1:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:32:39.503 :oiz6yl/fD.net
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
知念潔(56) スポーツライター
【ロボットサーカス】
ホーッホッホッホ……。」
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
知念潔(56) スポーツライター
【ロボットサーカス】
ホーッホッホッホ……。」
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2:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:34:49.096 :oiz6yl/fD.net
午後。東京、港区。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」の撮影が行われている。
今日、この番組で特集されているのは、とある横綱による後輩力士への暴行問題だ。
あれやこれやと批評を行う司会者や出演陣。コメンテーターには、スポーツライター・知念もいる。
知念「今回の横綱による暴行事件、相撲協会はしっかりした対応をしていますよ!」
「問題なのは、独断専行で警察に被害届を出した尊鉄山親方の方です!」
テロップ「知念潔(56) スポーツライター」
知念の主張に対し、反論を行うある文化人。知念は文化人と言い合いになる。
文化人「しかしですね、知念さん……。横綱による暴力は、決して許せる行為ではありません!」
「親方が被害届を出していなかったら、このまま事件が隠蔽されていたかもしれませんよ!」
知念「元はといえば、後輩の力士による不作法が招いた事件ですよ!あの温厚な横綱が怒るのは、よほどのことです」
文化人「知念さん!あなたは横綱の暴力をかばうのか!」
知念「私はそんなことは言っていない!人の主張を曲解するな!」
午後。東京、港区。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」の撮影が行われている。
今日、この番組で特集されているのは、とある横綱による後輩力士への暴行問題だ。
あれやこれやと批評を行う司会者や出演陣。コメンテーターには、スポーツライター・知念もいる。
知念「今回の横綱による暴行事件、相撲協会はしっかりした対応をしていますよ!」
「問題なのは、独断専行で警察に被害届を出した尊鉄山親方の方です!」
テロップ「知念潔(56) スポーツライター」
知念の主張に対し、反論を行うある文化人。知念は文化人と言い合いになる。
文化人「しかしですね、知念さん……。横綱による暴力は、決して許せる行為ではありません!」
「親方が被害届を出していなかったら、このまま事件が隠蔽されていたかもしれませんよ!」
知念「元はといえば、後輩の力士による不作法が招いた事件ですよ!あの温厚な横綱が怒るのは、よほどのことです」
文化人「知念さん!あなたは横綱の暴力をかばうのか!」
知念「私はそんなことは言っていない!人の主張を曲解するな!」
3:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:37:10.322 :oiz6yl/fD.net
夜。東京のとある下町。居酒屋「黄金豹」。酒を飲む年配の客たち。客の中には、知念と喪黒福造がいる。
関西弁を話す客たちの中に溶け込む知念。知念の言葉も関西弁混じりになる。一方、周囲から浮いた状態で酒を飲む喪黒。
客A「最近の知念さん、評判悪いでぇ。暴力をふるった横綱をひいきし過ぎやと……」
知念「あれは仕事で言うとるんです。私にもしがらみがありますさかい……。本心は別ですよ」
客B「ホンマか?そりゃあ、すごい爆弾発言やなーー。いっそのこと、テレビで言うてみたらどうや!」
知念「そんなこと、テレビで言えるわけありませんよ。この店やから、本音が言えるんです」
客C「そやったなーー。この居酒屋は、関鉄ファンが集まる店やからなーー」
知念「そうとも!関鉄パンサーズを応援する私の気持ちだけは、嘘偽りが一切ありませんよ!」
「大阪で生まれ、筋金入りの『豹党』として育った私としては!」
喪黒「知念さんは、大阪市の大正区生まれですよねぇ?苗字が知念なのも、そういうことでしょう?」
知念「はい。私は大正区で生まれ育ちました。私の祖父は、戦前に沖縄から大阪へ移住してきたんです」
居酒屋「黄金豹」の店内には、プロ野球チーム「関鉄パンサーズ」のグッズがいたるところに置かれている。
夜。東京のとある下町。居酒屋「黄金豹」。酒を飲む年配の客たち。客の中には、知念と喪黒福造がいる。
