684: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:08:41.98 :J/jxjDXo0
【乙未】
響「…… あと10秒、9……」
たかね「はち、なな、ろく、ご、」
響「4、3、2、1、ゼロ!」
たかね「…… こほん。あけまして、おめでとうございます、ひびき!」
響「新年明けましておめでとう、たかね。よくこの時間まで起きてたね?」
たかね「わたくし、もうごさいですから、ねむくなったりしないのです」
響「へーえ? そんなこと言うわりには、紅白の間もけっこう船こいで……」
< ヴィーッ ヴィーッ
響「おっ? 一気にメール何通も…… あっ、そうか! うっかりしてたぞ!」
たかね「こんなよなかに、めーるですか。はためいわくな……」
響「今日この日ばっかりはそうでもないんだよ。えーと、これは春香と、亜美も真美も……」
たかね「なんと!? みなが、めいわくめーるを!?」
響「いやいや、だから、そうじゃなくって」
【乙未】
響「…… あと10秒、9……」
たかね「はち、なな、ろく、ご、」
響「4、3、2、1、ゼロ!」
たかね「…… こほん。あけまして、おめでとうございます、ひびき!」
響「新年明けましておめでとう、たかね。よくこの時間まで起きてたね?」
たかね「わたくし、もうごさいですから、ねむくなったりしないのです」
響「へーえ? そんなこと言うわりには、紅白の間もけっこう船こいで……」
< ヴィーッ ヴィーッ
響「おっ? 一気にメール何通も…… あっ、そうか! うっかりしてたぞ!」
たかね「こんなよなかに、めーるですか。はためいわくな……」
響「今日この日ばっかりはそうでもないんだよ。えーと、これは春香と、亜美も真美も……」
たかね「なんと!? みなが、めいわくめーるを!?」
響「いやいや、だから、そうじゃなくって」
685: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:09:31.41 :J/jxjDXo0
< ヴィーッ ヴィー ヴィーッ
響「わわ、どんどん……! すっかり忘れてた、すぐ返事書かなくっちゃ」
たかね「きょうは、やけにみじかいあいだに、たくさんおくられてくるのですね」
響「…… そうだ! たかね、ちょっとこっち来てくれる?」
たかね「はい? しかし、ひびき、わたくしたちはおなじこたつにはいっておりますが」
響「いいからいいから。ほら、早くー」
たかね「もう、しかたがありませんね…… いったい、なんだというのです?」
響「よし、そしたらここ、自分のひざに座って?」
たかね「やれやれ。ここでよいのですか」ポス
響「そうそう、いい感じ! あっ、そうだ、あとこれ、頭にのっけてね」
たかね「はて…… なんですか、このもこもこは」
響「こないだのクリスマスパーティのとき、事務所の飾りつけに使ってたわたの余りだよ」
たかね「これを、あたまに、というと…… このようなかんじでしょうか?」モフッ
響「おおー、うん、ばっちり!」
< ヴィーッ ヴィー ヴィーッ
響「わわ、どんどん……! すっかり忘れてた、すぐ返事書かなくっちゃ」
たかね「きょうは、やけにみじかいあいだに、たくさんおくられてくるのですね」
響「…… そうだ! たかね、ちょっとこっち来てくれる?」
たかね「はい? しかし、ひびき、わたくしたちはおなじこたつにはいっておりますが」
響「いいからいいから。ほら、早くー」
たかね「もう、しかたがありませんね…… いったい、なんだというのです?」
響「よし、そしたらここ、自分のひざに座って?」
たかね「やれやれ。ここでよいのですか」ポス
響「そうそう、いい感じ! あっ、そうだ、あとこれ、頭にのっけてね」
たかね「はて…… なんですか、このもこもこは」
響「こないだのクリスマスパーティのとき、事務所の飾りつけに使ってたわたの余りだよ」
たかね「これを、あたまに、というと…… このようなかんじでしょうか?」モフッ
響「おおー、うん、ばっちり!」
686: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:10:19.26 :J/jxjDXo0
響「じゃ、1枚だけ写真撮るよー」
たかね「またなのですね。みな、なぜそのようにしゃしんがすきなのでしょう……」
響「まーまー、すぐ済むからさ。それに魂抜いたりもしないし? くくっ」
たかね「そ…… そのはなしは、もうおやめください、ひびき」
<ピピッ カシャッ
響「で、今のをちょいちょいっと加工して……、こんな感じで! ほらたかね、どう、これ?」
たかね「…… おおっ!? わたくしが、このように、へんしんして!?」
響「えーっと、そして文面はどうしよう。なんて書こうかな…… ……よし」
響「『遅れてごめん、あけましておめでとう! 今年もたかねと自分のこと、よろしくお願いするぞっ!』」
響「そして、たかねのとこに吹き出しくっつけて…… 『めぇぇんような』、なんちゃって」
響「よーし、できたー! これでみんなに送信っと!」
響「じゃ、1枚だけ写真撮るよー」
たかね「またなのですね。みな、なぜそのようにしゃしんがすきなのでしょう……」
響「まーまー、すぐ済むからさ。それに魂抜いたりもしないし? くくっ」
たかね「そ…… そのはなしは、もうおやめください、ひびき」
<ピピッ カシャッ
響「で、今のをちょいちょいっと加工して……、こんな感じで! ほらたかね、どう、これ?」
たかね「…… おおっ!? わたくしが、このように、へんしんして!?」
響「えーっと、そして文面はどうしよう。なんて書こうかな…… ……よし」
響「『遅れてごめん、あけましておめでとう! 今年もたかねと自分のこと、よろしくお願いするぞっ!』」
響「そして、たかねのとこに吹き出しくっつけて…… 『めぇぇんような』、なんちゃって」
響「よーし、できたー! これでみんなに送信っと!」
687: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:11:41.68 :J/jxjDXo0
【りあくしょんず】
春香「もー、返信遅いぞー、響ちゃん…… って、なにこれ、たかねちゃんが羊になってるっ! かーわいいー!!」
千早「写真を撮るのに時間がかかったのかしら? それにしても、め、『めぇぇんような』って…… くっ、くくくっ」
美希「あふ…… たかね、まだ起きてるんだ…… いくら…… 新年でも、ミキ、もーゲンカイなの…… すぴー」
やよい「うちの弟たちも、たかねちゃんみたいにおりこうだったらなぁ…… 長介っ、歯はみがいたのー!?」
真「すごい、こんなスマホのスナップでも写真写りいいなあ、たかね! ボクもコツ教えてほしいくらいだよ」
雪歩「二人とも楽しそう。ああ、わたしも四条さ…… たかねちゃん、お膝に乗せてみたいなぁ、えへへ」
【りあくしょんず】
春香「もー、返信遅いぞー、響ちゃん…… って、なにこれ、たかねちゃんが羊になってるっ! かーわいいー!!」
千早「写真を撮るのに時間がかかったのかしら? それにしても、め、『めぇぇんような』って…… くっ、くくくっ」
美希「あふ…… たかね、まだ起きてるんだ…… いくら…… 新年でも、ミキ、もーゲンカイなの…… すぴー」
やよい「うちの弟たちも、たかねちゃんみたいにおりこうだったらなぁ…… 長介っ、歯はみがいたのー!?」
真「すごい、こんなスマホのスナップでも写真写りいいなあ、たかね! ボクもコツ教えてほしいくらいだよ」
雪歩「二人とも楽しそう。ああ、わたしも四条さ…… たかねちゃん、お膝に乗せてみたいなぁ、えへへ」
688: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:12:43.03 :J/jxjDXo0
真美「おおーっ! おひめっちの部屋着姿って初めて見たよ、すっごいレアじゃない!?」
亜美「ひびきんのプライベート部屋着も実はお宝だってば! まずは画像保存しなきゃだよっ!」
あずさ「まぁ…… うふふ、かわいい羊さん。響ちゃんが羊飼いさんみたいなものね、ぴったりだわ~♪」
律子「こんな時間まで夜更かしさせたりして、全く! ……たかね、これ案外デビューとか狙えたりして」
伊織「へぇ、見たとこ、たかねもすっかり写真に慣れたみたいね。撮ってるのが響だから、かしら?」
小鳥「1ヒビ2タカ3ヒビタカッ」バターン
真美「おおーっ! おひめっちの部屋着姿って初めて見たよ、すっごいレアじゃない!?」
亜美「ひびきんのプライベート部屋着も実はお宝だってば! まずは画像保存しなきゃだよっ!」
あずさ「まぁ…… うふふ、かわいい羊さん。響ちゃんが羊飼いさんみたいなものね、ぴったりだわ~♪」
律子「こんな時間まで夜更かしさせたりして、全く! ……たかね、これ案外デビューとか狙えたりして」
伊織「へぇ、見たとこ、たかねもすっかり写真に慣れたみたいね。撮ってるのが響だから、かしら?」
小鳥「1ヒビ2タカ3ヒビタカッ」バターン
690: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:16:35.24 :J/jxjDXo0
【2 in 1】
響「さ、もうそろそろいい子は寝る時間だぞー」
たかね「そうですか? わたくし、まだまだおきていられますよ?」
響「そりゃちょこちょこ居眠りしてたからね。でも夜更かししすぎると、明日がつらいよ」
たかね「はっ、そうでした! あしたはみなと、はつもうでにいくのでした」
響「明日っていうか、もう今日だけどなー。晴れたらいいね」
たかね「それより、ゆきがふってほしいです! みなと、またゆきがっせんができますゆえ!」
響「あはは、明日はみんな晴れ着で来るだろうから、ちょっと難しいんじゃないかな?」
【2 in 1】
響「さ、もうそろそろいい子は寝る時間だぞー」
たかね「そうですか? わたくし、まだまだおきていられますよ?」
響「そりゃちょこちょこ居眠りしてたからね。でも夜更かししすぎると、明日がつらいよ」
たかね「はっ、そうでした! あしたはみなと、はつもうでにいくのでした」
響「明日っていうか、もう今日だけどなー。晴れたらいいね」
たかね「それより、ゆきがふってほしいです! みなと、またゆきがっせんができますゆえ!」
響「あはは、明日はみんな晴れ着で来るだろうから、ちょっと難しいんじゃないかな?」
691: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:17:17.40 :J/jxjDXo0
たかね「……ひびき。しんねんになったことですから、ていあんがあります」
響「えっ? なあに、急に。改まっちゃって」
たかね「まいばん、ひびきにふとんをしかせるのはこくであると、わたくし、こころをいためております」
響「ふとん? いや、別にそれくらい大したことでもないけど……」
たかね「それにわたくし、このべっどというものについても、じゅうぶんけんしきをふかめました」
響「ベッドってそんなに奥深いものだったのかぁ。知らなかったなー」
たかね「つきましては…… としのかわりめですし、その……、こんご、ねるときは――」
響「ま、続きはちゃんと中で聞くからさ、早く入りなよ。からだ冷えちゃうよ?」
たかね「……ひびき。しんねんになったことですから、ていあんがあります」
響「えっ? なあに、急に。改まっちゃって」
たかね「まいばん、ひびきにふとんをしかせるのはこくであると、わたくし、こころをいためております」
響「ふとん? いや、別にそれくらい大したことでもないけど……」
たかね「それにわたくし、このべっどというものについても、じゅうぶんけんしきをふかめました」
響「ベッドってそんなに奥深いものだったのかぁ。知らなかったなー」
たかね「つきましては…… としのかわりめですし、その……、こんご、ねるときは――」
響「ま、続きはちゃんと中で聞くからさ、早く入りなよ。からだ冷えちゃうよ?」
692: ◆ccGlDikGP2:2015/07/25(土) 21:18:26.50 :J/jxjDXo0
響「ああー、あったかい! やっぱり毛布はお布団の上からかけるに限るさー。ね、たかね」
たかね「……」
響「そうそう、ごめん、提案があるって話だったね。なあに?」
たかね「…… もう、いいです」プイ
響「えー、なんで? 聞かせてよ」
たかね「しりません。ひびきの、いけず」
響「えーと、『今年からは毎晩、響と一緒にベッドで寝ます』、ってことで合ってる?」
たかね「……いいえ! ちがいます! ねてあげても、かまいませんよ、ですっ!」
響「あははっ、そうか、嬉しいなー! じゃあ毎晩、自分がおうかがい立てなくちゃね」ワシャワシャ
たかね「で、ですから、わたくしのあたまを、きやすくなでないでくださいませ! もう!」
響「ああー、あったかい! やっぱり毛布はお布団の上からかけるに限るさー。ね、たかね」
たかね「……」
響「そうそう、ごめん、提案があるって話だったね。なあに?」
たかね「…… もう、いいです」プイ
響「えー、なんで? 聞かせてよ」
たかね「しりません。ひびきの、いけず」
響「えーと、『今年からは毎晩、響と一緒にベッドで寝ます』、ってことで合ってる?」
たかね「……いいえ! ちがいます! ねてあげても、かまいませんよ、ですっ!」
響「あははっ、そうか、嬉しいなー! じゃあ毎晩、自分がおうかがい立てなくちゃね」ワシャワシャ
たかね「で、ですから、わたくしのあたまを、きやすくなでないでくださいませ! もう!」
709: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:14:11.00 :PbQMQGi20
【はうめに】
響「あ、そうだ、たかねはいくつにする?」
たかね「はい? ひびきもしってのとおり、わたくしはごさいですよ」
響「ああ、いや、年の話じゃなくて、お雑煮のお餅のことさー」
たかね「おぞうに……? けさは、『おせち』をたべるのでは?」
響「おせちだけじゃ物足りないよ。お雑煮っていうのは、具がいろいろ入ったスープみたいなやつ」
たかね「すうぷですか。めんは、はいっていないのですか?」
響「残念ながら麺は入れないなー。だけど、お餅が入ってるぶん、ボリュームはあるから」
たかね「なるほど、それはそれでたのしみです!」
【はうめに】
響「あ、そうだ、たかねはいくつにする?」
たかね「はい? ひびきもしってのとおり、わたくしはごさいですよ」
響「ああ、いや、年の話じゃなくて、お雑煮のお餅のことさー」
たかね「おぞうに……? けさは、『おせち』をたべるのでは?」
響「おせちだけじゃ物足りないよ。お雑煮っていうのは、具がいろいろ入ったスープみたいなやつ」
たかね「すうぷですか。めんは、はいっていないのですか?」
響「残念ながら麺は入れないなー。だけど、お餅が入ってるぶん、ボリュームはあるから」
たかね「なるほど、それはそれでたのしみです!」
710: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:15:09.18 :PbQMQGi20
響「うん、もうちょっとでできるからね。で、お餅、いくつ欲しい?」
たかね「そうですね…… ならば、わたくしのとしにちなんで、いつつで!」
響「はぁっ!? い、5つ!?」
たかね「む、なにかおかしいですか」
響「いくらたかねでも、それはちょっとないんじゃないかなぁ……」
たかね「…… わたくし、しょうしょう、せんたくをあやまったようにおもいます」
響「そうそう、わかってくれればいいの」
たかね「ではここは、やっつでおねがいします!」
響「あのね、数が多いとえらいとか、そういうやつじゃないからね」
響「うん、もうちょっとでできるからね。で、お餅、いくつ欲しい?」
たかね「そうですね…… ならば、わたくしのとしにちなんで、いつつで!」
響「はぁっ!? い、5つ!?」
たかね「む、なにかおかしいですか」
響「いくらたかねでも、それはちょっとないんじゃないかなぁ……」
たかね「…… わたくし、しょうしょう、せんたくをあやまったようにおもいます」
響「そうそう、わかってくれればいいの」
たかね「ではここは、やっつでおねがいします!」
響「あのね、数が多いとえらいとか、そういうやつじゃないからね」
711: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:15:46.06 :PbQMQGi20
【アミロペクチン】
たかね「これが、おせち…… それに、おぞうに!」キラキラ
響「本格的とまでは言わないけど、我ながら雰囲気は十分だと思うぞ!」
たかね「いちねんのはじめの、おめでたいおしょくじです。こころして、いただかねば」
響「うん、自分が腕によりをかけて作ったんだから、気合入れて食べてね」
たかね「はいっ! それでは、いただきます!!」
たかね「ふぬぬぬぬぬぬ!!」
響「…… おおー……」
たかね「お、おもひ、とは…… ほ、ほのように、のびゆものほは!」
響「そんな長さまで切らずに伸ばせるなんて、たかねは器用だなあ」
【アミロペクチン】
たかね「これが、おせち…… それに、おぞうに!」キラキラ
響「本格的とまでは言わないけど、我ながら雰囲気は十分だと思うぞ!」
たかね「いちねんのはじめの、おめでたいおしょくじです。こころして、いただかねば」
響「うん、自分が腕によりをかけて作ったんだから、気合入れて食べてね」
たかね「はいっ! それでは、いただきます!!」
たかね「ふぬぬぬぬぬぬ!!」
響「…… おおー……」
たかね「お、おもひ、とは…… ほ、ほのように、のびゆものほは!」
響「そんな長さまで切らずに伸ばせるなんて、たかねは器用だなあ」
712: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:16:25.29 :PbQMQGi20
【西と東でモノがちがう】
たかね「……おや? ひびき、かがみもちは、そのままなのですね」
響「んー? そうだよ、あれは新年の飾り物なんだって言ったでしょ?」
たかね「わたくし、おぞうにのおもちが、かがみもちだとおもっておりました」
響「鏡開きっていって、鏡餅には食べる決まったタイミングみたいなのがあるんだぞ」
たかね「ふむ、それはいつなのです?」
響「1月の…… えーっと、だいたい10日くらいかな。もうすぐだよ」
たかね「そのときはまた、おぞうにをつくるのですか」
響「決まりはないと思うけど、おぜんざいとか、おしることかにすることが多いかも」
たかね「おぜんざい? おしるこ……?」
【西と東でモノがちがう】
たかね「……おや? ひびき、かがみもちは、そのままなのですね」
響「んー? そうだよ、あれは新年の飾り物なんだって言ったでしょ?」
たかね「わたくし、おぞうにのおもちが、かがみもちだとおもっておりました」
響「鏡開きっていって、鏡餅には食べる決まったタイミングみたいなのがあるんだぞ」
たかね「ふむ、それはいつなのです?」
響「1月の…… えーっと、だいたい10日くらいかな。もうすぐだよ」
たかね「そのときはまた、おぞうにをつくるのですか」
響「決まりはないと思うけど、おぜんざいとか、おしることかにすることが多いかも」
たかね「おぜんざい? おしるこ……?」
713: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:16:53.77 :PbQMQGi20
響「そのふたつはあんまり違わないんだけどね、甘く煮たあずきとお餅を一緒にして食べるの」
たかね「あまい、あずき……! それも、たいへんにおいしそうです」ジュルリ
響「寒いときにはあったまるしね。ってわけで、そのときまでは、鏡餅はおあずけ」
たかね「ああ、おしるこに、おぜんざい! どのようなあじなのでしょう、まちどおしいです!」
響「…… えっ、ちょっと待って、両方は作んないよ?」
たかね「なんと!?」
響「いや、だって、ほとんど同じもの作ったってしょうがないし」
たかね「そ、そんな! わたくしのいきるたのしみのはんぶんを、うばおうというのですか!?」
響「さっき存在知ったばっかりで何言ってるの、たかね」
響「そのふたつはあんまり違わないんだけどね、甘く煮たあずきとお餅を一緒にして食べるの」
たかね「あまい、あずき……! それも、たいへんにおいしそうです」ジュルリ
響「寒いときにはあったまるしね。ってわけで、そのときまでは、鏡餅はおあずけ」
たかね「ああ、おしるこに、おぜんざい! どのようなあじなのでしょう、まちどおしいです!」
響「…… えっ、ちょっと待って、両方は作んないよ?」
たかね「なんと!?」
響「いや、だって、ほとんど同じもの作ったってしょうがないし」
たかね「そ、そんな! わたくしのいきるたのしみのはんぶんを、うばおうというのですか!?」
響「さっき存在知ったばっかりで何言ってるの、たかね」
714: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:18:06.47 :PbQMQGi20
【debutante】
たかね「あの、ひびき。ほんじつの、わたくしのこおでぃねえとなのですが」
響「それなら心配ないぞー。新年最初のお出かけだもんね、ばっちりおしゃれに決めてあげる!」
たかね「そこはひびきのことですから、しんようしております」
響「うん、自分に任せといて! で、コーディネートがどうしたの? なにか注文ある?」
たかね「そうなのです。ひとつ、ぜひともみにつけたいものがございまして」
響「ふんふん、じゃあ今日はそれをメインにしよっか。どれが着たいの?」
たかね「いえ、その…… おようふくではなくて、ですね」
響「洋服じゃない? ……たかね、前にも言ったけど、シャンプーハットはお外には――」
たかね「ちがいます!! それではありません!!」
【debutante】
たかね「あの、ひびき。ほんじつの、わたくしのこおでぃねえとなのですが」
響「それなら心配ないぞー。新年最初のお出かけだもんね、ばっちりおしゃれに決めてあげる!」
たかね「そこはひびきのことですから、しんようしております」
響「うん、自分に任せといて! で、コーディネートがどうしたの? なにか注文ある?」
たかね「そうなのです。ひとつ、ぜひともみにつけたいものがございまして」
響「ふんふん、じゃあ今日はそれをメインにしよっか。どれが着たいの?」
たかね「いえ、その…… おようふくではなくて、ですね」
響「洋服じゃない? ……たかね、前にも言ったけど、シャンプーハットはお外には――」
たかね「ちがいます!! それではありません!!」
715: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:19:00.11 :PbQMQGi20
【周囲に植わってる】
響「やっぱりお正月の街って、独特な雰囲気があるなー」
たかね「ひびき、さきほどから、あちこちにたけがたててあるのはなぜですか?」
響「ああ、あれ? あれは門松って言って、鏡餅とかと同じお正月の飾りのひとつなの」
たかね「ほほう…… しかしなぜ、『かどたけ』ではなく『かどまつ』なのでしょう」
響「えっ?」
たかね「たけが、まんなかで、とてもめだっています。しゅやくはたけなのでは?」
響「…… いい、たかね。目立ってる人やものが、いつも主役だとは限らないんだよ」
たかね「はっ……!」
たかね「いえ、そういうことではなく、りゆうをきいたのです。ごまかさないでください」
響「さあてたかね急がないとみんなとの待ち合わせに遅れちゃうぞー」
たかね「ひびき、ひびき! こちらを! わたくしのめをみてはなすのです!!」
【周囲に植わってる】
響「やっぱりお正月の街って、独特な雰囲気があるなー」
たかね「ひびき、さきほどから、あちこちにたけがたててあるのはなぜですか?」
響「ああ、あれ? あれは門松って言って、鏡餅とかと同じお正月の飾りのひとつなの」
たかね「ほほう…… しかしなぜ、『かどたけ』ではなく『かどまつ』なのでしょう」
響「えっ?」
たかね「たけが、まんなかで、とてもめだっています。しゅやくはたけなのでは?」
響「…… いい、たかね。目立ってる人やものが、いつも主役だとは限らないんだよ」
たかね「はっ……!」
たかね「いえ、そういうことではなく、りゆうをきいたのです。ごまかさないでください」
響「さあてたかね急がないとみんなとの待ち合わせに遅れちゃうぞー」
たかね「ひびき、ひびき! こちらを! わたくしのめをみてはなすのです!!」
716: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:20:07.75 :PbQMQGi20
【暗くないところで】
亜美「おっ、二人とも来たみたいだよん」
真美「やっほーひびきん、おひめっち! あけおめー!」
響「ごめんみんなー、お待たせー! あけましておめでとーっ」
たかね「あけましておめでとうございます。ことしも、よろしくおねがいします」
あずさ「うふふ、こちらこそよろしくね~、たかねちゃん」
律子「ああそうだ、響? ゆうべのメールだけど、あんな遅くまでたかねを起こしとくのは……」
真美「げげっ……!? り、律っちゃん、その話は今はしなくていーっしょ!」
亜美「そーそー律子サマ、年のはじめくらいカタいこと言いっこナシでさ、ね?」
【暗くないところで】
亜美「おっ、二人とも来たみたいだよん」
真美「やっほーひびきん、おひめっち! あけおめー!」
響「ごめんみんなー、お待たせー! あけましておめでとーっ」
たかね「あけましておめでとうございます。ことしも、よろしくおねがいします」
あずさ「うふふ、こちらこそよろしくね~、たかねちゃん」
律子「ああそうだ、響? ゆうべのメールだけど、あんな遅くまでたかねを起こしとくのは……」
真美「げげっ……!? り、律っちゃん、その話は今はしなくていーっしょ!」
亜美「そーそー律子サマ、年のはじめくらいカタいこと言いっこナシでさ、ね?」
717: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:20:36.13 :PbQMQGi20
【ふぁっしょんちぇっく】
たかね「みき、それに、はるかも、いつもとおようふくがちがいますね」
美希「ミキはメンドくさいからいいって言ったんだけど、ママがせっかくだからって」
春香「わたしはみんなでお参りするこの機会に、と思ったの。どう、たかねちゃん、似合うかな?」
たかね「はい! はるかもみきも、とてもきれいで、すてきです」
春香「本当? えへへ、ありがとう!」
美希「……まあ、ホントはこういう和服って、貴音のほうがぴったりってカンジもするけど」
春香「ああ…… うん、それはわかるかも」
たかね「? わたくしが、どうかしたのですか?」
春香「んーん、なんでもないよ。きっと、たかねちゃんが着ても似合うよね、って話」
たかね「おお! まことですかっ!」
【ふぁっしょんちぇっく】
たかね「みき、それに、はるかも、いつもとおようふくがちがいますね」
美希「ミキはメンドくさいからいいって言ったんだけど、ママがせっかくだからって」
春香「わたしはみんなでお参りするこの機会に、と思ったの。どう、たかねちゃん、似合うかな?」
たかね「はい! はるかもみきも、とてもきれいで、すてきです」
春香「本当? えへへ、ありがとう!」
美希「……まあ、ホントはこういう和服って、貴音のほうがぴったりってカンジもするけど」
春香「ああ…… うん、それはわかるかも」
たかね「? わたくしが、どうかしたのですか?」
春香「んーん、なんでもないよ。きっと、たかねちゃんが着ても似合うよね、って話」
たかね「おお! まことですかっ!」
718: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:21:34.93 :PbQMQGi20
美希「……あれ? たかね、イヤリングなんて前からつけてたっけ?」
たかね「ふふふ、ほんじつはわたくし、おめかししているのです!」
春香「えっ? あっ、ホントだ! おしゃれさんだねー、たかねちゃん」
たかね「ふたりとも、さすが、おめがたかいですね。どうでしょうか、にあっておりますか?」
春香「うん、とっても! 銀色がたかねちゃんの髪と引き立てあってて、すごく綺麗だよ!」
美希「へえー…… それに、これ、三日月の形してるんだ」
春香「…… ねえ、たかねちゃん。これ、響ちゃんからもらったんでしょ?」
たかね「ええ、そうです。やはりわかりますか」
美希「ミキたちにはすぐわかっちゃうの。たかね、それ、大事にしなくちゃダメだよ」
春香「きっとね…… 響ちゃん、選ぶのに時間とかいっぱいかけたと思うんだ」
たかね「もちろんです。ひびきが"わたくし"にくれた、たいせつな、おくりものですから」
美希「……あれ? たかね、イヤリングなんて前からつけてたっけ?」
たかね「ふふふ、ほんじつはわたくし、おめかししているのです!」
春香「えっ? あっ、ホントだ! おしゃれさんだねー、たかねちゃん」
たかね「ふたりとも、さすが、おめがたかいですね。どうでしょうか、にあっておりますか?」
春香「うん、とっても! 銀色がたかねちゃんの髪と引き立てあってて、すごく綺麗だよ!」
美希「へえー…… それに、これ、三日月の形してるんだ」
春香「…… ねえ、たかねちゃん。これ、響ちゃんからもらったんでしょ?」
たかね「ええ、そうです。やはりわかりますか」
美希「ミキたちにはすぐわかっちゃうの。たかね、それ、大事にしなくちゃダメだよ」
春香「きっとね…… 響ちゃん、選ぶのに時間とかいっぱいかけたと思うんだ」
たかね「もちろんです。ひびきが"わたくし"にくれた、たいせつな、おくりものですから」
719: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:22:42.04 :PbQMQGi20
【ご対面の前に】
たかね「としのはじめから、たくさんのひとがあつまっているのですね」
真「初めだからこそ、だよ。お参りしたら、なんとなくいいことありそうな感じがするしさ」
たかね「いちりあります。では、さっそくまいりましょう!」
雪歩「あっ! ちょっと待って、たかねちゃん。まずこっちで手とお口をすすがないと」
たかね「そういえば、ゆきほも、きょうはわふくなのですね?」
雪歩「うん、わたしはお洋服にしようと思ってたんだけど、お父さんがどうしてもって……」
真「いいなあ。ボクも振袖着てみたかったんだけど、父さんがどうしてもダメだって……」
たかね「…… よのなかは、いずこも、かなしいすれちがいばかりです」
【ご対面の前に】
たかね「としのはじめから、たくさんのひとがあつまっているのですね」
真「初めだからこそ、だよ。お参りしたら、なんとなくいいことありそうな感じがするしさ」
たかね「いちりあります。では、さっそくまいりましょう!」
雪歩「あっ! ちょっと待って、たかねちゃん。まずこっちで手とお口をすすがないと」
たかね「そういえば、ゆきほも、きょうはわふくなのですね?」
雪歩「うん、わたしはお洋服にしようと思ってたんだけど、お父さんがどうしてもって……」
真「いいなあ。ボクも振袖着てみたかったんだけど、父さんがどうしてもダメだって……」
たかね「…… よのなかは、いずこも、かなしいすれちがいばかりです」
720: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:23:10.30 :PbQMQGi20
たかね「ところでわたくし、おうちをでるまえに、てはあらっておりますよ」
真「うーんとね…… 今から神様に会うんだから、もう一度ちゃんと洗うのがルールなんだよ」
たかね「そういうものなのですか」
雪歩「ちょっと面倒かもしれないけど、そういうものなの。はい、たかねちゃん、ひしゃくをどうぞ」
たかね「ありがとうございます。これで、おみずをくむのですね?」
雪歩「そう、それで両手を片方ずつ洗ってね、それからお口もすすぐの」
たかね「こころえました!」
たかね「ところで、このおみずは、のんでもよろしいのですか?」
真「うん、よろしくないね」
雪歩「マナー的にも衛生的にもやめとこうね、たかねちゃん」
たかね「ところでわたくし、おうちをでるまえに、てはあらっておりますよ」
真「うーんとね…… 今から神様に会うんだから、もう一度ちゃんと洗うのがルールなんだよ」
たかね「そういうものなのですか」
雪歩「ちょっと面倒かもしれないけど、そういうものなの。はい、たかねちゃん、ひしゃくをどうぞ」
たかね「ありがとうございます。これで、おみずをくむのですね?」
雪歩「そう、それで両手を片方ずつ洗ってね、それからお口もすすぐの」
たかね「こころえました!」
たかね「ところで、このおみずは、のんでもよろしいのですか?」
真「うん、よろしくないね」
雪歩「マナー的にも衛生的にもやめとこうね、たかねちゃん」
721: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:25:17.18 :PbQMQGi20
【いざお目見え】
たかね「……」
千早「…… あら? たかねちゃん、どうしたの?」
伊織「あとは参拝するだけでしょ? なにをぼーっと突っ立ってるのよ」
たかね「その…… じつは、さほうが、わからないのです」
千早「ああ、なるほど……」
伊織「日ごろの振舞い見てると忘れそうになるけど、あんた5歳だものね……」
伊織「いい? まずは、この紐をひっぱって鈴を鳴らすのよ」
たかね「…… あっ、よくみると、うえにまるいものが! あれが、すずなのですね」
伊織「そうよ。この鈴の音には、神様をお招きする意味があるんですって」
【いざお目見え】
たかね「……」
千早「…… あら? たかねちゃん、どうしたの?」
伊織「あとは参拝するだけでしょ? なにをぼーっと突っ立ってるのよ」
たかね「その…… じつは、さほうが、わからないのです」
千早「ああ、なるほど……」
伊織「日ごろの振舞い見てると忘れそうになるけど、あんた5歳だものね……」
伊織「いい? まずは、この紐をひっぱって鈴を鳴らすのよ」
たかね「…… あっ、よくみると、うえにまるいものが! あれが、すずなのですね」
伊織「そうよ。この鈴の音には、神様をお招きする意味があるんですって」
722: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:25:45.80 :PbQMQGi20
ガラガラガラ
伊織「……っと、こんなものかしら」
たかね「……」ジー
伊織「ん? なあに、鈴を鳴らす仕草もパーフェクトな伊織ちゃんに思わず見とれちゃった?」
たかね「いえ、いおりがせのびをしているのは、あまりみないものですから」
伊織「なぁっ!?」
千早「…… くすっ」
伊織「ち、千早、あんた今笑ったわね!? あとで覚えてなさいよ!」
たかね「はて…… せのびをするのは、なにかはずかしいことなのですか?」
伊織「たかね、いい!? 念のために言っとくけど、響よりはわたしの方が身長高いんだから!」
たかね「なんと! ほとんどおなじとおもっておりました」
伊織「なんですって!? 1cmよ!? 1cmも違うんだから今後は気をつけなさいよね!」
響「ところで念のために言っとくけど、自分、ちゃんと聞いてるからなー?」
ガラガラガラ
伊織「……っと、こんなものかしら」
たかね「……」ジー
伊織「ん? なあに、鈴を鳴らす仕草もパーフェクトな伊織ちゃんに思わず見とれちゃった?」
たかね「いえ、いおりがせのびをしているのは、あまりみないものですから」
伊織「なぁっ!?」
千早「…… くすっ」
伊織「ち、千早、あんた今笑ったわね!? あとで覚えてなさいよ!」
たかね「はて…… せのびをするのは、なにかはずかしいことなのですか?」
伊織「たかね、いい!? 念のために言っとくけど、響よりはわたしの方が身長高いんだから!」
たかね「なんと! ほとんどおなじとおもっておりました」
伊織「なんですって!? 1cmよ!? 1cmも違うんだから今後は気をつけなさいよね!」
響「ところで念のために言っとくけど、自分、ちゃんと聞いてるからなー?」
724: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:26:17.32 :PbQMQGi20
千早「さて、それじゃあたかねちゃん、改めて参拝のしかたを教えてあげるわ」
たかね「ちはや、よしなにおねがいします」
伊織「ちょっと待ちなさい千早、なにさらっと流してるの!?」
響「それより伊織はさ、身長の件で自分とちょっと話、しようか」ガッ
伊織「い、いやああああ!?」ズルズル
千早「最初は、さっき水瀬さんがしたように鈴を鳴らしてから、お賽銭を投げるの」
たかね「おさいせん、というのはしっております! ひびきから、このごえんだまをもらいました」
千早「そうだったのね。それは、目の前の賽銭箱に投げ込めばいいわ」
たかね「はい! では…… とおっ!」
チャリン
千早「ふふ、上手。この後はいくつか決まった作法があるけど、すぐ覚えてしまえるから」
たかね「わたくしに、おぼえきれるでしょうか。しょうしょうふあんが……」
千早「大丈夫。少しくらい間違ったとしても、神様はそんなことで怒ったりしないわ」
千早「さて、それじゃあたかねちゃん、改めて参拝のしかたを教えてあげるわ」
たかね「ちはや、よしなにおねがいします」
伊織「ちょっと待ちなさい千早、なにさらっと流してるの!?」
響「それより伊織はさ、身長の件で自分とちょっと話、しようか」ガッ
伊織「い、いやああああ!?」ズルズル
千早「最初は、さっき水瀬さんがしたように鈴を鳴らしてから、お賽銭を投げるの」
たかね「おさいせん、というのはしっております! ひびきから、このごえんだまをもらいました」
千早「そうだったのね。それは、目の前の賽銭箱に投げ込めばいいわ」
たかね「はい! では…… とおっ!」
チャリン
千早「ふふ、上手。この後はいくつか決まった作法があるけど、すぐ覚えてしまえるから」
たかね「わたくしに、おぼえきれるでしょうか。しょうしょうふあんが……」
千早「大丈夫。少しくらい間違ったとしても、神様はそんなことで怒ったりしないわ」
725: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:28:11.44 :PbQMQGi20
千早「まずは、おじぎを二回するの。神様に尊敬の気持ちを表すためね」
たかね「さいしょは、おじぎがにかいですね」
千早「そう。そうしたら次は、手を胸の高さに持ち上げて、手のひらを重ねて」
たかね「むねのたかさで、りょうてを…… ゆびは、のばしていてよいのですか?」
千早「それでいいわ。じゃあ、合わせた手をこうして、肩幅より少し狭いくらいに開きましょう」
たかね「……はい! ひらきました!」
千早「そして、二回、拍手(かしわで)…… つまり、手を打ち合わせて音を立てるの」
たかね「なんと。それでは、かみさまがびっくりしてしまいませんか?」
千早「まずは、おじぎを二回するの。神様に尊敬の気持ちを表すためね」
たかね「さいしょは、おじぎがにかいですね」
千早「そう。そうしたら次は、手を胸の高さに持ち上げて、手のひらを重ねて」
たかね「むねのたかさで、りょうてを…… ゆびは、のばしていてよいのですか?」
千早「それでいいわ。じゃあ、合わせた手をこうして、肩幅より少し狭いくらいに開きましょう」
たかね「……はい! ひらきました!」
千早「そして、二回、拍手(かしわで)…… つまり、手を打ち合わせて音を立てるの」
たかね「なんと。それでは、かみさまがびっくりしてしまいませんか?」
726: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:28:50.51 :PbQMQGi20
千早「たかねちゃんは嬉しいときや驚いたとき、思わず手を叩いてしまいたくなることがない?」
たかね「そういえば、ほんとうにするかどうかはべつで、あります」
千早「もともとこの拍手は、そういう自然な感情の表れが由来だと聞いたことがあるわ」
たかね「なるほど…… かみさまにあえた、うれしさがこもっているのですか」
千早「そうね。素敵な音楽や歌を聴いたときに思わず拍手(はくしゅ)をするのも、きっと同じ」
たかね「すると、ごちそうをまえにしたとき、てをうちたくなるのもおなじですね!」
千早「ふふっ…… そうね、それも一緒に違いないわ」
千早「ここまで済んだら、最後にもう一回おじぎをして、それでおしまい。簡単でしょう?」
たかね「おじぎ、おじぎ、てをうつ、てをうつ、おじぎ…… で、あっておりますか?」
千早「たかねちゃんは嬉しいときや驚いたとき、思わず手を叩いてしまいたくなることがない?」
たかね「そういえば、ほんとうにするかどうかはべつで、あります」
千早「もともとこの拍手は、そういう自然な感情の表れが由来だと聞いたことがあるわ」
たかね「なるほど…… かみさまにあえた、うれしさがこもっているのですか」
千早「そうね。素敵な音楽や歌を聴いたときに思わず拍手(はくしゅ)をするのも、きっと同じ」
たかね「すると、ごちそうをまえにしたとき、てをうちたくなるのもおなじですね!」
千早「ふふっ…… そうね、それも一緒に違いないわ」
千早「ここまで済んだら、最後にもう一回おじぎをして、それでおしまい。簡単でしょう?」
たかね「おじぎ、おじぎ、てをうつ、てをうつ、おじぎ…… で、あっておりますか?」
727: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:29:27.65 :PbQMQGi20
千早「ええ、ばっちりよ。ああ、それと最後のおじぎのときに、お願い事をするのも忘れずに」
たかね「おねがいごと?」
千早「拍手までが神様へのご挨拶みたいなもので、その後でお願いをする感覚ね」
たかね「おねがいごと…… といっても、どのていどのことをおつたえすれば?」
千早「確かに、複雑だと神様も困ってしまうかしら。じゃあ、好きなもののことを考えてみたら?」
たかね「おや、それだけでよいのですか」
千早「シンプルなほうがわかりやすくていいと思うわ。神様もきっと、察してくれるでしょう」
たかね「それならかんたんです。わたくしのおねがいごとは、もうきまりました!」
千早「そう? だったら早速、実際に参拝しましょうか」
千早「ええ、ばっちりよ。ああ、それと最後のおじぎのときに、お願い事をするのも忘れずに」
たかね「おねがいごと?」
千早「拍手までが神様へのご挨拶みたいなもので、その後でお願いをする感覚ね」
たかね「おねがいごと…… といっても、どのていどのことをおつたえすれば?」
千早「確かに、複雑だと神様も困ってしまうかしら。じゃあ、好きなもののことを考えてみたら?」
たかね「おや、それだけでよいのですか」
千早「シンプルなほうがわかりやすくていいと思うわ。神様もきっと、察してくれるでしょう」
たかね「それならかんたんです。わたくしのおねがいごとは、もうきまりました!」
千早「そう? だったら早速、実際に参拝しましょうか」
728: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:30:23.68 :PbQMQGi20
【でざいあ】
ガラガラガラ
パン パンッ
千早(…… さすが元四条さん、ちゃんと一度の説明で全部覚えているわね)
千早(あとは一礼して…… ふふ、小さな手を合わせて、いったいどんなことをお願いし――)
たかね「らぁめん!!!!」
千早「!?」
周囲「ブフォッ」
【でざいあ】
ガラガラガラ
パン パンッ
千早(…… さすが元四条さん、ちゃんと一度の説明で全部覚えているわね)
千早(あとは一礼して…… ふふ、小さな手を合わせて、いったいどんなことをお願いし――)
たかね「らぁめん!!!!」
千早「!?」
周囲「ブフォッ」
729: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:30:59.91 :PbQMQGi20
千早「ちょっ、ちょっと、四じ…… たかねちゃん、別に声に出す必要はなくて――」
たかね「それから、もちろん…… ひびき!!!!!」
千早「!」
周囲「……」ザワザワ
たかね「……はっ!? わ、わたくし、ねんじるあまり、つい、くちに……!」
響「なんか大声で呼ばれた気がしてこっち来たんだけど…… たかね、どうかした?」
たかね「い、いえ、なにもありませんよ、ひびき」
響「そうなの? ねえ千早、たかねと一緒にいたんでしょ、何か知らない?」
千早「さあ? 私は何も。それより我那覇さん、今年はきっといい年になるわ」
響「?」
千早「ちょっ、ちょっと、四じ…… たかねちゃん、別に声に出す必要はなくて――」
たかね「それから、もちろん…… ひびき!!!!!」
千早「!」
周囲「……」ザワザワ
たかね「……はっ!? わ、わたくし、ねんじるあまり、つい、くちに……!」
響「なんか大声で呼ばれた気がしてこっち来たんだけど…… たかね、どうかした?」
たかね「い、いえ、なにもありませんよ、ひびき」
響「そうなの? ねえ千早、たかねと一緒にいたんでしょ、何か知らない?」
千早「さあ? 私は何も。それより我那覇さん、今年はきっといい年になるわ」
響「?」
730: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:31:55.18 :PbQMQGi20
【Green-Eyed-Carmine Eyes】
伊織「まったく。わたし、本当のこと言っただけなのに……」ズズッ
やよい「でも伊織ちゃん、人が気にしてることを言うのって、あんまりよくないかも」ズズ
伊織「う…… わ、わかってるわよ」
たかね「あっ! ふたりとも、それはなにをのんでいるのですか?」
やよい「たかねちゃん、おかえりー。これはね、甘酒っていうの。あっちでもらえるよ」
たかね「おさけですか。わたくし、もうごさいですから、だいじょうぶかとはおもいますが……」チラ
響「はいはい、飲んでみたくてしょうがないんだよね?」
たかね「とうぜんです! いろいろなあじをしってこその、しゅくじょですから」
響「仕方ないなー。やよい、伊織も、いっしょに行かない?」
やよい「ええっ? でもわたし、もう一杯もらっちゃいましたし……」
伊織「まあおめでたいお正月だし、神様もそうケチじゃないでしょ。付き合ってあげるわ」
【Green-Eyed-Carmine Eyes】
伊織「まったく。わたし、本当のこと言っただけなのに……」ズズッ
やよい「でも伊織ちゃん、人が気にしてることを言うのって、あんまりよくないかも」ズズ
伊織「う…… わ、わかってるわよ」
たかね「あっ! ふたりとも、それはなにをのんでいるのですか?」
やよい「たかねちゃん、おかえりー。これはね、甘酒っていうの。あっちでもらえるよ」
たかね「おさけですか。わたくし、もうごさいですから、だいじょうぶかとはおもいますが……」チラ
響「はいはい、飲んでみたくてしょうがないんだよね?」
たかね「とうぜんです! いろいろなあじをしってこその、しゅくじょですから」
響「仕方ないなー。やよい、伊織も、いっしょに行かない?」
やよい「ええっ? でもわたし、もう一杯もらっちゃいましたし……」
伊織「まあおめでたいお正月だし、神様もそうケチじゃないでしょ。付き合ってあげるわ」
731: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:32:30.41 :PbQMQGi20
たかね「…… こうしてみると、たしかにいおりのほうが、ひびきよりも、すこしおおきいですね」
伊織「ちょっと!? たかね、やめなさい、その話はもういいから!」
響「そりゃしょうがないさー、1cm"も"違うんだもん。1cmも」ジトー
伊織「だ、だから、悪かったって言ってるじゃないの」
やよい「でも、うらやましいなあ。わたしなんて、まだ150センチにもとどいてないんですよ」
響「なに言ってるの、やよいはそれがいいんじゃないかー」ナデナデ
伊織「そうよ、突き詰めたら小柄なのも立派な個性になるんだから」ナデナデ
やよい「えへへー、そうですかー?」
響「うん、絶対そうだぞ!」ナデナデ
たかね「……」
響「もう事務所で自分よりちっちゃいのやよいくらいだし、いっそ連れて帰っ…… ん?」
たかね「ひびき、はやく、あまざけをもらいにまいりましょう」クイクイ
たかね「…… こうしてみると、たしかにいおりのほうが、ひびきよりも、すこしおおきいですね」
伊織「ちょっと!? たかね、やめなさい、その話はもういいから!」
響「そりゃしょうがないさー、1cm"も"違うんだもん。1cmも」ジトー
伊織「だ、だから、悪かったって言ってるじゃないの」
やよい「でも、うらやましいなあ。わたしなんて、まだ150センチにもとどいてないんですよ」
響「なに言ってるの、やよいはそれがいいんじゃないかー」ナデナデ
伊織「そうよ、突き詰めたら小柄なのも立派な個性になるんだから」ナデナデ
やよい「えへへー、そうですかー?」
響「うん、絶対そうだぞ!」ナデナデ
たかね「……」
響「もう事務所で自分よりちっちゃいのやよいくらいだし、いっそ連れて帰っ…… ん?」
たかね「ひびき、はやく、あまざけをもらいにまいりましょう」クイクイ
732: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:33:07.98 :PbQMQGi20
響「どうしたのさ、たかね。焦らなくたってなくならないよ」
たかね「……」ギュッ
伊織「…… よく考えたらわたしたち、わざわざ二杯目もらいに行くこともないわね、やよい」
響「え?」
やよい「うん、まだたっぷり残ってるもんね。待ってますから、二人で行ってきてください!」
響「急になに言い出すの、二人とも。さっきまでは一緒に行こうって……」
伊織(…… 響、ちょっと耳貸して)
響(えっ、なになに? なんか内緒話でもある?)
やよい(あの、響さん。たかねちゃん、すごくむくれちゃってます)
響(え、ええっ!?)チラッ
たかね「……」
伊織(きっと、あんたがやよいにとられちゃったような気がしてるんでしょ)
響「どうしたのさ、たかね。焦らなくたってなくならないよ」
たかね「……」ギュッ
伊織「…… よく考えたらわたしたち、わざわざ二杯目もらいに行くこともないわね、やよい」
響「え?」
やよい「うん、まだたっぷり残ってるもんね。待ってますから、二人で行ってきてください!」
響「急になに言い出すの、二人とも。さっきまでは一緒に行こうって……」
伊織(…… 響、ちょっと耳貸して)
響(えっ、なになに? なんか内緒話でもある?)
やよい(あの、響さん。たかねちゃん、すごくむくれちゃってます)
響(え、ええっ!?)チラッ
たかね「……」
伊織(きっと、あんたがやよいにとられちゃったような気がしてるんでしょ)
733: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:33:48.80 :PbQMQGi20
響(だって自分、ちょっとやよいの頭なでたくらいだよ?)
やよい(ちっちゃい子って、そういうのよく見てますし、けっこう気にするんですよー)
伊織(しっかりしてるように見えても、まだまだ子供ってことよ。ちゃんと安心させてあげなさい)
響「…… よし、たかね。それじゃ改めて、甘酒もらいに行こっか」
たかね「……」
響「あったかくて、ちょっと不思議な味で、おいしいぞ。期待してていいよ」
たかね「…… ひびき」
響「なあに?」
たかね「ひびきは、わたくしよりやよいのほうが、かぞくにほしいですか?」
響「!」
響(だって自分、ちょっとやよいの頭なでたくらいだよ?)
やよい(ちっちゃい子って、そういうのよく見てますし、けっこう気にするんですよー)
伊織(しっかりしてるように見えても、まだまだ子供ってことよ。ちゃんと安心させてあげなさい)
響「…… よし、たかね。それじゃ改めて、甘酒もらいに行こっか」
たかね「……」
響「あったかくて、ちょっと不思議な味で、おいしいぞ。期待してていいよ」
たかね「…… ひびき」
響「なあに?」
たかね「ひびきは、わたくしよりやよいのほうが、かぞくにほしいですか?」
響「!」
734: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:34:26.35 :PbQMQGi20
たかね「たしかに、やよいは、しっかりしていて、おうちのこともできますし――」
響「…… ここで、たかねに問題!」
たかね「は、はい?」
響「お餅はお餅でも食べられないお餅って、なーんだ?」
たかね「たべられないおもち? …… そのようなめんようなものが、あるのですか?」
響「あるんだよ。しかも今、ちょうどたかねが持ってるね」
たかね「わたくしが? というと…… ひびきがよくいう、わたくしのほっぺですか?」
響「ブッブー。それじゃないぞ。ほかには?」
たかね「む、むむむ…… おもち、たべられない、おもち……」
響「どう、もう降参?」
たかね「うう…… こうさんいたします。こたえはなんですか?」
響「…… "やきもち"」
たかね「たしかに、やよいは、しっかりしていて、おうちのこともできますし――」
響「…… ここで、たかねに問題!」
たかね「は、はい?」
響「お餅はお餅でも食べられないお餅って、なーんだ?」
たかね「たべられないおもち? …… そのようなめんようなものが、あるのですか?」
響「あるんだよ。しかも今、ちょうどたかねが持ってるね」
たかね「わたくしが? というと…… ひびきがよくいう、わたくしのほっぺですか?」
響「ブッブー。それじゃないぞ。ほかには?」
たかね「む、むむむ…… おもち、たべられない、おもち……」
響「どう、もう降参?」
たかね「うう…… こうさんいたします。こたえはなんですか?」
響「…… "やきもち"」
735: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:35:09.39 :PbQMQGi20
たかね「む…… わたくし、べつに、やきもちなど、やいておりません」
響「ごめん。自分、ちょっと無神経だった」
たかね「……やよいがこがらで、かわいいのはじじつです。でも、わたくしだって、こがらです」
響「うん、たかねは自分より、やよいより、ずっとちっちゃいもんね」
たかね「けっしておおきくはないひびきが、かんたんに、あたまをなでられるほどに!」
響「そうそう。ちょうどいい高さだから、ついなでちゃうんだよなぁ」
たかね「どうせ、いやだといっても、ひびきはやめないのですから」
響「そんなことないよ。はっきり言ってくれたら、自分、やらないように……」
たかね「いまだけは、もんくをもうしません。ですから、その…… すきになでても、かまいませんよ」
響「お、そうなんだ? それじゃ遠慮なく、お言葉に甘えて」ナデナデナデ
たかね「…… んふふ、ふふ」
たかね「む…… わたくし、べつに、やきもちなど、やいておりません」
響「ごめん。自分、ちょっと無神経だった」
たかね「……やよいがこがらで、かわいいのはじじつです。でも、わたくしだって、こがらです」
響「うん、たかねは自分より、やよいより、ずっとちっちゃいもんね」
たかね「けっしておおきくはないひびきが、かんたんに、あたまをなでられるほどに!」
響「そうそう。ちょうどいい高さだから、ついなでちゃうんだよなぁ」
たかね「どうせ、いやだといっても、ひびきはやめないのですから」
響「そんなことないよ。はっきり言ってくれたら、自分、やらないように……」
たかね「いまだけは、もんくをもうしません。ですから、その…… すきになでても、かまいませんよ」
響「お、そうなんだ? それじゃ遠慮なく、お言葉に甘えて」ナデナデナデ
たかね「…… んふふ、ふふ」
736: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:35:37.02 :PbQMQGi20
たかね「あっつ、あちっ…… あちちっ!?」
響「無理しないほうがいいよ、たかね。冷めるまで自分が持っといてあげるってば」
たかね「いいえ! これは、あち、わたくしがいただいたぶんですから、わたくしがじぶんで!」
響「心配しなくても、誰も取ったりしないって」
たかね「そうではないのです! おとなとして、そのくらいのことは、じしんで、あちち!!」
響「大人ならちゃんとそのへん、聞き分けてくれたっていいでしょ!?」
ギャーギャー
やよい「あっ、響さんとたかねちゃん、帰ってきたよ! 大丈夫だったかなぁ?」
伊織「…… ここからでも見えるくらい、にこにこしてるじゃない。心配するだけ損ってやつよ」
たかね「あっつ、あちっ…… あちちっ!?」
響「無理しないほうがいいよ、たかね。冷めるまで自分が持っといてあげるってば」
たかね「いいえ! これは、あち、わたくしがいただいたぶんですから、わたくしがじぶんで!」
響「心配しなくても、誰も取ったりしないって」
たかね「そうではないのです! おとなとして、そのくらいのことは、じしんで、あちち!!」
響「大人ならちゃんとそのへん、聞き分けてくれたっていいでしょ!?」
ギャーギャー
やよい「あっ、響さんとたかねちゃん、帰ってきたよ! 大丈夫だったかなぁ?」
伊織「…… ここからでも見えるくらい、にこにこしてるじゃない。心配するだけ損ってやつよ」
737: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:37:37.62 :PbQMQGi20
【実力のうち】
亜美「さーて、おひめっち! 亜美たちとことし最初の勝負といこーぜぃ!」
たかね「ほう…… わたくし、まけませんよ。なにでたたかうのです?」
真美「んっふっふー、読みが甘いぞよおひめっち。みんなで初詣とくれば、アレっきゃないっしょ?」
たかね「はて、あれ、とは?」
亜美「これだよこれっ! 年のはじめの運だめしといえばこれ、おみくじなのだー!」
律子「はぁ、全く、勝負って…… あの子たち、縁起物だってことわかってるのかしら」
あずさ「でもお正月には引きたくなりますよね~。そうだ、律子さん、わたしたちもやりましょう!」
律子「は!? え、いえ、私は別に……」
あずさ「わたしもたまには、誰かに運勢を見てもらいたいんですよ。ほらほら♪」
律子「ちょっ、あずささん、わ、わかりましたから、引っ張るのは!」
【実力のうち】
亜美「さーて、おひめっち! 亜美たちとことし最初の勝負といこーぜぃ!」
たかね「ほう…… わたくし、まけませんよ。なにでたたかうのです?」
真美「んっふっふー、読みが甘いぞよおひめっち。みんなで初詣とくれば、アレっきゃないっしょ?」
たかね「はて、あれ、とは?」
亜美「これだよこれっ! 年のはじめの運だめしといえばこれ、おみくじなのだー!」
律子「はぁ、全く、勝負って…… あの子たち、縁起物だってことわかってるのかしら」
あずさ「でもお正月には引きたくなりますよね~。そうだ、律子さん、わたしたちもやりましょう!」
律子「は!? え、いえ、私は別に……」
あずさ「わたしもたまには、誰かに運勢を見てもらいたいんですよ。ほらほら♪」
律子「ちょっ、あずささん、わ、わかりましたから、引っ張るのは!」
738: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:38:08.02 :PbQMQGi20
真美「そんじゃ、いっせーのせ、でみんな開くんだよっ!」
亜美「おひめっち、負けを認めるならいまのうちだよん」
たかね「ふっ、なにをいっているやら…… あみもまみも、てきではありません」
あずさ「うふふ、何が出るかしら~。どきどきしちゃうわ」
律子「…… ねえあずささん、なんで私たちまで一緒に混じってるんです?」
真美「よーし、行っちゃうかんねー!? いっせえのー…… せっ!!」
亜美「…… しょ、小吉…… うあうあー、ビミョーすぎてコメントしづらいよー!」
真美「真美は吉ゲットだーっ! ……ねえ亜美、小吉と吉ってどっちがいいんだったっけ?」
あずさ「えいっ…… わあ、中吉! 二番目にいいのを引けるなんて、いい年になりそう♪」
律子「どうして私までこんな…… …… あっ、大吉……」
あずさ「まあ、おめでとうございます律子さん。きっと今年は最高の年ですよ~!」
真美「あーっ、いいなー、律っちゃん」
亜美「ていうかもうこれで勝者確定じゃーん、つまんないのー!」
真美「そんじゃ、いっせーのせ、でみんな開くんだよっ!」
亜美「おひめっち、負けを認めるならいまのうちだよん」
たかね「ふっ、なにをいっているやら…… あみもまみも、てきではありません」
あずさ「うふふ、何が出るかしら~。どきどきしちゃうわ」
律子「…… ねえあずささん、なんで私たちまで一緒に混じってるんです?」
真美「よーし、行っちゃうかんねー!? いっせえのー…… せっ!!」
亜美「…… しょ、小吉…… うあうあー、ビミョーすぎてコメントしづらいよー!」
真美「真美は吉ゲットだーっ! ……ねえ亜美、小吉と吉ってどっちがいいんだったっけ?」
あずさ「えいっ…… わあ、中吉! 二番目にいいのを引けるなんて、いい年になりそう♪」
律子「どうして私までこんな…… …… あっ、大吉……」
あずさ「まあ、おめでとうございます律子さん。きっと今年は最高の年ですよ~!」
真美「あーっ、いいなー、律っちゃん」
亜美「ていうかもうこれで勝者確定じゃーん、つまんないのー!」
739: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:38:49.86 :PbQMQGi20
真美「あ、そーいえば、おひめっちはどうだったのさ?」
亜美「黙りこくってるとこ見るとー? んっふっふ、さては……」
たかね「…… ……ふふ、ふふふ」
律子「た、たかね? どうしたの、大丈夫?」
あずさ「たかねちゃん、前も言ったけど、占いやおみくじの結果ってそんなに気にしなくていいのよ?」
たかね「ふふふ。わたくしがだまっていたりゆうは、そのようなことではないのですよ、みな」
真美「んんー……? どゆこと?」
亜美「およっ、てことはおひめっちも大吉だったの?」
たかね「さあ、これをごらんなさい! きっと、たいへんにめずらしいものにそういありません!!」
「大凶」 バァーン
真美「あ、そーいえば、おひめっちはどうだったのさ?」
亜美「黙りこくってるとこ見るとー? んっふっふ、さては……」
たかね「…… ……ふふ、ふふふ」
律子「た、たかね? どうしたの、大丈夫?」
あずさ「たかねちゃん、前も言ったけど、占いやおみくじの結果ってそんなに気にしなくていいのよ?」
たかね「ふふふ。わたくしがだまっていたりゆうは、そのようなことではないのですよ、みな」
真美「んんー……? どゆこと?」
亜美「およっ、てことはおひめっちも大吉だったの?」
たかね「さあ、これをごらんなさい! きっと、たいへんにめずらしいものにそういありません!!」
「大凶」 バァーン
740: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:39:35.83 :PbQMQGi20
真美(……ねえ亜美、おひめっちアレ読めてないっぽいから、ホントのこと教えてあげなよ)
亜美(うええっ、なんで亜美!? そーゆーのはズノーどーろ担当の律っちゃんっしょ!)
