57:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 16:52:37.14 :+AqJxiVOO
「6、7、8……」
丁寧に焦らず、大胸筋と上腕三頭筋に力を込める。頭上のバーベルはわずかな震えもなく、静かに上下動を繰り返した。
15回を数えた所で私はバーベルを起き、タオルで汗を拭いた。ベンチプレスの負荷は、もう少し高めてもよいかもしれない。
時計を見ると昼手前だ。そろそろ昼食の時間か。
バクシンオーには弁当を持たせてある。スプリンターである彼女には、エネルギーの変換効率が高い食事が望ましい。
学園の食堂でも充分なのだが、私が自ら作った方がより効果的だ。トレーナーには、私のように担当ウマ娘の食事まで作る者が少なくない。
私は冷蔵庫を開け、ホエイプロテインの袋と牛乳を取り出す。シェイカーでそれらを混ぜ、喉に流し込む。
そして、サラダチキンとバナナ、ビタミングミにエネルギーバー。これで昼食は終了だ。
味気ない食事ではあるが、私にとってはこれで充分だ。何より、チートデイは近い。不満に耐えた先のカタルシスこそ、チートデイでは重要なのだ。
「さて……」
午後は高等部で栄養学の授業がある。教員も兼ねている以上、準備は怠れない。シャワーを浴び、教科書を確認せねば……
コンコン
ノックの音だ。すぐに飛び込んでこない所からして、バクシンオーではない。
なら誰だろうか。またライアン君が、筋トレの指導をお願いしに来たか。10分程度なら、余裕はある。
「入りたまえ」
「失礼します」
ペコリと頭を下げたその顔が誰か認識するのに、わずかに時間がかかった。
見慣れないのと、彼女がここに来る理由が分からなかったからだ。
両耳の耳飾り……昨夏に編入してきた、彼女か。
「どうかしたかな?ファインモーション君」
「6、7、8……」
丁寧に焦らず、大胸筋と上腕三頭筋に力を込める。頭上のバーベルはわずかな震えもなく、静かに上下動を繰り返した。
15回を数えた所で私はバーベルを起き、タオルで汗を拭いた。ベンチプレスの負荷は、もう少し高めてもよいかもしれない。
時計を見ると昼手前だ。そろそろ昼食の時間か。
バクシンオーには弁当を持たせてある。スプリンターである彼女には、エネルギーの変換効率が高い食事が望ましい。
学園の食堂でも充分なのだが、私が自ら作った方がより効果的だ。トレーナーには、私のように担当ウマ娘の食事まで作る者が少なくない。
私は冷蔵庫を開け、ホエイプロテインの袋と牛乳を取り出す。シェイカーでそれらを混ぜ、喉に流し込む。
そして、サラダチキンとバナナ、ビタミングミにエネルギーバー。これで昼食は終了だ。
味気ない食事ではあるが、私にとってはこれで充分だ。何より、チートデイは近い。不満に耐えた先のカタルシスこそ、チートデイでは重要なのだ。
「さて……」
午後は高等部で栄養学の授業がある。教員も兼ねている以上、準備は怠れない。シャワーを浴び、教科書を確認せねば……
コンコン
ノックの音だ。すぐに飛び込んでこない所からして、バクシンオーではない。
なら誰だろうか。またライアン君が、筋トレの指導をお願いしに来たか。10分程度なら、余裕はある。
「入りたまえ」
「失礼します」
ペコリと頭を下げたその顔が誰か認識するのに、わずかに時間がかかった。
見慣れないのと、彼女がここに来る理由が分からなかったからだ。
両耳の耳飾り……昨夏に編入してきた、彼女か。
「どうかしたかな?ファインモーション君」

【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」

【速報】尾田っち、ワンピース最新話でやってしまうwwww

【東方】ルックス100点の文ちゃん

【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?

韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
58:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 17:13:26.17 :+AqJxiVOO
パアッと彼女の顔が明るくなった。
「あ、私の顔を覚えて下さったんですね。感激だなあ」
「授業以外で1対1で会うのは初めてだがね。バクシンオーと同じクラスだったな」
「はい!バクちゃんにはいつもお世話になってます」
ニコニコとファインモーションは弾んだ様子で話す。アイルランドの王族ということだが、とてもフランクな子だ。尻尾は上機嫌そうにパタパタ揺れている。
彼女は上流階級が多い学園でも最高レベルのVIPと聞いているが、その気さくさはバクシンオーからも聞いていた。
「バクシンオーなら食堂だが?」
「ええ。実は天王寺トレーナーに用事があって」
「私に?授業内容の質問かな」
フルフルと彼女が首を振る。
「違うの。年末、バクちゃんとライスちゃんとで、一緒にラーメン屋さんに行ったって話を聞いて」
「まあ、そうだが」
「うん。せっかくだから、私にもラーメン屋さん、教えてほしいんだ」
「……は?」
予想だにしない質問に、頭が一瞬真っ白になる。ラーメン?
「だからラーメン屋さんだよー。美味しいラーメン屋さん、色々探してるんだ。天王寺トレーナーなら、美味しいお店を知ってるんじゃないかって思って」
「意外だな。ラーメンがそこまで好きか」
「うんっ!!」
ファインモーションの尻尾の揺れが、さらに激しくなった。
「ラーメンはね、一杯の中に宇宙があるんだ。言ってみれば、それだけで完結したフルコース、みたいな?
色々美味しいものを食べてきたけど、ラーメンより美味しいものなんてないよー。日本にいるうちに、美味しいお店は行けるだけ行っておきたくて」
そうか、彼女は王族だ。日本に骨を埋めるわけにはいかない。
さりとて、アイルランドにマトモなラーメン屋があるとは思えない。なぜラーメンがそこまで好きなのかという疑問はあれ、気持ちは理解する。
「なるほど。ジャンルに希望はあるか?」
「希望……そうだ!北海道ラーメン!」
パン、と手を叩いてファインモーションが言う。
……これは、なかなか難しいミッションだぞ。
パアッと彼女の顔が明るくなった。
「あ、私の顔を覚えて下さったんですね。感激だなあ」
「授業以外で1対1で会うのは初めてだがね。バクシンオーと同じクラスだったな」
「はい!バクちゃんにはいつもお世話になってます」
ニコニコとファインモーションは弾んだ様子で話す。アイルランドの王族ということだが、とてもフランクな子だ。尻尾は上機嫌そうにパタパタ揺れている。
彼女は上流階級が多い学園でも最高レベルのVIPと聞いているが、その気さくさはバクシンオーからも聞いていた。
「バクシンオーなら食堂だが?」
「ええ。実は天王寺トレーナーに用事があって」
「私に?授業内容の質問かな」
フルフルと彼女が首を振る。
「違うの。年末、バクちゃんとライスちゃんとで、一緒にラーメン屋さんに行ったって話を聞いて」
「まあ、そうだが」
「うん。せっかくだから、私にもラーメン屋さん、教えてほしいんだ」
「……は?」
予想だにしない質問に、頭が一瞬真っ白になる。ラーメン?
「だからラーメン屋さんだよー。美味しいラーメン屋さん、色々探してるんだ。天王寺トレーナーなら、美味しいお店を知ってるんじゃないかって思って」
「意外だな。ラーメンがそこまで好きか」
「うんっ!!」
ファインモーションの尻尾の揺れが、さらに激しくなった。
「ラーメンはね、一杯の中に宇宙があるんだ。言ってみれば、それだけで完結したフルコース、みたいな?
