2025年03月19日 22:30 【モバマス】キモチを言葉に 元スレ 全てのレス 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/03/03(木) 18:59:31.95 :BQNul1gr0 ああ そうだ やっと……やっとわかりました この気持ちの意味が そうだ これは 読む →
2025年03月14日 07:00 櫻井桃華「恋しい、愛おしい、プロデューサーちゃま」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/04/05(水) 17:13:20.26 :H3m5qLwCO ……プロデューサーちゃま。わたくし、分かりませんでしたの。 恋というものがどういうものなのか、分かりませんでした。 恋しい。恋い慕う。恋い焦がれる。 恋というものが、恋という気持ちが、恋という想いがなんなのか、分かりませんでしたのよ。 本では読みましたわ。 恋をして、恋に溺れて、恋に生きるいろいろな登場人物のお話は読みました。 考えてはみましたわ。 恋というのはこんな感じなのかしら、こうした風なのかしら、こういう心地なのかしら……と、そうして考えました。 恋する人は見ましたわ。 誰かに恋心を抱いて、誰かを恋しく感じて、誰かへの恋に染まった人たちの姿は見てきました。 でも、それでも分かりませんでしたの。 なんとなく、霧がかった想像で、もやもやした形では考えられるようにもなりましたけれど。 きちんと、しっかり、本当のそれがどうなのかということは分かりませんでしたの。 だから聞きましたわ。 恋とはいったい? 恋とはどういうこと? 恋をするというのは、どんな気持ちなのかしら? そう聞きましたの。 みんな……この事務所にいるアイドルのみんなへ、聞きましたのよ。 聞いて、そして教えてもらいましたの。 読む →
2025年02月22日 21:05 サーバル「こわい夢」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/19(月) 23:58:31.87 :IBiS+bJA0 「博士、少し聞きたいことが」 「なんですか、助手」 「実は昨日、かばんの作ったカレーを食べたのです」 「か、かばんのカレーを食べたのですか!? 一人だけずるいですよ、助手!!」がたっ 「最後まで聞いてください、博士。確かに私はカレーを食べていました。ですが、気づいた時には、普段寝ているベッドの上にいたのです」 「…………?? 助手が何を言っているのか、全然分からないのです……」 「夢ですよ」 「夢?」 「後で調べてみたら、図書館の本に書いてあったのです。ヒトは寝ている間に、脳が頭の中を整理します。その時に見る映像を『夢』と呼ぶのだそうです」 「そ、それなら知っているのです! まったく、分かりにくく言わないでほしいのですよ!」ぷんすこ (かわいい……) 「なんなのですか、その目は!」 「いえ……すみません、博士。今まで見た覚えがほとんどなかったので、つい珍しくて話したのです」 「それは仕方がないのです。夢は見ても忘れることが多いのですよ」 「……ですから、次からはカレーの夢を見た時は教えるのですよ! 博士にも食べさせろです!」 「ど、どうやって食べるつもりですか………………それより、私がその夢を覚えていたのはなぜでしょうか?」 「それはきっと、かばんのカレーのおかげなのです」 「カレー?」 「おそらく、自分の好きなものが出てきたから、強く記憶に残ったのです」 「なるほど…………ということは、逆の場合もあるのですか?」 「ありますよ。嫌いなものの出る夢も、記憶に残りやすいのです。例えば……」 「過去の思い出したくない出来事が夢に出てくることもあるそうですよ」 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:02:43.34 :PoruoH2d0 大切なもの。 離したくないもの。 かけがえのないもの。 失いたくないもの。 いつも近くにいるのが当たり前で、気がつくと忘れている時がある。 「かばんちゃん!」 サーバルの隣にいるのは、さばんなちほーで出会ったヒトのフレンズ、かばん。 「なあに、サーバルちゃん」 「手、繋ご!」 「うん、いいよ」 二人は片方の手をぎゅっと握り合って歩く。手から感じるのは、じんわりとした温もり。ぐっと握れば、相手からぐっと握り返される、小さな幸せ。 その温もりは、セルリアンによって、一度失いかけたもの。 そして、みんなで救い出したもの。 「こうしているとね、かばんちゃんがちゃんとここにいるんだな、って思えて嬉しくなるの」 「ぼくも、こうしているのは好きかな」 「えへへっ……かばんちゃん、これからも一緒だよ」 「……うん、もちろんだよ、サーバルちゃん」 あれから二人は、一緒にいる時間が増えた。大切なものをまた失ってしまうのが怖くて、何となく気がかりだったから。 二人は時々、あの時のことを思い出してしまう。そんな時――心臓がどくどくと波打つ時は、いつも互いの手を握る。 お互いの存在を確かめるように、お互いの鼓動を合わせるように、二人は横に並んで歩く。 誰にも負けないと自信を持って言える、強い絆と、何にも変えがたい、たくさんの思い出を胸にしまって。 もう大丈夫だよ。もう離さないよ。 二人は相手に、自分自身に、そう言い聞かせる。 そんな二人のもとに、それは突然やって来た。 3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:07:03.54 :PoruoH2d0 地響きのような音。辺り一面の真っ暗闇。 何も見えないのに、「何かがいる」と野生の本能が感じ取る。 その「何か」は巨体の向きをぐるりと変えて、一つ目が、ギョロリと私を見つめている。 大きな、大きなセルリアン。 そのあまりの巨体に、思わず頭が真っ白になる。 逃げなきゃ――! そう思った私は、すぐさま体を動かそうとする。 ……あれ? 動かない? いくら動こうとしても、体が言うことを聞こうとしない。逃げられない。 このままじゃ、私―――― どすん 「うみゃあっ!」 ぐらりと体の中心が傾き、その場で尻もちをついてしまう。 「いっ…………たた…………」 痛い。 ずきずきと痛みを感じて、体に力が入らない。 手でなんとか後ろに後ずさるが、それだけで逃げられるはずもなかった。それを見下ろすセルリアンは、大きな目を下に向けて、私をじっと凝視する。 あまりの大きさに圧倒されて、体から力が抜けてしまう。 ぐらっ セルリアンは大きく傾いた。 ああ。 私、死ぬんだ。 セルリアンの体に飲み込まれる直前、私の頭に浮かんだのは、その言葉だけだった。 4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:10:06.22 :PoruoH2d0 「!!」がばっ 現実に引き戻され、飛び起きた私は、すぐさま辺りをきょろきょろと見回す。 今の、何? 木。野草。風の音。青い空。 セルリアンの姿は、どこにも見当たらない。 「すー…………すー…………」 隣で眠るかばんちゃんの寝息を聞いて、私はやっと我に帰る。私とかばんちゃんは木陰でお昼寝をしている真っ最中。夜行性の私が昼間に起きているのを心配したかばんちゃんが、私のために作ってくれた時間だった。 私が見ていたのはただの夢。 ただの、夢? それにしては、あまりにもリアルだった。 本当に、あれは夢なの? 「ち……違う」 違う、違う、あんなの違う。あんなの現実じゃない。 あんなの、ただのまやかし…………嘘に決まってる。 私もかばんちゃんも無事に生き延びて、今こうして生きている。それは揺るがない事実のはずだ。 でも………… それなら、どうしてあんなにリアルだったんだろう……? どくん、どくん、どくん 「っ…………」 おいしい空気で満たされているはずなのに、呼吸はやけに苦しい。 心臓の鼓動はまだ収まらなかった。 5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:11:34.05 :PoruoH2d0 「ここは……?」 場所はおそらく、真っ暗な森の中。 目の前に立っているのは、また、巨大なセルリアン。 ただ、前の夢と違い、こちらの様子に気づいていない上、足が問題なく動く。 それなら早く逃げた方がいいと、私はセルリアンに気づかれないよう、ゆっくりと後退していく。 けど……何だろう? 何か違和感を感じる。 セルリアンの様子が以前とは違うような―― どさっ 「えっ……」 その時、セルリアンの体から何かが落ちてくるのが見えた。 見覚えのあるシルエットに、思わず背筋が凍りつく。 かばんちゃんの、かばんだ。 「かばん…………ちゃん…………?」 見たくもない、目を背けたくなる光景があると分かっていても、私はゆっくり、ゆっくりと視線を上へ動かしていく。 セルリアンの真っ黒い体の中に、かばんちゃんは一人、ぷかぷかと浮かんでいた。 6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:15:18.84 :PoruoH2d0 その瞬間、恐怖の感情は消え失せ、逆に怒りが沸騰するように湧き出した。 「…………みゃ」 「うみゃあああああぁぁぁっ!!!」 さっきまで凍りついていた私の体は、反射的にセルリアンの体へと飛びついていた。 ぎらりと先を尖らせた爪で、がりがり、がりがりと、セルリアンを引き裂いて、 引き裂いて、引き裂いて、引き裂いて、 がりっ、がりっがりっ、がりりっ 「みゃあっ!! うみゃああぁっ!! 返して、返してよっ!! かばんちゃんを返して!!!」 がり、がりがりがり、がりっ 「みゃっ!! うみゃっ!! うみゃーーーっ!!!」 「はあっ、はあっ………………」 「かばんちゃんは…………怖がりだけど優しくて、困ってる子のためにいろんなことを考えて、とっても頑張り屋さんで…………」 「まだお話したいことも、一緒に行きたいところも、たっくさんあって…………」 「だから、だから返して……………っ」 「かばんちゃんを、返してよーーーーーっっ!!!」 世界に自分一人しかいないとさえ思えてしまうくらい、静かな夜の森を突き抜けるように、私の大きな声は辺りに響き渡った。 ぐらっ 「え…………きゃあっ!」 精いっぱいの思いもむなしく、私の体はやすやすと、セルリアンの黒い足に吹き飛ばされた。 7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:16:49.01 :PoruoH2d0 「いたい…………っ…………」 私の攻撃に怖気づいたのか、それともただの気まぐれか、セルリアンはぐるんと向きを変え、どすどすと地面を鳴らしながら走り始めた。 「ま、待って、かばんちゃ……っ!」 ずきっ 「いたっ……!」 慌てて追いかけようとすると、ずきん、と足にひびが入ったかのような痛みに体が固まる。 吹き飛ばされ、勢いよく地面にたたきつけられた私の足は、思うように動かなくなっていた。 