2022年09月02日 19:35 佐久間まゆ「栗の花…ですか」 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2016/05/03(火) 23:02:11.08 :kYdsuesF0 「ねぇなんで!? これまでみんなで一緒にやってきたじゃん! それなのになんでいきなり辞めるとか言い出すの!?」 一目で快活とわかる少女が怒りをあらわに別の少女を問い詰めた。 「フン。そういう暑苦しいのが嫌だって言ってるんでしょうが…」 まくしたてられている方の少女は外見の可愛らしさににまったく似つかわしくない刺々しい雰囲気を纏い心底面倒だというような口調でそう吐き捨てる。可愛らしい外面は猫を被っているのだろう。 「なっ!? あんたねぇ!!」 読む →
2018年09月02日 21:30 大槻唯にたくさんエ◯チなことをするお話 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2018/08/31(金) 22:24:09.80 :iPWHLqVm0 今これから唯とセックスすることになるだろう。 もう何回もしてきたから、微かに変わった唯の雰囲気で分かる。 ついさっきまで二人で観ていたTVドラマがキスシーンで終わったからか、それとも、たまたま俺と同じタイミングでグラスに手を伸ばしたからなのか。 そこまでは分からない。だが、とにかく、唯がセックスを意識し始めたことをはっきりと感じた。 だから誘えば断られることは無いはずだ。 とはいえ俺みたいな大人が十代の娘にあからさまなお誘いをするなんて真似は、やはり少々抵抗がある。 こういった関係となってしばらく経つが、そこについてはなかなか慣れることができないでいる。 すぐ始めるか、それともシャワーを浴びた後にするか。 俺としては勿論、すぐにでも始めたい。 そう俺を急き立てるのは、唯から漂ってくる甘い香りなのかもしれない。 ソファの上、俺から拳三つ分だけ空けて座っている唯。 大人が余裕をもって寝そべることができる大きめのソファだというのに、俺たちの座面の使い方はいつも勿体ない。 唯が家に出入りするようになったから奮発して購入したのだが、これなら以前の二人掛けのものでも十分だったかもしれない。 いや違うか。二人掛けソファの上だと、体位が制限されるからこのサイズに変えたのだった。 実際、今日はこのソファ上でヤることになりそうだ。 キャミソールとデニムのショーパン姿の唯。 日中、外でデートしていたときには着ていたTシャツはいつの間にか脱いでいた。 キャミの明るいオレンジ色はとても唯にマッチしている。 いつもながら室内では軽装で、とても目に毒である。 白い肌に絶妙な陰影を作る鎖骨と、左右合計四本の肩紐。 オレンジと白の肩紐と鎖骨の窪みとの隙間に親指を差し込みたい。 そして外側にずらし下ろして、唯の上半身を露わにしてやりたい…。 視界に捉えてしまうと、そんな欲求が盛り上がってくる。 「んっ…」 唯がまたグラスに手を伸ばして、一口飲んだ。 それで飲み切ったらしく「なくなっちゃった」とローテーブルにグラスを置いた。 組んでいた脚を解いて「ん~~~っ」と両脚をピンと前に伸ばす唯。 そして、凝りをほぐすように足首を前後左右へ動かし始める。 傷一つ見当たらない、均整がとれて美しく、それでいて一目で十代のものと分かる瑞々しさのある脚。 完璧な少女の完璧な脚。俺はその太ももの柔らかさを知っている。ふくらはぎの柔らかさも知っている。 もちろん、膝の皿の可動範囲も、脛肉の薄さも、アキレス腱の弾力も、踵の硬さも知っている。 十本の可愛らしい足指の味だって当然知っている。そう、俺だけが熟知している。 「ふぅ」 脱力。唯の足先がダランと床に付く。 読む →
2017年10月08日 09:00 鷺沢文香「アッシェンプッテルの日記帳」 関連SS 鷺沢文香「偽アッシェンプッテルの日記帳」 鷺沢文香「アッシェンプッテルの日記帳」 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2017/10/07(土) 23:48:28.38 :mxDxIcFa0 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 20〇×年11月25日 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 悪くない目覚めでした。 空腹で目を覚ますというのがなかなか人間的で、笑ってしまいました。 近場のスーパーまで赴いて食料を調達してきたので、今日は休憩しながら書くことにしましょう。 なんともまぁ…我ながら見事に失恋したものです。 それに、こう文字にしてみると、美波さんの大胆過ぎる行動には今でも畏怖の念を禁じ得ませんし…。 おそらく彼女はあの日始めから、自分の目的を達するためにPさんのお宅に来ていたのでしょうね。 (少しでも私を祝う気持ちを持ってくれていたなら嬉しいのですが…) ですが。あの夜から数日の間、お仕事そっちのけで考えていたのはそういったことについてではありません。 そもそも、美波さんのあの夜の振る舞いを線と点で結ぶことが出来たのも、つい一昨日のことです。 (もし仮に10月28日に日記を書いていたとしたら、全く別の記述になった筈) それまであの二人が結ばれたのは、私のような黴臭い人間には一生理解できない『男女の妙』や『青春の雰囲気』に依ってなのだろうと、全く理解できていないくせに不思議と納得していたぐらいです。 (なんという莫迦さ加減) あの夜の後、私の頭の中を埋めていたのは別のこと。 『何故私は動くことが出来なかったのか?』 ということについてでした。 失恋したことや彼女に出し抜かれたということよりも、その疑問の方が私にとっては問題だったのです。 (もちろん両方とも相当に大きなショックではありましたが…) なにせ自分のことなのに理解できなかったのですから。 二人が交わる直前に言っていたように、私が起きる素振りを少しでも見せれば展開は全く違っていただろうに…何故? Pさんが私に操を立ててくれると信じていたから? 中断させると美波さんが可哀想だったから? 夢かドッキリであると決めつけていたから? 実は動こうとしていたのに酔いの所為で動けなかっただけ? 数日はそんな風な見当違いの理由をごちゃごちゃと捏ね繰り回していました。 読む →
2017年07月21日 08:00 向井拓海「ポリネシア…なんて?」 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2016/10/31(月) 01:33:51.86 :VsYSaNKD0 鼻先をうなじに突っ込んで何が愉しいのか、ひたすらに荒い呼吸を繰り返しやがるコイツにはもう諦めさえ感じている。 熱い鼻息がアタシの首筋に吹きかかってもお構いなしらしい。 「あぁもう! 包丁使ってんだから、ちっとは大人しくしてろよっ」 無駄と知りながら、アタシの背中にぴったりと貼りついているヘンタイを𠮟りつけてみたが、やっぱり意味はなかった。 それどころか息はさらに熱くなるわ、アタシを抱く腕の力は増すわで、やらないほうがマシだったかもしれない。 「すぅ~~~はぁ~~~あぁぁ~…拓海…拓海…」 「んっ……」 せっかく晩メシを料理してやってるっていうのに、うわ言みたいにアタシの名前を呼びながら変なトコロにトリップしやがって…。 慣れない状況でどうにか下ごしらえを終えた食材を順番にボウルに放り込んで生地と混ぜ合わせた。 熱したフライパンに油を引き、薄い豚肉を数枚並べる。 じゅわじゅわと小気味いい音を鳴らしながら、ほどほどに火が通ったところで肉を裏返していく。 香ばしい匂いが鼻をくすぐって気を良くしたのも束の間、豚肉の脂が思ったよりも滲み出していたらしく、パチンと小さく爆ぜて油が飛んだ。 その油の飛んだ先は太ももだった。 今日に限っては運悪く。 「熱っ!? ったくよぉ! こんな格好で料理するもんじゃねーな!」 普通ならエプロンかズボンかスカートが防いでくれて、むしろ油が飛んだことさえ気づかないんだろうが、今はそのどれも無い。 読む →
2017年07月14日 08:00 安部菜々「ちょっとえっちなウサミンボイス」 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2017/07/14(金) 02:23:54.15 :Vq3CUo2i0 ◆◇◆◇◆◇◆ 『ソレ』が僕の手元に舞い込んできたのは全くの偶然だった。 年に一度の帰省の折、たまたま出かけた散歩の最中にばったりと中学時代の友人と出会ったことがすべての始まりだ。 ソイツとは当時は二人で遊びに出かけることも少なくなかった程に仲が良かったのに、別々の高校へ入学してからは二、三度会ったきり、疎遠になっていた。 だけど会ってしまえば、ほとんど十年ぶりの再会にもかかわらず、昨日まで中学生だったみたいにバカ話で盛り上がって、ここで会ったが百年目と真昼間から飲みに繰り出した。 ベロベロに酔って居酒屋を出た後もソイツの実家で飲み続けて――それからの記憶はかなり曖昧なのだけど――性癖の暴露大会までしてしまい、その結果同好の士であることが判明したのだったか。 翌朝、見慣れないハードディスクが実家の自室の枕元にあるのを頭痛と一緒に気付いた。状況的に友人から譲り受けたものだった。 そして、そのハードディスクの中に入っていた50メガバイト足らずのデータが『ソレ』だった。 全くの偶然。確かにその通りだった。 とはいえよくよく考えてみれば、彼とは遅かれ早かれどこか、例えば共通の友人の結婚式などで会い、そうして結局同じ展開を辿ることになったのではないかとも思う。 だからそういう意味では僕がソレを手に入れたのは、実は必然であり運命であったのかもしれない。 つまりは、今こうして僕の担当アイドルである菜々さんが目をクロマグロばりに泳がせながら汗を滝のように流しているのもまた、彼女の運命だったのかもしれないわけで。 自分でその運命に引き込んでおいてこう言うのも申し訳ないが、つくづく難儀な星の元に生まれた人だと思う。いやウサミン星か。だからか。 「―――――って知ってますか?」 「あっばばばっ」 この問い掛けだけで菜々さんはそうなった。 24時が近づき、僕らしかいなくなった事務所にポンコツアンドロイドのエラー音声が虚しく響き渡る。 読む →