色々美味しいものを食べてきたけど、ラーメンより美味しいものなんてないよー。日本にいるうちに、美味しいお店は行けるだけ行っておきたくて」
そうか、彼女は王族だ。日本に骨を埋めるわけにはいかない。
さりとて、アイルランドにマトモなラーメン屋があるとは思えない。なぜラーメンがそこまで好きなのかという疑問はあれ、気持ちは理解する。
「なるほど。ジャンルに希望はあるか?」
「希望……そうだ!北海道ラーメン!」
パン、と手を叩いてファインモーションが言う。
……これは、なかなか難しいミッションだぞ。
61:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 21:56:25.25 :0x9fhWilO
北海道ラーメンと一口に言っても、種類は多種多様だ。
有名なのが味噌ベースの札幌ラーメン。ラードでスープに蓋をする技法を採る店が多く、北海道ラーメンといえばまず味噌が思い浮かぶ。
しかし、醤油ベースの旭川ラーメンはそれとは全く異なる。濃厚で塩分強めのダブルスープが特徴で、札幌に住む人はむしろこちらを好む、らしい。
函館の塩ラーメンも有名だ。清湯のあっさりした味が特徴で、昆布を使ったスープが多い。
この他にも、鰹節の風味が強い釧路ラーメン、利尻昆布の旨味を前面に出した稚内ラーメンなど、広大な北海道に相応しく味もまた多種多様だ。
ファインモーションがこのうちのどれを望んでいるかで、連れていくべき店は大きく変わってしまう。
もう少し細かく訊きたいが、日本に来てまだ半年の彼女にそこまでの知識があるのかどうか。
事前に日本語を猛特訓したというだけあり言葉は驚くほど流暢だが、正直確信は持てない。
「……そもそも、なぜ北海道ラーメンなんだ?」
んー、と人差し指を口に当て、ファインモーションが考える素振りをした。
「日本に来て、デビューが札幌だったの。そこで浦安トレーナーに連れていってもらった、路地裏の店にあるラーメンが美味しくて!
世の中には、こんなに美味しいものがあるんだって知ったんだ。
それで、色々ラーメンを食べ歩くようになったの。最近は自分でも作ろうと思ってるけど、まだまだかな」
「路地裏、か……」
おそらくはラーメン横丁だろう。あそこは観光客向けの店が多く、味はピンキリだ。当たりの店の方が少ない。
王族である彼女の舌を満足させる店となると……
私はニィと笑った。東京にその流れを汲む店がある。恐らくは、あそこだ。
「分かった。君にピッタリの店が六本木にある」
「六本木?あ、明日近くまで行く用事があるよ!ミッドタウンで、◯◯国の大臣とお会いするの。夜は予定ないから、ついでに行ってみようかな。
天王寺トレーナー、案内してくださる?」
明日か、チートデイには丁度いいだろう。バクシンオーも連れて、行くとしようか。
「無論、構わないよ」
北海道ラーメンと一口に言っても、種類は多種多様だ。
有名なのが味噌ベースの札幌ラーメン。ラードでスープに蓋をする技法を採る店が多く、北海道ラーメンといえばまず味噌が思い浮かぶ。
しかし、醤油ベースの旭川ラーメンはそれとは全く異なる。濃厚で塩分強めのダブルスープが特徴で、札幌に住む人はむしろこちらを好む、らしい。
函館の塩ラーメンも有名だ。清湯のあっさりした味が特徴で、昆布を使ったスープが多い。
この他にも、鰹節の風味が強い釧路ラーメン、利尻昆布の旨味を前面に出した稚内ラーメンなど、広大な北海道に相応しく味もまた多種多様だ。
ファインモーションがこのうちのどれを望んでいるかで、連れていくべき店は大きく変わってしまう。
もう少し細かく訊きたいが、日本に来てまだ半年の彼女にそこまでの知識があるのかどうか。
事前に日本語を猛特訓したというだけあり言葉は驚くほど流暢だが、正直確信は持てない。
「……そもそも、なぜ北海道ラーメンなんだ?」
んー、と人差し指を口に当て、ファインモーションが考える素振りをした。
「日本に来て、デビューが札幌だったの。そこで浦安トレーナーに連れていってもらった、路地裏の店にあるラーメンが美味しくて!
