1: ◆vMSeYbSya.:2016/09/16(金) 21:38:11.99 :FtGzEhXb0
タイトル通りです
登場人物は提督と初月のみ
3回安価をこなしたらなんやかやで嵐は過ぎ去り夜が明けて終わります
窓の外は激しい雷雨。
初月「どうもこれは、ダメそうだな」
提督「そうだな、ダメだ」
秘書艦の初月と俺は、二人で霧深い山を登り、一軒の山荘に来ていた。で、1時間ほどで山は恐るべき嵐に巻き込まれてしまったわけだ。
まあ、さすがにこの建物が崩れたりはしないだろうが、俺たちが今から山を降りることも、この後に到着予定だった艦娘たちが、嵐が止む前にここに来ることもできないだろう。
提督「どうしようか」
初月「どうもこうもない。嵐が終わるまではここで過ごせばいい」
提督「そうだよな」
俺は少しだけ息をつく。
ここで過ごすことに問題があるわけじゃない。電気もあれば水もあり、食べるものもあるし料理だってできる。
問題は、ここには俺と初月しかいないことだ。
なんか緊張する。
初月「提督よ」
提督「な、なんだ」
初月「こうして座っていても仕方が無い。何かをしよう」
提督「何かってなんだ」
初月「そうだな。例えば……」
>>2
タイトル通りです
登場人物は提督と初月のみ
3回安価をこなしたらなんやかやで嵐は過ぎ去り夜が明けて終わります
窓の外は激しい雷雨。
初月「どうもこれは、ダメそうだな」
提督「そうだな、ダメだ」
秘書艦の初月と俺は、二人で霧深い山を登り、一軒の山荘に来ていた。で、1時間ほどで山は恐るべき嵐に巻き込まれてしまったわけだ。
まあ、さすがにこの建物が崩れたりはしないだろうが、俺たちが今から山を降りることも、この後に到着予定だった艦娘たちが、嵐が止む前にここに来ることもできないだろう。
提督「どうしようか」
初月「どうもこうもない。嵐が終わるまではここで過ごせばいい」
提督「そうだよな」
俺は少しだけ息をつく。
ここで過ごすことに問題があるわけじゃない。電気もあれば水もあり、食べるものもあるし料理だってできる。
問題は、ここには俺と初月しかいないことだ。
なんか緊張する。
初月「提督よ」
提督「な、なんだ」
初月「こうして座っていても仕方が無い。何かをしよう」
提督「何かってなんだ」
初月「そうだな。例えば……」
>>2
2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/16(金) 21:39:00.65 :yyhjeCZQ0
怪談
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3: ◆vMSeYbSya.:2016/09/16(金) 22:51:27.35 :FtGzEhXb0
初月「怪談というのはどうだ」
提督「怪談? 意外だな、初月がそういう話に興味があるなんて」
初月「そうかな? そもそも艦娘なんて幽霊みたいなものだからな。身近な話さ」
提督「そんなことを言われた時点で、あんまり怖くなくなってきたぞ」
初月「余裕なのも今のうちだぞ。僕には取っておきの話がある」
初月は妙に自信ありげだ。そこまで言うなら、つきあってみようか。
雑貨にあった蝋燭を一本だけ灯し、電灯を消した。本格的だ。
闇の中に、初月が炎に照らされて浮かび上がる。その端正な顔に差す光と影が不気味だ。
外の嵐の音だけが響くが、中は物音一つない。雰囲気は最高じゃないか?
初月「これは、他の鎮守府と合同で作戦を行った時に、よその艦娘に聞いた話だ」
提督「へえ、艦娘同士で怪談を語り合っているとはね」
そして、初月の話が始まる。
初月「これは、話した艦娘が本当に体験した話だそうだ……」
~数分後~
初月「……というわけだ」
提督「…………」
初月「どうした、提督。つまらない話だったかな」
提督「…………え、あ、いや別に」
俺はなんでもないという風に、頬をかいた。
初月はなぜかこちらをじっとみつめている。
初月「……」
提督「……な、なんだよ」
初月「わっ!!」
提督「うおぁわぁ!!」
……あっ。
初月「…………く」
提督「……おっ、おまっ!」
初月「くっ……、ふふっ」
珍しく初月が笑う。こんな形では見たくなかった笑顔だった。
提督「ちょっとほんと……その……やめて」
初月「意外だな、提督がそんなに怖がりだったなんて」
提督「嵐のせいだ、嵐の」
そういうことにしておきたい。
いや、しかし初月の話はかなり怖かったと思う。なんだか鎮守府に帰るのが今から怖くなってきた。
初月「実に満足した」
初月はとてもすっきりとした表情で立ち上がり、明かりを点けた。俺はぐったりしたまま、蝋燭を消す。
提督「なんか悔しいが、もう怪談は当分いいや……」
初月「そうか? なんなら、まだ話は残っているんだが」
提督「いい! もっと楽しいことをしたい。俺が!」
初月「ふうん。たとえば?」
提督「そりゃえーっと……」
>>4
初月「怪談というのはどうだ」
提督「怪談? 意外だな、初月がそういう話に興味があるなんて」
初月「そうかな? そもそも艦娘なんて幽霊みたいなものだからな。身近な話さ」
提督「そんなことを言われた時点で、あんまり怖くなくなってきたぞ」
初月「余裕なのも今のうちだぞ。僕には取っておきの話がある」
初月は妙に自信ありげだ。そこまで言うなら、つきあってみようか。
雑貨にあった蝋燭を一本だけ灯し、電灯を消した。本格的だ。
闇の中に、初月が炎に照らされて浮かび上がる。その端正な顔に差す光と影が不気味だ。
外の嵐の音だけが響くが、中は物音一つない。雰囲気は最高じゃないか?
