1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:00:15.41 :pZ0kk8uso
P「ん、んん」
男は顔を上げて、まずは仰天しました。自分がそんな場所にいるはずはなかったからです。
あたりには白と青しかありませんでした。
地はただただ平らな雪に覆われ、天は青く蒼く澄みわたっていました。
男はもういちど周りを見まわして、納得したようにつぶやきました。
P「つまり、夢の中か」
なぜなら雪面には自分の足跡すらなかったからです。
ここが現実だとするなら、倒れていた身体に雪が積もっていなかったのに
ここまでやってきた足跡がないなんてありえないでしょう。
P「ん、んん」
男は顔を上げて、まずは仰天しました。自分がそんな場所にいるはずはなかったからです。
あたりには白と青しかありませんでした。
地はただただ平らな雪に覆われ、天は青く蒼く澄みわたっていました。
男はもういちど周りを見まわして、納得したようにつぶやきました。
P「つまり、夢の中か」
なぜなら雪面には自分の足跡すらなかったからです。
ここが現実だとするなら、倒れていた身体に雪が積もっていなかったのに
ここまでやってきた足跡がないなんてありえないでしょう。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:01:46.19 :pZ0kk8uso
P「貴音、いるかな?」
貴音「はい、あなた様」
とつぜん男の傍らに滲み出たのは、まだ娘さんとでもいうべき年齢の、
ふわふわと長い髪を波うたせたうつくしい女でした。
P「やっぱり貴音ならどこにでも出てこられるね」
貴音「謹んでどやあ、と申し上げます。ところでここは?」
P「きっと、夢の中だと思う」
貴音「面妖な」
P「まったくだ。君のかな?」
貴音「わかりません。あなた様のでは?」
P「俺の夢ならもっとうるさくてギスギスしているよ」
貴音「ふふっ。わたくしの夢ならあたりに食べ物がございましょう」
P「なるほど。俺たちじゃないなら、俺たちが知る他の誰かか」
P「貴音、いるかな?」
貴音「はい、あなた様」
とつぜん男の傍らに滲み出たのは、まだ娘さんとでもいうべき年齢の、
ふわふわと長い髪を波うたせたうつくしい女でした。
P「やっぱり貴音ならどこにでも出てこられるね」
貴音「謹んでどやあ、と申し上げます。ところでここは?」
P「きっと、夢の中だと思う」
貴音「面妖な」
P「まったくだ。君のかな?」
貴音「わかりません。あなた様のでは?」
P「俺の夢ならもっとうるさくてギスギスしているよ」
貴音「ふふっ。わたくしの夢ならあたりに食べ物がございましょう」
P「なるほど。俺たちじゃないなら、俺たちが知る他の誰かか」
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:03:30.63 :pZ0kk8uso
男女は黙ってあたりを見回していました。
焦っている様子はちっとも見られませんでした。
貴音「穏やかで、静かで、美しく、白い」
P「そうだな、雪歩だ」
貴音「左様でございますね」
男が伸びをして深く息を吸い込みました。
P「どう考えても雪歩だ。とても落ち着く」
貴音「ええ。……あなた様?」
P「うん?」
貴音「さいきん雪歩は伸び悩んでいるように見受けます」
P「君たちが心配することじゃない……
と普段なら言うところだけど、ここは夢だしな。当たりだよ」
男が少し寂しそうな顔をすると、白くほのかに輝く世界では、
はっとするほどに老け込んで見えるのでした。
男女は黙ってあたりを見回していました。
焦っている様子はちっとも見られませんでした。
貴音「穏やかで、静かで、美しく、白い」
P「そうだな、雪歩だ」
貴音「左様でございますね」
男が伸びをして深く息を吸い込みました。
P「どう考えても雪歩だ。とても落ち着く」
貴音「ええ。……あなた様?」
P「うん?」
貴音「さいきん雪歩は伸び悩んでいるように見受けます」
P「君たちが心配することじゃない……
と普段なら言うところだけど、ここは夢だしな。当たりだよ」
男が少し寂しそうな顔をすると、白くほのかに輝く世界では、
はっとするほどに老け込んで見えるのでした。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:05:04.07 :pZ0kk8uso
P「新規の案件は来てるんだ。みんなと比べても悪くない。
だけどリピートが減ってきた」
貴音「りぴいと……でございますか」
P「俺が前に言ったプロの条件、覚えてるか?」
貴音「はい……もう一度頼みたいと思わせる仕事をするのが
ぷろふぇっしょなるであると」
P「そう。払った金以上のものを与える、クライアントの期待を
良い方に裏切るのがプロの仕事だと俺は思っているし
みんなにもそうなってもらいたい。
重ねた満足が次の仕事を呼び、君たちにも自信を深める。
