に)」
4: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:52:48.14:PxnlyKit0
盗賊「(こっちのお兄さんは、職業ヒーラー、いわゆる医者?)」
盗賊「(お兄さんが旅をしている理由は、幼い頃、自分を助けた恩人にお礼をするためらしい)」
盗賊「(お兄さんがヒーラーなのは、その恩人への憧れらしい)」
盗賊「(こっちの女の子がエルフちゃん、職業剣士)」
盗賊「(エルフちゃんは元々、どこかのエルフ族の王族にあたるらしい)」
盗賊「(そのなかで、エルフちゃんは次のお姫様らしい)」
盗賊「(しかし、エルフちゃんは自分には無理だと家出をしたみたい)」
盗賊「(それからは、持ち前の剣技で町などで依頼をこなして食いつないでたらしい)」
5: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:53:04.81:PxnlyKit0
盗賊「(エルフちゃんとお兄さんが出会ったのは、半年以上前らしい)」
盗賊「(エルフちゃんが依頼で負傷していた所をお兄さんが通りがかり)」
盗賊「(治療してあげたら、エルフちゃんがお礼という事でお兄さんの旅に同行)」
盗賊「(ベタだね)」
盗賊「(そして、これである)」
ヒーラー「おい!頬に剣が掠ったぞ!?」
エルフ「……」ブンッ
ヒーラー「うわっ!?」スッ
エルフ「避けないでください」スッ
盗賊「……大丈夫かな?」
7: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:55:59.40:PxnlyKit0
ヒーラー「遠くに海が見えてきたな」
盗賊「あっ!本当だ!」
エルフ「ようやく、砂漠から抜けられますね……」グッタリ
盗賊「やっぱり、エルフ族には厳しいのかな?砂漠は?」
エルフ「ええ、森を空気が潤っていましたけど、砂漠は乾きすぎです」
ヒーラー「ふうん」
盗賊「ん?ねえ、お兄さん?あれ何かな?」
ヒーラー「ん?」
ゴーレム「」
9: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:56:24.04:PxnlyKit0
ヒーラー「ゴーレムか?これ?」
ゴーレム「」
盗賊「みたいだね」
エルフ「壊れてしまったんですかね?」
ゴーレム「」
ヒーラー「しかし、よく出来てるなこれ」サワサワ
盗賊「たしか、ゴーレムって2年前に廃棄令が出たんだっけ?」
ヒーラー「あれだろ?どこかの国が門番として置いてたら、突然暴れだしたやつ」
盗賊「そうそう、一般市民にまで被害出たから、大陸全体で出たんだよね?」
11: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:57:00.78:PxnlyKit0
エルフ「実物は初めてみました」ペタペタ
ヒーラー「まあ、遺跡とかに配置してあるのが普通だからな」
盗賊「突然動いたりして」ニヤニヤ
ヒーラー「そんなベタな」
エルフ「ん?なんですか?この出っ張りは?」スッ
ポチッ
ヒーラー「え?」
盗賊「え?」
12: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:58:53.34:PxnlyKit0
ウィーン
ゴーレム「……」ゴゴゴゴゴゴゴ
ヒーラー「おい?嘘だろ?」
盗賊「まさか、スイッチがあるなんて」
ゴーレム「!!」ピキーン
エルフ「っ!」バッ
ゴーレム「……!」ピカッ
ヒーラー「目の部分が光った!?」
盗賊「エルフちゃん!伏せて!!」
エルフ「え!?」バッ
13: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 08:59:46.63:PxnlyKit0
ゴーレム「!!!!」ビーーー
ビーーーーーーーーーー
ヒーラー「なんだ!?熱線か?」
ドゴンッ!
盗賊「……砂山が消し飛んだね」ゾワッ
エルフ「……敵意があるなら容赦はしません!」ダッ
盗賊「どうする?お兄さんってあれ?」
ヒーラー「がんばれー」
盗賊「いつの間にあんな距離まで離れたの?」
14: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:00:54.32:PxnlyKit0
エルフ「せいっ!!」ブンッ
カキンッ
ゴーレム「?」
エルフ「やっぱり、見た目通り硬い装甲ですね」
盗賊「エルフちゃん離れて!」シュボッ
エルフ「爆弾ですか!?」ダッ
盗賊「えいっ!」ポイッ
コロン シュー
ゴーレム「!!」
ドゴンッ!
15: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:01:36.18:PxnlyKit0
モクモク
エルフ「どうですかね?」
盗賊「んー衝撃に弱いならなぁ」
ゴーレム「……」ガシャンガシャン
エルフ「駄目ですね……」
盗賊「じゃあ、手足の間接部分を狙うのは?」
エルフ「……やってみます!」ダッ
17: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:03:51.57:PxnlyKit0
ゴーレム「!!」ブオッ
エルフ「そんなデカイ図体の攻撃は当たりませんよ!」サッ
エルフ「間接部分は?……ココか!」ヒュッ
ズブッ!
エルフ「やっぱり!間接部分が弱点ですね!」
ゴーレム「!」ギギギギギ
盗賊「さっきより動きが悪くなってる!」
エルフ「右腕はやりました!次は左腕です!」バッ
ヒーラー「……暇だな」
18: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:04:52.98:PxnlyKit0
ゴーレム「!?」
エルフ「左腕!!」ヒュッ
ズブッ!
盗賊「やった!」
ゴーレム「!!」ギギギギギ
エルフ「っ!?剣が抜けない!?」グイッ
盗賊「エルフちゃん!?剣を手放して!」
ゴーレム「!!」ブオンッ
エルフ「蹴り!?」
20: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:07:45.32:PxnlyKit0
ドゴッ!
メキメキメキメキ
エルフ「あがッ!?」ドサッ
盗賊「エルフちゃん!」
ゴーレム「!?」ズシーン
エルフ「っ……どうやら、両手が使えなくなった状態で蹴りをしたもんだから」
盗賊「バランス取れなくて、倒れたね」
ゴーレム「!?……!?」ジタバタ
エルフ「滑稽ですね、っ痛!?」ガクッ
盗賊「!? お兄さん!早く!」
21: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:08:20.25:PxnlyKit0
ヒーラー「わかってる!」ダッ
エルフ「……不覚でしたね、まさか捨て身の攻撃をされるなんて」
盗賊「……あんま言いたくないけど、剣から手を離せば避けれたよね」
エルフ「剣が大好きな性分なものですから」
ヒーラー「【ヒール】」パアッ
エルフ「っふう!……ありがとうございます」ペコリ
盗賊「本当にお兄さんは回復薬みたいな人だよね」
ヒーラー「……俺、間違った事はしてないよね?」
_________
______
___
_
24: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:13:06.75:PxnlyKit0
盗賊「この長い橋を渡れば、水の都だね!」
ヒーラー「もう目の前だな」
エルフ「……磯の香りは初めてです」
エルフ「そういえば、水の都って孤島なんですかね?あれ」
ヒーラー「元々、昔はこの辺りも大陸だったみたいだけどな」
エルフ「ん?なんで海になっているのですか?」
盗賊「どうやら、地盤沈下があったらしくてね、あの部分だけ沈まなかったみたいだよ?」
エルフ「へー」
ヒーラー「(果たして、あの人はここにいるのだろうか……)」
25: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:13:35.54:PxnlyKit0
ワイワイガヤガヤ
盗賊「しかし、さすが島を繋ぐ大橋」
ヒーラー「人や馬車の行き来がすごいな」
エルフ「なんか、こういうの見てるとワクワクしますね!」
盗賊「あっ!下見てみてよ!」
ブオオオオオオオオオオオオン
エルフ「船ですか?あれ?」
ヒーラー「最新式の蒸気船だな、あれ」
盗賊「水の都はよく貿易にも使われるみたいだからね」
26: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:16:33.91:PxnlyKit0
ヒーラー「門の前に着いたな」
エルフ「ようやく着きましたね」
門番「ん?お前エルフ族か」
エルフ「……なにか問題でも?」
門番「どこからきたんだ?」
エルフ「この大陸の端っこにある森からはるばると砂漠を横断してきましたけど?」
門番「え!?すごいな!そんな所からここまで来たのか?アンタ!」
盗賊「……エルフ族は侵入禁止ではないんだね?」
門番「んなわけない、すまなかったな、アンタ」
エルフ「別に……慣れてますから」スタスタ
27: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:17:27.02:PxnlyKit0
ヒーラー「エルフ族ってだけでも、色々苦労はあるもんだな」
盗賊「……場所によっては差別も受けるらしいよ」
ヒーラー「そもそも、人間とエルフ族のイザコザが解けたのも最近だしな」
盗賊「やっぱり、家出した最初の頃は苦労したのかな」
ヒーラー「……一度だけ、エルフとそういう場所に行ったことあるよ」
盗賊「どうだったの?」
ヒーラー「事前に調査してたからさ、あいつの耳が見えないようにローブ貸してやったんだ」
ヒーラー「国の中に入ったらさ、大広間でオークションやってたんだよな」
ヒーラー「で、オークションの内容は異種族の奴隷販売」
28: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:18:51.30:PxnlyKit0
ヒーラー「あいつさ、エルフ族の女の子が商品として出た時、震えてた」
ヒーラー「俺も流石にまずいと思って、その場から離れて宿に直行」
ヒーラー「そしたらさ……エルフ、わんわん泣いてたよ」
ヒーラー「『なんで、私達が仕打ちを受けなくてはならないんですか』って」
ヒーラー「泣き止むまでかなり時間かかったよ」
盗賊「……そう」
29: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:19:12.70:PxnlyKit0
エルフ「皆さん!早く行きましょう!」
ヒーラー「……俺は、もうアイツが泣いてるとこは見たくないね」
盗賊「お兄さん……」
__________
_______
____
30: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:23:36.64:PxnlyKit0
ザアアアアアアアアアア
ヒーラー「すごいな」
エルフ「そうですね、街の道にそって水が流れていますね」
盗賊「この国の中ではカヌーやボートで移動するのが主流みたいだね」
エルフ「あっ、あれはなんですか?」
ヒーラー「ゴンドラだな」
盗賊「へえ、あれにでも乗る?」