「そんな……いやっ、だめ…………だめ…………!」 私は両手で地面をひっつかみ、這いつくばって前に進もうとする。 だが、そんな悪あがきをしたところで、セルリアンとの距離が縮むはずもない。 セルリアンの足音は遠ざかり、小さくなっていく。 「…………やだ…………っ………………かばんちゃん………………行かないで…………」 「いや…………いやっ………………いやだぁ………………」 やがて、音の一切が聞こえなくなり、私の体力が尽きて動けなくなった頃、 世界は真っ暗な闇に包まれた。 8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:19:15.37 :PoruoH2d0 「…………ちゃん…………かばん……ちゃん……」 「かばんちゃん!!」 「えっ?」 「うみゃっ…………あれ………………?」 「サーバルちゃん、どうかしたの?」 「あ…………かばんちゃん、生きてる……生きてるの?」 「え……何言ってるの?」 「かばん……ちゃん………………かばんちゃんっ!!」だきっ 「わっ、サーバルちゃん!?」どさっ 「よかった…………よかったぁ…………っ」 私は一目散にかばんちゃんに飛びつく。二人でごろごろとバスの中を転がって、バスの車体がぐらっと揺れた。 目の前のきょとんとしたかばんちゃんの姿を見ただけで、嬉しさと、安堵と、喜びでいっぱいになる。 ぎゅっと抱きついた場所から、かばんちゃんの体温がじんわりと伝わって、体と心を温めてくれる。 「本当にどうしたの? さっきまで苦しそうに唸ってたのに、起きたら急に飛びついて……」 「……あ、ごっ、ごめんね! 迷惑だったかな?」 「平気だよ。少しびっくりしたけど……それよりサーバルちゃんは……」 「え、えーっと、ほんとに何でもないから! 心配しないで!」 「そう? それならいいけど……」 かばんちゃんに嘘をついている背徳感からか、私はまっすぐに目を合わせることもできず、何も無い場所を見ながら言ってしまう。 ごめんね、かばんちゃん。でも、こんなこと言えないよ。 かばんちゃんが私の前からいなくなるなんて、そんなの私…… ずきっ (いやっ!) 心臓に針がささったような痛みを感じて、私はすぐに考えるのをやめた。 9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:20:54.01 :PoruoH2d0 「カバン、今日ハジャパリカフェニ行クンジャナカッタノ?」 かばんちゃんの手元でちっちゃくなったボスが、ツッコミを入れるように言う。 「あ、そうでしたね、ラッキーさん。すぐ行きましょう」 かばんちゃんはボスにそう伝えると、いそいそとバスの運転席へと向かった。 巨大セルリアンを倒した後、私とかばんちゃんは「無事セルリアンを倒せた&かばん何の動物か分かっておめでとうの会」をゆうえんちで開催するために、各地のちほーを飛び回っている。 単にお誘いするだけの時もあるし、ちょっとしたお仕事を担当してほしいと頼んだりもする。みんなかばんちゃんのことが大好きだから、誰もが喜んで引き受けてくれた。 今日はこうざんのジャパリカフェに向かう日。 あそこにはカフェを営むアルパカ、紅茶を飲みに来るトキに加えて、最近新しく増えたお客さんも何人かいるらしい。 なるべくたくさんのフレンズに来てほしいなら、カフェでアルパカさんに宣伝してもらうといいと思う、と提案したのはかばんちゃんだった。かばんちゃんは本当に頭がいい。 「どんなフレンズが遊びに来るのか、今から楽しみだね」とかばんちゃんに後ろから話しかける。かばんちゃんは「そうだね」と楽しそうに返してくれた。 どく、どく、どく、どく………… 血液が波打つ心臓。鼓動はまだ速いまま。 …………大丈夫。かばんちゃんはすぐ目の前にいる。 大丈夫……大丈夫…… 私は自分に言い聞かせ続ける。 10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:23:10.76 :PoruoH2d0 「ふわああぁ! いらっしゃあい! ようこそぉ、ジャパリカフェへ~」 「お久しぶりです、アルパカさん」 カフェの経営主であるアルパカは、以前バスの電池を充電しに来た時と何ら変わらない笑顔で、私たちを迎え入れてくれた。 「あんれぇ、二人とも久しぶりだねぇ! どうぞどうぞお、ゆっくりしてってぇ! これねぇ、新しい種類の紅茶なんだゆぉ〜。飲んで感想を聞かせてほしいなぁ~」 「ぜひ、飲ませてください!」 「あら、久しぶりじゃない。といっても、セルリアンの時以来かしら」 「トキさんもいたんですね」 「もしかして、また私の歌を聴きに来たの? ふふ、歌ならいつでも歓迎よ。ここに来るようになってから喉の調子がずっといいの」 「そのことなんですが……トキさん、その歌を、もっとたくさんのフレンズに聞かせたいと思いませんか?」 「……? それって、どういうこと?」きょとん 「へえ……なるほどね」 「PPPのみなさんも呼ぶ予定なので、コラボしてみるとかどうでしょう?」 「むふふ、いいじゃない。あのPPPと歌えるなんて光栄だわ。私の歌をフレンズに知ってもらうきっかけにもなるわね。お友達のショウジョウトキも呼ぼうかしら」 「ぜひそうしてください!」 「新しい紅茶持って来たよぉ~!」 トキとかばんちゃんが楽しそうに話していると、アルパカが新しく仕入れたという紅茶を持ってきた。 「いただきまーす!」 「あ、これおいしいです!」 「ほんとぉ? よかったぁ」 かばんちゃんの言葉はお世辞でもなんでもなく、本当においしい紅茶だった。何の植物を使っているのかは相変わらずさっぱり分からないけど、ちょっと嗅ぐだけで鼻の中にふわっと広がって、頭が痺れるようないい香り。 さっきまで冷えていた心も、紅茶が体の中からじんわりと温めてくれる。 11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:24:32.69 :PoruoH2d0 「本当だ。すごくおいしい!」 「えへへぇ、褒めてくれてうれしいなぁ」 「ではここで一曲。すぅーー…………みんなで飲む紅茶はあぁ~~とってもぉ~~~最高なの〜〜よぉ~~~~」 「ふう……どうだった?」 「とっても素敵な歌でした! 前に歌ってた時よりもさらに良くなっていると思います!」 「むっふっふ……こう見えてちゃんと毎日練習してるのよ。PPPとコラボするなら、この歌声もさらに磨きをかけなきゃいけないわね」 「すごーい! PPPとのコラボ、楽しみだね!」 「そうだね、サーバルちゃん」 「あははっ……」 紅茶だけじゃない。お店の雰囲気も、アルパカの嬉しそうな笑顔も、トキの歌声も。 今は何もかもが温かい。 (ずっとこうしていられたらいいのにな……) 「……それにしても、あなたも大変だったわね」 「えっ?」 「飲み込まれたんでしょ、セルリアンに」 どきっ 「怖くなかった? 仲間を守るために飛び込むなんて、あなたは勇敢なのね」 「そんなことないですよ。あの時は必死で……」 だめ。 やめて、それ以上は。 12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:26:48.07 :PoruoH2d0 「追い詰められた時に、獣の本性は現れるものよ」 「逃げずに立ち向かうなんて、かばんさんはすごいにぇ」 逃げずに立ち向かって、かばんちゃんはセルリアンに、 セルリアンに、 セルリアンに、 どく、どく、どく、どく、どく…… 「……サーバル?」 「……ぁ、え、何……?」 「あなた、顔が真っ青よ。具合でも悪いの?」 「ちが……何にもないよ……」 かたかたかたかた…… 「手が震えてるじゃない」 「違うの、これは……」 セルリアンの中に、 真っ黒い体に、 体に、 かばんちゃんが、 かばんちゃんが、 かばんちゃんが、 「気をつけてねぇ。セルリアンがいなくなったわけじゃないから、油断してるとまた食べ…………」 「いやあっ!!!!」 13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:29:12.82 :PoruoH2d0 がちゃん! 「わああっ!! た、食べ…………!?」びくっ 「はあっ……はあっ……はあっ……」 「サ、サーバルちゃん、大丈夫!?」 「はあ………………はあ…………」 私、今、何して……? ゆっくりと顔を上げると、さっきまで飲んでいた紅茶が床に飛び散り、ティーカップは破片となって辺りに散乱していた。 「あれまぁ、どうしたのぉ?」 「ご、ごめんなさい! カップを割っちゃった……」 「カップなんて他にもあるからいいんだよぉ。それより大丈夫? けがはない?」 「……はい…………」 「よかったぁ。ちょっと待っててねぇ、箒とちりとり持ってくるからぁ」 アルカパは席を立ち、奥の部屋に掃除道具を取りに行ってしまった。 取り残された三人の間に、ずっしりと重たくなった空気が立ちこめる。 「…………」 「…………」 「…………」 「さ……サーバルちゃん」 「……何?」 「その……あんまり気を落とすことないよ。誰にでも、こういう失敗はあるから……」 「うん…………そう、だね…………」 ぐっ、と毛皮を掴む手の力が強くなる。 きゅっ、と唇を噛む力が強くなる。 目を合わせるのも躊躇ってしまう。 視界の端でかばんちゃんが、なんて声をかけたらいいのか、迷っている顔を見せていた。 14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:30:34.26 :PoruoH2d0 そんなかばんちゃんを他所に、トキはぽつりと口を開く。 「……サーバル。あなたは何を見ているの?」 「……え」 「今のあなた、まるで別人よ。原因は分からないけど、ずっと何かに怯えた顔をしてる」 「あなたが恐れているのは、一体何なの?」 「っ…………!」 トキは鋭い。私が怯えていることに、もうとっくに気がついていた。 言うべき、なのかな。 確かに、今ここで全部吐き出してしまった方が、気分は楽になるかもしれない。 けど、ここで言ってしまったら、かばんちゃんは―― 「おまたせぇ! 箒とちりとり持ってきたよぉ~」」 私が口を開こうとするのと、アルパカが戻ってくるのはほぼ同時で、私たちの会話はそれきり打ち切られた。 15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:32:38.33 :PoruoH2d0 夢は、終わることを知らない。 正しく表すなら、夢は「中断」と「再開」を繰り返す存在。 現実を蝕み、食い尽くし、あたかもこちらが現実だ、さっさと認めろと言わんばかりに主張する。 一度目を開けて現実に戻っても、次に目を閉じれば、また夢はやってくる。 夢の中では絶望に叩きのめされ、夢の外ではまた見る夢への恐怖に怯える。 夢に支配され、頭の中をぐちゃぐちゃに掻き乱されている気分だった。 夢を見るようになってから、私はかばんちゃんの側を離れられなくなった。 セルリアンがいないかどうか不安で、常に周囲を警戒しなければいけなくなった。 