1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 12:00:38.05 :J1t1zDf6O
【勇者宅 自室】
勇者「俺の名前は勇者。なんでも生まれた時に“聖痕”なんてもんがケツにあったお陰で神官は大騒ぎ。王様にまで上告した」
母上「勇者ぁ~! 朝よぉ~! 起きなさぁあ~い」トントン
勇者「そして、扉をノックしているのは我が親の片割れ(妻)。王様から金を積まれて18歳になったら魔王退治の旅へと行かせる約束した……」
母上「寝てるのぉ? 開けるわよぉ?」
勇者「うるさいな! 自己紹介の最中に話しかけないでよママン!」
母上「……あら? 起きてるじゃなぁ~い。ちゃんと返事はしないとぉ~」
勇者「い、嫌だからな! 俺は王様のところなんて行かへんぞ!」
母上「またそんな駄々こねぇてぇ。みんなの希望なのよぉ?」
勇者「希望なんてクソくらえ! 誰が死にに行きたいもんか!」
母上「それにぃ、お金も~」
勇者「やっぱり金か畜生!」
母上「うふふ~。今日が旅立ちの日ねぇ~」
勇者「いやだ。俺はいやなんだ。なんで俺ばっかり、というか、ピンポイントで俺だけ」
母上「さぁ、朝ごはんできてるから、食べなさい~。下でお父さんも待ってるわよぉ~」
勇者「なぁ、母上。やっぱり、俺には無理だ……」
母上「あらあらぁ~。そんな弱音を吐く子に育てた覚えはないんだけどぉ~」シャキン
勇者「ひっ⁉︎ ほ、包丁を構えるのはやめて⁉︎」
母上「しごきたりなかったのかしらぁ? 親失格でお母さん悲しいわぁ」ユラァ
勇者「た、足りてる! 足りてるよ! いやぁ! 行きたい! 行きたいなぁ! 魔王なんかけちょんけちょん! ほら、こうやって、この枕め! おりゃ!」ボスボス
母上「……」ジィー
勇者「はっ! 魔王なんて楽勝だぜ! 雑魚が!」チラ
母上「そうよねぇ」ニコォ
勇者「……ふぅ」
母上「それじゃあ、下で待ってるからぁ~。はやく降りてくるのよぉ~」ギィー バタン
【勇者宅 自室】
勇者「俺の名前は勇者。なんでも生まれた時に“聖痕”なんてもんがケツにあったお陰で神官は大騒ぎ。王様にまで上告した」
母上「勇者ぁ~! 朝よぉ~! 起きなさぁあ~い」トントン
勇者「そして、扉をノックしているのは我が親の片割れ(妻)。王様から金を積まれて18歳になったら魔王退治の旅へと行かせる約束した……」
母上「寝てるのぉ? 開けるわよぉ?」
勇者「うるさいな! 自己紹介の最中に話しかけないでよママン!」
母上「……あら? 起きてるじゃなぁ~い。ちゃんと返事はしないとぉ~」
勇者「い、嫌だからな! 俺は王様のところなんて行かへんぞ!」
母上「またそんな駄々こねぇてぇ。みんなの希望なのよぉ?」
勇者「希望なんてクソくらえ! 誰が死にに行きたいもんか!」
母上「それにぃ、お金も~」
勇者「やっぱり金か畜生!」
母上「うふふ~。今日が旅立ちの日ねぇ~」
勇者「いやだ。俺はいやなんだ。なんで俺ばっかり、というか、ピンポイントで俺だけ」
母上「さぁ、朝ごはんできてるから、食べなさい~。下でお父さんも待ってるわよぉ~」
勇者「なぁ、母上。やっぱり、俺には無理だ……」
母上「あらあらぁ~。そんな弱音を吐く子に育てた覚えはないんだけどぉ~」シャキン
勇者「ひっ⁉︎ ほ、包丁を構えるのはやめて⁉︎」
母上「しごきたりなかったのかしらぁ? 親失格でお母さん悲しいわぁ」ユラァ
勇者「た、足りてる! 足りてるよ! いやぁ! 行きたい! 行きたいなぁ! 魔王なんかけちょんけちょん! ほら、こうやって、この枕め! おりゃ!」ボスボス
母上「……」ジィー
勇者「はっ! 魔王なんて楽勝だぜ! 雑魚が!」チラ
母上「そうよねぇ」ニコォ
勇者「……ふぅ」
母上「それじゃあ、下で待ってるからぁ~。はやく降りてくるのよぉ~」ギィー バタン

【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」

【速報】尾田っち、ワンピース最新話でやってしまうwwww

【東方】ルックス100点の文ちゃん

【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?

韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 12:17:59.61 :J1t1zDf6O
【勇者宅 居間】
父上「シャオラッ! シャオラッ!」ブン ブン
勇者「母上。つかぬことを聞きますが父上は居間でなぜに斧をふりましておられるので?」
母上「ご近所の武器屋さんから頂いたみたいねぇ。勇者のめでたい旅立ちを祝してってぇ~」
父上「おっ! 起きたか! まったく、旅立ちの日にまで朝寝坊するとは肝っ玉の据わったやつだ! さすが俺の息子!」
勇者「(引きこもりたかっただけなんだけど)」
父上「ガハハハッ!」キラン
勇者「(正直に言ったら斧で一刀両断されそうな気がする)」
母上「貴方もそれぐらいにしてぇ~。今日は家族揃って最後の朝食になるかもしれないんだからぁ」
勇者「不吉なこと言わないでくれる⁉︎」
父上「そうだな……。勇者、立派になって。俺は、俺はっ、ぐすっ」
勇者「ち、父上。泣いてるの? そんな、俺なんかまだまだ」
父上「さ、飯でも食うか」ケロッ
勇者「あー、そうですか。あんたらマイペースだったわ」
父上「ところで勇者。伝えわすれていたが、お前今日からこの家出入り禁止な」
勇者「はぁっ⁉︎ なんで⁉︎」
父上「魔王倒したら入っていいぞ」
勇者「俺の家だろーが!」
父上「おい、テメェ誰に口きいてやがる」ポキポキ
勇者「僕の家です、はい」
父上「早い話が王様に親権を譲った。今日からお前は王様の子」
母上「私たちも涙をのんでぇ~。だって、勇者がそうすれば王族になれるしぃ」
勇者「そんな……」
父上「そして、俺たちも王様に恩を売ってがっぽり、ごほん」
母上「あなたぁ、今度ここの温泉に行きたいわぁ」
勇者「それでいいのかよ!」
父上「……」
勇者「俺を育ててくれたんだろ⁉︎ 俺を生んでくれたんだろ⁉︎ そりゃ親孝行はしてないかもしれないけど」
母上「勇者……」
勇者「父さん、母さん……」
父上「いい」キッパリ
勇者「……っ!」プルプル
父上「いずれお前も大人になる。そうなったら嫁ができ、家庭を持ち、自分の子を持つだろう。そうなった時に、俺の気持ちがわかる。お前のためなんだ」
勇者「……俺の、ため」
【勇者宅 居間】
父上「シャオラッ! シャオラッ!」ブン ブン
勇者「母上。つかぬことを聞きますが父上は居間でなぜに斧をふりましておられるので?」
母上「ご近所の武器屋さんから頂いたみたいねぇ。勇者のめでたい旅立ちを祝してってぇ~」
父上「おっ! 起きたか! まったく、旅立ちの日にまで朝寝坊するとは肝っ玉の据わったやつだ! さすが俺の息子!」
勇者「(引きこもりたかっただけなんだけど)」
父上「ガハハハッ!」キラン
勇者「(正直に言ったら斧で一刀両断されそうな気がする)」
母上「貴方もそれぐらいにしてぇ~。今日は家族揃って最後の朝食になるかもしれないんだからぁ」
勇者「不吉なこと言わないでくれる⁉︎」
父上「そうだな……。勇者、立派になって。俺は、俺はっ、ぐすっ」
勇者「ち、父上。泣いてるの? そんな、俺なんかまだまだ」
父上「さ、飯でも食うか」ケロッ
勇者「あー、そうですか。あんたらマイペースだったわ」
父上「ところで勇者。伝えわすれていたが、お前今日からこの家出入り禁止な」
勇者「はぁっ⁉︎ なんで⁉︎」
父上「魔王倒したら入っていいぞ」
勇者「俺の家だろーが!」
父上「おい、テメェ誰に口きいてやがる」ポキポキ
勇者「僕の家です、はい」
父上「早い話が王様に親権を譲った。今日からお前は王様の子」
母上「私たちも涙をのんでぇ~。だって、勇者がそうすれば王族になれるしぃ」
勇者「そんな……」
父上「そして、俺たちも王様に恩を売ってがっぽり、ごほん」
母上「あなたぁ、今度ここの温泉に行きたいわぁ」
勇者「それでいいのかよ!」
父上「……」
勇者「俺を育ててくれたんだろ⁉︎ 俺を生んでくれたんだろ⁉︎ そりゃ親孝行はしてないかもしれないけど」
母上「勇者……」
勇者「父さん、母さん……」
父上「いい」キッパリ
勇者「……っ!」プルプル
父上「いずれお前も大人になる。そうなったら嫁ができ、家庭を持ち、自分の子を持つだろう。そうなった時に、俺の気持ちがわかる。お前のためなんだ」
勇者「……俺の、ため」
3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 12:32:49.04 :J1t1zDf6O
父上「なんて言うと思ったか!」
勇者「えっ」
父上「ウジウジしてんじゃねぇ! 男だろ! 魔王倒してこい!」
勇者「そんな、無理やり」
父上「世の中なんてもんはなぁ、理不尽の塊なんだ! 社会勉強と思って行ってこい! お前にゃ女神様の加護がついてる!」
勇者「加護って、クジ運なんて一度もよかったことないよ」
父上「あぁん?」キラン
勇者「……わかったよ。俺なんかどうせ、どうせいらない子なんだ。邪魔者なんだろ!」
父上「ようやくわかったか」
母上「あ、あなた……」
父上「黙っていなさい」
勇者「だったらお望みどおり出ていってやるよ!」ガタ
母上「あ、朝ごはん……」
勇者「く……っ! うっ、ぐすっ」ダダダッ バタン
父上「やれやれ……。相変わらず慌てん坊なやつだ」
母上「本当によかったの?」
父上「にこやかに笑って見送る、それができればなぁ。だが、泣いてしまいそうで」
母上「……もう、見栄っ張りなんだからぁ」
父上「あいつも18。いつかは自立しなければならない。信じよう、俺たちの息子を」
母上「(勇者……。辛かったら帰ってくるのよ……)」ホロリ
父上「なんて言うと思ったか!」
勇者「えっ」
父上「ウジウジしてんじゃねぇ! 男だろ! 魔王倒してこい!」
勇者「そんな、無理やり」
父上「世の中なんてもんはなぁ、理不尽の塊なんだ! 社会勉強と思って行ってこい! お前にゃ女神様の加護がついてる!」
勇者「加護って、クジ運なんて一度もよかったことないよ」
父上「あぁん?」キラン
勇者「……わかったよ。俺なんかどうせ、どうせいらない子なんだ。邪魔者なんだろ!」
父上「ようやくわかったか」
母上「あ、あなた……」
父上「黙っていなさい」
勇者「だったらお望みどおり出ていってやるよ!」ガタ
母上「あ、朝ごはん……」
勇者「く……っ! うっ、ぐすっ」ダダダッ バタン
父上「やれやれ……。相変わらず慌てん坊なやつだ」
母上「本当によかったの?」
父上「にこやかに笑って見送る、それができればなぁ。だが、泣いてしまいそうで」
母上「……もう、見栄っ張りなんだからぁ」
父上「あいつも18。いつかは自立しなければならない。信じよう、俺たちの息子を」
母上「(勇者……。辛かったら帰ってくるのよ……)」ホロリ
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 15:20:08.88 :TqZDSh6WO
【城下町】
勇者「とは言ったものの。どうしたもんかなぁ」テクテク
道具屋店主「勇者! ついに旅立ちだな! 期待してるぜ!」
勇者「あ、ども」ペコ
武器屋店主「おっ、王様に謁見しにいくのか! 頑張れよ!」
勇者「ウース」ペコ
老人「あの頼りない子供が」
勇者「俺って立派に見える?」
老人「……やはり、子供のままじゃの」
勇者「……」ガックシ
犬「ワンワン!」
勇者「いいよなぁ、お前は。なんにも悩みなさそうで」
犬「わん?」
勇者「毎日与えられた飯くって、ゴロゴロして、遊んでさ。俺もそんな生活送りてぇなぁ」ナデナデ
犬「ハッハッ」
勇者「王族になりゃそんな生活……だめか。俺は魔王退治で送りだされちゃうもんな」
兵士「勇者か」
勇者「ん? おや、兵士さんじゃありませんか。いまから出勤ですかい?」
兵士「村人Aみたいな喋り方をするんじゃない。まったく、こいつは」
勇者「俺は元々そんなもんすよ」
兵士「王様に謁見だろう。お前を迎えにいっていたところだったのだ」
勇者「はぁ、それはお疲れさんです。じゃ、俺はこれで」クルッ
兵士「待たんか」ガシッ
勇者「勇者ならあっちにいました」
兵士「三文芝居をするんじゃない。ほら、いくぞ」グイ
勇者「いやじゃ~~~! 堪忍してぇ~~~~!」ズルズル
【城下町】
勇者「とは言ったものの。どうしたもんかなぁ」テクテク
道具屋店主「勇者! ついに旅立ちだな! 期待してるぜ!」
勇者「あ、ども」ペコ
武器屋店主「おっ、王様に謁見しにいくのか! 頑張れよ!」
勇者「ウース」ペコ
老人「あの頼りない子供が」
勇者「俺って立派に見える?」
老人「……やはり、子供のままじゃの」
勇者「……」ガックシ
犬「ワンワン!」
勇者「いいよなぁ、お前は。なんにも悩みなさそうで」
犬「わん?」
勇者「毎日与えられた飯くって、ゴロゴロして、遊んでさ。俺もそんな生活送りてぇなぁ」ナデナデ
犬「ハッハッ」
勇者「王族になりゃそんな生活……だめか。俺は魔王退治で送りだされちゃうもんな」
兵士「勇者か」
勇者「ん? おや、兵士さんじゃありませんか。いまから出勤ですかい?」
兵士「村人Aみたいな喋り方をするんじゃない。まったく、こいつは」
勇者「俺は元々そんなもんすよ」
兵士「王様に謁見だろう。お前を迎えにいっていたところだったのだ」
勇者「はぁ、それはお疲れさんです。じゃ、俺はこれで」クルッ
兵士「待たんか」ガシッ
勇者「勇者ならあっちにいました」
兵士「三文芝居をするんじゃない。ほら、いくぞ」グイ
勇者「いやじゃ~~~! 堪忍してぇ~~~~!」ズルズル
5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 15:39:56.86 :TqZDSh6WO
【王城 謁見の間】
王様「ワシが王様でアル」
勇者「はい」
王様「……え? そんだけ?」
勇者「はい?」
王様「もっと、ははーっとか、本日はご機嫌麗しゅうとかないの?」
勇者「子供の頃から知ってるじゃないですか」
王様「あ、そう。……うぉっほんっ、勇者よ! よくぞまいった!」
勇者「(やりたいのね)」
王様「此度の日をどれだけ待ち望んだことか! まずは18の誕生日、おめでとう。祝福するぞよ」
勇者「ありがたき幸せ」ペコ
王様「うむ。と、同時に女神様のお告げどおりの旅立ちの日でもある」
勇者「……」
王様「お主にはこの世界を魔王の脅威から救ってもらわなきゃならん。引き受けてくれるな? 勇者よ」
勇者「いや」
王様「まさかイヤなどとは言うまいて。まさかのぅ」
勇者「あの、ちなみに断ったらどうなるんです?」
王様「税金」ボソ
勇者「え?」
王様「実はの、お主の家だけは税を特別免除しいて、尚且つ、毎月お金を振り込んでいた。勇者という理由での。断れば今までの分を請求する」
勇者「そ、そんな話はじめて聞きました」
王様「まぁ家計事情なんて子供には普通話さんじゃろ」
勇者「(父さんがロクに仕事もせずに毎日過ごせてたのはそういうことか……! クソ親父め!」
王様「ちなみにじゃが、ワシも養子縁組したのは聞いとる?」
勇者「あ、それは今朝」
王様「うむうむ。よって、請求は親にではなく勇者本人にいくことになる」
勇者「なんでだよ!」
王様「だって、実の親とは赤の他人じゃもん。わしも肩代わりするつもりないし。無能の」
勇者「無能って言うな! あの、ちなみに請求っておいくらまん?」
王様「ざっと軽く見積もって300万ゴールドってとこかの」
勇者「さ、さ、さ、さ、さんひゃくっ⁉︎」
王様「18までずっと支給しておったんじゃ。当たり前じゃろ」
勇者「買ってもらったおもちゃといえば竹とんぼだけなのに」
王様「それは1ゴールドじゃの」
勇者「あの、分割とかはもちろんできるんですよね?」
王様「ならん。一括で返納してもらう」
勇者「一括で⁉︎ 無理に決まってる!」
王様「それならば、そうじゃな。やっぱり魔王退治にいってもらうしかないの」
勇者「め、めちゃくちゃや。こんなの」ガックシ
【王城 謁見の間】
王様「ワシが王様でアル」
勇者「はい」
王様「……え? そんだけ?」
勇者「はい?」
王様「もっと、ははーっとか、本日はご機嫌麗しゅうとかないの?」
勇者「子供の頃から知ってるじゃないですか」
王様「あ、そう。……うぉっほんっ、勇者よ! よくぞまいった!」
勇者「(やりたいのね)」
王様「此度の日をどれだけ待ち望んだことか! まずは18の誕生日、おめでとう。祝福するぞよ」
勇者「ありがたき幸せ」ペコ
王様「うむ。と、同時に女神様のお告げどおりの旅立ちの日でもある」
勇者「……」
王様「お主にはこの世界を魔王の脅威から救ってもらわなきゃならん。引き受けてくれるな? 勇者よ」
勇者「いや」
王様「まさかイヤなどとは言うまいて。まさかのぅ」
勇者「あの、ちなみに断ったらどうなるんです?」
王様「税金」ボソ
勇者「え?」
王様「実はの、お主の家だけは税を特別免除しいて、尚且つ、毎月お金を振り込んでいた。勇者という理由での。断れば今までの分を請求する」
勇者「そ、そんな話はじめて聞きました」
王様「まぁ家計事情なんて子供には普通話さんじゃろ」
勇者「(父さんがロクに仕事もせずに毎日過ごせてたのはそういうことか……! クソ親父め!」
王様「ちなみにじゃが、ワシも養子縁組したのは聞いとる?」
勇者「あ、それは今朝」
王様「うむうむ。よって、請求は親にではなく勇者本人にいくことになる」
勇者「なんでだよ!」
王様「だって、実の親とは赤の他人じゃもん。わしも肩代わりするつもりないし。無能の」
勇者「無能って言うな! あの、ちなみに請求っておいくらまん?」
王様「ざっと軽く見積もって300万ゴールドってとこかの」
勇者「さ、さ、さ、さ、さんひゃくっ⁉︎」
王様「18までずっと支給しておったんじゃ。当たり前じゃろ」
勇者「買ってもらったおもちゃといえば竹とんぼだけなのに」
王様「それは1ゴールドじゃの」
勇者「あの、分割とかはもちろんできるんですよね?」
王様「ならん。一括で返納してもらう」
勇者「一括で⁉︎ 無理に決まってる!」
王様「それならば、そうじゃな。やっぱり魔王退治にいってもらうしかないの」
勇者「め、めちゃくちゃや。こんなの」ガックシ
6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 15:53:23.27 :TqZDSh6WO
大臣「王様、よろしいですかな?」
王様「お、おお。大臣、おったのか。よいぞ」
大臣「失礼致します。勇者よ、話を聞け」
勇者「なんでせう?」
大臣「泣くな。うっとうしい。旅立ちの手引き書を用意した。これ」ゴソゴソ
衛兵「はっ!」ザッ
勇者「手引き書?」
衛兵「受け取れ」スッ
勇者「……向かう場所、ですか」ペラ
大臣「なにはともあれ旅には仲間がつきものだ。アイーダの酒場で仲間を募集しろ。そして次の国に向かうのだ」
勇者「……」ペラ ペラ
大臣「そして――……」
勇者「あ、あのっ! ちょっといいですか!」
大臣「なんだ?」
勇者「この、ダーマ神殿てなんすか⁉︎ 転職できるって書いてありますけど!」
大臣「そのままの意味だ。職とは、女神様により定められた天命。だが、その洗礼を変えることができる」
勇者「行きます! 俺行ってきます!」
大臣「……?」
勇者「急ぐなくては! じゃ、そゆことで!」ダダダッ
王様「お、おい、勇者よ」
大臣「……」
王様「走って行きおった」
大臣「よもや、勇者も転職できると思ってるんじゃないでしょうか」
王様「できんのにのぅ」
大臣「王様、よろしいですかな?」
王様「お、おお。大臣、おったのか。よいぞ」
大臣「失礼致します。勇者よ、話を聞け」
勇者「なんでせう?」
大臣「泣くな。うっとうしい。旅立ちの手引き書を用意した。これ」ゴソゴソ
衛兵「はっ!」ザッ
勇者「手引き書?」
衛兵「受け取れ」スッ
勇者「……向かう場所、ですか」ペラ
大臣「なにはともあれ旅には仲間がつきものだ。アイーダの酒場で仲間を募集しろ。そして次の国に向かうのだ」
勇者「……」ペラ ペラ
大臣「そして――……」
勇者「あ、あのっ! ちょっといいですか!」
大臣「なんだ?」
勇者「この、ダーマ神殿てなんすか⁉︎ 転職できるって書いてありますけど!」
大臣「そのままの意味だ。職とは、女神様により定められた天命。だが、その洗礼を変えることができる」
勇者「行きます! 俺行ってきます!」
大臣「……?」
勇者「急ぐなくては! じゃ、そゆことで!」ダダダッ
王様「お、おい、勇者よ」
大臣「……」
王様「走って行きおった」
大臣「よもや、勇者も転職できると思ってるんじゃないでしょうか」
王様「できんのにのぅ」
10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/09(火) 16:28:24.88 :TqZDSh6WO
【再び城下町】
勇者「ひゃっほーーーーい! 俺の人生はバラ色だぁーー! 勇者とおさらばでっきるぅ~~~! スキップスキップランランラン♪」
子供「ママァ。あの人」
母親「シッ。見ちゃいけません」
勇者「なんだよ、こんな神殿があるならもっとはやくいっときゃ……いや、待てよ」ピタ
アイーダ「勇者」
勇者「あれ? 結構遠くね? まずいんじゃないか、これ。モンスター多いだろうし」
アイーダ「勇者ってばよ」パコーン
勇者「いっ、てぇなぁ! 誰だよ、頭はた、いた……の?」
アイーダ「あたしだよ」
勇者「こ、これはこれは。腕っ節が強いで評判のアイーダおばさまじゃないですか」
アイーダ「あいかわらず腰の低い子だねぇ」
勇者「いやいや、あっしなんてもう」
アイーダ「誰があっしだよ。ふざけてないでうちにきな」
勇者「なぜでしょーか」
アイーダ「この鳥頭は。王様からなにも聞いてないのかい?」
勇者「あ、あぁ! そういえばなんか言ってたような」
アイーダ「うちにくれば名簿に登録してあるやつと連絡がとれる。仲間、必要だろ?」
勇者「仲間、仲間ねえ。たしかに神殿にいくには仲間がいた方が……アイーダさんってダーマ神殿聞いたことあります?」
アイーダ「あん? ダーマって転職ができるとこだろ?」
勇者「さすが! 荒くれ者どもと繋がりがあるってことは事情通!」
アイーダ「ほんで? それがどしたい?」
勇者「あのですね、ちょびっと気になったんですけどもぉ、転職ってどんな職があるのかご存じです?」
アイーダ「職? あぁ、戦士とか武闘家とか?」
勇者「うんうん」
アイーダ「あとは、魔法使いに僧侶、踊り子」
勇者「そんでそんで?」
アイーダ「一風変わって遊び人とか」
勇者「キタ━(゚∀゚)━!!」
アイーダ「うお、な、なんだこいつ」
勇者「勝つるwwwwこれで勝ったも同然ww」
アイーダ「……」
勇者「うひょおおお! やったぜ! ハーレルヤー!」
アイーダ「……頭おかしくなった?」
勇者「アイーダさん! ありがとう!」ガシッ ブンブン
アイーダ「いたっ、いたたっ、握手はいいけどちょっと」
勇者「そうとわかれば、やはりさっさと行かなければ」ダダダッ
アイーダ「お、おいっ! 仲間はっ⁉︎」
勇者「俺には必要ない! むしろ足手まといだ!」
アイーダ「お、おぉ……」
勇者「待ってろよぉ~~~~っ!!(ダーマ神殿!!)」
【再び城下町】
勇者「ひゃっほーーーーい! 俺の人生はバラ色だぁーー! 勇者とおさらばでっきるぅ~~~! スキップスキップランランラン♪」
子供「ママァ。あの人」
母親「シッ。見ちゃいけません」
勇者「なんだよ、こんな神殿があるならもっとはやくいっときゃ……いや、待てよ」ピタ
アイーダ「勇者」
勇者「あれ? 結構遠くね? まずいんじゃないか、これ。モンスター多いだろうし」
アイーダ「勇者ってばよ」パコーン
勇者「いっ、てぇなぁ! 誰だよ、頭はた、いた……の?」
アイーダ「あたしだよ」
勇者「こ、これはこれは。腕っ節が強いで評判のアイーダおばさまじゃないですか」
アイーダ「あいかわらず腰の低い子だねぇ」
勇者「いやいや、あっしなんてもう」
アイーダ「誰があっしだよ。ふざけてないでうちにきな」
勇者「なぜでしょーか」
アイーダ「この鳥頭は。王様からなにも聞いてないのかい?」
勇者「あ、あぁ! そういえばなんか言ってたような」
アイーダ「うちにくれば名簿に登録してあるやつと連絡がとれる。仲間、必要だろ?」
勇者「仲間、仲間ねえ。たしかに神殿にいくには仲間がいた方が……アイーダさんってダーマ神殿聞いたことあります?」
アイーダ「あん? ダーマって転職ができるとこだろ?」
勇者「さすが! 荒くれ者どもと繋がりがあるってことは事情通!」
アイーダ「ほんで? それがどしたい?」
勇者「あのですね、ちょびっと気になったんですけどもぉ、転職ってどんな職があるのかご存じです?」
アイーダ「職? あぁ、戦士とか武闘家とか?」
勇者「うんうん」
アイーダ「あとは、魔法使いに僧侶、踊り子」
勇者「そんでそんで?」
アイーダ「一風変わって遊び人とか」
勇者「キタ━(゚∀゚)━!!」
アイーダ「うお、な、なんだこいつ」
勇者「勝つるwwwwこれで勝ったも同然ww」
アイーダ「……」
勇者「うひょおおお! やったぜ! ハーレルヤー!」
アイーダ「……頭おかしくなった?」
勇者「アイーダさん! ありがとう!」ガシッ ブンブン
アイーダ「いたっ、いたたっ、握手はいいけどちょっと」
勇者「そうとわかれば、やはりさっさと行かなければ」ダダダッ
アイーダ「お、おいっ! 仲間はっ⁉︎」
勇者「俺には必要ない! むしろ足手まといだ!」
アイーダ「お、おぉ……」
勇者「待ってろよぉ~~~~っ!!(ダーマ神殿!!)」
17: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 18:54:00.70 :76b4/dYJO
【アイーダ酒場】
戦士「ふっ、ロイヤルストレートフラッシュ」
僧侶「ひぃ~ん、ツーペア。負けましたぁ」
魔法使い「やるじゃない。戦士」
戦士「あたしはポーカーは得意なんだ。それに、僧侶、顔に出すぎだよ」パサ
僧侶「素直って褒めてくれてるんですか?」
戦士「……たしかに、素直なんだろうけど、なんだろう、あざとさを感じるのは」
僧侶「チッ」
戦士「いま舌打ちしたろ⁉︎」
魔法使い「ふふっ、僧侶なんて雑魚よ。ポーカーといえばこの私。大魔法使いであるこのわ・た・し、でしょ」
戦士「なんだ? やるのか? 勝負事なら手は抜かないよ?」
魔法使い「真面目ね。もっと肩の力抜いたら?」
戦士「遊びだからって勝負は勝負だ。下手な言い訳はしたくねぇ」
魔法使い「女のくせに、男みたいな口ぶりして」
戦士「あたしは女を捨てたんだ。そんなの関係ないね」
魔法使い「そこまで言うなら……なにか賭ける?」
僧侶「か、賭け事はだめですよぉ」
戦士「挑発してんのか? いいぜ、乗ってやるよ」
魔法使い「戦士、貴女もどうせ勇者のパーティーに入りたくてこの街に来たクチでしょ?」
戦士「勘違いすんな。勇者ってのがどんなのか見定めてから決めるつもりだ」
魔法使い「ふーん。ま、どうでもいいけど。私もそう。あぁ、そうっていうのは勇者御一行の仲間入りしたいってことね」
戦士「……それで?」
魔法使い「負けたら、候補から降りるってのはどう?」
戦士「なんだと?」ギロ
魔法使い「見てみなさいよ、店の中。私たちだけじゃない。……どこから聞きつけたのか、今日が勇者の旅立ちの日だと知った冒険者で超満員」
戦士「なぁ~るほど。ライバルは減らしたいってわけ」
魔法使い「私の見立てによれば、他は雑魚。あなたは別格。たたずまいでわかるもの」
僧侶「……」
魔法使い「もちろんあなたもね、僧侶」チラ
僧侶「えっ? わ、わわわたしですかっ?」
魔法使い「猫かぶるのをおやめよ。実力者は実力者でグループを作る」
【アイーダ酒場】
戦士「ふっ、ロイヤルストレートフラッシュ」
僧侶「ひぃ~ん、ツーペア。負けましたぁ」
魔法使い「やるじゃない。戦士」
戦士「あたしはポーカーは得意なんだ。それに、僧侶、顔に出すぎだよ」パサ
僧侶「素直って褒めてくれてるんですか?」
戦士「……たしかに、素直なんだろうけど、なんだろう、あざとさを感じるのは」
僧侶「チッ」
戦士「いま舌打ちしたろ⁉︎」
魔法使い「ふふっ、僧侶なんて雑魚よ。ポーカーといえばこの私。大魔法使いであるこのわ・た・し、でしょ」
戦士「なんだ? やるのか? 勝負事なら手は抜かないよ?」
魔法使い「真面目ね。もっと肩の力抜いたら?」
戦士「遊びだからって勝負は勝負だ。下手な言い訳はしたくねぇ」
魔法使い「女のくせに、男みたいな口ぶりして」
戦士「あたしは女を捨てたんだ。そんなの関係ないね」
魔法使い「そこまで言うなら……なにか賭ける?」
僧侶「か、賭け事はだめですよぉ」
戦士「挑発してんのか? いいぜ、乗ってやるよ」
魔法使い「戦士、貴女もどうせ勇者のパーティーに入りたくてこの街に来たクチでしょ?」
戦士「勘違いすんな。勇者ってのがどんなのか見定めてから決めるつもりだ」
魔法使い「ふーん。ま、どうでもいいけど。私もそう。あぁ、そうっていうのは勇者御一行の仲間入りしたいってことね」
戦士「……それで?」
魔法使い「負けたら、候補から降りるってのはどう?」
戦士「なんだと?」ギロ
魔法使い「見てみなさいよ、店の中。私たちだけじゃない。……どこから聞きつけたのか、今日が勇者の旅立ちの日だと知った冒険者で超満員」
戦士「なぁ~るほど。ライバルは減らしたいってわけ」
魔法使い「私の見立てによれば、他は雑魚。あなたは別格。たたずまいでわかるもの」
僧侶「……」
魔法使い「もちろんあなたもね、僧侶」チラ
僧侶「えっ? わ、わわわたしですかっ?」
魔法使い「猫かぶるのをおやめよ。実力者は実力者でグループを作る」
18: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 19:07:11.73 :76b4/dYJO
僧侶「で、でもぉ~私たちは職も違いますしぃ~蹴落とす必要ないんじゃないですかぁ?」
魔法使い「それもそうだけど、もし少人数しか選ばれなかった時に面倒だもの。私はどうしても勇者についていきたいの」
戦士「なんだぁ? 勇者がへっぽこなやつでもか?」
魔法使い「どんなやつでも、よ。“聖痕”という証拠がある以上、勇者であることに疑いはない。魔王を滅ぼし、魔物に殺された母様の仇を討ちたい……!」
戦士「……よし、わかった。お前についていくだけの理由があるとは察した。だがな、あたしだってただ見るためにここにきたわけじゃねぇ」
魔法使い「えっ、だってあんたさっき」
戦士「あたし達は今日はじめて会ったんだ。そんな奴らに本音を言うはずないだろ」
魔法使い「うっ」
戦士「だが、さっきのあんたの仇という言葉を聞いて気持ちが変わった。あたしは、自分の実力を試すために勇者についていきたい」
魔法使い「修行感覚ってわけ? 遊びのつもり?」
戦士「てめぇ……! 身体中にある傷跡を見てそれ言ってんのか? あたしの決心が遊びだと……?」
魔法使い「……」ゴクリ
戦士「女を捨ててまで武芸に身を打ち込んでるんだ。遊びなわけないじゃないの」ガン
魔法使い「……悪かったわよ」
戦士「僧侶、あんたはどうなんだい?」
僧侶「えっとぉ~、私は神官様に言われてここに来たっていいますかぁ~」
戦士「だったら帰んな。神官様とやらには“選べれなかった”と言えばいいだけ」
僧侶「えっとぉ~えっとぉ~」
魔法使い「イライラするわね、この女。私達がわざわざ本音で話してるのに」
僧侶「でもでもぉ~、貴女達が勝手に話しだしただけって言いますかぁ~」
僧侶「で、でもぉ~私たちは職も違いますしぃ~蹴落とす必要ないんじゃないですかぁ?」
魔法使い「それもそうだけど、もし少人数しか選ばれなかった時に面倒だもの。私はどうしても勇者についていきたいの」
戦士「なんだぁ? 勇者がへっぽこなやつでもか?」
魔法使い「どんなやつでも、よ。“聖痕”という証拠がある以上、勇者であることに疑いはない。魔王を滅ぼし、魔物に殺された母様の仇を討ちたい……!」
戦士「……よし、わかった。お前についていくだけの理由があるとは察した。だがな、あたしだってただ見るためにここにきたわけじゃねぇ」
魔法使い「えっ、だってあんたさっき」
戦士「あたし達は今日はじめて会ったんだ。そんな奴らに本音を言うはずないだろ」
魔法使い「うっ」
戦士「だが、さっきのあんたの仇という言葉を聞いて気持ちが変わった。あたしは、自分の実力を試すために勇者についていきたい」
魔法使い「修行感覚ってわけ? 遊びのつもり?」
戦士「てめぇ……! 身体中にある傷跡を見てそれ言ってんのか? あたしの決心が遊びだと……?」
魔法使い「……」ゴクリ
戦士「女を捨ててまで武芸に身を打ち込んでるんだ。遊びなわけないじゃないの」ガン
魔法使い「……悪かったわよ」
戦士「僧侶、あんたはどうなんだい?」
僧侶「えっとぉ~、私は神官様に言われてここに来たっていいますかぁ~」
戦士「だったら帰んな。神官様とやらには“選べれなかった”と言えばいいだけ」
僧侶「えっとぉ~えっとぉ~」
魔法使い「イライラするわね、この女。私達がわざわざ本音で話してるのに」
僧侶「でもでもぉ~、貴女達が勝手に話しだしただけって言いますかぁ~」
19: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 19:39:01.42 :76b4/dYJO
魔法使い「要するに、私達には話しする気ないってわけ?」
僧侶「はうぅ、そんな、極端ですよぉ。女神様も争いは嫌ってらっしゃいますぅ~」
戦士「たしかに……イライラするね。魔法使い、あんたとは気が合いそうだ。僧侶、あんたのその喋り方、なんとかならないのか?」
僧侶「うぅ」
魔法使い「頭悪いんじゃないの? いいえ、悪そうに見えるわよ? 本当に悪いんならお気の毒だけど」
僧侶「……黙って聞いてりゃ調子のってんじゃねぇぞアバズレどもが」ボソ
魔法使い「……!」
戦士「ん? なんか言ったか?」
僧侶「い、いえ~」ニコォ
魔法使い「(聞こえたわよ、やっぱりこいつ)」
僧侶「そ、そうだぁ! ポーカーやるんじゃないんですかぁ?」パン
戦士「あぁ、そうだったな。どうすんだ? 勇者の仲間入りの条件、賭けるのか?」
魔法使い「もちろん。でも、戦士だけじゃないわ。僧侶、あなたも勝負に参加して」
僧侶「え、えぇ? なんで私までぇ?」
戦士「勇者についてく理由がないから参加しても平気だろ」
僧侶「だ、だからぁ。神官様のご提示がぁ」
魔法使い「カード、切るわよ」パサ
戦士「ああ」
僧侶「ひ、人の話を聞いてくださぁ~い」
アイーダ「勝負はする必要ないよ」スッ
戦士&僧侶&魔法使い「アイーダさん?」
アイーダ「トランプをしまいな。集まった猛者ども! みんなよく聞け!! 酒を飲む手を止めてこっちに注目だ!!」パン パン
戦士「勇者がついにくるのか……?」
魔法使い「そのようね」
アイーダ「いいか、勇者は、勇者は……」
僧侶「……」ゴクリ
アイーダ「たった今、旅立った! よって、本日の営業は終わり!!」
店内「は、はああああぁぁぁっ⁉︎」
魔法使い「要するに、私達には話しする気ないってわけ?」
僧侶「はうぅ、そんな、極端ですよぉ。女神様も争いは嫌ってらっしゃいますぅ~」
戦士「たしかに……イライラするね。魔法使い、あんたとは気が合いそうだ。僧侶、あんたのその喋り方、なんとかならないのか?」
僧侶「うぅ」
魔法使い「頭悪いんじゃないの? いいえ、悪そうに見えるわよ? 本当に悪いんならお気の毒だけど」
僧侶「……黙って聞いてりゃ調子のってんじゃねぇぞアバズレどもが」ボソ
魔法使い「……!」
戦士「ん? なんか言ったか?」
僧侶「い、いえ~」ニコォ
魔法使い「(聞こえたわよ、やっぱりこいつ)」
僧侶「そ、そうだぁ! ポーカーやるんじゃないんですかぁ?」パン
戦士「あぁ、そうだったな。どうすんだ? 勇者の仲間入りの条件、賭けるのか?」
魔法使い「もちろん。でも、戦士だけじゃないわ。僧侶、あなたも勝負に参加して」
僧侶「え、えぇ? なんで私までぇ?」
戦士「勇者についてく理由がないから参加しても平気だろ」
僧侶「だ、だからぁ。神官様のご提示がぁ」
魔法使い「カード、切るわよ」パサ
戦士「ああ」
僧侶「ひ、人の話を聞いてくださぁ~い」
アイーダ「勝負はする必要ないよ」スッ
戦士&僧侶&魔法使い「アイーダさん?」
アイーダ「トランプをしまいな。集まった猛者ども! みんなよく聞け!! 酒を飲む手を止めてこっちに注目だ!!」パン パン
戦士「勇者がついにくるのか……?」
魔法使い「そのようね」
アイーダ「いいか、勇者は、勇者は……」
僧侶「……」ゴクリ
アイーダ「たった今、旅立った! よって、本日の営業は終わり!!」
店内「は、はああああぁぁぁっ⁉︎」
20: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 19:45:55.66 :76b4/dYJO
アイーダ「一人で行っちまった! お前らには悪いが、足手まといだそうだ!! 酒代はチャラにしといてやるよ」
戦士「な、なんだと……?」
魔法使い「そ、そんなのって、あり?」
僧侶「……」
アイーダ「あんた達も。ポーカーなんてやる必要ないんだ。荷物をまとめて故郷にお帰り」
戦士「は、はは。なんて野郎だ。一人で魔王退治だと。そんな肝っ玉座ってる男見たことも聞いたこともねぇや」
アイーダ「あん?」
魔法使い「それほどの強者。さすが勇者ってわけか……」
僧侶「勇者様はいつ頃出発されたのですかぁ?」
アイーダ「つい今しがた」
僧侶「ありがとうございますぅ~」ゴソゴソ
アイーダ「おい、あんたまさか」
僧侶「杖は、あ、ここだ。よいしょっと。それでは私はここで~お疲れ様でしたぁ~」イソイソ
アイーダ「ふぅ……やれやれ」
魔法使い「これから、どうしよ。どうしたらいいの」
戦士「……くっ、まだ修行が足りなかったのか」
アイーダ「あんた達は僧侶と一緒に行かなくてよかったの?」
魔法使い「故郷は別々ですし」
アイーダ「はぁ? あんたら気づいてないのかい? あの子、勇者を追いかけていったよ」
戦士&魔法使い「な、なんですって(だって)⁉︎」ガタッ
アイーダ「機転の利く子みたいだね。切り替えの早いというか」
戦士「あ、あいつ! あたしの剣、剣は」カチャカチャ
魔法使い「こうしちゃいられない……!」ガタガタ
アイーダ「(そんなに遠くには行ってないはずなんたけどねぇ。ま、すぐに会えるだろうさ)」
アイーダ「一人で行っちまった! お前らには悪いが、足手まといだそうだ!! 酒代はチャラにしといてやるよ」
戦士「な、なんだと……?」
魔法使い「そ、そんなのって、あり?」
僧侶「……」
アイーダ「あんた達も。ポーカーなんてやる必要ないんだ。荷物をまとめて故郷にお帰り」
戦士「は、はは。なんて野郎だ。一人で魔王退治だと。そんな肝っ玉座ってる男見たことも聞いたこともねぇや」
アイーダ「あん?」
魔法使い「それほどの強者。さすが勇者ってわけか……」
僧侶「勇者様はいつ頃出発されたのですかぁ?」
アイーダ「つい今しがた」
僧侶「ありがとうございますぅ~」ゴソゴソ
アイーダ「おい、あんたまさか」
僧侶「杖は、あ、ここだ。よいしょっと。それでは私はここで~お疲れ様でしたぁ~」イソイソ
アイーダ「ふぅ……やれやれ」
魔法使い「これから、どうしよ。どうしたらいいの」
戦士「……くっ、まだ修行が足りなかったのか」
アイーダ「あんた達は僧侶と一緒に行かなくてよかったの?」
魔法使い「故郷は別々ですし」
アイーダ「はぁ? あんたら気づいてないのかい? あの子、勇者を追いかけていったよ」
戦士&魔法使い「な、なんですって(だって)⁉︎」ガタッ
アイーダ「機転の利く子みたいだね。切り替えの早いというか」
戦士「あ、あいつ! あたしの剣、剣は」カチャカチャ
魔法使い「こうしちゃいられない……!」ガタガタ
アイーダ「(そんなに遠くには行ってないはずなんたけどねぇ。ま、すぐに会えるだろうさ)」
22: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 20:13:18.86 :76b4/dYJO
【街近郊 平原 ~ ミンドガルドの村】
スライム「ピギーッ!」
勇者「逃げる!」ダダダッ
ベビーパンサー「ガルルッ」
勇者「逃げ続ける!」ダダダッ
スカルナイト「ウガー」
勇者「逃げる勇気!!」ダダダッ
村人「――ミンドガルドへようこそ」
勇者「ひたすらに走っていたら、あっという間に次の街についてしまった」
村人「旅の人。宿はどうするね?」
勇者「あ、うーん。どうしよっかな。一泊いくらです?」
村人「8ゴールドだよ」
勇者「それなら……あれ、あ、やっべ! 家からも城からも慌てて出てきたから金あんま持ってねえ」
村人「なんだ、お兄さん、文無しか?」
勇者「いや、ちょっとはあるはず……」ゴソゴソ チャラ
村人「ひぃ、ふぅ、みーと100ゴールドもないじゃないか。それで全財産? お小遣いじゃなく?」
勇者「まぁ、小遣いみたいなもんすけど」
村人「よくそれで旅なんかする気になったねぇ。すぐに底をついちゃうよ」
勇者「そうなったら、野宿とか」
村人「寝てる間の魔物除けアイテムは一個、80ゴールドだぞ? しかも一回の使い捨て」
勇者「そんなすんのっ⁉︎」
村人「アイテム使わないならせめて、見張り番がいないと、なぁ」
勇者「夜行性のモンスター多いし、寝込み襲われちゃいますもんね」
村人「村の中で野宿なんてしたらつまみだすぞ……ハッ、まさか、流れ者の犯罪者じゃ?」
勇者「えっ、誰が……俺っ⁉︎ ち、違いますよ! 違います!」ブンブン
村人「ふん。で、どうする? 宿に泊まってく?」
勇者「そ、そうします~」シュン
【街近郊 平原 ~ ミンドガルドの村】
スライム「ピギーッ!」
勇者「逃げる!」ダダダッ
ベビーパンサー「ガルルッ」
勇者「逃げ続ける!」ダダダッ
スカルナイト「ウガー」
勇者「逃げる勇気!!」ダダダッ
村人「――ミンドガルドへようこそ」
勇者「ひたすらに走っていたら、あっという間に次の街についてしまった」
村人「旅の人。宿はどうするね?」
勇者「あ、うーん。どうしよっかな。一泊いくらです?」
村人「8ゴールドだよ」
勇者「それなら……あれ、あ、やっべ! 家からも城からも慌てて出てきたから金あんま持ってねえ」
村人「なんだ、お兄さん、文無しか?」
勇者「いや、ちょっとはあるはず……」ゴソゴソ チャラ
村人「ひぃ、ふぅ、みーと100ゴールドもないじゃないか。それで全財産? お小遣いじゃなく?」
勇者「まぁ、小遣いみたいなもんすけど」
村人「よくそれで旅なんかする気になったねぇ。すぐに底をついちゃうよ」
勇者「そうなったら、野宿とか」
村人「寝てる間の魔物除けアイテムは一個、80ゴールドだぞ? しかも一回の使い捨て」
勇者「そんなすんのっ⁉︎」
村人「アイテム使わないならせめて、見張り番がいないと、なぁ」
勇者「夜行性のモンスター多いし、寝込み襲われちゃいますもんね」
村人「村の中で野宿なんてしたらつまみだすぞ……ハッ、まさか、流れ者の犯罪者じゃ?」
勇者「えっ、誰が……俺っ⁉︎ ち、違いますよ! 違います!」ブンブン
村人「ふん。で、どうする? 宿に泊まってく?」
勇者「そ、そうします~」シュン
23: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 20:42:59.11 :76b4/dYJO
【夜 ミンドガルドの村 宿屋 食堂】
勇者「はぁ~、まいったぞ。いきなり資金難になるとは」ペラ
店主「オムライスお待ち」コト
勇者「ダーマの神殿まではどれくらいかかるんだろうか」
店主「ん? お客さん。ダーマ神殿目指してるの?」
勇者「はい?」
店主「ああ、すまんね。独り言が聞こえちまったもんで」
勇者「かまわないすよ、そうです。オムライスうまそっすね」
店主「ダーマっつうとこっから1ヶ月はかかるよ」
勇者「そ、そんなにっ⁉︎」
店主「ああ、ほれ、壁に地図がかかってるだろ。あれ見てみな」
勇者「……」コト