2017年06月19日 20:30 佐藤心のすったもんだ 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2017/06/17(土) 21:35:12.21 :BGljWOh70 ◆◇◆◇◆◇◆ 「マジ…?」 これ、なんていうんだっけ? 床ドンだっけ? 下がベッドの場合でも床ドンって呼んでいいのかな…? じゃなくて! 「お、おいおい…落ち着いとけー?」 そう! 落ち着かなきゃ☆ って別に自分に言ったワケじゃないんだけど! 「なんでそんな驚いた顔してるんですか? ヤるって言いましたよね?」 「え、えー? そうだっけー? はぁと、忘れちったー☆」 何の意味もなさそうな誤魔化しをしながら目を逸らすと、自分の部屋とは違って白いクロスの貼られた天井。 シーリングライトでけぇ~…そんなことを頭の中で呟いてすぐにそういう状況じゃないって改めて思い知らされる。 Pの手が今現在はぁとが唯一身に着けているバスタオルを解きにかかっていたから…ってこのヤロー、マジで担当アイドルに手出すつもりー!? 「ちょ! ホンっトにするつもり…?」 「なんなんですか? シャワーまで浴びといてやっぱりナシとか勘弁してくださいよ?」 「いや、そのぉ…」 そのためにシャワー浴びたわけじゃないんだけど…。その証拠にほら見ろよ☆ お化粧だってばっちり落として…やっぱ見るな! 「ちょーっとだけ待って? ていうか待てよ☆ 待って☆」 はぁとを素っ裸に剥こうとするPの手は止まるも、いまだ貞操の危機真っ只中! 精一杯平静を装いつつ、このピンチをどうにか切り抜けるヒントを見つけるため、佐藤心ことしゅがーはぁとは状況のおさらいをするのであった☆ ん~~でもヤバげかも…? 読む →
2016年10月08日 00:05 東郷あい「あちらを立てればこちらが立たず」 元スレ 全てのレス 2: ◆ao.kz0hS/Q:2016/10/07(金) 20:24:46.54 :mFpjnES+0 アウトロの余韻がレンガ造りの壁に染み入ってゆく。 静寂の三秒前、そこここから控えめだが心地の良い拍手が起こった。 ぐるりと店内を見回せば、ゆっくりと拍手をする壮年の男性、目を閉じ聴き入るご老人、着飾ってはいるが気怠そうな女性、その女性にしか興味がなさそうな男、グラスを磨くバーテンダー。 バーでの過ごし方は皆それぞれだ。 本業の方のライブの歓声と熱狂とは比べるべくもないが、私はこの雰囲気が非常に気に入っている。 照明の絞られた店内では、ステージから一番遠くの席に座る連れの表情は分からないはずなのだが、彼の真摯な視線がありありと感じられた。 二呼吸の間拍手を受けさせてもらい、マイクを手に取る。 「ありがとう。このステージも次が最後の曲…」 言いながらこのバーのオーナーでもあるバーテンダーに視線を送る。 「最後はオリジナルの曲にしたいのだが…あぁ、お店の雰囲気を壊すような曲ではないことは約束するよ…」 数年来の付き合いのオーナーは「勝手にしろ」と言わんばかりの笑みをたたえて頷いてくれた。 「よかった。オーナー様の許可も出たな、フフッ…。曲名はあえて言わないでおこうか…。どういう曲なのか、耳だけで感じてみるのもまた一興だろう?」 戯言で本音を隠す。 耳だけで感じて欲しいというのも一演者としてはもちろん本心だが、肝心なことは別にある。 …この程度の不義理であればオーナーも赦してくれるだろう。 「……私の想いが届いてくれると幸いだ」 私の記憶が確かなら、彼にこの曲を聴かせるのは今回で2度目だ。 1度目のときは自己紹介がてらレパートリーの一つとして演奏しただけだったが、さて、彼は覚えていてくれただろうか…? 一番遠くの席を強く見つめてから、私はサックスに息を吹き込み始めた―――。 読む →
2016年07月26日 08:05 モバP「痛くなければ覚えませぬ」 元スレ 2: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:17:25.91 :kn5lQ3PC0 目の前には書類、書類、書類の山…。 日中、アイドルの付き添いで現場に出ていたしわ寄せだ。 一日でもこれだけ溜まってしまう。 企画書、稟議書、履歴書、見積書、請求書、企画書、領収書、進捗表、履歴書、企画書…種々様々。 目を通し上司の書類トレーへ、目を通し修正して再出力、目を通して経理へ回覧…。 事務所にただ一人残り、片っ端から書類を千切っては投げ、千切っては投げ(イメージ)。 うおォン俺はまるで人間書類処理機だ、なんてな。 でもまぁノってきた。 このペースなら終電までには余裕で終わるなぁ。 と見通しが立ったので一息つこうかなと気を緩めたのだが… 3: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:18:43.82 :kn5lQ3PC0 「おつかれさま。働き者ね、頭が下がるわ」 P「ひぃっ!!??」ドキィッ 4: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:21:17.76 :kn5lQ3PC0 その絶妙なタイミングで背後から、それも耳元で声を掛けられ、完全に一人だと思い込んでいたこともあり心臓が止まるかと思うほど驚いた。 「…ずいぶんな反応ね。せっかく一人寂しく労働にいそしむあなたを労いに来たのに」 P「か、奏かぁ。驚かせないでくれよ…」ドキドキ 振り向くとそこには担当アイドルである速水奏が立っていた。 まだ、心臓の鼓動は正常には戻らない。 奏「そんなつもりはなかったのだけれど…。Pさんが集中し過ぎなのよ」 奏「あぁ、でもこんなにたくさんの書類を前にすれば、そうでなければ立ち行かないのかしらね」 奏「ともかく改めて、おつかれさまPさん。いつも私たちのためにありがとう」 P「おつかれさま奏。だけどこれは俺の仕事だから礼には及ばないよ」 奏「ストイックなところは素敵だけれど、感謝は素直に受け取っておくものよ? ふふっ」 奏「頑張ってくれているあなたのためにコーヒー買ってきたの。集中するのは結構だけれど息抜きも必要だと思わない?」 ナイロン袋に入った缶コーヒーを取り出し微笑みながら顔の横で軽く振る奏の仕草はそのままCMにも使えそうなほど絵になっていた。いやしかし缶コーヒーは奏のイメージとは少しズレるか…。 奏はなんとなく瓶だな。瓶となるとコーヒーではなく… 奏「…Pさん、メリハリって言葉知ってる?」 P「あ、すまない…。ちょうど俺も休憩しようかと思っていたところなんだ。コーヒーありがとう」 奏「さ、ソファで休憩しましょ」 5: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:22:48.59 :kn5lQ3PC0 ソファに腰を下ろしふと壁掛け時計に目をやるともう23時になろうかというところだった。 23時…。びっくりしたことで思いつくのが遅れたが、高校生であれば夢の中にいるのが推奨されるような時刻だ。 P「奏、こんな時間になぜ事務所に来たんだ? 今日の仕事は21時まででそのあともタクシーで直帰するように伝えていたはずだが?」 向かいではなく隣に座ってきた奏に目を合わせないまま質問する。 奏「だからあなたを労いに来たのよ」 見目麗しいアイドルが労ってくれるなど本来なら望外の喜びと言っても良いのだが、それもやはり時と場合に依る。 それに加えて奏は「要注意人物」なのだ。 ひょっとしたら自意識過剰と言われてしまうかもしれないが。 …ただの自意識過剰であったならどんなに簡単か。 P「感心しないな…。奏はまだ高校生なんだぞ? たしかに仕事で夜遅くまで拘束することはあってそれは本当に申し訳ないと思っているが、それでもだからこそ高校生として最低限の休息を取れるように配慮しているんだ」 P「しかも、こんな時間の事務所に来るなんて。俺しか残っていないような事務所にのこのこやって来るなんて、危機感があまりにも無さすぎるんじゃないか?」 奏「…あなたしかいないからきたのよ」ボソッ P「ん? なんだ?」 かなり際どい言葉を必死に冷静に聞こえていないふりをした。 奏「…なんでもないわ」 6: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:23:58.16 :kn5lQ3PC0 奏「大人びてみせなくちゃいけない仕事ばかりやらせるくせに、こんなときは子供扱いするのね。矛盾してるわ」 それは実に痛いところであるが… P「矛盾は百も承知だ。ただお前が何かひどい目に遭ったりせず安全でいられることはなによりも大事なんだ」 奏「…今日ここで何が起こったって、私はそれをひどいことだなんて思わないのに」 P「ん? なんだって?」 奏「…っ」キッ 奏の大きな瞳に睨まれると実に迫力がある。 たしかにさっきのは自分でも白々しかったと思うが。 奏「…いいわ。子供らしくわかりやすく言ってあげる」 そして完全に失策だったようだ。まずい奏の目が座っている…。 P「いや、待て奏。いい、わかった、俺が悪かった」 奏「いいえ、待たないわ」 奏「…好きよPさん」 P「ぁ…」 7: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:25:40.53 :kn5lQ3PC0 決定的な言葉に思考がショートする。 強引にでも奏の言葉を遮った方がいいのか、それとも最後まで聞いてうまくごまかした方がいいのかわからない。 そもそも手遅れであるような気がするし、それに最早ごまかせるものでもないかもしれない。 奏「今日この時間にここに来たのはあなたしかいないと分かっていたから。さっき聞こえてたでしょ?」 P「れ、冷静になれ…」 奏「冷静よ? 少なくともPさんよりは」 奏「…もっと言えばあなたに手を出してもらいたくて、あなたと二人きりになれるここに来たわ」 P「っ…」 奏「本当にあなたには感謝してるの。見たこともない素敵な世界を見せてくれて」 P「それは、奏の力だ…」 奏「半分はね。でももう半分はやっぱりPさんのおかげよ。私が一番輝ける仕事を取ってきてくれたり、自分でも知らなかった一面に光を当ててくれたり…。 たぶん他のプロデューサーでは無理だったと思うわ」 P「……」 奏「それに、あなたは下衆な視線を送って来るクラスメイトやタレントや俳優とは違う。 あなたはちゃんと私の内面も見てくれている。それとも…ただ私のルックスがあなたの好みではないのかしら?」 P「いやっ、そんな……ことは…ない……」 あまりにも見当違いな奏の考えに咄嗟に本心が顔を出してしまった。まずいまずい完全に奏のペースだ…。 奏「ふふっ。嬉しいわ。本当に…」 8: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:26:32.27 :kn5lQ3PC0 奏「きっとあなた以上の男性はいないわ。