精神は日に日に擦り切れ、まともに眠れなくなったことで体力も次第に衰えていく。 私は次第に追い詰められていった。 16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:35:01.08 :PoruoH2d0 「あ、あれ……ここは……?」 ここはどこ? どうしてこんなに真っ暗なの? セルリアンの中? 真っ暗な森の中? かばんちゃんはどこにいるの? 誰もいない。 何も聞こえない。 あるのはただ、一面に広がる黒一色。 真っ暗闇よりさらに黒い、真の暗黒。 「かばんちゃん、どこにいるの?」 私は問いかける。 かばんちゃんの声どころか、返ってくる音一つ無い。 嫌な予感がした。 「かばんちゃんっ!」 私は走った。 かばんちゃんの名前を叫びながら、どこまでも、どこまでも。 「かばんちゃん、どこにいるの!? 返事してーー!!」 「かばんちゃーーん!! 私だよーーー!!」 「かばんちゃーーん!!!」 けど、いくら走っても、ここは一面に暗黒が広がる世界。 私が発する音以外に、聞こえる音は何も無い。 17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:38:04.86 :PoruoH2d0 いつの間にか、私は涙を流して走っていた。 「かばん……ちゃん……っ…………どこにいるの……っ」 「かばんちゃんっ…………はあっ……はあっ……」 見た目はヒトの姿とはいえ、特徴はサーバルキャットの頃と変わらない。 長時間走るのは得意ではなかった。 「っ…………かばん……ちゃんっ……!」 「はあっ…………」 やがて体力は底をつき、私はその場でうずくまった。 「かばんちゃ……げほっ……げほっ……!」 「げほっ、げふっ、げっ…………かば、んちゃ、げほっ……!」 持ち前の大きな声さえ枯れ果てて、もう上手く出せなくなっていた。 「う、ううっ、ううぅ……」 八方塞がりになった私の目から、涙がぼろぼろと溢れ出る。 私は、かばんちゃんを守れない。 ……いや、私には到底無理なことだったのかもしれない。 「さばんながいど」なんて言って、ジャパリパークについて教えて、何も知らないかばんちゃんを助けてあげようと思っていたのに。 何も知らないのは私の方だ。 かばんちゃんを救う方法も。かばんちゃんがどこにいるのかも。私は何も知らない。何もできない。 悔しい。悔しいよ。 「かばんちゃん…………」 鎖が心に巻きついて、ぎゅうぎゅうと私の心臓を締めつけるようで、涙と嗚咽に濡れた私は、ただ泣くことしかできなかった。 18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:39:28.85 :PoruoH2d0 「…………サー…………ちゃん……」 「サーバルちゃん!」 「みゃっ…………!!」ばっ 飛び起きた私の目に映ったのは、ジャパリバス、かばんちゃん、そしてちっちゃくなったボス。 いつもの光景。 「おはよう、サーバルちゃん」 「あ、えっと……おはよう、かばんちゃん」 (また、夢……) 「サーバルちゃん、泣いてるの?」 「え?」 「だって、涙が……」 かばんちゃんに言われるまで気がつかなかったけど、私の頬には確かに幾筋かの涙が流れていた。 「な……泣いてないよ。これはその……あくびで出ただけだから」 「……そう」 もう何回目かも分からない嘘をつく。 「それじゃ、ここから早く出発したいから、バスに乗ろうか」 夢から目覚めた私はまだ夢うつつの状態で、言われるがままにジャパリバスに乗った。 昨日は確か、さばくちほーのフレンズに会いに行ったから……次に目指すのはこはんのはずだ。 19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:41:42.65 :PoruoH2d0 前の座席に座ったかばんちゃんは、静かにバスを運転し始めた。 「無理やり起こしちゃったけど、もっと寝ていたかった? 着くまでまだ時間がかかるから、バスの中で寝てていいよ」 「ううん、私は大丈夫だよ。むしろ――――」 起こしてくれて、ありがとう。 そう言いたかったけれど、直前になって口を閉じた。かばんちゃんに不思議に思われたくなかったからだ。 ジャパリバスの車内は、無人のように静かだった。私が何一つ話さなくなったから、かばんちゃんも声をかけづらいのだ。 かばんちゃんはボスの代わりにハンドルを握っているから、前より自由におしゃべりできないけれど、それでも私たちは、バスの中でいつもたくさんの話をしていた。 出会ったフレンズの話。 周りの景色の話。 ジャパリまんの話。 私が動物だった時の話は、かばんちゃんにしかしていない。 今は何も話す気が起きず、ただただ気怠い。 それに加えて、頭にずきずきと痛みを感じる。 バスの中で横になろうにも、頭の痛みは治まらず、余計に意識がそこに集中される。 それでも、寝たらまたあの夢を見ることになるので、そうなるよりはよっぽどいいのも確かだった。 「っ………………ううっ……!」 バスの中で横になってからしばらく経っても、痛みは一向に治まる気配はない。 ……それどころか、痛みが少しずつ増していっている。 頭を刃物で突かれるような痛みが、奥深くまで突き刺すような痛みに変わっていた。 「ぃ…………っ!」 言うつもりは無くても、痛みが走ると条件反射のように苦痛の声をあげてしまう。 両側から挟み込むように手を置いて、少しでも痛みから気を逸らそうと、私は必死になっていた。 20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:43:17.54 :PoruoH2d0 「――――サーバルちゃん」 かばんちゃんの声が聞こえて、私ははっと我に帰る。 こちらを向いてこそいなかったが、声色からは様々な感情が滲み出ていて、バスのハンドルを握る手に、僅かに力が入っているのが分かった。 「頭、痛いの?」 その問いが何を意味しているのか、この時の私には分からなかった。おそらく、かばんちゃんは私のことを試していたのだと思う。私が嘘をついているのか、ついていないのかを知るために。 「わ、私はへーきだよ。気にしないで……」 「っ…………!」 その時、私は確かに、かばんちゃんの息が詰まり、微妙に空気が揺れ動いたのを感じ取った。 やりきれない感情が鼻先まで詰まって、息をしようにも上手くできなくなる、そんな動き。 「……あのね、サーバルちゃん。今から言うことに、正直に答えてほしいんだけど」 「何?」 「サーバルちゃんは、どうして――――」 がたっ! 「うわっ!?」 「うみゃあっ!?」 突然、バスが大きく車体を揺らした後、やがて死んだように動かなくなってしまった。 「どうしよう、動かない……」 「何かあったの? バス死んじゃったの?」 「ドウヤラ、タイヤガ挟マッタミタイダネ」 外へ出て確認してみると、ボスの言った通り、バスの後輪が地面の溝にはまり、動けなくなっていた。 21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:46:06.41 :PoruoH2d0 「どうすればいいの、ボス?」 「バスヲ押シテ、溝カラ出スシカナイネ」 「ええ、できるかなあ……」 「二人でやればきっとできるよ、やってみよ!」 「え、でも」 かばんちゃんは心配そうな顔をしていた。 「サーバルちゃん、体調は……」 「私は全然平気だよ! だから早くやろうよ、ね?」 「う……うん」 かばんちゃんはまだ疑っているように見えたけど、私が無理やり押し通して、最終的に渋々承諾した。 「じゃあ、いくよ……せーのっ」 「「えいっ……!」」 難なくバスを押し出してかばんちゃんを安心させようと、私は持っている力を全部出すくらいの意気込みでバスの背中を押した。が、二人の努力も空しく、どんなに押してもバスは微動だにしない。結局、力を入れて始めてからほんの数十秒で、私たちはその場にどさっと座り込んでしまった。 「はああ……やっぱり、重たいね…………」 「み…………みんみぃ…………」 この調子じゃ、到底動かせそうにない……とため息をついていた、 その時。 ガサッ 「!」ぴくっ 「かばんちゃん、今何か音がしなかった?」 「え、そう? ぼくは何も聞こえなかったけど」 ガサッ ガサッ 「ほら、やっぱりするよ。ガサガサって……」 22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:49:44.94 :PoruoH2d0 「あ」 「サーバルちゃん……?」 「う……し……ろ……」 「……!!」 私もかばんちゃんも(そしてボスも)、お互いバスに夢中で全く気がついていなかった。かばんちゃんの背後から、セルリアンがわらわらと出てきていたのだ。 「セルリアン!……とりあえず、今はここから逃げよう!」 ガサッ 「!!」 逃げようとするかばんちゃんを遮ったのは、さらに別のセルリアン。背後だけじゃない。四方八方が埋め尽くされ、私たちは完全にセルリアンに取り囲まれていた。 数は少なくとも十体以上。さらに部の悪いことに、さばんなちほーでかばんちゃんが初めて出会ったのより少し大きいサイズの個体だらけだった。 「…………サーバルちゃん、悪いけど協力してくれるかな? ぼくが松明に火をつけてセルリアンを引きつけるから、そのうちに――――」 「――サーバルちゃん?」 「あ、あ、あぁ…………」 喉の奥に何かが詰まったように、私は上手く呼吸ができなくなった。バスの側面に背中がついて、これ以上動けなくなる。 じりじりと、少しずつ、確実に近づいてくる恐怖。無機質無感情な一つ目が、こちらを覗き込むように目を向ける。 怖い 怖い 怖い 怖い……! 「いや……いや、いや、いや、いや」 「サーバルちゃん、聞こえ――――」 「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 「サーバルちゃん!?」 23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:50:54.57 :PoruoH2d0 パニック状態に陥った私は、頭を抱え込んで、狂ったように叫び出す。 「いやっ!! いやああっ!! やだあああああぁぁぁっ!!!」 「サーバルちゃん、どうしたの!? 落ち着いて!」 「やだっ、やめてよっ!! かばんちゃんを奪わないでえぇっっ!!!」 「サーバルちゃん!!」 また、失う。 奪われる。 殺される。 目の前にかばんちゃんとセルリアンが並ぶだけで、あの映像が、あの巨体が、あの黒い黒い漆黒の闇が蘇ってしまう。 頭の中心はぐらぐらして、目は涙で濡れて、手足はがくがく震えて、恐怖に全身が包まれて。 頭がどうにかなってしまいそうだった。 かばんちゃんが私のもとへ駆け寄り、何か声をかけているらしいが、当の私はパニックになっていて何も聞こえない。 そうこうしているうちに、セルリアンは既にかなり距離を狭めていた。 かばんちゃんにも武器のたいまつはあったが、今から取り出しても間に合わない。 