エルフ「いいですね!是非乗りたいものです!」チラッ
ヒーラー「いいね、乗ろうか」
31: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:26:42.04:PxnlyKit0
ザアアアアアアアアアアア
船頭「お客さん達は観光かい?」
ヒーラー「ああ、旅をしててね」
盗賊「まあ観光だよね」
船頭「どこかリクエストはあるかい?」
ヒーラー「うーん、おまかせでいいや」
船頭「あいよ!」グイッ
エルフ「動いた!」
船頭「そこの子はエルフ族かな?珍しいね」
エルフ「……ええ」
船頭「まあ、この都は異種族を拒んだりはしないよ」
盗賊「へえー来るもの拒まず?」
32: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:28:15.10:PxnlyKit0
船頭「そうなるね」
ヒーラー「最初はどこに向かうんだ?」
船頭「まあ、私のオススメコースで進んであげるよ?特別に」
盗賊「おお、サービスいいね」
船頭「それくらいやらないとね!そこのエルフの子に楽しんでもらうためにね」
エルフ「えっ?」
船頭「ふふん、さっきから顔が若干こわばってっていたからね!」
エルフ「そう、ですか……」
船頭「安心しなよ!リラックス!リラックス!」
船頭「ようこそ、旅人達!」
_________
_____
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33: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:32:45.42:PxnlyKit0
船頭「まず最初に、この都のシンボル巨大噴水だよ!」
船頭「でも、残念ながら故障しててね、今は動かないんだ」
ヒーラー「すごいな……かなり大きいぞ」
エルフ「この噴水の形って人ですか?」
船頭「うーん、半分正解かな?」
盗賊「わかった!人魚でしょ?これ」
船頭「正解!」
ヒーラー「人魚ねえ、水の都らしいな」
船頭「ここで、少し物語でも話そうか」
34: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:33:42.68:PxnlyKit0
船頭「かつて、この都にはある男がいました」
船頭「彼は、とても思いやりのある人間でした」
船頭「ある日、彼は浜辺に打ち上げられたイソギンチャクを見つけた」
船頭「心優しい彼は、それを海に返してあげた」
船頭「それからしばらくして、彼は船で海に出かけた」
船頭「しかし、彼は嵐に巻き込まれてしまった」
船頭「誰もが彼は死んだものと思いこんだ」
船頭「しかし、彼は奇跡的に帰ってきていた」
船頭「そう、イソギンチャクを助けた礼で人魚が彼を引っ張ってきたのです!」
船頭「これらの出来事から、人魚伝説がこの都に生まれ始めたらしいよ」
盗賊「ふうん」
35: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:34:05.62:PxnlyKit0
ヒーラー「よくある話だな」
船頭「私は実際には人魚見たことないけどね」
盗賊「所詮は伝説だからね」
エルフ「でも、いい話じゃないですか」
ヒーラー「いわゆる、恩人に礼をする話だからな」
エルフ「ヒーラーさんもそうですね」
盗賊「ああー確かに」
船頭「探し人でもいるのかい?」
ヒーラー「ああ、そうだ」ガサゴソ
船頭「?」
36: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:39:00.76:PxnlyKit0
ヒーラー「この写真のローブの人物に見覚えは?」ピラッ
船頭「古い写真だね、これ」
ヒーラー「まあ8年位前のだからな、で?」
船頭「うーん、ごめん、知らないや」
ヒーラー「そうか……ありがと」
船頭「おっと、前方注意!」グイッ
エルフ「あちらからもゴンドラが来ますね」
盗賊「あっちは一人しか乗っていないね」
ローブの男「……」
ヒーラー「っ!?」
37: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:39:27.43:PxnlyKit0
ヒーラー「(まさか、あのゴンドラに乗っているのは!)」ダッ
エルフ「ヒーラーさん?」
盗賊「お兄さん?」
ヒーラー「おいっ!アンタ!!」
ローブの男「……」
ヒーラー「聞こえてるだろ!答えてくれ!」
ローブの男「……スピードを上げてくれ」
ヒーラー「おいっ!!」
38: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:39:48.26:PxnlyKit0
エルフ「ちょっと!?ヒーラーさん!?」
盗賊「そんなに声を荒げてどうしたのさ?」
ヒーラー「見つけた」
エルフ「え?」
ヒーラー「恩人、見つけた!」
盗賊「え?本当?」
ヒーラー「ああ、間違いないあのローブは」
盗賊「見間違えじゃないの?」
ヒーラー「いや、きっとあの人だ……」
エルフ「……」
__________
______
___
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39: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:41:07.33:PxnlyKit0
エルフ「すごいいいいいいいいいいいい!!」
武器屋「どうだい?この剣はね」
盗賊「また始まったか」
ヒーラー「……」
盗賊「お兄さん?」
ヒーラー「ん……なんだ?」
盗賊「さっきからなんか思いつめてるけど、大丈夫?」
ヒーラー「いや、大丈夫だ、なんでもない」
40: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:41:36.39:PxnlyKit0
ヒーラー「(俺は今まで、あの人を会うために旅をしてきた)」
ヒーラー「(あの人に会ったら、俺の旅は終わる)」
ヒーラー「(別に終わってもいいかもしれない)」
ヒーラー「(だけど、今の俺は明らかにエルフや盗賊との旅を楽しんでいる)」
ヒーラー「(確かに、俺の目的が終わっても旅は続けていいかもしれない)」
ヒーラー「(でも、目的も無しだとな……エルフを故郷に帰らせてやりたいし)」
ヒーラー「(今は俺の護衛って名目で同行しているが、その俺の目標が無くなれば)」
ヒーラー「(異種族のお姫様を連れて行ってはよくなくなる)」
41: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:42:07.33:PxnlyKit0
ヒーラー「(でも、そんな事をいったら恩人には礼はできない)」
ヒーラー「(どうするべきか……)」
盗賊「……あんまり、思いつめないほうがいいよ?」
ヒーラー「え?」
盗賊「なんか、お兄さんらしくないじゃん」
ヒーラー「……そうだな」
ヒーラー「(俺らしくか……)」
ヒーラー「少し、そこら辺うろつくわ」トコトコ
盗賊「お兄さん……」
エルフ「しゅごいいいいいいいいいいいいい!?」ペロペロ
武器屋「おい!売り物舐めるな!!」
42: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:51:35.29:PxnlyKit0
盗賊「(きっと、お兄さんは恩人って人に会った後を考えているんだろうな)」
盗賊「……馬鹿みたい」
盗賊「(自分のしたい事をすればいいのに)」
盗賊「(多分、考えているのはエルフちゃんの事だろうね)」
盗賊「お兄さんがあの調子じゃ、こっちまでブルーになるよ……」
コテッ
43: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:52:06.48:PxnlyKit0
子供「うわーん!」ピーピー
盗賊「?どうしたの?」
子供「痛いよー!」ピーピー
盗賊「あちゃー、擦りむいちゃったね」ナデナデ
盗賊「痛いの痛いの飛んでいけー」
子供「うわーん!」ピーピー
盗賊「(……まいったな、お兄さんいないと治療できないし)」
サッ
ローブの男「どれ、見せてみなさい」
盗賊「(あれ?さっきゴンドラですれ違った人だ)」
44: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:58:09.25:PxnlyKit0
ローブの男「【ヒール】」パアッ
子供「っ!?……あれ?痛くない?」
ローブの男「もう大丈夫だ」
子供「ありがとう!おじさん!」ダッ
ローブの男「おじっ……もうそんな歳か」ガックリ
盗賊「あの」
ローブの男「ん?なんだい嬢ちゃん?」
盗賊「おじさんはもしかして、この写真の人?」ピラッ
ローブの男「!?……確かに俺だな」
盗賊「この写真の持ち主がおじさんに会いたがってるよ?」
ローブの男「約束を果たしにきたか……悪い、無理だ」
45: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:58:32.73:PxnlyKit0
盗賊「なんで?」
ローブの男「……俺はもう、誰かに恩人とは呼ばれる人間じゃなくなったんだ」
盗賊「え?」
ローブの男「悪いが、俺にはそいつに会う資格はもうないよ」スタッ
盗賊「待ってよ!」
ローブの男「……」スタスタ
盗賊「卑怯者!」
ローブの男「!?……」スタスタ
盗賊「……こんなの無いよ」
46: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:59:03.57:PxnlyKit0
盗賊「今まで、お兄さんはおじさんに会うためにヒーラーの職になったり」
盗賊「旅をしてきたりしたんだよ!?」
盗賊「おじさんとの約束を果たすために!」
盗賊「これじゃ、お兄さんが馬鹿みたいじゃないか!!」
ローブの男「……俺は、命を見殺しにした男だ」
盗賊「……」
ローブの男「しかも、約束を破ってな」
ローブの男「……汚い大人だろ?」
ローブの男「……そいつに会わせる顔も無い」ダダッ
盗賊「……卑怯者」
_________
______
___
47: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:59:25.95:PxnlyKit0
ヒーラー「この男を知っているか?」ピラッ
「ああ、この人ならこの間この酒場に来てたよ?」
ヒーラー「そうか!でまだここにいるのか?」
「うーん、たしか後2日は滞在するとか言っていたな」
ヒーラー「情報ありがとう」
ヒーラー「(会う覚悟を決めないとな)」
____________
_____
__
48: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 09:59:42.11:PxnlyKit0
エルフ「うん!この宿屋の窓から見える景色は最高ですね!」
盗賊「海が見える部屋、まあロマン溢れるよね」
ヒーラー「海か、そういえばすぐ側に浜辺があったな」
エルフ「え?本当ですか!?」
ヒーラー「ああ、たしか」
エルフ「海水浴!!……ちょっと水着を買いに行ってきます!」
エルフ「盗賊さんも!」
盗賊「ふふん!あたしはもう買ったのだよエルフちゃん!」
エルフ「いつの間に!?」
盗賊「エルフちゃんが剣見てる時にね」