世の中には、こんなに美味しいものがあるんだって知ったんだ。
それで、色々ラーメンを食べ歩くようになったの。最近は自分でも作ろうと思ってるけど、まだまだかな」
「路地裏、か……」
おそらくはラーメン横丁だろう。あそこは観光客向けの店が多く、味はピンキリだ。当たりの店の方が少ない。
王族である彼女の舌を満足させる店となると……
私はニィと笑った。東京にその流れを汲む店がある。恐らくは、あそこだ。
「分かった。君にピッタリの店が六本木にある」
「六本木?あ、明日近くまで行く用事があるよ!ミッドタウンで、◯◯国の大臣とお会いするの。夜は予定ないから、ついでに行ってみようかな。
天王寺トレーナー、案内してくださる?」
明日か、チートデイには丁度いいだろう。バクシンオーも連れて、行くとしようか。
「無論、構わないよ」
62:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 21:57:36.12 :0x9fhWilO
第2R 六本木「天鳳」
第2R 六本木「天鳳」
63:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 22:20:47.53 :0x9fhWilO
*
「ややっ!ここが六本木ですか!!」
バクシンオーがキョロキョロと辺りを見渡す。待ち合わせはミッドタウンの1階。時間より少し早めに着いてしまったようだ。
ファインモーションは、リッツ・カールトンにいるらしい。私にはあまり縁の無さそうなホテルではある。
エントランスから、2人の女性の姿が見えた。1人は正装のファインモーション。もう一人は背の高い、黒いスーツに身を包んでいる。……ウマ娘か?
「お待たせしました!」
「おおっ!ファインモーションさんっ!こんばんはっ!!」
スーツのウマ娘は、険しい目で私を見つめている。何か、気に障ることでもしただろうか?
「お疲れ様。彼女は?」
「あっ、彼女はSPのハリィ。外出する時は、いつも一緒なのよ」
「…………」
まだ私を睨んでいる。これはやりにくい。
「私はトレセン学園のトレーナー、天王寺定光です。よろしく」
握手しようと手を差し出したが、「フン」ととりつく島もない。
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませた。
「いい加減にしてよ、ハリィ。男の人が苦手なのは分かるけれど」
「……お言葉ですが殿下。男の勧める店、それもラーメン店などロクなものではございません。行って後悔してからでは、遅いかと」
「天王寺トレーナーはいい人よ?ボディビルの世界では、世界的にも有名な方なのに」
「そんなことなど、私は知りません。とにかく、この男が何か妙な真似をしたら、腕の1本や2本、へし折ってご覧にいれます」
はあ、とファインモーションが溜め息をつく。
「ごめんなさいね。彼女、男性が苦手なの。とても有能なSPだし、ウマ娘としても大きなレースを幾つも勝っていたのだけど……」
「過去の話です。何より、殿下の姉上には、一度も勝てず仕舞いだった」
「でも最後まで諦めず食らいついた。だからお姉さまはハリィが大のお気に入りなんだけど……。
あ、ごめんなさい!ラーメンだったね。ここから近いのかな?」
私は頷く。
「ここから3分も掛からないよ。じゃあ、行こうか」
ハリィの険しい視線を背中に受け、私は歩き出した。すぐに、店の目印になるドラム缶が見えてくる。
「……ドラム缶ラーメン?」
「実際にドラム缶では作ってないから、安心してくれ。では、入ろう」
*
「ややっ!ここが六本木ですか!!」
バクシンオーがキョロキョロと辺りを見渡す。待ち合わせはミッドタウンの1階。時間より少し早めに着いてしまったようだ。
ファインモーションは、リッツ・カールトンにいるらしい。私にはあまり縁の無さそうなホテルではある。
エントランスから、2人の女性の姿が見えた。1人は正装のファインモーション。もう一人は背の高い、黒いスーツに身を包んでいる。……ウマ娘か?
「お待たせしました!」
「おおっ!ファインモーションさんっ!こんばんはっ!!」
スーツのウマ娘は、険しい目で私を見つめている。何か、気に障ることでもしただろうか?