店主「現在地が西のはずれ。ダーマは大陸のちょうど中心地にある」
勇者「うまいすね、これ」モグモグ
店主「まぁな。俺のカミさんが作ってるから。そんで、山を二つ超えなきゃいかんから、はやくて1ヶ月てとこ」
勇者「はぁ……まいったな」
魔法使い「あんた、なんで抜け駆けなんてすんのよ!」バンッ
僧侶「えぇ~。だってぇ、一緒に行くなんて約束はぁ」
戦士「それにしたって黙っていくこたぁないだろう!」
勇者「おっちゃん」
店主「なんだ?」
勇者「あの騒がしい子たちも旅の人?」
店主「らしいよ。ついさっき到着してね。パーティなんじゃないか」
勇者「ふーん」モグモグ
戦士「勇者、どこまで行ってるんだろうな。来る途中は見かけなかったが」
勇者「ん? 勇者?」ピクッ
魔法使い「行動がはやければ、足もはやいなんて。ほんと、たいした男みたいね」
僧侶「私たちが気がつかなかった可能性もぉ~」
戦士「ここまではだだっ広い平原だったんだ。人影の見落としはありえない」
勇者「(……勇者探してんのかよ。こいつら。まさか、王様に見張りを言いつけられたとか?)」
店主「勇者……? おおい、あんた達! 勇者様がどうかしたのかい?」
戦士「ああ、今日が勇者の旅立ちの日なんだ。魔王退治のね」
店主「な、なんだってぇ⁉︎ こいつはたまげた! なら、あんた達は勇者様の付き人かい⁉︎」
魔法使い「だといいんだけどねぇ。私達はまだ……」
戦士「魔法使いの言う通りさ。勇者は仲間が足手まといだとよ」
店主「ひぇ~~!! こいつはまたたまげた! なら一人で旅してるんか⁉︎」
僧侶「店主さん~、今日はお客さんは私たちだけですかぁ?」
店主「ここは辺鄙な村だ。今日チェックインしたのは、あんた達と、ここの――」
勇者「ば、ばかっ!」コソ
【夜 ミンドガルドの村 宿屋 食堂】
勇者「はぁ~、まいったぞ。いきなり資金難になるとは」ペラ
店主「オムライスお待ち」コト
勇者「ダーマの神殿まではどれくらいかかるんだろうか」
店主「ん? お客さん。ダーマ神殿目指してるの?」
勇者「はい?」
店主「ああ、すまんね。独り言が聞こえちまったもんで」
勇者「かまわないすよ、そうです。オムライスうまそっすね」
店主「ダーマっつうとこっから1ヶ月はかかるよ」
勇者「そ、そんなにっ⁉︎」
店主「ああ、ほれ、壁に地図がかかってるだろ。あれ見てみな」
勇者「……」コト
店主「現在地が西のはずれ。ダーマは大陸のちょうど中心地にある」
勇者「うまいすね、これ」モグモグ
店主「まぁな。俺のカミさんが作ってるから。そんで、山を二つ超えなきゃいかんから、はやくて1ヶ月てとこ」
勇者「はぁ……まいったな」
魔法使い「あんた、なんで抜け駆けなんてすんのよ!」バンッ
僧侶「えぇ~。だってぇ、一緒に行くなんて約束はぁ」
戦士「それにしたって黙っていくこたぁないだろう!」
勇者「おっちゃん」
店主「なんだ?」
勇者「あの騒がしい子たちも旅の人?」
店主「らしいよ。ついさっき到着してね。パーティなんじゃないか」
勇者「ふーん」モグモグ
戦士「勇者、どこまで行ってるんだろうな。来る途中は見かけなかったが」
勇者「ん? 勇者?」ピクッ
魔法使い「行動がはやければ、足もはやいなんて。ほんと、たいした男みたいね」
僧侶「私たちが気がつかなかった可能性もぉ~」
戦士「ここまではだだっ広い平原だったんだ。人影の見落としはありえない」
勇者「(……勇者探してんのかよ。こいつら。まさか、王様に見張りを言いつけられたとか?)」
店主「勇者……? おおい、あんた達! 勇者様がどうかしたのかい?」
戦士「ああ、今日が勇者の旅立ちの日なんだ。魔王退治のね」
店主「な、なんだってぇ⁉︎ こいつはたまげた! なら、あんた達は勇者様の付き人かい⁉︎」
魔法使い「だといいんだけどねぇ。私達はまだ……」
戦士「魔法使いの言う通りさ。勇者は仲間が足手まといだとよ」
店主「ひぇ~~!! こいつはまたたまげた! なら一人で旅してるんか⁉︎」
僧侶「店主さん~、今日はお客さんは私たちだけですかぁ?」
店主「ここは辺鄙な村だ。今日チェックインしたのは、あんた達と、ここの――」
勇者「ば、ばかっ!」コソ
24: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 21:04:43.57 :76b4/dYJO
店主「そういやあんた、どっから来たの?」
戦士&魔法使い&僧侶「……」ジィ~
勇者「せ、拙者はしがない旅の者でござる」
店主「そんな喋り方してなかったろ」
僧侶「いきなり失礼ですけどぉ~、そちらの旅の方の職業をお聞かせいただいてよろしいですかぁ~?」
勇者「しょ、職業?」
店主「なんでもこのお兄さん、ダーマ神殿を目指してるらしいよ」
魔法使い「なら、転職? なにになりたいの?」
勇者「遊び人に」
魔法使い「遊び人……? ぷっ、変なやつ」
戦士「おい、お前。遊び人なんて怠け者のやる職業だぞ」
勇者「(怠けたいんだから天職じゃねぇか)」
僧侶「……」
店主「勇者様が旅立つのなら号外かお触れでも出してくれりゃいいのにねぇ」
戦士「そんなことしたら魔王に潰されちまうだろ。秘密裏にやる必要があんだよ」
魔法使い「そーそー。絶対的な魔王にとってのただひとつの脅威たる勇者。除外する為には、国ひとつ潰すわよ」
店主「国をか……おっかねぇ」ゴクリ
僧侶「……私ぃ、そちらの旅の方のテーブルに相席したいんですけどぉ」
勇者「へ?」
僧侶「だめでしょうかぁ~」
店主「席は四人がけだ。かまわないよ」
勇者「ちょ、俺の意思は!」
店主「こんなベッピンさん三人のうちの一人と一緒な飯食えるんだ。男なら役得だろ?」
勇者「めんどくさいから、いい――」
僧侶「失礼しますぅ~」スッ
勇者「見かけによらずグイグイくるな!」
魔法使い「僧侶、ちょっと、あんた男の趣味悪くない? そんなのがいいの?」
戦士「まったくだ。そんな軟弱そうなやつ」
勇者「こ、こいつら、なんで俺なにも言ってないのにボロクソいわれとるんじゃ!」
僧侶「うふふ。あちらは無視しておいて。……あ、手にご飯粒つけてますよ」
勇者「え、ついてな……」
僧侶「実は、私ぃ、特技があるんですよ」
勇者「(……? なんだ、手が熱い)」
僧侶「僧侶は癒しの職。女神様の特色が色濃くでる職でもあるんですぅ~」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「女神は争いを好まないもの。魔法使いや戦士だって加護を受けてるけど、どちらかというと精霊の側面が強いわ」
店主「そういやあんた、どっから来たの?」
戦士&魔法使い&僧侶「……」ジィ~
勇者「せ、拙者はしがない旅の者でござる」
店主「そんな喋り方してなかったろ」
僧侶「いきなり失礼ですけどぉ~、そちらの旅の方の職業をお聞かせいただいてよろしいですかぁ~?」
勇者「しょ、職業?」
店主「なんでもこのお兄さん、ダーマ神殿を目指してるらしいよ」
魔法使い「なら、転職? なにになりたいの?」
勇者「遊び人に」
魔法使い「遊び人……? ぷっ、変なやつ」
戦士「おい、お前。遊び人なんて怠け者のやる職業だぞ」
勇者「(怠けたいんだから天職じゃねぇか)」
僧侶「……」
店主「勇者様が旅立つのなら号外かお触れでも出してくれりゃいいのにねぇ」
戦士「そんなことしたら魔王に潰されちまうだろ。秘密裏にやる必要があんだよ」
魔法使い「そーそー。絶対的な魔王にとってのただひとつの脅威たる勇者。除外する為には、国ひとつ潰すわよ」
店主「国をか……おっかねぇ」ゴクリ
僧侶「……私ぃ、そちらの旅の方のテーブルに相席したいんですけどぉ」
勇者「へ?」
僧侶「だめでしょうかぁ~」
店主「席は四人がけだ。かまわないよ」
勇者「ちょ、俺の意思は!」
店主「こんなベッピンさん三人のうちの一人と一緒な飯食えるんだ。男なら役得だろ?」
勇者「めんどくさいから、いい――」
僧侶「失礼しますぅ~」スッ
勇者「見かけによらずグイグイくるな!」
魔法使い「僧侶、ちょっと、あんた男の趣味悪くない? そんなのがいいの?」
戦士「まったくだ。そんな軟弱そうなやつ」
勇者「こ、こいつら、なんで俺なにも言ってないのにボロクソいわれとるんじゃ!」
僧侶「うふふ。あちらは無視しておいて。……あ、手にご飯粒つけてますよ」
勇者「え、ついてな……」
僧侶「実は、私ぃ、特技があるんですよ」
勇者「(……? なんだ、手が熱い)」
僧侶「僧侶は癒しの職。女神様の特色が色濃くでる職でもあるんですぅ~」
戦士「そうなのか?」
魔法使い「女神は争いを好まないもの。魔法使いや戦士だって加護を受けてるけど、どちらかというと精霊の側面が強いわ」
25: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 21:26:33.77 :76b4/dYJO
僧侶「勇者様は女神様の寵愛を一身に受けられるお方。溢れ出る光に蓋はできません~」ポワッ
勇者「(な、なんだ。やばい感じする!)」
魔法使い「……?」
戦士「僧侶の手が光だしてるのはどういう原理だ? いや、重ねてる手から?」
勇者「や、やだなぁ! ご飯粒なんてついてないじゃないですか!」サッ
僧侶「あっ」
勇者「いやぁ、おいしかった! おっちゃん! オムライスうまかった! ごっそさん!」
店主「いいのか? まだ半分くらい残ってるが」
勇者「職が細いんだ、俺! もうお腹いっぱいになっちまって、残してごめんな?」
店主「いや、金払ってるからかまわねぇが」
僧侶「……」ジィ~
勇者「うっ、じゃ、じゃあ俺は部屋にいくから! あ、あと、明日は早朝にでたいんだけどどうしたらいい?」
店主「料金は先払いでもらってる。そのままチェックアウトしてかまわないよ」
勇者「了解! それじゃ、俺はこれで!」ソソクサ
戦士「なんだぁ、あいつ。いきなり慌ててたっていうか」
魔法使い「たしかに、変ね……それに僧侶。さっきのはなにをしてたの? 回復魔法?」
僧侶「うふふ。みぃ~つけた」ボソ
戦士&魔法使い「……?」
僧侶「先ほどのは、旅の安全を祈ってたんですよぉ」
戦士「そんなことか」
魔法使い「待って。光ってたわ。ああいうのものなの?」
僧侶「そうですよぉ」ニコニコ
戦士「祈りが特技か。しょーもな」
僧侶「なんとでもぉ~。それはそうと、こちらのパーティからは抜けさせてもらいますのでぇ」
魔法使い「いいの? 同じ魔法職だから言わせてもらうけど、前衛は必要よ」
戦士「そうだ、あたしが守ってやるぞ」エッヘン
僧侶「はい~。実は私の元いた神殿というのもダーマでしてぇ。目的地が同じなようなので、先ほどのお方を頼ろうかと思いますぅ」
戦士「目的地が同じって」
魔法使い「……勇者様のことは諦めるの?」
僧侶「元々神官さまに言われただけですしぃ、お二人の言う通り、諦めようかとぉ~」
戦士「まぁ、そうか。あんたには理由がないもんな」
僧侶「勇者様は女神様の寵愛を一身に受けられるお方。溢れ出る光に蓋はできません~」ポワッ
勇者「(な、なんだ。やばい感じする!)」
魔法使い「……?」
戦士「僧侶の手が光だしてるのはどういう原理だ? いや、重ねてる手から?」
勇者「や、やだなぁ! ご飯粒なんてついてないじゃないですか!」サッ
僧侶「あっ」
勇者「いやぁ、おいしかった! おっちゃん! オムライスうまかった! ごっそさん!」
店主「いいのか? まだ半分くらい残ってるが」
勇者「職が細いんだ、俺! もうお腹いっぱいになっちまって、残してごめんな?」
店主「いや、金払ってるからかまわねぇが」
僧侶「……」ジィ~
勇者「うっ、じゃ、じゃあ俺は部屋にいくから! あ、あと、明日は早朝にでたいんだけどどうしたらいい?」
店主「料金は先払いでもらってる。そのままチェックアウトしてかまわないよ」
勇者「了解! それじゃ、俺はこれで!」ソソクサ
戦士「なんだぁ、あいつ。いきなり慌ててたっていうか」
魔法使い「たしかに、変ね……それに僧侶。さっきのはなにをしてたの? 回復魔法?」
僧侶「うふふ。みぃ~つけた」ボソ
戦士&魔法使い「……?」
僧侶「先ほどのは、旅の安全を祈ってたんですよぉ」
戦士「そんなことか」
魔法使い「待って。光ってたわ。ああいうのものなの?」
僧侶「そうですよぉ」ニコニコ
戦士「祈りが特技か。しょーもな」
僧侶「なんとでもぉ~。それはそうと、こちらのパーティからは抜けさせてもらいますのでぇ」
魔法使い「いいの? 同じ魔法職だから言わせてもらうけど、前衛は必要よ」
戦士「そうだ、あたしが守ってやるぞ」エッヘン
僧侶「はい~。実は私の元いた神殿というのもダーマでしてぇ。目的地が同じなようなので、先ほどのお方を頼ろうかと思いますぅ」
戦士「目的地が同じって」
魔法使い「……勇者様のことは諦めるの?」
僧侶「元々神官さまに言われただけですしぃ、お二人の言う通り、諦めようかとぉ~」
戦士「まぁ、そうか。あんたには理由がないもんな」
26: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 21:43:34.19 :76b4/dYJO
【深夜 魔法使い 部屋】
戦士「魔法使い、まだ起きてるか?」コンコン
魔法使い「その声は、戦士? 鍵なら空いてるわよ」
戦士「失礼する」ガチャ
魔法使い「夜分にどうしたの? というか、まだ起きてたのね」
戦士「あんたもな。なんだ、本を開いて勉強でもしてたのか?」
魔法使い「気にならない? 僧侶の言動。あの子、どうにも信用ならないのよ」
戦士「……同感だ。実は気になってな。あたしのはただの勘だが」
魔法使い「さっきの光、調べてみたの」
戦士「祈りってやつか。それで?」
魔法使い「専門職じゃないから詳しいことはわからないけど、たしかに祈りをするときは祝福の影響で発光することがあるらしいわ」
戦士「……でも、それだけじゃないんだろ?」
魔法使い「貴女も見たでしょ? 重ねてた手の下から、つまり、あの男からの光だったわよね?」
戦士「そんな気がした」
魔法使い「そうであれば、おかしいわ。僧侶の手が光っていなければ」
戦士「だけど、光が強すぎて、その、見間違いってことも」
魔法使い「……」ギシ
戦士「まさか、あいつが勇者だってのか?」
魔法使い「あくまで可能性よ。でも、僧侶はあいつとパーティを組むと決めた。どうにもひっかかる」
戦士「たしかに、男、だもんな。しかも二人きりになるし」
魔法使い「貴女、オンナは捨てたんじゃなかったっけ」
戦士「ち、ちがっ! あたしは、一般的な常識で!」
魔法使い「別にいいけど。それを抜きにしても、前衛を任せられると判断できない者とパーティを組むメリットは、魔法職に無いのよ」
戦士「……強いのか? あいつ」
魔法使い「そこで、提案があるんだけど――」
【深夜 魔法使い 部屋】
戦士「魔法使い、まだ起きてるか?」コンコン
魔法使い「その声は、戦士? 鍵なら空いてるわよ」
戦士「失礼する」ガチャ
魔法使い「夜分にどうしたの? というか、まだ起きてたのね」
戦士「あんたもな。なんだ、本を開いて勉強でもしてたのか?」
魔法使い「気にならない? 僧侶の言動。あの子、どうにも信用ならないのよ」
戦士「……同感だ。実は気になってな。あたしのはただの勘だが」
魔法使い「さっきの光、調べてみたの」
戦士「祈りってやつか。それで?」
魔法使い「専門職じゃないから詳しいことはわからないけど、たしかに祈りをするときは祝福の影響で発光することがあるらしいわ」
戦士「……でも、それだけじゃないんだろ?」
魔法使い「貴女も見たでしょ? 重ねてた手の下から、つまり、あの男からの光だったわよね?」
戦士「そんな気がした」
魔法使い「そうであれば、おかしいわ。僧侶の手が光っていなければ」
戦士「だけど、光が強すぎて、その、見間違いってことも」
魔法使い「……」ギシ
戦士「まさか、あいつが勇者だってのか?」
魔法使い「あくまで可能性よ。でも、僧侶はあいつとパーティを組むと決めた。どうにもひっかかる」
戦士「たしかに、男、だもんな。しかも二人きりになるし」
魔法使い「貴女、オンナは捨てたんじゃなかったっけ」
戦士「ち、ちがっ! あたしは、一般的な常識で!」
魔法使い「別にいいけど。それを抜きにしても、前衛を任せられると判断できない者とパーティを組むメリットは、魔法職に無いのよ」
戦士「……強いのか? あいつ」
魔法使い「そこで、提案があるんだけど――」
27: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 22:00:46.53 :76b4/dYJO
【宿屋 早朝】
スズメ「チュンチュン」
勇者「っし! 天気は快晴! 今日もマラソン日和! さぁ~走るぞぉ! 目指すはダーマ! ダマされるもんか! なんつって」バタンッ
僧侶「おはようございますぅ~」
勇者「あ、お、おはよう。朝、はやいんだね。というか、なんで扉の前に立ってんの?」
僧侶「一晩ここで夜をあかしましたのでぇ~」
勇者「ここ? ここって通路だよ?」
僧侶「はい~。お布団ならあちらに~」
勇者「あー、うん、綺麗にたたんでありますね。ってそうじゃないわ! 部屋で寝ろよ!」
僧侶「何時に出るかわからなかったんですもの~」
勇者「誰が……? 俺が?」
僧侶「はい~」ニコニコ
勇者「俺が出るのを待ってたと。そして、ここで寝てた。それすなわち……」
僧侶「パーティを組んでいただけませんかぁ?」
勇者「間に合ってます」ピシャリ
僧侶「そうおっしゃらずにぃ~。お話だけでも」
勇者「俺は遊び人になりにダーマ神殿に向かってるんだ。そんなやつとパーティを組んだってろくなことにならないよ」
僧侶「正直なお方なんですねぇ。是非ともご一緒したいですぅ」
勇者「いや、だからだな。あの、人の話聞いてる?」
戦士「ちょぉっと待ったッ!!」
魔法使い「抜け駆けは許さないわよ! 僧侶!!」
僧侶「チッ」
勇者「な、なんだ?」
魔法使い「話は盗み聞きさせてもらったわ。まさか廊下で一晩明かすなんて、よっぽどそいつとパーティを組みたいようねぇ?」
戦士「あたしも驚いたぜ。たまたま通りかかったから発見できたものの」
魔法使い「……そいつ、何者? まさか、勇者様なの?」
勇者「……っ!」ギクゥッ
僧侶「……やですねぇ~。違うんじゃないですかぁ? 本人はそんなこと言っておられませんしぃ」
戦士「なんでそこまでそいつにこだわる? 前衛ならあたしでも困らないだろう?」
僧侶「はぁ……。それはぁ目的地が同じと言ったじゃないですかぁ」
戦士「なら、あたしたちの目的地もダーマだと言ったら?」
僧侶「……そうなんですかぁ? 勇者様は別のところに向かってるかもしれませんよぉ?」
【宿屋 早朝】
スズメ「チュンチュン」
勇者「っし! 天気は快晴! 今日もマラソン日和! さぁ~走るぞぉ! 目指すはダーマ! ダマされるもんか! なんつって」バタンッ
僧侶「おはようございますぅ~」
勇者「あ、お、おはよう。朝、はやいんだね。というか、なんで扉の前に立ってんの?」
僧侶「一晩ここで夜をあかしましたのでぇ~」
勇者「ここ? ここって通路だよ?」
僧侶「はい~。お布団ならあちらに~」
勇者「あー、うん、綺麗にたたんでありますね。ってそうじゃないわ! 部屋で寝ろよ!」
僧侶「何時に出るかわからなかったんですもの~」
勇者「誰が……? 俺が?」
僧侶「はい~」ニコニコ
勇者「俺が出るのを待ってたと。そして、ここで寝てた。それすなわち……」
僧侶「パーティを組んでいただけませんかぁ?」
勇者「間に合ってます」ピシャリ
僧侶「そうおっしゃらずにぃ~。お話だけでも」
勇者「俺は遊び人になりにダーマ神殿に向かってるんだ。そんなやつとパーティを組んだってろくなことにならないよ」
僧侶「正直なお方なんですねぇ。是非ともご一緒したいですぅ」
勇者「いや、だからだな。あの、人の話聞いてる?」
戦士「ちょぉっと待ったッ!!」
魔法使い「抜け駆けは許さないわよ! 僧侶!!」
僧侶「チッ」
勇者「な、なんだ?」
魔法使い「話は盗み聞きさせてもらったわ。まさか廊下で一晩明かすなんて、よっぽどそいつとパーティを組みたいようねぇ?」
戦士「あたしも驚いたぜ。たまたま通りかかったから発見できたものの」
魔法使い「……そいつ、何者? まさか、勇者様なの?」
勇者「……っ!」ギクゥッ
僧侶「……やですねぇ~。違うんじゃないですかぁ? 本人はそんなこと言っておられませんしぃ」
戦士「なんでそこまでそいつにこだわる? 前衛ならあたしでも困らないだろう?」
僧侶「はぁ……。それはぁ目的地が同じと言ったじゃないですかぁ」
戦士「なら、あたしたちの目的地もダーマだと言ったら?」
僧侶「……そうなんですかぁ? 勇者様は別のところに向かってるかもしれませんよぉ?」
28: ◆7Ub330dMyM:2018/01/09(火) 22:28:01.52 :76b4/dYJO
魔法使い「そいつに質問があるのよ。なに壁に張り付いてるの?」
勇者「ボクハオキモノデス」
魔法使い「わー、おもしろーい。メラ」ボッ
勇者「あっつぅっ! 馬鹿野郎! 人に向けて魔法は撃っちゃいけません!」アタフタ
魔法使い「たいしてダメージないみたいね……」
勇者「ふーっ、ふーっ、どうしてくれる! キズモノにされたらお婿にいけないじゃないの!」
魔法使い「将来設計の話なら別の子にしてくれる? 出身地はどこ? 身なりも軽装なようだけど」
勇者「うっ、そ、それは、隣の国の」
戦士「む? そうだったのか。ならば同郷だな」
魔法使い「そうだったの? 隣国に詳しい?」
戦士「もちろんだ。なにしろ生まれ育った国だからな」
魔法使い「そうよね、普通は。あんたも?」
勇者「いや、俺は、その、引きこもり生活をしておりまして。外の世界を知らずに」
戦士「それなのに旅をしてるのか?」
僧侶「お二人ともその辺で。きっとあまりのダメ男っぷりに親に勘当されたんですよぉ~。察してあげましょぉ~?」
勇者「サラッとひどいこと言わないでくれるかな⁉︎」
僧侶「口裏合わせてください~」コソッ
勇者「うっ、わ、わかった」コクリ
魔法使い「ますます怪しいわ。もっと言えば胡散臭い」
戦士「あぁ、そうだな。こうなっちゃ疑うなって方が無理だ」
僧侶「この方は勇者様じゃありませんよぉ~? ねぇ~?」
勇者「もちろんです! 僕勇者ジャナイヨ!」
魔法使い「なぜ、隠すのか。そこもわからないのは確かね」
戦士「ああ。それに、こんなやつが勇者だとは思えないってのも」
魔法使い&戦士「……」ジトー
勇者「えぇい! というか、なんで俺がこんな目に合わなきゃいかんのじゃ! 場の雰囲気に呑まれてすっかり流されてたわ!」ガバッ
僧侶「あららぁ~」
勇者「お前らに付き合ってたら出発が昼になっちまうわ! そんじゃ――」
戦士「待てよ」ガシッ
勇者「……うわぉーお。握力すごぉーい。肩の骨が悲鳴あげそぉ」ミシミシ
戦士「僧侶だけじゃなく、あたしと魔法使いもパーティにいれろ。そんで折れてやる」
勇者「僧侶と組むなんて一言も」
僧侶「はぁ、しかたないですねぇ」
勇者「決めるのそっち⁉︎」
魔法使い「……旅をしながら見定める。こいつが勇者じゃなくても、行く先で情報は集められるだろうし」
戦士「ああ。それが昨夜。あたしらで決めた話だ」
勇者「(い、いかんですよ。こんなやつらとパーティを組むなんてごめんこうむりたい)」
僧侶「なんにせよ、そろそろ離してあげてはぁ~?」
戦士「ほらよ」パッ
勇者「(に、逃げなければ。隙を見て)」
魔法使い「ともあれ、これからよろしくね?」
僧侶「ふつつか者ですが、よしくおねがいしますぅ~」
戦士「……ふん」
魔法使い「そいつに質問があるのよ。なに壁に張り付いてるの?」
勇者「ボクハオキモノデス」
魔法使い「わー、おもしろーい。メラ」ボッ
勇者「あっつぅっ! 馬鹿野郎! 人に向けて魔法は撃っちゃいけません!」アタフタ
魔法使い「たいしてダメージないみたいね……」
勇者「ふーっ、ふーっ、どうしてくれる! キズモノにされたらお婿にいけないじゃないの!」
魔法使い「将来設計の話なら別の子にしてくれる? 出身地はどこ? 身なりも軽装なようだけど」
勇者「うっ、そ、それは、隣の国の」
戦士「む? そうだったのか。ならば同郷だな」
魔法使い「そうだったの? 隣国に詳しい?」
戦士「もちろんだ。なにしろ生まれ育った国だからな」
魔法使い「そうよね、普通は。あんたも?」
勇者「いや、俺は、その、引きこもり生活をしておりまして。外の世界を知らずに」
戦士「それなのに旅をしてるのか?」
僧侶「お二人ともその辺で。きっとあまりのダメ男っぷりに親に勘当されたんですよぉ~。察してあげましょぉ~?」
勇者「サラッとひどいこと言わないでくれるかな⁉︎」
僧侶「口裏合わせてください~」コソッ
勇者「うっ、わ、わかった」コクリ
魔法使い「ますます怪しいわ。もっと言えば胡散臭い」
戦士「あぁ、そうだな。こうなっちゃ疑うなって方が無理だ」
僧侶「この方は勇者様じゃありませんよぉ~? ねぇ~?」
勇者「もちろんです! 僕勇者ジャナイヨ!」
魔法使い「なぜ、隠すのか。そこもわからないのは確かね」
戦士「ああ。それに、こんなやつが勇者だとは思えないってのも」
魔法使い&戦士「……」ジトー
勇者「えぇい! というか、なんで俺がこんな目に合わなきゃいかんのじゃ! 場の雰囲気に呑まれてすっかり流されてたわ!」ガバッ
僧侶「あららぁ~」
勇者「お前らに付き合ってたら出発が昼になっちまうわ! そんじゃ――」
戦士「待てよ」ガシッ
勇者「……うわぉーお。握力すごぉーい。肩の骨が悲鳴あげそぉ」ミシミシ
戦士「僧侶だけじゃなく、あたしと魔法使いもパーティにいれろ。そんで折れてやる」
勇者「僧侶と組むなんて一言も」
僧侶「はぁ、しかたないですねぇ」
勇者「決めるのそっち⁉︎」
魔法使い「……旅をしながら見定める。こいつが勇者じゃなくても、行く先で情報は集められるだろうし」
戦士「ああ。それが昨夜。あたしらで決めた話だ」
勇者「(い、いかんですよ。こんなやつらとパーティを組むなんてごめんこうむりたい)」
僧侶「なんにせよ、そろそろ離してあげてはぁ~?」
戦士「ほらよ」パッ
勇者「(に、逃げなければ。隙を見て)」
魔法使い「ともあれ、これからよろしくね?」
僧侶「ふつつか者ですが、よしくおねがいしますぅ~」
戦士「……ふん」
29: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 10:33:30.05 :OsAGEgfJO
【平原】
僧侶「まっ、まってくださぁ~い」トテトテ
魔法使い「ぜぇっ、ぜぇっ、ちょ、ちょっと、なにも走らなくたって」
戦士「いや、あたしは歩いてもかまわんのだが」
勇者「ついてけねぇなら置いてくぞ!」
戦士「こいつがこう言ってるし」
魔法使い「ちょ、ちょっとストップ」
僧侶「もう、走れませんん~」
勇者「……ったく、しょうがないなぁ。おあつらえ向きに岩があるし、休憩するか」
魔法使い「ふぅ、ふぅ、あんた、やっぱり前衛職なのね? そんなに平気な顔してるなんて」
戦士「あたしも驚いたぞ。スタミナがあるんだな?」
勇者「まぁ、小さい頃からそれなりに鍛えられてたし」
戦士「へぇ……」
僧侶「ふぅ、ふぅ……どうしてそんなに急がれてるんですかぁ~?」
勇者「はやく転職したいから」
魔法使い「転職って、ひとつの職を極めた人が行うものでしょ? 極めてるようには見えないけど」
勇者「極めてるとか未熟だとか関係ないよ。俺は今の職が嫌いなんだ」
戦士「む。女神様から与えられたギフトに文句をつけるとは」
勇者「ふてぶてしいとはよく言われる、えへへ」
戦士「褒めとらんわっ!」
魔法使い「なんか調子狂うわ。いい? 職業ってのは、言ってみれば名前みたいなものよ。女神様が各個人にあった適職を振り分けてくださってて──」
勇者「カテゴリー分けだろ、要するに」
僧侶「……」
勇者「戦士だの武闘家だの。いいか、職ってのは生業だ。食を得る糧だ。一種の生き様と断言したっていい」
戦士「……」
勇者「“職に貴賎なし”。昔の人は言いました。農夫が魔法使いより劣っているなんて俺はちっとも思わねぇ。みんなそれぞれ精一杯生きているんだ」
魔法使い「わ、私は別に、見下してなんて」
勇者「そうか? 説教する気なんてこれっぽっちもないけどよ。優越感に浸って、有難がってる。俺にはそう見えるね」
戦士「お前は遊び人志望なんだろう?」
勇者「あ、はい」
戦士「毎日遊びほうけて、ちゃらんぽらんな性格してるあの?」
勇者「おっしゃる通りでございます」
戦士「そんなやつが偉そうに言うことか!」
勇者「う、うぅ。なんでや。発言の自由ぐらいあってもええやないか」
僧侶「でも、確かに、一理あると思いますけどねぇ~」
戦士「……やけにこいつの肩を持つね」
僧侶「神は等しく平等なのですよぉ。私は中立の目線から判断しているに過ぎません~」
戦士「けっ」
岩「」モコ
魔法使い「あんた、結局、なんの──」
岩「」モコモコ
【平原】
僧侶「まっ、まってくださぁ~い」トテトテ
魔法使い「ぜぇっ、ぜぇっ、ちょ、ちょっと、なにも走らなくたって」
戦士「いや、あたしは歩いてもかまわんのだが」
勇者「ついてけねぇなら置いてくぞ!」
戦士「こいつがこう言ってるし」
魔法使い「ちょ、ちょっとストップ」
僧侶「もう、走れませんん~」
勇者「……ったく、しょうがないなぁ。おあつらえ向きに岩があるし、休憩するか」
魔法使い「ふぅ、ふぅ、あんた、やっぱり前衛職なのね? そんなに平気な顔してるなんて」
戦士「あたしも驚いたぞ。スタミナがあるんだな?」
勇者「まぁ、小さい頃からそれなりに鍛えられてたし」
戦士「へぇ……」
僧侶「ふぅ、ふぅ……どうしてそんなに急がれてるんですかぁ~?」
勇者「はやく転職したいから」
魔法使い「転職って、ひとつの職を極めた人が行うものでしょ? 極めてるようには見えないけど」
勇者「極めてるとか未熟だとか関係ないよ。俺は今の職が嫌いなんだ」
戦士「む。女神様から与えられたギフトに文句をつけるとは」
勇者「ふてぶてしいとはよく言われる、えへへ」
戦士「褒めとらんわっ!」
魔法使い「なんか調子狂うわ。いい? 職業ってのは、言ってみれば名前みたいなものよ。女神様が各個人にあった適職を振り分けてくださってて──」
勇者「カテゴリー分けだろ、要するに」
僧侶「……」
勇者「戦士だの武闘家だの。いいか、職ってのは生業だ。食を得る糧だ。一種の生き様と断言したっていい」
戦士「……」
勇者「“職に貴賎なし”。昔の人は言いました。農夫が魔法使いより劣っているなんて俺はちっとも思わねぇ。みんなそれぞれ精一杯生きているんだ」
魔法使い「わ、私は別に、見下してなんて」
勇者「そうか? 説教する気なんてこれっぽっちもないけどよ。優越感に浸って、有難がってる。俺にはそう見えるね」
戦士「お前は遊び人志望なんだろう?」
勇者「あ、はい」
戦士「毎日遊びほうけて、ちゃらんぽらんな性格してるあの?」
勇者「おっしゃる通りでございます」
戦士「そんなやつが偉そうに言うことか!」
勇者「う、うぅ。なんでや。発言の自由ぐらいあってもええやないか」
僧侶「でも、確かに、一理あると思いますけどねぇ~」
戦士「……やけにこいつの肩を持つね」
僧侶「神は等しく平等なのですよぉ。私は中立の目線から判断しているに過ぎません~」
戦士「けっ」
岩「」モコ
魔法使い「あんた、結局、なんの──」
岩「」モコモコ
30: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 14:00:20.07 :WsvInrNpO
僧侶「あのぉ~、旅の方が腰掛けてるその岩……」
爆弾岩「ウガァー」ボコン
勇者「うおっ」ガク
僧侶「やっぱりぃ~」
魔法使い「モンスター⁉︎」
戦士「爆弾岩だったのか!」ズザザ
爆弾岩「……」ニヤニヤ
勇者「(爆弾岩は様子を見てる……ってか、これ走って逃げたらいいんじゃね?)」
戦士「よぉーしッ! やってやらぁ!」チャキッ
勇者「(戦士は血気盛んだねぇ。しめしめ)」スススッ
魔法使い「物理攻撃では不利だわ! 時間を稼いで! 私は攻撃魔法、僧侶! サポート魔法で戦士の援護を!」
僧侶「はぁ~い」
勇者「(そぉ~っと、そぉ~っと)」コソコソ
魔法使い「あんたは……あれ? あいつは?」
僧侶「あちらで駆け出していますよぉ~」
勇者「ぬぉっ! もう見つかった⁉︎」ダダダッ
魔法使い「……」ポカーン
戦士「どおりゃっ!」ガキンッ
爆弾岩「……」ニヤニヤ
戦士「くっ、刃が……! 岩相手に無理か」
僧侶「爆弾岩は早めに決着をつけないとぉ~」
魔法使い「あ、あいつ……!」ワナワナ
戦士「おい! 魔法使い!逃げ出したやつにかまってる時間はねぇぞ!」
勇者「(すまないな……。恨むならば自分の無力さを恨むがいい……!)」ダダダッ
魔法使い「冷気系魔法を使うわ! 戦士、さがって!」
戦士「おう!」シュタ
僧侶「あのぉ~、旅の方が腰掛けてるその岩……」
爆弾岩「ウガァー」ボコン
勇者「うおっ」ガク
僧侶「やっぱりぃ~」
魔法使い「モンスター⁉︎」
戦士「爆弾岩だったのか!」ズザザ
爆弾岩「……」ニヤニヤ
勇者「(爆弾岩は様子を見てる……ってか、これ走って逃げたらいいんじゃね?)」
戦士「よぉーしッ! やってやらぁ!」チャキッ
勇者「(戦士は血気盛んだねぇ。しめしめ)」スススッ
魔法使い「物理攻撃では不利だわ! 時間を稼いで! 私は攻撃魔法、僧侶! サポート魔法で戦士の援護を!」
僧侶「はぁ~い」
勇者「(そぉ~っと、そぉ~っと)」コソコソ
魔法使い「あんたは……あれ? あいつは?」
僧侶「あちらで駆け出していますよぉ~」
勇者「ぬぉっ! もう見つかった⁉︎」ダダダッ
魔法使い「……」ポカーン
戦士「どおりゃっ!」ガキンッ
爆弾岩「……」ニヤニヤ
戦士「くっ、刃が……! 岩相手に無理か」
僧侶「爆弾岩は早めに決着をつけないとぉ~」
魔法使い「あ、あいつ……!」ワナワナ
戦士「おい! 魔法使い!逃げ出したやつにかまってる時間はねぇぞ!」
勇者「(すまないな……。恨むならば自分の無力さを恨むがいい……!)」ダダダッ
魔法使い「冷気系魔法を使うわ! 戦士、さがって!」
戦士「おう!」シュタ
31: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 14:01:00.65 :WsvInrNpO
魔法使い「氷の礫をくらえっ! ヒャド!」カキン
爆弾岩「……っ⁉︎」ドゴン ヒュー
戦士「おお……! 凍らせるかと思ったが、吹っ飛んだ」
僧侶「初級魔法しか使えないんですかぁ?」
魔法使い「いちいちうっさい! 距離とれたんだからいいでしょ!」
僧侶「……でもぉ、飛ばしただけじゃ」
爆弾岩「」ヒュー
勇者「ん? なんか背後から気配を感じるような……?」クル
爆弾岩「」ヒュー
勇者「なんでこっちに来てんの⁉︎」ギョ
戦士「……魔法使い。狙ってやったのか?」
魔法使い「……うん、そんなつもりなかったけど。まぁ、いいでしょ」
勇者「にょわあああああっ!」ダダダッ
僧侶「あらあらぁ~。爆弾岩が赤くなりはじめてますねぇ~。爆発する兆候ですぅ」
勇者「こっちこないでぇぇええええっ!!」ダダダッ
戦士「なんか、哀れになってきたんだが」
魔法使い「そ、そうね……」
僧侶「旅のお方ぁ~。足を止めて伏せればいいんですよぉ~」フリフリ
勇者「ハッ! そ、そうだ! そうすれば頭上を通りこして――」
爆弾岩「」ズドーン
勇者「目の前に落ちてくるとかお約束やんけ!」
爆弾岩「……」プルプル
勇者「トイレ? う◯こなら我慢しない方が」
爆弾岩「……」ニタァ
勇者「やっぱ我慢して! 平原は公共スペースです! 汚物の垂れ流しはご遠慮してください!」
爆弾岩「」ピカァー
戦士&魔法使い&僧侶「あ、爆発する」
勇者「――ひっ⁉︎」
魔法使い「氷の礫をくらえっ! ヒャド!」カキン
爆弾岩「……っ⁉︎」ドゴン ヒュー
戦士「おお……! 凍らせるかと思ったが、吹っ飛んだ」
僧侶「初級魔法しか使えないんですかぁ?」
魔法使い「いちいちうっさい! 距離とれたんだからいいでしょ!」
僧侶「……でもぉ、飛ばしただけじゃ」
爆弾岩「」ヒュー
勇者「ん? なんか背後から気配を感じるような……?」クル
爆弾岩「」ヒュー
勇者「なんでこっちに来てんの⁉︎」ギョ
戦士「……魔法使い。狙ってやったのか?」
魔法使い「……うん、そんなつもりなかったけど。まぁ、いいでしょ」
勇者「にょわあああああっ!」ダダダッ
僧侶「あらあらぁ~。爆弾岩が赤くなりはじめてますねぇ~。爆発する兆候ですぅ」
勇者「こっちこないでぇぇええええっ!!」ダダダッ
戦士「なんか、哀れになってきたんだが」
魔法使い「そ、そうね……」
僧侶「旅のお方ぁ~。足を止めて伏せればいいんですよぉ~」フリフリ
勇者「ハッ! そ、そうだ! そうすれば頭上を通りこして――」
爆弾岩「」ズドーン
勇者「目の前に落ちてくるとかお約束やんけ!」
爆弾岩「……」プルプル
勇者「トイレ? う◯こなら我慢しない方が」
爆弾岩「……」ニタァ
勇者「やっぱ我慢して! 平原は公共スペースです! 汚物の垂れ流しはご遠慮してください!」
爆弾岩「」ピカァー
戦士&魔法使い&僧侶「あ、爆発する」
勇者「――ひっ⁉︎」
32: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 14:31:21.88 :WsvInrNpO
お気の毒ですが、勇者は死んでしまいました。
勇者「おおい! 死んでねぇわ! ……あぁ、死ぬかと思った」ボロ
僧侶「旅のお方~、大丈夫ですかぁ~?」トテトテ
戦士「爆弾岩の爆破攻撃を食らって生きてるのかよ」テクテク
魔法使い「こいつ、本当に人間? モンスターなんじゃないの?」
勇者「失礼なことを言うのはやめていただけるかな⁉︎」パンパン
僧侶「回復しますねぇ~」ポワァ
魔法使い「自業自得ってやつね」
戦士「いきなり逃げ出すとは、遊び人を目指すわけだ」
勇者「えへへ」テレテレ
戦士「褒めとらんっちゅーに!」
僧侶「でも、さすが、ゆう……旅のお方ですぅ。擦り傷だけなんてぇ」
魔法使い「擦り傷はあったんだ」
戦士「それぐらいで済んでるのがそもそも異常だ。普通なら死んでる」
勇者「俺はなぁ、こんなところで死ぬわけにはいかねぇんだよ……! 俺は、俺は……!」
戦士「お?」
勇者「立派なニートにならなければいけないのだからっ!!」ビシッ
戦士「死んでいいぞ」
魔法使い「まったく、モンスター退治したってのにかけらの緊張感もないなんて。へんな感じ」
僧侶「退治といえるかは微妙ですけどねぇ」
魔法使い「細かいことはいいでしょ」
テレテレッテッテッテー
戦士はレベルが上がった。
戦士「女神様から祝福のファンファーレが」
魔法「ほら、やっぱり倒したってことになってる」
僧侶「おめでとうございますぅ~」パチパチ
勇者「はぁ、罪のない命を……」
魔法使い「意外ね。あんたからそんなセリフがでてくるなんて。それとも、レベル上がられた嫉妬?」
勇者「違わい。こいつはただここにいただけなのに」
爆弾岩「」チーン
勇者「モンスターにも社会があるとか考えたことねぇの」
戦士「はっ、社会? 知能があるかすら怪しいぞ」
勇者「そりゃ下っ端はそうだろうけどさ」スッ
魔法使い「魔王の手下なんて人間とって脅威でしかないわ! 絶滅させるべきよ!」
僧侶「あの、爆弾岩の飛び散った破片を拾ってなにをなさってるんですか?」
勇者「元いた場所に埋めてやるんだ。墓なんて大層なもんじゃないけど」
お気の毒ですが、勇者は死んでしまいました。
勇者「おおい! 死んでねぇわ! ……あぁ、死ぬかと思った」ボロ
僧侶「旅のお方~、大丈夫ですかぁ~?」トテトテ
戦士「爆弾岩の爆破攻撃を食らって生きてるのかよ」テクテク
魔法使い「こいつ、本当に人間? モンスターなんじゃないの?」
勇者「失礼なことを言うのはやめていただけるかな⁉︎」パンパン
僧侶「回復しますねぇ~」ポワァ
魔法使い「自業自得ってやつね」
戦士「いきなり逃げ出すとは、遊び人を目指すわけだ」
勇者「えへへ」テレテレ
戦士「褒めとらんっちゅーに!」
僧侶「でも、さすが、ゆう……旅のお方ですぅ。擦り傷だけなんてぇ」
魔法使い「擦り傷はあったんだ」
戦士「それぐらいで済んでるのがそもそも異常だ。普通なら死んでる」
勇者「俺はなぁ、こんなところで死ぬわけにはいかねぇんだよ……! 俺は、俺は……!」
戦士「お?」
勇者「立派なニートにならなければいけないのだからっ!!」ビシッ
戦士「死んでいいぞ」
魔法使い「まったく、モンスター退治したってのにかけらの緊張感もないなんて。へんな感じ」
僧侶「退治といえるかは微妙ですけどねぇ」
魔法使い「細かいことはいいでしょ」
テレテレッテッテッテー
戦士はレベルが上がった。
戦士「女神様から祝福のファンファーレが」
魔法「ほら、やっぱり倒したってことになってる」
僧侶「おめでとうございますぅ~」パチパチ
勇者「はぁ、罪のない命を……」
魔法使い「意外ね。あんたからそんなセリフがでてくるなんて。それとも、レベル上がられた嫉妬?」
勇者「違わい。こいつはただここにいただけなのに」
爆弾岩「」チーン
勇者「モンスターにも社会があるとか考えたことねぇの」
戦士「はっ、社会? 知能があるかすら怪しいぞ」
勇者「そりゃ下っ端はそうだろうけどさ」スッ
魔法使い「魔王の手下なんて人間とって脅威でしかないわ! 絶滅させるべきよ!」
僧侶「あの、爆弾岩の飛び散った破片を拾ってなにをなさってるんですか?」
勇者「元いた場所に埋めてやるんだ。墓なんて大層なもんじゃないけど」
33: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 15:20:45.97 :WsvInrNpO
【魔王城 玉座】
魔王「勇者が生まれ落ち、早18年の歳月。そろそろ旅立ちの日を迎えよう」
四天王一同「……」
魔王「にもかかわらず! 未だに詳細が掴めぬとは貴様らはそんなにも無能な集まりであるか!」ブンッ カランカラン
大臣「魔王様、落ち着きなされ。先代のワイングラスを投げては」
魔王「黙れ、黙れ黙れぇいっ!! 貴様達はなにをしておった! 遊んでおったのじゃあるまいな⁉︎」
サキュバス「四天王の一人、淫夢王サキュバスが恐れながら、申し上げます」
魔王「……」クィ
サキュバス「我々には、その、なぜ人間風情ごときをそこまで危険視するのか……いくら女神の加護を得ているとはいえ」
オーガ「同じく! 四天王が一人、巨人王オーガも同意致します! 大魔王様は絶対的存在! なにを恐るることがございましょう!」ズゥゥン
魔王「まだそのような認識でおったのか」
シンリュウ「竜族の長、シンリュウも疑念を抱いております。むしろ、身の程をわきまえていないのは人間達。ご采配をいただければ、すぐにでも国を滅ぼしてまいりましょう」
魔王「余が何度も説明したであろうが」
キングヒドラ「獣族の王! キングヒドラ! 我も理解できませぬ! 勇者が我々と人間の架け橋になるなどとありえぬこと!」
魔王「……古き伝承からあることよ」
サキュバス「し、しかし……!」
魔王「“勇者の冠を擁する者、光と共に、種族を超えた架け橋とならん。汝、争うことなかれ。争いはなにも生まぬ。勇者の作る光の道を闊歩せよ――”」
四天王一同「……」
魔王「なにも力だけが、この世の理ではないのよ。圧倒的な暴力。それは快楽、強さには違いない。だが、それを生みだす原動力がある」
シンリュウ「と、申されますと」
魔王「人間どもの好きな、希望とやらだ」
キングヒドラ「ぐふっ、ぬわっはっはっ! 大魔王! わからぬのはそこよ! 我々を人間と同じ尺度で捉えるとは言語道断!」ジャララ
サキュバス「左様でございます。人など餌同然」
魔王「やはり、わからぬか」
シンリュウ「当然でございましょう。もし、勇者が友好を持ちかけてきても瞬時に灼熱の息で消し炭にしてごらんにいれます」
魔王「……ふぅー」
オーガ「大魔王にはどっしりと構えていただきたい! 我らが種を代表する者であれば、魔王様もまた! 我らの代表なり!」
魔王「(気がついておらなんだか。サキュバス以外は男勝りな言葉使いをしているが、四天王、この私を含んで全員“オンナ”であることに。このままでは……)」
【魔王城 玉座】