エルフ「ぐぬぬぬ……行ってきます!」バタン
49: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 10:00:05.62:PxnlyKit0
ヒーラー「あいつ、楽しそうだなー」
盗賊「まあ、エルフ族って森で暮らしているからね」
ヒーラー「海が珍しいのか」
盗賊「そうだと思うよ?」
ヒーラー「ふーん」
盗賊「(お兄さん、さっきのおじさんの話を聞いたらどうするんだろう?)」
盗賊「(恩人に会うことを拒絶されたなんて知ったら……)」
ヒーラー「どうした?」
盗賊「ん?なんでもないよ!」
50: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 10:00:33.00:PxnlyKit0
盗賊「それよりも、お兄さん?二人っきりだねー」ニヤニヤ
ヒーラー「え?いきなりなんだ?」
盗賊「こんなにかわいい娘とね!」ドサッ
ヒーラー「……」
盗賊「……めちゃくちゃにしてもいいのよ?」
ヒーラー「まな板」ボソッ
盗賊「っ!?」
ヒーラー「自分の体を張るなら、もっと成長してからにしな!」
盗賊「……エルフちゃんみたいな?」ボソッ
ヒーラー「なっ!?」
__________
______
___
59: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:17:29.55:PxnlyKit0
ザザーン ザザーン
エルフ「夏だー!海だー!」
盗賊「いやー海水浴なんて久しぶりだなあ」
ヒーラー「……」ジー
エルフ「な?なんですか?」ボイーン
ヒーラー「目の保養」
盗賊「っ!」イラッ
エルフ「それじゃあお先に!」ダッ
60: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:18:06.25:PxnlyKit0
盗賊「お兄さん、まな板でもね需要はあるんだよ?」
ヒーラー「ほう」
盗賊「あたしを求める人がいたら、お金次第で動くかもよ?」
ヒーラー「例えば?」
盗賊「今ここで、脱ぎたての水着プレゼント!とか」
ヒーラー「1000G」チャリン
盗賊「え?え?……やっ安いなあ!」アセアセ
ヒーラー「2500」チャリン
盗賊「ううむ……もう少し!」
ヒーラー「5000」チャリン
盗賊「プレゼント!」ヌギヌギ
バッ
盗賊「なんちゃって!」テブラ
ヒーラー「買った!」バシッ
盗賊「え!?冗談だよ!」アセアセ
61: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:19:12.03:PxnlyKit0
ヒーラー「……」スーハースーハー
盗賊「ちょ///……ブラをそんなに嗅がなくても///」
ヒーラー「……」ペロペロ
盗賊「待って!舐めないで!てか返してよぉ///」
ヒーラー「ゴーグル!」スチャ
盗賊「目にかけんなー!!」
_________
_____
___
62: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:19:41.68:PxnlyKit0
エルフ「ふー!遊びつかれましたね!」
盗賊「……うん」フラフラ
ヒーラー「ああ!」テカテカ
盗賊「(まさか、水着がこんなにボロボロにされるとは……)」シクシク
エルフ「今日は後はどうしますか?」
ヒーラー「どこか、外食でも行こうか」
盗賊「……お兄さんってさ、どうしてそんな大金持ってるの?」
ヒーラー「え?」
盗賊「まさか……臓器売買?」
エルフ「違いますよ!」
64: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:20:26.50:PxnlyKit0
盗賊「え?」
エルフ「ヒーラーさんの大金は、かなり前に行った街で手に入ったものなんですよ」
盗賊「どんな?」
エルフ「ちょうど、私達が滞在していた時にゴブリンが襲撃したんです」
エルフ「その時にたくさんのケガ人で町が溢れかえりました」
エルフ「当然、病院は混みました、その時に動いたのがヒーラーさんです」
盗賊「ああ、商売したのか」
エルフ「いえ、ヒーラーさんはお礼は全部断っていましたよ?」
エルフ「でも、街の市長がどうしてもって、ヒーラーさんは渋々受け取りました」
エルフ「多分、まだ銀行の通帳には250万くらい残っているんじゃないですかね?」
盗賊「なるほど、お兄さんについていけばヒモが出来るね」
65: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:21:18.53:PxnlyKit0
_______________
ヒーラー「海上レストランねぇ、洒落てんな」
盗賊「すごいね、この浮島まったく揺れてないよ?」
エルフ「……星空がキレイ」
ドントコトン
ヒーラー「ん?踊り子達が踊ってるのか?」
盗賊「……あの衣装きれいだね」
エルフ「そうですね」
踊り子「あら?貴方達も着たいの?」
エルフ「あっ!いえいえ!そうではなくて!」
盗賊「エルフちゃん、ここは話に乗ろうよ!」ニヤニヤ
66: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:21:47.73:PxnlyKit0
エルフ「でも私達が行ったら、ヒーラーさんが一人に」
ヒーラー「気にするな、楽しんでこいよ」
盗賊「そうそう、行こうよエルフちゃん!グイッ
踊り子「じゃあ、こっちに来てちょうだい」
キャキャ ウフフフ
ヒーラー「……一人ねえ」
ヒーラー「たしかに最近は一人っきりっことがなかったな」
68: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:22:38.66:PxnlyKit0
ヒーラー「思えば、楽に旅を進めることが出来たのはエルフのおかげだな」
ヒーラー「あいつに会うまでは、モンスターに出会ったら逃げてたからなあ」
ヒーラー「……アイツらがいないとここまで来れたかどうかもわからないな」
スタスタ
ローブの男「……」
ヒーラー「っ!あの人!」ダッ
ローブの男「っ!?」
ヒーラー「おいっ!!待ってくれ!」
69: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:23:58.86:PxnlyKit0
ローブの男「……」ダッダッダッダッダッ
ヒーラー「なんで逃げるんだ!俺はあんたに礼を言いたいだけだ!!」
ローブの男「……」ダッダッダッダッダッ
ヒーラー「待ってくれよ!」ダッダッダッダッダッ
ローブの男「っち!……」ダッダッダッダッダッ
ヒーラー「待てよ!!」ダッダッダッダッダッ
ドンッ
船頭「痛っ!?」ドサッ
ヒーラー「うわ!?」ドサッ
70: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:24:25.34:PxnlyKit0
船頭「なんだ、旅人さんじゃないか」
ヒーラー「すまん、急いでたんだ……」
船頭「?」
ヒーラー「……見失ったな、クソッ!」
船頭「……そうだ!旅人さん!」
ヒーラー「……なんだ?」
船頭「なんかイライラしているみたいだから、面白い話を」
ヒーラー「?」
船頭「どうやら明日、巨大タコがこの都の近くに来るんだって!」
ヒーラー「それがどうしたんだ?」
72: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:24:55.39:PxnlyKit0
船頭「今、観光会社がそれをイベントに出来ないかって提案してて」
ヒーラー「……それに参加しろと?」
船頭「うん!ただじゃないよ!捕獲したら10万Gを賞金に出すって!」
ヒーラー「……まあ、考えておくよ」
船頭「気が向いたら、明日港に来てね!」トコトコ
ヒーラー「捕獲ねえ……」
ヒーラー「……なんで、あの人は俺から逃げたんだろう?」
73: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:25:38.56:PxnlyKit0
ザザーン ザザーン
ヒーラー「(まさか、会う気が無いのか?)」
ヒーラー「(もしくは別人?」
ヒーラー「ん?」
イソギンチャク「」カラカラ
ヒーラー「……イソギンチャクか」
ヒーラー「そういえば、人魚伝説だっけ?」
ヒーラー「こうやって」ガシッ
イソギンチャク「」
ヒーラー「海に返したら!」ブンッ
ポチャ
ヒーラー「恩返しを受けたのは……」
74: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:26:00.91:PxnlyKit0
ヒーラー「アホらし、帰ろう」スタスタ
ザザーン ザザーン
ブクブクブク
ザバンッ
人魚「……」ジー
_________
______
___
75: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:26:51.87:PxnlyKit0
ガチャ
ヒーラー「ただいま」
エルフ「あっ、おかえりさない!」
盗賊「お兄さん遅かったね?どこ行ってたの?」
ヒーラー「うろついてたよ、ってお前らその衣装」
エルフ「あっ気づきました?記念に貰ったんですよ!」
盗賊「かわいいでしょ?」フフン
ヒーラー「……そうだな」
盗賊「あっ、お兄さんニヤついてどうしたの?」ニヤニヤ
ヒーラー「……なんでもない」
ヒーラー「(……俺はこのまま目的を果たさないほうが幸せなのか?)」
___________
_______
____
80: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:48:50.81:PxnlyKit0
漁師「えー皆さんに集まっていただいたのは話したとおりです」
漁師「これからー巨大タコ オクトパス を捕獲してもらいたのです」
漁師「見事捕獲した方にはー賞金をお渡しします」
ザワザワ
盗賊「しかし、よくこんなイベントを思いついたね」
ヒーラー「まあ、俺らからしたら依頼以外で金をもらうチャンスだからな」
エルフ「……見た感じ、腕利きの方がチラホラいますね」
ザワザワザアザワ
81: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:49:16.46:PxnlyKit0
漁師「出航!」
ザザーン
盗賊「しかし、こんなに沢山船を出していいのかね?」
ヒーラー「多分、何隻かは囮になるだろうな」
エルフ「でも、ここまでの大金を貰えるとなると、結構危険なのでは?」
ヒーラー「まあ、討伐じゃなくて捕獲だもんな、そりゃ難易度あがるよ」
盗賊「まあ、世の中には結構ブラックな仕事もあるからね」
ヒーラー「例えば?」
盗賊「東の方にある、通称は黄金の国ジパングでね」
盗賊「マグロ漁船ってのに乗っていくお仕事もあるらしいよ?」
ヒーラー「へー」
82: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:54:38.99:PxnlyKit0
ブクブクブク
エルフ「ん?なんか、下から変な気配が……」
ドッバーン
盗賊「うわ!?触手!?」
エルフ「っせい!」ブンッ
スパッ
ヒーラー「おお、流石だな」
エルフ「でもっ!本体は海の中ですよ!」
オレニマカセロ! エアロッ!
