1:Z級:2012/10/08(月) 12:04:57.09 :45U1MmZF0
左胸の少し下がとても痒い。
自覚したのは三日前、
虫に噛まれたわけでもない。
僕はそれを放置していた。
そして今朝、目が覚めると、
そこからキノコか何かのように
小さな女の子が生えていた。
少女は全裸であったが、
鎖骨の少し下あたりからしか生えていなかった。
そのため大事な部分は隠れていた。
左胸の少し下がとても痒い。
自覚したのは三日前、
虫に噛まれたわけでもない。
僕はそれを放置していた。
そして今朝、目が覚めると、
そこからキノコか何かのように
小さな女の子が生えていた。
少女は全裸であったが、
鎖骨の少し下あたりからしか生えていなかった。
そのため大事な部分は隠れていた。
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4:Z級:2012/10/08(月) 12:05:44.94 :45U1MmZF0
「生えてきてごめんなさい」
少女は申し訳なさそう頭を下げた。
僕は驚いて、少女を観察する。
黒髪の綺麗な、清純そうな少女だ。
観念して言ってしまえば、
僕の初恋の女の子にとても似ていた。
初恋は小学一年生の時で、
その子の顔なんてろくに憶えていないのだけど。
生えてきた女の子は十代ぐらいに見えた。
「生えてきてごめんなさい」
少女は申し訳なさそう頭を下げた。
僕は驚いて、少女を観察する。
黒髪の綺麗な、清純そうな少女だ。
観念して言ってしまえば、
僕の初恋の女の子にとても似ていた。
初恋は小学一年生の時で、
その子の顔なんてろくに憶えていないのだけど。
生えてきた女の子は十代ぐらいに見えた。
8:Z級:2012/10/08(月) 12:06:27.34 :45U1MmZF0
こういう場合は病院にいくべきだろうか
それとも救急車を呼ぶべきだろうか
僕は真剣に悩み、とりあえずシャツを脱いだ。
少女がシャツの中、もぞもぞと息苦しそうにしていたからだ。
「あの」
「……喋ってる」
「あの、聞こえますか?」
「聞こえてますよ」
少女は声が届いていると知り、微笑んだ。
こういう場合は病院にいくべきだろうか
それとも救急車を呼ぶべきだろうか
僕は真剣に悩み、とりあえずシャツを脱いだ。
少女がシャツの中、もぞもぞと息苦しそうにしていたからだ。
「あの」
「……喋ってる」
「あの、聞こえますか?」
「聞こえてますよ」
少女は声が届いていると知り、微笑んだ。
12:Z級:2012/10/08(月) 12:07:11.37 :45U1MmZF0
「突然、占拠してしまってごめんなさい」
「胸上占拠だ。胸上不法占拠だ」
デモをおこしてやろうかと考える。
自分の体の上の土地は、一体誰のものなのだろう?
ふとくだらないことを考える。
その土地を買った覚えはないが、
僕のものであるべきだろう。
「君は何なんだ?」
気になっていたことを尋ねる。
「突然、占拠してしまってごめんなさい」
「胸上占拠だ。胸上不法占拠だ」
デモをおこしてやろうかと考える。
自分の体の上の土地は、一体誰のものなのだろう?
ふとくだらないことを考える。
その土地を買った覚えはないが、
僕のものであるべきだろう。
「君は何なんだ?」
気になっていたことを尋ねる。
15:Z級:2012/10/08(月) 12:08:14.32 :45U1MmZF0
「何なんでしょう?」
「あのね」
「私を責められても困りますよ」
突然、強気で少女は言い出した。
僕は気が弱い。
小さな少女が少し語気を強めただけで驚く。
「なんで」
「気付いたらここに生えてたんですから」
「僕は生えられてたんだけど」
「それにですね、考えてみてください」
「考えよう」
「あなたは左胸が少し重くなっただけです」
「……それだけかな?」
いまいち納得がいかない。
彼女が生えてきたことによって、
より多くの損害は生ずる気がする。
「何なんでしょう?」
「あのね」
「私を責められても困りますよ」
突然、強気で少女は言い出した。
僕は気が弱い。
小さな少女が少し語気を強めただけで驚く。
「なんで」
「気付いたらここに生えてたんですから」
「僕は生えられてたんだけど」
「それにですね、考えてみてください」
「考えよう」
「あなたは左胸が少し重くなっただけです」
「……それだけかな?」
いまいち納得がいかない。
彼女が生えてきたことによって、
より多くの損害は生ずる気がする。
20:Z級:2012/10/08(月) 12:09:02.06 :45U1MmZF0
「私は脚がないせいで、動くこともできません」
「……そうだね」
「私のほうが損害を被っています」
「……そうかな」
「そうです」
押し切られてしまう。
「私は脚がないせいで、動くこともできません」
「……そうだね」
「私のほうが損害を被っています」
「……そうかな」
「そうです」
押し切られてしまう。
21:Z級:2012/10/08(月) 12:09:59.66 :45U1MmZF0
僕が病院に電話をしようと携帯をとると
突然少女は慌てだした。
「どこに電話するつもりですかっ?」
「どこって……病院」
この状況で時報を聞いたり
出前をとる人間がいるならば教えて欲しい。
「やめてくださいよ」
「何で?」
「私、切除されちゃうじゃないですか」
「ああ、確かに」
「というわけで、一度落ち着いて」
「落ちついた」
「携帯をベッドに投げましょう」
何故か言いなりになり、
僕は携帯をベッドに投げた。
僕が病院に電話をしようと携帯をとると
突然少女は慌てだした。
「どこに電話するつもりですかっ?」
「どこって……病院」
この状況で時報を聞いたり
出前をとる人間がいるならば教えて欲しい。
「やめてくださいよ」
「何で?」