雪歩はもともとはリピート率こそ強みだったんだけど」
貴音「そうですか……」
P「あ、雪歩は悪くない。雪歩はよくやってくれてる」
貴音「ふふっ。私たちもほとんど皆、わかっておりますよ」
P「全員じゃないのかな」
貴音「ですから、雪歩が」
女の声が雪に染み込むと、あとには完全な無音だけが残りました。
P「新規の案件は来てるんだ。みんなと比べても悪くない。
だけどリピートが減ってきた」
貴音「りぴいと……でございますか」
P「俺が前に言ったプロの条件、覚えてるか?」
貴音「はい……もう一度頼みたいと思わせる仕事をするのが
ぷろふぇっしょなるであると」
P「そう。払った金以上のものを与える、クライアントの期待を
良い方に裏切るのがプロの仕事だと俺は思っているし
みんなにもそうなってもらいたい。
重ねた満足が次の仕事を呼び、君たちにも自信を深める。
雪歩はもともとはリピート率こそ強みだったんだけど」
貴音「そうですか……」
P「あ、雪歩は悪くない。雪歩はよくやってくれてる」
貴音「ふふっ。私たちもほとんど皆、わかっておりますよ」
P「全員じゃないのかな」
貴音「ですから、雪歩が」
女の声が雪に染み込むと、あとには完全な無音だけが残りました。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:06:31.68 :pZ0kk8uso
女はしゃがんで足下の雪をあつめ、雪玉を2つ作りました。
1つをあらぬ方向に投げ、雪に穿たれたあとを見て童女のように笑いました。
それからもう1つの雪玉を手にして男の背をじっと見つめました。
女が苦笑して雪玉を足元に捨てた時、ずいぶんと久しぶりに男は口を開きました。
P「雪歩を探す。ついてきてくれるかな?」
貴音「はい」
P「怖くないのか」
貴音「ちっとも」
P「俺は、怖いよ。
雪歩は本当によくやってるんだ。
結果がついてこないのはスタッフ、つまり俺のせいだ。
あいつの夢の中で俺はいったいどんなめに遭うんだろ」
貴音「ここがまことに雪歩の夢ならば、あなた様の隣りより安全な場所はありません。
わたくしはそう思います」
男は答えず、一方を向いていました。
白と青の世界に染み出したように、松の並木がありました。
女はしゃがんで足下の雪をあつめ、雪玉を2つ作りました。
1つをあらぬ方向に投げ、雪に穿たれたあとを見て童女のように笑いました。
それからもう1つの雪玉を手にして男の背をじっと見つめました。
女が苦笑して雪玉を足元に捨てた時、ずいぶんと久しぶりに男は口を開きました。
P「雪歩を探す。ついてきてくれるかな?」
貴音「はい」
P「怖くないのか」
貴音「ちっとも」
P「俺は、怖いよ。
雪歩は本当によくやってるんだ。
結果がついてこないのはスタッフ、つまり俺のせいだ。
あいつの夢の中で俺はいったいどんなめに遭うんだろ」
貴音「ここがまことに雪歩の夢ならば、あなた様の隣りより安全な場所はありません。
わたくしはそう思います」
男は答えず、一方を向いていました。
白と青の世界に染み出したように、松の並木がありました。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:08:15.42 :pZ0kk8uso
貴音「面妖な」
P「何が?」
貴音「あのような並木など先ほどまでありましたか?」
P「ああ、なかったよ。
けれど俺たちには雪歩を探す手がかりが必要だ。
なら用意してくれるだろう」
貴音「驚かないのですか」
P「呼んだ客を放り出しておくような子じゃない。
しかしあの先か。遠いね」
男女は雪の中を歩き始めました。
日の光が照り返り、寒さは感じませんでした。
近くで見たら、並木の間隔は思った以上にひらけていました。
松それ自体が巨きく、そのため見誤ったのでした。
太い幹の列をたどりながら、立ち止まったのは女でした。
貴音「面妖な」
P「今度はどうした?」
貴音「面妖な」
P「何が?」
貴音「あのような並木など先ほどまでありましたか?」
P「ああ、なかったよ。
けれど俺たちには雪歩を探す手がかりが必要だ。
なら用意してくれるだろう」
貴音「驚かないのですか」
P「呼んだ客を放り出しておくような子じゃない。
しかしあの先か。遠いね」
男女は雪の中を歩き始めました。
日の光が照り返り、寒さは感じませんでした。
近くで見たら、並木の間隔は思った以上にひらけていました。
松それ自体が巨きく、そのため見誤ったのでした。
太い幹の列をたどりながら、立ち止まったのは女でした。
貴音「面妖な」
P「今度はどうした?」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:09:40.86 :pZ0kk8uso
貴音「わたくしたちが近寄ると、松の姿が変わるようです」
言われて男はいちばん近くの幹を見つめました。
ひき肌も荒々しく重厚な松でした。