襲われるのを覚悟し、かばんちゃんが目を瞑ったその瞬間―― 三つの影が、私たちの上空を駆け抜けた。 24:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:52:44.41 :PoruoH2d0 ずばっ、ざしゅっと石が砕ける音がしたと思うと、一気に三体のセルリアンが倒れた。 「二人とも大丈夫ですか?」 「その声は……キンシコウさん! ヒグマさんとリカオンさんまで!」 「我々セルリアンハンターが来たからにはもう大丈夫ですよ! 今助けますから!」 ヒグマ、キンシコウ、それにリカオンの三人は、それぞれセルリアンの間を縦横無尽に駆け回り始めた。 そして、目にも止まらぬ速さで、次々とセルリアンに斬りかかった。 片方が注意を引き、その隙に片方が石を割るというように、見事な連携でどんどんセルリアンを倒していく。 あっという間に殲滅し、かろうじて生き残った数体は恐れをなして逃げ、セルリアンの影は辺りに一つも見当たらなくなった。 「ったく、世話かけさせやがって。私たちが通りがかってなかったら死んでたぞ」 「あらあら、二人の声を聞きつけて真っ先に助けに行ったのは誰だったかしらー?」にこにこ 「キンシコウ!!///」 「本当にありがとうございます。おかげで助かりました」 「お役に立てて良かったです。最近この辺でセルリアンが大量発生しているとの情報があったので、重点的にパトロールしてたんですよ」 ああ、よかった…… リカオンと話すかばんちゃんの余裕のある表情を見て、私は安堵の表情を浮かばせた。 でも、結局、私は何も出来なかった。 役立たずだ…… 25:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:56:45.49 :PoruoH2d0 「おい」 「…………」 「おい、サーバル!」 「えっ!?」 「おまえは大丈夫なのか?」 「あ、えっと…………私も大丈夫だよ。助けてくれてありがとう、キンシコウ、ヒグマ、リ――」 ずきっ 「!?」 「……サーバルちゃん?」 「いっ…………あぁっ…………!」 突然、激しい頭痛を感じた私は、あまりの痛さにその場から動けなくなった。 「うぅっ……」 どさっ ぐらりと足から崩れて、私の体はかばんちゃんにもたれかかる。 「さ……サーバルちゃん! サーバルちゃん!」 疲労、恐怖、焦燥感……さまざまなストレスが積もり積もった体は、もうとっくに許容量をオーバーしていたのかもしれない。 かばんちゃんの必死に叫ぶ声さえも、どこか遠い世界の出来事のようで。 私は再び目を閉じた。 夢は、いつまでも終わらない。 26:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 00:58:04.38 :PoruoH2d0 サーバルちゃんがおかしい。 それが可能性から確信に変わるまで、そう時間はかからなかった。 「ね、かばんちゃん。また手を繋いでいい?」 「うん、いいよ」 ぎゅっ 「…………?」 「っ……」 最初に違和感を感じたのは、手を握った時。 いつもより強く、僅かながら震えていたその手は、 まるで、ぼくが離れるのをひどく恐れているようだった。 「サーバルちゃん」 「…………」 「サーバルちゃん!」 「えっ…………どうかしたの、かばんちゃん?」 しばらく経つと、今度は意識を朦朧とさせるようになった。 目はうっすら半目で、考え事をしているのか、それとも何も考えていないのか分からない顔で、ただ何もない空虚を見つめていた。 話す時も、はきはきした声ではなく「へえ……」とか「そう、なんだ」と素っ気なく、やんわりした返答が返るだけ。 サーバルちゃんがサーバルちゃんじゃなくなったみたいで――――まるで何かに取り憑かれてしまったように見えて、ぼくは怖かった。 27:>>26からかばんちゃん視点です:2018/02/20(火) 01:01:02.68 :PoruoH2d0 「…………かばん…………ちゃん……」 「ん……?」 「いや……っ…………行か……ないで…………」 そして、寝ている時。 サーバルちゃんは何かにうなされていた。 体をがたがたと震わせて、何度もぼくの名前を呼び、目もとには涙をためていた。 左右の手は地面に向かって爪を立て、何かよりすがれるものを探しているように見えた。 うなされているサーバルちゃんに気づく度に、ぼくはサーバルちゃんの頭を優しく撫でる。そうすると、次第に彼女の呼吸も落ち着いてきて、普段通り眠れるようになる。 ぼくにできることはこれくらいしか無かった。サーバルちゃんのように夜行性じゃないから、知らない間にサーバルちゃんが苦しんでいることも、きっと何度もあるだろう。そう思うと胸が苦しくなった。 そういった日々が何日も続いて、ぼくは眠っているサーバルちゃんの顔を見ながら、密かに確信するようになった。 サーバルちゃんは怯えている。 それも、とてつもなく大きな何かに。 28:>>26からかばんちゃん視点です:2018/02/20(火) 01:03:36.73 :PoruoH2d0 「サーバルちゃん、しっかりして! サーバルちゃん!!」 ぼくにもたれかかったサーバルちゃんは、いくら声をかけても、一向に目覚める気配がなかった。 どうすればいい?どうしたらいい? 突然の事態に頭が混乱する。 「とりあえず、どこか安全な場所で休ませた方が良さそうですね……」 「……そういえば、この森を抜けた場所に『こはん』がありませんでしたっけ?」 「はい、ビーバーさんとプレーリードックさんが住んでいる……」 「そうそう、そこです。あそこならサーバルもゆっくり休めると思いますよ」 キンシコウはぼくに言った。こんな時でも、彼女は相変わらず冷静だ。ぼくにはその姿がとてもたのもしく感じられた。 「ただ、ここからだと少し距離がある場所ですけど……」 「それなら大丈夫です、ジャパリバスが……」 「…………そうだ、動けなくなってるんだった……」 セルリアンやサーバルに気を取られてすっかり忘れていたが、ジャパリバスはタイヤが挟まり、いまだに動けないままだった。このままだとどうすることもできない。 普段なら何かいい方法が思いつくのに、肝心な時に限って、何も良いアイデアが浮かんでこない。 「うう……どうすれば……」 「…………おい、リカオン。ちょっとこれ持っててくれ」ぱしっ 「えっ、別にいいですけど、何かするんですか?」 「……バスを押し出せばいいんだな?」 「えっ、ヒグマさん、やるんですか!?」 「あ、あまり無理しない方が……」 「つべこべ言うな。黙って見てろ」 ヒグマはバスの後部に手をかけると、両手に思いきり力を加え始める。 その途端、ずずず……と動きだし、バスはものの十秒ほどであっという間に押し出された。目の前の出来事に、キンシコウとリカオンまで驚いている。 29:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:05:20.06 :PoruoH2d0 「す……すごい」 「本当に一人で持ち上げるなんて……」 「こ、これくらい余裕だ。ほら、せっかく動けるようにしたんだ。さっさと行きな」 ぼくたちの反応に満更でもない顔を一瞬浮かべ、すぐさま慌てて目を背けたヒグマは、ぼくに声をかけて促した。 素直じゃないけれど、ぼくのことを思って言ってくれているのが伝わってきた。 「キンシコウさん、リカオンさん、ヒグマさん。本当にありがとうございました!」 「……じゃあな」 「またね、かばんさん。サーバルを助けてあげてね」 「気をつけてくださいねー!」 「はい!」 三人の優しいフレンズに見送られながら、ぼくはバスを走らせる。 目指す「こはん」まで一直線だ。 30:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:07:14.58 :PoruoH2d0 「……行っちゃいましたね」 「大丈夫ですかね、かばんさん」 「あの子は強いから、きっと大丈夫ですよ」 「一人であのでかいセルリアンに立ち向かったくらいですから、芯の強さは並大抵じゃ無いですよね。まあ、いくらなんでも無茶だとは思いますけど……」 「いいじゃない。大切な人を守ろうと全力で戦うなんて……」 「…………」 「……ヒグマ? どうかしたんですか?」 「…………うっ」くらっ 「ちょっ、ヒグマ!」 「はぁー……やっぱだめだ。キンシコウ、すまないが運んでくれないか」 「……やっぱり無理してたんですね」 「何も一人で持ち上げなくても……ぼくたちも手伝ったのに」 「……なんとなくな」 「え?」 「要は、かばんさんに少しでも良いところを見せたかったってことですね」 「そんなこと言ってないだろ!!」 「ふふ、冗談ですよ、冗談。担ぎますから、しっかり掴まっていてくださいね」 31:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:08:02.21 :PoruoH2d0 「…………あいつがあんなに落ち込んでるの、初めて見たな」 「かばんさんが、ですか?」 「ああ。出会ってから日が浅いってのもあるだろうが……それだけ大切な仲間が苦しんでいるのを見るのは辛かったんだろう」 「あいつは確かに強い。けどそれは、守りたいと思うフレンズ――サーバルがいたからなのかもな」 「……ふふ」 「……何がおかしいんだよ?」 「まさかヒグマが他人にそこまで同情するなんてね」 「なっ…………別にいいだろ。我ながら変だとは思うけど」 「それはおそらく、ヒグマにも守りたいと思うフレンズがいるんじゃないですか?」 「そりゃ、まあ……」ちらっ 「それって、もしかしてぼくたち……?」 「いっ、言わねーからな!!///」 「もう、素直じゃないなあ……」 32:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:08:52.15 :PoruoH2d0 再びバスに乗ったぼくは、ひたすら道を走り続ける。 ビーバー達の住む「こはん」はなかなか見えず、その焦れったさにぼくは苦しめられた。 時折、後ろで横になっているサーバルちゃんの声が聞こえてくる。 恐怖に怯え、苦しみを滲ませ、か弱く震えたその声が。 「サーバルちゃん……」 「アワワワワワ……」 「ラッキーさん、サーバルちゃんの苦しみを和らげられる方法はないんですか?」 「検索中……検索中……」 藁にもすがる気持ちでラッキーさんに聞いても、検索中という言葉を何度も繰り返すのみで、一向に回答は得られない。 残念だけど、こういう時に限って役に立てないのはラッキーさんも同じらしい。 一刻も早く、助けないと。 でも、もし、助けられなかったら? 答えのない問い、考えたくもない最悪の事態が頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。ハンドルを持つ手も自然と震えていた。 そうこうしているうちに、バスは森を抜けた。 33:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:09:59.80 :PoruoH2d0 ばっと太陽の光が差し込み、それに伴って視界が開け、バスはなだらかな丘に差し掛かった。