モニター「チュドーン」
妹「あら、GAMEOVERになってしまいました」
兄「いきなり部屋に入ってくるなりなにを言い出すのかね、チミは」
妹「変、でしょうか。私の母と兄さんの父が惹かれ合ったということは」
兄「今はいいけど、二人の前でだけはそういう言い方すんなよ。父さんも養母さんも再婚に引け目感じてんだから」
妹「あ、……はい、気をつけます」
兄「んにゃ、話の腰を折って悪かった。それで、本題は?」
妹「はい、いずれ兄さんの精子と私の卵子が」
兄「せめて遺伝子って言って欲しいな」
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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:19:43.33:/qmAIZJi0
妹「あ、はい。それが強く惹かれ合うこともあり得るのではと」
兄「……危ない妄想を目ぇ輝かせながら口にしないように」
妹「ですけど、私にとって兄さんが血の繋がらない異性であるという現実は変わらないわけで」
兄「それがなんだ、俺に襲われることを心配してるってか?」
妹「いえ、その、期待しているんですけれど」ポ
兄「」
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:22:07.23:/qmAIZJi0
妹「兄さんは頭が固いので、どうやって攻め落とそうかと考えあぐねているのです」
兄(本人の前でそれを言うとか、おちょくっとるのかこいつは。……ん、いやまてよ)
兄「――ああ、そうか、そういうことか。わかった」
妹「あら、物分かりのよい。でしたら契約書に拇印を――」
兄「すっかり忘れてたぜ、おまえ演劇部だったもんな。つまりこれは役柄かなんかの練習だ。な、そうなんだろ?」
妹「近々芸祭があるのは事実ですが、別にそれとは関係ありませんよ」プゥ
兄「……あのさぁ妹。おまえ、自分で言っていることをちゃんと理解してるのか?」
妹「はい、兄さんに男性的魅力を感じることがちょくちょくあるので、試しに期間限定でお付き合いしてみてはどうかと」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:25:51.45:/qmAIZJi0
兄「付き合うだ? おまえの容姿だったら」
妹「性格は……?」ウル
兄「はいはい、性格もー。はともかく、男なんて選り取り見取りだろ」
妹「はぁ、まあ打てば響くでしょうね」
兄(嫌な言い回しだ)
兄「だったらそうすりゃいいだろ。俺より格好いいやつなんざごまんといるぞ」
妹「兄さんは私に他の殿方とお付き合いしろと、そう仰るのですか」
兄「そうは言ってない、俺に固執する理由がわからんと言っているんだよ」
妹「それは、身近にいて間違いを犯しそうにない相手だと信じれるからこそ、お願いしてるんじゃないですか」
兄「……ちょっと待ちやがってくださいね。おまえ、さっきは期待しているかどうとか」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:29:25.98:/qmAIZJi0
兄「……ちょっと待ってね。おまえ、さっきは期待しているかどうとか」
妹「あ、そうでしたね。では、さっきのは撤回します。失言したのはまことに遺憾です。はい、これでいいですか」
兄(なんという棒読み。しかもそれ謝ってねえし)
兄「そもそもの根本的な問題として、兄妹は付き合えないわけだが」
妹「その点はご安心ください」
兄「ほぅ、安心の根拠があると」
妹「しかと」
兄「では、一行で述べよ」
妹「既成事実に勝る物はなし」
兄「」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:32:20.90:/qmAIZJi0
妹「例外として、私の想いが儚い幻想に過ぎなかった場合には話も変わってきますけれど」
兄「幻想だ?」
妹「つまり、兄さんが箸にも棒にもかからぬ俗物であるとわかればちゃんと関係を終わらせますので」
兄「……んだと?」カチン
妹「私に釣り合う自信がないのでしたら、この話はなかったことにしていただいても構いません」
兄「一方的に要求してくるワリにずいぶんと高飛車な物言いじゃねえか」
妹「怒られることは初めから覚悟の上です。返答のほどは?」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:38:48.66:/qmAIZJi0
兄「はっきり言うが、気が乗らんな」
妹「兄さんに私の頼みは断れません。要求が無茶でなく、且つ私が兄さんを信じている以上は」
兄(……さっきなくてもいいっていったばかりじゃないか)
兄「……期限は?」
妹「そうですね。では」チラ
カレンダー「今日は11月25日なんだZE」
妹「明日から、ちょうど一カ月間ではどうでしょうか」
兄「……もうひとつ確認しておく。俺がおまえに愛想を尽かした場合はどうする?」
妹「そうさせないよう努力はするつもりですけど」
兄「万が一ってこともあるだろ」
妹「そうですね、交際相手としてそぐわないのであれば、どうぞ私をこっぴどく振ってください」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:44:25.10:/qmAIZJi0
兄部屋
兄「ったく、なんなんだあいつ。昔はもうちょい可愛げあったのに」バッタン
兄(最近は態度も素っ気ないしな、まあ昔みたく四六時中くっつかれても困るけど)
兄(気まぐれの暇潰しにしちゃあかなり悪質だよな)
兄(結局押し切られて了承しちまったが、冷静に考えてみれば問題だらけだ)
兄(ぶっちゃけ、才色兼備のあいつに釣り合うほどの自信はねえし)
兄(それに、世間体っていうのもある。状況だけ見てばどこのエロゲだよって感じだな)
兄(……大体、あいつもあいつだ。兄に襲われることを期待してる妹なんてありえねえだろ)
兄(あいつは俺にとって大切な家族。それ以上でもそれ以下でもない)
兄(そうだ、遊びで付き合ったところでその関係は揺らがない)
兄(ここは敢えて挑発に乗った振りを続けて、タイミングを見て突き放そう)
兄(いや、そうしなけりゃな。わざと失望させてでも)
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:47:35.35:/qmAIZJi0
妹部屋
妹「ふぅ、まず第一段階はクリアですね」パタン
妹(色仕掛けという手もないではないですけど、切り札は奥の手に取って置きましょう)
妹(成功したとして私が痴女に思われるのは、本意ではありませんからね)
妹(あとは、兄さんが私を異性として見るのに相応しい場に連れ出せば……)
妹(さて、何が出るかな、何が出るかな)ゴソゴソ
タンス「ぬぅん」
妹「ダダーン、今日の兄さんの下着は、羊さんのトランクスー」メェー
妹(……ブリーフもないのか、今度それとなく探りを入れてみましょう)
妹『兄さん、ブルースリーとブリーフってちょっと似てますよね。ところでブリーフ持ってないですか』
妹(……ふふ、我ながら完璧すぎますね)
妹(スーハー、スーハー、……うぅ、グゥレイト! 兄さんの香り、お天道様の香り!)
妹「明日から兄さんと恋人同士。うぅ、今日は興奮して寝つけそうにありません」ゴロゴロ
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 08:54:34.94:/qmAIZJi0
翌朝
義母「はいあなた、アーン」
父「やだなあ、母さん。子供たちの見ている前で――」デレデレ
妹「はい兄さん、アーン」
兄「……ぱく」
父&義母「」
妹「どう、美味しい?」
兄「まあ、うまいよ」
妹「よかった! 腕によりをかけて作ったんですよ。さあ、今度は卵焼き行っちゃいましょうか」
兄「まてまて、おまえのが全然減ってないだろ」
妹「ああ、それは盲点でした。では、兄さんが私に食べさせましょう。これで全て解決」
兄「そうだね、100%遅刻することを除けばね」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:03:48.07:/qmAIZJi0
父「お、おまえたち。一体なにをしてるんだい?」オズオズ
妹「何って、パパとママが普段していることをやっているだけですよ?」
父「そ、それはそうだろうが、私たちは仲睦まじい夫婦でおまえたちは」
兄(自分たちにふざけた形容詞つけんな、この色ボケ親父)
妹「今だけ期間限定の恋人なんですよ。ねー?」デレデレ
義母「そ、それ本当なの? 兄くん」
兄「はぁ、まぁ。なんだか、そういうことみたいですね」
妹「なんですか兄さん、その態度は。そんなおざなりな演技では主役を張れませんよ」プンプン
兄「主役て、演劇部になった覚えはねえ」
兄(ここまで徹底してやるとは思ってなかったが。完璧主義って怖い)
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:07:37.59:/qmAIZJi0
妹「じゃあ、行ってきます。さぁ、兄さんも急いで」
兄「……んじゃ、行ってきます」
義母「え、ええ。……二人とも気をつけてね――あ」バタン
父「……さっきのは、なんだったんだろうな」
義母「二人になにかあったのかしら。あ、あなた、ネクタイが曲がってるわよ」スス
父「おお、済まんな母さん。うん、まだなにもないと思いたいところだが」
義母「まさかあの年で肉体関係を持っていたり、しないわよね」
父「さすがにそれはないだろう。なんとなく、ぎこちなさが拭えなかったようだし」
義母「それなら、いいんだけど。はい、これ、今日のお弁当よ」
父「ああ、ありがとう」
父(やれやれ、今日も会社の連中に羨ましがられてしまうな)デレデレ
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:26:48.38:/qmAIZJi0
義母「さておき、少し不安ね。二人とも年頃だし、間違いが起きないとも限らないんじゃ」
父「とはいえ、まだ特定の相手もいないようだからな。恋人ごっこをしたくなったってところじゃないのか?」
義母「でも、妙なことにならないかしら。妹ちゃん、小さい頃から兄くんにぺったりだったから」
父「それくらいは弁えているだろう。子供の倫理観を信じるのも親の役目だ」
義母「そうよね、他でもない私たちの子供だもの。取り越し苦労よね」
父「そうとも。――それじゃあ、行ってくるよ」
義母「はい、行ってらっしゃい。私が寂しくなって泣かないように早く帰ってきてね。――チュ」
父「チュ。ははは、まいったなぁ」デレデレ
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:45:58.50:/qmAIZJi0
妹「ふふ、兄さんの手、温かいです」
兄「外が相対的に寒いだけっすなぁ」
妹「もぅ、そんなこと言って。少しくらいムードというものを考えてくれてもいいじゃないですか」
兄「通学中にんなことを考えるカップルは世界中のどこにもいるめえよ」
妹「そんなことないですよ。駅中でやり合ってる人とかいるじゃないですか」
兄「そういう恥知らずな関係になるのは断固として拒否する」
妹「同意です。が、私と兄さんの絆の深さを見せつけてやるのはやぶさかじゃありませんよ」
兄「誰にだ、そもそもなんのために」
自転車「チリンチリーン」
兄(おっと、自転車か)
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:51:43.80:/qmAIZJi0
自転車男「――おらおらー、どいたどいたー」
自転車男(朝っぱらから手繋いでンじゃねぇ、ジャリガキ共!)
兄「おい妹、手を――お」ギュン
妹「たぁっ!」グイ
自転車通勤「な、なにィ!? ――ぐほぁ!」ズガン
兄(ちょ、ちょお! ラリアットとかマジ危険)
妹「兄さんとの繋がりを断とうなんて、とんだ甘ちゃんでしたね」フフン
自転車男「…………」ピクピク
兄(し、死んでないだろうな)
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:55:01.47:/qmAIZJi0
妹「さてと兄さん、なんの話でしたっけ」
兄「ああ、だからいちいち見せつける意味があるのかって」
妹「それは、関係を公認にする――」
兄「話が違うだろ、あくまで期間限定という話だったはずだ」
妹「もちろんもちろん。でも、期間限定であっても恋人のように振る舞ってくれないと」
兄「バカ言え、付き合い始めのカップルなんてのは大概ぎこちないもんだろ」
妹「……あぁ、言われてみればそうかも知れませ――と、開かずの踏切が」カンカン
兄「この時間じゃあ締まると五分は待ちぼうけコースだな。とっとと渡り切るぞ」
妹「わっととっ! い、いきなり手を引っ張らないでください」
兄「急がないと電車が来ちまうだろ。ほら、引っ張られてるだけじゃなくておまえも足を動かせって」
妹「わ、わかりましたから。い、痛ぃ、兄さん。あ、もっと、優しく……」
兄「……朝っぱらからけったいな声出すなよ」タッタッタ
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 09:56:49.76:/qmAIZJi0
妹「ちょっと、ちょっと兄さん」
兄「はい、なにか」
妹「なにか、じゃありませんよ。学校に入るなり手を放すなんてひどいじゃないですか」
兄「妥当な処置だ。どこの校則だって不純異性行為は禁じられてるだろ」
妹「なっ、私と兄さんの関係のどこか不純だと――モガ!?」
兄「バ、バカ、声が大きいってえの」
先輩「あら、おはよう兄くん。今日は早いのね」
兄「あ、先輩。お、おはようございます」
妹「むーむー!」ジタバタ
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:03:30.17:/qmAIZJi0
妹(……あ、ピーンと来ました)
妹「ペロリ」
兄「うぉ!」ビクン
妹「ふぅ、ひどいじゃないですか兄さん」
兄(な、舐められただと)
妹(ほんのり兄塩)
先輩(仲のいい兄妹ね、ちょっと羨ましいかも)
先輩「妹さんもおはよう。珍しいわね、兄妹揃って仲良く登校なんて」
妹「おはようございます。そうなんですよ、いつも兄が遅刻ギリギリなので私がしっかり面倒を見ないと」
兄「おいこら、先輩の前でそういうことをいうんじゃねえ」
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:08:44.40:/qmAIZJi0
先輩「あは、兄くんもしっかり者の妹さんを持って幸せねぇ」ニコニコ
兄「口うるさいだけですって。どうせなら先輩のようなお姉さんが――イデ!」
妹「このように脇の甘い兄がいつもご迷惑をかけています」ペコ
兄「こら、なにもほんとに小突くことはねえだろうが」
先輩「くすくす、ほんとうに仲が良いのね。私は一人っ子だからそういうの、憧れるわ」
妹「そうなんですか。でも、いればいるで手がかかりますよ」
妹(むしろ、手塩にかけて私色に染めたい)ゾクリ
兄「てめえの兄貴をペットのように言うんじゃねえ」
妹「でしたら、逆がいいですか?」
兄(……真顔が怖いです)
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:10:35.94:/qmAIZJi0
先輩「ふふ、心配しないでも大丈夫よ妹さん」
妹「……そうですか?」
先輩「兄くん、生徒会では意外としっかりしてるから」
兄「もう、先輩までそんな。意外と、は余計ですって」
先輩「あら、ごめんなさい、フフフ」
妹「」イラ
妹「……さぁ、早く行きましょう兄さん」
兄「て、うぉっと、いきなり引っ張るなよ」
妹「では先輩、失礼します」
兄「す、すみません。放課後に」
先輩「え、ええ。またね」
先輩(い、一瞬睨まれたような。気のせい、かしら)
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:13:18.98:/qmAIZJi0
チャイム「ゴーンゴーン」
兄「よっし、ようやく昼休みだぜぃ」
携帯「ガクガクブルブル」
兄「っと、誰だ……って、まさかと思えば」
携帯「着信中――妹」
兄(おいおい、勘弁してくれ。まさか昼食でまでアーンとか言い出さねえだろうな)
兄(いやまてよ、ここは敢えて気づかない振りをするのもひとつの手か)
兄(うむ、我ながら良い案だ。後で追求されても鞄の中に入っていたとか言って誤魔化しておけば)
???「どうして取らないんですか? 鳴ってますよ、携帯」
兄「ああいや、気にしないでくれ。どうやらただの迷惑電わーお」
妹「わーお、じゃありませんよ。迷惑ってどういうことですか。聞き捨てなりませんよ」プクゥ
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:15:52.40:/qmAIZJi0
兄「おまえ、直接きたのならわざわざ携帯かける必要ないだろ」
妹「今スルーしようとしていたのはどこのどなたですか」
兄「そ、そんなことより、二年の教室によく堂々と入ってこれるな」
妹「……何か問題がありましたでしょうか」
兄「いや、特には。ただ、普通下級生は躊躇するもんだと思うが」
妹「やましい理由がなければ臆することもありません」
兄「感心するくらい堂々としてるなぁ」
妹「お言葉ですが、兄さんは世間の目をいちいち気にし過ぎです」
兄(……バッサリ斬ってくれるなぁ)
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:17:05.28:/qmAIZJi0
妹「さぁ、今日は栄えある門出の日ということで、腕によりをかけて愛妻」
兄「特製」
妹「そう、特製弁当を作ってきました。さぁ、一緒に食べましょう」
兄「いや待て、さすがにここでは――っ」
妹『兄さんは世間の目をいちいち気にし過ぎです』
兄(う、言われた先から気にするのもなんか悔しい)
兄「……しゃあねえ、ひとまず俺の席に座ってろ。空いてる席を借りてくる」
妹「はい、待ってます」チョコン
妹(あ、お尻に兄さんの温もりが残ってる)
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:20:34.55:/qmAIZJi0
クラスメイトの瞳「ジロジロ」
クラスメイトの口「ザワザワ」
クラスメイトの耳「ピクピク」
兄(まー、こうなるわな。アーンパンチを仕掛けてこなかったのが不幸中の幸いか)
妹「どうです、兄さんの好きな唐揚げ。片栗粉塗してみたんですけど」
兄「あ、ああ、すごくご飯と合う」
兄(さすがに美味い。俺好みの味付けをよくわかってやがる)
妹「ならよかったです。気合入れて作ったかいがありました」
兄「おまえ、普段は友達と食べてるんだよな」
妹「はい、大抵は。兄さんもですよね」
兄「ま、大体な。一年女子って、どんなことを話しながら食べてるんだ?」
妹「どんなことと言われても、何の変哲もない日常会話ですけど」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:22:09.02:/qmAIZJi0
兄「具体的な話題は?」
妹「そうですね。昨日は、新作のファッションとか、ドラマの話とか、気になる先輩の話とか」
兄「ふーん、なるほどね」
兄(やっぱ女子には色恋話もあるんだな)
妹「兄さんはどうですか? やっぱり同じですか?」
兄「ほとんど趣味に偏ってる。楽器にバイクに攻略中のゲームに、たまに気になる」
妹「妹」
兄「の話とか、って勝手に被せんな!」
妹「あは、バレてしまいましたか」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:26:17.06:/qmAIZJi0
兄&妹「ご馳走様でした」
妹「はい兄さん、紅茶ですよ」
兄「お、用意が良いな」
妹「いえ、それほどでも。――あの、食べ終わったばかりで恐縮なのですが」
兄「なんだ?」
妹「全体的な感想を聞かせてください。今後作る時の参考にしたいので」
兄「昼飯か? 文句なくうまかったよ。量も適量だった。95点」
妹「そうですか! ふふ、とても嬉しいです」
兄(そ、そんな顔されるとこっちまで照れるな)
妹「――で、減点箇所はどこですか?」ジ
兄(……え、そうくるの?)タジ
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:29:44.83:/qmAIZJi0
妹「どこですか?」
兄(嘘で100点って言っても手遅れっぽいな。はぁ、昔から融通が効かないというかなんというか)
兄「煮浸しの水分が抜けて、仕切りを超えて隣のご飯にまで及んでた」
妹「……あ」
兄(これは多分、踏切前で走ったのも影響してるかな)
兄「俺だったら下に千切ったキッチンペーパーを敷いた。まあ、そんだけなんだけどさ」
妹(……う、迂闊)ガーンガーン
兄「おいおい、そんなにショック受けることもないだろ? ほとんど影響はなかったんだし」
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:37:55.81:/qmAIZJi0
妹「……本当ですか?」
兄「ああ、誓って本当だ」
妹「……なら、いいですけど」
兄「ほんと料理の腕上げたよな。おまえ、いい嫁さんになれるよ」
妹(む、他人事のように……)カチン
妹「――兄さん、話は変わるのですが」
兄「ん、なんだ?」
兄(この目、腹に一物ありそうな。警戒するに越したことはないか)
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:39:22.20:/qmAIZJi0
妹「三週間後の芸祭ですが、兄さんにも来てもらえるのですよね」
兄「芸祭は、来るもなにも全員出席、って、ああ、演劇部の発表ってことか」
妹「そうです」
兄「催促するってことは、おまえなにか役もらったのか?」
妹「ええ、何を隠そうメインヒロインなんですよ?」ブイ
兄「うぉ、大抜擢じゃねえか! よく一年で射止められたな」
妹「なんてね。役柄に少し問題がありまして、競争相手が他に二人しかいなかったんです」
兄「問題? ああ、もしかして嫌われ役なのか? シンデレラの継母みたいな?」
妹「いえ、そうではないのですが」
兄(なんだ、言い淀むようなひどい役なのか?)
