男「ということで引っ越して2年近く経つけどずっと気になっていたこの店に入ってみることにした」
男「いつも行くスーパーの途中の道にあるから、外観だけちらちら見てたんだけど、なんか緊張して入れなかったんだよね」
男「でもさすがに俺もいい大人なんだ。緊張なんかしていてどうする」
男「……よし」
男「ど、どうもー」カランコロンカラン
店主「お、いらっしゃい。そこ空いてるよ」
男「あ、どうも……」
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3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 00:33:37.32:bvg6Ml/20
店主「注文何にする?」
男(き、気の強そうな女の人だな……見たところ、26~7歳くらい?)
男(エ、エプロンがはち切れそうなほどのお、おおお、おっぱ、おっ)
店主「お客さん?どこ見てんだい。私の胸にゃメニューは載ってないよ?」
男「え゛っ!?」
男(や、やべえええ!!バレてた!!バレてたよ!!!終わったよ俺!!来て早々逮捕だよ!!)
幼女「あははー!仕方ないよー、店ちゃんのおっぱい大きすぎるもん!」
男「なっ!?えっ!?」
店主「あっはっは!まあな!確かにそうだがお前はさっさと宿題しろ!」
幼女「えー、つまんないの」
男(え?なに?娘?なんなの?)
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 00:39:27.12:bvg6Ml/20
店主「悪いね。あのガキ、毎日ここに来て居座りやがんだよ。そのくせ頼むのはジュース一杯でちっとも商売になりゃしないよ」
幼女「そんなこと言って店ちゃん私がこないと寂しいくせにー!」ケラケラ
店主「はいはい。わかったからさっさと帰れ。他の客が来たらどうすんだよ」
幼女「来ない来ない。ここ毎日同じ人しか来ないじゃん。その男の人はすごい珍しい例だね」
店主「だぁー、うっせぇ」
男「え……そ、そうなんですか?」
店主「んー……ああ、否定はできないのが悔しいよ……あはは」
幼女「いっつもそこの席だけ空いてるんだけどね」
男「へ、へぇー」
老人「時に少年よ」
男(うわっ、なんか気難しそうな人が話しかけてきた)
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 00:45:18.36:bvg6Ml/20
店主「待てジジィ。ジジィの話は長えのさ。注文が先だ」
老人「むっ……若造より長く生きとるんじゃ!話すことが多くなるのは当然のことじゃろう!?」
店主「はいはい。で、お客さん何にする?」
老人「人の話を聞かんか!!」
男「あ、じゃ、じゃあとりあえずコーヒーで」
店主「はーいよ」ニカッ
男「そ、それで……お話とは」
老人「おぉ、聞いてくれるかの。君はええ奴じゃ」
男「い、いえ、そんな」
幼女「じいちゃんいっつも流されてるから話できるのが嬉しいんだよ!」ニヘヘ
老人「黙らんかちびっ子!」
幼女「ひぃ!怖いよー!」
老人「ええから宿題せえ!」
幼女「はーい」キャッキャッ
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 00:52:43.90:bvg6Ml/20
老人「コホン……時に少年よ」
男(あ、ちゃんとそこからやるんだ……)
老人「何故ここに来ようと思ったのじゃ?
先程も話に出ていた通り、ここは毎日同じ客しか来ん。この店は外から中の様子が全く見えんじゃろう?
恐らくそのせいでな、新しい客がほとんど入ってこないのじゃ」
男「は、はぁ……」
老人「わしは何度も中を見えるようにせいとあの店主に言うんじゃが、いくら言っても聞く耳持たんのじゃ。
全く、若者が老人の話を聞かんくなったら終わりじゃて。何を受け継げばいい?何を学ぶのじゃ?
己で全てを手に入れることができるか?否、それなら技術は廃れまい。よいか少年。
人生に必要なのは経験じゃ。何事も経験せにゃならん。少年には祖父や祖母はおるかね?」
男「え、ええ……まあ。ずいぶん里に帰れていませんが」
老人「おぉう、なんということじゃ。そりゃいかん。いかんぞ。祖父母は悲しんどるじゃろうて」
男「そ、そうですかね……?」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:00:48.58:bvg6Ml/20
老人「当たり前じゃろうが。わしの孫と言えばの」
店主「あーったく、またその話かよ。日が暮れちまうよ」
老人「お主には関係ないじゃろ!」
店主「ありまくりだよ、誰の店だと思ってんだい。回転率もへったくれもないね。
はいよ、コーヒーお待ち」
男「あ、どうも……」
老人「全く……。ところで少年、お主はどう思う?」
男「はい?」
老人「この店の外観の問題じゃ。中を見えるようにした方がいいと思わんかね?」
店主「いーんだよ、今のままで」
老人「わしは少年に聞いておるのじゃ」
男「え?え?……え、えーっと……い、今のままでいいんじゃないでしょうか?」
老人「な、何故じゃ!?」
店主「ほーらな、だからこの方が落ち着くんだよ」
男「あ、それです。俺も、そう思います」
老人「ぬぐぐ……しかし、今のままじゃと店の経営が」
店主「それならその長い話をやめてくれた方がよっぽど店にとって利益になるさ」
老人「くぅぅ、しぶとい奴じゃ!」
店主「どっちがだよ」
男「あ、あはは……」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:05:39.19:bvg6Ml/20
店主「それよりお客さん、コーヒー、飲んでくれな。冷めちまったら淹れなおさねえと」
男「あ、はいっ!すみません……」ゴクリ
幼女「……」ニヤニヤ
店主「なーにニヤついてんだよ」
幼女「だ、だって、その人次第であれが見れるかもしれないんでしょ!?久しぶりに見たいなー!あれ!」
男(あ、あれ……?あれってなんだ?お、俺なんか期待されてる?)
老人「わしゃ勘弁して欲しい。騒がしくてたまらん」
店主「ははっ。そういえば随分だな。どうだお客さん、おいしいかい?」
幼女「ワクワク!ドキドキ!」
老人「けっ……」
男(な、なんだこれ……何が正解なんだよこれぇ!!なんでこんなに期待されてんの!?何があんの!?)
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:11:43.13:bvg6Ml/20
男「と、とりあえず……おいしいですけど……はい」
店主「おっ」
老人「けっ」
幼女「あっ……」
男「えっ?」
幼女「や、やったー!!来るよー!!」
男「え!?な、なに!?なんなの!?」
少女「」ガチャバタンスタスタスタスタ
男「えっ!?えっ!?」
少女「お、おいしいですか!?本当ですか!?どの辺がおいしいですか!?
味ですか!?深み!?コク!?苦味!?温度!?」
男「な、なに!?何が起こってるの!?」
幼女「あはははー!!」ケラケラ
店主「あっはっは!良かったな、少女」
少女「それ私が淹れたコーヒーなんですよ!どうですか?おいしいんですよね?良かったです!!」
男「お、おいしいです!おいしいですって!」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:17:13.16:bvg6Ml/20
少女「レシピとかいります!?淹れ方とか、そういうのなら教えられますけど!!」
男「い、いえ、俺自分であまりコーヒー飲まないので!」
少女「そうですか!?じゃあタッパーにいれて持って帰ります!?私が淹れたコーヒー!!」
男「た、タッパー!?コーヒーを!?」
少女「もう一杯頼みますか!?店主!!オーダー追加で!!」
男「えぇぇ!?何しちゃってんの!?」
店主「落ち着け少女、そんなにしつこいと今までみたいにこの人も次来てくれなくなるぞ」
少女「あっ……そ、そうですね」シュン
男「あっ……」
男(な、なんかすごい落ち込んでる……そんなに飲んで欲しいのかな……)
男「あ、じゃ、じゃあ……もう一杯いただこうかな~なんて……あはは」
店主「なっ!?」
幼女「えぇ!?」
老人「むっ」
男「え?」
少女「えぇっ!?」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:20:58.03:bvg6Ml/20
男「あ、あの……俺なんかまずいこと言いました?」
店主「い、いやっ……あーっと」
幼女「は、初めてだよ……少女ちゃんのこの攻撃を受けてもう一杯頼んだ人」
男「えっ、そうなんですか?」
老人「あれを目の当たりにしてさらに頼むとは……よくわからんのう」
少女「わ、私……私……」
少女「がんばりますから!!!!」ゴォォオ
幼女「うわー、完全に火がついちゃってるね」
店主「おーい、火事だけはやめろよなー」
老人「今日は中々……味のある日じゃなあ」
男(あれ?なんか間違えたなこれ……うん、間違えたな)
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:27:12.61:bvg6Ml/20
少女「はいお待ち!!」ドン
男(なんかメッチャ出てきた……)
男「あの、俺こんなに頼んでませんけど……むしろコーヒー一杯だk」
少女「私特製カルボナーラに私特製サラダ!後は私特製スープに私特製ティラミス!そして私特製のコーヒーです!!」
男「わ、わぁ~、全部特製なんだぁ、すごいなあ」
少女「食べてみてください!」ニコニコ
男「……あはは」
少女「……」ニコニコ
男(……こうなったら……ええいままよ!)
男「むぐっ!ばくっ!」モグモグモグモグモグ
店主「おぉ、ナイスな食べっぷりだね」
幼女「すごーい!」
老人「しめて2500円じゃな」
男「ぶほぉ!!」
店主「うわ!」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:32:18.58:bvg6Ml/20
男「え!?お金とるの!?」
少女「まさか!サービスですよ、サービス」
男「な、なんだ……良かったあ」
老人「ふぉっふぉっふぉっ、冗談じゃよ」
店主「少女、今回のお客さんのサービス分給料から引いとくからな」
少女「やはり自腹でお願いします」
男「えぇっ!?嘘だろぉ!?」
幼女「あはは!ドンマイだよ!」
男「はぁ……まあ、おいしいんでいいですけど……」
少女「えっ!?」
男「その下りももういいです……」
幼女「なーんだ、また見れると思ったのにー」
男「二つの意味でお腹いっぱいです……」
老人「……」
店主「……」
男「いや、なんか言ってくださいよ!!」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:32:22.50:Io1QU/iB0
男「はぁ……もうダメ、もう死ぬ。もう何も入らない」
幼女「よくがんばった!感動した!」
店主「ところでさっきから盛り上がってるけど、宿題終わったのか?」
幼女「へっ!?」ギクッ
店主「……皿洗い手伝え」
幼女「いやぁぁぁ!!」
店主「いやぁぁぁ!!じゃねえ!店の売り上げの邪魔するなら少しは店のために働け!」
幼女「働いてないのに……まだ子どもなのに……」
店主「家の手伝いみたいなもんだろ。一日中いるんだからよ」
幼女「ちぇー。はーいお母さん」
店主「誰がお母さんだ誰が!!」
男「あ、あのー……そろそろお勘定を……」
店主「おっ、そうか。はいよ、ちょっと待っててくれな」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:44:39.47:bvg6Ml/20
店主「少女の暴走分は金とらないから、また来てくれな」
男「えっ、いいんですか?」
店主「こっちの都合なんだから、お客さんからお金は取れないよ」
男「あ、ありがとうございます……!!」ジーン
店主「あ、ところで、お客さんお名前は?」
男「男といいます。また来ます。本当にありがとうございました」
店主「へへっ、客に礼言われるなんて、なんだかむず痒いよ。こっちこそ、ありがと」
店主「また来てくれたら、皆喜ぶよ。新規のお客さんで、こんなに盛り上がるのは初めてだからさ」
男「そ、そうなんですか……。そう言っていただけると、ありがたいです」
店主「あははっ、ホント、ガキやジジイと違って礼儀正しいよ。じゃ、またよろしくね」
男「は、はい!また!」
カランコロンカラン
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:48:50.76:bvg6Ml/20
男「……」
男「……」ウズウズ
男「……」ウズウズ
男「……うおおおおおおおおおおおおっ!!!!」タッタッタッタ
犬「」ビクッ
男「これだこれこれぇ!!俺の憧れはこれなんだよおおおおおお!!!!」
男「いぃぃぃぃぃやっほおおおおおおおおおおう!!!!!!」
子ども「ママ、変な人がいるー」
男「」ビクゥ!!
ママ「こら、見ちゃいけません!」
男「あ、あはは……」スタスタ
男(あ、危ない危ない……テンション上がりすぎた……)
男(ふぅ……)
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:52:12.60:bvg6Ml/20
次の日、店の前
男(……ま、また来てしまった……)
男(さすがに昨日の今日じゃ図々しいかな……。また来てほしいと言われたけど、さすがにな……)
男(いやでも俺は客だぞ?別に遠慮することなんて何もないよな……?)
男(な?そうだよな?な?)
男(……うん。いざ!!)
男「ど、どうも」カランコロンカラン
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:55:35.03:bvg6Ml/20
青年「なぜだぁ!!!!」
男「うおっ!?」
店主「だぁ~、もう。いつものことじゃねえか」
青年「いつものことだからダメなんだぁ!!!何故だ何故だ何故だぁ!!」
幼女「もーう!うーるーさーいー!!」
老人「前々から言っとろうが!お主の書く小説はおもしろくない!!」
青年「うわああああ!やめろおおお!!」
幼女「何回も応募して候補にすら残らないんでしょ?諦めなよ、もー」
青年「諦めてたまるか!!!……ん?お、おや?」
男「あっ」
店主「おっ」
幼女「あっ!!」
老人「むっ」
少女「……」コソッ
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:01:28.52:bvg6Ml/20
幼女「わぁー!!来た!!ね!?ね!?言ったでしょ!?ほらね!?」
老人「むむむぅ……まさか来るとは……最近の若者の思考はわからん」
店主「おー!よく来たなぁ!ほら、昨日と同じ席、空いてるよ」
男「あ、ありがとうございます!あはは……」
青年「これが噂に聞いた男くんか。いやー、物好きもいたもんだ。さては君、ここの常連になろうと?」
幼女「やめといた方がいいかもよー、売れないくせにうるさい小説家が居座るし」
青年「う、うるさい!!君だって宿題するとか適当なこと言って居座ってるじゃないか!!」
幼女「私はお母さんが留守の間家に一人じゃ危ないからだもんね」
青年「うぐぬぬぅ……」
男(なんだ……帰れといいながら、子守を受け持ってたんだ、店主さん)
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:07:12.39:bvg6Ml/20
男「と、ところで……あの方は?昨日はお見かけしなかったように思いますけど……」
店主「ああ、ここを仕事場かなんかと勘違いしてる小説家だよ。昨日はなんだったか、
賞に応募した結果が来るやらなんやらで家に居たみたいだけど」
青年「審査員は目が腐ってるんだ!!」
老人「お主の才能が腐っとるとしか思えん」
青年「こ、この僕の作品が認められないなんて……そうだ!君、ちょっと読んでみてくれないか?」
男「へっ?お、俺ですか?」
青年「ああ、話に聞くと中々筋がいいらしいじゃないか!君なら理解してくれるかもしれない!」
幼女「男くん、宿題教えてよー」
青年「宿題は一人でしなさい!!」
幼女「ちぇー」
男「ま、まあ……俺でよければ……」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:11:06.18:bvg6Ml/20
青年「そ、そうかそうか!やはり君は筋がいい!ここの連中は読もうとすらしないからね!」
老人「つまらんからじゃろ」
青年「う、うるさい!!」
店主「ま、落ちる時点でたかがしれてるよな」
青年「ぐぬぅ……!!」
幼女「やーい!言われてるー!」ケラケラ
青年「ムキーッ!!」
幼女「きゃー!」キャッキャッ
男「あ、あの……それで、作品というのは……」
青年「おっとすまない……」アセアセ
老人「作品というよりただの紙じゃよ」
青年「も、もう!外野は黙っててくれないか!!」
男「は、あはは……」
青年「これなんだが……」ドサッ
男(分厚っ!!)
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:25:01.15:bvg6Ml/20
青年「……ど、どうだい?」ドキドキ
男(つ、つまんねええええ!!なんだこれえええ!!)
男「……」パタン
青年「え、まだ途中」
男「あはは……あのー……そのぉ……」
店主「男、ハッキリ言ってやれ。その方がそいつのためだ」
男「ドブみたいでした」
青年「そこまで!?!?」
幼女「あははっ!!あはははっ!!ドブみたいだって!!最高!!最高だよー!!」
老人「見るに耐えないという感情の比喩表現かの。男の方が向いとるかもしれんの」
青年「ダメだ……立ち直れない……心に雨が降っているよ……」
老人「ありがちじゃの」ムスッ
青年「うるさいなぁ!!!」
少女「あ、あの……」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:27:35.28:QlbgT2sR0
店主「ん?」
少女「こ、これ、どうぞ……」コトッ
男「えっ?お、俺に?」
少女「私からのほんの気持ちです……」ササッ
男「……えっ?」
男(ん?なにこれ?どういうこと?)
男「あっ、そういえば俺まだ注文してませんでしたね……すみません」
店主「気にしなくていいよ。でも、コーヒーがもう出てるけど、まだいるのかい?」
男「あ……いえ、そうですね。では、コーヒーを一杯注文していたということで。どうせそのつもりでしたし」
店主「はいよ」ニカッ
老人「ふむ……あの娘が暴走時以外に表に出てくるなんてこと、あったかの?」
幼女「だよね、珍しいねー」
青年「な、なんてことだ……」フルフル
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:45:20.32:bvg6Ml/20
男「それじゃあ、いただきまー……ん?」
少女「……」コソッ
男(あれ?なんかすごい見てない?なんで?)
少女「……」ジーッ
男(ん?なに?なんなの?すごい飲みにくいけど?)
男「あ、あの……店主さん」
店主「ん?」
男「少女ちゃんって、あんなおとなしい子でしたっけ?」
店主「あぁ……それは」
青年「僕が説明しよう!」
老人「やめておけ、しょうもない比喩表現ばかりで訳がわからんくなるじゃろ」
青年「あの薔薇のように可憐な少女さんは……って、うるさいな!!」
男(うるさいが口癖みたいになってるな、この人……)
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:53:15.06:bvg6Ml/20
青年「と、とにかく、あの薔薇のように可憐で健気な少女ちゃんは、
褒められるとまるで水を得た魚のように感情が高ぶっちゃって、人が変わってしまうのさ」
男「と、ということは、昨日俺が見た少女ちゃんは特殊な少女ちゃん?」
幼女「そうそう。だから楽しみだったんだー!」
男「あ、そういえば久々に見れるとか言ってたもんね」
幼女「そうだよー!少女ちゃん、新しいお客さんが褒めてくれた時にしかああならないから、なかなか見られないんだよー」
店主「むしろ普段の姿があっちの、大人しい少女だよ」
少女「……」ジーッ
老人「わしゃ今の少女ちゃんの方がええわい。やかましくて敵わんからの」
青年「な、なななにを言う!!感情が昂ぶってしまって周りが見えなくなる少女ちゃんも、とても素敵だ!!!」
老人「ん?なんじゃ?お主、好きなんか?」
青年「そ、そそそそそんなわけないだろー!?」
店主「好きだな」
幼女「だね」
青年「あああああああやめてえええええ!!!」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 03:03:29.06:bvg6Ml/20
老人「全く……煩悩に振り回されながら仕事をしとるのか?