「私、切除されちゃうじゃないですか」
「ああ、確かに」
「というわけで、一度落ち着いて」
「落ちついた」
「携帯をベッドに投げましょう」
何故か言いなりになり、
僕は携帯をベッドに投げた。
25:Z級:2012/10/08(月) 12:11:32.26 :45U1MmZF0
「まったく……!」
「僕は君の言うとおり、携帯を捨てた」
「まずはそこに座ってください。汚い部屋ですが」
「僕の部屋だ」
失礼な少女だ。
体のサイズに見合わず、態度はでかい。
「僕に医療の知識はない」
「そうですか」
「だから、君が悪性の腫瘍でないという確信がない」
「人をがん細胞みたいに言わないでください」
失礼な、と少女は頬を膨らませた。
「君が悪性の腫瘍でないと言うのならば、だ」
「はい」
「僕に君が何なのか、説明して欲しい」
「説明ですか」
「うん、それに僕が納得すれば」
「すれば?」
「119は諦めよう」
「まったく……!」
「僕は君の言うとおり、携帯を捨てた」
「まずはそこに座ってください。汚い部屋ですが」
「僕の部屋だ」
失礼な少女だ。
体のサイズに見合わず、態度はでかい。
「僕に医療の知識はない」
「そうですか」
「だから、君が悪性の腫瘍でないという確信がない」
「人をがん細胞みたいに言わないでください」
失礼な、と少女は頬を膨らませた。
「君が悪性の腫瘍でないと言うのならば、だ」
「はい」
「僕に君が何なのか、説明して欲しい」
「説明ですか」
「うん、それに僕が納得すれば」
「すれば?」
「119は諦めよう」
27:Z級:2012/10/08(月) 12:13:00.14 :45U1MmZF0
少女は人の胸の上で
偉そうに腕を組んでしばらく考えていた。
僕は秋の朝特有の寒さに少し寒さを感じた。
何しろ、少女を気遣ってシャツを脱いだのだ。
風邪をひきそうだと本気で心配になってきた頃、
少女はようやっと口を開いた。
「私はですね」
「うん」
「妖精さんです」
「うん?」
「あなたの心臓から生えてきました」
「うえ、これって心臓まで根付いてるのか」
引き抜けば心臓に風穴が開くのかもしれない。
そんなことを想像して、胸に寒気が走った。
「つまり、あなたの心の化身だというわけです」
「心臓と心ねぇ」
一文字違いではあるが
少女は人の胸の上で
偉そうに腕を組んでしばらく考えていた。
僕は秋の朝特有の寒さに少し寒さを感じた。
何しろ、少女を気遣ってシャツを脱いだのだ。
風邪をひきそうだと本気で心配になってきた頃、
少女はようやっと口を開いた。
「私はですね」
「うん」
「妖精さんです」
「うん?」
「あなたの心臓から生えてきました」
「うえ、これって心臓まで根付いてるのか」
引き抜けば心臓に風穴が開くのかもしれない。
そんなことを想像して、胸に寒気が走った。
「つまり、あなたの心の化身だというわけです」
「心臓と心ねぇ」
一文字違いではあるが
29:Z級:2012/10/08(月) 12:13:42.33 :45U1MmZF0
「あなたには懺悔することがあるはず」
「懺悔って……うーん、そんなに大仰なことは」
「私はあなたの心です。自分自身に嘘はつけませんよ!」
「うーん」
見に覚えがない。
もちろん、二十年間生きてきた中で
悪いことの一つや二つはしてきた。
小さな悪事なら数えられないほどだろう。
しかし懺悔しろと心に言われるほど、
大きなことはしていないはずなのだ。
「あなたには懺悔することがあるはず」
「懺悔って……うーん、そんなに大仰なことは」
「私はあなたの心です。自分自身に嘘はつけませんよ!」
「うーん」
見に覚えがない。
もちろん、二十年間生きてきた中で
悪いことの一つや二つはしてきた。
小さな悪事なら数えられないほどだろう。
しかし懺悔しろと心に言われるほど、
大きなことはしていないはずなのだ。
34:Z級:2012/10/08(月) 12:14:29.61 :45U1MmZF0
僕が見に覚えがなくて悩んでいると
少女は少し残念そうに小さく溜息をついた。
僕が見ていると気付くと、
すぐに生意気な表情に戻って腕を組む。
「本当に覚えはないなぁ」
「そうですか」
「心さん」
僕は彼女を心と呼ぶことにした。
「教えてほしいな」
何しろ、彼は僕の心らしい。
僕の記憶にないことも知っているはずだ。
僕が尋ねると、心はふんっと鼻息をはいた。
「私が知るわけないでしょ」
「えぇ……僕自身だってさっき」
「嘘だから」
「嘘かよ」
心臓やら心やら云々は全て彼女の嘘だった。
僕が見に覚えがなくて悩んでいると
少女は少し残念そうに小さく溜息をついた。
僕が見ていると気付くと、
すぐに生意気な表情に戻って腕を組む。
「本当に覚えはないなぁ」
「そうですか」
「心さん」
僕は彼女を心と呼ぶことにした。
「教えてほしいな」
何しろ、彼は僕の心らしい。
僕の記憶にないことも知っているはずだ。
僕が尋ねると、心はふんっと鼻息をはいた。
「私が知るわけないでしょ」
「えぇ……僕自身だってさっき」
「嘘だから」
「嘘かよ」
心臓やら心やら云々は全て彼女の嘘だった。
39:Z級:2012/10/08(月) 12:16:08.06 :45U1MmZF0
彼女の嘘に免じて、僕は電話することにする。
携帯をとると、途端に心は慌てだした。
「早まらないで! まだ和解はできるはず」
「痛い痛い、地味に痛いよ」
ぽこぽこと、彼女は胸を叩くのだ。
両腕を精一杯使って、太鼓か何かのように。
「本当のことを言う気がないなら」
「言います、言いますから!」
切除だけは勘弁を、と心は両手を合わせた。
拝まれても、大して迫力がない。
彼女の嘘に免じて、僕は電話することにする。
携帯をとると、途端に心は慌てだした。
「早まらないで! まだ和解はできるはず」
「痛い痛い、地味に痛いよ」