ふと、この夢のあるじである少女には似合わないと思いました。
続いて二本先の松に目をこらしました。
その姿はまるで電波が不安定なテレビの画面のようにざわついて、
時折苦しげに歪んでいました。
更にその先の一本に目をやると、それは穏やかに、日に照らされて霞んでいました。
日の当たる肌は雪景色と溶け合うかのよう、
古い古い水墨画を見ている心地といえばよいのでしょうか。
P「貴音」
貴音「はい」
貴音「わたくしたちが近寄ると、松の姿が変わるようです」
言われて男はいちばん近くの幹を見つめました。
ひき肌も荒々しく重厚な松でした。
ふと、この夢のあるじである少女には似合わないと思いました。
続いて二本先の松に目をこらしました。
その姿はまるで電波が不安定なテレビの画面のようにざわついて、
時折苦しげに歪んでいました。
更にその先の一本に目をやると、それは穏やかに、日に照らされて霞んでいました。
日の当たる肌は雪景色と溶け合うかのよう、
古い古い水墨画を見ている心地といえばよいのでしょうか。
P「貴音」
貴音「はい」
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:10:48.31 :pZ0kk8uso
P「二本先の松はどう見える?」
貴音「苦しげに乱れています」
P「三本先の松は」
貴音「はっきりと。ですがとてもしんぷるに。
とても愛らしく。……とても雪歩らしく」
P「ずばりと言ったね。
たとえ子どもでも女は女だ。残酷だ」
貴音「言葉に依らなければむごくあれないむすめ子は、
殿方にくらべればかわいいものだと申す者がおりました」
P「うまいことを言う人だな」
貴音「あと、わたくしは子どもではございません。訂正してください」
P「あ、そうだったのか。最近は子どもの定義が変わったのか。
それは知らなかった。謝るよ。ごめん」
貴音「いけずです……」
P「二本先の松はどう見える?」
貴音「苦しげに乱れています」
P「三本先の松は」
貴音「はっきりと。ですがとてもしんぷるに。
とても愛らしく。……とても雪歩らしく」
P「ずばりと言ったね。
たとえ子どもでも女は女だ。残酷だ」
貴音「言葉に依らなければむごくあれないむすめ子は、
殿方にくらべればかわいいものだと申す者がおりました」
P「うまいことを言う人だな」
貴音「あと、わたくしは子どもではございません。訂正してください」
P「あ、そうだったのか。最近は子どもの定義が変わったのか。
それは知らなかった。謝るよ。ごめん」
貴音「いけずです……」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:12:24.96 :pZ0kk8uso
P「夢の中だもの。
さて。俺はここで止まっているから二本目の松まで行ってくれないか」
貴音「はい」
言われて女は松に向けて走り出しました。
すねの中ほどまでが埋まる雪を味わうように。長い髪が揺れました。
女がすっきりと立つ傍らで松がのたうつ有り様は、
夢の中といってもなお戸惑いを与えるものでした。
P「すぐそばにいる貴音にもかすんで、ねじけて見えるのかな?」
貴音「はい」
P「そこで待ってて。今度は俺がそっちに行く」
そう言うと、男はその松を見ながら近づきました。
距離が縮まるにつれて松のかすれは大きくなり、苦しげにも見え、
ひときわ震えると堅固で重厚なひき肌に姿を変えました。
P「つまり」
男はつぶやき、女は名残惜しげに松の肌を撫でていました。
P「俺の近くにあるものは姿を変えるんだな。
ここは雪歩の夢だ。
けれど、あの子は俺の周りだけ俺に合わせている」
P「夢の中だもの。
さて。俺はここで止まっているから二本目の松まで行ってくれないか」
貴音「はい」
言われて女は松に向けて走り出しました。
すねの中ほどまでが埋まる雪を味わうように。長い髪が揺れました。
女がすっきりと立つ傍らで松がのたうつ有り様は、
夢の中といってもなお戸惑いを与えるものでした。
P「すぐそばにいる貴音にもかすんで、ねじけて見えるのかな?」
貴音「はい」
P「そこで待ってて。今度は俺がそっちに行く」
そう言うと、男はその松を見ながら近づきました。
距離が縮まるにつれて松のかすれは大きくなり、苦しげにも見え、
ひときわ震えると堅固で重厚なひき肌に姿を変えました。
P「つまり」
男はつぶやき、女は名残惜しげに松の肌を撫でていました。
P「俺の近くにあるものは姿を変えるんだな。
ここは雪歩の夢だ。
けれど、あの子は俺の周りだけ俺に合わせている」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:13:37.49 :pZ0kk8uso
貴音「あなた様の意に添おうというのでしょう。
まこと、雪歩らしいいじらしさかと」
P「そんな姿をファンは見たくないよ。
俺だっていやだ。
こんな卑屈さを貴音は気づいていたか?」
貴音「雪歩がどうと言うのではありません。
