2: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:20:37.65 :PSNJgP6Z0
がちゃり。
「ただいまー」
返事はありません。当たり前です、ひとり暮らしですから。
今日もひと仕事を終えて、程よい疲れを抱え帰ってきました。
お帰りなさい、ああただいま、あなた今日はごはん? お風呂? それとも。
脳内ひとり芝居はこのくらいで。
「さて、今日は、と」
私はそそくさとキッチンに向かい、冷蔵庫のドアを開けます。
「どんな塩梅、かしら」
ワクワクしながら、私はタッパーをひとつ、取り出しました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
がちゃり。
「ただいまー」
返事はありません。当たり前です、ひとり暮らしですから。
今日もひと仕事を終えて、程よい疲れを抱え帰ってきました。
お帰りなさい、ああただいま、あなた今日はごはん? お風呂? それとも。
脳内ひとり芝居はこのくらいで。
「さて、今日は、と」
私はそそくさとキッチンに向かい、冷蔵庫のドアを開けます。
「どんな塩梅、かしら」
ワクワクしながら、私はタッパーをひとつ、取り出しました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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3: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:21:55.62 :PSNJgP6Z0
「……もらってくれませんかねえ」
「プロデューサーをですか? ええ、それはもう」
「楓さん、違います」
目の前には段ボール箱。我がプロデューサー氏の実家から贈られてきたそれには、ぎっしりのきゅうり。
どれも立派で、みずみずしいものでした。
「さすがにとても食べきれないので、ねえ」
「プロデューサーのご実家って、農家、でしたっけ?」
「いやいや、普通のサラリーマンですよ……家庭菜園は普通じゃないですけど」
「まあ」
趣味で家庭菜園とか、とてもいいことだと思うんですけど。まあ、物事には限度というものはありまして。
プロデューサーがおっしゃるには、借りた農園が相応に広いとこだ、と。
土地を余しておくにはもったいない、と。
なら、いろいろ作るか、と。
自分たちが食べられる以上の供給を生産するに至った、と。
なるほど、あるあるですね。
「……もらってくれませんかねえ」
「プロデューサーをですか? ええ、それはもう」
「楓さん、違います」
目の前には段ボール箱。我がプロデューサー氏の実家から贈られてきたそれには、ぎっしりのきゅうり。
どれも立派で、みずみずしいものでした。
「さすがにとても食べきれないので、ねえ」
「プロデューサーのご実家って、農家、でしたっけ?」
「いやいや、普通のサラリーマンですよ……家庭菜園は普通じゃないですけど」
「まあ」
趣味で家庭菜園とか、とてもいいことだと思うんですけど。まあ、物事には限度というものはありまして。
プロデューサーがおっしゃるには、借りた農園が相応に広いとこだ、と。
土地を余しておくにはもったいない、と。
なら、いろいろ作るか、と。
自分たちが食べられる以上の供給を生産するに至った、と。
なるほど、あるあるですね。
4: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:22:35.36 :PSNJgP6Z0
「事務所のみんなにも持ってってもらってるんですけどね」
「……どのくらい送ってこられたんです?」
「……三箱」
まあ。
それはそれは、お疲れさまです。
「女子寮に持ってく前に、少しでもさばいておこうか、と」
「それで、朝から移動販売、ですか」
「タダですけどね」
プロデューサーは苦笑します。
まあ女子寮なら、響子ちゃんがどうにかしてくれそうですし、それなら。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ええ、ええ。どっさり持って行ってください」
そう言ってプロデューサーは、袖机からスーパーのビニール袋をぽいぽいと取り出しました。
……マメですね、プロデューサー。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「事務所のみんなにも持ってってもらってるんですけどね」
「……どのくらい送ってこられたんです?」
「……三箱」
まあ。
それはそれは、お疲れさまです。
「女子寮に持ってく前に、少しでもさばいておこうか、と」
「それで、朝から移動販売、ですか」
「タダですけどね」
プロデューサーは苦笑します。