関西弁を話す客たちの中に溶け込む知念。知念の言葉も関西弁混じりになる。一方、周囲から浮いた状態で酒を飲む喪黒。
客A「最近の知念さん、評判悪いでぇ。暴力をふるった横綱をひいきし過ぎやと……」
知念「あれは仕事で言うとるんです。私にもしがらみがありますさかい……。本心は別ですよ」
客B「ホンマか?そりゃあ、すごい爆弾発言やなーー。いっそのこと、テレビで言うてみたらどうや!」
知念「そんなこと、テレビで言えるわけありませんよ。この店やから、本音が言えるんです」
客C「そやったなーー。この居酒屋は、関鉄ファンが集まる店やからなーー」
知念「そうとも!関鉄パンサーズを応援する私の気持ちだけは、嘘偽りが一切ありませんよ!」
「大阪で生まれ、筋金入りの『豹党』として育った私としては!」
喪黒「知念さんは、大阪市の大正区生まれですよねぇ?苗字が知念なのも、そういうことでしょう?」
知念「はい。私は大正区で生まれ育ちました。私の祖父は、戦前に沖縄から大阪へ移住してきたんです」
居酒屋「黄金豹」の店内には、プロ野球チーム「関鉄パンサーズ」のグッズがいたるところに置かれている。
4:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:39:17.966 :oiz6yl/fD.net
大型の液晶テレビを見る客たち。テレビには、関鉄の野球中継が映っている。
関鉄のバッター・糸谷が、相手チームのピッチャーから球を打つ。ホームベースへと帰還する2人の選手。
実況「糸谷のタイムリーで、2点が入りました!関鉄、逆転に成功です!」
一同「やったーーーーっ!!!」
客たちとともに、大喜びをする知念。それに対し、喪黒はずっと静かなままだ。
居酒屋「黄金豹」を出て、道を歩く知念。知念の側に喪黒が寄ってくる。
喪黒「ねぇ、知念さん……。あなた、さっきの店の常連なんですか?」
知念「ええ……、そうですよ。もしかして、あなたも関鉄ファンなんですか?」
喪黒「いえいえ……、私は違います。ただ……。関鉄ファンが集まる店とは、どんなものかと興味があったもので……」
知念「ああ、そうなんですか……。あなた、好奇心旺盛な方なんですね」
喪黒「それはそうと……。お店の中でのあなたは、いつもと違って楽しそうでしたね」
大型の液晶テレビを見る客たち。テレビには、関鉄の野球中継が映っている。
関鉄のバッター・糸谷が、相手チームのピッチャーから球を打つ。ホームベースへと帰還する2人の選手。
実況「糸谷のタイムリーで、2点が入りました!関鉄、逆転に成功です!」
一同「やったーーーーっ!!!」
客たちとともに、大喜びをする知念。それに対し、喪黒はずっと静かなままだ。
居酒屋「黄金豹」を出て、道を歩く知念。知念の側に喪黒が寄ってくる。
喪黒「ねぇ、知念さん……。あなた、さっきの店の常連なんですか?」
知念「ええ……、そうですよ。もしかして、あなたも関鉄ファンなんですか?」
喪黒「いえいえ……、私は違います。ただ……。関鉄ファンが集まる店とは、どんなものかと興味があったもので……」
知念「ああ、そうなんですか……。あなた、好奇心旺盛な方なんですね」
喪黒「それはそうと……。お店の中でのあなたは、いつもと違って楽しそうでしたね」
5:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:41:16.793 :oiz6yl/fD.net
知念「ええ、まあ……。あの店の中なら、本心を開けっ広げにできますから。でも、普段の私はそういうわけにはいきませんよ」
喪黒「なるほど。私の仕事柄、今のあなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
知念「ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
知念「か、変わったお仕事ですね……」
喪黒「見たところ、知念さんの心にもスキマがおありのようです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と知念が席に腰掛けている。
喪黒「それにしても、本当にびっくりしましたよ」
「あの横綱の暴行事件での知念さんのご意見は、本心によるものではなかったのですよねぇ?」
知念「はい。あれは仕事のための発言ですから……。私も何かと相撲協会の世話になっていますし……」
知念「ええ、まあ……。あの店の中なら、本心を開けっ広げにできますから。でも、普段の私はそういうわけにはいきませんよ」
喪黒「なるほど。私の仕事柄、今のあなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
知念「ココロのスキマ、お埋めします!?」
喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」
知念「か、変わったお仕事ですね……」
