2020年03月20日 20:00 T「尻穴が孕みたがってるんだ・・・・ 出してくれ Kェー!!」 元スレ 1:◆LeBgafvn/6 :2020/03/03(火) 22:27:53 :g73oNLiO0.net K「ムウッ・・・・!!」 T「ハアッ・・・・!!」 バキバキバキッ!! T「ヒュウ、やるねぇ」 T「流石は野獣の肉体と天才的頭脳を持つ男スーパードクターK様ってワケかい」 K「軽口を叩いている場合か。それより、どうしてこんなことを」 T「中で話してやるよ。ああ、穴はその板で塞いどけ。外からやったように見せてな」 読む →
2016年08月10日 00:25 小野寺「ニセコイの逆襲」 元スレ 全てのレス 2: ◆LeBgafvn/6:2016/08/09(火) 23:16:31.27 :SrR5nxCV0 ~ 天駒高原 約束の場所 ~ 楽「俺も好きだよ、小野寺」 楽「ずっとずっと好きだったんだ、中学の頃から」 楽「ずっと……小野寺の事が好きだった……」 小野寺「……うん、ありがとう」 小野寺「さっき……分かった」 小野寺「嬉しかったよ……凄く……本当に……」 小野寺「……」 読む →
2016年06月26日 12:05 寿也「僕に君の子供を妊娠することはできない」 元スレ 全てのレス 1: ◆LeBgafvn/6:2016/06/25(土) 23:24:37.86 :DwUT03Vz0 ガチャ 吾郎「……トシ」 寿也「……吾郎君、清水さんとの婚約、おめでとう」 吾郎「……う、うは、はっはは」 吾郎「悪ィなトシ。別に隠してたわけじゃなかったんだけどよォ」バンバンバン 吾郎「こーゆーのってよ、昔からの知り合い程言い出しづらいっつーか……分かンだろ、お前なら」 吾郎「だから……」 バァン!!! 読む →
2015年10月12日 18:55 つぐみ「二人のニセコイ」 元スレ 全てのレス 1: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:43:31.84 :8HeZ4CUl0 ・前作(本編とは関係ありません) 万里花「所詮はニセコイ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402231432/ 2: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:45:21.20 :8HeZ4CUl0 ※前作の最後で「再投稿する際は別のトリップにする」旨予告していましたが、そのトリップキーをなくしてしまいました。 よって前作のキーをそのまま使って投稿しています。悪しからずご了承ください。 3: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:46:21.23 :8HeZ4CUl0 楽「……じゃあさ」 楽「千棘の鍵って、元々はつぐみのモノだったりして、って言うのはどうよ」 小野寺「―――」 万里花「………」 るり「………」 集「………」 楽「……ごめん、俺、そんなに変なこと、言っ、たか?」 小野寺「あっ……いや、その、うーん」 万里花「………」 るり「……一条くん、あなたって、ほんっとに……」 4: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:47:04.16 :8HeZ4CUl0 羽「……ちなみに、どうしてそんな発想に至ったのか、教えてくれるかな?」 小野寺「ちょ、羽先生!!」 楽「いやあ……ホント、根拠のある話じゃないんだけど」 楽「俺達って、小さい頃皆で仲良く遊んでたんだろ?」 羽「うん。今鍵を持っている子達と、楽ちゃんとつぐみちゃん。間違いなく小さい頃に遊んでるわ」 楽「それで、鍵が4本登場する絵本に、皆うすぼんやり覚えがある、と」 万里花「……ええ」 小野寺「……うん」 楽「そうなると当時”絵本ごっこしよう”と言う話になって、何かの形で鍵が実際に用意された可能性はあると思う」 楽「俺らの親が用意したとか、たまたま俺らで持ってたおもちゃの鍵を持ち寄った、とかな」 るり「……」 5: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:48:07.58 :8HeZ4CUl0 楽「しかし男の俺はともかく、女の子が5人に対して、絵本に出てくる鍵は4本。お話通りにするには、鍵が一本足りないだろ?」 楽「……でも、故意に仲間外れを作ったりするのは、多分しなかったと思うんだよな」 楽「例えば、ジャンケンか何かで負けて、鍵をもらえなかった千棘が」 楽「皆の前では平気そうなツラして意地張って」 楽「夜中こっそり、一人でべそべそ泣いてるところを見つけたつぐみが」 楽「自分の鍵を譲ってやった絵面とか、なんかしっくりくるっつーか」 小野寺(どうしよう、ちょっと来る) 万里花(来ますわ) るり(来るわね) 羽(来るかも) 6: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:48:49.46 :8HeZ4CUl0 集「まあ……だけどお前、ひとつ失敗してるよ」 楽「?」 集「そーゆー話は……」 プルプルプル 千棘「何ぁにをお話しになられていたのかしら、ダーリィン……?」 集「関係者の耳に触れそうもないところで、するべきだったってコトで」ニコ 楽(終わった) 千棘「アンタねぇぇぇぇええええ!!!!」 7: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:49:50.56 :8HeZ4CUl0 パシィッ!! 8: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:50:43.19 :8HeZ4CUl0 楽「!?」 つぐみ「うっ……」 千棘「つぐみ!? 一体何処から」 つぐみ「……本気を出しすぎです、お嬢」 千棘「……」ムスッ 千棘「……何で、ジャマ、するのよ」 つぐみ「……」フゥ つぐみ「落ち着いてください」 つぐみ「いくらコイビトだからと言って、無尽蔵に痛めつけてよいものではありません」 千棘「……主のコイビトに実銃ブッ放す奴が、ずいぶんなお説教ね?」 つぐみ「……」 つぐみ「私は特別な訓練を受けていますから、大丈夫なんです」 10: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:51:43.96 :8HeZ4CUl0 千棘「……ふんっ」プイッ つぐみ「お嬢っ」 千棘「おじょう、じゃないわよ」 千棘「どうせちょっと……」 千棘「……ダーリンにおだて上げられたから、のぼせ上がってるんでしょ」 つぐみ「」ボッ つぐみ「いいいいいや、私は、べべべべべべ別にそんなっ」 千棘「いーわよ、いーわよ。どうせ私はワガママだも~ん」 楽「お、おい……ハニー。今のは俺が悪かったからさ。つぐみにまで当たることないだろ」 千棘「……」プチン 千棘「別に、当たってなんか、ないッ!!」ダダダダダッ つぐみ「あっ、お嬢っ!!」ダダッ 11: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:53:06.04 :8HeZ4CUl0 羽「っ、と」キュッ つぐみ「わっぷ……せ、先生」 羽「……つぐみちゃん」 羽「追わないで欲しい気持ちになることも、人生にはたくさんあるのです」 つぐみ「しかしっ」 羽「ねっ?」 つぐみ「……」 つぐみ「そういう、ものですか」 12: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:54:06.24 :8HeZ4CUl0 るり「……うかつよ、一条君」 楽「面目ない」ズーン 万里花「落ち込まないで下さいまし、楽様」 万里花「面白いことを閃いた時、つい周りに吹聴したくなるのは、人間(ヒト)の抗えざる性(サガ)ですもの」 楽(橘と同レベルか……) 小野寺「ちゃんと千棘ちゃんに、謝らなくちゃだめだよ?」 楽「ああ。今日の夜にでも電話して、明日にでも謝っておくよ」 キーン コーン カーン コーン 13: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:54:58.54 :8HeZ4CUl0 万里花「……っ、と。次の授業が始まってしまいますわ。舞子さん、行きましょう」 小野寺「えっ」 楽「えっ」 集「えっ」 万里花「……行きましょう」グイグイ 集「う、ウ、ウヘアアアァァァァ……」 小野寺「……」 楽「……」 羽「……」 羽「……マジコイ?」 楽・小野寺『違うと思います』 14: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:55:41.19 :8HeZ4CUl0 『二人のニセコイ』 15: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:57:51.47 :8HeZ4CUl0 ~ 夜 集英組 一条楽 自室 ~ 楽「悪かった」 千棘『……もう、分かったって言ってるでしょ。切るわよ』 楽「だけど、俺のせいでお前、つぐみとも」 千棘『いいから。