そりゃつまらん小説ができあがるわけじゃ。家で書け家で」
青年「そ、そういうことではない!!!僕はいつも作品に全力を注いでいる!!
そう!ペンを持ち原稿に向かう僕はまるで水を得た魚のように」
老人「さっきも言っとったぞ、それ。比喩表現のレパートリー無さすぎじゃろ」
青年「う、うるさいな!!!」
男「……ふう、おいしいな、やっぱり」ゴクリ
少女「どうぞ」コトン
男「えっ?」
少女「……」ドギマギ
男「……ふ、ふう」ゴクン
少女「おかわりどうぞ」コトン
男「店主さん、助けてください」
店主「嫌だ」メンドクサソウ
男「そ、そんなあ!!」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 03:15:11.22:bvg6Ml/20
幼女「少女ちゃん、男くんのこと好きなの?」
青年「うおおおおおおおおおおい!!!ストップ!!ストッピング!!!」
幼女「なんだよー、もー」
青年「その質問はやめてくれないかな?僕の心が波浪警報だから」
老人「ぶふっ……お主、今のはちょっと良かったぞ」
青年「え?本当?メモメモ……」
少女「え、えっと……」
男(俺どんな顔してればいいんだろう……)
少女「好きって……何?」
老人「ほう……こりゃまた深い質問じゃな。ほれ、出番じゃぞ売れない小説家よ」
青年「そ、それは……好きとは……」
少女「好きとは……?」
青年「魚が水を……」
老人「おーい、小説家がお勘定じゃ」
青年「待って!!お願い!!ごめんなさい!!」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 03:21:28.26:bvg6Ml/20
少女「私はただ、料理を褒めて欲しくて……あんなに食べてくれたの、この人が初めてだから」
店主「まぁなあ、お代わりした時はさすがの私も驚いたよ」
青年「それだったら僕がその役を受けもとう!!」
少女「別に私は魚に水を得て欲しくないから……」
青年「ぐわあ!!!」
幼女「今の一番キツイ一言だね!」
青年「明るく言わないでおくれ……」
男「そ、そうかぁ……あはは、なんだか居場所ができたみたいで、嬉しいな」
店主「……」ニカッ
老人「そういえば、まだ聞いてなかったの」
男「ん?」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 03:29:03.54:bvg6Ml/20
老人「何故お主はここに来た?何がお主をそうさせたのじゃ」
男「……笑わないでくださいね?」
幼女「笑うような理由なの?」
男「ん、うーん……多分」
青年「なんだい?」
男「俺、憧れてたんです。こんな風に、一人で喫茶店に来て、なんか居心地の良い空間に包まれて、
ただのんびり過ごすってことに。ずっとここのお店が気になってたんですけど、中々勇気が出なくて……。
でも、もう大人なんだって、何を緊張してんだって決心したのが、ちょうど昨日なんです」
男「なんでこのお店なのかってのは、わかりません。ただ、よくいくデパートの通り道で、いつも外観を眺めてました。
中はどんな風になってんだろって、なんか隠れ家みたいな魅力があって、もしかしたらそこに引き寄せられたのかも」
老人「じゃから昨日は、外観は今のままでいいと?」
男「そうですね。そうかもしれません。隠れ家だからこそ、落ち着けるというか……」
店主「あははっ、嬉しいこと言ってくれるねえ」
少女「サービス」コトッ
男「え゛っ」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 03:32:54.04:bvg6Ml/20
老人「そうか……ほっほっほ……そうかそうか」
幼女「なんか笑ってるよ」
店主「ほっときな、ジジイも長くないんだろ」
老人「健康すぎるくらい健康じゃ!!このたわけが!!」
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 11:56:41.31:bvg6Ml/20
老人「少年よ、わしは若い頃、多くの国へ行ったよ」
幼女「語り出したよ」
店主「火の元確認してくるよ」
幼女「あ、逃げた!ずるーい!」
老人「ヨーロッパなんてのは、わしの庭みたいなもんじゃった」
男「へ、へぇー、何カ国くらい行かれたんですか?」
老人「数え切れんほどじゃ。特にイタリアのシエーナなんてのは最高じゃった。ああ、最高じゃ」
老人「いいか少年、あそこには街の中心に大きな広場があってな。そこには寝転ぶ人、夫婦で並んで座る人、
スポーツの話をする人、子どもに大学生と、様々な人々が集まり語らっておる。実に平和じゃ。実に。
そこにいる老人はこう言っておったよ。『この広場が俺の人生さ。ガキの頃からここで遊んでるよ』と」
男「やっぱり外国の人は言うことが違いますね……」
老人「恥ずかしいことに、わしはそのイタリア人の何気ない一言に胸を打たれたのじゃ。
そして考えた。わしにはそういう場所はあるのか?人生と共に過ごしてきたような場所が?
答えはすぐに出たよ。わしには、これっぽっちも無かった」
老人「実に、実に寂しい人生じゃ」
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 12:06:15.36:bvg6Ml/20
男「そんな……」
老人「同情はいらんよ。理解しておる。わしは、寂しい人生を送っていた。
日本に帰って、考えたのじゃ。わしの人生は後どのくらいじゃろう。今からでも、遅くないじゃろうか、と」
男「……というと?」
老人「ちょうど良い機会じゃ。言わせてもらおうかの」ジッ
店主「ん?……な、なんだジジイ」
老人「店主よ。ここは素晴らしい。素晴らしい場所じゃ。わしはここに来ると、あの広場を思い出す。
実に不思議じゃ。様々な人間が、子どもからわしのような老いぼれまで、気概なく語り合っておる。
わしはの、ここが好きなんじゃ。だからこそ、潰れて欲しくない。多くの人に来て欲しいのじゃ」
店主「それで中が見えるようにしろしろうるせえのか」
老人「わしは……探していたのじゃ。そして、見つけた。わしが笑ったのはそういうことなんじゃよ、少年よ」
男「えっ?」
老人「わしも、憧れでここに来るようになった。なにがおかしいことか。自信を持て、少年」
男「あ、は、はい!」
幼女「ふーん……以外」
青年「……爺さんがこんなことを言うなんてね」
店主「……うん、ま、ジジイの話にしちゃ……悪くなかったよ」
131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 12:16:25.56:bvg6Ml/20
老人「いかんの、昔話なんてのはするもんじゃない。場が白けてしまった。
おーい店主、ビールじゃ!」
店主「年寄りに昼間っから出すビールなんてないよ。トマトジュースでも飲んでな。ほらよ」ゴトッ
老人「……」
青年「ぷっ!!くくっ!かっこつかないね爺さん!!」
老人「たわけ!!」ゴクゴク
老人「ぶほぉっ!!な、なんじゃこりゃ!?まずいぞ!!」
少女「……サービスでコーヒーを混ぜてみた」
老人「殺す気か!!」
青年「いひひ!!ひー!!ひー!!」
店主「少女、そんなこたしなくたってジジイはすぐだ」
老人「どういう意味じゃおい。わしは生きるぞ!!生き延びてやる!」
幼女「寿命はいいけど話を短くしてよ。おかげで宿題が進まない」
男「それは自分のせいなんじゃ」
幼女「うえーんいじめるよー!」
男「えぇっ!?」
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 12:27:26.96:bvg6Ml/20
ーーーーーーーーー
ーーー
ー
男「だから、掛け算だからそこは12じゃなくて32になって……」
幼女「なーるほどー!」
青年「爺さん!さっきの話小説に書いてもいいかい!?」
老人「お主に書かれたらわしの思い出が海の話になってしまう」
青年「水を得た魚は使わないから!!頼むよ!!」
老人「却下じゃ。花畑になってしまう」
青年「薔薇のように可憐も使わない!!というかこんな干からびた爺さんの話に薔薇なんて出てきようがないね」
老人「もう何を言っても却下じゃ」
青年「そんなあああああ!!!」
少女「はいおかわり」コトッ
男「あの、もう俺のお腹すごい勢いでぽちゃんぽちゃんなんだけど……」
少女「……」ニコニコ
店主「……ぐー」zzZ
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 12:39:23.89:bvg6Ml/20
男「あ、俺そろそろ帰って夕飯の準備しないと」
老人「む?ここで食べていけばいいじゃろ?」
幼女「あー!もしかして一緒に住んでる人がいるとか!」
少女「」ピクッ
男「いやいや、そういうわけではなくて。野菜腐らせちゃうんで、使わないとダメなんですよ」
少女「」ホッ
店主「そうかい、じゃあお勘定だね」
男「はい。お願いします」
店主「っつってもコーヒー何杯飲んだんだ?」
男「それはもう、数え切れないほどに……」
店主「んー、まっ、ツケってことでいいかな。今日は最初の一杯分だけでいいよ」
男「そ、そんな……悪いですよ。ちゃんと払います」
店主「いいのさいいのさ。また来てくれたらね。じゃ、またー」
男「あ、は、はい!また来ます!」
カランコロンカラン
146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 13:33:05.00:bvg6Ml/20
次の日
カランコロンカラン
少女「!!」
店主「おっ、今日は早いじゃないか」
青年「どうしたんだい?暇だったとか?」
男「二人はまだいないんですね。昨日今日と料金をよくしてもらったので、今日はお昼をここでいただこうかと思いまして」
店主「なーに、気にするこたないってのに」
男「いえいえ、ぜひここでと」
店主「ふふんっ、そうかい」ニカッ
店主「じゃ、注文は何にする?」
男「んー……カツカレーで」
少女「はーい」
青年「少女ちゃんの作るカツカレーは美味しいよ!!」チラッチラッ
少女「~♪」グツグツ
店主「まるで聞いてないね」
男「あはは……」
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 13:41:29.23:bvg6Ml/20
青年「ところで相談なんだが、具体的に僕の作品はどう面白くなかったんだい?」
男「あ、いやー……えーっと」
青年「脅しているわけじゃないんだ。純粋に、意見が聞きたくてね」
男「そ、そうですか……では、まず情景が全く浮かんできませんでしたね。今どこで何をしているのかがもうさっぱりで。
それと登場人物の心情が分かりにくかったです。説明されてはいるんですけど、どれもしっくりこない比喩表現ばかりで……。
後ネーミングセンスが……ミントってなんですかミントって。薔薇色すぎるでしょ。
おまけに」
青年「ちょっと待って!!もう精神ズタボロだから!!もういいから!!もういい!!」
店主「言っちまえば全部ってことさ」
青年「うん……うん……よくわかったよ。感謝するよ……」
男「な、なんかすみません……」
カランコロンカラン
老人「むっ?」
幼女「あー!もう来てる!」
男「あ、どうも」
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 13:49:41.98:bvg6Ml/20
男「ん?」
幼女「ん?」テツナギ
老人「なんじゃ?」テツナギ
男「二人は、いつも一緒にここに来てるんですか?」
老人「そりゃそうじゃよ。ここんとこの親御さんは忙しくてな。送り迎えはわしがしとる」
店主「そこの親と私が同級生でね。ま、ジジイは常連のよしみってやつさ。最初は私が送り迎えをしてたんだけど」
幼女「一人で来れるのに」
老人「いかん。子どもを一人で歩かせるのは危険じゃ」
幼女「もー。爺ちゃんずっと手離してくんないもん」
青年「なに、孫のようでかわいいのさ、君のことが」
老人「や、やめんか!!」
幼女「付き合うのは50年遅いよ」
老人「お前は早すぎじゃちびっ子!!」クワッ
男(ませてるなー……)
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 14:08:46.12:bvg6Ml/20
店主「はいよ、カツカレーお待ち」ゴトッ
男「あ、ありがとうございます。いただきます」モグ
少女「……ど、どう?」ソーッ
男「うん、おいしい!」
少女「……」チラッ
店主「あははっ、良かったじゃん」
少女「」コクリ
少女「良かったら作り方とか教えますけど。厨房の方に来てくれたら全然教えられますよ。
なんだったら野菜の切り方とかも、……あ、それと食後にコーヒーが合うんですよ。店主、オーダー追加で。あ、それとデザートもいいんですよ。
店主、しっとりチョコケーキ追加で。あ、それと」
男「い、いい!!いいから!!カツカレーだけで十分!!うん!!まだ授業あるし!!」
老人「授業?少年、学生じゃったのか?」
男「あ、はい……って言っても、ただのモラトリアムの延長でしかないですけど……」
老人「ほー、そうじゃったか。良い機会じゃ。やりたいことは今のうちじゃぞ」
男「その一環としての、この喫茶店です」
老人「……ふぉふぉふぉ。そうかそうか。それはいいことじゃ」
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 15:20:47.33:bvg6Ml/20
青年「うーん……」
店主「どうした?」
青年「いや、次の題材を考えていてね。何について書こうかと、それだけさ」
老人「なんじゃ、また懲りずに書くつもりか?」
青年「当たり前だ。これが僕の生き方であり、生きがいなんだ」
幼女「喫茶店で少女ちゃんを眺めること?」
青年「違うよ!!小説の方だよ!!話の流れでわかるだろ!?」
男「小説って、そんなに考えて題材が出てくるようなものなんですか?」
青年「それが出てこないんだ……」
男「素人で悪いですけど、爺さんが言ってたように、大事なのは経験なんじゃないかと」
青年「むっ!?」ピキーン
老人「そうじゃ、その通りじゃ。やはり君はいい奴じゃ!」
男「経験して感銘を受けたことなんかを基に書いてみたらどうです?」
青年「そ、そうか……なるほど……」
老人「だからお主の恋愛物語は中身がなくつまらんのじゃな」フォッフォ
青年「うるさいな!!放っておいてくれないか!?」
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 15:24:21.66:bvg6Ml/20
男「あ、じゃあ、俺はそろそろ大学に向かわないといけないので……。お金置いときますね」
店主「はいよー」
男「あ、講義が終わったらまた来てもいいですか?」
店主「もちろんさ。じゃ、またということで」
幼女「またねー!」
老人「こんなとこに来ても暇じゃぞ。ま、それがいいんじゃが」
青年「君が帰ってくるまでに作品を完成させてみせる!」
男「それはさすがに無理なんじゃ……。では」
カランコロンカラン
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 15:36:38.43:bvg6Ml/20
少女「……また来るんですよね?」
店主「ああ、そう言ってたよ」
老人「しかし、中々おもしろい少年だ。そうだろう?変わり者らよ」
幼女「変わり者じゃないよー!普通普通!」
老人「普通の人間はここには馴染めまい」
店主「ま、そうだろうよ。難しいジジイと生意気なガキ。うるさい小説家とキツイ私に暴走娘。
誰も近寄らないね、こんなとこ」
青年「はっはっは、言われてみればそうだね」
店主「笑い事じゃねえよ、ったく。商売あがったりだ」
少女「でも、あの人は普通みたい」
老人「ここに馴染める時点で変人じゃよ。実に居心地が良さそうじゃ、少年は」
青年「久しぶりに仲間が増えたみたいで、
嬉しいね、僕は」
幼女「『ドブみたいでした』とかおもしろいしね!!あはは!!」キャッキャッ
青年「それはもうやめてくれ!!」
182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 15:45:37.77:bvg6Ml/20
老人「何年ぶりじゃ、常連が増えたのは」
青年「この中じゃ一番常連として後輩の僕が来るようになってから2年だね」
老人「もうそんなになるのか。あの頃のお主は異常だった」
青年「それは同感だ。僕は面倒なやつだったからね」
幼女「ほんとほんとー。どっよーんとした空気で、何も注文せずに話しかけてもぶっきらぼうで」
老人「はて、いつから話すようになったんじゃったか?」
店主「初めて声を聞いたのは、少女がコーヒーを持っていった時だったな」
幼女「ぷっ、くくっ!!憶えてる憶えてる!!『こんなところに薔薇が咲いていたなんて……』とか言ってたね確か!」
青年「うわああああああやめろおおおおお!!!」
店主「あははっ!!その頃から薔薇とか言ってたのかよ!!」
少女「……意味がわからなかった」
青年「いやあああああああああ!!!!!」
187:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 16:06:08.42:bvg6Ml/20
青年「い、今は僕の話じゃなくて彼の話だろう!?」
老人「ああそうじゃったそうじゃった。老人は話がすぐ逸れて長くなってしまうからの」
青年「爺さんが自らを卑下する時は何かの目論見があった時だと相場が決まってる」
老人「まさか。お主の昔話を引き出す誘導などしておらんよ」
青年「ほらね!!!!!」
老人「話を戻そう。少年はやはり変人じゃ。わしはそう思う」
幼女「なになに、爺ちゃん嫌いなの?」
老人「そういうことではない。ここはそういう場所なんじゃと言いたい」
店主「変人が集まる店ってか?」
老人「その通りじゃ」
店主「やめてくれよ」
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 16:15:12.89:bvg6Ml/20
老人「わしらはすでに固まりとして出来上がっておった。しかしじゃ、少年はそこになんの違和感もなく、スッと入り込んできたのじゃ」
店主「まあ……よおく考えてみりゃあんまりないことだね」
老人「そうじゃろうそうじゃろう」
幼女「なにがいいたいのー?」
老人「答えなどないよ。老人の長話じゃ。しかし、あえて言うなら……わしはあの少年が気に入った!」
店主「んだよ、そんなことかよジジイ。本当に長い話だな」
老人「ただの一興で、暇潰しじゃ。ここでの会話にそれ以外の何を求める?