だからあなたが好き。単純明快でしょ?」 奏「Pさん……あなたの答えを聞きたいわ」 吸い込まれそうなほど美しい瞳をまっすぐ向けられる。 この2つの宝石の前じゃとてもじゃないが嘘はつけそうにない…。 P「か…奏…。俺とお前はプロデューサーとア「Pさん」 俺の言葉を遮るように奏が話し始める。 奏「私は子供らしいから、子供でも納得できるように答えてね? 変なごまかしや単なる先延ばしはきっと理解できないわ」 P「ぐっ……」 奏「本心を聞かせて。本心であればそれがどちらでも私は納得するわ」 奏「あ、そうね……別に言葉でなくてもいいわよ」 P「?」 奏「ん……」 奏が俺の方へ体を向け目を瞑り、キス待ちの構えになった。 このポーズはこれまでにも何度もされてきたがいずれも俺をからかうための冗談めいたものであった。 しかし今回の奏は本気らしい。 主導権を握っているかに見える奏もその実、緊張しているようで頬は見たことがないくらいに朱が差し、唇もかすかに震えている。 9: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:28:34.22 :kn5lQ3PC0 … …… ……… …………無理だ。 どうシミュレートしても奏にキスする結末になってしまう。 だって仕方ないよ、俺だって奏大好きだもん。 嘘つけない、ごまかしダメ、先延ばしダメなんて、もう他にないよ…。 あ!「答えは沈黙」というのは…ダメだろうなぁ。 「沈黙ということはOKということね」ってなるよ絶対。 どうしたらいい!?この緊縛にも似た状況を打破できる妙手ないのかい!? ずっと奏のキス顔を見つめていたら意思とは関係なくキスしてしまいそうだったので、 どうにか目を逸らしソファ前に置かれたローテーブルに目をやった。テーブルに置かれ たままになっていたあるものに目が留まる。きっと誰かが食べ切ったあとに捨て忘れた のだろう。あぁ、懐かしいなぁ。子供の頃、コレをアレしたらすげー笑えたなぁ……。 あ、やるか…? やってみるか? 奏に? 絶対奏はやったことないだろ。こんなこと したらもう今日のことなんてぶっとんでしまうんじゃないか? 奏ももしかしたら考え 直してくれるかも。もっとも俺の首もぶっとんでしまうかもしれないが…。いや、それ は確かに嫌だが今はもうこの思いつきを奏にやってみたくてたまらなくなっている。 …奏怒るだろうなぁ。でもコレをアレされた奏がどんな感じになるのか興味あるなぁ。 いや、あくまで交渉材料としてね? 10: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:29:39.62 :kn5lQ3PC0 そうして俺はテーブルの上に無造作に投げ出されていた赤色のソレ、通称みかんネットにひそかに手を伸ばした。 そして入れ口を十分に広げ振りかぶり…… ず ぽ っ ! 奏「ふぇ!?」 奏の美しい顔に一気に被せてしまった。 奏「へっ!? はっ…!?」フゴフゴ 圧迫祭り絶賛開催中……っ! あわわわわ…。 11: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:30:34.50 :kn5lQ3PC0 P「ごくり…」 奏「Pひゃ、ん…な、にをひ、たの…? 目が…開けられなひわ……」 奏「こへ…スツォッキング…? いえ、網たひつ…? なに…これ…どこから…? 何なの…?」 ネットの圧迫感で瞼があげられないらしく、頭を飲み込んだみかんネットをペタペタと触り、その感触から網タイツと勘違いしたようだ。 惜しい! いや、本来下半身に履くものである網タイツをこのタイミングで頭に被せられたなどという発想自体出てこないのが普通かもしれないので、そこは奏の客観的判断力と柔軟な思考の融合を称賛しても良いだろう。 さすが奏だ…。 …。 ……あぁ。 ………やってしまった。 ネットに圧迫された奏の顔は見るも無残。 鼻は潰れ、頬はネットに引きずられ下に垂れ、髪は散らかしたように顔にへばりついている。 このネットの下に美女の顔があると分かる人間は皆無だろう。 この圧迫顔から元の美しい顔を想像することは人間業ではない。 そもそも美女にこんな罰当たりなことをするなんて常軌を逸している。 あぁ…まじでやっちまったなぁ…。 しかし…… 12: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:31:58.31 :kn5lQ3PC0 奏「えっ? ほんとうに…えっ、なっ、なんなの?」 P「……」ゾクゾクッ 状況がまったくわからず、あたふたとする奏のぶちゃいくな顔を見ていると胸の奥がズキズキするようなあまりよろしくない類の快感が沸いたことを認めなくてはならないだろう…。 なんだろうこの感情…。 おそらく俺しか見たことがない、しかももう二度と見ることはできないだろう奏の無様な姿。 それを凝視する。 そこで文明の利器の存在を思い出す。 慣れた手つきでスマートフォンを取り出しカメラアプリ起動。 カシャ♪ 静かな事務所に無慈悲な撮影音が鳴り響いた。 奏「P、ひゃん…? 何を撮っているの…?」 カシャ♪ カシャ♪ 響く電子音。 奏「だから! 何をしているの!?」 明らかに怒気を孕んだ問いかけに答えてやることにする。言葉で、ではなく…。 むんず ずるぅ 奏「んっ!?」 ネットの先端を上へ5センチほど引っ張ると、予想通りそれにつられて奏の瞼が開いたのでスマホの画面を見せてやった。 13: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:33:10.40 :kn5lQ3PC0 奏「ぃゃ…なひよ…これわたひ…? なんのつもり…なの…ひょ…」フルフル あ、ネットを引き上げたから今度は頬が引き上げられて…しかも最悪なことに鼻がブタっ鼻ぽっくなっている。 さらに昏い興奮を覚えた。 残したい、この感動。 カシャ♪ 奏「や、や…めへ…やめへぇ……」 カシャ♪ カシャ♪ カシャ♪ 奏「やめなさい!!!」グイッ 声を荒げて奏が被せられていたみかんネットをはぎとってしまった。 顔にネットの跡はついていないが、髪はそうもいかずせっかくビシッと決まっていた髪型は崩れ後れ毛があっちにもこっちにもある。 だからかもしれないが、怒りに凄む奏もいつもの迫力がない。 奏「なんなのよ!? なにがしたいの!?」 P「奏、俺はやはりお前の想いには答えられない」 奏「えぇ!? はぁぁ!?」 奏「えっ…………」 奏「やっぱり私じゃダメなのね……」シュン P「いや! 違うそうじゃない。 『応えられない』ではなく『答えられない』だ。OKともNOとも答えられないということだ」 奏「なによ…それ…納得できない…」 14: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:35:24.53 :kn5lQ3PC0 P「俺たちの関係の始まりはプロデューサーとアイドルだ。それが大前提だ。その前提を反故にするようなことは俺にはできない。 そしてお前もアイドルでいる間は特定の誰かに表立って愛情を注ぐというようなことはしてはいけない。 だから俺に『好き』だなんて言うのもだめだ。それはそれが許される時までずっと秘めておくべきものだ」 奏「な…とく…できない…」 P「そういうルールだ。アイドルになる前に伝えたはずだな?」 P「そして…それでも尚、ルールを破ろうというのなら、俺だってルールを破る…」 奏「な、なによ…?」 スマホを3回ほどタップして画面を見せつける。 LINEのとあるグループにさっきの圧迫顔の写真をあと1タップで送信できる状態になっている。 グループのメンバーは、俺、速水奏、城ヶ崎美嘉、そして、宮本フレデリカ、塩見周子、一ノ瀬志希。俺とLiPPSの連絡用のグループだ。 P「ルールを破ろうとするような悪い子には罰を与えなくてはいけない。 まだこの話題を続けようというのなら、このグループにさっきの写真をぶち込む…」 奏「…」 奏「………」 奏「ひぃぃぃ!!!??」ブルルッ 15: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:36:51.50 :kn5lQ3PC0 この罰の恐ろしさを正しく認識した奏の顔が一気に青くなった。 美嘉はともかく、フレデリカ、周子、志希にこんな写真が渡ろうものならどれだけいじられてどこまで拡散されるか…。 もし俺の恥ずかしい写真が万が一この三人に渡ったとしたら…想像するだに恐ろしい…。 奏「だ、だめっ…そんなの家から出られなくなる……っ」ガタガタ P「こんな汚い手を使うしかない俺をいくらでも罵ってくれていい。だから俺との関係についての話はすべての筋を……奏?」 奏「だ、だめよっ…もう日本じゃ生きてきけないわ……」ガタガタ 青くなったまま身震いしている奏に俺の声は届いていないようだ…。 奏「ダメよ…Pさんっ…お願い写真を消して…っ」ガバッ 奏が俺のスマホに飛びついてくる。 やばい完全に正気を失っている…。 P「いやっ、待てっ!送らない!送らないから!!危ない!押しちゃう!!」 奏「いやぁぁぁ!だめよ!!押さないでぇ!!!」グイィ P「押さないって!!!!だ、大丈夫!!嘘だって!!こいつらに渡すわけないって!!!」 奏「だめぇぇえ!!! やめてぇぇぇぇぇええ!!!」グイィィ P「ほんとに!!送らないからぁっ!!! 奏ぇ!!! 俺の話を聞けぇぇぇ!!!」 奏「いやぁぁぁあぁぁ!!!」グイィィィィイイ P「やめろぉぉぉぉ!!!!」 ぽちっ…… P奏「「あっ」」 LINEの薄青の背景に奏のみかんネット顔が表示される。 奏「いやあああぁぁぁぁぁああ!!!!」 16: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:37:47.60 :kn5lQ3PC0 響き渡る奏の絶叫。近隣のビルから通報されてもおかしくない声量だ。 そしてすぐさま既読が1つ付く。 ぽーん♪ 美嘉【これ奏? どゆこと???】 奏「いやあああぁぁぁぁぁああ!!!!!」 そしてまた絶叫。 奏「はぁ、はぁ…み、美嘉?…まだ美嘉だけ…まだ美嘉なら…消さなきゃ…消さなきゃ…早く…っ」 P「か、奏…」 うわ言のように呟きながら俺のスマホを取り上げて震える手でフリックとタップを繰り返す奏だが、たしかLINEの写真は…。 奏「け、消せるのはこの端末だけぇぇぇぇええぇ!!???」 奏「いやあああぁぁぁぁぁああ!!!!!!!」 そして気付けば既読があっという間に「4」となっていた。 つまり全員に見られたことになる…。 奏「あああぁぁぁぁぁあ゛あ゛!!!!!!!!!」 