あなた様は皆にとって最初のおーでぃえんすです。
まずあなた様に認めてもらいたい、
というのは無理もないことかと」
P「君らが俺の評価を気にしていたとは思わなかったよ。
みんなもう好き勝手やってくれてるからね」
貴音「ふふ。喜ばせたくても自分は変えられませんから」
P「でも雪歩は変えた」
貴音「はい」
P「叱られたくないあまりに自分を殺したのか。
それほど萎縮させていたのに気づかなかったんだね、俺は」
女はつと手を上げて男の背に触れようとし、しかしそのまま手を下ろしました。
貴音「……恐れてではないでしょう」
貴音「あなた様の意に添おうというのでしょう。
まこと、雪歩らしいいじらしさかと」
P「そんな姿をファンは見たくないよ。
俺だっていやだ。
こんな卑屈さを貴音は気づいていたか?」
貴音「雪歩がどうと言うのではありません。
あなた様は皆にとって最初のおーでぃえんすです。
まずあなた様に認めてもらいたい、
というのは無理もないことかと」
P「君らが俺の評価を気にしていたとは思わなかったよ。
みんなもう好き勝手やってくれてるからね」
貴音「ふふ。喜ばせたくても自分は変えられませんから」
P「でも雪歩は変えた」
貴音「はい」
P「叱られたくないあまりに自分を殺したのか。
それほど萎縮させていたのに気づかなかったんだね、俺は」
女はつと手を上げて男の背に触れようとし、しかしそのまま手を下ろしました。
貴音「……恐れてではないでしょう」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:15:14.50 :pZ0kk8uso
P「なんでも同じだよ。でも今は雪歩を探そう。
夢に俺を招いたからには、あいつも何とかしたいんだと思う」
貴音「あなた様! あれを」
女の驚きの理由は明らかでした。
二人を導いていた松はもうどこにもなく、
なだらかな雪の坂を下った先、
女の指は小さなあずま家を示していたからです。
P「なるほど、あの中か。
なら貴音はもう醒めてくれ。あとは一人で行くから」
貴音「そんな、わたくしも」
P「勝手だけどごめん。
俺がこれからする話は雪歩の針路に関わることなんだ。
貴音だったら他の子にいてもらいたい?」
貴音「……雪歩のことよろしくお願いいたします」
P「任せなさい。貴音が醒めてもこの記憶があったら、
俺と雪歩をなるべく起こさないようにしてくれないか。
夢は一瞬のはずだけど、自然に目覚めたほうがいいと思うし」
貴音「はい」
P「ここまでついてきてくれてありがとうな」
滲んで消えた女を見送って、男は丘を下ってゆきました。
P「なんでも同じだよ。でも今は雪歩を探そう。
夢に俺を招いたからには、あいつも何とかしたいんだと思う」
貴音「あなた様! あれを」
女の驚きの理由は明らかでした。
二人を導いていた松はもうどこにもなく、
なだらかな雪の坂を下った先、
女の指は小さなあずま家を示していたからです。
P「なるほど、あの中か。
なら貴音はもう醒めてくれ。あとは一人で行くから」
貴音「そんな、わたくしも」
P「勝手だけどごめん。
俺がこれからする話は雪歩の針路に関わることなんだ。
貴音だったら他の子にいてもらいたい?」
貴音「……雪歩のことよろしくお願いいたします」
P「任せなさい。貴音が醒めてもこの記憶があったら、
俺と雪歩をなるべく起こさないようにしてくれないか。
夢は一瞬のはずだけど、自然に目覚めたほうがいいと思うし」
貴音「はい」
P「ここまでついてきてくれてありがとうな」
滲んで消えた女を見送って、男は丘を下ってゆきました。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:16:15.43 :pZ0kk8uso
男はあずま家から少し離れたところで立ち止まりました。
それは先ほどの松の並木の三本ぶんの距離でした。
男はしばらくあずま家を眺めていました。
白塗りのしっくいと檜皮をふいた屋根。
その可愛らしい建物をどう考えているのか、よそからでは窺うことはできませんでした。
男は一つ頭を振ると近づいて行きました。
一歩ごとに、あずま家の輪郭が乱れ身悶えているようでした。
P「入っていいか? 雪歩」
男はドアをノックしました。
なぜノックしたのか?
そこにあるのはあずま家ではなく、
プレハブの小さな家だったからです。
戸ではなくドアだったからです。
男が近づいたことで姿を変えたからです。
男はあずま家から少し離れたところで立ち止まりました。
それは先ほどの松の並木の三本ぶんの距離でした。
男はしばらくあずま家を眺めていました。
白塗りのしっくいと檜皮をふいた屋根。
その可愛らしい建物をどう考えているのか、よそからでは窺うことはできませんでした。
男は一つ頭を振ると近づいて行きました。
一歩ごとに、あずま家の輪郭が乱れ身悶えているようでした。
P「入っていいか? 雪歩」
男はドアをノックしました。
なぜノックしたのか?