夜も遅いし……また明日、ね』 楽「だから、ちょっと待っ」 千棘『おやすみ』プッ ツー ツー ツー 楽「……」 楽「……」バフッ 楽(……くそっ) 楽(今かけ直しても、こじれるだけか……) 16: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:58:53.98 :8HeZ4CUl0 楽(……) 楽(そもそもの原因は俺だから、あんまり強く出れねーけど) 楽(いくらそっち方面に疎い鈍いっつったって、つぐみに”鍵の話”を嗅ぎ回られるっつー事は) 楽(ニセコイ関係を疑っているつぐみに、格好の材料を与えるってコトで) 楽(その危険性、アイツは本当に分かってんのかな……) 楽(……) 楽(……) 楽(つぐみ、か) 楽(出会った頃は、刺々しいばっかりで、ホント俺の命なんざ紙くずぐらいに考えてる奴だと思ってたけど) 楽(なんにでも一生懸命な奴で、いちいちカッコイイし、それでいて可愛いところもあるとか、だんだん分かってきて) 楽(人としても一本筋が通ってて、魅力的、っつーか……) 17: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 20:59:33.26 :8HeZ4CUl0 楽(……) 楽(……) 楽(……もし) 楽(……さっきの想像が真実で) 楽(つぐみが、約束の女の子だったとしたら……) 楽(……) 楽(……) 楽(ないない) 楽(あれだけ千棘を敬愛していて、忠節を捧げていて、大事にしているアイツだ) 楽(俺を含めて、千棘以外の存在を好きになる姿が、全然想像できねー) 18: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:00:17.02 :8HeZ4CUl0 楽(……) 楽(……) 楽(……そーだよな) 楽(仮につぐみが約束の女の子だったとして) 楽(今のつぐみは、俺のことなんて、絶対相手にしねーだろ) 楽(……そもそも) 楽(千棘にとは言え、鍵を他人にやっちまってるってことは、約束自体大事に思っていないと予想できるわけで……) 楽(……っつーかそもそも、今の俺は小野寺が好きで、千棘と付き合ってて、橘の婚約者で、羽姉と同居していて……) 楽(……) 楽(……) 楽(……)ハァ 楽(……) 楽(……寝よ) 19: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:01:14.25 :8HeZ4CUl0 ~ 同刻 桐崎邸 桐崎千棘 自室 ~ 楽『悪かった』 千棘「……もう、分かったって言ってるでしょ。切るわよ」 楽『だけど、俺のせいでお前、つぐみとも』 千棘「いいから。夜も遅いし……また明日、ね」 楽『だから、ちょっと待っ』 千棘「おやすみ」プッ ツー ツー ツー 千棘「……」 千棘「……」 千棘「……」バフッ 20: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:01:54.38 :8HeZ4CUl0 千棘「……」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ 千棘(ああああああああああああああああああああ)ゴロゴロゴロ 千棘(何なのよもおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)ジタバタジタバタ 千棘(うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)ジタバタガスガス 千棘「……っはーっ、はーっ、はーっ……」 千棘(……) 千棘(……) 千棘(……私が) 千棘(本当は鍵なんて持ってなくて) 千棘(何かの情けでつぐみから鍵を貰ったってぇ?) 21: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:02:42.26 :8HeZ4CUl0 千棘(……) 千棘(ありえるわよクソッタレ!!!!!!!!!)ズガンズバン コン コン クロード『……お嬢?』 千棘「……ジャマしないでくれる? 今良いトコなの」 クロード『……程々になさいませ』 千棘「はいはい……」 千棘「……」 千棘(……) ジャリ 千棘(……元々、この鍵だって、日記と一緒にクローゼットへブチ込まれてただけのモンだし) 千棘(日記にはそれらしいコトが書いてあるけど、この鍵がその時のモノって確証はそもそもないし) 千棘(大体日記の内容って真実なの? 日記の男の子ってホントにアイツ?) 千棘(全然覚えてないけど、当時の私がつぐみを男の子と勘違いしてたって可能性は?) 22: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:04:01.77 :8HeZ4CUl0 千棘(……考えれば考えるほど、ワケわかんない) 千棘(一体、10年前に何があったっつーのよ……) 千棘(……) 千棘(……) 千棘(……でも) 千棘(仮に、10年前のコトが全部分かったとして) 千棘(約束の女の子が、私じゃなかったとしたら) 千棘(……例えば、つぐみだったとしたら) 千棘(ニセモノのコイビトでしかない私は) 千棘(どうしたら、いいんだろ……) 23: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:05:25.03 :8HeZ4CUl0 ~ 同刻 鶫誠士郎 セーフハウス ~ つぐみ(……) つぐみ(……流石に同じ家には、帰りづらかったけれど) つぐみ(こうして一人になると、やはり少し、寂しいな……) つぐみ(……)ゴロン つぐみ(……) つぐみ(……全く) つぐみ(お嬢のかんしゃくも、今に始まったことではないが) つぐみ(自分が標的になるのは、やはり気持ちの良いものではない) つぐみ(……下手をすれば、日本に来てからは、初めてではないか?) つぐみ(何故かと言えば……) つぐみ(一条、楽) つぐみ(奴がお嬢と付き合い始めてから、お嬢の怒りはおおむね全て、奴に向いていたから) 24: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:06:10.15 :8HeZ4CUl0 つぐみ(……怒りだけではない) つぐみ(間近で見ていた私には、確かに分かる) つぐみ(お嬢の喜び、悲しみ、怒り、興味、全ての感情が、今は奴を中心に回っている) つぐみ(……本当に、馬鹿な話だ) つぐみ(一条楽とお嬢が、ニセモノのコイビトかも知れない、などと) つぐみ(あのお嬢が、ここまであけすけに心を向けている男の、何がニセモノだと言うのだろう) つぐみ(お嬢は間違いなく、一条楽を、愛しているはずだ) つぐみ(……) つぐみ(だが) つぐみ(一条楽の方は、どうなのだろうか) つぐみ(他の女に、少しでも懸想するようなことが……) つぐみ(……あったならば血煙を吹かせて縊り殺してやるところなのだが) つぐみ(……) 25: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:07:24.93 :8HeZ4CUl0 つぐみ(……) つぐみ(……)ハァ つぐみ(……自分自身に嘘をついても、しょうがない、か) つぐみ(……)ゴロン つぐみ(……そう言えば) つぐみ(結局、”鍵”とは何なのだ) つぐみ(考えてみれば、おかしな話だ) つぐみ(一条楽が記憶を無くした時に、二人の間に、鍵を通じた因縁があったとは聞いているが) つぐみ(今日の、お嬢の怒りぶりは、普段のそれとは恐らく違っていた) つぐみ(あのように重い一撃、今まで……) 26: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:07:57.29 :8HeZ4CUl0 つぐみ(……) つぐみ(そうだ、やはりおかしい) つぐみ(10年前に、お嬢と一条楽の間に鍵の因縁が生まれていたとしたら) つぐみ(それは二人がコイビト同士になった時点で、既に成就されているではないか) つぐみ(何故お嬢は、既に果たされているはずの約束に、固執しているのだ?) つぐみ(それも普通に、ではない。まるで、縋ってさえいるような……) つぐみ(……) ゴロン つぐみ(……そして、小野寺様をはじめとする、鍵を持つ他の者の存在) つぐみ(……仮に、彼女らの存在が、お嬢の心をかき乱しているのだとしたら……) つぐみ(……) 27: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:08:40.89 :8HeZ4CUl0 ~ 翌日 凡矢理高校 昼休み 校舎裏 ~ 万里花「……それで、私ですか?」 つぐみ「……ああ」 万里花「素直にお話しするとでも?」ニコ つぐみ「……こういう言い方は、貴様……お前相手でも、失礼で悪いとは思うんだが」 つぐみ「他に、当てがなくなってしまったのだ」 万里花「あら」 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ つぐみ「お嬢、その、昨日は……」 千棘「……いいのよ、ホント」 千棘「確かに昨日の勢いじゃ、アイツに怪我させちゃってもおかしくなかったし」 千棘「止めてくれてありがと、つぐみ。嫌な思いまでさせちゃって、ごめんね」 千棘「あ、ミルクティもありがと」ズズッ つぐみ「お嬢っ……」パァァァァ 28: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:09:23.85 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……」 つぐみ「」ブンブンッ つぐみ「」キリッ つぐみ「ところでお嬢、昨日の話にも出ていた、鍵の話なんですが」 千棘「ブッフゥッ!?」ブボッ つぐみ「お嬢!?」 千棘「グホッ、ゲホッ、あ、な、な、なななななんでもないのよつぐみ」 つぐみ「なななななんでもない訳無いでしょう!? 今すっごい吹いてましたよ飲み物」 千棘「いーいーかーらーほっとけよ!!!!」ダダダッ つぐみ「……」 つぐみ(……?) ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ つぐみ「小野寺様」 29: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:10:01.41 :8HeZ4CUl0 小野寺「あ、つぐみちゃんおはよう。あの後大丈夫だった?」 小野寺「……って、心配することないか。千棘ちゃんとつぐみちゃん、仲良しだもんね」 つぐみ「ええ、ありがとうございます」ハハ つぐみ「ところで、その時に話題になった鍵の件なんですが」 小野寺「」ビクッッ つぐみ「……小野寺様?」 小野寺「あー……その、ごめんね、つぐみちゃん、その辺はその、私からは、のーこめんとって言うか……」 つぐみ「そんな事は無いでしょう。それとも」 つぐみ「……私の耳に入るのは、不都合な話、と言う事になるのでしょうか」キラリン 小野寺「っ……」 つぐみ「……」 小野寺「……ご」 つぐみ「ご?」 小野寺「ご」 小野寺「ごめんなさい!!」ダダダダダッ つぐみ「……」ハァ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ つぐみ「羽先生、鍵のことでご相談が……」 30: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:10:46.21 :8HeZ4CUl0 羽「んー? どこの鍵の話かな?」 