初月「これは、他の鎮守府と合同で作戦を行った時に、よその艦娘に聞いた話だ」
提督「へえ、艦娘同士で怪談を語り合っているとはね」
そして、初月の話が始まる。
初月「これは、話した艦娘が本当に体験した話だそうだ……」
~数分後~
初月「……というわけだ」
提督「…………」
初月「どうした、提督。つまらない話だったかな」
提督「…………え、あ、いや別に」
俺はなんでもないという風に、頬をかいた。
初月はなぜかこちらをじっとみつめている。
初月「……」
提督「……な、なんだよ」
初月「わっ!!」
提督「うおぁわぁ!!」
……あっ。
初月「…………く」
提督「……おっ、おまっ!」
初月「くっ……、ふふっ」
珍しく初月が笑う。こんな形では見たくなかった笑顔だった。
提督「ちょっとほんと……その……やめて」
初月「意外だな、提督がそんなに怖がりだったなんて」
提督「嵐のせいだ、嵐の」
そういうことにしておきたい。
いや、しかし初月の話はかなり怖かったと思う。なんだか鎮守府に帰るのが今から怖くなってきた。
初月「実に満足した」
初月はとてもすっきりとした表情で立ち上がり、明かりを点けた。俺はぐったりしたまま、蝋燭を消す。
提督「なんか悔しいが、もう怪談は当分いいや……」
初月「そうか? なんなら、まだ話は残っているんだが」
提督「いい! もっと楽しいことをしたい。俺が!」
初月「ふうん。たとえば?」
提督「そりゃえーっと……」
>>4
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/16(金) 22:53:10.13 :fZ4DiCVzo
インディアンポーカー
6: ◆vMSeYbSya.:2016/09/16(金) 23:33:55.89 :FtGzEhXb0
一レスで勝負が決まってしまうと面白くないので、3回の制限に加算しない、追加安価をしましょう
そういえば、俺はトランプを持ってきていたのだった。早速荷物から取り出す。
初月「お、西洋かるたか」
提督「まあ、そうとも言うな」
俺と初月は、テーブルに向かい合って座った。何のゲームをするにしても、二人ならこの形だろう。
提督「さて、何をやろうかな」
初月「道化師を持っていたほうが負けじゃないのか」
提督「二人でやるゲームじゃないな、それは……」
初月「なに、他にも遊び方があったとは……」
提督「えー。怪談の前にトランプを覚えたほうがいいんじゃないか。まあ、説明してもいいんだけど……。最初はシンプルなやつがいいか」
ふむ、ババ抜きが得意というのは、つまりポーカーフェイスに自信があるんじゃないか?
ではポーカー、だと複雑だよな。ならインディアンポーカーはどうだろうか。
初月「なんだそれは? 大陸の現住民族を殴る遊びか。あまり関心しないな」
提督「そんな直接的な名前の遊びではない。まあ、なんでインディアンかは俺も知らないよ。ルールを簡単に説明すると……」
1 プレイヤーが一枚ずつ、自分に見えないようにカードを取る。
2 いっせーの、せ、でカードを自分に見えないように相手に見せる。
3 相手のカードは見えて、自分のカードは見えない状態になる。ここで、勝負をするかどうかを決める。
4 勝負をする場合は互いの数を比べあって、強い数を持っていたほうが勝ち。同じ数だったのなら引き分け。
強さは2<3<4……12<13<A<ジョーカー
今回はハート、ダイヤ、スペード、クラブのスートは関係ないものとする。
提督「……という感じだ。何かわからないことはあるかな」
初月「なぜ1が13よりも強いんだ? さらに道化師が一番上というのは」
提督「判官びいきだよ。1が一番低くて、ジョーカーは1枚しかないからかわいそうだろ」
初月「なるほど」
提督「(信じた……)さて、まずは一度やってみるか」
初月「よし、負けないぞ」
提督「じゃ、札を一枚ずつ取って」
初月「見えないように、だったな」
俺と初月が、山札から一枚ずつ取る。
提督「よし、行くぞ」
初月「いっせーの……」
せ! で、一斉に札を額に当てた。初月の札は……?
コンマ
左から数えて、コンマの一桁番目のIDの文字で札の内容を決めます
数字だったらそのまま(0は10)
アルファベットだったらABが1、CDが2、……YZが13、という形で
IDは8文字と末尾なので、9か0だったら十桁の数字を参照します
コンマの両方が9か0ならジョーカーです
一応スートも決めます
01~25 ハート
26~50 ダイヤ
51~75 クラブ
75~98 スペード(微妙に確率が低いですがまあ関係ないので……)
追加安価
>>6
一レスで勝負が決まってしまうと面白くないので、3回の制限に加算しない、追加安価をしましょう
そういえば、俺はトランプを持ってきていたのだった。早速荷物から取り出す。
初月「お、西洋かるたか」
提督「まあ、そうとも言うな」
俺と初月は、テーブルに向かい合って座った。何のゲームをするにしても、二人ならこの形だろう。
提督「さて、何をやろうかな」
初月「道化師を持っていたほうが負けじゃないのか」
提督「二人でやるゲームじゃないな、それは……」
初月「なに、他にも遊び方があったとは……」
提督「えー。怪談の前にトランプを覚えたほうがいいんじゃないか。まあ、説明してもいいんだけど……。最初はシンプルなやつがいいか」
ふむ、ババ抜きが得意というのは、つまりポーカーフェイスに自信があるんじゃないか?
ではポーカー、だと複雑だよな。ならインディアンポーカーはどうだろうか。
初月「なんだそれは? 大陸の現住民族を殴る遊びか。あまり関心しないな」
提督「そんな直接的な名前の遊びではない。まあ、なんでインディアンかは俺も知らないよ。ルールを簡単に説明すると……」
1 プレイヤーが一枚ずつ、自分に見えないようにカードを取る。
2 いっせーの、せ、でカードを自分に見えないように相手に見せる。
3 相手のカードは見えて、自分のカードは見えない状態になる。ここで、勝負をするかどうかを決める。
4 勝負をする場合は互いの数を比べあって、強い数を持っていたほうが勝ち。同じ数だったのなら引き分け。
強さは2<3<4……12<13<A<ジョーカー
今回はハート、ダイヤ、スペード、クラブのスートは関係ないものとする。
提督「……という感じだ。何かわからないことはあるかな」
初月「なぜ1が13よりも強いんだ? さらに道化師が一番上というのは」
提督「判官びいきだよ。1が一番低くて、ジョーカーは1枚しかないからかわいそうだろ」
初月「なるほど」
提督「(信じた……)さて、まずは一度やってみるか」
初月「よし、負けないぞ」
提督「じゃ、札を一枚ずつ取って」
初月「見えないように、だったな」
俺と初月が、山札から一枚ずつ取る。
提督「よし、行くぞ」
初月「いっせーの……」
せ! で、一斉に札を額に当てた。初月の札は……?
コンマ
左から数えて、コンマの一桁番目のIDの文字で札の内容を決めます
数字だったらそのまま(0は10)
アルファベットだったらABが1、CDが2、……YZが13、という形で
IDは8文字と末尾なので、9か0だったら十桁の数字を参照します
コンマの両方が9か0ならジョーカーです
一応スートも決めます
01~25 ハート
26~50 ダイヤ
51~75 クラブ
75~98 スペード(微妙に確率が低いですがまあ関係ないので……)
追加安価
>>6
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/16(金) 23:36:07.07 :yyhjeCZQ0
よ
10: ◆vMSeYbSya.:2016/09/16(金) 23:47:32.64 :FtGzEhXb0
初月のカードは……ハートの、キング。
キングか……!