ぽこぽこと、彼女は胸を叩くのだ。
両腕を精一杯使って、太鼓か何かのように。
「本当のことを言う気がないなら」
「言います、言いますから!」
切除だけは勘弁を、と心は両手を合わせた。
拝まれても、大して迫力がない。
42:Z級:2012/10/08(月) 12:17:59.95 :45U1MmZF0
さて、どうしたものか。
僕が悩んでいると、携帯が鳴った。
着信だ。
メールの内容を確認する。
「あああ!!」
「うひぃ、大きな声出さないでください!」
「バイトだった。遅れる!」
僕は慌ててスラックスを脱いだ。
「うへぁわわわ、ちょっと女の子の前ですよ!」
心は慌てて両目を塞ぎ、苦情を告げるが、
どうしろと言うのだろう。
僕は心の苦情を無視して着替え、
彼女が隠せるようにワイシャツを着込んだ。
「狭い、暗い、息苦しいです」
「鋏で切られなかっただけでも感謝してほしい」
「喜んで我慢します」
僕はやむを得ず、少女を胸から生やしたまま、
外出をすることとなった。
さて、どうしたものか。
僕が悩んでいると、携帯が鳴った。
着信だ。
メールの内容を確認する。
「あああ!!」
「うひぃ、大きな声出さないでください!」
「バイトだった。遅れる!」
僕は慌ててスラックスを脱いだ。
「うへぁわわわ、ちょっと女の子の前ですよ!」
心は慌てて両目を塞ぎ、苦情を告げるが、
どうしろと言うのだろう。
僕は心の苦情を無視して着替え、
彼女が隠せるようにワイシャツを着込んだ。
「狭い、暗い、息苦しいです」
「鋏で切られなかっただけでも感謝してほしい」
「喜んで我慢します」
僕はやむを得ず、少女を胸から生やしたまま、
外出をすることとなった。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 12:19:11.69 :G8+WZ06/0
少女のサイズが知りたい
52:Z級:2012/10/08(月) 12:19:54.49 :45U1MmZF0
>>47
りかちゃん人形を思い出してください。
りかちゃん人形を思い出してください。
56:Z級:2012/10/08(月) 12:20:24.02 :45U1MmZF0
僕のバイトはレストランの店員なのだが
注文をとる最中は黙っている心は、
僕が厨房に戻ると同時に愚痴を吐いた。
暑いだの、苦しいだの、
胸上不法占拠者にしては図々しい。
僕はその小さな声がバイト先の先輩に聞こえる度、
咳払いをして誤魔化した。
何とか午前中のバイトを終えると、
土下座をする勢いで店長に謝罪し、
午前であがることにした。
原動付き自転車に跨って発進し、
僕はそこでようやくクレームを告げる。
僕のバイトはレストランの店員なのだが
注文をとる最中は黙っている心は、
僕が厨房に戻ると同時に愚痴を吐いた。
暑いだの、苦しいだの、
胸上不法占拠者にしては図々しい。
僕はその小さな声がバイト先の先輩に聞こえる度、
咳払いをして誤魔化した。
何とか午前中のバイトを終えると、
土下座をする勢いで店長に謝罪し、
午前であがることにした。
原動付き自転車に跨って発進し、
僕はそこでようやくクレームを告げる。
59:Z級:2012/10/08(月) 12:21:47.97 :45U1MmZF0
「心さん!」
「うわぁ、なんですか突然」
どうやら呑気なことに、
心は眠っていたらしい。
可愛らしいいびきをかく彼女を起こすのは躊躇われたが
心を鬼にする。
「バイト中は喋らないでってあれだけ言ったのに」
「あなたには分からないんです」
「何が」
「シャツの中という場所がいかに劣悪な環境なのか」
だったらそんな場所に生えてくるな、
と言いそうになる。
そういえば彼女は生える場所を選べなかったのだ。
しかしまぁ、僕も生まれる場所は選べなかったわけで
おあいこだろう。
「心さん!」
「うわぁ、なんですか突然」
どうやら呑気なことに、
心は眠っていたらしい。
可愛らしいいびきをかく彼女を起こすのは躊躇われたが
心を鬼にする。
「バイト中は喋らないでってあれだけ言ったのに」
「あなたには分からないんです」
「何が」
「シャツの中という場所がいかに劣悪な環境なのか」
だったらそんな場所に生えてくるな、
と言いそうになる。
そういえば彼女は生える場所を選べなかったのだ。
しかしまぁ、僕も生まれる場所は選べなかったわけで
おあいこだろう。
61:Z級:2012/10/08(月) 12:23:21.89 :45U1MmZF0
しかし秋だったから良かったものの、
これが夏場であったら、
彼女は失神ものだろう。
僕はそれから少しだけ汗のケアを熱心に
行うようになる。
とりあえず、シーブリーズは購入してから帰ろう。
と、心に決めた。
しかし秋だったから良かったものの、
これが夏場であったら、
彼女は失神ものだろう。
僕はそれから少しだけ汗のケアを熱心に
行うようになる。
とりあえず、シーブリーズは購入してから帰ろう。
と、心に決めた。
62:Z級:2012/10/08(月) 12:24:14.66 :45U1MmZF0
「ずっと全裸で過ごせってことなのか」
「わー、露出狂ですね」
「君がそうさせようとしてるんだ」
もしかしたら心はサディストなのかもしれない。
僕が右往左往する度、
シャツのしたで体を震わせて笑っていた。
今だって怒る僕を見て笑っている。
「あのね」
「分かりました。黙ります」
「ん?」
「黙りますから、切除だけは勘弁してくださいね」
歯を見せて彼女は笑う。
「ほら、今日も上手く行きましたし」
「上手くいったのか?」
「明日も明後日も、私が生えてても大丈夫ですよ」
自信ありげに彼女は自分の胸を叩いた。
「……」
不安しかない。
「ずっと全裸で過ごせってことなのか」
「わー、露出狂ですね」
「君がそうさせようとしてるんだ」