つぐみ「……どこの鍵、かは、よくわからないのですが」 羽「えっ」 つぐみ「えっ」 羽「……んーっとね、私はまだ新任だから、自分の教室の鍵くらいしか、預かっていないんだけど」 つぐみ「ああ、ええと違います。先生方がお持ちの鍵の話です」 羽「……当直用の下着とか、お風呂セットくらいしか、入ってないわよ?」 つぐみ「えっ」 羽「えっ」 つぐみ「……ああー、先生方の職員用ロッカーの話ではなくて、先生やお嬢が持っている鍵の話で」 羽「……」 羽「……」 羽「……えーとね」 つぐみ「……誤魔化さないで、お聞かせ願えますか」 羽「バレちゃった」エヘ 31: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:11:24.25 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……先生は、ご存知なんですよね」 つぐみ「お嬢と小野寺様と、橘万里花と先生がお持ちの鍵のこと」 羽「……」 羽「んー」 羽「教えてあげません」ニコ つぐみ「……知っていることは、否定しないのですか」 羽「うん。先生はお姉さんですから、皆より少しだけ昔のことには詳しいわ」 羽「でも、皆が知らないことを、つぐみちゃんにだけ話すのは平等じゃないもの」 羽「先生は、えこひいきをしません」 羽「だから、ひみつです」ピッ つぐみ「……しかし」 つぐみ「一条楽を含め、当時を知る者達は、皆その鍵について、何らかの見識を持っているようです」 つぐみ「私だけ何も知らないというのは、不平等とは言えませんか」 羽「……んー、まあ、そうなんだけどね」 つぐみ「ではっ」 32: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:12:04.49 :8HeZ4CUl0 羽「それでもダメ、かなー」 つぐみ「……何故、ですか」 羽「……私は先生だけど、当事者でもあるからね」 羽「ライバルに塩を送るようなコトは、できるだけしたくないかな、って」ニコ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 万里花「……なるほど」 万里花「けれど、それだけではないのでしょう?」 つぐみ「……」 万里花「もし、あなたが本当に、鍵の真実を知りたいだけならば」 万里花「私以外にも、話を聞くべき人間が、ちゃんといるではありませんか」 つぐみ「……」 万里花「正直にお答えください」 万里花「どうして、楽様を避けて、私に話を聞きに来たのですか?」 33: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:12:58.27 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……」 万里花「言えないのならば、私からお話しすることもありません」クルッ 万里花「ごきげんよう、鶫誠士郎さ」 つぐみ「それが一条楽の、かつての想い人に繋がる話だと思っているからだ!!!!」 万里花「」ビクッ つぐみ「……」 つぐみ「私とて、鈍感ではあるかも知れんがバカじゃない」 つぐみ「10年前に出会った者達が、同じように鍵を持っていて」 つぐみ「一条楽がその中心に居ることぐらいは、理解している」 つぐみ「今日、皆に話を聞いて……疑念が確信に変わった」 万里花「……確かに、そのような発想をお持ちなら、楽様に直接話を聞くのは憚られますわね」 万里花「でも、それで私に話を聞きにくるのは、やはりおかしいのではありませんか?」 万里花「自らの主のコイビトの、恋愛遍歴を探ろうだなんて。余程趣味が悪いのではないかしら」 34: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:13:50.06 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……」 つぐみ「……今、一条楽はお嬢のコイビトだが」 つぐみ「仮に、過去にその、鍵を持った女と、コイに落ちたことがあったとするなら」 つぐみ「そして私が、本当はその一人だったかもしれないと言われてしまえば……」 つぐみ「……」 つぐみ「……」 万里花「……」ザッ つぐみ「……気になるんだよっ!!」 万里花「」ピタ 万里花「……へえ」ニヤ つぐみ「……」 つぐみ「……あ」カァァァ 35: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:14:37.51 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……っあ、う、え」 つぐみ「……や、やっぱり、い、いい」 つぐみ「都合がいいようだが、この話は忘れてくれ、橘万里花。私も二度と、このような世迷い事はっ」アセアセ 万里花「お断りします」ニコッ つぐみ「っ……!!」 万里花「せっかく協力して差し上げる気になったのに、今更待ったはナシでしょう?」ニコニコ つぐみ「……む、ぅ……」 万里花「最初から」 万里花「正直に気持ちを話してさえ下されば、意地悪をするつもりなど、無かったんですのよ」 つぐみ「……どうして」 万里花「だって貴女は、私にそっくりだから」 万里花「放ってなんて、おけませんわ」ニコ つぐみ(傷ついた) 36: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:15:12.77 :8HeZ4CUl0 万里花「……」 万里花「お話は、しますけれど」 万里花「今日の放課後、時間はございまして?」 つぐみ「……おそらく、大丈夫だ」 万里花「ならば少し、お付き合いくださいまし」 万里花「……おこづかい、いっぱい持ってきてくださいね?」 つぐみ「……ああ」 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ つぐみ「……それで」 つぐみ「何故」 37: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:15:47.32 :8HeZ4CUl0 ~ 同日 放課後 駅前繁華街 ~ つぐみ「こんな所に集まらねばならんのだ」 万里花「何故って」 万里花「お買い物をするために、決まっているじゃありませんの」 つぐみ「」 万里花「?」ニコ つぐみ「……私は、鍵の話をしてくれるよう頼んだはずなのだが」 万里花「……」 万里花「……」ギロッ つぐみ「」ビクッ 万里花「……きさん」 万里花「にやがんなかよ」 つぐみ「」 38: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:16:29.91 :8HeZ4CUl0 万里花「殺し屋の世界がどがんひゅーなかトコか知らんけんね」 万里花「ばってん、女にとって恋愛ちゅうモンは命がけやが」 万里花「そげん硝煙臭い、げど臭い格好せんと」 万里花「コイをするならしこらんかい、コラ」 つぐみ「……すみません」 つぐみ(……言葉の意味は全然分からんが、とにかく凄味があって怖い) 万里花「……」 万里花「」ギラッ 万里花「そこな隠れよるきさんら」 ???『』ビグウッ 万里花「はよ、こーきぃ」 万里花「そげな隠れとっとも、一緒に居ねればどんげもならんわ」 ???『ど、ど、どうしよう小咲ちゃんこれ完全にバレてるんだけど』 ???『凄い怒られてるのは分かるんだけど何言ってるんだか全然わかんないよ、どうしよう千棘ちゃぁん』 つぐみ「……」 つぐみ(……女は、怖いな……) 39: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:17:47.69 :8HeZ4CUl0 ~ 駅前デパート 6階 レディースファッションエリア ~ マネキン(ドヤァァァァァァ) ディスプレイ(キラァァァァァァァ) 店員(イラッシャイマセェェェェェ) つぐみ(……橘万里花の勢いに圧倒されたとはいえ) つぐみ(……こんな女々しい空間に、私が足を踏み入れようとは……)ゲッソリ 千棘「……万里花、アンタねぇ」ヒソヒソ 小野寺「……あのね、私達、鍵のことでちょっとつぐみちゃんと」ヒソヒソ 万里花「ぁあ゙!?」ギロリ 小野寺「生きててすみません」 万里花「……」 40: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:18:37.08 :8HeZ4CUl0 万里花「……こほん」 万里花「今日は私、つぐみさんにお洒落を学んでいただこうと、買い物にお誘いしましたの」 万里花「主の桐崎さんが、ちゃんと彼女と向き合っていたら」 万里花「必要の無いコトだったかも知れませんけど、ね」 千棘「何よソレ、私は……」 千棘「……」 千棘「……」ギリッ 千棘「……そんな事より、どういう風の吹き回しよ」 千棘「何であんたが、つぐみにこんな真似」 万里花「……そうですねぇ」 万里花「私なりの、つぐみさんへのお答えとでも、申しておきましょうか」 千棘「……」 千棘「やっぱ、ワケわかんないんだけど」 万里花「……」ニコ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 小野寺「えっとえっと」 41: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:19:19.42 :8HeZ4CUl0 つぐみ「え、はあ、まあ」 小野寺「……」 小野寺「……えっと」 小野寺「つぐみちゃんは、普段はどんな所で服を買ってるの?」 つぐみ「……ビ」 小野寺「ヴィトン!?」 つぐみ「備品を」 小野寺「ビヒン!?」 つぐみ「あ、その、勤め先の備品から、適当に見繕っているというか、その」 小野寺「それは横領だよつぐみちゃん……」 つぐみ「すみません……」 万里花「……」 千棘「……」 万里花「……」 千棘「……」 万里花「……」チラ 42: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:20:13.34 :8HeZ4CUl0 小野寺「やっぱりこれだけ一杯あると、どうしても目移りしちゃうね、つぐみちゃん」 千棘「……」 千棘「……」ハァ 千棘「……もう、しょうがないわね……」 千棘「私達も手伝ってあげるから。