魔王「勇者が生まれ落ち、早18年の歳月。そろそろ旅立ちの日を迎えよう」
四天王一同「……」
魔王「にもかかわらず! 未だに詳細が掴めぬとは貴様らはそんなにも無能な集まりであるか!」ブンッ カランカラン
大臣「魔王様、落ち着きなされ。先代のワイングラスを投げては」
魔王「黙れ、黙れ黙れぇいっ!! 貴様達はなにをしておった! 遊んでおったのじゃあるまいな⁉︎」
サキュバス「四天王の一人、淫夢王サキュバスが恐れながら、申し上げます」
魔王「……」クィ
サキュバス「我々には、その、なぜ人間風情ごときをそこまで危険視するのか……いくら女神の加護を得ているとはいえ」
オーガ「同じく! 四天王が一人、巨人王オーガも同意致します! 大魔王様は絶対的存在! なにを恐るることがございましょう!」ズゥゥン
魔王「まだそのような認識でおったのか」
シンリュウ「竜族の長、シンリュウも疑念を抱いております。むしろ、身の程をわきまえていないのは人間達。ご采配をいただければ、すぐにでも国を滅ぼしてまいりましょう」
魔王「余が何度も説明したであろうが」
キングヒドラ「獣族の王! キングヒドラ! 我も理解できませぬ! 勇者が我々と人間の架け橋になるなどとありえぬこと!」
魔王「……古き伝承からあることよ」
サキュバス「し、しかし……!」
魔王「“勇者の冠を擁する者、光と共に、種族を超えた架け橋とならん。汝、争うことなかれ。争いはなにも生まぬ。勇者の作る光の道を闊歩せよ――”」
四天王一同「……」
魔王「なにも力だけが、この世の理ではないのよ。圧倒的な暴力。それは快楽、強さには違いない。だが、それを生みだす原動力がある」
シンリュウ「と、申されますと」
魔王「人間どもの好きな、希望とやらだ」
キングヒドラ「ぐふっ、ぬわっはっはっ! 大魔王! わからぬのはそこよ! 我々を人間と同じ尺度で捉えるとは言語道断!」ジャララ
サキュバス「左様でございます。人など餌同然」
魔王「やはり、わからぬか」
シンリュウ「当然でございましょう。もし、勇者が友好を持ちかけてきても瞬時に灼熱の息で消し炭にしてごらんにいれます」
魔王「……ふぅー」
オーガ「大魔王にはどっしりと構えていただきたい! 我らが種を代表する者であれば、魔王様もまた! 我らの代表なり!」
魔王「(気がついておらなんだか。サキュバス以外は男勝りな言葉使いをしているが、四天王、この私を含んで全員“オンナ”であることに。このままでは……)」
35: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 15:57:15.20 :WsvInrNpO
【再び 平原】
勇者「――これで、よしっと」サク
魔法使い「やっぱり変人よ。モンスターに墓標を作るなんて聞いたことない」
僧侶「綺麗なお花ですねぇ~」
勇者「こいつらだって生きてる。アレフガルドの大地の上で暮らしてる」
魔法使い「綺麗事ね。やらなきゃやられてたわ」
勇者「それ自体は否定しないさ。でも、人間だって殺し合いしないわけじゃないだろ」
戦士「おぉ~い! 一角うさぎがとれたぞぉー!」
魔法使い「……火、おこしましょっか。焚き木から離れて」
僧侶「わぁー。なんだか、キャンプみたいですぅ」
魔法使い「そのまんまでしょ。メラ」ボッ
勇者「飯食ったら出発するからな」
僧侶「あのぉ~また走るんでしょうかぁ?」
魔法使い「馬を用意してくれるとかないの?」
勇者「そんな金あるか」
戦士「よいせっと。火は準備してるな、待ってろよ、今から捌いて」スラッ
勇者「しゃーない。走るには走る。だが……戦士」
戦士「なんだ?」
勇者「僧侶、魔法使い、おぶるならどっちがいい?」
魔法使い「は、はぁっ⁉︎」
僧侶「なぁるほどぉ~」ポン
戦士「どういう意味だ? どこか怪我したのか?」
勇者「いいや、好きだろ? トレーニング。まさかそんな格好と職で非力ってわけじゃないだろし」
戦士「あぁ、鍛錬か! お前もそういう志があったのだな!」
魔法使い「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私は嫌よ! 男に体を密着させるなんて!」
僧侶「私はかまいませんのでぇ~」
魔法使い「ま、まじ……? あんた、曲がりなりにも神職でしょ? 神に捧げてる身体を」
僧侶「お堅いんですねぇ。下心がなければかまいませんよぉ~。あってもいいですけど」
魔法使い「う……」タジ
勇者「だったら決まりだな。今後の方針を発表する! 飯を食って小休憩をしたら、次の街までダッシュ!」
魔法使い「なんで仕切ってんのよ。さっき真っ先に逃げ出したくせに」
戦士「うむうむ。鍛えるのならそれでかまわん」
僧侶「かしこまりましたぁ~」
【再び 平原】
勇者「――これで、よしっと」サク
魔法使い「やっぱり変人よ。モンスターに墓標を作るなんて聞いたことない」
僧侶「綺麗なお花ですねぇ~」
勇者「こいつらだって生きてる。アレフガルドの大地の上で暮らしてる」
魔法使い「綺麗事ね。やらなきゃやられてたわ」
勇者「それ自体は否定しないさ。でも、人間だって殺し合いしないわけじゃないだろ」
戦士「おぉ~い! 一角うさぎがとれたぞぉー!」
魔法使い「……火、おこしましょっか。焚き木から離れて」
僧侶「わぁー。なんだか、キャンプみたいですぅ」
魔法使い「そのまんまでしょ。メラ」ボッ
勇者「飯食ったら出発するからな」
僧侶「あのぉ~また走るんでしょうかぁ?」
魔法使い「馬を用意してくれるとかないの?」
勇者「そんな金あるか」
戦士「よいせっと。火は準備してるな、待ってろよ、今から捌いて」スラッ
勇者「しゃーない。走るには走る。だが……戦士」
戦士「なんだ?」
勇者「僧侶、魔法使い、おぶるならどっちがいい?」
魔法使い「は、はぁっ⁉︎」
僧侶「なぁるほどぉ~」ポン
戦士「どういう意味だ? どこか怪我したのか?」
勇者「いいや、好きだろ? トレーニング。まさかそんな格好と職で非力ってわけじゃないだろし」
戦士「あぁ、鍛錬か! お前もそういう志があったのだな!」
魔法使い「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私は嫌よ! 男に体を密着させるなんて!」
僧侶「私はかまいませんのでぇ~」
魔法使い「ま、まじ……? あんた、曲がりなりにも神職でしょ? 神に捧げてる身体を」
僧侶「お堅いんですねぇ。下心がなければかまいませんよぉ~。あってもいいですけど」
魔法使い「う……」タジ
勇者「だったら決まりだな。今後の方針を発表する! 飯を食って小休憩をしたら、次の街までダッシュ!」
魔法使い「なんで仕切ってんのよ。さっき真っ先に逃げ出したくせに」
戦士「うむうむ。鍛えるのならそれでかまわん」
僧侶「かしこまりましたぁ~」
36: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 17:23:45.67 :WsvInrNpO
戦士「ほっほっ」ザッ ザッ
魔法使い「……」ジトォー
勇者「あの、僧侶さん?」
僧侶「はぁい?」ニコニコ
勇者「なんだが、背中にあたる感触が妙に生々しく感じるんだけども」
僧侶「もちろんですよぉ~。下はなにも着けておりませんのでぇ~」
勇者「な、なにもって、その」
僧侶「なにもはなにも、ですよぉ~」
魔法使い「不潔」
戦士「どしたどしたぁっ! お前が言い出しっぺだろ! 遅れてるぞ!」
勇者「(俺だって男なんだぞ!突起物があるような)」
僧侶「布でこすれてぇ~、たっちゃいました」
勇者「たっちゃいましたって、な、なにが?」
僧侶「乳房の先端についてる、と・こ・ろ」
勇者「……っ!」
戦士「なんだ、あいつ。前かがみになって」
魔法使い「ますます不潔」
勇者「落ち着け、素数だ。素数を数えるんだ」
僧侶「んっ」モゾ
勇者「悩ましげな声をあげるな!」
僧侶「だっ、てぇ。走る度に、こすれてっあんっ」
勇者「だああああっ! なんかもうちくしょおおおおっ!!」ダダダッ
戦士「やればできるじゃないか」
魔法使い「はぁ……あれがもし勇者だったら、この世の終わりだわ」
戦士「ほっほっ」ザッ ザッ
魔法使い「……」ジトォー
勇者「あの、僧侶さん?」
僧侶「はぁい?」ニコニコ
勇者「なんだが、背中にあたる感触が妙に生々しく感じるんだけども」
僧侶「もちろんですよぉ~。下はなにも着けておりませんのでぇ~」
勇者「な、なにもって、その」
僧侶「なにもはなにも、ですよぉ~」
魔法使い「不潔」
戦士「どしたどしたぁっ! お前が言い出しっぺだろ! 遅れてるぞ!」
勇者「(俺だって男なんだぞ!突起物があるような)」
僧侶「布でこすれてぇ~、たっちゃいました」
勇者「たっちゃいましたって、な、なにが?」
僧侶「乳房の先端についてる、と・こ・ろ」
勇者「……っ!」
戦士「なんだ、あいつ。前かがみになって」
魔法使い「ますます不潔」
勇者「落ち着け、素数だ。素数を数えるんだ」
僧侶「んっ」モゾ
勇者「悩ましげな声をあげるな!」
僧侶「だっ、てぇ。走る度に、こすれてっあんっ」
勇者「だああああっ! なんかもうちくしょおおおおっ!!」ダダダッ
戦士「やればできるじゃないか」
魔法使い「はぁ……あれがもし勇者だったら、この世の終わりだわ」
37: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 17:42:35.53 :WsvInrNpO
【国境の街 アルデンテ】
勇者「ぜぇっ、ぜえっ」バタリ
戦士「だらしないなぁ。そんなに疲労するとは」
魔法使い「疲れてるのは別の理由でしょ」
僧侶「はやかったですねぇ~」ニコニコ
魔法使い「(僧侶、おそろしいやつ)」
村人「さぁ、さあ! 今日はお祭りだよぉ~!」
戦士「騒がしいな。まるで祝賀パレードだ」
魔法使い「記念日? 今日じゃないはずだけど」
戦士「おい、なんの祝典だ?」
村人「おお、これは旅の方! あなた達は幸運ですよ!」
僧侶「なにか抽選会でもあるんですかぁ?」
村人「へ? ち、違います! この村に今、かの有名なあのお方がいらっしゃっているんです!」
戦士「かの有名……な?」
魔法使い「あのお方?」
村人「むっふっふぅ~聞いたら驚きますよぉ! あのお方とは!」
僧侶「お方とはぁ?」
村人「魔王討伐に旅立ったばかりの超有名人! 勇者様! その人です!!」バーン
戦士&魔法使い「なんだって(ですって)⁉︎」
僧侶「はぁ、勇者様が、ですか?」
村人「あ、あれ? そちらの僧侶さんは驚かれないんですか?」
僧侶「……」チラ ジー
勇者「もう、だめ。甘い香り、オンナは……」
僧侶「その勇者様はどちらにいらっしゃるんです?」
村人「酒場にて祝賀パーティーを行っていらっしゃいます! 我が村をあげてのお出迎えですからな」
戦士「おい! 魔法使い!」
魔法使い「ええ! 私たちも向かいましょう!」
僧侶「ふぅん……これは、どうなってるんでしょうねぇ~」
【国境の街 アルデンテ】
勇者「ぜぇっ、ぜえっ」バタリ
戦士「だらしないなぁ。そんなに疲労するとは」
魔法使い「疲れてるのは別の理由でしょ」
僧侶「はやかったですねぇ~」ニコニコ
魔法使い「(僧侶、おそろしいやつ)」
村人「さぁ、さあ! 今日はお祭りだよぉ~!」
戦士「騒がしいな。まるで祝賀パレードだ」
魔法使い「記念日? 今日じゃないはずだけど」
戦士「おい、なんの祝典だ?」
村人「おお、これは旅の方! あなた達は幸運ですよ!」
僧侶「なにか抽選会でもあるんですかぁ?」
村人「へ? ち、違います! この村に今、かの有名なあのお方がいらっしゃっているんです!」
戦士「かの有名……な?」
魔法使い「あのお方?」
村人「むっふっふぅ~聞いたら驚きますよぉ! あのお方とは!」
僧侶「お方とはぁ?」
村人「魔王討伐に旅立ったばかりの超有名人! 勇者様! その人です!!」バーン
戦士&魔法使い「なんだって(ですって)⁉︎」
僧侶「はぁ、勇者様が、ですか?」
村人「あ、あれ? そちらの僧侶さんは驚かれないんですか?」
僧侶「……」チラ ジー
勇者「もう、だめ。甘い香り、オンナは……」
僧侶「その勇者様はどちらにいらっしゃるんです?」
村人「酒場にて祝賀パーティーを行っていらっしゃいます! 我が村をあげてのお出迎えですからな」
戦士「おい! 魔法使い!」
魔法使い「ええ! 私たちも向かいましょう!」
僧侶「ふぅん……これは、どうなってるんでしょうねぇ~」
38: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 17:58:35.43 :WsvInrNpO
【アルデンテの村 酒場】
村娘「きゃっ、もう、勇者さまったらぁ」
偽勇者「ぎゃっはっはっ! キミかわいいねぇ!」
村娘「いやん。ねぇ、勇者様ぁ、本当に魔王討伐なんてできるんですかぁ?」
偽勇者「おう! あったりまえよ! この俺にまかせておけばなぁ~んにも心配いらねぇ!」
村娘達「きゃーーっ! 勇者様素敵ぃ~っ!」
魔法使い「……あ、あれが、勇者」
戦士「なんとも、下衆な」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「本当に勇者なの?」
偽勇者「愉快愉快! おらぁ、酒だ酒だ! もっと酒持ってこんかーーーいっ!」
店員「ハイ! ただいま!」
戦士「おい」
店員「お客さん、悪いね。見ての通り忙しくて」
戦士「注文じゃない。あれ、勇者っていう証拠あるのか?」
店員「シーッ! 聞こえますよ! アレなんて言っちゃ!」アタフタ
戦士「聞こえてもかまわん」
店員「まったく。……で、なんですか?」
魔法使い「名を騙ってる偽物じゃないの? ってこと」
店員「めっそうもない! あのお方は本物ですよ!」
僧侶「どうしてそう思われたんですかぁ?」
店員「雷魔法ですよ! 伝承にあるでしょう! 勇者しか使えないと記録にあるあの!」
魔法使い「雷魔法……? まさか、ライデイン?」
店員「えぇ、えぇ。そのまさかです。勇者様は雷魔法を使って木を真っ二つに。それはもう、シュババ~っとやっちゃったんです!」
僧侶「それは、妙ですねぇ」
店員「妙なんてもんじゃありませんよ! まさかこんな国境ハズレの村に立ち寄ってくださるなんて奇跡です! あとでサインをいただかねば!」
戦士「伝説の魔法、ライデイン、か……」
魔法使い「勇者、なの? アレが?」
偽勇者「あーっはっはっはっ! 笑いが止まらねえ!」
【アルデンテの村 酒場】
村娘「きゃっ、もう、勇者さまったらぁ」
偽勇者「ぎゃっはっはっ! キミかわいいねぇ!」
村娘「いやん。ねぇ、勇者様ぁ、本当に魔王討伐なんてできるんですかぁ?」
偽勇者「おう! あったりまえよ! この俺にまかせておけばなぁ~んにも心配いらねぇ!」
村娘達「きゃーーっ! 勇者様素敵ぃ~っ!」
魔法使い「……あ、あれが、勇者」
戦士「なんとも、下衆な」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「本当に勇者なの?」
偽勇者「愉快愉快! おらぁ、酒だ酒だ! もっと酒持ってこんかーーーいっ!」
店員「ハイ! ただいま!」
戦士「おい」
店員「お客さん、悪いね。見ての通り忙しくて」
戦士「注文じゃない。あれ、勇者っていう証拠あるのか?」
店員「シーッ! 聞こえますよ! アレなんて言っちゃ!」アタフタ
戦士「聞こえてもかまわん」
店員「まったく。……で、なんですか?」
魔法使い「名を騙ってる偽物じゃないの? ってこと」
店員「めっそうもない! あのお方は本物ですよ!」
僧侶「どうしてそう思われたんですかぁ?」
店員「雷魔法ですよ! 伝承にあるでしょう! 勇者しか使えないと記録にあるあの!」
魔法使い「雷魔法……? まさか、ライデイン?」
店員「えぇ、えぇ。そのまさかです。勇者様は雷魔法を使って木を真っ二つに。それはもう、シュババ~っとやっちゃったんです!」
僧侶「それは、妙ですねぇ」
店員「妙なんてもんじゃありませんよ! まさかこんな国境ハズレの村に立ち寄ってくださるなんて奇跡です! あとでサインをいただかねば!」
戦士「伝説の魔法、ライデイン、か……」
魔法使い「勇者、なの? アレが?」
偽勇者「あーっはっはっはっ! 笑いが止まらねえ!」
39: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 18:15:43.10 :WsvInrNpO
【アルデンテの街 宿屋】
勇者「おばちゃん。部屋ひとつ」
店主「あら、めずらしい。ひとり旅かい?」
勇者「うん、まぁ、そんなとこ。連れはいるにはいたけどね、どっかいったし。空いてる?」
店主「空いてるよ。勇者様の隣の部屋が」
勇者「勇者? え? この街に来てんの?」ドッキンコドッキンコ
店主「酒場で乱痴気騒ぎさ」
勇者「(てことは、俺のことじゃない! セーフ! セーフ!)」
店主「しっかし、あたしゃにはどうにも勇者に見えないねぇ」
勇者「そうなの?」
店主「勝手なイメージで申し訳ないが、なんてったって勇者だろ? もっと清廉潔白な方かと思ってたよ」
勇者「……年頃のやつだよ。普通の」
店主「そうかもしれないねぇ、若い娘に鼻の下伸ばしてるようじゃ」
勇者「夕食もつけてくれる?」
店主「ああ、追加で2ゴールドになるよ」
勇者「かまわない。メニューはなにかな?」
店主「村の名前を聞いてピンとこないのかい?」
勇者「村の……あぁ、ってことは」
店主「そう、パスタさね」ニコ
【アルデンテの街 宿屋】
勇者「おばちゃん。部屋ひとつ」
店主「あら、めずらしい。ひとり旅かい?」
勇者「うん、まぁ、そんなとこ。連れはいるにはいたけどね、どっかいったし。空いてる?」
店主「空いてるよ。勇者様の隣の部屋が」
勇者「勇者? え? この街に来てんの?」ドッキンコドッキンコ
店主「酒場で乱痴気騒ぎさ」
勇者「(てことは、俺のことじゃない! セーフ! セーフ!)」
店主「しっかし、あたしゃにはどうにも勇者に見えないねぇ」
勇者「そうなの?」
店主「勝手なイメージで申し訳ないが、なんてったって勇者だろ? もっと清廉潔白な方かと思ってたよ」
勇者「……年頃のやつだよ。普通の」
店主「そうかもしれないねぇ、若い娘に鼻の下伸ばしてるようじゃ」
勇者「夕食もつけてくれる?」
店主「ああ、追加で2ゴールドになるよ」
勇者「かまわない。メニューはなにかな?」
店主「村の名前を聞いてピンとこないのかい?」
勇者「村の……あぁ、ってことは」
店主「そう、パスタさね」ニコ
40: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 18:37:04.30 :WsvInrNpO
【再び 酒場】
偽勇者「キミキミ! キミ達!」チョイチョイ
魔法使い「うげっ、私達を見てない?」
戦士「そのようだな」
僧侶「……」スタスタ
魔法使い「あっ、そ、僧侶」
偽勇者「めっちゃくちゃかわいいねぇ! キミ、その格好は神官見習いだよね? 僧侶?」
僧侶「はい~。はじめまして、勇者様」
偽勇者「挨拶はいいからいいから、隣座ってよ! ねっ! おい、お前は邪魔!」ドンッ
村娘「きゃっ、そ、そんな。さっきまで」
偽勇者「うるせぇな! どつくぞコラァ!」
魔法使い「あいつ……!」
戦士「待て。こらえろ」
村娘「ひっ、す、すみません」ササッ
僧侶「……」
村娘「ど、どうぞ。お座りください」
偽勇者「勇者がキミの為に席をあけたよぉ! ささっ、座って、座って」
僧侶「失礼いたします~」スッ
偽勇者「いや、マジほんとかわいいね! 田舎の芋娘と比べたら月とスッポンだわ!」
僧侶「ありがとうございますぅ~」
偽勇者「料理はまだかよ!」バンッ
店員「ただいまお持ちいたします!」アタフタ
偽勇者「俺ってば勇者じゃん? キミならパーティー組んでもいいよぉ? あっちの子も連れ? もしかしてパーティー組んでる?」
僧侶「すみません、お手を拝借」
偽勇者「おっほっ! 積極的なんだねぇ~、いいよいいよ。なに? 手相でも見てくれるの?」
僧侶「……」ポワァ
偽勇者「重ねるだけ? もっと指を絡めてもいいんだよぉ?」
僧侶「……よく、わかりました」スッ
偽勇者「えっ、えっ? 急に立ち上がってどうしちゃったの?」
僧侶「いえ、私は神殿に帰らなければならないので。失礼いたします~」
偽勇者「……おいっ!」ガシッ
僧侶「はい?」
偽勇者「俺は勇者なんだぜ? お酌のひとつぐらいしてけよ」
僧侶「すみません、あなたには無理ですぅ~」ツネリ
偽勇者「いっつ!」
僧侶「女性からではないと、身体に触れてはなりませんよ」
偽勇者「こ、この野郎……!」ブンッ
戦士「そこまでだ」チャキッ
偽勇者「う……っ!」
戦士「女神様に仕える神職に対する暴力。勇者であっても見過ごせん」
偽勇者「貴様ら! 勇者に向かって!」
戦士「我々はこのまま酒場を後にする。これで手打ちとせよ」
【再び 酒場】
偽勇者「キミキミ! キミ達!」チョイチョイ
魔法使い「うげっ、私達を見てない?」
戦士「そのようだな」
僧侶「……」スタスタ
魔法使い「あっ、そ、僧侶」
偽勇者「めっちゃくちゃかわいいねぇ! キミ、その格好は神官見習いだよね? 僧侶?」
僧侶「はい~。はじめまして、勇者様」
偽勇者「挨拶はいいからいいから、隣座ってよ! ねっ! おい、お前は邪魔!」ドンッ
村娘「きゃっ、そ、そんな。さっきまで」
偽勇者「うるせぇな! どつくぞコラァ!」
魔法使い「あいつ……!」
戦士「待て。こらえろ」
村娘「ひっ、す、すみません」ササッ
僧侶「……」
村娘「ど、どうぞ。お座りください」
偽勇者「勇者がキミの為に席をあけたよぉ! ささっ、座って、座って」
僧侶「失礼いたします~」スッ
偽勇者「いや、マジほんとかわいいね! 田舎の芋娘と比べたら月とスッポンだわ!」
僧侶「ありがとうございますぅ~」
偽勇者「料理はまだかよ!」バンッ
店員「ただいまお持ちいたします!」アタフタ
偽勇者「俺ってば勇者じゃん? キミならパーティー組んでもいいよぉ? あっちの子も連れ? もしかしてパーティー組んでる?」
僧侶「すみません、お手を拝借」
偽勇者「おっほっ! 積極的なんだねぇ~、いいよいいよ。なに? 手相でも見てくれるの?」
僧侶「……」ポワァ
偽勇者「重ねるだけ? もっと指を絡めてもいいんだよぉ?」
僧侶「……よく、わかりました」スッ
偽勇者「えっ、えっ? 急に立ち上がってどうしちゃったの?」
僧侶「いえ、私は神殿に帰らなければならないので。失礼いたします~」
偽勇者「……おいっ!」ガシッ
僧侶「はい?」
偽勇者「俺は勇者なんだぜ? お酌のひとつぐらいしてけよ」
僧侶「すみません、あなたには無理ですぅ~」ツネリ
偽勇者「いっつ!」
僧侶「女性からではないと、身体に触れてはなりませんよ」
偽勇者「こ、この野郎……!」ブンッ
戦士「そこまでだ」チャキッ
偽勇者「う……っ!」
戦士「女神様に仕える神職に対する暴力。勇者であっても見過ごせん」
偽勇者「貴様ら! 勇者に向かって!」
戦士「我々はこのまま酒場を後にする。これで手打ちとせよ」
42: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 18:52:38.86 :WsvInrNpO
【宿屋 ロビー】
魔法使い「ひやひやしちゃったじゃない!」
戦士「まったくだぞ。いくらなんでもあれは。相手を選べ」
僧侶「すみません~」
魔法使い「……ねぇ、僧侶。さっきの手を重ねるのって、本当に旅の祈り?」
僧侶「そうですよぉ」
戦士「本当か? なにかを確かめていたんじゃないのか?」
僧侶「いえいえ~。それはそうと、もう一人の旅のお方はどちらにぃ~」
店主「いらっしゃい。あんたらも部屋かい?」
僧侶「はい~。空いてますかぁ?」
店主「うちは団体部屋しか置いてないんだ。今日は相部屋になっちまうよ」
魔法使い「そ、そんなぁ」
店主「すまないねぇ、なにしろ辺鄙な田舎村だろ? 個室を用意しておくと採算がなぁ」
戦士「女将。聞くが、酒場にいる勇者とやらも?」
店主「あぁ、当宿を利用してもらってるさね」
魔法使い「ええ⁉︎ てことは、あいつと相部屋⁉︎」
店主「勇者様は一部屋貸し切りだよ。そうご希望なんでね。大方、村娘を連れ込もうとしてるんだろうが」
魔法使い「ホッ」
戦士「もう一つのところになるのか?」
店主「ああ、さっき、チェックインした青年だよ。あちらも旅の途中みたいだが」
僧侶「そちらでかまいません~」ニコニコ
店主「いいのかい? 男にしちゃかわいい顔してたが」
魔法使い「そいつって、まさか」
【宿屋 ロビー】
魔法使い「ひやひやしちゃったじゃない!」
戦士「まったくだぞ。いくらなんでもあれは。相手を選べ」
僧侶「すみません~」
魔法使い「……ねぇ、僧侶。さっきの手を重ねるのって、本当に旅の祈り?」
僧侶「そうですよぉ」
戦士「本当か? なにかを確かめていたんじゃないのか?」
僧侶「いえいえ~。それはそうと、もう一人の旅のお方はどちらにぃ~」
店主「いらっしゃい。あんたらも部屋かい?」
僧侶「はい~。空いてますかぁ?」
店主「うちは団体部屋しか置いてないんだ。今日は相部屋になっちまうよ」
魔法使い「そ、そんなぁ」
店主「すまないねぇ、なにしろ辺鄙な田舎村だろ? 個室を用意しておくと採算がなぁ」
戦士「女将。聞くが、酒場にいる勇者とやらも?」
店主「あぁ、当宿を利用してもらってるさね」
魔法使い「ええ⁉︎ てことは、あいつと相部屋⁉︎」
店主「勇者様は一部屋貸し切りだよ。そうご希望なんでね。大方、村娘を連れ込もうとしてるんだろうが」
魔法使い「ホッ」
戦士「もう一つのところになるのか?」
店主「ああ、さっき、チェックインした青年だよ。あちらも旅の途中みたいだが」
僧侶「そちらでかまいません~」ニコニコ
店主「いいのかい? 男にしちゃかわいい顔してたが」
魔法使い「そいつって、まさか」
45: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 19:51:10.09 :WsvInrNpO
【宿屋 部屋】
魔法使い「変な気起こしたら、殺すわよ」キッ
勇者「なんでいきなり物騒な目つきされなくちゃいけないんですかねぇ!」
魔法使い「……ふん」プイ
戦士「まぁ、こいつは無害だろう。そう心配するな」カチャカチャ
僧侶「旅のお方は勇者様を観に行かなくてよいのですかぁ?」
勇者「興味ないから」
魔法使い「あ~ぁ」ボフッ
戦士「ライデインを放ったという話は本当なのだろうか?」
勇者「……」ピクッ
魔法使い「木を真っ二つにしたんでしょ? なら、本当なんじゃない?」
僧侶「なにかのまやかしかも~」
勇者「ちょい待ち。ライデインって言った? 今?」
戦士「ああ。この村に到着した時に披露したらしい」
勇者「(子供の頃、遊びで撃ってめちゃくちゃ叱られたなぁ……)」シミジミ
僧侶「お二人は勇者という確信がもてないんですよねぇ?」
魔法使い「むしろ、そうじゃないであってほしい?」
戦士「うーむ」
僧侶「ならば、簡単ですよぉ。勇者には印が刻まれてますからぁ」
勇者「……!」ギックゥ
魔法使い「そうなのっ⁉︎」ガバッ
戦士「なぜもっとはやく言わないんだ!」
僧侶「聞かれなかったものでぇ」
魔法使い「それで、印って⁉︎」
僧侶「“聖痕”といわれるものですねぇ~。身体に刻まれているんですぅ」
戦士「そんなものが……」
魔法使い「それって、もしかして手にあるとか」
僧侶「いえいえ~。目に見える部分ではありません~」
魔法使い「服の下ってこと?」
僧侶「はい~。お尻、ですよぉ~」
戦士「し、シリ。なんでまた、そんなところに」
僧侶「色仕掛けでもして脱がせればすぐにわかると思うんですけどぉ~。旅の方もそう思いません~?」
勇者「アア、ソウダネ」
魔法使い「色仕掛け……あんなやつに……」
戦士「あたしには無理だな」
魔法使い「想像してみたけど、私もパス。生理的に無理」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「でも、聖痕なんてあったんだ」
勇者「……」ドッキンコ ドッキンコ
僧侶「ここって、お風呂はどうなってるんでしょうねぇ~」
【宿屋 部屋】
魔法使い「変な気起こしたら、殺すわよ」キッ
勇者「なんでいきなり物騒な目つきされなくちゃいけないんですかねぇ!」
魔法使い「……ふん」プイ
戦士「まぁ、こいつは無害だろう。そう心配するな」カチャカチャ
僧侶「旅のお方は勇者様を観に行かなくてよいのですかぁ?」
勇者「興味ないから」
魔法使い「あ~ぁ」ボフッ
戦士「ライデインを放ったという話は本当なのだろうか?」
勇者「……」ピクッ
魔法使い「木を真っ二つにしたんでしょ? なら、本当なんじゃない?」
僧侶「なにかのまやかしかも~」
勇者「ちょい待ち。ライデインって言った? 今?」
戦士「ああ。この村に到着した時に披露したらしい」
勇者「(子供の頃、遊びで撃ってめちゃくちゃ叱られたなぁ……)」シミジミ
僧侶「お二人は勇者という確信がもてないんですよねぇ?」
魔法使い「むしろ、そうじゃないであってほしい?」
戦士「うーむ」
僧侶「ならば、簡単ですよぉ。勇者には印が刻まれてますからぁ」
勇者「……!」ギックゥ
魔法使い「そうなのっ⁉︎」ガバッ
戦士「なぜもっとはやく言わないんだ!」
僧侶「聞かれなかったものでぇ」
魔法使い「それで、印って⁉︎」
僧侶「“聖痕”といわれるものですねぇ~。身体に刻まれているんですぅ」
戦士「そんなものが……」
魔法使い「それって、もしかして手にあるとか」
僧侶「いえいえ~。目に見える部分ではありません~」
魔法使い「服の下ってこと?」
僧侶「はい~。お尻、ですよぉ~」
戦士「し、シリ。なんでまた、そんなところに」
僧侶「色仕掛けでもして脱がせればすぐにわかると思うんですけどぉ~。旅の方もそう思いません~?」
勇者「アア、ソウダネ」
魔法使い「色仕掛け……あんなやつに……」
戦士「あたしには無理だな」
魔法使い「想像してみたけど、私もパス。生理的に無理」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「でも、聖痕なんてあったんだ」
勇者「……」ドッキンコ ドッキンコ
僧侶「ここって、お風呂はどうなってるんでしょうねぇ~」
46: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 20:11:46.48 :WsvInrNpO
【数時間後 宿屋 部屋】
魔法使い「あー、いいお湯だった」ホカホカ
戦士「サッパリしたな」
僧侶「戦士さんって、スタイルいいですよねぇ」
戦士「あたしは鍛えてるだけだよ。僧侶だって胸大きかったじゃないか」
勇者「お、おう、それじゃ次は俺が」
僧侶「旅のお方~」
勇者「な、なんでしょ?」
僧侶「タオル、お忘れですよぉ。大衆浴場になってるので、大事な部分は隠さないとぉ」ニコニコ
戦士「……? 男湯と女湯は別れてたろ?」
勇者「し、失礼します!」パサッ ダダダッ
魔法使い「ねぇ、僧侶。やっぱりあいつに対して扱い違うわよ。どう見たっておかしい」
僧侶「くすくす。だって、必死なのがかわいくてぇ~」
戦士「か、かわいい? アレがか? まぁ、悪い顔立ちはしていないと思うが」
僧侶「そうじゃありませんよぉ~。イタズラを見つかった子供みたいな反応が、です」
魔法使い「遊んでるの?」
僧侶「そうかもしれませんねぇ」
魔法使い「そういう感じ? 私、てっきり」
僧侶「……あの人が勇者だと思った?」
戦士&魔法使い「……っ!」
僧侶「だとしたら、私たちに隠す理由はなんなんでしょうねぇ~」
戦士「そこがなぁ」
魔法使い「わからないのよねぇ」
僧侶「転職する為にダーマを目指してるって話ですしぃ~」
戦士「勇者は転職なんぞできん」
魔法使い「それを知らないってわけでもないだろうしねぇ」
僧侶「勇者とはぁ、職業ではありません~。なりたくてなれるものではないのですからぁ」
戦士「この大地に立つ者の光の存在」
魔法使い「伝説の女神の代弁者」
僧侶「酒場にいた方はそうは見えませんけどねぇ~」
魔法使い「風呂にいったやつも同じでしょ。そりゃ、少しは、マシだけど。モンスターの墓作ったり変なやつよ」
【数時間後 宿屋 部屋】
魔法使い「あー、いいお湯だった」ホカホカ
戦士「サッパリしたな」
僧侶「戦士さんって、スタイルいいですよねぇ」
戦士「あたしは鍛えてるだけだよ。僧侶だって胸大きかったじゃないか」
勇者「お、おう、それじゃ次は俺が」
僧侶「旅のお方~」
勇者「な、なんでしょ?」
僧侶「タオル、お忘れですよぉ。大衆浴場になってるので、大事な部分は隠さないとぉ」ニコニコ
戦士「……? 男湯と女湯は別れてたろ?」
勇者「し、失礼します!」パサッ ダダダッ
魔法使い「ねぇ、僧侶。やっぱりあいつに対して扱い違うわよ。どう見たっておかしい」
僧侶「くすくす。だって、必死なのがかわいくてぇ~」
戦士「か、かわいい? アレがか? まぁ、悪い顔立ちはしていないと思うが」
僧侶「そうじゃありませんよぉ~。イタズラを見つかった子供みたいな反応が、です」
魔法使い「遊んでるの?」
僧侶「そうかもしれませんねぇ」
魔法使い「そういう感じ? 私、てっきり」
僧侶「……あの人が勇者だと思った?」
戦士&魔法使い「……っ!」
僧侶「だとしたら、私たちに隠す理由はなんなんでしょうねぇ~」
戦士「そこがなぁ」
魔法使い「わからないのよねぇ」
僧侶「転職する為にダーマを目指してるって話ですしぃ~」
戦士「勇者は転職なんぞできん」
魔法使い「それを知らないってわけでもないだろうしねぇ」
僧侶「勇者とはぁ、職業ではありません~。なりたくてなれるものではないのですからぁ」
戦士「この大地に立つ者の光の存在」
魔法使い「伝説の女神の代弁者」
僧侶「酒場にいた方はそうは見えませんけどねぇ~」
魔法使い「風呂にいったやつも同じでしょ。そりゃ、少しは、マシだけど。モンスターの墓作ったり変なやつよ」
47: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 20:29:59.60 :WsvInrNpO
【宿屋 大衆浴場】
勇者「(おかしい。……実はバレてるんじゃなかろうか?)」カポーン
老人「おおい、にいちゃんや」
勇者「(いや、でも、勇者を確認しにいったって話だし。まだバレてはいないはず)」
老人「聞こえとらんのかの? にいちゃんや~い」
勇者「(いやいや、でも、それにしたって、特に……あの、僧侶の態度は……)」
老人「小僧ッ!!」クワッ
勇者「わっ! は、はいっ!」ビクゥ
老人「その若さでぼけっとしとるなや。ずっと呼んでおったじゃろうか」
勇者「あ、す、すまん。考え事してて。どしたのよ、じいちゃん」
老人「どうしたもこうしたもあるかい。大衆浴場は初めてかい?」
勇者「そうだけど」
老人「湯船にタオルは厳禁じゃ。汚いじゃろうが」
勇者「あ、そうなの?」
老人「あったりまえじゃて。それで身体をゴシゴシしとったろ」
勇者「でも、丸見えになっちゃうし」
老人「男同士でなんじゃ! きしょ! きっしょ!」
勇者「若者言葉使うんすね」
老人「とにかくじゃ、それは傍に置いとくんじゃよ。ルールっでもんがある」
勇者「すんません」ザパァ
老人「わかればよろしい」
勇者「じいちゃんもここに泊まってんの?」チャポン
老人「ここは浴場だけ村の共有スペースで解放されとるんじゃよ」
勇者「へー」
老人「有料じゃがな。一回2ゴールド」
勇者「宿屋利用者は宿泊料金に含まれると、いい村だね」
老人「なぁ~んにもない田舎も田舎じゃがな。通り道ぐらいしか利用はせんような」
勇者「でも、嫌いじゃないよ。俺は」
老人「ほっ⁉︎ ほっほっほっ! 変わった若者じゃの!」
勇者「そうかな?」
老人「若者は活気と娯楽をこのむじゃろ。住んでるのは八割方、よぼよぼのじいさんやばあさんじゃ」
勇者「……そういうもんか」
【宿屋 大衆浴場】
勇者「(おかしい。……実はバレてるんじゃなかろうか?)」カポーン
老人「おおい、にいちゃんや」
勇者「(いや、でも、勇者を確認しにいったって話だし。まだバレてはいないはず)」
老人「聞こえとらんのかの? にいちゃんや~い」
勇者「(いやいや、でも、それにしたって、特に……あの、僧侶の態度は……)」
老人「小僧ッ!!」クワッ
勇者「わっ! は、はいっ!」ビクゥ
老人「その若さでぼけっとしとるなや。ずっと呼んでおったじゃろうか」
勇者「あ、す、すまん。考え事してて。どしたのよ、じいちゃん」
老人「どうしたもこうしたもあるかい。大衆浴場は初めてかい?」
勇者「そうだけど」
老人「湯船にタオルは厳禁じゃ。汚いじゃろうが」
勇者「あ、そうなの?」
老人「あったりまえじゃて。それで身体をゴシゴシしとったろ」
勇者「でも、丸見えになっちゃうし」
老人「男同士でなんじゃ! きしょ! きっしょ!」
勇者「若者言葉使うんすね」
老人「とにかくじゃ、それは傍に置いとくんじゃよ。ルールっでもんがある」
勇者「すんません」ザパァ
老人「わかればよろしい」
勇者「じいちゃんもここに泊まってんの?」チャポン
老人「ここは浴場だけ村の共有スペースで解放されとるんじゃよ」
勇者「へー」
老人「有料じゃがな。一回2ゴールド」
勇者「宿屋利用者は宿泊料金に含まれると、いい村だね」
老人「なぁ~んにもない田舎も田舎じゃがな。通り道ぐらいしか利用はせんような」
勇者「でも、嫌いじゃないよ。俺は」
老人「ほっ⁉︎ ほっほっほっ! 変わった若者じゃの!」
勇者「そうかな?」
老人「若者は活気と娯楽をこのむじゃろ。住んでるのは八割方、よぼよぼのじいさんやばあさんじゃ」
勇者「……そういうもんか」
48: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 20:45:10.50 :WsvInrNpO
偽勇者「おらぁっ! ……ヒック」バァンッ
勇者「なんだ?」
老人「おお、勇者様ではございませぬか」
勇者「あれが?」
偽勇者「うぃ~っ、ヒック」ヨテヨテ
老人「いかん、かなり酔っ払っておる」ザパァ
偽勇者「あー、飲みすぎた。しっかし、村娘とこのあと……ぐふっぐふふっ」
老人「勇者様。深酔いにお風呂は危険でございますじゃ」トテトテ
偽勇者「あん?……ック」
老人「しばらく外で休んでからの方が」
偽勇者「うるせぇっ!」ブンッ
老人「な、何を……!」
偽勇者「俺は勇者なんだぞぉっ! ほっとけってんだ! じじいコラァ!」
老人「ひ、ひぃ」ドサッ
偽勇者「けっ、よぼよぼのち◯こ見せてんじゃねえっっての」
勇者「……おい」ザパァ
偽勇者「あ?」
勇者「老人は労わるもんだ。親に教わらなかったのか?」
偽勇者「なんだァ? テメエ? 勇者に文句あるっての」
勇者「立派だろうが。シワシワのどこが悪い」
老人「よい、よい。若者よ。ワシのことなぞ」
偽勇者「あ、お前も逆らう気か? 勇者であるこの俺様にィ!」
勇者「逆らう? 勘違いすんなよ。俺はハナからお前のことなんか眼中にない」バチ バチバチ
偽勇者「んだとぉ!」
勇者「じいちゃん、浴室から出ろ」
老人「し、しかし……」
勇者「ここからは俺とこいつの問題だ。余計な口出して悪かった」
老人「……! ま、待っとれ! すぐに人を呼んできてやる!」ワタワタ
偽勇者「おらぁっ! ……ヒック」バァンッ
勇者「なんだ?」
老人「おお、勇者様ではございませぬか」
勇者「あれが?」
偽勇者「うぃ~っ、ヒック」ヨテヨテ
老人「いかん、かなり酔っ払っておる」ザパァ
偽勇者「あー、飲みすぎた。しっかし、村娘とこのあと……ぐふっぐふふっ」
老人「勇者様。深酔いにお風呂は危険でございますじゃ」トテトテ
偽勇者「あん?……ック」
老人「しばらく外で休んでからの方が」
偽勇者「うるせぇっ!」ブンッ
老人「な、何を……!」
偽勇者「俺は勇者なんだぞぉっ! ほっとけってんだ! じじいコラァ!」
老人「ひ、ひぃ」ドサッ
偽勇者「けっ、よぼよぼのち◯こ見せてんじゃねえっっての」
勇者「……おい」ザパァ
偽勇者「あ?」
勇者「老人は労わるもんだ。親に教わらなかったのか?」
偽勇者「なんだァ? テメエ? 勇者に文句あるっての」
勇者「立派だろうが。シワシワのどこが悪い」
老人「よい、よい。若者よ。ワシのことなぞ」
偽勇者「あ、お前も逆らう気か? 勇者であるこの俺様にィ!」
勇者「逆らう? 勘違いすんなよ。俺はハナからお前のことなんか眼中にない」バチ バチバチ
偽勇者「んだとぉ!」
勇者「じいちゃん、浴室から出ろ」
老人「し、しかし……」
勇者「ここからは俺とこいつの問題だ。余計な口出して悪かった」
老人「……! ま、待っとれ! すぐに人を呼んできてやる!」ワタワタ
49: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 21:01:19.40 :WsvInrNpO
偽勇者「ヒック……味方がいっちまったぞぉ? 味方っていってもじじいだが」
勇者「“勇者”」
偽勇者「あ?」
勇者「勇ある者。聞こえはいいよな。人間の希望。魔王を討ち亡ぼす。まさに英雄ってわけだ」
偽勇者「そうだ! 俺は偉いんだ!」
勇者「履き違えるな。勇者は偉くなんかねぇ、ただの、孤独だ」
偽勇者「はっ、あっはっはっはっ! なに言ってるんだぁ! 勇者の力があれば金も! 女も! 自由だ!」
勇者「……」
偽勇者「俺こそが勇者なんだ! お前もひれ伏せェ!」
勇者「少し羨ましい。そう開き直って考えられるお前が」
偽勇者「ヒック」
勇者「ひとつ! 勇者家家訓! 人に迷惑かけるときは、自分が迷惑と思うことはやっちゃいけません!」バチバチ
偽勇者「あっ、な、なんだ。痺れてきた」
勇者「ふたつ! 勇者家家訓! 人に迷惑かけるときは、まず自分に置き換えて考えなさい!」ピシャンッ
偽勇者「あばばばばばっ、痺れ」
勇者「みっつ! 勇者家家訓! 勇者たるもの、老人には優しくしなさい! ……目一杯力加減してやる、明日の朝までオネンネだろうが、勘弁しろよ」
偽勇者「ひっ、ま、まさか、その魔法は」
勇者「──……魔力を雷に変えて、射貫け。ライデイン」
偽勇者「ヒック……味方がいっちまったぞぉ? 味方っていってもじじいだが」
勇者「“勇者”」
偽勇者「あ?」
勇者「勇ある者。聞こえはいいよな。人間の希望。魔王を討ち亡ぼす。まさに英雄ってわけだ」
偽勇者「そうだ! 俺は偉いんだ!」
勇者「履き違えるな。勇者は偉くなんかねぇ、ただの、孤独だ」
偽勇者「はっ、あっはっはっはっ! なに言ってるんだぁ! 勇者の力があれば金も! 女も! 自由だ!」
勇者「……」
偽勇者「俺こそが勇者なんだ! お前もひれ伏せェ!」
勇者「少し羨ましい。そう開き直って考えられるお前が」
偽勇者「ヒック」
勇者「ひとつ! 勇者家家訓! 人に迷惑かけるときは、自分が迷惑と思うことはやっちゃいけません!」バチバチ
偽勇者「あっ、な、なんだ。痺れてきた」
勇者「ふたつ! 勇者家家訓! 人に迷惑かけるときは、まず自分に置き換えて考えなさい!」ピシャンッ
偽勇者「あばばばばばっ、痺れ」
勇者「みっつ! 勇者家家訓! 勇者たるもの、老人には優しくしなさい! ……目一杯力加減してやる、明日の朝までオネンネだろうが、勘弁しろよ」
偽勇者「ひっ、ま、まさか、その魔法は」
勇者「──……魔力を雷に変えて、射貫け。ライデイン」
50: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 21:17:39.40 :WsvInrNpO
【宿屋 部屋】
魔法使い「な、なに?」ズゥゥゥーーン
戦士「地震か?」
僧侶「どうやら、勇者ごっこは終わりみたいですねぇ」
魔法使い「ごっこ?」
僧侶「なにやら面白そうですしぃ、私たちも行ってみませんかぁ?」
戦士「地震じゃないのか?」
魔法使い「魔力の波動を微かに感じる……これって」
僧侶「さぁてぇ~?」
店主「あんた達!大丈夫かい⁉︎」バタン
戦士「女将。こちらは別になんともないが」
店主「それがもう、大騒ぎさ! 浴場の常連客にじいさまがいるんだけどね!」
魔法使い「落ち着いて」
店主「年甲斐もなく取り乱しちゃって。あの勇者! ニセモノだって話だよ!」
戦士「なんと!」