妹「あの、ここではなんですので、場所を変えていいですか?」
兄「……ああ、いいけど」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:41:39.21:/qmAIZJi0
屋上
妹「寒! ……さすがにこの季節は誰もいませんね」
兄「長居しなければ問題ない。それに、あまり聞かれたくない話なんだろ?」
妹「ええ、まあ、そうです」
兄「じゃあ、教えてくれ」
妹「ええ、実は話の佳境で少々、その、何と言いますか」
兄「なんだよ、そこまで言ったならちゃんと」
妹「……わ、わかりました。ええと、ですね」モジモジ
兄「おぅ」
妹「……されるんです」
兄「んん? 悪い、声が小さくて聞き取れなかった」
妹「ですから、敵国の兵士たちに……犯されるシーンが、ありまして」カァァ
兄「」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:43:16.33:Zq1mr0TM0
妹「舞台設定は中世のフランスです。動乱の時代ですね」
兄「……マリーアントワネット? それとも、ジャンヌダルクか」
妹「後者です。最後に囚われた時、そういう濡れ場があって」
兄「って、待て待て! 芸祭は一般公開されるんだぞ? 当然小学生のガキだって来る」
妹「落ち着いてください兄さん、何も直接的な行為に及ぶというわけではなくて――」
兄「当たり前だ! ――じゃなくて、おかしくないか?」
妹「あの、おかしいというのは」
兄「一般公開されるのにそんなストーリーが芸祭として認められるはずがない」
妹「私たちもそう思っていたんですが、不思議と認められてしまったんです」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:52:29.43:/qmAIZJi0
兄「し、信じられねえ、何考えてんだうちの学校。PTAから苦情が殺到するぞ」
妹「一応、紙でできた戦衣装を破られるまではやるんですが、ちゃんと下にTシャツは着込みますし」
兄「そりゃあ、そうだろうけれど……」
兄(……なんだそりゃ。俺の妹がよりによって公開レ○プ? うぁー、想像したくもねえ)
妹「台本は、確かに史実と違って脚色されている部分も多いです」
兄「……だろうな」
妹「反面、史実では枝葉の部分が曖昧なので、倫理観がほとんどなかった歴史的背景を考慮して」
兄(より、リアリティを追求した結果ってか。まじ勘弁)
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:54:18.70:/qmAIZJi0
兄「はぁ、芸祭休むかな、俺」
妹「そんな! サボリなんて駄目ですよ、兄さん」
兄「つうか、なんだってそんな役柄引き受けたんだ。自分の置かれた立場、わかってるのか」
妹「立場って、どういうことですか」
兄「演劇を見ている男共からおまえがズリネタにされかねないって、そう言ってんの」
妹「ズっ! ……な……なな」カァァ
兄(冷静な妹といえど、さすがに動揺するか。でも、はっきり言った方が伝わりやすいからな)
兄「しばらくは噂にだってなるだろうさ。やりたがるやつが少なかったのも当然だ」
妹「……うぐ」
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:57:05.00:/qmAIZJi0
兄「まったく、いくらメインヒロインだからってそりゃないぜ。貧乏くじ掴まされたも同然じゃねえか」
妹「……あぅあぅ」ジワァ
兄(う……やばい。涙目だ、ちょっと言いすぎたか)
兄「と、とにかくだ。今からでもいいからそんな役柄降りちまえ。なんなら俺も一緒にかけあってやるから」
妹「そ、そんな、そんなの無理です! 全体的には素晴らしい脚本ですし、みんな必死に練習してきたんですよ?」
兄「それで、おまえは堪えられるのか?」
妹「……え」
兄「劇の後で、好奇と欲望の視線に晒されてもいいのかよ」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:58:57.89:/qmAIZJi0
妹「……それは」
兄「どうなんだ」
妹「……に、兄さんが」
兄「……俺? 俺がなんだ」
妹「兄さんがちゃんと見守ってくれているなら、平気です」
兄「見守るって、おまえらの劇を視聴しに来いってか!?」
妹「来て、くれないんですか?」
兄「だって、おまえが……いくら芝居とはいえ、襲われるとか」
妹「兄さんに具体的なこと言われたから、本当に怖くなってきちゃいました」ガクガク
兄(……まいったぞこりゃ)
73: ◆F.0ZPEs1mU :2012/03/25(日) 11:05:23.02:/qmAIZJi0
兄「お、俺のせいにされても困るぞ。自分の浅慮が招いたことだろ」
妹「……じゃあ、私はどうすればいいんでしょうか」
兄「わからねえよ。つうか、襲われる場面になれば男に圧し掛かられたりするわけだろ?」
妹「はい、その演技のときは、正直すごく怖いです。自然と声が震えて、生々しいって褒め言葉を頂戴しました」
兄(……怖気がするわ。真に迫った妹の悲鳴とか聞かされる身にもなってくれっつうの)
妹「でも、兄さんが傍にいてさえくれれば、怖いことも我慢出来ます。劇の最中も、その後も」
兄「……肝心なことを聞いていなかったけど。おまえはその役、やりたいのか?」
妹「それは、はい。誰にも屈しない高潔な心を胸に秘めて命を落とした乙女。その悲哀を表現したいんです」
兄(ほんと、根っこは強いんだよな。だけど)
兄(こいつのためを思えば、あー、どう答えるのがベストなんだろ)
妹(………………計算通り)ニィ
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:17:36.10:/qmAIZJi0
妹部屋
妹「ふぅ、よいしょっと」ギィ
妹(これで、第二段階もクリアです。なかなかに順調ですね)
妹(あまり動いていると怪しまれますし、しばらくは静観しましょう)
妹(……兄さん、ちゃんと動揺してくれていました)ジーン
妹(欲を言えば、敵兵士に志願してくれれば最高だったんですけど)
妹(どのみち一年にそんな権限などありませんし、しょうがないですね)ハァ
妹(たとえそれがうまくいったとしてもそれはそれで問題)
妹(……襲ってくる兄さんを見たら、本気になってしまいそうですし)モジ
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:21:45.67:/qmAIZJi0
妹(なんだかんだでこの微妙な距離感は心地いいんですよね)
妹(とはいえ、そろそろもどかしくなってきました)
妹(真綿で締めるようにじわじわとスキンシップを測り)
妹(距離を多少なりとも縮めたところで寝取られるところを見せつける)
妹(名付けて、吊り橋効果で兄悶絶作戦!)ドンドンパフパフー
妹(人は、物が落ちそうになったのを見れば反射的に手が伸びるもの)
妹(今のうちに、アドリブの台詞を詰めていかないとですね)
妹(必ず、心を絡め取れるような演技をしてみせます。覚悟していてくださいね、兄さん)ガッツ
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:28:57.38:/qmAIZJi0
兄部屋
兄「……ふうぅ、どっと疲れたぜ」ドサッ
兄「冬場とはいえ汗かいたし、風呂入らなきゃな」
兄(……冷や汗の方が多かったが)
兄「芸祭か、来る日が怖すぎるな」ヌギヌギ
兄(あくまで演技ですから、って言われても、脳内補完ってのがあるからな)
兄(とりあえず、会場に入るだけでも問題ないだろ。後でチケット見せれば済むし)
兄(考えすぎてもしょうがない。前向きに考えよう)
兄「着替え着替えっと」ゴソゴソ
兄「うし、準備完了。いきますか」
118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:30:14.59:/qmAIZJi0
浴室
兄「かぁー、やっぱ冬場の風呂はたまらんなぁ」ジワァ
兄(と、いかんいかん。我ながら少しオヤジくさかったな)
兄(一度入るまでがめんどいけど、入ると気持ちいいんだよなぁ)
兄「おや、この声は」
妹「ふんふーん、トゥトゥトゥトゥーン♪」ルンルン
兄(やっぱり妹か、なんだか機嫌がよさそうだ)
ドア「バタン」
兄「……へ?」
妹「一番風呂ー! ――って」
兄&妹「」
120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:42:04.95:/qmAIZJi0
妹「…………」パクパク
兄「お、おまえ! 浴室の電気ついてる――」
妹「ひゃああぁ!?!?」ガバッ
ドア「バッタン!」
妹「な、なな、なんでここに兄さんが!?」アゥアゥ
兄「じ、自宅の風呂に入って何が悪い!」アワアワ
兄(や、やばい。完全に目に焼き付いちまった)ジク
妹「うぅう、まだ誰にも見せたことなかったのに」
兄「……ぬぐ」モジ
兄(だー、落ち着け! あいつはただの妹だぞ!)
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:46:36.14:/qmAIZJi0
妹「……み、見ました?」
兄「しょ、正直に言う。胸から上は」
兄(……ほとんど生えて、なかったな)
妹「……やっぱり見たんですね」
兄「見えたんだ! どう考えたって不可抗力だろ! こっちがびっくりだわ!」
妹「……うう」
兄「と、とりあえずそのままだと風邪引くだろ。厚めのタオル羽織ってトイレ入ってろ、すぐに空けるから」
妹「……うぅ、はい」グスン
トイレ「バタン」
123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:48:37.24:/qmAIZJi0
脱衣場
兄「ふぅ、まじ焦ったぜ」
兄{……当たり前だけど、すっかり女の子らしくなってたな。胸とか膨らんで)ググ
兄(う、いかんいかん。今は考えるな)ブルブル
兄(湯船に入ったタイミングだったのがまずかったか)
兄(でも、電気つけてれば普通誰かが入ってるって思うよな)
兄(しっかり者に見えて、どこか抜けてんだよな)パサッ
兄「着替え終わった。@10秒したら出てきていいぞ」
妹「あ、はい。すみませんでした、兄さん」
兄「いいって。じゃあ、ちゃんと温まってから出るんだぞ」シャッ
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 14:52:52.75:/qmAIZJi0
浴室
妹「……はぁ、考え事してるとほんと駄目ですね、私」
妹(絶好のチャンスだったのに、咄嗟のアドリブができなかったのは痛いです)
妹「……見られてしまいました、よね」
妹「少し、持ち上がってましたし」カァ
妹(い、いや、これはむしろ喜ぶべきことです)
妹(私の体を見てちゃんと欲情してくれた。インポテンツの可能性は否決されました)ワーイ
妹「…………」キュッキュ
シャワー「ジャー」
妹「これなら、音も聞かれない――ん、くぅん!」クチュリ
妹(よ、予行演習です。ご尊顔お借りしますね、兄さ……んっ)ツプ
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 15:03:57.21:/qmAIZJi0
ダイニング
義母「はい、はーい。それでは失礼しますね」
電話「ガチャ」
義母「あの奥さんたら、話が長くてほんと大変。切るタイミングがなかなか掴めないわ」
義母(……あれ。まだガスが突きっ放し)
義母「確か、電話が来る前にもついていたわよねぇ」
義母(誰がお風呂入ってるのかしら。兄くん? それとも妹ちゃん?)
義母(……ちょっと一言声をかけてこようかしら)
義母(そうね、冬場になるとガス料金高くなるし、少しは節約してもらわないと)
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 15:10:32.13:/qmAIZJi0
脱衣場
義母(あら、妹ちゃんの下着)
義母「妹ちゃん、いくらなんでもお湯使い過ぎよー?」
シャワー「ジャー」
義母「うーん、聞こえないのかしら」
義母(あれ、これって、妹ちゃんの声?)
妹「――さん――ふっ、――こ、は」
義母(え、ちょ、もしかして)
妹「――あ、――ひぁ――兄、さん! ――ちゃ、ああぁ!!」
義母「」
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 15:14:35.74:/qmAIZJi0
兄「……おい、そこのリモコン取ってくれ」
妹「は、はい、これですね。どうぞ、兄さん」アセアセ
兄「わ、悪い」アタフタ
兄(だめだこりゃ。妹のことまともに見れんぞ)
兄(よし、バラエティ番組でも見て気を――)
モニター「駄目よ兄さん! 私たち、兄妹なのよ!?」
兄&妹「」
兄(韓流の再放送ですね、本当にありがとうございました)ピコ
モニター「次のニュースです」
義母(……今の反応。二人とも意識し合っているのは、間違いないわね)
133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 15:24:54.86:/qmAIZJi0
目覚まし「ジリリリリリリリ」
兄(うぅ、寒ぃ~。12月に入って一気に冷え込んだな)
ドア「ドンドン」
妹「兄さん、もぅ朝ですよ。そろそろ起きてください」
兄「……あーい、あと五分したらいく」
妹「そんなこと言ってるから遅刻ぎりぎりになるんですよ」
兄(抗い切れぬ布団の温もり)ヌクヌク
妹「わかりました、兄さんが起きてくるまで私ここに座っていますからね」
兄(そしてそれを許さない妹)ハァ
137: ◆F.0ZPEs1mU :2012/03/25(日) 15:35:21.76:/qmAIZJi0
イケ男「なあ兄」
兄「ん、なんだイケ男?」
イケ男「最近、美人の妹さんよくくるじゃないか」
兄「あ、ああ。それがどうした?」
イケ男「いやさ。あの子、彼氏とかいるのかなーって思って」
兄「あれ、でもおまえ、彼女いるだろ? 新体操部の」
イケ男「正直、あいつとあまりうまくいってないんだよ。一回紹介してくれね?」
兄「断る、二股は感心しない」
イケ男「じゃあ、彼女と別れたらいいのか?」
兄「浮気性のやつに大事な妹はやれん、他を当たれ」
イケ男「……チ、わかったよ」
155:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:47:21.49:/qmAIZJi0
昼休み
妹「よし、今日は学食に」
妹友1「妹ちんストーップ!」ハシ
妹「あれ、友1ちゃん?」
妹友1「ねえ、またお兄さんと一緒に食べるの?」
妹「ええ、そのつもりですけど」
妹友2「兄妹で仲良くするのは悪いことじゃないけど……」
妹友1「うん、たまには私たちと一緒に食べようよ」
妹「……う、そうですね。たまには」
妹友2「よーし、じゃあ決まりだね。学食いこう!」
妹(……マンネリ化を招かない、という一点において意味はありますが、うう)ガックシ
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:48:22.95:/qmAIZJi0
兄「お、メールだ」
メール「ごめんなさい兄さん。友達に引き止められちゃったので今日は別行動でお願いします」
兄(うん。ま、そういう日もあるわな。了解だよ、っと)
クラスメイト「ざわざわ」
兄「ん、なんだ、騒がしい」
先輩「あ、いたいた、兄くーん」タッタッタ
兄「あれ、先輩?」
先輩「よかった、まだ教室にいてくれて。生徒会の案件について少し話があるのだけど」
兄「そうですか。先輩、昼食は」
先輩「当然まだよ。どうせなら一緒に学食でもと思って」
兄「わっかりました。じゃあすぐ支度します」トントン
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:49:30.19:/qmAIZJi0
学食
携帯「ギュイ、ギュイ! ギュイ、ギュイ!」
生徒&教師「!?」ガタ
兄「地震か!?」
先輩「あ、驚かせちゃったかしら? これ、私のメール着信音なの」
兄「……えー」
兄(……心臓に悪すぎ。ていうか、前のはもっと普通だったよな)
先輩「やっぱり評判は悪そうね」
兄「そりゃそうでしょ、できれば今すぐに変えていただきたく」
先輩「そうね、そうするわ」ピコピコ
兄「やれやれだぜ、一気に注目浴びちゃったな」
妹(……え。……あれ、兄さん?)
先輩(ふふ、やっと気づいてくれたみたいね。これでよし、と)
メール「(本分なし)⇒削除」
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:50:41.97:/qmAIZJi0
先輩「あは、兄くん、ミートソースほっぺについてるわよ」
兄「え、ほんとですか? どこです?」
兄(あれー、跳ねさせた覚えはないんだけどな)
先輩「動かないで。私が取ってあげるから」
兄「え、取ってって。あ――」
ハンカチ「フキフキ」
先輩「ふふ、もういいわよ」
兄「す、すみませんどうも。あの、それ、洗って返します」
先輩「これくらい気にしなくても大丈夫よ。ハンカチは汚すためにあるんだもの」
兄(うーん。先輩ってほんと、優しいなぁ)
ハンカチ「ピカピカ」
159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:51:15.37:/qmAIZJi0
生徒会室
先輩「では決を取ります。本案に賛成の方は挙手をお願いします」
挙手「ズバババ」
先輩「賛成多数。よって本案は可決されました。続いては次の頁の――」
兄「うーん、ほんと凛としてるというか、仕切るのが絵になるよな」サラサラ
先輩「兄さん、議題の方の書き写しはどうでしょうか」
兄「もう少しで終わります。――はい、もう消していいですよ」
ホワイトボード「キュッキュッキュ♪」
兄(いつまで見惚れているわけにもいかんし、集中集中っと)
先輩(いいわね、たまーに見せる真剣な表情)ジィ
生徒会委員「先輩、議事の進行をお願いします」
先輩「あ、はい。失礼しました。続いては風紀委員会より、芸祭の治安について――」
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:52:37.36:/qmAIZJi0
兄「うー、終わった終わった」
兄(20頁は進んだな、さすがに肩凝ったぜ)
先輩「お疲れ様、兄くん。今日は記述が多くて大変だったでしょう」
兄「いえ、前もって頭で整理しておきましたから大丈夫です。助かりました」
先輩「そぉ? ふふ、よかった」
兄「では、そろそろ帰ります」
先輩「ねぇ、よかったら一緒に帰らない?」
兄「え、俺とですか? でも、先輩の家ってモールの方でしたよね」
先輩「ええ、途中まででいいの。校門前のバス停まで」
兄「ああ、そういうことなら全然OKです」
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:54:21.95:/qmAIZJi0
兄「ただいまー。って、あれ?」
妹「……あ」
兄「どうしたんだおまえ、今日は演劇部の練習があるから遅くなるって」
妹「……」ムス
兄「ん、なんだよその目は。
妹「……」フイ
兄「おい、どうして口利いてくれないんだよ」
妹「……ご自分の胸に聞いてみたらどうですか」ダッ
兄「あ、ちょっと待て――って、行っちまった」
兄(なにいじけてんだ、あいつ。生理でも始まったか?)
163:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 17:55:19.46:/qmAIZJi0
妹「……ご馳走様でした」
義母「あら、もういいの? 大分残してるじゃない」
妹「明日の朝食べますので残しておいてください」ガタン
兄「おい、自分の食った皿くらいちゃんと流しに運べ」
妹「――っ! ああ、そうでしたね。すみません、誰かさんみたいに気が利かなくて」ガチャガチャ
兄(ったく、まだ怒ってやがる。誰かさんって誰だよ)モクモク
義母「あの、兄くん。妹ちゃんどうしちゃったのかな?」
兄「俺に聞かれてもさっぱり。帰ってきた時からこうだったし」
義母「あぁ、そ、そうなの」
義母(……まさか、本当に一線を超えてしまったとか)
166: ◆F.0ZPEs1mU :2012/03/25(日) 17:58:51.16:/qmAIZJi0
父「ぷはぁ、風呂上がりのビールは最高だな」
義母「あの、あなた。折り入って相談が」トクトク
父「ん、なんだ。改まって」
義母「その、兄くんと妹ちゃんのことなんだけど」
父「ああ、恋人ごっこの話か」
義母「ええ、それが……思ったより深刻みたいなのよ」
父「深刻? なにがだい?」
義母「大分前の話なんだけど、妹ちゃんが兄くんのことを呼びながら」
父「呼びながら、どうしたんだ」
義母「……なんというか、私がこんなこと言っていいのかあれなんだけど」
父「はは、随分ともったいぶるじゃないか」
義母「その、自分を慰めてたというか」
父「」
226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:44:04.95:/qmAIZJi0
ドア「コンコン」
兄「どうぞ、開いてるよー。って」
父「おお、以前に入った時と大分趣が違うな」
兄「親父? なんか用?」
父「ああ、勉強中だったのか。いや、用というほどでもないんだがな」
兄「おう」クルリ
父「たまには親子水入らずで話すのも悪くないだろう」
兄「ふーん? 学校の話とか?」
父「ああ、そういったこととか、おまえのタイプの女の子とか」
兄「……はぃ?」
父「おまえだって年頃だ。一人や二人くらい、気になっている女の子がいるだろう?」チラッ
兄(な、なんだ。このむず痒い雰囲気は)
229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:47:25.84:/qmAIZJi0
父「で、どうだ。確か中学の時に付き合っていた」
兄「あいつとなら、引っ越ししてから自然消滅した。親父にも話した気がするけど」
兄(もう2年も前の話なんだけどなー)
父「そ、そうだったか。それで、今はどうなんだ?」
兄「んー、まー。気になってる子くらいはいるよ。当然だろ」
父「ほぅ。で、どういった子なんだ」
兄「……なんで急にそんなこと聞くんだ?」
父「まぁいいじゃないか。なんとなくだ」
兄「先に言い出しっぺの方からどうぞ」
父「わかった、父さんは大きすぎず小さすぎずがいい。こう、母さんのような」モミモミ
兄「……のろけにきただけかよ」
兄(それ以前に、胸から話題にするのかよ。手付きエロいし)
230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:49:32.55:/qmAIZJi0
父「そういえば、妹も随分と綺麗になったな」
兄(……なんとなく、唐突な気がするが)
兄「そうだな。学校でも男女問わず人気があるみたいだ」
父「うむ、魅力的な娘を持てて親としても鼻が高い」
兄「だろうな、出来すぎた妹を持つとこっちも肩身が狭い」
父「若い頃の母さんの写真を見たことがあるか? 妹とそっくりなんだよ」
兄「へえぇ! そういやアルバム見たことはほとんどなかったな」
父「今度家族一緒に見よう。私たちのアルバムも持ち合わせてな」
兄「ああ、悪くないな」
父「……ところで、おまえの目から見てだが」
兄「おぅ」
父「妹はどんな感じだ? イケてるか?」
兄「妹? うーん…………ウン?」
232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:51:17.71:/qmAIZJi0
兄「話がよく、見えなくなってきたんだけど」
父「二週間くらい前だったか、おまえと妹が恋人ごっこをやっているとかいう話をしていたじゃないか」
兄「……ああ、その話か。それが?」
父「まだあれは、続いているんだろう?」
兄「そうらしい、けど」
父「それで、妹との関係が微妙に変化したり、してないか?」
兄「……変化したら、それはそれで問題じゃないか?」
父「そうだな、だからこうして聞いてるんだ」
兄「……つまり、俺たちの仲があらぬ方向に進行していないかと疑いを持った。こういう認識でいいのか?」
父「そこまでストレートに疑っているわけではないが、母さんが心配してるんでな」
兄(……あんたの行動原理は全て義母さん優先か)
234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:52:29.84:/qmAIZJi0
兄「心配しなくても、俺にその気はないよ」
父「その言い方だと、あっちからのアプローチはあるってことか」
兄「妹も、冗談半分だと思うけどな。恋愛ごっこを楽しんでるだけだよ」
父(……ふむ、しらを切っているというわけではなさそうだな)
父「わかった、信用していいんだな?」
兄「こうして疑われているのが腹立たしいくらいだ。……この返事で充分だろ?」
父「ああ、充分だ。勉強の邪魔をして済まなかった」
兄「いや。――あのさ、母さんの方にも」
父「ああ、うまく言っておくよ。じゃあ、勉強頑張れよ」
兄「りょーかい」
235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:53:43.85:/qmAIZJi0
兄「さてと、ちゃっちゃと宿題を片付け」
ドア「コンコン」
兄「ん、忘れ物か? どうぞー?」
妹「お邪魔しますよ、兄さん」
兄「」
妹「ちょっとお尋ねしたいことがあります。いいですか」
兄「あ、ええとだな。今ちょうど勉強を」
妹「いいですよね」ギラリ
兄「もちろんです。ささ、どうぞどうぞ、狭苦しいところで恐縮ですが」
兄(……や、やだこの妹、ちょっと怖い)ガクブル
237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 21:57:42.57:/qmAIZJi0
妹「…………」
兄(入ってくるなり三分間も黙ったまま、か)
兄「おい、俺だって暇じゃないんだから」
妹「――兄さんは」
兄「はい、なんでございましょう」
妹「どんな女の子が好みなんですか?」
兄(……デジャヴ)
兄「ええと、ですね」
妹「やっぱり背が高くてサラサラのロングヘアーで包容力がある人なんか、いいんでしょうね」
兄「……あん?」
妹「え? ボンキュッボンで生徒会とか入っていたりしたらさらに最高ですって? へー、そうですか」
兄(……もしかして、先輩のこと言ってるのか?)
239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:03:33.04:/qmAIZJi0
妹「鼻の下伸ばしてる兄さんを見て、私、どれだけ恥ずかしかったか」
兄「はぁ? 誰かいつどこで鼻の下伸ばしたんだよ」
妹「兄さんが昼休みに学生食堂で、です! 先輩に口元拭いてもらってたじゃないですか!」
兄「ただそれだけで、なんでそんなに怒られなきゃならんの?」
妹「期間限定とはいえ、私たちは恋人のはずです!」
兄「それは、ちゃんと守ってるだろう」
妹「守ってません! 自分の好きな人が他の女の子といちゃいちゃしてるのを見過ごせるはずがないでしょう!」
兄「ちょ、声が大きいって! 別にいちゃいちゃしたつもりもないし!」
妹「……く」ギリ
兄「……道理で機嫌が悪かったわけだ。嫉妬してたのな、俺と先輩のこと」
妹「ええ、そうですよ。悪いですか」
兄「悪くはねえ。けど、あれくらいで不貞腐れられたらたまったもんじゃない」
妹「あれくらい、ですって……」ギュウ
241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:07:41.01:/qmAIZJi0
兄「常識的に考えてくれよ。おまえとのアーンの方がよっぽど恥ずかしいっつうの」
妹「じゃあ! ……じゃあ兄さんは先輩のことを、なんとも思ってないんですか」
兄「なんともっていうのは語弊があるけど」
妹「やっぱりそうじゃないですか!」
兄「だから落ち着けって! 美人で面倒見のいい信頼できる先輩だと思ってる。でも、それだけだ」
妹「……恋愛対象では、ないんですね?」
兄「少なくとも今は、そういう気はない。仮にあったとして、あの先輩には大学生の彼氏がいるし」
妹「え……、そ、それは本当ですか」
兄「おう、俺はおまえに嘘はいわねえよ」
兄(……全部見たこと以外はな)フッ
妹「そ、そう、ですか」ヘナ
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:09:40.75:/qmAIZJi0
兄「おまえも、いちいちそれくらいで目くじら立てるな。じゃないと」
妹「……じゃないと?」
兄「万が一俺と付き合うことになってもすぐ別れることになる」
妹「……う」
兄(ま、そういう展開はないだろうがな)
兄「どのみち、俺の言ったことが信用できないなら関係だって長続きしない。恋人ごっこも終わりだ」
妹「そ、それはダメです。困ります」
兄「じゃあ、信じてくれるってことでいいんだな」
妹「……わかりました、兄さんを信用します」
兄「よし、じゃあ仲直りな」スッ
妹「……親指。……はい」ピト
246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:12:42.40:/qmAIZJi0
兄(やれやれ、これでひと段落だな)
妹「……あ、兄さん。まぶたにゴミがついてますよ」
兄「え、ほんとか? どこだ」
妹「あ、だめです、目に入ってしまいますよ。今取りますからちょっとの間瞑ってください」
兄「そ、そうか。じゃあ頼む」ギュ
妹「……はい」スッ
兄(――え、なんで頬に手が)
妹「……ん!」チュ
兄「」
254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:25:41.41:/qmAIZJi0
兄(……な、ちょ、妹!?)