律子(それこそどうして私なのよ! ……確か一番いい運勢引いた人が勝ちで、偉いのよね?)
あずさ(り、律子さん、どうしてそれをわたしの方を見ながら言うんですか~!?)
律子(だって占いやおみくじに一番造詣が深いのはあずささんじゃありませんか!)
あずさ(で、でもっ! たかねちゃん以外でいちばん結果が悪かったのは真美ちゃんですよ!?)
真美(にゃ、にゃんだってー!? あずさお姉ちゃん、真美のこと売るつもりなの!?)
たかね「ふふふ、みな、わたくしのごううんに、こえもありませんか」ドヤァ…
亜美(声が出てないのはホントだけど理由が全然ちがーう!!)
真美(……ねえ亜美、おひめっちアレ読めてないっぽいから、ホントのこと教えてあげなよ)
亜美(うええっ、なんで亜美!? そーゆーのはズノーどーろ担当の律っちゃんっしょ!)
律子(それこそどうして私なのよ! ……確か一番いい運勢引いた人が勝ちで、偉いのよね?)
あずさ(り、律子さん、どうしてそれをわたしの方を見ながら言うんですか~!?)
律子(だって占いやおみくじに一番造詣が深いのはあずささんじゃありませんか!)
あずさ(で、でもっ! たかねちゃん以外でいちばん結果が悪かったのは真美ちゃんですよ!?)
真美(にゃ、にゃんだってー!? あずさお姉ちゃん、真美のこと売るつもりなの!?)
たかね「ふふふ、みな、わたくしのごううんに、こえもありませんか」ドヤァ…
亜美(声が出てないのはホントだけど理由が全然ちがーう!!)
741: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:40:47.27 :PbQMQGi20
【氏名住所を忘れずに】
春香「うーんと…… どうしようかなぁ……」
美希「あふぅ…… ミキは、こんなカンジでいーかな、っと」
春香「は、はやっ! え、美希、もう書いちゃったの!?」
美希「神様へのお願い、でしょ? ミキの自力じゃできないことなんて、ケンコー祈願くらいなの」
春香「う、うわあ…… これだけ言い切られて説得力があるの、なんかくやしい……!」
真「雪歩ー、できたー? あんまりのんびりしてたら、いい場所とられちゃうよー」
雪歩「あ、あうぅ、ごめんね、真ちゃん…… もうちょっと待ってて」
真「待つのはいいけど…… そんなに熱心になに書いてるのさ、ちょっとボクにも見せてよー」
雪歩「わあっ!? ダメ、見ちゃダメー!」
たかね「はて。みなできのいたをてに、なにをしているのです?」
春香「あっ、たかねちゃん。これ、絵馬っていう、お願い事を書くものなんだよ」
【氏名住所を忘れずに】
春香「うーんと…… どうしようかなぁ……」
美希「あふぅ…… ミキは、こんなカンジでいーかな、っと」
春香「は、はやっ! え、美希、もう書いちゃったの!?」
美希「神様へのお願い、でしょ? ミキの自力じゃできないことなんて、ケンコー祈願くらいなの」
春香「う、うわあ…… これだけ言い切られて説得力があるの、なんかくやしい……!」
真「雪歩ー、できたー? あんまりのんびりしてたら、いい場所とられちゃうよー」
雪歩「あ、あうぅ、ごめんね、真ちゃん…… もうちょっと待ってて」
真「待つのはいいけど…… そんなに熱心になに書いてるのさ、ちょっとボクにも見せてよー」
雪歩「わあっ!? ダメ、見ちゃダメー!」
たかね「はて。みなできのいたをてに、なにをしているのです?」
春香「あっ、たかねちゃん。これ、絵馬っていう、お願い事を書くものなんだよ」
742: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:41:56.68 :PbQMQGi20
たかね「…… おねがいごとは、さんぱいのときにおつたえするのではないのですか?」
春香「あ、そういえば……」
真「言われてみればそうだね…… 絵馬って、なんのために書いてるんだっけ」
美希「単に口で伝えるだけじゃなくて、書いてショーコも残しとく、ってことじゃないの?」
春香「証拠、かぁ…… なんか世知辛いけど、そんなところかもね」
雪歩「…… ええっとね、みんな。昔は、本物のお馬さんを神様に捧げてたんだよ」
真「ええ!?」
たかね「なんと!?」
雪歩「貴重なお馬さんをあげるから、かわりにお願いを聞いてください、ってことだったの」
春香「じゃあ絵馬って、本物の馬のかわりにこれで、ってことだったんだ……」
美希「ふーん。それでオッケーなんだったらずいぶん安上がりなの」
雪歩「ちょっ、美希ちゃん!? ストレートすぎるよぉ!」
たかね「…… おねがいごとは、さんぱいのときにおつたえするのではないのですか?」
春香「あ、そういえば……」
真「言われてみればそうだね…… 絵馬って、なんのために書いてるんだっけ」
美希「単に口で伝えるだけじゃなくて、書いてショーコも残しとく、ってことじゃないの?」
春香「証拠、かぁ…… なんか世知辛いけど、そんなところかもね」
雪歩「…… ええっとね、みんな。昔は、本物のお馬さんを神様に捧げてたんだよ」
真「ええ!?」
たかね「なんと!?」
雪歩「貴重なお馬さんをあげるから、かわりにお願いを聞いてください、ってことだったの」
春香「じゃあ絵馬って、本物の馬のかわりにこれで、ってことだったんだ……」
美希「ふーん。それでオッケーなんだったらずいぶん安上がりなの」
雪歩「ちょっ、美希ちゃん!? ストレートすぎるよぉ!」
743: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:42:57.18 :PbQMQGi20
真「さてと、せっかくだからたかねも書いていけば?」
たかね「それはよいですね。かみさまに、ねんをおしておきましょう!」
春香「そうだ。たかねちゃん、絵馬の書き方のコツ知ってる?」
たかね「いえ、わたくし、みるのもはじめてですので」
春香「あはは、だよね。これ、お願いするんじゃなくて、言い切るといいんだって」
たかね「いいきる?」
美希「『○○できますように』じゃなくて、『○○する!』みたいに書くといいってコトだよ」
たかね「なるほど! では、すこし、かえまして……」
たかね「これで…… できました!」
真(三文字!)
美希(ミキよりシンプルなの!)
雪歩(漢字はまだ難しいよね。あの字は、特に)
春香(ふふっ、たかねちゃんなら当然、そうなるよねっ)
真「さてと、せっかくだからたかねも書いていけば?」
たかね「それはよいですね。かみさまに、ねんをおしておきましょう!」
春香「そうだ。たかねちゃん、絵馬の書き方のコツ知ってる?」
たかね「いえ、わたくし、みるのもはじめてですので」
春香「あはは、だよね。これ、お願いするんじゃなくて、言い切るといいんだって」
たかね「いいきる?」
美希「『○○できますように』じゃなくて、『○○する!』みたいに書くといいってコトだよ」
たかね「なるほど! では、すこし、かえまして……」
たかね「これで…… できました!」
真(三文字!)
美希(ミキよりシンプルなの!)
雪歩(漢字はまだ難しいよね。あの字は、特に)
春香(ふふっ、たかねちゃんなら当然、そうなるよねっ)
744: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:44:27.41 :PbQMQGi20
【注連/三五七】
たかね「ひびき、さきほどから、きになっているのですが」
響「なあに、どうしたの?」
たかね「おみせやおうちのとびらのまえに、みかんがあります! ほら、あそこにも、ここも!」
響「…… さっきからやたらそわそわしてると思ったら、それが原因だったんだな」
たかね「どれもたいへんおおきく、いろもきれいです! いただいてもよいのでしょうか」キラキラ
響「ダーメ。っていうかそもそもあれ、みかんじゃないからね?」
たかね「ぬ…… わたくしをあきらめさせようとして、うそをついていますね、ひびき」
響「嘘じゃないよ。確かにみかんの仲間だけど、ダイダイって言って、種類が違うんだぞ」
たかね「だいだい?」
響「お家や子孫が代々栄えるようにって、そういう願いをこめてあるの」
たかね「なんと! ただのだじゃれではありませんか!」
響「縁起物なんて、どれも案外そういうものさー」
【注連/三五七】
たかね「ひびき、さきほどから、きになっているのですが」
響「なあに、どうしたの?」
たかね「おみせやおうちのとびらのまえに、みかんがあります! ほら、あそこにも、ここも!」
響「…… さっきからやたらそわそわしてると思ったら、それが原因だったんだな」
たかね「どれもたいへんおおきく、いろもきれいです! いただいてもよいのでしょうか」キラキラ
響「ダーメ。っていうかそもそもあれ、みかんじゃないからね?」
たかね「ぬ…… わたくしをあきらめさせようとして、うそをついていますね、ひびき」
響「嘘じゃないよ。確かにみかんの仲間だけど、ダイダイって言って、種類が違うんだぞ」
たかね「だいだい?」
響「お家や子孫が代々栄えるようにって、そういう願いをこめてあるの」
たかね「なんと! ただのだじゃれではありませんか!」
響「縁起物なんて、どれも案外そういうものさー」
745: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:45:27.12 :PbQMQGi20
【いま明かされる衝撃の】
たかね「えんぎもの、といえば…… ひびきは、おみくじはひきましたか?」
響「おみくじ? ああ、そういえば今年は引かなかったなー」
たかね「おや、それでは、わたくしとしょうぶできませんね」
響「たかねは引いてたんだ。 ……ちょっと待って、勝負ってなに?」
たかね「もちろん、おみくじのけっかのよしあしできそいあうのですよ」
響「どうせ亜美と真美が言い出したんでしょ、それ。で、たかねはどうだったの」
たかね「このとおり、わたくしにふさわしい、さいこうのものでした!」ピラ
響「へえー? まあ、初詣のときは大吉多めに入れてる、なんて話もあ――」
たかね「ふふふ、どうです? それをみるとみな、ひびきのように、おしだまってしまうのですよ」
響(……ってことはつまり、その場にいた誰もまだホントのこと言ってないんだな!? もー!!)
【いま明かされる衝撃の】
たかね「えんぎもの、といえば…… ひびきは、おみくじはひきましたか?」
響「おみくじ? ああ、そういえば今年は引かなかったなー」
たかね「おや、それでは、わたくしとしょうぶできませんね」
響「たかねは引いてたんだ。 ……ちょっと待って、勝負ってなに?」
たかね「もちろん、おみくじのけっかのよしあしできそいあうのですよ」
響「どうせ亜美と真美が言い出したんでしょ、それ。で、たかねはどうだったの」
たかね「このとおり、わたくしにふさわしい、さいこうのものでした!」ピラ
響「へえー? まあ、初詣のときは大吉多めに入れてる、なんて話もあ――」
たかね「ふふふ、どうです? それをみるとみな、ひびきのように、おしだまってしまうのですよ」
響(……ってことはつまり、その場にいた誰もまだホントのこと言ってないんだな!? もー!!)
746: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:46:04.73 :PbQMQGi20
たかね「……」ズーン
響「えーとね、その…… そう、珍しいのは間違いないから、ある意味運はいいんだって!」
たかね「…… そのようななぐさめ、けっこうです……」ズーン
響「ただの運試しなんだから、そんな気にするようなことじゃないさー」
たかね「よりによって…… あたらしい、いちねんのはじめに……」
響「いやでもおみくじってだいたい、年の初めくらいにしか引かないし」
たかね「それにくわえ、みながこのことをひみつにしていたのもゆるせません!」
響「みんな、たかねがショック受けないようにって気を遣ってくれたんだよ、きっと」
たかね「あとできかされるほうが、よりしょっくです!!」
響「…… あー、そこはさ、あのー…… あれだよ、ほら、その……」
たかね「……」ズーン
響「えーとね、その…… そう、珍しいのは間違いないから、ある意味運はいいんだって!」
たかね「…… そのようななぐさめ、けっこうです……」ズーン
響「ただの運試しなんだから、そんな気にするようなことじゃないさー」
たかね「よりによって…… あたらしい、いちねんのはじめに……」
響「いやでもおみくじってだいたい、年の初めくらいにしか引かないし」
たかね「それにくわえ、みながこのことをひみつにしていたのもゆるせません!」
響「みんな、たかねがショック受けないようにって気を遣ってくれたんだよ、きっと」
たかね「あとできかされるほうが、よりしょっくです!!」
響「…… あー、そこはさ、あのー…… あれだよ、ほら、その……」
747: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:46:46.90 :PbQMQGi20
響「…… でもさ、たかね、考えようによっては大凶って、すごくいいのかもよ」
たかね「なにがですか!? まずみかけない、さいあくのけっかなのでしょう!」
響「今が最悪なんだったら、これから先はいいことしか起こらない、ってことじゃない?」
たかね「え? …… あっ、なるほど……」
響「それに、たかね一人だったら大変だけど、自分もいっしょにいるんだから大丈夫だよ」
たかね「…… ふふふっ。それならば、わるいことはすべて、ひびきに、ひきうけてもらいましょうか」
響「えーっ、何それ。ひっどいなぁ」
たかね「おみくじをひいていないひびきへの、おすそわけですよ」
響「…… 夕飯、たかねの食べたがってたカレーの予定だったけど、やめちゃおうかな?」
たかね「な、そ、そんな!? さっそく、わるいことがはじまっているではありませんか!?」
響「いーや、これに関してはたかねの自業自得だぞー」
響「…… でもさ、たかね、考えようによっては大凶って、すごくいいのかもよ」
たかね「なにがですか!? まずみかけない、さいあくのけっかなのでしょう!」
響「今が最悪なんだったら、これから先はいいことしか起こらない、ってことじゃない?」
たかね「え? …… あっ、なるほど……」
響「それに、たかね一人だったら大変だけど、自分もいっしょにいるんだから大丈夫だよ」
たかね「…… ふふふっ。それならば、わるいことはすべて、ひびきに、ひきうけてもらいましょうか」
響「えーっ、何それ。ひっどいなぁ」
たかね「おみくじをひいていないひびきへの、おすそわけですよ」
響「…… 夕飯、たかねの食べたがってたカレーの予定だったけど、やめちゃおうかな?」
たかね「な、そ、そんな!? さっそく、わるいことがはじまっているではありませんか!?」
響「いーや、これに関してはたかねの自業自得だぞー」
748: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:47:53.05 :PbQMQGi20
【もはや日本料理】
たかね「おおお…… これは、はじめてかぐ、えもいわれぬかおり……」スンスン
響「確かにこの匂いって、これでしか味わえないからね」
たかね「みためにも、こがねいろ…… ともうしますか、つやつやと、かがやいていて!」
響「あんまり眺めてばっかりいると冷めちゃうから、早く食べようよ、たかね」
たかね「なりません! まずは、めとはなで、しっかりとたのしまねば!」
響「まったくもう。どこの美食家なのさ……」
たかね「んん! んんんん!!」ムグモグムグ
響「どう? これが、日本人のソウルフードのひとつとか言われることもあるカレーだぞ!」
たかね「んんむ…… こ、これは、まさしくびみです!!」
【もはや日本料理】
たかね「おおお…… これは、はじめてかぐ、えもいわれぬかおり……」スンスン
響「確かにこの匂いって、これでしか味わえないからね」
たかね「みためにも、こがねいろ…… ともうしますか、つやつやと、かがやいていて!」
響「あんまり眺めてばっかりいると冷めちゃうから、早く食べようよ、たかね」
たかね「なりません! まずは、めとはなで、しっかりとたのしまねば!」
響「まったくもう。どこの美食家なのさ……」
たかね「んん! んんんん!!」ムグモグムグ
響「どう? これが、日本人のソウルフードのひとつとか言われることもあるカレーだぞ!」
たかね「んんむ…… こ、これは、まさしくびみです!!」
749: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:48:32.36 :PbQMQGi20
たかね「ほどよいからさで、とろみが、ごはんとからみあって!」
響「そうそう、カレーはお米でこそだよね。いや、ナンとかでもおいしいけどさ」
たかね「なん……? ごはんのほかにも、かれーとくみあわせられるものが!?」
響「え? ああ…… うん、外国のパンみたいなのがあるんだよ」
たかね「なんと! それは、ほんじつはないのですか!?」
響「ごめん、今日は準備してないや。次にカレー食べるときはそっちにしようね」
たかね「むぅ…… いたしかたありませんね。つぎのたのしみに、とっておきます」
たかね「さきほどひびきのいっていた、"そうるふーど"とはなんですか?」
響「ようは、その国の人ならたいてい好きで、よく食べるお料理のことさー」
たかね「ではたとえば、ごはんや、おにぎり…… それに、おみそしるなどでしょうか」
響「そういうのだぞ。それ以外に、カレーとか、ラーメンもそうだって言う人もいるね」
たかね「らぁめんもですか! ではわたくしは、みもこころも、まぎれもないにほんじんです!」
たかね「ほどよいからさで、とろみが、ごはんとからみあって!」
響「そうそう、カレーはお米でこそだよね。いや、ナンとかでもおいしいけどさ」
たかね「なん……? ごはんのほかにも、かれーとくみあわせられるものが!?」
響「え? ああ…… うん、外国のパンみたいなのがあるんだよ」
たかね「なんと! それは、ほんじつはないのですか!?」
響「ごめん、今日は準備してないや。次にカレー食べるときはそっちにしようね」
たかね「むぅ…… いたしかたありませんね。つぎのたのしみに、とっておきます」
たかね「さきほどひびきのいっていた、"そうるふーど"とはなんですか?」
響「ようは、その国の人ならたいてい好きで、よく食べるお料理のことさー」
たかね「ではたとえば、ごはんや、おにぎり…… それに、おみそしるなどでしょうか」
響「そういうのだぞ。それ以外に、カレーとか、ラーメンもそうだって言う人もいるね」
たかね「らぁめんもですか! ではわたくしは、みもこころも、まぎれもないにほんじんです!」
750: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:49:16.15 :PbQMQGi20
響「間違いないね。ちなみに、組み合わせたカレーラーメンなんてのもあるよ」
たかね「まことですか!? ではつぎのときは、ぜひそれを!」キラキラ
響「それはいいけど、そうするとナンが食べられなくなっちゃうぞ?」
たかね「あっ…… うう、それはこまります……」
響「ふふふ、いっぱい悩むといいよ。そうだ、ラーメンとカレーならどっちが好きだった?」
たかね「どっち? ……らぁめんと、かれーで?」
響「そ、あえてひとつだけ選ぶとしたら、たかねはどっちが好き?」
たかね「……」
たかね「…… ……」ポロポロポロポロ
響「ちょっ!?」
響「ホントにごめん、ちょっと聞いただけだから、ね、自分が軽率だったぞ、ごめんね」
たかね「う、うう…… わたくし、じしんのこころは、うらぎれませんでした……」ポロポロ
響「間違いないね。ちなみに、組み合わせたカレーラーメンなんてのもあるよ」
たかね「まことですか!? ではつぎのときは、ぜひそれを!」キラキラ
響「それはいいけど、そうするとナンが食べられなくなっちゃうぞ?」
たかね「あっ…… うう、それはこまります……」
響「ふふふ、いっぱい悩むといいよ。そうだ、ラーメンとカレーならどっちが好きだった?」
たかね「どっち? ……らぁめんと、かれーで?」
響「そ、あえてひとつだけ選ぶとしたら、たかねはどっちが好き?」
たかね「……」
たかね「…… ……」ポロポロポロポロ
響「ちょっ!?」
響「ホントにごめん、ちょっと聞いただけだから、ね、自分が軽率だったぞ、ごめんね」
たかね「う、うう…… わたくし、じしんのこころは、うらぎれませんでした……」ポロポロ
751: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:50:27.84 :PbQMQGi20
【計画倒れ】
たかね「『いちねんのけいは、がんたんにあり』…… たいへん、よいことばです」
響「昔の人はためになること言うよね」
たかね「それにまなび、わたくし、ことしのもくひょうをたてることにします!」
響「ほほー。まさかと思うけどラーメン何杯食べるとか、そういうのじゃないよね?」
たかね「ふっ…… わたくしをあまくみないでください、ひびき。もちろん、ちがいます」
響「へえ、じゃあ、どんなの?」
たかね「ことしは…… たくさんたべて、わたくし、ひびきよりもおおきくなってみせます!」
響「……たかね、目標って、一般的には努力でなんとかなるものにするんだよ?」
たかね「やってみないで、あきらめるのはよくありませんよ」
響「何事にも限度ってあると思うぞ、自分」
【計画倒れ】
たかね「『いちねんのけいは、がんたんにあり』…… たいへん、よいことばです」
響「昔の人はためになること言うよね」
たかね「それにまなび、わたくし、ことしのもくひょうをたてることにします!」
響「ほほー。まさかと思うけどラーメン何杯食べるとか、そういうのじゃないよね?」
たかね「ふっ…… わたくしをあまくみないでください、ひびき。もちろん、ちがいます」
響「へえ、じゃあ、どんなの?」
たかね「ことしは…… たくさんたべて、わたくし、ひびきよりもおおきくなってみせます!」
響「……たかね、目標って、一般的には努力でなんとかなるものにするんだよ?」
たかね「やってみないで、あきらめるのはよくありませんよ」
響「何事にも限度ってあると思うぞ、自分」
752: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:50:59.44 :PbQMQGi20
【昔は大人ももらえました】
たかね「ときに、ひびき。なにかわすれていることがございませんか?」
響「え? ……あれ、自分、なにか約束とかしてたっけ?」
たかね「おやおや、そのようなことでは、かんぺきのながないてしまいますよ」
響「えーっと…… ごめん、まだ思い出せないや。なあに?」
たかね「いたしかたありませんね、おしえてさしあげます。わたくしの、おとしだまですよ」
響「えっ」
たかね「おとしだま、です。 ……ま、まさか、しらないのですか!?」
響「いやもちろん自分は知ってるぞ。じゃなくて、なんでたかねが知ってるのかなぁ、って」
【昔は大人ももらえました】
たかね「ときに、ひびき。なにかわすれていることがございませんか?」
響「え? ……あれ、自分、なにか約束とかしてたっけ?」
たかね「おやおや、そのようなことでは、かんぺきのながないてしまいますよ」
響「えーっと…… ごめん、まだ思い出せないや。なあに?」
たかね「いたしかたありませんね、おしえてさしあげます。わたくしの、おとしだまですよ」
響「えっ」
たかね「おとしだま、です。 ……ま、まさか、しらないのですか!?」
響「いやもちろん自分は知ってるぞ。じゃなくて、なんでたかねが知ってるのかなぁ、って」
753: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:51:31.21 :PbQMQGi20
響「やっぱりこれも亜美と真美が元凶かー…… ほんと、ロクなこと教えないんだから」
たかね「それはさておき、わたくしにも、もらうけんりがあるはずです」
響「ちょっと待ってよ。むしろ、自分だってまだもらってておかしくない立場なんだからね?」
たかね「ですが、いまのわたくしのほごしゃは、ひびきでしょう?」
響「そりゃそうだけどさー」
たかね「ならば、まずはひびき、ほごしゃとしてのせきむをはたしてください!」
響「お年玉あげるのが保護者の義務だなんて話、初めて聞いたぞ、自分……」
響「はい、じゃあ、たかねにはこれあげる」ペラッ
たかね「まっておりました!」
響「やっぱりこれも亜美と真美が元凶かー…… ほんと、ロクなこと教えないんだから」
たかね「それはさておき、わたくしにも、もらうけんりがあるはずです」
響「ちょっと待ってよ。むしろ、自分だってまだもらってておかしくない立場なんだからね?」
たかね「ですが、いまのわたくしのほごしゃは、ひびきでしょう?」
響「そりゃそうだけどさー」
たかね「ならば、まずはひびき、ほごしゃとしてのせきむをはたしてください!」
響「お年玉あげるのが保護者の義務だなんて話、初めて聞いたぞ、自分……」
響「はい、じゃあ、たかねにはこれあげる」ペラッ
たかね「まっておりました!」
754: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:52:04.78 :PbQMQGi20
たかね「…… はて、これは? きっぷ、ですか?」ピラピラ
響「できたてのほやほや、しかも自分のお手製で、ほかじゃ手に入らない超レアものさー」
たかね「しかし、ひびき。おとしだまとは、おもに、おかねだとききましたが」
響「たぶんそれ、たかねにとってはお金よりよっぽど嬉しいと思うよ」
たかね「そうなのですか? なぜですか?」
響「そこに使い方も書いといたから、まずはちゃんと読んでみて」
たかね「む。そのようにてまをかけずとも、ひびきがせつめいしてくれれば、すむのでは?」
響「たかねももう5歳のりっぱな淑女なんだし、たまにはお勉強しなくっちゃ」
たかね「…… いわれてみれば、たしかにそうです」
響「ん、がんばってねー」
たかね「…… はて、これは? きっぷ、ですか?」ピラピラ
響「できたてのほやほや、しかも自分のお手製で、ほかじゃ手に入らない超レアものさー」
たかね「しかし、ひびき。おとしだまとは、おもに、おかねだとききましたが」
響「たぶんそれ、たかねにとってはお金よりよっぽど嬉しいと思うよ」
たかね「そうなのですか? なぜですか?」
響「そこに使い方も書いといたから、まずはちゃんと読んでみて」
たかね「む。そのようにてまをかけずとも、ひびきがせつめいしてくれれば、すむのでは?」
響「たかねももう5歳のりっぱな淑女なんだし、たまにはお勉強しなくっちゃ」
たかね「…… いわれてみれば、たしかにそうです」
響「ん、がんばってねー」
755: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:53:07.81 :PbQMQGi20
たかね「ひ、ひびき! ひびき!!」タタタッ
響(おっ、きたきた)
たかね「このきっぷにかいてあることは、まことなのですか!?」
響「もちろん、まことだよー」
たかね「では、これをだせば…… しゅうにふたつめのかっぷめんをしょくしても、よいのですね!?」
響「うん、自分も大人として、アイドルとして、二言はないぞ」
たかね「なんと……、なんとすばらしいのでしょう!! ゆめのようなきっぷです!」キラキラ
響「でも使えるのは週に一枚限り、全部で七枚だけだから、タイミングはよーく考えるんだよ?」
たかね「む、むむむ…… たしかにこれは、いつつかうか、はんだんがじゅうように……!」
響(……苦しまぎれの思いつきだったけど、喜んでるみたいでなによりだぞ。ふふふ)
たかね「ひ、ひびき! ひびき!!」タタタッ
響(おっ、きたきた)
たかね「このきっぷにかいてあることは、まことなのですか!?」
響「もちろん、まことだよー」
たかね「では、これをだせば…… しゅうにふたつめのかっぷめんをしょくしても、よいのですね!?」
響「うん、自分も大人として、アイドルとして、二言はないぞ」
たかね「なんと……、なんとすばらしいのでしょう!! ゆめのようなきっぷです!」キラキラ
響「でも使えるのは週に一枚限り、全部で七枚だけだから、タイミングはよーく考えるんだよ?」
たかね「む、むむむ…… たしかにこれは、いつつかうか、はんだんがじゅうように……!」
響(……苦しまぎれの思いつきだったけど、喜んでるみたいでなによりだぞ。ふふふ)
756: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:55:57.86 :PbQMQGi20
【Waxing Gibbous】
たかね「あっ、そうです! ひびき、ことしさいしょのおつきさまをみましょう!」
響「初日の出見に行くかわりの、初お月見かー。うん、風流でいいかもね」
たかね「もうそろそろ、まんげつになっているでしょうか?」
響「んーと、ちょっとタイミングが早いかなぁ。でも、あと一週間もしないくらいのはずだよ」
たかね「そうですか、わたくし、はやくみてみたいです」
響「そっか、そういえば、たかねはまだ満月見たことないんだったっけ」
響「おおー。もう、半月よりけっこう大きくなってるなー」
たかね「こんばんも、おつきさまはきんいろで、あかるくて…… とてもうつくしいです!」
響「うん、ホントに。今日は雲もないからよく見えるね」
たかね「まんげつのばんは、あれがまんまるになるのですね?」
響「そうだよ。この感じなら一週間もかかんないかな、あと三、四日くらいだと思うぞ」
【Waxing Gibbous】
たかね「あっ、そうです! ひびき、ことしさいしょのおつきさまをみましょう!」
響「初日の出見に行くかわりの、初お月見かー。うん、風流でいいかもね」
たかね「もうそろそろ、まんげつになっているでしょうか?」
響「んーと、ちょっとタイミングが早いかなぁ。でも、あと一週間もしないくらいのはずだよ」
たかね「そうですか、わたくし、はやくみてみたいです」
響「そっか、そういえば、たかねはまだ満月見たことないんだったっけ」
響「おおー。もう、半月よりけっこう大きくなってるなー」
たかね「こんばんも、おつきさまはきんいろで、あかるくて…… とてもうつくしいです!」
響「うん、ホントに。今日は雲もないからよく見えるね」
たかね「まんげつのばんは、あれがまんまるになるのですね?」
響「そうだよ。この感じなら一週間もかかんないかな、あと三、四日くらいだと思うぞ」
757: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:56:32.99 :PbQMQGi20
たかね「そういえばひびき、しっていますか? おつきさまには、うさぎさんがいるのですよ」
響「へえー、たかね、それは誰に教えてもらったの?」
たかね「むっ…… だれでもありません。これはわたくしのはっそうです!」
響「そうだったんだ。ごめんごめん、その言い伝え、もともと有名なんだよ」
たかね「おや、そうだったのですか? ざんねんです」
響「それにしても、どうしてうさぎさんがいると思ったの?」
たかね「せんじつのゆきうさぎさんが、きっと、おつきさまへいったとおもいまして」
響「なるほど。じゃあ、お友達も一緒に、かな?」
たかね「もちろんです!」
たかね「それより、そのいいつたえは、なぜできたのでしょうか?」
響「満月じゃなくても、これだけ大きかったらわかるかな。ほら、あのお月様の模様がさ」
たかね「もよう?」
響「そう、影みたいになってるでしょ。あれがうさぎに見えるって、昔から――」
たかね「そういえばひびき、しっていますか? おつきさまには、うさぎさんがいるのですよ」
響「へえー、たかね、それは誰に教えてもらったの?」
たかね「むっ…… だれでもありません。これはわたくしのはっそうです!」
響「そうだったんだ。ごめんごめん、その言い伝え、もともと有名なんだよ」
たかね「おや、そうだったのですか? ざんねんです」
響「それにしても、どうしてうさぎさんがいると思ったの?」
たかね「せんじつのゆきうさぎさんが、きっと、おつきさまへいったとおもいまして」
響「なるほど。じゃあ、お友達も一緒に、かな?」
たかね「もちろんです!」
たかね「それより、そのいいつたえは、なぜできたのでしょうか?」
響「満月じゃなくても、これだけ大きかったらわかるかな。ほら、あのお月様の模様がさ」
たかね「もよう?」
響「そう、影みたいになってるでしょ。あれがうさぎに見えるって、昔から――」
758: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:57:30.84 :PbQMQGi20
759: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 21:58:19.48 :PbQMQGi20
響「――ね! たかね? たかね、ねえ、たかねってば、聞こえてる!?」
響「――ね! たかね? たかね、ねえ、たかねってば、聞こえてる!?」
760: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 22:00:13.85 :PbQMQGi20
たかね「……おや、ひびき? どうしました?」
響「あ…… もうっ、『どうしました?』じゃないぞ!? 急に黙り込んで、ぼーっとしちゃってさ」
たかね「…… ……わたくしが、ですか? ぼおっと?」
響「気になったから声かけても全然返事もしないし。自分、心配したんだからね?」
たかね「こえをかけていたのですか? ひびきが、ずっと?」
響「…… ちょっとたかね、ホントに大丈夫なの? 自覚もなかったなんて……」
たかね「い、いえ、なにもないのです。だいじょうぶ、ですよ」
響「まぁ、今なんともないならいいんだけどさ」
響「さ、もう十分見たでしょ? まだまだ寒いし、お部屋に戻ろうよ」
たかね「…… そう、ですね」
たかね「……おや、ひびき? どうしました?」
響「あ…… もうっ、『どうしました?』じゃないぞ!? 急に黙り込んで、ぼーっとしちゃってさ」
たかね「…… ……わたくしが、ですか? ぼおっと?」
響「気になったから声かけても全然返事もしないし。自分、心配したんだからね?」
たかね「こえをかけていたのですか? ひびきが、ずっと?」
響「…… ちょっとたかね、ホントに大丈夫なの? 自覚もなかったなんて……」
たかね「い、いえ、なにもないのです。だいじょうぶ、ですよ」
響「まぁ、今なんともないならいいんだけどさ」
響「さ、もう十分見たでしょ? まだまだ寒いし、お部屋に戻ろうよ」
たかね「…… そう、ですね」
761: ◆ccGlDikGP2:2015/09/09(水) 22:00:48.35 :PbQMQGi20
たかね「ひびき。さきほどの、おはなしなのですが」
響「先ほどの? どの話?」
たかね「あとどれくらいたてば、まんげつになるのか、というおはなしです」
響「あはは、そんなに楽しみなんだ。ちょっと待っててね、ちゃんと調べてみるから」
響「えーっとね…… うん、自分の見立てで合ってるみたい。あと四日ってところかな?」
たかね「よっか…… まんげつは、よっかごなのですね?」
響「うん、そしたら真ん丸なお月様が見られるぞ! もちろん晴れてれば、だけど」
たかね「きっと、はれますよ。そんなきがいたします」
響「だといいね。そうだ、前の日になったらてるてる坊主とか作ろっか!」
たかね「ひびき。さきほどの、おはなしなのですが」
響「先ほどの? どの話?」
たかね「あとどれくらいたてば、まんげつになるのか、というおはなしです」
響「あはは、そんなに楽しみなんだ。ちょっと待っててね、ちゃんと調べてみるから」
響「えーっとね…… うん、自分の見立てで合ってるみたい。あと四日ってところかな?」
たかね「よっか…… まんげつは、よっかごなのですね?」
響「うん、そしたら真ん丸なお月様が見られるぞ! もちろん晴れてれば、だけど」
たかね「きっと、はれますよ。そんなきがいたします」
響「だといいね。そうだ、前の日になったらてるてる坊主とか作ろっか!」
784: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:42:59.81 :mKrcaVT70
響「じゃあみんな、おつかれー! 自分たちはお先に失礼するぞー」
雪歩「あれっ…… 響ちゃん、もう帰っちゃうの?」
響「うん、冬休みもそろそろ終わっちゃうし、今日はたかねのことかまってあげるつもり!」
伊織「なるほど、そういうこと。よかったじゃないの、たかね」
たかね「……ええ、そうですね」
伊織(あら……? てっきり大喜びしてると思ったのに、意外と反応薄いわね……)
律子「正月休み終わりがけで交通量も増えてきてるし、気をつけて帰りなさいよー」
小鳥「今日もお疲れさまでした、響ちゃん」
あずさ「また明日ね~、響ちゃん。たかねちゃんも、ばいばい」
響「うん、また明日! たかねもほら、ちゃんとあいさつしよう?」
たかね「あ…… そうでした。みな、おつかれさまでした」
響「じゃあみんな、おつかれー! 自分たちはお先に失礼するぞー」
雪歩「あれっ…… 響ちゃん、もう帰っちゃうの?」
響「うん、冬休みもそろそろ終わっちゃうし、今日はたかねのことかまってあげるつもり!」
伊織「なるほど、そういうこと。よかったじゃないの、たかね」
たかね「……ええ、そうですね」
伊織(あら……? てっきり大喜びしてると思ったのに、意外と反応薄いわね……)
律子「正月休み終わりがけで交通量も増えてきてるし、気をつけて帰りなさいよー」
小鳥「今日もお疲れさまでした、響ちゃん」
あずさ「また明日ね~、響ちゃん。たかねちゃんも、ばいばい」
響「うん、また明日! たかねもほら、ちゃんとあいさつしよう?」
たかね「あ…… そうでした。みな、おつかれさまでした」
785: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:43:37.79 :mKrcaVT70
響「はーっ、寒い寒い……! こんな日は急いで帰って、こたつであったかいもの食べなきゃね」
たかね「……そう、ですね。それがよいでしょう」
響「あれ…… ねえたかね、具合でも悪いの?」
たかね「はい? いえ、とくには…… なぜですか?」
響「だっていつもなら『ほんじつのめにゅーはなんですか!?』って、すぐ食いついてくるのに」
たかね「…… じつは、すこし、かんがえごとがございまして……」
響「考え事?」
響「はーっ、寒い寒い……! こんな日は急いで帰って、こたつであったかいもの食べなきゃね」
たかね「……そう、ですね。それがよいでしょう」
響「あれ…… ねえたかね、具合でも悪いの?」
たかね「はい? いえ、とくには…… なぜですか?」
響「だっていつもなら『ほんじつのめにゅーはなんですか!?』って、すぐ食いついてくるのに」
たかね「…… じつは、すこし、かんがえごとがございまして……」
響「考え事?」
786: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:44:08.75 :mKrcaVT70
たかね「あの…… ひびき。こんばんが、まんげつなのでしたね?」
響「そうだよ。よく晴れてるし、きっときれいに見えるぞー。たかねがいい子にしてたからさー」
たかね「そこでわたくし、おりいって、おねがいがあるのですが……」
響「あはは、今日はまたえらく神妙だなぁ。なに、どうしたの?」
たかね「またてんたいかんそくをしたいのです。あのおかへ、つれていってくれませんか?」
響「え…… えぇ!? こんな寒い日に、わざわざ? たかね、また風邪引いちゃうよ」
たかね「わたくしなら、だいじょうぶです」
響「今日はベランダから見ればいいでしょ。あそこに行くのはもっと暖かい日にしない?」
たかね「どうか、おねがいします、ひびき。わたくし…… どうしてもこんやは、あのばしょがよいのです」
響「……もーっ、しょうがないなぁ。それじゃ、しっかり寒さ対策してかなくっちゃ」
たかね「あの…… ひびき。こんばんが、まんげつなのでしたね?」
響「そうだよ。よく晴れてるし、きっときれいに見えるぞー。たかねがいい子にしてたからさー」
たかね「そこでわたくし、おりいって、おねがいがあるのですが……」
響「あはは、今日はまたえらく神妙だなぁ。なに、どうしたの?」
たかね「またてんたいかんそくをしたいのです。あのおかへ、つれていってくれませんか?」
響「え…… えぇ!? こんな寒い日に、わざわざ? たかね、また風邪引いちゃうよ」
たかね「わたくしなら、だいじょうぶです」
響「今日はベランダから見ればいいでしょ。あそこに行くのはもっと暖かい日にしない?」
たかね「どうか、おねがいします、ひびき。わたくし…… どうしてもこんやは、あのばしょがよいのです」
響「……もーっ、しょうがないなぁ。それじゃ、しっかり寒さ対策してかなくっちゃ」
787: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:47:59.91 :mKrcaVT70
響「よーし、とうちゃーく、っと! ……ううー、わかってたけど、すっごい冷えてるなー……」
たかね「…… ……」
響「たかねは大丈夫? ホントに寒くない?」
たかね「ひびき」
響「ん? なあに?」
たかね「いつも、わたくしのわがままをきいてくれて、ありがとうございました」
響「……ちょっと、今日はどうしちゃったのさ? たかね、ずいぶんおとなしいじゃないか」
たかね「そう、でしょうか」
響「間違いないぞ、口数も少ない感じだし。なにかあったの?」
たかね「…… ……ひびき、じつは、わたくしは……」
響「うん、たかねが?」
たかね「ひびきと、おわかれせねばなりません」
響「……え?」
響「よーし、とうちゃーく、っと! ……ううー、わかってたけど、すっごい冷えてるなー……」
たかね「…… ……」
響「たかねは大丈夫? ホントに寒くない?」
たかね「ひびき」
響「ん? なあに?」
たかね「いつも、わたくしのわがままをきいてくれて、ありがとうございました」
響「……ちょっと、今日はどうしちゃったのさ? たかね、ずいぶんおとなしいじゃないか」
たかね「そう、でしょうか」
響「間違いないぞ、口数も少ない感じだし。なにかあったの?」
たかね「…… ……ひびき、じつは、わたくしは……」
響「うん、たかねが?」
たかね「ひびきと、おわかれせねばなりません」
響「……え?」
【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」
【速報】尾田っち、ワンピース最新話でやってしまうwwww
【東方】ルックス100点の文ちゃん
【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?
韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
788: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:48:44.17 :mKrcaVT70
【きみのふるえる手を】
【きみのふるえる手を】
789: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:53:54.80 :mKrcaVT70
響「お別れ、って…… えっ、たかね、なんの話してるの?」
たかね「てんたいかんそくがしたいのは、ほんしんですが…… ここにきたのは、べつのりゆうです」
響「な、なに言ってるのさ。あのね、そういう冗談ってぜんぜんおもしろくないぞ」
たかね「きょう、このよる、おむかえがある、とれんらくがありました」
響「お迎え……? だから、いったい、なんのことなのか――」
たかね「…… ……きた、ようです」
響「えっ?」
響「……なに、あれ?」
響「お別れ、って…… えっ、たかね、なんの話してるの?」
たかね「てんたいかんそくがしたいのは、ほんしんですが…… ここにきたのは、べつのりゆうです」
響「な、なに言ってるのさ。あのね、そういう冗談ってぜんぜんおもしろくないぞ」
たかね「きょう、このよる、おむかえがある、とれんらくがありました」
響「お迎え……? だから、いったい、なんのことなのか――」
たかね「…… ……きた、ようです」
響「えっ?」
響「……なに、あれ?」
790: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:54:23.50 :mKrcaVT70
響「え…… え、ええ!? ゆ、UFO!?」
たかね「こちらでは、そのようによぶことがおおいようですね」
響「なに平然としてるの、たかね!? 早くここから――」
たかね「だいじょうぶです。ひびきに、もちろんわたくしにも、きけんはありません」
響「…… ……ねえ、待って、『こちらでは』ってどういうこと?」
たかね「あれが、わたくしのおむかえです」
響「さっきからさっぱり意味がわかんないよっ! たかねのお迎えって、なんなのさ!?」
たかね「わたくしが…… "くに"へかえるときがきた、ということです、ひびき」
響「くに? くに…… って、かえる、ってそれ、どういう意味……?」
響「え…… え、ええ!? ゆ、UFO!?」
たかね「こちらでは、そのようによぶことがおおいようですね」
響「なに平然としてるの、たかね!? 早くここから――」
たかね「だいじょうぶです。ひびきに、もちろんわたくしにも、きけんはありません」
響「…… ……ねえ、待って、『こちらでは』ってどういうこと?」
たかね「あれが、わたくしのおむかえです」
響「さっきからさっぱり意味がわかんないよっ! たかねのお迎えって、なんなのさ!?」
たかね「わたくしが…… "くに"へかえるときがきた、ということです、ひびき」
響「くに? くに…… って、かえる、ってそれ、どういう意味……?」
791: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:55:00.86 :mKrcaVT70
響「…… なんだあれ、今度は、人が出てきて…… どうなってるの、これ……」
たかね「……」
響「夢、きっと、夢だ…… 早く覚めてよ、こんな意味のわかんない夢なんかうんざりだぞ……!」
???「お久しゅうございます、姫君。先般お伝えしました通り、お迎えに上がりました」
たかね「…… ……おやくめ、ごくろうにぞんじます」
響「…… なんだあれ、今度は、人が出てきて…… どうなってるの、これ……」
たかね「……」
響「夢、きっと、夢だ…… 早く覚めてよ、こんな意味のわかんない夢なんかうんざりだぞ……!」
???「お久しゅうございます、姫君。先般お伝えしました通り、お迎えに上がりました」
たかね「…… ……おやくめ、ごくろうにぞんじます」
792: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:55:39.19 :mKrcaVT70
響「だ、誰なんだ、あんた! たかねのこと、どうするつもり!?」
???「姫君。これは?」
たかね「こちらでの、わたくしのかぞくで、ともです」
???「…… ご家族で、かつご友人…… ですか?」
たかね「はて。それになにか、おかしなことがありますか」
???「いえ、これは失礼を。承知仕りました」
たかね「ひびき。こちらは――」
使者「そのようなお気遣いは無用です、姫君。いずれにせよこの方とは二度とお会いしませんゆえ」
響「だ、誰なんだ、あんた! たかねのこと、どうするつもり!?」
???「姫君。これは?」
たかね「こちらでの、わたくしのかぞくで、ともです」
???「…… ご家族で、かつご友人…… ですか?」
たかね「はて。それになにか、おかしなことがありますか」
???「いえ、これは失礼を。承知仕りました」
たかね「ひびき。こちらは――」
使者「そのようなお気遣いは無用です、姫君。いずれにせよこの方とは二度とお会いしませんゆえ」
793: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:56:37.21 :mKrcaVT70
響「だから、自分を残して勝手に話を進めないでってばっ!!」
たかね「あの…… どうか、どうかおちついてください、ひびき……」
響「これが落ち着いてられる!? それよりたかね、自分から離れるんじゃないぞ!」
使者「……ご友人、ということですので大目に見ますが、あまり気安い口をおききになりませんように」
響「うるさい! さっきも聞いたけど、姫君うんぬんより前にまずあんた誰なの!?」
使者「私は、姫君にお仕えする家臣がひとりに過ぎませぬ」
響「家臣だの姫君だのって…… まるで、たかねが本当にお姫さまかなんかみたいな、」
使者「実際に姫君であらせられるとしたら?」
響「……え?」
使者「この方こそ、月世界の第一王女である姫君でございます」
響「月……? 月、って、あの…… あそこで空に浮かんでる、あの月?」
使者「いかにもその通りです」
響「……はは、あはは、は! 冗談、冗談だよね? ドッキリとか…… そういうの、でしょ……?」
使者「お信じになるかどうかは、ご随意に。こちらとしては事実をお伝えするのみですゆえ」
響「だから、自分を残して勝手に話を進めないでってばっ!!」
たかね「あの…… どうか、どうかおちついてください、ひびき……」
響「これが落ち着いてられる!? それよりたかね、自分から離れるんじゃないぞ!」
使者「……ご友人、ということですので大目に見ますが、あまり気安い口をおききになりませんように」
響「うるさい! さっきも聞いたけど、姫君うんぬんより前にまずあんた誰なの!?」
使者「私は、姫君にお仕えする家臣がひとりに過ぎませぬ」
響「家臣だの姫君だのって…… まるで、たかねが本当にお姫さまかなんかみたいな、」
使者「実際に姫君であらせられるとしたら?」
響「……え?」
使者「この方こそ、月世界の第一王女である姫君でございます」
響「月……? 月、って、あの…… あそこで空に浮かんでる、あの月?」
使者「いかにもその通りです」
響「……はは、あはは、は! 冗談、冗談だよね? ドッキリとか…… そういうの、でしょ……?」
使者「お信じになるかどうかは、ご随意に。こちらとしては事実をお伝えするのみですゆえ」
794: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:57:10.48 :mKrcaVT70
響「…… ……じゃあ、その、月の人、が…… なんで急にたかねを迎えに来るの?」
使者「所定の期間が経過したゆえにございます」
響「期間? 所定の、って……」
使者「姫君がこのたび地球に参りましたのは、王族の子女としての試練をお受けになるためでした」
響「し…… 試練? はは、ははっ、アイドルやるのがなんの試練だっていうのさ!?」
使者「そうではありません。地球を訪れること、それ自体が試練でございます」
響「…… つまり、大事に育ててきた子に、あえて一人で旅させる…… みたいな?」
使者「概ね、そのようなものと捉えていただいて結構です」
響「一応…… 理屈としてはわかるよ。でも、なら、なんで貴音はちっちゃくなっちゃったの?」
使者「ああ、そうでした。その点で大きな認識の齟齬があるのですね」
響「そご? ……どんな勘違いがあるっていうんだ?」
響「…… ……じゃあ、その、月の人、が…… なんで急にたかねを迎えに来るの?」
使者「所定の期間が経過したゆえにございます」
響「期間? 所定の、って……」
使者「姫君がこのたび地球に参りましたのは、王族の子女としての試練をお受けになるためでした」
響「し…… 試練? はは、ははっ、アイドルやるのがなんの試練だっていうのさ!?」
使者「そうではありません。地球を訪れること、それ自体が試練でございます」
響「…… つまり、大事に育ててきた子に、あえて一人で旅させる…… みたいな?」
使者「概ね、そのようなものと捉えていただいて結構です」
響「一応…… 理屈としてはわかるよ。でも、なら、なんで貴音はちっちゃくなっちゃったの?」
使者「ああ、そうでした。その点で大きな認識の齟齬があるのですね」
響「そご? ……どんな勘違いがあるっていうんだ?」
795: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:57:47.45 :mKrcaVT70
使者「姫君は "小さくなってしまった" のではございません。"元にお戻りになった" のです」
響「…… ……はっ?」
響「な、なに言ってるの……? 小さくなったんじゃない、って、でも現にいま、こんなちっちゃい子に――」
使者「おわかりになりませんか。現在のそのお姿こそが、姫君本来の風采である、ということですよ」
たかね「……」
使者「姫君は "小さくなってしまった" のではございません。"元にお戻りになった" のです」
響「…… ……はっ?」
響「な、なに言ってるの……? 小さくなったんじゃない、って、でも現にいま、こんなちっちゃい子に――」
使者「おわかりになりませんか。現在のそのお姿こそが、姫君本来の風采である、ということですよ」
たかね「……」
796: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:58:29.71 :mKrcaVT70
響「えっ、ま…… 待って! どういうこと!? 自分、意味がわかんないよ!」
使者「そのままの意味でございます。一時的に成長しておられたのが、こうして元に戻られただけのこと」
響「バカ言わないでよ!! そもそも一時的に成長だなんて、そんなこと、できるわけが……」
使者「我々の技術をもってすれば、さほど困難なことでもありません」
響「でも、じ、自分のよく知ってる貴音は…… 自分より2歳も年上で、背だってずーっと高くって!」
使者「ですから、それらはすべて、この姫君の仮の姿であった、ということですよ」
響「見た目だけの話じゃないよっ! 態度とか知識とか、話の内容とかも…… 貴音は!」
使者「当然でしょう。身体の成長に合わせ、精神年齢を引き上げない理由などありますでしょうか?」
響「そ……、んな! じゃあ…… 貴音と、自分が、初めて会ったときから、ずっと……?」
使者「左様でございます。貴女が知っていたとお思いの"四条貴音"なる存在は、幻想に過ぎません」
響「えっ、ま…… 待って! どういうこと!? 自分、意味がわかんないよ!」
使者「そのままの意味でございます。一時的に成長しておられたのが、こうして元に戻られただけのこと」
響「バカ言わないでよ!! そもそも一時的に成長だなんて、そんなこと、できるわけが……」
使者「我々の技術をもってすれば、さほど困難なことでもありません」
響「でも、じ、自分のよく知ってる貴音は…… 自分より2歳も年上で、背だってずーっと高くって!」
使者「ですから、それらはすべて、この姫君の仮の姿であった、ということですよ」
響「見た目だけの話じゃないよっ! 態度とか知識とか、話の内容とかも…… 貴音は!」
使者「当然でしょう。身体の成長に合わせ、精神年齢を引き上げない理由などありますでしょうか?」
響「そ……、んな! じゃあ…… 貴音と、自分が、初めて会ったときから、ずっと……?」
使者「左様でございます。貴女が知っていたとお思いの"四条貴音"なる存在は、幻想に過ぎません」
797: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 21:59:18.58 :mKrcaVT70
響「…… なんで、なんでそんなことしたの!? たかねを無理やり成長させて、なんの意味があるのさ!?」
使者「先ほども申しました、試練をお受けいただくための準備のひとつです」
響「こんなちっちゃい子を、大人に見せかけて…… それでよそにひとりぼっちで放り出すのがあんたのいう試練なの!?」
使者「ああ、ようやくご理解いただけましたか。その通りですよ」
響「ふざけてるのか!? そんな危ないことやらせるなんて、いったいなに考えてるんだ!」
使者「どんなものであれ、試練というからには相応の危険が伴うものだと存じますが」
響「そういう問題!? それに、あんたの話だとたかねは月のお姫様なんでしょ!? なのに!」
使者「王族だからこそ、この程度も乗り越えられぬようでは到底務まらない、ということでございます」
響「それで―― それで、もし万が一のことでもあったら、取り返しつかないじゃないか……!」
使者「ええ。間引き…… とまでは申しませんが、ふるいにかけるような面もございまして」
響「…… ……なんだって?」
使者「過去には、政治的に対立する者らが試練の機会を利用し、王族を亡き者にした例もあったとか」
響「…… おかしいよ、そんなの…… 絶対おかしい、間違ってるぞ……!」
響「…… なんで、なんでそんなことしたの!? たかねを無理やり成長させて、なんの意味があるのさ!?」
使者「先ほども申しました、試練をお受けいただくための準備のひとつです」
響「こんなちっちゃい子を、大人に見せかけて…… それでよそにひとりぼっちで放り出すのがあんたのいう試練なの!?」
使者「ああ、ようやくご理解いただけましたか。その通りですよ」
響「ふざけてるのか!? そんな危ないことやらせるなんて、いったいなに考えてるんだ!」
使者「どんなものであれ、試練というからには相応の危険が伴うものだと存じますが」
響「そういう問題!? それに、あんたの話だとたかねは月のお姫様なんでしょ!? なのに!」
使者「王族だからこそ、この程度も乗り越えられぬようでは到底務まらない、ということでございます」
響「それで―― それで、もし万が一のことでもあったら、取り返しつかないじゃないか……!」
使者「ええ。間引き…… とまでは申しませんが、ふるいにかけるような面もございまして」
響「…… ……なんだって?」
使者「過去には、政治的に対立する者らが試練の機会を利用し、王族を亡き者にした例もあったとか」
響「…… おかしいよ、そんなの…… 絶対おかしい、間違ってるぞ……!」
798: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:00:00.26 :mKrcaVT70
たかね「いままで、なにもおつたえできなくて…… ごめんなさい、ひびき」
響「…… たかねも、このこと…… 初めから、全部、知ってたの……?」
たかね「いいえ!! ちがいます! それだけはぜったいにちがいます、しんじてくだ――」
使者「姫君は本当にご存知ありませんでしたよ。少なくとも、四日前の晩までは」
響「なんであんたがそんなこと言い切れるのさ?」
使者「その時点でようやく、我々と姫君との間で連絡が取れたからでございます」
響「は!?」
使者「お迎えにあがる旨、その日時…… 同時に、姫君がお忘れだった情報もお伝えした次第でして」
響「忘れてた……?」
使者「……致し方ありませんね。ここまでお話しした手前、もう少しご説明して差し上げましょう」
たかね「いままで、なにもおつたえできなくて…… ごめんなさい、ひびき」
響「…… たかねも、このこと…… 初めから、全部、知ってたの……?」
たかね「いいえ!! ちがいます! それだけはぜったいにちがいます、しんじてくだ――」
使者「姫君は本当にご存知ありませんでしたよ。少なくとも、四日前の晩までは」
響「なんであんたがそんなこと言い切れるのさ?」
使者「その時点でようやく、我々と姫君との間で連絡が取れたからでございます」
響「は!?」
使者「お迎えにあがる旨、その日時…… 同時に、姫君がお忘れだった情報もお伝えした次第でして」
響「忘れてた……?」
使者「……致し方ありませんね。ここまでお話しした手前、もう少しご説明して差し上げましょう」
799: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:00:53.55 :mKrcaVT70
使者「まずそもそも、試練に臨むにあたり、対象者は月の民としての記憶を一時的に抹消されます」
響「えっ…… どうして?」
使者「地球の民として溶け込めるように、ですね。その際、地球人としての仮の記憶も与えられます」
響「それじゃ、貴音の名前なんかのプロフィールも、全部うそっぱちだってことなのか……」
使者「苗字に関してはその通りです。『四条』という姓は、月の民が代々名乗ってきた仮の苗字でして」
響「! つまり、貴音って名前だけは本名だってこと?」
使者「はい。少なくとも音としては、もっとも近い表記と言って差し支えないでしょう」
響「……そう、なんだ。少なくとも自分、貴音のこと、全然知らなかったわけじゃないんだね」
使者「まあ、そういうことである、としておきましょうか」
使者「まずそもそも、試練に臨むにあたり、対象者は月の民としての記憶を一時的に抹消されます」
響「えっ…… どうして?」
使者「地球の民として溶け込めるように、ですね。その際、地球人としての仮の記憶も与えられます」
響「それじゃ、貴音の名前なんかのプロフィールも、全部うそっぱちだってことなのか……」
使者「苗字に関してはその通りです。『四条』という姓は、月の民が代々名乗ってきた仮の苗字でして」
響「! つまり、貴音って名前だけは本名だってこと?」
使者「はい。少なくとも音としては、もっとも近い表記と言って差し支えないでしょう」
響「……そう、なんだ。少なくとも自分、貴音のこと、全然知らなかったわけじゃないんだね」
使者「まあ、そういうことである、としておきましょうか」
800: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:01:31.92 :mKrcaVT70
使者「ただ問題は、我々の有する地球についての記録がいささか現状に即していないことにあります」
響「…… もしかして、貴音の言葉づかいがやたら時代がかってたのって……」
使者「そういうことです。数十年、部分的には数百年単位での乖離が生じてしまっていたようですね」
響「なるほど、ね…… さもそれが普通みたいな感じで喋ってたけど、そんな理由があったのか」
使者「また、当然ですが、年齢を成長させる施術の維持にはそれなりの熱量を必要と致しまして」
響「つまり、なに? 貴音が食いしん坊だったのも実はそこが原因だってこと?」
使者「仰る通りです。もちろん、姫君にその意識はありませんので、無自覚だったはずですが」
響「なんだか話が急すぎて、現実味はぜんぜんないけど…… 確かに、理にはかなってるね」
使者「さて…… では改めて、私が今回姫君をお迎えに参るまでの経緯をご説明しておきましょう」
響「うん。聞かせてもらうぞ」
使者「ただ問題は、我々の有する地球についての記録がいささか現状に即していないことにあります」
響「…… もしかして、貴音の言葉づかいがやたら時代がかってたのって……」
使者「そういうことです。数十年、部分的には数百年単位での乖離が生じてしまっていたようですね」
響「なるほど、ね…… さもそれが普通みたいな感じで喋ってたけど、そんな理由があったのか」
使者「また、当然ですが、年齢を成長させる施術の維持にはそれなりの熱量を必要と致しまして」
響「つまり、なに? 貴音が食いしん坊だったのも実はそこが原因だってこと?」
使者「仰る通りです。もちろん、姫君にその意識はありませんので、無自覚だったはずですが」
響「なんだか話が急すぎて、現実味はぜんぜんないけど…… 確かに、理にはかなってるね」
使者「さて…… では改めて、私が今回姫君をお迎えに参るまでの経緯をご説明しておきましょう」
響「うん。聞かせてもらうぞ」
801: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:02:12.52 :mKrcaVT70
使者「本来であれば、定められた試練の期間が終わり次第幼子に戻られ、迎えの者がすぐ参ります」
響「今あんたがここにいるのも、そのルールに従ったからじゃないの?」
使者「その前に、そもそもまず私含め、ほとんどの者は試練の正確な期間を知らされておりません」
響「……じゃあ、どうやって迎えにくるタイミングを合わせられるんだ?」
使者「元に戻られたことが我々に自動的に伝わる仕組みになっており、それを確認してから伺うのです」
響「おかしいじゃないか! だって、貴音がたかねになっちゃったのはもう一月くらい前なのに!」
使者「今回に限り、少々事情が異なっておりましたゆえ」
響「事情……?」
使者「はい。姫君は、王位継承の優先権で言うと第一位にあたるお方です」
響「女王様の候補として、優先順位が一番上、ってこと?」
使者「その通りです。その分、試練も常と比べると困難なものとなります」
響「あんたたち……、こんなちっちゃい子にどれだけ要求したら気が済むんだ!?」
使者「そう申されましても、こちらにはこちらの慣例がございますので」
使者「本来であれば、定められた試練の期間が終わり次第幼子に戻られ、迎えの者がすぐ参ります」
響「今あんたがここにいるのも、そのルールに従ったからじゃないの?」
使者「その前に、そもそもまず私含め、ほとんどの者は試練の正確な期間を知らされておりません」
響「……じゃあ、どうやって迎えにくるタイミングを合わせられるんだ?」
使者「元に戻られたことが我々に自動的に伝わる仕組みになっており、それを確認してから伺うのです」
響「おかしいじゃないか! だって、貴音がたかねになっちゃったのはもう一月くらい前なのに!」
使者「今回に限り、少々事情が異なっておりましたゆえ」
響「事情……?」
使者「はい。姫君は、王位継承の優先権で言うと第一位にあたるお方です」
響「女王様の候補として、優先順位が一番上、ってこと?」
使者「その通りです。その分、試練も常と比べると困難なものとなります」
響「あんたたち……、こんなちっちゃい子にどれだけ要求したら気が済むんだ!?」
使者「そう申されましても、こちらにはこちらの慣例がございますので」
802: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:03:25.16 :mKrcaVT70
響「っ……、もういいよ! それで、たかねの場合が普通とはどう違ったっていうの?」
使者「単純なことです。姫君の側から、接触を図ってもらう必要がございまして」
響「接触…… っていったって、たかねが自分から誰かに連絡を取る手段なんて…… ……まさか」
使者「お気づきになりましたか。こちらで言う『満月』直前の月を、姫君がご覧になることが必要でした」
響「じゃあ…… この間の晩、たかねが急にしばらく反応しなくなったのって……」
使者「お察しの通り、その折に我々と交信しておられたためです」
響「それで、貴音がたかねになっ…… "戻ってる"のがようやくわかって、あんたがのこのこ来たってわけだ」
使者「ええ。すでに一月近くも経っているとは、さすがに思いませんでしたが」
響「それで家来とかよく言えるよ! ふつう、心配でいてもたってもいられないんじゃないの!?」
使者「我々は決め事に従うのみです。仮に姫君が失敗なさったとして、そこまでの器だっただけのこと」
響「っ……、もういいよ! それで、たかねの場合が普通とはどう違ったっていうの?」
使者「単純なことです。姫君の側から、接触を図ってもらう必要がございまして」
響「接触…… っていったって、たかねが自分から誰かに連絡を取る手段なんて…… ……まさか」
使者「お気づきになりましたか。こちらで言う『満月』直前の月を、姫君がご覧になることが必要でした」
響「じゃあ…… この間の晩、たかねが急にしばらく反応しなくなったのって……」
使者「お察しの通り、その折に我々と交信しておられたためです」
響「それで、貴音がたかねになっ…… "戻ってる"のがようやくわかって、あんたがのこのこ来たってわけだ」
使者「ええ。すでに一月近くも経っているとは、さすがに思いませんでしたが」
響「それで家来とかよく言えるよ! ふつう、心配でいてもたってもいられないんじゃないの!?」
使者「我々は決め事に従うのみです。仮に姫君が失敗なさったとして、そこまでの器だっただけのこと」
803: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:04:56.99 :mKrcaVT70
響「……もうこの際、あんたが本当に月の人で、たかねを連れ戻しに来た、ってのは信じるしかなさそうだぞ」
使者「それは大変に助かります」
響「でも…… なら、あんたが、たかねをちゃんと無事に連れて帰ってくれる、って保証は?」
使者「かえって疑念を抱かせてしまいましたか。しかし、もしも私が姫君に害意を抱く身なら――」フッ
響(なっ…… き、消え…… っ!?)