まあ女子寮なら、響子ちゃんがどうにかしてくれそうですし、それなら。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「ええ、ええ。どっさり持って行ってください」
そう言ってプロデューサーは、袖机からスーパーのビニール袋をぽいぽいと取り出しました。
……マメですね、プロデューサー。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
5: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:23:23.89 :PSNJgP6Z0
「ふむ」
目の前に鎮座ましましているのは、大量のきゅうり。
私は袋ふたつ分のきゅうりを持たされ、こうしてキッチンで思索に耽っています。
……言い過ぎでした。ただ悩んでいるだけです。
よくあるのは、浅漬けにするとか、切ってそのまま味噌をつけてもろきゅうとか。
煮ても炒めてもいけますね、冬瓜のように使えば。
ただきゅうりは日持ちしないので、これだけあるとさすがに……
毎日が休肝バー、もとい、きゅうり天国(キューカンバー)というのは。
「まあそれもいいですけど」
くすりと笑う、私。
そうだ。ここには漬け樽はないけれど、多少日持ちする漬物なら。
「あれ。ですね」
私はさっそく、きゅーちゃん漬けを作り始めるのでした。
「ふむ」
目の前に鎮座ましましているのは、大量のきゅうり。
私は袋ふたつ分のきゅうりを持たされ、こうしてキッチンで思索に耽っています。
……言い過ぎでした。ただ悩んでいるだけです。
よくあるのは、浅漬けにするとか、切ってそのまま味噌をつけてもろきゅうとか。
煮ても炒めてもいけますね、冬瓜のように使えば。
ただきゅうりは日持ちしないので、これだけあるとさすがに……
毎日が休肝バー、もとい、きゅうり天国(キューカンバー)というのは。
「まあそれもいいですけど」
くすりと笑う、私。
そうだ。ここには漬け樽はないけれど、多少日持ちする漬物なら。
「あれ。ですね」
私はさっそく、きゅーちゃん漬けを作り始めるのでした。
6: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:24:00.20 :PSNJgP6Z0
用意したきゅうりは、八本。一キロくらいあるかしら。
それからしょうがを一個。そこそこの大きさですけど、全部入れちゃいましょう。
あと、しょうゆと砂糖と、酢。そうそう、鷹の爪も少し入れましょう。
あ、まあお仕事ありますし、今日は下ごしらえだけで。
私は出したばかりのショウガと調味料を、そそくさと戻すのでした。
用意したきゅうりは、八本。一キロくらいあるかしら。
それからしょうがを一個。そこそこの大きさですけど、全部入れちゃいましょう。
あと、しょうゆと砂糖と、酢。そうそう、鷹の爪も少し入れましょう。
あ、まあお仕事ありますし、今日は下ごしらえだけで。
私は出したばかりのショウガと調味料を、そそくさと戻すのでした。
7: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:24:46.21 :PSNJgP6Z0
きゅうりを一センチに足りないくらいの厚さで、輪切り。
すとん。すとん。すとん。
よく「手つきが危なっかしい」とは言われますけど、ゆっくり切れば安全ですし。
のんびり、やりましょう。
切ったきゅうりは、ボウル……うーん、ちょっと多いかしら。
大きな鍋に入れましょうか。
そして、塩をひとつかみ。ひと「つまみ」じゃなくてひと「つかみ」
要は塩漬けです。ばさっと入れて、きゅうりと混ぜて、と。
お皿を上からかぶせて、その上に、重しになるようなものを。
「それじゃあ」
きゅうりを一センチに足りないくらいの厚さで、輪切り。
すとん。すとん。すとん。
よく「手つきが危なっかしい」とは言われますけど、ゆっくり切れば安全ですし。
のんびり、やりましょう。
切ったきゅうりは、ボウル……うーん、ちょっと多いかしら。
大きな鍋に入れましょうか。
そして、塩をひとつかみ。ひと「つまみ」じゃなくてひと「つかみ」
要は塩漬けです。ばさっと入れて、きゅうりと混ぜて、と。
お皿を上からかぶせて、その上に、重しになるようなものを。
「それじゃあ」
8: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:25:14.47 :PSNJgP6Z0
ちょうど二リットル空きペットボトルがありました。これに水を入れて、乗せましょう。
その転がっている『〇五郎』のほうが大きい?
……あのね、大きさじゃないんだよ。
ペットボトルを乗せて、セット完了。
今日はほったらかしにして、お仕事の準備をしましょう。
あとは帰ってきたら、続きをすることにして、と。
では、行ってきます。
ちょうど二リットル空きペットボトルがありました。これに水を入れて、乗せましょう。
その転がっている『〇五郎』のほうが大きい?