あちこちに咲いた草花と、遠くにそびえ立つ雄大な雪山の景色は、何の煩いも無い人間が見たとしら、息を飲んで見とれるに違いない。 ……もっとも、今のぼくはその例外に当てはまるのだが。 バスを道沿いに走らせながら、ぼくは事故を起こさないよう注意しながら辺りを見回して、ビーバーさんたちが建てた、小さな木造の家が見当たらないか探した。 「……あっ、あれだ!」 森を抜けてからそう時間はかからず、ちょうど土地が低くなっている場所に、それなりに広い湖と、そのほとりに建つ家を発見した。 「あっ、かばんさんじゃないスか! お久しぶりっス!」 「ビーバーさん、助けてください! サーバルちゃんが……!」 「うええっ!? ど、どうしたっスか?」 事情をかいつまんで説明すると、ビーバーさんはぼくにサーバルちゃんが休めそうな木陰のある場所まで案内してくれた。ぼくはサーバルちゃんをバスからゆっくりと降ろし、落とさないよう慎重に運ぶ。 「サーバルちゃん大丈夫? ぼくの声、聞こえるかな?」 木の根元にそっと寝かせたサーバルちゃんに、ぼくは恐る恐る話しかけた。 「…………んん………………っ」 「……!」 「ぁ……かばん……ちゃん……?」 「サーバルちゃん……!」 「私………………あれ、ここは……?」 「サーバルちゃんはそこで休んでて。ぼくが水を持ってくるから」 ぼくはサーバルちゃんに代わって水辺へ向かい、両手になるべく多くの水を掬う。 それを彼女の口元まで持っていくと、少しずつ、ちろちろと舌を使って飲み始めた。 「ん……」 「そうそう、ゆっくりでいいからね……」 両手で作った器から水が無くなるまで与えたら、またぼくは水を掬いサーバルちゃんの目の前に持ってくる。 そんな行為を何回も、何回も繰り返した。実際は数回しかしてないはずなのに、ぼくにはそれが、とてつもなく長い時間に感じられた。 34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:11:26.47 :PoruoH2d0 「……ありがとう」 しばらくして、サーバルちゃんはぼくの方に目を向けて言い――またすぐに逸らす。 まだ本調子に戻ったとは言い難いが、顔つきはさっきと比べるとだいぶ良くなっていた。 ただ、その顔に浮かべる表情は……笑顔で取り繕うことすらも諦めた、衰弱しきった顔色だった。 「いいんだよ。ぼくはサーバルちゃんが良くなってくれれば、それで…………」 「うん…………」 「…………」 話すことが無くなると、またぼくたちは黙ってしまう。サーバルちゃんはあまり目を合わせようとしないし、ぼくは何も言い出せない。静寂を埋めるかのように、二人の間に風と水のせせらぎが通り抜ける。 ぼくはサーバルちゃんの横にぺたんと座って、彼女の髪をすっと撫でた。ぼくは苦しかった。サーバルちゃんが薄目になって気持ちよさそうな表情をするのが、唯一の救いだった。 こんなこと、今まで無かったのに。サーバルちゃんはいつも元気で、いつも笑顔で、いつもぼくを楽しませようとしてくれた。ぼくはそれにずっと支えられていたから、どんなに困難があっても乗り越えることができたのに。 今のサーバルちゃんは、まるで別人だ。 こんなに元気がなくて、疲れ果てて、弱った姿なんて、見たことがない。 ぼくは一体、どうすれば…… 「カバン、チョットイイカナ」 しばらくして、腕に巻かれたラッキーさんが、ぼくに向かって話しかけてきた。二人きりで話したいと言われたので、ぼくはサーバルちゃんから少し離れた場所に移動した。 「今日ハココデ一泊シヨウカ」 「えっ…………」 口を開けるやいなやの提案に、ぼくは驚いた。 もともとラッキーさんには、いままでに出会ったフレンズさんと再び会うために、これまで旅をしたルートをもう一度回ると予め伝えていたし、今日だってその予定のスケジュール通りに動いていた。 こんな状況とはいえ、ラッキーさんの方から予定の変更を提案するなんて、ぼくは思ってもみなかったのだ。 「サーバルノ苦シミヲ和ラゲルタメダヨ。カバント二人キリデユックリ過ゴスノガ、今ノサーバル二トッテ、一番気持チガ落チ着クダロウカラネ」 「ラッキーさん……!」 どうやら、さっきぼくがバスの中で見つけて欲しいと言った「サーバルちゃんの苦しみを和らげる方法」を、ラッキーさんはずっと探し、自分なりの答えを見つけてくれたみたいだ。 35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/02/20(火) 01:12:57.16 :PoruoH2d0 「……確かに、ラッキーさんの言う通りです。分かりました。ぼくがなんとかしてサーバルちゃんを元気にしてみせます」 「ヨロシクネ。ソレカラ」 ラッキーさんは一旦間を置いた。 「サーバルガ何ニ苦シンデイルノカ、チャント聞カナキャダメダヨ」 「……はい」 ぼくが返事をすると、二人の会話は終わり、辺りは再び静かになった。 そう、分かっていた。 サーバルちゃんが何かに怯えているということに。 それなのに、何度聞いても、サーバルちゃんは平気なふりをして答えようとしない。 『サーバルちゃんは、どうして――――』 バスの中で言おうと思って、途中で中断されたあの言葉。 『どうして、教えてくれないの?』 今思えば、とても残酷な言葉だ。 サーバルちゃんの言葉を信じていないということになるのだから。 それでも、サーバルちゃんが何かを隠しているのは、もはや否定する方が難しかった。 ぼくだって怖い。 サーバルちゃんでさえ怯えてしまうような何かに、果たしてぼくは立ち向かうことができるのか。 再び彼女の笑顔を取り戻すことができるのか。 それを考えると、ぼくはとても臆病な気持ちになってしまう。 けど、今はそんなことを考えてなんかいられない。 あんなにサーバルちゃんが苦しんでいるのに、何もしないなんてできるはずがない。 「かばん殿ー!」 「あ……プレーリーさん!」 「お久しぶりであります! 元気でありましたか?」 「ぼくは元気…………んむっ!?」 「ん……ぷはっ。プレーリー式の挨拶であります!」 「あ、ああ……そんなのありましたね……(いまだに慣れない……)」 「かばんさん! サーバルの様子はどうっスか?」 「ひとまずは落ち着いたと思います。まだ元気は無いですけど……」 読む →
2025年02月21日 21:00 梨子「月がきれいね」千歌「!」 元スレ 全てのレス 1: ◆UUDpSWciis:2017/12/06(水) 01:00:21.69 :4ZJiHYISO 今日の月が円くてよかったので初投稿です 梨子「そう思わない?」 千歌「う、うん」 千歌(これってまさか、告白!?) 読む →
2025年02月20日 18:00 【ガルパン】エリカ「弱くて強いあなたに」 元スレ 全てのレス 1: ◆saI1ZNzQKuJn:2018/03/18(日) 21:33:38.81 :TwK3jZfv0 審判「黒森峰フラッグ車行動不能!大洗の勝利です!」 小梅「あーみほさんはやっぱり強いなぁ。練習試合とはいえまた負けちゃうなんて。」 大洗女子学園と黒森峰女学園の何度目かの練習試合、 車数を大洗に合わせていることもあってかここ最近は大洗が連戦連勝。 黒森峰の新隊長である逸見エリカはこの結果に表情を暗くさせていた。 読む →
2025年01月23日 19:30 貴音「外は白い雪の夜」 元スレ 全てのレス 1: ◆dY9RWPXaDQ:2015/01/22(木) 00:12:34.32 :E6AlHoQN0 「貴音」 「いや、もう気にならないよ」 「これまで何度も待たされたしな」 「はは、わかってるよ。事務所が変わってから、忙しくなったもんな」 「俺が、担当を外れてから…」 読む →
2025年01月21日 12:00 美希「恋人」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/01/21(水) 23:21:05.88 :GQ59esKU0 美希「…そんなに悲しい顔しないでほしいの」 美希「これで、もう会えなくなるわけじゃないんだし」 美希「出会ったこと、後悔してるなんて思ってないよ?」 美希「ミキも、楽しかったよ。もちろん、別れるのは悲しいけど…」 美希「でもプロデューサーは、これからもミキのプロデューサーなの」 読む →
2025年01月19日 21:00 真「結婚しようよ」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/01/21(水) 22:11:42.04 :GQ59esKU0 真「ねぇ、結婚しましょうよ」 真「…そんな、鳩が豆鉄砲食らったような顔しなくたっていいじゃないですか」 真「私はプロデューサーのこと、ずっと好きでしたよ?」 真「プロデューサーはどうなんですか?」 真「へへ…。その答えが聞きたかったんです」 読む →
2025年01月18日 21:00 千鶴「恋する凡人」 元スレ 全てのレス 1: ◆ksPx5/M7Wg:2016/01/12(火) 23:16:37.24 :eTT4YJw50 ・松尾千鶴ちゃんのSSです ・百合注意 2: ◆ksPx5/M7Wg:2016/01/12(火) 23:17:04.02 :eTT4YJw50 いつからだろう。 意識し始めたのは。 読む →
2025年01月18日 12:00 女「私は好きだよ、アンタの事」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/01/10(日) 23:31:08.78 :YSY4iPZSo 友「……またここにいたんだ」 女「なんだ、お前か」 友「……今、何か隠した?」 女「お前が来るなら別に隠さなかったよ」 友「……身体に悪いよ」 女「言われなくても分かってるさ」 友「……もう」 読む →
2025年01月13日 07:00 絵里「冬がくれた予感」 元スレ 全てのレス 1: ◆/mZLy8NPNI:2017/01/18(水) 19:51:32.42 :VUvytcqj0 初投稿です。のぞえりです。 BiBiの「冬がくれた予感」の世界観です。 2: ◆/mZLy8NPNI:2017/01/18(水) 19:52:51.26 :VUvytcqj0 12月24日 アキバの街角 「寒い・・・。」 今日は聖なる夜、クリスマスイブ。 街はカップルで溢れ、みんな笑顔で幸せな時間を過ごしている。 それはもう、見ているこっちが思わずにやけてしまうほど甘々だ。 こんなこと言っていたら勘違いされるかもしれないから一応私の名誉の為に言っておくが、私にだって恋人は居る。 彼女の名は東條希。音ノ木坂学院の三年生。 私のクラスメイトだ。 女子校で出会い、惹かれて、告白して、付き合った。 世間から見たら異常かもしれないが、 私達は互いに心の底から愛し合っている。 ラブラブでお似合いな二人(ふうふ)なのよ。 今日、その希と一緒に居ないのには訳がある。 と言っても大した訳ではない。 私がつまらない意地を張っただけ。 ・・・何であんな事したのかしら。 読む →