初月「どうした、提督」
提督「い、いや、なんでもない」
大分勝ち目が薄い!
俺のカードは一体なんだ。初月の様子をじっと見てみる。
初月「なんだ、僕の顔なんか見て。大切なのはこのカードじゃないのか?」
提督「ぐ……」
初月がひらひらと、額のカードを振ってみせる。俺の動揺はすでにバレているな。
初月「降りる、というのならそれでも構わないよ」
余裕だな。いや、余裕と見せかけて俺を降りさせようとしているのか?
……そんな高度な駆け引きをする必要はあまりない気もする。
まあ、まずはルールを把握するための一回目だ。とりあえず勝負をしてみようか。
提督「いや、勝負だ」
初月「ほう」
そんなカードでか? といわんばかりの表情。いや、俺の錯覚か。どっちだ。
……勝負すると決めてから考えるのも空しい。ここは行くだけ。
提督「じゃ、タイミングを合わせてカードを出すぞ」
初月「ああ、いいとも」
いっせーの、せ!
俺の、カードは……!?
追加安価
>>6と同じ形で決めます
>>10
初月のカードは……ハートの、キング。
キングか……!
初月「どうした、提督」
提督「い、いや、なんでもない」
大分勝ち目が薄い!
俺のカードは一体なんだ。初月の様子をじっと見てみる。
初月「なんだ、僕の顔なんか見て。大切なのはこのカードじゃないのか?」
提督「ぐ……」
初月がひらひらと、額のカードを振ってみせる。俺の動揺はすでにバレているな。
初月「降りる、というのならそれでも構わないよ」
余裕だな。いや、余裕と見せかけて俺を降りさせようとしているのか?
……そんな高度な駆け引きをする必要はあまりない気もする。
まあ、まずはルールを把握するための一回目だ。とりあえず勝負をしてみようか。
提督「いや、勝負だ」
初月「ほう」
そんなカードでか? といわんばかりの表情。いや、俺の錯覚か。どっちだ。
……勝負すると決めてから考えるのも空しい。ここは行くだけ。
提督「じゃ、タイミングを合わせてカードを出すぞ」
初月「ああ、いいとも」
いっせーの、せ!
俺の、カードは……!?
追加安価
>>6と同じ形で決めます
>>10
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/16(金) 23:52:31.18 :M4zgjZwvo
まかせろ
13: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 00:36:15.38 :5X/UpU6R0
18のM4zgjZwvo
vなので11、18なのでハートです
俺のカードは……! ハートの、ジャック!
初月「……なに、勝ったのは僕か?」
初月は驚いて自分のカードを見ている。
あんなに余裕に見えたのに、実は負けを覚悟していたようだった。確かにジャックは強い。
提督「やっぱり負けたか」
初月「ふむ、11以上の数を相手に勝負しようとするとは思わなかったよ」
提督「いきなり降りても興ざめだと思ってね」
俺は、カードを置いた。
負けたなー。
初月「ふうん、なかなか面白いじゃないか」
提督「だろ? ババ抜きとはまた違う心理戦だ」
しかしまあ、これはルールが単純すぎて何かを賭けていないとあまり面白くないかもしれないな。何度もやるゲームじゃない。
賭ける、か。
初月「提督、次は何か勝者に報奨を用意してみてはどうだろう」
提督「お? 初月から言い出すとは思わなかった」
気がつけばずいぶんと身を乗り出している。楽しそうで何よりだ。
さて、何を賭ける……いや、報奨とするかだな。
提督「何か希望はあるか?」
初月「そうだな……。勝ったほうが、負けたほうの希望を叶える、というのは?」
提督「なるほど、定番だな。いいぜ」
カードをシャッフルしなおして、俺は次の勝負に備えた。
18のM4zgjZwvo
vなので11、18なのでハートです
俺のカードは……! ハートの、ジャック!
初月「……なに、勝ったのは僕か?」
初月は驚いて自分のカードを見ている。
あんなに余裕に見えたのに、実は負けを覚悟していたようだった。確かにジャックは強い。
提督「やっぱり負けたか」
初月「ふむ、11以上の数を相手に勝負しようとするとは思わなかったよ」
提督「いきなり降りても興ざめだと思ってね」
俺は、カードを置いた。
負けたなー。
初月「ふうん、なかなか面白いじゃないか」
提督「だろ? ババ抜きとはまた違う心理戦だ」
しかしまあ、これはルールが単純すぎて何かを賭けていないとあまり面白くないかもしれないな。何度もやるゲームじゃない。
賭ける、か。
初月「提督、次は何か勝者に報奨を用意してみてはどうだろう」
提督「お? 初月から言い出すとは思わなかった」
気がつけばずいぶんと身を乗り出している。楽しそうで何よりだ。
さて、何を賭ける……いや、報奨とするかだな。
提督「何か希望はあるか?」
初月「そうだな……。勝ったほうが、負けたほうの希望を叶える、というのは?」
提督「なるほど、定番だな。いいぜ」
カードをシャッフルしなおして、俺は次の勝負に備えた。
14: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 00:39:36.46 :5X/UpU6R0
~~~~~
提督が西洋かるたを混ぜ始めた。ずいぶんとなれた手つきだった。
この道具にこんな遊び方があったなんて、知らなかった。提督の口ぶりからすると、まだまだたくさんの遊び方があるのだろう。
自分もまだまだ生まれたばかり……いや、生まれなおしたばかりなのだと実感した。
提督「よし。カードを取ってくれ」
初月「ああ」
僕は手を伸ばして、カードを取る。提督も同じように取った。
そういえば、報奨があるのだから灰色の決着にも何か対策が必要になる。
初月「そうだ。引き分けか、相手が降りた場合はどうすればいい」
僕の言葉に提督は少し考えて、応えた。
提督「そうだなあ……。そもそも一回勝負じゃあっさりしすぎてるから、10点先取にするかな?