……あのね、大きさじゃないんだよ。
ペットボトルを乗せて、セット完了。
今日はほったらかしにして、お仕事の準備をしましょう。
あとは帰ってきたら、続きをすることにして、と。
では、行ってきます。
9: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:26:05.97 :PSNJgP6Z0
はい、ただいま。
いつもどおり仕事を終え、今日はプロデューサーに送られ帰ってきました。はあ、らくちん。
プロデューサーに「よかったら私の手料理、いかがですか?」などと声をかけるものの。
「そんな時間ないです」
まあ身もふたもないお言葉で、お断りされてしまいました。
プロデューサーの忙しさはよく理解してます。私の仕事関係ですし、ね。
ですから、強くお引止めせずにまっすぐマンションへ。
さて。
「おお、たっぷんたっぷんですね」
シンクに鎮座しているお鍋を見ると、すっかりきゅうりの水が上がっていました。うん、上等上等。
ざるに開け水を捨てて、また鍋に戻して蛇口から水を張ります。ちょっとだけでも塩抜きを。
その間に、調味液を作っておきましょう。
はい、ただいま。
いつもどおり仕事を終え、今日はプロデューサーに送られ帰ってきました。はあ、らくちん。
プロデューサーに「よかったら私の手料理、いかがですか?」などと声をかけるものの。
「そんな時間ないです」
まあ身もふたもないお言葉で、お断りされてしまいました。
プロデューサーの忙しさはよく理解してます。私の仕事関係ですし、ね。
ですから、強くお引止めせずにまっすぐマンションへ。
さて。
「おお、たっぷんたっぷんですね」
シンクに鎮座しているお鍋を見ると、すっかりきゅうりの水が上がっていました。うん、上等上等。
ざるに開け水を捨てて、また鍋に戻して蛇口から水を張ります。ちょっとだけでも塩抜きを。
その間に、調味液を作っておきましょう。
10: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:26:46.61 :PSNJgP6Z0
醤油が400ミリリットル。砂糖が200グラム。お酢が100ミリリットル。
計量カップでアバウトに量るだけ。
砂糖の重さ? えー、確か100グラムは、カップで160ミリリットルくらいだったか、と。うろ覚えですけど。
その程度のアバウトさで、十分。
別のお鍋を用意して、量ったそばからジャーっと。そして火をつけます。
なべ底に、青白い炎。なんか火をつける時って、わくわくしますよね。私、料理してるなあ、って。
沸騰するまでに、針ショウガを作っておきましょう。
ショウガの皮も剥かずに、トントントン。厚めの針ショウガができていきます。
あら。
火にかけたお鍋が沸騰して、ぶわっと泡が吹きそう。慌てて火を止めました。準備、よし。
そして残りのショウガも全てハリハリにして。アツアツの調味液に投下!
ざばざばざばー。
シンクで塩抜きしているきゅうりをざるに開けて、水切り。これも調味液にどばーっと投下。
結構、鍋いっぱいになりましたね。
最後に、小口切りにした鷹の爪をぱらぱらと。
できました。
あとは蓋をして一晩放置して。本日の作業はここまで。
はい。
皆様、おつかれさまでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
醤油が400ミリリットル。砂糖が200グラム。お酢が100ミリリットル。
計量カップでアバウトに量るだけ。
砂糖の重さ? えー、確か100グラムは、カップで160ミリリットルくらいだったか、と。うろ覚えですけど。
その程度のアバウトさで、十分。
別のお鍋を用意して、量ったそばからジャーっと。そして火をつけます。
なべ底に、青白い炎。なんか火をつける時って、わくわくしますよね。私、料理してるなあ、って。
沸騰するまでに、針ショウガを作っておきましょう。
ショウガの皮も剥かずに、トントントン。厚めの針ショウガができていきます。
あら。
火にかけたお鍋が沸騰して、ぶわっと泡が吹きそう。慌てて火を止めました。準備、よし。
そして残りのショウガも全てハリハリにして。アツアツの調味液に投下!