妹「……ん……ふ」ギュ
兄(首に手が、く、胸が強く押しつけられて)
兄「って、待て!」ドン
妹「……きゃっ! もぅ、いきなり押さないでください」
兄「お、おまえ、なにやってんの?」
妹「兄さんに変な虫が付かないよう、唾をつけさせていただきました」ペロリ
兄(……なんて顔で笑いやがる)
妹「ちなみに今のが、私のファーストキスです。これで私の覚悟のほどはご理解いただけたかと」
兄(……こ、こいつ。本気で?)
妹「期限はあと二週間。不束者ですが、それまでどうぞよろしくお願いします。兄さん」
262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:44:33.67:/qmAIZJi0
花火「ドーン、ドーン」
兄「うーん、意外とあっという間だったな」
妹「あ、いたいた。兄さん!」
兄「おう、妹――どわっ!?」ガシィ
妹「よかった! ちゃんと時間通りです!」ギュウウ
兄「ば、馬鹿やろ! 周りの目も考えろ!」ヒソヒソ
妹「あ、はい、ごめんなさい、つい」ペロ
子供「ねえ、ママ。あのお兄ちゃんとお姉ちゃんなんで抱き合って――」
母親「しっ、邪魔しちゃダメでしょ」
兄&妹「」
兄「……最近の親って、寛容なんだな」
妹「で、ですね。……行きましょうか」
275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 22:55:23.93:/qmAIZJi0
兄「演劇は、明日からだったな」
妹「はい、リハがあるので三十分も抜けられないです。ご飯の時間が取れるかも怪しいくらいで」
兄「そりゃハードだな。楽しめるのは今日だけってことか」
妹「今日だけでも十分です。兄さんを独占できれば」
兄「……頼むから言動には気をつけて――お?」
妹友1「いたいた! 妹ちん!」
妹「あれ、どうしたの慌てて」
妹友1「それが、妹友2が足を挫いちゃって、ダンス出られなくなっちゃったの」
妹「嘘!? なんで、あんなに楽しみにしてたのに……」
妹友1「まったくだよ。それでね、一時間だけでいいから代役をお願いしたいの」
妹「え……今から!?」ガーン
279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 23:01:40.52:/qmAIZJi0
妹友1「バックダンスだから、簡単なフリさえ覚えればいいの。お願い、この通り!」
妹「……妹友1ちゃん。で、でも」チラ
兄(まったく、この期に及んで選択の余地はないだろ)
兄「いってやれ。それまで適当に時間潰してるから」
妹「……でも、私から頼んだのに」
兄「変に気を遣わないでいいって。友達が困ってるなら力になるのが当たり前だろ」
妹「……兄さん」
兄「ほーらー、そんな顔するなって。俺は笑ってるおまえが好きなんだからさ」
妹「」ボシュー
兄(……ん?)
294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 23:38:36.37:/qmAIZJi0
兄「じゃあ、11:30にここで待ち合わせな。それでいいな、妹」
妹「……」コックン
兄(……大丈夫か、こいつ)タラー
妹友1「すみませんお兄さん、少しだけお借りします。さ、急ぐよ! 妹ちん」ズルズル
妹「……」ホケー
兄「……ほとんど引っ張られてるな、ありゃ」
兄(さてと、どんなのやってるのかなー――と)
パンフレット「3-B。猫耳メイド喫茶。ご主人様、首を長くしてお待ちしておりますニャ」
兄「……猫好きを公言してはばからぬ身としては、いかぬわけにはいくまい」フッ
297:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 23:43:00.03:/qmAIZJi0
猫耳メイド1「いらっしゃいませニャ♪」
男性客「あ、あの、ブルマンを一つ」
猫耳メイド1「かしこまりましたニャ♪ この特製パフェもお薦めですニャ♪」
男性客「あ、じゃあそれもお願いします」
猫耳メイド1「ありがとニャ♪ 注文入りますニャー」
厨房「はいですニャー♪」
男性客「……いい。ここ、いい!」デレデレ
兄「……ほぅ、なかなかの盛況ぶりだな」
兄(芸祭で白のぴっちりニーソックスが見られるとは。スカートもミニ、眼福だな)
???「え、まさか兄くん?」
兄「ん? あれ、誰だ?」
兄(確かに名前呼ばれたような気が。それに、このハスキーな声……どこかで)
298:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 23:47:31.95:/qmAIZJi0
猫耳メイド???「やっぱり兄くんじゃない! もぅ、あなたも好きねぇ」
兄(うわ、すごいスタイルいいな。モデルさんかなにかか?)
兄「ええと、どちら様でしょうか」
猫耳メイド???「あら、この恰好だとわかんないか。なら、これでどうかしら?」パサ
兄「あれ、先輩!?」
先輩メイド「やっと気づいたか」
兄「髪アップにしてたんですか! 全然気づきませんでしたよ」
先輩メイド「ふふ、こっちだってびっくりしたわ。まさか兄くんがウチの組に来るなんてね」
兄「い、いえ。これには海より深い事情がありまして」
先輩メイド「あらあら、そんなに照れなくてもいいじゃない」
299:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 23:51:10.47:/qmAIZJi0
猫耳メイド2「こらそこ! ちゃんと語尾にニャをつけなさいニャ!」
先輩メイド「あ、す、すみませんでしたニャ!」
兄「……ぷッ」
先輩メイド「あぁひどい! なにも笑うことないじゃない!」カァァ
猫耳メイド2「もう戻ってるニャ! これは罰ゲーム対象者候補だニャ!」
先輩メイド「ま、待つニャ! 悪かったニャ! それだけは勘弁して欲しいニャ!」
兄(だ、ダメだ。あの先輩が、く……はは、あー、ぽんぽ痛ーい)タスケテー
先輩メイド「ちょ、ちょっと兄くん! いくらなんでも笑いすぎ――」カァァ
猫耳メイド2「ジロ」
先輩メイド「――だニャ!」
305:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 00:03:11.61:dnM90AcS0
兄「……なんだかんだでコーヒーがウマい」ズズー
兄(さすがに男性客が多い、というか9割方そんな感じか)
兄(先輩も忙しそうだなー。あっちにいったりこっちに来たり)
兄(ま、生徒会でいつでも話せるしな)
兄(……にしても、胸元が開きすぎだな。屈むと見えちゃうだろ、あれ)ドギマギ
兄(目に悪い。そろそろお暇するか)
兄「すみません、お勘定をお願いします」
猫耳メイド1「はいニャー♪ ちょっとお待ちくださいにゃー♪」
兄(時間は、11時過ぎか。丁度いいな)
先輩メイド「あ、兄くん、ちょっと待つニャ!」
兄「ん?」
先輩メイド「そろそろ小休憩ニャ。ちょっとだけ顔を貸してもらないかニャー?」
兄(……すごい順応力だニャー)
310:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 00:15:17.81:dnM90AcS0
先輩メイド「ふぅ、待たせたニャ」
兄(……もはや何も言うまい)
兄「いえ、それで話というのは」
先輩メイド「午後からフリーなのニャ。空いてニャいかニャ?」
兄「え、それはちょっと」
先輩メイド「……なにか予定があるのかニャ?」
兄「はぁ、妹と色々回る予定なんで」
先輩メイド「――妹さん、ね」
兄(……あれ、口調が戻った?)
313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 00:17:02.51:dnM90AcS0
先輩メイド「あなたたちのこと、結構噂になってるわよ」
兄「噂、ですか?」
先輩メイド「兄妹とは思えない仲の良さだって」
兄「はぁ、そうですかね」
兄(……あれ、なんだろ)
先輩メイド「そうですか、って。あなたたち兄妹なんでしょ?」
兄「ええ、まぁ。血は繋がってないんですけどね」
先輩メイド「え――嘘、でしょ」
兄「もちろん、俺はあいつのことを妹としか見てませんけど」
兄(……胸が、軋むような)
先輩メイド「……そう。なら、私と付き合っちゃわない?」
兄「」
322:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 00:29:35.07:dnM90AcS0
先輩メイド「いいアイディアだと思うの。あなたたちも、妙な噂を立てられるのは本意じゃないでしょ?」
兄「な、何言ってるんですか。先輩には彼氏が」
先輩メイド「彼とは、とっくに終わったわよ」
兄「え……。だって、両想いだったんですよね」
先輩メイド「そう、だったわね。でも、だからってうまく行くとは限らないのが男女の関係よ」
兄「……う」
先輩メイド「好きだからこそ、些細な擦れ違いで大喧嘩になる。携帯に出なかったとか、異性と手を握ったとか。ほんとくだらないことで」
兄(……先輩、辛そうだ)
先輩メイド「ちょっとしたことで色目を使ったとかいちゃもんつけられて顔を叩かれる身にもなってごらんなさい」
兄「暴力を、振るわれたんですか」
先輩メイド「ええ、右目を殴られた時には視力がすごく低下したわ。失明は免れたけど、それで決断した」
兄(……そう、だったんだ)
336:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 00:42:18.14:dnM90AcS0
先輩メイド「兄くんは、私のこと嫌い?」
兄「と、とんでもない。そんなわけ」
先輩メイド「なら、好き?」
兄「……それは、美人だと思いますし、優しくて面倒見がいいですし」
先輩メイド「嬉しいわ、兄くんにそう言ってもらえるなんて。じゃあ、付き合ってくれるわね?」
兄「そ、それは……」
兄(……一月前なら、迷わずOKしたはず。それは、間違いないのに)
先輩メイド「……ねぇ、何を悩むことがあるの?」
兄「……先輩は、どうして俺のことを?」
先輩メイド「あなたのことは、これでもよく知っているつもりよ。一年の頃から」
兄「たとえば?」
先輩メイド「一見ぶっきらぼうに見えて、困っている人に対しては親身になって助けてあげられる人。もちろん、容姿も悪くないしね」
兄(……嬉しい。……けど、なんだろう。なにか違う気がする)
345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 01:05:06.45:dnM90AcS0
兄「……先輩は、元彼の人のどこが気に入ったんですか?」
先輩メイド「……え」
兄「さっき言いましたよね。はっきりと、両想いだったって。なら、どこが好きだったか言えるんじゃないですか」
先輩メイド「そ、そうね。スポーツ万能で格好良かったし、とても優しくしてくれたから……」
兄「じゃあ、嫌いなところは?」
先輩メイド「――――それ、は」
兄「遊びならともかく、本格的に付き合うっていうのは相当覚悟がいることだと思うんですよ」
兄(好きな人の嫌いなところと向き合う機会がぐんと増える。そんでもって、好きな相手には格好いい自分を見せたいもんだしな)
先輩メイド「……私は、でも……本当に兄くんのことは気に入って」
兄「先輩は、俺の醜い部分をなにも知らないでしょ。理想像だけを押し付けられても、困ります」
先輩メイド「――――」
兄「ま、こういう糞生意気な面も持ってるんで。それでよかったら考えといてください。じゃ、俺行きますね」タッタッタ
先輩メイド「ちょ、ちょっと! 言い逃げなんて卑怯……あ……」
先輩メイド(……な、なによもう、ほんとに生意気。…………はぁ、まいった)
350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 01:16:01.83:dnM90AcS0
妹「……あ、兄さん!」
兄「悪い、待たせた」チラ
兄(あらら、話し込んでたら10分も遅れちまった)
妹「いえ、大丈夫です。これでおあいこですよ」
兄「はは、それもそっか。どこか、回りたいところあるか? お化け屋敷とか?」
妹「……もぉ、兄さんの意地悪。私が苦手なこと知っててそういうこと言ってるんですね」
兄「あれ、その年にもなって怖いのかー。ならしょうがないな、別のものにするかぁ?」
妹「……そうやってすぐ挑発するところとか、好きじゃないです」
兄「お、おいおい、ほんの冗談だろ?」
妹(なんて、そんなはずないです。……酸いも甘いもすべてひっくるめて、私の兄さんです)
351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 01:23:05.84:dnM90AcS0
兄「いやー、初日からちょっと飛ばしすぎたな」
妹「少し、欲張りすぎましたね。さすがにへとへとです」
兄「おまえは明日が本番だもんな。早めに帰って英気を養うかぁ」
妹「……疲れて歩けないです。おんぶを所望します」
兄「」
妹「……ダメ、ですか?」
兄「ダメ、それと上目遣いはやめなさい」
妹「残念です」スク
兄(……こいつはまったく)
妹「明日は10:30開演です。それからこれ、兄さんのチケットです。なくさないでくださいね」
兄「お、おう」
兄(……ついに、この時がきたか。明日、なんとか無事に終わってくれればいいんだけど)
373: ◆F.0ZPEs1mU :2012/03/26(月) 01:47:43.93:dnM90AcS0
兄(そして夜、あっという間だなぁ)
兄「ううむ、早めに寝るつもりだったのに寝付けないぞ」チラ
時計「もう23:30なんだZE?」
兄「……水を飲もう。そうしよう」スタスタ
ドア「ギィ」
妹「……あの、兄さん。よろしければ――」
ドア「バタン」
妹「」
兄「お休み、いい夢を見ろよ」フッ
妹「って、兄さんひどいです! なんでなにも聞かずにそのまま閉めちゃうんですか!」
兄「パジャマ姿で枕まで持ってきてる時点で予想はついた」
兄(まったくもう。俺を寝不足にしたいのかよ、あいつは)
妹「開けてくれなきゃ私、廊下で寝ますから。十中八九風邪を引くでしょうけれど、明日の舞台は熱をおして頑張りますね」
兄(……そのやり口、地上げ屋よりたち悪いと思うの)
539: ◆F.0ZPEs1mU :2012/03/26(月) 16:25:06.88:dnM90AcS0
鍵「カチャ」
妹「……兄さん、私は信じていました」
兄「どの口が言ってるんだ。もーいー、とっとと入れ。風邪引いたらことだ」
妹「はい、失礼します」シズシズ
兄(……ん、石鹸の香りが。風呂上がりか)
妹「……さてと。やはりここから、ですか」ジー
兄「ん、なに見てんだ――なに屈んでんだ?」
妹「よいしょ、と」ゴソゴソ
兄「ちょっと待て」
妹「少々お待ちください、すぐに終わりますので」モゾモゾ
543:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 16:29:45.16:dnM90AcS0
兄「一体なにをやっているんだね」
妹「ご覧の通り、ベッドの下を漁っているところです」ゴソゴソ
兄「薄々察しはつくが、念のためなんでか聞いておこうか」
妹「健全な男子はベッドの下か押入れに夜のお供を隠すという風習があるとか」
兄(いつの時代だ)
兄「仮にそれがあったとして、どうするんだよ」
妹「兄さんの趣向が変化したかをチェックしようと思いまして」
兄「なんのために」
妹「妹物とか増えてると嬉しいかな、と――」
兄「やっぱ出てけ」
546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 16:34:03.43:dnM90AcS0
ベッド「うぁ!」ギシギシ
妹「ふふ、スプリングが効いていますね。それにこのベッド、兄さんの匂いがします」モフモフ
兄「そういうこっぱずかしい台詞がよくもまぁ次から次へと出てくるもんだな」
妹「……くんくん」
兄「嗅ぐな!」
妹「あぁ、そうですね。せっかく生兄さんが傍にいるというのに」
兄「誰が生か」
妹「――さあ兄さん、遠慮しないで隣にどうぞ?」ポンポン
兄(……悪びれないやつ)
548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 16:36:25.91:dnM90AcS0
兄「はぁ、わかった。おまえはそこで寝ろ」バサッ
妹「やった! って、兄さん。一体なにをして」
兄「見りゃわかるだろ、来客用の布団を引いている」グッグ
妹「そんな! 昔は兄妹仲良く寝てたじゃないですか!」
兄「昔は昔、今は今。これ以上の譲歩はできねえよ」テキパキ
妹「……うぅ、そんなぁ」ショボン
兄「……一週間くらい前だったか、親父が俺の部屋にきた。俺たちのことで」
妹「え……、兄さんも?」
兄「そうだ。二人とも、俺たちのこと本気で心配してんだよ」
妹「……うぅ、道理で」
兄「人の目とか以前に、俺は二人に心配も迷惑もかけたくない。その領域にまで立ち入る気なら、自分の部屋に戻れ」
妹「……わかりました。このまま寝ます」
551:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 16:42:00.65:dnM90AcS0
兄「じゃあ、電気消すぞ」
妹「はい、おやすみなさい。兄さん」
兄「ああ、おやすみ」
スイッチ「カチ」
兄(……ふう、納得してくれてよかった)
妹「……すぅ」
兄「ん、寝付きが早いな」
兄(さすがに色々あって疲れたんだろうな)
妹「……兄……さん」
兄(……寝言か。……さて、俺も寝よう。おやすみ、妹)
554:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 16:48:53.65:dnM90AcS0
鳥「チュンチュン♪ チュチュチュン♪」
兄「……ん、もう、朝か? って、まだ薄暗いな」
兄(さっきから耳に息がかかってくすぐった――って息?)
妹「……すぅ……すぅ」
兄「」
兄(妹!? なんで下に来てんだ――って、腕が絡んで動か)ギュウ
兄「こ、このバカ、抱き枕じゃねんだぞ!」ヒソヒソ
妹「……ん……むぅ」ムニィ
兄「や、やめやめ! そんな押し付けられたら」ググ
兄(こ、これは起こすしかないか。いや、でも、まだ五時半)
妹「……兄……さん?」
兄「あ、起きちゃったか。す、すまん」
兄(ま、まぁ結果オーライということで――ん、あれ、目は閉じたままだぞ)
妹「……や、そこ……だめぇ」
兄「」
559:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 16:55:17.64:dnM90AcS0
妹「……はぁ……兄、さ……んっ」ギュウウ
兄「ど、どんな夢見てんだよ、こいつは」ジリ
妹「……ひぅっ」ビクン
兄(ぬぐっ、立たせん! 立たせはせんぞ!)ググ
妹「……ん……あ」ハラリ
兄(い、いかん。着衣が乱れて下着が。……こ、このままでは時間の問題)
兄(別のことを考えて気を紛らわすしか。よし、某鮫映画で!)
BGM(――ドゥードゥ、ドゥードゥ。ドゥッデドゥッデドゥッデドゥッデ)
兄「……だ、駄目だ。BGMはリアルに想像できるのに、肝心の鮫がさーぱりイメージできん」
妹「……んん」ググ
兄(うう、顔近! 腕を掻い潜って下に避難するしかない!)
565:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:00:30.60:dnM90AcS0
兄(よし……3,2,1)
兄(ふんぬ!)スポッ
妹「んっ」スカッ
兄「せ、成功。妹は……まだ寝てるな。完璧だ」ホッ
兄(……ふぅ、安心したら急にトイレ行きたくなっちまった。行くか)スク
妹「……兄……さん」
兄(ったく、夢にまで出てくるって、どんだけ思いつめてるんだ)
兄「俺は、お前に好かれるほどたいしたやつじゃない。残念だけどな」
兄(……って、はは、なんで残念なんだよ。どうも最近調子狂うぜ)
ドア「バタン」
妹「…………」チ
566:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:00:52.47:kScrswC70
兄「……ふぅ、スッキリした。って」
妹「……っ、しまっ! あ、お、おはようございます、兄さん」アタフタ
兄「お、おうおはよう、起きてたのか」
兄(……あ、あかん。顔が合わせづらい)
妹「え、ええ。まあ」
兄(肌もどことなく上気してる。ふ、冬のせいだよな、きっと)
兄「ところで――なんでそんなとこで突っ立ってるんだ? 入れないんだが」
妹「えと、その、ちょっとだけ外で待っててもらえませんか。汗かいちゃったので、すぐに着替えたいんです」
575:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:12:54.83:dnM90AcS0
兄「……? だったら自分の部屋で着替えればいいんじゃないか。すぐ隣なんだし」
兄(というか、確か着替えなんて持ってきてなかったじゃないか?)
妹「あぅ、それは、その……そうなのですけど」
兄「……ははーん」ピーン
妹「……う」ギクリ
兄「おまえ、もしかして」
妹「な、なな、なんですか」オドオド
兄「おねしょしちゃったとか?」ニヤ
妹「な! ち、違いますよ! 誰がこの歳にもなって!」カァァ
576:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:16:46.49:dnM90AcS0
兄「じゃあ隠す必要もないだろ」バ
妹「それも、そうなんですけど」シュババ
兄「ほら、遊んでないで通せって。布団干すんだから」グイ
妹「だ、ダメですってば! ――あぁ、ご無体な!」
兄(……なーにがご無体な、だ。……おや、なんでベットの羽毛布団がこっちに)バサ
妹「……あ、あぅ」ボシュー
兄「ん、これ、俺の下着だよな。どうして布団に埋もれて」ガシ
トランクス「解せぬ」グッショリ
兄「」
妹「…………」フルフル
582:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:27:08.19:dnM90AcS0
兄「ベッド、正座」ビシ
妹「……はい」チョコン
兄「……さて、これはなんだね」
妹「トランクスです。元々はボクサー用品から派生したもので、エバートラスト社が――」
兄「おーけーおーけー、さすがは我が妹。精緻な解説をありがとう」
妹「きょ、恐縮です」
兄「まず、言い訳から聞こうか」
妹「……え、ええとですね。そう、寝汗をかいていたんです」アセアセ
兄「うん、それはさっきも聞いたな。続きを頼む」
585:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:29:16.20:dnM90AcS0
妹「そ、それはもう、あまりにもの凄い量だったので」
兄「この濡れっぷりからすると、そのようだな」ビッショリ
妹「え、ええ。恥ずかしながら」カァァ
兄「うむ、長年おまえの兄をやってきたが」
妹「は、はぁ」
兄「おまえがこうも汗っかきさんだとは知らなんだ」
妹「こ、巧妙に隠していたんですが、ついにバレてしまいましたね」
兄「まったく、照れ屋さんなんだから!」ツン
妹「やん! もう、兄さんたらぁ」グイ
兄「ははは――――んで?」
妹「」
587:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:32:59.55:dnM90AcS0
妹「うぅ……その、早急に拭き取るものが欲しかったのです」
兄「わかるぞ、体が汗でべたついていたら気持ち悪いからな」
妹「そうなんです! さすが兄さん、わかってますね!」
兄「ふんふん、ここまでは実(↑)に、理に叶っているようだ」
妹「で、ですよね」
兄「付け入る隙のない流れというものは美しい」
妹「まったく同感です。なので、兄さんのタンスから」
兄「ほぅ、タンスから」
妹「肌触りのよいトランクスを、と」ドドーン
兄「なるほどなるほど」ウンウン
590:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:38:22.78:dnM90AcS0
妹「コットンの下着って、水分の吸収に最適ですよね」ニコ
兄「確かに、そうかもしれないな」ニコ
妹「そうですよね! では、判決は無罪ということでいだだだ!」グリグリ
兄「おまえの拭き取り優先順位は目の前にあるティッシュ、タオル、ハンカチを飛び越して兄のトランクスか?」グリグリ
妹「い、痛、や、痛いです兄さん! ごめんなさい! 止めてください!」ジワァ
兄「ああいいとも、止めてやる」バッ
妹「……うぅ、ひどい。……頭が割れるかと思いました」ヒリヒリ
兄「おまえさ、いくらなんでもやることが度をすぎてるだろ」
妹「……???」キョトン
兄(……え、自覚なし?)
595:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:49:34.66:dnM90AcS0
兄「夜中に訪ねてくるわこっちの布団に忍び込んでくるわ、挙句の果てにオ――」
妹「い、言わないでください! こっちだってし、しし、したことは、反省してるんです」モジ
兄「信用していいものやらな。いいか、逆の立場で考えてみろ」
妹「逆、ですか。兄さんの?」
兄「ああそうだ。もし俺がおまえの下着持ち出してああいう真似をやったらどう思うよ」
妹「……う、それは、その……切ないです」
兄「そうだろ? 救い難い変態だろ? 俺だってそういう気持ち――切ないとな?」
妹「そんなものじゃなくて、どうせなら私を使ってくれればいいのに、と」ポ
兄「」
604:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 18:09:29.71:dnM90AcS0
兄「……おまえ、いくらなんでも無防備過ぎ」
妹「無防備?」
兄「俺だって年頃の健全な男なんだよ。いつまでそういう挑発に耐えられるもんでもないの」
妹「……ですから、我慢しないでくださいね、と」
兄「だーかーらー! 兄妹でそういう真似はできねえだろ! おまえは俺を傷つけたいのか?」
妹「傷つく……って」
兄「妹のおまえに手を出す=父さんと母さんの信頼を裏切ることだろ。こっちだって生殺しだよ」
妹「妹、妹って、そんなの言葉だけじゃないですか!」
兄「俺だって、もっと別の出会い方をしてれば、おまえに一目惚れしてたかもしれないと思うことはある」
妹「……だ、だったら!」
兄「でも、今の俺の気持ちとしては、おまえには妹でいて欲しい」キッパリ
妹「……そう、ですか」
兄「もう一度洗面所行ってくるから、その間におまえも自分の部屋戻れ。わかったな」バタン
妹「……兄さん。……でも、私の気持ちは」
@は芸祭編とエピで終了、2時間ほど離席します
605:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 18:10:51.52:RVWxqzJ00
ステージ前
観客「どよどよ」
兄「うは、想像以上の大混雑だな」
兄(喜んでいいやら悲しんでいいやら)
モギリ「いらっしゃいませ。お手数ですがチケットの提示をお願いいたします」
兄「あ、はい。これでいいかな」
モギリ「ありがとうございます。席は前から5列目の左中ほどになります」ビリ
兄「わかりました」
兄(……五列目か、見るにはいい場所だけど……)
兄(ジャンヌダルク、100年戦争の主役。世界史は苦手だが、不思議と名前は忘れられないな)
兄(神の声を聞き、国難に立ち上がった悲劇の聖女、か)
兄(いったいどんなふうに演技してみせるのか。別の意味でちょっとわくわくしてきた)
668:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 20:33:49.01:dnM90AcS0
楽屋
妹「……すぅ……はぁ……すぅ」
妹「あー、あー。うん、声は問題ないですね」
妹(兄さん、ごめんなさい。やっぱり私の想いは変わりません)
妹(……あんなところを見られても変わらなかったんです。もう手遅れですよ)カァァ
顧問「妹さん、そろそろジャンヌの出番よ。用意できてる?」
妹「はい、大丈夫です。今いきます」スク
顧問「ふふ、期待しているわよ」
妹「が、頑張ります」
妹「あとは、祈るしかないですね」ボソ
妹(この脚本と私の演技で、兄さんの心を変えられるように)グ
669:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 20:37:53.93:dnM90AcS0
観客「…………」シーン
兄(学祭にしてはずいぶんと客の行儀が良いな。プロローグの殺陣もナレーションも本格的だし)
ナレーション「――追い詰められたシャルル7世。だが、そこに一縷の望みが生まれた」
兄(お、妹ジャンヌの登場か)ガタ
ジャンヌ「本当です、お母様。私は確かにカタリナ様とマルガリタ様、そして大天使ミカエル様の啓示を」
観客「ざわ」
兄「」トクン
兄(金髪のウィッグか。……な、なかなか似合ってるな)
ジャンヌ「信じてください! ボードリクールに赴き、オルレアンの包囲を解いてフランスを救うようにと仰せだったのです」
ジャンヌママ「しかし、おまえは昔から夢見がちな子だったからねぇ」クスクス
ジャンヌ「信じて、くださらないのですか」ガーン
ジャンヌママ「よしんばそれが本当だったとして、剣を握ったこともない娘にフランスを救えと仰るなんて、随分と無茶な要求じゃないかい」
兄(確かに、そうだよなぁ。なんで彼女じゃなきゃなかったんだろ)
675:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 20:48:35.00:dnM90AcS0
ジャンヌ「もう待てません。未だ包囲下にあるオレルアンで人々は餓えと渇きに苦しんでいるのですよ」
側近1「解放を望むのは我々も同じだ、しかし、始まればもう後に引き返せなくなる。軽々しく判断はできん」
ジャンヌ「なぜ、です。救おうとする私を、前に進もうとする私をなぜ止めるのですか?」
側近1「……しつこいやつだな」
側近2「世情というものがあるのだ。君らが勝手に動くことで迷惑を被る人間がいる」
ジャンヌ「お話はわかりますが、あなたたちにはまったく緊迫感が感じられません」
側近2「……なにぃ?」
ジャンヌ「我らが同胞が、フランスの人々が血を流しているにもかかわらず、皆さんはそのような上等な服を着込み、高いワインを飲みながら私を言い包めようとするのですから」
側近1「無礼な! 成り上がりの村娘ふぜいがよくも貴族にそのような物言いを!」
ジャンヌ「……なるほど、これではオレルアンの人々の気持ちをわかるはずもありませんね」
側近2「……シャルル殿下の庇護を受けているからといって調子に乗るなよ」
ジャンヌ「ご忠告痛み入ります。ならば私たちだけで始めるまでです。ジャン、ライール、行きましょう」
側近1「おのれ、衆目の前で恥をかかせおって。……このままで済むと思うなよ」
兄(……んだこいつら、超うぜえ。ジャンヌに偉そうな口聞いてんじゃねえぞ)イラ
679:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 20:58:57.56:dnM90AcS0
観客「…………」シーン
敵兵「死ね、フランスの犬め!」
ジャンヌ「くぅっ!」ギン
ライール「ジャンヌ殿、出すぎだぞ! 自重せよ!」
ジャンヌ「大丈夫です、私が行動することを、神がお望みなのならば」
ライール「……まったく、こちらの身にもなってくださいよ」
兄(いいぞライール、もっと言ってやれ)
ジャンヌ「我が兵士たちよ! 私の後に続きなさい!」キーン
兵士たち「オォー!」
ジャンヌ「現状を打破するには、まず行動することです。我らの意志が一所に示されることによって初めて神が行動されるのです!」
兵士たち「武器を持て! 我らが聖女の歩みを止めさせるな!」
敵将「くっ、やつらを食い止めろ! オルレアンへ一兵たりとも侵入させるな!」
681: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/03/26(月) 21:01:51.31:sFfDm4Tm0
側近1「シャルル王よ。これ以上あの女をのさばらせておいていいのですかな?」
シャルル「口を慎め、彼女なくしては戴冠式はならなかったのだぞ」
側近1「これは失礼しました。しかし、最近よからぬ噂が流れておりまして」
シャルル「噂?」
側近1「ジャンヌ殿がアランソン公と結託し、シャルル王を傀儡しようとしているのではないかと」
シャルル「ば、馬鹿を申すな! あのジャンヌがそんなこと、ありえん!」
側近1「私もそう思いたいですが……あり得ぬことでもないかと」
シャルル「…………」
側近「彼女を、コンビーニュに送り込んではいかがですかな?」
シャルル「敵軍との激戦地ではないか! 危険すぎる!」
側近「だからいいのではないですか。戦いに疲れた我が兵士たちの士気も高まりましょう」ニヤリ
688:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 21:17:02.16:dnM90AcS0
ナレーション「側近の策略によりジャンヌは敵軍に拘束され、イングランド軍に引き渡された。そして――」
ジャンヌ「お、おやめなさい! 神がこのようなことをお許しになると!」
看守1「なにお高く止まってるんだ、気違い魔女が!」バシィ
ジャンヌ「きゃあっ!?」ドサッ
看守「へっ、聖処女だぁ? なら、本当にそうか俺が確かめてやるよ!」
ジャンヌ「あ、あなた達は……や、やめて……やああ!?」ビリビリィ
観客「」ドヨ
男性客「」ムク
兄(……くそったれ。覚悟はしてたけど……やっぱ、きつい)ググ
689:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 21:18:26.24:wSYkMx7K0
ジャンヌ「や、やだ、やだ! やめてよ!」ボロボロ
看守1「へへ、やっとしおらしくなりやがったな」
看守2「おい、ちゃんと両手掴んでろよ」
妹「……神よ、どうか私に救いの手を差し伸べ……ぐふっ!」ズド
兄「……!」ググ
看守1「神様だぁ? んな得体の知れないもんが助けにくるはずねえだろが」
ジャンヌ「……く……はっ……う、ゲボッ」
看守2「うわ、汚ねぇ。吐きやがったぜこのアマ」
看守1「くっせー、腹の中身は俺らとなんも変わらないじゃねえか」ケラケラ
ジャンヌ「……うぅ、ひ、ひどい」
兄(……芝居とはいえ殺したい。こいつら、悪役はまり過ぎだろ)ググ
看守2「さぁて、お楽しみの時間だ」ニタァ
704:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 21:33:57.84:dnM90AcS0
ジャンヌ「い、いや、誰か、誰かぁ!」ジタバタ
看守2「ひゃっはっは、ここは監獄塔だぜ? 誰も来やしねえよ!」
ジャンヌ「こんな、こんなことのために、私は戦ってきたわけじゃ、ない!」グスグス
看守1「ほらほら、いい加減諦めな!」ガシ
看守2「ひゃっひゃっひゃ、一気にいくぜ」グイ
ジャンヌ「……お、お父様、お母様、……兄さぁん!!」ボロボロ
兄(……っ!! んの、くそったれがぁ!)ガタン
闇「――おっと、見せられるのはここまでだ」
兄(……スポットライトが!?)
男性客(馬鹿な、暗転だと!? ……おのれ、卑劣な真似を!)ググ
兄(……劇を、台無しにするところだった)ストン
兄(……こんなに胸がムカついたのは、生まれて初めてだ)
714:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 21:49:29.48:dnM90AcS0
異端審問官「あの女は、処女ではなかった」
代理裁判官「なんと」
異端審問官「聖処女というのは偽りだった。神の声を聞いたと嘯き、人々を混乱へ導いた売女だ」
兵士「さぁ、布を外せ!」
ジャンヌ「……う……あ」ピクピク
民衆「ざわざわ」
兄(磔刑。ジャンヌ、最後は火炙りにされちまうんだったな)
異端審問官「では、最後に言い残したことはあるかね?」クックック
ジャンヌ「……私、……私は、思いを曲げるわけには、いきません」ギラ
兄(……ジャンヌ……いや、妹)ジィ
723:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:06:43.18:dnM90AcS0
異端審問官「ほぅ、あくまで異端者であると認めないというか」
ジャンヌ「……誰が理解できなくとも、私は自らの信念に従います。性的な脅迫に晒されようとも」
代理裁判官「……性的とは?」
異端審問官「き、聞く耳を持つ必要はない! 火にかけよ! もはやこやつに心を改める気はない!」
観客「ざわざわ」イライラ
兄(……客席から殺気が、すげえな)
ジャンヌ「……聖女カトリーヌ、マルグリット、天使ミカエル」
ジャンヌ「これが、……あなたたちの、思し召しというならば、私は甘んじて、受け入れましょう」
ジャンヌ「私は、信仰を、あなたたちへの想いを、疑いません……」
ジャンヌ「だから、私を愛し、て……。私の全てと、引き換えでも、いい。……あなた、の、愛を……くだ……さ……」ガク
兄「――――」ジワ
734:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:23:16.72:dnM90AcS0
司会「続いては我らがメインヒロイン、ジャンヌダルク!」
ジャンヌ「……あぅ」ペコリン
観客「ザアアアアアア」ガタガタ
兄(スタンディングオベーション。まるで海鳴りだな――ん)
後方男性客「」ムク
兄(……やはり、悲劇は避けられなかったか)ガックリ
ジャンヌ「――! ――!」ヒラヒラ
兄「……手を振ってるの、俺っぽいな。さすがに声はそっからじゃ聞こえないぞ」ヒラヒラ
ジャンヌ「――!」ブイ
兄(はは、もうこんな役柄は勘弁してくれよ。襲われるのを見るのは懲り懲りだからな)
736:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:24:19.35:kScrswC70
妹「……はぁ……すっかり遅くなっちゃった。……あ!」
兄「よ、お疲れ。打ち上げ終わったみたいだな」
妹「兄さん! ……嬉しいです、迎えにきてくれたんですね」ニパァ
兄(……あんなシーンを連続して見せられた後じゃなぁ)ポリポリ
妹「ステージから兄さんの顔、ちゃんと見えましたよ。ずっと席を立たないでいてくれましたね」
兄「あの位置じゃあいなくなってもすぐにバレちまうだろ――ほい」ポイ
妹「え、わぁっ!」パシ
兄「ちょっと遅いけど、祝杯と行こうか。ジュースだけどな」ニヤ
妹「……えへへ、ありがとうございます」
746:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:42:17.14:dnM90AcS0
妹「本当に助かりました。この辺り夜は人気がないから、ちょっと通るの不安だったんです」
兄「送ってくれる男子なんて選り取り見取りだろ?」
妹「もう、またそんなこと言って。本当意地悪ですね、兄さん――う」ブルリ
兄「……やれやれ」パチンパチン
妹「……? わっ」パサ
兄「これ着てろ。少しはマシだ」
妹「は、はい。ありがとうございます。……今日の兄さん、優しいです」ギュウ
兄「失礼な、俺はいつでも優しいぞ」ムス
妹「……温かい。ふふ、兄さんの温りが、まだ残ってる」ウットリ
兄(また、人の気も知らないでそういうことを)ハァ
750:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:51:57.91:dnM90AcS0
兄「ただいま」
妹「ただいま戻りました」
父「おう、お帰り」
義母「寒かったでしょう、すぐお風呂にする?」
兄「ああ、そうだな。おい妹、おまえ先に」
妹「じゃあ、兄さんと一緒に入ってきますね」ニコ
兄「」ドサ
兄(って、いきなり何を言い出すんだよおまえは――)
父「ああ、たまには二人で入るのも悪くないかもな」
母「湯冷めしないうちに出てくるのよ?」
兄「」パクパク
妹「はい、では行きましょう。兄さん?」グイ
751:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:52:22.69:w3HDYCzG0
兄「……お、おまえいったい何をしでかした」
妹「えと、なんのことでしょうか」
兄(……まさか、こいつ)
兄「……もしかして、親父と母さんにもあのチケット」
妹「渡しましたよ? 一般客が入れるんですから当然でしょう」
兄(やっぱりか。……どういう思いで観てた想像はつくが、それだけでああはならないはず)
兄「おまえ、あらかじめあの二人になんか言っただろ」
妹「その話でしたら、浴室でにしませんか? 早く温まりたいですし」
769:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:11:53.89:dnM90AcS0
兄「水着着用、それ以外は認めん」ビシ
妹「はい、譲歩します」
兄「……ずいぶんあっさりと認めたな」
妹「無茶ぶりをして小さな意見を通すのは心理学の初歩ですから」ニコニコ
兄(……ぬうう)
妹「一緒にお風呂なんて久し振りですから楽しみです」ルンルン
兄「もういいから、とっとと着替えてこい。ささっと入ってさっと出るぞ」
妹「そんなもったいないこと」
兄「はよ」
妹「うぅ、わかりました。逃げちゃだめですからね」バタン
兄「……くそ、この展開は読めなかったな」
兄(水着があれば、興奮しないですむかな。……無理だよなぁ、劇の後だし)
773:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:21:40.84:sjjFG99l0
浴室
兄「よし、体は洗い終わったな」
兄(……妹、ちょっと遅いな)
兄「い、いやいや、そっちの方がいいじゃないか。よし、髪の方も」
ドア「バタン」
兄「」
妹「し、失礼しますね、兄さん」モジモジ
兄「お、おう……」
兄(薄桃色のビキニ……だと、う、胸の谷間が眩しすぎる)
妹「ど、どうですか? 似合ってます」
兄「い、いいと思う。けど、おまえそんなの持ってたっけ?」
妹「秋バーゲンで安くなってたのを買ったんです、人前で着るのは初めてですよ」
兄「そ、そか」カァァ
妹「で、です」カァァ
780:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:33:01.50:dnM90AcS0
兄「浴槽も二人だと、狭く感じるな」
妹「そ、そうですね」
兄(……だめだ、妹が目の前にいるだけで顔が熱くなる。心の鼓動が収まらん)
妹「あの、兄さん」
兄「なんだ?」
妹「……劇で襲われる私を見て、どう思いました?」
兄「……おまえ、この状況でそれを聞くか?」
妹「私は……すごく嫌でした。鳥肌が立ちました。芝居とはいえ、大好きな兄さんの目の前で、あんな……」
兄「だったら、なんで俺を呼んだんだよ!」
妹「……知って欲しかったんです、私の気持ちを」ズイ
兄(ちょ、こんな狭いところで!)
788:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:44:52.24:dnM90AcS0
妹「兄さん……」ギュウ
兄(む、胸が、直接当たって)ムニ
兄「お、落ち着け妹。俺たちはあくまで――」
妹「お、お願いです。そのまま、黙って聞いてください」ガクガク
兄(だー、震えるくらいならこんなことやんなよ!)