喪黒「見たところ、知念さんの心にもスキマがおありのようです。何なら、相談に乗りましょうか?」
BAR「魔の巣」。喪黒と知念が席に腰掛けている。
喪黒「それにしても、本当にびっくりしましたよ」
「あの横綱の暴行事件での知念さんのご意見は、本心によるものではなかったのですよねぇ?」
知念「はい。あれは仕事のための発言ですから……。私も何かと相撲協会の世話になっていますし……」
6:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:43:21.785 :oiz6yl/fD.net
喪黒「でも、それはあなたの生活のためにやむを得ないでしょう?何しろ、評論家とは巧みに言葉を並べるのがお仕事……」
「それに……。あんまりズバズバと過激な本音を口にしたら、業界から干されかねませんよ」
知念「ええ、まあ……。今の時代は、出版不況で本がろくに売れませんし……。雑誌も休刊が相次いでいます」
「だから、もの書きとして生き残るのも必死なんですよ。カネや利権の話があれば飛びつかざるを得ません」
喪黒「ですがねぇ……。どんなに嘘の言葉を並べても、良心の呵責の気持ちは消せないでしょう?」
知念「そうですよ!そもそも、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのものですよ!」
「その気持ちさえも偽って、しがらみや利権のためのポジショントークを行う……」
「それじゃあ、スポーツへの冒涜そのもので……。お天道様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますよ!!」
喪黒「しかしながら、そんなあなたも心からスポーツを楽しめるのが関鉄の応援なのですよねぇ?」
知念「はい。私は小さいころから、筋金入りの関鉄ファンとして育ったのですから……」
喪黒「なるほど……。知念さんが関鉄を応援しているのは、小さいころからの純粋な気持ちの延長なのでしょう」
「だから、嘘偽りを一切感じられませんでしたし……。あの居酒屋の中でのあなたは、本当に楽しそうでした」
知念「ええ。あの居酒屋の中なら、私はありのままの自分でいられますから……。とはいえ……」
喪黒「何やら、複雑な事情がありそうですなぁ」
喪黒「でも、それはあなたの生活のためにやむを得ないでしょう?何しろ、評論家とは巧みに言葉を並べるのがお仕事……」
「それに……。あんまりズバズバと過激な本音を口にしたら、業界から干されかねませんよ」
知念「ええ、まあ……。今の時代は、出版不況で本がろくに売れませんし……。雑誌も休刊が相次いでいます」
「だから、もの書きとして生き残るのも必死なんですよ。カネや利権の話があれば飛びつかざるを得ません」
喪黒「ですがねぇ……。どんなに嘘の言葉を並べても、良心の呵責の気持ちは消せないでしょう?」
知念「そうですよ!そもそも、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのものですよ!」
「その気持ちさえも偽って、しがらみや利権のためのポジショントークを行う……」
「それじゃあ、スポーツへの冒涜そのもので……。お天道様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますよ!!」
喪黒「しかしながら、そんなあなたも心からスポーツを楽しめるのが関鉄の応援なのですよねぇ?」
知念「はい。私は小さいころから、筋金入りの関鉄ファンとして育ったのですから……」
喪黒「なるほど……。知念さんが関鉄を応援しているのは、小さいころからの純粋な気持ちの延長なのでしょう」
「だから、嘘偽りを一切感じられませんでしたし……。あの居酒屋の中でのあなたは、本当に楽しそうでした」
知念「ええ。あの居酒屋の中なら、私はありのままの自分でいられますから……。とはいえ……」
喪黒「何やら、複雑な事情がありそうですなぁ」
7:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:45:21.177 :oiz6yl/fD.net
知念「妻が何かと口うるさいんですから……。外で一杯飲んで、帰りが遅いと妻がガミガミ叱るんです」
「しかも、娘も私のことを毛嫌いしていて……」
喪黒「知念さんは奥様や娘さんと不仲なんですか?」
知念「はい。それだけでなく、最近は関鉄にも明るいニュースが少ないので憂鬱なんです」
「2003年の優勝監督だった星田さんは今年亡くなりましたし……。おまけに、今年の関鉄は低迷しているんです」
喪黒「負けている試合を見ると、気が滅入るでしょう?」
知念「ええ。関鉄の負けを連日のように目にするのは、ファンにとっては本当に辛いですよ……」
喪黒「いやはや……。あなたの気苦労、察するに余りあります」
「ですが……。私は、知念さんのストレス解消に役に立つものを知っているんですよ」