ざばざばざばー。
シンクで塩抜きしているきゅうりをざるに開けて、水切り。これも調味液にどばーっと投下。
結構、鍋いっぱいになりましたね。
最後に、小口切りにした鷹の爪をぱらぱらと。
できました。
あとは蓋をして一晩放置して。本日の作業はここまで。
はい。
皆様、おつかれさまでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
11: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:28:00.35 :PSNJgP6Z0
翌朝。
そうそう、地方ロケで少しだけ家を空けるのでした。
女性が旅行に行くときは、いろいろ持っていくものが多い、と言うけれど。
私は最低限の私服と化粧品ポーチ、お気に入りの本を用意するくらいで、小さめのバッグで十分。
ロケにはスタイリストさんもメイクさんも同行するし、基本はお任せなのです。
なので、ロケ用セットはいつでも準備している、仕事のできる、私。えっへん。
さて、それじゃあきゅーちゃんの仕上げといきましょうか。
「おめえら、覚悟しな」
私はコンロに鎮座するお鍋に、そう告げます。
そして……ご開帳。
「おお、これはこれは」
半日ほったらかしのそれは、そこそこいい色に染まってきていました。
ひとつつまんで、口に放り込みます。奥歯で噛めば、かりっと小気味よい音。
「……うん、まだまだね」
翌朝。
そうそう、地方ロケで少しだけ家を空けるのでした。
女性が旅行に行くときは、いろいろ持っていくものが多い、と言うけれど。
私は最低限の私服と化粧品ポーチ、お気に入りの本を用意するくらいで、小さめのバッグで十分。
ロケにはスタイリストさんもメイクさんも同行するし、基本はお任せなのです。
なので、ロケ用セットはいつでも準備している、仕事のできる、私。えっへん。
さて、それじゃあきゅーちゃんの仕上げといきましょうか。
「おめえら、覚悟しな」
私はコンロに鎮座するお鍋に、そう告げます。
そして……ご開帳。
「おお、これはこれは」
半日ほったらかしのそれは、そこそこいい色に染まってきていました。
ひとつつまんで、口に放り込みます。奥歯で噛めば、かりっと小気味よい音。
「……うん、まだまだね」
12: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:28:50.97 :PSNJgP6Z0
きゅうりはまだ、芯まで味が染みてません。塩辛さが強くて若い、そんな感じ。
そこできゅーちゃんを鍋から全部取り出して、調味液だけにします。再び着火。
きゅうりの水分が出て薄まった調味液を少し煮詰めて、濃さを戻しましょう。
最近のコンロは便利ですよね。調理タイマーが付いてて、鍋を空焚きするなんてこともない。
私はタイマーを適当にセットして、出勤準備を始めたのでした。
しばらくして。
私はもう準備万端。でも、プロデューサーはまだ来ませんね。
「では」
深めのタッパーを用意して、取り出しておいたきゅーちゃんを入れます。ハリハリショウガも一緒に、ぽいぽいっ。
……あら、ひとつじゃ足りなかったですね。
もうひとつタッパーを出して、そちらにもぽいぽいっ。一つめのタッパーと分量をあわせて、と。
そして、鍋の中身を注ぎ入れました。
できあがったふたつのタッパー。まだぬくもりが残っているそれを、冷蔵庫へシュート!
そして、最後の大事な儀式。
きゅうりはまだ、芯まで味が染みてません。塩辛さが強くて若い、そんな感じ。
そこできゅーちゃんを鍋から全部取り出して、調味液だけにします。再び着火。
きゅうりの水分が出て薄まった調味液を少し煮詰めて、濃さを戻しましょう。
最近のコンロは便利ですよね。調理タイマーが付いてて、鍋を空焚きするなんてこともない。
私はタイマーを適当にセットして、出勤準備を始めたのでした。
しばらくして。
私はもう準備万端。でも、プロデューサーはまだ来ませんね。
「では」
深めのタッパーを用意して、取り出しておいたきゅーちゃんを入れます。ハリハリショウガも一緒に、ぽいぽいっ。
……あら、ひとつじゃ足りなかったですね。
もうひとつタッパーを出して、そちらにもぽいぽいっ。一つめのタッパーと分量をあわせて、と。
そして、鍋の中身を注ぎ入れました。
できあがったふたつのタッパー。まだぬくもりが残っているそれを、冷蔵庫へシュート!