もしかしたら心はサディストなのかもしれない。
僕が右往左往する度、
シャツのしたで体を震わせて笑っていた。
今だって怒る僕を見て笑っている。
「あのね」
「分かりました。黙ります」
「ん?」
「黙りますから、切除だけは勘弁してくださいね」
歯を見せて彼女は笑う。
「ほら、今日も上手く行きましたし」
「上手くいったのか?」
「明日も明後日も、私が生えてても大丈夫ですよ」
自信ありげに彼女は自分の胸を叩いた。
「……」
不安しかない。
63:Z級:2012/10/08(月) 12:26:27.22 :45U1MmZF0
心の自信は、その日の夜に崩れ去る。
問題は入浴タイムにやってきた。
僕が服を脱ぎ、風呂場へ向かうと彼女は慌てた。
「ま、まさかまさか」
「残念ながら、入浴タイムだね」
「うわわわ、待ってください!女の子の前ですよ」
朝と同じようなことを言って彼女は目を覆う。
「そのまま耐えててくれ」
「待って待って、うへわぁあああ」
僕は小さな少女を胸に引っさげた、
非常に情けない姿で体を洗った。
心の自信は、その日の夜に崩れ去る。
問題は入浴タイムにやってきた。
僕が服を脱ぎ、風呂場へ向かうと彼女は慌てた。
「ま、まさかまさか」
「残念ながら、入浴タイムだね」
「うわわわ、待ってください!女の子の前ですよ」
朝と同じようなことを言って彼女は目を覆う。
「そのまま耐えててくれ」
「待って待って、うへわぁあああ」
僕は小さな少女を胸に引っさげた、
非常に情けない姿で体を洗った。
68:Z級:2012/10/08(月) 12:27:40.96 :45U1MmZF0
髪を洗い、腕を洗い、
胸元を洗おうとした瞬間、
ふと疑問に思う。
「あのさ」
「なんですか、終わりましたか?」
「終わってないけど、終わってないけど」
「なんですか」
「君は洗わなくていいの?」
「あ」
心は驚いて両手をどけた。
悲鳴をあげるかと思ったが、違った。
彼女は僕の胸の上に、
僕の顔を見る方向で生えていて、
体を捻らない限り、僕の鎖骨から上しか見えない。
髪を洗い、腕を洗い、
胸元を洗おうとした瞬間、
ふと疑問に思う。
「あのさ」
「なんですか、終わりましたか?」
「終わってないけど、終わってないけど」
「なんですか」
「君は洗わなくていいの?」
「あ」
心は驚いて両手をどけた。
悲鳴をあげるかと思ったが、違った。
彼女は僕の胸の上に、
僕の顔を見る方向で生えていて、
体を捻らない限り、僕の鎖骨から上しか見えない。
70:Z級:2012/10/08(月) 12:28:32.61 :45U1MmZF0
「洗ってください。カビでも生えたら困ります」
「僕も嫌だなぁ、胸にカビが生えるのは」
胸から下がないので興奮することもなく
僕は小さな少女の体をごしごしと洗った。
ボディソープの泡で髪の毛を洗おうとすると
心は大激怒した。
「洗ってください。カビでも生えたら困ります」
「僕も嫌だなぁ、胸にカビが生えるのは」
胸から下がないので興奮することもなく
僕は小さな少女の体をごしごしと洗った。
ボディソープの泡で髪の毛を洗おうとすると
心は大激怒した。
76:Z級:2012/10/08(月) 12:30:09.96 :45U1MmZF0
退屈だ、と時には心は怒り出した。
僕は基本的に、バイトのない間は家にいる。
することもなくゴロゴロしながら、
時より昼ドラを見て欝になったり、
ゲームをして酔いに悩まされたりする。
心にとってそのどちらも面白くはないらしい。
僕がそんなことをしていると苦情を告げる。
「だったら君は何がしたいんだ?」
「そうですね」
彼女は顎に手を当てて
探偵のようにしばらく考えた。
「縄跳び」
「縄跳び!?」
予想以上に運動的で、
子供的なことを心が言うので驚いた。
「鬼ごっこも、水泳も、跳び箱も、部活も」
「ちょっと待て、君は僕を学校関係者だと」
「思ってませんよ、願望です、願望」
「無茶ばかり言うな」
「だったらデートでいいです。デート」
「デート?」
「はい、遊園地なら大丈夫ですよね?」
確かに、少し金を出せば遊園地には行ける。
しかし、その場合、
心は外からは見えないのだから、
僕は男一人で遊園地に来た寂しい人になる。
僕は必死に心の要望を断った。
退屈だ、と時には心は怒り出した。
僕は基本的に、バイトのない間は家にいる。
することもなくゴロゴロしながら、
時より昼ドラを見て欝になったり、
ゲームをして酔いに悩まされたりする。
心にとってそのどちらも面白くはないらしい。
僕がそんなことをしていると苦情を告げる。
「だったら君は何がしたいんだ?」
「そうですね」
彼女は顎に手を当てて
探偵のようにしばらく考えた。
「縄跳び」
「縄跳び!?」
予想以上に運動的で、
子供的なことを心が言うので驚いた。
「鬼ごっこも、水泳も、跳び箱も、部活も」
「ちょっと待て、君は僕を学校関係者だと」
「思ってませんよ、願望です、願望」
「無茶ばかり言うな」
「だったらデートでいいです。デート」
「デート?」
「はい、遊園地なら大丈夫ですよね?」
確かに、少し金を出せば遊園地には行ける。
しかし、その場合、
心は外からは見えないのだから、
僕は男一人で遊園地に来た寂しい人になる。
僕は必死に心の要望を断った。
78:Z級:2012/10/08(月) 12:32:23.84 :45U1MmZF0
ふと、怖いことを思いついた。
「あのさ」
「はい」
「まさかとは思うけど」
「まさかとは思うけど?」
「君は僕に寄生した何かで」
その時点で突拍子もない話だ。
心は眉を寄せた。
「放っておくと君は成長して」
「成長して?」
「栄養を吸い取られた僕は縮み」
「……展開が読めました」
「僕と君の立場は入れ替わってしまうのでは」
「あのですね」
「はい」