使者「――貴女相手にゆるりと言葉を交わしている必要など、特にないのでございまして」
響「…… ひっ!?」
響(い、いつの間に自分の後ろに!? 見えもしなかったし、気配も、全然……!)
使者「ここまでで『そうした行動』を取っていないこと、それ自体をもって信用していただければ、と」
響「……もうこの際、あんたが本当に月の人で、たかねを連れ戻しに来た、ってのは信じるしかなさそうだぞ」
使者「それは大変に助かります」
響「でも…… なら、あんたが、たかねをちゃんと無事に連れて帰ってくれる、って保証は?」
使者「かえって疑念を抱かせてしまいましたか。しかし、もしも私が姫君に害意を抱く身なら――」フッ
響(なっ…… き、消え…… っ!?)
使者「――貴女相手にゆるりと言葉を交わしている必要など、特にないのでございまして」
響「…… ひっ!?」
響(い、いつの間に自分の後ろに!? 見えもしなかったし、気配も、全然……!)
使者「ここまでで『そうした行動』を取っていないこと、それ自体をもって信用していただければ、と」
804: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:05:46.59 :mKrcaVT70
響「…… じ、自分のこと、どうにか、するつもり…… なの?」
使者「申し上げましたでしょう。そうする必要があれば、最初からそのようにしております」
響「っ……!」
使者「むしろ貴女には感謝しているのですよ。この一月ほどの間、姫君を保護してくださったのですから」
響「それ、は…… だって当然でしょ、友達が、困ってたんだから」
使者「…… なんにせよ、おかげで何事もなく無事に試練が済みましたこと、改めて礼を申し上げます」
響「あ…… ああ、ごていねいにどうも…… 別に自分、たいしたことはしてないけど」
響(どうにもペースが狂わされちゃうぞ…… そういう意味では貴音と似てるけど、でも……!)
響「…… じ、自分のこと、どうにか、するつもり…… なの?」
使者「申し上げましたでしょう。そうする必要があれば、最初からそのようにしております」
響「っ……!」
使者「むしろ貴女には感謝しているのですよ。この一月ほどの間、姫君を保護してくださったのですから」
響「それ、は…… だって当然でしょ、友達が、困ってたんだから」
使者「…… なんにせよ、おかげで何事もなく無事に試練が済みましたこと、改めて礼を申し上げます」
響「あ…… ああ、ごていねいにどうも…… 別に自分、たいしたことはしてないけど」
響(どうにもペースが狂わされちゃうぞ…… そういう意味では貴音と似てるけど、でも……!)
805: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:06:23.24 :mKrcaVT70
使者「それでは、私どもはこれで失礼致します。もうお会いすることもありませんゆえ、ご安心を」
響「…… 気に入らないぞ、自分。やっぱり、どうしても気に入らない」
使者「礼ならば申し上げましたし、貴女をどうこうするつもりもございませんが…… 他に何かご不満でも?」
響「いっぱいあるよ。その中でもいっちばん気に食わないこと、言っていいかな」
使者「構いませんが、手短に願えますか」
響「ありがと。じゃあ、教えてほしいんだけど」
響「ねえ、あんたさ…… なんでたかねに謝らないの?」
使者「…… はい?」
響「さっきからずーっと気になってたんだ。自分でおかしいと思わない?」
使者「それでは、私どもはこれで失礼致します。もうお会いすることもありませんゆえ、ご安心を」
響「…… 気に入らないぞ、自分。やっぱり、どうしても気に入らない」
使者「礼ならば申し上げましたし、貴女をどうこうするつもりもございませんが…… 他に何かご不満でも?」
響「いっぱいあるよ。その中でもいっちばん気に食わないこと、言っていいかな」
使者「構いませんが、手短に願えますか」
響「ありがと。じゃあ、教えてほしいんだけど」
響「ねえ、あんたさ…… なんでたかねに謝らないの?」
使者「…… はい?」
響「さっきからずーっと気になってたんだ。自分でおかしいと思わない?」
806: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:07:49.11 :mKrcaVT70
使者「私は役目通りお迎えに上がったまでで…… 姫君にお詫びするようなことは、特にないかと思いますが」
響「…… たぶん、自分、あんたとは一生わかりあえないさー」
使者「立場も何もかも異なる以上、当然かと。それで、つまり、貴女は何が仰りたいのですか?」
響「なにが、って……? ホントにまだわかんないのか?」
使者「ええ。解りかねます」
響「こん…… っの、ふらー!! あんた、やっぱりどうしようもない大バカだぞ!」
使者「…… どういうことでしょうか。さすがに聞き捨てなりませんが」
響「迎えに来たあんたがいまここで、たかねに言わなきゃいけないことなんてひとつだけでしょ!?」
響「『ずっとひとりぼっちにさせてさびしかったよね、待たせてごめんね』って!!」
響「お姫様とかの前に、お母さんや、……お父さんと、一緒にいるのが当たり前の年の子なんだよっ!?」
たかね「……!」
響「よくがんばったねって、もう心配ないよって…… どうして言ってあげられないのさ!!」
使者「私は役目通りお迎えに上がったまでで…… 姫君にお詫びするようなことは、特にないかと思いますが」
響「…… たぶん、自分、あんたとは一生わかりあえないさー」
使者「立場も何もかも異なる以上、当然かと。それで、つまり、貴女は何が仰りたいのですか?」
響「なにが、って……? ホントにまだわかんないのか?」
使者「ええ。解りかねます」
響「こん…… っの、ふらー!! あんた、やっぱりどうしようもない大バカだぞ!」
使者「…… どういうことでしょうか。さすがに聞き捨てなりませんが」
響「迎えに来たあんたがいまここで、たかねに言わなきゃいけないことなんてひとつだけでしょ!?」
響「『ずっとひとりぼっちにさせてさびしかったよね、待たせてごめんね』って!!」
響「お姫様とかの前に、お母さんや、……お父さんと、一緒にいるのが当たり前の年の子なんだよっ!?」
たかね「……!」
響「よくがんばったねって、もう心配ないよって…… どうして言ってあげられないのさ!!」
807: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:09:13.37 :mKrcaVT70
使者「……やはり、貴女の仰ることは、私には理解の及ばないところが多いようです」
響「自分も、だぞ。たかねの知り合い相手にこんなこと言いたくないけど、わかりたくもないよ!」
使者「まあ、どうとでもご自由に。それでは、もうよろしいですね?」
響「……」
たかね「あ、あの……」
使者「お待たせ致しまして申し訳ございません、姫君。さ、参りましょう」
たかね「…… ……」
使者「……はて。もうよろしいですね、と、つい今しがた確認させていただいたはずですが」
響「…………」
使者「私の袖を、放していただけますか?」
使者「……やはり、貴女の仰ることは、私には理解の及ばないところが多いようです」
響「自分も、だぞ。たかねの知り合い相手にこんなこと言いたくないけど、わかりたくもないよ!」
使者「まあ、どうとでもご自由に。それでは、もうよろしいですね?」
響「……」
たかね「あ、あの……」
使者「お待たせ致しまして申し訳ございません、姫君。さ、参りましょう」
たかね「…… ……」
使者「……はて。もうよろしいですね、と、つい今しがた確認させていただいたはずですが」
響「…………」
使者「私の袖を、放していただけますか?」
808: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:10:04.35 :mKrcaVT70
響「…… 待って……、やっぱり自分、いやだ、これでお別れなんて納得できるわけない!!」
たかね「…… ……ひびき」
使者「失礼ながら、貴女が得心されるかどうかは私になんら関わりのないことです」
響「お願い、お願いしますっ、せめて最後にたかねと話をさせて!」
使者「お断りします。貴女とお会いするのは勿論、ここまで時間を割いたこと自体、特例中の特例のようなもので――」
たかね「……よいのです。すこしのあいだ、はなれていなさい」
使者「なっ、しかし姫君! この者の振る舞いはあまりにも目に余ります、本来ならば」
たかね「ひかえよ!!」
使者「!?」
響「っ、た、たかね……?」
たかね「すこしのあいだ、はなれていなさい、と、わたくしはそうもうしましたよ」
使者「……っ。仰せの、通りに」
たかね「おおきなこえをだして、ごめんなさい、ひびき。あちらで、おはなししましょう」
響「…… 待って……、やっぱり自分、いやだ、これでお別れなんて納得できるわけない!!」
たかね「…… ……ひびき」
使者「失礼ながら、貴女が得心されるかどうかは私になんら関わりのないことです」
響「お願い、お願いしますっ、せめて最後にたかねと話をさせて!」
使者「お断りします。貴女とお会いするのは勿論、ここまで時間を割いたこと自体、特例中の特例のようなもので――」
たかね「……よいのです。すこしのあいだ、はなれていなさい」
使者「なっ、しかし姫君! この者の振る舞いはあまりにも目に余ります、本来ならば」
たかね「ひかえよ!!」
使者「!?」
響「っ、た、たかね……?」
たかね「すこしのあいだ、はなれていなさい、と、わたくしはそうもうしましたよ」
使者「……っ。仰せの、通りに」
たかね「おおきなこえをだして、ごめんなさい、ひびき。あちらで、おはなししましょう」
809: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:10:39.04 :mKrcaVT70
たかね「…… あのもののことを、わるくおもわないであげてくださいね」
響「う、うん。まあ実際、無理言ってるの、たぶん、自分のほう、なんだし……」
たかね「きっと、なれないばしょで、きんちょうしているのですよ。ふふ、いつぞやのねこさんのようです」
響「…… たかね、ホントに、お姫様だったんだね」
たかね「はい…… しかし! ほんとうにおぼえていなかったのです。それはどうか、しんじてください」
響「そこはもう疑ってないよ。たかねが最初から覚えてたら、隠しとけるわけないもんね」
たかね「む。どういういみです?」
響「だって…… 自分にばれずに隠し事なんて、たかねはできないでしょ?」
たかね「そっ、そんなことはありません! わたくしのえんぎをもってすれば!」
響「よく言うよ。サーターアンダギーつまみ食いしてたのとか、バレバレだったのに」
たかね「う…… ……ふふっ。たしかに、そのとおりですね」
たかね「…… あのもののことを、わるくおもわないであげてくださいね」
響「う、うん。まあ実際、無理言ってるの、たぶん、自分のほう、なんだし……」
たかね「きっと、なれないばしょで、きんちょうしているのですよ。ふふ、いつぞやのねこさんのようです」
響「…… たかね、ホントに、お姫様だったんだね」
たかね「はい…… しかし! ほんとうにおぼえていなかったのです。それはどうか、しんじてください」
響「そこはもう疑ってないよ。たかねが最初から覚えてたら、隠しとけるわけないもんね」
たかね「む。どういういみです?」
響「だって…… 自分にばれずに隠し事なんて、たかねはできないでしょ?」
たかね「そっ、そんなことはありません! わたくしのえんぎをもってすれば!」
響「よく言うよ。サーターアンダギーつまみ食いしてたのとか、バレバレだったのに」
たかね「う…… ……ふふっ。たしかに、そのとおりですね」
810: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:11:45.97 :mKrcaVT70
響「それより、ねえ、たかね…… ……ホントに、もう月に、"くに"に帰っちゃっていいの?」
たかね「……」
響「あと5日もしたら、前に教えてあげた鏡開きだぞ。おぜんざいも、おしるこも、まだ食べてないでしょ」
たかね「そうでした…… きっと、ひびきがつくってくれたら、びみなのでしょうね」
響「そうだよ、甘くて、あつあつでさ…… 食べたかったら、両方作ってあげたっていいし」
たかね「…… くすっ…… かがみもちだけでは、たりなくなってしまいそうです……」
響「事務所のみんなにもお別れのあいさつ、していこうよ」
たかね「ええ、したかったですね…… これほど、きゅうなはなしでなければよかったのに」
響「確かに急だけど、きっとみんなわかってくれるよ。自分もいっしょについてってあげるからさぁ!」
たかね「…… ひびきは、ほんとうに、やさしいですね」
響「それより、ねえ、たかね…… ……ホントに、もう月に、"くに"に帰っちゃっていいの?」
たかね「……」
響「あと5日もしたら、前に教えてあげた鏡開きだぞ。おぜんざいも、おしるこも、まだ食べてないでしょ」
たかね「そうでした…… きっと、ひびきがつくってくれたら、びみなのでしょうね」
響「そうだよ、甘くて、あつあつでさ…… 食べたかったら、両方作ってあげたっていいし」
たかね「…… くすっ…… かがみもちだけでは、たりなくなってしまいそうです……」
響「事務所のみんなにもお別れのあいさつ、していこうよ」
たかね「ええ、したかったですね…… これほど、きゅうなはなしでなければよかったのに」
響「確かに急だけど、きっとみんなわかってくれるよ。自分もいっしょについてってあげるからさぁ!」
たかね「…… ひびきは、ほんとうに、やさしいですね」
811: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:12:26.78 :mKrcaVT70
響「自分の家族だっているぞ! 今日のおでかけが実は最後だったなんて、みんな絶対さびしがるって!」
たかね「でも、おわかれをいうためだけにもういちどあうのも…… きっと、さびしいです」
響「それ、は…… そうかもしれないけど、だけど……!」
響「それにさ…… そうだ、たかね、まだお年玉のきっぷだって1枚も使ってないじゃないか!」
たかね「ああ、それについてはまこと、おしいことをしてしまいました」
響「今からだって使えばいいよ! なんだったら、毎週2個くらいまでは食べたって――」
たかね「とてもみりょくてきな、ていあんですが…… それは、わたくし、おことわりいたしましょう」
響「どうして!? たかねは立派な淑女なんだから、カップ麺のひとつやふたつ!」
たかね「ひびきとの、たいせつな、おやくそくです。わたくしのいままでのがまんを、むだにするのですか?」
響「自分の家族だっているぞ! 今日のおでかけが実は最後だったなんて、みんな絶対さびしがるって!」
たかね「でも、おわかれをいうためだけにもういちどあうのも…… きっと、さびしいです」
響「それ、は…… そうかもしれないけど、だけど……!」
響「それにさ…… そうだ、たかね、まだお年玉のきっぷだって1枚も使ってないじゃないか!」
たかね「ああ、それについてはまこと、おしいことをしてしまいました」
響「今からだって使えばいいよ! なんだったら、毎週2個くらいまでは食べたって――」
たかね「とてもみりょくてきな、ていあんですが…… それは、わたくし、おことわりいたしましょう」
響「どうして!? たかねは立派な淑女なんだから、カップ麺のひとつやふたつ!」
たかね「ひびきとの、たいせつな、おやくそくです。わたくしのいままでのがまんを、むだにするのですか?」
812: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:12:56.23 :mKrcaVT70
響「なんで…… なんでこんなときだけそんなに物分かりがいいんだよ、たかね!」
たかね「……わたくしも、わからないのです。なぜでしょうね……」
響「無理にいい子ぶらなくていいから…… 自分に今までさんざん言ったみたいに、わがまま言いなよ!」
たかね「…… ふふっ…… これは、こまってしまいました」
響「なにがさ!?」
たかね「いままで、ひびきに、たくさんわがままをきいてもらったから…… もう、おもいつかないのです」
響「…… ねえ、やだよぅ…… たかね、行かないで、もっと自分にわがまま言ってよ……」
たかね「ふふ…… あべこべではありませんか、ひびきが、わがままをいって、どうするのですか……」
響「あべこべでいい、わがままだって言うよ、たかねがいなくなるなんて自分絶対やだ、だから――」
使者「さて。そろそろよろしいですか、姫君」グイ
たかね「あっ……!」
響「なんで…… なんでこんなときだけそんなに物分かりがいいんだよ、たかね!」
たかね「……わたくしも、わからないのです。なぜでしょうね……」
響「無理にいい子ぶらなくていいから…… 自分に今までさんざん言ったみたいに、わがまま言いなよ!」
たかね「…… ふふっ…… これは、こまってしまいました」
響「なにがさ!?」
たかね「いままで、ひびきに、たくさんわがままをきいてもらったから…… もう、おもいつかないのです」
響「…… ねえ、やだよぅ…… たかね、行かないで、もっと自分にわがまま言ってよ……」
たかね「ふふ…… あべこべではありませんか、ひびきが、わがままをいって、どうするのですか……」
響「あべこべでいい、わがままだって言うよ、たかねがいなくなるなんて自分絶対やだ、だから――」
使者「さて。そろそろよろしいですか、姫君」グイ
たかね「あっ……!」
813: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:13:46.43 :mKrcaVT70
響「そんな! ちょっと待ってよ、まだ話は―― っ!?」ガクッ
響(な、なん……、で、こんな…… 急に、眠気が…… っ……!?)
響(…… だ、めだぞ…… ここ、で、……寝ちゃ、っ、たら! たかね、と―― にど、と…… ……)
響「……」
たかね「ほんとうに…… ぶじなのですか? ねむるだけ、なのですね?」
使者「はい。時間が来れば、問題なくお目覚めになります」
たかね「ここはとてもさむいです。ひびきが、かぜをひいてしまいませんか?」
使者「ご心配なく。目を覚まされるまで、危険がないよう、監視および温度の調節を行います」
たかね「……そう、ですか。それなら、だいじょうぶ、ですね」
響「そんな! ちょっと待ってよ、まだ話は―― っ!?」ガクッ
響(な、なん……、で、こんな…… 急に、眠気が…… っ……!?)
響(…… だ、めだぞ…… ここ、で、……寝ちゃ、っ、たら! たかね、と―― にど、と…… ……)
響「……」
たかね「ほんとうに…… ぶじなのですか? ねむるだけ、なのですね?」
使者「はい。時間が来れば、問題なくお目覚めになります」
たかね「ここはとてもさむいです。ひびきが、かぜをひいてしまいませんか?」
使者「ご心配なく。目を覚まされるまで、危険がないよう、監視および温度の調節を行います」
たかね「……そう、ですか。それなら、だいじょうぶ、ですね」
814: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:17:21.28 :mKrcaVT70
使者「さあ、もう十分でしょう、姫君。参りますよ」
たかね「あの…… まってください、さいごに、いますこしだけ」タタッ
使者「……! 姫君、どちらへ?」
たかね「きてはなりません!!」
使者「!」
たかね「すぐです。すぐにもどります。ですから、あとほんの、ひとときだけ」
使者「…… やれやれ。お気の済みますように」
響「……」
たかね「ひびき。これで、おわかれです」
たかね「いままで、わたくしも、ほんとうにたのしかったですよ」
使者「さあ、もう十分でしょう、姫君。参りますよ」
たかね「あの…… まってください、さいごに、いますこしだけ」タタッ
使者「……! 姫君、どちらへ?」
たかね「きてはなりません!!」
使者「!」
たかね「すぐです。すぐにもどります。ですから、あとほんの、ひとときだけ」
使者「…… やれやれ。お気の済みますように」
響「……」
たかね「ひびき。これで、おわかれです」
たかね「いままで、わたくしも、ほんとうにたのしかったですよ」
815: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:22:20.66 :mKrcaVT70
たかね「……ひびきは、いつも、わたくしのあたまを、なでていましたね」
たかね「わたくしがとめてもきかず、それはもう、すきなように、わしわしと……」
たかね「じつはわたくし、ずうっと、ひびきにしかえしをするきかいをねらっていたのです!」
たかね「しかし、てがとどきそうにないので、あきらめていましたが……」
たかね「ふふふ…… ねているいまならば、わたくしでも、かんたんにさわれます」
たかね「かくごしなさい、ひびき。いままでのぶんの、おかえしですよ。ふふふふ……!!」
たかね「……ひびきは、いつも、わたくしのあたまを、なでていましたね」
たかね「わたくしがとめてもきかず、それはもう、すきなように、わしわしと……」
たかね「じつはわたくし、ずうっと、ひびきにしかえしをするきかいをねらっていたのです!」
たかね「しかし、てがとどきそうにないので、あきらめていましたが……」
たかね「ふふふ…… ねているいまならば、わたくしでも、かんたんにさわれます」
たかね「かくごしなさい、ひびき。いままでのぶんの、おかえしですよ。ふふふふ……!!」
816: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:23:40.64 :mKrcaVT70
たかね「おお…… これが、ひびきのあたまのてざわりですか。これは、なかなか」
たかね「ふふふ。はるかにせのちいさいわたくしからなでまわされるとは、いいきみです!」
たかね「さきほど、わたくしが、ひびきにはかくしごとをできない、といいましたね」
たかね「それはほんとうですが…… わたくし、ひとつだけ、ひびきをだましおおせましたよ」
たかね「この、よっかかん…… ひびきと、おわかれせねばならぬと、しってから……」
たかね「そのことを、ひびきにけどられぬよう、わたくしはひっしでした」
たかね「どうです? ひびき、きづいていなかったでしょう? ……ふふっ、わたくしのかちです!」
たかね「おお…… これが、ひびきのあたまのてざわりですか。これは、なかなか」
たかね「ふふふ。はるかにせのちいさいわたくしからなでまわされるとは、いいきみです!」
たかね「さきほど、わたくしが、ひびきにはかくしごとをできない、といいましたね」
たかね「それはほんとうですが…… わたくし、ひとつだけ、ひびきをだましおおせましたよ」
たかね「この、よっかかん…… ひびきと、おわかれせねばならぬと、しってから……」
たかね「そのことを、ひびきにけどられぬよう、わたくしはひっしでした」
たかね「どうです? ひびき、きづいていなかったでしょう? ……ふふっ、わたくしのかちです!」
817: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:24:24.51 :mKrcaVT70
たかね「それにしても……、ほんとうに、ひびきのかみは、くろくて、ゆたかで…… つのも、はえていて……」
たかね「……っ、つやつや、と、していて…… ふれて、いて、とても…… ここちがよい、ですね……」
たかね「これが…… さいご、ですから…… っ、いますこし、いま、すこし、だけ……」
たかね「…… ごめんなさい、ひびき。ちゃんと、さよならを、いえなくて、ごめんなさい」
たかね「どうか…… わたくしのことは、わすれてください」
たかね「わたくしが、ひびきをおぼえていれば…… それで、いいのです」
たかね「それにしても……、ほんとうに、ひびきのかみは、くろくて、ゆたかで…… つのも、はえていて……」
たかね「……っ、つやつや、と、していて…… ふれて、いて、とても…… ここちがよい、ですね……」
たかね「これが…… さいご、ですから…… っ、いますこし、いま、すこし、だけ……」
たかね「…… ごめんなさい、ひびき。ちゃんと、さよならを、いえなくて、ごめんなさい」
たかね「どうか…… わたくしのことは、わすれてください」
たかね「わたくしが、ひびきをおぼえていれば…… それで、いいのです」
818: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:25:17.26 :mKrcaVT70
たかね「……じかんをとらせました。まいりましょう」
使者「ご随意に」
たかね「もう、てはずはととのったのですか?」
使者「万端です。もっとも難儀するであろうこの方には無事お休み頂きましたので、あとは順次」
たかね「ひびきも、ほかのみなにも…… くれぐれも、きけんなど、ないようにしてください」
使者「もちろんでございます、姫君。すべて心得ておりますので、ご安心を」
たかね「ならば、よいのです」
たかね「……じかんをとらせました。まいりましょう」
使者「ご随意に」
たかね「もう、てはずはととのったのですか?」
使者「万端です。もっとも難儀するであろうこの方には無事お休み頂きましたので、あとは順次」
たかね「ひびきも、ほかのみなにも…… くれぐれも、きけんなど、ないようにしてください」
使者「もちろんでございます、姫君。すべて心得ておりますので、ご安心を」
たかね「ならば、よいのです」
819: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:25:48.18 :mKrcaVT70
820: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:36:03.21 :mKrcaVT70
響「…… ん、ううん……」
響「んんー……? う、うわっ!?」
響「寝て…… たのか、自分。ううー、それにしても寒いぞぉ……」
響「…… ちょっと、だいたいここ、どこ!? 丘…… っていうか、山っていうか……?」
響「あっ! そ、そうだ、スマホで見てみたらわかるかも!」ゴソゴソ
響「えっと…… って、うぎゃー! もう真夜中じゃないか!? と、とりあえず、今は場所を……」
響「うわー、うちから結構遠いなあ…… まあ、歩いて帰れない距離じゃなさそうだけど」
響「ああもう、なんでこんなとこにいるんだ自分!? あのまま寝てたら凍え死んじゃってもおかしくないぞ!」
響「とりあえず、そんなことより今は早く帰らなきゃ。明日にも差支えちゃう」
響「…… ん、ううん……」
響「んんー……? う、うわっ!?」
響「寝て…… たのか、自分。ううー、それにしても寒いぞぉ……」
響「…… ちょっと、だいたいここ、どこ!? 丘…… っていうか、山っていうか……?」
響「あっ! そ、そうだ、スマホで見てみたらわかるかも!」ゴソゴソ
響「えっと…… って、うぎゃー! もう真夜中じゃないか!? と、とりあえず、今は場所を……」
響「うわー、うちから結構遠いなあ…… まあ、歩いて帰れない距離じゃなさそうだけど」
響「ああもう、なんでこんなとこにいるんだ自分!? あのまま寝てたら凍え死んじゃってもおかしくないぞ!」
響「とりあえず、そんなことより今は早く帰らなきゃ。明日にも差支えちゃう」
821: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:37:02.31 :mKrcaVT70
響「……あ」
響「今日、満月なんだ…… ここから見るお月様、すごく、きれいだなぁ……」
響「は……っ、 くしゅんっ! …… ああ寒いぃ、風邪ひいてないといいけど……!」
響「……あ」
響「今日、満月なんだ…… ここから見るお月様、すごく、きれいだなぁ……」
響「は……っ、 くしゅんっ! …… ああ寒いぃ、風邪ひいてないといいけど……!」
822: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 22:40:14.15 :mKrcaVT70
823: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 23:37:31.38 :mKrcaVT70
【"As Usual"】
ガチャ
響「はいさーい、おっはよーっ!」
小鳥「あら、おはよう、響ちゃん。今日はずいぶん早いわね」
響「う…… うん。実は昨日の夜、あんまり寝られなくって……」
小鳥「そうなの? まだまだ毎日寒いんだし、あんまり無理したらだめよ」
響「ありがと、ピヨ子。でも自分カンペキだから、このくらいへっちゃらさー!」
小鳥「ふふ、そうよね、響ちゃんなら大丈夫よね」
小鳥「あら、そういえば…… 今朝は響ちゃん、一人なの?」
響「えっ? うん、そうだぞ、特に誰とも一緒にならなかったもん。どうして?」
小鳥「…… あれ? なんでわたし、わざわざこんなこと聞いたのかしら……」
響「もー、自分みたいにカンペキになれとは言わないけどさ、しっかりしてよピヨ子ぉ」
【"As Usual"】
ガチャ
響「はいさーい、おっはよーっ!」
小鳥「あら、おはよう、響ちゃん。今日はずいぶん早いわね」
響「う…… うん。実は昨日の夜、あんまり寝られなくって……」
小鳥「そうなの? まだまだ毎日寒いんだし、あんまり無理したらだめよ」
響「ありがと、ピヨ子。でも自分カンペキだから、このくらいへっちゃらさー!」
小鳥「ふふ、そうよね、響ちゃんなら大丈夫よね」
小鳥「あら、そういえば…… 今朝は響ちゃん、一人なの?」
響「えっ? うん、そうだぞ、特に誰とも一緒にならなかったもん。どうして?」
小鳥「…… あれ? なんでわたし、わざわざこんなこと聞いたのかしら……」
響「もー、自分みたいにカンペキになれとは言わないけどさ、しっかりしてよピヨ子ぉ」
824: ◆ccGlDikGP2:2015/12/15(火) 23:38:42.34 :mKrcaVT70
P「よーし、みんな揃ったなー? それじゃあミーティング始めるぞー」
P「今日は…… スケジュール見ての通り、だいたいみんなレッスンとレコーディングだな」
P「まず春香、真美、それに雪歩。午前中にボーカルレッスンだからすぐ移動な、遅れないように」
P「あずささんと千早はスタジオでレコーディングだ。千早、あずささんの先導頼むぞ」
P「伊織と亜美は…… と、そうか、雑誌取材だったな、ちゃんと律子の指示に従えよー」
P「真に響、美希、それとやよいは、ダンススタジオでレッスン。俺が車で送ってく」
P「えーと、とりあえずは以上だけど…… なんか確認しときたいこととか、あるか?」
P「大丈夫そうだな。じゃあ、765プロ全員、今日も一日しっかり頑張ろう!」
一同「「「「「「「「「「「「はーいっ!」」」」」」」」」」」」
P「よーし、みんな揃ったなー? それじゃあミーティング始めるぞー」
P「今日は…… スケジュール見ての通り、だいたいみんなレッスンとレコーディングだな」
P「まず春香、真美、それに雪歩。午前中にボーカルレッスンだからすぐ移動な、遅れないように」
P「あずささんと千早はスタジオでレコーディングだ。千早、あずささんの先導頼むぞ」
P「伊織と亜美は…… と、そうか、雑誌取材だったな、ちゃんと律子の指示に従えよー」
P「真に響、美希、それとやよいは、ダンススタジオでレッスン。俺が車で送ってく」
P「えーと、とりあえずは以上だけど…… なんか確認しときたいこととか、あるか?」
P「大丈夫そうだな。じゃあ、765プロ全員、今日も一日しっかり頑張ろう!」
一同「「「「「「「「「「「「はーいっ!」」」」」」」」」」」」
833: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:00:33.26 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 15.8】
響(……ん、 ……あー、朝かぁ)
響(そうだ、もう学校始まるんだったぞ。ぐずぐずしてらんない)
響(でも…… 寒いし、まだ時間は余裕あるし…… もうちょっと、あと5分だけ――)
いぬ美「ばうっ!」
響「うわ、わわぁっ!? ……あー、いぬ美、ありがと。おかげで目が覚めたよ」
いぬ美「くぅーん……」
響「あはは、大丈夫だってば。すぐ朝ご飯作るからね、ちょっと待っ……」
響「……え? いぬ美、ごめん、もう一回言って?」
響「あの、子……? はどこだ、って…… 待って待って、なんの話?」
響「へ、変な冗談やめてよ、もう…… いくらカンペキでも自分、そういうの得意じゃないんだから」
【Waning Gibbous / 15.8】
響(……ん、 ……あー、朝かぁ)
響(そうだ、もう学校始まるんだったぞ。ぐずぐずしてらんない)
響(でも…… 寒いし、まだ時間は余裕あるし…… もうちょっと、あと5分だけ――)
いぬ美「ばうっ!」
響「うわ、わわぁっ!? ……あー、いぬ美、ありがと。おかげで目が覚めたよ」
いぬ美「くぅーん……」
響「あはは、大丈夫だってば。すぐ朝ご飯作るからね、ちょっと待っ……」
響「……え? いぬ美、ごめん、もう一回言って?」
響「あの、子……? はどこだ、って…… 待って待って、なんの話?」
響「へ、変な冗談やめてよ、もう…… いくらカンペキでも自分、そういうの得意じゃないんだから」
834: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:01:42.15 :jeBrEKzd0
【双海亜美&双海真美の場合:2】
真美「ねーえ、亜ー美ー」
亜美「なーにさー」
真美「ヒマー。ヒーマーだーよーぉ」
亜美「だねぃ…… にーちゃん、早く帰ってきてくんなきゃ、亜美たち待ちボケ殺しだよー」
真美「あーあー。どーせレッスンまで待っとかなきゃだし…… ひと狩りしとこっか?」
亜美「いやいやいやそれはダメっしょ。亜美たち、事務所じゃハンターはいぎょーって決めたじゃん!」
真美「あっ……、そーだったそーだった! いやー、へへへ、うっかりうっかり……」
真美「…… ありっ? ねえ、真美たち、どうしてモンハンやんないことにしたんだっけ?」
亜美「何言ってんの真美、そりゃ…… ……えっ、と? あれっ、なんでだったっけ……」
【双海亜美&双海真美の場合:2】
真美「ねーえ、亜ー美ー」
亜美「なーにさー」
真美「ヒマー。ヒーマーだーよーぉ」
亜美「だねぃ…… にーちゃん、早く帰ってきてくんなきゃ、亜美たち待ちボケ殺しだよー」
真美「あーあー。どーせレッスンまで待っとかなきゃだし…… ひと狩りしとこっか?」
亜美「いやいやいやそれはダメっしょ。亜美たち、事務所じゃハンターはいぎょーって決めたじゃん!」
真美「あっ……、そーだったそーだった! いやー、へへへ、うっかりうっかり……」
真美「…… ありっ? ねえ、真美たち、どうしてモンハンやんないことにしたんだっけ?」
亜美「何言ってんの真美、そりゃ…… ……えっ、と? あれっ、なんでだったっけ……」
835: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:02:11.55 :jeBrEKzd0
真美「あ、それはそーとさ、亜美?」
亜美「なんだい、どしたい真美さんや」
真美「これ、マシンセッティングさぁ、変えるのはいーけど、ちゃんと戻しといてよねー」
亜美「は?」
真美「トボけたってムダだよー? どーしてこんな初心者向けなのかは知んないけど」
亜美「え、ちょっと待ってってば。最近、亜美はマリカーさわってもないよ?」
真美「真美も久々だったから、すぐには気づかなかったYO…… ああ、別に怒ってるわけじゃないから」
亜美「いやいやいや! 勝手に亜美が変えたことにしないでよ、知らないって!」
真美「オージョー際が悪いよん、亜美ー。次から気をつけてくれればそれでいい……」
亜美「違うよ! 亜美がこだわってるのはそこじゃないってば!!」
真美「もー、なんなのさ、しつっこいなぁ……」
真美「あ、それはそーとさ、亜美?」
亜美「なんだい、どしたい真美さんや」
真美「これ、マシンセッティングさぁ、変えるのはいーけど、ちゃんと戻しといてよねー」
亜美「は?」
真美「トボけたってムダだよー? どーしてこんな初心者向けなのかは知んないけど」
亜美「え、ちょっと待ってってば。最近、亜美はマリカーさわってもないよ?」
真美「真美も久々だったから、すぐには気づかなかったYO…… ああ、別に怒ってるわけじゃないから」
亜美「いやいやいや! 勝手に亜美が変えたことにしないでよ、知らないって!」
真美「オージョー際が悪いよん、亜美ー。次から気をつけてくれればそれでいい……」
亜美「違うよ! 亜美がこだわってるのはそこじゃないってば!!」
真美「もー、なんなのさ、しつっこいなぁ……」
836: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:02:41.78 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 16.2】
響「まーったく、プロデューサーもいいかげんさー。レッスンの終了時間、勘違いするなんて」
響「時間潰しといてくれ、って言われてもなぁ…… 落ち着いて、座れるようなとこ……」
響「……あ! ちょうどいいところに!」
響(どれにしよう。レッスンでちょっとくたびれてるし、甘いの飲みたいなー)
響「えっと、じゃあ、このココアで」
響「…… あの、ごめんなさい、やっぱり変えていいですか?」
響「こっちのキャラメルマキアートにします。レギュラーサイズで!」
響「えっ? セットのほうがお得? んーと…… それじゃあ、スコーンもください」
響(……ここのお代くらい、あとでおごってもらってもバチはあたんないよね? くふふ)
【Waning Gibbous / 16.2】
響「まーったく、プロデューサーもいいかげんさー。レッスンの終了時間、勘違いするなんて」
響「時間潰しといてくれ、って言われてもなぁ…… 落ち着いて、座れるようなとこ……」
響「……あ! ちょうどいいところに!」
響(どれにしよう。レッスンでちょっとくたびれてるし、甘いの飲みたいなー)
響「えっと、じゃあ、このココアで」
響「…… あの、ごめんなさい、やっぱり変えていいですか?」
響「こっちのキャラメルマキアートにします。レギュラーサイズで!」
響「えっ? セットのほうがお得? んーと…… それじゃあ、スコーンもください」
響(……ここのお代くらい、あとでおごってもらってもバチはあたんないよね? くふふ)
837: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:03:51.60 :jeBrEKzd0
【如月千早の場合:2】
千早「…… ~♪ …… ♪ ♪」カリカリ
千早「~♪ …… ~♪」ペラ カリカリカリ
ガチャ
真美「ひゃーっ、たっだいまーっ!!」
亜美「ううう…… なんで傘もってない日に限って雨なんかーっ! あ”ー、さぶいぃー……」
千早「ああ、お帰りなさい、二人とも。エアコンの温度、ちょっと上げる?」
真美「女神だ…… 千早お姉ちゃんマジ女神!」
亜美「ぜひ、ぜひともおねげーします!」
【如月千早の場合:2】
千早「…… ~♪ …… ♪ ♪」カリカリ
千早「~♪ …… ~♪」ペラ カリカリカリ
ガチャ
真美「ひゃーっ、たっだいまーっ!!」
亜美「ううう…… なんで傘もってない日に限って雨なんかーっ! あ”ー、さぶいぃー……」
千早「ああ、お帰りなさい、二人とも。エアコンの温度、ちょっと上げる?」
真美「女神だ…… 千早お姉ちゃんマジ女神!」
亜美「ぜひ、ぜひともおねげーします!」
838: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:04:46.60 :jeBrEKzd0
真美「あれっ? ねえねえ千早お姉ちゃん、なんで楽譜にわざわざドレミなんか書いてんの?」
千早「…… ……えっ?」
亜美「ホントだー。どしたのさ、千早おねーちゃんなら音符読むのなんかアホの子はいさいでしょ?」
千早「あほの……? ひょっとして、お茶の子さいさい、かしら?」
亜美「えへへ、うん、それそれ!」
真美「あー、亜美ってば、今のひびきんに聞かれたらメッチャ怒られちゃうYo」
千早「もう…… スマホやゲームもいいけれど、たまには本も読まなくちゃだめよ」
千早(…… でも確かに、私、どうしてこんなことを……?)
真美「あれっ? ねえねえ千早お姉ちゃん、なんで楽譜にわざわざドレミなんか書いてんの?」
千早「…… ……えっ?」
亜美「ホントだー。どしたのさ、千早おねーちゃんなら音符読むのなんかアホの子はいさいでしょ?」
千早「あほの……? ひょっとして、お茶の子さいさい、かしら?」
亜美「えへへ、うん、それそれ!」
真美「あー、亜美ってば、今のひびきんに聞かれたらメッチャ怒られちゃうYo」
千早「もう…… スマホやゲームもいいけれど、たまには本も読まなくちゃだめよ」
千早(…… でも確かに、私、どうしてこんなことを……?)