妹「私にとって兄さん以外の人と行為をするということは、劇のようにされることも同然なんです」
兄「――――っ」
妹「私、怖い。そんな思いをするのは、絶対嫌なんです。もう、兄さんしか、考えられない」ギュウ
兄(……くそ、俺だって)ギリギリ
791:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:50:50.09:dnM90AcS0
妹「私、あの時兄さんが来てくれればどんなに幸せかと思いました」
兄「……俺だってあの時は、飛び出しかけたさ」
妹(……!)ジワ
妹「嬉しい、です。それ、嘘じゃないんですよね」ウル
兄「そういう顔すんのは、卑怯だろ」
妹「卑怯でもいいんです。兄さんの心を射止めるためならなんだってします」
妹「何度も諦めようと思った。自分なりに葛藤して、でも思いは変わらなかった。ジャンヌのように」
兄「……妹」
妹「舞台の上でも言った台詞。あれは、兄さんだけに伝えたかったことです」
兄「……っ」
妹「兄さん、どうか私を、私だけを、愛してください……」ギュウ
808:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:03:46.58:peOXJqkv0
兄「……参った、俺の負け」
妹「……え? ……きゃっ!?」グイ
兄「――ん」チュ
妹(――に、兄さんの方から、キス……初めて)トクントクン
兄「……ん」レロ
妹(……し、舌が入っ――や、歯ぐき、抉られ!)ザプ
妹「――ん、ぷぁ――んふっ!」チュパ
妹(……に、兄さん。兄さん、兄さん! あぁ!?)ヒュッ
兄「胸も、ずいぶんと挑発的に押しつけてくれたなぁ」モミ
妹「――ぁ! ――ぁぁっ!」ザバッ
妹(だ、ダメ! 声、殺し切れない!)ガクガク
兄「この調子だと、終わるまでにお湯が全部なくなっちゃうかもな」キュ
妹「ひゃあん!?」ビクン
828:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:15:25.56:bl4VSGxu0
兄「どうだ、気持ちいいか」キュッキュ
妹「わ、わからない、です。……ん、兄さん」フルフル
妹(だ、駄目……膝が笑って……立てない)ガクガク
兄「もうこんなに固くして。ほんと可愛いな、妹」
妹(あうぅ、どうしよう。兄さんの言葉だけで、体が高まっちゃう)ゾク
兄「膝の裏、手入れるぞ」
妹「え、ひゃわ!?」グイ
兄「よっこいしょっと」ザパー
妹「や、兄さん! こ、こんなおしっこするみたいな格好!」カァァ
兄「もう十分、体温まっただろう?」ニヤ
836:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:21:59.28:bl4VSGxu0
兄「横たえるぞ、よいしょっと」
妹「あ、……あ」
兄「さて、どうして欲しい?」
妹「ちょ、ま、待ってください!」
兄「ん、なんだ?」
妹「に、兄さんの気持ちをまだ聞かせていただいて」
兄「さっき言っただろう。俺の負けって」ハァ
妹「ど、どういう、ことですか」
兄「おまえが襲われるのを見て、おまえが襲われるのが嫌だと聞いて、自分の気持ちがはっきりわかった」
妹「そ、それじゃあ……本当に」
兄「おまえは誰にも渡さない、渡したくない」
妹(……ああ、兄さん……私)ゾクゾク
842:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:28:18.14:bl4VSGxu0
兄「狭い風呂場でやるのは危険だからな。今日はおまえに気持ちよくなってもらおう」
妹「き、気持ちよく、ですか」
兄「はむ」グイ
妹(あ、上の水着、咥えられて)シュルン
兄「ん、形のいい、綺麗な胸だ」
妹「お、お褒めにあずかり、恐縮です」
兄「足、ちょっと開かせるぞ」
妹「え……ちょ、まさか」
兄「指、入れるぞ」スス
妹「」
妹「え、ちょ、いや、ホント、に……」カチンコチン
847:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:41:25.47:bl4VSGxu0
妹「――ぅ! ――ひぅ!――ひん!」ピクピク
兄「たった三分舌で舐めただけでも、こんなに固くなるもんなんだな」チュパチュパ
妹「そ、それは兄さんの、が」ガクガク
兄「ぱく」カリ
妹「い゛!」
兄(胸に意識が集中したところで、ポチっとな)クリリン
妹「ひゃん!? あっ、ああっ、んっ、あーっっ!」ビクンビクン
妹(駄目、こんな、こんなの! びりびりきちゃってっ、体がふわふわしてっ……)
兄「大分、出来上がってるみたいだな。ほんとに妹は、エッチな子だ」トローリ
妹「……ち、違います! それは、その」
兄「うん、なんだ?」
妹「して、くれるのが、兄さんだから、です」ボシュ
兄(……可愛すぎ)ウズ
848:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:42:10.46:pcwcMXUg0
妹「あっ! んっ! くうぅん! あふっ!」ガクガク
兄(だいぶ、声を抑えられなくなってきたな)ニヤニヤ
兄「そろそろ昇れるかな?」
妹「あっ! の、昇るって? ……んんんんっ!!?」ビクビクン
兄「んん、ちゅう」
妹「に、兄さん! き、汚いです! 駄目です! そんなとこ、んんっ!!」
兄「ちゃんと洗ってあるから大丈夫さ。さて、どれくらい出てくるかな」ズ
妹(そ、そんな。に、兄さんが私の、あそこ、舐めて! あ゛あ゛! 頭が、真っ白く!)ビクビクビク
兄(やっとお豆さんが顔を出したか。仕上げだな、いっせーの、せぃ!)グリ
妹「―――ひっ!! ~~~~~~ぅぅぅぅううううう!!!?」プシュプシュ
兄「……わ、凄い量だな。もったいない」ジュルルル
妹(か、体、痙攣して! え、う、嘘!? 兄さん飲んでる! わ、私の、だ、も、わけ、わから、な……)ガクガク
867:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:05:16.20:bl4VSGxu0
兄部屋
妹「ベッド、正座」ビシ
兄「……はい」チョコン
妹「一応言い訳を、聞きましょうか」ジロ
兄「すみません、妹があまりに可愛すぎて調子に乗りました」タハー
妹「……う、だ、だからって! 気を失うまでやるなんてひどいじゃないですか!」カァァ
兄「いや、初めからあんなに盛り上がるとは、正直……予想外だったというか」ポリポリ
妹「//////」ボシュ
兄「まあでも、結果オーライだな。あのままやってたら絶対二人とも風邪引いてたし」
妹「……なんか納得がいきません」プンプン
兄「自分でするよりは、気持ちよかっただろ?」
妹「//////」ボシュ
887:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:23:27.19:bl4VSGxu0
兄「あー、すっきり。ここ三週間のもやもやが消し飛んだよ」
妹「……ねえ、兄さん。期間限定の恋人期限は、あと一週間残っているんです」
兄「ああ、そうだったっけか」
妹「最終日はクリスマスなんですけど?」
兄「」
妹「素敵なプレゼント、期待してもいいんですよね?」キラキラ
兄(……完敗だな、根を上げるのはこの日に絞ってたってことかよ)
兄「わかった、考えとくよ。それで、おまえは?」
妹「私は、もう兄さんに差し上げるものは決まっています」
妹(あるいは、今日差し上げていたかもしれないものですけど、ね)
兄「そっか。じゃあ、その日を楽しみに待つとする――と」ドサ
妹「――駄目ですよ。今度は兄さんが」
兄(ちょ、ズボン下ろされ)
妹「私で気持ちよくなる番で、――ふぁ、ふぇっくしょん!」ガリ
兄「」finale
888:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:24:23.48:OJF2GlHf0
妹「あ、はい。それが強く惹かれ合うこともあり得るのではと」
兄「……危ない妄想を目ぇ輝かせながら口にしないように」
妹「ですけど、私にとって兄さんが血の繋がらない異性であるという現実は変わらないわけで」
兄「それがなんだ、俺に襲われることを心配してるってか?」
妹「いえ、その、期待しているんですけれど」ポ
兄「」
妹「兄さんは頭が固いので、どうやって攻め落とそうかと考えあぐねているのです」
兄(本人の前でそれを言うとか、おちょくっとるのかこいつは。……ん、いやまてよ)
兄「――ああ、そうか、そういうことか。わかった」
妹「あら、物分かりのよい。でしたら契約書に拇印を――」
兄「すっかり忘れてたぜ、おまえ演劇部だったもんな。つまりこれは役柄かなんかの練習だ。な、そうなんだろ?」
妹「近々芸祭があるのは事実ですが、別にそれとは関係ありませんよ」プゥ
兄「……あのさぁ妹。おまえ、自分で言っていることをちゃんと理解してるのか?」
妹「はい、兄さんに男性的魅力を感じることがちょくちょくあるので、試しに期間限定でお付き合いしてみてはどうかと」
兄「付き合うだ? おまえの容姿だったら」
妹「性格は……?」ウル
兄「はいはい、性格もー。はともかく、男なんて選り取り見取りだろ」
妹「はぁ、まあ打てば響くでしょうね」
兄(嫌な言い回しだ)
兄「だったらそうすりゃいいだろ。俺より格好いいやつなんざごまんといるぞ」
妹「兄さんは私に他の殿方とお付き合いしろと、そう仰るのですか」
兄「そうは言ってない、俺に固執する理由がわからんと言っているんだよ」
妹「それは、身近にいて間違いを犯しそうにない相手だと信じれるからこそ、お願いしてるんじゃないですか」
兄「……ちょっと待ちやがってくださいね。おまえ、さっきは期待しているかどうとか」
兄「……ちょっと待ってね。おまえ、さっきは期待しているかどうとか」
妹「あ、そうでしたね。では、さっきのは撤回します。失言したのはまことに遺憾です。はい、これでいいですか」
兄(なんという棒読み。しかもそれ謝ってねえし)
兄「そもそもの根本的な問題として、兄妹は付き合えないわけだが」
妹「その点はご安心ください」
兄「ほぅ、安心の根拠があると」
妹「しかと」
兄「では、一行で述べよ」
妹「既成事実に勝る物はなし」
兄「」
妹「例外として、私の想いが儚い幻想に過ぎなかった場合には話も変わってきますけれど」
兄「幻想だ?」
妹「つまり、兄さんが箸にも棒にもかからぬ俗物であるとわかればちゃんと関係を終わらせますので」
兄「……んだと?」カチン
妹「私に釣り合う自信がないのでしたら、この話はなかったことにしていただいても構いません」
兄「一方的に要求してくるワリにずいぶんと高飛車な物言いじゃねえか」
妹「怒られることは初めから覚悟の上です。返答のほどは?」
兄「はっきり言うが、気が乗らんな」
妹「兄さんに私の頼みは断れません。要求が無茶でなく、且つ私が兄さんを信じている以上は」
兄(……さっきなくてもいいっていったばかりじゃないか)
兄「……期限は?」
妹「そうですね。では」チラ
カレンダー「今日は11月25日なんだZE」
妹「明日から、ちょうど一カ月間ではどうでしょうか」
兄「……もうひとつ確認しておく。俺がおまえに愛想を尽かした場合はどうする?」
妹「そうさせないよう努力はするつもりですけど」
兄「万が一ってこともあるだろ」
妹「そうですね、交際相手としてそぐわないのであれば、どうぞ私をこっぴどく振ってください」
兄部屋
兄「ったく、なんなんだあいつ。昔はもうちょい可愛げあったのに」バッタン
兄(最近は態度も素っ気ないしな、まあ昔みたく四六時中くっつかれても困るけど)
兄(気まぐれの暇潰しにしちゃあかなり悪質だよな)
兄(結局押し切られて了承しちまったが、冷静に考えてみれば問題だらけだ)
兄(ぶっちゃけ、才色兼備のあいつに釣り合うほどの自信はねえし)
兄(それに、世間体っていうのもある。状況だけ見てばどこのエロゲだよって感じだな)
兄(……大体、あいつもあいつだ。兄に襲われることを期待してる妹なんてありえねえだろ)
兄(あいつは俺にとって大切な家族。それ以上でもそれ以下でもない)
兄(そうだ、遊びで付き合ったところでその関係は揺らがない)
兄(ここは敢えて挑発に乗った振りを続けて、タイミングを見て突き放そう)
兄(いや、そうしなけりゃな。わざと失望させてでも)
妹部屋
妹「ふぅ、まず第一段階はクリアですね」パタン
妹(色仕掛けという手もないではないですけど、切り札は奥の手に取って置きましょう)
妹(成功したとして私が痴女に思われるのは、本意ではありませんからね)
妹(あとは、兄さんが私を異性として見るのに相応しい場に連れ出せば……)
妹(さて、何が出るかな、何が出るかな)ゴソゴソ
タンス「ぬぅん」
妹「ダダーン、今日の兄さんの下着は、羊さんのトランクスー」メェー
妹(……ブリーフもないのか、今度それとなく探りを入れてみましょう)
妹『兄さん、ブルースリーとブリーフってちょっと似てますよね。ところでブリーフ持ってないですか』
妹(……ふふ、我ながら完璧すぎますね)
妹(スーハー、スーハー、……うぅ、グゥレイト! 兄さんの香り、お天道様の香り!)
妹「明日から兄さんと恋人同士。うぅ、今日は興奮して寝つけそうにありません」ゴロゴロ
翌朝
義母「はいあなた、アーン」
父「やだなあ、母さん。子供たちの見ている前で――」デレデレ
妹「はい兄さん、アーン」
兄「……ぱく」
父&義母「」
妹「どう、美味しい?」
兄「まあ、うまいよ」
妹「よかった! 腕によりをかけて作ったんですよ。さあ、今度は卵焼き行っちゃいましょうか」
兄「まてまて、おまえのが全然減ってないだろ」
妹「ああ、それは盲点でした。では、兄さんが私に食べさせましょう。これで全て解決」
兄「そうだね、100%遅刻することを除けばね」
父「お、おまえたち。一体なにをしてるんだい?」オズオズ
妹「何って、パパとママが普段していることをやっているだけですよ?」
父「そ、それはそうだろうが、私たちは仲睦まじい夫婦でおまえたちは」
兄(自分たちにふざけた形容詞つけんな、この色ボケ親父)
妹「今だけ期間限定の恋人なんですよ。ねー?」デレデレ
義母「そ、それ本当なの? 兄くん」
兄「はぁ、まぁ。なんだか、そういうことみたいですね」
妹「なんですか兄さん、その態度は。そんなおざなりな演技では主役を張れませんよ」プンプン
兄「主役て、演劇部になった覚えはねえ」
兄(ここまで徹底してやるとは思ってなかったが。完璧主義って怖い)
妹「じゃあ、行ってきます。さぁ、兄さんも急いで」
兄「……んじゃ、行ってきます」
義母「え、ええ。……二人とも気をつけてね――あ」バタン
父「……さっきのは、なんだったんだろうな」
義母「二人になにかあったのかしら。あ、あなた、ネクタイが曲がってるわよ」スス
父「おお、済まんな母さん。うん、まだなにもないと思いたいところだが」
義母「まさかあの年で肉体関係を持っていたり、しないわよね」
父「さすがにそれはないだろう。なんとなく、ぎこちなさが拭えなかったようだし」
義母「それなら、いいんだけど。はい、これ、今日のお弁当よ」
父「ああ、ありがとう」
父(やれやれ、今日も会社の連中に羨ましがられてしまうな)デレデレ
義母「さておき、少し不安ね。二人とも年頃だし、間違いが起きないとも限らないんじゃ」
父「とはいえ、まだ特定の相手もいないようだからな。恋人ごっこをしたくなったってところじゃないのか?」
義母「でも、妙なことにならないかしら。妹ちゃん、小さい頃から兄くんにぺったりだったから」
父「それくらいは弁えているだろう。子供の倫理観を信じるのも親の役目だ」
義母「そうよね、他でもない私たちの子供だもの。取り越し苦労よね」
父「そうとも。――それじゃあ、行ってくるよ」
義母「はい、行ってらっしゃい。私が寂しくなって泣かないように早く帰ってきてね。――チュ」
父「チュ。ははは、まいったなぁ」デレデレ
妹「ふふ、兄さんの手、温かいです」
兄「外が相対的に寒いだけっすなぁ」
妹「もぅ、そんなこと言って。少しくらいムードというものを考えてくれてもいいじゃないですか」
兄「通学中にんなことを考えるカップルは世界中のどこにもいるめえよ」
妹「そんなことないですよ。駅中でやり合ってる人とかいるじゃないですか」
兄「そういう恥知らずな関係になるのは断固として拒否する」
妹「同意です。が、私と兄さんの絆の深さを見せつけてやるのはやぶさかじゃありませんよ」
兄「誰にだ、そもそもなんのために」
自転車「チリンチリーン」
兄(おっと、自転車か)
自転車男「――おらおらー、どいたどいたー」
自転車男(朝っぱらから手繋いでンじゃねぇ、ジャリガキ共!)
兄「おい妹、手を――お」ギュン
妹「たぁっ!」グイ
自転車通勤「な、なにィ!? ――ぐほぁ!」ズガン
兄(ちょ、ちょお! ラリアットとかマジ危険)
妹「兄さんとの繋がりを断とうなんて、とんだ甘ちゃんでしたね」フフン
自転車男「…………」ピクピク
兄(し、死んでないだろうな)
妹「さてと兄さん、なんの話でしたっけ」
兄「ああ、だからいちいち見せつける意味があるのかって」
妹「それは、関係を公認にする――」
兄「話が違うだろ、あくまで期間限定という話だったはずだ」
妹「もちろんもちろん。でも、期間限定であっても恋人のように振る舞ってくれないと」
兄「バカ言え、付き合い始めのカップルなんてのは大概ぎこちないもんだろ」
妹「……あぁ、言われてみればそうかも知れませ――と、開かずの踏切が」カンカン
兄「この時間じゃあ締まると五分は待ちぼうけコースだな。とっとと渡り切るぞ」
妹「わっととっ! い、いきなり手を引っ張らないでください」
兄「急がないと電車が来ちまうだろ。ほら、引っ張られてるだけじゃなくておまえも足を動かせって」
妹「わ、わかりましたから。い、痛ぃ、兄さん。あ、もっと、優しく……」
兄「……朝っぱらからけったいな声出すなよ」タッタッタ
妹「ちょっと、ちょっと兄さん」
兄「はい、なにか」
妹「なにか、じゃありませんよ。学校に入るなり手を放すなんてひどいじゃないですか」
兄「妥当な処置だ。どこの校則だって不純異性行為は禁じられてるだろ」
妹「なっ、私と兄さんの関係のどこか不純だと――モガ!?」
兄「バ、バカ、声が大きいってえの」
先輩「あら、おはよう兄くん。今日は早いのね」
兄「あ、先輩。お、おはようございます」
妹「むーむー!」ジタバタ
妹(……あ、ピーンと来ました)
妹「ペロリ」
兄「うぉ!」ビクン
妹「ふぅ、ひどいじゃないですか兄さん」
兄(な、舐められただと)
妹(ほんのり兄塩)
先輩(仲のいい兄妹ね、ちょっと羨ましいかも)
先輩「妹さんもおはよう。珍しいわね、兄妹揃って仲良く登校なんて」
妹「おはようございます。そうなんですよ、いつも兄が遅刻ギリギリなので私がしっかり面倒を見ないと」
兄「おいこら、先輩の前でそういうことをいうんじゃねえ」
先輩「あは、兄くんもしっかり者の妹さんを持って幸せねぇ」ニコニコ
兄「口うるさいだけですって。どうせなら先輩のようなお姉さんが――イデ!」
妹「このように脇の甘い兄がいつもご迷惑をかけています」ペコ
兄「こら、なにもほんとに小突くことはねえだろうが」
先輩「くすくす、ほんとうに仲が良いのね。私は一人っ子だからそういうの、憧れるわ」
妹「そうなんですか。でも、いればいるで手がかかりますよ」
妹(むしろ、手塩にかけて私色に染めたい)ゾクリ
兄「てめえの兄貴をペットのように言うんじゃねえ」
妹「でしたら、逆がいいですか?」
兄(……真顔が怖いです)
先輩「ふふ、心配しないでも大丈夫よ妹さん」
妹「……そうですか?」
先輩「兄くん、生徒会では意外としっかりしてるから」
兄「もう、先輩までそんな。意外と、は余計ですって」
先輩「あら、ごめんなさい、フフフ」
妹「」イラ
妹「……さぁ、早く行きましょう兄さん」
兄「て、うぉっと、いきなり引っ張るなよ」
妹「では先輩、失礼します」
兄「す、すみません。放課後に」
先輩「え、ええ。またね」
先輩(い、一瞬睨まれたような。気のせい、かしら)
チャイム「ゴーンゴーン」
兄「よっし、ようやく昼休みだぜぃ」
携帯「ガクガクブルブル」
兄「っと、誰だ……って、まさかと思えば」
携帯「着信中――妹」
兄(おいおい、勘弁してくれ。まさか昼食でまでアーンとか言い出さねえだろうな)
兄(いやまてよ、ここは敢えて気づかない振りをするのもひとつの手か)
兄(うむ、我ながら良い案だ。後で追求されても鞄の中に入っていたとか言って誤魔化しておけば)
???「どうして取らないんですか? 鳴ってますよ、携帯」
兄「ああいや、気にしないでくれ。どうやらただの迷惑電わーお」
妹「わーお、じゃありませんよ。迷惑ってどういうことですか。聞き捨てなりませんよ」プクゥ
兄「おまえ、直接きたのならわざわざ携帯かける必要ないだろ」
妹「今スルーしようとしていたのはどこのどなたですか」
兄「そ、そんなことより、二年の教室によく堂々と入ってこれるな」
妹「……何か問題がありましたでしょうか」
兄「いや、特には。ただ、普通下級生は躊躇するもんだと思うが」
妹「やましい理由がなければ臆することもありません」
兄「感心するくらい堂々としてるなぁ」
妹「お言葉ですが、兄さんは世間の目をいちいち気にし過ぎです」
兄(……バッサリ斬ってくれるなぁ)
妹「さぁ、今日は栄えある門出の日ということで、腕によりをかけて愛妻」
兄「特製」
妹「そう、特製弁当を作ってきました。さぁ、一緒に食べましょう」
兄「いや待て、さすがにここでは――っ」
妹『兄さんは世間の目をいちいち気にし過ぎです』
兄(う、言われた先から気にするのもなんか悔しい)
兄「……しゃあねえ、ひとまず俺の席に座ってろ。空いてる席を借りてくる」
妹「はい、待ってます」チョコン
妹(あ、お尻に兄さんの温もりが残ってる)
クラスメイトの瞳「ジロジロ」
クラスメイトの口「ザワザワ」
クラスメイトの耳「ピクピク」
兄(まー、こうなるわな。アーンパンチを仕掛けてこなかったのが不幸中の幸いか)
妹「どうです、兄さんの好きな唐揚げ。片栗粉塗してみたんですけど」
兄「あ、ああ、すごくご飯と合う」
兄(さすがに美味い。俺好みの味付けをよくわかってやがる)
妹「ならよかったです。気合入れて作ったかいがありました」
兄「おまえ、普段は友達と食べてるんだよな」
妹「はい、大抵は。兄さんもですよね」
兄「ま、大体な。一年女子って、どんなことを話しながら食べてるんだ?」
妹「どんなことと言われても、何の変哲もない日常会話ですけど」
兄「具体的な話題は?」
妹「そうですね。昨日は、新作のファッションとか、ドラマの話とか、気になる先輩の話とか」
兄「ふーん、なるほどね」
兄(やっぱ女子には色恋話もあるんだな)
妹「兄さんはどうですか? やっぱり同じですか?」
兄「ほとんど趣味に偏ってる。楽器にバイクに攻略中のゲームに、たまに気になる」
妹「妹」
兄「の話とか、って勝手に被せんな!」
妹「あは、バレてしまいましたか」
兄&妹「ご馳走様でした」
妹「はい兄さん、紅茶ですよ」
兄「お、用意が良いな」
妹「いえ、それほどでも。――あの、食べ終わったばかりで恐縮なのですが」
兄「なんだ?」
妹「全体的な感想を聞かせてください。今後作る時の参考にしたいので」
兄「昼飯か? 文句なくうまかったよ。量も適量だった。95点」
妹「そうですか! ふふ、とても嬉しいです」
兄(そ、そんな顔されるとこっちまで照れるな)
妹「――で、減点箇所はどこですか?」ジ
兄(……え、そうくるの?)タジ
妹「どこですか?」
兄(嘘で100点って言っても手遅れっぽいな。はぁ、昔から融通が効かないというかなんというか)
兄「煮浸しの水分が抜けて、仕切りを超えて隣のご飯にまで及んでた」
妹「……あ」
兄(これは多分、踏切前で走ったのも影響してるかな)
兄「俺だったら下に千切ったキッチンペーパーを敷いた。まあ、そんだけなんだけどさ」
妹(……う、迂闊)ガーンガーン
兄「おいおい、そんなにショック受けることもないだろ? ほとんど影響はなかったんだし」
妹「……本当ですか?」
兄「ああ、誓って本当だ」
妹「……なら、いいですけど」
兄「ほんと料理の腕上げたよな。おまえ、いい嫁さんになれるよ」
妹(む、他人事のように……)カチン
妹「――兄さん、話は変わるのですが」
兄「ん、なんだ?」
兄(この目、腹に一物ありそうな。警戒するに越したことはないか)
妹「三週間後の芸祭ですが、兄さんにも来てもらえるのですよね」
兄「芸祭は、来るもなにも全員出席、って、ああ、演劇部の発表ってことか」
妹「そうです」
兄「催促するってことは、おまえなにか役もらったのか?」
妹「ええ、何を隠そうメインヒロインなんですよ?」ブイ
兄「うぉ、大抜擢じゃねえか! よく一年で射止められたな」
妹「なんてね。役柄に少し問題がありまして、競争相手が他に二人しかいなかったんです」
兄「問題? ああ、もしかして嫌われ役なのか? シンデレラの継母みたいな?」
妹「いえ、そうではないのですが」
兄(なんだ、言い淀むようなひどい役なのか?)