「小説の読みすぎです」
「そうですか」
まあ、冗談のつもりで言ったのだが。
ふと、怖いことを思いついた。
「あのさ」
「はい」
「まさかとは思うけど」
「まさかとは思うけど?」
「君は僕に寄生した何かで」
その時点で突拍子もない話だ。
心は眉を寄せた。
「放っておくと君は成長して」
「成長して?」
「栄養を吸い取られた僕は縮み」
「……展開が読めました」
「僕と君の立場は入れ替わってしまうのでは」
「あのですね」
「はい」
「小説の読みすぎです」
「そうですか」
まあ、冗談のつもりで言ったのだが。
80:Z級:2012/10/08(月) 12:34:53.62 :45U1MmZF0
僕は心を抱いて脇役の毎日を送る。
僕と心は何だかんだ些細な喧嘩をしながらも、
上手く共同生活を続けることができた。
気付けば彼女が生えてきてから一月が経っていた。
僕はカップラーメン前に三分間耐え、
やっとありつけたそれに舌鼓を打ち、
ついでに心に餌やりをしておこうと、
シャツを捲った。
いつもなら食べ物の匂いにつられて
元気に口を開けているはずの心が、
その日は何故か、
ぐったりとしていた。
僕は心を抱いて脇役の毎日を送る。
僕と心は何だかんだ些細な喧嘩をしながらも、
上手く共同生活を続けることができた。
気付けば彼女が生えてきてから一月が経っていた。
僕はカップラーメン前に三分間耐え、
やっとありつけたそれに舌鼓を打ち、
ついでに心に餌やりをしておこうと、
シャツを捲った。
いつもなら食べ物の匂いにつられて
元気に口を開けているはずの心が、
その日は何故か、
ぐったりとしていた。
87:Z級:2012/10/08(月) 12:36:45.85 :45U1MmZF0
体から生える小人の病への対処法など、
検索をかけてもあるはずがなく、
僕は彼女が目覚めるまで祈ることしかできない。
貧乏性が故か、そんな状況でもラーメンを食べ尽くし、
心の目覚めを待った。
真っ白だった心の肌が、
心なしか少し、茶色にくすんでいた。
その色を見て僕は直感する。
これは、あれだ。
植物が枯れる前兆に似ている。
小学生の頃、
僕は一人一鉢の植物をすぐに枯らしてしまう
典型的な世話下手な生徒だった。
だからその色には見覚えがあった。
体から生える小人の病への対処法など、
検索をかけてもあるはずがなく、
僕は彼女が目覚めるまで祈ることしかできない。
貧乏性が故か、そんな状況でもラーメンを食べ尽くし、
心の目覚めを待った。
真っ白だった心の肌が、
心なしか少し、茶色にくすんでいた。
その色を見て僕は直感する。
これは、あれだ。
植物が枯れる前兆に似ている。
小学生の頃、
僕は一人一鉢の植物をすぐに枯らしてしまう
典型的な世話下手な生徒だった。
だからその色には見覚えがあった。
92:Z級:2012/10/08(月) 12:38:03.70 :45U1MmZF0
心は夕方に目を覚ました。
「ふわぁ……あれ、どうしました?」
僕の顔はよっぽど酷いものだったのだろう。
心は驚いたようで、目を丸くした。
僕は思わず彼女を抱き締めた。
胸のうえに居たから抱き締め辛かったのだが。
「あ、あの」
「気分、悪いんだよね?」
「……」
「体調、いつから悪いの?」
「……一週間ほど前から、です」
心は気まずそうに視線を知らしながら
白状した。
「僕のせいか」
「ど、どうしてそうなるんですか!」
「僕が君の世話を間違えたんだ」
「違います。それに、なんでそんなに悲しむんですか」
心は顔をほんの少し赤くして、眉を顰めた。
「最初の頃は鋏で切ろうとなんてしてたくせに」
「情が移ったんだ。君のせいだ」
「……」
「……」
「とにかく、あなたのせいじゃないですから」
心は拗ねたようにそう告げると、
ふん、と顔を背けた。
心は夕方に目を覚ました。
「ふわぁ……あれ、どうしました?」
僕の顔はよっぽど酷いものだったのだろう。
心は驚いたようで、目を丸くした。
僕は思わず彼女を抱き締めた。
胸のうえに居たから抱き締め辛かったのだが。
「あ、あの」
「気分、悪いんだよね?」
「……」
「体調、いつから悪いの?」
「……一週間ほど前から、です」
心は気まずそうに視線を知らしながら
白状した。
「僕のせいか」
「ど、どうしてそうなるんですか!」
「僕が君の世話を間違えたんだ」
「違います。それに、なんでそんなに悲しむんですか」
心は顔をほんの少し赤くして、眉を顰めた。
「最初の頃は鋏で切ろうとなんてしてたくせに」
「情が移ったんだ。君のせいだ」
「……」
「……」
「とにかく、あなたのせいじゃないですから」
心は拗ねたようにそう告げると、
ふん、と顔を背けた。
98:Z級:2012/10/08(月) 12:39:48.51 :45U1MmZF0
僕は多分、
そのとき心に恋をしていることに気づいた。
僕は多分、
そのとき心に恋をしていることに気づいた。
99:Z級:2012/10/08(月) 12:40:20.57 :45U1MmZF0
いくら食事を与えても、
いくら水を与えても、
いくら繊細に扱っても、
心の衰弱は止まらなかった。
肌の色は徐々に悪くなり、口数も減った。
「心さん、無事?」
「……無事ですよ」
黙れといってもきかなかった彼女が、
いつからか、僕から話しかけない限り
言葉を発しないようになった。
「生きてる?」
「……生きてますってば」
「僕はどうすればいい?」
「どうするとは?」
「僕は君に何が出来る?」
「何も望んでませんよ」
心はおかしそうに笑った。
必死な僕を見て笑ったのかもしれない。
その笑顔が前より弱々しくて
僕は切ない気持ちにさせられた。
いくら食事を与えても、
いくら水を与えても、
いくら繊細に扱っても、
心の衰弱は止まらなかった。
肌の色は徐々に悪くなり、口数も減った。