「お疲れ様。彼女は?」
「あっ、彼女はSPのハリィ。外出する時は、いつも一緒なのよ」
「…………」
まだ私を睨んでいる。これはやりにくい。
「私はトレセン学園のトレーナー、天王寺定光です。よろしく」
握手しようと手を差し出したが、「フン」ととりつく島もない。
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませた。
「いい加減にしてよ、ハリィ。男の人が苦手なのは分かるけれど」
「……お言葉ですが殿下。男の勧める店、それもラーメン店などロクなものではございません。行って後悔してからでは、遅いかと」
「天王寺トレーナーはいい人よ?ボディビルの世界では、世界的にも有名な方なのに」
「そんなことなど、私は知りません。とにかく、この男が何か妙な真似をしたら、腕の1本や2本、へし折ってご覧にいれます」
はあ、とファインモーションが溜め息をつく。
「ごめんなさいね。彼女、男性が苦手なの。とても有能なSPだし、ウマ娘としても大きなレースを幾つも勝っていたのだけど……」
「過去の話です。何より、殿下の姉上には、一度も勝てず仕舞いだった」
「でも最後まで諦めず食らいついた。だからお姉さまはハリィが大のお気に入りなんだけど……。
あ、ごめんなさい!ラーメンだったね。ここから近いのかな?」
私は頷く。
「ここから3分も掛からないよ。じゃあ、行こうか」
ハリィの険しい視線を背中に受け、私は歩き出した。すぐに、店の目印になるドラム缶が見えてくる。
「……ドラム缶ラーメン?」
「実際にドラム缶では作ってないから、安心してくれ。では、入ろう」
64:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/08(土) 22:22:09.12 :0x9fhWilO
少し休憩。
ハリィには一応元ネタがあります。
元ネタの馬はファインモーションより年下ですが。
ハリィには一応元ネタがあります。
元ネタの馬はファインモーションより年下ですが。
66:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:12:47.35 :/CyxYZTNO
店の前には数人ほどの列ができていた。振り向くとハリィが険しい顔をしている。
「あれで作っているのでなければ、何のためにあの缶はあるのだ」
「昔の名残だよ。遥か昔、数十年前にこの店のルーツができた時には、実際にドラム缶を寸胴代わりにしていたらしいな。
元々、この店は旭川にあった。そして初代の親父の息子たちが、札幌と六本木に店を出したってわけだ」
パン、とファインモーションが手を叩いた。
「だからお店の名前が同じなんだね!ドラム缶を見て、思い出したよ」
「そういうことだ。ただ、味は少し違うらしいが」
横のバクシンオーがソワソワと落ち着かない様子で店内を見ている。
「トレーナーさん!私、お腹が空きました!お勧めは何ですか?」
「えっと、醤油も味噌もあるねー。確か、札幌で食べた時は味噌だったかな」
そう言うファインモーションに、私は微笑みながら首を横に振る。
「六本木の天鳳では、ほとんどの客が『135』を注文するな」
「……135?」
「うむ、135というのは……っと、席が空いたようだ」
テーブル席に通されると、周囲の目線が一斉にこちらに向いた。見目麗しいウマ娘3人に、屈強なスキンヘッドの大男とくれば嫌でも目立つ。
そこにハリィが鋭い眼光で客を睨むと、視線が逸れて行くのが分かった。なるほど、令嬢の護衛には確かに向いた人物らしい。
向こうから東南アジア系と思われる店員がやってきた。
「ゴ注文は」
「135大盛り、それにライスを。君たちは?」
「トレーナーさんと同じのにします!」
「私もそうするよー」
ハリィは暫し黙った後、「殿下と同じもので」と不機嫌そうに言った。
「それで、135って何なの?」
「メニューにも書いてあるが、醤油ラーメンの『麺硬め』『油多め』『しょっぱめ』を指す。
これよりさらに味が濃く、油っぽく、しょっぱい『めんばり』もあるが、こちらの方が万人向けだ」
ハリィが私を不満そうに見ている。
「そんな健康に悪そうなものを、よく殿下に食わせようとしているな」