知念「何ですか?それは……」
喪黒「詳しいことは、明日話すことにしましょう」
住宅街、知念の自宅。玄関に入る知念。それに対し、妻・慶子が鬼のような形相で知念を出迎える。
知念「ただいま……」
知念「妻が何かと口うるさいんですから……。外で一杯飲んで、帰りが遅いと妻がガミガミ叱るんです」
「しかも、娘も私のことを毛嫌いしていて……」
喪黒「知念さんは奥様や娘さんと不仲なんですか?」
知念「はい。それだけでなく、最近は関鉄にも明るいニュースが少ないので憂鬱なんです」
「2003年の優勝監督だった星田さんは今年亡くなりましたし……。おまけに、今年の関鉄は低迷しているんです」
喪黒「負けている試合を見ると、気が滅入るでしょう?」
知念「ええ。関鉄の負けを連日のように目にするのは、ファンにとっては本当に辛いですよ……」
喪黒「いやはや……。あなたの気苦労、察するに余りあります」
「ですが……。私は、知念さんのストレス解消に役に立つものを知っているんですよ」
知念「何ですか?それは……」
喪黒「詳しいことは、明日話すことにしましょう」
住宅街、知念の自宅。玄関に入る知念。それに対し、妻・慶子が鬼のような形相で知念を出迎える。
知念「ただいま……」
8:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:47:28.016 :oiz6yl/fD.net
慶子「あなた……。こんな遅くまでどこに行ってたの!?」
テロップ「知念慶子(52) 知念潔の妻」
知念「そ、それは……」
慶子「また、どこかで一杯飲んできたのね!?あなたは、人付き合いだけは巧みなんだから……」
知念「で、でも……。人付き合いを大事にしたおかげで、俺は仕事や収入が保障されとるし……」
「一家も飯を食っていけるんやろが……」
慶子「仕事?どうせ、立場の強い人に、おべっかやゴマすりをすることなんでしょ!」
「ほら……。横綱の暴行事件では、徹頭徹尾、加害者や相撲協会の味方をして……」
知念「うう……」
妻の剣幕に対し、押され気味の知念。言い争いをする2人の前に、娘・美織が現れる。
美織「パパとママ、うるさい!受験勉強の邪魔!」
テロップ「知念美織(18) 高校生、知念潔の娘」
知念「す、すまない……」
慶子「あなた……。こんな遅くまでどこに行ってたの!?」
テロップ「知念慶子(52) 知念潔の妻」
知念「そ、それは……」
慶子「また、どこかで一杯飲んできたのね!?あなたは、人付き合いだけは巧みなんだから……」
知念「で、でも……。人付き合いを大事にしたおかげで、俺は仕事や収入が保障されとるし……」
「一家も飯を食っていけるんやろが……」
慶子「仕事?どうせ、立場の強い人に、おべっかやゴマすりをすることなんでしょ!」
「ほら……。横綱の暴行事件では、徹頭徹尾、加害者や相撲協会の味方をして……」
知念「うう……」
妻の剣幕に対し、押され気味の知念。言い争いをする2人の前に、娘・美織が現れる。
美織「パパとママ、うるさい!受験勉強の邪魔!」
テロップ「知念美織(18) 高校生、知念潔の娘」
知念「す、すまない……」
9:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:49:22.268 :oiz6yl/fD.net
慶子「ねぇ、美織。こんな時間まで飲み歩くパパがいけないのよ」
美織「うん」
知念(慶子どころか、最近では美織まで俺のことを見下しおって……)
翌日。東京、赤坂。銀河テレビ。昼のワイドショーに出演する知念。この番組でも、知念は横綱の暴行問題で持論を述べる。
知念「尊鉄山親方は警察に被害届を出す前に、相撲協会に事前に連絡をすべきでしたね!」
知念の発言に対し、番組出演者のある弁護士が反論をする。
弁護士「相撲協会に連絡なんかして、まともな対応が行われたと思いますか?」
知念「思いますよ!現に、相撲協会は今回の事件で……」
弁護士「知念さん!過去に、力士が親方の暴行で死亡した事件で、相撲協会はどんな対応を取ったと思いますか!?」
「そういう体質が続いてきた組織が、おいそれと変わるとは思えませんよ!!」
知念「それとこれとは別ですよ!」
慶子「ねぇ、美織。こんな時間まで飲み歩くパパがいけないのよ」
美織「うん」
知念(慶子どころか、最近では美織まで俺のことを見下しおって……)
翌日。東京、赤坂。銀河テレビ。昼のワイドショーに出演する知念。この番組でも、知念は横綱の暴行問題で持論を述べる。
知念「尊鉄山親方は警察に被害届を出す前に、相撲協会に事前に連絡をすべきでしたね!」
知念の発言に対し、番組出演者のある弁護士が反論をする。
弁護士「相撲協会に連絡なんかして、まともな対応が行われたと思いますか?」
知念「思いますよ!現に、相撲協会は今回の事件で……」