839: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:05:26.47 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 16.4】
響「そうだ、たまには違うルート通って帰ってみようかな。なにか新発見があるかも!」
響「お! こんなとこにケーキ屋さんあったんだ、知らなかったぞ」
響「うわー、どれもきらきらしてて…… 全部おいしそうだなー、目移りしちゃう」
響「春香はここのお店、知ってるかな。今度教えてあげよっと」
響「…… はっ、この匂い! これ、間違いなくラーメン屋さん……」
響「ああ、ダメだー、ただでさえ寒い上、おなか空いてるときにこれ嗅いじゃったらダメだぞー……」
響「今月はそんなにお金使ってないし…… うん、たまにはいいよね!」
< イラッシャイマセー
【Waning Gibbous / 16.4】
響「そうだ、たまには違うルート通って帰ってみようかな。なにか新発見があるかも!」
響「お! こんなとこにケーキ屋さんあったんだ、知らなかったぞ」
響「うわー、どれもきらきらしてて…… 全部おいしそうだなー、目移りしちゃう」
響「春香はここのお店、知ってるかな。今度教えてあげよっと」
響「…… はっ、この匂い! これ、間違いなくラーメン屋さん……」
響「ああ、ダメだー、ただでさえ寒い上、おなか空いてるときにこれ嗅いじゃったらダメだぞー……」
響「今月はそんなにお金使ってないし…… うん、たまにはいいよね!」
< イラッシャイマセー
840: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:06:10.36 :jeBrEKzd0
841: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:08:25.68 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 18.8】
響「みんな、おはよー。ごはんできてるぞー、おいでー」
響「はいはい、まだ、まだだぞー? 食べるのは全員にちゃんと行き渡ってからね」
響「ふーっ。お正月気分もずいぶん抜けてきたなー」
響「お飾りもそろそろ撤収しないと。……ああ、それに、そういえば今日って」
響「んー、朝からそこまで甘いの食べたいわけでもないし。帰ってきてからにしよう」
響「というか…… ひとりでおぜんざいとかお汁粉とかって、なんかわびしい気がするぞ」
響「だいたい自分、いつもはそこまで準備しないのに。なんで今年はこれ買ったんだっけ……?」
響「まあ、あるものは仕方ないよね。事務所で誰か、誘ってみようかな」
【Waning Gibbous / 18.8】
響「みんな、おはよー。ごはんできてるぞー、おいでー」
響「はいはい、まだ、まだだぞー? 食べるのは全員にちゃんと行き渡ってからね」
響「ふーっ。お正月気分もずいぶん抜けてきたなー」
響「お飾りもそろそろ撤収しないと。……ああ、それに、そういえば今日って」
響「んー、朝からそこまで甘いの食べたいわけでもないし。帰ってきてからにしよう」
響「というか…… ひとりでおぜんざいとかお汁粉とかって、なんかわびしい気がするぞ」
響「だいたい自分、いつもはそこまで準備しないのに。なんで今年はこれ買ったんだっけ……?」
響「まあ、あるものは仕方ないよね。事務所で誰か、誘ってみようかな」
842: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:08:55.72 :jeBrEKzd0
【菊地真の場合:2】
真「さーてっ、今日もいつものコース行ってこようっと!」
美希「こんなに寒いのにお外でランニングなんて、真くん、ホントに元気だね……」
真「トレーニングは毎日欠かさないのが基本なんだよ。たまには美希もいっしょにどう?」
美希「ヤなの。ミキ、毎日かかさずソファで寝なくちゃ死んじゃうもん」ボフ
真「それなら、ひとっ走りしてから寝てみたら? きっといつも以上に気持ちいいよ!」
美希「うーん…… そんなこと、しなくても…… 気持ち…… いい、から、だいじょーぶ……」
真「…… まーた話してるうちに寝ちゃうんだから。これってもう才能だよ」
真「いくら暖房きいてても、このままはちょっと…… タオルケット、どこかなぁ?」
【菊地真の場合:2】
真「さーてっ、今日もいつものコース行ってこようっと!」
美希「こんなに寒いのにお外でランニングなんて、真くん、ホントに元気だね……」
真「トレーニングは毎日欠かさないのが基本なんだよ。たまには美希もいっしょにどう?」
美希「ヤなの。ミキ、毎日かかさずソファで寝なくちゃ死んじゃうもん」ボフ
真「それなら、ひとっ走りしてから寝てみたら? きっといつも以上に気持ちいいよ!」
美希「うーん…… そんなこと、しなくても…… 気持ち…… いい、から、だいじょーぶ……」
真「…… まーた話してるうちに寝ちゃうんだから。これってもう才能だよ」
真「いくら暖房きいてても、このままはちょっと…… タオルケット、どこかなぁ?」
843: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:09:25.52 :jeBrEKzd0
真「じゃあボクは…… っと、出かける前に、ちゃんと持つもの持ったっけ?」
真「えーっと。タオルよーし、お金よーし、iPodよーし、飲み物よ……」
真「…… あれー、おっかしいなぁ。なんでボク、アクエリなんか持ってきちゃったんだろ」
真「これ、甘すぎるんだよねー…… ランニングで飲んでたら、すぐお腹たぽんたぽんになっちゃうし」
真「……まあ、でもいつも水ってのもあれだし、たまにはいいかな?」
真「よおーしっ、改めてしゅっぱーつ! いってきまーす!」
真「じゃあボクは…… っと、出かける前に、ちゃんと持つもの持ったっけ?」
真「えーっと。タオルよーし、お金よーし、iPodよーし、飲み物よ……」
真「…… あれー、おっかしいなぁ。なんでボク、アクエリなんか持ってきちゃったんだろ」
真「これ、甘すぎるんだよねー…… ランニングで飲んでたら、すぐお腹たぽんたぽんになっちゃうし」
真「……まあ、でもいつも水ってのもあれだし、たまにはいいかな?」
真「よおーしっ、改めてしゅっぱーつ! いってきまーす!」
844: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:09:53.58 :jeBrEKzd0
【萩原雪歩の場合:2】
雪歩「さてと。今日もみんなのぶんのお茶、おいしく淹れられますように……」
ガチャ
雪歩「はうぅ!?」
伊織「ちょっと、今の声なに!? なにかあったの!?」
雪歩「……えっ、な、なにこれ? どうして、こんなにたくさん……!?」
伊織「雪歩? どうしたの、お茶がなんだっていうの?」
雪歩「い、伊織ちゃん! 伊織ちゃん、お家からお茶っ葉持ってきてくれたりした!?」
伊織「…… はぁ?」
雪歩「だって、だってほら、給湯室のストックがいつの間にかこんなにいっぱいぃ!!」
【萩原雪歩の場合:2】
雪歩「さてと。今日もみんなのぶんのお茶、おいしく淹れられますように……」
ガチャ
雪歩「はうぅ!?」
伊織「ちょっと、今の声なに!? なにかあったの!?」
雪歩「……えっ、な、なにこれ? どうして、こんなにたくさん……!?」
伊織「雪歩? どうしたの、お茶がなんだっていうの?」
雪歩「い、伊織ちゃん! 伊織ちゃん、お家からお茶っ葉持ってきてくれたりした!?」
伊織「…… はぁ?」
雪歩「だって、だってほら、給湯室のストックがいつの間にかこんなにいっぱいぃ!!」
845: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:10:21.29 :jeBrEKzd0
伊織「え……? いや、わたしは何もしてないわよ」
雪歩「ええっ、そしたら…… わ、わたしが買ってきたんだっけ? うう、覚えがないよぅ……」
伊織「そもそもここ、雪歩の聖域じゃない。誰も勝手に手を加えたりしないと思うけど」
雪歩「そ、そうかな、うん、そうかも……?」
雪歩「ああ、しかもこれ全部、ちょっとだけしか使った跡がないよ…… なんてもったいない!」
伊織「ふーん。ねえ、これ、似てるように見えるけど全部違うやつ?」
雪歩「そうだよ。せっかくだから今度みんながいる時に、飲み比べとか、してもらおうかなぁ」
伊織「ああ、いいんじゃない? 普通はなかなかそんな機会ないもの」
雪歩「うーん、でもでも、わたしの淹れ方のせいで、味がわかってもらえなかったりしたら……」
伊織「え……? いや、わたしは何もしてないわよ」
雪歩「ええっ、そしたら…… わ、わたしが買ってきたんだっけ? うう、覚えがないよぅ……」
伊織「そもそもここ、雪歩の聖域じゃない。誰も勝手に手を加えたりしないと思うけど」
雪歩「そ、そうかな、うん、そうかも……?」
雪歩「ああ、しかもこれ全部、ちょっとだけしか使った跡がないよ…… なんてもったいない!」
伊織「ふーん。ねえ、これ、似てるように見えるけど全部違うやつ?」
雪歩「そうだよ。せっかくだから今度みんながいる時に、飲み比べとか、してもらおうかなぁ」
伊織「ああ、いいんじゃない? 普通はなかなかそんな機会ないもの」
雪歩「うーん、でもでも、わたしの淹れ方のせいで、味がわかってもらえなかったりしたら……」
846: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:11:02.89 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 19.3】
響「んっ? なんだろ、これ」
響「……あ、そっか。飾りつけの余り、せっかくだからってもらって帰ったんだった」
響「自分でもらって貼っといて、自分で忘れてたら世話はないなー」
響「クリスマスどころかもうお正月も過ぎちゃったし、固まっても困るし、はがしとこうっと」
響「…… しっかし、これ、なんでこんな低いところに貼ったんだっけ?」
響「うわっ、しかも噛んだあとまで! どうせねこ吉かブタ太あたりだろ、ほんとにもー……」
【Waning Gibbous / 19.3】
響「んっ? なんだろ、これ」
響「……あ、そっか。飾りつけの余り、せっかくだからってもらって帰ったんだった」
響「自分でもらって貼っといて、自分で忘れてたら世話はないなー」
響「クリスマスどころかもうお正月も過ぎちゃったし、固まっても困るし、はがしとこうっと」
響「…… しっかし、これ、なんでこんな低いところに貼ったんだっけ?」
響「うわっ、しかも噛んだあとまで! どうせねこ吉かブタ太あたりだろ、ほんとにもー……」
847: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:11:47.06 :jeBrEKzd0
848: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:13:15.75 :jeBrEKzd0
【天海春香の場合:2】
春香「よーっし、時間ぴったり! さてさて、本日のマドレーヌはっと……」
春香「どれどれー? ……わぁ、ばっちりきれいなきつね色っ♪」
春香「でもお菓子って、見た目だけじゃダメだもんね。かんじんのお味はどうでしょうか!」
春香「えへへ、焼きあがってすぐのお味見は、お菓子を作るひとだけの特権だよねー」
春香「それじゃ、早速…… いただきまーす」
春香「……んん! おおー! 我ながらこれはいい感じですよ、いい感じっ!」
春香「よしよしっと。うち用のは別にして、今日の事務所のおやつ用にラッピングしよっ」
【天海春香の場合:2】
春香「よーっし、時間ぴったり! さてさて、本日のマドレーヌはっと……」
春香「どれどれー? ……わぁ、ばっちりきれいなきつね色っ♪」
春香「でもお菓子って、見た目だけじゃダメだもんね。かんじんのお味はどうでしょうか!」
春香「えへへ、焼きあがってすぐのお味見は、お菓子を作るひとだけの特権だよねー」
春香「それじゃ、早速…… いただきまーす」
春香「……んん! おおー! 我ながらこれはいい感じですよ、いい感じっ!」
春香「よしよしっと。うち用のは別にして、今日の事務所のおやつ用にラッピングしよっ」
849: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:14:05.85 :jeBrEKzd0
春香「…… あれれ? おかしいなぁ…… やだなあ、わたしってホントにドジだなぁ」
春香「なんか自信なくなってきちゃった、念のためもう一回、確認してみよっと」
春香「千早ちゃんでしょ、あずささんでしょ、それに律子さん、伊織、亜美と真美」
春香「真、雪歩、やよい、美希、響ちゃん、そして、わたし。うん、12人、誰も忘れてない」
春香「それからプロデューサーさん、小鳥さん、社長で…… みんな合わせて15人。間違いないよね」
春香「……なのに、なんでわたし、16人分作っちゃったんだろう?」
春香「…… あれれ? おかしいなぁ…… やだなあ、わたしってホントにドジだなぁ」
春香「なんか自信なくなってきちゃった、念のためもう一回、確認してみよっと」
春香「千早ちゃんでしょ、あずささんでしょ、それに律子さん、伊織、亜美と真美」
春香「真、雪歩、やよい、美希、響ちゃん、そして、わたし。うん、12人、誰も忘れてない」
春香「それからプロデューサーさん、小鳥さん、社長で…… みんな合わせて15人。間違いないよね」
春香「……なのに、なんでわたし、16人分作っちゃったんだろう?」
850: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:14:40.61 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 19.8】
響「よく晴れてるなー! 冬の朝は空気が澄んでる感じで気持ちいいさー」
響「…… うぅー、しかし、つめた……! やっぱりホームは風がモロに来るからきっついぞー……」
響「これ着ててまだ寒いってなんなのさー、もー! うちなーじゃこんなの、絶対いらないのに」
響「だぼだぼな分、ちょっと子供っぽい感じもするけど…… 背に腹はかえられないや」
響「それにしても、生地がもったいないなぁ。余裕ありすぎっていうか」
響「ちっちゃい子一人くらいなら一緒に入れちゃいそう。そしたらきっと、あったかいだろうなー」
響「…… なーんて。そんなの、まだまだずーっと先の話だよね」
響「あっ、よかった、電車、時間通りだ。はーっ、やっと少しはマシになる!」
【Waning Gibbous / 19.8】
響「よく晴れてるなー! 冬の朝は空気が澄んでる感じで気持ちいいさー」
響「…… うぅー、しかし、つめた……! やっぱりホームは風がモロに来るからきっついぞー……」
響「これ着ててまだ寒いってなんなのさー、もー! うちなーじゃこんなの、絶対いらないのに」
響「だぼだぼな分、ちょっと子供っぽい感じもするけど…… 背に腹はかえられないや」
響「それにしても、生地がもったいないなぁ。余裕ありすぎっていうか」
響「ちっちゃい子一人くらいなら一緒に入れちゃいそう。そしたらきっと、あったかいだろうなー」
響「…… なーんて。そんなの、まだまだずーっと先の話だよね」
響「あっ、よかった、電車、時間通りだ。はーっ、やっと少しはマシになる!」
851: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:15:13.59 :jeBrEKzd0
【Waning Gibbous / 19.9】
響「お、もう明るいのに…… そっか、そろそろ下弦の月だっけ」
響「夜空の月はもちろんきれいだけど、青空に月っていうのもいいよね」
響「太陽と月がいっしょの空で見えるなんて、よくよく考えたら不思議っていうか」
響「ふつうは対照的だけど、コンビにしたらそれはそれで――」
響「……ん?」
響「下弦の、月……? なんでそんな名前、急に出てきたんだろ」
響「確かに習ったはずだけど、今見えてるあれ、それで合ってるんだっけ……」
響「今度誰かに聞いてみようっと。律子…… それか、あずささんも占いつながりで詳しいかな?」
【Waning Gibbous / 19.9】
響「お、もう明るいのに…… そっか、そろそろ下弦の月だっけ」
響「夜空の月はもちろんきれいだけど、青空に月っていうのもいいよね」
響「太陽と月がいっしょの空で見えるなんて、よくよく考えたら不思議っていうか」
響「ふつうは対照的だけど、コンビにしたらそれはそれで――」
響「……ん?」
響「下弦の、月……? なんでそんな名前、急に出てきたんだろ」
響「確かに習ったはずだけど、今見えてるあれ、それで合ってるんだっけ……」
響「今度誰かに聞いてみようっと。律子…… それか、あずささんも占いつながりで詳しいかな?」
852: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:15:47.37 :jeBrEKzd0
853: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:17:05.62 :jeBrEKzd0
【Last Quarter / 21.8】
響「よしっ、きょうもいい天気。傘はなくても大丈夫そう!」
響「…… それはいいんだけど、この窓一面の結露。これ、なんとかなんないかなぁ」
響「暖房入れる以上は仕方ないけど、なんかすっきりしないぞ」
響「……」スッ
響「…… うひゃっ、つ、つめたっ!?」
響「もう、何やってるんだ、自分…… 窓にお絵かきなんて年でもないのにさ」
【Last Quarter / 21.8】
響「よしっ、きょうもいい天気。傘はなくても大丈夫そう!」
響「…… それはいいんだけど、この窓一面の結露。これ、なんとかなんないかなぁ」
響「暖房入れる以上は仕方ないけど、なんかすっきりしないぞ」
響「……」スッ
響「…… うひゃっ、つ、つめたっ!?」
響「もう、何やってるんだ、自分…… 窓にお絵かきなんて年でもないのにさ」
854: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:17:38.39 :jeBrEKzd0
【高槻やよいの場合:2】
やよい「あっ、真さん! おはようございまーすっ!」
真「おはよっ、やよい。そうだ、いつものあれ、やってくれる?」
やよい「! わかりましたっ! じゃあ、行きますよー?」
真「よーし、思いっきり頼むよっ」
やよい「はい! せーのっ、はいたーっ――」
真「いえ……」
やよい「………… あれっ……?」
真「……っっとぉ!? ちょっとちょっと、やよい、なんで途中でやめちゃうの?」
やよい「え? …… あ、あっ、ご、ごめんなさい真さん! 大丈夫でしたか!?」
真「うん、思いっきり空振りしただけだよ、あははは……」
【高槻やよいの場合:2】
やよい「あっ、真さん! おはようございまーすっ!」
真「おはよっ、やよい。そうだ、いつものあれ、やってくれる?」
やよい「! わかりましたっ! じゃあ、行きますよー?」
真「よーし、思いっきり頼むよっ」
やよい「はい! せーのっ、はいたーっ――」
真「いえ……」
やよい「………… あれっ……?」
真「……っっとぉ!? ちょっとちょっと、やよい、なんで途中でやめちゃうの?」
やよい「え? …… あ、あっ、ご、ごめんなさい真さん! 大丈夫でしたか!?」
真「うん、思いっきり空振りしただけだよ、あははは……」
855: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:18:17.64 :jeBrEKzd0
やよい「…… 真さん。ちょっとだけ、ヘンなことお願いしてもいいですか?」
真「変なこと? なーに?」
やよい「ハイタッチするときに、しゃがんでほしいんです」
真「えっ? ……ん、んん、ええ? ボクがしゃがんだらそれ、ハイタッチにならなくない?」
やよい「あのっ、一回! 一回だけでいいんですっ、お願いします!」
真「いやまあ、ボクのほうは別になんの苦労もないけどさ」
真「えーと、そしたら……、よっと。こんな感じ?」グッ
やよい「あっ…… それ、その高さですー! ありがとうございます真さん! 今度こそ、いきますよっ」
真「あはは、やっぱりこれじゃ低すぎて、やよいもちょっとかがみ気味じゃない」
「「はいたーっち! いえい!」」パンッ
やよい「…… 真さん。ちょっとだけ、ヘンなことお願いしてもいいですか?」
真「変なこと? なーに?」
やよい「ハイタッチするときに、しゃがんでほしいんです」
真「えっ? ……ん、んん、ええ? ボクがしゃがんだらそれ、ハイタッチにならなくない?」
やよい「あのっ、一回! 一回だけでいいんですっ、お願いします!」
真「いやまあ、ボクのほうは別になんの苦労もないけどさ」
真「えーと、そしたら……、よっと。こんな感じ?」グッ
やよい「あっ…… それ、その高さですー! ありがとうございます真さん! 今度こそ、いきますよっ」
真「あはは、やっぱりこれじゃ低すぎて、やよいもちょっとかがみ気味じゃない」
「「はいたーっち! いえい!」」パンッ
856: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:18:57.17 :jeBrEKzd0
【Last Quarter / 22.4】
響「うわっ、これ…… ちょっとねこ吉! またオウ助にちょっかい出したな!?」
響「言い訳しない! こんなに羽とか毛とかが散らばってて、自分にばれないとでも思ったの?」
響「ああもう、今からだと掃除機かけるには微妙な時間だぞ…… ん、そうだ!」
響「あったあった、コロコロ。ちゃんとこういう時にも備えてる自分って、やっぱりカン……」
響「…… あれっ、これ、開けてからそんなに経ってないよね?」
響「残りがずいぶん少ないなぁ…… 今までしまいこんでたし、大して使ってないはずなのに」
響「まあ、いいか。次の買い物のとき、買うの忘れないようにしとかなくちゃ」
【Last Quarter / 22.4】
響「うわっ、これ…… ちょっとねこ吉! またオウ助にちょっかい出したな!?」
響「言い訳しない! こんなに羽とか毛とかが散らばってて、自分にばれないとでも思ったの?」
響「ああもう、今からだと掃除機かけるには微妙な時間だぞ…… ん、そうだ!」
響「あったあった、コロコロ。ちゃんとこういう時にも備えてる自分って、やっぱりカン……」
響「…… あれっ、これ、開けてからそんなに経ってないよね?」
響「残りがずいぶん少ないなぁ…… 今までしまいこんでたし、大して使ってないはずなのに」
響「まあ、いいか。次の買い物のとき、買うの忘れないようにしとかなくちゃ」
857: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:19:46.87 :jeBrEKzd0
858: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:21:12.94 :jeBrEKzd0
【Waning Crescent / 22.8】
響「この時間なら十分間に合うな、よしよし…… ん?」
響「おっ……? キミ、このへんじゃ見かけない子だね。おっはよ!」
響「そんなに緊張しないでよ。ねえねえ、キミはどのへんから来――」
響「…… えっ、ごめん、そうだっけ……? 前にも会ってたっけ? ど忘れかなあ」
響「前のときに、一緒にいた…… ちっこいの? ちっこいの、って…… 子猫とか?」
響「じゃあ、自分はそろそろ学校に行かなくちゃ。呼び止めてごめんねー」
響「あ、待って、そっちはやめといたほうがいいよ。このあたりのボス猫の縄張りが……」
響「それも聞いた……? そっか、ならいいんだ、何度もごめん」
【Waning Crescent / 22.8】
響「この時間なら十分間に合うな、よしよし…… ん?」
響「おっ……? キミ、このへんじゃ見かけない子だね。おっはよ!」
響「そんなに緊張しないでよ。ねえねえ、キミはどのへんから来――」
響「…… えっ、ごめん、そうだっけ……? 前にも会ってたっけ? ど忘れかなあ」
響「前のときに、一緒にいた…… ちっこいの? ちっこいの、って…… 子猫とか?」
響「じゃあ、自分はそろそろ学校に行かなくちゃ。呼び止めてごめんねー」
響「あ、待って、そっちはやめといたほうがいいよ。このあたりのボス猫の縄張りが……」
響「それも聞いた……? そっか、ならいいんだ、何度もごめん」
859: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:21:59.97 :jeBrEKzd0
【秋月律子の場合:2】
律子「……」カタカタカタカタ
律子「…… ……ふぅっ。あとは細かいところ詰めたらオッケー、かな」
律子「よし、もうひと頑張り…… と、その前に……」ゴソゴソ
亜美「ねーえー、律っちゃーん」
真美「軍そ…… 律っちゃんどのぉー」
律子「…… ふぁによ」カタカタカタカタ
【秋月律子の場合:2】
律子「……」カタカタカタカタ
律子「…… ……ふぅっ。あとは細かいところ詰めたらオッケー、かな」
律子「よし、もうひと頑張り…… と、その前に……」ゴソゴソ
亜美「ねーえー、律っちゃーん」
真美「軍そ…… 律っちゃんどのぉー」
律子「…… ふぁによ」カタカタカタカタ
860: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:22:29.41 :jeBrEKzd0
真美「真美たち、ヒマでしょーがないんだけどー…… って」
亜美「あれれ、なに今の? 律っちゃん、今日カツゼツすっごい悪くない?」
律子「ひょうろいいわ、これあふぇるから、おとなひくひてなさい」コロン
真美「えっ? おおっ、キャンディだー!」
亜美「これ亜美たちがもらっちゃっていいのー? わーい!」
律子「わたひ…… ん、ん、こほん。私の好みで選んでるから、味の文句は受け付けないわよ」
亜美「ぜんぜんいーよ! あんがとー律っちゃん!」
真美「…… でもさー、なんか意外ってゆーか、めずらちーね」
亜美「だよねー、お仕事しながら律っちゃんがお菓子食べてるなんてさー」
律子「べ、別に、それくらいいいでしょ? 最近、飴舐めてる方がはかどるのよ」
真美「真美たち、ヒマでしょーがないんだけどー…… って」
亜美「あれれ、なに今の? 律っちゃん、今日カツゼツすっごい悪くない?」
律子「ひょうろいいわ、これあふぇるから、おとなひくひてなさい」コロン
真美「えっ? おおっ、キャンディだー!」
亜美「これ亜美たちがもらっちゃっていいのー? わーい!」
律子「わたひ…… ん、ん、こほん。私の好みで選んでるから、味の文句は受け付けないわよ」
亜美「ぜんぜんいーよ! あんがとー律っちゃん!」
真美「…… でもさー、なんか意外ってゆーか、めずらちーね」
亜美「だよねー、お仕事しながら律っちゃんがお菓子食べてるなんてさー」
律子「べ、別に、それくらいいいでしょ? 最近、飴舐めてる方がはかどるのよ」
861: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:23:01.12 :jeBrEKzd0
【星井美希の場合:2】
律子「……」ペラッ
小鳥「……」カタカタカタ ターンッ
ガチャ
美希「ねえ小鳥、律子…… さん」
律子「あんた、寝てたんじゃなかったの。どうしたのよ」ペラッ
小鳥「あら美希ちゃん、何かあった?」カタカタカタカタ
美希「ミキね、眠れないの」
律子「ああ、そう」ペラ
小鳥「へえー、珍し」カタカタカ
律子「なんっですって!?」ガタタッ
小鳥「み、美希ちゃんがおかしくなった!」ガタッ
美希「ちょっ…… な、なんなのなの、二人して」
【星井美希の場合:2】
律子「……」ペラッ
小鳥「……」カタカタカタ ターンッ
ガチャ
美希「ねえ小鳥、律子…… さん」
律子「あんた、寝てたんじゃなかったの。どうしたのよ」ペラッ
小鳥「あら美希ちゃん、何かあった?」カタカタカタカタ
美希「ミキね、眠れないの」
律子「ああ、そう」ペラ
小鳥「へえー、珍し」カタカタカ
律子「なんっですって!?」ガタタッ
小鳥「み、美希ちゃんがおかしくなった!」ガタッ
美希「ちょっ…… な、なんなのなの、二人して」
862: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:23:35.36 :jeBrEKzd0
律子「美希あんた、熱でもあるんじゃないでしょうね」
小鳥「だ、大丈夫なの? 病院にはもう行った?」
美希「ミキのこといったいなんだと思ってるの!? いまいち寝つけないだけなのー!」
律子「あんたが眠れないなんて異常事態以外のなにものでもないわよ……」
美希「むー…… あ、ねえねえ小鳥、抱き枕みたいなものってなーい?」
律子「あのねえ、毎度のことだけど、あんたこそ事務所をなんだと思ってるの?」
小鳥「うーん、タオルケットくらいしかないわね…… これ、丸めたらかわりにならないかしら」
律子「小鳥さんも! そんなに甘やかしてやらなくていいんですよ!」
美希「んー…… もっとあったかくて、もふもふしてて、ぎゅってできるくらいのサイズのがいいな」
小鳥「ああ、そうなるとちょっと難しいかなぁ……」
律子「だいたいあんた、今までそんなのなくてもぐーすか寝てたじゃない」
美希「そのハズ、なんだけど…… なーんか、物足りないの」
律子「美希あんた、熱でもあるんじゃないでしょうね」
小鳥「だ、大丈夫なの? 病院にはもう行った?」
美希「ミキのこといったいなんだと思ってるの!? いまいち寝つけないだけなのー!」
律子「あんたが眠れないなんて異常事態以外のなにものでもないわよ……」
美希「むー…… あ、ねえねえ小鳥、抱き枕みたいなものってなーい?」
律子「あのねえ、毎度のことだけど、あんたこそ事務所をなんだと思ってるの?」
小鳥「うーん、タオルケットくらいしかないわね…… これ、丸めたらかわりにならないかしら」
律子「小鳥さんも! そんなに甘やかしてやらなくていいんですよ!」
美希「んー…… もっとあったかくて、もふもふしてて、ぎゅってできるくらいのサイズのがいいな」
小鳥「ああ、そうなるとちょっと難しいかなぁ……」
律子「だいたいあんた、今までそんなのなくてもぐーすか寝てたじゃない」
美希「そのハズ、なんだけど…… なーんか、物足りないの」
863: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:24:19.52 :jeBrEKzd0
【Waning Crescent / 23.4】
響「…………」カリカリカリ
響「……」カリカリ ペラッ
響「…… ……あ、違った。こっちか」
響「…… ……」カリカリ
響「…………」ペラ カリカリカリ
響「…… ふーっ。でーきたっ!」
響「今日はなんだかいつもより集中できた気がするなー。なんでだろ?」
響「ああ、そっか、誰も邪魔しに来なかったからか! いぬ美、ねこ吉も、ありがとね」
【Waning Crescent / 23.4】
響「…………」カリカリカリ
響「……」カリカリ ペラッ
響「…… ……あ、違った。こっちか」
響「…… ……」カリカリ
響「…………」ペラ カリカリカリ
響「…… ふーっ。でーきたっ!」
響「今日はなんだかいつもより集中できた気がするなー。なんでだろ?」
響「ああ、そっか、誰も邪魔しに来なかったからか! いぬ美、ねこ吉も、ありがとね」
864: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:24:46.78 :jeBrEKzd0
865: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:26:47.53 :jeBrEKzd0
【Waning Crescent / 24.8】
響「さてと、忘れ物はしてないよね? よし、大丈夫……」
響「……あー! 透明ピアスつけてなかったぞ、危ない危ない」
響「よーし、今度こそばっちり…… って」
響「…… ……? あれ、自分、こんなイヤリング買ったっけ……」
響「記憶にないぞ…… これ、誰かうちに来たときに忘れて帰ったんだったかな?」
響「銀の、三日月かー。デザイン的には…… シンプルだし、伊織か千早あたりが好きそう」
響「でも付けてるの見た記憶はないし、置いてったら自分に聞くだろうし……」
響「うーん。今度事務所で、みんなに確に…… って、うぎゃー! 時間ーっ!!」
【Waning Crescent / 24.8】
響「さてと、忘れ物はしてないよね? よし、大丈夫……」
響「……あー! 透明ピアスつけてなかったぞ、危ない危ない」
響「よーし、今度こそばっちり…… って」
響「…… ……? あれ、自分、こんなイヤリング買ったっけ……」
響「記憶にないぞ…… これ、誰かうちに来たときに忘れて帰ったんだったかな?」
響「銀の、三日月かー。デザイン的には…… シンプルだし、伊織か千早あたりが好きそう」
響「でも付けてるの見た記憶はないし、置いてったら自分に聞くだろうし……」
響「うーん。今度事務所で、みんなに確に…… って、うぎゃー! 時間ーっ!!」
866: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:27:38.47 :jeBrEKzd0
【水瀬伊織の場合:2】
伊織「…… どう考えても、おかしいわ。いったい誰が……」
やよい「あれっ、伊織ちゃん? 冷蔵庫になにか探しもの?」
伊織「えっ?」
やよい「えーっと、用事が済んだなら、扉は早めに閉めたほうがいいかなー、って」
伊織「あ…… ああ、そうね、うっかりしてたわ、ごめんなさい」
やよい「それで、どうしたの? 伊織ちゃん、なにか困ったことでもあったの?」
伊織「…… 誰にも言わないでくれる?」
やよい「ええっ、そんな大変なこと……!? う、うん、わかった、わたし、約束する」
伊織「実は…… オレンジジュースが、減ってるの」
やよい「えっ?」
伊織「名前書いたびんに入れて、勝手に飲むな、って注意書きまでしてるのに!」
【水瀬伊織の場合:2】
伊織「…… どう考えても、おかしいわ。いったい誰が……」
やよい「あれっ、伊織ちゃん? 冷蔵庫になにか探しもの?」
伊織「えっ?」
やよい「えーっと、用事が済んだなら、扉は早めに閉めたほうがいいかなー、って」
伊織「あ…… ああ、そうね、うっかりしてたわ、ごめんなさい」
やよい「それで、どうしたの? 伊織ちゃん、なにか困ったことでもあったの?」
伊織「…… 誰にも言わないでくれる?」
やよい「ええっ、そんな大変なこと……!? う、うん、わかった、わたし、約束する」
伊織「実は…… オレンジジュースが、減ってるの」
やよい「えっ?」
伊織「名前書いたびんに入れて、勝手に飲むな、って注意書きまでしてるのに!」
867: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:28:25.58 :jeBrEKzd0
やよい「でも、みんな伊織ちゃんがオレンジジュース大事にしてることは知ってるし、そんなこと……」
伊織「だから悩んでるんじゃないの…… まさか、プロデューサー……?」
やよい「そんな、それこそありえないよ。プロデューサーは黙ってそんなことしないよ!」
伊織「わ、わかってるわよ。言ってみただけ」
やよい「うーん、でもたしかに、どうして少なくなっちゃったんだろう……」
伊織「……わたしが自分で、無意識に飲んだのかしら」
やよい「それはちょっと無理があるんじゃないかなぁ、伊織ちゃん」
伊織「疲れてたりで記憶にない、とか…… あるいは、誰かに分けてあげたのを覚えてないとか」
やよい「ひょっとして、そういう心あたりがあるの?」
伊織「ぜんぜん。そうとでも考えないと、この状況に説明がつかないってだけよ」
やよい「でも、みんな伊織ちゃんがオレンジジュース大事にしてることは知ってるし、そんなこと……」
伊織「だから悩んでるんじゃないの…… まさか、プロデューサー……?」
やよい「そんな、それこそありえないよ。プロデューサーは黙ってそんなことしないよ!」
伊織「わ、わかってるわよ。言ってみただけ」
やよい「うーん、でもたしかに、どうして少なくなっちゃったんだろう……」
伊織「……わたしが自分で、無意識に飲んだのかしら」
やよい「それはちょっと無理があるんじゃないかなぁ、伊織ちゃん」
伊織「疲れてたりで記憶にない、とか…… あるいは、誰かに分けてあげたのを覚えてないとか」
やよい「ひょっとして、そういう心あたりがあるの?」
伊織「ぜんぜん。そうとでも考えないと、この状況に説明がつかないってだけよ」
868: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:29:31.45 :jeBrEKzd0
【Waning Crescent / 25.5】
響「…… んー。なんか、寒いなぁ」
響「あれ、なあに、ねこ吉。どうしたの?」
響「…… いや、これはこの順番でいいの。毛布を上にかけたほうがあったかいんだよ」
響「なんででも! ふとんの上に毛布ってしたほうが熱が逃げないんだぞ!」
響「そのはず、なのに、どうしても、なんか寒い感じがするぞ……」
響「…… 誰かいっしょにいてくれたら、この寒いの、少しはマシになるのかなぁ」
響「って、うぎゃー!? じ、自分のバカ、なに考えてるんだ!?」
響「ああもう、ねこ吉でいいよ、おいで…… って、どうしてそこで出て行っちゃうのさー!」
【Waning Crescent / 25.5】
響「…… んー。なんか、寒いなぁ」
響「あれ、なあに、ねこ吉。どうしたの?」
響「…… いや、これはこの順番でいいの。毛布を上にかけたほうがあったかいんだよ」
響「なんででも! ふとんの上に毛布ってしたほうが熱が逃げないんだぞ!」
響「そのはず、なのに、どうしても、なんか寒い感じがするぞ……」
響「…… 誰かいっしょにいてくれたら、この寒いの、少しはマシになるのかなぁ」
響「って、うぎゃー!? じ、自分のバカ、なに考えてるんだ!?」
響「ああもう、ねこ吉でいいよ、おいで…… って、どうしてそこで出て行っちゃうのさー!」
869: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:30:11.72 :jeBrEKzd0
870: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:31:06.26 :jeBrEKzd0
【Waning Crescent / 25.8】
< 『そして今日最も悪い運勢なのは、ごめんなさーい、てんびん座のあなた!』
響「うがっ…… 今日の自分、ワースト!?」
響「いやまあ、別に本気で信じてはいないけど、朝からこれだとテンション下がっちゃうぞ……」
< 『でも大丈夫! そんなてんびん座のツキを回復させるラッキーパーソンは「最近会ってない人」!』
響「最近会ってない友達、かぁ…… うちなーのみんな、元気にしてるかな」
響「でもこれ、ラッキーパーソンって、つまりはその人に会えってことだよね?」
響「しばらくぶりの人にばったり会えるなら、それ自体がラッキーなことなんじゃ……」
響「……ま、どうでもいいか。さっさと準備しなくっちゃ」
【Waning Crescent / 25.8】
< 『そして今日最も悪い運勢なのは、ごめんなさーい、てんびん座のあなた!』
響「うがっ…… 今日の自分、ワースト!?」
響「いやまあ、別に本気で信じてはいないけど、朝からこれだとテンション下がっちゃうぞ……」
< 『でも大丈夫! そんなてんびん座のツキを回復させるラッキーパーソンは「最近会ってない人」!』
響「最近会ってない友達、かぁ…… うちなーのみんな、元気にしてるかな」
響「でもこれ、ラッキーパーソンって、つまりはその人に会えってことだよね?」
響「しばらくぶりの人にばったり会えるなら、それ自体がラッキーなことなんじゃ……」
響「……ま、どうでもいいか。さっさと準備しなくっちゃ」
871: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:31:40.80 :jeBrEKzd0
【三浦あずさの場合:2】
あずさ「…… ふむふむ?」
あずさ「えーっと、ああ、でも、そうねえ、それなら……」
あずさ「じゃあ最後は…… さあて。何が出るかしら~、っと!」
あずさ「…… ……あら? 今度も、まただわ」
雪歩「あっ、あずささん、タロットですか。いい運勢でした?」
あずさ「ああ雪歩ちゃん、おかえりなさい。それが、ちょっと変なのよねぇ」
【三浦あずさの場合:2】
あずさ「…… ふむふむ?」
あずさ「えーっと、ああ、でも、そうねえ、それなら……」
あずさ「じゃあ最後は…… さあて。何が出るかしら~、っと!」
あずさ「…… ……あら? 今度も、まただわ」
雪歩「あっ、あずささん、タロットですか。いい運勢でした?」
あずさ「ああ雪歩ちゃん、おかえりなさい。それが、ちょっと変なのよねぇ」
872: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:32:11.10 :jeBrEKzd0
雪歩「ヘン? そういえばあずささん、すっごく難しい顔してましたね」
あずさ「ええ。レッスンの時間まで、ちょっと暇つぶし程度のつもりで始めたんだけど……」
雪歩「…… ま、まさか、すごく悪い結果が出ちゃったとかですかぁ!?」
あずさ「ううん、そんなことじゃないの。むしろ運勢自体は好調そう♪」
雪歩「そ、そうですか? よかった…… ほっとしました」
あずさ「ただ…… さっきから、何度やってもおんなじカードが必ずどこかに出るのよね~」
雪歩「それって、やっぱり珍しいことなんですか」
あずさ「そうね、78枚もあるのに毎回、ってなると、ちょっと気になっちゃうかも」
雪歩「へえ…… ちなみに、よく出るのはどのカードなんですか?」
あずさ「『月』と『太陽』の2枚。う~ん…… 不思議ねぇ。もう一度、やってみようかしら」
雪歩「ヘン? そういえばあずささん、すっごく難しい顔してましたね」
あずさ「ええ。レッスンの時間まで、ちょっと暇つぶし程度のつもりで始めたんだけど……」
雪歩「…… ま、まさか、すごく悪い結果が出ちゃったとかですかぁ!?」
あずさ「ううん、そんなことじゃないの。むしろ運勢自体は好調そう♪」
雪歩「そ、そうですか? よかった…… ほっとしました」
あずさ「ただ…… さっきから、何度やってもおんなじカードが必ずどこかに出るのよね~」
雪歩「それって、やっぱり珍しいことなんですか」
あずさ「そうね、78枚もあるのに毎回、ってなると、ちょっと気になっちゃうかも」
雪歩「へえ…… ちなみに、よく出るのはどのカードなんですか?」
あずさ「『月』と『太陽』の2枚。う~ん…… 不思議ねぇ。もう一度、やってみようかしら」
873: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:32:53.50 :jeBrEKzd0
【Waning Crescent / 26.1】
ガタンゴトン
響「ぁーっ、くたびれたぞ…… でも、レコーティング、大変だったけどいい感じ!」
響「事務所戻ったら次は即ダンスレッスンだっけ。急がなくちゃね」
「ねえ、おかーさん、しりとりしたい!」
「いいわよ、ふふっ、ほんとに好きなのねぇ。じゃあ、――ちゃんからスタートよ」
「よーし、それじゃあ…… しりとりの"り"!」
「り、ね? そうね…… さっきいっしょに買った、"りんご"」
「ご、ご…… うーんと、あっ、あった! "ごみばこ"!」
響「……子供って、なんであんなにしりとりが好きなのかな?」
「何にしようかしら。"こ"で始まることば、たくさんあるし……」
響「しりとり、かぁ…… 最後に自分が真剣にやったのって、いつだったかなぁ」
【Waning Crescent / 26.1】
ガタンゴトン
響「ぁーっ、くたびれたぞ…… でも、レコーティング、大変だったけどいい感じ!」
響「事務所戻ったら次は即ダンスレッスンだっけ。急がなくちゃね」
「ねえ、おかーさん、しりとりしたい!」
「いいわよ、ふふっ、ほんとに好きなのねぇ。じゃあ、――ちゃんからスタートよ」
「よーし、それじゃあ…… しりとりの"り"!」
「り、ね? そうね…… さっきいっしょに買った、"りんご"」
「ご、ご…… うーんと、あっ、あった! "ごみばこ"!」
響「……子供って、なんであんなにしりとりが好きなのかな?」
「何にしようかしら。"こ"で始まることば、たくさんあるし……」
響「しりとり、かぁ…… 最後に自分が真剣にやったのって、いつだったかなぁ」
874: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:33:29.60 :jeBrEKzd0
【音無小鳥の場合:2】
小鳥「…… なんだか、そろそろ降り出しそうですね」
高木「ん? ああ、確かにね。予報では午後もせいぜい曇りと言っていたはずだが」
小鳥「にわか雨で済めばいいんですけどね。けっこう冷えてますし」
高木「まったくだ。音無君は傘の用意はあるのかね?」
小鳥「わたしより社長、みんなの方が心配なんです。今日はほぼ全員、現場の移動がありますから」
高木「ああ…… いかん、アイドル諸君のことにまで頭が回っていなかった」
小鳥「一応、傘のストックはあるので、事務所に寄って帰る子たちのフォローはできると思うんですけど」
小鳥「…… あー、やっぱり。響ちゃんと真ちゃん、それに伊織ちゃん、今日は直帰だわ」
高木「ふうむ…… 彼女たちが傘を持っていてくれることを祈りたいものだ」
【音無小鳥の場合:2】
小鳥「…… なんだか、そろそろ降り出しそうですね」
高木「ん? ああ、確かにね。予報では午後もせいぜい曇りと言っていたはずだが」
小鳥「にわか雨で済めばいいんですけどね。けっこう冷えてますし」
高木「まったくだ。音無君は傘の用意はあるのかね?」
小鳥「わたしより社長、みんなの方が心配なんです。今日はほぼ全員、現場の移動がありますから」
高木「ああ…… いかん、アイドル諸君のことにまで頭が回っていなかった」
小鳥「一応、傘のストックはあるので、事務所に寄って帰る子たちのフォローはできると思うんですけど」
小鳥「…… あー、やっぱり。響ちゃんと真ちゃん、それに伊織ちゃん、今日は直帰だわ」
高木「ふうむ…… 彼女たちが傘を持っていてくれることを祈りたいものだ」
875: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:34:13.62 :jeBrEKzd0
小鳥「伊織ちゃんには新堂さんがいらっしゃるので大丈夫でしょう。問題はあとの二人ですね……」
高木「……音無君は、まるでアイドル諸君の母のような存在だな」
小鳥「はは? 母…… え、ええっ、急になに言い出すんですか社長!」
高木「いや、変な含みはないよ。君は本当に、皆のことを娘のように思っているのだな、と、今更感じたまでだ」
小鳥「そんな、大げさですよ、わたしにできることはしてあげたいな、ってだけです。それに」
高木「それに?」
小鳥「一番年下の亜美ちゃん真美ちゃんだって、わたしの娘としてはまだまだ大きすぎますっ!」
高木「ははは、確かにその通りだね。幼児、せいぜいが幼稚園生くらいなら――」
小鳥「社長?」ギロッ
高木「……と、すまない。軽口が過ぎたようだ」
小鳥「ホントですよ、もうっ」
小鳥「伊織ちゃんには新堂さんがいらっしゃるので大丈夫でしょう。問題はあとの二人ですね……」
高木「……音無君は、まるでアイドル諸君の母のような存在だな」
小鳥「はは? 母…… え、ええっ、急になに言い出すんですか社長!」
高木「いや、変な含みはないよ。君は本当に、皆のことを娘のように思っているのだな、と、今更感じたまでだ」
小鳥「そんな、大げさですよ、わたしにできることはしてあげたいな、ってだけです。それに」
高木「それに?」
小鳥「一番年下の亜美ちゃん真美ちゃんだって、わたしの娘としてはまだまだ大きすぎますっ!」
高木「ははは、確かにその通りだね。幼児、せいぜいが幼稚園生くらいなら――」
小鳥「社長?」ギロッ
高木「……と、すまない。軽口が過ぎたようだ」
小鳥「ホントですよ、もうっ」
876: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 21:35:51.24 :jeBrEKzd0
877: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:00:16.33 :jeBrEKzd0
【我那覇響の場合】
響「うひゃーっ、思いっきり降られちゃった…… みんなー、ただいまー!」
響「おー、よしよし、ちょっとだけ待っててね。すぐ着替えないと自分、風邪引いちゃう」
響「さて…… と、みんなお待たせ。はいっ、じゃ、食べていいよーっ!」
響「あとは自分の分だな。ううー、おなかすいた……」
響「でもなー、外すっごく寒かったし、まだ雨はひどいし。買い物に行くの、めんどくさいなぁ……」
響「帰りにスーパーでも寄っとくんだったぞ…… 冷蔵庫になんか残ってないかなー?」
響「……あっ! よかった、卵がまだあった! 今日はこれでなんとかなる!」
響「何つくろっかなー…… お腹空いてるし、ちゃちゃっとできる炒り卵にでもしようっと」
【我那覇響の場合】
響「うひゃーっ、思いっきり降られちゃった…… みんなー、ただいまー!」
響「おー、よしよし、ちょっとだけ待っててね。すぐ着替えないと自分、風邪引いちゃう」
響「さて…… と、みんなお待たせ。はいっ、じゃ、食べていいよーっ!」
響「あとは自分の分だな。ううー、おなかすいた……」
響「でもなー、外すっごく寒かったし、まだ雨はひどいし。買い物に行くの、めんどくさいなぁ……」
響「帰りにスーパーでも寄っとくんだったぞ…… 冷蔵庫になんか残ってないかなー?」
響「……あっ! よかった、卵がまだあった! 今日はこれでなんとかなる!」
響「何つくろっかなー…… お腹空いてるし、ちゃちゃっとできる炒り卵にでもしようっと」
878: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:01:05.99 :jeBrEKzd0
響「2個でいいかな…… いや、今日は豪勢に3ついっちゃおう!」
響「あ、バターも少なくなってる。今度買ってくるの忘れないようにしなきゃ」
響「固まりすぎないように、火を通しすぎないように、外から中に、寄せる感じで……」
響「まだ、ちょっとだけ、やわらかすぎる、かなー? ……ってタイミングですぐお皿にあける!」
響「…… よしよし、いい感じにとろっとろのふわふわさー。ふふふ、我ながらカンペキっ!」
響「生クリームあったらもっとふわっとするんだけどなー、今日は牛乳でがまんだぞ」
響「この前作った時は自分でも最高の出来だったもん、 だってあんなに大喜びして――」
響「2個でいいかな…… いや、今日は豪勢に3ついっちゃおう!」
響「あ、バターも少なくなってる。今度買ってくるの忘れないようにしなきゃ」
響「固まりすぎないように、火を通しすぎないように、外から中に、寄せる感じで……」
響「まだ、ちょっとだけ、やわらかすぎる、かなー? ……ってタイミングですぐお皿にあける!」
響「…… よしよし、いい感じにとろっとろのふわふわさー。ふふふ、我ながらカンペキっ!」
響「生クリームあったらもっとふわっとするんだけどなー、今日は牛乳でがまんだぞ」
響「この前作った時は自分でも最高の出来だったもん、 だってあんなに大喜びして――」
879: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:04:13.25 :jeBrEKzd0
響「……ん? そういえばこの前炒り卵作ったのって、いつだったっけ?」
響「やだなー、こんなことも思い出せないなんて。自分、ボケちゃってるんじゃないか? あはは!」
響「ああ、そうだ! 卵が余ってて、使い切っちゃいたいから卵料理にしよう、って、 に言って」
響「んん……? …… あれ…… うーん……?」
響「……ん? そういえばこの前炒り卵作ったのって、いつだったっけ?」
響「やだなー、こんなことも思い出せないなんて。自分、ボケちゃってるんじゃないか? あはは!」
響「ああ、そうだ! 卵が余ってて、使い切っちゃいたいから卵料理にしよう、って、 に言って」
響「んん……? …… あれ…… うーん……?」
880: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:05:05.65 :jeBrEKzd0
響「なんだろ、これ…… おかしいぞ?」
響「あはは、まいったなぁ…… ホントに、自分、きょうは、どうしちゃったんだろ……」
響「………… なん、で…… なみ…… だ、とま、ら、 な、っ…… ……」
響「なんだろ、これ…… おかしいぞ?」
響「あはは、まいったなぁ…… ホントに、自分、きょうは、どうしちゃったんだろ……」
響「………… なん、で…… なみ…… だ、とま、ら、 な、っ…… ……」
881: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:05:56.92 :jeBrEKzd0
響「そ、うだ…… よ、そう、だ……」
響「そう、だっ、た、…… これ……、炒り卵、じゃ、ない…… スクランブル、エッグ、だ」
響「…… そうだ、自分…… 前にも、おなじ、こと……、炒り卵の、つもりで…… お願いされて、」
響「誰に?」
響「そ、うだ…… よ、そう、だ……」
響「そう、だっ、た、…… これ……、炒り卵、じゃ、ない…… スクランブル、エッグ、だ」
響「…… そうだ、自分…… 前にも、おなじ、こと……、炒り卵の、つもりで…… お願いされて、」
響「誰に?」
882: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:07:00.75 :jeBrEKzd0
響「…… ……決まってる…… じゃないか、そんなの、っ」
響「たかね」
響「貴音」
響「貴音!」
響「なんで…… なんで、自分、こんな大事なこと…… 大事な友達のこと、今の今まで!!」
響「…… ……決まってる…… じゃないか、そんなの、っ」
響「たかね」
響「貴音」
響「貴音!」
響「なんで…… なんで、自分、こんな大事なこと…… 大事な友達のこと、今の今まで!!」
883: ◆ccGlDikGP2:2015/12/23(水) 22:07:39.62 :jeBrEKzd0
【いまだにぼくは】
【いまだにぼくは】
889: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:00:05.88 :UJ1dh6+B0
【我那覇響の場合:2】
ガチャッ
P「おはようございまーす」
やよい「あっ…… よかった、プロデューサーっ!!」
P「お、やよい。おは……」
伊織「あんたやっと着いたのね!? いいからこっち、すぐ来て! お願い、早くっ!!」
P「うわっ、い、伊織っ!? 待ってくれ、一体どうしたんだ? わけが――」
「――だからっ! なんで、どうしてみんなわかってくれないんだ!?」
「落ち着いてよ!! おねがいだから話を聞いてほしいの!!」
P「な、なんだ!? 誰か喧嘩でもしてるのか?」
【我那覇響の場合:2】
ガチャッ
P「おはようございまーす」
やよい「あっ…… よかった、プロデューサーっ!!」
P「お、やよい。おは……」
伊織「あんたやっと着いたのね!? いいからこっち、すぐ来て! お願い、早くっ!!」
P「うわっ、い、伊織っ!? 待ってくれ、一体どうしたんだ? わけが――」
「――だからっ! なんで、どうしてみんなわかってくれないんだ!?」
「落ち着いてよ!! おねがいだから話を聞いてほしいの!!」
P「な、なんだ!? 誰か喧嘩でもしてるのか?」
890: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:01:01.30 :UJ1dh6+B0
響「美希、美希なら覚えてるよね!? プロジェクト・フェアリーは、三人のユニットで!」
美希「…… やめてよ…… なに、言ってるの? 響とミキは、二人で、ずっといっしょに……」
響「ちがう、違うよっ、美希と、自分と…… それに貴音と! 三人で一緒にやってきたんじゃないか!!」
美希「ねえ…… さっきからずっと言ってる、その"たかね"って、いったい誰のこと……?」
響「……美希、まで? 美希も、やっぱり、忘れちゃってるの……?」
春香(あっ…… プロデューサーさん!!)
P(今来たところなんだ、状況がわからない! 春香、二人に何があったんだ?)
春香(わたしもわからないんです! わたしが来たときから響ちゃん、ずっとあんなふうで……)
P(あんな風、って?)
春香(この事務所にはもう一人、"たかね"ってアイドルが所属してるはずだ、って言い張ってるんです!)
響「美希、美希なら覚えてるよね!? プロジェクト・フェアリーは、三人のユニットで!」
美希「…… やめてよ…… なに、言ってるの? 響とミキは、二人で、ずっといっしょに……」
響「ちがう、違うよっ、美希と、自分と…… それに貴音と! 三人で一緒にやってきたんじゃないか!!」
美希「ねえ…… さっきからずっと言ってる、その"たかね"って、いったい誰のこと……?」
響「……美希、まで? 美希も、やっぱり、忘れちゃってるの……?」
春香(あっ…… プロデューサーさん!!)
P(今来たところなんだ、状況がわからない! 春香、二人に何があったんだ?)
春香(わたしもわからないんです! わたしが来たときから響ちゃん、ずっとあんなふうで……)
P(あんな風、って?)
春香(この事務所にはもう一人、"たかね"ってアイドルが所属してるはずだ、って言い張ってるんです!)
891: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:02:30.49 :UJ1dh6+B0
P「お、おい、響……」
響「プロデューサー……? プロデューサー!! プロデューサーは貴音のこと、思い出せるでしょ!?」
P「たかね……?」
響「そうっ、貴音! 髪が銀色で、すっごく背が高くて! 自分と一緒に765に入社したアイドルの!!」
P「…… あのな、響、落ち着いて聞い……」
響「ちょっと不思議な、でも高貴な感じでっ、そう、だから亜美や真美はお姫ちんなんてあだ名を――」
P「………… すまん、響。嘘はつけない。お前の言ってることが、俺には…… わからない」
響「~~~~~~~~っっ!!」
ガチャ
小鳥「おはようござい…… って、あれ? みんな集まって、何かあったんですか?」
P「お、おい、響……」
響「プロデューサー……? プロデューサー!! プロデューサーは貴音のこと、思い出せるでしょ!?」
P「たかね……?」
響「そうっ、貴音! 髪が銀色で、すっごく背が高くて! 自分と一緒に765に入社したアイドルの!!」
P「…… あのな、響、落ち着いて聞い……」
響「ちょっと不思議な、でも高貴な感じでっ、そう、だから亜美や真美はお姫ちんなんてあだ名を――」
P「………… すまん、響。嘘はつけない。お前の言ってることが、俺には…… わからない」
響「~~~~~~~~っっ!!」
ガチャ
小鳥「おはようござい…… って、あれ? みんな集まって、何かあったんですか?」
892: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:03:17.49 :UJ1dh6+B0
響「ピヨ子…… ……あっ、そ、そうだ!! そうだよ、ピヨ子っ!!」
小鳥「え……? わ、わたし!? わたしが、なに?」
響「ピヨ子はさ、事務所にたかねがいるとき、たっくさんビデオ撮ってたよね!?」
小鳥「なに、なんの話!? ちょっと落ち着きましょ、響ちゃん、ねっ?」
響「あのビデオカメラ、どこにあるの!? メモリーにきっと映像が残ってるはず! 」
小鳥「カメラの…… メモリー? それがなにか必要なの?」
律子「…… いい加減にしなさいよ、響。小鳥さんも困ってるでしょう」
小鳥「いえ、大丈夫ですよ、律子さん。よくわかりませんけど、響ちゃんの役に立つなら」
小鳥「ええと、最近だと…… これね。ここ1ヶ月くらいずっと使ってたと思うわ」
響「ほんとにありがとっ、ピヨ子! これがあれば絶対みんなも思い出してくれるぞ!」
響「ピヨ子…… ……あっ、そ、そうだ!! そうだよ、ピヨ子っ!!」
小鳥「え……? わ、わたし!? わたしが、なに?」
響「ピヨ子はさ、事務所にたかねがいるとき、たっくさんビデオ撮ってたよね!?」
小鳥「なに、なんの話!? ちょっと落ち着きましょ、響ちゃん、ねっ?」
響「あのビデオカメラ、どこにあるの!? メモリーにきっと映像が残ってるはず! 」
小鳥「カメラの…… メモリー? それがなにか必要なの?」
律子「…… いい加減にしなさいよ、響。小鳥さんも困ってるでしょう」
小鳥「いえ、大丈夫ですよ、律子さん。よくわかりませんけど、響ちゃんの役に立つなら」
小鳥「ええと、最近だと…… これね。ここ1ヶ月くらいずっと使ってたと思うわ」
響「ほんとにありがとっ、ピヨ子! これがあれば絶対みんなも思い出してくれるぞ!」
893: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:04:18.66 :UJ1dh6+B0
響「じゃあ、いい? みんなよく見ててよ……」
千早「我那覇さん……? その映像で、いったい何が……」
響「あっ、これ、ほらここっ! 朝のミーティングのあとで、プロデューサーと、たか…… ね……」
P『みんな、ちゃんと確認できたな? それじゃ各自、時間が来るまで――』
亜美「…… ねえ、これさ…… ずーっとにーちゃんしか写ってないよ、ひびきん……」
真美「しっ! 黙ってなよ亜美、それがなんか大事なのかもしれないっしょ!?」
響「…… そんな、なんで…… あ、あっ、そうか、たかねが小柄すぎて写せてないんだ!」
美希「響、あのね――」
響「そっか、そうだ、美希がたかね抱えて寝てるとこだったらもっと見やすいはず!」
響「じゃあ、いい? みんなよく見ててよ……」
千早「我那覇さん……? その映像で、いったい何が……」
響「あっ、これ、ほらここっ! 朝のミーティングのあとで、プロデューサーと、たか…… ね……」
P『みんな、ちゃんと確認できたな? それじゃ各自、時間が来るまで――』
亜美「…… ねえ、これさ…… ずーっとにーちゃんしか写ってないよ、ひびきん……」
真美「しっ! 黙ってなよ亜美、それがなんか大事なのかもしれないっしょ!?」
響「…… そんな、なんで…… あ、あっ、そうか、たかねが小柄すぎて写せてないんだ!」
美希「響、あのね――」
響「そっか、そうだ、美希がたかね抱えて寝てるとこだったらもっと見やすいはず!」
894: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:07:25.53 :UJ1dh6+B0
伊織『例によって寝てたのね、美希……』
美希『ふにゃ…… くぅ……』
美希「……ミキが、ソファで寝てるだけだよ。その、えっと…… たかねだっけ、その子、どこにいるの?」
響「なん……で、どうして!? あんなにずっと事務所にいたのに、なんでどこにも写ってないの!?」
小鳥「響ちゃん…… わたし、確かによくビデオまわしてるけど、そのたかねちゃんって子は、一度も……」
響「……ピヨ子! ピヨ子もグルなんだな!?」
小鳥「えっ?」
響「後から編集してたかねのことだけ消しちゃったんだな!? ピヨ子ならきっとそんなの簡単に!」
小鳥「きゃっ……!? やめて響ちゃん、待って、わたし、そんなこと全然……!」
響「そうなんでしょ、ねえっ!? そうだって言ってよピヨ子ぉぉ!!」
伊織『例によって寝てたのね、美希……』
美希『ふにゃ…… くぅ……』
美希「……ミキが、ソファで寝てるだけだよ。その、えっと…… たかねだっけ、その子、どこにいるの?」
響「なん……で、どうして!? あんなにずっと事務所にいたのに、なんでどこにも写ってないの!?」
小鳥「響ちゃん…… わたし、確かによくビデオまわしてるけど、そのたかねちゃんって子は、一度も……」
響「……ピヨ子! ピヨ子もグルなんだな!?」
小鳥「えっ?」
響「後から編集してたかねのことだけ消しちゃったんだな!? ピヨ子ならきっとそんなの簡単に!」
小鳥「きゃっ……!? やめて響ちゃん、待って、わたし、そんなこと全然……!」
響「そうなんでしょ、ねえっ!? そうだって言ってよピヨ子ぉぉ!!」
895: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:08:28.61 :UJ1dh6+B0
真「ちょっと響っ!? 小鳥さんに何してるんだよっ! やめ――」
響「放してよ!! こんなのありえない、おかしいよ、自分絶対信じないぞ!」
真「うわっ、この……っ、落ち着いてってば響! プロデューサー、押さえるの手伝ってくださいっ!」
P「あ…… ああ、すまん!」
響「うがああああっ!! 放して! 二人とも、放せよっ、はなせぇえーっ!!」
P「響、いったいどうしたっていうんだ、落ち着け、頼むから落ち着いてくれ!」
あずさ「音無さんっ、大丈夫ですか!? 怪我とか、してないですか」
雪歩「わ、わたし、救急箱取ってきますっ!」
小鳥「けほ、っ、げほっ…… わたし、っ、だいじょうぶ、ですから、響ちゃんを……!」
響「うそだ、うそだ、うそだ、こんなの絶対うそだぞ! 映像にも写真にもどこにもたかねがいないなんてうそだ!」
真「ちょっと響っ!? 小鳥さんに何してるんだよっ! やめ――」
響「放してよ!! こんなのありえない、おかしいよ、自分絶対信じないぞ!」
真「うわっ、この……っ、落ち着いてってば響! プロデューサー、押さえるの手伝ってくださいっ!」
P「あ…… ああ、すまん!」
響「うがああああっ!! 放して! 二人とも、放せよっ、はなせぇえーっ!!」
P「響、いったいどうしたっていうんだ、落ち着け、頼むから落ち着いてくれ!」
あずさ「音無さんっ、大丈夫ですか!? 怪我とか、してないですか」
雪歩「わ、わたし、救急箱取ってきますっ!」
小鳥「けほ、っ、げほっ…… わたし、っ、だいじょうぶ、ですから、響ちゃんを……!」
響「うそだ、うそだ、うそだ、こんなの絶対うそだぞ! 映像にも写真にもどこにもたかねがいないなんてうそだ!」
896: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:10:07.65 :UJ1dh6+B0
P「…… 社長。これから響を自宅まで送り届けてきます。すみませんが、その間……」
高木「わかっている。事務所は私と律子君で取りまとめておくよ。幸い、音無君も大事ないようだ」
P「申し訳ありません、お手数をおかけします」
高木「何、気にしないでくれたまえ、いつもキミには苦労をかけているからね。それよりも」
P「はい?」
高木「我那覇君を、しっかり支えてあげてほしい。彼女に何があったのか、私にはわからないが……」
P「……はい。正直なところまだ原因はわからないんですが、全力を尽くします」
高木「うむ。とはいえ、今日のところはまず、しっかり休ませてあげるべきだろうな」
P「そう思います。話を聞くにしても、もう少し落ち着いてからがよさそうですね」
P「…… 社長。これから響を自宅まで送り届けてきます。すみませんが、その間……」
高木「わかっている。事務所は私と律子君で取りまとめておくよ。幸い、音無君も大事ないようだ」
P「申し訳ありません、お手数をおかけします」
高木「何、気にしないでくれたまえ、いつもキミには苦労をかけているからね。それよりも」
P「はい?」
高木「我那覇君を、しっかり支えてあげてほしい。彼女に何があったのか、私にはわからないが……」
P「……はい。正直なところまだ原因はわからないんですが、全力を尽くします」
高木「うむ。とはいえ、今日のところはまず、しっかり休ませてあげるべきだろうな」
P「そう思います。話を聞くにしても、もう少し落ち着いてからがよさそうですね」
897: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:10:44.55 :UJ1dh6+B0
P「それじゃあ社長、しばらく空けます。後のことをお願いします」
高木「ああ、引き受けたよ。大変だと思うがキミも、よろしく頼む」
P「もちろんです。失礼します」
ガチャ
P「……! お前たち」
春香「あのっ、プロデューサーさん! 今から響ちゃんのこと、送っていくんですよね?」
P「……ああ、そうだ。今日の響は、レッスンとかできる状態じゃなさそうだからな」
春香「だったらお願いします、わたしにも手伝わせてください!」
P「春香…… 気持ちはありがたいが、いまの響には……」
春香「何ができるわけじゃなくても、響ちゃんのそばにいてあげたいんです」
P「それじゃあ社長、しばらく空けます。後のことをお願いします」
高木「ああ、引き受けたよ。大変だと思うがキミも、よろしく頼む」
P「もちろんです。失礼します」
ガチャ
P「……! お前たち」
春香「あのっ、プロデューサーさん! 今から響ちゃんのこと、送っていくんですよね?」
P「……ああ、そうだ。今日の響は、レッスンとかできる状態じゃなさそうだからな」
春香「だったらお願いします、わたしにも手伝わせてください!」
P「春香…… 気持ちはありがたいが、いまの響には……」
春香「何ができるわけじゃなくても、響ちゃんのそばにいてあげたいんです」
898: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:11:19.00 :UJ1dh6+B0
真「ボクも、一緒に行きます。万が一、またさっきみたいなことになったら危ないですし」
美希「ミキもついていくの。みんなの中で、響といちばん一緒にいる時間が長いの、ミキだから」
P「ダメだ…… って言っても来るんだろうな、三人とも」
春香「はい!」
真「へへっ、もちろんですよ」
美希「トーゼンなの」
P「…… 女の子の部屋に俺だけで入るのはマズいだろうし、どうしようかと思ってたとこだ」
春香「じゃあ!」
P「今日は三人ともレッスンだけだったな?」
美希「えーっと、そうだったっけ? でもこの際、そんなのどーでもいいよ」
真「こら、美希、何言ってるのさ。プロデューサー、ボクら三人とも午後からですよ」
P「……よし、わかった。それまでには戻れるようにしよう」
真「ボクも、一緒に行きます。万が一、またさっきみたいなことになったら危ないですし」
美希「ミキもついていくの。みんなの中で、響といちばん一緒にいる時間が長いの、ミキだから」
P「ダメだ…… って言っても来るんだろうな、三人とも」
春香「はい!」
真「へへっ、もちろんですよ」
美希「トーゼンなの」
P「…… 女の子の部屋に俺だけで入るのはマズいだろうし、どうしようかと思ってたとこだ」
春香「じゃあ!」
P「今日は三人ともレッスンだけだったな?」
美希「えーっと、そうだったっけ? でもこの際、そんなのどーでもいいよ」
真「こら、美希、何言ってるのさ。プロデューサー、ボクら三人とも午後からですよ」
P「……よし、わかった。それまでには戻れるようにしよう」
899: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:13:28.26 :UJ1dh6+B0
ガチャ
春香「…… おじゃま、しまーす」
美希「ミキ、響の家族とはだいたい顔見知りだから、ちょっとアイサツしとくね」
春香「そうなんだ? 助かるよ、そっちはよろしくね。……真、大丈夫?」
真「うん、オッケー。響、歩ける? ゆっくりでいいからね」
響「……」
P(…… 真、俺も手を貸そうか?)