つぐみもちょっとはやる気出しなさいよ」 つぐみ「え、あ、お嬢、そ、そんな」 千棘「いいからいいから。ね、小咲ちゃん?」 小野寺「うん、もちろん♪」 つぐみ「いいんですよ、私にこんな、キラキラした服は、その……」 小野寺「大丈夫大丈夫、つぐみちゃんスタイル良いし、きっと似合うって、ほらほら……」 つぐみ「お、小野寺様~……」ジタバタ 千棘「……」 千棘「……これで、いいんでしょ?」 万里花「……ええ」ニコ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 小野寺「……つぐみちゃんには、こういうチュニックワンピなんか似合うかな、なんて思ったりして」 千棘「確かにね、こういう淡い……パステル系の色合い着てるところ、あんまり見ないし」 43: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:20:55.78 :8HeZ4CUl0 万里花「……」ヤレヤレ 千棘「……何よ」 万里花「幼稚園児のスモックを選ぶつもりで来ているのでしたら、今すぐお帰りになられることをお勧めしますわ」 万里花「インターネット通販でお買い上げになられたほうが、余程素材も配色も豊富にございますわよ」 小野寺「生まれてすみません」 千棘「……ちょっと万里花アンタ、少しは言葉を」 万里花「黙りなさいこの豪腕クソムシ」 千棘「」 万里花「つぐみさん程の豊かなバストラインと高身長を、魅力的に見せるコトを考えた時」 万里花「デブがデブであることを隠すための逃げ道、チュニックワンピなどと言う選択肢はまず消し去られるべき愚考ですわ」 千棘「な、なんでよ、可愛いじゃ」 万里花「可愛さで腹肉を覆い隠すための服なんだから当たり前でしょうバカですか」 千棘「」 44: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:21:46.42 :8HeZ4CUl0 小野寺「……そっか」 小野寺「そうだよね」 小野寺「チュニックワンピに何か嫌な思い出があるのかと思う位貶めてるのは、正直どうかと思うけど」 小野寺「つぐみちゃん、せっかくシュッとしてて胸がおっきいんだもん。そこを生かさないと勿体無いよね」 万里花「……」ニコ 万里花「10年前のデータで恐縮ですが、楽様の好みはややファンシー系のすっきりとしたガーリー」 万里花「そういう意味では先行きド近眼の金髪霊長類コーデも一応アリといえばアリですが」 千棘(え、うそ、それ私のことなの) 千棘(……って言うかそのコーデ、発案したの小咲ちゃんなんだけど) 万里花「楽様も様々な意味で健康健全な青少年。やはり巨乳を主軸に置いたコーデを立てるのが巧手と言うものです」 つぐみ「……私はその、例えば上にカーディガンやストールなど」 万里花「黙れよ」 つぐみ「」 45: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:22:40.71 :8HeZ4CUl0 万里花「巨乳は資産です。ない事を隠すことこそあれ、あるものを使わずにどうするんです」 万里花「上はすっきりタイトなホルダーネックキャミ。巨乳とスレンダーのコントラストを浮き彫りに」 万里花「七分丈デニム上の腰からヒップにかけてのラインや、横乳等の健康的な露出を重ねて」 万里花「楽様の視線を誘う方向性で検討しておりますが、いかがですかつぐみさん」 つぐみ「……こ、このチュニックワンピもその」チラ 千棘「……」 千棘「……」ヤレヤレ 小野寺「……」オロオロ つぐみ「……ホルダーネックでお願いします」 万里花「……はい」ニコ ~ 駅前デパート 7階 エステ・コスメティックフロア ~ 千棘「ふふふ……」パフパフ 千棘「ファッションでは水を空けられたけど、メイクなら私の独壇場よ」ペタペタ つぐみ「……あの、お嬢」 千棘「ああ、さっきのコトなら気にしなくていいわよ」 千棘「悔しいけど、服。とっても似合っていたもの」 46: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:23:21.41 :8HeZ4CUl0 千棘「つぐみって、本当はあんなに可愛らしかったのね。びっくりしちゃった」ニィ つぐみ「……」テレテレ 千棘「でも、だからこそ、私だってあなたの主として、それなりの力量を見せてあげなきゃね」 千棘「待ってなさいつぐみ、世界が嫉妬する驚きの白さに染め上げてやるんだからね……!!」ヌリヌリ つぐみ「……あ、ありがとうございます、お嬢……」 千棘「元々つぐみは肌も綺麗だし、普段遣いならナチュラルメイクか、ノーメイクでもいいくらいだけど」 千棘「……ちっちゃい傷跡とかは、化粧で隠せたら、それに越したことはないもんね」 つぐみ「……そう、ですね」 千棘「……」 つぐみ「……」 千棘「……付けまわす様な真似して、ごめんね」 つぐみ「……いえ。むしろ私の注意が散漫で、気づけなかったことを恥じています」 千棘「……鍵のことも、その。どうやって説明していいか、わかんなくなっちゃって」 千棘「でもね、あのね、その……鍵のことも、今日のことも」 千棘「つぐみに嫌な思いをさせようとして、そうした訳じゃないって言うか」 千棘「結局のところ、自分の都合って言うか……」 つぐみ「……」 千棘「……」 47: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:24:14.88 :8HeZ4CUl0 千棘「……あのね、つぐみ、実は」 つぐみ「言わないでください、お嬢」 千棘「でも、」 つぐみ「橘万里花から話を聞くために、街に出たのですから」 つぐみ「お嬢からタダで聞いてしまっては、勿体無いですよ」 千棘「……つぐみ」 つぐみ「……」ニコ つぐみ「……それに」 千棘「……それに?」 つぐみ「………」 ~ 駅前デパート 10階 レストラン・カフェフロア ~ つぐみ「……おいしい」 千棘「洋菓子のお店にも詳しいのね、さすが小咲ちゃん」 小野寺「えへへ……機会があったら、皆で行ってみたいなーって、ずっと思ってたの」 48: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:25:03.68 :8HeZ4CUl0 万里花「美味しい」モフモフ 万里花「これでお金が取れますわね」モフモフ 千棘「もう取ってるっつの」 小野寺「あ、あはは……」 つぐみ「……」 つぐみ「……すまんな、橘万里花」 万里花「もふ?」 つぐみ「私は少し、結論を急ぎすぎていた」 つぐみ「人同士の関係性というものは、約束事や結論だけを元に出来上がるのではないと、改めて気づかされたよ」 つぐみ「その合間にある、お嬢や小野寺様、そしてお前達と過ごす、日常の尊さのようなものを」 つぐみ「全く理解しないまま、その秘密だけ暴き出そうと言うのは、少しばかり破廉恥だった」 小野寺「……」 千棘「……」 万里花「……謝られる道理は、ございませんわ」 49: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:25:44.86 :8HeZ4CUl0 万里花「私、ぶっちゃけ、自分の鍵の話以外は、ろくに知りませんし」ニコ 千棘「最後までいい話で終わらせなさいよアンタはァァァァァ!!!」ビュッビュビュッ 万里花「あら、あらあら」ユラァユラァ つぐみ「……はは、は」 小野寺「……」 小野寺「……ねえ、皆」 小野寺「せっかく皆で集まったんだし、できれば一つ、付き合って欲しい所があるんだけど……」 つぐみ「……?」 ~ 駅前デパート 9階 アミューズメントフロア ~ つぐみ「……何です、この怪しげな筐体は」 小野寺「ええっと……」 小野寺「……すごくかわいい証明写真が取れるの。複数人で」 つぐみ「なるほど」 万里花「」ブフッ 千棘「」ブフッ 50: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:26:40.34 :8HeZ4CUl0 小野寺「えっ、万里花ちゃん、千棘ちゃん、今のアウトだった!?」 千棘「いや……どっちかってと、アウトだったのはあたしらだけど……」 万里花「何で女四人連れ立って証明写真撮りにこなくちゃならないんですの……プッ」 つぐみ「……確かに。疑問は残りますね」 つぐみ「証明写真を残しておくと、どこかから経費が落ちるのですか」 万里花「」ブフッ 小野寺「……そう言うのじゃ、ないんだけどね」 小野寺「つぐみちゃんの言っていた、”日常の尊さ”って言う奴」 小野寺「形にして残しておくのも、悪くないかなー、って」 千棘「……」 万里花「……」 つぐみ「……そう、ですね」 つぐみ「せっかくこうして、集まる事ができたのですから」 つぐみ「今日の記憶を残すのも、やぶさかではありません」 51: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:27:21.99 :8HeZ4CUl0 千棘「……そうと決まれば、さっさと撮っちゃいましょ」 千棘「落書きする時間のほうが、面白いでしょ、こーゆーのって!!」ダダダッ 小野寺「あっ、ちょっとまってよ、千棘ちゃん!!」