初月「ふむ」
提督「お互いが降りた場合は互いに1点ずつ。
片方が降りたら、降りなかったほうだけに2点。
普通に勝負したら、勝った方だけに4点。
勝負して引き分けならお互いに2点」
すらすらと解決法が出てくる。さすがは提督だ。
僕にとって、提督はもっとも身近な大人と言える。なにせ、艦娘は身体の大きさに関係なく、誰もが生まれなおしたばかりなのだ。
しっかりしていると見えた人が、意外なくらい常識的(もちろん僕にとっての、だけど)な知識が抜け落ちていたりもする。
……でもまさか、提督が怪談に弱いとは思わなかった。そういうところも好ましいと思えるのが不思議だ。
僕は、提督に頷いてみせた。
初月「わかった。それでいこう」
提督「よし。行くぞ!」
提督と僕が、お互いに札を取る。
僕は勝ちたい。……僕だけではなく、提督も勝ちたい、と思っているのがわかる。それが嬉しい。
……しばらく後……
提督「まさか、ここまでもつれるとはな……」
初月「次が最後の勝負か」
お互いに9対9。ずいぶんと長い時間、戦っていた気がする。こんなに提督の表情を見たのは初めてだ。
互いに疲労の色が濃い。そもそも、この勝負の前に、山奥まで歩いてきているのだから当然といえば当然か。
でも、楽しかった。
提督「ここまでやって、互いに降りて引き分けもないだろ。カードを引いたら相手に見せる手順は飛ばして、せーので表にする、でいこう」
初月「よし……。まずは僕から引かせてもらおう」
一枚、札を引いて、そのまま置く。泣くか笑うか、全てはこの札次第だ。
提督も手を伸ばして、札を置いた。
互いに視線を重ねる。鼓動が知らずと早くなった。外の嵐の音が聞こえなくなる、緊張の静寂。
提督・初月「せー……の!」
>>6のルールでカードの内容を決めます
初月の札
>>15
提督のカード
>>16
~~~~~
提督が西洋かるたを混ぜ始めた。ずいぶんとなれた手つきだった。
この道具にこんな遊び方があったなんて、知らなかった。提督の口ぶりからすると、まだまだたくさんの遊び方があるのだろう。
自分もまだまだ生まれたばかり……いや、生まれなおしたばかりなのだと実感した。
提督「よし。カードを取ってくれ」
初月「ああ」
僕は手を伸ばして、カードを取る。提督も同じように取った。
そういえば、報奨があるのだから灰色の決着にも何か対策が必要になる。
初月「そうだ。引き分けか、相手が降りた場合はどうすればいい」
僕の言葉に提督は少し考えて、応えた。
提督「そうだなあ……。そもそも一回勝負じゃあっさりしすぎてるから、10点先取にするかな?
初月「ふむ」
提督「お互いが降りた場合は互いに1点ずつ。
片方が降りたら、降りなかったほうだけに2点。
普通に勝負したら、勝った方だけに4点。
勝負して引き分けならお互いに2点」
すらすらと解決法が出てくる。さすがは提督だ。
僕にとって、提督はもっとも身近な大人と言える。なにせ、艦娘は身体の大きさに関係なく、誰もが生まれなおしたばかりなのだ。
しっかりしていると見えた人が、意外なくらい常識的(もちろん僕にとっての、だけど)な知識が抜け落ちていたりもする。
……でもまさか、提督が怪談に弱いとは思わなかった。そういうところも好ましいと思えるのが不思議だ。
僕は、提督に頷いてみせた。
初月「わかった。それでいこう」
提督「よし。行くぞ!」
提督と僕が、お互いに札を取る。
僕は勝ちたい。……僕だけではなく、提督も勝ちたい、と思っているのがわかる。それが嬉しい。
……しばらく後……
提督「まさか、ここまでもつれるとはな……」
初月「次が最後の勝負か」
お互いに9対9。ずいぶんと長い時間、戦っていた気がする。こんなに提督の表情を見たのは初めてだ。
互いに疲労の色が濃い。そもそも、この勝負の前に、山奥まで歩いてきているのだから当然といえば当然か。
でも、楽しかった。
提督「ここまでやって、互いに降りて引き分けもないだろ。カードを引いたら相手に見せる手順は飛ばして、せーので表にする、でいこう」
初月「よし……。まずは僕から引かせてもらおう」
一枚、札を引いて、そのまま置く。泣くか笑うか、全てはこの札次第だ。
提督も手を伸ばして、札を置いた。
互いに視線を重ねる。鼓動が知らずと早くなった。外の嵐の音が聞こえなくなる、緊張の静寂。
提督・初月「せー……の!」
>>6のルールでカードの内容を決めます
初月の札
>>15
提督のカード
>>16
15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/17(土) 00:41:31.64 :PM3ed+hto
あ
16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/17(土) 00:41:35.41 :dUDdDnCE0
よ
17: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 01:20:29.04 :5X/UpU6R0
64のPM3ed+hto
クラブの3
41のdUDdDnCE0
ダイヤの2
初月「……!」
僕の札は、クラブの3。よりによって、ここでこの数字が……!
提督「……」
と思ったら提督はダイヤの2だった。
提督が、顔をテーブルに突っ伏す。がつん、と割と痛い音がする。
提督「まーじかー」
初月「……紙一重の勝負だったね(札だけに)」
提督「ここで2を出す俺の勝負弱さよ」
提督は顔を上げて、イスの背もたれにおもいきり体を預けた。腕を背に落として首を上げる。
提督「くー、なんかどっと疲れた。……今、何時だ?」
僕と提督は、同時に壁にかけられた時計に目を移す。……もうこんな時間か。
提督「やれやれ、そろそろ寝ないとまずいかな……。明日の天気次第だけど」
初月「多分、明日には止んでいるだろうな。快晴が来るよ」
窓の外を見て、そう思う。何度か嵐の中を抜けたこともある経験から、なんとなくわかるのだ。
提督は僕の言葉を聞いて、息をつく。
提督「じゃ、やっぱり起きてるわけにはいかないか? ……初月、どうする?」
初月「え? 僕が決めるのか」
提督「勝ったのはお前だろ」
そう言って提督は笑った。
……そういえばそうだったっけ。勝ったほうが負けたほうに、希望を聞いてもらえる。
どうしようかな。すぐに使いたい気持ちもあるし、後に取っておきたい気もする。
提督「ま、好きにしてくれればいい。……夜は結構短そうだ」
窓の外を見ながら、彼はそう言う。その手は西洋かるたを手に取り、混ぜている。鮮やかな手つき。
……なんとなく、どうしたいか決まった気がする。僕は……。
最後の安価です(追加もないでしょう恐らく)
>>18
64のPM3ed+hto
クラブの3
41のdUDdDnCE0
ダイヤの2
初月「……!」
僕の札は、クラブの3。よりによって、ここでこの数字が……!