そして、最後の大事な儀式。
13: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:29:19.56 :PSNJgP6Z0
「おいしくなーれ……おいしくなーれ……もえもえ、きゅん」
ええ、まあ。
なんとなくそんな気分だったのです。
プロデューサーから間もなく着くと連絡がありました。
私はロケセットを持ち、マンションのロビーへ向かいます。
では、きゅーちゃんたち。再会を楽しみにしてますね。
アデュー。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おいしくなーれ……おいしくなーれ……もえもえ、きゅん」
ええ、まあ。
なんとなくそんな気分だったのです。
プロデューサーから間もなく着くと連絡がありました。
私はロケセットを持ち、マンションのロビーへ向かいます。
では、きゅーちゃんたち。再会を楽しみにしてますね。
アデュー。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
14: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:29:53.92 :PSNJgP6Z0
そして、最初へ戻る。なーんて。
ロケから帰ってタッパーを取り出した私は、浸かり具合を確認するのです。
では、ご開帳。
「……まあ」
ほどよい色に染まった、きゅーちゃん。
これは我ながら、素晴らしい出来と思えます。傑作です。
「さっそく、ひとくち」
タッパーから一切れ取り出して、ぱくり。
しっかりした歯ごたえと、ほどよい甘味と、塩気。鷹の爪のぴりっと感も感じられます。
私はぽりぽりと噛みしめながら、ひとりサムズアップをするのでした。
さあ、こうなればあとは。
「ご慰労会、ですね」
おひとりさまですけど。
そして、最初へ戻る。なーんて。
ロケから帰ってタッパーを取り出した私は、浸かり具合を確認するのです。
では、ご開帳。
「……まあ」
ほどよい色に染まった、きゅーちゃん。
これは我ながら、素晴らしい出来と思えます。傑作です。
「さっそく、ひとくち」
タッパーから一切れ取り出して、ぱくり。
しっかりした歯ごたえと、ほどよい甘味と、塩気。鷹の爪のぴりっと感も感じられます。
私はぽりぽりと噛みしめながら、ひとりサムズアップをするのでした。
さあ、こうなればあとは。
「ご慰労会、ですね」
おひとりさまですけど。
15: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:31:04.19 :PSNJgP6Z0
きゅーちゃんだけでは少し寂しいので、冷凍シューマイを取り出して、レンジでチン。
あとは、本日のファーストチョイス。
「……今日の気分は……君に決めた!」
最初はオリオンのドラフトで、いきましょう。
リビングのテーブルに、シューマイの皿とからし醤油の小皿。そして。
愛しの、きゅーちゃん。
では、参りましょうか。
プシュッ!!
オリオン缶のプルタブを開けます。ああ、いい音ですね。心が湧きたちます。
「本日もお仕事、お疲れさまでした」
缶のままグイっとひと口。オリオンのさらっとさわやかな口当たりと、すっきり喉ごし。
「……ふう……おいし」
きゅーちゃんだけでは少し寂しいので、冷凍シューマイを取り出して、レンジでチン。
あとは、本日のファーストチョイス。
「……今日の気分は……君に決めた!」
最初はオリオンのドラフトで、いきましょう。
リビングのテーブルに、シューマイの皿とからし醤油の小皿。そして。
愛しの、きゅーちゃん。
では、参りましょうか。
プシュッ!!