魔法使い「……」
店主「相当酔っ払って脱衣所に落としてたんだって! ツルギを!」
僧侶「ツルギというとぉ?」
店主「なんでも魔法剣ってやつがあるらしいじゃないのさ! 爺さまでさえ使えば雷を落とせるなんて!」
戦士「それはそれで驚きだな。レア中のレアだぞ」
店主「どこで拾ってきたんだろうねぇ。胡散臭いと思ってたんだよ、あたしゃ」
魔法使い「じゃあ、さっきの振動はその剣を振ったもの?」
店主「あぁ、そうだった! 浴場に急がなきゃ!」ドテドテ
戦士「そういや、浴場にはもう一人いたな」
魔法使い「……そのようね」
【宿屋 部屋】
魔法使い「な、なに?」ズゥゥゥーーン
戦士「地震か?」
僧侶「どうやら、勇者ごっこは終わりみたいですねぇ」
魔法使い「ごっこ?」
僧侶「なにやら面白そうですしぃ、私たちも行ってみませんかぁ?」
戦士「地震じゃないのか?」
魔法使い「魔力の波動を微かに感じる……これって」
僧侶「さぁてぇ~?」
店主「あんた達!大丈夫かい⁉︎」バタン
戦士「女将。こちらは別になんともないが」
店主「それがもう、大騒ぎさ! 浴場の常連客にじいさまがいるんだけどね!」
魔法使い「落ち着いて」
店主「年甲斐もなく取り乱しちゃって。あの勇者! ニセモノだって話だよ!」
戦士「なんと!」
魔法使い「……」
店主「相当酔っ払って脱衣所に落としてたんだって! ツルギを!」
僧侶「ツルギというとぉ?」
店主「なんでも魔法剣ってやつがあるらしいじゃないのさ! 爺さまでさえ使えば雷を落とせるなんて!」
戦士「それはそれで驚きだな。レア中のレアだぞ」
店主「どこで拾ってきたんだろうねぇ。胡散臭いと思ってたんだよ、あたしゃ」
魔法使い「じゃあ、さっきの振動はその剣を振ったもの?」
店主「あぁ、そうだった! 浴場に急がなきゃ!」ドテドテ
戦士「そういや、浴場にはもう一人いたな」
魔法使い「……そのようね」
51: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 21:46:57.90 :WsvInrNpO
【浴場 男湯】
老人「まったく、なんというやつじゃ!」
店員「どうしてくれるんだ! うちの酒場で飲み食いした分!」
村娘「勇者様じゃなかったなんてぇ~。あ~ん、もうお嫁にいけなぁ~い」
偽勇者「」ドサッ
店主「とんでもない詐欺師だよ! 明日の朝一番で役所に突き出さないと!」
戦士「おおーい、女将」
店主「あら、あんた達も来たのかい」
魔法使い「もう一人いなかった?」
店主「あぁ、気絶してるよ」
僧侶「気絶? なにがあったんでしょお?」
老人「あちらの若者にはすまんことをした」
戦士「ははーん、剣を振ったら巻き添えくらったと」
老人「脱衣所で偶然見つけてのぉ。これまた、たまたま振った先の直線上に二人がおったらしい」
魔法使い「運のないやつ……」
僧侶「回復魔法使えますのでぇ、もう一人のお方はどちらに?」
店主「そっち。裸だからタオル被せておいたけど」
僧侶「あっ」トテトテ
勇者「う、うぅーん。嫌や。ヒジキは嫌いなんや。うーん」
戦士「どんな夢見てんだ」
魔法使い「気絶っていうか、ただ寝てるだけなんじゃないの」
僧侶「お目覚めください、勇者様」ボソ ポワァ
勇者「……あ、あれ? ここは?」
戦士「更衣室だ」
勇者「きゃあ! なによあんた達!」ガバッ
戦士「男のくせに気色悪い声だすな」
魔法使い「そんだけ悪ふざけできれば心配なさそーね」
勇者「うー、いてて。さっきのはちょっとだけ痛かった」ムク
戦士「古より伝わる秘宝剣。稲妻のつるぎ。話には聞いていたが、はじめてお目にかかる。爆弾岩といい死んでないとはたいしたものだ」
勇者「(ニセモノが倒れた後で、直撃してなくてよかったな。あいつだったらたぶん死んでた)」
魔法使い「あの剣も王様に献上するのかしら」
戦士「おそらく。野放しにするには、あまりに危険だ」
僧侶「旅のお方も鍛えてらっしゃるんですねぇ」
勇者「男だからって見ていいもんではないぞ」
魔法使い「……ねぇ、お尻、見せてくれない?」
勇者「断る」
戦士「いやな? まさかとは思うが、確認は必要だろう?」
勇者「なぜ近寄る」
魔法使い「痛くしないから」ジリ ジリ
勇者「嫌だと言ってるだろうが」
【浴場 男湯】
老人「まったく、なんというやつじゃ!」
店員「どうしてくれるんだ! うちの酒場で飲み食いした分!」
村娘「勇者様じゃなかったなんてぇ~。あ~ん、もうお嫁にいけなぁ~い」
偽勇者「」ドサッ
店主「とんでもない詐欺師だよ! 明日の朝一番で役所に突き出さないと!」
戦士「おおーい、女将」
店主「あら、あんた達も来たのかい」
魔法使い「もう一人いなかった?」
店主「あぁ、気絶してるよ」
僧侶「気絶? なにがあったんでしょお?」
老人「あちらの若者にはすまんことをした」
戦士「ははーん、剣を振ったら巻き添えくらったと」
老人「脱衣所で偶然見つけてのぉ。これまた、たまたま振った先の直線上に二人がおったらしい」
魔法使い「運のないやつ……」
僧侶「回復魔法使えますのでぇ、もう一人のお方はどちらに?」
店主「そっち。裸だからタオル被せておいたけど」
僧侶「あっ」トテトテ
勇者「う、うぅーん。嫌や。ヒジキは嫌いなんや。うーん」
戦士「どんな夢見てんだ」
魔法使い「気絶っていうか、ただ寝てるだけなんじゃないの」
僧侶「お目覚めください、勇者様」ボソ ポワァ
勇者「……あ、あれ? ここは?」
戦士「更衣室だ」
勇者「きゃあ! なによあんた達!」ガバッ
戦士「男のくせに気色悪い声だすな」
魔法使い「そんだけ悪ふざけできれば心配なさそーね」
勇者「うー、いてて。さっきのはちょっとだけ痛かった」ムク
戦士「古より伝わる秘宝剣。稲妻のつるぎ。話には聞いていたが、はじめてお目にかかる。爆弾岩といい死んでないとはたいしたものだ」
勇者「(ニセモノが倒れた後で、直撃してなくてよかったな。あいつだったらたぶん死んでた)」
魔法使い「あの剣も王様に献上するのかしら」
戦士「おそらく。野放しにするには、あまりに危険だ」
僧侶「旅のお方も鍛えてらっしゃるんですねぇ」
勇者「男だからって見ていいもんではないぞ」
魔法使い「……ねぇ、お尻、見せてくれない?」
勇者「断る」
戦士「いやな? まさかとは思うが、確認は必要だろう?」
勇者「なぜ近寄る」
魔法使い「痛くしないから」ジリ ジリ
勇者「嫌だと言ってるだろうが」
52: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 22:13:11.12 :WsvInrNpO
魔法使い「戦士、抑えて」
勇者「ちょ」
戦士「ほいきた」ガシ
勇者「おい、これ男女逆だったらえらい場面だぞ」
魔法使い「お尻ぐらいいでしょ」
勇者「なんだ? お前なら見られてもいいってのか?」
魔法使い「私はだめ。男と女とじゃ価値が違うもの」
勇者「……なんだかなぁ」
戦士「ほれ、タオルとっちまえ」
勇者「(よく考えたらこれってピンチ?)」
魔法使い「わ、私がとるの? 戦士がとってよ」
戦士「な、なんであたしが。タオルとって見えたら困るじゃないか」
勇者「……おや?」
魔法使い「だ、だから、私だって見たくないもん」
勇者「なんだなんだ? まさか、俺のツルギを見るんじゃないかと臆してらっしゃる?」
魔法使い「つ、ツルギって」
勇者「おんやぁ~? 想像しちゃったのかな?」
戦士「……」
勇者「戦士さんもどうなされたので? 顔が赤いようですが?」
魔法使い「あ、あんたが自分でとってよ」
勇者「嫌に決まっとるやろがい」
魔法使い「う、うぅ~~」プルプル
勇者「な? もう諦めろって。俺のケツなんかなんにもねぇし」
僧侶「えいっ」パサ
勇者&戦士&魔法使い「あっ」
僧侶「私だけ知ってるっていうのもどうかと思いましてぇ~」
勇者「な、なんてことしやがる!」
魔法使い「き、汚いものはやくしまいなさいよ!」
戦士「……これが、オトコの……」ゴクリ
僧侶「おっき、顔に似合わず」
勇者「ち、ちくしょ」アタフタ クルッ
戦士「あ、聖痕」
魔法使い「あ、ほんとだ」
僧侶「……」ニコニコ
勇者「し、しまったぁあああぁああ~~っ!!」
魔法使い「戦士、抑えて」
勇者「ちょ」
戦士「ほいきた」ガシ
勇者「おい、これ男女逆だったらえらい場面だぞ」
魔法使い「お尻ぐらいいでしょ」
勇者「なんだ? お前なら見られてもいいってのか?」
魔法使い「私はだめ。男と女とじゃ価値が違うもの」
勇者「……なんだかなぁ」
戦士「ほれ、タオルとっちまえ」
勇者「(よく考えたらこれってピンチ?)」
魔法使い「わ、私がとるの? 戦士がとってよ」
戦士「な、なんであたしが。タオルとって見えたら困るじゃないか」
勇者「……おや?」
魔法使い「だ、だから、私だって見たくないもん」
勇者「なんだなんだ? まさか、俺のツルギを見るんじゃないかと臆してらっしゃる?」
魔法使い「つ、ツルギって」
勇者「おんやぁ~? 想像しちゃったのかな?」
戦士「……」
勇者「戦士さんもどうなされたので? 顔が赤いようですが?」
魔法使い「あ、あんたが自分でとってよ」
勇者「嫌に決まっとるやろがい」
魔法使い「う、うぅ~~」プルプル
勇者「な? もう諦めろって。俺のケツなんかなんにもねぇし」
僧侶「えいっ」パサ
勇者&戦士&魔法使い「あっ」
僧侶「私だけ知ってるっていうのもどうかと思いましてぇ~」
勇者「な、なんてことしやがる!」
魔法使い「き、汚いものはやくしまいなさいよ!」
戦士「……これが、オトコの……」ゴクリ
僧侶「おっき、顔に似合わず」
勇者「ち、ちくしょ」アタフタ クルッ
戦士「あ、聖痕」
魔法使い「あ、ほんとだ」
僧侶「……」ニコニコ
勇者「し、しまったぁあああぁああ~~っ!!」
53: ◆7Ub330dMyM:2018/01/10(水) 22:32:28.05 :WsvInrNpO
魔法使い「や、やっぱり、あんたが勇者?」
戦士「う、うーむ。異常なタフネスさを考えると、いや、しかし」
勇者「……」ガックシ
僧侶「勇者様、ファイトォ♪」
魔法使い「というか、僧侶! あんたやっぱり知ってたのね⁉︎」
僧侶「気がつかない方が悪いんですよぉ」
戦士「本物、なのか? 今度こそ」
勇者「はは、あはは」
魔法使い「あっちのニセモノも大概だったけど、コレよ? 抜け殻みたいなやつが?」
僧侶「正真正銘の勇者様です。お疑いであれば、あなた方の目が曇っているということ」
戦士「あたしの、目が、ねぇ」
魔法使い「……」
僧侶「改めてご挨拶させていただきます。ダーマ神殿より、遣わされました。勇者様とご一緒してお力添えになるようにと」フワッ
戦士「お、おい。僧侶」
魔法使い「本物、みたいね。間違いなく」
勇者「……」
魔法使い「勇者様、私は──」
勇者「いい」
魔法使い「えっ」
勇者「これまでと同じでいいんだ。俺はみんなと変わらない」
戦士「し、しかし。本物であれば」
勇者「態度を変えるのは失礼な時もある。今がその時ってだけ、俺に対してはな」
魔法使い「そう、お望みであれば」
勇者「あぁー、ったく」ポリポリ
店主「あんた達、ちょっとこっち手伝っておくれ。こいつを運ばないと」
勇者「了解! 服着るからまっててくれ!」
戦士「力仕事なら、あたしが」
勇者「いいんだ、テキトーにやらせてくれよ。頼む」
戦士「……」
勇者「よーし! すぐ着るから!」
魔法使い「……ねぇ、僧侶」
僧侶「はい?」
魔法使い「勇者ってイメージと違うのね」
僧侶「ええ、そうですね。伝説というおとぎ話の中だけじゃない、現実になると」
戦士「等身大の、若者か」
店員「この! ニセモノめ! 吐け! 食ったもの吐きだせ!」
店主「吐いたところでどーにもならいでしょーが! 足の方持ちな!」
魔法使い「や、やっぱり、あんたが勇者?」
戦士「う、うーむ。異常なタフネスさを考えると、いや、しかし」
勇者「……」ガックシ
僧侶「勇者様、ファイトォ♪」
魔法使い「というか、僧侶! あんたやっぱり知ってたのね⁉︎」
僧侶「気がつかない方が悪いんですよぉ」
戦士「本物、なのか? 今度こそ」
勇者「はは、あはは」
魔法使い「あっちのニセモノも大概だったけど、コレよ? 抜け殻みたいなやつが?」
僧侶「正真正銘の勇者様です。お疑いであれば、あなた方の目が曇っているということ」
戦士「あたしの、目が、ねぇ」
魔法使い「……」
僧侶「改めてご挨拶させていただきます。ダーマ神殿より、遣わされました。勇者様とご一緒してお力添えになるようにと」フワッ
戦士「お、おい。僧侶」
魔法使い「本物、みたいね。間違いなく」
勇者「……」
魔法使い「勇者様、私は──」
勇者「いい」
魔法使い「えっ」
勇者「これまでと同じでいいんだ。俺はみんなと変わらない」
戦士「し、しかし。本物であれば」
勇者「態度を変えるのは失礼な時もある。今がその時ってだけ、俺に対してはな」
魔法使い「そう、お望みであれば」
勇者「あぁー、ったく」ポリポリ
店主「あんた達、ちょっとこっち手伝っておくれ。こいつを運ばないと」
勇者「了解! 服着るからまっててくれ!」
戦士「力仕事なら、あたしが」
勇者「いいんだ、テキトーにやらせてくれよ。頼む」
戦士「……」
勇者「よーし! すぐ着るから!」
魔法使い「……ねぇ、僧侶」
僧侶「はい?」
魔法使い「勇者ってイメージと違うのね」
僧侶「ええ、そうですね。伝説というおとぎ話の中だけじゃない、現実になると」
戦士「等身大の、若者か」
店員「この! ニセモノめ! 吐け! 食ったもの吐きだせ!」
店主「吐いたところでどーにもならいでしょーが! 足の方持ちな!」
66: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 10:32:38.37 :/prJW+7dO
【翌日 早朝 宿屋 食堂】
勇者「ごほん」
戦士&魔法使い&僧侶「……」ジィー
勇者「あの、むず痒いからそんなに見つめないでくれない?」
僧侶「話す時は人の目を見て話すものなのでぇ~」
戦士「シャイボーイか」
魔法使い「童貞なんじゃない?」
勇者「言い返せないのが悔しい!」
戦士「なんだ、チェリーの方か」
勇者「……」プルプル
魔法使い「モテそうには見えないもの」
勇者「……はぁ、いいよ、もう。それで、今後の方針だが」
僧侶「勇者様とご一緒であればどこへでもぉ」
魔法使い「あ、あたし、別に、ただ、まぁあんたが勇者なら」
戦士「一緒に行けば強いモンスターと戦えるんだろ?」
勇者「自分の欲望に忠実か!」バンッ
僧侶「私たちから質問よろしいですかぁ?」
勇者「……なに?」
魔法使い「なんで、隠してたの? 勇者だって」
戦士「あたしらにだけじゃない。このまま隠し通せるかどうかは別として理由がわからない。ダーマが目的地というのも」
勇者「(遊び人になりたいのは本当! 隠してたのは面倒になりたくなかったらだよ! ……とは言え、正直に言うとヒンシュクを買いそうだな)」
魔法使い「もしかして、魔王軍からも隠すため?」
勇者「へ?」
僧侶「私もそれは考えましたぁ。勇者の所在がわかれば、近隣に被害が及ぶ恐れがありますもんねぇ」
戦士「……どうなんだ?」
勇者「あ、ああ! そうそう! その通り!」
魔法使い「……」ジトォー
勇者「俺のせいでまわりに被害なんてことになったらいかんですよ!」
戦士「……」ジトォー
勇者「い、いかんと思うのです、はぃ」
僧侶「くすくす。どちらにせよ、ダーマは魔王城に行く道の通過点上にあります~」
勇者「ご、ごほん。パーティの件なんだが、希望するなら組むのはいいよ。上から目線で申し訳ないけど」
魔法使い「ほ、ほんとうっ⁉︎」ガタッ
勇者「ただし、条件がある。特に戦士」
戦士「む?」
勇者「無闇な殺生は禁止だ」
魔法使い「は、はぁっ⁉︎」
勇者「あくまで、正当防衛。鍛錬をしたいのなら半殺しまでにしとけ。喧嘩止まりのな」
【翌日 早朝 宿屋 食堂】
勇者「ごほん」
戦士&魔法使い&僧侶「……」ジィー
勇者「あの、むず痒いからそんなに見つめないでくれない?」
僧侶「話す時は人の目を見て話すものなのでぇ~」
戦士「シャイボーイか」
魔法使い「童貞なんじゃない?」
勇者「言い返せないのが悔しい!」
戦士「なんだ、チェリーの方か」
勇者「……」プルプル
魔法使い「モテそうには見えないもの」
勇者「……はぁ、いいよ、もう。それで、今後の方針だが」
僧侶「勇者様とご一緒であればどこへでもぉ」
魔法使い「あ、あたし、別に、ただ、まぁあんたが勇者なら」
戦士「一緒に行けば強いモンスターと戦えるんだろ?」
勇者「自分の欲望に忠実か!」バンッ
僧侶「私たちから質問よろしいですかぁ?」
勇者「……なに?」
魔法使い「なんで、隠してたの? 勇者だって」
戦士「あたしらにだけじゃない。このまま隠し通せるかどうかは別として理由がわからない。ダーマが目的地というのも」
勇者「(遊び人になりたいのは本当! 隠してたのは面倒になりたくなかったらだよ! ……とは言え、正直に言うとヒンシュクを買いそうだな)」
魔法使い「もしかして、魔王軍からも隠すため?」
勇者「へ?」
僧侶「私もそれは考えましたぁ。勇者の所在がわかれば、近隣に被害が及ぶ恐れがありますもんねぇ」
戦士「……どうなんだ?」
勇者「あ、ああ! そうそう! その通り!」
魔法使い「……」ジトォー
勇者「俺のせいでまわりに被害なんてことになったらいかんですよ!」
戦士「……」ジトォー
勇者「い、いかんと思うのです、はぃ」
僧侶「くすくす。どちらにせよ、ダーマは魔王城に行く道の通過点上にあります~」
勇者「ご、ごほん。パーティの件なんだが、希望するなら組むのはいいよ。上から目線で申し訳ないけど」
魔法使い「ほ、ほんとうっ⁉︎」ガタッ
勇者「ただし、条件がある。特に戦士」
戦士「む?」
勇者「無闇な殺生は禁止だ」
魔法使い「は、はぁっ⁉︎」
勇者「あくまで、正当防衛。鍛錬をしたいのなら半殺しまでにしとけ。喧嘩止まりのな」
67: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 10:33:28.12 :/prJW+7dO
戦士「しかし、それではレベルアップが」
勇者「経験値は殺さなくても手にはいる。気絶させりゃいい」
僧侶「そうなんですかぁ?」
勇者「勇者がモンスターを殺した! なんて物騒だろ。まぁ、そこはお察しくださいな部分でもあるが、逆に大雑把な解釈だからこそ、こういう見方もできる」
魔法使い「私達に重要なのは、個々のレベルアップよ。旅を続けていく限り、避けては通れない」
勇者「だから、レベルアップさえできりゃ問題ない。だろ? 無力化でちゃんと手にはいるよ。“ここはそういうもんだ”と思ってくれりゃいい」
戦士「それなら、まぁ」
魔法使い「なんで、なんでそんなにモンスターに情けをかけようとすんの? あいつらは敵なのよ。こっちが命乞いしても聞く耳もたないような」
勇者「俺は神職じゃない。志てるつもりもない。だけど、嫌なんだよ」
僧侶「……かしこまりましたぁ」
魔法使い「僧侶っ!」バンッ
僧侶「私達がパーティを希望している身。ならば、条件を呑むのは当然かとぉ~」
魔法使い「う、そ、それは」
僧侶「それに、戦うな、とは申しておりませんしぃ。正当防衛なら、殺されそうになったらヤッちってもいいんですよねぇ~?」
勇者「しゃーないよ、そうなったら」
戦士「ふむ。あえての鍛錬か。良いかもしれんな」
魔法使い「戦士も!」
戦士「そうカッカするな。どうやら勇者様とやらはこういう人間のようだ」
勇者「……魔法使いはどうする?」
魔法使い「~~~~ッ! わかったわよ!」プイ
戦士「しかし、それではレベルアップが」
勇者「経験値は殺さなくても手にはいる。気絶させりゃいい」
僧侶「そうなんですかぁ?」
勇者「勇者がモンスターを殺した! なんて物騒だろ。まぁ、そこはお察しくださいな部分でもあるが、逆に大雑把な解釈だからこそ、こういう見方もできる」
魔法使い「私達に重要なのは、個々のレベルアップよ。旅を続けていく限り、避けては通れない」
勇者「だから、レベルアップさえできりゃ問題ない。だろ? 無力化でちゃんと手にはいるよ。“ここはそういうもんだ”と思ってくれりゃいい」
戦士「それなら、まぁ」
魔法使い「なんで、なんでそんなにモンスターに情けをかけようとすんの? あいつらは敵なのよ。こっちが命乞いしても聞く耳もたないような」
勇者「俺は神職じゃない。志てるつもりもない。だけど、嫌なんだよ」
僧侶「……かしこまりましたぁ」
魔法使い「僧侶っ!」バンッ
僧侶「私達がパーティを希望している身。ならば、条件を呑むのは当然かとぉ~」
魔法使い「う、そ、それは」
僧侶「それに、戦うな、とは申しておりませんしぃ。正当防衛なら、殺されそうになったらヤッちってもいいんですよねぇ~?」
勇者「しゃーないよ、そうなったら」
戦士「ふむ。あえての鍛錬か。良いかもしれんな」
魔法使い「戦士も!」
戦士「そうカッカするな。どうやら勇者様とやらはこういう人間のようだ」
勇者「……魔法使いはどうする?」
魔法使い「~~~~ッ! わかったわよ!」プイ
68: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 10:51:26.03 :/prJW+7dO
僧侶「あ、でもちょっと待ってください~」
勇者「ん?」
僧侶「レベルアップの件については了承いたしましたぁ~。でも、資金調達はどうなさるおつもりでぇ?」
戦士「おっ、そうだった。魔物の皮やツノを売らなければ旅が苦しくなるぞ」
勇者「あ……」
魔法使い「その顔は、考えてなかったって感じね」
勇者「やべ、どうしよう」
僧侶「みなさんいくらもってますかぁ?」
戦士「あたしは300ゴールドほど」
魔法使い「少なっ! 私は1000ゴールド」
戦士「おっ、結構持ってるな」
魔法使い「当たり前でしょ。あんたが少なすぎるのよ」
僧侶「私も魔法使いさんと同じぐらいですぅ~」
魔法使い「まぁ、当面はなんとかなるか。でも、装備もあるし……勇者は? 王様からがっぽり支給されてるんでしょ?」
勇者「……」
戦士「いくらだ? 荷物は軽そうだが」
勇者「……ゴールド」
僧侶「すみません~いま、なんとぉ?」
勇者「は、はちじゅう、ゴールド」
戦士&僧侶&魔法使い「……」ポカーン
魔法「……き、聞き間違いよねぇ? 勇者がまさか、そんな貧乏なはず」
勇者「う、うぅ」
戦士「ほ、本気なのか?」
僧侶「これは、困ってしまいましたねぇ~」
魔法使い「このっ! 貧乏勇者! 甲斐性なし!」ゲシゲシ
勇者「や、やめちくりぃ~。蹴らんどいてくりぃ~」
魔法使い「はぁっ、はぁっ、ヒモ男かあんたはっ!!」ゲシゲシ
勇者「ず、ずびません~」
僧侶「殺生が禁止となるとぉ、戦利品も望めませんしぃ」
僧侶「あ、でもちょっと待ってください~」
勇者「ん?」
僧侶「レベルアップの件については了承いたしましたぁ~。でも、資金調達はどうなさるおつもりでぇ?」
戦士「おっ、そうだった。魔物の皮やツノを売らなければ旅が苦しくなるぞ」
勇者「あ……」
魔法使い「その顔は、考えてなかったって感じね」
勇者「やべ、どうしよう」
僧侶「みなさんいくらもってますかぁ?」
戦士「あたしは300ゴールドほど」
魔法使い「少なっ! 私は1000ゴールド」
戦士「おっ、結構持ってるな」
魔法使い「当たり前でしょ。あんたが少なすぎるのよ」
僧侶「私も魔法使いさんと同じぐらいですぅ~」
魔法使い「まぁ、当面はなんとかなるか。でも、装備もあるし……勇者は? 王様からがっぽり支給されてるんでしょ?」
勇者「……」
戦士「いくらだ? 荷物は軽そうだが」
勇者「……ゴールド」
僧侶「すみません~いま、なんとぉ?」
勇者「は、はちじゅう、ゴールド」
戦士&僧侶&魔法使い「……」ポカーン
魔法「……き、聞き間違いよねぇ? 勇者がまさか、そんな貧乏なはず」
勇者「う、うぅ」
戦士「ほ、本気なのか?」
僧侶「これは、困ってしまいましたねぇ~」
魔法使い「このっ! 貧乏勇者! 甲斐性なし!」ゲシゲシ
勇者「や、やめちくりぃ~。蹴らんどいてくりぃ~」
魔法使い「はぁっ、はぁっ、ヒモ男かあんたはっ!!」ゲシゲシ
勇者「ず、ずびません~」
僧侶「殺生が禁止となるとぉ、戦利品も望めませんしぃ」
69: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 11:19:37.81 :/prJW+7dO
魔法使い「王様ならなにも貰ってないの⁉︎」
勇者「それは、色々(ただ慌てて出ただけ)とありまして」
魔法使い「はぁ……どうすんのよ、勇者様」
勇者「……ギャンブルとか、どu」
魔法使い「無一文になるつもりか!」スパーン
戦士「生計の為ならば生を奪う、致し方ないだろう。我々だって、肉を食らう。菜食主義者ではないよな?」
勇者「あー、うん、それはその通り」
戦士「やれやれ……ブレブレのような気がするが、関係のない殺生はしないという解釈でいいか?」
勇者「ははーっ」ドゲザ
僧侶「決まりですねぇ~」
魔法使い「……こ、こんなのが、勇者。私は認めない! 絶対に認めないんだからぁっ!!」
店主「ちょっとちょっと、朝っぱらから騒がしいねぇ」
勇者「あ、おばちゃん。おはよ」
店主「ほい、おはよーさん。まっとくれ、今トーストを準備するから」
僧侶「昨日のニセモノさんはどうなったんですかぁ?」
店主「若い衆に頼んで隣町の役所に連れてってもらったよ。連れてく最中もうるさくてねぇ」
戦士「まだ自分が勇者だと?」
店主「いいや、その逆さ。“ホンモノがいる! あのお方に会わせてくれ!”だと。まだホラふくなんて笑っちまったよ」
魔法使い「ふーん」ジトー
勇者「う、うぅ」シュン
店主「村の連中以外はあんた達しかいないってのに。そっちのお兄ちゃんが勇者なのかい?」
勇者「いや、俺は」
店主「だぁーっはっはっ! そんなわけないよねぇ!」
勇者「(なんだろう、そう見えないっていうのも悲しい)」
店主「ま、牢屋にぶちこまれれば大人しくなるだろ」
魔法使い「王様ならなにも貰ってないの⁉︎」
勇者「それは、色々(ただ慌てて出ただけ)とありまして」
魔法使い「はぁ……どうすんのよ、勇者様」
勇者「……ギャンブルとか、どu」
魔法使い「無一文になるつもりか!」スパーン
戦士「生計の為ならば生を奪う、致し方ないだろう。我々だって、肉を食らう。菜食主義者ではないよな?」
勇者「あー、うん、それはその通り」
戦士「やれやれ……ブレブレのような気がするが、関係のない殺生はしないという解釈でいいか?」
勇者「ははーっ」ドゲザ
僧侶「決まりですねぇ~」
魔法使い「……こ、こんなのが、勇者。私は認めない! 絶対に認めないんだからぁっ!!」
店主「ちょっとちょっと、朝っぱらから騒がしいねぇ」
勇者「あ、おばちゃん。おはよ」
店主「ほい、おはよーさん。まっとくれ、今トーストを準備するから」
僧侶「昨日のニセモノさんはどうなったんですかぁ?」
店主「若い衆に頼んで隣町の役所に連れてってもらったよ。連れてく最中もうるさくてねぇ」
戦士「まだ自分が勇者だと?」
店主「いいや、その逆さ。“ホンモノがいる! あのお方に会わせてくれ!”だと。まだホラふくなんて笑っちまったよ」
魔法使い「ふーん」ジトー
勇者「う、うぅ」シュン
店主「村の連中以外はあんた達しかいないってのに。そっちのお兄ちゃんが勇者なのかい?」
勇者「いや、俺は」
店主「だぁーっはっはっ! そんなわけないよねぇ!」
勇者「(なんだろう、そう見えないっていうのも悲しい)」
店主「ま、牢屋にぶちこまれれば大人しくなるだろ」
70: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 12:24:17.83 :/prJW+7dO
【魔王城付近 沼地】
魔王「のぅ、サキュバスよ」
サキュバス「ははっ、ここに」
魔王「幾百年といがみ合う種族の争い。お前は人間達との戦いになにを見る」
サキュバス「群れを主体とする脆弱な生き物。しかし、時にひどい残虐性、憎悪。危険極まりない存在かと」
魔王「ふっ、向こうも我等をそう思っておろうな」
サキュバス「然りにございます。あちらもこちらを悪の象徴と見ているでしょう。決して相入れない、平行線上にいますゆえ」
魔王「……幾千年、繰り返したことか」
サキュバス「ご心中お察しいたします」
魔王「我等は、負けるぞ」
サキュバス「……」
魔王「なにも今すぐという話ではない。内に内にと向いている近親婚のお陰で、個々の血が強まるどころか、衰退している」
サキュバス「それは、魔族繁栄の為、先代様の方針で」
魔王「その結果がご覧の有様だ。巨人王オーガの身体つきを見よ。背丈が代を変わるごとに小さくなっておるでないか。他の種族も……」
サキュバス「……」
魔王「強い種を産むには、交配が不可欠だ。だが、種族間のプライドが邪魔をする」
サキュバス「我々が、負けるなどと。おやめください。群れが主体の脆弱な生き物に敗北しようがありません」
魔王「だからだよ、その驕りに負けるのだ」
サキュバス「我が王よ……」
魔王「率いるとは、調整を余儀なくされる。お主も種を代表する者であれば、我が苦心がわかるであろう」
サキュバス「そ、それは……」
魔王「だが、まだ諦めているわけではない。女神の申し子たる勇者の行方さえ掴めれば、友好などという仮初めの芽を潰せる」
サキュバス「……!」
魔王「どこにおるのやら」
サキュバス「大魔王様の苦心、わたくしも種を束ねる者として充分にご理解できました。勇者捜索はおまかせを」
魔王「なにを……18年も見つけられないでおいて」
サキュバス「必ずや挽回してみせましょう。我が誇りにかけて」
魔王「信じて、よいのだな……?」
サキュバス「必ずや……! 四天王がひとり、淫夢王の名にかけて!」ザッ
魔王「……頼んだぞ、我が友よ」
サキュバス「はっ!」ビシッ
【魔王城付近 沼地】
魔王「のぅ、サキュバスよ」
サキュバス「ははっ、ここに」
魔王「幾百年といがみ合う種族の争い。お前は人間達との戦いになにを見る」
サキュバス「群れを主体とする脆弱な生き物。しかし、時にひどい残虐性、憎悪。危険極まりない存在かと」
魔王「ふっ、向こうも我等をそう思っておろうな」
サキュバス「然りにございます。あちらもこちらを悪の象徴と見ているでしょう。決して相入れない、平行線上にいますゆえ」
魔王「……幾千年、繰り返したことか」
サキュバス「ご心中お察しいたします」
魔王「我等は、負けるぞ」
サキュバス「……」
魔王「なにも今すぐという話ではない。内に内にと向いている近親婚のお陰で、個々の血が強まるどころか、衰退している」
サキュバス「それは、魔族繁栄の為、先代様の方針で」
魔王「その結果がご覧の有様だ。巨人王オーガの身体つきを見よ。背丈が代を変わるごとに小さくなっておるでないか。他の種族も……」
サキュバス「……」
魔王「強い種を産むには、交配が不可欠だ。だが、種族間のプライドが邪魔をする」
サキュバス「我々が、負けるなどと。おやめください。群れが主体の脆弱な生き物に敗北しようがありません」
魔王「だからだよ、その驕りに負けるのだ」
サキュバス「我が王よ……」
魔王「率いるとは、調整を余儀なくされる。お主も種を代表する者であれば、我が苦心がわかるであろう」
サキュバス「そ、それは……」
魔王「だが、まだ諦めているわけではない。女神の申し子たる勇者の行方さえ掴めれば、友好などという仮初めの芽を潰せる」
サキュバス「……!」
魔王「どこにおるのやら」
サキュバス「大魔王様の苦心、わたくしも種を束ねる者として充分にご理解できました。勇者捜索はおまかせを」
魔王「なにを……18年も見つけられないでおいて」
サキュバス「必ずや挽回してみせましょう。我が誇りにかけて」
魔王「信じて、よいのだな……?」
サキュバス「必ずや……! 四天王がひとり、淫夢王の名にかけて!」ザッ
魔王「……頼んだぞ、我が友よ」
サキュバス「はっ!」ビシッ
71: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 13:03:02.21 :/prJW+7dO
【アルデンテの村 近郊 森林】
勇者「ああ、そよ風が気持ちいい。あの雲のように俺も漂えたら」
魔法使い「邪魔」ドンッ
勇者「人間の扱いして⁉︎」ドサッ
魔法使い「うー、なんでこんな獣道通んなきゃいけないのよぉ~」
戦士「しかたない、だろっと。あそこに見える山を越えなきゃならない」
僧侶「遅いですよぉ~」フリフリ
魔法使い「なんでこんな歩きにくい場所で元気なのよ、僧侶」
戦士「ダーマから来たのなら、ここを通ってるんじゃないか?」
魔法使い「陸路を? 魔法職ひとりで? ……怪しい」
戦士「魔法使いはどうやってアイーダの酒場へ?」
魔法使い「城のすぐ近くに波止場があるもの。船に乗って来ただけ」
戦士「ということは、別大陸出身か」
魔法使い「大陸というか、島国よ」
戦士「ほう」
僧侶「勇者さまぁ~。はやくはやくぅ~」フリフリ
勇者「はいはい」
戦士「足元に気をつけろよ」
勇者「俺を舐めんなよ? ワンパクっぷりは近所でも呆れられてたんだから」
魔法使い「……私は今呆れてる」
勇者「ほっ、よっと」パキッ カチ
戦士&魔法使い「……ん?」クル
勇者「ん? どした? 俺の顔になんかついてるか?」
戦士「いや、なんか、枝じゃない音がしなかったか?」
魔法使い「なにかのスイッチを押したような」
勇者「気のせいだろ。……びびってんのか?」
戦士「それなら、いいのだが」
勇者「まったく~。今からそんなんじゃこれから先が思いやられるぜ」
魔法使い「ムカつく。メラ」ボッ
勇者「ほっ! はっはーっ! チッチッチ、甘い甘いー」ヒョイ カチリ
戦士「おい、今のはっきり聞こえたぞ。カチリって」
勇者「やーいやーい! 魔法使いのノーコン!」
魔法使い「……」プルプル
勇者「ざまぁwww ……あ?」ガコン
戦士&魔法使い「あっ」
勇者「うそぉおおおおっ! なんでこんなところに落とし穴がああぁぁぁぁっ」ヒューー
【アルデンテの村 近郊 森林】
勇者「ああ、そよ風が気持ちいい。あの雲のように俺も漂えたら」
魔法使い「邪魔」ドンッ
勇者「人間の扱いして⁉︎」ドサッ
魔法使い「うー、なんでこんな獣道通んなきゃいけないのよぉ~」
戦士「しかたない、だろっと。あそこに見える山を越えなきゃならない」
僧侶「遅いですよぉ~」フリフリ
魔法使い「なんでこんな歩きにくい場所で元気なのよ、僧侶」
戦士「ダーマから来たのなら、ここを通ってるんじゃないか?」
魔法使い「陸路を? 魔法職ひとりで? ……怪しい」
戦士「魔法使いはどうやってアイーダの酒場へ?」
魔法使い「城のすぐ近くに波止場があるもの。船に乗って来ただけ」
戦士「ということは、別大陸出身か」
魔法使い「大陸というか、島国よ」
戦士「ほう」
僧侶「勇者さまぁ~。はやくはやくぅ~」フリフリ
勇者「はいはい」
戦士「足元に気をつけろよ」
勇者「俺を舐めんなよ? ワンパクっぷりは近所でも呆れられてたんだから」
魔法使い「……私は今呆れてる」
勇者「ほっ、よっと」パキッ カチ
戦士&魔法使い「……ん?」クル
勇者「ん? どした? 俺の顔になんかついてるか?」
戦士「いや、なんか、枝じゃない音がしなかったか?」
魔法使い「なにかのスイッチを押したような」
勇者「気のせいだろ。……びびってんのか?」
戦士「それなら、いいのだが」
勇者「まったく~。今からそんなんじゃこれから先が思いやられるぜ」
魔法使い「ムカつく。メラ」ボッ
勇者「ほっ! はっはーっ! チッチッチ、甘い甘いー」ヒョイ カチリ
戦士「おい、今のはっきり聞こえたぞ。カチリって」
勇者「やーいやーい! 魔法使いのノーコン!」
魔法使い「……」プルプル
勇者「ざまぁwww ……あ?」ガコン
戦士&魔法使い「あっ」
勇者「うそぉおおおおっ! なんでこんなところに落とし穴がああぁぁぁぁっ」ヒューー
72: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 13:21:59.35 :/prJW+7dO
【??? 洞窟】
勇者「おー、いつつ」ナデナデ
戦士「おぉぉ~い! 大丈夫かぁぁぁ~⁉︎」
勇者「大丈夫! ケツが二つに割れただけで済んだ!」
魔法使い「元からでしょ!」
勇者「……結構落ちたな、しかし、なんにも見えねぇ」キョロキョロ
僧侶「どうしたらいいですかぁぁぁ~?」
勇者「魔法使い! 戦士に手頃な木を用意してもらって松明を作ってくれ!」
魔法使い「まったく、仕切る時は仕切るんだから」ブツブツ
勇者「からかったのは悪かったって! ほんの冗談のつもりだったんだ!」
魔法使い「準備ができたら投げ込むけど、どうやって戻ってくるつもりぃ~? 結構、深いわよねぇ~?」
勇者「こっちに降りるのは危険かもしれない! なんとか出口を探すから、森の入り口で夕方までまっててくれ!」
僧侶「ほんとに大丈夫ですかぁ~~?」
勇者「大丈夫大丈夫! もし戻ってこなかったら迷子と思って探してね!」
魔法使い「かっこつけるんなら最後までかっこつけなさいよ!」
戦士「おい、魔法使い。これでいいだろ」
魔法使い「ん。じゃぁ」
戦士「待て。布を巻いてっと」ビリ クルクル
魔法使い「油で湿らせるの忘れないでね」
戦士「昨日の一角うさぎのやつがある。これで」
魔法使い「メラ」ボッ
戦士「よし。いいかぁ~投げるぞぉ~~~っ!」ヒョイ
勇者「ありがとう! それじゃまた後で落ち合おう!」パシ
僧侶「くれぐれもお気をつけてぇ~!」
勇者「それでぇ、どこだぁ? ここはぁ?」
【??? 洞窟】
勇者「おー、いつつ」ナデナデ
戦士「おぉぉ~い! 大丈夫かぁぁぁ~⁉︎」
勇者「大丈夫! ケツが二つに割れただけで済んだ!」
魔法使い「元からでしょ!」
勇者「……結構落ちたな、しかし、なんにも見えねぇ」キョロキョロ
僧侶「どうしたらいいですかぁぁぁ~?」
勇者「魔法使い! 戦士に手頃な木を用意してもらって松明を作ってくれ!」
魔法使い「まったく、仕切る時は仕切るんだから」ブツブツ
勇者「からかったのは悪かったって! ほんの冗談のつもりだったんだ!」
魔法使い「準備ができたら投げ込むけど、どうやって戻ってくるつもりぃ~? 結構、深いわよねぇ~?」
勇者「こっちに降りるのは危険かもしれない! なんとか出口を探すから、森の入り口で夕方までまっててくれ!」
僧侶「ほんとに大丈夫ですかぁ~~?」
勇者「大丈夫大丈夫! もし戻ってこなかったら迷子と思って探してね!」
魔法使い「かっこつけるんなら最後までかっこつけなさいよ!」
戦士「おい、魔法使い。これでいいだろ」
魔法使い「ん。じゃぁ」
戦士「待て。布を巻いてっと」ビリ クルクル
魔法使い「油で湿らせるの忘れないでね」
戦士「昨日の一角うさぎのやつがある。これで」
魔法使い「メラ」ボッ
戦士「よし。いいかぁ~投げるぞぉ~~~っ!」ヒョイ
勇者「ありがとう! それじゃまた後で落ち合おう!」パシ
僧侶「くれぐれもお気をつけてぇ~!」
勇者「それでぇ、どこだぁ? ここはぁ?」
73: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 15:02:04.40 :/prJW+7dO
【数十分後 洞窟 中腹部】
勇者「いんやー、すぐに行き止まりかと思えばなかなか入り組んでるんでない? 炭鉱だったのかな?」
シク……
勇者「唐突ですが、ここで俺が嫌いなものランキングの発表です。第3位、幽霊」
シクシク
勇者「第2位! ゴースト」
シクシク
勇者「そして栄えある第1位はぁ、お化け!」
シクシク
勇者「全部同じでしたぁ~……はは、あはは……」
シクシクシクシク
勇者「なんでずっと泣いてるんじゃ! 出るなら出てこんかい!」バッ
ハーピー「シクシク」
勇者「おっと……なんだ、鳥か」
ハーピー「……っ⁉︎ ニンゲン!」
勇者「人型、言語能力があるのか」
ハーピー「……去れ。コロスぞ」
勇者「そういきるなって。足、はさまって動けねぇんだろ?」
ハーピー「⁉︎ なにかすルつもりか!」
勇者「焼き鳥にして食う。腹減ってんだ」
ハーピー「おのれ……っ! 野蛮な!」
勇者「よいせっと」ドサッ
ハーピー「……!」ビクッ
勇者「俺さ、小さい頃、スライム飼ってたんだ。親からは犬猫にしなさいって大反対されたけど」
ハーピー「す、スライム?」
勇者「スラリンって名前つけてな? 最初はよく反抗したもんだ」
ハーピー「クッ……」バサバサッ
勇者「スラリンもお前みたいに怪我しててさ。治るまでは俺のこと利用してやろうって考えたんだろうな。
治療は素直に受け入れだした、動くなよ」ガタッ
ハーピー「……?」
勇者「よっ、俺にとっちゃ、初めての友達だったんだ。勇者っていってみんなから遠巻きに眺められてるだけだったから」コロ
ハーピー「……」
勇者「そうそう、今のお前みたいに。石をどかしたら俺のこと襲おうと考えてるだろ?」
ハーピー「な、ナニをイッてる」
【数十分後 洞窟 中腹部】
勇者「いんやー、すぐに行き止まりかと思えばなかなか入り組んでるんでない? 炭鉱だったのかな?」
シク……
勇者「唐突ですが、ここで俺が嫌いなものランキングの発表です。第3位、幽霊」
シクシク
勇者「第2位! ゴースト」
シクシク
勇者「そして栄えある第1位はぁ、お化け!」
シクシク
勇者「全部同じでしたぁ~……はは、あはは……」
シクシクシクシク
勇者「なんでずっと泣いてるんじゃ! 出るなら出てこんかい!」バッ
ハーピー「シクシク」
勇者「おっと……なんだ、鳥か」
ハーピー「……っ⁉︎ ニンゲン!」
勇者「人型、言語能力があるのか」
ハーピー「……去れ。コロスぞ」
勇者「そういきるなって。足、はさまって動けねぇんだろ?」
ハーピー「⁉︎ なにかすルつもりか!」
勇者「焼き鳥にして食う。腹減ってんだ」
ハーピー「おのれ……っ! 野蛮な!」
勇者「よいせっと」ドサッ
ハーピー「……!」ビクッ
勇者「俺さ、小さい頃、スライム飼ってたんだ。親からは犬猫にしなさいって大反対されたけど」
ハーピー「す、スライム?」
勇者「スラリンって名前つけてな? 最初はよく反抗したもんだ」
ハーピー「クッ……」バサバサッ
勇者「スラリンもお前みたいに怪我しててさ。治るまでは俺のこと利用してやろうって考えたんだろうな。
治療は素直に受け入れだした、動くなよ」ガタッ
ハーピー「……?」
勇者「よっ、俺にとっちゃ、初めての友達だったんだ。勇者っていってみんなから遠巻きに眺められてるだけだったから」コロ
ハーピー「……」
勇者「そうそう、今のお前みたいに。石をどかしたら俺のこと襲おうと考えてるだろ?」
ハーピー「な、ナニをイッてる」
74: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 15:16:05.00 :/prJW+7dO
勇者「お互いに知能があるならさぁ、向いてる方向が違うだけだと思うんだよなぁ。ほれ、とれたぞ」
ハーピー「……」スッ
勇者「行けよ。背中から刺したりしねぇから、あ、でも襲おうってんなら俺も抵抗はするぞ。今はそういう時代なんだろうからな」
ハーピー「……フン」バサッ
勇者「さて、と」パンパン
ハーピー「ギャッ」ドサッ
勇者「……まさか、飛べないとか、そういうお約束パターン?」
ハーピー「う、うぅッ……!」ズリ
勇者「しょーがねぇなぁ! ほれ、こっちこい!」
ハーピー「ダマレ! ニンゲンになど!」キッ
勇者「そのままだったら野垂れ死ぬぞー。プライドと命どっちとるんだー?」
ハーピー「死をエラぶ!」
勇者「あー、そうですか。勝手にしろよ」スタスタ
ハーピー「き、貴様! よるな!」
勇者「死ぬんだろ? なら近寄ったって関係ないじゃん」
ハーピー「くっ」ズリズリ
勇者「俺のマッサージは街のじいちゃんばあちゃんにも高評なんだ、あの世を見せてやんよ」ポワァ
ハーピー「うっ、うぅ……」
勇者「勇者として生まれてよかったことがひとつある。それは、補助系、攻撃系と満遍なく覚えること。バランス方っつーのかな。器用貧乏とも言うけど」
ハーピー「ゆ、勇者ダト……」
勇者「あ、近所にね? 勇者って人がいたんだ。俺じゃないよ?」ポワァ
ハーピー「(暖かい、ヒカリ)」
勇者「少し怪我の具合がひどいか。じっとしてろよ」