「これは『チートデイ』だ。健康に悪い、大いに結構。ただ旨ければいい。
ファインモーション君も、うちのバクシンオーも私も、日々激しいトレーニングを行っている。旨いものを好きなだけ食うことが、何よりのストレス解消になるのだよ。
そして、旨いものは健康には必ずしも良くはない」
私は静かにハリィに微笑んだ。
「そして、トレーニングを熱心に行っているのは、君もじゃないかね?その鍛え上げられた肉体を見れば分かる。
君にとっても、この店はチートデイにはもってこいだと思うが」
「……不味かったら承知せんぞ」
そう言う彼女の前に、丼が置かれた。
「135とライスデス」
店の前には数人ほどの列ができていた。振り向くとハリィが険しい顔をしている。
「あれで作っているのでなければ、何のためにあの缶はあるのだ」
「昔の名残だよ。遥か昔、数十年前にこの店のルーツができた時には、実際にドラム缶を寸胴代わりにしていたらしいな。
元々、この店は旭川にあった。そして初代の親父の息子たちが、札幌と六本木に店を出したってわけだ」
パン、とファインモーションが手を叩いた。
「だからお店の名前が同じなんだね!ドラム缶を見て、思い出したよ」
「そういうことだ。ただ、味は少し違うらしいが」
横のバクシンオーがソワソワと落ち着かない様子で店内を見ている。
「トレーナーさん!私、お腹が空きました!お勧めは何ですか?」
「えっと、醤油も味噌もあるねー。確か、札幌で食べた時は味噌だったかな」
そう言うファインモーションに、私は微笑みながら首を横に振る。
「六本木の天鳳では、ほとんどの客が『135』を注文するな」
「……135?」
「うむ、135というのは……っと、席が空いたようだ」
テーブル席に通されると、周囲の目線が一斉にこちらに向いた。見目麗しいウマ娘3人に、屈強なスキンヘッドの大男とくれば嫌でも目立つ。
そこにハリィが鋭い眼光で客を睨むと、視線が逸れて行くのが分かった。なるほど、令嬢の護衛には確かに向いた人物らしい。
向こうから東南アジア系と思われる店員がやってきた。
「ゴ注文は」
「135大盛り、それにライスを。君たちは?」
「トレーナーさんと同じのにします!」
「私もそうするよー」
ハリィは暫し黙った後、「殿下と同じもので」と不機嫌そうに言った。
「それで、135って何なの?」
「メニューにも書いてあるが、醤油ラーメンの『麺硬め』『油多め』『しょっぱめ』を指す。
これよりさらに味が濃く、油っぽく、しょっぱい『めんばり』もあるが、こちらの方が万人向けだ」
ハリィが私を不満そうに見ている。
「そんな健康に悪そうなものを、よく殿下に食わせようとしているな」
「これは『チートデイ』だ。健康に悪い、大いに結構。ただ旨ければいい。
ファインモーション君も、うちのバクシンオーも私も、日々激しいトレーニングを行っている。旨いものを好きなだけ食うことが、何よりのストレス解消になるのだよ。
そして、旨いものは健康には必ずしも良くはない」
私は静かにハリィに微笑んだ。
「そして、トレーニングを熱心に行っているのは、君もじゃないかね?その鍛え上げられた肉体を見れば分かる。
君にとっても、この店はチートデイにはもってこいだと思うが」
「……不味かったら承知せんぞ」
そう言う彼女の前に、丼が置かれた。
「135とライスデス」
67:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:34:11.43 :/CyxYZTNO
スープはやや少なく、麺が一部顔を覗かせている。そしてメンマとネギに、硬めのチャーシュー。
スープの色は茶色に濁っており、透明度はほとんどない。
「これ、味噌じゃないの?」
「れっきとした醤油ラーメンだ。さあ、頂こ「バックシーン!!!」」
着丼と共に、バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを食べ始めている。
「美味しいですトレーナーさん!!しょっぱくて、美味しくて、箸が止まりません!!」
「……改めて、頂こうか」
リフトアップされたのは、西山製麺の縮れ麺。これに油を纏った濃厚なスープがガッツリと絡んでいる。
それを勢いよく啜ると、動物系の旨味と塩分の暴力が、味蕾に突き刺さる!