経済を回復させる方法か?政治の話か?そんなものはここの外で十分すぎるくらい話し合われておるじゃろう」
店主「ああはいはい」
老人「流すな店主よ。お主はどうじゃ?」
店主「ん?」
老人「少年のことだ。気に入っておるのか?」
201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 16:46:42.70:bvg6Ml/20
店主「気に入っ……まあ、礼儀正しいし、いい子だなとは思うよ」
老人「ほう。そこで提案なんじゃが、どうじゃ、婿に」
店主「あんたは私の父ちゃんか。余計なお世話だジジイ」
青年「でも確かに店主さん黙ってれば美人だよね。胸も大きいし」
店主「早く原稿書けよ。コーヒーこぼす場所が無いだろうが」
青年「えぇ!!やめてよ!!」
店主「それに、そういうのは……」ポンッ
少女「わっ」トトッ
店主「こいつの仕事だろ」
青年「ええぇ!?やめてよおおお!!」
幼女「うるさいなーもー」
204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 16:56:04.99:bvg6Ml/20
少女「な、なんで私が……」
店主「少女さ、男のこと気になり始めてるだろ?」
少女「き、気になるって……ご飯たくさん食べてくれたし……」
店主「今は好きじゃないことくらい分かってるよ。ただ、それくらい認めたらどうだ?」
少女「うっ……」
少女「……目で追ってる。時は、ある」
店主「……だとよ」
老人「ふむむ……」
青年「ぬわあああ!!!よし次は飛び切りホラーでサスペンスなものにしよう!!そして多くの人を不幸に……」ブツブツ
幼女「えー、いやだよそんなのー。店ちゃーん、なんかおかしくなってるよ?」
店主「今ならさぞいい作品が書けそうだな」
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 17:05:36.49:bvg6Ml/20
青年「なんてね……ははは……実はもう次の題材は決まってるんだ……」
幼女「えっ?そうなのー?」
青年「ああ、彼の言葉でピンときてね。君たちにも相談しなければならないと思ってたところなんだ」
老人「む、どういうことじゃ?」
青年「特に店主さんと少女ちゃんなんだが、このお店のことを書いてもいいだろうか?」
店主「は、はぁ!?」
青年「頼むよ。真面目なお願いなんだ。僕が経験したことってなんだって振り返った時に、
まず一番最初に浮かんだのがここなんだ。ここのことを書いて、僕は本気で賞を狙いたい。
許してくれないだろうか?もちろん、実名なんかは使わないし、プライベートなことは書かない」
店主「……お、おいおいマジかよ。ここが本になるのか?」
青年「ははっ……賞を取れたらね」ズーン
老人「……売れない小説家よ。わしは良いと思うぞ。何より、お主の話で初めて読んでみたいと思った」
青年「じ、爺さん……!!ありがとう……」
208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 17:13:27.74:bvg6Ml/20
幼女「とびきりセクシーなお姉さんで私を書いてくれるならいいよ!」
青年「それじゃ話変わってくるから!!」
店主「……ま、やってみりゃいいんじゃねえか?こんなとこで起こった話がおもしろいとは思えねえけど、
そこはあんたの手腕だろ?」
青年「ほ、本当かい!?ありがとう……がんばってみるよ」
店主「で、主役はもちろんカッコいい姉さん役(モデル私)なんだろうな?」
青年「主役はもちろんこの僕さ」
少女「えっ……」
幼女「え゛っ」
老人「それはいかん」
店主「やめとけよ……」
青年「な、なんでさ!?」
213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 17:23:35.30:bvg6Ml/20
老人「お主、小説書いとるだけじゃろ」
店主「うるさいだけじゃねえか」
幼女「失恋しちゃってるし」
青年「失恋は関係ないだろ!!それに僕はまだ諦めてないからな!!」
老人「まあ……一度良いと言ってしまった以上、協力しようかのう」
店主「なんだかんだ口出してる内に主役を私にすり替えればいいんだし」
青年「えぇ!?」
幼女「私も協力してあげるよー、宿題より楽しそうだし」
青年「あ、ありがとう……とりあえず最初の部分を書いてみたんだけど……」
老人「ほう、読んでみい」
青年「新緑の候、ますます」
店主「ちょっと待て」
老人「お主迷走しすぎじゃろ」
214:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 17:27:51.99:uoFHQhWB0
ーーーーーーー
ーーー
ー
男「……お、俺がいない間にそんなことが」
幼女「もう大変だったんだよー!人物設定をあーじゃないこーじゃないって!」
青年「君がセクシーなお姉さんって何度も言うからだろう!?」
男「あはは……」
店主「コーヒー飲むかい?」
男「あっ、お願いします」
老人「ところで早速物語を考えようじゃないか。わしが近所に出たマムシを退治した話なんかどうじゃ」
青年「何だいその話……」
幼女「じゃあ私がすごい天才になって、宿題なんかあっという間に終わらせる話!」
青年「言いたいことは多々あるけど、せめて宿題終わらせてから言っておくれよ」
店主「ほらよっ」コトッ
男「あ、どうも」
少女「……」ジーッ
241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 18:46:26.34:bvg6Ml/20
店主「大学で講義があったんだっけ?」
男「ええ、はい」
店主「ふーん、なんの勉強?」
男「学部は経済ですけど、身についているのかどうか」
老人「身についておるよ」
男「えっ?そ、そうでしょうか?」
老人「勉強とはそういうもんじゃ。謙虚なほど、身についておる」
男「そ、そうなん……ですかね?」
老人「そうじゃ。特に君みたいな人間はの。とにかく、ここではあまり大学の話は聞きたく無い」
店主「なんでよ?」
老人「政治、経済と一緒じゃ。それを忘れたくて、ここに来とるんじゃろう?ならここで話すべきじゃない」
男「あ、そ、そうですね……」
店主「出たよ、気難しいね。ジジイ、久々なんじゃないか?」
老人「たわけが!!わしはいつでも変わっとらんよ。これがわしじゃ」
店主「あーあーそうかい」
243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 18:57:06.34:bvg6Ml/20
店主「悪いね、なんか」
男「いえ、気になさらないで下さい。この話は終わりにしましょう。ね?」
店主「ああ、そうだね……」
青年「君、オレンジの字が違うじゃないか!これじゃ先生に怒られるよ!?オレンジはヂじゃなくてジだ!!」
幼女「この方がいいじゃん!」
青年「何故!?」
男「なんか、暖かい感じがするね」
幼女「だよね!ほらー。先生は間違ってるよ。窓の外からオレンジの光、より、窓の外からオレンヂの光、の方が絶対いいのに」
老人「子どもの感性とは、時に鋭く、大人を遠くへ置いていくもんじゃ。
売れない小説家よ、オレンヂの暖かさがわからんようじゃ賞は遠いぞ」
青年「そ、そんな無茶だよお!!」
男「あはは……」
248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:07:52.60:bvg6Ml/20
少女「コーヒーのお代わりは」
男「あ、これ飲んだら今日は帰るから、遠慮しとこうかな。ありがとう」
幼女「えー、帰っちゃうの?晩御飯は?」
男「昨日の腐りかけの野菜で作ったシチューがまだ残ってて……」
少女「シチュー好きなんですか?」
男「ん?うん、まあ……簡単だし」
少女「明日もお昼ご飯食べにきます?」
男「あー……考えてなかったけど、せっかくだしそうさせてもらおうかな?」
少女「わかりました」ゴォォォ
店主「今から燃えてっと明日には燃え尽きるぞ……」
男「じゃ、じゃあ今日のところはこれで……」
店主「はいよ、お勘定ね」
男「はい……って、あれ?」
店主「ん?」
250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:15:56.66:bvg6Ml/20
男「あ、あれ……?ない……ないぞ?」
店主「どうした?」
男「さ、財布落としちゃったみたいで……」
店主「おいおい……平気なのか?」
男「す、すみません!多分大学にあるので探してまた戻ってきますね!」
店主「別に後日でも」
男「探しちゃわないと不安ですし、ただでさえツケて貰ってるので今回は流石に……今日払わせてくれませんか?
営業時間内にはまた戻ってくるので」
店主「あははっ、そこまで言うならわかったよ。待ってる」
男「はい!では、いってきます!!」ガチャバタン
老人「ふぉっふぉっふぉ。我が家であるかのような飛び出し方じゃの。いってきますと言っとったぞ。あれもあれで面倒な少年じゃ」
店主「あはは、全くだ。律儀なのかどうだか……まぁ、待ってるかあ」
253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:22:06.63:bvg6Ml/20
数時間後
店主「よっと」ガラララ
男「ハァ……ハァ……て、店主さん……す、すみません……」
店主「おっ、ギリギリセーフってやつだな。見つかったのか?」
男「はい……なんとか」
店主「……疲れたろう?中、入りなよ」
男「す、すみません……」
店主「いいからいいから。謝ってばっかだとこっちまで申し訳なくなるからさ」
男「そ、そうですね……ありがとうございます」
店主「……おう」ニカッ
店主「ささ、入った入った!」グイグイ
男「あ、わ、ちょっと!」フラフラ
256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:31:18.48:bvg6Ml/20
店主「ふう……何飲む?」
男「じゃ、じゃあ麦茶を一杯」
店主「遠慮してんの?酒とかもあるけど」
男「いえ、俺酒はやらないんで……それに、走った後だから麦茶が一番なんです」
店主「そうかい。んじゃ、うんと冷たくしてあげるよ。氷たくさんいれてね」
男「助かります」
店主「ふう……」
男「ん、なんかいい匂いしません?」クンクン
店主「ああ、奥で少女が明日の仕込みしてんのさ。張り切ってたよ、少女のやつ」
男「そうなんですか……料理上手ですよね」
店主「家の手伝いよくしてたんだって」
男「なんかそのレベル超えてるような気がするんですが……」
店主「あははっ、私が散々鍛えたから」
男「あ、そうなんですか」
店主「基礎ができてたのさ。そりゃ上達もはやいわけだ」
261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:38:49.13:bvg6Ml/20
店主「常連の中で、一番の古株って誰だと思う?」
男「えっ?……えーっと、爺さん、ですか?」
店主「ブッブー、外れ」
男「え!? じゃあ……青年さんは一番の後輩って言ってたから、幼女ちゃん?」
店主「それも外れ」
男「え? え?」
店主「あははっ。正解は、少女さ。あいつは、元々客だったんだ」
男「へぇー!そうなんですか……」
店主「まだこの店開いたばっかの頃だったかなあ……。朝店を開けるために行くと、扉の前に立ってんの。少女が。もうね、不気味だったよ」
男「ひ、一人でですか!?店が開く前から!?」
店主「そうそう。ははっ、こえーだろ?」
男「な、なんでそんな……」
266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:51:13.41:bvg6Ml/20
店主「あー……駅前にある、結構賑わってる喫茶店知ってるか?」
男「ああ、はい。入ったことはないですけど……」
店主「あそこ、少女の実家なのさ」
男「えっ!?」
店主「コーヒーにこだわってるとかで、結構な固定客がついてる。立地条件もいいし、雰囲気も良い。
一歩踏み入れれば駅前の喧騒から一転、森の中の切り株に座ってるような静けささ。
一度だけ入ったことがあるけど、小鳥でも鳴いてんじゃねえかって、首を回したくらいさ」
男「すごいですね……」
店主「そこの親父……まあ、少女の父親なんだけど、本当にこだわる厳しい人でね。
少女の料理の技術とか、コーヒーの淹れ方に納得がいかなかったみたいでさ、少女を突き放しちゃったんだ。
跡を継ぎたいならどっかで修行してこいって。まだ俺が教えるレベルじゃねえって。無責任な話さ」
男「それで毎朝……」
店主「ま、お手軽なコーヒーを楽しむチェーン店が増えたからさ。喫茶店として構えてるような場所は、この街には少女の実家とここくらいしか無くてね。
ここに来るしか無かったんだと思うよ」
男「そうなんですか……」
267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 19:58:43.86:bvg6Ml/20
店主「そんなもんだから、少女はコーヒーを人に褒められるのが嬉しくてね」
男「あっ……」
店主「父親に近づけたとか思うのかね。嬉しくてつい暴走しちゃうって、そんな裏話があんのさ」
男「へぇー……まだまだ俺、全然皆さんのこと知らないんですね」
店主「私だってそうさ。ジジイがヨーロッパ好きだなんて、ついこの前知ったばかりだよ」
男「……あっ」
店主「ん?……げっ」
少女「その話……しないでって言ったはず」
店主「あ、あはは……悪い。酒回っちゃってさ」
少女「まかない抜き」
店主「ちょ、それはどうなのよ!?」
少女「まかない抜き」
店主「ちょっとお!!」
271:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:08:19.15:bvg6Ml/20
男「仕込みは終わったの?」
少女「はい、終わりました」
男「明日のお昼、楽しみにしてるね」
少女「は、はいっ……」
店主「赤くなってら」
少女「店主、お酒も没収するよ?」
店主「冗談さ冗談。ははは……はぁ」
店主「まかない抜きなら自分で作るしかねえなあ……」
少女「こっちも冗談。もうできてるから、持ってくるね」
店主「あ、ホント?良かったぁーさすがだね」
少女「待ってて」
店主「はいよ」
277:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:16:36.92:bvg6Ml/20
店主「ふう……ああ見えてたまに気が強いんだよね……誰に似たんだか」
男(店主さんしかいないような……)
店主「……」ジトッ
男「あ、あはは……」
店主「なんか考えてることが聞こえてきたようなきがしたよ」
男「き、気のせいですよ、きっと!あはは!」
店主「男って、顔に出やすいんだよねえ」
男「えっ!? 初めて言われましたけど……」
店主「そうなの? 一番最初に来た日、私の胸しか見てなかったでしょ?
もうバレバレよ」
男「うわあああやめてください!!すみません!!すみません!!」
店主「あっはは!!冗談だよ冗談!!」バンバン
少女「……悪酔いしすぎ」
280:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:23:39.95:bvg6Ml/20
少女「はい、まかない」ゴトッ
店主「おー、カツ丼!いいね!」
男「……」ゴクリ
店主「いただきます!」
男「……あ、じゃ、じゃあ俺はそろそろ帰りますね。お茶ありがとうございました」
店主「ん、もう帰んの?」
男「あはは、まかない見たらお腹空いちゃって……。お金ここに置いときますね、お話もおもしろかったです」
店主「いいよいいよ。全部こっちが好きにやったことだからさ」
男「では……あの、また明日のお昼に」
店主「はいよー」
カランコロンカラン
282:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:35:30.79:bvg6Ml/20
店主「んっ……」モグモグ
店主「やっぱうまいねー」
少女「……店主」
店主「んー?」モグモグ
少女「……本当のこと教えて欲しいんだけど」
店主「」ピタッ
少女「……」
店主「……なんのことさ?」
少女「誤魔化すの下手だよね。私より、あの人のこと、気になってるんじゃない?」
店主「……」
店主「まさか。ないない、安心しなって。
周り見えなくなって、周りの女が皆ライバルみたいに見えちゃうのは分かるけどさ」
少女「じゃあなんであんな話したの?」
店主「……」
288:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:49:15.21:bvg6Ml/20
少女「私……ただ料理が上手にできるようになりたくて、ここで働かせて貰ってるだけなんだけど」
少女「お店の前で待ってたのは本当だけど……駅前の喫茶店は、店主の実家でしょ?
父親に認めてもらうために、このお店開いたんだよね?」
店主「……」
少女「お爺さんにあの人を婿にどうって言われた時も、焦って私を使ったよね。
自分の家庭の事情話すのも、怖くて私を使ったよね」
店主「……悪い。酔っててさ」
少女「謝ってほしくなんてないよ。本当のことを教えて欲しいだけ」
店主「……」
少女「"今は好きじゃないことくらいわかってるよ。ただ、それくらい認めたらどうだ?"」
店主「……ははっ……敵わないな。まだまだ子どものくせに」
少女「心は大人だよ。店主より」
店主「そうかい」
289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:50:05.94:mMoZYxUz0
店主「……はぁー……」グッタリ
店主「なんか疲れた。ははっ」
少女「マッサージならしてあげるよ」
店主「嫌だよ。少女のマッサージ、くすぐったいだけだし」
少女「……がんばってるもん」
店主「……」
少女「……」
店主「……ほんと、顔にでるんだよ、男」
少女「……」
店主「おいしい時は本当においしそうで、小説家の本読んだ時なんか見たか?心の底からつまらなそうだったろ」
少女「そのあと、ドブだもんね」
店主「なんか……羨ましいんだよな、そういうところが。私なんて、常に怒ったような顔してる親父を見て育ったからさ。
新鮮というか。……気になるんだよなぁ……」
少女「……そっか」
店主「……うん」
297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:06:16.36:bvg6Ml/20
少女「好きになったらどうすんの?」
店主「ん……伝えない、と思う。うん」
少女「……どうして?」
店主「……男がこの店に求めてるのは、そういうんじゃないからさ。ほら、居心地、悪くなっちまうだろ?
どうしても……。私としては、店のことも、好きでいて欲しいからさ。
私が告白したら、きっともう、店に来ないよ、男は。どっちかなんだ。
だから、私は譲る気満々なんだけど?」ニヤッ
少女「なにそれ、ずるいよ」
店主「諦められるうちに諦めたいのさ。まだまだ全然、好きなんて感じじゃないからさ」
店主「いい顔をするやつさ、男は」
少女「……ふーん」
店主「少女は? 案外もう好きなんじゃないの?」ニヤニヤ
少女「さ、着替えて帰ろっと」
店主「おい!!」
298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:07:47.02:CYOJEKoY0
少女「そんな話聞いたら、好きなんて言えるわけないでしょ。そういう意味でのずるい、だよ」
店主「あ、なるほどね」
少女「私も同意見だよ。お客さんが求めてることをするのが店員なら、私達は間違ったことしようとしてる」
店主「おー、店員の鏡だね」
少女「でも店員だってたまにミスするよね」
店主「どっちなのさ!?」
少女「とにかく、スッキリした。言わないのがむず痒かったから。そういうことだったんだね」
店主「そうさ。人の居場所を作るって、大変だよ。こういう店を開いて、初めて気づいた。
皆が居心地良いのと、私一人が気持ち良いの、どっちとるかなんて、一目瞭然だろ?」
少女「なんか、余裕がムカつく」
店主「大人になると余裕が出てくるもんなのさ」フフン
少女「ムカつく」
店主「」フフン
少女「ムカつく」
309:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:24:03.07:bvg6Ml/20
ーーーーーー
ーーー
ー
カランコロンカラン
男「どうも」
店主「お、来たか。ちょっときついお知らせがあるよ」
男「えっ!?な、なんですか!?来て早々!?」
店主「ま、テーブルの上見りゃわかるさ」
男「……ん?」
男(うわぁ……大量のシチューが待ち構えてる……)
店主「あっはは!その顔!だよな!昨日の夜もその前の日の夜もシチューって言ってたのに、
少女のやつ男がシチュー好きって言うもんだからさ」
男「が、がんばります……!」
青年「がんばりたまえ。僕は見ているだけだけどね」
男「はい……」
312:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:28:47.65:bvg6Ml/20
少女「どうぞ。お代わりは何杯でもあるので」
男「い、いただきまーす……」ハフッハフッ
男(……ん? う、うまっ!!)