真(ありがとうございます、ボクひとりで大丈夫ですよ)
美希「みんな、久しぶりー。ごめんね、今日はちょっとだけお騒がせするの」
春香「えっと…… 響ちゃん、まず、シャワーでも浴びてきたらどうかな? きっとさっぱりするよ」
響「……」
ガチャ
春香「…… おじゃま、しまーす」
美希「ミキ、響の家族とはだいたい顔見知りだから、ちょっとアイサツしとくね」
春香「そうなんだ? 助かるよ、そっちはよろしくね。……真、大丈夫?」
真「うん、オッケー。響、歩ける? ゆっくりでいいからね」
響「……」
P(…… 真、俺も手を貸そうか?)
真(ありがとうございます、ボクひとりで大丈夫ですよ)
美希「みんな、久しぶりー。ごめんね、今日はちょっとだけお騒がせするの」
春香「えっと…… 響ちゃん、まず、シャワーでも浴びてきたらどうかな? きっとさっぱりするよ」
響「……」
900: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:14:03.04 :UJ1dh6+B0
春香「じゃあ、すみませんけどプロデューサーさん、リビングで待っててもらえますか?」
P「ああ、わかった、そうする。お前たちに来てもらってよかったよ」
美希「ぜーったい、のぞいたりしちゃダメだからね?」
P「なっ…… なに言ってるんだバカ! そんなこと、するわけないだろ」
真「あははっ。それまで響の家族のこと、ちょっと見といてあげてください」
P「そ、そうだな…… 三人とも、よろしく頼む」
P(…… 響の部屋、か。こんな形で足を踏み入れることになるとは思わなかったよ)
P(大家族がいる分広めだけど、それ以外はいたって普通だな)
春香「じゃあ、すみませんけどプロデューサーさん、リビングで待っててもらえますか?」
P「ああ、わかった、そうする。お前たちに来てもらってよかったよ」
美希「ぜーったい、のぞいたりしちゃダメだからね?」
P「なっ…… なに言ってるんだバカ! そんなこと、するわけないだろ」
真「あははっ。それまで響の家族のこと、ちょっと見といてあげてください」
P「そ、そうだな…… 三人とも、よろしく頼む」
P(…… 響の部屋、か。こんな形で足を踏み入れることになるとは思わなかったよ)
P(大家族がいる分広めだけど、それ以外はいたって普通だな)
901: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:15:22.74 :UJ1dh6+B0
P(……少なくとも昨日までの響は、特に変わった様子はなかったと思う)
P(だから恐らく、何かあったとしたら、昨日…… それも事務所を出た後のことなんだろうが)
P(響の場合、一人暮らしだから、ご家族に話を聞くって手も使えないし……)
ねこ吉「ニャーゴ」
P「…… お前さんに話が聞ければいいけど、俺は響と違って、そんなことできないからなぁ」
ねこ吉「ウニャー」
P「ああいや、それより、まずは謝らなくちゃな……」
ねこ吉「……」
P「お前のご主人の様子が違うことに、すぐに気づいてやれなかった。すまない」
ねこ吉「ニャッ」
P「…………ん? お前、なにくわえてるんだ?」
ねこ吉「……」ジリッ
P「おい、ちょっと待てってば。ダメじゃないか、それ、ご主人様のだろ」
ねこ吉「……!」タタタッ
P「あ、こら! ……っと、持って行っちゃったか」
P(……少なくとも昨日までの響は、特に変わった様子はなかったと思う)
P(だから恐らく、何かあったとしたら、昨日…… それも事務所を出た後のことなんだろうが)
P(響の場合、一人暮らしだから、ご家族に話を聞くって手も使えないし……)
ねこ吉「ニャーゴ」
P「…… お前さんに話が聞ければいいけど、俺は響と違って、そんなことできないからなぁ」
ねこ吉「ウニャー」
P「ああいや、それより、まずは謝らなくちゃな……」
ねこ吉「……」
P「お前のご主人の様子が違うことに、すぐに気づいてやれなかった。すまない」
ねこ吉「ニャッ」
P「…………ん? お前、なにくわえてるんだ?」
ねこ吉「……」ジリッ
P「おい、ちょっと待てってば。ダメじゃないか、それ、ご主人様のだろ」
ねこ吉「……!」タタタッ
P「あ、こら! ……っと、持って行っちゃったか」
902: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:16:13.06 :UJ1dh6+B0
ガチャ
P「!」
春香「お待たせしました。プロデューサーさん、もういいですよ」
P「ああ、ありがとう。……響はどんな様子だ?」
美希「なんとかベッドに入らせて、やっと寝ついたの。泣き疲れちゃったカンジ」
P「そうか、よかった。今はまず何よりも休息が必要だろうからな」
真「わりと落ち着いてはいました。ただ、すごく沈み込んでて、反応も薄くって……」
P「そうなるのも当然だよな…… 誰とも話が合わない状態になってたわけだし」
ガチャ
P「!」
春香「お待たせしました。プロデューサーさん、もういいですよ」
P「ああ、ありがとう。……響はどんな様子だ?」
美希「なんとかベッドに入らせて、やっと寝ついたの。泣き疲れちゃったカンジ」
P「そうか、よかった。今はまず何よりも休息が必要だろうからな」
真「わりと落ち着いてはいました。ただ、すごく沈み込んでて、反応も薄くって……」
P「そうなるのも当然だよな…… 誰とも話が合わない状態になってたわけだし」
903: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:16:46.56 :UJ1dh6+B0
P「担当として本当に恥ずかしい話だけど、俺は思い当たる原因が何もないんだ……」
春香「それは…… 仕方がないと思います。わたしたちも、ほとんどついていけてませんでしたから」
P「お前たちはなにか心当たりがないか? どんなことでもいいんだ、聞かせて欲しい」
美希「やっぱり、響がずっと言ってた『たかね』って名前がヒントなんじゃない?」
P「そうだな、そこは間違いないと思う」
真「その子がまるで、ずっとボクらともいっしょにいた、みたいな口ぶりでしたもんね」
P「そもそもこの『たかね』って名前自体、響は前に口にしたこと、あったか?」
春香「えっと、響ちゃんの学校のお友達のこととか、全部は知らないですけど…… 記憶にないです」
美希「ミキも、なの。961プロにも…… たぶん、いなかったと思うな……」
真「……あ! いっしょに仕事したことのある、べつの事務所のアイドルとかじゃないですか?」
P「そう思って、待ってる間、今まで付き合いのあった事務所のHPとかを記憶の限り確認してみた」
春香「それで…… どうだったんですか?」
P「『たかね』という名前も、それに苗字も…… 今のところ、どこにも該当がないんだ」
P「担当として本当に恥ずかしい話だけど、俺は思い当たる原因が何もないんだ……」
春香「それは…… 仕方がないと思います。わたしたちも、ほとんどついていけてませんでしたから」
P「お前たちはなにか心当たりがないか? どんなことでもいいんだ、聞かせて欲しい」
美希「やっぱり、響がずっと言ってた『たかね』って名前がヒントなんじゃない?」
P「そうだな、そこは間違いないと思う」
真「その子がまるで、ずっとボクらともいっしょにいた、みたいな口ぶりでしたもんね」
P「そもそもこの『たかね』って名前自体、響は前に口にしたこと、あったか?」
春香「えっと、響ちゃんの学校のお友達のこととか、全部は知らないですけど…… 記憶にないです」
美希「ミキも、なの。961プロにも…… たぶん、いなかったと思うな……」
真「……あ! いっしょに仕事したことのある、べつの事務所のアイドルとかじゃないですか?」
P「そう思って、待ってる間、今まで付き合いのあった事務所のHPとかを記憶の限り確認してみた」
春香「それで…… どうだったんですか?」
P「『たかね』という名前も、それに苗字も…… 今のところ、どこにも該当がないんだ」
904: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:17:18.11 :UJ1dh6+B0
美希「…… 今までずっといっしょにいたはずなのに、ミキ、響のこと全然知らなかったのかも」
真「美希よりは響との付き合い、短いけどさ。ボクも同じこと思ってるよ」
春香「響ちゃん…… なにか、わたしたちがしてあげられることってないかな……」
P「今はそっとして、休ませてやるのが一番大事だと思う。それに、三人とも、そろそろ時間だ」
春香「……そうだ! プロデューサーさん、レッスンまでまだ余裕ありますよね?」
P「まあ…… 車だし、直接スタジオに向かえばいいからな。もうちょっと大丈夫だけど」
春香「じゃあ、響ちゃんごめんね、ちょっとだけ台所借りちゃいます!」
真「え? 春香、何するの?」
春香「ちょっとねー。そうだ、真と美希、それにプロデューサーさんは、その間に……」
美希「…… 今までずっといっしょにいたはずなのに、ミキ、響のこと全然知らなかったのかも」
真「美希よりは響との付き合い、短いけどさ。ボクも同じこと思ってるよ」
春香「響ちゃん…… なにか、わたしたちがしてあげられることってないかな……」
P「今はそっとして、休ませてやるのが一番大事だと思う。それに、三人とも、そろそろ時間だ」
春香「……そうだ! プロデューサーさん、レッスンまでまだ余裕ありますよね?」
P「まあ…… 車だし、直接スタジオに向かえばいいからな。もうちょっと大丈夫だけど」
春香「じゃあ、響ちゃんごめんね、ちょっとだけ台所借りちゃいます!」
真「え? 春香、何するの?」
春香「ちょっとねー。そうだ、真と美希、それにプロデューサーさんは、その間に……」
905: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:18:00.92 :UJ1dh6+B0
906: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:24:35.44 :UJ1dh6+B0
響(……ん、 ……あー、朝 ……?)
響(………… ちがう、ここ、自分の部屋だ…… あれ、事務所に行ったんじゃ、なかったっけ?)
ムクッ
響(いまは…… うわっ、もう暗くなっちゃってる。どうして……?)
響(…… ああ、そうか。思い出した…… 自分、事務所でパニックになって……)
響(そこから…… どうしたんだっけ、覚えてないぞ…… ん?)
響(なんだろ、これ。何枚も…… 書置き?)ガサッ
響(……ん、 ……あー、朝 ……?)
響(………… ちがう、ここ、自分の部屋だ…… あれ、事務所に行ったんじゃ、なかったっけ?)
ムクッ
響(いまは…… うわっ、もう暗くなっちゃってる。どうして……?)
響(…… ああ、そうか。思い出した…… 自分、事務所でパニックになって……)
響(そこから…… どうしたんだっけ、覚えてないぞ…… ん?)
響(なんだろ、これ。何枚も…… 書置き?)ガサッ
907: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:25:58.06 :UJ1dh6+B0
響へ
とりあえずきょうはゆっくり休むといい。
明日についてもレッスンのみの予定だったから、こっちでオフにしといた。
響の許可もなく勝手に部屋に入るのはよくないとは思ったんだが、
緊急だったし、春香と真、美希に一緒に来てもらったので勘弁してほしい。
実際のところ俺はろくに何もしてない。三人が全部やってくれたから安心してくれ。
気が向いたらでいいので、目が覚めてから余裕があるときにでも連絡をくれると助かる。
それとは別に、困ったこととか、悩みとかがあるなら、いつでも相談してほしい。
俺がすぐに解決できるようなことじゃなくても、できるかぎり力になりたいんだ。
響(…… プロデューサー……)
響へ
とりあえずきょうはゆっくり休むといい。
明日についてもレッスンのみの予定だったから、こっちでオフにしといた。
響の許可もなく勝手に部屋に入るのはよくないとは思ったんだが、
緊急だったし、春香と真、美希に一緒に来てもらったので勘弁してほしい。
実際のところ俺はろくに何もしてない。三人が全部やってくれたから安心してくれ。
気が向いたらでいいので、目が覚めてから余裕があるときにでも連絡をくれると助かる。
それとは別に、困ったこととか、悩みとかがあるなら、いつでも相談してほしい。
俺がすぐに解決できるようなことじゃなくても、できるかぎり力になりたいんだ。
響(…… プロデューサー……)
908: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:26:42.01 :UJ1dh6+B0
響(こっちの…… この字は真ので、これは、美希の……)ガサガサ
響へ
春香がいまおいしそうなお料理作ってくれてるから、起きたらまずはしっかり食べなきゃだよ!
おなか空いてると人間、頭まわんないし、気も弱くなっちゃうから。
実は、響の家族みんなにもごはんをあげるべきかなって話になったんだけど、
下手なことしないで響にまかせたほうがいいよね、ってことでなにもしてないんだ。
響のことすごく心配してるみたいだから、春香のごはんで元気出たら、相手してあげてね。
いろいろ考えちゃうときは、思いっきり体動かすのもかえっていいと思うんだ。
言ってくれればトレーニングとかいっくらでも付き合うからね、ボク。
今度のダンスレッスンのときにはいつもの調子取り戻してくるの、待ってるから。
響がうかうかしてたら置いてっちゃうよ!
響(こっちの…… この字は真ので、これは、美希の……)ガサガサ
響へ
春香がいまおいしそうなお料理作ってくれてるから、起きたらまずはしっかり食べなきゃだよ!
おなか空いてると人間、頭まわんないし、気も弱くなっちゃうから。
実は、響の家族みんなにもごはんをあげるべきかなって話になったんだけど、
下手なことしないで響にまかせたほうがいいよね、ってことでなにもしてないんだ。
響のことすごく心配してるみたいだから、春香のごはんで元気出たら、相手してあげてね。
いろいろ考えちゃうときは、思いっきり体動かすのもかえっていいと思うんだ。
言ってくれればトレーニングとかいっくらでも付き合うからね、ボク。
今度のダンスレッスンのときにはいつもの調子取り戻してくるの、待ってるから。
響がうかうかしてたら置いてっちゃうよ!
909: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:28:09.03 :UJ1dh6+B0
響サマ
よく眠れた?
心配ごととかって、寝ちゃえばわりとカイケツしちゃうの。
ミキはね、響のこと、とくに心配はしてないよ。
だって響は、ちょっとちっちゃいだけでカンペキだって知ってるもん。
でも、ミキにこっそり話したいこととかあるんだったら教えてね?
ずっとコンビ組んでた響とミキの間にかくしごとなんてナシなの!
そうそう、響の家族ね、みんなミキのこと覚えててくれたみたい。
あらためてミキからよろしくって伝えといてほしいな!
じゃ、また事務所でね☆
響サマ
よく眠れた?
心配ごととかって、寝ちゃえばわりとカイケツしちゃうの。
ミキはね、響のこと、とくに心配はしてないよ。
だって響は、ちょっとちっちゃいだけでカンペキだって知ってるもん。
でも、ミキにこっそり話したいこととかあるんだったら教えてね?
ずっとコンビ組んでた響とミキの間にかくしごとなんてナシなの!
そうそう、響の家族ね、みんなミキのこと覚えててくれたみたい。
あらためてミキからよろしくって伝えといてほしいな!
じゃ、また事務所でね☆
910: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:28:55.48 :UJ1dh6+B0
響(最後のこれは、春香のだ……)
響ちゃんへ
わたしもプロデューサーさんにくっついてお邪魔しました。
響ちゃん、きっとすごく疲れちゃってるんだと思うから、たっぷり眠れますように。
さすがの響ちゃんも、起きてすぐはおなか空いてるんじゃないかな? と思って、
お台所を借りてかんたんなごはんを作っておきました。よかったら食べてね。
ちなみに材料は冷蔵庫の中身を勝手に使わせてもらっちゃいました! ごめん! >_<
いつもがんばり屋さんな響ちゃんだから、たまにはちょっとお休みしても大丈夫。
くれぐれも無理はしないでゆっくり過ごしてほしいです。
P.S.
いつでも連絡待ってるからね!
わたし、最近は夜更かし気味だから、ちょっとくらい遅くても大丈夫だよー!
響(最後のこれは、春香のだ……)
響ちゃんへ
わたしもプロデューサーさんにくっついてお邪魔しました。
響ちゃん、きっとすごく疲れちゃってるんだと思うから、たっぷり眠れますように。
さすがの響ちゃんも、起きてすぐはおなか空いてるんじゃないかな? と思って、
お台所を借りてかんたんなごはんを作っておきました。よかったら食べてね。
ちなみに材料は冷蔵庫の中身を勝手に使わせてもらっちゃいました! ごめん! >_<
いつもがんばり屋さんな響ちゃんだから、たまにはちょっとお休みしても大丈夫。
くれぐれも無理はしないでゆっくり過ごしてほしいです。
P.S.
いつでも連絡待ってるからね!
わたし、最近は夜更かし気味だから、ちょっとくらい遅くても大丈夫だよー!
911: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:30:31.24 :UJ1dh6+B0
響(…… プロデューサーも、春香も、真も美希も。それにきっと、事務所のみんなも)
響(自分のこと、本気で心配してくれてる。それはわかるし、すごく嬉しい)
響(――でも)
響(ここでいま、たとえば自分が、プロデューサーに、それか春香に、電話でもかけて)
響(もう一度…… 今度は落ち着いて、全部、説明できたとして)
響(心配とか同情はきっと、今以上にしてくれる。大変なんだなって、心から気遣ってくれる)
響(でも…… ……でも、それだけ、それでおしまい)
響(一番わかってほしい、思い出してほしい、貴音のことは―― 伝わらない)
響(…… プロデューサーも、春香も、真も美希も。それにきっと、事務所のみんなも)
響(自分のこと、本気で心配してくれてる。それはわかるし、すごく嬉しい)
響(――でも)
響(ここでいま、たとえば自分が、プロデューサーに、それか春香に、電話でもかけて)
響(もう一度…… 今度は落ち着いて、全部、説明できたとして)
響(心配とか同情はきっと、今以上にしてくれる。大変なんだなって、心から気遣ってくれる)
響(でも…… ……でも、それだけ、それでおしまい)
響(一番わかってほしい、思い出してほしい、貴音のことは―― 伝わらない)
912: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:31:10.63 :UJ1dh6+B0
響(みんなが忘れてるのは、貴音がたかねになっちゃってからのことだけじゃない)
響(そもそも、貴音が…… 最初から、いなかったことになってるんだ……)
響(けさ、事務所についたときからそうだった。春香も、千早も、やよいも、伊織も)
響(あずささんも、律子も、亜美も真美も、雪歩も、真も、みんな…… みんな、覚えてなかった)
響(最後に来た美希に聞いても―― そうだ、それで自分、かっとなって)
響(そうだ…… それから、ピヨ子に、最低の八つ当たりして…… 謝らなくちゃ……)
響(まず誰よりもピヨ子に謝って、迷惑かけたみんなにも、プロデューサーにも謝って……)
響(謝って、 ……それから? それから、自分、どうしたらいいんだ?)
響(みんなが忘れてるのは、貴音がたかねになっちゃってからのことだけじゃない)
響(そもそも、貴音が…… 最初から、いなかったことになってるんだ……)
響(けさ、事務所についたときからそうだった。春香も、千早も、やよいも、伊織も)
響(あずささんも、律子も、亜美も真美も、雪歩も、真も、みんな…… みんな、覚えてなかった)
響(最後に来た美希に聞いても―― そうだ、それで自分、かっとなって)
響(そうだ…… それから、ピヨ子に、最低の八つ当たりして…… 謝らなくちゃ……)
響(まず誰よりもピヨ子に謝って、迷惑かけたみんなにも、プロデューサーにも謝って……)
響(謝って、 ……それから? それから、自分、どうしたらいいんだ?)
913: ◆ccGlDikGP2:2015/12/26(土) 20:31:49.40 :UJ1dh6+B0
響(みんなに謝って? "貴音"なんていなかった、自分の勘違いだった、って、言って?)
響(勘違いなんかじゃないのに? 貴音は、たかねは…… たしかに自分たちの仲間で、友達で)
響(自分は―― 自分だけは、こんなにはっきり、全部、全部覚えてるのに!?)
響(…… なんで…… なんで、なんで、なんで、っ!!)
響「………… わかんない…… わかん、ない、よ、貴音ぇ…… 自分、どうすればいいの、わかんないよぅ……」
響(みんなに謝って? "貴音"なんていなかった、自分の勘違いだった、って、言って?)
響(勘違いなんかじゃないのに? 貴音は、たかねは…… たしかに自分たちの仲間で、友達で)
響(自分は―― 自分だけは、こんなにはっきり、全部、全部覚えてるのに!?)
響(…… なんで…… なんで、なんで、なんで、っ!!)
響「………… わかんない…… わかん、ない、よ、貴音ぇ…… 自分、どうすればいいの、わかんないよぅ……」
943: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:29:34.50 :p1xr7Yhy0
たかね「――びき、ひびき。おきてください! ひびきーっ!」
響「ん、ううん…… わかった、わかったぞ、すぐ起きるって、たか、ね…… ……!?」
たかね「あっ、ようやくおき…… ぷっ! どうしたのですか、ひびき。おくちが、ひらいたままですよ」
響「たかね…… たかね!? たかねぇっ!!」
たかね「ひゃあっ!? ひびき? ど…… どうか、したのですか?」
響「たかねだ、たかね、よかった…… ウソじゃなかった! ちゃんと、たかねはここにいるじゃないか!」
たかね「――びき、ひびき。おきてください! ひびきーっ!」
響「ん、ううん…… わかった、わかったぞ、すぐ起きるって、たか、ね…… ……!?」
たかね「あっ、ようやくおき…… ぷっ! どうしたのですか、ひびき。おくちが、ひらいたままですよ」
響「たかね…… たかね!? たかねぇっ!!」
たかね「ひゃあっ!? ひびき? ど…… どうか、したのですか?」
響「たかねだ、たかね、よかった…… ウソじゃなかった! ちゃんと、たかねはここにいるじゃないか!」
944: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:30:04.80 :p1xr7Yhy0
たかね「…… ふふ、とうぜんでしょう。わたくしは、とけていなくなったりしない、ともうしましたよ?」
響「うん…… うん、そうだよねっ…… あはは、自分寝起きでちょっと混乱してたぞ、ごめんごめん」
たかね「まったくもう…… さあ、ひびき! びみなあさごはんを、おねがいします!」
響「まかせといて、びっくりするくらいおいしいの作ってあげるから!」
響「そうだよ、やっぱりなんかの間違いだったんだ、今までのは全部、悪い――」
響「ゆ、 め ……か。だよね、わかってたよ…… わかってたさー」
響「………… 悪い、夢、なら、もういいかげん、覚めたっていいはずだぞ……」
たかね「…… ふふ、とうぜんでしょう。わたくしは、とけていなくなったりしない、ともうしましたよ?」
響「うん…… うん、そうだよねっ…… あはは、自分寝起きでちょっと混乱してたぞ、ごめんごめん」
たかね「まったくもう…… さあ、ひびき! びみなあさごはんを、おねがいします!」
響「まかせといて、びっくりするくらいおいしいの作ってあげるから!」
響「そうだよ、やっぱりなんかの間違いだったんだ、今までのは全部、悪い――」
響「ゆ、 め ……か。だよね、わかってたよ…… わかってたさー」
響「………… 悪い、夢、なら、もういいかげん、覚めたっていいはずだぞ……」
945: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:30:51.99 :p1xr7Yhy0
【Waning Crescent / 28.9】
響(いくらカンペキだって言っても、自分だって風邪くらいひいたことはあるし)
響(お仕事の関係で、公欠扱いにしてもらったこともあるけど……)
響(………… 二日続けて学校サボったのなんて、考えてみたら、初めてかもしれないや)
響(昨日はオフにしといた、ってプロデューサーが書いてくれてたけど)
響(きょうもお休みさせてほしい、って言い出したのは、自分)
響(プロデューサーも、何も聞かないで、すぐわかったって言ってくれて……)
響(こんなことしてたって、なんにもならないのはわかってる…… わかってる、けど)
【Waning Crescent / 28.9】
響(いくらカンペキだって言っても、自分だって風邪くらいひいたことはあるし)
響(お仕事の関係で、公欠扱いにしてもらったこともあるけど……)
響(………… 二日続けて学校サボったのなんて、考えてみたら、初めてかもしれないや)
響(昨日はオフにしといた、ってプロデューサーが書いてくれてたけど)
響(きょうもお休みさせてほしい、って言い出したのは、自分)
響(プロデューサーも、何も聞かないで、すぐわかったって言ってくれて……)
響(こんなことしてたって、なんにもならないのはわかってる…… わかってる、けど)
946: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:31:21.70 :p1xr7Yhy0
響(おととい、目が覚めてから。何度も家中ひっくり返して、なにか痕跡がないか、ずっと探した)
響(…… なんにもない。ほんとに、きれいさっぱり残ってない)
響(ジェルジェムとか、たかねに直接関係ないものはいくつか見つけたけど)
響(たかねが着てた服とか靴とかはもちろん…… 使ってたお箸や歯ブラシなんかも、全部、なくなってる)
響(ピヨ子のカメラだけじゃない。自分のスマホのデータも、そこだけ抜け落ちたみたいに消えてた)
響(送信履歴まで…… みんなに送ったメールも画像も、当然、残ってないらしくて)
響(おととい、目が覚めてから。何度も家中ひっくり返して、なにか痕跡がないか、ずっと探した)
響(…… なんにもない。ほんとに、きれいさっぱり残ってない)
響(ジェルジェムとか、たかねに直接関係ないものはいくつか見つけたけど)
響(たかねが着てた服とか靴とかはもちろん…… 使ってたお箸や歯ブラシなんかも、全部、なくなってる)
響(ピヨ子のカメラだけじゃない。自分のスマホのデータも、そこだけ抜け落ちたみたいに消えてた)
響(送信履歴まで…… みんなに送ったメールも画像も、当然、残ってないらしくて)
947: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:31:50.90 :p1xr7Yhy0
響(自分の家族も、いぬ美とねこ吉、それにハム蔵は、断片的に覚えてるみたいだけど……)
響(あとのみんなは、ほとんど忘れてる。そもそも、貴音にすら会ったことないって感じになってる)
響(結局、ほかに見つけられたのって言ったら)
響(自分が選んであげた髪留めと…… なんでか残ってた、シャンプーハット。そして)
響(貴音にプレゼントするつもりで買って、クリスマスにたかねにあげた、三日月のイヤリング……)
響(………… こんなので…… 貴音が、たかねがいたことの証拠になるわけない……!)
響(自分の家族も、いぬ美とねこ吉、それにハム蔵は、断片的に覚えてるみたいだけど……)
響(あとのみんなは、ほとんど忘れてる。そもそも、貴音にすら会ったことないって感じになってる)
響(結局、ほかに見つけられたのって言ったら)
響(自分が選んであげた髪留めと…… なんでか残ってた、シャンプーハット。そして)
響(貴音にプレゼントするつもりで買って、クリスマスにたかねにあげた、三日月のイヤリング……)
響(………… こんなので…… 貴音が、たかねがいたことの証拠になるわけない……!)
948: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:32:27.31 :p1xr7Yhy0
響(昨日も今日もみんなが、なにかにつけてメールをくれる)
響(絵文字をいつもよりいっぱい使ったり、事務所とかで撮った写真を送ってくれたり……)
響(気にかけてくれてるのが、痛いくらいわかる)
響(だから、言えない。言えるわけ、ない)
響(そういうことしてほしいんじゃない、って)
響(自分のことなんてどうでもいいって、気なんかぜんぜん遣ってくれなくっていいんだって)
響(自分がみんなにしてほしいことなんて、ひとつだけ)
響(ただ、貴音の…… たかねのこと、せめて思い出してくれたら、それでいい。それだけ、なのに)
響(昨日も今日もみんなが、なにかにつけてメールをくれる)
響(絵文字をいつもよりいっぱい使ったり、事務所とかで撮った写真を送ってくれたり……)
響(気にかけてくれてるのが、痛いくらいわかる)
響(だから、言えない。言えるわけ、ない)
響(そういうことしてほしいんじゃない、って)
響(自分のことなんてどうでもいいって、気なんかぜんぜん遣ってくれなくっていいんだって)
響(自分がみんなにしてほしいことなんて、ひとつだけ)
響(ただ、貴音の…… たかねのこと、せめて思い出してくれたら、それでいい。それだけ、なのに)
949: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:33:04.13 :p1xr7Yhy0
響(結局、ここに戻ってきちゃう。昨日からずっと、堂々めぐりだ)
響(みんなに貴音のことを、思い出してもらうために)
響(もう、アイドル、一緒にできないとしても…… せめてもう一回、貴音に会うために)
響(いま、自分にできることって、なにがある?)
響(それがずっとわかんない。…………わかんないから、なにもできない)
響(結局、ここに戻ってきちゃう。昨日からずっと、堂々めぐりだ)
響(みんなに貴音のことを、思い出してもらうために)
響(もう、アイドル、一緒にできないとしても…… せめてもう一回、貴音に会うために)
響(いま、自分にできることって、なにがある?)
響(それがずっとわかんない。…………わかんないから、なにもできない)
950: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:34:35.34 :p1xr7Yhy0
【Waning Crescent / 29.3】
響「…… よし、っと」
響「お待たせみんなー、夕飯、できたぞー。おいで」
響(自分がどうだろうと、みんなのご飯はちゃんと用意してあげなきゃいけない)
いぬ美「くーん」
ねこ吉「ニャン」スタスタスタ
響(でも、準備してる間は、ほかのこと考えなくていいから…… ちょっと助かってるとこもある)
ブタ太「ブヒッ」
うさ江「……」ピョン
響「買い置きのがメインでごめんね、みんな。明日には買い物、行けると思うから」
響(買い物、か。 ……自分一人だから、持てる荷物、減っちゃうな)
【Waning Crescent / 29.3】
響「…… よし、っと」
響「お待たせみんなー、夕飯、できたぞー。おいで」
響(自分がどうだろうと、みんなのご飯はちゃんと用意してあげなきゃいけない)
いぬ美「くーん」
ねこ吉「ニャン」スタスタスタ
響(でも、準備してる間は、ほかのこと考えなくていいから…… ちょっと助かってるとこもある)
ブタ太「ブヒッ」
うさ江「……」ピョン
響「買い置きのがメインでごめんね、みんな。明日には買い物、行けると思うから」
響(買い物、か。 ……自分一人だから、持てる荷物、減っちゃうな)
951: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:35:08.72 :p1xr7Yhy0
響(ああ、でも、食材買うにしても、料理するにしても……)
響(…… ひとり分だけあればいいんだから、結局そんなに変わらないのか)
響(おとといも昨日も、自分、レトルトやインスタントのものばっかり食べてる)
響(料理すると…… 無意識に、ふたり分作っちゃいそうになるから)
響(それに気づいちゃったせいで、買い物行くのすらずるずる先延ばしにしてたけど……)
響(いいかげん、そんなことも言ってられないぞ。自分には家族がいるんだから)
響(自分用にはまだカップ麺なんかもあるから、当面はいいとして……)
響(ああ、でも、食材買うにしても、料理するにしても……)
響(…… ひとり分だけあればいいんだから、結局そんなに変わらないのか)
響(おとといも昨日も、自分、レトルトやインスタントのものばっかり食べてる)
響(料理すると…… 無意識に、ふたり分作っちゃいそうになるから)
響(それに気づいちゃったせいで、買い物行くのすらずるずる先延ばしにしてたけど……)
響(いいかげん、そんなことも言ってられないぞ。自分には家族がいるんだから)
響(自分用にはまだカップ麺なんかもあるから、当面はいいとして……)
952: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:36:00.38 :p1xr7Yhy0
響(…… だいたい、カップ麺にしても)
響(もともと自分、そうしょっちゅう食べるほうじゃなかったのに)
響(貴音が味を覚えたせいで、うちに必ずストックがある状態になっちゃって)
響(たかねがうちに来てからも、結局毎週ひとつは必ず買ってたし)
響(…………お年玉にあげたきっぷ、たかねなら絶対すぐ使うと思ってたから)
響(その分も、と思って、ちょっとよけいに買い込んでたのに…… ははっ。自分、ばかみたい)
響(たかね、今ごろ、どうしてるんだろう。無事に帰れたのかな)
響(あっちにはカップ麺なんてないだろうから、今ごろ、食べたいってだだこねてたりして)
響(週にひとつってだけでも散々ぐずったのに、それを2回もおあずけなんて――)
響(…… だいたい、カップ麺にしても)
響(もともと自分、そうしょっちゅう食べるほうじゃなかったのに)
響(貴音が味を覚えたせいで、うちに必ずストックがある状態になっちゃって)
響(たかねがうちに来てからも、結局毎週ひとつは必ず買ってたし)
響(…………お年玉にあげたきっぷ、たかねなら絶対すぐ使うと思ってたから)
響(その分も、と思って、ちょっとよけいに買い込んでたのに…… ははっ。自分、ばかみたい)
響(たかね、今ごろ、どうしてるんだろう。無事に帰れたのかな)
響(あっちにはカップ麺なんてないだろうから、今ごろ、食べたいってだだこねてたりして)
響(週にひとつってだけでも散々ぐずったのに、それを2回もおあずけなんて――)
953: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:37:28.61 :p1xr7Yhy0
響(…… そうか。もう、あの満月の夜から、2週間ちょっと経つんだ)
響(自分が毎週、カップ麺買うの、やめて…… たかねのこと、すっかり忘れて)
響(学校行って、貴音も、たかねもいない事務所に行って、レッスンしたりお仕事したりして)
響(みんなも、たかねがいないのが当たり前になってから、まだ2週間…… いや、もう2週間、か)
響(満月見るのを楽しみにしてたたかねに、見せてあげられたのはよかったけど)
響(それが最後になっちゃうって、もし知ってたら…… 絶対、連れて行かなかったのに)
響(でも考えてみたら、貴音がたかねに変わっちゃってからは、あれが最初の満月だったわけで……)
響(…… そうか。もう、あの満月の夜から、2週間ちょっと経つんだ)
響(自分が毎週、カップ麺買うの、やめて…… たかねのこと、すっかり忘れて)
響(学校行って、貴音も、たかねもいない事務所に行って、レッスンしたりお仕事したりして)
響(みんなも、たかねがいないのが当たり前になってから、まだ2週間…… いや、もう2週間、か)
響(満月見るのを楽しみにしてたたかねに、見せてあげられたのはよかったけど)
響(それが最後になっちゃうって、もし知ってたら…… 絶対、連れて行かなかったのに)
響(でも考えてみたら、貴音がたかねに変わっちゃってからは、あれが最初の満月だったわけで……)
954: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:38:00.65 :p1xr7Yhy0
響(……ああ、そうか)
響(満月の夜から、ほぼ2週間、ってことは)
響(きょうの夜が、ちょうど…… そうだ、間違いないや、新月になるんだ)
響(月が見えないのはそのせいなんだよって、ひと月くらい前、たかねに教えてあげたっけ)
響(…… どのみち何していいかわかんないなら、きっと、シンプルに考えたほうがいい)
響(もう一度、今夜、行ってみよう。あの場所に)
響(……ああ、そうか)
響(満月の夜から、ほぼ2週間、ってことは)
響(きょうの夜が、ちょうど…… そうだ、間違いないや、新月になるんだ)
響(月が見えないのはそのせいなんだよって、ひと月くらい前、たかねに教えてあげたっけ)
響(…… どのみち何していいかわかんないなら、きっと、シンプルに考えたほうがいい)
響(もう一度、今夜、行ってみよう。あの場所に)
955: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:38:36.54 :p1xr7Yhy0
響(なにか、意味があるのかもしれない)
響(自分がたかねを連れて流星群を見に行ったのは、ただの偶然だけど)
響(貴音がまだ"貴音だった"ころに、何度か一緒に星を見に行って)
響(そして、たかねとお別れしたのも同じ場所だったんだ)
響(きっとみんなは知らない、と思う。でも、たかねも、自分も…… 貴音も、よく知ってる場所)
響(それに…… 今晩がちょうど新月なのは、たまたまだとしても)
響(自分は、消えちゃったお月様を探しに行くんだ。タイミングとしてはぴったりだぞ)
響(なにか、意味があるのかもしれない)
響(自分がたかねを連れて流星群を見に行ったのは、ただの偶然だけど)
響(貴音がまだ"貴音だった"ころに、何度か一緒に星を見に行って)
響(そして、たかねとお別れしたのも同じ場所だったんだ)
響(きっとみんなは知らない、と思う。でも、たかねも、自分も…… 貴音も、よく知ってる場所)
響(それに…… 今晩がちょうど新月なのは、たまたまだとしても)
響(自分は、消えちゃったお月様を探しに行くんだ。タイミングとしてはぴったりだぞ)
956: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:39:16.45 :p1xr7Yhy0
響(もちろん、行っても何もない可能性のほうがずっと高いし……)
響(…… 何かあったらあったで、どうなるか、わかったもんじゃない)
響(だって、自分やみんなの記憶をいじったのも、たかねに関係してるものがなくなってるのも)
響(たぶん…… っていうかほぼ確実に、たかねを連れてっちゃったあいつの仕業だ)
響(そんなワケわかんないこと、一晩のうちに簡単にやっちゃうような相手なんだから)
響(たかねついでに、自分に関するみんなの記憶とかだって……)
響(むしろ―― 自分そのものを消しちゃうこと、だって、きっと、楽勝なはず)
響(もちろん、行っても何もない可能性のほうがずっと高いし……)
響(…… 何かあったらあったで、どうなるか、わかったもんじゃない)
響(だって、自分やみんなの記憶をいじったのも、たかねに関係してるものがなくなってるのも)
響(たぶん…… っていうかほぼ確実に、たかねを連れてっちゃったあいつの仕業だ)
響(そんなワケわかんないこと、一晩のうちに簡単にやっちゃうような相手なんだから)
響(たかねついでに、自分に関するみんなの記憶とかだって……)
響(むしろ―― 自分そのものを消しちゃうこと、だって、きっと、楽勝なはず)
957: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:39:57.12 :p1xr7Yhy0
響(でも、そうだとしても)
響(自分には、ほかに思いつく手がかりはないし)
響(それにウジウジ引きこもってたって、なんにも変わらないんだ)
響(……なんか、考えてたらムカムカしてきたぞ。この状況にも、自分自身にも!)
響(なんで自分、カンペキなんて言っといて、あっさり尻尾巻いて引き下がっちゃってるんだ?)
響(貴音のこと覚えてるのが、世界中でホントに自分だけなら――)
響(貴音のためになにかできるのだって、自分ひとりしかいないんじゃないか!)
響(でも、そうだとしても)
響(自分には、ほかに思いつく手がかりはないし)
響(それにウジウジ引きこもってたって、なんにも変わらないんだ)
響(……なんか、考えてたらムカムカしてきたぞ。この状況にも、自分自身にも!)
響(なんで自分、カンペキなんて言っといて、あっさり尻尾巻いて引き下がっちゃってるんだ?)
響(貴音のこと覚えてるのが、世界中でホントに自分だけなら――)
響(貴音のためになにかできるのだって、自分ひとりしかいないんじゃないか!)
961: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:24:25.55 :p1xr7Yhy0
【すねーく・れっぐす】
【すねーく・れっぐす】
962: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:24:53.71 :p1xr7Yhy0
※※※
これらは番外編であり、いわゆる埋めネタです。
いろいろな事情で本編からは省くことにした没ネタや
本編終了後の日常ネタ的なもの等等、時系列も統一されていないごった煮です。
パラレルということで、箸休め程度にお楽しみください。
また、性質上、次スレ読了後にお読みになることを強くおすすめします。
(なお、言うまでもないことかとは思いますが、
snake legsでは「蛇足」の意味になりませんのでご注意ください。)
※※※
※※※
これらは番外編であり、いわゆる埋めネタです。
いろいろな事情で本編からは省くことにした没ネタや
本編終了後の日常ネタ的なもの等等、時系列も統一されていないごった煮です。
パラレルということで、箸休め程度にお楽しみください。
また、性質上、次スレ読了後にお読みになることを強くおすすめします。
(なお、言うまでもないことかとは思いますが、
snake legsでは「蛇足」の意味になりませんのでご注意ください。)
※※※
963: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:25:57.75 :p1xr7Yhy0
【千早ちゃんはどうしてそうなっちゃったの?】
※ >>104
春香「っ、あいったたたぁ……」
千早「どうしたの春香、大丈夫!? 怪我はしていない!?」
春香「あっ、ち、千早ちゃん! あのね、幼女が、古風で! 銀髪の、ていうか貴音さんが、ちっちゃくなって!」
千早「どうしたの春香、大丈夫!? 頭を打っていない!?」
春香「ほ、ほんとなんだってば!」
千早「……待って、春香。今、四条さんが小さくなった、と言ったのよね?」
春香「うん、うんっ、そう! よかった千早ちゃん、信じてくれ――」
千早「具体的にはどのあたりが小さくなっていたの?」
春香「え?」
千早「とても大事なことなの、答えて。やはりあの立派なお尻? それともひょっとして」
春香「何言ってるの千早ちゃん!? 頭打ってないよね!?」
【千早ちゃんはどうしてそうなっちゃったの?】
※ >>104
春香「っ、あいったたたぁ……」
千早「どうしたの春香、大丈夫!? 怪我はしていない!?」
春香「あっ、ち、千早ちゃん! あのね、幼女が、古風で! 銀髪の、ていうか貴音さんが、ちっちゃくなって!」
千早「どうしたの春香、大丈夫!? 頭を打っていない!?」
春香「ほ、ほんとなんだってば!」
千早「……待って、春香。今、四条さんが小さくなった、と言ったのよね?」
春香「うん、うんっ、そう! よかった千早ちゃん、信じてくれ――」
千早「具体的にはどのあたりが小さくなっていたの?」
春香「え?」
千早「とても大事なことなの、答えて。やはりあの立派なお尻? それともひょっとして」
春香「何言ってるの千早ちゃん!? 頭打ってないよね!?」
964: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:26:43.55 :p1xr7Yhy0
【ずー】
たかね「ひびき、ひびき。あすは、おでかけするおやくそくですよ」
響「あー、そうだったね。たかねはどこに行きたいの? どうせラーメン屋さんとか……」
たかね「わたくし、どうぶつへんへいきたいです!」
響「は、はぁ!? ええー、この寒いのにわざわざ動物園なんて……」
たかね「ではひびきはこのさむぞらに、すいぞくかんのほうがよいのですか?」
響「なんでその二択しかないの?」
【ずー】
たかね「ひびき、ひびき。あすは、おでかけするおやくそくですよ」
響「あー、そうだったね。たかねはどこに行きたいの? どうせラーメン屋さんとか……」
たかね「わたくし、どうぶつへんへいきたいです!」
響「は、はぁ!? ええー、この寒いのにわざわざ動物園なんて……」
たかね「ではひびきはこのさむぞらに、すいぞくかんのほうがよいのですか?」
響「なんでその二択しかないの?」
965: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:27:14.73 :p1xr7Yhy0
響「とかなんとか言って、結局動物園来たけど…… やっぱりめちゃくちゃ寒いぞぉぉ!!」
たかね「なさけない。うちなーんちゅは、そのていどなのですか?」
響「ううー…… そんなこと言ったって、寒いものは寒いんだもん……」
たかね「あっ、ひびき! みてください、とらさんです!」
響「お、おおー、うん、でっかいなぁ、かわいい、ああ寒いぃ……」
たかね「こちらには、らいおんさんが!」
響「ああ、たてがみ暖かそうでいいなあ…… 寒いぞ、うん、だよね、やっぱり寒いよなキミも……」
たかね「ひびき、ひびき!? ふたりのせかいにはいらないでください!」
響「とかなんとか言って、結局動物園来たけど…… やっぱりめちゃくちゃ寒いぞぉぉ!!」
たかね「なさけない。うちなーんちゅは、そのていどなのですか?」
響「ううー…… そんなこと言ったって、寒いものは寒いんだもん……」
たかね「あっ、ひびき! みてください、とらさんです!」
響「お、おおー、うん、でっかいなぁ、かわいい、ああ寒いぃ……」
たかね「こちらには、らいおんさんが!」
響「ああ、たてがみ暖かそうでいいなあ…… 寒いぞ、うん、だよね、やっぱり寒いよなキミも……」
たかね「ひびき、ひびき!? ふたりのせかいにはいらないでください!」
966: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:27:46.00 :p1xr7Yhy0
響「あれ…… たかね? ちょっ、たかね、どこ行ったの!?」
響「ああもう! きっと自分が話してる間に、ほかの動物に気を取られたかなんかしたんだ……」
< ピンポンパンポーン
『ご来園のお客様に、迷子のお知らせを致します』
響「あっ、さてはこれ、たかねだな? まったく、どこまで迎えに行けばいいんだろ」
『えー…… 髪が黒くて、つの……? が、生えていて」
響「あれ…… たかね? ちょっ、たかね、どこ行ったの!?」
響「ああもう! きっと自分が話してる間に、ほかの動物に気を取られたかなんかしたんだ……」
< ピンポンパンポーン
『ご来園のお客様に、迷子のお知らせを致します』
響「あっ、さてはこれ、たかねだな? まったく、どこまで迎えに行けばいいんだろ」
『えー…… 髪が黒くて、つの……? が、生えていて」
967: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:28:36.96 :p1xr7Yhy0
響「あれっ、髪が黒? そしたらたかねのことじゃないなぁ…… って、つの?」
『ええ、と、…… 年の割に、ちっちゃい? がなは、ひびきちゃん』
響「」
『お連れ様がお待ちです、正門そばの園内事務所まで――』
響「…………」
響「…… たぁかねぇぇえええ!!!!」ダッ
響「あれっ、髪が黒? そしたらたかねのことじゃないなぁ…… って、つの?」
『ええ、と、…… 年の割に、ちっちゃい? がなは、ひびきちゃん』
響「」
『お連れ様がお待ちです、正門そばの園内事務所まで――』
響「…………」
響「…… たぁかねぇぇえええ!!!!」ダッ
968: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:29:04.58 :p1xr7Yhy0
響「勝手にうろついたらダメでしょ、たかね! きょうはすぐ見つかったからよかったけど……」
たかね「……どうですか、ひびき。すこしは、きがはれましたか?」
響「え?」
たかね「おせっかいかともおもいましたが…… さいきん、ひびきのげんきがないように、おもいまして」
響「…… たかね、動物園に来たいって言ったの、もしかして自分のためだったの?」
たかね「い、いえ、わたくし、いろいろなどうぶつをみてみたかったので! けっしてひびきのためというわけでは!」
響(この寒いのに、水族館か動物園か二択って、ちょっとおかしいとは思ったけど……)
響「……もう、そんなとこ、やっぱり貴音だなぁ」ナデナデ
たかね「あ、あの、その……」
響「勝手にうろついたらダメでしょ、たかね! きょうはすぐ見つかったからよかったけど……」
たかね「……どうですか、ひびき。すこしは、きがはれましたか?」
響「え?」
たかね「おせっかいかともおもいましたが…… さいきん、ひびきのげんきがないように、おもいまして」
響「…… たかね、動物園に来たいって言ったの、もしかして自分のためだったの?」
たかね「い、いえ、わたくし、いろいろなどうぶつをみてみたかったので! けっしてひびきのためというわけでは!」
響(この寒いのに、水族館か動物園か二択って、ちょっとおかしいとは思ったけど……)
響「……もう、そんなとこ、やっぱり貴音だなぁ」ナデナデ
たかね「あ、あの、その……」
969: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:29:25.53 :p1xr7Yhy0
響「おかげでばっちり元気になったぞ、自分! たかね、売店でソフトクリーム食べてかない?」
たかね「そふとくりーむ…… なにやらすてきなおなまえですが、それはいったい!?」
響「ちょっと違うけど、アイスクリームの親戚みたいなやつだよ」
たかね「あいす!! はいっ、たべたいです! ぜひたべましょう!」
響「よーし、決まり! 行こっ!」
響「…… さ、寒いぞぉぉぉぉ……!」ブルブル
たかね「か…… かんがえてみれば、いえ、かんがえずとも、あたりまえでした……」ガタガタ
響「おかげでばっちり元気になったぞ、自分! たかね、売店でソフトクリーム食べてかない?」
たかね「そふとくりーむ…… なにやらすてきなおなまえですが、それはいったい!?」
響「ちょっと違うけど、アイスクリームの親戚みたいなやつだよ」
たかね「あいす!! はいっ、たべたいです! ぜひたべましょう!」
響「よーし、決まり! 行こっ!」
響「…… さ、寒いぞぉぉぉぉ……!」ブルブル
たかね「か…… かんがえてみれば、いえ、かんがえずとも、あたりまえでした……」ガタガタ
970: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:29:54.81 :p1xr7Yhy0
【千早さんはどうしてそうなっちゃったの…?】
千早「四じ…… たかねちゃん。今、少しいいかしら」
たかね「おや、ちはや。どうしたのですか?」
千早「ちょっと教えてほしいことがあるの。時間はかからないから」
たかね「わたくしでよろしければ、なんでもおききください!」
千早「ふふっ、ありがとう。じゃあ…… たかねちゃんの胸囲はいくつあるの?」
たかね「きょうい? きょういとはなんのことですか?」
千早「ああ、胸囲っていうのはお胸の大きさのことよ」
たかね「おむね、ですか…… じつはわたくし、はかったことがないのです」
千早「そうなの? ちょうどよかったわ、私、今日は思いがけず偶然たまたまここにメジャーを持っていて」
美希「………… ち、千早、さん……? たかね相手に、なにしてるの……?」
千早「」
たかね「きゃははっ! く、くすぐったいです、ちはや! ……ちはや?」
【千早さんはどうしてそうなっちゃったの…?】
千早「四じ…… たかねちゃん。今、少しいいかしら」
たかね「おや、ちはや。どうしたのですか?」
千早「ちょっと教えてほしいことがあるの。時間はかからないから」
たかね「わたくしでよろしければ、なんでもおききください!」
千早「ふふっ、ありがとう。じゃあ…… たかねちゃんの胸囲はいくつあるの?」
たかね「きょうい? きょういとはなんのことですか?」
千早「ああ、胸囲っていうのはお胸の大きさのことよ」
たかね「おむね、ですか…… じつはわたくし、はかったことがないのです」
千早「そうなの? ちょうどよかったわ、私、今日は思いがけず偶然たまたまここにメジャーを持っていて」
美希「………… ち、千早、さん……? たかね相手に、なにしてるの……?」
千早「」
たかね「きゃははっ! く、くすぐったいです、ちはや! ……ちはや?」
971: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:30:45.43 :p1xr7Yhy0
【あほのこ】
※ >>463
たかね「どこにもつもっていないではありませんか! だましたのですね!?」
響「…… たかね、これでひっかかるの何度目だっけ。そろそろ気づこうよ」
たかね「ああっ!? いまのあいだに、おふとんをあげてしまうとは! なんとひれつな!」
響「ここまでチョロいとかえって不安になってくるぞ、自分」
たかね「おに! あくま! いけず! ひびき!!」
響「はいはい、まず顔洗っておい……」
響「…………ちょっと待って!? "ひびき"って悪口あつかい!?」
たかね「いささか、おそすぎませんか?」
響「否定しないの!?」
【あほのこ】
※ >>463
たかね「どこにもつもっていないではありませんか! だましたのですね!?」
響「…… たかね、これでひっかかるの何度目だっけ。そろそろ気づこうよ」
たかね「ああっ!? いまのあいだに、おふとんをあげてしまうとは! なんとひれつな!」
響「ここまでチョロいとかえって不安になってくるぞ、自分」
たかね「おに! あくま! いけず! ひびき!!」
響「はいはい、まず顔洗っておい……」
響「…………ちょっと待って!? "ひびき"って悪口あつかい!?」
たかね「いささか、おそすぎませんか?」
響「否定しないの!?」
972: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:31:13.65 :p1xr7Yhy0
【我那覇響と四条貴音の場合:えくすとら】
律子「あれ? あんたたち、もうちょっとでレッスンの時間でしょう?」
貴音「はい、そうなのですが…… 響、律子嬢の言う通りですよ、そろそろ出立しなくては」
響「だよね、でもちょっと待って、えっと…… 台本、どこに置いたかなぁ……」
貴音「まったく、なぜ前もって準備しておかないのですか」
響「うぅ、ご、ごめん…… すぐ見つけるからさー」
千早「我那覇さん、これ? ソファのところにあったのだけれど」
響「あ、それだー! ありがと千早! ごめんごめん、お待たせ貴音。さ、行こっ」
貴音「ええ、参りまし…… ……あの、響?」
響「ん? どうしたの、早くー」
貴音「その…… これは、いったい?」
響「急に黙っちゃってヘンなの。ほら、いつも通り手を…… っ!?」
【我那覇響と四条貴音の場合:えくすとら】
律子「あれ? あんたたち、もうちょっとでレッスンの時間でしょう?」
貴音「はい、そうなのですが…… 響、律子嬢の言う通りですよ、そろそろ出立しなくては」
響「だよね、でもちょっと待って、えっと…… 台本、どこに置いたかなぁ……」
貴音「まったく、なぜ前もって準備しておかないのですか」
響「うぅ、ご、ごめん…… すぐ見つけるからさー」
千早「我那覇さん、これ? ソファのところにあったのだけれど」
響「あ、それだー! ありがと千早! ごめんごめん、お待たせ貴音。さ、行こっ」
貴音「ええ、参りまし…… ……あの、響?」
響「ん? どうしたの、早くー」
貴音「その…… これは、いったい?」
響「急に黙っちゃってヘンなの。ほら、いつも通り手を…… っ!?」
973: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:31:58.04 :p1xr7Yhy0
響(う、うぎゃー!? たかね連れて歩いてたときのクセでつい無意識にっ!!)