「心さん、無事?」
「……無事ですよ」
黙れといってもきかなかった彼女が、
いつからか、僕から話しかけない限り
言葉を発しないようになった。
「生きてる?」
「……生きてますってば」
「僕はどうすればいい?」
「どうするとは?」
「僕は君に何が出来る?」
「何も望んでませんよ」
心はおかしそうに笑った。
必死な僕を見て笑ったのかもしれない。
その笑顔が前より弱々しくて
僕は切ない気持ちにさせられた。
101:Z級:2012/10/08(月) 12:41:46.86 :45U1MmZF0
心は僕の胸を枕代わりに
眠っていることが多くなった。
うたた寝のような浅い眠りのようで、
僕が話しかければ応じる。
ただ、時々、
浮かされたような、
わけの分からないことを喋るようになった。
うわごとのようで、良くない兆候だ。
「私はね、本当は嫌だったんですよ」
「……」
「引越しだって嘘ついてたんです」
「……心さん」
「嘘ですよ嘘、全部嘘なんです」
「心さん」
「嘘吐いてる私が、ばれてほしいって思ってたんです」
「……心」
「笑えますよね」
よく分からないことを口走った後、
彼女はこてりと眠ってしまうのだ。
心は僕の胸を枕代わりに
眠っていることが多くなった。
うたた寝のような浅い眠りのようで、
僕が話しかければ応じる。
ただ、時々、
浮かされたような、
わけの分からないことを喋るようになった。
うわごとのようで、良くない兆候だ。
「私はね、本当は嫌だったんですよ」
「……」
「引越しだって嘘ついてたんです」
「……心さん」
「嘘ですよ嘘、全部嘘なんです」
「心さん」
「嘘吐いてる私が、ばれてほしいって思ってたんです」
「……心」
「笑えますよね」
よく分からないことを口走った後、
彼女はこてりと眠ってしまうのだ。
103:Z級:2012/10/08(月) 12:43:19.35 :45U1MmZF0
僕はバイトを休み、家にいることが多くなった。
心が元気になるまで、
珍しく静かな彼女を見ていたいと思ったのだ。
少しでも長く……なんてことを考えたわけじゃない。
心は僕の胸に両手を広げ、精一杯しがみついている。
そして寝ている。
片耳を胸に押し当てるのが彼女の癖だった。
「ああ、分かりました」
ある日、珍しく心から口を開いた。
「分かったって?」
「私があなたの胸に生えてきた理由」
「へえ、聞かせてよ」
「聞きたいですか?」
「聞きたい」
「きっと、こうするためです」
「こうするって?」
心はより強く、僕の胸に頭を押し当てる。
「こうやって、あなたの鼓動を聞くためですよ」
「……」
「あなたの生を感じるために、私はここに生えたんです」
きっとそうに違いない、と
彼女は寝言のように呟いた。
僕はバイトを休み、家にいることが多くなった。
心が元気になるまで、
珍しく静かな彼女を見ていたいと思ったのだ。
少しでも長く……なんてことを考えたわけじゃない。
心は僕の胸に両手を広げ、精一杯しがみついている。
そして寝ている。
片耳を胸に押し当てるのが彼女の癖だった。
「ああ、分かりました」
ある日、珍しく心から口を開いた。
「分かったって?」
「私があなたの胸に生えてきた理由」
「へえ、聞かせてよ」
「聞きたいですか?」
「聞きたい」
「きっと、こうするためです」
「こうするって?」
心はより強く、僕の胸に頭を押し当てる。
「こうやって、あなたの鼓動を聞くためですよ」
「……」
「あなたの生を感じるために、私はここに生えたんです」
きっとそうに違いない、と
彼女は寝言のように呟いた。
106:Z級:2012/10/08(月) 12:44:29.15 :45U1MmZF0
もっと早く、こうするべきだったのだろう。
僕は心が眠っている間に、
一人暮らしをはじめてから一度も開けていない
ダンボールを開けて探る。
少し埃をかぶったアルバムが出てきた。
渋る僕に、母親が無理に持たせたものだ。
小学校の卒業文集兼アルバムだった。
幼い頃の自分の写真を見つけ、恥ずかしい気分になる。
同じクラスに、彼女の顔を見つけた。
初恋の相手だ。
似ている、と思ったのは気のせいではなく、
心とそっくりだった。
六年生の彼女が成長すれば、
きっと心のようになるだろう。
「どうして……」
他に写真はないか、
アルバムを捲っていると、
ページの間から何かが落ちた。
もっと早く、こうするべきだったのだろう。
僕は心が眠っている間に、
一人暮らしをはじめてから一度も開けていない
ダンボールを開けて探る。
少し埃をかぶったアルバムが出てきた。
渋る僕に、母親が無理に持たせたものだ。
小学校の卒業文集兼アルバムだった。
幼い頃の自分の写真を見つけ、恥ずかしい気分になる。
同じクラスに、彼女の顔を見つけた。
初恋の相手だ。
似ている、と思ったのは気のせいではなく、
心とそっくりだった。
六年生の彼女が成長すれば、
きっと心のようになるだろう。
「どうして……」
他に写真はないか、
アルバムを捲っていると、
ページの間から何かが落ちた。
107:Z級:2012/10/08(月) 12:45:37.44 :45U1MmZF0
寄せ書きだった。
卒業の日、それぞれが記念に書いたものだ。
親しかった悪友達の汚い文に混ざって
控えめな、丸みのある文字を見つける。
また会おうね。
短い一文だけだったが、
その文章を見つけた瞬間、
断片的にだが、古い記憶を拾うことが出来た。
確か、彼女は卒業と同時に引っ越したのだ。
それで同じ地域の中学校にはいけなかった。
失恋に号泣した記憶がある。
幸い、卒業文集の後記に連絡先が記されていた。
僕はなけなしの勇気をかき集めて、
そこに電話をかけることにした。
寄せ書きだった。
卒業の日、それぞれが記念に書いたものだ。
親しかった悪友達の汚い文に混ざって