男「お、おいしい!!おいしいですこれ!!」ハフッ!!ハフッ!!
店主「昨日の仕込み、これだからな」
少女「冷まして熱してを繰り返してたから、味はよく染み込んでるはず」
男「お代わりお願いします」
青年「はやっ!!」
カランコロンカラン
老人「なんじゃ、騒がしい」
幼女「やっと着いたー……外雨降ってるよー」
316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:34:21.96:UiAhgzug0
青年「おっ、全員揃ったね!!」
老人「なんじゃ?何かあるんか?」
青年「聞いて驚かないでくれたまえ!!なんと……!」
幼女「あー!!宿題までびしょ濡れー!!」
青年「……~なのだ!!ってちょっと!!」
老人「ん?耳が遠くて聞こえんわい」
青年「耳の遠さ関係ないよね今の!!ちょっと!!僕が重大な発表をしようとしている時に」
幼女「なにー?うるさいなぁーもう」
男「お代わり」スッ
店主「ろ、6杯目……」ワナワナ
少女「はい」ニコニコ
青年「そこ!!食べるのやめて!!」
320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:40:00.27:bvg6Ml/20
店主「はいはい。んで、何よ?」
青年「はぁー……はぁ……苦労した」
幼女「はやくしてよー」
青年「うるさいな!!ちょっと待ってくれ!!」
老人「んー?耳が遠くて」
青年「まだ何も言ってないから!!というか聞こえてるでしょ!?絶対!!」
青年「……ふうー。実は……このお店を題材にした小説のタイトルが決まりましたあ!!」
店主「へー」
男「おぉぉ代わりぃぃぃ!!」ズバッ
少女「はい」ニコニコ
青年「ちょっともう!!!!」
327:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:49:00.18:bvg6Ml/20
青年「もういいよもう……もう……」
老人「仕方が無いのう……で、どんなタイトルなんじゃ?」
幼女「薔薇を得た魚ー?」
青年「違うよ!!」
青年「各自これを見てくれ……一応物語も書き上げたから。まだまだ推敲するところだらけだけどね……」バサッ
老人「お主、書くのだけは早いんじゃな」
青年「それが、自分でも驚くぐらい筆が進んじゃって。ははは……やっぱり経験していることだからかな?
君のアドバイスを聞いて良かったよ」
男「そんな、滅相もないです……。オレンヂの日、ですか。すごく良いタイトルだと思いますよ」
青年「そ、そうかい!?そう思うかい!?」
老人「ほぉぉ……どんなふざけたタイトルかと思っんじゃが、中々この店にもあっておる」
男「俺もそう思います」
幼女「やったー!私のが採用されてるー!」
328:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:49:05.36:2Ag51UEZ0
青年「よ、読んでみてくれるかい?初披露なんだ……」ドキドキ
老人「ふむ」
店主「ああ」
幼女「少女ちゃん、一緒に読もー?」
少女「うん」
男「……」
青年「……」ドキドキ
老人「……」
店主「……」
幼女「……」
少女「……」
男「……」
青年「ちょ、ちょっと!!なんとか言っておくれよ!!僕の心臓が破裂しちゃうよ!!」バクバク
333:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:01:16.64:bvg6Ml/20
男「良い……」
青年「えっ!?」バックンバックン
老人「ふ、ふむ……」
店主「これ……盗作とかじゃないよな?」
青年「そんなわけないでしょ!!正真正銘僕の経験さ!!というか内容に身に覚えあるでしょ!?」
少女「経験だけ話して他の誰かに書いて貰ったとか……?」
青年「泣くよ!?少女ちゃんまでそんなこと言うなら僕は泣くよ!?」
店主「いや……驚いた」
青年「えっ!?」
男「これ……おもしろいですよ」
青年「ほ、本当かい!?」
老人「いや分からんぞ……身内だからこそそう感じるのかも……しかし……むむむ」
店主「応募する価値は、十分にあると思うけどな、私は」
青年「ぃや、やったああああああああ!!!!!」
335:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:07:57.03:bvg6Ml/20
老人「しかし、まだガタガタのところがあるような気もするのう」
青年「あ、ああ!!推敲の余地は無限にあると思ってるけど、とりあえず良かったよ!!」
青年「稚拙な表現は君たちの力を貸して貰えないだろうか!?」
男「確かに……まだ魚と薔薇がチラついてますね」
老人「なに、これだけおるのじゃ。なんとかなるじゃろ!」
青年「ありがとう!!ありがとう!!いやー!!今日はいい日だ!!まるでオレンヂの日だ!!あっはっは!!」
幼女「うるさいよー」
店主「まあ、今だけは喜ばしといてやんな」
青年「やったー!!君、僕もそのシチュー貰ってもいいかな!?
実はさっきまで緊張して喉に何も通らなくてね!!腹ペコなんだ!!」
男「えっ、嫌ですけど」
青年「え゛っ!?」ガビーン
341:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:14:01.37:bvg6Ml/20
男「俺の食べさしじゃ勿体無いですよ」
青年「ど、どういうことだい!?」
男「一番新参の俺が言うのも生意気かもしれませんけど、皆で祝福しませんか?青年さんを」
老人「ほう、そりゃいいの」
幼女「え!?パーティ!?」
青年「い、いいのかい?少し気のはやいような……」
老人「いいんじゃよ。今を楽しめ。これも経験じゃ」
店主「……よーしっ!そうと決まれば、今日は私の奢り……」
青年「やったああああああ!!!」
店主「と見せかけてそれぞれの自腹だあああ!!」
青年「えええええっ!?」
342:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:20:09.51:bvg6Ml/20
ーーーーーーーー
ーーー
ー
数ヶ月後
青年「ま、あ、がっ……はぁ……はぁー……」バックンバックン
老人「お、落ち着け、やればできる小説家よ。お主はやればできるのじゃ!き、きっと大丈夫!」
青年「は、はっ……うぐっ……」
店主「まあ、無理もないよな……今日が賞の発表日、すなわち小説家にとっちゃ人生の別れ道なんだ」
男「は、発表は何時頃なんですか……?」
青年「も、もうす、もうすぐ、もうすっ」バックンバックン
幼女「なんか緊張してきたー!」
少女「わ、私も……」
353:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:34:34.69:bvg6Ml/20
prrrrrrrrr prrrrrrrrr
老人「き、きたかっ!?」
店主「……」ゴ、ゴクリ
男「は、はやく取らないと!!」
青年「あ、ああ!!」
青年「……も、もしもし!?」
青年「……は、はい……はい……。はい…………はい、はい……はい……はい、では……」
青年「…………」ガチャン
老人「ど、どうじゃ!?」
青年「ふ、副賞……賞金200万だって……」ポロポロ
老人「ようやった!!!!!!!!よくやった!!!!!!!!!」
幼女「やったああああああああああ!!!!!!!!!」
354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:35:33.41:mMoZYxUz0
老人「どうなるんじゃ!?どうなるんじゃ!?もうお主、プロの作家なのか!?」
青年「わからない……なんかもうなにがなんだか……夢をみてるみたいだ……」
老人「おおう!ありがちな比喩表現じゃ!それこそがお主じゃぞ!!」
青年「とにかく……とにかく……やったあああああああ!!!!」バンザーイ
幼女「やったあああああああ!!!」バンザーイ
店主「あっはっはっは!!あっはっはっは!!」バンザイ
少女「ふふっ」ニコニコバンザイ
男「良かったですね!!良かったあああああ!!」
老人「うおおおおおおおお!!!」バンザーイ
373:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:54:02.27:bvg6Ml/20
ーーーーーーーー
ーーーーー
ー
後日・喫茶店
青年「助けて下さいよお!!」
老人「知らん。知らん」
青年「賞とっても次の作品が勝手に完成しないんですよお!!」
老人「こんな時だけ敬語になるな」
青年「このままだと一発屋ですよお!!!あだ名は三木道三ですよお!!!」
老人「知るか。一発屋の小説家よ、経験しとらんお主が悪い」
青年「お願いですってえええ!!!」
老人「知らんと言っとろうが!!」
店主「それにしたって……客の一つも増えやしないね」
男「あはは……まあ、実名出してませんしね……」
少女「その方がいいです。忙しすぎるのは、あまり好きじゃないですし」
幼女「私もー。宿題する場所無くなるし」
379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:59:20.39:UiAhgzug0
青年「まただ……また売れない小説家だ……」
老人「絞り出さんか。お主はやればできる時代もあったのじゃ」
青年「僕の人生小説一冊分で終わらせてなるものか……乾いた雑巾を絞って出た埃で物語を書き上げてやるうううう!!!」
店主「新たに経験を積むって考えはないのかよ」
青年「ここから出たくない!!この喫茶店から!!」
店主「はぁ……」グッタリ
幼女「仕方ないよー、あの一冊が奇跡だったんだって!次はないって!ね?」ポンッ
青年「全然慰めになってないよ!!!!むしろ落とし入れてるよ!!!!」
青年「というかこんな子どもに慰められる僕って……」
幼女「むー、オレンヂって案出したの私だよー?」
青年「ははぁー!」ズサーッ
店主「あははっ!ま、いいじゃねえか。変わらないってのは、この店にとっちゃいいことさ」
青年「はぁー……」ドンヨリ
382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:10:28.83:bvg6Ml/20
男「でも俺は一番好きですよ。今までで読んだ本の中で、このオレンヂの日が。
こうしていっつも鞄の中にいれてあるんです」ポスッ
青年「ありがとおおお!!!サインするよ!!」
男「いや、もう4つもしてもらってるんですけど……」
青年「構わないさ!!何重にも書き重ねようじゃないか!!」
老人「ま、まあ……わしも……その。
読んでないことも、ゴホンっ!……ない」
青年「爺さあああんっ!!!」
店主「この店の本棚もそれで埋まってるしな」ニカッ
幼女「私も、読書感想文その本で書いたよー」
少女「私も、疲れた時に読んでますよ」
青年「皆……皆、ありがとう……そうだね。そういう人が居てくれるのは、僕の誇りだよ」
老人「書いて残ったものも埃じゃがな」ドッ
青年「おいいいいいい!!!」
388:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:16:43.28:bvg6Ml/20
カランコロンカラン
青年「なんだこんな時に!!誰だい!?」
親父「……」
店主「あっ……」
少女「えっ……?」
男「ん?」
老人「誰じゃ……?」
幼女「おじさん誰ー?」
男(あ、もしかして少女ちゃんの……?)
店主「……私の父親だ」
男「えっ!?」
391:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:22:51.20:bvg6Ml/20
少女「ど、どうして?」
男(ん? んっ?)
店主「私が、本を送ったんだ。自分でな」
青年「え?ぼ、僕の本を……?」
店主「ああ……」
老人「……何かわけがあるのじゃろう。わしらは席を外すべきかな?」
親父「いえ、おかまいなく。どうかそのままで」
老人「……ふむ」
親父「……」
店主「……」
男(な、なんだこの重い空気は……)
393:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:28:05.69:bvg6Ml/20
店主「店……場所、知ってたんだな」
親父「当たり前だ。娘の居場所を知らない父親がどこにいる」
店主「っ……」
親父「……話題になっていた」
老人「話題?」
店主「……」
親父「同じ客しか来ず、開いている意味のない店だという話をよく聞く。まるで売る気のない店だと」
店主「……」
店主「その通りだよ」
親父「……ふむ」
395:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:36:37.19:bvg6Ml/20
店主「うちは、常連さんを大切にする店さ。それをポリシーにやってる。
気に入ってくれた人だけ来てくれればいい。誰かを拒んだりもしてないはずなんだけどね。
どうも新規のお客さんが来てくれない」
老人「じゃからそれは、外から中が見えないからじゃ。わしらは皆受け入れておる」
親父「……本を読んだ」
青年「」ビクッ
親父「……素晴らしかった」
店主「えっ?」
親父「ここの名前はでていないが、お前が送ってきたということは、そういうことなのだろう?」
店主「あ、ああ……あれは、この店のことだ」
親父「……素晴らしいと思ったよ。素直に」
青年「あ、ありがとうございます」
親父「……一言だけ言おう」
男「……」ゴクリ
親父「お父さん寂しい」ポロポロ
店主「はっ!?あ!?はぁぁっ!?」
396:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:37:46.93:FaWUvHL90
店主「えっ!?お、おい!?」
親父「いけねっ……歳とって涙もろくなっちまったんだよ」フキフキ
店主「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待て!!な、なんだ!?なんなんだ!?」
親父「あのなぁ、お前なぁ、よそで修行してこいっつって本当に他所行く娘がどこにいるんだよぉ!!
お父さん悪いよ!?全部お父さんが悪い!!うん!!でも寂しいだろうがよぉぉぉ!!!」
店主「まてまてまてまて!!!お、お前親父の偽物か!?」
親父「あああああ!!ついに娘が俺の顔を忘れちまってるううう!!!あああ!!!」
店主「いや、いやいや!!覚えてる!!覚えてるよ!!!」
男(え、なにこれ……)
親父「お前なぁ!!!何この店!!お父さんの後継ぎ一切無視してすごいいい店作ってるじゃん!!!
たまんねえ!!たまんねえよ俺ぁ!!!」
店主「お、おう……いや……えっ?」
親父「嬉しいのに悲しいよお前!!どうすりゃいいんだよ!!どんな気持ちでここ来たと思ってんだよぉ!!」
店主「し、知るかよ!!」
親父「泣き笑いながらだよおおお!!!職質2回も受けたぞ!!!」
店主「ま、まじかよ!?」
403:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:46:18.23:IUCcREsrO
親父「他所で働いてこいって言ったら『ここでがんばるから、一生懸命やるから教えて下さい!』みたいになると思ったんだよおおお!!」
親父「お前、店開くなよおおお!!!」
店主「えぇぇっ!?」
親父「全部……全部シャイな俺が悪かったんだ……ごめんな、ごめんなぁぁ」ポロポロ
店主「な、泣くなって!!っつうかシャイどころか鬼だったぞ!?」
親父「お前があんまり可愛いもんだからつい意地悪したくなって……」
店主「はぁぁぁ!?」
親父「ごめん!!ほんとごめん!!でももうお父さん歳とったから!!自分に素直になれるようになったから!!
後はキッカケだけだったんだから!!そんな時に本が送られて来て何これイェーイ行くしかね~っしょ!!って感じだったんだから!!」
店主「訳わかんねえ……」
少女「私が一番訳わかりませんよ……」
男(あ、俺も……)
417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:01:49.33:ZKAdLhwY0
店主「な、なんか……もう……全部、訳わかんねえ……」グッタリ
男「だ、大丈夫ですか!?」
店主「少女……胃薬頼む。
……ったくどれだけ私が気を張ってたか……今日は来るかも、今日こそ来るかもと毎日毎日……」
親父「すまない」
男(厳格な感じに戻ってる!?)
親父「しかし、ここのお店の噂は閉塞的なことだけでな、味の文句なんかは一つも聞かなかったよ。
だから俺は心の中で『入る勇気無くて愚痴ってるだけじゃねーかバーカ』と思っていたぞ」
店主「それもどうだよ……というか私店開いてから一度だけ親父の店行ったことあんだけど……」
親父「知ってる……厨房に隠れてた」
店主「なにしてんだよ!!」
親父「急に娘が来たから」
店主「いやいやいやいや!!……はぁ、もう怒る気力も残ってねえよ……」
420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:06:38.49:ndH7/qtd0
老人「親子の絆に水を指すようで悪いんじゃが」
店主「なにが絆だジジイ!!」
老人「お主が親御さんをここに連れて来た目的とはなんだったのじゃ?」
親父「ご老人、とても良い質問です。私も気になってました」
店主「知らずに来たのかよ!!」
店主「はぁ……私は、今となっちゃ恥ずかしいけどよ、親父に認められたくてこの店開いたんだよ」
親父「うっ……」ポロポロ
幼女「おじちゃん泣くの早いよー」
店主「でさ、こんな良い本を書いてくれてさ」
青年「うっ……」ポロポロ
少女(あっ、めんどくさいな)
422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:11:39.22:iu7oDtUWO
店主「やっと親父にこの店に来てもらっても大丈夫だってくらい、ここに自信を持てたんだよ。
これ以上の店は、私じゃ作れねえぞってとこまでな。だから、本を送ったんだ。
見に来てくれって意味でな」
親父「娘ぇ……」ボロボロ
店主「あー、もう、んだよ全くよお」
親父「お前、立派に育ってくれたなあ…….ありがとよぉ……こんなお父さんなのに……」
店主「自覚はあるんだな。まだ救われたよ」
親父「確かに俺の店を継いで貰えないのは悲しいけど、お前が丹精こめて、必死になって作り上げた店だ……。
それがどれくらい大切かってのは、俺が一番よく理解してやれる。
時に自分を犠牲にしてまで店を守らなくちゃいけねえ時だってあるんだ」
店主「……」
親父「だから俺は、お前を誇りに思うよ。こんな立派な店を作り上げたお前を」
店主「……ああ、そうかい。嬉しいよ。こんな親父だけど、目標には、変わりねえからさ」
親父「……良い子だぁ……あああ……あれうちの娘なんですうう……」ボロボロ
男「え!?いや、知ってます!!」
433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:27:09.79:ZKAdLhwY0
親父「はぁー……お父さん泣き疲れたよ」
店主「私はもっと疲れたよ……」
親父「そうだ、俺の店でここを宣伝してもいいか?」
店主「ん、あー……どうすっかな。皆はどう思う?
親父の店、繁盛してるから、新規のお客さんは増えると思んだけど」
老人「ぜひお願いするべきじゃ!……と、言いたいところじゃけど、これはお主に任せるよ。
店のことでもあるが、親子のことでもあるからの」
幼女「うん、私も爺ちゃんとおんなじ」
青年「僕も同じかな」
男「俺もです」
少女「私も、料理さえ作れれば」
店主「そっか……んじゃ、遠慮するよ。隠れ家って響きが好きでさ、見つけた人だけ楽しんでって方が、性に合ってるんだ」
親父「そうか……そうだな。それがポリシーだもんな。わかったよ。ただ、俺はここの常連になるけどね」
店主「えっ」
435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:30:04.80:iS17hGE70
ーーーーーーーー
ーーーー
ー
後日・喫茶店
少女「男くん、今度の日曜だけど……」
男「うん、ちゃんと空けてあるよ。誘ってくれてありがとう。
女の子とデートなんて初めてすぎて、なにをどうしていいやら……」
少女「私も。飛びきりのお弁当作るから」
男「期待してるよ。って言っても、おいしいことはわかりきってるけど」
老人「じゃから!そこは段落を変えてじゃな!博之の心情を……」
青年「いや!!ここは曲げない!!小説家としてのポリシーだ!!」
老人「聞き分けならんやつじゃな!!」
青年「そっちこそ!!」
店主「おーい、宿題進んでるか?」
幼女「んー、おじちゃん中々教えるのうまいよー」
親父「ずっと娘に宿題教える妄想してたからな!!はっはっは!!」
店主「ったくよぉ……ま、騒がしくても平和でいいけどよ……」
いつまでも変わらず、このままの形で喫茶店は続く。
……オレンヂの日を繰り返しながら。
終わり
441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:38:01.90:gaGXNSyy0
512:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 04:14:05.72:xx1LGuBL0
店主「注文何にする?」
男(き、気の強そうな女の人だな……見たところ、26~7歳くらい?)