亜美「ちょっと見ましたオクサマ? 今めっちゃ自然に手ぇ握らせようとしましたザマスよ」
響「なんなのざますって!? どういうキャラなのさそれ!?」
真美「んっふっふ~…… ひびきんってば、けっこーガンガンいっちゃう系?」
響「な、な、なっ、そんな、別にそういうんじゃないってば!」
貴音「はて…… "そういうの"とは、どういうのを指すのですか、響」
響「話がややこしくなるから貴音はちょっと黙っててね!?」
美希「あふ…… そーいえばさっき、響が『いつもどおり』って言ってた気がするの」
雪歩「や、やっぱり? あれ聞き違いじゃなかったんだ……」
やよい「わたしも聞きましたー! 響さんと貴音さん、なかよしさんですねっ」
あずさ「あら~? なにか面白そうなお話の気配がするかも~、うふふふ」
響(……まずい! この流れはまずいって自分のカンが言ってるぞ、さっさと出てかないと!)
響(う、うぎゃー!? たかね連れて歩いてたときのクセでつい無意識にっ!!)
亜美「ちょっと見ましたオクサマ? 今めっちゃ自然に手ぇ握らせようとしましたザマスよ」
響「なんなのざますって!? どういうキャラなのさそれ!?」
真美「んっふっふ~…… ひびきんってば、けっこーガンガンいっちゃう系?」
響「な、な、なっ、そんな、別にそういうんじゃないってば!」
貴音「はて…… "そういうの"とは、どういうのを指すのですか、響」
響「話がややこしくなるから貴音はちょっと黙っててね!?」
美希「あふ…… そーいえばさっき、響が『いつもどおり』って言ってた気がするの」
雪歩「や、やっぱり? あれ聞き違いじゃなかったんだ……」
やよい「わたしも聞きましたー! 響さんと貴音さん、なかよしさんですねっ」
あずさ「あら~? なにか面白そうなお話の気配がするかも~、うふふふ」
響(……まずい! この流れはまずいって自分のカンが言ってるぞ、さっさと出てかないと!)
974: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:32:36.27 :p1xr7Yhy0
響「そ、そうだほら…… その、そう自分たちレッスンに遅れちゃうからね!?」
春香「えー、響ちゃーん、そんなこと言わないでもうちょっと詳しく……」
響「貴音っ、ぼーっとしてないでさあ行こうすぐ行こう急いで逃げよう!!」
貴音「は…… きゃっ、あ、あの、響っ!?」
響「じゃーねみんなっお疲れーっ!!」
バタバタバタ
真「けっきょく思いっきり手つないで行くんじゃないか」
伊織「ツッコんだら負けよ。ほっときなさい」
P「お疲れさまで…… お、音無さん!? 鼻血ですか、大丈夫ですか!?」
小鳥「………… 生ぎでて…… 生ぎでで、よがっだでず……」
響「そ、そうだほら…… その、そう自分たちレッスンに遅れちゃうからね!?」
春香「えー、響ちゃーん、そんなこと言わないでもうちょっと詳しく……」
響「貴音っ、ぼーっとしてないでさあ行こうすぐ行こう急いで逃げよう!!」
貴音「は…… きゃっ、あ、あの、響っ!?」
響「じゃーねみんなっお疲れーっ!!」
バタバタバタ
真「けっきょく思いっきり手つないで行くんじゃないか」
伊織「ツッコんだら負けよ。ほっときなさい」
P「お疲れさまで…… お、音無さん!? 鼻血ですか、大丈夫ですか!?」
小鳥「………… 生ぎでて…… 生ぎでで、よがっだでず……」
975: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:33:30.30 :p1xr7Yhy0
【過ぎたるは】
貴音「あぁ…… まさに、至福です……」
響(ちっちゃかったころもだけど、ホントにいい顔してココア飲むんだから。ふふ)
貴音「改めて実感致しました。ここあにはやはり、ましゅまろがなくてはなりません」
響「それも、ひとつじゃなくてふたつ以上、でしょ?」
貴音「もちろんです。ところで、響」
響「なあに?」
貴音「…… このうえ、おやつにお善哉とお汁粉をいただくことになるのでしょうか?」
響「……………うん、合わないし、甘味に甘味はキッツいなー。夕ご飯のあとにしよう」
【過ぎたるは】
貴音「あぁ…… まさに、至福です……」
響(ちっちゃかったころもだけど、ホントにいい顔してココア飲むんだから。ふふ)
貴音「改めて実感致しました。ここあにはやはり、ましゅまろがなくてはなりません」
響「それも、ひとつじゃなくてふたつ以上、でしょ?」
貴音「もちろんです。ところで、響」
響「なあに?」
貴音「…… このうえ、おやつにお善哉とお汁粉をいただくことになるのでしょうか?」
響「……………うん、合わないし、甘味に甘味はキッツいなー。夕ご飯のあとにしよう」
976: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:33:58.03 :p1xr7Yhy0
【タイトルに忠実に】
貴音「そういえば、わたくし秘蔵のらぁめんが、確かまだ戸棚に入っておりましたね」
響「え? 貴音秘蔵の…… って、ひょっとして、カップ麺?」
貴音「ええ、そうですよ」
響「……だいぶ前に買ってきてた、限定ものだとかっていう?」
貴音「その通りです。これは特別な時に食べるのだ、とわたくし、申しましたでしょう」
響「あ、ああ、そうだったね、ところでさ、貴音」
貴音「ひとり占めするつもりでしたが、たいへん気分がよいので、響にも分けて差し上げます♪」
響「あのね、貴音…… ほかでもない、そのカップ麺についてのことなんだけどね?」
【タイトルに忠実に】
貴音「そういえば、わたくし秘蔵のらぁめんが、確かまだ戸棚に入っておりましたね」
響「え? 貴音秘蔵の…… って、ひょっとして、カップ麺?」
貴音「ええ、そうですよ」
響「……だいぶ前に買ってきてた、限定ものだとかっていう?」
貴音「その通りです。これは特別な時に食べるのだ、とわたくし、申しましたでしょう」
響「あ、ああ、そうだったね、ところでさ、貴音」
貴音「ひとり占めするつもりでしたが、たいへん気分がよいので、響にも分けて差し上げます♪」
響「あのね、貴音…… ほかでもない、そのカップ麺についてのことなんだけどね?」
977: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:34:48.62 :p1xr7Yhy0
貴音「はい?」
響「そういうわけでね、もうないの」
貴音「…… はい?」
響「もう、ないんだよ、あれ」
貴音「…………響が、わたくしに黙って、食したのですね?」
響「ちがうよ」
貴音「ではなぜなくなったのです!?」
響「貴音…… じゃなくて、たかねが、ね。食べちゃったの」
貴音「なななな何を言っているのですか、響、だ、だいじ、だいじょうぶ、です、か」
響「貴音こそ大丈夫? 目が泳ぎまくってるんだけど……」
貴音「…………」ワナワナワナ
響「ちょ、ちょっと、貴音? ショックなのはわかるけど…… 聞いてる? ねえ、貴音、貴音――」
貴音「はい?」
響「そういうわけでね、もうないの」
貴音「…… はい?」
響「もう、ないんだよ、あれ」
貴音「…………響が、わたくしに黙って、食したのですね?」
響「ちがうよ」
貴音「ではなぜなくなったのです!?」
響「貴音…… じゃなくて、たかねが、ね。食べちゃったの」
貴音「なななな何を言っているのですか、響、だ、だいじ、だいじょうぶ、です、か」
響「貴音こそ大丈夫? 目が泳ぎまくってるんだけど……」
貴音「…………」ワナワナワナ
響「ちょ、ちょっと、貴音? ショックなのはわかるけど…… 聞いてる? ねえ、貴音、貴音――」
978: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:35:30.85 :p1xr7Yhy0
響「貴音!?」
貴音「めんようなーっ!」
響「貴音!?」
貴音「めんようなーっ!」
979: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:36:10.86 :p1xr7Yhy0
響「貴音!?」たかね「めんような!」
【すねーく・れっぐす】 おしまい。
響「貴音!?」たかね「めんような!」
【すねーく・れっぐす】 おしまい。
980: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:36:29.98 :p1xr7Yhy0
…………本当におしまい?
…………本当におしまい?
981: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:37:01.76 :p1xr7Yhy0
982: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:37:53.31 :p1xr7Yhy0
【りばーさる・りはーさる】
【りばーさる・りはーさる】
983: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:38:27.83 :p1xr7Yhy0
貴音(…… 朝、ですね)
貴音(本日は、ひさびさのおふです。存分に羽を伸ばすと致しましょう)
貴音(それはそうと、響は…… ああ、やはりもう起き出しているようですね)
貴音(そうです、本日は響のつくる朝食がいただけるのでした! ふふっ、わたくしは果報者です)
貴音(すぐに起きてもよいですが…… いま少し、べっどのぬくもりを堪能してから……)
<ガシャーン
貴音「っ!?」ガバ
貴音(…… 朝、ですね)
貴音(本日は、ひさびさのおふです。存分に羽を伸ばすと致しましょう)
貴音(それはそうと、響は…… ああ、やはりもう起き出しているようですね)
貴音(そうです、本日は響のつくる朝食がいただけるのでした! ふふっ、わたくしは果報者です)
貴音(すぐに起きてもよいですが…… いま少し、べっどのぬくもりを堪能してから……)
<ガシャーン
貴音「っ!?」ガバ
984: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:39:02.08 :p1xr7Yhy0
貴音「どうしました、何があったのですか、響! 無事で――」
ひびき「あれっ、ここどこ……? それに、おねえさん、だれ?」
貴音「!?」
貴音(口元からのぞく八重歯、小麦色の肌…… 聞き紛うはずもない、独特のいんとねえしょん……)
貴音(それに、腰より下まで届く豊かな黒髪…… なによりこの、碧く澄みきった瞳……!)
貴音「………… まさか…… 貴女は、響、なのですか!?」
ひびき「おじいー? おばあ、いないの……? いぬみどこ!? う、うぁ、うえぇ……」
貴音「ちょっ、あの、待っ――」
ひびき「うぎゃー! あんまー! にぃにー、たすけてぇー! うわあああぁーん!!」
貴音「ああ、どうすれば!? と、ともかく落ち着いてください! 泣かないで、ね、よしよし……」
貴音「どうしました、何があったのですか、響! 無事で――」
ひびき「あれっ、ここどこ……? それに、おねえさん、だれ?」
貴音「!?」
貴音(口元からのぞく八重歯、小麦色の肌…… 聞き紛うはずもない、独特のいんとねえしょん……)
貴音(それに、腰より下まで届く豊かな黒髪…… なによりこの、碧く澄みきった瞳……!)
貴音「………… まさか…… 貴女は、響、なのですか!?」
ひびき「おじいー? おばあ、いないの……? いぬみどこ!? う、うぁ、うえぇ……」
貴音「ちょっ、あの、待っ――」
ひびき「うぎゃー! あんまー! にぃにー、たすけてぇー! うわあああぁーん!!」
貴音「ああ、どうすれば!? と、ともかく落ち着いてください! 泣かないで、ね、よしよし……」
985: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:39:28.97 :p1xr7Yhy0
ひびき「ずびっ…… じぶん、な"いてない、もん。かんぺき、だもん」
貴音「ええ、そうです、偉いですよ。ところで…… 貴女のお名前を、わたくしに教えてくれませんか?」
ひびき「えっと、ひびき…… がなは、ひびき。ごさいだぞ…… じゃない、ごさい、です」
貴音「やはりそうなのですか…… とても良い名ですね、ひびき」
ひびき「えへへー、そうでしょ? じぶんもすきなの!」
ひびき「ずびっ…… じぶん、な"いてない、もん。かんぺき、だもん」
貴音「ええ、そうです、偉いですよ。ところで…… 貴女のお名前を、わたくしに教えてくれませんか?」
ひびき「えっと、ひびき…… がなは、ひびき。ごさいだぞ…… じゃない、ごさい、です」
貴音「やはりそうなのですか…… とても良い名ですね、ひびき」
ひびき「えへへー、そうでしょ? じぶんもすきなの!」
986: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:40:09.54 :p1xr7Yhy0
ひびき「ねえ、どうしてかぞくいないの? たかねはいぬとかねことか、きらいなの?」
貴音「い、いえ、特にそういうわけではないのですが……」
ひびき「それにたかね、ひとりでくらしてるの? あんまーは? おばぁとかは?」
貴音「よいですか、ひびき。人にはそれぞれ、"ひみつ"がたくさんあるのですよ」
ひびき「ひみつ?」
ひびき「ねえ、どうしてかぞくいないの? たかねはいぬとかねことか、きらいなの?」
貴音「い、いえ、特にそういうわけではないのですが……」
ひびき「それにたかね、ひとりでくらしてるの? あんまーは? おばぁとかは?」
貴音「よいですか、ひびき。人にはそれぞれ、"ひみつ"がたくさんあるのですよ」
ひびき「ひみつ?」
987: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:40:50.56 :p1xr7Yhy0
ひびき「たかね…… あのね、じぶん、おなかすいちゃった」
貴音「おや、これはしたり! 少々お待ちください、すぐ用意しますからね」
貴音「どうです、ひびき。これこそは人類の誇る至宝のひとつ、らぁめんです!」
ひびき「おいしい! でもじぶん、めんなら、そーきそばがいちばんすきだぞ!」
貴音「ひびき。お尻を出しなさい」
ひびき「あいっ!?」
貴音「悪い子には、お尻ぺんぺんです。さあ。はやく」
ひびき「たかね…… あのね、じぶん、おなかすいちゃった」
貴音「おや、これはしたり! 少々お待ちください、すぐ用意しますからね」
貴音「どうです、ひびき。これこそは人類の誇る至宝のひとつ、らぁめんです!」
ひびき「おいしい! でもじぶん、めんなら、そーきそばがいちばんすきだぞ!」
貴音「ひびき。お尻を出しなさい」
ひびき「あいっ!?」
貴音「悪い子には、お尻ぺんぺんです。さあ。はやく」
988: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:41:28.31 :p1xr7Yhy0
P「確かに見た目はよく似てるけど…… その子、本当に響なのか?」
貴音「はい、おそらくは。いかがしたものかと思い、とりあえずは事務所まで一緒に……」
小鳥「はーいひびきちゃん、おねえさん怖くないからねー、まずはお写真とビデオ撮らせてねー」
ひびき「う、うとぅるさん……」ガクガク
貴音「小鳥嬢!?」
P「ちょっ、音無さん!? めちゃくちゃ怯えてるじゃないですか! やめてくださいよ!」
真美「ねえねえ、亜美。真美はこれお姫ちんがカンケーしてるとニラんでるんだけど、どーよ」ヒソヒソ
亜美「間違いないね。お姫ちん、ひびきんが好きすぎて、黒まほーかなんかでコドモにしちゃったんだよ」ヒソヒソ
貴音「二人ともわたくしを一体なんだと思っているのです!?」
P「確かに見た目はよく似てるけど…… その子、本当に響なのか?」
貴音「はい、おそらくは。いかがしたものかと思い、とりあえずは事務所まで一緒に……」
小鳥「はーいひびきちゃん、おねえさん怖くないからねー、まずはお写真とビデオ撮らせてねー」
ひびき「う、うとぅるさん……」ガクガク
貴音「小鳥嬢!?」
P「ちょっ、音無さん!? めちゃくちゃ怯えてるじゃないですか! やめてくださいよ!」
真美「ねえねえ、亜美。真美はこれお姫ちんがカンケーしてるとニラんでるんだけど、どーよ」ヒソヒソ
亜美「間違いないね。お姫ちん、ひびきんが好きすぎて、黒まほーかなんかでコドモにしちゃったんだよ」ヒソヒソ
貴音「二人ともわたくしを一体なんだと思っているのです!?」
989: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:41:56.19 :p1xr7Yhy0
あずさ「あらあら…… ほんとにそっくり。可愛いですね~、響ちゃんの親戚の子ですか?」
律子「あずささん、話聞いてましたか!? この子が響本人なんですよ!?」
春香「かーわーいーいー!! ちっちゃかった響ちゃんがもっとちっちゃくなったらもっとかわいいぃー!!」
やよい「……う? 千早さん、どうしたんですかー? 寒いんですか?」
千早「いいえ、大丈夫よ高槻さん。新たな世界が開けそうなだけ。これはいわば、武者震い」ブルブル
伊織(いざという時はアレ止めなさいよ、真)
真(え、ごめん。ボク今の千早をどうにかできる自信ないんだけど)
雪歩「ねえひびきちゃん四条さんと一緒に住んでるんでしょちょっとお話詳しく聞かせてほしいなねえねえねえねえ」
美希「もー、なんなの、みんなうるさいの…… ひびき、ミキといっしょにソファいこ?」
ひびき「あいえなー! あきさみよー!!」ガタガタガタ
亜美「マズいよ真美、お姫ちんよりヤバいメンツがちょこちょこいるよーな気がするよ」ヒソヒソ
真美「ちびっ子ひびきんのパゥアーをナメてたね…… ま、あとはがんばってね、お姫ちん」ヒソヒソ
貴音「二人ともわたくしに一体どうしろというのです!?」
あずさ「あらあら…… ほんとにそっくり。可愛いですね~、響ちゃんの親戚の子ですか?」
律子「あずささん、話聞いてましたか!? この子が響本人なんですよ!?」
春香「かーわーいーいー!! ちっちゃかった響ちゃんがもっとちっちゃくなったらもっとかわいいぃー!!」
やよい「……う? 千早さん、どうしたんですかー? 寒いんですか?」
千早「いいえ、大丈夫よ高槻さん。新たな世界が開けそうなだけ。これはいわば、武者震い」ブルブル
伊織(いざという時はアレ止めなさいよ、真)
真(え、ごめん。ボク今の千早をどうにかできる自信ないんだけど)
雪歩「ねえひびきちゃん四条さんと一緒に住んでるんでしょちょっとお話詳しく聞かせてほしいなねえねえねえねえ」
美希「もー、なんなの、みんなうるさいの…… ひびき、ミキといっしょにソファいこ?」
ひびき「あいえなー! あきさみよー!!」ガタガタガタ
亜美「マズいよ真美、お姫ちんよりヤバいメンツがちょこちょこいるよーな気がするよ」ヒソヒソ
真美「ちびっ子ひびきんのパゥアーをナメてたね…… ま、あとはがんばってね、お姫ちん」ヒソヒソ
貴音「二人ともわたくしに一体どうしろというのです!?」
990: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:42:24.89 :p1xr7Yhy0
貴音「よいですか、ひびき? 小鳥嬢や高木殿の言いつけを、ちゃんと聞くのですよ」
ひびき「うんっ、だいじょうぶだぞ! じぶん、かんぺきだもん!」
貴音「ふふ、その様子なら心配なさそうですね。では、行って参ります」
ひびき「いってらっしゃーい! たかね、きをつけてねー!」
ひびき「ねえねえ、ことり。ことりっておなまえなのに、おうむとか、かわないの?」
小鳥「うーん、一人暮らしだとなかなか難しいのよねえ」
ひびき「えっ、ことりもかぞく、いないの? ひとりでおうちにすんでたら、さびしくない?」
小鳥「…………」
小鳥「ガフッ、ゴハァッ」
ひびき「うぎゃーっ!?」
高木「我那…… ひびき君、こちらへおいで。それ以上は音無君が危ない」
貴音「よいですか、ひびき? 小鳥嬢や高木殿の言いつけを、ちゃんと聞くのですよ」
ひびき「うんっ、だいじょうぶだぞ! じぶん、かんぺきだもん!」
貴音「ふふ、その様子なら心配なさそうですね。では、行って参ります」
ひびき「いってらっしゃーい! たかね、きをつけてねー!」
ひびき「ねえねえ、ことり。ことりっておなまえなのに、おうむとか、かわないの?」
小鳥「うーん、一人暮らしだとなかなか難しいのよねえ」
ひびき「えっ、ことりもかぞく、いないの? ひとりでおうちにすんでたら、さびしくない?」
小鳥「…………」
小鳥「ガフッ、ゴハァッ」
ひびき「うぎゃーっ!?」
高木「我那…… ひびき君、こちらへおいで。それ以上は音無君が危ない」
991: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:43:03.62 :p1xr7Yhy0
貴音「動物園…… ですか?」
ひびき「うちなーよりずーっとおおきいのがあるんでしょ? たかね、おねがい、つれてって!」
貴音(はて…… 困りました、本来なら響のほうがよほど詳しいはずですが……)
ひびき「なんでだめなの!? じぶん、はいってみたい! いこうよたかねぇー!」
貴音「な、なんででも、絶対に駄目です。あの館だけはいけません」
ひびき「やだやだーっ!! せっかくきたんだからぜんぶみたいぞー!」
貴音「聞き分けなさい、ひびき。世の中にはこれ以上の理不尽など、いくらでもあるのですよ」
ひびき「う…… うぎゃー!! たかねのけちんぼー!! ばがー!! うわあぁぁん!!」
貴音(ひびきの涙を見るのは胸が痛みますが…… 心を鬼にするのです、四条貴音……!)
貴音(爬虫類館、など…… 絶対にあれがいるに決まっております! そこだけはなりません!!)ガクガク
貴音「動物園…… ですか?」
ひびき「うちなーよりずーっとおおきいのがあるんでしょ? たかね、おねがい、つれてって!」
貴音(はて…… 困りました、本来なら響のほうがよほど詳しいはずですが……)
ひびき「なんでだめなの!? じぶん、はいってみたい! いこうよたかねぇー!」
貴音「な、なんででも、絶対に駄目です。あの館だけはいけません」
ひびき「やだやだーっ!! せっかくきたんだからぜんぶみたいぞー!」
貴音「聞き分けなさい、ひびき。世の中にはこれ以上の理不尽など、いくらでもあるのですよ」
ひびき「う…… うぎゃー!! たかねのけちんぼー!! ばがー!! うわあぁぁん!!」
貴音(ひびきの涙を見るのは胸が痛みますが…… 心を鬼にするのです、四条貴音……!)
貴音(爬虫類館、など…… 絶対にあれがいるに決まっております! そこだけはなりません!!)ガクガク
992: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:43:39.69 :p1xr7Yhy0
ひびき「たかね、たかねっ!! みてみて! そらからいっぱい、しろいのがおちてくるぞ!」
貴音「ふふっ…… あれは、雪というのですよ。おや、ひょっとして、ひびきは初めて見るのでしたか」
ひびき「うん! きらきらしてて、きれい…… たかね、おでかけしよ! じぶん、あれさわってみたい!!」
ひびき「うわぁ、わぁぁーっ……! すごい、まっしろ! せかいじゅうまっしろ!!」
貴音「まことよく積もりましたね。どうぞ、存分にさわってごらんなさい」
ひびき「わっ…… つ、つめたい! でも、かるくて、あっ、なくなっちゃった!?」
貴音「雪は、触れると溶けてしまうのです。すぐになくなってしまうからこそ、美しいのかもしれませんね」
ひびき「たかね、たかねっ!! みてみて! そらからいっぱい、しろいのがおちてくるぞ!」
貴音「ふふっ…… あれは、雪というのですよ。おや、ひょっとして、ひびきは初めて見るのでしたか」
ひびき「うん! きらきらしてて、きれい…… たかね、おでかけしよ! じぶん、あれさわってみたい!!」
ひびき「うわぁ、わぁぁーっ……! すごい、まっしろ! せかいじゅうまっしろ!!」
貴音「まことよく積もりましたね。どうぞ、存分にさわってごらんなさい」
ひびき「わっ…… つ、つめたい! でも、かるくて、あっ、なくなっちゃった!?」
貴音「雪は、触れると溶けてしまうのです。すぐになくなってしまうからこそ、美しいのかもしれませんね」
993: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:44:08.04 :p1xr7Yhy0
貴音「ひびき、お母様にもお兄様にも、ずいぶん会っていないでしょう。寂しくありませんか?」
ひびき「うーん…… さいしょはそうだったけど、いまはたかねがねえねだもん! さびしくなんかないぞ!」
貴音「ねえね? …………わたくしが?」
ひびき「うん! ふしぎでやさしくて、きれいで、かっこいい、じぶんのじまんのねえね!」
貴音「ひびき、お母様にもお兄様にも、ずいぶん会っていないでしょう。寂しくありませんか?」
ひびき「うーん…… さいしょはそうだったけど、いまはたかねがねえねだもん! さびしくなんかないぞ!」
貴音「ねえね? …………わたくしが?」
ひびき「うん! ふしぎでやさしくて、きれいで、かっこいい、じぶんのじまんのねえね!」
994: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:44:37.29 :p1xr7Yhy0
貴音「確かに、本当に楽しく…… そして心地よい毎日です。しかし、このままでよいわけがありません」
P「元に戻る方法だって見つかるかもしれないし、あんなに貴音になついてるんだ。そう急がなくても……」
貴音「いずれ迎えねばならぬことなら、早い方がよいに決まっております。ですから、高木殿」
高木「もちろん手配自体は、そう難しいことではないが…… それで本当によいのかね。四条君」
貴音「二言はございません。ひびきのためを思えば、それが最善かと」
貴音「確かに、本当に楽しく…… そして心地よい毎日です。しかし、このままでよいわけがありません」
P「元に戻る方法だって見つかるかもしれないし、あんなに貴音になついてるんだ。そう急がなくても……」
貴音「いずれ迎えねばならぬことなら、早い方がよいに決まっております。ですから、高木殿」
高木「もちろん手配自体は、そう難しいことではないが…… それで本当によいのかね。四条君」
貴音「二言はございません。ひびきのためを思えば、それが最善かと」
995: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:46:28.12 :p1xr7Yhy0
貴音「ひびき。お夕飯のあとで、大事なお話があります」
ひびき「えっ、なになに? ひょっとして、たかね、またどこかつれていってくれる?」
貴音「ひびき。お夕飯のあとで、大事なお話があります」
ひびき「えっ、なになに? ひょっとして、たかね、またどこかつれていってくれる?」
996: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:47:05.60 :p1xr7Yhy0
ひびき「どうして……? どうして、かえれなんていうの!?」
貴音「貴女は故郷にご家族がいるのです、ひびき。わたくしと居続けても、ためになりません」
ひびき「たかね、たかねは、じぶんのこときらいになったの? もう…… ねえねじゃ、いてくれないの……?」
貴音「…………っ!!」
ひびき「どうして……? どうして、かえれなんていうの!?」
貴音「貴女は故郷にご家族がいるのです、ひびき。わたくしと居続けても、ためになりません」
ひびき「たかね、たかねは、じぶんのこときらいになったの? もう…… ねえねじゃ、いてくれないの……?」
貴音「…………っ!!」
997: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:47:46.54 :p1xr7Yhy0
P「本当に行かなくていいのか、貴音。ひびきと約束したんじゃなかったのか」
貴音「わたくしがいては余計に収拾がつかなくなるでしょう。ひびきのこと、どうかよろしくお願い致します」
P「…………」
ひびき「なんで! なんでぇっ!? ねえはるか、たかねは!? なんでたかねいないの!?」
春香「…… あのね、ひびきちゃん。貴音さんは急にお仕事が入っちゃって、今日はどうしても……」
ひびき「うわああああん!! うそつき、たかねのうそつきーっ! おみおくりしてくれるって、やくそくしたじゃないかぁぁ!!」
P「本当に行かなくていいのか、貴音。ひびきと約束したんじゃなかったのか」
貴音「わたくしがいては余計に収拾がつかなくなるでしょう。ひびきのこと、どうかよろしくお願い致します」
P「…………」
ひびき「なんで! なんでぇっ!? ねえはるか、たかねは!? なんでたかねいないの!?」
春香「…… あのね、ひびきちゃん。貴音さんは急にお仕事が入っちゃって、今日はどうしても……」
ひびき「うわああああん!! うそつき、たかねのうそつきーっ! おみおくりしてくれるって、やくそくしたじゃないかぁぁ!!」
998: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:48:31.39 :p1xr7Yhy0
ひびき「たかねー!」貴音「面妖な……」
http://ex14.vip765ch.com/test/read.cgi/uso800desu/xxxxxxxxxx/
※埋めネタです。続きません。
ひびき「たかねー!」貴音「面妖な……」
http://ex14.vip765ch.com/test/read.cgi/uso800desu/xxxxxxxxxx/
※埋めネタです。続きません。
>>959~
2: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:41:52.79 :p1xr7Yhy0
3: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:43:26.44 :p1xr7Yhy0
響「って、ことで…… またここに来てみたわけだけど」
響「確かにさ、ひょっとして、たかねが―― それか貴音が、ここで普通に自分のこと待っててさ」
響「『おや響、遅かったですね』なーんて、いつもみたいにとぼけたこと言って」
響「それから、いつか天体観測したときの帰りみたいに、一緒にのんびり歩いて帰る…… なんて」
響「そういう都合のいいこと、起こんないかなぁ、って。考えなかったわけじゃないよ」
響「ま、そんなうまい話、あるわけない、か。おとぎ話じゃないんだし」
響「かわりにあんたがここにいるってのは、もっと予想外だったけどね」
使者「…………」
響「って、ことで…… またここに来てみたわけだけど」
響「確かにさ、ひょっとして、たかねが―― それか貴音が、ここで普通に自分のこと待っててさ」
響「『おや響、遅かったですね』なーんて、いつもみたいにとぼけたこと言って」
響「それから、いつか天体観測したときの帰りみたいに、一緒にのんびり歩いて帰る…… なんて」
響「そういう都合のいいこと、起こんないかなぁ、って。考えなかったわけじゃないよ」
響「ま、そんなうまい話、あるわけない、か。おとぎ話じゃないんだし」
響「かわりにあんたがここにいるってのは、もっと予想外だったけどね」
使者「…………」
4: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:44:11.27 :p1xr7Yhy0
【もいちどきみに】
【もいちどきみに】
5: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:46:06.13 :p1xr7Yhy0
響「きょうもよく冷えてるよね。こないだの夜と、おんなじくらいかな」
使者「そう、ですね。気温はさほど変わりないようです」
響「貴音…… じゃないんだった。たかね、そっちで風邪とかひいてない?」
使者「ええ。お元気ですよ」
響「そっか。それなら、よかった」
響「自分がどうしてここに来たかは、わかってるんでしょ?」
使者「今までのことも、姫君のことも…… 貴女はすべて覚えておられる、ということですね」
響「そうだよ。いや違うか、覚えてたんじゃなくて、思い出したんだ。全部」
使者「記憶の改竄は、完全だと思っておりましたが…… 認識を改めなくてはなりません」
響「きっと完全だったと思うし、思い出せたのも偶然さー。雨と―― それから卵のおかげ、かな」
使者「たまご?」
響「ああ、こっちの話。気にしなくていいよ」
響「きょうもよく冷えてるよね。こないだの夜と、おんなじくらいかな」
使者「そう、ですね。気温はさほど変わりないようです」
響「貴音…… じゃないんだった。たかね、そっちで風邪とかひいてない?」
使者「ええ。お元気ですよ」
響「そっか。それなら、よかった」
響「自分がどうしてここに来たかは、わかってるんでしょ?」
使者「今までのことも、姫君のことも…… 貴女はすべて覚えておられる、ということですね」
響「そうだよ。いや違うか、覚えてたんじゃなくて、思い出したんだ。全部」
使者「記憶の改竄は、完全だと思っておりましたが…… 認識を改めなくてはなりません」
響「きっと完全だったと思うし、思い出せたのも偶然さー。雨と―― それから卵のおかげ、かな」
使者「たまご?」
響「ああ、こっちの話。気にしなくていいよ」
6: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:46:43.74 :p1xr7Yhy0
響「どうせ、自分がみんな相手にパニックになってたこととかも知ってるんだよね」
使者「その通りです。貴女と別れた後も、監視は続けておりましたので」
響「だと思ったぞ」
使者「それはそうと、私からひとつお尋ねしても構いませんか?」
響「いいよ。なに?」
使者「なぜ、この場所をお選びになったのですか?」
響「自分もべつに、はっきり確信があったわけじゃないよ」
使者「ほう」
響「選んだ、っていうか…… ほかに思いつかなかった、って言ったほうが正しいかな」
使者「なるほど。道理ですね」
響「自分からも、質問だけどさ。あんたが、みんなや自分の記憶から、消しちゃったんでしょ。たかねのこと」
使者「ええ。そのはずでした。貴女を除いては、上手くいっていたのですが」
響「どうせ、自分がみんな相手にパニックになってたこととかも知ってるんだよね」
使者「その通りです。貴女と別れた後も、監視は続けておりましたので」
響「だと思ったぞ」
使者「それはそうと、私からひとつお尋ねしても構いませんか?」
響「いいよ。なに?」
使者「なぜ、この場所をお選びになったのですか?」
響「自分もべつに、はっきり確信があったわけじゃないよ」
使者「ほう」
響「選んだ、っていうか…… ほかに思いつかなかった、って言ったほうが正しいかな」
使者「なるほど。道理ですね」
響「自分からも、質問だけどさ。あんたが、みんなや自分の記憶から、消しちゃったんでしょ。たかねのこと」
使者「ええ。そのはずでした。貴女を除いては、上手くいっていたのですが」
7: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:47:23.54 :p1xr7Yhy0
響「それに記憶だけじゃなくて、写ってる映像とか、着てた服なんかも。そういうのまで、ぜーんぶ」
使者「仰るとおりです。姫君の痕跡を残すわけには参りませんでしたゆえ」
響「その割にはけっこう詰めが甘かったよね。細かいもの、ちょこちょこ残しちゃってたよ」
使者「そして、結局はすべて無駄だった、というわけですね」
響「しょうがないさー、相手が悪かったぞ。――なんたって、自分は、完璧だからね」
使者「しかし、すべて思い出されたのでしたら、姫君が実は幼子であったこともご承知のはずですが」
響「そりゃそうだよ。あんな話、びっくりしすぎて忘れられるわけないぞ」
使者「ならばなおのこと、貴女がここへ来られた理由が分かりかねますね」
響「は? えーっと…… どうして?」
使者「どうして、と仰られましても。貴女のご存知だった姫君は、すでにどこにもおられないというのに」
響「ああ、そんなの簡単だよ。自分は納得がいってないから、ってだけ」
響「それに記憶だけじゃなくて、写ってる映像とか、着てた服なんかも。そういうのまで、ぜーんぶ」
使者「仰るとおりです。姫君の痕跡を残すわけには参りませんでしたゆえ」
響「その割にはけっこう詰めが甘かったよね。細かいもの、ちょこちょこ残しちゃってたよ」
使者「そして、結局はすべて無駄だった、というわけですね」
響「しょうがないさー、相手が悪かったぞ。――なんたって、自分は、完璧だからね」
使者「しかし、すべて思い出されたのでしたら、姫君が実は幼子であったこともご承知のはずですが」
響「そりゃそうだよ。あんな話、びっくりしすぎて忘れられるわけないぞ」
使者「ならばなおのこと、貴女がここへ来られた理由が分かりかねますね」
響「は? えーっと…… どうして?」
使者「どうして、と仰られましても。貴女のご存知だった姫君は、すでにどこにもおられないというのに」
響「ああ、そんなの簡単だよ。自分は納得がいってないから、ってだけ」
8: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:47:54.89 :p1xr7Yhy0
使者「納得、でございますか」
響「じゃあどうなったら納得いくの? って聞かれたら、自分もよくわかんないけどさ」
使者「…………」
響「とにかく何かできることしてみよう、と思って、ここに来てみた。そしたらあんたがいた」
使者「要は、当て推量だったということでよろしいでしょうか」
響「なんだっていいよ。結果オーライ、ってやつ」
使者「…… 貴女がここへお見えになったという事実は、ご自身で思っておられるより、はるかに重大なことなのです」
響「どうして? 自分、貴音に連れられてきたり、たかねを連れてきたりしたのを思い出しただけなんだけど」
使者「そもそもこの場所は、ほかの方には知覚すらできないようになっているのですよ」
響「……は?」
使者「現に貴女は、この場所のことは姫君以外の方と話題にしたこともないのではありませんか?」
使者「納得、でございますか」
響「じゃあどうなったら納得いくの? って聞かれたら、自分もよくわかんないけどさ」
使者「…………」
響「とにかく何かできることしてみよう、と思って、ここに来てみた。そしたらあんたがいた」
使者「要は、当て推量だったということでよろしいでしょうか」
響「なんだっていいよ。結果オーライ、ってやつ」
使者「…… 貴女がここへお見えになったという事実は、ご自身で思っておられるより、はるかに重大なことなのです」
響「どうして? 自分、貴音に連れられてきたり、たかねを連れてきたりしたのを思い出しただけなんだけど」
使者「そもそもこの場所は、ほかの方には知覚すらできないようになっているのですよ」
響「……は?」
使者「現に貴女は、この場所のことは姫君以外の方と話題にしたこともないのではありませんか?」
9: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:48:28.73 :p1xr7Yhy0
響「えっと…… いや、でも、それは単に、貴音と自分の間の秘密みたいになってたっていうか……」
使者「わかりやすく申しますと、ここには一種の結界のようなものがあるのです」
響「け、結界……?」
使者「より厳密にいえば、そこに存在しているのに意識されなくなる、という表現が近いでしょうか」
響「………… この丘が、自分以外の人には見えてない…… ってこと?」
使者「概ねそういうことです。恐らく最初の訪問の際は、姫君が貴女をここに連れてこられたのでは?」
響「あ…… 確かに、そうだったかも。なんで貴音は、自分を……」
使者「私にはわかりかねます。姫君には、なにかお考えがあったのでしょうね」
響「そう、だったのかな…… どっちにしろ、もう確かめようもない、か」
使者「…… さておき、私がここにおりますのは、貴女にお伝えすることがあるためです」
響「伝えること?」
使者「はい」
響「えっと…… いや、でも、それは単に、貴音と自分の間の秘密みたいになってたっていうか……」
使者「わかりやすく申しますと、ここには一種の結界のようなものがあるのです」
響「け、結界……?」
使者「より厳密にいえば、そこに存在しているのに意識されなくなる、という表現が近いでしょうか」
響「………… この丘が、自分以外の人には見えてない…… ってこと?」
使者「概ねそういうことです。恐らく最初の訪問の際は、姫君が貴女をここに連れてこられたのでは?」
響「あ…… 確かに、そうだったかも。なんで貴音は、自分を……」
使者「私にはわかりかねます。姫君には、なにかお考えがあったのでしょうね」
響「そう、だったのかな…… どっちにしろ、もう確かめようもない、か」
使者「…… さておき、私がここにおりますのは、貴女にお伝えすることがあるためです」
響「伝えること?」
使者「はい」
10: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:49:03.15 :p1xr7Yhy0
響「よくわかんないけど、なにか自分に教えてくれることがあるんなら、もちろん――」
使者「『かぐや姫』なる物語はご存知ですか?」
響「え…… っ? なに、いきなり。なんの話?」
使者「こちらではかなり有名なものである、と聞き及んでおりますが」
響「いやまあ、そりゃ知ってるけど……」
使者「幼い女子が地球の民と交流しつつ、成長し、最後には月へと還る。そういった物語ですね?」
響「ざっくりいえばそんな感じで合ってる……、と思うぞ」
使者「あれは、実際に月から訪れた人物のことを下敷きにしているのです」
響「それ、って……! つまりなに、そんな前から試練がどうのなんてやってたの!?」
使者「はい。我々の側に残された記録と、かの物語の記述は大筋のところで一致しております」
響「あんたたち、昔からろくに進歩もしてないってことだね。よくもまあ」
響「よくわかんないけど、なにか自分に教えてくれることがあるんなら、もちろん――」
使者「『かぐや姫』なる物語はご存知ですか?」
響「え…… っ? なに、いきなり。なんの話?」
使者「こちらではかなり有名なものである、と聞き及んでおりますが」
響「いやまあ、そりゃ知ってるけど……」
使者「幼い女子が地球の民と交流しつつ、成長し、最後には月へと還る。そういった物語ですね?」
響「ざっくりいえばそんな感じで合ってる……、と思うぞ」
使者「あれは、実際に月から訪れた人物のことを下敷きにしているのです」
響「それ、って……! つまりなに、そんな前から試練がどうのなんてやってたの!?」
使者「はい。我々の側に残された記録と、かの物語の記述は大筋のところで一致しております」
響「あんたたち、昔からろくに進歩もしてないってことだね。よくもまあ」
11: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:49:33.91 :p1xr7Yhy0
使者「ただ…… 筋書の根本的なところが、事実と食い違っておりまして」
響「根本的なところ?」
使者「ええ。すなわち、娘が最初は赤ん坊の姿で見つかり、短期間で成長する、という点ですね」
響「……ああ、なるほど。ホントはまるで逆で、いきなり小っちゃい子に戻っちゃうのに、ってことか」
使者「あくまで推測ですが、長い年月を経て語り継がれるうち、少しずつ変わってしまったものかと」
響「それ以前に、地球じゃ普通、いきなり若返ったりしないもん。自然な流れに戻ったんでしょ」
使者「恐らくはそういうことなのでしょう。物語としても受け入れられやすくなりますし」
響「まあ、そうかもね」
響「てことは、つまり、かぐや姫って、実際は求婚とかされたあとで小っちゃい子になっちゃったのか」
使者「こちらの記録によればそうなっております。そして最終的には、月へお戻りになりました」
響「そこも、たかねの場合と同じだよね。連れて行かないでって言われてるの無視して、無理やり!」
使者「ただ…… 筋書の根本的なところが、事実と食い違っておりまして」
響「根本的なところ?」
使者「ええ。すなわち、娘が最初は赤ん坊の姿で見つかり、短期間で成長する、という点ですね」
響「……ああ、なるほど。ホントはまるで逆で、いきなり小っちゃい子に戻っちゃうのに、ってことか」
使者「あくまで推測ですが、長い年月を経て語り継がれるうち、少しずつ変わってしまったものかと」
響「それ以前に、地球じゃ普通、いきなり若返ったりしないもん。自然な流れに戻ったんでしょ」
使者「恐らくはそういうことなのでしょう。物語としても受け入れられやすくなりますし」
響「まあ、そうかもね」
響「てことは、つまり、かぐや姫って、実際は求婚とかされたあとで小っちゃい子になっちゃったのか」
使者「こちらの記録によればそうなっております。そして最終的には、月へお戻りになりました」
響「そこも、たかねの場合と同じだよね。連れて行かないでって言われてるの無視して、無理やり!」
12: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:50:21.90 :p1xr7Yhy0
使者「………… ところで、昨年のことですが、相当の規模の日蝕――」
響「はっ? 去年の…… ……日食?」
使者「失敬、こちらでは"月食"にあたるのでした。いずれにせよ、蝕があったのをご存知ですか」
響「ええっと…… そうだ、確か秋ごろにけっこう大きな皆既月食があったっけ?」
使者「そうですね。こちらの暦で厳密にいえば、十月すぎのことです」
響「ねえ、ちょっと。いきなりぜんぜん違う話始めないでほしいんだけど」
使者「なんのことでしょうか」
響「とぼけないで! 今たかねとかぐや姫の話してたでしょ、月食とどうつながるの?」
使者「蝕の起きたそのとき、貴女はそれをご覧になりましたか」
響「自分の言ってること、わかんないかなぁ!? それがいったいたかねとなんの関係――」
使者「その月食を、観測なさいましたか。それとも、なさいませんでしたか」
響「……まあ、見たけど。たか…… 貴音が、これだけ見事に見られる機会は珍しいって言うから、一緒に」
使者「やはり、そうでしたか」
使者「………… ところで、昨年のことですが、相当の規模の日蝕――」
響「はっ? 去年の…… ……日食?」
使者「失敬、こちらでは"月食"にあたるのでした。いずれにせよ、蝕があったのをご存知ですか」
響「ええっと…… そうだ、確か秋ごろにけっこう大きな皆既月食があったっけ?」
使者「そうですね。こちらの暦で厳密にいえば、十月すぎのことです」
響「ねえ、ちょっと。いきなりぜんぜん違う話始めないでほしいんだけど」
使者「なんのことでしょうか」
響「とぼけないで! 今たかねとかぐや姫の話してたでしょ、月食とどうつながるの?」
使者「蝕の起きたそのとき、貴女はそれをご覧になりましたか」
響「自分の言ってること、わかんないかなぁ!? それがいったいたかねとなんの関係――」
使者「その月食を、観測なさいましたか。それとも、なさいませんでしたか」
響「……まあ、見たけど。たか…… 貴音が、これだけ見事に見られる機会は珍しいって言うから、一緒に」
使者「やはり、そうでしたか」
13: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:51:21.65 :p1xr7Yhy0
響「ひとりで勝手に納得するのやめてよ。だいたいあんた、自分に伝えることがあったんじゃないの?」
使者「かぐや姫にせよ、今回の姫君にせよ、なぜ幼子の姿に戻る必要があったのだと思われますか?」
響「は? ……今度はなに、クイズ? いい加減、まともに教えてくれないかな」
使者「貴女のお考えを伺いたいのです。いかがお考えですか」
響「わかるわけないでしょ、そんなの。だいたい自分には、そんな必要があるとは思えないし」
使者「その通りです。あえてそうした危険を冒す必要など、あるわけがございません」
響「ああもう話が進まないぞ、イライラするなー! それで、あんた何が言いたいのさ!?」
使者「幼児化は、"本来起こるはずのない事態"だった、ということです。かぐや姫の場合も、こたびも」
響「……ねえ、おかしくない? この間と言ってること、ぜんぜん違うじゃないか」
使者「ええ。実のところ、先日私が貴女にお伝えしたことの大半は空言ですので」
響「…………… え?」
響「ひとりで勝手に納得するのやめてよ。だいたいあんた、自分に伝えることがあったんじゃないの?」
使者「かぐや姫にせよ、今回の姫君にせよ、なぜ幼子の姿に戻る必要があったのだと思われますか?」
響「は? ……今度はなに、クイズ? いい加減、まともに教えてくれないかな」
使者「貴女のお考えを伺いたいのです。いかがお考えですか」
響「わかるわけないでしょ、そんなの。だいたい自分には、そんな必要があるとは思えないし」
使者「その通りです。あえてそうした危険を冒す必要など、あるわけがございません」
響「ああもう話が進まないぞ、イライラするなー! それで、あんた何が言いたいのさ!?」
使者「幼児化は、"本来起こるはずのない事態"だった、ということです。かぐや姫の場合も、こたびも」
響「……ねえ、おかしくない? この間と言ってること、ぜんぜん違うじゃないか」
使者「ええ。実のところ、先日私が貴女にお伝えしたことの大半は空言ですので」
響「…………… え?」
14: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:52:16.62 :p1xr7Yhy0
響「そらごと…… っていうと、つまり、ウソ、ってことだよね?」
使者「……」
響「どういうこと? ウソって…… えっ、どこからどこまでが?」
使者「…… ……」
響「だっ、黙ってないでなんとか言ってよ!! ど、どうして、そんな――」
使者「……」スッ
響「え? ……ちょ、ちょっと?」
使者「この件に関しては、貴女に何を言われようと甘んじて受け入れます」
響「な、なっ、なにしてるの!? そんな…… 土下座なんてやめてよ!」
使者「喫緊の事態だったとはいえ、無体な偽りを申し上げてしまいました」
響「たしかに…… ウソだったってのは気に入らないし、びっくりしたけど……」
使者「責はすべて私にあります。今更頭を下げて、どうなるものでもございませんが」
響「そんなのどうでもいいから! それより、自分にもちゃんとわかるように説明して!」
響「そらごと…… っていうと、つまり、ウソ、ってことだよね?」
使者「……」
響「どういうこと? ウソって…… えっ、どこからどこまでが?」
使者「…… ……」
響「だっ、黙ってないでなんとか言ってよ!! ど、どうして、そんな――」
使者「……」スッ
響「え? ……ちょ、ちょっと?」
使者「この件に関しては、貴女に何を言われようと甘んじて受け入れます」
響「な、なっ、なにしてるの!? そんな…… 土下座なんてやめてよ!」
使者「喫緊の事態だったとはいえ、無体な偽りを申し上げてしまいました」
響「たしかに…… ウソだったってのは気に入らないし、びっくりしたけど……」
使者「責はすべて私にあります。今更頭を下げて、どうなるものでもございませんが」
響「そんなのどうでもいいから! それより、自分にもちゃんとわかるように説明して!」
15: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:53:30.01 :p1xr7Yhy0
響「…………事故?」
使者「端的に申し上げれば、そういうことになります」
響「でも貴音がたかねになっちゃう直前まで、特に変わったことはなかったと思うけど……」
使者「むしろ、溜まり溜まった歪みがついに誤魔化せなくなったのが、先月の頭ごろだったような次第で」
響「…… やっぱりだめだ、よくわかんないぞ、自分……」
使者「月と、こちら…… 地球とでは、当然ながら環境が大きく異なります。例えば、いわゆる重力などですね」
響「それ、は、まあ…… そう、なんだろうね」
使者「ゆえに、月の民が地球に来るにあたっては、環境に適応するための施術が必要となります」
響「施術って?」
使者「簡単に言えば、地球での生活を支障なく送れるようにするためのものです」
響「…………事故?」
使者「端的に申し上げれば、そういうことになります」
響「でも貴音がたかねになっちゃう直前まで、特に変わったことはなかったと思うけど……」
使者「むしろ、溜まり溜まった歪みがついに誤魔化せなくなったのが、先月の頭ごろだったような次第で」
響「…… やっぱりだめだ、よくわかんないぞ、自分……」
使者「月と、こちら…… 地球とでは、当然ながら環境が大きく異なります。例えば、いわゆる重力などですね」
響「それ、は、まあ…… そう、なんだろうね」
使者「ゆえに、月の民が地球に来るにあたっては、環境に適応するための施術が必要となります」
響「施術って?」
使者「簡単に言えば、地球での生活を支障なく送れるようにするためのものです」
16: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:54:08.04 :p1xr7Yhy0
響「えっと、そしたら、その、施術…… が、なにかトラブルでも起こしたってこと?」
使者「そうです。細かな原因等は未だ不明ですが、姫君のお姿が幼児に変わられたのはそれが理由です」
響「そこがそもそもおかしいよね。なんでちっちゃい子に戻っちゃうの?」
使者「単純なことですよ。成人に近い姿でいるよりも、維持のための燃費がよいからです」
響「…… 理屈は通ってるのかもしれないけど、やっぱり素直にはいそうですか、とは言えないさー」
使者「それは致し方ないことかと。ただ、非常事態であり、必要な対処であったことはご理解ください」
響「でも…… そんな一大事なら、なんでひと月もたかねのこと放っといたんだ!」
使者「誓って申しますが、我々とて好き好んで放置していたわけではございません」
響「そのへんも、この間の説明は全部ウソ、ってことなんだね」
使者「…… そう、なります。ここで、さきほどの月食のお話が絡んで参りまして」
響「へえ……? どう関係するの?」
響「えっと、そしたら、その、施術…… が、なにかトラブルでも起こしたってこと?」
使者「そうです。細かな原因等は未だ不明ですが、姫君のお姿が幼児に変わられたのはそれが理由です」
響「そこがそもそもおかしいよね。なんでちっちゃい子に戻っちゃうの?」
使者「単純なことですよ。成人に近い姿でいるよりも、維持のための燃費がよいからです」
響「…… 理屈は通ってるのかもしれないけど、やっぱり素直にはいそうですか、とは言えないさー」
使者「それは致し方ないことかと。ただ、非常事態であり、必要な対処であったことはご理解ください」
響「でも…… そんな一大事なら、なんでひと月もたかねのこと放っといたんだ!」
使者「誓って申しますが、我々とて好き好んで放置していたわけではございません」
響「そのへんも、この間の説明は全部ウソ、ってことなんだね」
使者「…… そう、なります。ここで、さきほどの月食のお話が絡んで参りまして」
響「へえ……? どう関係するの?」
17: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:54:36.22 :p1xr7Yhy0
使者「姫君の施術にも、我々が姫君の状況を把握するのにも、必要不可欠なものがございます」
響「月食に影響されそうなもの、っていうと…… つまりそれ、月の光、ってことかな」
使者「はい。施術の変調と月食のどちらが先かも判然としておりませんが、重なったのは致命的でした」
響「で、お迎えが来るまでの間できるだけ保つように、たかねに戻った…… ってわけか」
使者「加えて言えば、我々が事態の全容を初めて把握できたのは年が明けてからであった、ということです」
響「…… まあ、そっちにもいろいろ事情があった、っていうのはわかったぞ」
使者「ご配慮にあずかり、恐縮です」
響「はー…… 平然とした顔でウソばっかりついてたんだね、あんた」
使者「その点に関しては心より申し訳なく思っております。お許しください」
響「どうせ、自分なら簡単にだませそうとか思ってたんだろ」
使者「そうですね。なにせ、貴女は姫君をずっと保護してくださるほどのお人好しですゆえ」
響「ちょっとー!? そこはそれこそウソでも否定するとこでしょ!?」
使者「姫君の施術にも、我々が姫君の状況を把握するのにも、必要不可欠なものがございます」
響「月食に影響されそうなもの、っていうと…… つまりそれ、月の光、ってことかな」
使者「はい。施術の変調と月食のどちらが先かも判然としておりませんが、重なったのは致命的でした」
響「で、お迎えが来るまでの間できるだけ保つように、たかねに戻った…… ってわけか」
使者「加えて言えば、我々が事態の全容を初めて把握できたのは年が明けてからであった、ということです」
響「…… まあ、そっちにもいろいろ事情があった、っていうのはわかったぞ」
使者「ご配慮にあずかり、恐縮です」
響「はー…… 平然とした顔でウソばっかりついてたんだね、あんた」
使者「その点に関しては心より申し訳なく思っております。お許しください」
響「どうせ、自分なら簡単にだませそうとか思ってたんだろ」
使者「そうですね。なにせ、貴女は姫君をずっと保護してくださるほどのお人好しですゆえ」
響「ちょっとー!? そこはそれこそウソでも否定するとこでしょ!?」
18: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:55:13.55 :p1xr7Yhy0
使者「…… そんな貴女ですから、姫君が本当は幼子である、という嘘を吐けば」
響「だいたいお人よしっていうけど、友達が困ってるの助けるなんて当たり前で…… え?」
使者「姫君のためを思って月へ戻ることをすぐお認めになる、と考えましたが、そこは少々見込み違いでした」
響「待って。 ……ねえ、もう一度聞くぞ。この間の話、"どこからどこまで"が、ウソだって?」
使者「大きく分けると三点でございます。ひとつは、姫君が幼くなった原因について」
使者「さらに、なぜお迎えに上がるのが遅れたのか、ということについて」
使者「そして、最後のひとつは、姫君の御年についてです」
響「たかね…… 貴音の年も、ウソだった……? じゃ、じゃあ何、ほんとはいくつなの!?」
使者「貴女とほとんど変わりません。こちらの基準で考えるなら、18歳前後というところでしょうか」
使者「…… そんな貴女ですから、姫君が本当は幼子である、という嘘を吐けば」
響「だいたいお人よしっていうけど、友達が困ってるの助けるなんて当たり前で…… え?」
使者「姫君のためを思って月へ戻ることをすぐお認めになる、と考えましたが、そこは少々見込み違いでした」
響「待って。 ……ねえ、もう一度聞くぞ。この間の話、"どこからどこまで"が、ウソだって?」
使者「大きく分けると三点でございます。ひとつは、姫君が幼くなった原因について」
使者「さらに、なぜお迎えに上がるのが遅れたのか、ということについて」
使者「そして、最後のひとつは、姫君の御年についてです」
響「たかね…… 貴音の年も、ウソだった……? じゃ、じゃあ何、ほんとはいくつなの!?」
使者「貴女とほとんど変わりません。こちらの基準で考えるなら、18歳前後というところでしょうか」
19: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:56:19.40 :p1xr7Yhy0
響「…………」
使者「お気持ちはお察しします。私を罵るなり、殴るなりでお気が済むのなら、如何様にも――」
響「よかった! それなら貴音がまた戻ってきたら、一緒にアイドルやれるよねっ!?」
使者「!?」
響「え…… なにその反応。自分、なんかヘンなこと言った?」
使者「いえ、その……、てっきり、貴女はお怒りになっているものとばかり」
響「うーん、まあ、あんたがウソばっかり言ってたってのはちょっとムカっとしたけど」
使者「けど……?」
響「でも正直にそのこと教えてくれたし、何より、貴音が本当はたかねだったんじゃなくて、その逆で」
使者「…………」
響「つまり、たかねが本当は貴音だったってわかったから…… あれ? 自分の言いたいことわかる?」
使者「…… さほど自信はございませんが、おそらくは大丈夫です」
響「…………」
使者「お気持ちはお察しします。私を罵るなり、殴るなりでお気が済むのなら、如何様にも――」
響「よかった! それなら貴音がまた戻ってきたら、一緒にアイドルやれるよねっ!?」
使者「!?」
響「え…… なにその反応。自分、なんかヘンなこと言った?」
使者「いえ、その……、てっきり、貴女はお怒りになっているものとばかり」
響「うーん、まあ、あんたがウソばっかり言ってたってのはちょっとムカっとしたけど」
使者「けど……?」
響「でも正直にそのこと教えてくれたし、何より、貴音が本当はたかねだったんじゃなくて、その逆で」
使者「…………」
響「つまり、たかねが本当は貴音だったってわかったから…… あれ? 自分の言いたいことわかる?」
使者「…… さほど自信はございませんが、おそらくは大丈夫です」
20: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:57:18.14 :p1xr7Yhy0
響「でもさ。どうしてあんた、そんなにたくさんウソついたの?」
使者「あの満月の晩に、貴女が姫君と一緒にここへお見えになったからです」
響「いや、冬の夜中に、たかねみたいな小っちゃい子ひとりでここに来れるわけないでしょ」
使者「そうなる筈だったのです。姫君が月を見て、暫し無反応になったことは覚えておいでですか?」
響「…… ああ、あったね。満月の何日か前に、ベランダで」
使者「あの時に、こちらから姫君に指示をお送りしました。お一人で、この場所へ来られるようにと」
響「…………? でも、たかねはあのとき、自分に連れて行ってほしいって頼んだよ?」