ビューーーーーン!
ヒーラー「おいっ!?あっちの船の奴が竜巻出しやがった!?」
盗賊「皆!船に捕まって!!」ガシッ
83: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:54:59.04:PxnlyKit0
ビュオオオオオオオオオオ
オクトパス「グオオオオオオオ!!」
ヒーラー「本体が出てきた!」
サンダー! ファイアー!
エターナルフォースブリザード!アイテハシヌ!
盗賊「……すごい集中砲火」
エルフ「皆さん、捕獲って事忘れてません?」
オクトパス「ピギャアアアアアア!!」ズオオオオオオオ
84: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:56:45.79:PxnlyKit0
オクトパス「ピギャアアアアアアア!!」ズオオオオオオオオ
盗賊「あたし達の船に向かってきてる!?」
ヒーラー「おい!そこのガンナー!撃ってくれ!」
ガンナー「あいよ!」ズダンッ
ビシュ!
オクトパス「グギャアアア!?」ブンッ
シュルルルルル
盗賊「触手がくるよ!?」
エルフ「任せてください!」ブンッ
スパッ
ヒーラー「おおっ!キレイに横線が入った!」
エルフ「でも、切り落とせませんでした」
85: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:57:40.70:PxnlyKit0
オクトパス「グギギギギ!」
盗賊「どうやら、周りの攻撃で大分弱ってきたみたいだね」
エルフ「もう終わりそうですね」シャキン
ビチビチッ
ヒーラー「ん?船の後ろか?」
シュルルルルルルル
エルフ「なっ!?」
盗賊「危ないっ!エルフちゃん」
ヒーラー「エルフ!!」ダッ
ドンッ パシッ
ヒーラー「ぐっ!?」
エルフ「っ!?ヒーラーさん」
86: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:58:17.90:PxnlyKit0
オクトパス「グギャアアアアアアア!!」ズズズズズ
ドプンッ
ヒーラー「あっ」
ドプンッ
エルフ「ヒーラーさん!!」
盗賊「オクトパスがお兄さんを掴んだまま海に逃げちゃうよ!!」
エルフ「今行きます!」ダッ
盗賊「追っちゃ駄目だよ!!」グッ
エルフ「でも!」
盗賊「波が激しくなってきてる!泳いで追いかけるのは無理だよ!」
エルフ「そんな!……ヒーラーさん!!」
87: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:58:38.26:PxnlyKit0
ヒーラー「ガボボボボボボボボボッ!?」
オクトパス「ピギャアアアアアアア!!」
ヒーラー「(こいつ!ドンドン海の底に潜ってやがる!?」
ヒーラー「(この触手から早く抜け出さないと!!)」グッグッ
ヒーラー「(ちっ!無理かよ!!」
ヒーラー「(ん?俺を掴んでいる触手に横線が入ってる)?」
ヒーラー「(これは……さっきエルフが切ったやつか?)」
ヒーラー「(なら!!手を突っ込んで広げれば!!)」グイッ
グイッグッイ
ブチブチ
ヒーラー「(触手が千切れた!)」
88: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 11:59:30.95:PxnlyKit0
ヒーラー「ゴボボボオ!?」
ヒーラー「(体が自由になったのはいいが、今は海の底……)」
ヒーラー「(海上まで、息が続かない……)」
ヒーラー「(俺は死ぬのか?)」
ヒーラー「(意識が……)」
ヒーラー「」ブクブク
ヒーラー「」コポッ
ヒーラー「」
人魚「……」
_________
____
__
95: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:29:05.01:PxnlyKit0
[宿屋]
エルフ「ヒーラーさん……」
盗賊「……」
エルフ「普段は、戦闘にも参加しないくせに」
エルフ「なんで、私を庇ったりなんか……」ポタポタ
盗賊「エルフちゃん……」
エルフ「ヒーラーさんには、まだやることがあったでしょ?」ポロポロ
96: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:29:33.58:PxnlyKit0
エルフ「……私のせいだ」ポタポタ
盗賊「大丈夫だよ、きっと」
エルフ「……え?」
盗賊「お兄さんが死ぬ所なんて想像できないしね!」
盗賊「多分、ひょっこり帰ってくるよ!」
エルフ「盗賊さん……」
盗賊「だから、しばらく待ってみようよ!ね!」
_____________
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_
97: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:30:10.16:PxnlyKit0
ザザーン ザザーン
ローブの男「……」
ローブの男「(懐かしい奴を思い出したな)」
ローブの男「(まさか、あの村のガキが)」
ローブの男「(俺を探していたなんて)」
ローブの男「……悪いな、俺はお前に会わせる顔はねえんだ」
ザブンッ
人魚「……」
ローブの男「ん……あれは、人魚か?」
ドサッ
98: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:31:44.33:PxnlyKit0
ヒーラー「」
ローブの男「っ!?なんでこいつが?まさか溺れたのか?」
人魚「……」ジー
ローブの男「……なんだ、その目は」
人魚「……」ジー
ローブの男「……こいつを助けてほしいのか?」
人魚「…!」コクッ
ローブの男「っチ!見殺しにする理由はないけどな」
ローブの男「【ヒーリング】」パアァ
ヒーラー「……ごふっ!?」ブフッ
ヒーラー「……zzz」スースー
99: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:32:19.24:PxnlyKit0
ローブの男「……息は吹き返した、これでいいだろ?」
人魚「……」ジー
ローブの男「なんだよ?まだなにかあるのか?」
人魚「……」チョンチョン
ローブの男「コイツを」
人魚「……」スッ
ローブの男「ちゃんと、送ってやれって?」
人魚「……」ニコッ
ローブの男「……めんどくせえな」
ヒーラー「zzz」スースー
_____________
_________
____
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100: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:44:55.28:PxnlyKit0
___________
ヒーラー「っう……ううん?」ムクッ
エルフ「!?ヒーラーさん!!」ダキッ
ヒーラー「うおっ!?なんだ?なんだ?」
エルフ「死んじゃったかと思いましたよ!!」
盗賊「おお、お熱いねぇ」ニヤニヤ
ヒーラー「ん、死んだ?……そうだ!俺は確か溺れて!」
盗賊「お兄さんは助けてもらったんだよ」
ヒーラー「え?誰に?」
101: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:45:35.76:PxnlyKit0
盗賊「お兄さんの恩人さん、ほらあのローブの」
ヒーラー「は?」
盗賊「驚いたよ?突然この部屋にお兄さん担いでやってきたんだもん」
ヒーラー「え?あの人が助けてくれたのか?」
盗賊「多分ね、伝言もあるよ」
ヒーラー「……なんだ?」
盗賊「『昔の事はもう忘れろ』だとさ」
ヒーラー「……」
盗賊「(流石に堪えるよね、自分が追いかけてた人にこんな事言われるんだもん)」
102: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:46:21.06:PxnlyKit0
ヒーラー「……そうか」
エルフ「……それで、ヒーラーさんはどうするんですか?」
ヒーラー「……忘れるよ、昔の事はな」
盗賊「……」
ヒーラー「でも」
盗賊「……え?」
ヒーラー「今回の礼はしなくちゃな」
エルフ「ということは!」
ヒーラー「ああ!これからもあの人を追いかけるよ!恩人だからな!」
盗賊「……あはは!お兄さんらしいね!」
ヒーラー「……まあな」
_________
____
__
_
103: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:51:37.90:PxnlyKit0
ザアアアアアアアアア
船頭「で、旅人さん達はもうここを出発してしまうのかい?」
ヒーラー「ああ、どうやらあの人は火山地帯のほうに向かったらしいし」
船頭「もっとゆっくりすればいいのに」
盗賊「無理無理!この人意外とせっかちだから!」
エルフ「そうですね!」クスクス
盗賊「あっそうだ!あのね、お兄さん?エルフちゃんがね」
エルフ「ストップ!駄目です!」アセアセ
ヒーラー「?」
104: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:52:48.82:PxnlyKit0
船頭「旅人さん達、噴水の前を通るよ!っても壊れてるけど」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ヒーラー「ん?なんだ?」
ピュー
ブシャアアアアアアアアアアア
船頭「あれ?噴水直ったの?」
エルフ「……すごい迫力ですね」
盗賊「うん!」
人魚「……」
ヒーラー「ん?」
シーン
ヒーラー「……気のせいかな?」
105: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:53:18.30:PxnlyKit0
ザザーン
船頭「門の近くに到着!」
ヒーラー「送ってくれてありがとな」
船頭「まあ仕事だし」
エルフ「なんか名残惜しいですね……ここをでるのは」
船頭「住むかい?結構快適だよ?」
エルフ「うーん、どうしましょうか?」
ヒーラー「馬鹿、行くぞ」グイッ
エルフ「ええええ!?」
盗賊「またね」
船頭「ご武運を!」
106: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:53:40.68:PxnlyKit0
門番「どうだった?この都は」
エルフ「ええ!最高でした!」
門番「また来るといいさ」
ヒーラー「お前、本当にここに住みたいのか?」
エルフ「ええ!」
ヒーラー「知ってるか?海水ってのはお前が大好きな剣を錆びやすくするんだぞ?」
エルフ「っ!?やっぱり止めます!」
盗賊「……単純だねぇ」
107: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:54:02.83:PxnlyKit0
ヒーラー「じゃあ気を取り直して、火山地帯へ出発するか!」
エルフ「はい!」
盗賊「うん!」
ポチャ
人魚「……」
108: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 12:54:46.13:PxnlyKit0
あらあらしい海 おだやかな海
なにを悩んでいるの?
なにを伝えたいの?
