2: ◆dCFehqwTmo:2016/09/06(火) 22:05:05.96 :RE0Y+nXd0
子どもの頃、お父さんがある絵本をわたしに読んでくれたことがあります。
親を亡くして、お仕事を探す少年と、
貧しさから遠い地でお仕事をしてて、久しぶりに両親に会いに行く少女が、
ある船の上で出会う、そんなお話です。
ふたりはお互いの身の上を語りながら、少しずつ互いに惹かれていきます。
でも、ある夜、船が嵐にあって、もうこのまま沈んでしまうというとき。
二人は、船の舳先でいよいよ死んでしまう運命を覚悟していました。
そんなとき、真下に浮かぶ一隻の救命ボートから二人を呼ぶ声がするんです。
「あと一人なら乗れる」と。
少年は、ためらわずに少女を海に突き落とします。
そうすることで、救命ボートに乗ってる人たちが、彼女を無事に救い出してくれるから。
助け出される少女に、少年はこう叫ぶんです。
「君には親がいる。君に微笑み、君の手をとってくれる人がいる。どうか、どうか幸せに生きてほしい」
涙一つ流さずにそう叫び、手を振り続けてる少年を、
少しずつ海に呑まれていく船の上にいる少年を、
少女は離れ行くボートの上でじっと見つめていたんです。
……わたし、この絵本を読んで、最初はただただ悲しい気持ちになったんです。だから、お父さんに言ってその本をもらって何度も読み返しました。
少女は確かに助かったのに、でも、少年は死んでしまった、それがとても心に残って。どうして死んでしまったんだろうって。
何回も、何回も読み返して、歳を経るごとに、わたしは、いつしかこう思うようになったんです。
『誰かを好きになって、その人と一緒にいたいと思っても、いつか必ずその人と別れる日が訪れる』って。
――月刊346アイドルズ 20XX年12月特別号 『特集取材 佐久間まゆ ~歌声に愛を込めて~』より抜粋
子どもの頃、お父さんがある絵本をわたしに読んでくれたことがあります。
親を亡くして、お仕事を探す少年と、
貧しさから遠い地でお仕事をしてて、久しぶりに両親に会いに行く少女が、
ある船の上で出会う、そんなお話です。
ふたりはお互いの身の上を語りながら、少しずつ互いに惹かれていきます。
でも、ある夜、船が嵐にあって、もうこのまま沈んでしまうというとき。
二人は、船の舳先でいよいよ死んでしまう運命を覚悟していました。
そんなとき、真下に浮かぶ一隻の救命ボートから二人を呼ぶ声がするんです。
「あと一人なら乗れる」と。
少年は、ためらわずに少女を海に突き落とします。
そうすることで、救命ボートに乗ってる人たちが、彼女を無事に救い出してくれるから。
助け出される少女に、少年はこう叫ぶんです。
「君には親がいる。君に微笑み、君の手をとってくれる人がいる。どうか、どうか幸せに生きてほしい」
涙一つ流さずにそう叫び、手を振り続けてる少年を、
少しずつ海に呑まれていく船の上にいる少年を、
少女は離れ行くボートの上でじっと見つめていたんです。
……わたし、この絵本を読んで、最初はただただ悲しい気持ちになったんです。だから、お父さんに言ってその本をもらって何度も読み返しました。
少女は確かに助かったのに、でも、少年は死んでしまった、それがとても心に残って。どうして死んでしまったんだろうって。
何回も、何回も読み返して、歳を経るごとに、わたしは、いつしかこう思うようになったんです。
『誰かを好きになって、その人と一緒にいたいと思っても、いつか必ずその人と別れる日が訪れる』って。
――月刊346アイドルズ 20XX年12月特別号 『特集取材 佐久間まゆ ~歌声に愛を込めて~』より抜粋
3: ◆dCFehqwTmo:2016/09/06(火) 22:05:51.88 :RE0Y+nXd0
『あなたを待ちわびて』
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『あなたを待ちわびて』