男(エ、エプロンがはち切れそうなほどのお、おおお、おっぱ、おっ)
店主「お客さん?どこ見てんだい。私の胸にゃメニューは載ってないよ?」
男「え゛っ!?」
男(や、やべえええ!!バレてた!!バレてたよ!!!終わったよ俺!!来て早々逮捕だよ!!)
幼女「あははー!仕方ないよー、店ちゃんのおっぱい大きすぎるもん!」
男「なっ!?えっ!?」
店主「あっはっは!まあな!確かにそうだがお前はさっさと宿題しろ!」
幼女「えー、つまんないの」
男(え?なに?娘?なんなの?)
店主「悪いね。あのガキ、毎日ここに来て居座りやがんだよ。そのくせ頼むのはジュース一杯でちっとも商売になりゃしないよ」
幼女「そんなこと言って店ちゃん私がこないと寂しいくせにー!」ケラケラ
店主「はいはい。わかったからさっさと帰れ。他の客が来たらどうすんだよ」
幼女「来ない来ない。ここ毎日同じ人しか来ないじゃん。その男の人はすごい珍しい例だね」
店主「だぁー、うっせぇ」
男「え……そ、そうなんですか?」
店主「んー……ああ、否定はできないのが悔しいよ……あはは」
幼女「いっつもそこの席だけ空いてるんだけどね」
男「へ、へぇー」
老人「時に少年よ」
男(うわっ、なんか気難しそうな人が話しかけてきた)
店主「待てジジィ。ジジィの話は長えのさ。注文が先だ」
老人「むっ……若造より長く生きとるんじゃ!話すことが多くなるのは当然のことじゃろう!?」
店主「はいはい。で、お客さん何にする?」
老人「人の話を聞かんか!!」
男「あ、じゃ、じゃあとりあえずコーヒーで」
店主「はーいよ」ニカッ
男「そ、それで……お話とは」
老人「おぉ、聞いてくれるかの。君はええ奴じゃ」
男「い、いえ、そんな」
幼女「じいちゃんいっつも流されてるから話できるのが嬉しいんだよ!」ニヘヘ
老人「黙らんかちびっ子!」
幼女「ひぃ!怖いよー!」
老人「ええから宿題せえ!」
幼女「はーい」キャッキャッ
老人「コホン……時に少年よ」
男(あ、ちゃんとそこからやるんだ……)
老人「何故ここに来ようと思ったのじゃ?
先程も話に出ていた通り、ここは毎日同じ客しか来ん。この店は外から中の様子が全く見えんじゃろう?
恐らくそのせいでな、新しい客がほとんど入ってこないのじゃ」
男「は、はぁ……」
老人「わしは何度も中を見えるようにせいとあの店主に言うんじゃが、いくら言っても聞く耳持たんのじゃ。
全く、若者が老人の話を聞かんくなったら終わりじゃて。何を受け継げばいい?何を学ぶのじゃ?
己で全てを手に入れることができるか?否、それなら技術は廃れまい。よいか少年。
人生に必要なのは経験じゃ。何事も経験せにゃならん。少年には祖父や祖母はおるかね?」
男「え、ええ……まあ。ずいぶん里に帰れていませんが」
老人「おぉう、なんということじゃ。そりゃいかん。いかんぞ。祖父母は悲しんどるじゃろうて」
男「そ、そうですかね……?」
老人「当たり前じゃろうが。わしの孫と言えばの」
店主「あーったく、またその話かよ。日が暮れちまうよ」
老人「お主には関係ないじゃろ!」
店主「ありまくりだよ、誰の店だと思ってんだい。回転率もへったくれもないね。
はいよ、コーヒーお待ち」
男「あ、どうも……」
老人「全く……。ところで少年、お主はどう思う?」
男「はい?」
老人「この店の外観の問題じゃ。中を見えるようにした方がいいと思わんかね?」
店主「いーんだよ、今のままで」
老人「わしは少年に聞いておるのじゃ」
男「え?え?……え、えーっと……い、今のままでいいんじゃないでしょうか?」
老人「な、何故じゃ!?」
店主「ほーらな、だからこの方が落ち着くんだよ」
男「あ、それです。俺も、そう思います」
老人「ぬぐぐ……しかし、今のままじゃと店の経営が」
店主「それならその長い話をやめてくれた方がよっぽど店にとって利益になるさ」
老人「くぅぅ、しぶとい奴じゃ!」
店主「どっちがだよ」
男「あ、あはは……」
店主「それよりお客さん、コーヒー、飲んでくれな。冷めちまったら淹れなおさねえと」
男「あ、はいっ!すみません……」ゴクリ
幼女「……」ニヤニヤ
店主「なーにニヤついてんだよ」
幼女「だ、だって、その人次第であれが見れるかもしれないんでしょ!?久しぶりに見たいなー!あれ!」
男(あ、あれ……?あれってなんだ?お、俺なんか期待されてる?)
老人「わしゃ勘弁して欲しい。騒がしくてたまらん」
店主「ははっ。そういえば随分だな。どうだお客さん、おいしいかい?」
幼女「ワクワク!ドキドキ!」
老人「けっ……」
男(な、なんだこれ……何が正解なんだよこれぇ!!なんでこんなに期待されてんの!?何があんの!?)
男「と、とりあえず……おいしいですけど……はい」
店主「おっ」
老人「けっ」
幼女「あっ……」
男「えっ?」
幼女「や、やったー!!来るよー!!」
男「え!?な、なに!?なんなの!?」
少女「」ガチャバタンスタスタスタスタ
男「えっ!?えっ!?」
少女「お、おいしいですか!?本当ですか!?どの辺がおいしいですか!?
味ですか!?深み!?コク!?苦味!?温度!?」
男「な、なに!?何が起こってるの!?」
幼女「あはははー!!」ケラケラ
店主「あっはっは!良かったな、少女」
少女「それ私が淹れたコーヒーなんですよ!どうですか?おいしいんですよね?良かったです!!」
男「お、おいしいです!おいしいですって!」
少女「レシピとかいります!?淹れ方とか、そういうのなら教えられますけど!!」
男「い、いえ、俺自分であまりコーヒー飲まないので!」
少女「そうですか!?じゃあタッパーにいれて持って帰ります!?私が淹れたコーヒー!!」
男「た、タッパー!?コーヒーを!?」
少女「もう一杯頼みますか!?店主!!オーダー追加で!!」
男「えぇぇ!?何しちゃってんの!?」
店主「落ち着け少女、そんなにしつこいと今までみたいにこの人も次来てくれなくなるぞ」
少女「あっ……そ、そうですね」シュン
男「あっ……」
男(な、なんかすごい落ち込んでる……そんなに飲んで欲しいのかな……)
男「あ、じゃ、じゃあ……もう一杯いただこうかな~なんて……あはは」
店主「なっ!?」
幼女「えぇ!?」
老人「むっ」
男「え?」
少女「えぇっ!?」
男「あ、あの……俺なんかまずいこと言いました?」
店主「い、いやっ……あーっと」
幼女「は、初めてだよ……少女ちゃんのこの攻撃を受けてもう一杯頼んだ人」
男「えっ、そうなんですか?」
老人「あれを目の当たりにしてさらに頼むとは……よくわからんのう」
少女「わ、私……私……」
少女「がんばりますから!!!!」ゴォォオ
幼女「うわー、完全に火がついちゃってるね」
店主「おーい、火事だけはやめろよなー」
老人「今日は中々……味のある日じゃなあ」
男(あれ?なんか間違えたなこれ……うん、間違えたな)
少女「はいお待ち!!」ドン
男(なんかメッチャ出てきた……)
男「あの、俺こんなに頼んでませんけど……むしろコーヒー一杯だk」
少女「私特製カルボナーラに私特製サラダ!後は私特製スープに私特製ティラミス!そして私特製のコーヒーです!!」
男「わ、わぁ~、全部特製なんだぁ、すごいなあ」
少女「食べてみてください!」ニコニコ
男「……あはは」
少女「……」ニコニコ
男(……こうなったら……ええいままよ!)
男「むぐっ!ばくっ!」モグモグモグモグモグ
店主「おぉ、ナイスな食べっぷりだね」
幼女「すごーい!」
老人「しめて2500円じゃな」
男「ぶほぉ!!」
店主「うわ!」
男「え!?お金とるの!?」
少女「まさか!サービスですよ、サービス」
男「な、なんだ……良かったあ」
老人「ふぉっふぉっふぉっ、冗談じゃよ」
店主「少女、今回のお客さんのサービス分給料から引いとくからな」
少女「やはり自腹でお願いします」
男「えぇっ!?嘘だろぉ!?」
幼女「あはは!ドンマイだよ!」
男「はぁ……まあ、おいしいんでいいですけど……」
少女「えっ!?」
男「その下りももういいです……」
幼女「なーんだ、また見れると思ったのにー」
男「二つの意味でお腹いっぱいです……」
老人「……」
店主「……」
男「いや、なんか言ってくださいよ!!」
こんな喫茶店あったら行きてえな
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:39:02.60:r73yzu1kO
すごく常連になりたいな
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 01:39:07.65:bvg6Ml/20男「はぁ……もうダメ、もう死ぬ。もう何も入らない」
幼女「よくがんばった!感動した!」
店主「ところでさっきから盛り上がってるけど、宿題終わったのか?」
幼女「へっ!?」ギクッ
店主「……皿洗い手伝え」
幼女「いやぁぁぁ!!」
店主「いやぁぁぁ!!じゃねえ!店の売り上げの邪魔するなら少しは店のために働け!」
幼女「働いてないのに……まだ子どもなのに……」
店主「家の手伝いみたいなもんだろ。一日中いるんだからよ」
幼女「ちぇー。はーいお母さん」
店主「誰がお母さんだ誰が!!」
男「あ、あのー……そろそろお勘定を……」
店主「おっ、そうか。はいよ、ちょっと待っててくれな」
店主「少女の暴走分は金とらないから、また来てくれな」
男「えっ、いいんですか?」
店主「こっちの都合なんだから、お客さんからお金は取れないよ」
男「あ、ありがとうございます……!!」ジーン
店主「あ、ところで、お客さんお名前は?」
男「男といいます。また来ます。本当にありがとうございました」
店主「へへっ、客に礼言われるなんて、なんだかむず痒いよ。こっちこそ、ありがと」
店主「また来てくれたら、皆喜ぶよ。新規のお客さんで、こんなに盛り上がるのは初めてだからさ」
男「そ、そうなんですか……。そう言っていただけると、ありがたいです」
店主「あははっ、ホント、ガキやジジイと違って礼儀正しいよ。じゃ、またよろしくね」
男「は、はい!また!」
カランコロンカラン
男「……」
男「……」ウズウズ
男「……」ウズウズ
男「……うおおおおおおおおおおおおっ!!!!」タッタッタッタ
犬「」ビクッ
男「これだこれこれぇ!!俺の憧れはこれなんだよおおおおおお!!!!」
男「いぃぃぃぃぃやっほおおおおおおおおおおう!!!!!!」
子ども「ママ、変な人がいるー」
男「」ビクゥ!!
ママ「こら、見ちゃいけません!」
男「あ、あはは……」スタスタ
男(あ、危ない危ない……テンション上がりすぎた……)
男(ふぅ……)
次の日、店の前
男(……ま、また来てしまった……)
男(さすがに昨日の今日じゃ図々しいかな……。また来てほしいと言われたけど、さすがにな……)
男(いやでも俺は客だぞ?別に遠慮することなんて何もないよな……?)
男(な?そうだよな?な?)
男(……うん。いざ!!)
男「ど、どうも」カランコロンカラン
青年「なぜだぁ!!!!」
男「うおっ!?」
店主「だぁ~、もう。いつものことじゃねえか」
青年「いつものことだからダメなんだぁ!!!何故だ何故だ何故だぁ!!」
幼女「もーう!うーるーさーいー!!」
老人「前々から言っとろうが!お主の書く小説はおもしろくない!!」
青年「うわああああ!やめろおおお!!」
幼女「何回も応募して候補にすら残らないんでしょ?諦めなよ、もー」
青年「諦めてたまるか!!!……ん?お、おや?」
男「あっ」
店主「おっ」
幼女「あっ!!」
老人「むっ」
少女「……」コソッ
幼女「わぁー!!来た!!ね!?ね!?言ったでしょ!?ほらね!?」
老人「むむむぅ……まさか来るとは……最近の若者の思考はわからん」
店主「おー!よく来たなぁ!ほら、昨日と同じ席、空いてるよ」
男「あ、ありがとうございます!あはは……」
青年「これが噂に聞いた男くんか。いやー、物好きもいたもんだ。さては君、ここの常連になろうと?」
幼女「やめといた方がいいかもよー、売れないくせにうるさい小説家が居座るし」
青年「う、うるさい!!君だって宿題するとか適当なこと言って居座ってるじゃないか!!」
幼女「私はお母さんが留守の間家に一人じゃ危ないからだもんね」
青年「うぐぬぬぅ……」
男(なんだ……帰れといいながら、子守を受け持ってたんだ、店主さん)
男「と、ところで……あの方は?昨日はお見かけしなかったように思いますけど……」
店主「ああ、ここを仕事場かなんかと勘違いしてる小説家だよ。昨日はなんだったか、
賞に応募した結果が来るやらなんやらで家に居たみたいだけど」
青年「審査員は目が腐ってるんだ!!」
老人「お主の才能が腐っとるとしか思えん」
青年「こ、この僕の作品が認められないなんて……そうだ!君、ちょっと読んでみてくれないか?」
男「へっ?お、俺ですか?」
青年「ああ、話に聞くと中々筋がいいらしいじゃないか!君なら理解してくれるかもしれない!」
幼女「男くん、宿題教えてよー」
青年「宿題は一人でしなさい!!」
幼女「ちぇー」
男「ま、まあ……俺でよければ……」
青年「そ、そうかそうか!やはり君は筋がいい!ここの連中は読もうとすらしないからね!」
老人「つまらんからじゃろ」
青年「う、うるさい!!」
店主「ま、落ちる時点でたかがしれてるよな」
青年「ぐぬぅ……!!」
幼女「やーい!言われてるー!」ケラケラ
青年「ムキーッ!!」
幼女「きゃー!」キャッキャッ
男「あ、あの……それで、作品というのは……」
青年「おっとすまない……」アセアセ
老人「作品というよりただの紙じゃよ」
青年「も、もう!外野は黙っててくれないか!!」
男「は、あはは……」
青年「これなんだが……」ドサッ
男(分厚っ!!)
青年「……ど、どうだい?」ドキドキ
男(つ、つまんねええええ!!なんだこれえええ!!)
男「……」パタン
青年「え、まだ途中」
男「あはは……あのー……そのぉ……」
店主「男、ハッキリ言ってやれ。その方がそいつのためだ」
男「ドブみたいでした」
青年「そこまで!?!?」
幼女「あははっ!!あはははっ!!ドブみたいだって!!最高!!最高だよー!!」
老人「見るに耐えないという感情の比喩表現かの。男の方が向いとるかもしれんの」
青年「ダメだ……立ち直れない……心に雨が降っているよ……」
老人「ありがちじゃの」ムスッ
青年「うるさいなぁ!!!」
少女「あ、あの……」
最近小さい喫茶店見なくなったなぁ
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 02:33:07.85:bvg6Ml/20店主「ん?」
少女「こ、これ、どうぞ……」コトッ
男「えっ?お、俺に?」
少女「私からのほんの気持ちです……」ササッ
男「……えっ?」
男(ん?なにこれ?どういうこと?)
男「あっ、そういえば俺まだ注文してませんでしたね……すみません」
店主「気にしなくていいよ。でも、コーヒーがもう出てるけど、まだいるのかい?」
男「あ……いえ、そうですね。では、コーヒーを一杯注文していたということで。どうせそのつもりでしたし」
店主「はいよ」ニカッ
老人「ふむ……あの娘が暴走時以外に表に出てくるなんてこと、あったかの?」
幼女「だよね、珍しいねー」
青年「な、なんてことだ……」フルフル
男「それじゃあ、いただきまー……ん?」
少女「……」コソッ
男(あれ?なんかすごい見てない?なんで?)
少女「……」ジーッ
男(ん?なに?なんなの?すごい飲みにくいけど?)
男「あ、あの……店主さん」
店主「ん?」
男「少女ちゃんって、あんなおとなしい子でしたっけ?」
店主「あぁ……それは」
青年「僕が説明しよう!」
老人「やめておけ、しょうもない比喩表現ばかりで訳がわからんくなるじゃろ」
青年「あの薔薇のように可憐な少女さんは……って、うるさいな!!」
男(うるさいが口癖みたいになってるな、この人……)
青年「と、とにかく、あの薔薇のように可憐で健気な少女ちゃんは、
褒められるとまるで水を得た魚のように感情が高ぶっちゃって、人が変わってしまうのさ」
男「と、ということは、昨日俺が見た少女ちゃんは特殊な少女ちゃん?」
幼女「そうそう。だから楽しみだったんだー!」
男「あ、そういえば久々に見れるとか言ってたもんね」
幼女「そうだよー!少女ちゃん、新しいお客さんが褒めてくれた時にしかああならないから、なかなか見られないんだよー」
店主「むしろ普段の姿があっちの、大人しい少女だよ」
少女「……」ジーッ
老人「わしゃ今の少女ちゃんの方がええわい。やかましくて敵わんからの」
青年「な、なななにを言う!!感情が昂ぶってしまって周りが見えなくなる少女ちゃんも、とても素敵だ!!!」
老人「ん?なんじゃ?お主、好きなんか?」
青年「そ、そそそそそんなわけないだろー!?」
店主「好きだな」
幼女「だね」
青年「あああああああやめてえええええ!!!」
老人「全く……煩悩に振り回されながら仕事をしとるのか?