そんなもの
打ち寄せる波と一緒に
悲しみも
悩みも
流してしまえばいい
人魚「……またね、恩人さん」
イソギンチャク「」プカプカ
終わり
112: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 13:11:36.39:PxnlyKit0
おまけ
盗賊「ねえ、お兄さん?」
ヒーラー「なんだ?」
盗賊「お兄さんは変態なの?」
ヒーラー「……お前は何を言ってるんだ?」
盗賊「だって、浜辺であたしの水着舐めてたじゃん」
ヒーラー「あれはお前から買ったんだ、別にいいだろ?」
盗賊「……それ否定できてないよね?」
ヒーラー「馬鹿、俺は紳士だぞ?」
盗賊「……紳士はそんな事しないよね」
114: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 13:13:29.05:PxnlyKit0
盗賊「そうだ、ねえお兄さん?」
ヒーラー「うん?」
盗賊「あたしとエルフちゃん、もし売りに出されてたらどっちを買う?」
ヒーラー「……何がいいたい?」
盗賊「あたしとエルフちゃん、どっちが好き?」
ヒーラー「……両方は駄目か?」
盗賊「駄目」
ヒーラー「……」
116: 忍法帖【Lv=35,xxxPT】 :2012/02/19(日) 13:19:11.57:PxnlyKit0
盗賊「おうおう!困ってるねぇ」ニヤニヤ
ヒーラー「あっ……わかった!」
盗賊「悩め!なや……え?」
ヒーラー「聞きたいか?」
盗賊「……うん」
ヒーラー「付き合うのはエルフ!お前はセフレ!」
盗賊「……死ねっ!」
ドゴッ!
おしまい
エルフ「……出番無しですか」
ヒーラー「それがどうした?」
エルフ「……女の子だけにそれを押し付けて、貴方は毎晩グッスリ眠ってますね?」
エルフ「良心は痛まないのですか?」
ヒーラー「は?別に寝たいときは寝てもいいだろ?」
エルフ「なんか、呆れを通り越して逆に感心しますよ……」
盗賊「……ヒーラーのお兄さん、いくら殴っても起きないよね」
ヒーラー「まあな」
エルフ「あ?」シャキン
盗賊「わああ!?エルフちゃんストップ!!」
盗賊「(あたし達は現在、砂漠地帯を横断して、水の都に向かっている)」
盗賊「(……途中、砂漠の真ん中で足止めは食らったけど)」
盗賊「(ともかく、現在進行中だね)」
ヒーラー「女の子って事を主張するなら!剣振るのやめろ!」
エルフ「今の時代!女性も戦わなくては食べていけません!」
ヒーラー「野蛮人め!」
エルフ「……いいでしょう、職業は剣士らしく、美しく仕留めてあげましょう」シャキン
盗賊「(愉快な仲間と共に)」
盗賊「(こっちのお兄さんは、職業ヒーラー、いわゆる医者?)」
盗賊「(お兄さんが旅をしている理由は、幼い頃、自分を助けた恩人にお礼をするためらしい)」
盗賊「(お兄さんがヒーラーなのは、その恩人への憧れらしい)」
盗賊「(こっちの女の子がエルフちゃん、職業剣士)」
盗賊「(エルフちゃんは元々、どこかのエルフ族の王族にあたるらしい)」
盗賊「(そのなかで、エルフちゃんは次のお姫様らしい)」
盗賊「(しかし、エルフちゃんは自分には無理だと家出をしたみたい)」
盗賊「(それからは、持ち前の剣技で町などで依頼をこなして食いつないでたらしい)」
盗賊「(エルフちゃんとお兄さんが出会ったのは、半年以上前らしい)」
盗賊「(エルフちゃんが依頼で負傷していた所をお兄さんが通りがかり)」
盗賊「(治療してあげたら、エルフちゃんがお礼という事でお兄さんの旅に同行)」
盗賊「(ベタだね)」
盗賊「(そして、これである)」
ヒーラー「おい!頬に剣が掠ったぞ!?」
エルフ「……」ブンッ
ヒーラー「うわっ!?」スッ
エルフ「避けないでください」スッ
盗賊「……大丈夫かな?」
ヒーラー「遠くに海が見えてきたな」
盗賊「あっ!本当だ!」
エルフ「ようやく、砂漠から抜けられますね……」グッタリ
盗賊「やっぱり、エルフ族には厳しいのかな?砂漠は?」
エルフ「ええ、森を空気が潤っていましたけど、砂漠は乾きすぎです」
ヒーラー「ふうん」
盗賊「ん?ねえ、お兄さん?あれ何かな?」
ヒーラー「ん?」
ゴーレム「」
ヒーラー「ゴーレムか?これ?」
ゴーレム「」
盗賊「みたいだね」
エルフ「壊れてしまったんですかね?」
ゴーレム「」
ヒーラー「しかし、よく出来てるなこれ」サワサワ
盗賊「たしか、ゴーレムって2年前に廃棄令が出たんだっけ?」
ヒーラー「あれだろ?どこかの国が門番として置いてたら、突然暴れだしたやつ」
盗賊「そうそう、一般市民にまで被害出たから、大陸全体で出たんだよね?」
エルフ「実物は初めてみました」ペタペタ
ヒーラー「まあ、遺跡とかに配置してあるのが普通だからな」
盗賊「突然動いたりして」ニヤニヤ
ヒーラー「そんなベタな」
エルフ「ん?なんですか?この出っ張りは?」スッ
ポチッ
ヒーラー「え?」
盗賊「え?」
ウィーン
ゴーレム「……」ゴゴゴゴゴゴゴ
ヒーラー「おい?嘘だろ?」
盗賊「まさか、スイッチがあるなんて」
ゴーレム「!!」ピキーン
エルフ「っ!」バッ
ゴーレム「……!」ピカッ
ヒーラー「目の部分が光った!?」
盗賊「エルフちゃん!伏せて!!」
エルフ「え!?」バッ
ゴーレム「!!!!」ビーーー
ビーーーーーーーーーー
ヒーラー「なんだ!?熱線か?」
ドゴンッ!
盗賊「……砂山が消し飛んだね」ゾワッ
エルフ「……敵意があるなら容赦はしません!」ダッ
盗賊「どうする?お兄さんってあれ?」
ヒーラー「がんばれー」
盗賊「いつの間にあんな距離まで離れたの?」
エルフ「せいっ!!」ブンッ
カキンッ
ゴーレム「?」
エルフ「やっぱり、見た目通り硬い装甲ですね」
盗賊「エルフちゃん離れて!」シュボッ
エルフ「爆弾ですか!?」ダッ
盗賊「えいっ!」ポイッ
コロン シュー
ゴーレム「!!」
ドゴンッ!
モクモク
エルフ「どうですかね?」
盗賊「んー衝撃に弱いならなぁ」
ゴーレム「……」ガシャンガシャン
エルフ「駄目ですね……」
盗賊「じゃあ、手足の間接部分を狙うのは?」
エルフ「……やってみます!」ダッ
ゴーレム「!!」ブオッ
エルフ「そんなデカイ図体の攻撃は当たりませんよ!」サッ
エルフ「間接部分は?……ココか!」ヒュッ
ズブッ!
エルフ「やっぱり!間接部分が弱点ですね!」
ゴーレム「!」ギギギギギ
盗賊「さっきより動きが悪くなってる!」
エルフ「右腕はやりました!次は左腕です!」バッ
ヒーラー「……暇だな」
ゴーレム「!?」
エルフ「左腕!!」ヒュッ
ズブッ!
盗賊「やった!」
ゴーレム「!!」ギギギギギ
エルフ「っ!?剣が抜けない!?」グイッ
盗賊「エルフちゃん!?剣を手放して!」
ゴーレム「!!」ブオンッ
エルフ「蹴り!?」
ドゴッ!
