1: ◆9CUtNS6CZQ:2018/02/05(月) 16:00:45.69 :rngiQ8NE0
もみの木の林にとって代わり高層ビルが乱立するこの都会には不似合いに思えてしまうような雪がしんしんと降っていた。
ヒトと車がせわしなく行き交うこの東京というジャングルでも深夜も10時となると流石に幾分か静けさを思い出したかのように運んでくる。
煩すぎず、静かすぎず、月が綺麗な空気の冷える夜は、騒がしい音楽を好むボクでも今の気分には打って付けだったようだ。
「ハァ・・・」
溜息が白い靄となって瞬く間に霧散していった。さっきまで自分のモノだった熱と水蒸気があっという間に消えていく様に今の自分を重ねてしまって嫌になる。
苛立ちは足振りとなって現れ、寄りかかる屋上の安全策にブーツのかかとをぶつけ、軋んだ音を奏でた。
―――ボクの悪い癖だ。どうにもむしゃくしゃすると何かに当たってしまう。
そう思うと途端にばつが悪くなって屋上を見渡す。・・・といっても、この時間に好き好んで此処にいるヤツなんてボクくらいなものか。
ホッとしたような胸のすくような寂寞に襲われたような、ないまぜになった感情が胸の中で渦を巻く。落ち着け。激情に身を任せると碌なことにならないと、ボクはあの時学んだはずだろう。
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もみの木の林にとって代わり高層ビルが乱立するこの都会には不似合いに思えてしまうような雪がしんしんと降っていた。
ヒトと車がせわしなく行き交うこの東京というジャングルでも深夜も10時となると流石に幾分か静けさを思い出したかのように運んでくる。
煩すぎず、静かすぎず、月が綺麗な空気の冷える夜は、騒がしい音楽を好むボクでも今の気分には打って付けだったようだ。
「ハァ・・・」
溜息が白い靄となって瞬く間に霧散していった。さっきまで自分のモノだった熱と水蒸気があっという間に消えていく様に今の自分を重ねてしまって嫌になる。
苛立ちは足振りとなって現れ、寄りかかる屋上の安全策にブーツのかかとをぶつけ、軋んだ音を奏でた。
―――ボクの悪い癖だ。どうにもむしゃくしゃすると何かに当たってしまう。
そう思うと途端にばつが悪くなって屋上を見渡す。・・・といっても、この時間に好き好んで此処にいるヤツなんてボクくらいなものか。
ホッとしたような胸のすくような寂寞に襲われたような、ないまぜになった感情が胸の中で渦を巻く。落ち着け。激情に身を任せると碌なことにならないと、ボクはあの時学んだはずだろう。