そりゃつまらん小説ができあがるわけじゃ。家で書け家で」
青年「そ、そういうことではない!!!僕はいつも作品に全力を注いでいる!!
そう!ペンを持ち原稿に向かう僕はまるで水を得た魚のように」
老人「さっきも言っとったぞ、それ。比喩表現のレパートリー無さすぎじゃろ」
青年「う、うるさいな!!!」
男「……ふう、おいしいな、やっぱり」ゴクリ
少女「どうぞ」コトン
男「えっ?」
少女「……」ドギマギ
男「……ふ、ふう」ゴクン
少女「おかわりどうぞ」コトン
男「店主さん、助けてください」
店主「嫌だ」メンドクサソウ
男「そ、そんなあ!!」
幼女「少女ちゃん、男くんのこと好きなの?」
青年「うおおおおおおおおおおい!!!ストップ!!ストッピング!!!」
幼女「なんだよー、もー」
青年「その質問はやめてくれないかな?僕の心が波浪警報だから」
老人「ぶふっ……お主、今のはちょっと良かったぞ」
青年「え?本当?メモメモ……」
少女「え、えっと……」
男(俺どんな顔してればいいんだろう……)
少女「好きって……何?」
老人「ほう……こりゃまた深い質問じゃな。ほれ、出番じゃぞ売れない小説家よ」
青年「そ、それは……好きとは……」
少女「好きとは……?」
青年「魚が水を……」
老人「おーい、小説家がお勘定じゃ」
青年「待って!!お願い!!ごめんなさい!!」
少女「私はただ、料理を褒めて欲しくて……あんなに食べてくれたの、この人が初めてだから」
店主「まぁなあ、お代わりした時はさすがの私も驚いたよ」
青年「それだったら僕がその役を受けもとう!!」
少女「別に私は魚に水を得て欲しくないから……」
青年「ぐわあ!!!」
幼女「今の一番キツイ一言だね!」
青年「明るく言わないでおくれ……」
男「そ、そうかぁ……あはは、なんだか居場所ができたみたいで、嬉しいな」
店主「……」ニカッ
老人「そういえば、まだ聞いてなかったの」
男「ん?」
老人「何故お主はここに来た?何がお主をそうさせたのじゃ」
男「……笑わないでくださいね?」
幼女「笑うような理由なの?」
男「ん、うーん……多分」
青年「なんだい?」
男「俺、憧れてたんです。こんな風に、一人で喫茶店に来て、なんか居心地の良い空間に包まれて、
ただのんびり過ごすってことに。ずっとここのお店が気になってたんですけど、中々勇気が出なくて……。
でも、もう大人なんだって、何を緊張してんだって決心したのが、ちょうど昨日なんです」
男「なんでこのお店なのかってのは、わかりません。ただ、よくいくデパートの通り道で、いつも外観を眺めてました。
中はどんな風になってんだろって、なんか隠れ家みたいな魅力があって、もしかしたらそこに引き寄せられたのかも」
老人「じゃから昨日は、外観は今のままでいいと?」
男「そうですね。そうかもしれません。隠れ家だからこそ、落ち着けるというか……」
店主「あははっ、嬉しいこと言ってくれるねえ」
少女「サービス」コトッ
男「え゛っ」
老人「そうか……ほっほっほ……そうかそうか」
幼女「なんか笑ってるよ」
店主「ほっときな、ジジイも長くないんだろ」
老人「健康すぎるくらい健康じゃ!!このたわけが!!」
老人「少年よ、わしは若い頃、多くの国へ行ったよ」
幼女「語り出したよ」
店主「火の元確認してくるよ」
幼女「あ、逃げた!ずるーい!」
老人「ヨーロッパなんてのは、わしの庭みたいなもんじゃった」
男「へ、へぇー、何カ国くらい行かれたんですか?」
老人「数え切れんほどじゃ。特にイタリアのシエーナなんてのは最高じゃった。ああ、最高じゃ」
老人「いいか少年、あそこには街の中心に大きな広場があってな。そこには寝転ぶ人、夫婦で並んで座る人、
スポーツの話をする人、子どもに大学生と、様々な人々が集まり語らっておる。実に平和じゃ。実に。
そこにいる老人はこう言っておったよ。『この広場が俺の人生さ。ガキの頃からここで遊んでるよ』と」
男「やっぱり外国の人は言うことが違いますね……」
老人「恥ずかしいことに、わしはそのイタリア人の何気ない一言に胸を打たれたのじゃ。
そして考えた。わしにはそういう場所はあるのか?人生と共に過ごしてきたような場所が?
答えはすぐに出たよ。わしには、これっぽっちも無かった」
老人「実に、実に寂しい人生じゃ」
男「そんな……」
老人「同情はいらんよ。理解しておる。わしは、寂しい人生を送っていた。
日本に帰って、考えたのじゃ。わしの人生は後どのくらいじゃろう。今からでも、遅くないじゃろうか、と」
男「……というと?」
老人「ちょうど良い機会じゃ。言わせてもらおうかの」ジッ
店主「ん?……な、なんだジジイ」
老人「店主よ。ここは素晴らしい。素晴らしい場所じゃ。わしはここに来ると、あの広場を思い出す。
実に不思議じゃ。様々な人間が、子どもからわしのような老いぼれまで、気概なく語り合っておる。
わしはの、ここが好きなんじゃ。だからこそ、潰れて欲しくない。多くの人に来て欲しいのじゃ」
店主「それで中が見えるようにしろしろうるせえのか」
老人「わしは……探していたのじゃ。そして、見つけた。わしが笑ったのはそういうことなんじゃよ、少年よ」
男「えっ?」
老人「わしも、憧れでここに来るようになった。なにがおかしいことか。自信を持て、少年」
男「あ、は、はい!」
幼女「ふーん……以外」
青年「……爺さんがこんなことを言うなんてね」
店主「……うん、ま、ジジイの話にしちゃ……悪くなかったよ」
老人「いかんの、昔話なんてのはするもんじゃない。場が白けてしまった。
おーい店主、ビールじゃ!」
店主「年寄りに昼間っから出すビールなんてないよ。トマトジュースでも飲んでな。ほらよ」ゴトッ
老人「……」
青年「ぷっ!!くくっ!かっこつかないね爺さん!!」
老人「たわけ!!」ゴクゴク
老人「ぶほぉっ!!な、なんじゃこりゃ!?まずいぞ!!」
少女「……サービスでコーヒーを混ぜてみた」
老人「殺す気か!!」
青年「いひひ!!ひー!!ひー!!」
店主「少女、そんなこたしなくたってジジイはすぐだ」
老人「どういう意味じゃおい。わしは生きるぞ!!生き延びてやる!」
幼女「寿命はいいけど話を短くしてよ。おかげで宿題が進まない」
男「それは自分のせいなんじゃ」
幼女「うえーんいじめるよー!」
男「えぇっ!?」
ーーーーーーーーー
ーーー
ー
男「だから、掛け算だからそこは12じゃなくて32になって……」
幼女「なーるほどー!」
青年「爺さん!さっきの話小説に書いてもいいかい!?」
老人「お主に書かれたらわしの思い出が海の話になってしまう」
青年「水を得た魚は使わないから!!頼むよ!!」
老人「却下じゃ。花畑になってしまう」
青年「薔薇のように可憐も使わない!!というかこんな干からびた爺さんの話に薔薇なんて出てきようがないね」
老人「もう何を言っても却下じゃ」
青年「そんなあああああ!!!」
少女「はいおかわり」コトッ
男「あの、もう俺のお腹すごい勢いでぽちゃんぽちゃんなんだけど……」
少女「……」ニコニコ
店主「……ぐー」zzZ
男「あ、俺そろそろ帰って夕飯の準備しないと」
老人「む?ここで食べていけばいいじゃろ?」
幼女「あー!もしかして一緒に住んでる人がいるとか!」
少女「」ピクッ
男「いやいや、そういうわけではなくて。野菜腐らせちゃうんで、使わないとダメなんですよ」
少女「」ホッ
店主「そうかい、じゃあお勘定だね」
男「はい。お願いします」
店主「っつってもコーヒー何杯飲んだんだ?」
男「それはもう、数え切れないほどに……」
店主「んー、まっ、ツケってことでいいかな。今日は最初の一杯分だけでいいよ」
男「そ、そんな……悪いですよ。ちゃんと払います」
店主「いいのさいいのさ。また来てくれたらね。じゃ、またー」
男「あ、は、はい!また来ます!」
カランコロンカラン
次の日
カランコロンカラン
少女「!!」
店主「おっ、今日は早いじゃないか」
青年「どうしたんだい?暇だったとか?」
男「二人はまだいないんですね。昨日今日と料金をよくしてもらったので、今日はお昼をここでいただこうかと思いまして」
店主「なーに、気にするこたないってのに」
男「いえいえ、ぜひここでと」
店主「ふふんっ、そうかい」ニカッ
店主「じゃ、注文は何にする?」
男「んー……カツカレーで」
少女「はーい」
青年「少女ちゃんの作るカツカレーは美味しいよ!!」チラッチラッ
少女「~♪」グツグツ
店主「まるで聞いてないね」
男「あはは……」
青年「ところで相談なんだが、具体的に僕の作品はどう面白くなかったんだい?」
男「あ、いやー……えーっと」
青年「脅しているわけじゃないんだ。純粋に、意見が聞きたくてね」
男「そ、そうですか……では、まず情景が全く浮かんできませんでしたね。今どこで何をしているのかがもうさっぱりで。
それと登場人物の心情が分かりにくかったです。説明されてはいるんですけど、どれもしっくりこない比喩表現ばかりで……。
後ネーミングセンスが……ミントってなんですかミントって。薔薇色すぎるでしょ。
おまけに」
青年「ちょっと待って!!もう精神ズタボロだから!!もういいから!!もういい!!」
店主「言っちまえば全部ってことさ」
青年「うん……うん……よくわかったよ。感謝するよ……」
男「な、なんかすみません……」
カランコロンカラン
老人「むっ?」
幼女「あー!もう来てる!」
男「あ、どうも」
男「ん?」
幼女「ん?」テツナギ
老人「なんじゃ?」テツナギ
男「二人は、いつも一緒にここに来てるんですか?」
老人「そりゃそうじゃよ。ここんとこの親御さんは忙しくてな。送り迎えはわしがしとる」
店主「そこの親と私が同級生でね。ま、ジジイは常連のよしみってやつさ。最初は私が送り迎えをしてたんだけど」
幼女「一人で来れるのに」
老人「いかん。子どもを一人で歩かせるのは危険じゃ」
幼女「もー。爺ちゃんずっと手離してくんないもん」
青年「なに、孫のようでかわいいのさ、君のことが」
老人「や、やめんか!!」
幼女「付き合うのは50年遅いよ」
老人「お前は早すぎじゃちびっ子!!」クワッ
男(ませてるなー……)
店主「はいよ、カツカレーお待ち」ゴトッ
男「あ、ありがとうございます。いただきます」モグ
少女「……ど、どう?」ソーッ
男「うん、おいしい!」
少女「……」チラッ
店主「あははっ、良かったじゃん」
少女「」コクリ
少女「良かったら作り方とか教えますけど。厨房の方に来てくれたら全然教えられますよ。
なんだったら野菜の切り方とかも、……あ、それと食後にコーヒーが合うんですよ。店主、オーダー追加で。あ、それとデザートもいいんですよ。
店主、しっとりチョコケーキ追加で。あ、それと」
男「い、いい!!いいから!!カツカレーだけで十分!!うん!!まだ授業あるし!!」
老人「授業?少年、学生じゃったのか?」
男「あ、はい……って言っても、ただのモラトリアムの延長でしかないですけど……」
老人「ほー、そうじゃったか。良い機会じゃ。やりたいことは今のうちじゃぞ」
男「その一環としての、この喫茶店です」
老人「……ふぉふぉふぉ。そうかそうか。それはいいことじゃ」
青年「うーん……」
店主「どうした?」
青年「いや、次の題材を考えていてね。何について書こうかと、それだけさ」
老人「なんじゃ、また懲りずに書くつもりか?」
青年「当たり前だ。これが僕の生き方であり、生きがいなんだ」
幼女「喫茶店で少女ちゃんを眺めること?」
青年「違うよ!!小説の方だよ!!話の流れでわかるだろ!?」
男「小説って、そんなに考えて題材が出てくるようなものなんですか?」
青年「それが出てこないんだ……」
男「素人で悪いですけど、爺さんが言ってたように、大事なのは経験なんじゃないかと」
青年「むっ!?」ピキーン
老人「そうじゃ、その通りじゃ。やはり君はいい奴じゃ!」
男「経験して感銘を受けたことなんかを基に書いてみたらどうです?」
青年「そ、そうか……なるほど……」
老人「だからお主の恋愛物語は中身がなくつまらんのじゃな」フォッフォ
青年「うるさいな!!放っておいてくれないか!?」
男「あ、じゃあ、俺はそろそろ大学に向かわないといけないので……。お金置いときますね」
店主「はいよー」
男「あ、講義が終わったらまた来てもいいですか?」
店主「もちろんさ。じゃ、またということで」
幼女「またねー!」
老人「こんなとこに来ても暇じゃぞ。ま、それがいいんじゃが」
青年「君が帰ってくるまでに作品を完成させてみせる!」
男「それはさすがに無理なんじゃ……。では」
カランコロンカラン
少女「……また来るんですよね?」
店主「ああ、そう言ってたよ」
老人「しかし、中々おもしろい少年だ。そうだろう?変わり者らよ」
幼女「変わり者じゃないよー!普通普通!」
老人「普通の人間はここには馴染めまい」
店主「ま、そうだろうよ。難しいジジイと生意気なガキ。うるさい小説家とキツイ私に暴走娘。
誰も近寄らないね、こんなとこ」
青年「はっはっは、言われてみればそうだね」
店主「笑い事じゃねえよ、ったく。商売あがったりだ」
少女「でも、あの人は普通みたい」
老人「ここに馴染める時点で変人じゃよ。実に居心地が良さそうじゃ、少年は」
青年「久しぶりに仲間が増えたみたいで、
嬉しいね、僕は」
幼女「『ドブみたいでした』とかおもしろいしね!!あはは!!」キャッキャッ
青年「それはもうやめてくれ!!」
老人「何年ぶりじゃ、常連が増えたのは」
青年「この中じゃ一番常連として後輩の僕が来るようになってから2年だね」
老人「もうそんなになるのか。あの頃のお主は異常だった」
青年「それは同感だ。僕は面倒なやつだったからね」
幼女「ほんとほんとー。どっよーんとした空気で、何も注文せずに話しかけてもぶっきらぼうで」
老人「はて、いつから話すようになったんじゃったか?」
店主「初めて声を聞いたのは、少女がコーヒーを持っていった時だったな」
幼女「ぷっ、くくっ!!憶えてる憶えてる!!『こんなところに薔薇が咲いていたなんて……』とか言ってたね確か!」
青年「うわああああああやめろおおおおお!!!」
店主「あははっ!!その頃から薔薇とか言ってたのかよ!!」
少女「……意味がわからなかった」
青年「いやあああああああああ!!!!!」
青年「い、今は僕の話じゃなくて彼の話だろう!?」
老人「ああそうじゃったそうじゃった。老人は話がすぐ逸れて長くなってしまうからの」
青年「爺さんが自らを卑下する時は何かの目論見があった時だと相場が決まってる」
老人「まさか。お主の昔話を引き出す誘導などしておらんよ」
青年「ほらね!!!!!」
老人「話を戻そう。少年はやはり変人じゃ。わしはそう思う」
幼女「なになに、爺ちゃん嫌いなの?」
老人「そういうことではない。ここはそういう場所なんじゃと言いたい」
店主「変人が集まる店ってか?」
老人「その通りじゃ」
店主「やめてくれよ」
老人「わしらはすでに固まりとして出来上がっておった。しかしじゃ、少年はそこになんの違和感もなく、スッと入り込んできたのじゃ」
店主「まあ……よおく考えてみりゃあんまりないことだね」
老人「そうじゃろうそうじゃろう」
幼女「なにがいいたいのー?」
老人「答えなどないよ。老人の長話じゃ。しかし、あえて言うなら……わしはあの少年が気に入った!」
店主「んだよ、そんなことかよジジイ。本当に長い話だな」
老人「ただの一興で、暇潰しじゃ。ここでの会話にそれ以外の何を求める?