使者「指示とは申せ、実態としては、先日貴女たちに行った記憶の改竄と似た操作でございました」
響「えーっ、と…… つまり、かんたんに言うと?」
使者「姫君の意思とは関係なく動いて頂くための、いわば、自動制御…… とでも申しましょうか」
響「でもさ。どうしてあんた、そんなにたくさんウソついたの?」
使者「あの満月の晩に、貴女が姫君と一緒にここへお見えになったからです」
響「いや、冬の夜中に、たかねみたいな小っちゃい子ひとりでここに来れるわけないでしょ」
使者「そうなる筈だったのです。姫君が月を見て、暫し無反応になったことは覚えておいでですか?」
響「…… ああ、あったね。満月の何日か前に、ベランダで」
使者「あの時に、こちらから姫君に指示をお送りしました。お一人で、この場所へ来られるようにと」
響「…………? でも、たかねはあのとき、自分に連れて行ってほしいって頼んだよ?」
使者「指示とは申せ、実態としては、先日貴女たちに行った記憶の改竄と似た操作でございました」
響「えーっ、と…… つまり、かんたんに言うと?」
使者「姫君の意思とは関係なく動いて頂くための、いわば、自動制御…… とでも申しましょうか」
21: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:57:59.02 :p1xr7Yhy0
響「ああ…… それを貴音、いや、たかねに送ったから一人で来るはずなのに、なぜか自分もいた、と」
使者「そういうことでございます」
響「でも、なんで? そう簡単に指示以外の行動されちゃ、困るんじゃないの?」
使者「それも分かりません。いずれにせよあの場では、とにかく時間稼ぎをする必要がございました」
響「なるほどね…… アドリブ上手なんだなー、あんた」
使者「最終的に記憶を改竄させていただくことは確定事項でしたから、多少突飛でも構わなかったもので」
響「とっぴすぎるぞ。最初っから、全部本当のこと教えてくれたらよかったのに」
使者「…… 私が初めて貴女にお会いした折に、今述べたような経緯を真正直に説明したとしましょうか」
響「う、うん?」
使者「貴女はそれを信用なさいましたか? 私を信用して、姫君をお任せくださったでしょうか?」
響「そんなの、…… ……まあ、確かに、すぐには無理だったかもしれないけど」
使者「初動の遅れもあり、姫君を一刻も早く連れ帰ることが最優先事項だったのです」
響「ああ…… それを貴音、いや、たかねに送ったから一人で来るはずなのに、なぜか自分もいた、と」
使者「そういうことでございます」
響「でも、なんで? そう簡単に指示以外の行動されちゃ、困るんじゃないの?」
使者「それも分かりません。いずれにせよあの場では、とにかく時間稼ぎをする必要がございました」
響「なるほどね…… アドリブ上手なんだなー、あんた」
使者「最終的に記憶を改竄させていただくことは確定事項でしたから、多少突飛でも構わなかったもので」
響「とっぴすぎるぞ。最初っから、全部本当のこと教えてくれたらよかったのに」
使者「…… 私が初めて貴女にお会いした折に、今述べたような経緯を真正直に説明したとしましょうか」
響「う、うん?」
使者「貴女はそれを信用なさいましたか? 私を信用して、姫君をお任せくださったでしょうか?」
響「そんなの、…… ……まあ、確かに、すぐには無理だったかもしれないけど」
使者「初動の遅れもあり、姫君を一刻も早く連れ帰ることが最優先事項だったのです」
22: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:58:42.91 :p1xr7Yhy0
響「ねえ、ところで、さっき言ってたかぐや姫のときも、貴音と同じようなことだったわけ?」
使者「何分古い記録ゆえ、不明確な部分もあるのですが、似たような事故があったものと思われます」
響「そのかぐや姫も、当時の王女様…… お姫様だったわけでしょ?」
使者「それは勿論。試練を受ける資格があるのは王族の子女のみですから」
響「そうだ、前も言ってたその、試練、ってやつ。それって結局なんなの?」
使者「これについては前回ご説明した通りでございます。まあ、武者修行のようなものですね」
響「む、武者修行って……」
使者「まったく勝手の違う、見知った顔もない土地に渡り、独力でしばし生活するのですよ?」
響「それはそうだけど」
使者「武者は的外れとしても、何不自由ない暮らしをしていた姫君には修行のようなものでしょう」
響「わざわざ星をまたいでやることか、って気はするけど…… そういうもの、なのかな」
使者「前も申しましたが、こちらには、こちらの慣習がございますゆえ」
響「ねえ、ところで、さっき言ってたかぐや姫のときも、貴音と同じようなことだったわけ?」
使者「何分古い記録ゆえ、不明確な部分もあるのですが、似たような事故があったものと思われます」
響「そのかぐや姫も、当時の王女様…… お姫様だったわけでしょ?」
使者「それは勿論。試練を受ける資格があるのは王族の子女のみですから」
響「そうだ、前も言ってたその、試練、ってやつ。それって結局なんなの?」
使者「これについては前回ご説明した通りでございます。まあ、武者修行のようなものですね」
響「む、武者修行って……」
使者「まったく勝手の違う、見知った顔もない土地に渡り、独力でしばし生活するのですよ?」
響「それはそうだけど」
使者「武者は的外れとしても、何不自由ない暮らしをしていた姫君には修行のようなものでしょう」
響「わざわざ星をまたいでやることか、って気はするけど…… そういうもの、なのかな」
使者「前も申しましたが、こちらには、こちらの慣習がございますゆえ」
23: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 19:59:08.27 :p1xr7Yhy0
響「たかね…… もう、貴音、でいいのか。無事なんだよね? ちゃんと帰り着いたんでしょ?」
使者「ええ。大丈夫で……」
響「今言ってるそれは絶対ウソじゃないよねっ!? 自分…… 今度は、あんたのこと信じていい?」
使者「…… 私の、魂に賭けて請け合います。姫君は、お元気でおられます」
響「そっか、…… そっか、なら、いいよ。なによりだぞ」
響「………… それで? 自分に教えてくれることって、これで全部?」
使者「いいえ。あとひとつ残っております」
響「あは、は…… さっきから、驚かされてばっかりだから、もう、びっくりしないとは言い切れないや……」
響「たかね…… もう、貴音、でいいのか。無事なんだよね? ちゃんと帰り着いたんでしょ?」
使者「ええ。大丈夫で……」
響「今言ってるそれは絶対ウソじゃないよねっ!? 自分…… 今度は、あんたのこと信じていい?」
使者「…… 私の、魂に賭けて請け合います。姫君は、お元気でおられます」
響「そっか、…… そっか、なら、いいよ。なによりだぞ」
響「………… それで? 自分に教えてくれることって、これで全部?」
使者「いいえ。あとひとつ残っております」
響「あは、は…… さっきから、驚かされてばっかりだから、もう、びっくりしないとは言い切れないや……」
24: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:01:48.56 :p1xr7Yhy0
響「すー、はぁーっ…… ん、大丈夫。覚悟はできたぞ。最後のひとつ、教えてくれる?」
使者「承知しました。それでは早速ですが」
使者「まず、このたびの姫君の試練に関しては、失敗なさったものと見做されました」
響「失敗、だと…… どうなるの? 貴音、なにか責任とか取らなきゃダメってこと……?」
使者「いえ、特にそういったことはございません」
響「あ…… な、なんだ、それなら安し――」
使者「ただ、これをもちまして姫君の王族としての資格は喪われることになります」
響「っ、そんな…… それって大丈夫なの!? 貴音に不利になることなんじゃないの!?」
使者「私は、その件に関してはお教えできる立場にございません」
響「ちょっと! ここまで来てなんなのさ、それっ!?」
使者「それよりも、貴女にも関係のある決定事項がございます。その点をご説明差し上げても?」
響「……いいよ、聞くほかに自分にはどうしようもないもんね。お願い」
響「すー、はぁーっ…… ん、大丈夫。覚悟はできたぞ。最後のひとつ、教えてくれる?」
使者「承知しました。それでは早速ですが」
使者「まず、このたびの姫君の試練に関しては、失敗なさったものと見做されました」
響「失敗、だと…… どうなるの? 貴音、なにか責任とか取らなきゃダメってこと……?」
使者「いえ、特にそういったことはございません」
響「あ…… な、なんだ、それなら安し――」
使者「ただ、これをもちまして姫君の王族としての資格は喪われることになります」
響「っ、そんな…… それって大丈夫なの!? 貴音に不利になることなんじゃないの!?」
使者「私は、その件に関してはお教えできる立場にございません」
響「ちょっと! ここまで来てなんなのさ、それっ!?」
使者「それよりも、貴女にも関係のある決定事項がございます。その点をご説明差し上げても?」
響「……いいよ、聞くほかに自分にはどうしようもないもんね。お願い」
25: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:02:23.01 :p1xr7Yhy0
使者「実はこたびの決定に関して、我々の間でも一部から異論がございまして」
響「異論? どういうこと?」
使者「悪条件が重なり過ぎたため、そもそも時節として不相応だったのではないか、という話です」
響「……なるほど! そ、それ、自分もその通りだと思うぞ! そうだよ、もう一回くらいチャンスをっ」
使者「まさにその、もう一度の機会に関して、お伝えしたいことがあるのですよ」
響「えっ!? じゃあ…… ひょっとして、貴音、やり直しができるってこと?」
使者「それを認めるか、否か―― その決定権が、貴女に委ねられております」
響「え………… は!? 自分に!? な、なんでっ!?」
使者「我々の側の事情がどうであったにせよ、今回の件で貴女に心労やご迷惑をおかけしたのは事実です」
響「その辺はさすがに自覚あるんだね。ちょっと安心したぞ」
使者「加えまして、貴女は姫君の記憶をご自身で取り戻されました」
響「う、うん…… まあ、一応、そういうことになるのかな」
使者「その事実に敬服致しまして、姫君の命運を貴女に委ねることで公平を期す次第でございます」
使者「実はこたびの決定に関して、我々の間でも一部から異論がございまして」
響「異論? どういうこと?」
使者「悪条件が重なり過ぎたため、そもそも時節として不相応だったのではないか、という話です」
響「……なるほど! そ、それ、自分もその通りだと思うぞ! そうだよ、もう一回くらいチャンスをっ」
使者「まさにその、もう一度の機会に関して、お伝えしたいことがあるのですよ」
響「えっ!? じゃあ…… ひょっとして、貴音、やり直しができるってこと?」
使者「それを認めるか、否か―― その決定権が、貴女に委ねられております」
響「え………… は!? 自分に!? な、なんでっ!?」
使者「我々の側の事情がどうであったにせよ、今回の件で貴女に心労やご迷惑をおかけしたのは事実です」
響「その辺はさすがに自覚あるんだね。ちょっと安心したぞ」
使者「加えまして、貴女は姫君の記憶をご自身で取り戻されました」
響「う、うん…… まあ、一応、そういうことになるのかな」
使者「その事実に敬服致しまして、姫君の命運を貴女に委ねることで公平を期す次第でございます」
26: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:03:12.09 :p1xr7Yhy0
響「つまり貴音がもう一回チャレンジできるかどうかを、自分が決めていい、ってことで合ってる?」
使者「はい。その通りでございます」
響「それなら…… それなら、悩むことなんか何もないよ! もう一度、貴音がこっちに来れるように――」
使者「ああ、そうでした。その前に、ひとつだけ条件がある旨をお伝えしておかなくてはなりませんでした」
響「ちょっと…… もー、しっかりしてよ。で、なに? その条件っていうの、早く聞かせて!」
使者「いま一度姫君が試練に挑む、という場合、"まったく最初から"となることをご承知おきください」
響「つまり貴音がもう一回チャレンジできるかどうかを、自分が決めていい、ってことで合ってる?」
使者「はい。その通りでございます」
響「それなら…… それなら、悩むことなんか何もないよ! もう一度、貴音がこっちに来れるように――」
使者「ああ、そうでした。その前に、ひとつだけ条件がある旨をお伝えしておかなくてはなりませんでした」
響「ちょっと…… もー、しっかりしてよ。で、なに? その条件っていうの、早く聞かせて!」
使者「いま一度姫君が試練に挑む、という場合、"まったく最初から"となることをご承知おきください」
27: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:04:28.39 :p1xr7Yhy0
響「ん……? なに、まったく最初からって?」
使者「言葉通りの意味ですよ」
響「だから、それは具体的にどういう意味なのかってことを――」
使者「姫君が、貴女の決定を受けて、もう一度地球に来られる運びとなった際に」
使者「どこに向かわれるか、どんな姿形をしておられるか。それらすべてが未定ということです」
響「…………え? えっ!? は!?」
響「ん……? なに、まったく最初からって?」
使者「言葉通りの意味ですよ」
響「だから、それは具体的にどういう意味なのかってことを――」
使者「姫君が、貴女の決定を受けて、もう一度地球に来られる運びとなった際に」
使者「どこに向かわれるか、どんな姿形をしておられるか。それらすべてが未定ということです」
響「…………え? えっ!? は!?」
28: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:05:29.27 :p1xr7Yhy0
響「な、なにそれっ!? 今までとおんなじ条件でやり直すんじゃないの!?」
使者「それこそ何を仰っているのですか。条件が不適切と判断されたからこその、再挑戦の機会なのですよ」
響「そんな、だって……、今までの貴音の記憶とか経験とか、ぜんぶ無駄になっちゃうってことだぞ!?」
使者「当然です。本来なら到底ありえないことゆえ、また初めから、という決定は至極妥当かと思いますが?」
響「全部リセットしちゃうんだったら、それってもうやり直しじゃないじゃないか!!」
使者「なにか勘違いしておられるようですが、姫君がこちらで何をなさるかは問題ではないのですよ」
響「どういう意味さ!?」
使者「再び"あいどる"になるか、ならないか、貴女と再会なさるかどうか。それらは、すべて些事です」
響「でも! あんたたちにとってはそうかもしれないけど、自分にはそれが、っ……!!」
使者「不幸な事故があったのは事実として、体面上、無事に成功なさったという結果のみが必要なのです」
使者「功労者の一人には違いない貴女に、そのための決定権を差し上げる。そういう次第でして」
響「な、なにそれっ!? 今までとおんなじ条件でやり直すんじゃないの!?」
使者「それこそ何を仰っているのですか。条件が不適切と判断されたからこその、再挑戦の機会なのですよ」
響「そんな、だって……、今までの貴音の記憶とか経験とか、ぜんぶ無駄になっちゃうってことだぞ!?」
使者「当然です。本来なら到底ありえないことゆえ、また初めから、という決定は至極妥当かと思いますが?」
響「全部リセットしちゃうんだったら、それってもうやり直しじゃないじゃないか!!」
使者「なにか勘違いしておられるようですが、姫君がこちらで何をなさるかは問題ではないのですよ」
響「どういう意味さ!?」
使者「再び"あいどる"になるか、ならないか、貴女と再会なさるかどうか。それらは、すべて些事です」
響「でも! あんたたちにとってはそうかもしれないけど、自分にはそれが、っ……!!」
使者「不幸な事故があったのは事実として、体面上、無事に成功なさったという結果のみが必要なのです」
使者「功労者の一人には違いない貴女に、そのための決定権を差し上げる。そういう次第でして」
29: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:06:33.51 :p1xr7Yhy0
響「…… じゃあ、ここで自分がもし、貴音の再挑戦はナシ、って決めた場合、どうなるの?」
使者「特に何もございません。姫君はこれまでどおり、月でお暮らしになるのみです」
響「それで…… そしたら二度と、貴音は地球に来ない…… 来れない、ってことか……」
使者「ご理解が早くて助かります。その際は、姫君がこちらを訪れる理由も必要も、特になくなりますゆえ」
響「ついでにその場合、また自分の記憶いじって貴音のこと忘れさせる、っていうんだろ……!」
使者「ああ、それについてはどちらでも構わないと指示を受けております」
響「……? どちらでも、って……」
使者「貴女ひとりが姫君のことを覚えていたところでどうにもならないことは、すでによくご存知でしょう?」
響「…………っ!!」
響「…… じゃあ、ここで自分がもし、貴音の再挑戦はナシ、って決めた場合、どうなるの?」
使者「特に何もございません。姫君はこれまでどおり、月でお暮らしになるのみです」
響「それで…… そしたら二度と、貴音は地球に来ない…… 来れない、ってことか……」
使者「ご理解が早くて助かります。その際は、姫君がこちらを訪れる理由も必要も、特になくなりますゆえ」
響「ついでにその場合、また自分の記憶いじって貴音のこと忘れさせる、っていうんだろ……!」
使者「ああ、それについてはどちらでも構わないと指示を受けております」
響「……? どちらでも、って……」
使者「貴女ひとりが姫君のことを覚えていたところでどうにもならないことは、すでによくご存知でしょう?」
響「…………っ!!」
30: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:09:51.95 :p1xr7Yhy0
使者「さておき、そういうわけで、二つにひとつでございます。いかがなさいますか」
響「…………」
使者「確かに急なお話です。すぐにはお決めになれないでしょうから、いくらか猶予――」
響「もういちど、全部、最初からやり直しで」
使者「………… 何と?」
響「聞こえなかった? 貴音がもう一度やり直せることにして、って言ったの、自分」
使者「あの…… 失礼を承知でお尋ねしますが、私の説明をご理解されていないのではありませんか?」
響「ごめん、何が?」
使者「再挑戦なさるのであれば、姫君は確かに地球にお戻りにはなります。ですが、それだけ、ですよ?」
響「あんたさっきそう言ったよね。待って、実はまだ言ってなかったことがある、とか?」
使者「いえ、ございませんが……」
使者「さておき、そういうわけで、二つにひとつでございます。いかがなさいますか」
響「…………」
使者「確かに急なお話です。すぐにはお決めになれないでしょうから、いくらか猶予――」
響「もういちど、全部、最初からやり直しで」
使者「………… 何と?」
響「聞こえなかった? 貴音がもう一度やり直せることにして、って言ったの、自分」
使者「あの…… 失礼を承知でお尋ねしますが、私の説明をご理解されていないのではありませんか?」
響「ごめん、何が?」
使者「再挑戦なさるのであれば、姫君は確かに地球にお戻りにはなります。ですが、それだけ、ですよ?」
響「あんたさっきそう言ったよね。待って、実はまだ言ってなかったことがある、とか?」
使者「いえ、ございませんが……」
31: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:10:27.76 :p1xr7Yhy0
使者「しかし、つまり、姫君がまた"あいどる"をなさると決まったわけでもございませんし――」
響「うん。それから?」
使者「第一、貴女がすぐお会いになれるような場所に来られるかどうかも分かりかねますし」
響「そうかもね。で、ほかには?」
使者「お名前も顔かたちも、そもそももっと言えば再訪の時期すらも不明、ということですが……?」
響「なんだ…… 全部わかってるよ、そんなこと。自分そんなにバカじゃないぞ」
使者「ですが貴女は、貴女の知る姫君と、またお会いになりたかったのでは」
響「だって、貴音がもう一度こっちに来れる、ってことだけは絶対間違いないんでしょ?」
使者「それは…… 確かに、そうですが」
響「そこさえ確実ならなんくるないさー」
使者「しかし、つまり、姫君がまた"あいどる"をなさると決まったわけでもございませんし――」
響「うん。それから?」
使者「第一、貴女がすぐお会いになれるような場所に来られるかどうかも分かりかねますし」
響「そうかもね。で、ほかには?」
使者「お名前も顔かたちも、そもそももっと言えば再訪の時期すらも不明、ということですが……?」
響「なんだ…… 全部わかってるよ、そんなこと。自分そんなにバカじゃないぞ」
使者「ですが貴女は、貴女の知る姫君と、またお会いになりたかったのでは」
響「だって、貴音がもう一度こっちに来れる、ってことだけは絶対間違いないんでしょ?」
使者「それは…… 確かに、そうですが」
響「そこさえ確実ならなんくるないさー」
32: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:11:18.75 :p1xr7Yhy0
響「いくら自分がカンペキでも、月まで行かなきゃ貴音に会えない、ってなったら」
響「時間とか、お金とか。きっといっぱいかかっちゃう」
響「それにたぶん、かなり待たなきゃいけないよね。自分、あんまり辛抱強くないんだ」
響「でも―― 貴音が、地球のどこかにいてくれるんだったら」
響「自分が世界じゅう、隅から隅まで探し回れば、いつか、絶対会える。そうでしょ?」
響「いくら自分がカンペキでも、月まで行かなきゃ貴音に会えない、ってなったら」
響「時間とか、お金とか。きっといっぱいかかっちゃう」
響「それにたぶん、かなり待たなきゃいけないよね。自分、あんまり辛抱強くないんだ」
響「でも―― 貴音が、地球のどこかにいてくれるんだったら」
響「自分が世界じゅう、隅から隅まで探し回れば、いつか、絶対会える。そうでしょ?」
33: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:13:15.35 :p1xr7Yhy0
使者「……それで、本当に出会えるとでもお思いなのですか?」
響「もちろんだぞ」
使者「万に一つお会いになれたとしても、姫君のほうは貴女のことをおわかりでないかもしれませんよ」
響「それでもいいよ。自分が覚えてるから、大丈夫」
使者「それに、仮に貴女が姫君を見かけたとして、すぐそれとわかるお姿かどうかも――」
響「あのさ、そういうの、いま考えたってムダだよね。会う前から心配するようなことじゃないさー」
使者「…………」
響「そうだ、そんなことより、貴音に伝言お願いできない? 帰ったらまた顔合わせるんでしょ?」
使者「言付け、ですか…… 姫君に、なにをお伝えになりたいのですか?」
響「大丈夫だよ、すごくかんたんなことだから。いい?」
響「どれだけかかっても、貴音がどこにいても。自分が絶対見つけに行くから、それまで待ってて、って」
使者「…… 頭に、留め置きましょう」
使者「……それで、本当に出会えるとでもお思いなのですか?」
響「もちろんだぞ」
使者「万に一つお会いになれたとしても、姫君のほうは貴女のことをおわかりでないかもしれませんよ」
響「それでもいいよ。自分が覚えてるから、大丈夫」
使者「それに、仮に貴女が姫君を見かけたとして、すぐそれとわかるお姿かどうかも――」
響「あのさ、そういうの、いま考えたってムダだよね。会う前から心配するようなことじゃないさー」
使者「…………」
響「そうだ、そんなことより、貴音に伝言お願いできない? 帰ったらまた顔合わせるんでしょ?」
使者「言付け、ですか…… 姫君に、なにをお伝えになりたいのですか?」
響「大丈夫だよ、すごくかんたんなことだから。いい?」
響「どれだけかかっても、貴音がどこにいても。自分が絶対見つけに行くから、それまで待ってて、って」
使者「…… 頭に、留め置きましょう」
34: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:13:49.94 :p1xr7Yhy0
響「あっちに戻ったら、すぐ自分の決めたこと伝えてくれる?」
使者「そのために私が参ったのです。あとは、貴女の決定を待つのみの状況ですので」
響「でも、それで貴音がもう一回チャレンジする時期なんかは教えてくれない、ってことだね」
使者「そうなります」
響「まぁ仕方ないか。自分、どこにでもすぐ行けるようにお金貯めとかなくっちゃ」
使者「最後に、もう一度だけ。姫君が再度試練を行う、ということで、本当によろしいのですね?」
響「しつこいなあ。さっきから何度も、それで間違いない、って言ってるのに」
使者「………… やはり、貴女のことは、私には一生理解できそうもありません」
響「そこだけは気が合うよね。最初に会ってからずっと、自分もそう思ってるんだ」
響「あっちに戻ったら、すぐ自分の決めたこと伝えてくれる?」
使者「そのために私が参ったのです。あとは、貴女の決定を待つのみの状況ですので」
響「でも、それで貴音がもう一回チャレンジする時期なんかは教えてくれない、ってことだね」
使者「そうなります」
響「まぁ仕方ないか。自分、どこにでもすぐ行けるようにお金貯めとかなくっちゃ」
使者「最後に、もう一度だけ。姫君が再度試練を行う、ということで、本当によろしいのですね?」
響「しつこいなあ。さっきから何度も、それで間違いない、って言ってるのに」
使者「………… やはり、貴女のことは、私には一生理解できそうもありません」
響「そこだけは気が合うよね。最初に会ってからずっと、自分もそう思ってるんだ」
35: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:14:44.42 :p1xr7Yhy0
使者「ああ…… それから、先ほど貴女の仰った、姫君への言付けの件についてなのですが」
響「うん、くれぐれもちゃんと伝えてよね?」
使者「よく考えましたら、なぜ私がそのようなことまで引き受けねばならないのでしょうか?」
響「…………えっ?」
使者「前回、それに今回の使者役として、私は十分に責を果たしたかと思います」
響「ちょっと待ってよ、それはそうかもしれないけど、でも!」
使者「これ以上の頼まれごとなど、有り体に申しましてたいへんに面倒です」
響「そんなっ、話が違うぞ!? さっきは引き受けてくれるって!」
使者「はて。頭に留め置く、とは申しましたが、引き受けたとは一言も申しておりません」
響「な、っ……、卑怯だよそんなのっ! そのくらいしてくれたってバチは当たんないでしょ!?」
使者「ああ…… それから、先ほど貴女の仰った、姫君への言付けの件についてなのですが」
響「うん、くれぐれもちゃんと伝えてよね?」
使者「よく考えましたら、なぜ私がそのようなことまで引き受けねばならないのでしょうか?」
響「…………えっ?」
使者「前回、それに今回の使者役として、私は十分に責を果たしたかと思います」
響「ちょっと待ってよ、それはそうかもしれないけど、でも!」
使者「これ以上の頼まれごとなど、有り体に申しましてたいへんに面倒です」
響「そんなっ、話が違うぞ!? さっきは引き受けてくれるって!」
使者「はて。頭に留め置く、とは申しましたが、引き受けたとは一言も申しておりません」
響「な、っ……、卑怯だよそんなのっ! そのくらいしてくれたってバチは当たんないでしょ!?」
36: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:15:30.72 :p1xr7Yhy0
使者「いえ、やはりお断りします。私が姫君と確実にお会いできる保証もございませんし」
響「そ、それは…… そう、会えたらでいいからっ! あんたに頼めなかったら自分、どうやって貴音に……」
使者「なんと言われようと、決めました。私から姫君へはお伝えしかねます」
響「そんな勝手なこと言われっぱなしで、自分が納得す ――!?」フラッ
響(あ…… これ、っ!? ま、また…… たかねが、いなく、なった……とき、と、同じ……!)
使者「思えば奇妙な縁でしたが…… 今度こそ、貴女とお会いするのは最後になるでしょう」
響(ふざけ、るんじゃ…… ない、ぞ!?)
使者「姫君へのお言付けがおありなら、どうぞ、貴女ご自身でお伝えになりますように」
響(それ、が…… できない、から、あんた、に…… …………!)
響(………… ……)
使者「いえ、やはりお断りします。私が姫君と確実にお会いできる保証もございませんし」
響「そ、それは…… そう、会えたらでいいからっ! あんたに頼めなかったら自分、どうやって貴音に……」
使者「なんと言われようと、決めました。私から姫君へはお伝えしかねます」
響「そんな勝手なこと言われっぱなしで、自分が納得す ――!?」フラッ
響(あ…… これ、っ!? ま、また…… たかねが、いなく、なった……とき、と、同じ……!)
使者「思えば奇妙な縁でしたが…… 今度こそ、貴女とお会いするのは最後になるでしょう」
響(ふざけ、るんじゃ…… ない、ぞ!?)
使者「姫君へのお言付けがおありなら、どうぞ、貴女ご自身でお伝えになりますように」
響(それ、が…… できない、から、あんた、に…… …………!)
響(………… ……)
37: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:16:06.41 :p1xr7Yhy0
響(……………… たか、ね……)
響(……………… たか、ね……)
38: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:17:01.77 :p1xr7Yhy0
39: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:23:51.10 :p1xr7Yhy0
響(……ん、 ……あー、朝かぁ)
響(今日は、学校あるけど…… さむそうだし、まだ寝てよ……)
響(………… 違うっ! そんな場合じゃない!!)ガバ
響(……ん、 ……あー、朝かぁ)
響(今日は、学校あるけど…… さむそうだし、まだ寝てよ……)
響(………… 違うっ! そんな場合じゃない!!)ガバ
40: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:24:38.47 :p1xr7Yhy0
響(…… ここ、自分の部屋……! また眠らされて、きっとその間に運ばれたんだ……)
響(でも自分、生きてる、身体もどこもおかしくなってない)
響(それに、自分、貴音のこと…… 大丈夫、思い出せる! 全部、ぜんぶ覚えてる!!)
響(あいつが最後にまた嘘ついたのだって覚えてるぞ…… もし次会ったら、絶対、ただじゃおかない!)
響(…… ……落ち着こう。とりあえず、まずは起きなきゃ)
響(って、この手触り…… もう、ねこ吉がベッドにいるのまで再現なんて、ごていねいに――)
響(…… ここ、自分の部屋……! また眠らされて、きっとその間に運ばれたんだ……)
響(でも自分、生きてる、身体もどこもおかしくなってない)
響(それに、自分、貴音のこと…… 大丈夫、思い出せる! 全部、ぜんぶ覚えてる!!)
響(あいつが最後にまた嘘ついたのだって覚えてるぞ…… もし次会ったら、絶対、ただじゃおかない!)
響(…… ……落ち着こう。とりあえず、まずは起きなきゃ)
響(って、この手触り…… もう、ねこ吉がベッドにいるのまで再現なんて、ごていねいに――)
41: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:25:26.58 :p1xr7Yhy0
「…………ひび、き? どうか、したのですか?」
響「―――――― え?」
「…………ひび、き? どうか、したのですか?」
響「―――――― え?」
42: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:26:08.71 :p1xr7Yhy0
貴音「…… ぅん………… ふぁ……」
貴音「むにゃ……、ああ、響。おはよう、ございます…… よい朝ですね」
貴音「……はて、どうしたのです? ふふっ、わたくしの顔に、なにかついていますか?」
貴音「あっ、そうです! 本日の朝餉の当番は、響でしたね。わたくし、今朝は是非、ぱんを所望したく」
貴音「…… ぅん………… ふぁ……」
貴音「むにゃ……、ああ、響。おはよう、ございます…… よい朝ですね」
貴音「……はて、どうしたのです? ふふっ、わたくしの顔に、なにかついていますか?」
貴音「あっ、そうです! 本日の朝餉の当番は、響でしたね。わたくし、今朝は是非、ぱんを所望したく」
43: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:26:56.41 :p1xr7Yhy0
貴音「ひあっ!? ちょっ…… ひ、響!? いきなり何を――」
貴音「…………響? ど、どうしました、どこか痛むのですか、具合が悪いのですか?」
貴音「ああ、どうか落ち着いてください…… 大丈夫、大丈夫です、わたくしはちゃんと、ここにおりますよ」
貴音「あの…… 響? 少々、苦しいです、そんなに抱きしめられては」
貴音「ひあっ!? ちょっ…… ひ、響!? いきなり何を――」
貴音「…………響? ど、どうしました、どこか痛むのですか、具合が悪いのですか?」
貴音「ああ、どうか落ち着いてください…… 大丈夫、大丈夫です、わたくしはちゃんと、ここにおりますよ」
貴音「あの…… 響? 少々、苦しいです、そんなに抱きしめられては」
44: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:28:21.49 :p1xr7Yhy0
45: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:30:17.40 :p1xr7Yhy0
従者「首尾はいかがです? お話は無事に済みましたか?」
使者「もちろん何の問題もございませんでしたよ。戻りましょう」
従者「仰せの通りに」
使者「……」
従者「…… ひとつ、うかがっても?」
使者「なんです」
従者「なぜ彼女に、本当のことをすべて教えてあげなかったのです?」
使者「………… やはり会話を聞いていたのですか。盗み聞きとは、感心しませんね」
従者「職務の一環でございますので。それより、理由をお聞かせ願えますか」
従者「首尾はいかがです? お話は無事に済みましたか?」
使者「もちろん何の問題もございませんでしたよ。戻りましょう」
従者「仰せの通りに」
使者「……」
従者「…… ひとつ、うかがっても?」
使者「なんです」
従者「なぜ彼女に、本当のことをすべて教えてあげなかったのです?」
使者「………… やはり会話を聞いていたのですか。盗み聞きとは、感心しませんね」
従者「職務の一環でございますので。それより、理由をお聞かせ願えますか」
46: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:31:10.74 :p1xr7Yhy0
使者「はて、なんの理由でしょう?」
従者「決まっています」
従者「姫君が今後、地球に…… いえ、彼女の元に留まってよいことになった旨を、伝えなかった理由ですよ」
使者「伝えましたとも。選択如何では姫君が再度、地球へ赴くことは可能である、と」
従者「だいぶ語弊があるように思いますが」
使者「どういった点で、ですか」
従者「先ほどの説明を聞けば普通は、自身のところにまた姫君がおいでになるとは考えないのでは?」
使者「未定とは申しましたが、あの娘の許に行かない、とは一言も申しておりませんよ」
使者「はて、なんの理由でしょう?」
従者「決まっています」
従者「姫君が今後、地球に…… いえ、彼女の元に留まってよいことになった旨を、伝えなかった理由ですよ」
使者「伝えましたとも。選択如何では姫君が再度、地球へ赴くことは可能である、と」
従者「だいぶ語弊があるように思いますが」
使者「どういった点で、ですか」
従者「先ほどの説明を聞けば普通は、自身のところにまた姫君がおいでになるとは考えないのでは?」
使者「未定とは申しましたが、あの娘の許に行かない、とは一言も申しておりませんよ」
47: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:32:16.03 :p1xr7Yhy0
従者「ずいぶんと意地悪なことをなさるのですね。試練の本当の内容も、ついに明かさずじまいで」
使者「教えたところでどうなります。せいぜいあの娘が浮かれるくらいのものでしょう」
従者「そうでしょうか」
使者「いつまた、姫君が帰ってしまわぬとも限らない…… そのくらいの緊張感を持っておいてもらわねば」
従者「ですが、年端もいかない娘にそこまで要求するのは酷なのでは?」
使者「…………」
従者「姫君はもちろん、貴女様とも年頃はほぼ同じ…… いえ、彼女の方が年上でもおかしくありませんね」
使者「それは、私が幼く見えると言いたいのですか」
従者「そのようなことは決して。そもそも、彼女も年の頃より幼く見える面相でございましたし」
従者「ずいぶんと意地悪なことをなさるのですね。試練の本当の内容も、ついに明かさずじまいで」
使者「教えたところでどうなります。せいぜいあの娘が浮かれるくらいのものでしょう」
従者「そうでしょうか」
使者「いつまた、姫君が帰ってしまわぬとも限らない…… そのくらいの緊張感を持っておいてもらわねば」
従者「ですが、年端もいかない娘にそこまで要求するのは酷なのでは?」
使者「…………」
従者「姫君はもちろん、貴女様とも年頃はほぼ同じ…… いえ、彼女の方が年上でもおかしくありませんね」
使者「それは、私が幼く見えると言いたいのですか」
従者「そのようなことは決して。そもそも、彼女も年の頃より幼く見える面相でございましたし」
48: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:32:56.33 :p1xr7Yhy0
従者「さておき、彼女は見事、試練を乗り越えてみせたではありませんか」
使者「…… 偶々、でしょう。深く考えず、感情で動く部類の人間に見えましたから」
従者「そうだとしても、彼女の、姫君との絆の深さ。貴女様も、本当は認めておられるのでしょう?」
使者「…………」
従者「自力で、記憶を…… それもたかだか二週間程度で取り戻すと、いったい誰が予想しましたか」
使者「彼女から常に感じていた、動物的な、勘のようなものの恩恵…… なのでしょうか」
従者「そこはわかりかねますが、あの帝ですら出来なかったことを彼女は成し得たのですよ」
使者「はぁ…… また、『かぐや姫』のお話なのですね」
従者「まったくもって、嘆かわしい。物語の中だと、まるで月の民だけが悪者のようではありませんか」
使者「そこは致し方ないでしょう。どれだけ昔から伝わっていると思っているのです?」
従者「"当時の姫君の記憶" をあの帝めが "思い出せなかった" ことが、すべての元凶だというのに」
従者「さておき、彼女は見事、試練を乗り越えてみせたではありませんか」
使者「…… 偶々、でしょう。深く考えず、感情で動く部類の人間に見えましたから」
従者「そうだとしても、彼女の、姫君との絆の深さ。貴女様も、本当は認めておられるのでしょう?」
使者「…………」
従者「自力で、記憶を…… それもたかだか二週間程度で取り戻すと、いったい誰が予想しましたか」
使者「彼女から常に感じていた、動物的な、勘のようなものの恩恵…… なのでしょうか」
従者「そこはわかりかねますが、あの帝ですら出来なかったことを彼女は成し得たのですよ」
使者「はぁ…… また、『かぐや姫』のお話なのですね」
従者「まったくもって、嘆かわしい。物語の中だと、まるで月の民だけが悪者のようではありませんか」
使者「そこは致し方ないでしょう。どれだけ昔から伝わっていると思っているのです?」
従者「"当時の姫君の記憶" をあの帝めが "思い出せなかった" ことが、すべての元凶だというのに」
49: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:34:12.93 :p1xr7Yhy0
使者「誰しも、自身のことが可愛いのです。まして時の権力者ともなれば、過ちはそう認めますまい」
従者「だからと言って、あたかも武力に訴えて姫を奪い去ったかのような改変はいかがなものかと」
使者「…………」
従者「月では姫その人が、一日千秋の思いで待ち続けていたというのに!」
使者「もうそのお話は結構です。今更何を言ったところで、かぐや姫も、帝も、はるか過去の人なのですよ」
従者「これは失礼を。……さておき、彼女です」
使者「…… ああも簡単に、再挑戦の道を選ぶとは思いもよりませんでした」
従者「姫君との間に、それだけの信頼を築かれていたことの証左でございましょう」
使者「そう…… なの、でしょうか」
従者「ええ。間違いなく、そうですとも」
使者「誰しも、自身のことが可愛いのです。まして時の権力者ともなれば、過ちはそう認めますまい」
従者「だからと言って、あたかも武力に訴えて姫を奪い去ったかのような改変はいかがなものかと」
使者「…………」
従者「月では姫その人が、一日千秋の思いで待ち続けていたというのに!」
使者「もうそのお話は結構です。今更何を言ったところで、かぐや姫も、帝も、はるか過去の人なのですよ」
従者「これは失礼を。……さておき、彼女です」
使者「…… ああも簡単に、再挑戦の道を選ぶとは思いもよりませんでした」
従者「姫君との間に、それだけの信頼を築かれていたことの証左でございましょう」
使者「そう…… なの、でしょうか」
従者「ええ。間違いなく、そうですとも」
50: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:34:54.38 :p1xr7Yhy0
従者「生涯の友、あるいは伴侶となるものを探す試練など、前時代的で不毛、という話もございましたね」
使者「現に、今までは一度たりとも成就したためしはなかったのでしょう?」
従者「そのように聞いております。ですから、こたびの姫君が初、ということですね」
使者「…… その候補となる者と、周囲の者まで含めて、記憶を失わせたのちに――」
従者「共に過ごしたことを思い出し、会いたいと強く願い、再訪を望む。言葉にすれば、容易いですが」
使者「加えて今回の場合は、姫君が幼子に戻るという変事もあったのでしたね」
従者「あるいはそれこそが功を奏したのかもしれませんが…… いずれにせよ、彼女はやり遂げた」
使者「はい。それこそ、夢物語や御伽噺のたぐいと思っておりました」
従者「…… 貴女様におかれましては、特に、寂しくなりますね」
使者「…………」
従者「生涯の友、あるいは伴侶となるものを探す試練など、前時代的で不毛、という話もございましたね」
使者「現に、今までは一度たりとも成就したためしはなかったのでしょう?」
従者「そのように聞いております。ですから、こたびの姫君が初、ということですね」
使者「…… その候補となる者と、周囲の者まで含めて、記憶を失わせたのちに――」
従者「共に過ごしたことを思い出し、会いたいと強く願い、再訪を望む。言葉にすれば、容易いですが」
使者「加えて今回の場合は、姫君が幼子に戻るという変事もあったのでしたね」
従者「あるいはそれこそが功を奏したのかもしれませんが…… いずれにせよ、彼女はやり遂げた」
使者「はい。それこそ、夢物語や御伽噺のたぐいと思っておりました」
従者「…… 貴女様におかれましては、特に、寂しくなりますね」
使者「…………」
51: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:35:39.46 :p1xr7Yhy0
従者「だいたい、貴女様のお立場で頑なに"姫君"などとお呼びになる必要がどこにあります」
使者「今の私は月よりの使命を帯びてここにいる身です。当然の礼儀で……」
従者「しかし、実の姉上様を姉とお呼びになることに、なんの差し障りがあるでしょうか」
使者「……」
従者「ここには私のほか誰もおりません。それに、私からすれば貴女とて姫君なのですよ。"第二王女様"」
使者「…… これまでずっと、滅私に徹してこられた姉上が、初めてご自身の願いを口にされたのです」
従者「…………」
使者「もう一度友に逢いたい、そのためなら身分も立場もすべて捨てること厭わぬ、とまで仰って」
従者「ええ、私も驚かされました。その覚悟あらばこそ、今回の運びになったわけですから」
従者「だいたい、貴女様のお立場で頑なに"姫君"などとお呼びになる必要がどこにあります」
使者「今の私は月よりの使命を帯びてここにいる身です。当然の礼儀で……」
従者「しかし、実の姉上様を姉とお呼びになることに、なんの差し障りがあるでしょうか」
使者「……」
従者「ここには私のほか誰もおりません。それに、私からすれば貴女とて姫君なのですよ。"第二王女様"」
使者「…… これまでずっと、滅私に徹してこられた姉上が、初めてご自身の願いを口にされたのです」
従者「…………」
使者「もう一度友に逢いたい、そのためなら身分も立場もすべて捨てること厭わぬ、とまで仰って」
従者「ええ、私も驚かされました。その覚悟あらばこそ、今回の運びになったわけですから」
52: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:36:26.43 :p1xr7Yhy0
従者「姉上様のお役目を今後は一手に受け継ぐ、とのご決断はお見事でしたが、しかし……」
使者「その程度も引き受けられずして、何が王族ですか」
従者「!」
使者「姉上はこれまで、もう十分に王女としての責務を果たされました。これからは、私の番です」
従者「……本当に、ご立派になられましたね」
使者「これから訪れる諸々が、私の乗り越えるべき試練なのでしょう。見事果たしてみせます」
従者「ええ。どこまでもお供しましょう」
使者「戻ったらこれまで以上に忙しくなります。さあ、お急ぎなさい」
従者「仰せの通りに致します、"姫君"」
従者「姉上様のお役目を今後は一手に受け継ぐ、とのご決断はお見事でしたが、しかし……」
使者「その程度も引き受けられずして、何が王族ですか」
従者「!」
使者「姉上はこれまで、もう十分に王女としての責務を果たされました。これからは、私の番です」
従者「……本当に、ご立派になられましたね」
使者「これから訪れる諸々が、私の乗り越えるべき試練なのでしょう。見事果たしてみせます」
従者「ええ。どこまでもお供しましょう」
使者「戻ったらこれまで以上に忙しくなります。さあ、お急ぎなさい」
従者「仰せの通りに致します、"姫君"」
53: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:37:16.13 :p1xr7Yhy0
従者「ところで、もうひとつだけ、お尋ねしても構いませんか」
使者「なんです?」
従者「姫君…… いえ、つまり姉上様のことですが、なぜ一部の記憶を失われたままになさったのですか?」
使者「はて。わかりませんか?」
従者「恥ずかしながら」
使者「意趣返し、ですよ」
従者「はい?」
使者「先ほどはああ申しましたが、これからの私の苦労を思えば、それくらいは許されましょう」
従者「姉上様の記憶を戻さぬことがどう意趣返しになるのか、私には今ひとつ、わかりかねるのですが」
使者「はぁ…… これだからじいやは、頭のめぐりが ……あっ!」
従者「おや、これはこれは。私めのことを昔のようにお呼びくださるのですか?」
使者「っ、い、いえ! こほん、貴方も仕方のない人ですね」
従者「ところで、もうひとつだけ、お尋ねしても構いませんか」
使者「なんです?」
従者「姫君…… いえ、つまり姉上様のことですが、なぜ一部の記憶を失われたままになさったのですか?」
使者「はて。わかりませんか?」
従者「恥ずかしながら」
使者「意趣返し、ですよ」
従者「はい?」
使者「先ほどはああ申しましたが、これからの私の苦労を思えば、それくらいは許されましょう」
従者「姉上様の記憶を戻さぬことがどう意趣返しになるのか、私には今ひとつ、わかりかねるのですが」
使者「はぁ…… これだからじいやは、頭のめぐりが ……あっ!」
従者「おや、これはこれは。私めのことを昔のようにお呼びくださるのですか?」
使者「っ、い、いえ! こほん、貴方も仕方のない人ですね」
54: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:37:48.12 :p1xr7Yhy0
使者「よろしいですか? まず、この一月あまりの記憶がないことで、姉上の浮世離れした風情がますます強まります」
従者「はあ」
使者「あの娘にしても、幼子になった姉上のことは、当の姉上含めほかの誰にも理解されません」
従者「確かに、恐らくはそうなるでしょうが」
使者「周囲の者たちも、姉上が幼くなったことは忘れたままです。ですから確実にそうなります」
従者「それは分かりましたが、やはりそれの何が意趣返しなのか、この老体にはさっぱり……」
使者「…………腹いせ、です」
従者「腹いせ?」
使者「少々、二人が…… ……いえ。正直に申せば、姉上と共にいられるあの娘が、うらやましくて」
従者「…… なんと?」
使者「その…… ですので、ちょっとだけ、いたずらをしてやろうと、思い……」
従者「…………」
使者「よろしいですか? まず、この一月あまりの記憶がないことで、姉上の浮世離れした風情がますます強まります」
従者「はあ」
使者「あの娘にしても、幼子になった姉上のことは、当の姉上含めほかの誰にも理解されません」
従者「確かに、恐らくはそうなるでしょうが」
使者「周囲の者たちも、姉上が幼くなったことは忘れたままです。ですから確実にそうなります」
従者「それは分かりましたが、やはりそれの何が意趣返しなのか、この老体にはさっぱり……」
使者「…………腹いせ、です」
従者「腹いせ?」
使者「少々、二人が…… ……いえ。正直に申せば、姉上と共にいられるあの娘が、うらやましくて」
従者「…… なんと?」
使者「その…… ですので、ちょっとだけ、いたずらをしてやろうと、思い……」
従者「…………」
55: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:38:11.49 :p1xr7Yhy0
使者「……じいや、怒ったでしょう? 当然でしょうね。父上や母上に、注進でもなんでも……」
従者「はははは! いや、やはり貴女様はお変わりありませんな!」
使者「!」
従者「この爺、確信致しました。強かな貴女様は、きっと姉上様に負けずご立派な姫君となられましょう」
使者「な、何を言い出すかと思えば…… 当然ですよ」
従者「私も常におそばに控え、微力ながらお助けして差し上げます」
使者「……ふふ、頼もしいことですね」
従者「ぜひとも姉上様に、後を任せて間違いはなかった、と思っていただかなくてはなりません」
使者「そうです。姉上はせいぜい、あのような鄙なところで呆けておられればよいのです」
従者「ええ、きっとそうなさいますとも。さて…… なれば、戻る前に、しておくべきことがございますね」
使者「しておくべきこと……? はて、それは一体?」
従者「貴女様も、ひとたび王女となられた暁には、人前で涙など流せなくなります」
使者「……じいや、怒ったでしょう? 当然でしょうね。父上や母上に、注進でもなんでも……」
従者「はははは! いや、やはり貴女様はお変わりありませんな!」
使者「!」
従者「この爺、確信致しました。強かな貴女様は、きっと姉上様に負けずご立派な姫君となられましょう」
使者「な、何を言い出すかと思えば…… 当然ですよ」
従者「私も常におそばに控え、微力ながらお助けして差し上げます」
使者「……ふふ、頼もしいことですね」
従者「ぜひとも姉上様に、後を任せて間違いはなかった、と思っていただかなくてはなりません」
使者「そうです。姉上はせいぜい、あのような鄙なところで呆けておられればよいのです」
従者「ええ、きっとそうなさいますとも。さて…… なれば、戻る前に、しておくべきことがございますね」
使者「しておくべきこと……? はて、それは一体?」
従者「貴女様も、ひとたび王女となられた暁には、人前で涙など流せなくなります」
56: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:38:54.90 :p1xr7Yhy0
使者「涙? なぜ私が泣かねばならぬのですか。涙もろい姉上ならいざ知らず」
従者「今一度申し上げますが、ここには今、私のほか誰もおりません」
使者「ですから、それと、私が涙することの何が――」
従者「よろしいですか。幼少のころより貴女様にお仕えしてきたこの私、ひとりだけ、でございます」
使者「………… 姉上、っ、あ、ね、うぇぇ……! さびじい、でず、っ、私、わだぐじ、うええええ………」
従者「誰よりも寂しい思いをしておられるのは、勿論貴女様ですとも。今はどうぞ、存分にお泣きなさい」
従者(姫君…… 貴音様。妹君がいかに貴女様をお慕いだったかは、よくご存知のはず)
従者(月の地を二度と踏めずとも構わぬ、との、こたびのご決意。この爺、異論などはございません)
従者(それでも、どうか、月の輝く晩には…… かんばせを少しばかり、こちらにもお向けくださいませ)
従者(妹君も貴女様によく似て、情に厚く、そして、いささか泣き虫でいらっしゃいますゆえ)
使者「涙? なぜ私が泣かねばならぬのですか。涙もろい姉上ならいざ知らず」
従者「今一度申し上げますが、ここには今、私のほか誰もおりません」
使者「ですから、それと、私が涙することの何が――」
従者「よろしいですか。幼少のころより貴女様にお仕えしてきたこの私、ひとりだけ、でございます」
使者「………… 姉上、っ、あ、ね、うぇぇ……! さびじい、でず、っ、私、わだぐじ、うええええ………」
従者「誰よりも寂しい思いをしておられるのは、勿論貴女様ですとも。今はどうぞ、存分にお泣きなさい」
従者(姫君…… 貴音様。妹君がいかに貴女様をお慕いだったかは、よくご存知のはず)
従者(月の地を二度と踏めずとも構わぬ、との、こたびのご決意。この爺、異論などはございません)
従者(それでも、どうか、月の輝く晩には…… かんばせを少しばかり、こちらにもお向けくださいませ)
従者(妹君も貴女様によく似て、情に厚く、そして、いささか泣き虫でいらっしゃいますゆえ)
57: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:39:43.13 :p1xr7Yhy0
58: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:42:16.07 :p1xr7Yhy0
響「たか、ね、っ、たかね、貴音……! ど、どうして、ここにいるの?」
貴音「どうして…… と言われましても。昨晩、泊りにおいで、と誘ってくれたのは響でしょう?」
響「……………… 昨晩?」
貴音「ええ、つい昨晩のことですよ。明日は、響もわたくしもおふだから、と」
響「えっ、ちょっと何言ってるの? 貴音、だいじょうぶ?」
貴音「響こそ大丈夫ですか。一晩のうちに、いったい何があったのです」
響「一晩って…… あのさ、貴音。いま、何月の何日かわかってる?」
貴音「本当にどうしたというのですか、響。本日はもちろん、十二月の」
響「…………じゅうに、がつ?」
貴音「はい? それが何か――」
響「うがーっ!! あいつ記憶いじれるくせに、その辺のつじつま合わせてないのか!?」
貴音「ひ、響、あの、どうか落ち着いてください」
響「いい、貴音? 貴音こそ落ち着いて聞いてね。今日の日付は……」
響「たか、ね、っ、たかね、貴音……! ど、どうして、ここにいるの?」
貴音「どうして…… と言われましても。昨晩、泊りにおいで、と誘ってくれたのは響でしょう?」
響「……………… 昨晩?」
貴音「ええ、つい昨晩のことですよ。明日は、響もわたくしもおふだから、と」
響「えっ、ちょっと何言ってるの? 貴音、だいじょうぶ?」
貴音「響こそ大丈夫ですか。一晩のうちに、いったい何があったのです」
響「一晩って…… あのさ、貴音。いま、何月の何日かわかってる?」
貴音「本当にどうしたというのですか、響。本日はもちろん、十二月の」
響「…………じゅうに、がつ?」
貴音「はい? それが何か――」
響「うがーっ!! あいつ記憶いじれるくせに、その辺のつじつま合わせてないのか!?」
貴音「ひ、響、あの、どうか落ち着いてください」
響「いい、貴音? 貴音こそ落ち着いて聞いてね。今日の日付は……」
59: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:43:11.36 :p1xr7Yhy0
貴音「と…… 年が明けているのですか!? 一晩寝て起きただけというのに!? 面妖な!」
響「叫びたいのは自分のほうだよ!!」
貴音「と…… 年が明けているのですか!? 一晩寝て起きただけというのに!? 面妖な!」
響「叫びたいのは自分のほうだよ!!」
60: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:43:47.24 :p1xr7Yhy0
62: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:46:31.49 :p1xr7Yhy0
【我那覇響の場合:3】
貴音「そのようにのんびりしていて、よいのですか? もう学校は始まっているのでしょう?」
響「うん…… でも、今日はいいよ。お休みにしちゃうから」
貴音「それはいけません、響。せっかくの学業のための大事な時間を……」
響「やだ」
貴音「どうしたというのです。なにか、登校したくない理由でもあるのですか?」
響「自分、学校に行きたくないんじゃなくて、家にいたいの」
貴音「要はずる休みではありませんか」
響「たまにはそういう日もあっていいと思うぞ。なんたって自分、カンペキだし」
貴音「理由になっていないように思いますが……」
【我那覇響の場合:3】
貴音「そのようにのんびりしていて、よいのですか? もう学校は始まっているのでしょう?」
響「うん…… でも、今日はいいよ。お休みにしちゃうから」
貴音「それはいけません、響。せっかくの学業のための大事な時間を……」
響「やだ」
貴音「どうしたというのです。なにか、登校したくない理由でもあるのですか?」
響「自分、学校に行きたくないんじゃなくて、家にいたいの」
貴音「要はずる休みではありませんか」
響「たまにはそういう日もあっていいと思うぞ。なんたって自分、カンペキだし」
貴音「理由になっていないように思いますが……」
63: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:47:19.33 :p1xr7Yhy0
響「……お願い、貴音。明日から自分、ちゃんとするって約束するから」ギュ
貴音「ひ…… 響? 急にどうし……」
響「だから今日は、貴音と、一緒にいさせて。おねがい」
貴音「……」
響「…………だめ?」
貴音「…… ふふっ、響はほんとうに仕方ありませんね。今日だけですよ?」
響「えへへ、やったー! ありがと、貴音!」
貴音「わたくしにずる休みのお礼を言ってどうするのです。まったくもう」
響「そうだ! 貴音、きょうは自分がおぜんざいかおしるこ作ってあげる。どっちがいい?」
貴音「おやおや、わたくしに口止めの賂をしようというのですか? ……そうですね、むむむ」
響「ふふ、決められないんだったら、どっちも作ってあげてもいいよ」
響「……お願い、貴音。明日から自分、ちゃんとするって約束するから」ギュ
貴音「ひ…… 響? 急にどうし……」
響「だから今日は、貴音と、一緒にいさせて。おねがい」
貴音「……」
響「…………だめ?」
貴音「…… ふふっ、響はほんとうに仕方ありませんね。今日だけですよ?」
響「えへへ、やったー! ありがと、貴音!」
貴音「わたくしにずる休みのお礼を言ってどうするのです。まったくもう」
響「そうだ! 貴音、きょうは自分がおぜんざいかおしるこ作ってあげる。どっちがいい?」
貴音「おやおや、わたくしに口止めの賂をしようというのですか? ……そうですね、むむむ」
響「ふふ、決められないんだったら、どっちも作ってあげてもいいよ」
64: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:47:56.05 :p1xr7Yhy0
貴音「ところで、響…… さきほど教えていただいたことは、本当なのでしょうか」
響「ん? いまはもう一月になってる、ってこと?」
貴音「はい。わたくし、どうにも時間の感覚が曖昧で…… まだ十二月の初めのように思えてなりません」
響「うーん、こればっかりはホントなんだよ、としか言えないぞ」
貴音「ですが、仮にそうなのだとすると、その間、わたくしはどのように過ごしていたのでしょうか?」
響「……さ、さあ? じ、自分が知ってるかぎり、貴音は普通にしてたと思うよ。うん」
響(ラーメン食べたり、ココア飲んだり…… それに毎日、事務所には通ってたし)
貴音「しかし、どのようにお仕事や稽古をこなしていたものやら…… まったく記憶にないのです」
響(そりゃそうだぞ、だってレッスンもお仕事もなんにもやってないんだから!)