17: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:38:43.99 :kn5lQ3PC0 ぽーん♪ ぽーん♪ ぽーん♪ 周子【これは大変なことになってますねぇフレデリカさん】 フレデリカ【大変キョーミ?深いって感じ? 一ノ瀬さんはいかがしるぶぷれ?】 志希【にゃはは~~~】 ぽーん♪ 志希【みんなに知らせなきゃ(使命感)】 奏「ぎゃあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁあ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!」 18: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:40:16.36 :kn5lQ3PC0 これまでの人生でぶっちぎりで一番の絶叫が耳をつんざいた。 ちなみに5位までは全部ついさっき聞いたものだ。 絶叫し終わった後も微動だにせず、携帯を見つめ続けている奏から何か空気が漏れ出るような音がする…。 顔をのぞき込むとそれはなんかもう奏っぽい誰かだった。 我ながら酷い言い草であるが…。 奏「かひゅっ、かひゅ、かひゅ……」 奏「かひっ……」ビクッ 奏「」グタリ 叫び過ぎの酸欠からかショックからか現実逃避からか、奏は意識を手放してしまったようだ。 ソファに横たえて乱れた髪を撫で整えてやるが、表情は悪夢をみているように険しい。 こんなことにするつもりなんてなかったんだが…過ぎたことはもうどうしようもない。 この痛みによって奏が意識改革してくれることを切に願う。 俺と奏のスマホからはメッセージの受信を知らせる電子音が鳴り続けている。 P「ふ~~~……」 P「さて、退職届書こうか」 19: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/17(金) 23:41:06.84 :kn5lQ3PC0 速水奏 編 終わり 29: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:06:27.34 :r3M5PZL/0 始めます。 尚、各話のモバPは同一人物とは限りません。 30: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:09:04.40 :r3M5PZL/0 ………… …… … 鼻をくすぐるような良い匂いがする… 心地の良いかすかな音がしている… それに左半身がなんだか温かい…まるで… ん? 俺は今何をしているんだ? たしか…事務所でずっと書類仕事をしていて… 他のスタッフはみんな帰ってしまって… だったらのんびりやるかと一旦休憩しようとソファに深く腰を下ろして… なるほど、そのまま寝てしまったのか。 意識が覚醒し始めてようやく目をひらく気力が湧いてきたがまだ視界はかすんだままだ。 良い匂いのする方、心地よい音がする方、つまり温かな感触のある左方に目を凝らすとぼんやりと人の輪郭が見える。 その人影はじぃっとして動かないが周期的に手のあたりだけが動き、それに伴って心地の良い音…これは本のページをめくる音だ…がした。 31: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:10:39.48 :r3M5PZL/0 P「あぁ…文香か……」 文香「……」ペラッ 俺の呼びかけは読書中の鷺沢文香には届いていないようだ。 その集中力には感心するが…。 P「文香、近いぞ?」 文香「……」ペラッ 俺と文香が座るソファは4人が余裕をもって座れるほど大きいもので、しかも向かい側にももう一つ同じソファが設置されているというのに、 文香は俺の体の左側面と触れ合うほど近くに座っていた。 俺が休憩し始めた時には確かに文香はいなかったので、あとから来た文香がわざわざ俺のすぐ隣に腰かけたことになるが、一体どういうつもりなのだろう。 P「文香、近いって。おーい、文香!」 文香「……」ペラッ P「ってこれも聞こえないのか…? すごいな」 数メートル先の人にもはっきりと聞こえるような声量で呼びかけたのに、読書に没頭している文香は気付くことができないらしい。 32: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:12:08.15 :r3M5PZL/0 周りの声が耳に入らないほどの集中力というのは往々にして称賛されるものだが、このレベルまで来てしまうと最早危ういと言わざるを得ない。 仕事の時刻になっても気付かなかったり、カフェテラスで読書中に居眠り運転の車が向かってきたり、電車などで痴漢に良い的にされたり…。 読書するときにはもっと周りに注意を払うか、自室などのそもそも何の危険もないような場所を選ぶようにと再三にわたって文香には伝えていたのだが、相変わらずのようだ。 しかも今日などは夜も遅く俺しか残っていない事務所にわざわざ来て、それもわざわざ俺の隣に座ってこんなに無防備を晒しているなんて、本当にどういうつもりなんだ…。 こんなの、文香のそういう性質を知っている人間にとってはいたずらを誘っていると思われても仕方ないぞ? P「……」 文香「……」ペラッ そういうわけで…これから俺がすることは文香が読書中どれほど周りが見えなくなっているのかをプロデューサーとして把握しておくためであるし、 また同時に文香にその危うさを身をもって学習してもらうためである。 P「……」スッ つぃぃぃ さわ…さわ… 文香「………」ペラッ 手始めに文香の艶髪に触れてみた。 当然この程度では文香にとってはそよ風と変わらないのだろう、なんの反応もない。 33: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:14:13.25 :r3M5PZL/0 P「本当に綺麗な髪だ…これで特別な手入れしてないってんだから羨ましがられるのもやむなしだよなぁ…」サワサワ 早くも目的を忘れ、見た目通りの素晴らしい手触りをつい愉しんでしまう。 まさにシルクのような髪だ。 髪の暖簾に指先を突きいれてみるとなんの引っかかりもなく入り込み、手櫛をかけようとするも「するん」と 一切の抵抗なく髪先まで通ってしまったのでそもそも手櫛の必要は全くないのだろう。 しかもサラサラのくせにフワフワとした柔らかさもあって、髪先の束を手のひらで持ち上げてみると歪さのかけらもない 優しい曲線を描いた後で蛍光灯の安っぽい光をまったく別次元の輝きに変換してみせてからハラハラと元通りになった。 うむ、キューティクル・モイスチャ―ともに良し。 文香「…………」ペラッ P「それに文香といえば…」 くいっ P「この瞳だなぁ。ほんとうに吸い込まれそうだ…」 文香「…………」 文香「……」ペラッ 34: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:16:17.49 :r3M5PZL/0 前髪を上げるとどこか海の青さを連想させるような瞳があった。 P「はぁ……」ジー 文香「…………」ペラッ P「文香の瞳はずっと見ていたくなるなぁ…。はぁ……」ジーー 文香「…………」 文香「…………」 文香「…………ぁ」ペラッ 冗談抜きで本当にずっと見ていられるのだが、それで文香の読書が終わってしまっては検証ができなくなってしまうので断腸の思いで視線を外した。 その先にあったのは文香のトレードマークといってもよいヘアバンドだった。 P「文香のヘアバンド…」 文香「…………」ペラッ P「好き」 文香「…………///」 P「だけどたまには……あれ? ヘアバンド外したところ見た記憶が…無いな…」 P「外してみるか…? いやでも流石に気付くか…?」 P「うーん…」 文香「………」ペラッペラッ P「あ、読むスピードが速くなってる。ということは集中も深まっているということか…。もしかしたら気付かないんじゃ…?」 ぐいっ ヘアバンドの縁の指を掛けて少しずつ後ろへずらしていくと、あるところで手櫛と同じように「するん」と抜けてソファに落ちた。 文香は…? 35: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:17:40.86 :r3M5PZL/0 文香「………………」ペラッ P「あちゃーほんとに気付かないのかぁー。これはいよいよ危ないぞ~」 P「ん?」 P「すんすん…めっちゃ良い匂いがする…どこから…?」 文香「………?」 P「すんすん…あ、ヘアバンドがかかってた髪のところからかぁ。バンドで温められてたのが解放されたからかな」 文香「………」ペラッ P「あぁ、すごい良い匂い…。これで安物のシャンプーって嘘だろ…」 文香「………」 P「すんすん……あぁ…」 P「……直接嗅いでも大丈夫だよな…?」 文香「………!?」ピクッ P「ん?」 文香「………///」ペラッ 検証とは関係なくなってしまうが、良い匂いを胸いっぱいに吸い込みたいという欲求に逆らえそうにない。 でも残業代もでないのにこんな夜遅くまで働いているし、偶々転がり込んできた幸運をモノにしないのは 寧ろ神様の采配に逆らっているようできっとそれは良くないことなので、つまりはこの僥倖を噛みしめたところで 誰も俺を咎めることなどできるはずがない。 よし、OK。 文香の髪ギリギリまで鼻を近づけ… P「すぅ~~~~~~はぁ~~~~~~~」 文香「ぁぁ………/////」 36: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:19:06.38 :r3M5PZL/0 P「………」 P「OH MY GODESS……」ゾクゾクゾクッ 文香「………/////」 胸を満たしてくれた期待以上の幸福感に小躍りしてしまいそうなほどだった。 こんなの、鼻をうなじに突っ込んで思いっきり嗅いだら一体どうなってしまうんだろう…? どうなってしまうんだろう…? どうなってしまうんだろう…? ……どうなってしダメダメダメ!流石にダメ! もしこの検証中に文香が気付いたとしても、直接肌に触れていなければなんとでも言い訳できるけど、さすがに鼻を押し付けてたりなんかしたら完全にアウトだ。 ダメだめだめだめだめ……。 うん、もう大丈夫。 変な気はもう大丈夫、うん。 P「ふぅーーー、ふぅーーふぅー………よし!」 文香「………?」ペラペラ P「あ、そういやヘアバンド外した文香をちゃんと見てなかったな…う~~んと……?」 