タタタッ 万里花「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……これからは、橘万里花と呼び捨てるのも、憚られてしまうな」 万里花「……お気になさらず」 万里花「貴女と私が、あらゆる意味で敵同士と言うことには、変わりありませんもの」 つぐみ「……」 つぐみ「……それでも、言わせてもらおう」 つぐみ「……ありがとう」 万里花「……どういたしまして」ニコ 52: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:28:13.12 :8HeZ4CUl0 ~ 10分後 同フロア プリクラ筐体”Election” Bブース ~ 万里花『↓ビーハイブ流星拳(相手は死ぬ)』 千棘『↑腹黒帝国(首都:アンマン)』 万里花「何ですの」 千棘「やんのかコラ」 小野寺「ちょ、二人とも、あと150秒しかないんだからっ」 万里花「小野寺さんは無難に花びらラインで枠でも囲っておいて下さいまし」 千棘「この争いに手と口を出してしまえば貴女も戻れないわよ小咲ちゃん」 小野寺「んもー……」 つぐみ「……」 つぐみ「……」 ―― つぐみちゃんの言っていた、”日常の尊さ”って言う奴 ―― 形にして残しておくのも、悪くないのかなー、って つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……」カキカキ 53: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:29:02.71 :8HeZ4CUl0 ~ 同日 夜 鶫誠士郎 セーフハウス ~ ガチャ バターン ガチャ つぐみ「ふぅ……」 つぐみ「すっかり、遅くなってしまったな」カチッ つぐみ「……だが、凄く楽しかったし」ドサッ つぐみ「……」 つぐみ「ふふっ、私らしくもない、独り言など」 つぐみ「……」ガサガサ つぐみ「……」 つぐみ「…… ふ ふ ふん ふんふんふ ふふふ~ん♪」 ヌギヌギ つぐみ「ふふふふふふん ふん ふん ふふ~ん♪」ガサガサ つぐみ「……」 つぐみ「……この服」クルッ つぐみ「やはりいいな」シパッ つぐみ「お嬢もお許し下さったし」クイッ つぐみ「出掛けるのが楽しみだ」キメッ 54: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:29:43.93 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……それに」 つぐみ「あの橘万里花が勧めるのだから」 つぐみ「きっと、一条楽の好みにも沿う事だろう」 つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ(…………) つぐみ(………………) つぐみ「なんちゃって、なんちゃって」ジタバタ つぐみ「……」 つぐみ「……」ニコッ つぐみ「~~~~~~ッ」テレテレ つぐみ「……そう、だな」 つぐみ「きっと一条楽も、気に入るに違いない」 つぐみ「この服を着て……」 つぐみ「お嬢に習ったメイクを」 つぐみ「そう、お嬢に……」 55: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:30:52.98 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!!!」バァン!! つぐみ「何を、何を考えていたのだ私は!?!?!?」ジタバタジタバタ つぐみ「いやおかしいだろ、おかしいだろ色々と!!」ドンドコドコドコ つぐみ「何で橘万里花に鍵の話を聞きに行ったら」 つぐみ「私が一条楽好みの服を買ってホクホク帰宅することになってるんだよ!!」ダァン!! つぐみ「しかも今日の動向はお嬢に筒抜け!!!!」 つぐみ「一条楽の!」ガン つぐみ「コイビトの!!」バン つぐみ「お嬢に筒抜け!!!」ボーン!! つぐみ「ニヤニヤしてる場合じゃないだろ私何考えてるんだよもおおおおおおおお………」カァァァァァ つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……一条楽、は」 つぐみ「お嬢の、コイビト、か……」 56: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:31:36.81 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……はぁぁ……」ズーン つぐみ「……」 つぐみ「……今日はもう、休もう」 ガラガラ カチッ つぐみ「……」 ポーラ「……」チョコン つぐみ「」 ポーラ「……」 つぐみ「……」 57: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:32:10.36 :8HeZ4CUl0 ポーラ「一応先に言い訳しておくわね」 ポーラ「先週『たまにはちゃんとした物を食べさせてやろう。早く帰って来い』って夕食に誘ってくれたのはアンタ」 ポーラ「今日『悪いが、用事が出来たから遅くなる。どこかで時間をつぶすか、家の中にいてくれ』って言ったのもアンタ」 ポーラ「なかなか帰ってこないから、奥の部屋で電気を消して寝ちゃったのはあたしだけど」 ポーラ「私の靴も荷物も玄関にあるのに、気づかなかったのはアンタ」 ポーラ「だからお願い」 ポーラ「全部聞いてたけど殴らないで」 つぐみ「……」 ポーラ「……」 つぐみ「……」 ポーラ「……」 つぐみ「……殺せよ」 ポーラ「……ごめんね」 58: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:32:53.50 :8HeZ4CUl0 ~ 鶫誠士郎 セーフハウス 食卓 ~ つぐみ「……」モグモグ ポーラ「……」モグモグ ポーラ「……ご馳走になっておいて、申し訳ないとは思うんだけどさ」 ポーラ「……」 ポーラ「…………寝かせてよ」 ポーラ「あるいは、空気が油粘土より重いこの部屋から、私を出して……」モグモグ つぐみ「……五月蝿い」モグモグ つぐみ「これでお前に飯も食わせず、ただ去らせてしまえば」 つぐみ「私が恥をかいた意味が、本当になくなるだろうが……」モグモグ ポーラ「……」 ポーラ「……美味しいから、いいけど」モグモグ つぐみ「……すまんな」モグモグ 59: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:33:40.07 :8HeZ4CUl0 ポーラ「……居させられるんだったら、聞くわよ」 ポーラ「どーすんの、一条楽のこと」 つぐみ「」ブホッ ポーラ「……」 つぐみ「……」 ポーラ「……」 つぐみ「……」ハァ つぐみ「別に、どうもしないよ」 ポーラ「……」ジトー つぐみ「……勘違いするな。ごまかしじゃあない」 つぐみ「確かに私の中に、一条楽を憎からず思う気持ちはある」 つぐみ「だが、多分それは、純粋な恋愛感情だけと言うわけでもないのだ」 ポーラ「……随分、本音っぽいわね」 つぐみ「今更取り繕えるか、恥ずかしい……」 ポーラ「確かに」フフ 60: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:34:32.60 :8HeZ4CUl0 つぐみ「……まあ、そういうことなんだ」 つぐみ「一条楽を憎からず思う気持ちは、多分単純なコイとは違って」 つぐみ「私の大切な存在であるお嬢が、心を揺り動かされていることへの敬愛、尊敬とか」 つぐみ「日本の、普通の学生が送るような、穏やかな日常への憧憬とか」 つぐみ「そういう気持ちがないまぜになって、私は」 つぐみ「……一条楽に、ひ、惹かれているのだと、思う」 ポーラ「それは、楽しいの? それとも辛い?」 つぐみ「……自分でも、よくわからない」 つぐみ「どのみち、形になる事のない想いだからな、辛く思う時もあるけれど」 つぐみ「ふとしたことで暖かい、優しい気持ちになれるコトも、いっぱいあるんだ」 ポーラ「……」 つぐみ「それに、今までの私ならば、しなかったような真似をすることもある」 ポーラ「そんな、可愛らしい服を着てみたり?」 つぐみ「……ああ」テレテレ ポーラ「あれだけ憔悴してたクセに、着替えてないしね」 ポーラ「気に入ってるんでしょ、ソレ」 つぐみ「……」カァァ 61: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:36:21.69 :8HeZ4CUl0 ポーラ「なんか、いーなぁ。そういうの」 つぐみ「……今度、一緒に行こうか、ポーラ」 つぐみ「美味しいスイーツの店も、小野寺様に紹介してもらったんだ」 ポーラ「……ううん」 ポーラ「それも悪くないけど、そういうんじゃ、ないの」 つぐみ「……」 ポーラ「そういうんじゃあ、ないの……」 62: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:37:03.19 :8HeZ4CUl0 ~ 同刻 桐崎邸 桐崎千棘 自室 ~ 千棘「……」 千棘「……」 千棘「……」バフッ クロード『……お嬢』 千棘「今……ちょっと気分が乗らないの。邪魔しないで」 クロード『……程々になされませ』 千棘(何をよ……) 千棘「……」 千棘「……」ゴロン 千棘「……」 千棘(……つぐみ) 千棘(……楽しそうだったな) ―― 主の桐崎さんが、ちゃんと彼女と向き合っていたら ―― 必要の無いコトだったかも知れませんけど、ね 千棘(……) 63: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:38:22.15 :8HeZ4CUl0 ジャリ チャリン 千棘(……) 千棘(……10年前の約束と鍵) 千棘(……楽、そして、つぐみ) 千棘(……ちゃんと、か) 千棘「……」 千棘「……ねえ、クロード」 クロード『はっ』 千棘(本当に居たよ……) ~ 20分後 凡矢理IC付近 ビーハイブ幹部専用車 車内 ~ ブゥゥゥゥン ゥゥゥン ウゥゥン クロード「このまま、海まで流しましょうか」 千棘「……うん」 64: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:39:06.52 :8HeZ4CUl0 クロード「……」 千棘「……」 クロード「……」 千棘「……」 千棘「……聞かないの?」 クロード「……そうですね」 クロード「私とて、男のはしくれ」 クロード「女性がそんな表情をしている時に、暴き出すような不粋は致しません」ニコッ 千棘「……案外、大人なのね、クロードってば」 クロード「……光栄です」フフ 千棘「うん」フフ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 千棘「クロードは……どうしてパパの所で働こうと思ったの?」 クロード「似合っていませんか」 千棘「そうは思わない、けど」 千棘「その……ママの会社だって、普通の仕事だって、やってけたんじゃない?」 65: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:39:48.40 :8HeZ4CUl0 クロード「そうですねぇ……」 クロード「……いえ、やはり私には、この道しかありませんでしたよ」 千棘「……」 クロード「誤解なさらないでください」 クロード「今お嬢の前に居る私は、この道を進んだからこそ、こうしていられるのです」 クロード「そうでなければ、こんなに可愛らしい女性を目の前に、冷静ではいられないかも」 千棘「やだ、クロードってば」 クロード「……」 千棘「あはは、はは……」 クロード「……」 千棘「……クロード?」 