そこにあるのはあずま家ではなく、
プレハブの小さな家だったからです。
戸ではなくドアだったからです。
男が近づいたことで姿を変えたからです。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:17:18.83 :pZ0kk8uso
雪歩「は、はいぃ」
ドアを開けるとエアコンで温められた空気が流れ出してきました。
背後の雪を溶かすほどの勢いでした。
部屋の中にはテーブルとソファ、
その二つに挟まれるように少女が一人正座をしていました。
P「それ、コーヒーか」
男は少女の手元を見て言いました。
正座する少女が両手をそっと添えているのは、
ぶ厚いガラスのカフェオレボウルでした。
雪歩「あ、え、は、はい。プロデューサーが来るような気がして」
P「抹茶を立てるようにコーヒーを入れるんだね、雪歩は」
雪歩「あ、え、えと、癖ですから」
P「邪魔するよ。……なら抹茶を出してくれたらいい」
男は正座する少女の向かいにあぐらをかきました。
雪歩「は、はいぃ」
ドアを開けるとエアコンで温められた空気が流れ出してきました。
背後の雪を溶かすほどの勢いでした。
部屋の中にはテーブルとソファ、
その二つに挟まれるように少女が一人正座をしていました。
P「それ、コーヒーか」
男は少女の手元を見て言いました。
正座する少女が両手をそっと添えているのは、
ぶ厚いガラスのカフェオレボウルでした。
雪歩「あ、え、は、はい。プロデューサーが来るような気がして」
P「抹茶を立てるようにコーヒーを入れるんだね、雪歩は」
雪歩「あ、え、えと、癖ですから」
P「邪魔するよ。……なら抹茶を出してくれたらいい」
男は正座する少女の向かいにあぐらをかきました。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:18:46.89 :pZ0kk8uso
雪歩「でもプロデューサーはコーヒーが好きって」
P「この部屋もそうだ。
小さな洋間にせせこましくソファとテーブルを並べて埋まってる。
この間取りなら茶室で茶の道具だけで良かったんじゃないか」
雪歩「え? もしかして、プロデューサーは
そういうのがお好きだったんですか………?」
カフェオレボウルが、テーブルとソファが、部屋の中にあるもの全てが、
部屋自体が乱れて震えました。
P「いや、こういうやり方は意味がないね。悪い」
ゆがみは何事もなかったようにもとに戻りました。
雪歩「え?」
P「まじめな話をしていいかな?」
雪歩「え? あ、はい!」
P「成績の話だ」
そう聞くと少女は居心地悪そうに身をすくめました。
エアコンがごうとひときわ強くうなりを上げました。
雪歩「でもプロデューサーはコーヒーが好きって」
P「この部屋もそうだ。
小さな洋間にせせこましくソファとテーブルを並べて埋まってる。
この間取りなら茶室で茶の道具だけで良かったんじゃないか」
雪歩「え? もしかして、プロデューサーは
そういうのがお好きだったんですか………?」
カフェオレボウルが、テーブルとソファが、部屋の中にあるもの全てが、
部屋自体が乱れて震えました。
P「いや、こういうやり方は意味がないね。悪い」
ゆがみは何事もなかったようにもとに戻りました。
雪歩「え?」
P「まじめな話をしていいかな?」
雪歩「え? あ、はい!」
P「成績の話だ」
そう聞くと少女は居心地悪そうに身をすくめました。
エアコンがごうとひときわ強くうなりを上げました。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:19:30.27 :pZ0kk8uso
P「毎日忙しくて気づいていないとは思うが、このところ思わしくない」
雪歩「ううっ、私、ダメダメですから」
P「それならこんなに悩まない。雪歩はよくやってる。悪いのは俺だ」
雪歩「プロデューサーは悪くありません!」
P「ありがとう。
でもいま期待したような成果を出せていないことは事実だし、
そのためにはまず分析をしないといけない。
犯人探しじゃない。問題探しだ。わかるか?」
雪歩「は、はい」
P「毎日忙しくて気づいていないとは思うが、このところ思わしくない」
雪歩「ううっ、私、ダメダメですから」
P「それならこんなに悩まない。雪歩はよくやってる。悪いのは俺だ」
雪歩「プロデューサーは悪くありません!」
P「ありがとう。
でもいま期待したような成果を出せていないことは事実だし、
そのためにはまず分析をしないといけない。
犯人探しじゃない。問題探しだ。わかるか?」
雪歩「は、はい」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:20:55.13 :pZ0kk8uso
P「いま俺たちがいるのが夢だって気づいているかな」
雪歩「え? そうなんですか?」
P「お前はほんの少し前までこじんまりとした茶室にいた。違う?」
雪歩「は、はい。
お外を見ながらお茶を飲もうかと思って」
P「だがいまはこんな部屋になってる」
雪歩「で、でもプロデューサーがいるんですから当たり前です」
P「それだ」
雪歩「は、え? す、すみません」
P「自分の夢の中でも俺の好みを優先させてる」
雪歩「え、で、でも、プロデューサーに喜んでもらえたほうが」
P「ごめん」
雪歩「えっ」
P「あのわんぱくなじゃじゃ馬たちの中で
素直に言うことを聞いてくれる雪歩に甘えすぎた。
あるいは無理を押しつけた」
雪歩「そんな、謝ることなんて……」
P「いま俺たちがいるのが夢だって気づいているかな」
雪歩「え? そうなんですか?」
P「お前はほんの少し前までこじんまりとした茶室にいた。違う?」
雪歩「は、はい。
お外を見ながらお茶を飲もうかと思って」
P「だがいまはこんな部屋になってる」
雪歩「で、でもプロデューサーがいるんですから当たり前です」
P「それだ」
雪歩「は、え? す、すみません」
P「自分の夢の中でも俺の好みを優先させてる」
雪歩「え、で、でも、プロデューサーに喜んでもらえたほうが」
P「ごめん」
雪歩「えっ」