……これだ。これを身体は待っていたのだ。
パシーンッッ!!!
ワイシャツからボタンが弾け飛んだ。そう、チートデイはこうでなくてはならぬ。
「美味しいっ!!しょっぱいんだけど、それが不快な塩気じゃなく……まろやかですらある。
スープが少ないのは、これだけで充分だからね!?量が多かったら、きっとしつこくなってしまう」
ファインモーションも熱心に丼にかじりついた。ハリィはというと、まだ訝しげに丼を見ている。
「どうした?食べないのか」
「……なぜライスも頼んだ」
「食えば分かる。スープを飲んだ後、ライスを食べてみてくれ。抵抗がないなら、スープをライスにかけるのもお勧めだ」
渋々ラーメンを啜ると、ハリィの目の色が変わった。
「…………!?」
そして、スープを蓮華で飲んだ後、ライスを口にした瞬間。終始不機嫌そうな仏頂面だった彼女の表情が変わった。
「……So, delicious!!!何だこれはっ!?ライスが、甘いぞ!!?」
私はニヤリと笑う。
「135にはライスが必要なのだよ。過剰な塩分は、ライスの甘みを際立たせる。
そしてそれがさらに箸を進ませる。よく考えられた一杯だ」
「……う、うむ。確かに、旨い……」
ハリィもラーメンに夢中になったようだ。135の中毒性に勝るラーメンは、都内でもそうはあるまい。
……同じ北海道ラーメンを祖とする、あの店以外は……
スープはやや少なく、麺が一部顔を覗かせている。そしてメンマとネギに、硬めのチャーシュー。
スープの色は茶色に濁っており、透明度はほとんどない。
「これ、味噌じゃないの?」
「れっきとした醤油ラーメンだ。さあ、頂こ「バックシーン!!!」」
着丼と共に、バクシンオーが凄まじい勢いでラーメンを食べ始めている。
「美味しいですトレーナーさん!!しょっぱくて、美味しくて、箸が止まりません!!」
「……改めて、頂こうか」
リフトアップされたのは、西山製麺の縮れ麺。これに油を纏った濃厚なスープがガッツリと絡んでいる。
それを勢いよく啜ると、動物系の旨味と塩分の暴力が、味蕾に突き刺さる!
……これだ。これを身体は待っていたのだ。
パシーンッッ!!!