勇者「お互いに知能があるならさぁ、向いてる方向が違うだけだと思うんだよなぁ。ほれ、とれたぞ」
ハーピー「……」スッ
勇者「行けよ。背中から刺したりしねぇから、あ、でも襲おうってんなら俺も抵抗はするぞ。今はそういう時代なんだろうからな」
ハーピー「……フン」バサッ
勇者「さて、と」パンパン
ハーピー「ギャッ」ドサッ
勇者「……まさか、飛べないとか、そういうお約束パターン?」
ハーピー「う、うぅッ……!」ズリ
勇者「しょーがねぇなぁ! ほれ、こっちこい!」
ハーピー「ダマレ! ニンゲンになど!」キッ
勇者「そのままだったら野垂れ死ぬぞー。プライドと命どっちとるんだー?」
ハーピー「死をエラぶ!」
勇者「あー、そうですか。勝手にしろよ」スタスタ
ハーピー「き、貴様! よるな!」
勇者「死ぬんだろ? なら近寄ったって関係ないじゃん」
ハーピー「くっ」ズリズリ
勇者「俺のマッサージは街のじいちゃんばあちゃんにも高評なんだ、あの世を見せてやんよ」ポワァ
ハーピー「うっ、うぅ……」
勇者「勇者として生まれてよかったことがひとつある。それは、補助系、攻撃系と満遍なく覚えること。バランス方っつーのかな。器用貧乏とも言うけど」
ハーピー「ゆ、勇者ダト……」
勇者「あ、近所にね? 勇者って人がいたんだ。俺じゃないよ?」ポワァ
ハーピー「(暖かい、ヒカリ)」
勇者「少し怪我の具合がひどいか。じっとしてろよ」
75: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 15:46:25.48 :/prJW+7dO
【再び数十分後 洞窟】
勇者「これでよしっと。まぁ、飛ぶ分には問題ないだろ」
ハーピー「……」
勇者「どした? まだ痛むのか?」
ハーピー「オマエ、ヘンなやつ」
勇者「よく言われる」
ハーピー「勇者とは、ホントウか?」
勇者「嘘だよ、ウソ」
ハーピー「……」
勇者「あのさぁ、ここの出口があったら教えてくんない?」
ハーピー「ニンゲンにほどこしをウケたなど……! 一族の恥……!」
勇者「困ってんだよねぇ~。出口探すの疲れてきてるし」
ハーピー「獣王キングヒドラ様にお叱りを……! かクなる上は!」バサッ
勇者「せっかく治したのにまた怪我すんの?」ゲンナリ
ハーピー「思い上がるナッ! オマエを殺せばここでのコトもなかったコトに!」
勇者「誰にも言わない。本当。約束する。俺口固い」
ハーピー「信用できるカッ!!」ザシュ
勇者「……っとと。なぁ、考えなおさない?」ヒョイ
ハーピー「チョコマカと!」ザシュ ザシュ
勇者「よっと、ほっ」ヒョイ ヒョイ
ハーピー「~~ッ! 真面目にやれ! ヘラヘラするな!」バササッ
勇者「いや、だからだね」トンッ
ハーピー「うっ」ズキン ドサッ
勇者「言わんこっちゃない。これまたお約束的に」
ハーピー「……くっ、いっそコロセ」
勇者「テンプレのオンパレードか! そーゆうのいいから!」
ハーピー「ナラば、自決を」
勇者「はぁ……あのさあ、ありがちすぎんだろ」
ハーピー「……」スッ
勇者「待てよ」パシ
ハーピー「なぜ、トメル」
勇者「お前らにとって人間ってなに?」
ハーピー「エサだ」
勇者「そう。俺らにとっても、魔物の材料は高く売れる。そっから精製されるもんは重宝されてる。良い値がつく」
ハーピー「だから、ナンだ」
勇者「利用され利用して、高い知能を持った同士が欲のままに殺しあう。そうなれば遺恨を残すし、終わらないサイクルに突入する」
ハーピー「……」
勇者「一枚岩じゃないからな。魔物も人間も、ついついやらかしすぎちまうやつがポッと出てきちまうものなんだ」
ハーピー「イッてる意味が、ワカらん」
【再び数十分後 洞窟】
勇者「これでよしっと。まぁ、飛ぶ分には問題ないだろ」
ハーピー「……」
勇者「どした? まだ痛むのか?」
ハーピー「オマエ、ヘンなやつ」
勇者「よく言われる」
ハーピー「勇者とは、ホントウか?」
勇者「嘘だよ、ウソ」
ハーピー「……」
勇者「あのさぁ、ここの出口があったら教えてくんない?」
ハーピー「ニンゲンにほどこしをウケたなど……! 一族の恥……!」
勇者「困ってんだよねぇ~。出口探すの疲れてきてるし」
ハーピー「獣王キングヒドラ様にお叱りを……! かクなる上は!」バサッ
勇者「せっかく治したのにまた怪我すんの?」ゲンナリ
ハーピー「思い上がるナッ! オマエを殺せばここでのコトもなかったコトに!」
勇者「誰にも言わない。本当。約束する。俺口固い」
ハーピー「信用できるカッ!!」ザシュ
勇者「……っとと。なぁ、考えなおさない?」ヒョイ
ハーピー「チョコマカと!」ザシュ ザシュ
勇者「よっと、ほっ」ヒョイ ヒョイ
ハーピー「~~ッ! 真面目にやれ! ヘラヘラするな!」バササッ
勇者「いや、だからだね」トンッ
ハーピー「うっ」ズキン ドサッ
勇者「言わんこっちゃない。これまたお約束的に」
ハーピー「……くっ、いっそコロセ」
勇者「テンプレのオンパレードか! そーゆうのいいから!」
ハーピー「ナラば、自決を」
勇者「はぁ……あのさあ、ありがちすぎんだろ」
ハーピー「……」スッ
勇者「待てよ」パシ
ハーピー「なぜ、トメル」
勇者「お前らにとって人間ってなに?」
ハーピー「エサだ」
勇者「そう。俺らにとっても、魔物の材料は高く売れる。そっから精製されるもんは重宝されてる。良い値がつく」
ハーピー「だから、ナンだ」
勇者「利用され利用して、高い知能を持った同士が欲のままに殺しあう。そうなれば遺恨を残すし、終わらないサイクルに突入する」
ハーピー「……」
勇者「一枚岩じゃないからな。魔物も人間も、ついついやらかしすぎちまうやつがポッと出てきちまうものなんだ」
ハーピー「イッてる意味が、ワカらん」
76: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 16:02:48.40 :/prJW+7dO
勇者「ちっと難しかったか? 第二章! 政治編もあるぜ!」ビシッ
ハーピー「……」ポカーン
勇者「ダダ滑り……なにが言いたいかというと、もっとラクに生きようぜ。しきたりとか垣根とか、今は俺とお前しかここにはいないんだから」
ハーピー「……」
勇者「お前にだって魔物としての吟じがあったりすんだろ? もっとニンゲン殺してやるー! とか。自決なんてもんはバカのすることだ。やりたいことやってから死ね」
ハーピー「お前ハ、ニンゲンがコロサレてもいいのか」
勇者「そんな話じゃない。それぞれの立場でやりたいように生きろ、小難しく考えてもどうせ破綻すんだから」
ハーピー「……コノまま、ススメば出口がアル」
勇者「あ、本当? 風の気配ないからないのかと焦っちゃったよ」
ハーピー「指を舐めてミロ」
勇者「えっ、指?」アム
ハーピー「ソウスルと、風を感じられるはず」
勇者「……んー、おおっ! 指先がちべたい!」
ハーピー「ツギニ会ったら、コロス」
勇者「期待して待ってる。できれば、俺だけを狙ってほしい」
ハーピー「……」
勇者「俺を殺せたら、次の人間を殺したっていいよ」
ハーピー「……そのコトバ、ワスレるなよ」バサッ
勇者「ああ、しっかり覚えといてやる」ニッ
勇者「ちっと難しかったか? 第二章! 政治編もあるぜ!」ビシッ
ハーピー「……」ポカーン
勇者「ダダ滑り……なにが言いたいかというと、もっとラクに生きようぜ。しきたりとか垣根とか、今は俺とお前しかここにはいないんだから」
ハーピー「……」
勇者「お前にだって魔物としての吟じがあったりすんだろ? もっとニンゲン殺してやるー! とか。自決なんてもんはバカのすることだ。やりたいことやってから死ね」
ハーピー「お前ハ、ニンゲンがコロサレてもいいのか」
勇者「そんな話じゃない。それぞれの立場でやりたいように生きろ、小難しく考えてもどうせ破綻すんだから」
ハーピー「……コノまま、ススメば出口がアル」
勇者「あ、本当? 風の気配ないからないのかと焦っちゃったよ」
ハーピー「指を舐めてミロ」
勇者「えっ、指?」アム
ハーピー「ソウスルと、風を感じられるはず」
勇者「……んー、おおっ! 指先がちべたい!」
ハーピー「ツギニ会ったら、コロス」
勇者「期待して待ってる。できれば、俺だけを狙ってほしい」
ハーピー「……」
勇者「俺を殺せたら、次の人間を殺したっていいよ」
ハーピー「……そのコトバ、ワスレるなよ」バサッ
勇者「ああ、しっかり覚えといてやる」ニッ
77: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 16:20:34.12 :/prJW+7dO
【アルデンテの村 近郊 森林】
僧侶「あのぅ~、勇者さまは森の入り口で待つようにとぉ~」
戦士「魔法使い、ロープ頼む」
魔法使い「死んでたらどうすんのよ。はいってもう一時間も経つわ」
僧侶「ツンデレってやつですかぁ? 古典ですねぇ」
魔法使い「違うわよ! 私はそんなんじゃ!」
戦士「一度村に戻ってロープを買ってきたんだ。あたしが降りて勇者を探してくる」
バサッバサッ
魔法使い「……なにか羽音が聞こえない?」
僧侶「たしかにぃ~。エコーがかかってますねぇ。穴の中から?」
戦士「穴って、ここか?」ヒョイ
ハーピー「ウオッ⁉︎」ドヒュン
魔法使い「わっ、び、びっくりしたぁ……いきなり飛び出して……は、ハーピー⁉︎」
戦士「おぉ。人型だ」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「気をつけて! こいつは中級モンスターよ!」
ハーピー「ニンゲンか……」バサッバサッ
魔法使い「言語を解するのね! 高い知能を持ってる! モンスターにとって知能は強さの現れ! 戦士!」ザッ
戦士「戦闘か!」チャキ
僧侶「でもぉ、戦う意思があるようにはぁ~」
ハーピー「オマエたち、さっきのヤツのナカマか?」
魔法使い「さっきの? って、だ、誰?」
戦士「あ、あたしに聞かれても」
僧侶「そうでぇ~す!」フリフリ
魔法使い「ちょ、そ、僧侶!」
ハーピー「ココから東にススメ。そこに行けばイル」
戦士「な、なんだ……?」スッ
魔法使い「なにが、どうなってるの?」
ハーピー「フン」バサッバサッ
僧侶「……行っちゃいましたねぇ~」
戦士「ど、どうする?」
魔法使い「どうするったって……」
僧侶「ここにいたって暇ですしぃ、まずは行ってみませんかぁ~?」
【アルデンテの村 近郊 森林】
僧侶「あのぅ~、勇者さまは森の入り口で待つようにとぉ~」
戦士「魔法使い、ロープ頼む」
魔法使い「死んでたらどうすんのよ。はいってもう一時間も経つわ」
僧侶「ツンデレってやつですかぁ? 古典ですねぇ」
魔法使い「違うわよ! 私はそんなんじゃ!」
戦士「一度村に戻ってロープを買ってきたんだ。あたしが降りて勇者を探してくる」
バサッバサッ
魔法使い「……なにか羽音が聞こえない?」
僧侶「たしかにぃ~。エコーがかかってますねぇ。穴の中から?」
戦士「穴って、ここか?」ヒョイ
ハーピー「ウオッ⁉︎」ドヒュン
魔法使い「わっ、び、びっくりしたぁ……いきなり飛び出して……は、ハーピー⁉︎」
戦士「おぉ。人型だ」
僧侶「あらあらぁ~」
魔法使い「気をつけて! こいつは中級モンスターよ!」
ハーピー「ニンゲンか……」バサッバサッ
魔法使い「言語を解するのね! 高い知能を持ってる! モンスターにとって知能は強さの現れ! 戦士!」ザッ
戦士「戦闘か!」チャキ
僧侶「でもぉ、戦う意思があるようにはぁ~」
ハーピー「オマエたち、さっきのヤツのナカマか?」
魔法使い「さっきの? って、だ、誰?」
戦士「あ、あたしに聞かれても」
僧侶「そうでぇ~す!」フリフリ
魔法使い「ちょ、そ、僧侶!」
ハーピー「ココから東にススメ。そこに行けばイル」
戦士「な、なんだ……?」スッ
魔法使い「なにが、どうなってるの?」
ハーピー「フン」バサッバサッ
僧侶「……行っちゃいましたねぇ~」
戦士「ど、どうする?」
魔法使い「どうするったって……」
僧侶「ここにいたって暇ですしぃ、まずは行ってみませんかぁ~?」
78: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 16:41:48.73 :/prJW+7dO
【森林 東の外れ】
勇者「ふぃー」ザッ
戦士「あれじゃないか? おぉ~い! 勇者ぁ~!」
勇者「あれ? ここって入り口だったの?」
魔法使い「はぁ、はぁっ、呑気な、平気、なの?」
僧侶「ふぅ~」
勇者「なんともないよ。砂埃をかぶっちまったぐらい」パンパン
戦士「なぁなぁ、中はどうだった?」
勇者「なーんにも。宝箱さえなかったね」
魔法使い「ハーピーと遭遇しなかった⁉︎」
勇者「……いんや」
僧侶「そうなんですかぁ~?」
勇者「あぁ。誰とも会わなかったよ」
魔法使い「えっ、でも、それだったら、誰のこと。勇者はたしかにこっちにいたし、えっ、えっ?」
勇者「いいんじゃないの。わからなくても」
戦士「……かっこつけてんのか?」
勇者「ち、違わい! 改めて指摘すんな! 恥ずかしい!」
僧侶「くすくす。怪我がなくてなによりですぅ」
魔法使い「はぁ……つまり、そういうこと。あんたはキザ似合わないから」
勇者「べ、別に、そんなつもり」ゴニョゴニョ
戦士「生きてるならそれでよしとしよう。時間を食ったが、陽が落ちるまでに落ち着ける場所に行かなければ」
勇者「あー、間に合うかな?」
戦士「パス」ポイ
勇者「うぉっ」ドサ
戦士「さっき、村に戻ったついでにテントを買ってきた。勇者が持て」
魔法使い「あんたのせいなんだからそれぐらいしなさいよね」
勇者「は、はい」
僧侶「とりあえず、今日のところは山の中腹を目指す感じでしょうかねぇ~」
戦士「そうだな……。さ、出発だ」
【森林 東の外れ】
勇者「ふぃー」ザッ
戦士「あれじゃないか? おぉ~い! 勇者ぁ~!」
勇者「あれ? ここって入り口だったの?」
魔法使い「はぁ、はぁっ、呑気な、平気、なの?」
僧侶「ふぅ~」
勇者「なんともないよ。砂埃をかぶっちまったぐらい」パンパン
戦士「なぁなぁ、中はどうだった?」
勇者「なーんにも。宝箱さえなかったね」
魔法使い「ハーピーと遭遇しなかった⁉︎」
勇者「……いんや」
僧侶「そうなんですかぁ~?」
勇者「あぁ。誰とも会わなかったよ」
魔法使い「えっ、でも、それだったら、誰のこと。勇者はたしかにこっちにいたし、えっ、えっ?」
勇者「いいんじゃないの。わからなくても」
戦士「……かっこつけてんのか?」
勇者「ち、違わい! 改めて指摘すんな! 恥ずかしい!」
僧侶「くすくす。怪我がなくてなによりですぅ」
魔法使い「はぁ……つまり、そういうこと。あんたはキザ似合わないから」
勇者「べ、別に、そんなつもり」ゴニョゴニョ
戦士「生きてるならそれでよしとしよう。時間を食ったが、陽が落ちるまでに落ち着ける場所に行かなければ」
勇者「あー、間に合うかな?」
戦士「パス」ポイ
勇者「うぉっ」ドサ
戦士「さっき、村に戻ったついでにテントを買ってきた。勇者が持て」
魔法使い「あんたのせいなんだからそれぐらいしなさいよね」
勇者「は、はい」
僧侶「とりあえず、今日のところは山の中腹を目指す感じでしょうかねぇ~」
戦士「そうだな……。さ、出発だ」
79: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 19:47:33.01 :eL30j4//O
【獣王城 玉座】
キングヒドラ「なにぃっ⁉︎ もう一度申せっ!!」
ねずみモグラ「オラじゃねぇっスよ~」ブンブン
キングヒドラ「それはわかってる! ハーピーがニンゲンの匂いをつけて帰ってきただとぉ⁉︎」ドガーーン
ねずみモグラ「ひぃ~っ」ガタガタ
キングヒドラ「ハーピーはどこだっ!!」
ねずみモグラ「今、巣に」
ハーピー「ただいま、戻りました。キングヒドラ様」スッ
キングヒドラ「……」ギロ
ねずみモグラ「はわわわわっ」ガタガタ
ハーピー「此度の件は」
キングヒドラ「仕事はどうした! 人語を喋れるお前を斥候(偵察のこと)にやった理由を言えぇいっ!!!」ピシャーン
ハーピー「人間どもの、勢力調査です」
キングヒドラ「それがなぜニンゲンの匂いをつけて帰ってくる!! プンプン臭うぞぉっ!!!」
ねずみモグラ「あ、あの、キングヒドラ様ぁ」
キングヒドラ「なんだっ⁉︎」ギロ
ねずみモグラ「もしかして、ハーピー様はニンゲンどもを殺してきたのでは? もともと、匂い自体はめずらしいことでは」
キングヒドラ「……そうなのか?」
ハーピー「……」
キングヒドラ「答えんか。恐怖の爪で引き裂かれる前に」
ハーピー「も、申し訳ございません! 獣王様!」ドゲザ
キングヒドラ「なぜ……謝る?」ドシン
ハーピー「卑しくも、このハーピー。ニンゲンに助けていただきました!」
ねずみモグラ「えぇっ⁉︎」
キングヒドラ「……」プルプル
ハーピー「嘘をつくこと違わず。いかような罰もお受けする所存でございます」
キングヒドラ「……よかろう。正直に話した貴様の誇り、たしかに受け取った」
ハーピー「はい、有り難く」
キングヒドラ「だが、罰を免除することは無理だ! ニンゲンに手助け⁉︎ ほどこしを受けただとぉおおおっ⁉︎」ゴォッ
ハーピー「……もし、機会をいただけるのであれば、万全の状態でやつを殺しとうございます」
【獣王城 玉座】
キングヒドラ「なにぃっ⁉︎ もう一度申せっ!!」
ねずみモグラ「オラじゃねぇっスよ~」ブンブン
キングヒドラ「それはわかってる! ハーピーがニンゲンの匂いをつけて帰ってきただとぉ⁉︎」ドガーーン
ねずみモグラ「ひぃ~っ」ガタガタ
キングヒドラ「ハーピーはどこだっ!!」
ねずみモグラ「今、巣に」
ハーピー「ただいま、戻りました。キングヒドラ様」スッ
キングヒドラ「……」ギロ
ねずみモグラ「はわわわわっ」ガタガタ
ハーピー「此度の件は」
キングヒドラ「仕事はどうした! 人語を喋れるお前を斥候(偵察のこと)にやった理由を言えぇいっ!!!」ピシャーン
ハーピー「人間どもの、勢力調査です」
キングヒドラ「それがなぜニンゲンの匂いをつけて帰ってくる!! プンプン臭うぞぉっ!!!」
ねずみモグラ「あ、あの、キングヒドラ様ぁ」
キングヒドラ「なんだっ⁉︎」ギロ
ねずみモグラ「もしかして、ハーピー様はニンゲンどもを殺してきたのでは? もともと、匂い自体はめずらしいことでは」
キングヒドラ「……そうなのか?」
ハーピー「……」
キングヒドラ「答えんか。恐怖の爪で引き裂かれる前に」
ハーピー「も、申し訳ございません! 獣王様!」ドゲザ
キングヒドラ「なぜ……謝る?」ドシン
ハーピー「卑しくも、このハーピー。ニンゲンに助けていただきました!」
ねずみモグラ「えぇっ⁉︎」
キングヒドラ「……」プルプル
ハーピー「嘘をつくこと違わず。いかような罰もお受けする所存でございます」
キングヒドラ「……よかろう。正直に話した貴様の誇り、たしかに受け取った」
ハーピー「はい、有り難く」
キングヒドラ「だが、罰を免除することは無理だ! ニンゲンに手助け⁉︎ ほどこしを受けただとぉおおおっ⁉︎」ゴォッ
ハーピー「……もし、機会をいただけるのであれば、万全の状態でやつを殺しとうございます」
80: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 19:49:51.46 :eL30j4//O
キングヒドラ「……なに?」ピクッ
ハーピー「実力を隠しているのやも。こちらが手負いとはいえ、まるで赤子同然でした」
キングヒドラ「ふむ。では、情けをかけられたということか? ニンゲンに?」
ハーピー「お恥ずかしい話ですが、そうなのでしょう。であれば、見過ごすはずがございません」
キングヒドラ「忌々しいッ!!」ドンッ
ねずみモグラ「玉座が壊れちゃうっスよぉ」
キングヒドラ「それで、相手は何人だ? 群れがやつらの特徴だ。五人か? 十人か?」
ハーピー「……一人で、ございます」
キングヒドラ「ひ、ひひひひひひっ⁉︎」
ハーピー「申し訳、ございません」
キングヒドラ「ひ、ひとぉおおおおりぃぃいいっ⁉︎」ピシャア
ねずみモグラ「火炎の息が漏れてるっス! あちっ! あちちっ!」アタフタ
キングヒドラ「出ていけッ!! 貴様など種族のツラ汚しだッ!!!」
ねずみモグラ「シワが増えるっすよ! もうニンゲンでいうとハタチ超えたオナゴなんですからキングヒドラ様も!」
キングヒドラ「だまぁああれぇぇっ!!」ゴォッ
ねずみモグラ「熱っ! あっちゃあっ!!」バタバタ
ハーピー「かしこまり、ました。それがお望みであれば」スッ
キングヒドラ「……なに?」ピクッ
ハーピー「実力を隠しているのやも。こちらが手負いとはいえ、まるで赤子同然でした」
キングヒドラ「ふむ。では、情けをかけられたということか? ニンゲンに?」
ハーピー「お恥ずかしい話ですが、そうなのでしょう。であれば、見過ごすはずがございません」
キングヒドラ「忌々しいッ!!」ドンッ
ねずみモグラ「玉座が壊れちゃうっスよぉ」
キングヒドラ「それで、相手は何人だ? 群れがやつらの特徴だ。五人か? 十人か?」
ハーピー「……一人で、ございます」
キングヒドラ「ひ、ひひひひひひっ⁉︎」
ハーピー「申し訳、ございません」
キングヒドラ「ひ、ひとぉおおおおりぃぃいいっ⁉︎」ピシャア
ねずみモグラ「火炎の息が漏れてるっス! あちっ! あちちっ!」アタフタ
キングヒドラ「出ていけッ!! 貴様など種族のツラ汚しだッ!!!」
ねずみモグラ「シワが増えるっすよ! もうニンゲンでいうとハタチ超えたオナゴなんですからキングヒドラ様も!」
キングヒドラ「だまぁああれぇぇっ!!」ゴォッ
ねずみモグラ「熱っ! あっちゃあっ!!」バタバタ
ハーピー「かしこまり、ました。それがお望みであれば」スッ
82: ◆7Ub330dMyM:2018/01/11(木) 20:41:25.64 :eL30j4//O
【山 中腹部 テント設営地】
戦士「薪はこんぐらいでいいな」カランカラン
魔法使い「メラ」ボッ
勇者「お前、チャッカマンみたいになってきてるなぁ」
魔法使い「なに? チャッカマンって?」
勇者「いや、知らなきゃいい」
僧侶「見てください勇者様ぁ~! アルデンテの村がもうあんなに小さく!」
勇者「おお、いい眺めだ」
魔法使い「戦士、そっちの地図とって」
戦士「ん」ヒョイ
魔法使い「えぇ~と」パサッ
戦士「真面目だよなぁ、魔法使い」
魔法使い「計画性なく行動するのが嫌いなの」
戦士「勇者も見習ったらどうだ」
勇者「お前もな」
戦士「な、なにをぅっ!」
魔法使い「現在地は、ここね。ダーマまでは半分もきてない、か……」
僧侶「それはそうですよぉ。村二つ通りすぎただけですしぃ~」
魔法使い「僧侶、陸路できたの?」
僧侶「そうですよぉ~?」
魔法使い「どうやって? こんな長い距離、襲ってくださいっていってるようなものじゃない」
僧侶「それはぁ、これのおかげです♪」
戦士「アイテムか?」
僧侶「とぉっても貴重なものでぇ、ゴスペルリングっていうんですよぉ」
魔法使い「どんな効果なの?」
僧侶「モンスターに出会わなくなっちゃいますぅ」
魔法使い「えっ⁉︎」
戦士「ほほー」
魔法使い「それって、国宝級のアイテムじゃない!」
僧侶「はい~。世界にひとつしかないアイテムだそうですよぉ」
魔法使い「よ、よくそんなの……」
僧侶「もちろん返納しますよ~。もともとは神殿の魔除けにと保管されていたアイテムですから~」
勇者「どれどれ? 見せてもらっていいか?」
僧侶「どうぞどうぞ~」スッ
勇者「ふぅ~ん。なんの変哲もないリングに見えるけどねぇ」
僧侶「編み込まれるものが特殊なんですよぉ。我々が身につけている装備品もそうですけどぉ」
魔法使い「杖、新調したいな」
勇者「メラしかやってないn」
魔法使い「なんかいった?」ギロ
勇者「このリングすごぉーい!」
戦士「次は山を越えたあたりにある。なかなかに大きいぞ」
勇者「そうなんか?」
戦士「あぁ、コロシアムで有名な街。マッスルタウンだ」
【山 中腹部 テント設営地】
戦士「薪はこんぐらいでいいな」カランカラン
魔法使い「メラ」ボッ
勇者「お前、チャッカマンみたいになってきてるなぁ」
魔法使い「なに? チャッカマンって?」
勇者「いや、知らなきゃいい」
僧侶「見てください勇者様ぁ~! アルデンテの村がもうあんなに小さく!」
勇者「おお、いい眺めだ」
魔法使い「戦士、そっちの地図とって」
戦士「ん」ヒョイ
魔法使い「えぇ~と」パサッ
戦士「真面目だよなぁ、魔法使い」
魔法使い「計画性なく行動するのが嫌いなの」
戦士「勇者も見習ったらどうだ」
勇者「お前もな」
戦士「な、なにをぅっ!」
魔法使い「現在地は、ここね。ダーマまでは半分もきてない、か……」
僧侶「それはそうですよぉ。村二つ通りすぎただけですしぃ~」
魔法使い「僧侶、陸路できたの?」
僧侶「そうですよぉ~?」
魔法使い「どうやって? こんな長い距離、襲ってくださいっていってるようなものじゃない」
僧侶「それはぁ、これのおかげです♪」
戦士「アイテムか?」
僧侶「とぉっても貴重なものでぇ、ゴスペルリングっていうんですよぉ」
魔法使い「どんな効果なの?」
僧侶「モンスターに出会わなくなっちゃいますぅ」
魔法使い「えっ⁉︎」
戦士「ほほー」
魔法使い「それって、国宝級のアイテムじゃない!」
僧侶「はい~。世界にひとつしかないアイテムだそうですよぉ」
魔法使い「よ、よくそんなの……」
僧侶「もちろん返納しますよ~。もともとは神殿の魔除けにと保管されていたアイテムですから~」
勇者「どれどれ? 見せてもらっていいか?」
僧侶「どうぞどうぞ~」スッ
勇者「ふぅ~ん。なんの変哲もないリングに見えるけどねぇ」
僧侶「編み込まれるものが特殊なんですよぉ。我々が身につけている装備品もそうですけどぉ」
魔法使い「杖、新調したいな」
勇者「メラしかやってないn」
魔法使い「なんかいった?」ギロ
勇者「このリングすごぉーい!」
戦士「次は山を越えたあたりにある。なかなかに大きいぞ」
勇者「そうなんか?」
戦士「あぁ、コロシアムで有名な街。マッスルタウンだ」
88: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 11:34:28.00 :9na26kBgO
【山頭頂部 付近】
手下「おやび~~ん! 間違いありやせん! あの煙は旅人のもんでさぁ!」
ガンダタ「ぐっふっふ。遠征から帰ってきたとたんにカモがのこのこやってくるとはツイてるぜぇ~」
手下「苦労して手に入れた稲妻のツルギを持ち逃げされやしたからねぇ」
ガンダタ「ばっ、それを言うなよ」
手下「俺たちの中から裏切り者がでるとは。1ヶ月の遠征の後、やっと見つけた塔で、しかも多数の負傷者を出して赤字……お給料もまともに払えないなんて」
ガンダタ「ぬっ、ぬぐぐ……!」
手下「動けるのは俺と、親分のみ……はぁ」
ガンダタ「ガタガタうるせえっ! 働いて補填したらいいんだろうが! 赤字分は!」ガンッ
手下「……働くしかないの間違いではないすか?」
ガンダタ「いいんだよ! 働くって分に変わりねぇんだから! 仕切り直し!」
手下「へい」シュン
ガンダタ「支度するぞ! 俺の斧持ってこい!」
手下「へいへい」
ガンダタ「へいは一回!」
手下「金目の物持ってるといいですねぇ」ゴソゴソ
ガンダタ「……ぐっふっふっ、飛んで火にいる夏の虫とはやつらのことよ。なぁ~に、金がなくても身体がある」
手下「奴隷として売り飛ばすんですかい? 老人じゃなきゃいいでやんすね」
ガンダタ「対面すりゃわかるこった。やつらが寝静まった時間を狙って……うっひっひっ」ニタァ
【山頭頂部 付近】
手下「おやび~~ん! 間違いありやせん! あの煙は旅人のもんでさぁ!」
ガンダタ「ぐっふっふ。遠征から帰ってきたとたんにカモがのこのこやってくるとはツイてるぜぇ~」
手下「苦労して手に入れた稲妻のツルギを持ち逃げされやしたからねぇ」
ガンダタ「ばっ、それを言うなよ」
手下「俺たちの中から裏切り者がでるとは。1ヶ月の遠征の後、やっと見つけた塔で、しかも多数の負傷者を出して赤字……お給料もまともに払えないなんて」
ガンダタ「ぬっ、ぬぐぐ……!」
手下「動けるのは俺と、親分のみ……はぁ」
ガンダタ「ガタガタうるせえっ! 働いて補填したらいいんだろうが! 赤字分は!」ガンッ
手下「……働くしかないの間違いではないすか?」
ガンダタ「いいんだよ! 働くって分に変わりねぇんだから! 仕切り直し!」
手下「へい」シュン
ガンダタ「支度するぞ! 俺の斧持ってこい!」
手下「へいへい」
ガンダタ「へいは一回!」
手下「金目の物持ってるといいですねぇ」ゴソゴソ
ガンダタ「……ぐっふっふっ、飛んで火にいる夏の虫とはやつらのことよ。なぁ~に、金がなくても身体がある」
手下「奴隷として売り飛ばすんですかい? 老人じゃなきゃいいでやんすね」
ガンダタ「対面すりゃわかるこった。やつらが寝静まった時間を狙って……うっひっひっ」ニタァ
89: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 12:25:51.41 :D1/b/IpBO
【魔法使い 夢の中】
魔法使い(母)「メラゾーマ!」ゴォッ
レッサーデビル「ウギャーッ!!」ドサリ
魔法使い「ママッ!」
魔法使い(母)「くっ、油断した」ドロ
魔法使い「血っ⁉︎ 腕から血が……っ!」
魔法使い(母)「よく聞きなさい。走って村の人達を呼んできて」
魔法使い「や、やだよ! こわいもん! ママ、いや! 離れたくない!」
魔法使い(母)「黙って聞くのッ!!」
魔法使い「……っ!」ビクゥ
魔法使い(母)「いつものお使いよ」ニコ
魔法使い「うっ、うぅっ、ぐすっ」ポロポロ
魔法使い(母)「私の心配なら平気。ね、大丈夫だから」
魔法使い「ほ、本当……?」
魔法使い(母)「ええ、もちろん! 来週、ピクニックに行くんでしょ?」
魔法使い「う、うん……」
魔法使い(母)「指、貸して」
キラーナイト「……」ウィーン
魔法使い「……はい」
魔法使い(母)「ゆぅ~びきり、げんまん♪」
魔法使い「ゆ、ゆびきりっ、げんまんっ!」
キラーナイト「タイショウヲ、マッサツ」ピピ
魔法使い(母)「さ、走れるわね?」
魔法使い「う、うん!」ゴシゴシ
魔法使い(母)「行きなさいッ! 振り向いちゃだめよ! 一生懸命走って!!」
魔法使い「わ、わかった! ママ、頑張って!」ダダダッ
魔法使い(母)「ふぅ……さぁ、かかってきなさい。ここから先へは一歩も通さないわよ……っ!」
【魔法使い 夢の中】
魔法使い(母)「メラゾーマ!」ゴォッ
レッサーデビル「ウギャーッ!!」ドサリ
魔法使い「ママッ!」
魔法使い(母)「くっ、油断した」ドロ
魔法使い「血っ⁉︎ 腕から血が……っ!」
魔法使い(母)「よく聞きなさい。走って村の人達を呼んできて」
魔法使い「や、やだよ! こわいもん! ママ、いや! 離れたくない!」
魔法使い(母)「黙って聞くのッ!!」
魔法使い「……っ!」ビクゥ
魔法使い(母)「いつものお使いよ」ニコ
魔法使い「うっ、うぅっ、ぐすっ」ポロポロ
魔法使い(母)「私の心配なら平気。ね、大丈夫だから」
魔法使い「ほ、本当……?」
魔法使い(母)「ええ、もちろん! 来週、ピクニックに行くんでしょ?」
魔法使い「う、うん……」
魔法使い(母)「指、貸して」
キラーナイト「……」ウィーン
魔法使い「……はい」
魔法使い(母)「ゆぅ~びきり、げんまん♪」
魔法使い「ゆ、ゆびきりっ、げんまんっ!」
キラーナイト「タイショウヲ、マッサツ」ピピ
魔法使い(母)「さ、走れるわね?」
魔法使い「う、うん!」ゴシゴシ
魔法使い(母)「行きなさいッ! 振り向いちゃだめよ! 一生懸命走って!!」
魔法使い「わ、わかった! ママ、頑張って!」ダダダッ
魔法使い(母)「ふぅ……さぁ、かかってきなさい。ここから先へは一歩も通さないわよ……っ!」
90: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 12:43:34.50 :D1/b/IpBO
【深夜 山 中腹部】
魔法使い「――……ママッ!!」ガバッ
戦士「……」チラ
魔法使い「あ、えっ? ここ……」
戦士「平気か? 随分とうなされていたみたいだが」
魔法使い「あぁ……」
戦士「まだ夜は深い。ゆっくり身体を休めておけ」
魔法使い「貴女は、寝なくて平気なの?」
戦士「あと二時間すれば勇者を起こす。代わり番で見張りだからな」
勇者「んがーっ、んがーっ」スヤスヤ
魔法使い「そういや、そうだったっけ」
戦士「昔の夢でも見てたのか」
魔法使い「はぁ……そんなところ。母様の夢」
戦士「……なにやら、仇と言ってたな」
魔法使い「私が小さい頃にね、魔物に殺されちゃったの。遺体は見つかってないけど」
戦士「そうか……」
魔法使い「火、小さくなってるね」カラン
戦士「あたしは慰めが苦手だ。月並み言葉だが、ご冥福をお祈りさせてもらおう」
魔法使い「いいんじゃない、ストレートで。変に飾るよりは好感が持てるわ」
戦士「これしかできないだけだよ」
魔法使い「……変わった勇者よね」チラ
勇者「むにゃむにゃ、もう食べられないのにぃ~」スピー
戦士「どうだかな……正直なところ、掴みきれてない」
魔法使い「どういう意味?」
戦士「曖昧なように感じる。まだ日が浅いが、メリハリというか、なんというか……言葉ではうまく説明できん」
魔法使い「なんで、モンスターなんかに肩入れするのかな……」
戦士「さてな。魔王を倒す旅はしているんだ、肩入れしようとやることさえやっときゃ問題ない」
【深夜 山 中腹部】
魔法使い「――……ママッ!!」ガバッ
戦士「……」チラ
魔法使い「あ、えっ? ここ……」
戦士「平気か? 随分とうなされていたみたいだが」
魔法使い「あぁ……」
戦士「まだ夜は深い。ゆっくり身体を休めておけ」
魔法使い「貴女は、寝なくて平気なの?」
戦士「あと二時間すれば勇者を起こす。代わり番で見張りだからな」
勇者「んがーっ、んがーっ」スヤスヤ
魔法使い「そういや、そうだったっけ」
戦士「昔の夢でも見てたのか」
魔法使い「はぁ……そんなところ。母様の夢」
戦士「……なにやら、仇と言ってたな」
魔法使い「私が小さい頃にね、魔物に殺されちゃったの。遺体は見つかってないけど」
戦士「そうか……」
魔法使い「火、小さくなってるね」カラン
戦士「あたしは慰めが苦手だ。月並み言葉だが、ご冥福をお祈りさせてもらおう」
魔法使い「いいんじゃない、ストレートで。変に飾るよりは好感が持てるわ」
戦士「これしかできないだけだよ」
魔法使い「……変わった勇者よね」チラ
勇者「むにゃむにゃ、もう食べられないのにぃ~」スピー
戦士「どうだかな……正直なところ、掴みきれてない」
魔法使い「どういう意味?」
戦士「曖昧なように感じる。まだ日が浅いが、メリハリというか、なんというか……言葉ではうまく説明できん」
魔法使い「なんで、モンスターなんかに肩入れするのかな……」
戦士「さてな。魔王を倒す旅はしているんだ、肩入れしようとやることさえやっときゃ問題ない」
91: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 12:57:02.37 :D1/b/IpBO
【中腹部 茂みの中】
手下「おぉ~! 親分! 暗がりでよく見えやせんが、ありゃ間違いなく上玉の女冒険者でっせ! ひぃ、ふぅ、みぃ、男のコブつきみたいですが、当たりですね!!」
ガンダタ「ほぉ~れ見ろ! こうやってな、女神様はきちーんと考えてくださるんだよ!」
手下「へ? か、考える?」
ガンダタ「女神様の声が聞こえるねぇ~。“あなた達は頑張ったのです。ご褒美をあげましょう”ってな~!!」
手下「いや、でも、それじゃ、そもそも稲妻のツルギを持ち逃げされないんじゃ」
ガンダタ「下げて上げるっつーのはまさにこのことよ! 落ち込んでる時に棚からぼた餅なくりゃ、いつも以上に有り難みがますってもんだろぉ~!」
手下「な、なるほど! さすが親分!」
ガンダタ「どれ、では早速」ガサガサ
手下「待ってください! 今は二人起きてるんでもうすこし様子を見ましょう!」
ガンダタ「あぁ? 女におくれをとるガンダタ様じゃねぇぞ!」
手下「俺だって疲れてるんすから! ろくに休みもらえなかったし!」
ガンダタ「うっ、そ、そうなんか?」
手下「ね? 無駄な労力を使わず、まだ時間はあるでやんす。もうちょっと様子見ましょうって」
ガンダタ「しょうがねぇなぁ」
【中腹部 茂みの中】
手下「おぉ~! 親分! 暗がりでよく見えやせんが、ありゃ間違いなく上玉の女冒険者でっせ! ひぃ、ふぅ、みぃ、男のコブつきみたいですが、当たりですね!!」
ガンダタ「ほぉ~れ見ろ! こうやってな、女神様はきちーんと考えてくださるんだよ!」
手下「へ? か、考える?」
ガンダタ「女神様の声が聞こえるねぇ~。“あなた達は頑張ったのです。ご褒美をあげましょう”ってな~!!」
手下「いや、でも、それじゃ、そもそも稲妻のツルギを持ち逃げされないんじゃ」
ガンダタ「下げて上げるっつーのはまさにこのことよ! 落ち込んでる時に棚からぼた餅なくりゃ、いつも以上に有り難みがますってもんだろぉ~!」
手下「な、なるほど! さすが親分!」
ガンダタ「どれ、では早速」ガサガサ
手下「待ってください! 今は二人起きてるんでもうすこし様子を見ましょう!」
ガンダタ「あぁ? 女におくれをとるガンダタ様じゃねぇぞ!」
手下「俺だって疲れてるんすから! ろくに休みもらえなかったし!」
ガンダタ「うっ、そ、そうなんか?」
手下「ね? 無駄な労力を使わず、まだ時間はあるでやんす。もうちょっと様子見ましょうって」
ガンダタ「しょうがねぇなぁ」
92: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 13:19:36.41 :D1/b/IpBO
【再び テント設営地】
勇者「……んー」ムク
魔法使い「……? 起きたの?」
戦士「交代には、まだ」
勇者「ネズミがいるな」
魔法使い「ネズミ……? こんなとこに? どこよ」キョロキョロ
勇者「ふぁ~ぁ」コキパキ
戦士「ネズミだったら非常食にとっておきたいんだが」キョロキョロ
勇者「目が覚めた。戦士、交代すっか」
戦士「いや、あたしは」
勇者「俺は目が覚めたって言ったろ? どうせ起きてる。なら眠いやつが寝ておけばいい」
魔法使い「私も目が覚めたし、戦士は休んで大丈夫」
戦士「む、そうか? ならお言葉に甘えて」
勇者「お前もだよ、魔法使い」
魔法使い「え? 私は、べつに」
勇者「夢を見る睡眠ってのは案外浅いもんだ。明日に疲れを蓄積させるな」
戦士「……起きてたのか?」
勇者「いや、あの」
魔法使い「狸寝入りしてたの? キメきれないやつねぇ」
戦士「ふっ、まったくだ。言わなければわからないものを」
勇者「……入っちゃまずい雰囲気かなーと思って」
魔法使い「余計な気は使わない方がいいわよ。自然体でいること」
戦士「起きてるならあたしは休むぞ。マヌケな勇者様ひとりじゃないみたいだからな」ゴソゴソ
勇者「う、うぅ。二枚目キャラになりたい」
魔法使い「だったら空気を読み違えないように」
勇者「へい」
魔法使い「ふざけてばっかりなんだから」
勇者「オホホ、お花をつみに行ってまいりますわ」
魔法使い「くっ、この、ヘンテコ勇者」
勇者「寝たくなったら寝てていいからさ。母さん、生きてるといいな」ポンッ
魔法使い「何言ってるのよ。母様は死んだの」
勇者「遺体は見つかってないんだろ?」
魔法使い「はぁ……あのねぇ、いくら探し回ったか知らないでしょ。生きてるなら帰ってくる」
勇者「……」
魔法使い「ありもしない希望にすがるのは、やめたのよ」
勇者「それなら俺がお前のかわりに祈っておいてやるよ」
魔法使い「いい加減に」
勇者「勝手だろ、誰かひとりぐらいいたっていいじゃないか。そう願う者が」
魔法使い「……好きにしたら」
勇者「あぁ、てなわけで、ラリホー」ポワァ
魔法使い「えっ、な、なに、を……」
勇者「朝までゆっくりしてろ」スッ
【再び テント設営地】
勇者「……んー」ムク
魔法使い「……? 起きたの?」
戦士「交代には、まだ」
勇者「ネズミがいるな」
魔法使い「ネズミ……? こんなとこに? どこよ」キョロキョロ
勇者「ふぁ~ぁ」コキパキ
戦士「ネズミだったら非常食にとっておきたいんだが」キョロキョロ
勇者「目が覚めた。戦士、交代すっか」
戦士「いや、あたしは」
勇者「俺は目が覚めたって言ったろ? どうせ起きてる。なら眠いやつが寝ておけばいい」
魔法使い「私も目が覚めたし、戦士は休んで大丈夫」
戦士「む、そうか? ならお言葉に甘えて」
勇者「お前もだよ、魔法使い」
魔法使い「え? 私は、べつに」
勇者「夢を見る睡眠ってのは案外浅いもんだ。明日に疲れを蓄積させるな」
戦士「……起きてたのか?」
勇者「いや、あの」
魔法使い「狸寝入りしてたの? キメきれないやつねぇ」
戦士「ふっ、まったくだ。言わなければわからないものを」
勇者「……入っちゃまずい雰囲気かなーと思って」
魔法使い「余計な気は使わない方がいいわよ。自然体でいること」
戦士「起きてるならあたしは休むぞ。マヌケな勇者様ひとりじゃないみたいだからな」ゴソゴソ
勇者「う、うぅ。二枚目キャラになりたい」
魔法使い「だったら空気を読み違えないように」
勇者「へい」
魔法使い「ふざけてばっかりなんだから」
勇者「オホホ、お花をつみに行ってまいりますわ」
魔法使い「くっ、この、ヘンテコ勇者」
勇者「寝たくなったら寝てていいからさ。母さん、生きてるといいな」ポンッ
魔法使い「何言ってるのよ。母様は死んだの」
勇者「遺体は見つかってないんだろ?」
魔法使い「はぁ……あのねぇ、いくら探し回ったか知らないでしょ。生きてるなら帰ってくる」
勇者「……」
魔法使い「ありもしない希望にすがるのは、やめたのよ」
勇者「それなら俺がお前のかわりに祈っておいてやるよ」
魔法使い「いい加減に」
勇者「勝手だろ、誰かひとりぐらいいたっていいじゃないか。そう願う者が」
魔法使い「……好きにしたら」
勇者「あぁ、てなわけで、ラリホー」ポワァ
魔法使い「えっ、な、なに、を……」
勇者「朝までゆっくりしてろ」スッ
93: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 14:57:20.31 :cIisLjGgO
【茂みの中】
手下「絶好の機会でやんす! コブの男どっかいきやしたぜ!」
ガンダタ「他も寝静まったみてぇだな」
手下「ラクな仕事すぎて小躍りしそうっすよ!」
手下?「親分! お待たせしました!」ガサゴソ
ガンダタ「おっ? お、おめぇ?」
手下「(青い布つけてるやついたっけ?)」
手下?「ひどいですよぉ~置いてくなんて! それで、なにをするんですか?」
ガンダタ「……まぁ、いいか。あそこで寝てるやつらを縛るんだ」
手下?「盗みですかい?」
ガンダタ「あったりめーよ! 身ぐるみ剥いで女は上玉みてぇだからな、高く売れそうだ」
手下?「なぁ~るほど! 良い値で売れるといいですね!」
手下「大丈夫でやんす! マッスルタウンに富豪がいるっすから! ……ん? 知らないんでやんすか?」
手下?「知ってますよ! あの富豪さんでしょ!」
手下「でげすでげす! 成金趣味の嫌ぁ~な感じのやつっすけど、上客には違いねぇっす! 親分、男はどうしやす?」
ガンダタ「あいつは奴隷商に売りとばそう」
手下?「奴隷商人っていうと、あのお方ですかい?」
ガンダタ「ああ、隣国でなにやら建設してるらしくてな。力仕事をするやつを探してる」
手下「女がひとり、十万ゴールドとして……いや、もっといけるかもしんねぇでやんすな!」
手下?「ところで親分! 他の手下はどちらへ?」
ガンダタ「あ? お前が今来た頂上の洞穴だろーが。山賊が、勉強できねぇのは仕方ねぇけどよ、それぐらい覚えろよ」
手下?「でっへっへ。すみません」
手下「準備はいいすか?」ガサガサ
ガンダタ「ああ、いつでも……」ガサガサ
手下「とつげきぃぃ………うふん」コテ
ガンダタ「気色わりぃな。……おい。……あ? おい?」クルッ
手下?「ラリホー」ポワァ