貴音「それに…… その、実は、恥ずかしながら……」
響「どうしたの?」
貴音「ところで、響…… さきほど教えていただいたことは、本当なのでしょうか」
響「ん? いまはもう一月になってる、ってこと?」
貴音「はい。わたくし、どうにも時間の感覚が曖昧で…… まだ十二月の初めのように思えてなりません」
響「うーん、こればっかりはホントなんだよ、としか言えないぞ」
貴音「ですが、仮にそうなのだとすると、その間、わたくしはどのように過ごしていたのでしょうか?」
響「……さ、さあ? じ、自分が知ってるかぎり、貴音は普通にしてたと思うよ。うん」
響(ラーメン食べたり、ココア飲んだり…… それに毎日、事務所には通ってたし)
貴音「しかし、どのようにお仕事や稽古をこなしていたものやら…… まったく記憶にないのです」
響(そりゃそうだぞ、だってレッスンもお仕事もなんにもやってないんだから!)
貴音「それに…… その、実は、恥ずかしながら……」
響「どうしたの?」
65: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:49:48.11 :p1xr7Yhy0
貴音「……ほんの少し、少しではあるものの、体型が変わっているような気が」
響(あー…… 食べる量は相対的に減っても、運動量がそれ以上に減ってたもんなー……)
響「そ、そう……? 自分が見た感じ、相変わらずすらっとしてるから大丈――」
貴音「見た目の問題ではありません! 響とて、ぷろぽーしょん管理の難しさは知っているでしょう!?」
響「え、あ、う、うん、もちろん」
貴音「特にわたくしともなると、自身の感覚でわかるのです! いまのわたくしは明らかに不摂生で……」
響「そっかー、じゃあ、おぜんざい作るの止めとこっか」
貴音「な"っ、そ、それとこれとはお話が違います! もちろんいただきますとも!」
貴音「……ほんの少し、少しではあるものの、体型が変わっているような気が」
響(あー…… 食べる量は相対的に減っても、運動量がそれ以上に減ってたもんなー……)
響「そ、そう……? 自分が見た感じ、相変わらずすらっとしてるから大丈――」
貴音「見た目の問題ではありません! 響とて、ぷろぽーしょん管理の難しさは知っているでしょう!?」
響「え、あ、う、うん、もちろん」
貴音「特にわたくしともなると、自身の感覚でわかるのです! いまのわたくしは明らかに不摂生で……」
響「そっかー、じゃあ、おぜんざい作るの止めとこっか」
貴音「な"っ、そ、それとこれとはお話が違います! もちろんいただきますとも!」
66: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:50:34.67 :p1xr7Yhy0
【Absence Report"s"】
響「あ…… そうだ。ごめん貴音、ちょっと自分電話してきていい?」
貴音「もちろんです、ごゆっくり」
響「…… うん、ホントにごめんね、プロデューサー。明日は絶対行くから」
P『体調不良はしょうがないよ、連絡ありがとな。これ以上長引かないように、ちゃんと治してくれ』
響「うん…… きょうは、しっかり充電することにするさー」
P『ああ、ときには休むのも仕事みたいなもんだ。そうだ、学校には伝えたか?』
響「大丈夫だぞ、そっちにはもう電話かけたから」
P『ならよし。しかしまー三日も続けてお休みとは、響のイメージじゃないよな、はははっ』
響「う、うがー! どういう意味さー!?」
【Absence Report"s"】
響「あ…… そうだ。ごめん貴音、ちょっと自分電話してきていい?」
貴音「もちろんです、ごゆっくり」
響「…… うん、ホントにごめんね、プロデューサー。明日は絶対行くから」
P『体調不良はしょうがないよ、連絡ありがとな。これ以上長引かないように、ちゃんと治してくれ』
響「うん…… きょうは、しっかり充電することにするさー」
P『ああ、ときには休むのも仕事みたいなもんだ。そうだ、学校には伝えたか?』
響「大丈夫だぞ、そっちにはもう電話かけたから」
P『ならよし。しかしまー三日も続けてお休みとは、響のイメージじゃないよな、はははっ』
響「う、うがー! どういう意味さー!?」
67: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:51:19.99 :p1xr7Yhy0
P『そうだ、響。ちょっと聞きたいんだけど』
響「えっ、何?」
P『貴音がどこにいるか知らないか? まだ事務所に来てないんだよ』
響「…………!!」
P『あいつ今日みたいに午後からの日でも、結構早く来てること多いから、少し気になってな』
響「へ、へえー…… 貴音、どうしたんだろ?」
P『まあ、わからないよな。響ならひょっとしてと思ったんだが、知ってるわけ――』
響「あ、あー! そうだ、そうだった、思い出したぞ!」
P『え?』
響「実は自分、貴音から聞いてたんだ! きょうは事情があってお休みするって!」
P『はぁ!? そ、そうなのか?』
P『そうだ、響。ちょっと聞きたいんだけど』
響「えっ、何?」
P『貴音がどこにいるか知らないか? まだ事務所に来てないんだよ』
響「…………!!」
P『あいつ今日みたいに午後からの日でも、結構早く来てること多いから、少し気になってな』
響「へ、へえー…… 貴音、どうしたんだろ?」
P『まあ、わからないよな。響ならひょっとしてと思ったんだが、知ってるわけ――』
響「あ、あー! そうだ、そうだった、思い出したぞ!」
P『え?』
響「実は自分、貴音から聞いてたんだ! きょうは事情があってお休みするって!」
P『はぁ!? そ、そうなのか?』
68: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:52:01.09 :p1xr7Yhy0
響「ホントにごめん、プロデューサー! 伝えとくのすっかり忘れてたぞいやー自分ドジだなー」
P『なんだ、そうだったのか…… 思い出してくれたのはいいけど、これっきりにしてくれよ』
響「うん、気をつける。あとで貴音にも、ちゃんと自分で言わなきゃダメだぞ、って伝えとくね」
P『確かにそうだな。って、響、貴音はすぐ伝えられるようなとこにいるのか?』
響「うえっ!? ま、まさか! そんなことない…… と、思うよ?」
P『はは、当たり前か。なんにせよよろしく言っといてくれ』
響「うん…… ねえ、プロデューサー?」
P『ん? どうした?』
響「………… 貴音の苗字って、なんだっけ?」
P『は? どうしたんだ響、熱でもあるんじゃないか? あんまり電話してたら――』
響「ホントにごめん、プロデューサー! 伝えとくのすっかり忘れてたぞいやー自分ドジだなー」
P『なんだ、そうだったのか…… 思い出してくれたのはいいけど、これっきりにしてくれよ』
響「うん、気をつける。あとで貴音にも、ちゃんと自分で言わなきゃダメだぞ、って伝えとくね」
P『確かにそうだな。って、響、貴音はすぐ伝えられるようなとこにいるのか?』
響「うえっ!? ま、まさか! そんなことない…… と、思うよ?」
P『はは、当たり前か。なんにせよよろしく言っといてくれ』
響「うん…… ねえ、プロデューサー?」
P『ん? どうした?』
響「………… 貴音の苗字って、なんだっけ?」
P『は? どうしたんだ響、熱でもあるんじゃないか? あんまり電話してたら――』
69: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:52:55.68 :p1xr7Yhy0
響「おねがい、答え聞かせて。いまの自分にとって、すごく大事なことなの」
P『…… 四条、だ。四条貴音。765プロ所属アイドルの、四条貴音だよ。これでいいか?』
響「…………ありがと。いきなり変なこと聞いちゃって、ごめんね」
P『それくらい構わないよ。それより、ちゃんとあったかくして寝とくんだぞ』
響「そうする。じゃあプロデューサー、また明日」
P『ああ、また明日。……あ、待った、貴音も明日は来るんだよな?』
響「うん…… うん、絶対来るよ! ていうか自分、明日は貴音と一緒に事務所に行くから!」
P『へえ、約束でもしてたのか? わかった、改めて貴音にもよろしくなー』
響「ごめんね、お待たせー」
貴音「もう用事は済んだのですか?」
響「うん、大丈夫。……全部、ばっちりだぞ」
貴音「?」
響「おねがい、答え聞かせて。いまの自分にとって、すごく大事なことなの」
P『…… 四条、だ。四条貴音。765プロ所属アイドルの、四条貴音だよ。これでいいか?』
響「…………ありがと。いきなり変なこと聞いちゃって、ごめんね」
P『それくらい構わないよ。それより、ちゃんとあったかくして寝とくんだぞ』
響「そうする。じゃあプロデューサー、また明日」
P『ああ、また明日。……あ、待った、貴音も明日は来るんだよな?』
響「うん…… うん、絶対来るよ! ていうか自分、明日は貴音と一緒に事務所に行くから!」
P『へえ、約束でもしてたのか? わかった、改めて貴音にもよろしくなー』
響「ごめんね、お待たせー」
貴音「もう用事は済んだのですか?」
響「うん、大丈夫。……全部、ばっちりだぞ」
貴音「?」
70: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:53:44.14 :p1xr7Yhy0
【四条貴音の場合】
響「ありあわせだけど…… お昼ごはん、どうだったかな? おいしくできてた?」
貴音「ええ、何時もながらたいへん美味でしたよ。毎日でもいただきたいくらいです」
響「よかった! じゃあ自分、お皿洗ってくるから、ゆっくりしててね」
貴音「…………響。その前に、少し時間をいただけませんか?」
響「うん? いいけど、どうかした?」
貴音「大事なお話をしたいのです。わたくしに関わる、とても…… とても、大事な」
響「あはは、なに? そんなに改まっちゃってどうしたのさ?」
貴音「響。わたくしがいまから申し上げることは、すべて真実です」
響「う…… うん?」
貴音「とはいえ、たいへんに荒唐無稽な話です。どうか、まず、最後まで聞いていただきたいのです」
【四条貴音の場合】
響「ありあわせだけど…… お昼ごはん、どうだったかな? おいしくできてた?」
貴音「ええ、何時もながらたいへん美味でしたよ。毎日でもいただきたいくらいです」
響「よかった! じゃあ自分、お皿洗ってくるから、ゆっくりしててね」
貴音「…………響。その前に、少し時間をいただけませんか?」
響「うん? いいけど、どうかした?」
貴音「大事なお話をしたいのです。わたくしに関わる、とても…… とても、大事な」
響「あはは、なに? そんなに改まっちゃってどうしたのさ?」
貴音「響。わたくしがいまから申し上げることは、すべて真実です」
響「う…… うん?」
貴音「とはいえ、たいへんに荒唐無稽な話です。どうか、まず、最後まで聞いていただきたいのです」
71: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:54:33.95 :p1xr7Yhy0
貴音「何故だか、いままでずっと、記憶から零れ落ちていたことを…… 急に、思い出しました」
響「そうなの……? わかった。ちゃんと聞くよ、自分」
貴音「驚かずに聞いてください。響、わたくしは…… この地球の人間ではないのです」
響「ああ、うん、それは知ってる。月から来てるんだよね」
貴音「もちろん、到底すぐに受け容れられないことだとはわかっておりますが、しかし、えっ?」
響「だから、知ってるぞ。貴音は、月の王女様だって」
貴音「えっ?」
貴音「えっ?」
響(そっか、貴音、そっちはちゃんと記憶が戻ってるんだ…… 思い出せて、よかったね)
響「こんな大事なこと、隠さずに自分に打ち明けてくれて、ありがとう。貴音」
貴音「えっ?」
貴音「何故だか、いままでずっと、記憶から零れ落ちていたことを…… 急に、思い出しました」
響「そうなの……? わかった。ちゃんと聞くよ、自分」
貴音「驚かずに聞いてください。響、わたくしは…… この地球の人間ではないのです」
響「ああ、うん、それは知ってる。月から来てるんだよね」
貴音「もちろん、到底すぐに受け容れられないことだとはわかっておりますが、しかし、えっ?」
響「だから、知ってるぞ。貴音は、月の王女様だって」
貴音「えっ?」
貴音「えっ?」
響(そっか、貴音、そっちはちゃんと記憶が戻ってるんだ…… 思い出せて、よかったね)
響「こんな大事なこと、隠さずに自分に打ち明けてくれて、ありがとう。貴音」
貴音「えっ?」
72: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:55:04.16 :p1xr7Yhy0
響「…… ごめん。もう知ってるって、自分から先に言っとけばよかった。よしよし」
貴音「わ、わだぐし、が………… どの、ような、っ、覚悟で、この"、ごどを、言い出じ、だと……!」
響「大丈夫、大丈夫だからさ。もう泣かないで」
貴音「もしも…… もしも、響が、わたくしの素性を知って……」
響「……」
貴音「友として、見てくれなくなってしまったらと、思うと、わたくしは……!」
響「…………貴音」コツン
貴音「いたっ…… ひ、ひび、き? あの、なぜ、おでこを、それに顔が、近」
響「泣き虫の貴音が聞き逃しちゃわないように、だぞ。一度しか言わないから、よーく聞いて」
貴音「はっ、はい?」
響「出身がどことか、名前がどうとか。そういうの、友達になることと、なーんにも関係ないさー」
響「…… ごめん。もう知ってるって、自分から先に言っとけばよかった。よしよし」
貴音「わ、わだぐし、が………… どの、ような、っ、覚悟で、この"、ごどを、言い出じ、だと……!」
響「大丈夫、大丈夫だからさ。もう泣かないで」
貴音「もしも…… もしも、響が、わたくしの素性を知って……」
響「……」
貴音「友として、見てくれなくなってしまったらと、思うと、わたくしは……!」
響「…………貴音」コツン
貴音「いたっ…… ひ、ひび、き? あの、なぜ、おでこを、それに顔が、近」
響「泣き虫の貴音が聞き逃しちゃわないように、だぞ。一度しか言わないから、よーく聞いて」
貴音「はっ、はい?」
響「出身がどことか、名前がどうとか。そういうの、友達になることと、なーんにも関係ないさー」
73: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:56:10.50 :p1xr7Yhy0
貴音「しかし! それは、あくまで地球の上でのことで……」
響「四条貴音と我那覇響は、もうずっと前から友達だし、これからも、ずーっと友達でしょ。違う?」
貴音「それは…… 違いません、ちがわない、です、そうであって、ほしいです、ですが……!」
響「髪が銀色でも言葉遣いが古風でも、ちょっと抜けてても、……それに、月から来てたって」
響「そんなことくらいで友達やめるとか、ありえないよ」
貴音「………… ひび、き」
響「はいはい、もう泣かない、泣かない。貴音のほうがお姉さんなんだぞ?」
貴音「は………… い、はい、っ………」
響「……だいじょうぶ。自分、ここにいるよ。貴音が落ち着くまで、一緒にいてあげるから」
貴音「しかし! それは、あくまで地球の上でのことで……」
響「四条貴音と我那覇響は、もうずっと前から友達だし、これからも、ずーっと友達でしょ。違う?」
貴音「それは…… 違いません、ちがわない、です、そうであって、ほしいです、ですが……!」
響「髪が銀色でも言葉遣いが古風でも、ちょっと抜けてても、……それに、月から来てたって」
響「そんなことくらいで友達やめるとか、ありえないよ」
貴音「………… ひび、き」
響「はいはい、もう泣かない、泣かない。貴音のほうがお姉さんなんだぞ?」
貴音「は………… い、はい、っ………」
響「……だいじょうぶ。自分、ここにいるよ。貴音が落ち着くまで、一緒にいてあげるから」
74: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:56:46.52 :p1xr7Yhy0
響「そしたら…… もう、あっちには帰らないの?」
貴音「帰らない、というより、"帰れない"と言ったほうが正しいのかもしれません」
響「そう、なんだ……」
貴音「よいのです。これは、わたくしが望んだことです」
響「…… 貴音、あっちに家族とか、残してきちゃったってこと?」
貴音「ええ。ですが、なにも永劫の別れというわけではございませんから」
響「え?」
貴音「響とわたくしが、こうしてまた巡り会えたように…… いずれ巡り会わせが、あるやもしれません」
響「そしたら…… もう、あっちには帰らないの?」
貴音「帰らない、というより、"帰れない"と言ったほうが正しいのかもしれません」
響「そう、なんだ……」
貴音「よいのです。これは、わたくしが望んだことです」
響「…… 貴音、あっちに家族とか、残してきちゃったってこと?」
貴音「ええ。ですが、なにも永劫の別れというわけではございませんから」
響「え?」
貴音「響とわたくしが、こうしてまた巡り会えたように…… いずれ巡り会わせが、あるやもしれません」
75: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:57:34.12 :p1xr7Yhy0
響「…… 貴音の、家族かぁ。会ってみたかった気もするぞ」
貴音「そういえば、響にも話しておりませんでしたね。実はわたくし、妹がおりまして」
響「妹さん!? いたんだ! へえー、きっと貴音に似て美人なんだろうなー」
貴音「その妹がこのたび、わたくしの跡目を継いでくれることになったのです」
響「そうなのか。自分、詳しくはわかんないけど、いろいろ大変だろうね」
貴音「ええ…… ですが、あの子なら、見事にやり遂げてくれると信じております」
響「貴音の妹さんなら、大丈夫に決まってるさー。ところでその子と貴音、いくつ年が違うの?」
貴音「三つの違いですから、ああ、響、貴女よりひとつ下ということになりますね」
響「へー、年も近いんだ。あ、ひょっとして、貴音と同じような銀髪だったり?」
貴音「そうです。これは月でも、特にわたくしどもの家系に特徴的なものでして」
響「…… 妹さん、貴音のマネしてるみたいな髪留め、つけてたりする?」
貴音「ああ、そういえばあの子も…… ふふ、響、まるであの子を見てきたかのようですね」
響「…… 貴音の、家族かぁ。会ってみたかった気もするぞ」
貴音「そういえば、響にも話しておりませんでしたね。実はわたくし、妹がおりまして」
響「妹さん!? いたんだ! へえー、きっと貴音に似て美人なんだろうなー」
貴音「その妹がこのたび、わたくしの跡目を継いでくれることになったのです」
響「そうなのか。自分、詳しくはわかんないけど、いろいろ大変だろうね」
貴音「ええ…… ですが、あの子なら、見事にやり遂げてくれると信じております」
響「貴音の妹さんなら、大丈夫に決まってるさー。ところでその子と貴音、いくつ年が違うの?」
貴音「三つの違いですから、ああ、響、貴女よりひとつ下ということになりますね」
響「へー、年も近いんだ。あ、ひょっとして、貴音と同じような銀髪だったり?」
貴音「そうです。これは月でも、特にわたくしどもの家系に特徴的なものでして」
響「…… 妹さん、貴音のマネしてるみたいな髪留め、つけてたりする?」
貴音「ああ、そういえばあの子も…… ふふ、響、まるであの子を見てきたかのようですね」
76: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:58:14.13 :p1xr7Yhy0
響(…… もうこれ絶対間違いないぞ、あいつ、貴音の妹だったんだな!?)
響(月の人なんて貴音込みで二人しか知らないから、てっきりみんな銀髪だって……)
響(喋りとか物腰とかなんか似てたし、見た目も貴音がちょっと縮んだみたいだな、とは思ってたけど!)
響(で、話聞いてるかぎり…… 貴音、このひと月くらいの記憶だけがすっぽりなくなってる)
響(――当然、その間ちっちゃくなってたことも、自分と暮らしてたこともまるで覚えてない!)
響(月から来たこととか、家族のこととかはちゃんと覚えてるのに……)
響(それに、自分があいつと会ってるってことも、この分だときっと知らされてない)
響(それもこれも全部、あいつがわざとやったことなんだな!? もー!!)
響(…… もうこれ絶対間違いないぞ、あいつ、貴音の妹だったんだな!?)
響(月の人なんて貴音込みで二人しか知らないから、てっきりみんな銀髪だって……)
響(喋りとか物腰とかなんか似てたし、見た目も貴音がちょっと縮んだみたいだな、とは思ってたけど!)
響(で、話聞いてるかぎり…… 貴音、このひと月くらいの記憶だけがすっぽりなくなってる)
響(――当然、その間ちっちゃくなってたことも、自分と暮らしてたこともまるで覚えてない!)
響(月から来たこととか、家族のこととかはちゃんと覚えてるのに……)
響(それに、自分があいつと会ってるってことも、この分だときっと知らされてない)
響(それもこれも全部、あいつがわざとやったことなんだな!? もー!!)
77: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:58:51.02 :p1xr7Yhy0
78: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 20:59:44.51 :p1xr7Yhy0
【New Moon / 0.6】
響「……あ! しまった、両方作るとなるとあんこが足りないなー」
貴音「あんこ、ですか? できあいでなくとも、小豆を炊けばよいのでは……」
響「あのねー、貴音。ふつうの女子高生はあずきなんて家にストックしてないの!」
貴音「ふつうの女子高生の部屋に、わにやももんがはいないと思うのですが」
響「うがーっ!? い、いまそれ関係ないでしょ!」
響「ってことで、とりあえず大急ぎで買ってくるよ。貴音、その間お留守番してて」
貴音「それならば、響、わたくしもお供しますよ」
響「いいよ、今日の貴音はお客さんなんだから。自分、ダッシュで帰ってくる! いってきまーす!」
ガチャッ パタン
貴音「…… ふふ、まったく、せっかちなのですから。いってらっしゃいませ」
【New Moon / 0.6】
響「……あ! しまった、両方作るとなるとあんこが足りないなー」
貴音「あんこ、ですか? できあいでなくとも、小豆を炊けばよいのでは……」
響「あのねー、貴音。ふつうの女子高生はあずきなんて家にストックしてないの!」
貴音「ふつうの女子高生の部屋に、わにやももんがはいないと思うのですが」
響「うがーっ!? い、いまそれ関係ないでしょ!」
響「ってことで、とりあえず大急ぎで買ってくるよ。貴音、その間お留守番してて」
貴音「それならば、響、わたくしもお供しますよ」
響「いいよ、今日の貴音はお客さんなんだから。自分、ダッシュで帰ってくる! いってきまーす!」
ガチャッ パタン
貴音「…… ふふ、まったく、せっかちなのですから。いってらっしゃいませ」
79: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:00:13.34 :p1xr7Yhy0
貴音「はて、しかし、響のいない間、どうしたものでしょうか」
貴音「…… ひと月が過ぎた、と聞くと、なにやら響のお部屋もずいぶん懐かしいように感じますね」
貴音「そうです! せっかくですから響の家族の皆に、しばらくぶりのご挨拶を――」
ねこ吉「ウニャー」スリスリスリ
バチンッ
貴音「ひああぁっ!? ね、ねこ吉殿! おどかさないでください……」
貴音「はて、しかし、響のいない間、どうしたものでしょうか」
貴音「…… ひと月が過ぎた、と聞くと、なにやら響のお部屋もずいぶん懐かしいように感じますね」
貴音「そうです! せっかくですから響の家族の皆に、しばらくぶりのご挨拶を――」
ねこ吉「ウニャー」スリスリスリ
バチンッ
貴音「ひああぁっ!? ね、ねこ吉殿! おどかさないでください……」
80: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:01:12.50 :p1xr7Yhy0
貴音「……む? ねこ吉殿。それはいったい、何をくわえているのです?」
ねこ吉「ナーゴ」
貴音「おや、わたくしにくださるのですか。ふふ、ありがとうございます」
ねこ吉「ニャーン」スタスタスタ
貴音「しかし…… これをいただいたところで、残念ながら、わたくしにはどうしようも……」
貴音「響ならば、かんたんに仕上げてしまうのでしょうが」
貴音「……この、棒。なぜこれがまだ付いたままなのでしょう?」
貴音「ええと…… たしか、このように持って――」
貴音「………… ここを、こうして…… 引っかけて、輪から、引き抜いて…… おお!」
貴音「それならば、次は…… こちらに出たぶんを、このように……」
貴音「……む? ねこ吉殿。それはいったい、何をくわえているのです?」
ねこ吉「ナーゴ」
貴音「おや、わたくしにくださるのですか。ふふ、ありがとうございます」
ねこ吉「ニャーン」スタスタスタ
貴音「しかし…… これをいただいたところで、残念ながら、わたくしにはどうしようも……」
貴音「響ならば、かんたんに仕上げてしまうのでしょうが」
貴音「……この、棒。なぜこれがまだ付いたままなのでしょう?」
貴音「ええと…… たしか、このように持って――」
貴音「………… ここを、こうして…… 引っかけて、輪から、引き抜いて…… おお!」
貴音「それならば、次は…… こちらに出たぶんを、このように……」
81: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:01:44.47 :p1xr7Yhy0
82: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:05:51.66 :p1xr7Yhy0
ガチャ
響「貴音、ただいまーっ! いやー今日は外すっごい冷えてるぞ、寒かったー」
貴音「はっ!? ひ、響、お帰りなさい」ササッ
響「あーっ。貴音、いまなーんか隠したなー?」
貴音「いっ、いえ、そのようなことは決して!」
響「ほんとにー? つまみ食いでもしようとしてたんじゃないの?」
貴音「わたくしが、ですか? まさか。そ、それより、意外と時間がかかったのですね」
響「うん、ちょっと遠出しないと売ってなかったんだ…… って、へへー、隙ありっ!」ヒョイ
貴音「ああっ!? 響、それはっ!」
響「ふふーん、その焦りようってことは、やっぱりカップ麺かなんか――」
ガチャ
響「貴音、ただいまーっ! いやー今日は外すっごい冷えてるぞ、寒かったー」
貴音「はっ!? ひ、響、お帰りなさい」ササッ
響「あーっ。貴音、いまなーんか隠したなー?」
貴音「いっ、いえ、そのようなことは決して!」
響「ほんとにー? つまみ食いでもしようとしてたんじゃないの?」
貴音「わたくしが、ですか? まさか。そ、それより、意外と時間がかかったのですね」
響「うん、ちょっと遠出しないと売ってなかったんだ…… って、へへー、隙ありっ!」ヒョイ
貴音「ああっ!? 響、それはっ!」
響「ふふーん、その焦りようってことは、やっぱりカップ麺かなんか――」
83: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:06:22.68 :p1xr7Yhy0
【きみとふたり】
【きみとふたり】
84: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:06:50.96 :p1xr7Yhy0
響「………… 貴音。これ、って」
貴音「あの…… ですね、その、ええ、それは……」
響「……」
貴音「…… 申し訳ありません、響。それはやはり、響の作品なのですね?」
貴音「実は、響の外出中に、ねこ吉殿がそれを持ってきまして」
貴音「響が作っている途中のものを、勝手にねこ吉殿が持ち出したのだと思い」
貴音「受け取ったのち、手の届かないところにしまっておこうと考えたのですが…… その……」
貴音「…… 見よう見まねで手にしてみたら、急に…… わたくしも、やってみたくなりまして」
貴音「それで…… 試してみたところ、それらしく出来たものですから、つい…… 熱が入ってしまい……」
響「………… 貴音。これ、って」
貴音「あの…… ですね、その、ええ、それは……」
響「……」
貴音「…… 申し訳ありません、響。それはやはり、響の作品なのですね?」
貴音「実は、響の外出中に、ねこ吉殿がそれを持ってきまして」
貴音「響が作っている途中のものを、勝手にねこ吉殿が持ち出したのだと思い」
貴音「受け取ったのち、手の届かないところにしまっておこうと考えたのですが…… その……」
貴音「…… 見よう見まねで手にしてみたら、急に…… わたくしも、やってみたくなりまして」
貴音「それで…… 試してみたところ、それらしく出来たものですから、つい…… 熱が入ってしまい……」
85: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:07:56.71 :p1xr7Yhy0
貴音「………… ただ、どうにも不思議なのです」
貴音「わたくし、これまでに編み物をたしなんだことは一度もないというのに」
貴音「なぜか、手が、覚えている…… というのでしょうか、手順がわかる気がするのです」
貴音「…… とはいえ何分、初めてのことですので、いささか不恰好ですが……」
貴音「それにしても、晴れた空のような…… 澄んだ海のような、この色。響に、ぴったりだと思います」
貴音「この毛糸は響が選んだのでしょう? きっとよく似合いますよ、わたくしが保証……」
貴音「………… あの…… 響?」
貴音「なぜ、泣いているのですか?」
響「うれし、くて、さ…… 貴音が……、たかねが、マフラー、編んで、くれたのが、うれしくてさ……」
貴音「………… ただ、どうにも不思議なのです」
貴音「わたくし、これまでに編み物をたしなんだことは一度もないというのに」
貴音「なぜか、手が、覚えている…… というのでしょうか、手順がわかる気がするのです」
貴音「…… とはいえ何分、初めてのことですので、いささか不恰好ですが……」
貴音「それにしても、晴れた空のような…… 澄んだ海のような、この色。響に、ぴったりだと思います」
貴音「この毛糸は響が選んだのでしょう? きっとよく似合いますよ、わたくしが保証……」
貴音「………… あの…… 響?」
貴音「なぜ、泣いているのですか?」
響「うれし、くて、さ…… 貴音が……、たかねが、マフラー、編んで、くれたのが、うれしくてさ……」
86: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:08:32.74 :p1xr7Yhy0
貴音「大げさなのですから…… なにも、泣かずともよいではありませんか」
響「それに、貴音が…… いま、こうやって、ここにいてくれるのが自分、ホントに、うれしくて……」
貴音「ふふ…… 涙をふいてください、響。ほら、このまふらー、巻いて見せてくれませんか?」
響「…………ん。うん…… うんっ!」
響「えっと…… どう、かな?」
貴音「ああ、思ったとおり、響にたいそう似合います。わたくしの目に間違いはありませんでしたね」
響「それにこれ、すごくあったかい。やっぱり手編みっていいな」
貴音「きっと、毛糸の質もよいのでしょう。わたくしが編んだ部分の粗も目立たず、助かります」
響「…… ……あっ、そうだ、貴音、ちょっとこっちに来てくれる?」
貴音「はい? なにか、ありましたか?」
貴音「大げさなのですから…… なにも、泣かずともよいではありませんか」
響「それに、貴音が…… いま、こうやって、ここにいてくれるのが自分、ホントに、うれしくて……」
貴音「ふふ…… 涙をふいてください、響。ほら、このまふらー、巻いて見せてくれませんか?」
響「…………ん。うん…… うんっ!」
響「えっと…… どう、かな?」
貴音「ああ、思ったとおり、響にたいそう似合います。わたくしの目に間違いはありませんでしたね」
響「それにこれ、すごくあったかい。やっぱり手編みっていいな」
貴音「きっと、毛糸の質もよいのでしょう。わたくしが編んだ部分の粗も目立たず、助かります」
響「…… ……あっ、そうだ、貴音、ちょっとこっちに来てくれる?」
貴音「はい? なにか、ありましたか?」
87: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:09:06.35 :p1xr7Yhy0
響「ちょっとね。こっち来て座ってよ、ほら。自分も座るから」
貴音「はて……? それでは、失礼して」
響「ありがと、じゃあ、少しじっとしててよ」
貴音「響? いったい、なにを――」
貴音「!」
響「ね? こうやって、一緒にマフラー巻いたら、もっとあったかいよ」
貴音「ええ…… まことに。少々長すぎるようにも見えましたが、こうすれば、丁度よいですね」
響「……こうなるのまで見越して長めに編むつもりだったのかな、たかね」
貴音「? わたくしが、どうかしましたか?」
響「………… ふふーん、内緒だぞ。トップシークレット、ってやつさー」
貴音「おや…… ふふっ、お株を奪われてしまいましたか」
響「ちょっとね。こっち来て座ってよ、ほら。自分も座るから」
貴音「はて……? それでは、失礼して」
響「ありがと、じゃあ、少しじっとしててよ」
貴音「響? いったい、なにを――」
貴音「!」
響「ね? こうやって、一緒にマフラー巻いたら、もっとあったかいよ」
貴音「ええ…… まことに。少々長すぎるようにも見えましたが、こうすれば、丁度よいですね」
響「……こうなるのまで見越して長めに編むつもりだったのかな、たかね」
貴音「? わたくしが、どうかしましたか?」
響「………… ふふーん、内緒だぞ。トップシークレット、ってやつさー」
貴音「おや…… ふふっ、お株を奪われてしまいましたか」
88: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:09:38.10 :p1xr7Yhy0
響「あのさ、貴音」
貴音「なんです、響?」
響「これからはさ…… これからも、さ、ずぅっと、一緒にいてね」
貴音「何を今更。わたくしが響を置いてどこかへ行ったことなど、一度でもありましたか」
響「ん…… ない、ね。たかねはずっと、隣にいてくれたよ」
貴音「そうでしょう? 万一いなくなるとしたら、響の方ではないかと――」
貴音「――響、見えますか?」
響「うん。雪、降ってきたね」
響「あのさ、貴音」
貴音「なんです、響?」
響「これからはさ…… これからも、さ、ずぅっと、一緒にいてね」
貴音「何を今更。わたくしが響を置いてどこかへ行ったことなど、一度でもありましたか」
響「ん…… ない、ね。たかねはずっと、隣にいてくれたよ」
貴音「そうでしょう? 万一いなくなるとしたら、響の方ではないかと――」
貴音「――響、見えますか?」
響「うん。雪、降ってきたね」
89: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:10:13.80 :p1xr7Yhy0
貴音「どうでしょう、明日には積もるでしょうか」
響「どうかなあ…… 夜どおし降るようなら、可能性はあるかも」
貴音「きっと、たくさん積もりますよ。そんな気がいたします」
響「貴音が言うなら、きっとそうだよ」
貴音「実は、積もったらわたくし、作ってみたいものがありまして」
響「なんだか当ててみせようか。貴音の身長より大っきいくらいの、雪だるま、でしょ?」
貴音「……なんと! 今日の響の勘は、やけに冴えていますね」
響「たかねの…… 貴音のことだもん。聞かなくたって、わかるよ」
貴音「それは頼もしいかぎりです。では、わたくしが今、何を考えているかもわかりますか?」
響「そうだなぁ、きっと、こうじゃない?」
響「"寒いから、あったかくて、あまあまの、マシュマロのせたココアが飲みたい"」
貴音「…… ふふっ…… どうやら、本当にお見通しのようですね。さすが、響はかんぺきです」
貴音「どうでしょう、明日には積もるでしょうか」
響「どうかなあ…… 夜どおし降るようなら、可能性はあるかも」
貴音「きっと、たくさん積もりますよ。そんな気がいたします」
響「貴音が言うなら、きっとそうだよ」
貴音「実は、積もったらわたくし、作ってみたいものがありまして」
響「なんだか当ててみせようか。貴音の身長より大っきいくらいの、雪だるま、でしょ?」
貴音「……なんと! 今日の響の勘は、やけに冴えていますね」
響「たかねの…… 貴音のことだもん。聞かなくたって、わかるよ」
貴音「それは頼もしいかぎりです。では、わたくしが今、何を考えているかもわかりますか?」
響「そうだなぁ、きっと、こうじゃない?」
響「"寒いから、あったかくて、あまあまの、マシュマロのせたココアが飲みたい"」
貴音「…… ふふっ…… どうやら、本当にお見通しのようですね。さすが、響はかんぺきです」
90: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:10:46.31 :p1xr7Yhy0
響「当然だぞ。そしたら、ココア作ってあげる前にひとつ、自分のお願い聞いてくれる?」
貴音「ええ。わたくしにできることなら、なんでも」
響「ホント? じゃあ、さ…… あと5分だけ、このまま一緒に座ってて」
貴音「はて…… それだけでよいのですか? いったい何を頼まれるものかと思っておりました」
響「それだけでいいよ。それだけで、もう充分」
貴音「お安いご用です。しかし、5分とはいえ"おあずけ"なのでしたら、ただのここあでは少々物足りませんね」
響「へえ? じゃあ、どうしたらいいの?」
貴音「決まっております。よろしいですか、わたくしの分は」
「「ましゅまろをふたつに増やしてください」」
響「当然だぞ。そしたら、ココア作ってあげる前にひとつ、自分のお願い聞いてくれる?」
貴音「ええ。わたくしにできることなら、なんでも」
響「ホント? じゃあ、さ…… あと5分だけ、このまま一緒に座ってて」
貴音「はて…… それだけでよいのですか? いったい何を頼まれるものかと思っておりました」
響「それだけでいいよ。それだけで、もう充分」
貴音「お安いご用です。しかし、5分とはいえ"おあずけ"なのでしたら、ただのここあでは少々物足りませんね」
響「へえ? じゃあ、どうしたらいいの?」
貴音「決まっております。よろしいですか、わたくしの分は」
「「ましゅまろをふたつに増やしてください」」
91: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:11:14.09 :p1xr7Yhy0
貴音「……!」
響「ぷっ…… くくくっ、あはははは! やっぱりなー!」
貴音「参りました…… さすがは響です。わたくしのことを、よくわかっていますね」
響「だって、自分はカンペキだもん。でもさ」
貴音「でも?」
響「となりに貴音がいてくれないと、たぶん、ちょっとだけ足りないんだ」
貴音「…… ふふ、そうですか。響の"かんぺき"を背負うとなると、わたくしの責任は重大ですね」
響「ホントだぞ。だから、ね、今はもうちょっとだけ、このままでいて?」
貴音「くすっ…… ええ、承知しました」
貴音「……!」
響「ぷっ…… くくくっ、あはははは! やっぱりなー!」
貴音「参りました…… さすがは響です。わたくしのことを、よくわかっていますね」
響「だって、自分はカンペキだもん。でもさ」
貴音「でも?」
響「となりに貴音がいてくれないと、たぶん、ちょっとだけ足りないんだ」
貴音「…… ふふ、そうですか。響の"かんぺき"を背負うとなると、わたくしの責任は重大ですね」
響「ホントだぞ。だから、ね、今はもうちょっとだけ、このままでいて?」
貴音「くすっ…… ええ、承知しました」
92: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:13:19.81 :p1xr7Yhy0
貴音「…… 5分でいい、などと言っておきながら。まったく、もう」
響「すぅ…… むにゃ……」
貴音「このような昼間から…… わたくしの知らぬところで、よほど気苦労があったのでしょうね、響」
響「………… ふぁ…… ね、たか、ねぇ……」
貴音「はいはい、わたくしはここですよ。誰かさんが肩を占領しておりますので、動けません」
響「……ん、ふふ、」
貴音「そんなに嬉しそうな顔で…… どのような素敵な夢を見ているのでしょう?」
貴音「これほどそばで見るのは、なんとも久しぶりのような…… 相も変わらず、見事な黒髪です」
響「くぅ…… ……」
貴音「少しくらい触れても構いませんね? 肩をお貸しするぶんの役得、ということで」
貴音「…… 5分でいい、などと言っておきながら。まったく、もう」
響「すぅ…… むにゃ……」
貴音「このような昼間から…… わたくしの知らぬところで、よほど気苦労があったのでしょうね、響」
響「………… ふぁ…… ね、たか、ねぇ……」
貴音「はいはい、わたくしはここですよ。誰かさんが肩を占領しておりますので、動けません」
響「……ん、ふふ、」
貴音「そんなに嬉しそうな顔で…… どのような素敵な夢を見ているのでしょう?」
貴音「これほどそばで見るのは、なんとも久しぶりのような…… 相も変わらず、見事な黒髪です」
響「くぅ…… ……」
貴音「少しくらい触れても構いませんね? 肩をお貸しするぶんの役得、ということで」
93: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:13:57.78 :p1xr7Yhy0
貴音「響の御髪は、本当に豊かで、艶々としていて…… 触れていて、心地がよいですね……」
貴音「それに…… くすっ、この"つの"。なにゆえ、このように面妖なものができるのでしょうか?」
貴音「まだ起きませんか、響? ……でしたらもう少しだけ、触れさせていてくださいね」
貴音「響の御髪は、本当に豊かで、艶々としていて…… 触れていて、心地がよいですね……」
貴音「それに…… くすっ、この"つの"。なにゆえ、このように面妖なものができるのでしょうか?」
貴音「まだ起きませんか、響? ……でしたらもう少しだけ、触れさせていてくださいね」
94: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:14:40.30 :p1xr7Yhy0
響「…… ん、ぁ……? あっ、貴音、自分、寝ちゃってた……?」
貴音「おはようございます、響。すやすやと、それはもうよく眠っておりましたよ」
響「ご、ごめん! 約束だもんね、すぐココア作ってくるぞ」
貴音「それもたいへん魅力的ですが…… もう少し、このまま雪を眺めませんか?」
響「えっ? でも――」
貴音「響が隣に居るあたたかさを…… 響の隣に居るあたたかさを、堪能していたいのです」
響「…… うん、…………うん。じゃあ、もうちょっと、このままでいようか、貴音」
貴音「ええ。いま少し、このままでおりましょう、響」
響「…… ん、ぁ……? あっ、貴音、自分、寝ちゃってた……?」
貴音「おはようございます、響。すやすやと、それはもうよく眠っておりましたよ」
響「ご、ごめん! 約束だもんね、すぐココア作ってくるぞ」
貴音「それもたいへん魅力的ですが…… もう少し、このまま雪を眺めませんか?」
響「えっ? でも――」
貴音「響が隣に居るあたたかさを…… 響の隣に居るあたたかさを、堪能していたいのです」
響「…… うん、…………うん。じゃあ、もうちょっと、このままでいようか、貴音」
貴音「ええ。いま少し、このままでおりましょう、響」
95: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:15:09.91 :p1xr7Yhy0
響「そうだ。貴音、自分ね、貴音に渡したいものがあるんだ」
貴音「まことですか? わたくし、いったいなにを頂けるのでしょう」
響「実はいま、もうポケットの中に持ってるの。なんだと思う?」
貴音「ということは…… そこまで大きなものではないですし、それに食べ物でもありませんね」
響「うん、食べ物じゃないな、そこはごめんね。じゃ、ちょっと横向いてくれる?」
貴音「横、ですか?」
響「そうそう、横。自分に横顔向ける感じで」
貴音「はて…… ますます贈り物の正体がわからなくなってまいりました」
響「いいからいいから、ほら、早くっ!」
響「そうだ。貴音、自分ね、貴音に渡したいものがあるんだ」
貴音「まことですか? わたくし、いったいなにを頂けるのでしょう」
響「実はいま、もうポケットの中に持ってるの。なんだと思う?」
貴音「ということは…… そこまで大きなものではないですし、それに食べ物でもありませんね」
響「うん、食べ物じゃないな、そこはごめんね。じゃ、ちょっと横向いてくれる?」
貴音「横、ですか?」
響「そうそう、横。自分に横顔向ける感じで」
貴音「はて…… ますます贈り物の正体がわからなくなってまいりました」
響「いいからいいから、ほら、早くっ!」
96: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:15:39.74 :p1xr7Yhy0
貴音「ふふ、はいはい、急かさないでください。それでは…… これでよいでしょうか」
響「ばっちりだぞ、ありがと。じゃあ、ちょっとだけそのままでね」
貴音「む…… 響? なぜわたくしの耳をひっぱるのですか?」
響「あー、ダメダメ、じっとしててってば。また、自分がつけてあげるからさ」
貴音「"また"?」
貴音「ふふ、はいはい、急かさないでください。それでは…… これでよいでしょうか」
響「ばっちりだぞ、ありがと。じゃあ、ちょっとだけそのままでね」
貴音「む…… 響? なぜわたくしの耳をひっぱるのですか?」
響「あー、ダメダメ、じっとしててってば。また、自分がつけてあげるからさ」
貴音「"また"?」
97: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:16:16.48 :p1xr7Yhy0
響(………… ばいばい、たかね。あっという間の一月ちょっと、ほんとに楽しかったぞ)
響(そして…… おかえり、貴音。やっぱり自分、貴音と一緒だと落ち着くさー)
響(………… ばいばい、たかね。あっという間の一月ちょっと、ほんとに楽しかったぞ)
響(そして…… おかえり、貴音。やっぱり自分、貴音と一緒だと落ち着くさー)
98: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:17:23.26 :p1xr7Yhy0
響「…… はい、できたぞ!」
貴音「この耳飾り…… いやりんぐを、わたくしに?」
響「うん。言っとくけど、これずーっと前から用意してたんだからね、自分」
貴音「本当にありがとうございます、響、大切にいたします! ただ……」
響「ただ?」
貴音「…… わたくし、響へのお返しの持ち合わせが、何も……」
響「あはは、なんだ、そんなこと? 自分もちゃんと、貴音からプレゼント、もらってるさー」
貴音「お気遣いは嬉しいのですが、何も用意していないのにそう言われるのでは」
響「だってほら、このマフラー。貴音が編み上げて、自分にくれたじゃないか」
貴音「しかし、それは、もともと響の作品ではありませんか」
響「ちがうよ。これを作り始めたのはたかねだし、完成させたのも貴音だぞ」
響「…… はい、できたぞ!」
貴音「この耳飾り…… いやりんぐを、わたくしに?」
響「うん。言っとくけど、これずーっと前から用意してたんだからね、自分」
貴音「本当にありがとうございます、響、大切にいたします! ただ……」
響「ただ?」
貴音「…… わたくし、響へのお返しの持ち合わせが、何も……」
響「あはは、なんだ、そんなこと? 自分もちゃんと、貴音からプレゼント、もらってるさー」
貴音「お気遣いは嬉しいのですが、何も用意していないのにそう言われるのでは」
響「だってほら、このマフラー。貴音が編み上げて、自分にくれたじゃないか」
貴音「しかし、それは、もともと響の作品ではありませんか」
響「ちがうよ。これを作り始めたのはたかねだし、完成させたのも貴音だぞ」
99: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:18:12.78 :p1xr7Yhy0
貴音「響? わたくしが手を加えたのは、本当に最後の一部のみなのですよ」
響「だとしても、これは貴音が自分に作ってくれたプレゼントなの!」
貴音「ですが……」
響「そこまで言うならさ、ほら、よーく見て?」
貴音「はい?」
響「この、微妙にそろってない編み目。むしろ、貴音が最後にやったとこのほうが綺麗じゃない?」
貴音「む………… たしかに言われてみると、そのような気もしてきます」
響「でしょ? これは、間違いなく貴音がひとりで編んだマフラーさー。ね?」
貴音「なんとも面妖なことですが…… そう、なのでしょうか?」
響「もー。カンペキな自分がそうだって言ってるんだから、信用してってば」
貴音「響? わたくしが手を加えたのは、本当に最後の一部のみなのですよ」
響「だとしても、これは貴音が自分に作ってくれたプレゼントなの!」
貴音「ですが……」
響「そこまで言うならさ、ほら、よーく見て?」
貴音「はい?」
響「この、微妙にそろってない編み目。むしろ、貴音が最後にやったとこのほうが綺麗じゃない?」
貴音「む………… たしかに言われてみると、そのような気もしてきます」
響「でしょ? これは、間違いなく貴音がひとりで編んだマフラーさー。ね?」
貴音「なんとも面妖なことですが…… そう、なのでしょうか?」
響「もー。カンペキな自分がそうだって言ってるんだから、信用してってば」
100: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:19:11.25 :p1xr7Yhy0
響「だいたいさ、貴音。お返しなんて考えなくていいんだよ」
貴音「そういうわけには参りません。わたくしだけ贈り物を頂くのでは、不公平です」
響「はあ…… やっぱりその分だと、きょうがなんの日かまーだわかってないなー?」
貴音「? はて、何の日、とは?」
響「あのね、1月の21日だよ? まさか、そこまで忘れちゃってるわけじゃないよね」
貴音「…………なんと! 確かに、昨日が新月で…… まるで気づいておりませんでした」
響「思ったとおりさー。だから、さっきのイヤリングは自分からの誕生日プレゼントだぞ!」
響(…… まあ、クリスマス兼用なんだけど。そっちはほとんどひと月遅れで)
貴音「ああ、まだ師走のような気がしているというのに、世の中はずいぶんと様変わりを……」
響「だいたいさ、貴音。お返しなんて考えなくていいんだよ」
貴音「そういうわけには参りません。わたくしだけ贈り物を頂くのでは、不公平です」
響「はあ…… やっぱりその分だと、きょうがなんの日かまーだわかってないなー?」
貴音「? はて、何の日、とは?」
響「あのね、1月の21日だよ? まさか、そこまで忘れちゃってるわけじゃないよね」
貴音「…………なんと! 確かに、昨日が新月で…… まるで気づいておりませんでした」
響「思ったとおりさー。だから、さっきのイヤリングは自分からの誕生日プレゼントだぞ!」
響(…… まあ、クリスマス兼用なんだけど。そっちはほとんどひと月遅れで)
貴音「ああ、まだ師走のような気がしているというのに、世の中はずいぶんと様変わりを……」
101: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:20:03.99 :p1xr7Yhy0
響「それに、きょうは二重に誕生日みたいなものでしょ?」
貴音「どういうことです?」
響「もともとの貴音の誕生日なだけじゃなくて、地球人・四条貴音の初めての誕生日でもあるってこと!」
貴音「……!」
響「まー、なんて言っても、あんまり豪華なお祝いはしてあげられないけど」
貴音「なるほど…… 本日は、わたくしにとって、記念すべき一歩目になるのですね」
響「うん。これからまた、一歩一歩、一緒にやっていこうよ」
貴音「………… はい……!」
貴音「その門出を、いちばんに祝ってくださるのが、響で…… わたくしは、本当に幸せです」
響「…… 一緒に祝ってあげられる自分も、同じくらい幸せ者さー」
響「それに、きょうは二重に誕生日みたいなものでしょ?」
貴音「どういうことです?」
響「もともとの貴音の誕生日なだけじゃなくて、地球人・四条貴音の初めての誕生日でもあるってこと!」
貴音「……!」
響「まー、なんて言っても、あんまり豪華なお祝いはしてあげられないけど」
貴音「なるほど…… 本日は、わたくしにとって、記念すべき一歩目になるのですね」
響「うん。これからまた、一歩一歩、一緒にやっていこうよ」
貴音「………… はい……!」
貴音「その門出を、いちばんに祝ってくださるのが、響で…… わたくしは、本当に幸せです」
響「…… 一緒に祝ってあげられる自分も、同じくらい幸せ者さー」
102: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:20:46.19 :p1xr7Yhy0
響「じゃあ話に決着ついたところで、自分、約束のココア作ってこなくちゃ」
貴音「はっ、そうでした! よいですか、わたくしの分のましゅまろはふたつですからね?」
響「はいはい、ちゃんとわかってるって。ちょっとだけこちらでお待ちを、姫様」
貴音「おっと、お待ちください、響。まふらーはほどかずとも大丈夫ですよ」
響「えっ、どうして? いくら長くても、さすがに台所までは届かないぞ」
貴音「わたくしが響についてゆけばよいのです。大丈夫です、後ろで静かに待っておりますゆえ!」
響「そんな、貴音、いぬ美のリードじゃないんだから……」
響「じゃあ話に決着ついたところで、自分、約束のココア作ってこなくちゃ」
貴音「はっ、そうでした! よいですか、わたくしの分のましゅまろはふたつですからね?」
響「はいはい、ちゃんとわかってるって。ちょっとだけこちらでお待ちを、姫様」
貴音「おっと、お待ちください、響。まふらーはほどかずとも大丈夫ですよ」
響「えっ、どうして? いくら長くても、さすがに台所までは届かないぞ」
貴音「わたくしが響についてゆけばよいのです。大丈夫です、後ろで静かに待っておりますゆえ!」
響「そんな、貴音、いぬ美のリードじゃないんだから……」
103: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:21:51.81 :p1xr7Yhy0
貴音「さあ響、早く、早く参りましょう! 甘いここあがわたくしたちを待っております!」
響「…………ふふっ、まったく。貴音、ほんとに中身がたかねだったりしないよね?」
貴音「はて、響、なにか言いましたか?」
響「なんでもないぞ。さーて、それじゃ姫様! いざまいりましょう、お台所へ!」
貴音「はいっ!」
貴音「さあ響、早く、早く参りましょう! 甘いここあがわたくしたちを待っております!」
響「…………ふふっ、まったく。貴音、ほんとに中身がたかねだったりしないよね?」
貴音「はて、響、なにか言いましたか?」
響「なんでもないぞ。さーて、それじゃ姫様! いざまいりましょう、お台所へ!」
貴音「はいっ!」
104: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:22:29.07 :p1xr7Yhy0
響「貴音!?」たかね「めんような!」 おしまい。
響「貴音!?」たかね「めんような!」 おしまい。
105: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:23:08.27 :p1xr7Yhy0
本作の投下は、これでおしまいです。
106: ◆ccGlDikGP2:2016/03/22(火) 21:23:51.47 :p1xr7Yhy0
1年以上にわたりお付き合いいただきまして、どうもありがとうございます。
たくさんの乙や感想レス、素敵なイラストのご紹介など、どれも大変嬉しかったです。
まとめてのお返事で恐縮ですが、改めまして、本当にありがとうございました。
たくさんの乙や感想レス、素敵なイラストのご紹介など、どれも大変嬉しかったです。
まとめてのお返事で恐縮ですが、改めまして、本当にありがとうございました。
113:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/03/22(火) 22:16:36.57 :9VSMCroHO
乙でした
一年間楽しませて戴き、ありがとうございました
ひ び た か は 至 高
一年間楽しませて戴き、ありがとうございました
ひ び た か は 至 高
コメント 14
コメント一覧 (14)
いい話だったわ、泣けた
ひびたかわっほい!ひびたかフォーエバー!
貴音の設定とか、伏線(?)の使い方とか妙に手が込んでて長い期間かけただけのことはある。
お疲れ様でした。
創作物でよくある記憶を消すという行為は実は凄く恐ろしい事だと思う
ありがとう
起承転結の"起"以外で(特に何度も大差無いやり取りを長々と続けるだけの日常パートだらけな"承")それぞれでダラダラやってたせいで異様に長くて切り所分からなくて上手く切れなかったのもまあ分かるし、
一つのスレは出来るだけ記事一つで纏めたくて今回みたいに次スレを途中に繋げるのは不本意なのかもしれんけどさ
ブックマーク考えた人崇拝します