提督「……」
と思ったら提督はダイヤの2だった。
提督が、顔をテーブルに突っ伏す。がつん、と割と痛い音がする。
提督「まーじかー」
初月「……紙一重の勝負だったね(札だけに)」
提督「ここで2を出す俺の勝負弱さよ」
提督は顔を上げて、イスの背もたれにおもいきり体を預けた。腕を背に落として首を上げる。
提督「くー、なんかどっと疲れた。……今、何時だ?」
僕と提督は、同時に壁にかけられた時計に目を移す。……もうこんな時間か。
提督「やれやれ、そろそろ寝ないとまずいかな……。明日の天気次第だけど」
初月「多分、明日には止んでいるだろうな。快晴が来るよ」
窓の外を見て、そう思う。何度か嵐の中を抜けたこともある経験から、なんとなくわかるのだ。
提督は僕の言葉を聞いて、息をつく。
提督「じゃ、やっぱり起きてるわけにはいかないか? ……初月、どうする?」
初月「え? 僕が決めるのか」
提督「勝ったのはお前だろ」
そう言って提督は笑った。
……そういえばそうだったっけ。勝ったほうが負けたほうに、希望を聞いてもらえる。
どうしようかな。すぐに使いたい気持ちもあるし、後に取っておきたい気もする。
提督「ま、好きにしてくれればいい。……夜は結構短そうだ」
窓の外を見ながら、彼はそう言う。その手は西洋かるたを手に取り、混ぜている。鮮やかな手つき。
……なんとなく、どうしたいか決まった気がする。僕は……。
最後の安価です(追加もないでしょう恐らく)
>>18
18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/17(土) 01:21:54.50 :PM3ed+hto
抱きしめる
19: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 03:15:24.15 :5X/UpU6R0
初月「抱きしめてほしい」
提督の手元から、札がぱらぱらと音を立てて落ちた。
提督「な、なんだって?」
初月「抱きしめてほしいんだ。僕を」
提督「…………ど、どうした初月。上官をからかってはいけないよ」
初月「そういうつもりはないが」
提督「え、ほんとに……」
初月「だめかな」
提督「だめではないです」
し、しかし俺はアレでうおー、とかなんとか提督は言っている。
僕はそんなにおかしなことを言っただろうか。親愛の想いを、身体を触れ合わせて伝えるのは艦娘同士では普通のことだ。
そこで僕は気づいた。
ひょっとすると、提督は艦娘ではないから、人を抱きしめるやり方を知らないのかもしれないな。
なら、しかたがない。
僕は立ち上がる。
初月「提督」
提督「え」
僕はまだ何かをつぶやいている彼の後ろから、背もたれごしに提督を抱きしめた。
肩の上から腕を回して、彼の胸の前で手を結ぶ。
そうして、両腕と自分の身体でつつみこむように、提督の身体へやわらかく力を篭める。
初月「こうやるんだよ」
提督「 う、あ 、お、 え」
しばらくそうしていたけれど、彼は固まったままだった。
とてもわかりやすく教えたつもりなのに、まだわからないのだろうか。
そういえば。
大人は色々なことを知っているぶん、新しいことを覚えるのが苦手なんだ、と提督が言っていたことがあったのを思い出した。
そういうことなら、もっとしっかりと教えてあげないといけない。
僕は彼から身体を離して、その眼前へと周った。
提督「……はっ。お、俺は一体……は、初月?」
初月「しっかりと覚えてくれ」
提督「お、おぼえ、る?」
何か呆然としているような提督の前に立った僕は、足をあげて提督のふとももにひざをかけた。
このイスはてすりがないからちょうどいい。そのまま身体を提督に密着させた。
彼はまた固まる。さっきもそうだった。
これは集中して、新しいことを覚えようとしているというしるしなのかもしれない。
提督「初月ちょっとこれは……!」
初月「そんなに難しくはないはずだ。僕もすぐに覚えた」
提督「いやいやいや覚え、って、え!?」
そうして、両足を完全に提督のももの上にのせ、両ももを重ね合わせる形になる。
僕は足を開いて、提督の両足と腰をはさんでいるような状態だ。
そして、また彼の身体に腕をかける。今度は彼の脇の下から腕を回して、背中を両手で押すように力を入れる。
力はそんなにいらない。柔らかく、相手を安心させるようにするのがコツだ、と言っていた。
提督「 い、 や、いや 、 いやいや、 さすがにこれは」
初月「大丈夫。わかるまで、何度でも……」
僕はできるだけ優しく、提督の耳元で囁こうとする。もっとわかりやすく、聞こえやすく。
(ぷちん)
初月「抱きしめてほしい」
提督の手元から、札がぱらぱらと音を立てて落ちた。
提督「な、なんだって?」
初月「抱きしめてほしいんだ。僕を」
提督「…………ど、どうした初月。上官をからかってはいけないよ」
初月「そういうつもりはないが」
提督「え、ほんとに……」
初月「だめかな」
提督「だめではないです」
し、しかし俺はアレでうおー、とかなんとか提督は言っている。
僕はそんなにおかしなことを言っただろうか。親愛の想いを、身体を触れ合わせて伝えるのは艦娘同士では普通のことだ。
そこで僕は気づいた。
ひょっとすると、提督は艦娘ではないから、人を抱きしめるやり方を知らないのかもしれないな。
なら、しかたがない。
僕は立ち上がる。
初月「提督」
提督「え」
僕はまだ何かをつぶやいている彼の後ろから、背もたれごしに提督を抱きしめた。
肩の上から腕を回して、彼の胸の前で手を結ぶ。
そうして、両腕と自分の身体でつつみこむように、提督の身体へやわらかく力を篭める。
初月「こうやるんだよ」
提督「 う、あ 、お、 え」
しばらくそうしていたけれど、彼は固まったままだった。
とてもわかりやすく教えたつもりなのに、まだわからないのだろうか。
そういえば。
大人は色々なことを知っているぶん、新しいことを覚えるのが苦手なんだ、と提督が言っていたことがあったのを思い出した。
