1:JV ◆kra4.jDzds:2017/06/02(金) 22:34:16.96 :0eXE5gcO0
「アタシは、どうしてアタシなんだろう」
シェイクスピアの本にしおりを挟んだ美嘉は、足を組んで物思いに耽る。
突然何を言い出すかと思えば。
「プロデューサーはどう思う?」
独り言から相談へ。なんと難しい質問だ。
「と言われましても……それ、文香から貸りたのか」
「そう」
「珍しいな。普段は雑誌や漫画なのに」
「カリスマギャルにもバイブルがあるってなんか憧れない?ギャップってヤツ」
「熱心だな」
「それほどでも~って、話反らそうとしてない?」
「いや……」
バレてる。ギャルには何でもお見通しか。
「アタシは、どうしてアタシなんだろう」
シェイクスピアの本にしおりを挟んだ美嘉は、足を組んで物思いに耽る。
突然何を言い出すかと思えば。
「プロデューサーはどう思う?」
独り言から相談へ。なんと難しい質問だ。
「と言われましても……それ、文香から貸りたのか」
「そう」
「珍しいな。普段は雑誌や漫画なのに」
「カリスマギャルにもバイブルがあるってなんか憧れない?ギャップってヤツ」
「熱心だな」
「それほどでも~って、話反らそうとしてない?」
「いや……」
バレてる。ギャルには何でもお見通しか。
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2:JV ◆kra4.jDzds:2017/06/02(金) 22:36:09.24 :0eXE5gcO0
「哲学は専攻してなかったからなぁ。うーん、人は誰しも生まれる場所を選べないだろう?まぁ人に限らず、動物や虫だって」
「虫?……アタシが言ってるのは、何でアタシは自分のことを『アタシ』って呼ぶようになったのかって」
素でこけそうになった。自分が芸人だったら雛壇から勢いよく降りていただろう。
変なこと言った?と美嘉。
シェイクスピアの、ジュリエットの問いとは随分解釈が違った。
ちょっと考えてみる。
「そういうことか……それは美嘉の育った環境によるから、どうとも言えん」
「一人称って環境なの?」
「周りに自然と合わせるもんさ。現に莉嘉がそうだろう」
「……アタシが『アタシ』だから?」
足を組み替えて、もう一度本を手に取る美嘉。古い本だが、逆にそのシミが古書として良い味を出している。紙を捲る音にも品がある。
文香の手入れがなければ、ただの古ぼけた本だったろう。
「私、ボク、オレ……もしかしたら出身地で違うのかも★」
笑顔と冗談を同時にこぼすカリスマJKにつられ、
「方言と同じだな」
こっちも笑顔になる。美嘉のこういう部分、見習いたい。
「哲学は専攻してなかったからなぁ。うーん、人は誰しも生まれる場所を選べないだろう?まぁ人に限らず、動物や虫だって」
「虫?……アタシが言ってるのは、何でアタシは自分のことを『アタシ』って呼ぶようになったのかって」
素でこけそうになった。自分が芸人だったら雛壇から勢いよく降りていただろう。
変なこと言った?と美嘉。
シェイクスピアの、ジュリエットの問いとは随分解釈が違った。
ちょっと考えてみる。
「そういうことか……それは美嘉の育った環境によるから、どうとも言えん」
「一人称って環境なの?」
「周りに自然と合わせるもんさ。現に莉嘉がそうだろう」
「……アタシが『アタシ』だから?」
足を組み替えて、もう一度本を手に取る美嘉。古い本だが、逆にそのシミが古書として良い味を出している。紙を捲る音にも品がある。
文香の手入れがなければ、ただの古ぼけた本だったろう。
「私、ボク、オレ……もしかしたら出身地で違うのかも★」
笑顔と冗談を同時にこぼすカリスマJKにつられ、
「方言と同じだな」
こっちも笑顔になる。美嘉のこういう部分、見習いたい。
3:JV ◆kra4.jDzds:2017/06/02(金) 22:37:07.84 :0eXE5gcO0
「一人称なんて統一しちゃえばいいのに。仕事場ではこれ、友達間ではこれとか、使い分けなくて済むし」
同感だ。
「確かに、口を滑らすこともないしな。でも一人称が全部同じだったら大変なこともある」
「たとえば?」
右手のネイルを気にしながら美嘉は聞く。
「小説が全部『私』になったら区別が大変だぞ」
「そっか。誰かわかんなくなっちゃうね」
「主人公が同性二人の小説なんて最悪だ。どっちが何を話してるかすぐ理解できん」
「考えながら読むって大変だよね」
「それを鍛えるのが本だから余計にな」
そういった小説はハッキリ言って苦手だ。勘違いが多い。
「ねぇ、拓海ちゃんはどう思う?」
美嘉はソファーでくつろいでる『アタシ』に聞いた。
盗み聞きしてるのがバレたか。
「アタシも、区別が付かない小説は嫌いだ」
「一人称なんて統一しちゃえばいいのに。仕事場ではこれ、友達間ではこれとか、使い分けなくて済むし」
同感だ。
「確かに、口を滑らすこともないしな。でも一人称が全部同じだったら大変なこともある」
「たとえば?」
右手のネイルを気にしながら美嘉は聞く。
「小説が全部『私』になったら区別が大変だぞ」
「そっか。誰かわかんなくなっちゃうね」
「主人公が同性二人の小説なんて最悪だ。どっちが何を話してるかすぐ理解できん」
「考えながら読むって大変だよね」
「それを鍛えるのが本だから余計にな」
そういった小説はハッキリ言って苦手だ。勘違いが多い。
「ねぇ、拓海ちゃんはどう思う?」
美嘉はソファーでくつろいでる『アタシ』に聞いた。
盗み聞きしてるのがバレたか。
「アタシも、区別が付かない小説は嫌いだ」
4:JV ◆kra4.jDzds:2017/06/02(金) 22:37:47.09 :0eXE5gcO0
おしまい
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