経済を回復させる方法か?政治の話か?そんなものはここの外で十分すぎるくらい話し合われておるじゃろう」
店主「ああはいはい」
老人「流すな店主よ。お主はどうじゃ?」
店主「ん?」
老人「少年のことだ。気に入っておるのか?」
店主「気に入っ……まあ、礼儀正しいし、いい子だなとは思うよ」
老人「ほう。そこで提案なんじゃが、どうじゃ、婿に」
店主「あんたは私の父ちゃんか。余計なお世話だジジイ」
青年「でも確かに店主さん黙ってれば美人だよね。胸も大きいし」
店主「早く原稿書けよ。コーヒーこぼす場所が無いだろうが」
青年「えぇ!!やめてよ!!」
店主「それに、そういうのは……」ポンッ
少女「わっ」トトッ
店主「こいつの仕事だろ」
青年「ええぇ!?やめてよおおお!!」
幼女「うるさいなーもー」
少女「な、なんで私が……」
店主「少女さ、男のこと気になり始めてるだろ?」
少女「き、気になるって……ご飯たくさん食べてくれたし……」
店主「今は好きじゃないことくらい分かってるよ。ただ、それくらい認めたらどうだ?」
少女「うっ……」
少女「……目で追ってる。時は、ある」
店主「……だとよ」
老人「ふむむ……」
青年「ぬわあああ!!!よし次は飛び切りホラーでサスペンスなものにしよう!!そして多くの人を不幸に……」ブツブツ
幼女「えー、いやだよそんなのー。店ちゃーん、なんかおかしくなってるよ?」
店主「今ならさぞいい作品が書けそうだな」
青年「なんてね……ははは……実はもう次の題材は決まってるんだ……」
幼女「えっ?そうなのー?」
青年「ああ、彼の言葉でピンときてね。君たちにも相談しなければならないと思ってたところなんだ」
老人「む、どういうことじゃ?」
青年「特に店主さんと少女ちゃんなんだが、このお店のことを書いてもいいだろうか?」
店主「は、はぁ!?」
青年「頼むよ。真面目なお願いなんだ。僕が経験したことってなんだって振り返った時に、
まず一番最初に浮かんだのがここなんだ。ここのことを書いて、僕は本気で賞を狙いたい。
許してくれないだろうか?もちろん、実名なんかは使わないし、プライベートなことは書かない」
店主「……お、おいおいマジかよ。ここが本になるのか?」
青年「ははっ……賞を取れたらね」ズーン
老人「……売れない小説家よ。わしは良いと思うぞ。何より、お主の話で初めて読んでみたいと思った」
青年「じ、爺さん……!!ありがとう……」
幼女「とびきりセクシーなお姉さんで私を書いてくれるならいいよ!」
青年「それじゃ話変わってくるから!!」
店主「……ま、やってみりゃいいんじゃねえか?こんなとこで起こった話がおもしろいとは思えねえけど、
そこはあんたの手腕だろ?」
青年「ほ、本当かい!?ありがとう……がんばってみるよ」
店主「で、主役はもちろんカッコいい姉さん役(モデル私)なんだろうな?」
青年「主役はもちろんこの僕さ」
少女「えっ……」
幼女「え゛っ」
老人「それはいかん」
店主「やめとけよ……」
青年「な、なんでさ!?」
老人「お主、小説書いとるだけじゃろ」
店主「うるさいだけじゃねえか」
幼女「失恋しちゃってるし」
青年「失恋は関係ないだろ!!それに僕はまだ諦めてないからな!!」
老人「まあ……一度良いと言ってしまった以上、協力しようかのう」
店主「なんだかんだ口出してる内に主役を私にすり替えればいいんだし」
青年「えぇ!?」
幼女「私も協力してあげるよー、宿題より楽しそうだし」
青年「あ、ありがとう……とりあえず最初の部分を書いてみたんだけど……」
老人「ほう、読んでみい」
青年「新緑の候、ますます」
店主「ちょっと待て」
老人「お主迷走しすぎじゃろ」
あかんそれ手紙や
215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 17:32:12.92:bvg6Ml/20ーーーーーーー
ーーー
ー
男「……お、俺がいない間にそんなことが」
幼女「もう大変だったんだよー!人物設定をあーじゃないこーじゃないって!」
青年「君がセクシーなお姉さんって何度も言うからだろう!?」
男「あはは……」
店主「コーヒー飲むかい?」
男「あっ、お願いします」
老人「ところで早速物語を考えようじゃないか。わしが近所に出たマムシを退治した話なんかどうじゃ」
青年「何だいその話……」
幼女「じゃあ私がすごい天才になって、宿題なんかあっという間に終わらせる話!」
青年「言いたいことは多々あるけど、せめて宿題終わらせてから言っておくれよ」
店主「ほらよっ」コトッ
男「あ、どうも」
少女「……」ジーッ
店主「大学で講義があったんだっけ?」
男「ええ、はい」
店主「ふーん、なんの勉強?」
男「学部は経済ですけど、身についているのかどうか」
老人「身についておるよ」
男「えっ?そ、そうでしょうか?」
老人「勉強とはそういうもんじゃ。謙虚なほど、身についておる」
男「そ、そうなん……ですかね?」
老人「そうじゃ。特に君みたいな人間はの。とにかく、ここではあまり大学の話は聞きたく無い」
店主「なんでよ?」
老人「政治、経済と一緒じゃ。それを忘れたくて、ここに来とるんじゃろう?ならここで話すべきじゃない」
男「あ、そ、そうですね……」
店主「出たよ、気難しいね。ジジイ、久々なんじゃないか?」
老人「たわけが!!わしはいつでも変わっとらんよ。これがわしじゃ」
店主「あーあーそうかい」
店主「悪いね、なんか」
男「いえ、気になさらないで下さい。この話は終わりにしましょう。ね?」
店主「ああ、そうだね……」
青年「君、オレンジの字が違うじゃないか!これじゃ先生に怒られるよ!?オレンジはヂじゃなくてジだ!!」
幼女「この方がいいじゃん!」
青年「何故!?」
男「なんか、暖かい感じがするね」
幼女「だよね!ほらー。先生は間違ってるよ。窓の外からオレンジの光、より、窓の外からオレンヂの光、の方が絶対いいのに」
老人「子どもの感性とは、時に鋭く、大人を遠くへ置いていくもんじゃ。
売れない小説家よ、オレンヂの暖かさがわからんようじゃ賞は遠いぞ」
青年「そ、そんな無茶だよお!!」
男「あはは……」
少女「コーヒーのお代わりは」
男「あ、これ飲んだら今日は帰るから、遠慮しとこうかな。ありがとう」
幼女「えー、帰っちゃうの?晩御飯は?」
男「昨日の腐りかけの野菜で作ったシチューがまだ残ってて……」
少女「シチュー好きなんですか?」
男「ん?うん、まあ……簡単だし」
少女「明日もお昼ご飯食べにきます?」
男「あー……考えてなかったけど、せっかくだしそうさせてもらおうかな?」
少女「わかりました」ゴォォォ
店主「今から燃えてっと明日には燃え尽きるぞ……」
男「じゃ、じゃあ今日のところはこれで……」
店主「はいよ、お勘定ね」
男「はい……って、あれ?」
店主「ん?」
男「あ、あれ……?ない……ないぞ?」
店主「どうした?」
男「さ、財布落としちゃったみたいで……」
店主「おいおい……平気なのか?」
男「す、すみません!多分大学にあるので探してまた戻ってきますね!」
店主「別に後日でも」
男「探しちゃわないと不安ですし、ただでさえツケて貰ってるので今回は流石に……今日払わせてくれませんか?
営業時間内にはまた戻ってくるので」
店主「あははっ、そこまで言うならわかったよ。待ってる」
男「はい!では、いってきます!!」ガチャバタン
老人「ふぉっふぉっふぉ。我が家であるかのような飛び出し方じゃの。いってきますと言っとったぞ。あれもあれで面倒な少年じゃ」
店主「あはは、全くだ。律儀なのかどうだか……まぁ、待ってるかあ」
数時間後
店主「よっと」ガラララ
男「ハァ……ハァ……て、店主さん……す、すみません……」
店主「おっ、ギリギリセーフってやつだな。見つかったのか?」
男「はい……なんとか」
店主「……疲れたろう?中、入りなよ」
男「す、すみません……」
店主「いいからいいから。謝ってばっかだとこっちまで申し訳なくなるからさ」
男「そ、そうですね……ありがとうございます」
店主「……おう」ニカッ
店主「ささ、入った入った!」グイグイ
男「あ、わ、ちょっと!」フラフラ
店主「ふう……何飲む?」
男「じゃ、じゃあ麦茶を一杯」
店主「遠慮してんの?酒とかもあるけど」
男「いえ、俺酒はやらないんで……それに、走った後だから麦茶が一番なんです」
店主「そうかい。んじゃ、うんと冷たくしてあげるよ。氷たくさんいれてね」
男「助かります」
店主「ふう……」
男「ん、なんかいい匂いしません?」クンクン
店主「ああ、奥で少女が明日の仕込みしてんのさ。張り切ってたよ、少女のやつ」
男「そうなんですか……料理上手ですよね」
店主「家の手伝いよくしてたんだって」
男「なんかそのレベル超えてるような気がするんですが……」
店主「あははっ、私が散々鍛えたから」
男「あ、そうなんですか」
店主「基礎ができてたのさ。そりゃ上達もはやいわけだ」
店主「常連の中で、一番の古株って誰だと思う?」
男「えっ?……えーっと、爺さん、ですか?」
店主「ブッブー、外れ」
男「え!? じゃあ……青年さんは一番の後輩って言ってたから、幼女ちゃん?」
店主「それも外れ」
男「え? え?」
店主「あははっ。正解は、少女さ。あいつは、元々客だったんだ」
男「へぇー!そうなんですか……」
店主「まだこの店開いたばっかの頃だったかなあ……。朝店を開けるために行くと、扉の前に立ってんの。少女が。もうね、不気味だったよ」
男「ひ、一人でですか!?店が開く前から!?」
店主「そうそう。ははっ、こえーだろ?」
男「な、なんでそんな……」
店主「あー……駅前にある、結構賑わってる喫茶店知ってるか?」
男「ああ、はい。入ったことはないですけど……」
店主「あそこ、少女の実家なのさ」
男「えっ!?」
店主「コーヒーにこだわってるとかで、結構な固定客がついてる。立地条件もいいし、雰囲気も良い。
一歩踏み入れれば駅前の喧騒から一転、森の中の切り株に座ってるような静けささ。
一度だけ入ったことがあるけど、小鳥でも鳴いてんじゃねえかって、首を回したくらいさ」
男「すごいですね……」
店主「そこの親父……まあ、少女の父親なんだけど、本当にこだわる厳しい人でね。
少女の料理の技術とか、コーヒーの淹れ方に納得がいかなかったみたいでさ、少女を突き放しちゃったんだ。
跡を継ぎたいならどっかで修行してこいって。まだ俺が教えるレベルじゃねえって。無責任な話さ」
男「それで毎朝……」
店主「ま、お手軽なコーヒーを楽しむチェーン店が増えたからさ。喫茶店として構えてるような場所は、この街には少女の実家とここくらいしか無くてね。
ここに来るしか無かったんだと思うよ」
男「そうなんですか……」
店主「そんなもんだから、少女はコーヒーを人に褒められるのが嬉しくてね」
男「あっ……」
店主「父親に近づけたとか思うのかね。嬉しくてつい暴走しちゃうって、そんな裏話があんのさ」
男「へぇー……まだまだ俺、全然皆さんのこと知らないんですね」
店主「私だってそうさ。ジジイがヨーロッパ好きだなんて、ついこの前知ったばかりだよ」
男「……あっ」
店主「ん?……げっ」
少女「その話……しないでって言ったはず」
店主「あ、あはは……悪い。酒回っちゃってさ」
少女「まかない抜き」
店主「ちょ、それはどうなのよ!?」
少女「まかない抜き」
店主「ちょっとお!!」
男「仕込みは終わったの?」
少女「はい、終わりました」
男「明日のお昼、楽しみにしてるね」
少女「は、はいっ……」
店主「赤くなってら」
少女「店主、お酒も没収するよ?」
店主「冗談さ冗談。ははは……はぁ」
店主「まかない抜きなら自分で作るしかねえなあ……」
少女「こっちも冗談。もうできてるから、持ってくるね」
店主「あ、ホント?良かったぁーさすがだね」
少女「待ってて」
店主「はいよ」
店主「ふう……ああ見えてたまに気が強いんだよね……誰に似たんだか」
男(店主さんしかいないような……)
店主「……」ジトッ
男「あ、あはは……」
店主「なんか考えてることが聞こえてきたようなきがしたよ」
男「き、気のせいですよ、きっと!あはは!」
店主「男って、顔に出やすいんだよねえ」
男「えっ!? 初めて言われましたけど……」
店主「そうなの? 一番最初に来た日、私の胸しか見てなかったでしょ?
もうバレバレよ」
男「うわあああやめてください!!すみません!!すみません!!」
店主「あっはは!!冗談だよ冗談!!」バンバン
少女「……悪酔いしすぎ」
少女「はい、まかない」ゴトッ
店主「おー、カツ丼!いいね!」
男「……」ゴクリ
店主「いただきます!」
男「……あ、じゃ、じゃあ俺はそろそろ帰りますね。お茶ありがとうございました」
店主「ん、もう帰んの?」
男「あはは、まかない見たらお腹空いちゃって……。お金ここに置いときますね、お話もおもしろかったです」
店主「いいよいいよ。全部こっちが好きにやったことだからさ」
男「では……あの、また明日のお昼に」
店主「はいよー」
カランコロンカラン
店主「んっ……」モグモグ
店主「やっぱうまいねー」
少女「……店主」
店主「んー?」モグモグ
少女「……本当のこと教えて欲しいんだけど」
店主「」ピタッ
少女「……」
店主「……なんのことさ?」
少女「誤魔化すの下手だよね。私より、あの人のこと、気になってるんじゃない?」
店主「……」
店主「まさか。ないない、安心しなって。
周り見えなくなって、周りの女が皆ライバルみたいに見えちゃうのは分かるけどさ」
少女「じゃあなんであんな話したの?」
店主「……」
少女「私……ただ料理が上手にできるようになりたくて、ここで働かせて貰ってるだけなんだけど」
少女「お店の前で待ってたのは本当だけど……駅前の喫茶店は、店主の実家でしょ?
父親に認めてもらうために、このお店開いたんだよね?」
店主「……」
少女「お爺さんにあの人を婿にどうって言われた時も、焦って私を使ったよね。
自分の家庭の事情話すのも、怖くて私を使ったよね」
店主「……悪い。酔っててさ」
少女「謝ってほしくなんてないよ。本当のことを教えて欲しいだけ」
店主「……」
少女「"今は好きじゃないことくらいわかってるよ。ただ、それくらい認めたらどうだ?"」
店主「……ははっ……敵わないな。まだまだ子どものくせに」
少女「心は大人だよ。店主より」
店主「そうかい」
おお・・・
293:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 20:57:37.19:bvg6Ml/20店主「……はぁー……」グッタリ
店主「なんか疲れた。ははっ」
少女「マッサージならしてあげるよ」
店主「嫌だよ。少女のマッサージ、くすぐったいだけだし」
少女「……がんばってるもん」
店主「……」
少女「……」
店主「……ほんと、顔にでるんだよ、男」
少女「……」
店主「おいしい時は本当においしそうで、小説家の本読んだ時なんか見たか?心の底からつまらなそうだったろ」
少女「そのあと、ドブだもんね」
店主「なんか……羨ましいんだよな、そういうところが。私なんて、常に怒ったような顔してる親父を見て育ったからさ。
新鮮というか。……気になるんだよなぁ……」
少女「……そっか」
店主「……うん」
少女「好きになったらどうすんの?」
店主「ん……伝えない、と思う。うん」
少女「……どうして?」
店主「……男がこの店に求めてるのは、そういうんじゃないからさ。ほら、居心地、悪くなっちまうだろ?
どうしても……。私としては、店のことも、好きでいて欲しいからさ。
私が告白したら、きっともう、店に来ないよ、男は。どっちかなんだ。
だから、私は譲る気満々なんだけど?」ニヤッ
少女「なにそれ、ずるいよ」
店主「諦められるうちに諦めたいのさ。まだまだ全然、好きなんて感じじゃないからさ」
店主「いい顔をするやつさ、男は」
少女「……ふーん」
店主「少女は? 案外もう好きなんじゃないの?」ニヤニヤ
少女「さ、着替えて帰ろっと」
店主「おい!!」
大人やで
304:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:15:07.83:bvg6Ml/20少女「そんな話聞いたら、好きなんて言えるわけないでしょ。そういう意味でのずるい、だよ」
店主「あ、なるほどね」
少女「私も同意見だよ。お客さんが求めてることをするのが店員なら、私達は間違ったことしようとしてる」
店主「おー、店員の鏡だね」
少女「でも店員だってたまにミスするよね」
店主「どっちなのさ!?」
少女「とにかく、スッキリした。言わないのがむず痒かったから。そういうことだったんだね」
店主「そうさ。人の居場所を作るって、大変だよ。こういう店を開いて、初めて気づいた。
皆が居心地良いのと、私一人が気持ち良いの、どっちとるかなんて、一目瞭然だろ?」
少女「なんか、余裕がムカつく」
店主「大人になると余裕が出てくるもんなのさ」フフン
少女「ムカつく」
店主「」フフン
少女「ムカつく」
ーーーーーー
ーーー
ー
カランコロンカラン
男「どうも」
店主「お、来たか。ちょっときついお知らせがあるよ」
男「えっ!?な、なんですか!?来て早々!?」
店主「ま、テーブルの上見りゃわかるさ」
男「……ん?」
男(うわぁ……大量のシチューが待ち構えてる……)
店主「あっはは!その顔!だよな!昨日の夜もその前の日の夜もシチューって言ってたのに、
少女のやつ男がシチュー好きって言うもんだからさ」
男「が、がんばります……!」
青年「がんばりたまえ。僕は見ているだけだけどね」
男「はい……」
少女「どうぞ。お代わりは何杯でもあるので」
男「い、いただきまーす……」ハフッハフッ
男(……ん? う、うまっ!!)
男「お、おいしい!!おいしいですこれ!!」ハフッ!!ハフッ!!
店主「昨日の仕込み、これだからな」
少女「冷まして熱してを繰り返してたから、味はよく染み込んでるはず」
男「お代わりお願いします」
青年「はやっ!!」
カランコロンカラン
老人「なんじゃ、騒がしい」
幼女「やっと着いたー……外雨降ってるよー」
ハフッ!!ハフッ!!
317:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:34:26.08:bvg6Ml/20青年「おっ、全員揃ったね!!」
老人「なんじゃ?何かあるんか?」
青年「聞いて驚かないでくれたまえ!!なんと……!」
幼女「あー!!宿題までびしょ濡れー!!」
青年「……~なのだ!!ってちょっと!!」
老人「ん?耳が遠くて聞こえんわい」
青年「耳の遠さ関係ないよね今の!!ちょっと!!僕が重大な発表をしようとしている時に」
幼女「なにー?うるさいなぁーもう」
男「お代わり」スッ
店主「ろ、6杯目……」ワナワナ
少女「はい」ニコニコ
青年「そこ!!食べるのやめて!!」
店主「はいはい。んで、何よ?」
青年「はぁー……はぁ……苦労した」
幼女「はやくしてよー」
青年「うるさいな!!ちょっと待ってくれ!!」
老人「んー?耳が遠くて」
青年「まだ何も言ってないから!!というか聞こえてるでしょ!?絶対!!」
青年「……ふうー。実は……このお店を題材にした小説のタイトルが決まりましたあ!!」
店主「へー」
男「おぉぉ代わりぃぃぃ!!」ズバッ
少女「はい」ニコニコ
青年「ちょっともう!!!!」
青年「もういいよもう……もう……」
老人「仕方が無いのう……で、どんなタイトルなんじゃ?」
幼女「薔薇を得た魚ー?」
青年「違うよ!!」
青年「各自これを見てくれ……一応物語も書き上げたから。まだまだ推敲するところだらけだけどね……」バサッ
老人「お主、書くのだけは早いんじゃな」
青年「それが、自分でも驚くぐらい筆が進んじゃって。ははは……やっぱり経験していることだからかな?