2025年01月12日 22:35 女「私さ…」男「そっか」 元スレ 全てのレス 1: ◆nRrk0j/cII:2017/01/09(月) 22:54:55.66 :k5oh5eLS0 もっと触って もっと確かめて 私の存在を証明して それができるのは貴方だけ それが分かるのは私だけ ほら雨が降り出した この雨みたいに混ざり合おう ずっと一緒に 永遠に 読む →
2025年01月12日 07:00 【ガルパン】 紗希「…梓…涙」 梓「…紗希…涙」 元スレ 全てのレス 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/01/27(金) 00:53:33.99 :IMwBNu+gO 3 梓 『いつからだろう…』 『紗希は極端に口数が少ない、そのうえぼんやりとした見た目から頼りない印象を与えがちだ、でも他の装填手と比べて決して技術が劣るものではなかった。』 『無駄のない動き、確実な装填は砲手との間合いを狂わせることはない。それは車長として頼もしい心の支えだった。』 『なにより支えとなったのは紗希は一度も愚痴をこぼしたことがない。戦車の中が「暑い」「寒い」「うるさい」「狭い」こんなことは日常会話の中だったが紗希からは一言も聞いたことがない。』 『試合や練習で早々と撃破されてしまった時は「何やってんのよ!」とメンバー全員に怒鳴られたが、紗希は違った。心配そうな目で私を見たあと、優しくそっと微笑んでくれた。』 『目が合えばいつも優しく微笑んでくれる。』 『試合前、その笑顔は緊張で潰されそうな私をいつも救ってくれた。何度その笑顔に救われたことか?』 読む →
2025年01月08日 21:00 【ラブライブ】雪穂「夕暮れのプリンセス」 元スレ 全てのレス 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/01/09(月) 02:22:50.36 :mmYkrG800 ~ 昔、お姉ちゃんとことりさんと海未さんと一緒に、隣町に遊びに行ったことがある。 でも、道にはぐれてしまった。 雪穂『どうしよう海未ちゃん。ことりちゃん とお姉ちゃんとはぐれちゃったよ!』 海未『大丈夫です。雪穂は私が何があっても 守ります。』 雪穂『でも、道に迷っちゃったよ?』 海未『大丈夫です。確か、ここを通れば…』 そう言った海未さんは、誰よりもかっこよくて… しばらくついていくと、 海未『ほら、見てください!雪穂!この道、 覚えているでしょう?』 読む →
2025年01月06日 23:00 女「理由なんてさ…」男「そっか」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/01/04(水) 00:20:43.86 :Zo82c8PU0 鳥が一羽カゴの中 飛びたそうに外を見る 鍵はかかっていないけど 開ける者は誰1人としていない 他者を拒んだ鳥は悔やんだ しかし遅かった 誰も来ないまま鳥は羽を失った 羽ばたくことを恐れたから 自ら羽をもいだことすら 自覚できていなかった 読む →
2025年01月03日 07:00 (デレマスSS)渋谷凛「涙の雨」 元スレ 全てのレス 1: ◆stww/BS79E:2016/01/03(日) 20:28:44.00 :A+8yXyVa0 デレマスSSです。 注意事項としまして、このSSは百合です。 苦手な方はお気を付けください。 2: ◆stww/BS79E:2016/01/03(日) 20:30:14.34 :A+8yXyVa0 いつも通りのレッスンの後だった。 「ねぇねぇ、しぶりん♪」 いつもの明るい声で未央が話しかけてくる…でも内容はきっと… 「未央?どうしたの?」 私はその先の言葉を分かっていながら未央の言葉に付き合う。 「にっひっひー…最近、ある方とお熱い仲だと噂なのですが…真相はどうなのですかな~?」 イタズラな笑顔での質問……その内容は、ここ数日ずっと繰り返されているものだ。 私は、何度も無視をしようとしていたけど……流石にそこまで出来なくて…… 「またその話?今日だけで3回目なんだけど?」 でも、やっぱり少し飽き飽きしてしまって、不機嫌だと分かるように伝える。 「ちゃんと答えてくれれば終わるんだよー!」 未央は1回目や2回目と同じように怒ったようなしぐさで答えを求めてくる。 『暖簾に腕押し』ってこういうことを言うのかな…… 「そんなの私の勝手でしょ」 さっきより、少し強めに突き放そうとしてみる。 けど…… 「そ・れ・に!うら若き乙女としては、コイバナは気になるものなのだよ!」 やっぱり暖簾に腕押しだった…… なら、話題を変えてみようかな? 「それより未央、次のライブの準備は大丈夫?」 「この未央さまはばっちりである!」 「追加のリクエスト曲もあるけど、そっちも?」 「そっちは……きっと大丈夫!」 何とか話題は変わったかな? 私は、その未央の返事の間に荷物をそそくさとバックに詰めて、 一気に帰り支度を終わらせる。 「じゃあ、また明日」 そして、一瞬の隙を見てレッスンルームの控え室から出て行った。 「あ、しぶりーん!逃げないでよーー!!」 何とか……今日も逃げられたかな? そんなことを考えながら事務所の問の前まで来た。 読む →
2024年12月30日 18:00 【ミリマス】百合子「「私は卑怯だ」」杏奈【グリマス】 元スレ 全てのレス 2: ◆LaAqvoH0NE:2015/12/26(土) 02:48:45.61 :bIU819BG0 私には好きな人がいます。 それはとても大切な仲間。 一緒に仕事をするときも、一緒にゲームをするときもいつでも仲良くしてくれる大切な友達。 前から変なもやもやが心にかかっていました。 読む →
2024年12月28日 18:00 「待ち合わせ」 【ミリオンライブ】 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/12/24(日) 21:48:21.97 :icNS8jpJO 君にもメリークリスマス 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/12/24(日) 21:51:41.13 :Ze4I81eZO 12月24日、東京。 街は色づき、待ちゆく人も楽しそうな顔つきを心ないししている気がする。 そう、今日はクリスマス・イブ。 駅前からちょっと離れた、少しだけ駅の喧騒から離れた場所。 道路ぞいに街路樹と電灯が交互に立っている街路樹の下で。 読む →
2024年12月26日 21:00 千歌「ラストクリスマス」曜「特別な君へ」 元スレ 全てのレス 1: ◆PChhdNeYjM:2017/12/25(月) 02:05:04.91 :C2hlEurIO ――― ― 千歌「ハー……」 曜「うぅ、寒い」 千歌「息が白いねー」 曜「なんでこんな日にバイト入れちゃったかなあ」 読む →
2024年11月29日 07:00 幸子「月がきれいですね」 元スレ 全てのレス 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/11/25(土) 23:26:53.58 :8Me0A/7o0 P「ん…そうだな…」 幸子「……まあ、月よりボクのほうがカワイイですけどね!」 P「きれいとカワイイは違うと思うぞ」 幸子「そこはカワイイって言ってくださいよ!」 P「ハイハイ、カワイイカワイイ」 幸子「その適当なのやめてください!」 P「いやあ、確かに今日の月は奇麗だな」 幸子「露骨に話題を変えないでくださいよ!」 読む →
2024年11月27日 18:00 【艦これ】提督「うちの金剛は処女ビッチ」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/08/04(金) 23:54:02.20 :INjWsPWK0 艦これもSSも初心者です。拙い文ですがご了承下さい。 この提督の性別は男です。 金剛「ヘーイ!提督ゥー!貴方の愛しの金剛が帰ってきたデース!」バーン 提督「金剛……ドアは静かに開けようね」カキカキ 金剛「うぅ……少しでも早く会いたくて……スミマセーン……」 「それより提督ゥー……二人きりの提督室……今なら何をしても大丈夫デスヨ?」タニマヨセ 提督「執務中だから無理かなぁ」カキカキ 金剛「む……でも提督の主砲はそんなになって……ないデスネ……」 提督「そろそろティータイムの時間だろ?比叡達が待っているんじゃないか?」 金剛「そういえばそうデシタ!悔しいデスケドこの続きはまた今度にするデース!」バーン 提督「……」フゥ…… 読む →
2024年11月08日 22:30 女「好きだよって…それだけ」男「そっか」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/12/02(金) 23:35:45.97 :byq5W9Mg0 恋をした。 好きだった。 それはもう何年か前の話。 私が恋をした彼は不思議だった。 そこにいるようでいないような、 どことなく哀しげな雰囲気で、 またあるいは貴族のように気高く、 ときどき天使のようにふわっとしていた。 彼の持つ世界観がそうさせていたのだろう。 読む →
2024年11月08日 21:00 マキ「ヘッドセットの中で君を探す」 元スレ 全てのレス 1:ixItZzdx0:2016/12/02(金) 22:54:46.50 :7S1DcAfN0 昼下がりの教室 午前の授業での疲れと昼食で満たしたお腹のせいで睡魔と格闘しているものが大半で マキ「ううー...」カクカク この少女もまた、その一人である マキ「・・・」 マキ「...!」ハッ マキ(ヤバイ、今寝てた) マキ(くそう、こんな時にゆかりんと同じクラスなら...) 読む →
2024年10月20日 12:00 【ブルアカ】カヨコ√に入った 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/19(土) 19:16:14.14 :FPzf9Wlv0 そろそろ出ようと扉に手をかけたところで、カヨコは立ち止まった。 玄関の外から慌ただしい物音が徐々に近づいてきていた。沈黙し、手を戻して、数歩だけ扉から下がった。 ドタバタとした足音が扉の前で止まって、 「ああ、もう…鍵、鍵…!」 慌てた声と身をまさぐる音が扉の向こうから聞こえてくる。 「開いてるよ」 カヨコが声を掛けると、扉の向こうにいる人物が押し黙った。 すぐに扉が開くと、驚いた表情のアルが顔をのぞかせた。 「カ、カヨコ…?今日は、有給じゃなかった…?どうして事務所にいるの?って、それどころじゃなくて!」 言いながら、焦った様子で事務所に入り込んで、カヨコの横を慌ただしく通り過ぎる。 「今日、三人で仕事してたんじゃなかったの?」 「そうなのよ…!今もう、大変で…!」 自席に駆け寄るアルを目で追いながら、扉に背を向ける。 パーカーのポケットに手を突っ込んで、ドタドタと忙しない物音に近づいた。 読む →