ワイシャツからボタンが弾け飛んだ。そう、チートデイはこうでなくてはならぬ。
「美味しいっ!!しょっぱいんだけど、それが不快な塩気じゃなく……まろやかですらある。
スープが少ないのは、これだけで充分だからね!?量が多かったら、きっとしつこくなってしまう」
ファインモーションも熱心に丼にかじりついた。ハリィはというと、まだ訝しげに丼を見ている。
「どうした?食べないのか」
「……なぜライスも頼んだ」
「食えば分かる。スープを飲んだ後、ライスを食べてみてくれ。抵抗がないなら、スープをライスにかけるのもお勧めだ」
渋々ラーメンを啜ると、ハリィの目の色が変わった。
「…………!?」
そして、スープを蓮華で飲んだ後、ライスを口にした瞬間。終始不機嫌そうな仏頂面だった彼女の表情が変わった。
「……So, delicious!!!何だこれはっ!?ライスが、甘いぞ!!?」
私はニヤリと笑う。
「135にはライスが必要なのだよ。過剰な塩分は、ライスの甘みを際立たせる。
そしてそれがさらに箸を進ませる。よく考えられた一杯だ」
「……う、うむ。確かに、旨い……」
ハリィもラーメンに夢中になったようだ。135の中毒性に勝るラーメンは、都内でもそうはあるまい。
……同じ北海道ラーメンを祖とする、あの店以外は……
68:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:42:12.74 :/CyxYZTNO
*
「大・満・足、ですっ!!」
店から出ると、ハッハッハと腰に手を当ててバクシンオーが笑う。ファインモーションも上機嫌な様子で、ハンカチで口を拭った。
「本当に美味しかったよー。札幌のお店もいいけど、ここも美味しかったね。
六本木は大使館とかあるからよく来るけど、行きつけになるかも」
ハリィが私に頭を下げた。
「ミスター天王寺……無礼をお許し下さい。確かに、美味でした。殿下を充分に満足せしめるとは……」
「いや、私は単に旨いラーメンを紹介したまでだよ。そんな大層なことはしていない」
「だが、この埋め合わせは何かしらの形でしなければなりません。何をすべきでしょうか……」
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませる。
「もう、ハリィは大袈裟なんだよー。天王寺トレーナーも気にしてないみたいだし、いいじゃない」
「ですがっ!!私の気が収まりません。ここは一つ……」
※コンマ下が60以上で追加の店舗紹介
*
「大・満・足、ですっ!!」
店から出ると、ハッハッハと腰に手を当ててバクシンオーが笑う。ファインモーションも上機嫌な様子で、ハンカチで口を拭った。
「本当に美味しかったよー。札幌のお店もいいけど、ここも美味しかったね。
六本木は大使館とかあるからよく来るけど、行きつけになるかも」
ハリィが私に頭を下げた。
「ミスター天王寺……無礼をお許し下さい。確かに、美味でした。殿下を充分に満足せしめるとは……」
「いや、私は単に旨いラーメンを紹介したまでだよ。そんな大層なことはしていない」
「だが、この埋め合わせは何かしらの形でしなければなりません。何をすべきでしょうか……」
ファインモーションが「むう」と頬を膨らませる。
「もう、ハリィは大袈裟なんだよー。天王寺トレーナーも気にしてないみたいだし、いいじゃない」
「ですがっ!!私の気が収まりません。ここは一つ……」
※コンマ下が60以上で追加の店舗紹介
69:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:42:29.52 :zAsIrhFv0
あ
70:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:47:37.06 :/CyxYZTNO
ファインモーションが溜め息をつく。
「もう、ハリィったら……じゃあ、今度機会があったら、私のお勧めのお店に天王寺トレーナーとバクちゃんを連れていってあげるね。ハリィはそれでいい?」
「はっ、分かりました」
ハリィが恐縮したように頭を下げる。
さて、どんな店を彼女は紹介してくれるのだろう。その時が今から楽しみになってきた。
第二話 完
ファインモーションが溜め息をつく。
「もう、ハリィったら……じゃあ、今度機会があったら、私のお勧めのお店に天王寺トレーナーとバクちゃんを連れていってあげるね。ハリィはそれでいい?」
「はっ、分かりました」
ハリィが恐縮したように頭を下げる。
さて、どんな店を彼女は紹介してくれるのだろう。その時が今から楽しみになってきた。
第二話 完
71:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/09(日) 22:50:49.67 :/CyxYZTNO
以上です。新年早々天鳳に行こうとしたら臨時休業でした……。
追加の店舗紹介としたのは、その際に代わりに行ったお店です。こちらもかなりのインパクトがあるお店だったので、いつか登場させたいですね。
追加の店舗紹介としたのは、その際に代わりに行ったお店です。こちらもかなりのインパクトがあるお店だったので、いつか登場させたいですね。









































コメント 2
コメント一覧 (2)
憎い
森きのこ
が
しました
艦これのゴーヤでめっちゃ書いてただろまだかきたりないのか
森きのこ
が
しました