クロード「……昔の、話ですよ」 クロード「貴女を手篭めにして、ゆくゆくはこの組織を我が物として乗っ取ろう」 クロード「そんな風に考えた事もありました」 クロード「それが出来ない立場でも、ありませんでしたしね」 66: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:41:55.32 :8HeZ4CUl0 千棘「……どうして、やめちゃったの?」 千棘「私みたいな小娘相手なら、いくらでも付け入るスキなんて、あったでしょうに」 クロード「どうして、ですかねぇ」 クロード「……自ら成り上がる面白さを、見つけてしまったから、でしょうか」 千棘「悪ぶっちゃって」 クロード「そう見えますか?」 千棘「うん」 クロード「……」 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ クロード「……別に、ね」 クロード「集英組の小僧が、憎い訳ではないんですよ」 クロード「ただ、この世の中には、お嬢の事を弄び、利用しようとする者はごまんと居ます」 クロード「かつての、あるいは今の、私のように」 千棘「……」 67: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:42:42.83 :8HeZ4CUl0 クロード「……小僧自身に自覚が無かろうと、小僧を手駒に、小僧の周りの人間がそんな企みを持っているかもしれない」 クロード「更に言えば、お嬢自身の周りの人間が、自らの利益の為に、小僧を利用している可能性だって、有り得るんです」 千棘「……」 クロード「私はそんな輩から、お嬢を護りたいと思っています。その為には命だって張るつもりだ」 クロード「仮にお嬢自身から、煙たがられようとも、ね」 千棘「……やっぱり、優しいんじゃん」 クロード「いいえ。単なる私のエゴですよ」 クロード「そして、そのエゴの為に命を張れるのが、この業界のいいところです」 クロード「……私がこの道に生きる理由。これが答えでは、足りませんか?」 千棘「うーん……」 千棘「まあ、いっかな。それでも」 クロード「恐縮です」 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 千棘「……」 千棘「……さっきの話の、続きって訳じゃないんだけどさ」 クロード「ええ」 68: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:43:38.35 :8HeZ4CUl0 千棘「……」 千棘「……敵対組織のヒットマンと、組織の跡取りの恋って、」 クロード「有り得ませんね」 千棘「……どうして?」 クロード「組織によってその軽重に差はありますが」 クロード「ヒットマンは、組織で管理している”道具”の一つに過ぎません」 クロード「……腕の立つ者や、金を掛けて育てた者であれば、それなりに珍重もするでしょうが」 クロード「組織がダメージを被ってまで、庇ったり助け出したりはしないのです」 クロード「……使い捨ての道具を拾う為に、組織の屋台骨が揺らぐようなコトがあれば、本末転倒ですからね」 クロード「対して、組織の跡取りの嫁と言えば、その組織の格を内外に示す、重要なポジションです」 クロード「使い捨てのヒットマンを娶った、などと言う話になれば、色香で垂らしこまれたボンクラと、物笑いの種になるばかり」 クロード「ですから、そんな恋は実りませんよ。せいぜいが妾として弄ばれて、捨てられるのがオチでしょう」 千棘「……」 千棘「ずいぶん、包み隠さず、教えてくれるのね」 クロード「……今日のお嬢が、大人の顔をなさっているからこそ」 クロード「車の中での話は、今日これきりにして頂けるよう、お願い致します」 千棘「……ええ」 69: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:44:41.64 :8HeZ4CUl0 ピピピピピッ ピピピピピッ ピピピピピッ ピピピピピッ 70: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:45:19.24 :8HeZ4CUl0 ~ 深夜 町外れ ビーハイブ暗殺部隊緊急回線使用中 ~ クロード『ミッションを説明する』 つぐみ「了解」 ポーラ「了解」 クロード『40分ほど前、ウチの”生徒”どもが空港付近より逃走した』 クロード『標的は10代前半の男4名、女2名の計6名』 クロード『全員始末しろ』 クロード『相手の装備、能力、協力者については一切不明だが、緊急事態かつ表ざたには出来ん仕事なのでな』 クロード『任務に当たるのはお前らだけだ。支援は一切ない』 つぐみ「……」 ポーラ「……」 クロード『お前らも知っての通り、今ウチの”生徒”どもには試験的に生体電流で動作するGPS発信機を埋め込んでいる』 クロード『GPSによる位置同定まで二分二十七秒』 クロード『自由な質問を許可する』 71: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:46:05.96 :8HeZ4CUl0 つぐみ「逃げた”生徒”の所属は」 クロード『私がそんなヌルい教育をすると思うか』 つぐみ「いえ」 クロード『……ビーハイブ内、反体制派幹部の、子飼いのガキ共だ』 クロード『ボスとお嬢を日本で亡き者にするべく、密かに入国させていたらしい』 クロード『首謀者は先程、ベーリング海でカニのエサにしたと報告が入ったが、生き残りのガキ共も始末する必要がある』 クロード『組織の内情を身代金に、他所の組織へ身売りでもされたら厄介だからな』 クロード『しかし、ビーハイブのコマをヘタに動かせば、他所の組織が揉め事を嗅ぎ付けて、ガキ共を保護しに動く恐れがある』 クロード『今動ける者のうち、お前達二人ならば、この場面で裏切りを打つような真似は無いと踏んだ』 クロード『それだけの話だ』 ポーラ「諸々の状況を踏まえても、任務の難易度と人員が釣り合いません」 ポーラ「確実を期すならば、クロード様ご自身にも動いていただく必要があるかと思いますが」 クロード『私は動けん。野暮用があってな』 72: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:46:47.39 :8HeZ4CUl0 千棘『……ロード、どう……、仕事の…話なら……るわよ……』 クロード『心配ありません、お嬢。ブラジル支部の古い友人からの連絡でして』 クロード『頭は良い奴なのですが、未だに世界が平たいと思っているようで。時差の存在を頑なに認めないんですよ』 千棘『ふーん……人って……いう所……わってる……よね』 クロード『全くもって。大した話ではありませんから、すぐに戻ります』 千棘『……ーい……』 クロード『……どのみち、すぐには戻れん位置だ。このまま連れ回したほうが、護衛するにも丁度良い』 ポーラ「千棘お嬢様に事態を伝え、協力頂いてもよろしいのでは?」 ポーラ「いずれ近い将来、必ず、」 クロード『お嬢の仕事は』 クロード『……疲れた家族の為に、不恰好なパンプキン・パイを焼いてやる事だ』 クロード『キッチンシンクの下に何匹ネズミがいて、飼い猫が何匹殺したかなど、知る必要は一生ない』 ポーラ「……了解」 73: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:47:36.59 :8HeZ4CUl0 クロード『……位置の同定が完了した。デバイスエリアP93RD2Q141より南東方向へ移動中』 クロード『……錬度が足らんな。この速度は徒歩だ。しかも6人固まって移動している』 クロード『現時点を以ってお前等にもアクセス権限を分与した。確認しろ』 クロード『判っているとは思うが、一切痕跡は残すな。追跡を開始せよ、オーバー』ブツッ ポーラ「……だって、さ」 つぐみ「ああ、行こう」 ポーラ「……アンタ、何とも思わないの?」 ポーラ「こんな日に、こんな……」 つぐみ「……いや、別に何も」 ポーラ「……あっ、そ」 ~ 15分後 付近某所 ~ トボトボ トボトボ A『………』 B『……』 C『…………!!』 D『……』 E『…』 ポーラ「Hi,babies」ザシュ 74: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:48:25.38 :8HeZ4CUl0 F『――――!!!!』 シュバッ シュバ シュバババッ つぐみ「……ポーラ」 ポーラ「怒んないでよぉ」 ポーラ「大した武装してる様子もないし、ひょっとしたら一気にイケちゃうかな、なんて思っちゃったって」 ポーラ「仕方ないじゃないっ」ゲシッ F「」 ポーラ「この程度の錬度じゃあ、お嬢様暗殺計画がバレてなかったとしても、返り討ちだったわね」 ポーラ「クロード様、私達を立派に育ててくださって、ありがとうございます、ってとこかし……らっ!」ゲシッ F「」ゴロ ドサッ つぐみ「……何をそんなにイラついている」 ポーラ「いいでしょ別に。それよりもホラ、とりあえずもう一匹残ってるわよ」 つぐみ「ん……」ツカツカ 75: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:49:14.20 :8HeZ4CUl0 C「……」カタカタカタカタ つぐみ「……」 つぐみ(……アジア人か。日本人かも知れんな。綺麗な目をしている) つぐみ(そう、綺麗な、黒い、目、を――) ―― だって貴女は、私にそっくりだから ―― 放ってなんて、おけませんわ ―― つぐみちゃんの言っていた、”日常の尊さ”って言う奴 ―― 形にして残しておくのも、悪くないのかなー、って ―― あなたって、本当はあんなに可愛らしかったのね。びっくりしちゃった つぐみ(―――) ポーラ「……何よ、結局手ぇ出さないわけ? 」 ポーラ「別に、いいんだけど、さ」トコトコ C「……」ガタガタガタ ポーラ「ねえ、折角生きてるんだから教えてよ」 76: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:49:54.94 :8HeZ4CUl0 ポーラ「日本語は分かりますか?」 