そういうことなら、もっとしっかりと教えてあげないといけない。
僕は彼から身体を離して、その眼前へと周った。
提督「……はっ。お、俺は一体……は、初月?」
初月「しっかりと覚えてくれ」
提督「お、おぼえ、る?」
何か呆然としているような提督の前に立った僕は、足をあげて提督のふとももにひざをかけた。
このイスはてすりがないからちょうどいい。そのまま身体を提督に密着させた。
彼はまた固まる。さっきもそうだった。
これは集中して、新しいことを覚えようとしているというしるしなのかもしれない。
提督「初月ちょっとこれは……!」
初月「そんなに難しくはないはずだ。僕もすぐに覚えた」
提督「いやいやいや覚え、って、え!?」
そうして、両足を完全に提督のももの上にのせ、両ももを重ね合わせる形になる。
僕は足を開いて、提督の両足と腰をはさんでいるような状態だ。
そして、また彼の身体に腕をかける。今度は彼の脇の下から腕を回して、背中を両手で押すように力を入れる。
力はそんなにいらない。柔らかく、相手を安心させるようにするのがコツだ、と言っていた。
提督「 い、 や、いや 、 いやいや、 さすがにこれは」
初月「大丈夫。わかるまで、何度でも……」
僕はできるだけ優しく、提督の耳元で囁こうとする。もっとわかりやすく、聞こえやすく。
(ぷちん)
20: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 14:24:58.73 :5X/UpU6R0
提督「初月……!」
初月「わ」
提督は急に動いて、僕を抱きしめた。右手は顔を抱くように、左手は僕の腕の下を通って、背中を優しく押す。
やっとわかってくれたんだ。
初月「そうだよ、それでいいんだ」
提督「ああ。これでいいんだな」
提督は少しだけ体を離して、僕の顔をまっすぐと見つめた。……なんだか、恥ずかしい。
不思議だ。さっきまでの勝負では、相手の感情を知ろうとしてあれだけ互いの瞳を読みあっていたのに。どうして今は恥ずかしいんだろう。
そう、今はなんだか……お互いの気持ちがわかりすぎる、ような気がする。
でも悪い気分じゃない。顔が自然と、笑みの形になった。
提督の瞳が揺れた、と思った瞬間、彼の唇と僕の唇が触れていた。
……? なんだろう、これは。
少しだけ触れたと思ったら、すぐに離れていた。なぜか提督は顔をそらしている。
提督「すまない」
初月「提督」
提督「いや、だからすまない……」
初月「今のはなんだ」
ものすごい速度で提督の顔がこちらに戻った。
提督「な、なんだってなんだ」
初月「そのままの意味だ。抱きしめて親愛の情を伝えるのは知っているけど、さっきのは知らない」
提督「……? えーっと?」
提督は少し上を向いて、何事かを考えた。2秒で愕然とした顔になる。そのまま顔を後ろに倒して、両手で自分の顔を隠した。
初月「どうしたんだ、提督」
提督「ごめんなさい、全宇宙にごめんなさい」
初月「それではわからないぞ」
提督「ちょっと海の様子を見てくる」
そう言って僕をやさしく降ろすと、立ち上がって歩き始めた。僕はあわててついていく。
初月「何があったんだ、提督」
提督「何もなかった。全てを忘れて幸せになってくれ」
初月「そっちは玄関だぞ」
提督「そうだ、俺は川で一泳ぎしてくる。そうすればすぐに海に着く」
提督がカギを開けて、ドアに手をかけた。ここで僕は、彼が本気で出て行くつもりなのを悟った。
何を考えているんだ……!?
僕は彼の腕を掴んでひっぱった。僕は駆逐艦とはいえ艦娘なので、一人で提督を抑えることなどわけはない。
わけはないが、提督が本気で抵抗して困った。
提督「はなせー! 俺は生きていてはいけない存在!」
初月「わけのわからないことを言うんじゃない」
提督「俺はダメな男だ、提督どころか人間として失格だ! そう、川に飛び込まねば!」
初月「落ち着け」
提督「落ち着いたら死にたくなくなるかもしれないだろう!」
突発性の恐慌状態だろうか? 提督や大人というのはやはり大変なのだ。僕がなんとかしなければ。
提督「初月……!」
初月「わ」
提督は急に動いて、僕を抱きしめた。右手は顔を抱くように、左手は僕の腕の下を通って、背中を優しく押す。
やっとわかってくれたんだ。
初月「そうだよ、それでいいんだ」
提督「ああ。これでいいんだな」
提督は少しだけ体を離して、僕の顔をまっすぐと見つめた。……なんだか、恥ずかしい。
不思議だ。さっきまでの勝負では、相手の感情を知ろうとしてあれだけ互いの瞳を読みあっていたのに。どうして今は恥ずかしいんだろう。
そう、今はなんだか……お互いの気持ちがわかりすぎる、ような気がする。
でも悪い気分じゃない。顔が自然と、笑みの形になった。
提督の瞳が揺れた、と思った瞬間、彼の唇と僕の唇が触れていた。
……? なんだろう、これは。
少しだけ触れたと思ったら、すぐに離れていた。なぜか提督は顔をそらしている。
提督「すまない」
初月「提督」
提督「いや、だからすまない……」
初月「今のはなんだ」
ものすごい速度で提督の顔がこちらに戻った。
提督「な、なんだってなんだ」
初月「そのままの意味だ。抱きしめて親愛の情を伝えるのは知っているけど、さっきのは知らない」
提督「……? えーっと?」
提督は少し上を向いて、何事かを考えた。2秒で愕然とした顔になる。そのまま顔を後ろに倒して、両手で自分の顔を隠した。
初月「どうしたんだ、提督」
提督「ごめんなさい、全宇宙にごめんなさい」
初月「それではわからないぞ」
提督「ちょっと海の様子を見てくる」
そう言って僕をやさしく降ろすと、立ち上がって歩き始めた。僕はあわててついていく。
初月「何があったんだ、提督」
提督「何もなかった。全てを忘れて幸せになってくれ」
初月「そっちは玄関だぞ」
提督「そうだ、俺は川で一泳ぎしてくる。そうすればすぐに海に着く」
提督がカギを開けて、ドアに手をかけた。ここで僕は、彼が本気で出て行くつもりなのを悟った。
何を考えているんだ……!?