メキメキメキメキ
エルフ「あがッ!?」ドサッ
盗賊「エルフちゃん!」
ゴーレム「!?」ズシーン
エルフ「っ……どうやら、両手が使えなくなった状態で蹴りをしたもんだから」
盗賊「バランス取れなくて、倒れたね」
ゴーレム「!?……!?」ジタバタ
エルフ「滑稽ですね、っ痛!?」ガクッ
盗賊「!? お兄さん!早く!」
ヒーラー「わかってる!」ダッ
エルフ「……不覚でしたね、まさか捨て身の攻撃をされるなんて」
盗賊「……あんま言いたくないけど、剣から手を離せば避けれたよね」
エルフ「剣が大好きな性分なものですから」
ヒーラー「【ヒール】」パアッ
エルフ「っふう!……ありがとうございます」ペコリ
盗賊「本当にお兄さんは回復薬みたいな人だよね」
ヒーラー「……俺、間違った事はしてないよね?」
_________
______
___
_
盗賊「この長い橋を渡れば、水の都だね!」
ヒーラー「もう目の前だな」
エルフ「……磯の香りは初めてです」
エルフ「そういえば、水の都って孤島なんですかね?あれ」
ヒーラー「元々、昔はこの辺りも大陸だったみたいだけどな」
エルフ「ん?なんで海になっているのですか?」
盗賊「どうやら、地盤沈下があったらしくてね、あの部分だけ沈まなかったみたいだよ?」
エルフ「へー」
ヒーラー「(果たして、あの人はここにいるのだろうか……)」
ワイワイガヤガヤ
盗賊「しかし、さすが島を繋ぐ大橋」
ヒーラー「人や馬車の行き来がすごいな」
エルフ「なんか、こういうの見てるとワクワクしますね!」
盗賊「あっ!下見てみてよ!」
ブオオオオオオオオオオオオン
エルフ「船ですか?あれ?」
ヒーラー「最新式の蒸気船だな、あれ」
盗賊「水の都はよく貿易にも使われるみたいだからね」
ヒーラー「門の前に着いたな」
エルフ「ようやく着きましたね」
門番「ん?お前エルフ族か」
エルフ「……なにか問題でも?」
門番「どこからきたんだ?」
エルフ「この大陸の端っこにある森からはるばると砂漠を横断してきましたけど?」
門番「え!?すごいな!そんな所からここまで来たのか?アンタ!」
盗賊「……エルフ族は侵入禁止ではないんだね?」
門番「んなわけない、すまなかったな、アンタ」
エルフ「別に……慣れてますから」スタスタ
ヒーラー「エルフ族ってだけでも、色々苦労はあるもんだな」
盗賊「……場所によっては差別も受けるらしいよ」
ヒーラー「そもそも、人間とエルフ族のイザコザが解けたのも最近だしな」
盗賊「やっぱり、家出した最初の頃は苦労したのかな」
ヒーラー「……一度だけ、エルフとそういう場所に行ったことあるよ」
盗賊「どうだったの?」
ヒーラー「事前に調査してたからさ、あいつの耳が見えないようにローブ貸してやったんだ」
ヒーラー「国の中に入ったらさ、大広間でオークションやってたんだよな」
ヒーラー「で、オークションの内容は異種族の奴隷販売」
ヒーラー「あいつさ、エルフ族の女の子が商品として出た時、震えてた」
ヒーラー「俺も流石にまずいと思って、その場から離れて宿に直行」
ヒーラー「そしたらさ……エルフ、わんわん泣いてたよ」
ヒーラー「『なんで、私達が仕打ちを受けなくてはならないんですか』って」
ヒーラー「泣き止むまでかなり時間かかったよ」
盗賊「……そう」
エルフ「皆さん!早く行きましょう!」
ヒーラー「……俺は、もうアイツが泣いてるとこは見たくないね」
盗賊「お兄さん……」
__________
_______
____
ザアアアアアアアアアア
ヒーラー「すごいな」
エルフ「そうですね、街の道にそって水が流れていますね」
盗賊「この国の中ではカヌーやボートで移動するのが主流みたいだね」
エルフ「あっ、あれはなんですか?」
ヒーラー「ゴンドラだな」
盗賊「へえ、あれにでも乗る?」
エルフ「いいですね!是非乗りたいものです!」チラッ
ヒーラー「いいね、乗ろうか」
ザアアアアアアアアアアア
船頭「お客さん達は観光かい?」
ヒーラー「ああ、旅をしててね」
盗賊「まあ観光だよね」
船頭「どこかリクエストはあるかい?」
ヒーラー「うーん、おまかせでいいや」
船頭「あいよ!」グイッ
エルフ「動いた!」
船頭「そこの子はエルフ族かな?珍しいね」
エルフ「……ええ」
船頭「まあ、この都は異種族を拒んだりはしないよ」
盗賊「へえー来るもの拒まず?」
船頭「そうなるね」
ヒーラー「最初はどこに向かうんだ?」
船頭「まあ、私のオススメコースで進んであげるよ?特別に」
盗賊「おお、サービスいいね」
船頭「それくらいやらないとね!そこのエルフの子に楽しんでもらうためにね」
エルフ「えっ?」
船頭「ふふん、さっきから顔が若干こわばってっていたからね!」
エルフ「そう、ですか……」
船頭「安心しなよ!リラックス!リラックス!」
船頭「ようこそ、旅人達!」
_________
_____
___
_
船頭「まず最初に、この都のシンボル巨大噴水だよ!」
船頭「でも、残念ながら故障しててね、今は動かないんだ」
ヒーラー「すごいな……かなり大きいぞ」
エルフ「この噴水の形って人ですか?」
船頭「うーん、半分正解かな?」
盗賊「わかった!人魚でしょ?これ」
船頭「正解!」
ヒーラー「人魚ねえ、水の都らしいな」
船頭「ここで、少し物語でも話そうか」
船頭「かつて、この都にはある男がいました」
船頭「彼は、とても思いやりのある人間でした」
船頭「ある日、彼は浜辺に打ち上げられたイソギンチャクを見つけた」
船頭「心優しい彼は、それを海に返してあげた」
船頭「それからしばらくして、彼は船で海に出かけた」
船頭「しかし、彼は嵐に巻き込まれてしまった」
船頭「誰もが彼は死んだものと思いこんだ」
船頭「しかし、彼は奇跡的に帰ってきていた」
船頭「そう、イソギンチャクを助けた礼で人魚が彼を引っ張ってきたのです!」
船頭「これらの出来事から、人魚伝説がこの都に生まれ始めたらしいよ」
盗賊「ふうん」
ヒーラー「よくある話だな」
船頭「私は実際には人魚見たことないけどね」
盗賊「所詮は伝説だからね」
エルフ「でも、いい話じゃないですか」
ヒーラー「いわゆる、恩人に礼をする話だからな」
エルフ「ヒーラーさんもそうですね」
盗賊「ああー確かに」
船頭「探し人でもいるのかい?」
ヒーラー「ああ、そうだ」ガサゴソ
船頭「?」
ヒーラー「この写真のローブの人物に見覚えは?」ピラッ
船頭「古い写真だね、これ」
ヒーラー「まあ8年位前のだからな、で?」
船頭「うーん、ごめん、知らないや」
ヒーラー「そうか……ありがと」
船頭「おっと、前方注意!」グイッ
エルフ「あちらからもゴンドラが来ますね」
盗賊「あっちは一人しか乗っていないね」
ローブの男「……」
ヒーラー「っ!?」
ヒーラー「(まさか、あのゴンドラに乗っているのは!)」ダッ
エルフ「ヒーラーさん?」
盗賊「お兄さん?」
ヒーラー「おいっ!アンタ!!」
ローブの男「……」
ヒーラー「聞こえてるだろ!答えてくれ!」
ローブの男「……スピードを上げてくれ」
ヒーラー「おいっ!!」
エルフ「ちょっと!?ヒーラーさん!?」
盗賊「そんなに声を荒げてどうしたのさ?」
ヒーラー「見つけた」
エルフ「え?」
ヒーラー「恩人、見つけた!」
盗賊「え?本当?」
ヒーラー「ああ、間違いないあのローブは」
盗賊「見間違えじゃないの?」
ヒーラー「いや、きっとあの人だ……」
エルフ「……」
__________
______
___
_
エルフ「すごいいいいいいいいいいいい!!」
武器屋「どうだい?この剣はね」
盗賊「また始まったか」
ヒーラー「……」
盗賊「お兄さん?」
ヒーラー「ん……なんだ?」
盗賊「さっきからなんか思いつめてるけど、大丈夫?」
ヒーラー「いや、大丈夫だ、なんでもない」
ヒーラー「(俺は今まで、あの人を会うために旅をしてきた)」
ヒーラー「(あの人に会ったら、俺の旅は終わる)」
ヒーラー「(別に終わってもいいかもしれない)」
ヒーラー「(だけど、今の俺は明らかにエルフや盗賊との旅を楽しんでいる)」
ヒーラー「(確かに、俺の目的が終わっても旅は続けていいかもしれない)」
ヒーラー「(でも、目的も無しだとな……エルフを故郷に帰らせてやりたいし)」
ヒーラー「(今は俺の護衛って名目で同行しているが、その俺の目標が無くなれば)」
ヒーラー「(異種族のお姫様を連れて行ってはよくなくなる)」
ヒーラー「(でも、そんな事をいったら恩人には礼はできない)」
ヒーラー「(どうするべきか……)」
盗賊「……あんまり、思いつめないほうがいいよ?」
ヒーラー「え?」
盗賊「なんか、お兄さんらしくないじゃん」
ヒーラー「……そうだな」
ヒーラー「(俺らしくか……)」
ヒーラー「少し、そこら辺うろつくわ」トコトコ
盗賊「お兄さん……」
エルフ「しゅごいいいいいいいいいいいいい!?」ペロペロ
武器屋「おい!売り物舐めるな!!」
盗賊「(きっと、お兄さんは恩人って人に会った後を考えているんだろうな)」
盗賊「……馬鹿みたい」
盗賊「(自分のしたい事をすればいいのに)」
盗賊「(多分、考えているのはエルフちゃんの事だろうね)」
盗賊「お兄さんがあの調子じゃ、こっちまでブルーになるよ……」
コテッ
子供「うわーん!」ピーピー
盗賊「?どうしたの?」
子供「痛いよー!」ピーピー
盗賊「あちゃー、擦りむいちゃったね」ナデナデ
盗賊「痛いの痛いの飛んでいけー」
子供「うわーん!」ピーピー
盗賊「(……まいったな、お兄さんいないと治療できないし)」
サッ
ローブの男「どれ、見せてみなさい」
盗賊「(あれ?さっきゴンドラですれ違った人だ)」
ローブの男「【ヒール】」パアッ
子供「っ!?……あれ?痛くない?」
ローブの男「もう大丈夫だ」
子供「ありがとう!おじさん!」ダッ
ローブの男「おじっ……もうそんな歳か」ガックリ
盗賊「あの」
ローブの男「ん?なんだい嬢ちゃん?」
盗賊「おじさんはもしかして、この写真の人?」ピラッ
ローブの男「!?……確かに俺だな」
盗賊「この写真の持ち主がおじさんに会いたがってるよ?」
ローブの男「約束を果たしにきたか……悪い、無理だ」