C「……」フイッ ポーラ「はい、日本語でいいのね。アンタらの仕事を手引きしたのはだあれ?」 C「……」 ポーラ「どこの組織と協力しているの? 他に仲間はいるのかな?」 C「……」 ポーラ「じゃあねえ」 ポーラ「”殺一警百(シャーイージンパイ)”って知ってるかな?」 C「」ビクッ ポーラ「……」ニコニコ ポーラ「Dung♪」 ポーラ「Dung♪」 ポーラ「Dung♪ Dun Dun Dung♪」 77: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:50:31.19 :8HeZ4CUl0 ポーラ「One little」 ポーラ「Two little」 ポーラ「Three little Indian♪」 ポーラ「Four little」 ポーラ「Five little…」 ポーラ「…Six Little Indian♪」 ポーラ「Seven little」 ポーラ「Eight little」 ポーラ「Nine little Indian♪」 ポーラ「Ten little Indian Boooooooooys♪」 C「あ」 C「あ」 C「あがああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 78: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:51:05.72 :8HeZ4CUl0 ポーラ「騒ぐなよ」ゲシッ C「!」ゲボッ ポーラ「……ま、いいか。もう一回分あるし」 ポーラ「はい、じゃあお靴を脱いでね」グイグイ C「!!……」カタカタカタ ポーラ「……じゃ、もう一度聞くよー」 ポーラ「アンタらの仕事を手引きしたのはだあれ?」 C「……」カタカタ ポーラ「どこの組織と協力しているの? 他に仲間はいるのかな?」 C「……あ、ああ」 ポーラ「……」 ポーラ「Dung♪」 ポーラ「Dung♪」 ポーラ「Dung♪ Dun Dun Du」 つぐみ「止めろッ!!!」グイッ ポーラ「きゃっ!!」ドサッ 79: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:51:33.18 :8HeZ4CUl0 C「あ」 C「あああ」 つぐみ(……) つぐみ(……) つぐみ(……わたし、は) つぐみ(……今、何を、し、た……………) ポーラ「……黒虎?」 ポーラ「今、あんた、」 つぐみ「……」 C「あ、あ」 C「おねえ、さ、ん、」 C「ありが、と、……」 80: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:51:59.88 :8HeZ4CUl0 ズダァン!!! 81: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:52:39.43 :8HeZ4CUl0 ブシャッ ドサッ つぐみ「……」 ポーラ「……」 つぐみ「……時間制限のある尋問中に」 つぐみ「心の拠所を作らせるのは巧手ではない」 つぐみ「ゆとりがある時ならば、アメとムチを考えるのもいいが」 つぐみ「切迫した状況がある時は、却って自分達の首を絞める結果にもなりかねない」 つぐみ「初歩の初歩だったな、すまなかった」 ポーラ「いや、別にいいけど、あんた、」 つぐみ「埋め合わせは今夜中にする」 つぐみ「行くぞ」シュタッ ポーラ「あっ、ちょっ、待ちなさいよ、黒虎ッ!!!」シュタッ 82: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:53:25.05 :8HeZ4CUl0 ~ 20分後 ~ つぐみ「任務完了」 つぐみ「痕跡は全て薬品で処理しました」 クロード『ご苦労』ブツッ ポーラ「……」 つぐみ「すまなかった、ポーラ」 つぐみ「私は……」 つぐみ「……どうか、していたらしい 」 ポーラ「……もし任務が失敗してたら、二、三発ひっぱたいてやるつもりだったけどさ」 ポーラ「結局残りの全員自力で引きずり出して、素手で頚動脈引き千切った女に、どんな落とし前付けさせられるっつーのよ……」 ポーラ「衰えてないようで安心したわ、ホント」 つぐみ「……」 ポーラ「……でも、どうして突然、あんなことを」 つぐみ「さあな」 つぐみ「任務をこなしている間に、忘れてしまった」 ポーラ「……あっ、そ」 83: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:54:08.75 :8HeZ4CUl0 ポーラ「でもあんた、虚偽報告はしちゃダメでしょ」 つぐみ「?」 ポーラ「痕跡。体中、返り血で血まみれよ」 つぐみ「……そうだな」 つぐみ「先に帰る」 ポーラ「……うん」 ポーラ「……ねえ、黒虎」 つぐみ「何だ」 ポーラ「……」 ポーラ「私はクロード様と合流して、そのまま屋敷の警備に入るわ」 ポーラ「荷物はどうせ大したモンないし、明日以降取りに行くから、悪いけど置いといて」 ポーラ「ご飯、ありがとね」 つぐみ「……ああ」シュタッ 84: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:54:57.03 :8HeZ4CUl0 ポーラ「……」 ポーラ「お嬢様」 ポーラ「あんたの飼い猫は」 ポーラ「……とっても、優秀だよ」 85: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:55:32.00 :8HeZ4CUl0 ~ 鶫誠士郎 セーフハウス ~ ガチャ バターン ガチャ つぐみ「ふぅ……」 つぐみ「すっかり、遅くなってしまったな」カチッ つぐみ「……」 つぐみ「……」 つぐみ「……」ユラリ つぐみ「……」 カチャ パカ つぐみ(……) つぐみ(……) つぐみ(……日本に来てから) つぐみ(本当に、色んな事があったな) 86: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:56:01.58 :8HeZ4CUl0 ガサガサ つぐみ(……貰ったのは随分前だけれど、最近は特に付ける機会も多い、お嬢のリボン) つぐみ(……こんな女々しい格好をして、普通の学生のように遊び回って) つぐみ(最初は任務のためと割り切っていたが……) つぐみ(……いつしか、心の底から、この穏やかな世界と時間を、楽しんでいる私が居た) つぐみ(……本当の私のことを、誰も知らない、この世界で) つぐみ(……) つぐみ(そう、誰も) つぐみ(お嬢ですら知らない) つぐみ(本当の私は) つぐみ(本当の私の手のひらは) つぐみ(こんなにも、こんなにも、血塗られていることを) つぐみ(私に、あなた達と同じ世界で生きる資格なんてないのだと) つぐみ(誰も――) 87: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 21:56:39.49 :8HeZ4CUl0 つぐみ「………」 つぐみ「………」 つぐみ「……ぁ」 つぐみ「あ」 つぐみ「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!」 つぐみ「私は!!」ビリビリビリビリ つぐみ「わたしは!!」バキィ つぐみ「わたしはっ!!!!」グシャア つぐみ「わたし、はっ、!!!」ボゴォッ つぐみ「……」 つぐみ「……………私は………」 つぐみ「………」 つぐみ「……………」 つぐみ「――――」 89: ◆LeBgafvn/6:2015/07/10(金) 22:11:23.49 :8HeZ4CUl0 お久しぶりです。 かなり時間がかかってしまいましたが、ニセコイでもう一作書く事が出来ましたので アニメ二期終了に合わせて投稿を始めさせていただきました。 非常に長くなってしまったので、3,4回に分けて投稿する予定です。 ご容赦ください。 今回に至るまでの間に、オリジナルも書きました。 次回までの暇つぶしにでも読んで頂ければ幸いです。 男「俺のT○SOウッディ28Bキャップを挿入してやるぜ」 http://morikinoko.com/archives/51954659.html 男「ここがカーテンチ○ポレールバトルロワイヤル世界大会会場か」 http://morikinoko.com/archives/51964318.html 93: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:09:36.78 :z6poyGtz0 ~ 翌日早朝 桐崎邸付近 一条楽通学路 ~ トボトボ トボトボ 楽「……なー、集」 集「なーに?」 楽「正直に答えて欲しいんだけどさ」 楽「……周りから見た俺って、優柔不断で、女の子にだらしない、ダメな奴だったり」 集「するする。っていうか気づくの遅すぎ」ヘラヘラ 楽「あのなぁ……」 楽「一応、真剣に相談してるつもりなんだけど」 集「分かってるよ」 集「こんな朝っぱらから呼び出して、いきなり二人っきりで学校行こうだなんて、そりゃ真剣な相談だろうと思ったさ」 集「だからもー、マジメもマジメ。客観的に見て、お前は相当女の子にだらしない、本当にダメな奴だよ?」 集「って言うか、クラスの奴らからも、毎度毎度あんだけやっかみに遭って、よくも今更そんな質問する気になったもんだって」ハハハハ 楽「……」ムスッ 94: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:10:21.05 :z6poyGtz0 楽「じゃあ、お前は何でそんな奴と友達やってんだよ」 集「……それもマジな質問?」 楽「……マジだよ」 集「……んー」 集「俺は別に楽の女じゃないし? ってか男だし? お前がどんだけ女にだらしなくても関係ないからなー」 集「そもそも、俺も人のこと、言えた義理じゃないしさ」ニヒヒ 楽「分かってんなら、もっとシャンとしろよな」ハァ 集「そーだな」ヘラヘラ 集「……んで」 集「それをさておいても、俺はお前のこと、女にだらしないなんて思ってなかったぜ?」 楽「……さっきと言ってること、違わねぇ?」 