ガンダタ「あふん」コテ
手下?「……残るは山頂の洞穴だっけ」
ガンダタ「ぬ……っ! 睡眠、魔法……っ!」
手下?「親分、まだ意識あるんですか?」ヌギヌギ
ガンダタ「おのれ……! 稲妻のツルギを奪られた時と同じパターンか」ガク
手下?「稲妻のツルギ……あぁ、ニセモノ勇者の親玉だったのか」ヌギッ
勇者「……うぇっぷ、口の中に髪の毛はいっちった。ペッペッ」
【茂みの中】
手下「絶好の機会でやんす! コブの男どっかいきやしたぜ!」
ガンダタ「他も寝静まったみてぇだな」
手下「ラクな仕事すぎて小躍りしそうっすよ!」
手下?「親分! お待たせしました!」ガサゴソ
ガンダタ「おっ? お、おめぇ?」
手下「(青い布つけてるやついたっけ?)」
手下?「ひどいですよぉ~置いてくなんて! それで、なにをするんですか?」
ガンダタ「……まぁ、いいか。あそこで寝てるやつらを縛るんだ」
手下?「盗みですかい?」
ガンダタ「あったりめーよ! 身ぐるみ剥いで女は上玉みてぇだからな、高く売れそうだ」
手下?「なぁ~るほど! 良い値で売れるといいですね!」
手下「大丈夫でやんす! マッスルタウンに富豪がいるっすから! ……ん? 知らないんでやんすか?」
手下?「知ってますよ! あの富豪さんでしょ!」
手下「でげすでげす! 成金趣味の嫌ぁ~な感じのやつっすけど、上客には違いねぇっす! 親分、男はどうしやす?」
ガンダタ「あいつは奴隷商に売りとばそう」
手下?「奴隷商人っていうと、あのお方ですかい?」
ガンダタ「ああ、隣国でなにやら建設してるらしくてな。力仕事をするやつを探してる」
手下「女がひとり、十万ゴールドとして……いや、もっといけるかもしんねぇでやんすな!」
手下?「ところで親分! 他の手下はどちらへ?」
ガンダタ「あ? お前が今来た頂上の洞穴だろーが。山賊が、勉強できねぇのは仕方ねぇけどよ、それぐらい覚えろよ」
手下?「でっへっへ。すみません」
手下「準備はいいすか?」ガサガサ
ガンダタ「ああ、いつでも……」ガサガサ
手下「とつげきぃぃ………うふん」コテ
ガンダタ「気色わりぃな。……おい。……あ? おい?」クルッ
手下?「ラリホー」ポワァ
ガンダタ「あふん」コテ
手下?「……残るは山頂の洞穴だっけ」
ガンダタ「ぬ……っ! 睡眠、魔法……っ!」
手下?「親分、まだ意識あるんですか?」ヌギヌギ
ガンダタ「おのれ……! 稲妻のツルギを奪られた時と同じパターンか」ガク
手下?「稲妻のツルギ……あぁ、ニセモノ勇者の親玉だったのか」ヌギッ
勇者「……うぇっぷ、口の中に髪の毛はいっちった。ペッペッ」
94: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 15:23:47.48 :cIisLjGgO
【頂上 洞穴】
勇者「タウンワークはここにおいて……これでよし、と」パンパン
手下達「」スヤァ
勇者「お前らもお前らなりに理由があって仕事してんだろうけど、見過ごしたら被害者出続けるだろうからな。別の仕事見つけてくれ」
手下達「」スヤァ
勇者「……聞こえてないか。あー、肩凝った。ロープで縛るのもラクじゃないなぁ」ドサッ
ガンダタ「う……」ピク
勇者「もうお目覚め?」
ガンダタ「う、うぅっ……はっ! こ、ここは」
勇者「アジトでーす!」
ガンダタ「お、おめぇ! どういうことだ……そうだ、おりゃあ眠らされて」
勇者「耐性が少しはあるみたいだな。さすが親分ってとこか」
ガンダタ「むぉっ⁉︎ いつのまに縛りつけやがった!」
勇者「疲れたわー、親分マッチョだから、ここまで担いで運ぶの」
ガンダタ「おめぇら! 目を覚ましやがれ!」
手下達「」スヤァ
勇者「ねぇねぇ、なんで山賊なんかやってんの?」
ガンダタ「……くっ、不覚。ちくしょう」ガクッ
勇者「おやぶーん!」
ガンダタ「お前手下じゃねぇだろ!」
勇者「シカトすんなや!」
ガンダタ「ちっ、やってる理由なんて社会に適合できねぇからに決まってんだろ。ルールってやつが嫌いなのよ、俺たちゃ」
勇者「わかる! すっごぉーくわかる!」
ガンダタ「な、なんだ?」
勇者「ルールなんてかったくるしいもん俺も大嫌いでさぁ!」ポンポン
ガンダタ「なら、この縄を」
勇者「それは断る」
ガンダタ「……」
勇者「一緒にニートにならない?」
ガンダタ「ニートだと?」
勇者「イエスニート! 無職、遊び人、くぅ~、いい響きだわー! 何者にも縛られずフリーって!」
ガンダタ「どうやって食ってくんだよ、アホか」
勇者「違うの? 要するに、誰かに押し付けられるのが嫌なんだろ? ルールとか型とかにハメられてさ」
ガンダタ「まぁ……」
勇者「アゴでこき使われるのが嫌なだけで、やりたくないわけじゃないもんな? 山賊だってこうして働いてるわけだし?」
ガンダタ「いや、そりゃそうだが」
勇者「残念だわ。せっかくニート仲間が増えるかと思ったのに。なんだよ、真面目かよ」
ガンダタ「山賊に真面目って、お前、頭おかしいんじゃねぇのか」
【頂上 洞穴】
勇者「タウンワークはここにおいて……これでよし、と」パンパン
手下達「」スヤァ
勇者「お前らもお前らなりに理由があって仕事してんだろうけど、見過ごしたら被害者出続けるだろうからな。別の仕事見つけてくれ」
手下達「」スヤァ
勇者「……聞こえてないか。あー、肩凝った。ロープで縛るのもラクじゃないなぁ」ドサッ
ガンダタ「う……」ピク
勇者「もうお目覚め?」
ガンダタ「う、うぅっ……はっ! こ、ここは」
勇者「アジトでーす!」
ガンダタ「お、おめぇ! どういうことだ……そうだ、おりゃあ眠らされて」
勇者「耐性が少しはあるみたいだな。さすが親分ってとこか」
ガンダタ「むぉっ⁉︎ いつのまに縛りつけやがった!」
勇者「疲れたわー、親分マッチョだから、ここまで担いで運ぶの」
ガンダタ「おめぇら! 目を覚ましやがれ!」
手下達「」スヤァ
勇者「ねぇねぇ、なんで山賊なんかやってんの?」
ガンダタ「……くっ、不覚。ちくしょう」ガクッ
勇者「おやぶーん!」
ガンダタ「お前手下じゃねぇだろ!」
勇者「シカトすんなや!」
ガンダタ「ちっ、やってる理由なんて社会に適合できねぇからに決まってんだろ。ルールってやつが嫌いなのよ、俺たちゃ」
勇者「わかる! すっごぉーくわかる!」
ガンダタ「な、なんだ?」
勇者「ルールなんてかったくるしいもん俺も大嫌いでさぁ!」ポンポン
ガンダタ「なら、この縄を」
勇者「それは断る」
ガンダタ「……」
勇者「一緒にニートにならない?」
ガンダタ「ニートだと?」
勇者「イエスニート! 無職、遊び人、くぅ~、いい響きだわー! 何者にも縛られずフリーって!」
ガンダタ「どうやって食ってくんだよ、アホか」
勇者「違うの? 要するに、誰かに押し付けられるのが嫌なんだろ? ルールとか型とかにハメられてさ」
ガンダタ「まぁ……」
勇者「アゴでこき使われるのが嫌なだけで、やりたくないわけじゃないもんな? 山賊だってこうして働いてるわけだし?」
ガンダタ「いや、そりゃそうだが」
勇者「残念だわ。せっかくニート仲間が増えるかと思ったのに。なんだよ、真面目かよ」
ガンダタ「山賊に真面目って、お前、頭おかしいんじゃねぇのか」
95: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 15:40:40.39 :cIisLjGgO
勇者「ここから西にいけば、アデルの城がある。知ってるだろ?」
ガンダタ「ああ」
勇者「そこに行ってこれを見せたらいいよ」スッ
ガンダタ「……銀細工か?」
勇者「大工の仕事ならあると思うから」
ガンダタ「おい、ガキ。俺を舐めてんのか?」ギロ
勇者「ベロベロバーー!」
ガンダタ「……」
勇者「そんな姿で凄んでもだめだっての。ああ、別に売っちまってもいいから」
ガンダタ「なにがしてぇんだよ、お前」
勇者「俺は俺の好きなようにやってるだけ。親分と一緒」
ガンダタ「性善説とか信じてるクチか?」
勇者「そうでもない。理由を求めてんの? 俺を型にハメようとしてらっしゃる?」
ガンダタ「……」
勇者「おやぶーん、それじゃ筋が通りませんよー」
ガンダタ「からかってるだけか」
勇者「だから、そういうのだよ。自分の中だけで完結すんな」
ガンダタ「……」
勇者「あんたらは負け犬なんかじゃねぇ、社会不適合でもねぇ。……俺がやってるのも人助けでもなく、ただの自己満だ」
ガンダタ「クッ、そうか」
勇者「説教じゃねぇからな? ただ、理解してないようだったから説明した」
ガンダタ「ふん」
勇者「決めるのはあんた達だ。いつまでもその日暮らしのこんな生活できるもんじゃねぇぞ」
ガンダタ「……」
勇者「今が楽しいならいいんだけどさ」スタスタ
ガンダタ「おい、どこに行く! 縄を解いていけ!」
勇者「やーなこった。自分でなんとかしろ」
ガンダタ「小僧! ちょ、待て! 待ってぇー!」
勇者「ここから西にいけば、アデルの城がある。知ってるだろ?」
ガンダタ「ああ」
勇者「そこに行ってこれを見せたらいいよ」スッ
ガンダタ「……銀細工か?」
勇者「大工の仕事ならあると思うから」
ガンダタ「おい、ガキ。俺を舐めてんのか?」ギロ
勇者「ベロベロバーー!」
ガンダタ「……」
勇者「そんな姿で凄んでもだめだっての。ああ、別に売っちまってもいいから」
ガンダタ「なにがしてぇんだよ、お前」
勇者「俺は俺の好きなようにやってるだけ。親分と一緒」
ガンダタ「性善説とか信じてるクチか?」
勇者「そうでもない。理由を求めてんの? 俺を型にハメようとしてらっしゃる?」
ガンダタ「……」
勇者「おやぶーん、それじゃ筋が通りませんよー」
ガンダタ「からかってるだけか」
勇者「だから、そういうのだよ。自分の中だけで完結すんな」
ガンダタ「……」
勇者「あんたらは負け犬なんかじゃねぇ、社会不適合でもねぇ。……俺がやってるのも人助けでもなく、ただの自己満だ」
ガンダタ「クッ、そうか」
勇者「説教じゃねぇからな? ただ、理解してないようだったから説明した」
ガンダタ「ふん」
勇者「決めるのはあんた達だ。いつまでもその日暮らしのこんな生活できるもんじゃねぇぞ」
ガンダタ「……」
勇者「今が楽しいならいいんだけどさ」スタスタ
ガンダタ「おい、どこに行く! 縄を解いていけ!」
勇者「やーなこった。自分でなんとかしろ」
ガンダタ「小僧! ちょ、待て! 待ってぇー!」
96: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 15:58:56.98 :cIisLjGgO
【山 中腹部 テント設営地】
子供『あ、勇者くんだぁー! あそぼー!』
勇者(少年)『う、うんっ! へへっ!』
親『だめよ、勇者くんにもし怪我でもあったら』
勇者(少年)『えっ』
子供『……あ、うん。わかった』
勇者(少年)『ぼ、僕なら大丈夫だよ! ほら、こんなに丈夫なんだ!』バンバン
大人達『さすが勇者! すごいねぇー!』
勇者(少年)『ち、違うよ、僕、すごくなんか、ないよ。普通だよ』
大人達『勇者っ! 勇者っ! 勇者っ! 勇者っ!』パチパチ
兵士『頑張れよ、勇者』
勇者(少年)『僕、勇者ってだけじゃないよ、普通の、普通の……』
王様『勇者よ』
勇者『勇者っていうのやめてよっ! ……僕を……見てよ……』
勇者「――……嫌なこと、思い出したな」
【山 中腹部 テント設営地】
子供『あ、勇者くんだぁー! あそぼー!』
勇者(少年)『う、うんっ! へへっ!』
親『だめよ、勇者くんにもし怪我でもあったら』
勇者(少年)『えっ』
子供『……あ、うん。わかった』
勇者(少年)『ぼ、僕なら大丈夫だよ! ほら、こんなに丈夫なんだ!』バンバン
大人達『さすが勇者! すごいねぇー!』
勇者(少年)『ち、違うよ、僕、すごくなんか、ないよ。普通だよ』
大人達『勇者っ! 勇者っ! 勇者っ! 勇者っ!』パチパチ
兵士『頑張れよ、勇者』
勇者(少年)『僕、勇者ってだけじゃないよ、普通の、普通の……』
王様『勇者よ』
勇者『勇者っていうのやめてよっ! ……僕を……見てよ……』
勇者「――……嫌なこと、思い出したな」
97: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 16:12:35.90 :cIisLjGgO
【翌朝 テント設営地】
僧侶「う、うぅ~ん、よく眠れましたぁ~」ノビー
勇者「おはよ」
僧侶「おはよーございますぅ~」
勇者「戦士と魔法使いもそろそろ起こしてやれ」
僧侶「はい~。戦士さん、戦士さん」ユサユサ
戦士「ん、んぅ」
僧侶「魔法使いさん、魔法使いさん」ユサユサ
魔法使い「ん……」
僧侶「ずっと起きていらっしゃったんですかぁ? 交代いたしましたのに~」
勇者「今日はたまたまだ。次は言われなくても起こすよ」
僧侶「……? なにか、あったんですかぁ? 膝のところやぶれてますが~」
勇者「あら? おしっこする時にひっかけちゃったのかな?」
戦士「ふぁ~ぁ、なんだ、もう朝かぁ」
僧侶「あ、おはようございますぅ」
戦士「やけにぐっすり眠れた気がするな。深い眠りは久しぶりだ」
魔法使い「……んにゅ」
勇者「ヨダレぐらいふけよ」
魔法使い「ふぁ? ……っ⁉︎」ゴシゴシ
勇者「みんな、よく眠れたようでなによりだ。朝メシを食ったら出発する」
魔法使い「あれ、昨日、いつのまに寝たんだったっけ……」
【翌朝 テント設営地】
僧侶「う、うぅ~ん、よく眠れましたぁ~」ノビー
勇者「おはよ」
僧侶「おはよーございますぅ~」
勇者「戦士と魔法使いもそろそろ起こしてやれ」
僧侶「はい~。戦士さん、戦士さん」ユサユサ
戦士「ん、んぅ」
僧侶「魔法使いさん、魔法使いさん」ユサユサ
魔法使い「ん……」
僧侶「ずっと起きていらっしゃったんですかぁ? 交代いたしましたのに~」
勇者「今日はたまたまだ。次は言われなくても起こすよ」
僧侶「……? なにか、あったんですかぁ? 膝のところやぶれてますが~」
勇者「あら? おしっこする時にひっかけちゃったのかな?」
戦士「ふぁ~ぁ、なんだ、もう朝かぁ」
僧侶「あ、おはようございますぅ」
戦士「やけにぐっすり眠れた気がするな。深い眠りは久しぶりだ」
魔法使い「……んにゅ」
勇者「ヨダレぐらいふけよ」
魔法使い「ふぁ? ……っ⁉︎」ゴシゴシ
勇者「みんな、よく眠れたようでなによりだ。朝メシを食ったら出発する」
魔法使い「あれ、昨日、いつのまに寝たんだったっけ……」
98: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 17:14:37.75 :cIisLjGgO
【コロシアムの街 マッスルタウン】
傭兵「シェイシェイハ!! シェイハッ!! シェシェイ!! ハァーッシェイ!!」ブンブン
勇者「……でるゲーム間違えてね?」
魔法使い「あいかわらずむさくるしい街ねぇ~」
戦士「いいじゃないか! この熱気! 溢れ出る闘志!」ウズウズ
魔法使い「脳筋って仲間意識あんのね」
僧侶「出店もたくさんありますよぉ~」
勇者「なぁ、戦士」
戦士「どうした?」
勇者「コロシアムって毎日やってんの?」
戦士「ああ。なにしろここの財源だからな。元締めは癒着があると黒い噂があるが」
勇者「ふーん」
魔法使い「財源なんて、ただのギャンブルでしょ」
戦士「それは否定できない。誰が勝つかを予想して観客は一喜一憂するわけだからな。金がかかるから見てる方も熱くなる」
僧侶「勇者さまぁ、フランクフルト売ってますよぉ」
勇者「食べたら?」
僧侶「私に食べろって言うんですかぁ? フランクフルトを~」
魔法使い「公衆の面前で痴女ってんじゃないわよ!」スパーン
僧侶「はうぅ」
勇者「……あそこの上にあるのは?」
戦士「あれか? あれは優勝者に贈られる品物だ」
勇者「なになに……イーリスの杖、か」
魔法使い「えっ⁉︎ うそっ⁉︎」
戦士「魔法職の杖が賞品なんてめずらしいな」
魔法使い「……」ジィー
戦士「レアなのか? あれ」
魔法使い「かなり! 魔力を消費せずにピオリムが放てるのよ!」キラキラ
戦士「ピオリム……素早さを上げる魔法か」
僧侶「イーリス。ギリシア神話の虹の女神、あるいはギリシア語で虹……キレイな形状してますねぇ」
魔法使い「……」チラ
戦士「自分の杖見つめて……比べてるのか」
魔法使い「い、いいでしょ別に!」
戦士「余計ひもじい思いするだけだぞ」
【コロシアムの街 マッスルタウン】
傭兵「シェイシェイハ!! シェイハッ!! シェシェイ!! ハァーッシェイ!!」ブンブン
勇者「……でるゲーム間違えてね?」
魔法使い「あいかわらずむさくるしい街ねぇ~」
戦士「いいじゃないか! この熱気! 溢れ出る闘志!」ウズウズ
魔法使い「脳筋って仲間意識あんのね」
僧侶「出店もたくさんありますよぉ~」
勇者「なぁ、戦士」
戦士「どうした?」
勇者「コロシアムって毎日やってんの?」
戦士「ああ。なにしろここの財源だからな。元締めは癒着があると黒い噂があるが」
勇者「ふーん」
魔法使い「財源なんて、ただのギャンブルでしょ」
戦士「それは否定できない。誰が勝つかを予想して観客は一喜一憂するわけだからな。金がかかるから見てる方も熱くなる」
僧侶「勇者さまぁ、フランクフルト売ってますよぉ」
勇者「食べたら?」
僧侶「私に食べろって言うんですかぁ? フランクフルトを~」
魔法使い「公衆の面前で痴女ってんじゃないわよ!」スパーン
僧侶「はうぅ」
勇者「……あそこの上にあるのは?」
戦士「あれか? あれは優勝者に贈られる品物だ」
勇者「なになに……イーリスの杖、か」
魔法使い「えっ⁉︎ うそっ⁉︎」
戦士「魔法職の杖が賞品なんてめずらしいな」
魔法使い「……」ジィー
戦士「レアなのか? あれ」
魔法使い「かなり! 魔力を消費せずにピオリムが放てるのよ!」キラキラ
戦士「ピオリム……素早さを上げる魔法か」
僧侶「イーリス。ギリシア神話の虹の女神、あるいはギリシア語で虹……キレイな形状してますねぇ」
魔法使い「……」チラ
戦士「自分の杖見つめて……比べてるのか」
魔法使い「い、いいでしょ別に!」
戦士「余計ひもじい思いするだけだぞ」
99: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 17:32:15.32 :cIisLjGgO
【マッスルタウン 宿屋】
勇者「なんか一気に物価あがった気がするんだが? 一泊30ゴールドって」
戦士「しかたないよ。そういうもんだ」
僧侶「幸い団体部屋も同じ料金でしたしぃ~。よしとしましょう~」
魔法使い「次はいつ出発すんの?」
勇者「明日の朝かな」
戦士「なっ⁉︎ おいおい、この街に立ち寄って観戦してかないのか?」
勇者「なにが悲しくて男同士の殴り合いを見なきゃいかんのよ」
戦士「女もでるぞ」
勇者「あ、そうなの?」
戦士「当たり前だ。重要なのは強さであって性別ではない。証拠に今のチャンピオンも女だそうだ」
勇者「へー、そりゃすんごい」
僧侶「文字通り、男顔負けって感じですねぇ~」
戦士「是非! 一度手合わせしてみたい!」キラキラ
魔法使い「戦士がでたら?」
戦士「……そうしたいのはやまやまなんだがなぁ。事前申請が必要で、エントリーまでに一週間もかかるんだよ」
魔法使い「そ、そんなに……」ガックシ
勇者「お前今、杖手に入るかもって期待したろ」
僧侶「やっぱり職業は戦士さんなんですかぁ?」
戦士「いいや……武闘家みたいだ」
【マッスルタウン 宿屋】
勇者「なんか一気に物価あがった気がするんだが? 一泊30ゴールドって」
戦士「しかたないよ。そういうもんだ」
僧侶「幸い団体部屋も同じ料金でしたしぃ~。よしとしましょう~」
魔法使い「次はいつ出発すんの?」
勇者「明日の朝かな」
戦士「なっ⁉︎ おいおい、この街に立ち寄って観戦してかないのか?」
勇者「なにが悲しくて男同士の殴り合いを見なきゃいかんのよ」
戦士「女もでるぞ」
勇者「あ、そうなの?」
戦士「当たり前だ。重要なのは強さであって性別ではない。証拠に今のチャンピオンも女だそうだ」
勇者「へー、そりゃすんごい」
僧侶「文字通り、男顔負けって感じですねぇ~」
戦士「是非! 一度手合わせしてみたい!」キラキラ
魔法使い「戦士がでたら?」
戦士「……そうしたいのはやまやまなんだがなぁ。事前申請が必要で、エントリーまでに一週間もかかるんだよ」
魔法使い「そ、そんなに……」ガックシ
勇者「お前今、杖手に入るかもって期待したろ」
僧侶「やっぱり職業は戦士さんなんですかぁ?」
戦士「いいや……武闘家みたいだ」
100: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 17:43:31.40 :cIisLjGgO
【マッスルタウン 路地裏】
武闘家「あちょお~~~っ!! あたっ!!」バキッ
暴漢「ぐぇっ」ドサ
町娘「あ、ありがとうございました。危ないところを……」
武闘家「……ほら。次は気をつけなよ」スッ
町娘「ありがとうございます、ありがとうございます」ペコペコ
武闘家「それじゃ、アタイはこれで」
町娘「あ、あのっ! 質問が、あるんですけど……」
武闘家「ん?」
町娘「現チャンピオンの武闘家さんですよね⁉︎」
武闘家「そうだけど、っ、わぁっ⁉︎」
町娘「ファンなんです! まさかこんなところで会えるなんて、しかも助けてもらって……あぁ、感激ッ!!」
武闘家「あ、あはは~……そ、そう」タジ
町娘「握手してもらっていいですか⁉︎」
武闘家「いいけど……」スッ
町娘「一生洗えない、この手」ギュゥ
武闘家「いや、手は洗いなよ」
町娘「あぁ……」ウットリ
武闘家「うっ……ね、ねぇ、ちょっと、もういいだろ? 手を離してくれない?」
町娘「こ、興奮しすぎちゃって……はぁ、はぁ……」
武闘家「な、なんで息が荒くなるのかなぁ~」
町娘「ぶ、武闘家さん、私、もう……っ!!」
武闘家「ストップ!! それ以上迫ってきたら正拳突きをお見舞いするよ!」
町娘「す、すみません」シュン
武闘家「はぁ……」
老人「これ! こんなところでなにをほっつき歩いてるアル!」
武闘家「し、師匠。助かったぁ」ホッ
老人「道草くってないでいくアルヨ」
武闘家「はい! ただいま!」タタタッ
町娘「武闘家さん、女性なのにさわやかで、ポニーテールが素敵……」
【マッスルタウン 路地裏】
武闘家「あちょお~~~っ!! あたっ!!」バキッ
暴漢「ぐぇっ」ドサ
町娘「あ、ありがとうございました。危ないところを……」
武闘家「……ほら。次は気をつけなよ」スッ
町娘「ありがとうございます、ありがとうございます」ペコペコ
武闘家「それじゃ、アタイはこれで」
町娘「あ、あのっ! 質問が、あるんですけど……」
武闘家「ん?」
町娘「現チャンピオンの武闘家さんですよね⁉︎」
武闘家「そうだけど、っ、わぁっ⁉︎」
町娘「ファンなんです! まさかこんなところで会えるなんて、しかも助けてもらって……あぁ、感激ッ!!」
武闘家「あ、あはは~……そ、そう」タジ
町娘「握手してもらっていいですか⁉︎」
武闘家「いいけど……」スッ
町娘「一生洗えない、この手」ギュゥ
武闘家「いや、手は洗いなよ」
町娘「あぁ……」ウットリ
武闘家「うっ……ね、ねぇ、ちょっと、もういいだろ? 手を離してくれない?」
町娘「こ、興奮しすぎちゃって……はぁ、はぁ……」
武闘家「な、なんで息が荒くなるのかなぁ~」
町娘「ぶ、武闘家さん、私、もう……っ!!」
武闘家「ストップ!! それ以上迫ってきたら正拳突きをお見舞いするよ!」
町娘「す、すみません」シュン
武闘家「はぁ……」
老人「これ! こんなところでなにをほっつき歩いてるアル!」
武闘家「し、師匠。助かったぁ」ホッ
老人「道草くってないでいくアルヨ」
武闘家「はい! ただいま!」タタタッ
町娘「武闘家さん、女性なのにさわやかで、ポニーテールが素敵……」
101: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 18:10:49.43 :cIisLjGgO
【宿屋 食堂】
勇者「なぁ、いじけるのはよせって。ピオリムなんて使わないだろ?」
魔法使い「付加価値のある杖ってだけでハクがつくんだから!」
勇者「そんな、使わない機能があっても」
魔法使い「全部あんたが悪いのよ! 貧乏なくせに! 貧乏なくせに!」ゲシゲシ
勇者「や、やめてたもれ~」
僧侶「私のゴスペルリングの効果はパーティに適用されますので、このまま進めなくはできなくはないですけどぉ」
戦士「ろくに戦闘をしていない。レベルアップどころの話ではないぞ」
勇者「うっ」
戦士「ダーマに着く頃にはかなり強いモンスター達が闊歩する場所になる。はたしてこのままでいいのやら」
魔法使い「私はイヤよ! なにもできずに死ぬなんて!」
戦士「……勇者はどうなんだ? 戦っているところを見たことがない」
勇者「俺? それなり」
戦士「それなりとは、かなりのは幅がある」
勇者「すまん、正直本気がどこまでかは俺もわからんねーんだ」
魔法使い「……どういう意味?」
勇者「本気だしたことないから、俺」
戦士「それは、なにもしなくてもまわりが倒してくれたとか」
勇者「ああ、いやいや、勝負で苦労したことないの」
戦士「……」ギラッ
勇者「……なぁ、なんか逆鱗踏んだ?」
僧侶「というよりぃ、好奇心にぃ」
戦士「ふ、ふふっ、それは面白いなぁ。これまで城の猛者供と手合わせしていたそうじゃないか? 噂には聞いてるぞ」
勇者「い、いやぁ~。噂って尾ひれがつくもんじゃない?」
戦士「アデル城の戦士長といえば、我が師の同僚だったお方。そのお方とも手合わせをしているはずだよなぁ~」スラッ
勇者「なぜに剣を抜かれる?」
戦士「苦労したことが、ない? ほほう。それはそれは……」ガタッ
勇者「なぁ、僧侶、出店見に行かない?」
僧侶「今はちょっとぉ~」
戦士「おい、勇者ッ……表、でろっ!!」バンッ
【宿屋 食堂】
勇者「なぁ、いじけるのはよせって。ピオリムなんて使わないだろ?」
魔法使い「付加価値のある杖ってだけでハクがつくんだから!」
勇者「そんな、使わない機能があっても」
魔法使い「全部あんたが悪いのよ! 貧乏なくせに! 貧乏なくせに!」ゲシゲシ
勇者「や、やめてたもれ~」
僧侶「私のゴスペルリングの効果はパーティに適用されますので、このまま進めなくはできなくはないですけどぉ」
戦士「ろくに戦闘をしていない。レベルアップどころの話ではないぞ」
勇者「うっ」
戦士「ダーマに着く頃にはかなり強いモンスター達が闊歩する場所になる。はたしてこのままでいいのやら」
魔法使い「私はイヤよ! なにもできずに死ぬなんて!」
戦士「……勇者はどうなんだ? 戦っているところを見たことがない」
勇者「俺? それなり」
戦士「それなりとは、かなりのは幅がある」
勇者「すまん、正直本気がどこまでかは俺もわからんねーんだ」
魔法使い「……どういう意味?」
勇者「本気だしたことないから、俺」
戦士「それは、なにもしなくてもまわりが倒してくれたとか」
勇者「ああ、いやいや、勝負で苦労したことないの」
戦士「……」ギラッ
勇者「……なぁ、なんか逆鱗踏んだ?」
僧侶「というよりぃ、好奇心にぃ」
戦士「ふ、ふふっ、それは面白いなぁ。これまで城の猛者供と手合わせしていたそうじゃないか? 噂には聞いてるぞ」
勇者「い、いやぁ~。噂って尾ひれがつくもんじゃない?」
戦士「アデル城の戦士長といえば、我が師の同僚だったお方。そのお方とも手合わせをしているはずだよなぁ~」スラッ
勇者「なぜに剣を抜かれる?」
戦士「苦労したことが、ない? ほほう。それはそれは……」ガタッ
勇者「なぁ、僧侶、出店見に行かない?」
僧侶「今はちょっとぉ~」
戦士「おい、勇者ッ……表、でろっ!!」バンッ
102: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 18:30:16.12 :cIisLjGgO
【マッスルタウン 宿屋 表通り】
僧侶「二人ともがんばってぇ~!」
魔法使い「(勇者……伝説の。本当に強いのかしら)」
勇者「なぁ~んでこんなことになっとるのかねぇ~」
戦士「剣を抜けッ!!」チャキ
勇者「そろそろ頭冷やせって。俺が本気だしたことないってのはそういう意味じゃない、怠けてただけだっての」
戦士「それなりにと言ったではないか!」
勇者「あー、うん、まぁ、でもそれは俺の中での話だから。全然たいしたことないんだって」
戦士「伝説の存在……ずっと興味があった! いつか手合わせしてみたいと願っていた!!」
勇者「……チッ、またかよ」イラァ
戦士「さぁ、剣を抜け」
勇者「また、“勇者”かよ」
戦士「それとも、私では剣を抜くにすら値しないとでも言うつもりか!」キッ
勇者「……ふぅ」ニコ
戦士「どうした?」
勇者「俺の負けだ。頼む、剣を収めてくれ」
戦士「きさ、ま……っ! それでも男か! 神聖なる決闘を前にして、侮辱する気か!」
村人達「なんだなんだ? 決闘か? いいぞーやれやれぇー!」ガヤガヤ
勇者「なぁ、そんな熱くならなくても」
戦士「私は……っ! 私はこの剣に人生を賭けた! 雨の日も風の日も、オンナを捨て、指のマメが潰れても振り続けたッ!!」
勇者「……」
戦士「その、誇りを……誇りを貴様は侮辱するというのか……?」
武闘家「なんだ……?」
老人「喧嘩アルか? ……む、あやつは」
武闘家「……師匠、知り合いですか?」
老人「面白い見世物にナルヨ。ワシらも見物していくアル」
勇者「はぁ……わかったよ」スラッ
戦士「……恩にきる。一方的な勝負だとは理解してる」
【マッスルタウン 宿屋 表通り】
僧侶「二人ともがんばってぇ~!」
魔法使い「(勇者……伝説の。本当に強いのかしら)」
勇者「なぁ~んでこんなことになっとるのかねぇ~」
戦士「剣を抜けッ!!」チャキ
勇者「そろそろ頭冷やせって。俺が本気だしたことないってのはそういう意味じゃない、怠けてただけだっての」
戦士「それなりにと言ったではないか!」
勇者「あー、うん、まぁ、でもそれは俺の中での話だから。全然たいしたことないんだって」
戦士「伝説の存在……ずっと興味があった! いつか手合わせしてみたいと願っていた!!」
勇者「……チッ、またかよ」イラァ
戦士「さぁ、剣を抜け」
勇者「また、“勇者”かよ」
戦士「それとも、私では剣を抜くにすら値しないとでも言うつもりか!」キッ
勇者「……ふぅ」ニコ
戦士「どうした?」
勇者「俺の負けだ。頼む、剣を収めてくれ」
戦士「きさ、ま……っ! それでも男か! 神聖なる決闘を前にして、侮辱する気か!」
村人達「なんだなんだ? 決闘か? いいぞーやれやれぇー!」ガヤガヤ
勇者「なぁ、そんな熱くならなくても」
戦士「私は……っ! 私はこの剣に人生を賭けた! 雨の日も風の日も、オンナを捨て、指のマメが潰れても振り続けたッ!!」
勇者「……」
戦士「その、誇りを……誇りを貴様は侮辱するというのか……?」
武闘家「なんだ……?」
老人「喧嘩アルか? ……む、あやつは」
武闘家「……師匠、知り合いですか?」
老人「面白い見世物にナルヨ。ワシらも見物していくアル」
勇者「はぁ……わかったよ」スラッ
戦士「……恩にきる。一方的な勝負だとは理解してる」
103: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 18:48:30.05 :cIisLjGgO
勇者「勘違いしないでほしいんだけど。勇者ってのは、ある一点に優れてるわけじゃないんだ」
戦士「……?」
勇者「なんでもオールマイティーにこなす。戦士みたいな魔法を使えないかわりに、腕力に一点振りしてるではなく」
戦士「それがどうした」
勇者「魔法剣士に特性は近いと思うよ。両立させるという意味では。ピオリム」ポワァ
戦士「むっ……!」
勇者「意味がわかったろ? 自分で自分をサポートできるんだ。スクルト」ポワァ
戦士「くっ、ま、まずい」ダダダッ ブンッ
勇者「全部の呪文をカバーしてるわけじゃ、ないんだけどねっと」ヒョイ
戦士「そっちか!」ブンッ
勇者「あらよっと」ブンッ
――ガキィンッ――
戦士「……くっ」ギリギリ
勇者「ね? タネがわかればしょーもないだろ?」トンッ
戦士「なるほど、たしかに。勇者とやらは便利だな」
勇者「前衛、後衛、どっちでもできるからなぁ。ただ、特化はできないけど」
老人「弟子よ」
武闘家「はい、師匠」
老人「どっちが勝つと予想するアル」
武闘家「五分五分じゃないでしょうか。自魔法サポートは良いですが、自力の勝負で男の方が負けてる気がします」
老人「アイヤー。本気で言うとるアルか」
武闘家「ち、違うんですか?」
老人「お主の目は節穴ネ。あれはただ教えとるダケよ」
武闘家「……」
老人「ワシとオマエみたいな関係ネ。まだ全然ホンキじゃないヨ」
勇者「勘違いしないでほしいんだけど。勇者ってのは、ある一点に優れてるわけじゃないんだ」
戦士「……?」
勇者「なんでもオールマイティーにこなす。戦士みたいな魔法を使えないかわりに、腕力に一点振りしてるではなく」
戦士「それがどうした」
勇者「魔法剣士に特性は近いと思うよ。両立させるという意味では。ピオリム」ポワァ
戦士「むっ……!」
勇者「意味がわかったろ? 自分で自分をサポートできるんだ。スクルト」ポワァ
戦士「くっ、ま、まずい」ダダダッ ブンッ
勇者「全部の呪文をカバーしてるわけじゃ、ないんだけどねっと」ヒョイ
戦士「そっちか!」ブンッ
勇者「あらよっと」ブンッ
――ガキィンッ――
戦士「……くっ」ギリギリ
勇者「ね? タネがわかればしょーもないだろ?」トンッ
戦士「なるほど、たしかに。勇者とやらは便利だな」
勇者「前衛、後衛、どっちでもできるからなぁ。ただ、特化はできないけど」
老人「弟子よ」
武闘家「はい、師匠」
老人「どっちが勝つと予想するアル」
武闘家「五分五分じゃないでしょうか。自魔法サポートは良いですが、自力の勝負で男の方が負けてる気がします」
老人「アイヤー。本気で言うとるアルか」
武闘家「ち、違うんですか?」
老人「お主の目は節穴ネ。あれはただ教えとるダケよ」
武闘家「……」
老人「ワシとオマエみたいな関係ネ。まだ全然ホンキじゃないヨ」
104: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 19:07:42.75 :cIisLjGgO
【数分後】
戦士「はぁっ、はぁっ」チャキ
勇者「(そろそろ頃合いか。手を抜いたと悟らせないにも神経使うんだよなぁ。小石につまずいてっと)」ズルっ
戦士「……っ! 勝機っ! くらえっ! ハヤブサ斬り!!」ザシュ ザシュ
勇者「うっ、し、しまっ」カキーーン
老人「わざと剣を手放しおったな」ボソ
武闘家「……」ジィー
戦士「はぁっ、はぁっ、どうだっ!」チャキ
勇者「……まいった。すげーよ」
村人達「おお~! なかなかレベル高い決闘だったぞぉ」パチパチ
僧侶「お二人ともかっこよかったですよぉ~!」パチパチ
魔法使い「(たしかに便利だけど。自力は戦士の方が上ってことか。器用貧乏ね)」
老人「あの負け方はダメアルねー。後々、恨まれるアル」
武闘家「師匠、やはり、私には違いが」
老人「オマエよりも強いヨ。アレ」
武闘家「え、えぇっ⁉︎」
老人「ワシの見立てでは女戦士よりちょっぴり強いぐらいアル。オマエ」
武闘家「そんなことありません! あんなやつすぐに倒せます!」
老人「それがちょっぴり言うテルネ。どんぐりの背比べ。ワシから見たらどっちも弱いシ」
武闘家「……で、では、師匠が強い認める強さとは」
老人「ワシより強くねー? て思うぐらい」
武闘家「……!」ギロッ
老人「ふぉっふぉっふぉっ、一気に闘志が燃えあがたネ。嫉妬したカ」
武闘家「し、失礼しました。でも、あの男、何者……」
【数分後】
戦士「はぁっ、はぁっ」チャキ
勇者「(そろそろ頃合いか。手を抜いたと悟らせないにも神経使うんだよなぁ。小石につまずいてっと)」ズルっ
戦士「……っ! 勝機っ! くらえっ! ハヤブサ斬り!!」ザシュ ザシュ
勇者「うっ、し、しまっ」カキーーン
老人「わざと剣を手放しおったな」ボソ
武闘家「……」ジィー
戦士「はぁっ、はぁっ、どうだっ!」チャキ
勇者「……まいった。すげーよ」
村人達「おお~! なかなかレベル高い決闘だったぞぉ」パチパチ
僧侶「お二人ともかっこよかったですよぉ~!」パチパチ
魔法使い「(たしかに便利だけど。自力は戦士の方が上ってことか。器用貧乏ね)」
老人「あの負け方はダメアルねー。後々、恨まれるアル」
武闘家「師匠、やはり、私には違いが」
老人「オマエよりも強いヨ。アレ」
武闘家「え、えぇっ⁉︎」
老人「ワシの見立てでは女戦士よりちょっぴり強いぐらいアル。オマエ」
武闘家「そんなことありません! あんなやつすぐに倒せます!」
老人「それがちょっぴり言うテルネ。どんぐりの背比べ。ワシから見たらどっちも弱いシ」
武闘家「……で、では、師匠が強い認める強さとは」
老人「ワシより強くねー? て思うぐらい」
武闘家「……!」ギロッ
老人「ふぉっふぉっふぉっ、一気に闘志が燃えあがたネ。嫉妬したカ」
武闘家「し、失礼しました。でも、あの男、何者……」
105: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 19:28:32.92 :cIisLjGgO
戦士「立てるか?」スッ
勇者「お、おう、さんきゅ」
戦士「自魔法サポート。非力な後衛職、力だけの前衛職ではできない戦い方に脱帽した」
勇者「よせやい」
戦士「勇者というだけのことはある。危なかったぞ」
勇者「うんうん、いい汗かいたな」
戦士「あぁ。こんなにもやっていて充実していたのは師匠とやって以来だ。なにやら指導を受けていたようにすら感じる」
勇者「あ、そ、そう」
戦士「……いや、それほどあたしたちの力が拮抗していたのだろう。改めて感謝する」
勇者「もうやめようぜ、さ、メシメシ」
老人「ちと待つアル。ワカモノよ」
戦士「失礼だが、どちらだ?」
老人「ネーちゃんじゃないアル。用があるのはニーちゃんネ」
勇者「じーちゃん、なんだ?」
老人「ちこうよるアル」チョイチョイ
勇者「……?」
老人「もっとアルもっとアル。耳貸すアルよ」
勇者「なんだ? おひねりでもくれんのか?」
老人「お主、手を抜いたロ?」コショ
勇者「……おっとぉ~」
老人「バラされたくなければ、ついてくるヨロシ」
戦士「勇者、どうしたんだ?」
老人「呼ばれている名についても、色々と聞きたいことがあるネ」
戦士「立てるか?」スッ
勇者「お、おう、さんきゅ」
戦士「自魔法サポート。非力な後衛職、力だけの前衛職ではできない戦い方に脱帽した」
勇者「よせやい」
戦士「勇者というだけのことはある。危なかったぞ」
勇者「うんうん、いい汗かいたな」
戦士「あぁ。こんなにもやっていて充実していたのは師匠とやって以来だ。なにやら指導を受けていたようにすら感じる」
勇者「あ、そ、そう」
戦士「……いや、それほどあたしたちの力が拮抗していたのだろう。改めて感謝する」
勇者「もうやめようぜ、さ、メシメシ」
老人「ちと待つアル。ワカモノよ」
戦士「失礼だが、どちらだ?」
老人「ネーちゃんじゃないアル。用があるのはニーちゃんネ」
勇者「じーちゃん、なんだ?」
老人「ちこうよるアル」チョイチョイ
勇者「……?」
老人「もっとアルもっとアル。耳貸すアルよ」
勇者「なんだ? おひねりでもくれんのか?」
老人「お主、手を抜いたロ?」コショ
勇者「……おっとぉ~」
老人「バラされたくなければ、ついてくるヨロシ」
戦士「勇者、どうしたんだ?」
老人「呼ばれている名についても、色々と聞きたいことがあるネ」
107: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 20:02:35.43 :cIisLjGgO
【武闘家 家】
老人「話というのは他でもないアル」
武闘家「師匠、お茶をお持ちしました」コト
老人「ワシの弟子と結婚しない?」
武闘家「し、師匠っ⁉︎」バシャアッ
勇者「あっちゃぁっ!!」アタフタ
武闘家「な、なにを言いだすのですか⁉︎」カランカラン
老人「客人におもっくそぶちまけとるけど」
勇者「あつっ!あっつぅっ!」
武闘家「私はまだ修行中です! 先日正拳突きを覚えたばかりではないですか!」バシャア
勇者「おかわりっ⁉︎ ぎゃあっ!」
老人「おい、大丈夫カヨ」
勇者「~~ッ!」ゴロゴロ
武闘家「男なぞ興味ありません!!」
老人「転がってるが」
武闘家「聞いてますか!! 師匠!!」バンッ
老人「落ち着くヨロシ」
武闘家「なぜ、そのような提案を」
老人「子供が強くなりそうネ」
武闘家「それにしても浅はかです! 撤回してください!」
老人「わかた、わかたネ。ドウドウ」
武闘家「……」ブスゥ
老人「して、勇者とやら。オイ」
勇者「~~ッ!」ゴロゴロ、
老人「すまんネ、ワシ、お茶は目一杯暑くするヨ」
【武闘家 家】
老人「話というのは他でもないアル」
武闘家「師匠、お茶をお持ちしました」コト
老人「ワシの弟子と結婚しない?」
武闘家「し、師匠っ⁉︎」バシャアッ
勇者「あっちゃぁっ!!」アタフタ
武闘家「な、なにを言いだすのですか⁉︎」カランカラン
老人「客人におもっくそぶちまけとるけど」
勇者「あつっ!あっつぅっ!」
武闘家「私はまだ修行中です! 先日正拳突きを覚えたばかりではないですか!」バシャア
勇者「おかわりっ⁉︎ ぎゃあっ!」
老人「おい、大丈夫カヨ」
勇者「~~ッ!」ゴロゴロ
武闘家「男なぞ興味ありません!!」
老人「転がってるが」
武闘家「聞いてますか!! 師匠!!」バンッ
老人「落ち着くヨロシ」
武闘家「なぜ、そのような提案を」
老人「子供が強くなりそうネ」
武闘家「それにしても浅はかです! 撤回してください!」
老人「わかた、わかたネ。ドウドウ」
武闘家「……」ブスゥ
老人「して、勇者とやら。オイ」
勇者「~~ッ!」ゴロゴロ、
老人「すまんネ、ワシ、お茶は目一杯暑くするヨ」
108: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 20:27:35.42 :cIisLjGgO
【数分後】
老人「落ち着いたカヨ」
勇者「た、たいしたもんだ」
老人「あれに対応するのは難儀ダロヨ。ワシでも無理」
武闘家「……」プイ
老人「話を戻すネ。勇者か?」
勇者「うん、そだよ」
武闘家「……っ!」ジィー
老人「これ。パンダじゃないんだから好奇の視線で見るヨクナイ」
武闘家「あ、すみません、つい」
老人「やりとりだけならば冗談思うヨ。でも、オマエは実力もありそうネ」
勇者「じいちゃんも極めてんな」
老人「マスターと呼ぶイイヨ。若い頃はぶいぶい言わせたもんアル」
勇者「……聞きたいってのはそんだけ?」
老人「明日、コロシアムが開催されるアル。毎日開催してるケド」
勇者「みたいだね」
老人「お前も出場するアル。枠はチャンピオンから口きいてヤル」
勇者「……なんで?」
老人「マク・ドナルドがいいカ? リングネームは」
勇者「なぁ、おい。このじいちゃんボケてんのか?」
武闘家「凄くマイペースなだけ……師匠はこうなったら周りの意見なんか聞かないから」
老人「……どこにやったカ」ゴソゴソ
勇者「うぇ、なんで股間に手を突っ込んでるんだよ」
老人「あったあった」ズポッ ヒラリ
【数分後】
老人「落ち着いたカヨ」
勇者「た、たいしたもんだ」
老人「あれに対応するのは難儀ダロヨ。ワシでも無理」
武闘家「……」プイ
老人「話を戻すネ。勇者か?」
勇者「うん、そだよ」
武闘家「……っ!」ジィー
老人「これ。パンダじゃないんだから好奇の視線で見るヨクナイ」
武闘家「あ、すみません、つい」
老人「やりとりだけならば冗談思うヨ。でも、オマエは実力もありそうネ」
勇者「じいちゃんも極めてんな」
老人「マスターと呼ぶイイヨ。若い頃はぶいぶい言わせたもんアル」
勇者「……聞きたいってのはそんだけ?」
老人「明日、コロシアムが開催されるアル。毎日開催してるケド」
勇者「みたいだね」
老人「お前も出場するアル。枠はチャンピオンから口きいてヤル」
勇者「……なんで?」
老人「マク・ドナルドがいいカ? リングネームは」
勇者「なぁ、おい。このじいちゃんボケてんのか?」