妹「あの、ここではなんですので、場所を変えていいですか?」
兄「……ああ、いいけど」
屋上
妹「寒! ……さすがにこの季節は誰もいませんね」
兄「長居しなければ問題ない。それに、あまり聞かれたくない話なんだろ?」
妹「ええ、まあ、そうです」
兄「じゃあ、教えてくれ」
妹「ええ、実は話の佳境で少々、その、何と言いますか」
兄「なんだよ、そこまで言ったならちゃんと」
妹「……わ、わかりました。ええと、ですね」モジモジ
兄「おぅ」
妹「……されるんです」
兄「んん? 悪い、声が小さくて聞き取れなかった」
妹「ですから、敵国の兵士たちに……犯されるシーンが、ありまして」カァァ
兄「」
おやおや
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/25(日) 10:47:36.63:/qmAIZJi0妹「舞台設定は中世のフランスです。動乱の時代ですね」
兄「……マリーアントワネット? それとも、ジャンヌダルクか」
妹「後者です。最後に囚われた時、そういう濡れ場があって」
兄「って、待て待て! 芸祭は一般公開されるんだぞ? 当然小学生のガキだって来る」
妹「落ち着いてください兄さん、何も直接的な行為に及ぶというわけではなくて――」
兄「当たり前だ! ――じゃなくて、おかしくないか?」
妹「あの、おかしいというのは」
兄「一般公開されるのにそんなストーリーが芸祭として認められるはずがない」
妹「私たちもそう思っていたんですが、不思議と認められてしまったんです」
兄「し、信じられねえ、何考えてんだうちの学校。PTAから苦情が殺到するぞ」
妹「一応、紙でできた戦衣装を破られるまではやるんですが、ちゃんと下にTシャツは着込みますし」
兄「そりゃあ、そうだろうけれど……」
兄(……なんだそりゃ。俺の妹がよりによって公開レ○プ? うぁー、想像したくもねえ)
妹「台本は、確かに史実と違って脚色されている部分も多いです」
兄「……だろうな」
妹「反面、史実では枝葉の部分が曖昧なので、倫理観がほとんどなかった歴史的背景を考慮して」
兄(より、リアリティを追求した結果ってか。まじ勘弁)
兄「はぁ、芸祭休むかな、俺」
妹「そんな! サボリなんて駄目ですよ、兄さん」
兄「つうか、なんだってそんな役柄引き受けたんだ。自分の置かれた立場、わかってるのか」
妹「立場って、どういうことですか」
兄「演劇を見ている男共からおまえがズリネタにされかねないって、そう言ってんの」
妹「ズっ! ……な……なな」カァァ
兄(冷静な妹といえど、さすがに動揺するか。でも、はっきり言った方が伝わりやすいからな)
兄「しばらくは噂にだってなるだろうさ。やりたがるやつが少なかったのも当然だ」
妹「……うぐ」
兄「まったく、いくらメインヒロインだからってそりゃないぜ。貧乏くじ掴まされたも同然じゃねえか」
妹「……あぅあぅ」ジワァ
兄(う……やばい。涙目だ、ちょっと言いすぎたか)
兄「と、とにかくだ。今からでもいいからそんな役柄降りちまえ。なんなら俺も一緒にかけあってやるから」
妹「そ、そんな、そんなの無理です! 全体的には素晴らしい脚本ですし、みんな必死に練習してきたんですよ?」
兄「それで、おまえは堪えられるのか?」
妹「……え」
兄「劇の後で、好奇と欲望の視線に晒されてもいいのかよ」
妹「……それは」
兄「どうなんだ」
妹「……に、兄さんが」
兄「……俺? 俺がなんだ」
妹「兄さんがちゃんと見守ってくれているなら、平気です」
兄「見守るって、おまえらの劇を視聴しに来いってか!?」
妹「来て、くれないんですか?」
兄「だって、おまえが……いくら芝居とはいえ、襲われるとか」
妹「兄さんに具体的なこと言われたから、本当に怖くなってきちゃいました」ガクガク
兄(……まいったぞこりゃ)
兄「お、俺のせいにされても困るぞ。自分の浅慮が招いたことだろ」
妹「……じゃあ、私はどうすればいいんでしょうか」
兄「わからねえよ。つうか、襲われる場面になれば男に圧し掛かられたりするわけだろ?」
妹「はい、その演技のときは、正直すごく怖いです。自然と声が震えて、生々しいって褒め言葉を頂戴しました」
兄(……怖気がするわ。真に迫った妹の悲鳴とか聞かされる身にもなってくれっつうの)
妹「でも、兄さんが傍にいてさえくれれば、怖いことも我慢出来ます。劇の最中も、その後も」
兄「……肝心なことを聞いていなかったけど。おまえはその役、やりたいのか?」
妹「それは、はい。誰にも屈しない高潔な心を胸に秘めて命を落とした乙女。その悲哀を表現したいんです」
兄(ほんと、根っこは強いんだよな。だけど)
兄(こいつのためを思えば、あー、どう答えるのがベストなんだろ)
妹(………………計算通り)ニィ
妹部屋
妹「ふぅ、よいしょっと」ギィ
妹(これで、第二段階もクリアです。なかなかに順調ですね)
妹(あまり動いていると怪しまれますし、しばらくは静観しましょう)
妹(……兄さん、ちゃんと動揺してくれていました)ジーン
妹(欲を言えば、敵兵士に志願してくれれば最高だったんですけど)
妹(どのみち一年にそんな権限などありませんし、しょうがないですね)ハァ
妹(たとえそれがうまくいったとしてもそれはそれで問題)
妹(……襲ってくる兄さんを見たら、本気になってしまいそうですし)モジ
妹(なんだかんだでこの微妙な距離感は心地いいんですよね)
妹(とはいえ、そろそろもどかしくなってきました)
妹(真綿で締めるようにじわじわとスキンシップを測り)
妹(距離を多少なりとも縮めたところで寝取られるところを見せつける)
妹(名付けて、吊り橋効果で兄悶絶作戦!)ドンドンパフパフー
妹(人は、物が落ちそうになったのを見れば反射的に手が伸びるもの)
妹(今のうちに、アドリブの台詞を詰めていかないとですね)
妹(必ず、心を絡め取れるような演技をしてみせます。覚悟していてくださいね、兄さん)ガッツ
兄部屋
兄「……ふうぅ、どっと疲れたぜ」ドサッ
兄「冬場とはいえ汗かいたし、風呂入らなきゃな」
兄(……冷や汗の方が多かったが)
兄「芸祭か、来る日が怖すぎるな」ヌギヌギ
兄(あくまで演技ですから、って言われても、脳内補完ってのがあるからな)
兄(とりあえず、会場に入るだけでも問題ないだろ。後でチケット見せれば済むし)
兄(考えすぎてもしょうがない。前向きに考えよう)
兄「着替え着替えっと」ゴソゴソ
兄「うし、準備完了。いきますか」
浴室
兄「かぁー、やっぱ冬場の風呂はたまらんなぁ」ジワァ
兄(と、いかんいかん。我ながら少しオヤジくさかったな)
兄(一度入るまでがめんどいけど、入ると気持ちいいんだよなぁ)
兄「おや、この声は」
妹「ふんふーん、トゥトゥトゥトゥーン♪」ルンルン
兄(やっぱり妹か、なんだか機嫌がよさそうだ)
ドア「バタン」
兄「……へ?」
妹「一番風呂ー! ――って」
兄&妹「」
妹「…………」パクパク
兄「お、おまえ! 浴室の電気ついてる――」
妹「ひゃああぁ!?!?」ガバッ
ドア「バッタン!」
妹「な、なな、なんでここに兄さんが!?」アゥアゥ
兄「じ、自宅の風呂に入って何が悪い!」アワアワ
兄(や、やばい。完全に目に焼き付いちまった)ジク
妹「うぅう、まだ誰にも見せたことなかったのに」
兄「……ぬぐ」モジ
兄(だー、落ち着け! あいつはただの妹だぞ!)
妹「……み、見ました?」
兄「しょ、正直に言う。胸から上は」
兄(……ほとんど生えて、なかったな)
妹「……やっぱり見たんですね」
兄「見えたんだ! どう考えたって不可抗力だろ! こっちがびっくりだわ!」
妹「……うう」
兄「と、とりあえずそのままだと風邪引くだろ。厚めのタオル羽織ってトイレ入ってろ、すぐに空けるから」
妹「……うぅ、はい」グスン
トイレ「バタン」
脱衣場
兄「ふぅ、まじ焦ったぜ」
兄{……当たり前だけど、すっかり女の子らしくなってたな。胸とか膨らんで)ググ
兄(う、いかんいかん。今は考えるな)ブルブル
兄(湯船に入ったタイミングだったのがまずかったか)
兄(でも、電気つけてれば普通誰かが入ってるって思うよな)
兄(しっかり者に見えて、どこか抜けてんだよな)パサッ
兄「着替え終わった。@10秒したら出てきていいぞ」
妹「あ、はい。すみませんでした、兄さん」
兄「いいって。じゃあ、ちゃんと温まってから出るんだぞ」シャッ
浴室
妹「……はぁ、考え事してるとほんと駄目ですね、私」
妹(絶好のチャンスだったのに、咄嗟のアドリブができなかったのは痛いです)
妹「……見られてしまいました、よね」
妹「少し、持ち上がってましたし」カァ
妹(い、いや、これはむしろ喜ぶべきことです)
妹(私の体を見てちゃんと欲情してくれた。インポテンツの可能性は否決されました)ワーイ
妹「…………」キュッキュ
シャワー「ジャー」
妹「これなら、音も聞かれない――ん、くぅん!」クチュリ
妹(よ、予行演習です。ご尊顔お借りしますね、兄さ……んっ)ツプ
ダイニング
義母「はい、はーい。それでは失礼しますね」
電話「ガチャ」
義母「あの奥さんたら、話が長くてほんと大変。切るタイミングがなかなか掴めないわ」
義母(……あれ。まだガスが突きっ放し)
義母「確か、電話が来る前にもついていたわよねぇ」
義母(誰がお風呂入ってるのかしら。兄くん? それとも妹ちゃん?)
義母(……ちょっと一言声をかけてこようかしら)
義母(そうね、冬場になるとガス料金高くなるし、少しは節約してもらわないと)
脱衣場
義母(あら、妹ちゃんの下着)
義母「妹ちゃん、いくらなんでもお湯使い過ぎよー?」
シャワー「ジャー」
義母「うーん、聞こえないのかしら」
義母(あれ、これって、妹ちゃんの声?)
妹「――さん――ふっ、――こ、は」
義母(え、ちょ、もしかして)
妹「――あ、――ひぁ――兄、さん! ――ちゃ、ああぁ!!」
義母「」
兄「……おい、そこのリモコン取ってくれ」
妹「は、はい、これですね。どうぞ、兄さん」アセアセ
兄「わ、悪い」アタフタ
兄(だめだこりゃ。妹のことまともに見れんぞ)
兄(よし、バラエティ番組でも見て気を――)
モニター「駄目よ兄さん! 私たち、兄妹なのよ!?」
兄&妹「」
兄(韓流の再放送ですね、本当にありがとうございました)ピコ
モニター「次のニュースです」
義母(……今の反応。二人とも意識し合っているのは、間違いないわね)
目覚まし「ジリリリリリリリ」
兄(うぅ、寒ぃ~。12月に入って一気に冷え込んだな)
ドア「ドンドン」
妹「兄さん、もぅ朝ですよ。そろそろ起きてください」
兄「……あーい、あと五分したらいく」
妹「そんなこと言ってるから遅刻ぎりぎりになるんですよ」
兄(抗い切れぬ布団の温もり)ヌクヌク
妹「わかりました、兄さんが起きてくるまで私ここに座っていますからね」
兄(そしてそれを許さない妹)ハァ
イケ男「なあ兄」
兄「ん、なんだイケ男?」
イケ男「最近、美人の妹さんよくくるじゃないか」
兄「あ、ああ。それがどうした?」
イケ男「いやさ。あの子、彼氏とかいるのかなーって思って」
兄「あれ、でもおまえ、彼女いるだろ? 新体操部の」
イケ男「正直、あいつとあまりうまくいってないんだよ。一回紹介してくれね?」
兄「断る、二股は感心しない」
イケ男「じゃあ、彼女と別れたらいいのか?」
兄「浮気性のやつに大事な妹はやれん、他を当たれ」
イケ男「……チ、わかったよ」
昼休み
妹「よし、今日は学食に」
妹友1「妹ちんストーップ!」ハシ
妹「あれ、友1ちゃん?」
妹友1「ねえ、またお兄さんと一緒に食べるの?」
妹「ええ、そのつもりですけど」
妹友2「兄妹で仲良くするのは悪いことじゃないけど……」
妹友1「うん、たまには私たちと一緒に食べようよ」
妹「……う、そうですね。たまには」
妹友2「よーし、じゃあ決まりだね。学食いこう!」
妹(……マンネリ化を招かない、という一点において意味はありますが、うう)ガックシ
兄「お、メールだ」
メール「ごめんなさい兄さん。友達に引き止められちゃったので今日は別行動でお願いします」
兄(うん。ま、そういう日もあるわな。了解だよ、っと)
クラスメイト「ざわざわ」
兄「ん、なんだ、騒がしい」
先輩「あ、いたいた、兄くーん」タッタッタ
兄「あれ、先輩?」
先輩「よかった、まだ教室にいてくれて。生徒会の案件について少し話があるのだけど」
兄「そうですか。先輩、昼食は」
先輩「当然まだよ。どうせなら一緒に学食でもと思って」
兄「わっかりました。じゃあすぐ支度します」トントン
学食
携帯「ギュイ、ギュイ! ギュイ、ギュイ!」
生徒&教師「!?」ガタ
兄「地震か!?」
先輩「あ、驚かせちゃったかしら? これ、私のメール着信音なの」
兄「……えー」
兄(……心臓に悪すぎ。ていうか、前のはもっと普通だったよな)
先輩「やっぱり評判は悪そうね」
兄「そりゃそうでしょ、できれば今すぐに変えていただきたく」
先輩「そうね、そうするわ」ピコピコ
兄「やれやれだぜ、一気に注目浴びちゃったな」
妹(……え。……あれ、兄さん?)
先輩(ふふ、やっと気づいてくれたみたいね。これでよし、と)
メール「(本分なし)⇒削除」
先輩「あは、兄くん、ミートソースほっぺについてるわよ」
兄「え、ほんとですか? どこです?」
兄(あれー、跳ねさせた覚えはないんだけどな)
先輩「動かないで。私が取ってあげるから」
兄「え、取ってって。あ――」
ハンカチ「フキフキ」
先輩「ふふ、もういいわよ」
兄「す、すみませんどうも。あの、それ、洗って返します」
先輩「これくらい気にしなくても大丈夫よ。ハンカチは汚すためにあるんだもの」
兄(うーん。先輩ってほんと、優しいなぁ)
ハンカチ「ピカピカ」
生徒会室
先輩「では決を取ります。本案に賛成の方は挙手をお願いします」
挙手「ズバババ」
先輩「賛成多数。よって本案は可決されました。続いては次の頁の――」
兄「うーん、ほんと凛としてるというか、仕切るのが絵になるよな」サラサラ
先輩「兄さん、議題の方の書き写しはどうでしょうか」
兄「もう少しで終わります。――はい、もう消していいですよ」
ホワイトボード「キュッキュッキュ♪」
兄(いつまで見惚れているわけにもいかんし、集中集中っと)
先輩(いいわね、たまーに見せる真剣な表情)ジィ
生徒会委員「先輩、議事の進行をお願いします」
先輩「あ、はい。失礼しました。続いては風紀委員会より、芸祭の治安について――」
兄「うー、終わった終わった」
兄(20頁は進んだな、さすがに肩凝ったぜ)
先輩「お疲れ様、兄くん。今日は記述が多くて大変だったでしょう」
兄「いえ、前もって頭で整理しておきましたから大丈夫です。助かりました」
先輩「そぉ? ふふ、よかった」
兄「では、そろそろ帰ります」
先輩「ねぇ、よかったら一緒に帰らない?」
兄「え、俺とですか? でも、先輩の家ってモールの方でしたよね」
先輩「ええ、途中まででいいの。校門前のバス停まで」
兄「ああ、そういうことなら全然OKです」
兄「ただいまー。って、あれ?」
妹「……あ」
兄「どうしたんだおまえ、今日は演劇部の練習があるから遅くなるって」
妹「……」ムス
兄「ん、なんだよその目は。
妹「……」フイ
兄「おい、どうして口利いてくれないんだよ」
妹「……ご自分の胸に聞いてみたらどうですか」ダッ
兄「あ、ちょっと待て――って、行っちまった」
兄(なにいじけてんだ、あいつ。生理でも始まったか?)
妹「……ご馳走様でした」
義母「あら、もういいの? 大分残してるじゃない」
妹「明日の朝食べますので残しておいてください」ガタン
兄「おい、自分の食った皿くらいちゃんと流しに運べ」
妹「――っ! ああ、そうでしたね。すみません、誰かさんみたいに気が利かなくて」ガチャガチャ
兄(ったく、まだ怒ってやがる。誰かさんって誰だよ)モクモク
義母「あの、兄くん。妹ちゃんどうしちゃったのかな?」
兄「俺に聞かれてもさっぱり。帰ってきた時からこうだったし」
義母「あぁ、そ、そうなの」
義母(……まさか、本当に一線を超えてしまったとか)
父「ぷはぁ、風呂上がりのビールは最高だな」
義母「あの、あなた。折り入って相談が」トクトク
父「ん、なんだ。改まって」
義母「その、兄くんと妹ちゃんのことなんだけど」
父「ああ、恋人ごっこの話か」
義母「ええ、それが……思ったより深刻みたいなのよ」
父「深刻? なにがだい?」
義母「大分前の話なんだけど、妹ちゃんが兄くんのことを呼びながら」
父「呼びながら、どうしたんだ」
義母「……なんというか、私がこんなこと言っていいのかあれなんだけど」
父「はは、随分ともったいぶるじゃないか」
義母「その、自分を慰めてたというか」
父「」
ドア「コンコン」
兄「どうぞ、開いてるよー。って」
父「おお、以前に入った時と大分趣が違うな」
兄「親父? なんか用?」
父「ああ、勉強中だったのか。いや、用というほどでもないんだがな」
兄「おう」クルリ
父「たまには親子水入らずで話すのも悪くないだろう」
兄「ふーん? 学校の話とか?」
父「ああ、そういったこととか、おまえのタイプの女の子とか」
兄「……はぃ?」
父「おまえだって年頃だ。一人や二人くらい、気になっている女の子がいるだろう?」チラッ
兄(な、なんだ。このむず痒い雰囲気は)
父「で、どうだ。確か中学の時に付き合っていた」
兄「あいつとなら、引っ越ししてから自然消滅した。親父にも話した気がするけど」
兄(もう2年も前の話なんだけどなー)
父「そ、そうだったか。それで、今はどうなんだ?」
兄「んー、まー。気になってる子くらいはいるよ。当然だろ」
父「ほぅ。で、どういった子なんだ」
兄「……なんで急にそんなこと聞くんだ?」
父「まぁいいじゃないか。なんとなくだ」
兄「先に言い出しっぺの方からどうぞ」
父「わかった、父さんは大きすぎず小さすぎずがいい。こう、母さんのような」モミモミ
兄「……のろけにきただけかよ」
兄(それ以前に、胸から話題にするのかよ。手付きエロいし)
父「そういえば、妹も随分と綺麗になったな」
兄(……なんとなく、唐突な気がするが)
兄「そうだな。学校でも男女問わず人気があるみたいだ」
父「うむ、魅力的な娘を持てて親としても鼻が高い」
兄「だろうな、出来すぎた妹を持つとこっちも肩身が狭い」
父「若い頃の母さんの写真を見たことがあるか? 妹とそっくりなんだよ」
兄「へえぇ! そういやアルバム見たことはほとんどなかったな」
父「今度家族一緒に見よう。私たちのアルバムも持ち合わせてな」
兄「ああ、悪くないな」
父「……ところで、おまえの目から見てだが」
兄「おぅ」
父「妹はどんな感じだ? イケてるか?」
兄「妹? うーん…………ウン?」
兄「話がよく、見えなくなってきたんだけど」
父「二週間くらい前だったか、おまえと妹が恋人ごっこをやっているとかいう話をしていたじゃないか」
兄「……ああ、その話か。それが?」
父「まだあれは、続いているんだろう?」
兄「そうらしい、けど」
父「それで、妹との関係が微妙に変化したり、してないか?」
兄「……変化したら、それはそれで問題じゃないか?」
父「そうだな、だからこうして聞いてるんだ」
兄「……つまり、俺たちの仲があらぬ方向に進行していないかと疑いを持った。こういう認識でいいのか?」
父「そこまでストレートに疑っているわけではないが、母さんが心配してるんでな」
兄(……あんたの行動原理は全て義母さん優先か)
兄「心配しなくても、俺にその気はないよ」
父「その言い方だと、あっちからのアプローチはあるってことか」
兄「妹も、冗談半分だと思うけどな。恋愛ごっこを楽しんでるだけだよ」
父(……ふむ、しらを切っているというわけではなさそうだな)
父「わかった、信用していいんだな?」
兄「こうして疑われているのが腹立たしいくらいだ。……この返事で充分だろ?」
父「ああ、充分だ。勉強の邪魔をして済まなかった」
兄「いや。――あのさ、母さんの方にも」
父「ああ、うまく言っておくよ。じゃあ、勉強頑張れよ」
兄「りょーかい」
兄「さてと、ちゃっちゃと宿題を片付け」
ドア「コンコン」
兄「ん、忘れ物か? どうぞー?」
妹「お邪魔しますよ、兄さん」
兄「」
妹「ちょっとお尋ねしたいことがあります。いいですか」
兄「あ、ええとだな。今ちょうど勉強を」
妹「いいですよね」ギラリ
兄「もちろんです。ささ、どうぞどうぞ、狭苦しいところで恐縮ですが」
兄(……や、やだこの妹、ちょっと怖い)ガクブル
妹「…………」
兄(入ってくるなり三分間も黙ったまま、か)
兄「おい、俺だって暇じゃないんだから」
妹「――兄さんは」
兄「はい、なんでございましょう」
妹「どんな女の子が好みなんですか?」
兄(……デジャヴ)
兄「ええと、ですね」
妹「やっぱり背が高くてサラサラのロングヘアーで包容力がある人なんか、いいんでしょうね」
兄「……あん?」
妹「え? ボンキュッボンで生徒会とか入っていたりしたらさらに最高ですって? へー、そうですか」
兄(……もしかして、先輩のこと言ってるのか?)
妹「鼻の下伸ばしてる兄さんを見て、私、どれだけ恥ずかしかったか」
兄「はぁ? 誰かいつどこで鼻の下伸ばしたんだよ」
妹「兄さんが昼休みに学生食堂で、です! 先輩に口元拭いてもらってたじゃないですか!」
兄「ただそれだけで、なんでそんなに怒られなきゃならんの?」
妹「期間限定とはいえ、私たちは恋人のはずです!」
兄「それは、ちゃんと守ってるだろう」
妹「守ってません! 自分の好きな人が他の女の子といちゃいちゃしてるのを見過ごせるはずがないでしょう!」
兄「ちょ、声が大きいって! 別にいちゃいちゃしたつもりもないし!」
妹「……く」ギリ
兄「……道理で機嫌が悪かったわけだ。嫉妬してたのな、俺と先輩のこと」
妹「ええ、そうですよ。悪いですか」
兄「悪くはねえ。けど、あれくらいで不貞腐れられたらたまったもんじゃない」
妹「あれくらい、ですって……」ギュウ
兄「常識的に考えてくれよ。おまえとのアーンの方がよっぽど恥ずかしいっつうの」
妹「じゃあ! ……じゃあ兄さんは先輩のことを、なんとも思ってないんですか」
兄「なんともっていうのは語弊があるけど」
妹「やっぱりそうじゃないですか!」
兄「だから落ち着けって! 美人で面倒見のいい信頼できる先輩だと思ってる。でも、それだけだ」
妹「……恋愛対象では、ないんですね?」
兄「少なくとも今は、そういう気はない。仮にあったとして、あの先輩には大学生の彼氏がいるし」
妹「え……、そ、それは本当ですか」
兄「おう、俺はおまえに嘘はいわねえよ」
兄(……全部見たこと以外はな)フッ
妹「そ、そう、ですか」ヘナ
兄「おまえも、いちいちそれくらいで目くじら立てるな。じゃないと」
妹「……じゃないと?」
兄「万が一俺と付き合うことになってもすぐ別れることになる」
妹「……う」
兄(ま、そういう展開はないだろうがな)
兄「どのみち、俺の言ったことが信用できないなら関係だって長続きしない。恋人ごっこも終わりだ」
妹「そ、それはダメです。困ります」
兄「じゃあ、信じてくれるってことでいいんだな」
妹「……わかりました、兄さんを信用します」
兄「よし、じゃあ仲直りな」スッ
妹「……親指。……はい」ピト
兄(やれやれ、これでひと段落だな)
妹「……あ、兄さん。まぶたにゴミがついてますよ」
兄「え、ほんとか? どこだ」
妹「あ、だめです、目に入ってしまいますよ。今取りますからちょっとの間瞑ってください」
兄「そ、そうか。じゃあ頼む」ギュ
妹「……はい」スッ
兄(――え、なんで頬に手が)
妹「……ん!」チュ
兄「」
兄(……な、ちょ、妹!?)
妹「……ん……ふ」ギュ
兄(首に手が、く、胸が強く押しつけられて)
兄「って、待て!」ドン
妹「……きゃっ! もぅ、いきなり押さないでください」
兄「お、おまえ、なにやってんの?」
妹「兄さんに変な虫が付かないよう、唾をつけさせていただきました」ペロリ
兄(……なんて顔で笑いやがる)
妹「ちなみに今のが、私のファーストキスです。これで私の覚悟のほどはご理解いただけたかと」
兄(……こ、こいつ。本気で?)