P「あのわんぱくなじゃじゃ馬たちの中で
素直に言うことを聞いてくれる雪歩に甘えすぎた。
あるいは無理を押しつけた」
雪歩「そんな、謝ることなんて……」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:23:06.12 :pZ0kk8uso
P「雪歩のイメージカラーは白。清楚で健気、真摯でおとなしく儚げな美少女だ」
P「男はみんな本能的に、君を自分の色に染めたいと思う。
身も蓋もない言い方だけど、そういう魅力もあるんだから仕方ない」
雪歩「は、はずかしい、です」
少女は首まで朱を浮かべ、男はそっと目をそらしました。
P「男が苦手という厄介な性格も純粋さを育てのに役だったんだろう。
だが異物が現れた」
雪歩「異物……?」
P「俺だ。口で言われても信じられなかっただろうけど
こうして夢の中を歩けばわかる」
雪歩「プロデューサーはい、異物、なんかじゃ……」
P「屈託なく楽しく笑っていると思い込んでいた。
でも、やっぱり俺を恐れていたんだね。
ごく自然と、夢の中まで俺の好みにあつらえようとするほど」
P「でもね、俺の色が混じった雪歩なんて誰も望んでいない。
だから、失望した男たちは次の仕事を寄越さなくなった。
もちろん読めなかった俺が悪い。
君だけは個性を大切に受け入れて、
技術的なところだけを指摘するべきだった」
言ってから男は部屋の中を見回しました。
男の目には、画一的な壁のクリーム色がより鮮明になったように見えました。
P「雪歩のイメージカラーは白。清楚で健気、真摯でおとなしく儚げな美少女だ」
P「男はみんな本能的に、君を自分の色に染めたいと思う。
身も蓋もない言い方だけど、そういう魅力もあるんだから仕方ない」
雪歩「は、はずかしい、です」
少女は首まで朱を浮かべ、男はそっと目をそらしました。
P「男が苦手という厄介な性格も純粋さを育てのに役だったんだろう。
だが異物が現れた」
雪歩「異物……?」
P「俺だ。口で言われても信じられなかっただろうけど
こうして夢の中を歩けばわかる」
雪歩「プロデューサーはい、異物、なんかじゃ……」
P「屈託なく楽しく笑っていると思い込んでいた。
でも、やっぱり俺を恐れていたんだね。
ごく自然と、夢の中まで俺の好みにあつらえようとするほど」
P「でもね、俺の色が混じった雪歩なんて誰も望んでいない。
だから、失望した男たちは次の仕事を寄越さなくなった。
もちろん読めなかった俺が悪い。
君だけは個性を大切に受け入れて、
技術的なところだけを指摘するべきだった」
言ってから男は部屋の中を見回しました。
男の目には、画一的な壁のクリーム色がより鮮明になったように見えました。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:24:15.04 :pZ0kk8uso
雪歩「怖がってなんか……」
P「なに?」
雪歩「怖くなんかないです」
P「違うよ。君は俺を恐れるあまり俺に従うことを選んだ。それだけだ」
雪歩「す、好きな……」
P「うん?」
雪歩「好きな人の好みに合わせたいのが、そんなに、いけない、ことですか」
男は何もいわず、握った拳で三度自分の額を叩きました。
雪歩「お母さん、若いころミニスカートはいてました。
結婚してからいつも和服です。
でもお母さん、いつも幸せです」
P「ばかかお前は」
少女が目を見開くと、こらえていたしずくが手の甲に落ちました。
雪歩「怖がってなんか……」
P「なに?」
雪歩「怖くなんかないです」
P「違うよ。君は俺を恐れるあまり俺に従うことを選んだ。それだけだ」
雪歩「す、好きな……」
P「うん?」
雪歩「好きな人の好みに合わせたいのが、そんなに、いけない、ことですか」
男は何もいわず、握った拳で三度自分の額を叩きました。
雪歩「お母さん、若いころミニスカートはいてました。
結婚してからいつも和服です。
でもお母さん、いつも幸せです」
P「ばかかお前は」
少女が目を見開くと、こらえていたしずくが手の甲に落ちました。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:25:09.07 :pZ0kk8uso
P「ばかだお前は。それは幼稚園児のかかるはしかだよ。
初めて会った怖くない男を惜しんでいるだけだ」
雪歩「そ、そんなこと」
P「ああ、そんなことはどうでもいい。
問題なのは雪歩がアイドルだってことだ」
雪歩「そんなの関係」
P「ないわけないよ。アイドルは普通の人間じゃない。
世の中を照らすいきものなんだ。
出会った人を幸せにするために今の雪歩はいるんだ。
女の子たちは雪歩に憧れて少しだけおしとやかになって
男の子たちは雪歩を見て少しだけ隣りの女の子に優しくなる。
雪歩のお陰で世界はほんの少しだけ優しい場所になる。
もうそういう存在になってるんだ」
P「ばかだお前は。それは幼稚園児のかかるはしかだよ。
初めて会った怖くない男を惜しんでいるだけだ」
雪歩「そ、そんなこと」
P「ああ、そんなことはどうでもいい。
問題なのは雪歩がアイドルだってことだ」
雪歩「そんなの関係」
P「ないわけないよ。アイドルは普通の人間じゃない。
世の中を照らすいきものなんだ。
出会った人を幸せにするために今の雪歩はいるんだ。
女の子たちは雪歩に憧れて少しだけおしとやかになって
男の子たちは雪歩を見て少しだけ隣りの女の子に優しくなる。
雪歩のお陰で世界はほんの少しだけ優しい場所になる。
もうそういう存在になってるんだ」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:26:16.47 :pZ0kk8uso
雪歩「そんな、私はただ性格を変えたかっただけで」
P「本人の意志は関係ない。能力が人生を決める。
そういう人間もいるんだよ。そして君はそうなった」
雪歩「でも」
P「なんだ」
雪歩「でも、私は、みんなよりもプロデューサー1人がいいです……」
少女は手の甲にしずくを落とすのに忙しかったから、
男が一瞬手を伸ばしかけたことには気づきませんでした。
P「……阿呆が」