武闘家「凄くマイペースなだけ……師匠はこうなったら周りの意見なんか聞かないから」
老人「……どこにやったカ」ゴソゴソ
勇者「うぇ、なんで股間に手を突っ込んでるんだよ」
老人「あったあった」ズポッ ヒラリ
109: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 20:29:32.10 :cIisLjGgO
武闘家「そ、それは……!」
老人「光栄に思うヨロシ。ワシが若い頃つけてたマスクよ」
勇者「ずっと入れっぱなしだったのかよ!」
老人「これをかぶって、思う存分ヤッてこい。ほんで決勝で我が弟子をコテンパンにしてほしい」
武闘家「……っ!」
老人「コイツ、最近天狗になってるヨ。こんな街でコロシアムに参加させたのは失敗だた。鼻っ柱を折ってやってほしいネ」
勇者「……えぇ、それかぶんのぉ?」
老人「受けとれ」スッ
勇者「い、イヤすぎるんだけど」
武闘家「私がこいつに負けるとお思いですか!」バンッ
老人「またデタよ。さっきも言うたネ。オマエよりもこっちのニーちゃんの方が全然強い。レベルそのものが違う」
武闘家「……っ!」ギロッ
勇者「なぜに睨まれるんです?」
老人「未熟者の嫉妬ヨ。堪忍するネ」
勇者「いや、それはいいけど。えぇ、俺が出るのぉ?」
老人「さっきの女戦士。真実を知ったら激昂すること間違いナシよ。オマエも問題アル」
勇者「うっ」
老人「ああいうのはコテンパンにやっちまうネ。ありのままの強さを見せることが礼節」
勇者「いや、しかし、立ち直れない可能性も」
老人「今後の人間関係に影響するカ?」
勇者「……」
老人「そうなったらそれまでの関係ヨ。取り繕ったオマエはヒキョウモノに違いナイ」
勇者「ぐぬぬ」
老人「勇者とか全部置いて、一旦忘れるヨ。オマエは明日だけはマスクマンネ」
武闘家「そ、それは……!」
老人「光栄に思うヨロシ。ワシが若い頃つけてたマスクよ」
勇者「ずっと入れっぱなしだったのかよ!」
老人「これをかぶって、思う存分ヤッてこい。ほんで決勝で我が弟子をコテンパンにしてほしい」
武闘家「……っ!」
老人「コイツ、最近天狗になってるヨ。こんな街でコロシアムに参加させたのは失敗だた。鼻っ柱を折ってやってほしいネ」
勇者「……えぇ、それかぶんのぉ?」
老人「受けとれ」スッ
勇者「い、イヤすぎるんだけど」
武闘家「私がこいつに負けるとお思いですか!」バンッ
老人「またデタよ。さっきも言うたネ。オマエよりもこっちのニーちゃんの方が全然強い。レベルそのものが違う」
武闘家「……っ!」ギロッ
勇者「なぜに睨まれるんです?」
老人「未熟者の嫉妬ヨ。堪忍するネ」
勇者「いや、それはいいけど。えぇ、俺が出るのぉ?」
老人「さっきの女戦士。真実を知ったら激昂すること間違いナシよ。オマエも問題アル」
勇者「うっ」
老人「ああいうのはコテンパンにやっちまうネ。ありのままの強さを見せることが礼節」
勇者「いや、しかし、立ち直れない可能性も」
老人「今後の人間関係に影響するカ?」
勇者「……」
老人「そうなったらそれまでの関係ヨ。取り繕ったオマエはヒキョウモノに違いナイ」
勇者「ぐぬぬ」
老人「勇者とか全部置いて、一旦忘れるヨ。オマエは明日だけはマスクマンネ」
110: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 20:53:21.30 :cIisLjGgO
【宿屋 部屋】
魔法使い「ねぇ、勇者って結局どんくらい強かったの?」
戦士「質問の意図がわかりかねる。見ていただろう?」
魔法使い「うーんと、要するに、魔王と渡り合えると思った?」
戦士「いや、それはどうだろうな」
魔法使い「無理そう?」
戦士「無理とは言ってないが。個人でとなると厳しいだろう」
僧侶「くすくす」
魔法使い「なにがおかしいのよ」
僧侶「強さ議論をしているのがおかしくてぇ~」
魔法使い「どーゆー意味?」
僧侶「彼はそういう次元にいるんじゃないんですよぉ」
戦士「……?」
僧侶「女神様が人間と力比べをなさるはずがありません~」
魔法使い「はぁ、教会特有の信仰心ってやつ」
僧侶「いいえ~真実ですよぉ~」
魔法使い「女神の祝福ねぇ、どういう形で現れるんだろ」
僧侶「勇者さまはありがたぁ~いお方なのですぅ~」シミジミ
戦士「……ふむ」
勇者「ただいま」ギィ
僧侶「おかえりなさいませ~」
戦士「おう、あの老人は何の用だったんだ?」
勇者「明日さ、出発しないことにした」
魔法使い「えっ?」
僧侶「どうして突然~?」
勇者「うん、まぁ、なんていうか、家の修理を頼まれちゃって」
戦士「修理? いきなり他人にそんなものを頼むのか?」
勇者「いや、ほら。俺って手持ちの金が一番少ないだろ? 賃金はずむっていうから引き受けたんだ」
魔法使い「……ふぅ~ん、まぁそれはそうだけど」
勇者「明日は、みんな自由行動でいいよ」
僧侶「ついていってもよろしいですかぁ?」
勇者「いやぁ~それはやめといたがいい。気難しい爺さんだったから。なんでも、オンナが嫌いらしい」
戦士「変わった老人だな」
勇者「そういうわけだから。観光でもしてきてくれよ。な?」
【宿屋 部屋】
魔法使い「ねぇ、勇者って結局どんくらい強かったの?」
戦士「質問の意図がわかりかねる。見ていただろう?」
魔法使い「うーんと、要するに、魔王と渡り合えると思った?」
戦士「いや、それはどうだろうな」
魔法使い「無理そう?」
戦士「無理とは言ってないが。個人でとなると厳しいだろう」
僧侶「くすくす」
魔法使い「なにがおかしいのよ」
僧侶「強さ議論をしているのがおかしくてぇ~」
魔法使い「どーゆー意味?」
僧侶「彼はそういう次元にいるんじゃないんですよぉ」
戦士「……?」
僧侶「女神様が人間と力比べをなさるはずがありません~」
魔法使い「はぁ、教会特有の信仰心ってやつ」
僧侶「いいえ~真実ですよぉ~」
魔法使い「女神の祝福ねぇ、どういう形で現れるんだろ」
僧侶「勇者さまはありがたぁ~いお方なのですぅ~」シミジミ
戦士「……ふむ」
勇者「ただいま」ギィ
僧侶「おかえりなさいませ~」
戦士「おう、あの老人は何の用だったんだ?」
勇者「明日さ、出発しないことにした」
魔法使い「えっ?」
僧侶「どうして突然~?」
勇者「うん、まぁ、なんていうか、家の修理を頼まれちゃって」
戦士「修理? いきなり他人にそんなものを頼むのか?」
勇者「いや、ほら。俺って手持ちの金が一番少ないだろ? 賃金はずむっていうから引き受けたんだ」
魔法使い「……ふぅ~ん、まぁそれはそうだけど」
勇者「明日は、みんな自由行動でいいよ」
僧侶「ついていってもよろしいですかぁ?」
勇者「いやぁ~それはやめといたがいい。気難しい爺さんだったから。なんでも、オンナが嫌いらしい」
戦士「変わった老人だな」
勇者「そういうわけだから。観光でもしてきてくれよ。な?」
111: ◆7Ub330dMyM:2018/01/12(金) 21:05:59.52 :cIisLjGgO
【武闘家 家】
老人「まだ納得してないアルカ。明日になればわかることヨ」
武闘家「あたっ!! ほあっ!!」ビュッ ビュッ
老人「今日はそれぐらいにしとくネ」
武闘家「はぁっ、はぁっ」
老人「……」
武闘家「師匠。ひとつだけ聞かせてください。伝説の存在の勇者、師匠はワシより強い? と疑問系で言ってました」
老人「たしかに」
武闘家「改めて対峙してみて、いかがでしたか。師匠ほどのお人であれば、力量がわかるはず」
老人「引退したとて、格闘家のはしくれ。負けるとは口がサケてもいえないヨ」
武闘家「……では」
老人「今の言葉の中のどこに勝てると言ったカ? 察するネ」
武闘家「……っ! では、師匠の全盛期ならばどうですかっ!」
老人「……イメージがわかない。こんなのハジメてのことヨ」
武闘家「イメージ……?」
老人「ワシが見下ろしてるイメージヨ。倒れているものを」
武闘家「……」ゴクリ
老人「これまで、ゴッドハンドと呼ばれる者と対峙した時でさえ、そのイメージは持てたネ」
武闘家「……伝説に、偽りなしですか」
老人「女神の加護、ありゃバケモン。ヒトでは勝てるもんではない。遠慮なく全力で当たって砕けるヨロシ」
【武闘家 家】
老人「まだ納得してないアルカ。明日になればわかることヨ」
武闘家「あたっ!! ほあっ!!」ビュッ ビュッ
老人「今日はそれぐらいにしとくネ」
武闘家「はぁっ、はぁっ」
老人「……」
武闘家「師匠。ひとつだけ聞かせてください。伝説の存在の勇者、師匠はワシより強い? と疑問系で言ってました」
老人「たしかに」
武闘家「改めて対峙してみて、いかがでしたか。師匠ほどのお人であれば、力量がわかるはず」
老人「引退したとて、格闘家のはしくれ。負けるとは口がサケてもいえないヨ」
武闘家「……では」
老人「今の言葉の中のどこに勝てると言ったカ? 察するネ」
武闘家「……っ! では、師匠の全盛期ならばどうですかっ!」
老人「……イメージがわかない。こんなのハジメてのことヨ」
武闘家「イメージ……?」
老人「ワシが見下ろしてるイメージヨ。倒れているものを」
武闘家「……」ゴクリ
老人「これまで、ゴッドハンドと呼ばれる者と対峙した時でさえ、そのイメージは持てたネ」
武闘家「……伝説に、偽りなしですか」
老人「女神の加護、ありゃバケモン。ヒトでは勝てるもんではない。遠慮なく全力で当たって砕けるヨロシ」
119: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 15:45:36.97 :OTML+W87O
【翌日 マッスルタウン メインストリート】
――ヒュルルルルゥ~~ ドンドンッ パラララッ――
僧侶「わぁ、花火ですよぉ。昼なのに豪華ですねぇ」
魔法使い「うるさいなぁ。イオ系でも放てばいいのに」
戦士「活気を演出しているんだろう。客寄せだな」パクッ
魔法使い「どこで買ってきたの? しかも、その量」
戦士「んっ? んむっ、んまいぞ。食うか?」
魔法使い「たこ焼きにフランクフルトにイカ焼きに……よく持ちながら食べられるわね」
戦士「食べて減らしているからな!」キラン
受付「エントリーがお済みの方はこちらが入場口になってまーす、番号札を持って順番にお入りくださーい!」
魔法使い「今からはじまるみたいね、コロシアム」
僧侶「実際に見たことはないんですけどぉ、どういうシステムなんですかぁ?」
戦士「予選を突破した者同士の勝ち抜きトーナメント制だ。武器の使用は認められている」
魔法使い「え、それって怪我するんじゃ」
戦士「ありだ。ただし、殺しは即刻牢屋行きになる」
魔法使い「事故とか、ないの?」
戦士「これまでそんな話は聞いたことないよ、あむっ」モグモグ
??「おっと、すま……」ドンッ
戦士「あっ」ポト
??「あ、あれ? お前ら」
戦士「あ~~~っ!! あたしのたこ焼きがぁっ!!」コロ
受付「まもなく番号札の配布を締め切りまーす! まだの方はお急ぎくださぁーい!」
??「す、すまん。先を急ぐので」
僧侶「見慣れない中華服とマスクでしたねぇ。どこかで聞いた声をしていたような……?」
魔法使い「気のせいでしょ。あんなヘンチクリなの知り合いにいないし」
戦士「あ……あ……」ガクン
魔法使い「ちょ、膝ついてやめてよ。みっともない」
戦士「うぅ~。タコちゃん」グスン
僧侶「たこ焼きなら私が買ってあげますからぁ」
戦士「まことか!」パァ
僧侶「ちなみにぃ、コロシアムの観戦料金っておいくらなんでしょぉ~?」
【翌日 マッスルタウン メインストリート】
――ヒュルルルルゥ~~ ドンドンッ パラララッ――
僧侶「わぁ、花火ですよぉ。昼なのに豪華ですねぇ」
魔法使い「うるさいなぁ。イオ系でも放てばいいのに」
戦士「活気を演出しているんだろう。客寄せだな」パクッ
魔法使い「どこで買ってきたの? しかも、その量」
戦士「んっ? んむっ、んまいぞ。食うか?」
魔法使い「たこ焼きにフランクフルトにイカ焼きに……よく持ちながら食べられるわね」
戦士「食べて減らしているからな!」キラン
受付「エントリーがお済みの方はこちらが入場口になってまーす、番号札を持って順番にお入りくださーい!」
魔法使い「今からはじまるみたいね、コロシアム」
僧侶「実際に見たことはないんですけどぉ、どういうシステムなんですかぁ?」
戦士「予選を突破した者同士の勝ち抜きトーナメント制だ。武器の使用は認められている」
魔法使い「え、それって怪我するんじゃ」
戦士「ありだ。ただし、殺しは即刻牢屋行きになる」
魔法使い「事故とか、ないの?」
戦士「これまでそんな話は聞いたことないよ、あむっ」モグモグ
??「おっと、すま……」ドンッ
戦士「あっ」ポト
??「あ、あれ? お前ら」
戦士「あ~~~っ!! あたしのたこ焼きがぁっ!!」コロ
受付「まもなく番号札の配布を締め切りまーす! まだの方はお急ぎくださぁーい!」
??「す、すまん。先を急ぐので」
僧侶「見慣れない中華服とマスクでしたねぇ。どこかで聞いた声をしていたような……?」
魔法使い「気のせいでしょ。あんなヘンチクリなの知り合いにいないし」
戦士「あ……あ……」ガクン
魔法使い「ちょ、膝ついてやめてよ。みっともない」
戦士「うぅ~。タコちゃん」グスン
僧侶「たこ焼きなら私が買ってあげますからぁ」
戦士「まことか!」パァ
僧侶「ちなみにぃ、コロシアムの観戦料金っておいくらなんでしょぉ~?」
121: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 16:09:12.38 :OTML+W87O
【コロシアム 控え室】
受付「マク・ドナルドさん、いらっしゃいますか?」
マク「あ、はい」
受付「チャンピオンからの推薦というお話なのですが、一応予選は受けていただきますので。こちらが日程になります」パサ
マク「ふむふむ、午前が予選で午後が本戦か」ペラ
受付「そうです。予選は無観客試合となりまして、この先にある広場でグループに分かれて行われます」
マク「天下一武闘会モロパクr」
受付「はい?」
マク「いや、ごほん、なんでもない。割とオーソドックスな形式だからな。うん」
受付「……? 登録される武器はいかがなさいますか?」
マク「武器? 使っていいの?」
受付「当たり前ですよ。職によって得意とする得物がありますし、無手が専門というのならそれでかまいませんが」
マク「怪我大丈夫?」
受付「素人同士ではありませんので。万が一、やりすぎた場合でも、五十人を超える医療スタッフが控えております」
マク「へー。そうなんだ」
受付「どうされます? 武器。なにも持ってきてないんですか?」
マク「うん、てっきり、俺、素手でやるもんだと」
受付「レンタルされますか? 強度に問題はありますが、使えなくはありませんよ」
マク「うーん、レンタルねぇ」チラ
受付「あの、まだ他の方にも聞いてまわらなきゃいけないので」
マク「おねーさんが使ってるそれでいいや」
受付「へ? 私ですか? ……ペンしかもってませんけど」
マク「ペーパーナイフ。貸りるよ」
受付「あ、あのー。やる気、あります?」
マク「ない」キッパリ
受付「……推薦なので、目を瞑りますが、早々に敗退なんてことになったチャンピオンにもペナルティありますので、一応」
マク「なんでよ」
受付「参加希望者は殺到しているからですよ。その貴重な定員枠をひとつ潰すのですから」
マク「めんどくせぇ!」
受付「本当にペーパーナイフでいいんですか?」
マク「はぁ、いいよ。お姉さんの幸運がありそうだし」
受付「……きっしょ」ボソ
マク「聞こえるようにボソって言うのやめていただけるかな⁉︎」
受付「わかりました。それでは、マク・ドナルドさんはペーパーナイフということで」カキカキ
【コロシアム 控え室】
受付「マク・ドナルドさん、いらっしゃいますか?」
マク「あ、はい」
受付「チャンピオンからの推薦というお話なのですが、一応予選は受けていただきますので。こちらが日程になります」パサ
マク「ふむふむ、午前が予選で午後が本戦か」ペラ
受付「そうです。予選は無観客試合となりまして、この先にある広場でグループに分かれて行われます」
マク「天下一武闘会モロパクr」
受付「はい?」
マク「いや、ごほん、なんでもない。割とオーソドックスな形式だからな。うん」
受付「……? 登録される武器はいかがなさいますか?」
マク「武器? 使っていいの?」
受付「当たり前ですよ。職によって得意とする得物がありますし、無手が専門というのならそれでかまいませんが」
マク「怪我大丈夫?」
受付「素人同士ではありませんので。万が一、やりすぎた場合でも、五十人を超える医療スタッフが控えております」
マク「へー。そうなんだ」
受付「どうされます? 武器。なにも持ってきてないんですか?」
マク「うん、てっきり、俺、素手でやるもんだと」
受付「レンタルされますか? 強度に問題はありますが、使えなくはありませんよ」
マク「うーん、レンタルねぇ」チラ
受付「あの、まだ他の方にも聞いてまわらなきゃいけないので」
マク「おねーさんが使ってるそれでいいや」
受付「へ? 私ですか? ……ペンしかもってませんけど」
マク「ペーパーナイフ。貸りるよ」
受付「あ、あのー。やる気、あります?」
マク「ない」キッパリ
受付「……推薦なので、目を瞑りますが、早々に敗退なんてことになったチャンピオンにもペナルティありますので、一応」
マク「なんでよ」
受付「参加希望者は殺到しているからですよ。その貴重な定員枠をひとつ潰すのですから」
マク「めんどくせぇ!」
受付「本当にペーパーナイフでいいんですか?」
マク「はぁ、いいよ。お姉さんの幸運がありそうだし」
受付「……きっしょ」ボソ
マク「聞こえるようにボソって言うのやめていただけるかな⁉︎」
受付「わかりました。それでは、マク・ドナルドさんはペーパーナイフということで」カキカキ
123: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 16:26:07.52 :OTML+W87O
【予選広場 グループD】
マク「おー、いるいる」
司会「みなさーん! ご静粛に! ご静粛にー! こちらに注目してくださーい!」バンバン
マク「なんだ?」
司会「これよりぃ、グループ毎に別れて乱戦を行なっていただきまーす! 勝敗はシンプルに最後の一人が本戦出場です! 人数多いのでお願いしまーす!」
参加者達「もうはじめちまっていいのかぁ?」
司会「レフェリーは本戦までいませーん! どうせみなさんのほとんどが雑魚ですしー!」
参加者達「なんだとコラ!」
司会「かませ犬はぱっぱっとやられちゃってくださーい!」
参加者達「……」
烈海王「私は一向にかまわんッ!」
マク「えっ? おっ、おい」
烈海王「私は一向にかまわんっ!!」
マク「司会! 司会の人! どう見てもここにいちゃいけない人がいるよ! 勝てる気しない人が混ざってるよ!」
司会「さぁ、どうぞー! はじめちゃってくださーい!」カーンッ
マク「……」ゴクリ
烈海王「……こぉ~」
マク「あ、あのぅ~。あなた、海王ですよね? でちゃいけませんよね?」
烈海王「邪ッー!! 言葉は要らぬッ!!」ズザッ
マク「うおっ!」ヒョイ
烈海王「女々しくも喋るかァッッ!!」クワッ
マク「ひ、ひぃっ! こいつとやれよ! チャンピオン! ていうか、ふざけるじゃ……!」
烈海王「む……」ピタッ
マク「……?」
烈海王「しまった、闘技場を間違えていたか」
マク「あんたが行くのは地下だよ! ここじゃねぇよ!」
烈海王「失礼する」スタスタ
マク「……か、勘弁してくれよ」タラ~
【予選広場 グループD】
マク「おー、いるいる」
司会「みなさーん! ご静粛に! ご静粛にー! こちらに注目してくださーい!」バンバン
マク「なんだ?」
司会「これよりぃ、グループ毎に別れて乱戦を行なっていただきまーす! 勝敗はシンプルに最後の一人が本戦出場です! 人数多いのでお願いしまーす!」
参加者達「もうはじめちまっていいのかぁ?」
司会「レフェリーは本戦までいませーん! どうせみなさんのほとんどが雑魚ですしー!」
参加者達「なんだとコラ!」
司会「かませ犬はぱっぱっとやられちゃってくださーい!」
参加者達「……」
烈海王「私は一向にかまわんッ!」
マク「えっ? おっ、おい」
烈海王「私は一向にかまわんっ!!」
マク「司会! 司会の人! どう見てもここにいちゃいけない人がいるよ! 勝てる気しない人が混ざってるよ!」
司会「さぁ、どうぞー! はじめちゃってくださーい!」カーンッ
マク「……」ゴクリ
烈海王「……こぉ~」
マク「あ、あのぅ~。あなた、海王ですよね? でちゃいけませんよね?」
烈海王「邪ッー!! 言葉は要らぬッ!!」ズザッ
マク「うおっ!」ヒョイ
烈海王「女々しくも喋るかァッッ!!」クワッ
マク「ひ、ひぃっ! こいつとやれよ! チャンピオン! ていうか、ふざけるじゃ……!」
烈海王「む……」ピタッ
マク「……?」
烈海王「しまった、闘技場を間違えていたか」
マク「あんたが行くのは地下だよ! ここじゃねぇよ!」
烈海王「失礼する」スタスタ
マク「……か、勘弁してくれよ」タラ~
124: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 17:05:42.15 :OTML+W87O
【コロシアム 観客席】
僧侶「すごい人だかりですねぇ。何人ぐらいいるんでしょう」
戦士「見た所、あむっ、三千人ぐらいじゃないか」
僧侶「大きな建物だったんですねぇ」
魔法使い「外から見る分にはガワだけだしね。収容人数はそんなに入るんだ」
老人「おろ、お主は」
戦士「……? お、昨日のご老人ではないか」
魔法使い「勇者が家の修理にっていってた人?」
僧侶「主人がいつもお世話になっておりますぅ~」
魔法使い「いつ結婚したんだ、あんたらは!」
老人「そうカ。そういう話になってるカ。つったっとら邪魔ヨ。座るヨロシ」
魔法使い「いいんですか?」
老人「む?」
僧侶「女性が苦手なのではぁ~?」
老人「なに寝ぼけたこといってるカ。若い頃は日替わりでとっかえひっかえネ」
戦士「それはどうかと思うが……勇者は」
老人「細かいことはいいネ。デモンストレーションはじまるヨ」
司会「皆さまぁ! お待たせいたしましたぁ! 現っ! チャンピオン! 女武闘家さんの入場でぇぇーーすっ!!」
武闘家「……」スッ
観客「おおーっ! 出てきたぞぉーー!」
観客「きゃーーっ! チャンピオーーン!」
司会「初壇上から負け知らず! 並み居る猛者をばったばったと倒して気がつけばチャンピオン! そう! 私こそがチャンピオン! 好きなものはぬいぐるみと乙女チックだー!!」
武闘家「ちょっ」アタフタ
司会「ただいま予選を行なっておりまして、この後、本戦へと進みますがまだ少々お時間がございます。その間、チャンピオンに一戦してもらおうぜー!!」
観客達「オォーーッ」ガヤガヤ
僧侶「耳がキーンってしますねぇ」
戦士「チャンピオンは目玉だからな」
老人「まったく、勘違いしすぎヨ」
魔法使い「勘違い?」
老人「観客達に言うてナイネ。言うてるのはあのバカ弟子ヨ」クィ
武闘家「……」ペコリ
老人「声援なんぞに応えおってからに。なにしにきたのか本分を忘れてるアル」
戦士「弟子とは……? ご老人、あなたの弟子なのか?」
老人「そうヨ。不甲斐ない弟子を持って穴に引きこもりたい気持ちネ」
僧侶「わぁ、じゃあ、お爺さんも強いんですかぁ?」
老人「当たり前ヨ。強さなんてのは――」
観客「キャーーッ! キラーパンサーよーー!」
魔法使い「キラーパンサー⁉︎ 大人の⁉︎」ガタッ
【コロシアム 観客席】
僧侶「すごい人だかりですねぇ。何人ぐらいいるんでしょう」
戦士「見た所、あむっ、三千人ぐらいじゃないか」
僧侶「大きな建物だったんですねぇ」
魔法使い「外から見る分にはガワだけだしね。収容人数はそんなに入るんだ」
老人「おろ、お主は」
戦士「……? お、昨日のご老人ではないか」
魔法使い「勇者が家の修理にっていってた人?」
僧侶「主人がいつもお世話になっておりますぅ~」
魔法使い「いつ結婚したんだ、あんたらは!」
老人「そうカ。そういう話になってるカ。つったっとら邪魔ヨ。座るヨロシ」
魔法使い「いいんですか?」
老人「む?」
僧侶「女性が苦手なのではぁ~?」
老人「なに寝ぼけたこといってるカ。若い頃は日替わりでとっかえひっかえネ」
戦士「それはどうかと思うが……勇者は」
老人「細かいことはいいネ。デモンストレーションはじまるヨ」
司会「皆さまぁ! お待たせいたしましたぁ! 現っ! チャンピオン! 女武闘家さんの入場でぇぇーーすっ!!」
武闘家「……」スッ
観客「おおーっ! 出てきたぞぉーー!」
観客「きゃーーっ! チャンピオーーン!」
司会「初壇上から負け知らず! 並み居る猛者をばったばったと倒して気がつけばチャンピオン! そう! 私こそがチャンピオン! 好きなものはぬいぐるみと乙女チックだー!!」
武闘家「ちょっ」アタフタ
司会「ただいま予選を行なっておりまして、この後、本戦へと進みますがまだ少々お時間がございます。その間、チャンピオンに一戦してもらおうぜー!!」
観客達「オォーーッ」ガヤガヤ
僧侶「耳がキーンってしますねぇ」
戦士「チャンピオンは目玉だからな」
老人「まったく、勘違いしすぎヨ」
魔法使い「勘違い?」
老人「観客達に言うてナイネ。言うてるのはあのバカ弟子ヨ」クィ
武闘家「……」ペコリ
老人「声援なんぞに応えおってからに。なにしにきたのか本分を忘れてるアル」
戦士「弟子とは……? ご老人、あなたの弟子なのか?」
老人「そうヨ。不甲斐ない弟子を持って穴に引きこもりたい気持ちネ」
僧侶「わぁ、じゃあ、お爺さんも強いんですかぁ?」
老人「当たり前ヨ。強さなんてのは――」
観客「キャーーッ! キラーパンサーよーー!」
魔法使い「キラーパンサー⁉︎ 大人の⁉︎」ガタッ
125: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 17:27:07.25 :OTML+W87O
キラーパンサー「グルルッ」ズザッ
武闘家「すぅ~……はぁ~……」キッ
戦士「なるほど、デモンストレーションとはこのことか」
老人「バカバカしいヨ」
魔法使い「戦士だったら勝てそう?」
戦士「勝てないことはないだろうが、簡単にとはいかない――」
武闘家「哈っ(はっ)!!」パァンッ
キラーパンサー「ギャウッ⁉︎?」ドンッ ドサッ
僧侶「壁に叩きつけていっぱつ……ワンパンってやつですねぇ」
観客「うおおおおおおっ!! 強えっ!! お前こそがチャンピオンだ!」
戦士「……」
魔法使い「戦士より、あのチャンピオンって強いみたいね……」
老人「昨日の戦いぶりを見させてもらたアル」
戦士「ん? あたしか?」
老人「潜在能力ならうちの弟子とどっこいね。武闘家志望なら弟子にとってたが、生憎と剣士のようだシ」
戦士「あたしは、ちゃんと尊敬する師がいるよ」
老人「研鑽を忘れないように。光るモノはオマエももってるゲド、使わなければサビついてしまう」
戦士「ご忠告、覚えておこう」
老人「弟子といいライバルになりそうでなによりネ」
魔法使い「勇者じゃライバルってわけにはいかないもんねぇ」
戦士「あいつとも実力は近いよ。そうだ、今度定期的にやるか誘ってみるか」
老人「……やめとくアル」
戦士「……?」
魔法使い「おじいさん、やめるってなんで?」
老人「あいつとやったって稽古にならないヨ」
僧侶「あっ、帰っていくみたいですよぉ~」
武闘家「……」フリフリ ペコリ
観客達「チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン!」
キラーパンサー「グルルッ」ズザッ
武闘家「すぅ~……はぁ~……」キッ
戦士「なるほど、デモンストレーションとはこのことか」
老人「バカバカしいヨ」
魔法使い「戦士だったら勝てそう?」
戦士「勝てないことはないだろうが、簡単にとはいかない――」
武闘家「哈っ(はっ)!!」パァンッ
キラーパンサー「ギャウッ⁉︎?」ドンッ ドサッ
僧侶「壁に叩きつけていっぱつ……ワンパンってやつですねぇ」
観客「うおおおおおおっ!! 強えっ!! お前こそがチャンピオンだ!」
戦士「……」
魔法使い「戦士より、あのチャンピオンって強いみたいね……」
老人「昨日の戦いぶりを見させてもらたアル」
戦士「ん? あたしか?」
老人「潜在能力ならうちの弟子とどっこいね。武闘家志望なら弟子にとってたが、生憎と剣士のようだシ」
戦士「あたしは、ちゃんと尊敬する師がいるよ」
老人「研鑽を忘れないように。光るモノはオマエももってるゲド、使わなければサビついてしまう」
戦士「ご忠告、覚えておこう」
老人「弟子といいライバルになりそうでなによりネ」
魔法使い「勇者じゃライバルってわけにはいかないもんねぇ」
戦士「あいつとも実力は近いよ。そうだ、今度定期的にやるか誘ってみるか」
老人「……やめとくアル」
戦士「……?」
魔法使い「おじいさん、やめるってなんで?」
老人「あいつとやったって稽古にならないヨ」
僧侶「あっ、帰っていくみたいですよぉ~」
武闘家「……」フリフリ ペコリ
観客達「チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン!」
126: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 19:45:07.81 :/iL+wtxeO
【予選広場 グループD】
マク「――チキンナゲット5ピース拳っ!」ドンッ
ならず者「ぐえっ」ドサッ
司会「おっ! グループDは今ので最後ですねー! ……えぇ~とぉ、マク・ドナルドさん本戦進出けってーい!」カーンッ
マク「ふぅ、やれやれ。異文化コミュニケーションした時はどうなることかと思ったが」
武闘家「……」スッ
マク「おっ、よぉ」
武闘家「素手でやってるの?」
マク「ん? うん、まぁ」
武闘家「師匠はああ言ってるけど、アタイ、信じられない」
マク「いいんじゃないか、それで。言われてもわかるもんじゃないだろ」
武闘家「それは、体験させるって言いたいの?」
マク「なんでそう物事を……斜に構えてとらえるんですかねぇ」
武闘家「本気じゃないから」
マク「む?」
武闘家「苦労した人にはね、ムカつくのよ。あなたみたいな人」
マク「……」
武闘家「アタイだって、昔から才能があると言われつづけてきた。でも、師匠に出会い、天賦の才に奢っていたのは自分だと気がついた。……そして努力するようになった」
マク「……」
武闘家「――あんた、努力したことないだろ」
マク「んー」ポリポリ
武闘家「師匠は今のアタイが気にいらないんだ。鼻を折るつもりだろうけど」
マク「そう言ってたなぁ」
武闘家「これはチャンス! 師匠にアタイの努力を見てもらうための! ……積み重ねてるものを……!」
マク「なぁるほど」
武闘家「勇者だかなんだか知らないけど、踏み台になってもらう。……じゃ」クルッ スタスタ
マク「……勇者と思わない、か。嫌いじゃないねぇ。ああいうの」
【予選広場 グループD】
マク「――チキンナゲット5ピース拳っ!」ドンッ
ならず者「ぐえっ」ドサッ
司会「おっ! グループDは今ので最後ですねー! ……えぇ~とぉ、マク・ドナルドさん本戦進出けってーい!」カーンッ
マク「ふぅ、やれやれ。異文化コミュニケーションした時はどうなることかと思ったが」
武闘家「……」スッ
マク「おっ、よぉ」
武闘家「素手でやってるの?」
マク「ん? うん、まぁ」
武闘家「師匠はああ言ってるけど、アタイ、信じられない」
マク「いいんじゃないか、それで。言われてもわかるもんじゃないだろ」
武闘家「それは、体験させるって言いたいの?」
マク「なんでそう物事を……斜に構えてとらえるんですかねぇ」
武闘家「本気じゃないから」
マク「む?」
武闘家「苦労した人にはね、ムカつくのよ。あなたみたいな人」
マク「……」
武闘家「アタイだって、昔から才能があると言われつづけてきた。でも、師匠に出会い、天賦の才に奢っていたのは自分だと気がついた。……そして努力するようになった」
マク「……」
武闘家「――あんた、努力したことないだろ」
マク「んー」ポリポリ
武闘家「師匠は今のアタイが気にいらないんだ。鼻を折るつもりだろうけど」
マク「そう言ってたなぁ」
武闘家「これはチャンス! 師匠にアタイの努力を見てもらうための! ……積み重ねてるものを……!」
マク「なぁるほど」
武闘家「勇者だかなんだか知らないけど、踏み台になってもらう。……じゃ」クルッ スタスタ
マク「……勇者と思わない、か。嫌いじゃないねぇ。ああいうの」
127: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 20:03:28.03 :/iL+wtxeO
【コロシアム 観客席】
司会「れでぃぃぃすあんどじぇんとるめーーん! いよいよ本戦の開幕デーーーースっ!!!」
観客達「おおおおおぉぉぉーーっ!!!」
司会「十連続防衛中のチャンピオンの牙城を崩すやつはどいつだ! はたまた今回も防衛して破竹の新記録をたっせいするのかぁーーーっ! 無謀な挑戦者たちはぁ、こいつらだぁーーーっ!!」
僧侶「いよいよ本戦みたいですねぇー」
戦士「やはりこの空気はビリビリとくるものがある」
老人「口上で誤魔化してるダケヨ」
魔法使い「あっ、出てきた」
老人「さて、どこにおるアルカ」キョロキョロ
僧侶「チャンピオンの他にも知り合いがいらっしゃるんですかぁ?」
老人「今回の本命ヨ」
戦士「本命とは? 普通、弟子だろう?」
老人「ワシの弟子は負けるネ。ネタバラシて悪いけど確定ヨ」
魔法使い「えっ」
マク「……」スタスタ
老人「うんうん、ちゃんと勝ち進んでいるアルな」
僧侶「あのお方は~……」
魔法使い「コロシアムの外で戦士とぶつかったやつじゃなかった」
戦士「あたしはたこ焼きしか見てなかった」
僧侶「くすくす。花より団子ですねぇ」
老人「女戦士よ」
戦士「なんだ?」
老人「アレをよく見ておくよろし。一挙一動、目を離さずに」
戦士「……?」ジィー
老人「勉強にはならないダロけど、気がつくものがあるカモしれないネ」
僧侶「と、いうことはぁ……あの選手が本命さんですかぁ?」
老人「台風の目といっても過言ではないヨ」
魔法使い「べ、べた褒めね」
老人「当たり前ヨ。強者たるもの、自分より強い者を褒めんと、なにを褒めるノヨ」
戦士「なに……?」
老人「独り言ヨ。聞き流すよろし」
【コロシアム 観客席】
司会「れでぃぃぃすあんどじぇんとるめーーん! いよいよ本戦の開幕デーーーースっ!!!」
観客達「おおおおおぉぉぉーーっ!!!」
司会「十連続防衛中のチャンピオンの牙城を崩すやつはどいつだ! はたまた今回も防衛して破竹の新記録をたっせいするのかぁーーーっ! 無謀な挑戦者たちはぁ、こいつらだぁーーーっ!!」
僧侶「いよいよ本戦みたいですねぇー」
戦士「やはりこの空気はビリビリとくるものがある」
老人「口上で誤魔化してるダケヨ」
魔法使い「あっ、出てきた」
老人「さて、どこにおるアルカ」キョロキョロ
僧侶「チャンピオンの他にも知り合いがいらっしゃるんですかぁ?」
老人「今回の本命ヨ」
戦士「本命とは? 普通、弟子だろう?」
老人「ワシの弟子は負けるネ。ネタバラシて悪いけど確定ヨ」
魔法使い「えっ」
マク「……」スタスタ
老人「うんうん、ちゃんと勝ち進んでいるアルな」
僧侶「あのお方は~……」
魔法使い「コロシアムの外で戦士とぶつかったやつじゃなかった」
戦士「あたしはたこ焼きしか見てなかった」
僧侶「くすくす。花より団子ですねぇ」
老人「女戦士よ」
戦士「なんだ?」
老人「アレをよく見ておくよろし。一挙一動、目を離さずに」
戦士「……?」ジィー
老人「勉強にはならないダロけど、気がつくものがあるカモしれないネ」
僧侶「と、いうことはぁ……あの選手が本命さんですかぁ?」
老人「台風の目といっても過言ではないヨ」
魔法使い「べ、べた褒めね」
老人「当たり前ヨ。強者たるもの、自分より強い者を褒めんと、なにを褒めるノヨ」
戦士「なに……?」
老人「独り言ヨ。聞き流すよろし」
128: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 20:36:18.79 :/iL+wtxeO
【一回戦 マクvsナルシストな優男】
マク「んーとぉ、決勝までは三回勝たなきゃいけないわけか。チャンピオンってその間待つだけなの?」
優男「ふっ。貴様も運がないやつだ!」ビシィ
マク「運はないと思う、たしかに」
優男「一回戦からこのオレに当たってしまうとは……だが、情けはしないよ。なぜなら、女たちが悲しんでしまうから……」
マク「……」
優男「かっこよすぎるオレの罪……あぁっ! マーベラスッ!!」
レフェリー「間もなく試合が開始される。準備はいいか?」
マク「ああ」
優男「いつでも」
レフェリー「よし。まず、殺しはご法度だ。このルールだけは守れよ。じゃないと牢屋行きだからな」
優男「心得ているよ。そうなったら女たちが」
レフェリー「話を続ける。尚、この説明は一回戦のみとする、あとは割愛するからそのつもりで」
優男「彼には必要なかったろう」
マク「了解だ」
レフェリー「双方、立ち位置につけ」
優男「5秒で屠ってあげよう。せめてもの情けだ」ザッザッ
マク「……」ザッザッ
レフェリー「よし、位置についたな。……オーケーだ! ゴングを!」フリフリ
司会「一回戦の準備が整ったようです! キザな優男さんは前回の準々決勝で惜しくも敗れました! 今回は前回よりも高みを目指せるか! 注目の選手です!!」
【一回戦 マクvsナルシストな優男】
マク「んーとぉ、決勝までは三回勝たなきゃいけないわけか。チャンピオンってその間待つだけなの?」
優男「ふっ。貴様も運がないやつだ!」ビシィ
マク「運はないと思う、たしかに」
優男「一回戦からこのオレに当たってしまうとは……だが、情けはしないよ。なぜなら、女たちが悲しんでしまうから……」
マク「……」
優男「かっこよすぎるオレの罪……あぁっ! マーベラスッ!!」
レフェリー「間もなく試合が開始される。準備はいいか?」
マク「ああ」
優男「いつでも」
レフェリー「よし。まず、殺しはご法度だ。このルールだけは守れよ。じゃないと牢屋行きだからな」
優男「心得ているよ。そうなったら女たちが」
レフェリー「話を続ける。尚、この説明は一回戦のみとする、あとは割愛するからそのつもりで」
優男「彼には必要なかったろう」
マク「了解だ」
レフェリー「双方、立ち位置につけ」
優男「5秒で屠ってあげよう。せめてもの情けだ」ザッザッ
マク「……」ザッザッ
レフェリー「よし、位置についたな。……オーケーだ! ゴングを!」フリフリ
司会「一回戦の準備が整ったようです! キザな優男さんは前回の準々決勝で惜しくも敗れました! 今回は前回よりも高みを目指せるか! 注目の選手です!!」
129: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 20:37:13.76 :/iL+wtxeO
観客「優男さーーーんっ!!」
優男「ふっ」キラン
司会「対するは、マク・ドナルド選手! チャイニーズの装いでマスクをかぶるというなんともあべこべな出で立ちですか実力やいかに!!」
マク「(……だりぃ)」
司会「それでは、レディィイッ! ゴォォオーッ!」カーン
優男「……さぁ、このレイピアの餌食となるか?」ジリ
マク「5秒じゃなかったのかよ。さっさとこいよ」ダラー
優男「むっ、武器は無手か? クローもないのか?」
マク「ああ、これ」スッ
優男「なんだね、それは」
マク「ペーパーナイフ」
優男「ほ、ほう……」ヒクヒク
マク「ほれ」スッ
優男「なにをしているんだね……?」
マク「構えた」プラプラ
優男「ふ、ふっふっふっ、なぜ貴様のようなやつが本戦に」
マク「はよこい」
優男「よかろうッ! 医務室で後悔するがいい!!」ダンッ ダダダッ
マク「バリューセット」スッ
優男「……っ⁉︎」
マク「てりやき三段突きっ!!」ドンドンドンッ
優男「なっ、はやっ……ッ⁉︎ がはっ!!」ドサァ
マク「おっちゃん。医務室に連れてってやれ」クルッ
レフェリー「おっ、お、えっ?」
司会「おーーっとぉ!! どうしたことだこれはぁ!! 優男選手が向うもあえなく返り討ちぃーー!! 倒れてしまったーー!」
優男「」
レフェリー「泡ふいてる。だめだな、こりゃ」フリフリ
司会「あーーっとぉ! レフェリーが腕を交差したぁ! けっちゃーーくっ! なんともあっけない幕切れ!! マク・ドナルド選手の圧勝だぁーーっ!!!」
観客「優男さーーーんっ!!」
優男「ふっ」キラン
司会「対するは、マク・ドナルド選手! チャイニーズの装いでマスクをかぶるというなんともあべこべな出で立ちですか実力やいかに!!」
マク「(……だりぃ)」
司会「それでは、レディィイッ! ゴォォオーッ!」カーン
優男「……さぁ、このレイピアの餌食となるか?」ジリ
マク「5秒じゃなかったのかよ。さっさとこいよ」ダラー
優男「むっ、武器は無手か? クローもないのか?」
マク「ああ、これ」スッ
優男「なんだね、それは」
マク「ペーパーナイフ」
優男「ほ、ほう……」ヒクヒク
マク「ほれ」スッ
優男「なにをしているんだね……?」
マク「構えた」プラプラ
優男「ふ、ふっふっふっ、なぜ貴様のようなやつが本戦に」
マク「はよこい」
優男「よかろうッ! 医務室で後悔するがいい!!」ダンッ ダダダッ
マク「バリューセット」スッ
優男「……っ⁉︎」
マク「てりやき三段突きっ!!」ドンドンドンッ
優男「なっ、はやっ……ッ⁉︎ がはっ!!」ドサァ
マク「おっちゃん。医務室に連れてってやれ」クルッ
レフェリー「おっ、お、えっ?」
司会「おーーっとぉ!! どうしたことだこれはぁ!! 優男選手が向うもあえなく返り討ちぃーー!! 倒れてしまったーー!」
優男「」
レフェリー「泡ふいてる。だめだな、こりゃ」フリフリ
司会「あーーっとぉ! レフェリーが腕を交差したぁ! けっちゃーーくっ! なんともあっけない幕切れ!! マク・ドナルド選手の圧勝だぁーーっ!!!」
130: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 20:46:57.11 :/iL+wtxeO
【観客席】
戦士「……」ジィー
老人「どうネ。理解できたカ?」
魔法使い「あの相手が弱かっただけじゃないの?」
老人「弱いヨ」
魔法使い「な、なんじゃそりゃ」ズル
老人「というか、この大会自体出てるやつみんな弱いネ。ワシから言わせれば。その中で順位競ってるカラ、滑稽なのヨ」
戦士「たしかに、はやかったが」
老人「情報量が少なすぎタカ」
僧侶「あの、でもぉ、準々決勝ならそれなりだったんじゃぁ」
老人「他と比べて普通ぐらいカヨ。次いってミヨ」
魔法使い「それにしても、だるそーにしてたわね。あのマク・ドナルドって人」
老人「かっかっかっ! そらそうよ! 遊び相手にもならんモノ」
僧侶「……でもぉ、どこかで見たことがあるようなぁ~」
【観客席】
戦士「……」ジィー
老人「どうネ。理解できたカ?」
魔法使い「あの相手が弱かっただけじゃないの?」
老人「弱いヨ」
魔法使い「な、なんじゃそりゃ」ズル
老人「というか、この大会自体出てるやつみんな弱いネ。ワシから言わせれば。その中で順位競ってるカラ、滑稽なのヨ」
戦士「たしかに、はやかったが」
老人「情報量が少なすぎタカ」
僧侶「あの、でもぉ、準々決勝ならそれなりだったんじゃぁ」
老人「他と比べて普通ぐらいカヨ。次いってミヨ」
魔法使い「それにしても、だるそーにしてたわね。あのマク・ドナルドって人」
老人「かっかっかっ! そらそうよ! 遊び相手にもならんモノ」
僧侶「……でもぉ、どこかで見たことがあるようなぁ~」
131: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 21:03:20.84 :/iL+wtxeO
【準々決勝 マクvsおかっぱの女】
マク「女かよ」