オリオン缶のプルタブを開けます。ああ、いい音ですね。心が湧きたちます。
「本日もお仕事、お疲れさまでした」
缶のままグイっとひと口。オリオンのさらっとさわやかな口当たりと、すっきり喉ごし。
「……ふう……おいし」
16: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:31:31.41 :PSNJgP6Z0
さっそく、きゅーちゃんからいただきましょう。
ぱくり。
……ぽり……ぽり……
ああ、いい歯ごたえです。
本格的に、オリオンをぐびぐびっと。きゅーちゃんとオリオンが、胃の腑にすとんと落ちていきます。
うん。
いいですね。いい。
次に、シューマイをぱくり。オリオンをぐびっと。うん、これもおいしい。
冷食って便利ですよね。常備しておくとおつまみに事欠かなくて、ありがたいお供です。
あっという間に、オリオンは空になりました。
「それじゃあ、メインと参りましょうか」
さっそく、きゅーちゃんからいただきましょう。
ぱくり。
……ぽり……ぽり……
ああ、いい歯ごたえです。
本格的に、オリオンをぐびぐびっと。きゅーちゃんとオリオンが、胃の腑にすとんと落ちていきます。
うん。
いいですね。いい。
次に、シューマイをぱくり。オリオンをぐびっと。うん、これもおいしい。
冷食って便利ですよね。常備しておくとおつまみに事欠かなくて、ありがたいお供です。
あっという間に、オリオンは空になりました。
「それじゃあ、メインと参りましょうか」
17: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:32:24.95 :PSNJgP6Z0
今日のメインは、ロケ先のお土産。秋田の刈穂「kawasemi」
ラベルが綺麗で、思わず手に取っていました。
四合瓶をしばし眺め、私は準備を始めます。
冷徳利を食器棚から取り出して、中に氷を詰めましょう。ぐい飲みも用意して、と。
さて。
封を開け徳利に注ぎ入れれば、フルーティーな香りが鼻腔をくすぐります。ああ、幸せな香りですね。
「改めて、いただきます」
ぐい飲みに注ぎ、口に含みます。
……ああ。
フレッシュな味わいと、甘さ。これは。
「……おいしい」
今日のメインは、ロケ先のお土産。秋田の刈穂「kawasemi」
ラベルが綺麗で、思わず手に取っていました。
四合瓶をしばし眺め、私は準備を始めます。
冷徳利を食器棚から取り出して、中に氷を詰めましょう。ぐい飲みも用意して、と。
さて。
封を開け徳利に注ぎ入れれば、フルーティーな香りが鼻腔をくすぐります。ああ、幸せな香りですね。
「改めて、いただきます」
ぐい飲みに注ぎ、口に含みます。
……ああ。
フレッシュな味わいと、甘さ。これは。
「……おいしい」
18: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:33:01.30 :PSNJgP6Z0
その言葉だけで必要かつ十分。まずは一献、空けまして。
次は当然、きゅーちゃんと一緒に。
ぐい飲みを満たせば、再び香る命の水。きゅーちゃんを口に入れ、噛みしめます。そしておもむろに杯を空け。
「……ああ、酒あわせ……」
このひと時が、ありがたい。
まだ宵の口。ゆっくりとじっくりと、夜を愉しみましょう。
ひそやかな、愉しみを。
ぽりぽり……くいっくいっ……ぽりぽり……くいっくいっ……
この酒あわせが。
ずっと続きますように。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その言葉だけで必要かつ十分。まずは一献、空けまして。
次は当然、きゅーちゃんと一緒に。
ぐい飲みを満たせば、再び香る命の水。きゅーちゃんを口に入れ、噛みしめます。そしておもむろに杯を空け。
「……ああ、酒あわせ……」
このひと時が、ありがたい。
まだ宵の口。ゆっくりとじっくりと、夜を愉しみましょう。
ひそやかな、愉しみを。
ぽりぽり……くいっくいっ……ぽりぽり……くいっくいっ……
この酒あわせが。
ずっと続きますように。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
19: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:33:44.57 :PSNJgP6Z0
翌日。
この日オフの私は、小袋を携え事務所に顔を出します。
「……あれ? 楓さん?」
いつもの机では、プロデューサーがパソコンとにらめっこしていました。
「ええ、あなたの高垣楓、ですよ?」
「いや、それはいいです」
まあ、プロデューサー。つれないですね。
翌日。
この日オフの私は、小袋を携え事務所に顔を出します。
「……あれ? 楓さん?」
いつもの机では、プロデューサーがパソコンとにらめっこしていました。
「ええ、あなたの高垣楓、ですよ?」
「いや、それはいいです」
まあ、プロデューサー。つれないですね。
20: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:34:26.52 :PSNJgP6Z0
「今日はどうしました?」
プロデューサーが私に尋ねます。
「存外よく出来たんで、お裾分けです」