文香「………/////」 P「うわぁ~~~」 P「こりゃだめだぁ~~~」 文香「ぇ………」 37: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:20:21.77 :r3M5PZL/0 文香「………………」ウルウル… P「ヘアバンド取ったら前髪がサイドに流れて文香の綺麗な瞳がどこからでもはっきり見えてまうやん…」 P「こんなの街に出ようもんなら、ナンパやスカウトが殺到して1ミリだって進めんへんで…」 P「これほどの女神、悔しいが俺のプロデュース能力ではまだ扱いきれへん。 ストーカーを増やすだけ増やして文香を危険にさらすことになるに決まっとる…」 P「すまん文香、きっとすぐにこの姿の文香にもスポットライト当てたるからな…」 文香「…………////////」 P「あ、あまりの衝撃で関西弁が出てもうたわ…。ん゛ん゛ん゛…よし、戻った」 P「それにしても文香の集中力はどうなってるんだ…。さすがに肩を強く叩けば気付くだろうが、 痴漢がそんな触り方をするわけないし、きっと触れるか触れないかいや触れてる、というような微妙なラインを攻めてくるはずだ…」 P「かといって検証とはいえ俺がそれをやったら御用も御用…むむむ…」 P「ソフトタッチ…直接触れず…合法的な……」 文香「…………???」ソワソワ P「あ!」 悪魔的でも圧倒的でもないけどどれかといえば犯罪的かもしれないけど丁度いい思いつきが下りてきた。 38: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:21:28.50 :r3M5PZL/0 P「たしか…このあたりに…」 ごそごそと壁際のキャビネットの引き出しを漁る。 少し前に事務所内で流行ったものの、そのあまりのアレさに一瞬でブームが去ってしまったといういわくつきの器具を探す…。 P「あ、あった…」ニタァァァ 文香「………?」 おっと、思わずゲスい笑みを漏らしてしまった。 しかしコレを使ったことがある人間ならば誰だってニヤつくだろう。 この器具の威力を知っている者ならば誰でも…。 緩いカーブを描いた針金を束にしただけの重量50グラムにも満たない見た目は至って簡素な器具。 ちなみに針金の先端には肌を優しく擦るための小さな丸い素材が接着されている。 P「これはヘッドスパワイヤー…」 文香「!?」ビクッ P「ゆえにこれはマッサージである…」 文香の良い匂いがほのかに立ち上ってきている頭頂部に狙いを定める。 そしてゆっくりと丁寧に十数本のワイヤ―の先端のポッチを文香の頭皮に挿入するように押し込んだ。 39: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:22:01.42 :r3M5PZL/0 し ゅ る ん ♪ 文香「んひっ♥」ブルッ 40: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:23:49.35 :r3M5PZL/0 P「ん?」 文香「ぁ……」 P「あぁ、やっぱりこれは文香も気付いたかなぁ? もし気付いたんならこの検証ももうここできっぱりと終わりにしないとなぁ…」 文香「………/////」プルプル 文香「………」 文香「……」ペラッ P「なん……だと……!?」 しゅこん♪ しゅるん♪ するん♪ 文香「んんぅ♥ ぅひっ♥ あひっ♥」ペラッペペペラッブルルルペラッ P「なんてこった…。ワイヤーの刺激は確かに感じているのに、読書をやめないだなんて…。 もしかして読書中の文香の精神と肉体は完全に分離されているのか…!?」 しゅる♪ しゅこここ♪ しゅるん♪ 文香「んっ♥ ぐぅぅ♥ ふぁぁっ♥」 P「肉体を置き去りにして精神だけを本の世界に…。 だからこんなふうに、こんなふうにしても!はぁ、はぁ…… 口がだらしなく開いて鼻の穴をヒクヒクさせているのも、下品な喘ぎ声も、単なる肉体の反射反応でしかなく、 ゆえにそれが精神に伝達されることはない…だとォ?」 41: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:24:48.03 :r3M5PZL/0 しゅぴゅん♪ しゅるるん♪ しゅこ♪しゅこ♪しゅこここ♪ 文香「んぃぃ♥ もぉ♥ んぁ♥ だぇ♥」ブルブルブルッ P「こんなの痴漢に好きにして下さいって言ってるようなもんじゃないか!?」シュコシュコン 文香「んあっ♥ んんぁっ♥」 P「これはやばいぞ! 本格的に対策を考えないと文香が! 文香が暴漢に手籠めにされてまう!」シュコココッコココ 文香「あっ♥ あっ♥ あっ♥」ヒクッヒクッ P「………」 P「なんてな♪」 文香「ふぁ?」ブルブル P「文香、手止まってるぞ?」 文香「ぁ!? ……」ペラッペラッ P「ふん…まだ続ける気か…」 文香「……」ペラッペラッペラペラ 42: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:26:30.44 :r3M5PZL/0 P「文香の意図はよくわからないが…今日みたいに俺しかいないような事務所に来てあまつさえ俺のすぐ隣に座るなんて…、そんな不用心なことするんじゃないぞ?」 文香「……」ペラッ P「男と触れ合うことがあまりなかった文香にはよくわからないかもしれないが、そういうのは普通好きな男を落とすためにやるもんだ」 文香「……」ペラッ P「いくら俺でも勘違いするところだったぞ?」 文香「……勘違いじゃ 『しゅこん♪』 んひっ♥」ブルッ P「文香みたいな可愛くて綺麗でおとなしい女の子なんてな、悪い男の手にかかったらあっという間に食べられちゃうんだぞ?」 しゅるん♪ 文香「はひっ♥」 P「わかるか? 身も心もズタボロのドロドロにされて…」 しゃこん♪ 文香「ぅぁっ♥」 P「もしかしたらドラッグなんかも使われて頭バカにされて…」 しゅこしゅこ♪ 文香「ふぁ~♥」 P「涙も鼻水も唾液もだらしなく垂れ流したアヘ顔を写真に撮られて…」 しゃっこん♪ しゃっこん♪ 文香「ふぅぅ♥ んぁぁぁん♥」 P「それを使って一生脅され続けることになるんだ…」 P「わかったか?」 文香「はっ♥ はひぃ♥」 43: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:27:50.04 :r3M5PZL/0 P「そうか、なら良いんだ。それはそうと……」 しゅこん♪ しゅこん♪ しゅるるん♪ 文香「あひゃぁんん♥」 P「コレ…気に入ったか?」 文香「ふっ♥ ふぁぁい♥」 P「キモチイイか?」 文香「きひぃ♥ きもひいいれすぅ♥」 P「もっとしてほしいか?」 文香「んはぁい♥ もっろひてぇぇ♥」 P「ははは…よし」 しゅるん♪ しゅるしゅりゅしゅるるる♪ しゅこん♪ 文香「ふぁっ♥ ぁぁあ♥ あっ♥ あっ♥」 P「文香って結構欲しがりなんだな……」 44: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:28:26.04 :r3M5PZL/0 P「この……」 P「スケベが」ボソッ 文香「!?」 文香「あっ♥ あっ♥ ふあぁん♥♥♥」ビクンッ 45: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:30:13.55 :r3M5PZL/0 P「あ……」 つい調子に乗ってひどいことまで言ってしまった。 俺の悪い癖だ…。 文香は何かを耐えるように体を震わせている。 傷つけてしまったのかもしれない…。 P「文香…その…ごめん」 文香「ふ、ぅぅぅ……」ブルブルブル 文香「……」プルプル 文香「ぁ…Pさん…お目覚めでしたか…」プルルッ P「ふ、文香?」 文香「すみま…せん。 私…本を読んでいると……んはぁ♥ 周りが見えなくなってしまうので… もしかしたら…Pしゃんのこと…無視してしまっていたかもしれません…」 P「いや…うん…そうだね…?」 文香「ぁ…ちょっと…はぁん、はぁ♥はぁ♥ お花摘みに行って…きますね……」スック P「お、おう…」 ふらつきながら立ち上がり事務所外のトイレへ向かう文香の後ろ姿を見送る。 ついさっきまで文香が座っていた場所を見ると何かに濡れているように見えなくもなかったが、 それは曖昧なままにしておくことにしておく方が何かと良いような気がしたので調べるようなことはあえてしなかった。 46: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/18(土) 17:31:13.55 :r3M5PZL/0 鷺沢文香 編 終わり 56: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:30:59.71 :mx+DuvUn0 「は~い、おっけーで~す」 ADの間の抜けた一言は放送に必要な撮影がすべて終了したことを意味している。 「ふ~終わった~お疲れ~」 「お疲れ様です」 「お疲れさまー」 「どう?飲み行く?」 「おっ、いいっすねぇ~」 スタジオのセット中央に配置されたソファに腰かけた出演者たちは(撮影中もかなりリラックスしていたように見えたが )一気にプライベートモードに切り替わり、この後の予定を立て始めていた。 現在は午後7時、飲みに行くには丁度いい時間だろう。 「ねぇ、キミも一緒にご飯食べに行かない?」 「スタッフさんたちもいるからさ」 「んん~どうしよっかにゃー…あっ」 久々に担当アイドルが出演するテレビ番組の撮影現場に顔を出すことができ、その子が自分の仕事を卒なくこなしているのを確認できた。 そして今日のこのスタジオ内で営業をかけるべき人間は……いないようだ。 となるともうここには用はない。 そう思ってスタジオを後にしようとしたのだが。 「ごめんね~この後予定があったの忘れてた~♪」 「あぁ~…、なるほどね。頑張ってね!」 「ありがとーじゃね~♪」 「ぷ~ろでゅ~さ~!」 自分のことを呼ばれ振り向いた瞬間、胸部に鈍い衝撃が走った。 P「うぐっ!?」 57: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:32:21.80 :mx+DuvUn0 「にゃはは~! 何も言わず帰ろうとするってどういうことかにゃ~!?」グリグリ P「す、すまん、志希。お疲れ様…」 担当アイドルである一ノ瀬志希が俺の胸に飛び込みがてら頭突きをかまし、そのまま頭をぐりぐりとしてくる。 志希「久しぶりに現場に来てくれたのにね~~~うにゃ~~~!!」グリグリ P「ちょ…志希、やめなさい…」 衆人環視の中、ほとんどアイドルに抱き着かれているようなものであるから変な汗がジワリと滲み出るのを感じた。 