2024年10月15日 19:30 乃莉「線香花火の君へ」 関連SS なずな「打ち上げ花火の君へ」 乃莉「線香花火の君へ」 元スレ 全てのレス 2: ◆K27FRRVqmQ:2016/10/14(金) 20:46:21.33 :v/vb2/8JO 玄関のチャイムが鳴った。 私はヘッドホンを外すと、一旦パソコンをスリープにしてから玄関に向かった。 宅配便とか、そんなんだったら別に付けっぱなしでもいいんだけど。 でも、手が勝手に電源ボタンを押していたのは、なんとなく予感めいたものがあったからなんだと思う。 これから楽しいことが起こるような、そんな予感が。 なずな「乃莉ちゃん」 乃莉「あ、なずな」 ドアを開けると、なずなが立っていた。 読む →
2024年10月15日 07:00 なずな「打ち上げ花火の君へ」 関連SS なずな「打ち上げ花火の君へ」 乃莉「線香花火の君へ」 元スレ 全てのレス 2: ◆K27FRRVqmQ:2016/10/12(水) 18:19:47.57 :KohKIjyCO 視界の端で、何かが光ったような気がした。そちらを向くと、携帯のライトがゆっくりと赤く点滅している。 画面を見ると、乃莉ちゃんからメールが来ていたみたい。着信時間は……4時ってことは、もう1時間くらい過ぎている。 急ぎの用だったらどうしよう。ちらっとそんなことを考えたけれど、本当に急いでるなら階段を上がってうちに来ればいいだけだから、 ちょっとメールに気付かなくても大丈夫かな、なんて思いながら、乃莉ちゃんのメールを開いた。 近くで花火大会あるみたいだけど、なずな、行ったことある? 花火大会かあ。 最後に行ったのは、確か中学の時に友達と。それからだいぶ前に家族で行ったこともある。 そういえば、そろそろ花火大会の季節だっけ。窓の外を見ると、水色の空をバックに真っ白な入道雲が伸びていた。 何回か行ったことあるよ とりあえずメールを返してから、ちょっとそっけなかったかなあ、と少しだけ後悔してしまった。 返事、遅くなってごめんね、とか。 花火大会っていつなんだっけ?とか。 それから……もしよければ、一緒に行きたいな、なんて。 話したいことはもっともっとあるのに、どうしてうまく言えないんだろう。 読む →
2024年10月14日 20:00 にこの選択 元スレ 全てのレス 2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/10/12(日) 00:33:39.03 :hmlKwuKq0 にこ「ずっと前から大好きだったの」 にこ「私と付き合ってください」 勇気を出して告白した でも 希「ごめんなさい」 希「にこっちの気持ちは嬉しいけど…本当にごめんなさい」 最初からわかってた 絶対に届かない存在だということはわかってた だってあの2人に付け入る隙なんかないでしょ 所構わず見せつけてくれてたもんね なにをするにもいつも2人一緒 こいつら夫婦かってぐらいベタベタして 私の気持ちも知らないで 読む →
2024年10月11日 19:30 にこ「タイムカプセル」 元スレ 全てのレス 1: ◆/CKI6UlDEfWN:2014/10/10(金) 08:58:06.27 :EVKxcKDW0 にこ「花陽、昨日のあれ、見たわよね?」 花陽「もちろん! もう流石って感じで……」 にこ「そうよね、歌もパフォーマンスも超一流で」 花陽「まさに!」 にこ「まさに?」 にこぱな「「生きる伝説!」」 にこ「よね!」グッ 花陽「うんっ!」グッ 読む →
2024年10月07日 19:30 ちなつ「ごらく部」 元スレ 全てのレス 2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/10/14(火) 00:13:01.10 :Sc7juh7n0 「おーす、みんな!」 いつものように、大きな声をあげながら襖を開ける。この二年間で染み付いた行為だ。 私は、この瞬間がとても好き。授業が終わってから、みんなの集まる部室に行くのが、たまらなく好きだった。 「あれ、今日はちなつちゃんだけ?」 綾乃に絡まれていた所為で来るのが遅くなったから、当然一年生の二人はもういるものだと思っていた。しかし、この和室を見渡す限りあかりはいない。トイレにでも行っているのだろうか。 「私だけで悪かったですね。あかりちゃんはお姉さんとデートがあるって帰っちゃいましたよ」 ちなつちゃんが、不貞腐れるように言った。 読む →
2024年10月07日 12:00 【ミリマスSS】琴葉「日記」 元スレ 全てのレス 1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/10/05(日) 16:06:30.69 :Yr6qmuxh0 10/5 今日は私の誕生日だった。劇場のみんながプレゼントをくれるのもあってとても嬉しかった。…美也や瑞希ちゃん、麗花さんのはよく分からなかったけれど。 そうそう、今日から日記を付けることにした。というのも、プロデューサーに誕生日なんだから、何か新しいことを始めてみないか?と言われたからだ。 なぜ日記にしたのか私も良く分からない。 もしプロデューサーからの誕生日プレゼントが日記帳だったらそれを使いたかったけれど、仕方ないから昔お母さんから貰ったものを使っている。 これから忙しくなってくるけど、毎日短くてもいいから続けていけたらいいな。 読む →
2024年10月06日 21:00 貴音「KisS」 元スレ 全てのレス 2:以下、名無しが深夜にお送りします:2014/10/05(日) 23:17:05 :WyjljKcU 響「はいさーい!」彼女の元気な声が事務所に響く響「あれー?貴音一人か」貴音「なにか不都合でもあるのですか?」響「そんなことないぞ!貴音と二人っきりだから嬉しいなーって思ってさ」貴音「ふふ」元気なぽにーてーるを撫でると、えへへと笑うでも私が抱いている感情は彼女のそれとは違う 読む →
2024年09月30日 19:30 佐久間まゆ「遠く届かなかったあなたへ」 元スレ 全てのレス 2: ◆9YfKA67h5g:2017/06/19(月) 01:45:35.58 :gET7koTZ0 佐久間まゆ「プロデューサーさん、お疲れさまです」 P「おう、お疲れさま 今日もいいライブだったぞ」 どうもこんにちは、佐久間まゆです 今日も一日のお仕事を終えて大好きな運命の人のもとへ まゆ「プロデューサーさん、今日もご褒美は無しですか?」 読む →
2024年09月19日 22:40 女「もう線香花火かあ」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/07/28(火) 23:05:08.16 :+ZQfrwmDO 男「もうちょっと買ってこようか?」 女「ん、いいよ。やろ、線香花火」 男「うん」 女「……あっ」 男「消えたね」 女「暗いねえ」 読む →
2024年09月16日 18:00 【学マス】ことね「記憶喪失ぅ?」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/09/16(月) 14:33:35.27 :McaBdwJ20 ことね「…じゃー、本当の本当に記憶喪失なんですか?」 p「医師が言うには…階段で転びそうになった人を助けようとして、と」 ことね「それで自分が落ちてたら世話ないじゃないですか」 p「俺に言われましても…」 ことね「…」 p「あの…すみません。一過性だろうとは診断されているのですが」 読む →
2024年09月12日 22:30 女「多分…好き」男「そっか」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/01/01(日) 09:11:43.57 :yElWUePI0 とある国にお姫さまと王子さまがいました。 「ねえねえ、好きってどんな気持ちなの?」 お姫さまは王子さまに聞きました。 「君は僕のことが好きじゃないの?」 王子さまは少し残念そうでした。 「うーん…きっと好きだけど…よく分からないの」 王子さまは少し嬉しそうな顔をしてお姫さまを抱きしめました。 「どう?」 お姫さまはちょっとびっくりしながら答えました。 「あったかい」 王子さまは満足そうに言いました。 「これで良いんじゃない?」 お姫さまは王子さまを抱き返しました。 「うん、このあったかさだけで十分ね」 2人が一緒に暮らすのは、もう少し先のお話です。 読む →
2024年09月09日 18:05 ガヴリール「サターニャ、好きです!」 元スレ 全てのレス 1:か ◆aDRXZRX9R2:2017/05/05(金) 15:10:43.51 :QLvvP3vjo 「好きです」 なんて言葉が私の口から出てくるとは。 放課後、校舎裏。天使と悪魔が一人ずつ。 ドキドキが止まらない。 あいつの顔が見られない。 私の顔を見せたくない。 あいつが口を開いた。 「ごめん」 「あんたのことは好きだけど……」 「そういう目では見てなかったっていうか」 「でもこれからも友達でいましょう」 これが私の最初の失恋。 読む →
2024年09月08日 22:40 【ゆるゆりSS】きもちに寄り添う数秒間 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/09/07(土) 22:38:07.60 :49voo3/L0 7月23日。 下校時刻になっても、まだ昼間のように陽が高い夏の日。うかつに外に出ることは危険と叫ばれるほどの気温になる昼間に比べ、夕方はほんのちょっぴりマシになるが、それでもじっとしているだけで汗が噴き出してくるような暑さの中。 ばらばらと校舎から出てきた七森中の生徒たちは、なるべく日陰になるような道を探しながら帰宅の途についている。高温多湿の過酷な環境の中にあって、それでも生徒たちの表情が一様にどこか明るいのは、期末テストも終わり、明日の終業式でいよいよ夏休みに突入するという解放感のせいだろうか。 そんな中、ある少女たちだけは、晴れやかな心とは程遠いトゲトゲした気持ちを互いにぶつけあって、大げんかを繰り広げていた。 「だからあれほど言ったんじゃないの!!」 「向日葵には関係ないじゃん!!」 周囲の視線など気にも留めずに大声で反発しあいながら家路についている、向日葵と櫻子。いつものことといえばいつものことなのだが、今回がいつもよりもだいぶ激しめな雰囲気であったことは、周囲の生徒たちにも伝わっていたかもしれない。 きっかけは些細なことだった。しかしその些細なことが積み重なり、別の些細なものまで降り積もってきて、やがて看過できないものとなり、先に向日葵の導火線に火がついて爆発する。その爆発に櫻子が反発し、お互いに一歩も引かずにケンカ状態となる。 「もう知りませんわ! 勝手になさい!」 「あーあー勝手にしますよ! じゃあね!」 家の前までそんな調子でいがみ合い、もうしばらくは顔も見たくないとばかりにふんっと顔をそむけ、二人はそれぞれの家に帰っていった。 古谷家では、家の前の喧騒をききつけ、何事かと驚いた楓がとてとてと玄関まで姉を迎えに行っていた。大室家では、「ただいま」も言わずにバンと扉を開けてリビングに入ってきた櫻子の怒り顔を、花子が気まずそうに見つめている。 「……また、ひま姉とケンカしたし?」 「ふんっ!」 カバンをその辺にほっぽってずんずんと冷蔵庫に行き、冷えた麦茶を飲む。胸にいっぱいになってしまった怒りと暑さへのいら立ちが、冷たいものと一緒におなかの奥底に流れていって少しだけ落ち着き、そしてその空いた部分にもやもやとした嫌な気持ちが渦巻いていくのを、櫻子はなんとなく感じていた。 ――また、ケンカしちゃった。 幼い姉のそんな複雑そうな横顔を見て、「どうせ櫻子が悪いんだから、さっさと謝ってきた方がいいし」とでも言おうかと思っていた花子は、じっと言葉を飲み込んだ。 読む →