雪歩「……阿呆でもいいですぅ」
P「阿呆が」
雪歩「……阿呆ですぅ」
P「阿呆」
雪歩「……」
P「わかった」
雪歩「えっ?」
雪歩「そんな、私はただ性格を変えたかっただけで」
P「本人の意志は関係ない。能力が人生を決める。
そういう人間もいるんだよ。そして君はそうなった」
雪歩「でも」
P「なんだ」
雪歩「でも、私は、みんなよりもプロデューサー1人がいいです……」
少女は手の甲にしずくを落とすのに忙しかったから、
男が一瞬手を伸ばしかけたことには気づきませんでした。
P「……阿呆が」
雪歩「……阿呆でもいいですぅ」
P「阿呆が」
雪歩「……阿呆ですぅ」
P「阿呆」
雪歩「……」
P「わかった」
雪歩「えっ?」
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:26:51.31 :pZ0kk8uso
P「選んでいい」
雪歩「えら、ぶ?」
P「アイドルを続けるか、辞めるか選んでいい。
辞める方を選んだなら、俺のこれからの人生をあげる」
雪歩「それって」
P「俺は宝物を失うんだよ。
せめて雪歩を手に入れないと割に合わない」
雪歩「プロデューサー……」
P「選んでいい」
雪歩「えら、ぶ?」
P「アイドルを続けるか、辞めるか選んでいい。
辞める方を選んだなら、俺のこれからの人生をあげる」
雪歩「それって」
P「俺は宝物を失うんだよ。
せめて雪歩を手に入れないと割に合わない」
雪歩「プロデューサー……」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:28:10.34 :pZ0kk8uso
P「俺はこれから目をつぶる。
目をつぶって10数える。その間にこの部屋を整えて」
P「アイドルを続けるなら、雪歩の好みの茶室に。
ボウルもコーヒーも捨ててしまえ。
そんなものは雪歩のもてなしにはいらない」
P「俺と生きていくならこのままだ。――10」
雪歩「は、はい」
P「なあ雪歩。
初めてのライブ、楽しかったよな。客の顔が見える小さなハコで
最前列のOL2人が即売CD持って
目をキラキラさせてサインをねだってくれた。
――8」
雪歩「はい……」
P「俺はこれから目をつぶる。
目をつぶって10数える。その間にこの部屋を整えて」
P「アイドルを続けるなら、雪歩の好みの茶室に。
ボウルもコーヒーも捨ててしまえ。
そんなものは雪歩のもてなしにはいらない」
P「俺と生きていくならこのままだ。――10」
雪歩「は、はい」
P「なあ雪歩。
初めてのライブ、楽しかったよな。客の顔が見える小さなハコで
最前列のOL2人が即売CD持って
目をキラキラさせてサインをねだってくれた。
――8」
雪歩「はい……」
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:29:15.51 :pZ0kk8uso
P「盲導犬のレポートはミスキャストで悪かったと思ってる。
でもあれからしばらく『足の指がグーになって動けません』が
女の子たちの間で流行ったんだって。
――6」
雪歩「はい……ぐすっ」
P「前回の集合ライブのさ、あのウィンクのプロマイドは
未だに友だちに頼まれるレアものだ。
――4」
雪歩「プ、プロデューサー、私……」
P「うん?」
雪歩「10じゃなくて、もう少し、もう少し考えていいですか……?」
P「ああ。いくらでも待ってあげる。どうせ邯鄲の夢だ」
雪歩「ぐすっ、ごめんなさい……。
決めますから。プロデューサーを選びますから。
いいって言うまで目を閉じていてください……」
室内がぐにゃりとうねりましたが、
目を閉じていたから、きっと気づかなかったことでしょう。
ただ、何か柔らかいものが唇をなぞったような気がしました。
P「盲導犬のレポートはミスキャストで悪かったと思ってる。
でもあれからしばらく『足の指がグーになって動けません』が
女の子たちの間で流行ったんだって。
――6」
雪歩「はい……ぐすっ」
P「前回の集合ライブのさ、あのウィンクのプロマイドは
未だに友だちに頼まれるレアものだ。
――4」
雪歩「プ、プロデューサー、私……」
P「うん?」
雪歩「10じゃなくて、もう少し、もう少し考えていいですか……?」
P「ああ。いくらでも待ってあげる。どうせ邯鄲の夢だ」
雪歩「ぐすっ、ごめんなさい……。
決めますから。プロデューサーを選びますから。
いいって言うまで目を閉じていてください……」
室内がぐにゃりとうねりましたが、
目を閉じていたから、きっと気づかなかったことでしょう。
ただ、何か柔らかいものが唇をなぞったような気がしました。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:29:50.93 :pZ0kk8uso
P「ん、んん」
貴音「お目覚めですか」
そばには2人。
うつくしい髪の女と、机につっぷしているのは
部屋の中で向かい合った少女でした。
P「あ、うん、貴音か。覚えているか?」
貴音「あなた様も?」
P「不思議こともあるもんだな」
貴音「左様ですね。それで、雪歩は?」
P「ん、んん」
貴音「お目覚めですか」
そばには2人。
うつくしい髪の女と、机につっぷしているのは
部屋の中で向かい合った少女でした。
P「あ、うん、貴音か。覚えているか?」
貴音「あなた様も?」
P「不思議こともあるもんだな」
貴音「左様ですね。それで、雪歩は?」
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:30:32.83 :pZ0kk8uso
P「わからない。返事は聞きそびれたまま目が醒めて」
その言葉を追いかけるように、少女が小さな声を上げました。
雪歩「ん、四条さん……? あ! プ、プロデューサー! きゃあ!」
慌てて寝起きの顔を隠した少女を眺めてから、男女は視線を交わしました。
P「雪歩、覚えているか?」
雪歩「え? な、今日のステージですか?」
P「……」
貴音「……」
P「ああ。セットリスト、居眠りで落ちてない? MCは?」
雪歩「はい! ばっちりですぅ!