志希「なんでぇ~ キミはぁ~ あたしの現場にぃ~ 来てくれないのかにゃ~!?」グリグリ P「いや、まって志希ほんとに! 人が見てるからっ!」 気付けばスタジオ内に残る人たちの視線が俺と志希の二人に注がれていた。 ただ不思議なのはそれがゴシップ的なモノを見る視線ではなく…なんというか生温かい視線というか…。 志希「ふっふっふ~~残念だったね~。このスタジオの人たちはみんなあたしの味方だよ~。ロクに現場に来ないようなナマケモノには発言権も拒否権も無いのだぁ~♪」 P「へ? はぁっ?」 志希「だから大人しくしてるよーに!わかったかなー? ハスハス~♪」グリグリ P「ちょ、やめっ!? 嗅ぐな! くすぐったい!」 クスクスと、いや、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらスタッフの人たちが各々の作業を再開し始めた。 どうやらパパラッチの類の心配はいらないようであるがどうにもばつが悪い。 大きく「お疲れ様でした」と言い放ち、しがみつき続ける志希を引きずるようにしてどうにかスタジオから出ることに成功した。 58: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:34:08.15 :mx+DuvUn0 P「志希、おい、志希! もういいだろう、もういいだろう!?」 志希「ありり? スタジオから出ちゃったか~」 志希「ふぅ~~とりあえず充電かんりょー♪」 そう言ってようやく志希は離れてくれた。 志希の頭が擦り付けられていた胸のあたりから彼女の匂いが立ち上って来たのが分かった。 やれやれ…。 志希「改めてお疲れさまー♪」 P「あぁ、お疲れ様。撮影良かったぞ」 志希「まぁねー。それにしても一体どういう風の吹き回しかな? 最近めっきりあたしの現場には来てくれなくなってきたのに。 キミが来てるって分かってたらもっと頑張ったのにな~」 P「いや、そこは常に頑張ってくれよ…」 志希「ジョーダン、ジョーダン♪ にゃはは~」 P「たのむぞ?」 P「…それがなぁ、この局で予定してた打ち合わせが急にキャンセルになってしまって手持無沙汰でな、丁度志希の番組撮影やってるの思い出して見にきてみたんだ」 志希「んん~~? やることないから暇つぶしに見に来たってことかな~? それはさすがの志希ちゃんでも怒っちゃうぞぉ~?」 いつも通りの軽い口調だが微かにではあるが確かに怒気を孕んだ声に内心ひやっとしてしまう。 そもそも馬鹿正直に言わなくてもよかったかもしれないが…志希に変に取り繕ってもごまかせる気がまったくしないのだ。 P「本当にすまん! これからはできるだけ同行するようにするから許してくれ…」 志希「うん、許す♪ なんちゃって~にゃはは~」 志希の声のトーンが一転して元の軽快さに戻る。 志希「『ダダ』っていうのをこねてみただけだよ♪ キミも大変だもんねぇ~」 59: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:35:00.03 :mx+DuvUn0 自由奔放が服を着ているようなイメージを持たれている志希であるが、それは彼女の一面でしかない。 好き勝手やっているように見えて自分の仕事はきっちりこなしているし、どう振る舞えば自分の魅力を出せるかも十分に理解している。 そのギャップはギフテッドである志希特有のメリハリのつけ方なのだろう。 だが最近はその志希の能力に甘えてしまい、一人で現場に赴いてもらうことが増えてしまっていた。 志希「でも~だからこそ~こういうときくらい好きにハスハスさせてもらうからね~♪」ダキッ 言いつつ、折角引きはがした志希がまた抱き着いてきてしまった。今度は腕にであるが…。 普段の奔放さから多少のスキンシップは「キャラ」ということで大目に見てきたが最近は少々過剰に感じることも多くなってきている。 P「志希、そういうのはちょっと減らそうって言ってるよな?」 志希「いいの、いいの~♪ さっ、プロデューサーも事務所に帰るんでしょ? あたしも連れてって欲しいな~♪」 P「あぁもう…。俺は飯をどこかで食べるような余裕は時間的にも金銭的にもないからな?」 志希「いいよ♪ あたしもキミと同じコンビニ飯で構わないから♪」 P「う~ん、年頃のアイドルがそれでいいのか…?」 志希「なんだか今日は食品添加物をたっぷり味わいたい気分なんだ♪」グイッ P「はいはい、わかったよ」 撮影終わりのくせにまだ元気満々な志希に駐車場に停めた社有車まで引きずられていく羽目になるのだった。 60: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:35:59.38 :mx+DuvUn0 ――――― ――― ―― ― 志希「じゃああたしはあっちでオベンキョーするから。プロデューサーもお仕事頑張るよーにー♪」 実に粗末な晩御飯を一緒に済まし一服したところで志希がそう言い立ち上がった。 P「事務所に用があるって、勉強しに来たのか? 自分の部屋でやればいいのに」 志希「たまには気分を変えたくてね~。はぁい、あたしのことはいいから、キミもさっさと労働に勤しむのだ~♪」 P「はいよ。あまり遅くなる前に帰るんだぞ?」 志希「……」 P「?」 志希「はいは~い♪ さあやるにゃ~」 会議室に向かう志希の後ろ姿を見送る。 アイドルには学生が多いので会議室は業務に使われていないときに限り自習室として使っていいことになっている。 もっとも、志希のする勉強とは学生の域をはるかに超えたものであるのだろうが。 …凡人にはよくわからない。 事務所を見渡せばいつもより活気のある雰囲気を感じた。 …今日は金曜日か。 そうだよな花金くらいスパッと仕事片づけて明日知らずの飲みに繰り出したいよな。 悲しいかな俺には縁遠い話である。 それでも今日ぐらいは最終帰宅者になるのは避けたいものだ…。 P「…」 同僚P「…」 同じく最終帰宅常連の同僚Pと目が合う。 P・同僚P「「ふっ…」」ニヤッ 今日は俺の方が先に帰ってやるぞという不敵な笑みの応酬。 絶対同僚Pなんかに負けたりしない! 61: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:37:19.58 :mx+DuvUn0 ――――― ――― ―― ― 同僚P「おつかれちゃーーーーーん!!!!」 P「…」イラッ 同僚P「戸締りと消灯の確認よろしくねーーーーん!!!」 P「ウス…」イライラッ 汚い笑みを浮かべながら事務所のドアをくぐる同僚Pに心の中で中指を立てる。 あの野郎、勝ち誇ってたけど僅差だからね僅差。 俺だってあとはこのメールを送信すれば終わりだからね。 さっき掛かってきた電話を同僚Pがなかなか取らないから俺が仕方なく代わりに取った所為だからね。 もうほら、これで、これで、あ、添付ファイル忘れずに、これで…。 P「送信っ、と…」 P「ふぅ………見回りして帰ろ」 同僚Pには勝てなかったが午前様は避けられそうだ…。 自席から立ち上がりまずは事務室内の窓の施錠を確認して、最終帰宅時の確認シートにマークする。 資料室、給湯室も同様にチェックし、会議室を確認しようとしたのだが…。 P「電気ついてるな…」 ドア下の隙間から光が漏れ出ている。 電気の付けっ放しなどがあった場合は確認シートにその旨を書いておかなければならないから面倒だ…まったく誰だ消さずに帰った奴は…。 気怠さが増したのを感じながら会議室のドアを開くと、美少女と目が合った。 天才美少女、一ノ瀬志希。 P「はっ? え? なんでいる?」 志希「あっ! もぉ~~遅いよ~! いつもこんな時間まで働いてるなんて感心を通り越して少し引くにゃ~」 まるで俺がこうして会議室のドアを開けるのを待っていたかのような言い草だ。 両腕を上げて一伸びしてから、机の上に広げていた論文…うわなんだこれ英語びっしりで目がチカチカする…あれなんか英語ですらない…と筆記用具を鞄に仕舞い始めた。 62: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:38:50.20 :mx+DuvUn0 P「え? ずっと勉強してたのか?」 志希「そうだよ~。…ん? 勉強するって言ったよね?」 P「言ってたけど…こんな時間まで会社にいるなんて…」 志希「?」 状況がよくわかっていないらしい志希に軽い眩暈を覚えた。 P「あのなぁ…今日はたまたま俺が最後だったけど、もし他の奴が見回りしてたらソイツとこんな時間にこの狭い会議室で二人きりになってたんだぞ? 万が一があるかもとは思わないのか?」 志希「にゃはは~『たまたま』なんて白々しいんじゃにゃいかな~♪ ソレ♪」 志希が俺の左手にある確認シートを指さす。 志希「ここ最近ほとんどキミのサインだったよ? それって最後に会社を出る人が書くんだよね? きっと今日もキミだと予測…するまでもないかな♪」 改めてシートを見てみると確かにここ一か月はほとんど俺の名前が並んでいた。 極たまに同僚P。 P「いや、でもなぁ…今日は同僚Pが最後の可能性も十分あったんだぞ? それこそ10分の差しかなかった」 志希「にゃはは~ザブトンイチマイ~♪ でも同僚Pさんだったとしても、あの人なら心配ナッシン。 ああ見えて小さな犯罪も犯せないゼンニンと性向判断済みだよ~♪」 P「ったく、心理学だかなんだかわからんが、十代の小娘がアラサーのオッサンの内面を語ってたら痛い目みるぞ? 男が誰の目もない密室で女と二人きりになったときにどう動くかなんて当人にしかわからんわ。 それに魔が差すってこともあるし」 志希「それでも大丈夫♪ もしものときにはこの志希ちゃん特性の暴漢撃退用のスプレーが火を噴くぜー♪ あ、火は出ないよ?」 そのスプレーの中身の効果はえげつないんだろうが、果たしてその時になって冷静に使えるのか? しかも密室だったら自分も吸い込む危険もある。 あくまでそれが必要になるような状況を未然に回避するよう努力することが一番大切だ。 63: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:40:12.82 :mx+DuvUn0 P「はぁ…。志希、これからは会社に残るのは俺がいるときだけにするんだぞ?」 志希「は~い♪」 自分で言いながらどこか違和感を感じる…? その原因は客観的になってみるとすぐにわかった。 P「魔が差すかもしれないのは俺も一緒か……あっ…」 志希「……」 本来であればわざわざ口に出すべきではないことをつい言ってしまったのは気安い志希だからか…。 志希「にゃはは~♪ プロデューサー、志希ちゃん襲うっちゃうの~?」