おかっぱ「……オトコ、男、むおおおおおっ!」ムキムキ
マク「訂正、女じゃなかったわ」
司会「おかっぱの女選手は前回の決勝進出選手なので、シード扱いとなります。よってぇ! 準々決勝はぁ、このカードだぁー!」
マク「シードなんてあったのか。んー、あ、表をよく見ると武闘家は反対側から勝ち進んでるのね」
おかっぱ「おとこおおお、おとこおおおおっ!!」
マク「別の意味で身の危険を感じる」
司会「マク・ドナルド選手は初出場ながらも、初戦は見事な勝利をおさめました! その実力はホンモノなのか! レディィイッ! ゴォォオーッ!」カーン
おかっぱ「むふーっ、むふーっ」ズシン ズシン
マク「おわかりいただけるだろうか」
おかっぱ「むふーっ、むふーっ」ズシン ズシン
マク「身長2メートル、体重100キロを超そうな体躯をした女が向かってくる恐怖を」
おかっぱ「ぎぁあああおっ」
マク「恐竜のような雄叫びをあげている様を」
おかっぱ「どっせえぇいっ!!」ブンッ
マク「おっ」ドンッ
司会「おかっぱ選手の張り手がマク選手にクリーンヒットォ!! 直撃だぁーーっ!!!」
マク「……シャオリーです」タンッ
司会「しかーし! なにごともなかったかのようにしているぅー!」
マク「また海王でてきたらこわいからここまでにしとくか。ほら、こいよ」クイクイ
おかっぱ「おとこおおおおおおっ!!」ズンズンッ
【準々決勝 マクvsおかっぱの女】
マク「女かよ」
おかっぱ「……オトコ、男、むおおおおおっ!」ムキムキ
マク「訂正、女じゃなかったわ」
司会「おかっぱの女選手は前回の決勝進出選手なので、シード扱いとなります。よってぇ! 準々決勝はぁ、このカードだぁー!」
マク「シードなんてあったのか。んー、あ、表をよく見ると武闘家は反対側から勝ち進んでるのね」
おかっぱ「おとこおおお、おとこおおおおっ!!」
マク「別の意味で身の危険を感じる」
司会「マク・ドナルド選手は初出場ながらも、初戦は見事な勝利をおさめました! その実力はホンモノなのか! レディィイッ! ゴォォオーッ!」カーン
おかっぱ「むふーっ、むふーっ」ズシン ズシン
マク「おわかりいただけるだろうか」
おかっぱ「むふーっ、むふーっ」ズシン ズシン
マク「身長2メートル、体重100キロを超そうな体躯をした女が向かってくる恐怖を」
おかっぱ「ぎぁあああおっ」
マク「恐竜のような雄叫びをあげている様を」
おかっぱ「どっせえぇいっ!!」ブンッ
マク「おっ」ドンッ
司会「おかっぱ選手の張り手がマク選手にクリーンヒットォ!! 直撃だぁーーっ!!!」
マク「……シャオリーです」タンッ
司会「しかーし! なにごともなかったかのようにしているぅー!」
マク「また海王でてきたらこわいからここまでにしとくか。ほら、こいよ」クイクイ
おかっぱ「おとこおおおおおおっ!!」ズンズンッ
132: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 21:16:21.97 :/iL+wtxeO
【観客席】
魔法使い「なんか飽きてきた」
老人「オマエ魔法職。なら、見ていて楽しいモンではないヨ」
魔法使い「賭ければよかったかな。戦士、誰かに賭けてる?」
戦士「……」ジィー
魔法使い「って、聞いちゃいないか」
僧侶「私は賭けましたよぉ~」
魔法使い「いつ? ていうか、ほんと抜け目ないわよねぇ」
僧侶「魔法使いさんがヌケサクなんですよぉ~」
魔法使い「そ、そう……! ケンカ売ってるわけね?」
僧侶「誰に賭けたか気になりませんかぁ?」
魔法使い「聞いてほしいなら素直に……誰よ」
僧侶「マク・ドナルド選手ですぅ~」
魔法使い「へー、おじいさんの話がホントなら優勝するんでしょ? よかったじゃない」
僧侶「はい~。初出場ということもあってぇ、オッズは150倍でしたぁ」
魔法使い「大穴ね。いくらかけたの?」
僧侶「全財産です~」
魔法使い「ぜっ……や、やるわね。でも、もし負けたら返ってこないわよ?」
僧侶「第六感を信じようと思いましてぇ」
魔法使い「まぁ、あんたのお金だからいいけど」
僧侶「魔法使いさんのお財布もですよぉ~」
魔法使い「……えっ」
僧侶「さっき、席を外した時に麻袋から持っていきましたぁ」
魔法使い「ちょ、ちょっと~、タチの悪い冗談やめてよー……」ゴソゴソ
僧侶「……」ニコニコ
魔法使い「な、ないっ! ない! うそ⁉︎」ブンブン
僧侶「ですからぁ~」
魔法使い「僧侶っ! あんた⁉︎」
僧侶「みんなでマクさんを応援しましょ~」ニコニコ
老人「やるアルネ。オマエ」
【観客席】
魔法使い「なんか飽きてきた」
老人「オマエ魔法職。なら、見ていて楽しいモンではないヨ」
魔法使い「賭ければよかったかな。戦士、誰かに賭けてる?」
戦士「……」ジィー
魔法使い「って、聞いちゃいないか」
僧侶「私は賭けましたよぉ~」
魔法使い「いつ? ていうか、ほんと抜け目ないわよねぇ」
僧侶「魔法使いさんがヌケサクなんですよぉ~」
魔法使い「そ、そう……! ケンカ売ってるわけね?」
僧侶「誰に賭けたか気になりませんかぁ?」
魔法使い「聞いてほしいなら素直に……誰よ」
僧侶「マク・ドナルド選手ですぅ~」
魔法使い「へー、おじいさんの話がホントなら優勝するんでしょ? よかったじゃない」
僧侶「はい~。初出場ということもあってぇ、オッズは150倍でしたぁ」
魔法使い「大穴ね。いくらかけたの?」
僧侶「全財産です~」
魔法使い「ぜっ……や、やるわね。でも、もし負けたら返ってこないわよ?」
僧侶「第六感を信じようと思いましてぇ」
魔法使い「まぁ、あんたのお金だからいいけど」
僧侶「魔法使いさんのお財布もですよぉ~」
魔法使い「……えっ」
僧侶「さっき、席を外した時に麻袋から持っていきましたぁ」
魔法使い「ちょ、ちょっと~、タチの悪い冗談やめてよー……」ゴソゴソ
僧侶「……」ニコニコ
魔法使い「な、ないっ! ない! うそ⁉︎」ブンブン
僧侶「ですからぁ~」
魔法使い「僧侶っ! あんた⁉︎」
僧侶「みんなでマクさんを応援しましょ~」ニコニコ
老人「やるアルネ。オマエ」
135: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 23:35:55.73 :XHxRr4XKO
【決勝 マクvs女武闘家】
司会「青コーナー! 連戦無敗のチャンピオン! 女武闘家ぁー!」
観客「チャンピオン! 頑張れよー!」
武闘家「谢谢(シエシエ)」ペコ
司会「迎えるは準々決勝、準決勝と危なげなく勝ち進んできた謎のチャレンジジャー! マク・ドナルドだぁー!」
観客「なんかようわからんが頑張れー!」
マク「適当な応援ありがとよ!」
魔法使い「勝て! 死にものぐるいで勝ちなさい!」
マク「あ? なんか聞き覚えのある声がまじってたような」
武闘家「……疲れてないか?」
マク「疲れてたら手加減してくれんの?」
武闘家「冗談。そんなふざけた雰囲気はここでおしまい」
マク「えぇー、やだなー。もっとふざけたいのにー」
武闘家「うざっ」
マク「すみません」
武闘家「……すぅ~……はぁ~……」
マク「それってなんか統一法だったりすんの? 発勁とか?」
武闘家「気が散る」
マク「はい」
司会「泣いても笑ってもこの一戦で今日はフィナーレです! ではぁ、試合、開始ィッ!!」カーン
武闘家「……ひとつ、聞きたい」
マク「なんだね?」
武闘家「強いって、どんな気持ち?」
マク「……」
武闘家「アタイに見えない景色が見えてるんだろ?」
マク「つまんないよ。なにもかも」
武闘家「どうして? 強ければ嬉しくないの?」
マク「ノーテンキに構えてりゃそうかもしんないけどな。俺ってこう見えて繊細なの」
武闘家「……見えないけど」
マク「こう見えてって言ったろ」
武闘家「師匠の言う通り、最初から全力でいこうと思う」
マク「どーぞ」
武闘家「……」ゴゴゴッ
マク「(力溜めてんのか)」
【決勝 マクvs女武闘家】
司会「青コーナー! 連戦無敗のチャンピオン! 女武闘家ぁー!」
観客「チャンピオン! 頑張れよー!」
武闘家「谢谢(シエシエ)」ペコ
司会「迎えるは準々決勝、準決勝と危なげなく勝ち進んできた謎のチャレンジジャー! マク・ドナルドだぁー!」
観客「なんかようわからんが頑張れー!」
マク「適当な応援ありがとよ!」
魔法使い「勝て! 死にものぐるいで勝ちなさい!」
マク「あ? なんか聞き覚えのある声がまじってたような」
武闘家「……疲れてないか?」
マク「疲れてたら手加減してくれんの?」
武闘家「冗談。そんなふざけた雰囲気はここでおしまい」
マク「えぇー、やだなー。もっとふざけたいのにー」
武闘家「うざっ」
マク「すみません」
武闘家「……すぅ~……はぁ~……」
マク「それってなんか統一法だったりすんの? 発勁とか?」
武闘家「気が散る」
マク「はい」
司会「泣いても笑ってもこの一戦で今日はフィナーレです! ではぁ、試合、開始ィッ!!」カーン
武闘家「……ひとつ、聞きたい」
マク「なんだね?」
武闘家「強いって、どんな気持ち?」
マク「……」
武闘家「アタイに見えない景色が見えてるんだろ?」
マク「つまんないよ。なにもかも」
武闘家「どうして? 強ければ嬉しくないの?」
マク「ノーテンキに構えてりゃそうかもしんないけどな。俺ってこう見えて繊細なの」
武闘家「……見えないけど」
マク「こう見えてって言ったろ」
武闘家「師匠の言う通り、最初から全力でいこうと思う」
マク「どーぞ」
武闘家「……」ゴゴゴッ
マク「(力溜めてんのか)」
136: ◆7Ub330dMyM:2018/01/13(土) 23:49:08.84 :XHxRr4XKO
【観客席】
魔法使い「やれ! 殺っちゃえー!」
僧侶「くすくす。熱中してなによりですー」
戦士「女武闘家の雰囲気が変わった。最初からフルでやるつもりか」
老人「いい心構えネ。小細工は不要よ」
戦士「あのマク選手。たしかに強い。これまでの危なげなく勝利した戦いを見ても、そう思う」
老人「……」
戦士「ご老人。しかしだな、あたしはたぶん女武闘家が」
老人「それは合わせてただけよ」
戦士「……なに? 合わせる?」
老人「マクは相手の強さに合わせる。手を抜くのに慣れすぎてるネ。かわいそうな男ヨ……これまでそうしてきたんだロウ」
戦士「手を、抜く?」
老人「つまり、相手が子供だたら自分も子供レベルまで弱くするヨ。優しいんだろネ」
僧侶「……」
老人「だがしかし、それは武に生きる者にとっては、これ以上ない愚弄ヨ」
魔法使い「いけーっ! 今が隙だらけなんだから攻撃するのよー!」
戦士「では、武闘家の強さにも合わせるということか?」
老人「そうであれば、救えないネ。でも、ちゃんと事前にコテンパンするよう言ってあるから大丈夫ダロ」
僧侶「おじいさん、あの人って、やっぱり……」
老人「そろそろ体内の気を練り終わる」
【観客席】
魔法使い「やれ! 殺っちゃえー!」
僧侶「くすくす。熱中してなによりですー」
戦士「女武闘家の雰囲気が変わった。最初からフルでやるつもりか」
老人「いい心構えネ。小細工は不要よ」
戦士「あのマク選手。たしかに強い。これまでの危なげなく勝利した戦いを見ても、そう思う」
老人「……」
戦士「ご老人。しかしだな、あたしはたぶん女武闘家が」
老人「それは合わせてただけよ」
戦士「……なに? 合わせる?」
老人「マクは相手の強さに合わせる。手を抜くのに慣れすぎてるネ。かわいそうな男ヨ……これまでそうしてきたんだロウ」
戦士「手を、抜く?」
老人「つまり、相手が子供だたら自分も子供レベルまで弱くするヨ。優しいんだろネ」
僧侶「……」
老人「だがしかし、それは武に生きる者にとっては、これ以上ない愚弄ヨ」
魔法使い「いけーっ! 今が隙だらけなんだから攻撃するのよー!」
戦士「では、武闘家の強さにも合わせるということか?」
老人「そうであれば、救えないネ。でも、ちゃんと事前にコテンパンするよう言ってあるから大丈夫ダロ」
僧侶「おじいさん、あの人って、やっぱり……」
老人「そろそろ体内の気を練り終わる」
137: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 00:09:18.46 :kHGtQHyDO
【広場】
武闘家「……ッ」キッ
マク「かもん」クイクイ
武闘家「あちょぉ~~~~ッ!! 二段蹴りッ!!」ダンッ
マク「甘い……!」スッ
武闘家「まだまだっ!! 回転脚ッ!!」ガンッ
マク「おっ、おっ」スッ スッ
武闘家「はぁぁ~~~ッ!! 正拳突きっ!!」バァンッ
マク「うっ」ズザザ
司会「流れるような女武闘家選手の攻撃がマクを選手を襲うー! そしてとどめの正拳突きがクリーンヒットォーー!」
武闘家「……」スッ
マク「いてて。直線的な動きとはいえ、食らうといてぇな」
武闘家「まじめにやれ」
マク「やってるよ」
武闘家「ふざけるなっ!!」ダンッ
マク「いやー、本気でやろうとしてるんだけど、どうやるのか忘れちゃっててね」
武闘家「……そうか、なら思い出せるのからはじめないといけないのか」
マク「うーん、でもまぁ、ちょこっとならいいよ」
武闘家「……」ピク
マク「出し惜しみしてるわけじゃないんだけどな。爺さんがうるさそうだし、本気、見せてやるよ」
武闘家「面白い……! 伝説の存在の力! 見せてみろ!」
マク「んじゃ手始めに」ブンッ バンッ
司会「な、なんだー⁉︎ どうしたマク選手! いきなり地面を殴ったーー!!」
武闘家「……?」
司会「これは降参ですという合図なのかーー⁉︎」
ゴゴゴッ ゴゴゴゴゴゴッ メキメキ
武闘家「な……そんな、まさか……」
マク「地割れって、知ってる?」
司会「な、なななっ! マク選手が殴ったところから大地が割れたーー! きゃあっ⁉︎」ガラガラッ
ゴゴゴッ ゴゴゴォッ
マク「さらに、もう一発」ブン バンッ
ゴォォオーッ
武闘家「ま、まずいっ!」ダンッ
【広場】
武闘家「……ッ」キッ
マク「かもん」クイクイ
武闘家「あちょぉ~~~~ッ!! 二段蹴りッ!!」ダンッ
マク「甘い……!」スッ
武闘家「まだまだっ!! 回転脚ッ!!」ガンッ
マク「おっ、おっ」スッ スッ
武闘家「はぁぁ~~~ッ!! 正拳突きっ!!」バァンッ
マク「うっ」ズザザ
司会「流れるような女武闘家選手の攻撃がマクを選手を襲うー! そしてとどめの正拳突きがクリーンヒットォーー!」
武闘家「……」スッ
マク「いてて。直線的な動きとはいえ、食らうといてぇな」
武闘家「まじめにやれ」
マク「やってるよ」
武闘家「ふざけるなっ!!」ダンッ
マク「いやー、本気でやろうとしてるんだけど、どうやるのか忘れちゃっててね」
武闘家「……そうか、なら思い出せるのからはじめないといけないのか」
マク「うーん、でもまぁ、ちょこっとならいいよ」
武闘家「……」ピク
マク「出し惜しみしてるわけじゃないんだけどな。爺さんがうるさそうだし、本気、見せてやるよ」
武闘家「面白い……! 伝説の存在の力! 見せてみろ!」
マク「んじゃ手始めに」ブンッ バンッ
司会「な、なんだー⁉︎ どうしたマク選手! いきなり地面を殴ったーー!!」
武闘家「……?」
司会「これは降参ですという合図なのかーー⁉︎」
ゴゴゴッ ゴゴゴゴゴゴッ メキメキ
武闘家「な……そんな、まさか……」
マク「地割れって、知ってる?」
司会「な、なななっ! マク選手が殴ったところから大地が割れたーー! きゃあっ⁉︎」ガラガラッ
ゴゴゴッ ゴゴゴォッ
マク「さらに、もう一発」ブン バンッ
ゴォォオーッ
武闘家「ま、まずいっ!」ダンッ
138: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 00:16:17.89 :kHGtQHyDO
【観客席】
老人「アイヤー、本気でやれ言うたけど誰が見せろ言うたネ。この建物壊す気かあのボケ」
戦士「な、なんだこれは。どうなってる!」
魔法使い「じ、じじじ地震?」
僧侶「あらあらぁ」
老人「イヨイヨなったらワシが止めにはいるヨ。オマエら逃げる準備しとけ」
魔法使い「だ、だだただ大丈夫なの? これ」
老人「無問題」
魔法使い「な、何者よ! あのマクとかいうやつ!」
老人「それは後で本人に聞いてみるがよいよ」
戦士「……っ! こ、こんな力、人間か⁉︎ 」
【観客席】
老人「アイヤー、本気でやれ言うたけど誰が見せろ言うたネ。この建物壊す気かあのボケ」
戦士「な、なんだこれは。どうなってる!」
魔法使い「じ、じじじ地震?」
僧侶「あらあらぁ」
老人「イヨイヨなったらワシが止めにはいるヨ。オマエら逃げる準備しとけ」
魔法使い「だ、だだただ大丈夫なの? これ」
老人「無問題」
魔法使い「な、何者よ! あのマクとかいうやつ!」
老人「それは後で本人に聞いてみるがよいよ」
戦士「……っ! こ、こんな力、人間か⁉︎ 」
139: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 00:36:14.74 :kHGtQHyDO
武闘家「……くっ」
マク「なんでもさ、魔王ってのはいくつも障壁もってるらしいんだよね」
武闘家「だ、大地を割るなんて……」
マク「だからなのかもしれんけど、俺ってばその何層かの膜を打ち破るパワァーがあるみたいなのよ」
武闘家「……っ」ゴクリ
マク「地割れなんてさ、ほんの見せかけだけ。派手だけどな。どうする? もうやめる?」
武闘家「……や、やめられるものか……」
マク「そうだよな。ひっこみつかないよな」
武闘家「い、いくぞっ! 正拳突きっ!!」ダンッ ブンッ
マク「っと」パシッ
武闘家「つ、掴んだっ⁉︎」
マク「正拳突きって直線的すぎるから、当たった時はダメージでかいけど命中率はそんな高くないよ。予測しやすいし」
武闘家「くっ、離せ」ブンッ
マク「はい」パシッ
武闘家「あっ、りょ、両手を。ならば、蹴りで」
マク「……」ギュゥッ
武闘家「いっ⁉︎」ガクンッ
マク「動作を殺すのは、痛覚が一番なんだよ。拳を握られた痛みで、足がでなくなったろ」ギリギリ
武闘家「うっ、く、くぅっ」
マク「でも俺の足はあいてるんだな、これが。女の腹蹴るのは気がひけるから、胸にしとく。いいか、今から胸のあたりを蹴るからな」スッ ブンッ
武闘家「……っ! きゃあっ!!」ドゴーーン
司会「女武闘家選手、壁まで一直線に吹っ飛んだーーっ!! 凄まじい蹴りです!! 単なる蹴りなのでしょーか!」
マク「レフェリーのおっちゃん、隠れてないで出てきて」
レフェリー「ひっ」
マク「毎回悪いんだけど、医務室に連れてかないと」
レフェリー「あっ! だ、大丈夫か⁉︎」
武闘家「」パラパラ
レフェリー「おい、 医務班! 医務班!」
観客達「マジかよ」ザワザワ
司会「えっ? お、終わり?」
武闘家「……くっ」
マク「なんでもさ、魔王ってのはいくつも障壁もってるらしいんだよね」
武闘家「だ、大地を割るなんて……」
マク「だからなのかもしれんけど、俺ってばその何層かの膜を打ち破るパワァーがあるみたいなのよ」
武闘家「……っ」ゴクリ
マク「地割れなんてさ、ほんの見せかけだけ。派手だけどな。どうする? もうやめる?」
武闘家「……や、やめられるものか……」
マク「そうだよな。ひっこみつかないよな」
武闘家「い、いくぞっ! 正拳突きっ!!」ダンッ ブンッ
マク「っと」パシッ
武闘家「つ、掴んだっ⁉︎」
マク「正拳突きって直線的すぎるから、当たった時はダメージでかいけど命中率はそんな高くないよ。予測しやすいし」
武闘家「くっ、離せ」ブンッ
マク「はい」パシッ
武闘家「あっ、りょ、両手を。ならば、蹴りで」
マク「……」ギュゥッ
武闘家「いっ⁉︎」ガクンッ
マク「動作を殺すのは、痛覚が一番なんだよ。拳を握られた痛みで、足がでなくなったろ」ギリギリ
武闘家「うっ、く、くぅっ」
マク「でも俺の足はあいてるんだな、これが。女の腹蹴るのは気がひけるから、胸にしとく。いいか、今から胸のあたりを蹴るからな」スッ ブンッ
武闘家「……っ! きゃあっ!!」ドゴーーン
司会「女武闘家選手、壁まで一直線に吹っ飛んだーーっ!! 凄まじい蹴りです!! 単なる蹴りなのでしょーか!」
マク「レフェリーのおっちゃん、隠れてないで出てきて」
レフェリー「ひっ」
マク「毎回悪いんだけど、医務室に連れてかないと」
レフェリー「あっ! だ、大丈夫か⁉︎」
武闘家「」パラパラ
レフェリー「おい、 医務班! 医務班!」
観客達「マジかよ」ザワザワ
司会「えっ? お、終わり?」
140: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 00:54:08.11 :kHGtQHyDO
【観客席】
老人「一時はどうなることかおもたけど、おわたカヨ。コテンパンにするどころか、ってないネ」
戦士「ご老人!! あれはどういう知り合いだ!!」
老人「まぁ、弱いのは自覚できたろうから良しとスルか」
魔法使い「あ、あんなの、マクがいれば、魔王城付近のモンスターとも渡りあえるんじゃないの……?」
老人「あれでもちょっこっとしか見せてないと思うヨ」
戦士「な、なに? ちょこっと?」
老人「そうヨ。普段を0.1としたら0.5ぐらい?」
魔法使い「それって、1が上限?」
老人「100が上限に決まってるダロ。1だったらたいしたことなくなる」
魔法使い「い、今ので? 補助魔法かけてない状態よ? ……アレフガルド、滅ぼされちゃうんじゃないの……」
老人「大袈裟な。こっち側の人間なんだからいいヨ」
僧侶「これで、賭け金ゲットですねぇ~」ニコニコ
【観客席】
老人「一時はどうなることかおもたけど、おわたカヨ。コテンパンにするどころか、ってないネ」
戦士「ご老人!! あれはどういう知り合いだ!!」
老人「まぁ、弱いのは自覚できたろうから良しとスルか」
魔法使い「あ、あんなの、マクがいれば、魔王城付近のモンスターとも渡りあえるんじゃないの……?」
老人「あれでもちょっこっとしか見せてないと思うヨ」
戦士「な、なに? ちょこっと?」
老人「そうヨ。普段を0.1としたら0.5ぐらい?」
魔法使い「それって、1が上限?」
老人「100が上限に決まってるダロ。1だったらたいしたことなくなる」
魔法使い「い、今ので? 補助魔法かけてない状態よ? ……アレフガルド、滅ぼされちゃうんじゃないの……」
老人「大袈裟な。こっち側の人間なんだからいいヨ」
僧侶「これで、賭け金ゲットですねぇ~」ニコニコ
146: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 13:01:39.37 :o71JjVk4O
【医務室】
武闘家「うっ……」ムク
勇者「目が覚めたか」
武闘家「……そうか、蹴り一発で気を失ってしまったのか……」ポフン
勇者「ちゃんと鍛えてたお陰だろ。気絶で済んだのは」
武闘家「勝者が敗者に……!」ググッ
勇者「悪かった。それじゃ、俺は行くよ」
老人「待つアル」スッ
勇者「じーちゃん」
老人「たかだか一回の敗戦で、なにをイキってるネ」
武闘家「し、師匠」
老人「悔しいカ?」
武闘家「まだ、実感が……」
老人「そうダロよ。何度か寝て起きたらじんわりと負けという事実がのしかかってくるアル」
武闘家「……」
老人「あの時こうしておけばよかた、もっとできたはず……そして、その先にアルものは、自信の喪失ヨ」
武闘家「アタイは……」
老人「オマエが積み重ねてきた拳は、なんのタメにあるのヨ」
武闘家「なんの、ため」
老人「楽しくないとつらい修行はやってられないヨ。オマエ、ドMか?」
武闘家「そ、そんなわけっ、ないじゃないですか……」
老人「成長、変化が楽しく。たまにうまくいった時が気持ちイイからダロヨ」
武闘家「は、はい……」
老人「見世物小屋に長居しすぎたヨ。ワシも悪かったアル」
武闘家「いえ、そんな、アタイが未熟なせいで」
老人「謙虚さがあるならまだ取り戻せる。学ぶ姿勢はイツだって、傲慢とはかけ離れてイル」
武闘家「はい」シュン
老人「勇者よ。マスクかぶってちとついてくるアル」
勇者「お、おう。だけど、ついておかなくていいのか」
老人「ヒナはヒナなりに考える時間が必要ネ。ほっとくよろし」クルッ スタスタ
【医務室】
武闘家「うっ……」ムク
勇者「目が覚めたか」
武闘家「……そうか、蹴り一発で気を失ってしまったのか……」ポフン
勇者「ちゃんと鍛えてたお陰だろ。気絶で済んだのは」
武闘家「勝者が敗者に……!」ググッ
勇者「悪かった。それじゃ、俺は行くよ」
老人「待つアル」スッ
勇者「じーちゃん」
老人「たかだか一回の敗戦で、なにをイキってるネ」
武闘家「し、師匠」
老人「悔しいカ?」
武闘家「まだ、実感が……」
老人「そうダロよ。何度か寝て起きたらじんわりと負けという事実がのしかかってくるアル」
武闘家「……」
老人「あの時こうしておけばよかた、もっとできたはず……そして、その先にアルものは、自信の喪失ヨ」
武闘家「アタイは……」
老人「オマエが積み重ねてきた拳は、なんのタメにあるのヨ」
武闘家「なんの、ため」
老人「楽しくないとつらい修行はやってられないヨ。オマエ、ドMか?」
武闘家「そ、そんなわけっ、ないじゃないですか……」
老人「成長、変化が楽しく。たまにうまくいった時が気持ちイイからダロヨ」
武闘家「は、はい……」
老人「見世物小屋に長居しすぎたヨ。ワシも悪かったアル」
武闘家「いえ、そんな、アタイが未熟なせいで」
老人「謙虚さがあるならまだ取り戻せる。学ぶ姿勢はイツだって、傲慢とはかけ離れてイル」
武闘家「はい」シュン
老人「勇者よ。マスクかぶってちとついてくるアル」
勇者「お、おう。だけど、ついておかなくていいのか」
老人「ヒナはヒナなりに考える時間が必要ネ。ほっとくよろし」クルッ スタスタ
147: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 13:24:51.85 :o71JjVk4O
【通路】
マク「なぁ、じーちゃん、本当にほっといてよかったのか」
老人「オマエ、過保護すぎよ。優しさを履き違えるの、よくないアル」
マク「いや、そうだけど」
老人「負け癖がつくのがよくないだけで、負けは変わるきっかけに他ならないノヨ。弟子をありがとうアル」ペコ
マク「やめてくれよ。俺は、自分のしたかったことをしただけで」
老人「本当にソウか?」
マク「ただの自己満だよ」
老人「ならば、なぜこんなところにイル。女戦士にどう思われようといいダロ? 惚れてるカ?」
マク「そういうんじゃ、ねえけど」
老人「マゴマゴしてないでやりたいように生きればいいアル。オマエは“勇者”に縛られてるんダロ」
マク「……」
老人「人々の勇者に対する期待、羨望のまなざし。いつだってそれに晒されて生きてきた。ガラスの家に住んでいた気分だったロヨ」
マク「そんなたいしたもんでは」
老人「いつしか、心は壊れてしまうネ。勇者という肩書きと、本来の己との乖離のハザマで」
僧侶「あっ、おじいさ~ん!」フリフリ
マク「いっ⁉︎」ギョ
魔法使い「マクってやつもいる!」
老人「ここに集まるアル」
マク「ちょ」サッ
僧侶「初めましてぇ~。マク選手すっごくかっこよかったですよぉ~」
魔法使い「ねえねえ、私たちのパーティに入らない? マクさんがいれば百人力って感じだし! ね! 戦士もそう思うわよね?」
戦士「あ、ああ」
僧侶「無口なんですねぇ~?」
老人「やれやれ。こいつはまだ修行中の身。喋ることを禁じられてるアル」
戦士「そうなのか? そういえば、聞いたことがある、モンクというんだったか?」
老人「この男の肉体的強さは、先ほど見たとおり折り紙つきヨ。しかしアル。心と精神はまだまだネ」
魔法使い「別にいーんじゃない? あんだけ強ければ」
老人「諸刃の剣ヨ。アンバランスな均衡は、時に自分を追い詰めてしまうモノ」
僧侶「……」
老人「マクの代わりに提案があるアル」
戦士「提案? なんだ?」
老人「我が弟子を連れてくヨロシ」
魔法使い「えっ、弟子って、チャンピオン⁉︎」
老人「そんな肩書きはもう失ったヨ。こいつに負けてナ。しがないひとりの武闘家ネ」
僧侶「勇者さまに聞いてみないとぉ~」
老人「……その必要はないよ。マク、どう思うネ?」
マク「……っ!」
老人「ワシも策士ダロ? クビを縦にふるか横にふるかで答えるヨ。そうしなかった場合は――」
マク「~~ッ!」コクコクコク
老人「決まりアル。勇者とやらにはワシの家の修理が終わったら、伝えておいてヤル」
魔法使い「なんで……マクに聞いたら……」
戦士「おっけーなんだ?」
【通路】
マク「なぁ、じーちゃん、本当にほっといてよかったのか」
老人「オマエ、過保護すぎよ。優しさを履き違えるの、よくないアル」
マク「いや、そうだけど」
老人「負け癖がつくのがよくないだけで、負けは変わるきっかけに他ならないノヨ。弟子をありがとうアル」ペコ
マク「やめてくれよ。俺は、自分のしたかったことをしただけで」
老人「本当にソウか?」
マク「ただの自己満だよ」
老人「ならば、なぜこんなところにイル。女戦士にどう思われようといいダロ? 惚れてるカ?」
マク「そういうんじゃ、ねえけど」
老人「マゴマゴしてないでやりたいように生きればいいアル。オマエは“勇者”に縛られてるんダロ」
マク「……」
老人「人々の勇者に対する期待、羨望のまなざし。いつだってそれに晒されて生きてきた。ガラスの家に住んでいた気分だったロヨ」
マク「そんなたいしたもんでは」
老人「いつしか、心は壊れてしまうネ。勇者という肩書きと、本来の己との乖離のハザマで」
僧侶「あっ、おじいさ~ん!」フリフリ
マク「いっ⁉︎」ギョ
魔法使い「マクってやつもいる!」
老人「ここに集まるアル」
マク「ちょ」サッ
僧侶「初めましてぇ~。マク選手すっごくかっこよかったですよぉ~」
魔法使い「ねえねえ、私たちのパーティに入らない? マクさんがいれば百人力って感じだし! ね! 戦士もそう思うわよね?」
戦士「あ、ああ」
僧侶「無口なんですねぇ~?」
老人「やれやれ。こいつはまだ修行中の身。喋ることを禁じられてるアル」
戦士「そうなのか? そういえば、聞いたことがある、モンクというんだったか?」
老人「この男の肉体的強さは、先ほど見たとおり折り紙つきヨ。しかしアル。心と精神はまだまだネ」
魔法使い「別にいーんじゃない? あんだけ強ければ」
老人「諸刃の剣ヨ。アンバランスな均衡は、時に自分を追い詰めてしまうモノ」
僧侶「……」
老人「マクの代わりに提案があるアル」
戦士「提案? なんだ?」
老人「我が弟子を連れてくヨロシ」
魔法使い「えっ、弟子って、チャンピオン⁉︎」
老人「そんな肩書きはもう失ったヨ。こいつに負けてナ。しがないひとりの武闘家ネ」
僧侶「勇者さまに聞いてみないとぉ~」
老人「……その必要はないよ。マク、どう思うネ?」
マク「……っ!」
老人「ワシも策士ダロ? クビを縦にふるか横にふるかで答えるヨ。そうしなかった場合は――」
マク「~~ッ!」コクコクコク
老人「決まりアル。勇者とやらにはワシの家の修理が終わったら、伝えておいてヤル」
魔法使い「なんで……マクに聞いたら……」
戦士「おっけーなんだ?」
148: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 13:41:17.74 :o71JjVk4O
【夜 宿屋 食堂】
魔法使い「それでさぁ、マクが地面殴ったとおもったらメキメキメキィッて亀裂がはしったのよ! 信じられる⁉︎ 大地を割ったの!」
勇者「はいはい」
魔法使い「やがて亀裂が壁にまで到達してさ! 地震かと思っちゃった!」
僧侶「くすくす。魔法使いさん、すっかりマク選手のファンですねぇ」
戦士「いや、しかし、たいしたものだ。どうすればあそこまで極められるのか」
魔法使い「戦いたいとか言い出す?」
戦士「……やめとくよ。差がありすぎてな。なにもできずに終わってしまう」
魔法使い「あっちが勇者だったら信憑性あるのになぁ~。もうほんと凄かったんだから!」
勇者「……そうですか。今日の給料。100ゴールド」ジャラ
魔法使い「あ、そうそう。お爺さんに会ったわよ。全然女嫌いじゃなかった」
勇者「あ、そ、そう?」
魔法使い「勇者って見る目ないわね」
僧侶「それはどちらがでしょうねぇ」ニコニコ
魔法使い「サインもらっておけばよかったかなぁ~」
戦士「握手、してもらえばよかったかな」ボソ
魔法使い「意外ね。戦士もそういうこと思うんだ」
戦士「ひ、独り言だ」
僧侶「灯台下暗し、ですよぉ~」
勇者「……」ハラハラ
僧侶「本当にお二人は、ヌケサクさんですねぇ」ニコニコ
【夜 宿屋 食堂】
魔法使い「それでさぁ、マクが地面殴ったとおもったらメキメキメキィッて亀裂がはしったのよ! 信じられる⁉︎ 大地を割ったの!」
勇者「はいはい」
魔法使い「やがて亀裂が壁にまで到達してさ! 地震かと思っちゃった!」
僧侶「くすくす。魔法使いさん、すっかりマク選手のファンですねぇ」
戦士「いや、しかし、たいしたものだ。どうすればあそこまで極められるのか」
魔法使い「戦いたいとか言い出す?」
戦士「……やめとくよ。差がありすぎてな。なにもできずに終わってしまう」
魔法使い「あっちが勇者だったら信憑性あるのになぁ~。もうほんと凄かったんだから!」
勇者「……そうですか。今日の給料。100ゴールド」ジャラ
魔法使い「あ、そうそう。お爺さんに会ったわよ。全然女嫌いじゃなかった」
勇者「あ、そ、そう?」
魔法使い「勇者って見る目ないわね」
僧侶「それはどちらがでしょうねぇ」ニコニコ
魔法使い「サインもらっておけばよかったかなぁ~」
戦士「握手、してもらえばよかったかな」ボソ
魔法使い「意外ね。戦士もそういうこと思うんだ」
戦士「ひ、独り言だ」
僧侶「灯台下暗し、ですよぉ~」
勇者「……」ハラハラ
僧侶「本当にお二人は、ヌケサクさんですねぇ」ニコニコ
149: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 13:57:55.24 :o71JjVk4O
【その頃 武闘家の家】
老人「勇者についてって、見聞を広げるアル」
武闘家「ですが……! アタイはまだ師匠の元で」
老人「子供に旅をさせるのは良いことヨ。ワシも老いたネ。一緒にいくには」
武闘家「……っ!」ギュウ
老人「世界を見てまわり、己の目と耳で見聞を広げヨ。殻の世界に閉じこもるのはここまでにするアル」
武闘家「し、師匠」
老人「いつまでヒナのつもりでイルネ。オマエも自分で判断できる歳ダロヨ」
武闘家「……うっ、ぐすっ、アタイを、見捨てられるのですか……っ」ポロポロ
老人「オマエは優秀な弟子ヨ。この世でただひとり、ワシが才能に惚れこんだのは」
武闘家「……」シュン
老人「ワシが教えられることにも限界がアルヨ。成長する姿を見せることに自信がないノカ?」
武闘家「……」
老人「子の成長はいつだって嬉しいもの。血の繋がりはナイが、それまでは長生きしておいやるアル」
武闘家「師匠……!」ゴシゴシ
老人「行ってくるアル。……結婚したら生まれてくる子供は、ぜひ、ワシの弟子に」
武闘家「別れの場面でふざけないでください!」
老人「いや、本気」
武闘家「なおさら問題です!! 怒りますよ!」
老人「しかし、オマエ、この世界はわりと婚姻ハヤいから、行き遅れなんてあっというま……」
武闘家「あちょお~~~っ」スッ
老人「ま、待つアル! わかたわかた! ドウドウ」アタフタ
武闘家「……はぁ、男には、興味ありません」
老人「人の縁(えにし)とは、わからないモノよ」
【その頃 武闘家の家】
老人「勇者についてって、見聞を広げるアル」
武闘家「ですが……! アタイはまだ師匠の元で」
老人「子供に旅をさせるのは良いことヨ。ワシも老いたネ。一緒にいくには」
武闘家「……っ!」ギュウ
老人「世界を見てまわり、己の目と耳で見聞を広げヨ。殻の世界に閉じこもるのはここまでにするアル」
武闘家「し、師匠」
老人「いつまでヒナのつもりでイルネ。オマエも自分で判断できる歳ダロヨ」
武闘家「……うっ、ぐすっ、アタイを、見捨てられるのですか……っ」ポロポロ
老人「オマエは優秀な弟子ヨ。この世でただひとり、ワシが才能に惚れこんだのは」
武闘家「……」シュン
老人「ワシが教えられることにも限界がアルヨ。成長する姿を見せることに自信がないノカ?」
武闘家「……」
老人「子の成長はいつだって嬉しいもの。血の繋がりはナイが、それまでは長生きしておいやるアル」
武闘家「師匠……!」ゴシゴシ
老人「行ってくるアル。……結婚したら生まれてくる子供は、ぜひ、ワシの弟子に」
武闘家「別れの場面でふざけないでください!」
老人「いや、本気」
武闘家「なおさら問題です!! 怒りますよ!」
老人「しかし、オマエ、この世界はわりと婚姻ハヤいから、行き遅れなんてあっというま……」
武闘家「あちょお~~~っ」スッ
老人「ま、待つアル! わかたわかた! ドウドウ」アタフタ
武闘家「……はぁ、男には、興味ありません」
老人「人の縁(えにし)とは、わからないモノよ」
150: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 14:23:09.25 :o71JjVk4O
【翌日 マッスルタウン 出口】
魔法使い「あ~、今日もマクさん試合するのかなぁ」
戦士「ディフェンディングチャンピオンだからな。当然だろう」
勇者「……」
僧侶「くすくす」
魔法使い「見に行きたいなぁ」チラ
勇者「だめだ。昨日は予定外に道草くっちまったんだから」
魔法使い「ケチ。男の嫉妬ってみっともないわよ」
戦士「勇者も鍛錬すればまだまだ伸びると思うぞ」
魔法使い「そういうんじゃなくて! 圧倒的なのに惹かれるんじゃな~い! 完成形の魅力ってやつ?」
僧侶「育てるのも女の嗜みだと思いますけどぉ」
魔法使い「可愛げがあればいいけどねぇ、こいつじゃ」チラ
勇者「なんだよ」
魔法使い「……」ジトォー
勇者「そんなに目を細くして。ゴミでもはいったのか? 近眼?」
魔法使い「……はぁ」ガックシ
老人「おい、お主たち」
馬「ブルルッ」パッカパッカ
戦士「ご老体、その馬車は」
老人「これまで賞金を溜め込んでたカラナ。旅の選別ヨ。仲間が増えれば馬車はつきものダロ? まだ増えるかもわからんシ」
魔法使い「くれるの⁉︎」
老人「それと、ほれ」ポイッ
魔法使い「わっ⁉︎」ワタワタ
老人「アイヤー。そんなものも受け取れない反射神経カヨ」
魔法使い「魔法職なんだからいいでしょ! ……あれ、これって」
老人「イーリスの杖ヨ。昨日、マクから渡しておいてもらうように頼まれたネ」
魔法使い「えっ⁉︎」
戦士「ほう、なかなかに粋な計らいを」
魔法使い「で、でもっ、私、ちょっと会っただけなのに」
老人「受け取るヨロシ。それがあいつも望んでおるコトネ」チラ
勇者「ご、ごほんっ!」
【翌日 マッスルタウン 出口】
魔法使い「あ~、今日もマクさん試合するのかなぁ」
戦士「ディフェンディングチャンピオンだからな。当然だろう」
勇者「……」
僧侶「くすくす」
魔法使い「見に行きたいなぁ」チラ
勇者「だめだ。昨日は予定外に道草くっちまったんだから」
魔法使い「ケチ。男の嫉妬ってみっともないわよ」
戦士「勇者も鍛錬すればまだまだ伸びると思うぞ」
魔法使い「そういうんじゃなくて! 圧倒的なのに惹かれるんじゃな~い! 完成形の魅力ってやつ?」
僧侶「育てるのも女の嗜みだと思いますけどぉ」
魔法使い「可愛げがあればいいけどねぇ、こいつじゃ」チラ
勇者「なんだよ」
魔法使い「……」ジトォー
勇者「そんなに目を細くして。ゴミでもはいったのか? 近眼?」
魔法使い「……はぁ」ガックシ
老人「おい、お主たち」
馬「ブルルッ」パッカパッカ
戦士「ご老体、その馬車は」
老人「これまで賞金を溜め込んでたカラナ。旅の選別ヨ。仲間が増えれば馬車はつきものダロ? まだ増えるかもわからんシ」
魔法使い「くれるの⁉︎」
老人「それと、ほれ」ポイッ
魔法使い「わっ⁉︎」ワタワタ
老人「アイヤー。そんなものも受け取れない反射神経カヨ」
魔法使い「魔法職なんだからいいでしょ! ……あれ、これって」
老人「イーリスの杖ヨ。昨日、マクから渡しておいてもらうように頼まれたネ」
魔法使い「えっ⁉︎」
戦士「ほう、なかなかに粋な計らいを」
魔法使い「で、でもっ、私、ちょっと会っただけなのに」
老人「受け取るヨロシ。それがあいつも望んでおるコトネ」チラ
勇者「ご、ごほんっ!」
151: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 14:25:29.65 :o71JjVk4O
魔法使い「そ、そんな……私、お礼を言ってこなくちゃ」ギュウ
老人「マクならもういなくナタヨ」
魔法使い「えっ、そ、そうなの?」
戦士「チャンピオンなのにか?」
老人「すぐに返上したらしいヨ。運営は嘆いていたが、今日にも新しいチャンピオンは決まるアルネ」
戦士「いったい、どこに……」
老人「弟子よ!! いつまで荷台に引きこもってるアルか! 出てきて挨拶するアル!!」クワッ
勇者「……おい、じいちゃん」
老人「黙るアル。最後の指導に口を挟むの良くない」
武闘家「……」スッ タンッ
魔法使い「あ、元チャンピオン」
武闘家「お初にお目にかかります。よろしく」プイ
戦士「な、なんとも……」
僧侶「愛想がないですねぇ~」
老人「なにはともあれ、気楽にやるヨロシ」
魔法使い「そ、そんな……私、お礼を言ってこなくちゃ」ギュウ
老人「マクならもういなくナタヨ」
魔法使い「えっ、そ、そうなの?」
戦士「チャンピオンなのにか?」
老人「すぐに返上したらしいヨ。運営は嘆いていたが、今日にも新しいチャンピオンは決まるアルネ」
戦士「いったい、どこに……」
老人「弟子よ!! いつまで荷台に引きこもってるアルか! 出てきて挨拶するアル!!」クワッ
勇者「……おい、じいちゃん」
老人「黙るアル。最後の指導に口を挟むの良くない」
武闘家「……」スッ タンッ
魔法使い「あ、元チャンピオン」
武闘家「お初にお目にかかります。よろしく」プイ
戦士「な、なんとも……」
僧侶「愛想がないですねぇ~」
老人「なにはともあれ、気楽にやるヨロシ」
152: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 14:43:00.49 :o71JjVk4O
~~第1章『マッスルタウンのチャンピオン』~~
完
~~第1章『マッスルタウンのチャンピオン』~~
完
153: ◆7Ub330dMyM:2018/01/14(日) 14:59:29.07 :o71JjVk4O
くぅー疲。
というわけでここまでを昨日に書ききってしまいたかってんですが睡魔には勝てず。。
これにて一章と位置づけした武闘家が仲間にくわわるまでが終了となります。
わりとオーソドックスな勇者SSを書こうとはじめ、新鮮味はなかったでしょうが、どこかで読んだような安定感はあったはずと自負します。
昔ながらのSS好きな人の琴線に触れることはできたんではないでしょうか?
どんなもんだったでしょ?
批判も含み感想をお待ちしております。
というわけでここまでを昨日に書ききってしまいたかってんですが睡魔には勝てず。。
これにて一章と位置づけした武闘家が仲間にくわわるまでが終了となります。
わりとオーソドックスな勇者SSを書こうとはじめ、新鮮味はなかったでしょうが、どこかで読んだような安定感はあったはずと自負します。
昔ながらのSS好きな人の琴線に触れることはできたんではないでしょうか?
どんなもんだったでしょ?
批判も含み感想をお待ちしております。
156:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/14(日) 15:11:54.54 :suw+/xnxo
おつー
王道が好きな俺にはどストライクだったよ
王道が好きな俺にはどストライクだったよ
コメント 12
コメント一覧 (12)
第2章が楽しみ
情景が浮かびやすい文で読みやすくて最後まで読んじゃうわこれは
思ってるだけじゃ伝わらないんだよ!
SS好きなら一度は読むべき珠玉の作品
正直、勇者「魔王倒したし帰るか」僧侶「ひのきのぼう」より優れていると思う