弁護士「知念さん!過去に、力士が親方の暴行で死亡した事件で、相撲協会はどんな対応を取ったと思いますか!?」
「そういう体質が続いてきた組織が、おいそれと変わるとは思えませんよ!!」
知念「それとこれとは別ですよ!」
10:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:51:13.504 :oiz6yl/fD.net
番組の収録を終え、控室に戻る知念。控室の中には、喪黒の姿がある。
喪黒「こんにちは、知念さん」
知念「ああ、喪黒さん……」
銀河テレビを出て、タクシーに乗る喪黒と知念。タクシーは高速道路の中を走り抜けていく。
喪黒「これから、とっておきの場所へ案内しますよ。あなたのストレス解消に役立つ、特別なところへ……」
とある山の中に入るタクシー。草木が生い茂る中、銀色のピラミッド型の建物が立っている。タクシーを降りる喪黒と知念。
喪黒「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」
知念「ロボットサーカス?」
喪黒「そうです。さあ、中に入りましょう」
玄関の自動ドアが開き、建物の中に入る喪黒と知念。2人を、受付嬢の姿をしたロボットが出迎える。
番組の収録を終え、控室に戻る知念。控室の中には、喪黒の姿がある。
喪黒「こんにちは、知念さん」
知念「ああ、喪黒さん……」
銀河テレビを出て、タクシーに乗る喪黒と知念。タクシーは高速道路の中を走り抜けていく。
喪黒「これから、とっておきの場所へ案内しますよ。あなたのストレス解消に役立つ、特別なところへ……」
とある山の中に入るタクシー。草木が生い茂る中、銀色のピラミッド型の建物が立っている。タクシーを降りる喪黒と知念。
喪黒「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」
知念「ロボットサーカス?」
喪黒「そうです。さあ、中に入りましょう」
玄関の自動ドアが開き、建物の中に入る喪黒と知念。2人を、受付嬢の姿をしたロボットが出迎える。
11:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:53:13.607 :oiz6yl/fD.net
受付嬢ロボット「イラッシャイマセ……」
知念「ロボットの受付嬢ですか……。よくできてますね、これ……」
喪黒「驚くのはまだ早いですよ。知念さん」
案内ロボットに先導され、廊下を歩く喪黒と知念。彼らが行き着いた先で、さらに自動ドアが開く。
広めの観客席に入る喪黒と知念。観客席には、大勢の客がいる。室内に鳴り響く音楽。ステージ上で挨拶をするサーカス団。
サーカス団を構成しているのは、全てロボットたちばかりだ。サーカスのロボットは皆、全身が銀色の身体をしている。
知念「ロボットのサーカス団……。まるで、SFの世界みたいな光景ですよ……」
喪黒「この光景は、SFではなく現実のものですよ。何しろ、今は21世紀になって久しいですから……」
知念「うーーん……。科学の進歩は、予想以上にすさまじいようですね」
喪黒「さぁ、知念さん。ロボットサーカスを思う存分楽しみましょう!」
受付嬢ロボット「イラッシャイマセ……」
知念「ロボットの受付嬢ですか……。よくできてますね、これ……」
喪黒「驚くのはまだ早いですよ。知念さん」
案内ロボットに先導され、廊下を歩く喪黒と知念。彼らが行き着いた先で、さらに自動ドアが開く。
広めの観客席に入る喪黒と知念。観客席には、大勢の客がいる。室内に鳴り響く音楽。ステージ上で挨拶をするサーカス団。
サーカス団を構成しているのは、全てロボットたちばかりだ。サーカスのロボットは皆、全身が銀色の身体をしている。
知念「ロボットのサーカス団……。まるで、SFの世界みたいな光景ですよ……」
喪黒「この光景は、SFではなく現実のものですよ。何しろ、今は21世紀になって久しいですから……」
知念「うーーん……。科学の進歩は、予想以上にすさまじいようですね」
喪黒「さぁ、知念さん。ロボットサーカスを思う存分楽しみましょう!」
12:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:55:13.317 :oiz6yl/fD.net
サーカスを行うロボットたち。ロボットを見つめる喪黒と知念。
知念(おおっ……、ロボットが一輪車で綱渡りをしている)
人型のロボットが、アクロバットな動きを次々と行う。ロボットの動きを食い入るように見つめる知念。
知念(ああっ!!ロボットがブランコからネットに飛び移った!)
いくつものワイングラスを頭に載せた人型ロボットが、ステージ上を歩く。
知念(こんなことまでできるのか!信じられない!!)
トランポリンの上で飛んだり跳ねたりする人型ロボット。さらに、フラフープを自在に操る人型ロボット。
知念(すごいな!!機械なのに、人間以上に身体が柔らかいぞ!)
