103:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2020/09/02(水) 14:50:51.78 :+IqVL7Wl0
≪Observation by Asuka≫
「じゃあ、再生ボタンは神崎Pが押してくれ」
Pが神崎Pにレッスンルームの音響設備のリモコンを手渡す。
「……フン」
神崎Pは受け取ったリモコンを一瞥してから、いかにも不機嫌といった表情をボクに向けた。
ボクは隣にいる蘭子とアイコンタクトを取り、頷き合う。準備は万端だ。蘭子に背を向け、曲始めのポージングをとる。
四人だけのレッスンルームが静まり返る。
昨夜、蘭子と深く語り合ったからといって、“力”を妨げない方法、いや、蘭子と共鳴する方法が判明したわけではない。しかし“きっと大丈夫だ”という根拠のない自信はあった。
しっかりと見ておけよ神崎P。お前が軽んじた二宮飛鳥の本領を。お前の予想を裏切ってやる。お前の期待なんて知ったことか。ボクの……ボクと蘭子の覚醒した真の力を刮目しろ。
さあ来い。さあ押せ。どうした。ほら――。
そのとき、ジワリ、と背筋に不思議な温かさを感じた。それは“リンク”だった。ボクと蘭子を繋ぐ、不可視のライン。この世の如何なる回線よりも早く、正確に、膨大な情報を送受信することが出来る魂の回廊。ボクと蘭子が溶け合い、補い合い、共鳴するための。
錯覚なんかじゃない。
蘭子がこの曲で思い描く世界観が流れ込んでくる。それのなんと荘厳で気高いことか。
「いざっ!」
「さあっ!」
神崎Pへの催促が完璧に同期する。この程度のこと、背を向け合っていても今のボクたちにとっては容易いことだった。
「チッ……もういいわ」
「は……?」
神崎Pは手に持っていたリモコンを棚に置いた。音楽は再生されていない。
「P、これからのスケジュールだけど」
「うん、なになに?」
「は? いや、おい、テストはどうした、神崎P……!」
Pを伴ってレッスンルームの外へ出ていこうとする神崎Pを呼び止める。
「チッ……もういい、と言ったの」
「はぁ? 何を言って……? テストさえも受けさせないつもりか!?」
「あ~~飛鳥。合格だってさ」
「えっ?」
「チッ!」
合格? まだワンフレーズさえ歌っていないのに?
「チッ……やらなくても分かるわ。貴女だけよ、分かってていないのは。チッ」
「はぁ? 一体何を……?」
「今のお前たち、輝いてるぜっ!」
「は……?」
「チッ!」
何とも要領を得ない答えしか返ってこない。何なんだよ一体。
「飛鳥。たぶん、コレ……」
「ん? 蘭子? それは……?」
蘭子がキラキラと輝いて見えた。空気中の埃が光を受けて煌めくのに似てなくもないが、それとは一線を画する高貴な輝きがあった。その光の粒子は意思を持っている様に蘭子の周囲を浮遊している。そしてそれはボクの周囲にもあって……。
「これは……まさか……!」
「チッ……どうやらリンクは成功したようね。ならもう演るまでもない……レッスンルームなんかでその力を解放するのは勿体ない。本番で存分に奮いなさい。チッ!」
「つまり……?」
「合格満点、ダークイルミネイト結成決定っちゅーことだ!」
「~~~~~ッ!」
「やったぁ! 飛鳥~~~っ!」
「チッ! チィ…ッ!」
ダイブしてきた蘭子を受け止め、合格の歓びを共有する。
というかさっきから神崎P舌打ちし過ぎだろ。ボクと蘭子がユニットを組むことになったのがそんなに悔しいのか。やれやれ、最高の気分だね。
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≪Observation by Asuka≫
「じゃあ、再生ボタンは神崎Pが押してくれ」
Pが神崎Pにレッスンルームの音響設備のリモコンを手渡す。
「……フン」
神崎Pは受け取ったリモコンを一瞥してから、いかにも不機嫌といった表情をボクに向けた。
ボクは隣にいる蘭子とアイコンタクトを取り、頷き合う。準備は万端だ。蘭子に背を向け、曲始めのポージングをとる。
四人だけのレッスンルームが静まり返る。
昨夜、蘭子と深く語り合ったからといって、“力”を妨げない方法、いや、蘭子と共鳴する方法が判明したわけではない。しかし“きっと大丈夫だ”という根拠のない自信はあった。
しっかりと見ておけよ神崎P。お前が軽んじた二宮飛鳥の本領を。お前の予想を裏切ってやる。お前の期待なんて知ったことか。ボクの……ボクと蘭子の覚醒した真の力を刮目しろ。
さあ来い。さあ押せ。どうした。ほら――。
そのとき、ジワリ、と背筋に不思議な温かさを感じた。それは“リンク”だった。ボクと蘭子を繋ぐ、不可視のライン。この世の如何なる回線よりも早く、正確に、膨大な情報を送受信することが出来る魂の回廊。ボクと蘭子が溶け合い、補い合い、共鳴するための。
錯覚なんかじゃない。
蘭子がこの曲で思い描く世界観が流れ込んでくる。それのなんと荘厳で気高いことか。
「いざっ!」
「さあっ!」
神崎Pへの催促が完璧に同期する。この程度のこと、背を向け合っていても今のボクたちにとっては容易いことだった。
「チッ……もういいわ」
「は……?」
神崎Pは手に持っていたリモコンを棚に置いた。音楽は再生されていない。
「P、これからのスケジュールだけど」
「うん、なになに?」
「は? いや、おい、テストはどうした、神崎P……!」
Pを伴ってレッスンルームの外へ出ていこうとする神崎Pを呼び止める。
「チッ……もういい、と言ったの」
「はぁ? 何を言って……? テストさえも受けさせないつもりか!?」
「あ~~飛鳥。合格だってさ」
「えっ?」
「チッ!」
合格? まだワンフレーズさえ歌っていないのに?
「チッ……やらなくても分かるわ。貴女だけよ、分かってていないのは。チッ」
「はぁ? 一体何を……?」
「今のお前たち、輝いてるぜっ!」
「は……?」
「チッ!」
何とも要領を得ない答えしか返ってこない。何なんだよ一体。
「飛鳥。たぶん、コレ……」
「ん? 蘭子? それは……?」
蘭子がキラキラと輝いて見えた。空気中の埃が光を受けて煌めくのに似てなくもないが、それとは一線を画する高貴な輝きがあった。その光の粒子は意思を持っている様に蘭子の周囲を浮遊している。そしてそれはボクの周囲にもあって……。
「これは……まさか……!」
「チッ……どうやらリンクは成功したようね。ならもう演るまでもない……レッスンルームなんかでその力を解放するのは勿体ない。本番で存分に奮いなさい。チッ!」
「つまり……?」
「合格満点、ダークイルミネイト結成決定っちゅーことだ!」
「~~~~~ッ!」
「やったぁ! 飛鳥~~~っ!」
「チッ! チィ…ッ!」
ダイブしてきた蘭子を受け止め、合格の歓びを共有する。
というかさっきから神崎P舌打ちし過ぎだろ。ボクと蘭子がユニットを組むことになったのがそんなに悔しいのか。やれやれ、最高の気分だね。