盗賊「なんで?」
ローブの男「……俺はもう、誰かに恩人とは呼ばれる人間じゃなくなったんだ」
盗賊「え?」
ローブの男「悪いが、俺にはそいつに会う資格はもうないよ」スタッ
盗賊「待ってよ!」
ローブの男「……」スタスタ
盗賊「卑怯者!」
ローブの男「!?……」スタスタ
盗賊「……こんなの無いよ」
盗賊「今まで、お兄さんはおじさんに会うためにヒーラーの職になったり」
盗賊「旅をしてきたりしたんだよ!?」
盗賊「おじさんとの約束を果たすために!」
盗賊「これじゃ、お兄さんが馬鹿みたいじゃないか!!」
ローブの男「……俺は、命を見殺しにした男だ」
盗賊「……」
ローブの男「しかも、約束を破ってな」
ローブの男「……汚い大人だろ?」
ローブの男「……そいつに会わせる顔も無い」ダダッ
盗賊「……卑怯者」
_________
______
___
ヒーラー「この男を知っているか?」ピラッ
「ああ、この人ならこの間この酒場に来てたよ?」
ヒーラー「そうか!でまだここにいるのか?」
「うーん、たしか後2日は滞在するとか言っていたな」
ヒーラー「情報ありがとう」
ヒーラー「(会う覚悟を決めないとな)」
____________
_____
__
エルフ「うん!この宿屋の窓から見える景色は最高ですね!」
盗賊「海が見える部屋、まあロマン溢れるよね」
ヒーラー「海か、そういえばすぐ側に浜辺があったな」
エルフ「え?本当ですか!?」
ヒーラー「ああ、たしか」
エルフ「海水浴!!……ちょっと水着を買いに行ってきます!」
エルフ「盗賊さんも!」
盗賊「ふふん!あたしはもう買ったのだよエルフちゃん!」
エルフ「いつの間に!?」
盗賊「エルフちゃんが剣見てる時にね」
エルフ「ぐぬぬぬ……行ってきます!」バタン
ヒーラー「あいつ、楽しそうだなー」
盗賊「まあ、エルフ族って森で暮らしているからね」
ヒーラー「海が珍しいのか」
盗賊「そうだと思うよ?」
ヒーラー「ふーん」
盗賊「(お兄さん、さっきのおじさんの話を聞いたらどうするんだろう?)」
盗賊「(恩人に会うことを拒絶されたなんて知ったら……)」
ヒーラー「どうした?」
盗賊「ん?なんでもないよ!」
盗賊「それよりも、お兄さん?二人っきりだねー」ニヤニヤ
ヒーラー「え?いきなりなんだ?」
盗賊「こんなにかわいい娘とね!」ドサッ
ヒーラー「……」
盗賊「……めちゃくちゃにしてもいいのよ?」
ヒーラー「まな板」ボソッ
盗賊「っ!?」
ヒーラー「自分の体を張るなら、もっと成長してからにしな!」
盗賊「……エルフちゃんみたいな?」ボソッ
ヒーラー「なっ!?」
__________
______
___
ザザーン ザザーン
エルフ「夏だー!海だー!」
盗賊「いやー海水浴なんて久しぶりだなあ」
ヒーラー「……」ジー
エルフ「な?なんですか?」ボイーン
ヒーラー「目の保養」
盗賊「っ!」イラッ
エルフ「それじゃあお先に!」ダッ
盗賊「お兄さん、まな板でもね需要はあるんだよ?」
ヒーラー「ほう」
盗賊「あたしを求める人がいたら、お金次第で動くかもよ?」
ヒーラー「例えば?」
盗賊「今ここで、脱ぎたての水着プレゼント!とか」
ヒーラー「1000G」チャリン
盗賊「え?え?……やっ安いなあ!」アセアセ
ヒーラー「2500」チャリン
盗賊「ううむ……もう少し!」
ヒーラー「5000」チャリン
盗賊「プレゼント!」ヌギヌギ
バッ
盗賊「なんちゃって!」テブラ
ヒーラー「買った!」バシッ
盗賊「え!?冗談だよ!」アセアセ
ヒーラー「……」スーハースーハー
盗賊「ちょ///……ブラをそんなに嗅がなくても///」
ヒーラー「……」ペロペロ
盗賊「待って!舐めないで!てか返してよぉ///」
ヒーラー「ゴーグル!」スチャ
盗賊「目にかけんなー!!」
_________
_____
___
エルフ「ふー!遊びつかれましたね!」
盗賊「……うん」フラフラ
ヒーラー「ああ!」テカテカ
盗賊「(まさか、水着がこんなにボロボロにされるとは……)」シクシク
エルフ「今日は後はどうしますか?」
ヒーラー「どこか、外食でも行こうか」
盗賊「……お兄さんってさ、どうしてそんな大金持ってるの?」
ヒーラー「え?」
盗賊「まさか……臓器売買?」
エルフ「違いますよ!」
盗賊「え?」
エルフ「ヒーラーさんの大金は、かなり前に行った街で手に入ったものなんですよ」
盗賊「どんな?」
エルフ「ちょうど、私達が滞在していた時にゴブリンが襲撃したんです」
エルフ「その時にたくさんのケガ人で町が溢れかえりました」
エルフ「当然、病院は混みました、その時に動いたのがヒーラーさんです」
盗賊「ああ、商売したのか」
エルフ「いえ、ヒーラーさんはお礼は全部断っていましたよ?」
エルフ「でも、街の市長がどうしてもって、ヒーラーさんは渋々受け取りました」
エルフ「多分、まだ銀行の通帳には250万くらい残っているんじゃないですかね?」
盗賊「なるほど、お兄さんについていけばヒモが出来るね」
_______________
ヒーラー「海上レストランねぇ、洒落てんな」
盗賊「すごいね、この浮島まったく揺れてないよ?」
エルフ「……星空がキレイ」
ドントコトン
ヒーラー「ん?踊り子達が踊ってるのか?」
盗賊「……あの衣装きれいだね」
エルフ「そうですね」
踊り子「あら?貴方達も着たいの?」
エルフ「あっ!いえいえ!そうではなくて!」
盗賊「エルフちゃん、ここは話に乗ろうよ!」ニヤニヤ
エルフ「でも私達が行ったら、ヒーラーさんが一人に」
ヒーラー「気にするな、楽しんでこいよ」
盗賊「そうそう、行こうよエルフちゃん!グイッ
踊り子「じゃあ、こっちに来てちょうだい」
キャキャ ウフフフ
ヒーラー「……一人ねえ」
ヒーラー「たしかに最近は一人っきりっことがなかったな」
ヒーラー「思えば、楽に旅を進めることが出来たのはエルフのおかげだな」
ヒーラー「あいつに会うまでは、モンスターに出会ったら逃げてたからなあ」
ヒーラー「……アイツらがいないとここまで来れたかどうかもわからないな」
スタスタ
ローブの男「……」
ヒーラー「っ!あの人!」ダッ
ローブの男「っ!?」
ヒーラー「おいっ!!待ってくれ!」
ローブの男「……」ダッダッダッダッダッ
ヒーラー「なんで逃げるんだ!俺はあんたに礼を言いたいだけだ!!」
ローブの男「……」ダッダッダッダッダッ
ヒーラー「待ってくれよ!」ダッダッダッダッダッ
ローブの男「っち!……」ダッダッダッダッダッ
ヒーラー「待てよ!!」ダッダッダッダッダッ
ドンッ
船頭「痛っ!?」ドサッ
ヒーラー「うわ!?」ドサッ
船頭「なんだ、旅人さんじゃないか」
ヒーラー「すまん、急いでたんだ……」
船頭「?」
ヒーラー「……見失ったな、クソッ!」
船頭「……そうだ!旅人さん!」
ヒーラー「……なんだ?」
船頭「なんかイライラしているみたいだから、面白い話を」
ヒーラー「?」
船頭「どうやら明日、巨大タコがこの都の近くに来るんだって!」
ヒーラー「それがどうしたんだ?」
船頭「今、観光会社がそれをイベントに出来ないかって提案してて」
ヒーラー「……それに参加しろと?」
船頭「うん!ただじゃないよ!捕獲したら10万Gを賞金に出すって!」
ヒーラー「……まあ、考えておくよ」
船頭「気が向いたら、明日港に来てね!」トコトコ
ヒーラー「捕獲ねえ……」
ヒーラー「……なんで、あの人は俺から逃げたんだろう?」
ザザーン ザザーン
ヒーラー「(まさか、会う気が無いのか?)」
ヒーラー「(もしくは別人?」
ヒーラー「ん?」
イソギンチャク「」カラカラ
ヒーラー「……イソギンチャクか」
ヒーラー「そういえば、人魚伝説だっけ?」
ヒーラー「こうやって」ガシッ
イソギンチャク「」
ヒーラー「海に返したら!」ブンッ
ポチャ
ヒーラー「恩返しを受けたのは……」
ヒーラー「アホらし、帰ろう」スタスタ
ザザーン ザザーン
ブクブクブク
ザバンッ
人魚「……」ジー
_________
______
___
ガチャ
ヒーラー「ただいま」
エルフ「あっ、おかえりさない!」
盗賊「お兄さん遅かったね?どこ行ってたの?」
ヒーラー「うろついてたよ、ってお前らその衣装」
エルフ「あっ気づきました?記念に貰ったんですよ!」
盗賊「かわいいでしょ?」フフン
ヒーラー「……そうだな」
盗賊「あっ、お兄さんニヤついてどうしたの?」ニヤニヤ
ヒーラー「……なんでもない」
ヒーラー「(……俺はこのまま目的を果たさないほうが幸せなのか?)」
___________
_______
____
漁師「えー皆さんに集まっていただいたのは話したとおりです」
漁師「これからー巨大タコ オクトパス を捕獲してもらいたのです」
漁師「見事捕獲した方にはー賞金をお渡しします」
ザワザワ
盗賊「しかし、よくこんなイベントを思いついたね」
ヒーラー「まあ、俺らからしたら依頼以外で金をもらうチャンスだからな」
エルフ「……見た感じ、腕利きの方がチラホラいますね」
ザワザワザアザワ
漁師「出航!」
ザザーン
盗賊「しかし、こんなに沢山船を出していいのかね?」
ヒーラー「多分、何隻かは囮になるだろうな」
エルフ「でも、ここまでの大金を貰えるとなると、結構危険なのでは?」
ヒーラー「まあ、討伐じゃなくて捕獲だもんな、そりゃ難易度あがるよ」
盗賊「まあ、世の中には結構ブラックな仕事もあるからね」
ヒーラー「例えば?」
盗賊「東の方にある、通称は黄金の国ジパングでね」
盗賊「マグロ漁船ってのに乗っていくお仕事もあるらしいよ?」
ヒーラー「へー」
ブクブクブク
エルフ「ん?なんか、下から変な気配が……」
ドッバーン
盗賊「うわ!?触手!?」
エルフ「っせい!」ブンッ
スパッ
ヒーラー「おお、流石だな」
エルフ「でもっ!本体は海の中ですよ!」
オレニマカセロ! エアロッ!
ビューーーーーン!
ヒーラー「おいっ!?あっちの船の奴が竜巻出しやがった!?」
盗賊「皆!船に捕まって!!」ガシッ
ビュオオオオオオオオオオ
オクトパス「グオオオオオオオ!!」
ヒーラー「本体が出てきた!」
サンダー! ファイアー!