控えめな、丸みのある文字を見つける。
また会おうね。
短い一文だけだったが、
その文章を見つけた瞬間、
断片的にだが、古い記憶を拾うことが出来た。
確か、彼女は卒業と同時に引っ越したのだ。
それで同じ地域の中学校にはいけなかった。
失恋に号泣した記憶がある。
幸い、卒業文集の後記に連絡先が記されていた。
僕はなけなしの勇気をかき集めて、
そこに電話をかけることにした。
114:Z級:2012/10/08(月) 12:48:21.77 :45U1MmZF0
全てを終えた僕は、
心が起きるのを待つ。
彼女の肌はすっかりくすみ、灰色だ。
体も心なしか細くなっている。
元々細かったのに、細くなって、
生えてきた当初はエリンギのようだと思ったのに、
今ではシメジのようだと思ってしまう。
彼女がゆったりとした仕草で目を開ける。
僕は心と向き合った。
「心」
「……ぁあ、おはよう」
「起きたばかりで悪いけど、話がある」
「なんですか?」
「どうして嘘を吐いてるんだ?」
「嘘?」
「どうして、何も知らないようなふりを?」
「……何の話…か」
心は目を伏せて頭に手をやる。
同じだ。仕草も、表情も、彼女と。
どうして今まで気付かなかったのか、
不思議に思った。
全てを終えた僕は、
心が起きるのを待つ。
彼女の肌はすっかりくすみ、灰色だ。
体も心なしか細くなっている。
元々細かったのに、細くなって、
生えてきた当初はエリンギのようだと思ったのに、
今ではシメジのようだと思ってしまう。
彼女がゆったりとした仕草で目を開ける。
僕は心と向き合った。
「心」
「……ぁあ、おはよう」
「起きたばかりで悪いけど、話がある」
「なんですか?」
「どうして嘘を吐いてるんだ?」
「嘘?」
「どうして、何も知らないようなふりを?」
「……何の話…か」
心は目を伏せて頭に手をやる。
同じだ。仕草も、表情も、彼女と。
どうして今まで気付かなかったのか、
不思議に思った。
117:Z級:2012/10/08(月) 12:49:49.18 :45U1MmZF0
「僕が悪い」
「……」
「ごめん、だって、元気そうだったから」
「……」
「まさか」
心はふと微笑んだ。
「卒業後に君が死ぬだなんて、思わなかった」
「あなたは何も悪くないです」
か細い声で、笑ったまま、心は言った。
「でも、少し傷つきました」
「ごめん」
「私のこと、憶えてなかったんですから」
「懺悔とか言われても、分からないよ、普通」
後悔していることはないか?と聞かれていれば、
思い出したかもしれない。
「病気、だったんです」
「親御さんから、聞いた。末期だったって」
「私の希望で、転校ってことにしてもらいました」
「どうして?」
「どうしてって、みんなの悲しむ顔なんて」
「どうして僕の前に、こんな形で現れたの?」
「察してくださいよ。相変わらず、鈍いですね」
少し怒ったふりをして、心は胸を叩いた。
か細い腕が逆に折れそうで、心配になる。
「僕が悪い」
「……」
「ごめん、だって、元気そうだったから」
「……」
「まさか」
心はふと微笑んだ。
「卒業後に君が死ぬだなんて、思わなかった」
「あなたは何も悪くないです」
か細い声で、笑ったまま、心は言った。
「でも、少し傷つきました」
「ごめん」
「私のこと、憶えてなかったんですから」
「懺悔とか言われても、分からないよ、普通」
後悔していることはないか?と聞かれていれば、
思い出したかもしれない。
「病気、だったんです」
「親御さんから、聞いた。末期だったって」
「私の希望で、転校ってことにしてもらいました」
「どうして?」
「どうしてって、みんなの悲しむ顔なんて」
「どうして僕の前に、こんな形で現れたの?」
「察してくださいよ。相変わらず、鈍いですね」
少し怒ったふりをして、心は胸を叩いた。
か細い腕が逆に折れそうで、心配になる。
119:Z級:2012/10/08(月) 12:50:29.05 :45U1MmZF0
「あなたの近くに居たかったんです」
どんな形であろうとも。と、
心は付け足してから照れくさそうに笑った。
なんだか僕も照れくさくなって、
こんな状況で、
こんな状態で、
大切なことを笑って言う彼女が愛しくて
泣いてしまった。
「あなたの近くに居たかったんです」
どんな形であろうとも。と、
心は付け足してから照れくさそうに笑った。
なんだか僕も照れくさくなって、
こんな状況で、
こんな状態で、
大切なことを笑って言う彼女が愛しくて
泣いてしまった。
127:Z級:2012/10/08(月) 12:52:14.76 :45U1MmZF0
「まあ、半分嘘なんですけど」
「嘘かよ」
このタイミングでぶっちゃけるとは、
やはり彼女は、
僕の初恋の相手でもあり、
あの生意気な心でもあった。
できれば雰囲気ぶっこわしな嘘は、
墓場まで持っていってほしかった。
「私、若くして死んだんですよね」
「知ってる」
「だからですね、神様的なものにですね」
「神様的?」
「同情されたんです」
「まあ、半分嘘なんですけど」
「嘘かよ」
このタイミングでぶっちゃけるとは、
やはり彼女は、
僕の初恋の相手でもあり、
あの生意気な心でもあった。
できれば雰囲気ぶっこわしな嘘は、
墓場まで持っていってほしかった。
「私、若くして死んだんですよね」
「知ってる」
「だからですね、神様的なものにですね」
「神様的?」
「同情されたんです」
133:Z級:2012/10/08(月) 12:54:16.67 :45U1MmZF0
「好きな男に気づかれもせず」
「うん」
「好きな男はにぶちんで」
「……うん」
「私のけなげな思いに気づきもしない」
「……申し訳ない」
心は僕が謝罪するのを見て、笑った。
「復讐してやろう」
「うん?」
物騒なささやきだ。
彼女が死に際に聞いたその声は、