そう言って私は、小袋を彼に渡しました。
「これは?」
「どうぞ、私の愛情がこもってますよ?」
小袋を覗き込めば、そこに発見される小さなタッパー。
プロデューサーはそれを取り出すと、蓋をゆっくり開けます。
「お、漬物。きゅーちゃん?」
「大正解。お手製ですよ」
「へー、きゅーちゃんって作れるんですね」
そう言うとおもむろにひとつつまみ、口に放り込みました。ぽりぽりといい音。
「おー、これはなかなか」
「それはよかったです」
「今日はどうしました?」
プロデューサーが私に尋ねます。
「存外よく出来たんで、お裾分けです」
そう言って私は、小袋を彼に渡しました。
「これは?」
「どうぞ、私の愛情がこもってますよ?」
小袋を覗き込めば、そこに発見される小さなタッパー。
プロデューサーはそれを取り出すと、蓋をゆっくり開けます。
「お、漬物。きゅーちゃん?」
「大正解。お手製ですよ」
「へー、きゅーちゃんって作れるんですね」
そう言うとおもむろにひとつつまみ、口に放り込みました。ぽりぽりといい音。
「おー、これはなかなか」
「それはよかったです」
21: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:35:02.43 :PSNJgP6Z0
私はちひろさんにも同じ小袋を渡します。
「あら、楓さん。ありがとうございます」
「ちひろさん、今度はうちで、女子会しましょうね?」
「それは、ぜひぜひ」
うふふ、うふふと、笑顔のたくらみ。楽しくなりそうですね。
「あら、プロデューサーも参加します?」
「……いや遠慮しておきます。女性同士、気兼ねなく楽しんでくださいな」
「まあ、プロデューサーなら特別枠で。ねえ、ちひろさん?」
「そうですね……ぜひご一緒に」
女性ふたりの笑顔に、プロデューサーは苦い顔をして。
「ごちそうさまでした」
そそくさとタッパーを仕舞い、パソコンに向かうふりをするのでした。
大丈夫。取って食べたりしませんよ。
たぶん。おそらく。
そして事務所は、本日も通常営業です。
私はちひろさんにも同じ小袋を渡します。
「あら、楓さん。ありがとうございます」
「ちひろさん、今度はうちで、女子会しましょうね?」
「それは、ぜひぜひ」
うふふ、うふふと、笑顔のたくらみ。楽しくなりそうですね。
「あら、プロデューサーも参加します?」
「……いや遠慮しておきます。女性同士、気兼ねなく楽しんでくださいな」
「まあ、プロデューサーなら特別枠で。ねえ、ちひろさん?」
「そうですね……ぜひご一緒に」
女性ふたりの笑顔に、プロデューサーは苦い顔をして。
「ごちそうさまでした」
そそくさとタッパーを仕舞い、パソコンに向かうふりをするのでした。
大丈夫。取って食べたりしませんよ。
たぶん。おそらく。
そして事務所は、本日も通常営業です。
22: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:36:25.91 :PSNJgP6Z0
そういえば。
まだうちには、きゅうりがだいぶ残ってます。
どうしましょうね?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そういえば。
まだうちには、きゅうりがだいぶ残ってます。
どうしましょうね?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
23: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:37:07.92 :PSNJgP6Z0
その1.Qちゃん
(おわり)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その1.Qちゃん
(おわり)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
24: ◆eBIiXi2191ZO:2019/11/20(水) 23:40:58.28 :PSNJgP6Z0
とりあえず続きます。よろしくお願いします。
調味液の分量は好みによってバランスを変えてください。わりと塩辛めになっているかと思います。
唐辛子の辛さが苦手な方は、鷹の爪抜きで十分食べられます。
日持ちは冷蔵庫で二週間程度を目安に。
では ノシ
調味液の分量は好みによってバランスを変えてください。わりと塩辛めになっているかと思います。
唐辛子の辛さが苦手な方は、鷹の爪抜きで十分食べられます。
日持ちは冷蔵庫で二週間程度を目安に。
では ノシ
25:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2019/11/20(水) 23:44:46.75 :AnPgvpeWo
乙です
きゅうりは安いからと大量に買っちゃうと、いつの間にかシナシナになっちゃうんですよねえ
キューちゃんの手作りとはまた珍しい。夏に知りたかった
きゅうりは安いからと大量に買っちゃうと、いつの間にかシナシナになっちゃうんですよねえ
キューちゃんの手作りとはまた珍しい。夏に知りたかった
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森きのこ
がしました