集「”周りから”思われてるかも知れんが、”俺は”思ってなかったの」 楽「……」 集「俺は、お前の家の事情とか、他の奴よりはお前のことを知ってるしさ」 集「”家の為に仕方なく”ニセの恋人やって、”家のために仕方なく”ニセの婚約者やって」 集「”家の都合で仕方なく”年上の女先生と同居してるけど、本当は小野寺の事が好きで仕方ないってんだから」 集「だらしないどころか、むしろ気の毒に思ってるぐらいだよ」 集「これもマジのマジ、俺の本音で、本気の話ね」 95: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:11:08.78 :z6poyGtz0 楽「……そっ、か」 集「……」 集「でもさー」 集「楽自身からそんな質問が出てくるってことは」 集「楽は今の状況に、罪悪感を感じてるんだよな?」 楽「? ……ん、まあ、そりゃあ……」 集「それはダメだろ」 集「反則。許されないよ。最低」 楽「……よく分からんのだけど」ポリポリ 集「……」 96: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:12:20.05 :z6poyGtz0 集「……あのさ」 集「楽が本当に小野寺だけを好きで、ちゃんと小野寺の方だけ向いてるなら、そんな罪悪感生まれるワケないんだよ?」 楽「……そうかな?」 集「そうでしょ」 集「だって楽は、自分の本当のコイを、周りの余計な雑音でことごとく邪魔されてる、被害者なんだから」 集「怒ったり悔しがったり、全員いなくなればいいのに、位思うほうが、フツーだと思うけど」 楽「……」 集「もっと言っちゃえばさ」 集「今みたいな状況を、どこかでオイシイ、と思っちゃってる気持ちがあるから、罪悪感が生まれるんじゃないの?」 楽「そんなことっ!!」 集「本当に無い?」 集「今みたいなヘンな関係の前に、皆友達同士だから、嫌い合うまでの事はしないにしてもさ」 集「ニセの恋人や婚約者、同居にしたって、ちゃんと話をして、もう少し距離を置いて付き合うことはできるんじゃないの?」 楽「……」 97: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:14:04.41 :z6poyGtz0 集「……この前の、誠士郎ちゃんと鍵の話の時にも思ったんだけどさ」 集「約束の鍵の女の子が好き。でも小野寺と付き合いたい。だけどみんなのことも大事にしたい」 集「そんな気持ち、理解できないとは言わない」 集「だってお前は、凄くいいヤツだからさ」 集「困ってる人がいたら、自分のことなんて省みず、助けずにはいられないような、優しいヤツだから」 集「そんなのは、俺が一番よく知ってる。きっと、皆だって分かってるハズだ」 集「でも」 集「……優しさと、区切りをつけない事は、決して一緒じゃないと思うよ」 楽「……」 集「……」 集「ごめんな、なんか説教臭くなっちまって」 楽「……いいよ」 集「ん」 楽「ありがとう、集」 集「いーのいーの」 98: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:17:02.00 :z6poyGtz0 集「とりあえず、俺は先に学校行くからさ」 集「手始めに千棘ちゃんとでも、話してみたらどう?」 楽「そうだな。そうしてみる」 集「おっけー。じゃ、頑張ってな」 集「また行き詰まったら、いつでも相談しろよー」ヘラヘラ 楽「ありがとなー」 楽(……) 楽(……) ―― 集「今みたいな状況を、どこかでオイシイ、と思っちゃってる気持ちがあるから、罪悪感が生まれるんじゃないの?」 楽「……」 楽「」パシパシ 楽(まずは千棘と、ちゃんと話そう)タッ 楽(千棘のためにも)タッタッ 楽(俺のためにも)タッタッタッタ 楽(俺の気持ち、ちゃんとはっきり、させ、なく) ポニョン 楽「……ちゃ?」 99: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:19:29.13 :z6poyGtz0 ???「……」 楽「……」 楽「……つぐみさん?」 つぐみ「……」イラッ つぐみ「……おはよう、一条楽」 ~ 凡矢理高校付近 通学路 ~ つぐみ「……そういうワケで、お嬢は暫く外出できない」 つぐみ「襲撃を受ける可能性のほか、盗聴等の危険性も考慮して、電話やメール等、外部との接触を一切断って頂いている」 楽「……まあ、命を狙われる危険がある以上、我慢しないといけないんだろうけど」 楽「結構、長くなるのか?」 つぐみ「ああ。ある程度の始末をつけてしまえば、正直そう長引く話でもないんだが」 つぐみ「良きにつけ悪しきにつけ、利益が生まれない話には興味を持たないのがこの業界の人間だからな」 つぐみ「不穏分子が徹底的に粛清されたと言う話が広まれば、おかしな事を考える輩も、自然といなくなる」 つぐみ「それが確認できるまでは、お嬢に近しい我々だけで警備体制を敷かねばならん」 つぐみ「私やポーラも、今日の夜には任務に入る。暫くは戻れないだろう」 楽「……」 つぐみ「……」 100: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:21:26.51 :z6poyGtz0 つぐみ「……さっきのコトなら、もういいと言っているだろう」 つぐみ「お嬢の代わりで待ち合わせ場所に居ながら、お前の接近に気づけないほど油断していた私にも責任がある」 つぐみ「責めるつもりもないし、どこかへ密告するつもりもない。私も忘れるから、とっとと忘れて……」 楽「……それも、そうなんだけどよ」 楽「……」 つぐみ「……?」イラッ 楽「……いや、その」 楽「千棘が大変な立場にいるって言うのは、何となく想像できてたんだけど」 楽「改めて考えると……つぐみも、本当にスゲー奴なんだなって、ふと思ってさ」 つぐみ「……」 つぐみ「……裏切り者を何人か消すくらい、大して難しい仕事じゃあない」 つぐみ「ましてや、知らない相手だ。特に心に引っかかるようなコトもない」 楽「……そうは言っても、命の取り合いをして、辛くない奴なんていねぇだろ」 楽「千棘の為にそこまでできるお前は、俺から見たらやっぱり、凄ぇ奴だと思うよ」 101: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:23:32.86 :z6poyGtz0 つぐみ「……唐突に何だ」 楽「……」 楽「……その、さ」 楽「実は俺、ちょっと、悩んでたんだよ」 楽「自分では、”男たるもの”なんつって、誰にも恥ずかしくないように、真っ直ぐ生きてきたつもりだったんだけど」 楽「実は物凄く、いい加減な生き方で、周りの奴等を傷つけてたんじゃないか、って、急に気づいちまって」 楽「つぐみにも、嫌な思いさせちまった事、あったと思う。ほんとにゴメン」 つぐみ「……そんなことは、ない」 つぐみ「いいから、その話は、もう」 楽「……」 楽「……いや、聞いてくれ」 楽「そうじゃなきゃ、千棘の為に、本当に全身全霊を、命を賭けて戦っているつぐみに」 楽「そして千棘自身に、申し訳が立たねぇ」 つぐみ「……やめろ」 楽「ダメだ」 楽「もう、いい加減な事はできねーよ」 102: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:26:09.55 :z6poyGtz0 つぐみ「……」 楽「千棘のためにも」 つぐみ「……」ギュッ 楽「千棘を心から好いて、心配して」 つぐみ「……」カタカタカタ 楽「千棘の為に戦う、お前のためにも、」 楽「俺は……」 つぐみ「黙れええええええええええっ!!!!!」 楽「」ビクッ つぐみ「……っ、はあっ、はあ、はあっ……」ガタガタ 楽「……つぐ、み……?」 つぐみ「……ゎ、たし、は」 つぐみ「私、は」 つぐみ「そんなに綺麗な人間じゃない」 つぐみ「お前達とは、お前とは」 つぐみ「……違うんだよ……」 103: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:28:33.18 :z6poyGtz0 楽「……つぐみ」 楽「何、言って……」 楽「……」 つぐみ「……ぐっ、ううっ、ううううっ、ううう……」ボロ ボロ 楽「……」 楽「つぐみ……」 ―― 集「……優しさと、区切りをつけない事は、決して一緒じゃないと思うよ」 楽「……」 楽「……」キッ ギュッ つぐみ「っ!?」 つぐみ「な、な、一条、楽っ!!」 楽「……」ギュッ 104: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:29:46.27 :z6poyGtz0 つぐみ「離せ、離さないかっ、このっ」グイグイ 楽「……」 つぐみ「離せ、この」 つぐみ「離、せ……」 楽「……」 つぐみ「……」 楽「……」 楽「……あのさ」 楽「……正直」 楽「何でお前が泣いてるのか」 楽「苦しんでるのか、まるで分かんねーままなんだけど」 楽「……少しは、落ち着いたか?」 105: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:31:21.13 :z6poyGtz0 つぐみ「……」 つぐみ「……ああ」 つぐみ「だから、そろそろ離してくれないか」 楽「……」 楽「……ぅわっ、はっ、その、いやっ、ごめんっ!!!」ババッ つぐみ「……気にするな」ゴシゴシ つぐみ「久々の任務だったからな。精神的に参っていたのかも知れん」 つぐみ「すまなかった」ペコリ 楽「……そ、そっか、俺こそゴメンな、何かっ」 つぐみ「……」 つぐみ「……悪いが、今日は早退する」 つぐみ「皆には、上手く伝えておいてくれないか」 楽「……あ、ああ、分かった。任せとけ」 つぐみ「……よろしく」クルッ 106: ◆LeBgafvn/6:2015/07/16(木) 21:33:26.96 :z6poyGtz0 楽「……」 つぐみ「」タタタタッ 楽「……」 楽「……」ギリッ 楽「つぐみッ!!」 つぐみ「」ビクッ 楽「つぐみ、あのさ!!」 楽「もし本当に、何か辛いことがあって、どうしようもなく悩んだりしたら」 楽「俺にも、相談してくれ」 楽「絶対、力になるから」 楽「いつでもどこでも、地獄の果てだって飛んでいって、力になるから!!!」 つぐみ「……」 つぐみ「……」 楽「……だから……」 つぐみ「……」フッ つぐみ「ありがとう。そのときは、頼らせてもらうよ」 楽「……おう!!」 読む →