あ、でも、もう一度おさらいしてきます!」
顔を隠しながら小走りに逃げ出した少女を見送ってから、
男に視線を戻した女は小さく首をかしげました。
男は仏頂面をしていました。
P「わからない。返事は聞きそびれたまま目が醒めて」
その言葉を追いかけるように、少女が小さな声を上げました。
雪歩「ん、四条さん……? あ! プ、プロデューサー! きゃあ!」
慌てて寝起きの顔を隠した少女を眺めてから、男女は視線を交わしました。
P「雪歩、覚えているか?」
雪歩「え? な、今日のステージですか?」
P「……」
貴音「……」
P「ああ。セットリスト、居眠りで落ちてない? MCは?」
雪歩「はい! ばっちりですぅ!
あ、でも、もう一度おさらいしてきます!」
顔を隠しながら小走りに逃げ出した少女を見送ってから、
男に視線を戻した女は小さく首をかしげました。
男は仏頂面をしていました。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:31:24.29 :pZ0kk8uso
貴音「あなた様? 何かあったのですか?」
P「ん? いや。どうもかわいい嫁を逃したようだ。
今更になって、間違ったかなとね」
貴音「まあ……でも」
P「うん?」
貴音「それにしては、嬉しそうで」
P「まあね」
貴音「とても残念そうで」
P「まあね」
貴音「ふふっ」
女は口に手を当てました。
男は苦笑いをうかべました。
このお話も、夢のように唐突に幕とさせていただきます。
<おしまい>
貴音「あなた様? 何かあったのですか?」
P「ん? いや。どうもかわいい嫁を逃したようだ。
今更になって、間違ったかなとね」
貴音「まあ……でも」
P「うん?」
貴音「それにしては、嬉しそうで」
P「まあね」
貴音「とても残念そうで」
P「まあね」
貴音「ふふっ」
女は口に手を当てました。
男は苦笑いをうかべました。
このお話も、夢のように唐突に幕とさせていただきます。
<おしまい>
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 11:45:13.15 :pZ0kk8uso
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
普段と違う文体にを挑戦してみました。
ご意見ご指摘等あれば、ありがたく拝聴いたします。
普段と違う文体にを挑戦してみました。
ご意見ご指摘等あれば、ありがたく拝聴いたします。
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/06/12(火) 11:46:48.44 :gmR+HiAZo
不思議な話だった
乙
乙
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海):2012/06/12(火) 11:47:08.84 :lMtm0cGAO
乙
読みやすくてひきこまれた
読みやすくてひきこまれた
31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽):2012/06/12(火) 13:08:24.32 :FqnZ+mwAO
モノローグ調じゃない地文だからか、すごい幻想的な雰囲気だよね。正に夢見心地。
本来の書き方と違うとは思えない。板についてる感じだったよ。
本来の書き方と違うとは思えない。板についてる感じだったよ。
32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/06/12(火) 14:54:35.81 :Sbf5hjsW0
なんとなくだが、律子SSを書いた人か?違ってたらごめん。
丁寧で面白かった。
丁寧で面白かった。
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/06/12(火) 16:21:52.82 :pZ0kk8uso
>>32
律子SSは二日前にりっさんとおっさんのを書きました。
テーマおなじですもんね。わかりますよね。
リンクを張っときますので、興味をもたれたら読んでいただけたら幸いです。
http://www32.atwiki.jp/imasss/pages/38.html
律子SSは二日前にりっさんとおっさんのを書きました。
テーマおなじですもんね。わかりますよね。
リンクを張っときますので、興味をもたれたら読んでいただけたら幸いです。
http://www32.atwiki.jp/imasss/pages/38.html
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2012/06/12(火) 22:00:12.55 :iLqtRzaL0
お疲れ様です
不思議な感じのする作品だった。これからも無理の無いようがんばってください
不思議な感じのする作品だった。これからも無理の無いようがんばってください
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県):2012/06/13(水) 00:15:42.25 :RprPYU2Bo
乙
コメント 6
コメント一覧 (6)
きっと静かな人気があるんだろうなって
勝手に思ってる