妹「期限はあと二週間。不束者ですが、それまでどうぞよろしくお願いします。兄さん」
花火「ドーン、ドーン」
兄「うーん、意外とあっという間だったな」
妹「あ、いたいた。兄さん!」
兄「おう、妹――どわっ!?」ガシィ
妹「よかった! ちゃんと時間通りです!」ギュウウ
兄「ば、馬鹿やろ! 周りの目も考えろ!」ヒソヒソ
妹「あ、はい、ごめんなさい、つい」ペロ
子供「ねえ、ママ。あのお兄ちゃんとお姉ちゃんなんで抱き合って――」
母親「しっ、邪魔しちゃダメでしょ」
兄&妹「」
兄「……最近の親って、寛容なんだな」
妹「で、ですね。……行きましょうか」
兄「演劇は、明日からだったな」
妹「はい、リハがあるので三十分も抜けられないです。ご飯の時間が取れるかも怪しいくらいで」
兄「そりゃハードだな。楽しめるのは今日だけってことか」
妹「今日だけでも十分です。兄さんを独占できれば」
兄「……頼むから言動には気をつけて――お?」
妹友1「いたいた! 妹ちん!」
妹「あれ、どうしたの慌てて」
妹友1「それが、妹友2が足を挫いちゃって、ダンス出られなくなっちゃったの」
妹「嘘!? なんで、あんなに楽しみにしてたのに……」
妹友1「まったくだよ。それでね、一時間だけでいいから代役をお願いしたいの」
妹「え……今から!?」ガーン
妹友1「バックダンスだから、簡単なフリさえ覚えればいいの。お願い、この通り!」
妹「……妹友1ちゃん。で、でも」チラ
兄(まったく、この期に及んで選択の余地はないだろ)
兄「いってやれ。それまで適当に時間潰してるから」
妹「……でも、私から頼んだのに」
兄「変に気を遣わないでいいって。友達が困ってるなら力になるのが当たり前だろ」
妹「……兄さん」
兄「ほーらー、そんな顔するなって。俺は笑ってるおまえが好きなんだからさ」
妹「」ボシュー
兄(……ん?)
兄「じゃあ、11:30にここで待ち合わせな。それでいいな、妹」
妹「……」コックン
兄(……大丈夫か、こいつ)タラー
妹友1「すみませんお兄さん、少しだけお借りします。さ、急ぐよ! 妹ちん」ズルズル
妹「……」ホケー
兄「……ほとんど引っ張られてるな、ありゃ」
兄(さてと、どんなのやってるのかなー――と)
パンフレット「3-B。猫耳メイド喫茶。ご主人様、首を長くしてお待ちしておりますニャ」
兄「……猫好きを公言してはばからぬ身としては、いかぬわけにはいくまい」フッ
猫耳メイド1「いらっしゃいませニャ♪」
男性客「あ、あの、ブルマンを一つ」
猫耳メイド1「かしこまりましたニャ♪ この特製パフェもお薦めですニャ♪」
男性客「あ、じゃあそれもお願いします」
猫耳メイド1「ありがとニャ♪ 注文入りますニャー」
厨房「はいですニャー♪」
男性客「……いい。ここ、いい!」デレデレ
兄「……ほぅ、なかなかの盛況ぶりだな」
兄(芸祭で白のぴっちりニーソックスが見られるとは。スカートもミニ、眼福だな)
???「え、まさか兄くん?」
兄「ん? あれ、誰だ?」
兄(確かに名前呼ばれたような気が。それに、このハスキーな声……どこかで)
猫耳メイド???「やっぱり兄くんじゃない! もぅ、あなたも好きねぇ」
兄(うわ、すごいスタイルいいな。モデルさんかなにかか?)
兄「ええと、どちら様でしょうか」
猫耳メイド???「あら、この恰好だとわかんないか。なら、これでどうかしら?」パサ
兄「あれ、先輩!?」
先輩メイド「やっと気づいたか」
兄「髪アップにしてたんですか! 全然気づきませんでしたよ」
先輩メイド「ふふ、こっちだってびっくりしたわ。まさか兄くんがウチの組に来るなんてね」
兄「い、いえ。これには海より深い事情がありまして」
先輩メイド「あらあら、そんなに照れなくてもいいじゃない」
猫耳メイド2「こらそこ! ちゃんと語尾にニャをつけなさいニャ!」
先輩メイド「あ、す、すみませんでしたニャ!」
兄「……ぷッ」
先輩メイド「あぁひどい! なにも笑うことないじゃない!」カァァ
猫耳メイド2「もう戻ってるニャ! これは罰ゲーム対象者候補だニャ!」
先輩メイド「ま、待つニャ! 悪かったニャ! それだけは勘弁して欲しいニャ!」
兄(だ、ダメだ。あの先輩が、く……はは、あー、ぽんぽ痛ーい)タスケテー
先輩メイド「ちょ、ちょっと兄くん! いくらなんでも笑いすぎ――」カァァ
猫耳メイド2「ジロ」
先輩メイド「――だニャ!」
兄「……なんだかんだでコーヒーがウマい」ズズー
兄(さすがに男性客が多い、というか9割方そんな感じか)
兄(先輩も忙しそうだなー。あっちにいったりこっちに来たり)
兄(ま、生徒会でいつでも話せるしな)
兄(……にしても、胸元が開きすぎだな。屈むと見えちゃうだろ、あれ)ドギマギ
兄(目に悪い。そろそろお暇するか)
兄「すみません、お勘定をお願いします」
猫耳メイド1「はいニャー♪ ちょっとお待ちくださいにゃー♪」
兄(時間は、11時過ぎか。丁度いいな)
先輩メイド「あ、兄くん、ちょっと待つニャ!」
兄「ん?」
先輩メイド「そろそろ小休憩ニャ。ちょっとだけ顔を貸してもらないかニャー?」
兄(……すごい順応力だニャー)
先輩メイド「ふぅ、待たせたニャ」
兄(……もはや何も言うまい)
兄「いえ、それで話というのは」
先輩メイド「午後からフリーなのニャ。空いてニャいかニャ?」
兄「え、それはちょっと」
先輩メイド「……なにか予定があるのかニャ?」
兄「はぁ、妹と色々回る予定なんで」
先輩メイド「――妹さん、ね」
兄(……あれ、口調が戻った?)
先輩メイド「あなたたちのこと、結構噂になってるわよ」
兄「噂、ですか?」
先輩メイド「兄妹とは思えない仲の良さだって」
兄「はぁ、そうですかね」
兄(……あれ、なんだろ)
先輩メイド「そうですか、って。あなたたち兄妹なんでしょ?」
兄「ええ、まぁ。血は繋がってないんですけどね」
先輩メイド「え――嘘、でしょ」
兄「もちろん、俺はあいつのことを妹としか見てませんけど」
兄(……胸が、軋むような)
先輩メイド「……そう。なら、私と付き合っちゃわない?」
兄「」
先輩メイド「いいアイディアだと思うの。あなたたちも、妙な噂を立てられるのは本意じゃないでしょ?」
兄「な、何言ってるんですか。先輩には彼氏が」
先輩メイド「彼とは、とっくに終わったわよ」
兄「え……。だって、両想いだったんですよね」
先輩メイド「そう、だったわね。でも、だからってうまく行くとは限らないのが男女の関係よ」
兄「……う」
先輩メイド「好きだからこそ、些細な擦れ違いで大喧嘩になる。携帯に出なかったとか、異性と手を握ったとか。ほんとくだらないことで」
兄(……先輩、辛そうだ)
先輩メイド「ちょっとしたことで色目を使ったとかいちゃもんつけられて顔を叩かれる身にもなってごらんなさい」
兄「暴力を、振るわれたんですか」
先輩メイド「ええ、右目を殴られた時には視力がすごく低下したわ。失明は免れたけど、それで決断した」
兄(……そう、だったんだ)
先輩メイド「兄くんは、私のこと嫌い?」
兄「と、とんでもない。そんなわけ」
先輩メイド「なら、好き?」
兄「……それは、美人だと思いますし、優しくて面倒見がいいですし」
先輩メイド「嬉しいわ、兄くんにそう言ってもらえるなんて。じゃあ、付き合ってくれるわね?」
兄「そ、それは……」
兄(……一月前なら、迷わずOKしたはず。それは、間違いないのに)
先輩メイド「……ねぇ、何を悩むことがあるの?」
兄「……先輩は、どうして俺のことを?」
先輩メイド「あなたのことは、これでもよく知っているつもりよ。一年の頃から」
兄「たとえば?」
先輩メイド「一見ぶっきらぼうに見えて、困っている人に対しては親身になって助けてあげられる人。もちろん、容姿も悪くないしね」
兄(……嬉しい。……けど、なんだろう。なにか違う気がする)
兄「……先輩は、元彼の人のどこが気に入ったんですか?」
先輩メイド「……え」
兄「さっき言いましたよね。はっきりと、両想いだったって。なら、どこが好きだったか言えるんじゃないですか」
先輩メイド「そ、そうね。スポーツ万能で格好良かったし、とても優しくしてくれたから……」
兄「じゃあ、嫌いなところは?」
先輩メイド「――――それ、は」
兄「遊びならともかく、本格的に付き合うっていうのは相当覚悟がいることだと思うんですよ」
兄(好きな人の嫌いなところと向き合う機会がぐんと増える。そんでもって、好きな相手には格好いい自分を見せたいもんだしな)
先輩メイド「……私は、でも……本当に兄くんのことは気に入って」
兄「先輩は、俺の醜い部分をなにも知らないでしょ。理想像だけを押し付けられても、困ります」
先輩メイド「――――」
兄「ま、こういう糞生意気な面も持ってるんで。それでよかったら考えといてください。じゃ、俺行きますね」タッタッタ
先輩メイド「ちょ、ちょっと! 言い逃げなんて卑怯……あ……」
先輩メイド(……な、なによもう、ほんとに生意気。…………はぁ、まいった)
妹「……あ、兄さん!」
兄「悪い、待たせた」チラ
兄(あらら、話し込んでたら10分も遅れちまった)
妹「いえ、大丈夫です。これでおあいこですよ」
兄「はは、それもそっか。どこか、回りたいところあるか? お化け屋敷とか?」
妹「……もぉ、兄さんの意地悪。私が苦手なこと知っててそういうこと言ってるんですね」
兄「あれ、その年にもなって怖いのかー。ならしょうがないな、別のものにするかぁ?」
妹「……そうやってすぐ挑発するところとか、好きじゃないです」
兄「お、おいおい、ほんの冗談だろ?」
妹(なんて、そんなはずないです。……酸いも甘いもすべてひっくるめて、私の兄さんです)
兄「いやー、初日からちょっと飛ばしすぎたな」
妹「少し、欲張りすぎましたね。さすがにへとへとです」
兄「おまえは明日が本番だもんな。早めに帰って英気を養うかぁ」
妹「……疲れて歩けないです。おんぶを所望します」
兄「」
妹「……ダメ、ですか?」
兄「ダメ、それと上目遣いはやめなさい」
妹「残念です」スク
兄(……こいつはまったく)
妹「明日は10:30開演です。それからこれ、兄さんのチケットです。なくさないでくださいね」
兄「お、おう」
兄(……ついに、この時がきたか。明日、なんとか無事に終わってくれればいいんだけど)
兄(そして夜、あっという間だなぁ)
兄「ううむ、早めに寝るつもりだったのに寝付けないぞ」チラ
時計「もう23:30なんだZE?」
兄「……水を飲もう。そうしよう」スタスタ
ドア「ギィ」
妹「……あの、兄さん。よろしければ――」
ドア「バタン」
妹「」
兄「お休み、いい夢を見ろよ」フッ
妹「って、兄さんひどいです! なんでなにも聞かずにそのまま閉めちゃうんですか!」
兄「パジャマ姿で枕まで持ってきてる時点で予想はついた」
兄(まったくもう。俺を寝不足にしたいのかよ、あいつは)
妹「開けてくれなきゃ私、廊下で寝ますから。十中八九風邪を引くでしょうけれど、明日の舞台は熱をおして頑張りますね」
兄(……そのやり口、地上げ屋よりたち悪いと思うの)
鍵「カチャ」
妹「……兄さん、私は信じていました」
兄「どの口が言ってるんだ。もーいー、とっとと入れ。風邪引いたらことだ」
妹「はい、失礼します」シズシズ
兄(……ん、石鹸の香りが。風呂上がりか)
妹「……さてと。やはりここから、ですか」ジー
兄「ん、なに見てんだ――なに屈んでんだ?」
妹「よいしょ、と」ゴソゴソ
兄「ちょっと待て」
妹「少々お待ちください、すぐに終わりますので」モゾモゾ
兄「一体なにをやっているんだね」
妹「ご覧の通り、ベッドの下を漁っているところです」ゴソゴソ
兄「薄々察しはつくが、念のためなんでか聞いておこうか」
妹「健全な男子はベッドの下か押入れに夜のお供を隠すという風習があるとか」
兄(いつの時代だ)
兄「仮にそれがあったとして、どうするんだよ」
妹「兄さんの趣向が変化したかをチェックしようと思いまして」
兄「なんのために」
妹「妹物とか増えてると嬉しいかな、と――」
兄「やっぱ出てけ」
ベッド「うぁ!」ギシギシ
妹「ふふ、スプリングが効いていますね。それにこのベッド、兄さんの匂いがします」モフモフ
兄「そういうこっぱずかしい台詞がよくもまぁ次から次へと出てくるもんだな」
妹「……くんくん」
兄「嗅ぐな!」
妹「あぁ、そうですね。せっかく生兄さんが傍にいるというのに」
兄「誰が生か」
妹「――さあ兄さん、遠慮しないで隣にどうぞ?」ポンポン
兄(……悪びれないやつ)
兄「はぁ、わかった。おまえはそこで寝ろ」バサッ
妹「やった! って、兄さん。一体なにをして」
兄「見りゃわかるだろ、来客用の布団を引いている」グッグ
妹「そんな! 昔は兄妹仲良く寝てたじゃないですか!」
兄「昔は昔、今は今。これ以上の譲歩はできねえよ」テキパキ
妹「……うぅ、そんなぁ」ショボン
兄「……一週間くらい前だったか、親父が俺の部屋にきた。俺たちのことで」
妹「え……、兄さんも?」
兄「そうだ。二人とも、俺たちのこと本気で心配してんだよ」
妹「……うぅ、道理で」
兄「人の目とか以前に、俺は二人に心配も迷惑もかけたくない。その領域にまで立ち入る気なら、自分の部屋に戻れ」
妹「……わかりました。このまま寝ます」
兄「じゃあ、電気消すぞ」
妹「はい、おやすみなさい。兄さん」
兄「ああ、おやすみ」
スイッチ「カチ」
兄(……ふう、納得してくれてよかった)
妹「……すぅ」
兄「ん、寝付きが早いな」
兄(さすがに色々あって疲れたんだろうな)
妹「……兄……さん」
兄(……寝言か。……さて、俺も寝よう。おやすみ、妹)
鳥「チュンチュン♪ チュチュチュン♪」
兄「……ん、もう、朝か? って、まだ薄暗いな」
兄(さっきから耳に息がかかってくすぐった――って息?)
妹「……すぅ……すぅ」
兄「」
兄(妹!? なんで下に来てんだ――って、腕が絡んで動か)ギュウ
兄「こ、このバカ、抱き枕じゃねんだぞ!」ヒソヒソ
妹「……ん……むぅ」ムニィ
兄「や、やめやめ! そんな押し付けられたら」ググ
兄(こ、これは起こすしかないか。いや、でも、まだ五時半)
妹「……兄……さん?」
兄「あ、起きちゃったか。す、すまん」
兄(ま、まぁ結果オーライということで――ん、あれ、目は閉じたままだぞ)
妹「……や、そこ……だめぇ」
兄「」
妹「……はぁ……兄、さ……んっ」ギュウウ
兄「ど、どんな夢見てんだよ、こいつは」ジリ
妹「……ひぅっ」ビクン
兄(ぬぐっ、立たせん! 立たせはせんぞ!)ググ
妹「……ん……あ」ハラリ
兄(い、いかん。着衣が乱れて下着が。……こ、このままでは時間の問題)
兄(別のことを考えて気を紛らわすしか。よし、某鮫映画で!)
BGM(――ドゥードゥ、ドゥードゥ。ドゥッデドゥッデドゥッデドゥッデ)
兄「……だ、駄目だ。BGMはリアルに想像できるのに、肝心の鮫がさーぱりイメージできん」
妹「……んん」ググ
兄(うう、顔近! 腕を掻い潜って下に避難するしかない!)
兄(よし……3,2,1)
兄(ふんぬ!)スポッ
妹「んっ」スカッ
兄「せ、成功。妹は……まだ寝てるな。完璧だ」ホッ
兄(……ふぅ、安心したら急にトイレ行きたくなっちまった。行くか)スク
妹「……兄……さん」
兄(ったく、夢にまで出てくるって、どんだけ思いつめてるんだ)
兄「俺は、お前に好かれるほどたいしたやつじゃない。残念だけどな」
兄(……って、はは、なんで残念なんだよ。どうも最近調子狂うぜ)
ドア「バタン」
妹「…………」チ
!?
573:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 17:10:18.36:dnM90AcS0兄「……ふぅ、スッキリした。って」
妹「……っ、しまっ! あ、お、おはようございます、兄さん」アタフタ
兄「お、おうおはよう、起きてたのか」
兄(……あ、あかん。顔が合わせづらい)
妹「え、ええ。まあ」
兄(肌もどことなく上気してる。ふ、冬のせいだよな、きっと)
兄「ところで――なんでそんなとこで突っ立ってるんだ? 入れないんだが」
妹「えと、その、ちょっとだけ外で待っててもらえませんか。汗かいちゃったので、すぐに着替えたいんです」
兄「……? だったら自分の部屋で着替えればいいんじゃないか。すぐ隣なんだし」
兄(というか、確か着替えなんて持ってきてなかったじゃないか?)
妹「あぅ、それは、その……そうなのですけど」
兄「……ははーん」ピーン
妹「……う」ギクリ
兄「おまえ、もしかして」
妹「な、なな、なんですか」オドオド
兄「おねしょしちゃったとか?」ニヤ
妹「な! ち、違いますよ! 誰がこの歳にもなって!」カァァ
兄「じゃあ隠す必要もないだろ」バ
妹「それも、そうなんですけど」シュババ
兄「ほら、遊んでないで通せって。布団干すんだから」グイ
妹「だ、ダメですってば! ――あぁ、ご無体な!」
兄(……なーにがご無体な、だ。……おや、なんでベットの羽毛布団がこっちに)バサ
妹「……あ、あぅ」ボシュー
兄「ん、これ、俺の下着だよな。どうして布団に埋もれて」ガシ
トランクス「解せぬ」グッショリ
兄「」
妹「…………」フルフル
兄「ベッド、正座」ビシ
妹「……はい」チョコン
兄「……さて、これはなんだね」
妹「トランクスです。元々はボクサー用品から派生したもので、エバートラスト社が――」
兄「おーけーおーけー、さすがは我が妹。精緻な解説をありがとう」
妹「きょ、恐縮です」
兄「まず、言い訳から聞こうか」
妹「……え、ええとですね。そう、寝汗をかいていたんです」アセアセ
兄「うん、それはさっきも聞いたな。続きを頼む」
妹「そ、それはもう、あまりにもの凄い量だったので」
兄「この濡れっぷりからすると、そのようだな」ビッショリ
妹「え、ええ。恥ずかしながら」カァァ
兄「うむ、長年おまえの兄をやってきたが」
妹「は、はぁ」
兄「おまえがこうも汗っかきさんだとは知らなんだ」
妹「こ、巧妙に隠していたんですが、ついにバレてしまいましたね」
兄「まったく、照れ屋さんなんだから!」ツン
妹「やん! もう、兄さんたらぁ」グイ
兄「ははは――――んで?」
妹「」
妹「うぅ……その、早急に拭き取るものが欲しかったのです」
兄「わかるぞ、体が汗でべたついていたら気持ち悪いからな」
妹「そうなんです! さすが兄さん、わかってますね!」
兄「ふんふん、ここまでは実(↑)に、理に叶っているようだ」
妹「で、ですよね」
兄「付け入る隙のない流れというものは美しい」
妹「まったく同感です。なので、兄さんのタンスから」
兄「ほぅ、タンスから」
妹「肌触りのよいトランクスを、と」ドドーン
兄「なるほどなるほど」ウンウン
妹「コットンの下着って、水分の吸収に最適ですよね」ニコ
兄「確かに、そうかもしれないな」ニコ
妹「そうですよね! では、判決は無罪ということでいだだだ!」グリグリ
兄「おまえの拭き取り優先順位は目の前にあるティッシュ、タオル、ハンカチを飛び越して兄のトランクスか?」グリグリ
妹「い、痛、や、痛いです兄さん! ごめんなさい! 止めてください!」ジワァ
兄「ああいいとも、止めてやる」バッ
妹「……うぅ、ひどい。……頭が割れるかと思いました」ヒリヒリ
兄「おまえさ、いくらなんでもやることが度をすぎてるだろ」
妹「……???」キョトン
兄(……え、自覚なし?)