サーカスは、人型ロボットだけでなく、動物型ロボットも登場する。
炎の輪をくぐり抜けるライオン型ロボット。自転車を乗り回す熊型ロボット。ボールの上に乗る象型ロボット……。
ステージ上のサーカス団に拍手をする観客たち。喪黒と知念も、ロボットたちに惜しみない拍手を送っている。
サーカスを行うロボットたち。ロボットを見つめる喪黒と知念。
知念(おおっ……、ロボットが一輪車で綱渡りをしている)
人型のロボットが、アクロバットな動きを次々と行う。ロボットの動きを食い入るように見つめる知念。
知念(ああっ!!ロボットがブランコからネットに飛び移った!)
いくつものワイングラスを頭に載せた人型ロボットが、ステージ上を歩く。
知念(こんなことまでできるのか!信じられない!!)
トランポリンの上で飛んだり跳ねたりする人型ロボット。さらに、フラフープを自在に操る人型ロボット。
知念(すごいな!!機械なのに、人間以上に身体が柔らかいぞ!)
サーカスは、人型ロボットだけでなく、動物型ロボットも登場する。
炎の輪をくぐり抜けるライオン型ロボット。自転車を乗り回す熊型ロボット。ボールの上に乗る象型ロボット……。
ステージ上のサーカス団に拍手をする観客たち。喪黒と知念も、ロボットたちに惜しみない拍手を送っている。
13:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:57:14.580 :oiz6yl/fD.net
ピラミッド型の建物の外へ出る喪黒と知念。知念は、感極まった表情をしている。
知念「喪黒さん!今の私は、猛烈な感動を覚えていますよ!!」
「何しろ、ロボットたちのアクロバットな動きは、手に汗を握る場面の連続で……」
「もう、アドレナリンが出まくりでしたよ!!こんなに面白いものが、この世にあったのかと……」
喪黒「あなたいわく、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのもの……」
「だから、見方によってはサーカスもスポーツの一種と言えるでしょう」
知念「ええ。そりゃあ、もう……。おかげさまで、日ごろのストレスを発散できました!喪黒さんには、本当に感謝しますよ!」
喪黒「どういたしまして……。ただし、知念さんには約束していただきたいことがあります」
知念「約束!?」
喪黒「そうです。あなたがロボットサーカスを見るのは、今回の1度きりにしておいてください」
「たった1度しか味わえない感動を胸にしまうからこそ、この経験は貴重なものとして生き続けるのですよ」
知念「分かりました……。あのサーカスの感動のおかげで、私は、スポーツライターの魂が再び目覚めたような気がするんです!」
喪黒「そうですか。でも、現実の生活にそれが生かせるといいですけどねぇ……」
知念「もちろん、生かして見せますよ!!これからの私は、生まれ変わったつもりで仕事をしますから!!」
ピラミッド型の建物の外へ出る喪黒と知念。知念は、感極まった表情をしている。
知念「喪黒さん!今の私は、猛烈な感動を覚えていますよ!!」
「何しろ、ロボットたちのアクロバットな動きは、手に汗を握る場面の連続で……」
「もう、アドレナリンが出まくりでしたよ!!こんなに面白いものが、この世にあったのかと……」
喪黒「あなたいわく、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのもの……」
「だから、見方によってはサーカスもスポーツの一種と言えるでしょう」
知念「ええ。そりゃあ、もう……。おかげさまで、日ごろのストレスを発散できました!喪黒さんには、本当に感謝しますよ!」
喪黒「どういたしまして……。ただし、知念さんには約束していただきたいことがあります」
知念「約束!?」
喪黒「そうです。あなたがロボットサーカスを見るのは、今回の1度きりにしておいてください」
「たった1度しか味わえない感動を胸にしまうからこそ、この経験は貴重なものとして生き続けるのですよ」
知念「分かりました……。あのサーカスの感動のおかげで、私は、スポーツライターの魂が再び目覚めたような気がするんです!」
喪黒「そうですか。でも、現実の生活にそれが生かせるといいですけどねぇ……」
知念「もちろん、生かして見せますよ!!これからの私は、生まれ変わったつもりで仕事をしますから!!」
14:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 01:59:26.340 :oiz6yl/fD.net
昼。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」に出演する知念。彼の主張は、いつもと正反対になっている。
知念「今回の暴行事件、悪いのは横綱と相撲協会の方です!私は、尊鉄山親方の対応を心から支持します!」
司会者「どうしたんですか、知念さん……」
