1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/04/05(火) 22:14:45.26 :4BypDZP4O
「なに泣いてんのよ。みっともないわね」
ある日、子供を迎えに行くと泣いていた。
見たところ怪我はないようなので泣くほど辛いことがあったのだろう。そう思い訊ねる。
「何があったのよ。言ってみなさい」
「ぐすっ……クラスメイトにお前のお父さんハゲって言われて……それで、ぼく」
しくしくめそめそ。誰に似たのかしら。私もあのハゲも泣き虫ではない。弱虫でもない。
「そう。それは事実だから仕方ないわ」
「でも……」
「でも、ハゲててもアイツはアイツよ」
子供と手を繋いで空中浮遊。空が青かった。
「アイツに何か不満があるわけ?」
「ううん……ないけど」
「ふん。ならいいじゃないの」
鼻を鳴らすのはあいつを良い旦那だと認めるのが癪に障るから。ちらと横目で一瞥して。
「私だって完璧じゃないわ」
妹のフブキと比べると背が小さいし泣いている我が子に優しくしてやることも出来ない。
それでも私は母親。私なりに大切にしている。
「完璧な両親なんて、窮屈でしょ?」
「……よくわかんない」
わからないだろう。しかし、いつかわかる。
「お母さんはどうしてお父さんと結婚したの? お父さんのどこを好きになったの?」
「べ、別に好きとかそんなんじゃないわよ」
前置きをしつつ、咳払いをして私は答えた。
「私より強いから」
それだけが事実でそれだけで夫に相応しい。
「だからアンタも強くなりなさい」
「お父さんみたいに?」
「別にアイツみたいになる必要はないわ。もちろん私みたいになる必要もない。アイツがアイツであるように、そして私が私であるように。アンタはなりたい自分になりなさい」
我が家にハゲは2人もいらない。1人で充分。
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「なに泣いてんのよ。みっともないわね」
ある日、子供を迎えに行くと泣いていた。
見たところ怪我はないようなので泣くほど辛いことがあったのだろう。そう思い訊ねる。
「何があったのよ。言ってみなさい」
「ぐすっ……クラスメイトにお前のお父さんハゲって言われて……それで、ぼく」
しくしくめそめそ。誰に似たのかしら。私もあのハゲも泣き虫ではない。弱虫でもない。
「そう。それは事実だから仕方ないわ」
「でも……」
「でも、ハゲててもアイツはアイツよ」
子供と手を繋いで空中浮遊。空が青かった。
「アイツに何か不満があるわけ?」
「ううん……ないけど」
「ふん。ならいいじゃないの」
鼻を鳴らすのはあいつを良い旦那だと認めるのが癪に障るから。ちらと横目で一瞥して。
「私だって完璧じゃないわ」
妹のフブキと比べると背が小さいし泣いている我が子に優しくしてやることも出来ない。
それでも私は母親。私なりに大切にしている。
「完璧な両親なんて、窮屈でしょ?」
「……よくわかんない」
わからないだろう。しかし、いつかわかる。
「お母さんはどうしてお父さんと結婚したの? お父さんのどこを好きになったの?」
「べ、別に好きとかそんなんじゃないわよ」
前置きをしつつ、咳払いをして私は答えた。
「私より強いから」
それだけが事実でそれだけで夫に相応しい。
「だからアンタも強くなりなさい」
「お父さんみたいに?」
「別にアイツみたいになる必要はないわ。もちろん私みたいになる必要もない。アイツがアイツであるように、そして私が私であるように。アンタはなりたい自分になりなさい」
我が家にハゲは2人もいらない。1人で充分。