僕は彼の腕を掴んでひっぱった。僕は駆逐艦とはいえ艦娘なので、一人で提督を抑えることなどわけはない。
わけはないが、提督が本気で抵抗して困った。
提督「はなせー! 俺は生きていてはいけない存在!」
初月「わけのわからないことを言うんじゃない」
提督「俺はダメな男だ、提督どころか人間として失格だ! そう、川に飛び込まねば!」
初月「落ち着け」
提督「落ち着いたら死にたくなくなるかもしれないだろう!」
突発性の恐慌状態だろうか? 提督や大人というのはやはり大変なのだ。僕がなんとかしなければ。
21: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 14:27:46.83 :5X/UpU6R0
初月「それなら、なお落ち着くべきだ」
僕は彼の頭に腕をかけて、抱き寄せた。身長が高い彼の頭をひきよせたから、彼が膝をつく形になる。
そのまま両腕でしっかりと頭を固定して、つつみこむ。
こうすると、人は安心するのだと聞いた。鼓動の音が心を落ち着かせるとか。
僕の目論見どおり、提督が固まった。安心しているのかどうかはわからないけれど、とりあえず止まってくれてよかった。
初月「落ち着いたか」
提督「……はい。あー、もう死ぬつもりは無くなったから、離してくれるか」
言われたとおり、腕を解く。提督はゆっくりと立ち上がった。
僕は彼に、できるだけ優しく言う。
初月「大丈夫だ。もしもお前が死にたくなったら、僕に言ってくれ。いつでもこうして安心させてあげるから」
提督「……わかった。どうも俺が死ぬくらいじゃ償えないな」
何を言っているのかはわからないが、落ち着いたならいいか。
僕たちは部屋に戻り、ソファに並んで座った。また何かあるといけないので、僕は彼に出来るかぎりくっついていることにする。
提督はなぜかそわそわと居心地が悪そうだ。また同じような症状が現れるのかもしれない。これはますます離れていてはいけない、と決心を堅くした。
とりあえず、落ち着いたところで疑問を解消しておきたい。
初月「ところで提督、さっきのはなんだったんだ」
提督「さっきの:とは」
初月「唇を触れさせただろう」
提督「…………あれか」
提督は何だか落ち込んでいた。そういえば、彼はなぜか僕に謝っていた。どうしてだろう。別に、僕は嫌がったりはしていなかったと思うんだが。
提督「あれは、あー、俗に言う、キス、接吻、くちづけ、まあそういうものだ」
初月「ふうん。なんのためにする行為だ」
提督「…………愛情表現かな」
初月「なんだ。それなら全然構わないぞ」
提督「いや、いやいや。構うんだ」
初月「なぜ」
提督「……この話は複雑だから、また今度にしよう。初月も疲れただろ」
初月「まだ僕は……いや、わかった。そうしようか」
僕はそこまで差し迫って疲れたわけではなかったけど、むしろ提督のほうが辛そうだったので、今度にすることにした。
二人でそのまま軽い食事をして、もう一度お湯を浴びる(一緒に入ったほうが安心だと主張したが、断られた)。
そして、二人で並んでベッドに入った(これも断られたが、自分が眠っている間に死なれては困ると強く主張して押し切った。提督はなんとなく複雑な顔で了承した)。
思えば、誰かと同じ寝具に入って眠るのは初めてだな。なかなかいいものだ。
これからは毎日提督と一緒に寝てもいいかもしれない。早速提案してみようか。
初月「提督」
初月「……提督?」
初月「眠ったのか」
相当に疲れていたらしい。あっというまに彼は眼を閉じて、微動だにしなかった。
僕も眼を閉じて、嵐と彼の息の音だけが聞こえる闇の中にもぐりこんだ。
……提督が温かい。なんだか、安心する……。
その夜は、とてもいい夢を見た気がする。
初月「それなら、なお落ち着くべきだ」
僕は彼の頭に腕をかけて、抱き寄せた。身長が高い彼の頭をひきよせたから、彼が膝をつく形になる。
そのまま両腕でしっかりと頭を固定して、つつみこむ。
こうすると、人は安心するのだと聞いた。鼓動の音が心を落ち着かせるとか。
僕の目論見どおり、提督が固まった。安心しているのかどうかはわからないけれど、とりあえず止まってくれてよかった。
初月「落ち着いたか」
提督「……はい。あー、もう死ぬつもりは無くなったから、離してくれるか」
言われたとおり、腕を解く。提督はゆっくりと立ち上がった。
僕は彼に、できるだけ優しく言う。
初月「大丈夫だ。もしもお前が死にたくなったら、僕に言ってくれ。いつでもこうして安心させてあげるから」
提督「……わかった。どうも俺が死ぬくらいじゃ償えないな」
何を言っているのかはわからないが、落ち着いたならいいか。
僕たちは部屋に戻り、ソファに並んで座った。また何かあるといけないので、僕は彼に出来るかぎりくっついていることにする。
提督はなぜかそわそわと居心地が悪そうだ。また同じような症状が現れるのかもしれない。これはますます離れていてはいけない、と決心を堅くした。
とりあえず、落ち着いたところで疑問を解消しておきたい。
初月「ところで提督、さっきのはなんだったんだ」
提督「さっきの:とは」
初月「唇を触れさせただろう」
提督「…………あれか」
提督は何だか落ち込んでいた。そういえば、彼はなぜか僕に謝っていた。どうしてだろう。別に、僕は嫌がったりはしていなかったと思うんだが。
提督「あれは、あー、俗に言う、キス、接吻、くちづけ、まあそういうものだ」
初月「ふうん。なんのためにする行為だ」
提督「…………愛情表現かな」
初月「なんだ。それなら全然構わないぞ」
提督「いや、いやいや。構うんだ」
初月「なぜ」
提督「……この話は複雑だから、また今度にしよう。初月も疲れただろ」
初月「まだ僕は……いや、わかった。そうしようか」
僕はそこまで差し迫って疲れたわけではなかったけど、むしろ提督のほうが辛そうだったので、今度にすることにした。
二人でそのまま軽い食事をして、もう一度お湯を浴びる(一緒に入ったほうが安心だと主張したが、断られた)。
そして、二人で並んでベッドに入った(これも断られたが、自分が眠っている間に死なれては困ると強く主張して押し切った。提督はなんとなく複雑な顔で了承した)。
思えば、誰かと同じ寝具に入って眠るのは初めてだな。なかなかいいものだ。
これからは毎日提督と一緒に寝てもいいかもしれない。早速提案してみようか。
初月「提督」
初月「……提督?」
初月「眠ったのか」
相当に疲れていたらしい。あっというまに彼は眼を閉じて、微動だにしなかった。
僕も眼を閉じて、嵐と彼の息の音だけが聞こえる闇の中にもぐりこんだ。
……提督が温かい。なんだか、安心する……。
その夜は、とてもいい夢を見た気がする。
22: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 14:36:40.37 :5X/UpU6R0
……そして翌朝。俺たちは着替えを済ませて、朝食前の体操をしていた。
提督「すっかり晴れたな」
初月「ああ」
空には文字通り一点の曇りもない、青々とした蒼穹が広がっている。嵐の欠片も残っていない。
初月「さっき連絡があった。もうすぐみんなが到着するそうだ」
提督「そうか。それはよかった」
これ以上初月と二人きりでいると、俺は割とアレしそうでアレだった。自分がどれほどダメな最底辺のクズなのかわかる。発作的に山を転げ降りてしまいたい衝動がちょっとある。
そんなことを考えていると、じっと俺を見詰めていた初月がなにか眉をひそめた。
初月「提督、また何か変なことを考えているんじゃないか」
提督「そ、そんなことはないぞ」
今日の朝から、どうも初月の様子も少しおかしい気がする。心配をかけすぎてしまったか、俺のほうをちらちらと気にしている。まるで何かの機会をうかがっているようにすら見える、というのは俺の気にしすぎか。
ともかく、これではいかん。初月に心配をかけるほど、ますます俺がやばいことになりそうだ。いや、俺はこのさいどうでもいいんだけど、初月によくないことをするわけにはいかない。
体操で自分の中のもやもやを追い出すことにする。いちにー、さんしー、いちにー、さんしー。
初月「提督……やっぱり不安がある」
提督「ん?」
どういう意味、と問い返す間もなく、俺は後ろから初月に抱きつかれていた! な、なに!?