知念「私はこれまで、相撲協会と仕事で何かとしがらみがありました!でも、今の私は目覚めて、真人間になったんです!」
番組収録を終え、控室にいる知念。知念は、相撲協会関係者と会話をする。相撲協会関係者に脅され、息をのむ知念。
相撲協会関係者「知念さん。あなた余計なことを言ってくれましたね……。ただじゃ済みませんよ」
夜。居酒屋「黄金豹」。常連客たちとともに酒を飲む知念。いつも通り、テレビで関鉄パンサーズの野球中継を見る一同。
実況「試合終了!パンサーズ、力つきました!宿敵・巨神を前に、無念の逆転負けです!」
大型の液晶テレビを見ながら、落ち込む一同。
一同「あああ……」
知念(関鉄が負けた。ロボットサーカスは、負けや挫折がなくて気持ちいいままでいられるのに……。現実のスポーツチームはそうじゃない)
昼。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」に出演する知念。彼の主張は、いつもと正反対になっている。
知念「今回の暴行事件、悪いのは横綱と相撲協会の方です!私は、尊鉄山親方の対応を心から支持します!」
司会者「どうしたんですか、知念さん……」
知念「私はこれまで、相撲協会と仕事で何かとしがらみがありました!でも、今の私は目覚めて、真人間になったんです!」
番組収録を終え、控室にいる知念。知念は、相撲協会関係者と会話をする。相撲協会関係者に脅され、息をのむ知念。
相撲協会関係者「知念さん。あなた余計なことを言ってくれましたね……。ただじゃ済みませんよ」
夜。居酒屋「黄金豹」。常連客たちとともに酒を飲む知念。いつも通り、テレビで関鉄パンサーズの野球中継を見る一同。
実況「試合終了!パンサーズ、力つきました!宿敵・巨神を前に、無念の逆転負けです!」
大型の液晶テレビを見ながら、落ち込む一同。
一同「あああ……」
知念(関鉄が負けた。ロボットサーカスは、負けや挫折がなくて気持ちいいままでいられるのに……。現実のスポーツチームはそうじゃない)
15:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 02:02:30.369 :oiz6yl/fD.net
知念家。居間で、妻・慶子と娘・美織になじられる知念。
慶子「あなた、とんでもないことをしてくれたわね……!」
知念「とんでもないこと?昼のワイドショーでの発言のことか?」
慶子「そうよ!相撲関係の仕事がなくなったら、収入が大きく落ち込むでしょ!」
知念「でも、俺は正義感と自分の良心に従ったまでで……」
美織「あのねぇ。私は来年、大学に行かなきゃいけないんだよ!大学の学費、どうするの?」
「私のことも考えてから、行動すればよかったのに……。バカじゃないの、パパ!!」
慶子「あなたはコネだけが取り柄の人だったのに……。全く、余計なことをしてくれて……」
美織「ホント……。お金を稼げないパパなんか、家から出ていけばいいのに!」
知念「分かった!!こんな家、出て行ってやる!!」
堪忍袋の緒が切れ、家を飛び出す知念。住宅街を歩く知念の前に、喪黒が姿を現す。
知念「も、喪黒さん……。もう1度、ロボットサーカスに連れて行ってください!」
喪黒「いいえ、なりません。ロボットサーカスを見るのは1回だけ……。それが私との約束でしたよねぇ」
知念家。居間で、妻・慶子と娘・美織になじられる知念。
慶子「あなた、とんでもないことをしてくれたわね……!」
知念「とんでもないこと?昼のワイドショーでの発言のことか?」
慶子「そうよ!相撲関係の仕事がなくなったら、収入が大きく落ち込むでしょ!」
知念「でも、俺は正義感と自分の良心に従ったまでで……」
美織「あのねぇ。私は来年、大学に行かなきゃいけないんだよ!大学の学費、どうするの?」
「私のことも考えてから、行動すればよかったのに……。バカじゃないの、パパ!!」
慶子「あなたはコネだけが取り柄の人だったのに……。全く、余計なことをしてくれて……」
美織「ホント……。お金を稼げないパパなんか、家から出ていけばいいのに!」
知念「分かった!!こんな家、出て行ってやる!!」
堪忍袋の緒が切れ、家を飛び出す知念。住宅街を歩く知念の前に、喪黒が姿を現す。
知念「も、喪黒さん……。もう1度、ロボットサーカスに連れて行ってください!」
喪黒「いいえ、なりません。ロボットサーカスを見るのは1回だけ……。それが私との約束でしたよねぇ」
16:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 02:04:41.275 :oiz6yl/fD.net
知念「でも、喪黒さん……!!これは私の一生の願いなんです!!実は今日、私は……」
喪黒「そうですか。そんなことがあったんですか……」
知念「喪黒さん!私は、ロボットサーカスをどうしても見たいんです!あの建物の中に、ずっといてもいいくらいです!」
喪黒「分かりました……。あなたの望みをかなえてあげましょう!!ですが……、どんなことになっても私は知りませんよ!!」