2024年09月07日 07:00 大石泉「真紅の彼女へ」 元スレ 全てのレス 2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/09/07(水) 14:50:11.44 :BpZnOb+g0 「あー……」 「なんやいずみん、溜息なんてついて。幸せ逃げるで?」 わざとらしく私がついた溜息に、亜子が反応した。 今日のレッスンは終わり、もう帰るだけ。 そう、帰るだけなのだ、本来ならば。 だのに帰らないというのは、それ相応の理由があるわけで。 「んー、いや何となく。……何と言うか、緊張するなぁって」 心此処に非ずと言うか、ざわつくと言うか。 読む →
2024年09月05日 19:30 北条加蓮「Departure and Arrival」 元スレ 全てのレス 2: ◆eBIiXi2191ZO:2016/09/05(月) 22:56:06.37 :JLEZG+30o 『大丈夫、貴方が育てたアイドルだよ』 あの時、私は確かにそう言った。 はじめてのライブ、はじめてのステージ、プロデューサーがあまりに私を心配するから。 今にも泣きそうな、そんな顔をされたからつい。 すんなりと、言葉になったの。 あの時から、始まった。 そしてその気持ちは今も、続いてる。 読む →
2024年08月13日 18:00 ガヴリール「どうしようもない駄天使と天使」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/08/03(木) 23:09:49.46 :ZX6dXRvro ガヴリール(勢いよくドアが閉まり、枕の羽根が舞い上がる。今夜はついにラフィを怒らせてしまった) ガヴリール(どうやら、私がサターニャから貰った目覚まし時計をずっと使ってるのが気に食わないらしい) ガヴリール(ラフィと付き合い始めて一ヶ月が経つ…けど今までこんなこと無かったのにな……) 読む →
2024年08月12日 19:30 塩見周子「何かが始まる予感」 元スレ 全てのレス 2: ◆ukgSfceGys:2018/08/16(木) 21:22:57.26 :dMSTkW/G0 最初は何とも思っていなかった。 家出して途方にくれる中に出会った時も。 その流れでアイドルにスカウトされた時も。 実情を話しその日の宿がないと言った時も。 『ホテルがどこも空いてないから』という理由で家に泊めてもらった時も。 そして本当にアイドルになれた時も。 『スカウトしたから』という単純な理由であたしのプロデューサーになってくれた時も。 無事にデビューが出来て褒めてくれた時も。 お礼を言ったら「周子は元が良いからな、流石だよ」と褒めてくれた時も。 別に何とも思っていなかった。 読む →
2024年07月31日 22:35 「お前最近あの女子とよく遊んでるな?」「もしかして好きなのーw?」 元スレ 全てのレス 1:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2021/01/02(土) 16:32:03.862 :/wdh4Rxs0.net 男「ハ、ハァ!?全然そんなんじゃねえし!あいつのことなんて好きでもなんでもねえわ!」 「んなムキになんなよw」 「あ!」 女「……」 男「あ、これは、その…違くて…」 女「…」ダッ 男「ま、待って」 男「……」 「あーあ」 「俺しーらね!」 読む →
2024年07月25日 19:30 小指から赤い糸【ラブライブサンシャイン】 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/07/25(水) 00:14:08.80 :O9cIDFeR0 私にとって指とは唯一自分の中で誇れるところだった 幼少時からピアノを習っていた私は箱入り娘のように育てられた 特に手は 料理はおろか裁縫すらさせずに高校生まで過ごししてきた そのかいあって会う人、関わる人には例外なくこの手を褒められた そして私はそれが誇らしかった.... その日までは 読む →
2024年07月17日 19:30 杏「白馬の王子様」【ガルパン】 元スレ 全てのレス 1: ◆bXmsmX83I2:2016/07/18(月) 23:29:47.41 :1JwP3Qi50 杏「運命は自分で切り開くもの」 杏「高校の3年生までは私そう思っていた」 杏「けど、世の中はそんなに甘くなかった」 杏「現実は変えられなかった」 杏「廃校という未来を…私一人では変えることは出来なかった」 読む →
2024年07月11日 20:00 佐久間まゆ「縫い止めるより、射止めたい」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2016/10/06(木) 18:06:57.29 :LkNd+ILY0 今日はありがとうございます。 まゆのお願いを、わがままを聞いてくれて。 朝からのレッスンをずっと、一日付きっきりになって見ていてくれて。 忙しい中時間を割いて、作って、用意してくれて。 まゆの傍へ、離れず添っていてくれて。 ありがとうございます。 嬉しかったです。 一日、プロデューサーさんと一緒にいられて。 まゆがレッスンで汗を流す姿を――貴方のアイドルとして、貴方のまゆとして、階段を昇る姿を見ていてくれて。 とっても嬉しかったです。 それに、こうして。 それだけでも――レッスン中のまゆと一緒にいてほしい、っていうそのお願いを聞いてもらえただけでも嬉しいのに。 こうして、送ってまでくれて。 プロデューサーさんの隣。プロデューサーの傍。プロデューサーの横へ。 プロデューサーさんの運転する車の中、まゆをその助手席へ座らせてくれて。 こんなふうに二人きりで隣へ添いながら、プロデューサーさんと同じ空間の中を許されながら、寮まで送ってもらえるなんて。 まゆ、嬉しいです。 とても、とっても、嬉しいです。 手を伸ばせば触れられる。 静かな吐息が聞こえてくる。 恋しくて愛おしい貴方が感じられる。 プロデューサーさんと一緒にいられて、こうして見つめて語りかけながら隣にいられて、嬉しい。 嬉しくて、そしてとっても、幸せです。 読む →
2024年06月22日 18:00 タプリス「ちいさなちいさな、恋の音」 元スレ 全てのレス 1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2017/06/20(火) 17:42:29.11 :tFC+Tw8y0 最初は、自分でも気づかないほどちいさな音でした。 からだの奥のほうから、とくん、とくんと響く、ちいさな恋の鼓動の音。 最初はだいきらいだったはずのあの人。素敵だった先輩を駄天使にさせた、いつも騒がしい人。 …でも本当は誰よりも優しい人。 私の心は、だんだんその人に惹かれていきました。 読む →
2024年06月16日 07:00 藤原肇「いつかあなたが良き人に」 元スレ 全てのレス 1: ◆OW1CEojZt0DI:2017/06/15(木) 00:13:13.42 :5igoU/+K0 懐中電灯を携えて、ふたり、満天の星空の下で 2: ◆OW1CEojZt0DI:2017/06/15(木) 00:15:16.86 :5igoU/+K0 P「…綺麗だな」 肇「ええ、本当に…」 P「でも、良かったのか? せっかくご家族だけじゃなく近所の人たちまで集まってくれたのに、俺とふたりで散歩なんて」 肇「母が「片付けで忙しいからPさんとふたりで話してきなさい」と。こんな機会もあまりありませんし、私もPさんとお話したかったので…ご迷惑でしたか?」 P「そんなわけないだろ。嬉しいよ、肇」 肇「ふふ…」 P「どうした?」 肇「Pさんが名前を呼んでくれるのが嬉しいなって」 P「あー…そう言われるとなんか恥ずかしいな。やっぱり「藤原さん」に戻しても」 肇「…」プクー P「はは、冗談だよ」 読む →
2024年06月01日 22:30 綾乃「船見さんがこんな人だったなんて」 元スレ 1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/11(日) 23:33:45.11 :Cop85BtbO 綾乃「ねぇ、まだみんなには内緒にしてるの?私達のこと」 結衣「え、う、うん」 綾乃「どうして?」 結衣「は、恥ずかしくて…」 綾乃「…私と一緒にいるのが恥ずかしいの?」 結衣「ちがうよ!ただ、なんて言うか、その…」 綾乃「ふふ、もう…照れ屋なんだから」 結衣「うぅ…ごめん///」 読む →
2024年05月21日 21:05 ラフィエル「結婚後!?」 関連SS ラフィエル「婚約!?」 ラフィエル「結婚後!?」 元スレ 全てのレス 1:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2017/05/22(月) 01:05:16.262 :gLdE28P3H.net ----魔界---- サターニャ「ああこの空気、久しぶりね。もうかれこれ半年ぶり位になるのかしら」 ラフィエル「こ、ここが魔界、ですか……」ゴクリ ラフィエル「なんというか、禍々しい空気でいっぱいですね。少し怖いです……」 サターニャ「?」 サターニャ「(なんかかなり元気ないわね、さっきまではあんなにうれしそうだったのに)」 サターニャ「ああそっか、あんたはここに来るの初めてだもんね。大丈夫? そんなに怖いならちょっと休憩してもいいけど」 続きです、前のやつ読んでないと意味わからないかも 読む →
2024年05月20日 22:30 男「暇だから元彼女にメールでも送るか」 元スレ 全てのレス 1: ◆PiqUzW26Xw :2013/11/12(火) 05:53:24.57 :1LWKDDg60 男「何か眠れないな・・・」 男「でもやることもないしなぁ」 男「そだ元カノにメールでもしてみるか」 男「『最近どうしてる?』っと・・・」 男「・・・」 男「なかなかメール来ないな」 カ゛チャ 男(ん?ドアが開いた音?) 男「友達でも入ってきたのかな?」 元カノ「そうね。最近は最悪。あんたのせいで」 男「・・・」 読む →