ニヤニヤ そして失言を聞き逃してくれるほど志希の耳は悪くないらしい。 P「い、いやっ…そんなことはしない! 不安にさせるようなことを言ってすまん! 言葉の綾というか…失言だった」 志希「な~んだ、つまんないの~♪ せっかくスプレーのテストができると思ったのに~♪」 どうやら冗談っぽく受け取ってくれたようで一安心……? P「とにかく! 志希は天才と言っても体はただの女の子なんだから! 男に対しての危機感は常に持っているように!」 志希「体は女の子って……な~んかや~らし~♪」 あくまで茶化してくるスタイルに多少の苛立ちが募る。 P「志希、危機感。OK?」 志希「おーけーおーけー。あいむおーけー♪」 本当にわかってるのか…? 志希が顔の横でOKサインを作りながら立ち上がった。 どうやら会話の間に片づけは終わったらしい。 64: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:41:24.32 :mx+DuvUn0 志希「見回りまだあるんだよね? あたしも一緒に行く~♪」 志希「それと…」 P「わかってる、マンションまで送ってやるから」 志希「やったあ♪ お礼としてこのスプレー要る?」 P「結構です」 志希「あっはい」 志希「…にゃはは~! さぁ見回りレッツゴー」 とはいえもうそんなに残ってはいないのだが。 志希「ここで最後?」 P「そうだな」 そう言って見回り最後の部屋、仮眠室のドアを開いた。 がちゃり 残念ながら慣れ親しんだ仮眠室である。 吊りカーテンで仕切られた3台の簡素なベッドとサイドテーブル、そして毛布を収納した棚と洗面台があるだけの部屋。 しかし志希は初めて入ったらしく興味津々のようだ。 志希「へぇ~♪ キミもここで寝ることあるんだよね?」 P「あぁ、よく使うなぁ」 志希「どのベッド使うの?」 P「う~ん、大抵一番奥のかな」 志希「あそこかぁ~……ううぅ~うにゃ~ん♪」バッ ぎ し っ 志希が助走をつけて奥のベッドに飛び込むと静かな部屋にベッドの軋む音が響いた。 そして何が楽しいのかベッドの上でゴロゴロと転がっている。 …自分がスカートを穿いていることを忘れているらしく、スカートの裾はめくれ上がり肌触りのよさそうは太ももはまぶしく、 パンツは…普通に見えてしまっているぞ、おい…。 P「ちょっとおい、パンツ! 見えてる!」 志希「いいの、いいの~♪」 65: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:42:22.55 :mx+DuvUn0 いいことなど一つもないというのに尚もベッドを転げていたかと思うとうつ伏せの状態で止まり、志希のゆっくりとした呼吸音が聞こえてきた。 どうやら深呼吸をしているらしい。 艶のあるピンク色の生地を丸見えにしたまま…。 あぁ頭が痛くなってきた…。 志希「んんん~~~? 全然キミの匂いしないよ!? なんで~?」 P「そりゃ掃除のおばちゃんが毎日シーツ替えてくれてるに決まってるだろ。嫌だろ?オッサンの匂いがしたら。眠れるものも眠れん」 志希「あたしはキミの匂い好きなんだけどにゃあ~」 志希「あ、お菓子が置いてある! 食べていいのかにゃぁ…?」 自由すぎる…。 サイドテーブルの上に未開封の菓子箱があった。 そういえば昨日俺が出先で貰ったモノだ。無くしたと思っていたがここに置き忘れてたのか。 P「それ俺のだ。志希にやるよ」 志希「やったぁ♪ ありがとね~♪ お礼にこのス」 P「結構です」 志希「あっはい♪」 ばりっと音を立てて菓子箱が開かれる。 P「え? ここで食べるのか?」 志希「誰かさんが遅くまでお仕事してたから、なんだか小腹が空いてきちゃってね~」 P「というかこんな時間にお菓子って女の子的にどうなんだ?」 志希「ん~……カロリー計算しゅーりょー♪ 明日の朝食とレッスン量で調整可能で~す」 志希「ほら、キミも入り口に突っ立ってないで、一緒に食べよ? これから車の運転するんだから休憩しておくべきだよ♪」 一人だったら特に気にしないが志希を乗せるとなる万が一があってはいけないから確かに少し休憩しておいた方が良いだろう。 ポンポンとベッドのマットレスを叩く志希に促されるまま、彼女の隣に腰かけた。 志希「もぐもぐ…美味しい♪ あたしはやっぱりきのこ派だな~。チョコとスナックの食感が絶妙だね♪ プロデューサーは?」 P「俺は…どっちでもいいけど、どちらかと言えばたけのこの方かな」 66: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:44:26.63 :mx+DuvUn0 志希「えぇ~そうなんだ!? キミならきのこの良さを分かっていると信じてたのに…」 志希「じゃあ、これいらないよね?」 P「いるわ」 きのこの山の箱に手を伸ばそうとしたところで志希から待ったがかかった。 志希「はい、すとーっぷ♪ 食べたいなら…」 志希「はい、あ~ん♪」 志希がきのこを一粒つまんで俺の口元に差し出してきた…。 よくあるアレである。 が、俺はそれを無視して、自分で菓子箱から一粒つまみ出して口に運んだ。 うん、これはこれで美味いんだよなぁ。 志希「無視だとぉ~♪」 P「もう一個もらおう」 再び菓子箱に手を伸ばそうとしたのだが、志希はそれを自分の背後に隠してしまった。 志希「ダメ~♪ キミはこれ。はい、あ~ん」 そして性懲りもなくあ~んを強制してくる。 P「え、嫌だよ、普通に食べたい」 志希「アイドルからの貴重なあ~んだよ~? うりうり~♪」 志希「あ、これはもしかして恥ずかしいのかにゃ~? あ~んされるのは初めてだったかにゃ~? それなら恥ずかしくてできないのも当然だにゃ~♪」 十中八九ただの煽りであるが、まぁそこまで言うのなら乗ってやろう。 P「はいはい、じゃあ良いよ?」 志希「にゃは♪ はい、あ~ん♪」 P「んあ~むぐ……。もぐもぐ」 まぁ俺もいい大人ですし? 女の子からのあーんぐらい? 経験ないわけじゃないし? 志希「へぇ…これぐらいじゃバイタル変わらないんだぁ。見直したよ♪」 67: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:45:57.85 :mx+DuvUn0 P「ふふん…」 どうだこれくらなんともないんだからな、と内心勝った気分でいたのだが。 志希「じゃあ、これはどうかにゃ…?」 そう言うとスナック部分を唇で咥え、チョコの部分をこちらに差し出してきた。 志希「ん~~♪」 P「ちょっ…!?」ドキッ 志希「どひたの~? たへないの~?」ニヤニヤ P「っ……」 志希は間違いなく俺の反応を楽しんでいる…。 俺が慌てるのを見たいだけだ。 志希の思い通りにさせたくないのであればその口からあーんを受け取ればいいだけの話であるが、そんなことできるはずもない。 取ろうとしたら確実に唇同士が触れてしまうだろう。 状況的には完全に俺の負けであるのはわかるが、やめてくれと言うのも負けを認めているようで言いたくない。 ただ窮するのみであった。 志希「にゃはは~顔真っ赤~♪ 志希ちゃんご満悦~~♪」 また、ぎしっ、という音を立ててベッドに寝転んだ。 仰向けになってニヤニヤしている。俺の困る顔の映像を脳内で反芻でもしているのだろうか…? 十代の小娘に小馬鹿にされるというのは……正直イライラする…。 今日はいつになく志希に振り回されているからか、普段は微笑ましく見ていられる彼女のニヤケ顔がすごくイライラする…。 キスをせがむような行為、二人きりの仮眠室でベッドに寝そべるという行為、胸元の開いたボタン、いまにも見えそうなパンツ……。 何もわかっていない志希にすっごくイライラする。 68: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:47:28.11 :mx+DuvUn0 ……こんなの俺じゃなかったらとっくに襲っている。 あれだけ言ったのに分かっていない。 それとも自分は襲われても撃退できると本気で思っているのだろうか。 また俺が注意しても結局は馬耳東風、そして他の男に対しても同じように振る舞う…? 志希「~~♪」ニヤニヤ だめだ。 絶対にだめだ。 志希にはその危うさをなんとしても理解してもらわないと。 ……仕方がない。 多少強引なやり方になってしまうが言葉でダメなら体で理解してもらうしかない。 P「……」ゴソッ 一度深呼吸をし、ゆっくりとした動作で革靴を脱ぐ。 ベッドに膝をつくと小さく軋む音が鳴り、それと同時に志希の見開かれた目と合った。 天才に思考する暇は与えない。 素早くしかし必要以上に触れないように志希の上半身に馬乗りになり志希の顔を見下した。 志希「ぁ……」 志希のキョトンとした顔は貴重だ。 こうしてみるとただの可憐な美少女で、急激に罪悪感が襲ってきたがそれは無視することにした。 P「…どうだ志希、逃げられるか?」 体を落とし、志希の腹に軽く体重をかけながら尋ねてみた。 志希「にゃ、は、は……ちょっと、むりっぽいかな……」 P「そうか…、撃退スプレーはどうした?」 志希「……鞄の中」 P「わかったか? 俺がその気になればお前なんて簡単に襲えるってことだ」 志希「……っ」 P「これに懲りたらあまり男を…って志希?」 69: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:49:12.42 :mx+DuvUn0 志希「…っ…ふ……ふふっ」 志希「……にゃ~~はははは~~♪」 P「お、おい志希…?」 突然笑い出した志希に今度は俺の方がキョトンとしてしまう。 志希「にゃは、にゃはは♪……ごめんねぇ~だってキミの行動があんまりにも予想通りだったからさ~♪」 P「え…?」 志希「キミをわざとユーワクすればあたしに怖い目をみせようとしてくると思ってたんだよね~♪ 馬乗りになってくるのもばっちし的中♪」 P「…」 志希「にゃはは~♪ 大丈夫だよプロデューサー♪ 危機感でしょ? 最初からわかってるって~♪」 志希「最近はキミとあんまりじゃれあえないからその補充だよ♪」 P「……」 志希「んでさぁ~、もうそろそろどいてくれない? お腹少し苦しいんだ♪」 ぶちり、という音が俺の脳内に響いたような気がした。 だめだ、冷静に冷静に……。 わざと誘惑した、すべてお見通しでした、だと…? イライライライラ。 男をこんなにコケにして…、わかってない。 全然わかってない…。 あぁ、だめだめ冷静に……。 志希「それで、またキミの可愛い赤面顔を……ってあり?」 志希「あ、あれぇー……あたしの計算ではキミは赤面しながら急いであたしの上からどいてくれるはずなんだけど……志希ちゃん間違っちゃった…?」 