君のアドバイスを聞いて良かったよ」
男「そんな、滅相もないです……。オレンヂの日、ですか。すごく良いタイトルだと思いますよ」
青年「そ、そうかい!?そう思うかい!?」
老人「ほぉぉ……どんなふざけたタイトルかと思っんじゃが、中々この店にもあっておる」
男「俺もそう思います」
幼女「やったー!私のが採用されてるー!」
wktk
330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 21:54:39.84:bvg6Ml/20青年「よ、読んでみてくれるかい?初披露なんだ……」ドキドキ
老人「ふむ」
店主「ああ」
幼女「少女ちゃん、一緒に読もー?」
少女「うん」
男「……」
青年「……」ドキドキ
老人「……」
店主「……」
幼女「……」
少女「……」
男「……」
青年「ちょ、ちょっと!!なんとか言っておくれよ!!僕の心臓が破裂しちゃうよ!!」バクバク
男「良い……」
青年「えっ!?」バックンバックン
老人「ふ、ふむ……」
店主「これ……盗作とかじゃないよな?」
青年「そんなわけないでしょ!!正真正銘僕の経験さ!!というか内容に身に覚えあるでしょ!?」
少女「経験だけ話して他の誰かに書いて貰ったとか……?」
青年「泣くよ!?少女ちゃんまでそんなこと言うなら僕は泣くよ!?」
店主「いや……驚いた」
青年「えっ!?」
男「これ……おもしろいですよ」
青年「ほ、本当かい!?」
老人「いや分からんぞ……身内だからこそそう感じるのかも……しかし……むむむ」
店主「応募する価値は、十分にあると思うけどな、私は」
青年「ぃや、やったああああああああ!!!!!」
老人「しかし、まだガタガタのところがあるような気もするのう」
青年「あ、ああ!!推敲の余地は無限にあると思ってるけど、とりあえず良かったよ!!」
青年「稚拙な表現は君たちの力を貸して貰えないだろうか!?」
男「確かに……まだ魚と薔薇がチラついてますね」
老人「なに、これだけおるのじゃ。なんとかなるじゃろ!」
青年「ありがとう!!ありがとう!!いやー!!今日はいい日だ!!まるでオレンヂの日だ!!あっはっは!!」
幼女「うるさいよー」
店主「まあ、今だけは喜ばしといてやんな」
青年「やったー!!君、僕もそのシチュー貰ってもいいかな!?
実はさっきまで緊張して喉に何も通らなくてね!!腹ペコなんだ!!」
男「えっ、嫌ですけど」
青年「え゛っ!?」ガビーン
男「俺の食べさしじゃ勿体無いですよ」
青年「ど、どういうことだい!?」
男「一番新参の俺が言うのも生意気かもしれませんけど、皆で祝福しませんか?青年さんを」
老人「ほう、そりゃいいの」
幼女「え!?パーティ!?」
青年「い、いいのかい?少し気のはやいような……」
老人「いいんじゃよ。今を楽しめ。これも経験じゃ」
店主「……よーしっ!そうと決まれば、今日は私の奢り……」
青年「やったああああああ!!!」
店主「と見せかけてそれぞれの自腹だあああ!!」
青年「えええええっ!?」
ーーーーーーーー
ーーー
ー
数ヶ月後
青年「ま、あ、がっ……はぁ……はぁー……」バックンバックン
老人「お、落ち着け、やればできる小説家よ。お主はやればできるのじゃ!き、きっと大丈夫!」
青年「は、はっ……うぐっ……」
店主「まあ、無理もないよな……今日が賞の発表日、すなわち小説家にとっちゃ人生の別れ道なんだ」
男「は、発表は何時頃なんですか……?」
青年「も、もうす、もうすぐ、もうすっ」バックンバックン
幼女「なんか緊張してきたー!」
少女「わ、私も……」
prrrrrrrrr prrrrrrrrr
老人「き、きたかっ!?」
店主「……」ゴ、ゴクリ
男「は、はやく取らないと!!」
青年「あ、ああ!!」
青年「……も、もしもし!?」
青年「……は、はい……はい……。はい…………はい、はい……はい……はい、では……」
青年「…………」ガチャン
老人「ど、どうじゃ!?」
青年「ふ、副賞……賞金200万だって……」ポロポロ
老人「ようやった!!!!!!!!よくやった!!!!!!!!!」
幼女「やったああああああああああ!!!!!!!!!」
おお
356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:36:05.26:2Ag51UEZ0
やったな
362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:37:41.78:0CrnhM4X0
ようやった!!青年おめでとう!!
たっけぇ!!!
368:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 22:45:39.58:bvg6Ml/20たっけぇ!!!
老人「どうなるんじゃ!?どうなるんじゃ!?もうお主、プロの作家なのか!?」
青年「わからない……なんかもうなにがなんだか……夢をみてるみたいだ……」
老人「おおう!ありがちな比喩表現じゃ!それこそがお主じゃぞ!!」
青年「とにかく……とにかく……やったあああああああ!!!!」バンザーイ
幼女「やったあああああああ!!!」バンザーイ
店主「あっはっはっは!!あっはっはっは!!」バンザイ
少女「ふふっ」ニコニコバンザイ
男「良かったですね!!良かったあああああ!!」
老人「うおおおおおおおお!!!」バンザーイ
ーーーーーーーー
ーーーーー
ー
後日・喫茶店
青年「助けて下さいよお!!」
老人「知らん。知らん」
青年「賞とっても次の作品が勝手に完成しないんですよお!!」
老人「こんな時だけ敬語になるな」
青年「このままだと一発屋ですよお!!!あだ名は三木道三ですよお!!!」
老人「知るか。一発屋の小説家よ、経験しとらんお主が悪い」
青年「お願いですってえええ!!!」
老人「知らんと言っとろうが!!」
店主「それにしたって……客の一つも増えやしないね」
男「あはは……まあ、実名出してませんしね……」
少女「その方がいいです。忙しすぎるのは、あまり好きじゃないですし」
幼女「私もー。宿題する場所無くなるし」
それでこそ青年
380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:02:08.16:bvg6Ml/20青年「まただ……また売れない小説家だ……」
老人「絞り出さんか。お主はやればできる時代もあったのじゃ」
青年「僕の人生小説一冊分で終わらせてなるものか……乾いた雑巾を絞って出た埃で物語を書き上げてやるうううう!!!」
店主「新たに経験を積むって考えはないのかよ」
青年「ここから出たくない!!この喫茶店から!!」
店主「はぁ……」グッタリ
幼女「仕方ないよー、あの一冊が奇跡だったんだって!次はないって!ね?」ポンッ
青年「全然慰めになってないよ!!!!むしろ落とし入れてるよ!!!!」
青年「というかこんな子どもに慰められる僕って……」
幼女「むー、オレンヂって案出したの私だよー?」
青年「ははぁー!」ズサーッ
店主「あははっ!ま、いいじゃねえか。変わらないってのは、この店にとっちゃいいことさ」
青年「はぁー……」ドンヨリ
男「でも俺は一番好きですよ。今までで読んだ本の中で、このオレンヂの日が。
こうしていっつも鞄の中にいれてあるんです」ポスッ
青年「ありがとおおお!!!サインするよ!!」
男「いや、もう4つもしてもらってるんですけど……」
青年「構わないさ!!何重にも書き重ねようじゃないか!!」
老人「ま、まあ……わしも……その。
読んでないことも、ゴホンっ!……ない」
青年「爺さあああんっ!!!」
店主「この店の本棚もそれで埋まってるしな」ニカッ
幼女「私も、読書感想文その本で書いたよー」
少女「私も、疲れた時に読んでますよ」
青年「皆……皆、ありがとう……そうだね。そういう人が居てくれるのは、僕の誇りだよ」
老人「書いて残ったものも埃じゃがな」ドッ
青年「おいいいいいい!!!」
カランコロンカラン
青年「なんだこんな時に!!誰だい!?」
親父「……」
店主「あっ……」
少女「えっ……?」
男「ん?」
老人「誰じゃ……?」
幼女「おじさん誰ー?」
男(あ、もしかして少女ちゃんの……?)
店主「……私の父親だ」
男「えっ!?」
少女「ど、どうして?」
男(ん? んっ?)
店主「私が、本を送ったんだ。自分でな」
青年「え?ぼ、僕の本を……?」
店主「ああ……」
老人「……何かわけがあるのじゃろう。わしらは席を外すべきかな?」
親父「いえ、おかまいなく。どうかそのままで」
老人「……ふむ」
親父「……」
店主「……」
男(な、なんだこの重い空気は……)
店主「店……場所、知ってたんだな」
親父「当たり前だ。娘の居場所を知らない父親がどこにいる」
店主「っ……」
親父「……話題になっていた」
老人「話題?」
店主「……」
親父「同じ客しか来ず、開いている意味のない店だという話をよく聞く。まるで売る気のない店だと」
店主「……」
店主「その通りだよ」
親父「……ふむ」
店主「うちは、常連さんを大切にする店さ。それをポリシーにやってる。
気に入ってくれた人だけ来てくれればいい。誰かを拒んだりもしてないはずなんだけどね。
どうも新規のお客さんが来てくれない」
老人「じゃからそれは、外から中が見えないからじゃ。わしらは皆受け入れておる」
親父「……本を読んだ」
青年「」ビクッ
親父「……素晴らしかった」
店主「えっ?」
親父「ここの名前はでていないが、お前が送ってきたということは、そういうことなのだろう?」
店主「あ、ああ……あれは、この店のことだ」
親父「……素晴らしいと思ったよ。素直に」
青年「あ、ありがとうございます」
親父「……一言だけ言おう」
男「……」ゴクリ
親父「お父さん寂しい」ポロポロ
店主「はっ!?あ!?はぁぁっ!?」
なんだこの親父www
397:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:38:01.08:KZgzl2tC0
親父ワロタwww
402:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:45:47.49:bvg6Ml/20店主「えっ!?お、おい!?」
親父「いけねっ……歳とって涙もろくなっちまったんだよ」フキフキ
店主「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待て!!な、なんだ!?なんなんだ!?」
親父「あのなぁ、お前なぁ、よそで修行してこいっつって本当に他所行く娘がどこにいるんだよぉ!!
お父さん悪いよ!?全部お父さんが悪い!!うん!!でも寂しいだろうがよぉぉぉ!!!」
店主「まてまてまてまて!!!お、お前親父の偽物か!?」
親父「あああああ!!ついに娘が俺の顔を忘れちまってるううう!!!あああ!!!」
店主「いや、いやいや!!覚えてる!!覚えてるよ!!!」
男(え、なにこれ……)
親父「お前なぁ!!!何この店!!お父さんの後継ぎ一切無視してすごいいい店作ってるじゃん!!!
たまんねえ!!たまんねえよ俺ぁ!!!」
店主「お、おう……いや……えっ?」
親父「嬉しいのに悲しいよお前!!どうすりゃいいんだよ!!どんな気持ちでここ来たと思ってんだよぉ!!」
店主「し、知るかよ!!」
親父「泣き笑いながらだよおおお!!!職質2回も受けたぞ!!!」
店主「ま、まじかよ!?」
おいww
410:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:50:35.02:lfLnBI3e0
おっさんwwwww
412:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/21(火) 23:54:22.36:bvg6Ml/20親父「他所で働いてこいって言ったら『ここでがんばるから、一生懸命やるから教えて下さい!』みたいになると思ったんだよおおお!!」
親父「お前、店開くなよおおお!!!」
店主「えぇぇっ!?」
親父「全部……全部シャイな俺が悪かったんだ……ごめんな、ごめんなぁぁ」ポロポロ
店主「な、泣くなって!!っつうかシャイどころか鬼だったぞ!?」
親父「お前があんまり可愛いもんだからつい意地悪したくなって……」
店主「はぁぁぁ!?」
親父「ごめん!!ほんとごめん!!でももうお父さん歳とったから!!自分に素直になれるようになったから!!
後はキッカケだけだったんだから!!そんな時に本が送られて来て何これイェーイ行くしかね~っしょ!!って感じだったんだから!!」
店主「訳わかんねえ……」
少女「私が一番訳わかりませんよ……」
男(あ、俺も……)
店主「な、なんか……もう……全部、訳わかんねえ……」グッタリ
男「だ、大丈夫ですか!?」
店主「少女……胃薬頼む。
……ったくどれだけ私が気を張ってたか……今日は来るかも、今日こそ来るかもと毎日毎日……」
親父「すまない」
男(厳格な感じに戻ってる!?)
親父「しかし、ここのお店の噂は閉塞的なことだけでな、味の文句なんかは一つも聞かなかったよ。
だから俺は心の中で『入る勇気無くて愚痴ってるだけじゃねーかバーカ』と思っていたぞ」
店主「それもどうだよ……というか私店開いてから一度だけ親父の店行ったことあんだけど……」
親父「知ってる……厨房に隠れてた」
店主「なにしてんだよ!!」
親父「急に娘が来たから」
店主「いやいやいやいや!!……はぁ、もう怒る気力も残ってねえよ……」
親父wwwwwwwwwwwwwwww
421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:07:28.07:ZKAdLhwY0老人「親子の絆に水を指すようで悪いんじゃが」
店主「なにが絆だジジイ!!」
老人「お主が親御さんをここに連れて来た目的とはなんだったのじゃ?」
親父「ご老人、とても良い質問です。私も気になってました」
店主「知らずに来たのかよ!!」
店主「はぁ……私は、今となっちゃ恥ずかしいけどよ、親父に認められたくてこの店開いたんだよ」
親父「うっ……」ポロポロ
幼女「おじちゃん泣くの早いよー」
店主「でさ、こんな良い本を書いてくれてさ」
青年「うっ……」ポロポロ
少女(あっ、めんどくさいな)
少女ちゃん酷いっす
424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:17:31.94:ZKAdLhwY0店主「やっと親父にこの店に来てもらっても大丈夫だってくらい、ここに自信を持てたんだよ。
これ以上の店は、私じゃ作れねえぞってとこまでな。だから、本を送ったんだ。
見に来てくれって意味でな」
親父「娘ぇ……」ボロボロ
店主「あー、もう、んだよ全くよお」
親父「お前、立派に育ってくれたなあ…….ありがとよぉ……こんなお父さんなのに……」
店主「自覚はあるんだな。まだ救われたよ」
親父「確かに俺の店を継いで貰えないのは悲しいけど、お前が丹精こめて、必死になって作り上げた店だ……。
それがどれくらい大切かってのは、俺が一番よく理解してやれる。
時に自分を犠牲にしてまで店を守らなくちゃいけねえ時だってあるんだ」
店主「……」
親父「だから俺は、お前を誇りに思うよ。こんな立派な店を作り上げたお前を」
店主「……ああ、そうかい。嬉しいよ。こんな親父だけど、目標には、変わりねえからさ」
親父「……良い子だぁ……あああ……あれうちの娘なんですうう……」ボロボロ
男「え!?いや、知ってます!!」
親父「はぁー……お父さん泣き疲れたよ」
店主「私はもっと疲れたよ……」
親父「そうだ、俺の店でここを宣伝してもいいか?」
店主「ん、あー……どうすっかな。皆はどう思う?
親父の店、繁盛してるから、新規のお客さんは増えると思んだけど」
老人「ぜひお願いするべきじゃ!……と、言いたいところじゃけど、これはお主に任せるよ。
店のことでもあるが、親子のことでもあるからの」
幼女「うん、私も爺ちゃんとおんなじ」
青年「僕も同じかな」
男「俺もです」
少女「私も、料理さえ作れれば」
店主「そっか……んじゃ、遠慮するよ。隠れ家って響きが好きでさ、見つけた人だけ楽しんでって方が、性に合ってるんだ」
親父「そうか……そうだな。それがポリシーだもんな。わかったよ。ただ、俺はここの常連になるけどね」
店主「えっ」
うわおやじめんどくさかわいい
436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:30:10.43:9LiSaPps0
オヤジwwwwww
439:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:37:15.79:ZKAdLhwY0ーーーーーーーー
ーーーー
ー
後日・喫茶店
少女「男くん、今度の日曜だけど……」
男「うん、ちゃんと空けてあるよ。誘ってくれてありがとう。
女の子とデートなんて初めてすぎて、なにをどうしていいやら……」
少女「私も。飛びきりのお弁当作るから」
男「期待してるよ。って言っても、おいしいことはわかりきってるけど」
老人「じゃから!そこは段落を変えてじゃな!博之の心情を……」
青年「いや!!ここは曲げない!!小説家としてのポリシーだ!!」
老人「聞き分けならんやつじゃな!!」
青年「そっちこそ!!」
店主「おーい、宿題進んでるか?」
幼女「んー、おじちゃん中々教えるのうまいよー」
親父「ずっと娘に宿題教える妄想してたからな!!はっはっは!!」
店主「ったくよぉ……ま、騒がしくても平和でいいけどよ……」
いつまでも変わらず、このままの形で喫茶店は続く。
……オレンヂの日を繰り返しながら。
終わり
>>1お疲れー!!!!!
443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:38:14.88:ZKAdLhwY0
かなり疲れた……保守と支援に感謝してる
ありがとうございました
444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:38:18.54:xwSsSuFL0ありがとうございました
面白かったよー
おつ
447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:38:54.03:QeNwSvtN0おつ
お疲れ様
453:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:40:09.53:ndH7/qtd0
こういうのもいいもんだな
458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:43:29.67:iS17hGE70
楽しい時間を過ごせた!
後日談とか、書いてくれてもいいのよ?
459:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:43:33.43:5hbPdwK10後日談とか、書いてくれてもいいのよ?
乙
こんな感じの話は大好きだ
460:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:43:33.87:BhWc5ivu0こんな感じの話は大好きだ
乙
久しぶりに面白いオリジナルだったよ
463:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:44:24.77:AphKN+f4O久しぶりに面白いオリジナルだったよ
乙!
すごくよかった
465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:46:57.46:br1h8DRK0すごくよかった
乙
気に入った
476:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 00:56:26.82:YFCaY/ZO0気に入った
乙!いいSSが見れた!
489:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 01:16:48.50:+ya7f9qlO
久し振りに良いものを見た喫茶店行きたくなった
490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 01:18:42.52:LAr8OEPMI
乙!
無粋かもしれないけど、続編希望
491:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 01:22:38.81:IlWnPLl90無粋かもしれないけど、続編希望
めっちゃ面白かった!
喫茶店行こう
511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 04:07:58.32:ZKAdLhwY0喫茶店行こう
512:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 04:14:05.72:xx1LGuBL0
同じ人だったのか
514:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 04:53:07.43:gVl5vuqT0
乙
楽しかった
526:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/02/22(水) 07:39:53.66:TvJwUgrb0楽しかった
乙
店主と男は進展なしかぁ
533: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/02/22(水) 09:32:09.51:gJWdUCXV0店主と男は進展なしかぁ
女面接官の人だったのか
コメント 6
コメント一覧 (6)
途中まで呼んでたから気になってたんだよなあ
こういう喫茶店憧れるの分かるわ…
ベストや
何度も読ませていただいています。
続編希望!