多分神様のものではなくて
悪魔的なもののささやきに違いない。
「好きな男に気づかれもせず」
「うん」
「好きな男はにぶちんで」
「……うん」
「私のけなげな思いに気づきもしない」
「……申し訳ない」
心は僕が謝罪するのを見て、笑った。
「復讐してやろう」
「うん?」
物騒なささやきだ。
彼女が死に際に聞いたその声は、
多分神様のものではなくて
悪魔的なもののささやきに違いない。
137:Z級:2012/10/08(月) 12:57:00.15 :45U1MmZF0
「びっくりしました」
「何に?」
「あなたは見かけによらず、結構読書家でしたから」
「失礼な」
暗に馬鹿っぽいと言われているような気がした。
「私がこのまま大きくなれば」
「まさか……」
「あなたは栄養を吸い取られて、」
「君は栄養を吸い取って」
「関係は逆転してしまうわけです!!」
「うわぁ」
怖いと思ったけど、
女子高生の胸に生える生活というのも、
悪くはないかもしれない、なんて、
僕は思った。
反省した。
「びっくりしました」
「何に?」
「あなたは見かけによらず、結構読書家でしたから」
「失礼な」
暗に馬鹿っぽいと言われているような気がした。
「私がこのまま大きくなれば」
「まさか……」
「あなたは栄養を吸い取られて、」
「君は栄養を吸い取って」
「関係は逆転してしまうわけです!!」
「うわぁ」
怖いと思ったけど、
女子高生の胸に生える生活というのも、
悪くはないかもしれない、なんて、
僕は思った。
反省した。
144:Z級:2012/10/08(月) 13:02:32.83 :45U1MmZF0
「私にそんな気はないので安心してください」
「安心した」
「……彼岸花って知ってますか?」
「赤いやつだよね」
「アバウトですね」
赤くて、ばさばさしている花のはずだ。
「あれ、根っこが本体なんですよ」
「そうなんだー」
豆知識がひとつ増える。
「だからですね、仮に私が枯れたとしても」
「うん」
「きっと、多分、根っこが残ってます」
心臓に直結した部分は残っているのか、
僕はしばらくレントゲンはとれないな、と
覚悟する。
「あなたが私を忘れたら」
「うん」
「また生えてきて、今度こそ乗っ取ってやりますから」
本気で実行しそうで怖い。
「忘れないでいてくださいね」
「うん、約束する」
「約束してください」
心は満足げに笑い、
ふてぶてしく腕を組んだ。
「私にそんな気はないので安心してください」
「安心した」
「……彼岸花って知ってますか?」
「赤いやつだよね」
「アバウトですね」
赤くて、ばさばさしている花のはずだ。
「あれ、根っこが本体なんですよ」
「そうなんだー」
豆知識がひとつ増える。
「だからですね、仮に私が枯れたとしても」
「うん」
「きっと、多分、根っこが残ってます」
心臓に直結した部分は残っているのか、
僕はしばらくレントゲンはとれないな、と
覚悟する。
「あなたが私を忘れたら」
「うん」
「また生えてきて、今度こそ乗っ取ってやりますから」
本気で実行しそうで怖い。
「忘れないでいてくださいね」
「うん、約束する」
「約束してください」
心は満足げに笑い、
ふてぶてしく腕を組んだ。
148:Z級:2012/10/08(月) 13:04:07.45 :45U1MmZF0
僕の胸に生えた不思議な小人は、
その日一杯、くだらない話や思い出話をして、
一生懸命笑って、
翌日になると、綺麗サッパリ消えていた。
凹凸のなくなった胸を撫でながら、
僕は初めて、喪失感を味わった。
胸の女子高生は消えてしまったけど、
僕はこれからも、
心を抱いて生きていく。
僕の胸に生えた不思議な小人は、
その日一杯、くだらない話や思い出話をして、
一生懸命笑って、
翌日になると、綺麗サッパリ消えていた。
凹凸のなくなった胸を撫でながら、
僕は初めて、喪失感を味わった。
胸の女子高生は消えてしまったけど、
僕はこれからも、
心を抱いて生きていく。
152:Z級:2012/10/08(月) 13:05:47.99 :45U1MmZF0
以上です。
つたない文章でしたが、お付き合いしてくださった方、
どもどもありがとです。
レスうれしかったです。
ではまた、
ご縁があればよろしくお願いしますね。
つたない文章でしたが、お付き合いしてくださった方、
どもどもありがとです。
レスうれしかったです。
ではまた、
ご縁があればよろしくお願いしますね。
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 13:06:05.75 :s3Ss4p4N0
おつ
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 13:06:15.22 :e/qJbCYE0
Z級って駆逐艦?
162:Z級:2012/10/08(月) 13:06:54.30 :45U1MmZF0
>>156
映画のほうの意味で名乗っています。
映画のほうの意味で名乗っています。
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 13:06:18.23 :23gh6Hqf0
おつかれ
173: 忍法帖【Lv=6,xxxP】(1+0:15) :2012/10/08(月) 13:20:36.66 :mhGQrzls0
乳首いじってたら生えてくるかな?
178:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 13:55:16.25 :K14pbHe10
おもしろかったおつ
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キャベツの刺青のやつ