エターナルフォースブリザード!アイテハシヌ!
盗賊「……すごい集中砲火」
エルフ「皆さん、捕獲って事忘れてません?」
オクトパス「ピギャアアアアアア!!」ズオオオオオオオ
オクトパス「ピギャアアアアアアア!!」ズオオオオオオオオ
盗賊「あたし達の船に向かってきてる!?」
ヒーラー「おい!そこのガンナー!撃ってくれ!」
ガンナー「あいよ!」ズダンッ
ビシュ!
オクトパス「グギャアアア!?」ブンッ
シュルルルルル
盗賊「触手がくるよ!?」
エルフ「任せてください!」ブンッ
スパッ
ヒーラー「おおっ!キレイに横線が入った!」
エルフ「でも、切り落とせませんでした」
オクトパス「グギギギギ!」
盗賊「どうやら、周りの攻撃で大分弱ってきたみたいだね」
エルフ「もう終わりそうですね」シャキン
ビチビチッ
ヒーラー「ん?船の後ろか?」
シュルルルルルルル
エルフ「なっ!?」
盗賊「危ないっ!エルフちゃん」
ヒーラー「エルフ!!」ダッ
ドンッ パシッ
ヒーラー「ぐっ!?」
エルフ「っ!?ヒーラーさん」
オクトパス「グギャアアアアアアア!!」ズズズズズ
ドプンッ
ヒーラー「あっ」
ドプンッ
エルフ「ヒーラーさん!!」
盗賊「オクトパスがお兄さんを掴んだまま海に逃げちゃうよ!!」
エルフ「今行きます!」ダッ
盗賊「追っちゃ駄目だよ!!」グッ
エルフ「でも!」
盗賊「波が激しくなってきてる!泳いで追いかけるのは無理だよ!」
エルフ「そんな!……ヒーラーさん!!」
ヒーラー「ガボボボボボボボボボッ!?」
オクトパス「ピギャアアアアアアア!!」
ヒーラー「(こいつ!ドンドン海の底に潜ってやがる!?」
ヒーラー「(この触手から早く抜け出さないと!!)」グッグッ
ヒーラー「(ちっ!無理かよ!!」
ヒーラー「(ん?俺を掴んでいる触手に横線が入ってる)?」
ヒーラー「(これは……さっきエルフが切ったやつか?)」
ヒーラー「(なら!!手を突っ込んで広げれば!!)」グイッ
グイッグッイ
ブチブチ
ヒーラー「(触手が千切れた!)」
ヒーラー「ゴボボボオ!?」
ヒーラー「(体が自由になったのはいいが、今は海の底……)」
ヒーラー「(海上まで、息が続かない……)」
ヒーラー「(俺は死ぬのか?)」
ヒーラー「(意識が……)」
ヒーラー「」ブクブク
ヒーラー「」コポッ
ヒーラー「」
人魚「……」
_________
____
__
[宿屋]
エルフ「ヒーラーさん……」
盗賊「……」
エルフ「普段は、戦闘にも参加しないくせに」
エルフ「なんで、私を庇ったりなんか……」ポタポタ
盗賊「エルフちゃん……」
エルフ「ヒーラーさんには、まだやることがあったでしょ?」ポロポロ
エルフ「……私のせいだ」ポタポタ
盗賊「大丈夫だよ、きっと」
エルフ「……え?」
盗賊「お兄さんが死ぬ所なんて想像できないしね!」
盗賊「多分、ひょっこり帰ってくるよ!」
エルフ「盗賊さん……」
盗賊「だから、しばらく待ってみようよ!ね!」
_____________
_______
___
__
_
ザザーン ザザーン
ローブの男「……」
ローブの男「(懐かしい奴を思い出したな)」
ローブの男「(まさか、あの村のガキが)」
ローブの男「(俺を探していたなんて)」
ローブの男「……悪いな、俺はお前に会わせる顔はねえんだ」
ザブンッ
人魚「……」
ローブの男「ん……あれは、人魚か?」
ドサッ
ヒーラー「」
ローブの男「っ!?なんでこいつが?まさか溺れたのか?」
人魚「……」ジー
ローブの男「……なんだ、その目は」
人魚「……」ジー
ローブの男「……こいつを助けてほしいのか?」
人魚「…!」コクッ
ローブの男「っチ!見殺しにする理由はないけどな」
ローブの男「【ヒーリング】」パアァ
ヒーラー「……ごふっ!?」ブフッ
ヒーラー「……zzz」スースー
ローブの男「……息は吹き返した、これでいいだろ?」
人魚「……」ジー
ローブの男「なんだよ?まだなにかあるのか?」
人魚「……」チョンチョン
ローブの男「コイツを」
人魚「……」スッ
ローブの男「ちゃんと、送ってやれって?」
人魚「……」ニコッ
ローブの男「……めんどくせえな」
ヒーラー「zzz」スースー
_____________
_________
____
__
_
___________
ヒーラー「っう……ううん?」ムクッ
エルフ「!?ヒーラーさん!!」ダキッ
ヒーラー「うおっ!?なんだ?なんだ?」
エルフ「死んじゃったかと思いましたよ!!」
盗賊「おお、お熱いねぇ」ニヤニヤ
ヒーラー「ん、死んだ?……そうだ!俺は確か溺れて!」
盗賊「お兄さんは助けてもらったんだよ」
ヒーラー「え?誰に?」
盗賊「お兄さんの恩人さん、ほらあのローブの」
ヒーラー「は?」
盗賊「驚いたよ?突然この部屋にお兄さん担いでやってきたんだもん」
ヒーラー「え?あの人が助けてくれたのか?」
盗賊「多分ね、伝言もあるよ」
ヒーラー「……なんだ?」
盗賊「『昔の事はもう忘れろ』だとさ」
ヒーラー「……」
盗賊「(流石に堪えるよね、自分が追いかけてた人にこんな事言われるんだもん)」
ヒーラー「……そうか」
エルフ「……それで、ヒーラーさんはどうするんですか?」
ヒーラー「……忘れるよ、昔の事はな」
盗賊「……」
ヒーラー「でも」
盗賊「……え?」
ヒーラー「今回の礼はしなくちゃな」
エルフ「ということは!」
ヒーラー「ああ!これからもあの人を追いかけるよ!恩人だからな!」
盗賊「……あはは!お兄さんらしいね!」
ヒーラー「……まあな」
_________
____
__
_
ザアアアアアアアアア
船頭「で、旅人さん達はもうここを出発してしまうのかい?」
ヒーラー「ああ、どうやらあの人は火山地帯のほうに向かったらしいし」
船頭「もっとゆっくりすればいいのに」
盗賊「無理無理!この人意外とせっかちだから!」
エルフ「そうですね!」クスクス
盗賊「あっそうだ!あのね、お兄さん?エルフちゃんがね」
エルフ「ストップ!駄目です!」アセアセ
ヒーラー「?」
船頭「旅人さん達、噴水の前を通るよ!っても壊れてるけど」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ヒーラー「ん?なんだ?」
ピュー
ブシャアアアアアアアアアアア
船頭「あれ?噴水直ったの?」
エルフ「……すごい迫力ですね」
盗賊「うん!」
人魚「……」
ヒーラー「ん?」
シーン
ヒーラー「……気のせいかな?」
ザザーン
船頭「門の近くに到着!」
ヒーラー「送ってくれてありがとな」
船頭「まあ仕事だし」
エルフ「なんか名残惜しいですね……ここをでるのは」
船頭「住むかい?結構快適だよ?」
エルフ「うーん、どうしましょうか?」
ヒーラー「馬鹿、行くぞ」グイッ
エルフ「ええええ!?」
盗賊「またね」
船頭「ご武運を!」
門番「どうだった?この都は」
エルフ「ええ!最高でした!」
門番「また来るといいさ」
ヒーラー「お前、本当にここに住みたいのか?」
エルフ「ええ!」
ヒーラー「知ってるか?海水ってのはお前が大好きな剣を錆びやすくするんだぞ?」
エルフ「っ!?やっぱり止めます!」
盗賊「……単純だねぇ」
ヒーラー「じゃあ気を取り直して、火山地帯へ出発するか!」
エルフ「はい!」
盗賊「うん!」
ポチャ
人魚「……」
あらあらしい海 おだやかな海
なにを悩んでいるの?
なにを伝えたいの?
そんなもの
打ち寄せる波と一緒に
悲しみも
悩みも
流してしまえばいい
人魚「……またね、恩人さん」
イソギンチャク「」プカプカ
終わり
おまけ
盗賊「ねえ、お兄さん?」
ヒーラー「なんだ?」
盗賊「お兄さんは変態なの?」
ヒーラー「……お前は何を言ってるんだ?」
盗賊「だって、浜辺であたしの水着舐めてたじゃん」
ヒーラー「あれはお前から買ったんだ、別にいいだろ?」
盗賊「……それ否定できてないよね?」
ヒーラー「馬鹿、俺は紳士だぞ?」
盗賊「……紳士はそんな事しないよね」
盗賊「そうだ、ねえお兄さん?」
ヒーラー「うん?」
盗賊「あたしとエルフちゃん、もし売りに出されてたらどっちを買う?」
ヒーラー「……何がいいたい?」
盗賊「あたしとエルフちゃん、どっちが好き?」
ヒーラー「……両方は駄目か?」
盗賊「駄目」
ヒーラー「……」
盗賊「おうおう!困ってるねぇ」ニヤニヤ
ヒーラー「あっ……わかった!」
盗賊「悩め!なや……え?」
ヒーラー「聞きたいか?」
盗賊「……うん」
ヒーラー「付き合うのはエルフ!お前はセフレ!」
盗賊「……死ねっ!」
ドゴッ!
おしまい
エルフ「……出番無しですか」
コメント 11
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一応この話で完結なのかね?
主人公が回復役って発想は良いが話が広がりそうにない
悪くは無いんですが・・・。
後、今回のエピソードの冒頭にあったゴーレムのくだりは、
何かの複線かと思いきや、まったくの関係なし。なんだかなあ・・・。