兄「夜中に訪ねてくるわこっちの布団に忍び込んでくるわ、挙句の果てにオ――」
妹「い、言わないでください! こっちだってし、しし、したことは、反省してるんです」モジ
兄「信用していいものやらな。いいか、逆の立場で考えてみろ」
妹「逆、ですか。兄さんの?」
兄「ああそうだ。もし俺がおまえの下着持ち出してああいう真似をやったらどう思うよ」
妹「……う、それは、その……切ないです」
兄「そうだろ? 救い難い変態だろ? 俺だってそういう気持ち――切ないとな?」
妹「そんなものじゃなくて、どうせなら私を使ってくれればいいのに、と」ポ
兄「」
兄「……おまえ、いくらなんでも無防備過ぎ」
妹「無防備?」
兄「俺だって年頃の健全な男なんだよ。いつまでそういう挑発に耐えられるもんでもないの」
妹「……ですから、我慢しないでくださいね、と」
兄「だーかーらー! 兄妹でそういう真似はできねえだろ! おまえは俺を傷つけたいのか?」
妹「傷つく……って」
兄「妹のおまえに手を出す=父さんと母さんの信頼を裏切ることだろ。こっちだって生殺しだよ」
妹「妹、妹って、そんなの言葉だけじゃないですか!」
兄「俺だって、もっと別の出会い方をしてれば、おまえに一目惚れしてたかもしれないと思うことはある」
妹「……だ、だったら!」
兄「でも、今の俺の気持ちとしては、おまえには妹でいて欲しい」キッパリ
妹「……そう、ですか」
兄「もう一度洗面所行ってくるから、その間におまえも自分の部屋戻れ。わかったな」バタン
妹「……兄さん。……でも、私の気持ちは」
@は芸祭編とエピで終了、2時間ほど離席します
2時間なら軽い軽い
661:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 20:25:05.57:dnM90AcS0ステージ前
観客「どよどよ」
兄「うは、想像以上の大混雑だな」
兄(喜んでいいやら悲しんでいいやら)
モギリ「いらっしゃいませ。お手数ですがチケットの提示をお願いいたします」
兄「あ、はい。これでいいかな」
モギリ「ありがとうございます。席は前から5列目の左中ほどになります」ビリ
兄「わかりました」
兄(……五列目か、見るにはいい場所だけど……)
兄(ジャンヌダルク、100年戦争の主役。世界史は苦手だが、不思議と名前は忘れられないな)
兄(神の声を聞き、国難に立ち上がった悲劇の聖女、か)
兄(いったいどんなふうに演技してみせるのか。別の意味でちょっとわくわくしてきた)
楽屋
妹「……すぅ……はぁ……すぅ」
妹「あー、あー。うん、声は問題ないですね」
妹(兄さん、ごめんなさい。やっぱり私の想いは変わりません)
妹(……あんなところを見られても変わらなかったんです。もう手遅れですよ)カァァ
顧問「妹さん、そろそろジャンヌの出番よ。用意できてる?」
妹「はい、大丈夫です。今いきます」スク
顧問「ふふ、期待しているわよ」
妹「が、頑張ります」
妹「あとは、祈るしかないですね」ボソ
妹(この脚本と私の演技で、兄さんの心を変えられるように)グ
観客「…………」シーン
兄(学祭にしてはずいぶんと客の行儀が良いな。プロローグの殺陣もナレーションも本格的だし)
ナレーション「――追い詰められたシャルル7世。だが、そこに一縷の望みが生まれた」
兄(お、妹ジャンヌの登場か)ガタ
ジャンヌ「本当です、お母様。私は確かにカタリナ様とマルガリタ様、そして大天使ミカエル様の啓示を」
観客「ざわ」
兄「」トクン
兄(金髪のウィッグか。……な、なかなか似合ってるな)
ジャンヌ「信じてください! ボードリクールに赴き、オルレアンの包囲を解いてフランスを救うようにと仰せだったのです」
ジャンヌママ「しかし、おまえは昔から夢見がちな子だったからねぇ」クスクス
ジャンヌ「信じて、くださらないのですか」ガーン
ジャンヌママ「よしんばそれが本当だったとして、剣を握ったこともない娘にフランスを救えと仰るなんて、随分と無茶な要求じゃないかい」
兄(確かに、そうだよなぁ。なんで彼女じゃなきゃなかったんだろ)
ジャンヌ「もう待てません。未だ包囲下にあるオレルアンで人々は餓えと渇きに苦しんでいるのですよ」
側近1「解放を望むのは我々も同じだ、しかし、始まればもう後に引き返せなくなる。軽々しく判断はできん」
ジャンヌ「なぜ、です。救おうとする私を、前に進もうとする私をなぜ止めるのですか?」
側近1「……しつこいやつだな」
側近2「世情というものがあるのだ。君らが勝手に動くことで迷惑を被る人間がいる」
ジャンヌ「お話はわかりますが、あなたたちにはまったく緊迫感が感じられません」
側近2「……なにぃ?」
ジャンヌ「我らが同胞が、フランスの人々が血を流しているにもかかわらず、皆さんはそのような上等な服を着込み、高いワインを飲みながら私を言い包めようとするのですから」
側近1「無礼な! 成り上がりの村娘ふぜいがよくも貴族にそのような物言いを!」
ジャンヌ「……なるほど、これではオレルアンの人々の気持ちをわかるはずもありませんね」
側近2「……シャルル殿下の庇護を受けているからといって調子に乗るなよ」
ジャンヌ「ご忠告痛み入ります。ならば私たちだけで始めるまでです。ジャン、ライール、行きましょう」
側近1「おのれ、衆目の前で恥をかかせおって。……このままで済むと思うなよ」
兄(……んだこいつら、超うぜえ。ジャンヌに偉そうな口聞いてんじゃねえぞ)イラ
観客「…………」シーン
敵兵「死ね、フランスの犬め!」
ジャンヌ「くぅっ!」ギン
ライール「ジャンヌ殿、出すぎだぞ! 自重せよ!」
ジャンヌ「大丈夫です、私が行動することを、神がお望みなのならば」
ライール「……まったく、こちらの身にもなってくださいよ」
兄(いいぞライール、もっと言ってやれ)
ジャンヌ「我が兵士たちよ! 私の後に続きなさい!」キーン
兵士たち「オォー!」
ジャンヌ「現状を打破するには、まず行動することです。我らの意志が一所に示されることによって初めて神が行動されるのです!」
兵士たち「武器を持て! 我らが聖女の歩みを止めさせるな!」
敵将「くっ、やつらを食い止めろ! オルレアンへ一兵たりとも侵入させるな!」
お兄ちゃん劇の世界に入っちゃったな
685:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 21:10:28.08:dnM90AcS0側近1「シャルル王よ。これ以上あの女をのさばらせておいていいのですかな?」
シャルル「口を慎め、彼女なくしては戴冠式はならなかったのだぞ」
側近1「これは失礼しました。しかし、最近よからぬ噂が流れておりまして」
シャルル「噂?」
側近1「ジャンヌ殿がアランソン公と結託し、シャルル王を傀儡しようとしているのではないかと」
シャルル「ば、馬鹿を申すな! あのジャンヌがそんなこと、ありえん!」
側近1「私もそう思いたいですが……あり得ぬことでもないかと」
シャルル「…………」
側近「彼女を、コンビーニュに送り込んではいかがですかな?」
シャルル「敵軍との激戦地ではないか! 危険すぎる!」
側近「だからいいのではないですか。戦いに疲れた我が兵士たちの士気も高まりましょう」ニヤリ
ナレーション「側近の策略によりジャンヌは敵軍に拘束され、イングランド軍に引き渡された。そして――」
ジャンヌ「お、おやめなさい! 神がこのようなことをお許しになると!」
看守1「なにお高く止まってるんだ、気違い魔女が!」バシィ
ジャンヌ「きゃあっ!?」ドサッ
看守「へっ、聖処女だぁ? なら、本当にそうか俺が確かめてやるよ!」
ジャンヌ「あ、あなた達は……や、やめて……やああ!?」ビリビリィ
観客「」ドヨ
男性客「」ムク
兄(……くそったれ。覚悟はしてたけど……やっぱ、きつい)ググ
ムクムク
690:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 21:18:57.24:dnM90AcS0ジャンヌ「や、やだ、やだ! やめてよ!」ボロボロ
看守1「へへ、やっとしおらしくなりやがったな」
看守2「おい、ちゃんと両手掴んでろよ」
妹「……神よ、どうか私に救いの手を差し伸べ……ぐふっ!」ズド
兄「……!」ググ
看守1「神様だぁ? んな得体の知れないもんが助けにくるはずねえだろが」
ジャンヌ「……く……はっ……う、ゲボッ」
看守2「うわ、汚ねぇ。吐きやがったぜこのアマ」
看守1「くっせー、腹の中身は俺らとなんも変わらないじゃねえか」ケラケラ
ジャンヌ「……うぅ、ひ、ひどい」
兄(……芝居とはいえ殺したい。こいつら、悪役はまり過ぎだろ)ググ
看守2「さぁて、お楽しみの時間だ」ニタァ
ジャンヌ「い、いや、誰か、誰かぁ!」ジタバタ
看守2「ひゃっはっは、ここは監獄塔だぜ? 誰も来やしねえよ!」
ジャンヌ「こんな、こんなことのために、私は戦ってきたわけじゃ、ない!」グスグス
看守1「ほらほら、いい加減諦めな!」ガシ
看守2「ひゃっひゃっひゃ、一気にいくぜ」グイ
ジャンヌ「……お、お父様、お母様、……兄さぁん!!」ボロボロ
兄(……っ!! んの、くそったれがぁ!)ガタン
闇「――おっと、見せられるのはここまでだ」
兄(……スポットライトが!?)
男性客(馬鹿な、暗転だと!? ……おのれ、卑劣な真似を!)ググ
兄(……劇を、台無しにするところだった)ストン
兄(……こんなに胸がムカついたのは、生まれて初めてだ)
異端審問官「あの女は、処女ではなかった」
代理裁判官「なんと」
異端審問官「聖処女というのは偽りだった。神の声を聞いたと嘯き、人々を混乱へ導いた売女だ」
兵士「さぁ、布を外せ!」
ジャンヌ「……う……あ」ピクピク
民衆「ざわざわ」
兄(磔刑。ジャンヌ、最後は火炙りにされちまうんだったな)
異端審問官「では、最後に言い残したことはあるかね?」クックック
ジャンヌ「……私、……私は、思いを曲げるわけには、いきません」ギラ
兄(……ジャンヌ……いや、妹)ジィ
異端審問官「ほぅ、あくまで異端者であると認めないというか」
ジャンヌ「……誰が理解できなくとも、私は自らの信念に従います。性的な脅迫に晒されようとも」
代理裁判官「……性的とは?」
異端審問官「き、聞く耳を持つ必要はない! 火にかけよ! もはやこやつに心を改める気はない!」
観客「ざわざわ」イライラ
兄(……客席から殺気が、すげえな)
ジャンヌ「……聖女カトリーヌ、マルグリット、天使ミカエル」
ジャンヌ「これが、……あなたたちの、思し召しというならば、私は甘んじて、受け入れましょう」
ジャンヌ「私は、信仰を、あなたたちへの想いを、疑いません……」
ジャンヌ「だから、私を愛し、て……。私の全てと、引き換えでも、いい。……あなた、の、愛を……くだ……さ……」ガク
兄「――――」ジワ
司会「続いては我らがメインヒロイン、ジャンヌダルク!」
ジャンヌ「……あぅ」ペコリン
観客「ザアアアアアア」ガタガタ
兄(スタンディングオベーション。まるで海鳴りだな――ん)
後方男性客「」ムク
兄(……やはり、悲劇は避けられなかったか)ガックリ
ジャンヌ「――! ――!」ヒラヒラ
兄「……手を振ってるの、俺っぽいな。さすがに声はそっからじゃ聞こえないぞ」ヒラヒラ
ジャンヌ「――!」ブイ
兄(はは、もうこんな役柄は勘弁してくれよ。襲われるのを見るのは懲り懲りだからな)
拍手が聞こえる
741:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 22:33:18.10:dnM90AcS0妹「……はぁ……すっかり遅くなっちゃった。……あ!」
兄「よ、お疲れ。打ち上げ終わったみたいだな」
妹「兄さん! ……嬉しいです、迎えにきてくれたんですね」ニパァ
兄(……あんなシーンを連続して見せられた後じゃなぁ)ポリポリ
妹「ステージから兄さんの顔、ちゃんと見えましたよ。ずっと席を立たないでいてくれましたね」
兄「あの位置じゃあいなくなってもすぐにバレちまうだろ――ほい」ポイ
妹「え、わぁっ!」パシ
兄「ちょっと遅いけど、祝杯と行こうか。ジュースだけどな」ニヤ
妹「……えへへ、ありがとうございます」
妹「本当に助かりました。この辺り夜は人気がないから、ちょっと通るの不安だったんです」
兄「送ってくれる男子なんて選り取り見取りだろ?」
妹「もう、またそんなこと言って。本当意地悪ですね、兄さん――う」ブルリ
兄「……やれやれ」パチンパチン
妹「……? わっ」パサ
兄「これ着てろ。少しはマシだ」
妹「は、はい。ありがとうございます。……今日の兄さん、優しいです」ギュウ
兄「失礼な、俺はいつでも優しいぞ」ムス
妹「……温かい。ふふ、兄さんの温りが、まだ残ってる」ウットリ
兄(また、人の気も知らないでそういうことを)ハァ
兄「ただいま」
妹「ただいま戻りました」
父「おう、お帰り」
義母「寒かったでしょう、すぐお風呂にする?」
兄「ああ、そうだな。おい妹、おまえ先に」
妹「じゃあ、兄さんと一緒に入ってきますね」ニコ
兄「」ドサ
兄(って、いきなり何を言い出すんだよおまえは――)
父「ああ、たまには二人で入るのも悪くないかもな」
母「湯冷めしないうちに出てくるのよ?」
兄「」パクパク
妹「はい、では行きましょう。兄さん?」グイ
!?
764:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:01:20.92:dnM90AcS0兄「……お、おまえいったい何をしでかした」
妹「えと、なんのことでしょうか」
兄(……まさか、こいつ)
兄「……もしかして、親父と母さんにもあのチケット」
妹「渡しましたよ? 一般客が入れるんですから当然でしょう」
兄(やっぱりか。……どういう思いで観てた想像はつくが、それだけでああはならないはず)
兄「おまえ、あらかじめあの二人になんか言っただろ」
妹「その話でしたら、浴室でにしませんか? 早く温まりたいですし」
兄「水着着用、それ以外は認めん」ビシ
妹「はい、譲歩します」
兄「……ずいぶんあっさりと認めたな」
妹「無茶ぶりをして小さな意見を通すのは心理学の初歩ですから」ニコニコ
兄(……ぬうう)
妹「一緒にお風呂なんて久し振りですから楽しみです」ルンルン
兄「もういいから、とっとと着替えてこい。ささっと入ってさっと出るぞ」
妹「そんなもったいないこと」
兄「はよ」
妹「うぅ、わかりました。逃げちゃだめですからね」バタン
兄「……くそ、この展開は読めなかったな」
兄(水着があれば、興奮しないですむかな。……無理だよなぁ、劇の後だし)
wktk
775:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/26(月) 23:23:38.30:dnM90AcS0浴室
兄「よし、体は洗い終わったな」
兄(……妹、ちょっと遅いな)
兄「い、いやいや、そっちの方がいいじゃないか。よし、髪の方も」
ドア「バタン」
兄「」
妹「し、失礼しますね、兄さん」モジモジ
兄「お、おう……」
兄(薄桃色のビキニ……だと、う、胸の谷間が眩しすぎる)
妹「ど、どうですか? 似合ってます」
兄「い、いいと思う。けど、おまえそんなの持ってたっけ?」
妹「秋バーゲンで安くなってたのを買ったんです、人前で着るのは初めてですよ」
兄「そ、そか」カァァ
妹「で、です」カァァ
兄「浴槽も二人だと、狭く感じるな」
妹「そ、そうですね」
兄(……だめだ、妹が目の前にいるだけで顔が熱くなる。心の鼓動が収まらん)
妹「あの、兄さん」
兄「なんだ?」
妹「……劇で襲われる私を見て、どう思いました?」
兄「……おまえ、この状況でそれを聞くか?」
妹「私は……すごく嫌でした。鳥肌が立ちました。芝居とはいえ、大好きな兄さんの目の前で、あんな……」
兄「だったら、なんで俺を呼んだんだよ!」
妹「……知って欲しかったんです、私の気持ちを」ズイ
兄(ちょ、こんな狭いところで!)
妹「兄さん……」ギュウ
兄(む、胸が、直接当たって)ムニ
兄「お、落ち着け妹。俺たちはあくまで――」
妹「お、お願いです。そのまま、黙って聞いてください」ガクガク
兄(だー、震えるくらいならこんなことやんなよ!)
妹「私にとって兄さん以外の人と行為をするということは、劇のようにされることも同然なんです」
兄「――――っ」
妹「私、怖い。そんな思いをするのは、絶対嫌なんです。もう、兄さんしか、考えられない」ギュウ
兄(……くそ、俺だって)ギリギリ
妹「私、あの時兄さんが来てくれればどんなに幸せかと思いました」
兄「……俺だってあの時は、飛び出しかけたさ」
妹(……!)ジワ
妹「嬉しい、です。それ、嘘じゃないんですよね」ウル
兄「そういう顔すんのは、卑怯だろ」
妹「卑怯でもいいんです。兄さんの心を射止めるためならなんだってします」
妹「何度も諦めようと思った。自分なりに葛藤して、でも思いは変わらなかった。ジャンヌのように」
兄「……妹」
妹「舞台の上でも言った台詞。あれは、兄さんだけに伝えたかったことです」
兄「……っ」
妹「兄さん、どうか私を、私だけを、愛してください……」ギュウ
兄「……参った、俺の負け」
妹「……え? ……きゃっ!?」グイ
兄「――ん」チュ
妹(――に、兄さんの方から、キス……初めて)トクントクン
兄「……ん」レロ
妹(……し、舌が入っ――や、歯ぐき、抉られ!)ザプ
妹「――ん、ぷぁ――んふっ!」チュパ
妹(……に、兄さん。兄さん、兄さん! あぁ!?)ヒュッ
兄「胸も、ずいぶんと挑発的に押しつけてくれたなぁ」モミ
妹「――ぁ! ――ぁぁっ!」ザバッ
妹(だ、ダメ! 声、殺し切れない!)ガクガク
兄「この調子だと、終わるまでにお湯が全部なくなっちゃうかもな」キュ
妹「ひゃあん!?」ビクン
兄「どうだ、気持ちいいか」キュッキュ
妹「わ、わからない、です。……ん、兄さん」フルフル
妹(だ、駄目……膝が笑って……立てない)ガクガク
兄「もうこんなに固くして。ほんと可愛いな、妹」
妹(あうぅ、どうしよう。兄さんの言葉だけで、体が高まっちゃう)ゾク
兄「膝の裏、手入れるぞ」
妹「え、ひゃわ!?」グイ
兄「よっこいしょっと」ザパー
妹「や、兄さん! こ、こんなおしっこするみたいな格好!」カァァ
兄「もう十分、体温まっただろう?」ニヤ
兄「横たえるぞ、よいしょっと」
妹「あ、……あ」
兄「さて、どうして欲しい?」
妹「ちょ、ま、待ってください!」
兄「ん、なんだ?」
妹「に、兄さんの気持ちをまだ聞かせていただいて」
兄「さっき言っただろう。俺の負けって」ハァ
妹「ど、どういう、ことですか」
兄「おまえが襲われるのを見て、おまえが襲われるのが嫌だと聞いて、自分の気持ちがはっきりわかった」
妹「そ、それじゃあ……本当に」
兄「おまえは誰にも渡さない、渡したくない」
妹(……ああ、兄さん……私)ゾクゾク
兄「狭い風呂場でやるのは危険だからな。今日はおまえに気持ちよくなってもらおう」
妹「き、気持ちよく、ですか」
兄「はむ」グイ
妹(あ、上の水着、咥えられて)シュルン
兄「ん、形のいい、綺麗な胸だ」
妹「お、お褒めにあずかり、恐縮です」
兄「足、ちょっと開かせるぞ」
妹「え……ちょ、まさか」
兄「指、入れるぞ」スス
妹「」
妹「え、ちょ、いや、ホント、に……」カチンコチン
妹「――ぅ! ――ひぅ!――ひん!」ピクピク
兄「たった三分舌で舐めただけでも、こんなに固くなるもんなんだな」チュパチュパ
妹「そ、それは兄さんの、が」ガクガク
兄「ぱく」カリ
妹「い゛!」
兄(胸に意識が集中したところで、ポチっとな)クリリン
妹「ひゃん!? あっ、ああっ、んっ、あーっっ!」ビクンビクン
妹(駄目、こんな、こんなの! びりびりきちゃってっ、体がふわふわしてっ……)
兄「大分、出来上がってるみたいだな。ほんとに妹は、エッチな子だ」トローリ
妹「……ち、違います! それは、その」
兄「うん、なんだ?」
妹「して、くれるのが、兄さんだから、です」ボシュ
兄(……可愛すぎ)ウズ
すばらしい
849:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:43:44.25:scux4A1f0
やばい俺の3時間ものオナ禁が水の泡に
856:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:55:06.07:01tLXaAS0
>>849
節子それオナ禁やない休憩や
858:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 00:56:31.60:bl4VSGxu0節子それオナ禁やない休憩や
妹「あっ! んっ! くうぅん! あふっ!」ガクガク
兄(だいぶ、声を抑えられなくなってきたな)ニヤニヤ
兄「そろそろ昇れるかな?」
妹「あっ! の、昇るって? ……んんんんっ!!?」ビクビクン
兄「んん、ちゅう」
妹「に、兄さん! き、汚いです! 駄目です! そんなとこ、んんっ!!」
兄「ちゃんと洗ってあるから大丈夫さ。さて、どれくらい出てくるかな」ズ
妹(そ、そんな。に、兄さんが私の、あそこ、舐めて! あ゛あ゛! 頭が、真っ白く!)ビクビクビク
兄(やっとお豆さんが顔を出したか。仕上げだな、いっせーの、せぃ!)グリ
妹「―――ひっ!! ~~~~~~ぅぅぅぅううううう!!!?」プシュプシュ
兄「……わ、凄い量だな。もったいない」ジュルルル
妹(か、体、痙攣して! え、う、嘘!? 兄さん飲んでる! わ、私の、だ、も、わけ、わから、な……)ガクガク
兄部屋
妹「ベッド、正座」ビシ
兄「……はい」チョコン
妹「一応言い訳を、聞きましょうか」ジロ
兄「すみません、妹があまりに可愛すぎて調子に乗りました」タハー
妹「……う、だ、だからって! 気を失うまでやるなんてひどいじゃないですか!」カァァ
兄「いや、初めからあんなに盛り上がるとは、正直……予想外だったというか」ポリポリ
妹「//////」ボシュ
兄「まあでも、結果オーライだな。あのままやってたら絶対二人とも風邪引いてたし」
妹「……なんか納得がいきません」プンプン
兄「自分でするよりは、気持ちよかっただろ?」
妹「//////」ボシュ
兄「あー、すっきり。ここ三週間のもやもやが消し飛んだよ」
妹「……ねえ、兄さん。期間限定の恋人期限は、あと一週間残っているんです」
兄「ああ、そうだったっけか」
妹「最終日はクリスマスなんですけど?」
兄「」
妹「素敵なプレゼント、期待してもいいんですよね?」キラキラ
兄(……完敗だな、根を上げるのはこの日に絞ってたってことかよ)
兄「わかった、考えとくよ。それで、おまえは?」
妹「私は、もう兄さんに差し上げるものは決まっています」
妹(あるいは、今日差し上げていたかもしれないものですけど、ね)
兄「そっか。じゃあ、その日を楽しみに待つとする――と」ドサ
妹「――駄目ですよ。今度は兄さんが」
兄(ちょ、ズボン下ろされ)
妹「私で気持ちよくなる番で、――ふぁ、ふぇっくしょん!」ガリ
兄「」finale
まさかこれで終わりではなかろうな?
889:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:24:45.28:Q2jmkT3C0
クリスマスも書いてくれるんだろ?
892:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:25:56.27:Hwf95Gdg0
これで終わりだとしても今度クリスマスも書かないと許しませんよ!!!!!!!!
899: ◆F.0ZPEs1mU :2012/03/27(火) 01:32:39.48:bl4VSGxu0
長い支援と保守感謝です
すみません、これはここで終わりです
クリスマスも書けないことはないですが多分1000まで間に合わないので
万が一読みたい人がいれば、一週間以内にこのトリで書くかも
兄「うちの義妹がこんなに感じやすいわけがない」 ってなタイトルでドウデスカ
904:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:34:39.67:o6SiBJnq0すみません、これはここで終わりです
クリスマスも書けないことはないですが多分1000まで間に合わないので
万が一読みたい人がいれば、一週間以内にこのトリで書くかも
兄「うちの義妹がこんなに感じやすいわけがない」 ってなタイトルでドウデスカ
>>899
期待
タイトルもいいともう
908:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:35:48.30:vbki9udZO期待
タイトルもいいともう
乙!
910:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:36:06.37:OJF2GlHf0
>>1おつー楽しみにしてるわじゃあの
915:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 01:38:19.62:wZZ3g+qX0
妹の健気さと一途さに全俺が泣いた
933:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/03/27(火) 02:17:03.67:Km6IXCMv0
乙!!
コメント 10
コメント一覧 (10)
があまりに秀逸すぎて全て持っていったな
先輩は犠牲になったのだ・・・
血が繋がってないのも良い。
本気で兄になりたいと思ってしまった。
続編もしくは新作を楽しみにしています。
作者さんGJ!