喪黒は知念に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
知念「ギャアアアアアアアアア!!!」
夜空に浮かび上がるピラミッド型の建物。建物を目にし、驚く知念。建物の入り口の自動ドアが開き、知念に光を発射する。
光とともに、建物の入口へと吸い込まれていく知念。
1か月後。高速道路を走るタクシー。助手席に乗る喪黒。後部座席には知念慶子と娘・美織が乗っている。
慶子「あなた、主人の知り合いですよね?主人は一体、どこに行ったんですか?」
喪黒「知念さんですか?彼は例の場所にいるはずですよ」
知念「でも、喪黒さん……!!これは私の一生の願いなんです!!実は今日、私は……」
喪黒「そうですか。そんなことがあったんですか……」
知念「喪黒さん!私は、ロボットサーカスをどうしても見たいんです!あの建物の中に、ずっといてもいいくらいです!」
喪黒「分かりました……。あなたの望みをかなえてあげましょう!!ですが……、どんなことになっても私は知りませんよ!!」
喪黒は知念に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
知念「ギャアアアアアアアアア!!!」
夜空に浮かび上がるピラミッド型の建物。建物を目にし、驚く知念。建物の入り口の自動ドアが開き、知念に光を発射する。
光とともに、建物の入口へと吸い込まれていく知念。
1か月後。高速道路を走るタクシー。助手席に乗る喪黒。後部座席には知念慶子と娘・美織が乗っている。
慶子「あなた、主人の知り合いですよね?主人は一体、どこに行ったんですか?」
喪黒「知念さんですか?彼は例の場所にいるはずですよ」
17:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/11/05(月) 02:09:51.091 :oiz6yl/fD.net
とある山の中。ピラミッド型の建物。観客席に座る喪黒と、慶子・美織親子。この3人以外の観客は、皆、ロボットになっている。
信じがたい光景を目にし、驚く慶子と美織。
慶子・美織「あーーーーーっ!!」
サーカス団の中には、ロボット化した知念も加わっている。そう……。顔は人間風だが、首から下は銀色の機械となった状態で――。
慶子「あ、あなた……!!」
美織「パ、パパァーーッ!!」
悲壮な顔で悲鳴を上げる慶子と美織。ロボット特有のうつろな表情で、アクロバットな動きをこなす知念。
ピラミッド型の建物の前にいる喪黒。
喪黒「そもそも人間は……。長い歴史をかけてスポーツを文化として発展させ、一大産業として社会に根付かせてきました」
「スポーツは、身体を動かす欲求を満たすものであり……。行う側と見る側に夢と感動を与えることが醍醐味と言えます」
「しかしながら、プロスポーツの世界は商業主義が進みましたし……。興行と化したものは利権や問題が生まれるものです」
「ただし……。感情を一切持たないロボットが関わった興行ならば、それらの問題はたちまち解決してしまうでしょう」
「え?感情がなければ、感動は生まれない?なぁに、スポーツの感動もまた幻ですよ」
「知念さんが追い求めていたものも、所詮は幻なのですから……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
とある山の中。ピラミッド型の建物。観客席に座る喪黒と、慶子・美織親子。この3人以外の観客は、皆、ロボットになっている。
信じがたい光景を目にし、驚く慶子と美織。
慶子・美織「あーーーーーっ!!」
サーカス団の中には、ロボット化した知念も加わっている。そう……。顔は人間風だが、首から下は銀色の機械となった状態で――。
慶子「あ、あなた……!!」
美織「パ、パパァーーッ!!」
悲壮な顔で悲鳴を上げる慶子と美織。ロボット特有のうつろな表情で、アクロバットな動きをこなす知念。
ピラミッド型の建物の前にいる喪黒。
喪黒「そもそも人間は……。長い歴史をかけてスポーツを文化として発展させ、一大産業として社会に根付かせてきました」
「スポーツは、身体を動かす欲求を満たすものであり……。行う側と見る側に夢と感動を与えることが醍醐味と言えます」
「しかしながら、プロスポーツの世界は商業主義が進みましたし……。興行と化したものは利権や問題が生まれるものです」
「ただし……。感情を一切持たないロボットが関わった興行ならば、それらの問題はたちまち解決してしまうでしょう」
「え?感情がなければ、感動は生まれない?なぁに、スポーツの感動もまた幻ですよ」
「知念さんが追い求めていたものも、所詮は幻なのですから……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
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