下から俺の胸に手を回したまま、初月が言う。
初月「もう一度落ち着いておくといい」
提督「だ、大丈夫だって! というかそんなに簡単に抱きついてはいけない。ほら、俺は男で初月は女の子なわけで」
初月「男女差別はよくない」
提督「いやそういうわけじゃ、というか男ならいいってわけでもない!」
初月「難しいな、提督の言っていることは」
そう言いながら、初月はずっと俺にくっついたままなのだった。全く離してくれる気配がない。
ここで初月の声がなんだか、妙にうれしそうに弾んでいることに気がついた。ひょっとして、昨日一日のあれそれで、おかしなクセがついてしまったのか!?
初月「大丈夫だ、落ち着いてくれ」
提督「実はそれは俺のセリフでは?」
初月「前から抱きしめたほうがいいのかな」
初月はくるりと前に回って、ぴょんと飛んで俺の首に腕を回してきた。
初月「これでどうだ」
提督「どうって何がだよ!」
初月「提督も僕に腕を回してくれ。そうした方が安心するはずだ」
提督「何一つ安心できないって……」
初月「そんなことはない、昨日はこれでうまくいった。もっと密着したほうがいいかな」
そう言うと初月は、なんと両足を俺の身体に、ってやめてーそれはやめてー。倫理的にまずい体勢はやめてー。
……結局こんな調子で俺は、数分後にみんなが到着するまで初月に抱きつかれたままだった。到着したら、なぜかみんなが抱きついてきて更に大変だったのだが。
……鎮守府に帰るのが、昨日の怪談とは違う意味で怖くなってきた……。
初月「提督」
提督「な、なんだよ」
初月「昨日のキスとか接吻とか口付けかいうのはもうしないのか」
提督「えええ」
初月「僕は構わないぞ。愛情表現なんだろう」
提督「…………あー、また今度ね!」
初月「今度というのは今の度と書くな」(ぐいっ)
提督「や、やめー……っ……」
おわり
……そして翌朝。俺たちは着替えを済ませて、朝食前の体操をしていた。
提督「すっかり晴れたな」
初月「ああ」
空には文字通り一点の曇りもない、青々とした蒼穹が広がっている。嵐の欠片も残っていない。
初月「さっき連絡があった。もうすぐみんなが到着するそうだ」
提督「そうか。それはよかった」
これ以上初月と二人きりでいると、俺は割とアレしそうでアレだった。自分がどれほどダメな最底辺のクズなのかわかる。発作的に山を転げ降りてしまいたい衝動がちょっとある。
そんなことを考えていると、じっと俺を見詰めていた初月がなにか眉をひそめた。
初月「提督、また何か変なことを考えているんじゃないか」
提督「そ、そんなことはないぞ」
今日の朝から、どうも初月の様子も少しおかしい気がする。心配をかけすぎてしまったか、俺のほうをちらちらと気にしている。まるで何かの機会をうかがっているようにすら見える、というのは俺の気にしすぎか。
ともかく、これではいかん。初月に心配をかけるほど、ますます俺がやばいことになりそうだ。いや、俺はこのさいどうでもいいんだけど、初月によくないことをするわけにはいかない。
体操で自分の中のもやもやを追い出すことにする。いちにー、さんしー、いちにー、さんしー。
初月「提督……やっぱり不安がある」
提督「ん?」
どういう意味、と問い返す間もなく、俺は後ろから初月に抱きつかれていた! な、なに!?
下から俺の胸に手を回したまま、初月が言う。
初月「もう一度落ち着いておくといい」
提督「だ、大丈夫だって! というかそんなに簡単に抱きついてはいけない。ほら、俺は男で初月は女の子なわけで」
初月「男女差別はよくない」
提督「いやそういうわけじゃ、というか男ならいいってわけでもない!」
初月「難しいな、提督の言っていることは」
そう言いながら、初月はずっと俺にくっついたままなのだった。全く離してくれる気配がない。
ここで初月の声がなんだか、妙にうれしそうに弾んでいることに気がついた。ひょっとして、昨日一日のあれそれで、おかしなクセがついてしまったのか!?
初月「大丈夫だ、落ち着いてくれ」
提督「実はそれは俺のセリフでは?」
初月「前から抱きしめたほうがいいのかな」
初月はくるりと前に回って、ぴょんと飛んで俺の首に腕を回してきた。
初月「これでどうだ」
提督「どうって何がだよ!」
初月「提督も僕に腕を回してくれ。そうした方が安心するはずだ」
提督「何一つ安心できないって……」
初月「そんなことはない、昨日はこれでうまくいった。もっと密着したほうがいいかな」
そう言うと初月は、なんと両足を俺の身体に、ってやめてーそれはやめてー。倫理的にまずい体勢はやめてー。
……結局こんな調子で俺は、数分後にみんなが到着するまで初月に抱きつかれたままだった。到着したら、なぜかみんなが抱きついてきて更に大変だったのだが。
……鎮守府に帰るのが、昨日の怪談とは違う意味で怖くなってきた……。
初月「提督」
提督「な、なんだよ」
初月「昨日のキスとか接吻とか口付けかいうのはもうしないのか」
提督「えええ」
初月「僕は構わないぞ。愛情表現なんだろう」
提督「…………あー、また今度ね!」
初月「今度というのは今の度と書くな」(ぐいっ)
提督「や、やめー……っ……」
おわり
23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/17(土) 14:40:28.11 :gv4ZWt/6o
おつおつー
24: ◆vMSeYbSya.:2016/09/17(土) 14:41:01.16 :5X/UpU6R0
安価をくださった方、読んでいただいた方、ありがとうございました
軽く安価でひとつというつもりが、創作怪談をひとつでっちあげたり(完成の気配がないので飛ばしてしまいましたが)、
トランプの札を安価から作り出すルールを考えたり、
長々と抱きつくだのキスだののやりとりをしたりと、なかなか大変でした
苦労が作品に反映されているかどうかはわかりませんが、楽しんでいただけたなら幸せです。改めてありがとうございました。
軽く安価でひとつというつもりが、創作怪談をひとつでっちあげたり(完成の気配がないので飛ばしてしまいましたが)、
トランプの札を安価から作り出すルールを考えたり、
長々と抱きつくだのキスだののやりとりをしたりと、なかなか大変でした
苦労が作品に反映されているかどうかはわかりませんが、楽しんでいただけたなら幸せです。改めてありがとうございました。
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