もしコイツが男だったらもうとっくに手が出ていただろうが、さすがに女の子、それも飛び切りの美少女だ。 馬鹿にされたぐらいで暴力をふるうのはいくらなんでもあり得ない。 しかしコイツには一度痛い目を実際に見てもらう必要があるらしい。 さぁ、どうすればいいか…。 70: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:50:28.58 :mx+DuvUn0 深呼吸すると頭に上った血が幾分薄まったような気がして視界が開ける。 視界の端にはお菓子の箱、その中にはまだたくさんの小さなきのこが残っている。 志希はそれが好きだと言っていたなぁ…。 P「志希…今度は俺が食べさせてやるよ。ほら、あーん」 志希「え…な、なんで…?」 不穏な空気を感じ取ってか志希の顔から笑みが消えた。 こんな風に察しがいいところは本当に志希らしいと感心する。 が、今はそれすらも俺を苛立たせた。 P「はぁ? 好きなんだろコレ? ほらぁ」 志希「むぐっ!?」 半開きになっていた口に問答無用で菓子を突っ込むと彼女の目が驚愕の色に染まった。 志希が目をパチクリさせる様はちょっとだけ気の毒に思えたが、まだまだ足りない。 P「まだまだあるぞ? ほら口開けろ」 志希「もぐっ…!? ま、まっへ! いらないよぅ!」 菓子を押し込もうとした俺の腕が志希の両手に阻まれたのですかさずその両手を絡めとり、一瞬だけ腰を浮かせ股下に押し込んだ。 俺の股下から出ているのは志希の胸と顔だけ。 完璧なマウントの完成だ。 志希「やっ、だめっ、離してよぉ~」 志希は必死に体をよじってこの状態から逃れようとしているようだが、その抵抗は女に生まれなくて本当に良かったと心から思えるほどに非力だった。 志希「ふぎゅっ!?」 股下を潜り抜けようと足先の方へずれていくのを止めるのと同時に志希の口を開くために左手で志希の頬をつかみ無理矢理口を開かせる。 こんなアヒル顔でさえ可愛いくて…なぜかそれもまた苛つく。 P「何個入るかなぁー。にーこ、さんこ、よんこ…」 志希「ふむっ!? ふぅぅん゛ん゛っ!?」ブンブン 顔を左右に振ってイヤイヤしているが、まだ入るに決まっている。 唇と歯の隙間から見えるすでに入れたきのこ菓子を人差し指で奥に押し込むと、案の定スペースが空いた。 志希「んぐぅぅぅっ!?」 P「ごーこ、ろっ……こ、なぁ~なぁ~…こ! ん~~限界かな?」 本当はもっと入りそうだが志希が非協力的なのでこんなものだろうか。 71: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:52:41.93 :mx+DuvUn0 P「ほら、もぐもぐして」グイッグイッ 志希の顎を手で押して咀嚼の手伝いをしてやる。 志希「も゛…ぐ、もぐ…んぐ…う゛……」 志希「んん゛…んごく…」 志希「ぷおでゅーさぁ…んぐ…こわい…よぉ…んごく……もうやめよぉ…?」 今更何を言っているのか…。 P「志希、怖いだろう? 男を舐めてると怖い目に遭うんだぞ?」 志希「ぅ…んぐ…ぅん…」コクリ 志希が素直にうなずくのはこの荒療治の成果だろう。 P「でも俺で良かったなぁ、他の男だったら絶対に襲われてもっと怖い目に遭ってたぞ?」 頬の盛り上がりが減ってきたのでまた食べさせようと菓子箱をまさぐり一粒つまみ出すと、志希がぎょっとした表情を見せた。 志希「やっ…また…?」 P「あぁ、まただ。残ってるだろ? お残しは許しまへんで~ってか、ははっ」 志希「やだぁ…なんで…? もうわかったって言ってるのに…。なんの意味があるの…?」 P「ほらぁ、泣き言はいいから口開けろ~?」グイッ 志希「ひっ!? んごぁ…っ!?」 また志希の頬を握り強制的に開口させる。 さっき食わせた分はもう腹の中のようだ。 よしよし。 P「七個までは一気にいくぞ?」 志希「ふぅぅぅ゛ん゛!??? 」 一個、二個、三個……七個。 とりあえず、少なくともこれだけ入るのはもう分かっているからハイペースにつっこんでやった。 志希「んん゛ん゛ん゛……ふっぐぅ…う゛ぅ゛…」 こちらを見つめる志希の目はどこか虚ろに見える。 頬をリスみたいに膨らませ、しかも生気を失った表情なのにやはり可愛い。 くそっ! 苛つくイラつくイラつくイラつくっ!! P「あと、一個いけるか…?」 志希「んんん゛~~~~!!!」ブルブル 聞き分けなくイヤイヤする志希を軽く抑え込んで八個目を押し込むと、どうやらそれが限界らしかった。 72: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:54:26.55 :mx+DuvUn0 箱の中には残り二個のきのこの山…。 あともう少しだというのに…。 志希にはもう入らないか…? 志希「ん゛っ…んふ~~んふ~~っ」 と、そこで口呼吸を禁じられた志希の荒い鼻息が耳に入った。 志希のしゅっとした鼻もこのときばかりは小鼻をヒクつかせながらどうにか体内に酸素を取り入れようとしている。 鼻。 鼻かぁ…。 残り二個のうち一個を志希の口元に近づける。 そうすると志希は怯えにも似た表情を見せたが、口の上を素通りさせると一瞬安堵の色が浮かんだので、その油断の隙をついてきのこのスナックの部分を志希の左側の鼻の穴に挿入した。 ずにゅっ♪ 志希「ふむっ!?」 志希「ふ…ぐ……?」 志希の時間が止まっている。 めったなことでは思考することをやめない天才も、度重なる無意味な…いや無意味じゃない、志希を教育するためだ、本当だ…度重なる特異な状況に脳の処理機能がフリーズしてしまったらしい。 しかし…これはまた……。 P「んふっ…」 P「ふふ…はははは…」 なんて顔だよ、ははは。 さすがにアイドルでも鼻に異物を突っ込んだら可愛くなくなるのな、あはははは。 73: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:56:36.02 :mx+DuvUn0 そうだ記念…じゃなくて教育記録として残しておこう。 ぱしゃり♪ 志希「……ふ」 志希「ふぅ゛ぅ゛ぅ゛~~~~~~~」ジタバタ カメラのシャッター音に志希の思考が回復したようで…まぁ回復したところで体をよじることしかできないのだが。 P「片鼻じゃあ苦しいだろう? ほら、よく噛んで飲み込もう? ははっ」グイグイッ 志希「んに゛ぁ!? んむっ!んぐっ…んく…」 咀嚼することを失念していた志希を手伝ってやると、口内でグズグズになっていたらしい八個のきのこの山はほどなく嚥下された。 志希「んぷぁ…」 志希「な、なんで? なんなのこれぇ…こんなの襲われた方が…あたしキミになら……」 ずにっ♪ 志希「ふな゛ぁ!?」ビクッ 口内の圧迫感がなくなり安心した隙をついて最後の一個を右側の鼻の穴に差し込んだ。 ぱしゃり♪ アイドルとしてという以前に女の子として致命的な様を写真に収めたこの時点で、いつの間にか志希に対する苛立ちは霧散していた。 今はもう俺の下でフルフルと小動物のように震えている志希がたまらなく愛らしく見える。 志希「なんえ゛なんえ゛なんえ゛りはいれきらいりはいれきらいいみふめひいみふめひ……」 志希が極まった鼻声で何事かを呪文のように呟く。 その目の焦点はどこにあるのか曖昧だ。 その愛らしい視線を俺に向けたくて、両穴のきのこをそのスナック部分で鼻の内壁をノックするようにグリグリしてやった。 志希「んお゛ぉ゛!?」 志希「ん゛あ゛…やめへ…ごめんなさい…もうや…へ、へ、へ…」 志希「へぷちっ」 ぽろん……コロコロ… 世にも可愛らしいくしゃみの勢いで左側のきのこの山が鼻からすっぽ抜け、志希の胸の上に転がった。 74: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:57:45.85 :mx+DuvUn0 志希「ぁ……」 さっきまで志希の鼻穴におさまっていて、くしゃみによって発射されたソレには当然のようにぬめりのありそうな透明な液体が付着していた。 この可愛らしい志希の鼻水…。 嫌悪感は微塵も感じない。 意識せずともその濡れ菓子に手が伸びてしまう。 志希「ぷろ…でゅーさー…? それ…どうするの…? まさか、だよね…」 P「?」 志希が何を言っているのかわからない。 こんなのどうするかなんて決まっている。 そんな分かり切ったことをいちいち質問するなんて志希らしくないなぁ。 こんなオイシソウナものタベルに決まってるだろ? P「ん、ぱく」 志希「あっあっあ…えへ? えへ…?」 P「もぐ、もぐ…うん、美味いな…」 志希「ひっ、ひっ、ひあっ!? うぁっ!? はっ!? え!? ひっぃぃっ!?」 志希の口から出るのは意味をなさない空気が抜けるような音。 75: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 21:59:06.44 :mx+DuvUn0 P「こっちももらおうかな…」グニグニ 志希「ひぐぅ!?」 右穴に残ったきのこを突っ込み直し、内壁に擦り付けてから引っこ抜いた。 ずるぅぅ♪ P「あ、なんか付いてきた」 志希「ひっ!? ひっ、ひひひっ、だめだめだめだよっ、あひっ」 黄色だか透明だかよくわからない塊のような粘液のようなアイドルから出てくるものにしてはえげつないレベルのものを引き連れてスナックが出てきた。 P「ん、あむ…うんイケるイケる」 志希「いひっ、ひひっ♪いひひひ♪りかいりかいできなぁーいいいいい♪あひひひひ♪」 壊れたような笑い方をする志希の目には涙が溜まっている。 なんだっけ? 何をしてたんだっけ? 危機感のない志希への教育だ。 そうだそうだ。 男に馬乗りになられて好き放題にされる怖さも分かってくれたようだな。 P「志希、男のことをあんまり甘く見てると痛い目に遭うんだぞ? 分かったな?」 志希「はいはいはーーい♪ いひひひひひ志希ちゃんりょーかいだよー♪あはははははっひひひ♪」 P「事務所に遅くまで残るときは俺がいるときだけにするんだぞ?」 志希「はぁ~い!いひっ♪ キミがいるときだけ~あはっははは♪」 P「よし、じゃあ帰るか」 志希「帰る帰るーいひひっ♪」 なぜか酔漢のように足腰が立たなくなってしまった志希を彼女のマンションまで送り届けるのはなかなか骨だった。 76: ◆ao.kz0hS/Q:2016/06/19(日) 22:00:48.74 :mx+DuvUn0 一ノ瀬志希 編 終わり 78:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2016/06/19(日) 22:27:09.63 :hwfRtahpo レベル高いわ 読む →